説明

AML、B−ALLおよびT−ALLの診断用マーカー

本発明は、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞型急性リンパ性白血病(B−ALL)、およびT細胞型急性リンパ性白血病(T−ALL)に特異的な診断用マーカーを開示する。また、前記マーカーの存在を検出する製剤を含む組成物およびキット、並びにこれを用いてAML、B−ALLおよびT−ALLを診断する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞型急性リンパ性白血病(B−ALL)、およびT細胞型急性リンパ性白血病(T−ALL)に特異的な診断用マーカーに関する。さらに詳しくは、本発明は、前記マーカーの存在を検出する製剤を含む組成物およびキット、並びにAML、B−ALLおよびT−ALLを診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病とは、白血球が腫瘍性に増殖する疾患を総称する。白血病の種類は、その起源によって骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられ、進行速度によっては急性白血病と慢性白血病に分けられる。白血病の臨床様相は、疾患の類型と浸潤細胞の性質によって様々である。リンパ性白血病はリンパ系血液細胞が、骨髄性白血病は骨髄系血液細胞が、慢性骨髄性白血病は成熟期にある細胞がそれぞれ変異して発生し、急性骨髄性白血病は比較的初期段階の造血過程で分化を始める骨髄系母細胞の障害により引き起こされる。
【0003】
前記種類の急性白血病は、互いに異なるメカニズムによって発病され、種類によって治療剤や治療方法などが異なるので、正確なタイプの診断が非常に重要である。現在まで、急性白血病の分類は一次的に骨髄細胞を顕微鏡で観察して非正常的な癌細胞の形態と染色様相を観察する過程によって行われる。診断に役に立つタンパク質に対する単クローン抗体を用いる免疫学的方法も併用されているが、病理学的或いは組織学的に急性白血病の種類を区分することが可能な基準が未だに明確でない実情である。
【0004】
最近、1回で数千〜数万個の遺伝子発現を検索することが可能なマイクロアレイ技術が開発された。Golubなどは50個の遺伝子発現を用いてAMLとALLを区分することができることを報告した(Golub et al., Science 1998, 286:531-537)。この報告は、遺伝子発現を用いてAMLまたはALLを診断することができるという可能性を示したが、実際適用可能性を確認してみなかったので、実際診断に適用されるには限界がある。
【0005】
したがって、より迅速且つ一正確にAMLとALLを区分するために、現在まで、有意性の高いマーカーの開発が依然として要求されている。
【0006】
本発明では、AML、B−ALLおよびT−Allを簡単且つ正確に区分する生物学的マーカーを解決するために、DNAチップを用いて各タイプ別白血病でのみ過多発現を示す遺伝子を1次スクリーニングし、RT−PCRを行い、有意性の高いマーカーを確認した。その結果、本発明者らは、AMLマーカーとして使用可能な遺伝子であるCITED2、MGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15;B−ALLマーカーとして使用可能な遺伝子であるTCL1A、CD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1;並びにT−ALLとして使用可能な遺伝子であるTCF7、TRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lを発掘し、これを実際白血病試料に適用したとき、各タイプ別白血病を迅速、簡便、正確に診断することを確認し、本発明を完成した。
【発明の開示】
【0007】
本発明の一つの目的は、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML診断マーカー検出用キットを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、B−ALL診断マーカー検出用キットを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML、B−ALLおよびT−ALLを区別するための診断マーカー検出用キットを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む、AML診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、AML診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、AML、B−ALLおよびT−ALLを区別するための診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、(a)(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質;(b)(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質;並びに(c)(i)TCF7タンパク質、または(ii)TCF7タンパク質とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、AML、B−ALLおよびT−ALLを区別するための診断マーカー検出用組成物を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、前記白血病の中でも、白血病が正常的な分化過程を経ずに増殖して骨髄と末消血に未成熟(immature)、非正常的(abnormal)な白血球が存在する特徴を示す、急性白血病、好ましくは急性骨髄性白血病(AML)、B細胞型急性リンパ性白血病(B−ALL)、およびT細胞型急性リンパ性白血病(T−ALL)を診断するマーカーに関する。本発明は、生物学的試料から各タイプの急性白血病に特異的な診断マーカーを検出し、各タイプ別急性白血病を容易且つ簡単に診断する方法を提供する。
【0017】
本発明において、用語「診断用マーカー、診断するためのマーカー、または診断マーカー」とは、白血病細胞を正常細胞と区分して診断することが可能な物質であって、正常細胞に比べて白血病を持つ細胞において増加または減少を示すポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNAなど)、脂質、糖脂質、糖タンパク質、糖(単糖類、二糖類、オリゴ糖類など)などの有機生体分子などを含み、特定の条件、表現型または細胞型と関連のあるこれらは分析によって検出できる。本発明の目的上、白血病診断マーカーはAML、B−ALL、およびT−ALLを診断することが可能な核酸およびポリペプチドマーカーであり、マーカーは各タイプ別AML、B−ALL、およびT−ALL細胞でのみ発現が増加する特徴を持つ。
【0018】
有意性のある診断マーカーの選択と適用は、診断結果の信頼度を決定付ける決定的要素である。有意性のある診断マーカーとは、診断して得た結果が正確であって妥当度(validity)が高く、反復測定の際にも一貫した結果を示すように信頼度(reliability)の高いマーカーを意味する。本発明の白血病診断マーカーは、特定タイプの白血病の発病と共に直接的または間接的要因によって発現が常に増加する遺伝子であって、反復実験にも同一の結果を示し、発現水準の差異が対照群とは異なるタイプの白血病でと比較するときに非常に大きくて、間違った結果を下した確率が殆どない信頼度の高いマーカーである。したがって、本発明の有意性のある診断マーカーの発言程度を測定し、得られた測定結果に基づいて、診断された白血病のタイプを妥当に信頼することができる。
【0019】
本発明において、用語「生物学的試料」とは、白血病の発病によって白血病診断マーカーとして用いられる遺伝子またはタンパク質の水準の差異を検出することが可能な組織、細胞などであって、骨髄(bone marrow)、リンパ節(lymph node)、脾臓(spleen)、末消血(peripheral blood)、リンパ液(lymph fluid)、漿液(serous fluid)、尿(urine)、唾液(saliva)などを含むが、これに制限されない。
【0020】
本発明において、用語「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は急性白血病の発病有無を確認するもので、AML、B−ALL、T−ALLに区分される急性白血病の正確なタイプまで確認することができることを特徴とする。
【0021】
一つの様態として、本発明は、白血病疑心患者の生物学的試料から(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する段階と、これを正常対照群試料のmRNAまたはタンパク質の水準と比較してmRNAまたはタンパク質の水準の増加を確認する段階とを含んで、急性骨髄性白血病(AML)を診断する方法に関する。
【0022】
本発明において、用語「急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)」は、骨髄系細胞が骨髄内で増殖して末消血またはその他の臓器を浸襲する悪性血液疾患であって、成人で発病頻度が高い疾患である。
【0023】
本発明のCITED2(Cbp/p300-interacting transactivator with Glu/Asp-rich Carboxy-terminal domain, 2)、MGST1(microsomal glutathione S-transferase 1)、RAB32(RAB32, member RAS oncogene family)、BIN2(bridging intergrator 2)、ICAM−3(Intercellular Adhesion Molecule-3)、PXN(Paxilline)、PPGB(protective protein for beta-galactosidase)、およびTAF15(TAF15 RNA polymerase II, TATA box binding protein(TBP)-associated factor, 68kDa)遺伝子は、正常細胞および他のタイプの急性白血病細胞に比べて、AML細胞で特異的に高い水準の発現を示すので、AML診断マーカーとして提供される。
【0024】
この際、全急性白血病においてほぼ同一の量で発現される遺伝子RRAGB(GTP-binding protein ragB)および/またはDCK(deoxycytidine kinase)を定量対照群として使用することができる。
【0025】
CITED2遺伝子は、B−ALLおよびT−ALLでは殆ど発現されず、AMLでのみ特異的に発現されるので、単独でも敏感、正確、精密にAMLを診断することが可能な、信頼度の非常に高いマーカーである。CITED2マーカーを単独で検出してAMLを診断し、或いはCITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子をマーカーとして検出してAMLを診断するようにする。MGST1を選択してCITED2と共にAML診断マーカーとして使用することが好ましい。
【0026】
生物学的試料中の遺伝子の発現水準は、mRNAまたはタンパク質の量を確認することにより分かり、生物学的試料からmRNAとタンパク質を分離する過程は公知の工程を用いて行うことができ(Chomczynski and Sacchi Anal. Biochemistry. 1987, 162: 156-159)、mRNAとタンパク質の量は様々な方法で測定することができる。
【0027】
本発明において、用語「mRNA発現水準の測定」とは、AMLを診断するために、生物学的試料においてAMLマーカー遺伝子のmRNA存在有無と発現程度を確認する過程によってmRNAの量を測定する。このための分析方法としては、RT−PCR、競争的RT−PCR(Competitive RT-PCR)、実時間RT−PCR(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロット(Northern blotting)、およびDNAチップなどがあるが、これに制限されない。
【0028】
前記検出方法によって、正常対照群におけるmRNA発現量とAML疑心患者におけるmRNA発現量とを比較することができ、AMLマーカー遺伝子からmRNAの有意な発現量の増加有無を判断してAML疑心患者の実際AML患者有無を診断することができる。
【0029】
mRNA発現水準の測定は、好ましくはAML診断マーカーとして用いられる遺伝子に特異的なプライマーを利用するRT−PCR法を用いる。
【0030】
RT−PCRは、P.Seeburg(Cold Spring Harb Symp Quant Biol 1986, Pt 1:669-677)によってRNAの分析に導入された方法であって、mRNAを逆転写して得られたcDNAをPCRによって増幅して分析する。この際、増幅段階でAML診断マーカーに特異的に製造されたプライマー対を使用するようにする。RT−PCRの後、電気泳動してバンドのパターンとバンドの厚さを確認することにより、AML診断マーカーとして用いられる遺伝子のmRNA発現有無と程度を確認可能であり、これを対照群と比較することにより、AML発生有無を簡便に診断することができる。
【0031】
これとは異なり、前記AMLマーカー遺伝子またはその断片に該当する核酸がガラスなどの基板に高密度で付着されているDNAチップを利用する。DNAチップは、試料からmRNAを分離し、その末端または内部を蛍光物で標識したcDNAプローブを調製し、DNAチップに混成化させた後、判読して遺伝子の存在または発現程度を確認することにより、AML発病有無を診断することができる。
【0032】
本発明において、用語「タンパク質発現水準の測定」とは、AMLを診断するために、生物学的試料におけるAMLマーカー遺伝子で発現されたタンパク質の存在有無と発現程度を確認する過程であって、前記遺伝子のタンパク質に対して特異的に結合する抗体を用いてタンパク質の量を確認する。
【0033】
抗体を用いてタンパク質の水準を測定するための分析方法としては、ウエスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫核酸法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、およびタンパク質チップなどがあるが、これに制限されない。
【0034】
前記分析方法によって、正常対照群における抗原−抗体複合体の形成量とAML疑心患者における抗原−抗体複合体の形成量とを比較することができ、AMLマーカー遺伝子からタンパク質の有意な発現量の増加有無を判断し、AML疑心患者の実際AML患者有無を診断することができる。
【0035】
本発明において、用語「抗原−抗体複合体」とはAMLマーカータンパク質とこれに特異的な抗体の結合物を意味し、抗原−抗体複合体の形成量は検出ラベル(detection label)のシグナルの大きさによって定量的に測定可能である。
【0036】
このような検出ラベルは、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微粒子(microparticle)、レドックス分子、および放射線同位元素よりなる群から選択することができ、これらに制限されない。検出ラベルとして酵素が使用される場合、利用可能な酵素は、例えばβ−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼおよびGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼおよびルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ホスフェノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、またはβ−ラタマーゼなどがあり、これに制限されない。蛍光物は、例えばフルオレシン、イソチオシアン酸塩、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、フルオレサミンなどがあり、これに制限されない。リガンドは、例えばビオチン誘導体などがあり、これに制限されない。発光物は、例えばアクリジウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがあり、これに制限されない。微粒子は、例えばコロイド金、着色ラテックスなどがあり、これに制限されない。レドックス分子は、例えばフェロセン、ルテニウム錯体、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4−ベンゾキノン、ヒドロキノン、KW(CN)、[Os(bpy)2+、[Ru(bpy)2+または[MO(CN)4−などがあり、これに制限されない。放射線同位元素は、例えばH、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131Iまたは186Reなどがあり、これに制限されない。
【0037】
タンパク質発現水準の測定は、好ましくはELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法を用いる。ELISAは、固体支持体に付着された抗原を認知する標識付き抗体を利用する直接的ELISA、固体支持体に付着された抗原を認知する抗体の複合体において捕獲抗体を認知する標識付き抗体を利用する間接的ELISA、固体支持体に抗体と抗原の複合体において抗原を認知する別の標識付き抗体を利用する直接的サンドイッチELISA、固体支持体に付着された抗体と抗原の複合体において抗原を認知する別の抗体と反応させた後、この抗体を認知する標識付き2次抗体を利用する間接的サンドイッチELISAなどの様々なELISA方法を含む。より好ましくは、固体支持体に抗体を付着させ、試料を反応させた後、抗原−抗体複合体の抗原を認知する標識付き抗体を付着させて酵素的に発色させるか、或いは抗原−抗体複合体の抗原を認知する抗体に対して標識付き2次抗体を付着させて酵素的に発色させるサンドイッチELISA方法によって検出する。AMLマーカータンパク質と抗体の複合体形成程度を確認して、AML発病有無を確認することができる。
【0038】
また、好ましくは、前記AMLマーカーに対する一つ以上の抗体が基板上の所定の位置上に配列され、高密度で固定化されているタンパク質チップを用いる。タンパク質チップを用いて試料を分析する方法は、試料からタンパク質を分離し、分離したタンパク質をタンパク質チップと混成化させ、抗原−抗体複合体を形成させ、これを判読して、タンパク質の存在または発現程度を確認することにより、AML発病有無を確認することができる。
【0039】
また、好ましくは、前記AMLマーカーに対する一つ以上の抗体を用いたウエスタンブロットを用いる。試料から全体タンパク質を分離し、これを電気泳動して、タンパク質をサイズに応じて分離した後、ニトロセルロース膜に移動させて抗体と反応させる。生成された抗原−抗体複合体の量を標識付き抗体を用いて確認する方法で、遺伝子の発現により生成されたタンパク質の量を確認することにより、AML発病有無を確認することができる。
【0040】
前記検出方法は、白血病にかかっていない対照群におけるマーカー遺伝子の発現量と、白血病が発病した細胞におけるマーカー遺伝子の発現量を調査する方法で行われる。mRNAまたはタンパク質の水準は、前述したマーカータンパク質の絶対的(例:μg/ml)または相対的(例:シグナルの相対強度)差異で表わすことができる。
【0041】
別の様態として、本発明は、白血病疑心患者の生物学的試料から(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する段階、およびこれを正常対照群試料のmRNAまたはタンパク質の水準と比較してmRNAまたはタンパク質の水準の増加を確認する段階を含んで、B細胞型急性リンパ性白血病(B−ALL)を診断する方法に関する。
【0042】
本発明において、「B細胞型リンパ性白血病(B−ALL)」は、WHO分類によるもので、t(8;14)、t(8;22)、t(2;8)、t(9;22)、t(4;11)、t(1;19)などの染色体変異が発生したB−ALLを含む。
【0043】
本発明のTCL1A(T-cell leukemia/lymphoma 1A)、CD19、INSR(insulin receptor)、OFD1(oral-facial-digital syndrome 1)、AKR1B1(aldo-keto reductase family 1, member B1)、CD79B、およびUHRF1(ubiquitin-like, containing PHD and RING finger domains, 1)遺伝子は、正常細胞および他のタイプの急性白血病細胞に比べて、B−ALL細胞で特異的に高い水準の発現を示すので、B−ALLマーカーとして使用される。
【0044】
この際、全ての急性白血病においてほぼ同一の量で発現される遺伝子RRAGBおよび/またはDCKを定量対照群として使用することができる。
【0045】
TCL1A遺伝子は、AMLおよびT−ALLではほぼ発現されず、B−ALLでのみ特異的に発現されるので、単独でも敏感、正確、精密にB−ALLを診断することが可能な、信頼度の非常に高いマーカーである。TCL1Aマーカーを単独で検出してB−ALLを診断し、或いはTCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79およびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子をマーカーとして検出してB−ALLを診断するようにする。CD19遺伝子を選択してTCL1A遺伝子と共にB−ALL診断マーカーとして使用することが好ましい。
【0046】
B−ALLマーカーのmRNA水準は、RT−PCR、競争的RT−PCR、実時間RT−PCR、RNase保護分析法(RPA)、ノーザンブロット、DNAチップなどの分析方法によって、正常対照群におけるRNA発現量とB−ALL疑心患者におけるRNA発現量とを比較することができ、B−ALLマーカー遺伝子からmRNAの有意な発現量の増加有無を判断し、B−ALL疑心患者の実際B−ALL患者有無を診断することができる。好ましくは、B−ALL診断マーカーとして用いられる遺伝子に特異的なプライマーを利用するRT−PCRまたはDNAチップを用いる。
【0047】
B−ALLマーカーのタンパク質の水準は、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、放射免疫拡散法、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、タンパク質チップなどの分析方法によって、正常対照群における抗原−抗体複合体の形成量とB−ALL疑心患者における抗原−抗体複合体の形成量とを比較することができ、B−ALLマーカー遺伝子からタンパク質の有意な発現量の増加有無を判断し、B−ALL疑心患者の実際B−ALL患者有無を診断することができる。好ましくは、ELISA、タンパク質チップまたはウエスタンブロットを用いる。
【0048】
別の様態として、本発明は、白血病疑心患者の生物学的試料から(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する段階;およびこれを正常対照群試料のmRNAまたはタンパク質の水準と比較してmRNAまたはタンパク質の水準の増加を確認する段階を含んで、T細胞型急性リンパ性白血病(T−ALL)を診断する方法に関する。
【0049】
本発明において、「T細胞型急性リンパ性白血病(T−ALL)」は、WHO分類によるものであって、14q11、7q34などの染色体変異が発生したT−ALLを含む。
【0050】
本発明のTCF7(transcription factor 7:T-cell specific, HMG-box)、TRB(T cell receptor beta locus)、TRGC2(T cell receptor gamma constant 2)、NK4(natural killer cell transcript 4)、CHC1L(chromosome condensation 1-like)遺伝子は、正常細胞および他のタイプの急性白血病細胞に比べて、T−ALL細胞で特異的に高い水準の発現を示すので、T−ALLマーカーとして使用される。
【0051】
この際、全ての急性白血病においてほぼ同一の量で発現される遺伝子RRAGBおよび/またはDCKを定量対照群として使用することができる。
【0052】
TCF7遺伝子は、AMLおよびB−ALLではほぼ発現されず、T−ALLでのみ特異的に発現されるので、単独でも敏感、正確、精密にT−ALLを診断することが可能な、信頼度の非常に高いマーカーである。そのTCF7マーカーを単独で検出してT−ALLを診断し、またはTCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子をマーカーとして検出してT−ALLを診断するようにする。TRBを選択してTCF7遺伝子と共にT−ALL診断マーカーとして使用することが好ましい。
【0053】
T−ALLマーカーのmRNA水準は、RT−PCR、競争的RT−PCR、実時間RT−PCR、RNase保護分析法(RPA)、ノーザンブロット、DNAチップなどの分析方法によって、正常対照群におけるRNA発現量とT−ALL疑心患者におけるRNA発現量とを比較することができ、T−ALLマーカー遺伝子からmRNAの有意な発現量の増加有無を判断し、T−ALL疑心患者の実際T−ALL患者有無を診断することができる。好ましくは、T−ALL診断マーカーとして用いられる遺伝子に特異的なプライマーを利用するRT−PCRまたはDNAチップを用いる。
【0054】
T−ALLマーカーのタンパク質の水準は、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、放射免疫拡散法、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、タンパク質チップなどの分析方法によって、正常対照群における抗原−抗体複合体の形成量とT−ALL疑心患者における抗原−抗体複合体の形成量とを比較することができ、T−ALLマーカー遺伝子からタンパク質の有意な発現量の増加有無を判断し、T−ALL疑心患者の実際T−ALL患者有無を診断することができる。好ましくは、ELISA、タンパク質チップまたはウエスタンブロットを用いる。
【0055】
別の様態として、本発明は、白血病疑心患者の生物学的試料から、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質、並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する段階;およびこれを正常対照群試料のmRNAまたはタンパク質の水準と比較してmRNAまたはタンパク質の水準の増加を確認する段階を含んで、AML、B−ALL、およびT−ALLを区別して診断する方法を提供する。
【0056】
AML、B−ALLおよびT−ALL患者検出マーカー遺伝子の発現水準を同時に測定することにより、白血病のタイプを1回で決定することが可能な方法の効率性を図ることができる。
【0057】
この際、全ての急性白血病においてほぼ同一の量で発現される遺伝子RRAGBおよび/またはDCKを定量対照群として使用することができる。
【0058】
より好ましくは、CITED2とMGST1の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質、TCL1AとCD19の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質、およびTCF7とTRBの遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する方法を提供する。CITED2とMGST1の遺伝子はAML診断のための有意性の高いマーカーである。TCL1AとCD19の遺伝子はB−ALL診断のための有意性の高いマーカーである。TCF7とTRBの遺伝子はT−ALL診断のための有意性の高いマーカーである。整列された6個の遺伝子の発現パターンおよび量を比較することにより、白血病の発病有無とタイプを一目で診断することができる。
【0059】
AML、B−ALLおよびT−ALLの診断は、本発明で提供する白血病診断マーカー遺伝子に対するmRNAまたはタンパク質の水準を検出することが可能な製剤を含むキットによって容易に可能である。
【0060】
別の様態として、本発明は、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML診断マーカー検出用キットに関する。
【0061】
本発明の検出用キットは、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置から構成される。
【0062】
好ましくは、RT−PCRを行うために必要な必須要素を含む診断マーカー検出用キットに関する。RT−PCRキットは、マーカー遺伝子に対する特異的なそれぞれのプライマー対を含む。プライマーは、各マーカー遺伝子の核酸配列に特異的な配列を持つヌクレオチドであって、約7bp〜50bpの長さ、より好ましくは約10bp〜30bpの長さである。また、対照群遺伝子の核酸配列に特異的なプライマーを含むことができる。その他に、RT−PCRキットは、テストチューブまたは他の適切なコンテイナー、反応緩衝液(pH およびマグネシウム濃度は多様である)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、例えばTaq−ポリメラーゼおよび逆転写などの酵素、DNAse、RNAse抑制剤、DEPC−水、および滅菌水などを含むことができる。
【0063】
また、好ましくは、DNAチップを行うために必要な必須要素を含む診断マーカー検出用キットに関する。DNAチップキットは、遺伝子またはその断片に該当するcDNAまたはオリゴヌクレオチドが付着されている基板、および蛍光標識プローブを製作するための試薬、製剤、酵素などを含むことができる。また、基板は、対照群遺伝子として用いられるRRAGBおよび/またはDCK遺伝子またはその断片に該当するcDNAを含むことができる。
【0064】
また、好ましくは、ELISAを行うために必要な必須要素を含む診断マーカー検出用キットに関する。ELISAキットは、マーカータンパク質に対する特異的な抗体を含む。抗体は、各マーカータンパク質に対する特異性および親和性が高く、他のタンパク質に対する交差反応性が殆どない抗体であって、単クローン抗体、多クローン抗体または組み換え抗体である。また、ELISAキットは、対照群タンパク質に特異的な抗体を含むことができる。その他に、ELISAキットは、結合された抗体を検出することが可能な試薬、例えば、標識付き2次抗体、発色団(Chromophores)、酵素(例えば、抗体とコンジュゲートされる)、およびその基質または抗体と結合できる他の物質などを含むことができる。
【0065】
AMLマーカー検出用RT−PCRキットは、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なそれぞれのプライマー対を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子に対して特異的なプライマー対を含むことができる。
【0066】
AMLマーカー検出用DNAチップキットは、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子またはその断片に該当するcDNAが付着されている基板を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子またはその断片に該当するcDNAを基板に付着および固定することができる。
【0067】
AMLマーカー検出用ELISAキットは、(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質に対して特異的な抗体を含む。また、RRAGBおよび/またはDCKタンパク質に対して特異的な抗体を含むことができる。
【0068】
別の様態として、本発明は、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、B−ALL診断マーカー検出用キットに関する。
【0069】
B−ALLマーカー検出用RT−PCRキットは、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なそれぞれのプライマー対を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子に対して特異的なプライマー対を含むことができる。
【0070】
B−ALLマーカー検出用DNAチップキットは、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子またはその断片に該当するcDNAがある基板を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子またはその断片に該当するcDNAまたはオリゴヌクレオチド基板に付着および固定することができる。
【0071】
B−ALLマーカー検出用ELISAキットは、(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質に対して特異的な抗体を含む。また、RRAGBおよび/またはDCKタンパク質に対して特異的な抗体を含む。
【0072】
別の様態として、本発明は、(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、T−ALL診断マーカー検出用キットに関する。
【0073】
T−ALLマーカー検出用RT−PCRキットは、(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なそれぞれのプライマー対を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子に対して特異的なプライマー対を含むことができる。
T−ALLマーカー検出用DNAチップキットは、(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子またはその断片に該当するcDNAが付着されている基板を含む。また、RRAGBおよび/またはDCK遺伝子またはその断片に該当するcDNAを基板に付着および固定することができる。
【0074】
T−ALLマーカー検出用ELISAキットは、(i)TCF7タンパク質、または(ii)TCF7タンパク質とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に対して特異的な抗体を含む。また、RRAGBおよび/またはDCKタンパク質に対して特異的な抗体を含むことができる。
【0075】
別の様態として、本発明は、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML、B−ALLおよびT−ALLを区別するための診断マーカー検出用キットに関する。
【0076】
AML、B−ALL、およびT−ALL区別検出用RT−PCRキットは、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なそれぞれのプライマー対を含む。
【0077】
AML、B−ALL、およびT−ALL区別検出用DNAチップキットは、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子またはその断片に該当するcDNAが付着されている基板を含む。
【0078】
AML、B−ALL、およびT−ALL区別検出用ELISAキットは、(a)(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質;(b)(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質;並びに(c)(i)TCF7タンパク質、または(ii)TCF7タンパク質とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に対して特異的な抗体を含む。
【0079】
別の様態として、本発明は、(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む、AML診断マーカー検出用組成物に関する。
【0080】
本発明の「プライマー」は、短い自由3末端水酸化基(free 3' hydroxyl group)を持つ核酸配列で相補的なテンプレートと塩基対(base pair)を形成することができ、テンプレート鎖の複製のための開始点として機能する短い核酸配列を意味する。プライマーは、適切な緩衝溶液および温度で重合反応(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)のための試薬および相異なる4つのヌクレオシドトリホスフェートの存在下でDNA合成が開始できる。本発明のプライマーは、各マーカー遺伝子に特異的なプライマーであって、7個〜50個のヌクレオチド配列を持つセンスおよびアンチセンス核酸である。プライマーは、DNA合成の開始点として作用するプライマーの基本性質を変化させない追加の特徴を混入することができる。
【0081】
本発明のプライマーは、ホスホルアミダイト固体支持体方法、またはその他の公知の方法を用いて化学的に合成することができる。このような核酸配列は、また、当該分野の公知の多くの手段を用いて変形させることができる。このような変形の非−制限的な例としては、メチル化、カプセル化、天然ヌクレオチドの一つ以上の同族体への置換、およびヌクレオチド間の変形、例えば荷電されていない連結体(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)または荷電された連結体(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)への変形がある。核酸は、一つ以上の付加的な共有結合した残基、例えばタンパク質(例:ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)、挿入剤(例:アクリジン、プソラレンなど)、キレート化剤(例:金属、放射性金属、鉄、酸化性金属など)、およびアルキル化剤を含有することができる。本発明の核酸配列は、また、検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供することが可能な標識を用いて変形させることができる。標識の例としては放射性同位元素、蛍光性分子、ビオチンなどがある。
【0082】
AML診断マーカー検出用組成物は、好ましくはCITED2とMGST1診断マーカー検出用組成物であり、CITED2を増幅するための配列番号1および2、MGST1を増幅するための配列番号3および4に該当するそれぞれのプライマー対を含む。また、対照群遺伝子RRAGBを増幅するための配列番号13および14、DCKを増幅するための配列番号15および16をさらに含むことができる。
【0083】
別の様態として、本発明は、(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、AML診断マーカー検出用組成物に関する。
【0084】
本発明において、「抗体」とは、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体は、マーカータンパク質に対して特異的に結合する抗体を意味し、多クローン抗体、単クローン抗体および組み換え抗体を全て含む。
【0085】
上述したように、AMLマーカータンパク質が究明されたので、これを用いて抗体を生成することは当業界に広く知られている技術を用いて容易に製造することができる。
【0086】
多クローン抗体は、前述したAMLマーカータンパク質抗原を動物に注射し、動物から採血して抗体含有血清を得る当業界の公知の方法によって生産することができる。このような多クローン抗体は、山羊、ウサギ、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの任意の動物種宿主から製造可能である。
【0087】
単クローン抗体は、当業界に広く知られているハイブリドーマ方法(Kohler and Milstein (1976) European Journal of Immunology 6:511-519参照)またはファージ抗体ライブラリ(Clackson et al., Nature, 352:624-628, 1991; Marks et al., J. Mol. Biol., 222:58, 1-597, 1991)技術を用いて製造できる。
【0088】
ハイブリドーマ方法は、免疫学的に適した宿主動物、例えばAML診断マーカータンパク質抗原を注射したマウスなどからの細胞を利用し、残りの一つの集団からは癌または骨髄腫細胞株を利用する。このような2集団の細胞をポリエチレングリコールなどの当業界における公知の方法によって融合させてから、抗体−生産細胞を標準的な組織培養方法によって増殖させる。限界希釈法(limited dilution technique)によるサブクローニングによって均一な細胞集団を得た後、AML診断汚染マーカータンパク質に対して特異的な抗体を生成することが可能なハイブリドーマを標準技術によって試験管内でまたは生体内で多量培養する。前述したハイブリドーマが生産する単クローン抗体は、精製しなくても使用することができるが、当業界における公知の方法に従って精製して使用することが好ましい。
【0089】
ファージ抗体ライブラリ方法は、細胞内に存在する、様々なAMLタンパク質マーカーに対する抗体遺伝子(Single chain Fragmentvariable、scFv形態)を獲得し、これをファージの表面に融合タンパク質の形で発現させることにより抗体ライブラリを試験管内で製作し、このライブラリから単クローン抗体を分離、製作する方法である。
【0090】
また、本発明の抗体は、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を持つ完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片も含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、例えばFab、F(ab’)、F(ab’)およびFvなどがある。
【0091】
AML診断マーカー検出用組成物は、好ましくはCITED2とMGST1診断マーカー検出用組成物であり、CITED2特異的抗体、MGST1特異的抗体を含む。また、対照群遺伝子RRAGBに特異的な抗体、DCKに特異的な抗体をさらに含むことができる。
【0092】
別の様態として、本発明は、(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物に関する。
【0093】
B−ALL診断マーカー検出用組成物は、好ましくは、TCL1AとCD19診断マーカー検出用組成物であり、TCL1Aを増幅するための配列番号5および6、CD19を増幅するための配列番号7および8に該当するそれぞれのプライマー対を含む。また、対照群遺伝子RRAGBを増幅するための配列番号13および14、DCKを増幅するための配列番号15および16をさらに含むことができる。
【0094】
別の様態として、本発明は、(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物に関する。
【0095】
B−ALL診断マーカー検出用組成物は、好ましくは、TCL1AとCD19診断マーカー検出用組成物であり、TCL1A特異的抗体、CD19特異的抗体を含む。また、対照群遺伝子RRAGBに特異的な抗体、DCKに特異的な抗体をさらに含むことができる。
【0096】
別の様態として、本発明は、(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、T−ALL診断マーカー検出用組成物に関する。
【0097】
T−ALL診断マーカー検出用組成物は、好ましくは、TCF7とTRB診断マーカー検出用組成物であり、TCF7を増幅するための配列番号9および10、TRBを増幅するための配列番号11および12に該当するそれぞれのプライマー対を含む。また、対照群遺伝子RRAGBを増幅するための配列番号13および14、DCKを増幅するための配列番号15および16をさらに含むことができる。
【0098】
別の様態として、本発明は、(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、T−ALL診断マーカー検出用組成物に関する。
【0099】
T−ALL診断マーカー検出用組成物は、好ましくは、TCF7とTRB診断マーカー検出用組成物であり、TCF7特異的抗体、TRB特異的抗体を含む。また、対照群遺伝子RRAGBに特異的な抗体、DCKに特異的な抗体をさらに含むことができる。
【0100】
別の様態として、本発明は、(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子;(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子;並びに(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、AML、B−ALLおよびT−ALL診断マーカーの区別検出用組成物に関する。
【0101】
好ましくは、前記組成物は、CITED2とMGST1の遺伝子、TCL1AとCD19の遺伝子、およびTCF7とTRBの遺伝子に特異的なプライマー対を含む組成物であり、CITED2を増幅するためのプライマー対は、配列番号1および2、MGST1を増幅するためのプライマー対は配列番号3および4、TCL1Aを増幅するためのプライマー対は配列番号5および6、CD19を増幅するためのプライマー対は配列番号7および8、TCF7を増幅するためのプライマー対は配列番号9および10、TRBを増幅するためのプライマー対は配列番号11および12である。また、対照群遺伝子RRAGBを増幅するための配列番号13および14、DCKを増幅するための配列番号15および16をさらに含むことができる。
【0102】
別の様態として、本発明は、(a)(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質;(b)(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質;並びに(c)(i)TCF7タンパク質、または(ii)TCF7タンパク質とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的なプライマー対を含む、AML、B−ALLおよびT−ALL診断マーカーの区別検出用組成物に関する。
【0103】
好ましくは、前記組成物は、CITED2とMGST1タンパク質、TCL1AとCD19タンパク質、およびTCF7とTRBタンパク質に特異的な抗体を含む組成物である。
【0104】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。ところが、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0105】
実施例1:DNAチップ技術を利用した、AMLおよびALL患者の骨髄細胞の遺伝子発現調査
<1−1>骨髄細胞のRNA分離
本発明者らは、82名のAML患者、23名のB−ALL患者、および2名のT−ALL患者の骨髄試料からRNAを分離して実験に利用した。保管された骨髄試料からRNAを分離するために、1mLの骨髄試料に5mlのTriZol試薬(InVitrogen、Cat.No.15596−018)を添加して組織ホモジナイザーで1分間細胞を破壊させた。以後のRNA分離過程は、TriZol試薬の製造社から提供された実験方法によって行った。RNAを分離した後、純度をさらに高めるために、RNeasyキット(Qiagen、Cat.No.74106)用いて、製造社から提供された実験方法によってRNAを追加精製した。
【0106】

<1−2>分離されたRNAの定量分析
分離されたRNAはスペクトロフォトメーター(spectrophotometer)を用いて260nm波長で吸光度を測定してRNAを定量した。
【0107】

<1−3>参照RNAの製造
DNAチップとハイブリッド化の際に骨髄細胞から分離されたRNAと共にハイブリッド化する参照RNAは、血液細胞に起因した細胞株からRNAを分離して使用した。参照RNAを製造するために、HL−60、K−562、CCRF−CEM、CCRF−HSB−2、CEM−CM3、Molt−4、THP−1の7種の細胞株(韓国細胞株銀行(http;//cellbank.snu.ac.kr)から購入)から<1−1>の方法でRNAを分離した。分離されたRNAは<1−2>の方法で定量した後、同量を混ぜて参照RNAとして使用した。
【0108】

<1−4>実験に使用されたDNAチップ
DNAチップは、15,972個のcDNAプローブを含む16KヒトcDNAチップ(16KヒトcDNAチップ)を用いた(Vivian G. Cheung et al., Nature Genetics, Making and reading microarrays, 1999 Jan 21: 15-19; Microarray Biochip Technology, Mark Schena, 2000, Eaton Publishing)。簡単に製作過程を説明すると、次の通りである。cDNAがクローニングされているプラスミドを含むバクテリアストックからプラスミドを分離し、分離されたプラスミドをテンプレートとしてPCRを行って増幅した。増幅されたcDNAは、プローブを使用するために、PCRクリーンアップキット(clean-up kit)を用いて不純物を除去した。精製されたcDNAを50%DMSO含有スポッティング溶液に100〜200ng/μlの濃度で溶かしてGAPSIIスライド(Corning、Cat.No.40006)にスポッティングした後、適量の紫外線照射によって固定させて本発明の16KヒトcDNAチップを製造した。
【0109】

<1−5>チップ実験および遺伝子発現定量
10μgの骨髄試料から分離されたRNAと参照試料RNAをアミノアーリル−dUTPの存在下に逆転写してcDNAを製造した後、それぞれモノエステル−Cy5およびモノエステル−Cy3と反応させてCy5とCy3を標識した。標識付き試料は、PCRクリーンアップキットを用いて精製した後、DNAチップに16時間以上ハイブリッド化した。ハイブリッド化の後、非特異的ハイブリッド化を除去するために、SSC含有洗浄溶液を用いてDNAチップを洗浄した。洗浄されたDNAチップは、共焦点(confocal)をレーザースキャナ(Perkin Elmer、Scanarray Lite)を用いてスキャニングし、各スポットに存在する蛍光のデータを得てTIFF形態のイメージファイルとして格納した。TIFFイメージファイルをGenePix3.0(Axon Instruments)で定量して各スポットの蛍光値を定量した。GenePix3.0から得られた定量結果は、Yangなど(Nucleic Acids Res 2002, 30:e15)が提案した方法によって、S−plus統計パッケージ(InSightful)から提供する「lowess」機能を用いて補正した。
【実施例2】
【0110】
実施例2:DNAチップ結果からの、AML、B−ALLおよびT−ALLにおける発現に差異がある遺伝子の選別および対照群遺伝子の選別
使用されたDNAチップに存在する15,972個のプローブに対し、AML試料、B−ALL、およびT−ALL試料における発現に差異がある遺伝子をp<10−6の有意水準でt−testによって選別した。この場合、15,972回のt−testを反復するので、p<10−6の有意水準では0.02回の偽陽性(flase positive)が発現するものと予想されるので、選別された遺伝子はいずれも実際発現に差異がある遺伝子である。t−test結果、268個の遺伝子が、AML、B−ALL、およびT−ALLにおける発現に差異があるものとして選別された。
【0111】
RT−PCRを用いたAML、B−ALL、およびT−ALLの診断のための遺伝子を選別するために、t−testから得られたp値とAML、B−ALL、およびT−ALL試料の発現水準の差異を共に考慮して、AML、B−ALL、およびT−ALLで高く発現する遺伝子10個以内で選別した(表1、表2および表3)。
【表1】

【表2】

【0112】


【表3】

【0113】
また、試料の種類を問わずに、一定の水準で発現する遺伝子を選別するために、全体試料におけるそれぞれの遺伝子発現の分散を求め、分散が最も小さい7個の遺伝子を選別した(表4)。


【表4】

【実施例3】
【0114】
実施例3:RT−PCRを用いたB−ALL、T−ALL、AML特異的診断マーカー遺伝子および対照群遺伝子の選別
実施例2で選別された診断マーカー候補遺伝子の発現差異を用いて実際にAMLとALLを区分し得るかを調査するために、4個のAML試料と2個のT−ALL試料、2個のB−ALL試料における遺伝子発現をRT−PCRによって調査した。RT−PCR反応は次の方法で行った。5μgのRNA試料を取って20μl反応体積で逆転写させ、蒸留水を添加して100μlに希釈した。希釈された逆転写産物2μlを取ってテンプレートとして用い、8個のマーカー遺伝子に特異的なプライマー対の存在下に25μl反応体積で25回のPCR反応を行った。PCR反応産物のうち8μlを取って0.5μg/mlのエチジウムブロマイドの存在下に2%アガロースゲルで電気泳動してバンドを観察した。遺伝子の中から、最もAML、B−ALL、およびT−ALLに特異的な遺伝子および全試料において一定の水準で発現する2個の対照群遺伝子を選別した。図1は選定された8個の遺伝子のRT−PCR結果を示す。
【実施例4】
【0115】
実施例4:57個の急性白血病骨髄細胞における8個の診断マーカー遺伝子を用いたAMLおよびALLの診断
実施例3で選定された8個の診断用遺伝子の発現を追加的な41個のAML試料と16個のALL試料で調査した。急性白血病は、特徴的な染色体変異を持っているものと知られている。例えば、AMLはt(8;21)、t(15;17)、inv(16)などの染色体変異が最も頻繁に発生し、ALLはt(9;22)の染色体変異を持つ場合に予後がが良くないものと知られている。実施例4で選別された診断マーカー遺伝子が前述した様々な染色体変異を持つ急性白血病への適用が可能なのかを調査するために、様々な染色体変異を持つ試料で8個の診断マーカー遺伝子の発現を調査した。図2は正常的な染色体を持つAML試料で、図3はt(15;17)染色体変異を持つAML試料で、図4はt(8;21)の染色体変異を持つAML試料で、図5は正常的な染色体を持つB−ALL試料で、図6はt(9;22)染色体変異を持つB−ALL試料で、図7はT−ALL試料で8個の診断マーカー遺伝子の発現を調査したものである。
【0116】
総合的に39個のAML試料のうち38個の試料は、AMLに特異的な診断マーカー遺伝子を一つ以上発現し、ALLに特異的なマーカー遺伝子は発現しなかった。1個のAML試料はAMLマーカーだけでなく、ALLマーカー遺伝子を発現した。また、16個のALL試料のうち15個の試料はALLに特異的な診断マーカー遺伝子を一つ以上発現し、AMLに特異的なマーカー遺伝子を発現しなかった。1個のALL試料は、ALLマーカーだけでなくAMLマーカーも発現した。55個の急性白血病試料はいずれも1つ以上の対照群遺伝子を発現した。このような結果は、実施例4で発掘した8個のマーカー遺伝子の発現を確認することによりAML、B−ALL、T−ALLの区別が可能であることを示す。
【0117】
前記結果より、39個のAML試料のうち38個を正確に診断することができ、16個のALL試料のうち15個を正確に診断することができるため、本診断の敏感度はAML診断に対して97.4%、ALL診断に対して93.8%、全体的に96.4%と計算された。また、16個のAMLではない試料のうち15個をAMLではないと診断することができ、39個のALLではない試料のうち38個をALLではないと診断することができるため、特異度はAML診断に対して93.8%、ALL診断に対して96.4%、全体的に96.4%と計算された(表5)。
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の白血病診断マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現水準を検出してAML、B−ALLおよびT−ALLを区別する方法によって急性白血病のタイプを正確且つ簡便に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は4つのALL(Acute Lymphoblastic Leukemia)サンプルと4つのAML(Acute Myeloid Leukemia)サンプルにおいて、表1、表2、表3に含まれた遺伝子のうち、B細胞型ALL(B-cell Acute Lymphoblastic Leukemia:B−ALL)、T細胞型ALL(T-cell Acute Lymphoblastic Leukemia:T−ALL)、AMLそれぞれで特異的に発現する2個ずつの遺伝子と全細胞で一定の水準に発現する2個の遺伝子のRT−PCR結果である。
【図2】図2は正常染色体を持つAML患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。患者21を除いた全患者がAMLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。
【図3】図3はt(15;17)染色体変異を持つAML患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。全患者がAMLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。
【図4】図4はt(8;21)染色体変異を持つAML患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。全患者がAMLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。
【図5】図5は正常染色体を持つB−ALL患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。全患者がB−ALLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。
【図6】図6はt(9;22)染色体変異を持つB−ALL患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。患者51を除いた全患者がB−ALLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。
【図7】図7はT−ALL患者における8個の診断マーカー遺伝子の発現をRT−PCRによって調査した結果である。全患者がT−ALLマーカー遺伝子と対照群遺伝子のみを発現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML診断マーカー検出用キット。
【請求項2】
CITED2とMGST1の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、B−ALL診断マーカー検出用キット。
【請求項4】
TCL1AとCD19の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;
(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質;並びに
(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、AML、B−ALLおよび/またはT−ALLを区別するための診断マーカー検出用キット。
【請求項6】
CITED2とMGST1、TCL1AとCD19、およびTCF7とTRBの遺伝子のmRNAまたはそのタンパク質の水準を測定する製剤を含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
検出用キットはDNAチップ、RT−PCRまたはELISA検出用キットである、請求項1、請求項3および請求項5のいずれか1項に記載の検出用キット。
【請求項8】
(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む、AML診断マーカー検出用組成物。
【請求項9】
CITED2とMGST1の遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、AML診断マーカー検出用組成物。
【請求項11】
CITED2とMGST1のタンパク質に特異的な抗体を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物。
【請求項13】
TCL1AとCD19の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、B−ALL診断マーカー検出用組成物。
【請求項15】
TCL1AとCD19のタンパク質に特異的な抗体を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(a)(i)CITED2遺伝子、または(ii)CITED2遺伝子とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上の遺伝子;
(b)(i)TCL1A遺伝子、または(ii)TCL1A遺伝子とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上の遺伝子;並びに
(c)(i)TCF7遺伝子、または(ii)TCF7遺伝子とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上の遺伝子に特異的なプライマー対を含む、AML、B−ALLおよび/またはT−ALLを区別するための診断マーカー検出用組成物。
【請求項17】
CITED2とMGST1、TCL1AとCD9、およびTCF7とTRBの遺伝子に特異的なプライマー対を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
(a)(i)CITED2タンパク質、または(ii)CITED2タンパク質とMGST1、BIN2、RAB32、ICAM−3、PXN、PPGBおよびTAF15の中から選択される一つ以上のタンパク質;
(b)(i)TCL1Aタンパク質、または(ii)TCL1Aタンパク質とCD19、INSR、OFD1、AKR1B1、CD79BおよびUHRF1の中から選択される一つ以上のタンパク質;並びに
(c)(i)TCF7タンパク質、または(ii)TCF7タンパク質とTRB、TRGC2、NK4およびCHC1Lの中から選択される一つ以上のタンパク質に特異的な抗体を含む、AML、B−ALLおよび/またはT−ALLを区別するための診断マーカー検出用組成物。
【請求項19】
CITED2とMGST1、TCL1AとCD19、およびTCF7とTRBのタンパク質に特異的な抗体を含む、請求項18に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525047(P2008−525047A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549268(P2007−549268)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004630
【国際公開番号】WO2006/071088
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507222240)デジタル ゲノミックス インコーポレイティッド (1)
【出願人】(500409840)ダエウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (13)
【Fターム(参考)】