説明

AED

【課題】医療機関と通信可能な通信手段を有するAEDにおいて、患者の位置に関わらず、医療機関と通信可能なAEDを提供する。
【解決手段】患者の呼吸数、脈拍、体温、血圧など診察に有用なデータを測定する機能をAEDに付加し、AEDに組み込んだ通信モジュールを使用して医療従事者へ測定したデータを送る。医療従事者が送られてきたデータを元に、患者の診察に有用な情報を得て、AEDへ指示を出す。AEDに適切な指示を出すことにより、より効果的な治療を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)に関わり、AEDの機能拡張により、治療効果の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のAEDは、心肺停止状態の患者に対して電気ショックを与えて心肺蘇生を促進する装置である。救急医療における初期措置として有効な装置である。また、通信モジュールを組み込み、動作状態を監視している製品も存在する。
例えば、特許文献1の車載AEDは、車両乗員の心拍の状況を非拘束で検知する仕組み、判定推測する仕組み、及びその判定推測結果によってAED装置の使用を促す仕組み、安全な場所へ誘導するナビゲーションの仕組み、車載対応のAED装置、車両の状況によってAED動作を許可する仕組み、外部へ緊急連絡、報知を行う仕組み等を備える。
また、特許文献2のAEDは、複数の診断情報を収集し、該診断情報を遠隔地へ送信し、救急処置を提供するためのシステムである。特許文献2のシステムは、人間の第2の手に着用するように適合された第1の部材及び第2の部材を備え、これらの部材は、複敗の診断装置及び除細動装置を備える。そして、特許文献2のシステムには、遠隔地との間で筒報を送信及び受信するための送信ユニットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229091号公報
【特許文献2】特表2003−534026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1は、車載AEDであり、車から離れた患者に対しては、除細動することができない。また、特許文献1および特許文献2では、通信可能範囲が限られ、AEDと通信機器とが所定の距離以上離れると通信できない。
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、医療機関と通信可能な通信手段を有するAEDにおいて、患者の位置に関わらず、医療機関と通信可能なAEDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のAEDおよびAEDユニット並びにAEDシステムは、患者の呼吸数、脈拍、体温、血圧など診察に有用なデータを測定する機能をAEDに付加し、AEDに組み込んだ通信モジュールを使用して医療従事者へ測定したデータを送る。医療従事者が送られてきたデータを元にAEDへ指示を出すものである。
【0006】
即ち、本発明のAEDは、バイタルサインのデータを測定する測定手段、カメラ、マイク、スピーカ、近距離無線通信手段を備え、前記測定手段が測定したデータと、前記カメラが撮像した映像と、AEDを収容する格納ボックスを有するAEDユニットに具備された前記マイクが集音した音データとを、ネットワーク回線を介して所定の医療施設に通信可能な通信モジュールに送信するAEDである。
【0007】
また即ち、本発明のAEDユニットは、バイタルサインのデータを測定する測定手段、カメラ、マイク、スピーカ、近距離無線通信手段を備えたAED、および、前記測定手段が測定したデータと、前記カメラが撮像した映像と、AEDを収容する格納ボックスを有するAEDユニットに具備された前記マイクが集音した音データとを、ネットワーク回線を介して所定の医療施設に通信可能な通信モジュールを有するものである。
【0008】
また即ち、本発明のAEDシステムは、医療施設と、当該医療施設とネットワーク回線を介して通信するAEDユニットとを備えたAEDシステムであって、前記AEDユニットは、バイタルサインのデータを測定する測定手段、カメラ、マイク、スピーカ、表示部および近距離無線通信手段を備えたAED、並びに、前記医療施設および前記AEDと通信する通信モジュールを有し、前記AEDは、前記医療施設に前記測定手段が測定したバイタルサインのデータ、前記カメラが撮像した映像、前記マイクが集音した音データを送信し、前記医療施設の医療従事者の指示する音声またはメッセージを、前記スピーカまたは前記表示部から出力または表示するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、AEDから送られてきた患者の呼吸数、脈拍、体温、血圧などのバイタルサインの測定データを元に、医療従事者がAEDへ指示を出すことで、より適切な治療(心肺蘇生措置)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のAEDシステムの一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明のAEDシステムの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明のAEDシステムにおけるAEDの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のAEDシステムの一実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、AEDに、通信モジュール、バイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温、等)を測定する医療測定機器、および、カメラを組込み、測定した情報を通信モジュールで医療施設等へ送信するシステムである。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避けるため、説明を省略するようにした。
【0012】
図1によって、本発明のAEDシステムの一実施例を説明する。図1は、本発明のAEDシステムの一実施例を説明するための図である。
図1において、111はAED、100はAEDユニットおよびAED111の設置場所、110はAED111を収容している格納ボックス、121は設置場所100内を監視するカメラ、122は設置場所100内を適宜照らす照明、131は設置場所100内の音を集音するマイク、132は設置場所100内に音声を出力するスピーカ、120はカメラ設置台、150は患者、151は操作者である。カメラ設置台120は、カメラ120、照明122、マイク131、およびスピーカ132を搭載する。AEDユニットは、図示しない制御部と通信モジュールを有し、制御部は、通信モジュール、格納ボックス111、カメラ121、照明122、マイク131、スピーカ132、およびカメラ設置台120で構成される。
また、設置場所100のAEDユニットは、図示しない制御部と通信モジュールを有し、制御部は、通信モジュール、格納ボックス111、カメラ121、照明122、マイク131、スピーカ132、カメラ設置台120と相互にアクセス可能な有線LAN(Local Area Network)または無線LANで通信可能である。
また、設置場所100のAEDユニットの通信モジュールは、AEDユニット内の機器とLANで通信する他、一般回線または専用回線等のネットワーク回線を介して、所定の医療施設と通信する。
【0013】
カメラ設置台120は、図示しない制御部の制御に応じてカメラ121の画角および照明122の照射方向の変更を行う。また、AED111と、カメラ120、照明122、マイク131、スピーカ132、および制御部は、図示しないLANで接続され、相互にアクセス可能である。さらにAEDユニットは、ネットワークを介して医療施設と通信可能な通信モジュールを備え、一般ネットワーク回線または専用ネットワーク回線を介して所定の医療施設と通信可能である。またさらに、AED111は、Zig Bee(商標)、Bluetooth(商標)、WiMAX(商標)、デジタルコードレス電話、等の近距離無線通信手段、バイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温、等)の測定手段、および、患者150や周囲を撮像するカメラを備え、測定した情報および撮像された映像を、通信モジュールを介して医療施設等へ送信する。また、医療施設から送信される心肺蘇生措置のための適切な指示を受信し、AED111に備えたマイクおよびスピーカ、並びに設置場所100内のマイク131およびスピーカ132を使って会話することができる。
【0014】
図1において、カメラ121が設置場所100内を撮像し、撮像した映像を制御部が解析し、患者150が倒れたと判定した場合には、スピーカ132から警告音を発生する。さらに、好ましくは、制御部は照明122を照射し患者150の周囲を明るくし、マイク131から入力される音の感度焦点を患者150の近くに合わせ集音する。そして、制御部は、収集した映像および映像の解析結果、その後も継続して、撮像した映像、マイク131が集音した音を、通信モジュールからネットワークを介して医療施設に送信する動作を開始する。
この結果、設置場所100内または設置場所100の近辺にいた人151(以下、操作者151と称する)は、照明122の照射、スピーカ132から出力された警告音等によって、心臓マヒ(心室細動)等の不整脈が生じ倒れた人150(以下、患者150と称する)を、患者150を通常に発見するよりも、迅速に発見することができる。
さらに、制御部は、撮像した映像を制御部が解析し、患者150が倒れたと判定した場合には、自動的に通信モジュールからネットワーク回線を介して、所定の医療施設若しくは管理センタに送信するようにしても良い。そして、当該所定の医療施設の制御装置は、AED111が使用される事件が発生した(例えば、第1の発報)として、医療従事者に自動的に連絡し、医療従事者を待機させるようにすることができる。
【0015】
患者150を発見した操作者151は、付近にある設置場所100内の格納ボックス110に急行し、格納ボックス110の扉をあけAED111を取り出す。その後、操作者151は、格納ボックス110内に収容されているAED111を患者150まで運搬し、AED111のボタンを押す動作か、あるいはAED111のフタを開ける動作、等によってAED111の電源を入れる。なお、格納ボックス110の扉が開くと、自動的に通信モジュールからネットワーク回線を介して、所定の医療施設(若しくは管理センタ)に送信するようにしても良い。そして、当該所定の医療施設の制御装置は、AEDが使用される事件が発生した(例えば、第2の発報)として、医療従事者に自動的に連絡し、連絡された医療従事者が迅速に待機できるようにする。
【0016】
その後操作者151は、AED111から出力される音声の指示に従って、患者150にパッド(電極)を貼り付ける。パッドとAED111本体がコネクタによって接続されていれば、AED111は、心電図の読取り等の解析を自動的に開始する。
除細動が必要な心電図であれば、AED111は、「除細動が必要です」とのメッセージM1を音声出力やディスプレイ表示し、かつ充電を開始する。また、AED111の制御部(後述図3の判定処理部300)は、除細動が必要な心電図であること(例えば、「除細動が必要です」とのメッセージM1)およびその解析結果を(例えば、第3の発報として)、通信モジュールからネットワーク回線を介して、所定の医療施設(若しくは管理センタ)に送信する。
【0017】
操作者151は、メッセージM1「除細動が必要です」が出力または表示された場合には、感電を防ぐため、患者150周囲のすべての人が患者150に触っていないことを確認する。AED111は、充電後、「ショックが必要です」とのメッセージM2を(例えば、第4の発報として)音声出力やディスプレイ表示する。
操作者151は、メッセージM2「ショックが必要です」が出力または表示された場合には、感電を防ぐため、患者150周囲のすべての人が患者150に触っていないことを再度確認し、AED111本体の点滅しているボタンを押す。
以降、メッセージM1およびメッセージM2が出力または表示される都度、AED111本体の点滅しているボタンを押す。
AED111から、「ショックは不要です。患者に触れても大丈夫です」とのメッセージM3(例えば、第5の発報)が出力または表示された場合には、従来は、操作者151は、患者150が息をしているか、身体に動きがあるかどうかを確認し、身体に動きがなければ、心臓マッサージ、人口呼吸等の心肺蘇生措置を実行する。
【0018】
上述したメッセージM3の出力または表示の後に、操作者151が実行する患者150の息や身体の動きの確認は、経験者でなければ極めて難しい。また、心臓マッサージ、人口呼吸等の心肺蘇生措置の実行も同様である。そこで、本発明では、従来のやり方に加え、AED111に脈拍、呼吸、血圧、体温、等のバイタルサインを測定するためのセンサを設け、当該センサの検知した情報に基づいて患者150の脈拍、呼吸、血圧、体温、等のバイタルサインを測定し、当該測定されたデータを医療施設に送信するものである。このとき、操作者151は、AED111に付属するカメラを患者150の胸や顔等に向けて撮像し、撮像した映像をバイタルサインの測定データと共に送信する。
例えば、本発明のAEDシステムは、患者150の治療を適切に行うために、AED111の設置場所100(例えば、格納ボックス110)に、通信モジュールを有し、当該通信モジュールは、ネットワーク回線を介して所定の医療施設と通信可能である。当該通信モジュールは、通信可能な所定の医療施設に対して、通信し、応答のあった医療施設に患者150のバイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温、等)の情報、および、カメラが撮像した映像を医療施設に送信する。なお、通常、1つのAEDシステムは、1つの医療施設と優先的に通信接続するように定められ、そこに接続できなければ、順次優先順位順に他の医療施設と通信接続する。
このため、AED111は、上述したように、AED111自体にも、近距離無線通信可能な無線機を備え、同様の無線機を備えた設置場所100の格納ボックス110と通信することができる。この結果、AED111が格納ボックス110から持ち出されても、格納ボックス110の無線機を介して、設置場所100の通信モジュールから、ネットワーク回線を介して、医療施設と通信することができる。
【0019】
図2によって、さらに本発明のAEDシステムの一実施例を説明する。図2は、本発明のAEDシステム一実施例の構成を示すブロック図である。200はAEDシステム、280は医療施設、250はネットワーク回線、290は蓄積サーバ、210はAED設置場所100のAEDユニットである。また、AEDユニット210において、111はAED、211は通信モジュール、121はカメラ、122は照明、131はマイク、132はスピーカ、120はカメラ台、212は制御部、213はLANである。
図2のAEDシステム200において、ネットワーク回線250には、医療施設280、および蓄積サーバ290は、図示しないにネットワークインタフェースによって、ネットワーク回線250と接続され、相互に通信可能である。
蓄積サーバ290は、ネットワーク250を介してAEDユニット210から送信される映像、音声、AEDの動作情報、およびAEDが取得するバイタルサインの情報を受信し、蓄積する。なお、ネットワーク回線250を介して受信されるAEDユニットは1つまたは複数であるので、蓄積サーバ290は、ID等、それぞれのAEDユニットに固有の名称で区別して蓄積および管理する。また、ネットワーク回線250に接続される医療施設も1〜複数である。
【0020】
また、AEDユニット210のLAN213は、通信モジュール211を介してネットワーク回線250と接続する。さらに、通信モジュール211、カメラ121、照明122、カメラ台120、マイク131、スピーカ132、および制御部212は、それぞれ、LAN213を介して相互に通信可能である。また、カメラ台120は、少なくともカメラ211と照明122を搭載し、それらを旋回可能としている。
また、AED111は、通信モジュール211と近距離無線通信240で無線通信し、AEDユニット210からの制御命令や医療施設280からの指示を受信する。なお、医療施設280からの指示は、映像や音声のほか、AED111本体の動作を直接制御する制御命令を含む。
また、AED111は、近距離無線通信240によって、測定した患者150のバイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温、等)の測定情報、付属のカメラが撮像した映像、マイクからの音声情報を通信モジュール211、ネットワーク回線250を介して医療施設280および蓄積サーバ290に送信する。
この結果、医療施設280とAED111の操作者151は、医療施設280から送信される適切な指示を受信する等、会話を交信することができる。また、場合によっては、医療施設280からAED111を直接操作することができる。
【0021】
制御部212は、AEDユニット210の各機器を専用のアプリケーションに従って制御する。
例えば、図2において、制御部212は、照明122の点灯/消灯、マイク131から集音、感度の変更、感度位置の変更等の制御、スピーカ132の出力制御を行う。また、制御部212は、カメラ台120を制御して、カメラ121のパン角やチルト角の変更制御、照明122の照射方向の変更制御を行う。
【0022】
図1および図2の実施例によれば、蓄積サーバ290にカメラ121が撮像した映像が保存されるので、AED111の盗難、破壊、等があった場合でも、過去の状況が把握できる。
また、カメラ121が昼等の明るい時にはカラー撮像し、夜間等暗い場合にはモノクロおよび赤外光を撮像可能なカメラにすることにより、患者150を照射することはできないが、照明122を不要としても良い。
また、RFID等を設け、AEDから発する電波を監視カメラが検知し、どこで使用されているかを把握することも可能である。その結果、電波発生源方向にカメラを向けることで状況を撮像することを可能とした。
【0023】
次に、図3によって、本発明のAEDシステムに使用するAEDの一実施例を説明する。図3は、本発明のAEDシステムにおけるAEDの一実施例の構成を示すブロック図である。300は判定処理部、301は電気ショックを発生するための起動ボタン、302はAED電極、311は心拍センサ、312は呼吸センサ、313は血圧センサ、314は温度センサ、321はカメラ、322は表示部、323はマイク、324はスピーカ、340は近距離無線通信可能な無線機である。なお、心拍センサ311は、AED電極302に組み込まれている。
図3の本発明のAEDシステムにおけるAED111において、操作者151は、表示部322やスピーカ324の指示に従って、患者150にAEDの心拍センサ311およびAED電極302を取り付ける。
【0024】
判定処理部300は、患者150に、AEDの心拍センサ311が取り付けられたことを、心拍センサ311からの心拍データの入力が開始されたことによって認識する。認識後、判定処理部300は、無線機340に心拍データの入力が開始されたことを表す信号を出力、表示部322に心拍データの入力が開始されたことを表す映像信号を出力し、スピーカ324に心拍データの入力が開始されたことを表す音声信号を出力する。
無線機340は、心拍データの入力が開始されたことを表す信号を無線信号に変換して送信する。また、表示部322は、心拍データの入力が開始されたことを表す映像を表示する。また、スピーカ324は、メッセージM31「心拍データの入力が開始された」を音声出力する。
【0025】
AED111の判定処理部300は、心拍センサ311から入力される心拍データから、心電図の読み取り等の解析を自動的に開始する。
判定処理部300は、除細動が必要な心電図であれば、「除細動が必要です」とのメッセージM1をスピーカ324から音声出力させ、かつ、表示部322に「除細動が必要です」とのメッセージM1を表示する。また同時に、電気ショックを与えるための充電を開始する。また、判定処理部300は、除細動が必要な心電図であること(例えば、「除細動が必要です」とのメッセージM1)およびその解析結果を、無線機340からAEDユニット210に送信する。AEDユニット210の通信モジュール211は、受信した信号を、ネットワーク回線250を介して、所定の医療施設280および蓄積サーバ290に送信する。
また、操作者151は、感電を防ぐため、患者150周囲のすべての人が患者150に触っていないことを確認する。
【0026】
判定処理部300は、電気ショックを与えるための充電が完了した場合には、起動ボタン301の表示部を点滅させ、「ショックが必要です」とのメッセージM2をスピーカ324から音声出力させ、かつ、表示部322に「ショックが必要です」とのメッセージM2を表示する。また、判定処理部300は、電気ショックが必要であること(例えば、「ショックが必要です」とのメッセージM2)およびその解析結果を、無線機340からAEDユニット210に送信する。AEDユニット210の通信モジュール211は、受信した信号を、ネットワーク回線250を介して、所定の医療施設280および蓄積サーバ290に送信する。
操作者151は、メッセージM2「ショックが必要です」が出力または表示され、起動ボタン301の表示部が点滅を開始した場合には、感電を防ぐため、患者150周囲のすべての人が患者150に触っていないことを再度確認し、AED111本体の点滅している起動ボタン301を押す。
電気ショック後、AED111の判定処理部300は、心拍センサ311から入力される心拍データから、心電図の読み取り等の解析を開始する。
以降、AED111と操作者151は、メッセージM1およびメッセージM2が出力または表示される都度、上記動作を繰り返す。
【0027】
また、AED111の判定処理部300は、電気ショック後に取得した心電図を解析し、除細動が必要ではないと判定すれば、「ショックは不要です。患者に触れても大丈夫です」とのメッセージM3をスピーカ324から音声出力させ、かつ、表示部322に「ショックは不要です。患者に触れても大丈夫です」とのメッセージM3を表示する。また、判定処理部300は、ショックが不要な心電図であること(例えば、「ショックは不要です」とのメッセージM3)およびその解析結果を、無線機340からAEDユニット210に送信する。AEDユニット210の通信モジュール211は、受信した信号を、ネットワーク回線250を介して、所定の医療施設280および蓄積サーバ290に送信する。
【0028】
操作者151は、メッセージM3を確認した後、カメラ321を患者150の胸、顔、喉、等に向ける。カメラ321は、メッセージM3後は自動的に所定のフレームレートで撮像を開始し、AEDユニット210、ネットワーク回線250を介して、医療施設280および蓄積サーバ290に所定のフレームレートで送信が開始されている。なお、撮像の開始は、AED111に電源が投入された直後から開始され、撮像された映像が、自動的に送信されるようにしても良い。
メッセージM3の出力または表示後、判定処理部300は、心拍センサ311、呼吸センサ312、血圧センサ313、および温度センサ314から出力される検知データを取得する。そして、判定処理部300は、心拍センサ311の検出データから心電図の測定し、呼吸センサ312の検出データから呼吸数の測定または息をしているか否かの確認データの取得を行い、血圧センサ313の検出データから血圧値を測定し、温度センサ314の検出データから体温を測定する。即ち、判定処理部300は、患者150のバイタルサインを測定する。
判定処理部300は、これらバイタルサインの測定結果を無線機340からAEDユニット210に送信する。AEDユニット210の通信モジュール211は、受信した信号を、ネットワーク回線250を介して、所定の医療施設280および蓄積サーバ290に送信する。また、判定処理部300は、これらバイタルサインの測定結果を、表示部322に表示しかつスピーカ324から出力する。
【0029】
医療施設280の医療従事者は、AED111から送信された患者150のバイタルサインの測定結果から、患者150に必要な措置の仕方を判断し、図示しないマイクやキーボード等の入力手段を用いて、ネットワーク回線250およびAEDユニット210を介して、AED111に送信する。例えば、医療施設280の医療従事者は、AED111の操作者151と、お互いの機器に付属するマイクとスピーカを使って音声通話し、今後の措置を伝達し、分からないところがあれば説明する(さらに表示部を使っても良い)。この時、医療従事者は、操作者151にカメラ321を向ける場所を指示し、カメラ321で撮像した映像を見ることで、心肺蘇生措置についての判断がより適確になる。
【0030】
この結果、操作者151は、医療施設280の指示に基づいて、迅速および適確に患者150に対して、心臓マッサージ、人口呼吸等の心肺蘇生措置を実行することができる。また、それらの措置の最中にも、医療施設280から適宜指示をもらって心肺蘇生措置を実行することができる。この結果、患者150の回復を一層迅速に助けることができる。
【0031】
さらに、AED111単独の判定(診断)では、メッセージM1「除細動が必要です」およびメッセージM2「ショックが必要です」が出力および表示されない場合がある。しかし、医療施設の医療従事者は、心肺停止状態の患者に対して電気ショックを与えて心肺蘇生を促進する方が良いと判断する場合があるであろう。この時、医療従事者は、医療施設280からAED111に指令を出して、除細動が必要であると判定させる。この結果、AED111は、自己の心電図の判断よりも医療施設280の判断を優先させ、電気ショックを実行することができる。
なお、例えば、操作者151に警告を発報し、その後、直接AED111を充電し、電気ショックを患者150に与えるようにしても良い。
またさらに、医療従事者は、医療施設280からAED111に指令を出して、電気ショックの電圧を可変して、実行することができる。この結果、バイタルサインの値に応じて、あるいは、カメラが撮像した患者150の容体に応じて、適切な電気ショックを与えることができる。
【0032】
好ましくは、操作者151は、格納ボックス110からAED111を取り出す。または、取り出そうとする。しかし、メンテナンス直前で、内蔵のバッテリが切れかかって、電池切れの表示がある場合もある。このように、AEDのバッテリの電力が弱まっていたら、AED格納ボックス110経由でその旨を通知し、(最寄りの)他のAEDの設置場所を紹介してもらうようにする。
あるいは、AED111が所定の充電量未満になるかあるいは、カウンタ機能を有し、所定の期間(時間)メンテナンスされない場合には、AED格納ボックス110の外面またはAED111の表示部に他のAEDの設置場所を表示するようにしても良い。
【0033】
図1〜図3の実施例によれば、従来のAED(移動局:バッテリで稼働)では、AEDから直接医療施設に無線伝送するので多くの電力が必要であった。このため、バッテリの消耗が激しかった。しかし、AEDの格納ボックス(固定局:設置設備から給電で可動)経由で伝送すれば、AEDとAED格納ボックス間の通信は、近距離無線通信であるので少ない電力であり、AED格納ボックスは電力消費を考慮しなくて良い。
また、AEDの電力(バッテリ)が弱まっていたら、AED格納ボックス経由で他のAEDの設置場所がすぐに分かるため、迅速に患者への対応が可能となる。
さらに、AEDの作動条件(脈拍なし、細動、等の不整脈)の制限を、医療施設の医療従事者の遠隔操作によって解除し、自動的または手動でAEDの電気ショックの起動ボタンを押すことができる。
【0034】
図1〜図3および図4によって、本発明の他の実施例を説明する。図4は、本発明のAEDシステムの一実施例を説明するための図である。図4(a)は、AED111がAEDユニット210が存在する設置場所100から離れ過ぎたため、近距離無線通信不可能になってしまった一例を示す。このように、AED111とAEDユニット210との間の通信不能になった場合には、AED111は、医療施設280および蓄積サーバ290と通信不可能になってしまう。
そこで、図1〜図4の実施例では、図4(b)に示すように、別の設置場所に収容されているAED111’を中継地点に移動させ、中継機としてして中継に使用する。この結果、近距離無線通信の通信圏外までAEDユニット210とAED111が離れても、医療施設280や蓄積サーバ290と通信可能とすることができる。
例えば、デジタルコードレス電話の親機から子機1を中継機として子機2と無線通信する。
なお、中継として利用するAED111’が、そのまま格納ボックスに収容されたままで使用できるようにしても良い。
この結果、AED同士で通信可能となり、一方を患者の治療に使用し、他方を所属AED格納ボックス経由で医療施設までの中継局として使用することができる。
【0035】
上述の実施例によれば、AEDの操作者151は、医療施設の医療従事者から送信される適切な指示を受信する等、会話を交信することができる。また、場合によっては、医療施設からAEDを直接操作することができる。
また、AEDから設置場所までの通信ができれば良いため、通信時の消費電力を抑えることができる。また、AED単体の場合よりも確実な通信経路の確保が可能となる。
なお、医療施設および操作者は、1人には限らない。
【0036】
以上、本発明を実施例によって詳細に説明した。しかし、本発明は、上述の実施例に限定されるわけではなく、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者であれば、本発明の思想と精神に基づいて、本発明を修正若しくは変更できる発明が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
100:設置場所、 111:AED、 110:格納ボックス、 121:カメラ、 122:照明、 131:マイク、 132:スピーカ、 120:カメラ設置台、 150:患者、 151:操作者、 200:AEDシステム、 210:AEDユニット、 211:通信モジュール、 212:制御部、 213:LAN、 250:ネットワーク回線、 280:医療施設、 290:蓄積サーバ、 300:判定処理部、 301:起動ボタン、 302:AED電極、 311:心拍センサ、 312:呼吸センサ、 313:血圧センサ、 314:温度センサ、 321:カメラ、 322:表示部、 323:マイク、 324:スピーカ、 340:無線機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AEDにおいて、バイタルサインのデータを測定する測定手段、カメラ、マイク、スピーカ、近距離無線通信手段を備え、前記測定手段が測定したデータと、前記カメラが撮像した映像と、AEDを収容する格納ボックスを有するAEDユニットに具備された前記マイクが集音した音データとを、ネットワーク回線を介して所定の医療施設に通信可能な通信モジュールに送信することを特徴とするAED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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