説明

AKT(プロテインキナーゼB)阻害剤

抗悪性腫瘍薬及び/又は抗ウィルス剤であるAkt阻害剤としての4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又はその化合物の水和物もしくはその塩、並びに当該化合物を含んでなる組成物及び当該化合物を用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はAktの阻害剤である化合物、当該化合物を含んでなる組成物、及び当該化合物を用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは成長因子、ホルモン及び他の細胞制御分子を、正常及び病理学的状況下で、細胞の成長、生存及び代謝に連結する情報伝達経路に関与する。このようなプロテインキナーゼの1つであるプロテインキナーゼB(Aktとしても知られる)は、広範な細胞種の増殖及び生存の促進に中心的役割を担い、これによりアポトーシス(プログラムされた細胞死)から細胞を防御するセリン/スレオニンキナーゼである。
【0003】
多くのプロテインキナーゼ及び脱リン酸化酵素がAktの活性を制御する。例えば、Aktの活性はホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−K)により媒介され、これはAktのプレクストリンホモロジ(PH)結合ドメインへの第2のメッセンジャリン脂質の結合をイニシエートする。この結合はプラズマ膜へAktを定着させ、その結果この酵素のリン酸化及び活性化が生じる。PI3−Kの触媒サブユニットであるp110αの増幅、又はPI3−K制御サブユニットであるp85αにおける変異は、様々な種類のヒトのがんにおいてAktの活性化を導く。最近の研究でも、多数のウィルスのライフサイクルにおけるPI3−K/AKT経路の役割が示されてきた。
【0004】
国際公開第01/91754号パンフレットはプロテインキナーゼ阻害剤に関する。国際公開第2005/011697号パンフレットはプロテインキナーゼA及びB阻害剤を含む。国際公開第2005/054202号パンフレットはAKT阻害剤に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞生存の制御における中心的役割であることから、Aktは種々の障害、特にがん及びウィルス感染を効果的に治療するための新規な治療目標を備えている。しかしながら、このような治療には、強力、選択的、生物利用可能なAkt阻害剤が必用である。代替Akt阻害剤への必要性が存在する。従って、本発明は、作用強度、選択性及び/又は生物利用可能性が増した新規なAkt阻害剤、当該化合物を含んでなる組成物、及び当該化合物を使用する方法を提供する。
【0006】
加えて、希釈時又は溶液中において新規なAkt阻害剤を含有する組成物医薬組成物は、患者への提供を目的とするために必然的に無沈澱でなければならない。本発明は、そうした沈澱のない特定のpH範囲で新規なAkt阻害剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩又は当該化合物の水和物もしくはその塩を提供する。
【0008】
本発明は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸も提供する。
【0009】
更に、本発明は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を提供する。
【0010】
本発明は、医薬品として用いるために、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩も提供する。
【0011】
加えて、本発明は、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、ニューロブラストーマ、メラノーマ、もしくは前立腺、乳房、子宮、一次性胃、腸管型、子宮内膜、甲状腺、膵、肺又は膀胱の新生物を治療する医薬品の製造のために、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の使用を提供する。
【0012】
本発明は、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、もしくは前立腺、乳房、又は子宮の新生物を治療する医薬品の製造のために、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の使用も提供する。
【0013】
加えて、本発明は、非小細胞肺癌、又はグリア芽細胞腫を治療する医薬品の製造のために、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の使用を提供する。
【0014】
更に、本発明はC型肝炎、風疹、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を治療する医薬品の製造のために、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の使用を提供する。
【0015】
加えて、本発明は、発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、ニューロブラストーマ、メラノーマ、もしくは前立腺、乳房、子宮、一次性胃、腸管型、子宮内膜、甲状腺、膵臓、肺、又は膀胱の新生物を治療するための、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩を提供する。
【0016】
本発明は、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、もしくは前立腺、乳房、又は子宮の新生物を治療するための、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる、塩又は当該化合物の水和物もしくはその塩も提供する。
【0017】
加えて、本発明は、非小細胞肺癌又はグリア芽細胞腫を治療するための、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩を提供する。
【0018】
更に、本発明は、C型肝炎、風疹、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を治療するための、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩を提供する。
【0019】
加えて、本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者における多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、ニューロブラストーマ、メラノーマ、もしくは前立腺、乳房、子宮、一次性胃、腸管型、子宮内膜、甲状腺、膵臓、肺、又は膀胱の新生物を治療する方法を提供する。
【0020】
本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者において多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、もしくは前立腺、乳房、又は子宮の新生物を治療する方法を提供する。
【0021】
加えて、本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者において非小細胞肺癌又はグリア芽細胞腫を治療する方法を提供する。
【0022】
更に、本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者においてC型肝炎、風疹、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を治療する方法を提供する。
【0023】
本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる医薬組成物も提供する。
【0024】
加えて、本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる凍結乾燥した医薬組成物を提供し、ここに前記組成物のpHは水溶性希釈剤で希釈したときに4.2未満であり2.0より大きく、3.2未満であり2.0より大きく、又は2.8未満であり2.0より大きい。
【0025】
本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸又は4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を含む、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールもしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる凍結乾燥した医薬組成物を提供し、ここに前記組成物のpHは4.2未満であり2.0より大きく、3.2未満であり2.0より大きく、又は2.8未満であり2.0より大きい。
【0026】
更に、本発明は、結晶形態において2θ=4.9,14.8,及び10.2に強度ピークのあるX線粉末回折パターンを有する4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を提供する。
【0027】
本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール又はその薬理学的に許容できる塩又はその水和物も提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の化合物はAkt阻害剤であり、Akt活性に関連する障害の治療に有用であると考えられる。従って、本発明の化合物は抗悪性腫瘍剤及び/又は抗ウィルス剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の化合物はPTENに欠損が表れる悪性腫瘍、PI3−キナーゼ活性が調節解除された悪性腫瘍、又はAkt活性が上昇した悪性腫瘍の治療に有用である。Akt阻害剤は多発性骨髄腫(Hsuら、Blood(2001)、98(9)、2853−2855);非小細胞肺癌(Balsara、Carcinogenesis(2004)、25(11)、2053−2059);グリア芽細胞腫(Koulら、Mol.Cancer Ther.(2006)、5:637−644);ニューロブラストーマ(Liら、Cancer Res.(2005)、65(6)、2070−2075);メラノーマ(Daiら、J.of Clin.Oncology(2005)、23(7)、1473−1482)並びに、前立腺(Majumderら、Oncogene(2005)、24、7465−7474);乳房 (Tokunagaら、J.of Clin.Oncology(Meeting Abstracts)(2005)、23(16S)、9500);子宮(Cheungら、PNAS(1992)、89、9267−9271;Yuanら、(2000);Huら、(2000));一次性胃又は腸管型(Angら、Cancer Lett.(2005)、225(1)、53−59);子宮内膜(Jinら、British J.of Cancer(2004)、91、1808−1812);甲状腺(Ringelら、Cancer Res.(2001)、61(16)、6105−6111;De Vitaら、Cancer Res.(2000)、60、3916−3920);膵臓(Schliemenら、Brit.J.of Cancer(2003)、89、2110−2115);肺(Massionら、Am.J.Resp.Crit.Care Med.(2004)、170、1088−1094);又は膀胱(Rieger−Christら、Oncogene(2004)、23(27)、4745−4753)の新生物の治療に有用と考えられる。Akt阻害剤は、C型肝炎及びC型肝炎のNS5A(Mannovaら、J.Virol.(2005)、79(14)、8742−8749;Heら、(2002));風疹(Coorayら、Virology J.(2005)、2(1)、1−12);ヒト免疫不全ウィルス(HIV)のTatタンパク(Borgattiら、(1997));B型肝炎のプロテインX(Leeら、(2001))、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)(Johnsonら、(2001))等のウィルス治療にも有用と考えられる。
【0030】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールは、例えば薬理化学にしばしば用いられる薬理学的に許容できる塩と共に、薬理学的に許容できる酸付加塩を生成する。このような塩も本発明の一部である。薬理学的に許容できる塩及びこれを調製する一般的な方法論もまた当業者に周知である。例えば、P.Stahlら、“医薬塩ハンドブック:特性、選択及び使用”、(VCHA/Wiley−VCH、2002);S.M.Bergeら、“Pharmaceutical Salts”、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol.66、No.1、January 1977を参照されたい。
【0031】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールのための好適な塩には、一塩酸塩及び二塩酸塩が含まれる。
【0032】
本願明細書に記載の中間体は塩を生成しうる。塩に加えて、本発明の化合物及び本願明細書に記載の中間体は、水和物又は薬理学的に許容できる塩の水和物を生成しうる。
【0033】
好適な化合物は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールである。また別の好適な化合物は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸である。更に好適な化合物は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物である。
【0034】
本願明細書に用いる用語「患者」は、Akt活性上昇に伴う1以上の障害に苦しむ哺乳類を指す。もっとも好適な患者はヒトであると理解されよう。本発明は特に哺乳類のAkt/PKB阻害に関すると理解されたい。
【0035】
「治療」「治療する」「治療している」及び同等の用語は、新生物の成長、Akt1、Akt2及び/又はAkt3の増幅及び/又は過剰発現、細胞増殖、生存及び/又はウィルス複製を減少すること及び/又は阻害することを含む。
【0036】
本願明細書に用いる用語「有効量」は、薬理学的効果が表れる程度にAktを阻害する量を指す。
【0037】
本発明は、4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール、又はその薬理学的に許容できる塩、又はその水和物、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤を含んでなる医薬組成物も提供する。本発明のための医薬組成物は、凍結乾燥等の希釈前の形態、及び患者に直ちに投与するための希釈後の形態を含む。この医薬組成物のpHは約4.2未満から約2.0を超える。より好適には、このpHは約3.2未満から約2.0を超える。もっとも好適には、このpHは約2.8未満から約2.0を超える。「薬理学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤」は、例えば哺乳類、好適にはヒトである患者への輸送のために当業において一般的に許容される媒質である。このような担体、希釈剤、又は賦形剤は、一般的に当業者が決定及び考慮すべき十分な範囲内における多くの要因に従って処方される。これらには、処方される活性薬剤の種類及び性質、薬剤含有組成物を投与すべき対象、意図する組成物の投与経路、及び標的となる治療上の兆候を挙げられるが、限定しない。薬理学的に許容できる担体及び賦形剤には、水溶性及び非水溶性の液体媒質、並びに種々の固体及び半固体の服用形態が挙げられる。このような担体、希釈剤、又は賦形剤は活性薬剤に加えて多くの異なる成分及び添加物を含むことが可能であり、そうした添加成分、例えば当業者に周知である活性薬剤の安定剤等が多くの理由から処方に含まれる。薬理学的に許容できる適切な担体、希釈剤、又は賦形剤、及びそれらの選択のための要因は、直ちに利用可能な種々の情報源に記載が見られる。例えば、レミントン(Remington)、“調剤の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)”、(A.Gennaroら編集、第19版、Mack Publishing Co.、1995年)を参照されたい。
【0038】
本発明の化合物は、従来の非毒性で薬理学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤を含有する医薬組成物の服用ユニット処方で、静脈内(大量瞬時投与又は点滴等)等の全身に投与してもよい。
【0039】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールの医薬組成物については、活性成分は、通常、組成物の全重量を基準として約0.5〜95重量%の量で存在する。食味の向上又は吸着の遅延のために適切なコーティングを塗布してもよい。
【0040】
本願明細書に記載の障害の患者を治療するための本発明の化合物の治療上有効量は、当業者に公知の種々の方法で決定しうる。しかしながら、任意の特定の患者に対する服用レベルの特定は、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事制限、投与時間、投与経路、及び排出速度、薬剤の組合せ及び特定の疾患の重篤さを含む種々の要因に依存すると理解されたい。用いる化合物及び治療する特定の疾患に依存して、服用の頻度を変えてもよい。例えば、典型的な1日の服用量は約1mgから約1gの活性成分を含有してもよい。
【0041】
本発明の化合物は、文献公知又は実験手順に例示の他の標準的な操作に加え、本願明細書に提供される情報を用いて調製してもよい。
【0042】
本願明細書に使用の用語及び略語は、特に指定のない限り、通常の意味を有する。例えば、“LC”は液体クロマトグラフィを指し、“dppb”はビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを指し、Pd(OAc)は酢酸パラジウムを指し、“DMF”はN,N−ジメチルホルミアミドを指し、“DMSO”はジメチルスルホキシドを指し、“EtO”はジエチルエーテルを指し、“EtOAc”は酢酸エチルを指し、“TFA”はトリフロロ酢酸を指し、MeOHはメタノールを指す。
【0043】
(調製)
(調製1)
2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチルアミン二塩酸
無水MeOH(150mL)中{2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11.00g、24.85mmol)スラリーに、ジオキサン(350mL)中4N HClを加えた。反応生成物を室温で終夜かき混ぜ、次いで真空中で1/2の容積に濃縮し、過剰のEtOAcを加えると黄色の固体が沈澱した。N雰囲気下の真空ろ過により生成固体を回収し、EtOAcで洗浄し、真空下で乾燥(N雰囲気下)して、表題化合物(10.23g、収率99%)を黄色固体として得た。MS(ES):m/z343.0(M+H)。
【0044】
(調製2)
7−ブロモ−イソキノリン−5−スルホン酸
発煙HSO(2000mL、21.33mol、26−29.5%、SOフリー)を、メカニカルスターラ、還流コンデンサ、Nライン、及び温度計を備えた5L丸底フラスコに加えた。氷/アセトン浴中、発煙HSOを10℃に冷却し、次いで7−ブロモイソキノリンHCl(500.00 g、2.04mol)を、反応混合物が約15−20℃以下の温度を保つよう少量ずつ加えた。7−ブロモイソキノリンHClの添加終了後、生成反応混合物を約100℃に終夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いでかき混ぜた氷水の溶液中にゆっくりと注入した。真空ろ過により生成沈殿物を回収し、HO次いでEtOで洗浄し、真空ろ過にて乾燥した後、約35℃減圧下の乾燥オーブン中で乾燥して、表題化合物(501.42g、収率85%)を灰色がかった固体として得た。TOF−MS[ES+;m/z]287.9331/287.9330。
【0045】
(調製3)
7−(4−(メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホン酸
DMF(1400mL)及びMeOH(375mL)中7−ブロモ−イソキノリン−5−スルホン酸(150.00g、0.520mol)及び4−メトキシフェニルホウ酸(90.87g、0.598mol)を2M NaCO水溶液(652mL)で処理した。生成スラリーをNで3回脱酸素し、次いでPd(OAc)(2.33g、0.0104mol)及びdppb(5.54g、0.0130mol)を加えた。生成反応混合物を約70℃で3時間加熱し、次いで終夜室温に冷却させた。反応混合物をHO(4000mL)で希釈し、5N HCl水溶液にてpHを約2に調節した。生成スラリーを室温で30分間かき混ぜ、次いで真空ろ過により褐色固体を回収し、HOで洗浄して真空ろ過にて乾燥した。褐色固体をDMF(1000mL)及び2M NaCO水溶液(650mL)に溶解し、生成溶液をCelite(登録商標)パッドを通じてろ過し、DMF(400mL)/HO(400mL)で洗浄した。5N HCl水溶液を用いて、ろ過液のpHを約2に調節した。生成スラリーを室温で30分かき混ぜ、次いで真空ろ過により固体を回収し、HOで洗浄して真空ろ過にて終夜乾燥した。再び固体をDMF(1000mL)及び2M NaCO水溶液(1000mL)に溶解し、生成溶液をCelite(登録商標)で処理してスラリーとした。生成スラリーを室温で40分かき混ぜ、次いでCelite(登録商標)パッドを通じてろ過し、HOで洗浄した。5N HCl水溶液を用いて、ろ過液のpHを約2に調節した。生成スラリーを室温で30分かき混ぜ、次いで真空ろ過により固体を回収し、HOで洗浄して真空ろ過にて終夜乾燥した。固体を破砕し、次いでEtOAcで洗浄し、終夜真空乾燥した後、約35℃で、減圧下の乾燥オーブン中で乾燥して、表題化合物(136.79g、収率83%)を黄色固体として得た。TOF−MS[ES+;m/z]316.0624/316.0643。Anal.Calcd.For C1613NOS:C 60.94;H 4.15;N 4.44;S 10.16.Found C 60.76;H 4.13;N 4.50;S 9.90
【0046】
(調製4)
7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニルクロリド
1,2−ジクロロエタン(200mL)及びDMF (2.99mL、38.5mmol)中7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホン酸(12.13g、38.5mmol)のスラリーにオキザリルクロリド(26.8mL、308mmol)を滴下して加えた。60−65℃で4時間加熱する間、窒素雰囲気下でスラリーを機械的にかき混ぜた。スラリーを−10℃に冷却した。30分静置した後にろ過した。黄色固体を20%エーテル/ジクロロメタンで洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥して表題化合物(14.8g)を黄色粉末として得た。
【0047】
(調製5)
7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−チオールナトリウム塩
A.ジオキサン(40mL)中7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニルクロリド(4.0g、12mmol)にトリカルボキシエチルホスフィン塩酸塩(13.73g、48mmol)及び水(10mL)を加えた。混合物を100℃に加熱して3時間かき混ぜた。氷浴中で混合物を冷却し、ピペットでNaOH(5N、60mL)をゆっくり加えた。淡黄色の沈殿物をろ過、空気乾燥して表題化合物(3.2g、95%)を得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=266.2(M−Na
【0048】
代替として、表題化合物を以下のように作成できる。
B.(i)無水トルエン(2500mL)中7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホン酸(100.00g、0.317mol)溶液をNで3回脱酸素し、次いでPhP(332.58g、1.268mol)、I(80.46g、0.317mol)、及びBuN(152.00mL、0.638mol)で処理した。生成反応混合物をN雰囲気下で1時間かき混ぜ、次いで反応混合物に空気をバブリングしながら室温に終夜冷却した。反応混合物を1N NaOH水溶液(500mL)で処理し、次いで反応混合物に空気をバブリングしながら室温で終夜かき混ぜた。生成した黄褐色沈殿物を真空ろ過により回収した。THF/EtOの1/1溶液で洗浄し、次いで真空ろ過で乾燥してビス−(7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5)−ジスルフィド(72.50g、収率86%)を淡褐色の固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO)δ9.39(s,2H),8.51(d,2H),8.41(s,2H),8.11(d,2H),8.00(d,2H),7.53(d,4H),6.94(d,4H),3.78(s,6H)
【0049】
B.(ii)無水THF(850mL)中ビス−(7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5)−ジスルフィドのスラリーをNaBH(2.84g、75.07mmol)で処理した。生成反応混合物をN下、約35℃で1時間加熱し、次いでN下、約45℃で1時間加熱した。
【0050】
(調製6)
7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルフィン酸ナトリウム
水(10mL)中7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニルクロリド(1.48g、4mmol)にNaSO(1.01g、8mmol)及びNaHCO(1.01g、12mmol)を加えた。混合物を100℃に加熱して1時間かき混ぜた。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で水を除去した。残留物にメタノール(40mL)を加えて10分かき混ぜた。白色固体をろ過し、メタノールで洗浄してろ過液を合わせた。濃縮して表題化合物(1.1g)を得た。
【0051】
(調製7)
(3,5−ジクロロ−ベンジリデン)−(2,2−ジエトキシ−エチル)−アミン
2,2−ジエトキシ−エチルアミン(1852.5g;1.00当量;13.63モル)、3,5−ジクロロ−ベンズアルデヒド(2453g;1.00当量;13.60モル)、及びトルエン(12L)を、Dean Starkトラップ、コンデンサ、窒素インレット、オーバーヘッドスターラ、及び熱電対を備える22Lフラスコに入れた。薄い黄色反応物を還流するために暖めた。溶液は88℃で蒸留し始めた。全量約650mLの蒸留物(約240mLの水)を集めた。蒸留中、温度を114℃に上げた。還流2時間後のNMRに生成物が示された。2.5時間後に加熱を中止した。溝付きろ紙を通じて大型ガラスびんに溶液を重力ろ過して少量の微粒子(3,5−ジクロロ−ベンズアルデヒド由来と思われるガラス管の小部分を含む)を除去した。ろ過した溶液を、45℃水浴でBuchiフラスコを用いて濃縮した。溶媒が上昇停止してから、最大真空度で温度を70℃に上げて約1.5時間維持し、すべての残存トルエンを除去した。(3,5−ジクロロ−ベンジリデン)−(2,2−ジエトキシ−エチル)−アミンの重量は4059.3g(理論値の102.9%)であった。質量スペクトル(LCMS)m/z=291.2)(M+H
【0052】
(調製8)
5,7−ジクロロ−イソキノリン塩酸塩
トリフリック酸(2.97L;33.52モル;5.03 kg)をDean Starkトラップ、オーバーヘッドスターラ、コンデンサ、窒素インレット、3L滴下漏斗(フラスコとの間にコンデンサを介して)、及び熱電対を備えた12Lフラスコに入れた。トリフリック酸を120℃に加熱した。(3,5−ジクロロ−ベンジリデン)−(2,2−ジエトキシ−エチル)−アミン(1350.5g;1.00当量;4.65モル)をジクロロメタン(1350mL)で溶解し、滴下漏斗に入れた。温度119℃で添加を開始した。90分以上、温度を120℃に保って添加を完了した。添加期間に約1500mLの蒸留物を回収した。添加後約45分でHPLC面積%が完了し、94.14%生成物及び4.86%(3,5−ジクロロ−ベンジリデン)−(2,2−ジエトキシ−エチル)−アミンを示した。1.5時間後に加熱を中止した。反応物を約80℃に冷却した。この時点でフラスコを氷浴中に置いて更に冷却した。メタノール(2.7L)を9℃で反応物に加えた。この添加は60分以上かけて完了した。最高温度は27℃だった。メタノール添加中にいくらかの固体を生成した。このスラリーを2L滴下漏斗に少しずつ移し、22Lフラスコ内の水酸化アンモニウム(5.1L;36.67モル;4.59kg)及び水(5.1L)の溶液に加え、氷浴中で<2℃に冷した。滴下漏斗は、フラスコ壁に固着して油のような固体になりがちな材料が、フラスコ側面を降下しないようにするためにTeflon(登録商標)延長チューブを有する。滴下漏斗が固体により塞がらないように、材料は小さいスラッグ状で添加した。フラスコ及び滴下漏斗のメタノール(900mL)洗浄を含めて、35分以上かけて滴下を完了した。最高温度は26℃だった。褐色固体を生成した。スラリーを14℃に冷却した。固体をポリプロピレンパッド上でろ過した。固体を水4Lで2回及び2Lで1回洗浄した。次いで乾燥補助のために固体をヘプタン2Lで洗浄した。固体は50℃で真空乾燥し、重量999.0g(理論値の108.4%)となった。5,7−ジクロロ−イソキノリン(997g;1.00当量;5.03モル)及びエタノール(14.97L)を、滴下漏斗、窒素インレット、オーバーヘッドスターラ、及び熱電対を備えた22Lフラスコに入れた。褐色スラリーを環境温度(22℃)でかき混ぜた。塩化アセチル(1180mL;16.58モル;1.30kg)を滴下漏斗に入れた。これをフラスコに滴下して加えた。褐色スラリーが暗色化した。100−200mLの塩化アセチルを加えることにより固体はほとんど溶解したように見えた。完全な溶液は生成しなかった。添加を継続すると固体が再び現れた。添加は45以上かけて完了した。最高温度は43℃であり、これは添加の約半分で到達し、バス中の冷水でその温度を維持した。塩化アセチルの約3/4を添加した後に、NMR様に反応物の試料を取り出した。試料は塩のように思われたため、過剰の塩化アセチルは必用なさそうだった。スラリーをかき混ぜ、冷却した。40分後には温度は30℃だった。スラリーを<2℃に冷却し、氷浴中で1.5時間保持した。スラリーをろ過した。固体を冷エタノール1.3Lで2回洗浄した。湿った固形物の重量は811.4gだった。固体を50℃で真空乾燥した。乾燥重量は648.4gだった。これは収率61.0%であることを表していた。質量スペクトル(LCMS)m/z=199.05)(M+H
【0053】
(調製9)
[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−イルスルファニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
カルバミン酸カリウム(1952g;14.12モル)を、オーバーヘッドスターラ、滴下漏斗、窒素インレット、及び熱電対を備えた22Lフラスコに入れた。ジメチルホルムアミド(4L)を加えた。5,7−ジクロロ−イソキノリン塩酸塩(646.1g;1.00当量;2.76モル)をDMF(330mL)と共に少しずつ加えた。Boc−システアミン(514g;1.05当量;2.90モル)をジメチルホルムアミド(1520mL)に溶解して滴下漏斗に入れた。混合物を60℃に暖めた。混合物を暖める間にヘッドスペースを通じて15分間窒素パージした。Boc−システアミン溶液を60℃で2時間15分かけて添加した。添加後1時間20分して行ったHPLCでは、出発材料28.1%、生成物67.26%、異性体4.22%、及びビス体0.25%を示した。反応物を75℃に暖めた。表AのHPLCデータは75℃で収集した。
【0054】
【表1】

【0055】
1.5時間後にマントルヒータを冷却バスに入れ替えた。反応物を20−25℃に冷却した。固体をろ過してDMF(810mL、2回)で洗浄した。DMF溶液をMTBE(5.15L)及び5%LiCl(5.15L)で希釈した。50L底部出口付きフラスコ内でかき混ぜた後、層を分離した。水層をMTBE(2.9L)で抽出した。MTBE層を合わせ、5%LiClで洗浄した(2.9L、2回)。MTBE層を溝付きろ紙を通じて重力ろ過し、35℃に設定した水浴付きのBuchiフラスコを用いて濃縮し、892.7g(理論値の95.6%、無補正)の[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−イルスルファニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=339.85)(M+H
【0056】
(調製10)
[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−スルホニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−イルスルファニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(700g;1.00当量;2.07モル)を、50℃に設定した水浴付きBuchiフラスコ上で回転してイソプロピルアルコール(10.53L)に溶解した。メキノール(12.29g;98.01mモル;12.29g)、タングステン酸ナトリウム二水和物(31.4g;95.20mモル)、[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−イルスルファニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル溶液、イソプロピルアルコール(2.77L)、水(3.38L)、及び酢酸(123mL;2.15モル;128.90g)を、コンデンサ、窒素インレット、オーバーヘッドスターラ、滴下漏斗、及び熱電対を備えた22Lフラスコに入れた。水の添加により褐色溶液はわずかに乳状の外観となった。温水浴を用いて反応物を50℃に暖めた。過酸化水素(607mL;5.94モル;673.77g)を1時間かけて添加した。添加中、過酸化水素の添加速度及び必用に応じて冷水又は温水を水浴に加えて、温度を50−55℃に維持した。反応物は乳状褐色のままだった。反応温度は添加終了時に54℃であり、温水浴を用いて53−57℃に維持した。添加後10分のHPLCでは2.89分に24.69%のピークが現れ、生成物65.57%、異性体5.03%、ビス体4.33%であり、3.05分においてピークは0.18%だった。添加後2時間のHPLCではスルホキシド0.06%、3.046分に1.27%のピーク、生成物88.10%、異性体4.61%、及びビス体5.79%だった。反応物を冷却するために、水浴を排出して氷浴と入れ替えた。反応温度が27℃に達したときに、9%亜硫酸水素ナトリウム溶液(250mL)を加えて過酸化物をクエンチした。温度上昇は全く見られなかった。過酸化物試験片及びヨードデンプン紙は過酸化物が残存していないことを示した。15−20分かけて水(5.64L)を加えた。添加中、温度は18から24℃に上昇した。環境温度で終夜混合物をかき混ぜた。氷浴中、<5℃までスラリーを冷却して保持した。上清の定量的HPLCでは、<5℃において1.5時間後に結晶化が完了したことを示した。固体をろ過し、水洗した(2L、2回)。湿った固形物の重量は831gだった。固体を50℃で真空乾燥した。乾燥[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−スルホニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの重量は531g(理論値の69.31%、無補正)だった。質量スペクトル(LCMS)、m/z=371.85)(M+H
【0057】
(調製11)
(2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
60Lの反応容器に、PEPPSI(登録商標)(ピリジン強化した前触媒調製安定及びイニシエーション(Pyridine−Enhanced Precatalyst Preparation Stabilization and Initiation);51.0g;74.9mモル)、[2−(7−クロロ−イソキノリン−5−スルホニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.383kg;3.729モル)、フェニルホウ酸(895g;4.03モル)、KCO(1.039kg;7.518モル)、及びエタノール(15L)を窒素パージ下で入れた。最初にエタノール12Lを反応容器に加え、残りの3Lは他の材料を洗い流すために用いた。反応物を還流するために暖めた(78℃)。HPLCは1/2時間後に反応完了を示した。Huber(登録商標)サーキュレータを用いて反応物を59℃に冷却した。18分かけて反応物に水(8.7L)を加えた。水の添加中に温度は59℃から42℃に低下した。Huber(登録商標)サーキュレータを用い、1時間かけて反応物を42℃から0℃に冷却した。スラリーを1時間0℃に保持した。ポリプロピレンパッドを用いて固体をろ過し、1:1のエタノール:水(3.7L;冷蔵)で洗浄した。固体をフィルタ上で終夜乾燥した。次いで固体を60℃で22時間真空乾燥した。固体の乾燥重量は2.171kgだった。粗製2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル中のPdレベルは2196μg/gであり、固体はKF法によると、6.9%の水を含有していた。50Lの底部出口付きフラスコにジクロロメタン(4L)を入れた。粗製2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルを50Lフラスコに入れ、ジクロロメタン(1L)ですすいだ。NaSO(1.9kg)を入れてジクロロメタン(0.1L)ですすいだ。Darco G−60(登録商標)(3.8kg)を20LのBuchiフラスコに入れてジクロロメタン(12L)でスラリー化した。このスラリーを50Lフラスコに移してジクロロメタン(4.9L)ですすいだ。混合物を環境温度で2時間かき混ぜた。50cmステンレスフィルタにポリプロピレンパッド及びHyflo Super Cel(登録商標)(1.7kg)を装着した。Hyflo Super Cel(登録商標)パッドをジクロロメタン(2L)ですすいだ。50Lフラスコの内容物をHyflo Super Cel(登録商標)パッド上でろ過した。フラスコ及びフィルタ固形物をジクロロメタン(22L)ですすいだ。ろ過液は0.45ミクロンカートリッジフィルタを通じて60L反応容器に入れた。反応容器の内容物を暖め、低真空(約640mmHg)で蒸留して濃縮した。35−37℃で2時間かけて蒸留物を約33L集めた。エタノール(10L)を加えた。蒸留を継続しながら、真空をゆっくり調節して280mmHgまで低下させた。真空到達後、温度を上昇して蒸留を維持した。反応容器中の容積が約10Lに達した時点で、溶媒を留出させながら反応容器内の容積を同じに維持する速度でエタノール(6.5L)を加えた。エタノールを全て添加した時点で蒸留を停止した。最終容積は約10Lだった。蒸留終了時の温度は56℃だった。溶媒交換中に生成したスラリーを20℃に冷却して終夜保持した。スラリーをろ過した。固体を1:1のエタノール:水(1.8L)で洗浄した。湿った固形物の重量は1.878kgだった。固体を50℃で真空乾燥して1.2306kg(収率64.36%)の(2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=513.62)(M+H)
【実施例】
【0058】
(実施例1)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩
【化1】

A.{2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−イルスルファニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
アセトン(10mL)中7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−チオールナトリウム塩(0.29g、1mmol)に、(2−ブロモ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.22g、1mmol)及び炭酸カリウム(0.14g、1mmol)を加えた。混合物を室温で4時間かき混ぜ、次いでシリカゲルカラムに乗せ、ヘキサン中65%酢酸エチルで溶出して表題化合物(0.35g、86%)を得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=355.2(M+H
【0059】
B.{2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
{2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−イルスルファニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.35g、0.85mmol)の酢酸(8mL)溶液に水(2mL)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷却した。KMnO(0.27g、1.7mmol)の水(2mL)溶液を5分間かけて滴下して加えた。添加後に反応混合物を0℃で30分かき混ぜた。H(30%水溶液)を、褐色の色が消失するまで滴下して加えた。酢酸エチル(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム(40mL)で混合物を分離した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上でヘキサン中66%酢酸エチルでクロマトグラフ展開し、表題化合物(0.245g)を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=433.2(M+H
【0060】
C.4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸
ジクロロエタン(10mL)中2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.22g、0.51mmol)に−20℃でBBr(ジクロロメタン中1.0M、3.0mL)を加えた。添加後に反応混合物を−20℃で2時間かき混ぜ、ゆっくりと室温まで暖め、室温で2時間かき混ぜた。メタノール(5mL)を加えて過剰のBBrをクエンチした。減圧下で溶媒を蒸発させ、逆相HPLC(0.01% TFA含有0−100%アセトニトリル:水)で残留物を精製して4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールをTFA塩(0.18g)として得た。次いで、TFA塩0.12gの二塩酸塩への変換は、TFA塩に飽和重炭酸ナトリウム水溶液2mLを加え、TFA塩をフリー塩基に変換するために終夜かき混ぜた。フリー塩基をろ過した。フリー塩基を、最初に水、次いでジエチルエーテルで洗浄した。固体を乾燥した。次いで固体をMeOH中に懸濁した。0.2mL濃縮HCl水溶液を加えて1時間かき混ぜた。溶液を減圧下で濃縮して二塩酸塩(0.10g)を生成した。質量スペクトル(LCMS)m/z=329.0(M+H
【0061】
(実施例2)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール
ジクロロメタン(1L)中{2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(25.00g、56.49mmol)に0℃で40分かけてオーバーヘッドスターラで激しくかき混ぜながら、BBr(ジクロロメタン中1.0M、200mL、200mmol)を加えた。冷却浴を外し、室温で終夜かき混ぜた。0℃に冷却してメタノール(500mL)を1時間かけて滴下して加えた。生成スラリーをろ過し、フラスコをジクロロメタン(100mL)ですすぎ、このすすぎ液で固体を洗浄した。固体を追加のジクロロメタン(150mL)で洗浄し、真空ろ過で乾燥した。固体をメタノール(400mL)中でかき混ぜながらスラリー化し、次いで真空下で濃縮して薄いペーストとした。メタノール(400mL)を追加し、かき混ぜて固体を更にスラリー化した。このスラリーを真空下で乾燥するまで濃縮し、真空下で終夜乾燥した。固体を砕いて粉末とし、メタノール(1L)中でスラリー化した。Amberlyst(登録商標)A−21樹脂(75g)を加え、粉末が溶解するまでかき混ぜた。樹脂をろ過し、ろ過した樹脂をメタノール(220mL)中でスラリー化し、再度樹脂をろ過してろ液を合わせた。ろ過した樹脂をメタノール(100mL)で洗浄し、この洗浄液をろ液に加えた。ろ液にエタノール(200mL)を合わせて混合物を真空下で濃縮し、約200mLの容積としてスラリーを得た。エタノール(400mL)を加え、スラリーを50℃で約15分間暖め、次いで真空下で濃縮して容積を約200mLとした。スラリーを室温に冷却し、ろ過し、エタノール(15mL、2回)でろ過固形物をすすぎ、次いで真空乾燥して表題化合物(10.22g、55%)を黄褐色の固体として得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=329.0(M+H
【0062】
(実施例3)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール
氷/HO浴で無水CHCl(400mL)中2−[7−(4−メトキシ−フェニル)−イソキノリン−5−スルホニル]−エチルアミン二塩酸(9.5504g、22.99mmol)を約5℃に冷却し、次いで冷却スラリーにCHCl中BBr1.0M溶液(92.00mL、92.00mmol)を滴下して加えた。BBr添加完了時点で氷浴を外し、生成反応混合物を室温N下で終夜かき混ぜた。生成反応混合物をMeOHでクエンチし、次いで真空濃縮して残留物を得た。生成した残留物をMeOH(200mL)に溶解し、真空濃縮して残留物を得た。上記を3回繰り返し、次いで残留物をEtO(300mL)でスラリー化し、飽和NaHCO水溶液を約pH7に達するまで加えた。生成固体を真空ろ過により回収し、次いでCHCl/MeOHの3/1溶液に溶解した。ろ過液をNaClで飽和し、次いでCHCl/MeOHの3/1溶液(2回それぞれ400mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、ろ過し、次いで真空乾燥して固体/残留物を得た。少量のメタノール(20mL)及び過剰ヘキサンで固体/残留物をスラリー化し、次いで生成固体を真空ろ過で回収し、ヘキサンで洗浄して真空ろ過で乾燥し、淡黄色の固体(7.60g)を得た。無水CHCl(400mL)中で淡黄色固体(7.60g)をスラリー化し、氷/HO浴で約5℃に冷却し、次いでCHCl中1.0MのBBr溶液(70.00mL、70.00mmol)を滴下して加えた。BBr添加完了時点で氷浴を外し、生成反応混合物を室温N下で4時間かき混ぜた。追加のCHCl中1.0MのBBr溶液(70.00mL、70.00mmol)を滴下して反応混合物に加え、次いでN下で生成反応混合物を終夜室温でかき混ぜた。反応物を約40℃に1時間加熱し、次いで追加のCHCl中1.0MのBBr溶液(23.00mL、23.00mmol)を滴下して加えた。生成反応混合物を約40℃で約2時間加熱し、次いでMeOHでクエンチして真空濃縮し、残留物を得た。生成残留物をMeOH(200mL)に溶解し真空濃縮して黄色の残留物を得た。上記を3回繰り返した。黄色の残留物に飽和NaHCOを加えてpHを約7に調整し、次いで真空ろ過により生成固体を回収した。固体をシリカゲルに前もって吸収させ、次いでカラムクロマトグラフィ(330g ISCOシリカゲル、無希釈CHClから、5%のCHCl中2N NH/MeOH、10%のCHCl中2N NH/MeOHまで)により半精製して固体を得た。固体をシリカゲルに前もって吸収させ、次いでカラムクロマトグラフィ(330g ISCOシリカゲル、無希釈CHClから、5%のCHCl中2N NH/MeOH、10%のCHCl中2N NH/MeOHまで)により再精製して固体を得た。固体をシリカゲルに前もって吸収させ、次いでカラムクロマトグラフィ(330g ISCOシリカゲル、無希釈CHClから5%CHCl中2N NH/MeOH、10%CHCl中2N NH/MeOH、15%CHCl中2N NH/MeOHまで)により再精製して固体を得た。固体をシリカゲルに前もって吸収させ、次いでカラムクロマトグラフィ(330g ISCOシリカゲル、5%のCHCl中MeOHから、10%のCHClMeOH、20%のCHCl中MeOH、30%のCHCl中MeOHまで)により再精製して表題化合物(6.85g、収率90.8%)を黄色固体として得た。MS(ES,m/z):329.0(M+1)
【0063】
(実施例4)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸、未知の水和物状態
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール(171.8mg)を15mLの95%EtOHと共にバイアルに入れた。溶液をかき混ぜて化合物を溶解間、バイアルを80℃に設定したホットプレート上に置いた。溶解はほとんど又は全く起きなかったので、1モル当量のHCl(1N HCl水溶液0.52mL)を加えて固体を溶解し、明るい黄色の溶液を生成した。HCl添加の1分以内に固体生成が始まり、時間と共に増加した。80℃で約2時間後に試料を熱源から外し、室温で終夜かき混ぜた。真空ろ過を用い、ろ紙を通じて固体を収集した。終夜空気乾燥し、表題化合物107.8mgを回収した(収率63%)。X線粉末回折:2θ角(%強度):11.8(100.0);16.6(52.9);8.2(43.4)
【0064】
(実施例5)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物
A.種材料の調製。エタノール(5mL)中4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール(0.2509g、0.764mmol)にHCl水溶液(1M、0.765mL、0.765mmol)を加えた。生成混合物を加熱し、終夜還流した。室温に冷却し、スラリーを真空ろ過した。固体をエタノールですすぎ、真空ろ過で乾燥して黄色固体0.1842gを得た。
【0065】
B.4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物
エタノール(35mL)中4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール(1.75g、5.33mmol)のスラリーにHCl水溶液(1M、5.33mL、5.33mmol)を加えた。生成混合物を加熱還流し、水(2.5mL)を加えて溶液とした。この溶液を60℃に冷却し、上述のAから得られた約2mgの黄色固体の種を入れ、スラリーとした。室温に冷却して終夜かき混ぜた。スラリーを真空ろ過してエタノールでろ過固形物をすすぎ、次いで真空ろ過で乾燥して表題化合物1.331g(67%)を黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=329.0(M+H).カールフィッシャー:3.00%.X線粉末回折:2θ角(%強度):4.9(47.3);14.8(55.8);10.2(45.5)
【0066】
(実施例6)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩
メタノール(500mL)で4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール(16.57g、50.45mmol)をスラリー化した。別個に、メタノール(165mL)に塩化アセチル(12.60mL、177.05mmol)を加えてメタノール中HCl溶液を調製した。HClメタノール溶液を室温で30分かけてメタノール中4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールのスラリーに滴下して加えた。30分かき混ぜ、次いで酢酸エチル(600mL)を1時間かけて滴下して加えた。30分かき混ぜ、次いで固体をろ過して酢酸エチルで洗浄した(100mL、2回)。50℃で固体を真空乾燥し、次いで更に室温で窒素をゆっくり加えて真空乾燥して表題化合物を得た(18.3g、90%)。質量スペクトル(LCMS)m/z=329.0(M+H
【0067】
(実施例7)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩
60L反応容器にエタノール(24L)及び(2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(2.652kg;5.173モル)を入れた。(2−{7−[4−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−フェニル]−イソキノリン−5−スルホニル}−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルをエタノール(2.6L)ですすいだ。塩酸水溶液(31.9%;1780g;15.6モル)を水(1.42L)で希釈した。このHCl溶液を反応容器に入れて水(0.2L)ですすいだ。反応物を70℃に暖めた。約30℃で黄色固体が生成し、70℃付近で黄色スラリーが再生成した。反応物を70℃に1/2時間保持し、次いで還流するまで昇温した(78℃)。HPLCは還流1.5時間後に反応の完了を示した。水(14.5L)を13分かけて反応物に加えた。温度は69℃に低下した。還流するために反応物を再加熱(80℃)すると溶液が生成した。反応物を68℃に冷却すると固体が生成し始めた。反応物を1/2時間68℃に保持し、次いで1.5時間かけて2℃に冷却した。スラリーを1時間1−2℃に保持した。固体をろ過してエタノール(4.6L)で洗浄した。湿った固形物重量は3.236kgだった。固体を50℃で真空乾燥して2.106kg(理論値の101.4%)の4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩を得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=402.31)(M+H)
【0068】
(実施例8)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物
この実施例に用いるエタノール及び水酸化ナトリウム溶液は0.22ミクロンカートリッジフィルタを通じてろ過した。使用する水はエンドトキシンを規制した精製水である。
【0069】
エタノール(8L)及び4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩(841.6g;2.097モル)を、オーバーヘッドスターラ、コンデンサ、窒素インレット、マントルヒータ、熱電対、及び滴下漏斗を備えた22Lフラスコに入れた。4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸塩をエタノール(3.28L)ですすいだ。反応物を55℃に暖めた。水酸化ナトリウム溶液(1100mL;1.91N;2.10モル)を7分かけて反応物に加えると、その間に温度は62℃に上昇した。還流するために反応物を加熱し(78℃)、1時間保持した。水(1.96L)を一度に反応物に加えた。温度は68℃に低下した。還流するために反応物を再加熱(79℃)すると溶液が生成した。Darco G−60(登録商標)(438g)を反応物に加えた。反応物を1.25時間還流した。高温のDarco G−60(登録商標)スラリーをGFFペーパーうぃ通じてろ過し、別の22Lフラスコに入れた。淡黄色の液体が生成した。最初のフラスコ及びDarco G−60(登録商標)ろ過固形物を高温エタノール(2.5L)ですすいだ。すすぐ間に、ろ液中に固体が生成し始めた。ろ液及び洗浄液を含有する22Lフラスコにオーバーヘッドスターラ、窒素インレット、及び熱電対を備えた。スラリーをかき混ぜて環境温度に冷却した。固体をろ過してエタノール(2L)で洗浄した。湿った固形物重量は672gだった。固体を50℃で真空乾燥して540g(収率68.9%)の4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物を得た。質量スペクトル(LCMS)m/z=329.3)(M+H
【0070】
例示の化合物はAkt活性の阻害剤である。これらの化合物の阻害活性は、以下の方法により説明しうる。
【0071】
(Akt1リン酸化アッセイ)
このアッセイは、競合蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)によりPKCアルファ偽性基質ペプチドを測定する。このアッセイは、リン酸ペプチド生成物によりリン酸特異的抗体から脱離した時の、蛍光ラベルされた標識ペプチドから放出される偏光強度の変化を測定することにより、反応物中に生成されるホスホペプチド生成物の濃度を間接的に測定する。標準カーブで校正することにより定量的な結果を得る。
【0072】
(酵素及び基質)
Sf9昆虫細胞から精製した活性ヒト遺伝子組換えAkt1(全長)をUpstate Biotechnology,Inc社から入手した。ペプチド基質(分子量1561)は購入した。
【0073】
(標準アッセイ溶液)
溶液(A):20%DMSO(ジメチルスルホキシド)又は20%DMSO中化合物又は500mM EDTA;溶液(B):アッセイバッファ混合物:75μMペプチド基質、38mM MgCl、70mM HEPES、pH7.4、0.01%Triton X−100(登録商標)、及び50μM ATP(アデノシン三リン酸);溶液(C):Aktキナーゼ混合物:70mM HEPES、pH7.4、1mM DTT(ジチオスレイトール)、0.01%Triton−X−100(登録商標)、及びAkt1酵素。
【0074】
(FPIA手順)
最初に5μLの溶液(A)を10μLの溶液(B)と混ぜた。この混合物に10μLの溶液(C)を加えて酵素反応をイニシエートした。(25μL混合物中の最終濃度又は量:4%DMSO(最小阻害ウェル)又は4%DMSO中の種々の化合物濃度、又は100mM EDTA(最大阻害ウェル);30μMペプチド基質;15mM MgCl;70mM HEPES、pH7.4;20μM ATP;0.4mM DTT;0.01% Triton X−100(登録商標))。反応は、黒色ハーフエリア平底96ウェルマイクロタイタープレート中で実施した。
【0075】
室温60分後に、260mL EDTA、3.4nMフルオレセイントレーサ、及び7.5nM抗ホスホセリン抗体を含有する25μLのクエンチ/検出ミックスを加えて反応を終了した。プレートは室温で3時間以上、暗黒中でインキュベートし、次いでTecan Ultraプレートリーダを用いて蛍光偏光(λex=485nm、λex=530nm)を読み取った。ウェルあたりのリン酸化生成物濃度を、調製ペプチド競合希釈系列を標準カーブとして用い、ミリ偏光(mP)単位で計算した。本発明の例示化合物は、1μM以下のIC50値でAkt1リン酸化を阻害した。実施例1の化合物はこのアッセイ中、45±17nM(n=3)のIC50値でAkt1リン酸化を阻害した。
【0076】
(Phospho−GSK3b(pGSK3b)検出用の細胞系ELISA(cELISA))
(細胞内Aktの標的)
ヒトグリア芽細胞腫由来の指数関数的に成長するU87MG細胞を96ウェルプレートに蒔き、5%COにて終夜37℃でインキュベートした。実施例1の化合物の10個の濃度を、4mMストック(100%DMSO中)から培地中に1:2希釈系列で調製した。希釈系列のそれぞれの等体積を細胞に直接添加した。2時間後に処理を停止した。処理終了時に培地を除き、細胞を氷冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄した。ベンダーの手順に従って細胞をPREFERに固定した後、PBS/0.1%SDS及びPBS/0.1%Triton X−100(登録商標)ですすぎ、次いでSEA Blockブロッキング緩衝液で終夜インキュベートした。ブロッキングステップに続き、pGSK3b/Ser9に対するウサギ抗体、その後ヤギ抗ウサギIgGと共に、細胞を終夜インキュベートした。ベンダーの手順に従い、SuperSignal ELISA FemtoによりpGSK3bを検出した。実施例1の化合物はこのアッセイ中、2.04±0.68μM(n=8)のIC50値でpGSK3bを阻害した。
【0077】
(インビボ標的阻害試験)
(単一IV注射によるインビボ標的阻害)
ヒトグリア芽細胞腫由来の指数関数的に成長するU87MG細胞をヌードマウスの後方側面に皮下インプラントした。腫瘍サイズが200−250mmに達したときに、服用反応試験又は経時試験における単一IV注射により動物に化合物を投与した。各処置の最後に動物をCOで窒息させた。腫瘍を外科切除により回収し、すぐに液体窒素凍結し、分析まで−80℃で保存した。心臓穿刺により心臓から回収した血液から血清を調製し、分析まで−80℃で保存した。
【0078】
試料分析:
血清からアセトニトリル/メタノールでAkt阻害剤を抽出し、内部標準と共にLC/MS/MSで分析した。Powergen125ホモジナイザで25mM Tris(pH7.5)、Rocheコンプリートプロテアーゼ阻害剤、及び1mMバナジン酸を含有する溶解バッファ2容積中に腫瘍をホモジナイズし、次いで18ゲージ針及び23ゲージ針を逐次通過させた。可溶化液を20000gで30分間遠心分離した後、上澄画分から可溶性の細胞質抽出物を収集した。細胞質抽出物中のタンパク濃度をBCAキットで計測した。可溶化抽出物中のPhospho−GSK3b(pGSK3b)をELISAキットで分析した。
【0079】
このアッセイ中のグリア芽細胞腫に対して、実施例1の化合物は25mg/kgの単一IV注射を用いて1時間にpGSK3bを76%阻害した。
【0080】
(インビボ腫瘍成長阻害試験)
指数関数的に成長するヒトグリア芽細胞腫由来のU87MG細胞、又はヒト非小細胞肺癌由来のH1155細胞を、ヌードマウスの後方側面に皮下インプラントした。腫瘍細胞インプラントの3日後に、顕微手術を実施し、頸静脈を介する連続注入のためのカテーテルをカニューレ処置した。次いで実施例1を、種々の濃度でD5W(水中5%出来ストロース)で処方し、翌日、毎時40μLで4日間マウスに注入した。通常は最初のインプラント後の24日目に試験を終了するまで、腫瘍を週2回測定した。処置群の平均腫瘍体積をビヒクル処置群のもので割ることにより腫瘍成長阻害を計算した。
【0081】
グリア芽細胞腫に対して、実施例1の化合物は、アッセイ最終時の測定で27mg/kg/日の連続注入により、腫瘍成長を50%阻害した。
【0082】
非小細胞肺癌に対して、実施例1の化合物は、アッセイ最終時の測定で24mg/kg/日の連続注入により、腫瘍成長を63%阻害した。
【0083】
(医薬組成物試験)
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物の医薬組成物は、非還元糖及びpH調節剤を含んでなる。可溶化試験ではマンニトールは4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物の溶解度に影響を示さないようだった。しかしながら、半水和物の溶解度はpHに依存し、pH≦3.91において>19mg/mLであった。同様に沈澱の生じる速度はpH依存性だった。
表1:沈澱速度(ppt)への初期溶液pHの影響:全ての溶液はまず1mL当たり約15mgの4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物で調製し、室温で保存した。
【0084】
【表2】

【0085】
再溶解した沈澱のLC/MS分析により、これはアンモニア欠失後の2つの4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール分子(4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールの質量スペクトル(LCMS)m/z=329.1(M+H))から形成された“2量体様”分子(質量スペクトル(LCMS)m/z=640.2(M+H))であることが示された。加えて、沈澱は、より低溶解度の固体形態への変化が原因であるようには見えなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノールである化合物もしくはその薬理学的に許容できる塩、又は当該化合物の水和物もしくはその塩。
【請求項2】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール二塩酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一塩酸0.5水和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
医薬品として用いるための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、ニューロブラストーマ、メラノーマ、もしくは前立腺、乳房、子宮、一次性胃、腸管型、子宮内膜、甲状腺、膵、肺又は膀胱の新生物を治療する医薬品の製造のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項6】
多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、もしくは前立腺、乳房、又は子宮の新生物を治療する医薬品の製造のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項7】
非小細胞肺癌、又はグリア芽細胞腫を治療する医薬品の製造のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
C型肝炎、風疹、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を治療する医薬品の製造のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者において多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、ニューロブラストーマ、メラノーマ、もしくは前立腺、乳房、子宮、一次性胃、腸管型、子宮内膜、甲状腺、膵臓、肺、又は膀胱の新生物を治療する方法。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者において多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、もしくは前立腺、乳房、又は子宮の新生物を治療する方法。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者において非小細胞肺癌又はグリア芽細胞腫を治療する方法。
【請求項12】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与することを含んでなる、これを必用とする患者においてC型肝炎、風疹、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎、又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を治療する方法。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含んでなる凍結乾燥した医薬組成物であって、前記組成物のpHは水溶性希釈剤で希釈したときに4.2未満であり2.0より大きい、前記医薬組成物。
【請求項15】
前記pHは3.2未満であり2.0より大きい、請求項14に記載の凍結乾燥した医薬組成物。
【請求項16】
前記pHは2.8未満であり2.0より大きい、請求項15に記載の凍結乾燥した医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、及び薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を溶液中に含んでなる医薬組成物であって、前記組成物のpHは4.2未満であり2.0より大きい、前記医薬組成物。
【請求項18】
前記pHは3.2未満であり2.0より大きい、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物のpHは2.8未満であり2.0より大きい、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
結晶形態において2θ=4.9,14.8,及び10.2に強度ピークのあるX線粉末回折パターンを有する4−[5−(2−アミノ−エタンスルホニル)−イソキノリン−7−イル]−フェノール一酸0.5水和物。

【公表番号】特表2009−541335(P2009−541335A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516633(P2009−516633)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/070945
【国際公開番号】WO2007/149730
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】