説明

ALC壁穴の閉塞方法

【課題】耐火性を有し、かつ安価で、間取り変更等の施工作業の負担を軽減する。
【解決手段】ALC壁1に開口した第1の貫通孔3であって、第1の貫通孔を使用しない場合は、第1の貫通孔3にALC壁1からくり抜いた円筒状の部材2を挿入し、円筒状の部材2の外周21と第1の貫通孔3の内周31との間に耐火目地材5を充填する。これによりALC壁1が耐火性を有し、第1の貫通孔3を閉塞できる。さらに外側目隠し部材6で円筒状の部材2の端面を覆うことにより、第1の貫通孔3を開口した跡を隠せる。また、円筒状の部材2の中心に開口した第2の貫通孔4に、外側目隠し部材6の中心から突設した棒状部材8を挿通し、棒状部材8の先端の雄ネジ81と、内側目隠し部材7の中央の雌ネジ71とを螺合してALC壁1を挟持し、円筒状の部材2をこのALC壁1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALC壁に開口した壁穴の閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅や商業施設等の外壁には、ALC壁が用いられているが、このALC壁には、例えば冷暖房機器の吸排気用の配管を通したり、換気スリーブを挿入したりする壁穴を設ける場合がある。ところでALC壁に壁穴を開ける工事は、内張り等の内装工事に着工する前に予め行う。しかるに内装工事に着工する際や着工後において各部屋の間取り変更等が生じると、壁穴の位置を換える必要がある。しかるにこのような場合には、新たな位置に壁穴を開けるだけでなく、使用しなくなった元の壁穴を塞ぐ必要がある。
【0003】
そこで上述したようなALC壁に開口した壁穴を閉塞する治具として、例えば外周縁に鍔部を有する外枠体を上記壁穴に屋外側から挿入し、この外枠体の開口部分を蓋体で閉じて防水効果を高めるクーラースリーブ用外側キャップ(例えば特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案出願公開第62−136688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した従来におけるクーラースリーブ用外側キャップは、複数の部品で構成され、かつ構造が複雑であるため、製造コストが嵩むばかりでなく、壁穴の位置変更の可能性に備えて、予め調達しておく必要がある。さらに壁穴は貫通しているため、上述したクーラースリーブ用キャップの蓋体で開口部分を閉じるだけでは、この壁穴を密閉することができないため耐火性が不十分となる。したがって耐火基準が厳しい集合住宅等には不向きである。
【0006】
そこで本発明の目的は、間取り変更等に迅速、容易、かつ低コストで対応することができるALC壁穴の閉塞方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によるALC壁穴の閉塞方法の特徴は、ALC壁に開口した壁穴を使用しない場合には、このALC壁からくり抜いた円筒状の部材をこの壁穴に挿入し、かつ耐火性を有する部材や治具を用いてこの壁穴を密閉することにある。
【0008】
すなわち本発明によるALC壁穴の閉塞方法は、ALC壁から円筒状の部材をくり抜いて、このALC壁に貫通孔を開口する工程を備える。上記貫通孔を使用しない場合には、この貫通孔に上記円筒状の部材を挿入する工程を備える。さらに上記円筒状の部材の外周と上記貫通孔の内周との間に耐火目地材を充填する工程と、上記円筒状の端面を目隠し部材で覆う工程とを備える。
【0009】
また、充填材として耐火目地材を用いると、上記円筒状の部材の外周と上記貫通孔の内周との間に充填した耐火目地材によって、この円筒状の部材は貫通孔に固定されるため、一度閉塞してしまうと、その後の内装のリフォーム等において、再度利用することが困難となる。そこでALC壁から円筒状の部材をくり抜いて、このALC壁に第1の貫通孔を開口すると共に、この円筒状の部材の中心に第2の貫通孔を開口する工程を備える。上記第1の貫通孔を使用しない場合には、この第1の貫通孔に上記円筒状の部材を挿入する工程と、上記円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う工程とを備える。上記目隠し部材は、外側板状部材及び内側板状部材と、この外側板状部材及び内側板状部材を連結する棒状部材とを有する。ここで上記棒状部材は、上記外側板状部材又は内側板状部材の一方の中央に突設してある。また上記棒状部材は、上記第2の貫通孔に挿着したときには、その先端が上記ALC壁の反対側の面より突出すると共に、この先端には、雄ネジが螺刻してある。さらに上記外側板状部材又は内側板状部材の他方の中央には、上記棒状部材の先端に螺刻した雄ネジと螺合する雌ネジが螺刻してある。そこで上記円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う工程において、上記棒状部材を上記第2の貫通孔に挿着すると共に、この棒状部材の先端に螺刻した雄ネジに上記外側板状部材又は内側板状部材の他方に螺刻した雌ネジを螺合させて、この外側板状部材と内側板状部材とによって上記ALC壁を挟持することが望ましい。
【0010】
ここで「円筒状の部材」とは、上記ALC壁からくり抜いたものに限らず、他のALC壁からくり抜いた同等のサイズを有するものでもよい。上記「円筒状の部材」をくり抜くには、例えばホールソー等の円筒状のノコギリを用いて行う。このため上記「円筒状の部材」の外径は、上記貫通孔の内径よりわずかに小さい。またこの円筒状のノコギリの中心には、位置決め用のドリルが突設されていてもいなくてもよい。
【0011】
また「上記貫通孔を使用しない場合」とは、例えば部屋の間取り変更が生じたため、貫通孔に冷暖房機器の配管を挿通する必要がなくなった場合を意味する。
【0012】
「耐火目地材」には、耐火性を有する全ての充填材や繊維を織り込んだブランケット状のものが該当する。耐火性を有する充填材としては、例えばモルタルやグラウト等のセメントばかりでなく、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、ポリサルファイド系、シリコン系、または変形シリコン系等の硬化型のシーリング材が該当する。
【0013】
請求項1に記載した「目隠し部材」とは、上記円筒状の部材の屋外側または屋内側の少なくとも一方の端面を覆うものを意味し、耐火性があってもなくてもよい。そこで少なくとも一方の「目隠し部材」は、上記貫通孔の外径より大きいサイズを有する円形や矩形が該当する。また上記「目隠し部材」の材質は、例えば鉄、鋼、合板、木板、またはベニヤ板が該当する。なお上記円筒状の部材の端面を「目隠し部材」で覆うには、例えばこの目隠し部材の表面に接着剤を塗布してこの円筒状の部材の端面に貼り付けてもよい。
【0014】
「第2の貫通孔」とは、例えば上記円筒状の部材をくり抜くときに、この円筒状の部材の中心を、上記円筒状のノコギリの中心に突設されたドリルで同時に開口する場合に限らず、第1の貫通孔を開口する前後のいずれかにおいて、第1の貫通孔とは別途独立に開口する場合も含む。
【0015】
請求項2に記載した「目隠し部材」とは、「外側板状部材」及び「内側板状部材」で、円筒状の部材の双方の端面を覆うものを意味する。具体的には、上記第1の貫通孔の外径より大きいサイズを有する円形や矩形に限らず、縦幅または横幅のいずれか一方がこの第1の貫通孔の外径より大きい矩形も含む。また材質は、例えば鉄または鋼などが該当する。
【0016】
「棒状部材」には、この棒状部材の先端にのみ雄ネジが螺刻してあるものに限らず、この先端から末端にかけて雄ネジが螺刻してあるものも該当する。また上記「棒状部材」は、上記「外側板状部材」又は「内側板状部材」の一方の中央に溶接で固定したものや、ネジ止めして着脱可能にしたものが該当する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるALC壁穴の閉塞方法では、ALC壁からくり抜いた円筒状の部材を、このALC壁に開口した使用しない貫通孔に挿入して閉塞すれば足りる。したがって各部屋の間取り変更等に迅速に対応してこの貫通孔を容易かつ短時間に閉塞すると共に、別の部材や治具を準備することなく安価に施工作業を行うことができる。なお上記円筒状の部材の外周と上記貫通孔の内周との間に耐火目地材を充填することによって、この円筒状の部材と貫通孔との隙間が埋まり耐火性が向上するばかりでなく、この円筒状の部材がこの貫通孔に固着されて上記ALC壁の強度を高めることができる。またこの円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆うと、充填した上記耐火目地材の端面もこの目隠し部材で覆われるため、上記ALC壁に貫通孔を開口した跡を隠すことができる。さらに耐火性を有する目隠し部材で上記円筒状の部材の屋内側の端面を覆うことで、より耐火性が向上するため、耐火基準が厳しい集合住宅等にも適用することができる。
【0018】
内側板状部材と外側板状部材とを、第2の貫通孔に挿入した棒状部材で連結することによって、第1の貫通孔に挿入した円筒状の部材を、ALC壁に挟持するように着脱自在に固定することができる。したがって円筒状の部材はALC壁に固着されていないため、例えば間取り変更を伴うリフォームにおいて、この閉塞した開口穴を容易に再使用することが可能となると共に、取り外した円筒状の部材、内側板状部材、外側板状部材、及び棒状部材を利用して、使用しなくなった貫通孔を、容易かつ短時間に閉塞することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】貫通孔を開口したALC壁の斜視図である。
【図2】開口した貫通孔に円筒状の部材を挿入するALC壁の斜視図である。
【図3】円筒状の部材を挿入したALC壁の斜視図である。
【図4】貫通孔を閉塞したALC壁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図1〜4を参照しつつ、本発明によるALC壁穴の閉塞方法の1例を説明する。
【0021】
さて図1は、ALC壁1からくり抜いた円筒状の部材2と、このALC壁に開口した第1の貫通孔3との関係を示している。この図に示すように、本発明によるALC壁穴の閉塞方法としては、まず円筒状の切削刃を有するホールソーを用いてALC壁1から円筒状の部材2をくり抜いて、このALC壁に第1の貫通孔3を開口する。このため円筒状の部材2の外径は、第1の貫通孔3の内径よりわずかに小さい。また上記ホールソーの中心には、円筒状の部材2の中心を位置決めするドリルが突設しているため、この第1の貫通孔3を開口すると共に、円筒状の部材2の中心に第2の貫通孔4を開口する。なお、円筒状の部材2は、冷暖房機器等の配管を通すために第1の貫通孔3を使用することが確定するまで、倉庫等に保管される。
【0022】
図2は、使用しない第1の貫通孔3と、この貫通孔に挿入する円筒状の部材2との関係を示している。この図に示すとおり、部屋の間取り変更等が発生したため第1の貫通孔3を使用しない場合には、この第1の貫通孔に円筒状の部材2を挿入する。この場合、円筒状の部材2を第1の貫通孔3に挿入する前に、この円筒状の部材の外周21の全部または一部に、充填材としてシート状の耐火目地材5を巻き付ける。これにより、円筒状の部材2の外周21と第1の貫通孔3の内周31との間に耐火目地材5を充填する作業を短時間で行い、この円筒状の部材と第1の貫通孔とのわずかな隙間を容易に埋めることができる。なお、耐火目地材5を第1の貫通孔3の内周31に塗布した後に、円筒状の部材2をこの第1の貫通孔に挿入してもよい。
【0023】
さらに図3は、第1の貫通孔3に円筒状の部材2を挿入したALC壁1と、この円筒状の部材の端面を覆う目隠し部材との関係を示している。この図に示すとおり、第1の貫通孔3に円筒状の部材2を挿入した後に、この円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う。上記目隠し部材としては、第1の貫通孔3の外径より直径が大きい板状の鉄板でできた円形の外側目隠し部材6と、この第1の貫通孔の外径よりも縦幅が小さい板状の鉄板でできた矩形の内側目隠し部材7と、この外側目隠し部材の中心に直交するように突設した鉄性の棒状部材8とを有する。
【0024】
棒状部材8は、円筒状の部材2より長く、第2の貫通孔4の外径と略同等の外径を有する。さらに棒状部材8の外周には、末端から先端にかけて雄ネジ81が螺刻してある。このため棒状部材8を第2の貫通孔4に挿着したときには、この棒状部材の先端がALC壁1の反対側の面より突出する。さらに内側目隠し部材7の中央には、棒状部材8の先端に螺刻した雄ネジ81と螺合する雌ネジ71が螺刻してある。このため棒状部材8を第2の貫通孔4に挿着すると共に、この棒状部材の先端に螺刻した雄ネジ81に内側目隠し部材7に螺刻した雌ネジ71を螺合させて、外側目隠し部材6とこの内側目隠し部材とによってALC壁1を把持することができる。
【0025】
なお第2の貫通孔4の内周に、棒状部材8に螺刻した雄ネジ81と螺合する雌ネジを螺刻すれば、この第2の貫通孔にこの棒状部材を螺合することができる。棒状部材8の末端は、外側目隠し部材8の中央に溶接で固定されている。また上述した第1の貫通孔3にこの円筒状の部材2を挿入する工程の前に、棒状部材8を第2の貫通孔4に挿着してこの円筒状の部材の端面を覆ってもよい。
【0026】
図4は、使用しない第1の貫通孔3を、円筒状の部材2、耐火目地材5、及び外側目隠し部材6と内側目隠し部材7を用いて閉塞した状態を示している。したがってこの図に示すとおり、ALC壁1に開口したが使用しない第1の貫通孔3には、このALC壁からくり抜いた円筒状の部材2を挿入してこの貫通孔を閉塞すれば足りる。したがって各部屋の間取り変更等に迅速に対応して第1の貫通孔3を容易かつ短時間に閉塞すると共に、別の部材や治具を準備することなく安価に施工作業を行うことができる。なお円筒状の部材2の外周21と第1の貫通孔3の内周31との間に耐火目地材5を充填することによって、この円筒状の部材と第1の貫通孔との隙間が埋まり耐火性が向上するばかりでなく、この円筒状の部材がこの貫通孔に固着されてALC壁1の強度を高めることができる。
【0027】
さらに外側目隠し部材6で円筒状の部材2の端面を覆うと、充填した耐火目地材5の端面もこの外側目隠し部材で覆われるため、ALC壁1の第1の貫通孔3を開口した跡を隠すことができるばかりでなく、より一層耐火性が向上する。したがって耐火基準が厳しい集合住宅等にも適用することができる。また外側目隠し部材6の中心から突設した棒状部材8の先端に螺刻した雄ネジ81と、内側部材7の中心に螺刻した雌ネジ71とを螺合してALC壁1を挟持することで、このALC壁に円筒状の部材2を固定できるため、例えば耐火目地材5が腐って軟化してもこの円筒状の部材の落下等を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明におけるALC壁穴の閉塞方法は、個別住宅、集合住宅、企業の建築物、及び医療施設や介護施設等に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ALC壁
2 円筒状の部材
21 円筒状の部材の外周
3 第1の貫通孔
31 第1の貫通孔の内周
4 第2の貫通孔
5 耐火目地材
6 外側目隠し部材
7 内側目隠し部材
71 雌ネジ
8 棒状部材
81 雄ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALC壁から円筒状の部材をくり抜いて、このALC壁に貫通孔を開口する工程と、
上記貫通孔を使用しない場合には、この貫通孔に上記円筒状の部材を挿入する工程と、
上記円筒状の部材の外周と上記貫通孔の内周との間に耐火目地材を充填する工程と、
上記円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う工程とを備える
ことを特徴とするALC壁穴の閉塞方法。
【請求項2】
ALC壁から円筒状の部材をくり抜いて、このALC壁に第1の貫通孔を開口すると共に、この円筒状の部材の中心に第2の貫通孔を開口する工程と、
上記第1の貫通孔を使用しない場合には、この第1の貫通孔に上記円筒状の部材を挿入する工程と、
上記円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う工程とを備え、
上記目隠し部材は、外側板状部材及び内側板状部材と、この外側板状部材及び内側板状部材を連結する棒状部材とを有し、
上記棒状部材は、上記外側板状部材又は内側板状部材の一方の中央に突設してあり、
上記棒状部材は、上記第2の貫通孔に挿着したときには、その先端が上記ALC壁の反対側の面より突出すると共に、この先端には、雄ネジが螺刻してあり、
上記外側板状部材又は内側板状部材の他方の中央には、上記棒状部材の先端に螺刻した雄ネジと螺合する雌ネジが螺刻してあり、
上記円筒状の部材の端面を目隠し部材で覆う工程において、上記棒状部材を上記第2の貫通孔に挿着すると共に、この棒状部材の先端に螺刻した雄ネジに上記外側板状部材又は内側板状部材の他方に螺刻した雌ネジを螺合させて、この外側板状部材と内側板状部材とによって上記ALC壁を挟持する
ことを特徴とするALC壁穴の閉塞方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−23942(P2013−23942A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160827(P2011−160827)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【Fターム(参考)】