説明

AKTタンパク質キナーゼ阻害剤としての水酸化されたピリミジルシクロペンタン

本発明は、式Iを含む、化合物およびその薬剤として許容可能な塩を提供する。


AKTタンパク質キナーゼ阻害剤として本発明の化合物を使用する方法、および癌のような過剰増殖性疾患の治療のための方法も提供する。さらなる態様において、本発明は、哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼにより媒介される疾患または病状を治療する方法を提供し、これには、前記障害を治療または予防するために有効な量において、前記哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩を投与するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(例えば、AKTおよび関連キナーゼ)の新規阻害剤、該阻害剤を含有する医薬組成物、および本阻害剤を調製するための方法に関する。該阻害剤は、例えば、哺乳動物において、癌および炎症のような過剰増殖性疾患の治療のために有用である。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
タンパク質キナーゼ(PK)は、ATPから末端(ガンマ)リン酸の移行によって、タンパク質の、チロシン、セリンおよびトレオニン残基上におけるヒドロキシ基のリン酸化を触媒する酵素である。シグナル変換経路を介して、これらの酵素は、細胞成長、分化および増殖を調節する、すなわち、細胞寿命の事実上すべての態様は、何らかの形でPK活性に依存する(Hardie,G.and Hanks,S.(1995)The Protein Kinase Facts Book. I and II,Academic Press,San Diego,CA)。さらに、異常なPK活性は、乾癬のような比較的生命を脅かさない疾患から膠芽細胞腫(脳腫瘍)のような極めて悪性の疾患にわたる多数の障害に関連している。タンパク質キナーゼは、治療的調節のための重要な標的クラスである(Cohen,P.(2002)Nature Rev.Drug Discovery 1:309)。
【0003】
重大なことに、非定型タンパク質リン酸化および/または発現は、癌における異常な細胞増殖、転移および細胞生存の原因となる影響の1つとして報告されることが多い。多数ある中でもAkt、VEGF、ILK、ROCK、p70S6K、Bcl、PKA、PKC、Raf、Src、PDK1、ErbB2、MEK、IKK、Cdk、EGFR、BAD、CHK1、CHK2およびGSK3を含む種々のキナーゼの異常制御および/または発現が、癌に特異的に関与している。
【0004】
タンパク質キナーゼは、2つの分類、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)およびセリン−トレオニンキナーゼ(STK)を含む。タンパク質キナーゼB/Akt酵素は、多種多様なヒト腫瘍において過剰発現するセリン/トレオニンキナーゼの群である。PI3K脂質生成物の最もよく特徴がわかっている標的の1つは、シグナル変換経路内のPI3Kの下流の57KDセリン/トレオニンタンパク質キナーゼAktである(Hemmings,B.A.(1997)Science 275:628、Hay N.(2005)Cancer Cell 8:179−183)。Aktは、急性形質転換レトロウイルスAKT8のプロトオンコジーンv−aktのヒト相同体である。タンパク質キナーゼAおよびCに対するその高い配列相同性により、Aktはタンパク質キナーゼB(PKB)ならびにAおよびCに関連するキナーゼ(RAC)とも呼ばれる。Aktの3つのアイソフォーム、すなわちAkt1、Akt2およびAkt3が存在することが知られており、これらは80%の全体的相同性を呈する(Staal,S.P.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.84:5034、Nakatani,K.(1999)Biochem.Biophys.Res.Commun.257:906、Li et al(2002)CurrentTopics in Med.Chem.2:939−971、国際公開第WO2005/113762号)。これらのAktアイソフォームは、N末端側のプレクストリン相同ドメイン、キナーゼ触媒ドメインおよびC末端側の短い調節領域からなる共通のドメイン構成を共有する。さらに、Akt2およびAkt3はいずれも、スプライス変異を呈する。PtdInd(3,4,5)Pによる細胞膜への補給時、Aktは、アイソフォームAkt1(PKBα)、Akt2(PKBβ)およびAkt3(PKBγ)についてはそれぞれT308、T309およびT305において、ならびにアイソフォームAkt1、Akt2およびAkt3についてはそれぞれS473、S474およびS472において、PDK1によりリン酸化(活性化)される。このようなリン酸化は、未知のキナーゼ(推定的にPDK2と命名される)により起こるが、PDK1(Balendran,A.,(1999)Curr.Biol.9:393)、自己リン酸化(Toker,A.(2000)J.Biol.Chem.275:8271)およびインテグリン結合キナーゼ(ILK)(Delcommenne,M.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:11211)は、このプロセスに関与している。Akt活性化は、C末端疎水性モチーフ内の残基Ser473におけるそのリン酸化を必要とする(Brodbeck et al(1999)J.Biol.Chem.274:9133−9136、Coffer et al(1991)Eur.J.Biochem.201:475−481、Alessi et al(1997)Curr.Biol.7:261−269)。Aktのモノリン酸化は、該キナーゼを活性化するが、最大キナーゼ活性にはビス(リン酸化)が必要である。
【0005】
Aktは、アポトーシスを抑制し、血管形成および増殖の両方を強化することにより、癌に対するその影響を行使すると考えられている(Toker et al. (2006)Cancer Res.66(8):3963−3966)。Aktは、結腸癌(Zinda et al(2001)Clin. Cancer Res. 7:2475)、卵巣癌(Cheng et al(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9267)、脳癌(Haas Kogan et al(1998)Curr.Biol.8:1195)、肺癌(Brognard et al(2001)Cancer Res. 61:3986)、膵臓癌(Bellacosa et al(1995)Int.J.Cancer 64:280−285、Cheng et al(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:3636−3641)、前立腺癌(Graff et al(2000)J.Biol.Chem.275:24500)および胃癌(Staal et al(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5034−5037)を含むが、これらに限定されない多数の形態のヒト癌で過剰発現する。
【0006】
標的小分子阻害剤療法のために、PI3K/Akt/哺乳類のラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の経路が調査されている(Georgakis,G.and Younes,A.(2006)Expert Rev.Anticancer Ther. 6(1):131−140、Granville et al(2006)Clin. Cancer Res.12(3):679−689)。PI3K/Aktシグナル伝達の阻害は、アポトーシスを誘発し、Aktレベルを上昇させた腫瘍細胞の成長を阻害する(Kim et al(2005)Current Opinion in Investig. Drugs 6(12):1250−1258、Luo et al(2005)Molecular Cancer Ther.4(6):977−986)。
【0007】
異常制御経路を標的とし、最終的に疾患をもたらすキナーゼ阻害剤の開発は、医学および薬学界の大きな倫理的および商業的関心を引くものである。(1)Aktの細胞膜への補給、(2)PDK1またはPDK2による活性化、(3)基質のリン酸化、または(4)Aktの下流標的、のうちの1つを阻害する化合物は、独立療法として、または他の許容される手順と併用して、有益な抗癌剤となる場合がある。
【0008】
特許文献1は、とりわけ、AKT阻害剤として作用する多種多様な化合物を開示している。これらの化合物は、癌のような過剰増殖性疾患の治療において有用であると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0130954号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、AKTタンパク質キナーゼを阻害する新規化合物を提供する。本発明の化合物は、AKTタンパク質キナーゼの阻害により治療することができる疾患および病状の治療剤として実用的である。
【0011】
より具体的には、本発明は、式Iを有する化合物、
【0012】
【化1】

およびその薬剤として許容可能な塩を含む。
【0013】
本発明はまた、式Iの化合物を含む医薬組成物またはその薬剤として許容可能な塩も提供する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼにより媒介される疾患または病状を治療する方法を提供し、これには、前記障害を治療または予防するために有効な量において、前記哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩を投与するステップを含む。本発明の方法により治療され得るAKTタンパク質キナーゼ媒介病状としては、炎症性、過剰増殖性、心臓血管、神経変性、婦人科、または皮膚科疾患もしくは障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼの産生を阻害する方法を提供し、これには、AKTタンパク質キナーゼの産生を阻害するための有効な量において、前記哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩を投与するステップを含む。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、AKTタンパク質キナーゼの活性を阻害する方法を提供し、これには、前記キナーゼを、式Iの化合物と接触させるステップが含まれる。
【0017】
本発明化合物は、他の既知の治療剤と併用して、有利に使用され得る。したがって、本発明はまた、第2の治療剤と併用して、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩を含む医薬組成物も提供する。
【0018】
本発明はまた、AKTタンパク質キナーゼ媒介病状の治療における、薬剤として用いるための式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩も提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、療法用の式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩の使用である。一実施形態において、該療法は、AKTタンパク質キナーゼ媒介病状の治療を含む。
【0020】
本発明は、AKTタンパク質キナーゼ媒介疾患もしくは障害の治療のためのキットをさらに提供し、前記キットは、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩、容器、および任意に、治療法を示す添付文書もしくはラベルを含む。該キットは、前記疾患もしくは障害を治療するために有用な第2の医薬剤を含む第2の化合物つまり製剤をさらに含み得る。
【0021】
本発明のさらなる態様は、過剰増殖性疾患の治療における、式Iの化合物の使用を提供する。本発明のさらなる態様において、該過剰増殖性疾患は、癌である。
【0022】
本発明は、本発明の化合物を調製する方法、分離する方法、および精製する方法をさらに含む。
【0023】
本発明のさらなる利点および新規機能は、以下の説明において、部分的に記述され得、以下の明細書の検討によって、当業者には部分的に明らかになり得、または本発明の実践により習得され得る。本発明の利点は、添付の特許請求内で具体的に指摘される、手段、組み合わせ、組成物、および方法によって、実現され、達成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のある実施形態を詳細に参照するが、これらの実施例は、添付の構造および式に図示される。本発明は、列挙された実施形態と共に説明されるが、それらは、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。対照的に、本発明は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含まれ得るすべての改変、修正および等価物を網羅することを意図する。当業者は、本発明の実践で用いることができる、本明細書中に記載されたものと同様のまたは同等な多くの方法および材料を認識するであろう。本発明は、記載された方法および材料に断じて限定されない。定義された用語、用語の用法、記載された技術等を含むが、これらに限定されない、組み込まれた文献および同様の資料の1つもしくは複数が本出願とは異なる、または矛盾する場合には、本出願が優先する。
【0025】
定義
本明細書において使用する「一つの(a)」という用語は、1つもしくは複数を意味する。
【0026】
本明細書において使用する際、「本発明の化合物」、「この発明の化合物」および「式Iの化合物」という用語は、式Iの化合物およびその薬剤として許容可能な塩を含む。
【0027】
「有効量」という語句は、このような治療を必要とする哺乳動物に投与する際、(i)1つもしくは複数のAKTタンパク質キナーゼ、チロシンキナーゼ、追加のセリン/スレオニンキナーゼ、および/もしくは二重特異性キナーゼの活性により媒介される特定の疾患、病状、もしくは障害を治療するもしくは予防する、(ii)特定の疾患、病状、もしくは障害の1つもしくは複数の症状を軽減する、改善する、もしくは解消する、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病状、もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を予防するもしくは遅延するのに十分な化合物の量を意味する。癌の場合、有効量の薬物は、癌細胞数を減少させる、腫瘍の大きさを減少させ、末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度緩徐し、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度緩徐し、好ましくは停止させる)、腫瘍増殖をある程度阻害する、ならびに/または癌に関連する1つもしくは複数の症状をある程度軽減し得る。薬物が、増殖を予防し、および/または存在する癌細胞を死滅させ得る程度に、薬物は細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であり得る。癌療法に関しては、有効性は、例えば、無増悪期間(TTP)を評価する、および/または反応速度(RR)を決定することにより、測定され得る。
【0028】
「治療している(Treating)」とは、罹患しているヒト等の哺乳動物において、1つもしくは複数のAKTタンパク質キナーゼ、チロシンキナーゼ、追加のセリン/スレオニンキナーゼ、および/もしくは二重特異性キナーゼの活性により、少なくともある程度、少なくとも病状の緩和を意味することを意図する。「治療する(treat)」および「治療(treatment)」という用語は、治療的処置と予防もしくは再発防止措置の両方を指し、その目的は、望ましくない生理的変化または障害を予防するまたは抑制する(軽減する)ことである。本発明の目的では、便宜なまたは所望の臨床的結果は、検出可能であるかまたは検出不可能であるかを問わず、兆候の軽減、疾患の程度の低下、疾患の安定化された(すなわち、悪くならない)病状、疾患進行の遅延または遅らせること、疾患病状の緩和または軽減、および(部分的または全体的を問わず)寛解が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予測される生存と比較した生存の延長を意味することもできる。治療を必要とする者としては、既に病状または障害を持つ者、ならびに病状を有する傾向があるが、それを有すると診断されていない者が挙げられ、該治療は病状を調節および/もしくは阻害するものである。「治療している」、「治療する」、または「治療」という用語は、再発防止、すなわち、予防と、緩和的処置を共に包含する。
【0029】
本明細書に使用する際、「哺乳動物」という用語は、本明細書に記載される疾患に罹患した、または発症する危険性がある温血動物を指し、モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、および霊長類(ヒトを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「化学療法剤」は、作用機序にかかわらず、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤には、「標的療法」および従来の化学療法に使用される化合物が含まれる。
【0031】
化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(BAY43−9006、Bayer Labs)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、Pfizer)およびゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU 5271、Sugen)、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロスフォスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンのようなスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)のようなアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特には、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特には、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのような窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンのようなニトロスレア;抗生物質、例えば、エネジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特には、カリケアミシンガンマ1IおよびカリケアミシンオメガI1(Angew Chem. Intl.Ed.Engl.(1994)33:183−186);ジネミシンAを含むジネミシン;クロドロネートのようなビスホスホネート;エスペラマイシン;加えて、ネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCのようなミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)のような代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートのような葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンのようなピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルニチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンのようなメイタンシノイド;ミトガゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特には、T−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル;Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、ABRAXANE(商標)(Cremophor非含有)、パクリタキセルのアルブミン加工ナノ粒子配合物(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)(ドキセタキセル;Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチンのような白金類似体;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;ならびに上記のいずれかの薬剤として許容可能な塩、酸および誘導体が含まれる。
【0032】
「化学療法剤」の定義にさらに含まれるものは、(i)タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);タモキシフェンシトレートを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)(トレミフィンシトレート)を含む、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)のような、腫瘍に対するホルモン作用を調節もしくは阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(メゲストロールアセテート)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、およびARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)のような、副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンのような抗アンドロゲン剤;それらに加えて、トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特には、異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−アルファ、RalfおよびH−Ras;(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))およびHER2発現阻害剤のようなリボザイム;(viii)遺伝子療法ワクチンのようなワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、およびVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)のようなトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)のような抗血管新生剤;ならびに(x)上記のいずれかの薬剤として許容可能な塩、酸および誘導体である。
【0033】
アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セテュキマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、パーツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)のような治療抗体、ならびに抗体薬物複合体である、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も、「化学療法剤」の定義に含まれる。
【0034】
本発明のPI3K阻害剤と併用して化学治療剤として治療可能性があるヒト化モノクローナル抗体としては、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パソコリズマブ、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシービズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、およびビジリズマブが含まれる。
【0035】
AKT阻害剤
式Iの本発明化合物は、AKTタンパク質キナーゼを阻害するために有用である。本化合物は、AKTタンパク質キナーゼシグナル伝達経路ならびにチロシンおよびセリン/トレオニンキナーゼ受容体経路の阻害により治療され得る疾患に対する治療剤として実用的である。
【0036】
特に、シクロペンタ[d]ピリミジン上に7−ヒドロキシを有する式Iの化合物は、タンパク質キナーゼA(PKA)と比べてAKTに対して少なくとも50倍超の選択性があることがわかった。PKAと比べてAKTに対して、例えば、少なくとも100倍、さらなる例として、少なくとも150倍超の選択性がある。PKAを超える選択性は、PKAが、多くの細胞型の正常な機能および生理機能に対して重要である多くの細胞プロセスに関与するため、望ましい。さらに、PKAの阻害は、AKT阻害の抗増殖性およびアポトーシス促進効果の一因になるとは考えられていない。したがって、PKAの阻害は、AKT阻害の疾患修飾性利点に寄与することなく、AKT阻害に関連しない副作用をもたらし得た。
【0037】
式Iの化合物はまた、AKTに加えて、チロシンキナーゼ、ならびにセリンおよびトレオニンキナーゼの阻害剤としても有用であり得る。
【0038】
一般に、本発明の一態様は、式Iの化合物:
【0039】
【化2】

およびその薬剤として許容可能な塩を含む。
【0040】
式Iの化合物は、当該化合物の薬剤として許容可能な塩を含む。
【0041】
「薬剤として許容可能な」という語句は、物質または組成物が、製剤を含む他の成分と、および/もしくはそれで治療される哺乳動物と、化学的に、および/もしくは毒物学的に適合することを示す。
【0042】
さらに、本発明の化合物は、塩を形成し得る。塩の例としては、無機もしくは有機酸または無機塩基と、本発明の化合物の反応により調製されるこれらの塩が挙げられ、このような塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩(monohydrogenphosphate)、リン酸二水素塩(dihydrogenphosphate)、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物塩(chloride)、臭化物塩(bromide)、ヨウ化物塩(iodide)、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、ブチン−1,4−ジオアート、ヘキシン−1,6−ジオアート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、およびマンデル酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の単一化合物が、2つ以上の酸性または塩基性部分を含み得るため、本発明の化合物は、単一化合物中に、単塩、二重塩、三重塩を含み得る。
【0043】
ある実施形態において、当該塩は、「薬剤として許容可能な塩」であり、別途示されない限り、特定の化合物の対応する遊離酸または塩基の生理学的効果を保有し、生物学的ではない、そうでなければ、望ましくない塩を含む。
【0044】
式Iの化合物はまた、必ずしも薬剤として許容可能な塩ではない他の塩も含み、式Iの化合物を調製および/もしくは精製するため、ならびに/または式Iの化合物を分離するための中間体として有用であり得る。
【0045】
本発明はまた、本発明の同位体標識化合物も包含し、1つもしくは複数の原子が、通常自然に見られる原子質量もしくは質量数と異なる原子質量もしくは質量数を有する原子により置き換えられるという事実がなかったら、本明細書に参照されたものと全く一致している。特記されたいずれかの特定の原子または元素のすべての同位体は、本発明の化合物、およびそれらの使用の範囲内に、企図される。本発明の化合物に組み込むことができる例となる同位体としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iが挙げられる。本発明のある同位体標識化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、H)および炭素14(すなわち、14C)同位体は、それらの調製の容易さ、および検出能のために有用である。さらに、重水素(すなわち、H)のような重同位体による置換は、より優れた代謝安定性に起因する治療的利点(例えば、生体内半減期の増加、または必要用量の低減)を提供し得、したがって、一部の状況において好ましい場合がある。15O、13N、11Cおよび18Fのような陽電子放出同位体は、基質受容体占有度を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究において有用である。本発明の同位体標識化合物は、概して、本明細書の以下のスキームおよび/または実施例に開示されるものに類似の手順に従って、同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代用とすることにより、調製することができる。
【0046】
式Iの化合物の合成
本発明の化合物は、化学分野において公知の、特に、本明細書に含まれる説明を考慮に入れたものに類似のプロセスを含む、合成経路により合成され得る。出発材料は、概して、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)のような商業的供給元より入手可能であり、または、当業者には公知の方法を用いて容易に調製される(例えば、Louis F.Fieser and Mary Fieser,Reagents for Organic Synthesis,v.1−19,Wiley,N.Y.(1967−1999 ed.)、またはBeilsteins Handbuch der organischen Chemie,4,Aufl.ed.Springer−Verlag,Berlinに一般的に説明される(追加を含む)方法により調製される)。
【0047】
別個の反応ステップのさらなる詳細に関しては、以下の実施例の項を参照のこと。当業者は、他の合成経路が、本発明化合物を合成するために使用され得ることを理解するであろう。特定の出発材料および試薬が、実施例において示され、以下に論じられているが、他の出発材料および試薬は、多種多様な誘導体および/または反応条件を得るために容易に代用され得る。加えて、以下に説明される方法により調製される多くの化合物は、当業者に公知の従来の化学的性質を用いて、本開示を考慮してさらに修正することができる。
【0048】
式Iの化合物の調製において、中間体の離れた官能基(例えば、1級または2級アミン等)の保護が必要となる場合がある。そのような保護の必要性は、離れた官能基の性質や調製法の条件に依存して変動するものである。好適なアミノ保護基(NH−Pg)には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)および9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。そのような保護の必要性は、当業者により容易に決定される。保護基とその使用についての一般的な記載に関しては、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,1991を参照のこと。
【0049】
分離方法
式Iの化合物を調製するための合成方法のあらゆる方法において、その合成方法は、互いに、および/または出発材料から反応生成物を分離するために有利であり得る。各ステップまたは一連のステップの所望の生成物は、当技術分野においてよく見られる技法により所望の均質度に分離および/または精製される。典型的には、このような分離には、多相抽出、溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、またはクロマトグラフィを含む。クロマトグラフィは、例えば、逆相および正常相;サイズ排除;イオン交換;高、中および低圧液体クロマトグラフィ方法および装置;小規模分析;シミュレートされた移動床(「SMB」)および分取薄または厚層クロマトグラフィ、ならびに小規模薄層およびフラッシュクロマトグラフィを含めた複数の方法を含むことができる。
【0050】
もう1つのクラスの分離方法は、選択された試薬で反応混合物を処理して、所望の生成物、未反応の出発材料、反応副産物に結合させ、またはそうでなければ分離可能とすることを含む。このような試薬は、活性炭、モレキュラーシーブ、イオン交換媒体のような吸着剤または吸収剤を含む。代替として、該試薬は、塩基性材料の場合における酸、酸性材料の場合における塩基、抗体のような結合試薬、結合タンパク質、クラウンエーテルのような選択的キレーター、液体/液体イオン抽出試薬(「LIX」)等であり得る。
【0051】
適当な分離方法の選択は、関与する材料の性質に依存する。例えば、蒸留および昇華における沸点および分子量、クロマトグラフィにおける極性官能基の存在または不存在、多相抽出における酸性および塩基性媒体中での材料の安定性等。当業者は、所望の分離を最も達成するような技術を適用する。
【0052】
ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィおよび/または分別結晶化等による、当業者に公知の方法により、それらの物理化学的差に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適当な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはMosher酸塩化物のようなキラル補助基)との反応により、エナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋なエナンチオマーに変換(例えば、加水分解)することにより分離することができる。また、本発明の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換されたビアリール)であってよく、本発明の一部と考えられる。エナンチオマーはまた、キラルHPLCカラムの使用により分離することもできる。
【0053】
その立体異性体を実質的に含まない単一の立体異性体、例えば、エナンチオマーは、光学的に活性な分離剤を用い、ジアステレオマーの形成のような方法を用いるラセミ混合物の分離により得ることができる(Eliel,E. and Wilen,S. “Stereochemistry of Organic Compounds,” John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994、Lochmuller,C.H.,J.Chromatogr.,(1975)113(3):283−302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物とのイオン性ジアステレオマー塩の形成、および分別結晶化または他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬でのジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離、および純粋な立体異性体への変換、ならびに(3)キラル条件下での実質的に純粋なまたは豊富化された立体異性体の直接的分離を含めた、いずれかの好適な方法により分離し、単離することができる。“Drug Stereochemistry,Analytical Methods and Pharmacology,” Irving W.Wainer,Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York(1993)を参照のこと。
【0054】
方法(1)の下では、ジアステレオマー塩は、ブルシン、キニン、エフェドリン、ストリキニン、α−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)のようなエナンチオマー的に純粋なキラル塩基と、カルボン酸およびスルホン酸のような酸性官能基を有する不斉化合物との反応により形成することができる。当該ジアステレオマー塩は、分別結晶化またはイオンクロマトグラフィにより分離するように誘導することができる。アミノ化合物の光学異性体の分離では、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸、または乳酸のようなキラルカルボン酸またはスルホン酸の添加により、ジアステレオマー塩の形成をもたらすことができる。
【0055】
代替として、方法(2)により、分割すべき基質を、キラル化合物の1つのエナンチオマーと反応させて、ジアステレオマー対を形成する(E.and Wilen,S.”Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley & Sons,Inc.,1994,p.322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物を、メンチル誘導体のようなエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬と反応させ、続いて、ジアステレオマーを分離し、加水分解して、純粋なまたは豊富化されたエナンチオマーを得ることにより形成することができる。光学的純度を決定する方法は、ラセミ混合物の塩基、またはMosherエステル、α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III.J.Org.Chem.,(1982)47:4165)の存在下で、メンチルエステル、例えば、(−)メンチルクロロホルメートのようなキラルエステルを作成し、2つのアトロプ異性体エナンチオマーまたはジアステレオマーの存在についてH NMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性体化合物の安定なジアステレオマーは、アトロプ異性体ナフチル−イソキノリンの分離のための方法に従って、正常相および逆相クロマトグラフィにより分離し、単離することができる(第WO96/15111号)。方法(3)により、2つのエナンチオマーのラセミ混合物は、キラル固定相を用いるクロマトグラフィにより分離することができる(“Chiral Liquid Chromatography”(1989)W.J.Lough,Ed.,Chapman and Hall,New York、Okamoto,J.of Chromatogr.,(1990)513:375−378)。豊富化されたまたは精製されたエナンチオマーは、光学的回転および円二色性のような不斉炭素原子を持つ他のキラル分子を識別するのに用いる方法によって識別することができる。
【0056】
式Iの化合物による治療方法
本発明の化合物は、AKTタンパク質キナーゼ、チロシンキナーゼ、追加のセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼの調節もしくは制御により媒介される疾患もしくは障害を治療するための予防もしくは治療剤として使用することができる。本発明の方法により治療され得るAKTタンパク質キナーゼ媒介病状としては、炎症性、過剰増殖性、心臓血管、神経変性、婦人科、または皮膚科疾患もしくは障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
一実施形態において、前記医薬組成物は、以下のカテゴリーの癌を含む、過剰増殖性疾患の治療のものである。(1)心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;(2)肺:気管支癌(有棘細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支肺胞)上皮癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌;(3)胃腸:食道(有棘細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);(4)尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(有棘細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セシノーマ、奇形腫、胎児性癌、テラトカルシノーマ、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌腫、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);(5)肝臓:ヘパトーマ(肝細胞癌)、胆管癌、胚芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;(6)骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫(malignant giant cell tumor chordoma)、骨軟骨腫(osteochronfroma)(骨軟骨外骨腫症)、良性軟骨種、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;(7)神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫(meningiosarcoma)、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性グリア芽細胞腫、希突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);(8)婦人科性:子宮(子宮内膜癌腫)、頚(子宮頚癌、前腫瘍(pre−tumor)子宮頚部形成異常)、卵巣(卵巣癌腫[漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、未分類の癌腫(unclassified carcinoma)]、顆粒膜細胞−包膜細胞腫、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(有棘細胞癌、表皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、有棘細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、ファローピウス管(癌腫);(9)血液性:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];(10)皮膚:進行性黒色腫、悪性黒色腫、基底細胞癌腫、有棘細胞癌、カポジ肉腫、モールディスプラスティックニーバス(mole dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;(11)副腎:神経芽腫;(12)胸部:転移性乳癌;胸腺癌;(13)結腸;(14)口腔;(15)ヘアリー細胞白血病;(16)頭頸部;(17)および不応性転移性疾患を含むその他;カポジ肉腫;バンナヤンゾーナーナ症候群(Bannayan−Zonana syndrome);およびカウデン病またはレルミットデュクロス病(Lhermitte−Duclos disease)、とりわけ、過剰増殖性疾患の種類。
【0058】
本発明の化合物および方法はまた、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、血管線維腫、眼疾患(例えば、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、黄斑変性症等)、多発性硬化症、肥満症、アルツハイマー病、再狭窄、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、血管移植のグラフト狭窄(vein graft stenosis)、人工器官吻合周囲の再狭窄(peri−anastomatic prothetic graft stenosis)、前立腺肥大、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、組織修復による神経障害の阻害、瘢痕組織形成(および創傷治癒に役立ち得る)、多発性硬化症、炎症性腸疾患、感染、特に、細菌、ウイルス、レトロウイルスまたは寄生生物による感染症(アポトーシスを増加させることにより)、肺疾患、腫瘍、パーキンソン病、移植片拒絶反応(免疫抑制剤として)、敗血症ショック等のような疾患および病状を治療するために使用することができる。
【0059】
したがって、本発明の別の態様は、哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼにより媒介される疾患または病状を治療する方法を提供し、これには、前記障害を治療または予防するための有効な量で、前記哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬剤として許容可能な塩を投与するステップを含まれる。
【0060】
このような量に対応するであろう式Iの化合物の量は、特定の化合物、疾患病状およびその重症度、治療を必要とする哺乳動物の固有性(例えば、体重)のような要因に依存して異なるが、当業者により定期的に決定され得る。
【0061】
本発明はまた、AKTタンパク質キナーゼ媒介病状の治療で用いる式Iの化合物も提供する。
【0062】
本発明の追加の態様は、AKTタンパク質キナーゼ媒介病状の治療または予防のためのような、治療法のための薬剤の調製における、式Iの化合物の使用である。
【0063】
併用療法
本発明の化合物は、下記のような1つもしくは複数の追加の薬物と併用して、使用することができる。第2の薬物の用量は、臨床的に採用された用量に基づいて適切に選択することができる。本発明の化合物と第2の薬物の割合は、投与被験体、投与経路、標的疾患、臨床的病状、組み合わせ、および他の要因により、適切に決定することができる。投与被験体がヒトである場合、例えば、第2の薬物は、本発明の化合物の重量部あたり0.01〜100重量部の量で使用され得る。
【0064】
医薬併用製剤または投与計画の第2の化合物は、好ましくは、これらの化合物が互いに悪影響を及ぼさないような本発明の化合物に対して補完活性を有する。このような化合物は、意図する目的に有効な量で組み合わせて存在させることが好適である。したがって、本発明の別の態様は、本明細書に記載のような第2の薬物と併用して、本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0065】
本発明の化合物および追加の医薬的活性薬物は、単一の医薬組成物において共に、または別個に投与され得、別個に投与する場合、これは、同時に、またはいずれの順序においても逐次行われ得る。このような逐次投与は、時間的に近いか、または時間的に離れていてもよい。所望の組み合わせ治療効果を達成するために、本発明の化合物および第2の薬物の量および投与の相対的タイミングが選択される。
【0066】
併用療法は、「相乗効果」を供し、「相乗的」であることが判明し得るのであり、すなわち、一緒に用いる有効成分が、別々に化合物を使用して生じる効果の総和よりも大きい場合に該効果は達成される。有効成分が、(1)組み合わされた単位用量製剤において同時に共製剤化され、かつ投与され、もしくは送達される、(2)交互に、あるいは別々の製剤として平行に送達され、または(3)いくつかの他の養生法による場合に、相乗効果を達成することができる。代替療法で送達される場合、化合物が、例えば、別々の注射器中の異なる注射により投与されるか、または逐次送達される場合に、相乗効果を達成することができる。一般に、代替療法の間に、各有効成分の有効用量を逐次に、すなわち、系列的に投与し、他方、併用療法においては、有効用量の2つ以上の有効成分を一緒に投与する。
【0067】
投与経路
本発明の化合物は、治療すべき病状に適切なあらゆる経路により投与することができる。好適な経路は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、クモ膜下内および硬膜外を含む)、経皮、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣、腹腔内、肺内および鼻腔内を含む。好ましい経路は、例えば、受容者の病状により変化し得る。当該化合物を経口投与する場合、それは、薬剤として許容可能な担体または賦形剤とともに丸剤、カプセル、錠剤等として製剤化することができる。当該化合物を非経口投与する場合、それは、下に詳述されるように、薬剤として許容可能な非経口ビヒクルを用いて、単位用量注射形態に製剤化することができる。
【0068】
医薬製剤
ヒトを含む哺乳動物の治療上の処置(予防的治療を含む)のために本発明の化合物を使用するために、それは、通常、標準薬務に従って医薬組成物として製剤化される。本発明の本態様により、本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態において、医薬組成物は、薬剤として許容可能な希釈剤または担体に関連して式Iの化合物を含む。
【0069】
本発明の医薬組成物が、良好な医薬業務に合致した様式、すなわち、量、濃度、スケジュール、コース、ビヒクルおよび投与経路にて製剤化され、投薬され、および投与される。この文脈での考慮のための要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的病状、障害の原因、薬剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、および医薬実践者に知られた他の要因を含む。投与されるべき化合物の治療有効量は、このような考慮により左右され、これは、障害を予防し、改善し、または治療するのに必要な最小量である。本発明の化合物は、典型的には、薬物の容易に制御可能な用量を提供し、所定の養生法に対する患者コンプライアンスを可能にする医薬用量形態に製剤化される。
【0070】
本明細書に使用される組成物は、好ましくは滅菌されている。特に、生体内投与で用いるべき製剤は、滅菌されていなければならない。このような滅菌は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。該化合物は、通常、固体組成物、凍結乾燥された製剤、または水溶液として貯蔵することができる。
【0071】
本発明の化合物の医薬製剤は、種々の投与経路および投与タイプのために調製され得る。例えば、所望の程度の純度を有する本発明の化合物は、凍結乾燥された製剤、粉砕された粉末、または水溶液の形態にて、薬剤として許容可能な希釈剤、担体、賦形剤または安定化剤と任意に混合してもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)16th edition,Osol,A.Ed.)。製剤化は、周囲温度で、適切なpHにおいて、かつ所望の程度の純度にて、生理学的に許容可能な担体、すなわち、採用する用量および濃度にて受容者に非毒性である担体と混合することにより行うことができる。製剤のpHは、主として、特定の使用および化合物の濃度に依存するが、約3〜約8の範囲とすることができる。pH5の酢酸緩衝液中の製剤は、好適な実施形態である。製剤は、従来の溶解および混合手順を用いて、調製され得る。例えば、バルク薬剤物質(すなわち、本発明の化合物または化合物の安定化された形態(例えば、シクロデキストリン誘導体、もしくは他の既知の複合体化剤との複合体)を、1つもしくは複数の賦形剤の存在下で、好適な溶媒中に溶解させる。
【0072】
使用される特定の担体、希釈剤または賦形剤は、本発明の化合物を適用する手段および目的に依存する。溶媒は、概して、哺乳動物に投与するのに安全(GRAS)であると当業者により認識される溶媒に基づいて選択される。一般的には、安全な溶媒は、水、および水に可溶性、または混和性である他の非毒性溶媒のような非毒性水性溶媒である。好適な水性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PET300)等、およびそれらの混合物を含む。許容可能な希釈剤、担体、賦形剤および安定化剤は、採用される用量および濃度において受容者に対して非毒性であり、それらは、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アルコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;(塩化オクダデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールのようなアルキルパラベンのような)保存剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩−形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)のような非−イオン性界面活性剤を含む。これらの製剤はまた、薬物(すなわち、本発明の化合物、またはその医薬組成物)をエレガントに提示させ、または医薬生成物(すなわち、薬剤)の製造を助けるために、1つもしくは複数の安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、グライダント、加工助剤、着色剤、甘味剤、香料剤、矯味矯臭剤、および他の既知の添加剤を含むこともできる。活性な医薬成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)における、またはマイクロエマルジョンにおける、各々、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに捕獲することもできる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。「リポソーム」は、薬物(式Iの化合物、任意に、追加の化学療法剤のような)の哺乳動物への送達に有用な種々のタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの成分は、通常、生物学的膜の脂質配置と同様な、二層形成で配置される。
【0073】
本発明の化合物の徐放製剤を調製することができる。徐放製剤の好適な例は、式Iの化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成型された製品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびガンマ−エチル−L−グルタメートのコポリマー、非−分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマーを含む。
【0074】
本発明の化合物の医薬組成物は、滅菌注射水性または油性懸濁液のような滅菌注射製剤の形態とし得る。この懸濁液は、前記した好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射製剤は、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、または凍結乾燥された粉末として調製された、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。採用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発油を、便宜には、溶媒または懸濁化媒体として採用し得る。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むあらゆる無刺激不揮発性油が採用され得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸が、同様に、注射可能製剤の調製で使用され得る。
【0075】
非経口投与に適した製剤は、該製剤を、意図した受容者の血液と等張性にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶出を含有し得る水性および非水性滅菌注射溶液;および懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。
【0076】
本発明の組成物はまた、経口使用(例えば、錠剤、ロゼンジ、ハードもしくはソフトカプセル、水性または油性懸濁液、エマルジョン、分散可能な粉末もしくは顆粒、シロップまたはエリキシル剤として)、局所使用(例えば、クリーム、軟膏、ゲル、水性もしくは油性溶液または懸濁液として)、吸入による投与用(例えば、微粉または液体エアロゾルとして)、吹送による投与用(例えば、微粉として)に適している形態であってもよい。
【0077】
錠剤製剤として好適な薬剤として許容可能な賦形剤は、例えば、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムもしくは炭酸カルシウムのような不活性希釈剤、トウモロコシデンプンもしくはアルゲン酸のような造粒剤および崩壊剤;デンプンのような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルクのような平滑剤;エチルもしくはプロピルp−ヒドロキシベンゾアートのような防腐剤、ならびにアスコルビン酸のような抗酸化剤を含む。錠剤製剤は、胃腸管中での有効成分の崩壊およびそれに続く吸収を修正する、あるいは、それらの安定性および/または外観を改善するために、被覆しなくても、または被覆されてもよく、いずれの場合にも、従来のコーティング剤および当技術分野において公知の手順を用いる。
【0078】
経口使用の組成物は、有効成分が、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されるハードゼラチンカプセル、または有効成分が水もしくはピーナッツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油等の油と混合されるソフトゼラチンカプセルの形状であり得る。
【0079】
水性懸濁液は、概して、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トララカントガムおよびアカシアガムのような1つもしくは複数の懸濁化剤;レシチンのような分散もしくは湿潤剤、またはアルキレノオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリエキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと、長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)と共に微粉状で有効成分を含有する。水性懸濁液はまた、1つもしくは複数の防腐剤(エチルまたはプロピルp−ヒドロキシベンゾアート等)、抗酸化剤(アスコルビン酸等)、着色剤、矯味矯臭剤、および/または甘味剤(スクロース、サッカリンもしくはアスパルタム等)を含み得る。
【0080】
油性懸濁液は、有効成分を植物油(ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココヤシ油等)に、または鉱物油(液体パラフィン等)に懸濁させることにより製剤化され得る。該油性懸濁液はまた、蜜蝋、ハードパラフィンもしくはセチルアルコールのような濃厚剤を含有し得る。上述のもののような甘味料、および矯味矯臭剤を添加して、口当たりの良い経口調製品を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存することができる。
【0081】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、概して、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1つもしくは複数の防腐剤と一緒に有効成分を含有する。好適な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤は、既に上述されるものにより例示される。甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤のような、さらなる賦形剤が存在していてもよい。
【0082】
本発明の医薬組成物は、水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、または液体パラフィンのような鉱物油、またはこれらのいずれかの混合物であり得る。好適な乳化剤は、例えば、アラビアゴムもしくはトラガカントゴムのような天然ゴム、ダイズ、レシチンのような天然ホスファチド、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのような前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であり得る。これらのエマルジョンはまた、甘味剤、矯味矯臭剤および防腐剤を含有し得る。
【0083】
シロップおよびエリキシルは、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルタムもしくはスクロースのような甘味剤と共に製剤化され得、粘滑剤、防腐剤、矯味矯臭剤および/または着色剤も含有し得る。
【0084】
坐剤製剤は、有効成分と、常温で固体であるが、直腸温で液体である好適な刺激性のない賦形剤を混合することにより調製され得、それ故に、直腸内で溶解し、薬物を放出する。好適な賦形剤は、例えば、カカオバターおよびポリエチレングリコールを含む。膣内投与に適した製剤は、当該分野において適切であることが知られているような担体を、有効成分に加えて含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として供することができる。
【0085】
クリーム、軟膏、ゲル、水溶液もしくは油性溶液または懸濁液のような局所用製剤は、概して、当技術分野において公知の従来の手順を用いて、従来の局所的に許容可能なビヒクルまたは希釈剤と有効成分を製剤化することにより得られ得る。
【0086】
経皮投与のための組成物は、当業者には公知であるこれらの経皮皮膚パッチの形態であってもよい。
【0087】
肺内または鼻投与に適した製剤は、0.1〜500ミクロンの範囲の粒子サイズ(0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等のようなミクロン増分の0.1から500ミクロンの間の範囲の粒子サイズを含む)を有し、それは、肺胞嚢に到達するように鼻通路を通っての迅速な吸入により、または口からの吸入により投与される。好適な製剤は、有効成分の水性または油性溶液を含む。エアロゾルまたは乾燥粉末投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製され得、下に記載されるように治療または予防障害でこれまでに使用された化合物のような他の治療剤と共に送達することができる。
【0088】
適用のための医薬組成物(つまり製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に依存して多種多様な方法でパッケージ化され得る。例えば、流通のための製品は、適当な形態の医薬製剤をその中に保管した容器を含むことができる。好適な容器は、当業者には公知であり、瓶(プラスチックおよびガラス)、サシェ、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダ等のような材料を含む。該容器はまた、パッケージの内容物に対する分別のないアクセスを防止するために改ざんの恐れがない組み立てを含むこともできる。加えて、該容器には、容器の内容物を記載するラベルがその上に配置される。該ラベルはまた、適当な警告を含むこともできる。これらの製剤はまた、単位用量または複数回用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルにパッケージ化してもよく、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結し乾燥させた(凍結乾燥)条件で保存され得る。即時注射用溶液および懸濁液は、先に記載された種類の滅菌粉剤、顆粒剤および錠剤から調製される。好ましい単位用量製剤は、本明細書の上で言及したような、有効成分の、1日の用量または1日の単位副用量、またはその適切な一部を含有する製剤である。
【0089】
本発明は、したがって、獣医学的担体と一緒に、上で定義した少なくとも1つの有効成分を含む獣医学的組成物をさらに提供する。獣医学的担体は、組成物を投与するために有用である材料であり、そうでなければ、獣医学分野において、不活性または許容可能である固体、液体または気体材料であり得る。これらの獣医学的組成物は、非経口で、経口で、またはいかなる他の所望の経路によっても投与され得る。
【0090】
単回投与形態を生成するために1つもしくは複数の賦形剤と混合する本発明の化合物の量は、治療される被験体、障害または病状の重症度、投与速度、化合物の性質および処方医の裁量に依存して必然的に異なる。一実施形態において、本発明の化合物の好適な量は、それを必要とする哺乳動物に投与される。一実施形態において、投与は、1日あたり約0.001mg/体重kg〜約60mg/体重kgである。別に実施形態において、投与は、1日あたり0.5mg/体重kg〜40mg/体重kgの間の量である。場合によっては、前述の範囲の低限を下回る用量レベルが、十分に適切である場合もあり、一方、別の場合では、さらに多量の用量が、有害な副作用を生じることなく採用されてもよい(但し、このような多量の用量は、まず、1日を通して数回の少用量に分割すること)。投与の経路および用量レジメの詳細に関しては、Comprehensive Medicinal Chemistryの第5巻、第25.3章(Corwin Hansch、編集局長(Chairman of Editorial Board))、Pergamon Press 1990を参照されたく、これは、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0091】
製造製品
本発明の別の実施形態において、上記の障害の治療に有用な材料を含有する製造製品、つまり「キット」を提供する。一実施形態において、該キットは、本発明の化合物を含む容器を含む。好適な容器は、例えば、瓶、バイアル、注射器、ブリスターパック等を含む。該容器は、ガラスまたはプラスチックのような多種多様の材料から形成され得る。該容器は、本発明の化合物またはその製剤を保持し得、それは、病状を治療するために有効であり、滅菌アクセスポートを有する容器(例えば、該容器は、皮下用注射針により穿孔可能なストッパ付きの静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)を有し得る。
【0092】
該キットは、容器または容器上に貼り付けてあるラベルまたは添付文書をさらに含み得る。「添付文書」という用語は、治療用生成物の市販用パッケージに慣用的に包含される説明書を指し、このような治療用生成物の使用に関する効能、用途、用量、投与、禁忌および/または警告を含む。一実施形態において、該ラベルまたは添付文書は、該組成物を、例えば、AKTキナーゼにより、媒介される障害を治療するために使用することができることを示す。該ラベルまたは添付文書はまた、該組成物を、他の障害を治療するために使用することができることも示し得る。
【0093】
ある実施形態において、該キットは、錠剤またはカプセルのような本発明の化合物の固体経口形態の送達に適する。このようなキットは、好ましくは、いくつかの単位用量を含む。このようなキットは、それらの意図された使用の順序の向きにした用量を有するカードを含むことができる。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装業界で公知であり、医薬単位用量形態をパッケージ化するのに広く用いられている。所望であれば、例えば、該用量を投与することができる治療スケジュール中に日を示す、数字、文字、または他のマーキングの形態で、またはカレンダーインサートにて記憶補助を提供することができる。
【0094】
別の実施形態によると、キットは、(a)第1の容器の中に含有された本発明の化合物を含む第1の容器と、(b)第2の容器の中に含有された第2の医薬製剤を含む第2の容器とを含み得、第2の医薬製剤は、AKTキナーゼにより媒介される障害を治療するために有用な第2の化合物を含む。代替として、または加えて、該キットは、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸−緩衝化生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液のような薬剤として許容可能な緩衝液を含む第3の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、濾紙、針および注射器を含む、商業的および使用者の視点から望ましい他の物質をさらに含み得る。
【0095】
該キットは、本発明の化合物、および、もしあれば、第2の医薬製剤の投与用の指示書をさらに含み得る。例えば、該キットが、本発明の化合物を含む第1の組成物および第2の医薬製剤を含む場合、該キットは、それを必要とする患者に、第1および第2の医薬組成物を、同時に、連続または別々に投与するための指示書をさらに含み得る。
【0096】
ある他の実施形態において、該キットが、本発明の組成物および第2の治療剤を含む場合、該キットは、分割された瓶または分割されたホイルパケットのような別々の組成物を含有するための容器を含み得るが、別々の組成物を単一の分割されていない容器内に含有することもできる。ある実施形態において、該キットは、別々の成分の投与用の指示書を含む。該キットの形態は、別々の成分が、好ましくは、異なる用量形態(例えば、経口および非経口)で投与され、異なる投与間隔で投与される場合、あるいは組み合わせの個々の成分の滴定が処方医によって望まれる場合に特に有利である。
【0097】
したがって、本発明のさらなる態様は、AKTキナーゼにより媒介される障害もしくは疾患を治療するためのキットを提供し、ここで、該キットは、a)本発明の化合物またはその薬剤として許容可能な塩を含む第1の医薬組成物と、b)使用説明書とを含む。
【0098】
ある実施形態において、該キットは、(c)第2の医薬組成物をさらに含み、ここで、該第2の医薬組成物は、AKTキナーゼにより媒介される障害もしくは疾患を治療するために適する第2の化合物を含む。第2の医薬組成物を含むある実施形態において、該キットは、それを必要とする患者に、前記第1および第2の医薬組成物を、同時に、連続または別々に投与するための使用説明書をさらに含む。ある実施形態において、前記第1および第2の医薬組成物は、別々の容器に含有される。他の実施形態において、前記第1および第2の医薬組成物は、同一の容器に含有される。
【0099】
式Iの化合物が、主に、哺乳動物に用いる治療剤として価値のあるものであるが、それがまた、AKTタンパク質キナーゼ、チロシンキナーゼ、追加のセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼを制御するために必要とされる時は、有用である。したがって、それは、新規の生物学的試験の開発に用いる、および新規の薬理学的薬剤の研究に用いる薬理学的標準として有用である。
【0100】
本発明の化合物の活性が、体外、生体内、または細胞株において、AKTタンパク質キナーゼ、チロシンキナーゼ、追加のセリン/トレオニンキナーゼ、および/または二重特異性キナーゼに対して測定され得る。体外アッセイは、キナーゼ活性の阻害を決定するアッセイである。代替の体外アッセイは、キナーゼに結合する阻害剤の能力を定量し、結合前に阻害剤を放射性標識し、阻害剤/キナーゼ複合体を単離し、放射性標識結合の量を決定することにより、あるいは、新規の阻害剤を既知の放射性リガンドでインキュベートする競合的実験を実行することにより、測定され得る。これらのアッセイ、およびその他の有用な体外および細胞培養アッセイが、当業者には公知である。
【0101】
本発明を、ある程度の具体性を持って説明および図示してきたが、本開示は、単に例示目的であり、当業者であれば、以降に特許請求される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、部分の組み合わせおよび配置において幾多の変更が行われ得ることが理解される。
【実施例】
【0102】
生物学的実施例
AKT−1キナーゼアッセイ
本発明に記載の化合物の活性は、以下のキナーゼアッセイにより判定され得るが、該キナーゼアッセイは市販のIMAPキットを用いる蛍光偏光により、全長ヒト組み換え活性AKT−1による蛍光標識されたペプチドのリン酸化を測定する。
【0103】
該アッセイ材料は、Molecular Devices,Sunnyvale,CAからのIMAP AKTアッセイバルクキット、生成物番号#R8059より得られる。該キット材料は、IMAP反応緩衝液(5×)を含む。希釈された1×IMAP反応緩衝液は、10mM Tris−HCl、pH7.2、10mM MgCl、0.1% BSA、0.05% NaNを含有する。使用直前に、1mMの最終濃度にDTTを定期的に添加する。IMAP反応緩衝液(5×)、およびIMAP結合試薬も含まれる。該結合溶液を、1×IMAP結合緩衝液に、1:400のIMAP結合試薬の希釈物として調製する。
【0104】
フルオレセイン標識AKT基質(Crosstide)は、配列(Fl)−GRPRTSSFAEGを有する。20μMの原液を、1×IMAP反応緩衝液中に作製する。
【0105】
使用したプレートは、化合物を希釈し、化合物−ATPの混合物を調製するために使用される、Costar 3657(ポリプロピレン製の白色のV型底を有する382ウェル)を含む。当該アッセイプレートは、Packard ProxyPlate(商標)−384Fである。
【0106】
使用されるAKT−1は、PDK1およびMAPキナーゼ2で活性化される全長ヒト組み換えAKT−1から作製される。
【0107】
当該アッセイを行うために、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)中の10mMの化合物の原液を調製する。原液および対照化合物を、1:2のDMSO(10μLの化合物+10μLのDMSO)に、9回、連続希釈し、所望の用量範囲にわたり50×希釈系列を得る。次に、DMSO中の2.1μLアリコートの該化合物を、1mM DTTを含有する1×IMAP反応緩衝液中の50μLの10.4μM ATPを含有するCostar 3657プレートに移す。完全に混合した後、2.5μLアリコートを、ProxyPlate(商標)−384Fプレートに移す。
【0108】
200nMの蛍光標識されたペプチド基質および4nM AKT−1を含有する2.5μLアリコートの溶液を添加することにより、当該アッセイを開始する。該プレートを、1000gにて1分間遠心分離し、周囲温度で60分間インキュベートする。その後、反応物を、15μLの結合溶液を添加することにより反応停止し、蛍光偏光を測定するように設定されたVictor 1420 Multilabel HTS Counter上で読み込むまえに、再度遠心分離し、周囲温度でさらに30分間インキュベートする。
【0109】
実施例1の化合物を、上記のアッセイにおいて試験し、実施例1の化合物が500nM未満のIC50を有することが見出された。
【0110】
調製実施例
本発明を例示するために、以下の実施例を含む。しかしながら、本実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を実践する方法を示唆することのみを意図することを理解するべきである。当業者は、記載の化学反応物は、本発明の化合物を調製するための代替方法に容易に適合し、本発明の範囲内であると見なされることを認識されよう。例えば、本発明の化合物の合成を、例えば、干渉基を適切に保護することにより、記載されるもの以外の当技術分野において既知の他の好適な試薬を利用することにより、および/または反応条件の通常の修正を行なうことによるような、当業者には明らかな修正により、成功裏に調製し得る。代替として、当技術分野において既知の他の反応物は、本発明の化合物を調製するための適用性を有するものとして認識される。
【0111】
下記の実施例において、別途示されない限り、すべての温度は、摂氏で記述される。試薬は、Aldrich Chemical Company, Lancaster, TCIまたはMaybridgeのような商業的供給元より購入し、別途示されない限り、さらに精製することなく使用した。テトラヒドロフラン(「THF」)、ジクロロメタン(「DCM」)、トルエン、およびジオキサンは、Sure seal(登録商標)瓶中でAldrichより購入され、入荷した状態で使用した。
【0112】
下に記述される反応は、概して、窒素またはアルゴンの陽圧下で、無水溶媒中で、乾燥管(別途規定されない限り)を用いて行われ、反応フラスコを、典型的には、注射器を介して、基質および試薬を導入するために、ゴム隔膜を用いて固定した。ガラス製品を、オーブン乾燥させた、および/または加熱乾燥させた。
【0113】
H NMRスペクトルは、400MHzで作動するVarian装置で記録された。H−NMRスペクトルは、参考標準として、テトラメチルシラン(0.00ppm)または残渣溶媒(CDCl:7.25ppm、CDOD:3.31ppm、DO:4.79ppm、d−DMSO:2.50ppm)を用いて、CDCl、CDOD、DOまたはd−DMSO溶液(ppmで報告)として得られた。ピーク多重度を報告する際、以下の略語を使用する。s(1重項)、d(2重項)、t(3重項)、m(多重項)、br(広範)、dd(2重項の2重項)、dt(3重項の2重項)。与えられる場合、カップリング定数を、Hertz(Hz)で報告する。
【0114】
実施例1
【0115】
【化3】

(S)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシルアミノ)プロパン−1−オン
【0116】
【化4】

ステップ1:酢酸エチル(「EtOAc」、900mL)中のエチルプレゲネート(Ethyl pulegenate)(130g、662mmol)を、ドライアイスのイソプロパノール槽を用いて、−78℃に冷却した。反応物が、紫色に変わるまで、本混合物を、オゾン分解に供した。この時点で、オゾン発生が停止し、該反応物を、該ドライアイス槽から除去した。反応混合物が黄色に変わるまで、酸素を、反応混合物に吹き込んだ。反応混合物を、真空下で濃縮し、得られた残渣物を、氷酢酸(400mL)中に溶解した。この溶液を、0℃に冷却し、亜鉛末(65g、993mmol)を、30分間にわたり、数回に分けて添加した。その後、該反応物を、2時間撹拌し、この時点で、該反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、亜鉛末を除去した。当該酢酸を、NaOHおよびNaHCO水溶液を用いて、pH7まで中和し、エーテル(3×800mL)で抽出した。混合した有機物を、食塩水、MgSOで乾燥させ、濃縮し、液体として、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(107g、95%)を得た。
【0117】
【化5】

ステップ2:水(60mL)中のKOH(8.3g、147.9mmol)を、エタノール(100mL)中の(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、117.5mmol)とチオ尿素(9.2g、120.9mmol)との混合物の溶液に添加した。該混合物を、10時間還流した。冷却した後、溶媒を除去した。得られた残渣物を、0℃の濃縮HCl(12mL)を用いて中和し、その後、DCM(3×150mL)で抽出した。溶媒を除去し、得られた残渣物を、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィにより精製し、(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、56%)を得た。MS(APCI+)[M+H]++183。
【0118】
【化6】

ステップ3:ラネーニッケル(15g)およびNHOH(20mL)を、蒸留水(100mL)中の(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、65.8mmol)の懸濁液に添加した。混合物を、3時間還流し、その後、濾過した。濾液を濃縮し、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(9.89g、99%)を得た。MS(APCI+)[M+H]+151。
【0119】
ステップ4および5は、(R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレートから開始する、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オールの代替合成を説明する。
【0120】
【化7】

ステップ4:酢酸アンモニウム(240g、3114mmol)を、MeOH(1.2L)中の(R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(106.0g、622.8mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、窒素下で、室温で20時間撹拌し、TLCおよびHPLCによる判定により、反応を完了させた。該反応混合物を濃縮し、MeOHを除去した。得られた残渣物を、DCM中に溶解し、HO(2×)、食塩水(1×)で順次洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、油として、(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボン酸(102g、収率97%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z170.1[M+H]+。
【0121】
【化8】

ステップ5:ホルムアミド(303.5mL、7640mmol)中の(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボン酸(161.6g、955mmol)およびギ酸アンモニウム(90.3g、1433mmol)を含有する溶液を、150℃の内部温度まで加熱し、17時間撹拌した。反応混合物を冷却し、2Lの1口フラスコに移した。その後、高真空蒸留により、過剰のホルムアミジンを除去した。ホルムアミジンの発生がやむとすぐに、蒸留器中の残りの油を、DCM中に溶解し、食塩水(3×200mL)で洗浄した。混合した洗浄水溶液を、DCMで抽出した。混合した有機抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。得られた油を、最少量のDCM中に溶解し、本溶液を、分液漏斗を用いて、エーテル(DCM溶液に対して約5容積のエーテル)の撹拌溶液に添加し、いくつかの沈殿物を形成させた。本沈殿物を、中型フリット漏斗に通して濾過することにより除去し、これをエーテルですすぎ、処分した。濾液を、濃縮し、エーテルによる粉砕を、さらに2回繰り返した。その後、生成物を、高真空ライン上で乾燥させ、ペースト状の固体として、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(93.23g、収率65.0%)を得た。LC/MS(APCI−)m/z149.2。
【0122】
【化9】

ステップ6:純POCl(463.9mL、5067mmol)を、添加用漏斗により、0℃のDCE(1.2L)中の(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(152.2g、1013mmol)の溶液に、ゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応混合物を室温まで温め、その後、70分間撹拌しながら、加熱還流した。HPLCによる判定により、反応を完了させた。該反応混合物を、室温まで冷却し、過剰なPOClを、以下のように、4回に分けて反応停止した。反応混合物を、分液漏斗に移し、氷および飽和NaHCO溶液の入ったビーカーに滴下し、氷浴中で冷却した。該反応混合物の各分量の添加が完了したらすぐに、反応停止した混合物を、30分間撹拌し、分液漏斗に移す前に、POClの完全な消失を確認した。該混合物を、分液漏斗に移し、DCM(2×)で抽出した。混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗物を、以下のように、シリカゲルで精製した。シリカゲル(1kg)を、3Lのフリット漏斗上で、9:1のヘキサン:酢酸エチル中にスラリー化し、シリカを真空下で固定し、砂をかぶせた。該粗物を、DCM/ヘキサンの混合物で負荷し、真空下で、1Lの枝付きフラスコを用いて、化合物を溶出した。まず、高Rfの副生成物を溶出し、その後、油として、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(104.4g、収率61.09%)を得た。トリエチルアミン(93.0mL、534mmol)およびtert−ブチルピペラジン−1−カルボン酸(34.8g、187mmol)を、n−BuOH(250mL)中の(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(30.0g、178mmol)の溶液に添加した。該反応混合物を、窒素下で、加熱還流し、一晩(17時間)撹拌し、その後、ロータバップで濃縮した。得られた油を、DCM中に溶解し、HOで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。得られた油を、生成物がきれいに溶出するまで、まず、2:1のヘキサン:酢酸エチル、次いで、勾配1:1〜1:5のDCM:酢酸エチルで溶出するシリカゲルで精製し、粉末として、(R)−tertブチル4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(42.0g、収率74.1%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z319.1.1[M+H]+。
【0123】
【化10】

ステップ7:固体77%(最大)m−クロロ過安息香酸(「m−CPBA」、23.9g、107mmol)を、0°CのCHCl(310mL)中の(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(20.0g、62.8mmol)の溶液に、数回に分けて添加した。反応混合物を、5分間撹拌し、その後、室温まで温め、さらに90分間撹拌した。7.5時間後、HPLCは類似していた。該反応混合物を、0℃まで冷却し、その後、NaHCO(13.2g、157mmol)および別の0.5当量のm−CPBAを添加した。該反応混合物を、一晩(14時間)撹拌した。該反応混合物を、0℃まで冷却し、HO(50mL)中のNa(29.8g、188mmol)の溶液を、添加用漏斗により滴下した。これに続き、添加用漏斗により、HO(70mL)中のNaCO(24.6g、232mmol)の溶液を添加した(混合物は、均質になる)。該反応混合物を、30分間撹拌し、その後、該混合物を、CHCl(3×150mL)で抽出した。混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、(R)−4−(4−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−1−イル)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン1−酸化物(21.0g、100%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1.1[M+H]+。
【0124】
【化11】

ステップ8:AcO(77.0mL、816mmol)を、(R)−4−(4−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−1−イル)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン1−酸化物(21.0g、62.8mmol)に添加した。反応混合物を、窒素下で、90℃の砂槽中で加熱し、100分間撹拌した。反応混合物を、室温まで冷却し、過剰の無水酢酸を、回転蒸発により除去した。得られた油を、DCM中に溶解し、これを、その後、氷飽和NaCOに、慎重に注いだ。該混合物を、DCMで抽出し、混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、泡状物質として、(5R)−tert−ブチル4−(7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(23.6g、100%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z377.1[M+H]+。
【0125】
【化12】

ステップ9:LiOH−HO(6.58g、157mmol)を、0℃の2:1のTHF:HO(320mL)中の(5R)−tert−ブチル4−(7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(23.6g、62.69mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、10分間撹拌し、その後、室温まで温めた。LC/MSは、3時間および4.5時間で、同一であるように見えた。該反応混合物を、0℃まで冷却し、その後、飽和NHClを、該混合物に添加した。該混合物を、5分間撹拌し、ほとんどのTHFを、回転蒸発により除去した。該混合物を、EtOAc(3×250mL)で抽出し、混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗物を、Biotage 65Mフラッシュクロマトグラフィ(4:1のDCM:酢酸エチル、次いで、勾配1:1〜1:4のDCM:酢酸エチル)で精製した。生成物を溶出するとすぐに、酢酸エチルで該カラムを洗浄した。その後、30:1のDCM:MeOHで、生成物の残り(8.83g)を溶出した。混合した画分を、同一の条件下で、Biotage 40Mフラッシュクロマトグラフィを用いて、再び精製し、別の分量(2.99g)を得、泡状物質として、混合した収量の(5R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(11.82g、収率56.38%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1.1[M+H]+。
【0126】
【化13】

ステップ10:DCM(50mL)中のDMSO(5.45mL、76.8mmol)の溶液を、添加用漏斗により、−78℃のDCM(150mL)中の塩化オキサリル(3.35mL、38.4mmol)の溶液に滴下した。反応混合物を、35分間撹拌し、その後、DCM(80mL)中の(5R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(9.17g、27.4mmol)の溶液を、添加用漏斗により、ゆっくりと添加した。該反応混合物を、−78℃でさらに1時間撹拌し、この後、純トリエチルアミン(18.0mL、129mmol)を、該混合物に添加した。その後、該反応混合物を、室温まで温め、その後、それを、30分間撹拌した。HOを添加した。該混合物を、DCM(3×200mL)で抽出し、混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮した。粗物を、シリカゲル(Biotage65M)で精製し、触媒800mLの4:1のDCM:EtOAcを用いて、その後、生成物が溶出するまで、勾配1:1のDCM:酢酸エチル、次いで、1:4のDCM:EtOAcで溶出する生成物を用いて、カラムを洗浄し、泡状物質として、(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(7.5g、収率82.3%)を得た。該泡状物質を、DCM/ヘキサン(3×)から濃縮し、泡状物質も得た。HPLC>95%領域。LC/MS(APCI+)m/z333.1[M+H]+。
【0127】
【化14】

ステップ11:トリエチルアミン(4.33mL、31.1mmol、使用前の30分間、窒素で脱気)およびギ酸(1.36mL、36.1mmol、使用前の30分間、窒素で脱気)を、DCM(210mL、使用前の30分間、窒素で脱気)中の(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(9.75g、29.3mmol)の溶液に添加した。混合物を、5分間撹拌し、その後、Ru触媒(0.0933g、0.147mmol)を添加した。反応物を、正の窒素圧下で、一晩(18時間)撹拌した。該反応混合物を濃縮乾燥し、高真空で乾燥させた。不純物質を、500mLの1:1のDCM:酢酸エチルで洗浄したBiotage 65Mフラッシュクロマトグラフィで精製したが、次いで、生成物(第2のスポット)が溶出されるまで1:4のDCM:酢酸エチルを使用し、次いで、その勾配を純酢酸エチルにし、次いで、25:1のDCM:MeOHで生成物の残りを溶出した。画分を混合し、回転蒸発器で濃縮した。残渣物を、DCM/ヘキサンから再度濃縮し、泡状物質として、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(主要)とtert−ブチル4−((5R,7S)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(副)との混合物(9.35g、収率95.3%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1[M+H]+。H NMR(CDCl)は、カルビノールメチン(carbinol methine)の統合によって、88%のジアステレオ選択性を示した。
【0128】
【化15】

ステップ12:4−塩化ニトロベンゾイル(4.27g、23.0mmol)を、0℃のDCM(110mL)中のtert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(7.0g、20.9mmol)およびトリエチルアミン(4.38mL、31.4mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、一晩室温し、この後、飽和NaHCOを添加した。該混合物を、10分間撹拌し、その後、DCMで抽出した。混合した抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗物を、Biotage 65Mフラッシュクロマトグラフィ(3:1のヘキサン:酢酸エチルをロードした粗物、次いで、2:1のヘキサン:酢酸エチルがtert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸、および少量の混合した画分を溶出した)で精製した。その後、tert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸を、1:2のヘキサン:酢酸エチルを用いて、溶出した。生成物を有する画分を、回転蒸発により濃縮し、泡状物質として、tert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(8.55g、収率84.5%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z484.1[M+H]+。H NMR(CDCl)は、単一のジアステレオマーを示す)。他のジアステレオマーを有する画分を、回転蒸発により濃縮し、泡状物質として、tert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(0.356g、収率3.52%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z484.1[M+H]+。
【0129】
ステップ13は、(5R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(ステップ9)からのtert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸およびtert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸の代替調製を説明する。
【0130】
【化16】

ステップ13:4−塩化ニトロベンゾイル(15.78g、85.03mmol)を、0℃のDCM(400mL)中の(R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(25.85g、77.30mmol)およびNEt(11.73g、16.16mL、115.9mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、5分間撹拌した。その後、混合物を、室温まで温め、一晩(17時間)撹拌し、この後、飽和NaHCOを添加した。該反応混合物を、10分間撹拌し、分液漏斗に移した。有機層を収集し、水性抽出物を、DCM(2×)で洗浄した。混合した有機抽出物を、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗物を、7:1のヘキサン:酢酸エチルをロードしたフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した(勾配は、5:1のヘキサン:酢酸エチル―>2:1のヘキサン:酢酸エチル―>1:1のヘキサン:酢酸エチル)。一部のきれいなtert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸、一部のきれいなtert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸および一部の混合した画分が単離された。混合した画分を、再度カラムにかけ、予め単離した物質と混合し、tert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(14.27g、38%)およびtert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(12.58g、34%)を得た。4−塩化ブロモベンゾイルの使用が、異性体のわずかに良好な分離をもたらすことを示している。
【0131】
【化17】

ステップ14:LiOH−HO(0.499g、11.9mmol)を、0℃の2:1のTHF:HO(40mL)中のtert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(2.30g、4.76mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、室温まで温め、1時間撹拌した。THFを、回転蒸発により除去した。その後、飽和NaHCOを添加し、該混合物を、酢酸エチルで抽出した。混合した抽出物を、飽和NaHCOで洗浄(1×)し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、泡状物質として、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(1.59g、収率100.0%)を得た。処理後、HPLCにより、純度が98%の領域を超える生成物を得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1[M+H]+。
【0132】
【化18】

ステップ15:4M HCl/ジオキサン(11.2mL、44.9mmol)を、ジオキサン(15mL)中のtert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸(0.600g、1.79mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、窒素下で、室温で一晩(20時間)撹拌した。該混合物を、乾燥するまで濃縮し、高真空ライン上で乾燥させた。粗物を、エーテル中に懸濁し、超音波処理し、5分間撹拌した。固体を、窒素圧を用いて、中型フリット漏斗に通して濾過することにより単離し、エーテルですすぎ、窒素圧下で乾燥させ、高真空ライン上でさらに乾燥させ、粉末として、(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩(0.440g、収率79.8%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z235。
【0133】
【化19】

ステップ16:塩化トリメチルアセチル(1.68g、13.9mmol)を、0℃の乾燥THF(100mL)中の2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)酢酸(2.50g、13.3mmol)およびTEA(d.0.726、2.00mL、14.3mmol)の溶液に添加し、室温で撹拌した。別個のフラスコ中で、n−BuLi(6.424mL、14.58mmol)を、−78℃の乾燥THF(100mL)中の(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(2.47g、13.9mmol)に添加した。反応物を、−78℃で20分間撹拌し、その後、(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン溶液を、0℃の混合した無水溶液に滴下した。該反応物を、室温で一晩撹拌した。該反応物を、水(100mL)で反応停止させ、酢酸エチル(100mL)で希釈した。層を分離し、有機物を、食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、残渣物を得るまで濃縮した。得られた残渣物を、フラッシュクロマトグラフィで精製し、(R)−4−ベンジル−3−(2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)アセチル)オキサゾリジン−2−オン(2.79g、8.02mmol、収率60.5%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)7.37(t,J=8.2Hz,1H),7.33−7.26(m,3H),7.18−7.12(m,3H),7.07(d,J=8.2Hz,1H),4.73−4.65(m,1H),4.33−4.18(m,4H),3.27(dd,J1=3.5Hz,J2=13.3Hz,1H),2.77(dd,J1=9.4Hz,J2=13.7Hz,1H)。
【0134】
【化20】

ステップ17:(1r,4r)−4−アミノシクロヘキサノール塩酸塩(6.67g、44mmol)を、DCM(100mL)中に懸濁した。その後、ヒューニッヒ塩基(Huning’s base)(15mL)を添加し、それに続いて、触媒の4−ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)を添加した。反応物を、5分間添加し、その後、BocO(10.2g、47mmol)を、10分間にわたり、数回に分けて添加した。その後、該反応物を、室温で一晩撹拌した。該反応物を、1N HClの添加により反応停止し、10分間撹拌した。有機層を分離し、水層を、DCM(2×)で洗浄した。その後、混合した有機物を、食塩水およびMgSOを用いて乾燥させ、濃縮した。得られた残渣物を、ヘキサン(過剰なBocOをすべて除去)に懸濁し、濾過した。所望の物質を、固体であるtert−ブチル(1r,4r)−4−ヒドロキシシクロヘキシルカルバメート(5.1g、収率54%)として得た。H NMR(400MHz,CDCl)4.35(br s,1H),3.65−3.52(m,1H),3.43(br s,1H),1.99(見かけの3重項,J1=17.2Hz,J2=12.1Hz,4H),1.49−1.30(m,12H),1.4−1.08(m,2H)。
【0135】
【化21】

ステップ18:NEt(d. 0.726、4.95mL、35.5mmol)を、室温で、DCM(100mL)中のtert−ブチル(1r,4r)−4−ヒドロキシシクロヘキシルカルバメート(5.1g、23.7mmol)の溶液に添加し、懸濁液として撹拌した。反応物を、10分間撹拌し、それに続いて、tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(6.52mL、26.1mmol)を添加し、その際、該反応物は、均質溶液になり、2時間撹拌した。該反応物を、水(50mL)で希釈し、層を分離した。有機物を、1N HCl(2×50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、固体を得るまで濃縮した。固体をフラッシュクロマトグラフィ(5%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル(1r,4r)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)シクロヘキシルカルバメート(6.54g、19.8mmol、収率83.8%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)4.34(br s,1H),3.61−3.50(m,1H),3.4(br s,1H),1.97(d,J=12.9Hz,2H),1.82(d,J=13.7Hz,2H),1.44(s,9H),1.43−1.30(m,2H),1.21−1.05(m,2H),0.87(s,9H),0.04(s,6H)。
【0136】
【化22】

ステップ19:乾燥THF(50mL)中のtert−ブチル(1r,4r)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)シクロヘキシルカルバメート(1.00g、3.03mmol)の溶液を、−78℃まで冷却した。その後、n−BuLi(1.27mL、3.19mmol)を添加した。反応物を、−40℃まで温めながら、20分間撹拌した。これに続いて、クロロメチルメチルエーテル(d=1.060、0.254mL、3.34mmol)を迅速に滴下した。冷浴を除去し、窒素下で、反応物を、温めながら撹拌した。該反応物を、水で反応停止し、フラッシュクロマトグラフィ(5% 酢酸エチル/ヘキサン)による抽出処理および精製により、tert−ブチル(1r,4r)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)シクロヘキシル(メトキシメチル)カルバメート(0.957g、2.36mmol、収率84%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)4.69(br s,1H),3.85−3.47(m,1H),3.27(s,3H),1.90(d,J=10.5Hz,2H),1.79(d,J=12.9Hz,2H),1.67−1.50(m,2H),1.47(s,9H),1.46−1.30(m,4H),0.88(s,9H),0.04(s,6H)。
【0137】
【化23】

ステップ20:フッ化テトラブチルアンモニウム(8.94mL、8.94mmol)を、THF(50mL)中のtert−ブチル(1r,4r)−4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)シクロヘキシルカルバメート(1.97g、5.96mmol)の溶液に、添加し、一晩40℃まで加熱した。反応物を、水(100mL)および酢酸エチル(100mL)で希釈した。その後、層を分離し、有機物を、乾燥させ(MgSO)、油を得るまで濃縮した。該油を、フラッシュクロマトグラフィ(25%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル(1r,4r)−4−ヒドロキシシクロヘキシル(メトキシメチル)カルバメート(1.32g、5.09mmol、収率85%)を得た。
【0138】
【化24】

ステップ21:NaH(油中で60%、0.563g、14.07mmol)を、THF(50mL)中のtert−ブチル(1r,4r)−4−ヒドロキシシクロヘキシル(メトキシメチル)カルバメート(3.65g、14.07mmol)の溶液に添加し、40℃まで加熱した。ヨウ化メチル(0.878mL、14.07mmol)を、温めた撹拌溶液に添加し、一晩60℃まで加熱した。反応物を、水(100mL)で反応停止させ、酢酸エチル(100mL)で希釈した。その後、層を分離した。有機物を、乾燥させ(MgSO)、濃縮した。得られた残渣物を、フラッシュクロマトグラフィ(10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル(1r,4r)−4−メトキシシクロヘキシル(メトキシメチル)カルバメート(3.51g、12.8mmol、収率91%)を得た。
【0139】
【化25】

ステップ22:TiCl(0.207g、1.09mmol)を、−78℃まで冷却した乾燥DCM(20mL)中の(R)−4−ベンジル−3−(2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)アセチル)オキサゾリジン−2−オン(0.362g、1.04mmol)および(1r,4r)−4−メトキシシクロヘキシル(メトキシメチル)カルバメート(0.55g、2.01mmol)の溶液に添加した。ジイソプロピルエチルアミン(「DIEA」、d 0.742、0.199mL、1.15mmol)を、この冷却撹拌溶液に添加した。反応物を、−78℃で15分間撹拌し、その後、−10℃まで温め、3時間撹拌した。該反応物をNHClで反応停止した。該反応物を、DCM(50mL)および水(50mL)で希釈した。その後、層を分離した。水層を、DCM(25mL)で抽出し、乾燥させ(MgSO)、油を得るまで濃縮した。該油を、カラムクロマトグラフィ(10% EtO/ヘキサン〜30% EtO/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル(S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)カルバメート(0.610g、1.04mmol、収率99.5%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)7.38−7.28(m,4H),7.25−7.15(m,3H),7.10(d,J=8.6Hz,1H),4.65−4.56(m,1H),4.15−4.03(m,2H),3.60−3.36(m,2H),3.31(s,3H),3.15−2.95(m,1H),2.12−1.97(m,3H),1.69−1.57(m,2H),1.47(s,9H),1.46−1.37(m,3H),1.37−1.07(m,4H)。
【0140】
【化26】

ステップ23:H(0.294mL、3.06mmol)を、THF/水(2:1、83mL)中のLiOH−HO(0.0855g、2.04mmol)の溶液に添加した。該溶液を、室温で10分間撹拌した。該溶液を、0℃まで冷却し、THF(10mL)中のtert−ブチル(S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)カルバメート(0.600g、1.019mmol)の溶液で処置した。反応物を、0℃で2時間撹拌し、その後、室温まで温め、一晩撹拌した。該反応物を、0℃まで冷却し、1M NaSO(10mL)で処置し、10分間撹拌した。その後、反応物を、室温まで温め、10分間撹拌した。該反応物を、濃縮し、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。水性部分を、HSOで酸性化し、pHを約1〜約2にし、その後、DCM(2×20mL)で抽出した。有機物を混合し、乾燥させ(MgSO)、濃縮した。得られた残渣物により、(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)アミノ)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)プロパン酸(0.312g、0.726mmol、収率71%)を得た。LC/MS>純度95%、r.t.=3.25分間、(APCI+)m/z=430[M+H]+。
【0141】
【化27】

ステップ24:(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩(0.236g、0.768mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(「HATU」、0.265g、0.698mmol)およびコリジン(0.369mL、2.79mmol)を、DCM/DMF(15mL、2:1)中の(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)アミノ)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)プロパン酸(0.300g、0.698mmol)の溶液に添加し、反応物を、室温で一晩撹拌した。該反応物を、水(20mL)とDCM(50mL)とに分け、層を分離した。有機層を、水(2×10mL)で洗浄した。水層を、DCM(25mL)で逆抽出し、乾燥させ(MgSO)、油を得るまで濃縮した。該油を、カラムクロマトグラフィ(5% MeOH/DCM)で精製し、tert−ブチル(S)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)カルバメート(0.394g、0.610mmol、収率87.4%)を得た。LC/MS>純度95%、r.t.=3.83分間、(APCI+)m/z=646。
【0142】
【化28】

ステップ25:ジオキサン(4mL、16mmol)中の4N HClを、DCM(10mL)中のtert−ブチル(S)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピル((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシル)カルバメート(0.370g、0.573mmol)の溶液に添加し、反応物を、室温で3時間撹拌した。反応内容物を、EtO/ヘキサン(75mL、3:1)の激しく撹拌した混合物に滴下し、微粒子として、固体を得た。該粒子を濾過し、乾燥させ、(S)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシルアミノ)プロパン−1−オン二塩酸塩(0.325g、0.525mmol、収率91.7%)を得た。LC/MS>純度95%、r.t.=2.52分間、(APCI+)m/z=546。
【0143】
先述の説明は、本発明の原理のみを例示するものとして見なされる。さらに、多くの修正および変更が、当業者には容易に明らかであるため、上記のように示される正確な構造およびプロセスに本発明を限定することは望ましくない。したがって、すべての好適な修正および等価物は、以下の特許請求により定義される本発明の範囲内に含まれることが考慮され得る。
【0144】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「包含している(including)」、「包含する(include(s))」という用語は、本明細書内、および以下の特許請求の範囲内で使用される際、規定された機能、整数、成分、またはステップの存在を特定することを意図するが、それらは、1つもしくは複数の他の機能、整数、成分、ステップ、または群の存在または付加を除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化29】

【請求項2】
(S)−2−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−((1r,4S)−4−メトキシシクロヘキシルアミノ)プロパン−1−オン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項4】
哺乳動物において、AKT媒介疾患もしくは障害を治療する方法であって、前記哺乳動物に、治療有効量の請求項1または2に記載の化合物を投与するステップを含む、方法。
【請求項5】
前記疾患もしくは障害は、炎症性、過剰増殖性、心臓血管、神経変性、婦人科、または皮膚科疾患もしくは障害である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼの産生を阻害する方法であって、前記哺乳動物に、有効量の請求項1または2に記載の化合物を投与するステップを含む、方法。
【請求項7】
哺乳動物において、AKTタンパク質キナーゼの活性を阻害する方法であって、前記キナーゼを、請求項1または2に記載の化合物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項8】
AKTタンパク質キナーゼ媒介病状の治療における、薬剤として使用のための請求項1または2に記載の化合物。
【請求項9】
療法のための薬剤の製造における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項10】
過剰増殖性疾患の治療における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項11】
癌の治療における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項12】
AKTタンパク質キナーゼ媒介病状を治療するためのキットであって、
a)請求項1または2に記載の化合物を含む第1の医薬組成物と、
b)任意に、使用説明書と、
を含む、キット。

【公表番号】特表2011−509306(P2011−509306A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542373(P2010−542373)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/030602
【国際公開番号】WO2009/089453
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(504344509)アレイ バイオファーマ、インコーポレイテッド (87)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】