説明

AI人工知能プログラム搭載ゲーム装置

【課題】メモリ容量の少ない端末及び機器でも動作する、AI人工知能プログラムにより、コンピューターが自動的に落ち物ゲームを行い、対戦相手や記録データを必要とせず、通信不可時でもゲームを行うことができるAI人工知能プログラム搭載ゲーム装置を提供する。
【解決手段】物体の回転方向も含めた配置位置探索手段と、配置位置の候補が複数に及ぶ際は、数1の数式によって配置位置の最適性の順位を決定するロジックが簡便な最適性決定手段を有し、初期位置から配置位置までの経路を割り出す経路探索手段を有するAI人工知能プログラムと、処理部や表示制御手段を通じ、物体の移動の様子を表示部に表示させ、ゲームを行う者が操作入力手段を介し、物体の移動や回転の操作を行い、物体の操作や回転の状態を、処理部や表示制御部などを通じて表示部に表示させ、特定の条件でゲームが終了したり継続したりすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落ち物ゲームにおいて、物体の配置位置を探索し、物体の堆積状態から物体の配置位置の優先順位を、確率的手法に則って決定し、配置位置の最適性を任意に調節できる演算手段を有し、目的位置までの経路を探索する探索手段を有するAI人工知能プログラムを、落ち物ゲームに搭載したAI人工知能プログラム搭載ゲーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の対戦型落ち物ゲームは、ネットワーク通信を介し、人間同士がリアルタイムで対戦するか、リアルタイムに対戦相手が不在時の場合は、過去に人間がプレイした記録と対戦させるものであった。
(非特許文献1参照。)
【0003】
次に出現するブロックを認識し、ブロックの堆積状態などからその時点における物体の最適な配置位置を、複雑なロジックを用いて割り出す演算手段と、補正手段を有するAI人工知能を搭載したゲーム装置であった。
(非特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G−modeスタイル/テトリスリーグ,[online],株式会社ジーモード掲載[2011年1月9日検索],インターネット,〈URL:http://www.g-mode.jp/appli/vs/tetris-league/〉
【0005】
【非特許文献2】みんなでテトリス/ トレーニングモード,[online],Tetris Online Japan株式会社掲載[2011年1月9日検索],インターネット,〈URL:http://yahoo.tetrisonline.jp/yahoo/_contx/ttxguide.aspx?id=g4d〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の対戦型落ち物ゲームでは、リアルタイムでネットワーク通信手段を介して人間同士が対戦するものであったが、リアルタイムで対戦相手が不在時または通信不可時には、対戦ゲームを行うことが不可能であったので、この点を克服するために、過去に人間がゲームをプレイした記録を残し、リアルタイムで対戦相手が不在時または、ゲームを行う者の意志によって、ネットワーク通信手段を介して、記録データをダウンロードし、再現手段と表示手段を以って記録データからゲームプレーを再現し、ゲームを行う者がこの記録データと対戦するものであったが、記録データ数が少ない場合は、対戦相手としてのパターン数が少ない状態でゲームを行うものであり、通信不可時の場合は、記録データのダウンロードを行うことができず、ゲームを行うことが不可能であった。
(以上、非特許文献1参照。)
【0007】
コンピューターに自動で、物体を配置させる人工知能プログラムで以って、対戦相手不在時及び通信不可時に、ゲームを行うことができない欠点を克服したものであり、物体の配置位置を割り出す落ち物ゲームの人工知能として、次に出現するブロックを認識させ、物体の堆積状態から演算手段と補正手段を以って、最適な位置に物体を配置するゲーム装置であるが、これらを実現するためにはロジックが複雑になり過ぎて、プログラムが膨大となり、携帯電話などのメモリ容量の少ない端末及び機器では、プログラムを実行させることが不可能であった。
(以上、非特許文献2参照。)
本発明は、以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するためには、図1に示すロジックを有するAI人工知能プログラムで以って、コンピューターが自動的に落ち物ゲームを行うことが必要で、図1に示すロジックのうち、AI人工知能部分は以下に示す事項からなる。
【0009】
1.現在の物体の堆積状態と、配置しようとしている物体の回転方向も考慮に入れた配置位置を、演算で以って探索する配置位置探索手段(11)を有すること。
2.上記1の手段で以って、物体の堆積状態や回転方向も含めた配置位置を探索した際、配置位置の候補が複数に及んだときは、各々の配置位置に対する最適性の優先順位を決定する最適性決定手段(12)に、従来のようにロジックが複雑になり過ぎないようにするため、後述の数1を含むロジックを用いる。
3.上記1と2で配置位置と回転方向が決定したら、物体の出現位置を初期位置として、初期位置から配置位置までの経路を、物体の回転方向も考慮に入れ、探索する経路探索手段(13)を有すること。
【0010】
前述の1と2の物体の配置位置と回転方向と配置位置の最適性の演算手段は、配置位置探索手段(11)と最適性決定手段(12)からなり、まず図2のように物体の形状と、回転方向に合致する配置位置を、配置位置探索手段(11)で以って探索し、次に(22)〜(24)のように複数の候補が出現した場合は、配置候補位置と定義し、配置候補位置における任意の範囲の周辺位置における物体の堆積の有無や、物体の出現場所から配置候補位置までの距離を考慮に入れ、各配置候補位置の最適性を演算する最適性決定手段(12)に以下に示す数1の数式を含むロジックを用いて、配置候補位置の最適性に対する優先順位を決定する。
【0011】
後述の説明のために例として、図2の(22)〜(24)の配置候補位置における最適性の優先順位を(22),(23),(24)の順とする。
【0012】
【数1】

【0013】
上記の数1の各パラメーターと関数部分は以下のようになっている。
【0014】
k,n,iは自然数で、P(Xk,Yk,H(X,Y))|1≦k≦nは、(22)〜(24)の各配置候補位置のx,y座標であるX,Yと、(22)〜(24)の各配置候補位置の周辺にある任意のn個の周辺位置のうち、第k番目の位置のx,y座標であるXk,Ykと、(22)〜(24)の各配置候補位置のXとYから、物体の出現位置(21)までの距離であるH(X,Y)を考慮に入れた、(22)〜(24)の各配置候補位置X,Yにおける、物体の配置の最適性度合い関数で、G(H(X,Y))は、(22)〜(24)の各配置候補位置のX,Yと、物体の出現位置(21)からの距離による物体の配置の最適性度合い関数で、Xi,Yiは、(22)〜(24)の各配置候補位置X,Yの周辺にある任意のn個の周辺位置のうち第i番目の位置のx,y座標で共に自然数。
【0015】
αiは、(22)〜(24)の各配置候補位置X,Yの周辺にある、任意のn個の周辺位置Xi,Yiにおける、物体の配置の最適性を決定づけるための重み係数で正の実数であり、F(Xi,Yi)は、(22)〜(24)の各配置候補位置X,Yの周辺にある、任意のn個の周辺位置のうち第i番目の位置であるXi,Yiにおける、物体の有無を表す状態関数で、この関数の値域は次に示す数2の通りである。
【0016】
【数2】

【0017】
ここで、数2のFmin(Xi,Yi),F(Xi,Yi),Fmax(Xi,Yi)は正の実数で、Fmin(Xi,Yi)は、前述の物体の有無を表す状態関数F(Xi,Yi)が取りうる最小値で、Fmax(Xi,Yi)は、F(Xi,Yi)が取りうる最大値で、共に正の実数である。
【0018】
従来は、最適な配置位置と回転方向及び最適性の優先順位の調整が、複雑なロジックのプログラムで以って演算されていたが、前述の数1を用いて演算させることにより、ロジックが簡便になり、プログラムの量が大幅に減少し、(22)〜(24)の各配置候補位置のX,Y周辺にある任意のn個の周辺位置であるXi,Yiにおける最適性の重み係数αi(正の実数)を調整することで、物体の回転方向も含めた配置位置の最適性を自由に調節でき、コンピューターがゲームを行う難易度を容易に調整することが可能となる。
【0019】
以上の方法で、物体の配置候補位置が複数出現した場合において、各配置候補位置と回転方向の優先順位が確定したら、次に前述3の物体の出現位置から、配置位置までの経路を、回転方向を考慮に入れて探索する、経路探索手段(13)で以って経路を探索する。
【0020】
このとき、図2の(22)のように、物体の出現位置(21)から到達できない経路が出現した場合は、次の優先順位の配置位置(23)から、物体の出現位置(21)までの経路を探索し、以降、物体の出現位置(21)から、到達できない経路が出現した場合は、逐次優先順位を下げて経路を探索する。(図2の例では(23),(24)の順。)
【0021】
全ての配置候補位置に対する経路が見つからなかった場合は、物体の出現位置(21)と初期の回転方向を、物体の配置位置と回転方向として決定する。
【0022】
例として図2における配置候補位置(22)〜(24)で、物体の出現位置(21)から経路探索手段(13)で以って経路を探索した際に、到達できる配置候補位置である(23),(24)のうち、最適性の優先順位の高い(23)を配置位置として決定したものとする。
【0023】
図2の物体の出現位置(21)は図3の(31)、図2で配置位置として決定した(23)は図3の(32)に相当し、物体の出現位置(31)から、回転方向を考慮に入れ、配置位置(32)までの経路を探索する例を図3に示す。
【0024】
前述の配置位置探索手段(11)、最適性決定手段(12)と経路探索手段(13)を備えるAI人工知能(505)に加え、ディスプレイなどの表示部(501)に表示する表示制御手段(502)と、ゲームを行う者が物体の移動や回転といった操作の指示を与える操作入力手段(506)を有し、コンピューターが物体の配置を自動的に行った後に、出現位置(31)から配置位置(32)までの回転方向を考慮に入れた物体の移動を、表示制御手段(502)を通じて、ディスプレイなどの表示部(501)に表示。
【0025】
同時にゲームを行う者が、物体の移動や回転の操作を、操作入力手段(506)に指示を与えることで物体を操作し、物体の操作の様子を、表示制御部(502)などを通じてディスプレイなどの表示部(501)に表示し、ゲームを行う者と対戦相手であるコンピューターは、特定の条件で物体が消滅や増殖したり、ゲームが終了したり継続したりする。
【0026】
データや、前述の機能を果たすプログラムを格納するデータ記憶部(503)と、プログラムやデータの処理などを果たす処理部(504)を同時に有する。
【0027】
データ記憶部(503)の内容を、CD−ROM(401)やDVD−ROM(402)やDVD−RAM(403)などの外部記録媒体に保持し、パーソナルコンピューター(404)や家庭用ゲーム機(406)、携帯ゲーム機(407)に、データ記憶部(503)の内容をインストール(405)や供給(408)できるようにする。
【0028】
同様にデータ記憶部(503)の内容を、ホームページ(410)や外部サーバー(411)に格納し、インターネット通信回線(413)を介して、パーソナルコンピューター(404)や携帯電話(412)に、データ記憶部(503)の内容を供給できるものとする。
本発明は以上の構成よりなるAI人工知能プログラム搭載ゲーム装置である。
【発明の効果】
【0029】
従来の対戦型落ち物ゲームでは、前述のようにリアルタイムで対戦相手を要するか、リアルタイムでの対戦が不可時または、過去に人間が行ったゲームの記録との対戦を、飽きが来ないように楽しむために、多くのパターンの記録データを備えることが必要であったが、コンピューターがAI人工知能プログラムで以って自動的にゲームを行うことにより、対戦相手や記録データを一切必要とすることなく、ゲームを行うことが可能になる。
【0030】
また、物体の回転方向も含めた配置位置の最適性の決定を数1によって行うことと、数1の重み係数αi(正の実数)を調整することのみで、コンピューターがゲームを行う難易度を容易に調整できることにより、ロジックが簡便になり、プログラムの量が従来に比べて大幅に減り、携帯電話などのメモリ容量の少ない端末及び機器でもプログラムを動作させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のAI人工知能の概要図。
【図2】本発明の物体の配置位置探索の概要図。
【図3】本発明の物体の回転方向も考慮に入れた経路探索の一例。
【図4】本発明の各種端末機器へのデータ供給スタイルの図である。
【図5】本発明の実施形態の構成の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0033】
図5は本発明の実施例1で、AI人工知能搭載ゲーム装置の構成の概略図であって、図1に示す物体の形状と回転方向に合致する配置位置を探索する配置配置位置探索手段(11)と、数1を含むロジックを備え、従来の配置位置の最適性の演算に比べて、はるかに簡便なロジックで最適性を演算する最適性決定手段(12)と、物体の出現位置から配置位置までの経路を回転方向も考慮に入れて探索する経路探索手段(13)からなるAI人工知能(505)と、ディスプレイなどの表示部(501)に表示させる表示制御手段(502)と、ゲームを行う者が、物体の移動や回転などといった操作を入力する操作入力手段(506)、表示制御手段(502)を通じて、その操作入力手段(506)に対応する物体の移動及び回転の状態を表示部(501)に表示し、プログラムやデータを格納するデータ記憶部(503)と、プログラムやデータの処理を行う処理部(504)を有する。
【実施例2】
【0034】
図4は本発明の実施例2で、本発明を実施する際の機器及び機能の構成を示す図であって、ゲームプログラムやデータを、CD−ROM(401)、DVD−ROM(402)、DVD−RAM(403)などの外部記録媒体に保持。
【0035】
パーソナルコンピューター(404)にインストール(405)したり、家庭用テレビゲーム機(406)や携帯ゲーム機(407)に(401)〜(403)の外部記憶媒体を挿入することによりゲームプログラムを供給(408)し、ディスプレイ画面(409)を通じてゲームを行うものとする。
【0036】
またホームページ(410)や外部サーバー(411)などにゲームプログラムを格納し、パーソナルコンピューター(404)や携帯電話端末に(412)にインターネット通信回線(413)を介して、ゲームプログラムを供給しゲームを行うものとする。
【符号の説明】
【0037】
11 物体の回転方向を含めた配置位置の候補を探索する配置位置探索手段
12 複数の配置位置候補と回転方向に対して最適性の優先順位を決定する最適性決定手段
13 物体の初期出現位置から配置位置候補までの経路を回転方向も含めて探索する経路探索手段
21 物体の初期出現位置
22 物体の型に適合かつゲームを行う上で配置の優先順位が第1位となる位置であるが、初期位置からの経路を割り出せない配置候補位置
23 物体の型に適合かつゲームを行う上で配置の優先順位が第2位となる位置で初期位置からの経路を割り出せる配置位置かつ物体の目標位置
24 物体の型に適合かつゲームを行う上で配置の優先順位が第3位となる位置で初期位置からの経路を割り出せる配置位置
31 物体の初期出現位置
32 物体の目標配置位置
401 ゲームプログラムが格納されているCD−ROM
402 ゲームプログラムが格納されているDVD−ROM
403 ゲームプログラムが格納されているDVD−RAM
404 ゲームプログラムの供給を受けるパーソナルコンピュータ
405 パーソナルコンピュータへのゲームプログラムのインストール
406 ゲームプログラムの供給を受ける家庭用ゲーム機
407 ゲームプログラムの供給を受ける携帯ゲーム機
408 家庭用ゲーム機または携帯ゲーム機へのゲームプログラムの供給
409 ゲーム画面を表示させるディスプレイ装置
410 ゲームプログラムが格納されているホームページ
411 ゲームプログラムが格納されている外部サーバー
412 ゲームプログラムの供給を受ける携帯電話端末
413 ゲームプログラムが格納されているホームページと外部サーバーからパーソナルコンピュータと携帯電話端末にゲームプログラムを供給するインターネット通信回線
501 表示部
502 表示制御手段
503 データ記憶部
504 処理部
505 AI人工知能
506 操作入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落ち物ゲームにおいて、物体の形状と回転方向に合致する配置位置を探索する配置位置探索手段と、配置位置の候補が複数に及んだ場合は、配置位置の最適性の順位を、数1の数式を用いたロジックで以って決定する最適性決定手段と、回転方向も考慮に入れた物体の出現位置から配置位置までの経路を探索する経路探索手段からなる、コンピューターが自動で落ち物ゲームを行うAI人工知能を有し、ディスプレイなどの表示部に表示させる表示制御手段と、ゲームを行う者が移動や回転といった操作を入力する操作入力手段と、ゲームプログラムを格納するデータ記憶部と、プログラムやデータの処理などを行う処理部を有するAI人工知能搭載ゲーム装置。
【請求項2】
請求項1に記述したゲームプログラムを、図4に示す外部記憶装置やホームページ及びサーバー等に保持し、インストールや外部記憶装置の挿入及びインターネット回線を通じて各種端末機器に供給するためのシステム構成を有するAI人工知能搭載ゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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