説明

APJ受容体化合物

本発明は、広義には、APJ受容体としても知られるGタンパク質共役受容体アペリンのアロステリックモジュレーター(ネガティブおよびポジティブアロステリックモジュレーター、アロステリックアゴニスト、アゴ−アロステリックモジュレーターなど)である化合物に関する。APJ受容体化合物は、APJ受容体の細胞内ループおよびドメインから誘導される。また、本発明は、これらのAPJ受容体化合物ならびに、APJ受容体化合物を含む医薬組成物を、心疾患(たとえば、高血圧症および鬱血性心不全などの心不全)、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染といったAPJ受容体調節と関連のある疾患および症状の治療に使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2008年11月4日に出願された米国仮特許出願第61/198,292号の優先権の利益を主張するものである。上記出願の教示内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおける最大の遺伝子ファミリのひとつをなす。GPCRは、内在性膜シグナルタンパク質である。Gタンパク質共役受容体のアミノ酸配列を疎水性マッピングすることで、膜の細胞外側にアミノ末端、膜の細胞内側にカルボキシル末端を有する、7つの疎水性膜貫通領域を含むものとして、一般的なGタンパク質共役受容体のモデルが得られている。
【0003】
GPCRは、受容体が共役されるグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化させることで、細胞内シグナルの伝達(「シグナル形質導入」)を媒介する。GPCRは、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、光、金属イオンをはじめとする広範囲にわたる内因性刺激によって活性化される。以下の概説を援用する。Hill, British J. Pharm 147: s27(2006); Palczeski, Ann Rev Biochemistry 75: 743〜767(2006);Dorsham & Gutkind, Nature Reviews 7: 79〜94(2007);Kobilka & Schertler, Trends Pharmacol Sci. 2: 79〜83(2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPCRは、広範囲にわたる細胞シグナリング経路に関係し、多くの病態(心血管障害および精神障害、癌、AIDSなど)に関与するため、創薬の重要な標的である。事実、承認薬の40〜50%がGPCRを標的としており、このクラスの製剤標的が極めて重要であることがわかる。興味深いことに、その数はGPCRがわずか約30で、ヒトの疾患と関連があると考えられているGPCRの総数のうちのほんのわずかである。ヒトゲノムでは1000を超えるGPCRが周知であり、それらが薬理の複雑な膜結合受容体だということもあいまって、GPCRは研究開発の観点から依然として魅力的な標的である。
【0005】
GPCRのアロステリックモジュレーター(ネガティブおよびポジティブアロステリックモジュレーター、アロステリックアゴニスト、アゴ−アロステリックモジュレーターなど)である新規な製剤の開発がいまだ求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、広義には、APJ受容体としても知られるGタンパク質共役受容体アペリンのアロステリックモジュレーター(ネガティブおよびポジティブアロステリックモジュレーター、アロステリックアゴニスト、アゴ−アロステリックモジュレーターなど)である化合物に関する。APJ受容体化合物は、APJ受容体の細胞内ループおよびドメインから誘導される。また、本発明は、これらのAPJ受容体化合物ならびに、APJ受容体化合物を含む医薬組成物を、心疾患(たとえば、高血圧症および鬱血性心不全などの心不全)、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染といったAPJ受容体調節と関連のある疾患および症状の治療に使用することにも関する。
【0007】
特に、本発明は、式I
TLP
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Pは、APJ受容体の細胞内i1、i2、i3ループまたは細胞内i4ドメインの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含むペプチドであり、
Lは、C(O)で表され、N末端アミノ酸残基のN末端窒素でPに結合されるリンキング部分であり、
Tは、Lに結合される親油性テザー部分であり、PのC末端アミノ酸残基が官能化されていてもよい。
【0008】
また、本発明は、本発明の1種類以上の化合物とキャリアとを含む医薬組成物ならびに、ここに開示の化合物および組成物を、APJ受容体の調節(阻害または活性化)に応答する疾患および症状を治療する方法に使用することにも関する。
【0009】
また、本発明は、本発明の1種類以上の化合物とキャリアとを含む医薬組成物ならびに、ここに開示の化合物および組成物を、APJ受容体の調節に応答する疾患および症状を治療する方法に使用することにも関する。
【0010】
上記は、添付の図面に示されたような本発明の実施形態についての以下の具体的な説明から明らかになろう。図中、全体をとおして同様の参照符号は同一の要素を示す。図面はかならずしも縮尺どおりではなく、本発明の実施形態を示すにあたって強調した部分もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】アペリンまたは化合物51での処理時にAPJ受容体を安定して発現するHEK細胞でcAMPがNKH477に刺激されて増加するのを阻害することを示す、グラフである。
【図1B】アペリンまたは化合物12での処理時にAPJ受容体を安定して発現するHEK細胞でcAMPがNKH477に刺激されて増加するのを阻害することを示す、グラフである。
【図2A】15分の時点でマウスの心機能にアペリン−13がおよぼす影響を説明する、棒グラフである。アペリン濃度をx軸に示す。
【図2B】15分の時点でマウスの心機能に化合物12がおよぼす影響を説明する、棒グラフである。アペリン濃度をx軸に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおける最大の遺伝子スーパーファミリのひとつをなす。これらの膜貫通タンパク質は、細胞外刺激を送って細胞内シグナルの形質導入カスケードを開始することで、細胞が自らの環境に応答できるようにする。GPCRは、当該受容体が共役するグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)の結合と活性化によってシグナル形質導入を媒介する。広範囲にわたるリガンドがこれらの受容体と結合し、これがさらに、多くの細胞機能に不可欠なシグナリングネットワークを統合する。さまざまなGPCRリガンドが、小タンパク質、ペプチド、アミノ酸、生体アミン、脂質、イオン、オドラント、さらには光の光子すらも含む。以下の概説を援用する。Hill, British J. Pharm 147: s27 (2006);Dorsham & Gutkind, Nature Reviews 7: 79〜94(2007)。
【0014】
多岐にわたる恒常性維持プロセスを調節するだけでなく、GPCRシグナリング経路は多くの病態(心血管障害および精神障害、癌、AIDSなど)で不可欠な成分である。事実、承認薬の40〜50%がGPCRを標的としており、このクラスの製剤標的が極めて重要であることがわかる。興味深いことに、その数はGPCRがわずか約30で、ヒトの疾患と関連があると考えられているGPCRの総数のうちのほんのわずかである。GPCRは、複雑な薬理学的特性を呈する膜結合受容体であり、研究開発の観点から依然として魅力的な標的である。人間の健康におけるその重要性とその有病率(ヒトゲノムで1000を超える周知のGPCR)とを考えると、GPCRは創薬および設計にとって重要な標的受容体クラスをなす。
【0015】
GPCRは、進化的に保存された構造モチーフによってさまざまなシグナリングカスケードを媒介する内在性膜タンパク質である。GPCRはいずれも、膜の細胞外側にアミノ末端、膜の細胞内側にカルボキシル末端を有する、7つの疎水性膜貫通α−らせんからなると考えられている。膜貫通らせんは、細胞外(e1、e2、e3)および細胞内(細胞質)ループ(i1、i2、i3)によって順次リンクされる。細胞内ループまたはドメインは、Gタンパク質のカップリングと代謝回転に密接に関与し、TM1−TM2を接続するi1;TM3−TM4を接続しているi2;TM5−TM6を接続しているi3;C末端細胞質側末端(ドメイン4)の一部を含む。ある程度は7TMドメインの形態的相同性と、いくつかのGPCRの近年の高解像度結晶構造(Palczewski et al., Science 289, 739〜45 (2000)、Rasmussen, S.G. et al., Nature 450, 383〜7 (2007))がゆえに、熟練したモデラーは今や、いくつかの関連の受容体をアライメントしてGPCRループドメインの一般的な境界を予測できるようになっている。これらの予測は、ある程度は、EMBOSS、ClustalW2、KalignおよびMAFFT(Fast Fourier Transformを用いるマルチプルアライメント)をはじめとするコンピュータ生物学者によって用いられる、多数のプログラムによって支援される。重要なことに、これらのプログラムの多くが一般利用可能(たとえば、European Bioinformatics Institute(EMBL−EBI)ウェブサイトhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/を参照のこと)であり、大半がウェブベースのインタフェースを持っている。
【0016】
GPCRによるシグナル形質導入は、リガンドがその対応する受容体に結合することで開始される。多くの場合、GPCRリガンド結合は、細胞外ドメイン付近のらせんのクラスターによって生成される親水性ポケットで起こると考えられている。しかしながら、大きなペプチドなどの他のリガンドも、タンパク質の細胞外領域に結合すると考えられ、疎水性リガンドは、らせんにおけるギャップ間の膜を介して受容体結合ポケットにインターカレートすると想定される。リガンド結合のプロセスは、受容体内のコンホメーションの変化を誘導する。これらの変化は、らせん6の外側への動きを伴い、これが細胞内ループのコンホメーションを変化させ、最終的にヘテロ三量体Gタンパク質を結合および活性化可能な受容体形態になる(Farrens, D., et al. Science 274, 768〜770 (1996)、Gether, U. and Kobilka, B., J. Biol. Chem. 273, 17979〜17982(1998))。結合時、この受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質のαサブユニットでGDPとGTPの交換を触媒し、それが受容体からのGタンパク質の分離ならびにGタンパク質自体のαおよびβ/γサブユニットの解離につながる。特に、このプロセスは触媒的で、ひとつの受容体の活性化が多数のGタンパク質の活性化と代謝回転を誘発し、これで複数の第2のメッセンジャー系が調節されることもあるという点で、シグナル増幅につながる。多数のGタンパク質型が存在することならびに、α、β、γサブユニットのアイソフォームが異なることで、シグナルがさらに多様化される。一般に、GPCRはGタンパク質と相互作用して、環状AMP、リン酸イノシトール、ジアシルグリセロールおよびカルシウムイオンなどの細胞内の第2のメッセンジャーの合成または阻害を調節し、それによって最終的には生物応答につながる細胞内イベントのカスケードがトリガーされる。
【0017】
GPCRシグナリングは、細胞機構ならびに薬理学的介入によって調節および減衰されることがある。シグナル形質導入は、急速脱感作と呼ばれるプロセスによって、比較的高速のキネティクス(数秒から数分)で「スイッチオフ」になることがある。GPCRの場合、これは細胞または組織に存在する受容体の総数を検出可能なレベルで変化させることなく、ヘテロ三量体Gタンパク質の受容体の機能的アンカップリングによって引き起こされる。このプロセスには、タンパク質アレスチンが受容体に結合し、それ以上のGタンパク質カップリングを閉塞できるようにする受容体C末端のリン酸化を伴う。アレスチンによって結合されると、この受容体は細胞にインターナライズされ、細胞表面に戻されるか分解される。Gタンパク質のαサブユニットは、固有のGTPase活性を有し、これがシグナリングを減衰させてβ/γサブユニットとの再会合を促進し、基底状態に戻す。GPCRシグナリングは、薬理学的に調節されることもある。アゴニスト薬剤が直接的に作用して受容体を活性化させるのに対し、アンタゴニスト薬剤は間接的に作用し、受容体との会合によってアゴニスト活性を防ぐことで受容体シグナリングをブロックする。
【0018】
GPCR結合およびシグナリングは、オルソステリック結合部位ではなく、受容体の他の場所にあるアロステリック部位での結合によって結合されるリガンドによる、アロステリック調節によっても修飾される。アロステリックモジュレーターは、オルソステリックリガンド媒介活性のポジティブとネガティブ両方のモジュレーター、アロステリックアゴニスト(オルソステリックリガンドの非存在下で作用する)、アゴ−アロステリックモジュレーター(自らアゴニスト活性を有するが、オルソステリックリガンドの活性を調節可能でもあるリガンド)を含み得る。
【0019】
GPCRの大きなスーパーファミリは、構造的および機能的類似性に基づいて、いくつかのサブクラスに分けられる。GPCRファミリは、クラスAロドプシン様、クラスBセクレチン様、クラスC代謝調節型グルタミン酸/フェロモン、クラスD真菌フェロモン、クラスE cAMP受容体(Dictyostelium)、Frizzled/Smoothenedファミリ、さまざまなオーファンGPCRを含む。また、推定上のファミリとしては、眼白子症タンパク質、昆虫オドラント受容体、植物Mlo受容体、線形動物化学受容体、鋤鼻受容体(VIR & V3R)、味覚受容体があげられる。
【0020】
ファミリAまたはロドプシン様とも呼ばれるクラスAのGPCRは、最大クラスの受容体であり、特徴的に選択性vs.内因性アゴニストおよび小分子薬剤の基礎をなす比較的小さな細胞外ループを有する。また、クラスA受容体は、比較的小さな細胞内ループも有する。クラスA受容体は、ドパミンおよびセロトニンなどのアミンファミリのメンバ、炎症性細胞遊走因子およびオピオイドなどのペプチドメンバ、視覚オプシン、オドラント受容体、多数のホルモン受容体を含む。
【0021】
アペリン受容体(APJ)は、心疾患など、心疾患など(高血圧症ならびに、鬱血性心不全といった心不全など)、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染などの症状と結び付けられてきたクラスA受容体である。
【0022】
ペプチド
本明細書で定義するように、Pは、アペリン(APJ)受容体の細胞内i1、i2またはi3ループあるいは細胞内i4ドメインの少なくとも3個(少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17など)の近接したアミノ酸残基を含むペプチドである。リンキング部分−C(O)が結合するPのN末端アミノ酸残基のN末端窒素が、少なくとも3個の近接したアミノ酸残基のうちの1つであってもよいし、当該少なくとも3個の近接したアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基であってもよいことは、理解できよう。
【0023】
細胞内i1ループとは、本明細書で使用する場合、TM1をTM2および対応する膜貫通結合接合残基に連結するループを示す。
【0024】
細胞内i2ループとは、本明細書で使用する場合、TM3をTM4および対応する膜貫通結合接合残基に連結するループを示す。
【0025】
細胞内i3ループとは、本明細書で使用する場合、TM5をTM6および対応する膜貫通結合接合残基に連結するループを示す。
【0026】
細胞内i4ドメインとは、本明細書で使用する場合、C末端細胞質側末端および膜貫通結合接合残基を示す。
【0027】
特定の実施形態では、Pは、アペリン受容体(APJ)の細胞内i1、i2またはi3ループあるいは細胞内i4ドメインの少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個または少なくとも17個の近接したアミノ酸残基を含む。
【0028】
別の特定の実施形態では、Pの少なくとも3個(少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17など)の近接したアミノ酸は、アペリン受容体(APJ)の細胞内i1、i2またはi3ループあるいは細胞内i4ドメインから誘導され、各ループおよびi4ドメインのアミノ酸配列は、表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の配列に示すアミノ酸だけでなく、i1ループ、i2ループ、i3ループおよびi4ドメインに対する細胞内ループも、膜貫通結合接合残基を含み得ることは、理解できよう。たとえば、i1ループは、膜貫通結合接合残基からの1つ以上の残基がC末端、N末端のいずれかまたはその両方に含まれる配列番号1を含み得る。たとえば、配列番号1は、C末端でいずれかの順でアラニン残基、セリン残基のいずれかまたは両方を含み得る。このような配列はそれぞれ、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107として同定可能である(すなわち、TVFRSSREKRRSADIFIA、配列番号104;TVFRSSREKRRSADIFIS、配列番号105;TVFRSSREKRRSADIFISA、配列番号106;TVFRSSREKRRSADIFIAS、配列番号107)。
【0031】
もうひとつの実施形態では、Pは、APJ受容体のi1細胞内ループの近接したアミノ酸残基を、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個または少なくとも17個含む。
【0032】
本明細書に提示の実施形態では、Pのアミノ酸残基がX、M、YまたはZで表される場合、C末端アミノ酸残基はアミノ酸の−OHを含まず、C末端残基に結合される末端基Rが−OHならびに本明細書にて定義する他の部分を含むことは理解できよう。
【0033】
一実施形態では、Pがi1ループから誘導され、以下の構造式
−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、トリプトファン残基、バリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基、グルタミン酸残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基、アラニン残基またはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはリシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、アラニン残基またはリシン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基、アスパラギン酸残基、アラニン残基またはアルギニン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基またはアラニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはアスパラギン酸残基であり、
16は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基、バリン残基、アラニン残基またはイソロイシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはフェニルアラニン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはイソロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
ただし、X〜X19の少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0034】
PをX〜X19で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、XがLに結合される。Xが存在しない場合、XがLに結合される。
【0035】
特定の実施形態では、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14のうちの少なくとも4個が存在する。
【0036】
もうひとつの特定の実施形態では、
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、および
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンである。
【0037】
別の特定の実施形態では、X、X、XまたはX10のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0038】
もうひとつの特定の実施形態では、
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである。
【0039】
別の特定の実施形態では、X11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0040】
もうひとつの特定の実施形態では、
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンであり、
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである。
【0041】
もうひとつの特定の実施形態では、X、X、X、X10、X11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0042】
さらにもうひとつの特定の実施形態では、
がアルギニンであり、
がグルタミン酸であり、
がリシンであり、
10がアルギニンである。
【0043】
さらにもうひとつの特定の実施形態では、
11がアルギニンであり、
12がセリンであり、
13がアラニンであり、
14がアスパラギン酸である。
【0044】
さらに別の特定の実施形態では、Pが、以下の表2aに示すような配列番号1〜55からなる群から選択される。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
もうひとつのさらに別の特定の実施形態では、Pが、以下の表2bに示すような配列番号108〜112からなる群から選択される。
【0048】
【表4】

【0049】
もうひとつの特定の実施形態では、Pが、アペリン(APJ)受容体のi2細胞内ループの近接したアミノ酸残基を、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個または少なくとも17個含む。
【0050】
一実施形態では、Pがi2ループから誘導され、以下の構造式
−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y10−Y11−Y12−Y13−Y14−Y15−Y16−Y17−Y18−Y19−Y20−Y2122−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはチロシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはアスパラギン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはバリン残基またはロイシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアラニンであり、ただし、Y〜Y22のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0051】
PをY〜Y22で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、YがLに結合される。Yが存在しない場合、YがLに結合される。
【0052】
特定の実施形態では、Y、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、Y14のうちの少なくとも3個が存在する。
【0053】
別の特定の実施形態では、
がアルギニン残基であり、
がプロリン残基であり、
10がバリン残基であり、
11がアラニン残基である。
【0054】
もうひとつの他の特定の実施形態では、
12が、アスパラギン残基であり、
13が、アラニン残基であり、
14が、アルギニン残基であり、
15が、ロイシン残基である。
【0055】
別の特定の実施形態では、Pが、以下の表3に示すような配列番号56〜73からなる群から選択される。
【0056】
【表5】

【0057】
さらにもうひとつの特定の実施形態では、Pが、アペリン(APJ)受容体のi3細胞内ループの近接したアミノ酸残基を、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個,または少なくとも17個を含む。
【0058】
一実施形態では、Pがi3ループから誘導され、以下の構造式
Pは、Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z10−Z11−Z12−Z13−Z14−Z15−Z16−Z17−Z18−Z19−Z20−Z21−Z22−Z23−Z24−Z25−Z26−Z27−Z28−Z29−Z30−Rである
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはヒスチジン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基またはグリシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
23は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
24は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
25は、存在しないか、あるいはセリン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基であり、
26は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
27は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
28は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
29は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
30は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、Z〜Z30のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0059】
PをZ〜Z30で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、ZがLに結合される。Zが存在しない場合、ZがLに結合される。
【0060】
特定の実施形態では、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19のうちの少なくとも4個が存在する。
【0061】
別の特定の実施形態では、
12がグルタミン酸残基であり、
13がアルギニン残基であり、
14がイソロイシン残基であり、
15がグルタミン酸残基またはグリシン残基である。
【0062】
他の特定の実施形態では、
16がグリシン残基であり、
17がロイシン残基であり、
18がアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19がリシン残基である。
【0063】
もうひとつの特定の実施形態では、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25のうちの少なくとも4個が存在する。
【0064】
別の特定の実施形態では、
21がアルギニン残基であり、
22がアルギニン残基であり、
23がロイシン残基であり、
24がロイシン残基であり、
25が、セリン残基あるいは、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基である。
【0065】
もうひとつの他の特定の実施形態では、Z25がアラニン残基である。
【0066】
もうひとつの特定の実施形態では、Z、Z、Z、Zが存在する。
【0067】
他の特定の実施形態では、
がグルタミン残基であり、
がトレオニン残基であり、
がイソロイシン残基であり、
がアラニン残基である。
【0068】
さらにもうひとつの別の特定の実施形態では、
がグリシン残基であり、
がセリン残基であり、
がグリシン残基であり、
がセリン残基である。
【0069】
別の特定の実施形態では、Pが、以下の表4に示すような配列番号74〜99からなる群から選択される。
【0070】
【表6】

【0071】
別の特定の実施形態では、Pが、アペリン(APJ)受容体のi4細胞内ドメインの近接したアミノ酸残基を、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個または少なくとも17個含む。
【0072】
一実施形態では、Pがi4ドメインから誘導され、以下の構造式
−M−M−M−M−M−M−M−M−M10−M11−M12−M13−M14−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはトレオニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはメチオニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、M〜M14のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0073】
PをM〜M14で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、MがLに結合される。Mが存在しない場合、MがLに結合される。
【0074】
特定の実施形態では、
がアスパラギン酸残基であり、
がプロリン残基であり、
がアルギニン残基であり、
がフェニルアラニン残基である。
【0075】
別の特定の実施形態では、Pが、以下の表5に示すような配列番号101〜103からなる群から選択される。
【0076】
【表7】

【0077】
表2〜5(2bを含む)に示す配列がC末端で官能化されていてもよいことは、理解できよう。C末端での官能化は、C末端に存在する酸部分が他の何らかの官能基で置換されることを意味する。好適な官能基として、−C(O)N(R、−C(O)ORまたはC(O)NHC(O)ORがあげられるが、ここで、Rは水素または(C〜C10)アルキル基であり、Rは(C〜C10)アルキル基である。
【0078】
Pが、その誘導元であるアペリン(APJ)細胞内ループ(i1、i2またはi3)またはドメイン(i4)から表記の数の近接したアミノ酸残基を含むかぎり、残りのペプチドがあれば、それが以下のものから選択されることは理解できよう。
(a)天然のアミノ酸残基、非天然(unnatural)のアミノ酸残基またはこれらの組み合わせのうちの任意のもの;
(b)天然のアミノ酸残基、非天然のアミノ酸残基およびこれらの組み合わせを含むペプチド配列;
(c)1つ以上のペプチドバックボーン修飾を含む、(b)によるペプチド配列;
(d)1つ以上のレトロ−インベルソペプチドリンケージを含む、(c)によるペプチド配列;
(e)(c)によるペプチド配列であって、1つ以上のペプチド結合が
【化1】


またはこれらの組み合わせで置換される、ペプチド配列;
(f)1つ以上のデプシペプチドリンケージを含み、アミドリンケージがエーテルリンケージで置換された(c)によるペプチド配列;
(g)1つ以上の配座制限を含む、(c)によるペプチド配列;
(h)(d)〜(g)のうちの1つ以上を含む、(c)によるペプチド配列。
【0079】
さらに、GPCR細胞内ループ(i1、i2またはi3)またはドメイン(i4)から誘導される表記の数の近接したアミノ酸残基以内であっても、上記の(e)に記載されたもの;レトロ−インベルソペプチドリンケージ;デプシペプチドリンケージ;配座制限;またはこれらの組み合わせなどであるがこれに限定されるものではないペプチドバックボーン修飾があり得ることは、理解できよう。
【0080】
式IのPはC末端で任意に官能化可能であることにも注意されたい。C末端での官能化は、C末端に存在する酸部分が他の何らかの官能基で置換されることを意味する。好適な官能基として、−C(O)N(R、−C(O)ORまたはC(O)NHC(O)ORがあげられるが、ここで、Rは水素または(C〜C10)アルキル基であり、Rは(C〜C10)アルキル基である。C末端の官能化は、調製に用いた方法から得られる。
【0081】
ペプチド模倣物とは、本明細書で使用する場合、ペプチド配列に代えて非ペプチド構造要素を含む化合物を示す。
【0082】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という擁護は、天然に生じるアミノ酸と非天然のアミノ酸の両方を含む。
【0083】
本明細書で使用する場合、「天然に生じるアミノ酸」という表現は、式NH−CHR−COOHで表される化合物を意味し、式中、Rは、以下の表に示すようなリシン、アルギニン、セリン、チロシンなどの天然に生じるアミノ酸の側鎖である。
【0084】
【表8】

【0085】
「非天然のアミノ酸」とは、対応する核酸コドンが存在しないアミノ酸を意味する。非天然のアミノ酸の例としては、たとえば、上述したようなD−プロリン(D−P、D−Pro)などの天然のα−アミノ酸のD−異性体;非天然の側鎖を有する天然のα−アミノ酸(フェニルアラニンに関連した
【化2】


など);Aib(アミノ酪酸)、bAib(3−アミノイソ酪酸)、Nva(ノルバリン)、β−Ala、Aad(2−アミノアジピン酸)、bAad(3−アミノアジピン酸)、Abu(2−アミノ酪酸)、Gaba(γ−アミノ酪酸)、Acp(6−アミノカプロン酸)、Dbu(2,4−ジアミノ酪酸)、α−アミノピメリン酸、TMSA(トリメチルシリル−Ala)、aIle(allo−イソロイシン)、Nle(ノルロイシン)、tert−Leu、Cit(シトルリン)、Orn(オルニチン、O)、Dpm(2,2’−ジアミノピメリン酸)、Dpr(2,3−ジアミノプロピオン酸)、αまたはβ−Nal、Cha(シクロヘキシル−Ala)、ヒドロキシプロリン、Sar(サルコシン)、Dap(2,3−ジアミノプロピオン酸)などがあげられる。
【0086】
非天然(unnatural)アミノ酸は、環状アミノ酸;MeGly(Nα−メチルグリシン)、EtGly(Nα−エチルグリシン)、EtAsn(Nα−エチルアスパラギン)といったNα−アルキル化アミノ酸などのアミノ酸類似体;α炭素が2つの側鎖置換基を有するアミノ酸も含む。天然のアミノ酸と同様に、非天然(unnatural)のアミノ酸の残基も、非天然(unnatural)のアミノ酸が本明細書に記載したようなペプチド配列の一部になるときに残るものである。
【0087】
アミノ酸残基は、アミノ基の水素原子またはカルボキシル基のヒドロキシル部分あるいはその両方を欠いていることで、ペプチド鎖の単位がアミノ酸残基である、上述したようなアミノ酸構造である。
【0088】
天然のアミノ酸のD−異性体については、本明細書では対応する天然に生じるアミノ酸の小文字で示す。たとえば、D−プロリンは、天然に生じるプロリンで用いられるような「P」ではなく「p」で表される。
【0089】
テザー(T)
式IのTは、本発明のAPJ受容体化合物を親油性にする親油性テザー部分である。Tによって得られる親油性は、APJ受容体化合物が細胞膜に浸透し、APJ受容体化合物が細胞膜にテザーするのを促進できる。それ自体、Tによって得られる親油性は、本発明のAPJ受容体化合物および対応する受容体の相互作用を容易にし得る。
【0090】
式Iの親油性テザー部分として使用するのに適した化合物の相対的な親油性については、有機溶媒層(膜様)対水性溶媒層(細胞外または細胞質環境と類似)に分かれる化合物の量を測定することで定量化可能である。オクタノール/水またはオクタノール/PBSなどの混合溶媒組成物の分配係数は、オクタノール対水性溶媒の平衡で形成される化合物の比である(分配係数P=[化合物]オクタノール/[化合物]水性)。多くの場合、分配係数はlog Pとして対数の形で表される。親油性の高い化合物は親水性の化合物よりもlog Pがプラスに大きく、膜の二分子層と強く相互作用しやすい。
【0091】
親油性テザー部分(T)として使用するのに適した化合物の分配係数を求めるには、計算プログラムも利用できる。たとえば別のメチレン単位(−CH−)を既存のアルキル基に加えるなど、化学構造が体系的に変化している状況では、ChemDraw(CambridgeSoft,Inc)などを用いてlog Pの傾向を求めることが可能である。
【0092】
一実施形態では、Tが、置換されていてもよい(C〜C30)アルキル、(C〜C30)アルケニル、(C〜C30)アルキニルであり、式中0〜3個の炭素原子が、酸素、硫黄、窒素またはこれらの組み合わせで置換される。
【0093】
特定の実施形態では、(C〜C30)アルキル、(C〜C30)アルケニル、(C〜C30)アルキニルは、1つ以上の置換可能な炭素原子で、ハロゲン、−CN、−OH、−NH、NO、−NH(C〜C)アルキル、−N((C〜C)アルキル)、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)ハロアルコキシ、アリールオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、−CONH、−OCONH、−NHCONH、−N(C〜C)アルキルCONH、−N(C〜C)アルキルCONH(C〜C)アルキル、−NHCONH(C〜C)アルキル、−NHCON((C〜C)アルキル)、−N(C〜C)アルキルCON((C〜C)アルキル)、−NHC(S)NH、−N(C〜C)アルキルC(S)NH、−N(C〜C)アルキルC(S)NH(C〜C)アルキル、−NHC(S)NH(C〜C)アルキル、−NHC(S)N((C〜C)アルキル)、−N(C〜C)アルキルC(S)N((C〜C)アルキル)、−CONH(C〜C)アルキル、−OCONH(C〜C)アルキル−CON((C〜C)アルキル)、−C(S)(C〜C)アルキル、−S(O)(C〜C)アルキル、−S(O)NH、−S(O)NH(C〜C)アルキル、−S(O)N((C〜C)アルキル)、−CO(C〜C)アルキル、−OCO(C〜C)アルキル、−C(O)O(C〜C)アルキル、−OC(O)O(C〜C)アルキル、−C(O)Hまたは−COHによって置換され、pが1または2である。
【0094】
特定の実施形態では、Tが、CH(CHOPh−、CH(CHC=C(CH、CH(CH11O(CH、CH(CHO(CH、CH(CH13からなる群から選択される。
【0095】
特定の実施形態では、Tが、CH(CH16、CH(CH15、CH(CH14、CH(CH13、CH(CH12、CH(CH11、CH(CH10、CH(CH、CH(CH、CH(CHOPh−、CH(CHC=C(CH、CH(CH11O(CH、CH(CHO(CH、CH(CH13からなる群から選択される。
【0096】
式Iの親油性部分(T)を、前駆物質である親油性化合物(脂肪酸および胆汁酸など)から誘導可能であることは理解できよう。本明細書で使用する場合、Tに関して「〜から誘導される」とは、Tが前駆物質である親油性化合物から誘導され、式IのAPJ受容体化合物を調製する上での前駆物質である親油性化合物の反応によって、前駆物質である親油性化合物に比して構造的に修飾された、式IにおいてTで表される親油性テザー部分が得られることを意味する。
【0097】
たとえば、親油性テザー部分である式IのTは、脂肪酸または胆汁酸から誘導可能である。式Iによれば、Tが脂肪酸から誘導される(すなわち脂肪酸誘導体)場合、これは誘導元となった脂肪酸における酸官能基のカルボニル炭素に対する炭素原子αでL−Pに結合されることは理解できよう。たとえば、Tがパルミチン酸
【化3】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化4】


同様に、Tがステアリン酸
【化5】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化6】

【0098】
同様に、Tが3−(ドデシルオキシ)プロパン酸
【化7】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化8】

【0099】
同様に、Tが4−(ウンデシルオキシ)ブタン酸
【化9】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化10】

【0100】
同様に、Tがエライジン酸
【化11】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化12】

【0101】
同様に、Tがオレイン酸
【化13】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化14】

【0102】
同様に、Tが16−ヒドロキシパルミチン酸
【化15】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化16】

【0103】
同様に、Tが2−アミノオクタデカン酸
【化17】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化18】

【0104】
同様に、Tが2−アミノ−4−(ドデシルオキシ)ブタン酸
【化19】


から誘導される場合、式IのTは以下の構造を有する。
【化20】

【0105】
別の実施形態では、Tが脂肪酸から誘導される。特定の実施形態では、Tが、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸からなる群から選択される脂肪酸から誘導される。
【0106】
もうひとつの特定の実施形態では、Tが、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレイン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸からなる群から選択される脂肪酸から誘導される。
【0107】
もうひとつの実施形態では、式IのTが胆汁酸から誘導可能である。Tが脂肪酸誘導体である実施形態と同様に、式Iによれば、Tが胆汁酸から誘導される(すなわち、胆汁酸誘導体)場合、これは誘導元となった胆汁酸における酸官能基のカルボニル炭素に対する炭素原子αでL−Pに結合されることは理解できよう。たとえば、Tがリトコール酸
【化21】


から誘導される場合、
式IのTは以下の構造を有する。
【化22】

【0108】
別の実施形態では、Tが胆汁酸から誘導される。特定の実施形態では、Tが、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、コラン酸、コール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、イソウルソデオキシコール酸、ラゴデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ヒオコール酸、ヒオデオキシコール酸などからなる群から選択される胆汁酸から誘導される。
【0109】
たとえば、Tは、
【化23】


から選択される。
【0110】
さらに別の実施形態では、Tが、酸官能基以外の部分で修飾された、上述した胆汁酸から誘導される。たとえば、Tは、上述したいずれかの胆汁酸から誘導可能であり、この場合、エステルまたはハロエステルを形成するようヒドロキシ位置が修飾されている。たとえば、Tは、
【化24】


であり得る。
【0111】
式Iの親油性膜テザーTとして用いるのに適した他の親油性部分としては、ステロイドがあげられるが、これに限定されるものではない。好適なステロイドとしては、ステロール;プロゲスターゲン;糖質コルチコイド;ミネラルコルチコイド;アンドロゲン;およびエストロゲンがあげられるが、これに限定されるものではない。通常、式Iに取り込まれるよう結合可能または修飾可能なステロイドであれば、どのようなステロイドでも使用できる。式Iに取り込んだ結果として、親油性膜テザーTが前駆物質親油性化合物からわずかに修飾される場合もある旨は理解できよう。
【0112】
Tで本発明において使用する好適なステロールとしては、コレスタノール、クロプロステノール、コレステロール、エピコレステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロールなどがあげられるが、これに限定されるものではない。好ましいステロールは、親油性と水溶解性とのバランスが得られるものである。
【0113】
好適なプロゲスターゲンとしては、プロゲステロンがあげられるが、これに限定されるものではない。好適な糖質コルチコイドとしては、コルチゾールがあげられるが、これに限定されるものではない。好適なミネラルコルチコイドとしては、アルドステロンがあげられるが、これに限定されるものではない。好適なアンドロゲンとしては、テストステロンおよびアンドロステンジオンがあげられるが、これに限定されるものではない。好適なエストロゲンとしては、エストロンおよびエストラジオールがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0114】
もうひとつの特定の実施形態では、Tが2−テトラデカンアミドオクタデカノイド酸から誘導可能である。Tが脂肪酸誘導体である実施形態と同様に、式Iによれば、Tが2−テトラデカンアミドオクタデカノイド酸から誘導される場合、これは誘導元となった胆汁酸における酸官能基のカルボニル炭素に対する炭素原子αでL−Pに結合されることは理解できよう。たとえば、Tが2−テトラデカンアミドオクタデカノイド酸から誘導される場合、テザーは
【化25】


である。
【0115】
もうひとつの実施形態では、式IのTが、2−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)オクタデカン酸から誘導可能である。たとえば、Tが2−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)オクタデカン酸から誘導される場合、テザーは、
【化26】


である。
【0116】
さらにもうひとつの実施形態では、式IのTが、
【化27】


であり得る。
【0117】
化合物が、さらに多くのテザー部分のうちの1つを含有し得ることは理解できよう。特定の態様では、テザー部分が同一である。他の実施形態では、テザー部分が異なる。
【0118】
化合物(T−L−P)
第1の態様では、本発明のGPCR化合物が、式I
T−L−P
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、式中、
Pは、APJ受容体の細胞内i1、i2、i3ループまたは細胞内i4ドメインの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含むペプチドであり、
Lは、C(O)で表され、N末端アミノ酸残基のN末端窒素でPに結合されるリンキング部分であり、
Tは、Lに結合される親油性テザー部分であり、PのC末端アミノ酸残基が官能化されていてもよい。
【0119】
第2の態様では、Pが少なくとも6個近接したアミノ酸残基を含む。
【0120】
第3の態様では、Pが、i1ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸を含む。
【0121】
第3の態様の特定の実施形態では、Pがi1ループから誘導され、以下の構造式
−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、トリプトファン残基、バリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基、グルタミン酸残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基、アラニン残基またはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはリシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、アラニン残基またはリシン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基、アスパラギン酸残基、アラニン残基またはアルギニン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基またはアラニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはアスパラギン酸残基であり、
16は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基、バリン残基、アラニン残基またはイソロイシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはフェニルアラニン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはイソロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
ただし、X〜X19の少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0122】
特定の実施形態では、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14のうちの少なくとも4個が存在する。
【0123】
もうひとつの特定の実施形態では、
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、および
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンである。
【0124】
別の特定の実施形態では、X、X、XまたはX10のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0125】
もうひとつの特定の実施形態では、
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである。
【0126】
別の特定の実施形態では、X11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0127】
もうひとつの特定の実施形態では、
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンであり、
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである。
【0128】
もうひとつの特定の実施形態では、X、X、X、X10、X11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである。
【0129】
さらにもうひとつの特定の実施形態では、
がアルギニンであり、
がグルタミン酸であり、
がリシンであり、
10がアルギニンである。
【0130】
さらにもうひとつの特定の実施形態では、
11がアルギニンであり、
12がセリンであり、
13がアラニンであり、
14がアスパラギン酸である。
【0131】
第3の態様のもうひとつの特定の実施形態では、Pの誘導元であるAPJ受容体のi1ループが、以下の配列:TVFRSSREKRRSADIFI(配列番号1)を有する。
【0132】
第3の態様のもうひとつの実施形態では、Pが、
TVFRSSREKRRSADIFI (配列番号1);
AVFRSSREKRRSADIFI (配列番号2);
TAFRSSREKRRSADIFI (配列番号3);
TVARSSREKRRSADIFI (配列番号4);
TVFASSREKRRSADIFI (配列番号5);
TVFRASREKRRSADIFI (配列番号6);
TVFRSAREKRRSADIFI (配列番号7);
TVFRSSAEKRRSADIFI (配列番号8);
TVFRSSRAKRRSADIFI (配列番号9);
TVFRSSREARRSADIFI (配列番号10);
TVFRSSREKARDADIFI (配列番号11);
TVFRSSREKRASADIFI (配列番号12);
TVFRSSREKRRAADIFI (配列番号13);
TVFRSSREKRRSAAIFI (配列番号14);
TVFRSSREKRRSADAFI (配列番号15);
TVFRSSREKRRSADIAI (配列番号16);
TVFRSSREKRRSADIFA (配列番号17);
tVFRSSREKRRSADIFI (配列番号18);
TvFRSSREKRRSADIFI (配列番号19);
TVfRSSREKRRSADIFI (配列番号20);
TVFrSSREKRRSADIFI (配列番号21);
TVFRsSREKRRSADIFI (配列番号22);
TVFRSsREKRRSADIFI (配列番号23);
TVFRSSrEKRRSADIFI (配列番号24);
TVFRSSReKRRSADIFI (配列番号25);
TVFRSSREKrRSADIFI (配列番号26);
TVFRSSREKRrSADIFI (配列番号27);
TVFRSSREKRRSADiFI (配列番号28);
TVFRSSREKRRSADIFi (配列番号29);
TVFRSSREKRRsADIFI (配列番号30);
TVFRSSREKRRSaDIFI (配列番号31);
TVFRSSREKRRSAdIFI (配列番号32);
TVFRSSREkRRSADIFI (配列番号33);
TVFWSSREKRRSADIFI (配列番号34);
VFRSSREKRRSADIFI (配列番号35);
FRSSREKRRSADIFI (配列番号36);
SSREKRRSADIFIAS (配列番号37);
RSSREKRRSADIFI (配列番号38);
FRSSREKRRSADIA (配列番号39);
FRSSREKRRSADIV (配列番号40);
TVFRSSREKRRSAD (配列番号41);
SSREKRRSADIFIA (配列番号42);
VSSREKRRSADIFI (配列番号43);
SSREKRRSADIFI (配列番号44);
FRSSREKRRSADI (配列番号45);
FRSSREKRRSAD (配列番号46);
SREKRRSADIFI (配列番号47);
REKRRSADIFI (配列番号48);
RSSREKRRSAD (配列番号49);
REKRRSADIF (配列番号50);
SSREKRRSAD (配列番号51);
REKRRSADI (配列番号52);
SREKRRSAD (配列番号53);
EREKRRSAD (配列番号54);
REKRRSAD (配列番号55)
から選択される配列である。
【0133】
第3の態様のもうひとつの実施形態では、Pが、
TVFRSSRE(D−Dap)RRSADIFI (配列番号108);
TVFRSSREpKRRSADIFI (配列番号109);
TVFRSSRpEKRRSADIFI (配列番号110);
TVFRSSRE(D−Dab)RRSADIFI (配列番号111);
TVFRSSRE(D−Orn)RRSADIFI (配列番号112)
から選択される配列である。
【0134】
第4の態様では、Pが、i2ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸を含む。
【0135】
第4の態様の特定の実施形態では、Pがi2ループから誘導され、以下の構造式
−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y10−Y11−Y12−Y13−Y14−Y15−Y16−Y17−Y18−Y19−Y20−Y2122−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはチロシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはアスパラギン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはバリン残基またはロイシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアラニンであり、ただし、Y〜Y22のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0136】
PをY〜Y22で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、YがLに結合される。Yが存在しない場合、YがLに結合される。
【0137】
特定の実施形態では、Y、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、Y14のうちの少なくとも3個が存在する。
【0138】
別の特定の実施形態では、
がアルギニン残基であり、
がプロリン残基であり、
10がバリン残基であり、
11がアラニン残基である。
【0139】
もうひとつの他の特定の実施形態では、
12がアスパラギン残基であり、
13がアラニン残基であり、
14がアルギニン残基であり、
15がロイシン残基である。
【0140】
第4の態様のもうひとつの特定の実施形態では、Pの誘導元であるAPJ受容体のi2ループが、以下の配列:DRYLAIVRPVANARLRLRVSGA(配列番号56)を有する。
【0141】
第4の態様のもうひとつの実施形態では、Pが、
DRYLAIVRPVANARLRLRVSGA (配列番号56);
LAIVRPVANARLRLRVSG (配列番号57);
AIVRPVANARLRLRVSG (配列番号58);
IVRPVANARLRLRVSG (配列番号59);
VRPVANARLRLRVSG (配列番号60);
RPVANARLRLRVSG (配列番号61);
VRPVANARLRLRVS (配列番号62);
AIVRPVANARLRL (配列番号63);
RPVANARLRLRVS (配列番号64);
VRPVANARLRLLL (配列番号65);
VRPVANARLRLRV (配列番号66);
RPVANARLRLRV (配列番号67);
VRPVANARLRLR (配列番号68);
RPVANARLRLR (配列番号69);
VRPVANARLRL (配列番号70);
RPVANARLRL (配列番号71);
VRPVANARLR (配列番号72);
VRPVANARL (配列番号73)
から選択される配列である。
【0142】
第5の態様では、Pが、i3ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸を含む。
【0143】
第5の態様の特定の実施形態では、Pがi3ループから誘導され、以下の構造式
Pは、Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z10−Z11−Z12−Z13−Z14−Z15−Z16−Z17−Z18−Z19−Z20−Z21−Z22−Z23−Z24−Z25−Z26−Z27−Z28−Z29−Z30−Rである
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはヒスチジン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基またはグリシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
23は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
24は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
25は、存在しないか、あるいはセリン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基であり、
26は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
27は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
28は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
29は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
30は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、Z〜Z30のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0144】
特定の実施形態では、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19のうちの少なくとも4個が存在する。
【0145】
別の特定の実施形態では、
12がグルタミン酸残基であり、
13がアルギニン残基であり、
14がイソロイシン残基であり、
15がグルタミン酸残基またはグリシン残基である。
【0146】
他の特定の実施形態では、
16がグリシン残基であり、
17がロイシン残基であり、
18がアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19がリシン残基である。
【0147】
もうひとつの特定の実施形態では、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25のうちの少なくとも4個が存在する。
【0148】
別の特定の実施形態では、
21がアルギニン残基であり、
22がアルギニン残基であり、
23がロイシン残基であり、
24がロイシン残基であり、
25が、セリン残基あるいは、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基である。
【0149】
もうひとつの他の特定の実施形態では、Z25がアラニン残基である。
【0150】
もうひとつの特定の実施形態では、Z、Z、Z、Zが存在する。
【0151】
他の特定の実施形態では、
がグルタミン残基であり、
がトレオニン残基であり、
がイソロイシン残基であり、
がアラニン残基である。
【0152】
さらにもうひとつの別の特定の実施形態では、
がグリシン残基であり、
がセリン残基であり、
がグリシン残基であり、
がセリン残基である。
【0153】
第5の態様の特定の実施形態では、Pの誘導元であるAPJ受容体のi3ループが、以下の配列:IAQTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLSIIVVL(配列番号74)を有する。
【0154】
第5の態様のもうひとつの実施形態では、Pが、
IAQTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLSIIVVL (配列番号74);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号75);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号76);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLF (配列番号77);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLW (配列番号78);
GSGSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号79);
SGSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号80);
IAGHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号81);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRL (配列番号82);
GSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号83);
SGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号84);
GHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号85);
QTIAGHFRKERIEGLRKRR (配列番号86);
GHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号87);
HFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号88);
QTIAGHFRKERIEGLRK (配列番号89);
FRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号90);
RKERIEGLRKRRRLLS (配列番号91);
ERIEGLRKRRRLLSII (配列番号92);
HFRKERIEGLRKRRRL (配列番号93);
FRKERIGGKRRRLLA (配列番号94);
ERIEGLRKRRRLLS (配列番号95);
HFRKERIEGLRKRR (配列番号96);
QTIAGHFRKERI (配列番号97);
EGLRKRRRLLA (配列番号98);
QTIAGHFRKER (配列番号99)
から選択される配列である。
【0155】
第6の態様では、Pが、i4ドメインの少なくとも3個の近接したアミノ酸を含む。
【0156】
第6の態様の特定の実施形態では、Pがi4ドメインから誘導され、以下の構造式
−M−M−M−M−M−M−M−M−M10−M11−M12−M13−M14−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはトレオニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはメチオニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、M〜M14のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する。
【0157】
PをM〜M14で記載する場合、これが表記のとおりLに結合されることは理解できよう。たとえば、MがLに結合される。Mが存在しない場合、MがLに結合される。
【0158】
特定の実施形態では、
がアスパラギン酸残基であり、
がプロリン残基であり、
がアルギニン残基であり、
がフェニルアラニン残基である。
【0159】
第6の態様の特定の実施形態では、Pの誘導元であるAPJ受容体のi4ドメインが、以下の配列:FFDPRFRQACTSMLCCGQSRCAGTSHSSSGEKSASYSSGHSQGPGPNMGKGGEQMHEKSIPYSQETLVVD(配列番号100)を有する。
【0160】
第6の態様のもうひとつの実施形態では、Pが、
FFDPRFRQASTSML (配列番号101);
FDPRFRQASTSML (配列番号102);
DPRFRQASTSML (配列番号103)
から選択される配列である。
【0161】
第7の態様では、Tが、置換されていてもよい(C〜C30)アルキル、(C〜C30)アルケニル、(C〜C30)アルキニルであり、0〜3個の炭素原子が、酸素、硫黄、窒素またはこれらの組み合わせで置換される。このTの値は、第1、第2、第3、第4、第5、第6の態様ならびに、その具体的な(すなわち、具体的な、一層具体的な、最も具体的な)実施形態に適用可能である。
【0162】
第7の態様の特定の実施形態では、Tが、CH(CH16、CH(CH15、CH(CH14、CH(CH13、CH(CH12、CH(CH11、CH(CH10、CH(CH、CH(CH、CH(CHOPh−、CH(CHC=C(CH、CH(CH11O(CH、CH(CHO(CHから選択される。
【0163】
第7の態様のもうひとつの特定の実施形態では、Tが脂肪酸誘導体である。
【0164】
第7の態様の別の特定の実施形態では、脂肪酸が、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレイン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。
【0165】
第8の態様では、Tが胆汁酸誘導体である。このTの値は、第1、第2、第3、第4、第5、第6の態様ならびに、その具体的な(すなわち、具体的な、一層具体的な、最も具体的な)実施形態に適用可能である。
【0166】
第8の態様の特定の実施形態では、胆汁酸が、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、コラン酸、コール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、イソウルソデオキシコール酸、ラゴデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ヒオコール酸、ヒオデオキシコール酸からなる群から選択される。
【0167】
第9の態様では、Tが、ステロール;プロゲスターゲン;糖質コルチコイド;ミネラルコルチコイド;アンドロゲン;エストロゲンから選択される。このTの値は、第1、第2、第3、第4、第5、第6の態様ならびに、その具体的な(すなわち、具体的な、一層具体的な、最も具体的な)実施形態に適用可能である。
【0168】
第10の態様では、式IのT−Lが、
CH(CH15−C(O);
CH(CH13−C(O);
CH(CHO(CHC(O);
CH(CH10O(CHC(O);
CH(CHC=C(CH−C(O);
LCA−C(O);
CH(CHOPh−C(O)
からなる群から選択される部分で表され、
【化28】


である。
【0169】
第11の態様では、式IのTが、
【化29】


からなる群から選択される部分で表される。
【0170】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【化30】


【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0171】
上記の化合物一覧では、化合物の番号識別子の後ろに構造を入れてある。
【0172】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【0173】
【表9】

【0174】
式中、PalはC1531C(O)−である。
【0175】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【化45】

【化46】

【化47】

【化48】


【化49】

【化50】

【0176】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【0177】
上記の化合物一覧では、化合物の番号識別子の後ろに構造を入れてある。
【0178】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【化56】

【化57】

【化58】


【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【0179】
上記の化合物一覧では、化合物の番号識別子の後ろに構造を入れてある。
【0180】
さらにもうひとつの実施形態では、本発明のGPCR化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つから選択される。
【化65】

【0181】
上記の化合物一覧では、化合物の識別子の後ろに構造を入れてある。
【0182】
「シクロアルキル」とは、単独でまたは「シクロアルキルアルキル」などのこれより大きな部分の一部として用いる場合、飽和であっても不飽和であってもよい、炭素数3〜20、炭素数3〜12または炭素数3〜9の単環または多環、非芳香環系を示す。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロオクチル、シクロヘプタニル、ノルボルニル、アダマンチルなどがあげられる。
【0183】
「ヘテロシクロアルキル」とは、O、NおよびSから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を含有する、原子3〜20個、原子3〜12個または原子3〜8個からなる、飽和または不飽和、非芳香族、単環または多環系を示す。ヘテロシクリル基の例として、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、イソオキサゾリジン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジチアン、1,4−ジチアン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン−1,1−ジオキシド、テトラヒドロ−2H−1,2−チアジン−1,1−ジオキシド、イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド、ピロリジン−2−オン、ピペリジン−2−オン、ピペラジン−2−オン、モルホリン−2−オンなどがあげられる。
【0184】
「ハロゲン」および「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを示す。
【0185】
「ハロアルキル」とは、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。類推で、「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」などは、1つ以上のハロゲン原子で置換された基(たとえばアルケニルまたはアルキニル)を示す。
【0186】
「シアノ」とは、基−CNを示す。
【0187】
「オキソ」とは、二価の=O基を示す。
【0188】
「チオキソ」とは、二価の=S基を示す。
【0189】
「Ph」とは、フェニル基を示す。
【0190】
「カルボニル」とは、二価の−C(O)−基を示す。
【0191】
「アルキル」とは、単独でまたは「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、「アルキルアミン」などのこれより大きな部分の一部として用いる場合、指定数の炭素、一般に1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族基を示す。特に、脂肪族基は、1〜10、1〜8、1〜6または1〜4個の炭素原子を有するものであってもよい。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどの基で例示される。
【0192】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族基を示す。一般に、アルケニル基は、2〜12個の炭素原子、2〜8個、2〜6個または2〜4個の炭素原子を有する。アルケニル基の例として、エテニル(−CH=CH)、n−2−プロペニル(アリル、−CHCH=CH)、ペンテニル、ヘキセニルなどがあげられる。
【0193】
「アルキニル」とは、少なくとも1つのアルキニル不飽和部位を有する、直鎖または分枝鎖の脂肪族基を示す。一般に、アルキニル基は、2〜12個、2〜8個、2〜6個または2〜4個の炭素原子を有する。アルキニル基の例として、エチニル(−CoCH)、プロパルギル(−CHCoCH)、ペンチニル、ヘキシニルなどがあげられる。
【0194】
「アルキレン」とは、二価の飽和直鎖炭化水素を示し、たとえばC〜Cアルキレンは、−(CH−、−CH−CH−(CHCHなどを含む。「二価とは、アルキレン基が、2つの異なる炭素原子を介して分子の残りの部分と結合することを意味する。
【0195】
「アルケニレン」とは、1つの炭素−炭素単結合が二重結合で置きかえられているアルキレン基を示す。
【0196】
「アルキニレン」とは、1つの炭素−炭素単結合が三重結合で置き換えられている、アルキレン基を示す。
【0197】
「アリール」とは、単独でまたは「アラルキル」などのこれより大きな部分の一部として用いる場合、単一の環または複数の縮合環を有する、炭素数6〜14の芳香族炭素環基を指す。また、「アリール」という用語は、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基と縮合した芳香族炭素環(単数または複数)も含む。アリール基の例として、フェニル、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール、ナフチル、フェナントレニルなどがあげられる。
【0198】
「アリールオキシ」とは、−OAr基を示し、Oは酸素原子、Arは先に定義したようなアリール基である。
【0199】
「アラルキル」とは、ベンジル、−(CHフェニル、−(CHフェニル、−CH(フェニル)など、アリール部分で置き換えられた少なくとも1つのアルキル水素原子を有するアルキルを示す。
【0200】
「アルキルシクロアルキル」とは、−CH−シクロヘキシル、−CH−シクロヘキセニルなど、シクロアルキル部分で置き換えられた少なくとも1つのアルキル水素原子を有するアルキルを示す。
【0201】
「ヘテロアリール」とは、単独でまたは「ヘテロアラルキル」などでのようにこれより大きな部分の一部として用いる場合、窒素、酸素、硫黄から独立に選択される1〜4個の環ヘテロ原子を含む、5〜14員の単環、二環または三環の複素芳香環系を示す。また、「ヘテロアリール」という用語は、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基と縮合した、複素芳香環(単数または複数)も含む。ヘテロアリール基の特定の例として、置換されていてもよいピリジル、ピロリル、ピリミジニル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル,1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、ベンゾフリル、[2,3−ジヒドロ]ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イソベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キノリジニル、キナゾリニル、フタラジニル、キノキサリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリド[3,4−b]ピリジル、ピリド[3,2−b]ピリジル、ピリド[4,3−b]ピリジル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、キサンテニル、ベンゾキノリルなどがあげられる。
【0202】
「ヘテロアリールオキシ」とは、−OHet基を示し、Oは酸素原子、Hetは先に定義したようなヘテロアリール基である。
【0203】
「ヘテロアラルキル」とは、−CH−ピリジニル、−CH−ピリミジニルなどなど、ヘテロアリール部分と置き換えられた少なくとも1つのアルキル水素原子を有するアルキルを示す。
【0204】
「アルコキシ」とは、−O−R基を示し、Rは、「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルケニル」または「アルキニル」である。アルコキシ基の例として、たとえば、メトキシ、エトキシ、エテノキシなどがあげられる。
【0205】
「アルキルヘテロシクロアルキル」とは、−CH−モルホリノ、−CH−ピペリジルなど、ヘテロシクロアルキル部分で置き換えられた少なくとも1つのアルキル水素原子を有するアルキルを示す。
【0206】
「アルコカルボニル」とは、基−C(O)ORを示し、Rは、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」である。
【0207】
「ヒドロキシアルキル」および「アルコキシアルキル」は、それぞれヒドロキシルおよびアルコキシで置換されたアルキル基である。
【0208】
「アミノ」とは−NHを意味し、「アルキルアミン」および「ジアルキルアミン」とはそれぞれ−NHRおよび−NRを意味し、Rはアルキル基である。「シクロアルキルアミン」および「ジシクロアルキルアミン」とは、それぞれ−NHRおよび−NRを意味し、Rはシクロアルキル基である。「シクロアルキルアルキルアミン」とは−NHRを意味し、Rはシクロアルキルアルキル基である。「[シクロアルキルアルキル][アルキル]アミン」とは−N(R)を意味し、一方のRがシクロアルキルアルキルで、他方のRがアルキルである。
【0209】
ハロアルキルおよびハロシクロアルキルは、ハロゲンが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から独立に選択される、モノハロアルキル基、ポリハロアルキル基、ペルハロアルキル基である。
【0210】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」などに適した置換基としては、本発明の安定した化合物を形成するものがあげられる。好適な置換基の例として、ハロゲン、−CN、−OH、−NH、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C〜C)シクロアルキル、(5〜7員環)ヘテロシクロアルキル、−NH(C〜C)アルキル、−N((C〜C)アルキル)、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、−CONH、−OCONH、−NHCONH、−N(C〜C)アルキルCONH、−N(C〜C)アルキルCONH(C〜C)アルキル、−NHCONH(C〜C)アルキル、−NHCON((C〜C)アルキル)、−N(C〜C)アルキルCON((C〜C)アルキル)、−NHC(S)NH、−N(C〜C)アルキルC(S)NH、−N(C〜C)アルキルC(S)NH(C〜C)アルキル、−NHC(S)NH(C〜C)アルキル、−NHC(S)N((C〜C)アルキル)、−N(C〜C)アルキルC(S)N((C〜C)アルキル)、−CONH(C〜C)アルキル、−OCONH(C〜C)アルキル−CON((C〜C)アルキル)、−C(S)(C〜C)アルキル、−S(O)(C〜C)アルキル、−S(O)NH、−S(O)NH(C〜C)アルキル、−S(O)N((C〜C)アルキル)、−CO(C〜C)アルキル、−OCO(C〜C)アルキル、−C(O)O(C〜C)アルキル、−OC(O)O(C〜C)アルキル、−C(O)Hまたは−COHからなる群から選択されるものがあげられる。特に、置換基は、ハロゲン、−CN、−OH、−NH、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、(C〜C)アルコキシ、フェニル、(C〜C)シクロアルキルから選択される。本発明の枠組み内で、前記「置換」は、水素原子が重水素原子で置換された状況を包含することも意図している。pは、値が1または2の整数である。
【0211】
本明細書に開示された化合物の薬学的に許容される塩は、本発明に含まれる。たとえば、化合物を好適な有機または無機酸と反応させ、薬学的に許容されるアニオン塩形態にすることで、アミンまたは他の塩基性基を含有する化合物の酸塩を得られる。アニオン塩の例として、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、ジヒドロクロリド、エデト酸塩、エジシル酸、エストラート、エシレート、フマル酸塩、グリセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシレート、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド塩があげられる。
【0212】
酸性官能基を含有する化合物の塩は、好適な塩基との反応によって調製可能なものである。このような薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるカチオンが得られる塩基を用いて生成可能であり、一例として、アルカリ金属塩(特にナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属塩(特にカルシウムおよびマグネシウム)、アルミニウム塩およびアンモニウム塩ならびに、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルアミン、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン、プロカイン、ジベンジルピペリジン、デヒドロアビエチルアミン、N,N’−ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、コリジン、キニーネ、キノリン、さらにはリジンおよびアルギニンなどの塩基性アミノ酸といった、生理学的に許容可能な有機塩基から得られる塩があげられる。
【0213】
医薬組成物
本発明は、有効量の化合物式I(本明細書に記載の式のいずれも含むなど)または前記化合物の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む、医薬組成物も提供するものである。キャリア(単数または複数)は、医薬品で使用する量でそのレシピエントにとって有害ではないという点で「薬学的に許容可能である」。
【0214】
本発明の医薬組成物で使用してもよい薬学的に許容されるキャリア、アジュバント、ビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝液物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンなどの塩または電解質、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよびウールファットがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0215】
必要であれば、従来技術において周知の方法で、医薬組成物における本発明の化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティを高めてもよい。ひとつの方法として、製剤に脂質賦形剤を使用することがあげられる。「Oral Lipid−Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water−Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences),」 David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007;および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples,」 Kishor M. Wasan, ed. Wiley−Interscience, 2006を参照のこと。
【0216】
バイオアベイラビリティを高める別の周知の方法に、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロクサマーと配合されていてもよい、本発明の化合物の非晶質形態あるいは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーを用いることがある。米国特許第7,014,866号明細書および米国特許出願公開第20060094744号明細書および同第20060079502号明細書を参照のこと。
【0217】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、局所(頬および舌下を含む)、経肺、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内を含む)投与に適したものを含む。特定の実施形態では、本明細書の式の化合物を、経皮的に(経皮パッチまたはイオン導入技法を用いるなど)投与する。他の製剤を、錠剤、徐放性カプセル、リポソームなどの適宜単位剤形で提供してもよく、薬学分野で周知の方法で調製してもよい。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA (17th ed. 1985)を参照のこと。
【0218】
このような調製方法は、1種類以上の副成分をなすキャリアなどの成分を、投与対象の分子と合わせるステップを含む。通常、組成物は、有効成分を、液体キャリア、リポソームまたは微粉化固体キャリアあるいはその両方と、均一にしっかりと合わせた後、必要に応じて、製品を成形することで調製される。
【0219】
特定の実施形態では、化合物を経口投与する。経口投与に適した本発明の組成物は、各々があらかじめ定められた量の有効成分を含有する、カプセル剤、サシェ剤または錠剤;散剤または顆粒剤;水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁液;水中油型液体エマルジョン;油中水型液体エマルジョン;リポソームに封入;またはボーラスとしてなどの形で、別個の単位として提示され得るものである。このような懸濁剤を入れるには、化合物の吸収速度を有利に増加させることがある軟ゼラチンカプセル剤が有用な場合がある。
【0220】
経口用錠剤の場合に、一般に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチがあげられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も一般に添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥コーンスターチがあげられる。水性懸濁液を経口投与する場合、有効成分は乳化剤および懸濁剤と混合される。必要があれば、特定の甘味剤および/または風味剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0221】
経口投与に適した組成物としては、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントである風味基剤に成分を含む薬用キャンディ;ゼラチンおよびグリセリン、あるいはスクロースおよびアカシアである不活性基剤に有効成分を含むトローチ剤があげられる。
【0222】
非経口投与に適した組成物としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、想定レシピエントの血液で製剤を等張にする溶質を含むものであってもよい、水性および非水性の滅菌注射溶液;懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液があげられる。製剤は、単位用量または複数用量容器、たとえば密封アンプルおよびバイアルで存在してもよく、使用直前に滅菌液体キャリア、たとえば注射用水を加えさえすればよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。滅菌散剤、顆粒剤、錠剤から、即席の注射溶液および懸濁液を調製してもよい。
【0223】
このような注射溶液は、たとえば滅菌されて注射可能な水性懸濁液または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(たとえば、Tween 80など)および懸濁剤を用いて、従来技術において周知の技術に従って調合できるものである。また、滅菌されて注射可能な調製物は、1,3−ブタンジオールの溶液など、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液であってもよい。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、マンニトール、水、リンゲル溶液、生理食塩液である。また、溶媒または懸濁媒体として、従来は滅菌固定油が使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドをはじめとして、どのブランドの固定油を使用してもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油などの薬学的に許容され得る天然油、特にそのポリオキシエチル化物と同様に、注射物を調製する際に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含むものであってもよい。
【0224】
本発明の医薬組成物は、直腸投与用坐剤の形で投与されてもよい。これらの組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが直腸温度で液体であるため、直腸で溶けて有効成分を放出する好適な非刺激性賦形剤とを混合することによって、調製可能なものである。このような材料としては、ココアバター、蜜蝋、ポリエチレングリコールがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0225】
本発明の医薬組成物は、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与されてもよい。このような組成物は医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または従来技術において周知の他の可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩溶液中の溶液として調製されてもよい。たとえば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz JDおよびZaffaroni AC、米国特許第6,803,031号明細書を参照のこと。
【0226】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療に局所塗布で容易に到達可能な領域または器官を含む場合に、特に有用である。皮膚に限局した局所塗布では、キャリアに懸濁または溶解された活性成分を含有する好適な軟膏を用いて、医薬組成物を配合する必要がある。本発明の化合物の局所投与用キャリアとしては、鉱油、液状石油、ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、水があげられるが、これに限定されるものではない。あるいは、医薬組成物は、キャリアに懸濁または溶解された活性化合物を含有する好適なローションまたはクリームを用いて製剤化可能なものである。好適なキャリアとしては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、水があげられるが、これに限定されるものではない。本発明の医薬組成物はまた、直腸坐剤製剤によって、あるいは好適な注腸製剤で、下部腸管に局所適用可能である。局所経皮パッチおよびイオン導入投与もまた本発明に含まれる。
【0227】
患者への治療剤の適用は、目的の部位に投与されるよう局所的なものであってもよい。目的の部位で患者に組成物を提供するために、注射ならびに、カテーテル、トロカール、プロジェクタイル、プルロニックゲル、ステント、薬剤徐放ポリマーあるいは体内到達用の他の器具を使用するなど、さまざまな技術を使用可能である。
【0228】
したがって、もうひとつの実施形態によれば、プロテーゼ、人口弁、血管移植片、ステントまたはカテーテルなどの植込可能な医療器具をコーティングするための組成物に、本発明の化合物を取り入れてもよい。好適なコーティングならびに、コーティングをほどこした植込可能な器具の一般的な作製方法については、従来技術において周知であり、米国特許第6,099,562号明細書、同第5,886,026号明細書、同第5,304,121号明細書に例示されている。コーティングは一般に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、これらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。また、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはこれらの組み合わせからなる好適なトップコートで上記のコーティングをさらに覆い、当該組成物に制御放出特性を与えてもよい。侵襲性器具用のコーティングは、本明細書で使用される用語の薬学的に許容されるキャリア、アジュバントまたはビヒクルの定義に含まれる。
【0229】
もうひとつの実施形態によれば、本発明は、植込可能な医療用器具のコーティング方法であって、前記器具を上述したコーティング組成物と接触させるステップを含む、方法を提供するものである。器具へのコーティングが哺乳動物への植込前におこなわれることは、当業者であれば自明であろう。
【0230】
もうひとつの実施形態によれば、本発明は、植込可能な薬剤放出器具の含浸方法であって、前記薬剤放出デバイスを本発明の化合物または組成物と接触させるステップを含む、方法を提供するものである。植込可能な薬剤放出器具としては、生分解性ポリマーカプセルまたは弾薬、非分解性拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーオブラートがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0231】
もうひとつの実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または当該化合物を含む組成物で、前記化合物が治療的に活性であるようにコーティングされた植込可能な医療用器具を提供するものである。
【0232】
もうひとつの実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が薬剤放出器具から放出され、治療的に活性であるように、前記化合物または当該化合物を含む組成物で含浸されているか、あるいはそれを含む、植込可能な薬剤放出器具を提供するものである。
【0233】
患者から取り出すことで臓器または組織に到達可能である場合、かかる臓器または組織を、本発明の組成物を含む媒質に浸してもよいし、本発明の組成物を臓器に塗布してもよく、あるいは本発明の組成物を他の都合のよい方法で適用してもよい。
【0234】
もうひとつの実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療薬をさらに含む。一実施形態では、第2の治療薬は、本発明の1種類以上の別の化合物である。
【0235】
もうひとつの実施形態では、第2の治療薬は、式IのAPJ受容体化合物と同じ作用機序を有する化合物と併用投与されると有利な性質を有する旨が周知であるか、そのような性質を示す、任意の化合物または治療薬から選択されるものであってもよい。
【0236】
特定の実施形態では、第2の治療剤が、心疾患(高血圧症ならびに、鬱血性心不全などの心不全など)、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染から選択される疾患または症状の治療または予防に有用な作用剤である。もうひとつの実施形態では、第2の治療剤が、高血圧症および心不全、特に鬱血性心不全から選択される疾患または症状の治療または予防に有用な作用剤である。
【0237】
たとえば、疾患または症状が鬱血性心不全である場合、第2の治療薬は、ACE阻害剤、β遮断薬、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、ループ利尿薬、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体遮断薬から選択可能である。
【0238】
治療対象となる疾患または症状が高血圧症である場合、第2の治療薬は、α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、ナトリウム利尿薬、塩利尿薬、中枢作用降圧薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、デュアルACEおよび中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、アンジオテンシン−受容体遮断薬(ARB)、アルドステロン合成酵素阻害剤、アルドステロン−受容体アンタゴニストまたはエンドセリン受容体アンタゴニストから選択可能である。
【0239】
α−遮断薬は、ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、テラゾシンを含む。
【0240】
併用療法用のβ−遮断薬は、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、アセブトロール、エスモロール、セリプロロール、タリプロロール、アセブトロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロパノロール、ブプラノロール、ペンブトロール、メピンドロール、カルテオロール、ナドロール、カルベジロール、それらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0241】
カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジン(DHP)および非DHPが含まれる。好ましいDHPは、アムロジピン、フェロジピン、リヨシジン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルピジン、ニルジピン、ニモジフィン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピンならびにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。非DHPは、フルナリジン、プレニラミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミル、ベラムピミルならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0242】
利尿薬は、たとえば、アミロライド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロロチアジド、クロロサリドンから選択されるチアジド誘導体である。
【0243】
中枢作用降圧薬は、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドパを含む。
【0244】
ACE阻害剤は、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナザプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラミプリラト、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、ゾフェノプリルを含む。好ましいACE阻害剤は、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリルである。
【0245】
デュアルACE/NEP阻害剤は、たとえば、オマパトリラト、ファシドトリル、ファシドトリラトである。
【0246】
好ましいARBは、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタンを含む。
【0247】
好ましいアルドステロン合成酵素阻害剤は、アナストロゾール、ファドロゾール、エキセメスタンである。
【0248】
好ましいアルドステロン−受容体アンタゴニストは、スピロノラクトンおよびエプレレノンである。
【0249】
好ましいエンドセリンアンタゴニストは、たとえば、ボセンタン、エンラセンタン、アトラセンタン、ダルセンタン、シタキセンタン、テゾセンタンならびにそれらの薬学的に許容される塩である。
【0250】
一実施形態では、本発明は、本発明の化合物と上述した第2の治療薬のいずれかの1種類以上とからなる別個の剤形を提供するものであり、当該化合物および第2の治療薬が互いに合わせられる。「互いに合わせられる」という表現は、本明細書で使用する場合、別個の剤形が一緒に(互いに24時間未満、連続または同時に)販売および投与されることを想定したものである旨が容易にわかるように、別個の剤形が一緒に包装されるか、そうでなければ互いに結合されていることを意味する。
【0251】
本発明の医薬組成物では、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与された場合、標的となる機能障害を(治療的または予防的に)治療するのに十分な量を示す。たとえば、有効量は、治療対象となる機能障害の重篤度、期間または進行具合を減らすまたは寛解させ、治療対象となる機能障害の進行を予防し、治療対象となる機能障害の退行を引き起こし、あるいは別の処置剤の予防効果または治療効果(単数または複数)を亢進または改善するのに十分である。好ましくは、化合物は、組成物中に、0.1〜50wt.%、一層好ましくは1〜30wt.%、最も好ましくは5〜20wt.%の量で存在する。
【0252】
動物の場合と人間の場合での薬用量の相互関係(体表面積1平方メートルあたりのミリグラム換算)が、Freireich et al., (1966) Cancer Chemother. Rep 50: 219に記載されている。体表面積は、患者から身長と体重からおおよそ判断できる。Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y., 1970, 537などを参照のこと。
【0253】
第2の治療薬を含む医薬組成物の場合、第2の治療薬の有効量は、その作用剤だけを用いる単剤療法計画で普通に用いられる薬用量の約20%〜100%である。好ましくは、有効量は通常の単剤療法用量の約70%〜100%である。これらの第2の治療薬の通常の単剤療法薬用量は従来技術において周知である。Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)(各参考文献全体を本明細書に援用する)などを参照のこと。
【0254】
本発明の方法で用いる化合物は、単位剤形で処方可能である。「単位剤形」という用語は、治療を受ける被検体用の単位薬用量として適した物理的に離散した単位を示し、各単位が、任意に好適な製剤キャリアと合わせて、所望の治療効果を生成するよう算出されたあらかじめ定められた量の活性材料を含む。単位剤形は、単回治療日用量に合わせてあってもよいし、複数回治療日用量(1日あたり約1〜4またはそれ以上の回数など)のうちの1回分であってもよい。複数回治療日用量を用いる場合、単位剤形が同一であっても異なっていてもよい。
【0255】
治療方法
本明細書で使用する場合、「被検体」および「患者」という用語は一般に人間を意味するが、ペット(イヌ、ネコなど)、家畜(ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(ラット、マウス、モルモットなど)といった治療を必要とする動物であってもよい。
【0256】
「治療する」および「治療中」といった表現は同義に用いられ、治療と予防処置(発達の尤度を落とす)の両方を含む。どちらの表現も、疾患(本明細書で説明する疾患または機能障害など)の発達または進行を低減、抑制、減衰、縮小、停止または安定させること、疾患の重篤度を落とすこと、あるいは疾患に関連する症候を改善することを意味する。
【0257】
「疾患」とは、細胞、組織または臓器の正常な機能を損傷またはこれに干渉する症状または機能障害意味する。
【0258】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与された場合、標的となる機能障害を(治療的または予防的に)治療するのに十分な量を示す。たとえば、有効量は、治療対象となる機能障害の重篤度、期間または進行具合を減らすまたは寛解させ、治療対象となる機能障害の進行を予防し、治療対象となる機能障害の退行を引き起こし、あるいは別の処置剤の予防効果または治療効果(単数または複数)を亢進または改善するのに十分である。
【0259】
また、本発明は、有効量の本発明のAPJ受容体化合物を、それを必要とする被検体に投与することを含む、APJ受容体の調節による利益のある疾患、機能障害または病態を治療する方法も含む。APJ受容体の調節(阻害または活性化)による利益のある疾患および症状としては、心疾患(高血圧症ならびに、鬱血性心不全といった心不全など)、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染があげられるが、これに限定されるものではない。
【0260】
一実施形態では、本発明のAPJ受容体化合物が、心不全患者で用いる強心薬として有用である。
【0261】
もうひとつの実施形態では、本発明のAPJ受容体化合物が、高血圧症の治療用に投与可能なものである。
【0262】
もうひとつの実施形態では、本発明のAPJ受容体化合物が、HIV感染の治療用として投与可能なものである。
【0263】
他の態様では、本発明のAPJ受容体化合物が、腫瘍転移の治療用として投与可能なものである。
【0264】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量が、治療1回あたり約.005mg〜約5000mgの範囲を取り得る。さらに特定の実施形態では、この範囲は約.05mg〜約1000mg、あるいは約0.5mg〜約500mg、あるいは約5mg〜約50mgである。治療を1日1回以上(たとえば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回など)実施可能である。複数回の治療を用いる場合、その回数は同一であっても異なっていてもよい。治療を、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごとなどで実施可能であることは、理解できよう。たとえば、1日おきで実施する場合、治療用量を月曜日に開始し、その後の1回目の治療を水曜日に実施、その後の2回目の治療を金曜日に実施するなどといった具合である。治療は一般に、1日1〜2回実施される。当業者であれば自明であろうように、治療対象となる疾患、疾患の重篤度、投与経路、性別、年齢、患者の全身健康状態、賦形剤使用、他の作用剤を用いるなどの他の治療薬との同時使用の可能性、医師の判断に応じて、有効用量も変化する。
【0265】
あるいは、本発明の化合物の有効量は、約0.01mg/kg/日〜約1000mg/kg/日、約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日、約0.5mg/kg/日〜約50mg/kg/日または約1mg/kg/日〜10mg/kg/日である。
【0266】
もうひとつの実施形態では、上記の治療方法のいずれも、前記患者に1種類以上の第2の治療薬を同時投与する別のステップを含む。第2の治療薬の選択肢は、APJ受容体を調節する化合物との同時投与が有用であることが知られている第2の治療薬であってもよい。第2の治療薬の選択肢は、治療対象となる特定の疾患または症状に左右される。本発明の方法で使用できる第2の治療薬の例として、本発明の化合物と第2の治療薬とを含む併用組成物で使用するための上記に記載のものがあげられる。
【0267】
「同時投与される」という表現は、本明細書で使用する場合、本発明の化合物と一緒に、単一剤形(本発明の化合物と上述したような第2の治療薬とを含む本発明の組成物など)の一部または別々の複数剤形として第2の治療薬を投与できることを意味する。あるいは、本発明の化合物の投与前、同時または後で、別の作用剤を投与してもよい。このような併用治療では、本発明の化合物と第2の治療薬(単数または複数)の両方を従来の方法で投与する。本発明の化合物と第2の治療薬とを含む本発明の組成物を、被検体に投与することは、同一の治療薬、他の第2の治療薬または本発明の化合物を、治療期間内の別の時点で前記被検体に別途投与することを除外するものではない。
【0268】
第2の治療薬を被検体に投与する本発明の一実施形態では、本発明の化合物の有効量が、第2の治療薬を投与しない場合のその有効量未満である。もうひとつの実施形態では、第2の治療薬の有効量が、本発明の化合物を投与しない場合のその有効量未満である。このように、いずれかの作用剤の高用量に関連する望ましくない副作用を最小限に抑えられる。他の潜在的な利点(限定することなく、投与計画の改善および/または薬剤コストの抑制を含む)も当業者であれば自明であろう。
【0269】
キット
また、本発明は、標的疾患、機能障害または症状の治療に使用するためのキットも提供する。これらのキットは、(a)式Iの化合物またはその塩を含む医薬組成物(前記医薬組成物が容器に入っている)と、(b)標的疾患、機能障害または症状を治療する上での医薬組成物の使用方法を説明した指示と、を含む。
【0270】
容器は、前記医薬組成物を保持可能なものであれば、どのような入れ物または他の密封されたまたは封止可能な装置であってもよい。一例として、瓶、アンプル、分割されたまたは複数区画のホルダボトル(各区画またはチャンバが、一用量の前記組成物を含む)、分割されたホイルパケット(各区画が一用量の前記組成物を含む)または一用量の前記組成物を分注するディスペンサがあげられる。容器は、たとえば紙または厚紙の箱、ガラスまたはプラスチックの瓶あるいはジャー、開閉可能な袋(たとえば、異なる容器に入れるための錠剤の「レフィル」を保持する目的など)または個々の用量を治療計画に沿って押し出せるようになったブリスターパックなど、薬学的に許容される材料で作られる、従来技術において周知のような従来のどのような形状または形態であってもよい。使用する容器は、用いる厳密な剤形に左右されることがある。たとえば、従来の厚紙の箱は通常、液体懸濁液の保持には用いられない。2つ以上の容器を単一のパッケージで一緒に使用して、単一の剤形を販売するのも可能である。たとえば、錠剤を瓶に入れ、これを箱の中に入れてもよい。一実施形態では、容器がブリスターパックである。
【0271】
本発明のキットは、単位用量の医薬組成物を投与または測定するための器具を含むものであってもよい。このような器具は、前記組成物が吸入可能な組成物である場合に吸入器;前記組成物が注射可能な組成物である場合に注射器と針;前記組成物が経口液体組成物である場合に容量の目印のあるまたはない針、スプーン、ポンプまたは入れ物;またはキットに含まれる組成物の処方剤に適した他の計量または送達器具を含むものであってもよい。
【0272】
特定の実施形態では、本発明のキットは、容器の別々の入れ物に、本発明の化合物との同時投与で使用するための上記にて列挙したものの1つなどの第2の治療薬を含む医薬組成物を含むものであってもよい。
【0273】
APJ受容体化合物を調製するための基本方法
ペプチドの合成
本発明の化合物のペプチド成分(P)は、直交保護されるアミノ酸を段階的に取り入れることで、合成可能なものである。どのような好適な合成方法でも使用可能である。従来のFmocまたはBoc化学を容易に適合させ、本発明の化合物の所望のペプチド成分(P)を得ることが可能である。Fmoc保護基の切断のほうが、Boc切断に必要な酸脱保護の切断(これは、酸の脱保護を繰り返し必要として感受性残基の変化を生じるとともに酸が触媒する副反応を増やす)よりもおだやかであるため、通常はFmocが好ましい(G. B. FIELDS et al.、Int. J. Pept. Protein, 1990, 35, 161)。
【0274】
ペプチドを、Solid Phase Peptide Synthesis(SPPS)で直線状にアセンブル可能、保護されたまたは未保護のペプチド成分またはその両方の組み合わせのモジュール縮合を使用して、溶液中でアセンブル可能である。
【0275】
固相ペプチド合成
SPPSでは、切断時にC末端の所望の部分を得られる適切な樹脂を選択する。たとえば、線状ペプチドの切断時、Rinkアミド樹脂によってC末端に第1級アミドが得られるのに対し、Rink酸樹脂は酸を提供する。Rink酸樹脂は、Rinkアミド樹脂より影響があり、保護されたペプチドも切断されて、後に遊離酸が活性化されてアミンまたは他の求核試薬と反応することがある。あるいは、アシル化の前に他の樹脂で他の部分を結合させ、アルキル化された第2級アミド、エステルまたは他の所望のC末端修飾を切断してもよい。切断後に得られる、一般に用いられる樹脂および機能的部分の概説が、NovaBiochemまたはAdvanced Chemtechカタログなどの製造業者による資料に見られる。
【0276】
一般に、樹脂は切断後にC末端がアミド結合であるように選択される。Rinkアミド樹脂は、切断時にC末端アミドにつながる樹脂である。文献(Bodansky M. Principles of Peptide synthesis (1993) 318p; Peptide Chemistry, a Practical Textbook (1993); Spinger−Verlag)で周知の方法を用いて、直交保護されたFmocアミノ酸を段階的に加える。これらの手順は、手作業でおこなってもよいし、自動ペプチド合成装置を用いておこなってもよい。
【0277】
このプロセスは、HBTU、HATU、PyBopまたは単純なカルボジイミドなどの活性化剤を用いる、保護されたアミノ酸の酸部分の活性化を伴う。HOBtまたはHOAtなど、添加剤を使用してカップリング時のラセミ化を減らすことも多い(M. SCHNOLZER et al., Int. J. Pept. Protein Res., 1992, 40, 180)。手作業で、ニンヒドリンアッセイを用いてカップリング効率を測光的に求めることが可能である。カップリング効率が98%未満である場合、第2のカップリングが望ましいこともある。第2のカップリング後、キャッピングステップを用いて長い欠失配列が形成されるのを防止し、所望の最終化合物の精製を単純化してもよい。自動化を用いる場合、アルギニンなど残基に問題があることが周知の場合を除けば、第2のカップリングは一般に不要である。
【0278】
Fmocの脱保護は、ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン(20%)を用いてなされるのが、最も一般的である。あるいは、モルホリン、ジエチルアミンまたはピペラジンなどの他の第2級アミンを使用してもよい。この反応は容易で通常はピペリジンを用いて20分以内に達成される。脱保護後、樹脂をDMFおよびDCMで数回洗浄した後、次の残基とカップリングさせる。このプロセスを繰り返し、配列が完成するまでペプチドを線状にアセンブルする。最終的なFmocを除去すると、テザー部分とカップリングできる。
【0279】
好ましい合成では、手作業あるいは、CEM Microwaveペプチド合成装置、Rainin Symphony合成装置またはABI 433フロースルー合成装置などの市販の合成装置を用いて自動的になされるSPPSによって、ペプチドを形成する。C末端アミドペプチドの合成には、市販のRinkアミド樹脂を使用する(Rink, H. Tetrahedron Lett, 28, 4645, 1967)。ペプチド合成試薬(カップリング、脱保護剤)は、市販されており、HOBT、HBTU(Novabiochem)ならびにDMF、DCM、ピペリジン、NMP、DIEA(Sigma−Aldrich)があげられる。固相ペプチド合成で用いられる適宜保護されたアミノ酸は、Sigma−AldrichおよびCEM Corporationをはじめとする多くの供給元から市販されている。
【0280】
たとえば、0.1mmolまたは0.25mmolスケールでのペプチドの便利な調製では、約0.6mmol/gで置き換えてRinkアミド固相樹脂を使用する。ABI連続フロー自動合成装置で、5当量の直交保護アミノ酸(AA)を使用し、かつHBTU/HOBtカップリングプロトコール(各試薬5当量ずつ)を用いて、アミノ酸を線状結合させる。もうひとつの好ましい合成では、マイクロ波機器を用いて、試薬10当量でペプチドを合成可能である。DMF中20%ピペリジンを使用し、続いてDMFおよびDCMで洗浄することで、Fmocを脱保護できる。
【0281】
いずれの場合も(すなわち、Rink酸およびRinkアミド樹脂)、N末端の最終的なFmoc脱保護によって、切断前に特に修飾しなければ樹脂からの切断後には遊離アミンが残る。本発明の化合物では、アミド結合を介してテザー部分を結合させる。
【0282】
ペプチドの液相合成
液相合成の場合、所望のペプチドは通常、2〜4アミノ酸ずつの単位でペプチド断片に細分化される。選択される単位は、配列、ラセミ化に対する断片の安定性、アセンブリしやすさに左右される。各アミノ酸を加える都度、1〜1.5当量の残基が必要なだけであるのに対し、SSPSでは5〜10当量の試薬が必要である。OSu活性エステルなどのあらかじめ活性化されアミノ酸および酸フルオリドも使用可能であり、反応を完了するのに塩基が必要なだけである。
【0283】
カップリング時間としては、ステップごとに1.5〜2時間を要する。2つの断片が溶液中で縮合されてさらに大きな断片になるが、これをさらに所望の配列が完成するまで別の断片と縮合させることが可能である。液相プロトコールでは、各断片を1当量使用し、カルボジイミド(DIC)などのカップリング試薬を用いる。ラセミ化された易発性断片、PyBopまたはHBTU/HOBtを使用可能である。Bsmoc/tBuまたはFmoc/tBuおよびBoc/ベンジル保護したアミノ酸も等しく使用するのに適している。
【0284】
Fmocを用いる場合、脱ブロック剤として4−(アミノメチル)ピペリジンまたはトリス(2−アミノエチル)アミンを使用すると、望ましくない副反応を回避できる。得られるFmocアダクトを、pH5.5の水性リン酸緩衝液で抽出することが可能である(Organic Process Research & Development 2003, 7, 2837)。Bsmocを用いる場合、緩衝液は必要なく、水性抽出だけが求められる。これらの試薬を用いる脱保護は、30〜60分で起こる。N末端残基でのFmoc基の脱ブロックによって、テザー部分の結合に用いられる遊離末端アミンが得られる。本発明の化合物では、テザー部分は、アミド結合を介してN末端アミンに結合される。
【0285】
液相合成のひとつの利点に、質量分析によって各カップリングステップ後に化合物を監視し、生成物が形成されるのを確認できることがある。また、単純なTLC系を用いて、反応の完了を判断することもできよう。
【0286】
テザーの結合
アミド結合カップリングを使用して、ペプチド鎖のN末端アミノ酸の末端窒素にテザーを結合させる。
【化66】

【0287】
テザーは、固相手順を用いて、あるいは溶液中にてアミド結合カップリングを用いて結合可能である。N末端を適宜カップリングした後、酸カクテルを用いて最終化合物を樹脂から切断する(Peptide Synthesis and Applications, John Howl, Humana Press, 262p, 2005)。一般に、これらのカクテルでは、濃トリフルオロ酢酸(80〜95%)およびさまざまなスカベンジャーを使用して、カルボカチオンを捕捉するとともに、側鎖反応を防止する。一般的なスカベンジャーとして、イソプロピルシラン、チオール、フェノール、水があげられる。カクテル混合物は、ペプチドの残基によって決まる。メチオニン、アスパラギン酸、システインなどの感受性残基の場合には、特別な配慮が必要である。一般的な脱保護は、カクテル中にて2〜5時間にわたって起こる。好ましい脱保護カクテルとして、トリイソプロピルシラン(TIS)、フェノール、チオアニソール、ドデカンチオール(DDT)、水を使用することがあげられる。メタンスルホン酸(MSA)もカクテルで使用できる(4.8%)。一層好ましいカクテルは、(TFA:MSA:TIS:DDT:水82:4.5:4.5:4.5:4.5;10mL/0.1mmol樹脂)からなる。
【0288】
脱保護後、樹脂を濾過して除去し、ジエチルエーテル、m−tert−ブチルエーテルまたは酢酸エチルなどの有機溶媒から沈殿させて最終化合物を単離し、得られる固体を濾過して回収するか、凍結乾燥させて粉末にする。十分な純度を得るのに逆相HPLCでのペプチドの精製が必要なこともある。通常、有機溶媒を用いる水性溶媒での勾配によって、不純物および欠失配列から十分に分離される。一般に、0.1%TFAを水性および有機モディファイアとして使用するが、酢酸アンモニウムなどの他のモディファイアも使用可能である。精製後、化合物を回収し、分析し、十分な純度の画分を合わせて凍結乾燥させ、化合物を固体として得る。
【0289】
アミノ酸試薬
使用した以下の市販の直交保護アミノ酸を、本発明の化合物の合成に使用可能である:Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Ala−OH*HO、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc、Asn(Trt)−OH、Fmoc−Asp(tBu)、Fmoc−Cys(tBu)−OH、Fmoc−Glu(tBu)−OH、Fmoc−Glx(Pbf)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc、Lys(tBu)−OH、Fmoc−Met−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Thr(tBu)−OH、Fmoc−Typ−OH,およびFmoc−Val−OH。本発明の化合物に取り入れるのに適した別のアミノ酸(Dアミノ酸、置換アミノ酸、他の保護基のバリエーションなど)も市販され、あるいは従来技術において周知の方法で合成される。
【0290】
分析方法
以下に列挙する方法を用いるHPLCで、本発明の化合物の純度を分析する。精製は分取HPLCでおこなう。
【0291】
高速LC/MS方法
カラム:Phenomenex Luna C−5 20×30mm
流量:1.0ml/分
溶媒A:タイプIの水中0.1%TFA
溶媒B:アセトニトリル中0.1%TFA
UV 220nm
注射:20ul
勾配 5〜95%B(7分);95〜5%B(1分);5%B(4分)
【0292】
分析純度法
カラム: Phenomenex Luna C−5 20×30mm
流量: 1.0ml/分
溶媒A:タイプIの水中0.1%TFA
溶媒B:アセトニトリル中0.1%TFA
UV:220nm
注射:20ul
勾配:2〜95%B(10分);95〜2%B(2分);2%B(2分)
【0293】
分取LC/MS方法
カラム:Phenomenex Luna C−5 250×150mm
流量:5.0ml/分
溶媒A:タイプIの水中0.1%TFA
溶媒B:アセトニトリル中0.1%TFA
UV:220nm
注射:900ul
勾配:35%B(5分);35〜85%B(13分);85〜35%B(0.5分);35%B(1.5分)
【0294】
化合物の合成
化合物12 Pal− TVFRSSREKRRSADIFI−アミド
Rinkアミド樹脂で、0.1mmolスケールにて化合物12を上述したようにして合成した。上述したようにしてアミノ酸を順次カップリングした。N末端残基セリンでのFmoc基の脱保護後、N末端アミンを、上述したようにパルミチン酸(10当量)、HBTU(10当量)およびDIEA(10当量)でキャップした。MS、TIS、DDT、水を含有する(82:4.5:4.5:4.5:4.5;10mL)TFAを用いて、樹脂からpepducinを切断し、ミディアムフリットBuchner fullで濾過し、エーテルで微粉砕し、得られる沈殿物を遠心処理して回収した。粗ペプチドを最小量のDMSO(約1ml)に取り、RP−HPLCで先に説明したようにして精製した。正しいMWの画分をプールし、凍結乾燥させ、方法Aで純度を分析した。分取ロットの収率を以下の表に示す。
【0295】
【表10】

【0296】
化合物96 Pal−QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLA−アミド
化合物12で説明したようにして化合物96を合成した。代表的なロットの収率を以下の表に示す。
【0297】
【表11】

【0298】
化合物11 Pal− FRSSREKRRSADIFI−アミド
化合物12で説明したようにして化合物11を合成した。代表的なロットの収率を以下の表に示す。
【0299】
【表12】

【0300】
上述した方法で合成した別の化合物を表6にあげておく。
【0301】
【表13】

【0302】
【表14】

【0303】
【表15】

【0304】
【表16】

【0305】
【表17】

【0306】
【表18】

【0307】
スクリーニング方法
機能的アッセイ
GPCRシグナリングの検出およびキャラクタライズに用いるのに適した機能的アッセイとして、遺伝子レポーターアッセイおよびカルシウムフラックスアッセイ、cAMPおよびキナーゼ活性化アッセイがあげられる。いくつかの好適なアッセイについて、以下にて詳細に説明する。
【0308】
遺伝子レポーターアッセイ
APJ受容体を発現する細胞を、第2のメッセンジャーシグナリング経路(単数または複数)の活性化に応答するエンハンサーエレメントを含むレポーター遺伝子プラスミドコンストラクトで一過的または安定的にトランスフェクトすることで、検出可能なレポータータンパク質をコードするcDNAの転写を制御可能である。APJ発現は、細胞系または細胞型での内因性発現の結果であってもよいし、従来技術において一般に用いられている手段による目的の受容体をコードするDNAの細胞系への安定したまたは一過的なトランスフェクションの結果であってもよい。固定化細胞系または一次細胞培養を使用可能である。
【0309】
活性化された経路が刺激性である(GsまたはGqなど)場合、アゴニスト活性によって転写因子が活性化され、これがゆえにレポーター活性の増大によって検出可能なレポーター遺伝子の転写が増す。アゴニスト活性または逆アゴニスト活性を試験するには、レポーター遺伝子コンストラクトおよびAPJ受容体を発現する細胞を、あらかじめ定められた時間(2〜12時間、一般に4時間など)被検化合物でチャレンジする。次に、レポーター遺伝子産物のレベルについて細胞を評価する。逆アゴニストは、レポーターのレベルを用量依存的に基線レベル未満まで抑制する。刺激性の経路でアンタゴニスト活性または阻害活性を試験するには、APJ受容体とレポーター遺伝子コンストラクトの両方を発現する細胞を受容体アゴニストによって活性化させ、遺伝子レポーター産物レベルを高めればよい。アンタゴニストで処理すると、アゴニスト刺激の作用が用量依存的かつ受容体依存的に逆になる。
【0310】
阻害経路(APJにカップリングするGiなど)による受容体シグナリングでのアゴニスト活性を試験するには、細胞を系統的な活性化因子(フォルスコリンなど)で処理してレポーター遺伝子産物のレベルを高めればよい。受容体アゴニストで処理してGiを活性化させると、アデニリルシクラーゼの阻害によってこの発現が阻害される。アンタゴニスト活性をスクリーニングするにはアデニリルシクラーゼのアゴニスト阻害に反してレポーター転写を増す被検化合物の機能を評価すればよい。
【0311】
あるいは、乱交雑Gタンパク質Ga16を発現するプラスミドコンストラクトを使用して、通常は阻害Gタンパク質とカップリングするGPCRから陽性シグナルを得ることも可能である。キメラGタンパク質Gaq/Gai5の同時発現(Coward et al. Analytical Biochemistry 270, 242〜248(1999))によって、Gi共役受容体へのカップリングと阻害Gi経路から刺激Gq経路への第2のメッセンジャーシグナリングへの変換が可能になる。これらの系でのアゴニストおよびアンタゴニスト評価は、刺激経路での場合と同一である。トランスフェクション効率、細胞が不均等に蒔かれていること、細胞生存率などの要因によって生じるウェルごとのばらつきについては、構成的に発現しているレポーター遺伝子と、調節レポーターと無関係の非干渉シグナルとを同時トランスフェクトすることで、一過性のトランスフェクションアッセイで正規化可能である。
【0312】
カルシウムフラックスアッセイ
カルシウムフラックスアッセイは、最も普及した細胞ベースのGPCR機能的アッセイのひとつである。このアッセイでは、fura2 AM、fluo−4およびカルシウム−4などのカルシウムを検知する蛍光染料を使用して細胞内カルシウム濃度の変化を測定することが最も多い。これは主に、GαqサブユニットによるGPCRシグナルリングの検出に用いられる。これらのGq共役GPCRが活性化されると、ホスホリパーゼCが活性化され、それによって以後のリン酸イノシトールの生成量が増える。小胞体でのIP3受容体がこの変化を検知した後、細胞質にカルシウムを放出する。蛍光染料との細胞内カルシウム結合を、FLIPR Tetra、Flexstation(MDS)およびFDSS(Hamamatsu)などの蛍光強度を定量化する機器で検出可能である。Gq共役受容体シグナリングを評価することに加え、カルシウムフラックスアッセイも用いて、CNG(環状ヌクレオチド依存性カルシウムチャネル)またはキメラGタンパク質(Gqi5、Gsi5など)を同時発現させることでGsとGi共役受容体について研究することができる。いくつかのGi共役受容体の活性化も、Gβγが媒介するホスホリパーゼC活性化によるカルシウムフラックスアッセイで検出可能である。
【0313】
APJ試験
カルシウムフラックスアッセイを使用する一例に、APJで安定してトランスフェクトされたMolt3ヒト細胞系またはラットRBL細胞におけるAPJ受容体のアペリン活性化の評価があげられる。底部が透明な96ウェルのブラックプレートに、20mM HEPES、0.1%BSAを含むハンクス平衡塩溶液中にて、200K/ウェルで細胞を播種することが可能である。室温で1時間、カルシウム−4染料中にてインキュベートすることで染料をロードした後、細胞プレートをFlexstation 3内に配置することが可能である。被検化合物または基準アンタゴニストを添加するには、手作業でピペット滴下するか、Flexstationでの液体ハンドリングを使用すればよい。後者は被検化合物のアゴニスト活性の評価を可能にするものである。37℃で15分間のインキュベーション後、Flexstationにアペリンを加えることができ、蛍光強度の変化を測定することで、受容体の活性化を評価することができる。このアッセイモードは、APJ活性のアゴニストおよびアゴニストモジュレーターの検出も可能にする。
【0314】
HTRF cAMPアッセイおよびIP−Oneアッセイ(Cisbio)
TR−FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギ移動法)に基づいてCisbio Bioassaysが開発した技術に、HTRF(homogeneous time resolved fluorescence)がある。Cisbio Bioassaysは、ホールセルと相性のよい多岐にわたるHTRF−ベースのアッセイを開発しているため、一層生理学的な条件下で機能的アッセイを実施できる。クリプテート標識抗IP1モノクローナル抗体およびd2標識IP1を用いる競合的イムノアッセイに、IP−Oneアッセイがある。IP1は、IP3の比較的安定した下流代謝物であり、Gq受容体活性化後に細胞に蓄積される。
【0315】
クリプテート標識抗cAMP抗体およびd2標識cAMPを用いる競合的イムノアッセイに基づくcAMPキットを使用して、本発明のAPJ化合物の作用をアッセイした。このアッセイでは、Gs共役受容体活性化時の細胞内cAMPの増加ならびに、Gi共役受容体活性化時のcAMPのフォルスコリン(またはそれよりも可溶性の高いタイプのフォルスコリン−NKH477)刺激増加の低減を測定する。たとえば、Gi共役受容体APJを安定して発現するHEK細胞をその内因性リガンドアペリンで処理すると、EC50が5e−10MでcAMPのNKH477刺激増加が阻害された。
【0316】
このアッセイの代表的なデータを、化合物51について図1A、化合物12について図1Bに示す。化合物をさらに試験し、結果を表7に示す。表7のデータでは、EC50値は以下のとおり表記される。1nM〜500nMを*****で示し、501nM〜1000nMを****で示し、1001nM〜5000nMを***で示し、5001nM〜10,000nMを**で示し、10,000nMを超えるものを*と示す。
【0317】
【表19】

【0318】
【表20】

【0319】
【表21】

【0320】
【表22】

【0321】
αスクリーン細胞キナーゼアッセイ
GPCRが活性化されると、下流側のキナーゼ系が調節されるため、その活性化はGPCRの機能と調節をプローブするのに用いられることが多い。TGR BioscienceおよびPerkinElmerが、キナーゼ調節をスクリーニングするにあたって有用かつそれができるHTSである、Surefire細胞キナーゼアッセイキットを開発している。このようなキットでは、Gi調節下流キナーゼ様ERK1/2をモニタリングできる。このアッセイは、Gi共役受容体(APJなど)活性化時のERK1/2キナーゼリン酸化の増大を測定可能にし、このシグナルを用いてGi共役受容体モジュレーターをアッセイすることができる。同様のキットを利用して、MAPおよびBADなどの他の経路依存性シグナルキナーゼをアッセイしてもよい。
【0322】
IN VIVOアッセイ
Gタンパク質共役受容体APJは、心不全、高血圧症、HIV感染、腫瘍学を含むいくつかの治療分野で重要である。本発明のAPJ化合物(アゴニスト、アンタゴニスト、モジュレーター)は、好適なin vivoモデルを用いて評価可能なものである。このようなin vivoモデルとしては、心不全および高血圧症の齧歯類モデルあるいは、単離された灌流心臓での心収縮力の評価があげられる。
【0323】
高血圧自然発生ラット(SHR)が、慢性心室圧オーバーヘッドの特に有用な急性ラットモデルであるのに対し、オスのwt WistarまたはSHRラットにおける平均動脈圧は、血圧トランスデューサを介して頸動脈での大腿カニューレ挿入によって評価可能である(Regul. Pept. 2001:99:87)。また、単離されたラット心臓調製物を用いて、アペリンの変力作用が示されており、よって、これを用いてAPJアゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターを評価可能であった(Circ. Res 2002; 91(5):434〜40)。さらに多くの心不全慢性モデルについては、有用な模範モデルに大動脈バンディングを用いたマウスがある(Circ Res.2007:101:e32〜e42)。
【0324】
マウスおよびラットのランゲンドルフ心臓調製物を用いて、アペリンおよびAPJpepducinが標的組織に対しておよぼす直接的な心作用をキャラクタライズした(Szokodi, Circ. Res 2002:91 434〜440)。心臓を118 NaCl、4.7 KCl、1.2 KH2PO4、1.5 CaCl、1.2 MgCl、23 NaHCO、10.0 デキストロースで灌流(単位mM)し、95%O−5%COガスで処理し、pH7.4に調節した。感圧バルーンカテーテルをLV腔に挿入し、発生圧力の変化を記録した。心拍数、平均ピーク収縮期血圧、平均拡張終期血圧、発生圧力、dP/dt max、dP/dt minなどの標準的なパラメータを測定することで、心機能を評価した。発生圧力の増加は、APJ、アペリンについての内因性リガンドの周知の変力作用と一致している。図2Aに、内因性リガンドアペリン−13がマウスの心機能に対しておよぼす作用を示す。15分の時点での発生圧力の増加は、天然APJリガンドアペリンの周知の変力作用と一致している。同様に、図2Bに、化合物12が心臓組織を機能させるにあたって変力活性を呈することを示す。これは、APJ受容体でのアゴニストと一致している。
【0325】
本明細書に引用したすべての特許、公開公報ならびに参考文献での教示内容全体を、本明細書に援用する。
【0326】
以上、実施形態を参照して本発明について特に図示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に対して諸々の変更をほどこし得ることは、当業者であれば理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
T−L−P
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Pは、APJ受容体の細胞内i1、i2、i3ループまたは細胞内i4ドメインの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含むペプチドであり、
Lは、C(O)で表され、N末端アミノ酸残基のN末端窒素でPに結合されるリンキング部分であり、
Tは、Lに結合される親油性テザー部分であり、PのC末端アミノ酸残基が官能化されていてもよい、化合物。
【請求項2】
Pが少なくとも6個の近接したアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Pが前記i1ループから誘導され、以下の構造式
−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、トリプトファン残基、バリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはセリン残基、グルタミン酸残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基、アラニン残基またはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはリシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基、アラニン残基またはリシン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基、アスパラギン酸残基、アラニン残基またはアルギニン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基またはアラニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはアスパラギン酸残基であり、
16は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基、バリン残基、アラニン残基またはイソロイシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基、アラニン残基またはフェニルアラニン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはイソロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
ただし、X〜X19の少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、X、X、X10、X11、X12、X13、X14のうちの少なくとも4個が存在する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、および
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンである、
請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
、X、XまたはX10のうちの少なくとも1つがアラニンである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである、
請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、アルギニンまたはアラニンであり、
が、グルタミン酸、アラニンまたはプロリンであり、
が、リシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸、D−2,3−ジアミニオンプロピオン酸またはD−オルニチンであり、
10が、アルギニン、アラニンまたはリシンであり、
11が、アルギニンまたはアラニンであり、
12が、セリン、アスパラギン酸、アラニンまたはアルギニンであり、
13が、アラニンまたはセリンであり、
14が、アスパラギン酸またはアラニンである、
請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
、X、X、X10、X11、X12、X13またはX14のうちの少なくとも1つがアラニンである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がアルギニンであり、
がグルタミン酸であり、
がリシンであり、
10がアルギニンである、
請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
11がアルギニンであり、
12がセリンであり、
13がアラニンであり、
14がアスパラギン酸である、
請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


または上記のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項14】
Pが、前記i1ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Pが、以下の配列:TVFRSSREKRRSADIFI(配列番号1)から誘導される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Pが、
TVFRSSREKRRSADIFI (配列番号1);
AVFRSSREKRRSADIFI (配列番号2);
TAFRSSREKRRSADIFI (配列番号3);
TVARSSREKRRSADIFI (配列番号4);
TVFASSREKRRSADIFI (配列番号5);
TVFRASREKRRSADIFI (配列番号6);
TVFRSAREKRRSADIFI (配列番号7);
TVFRSSAEKRRSADIFI (配列番号8);
TVFRSSRAKRRSADIFI (配列番号9);
TVFRSSREARRSADIFI (配列番号10);
TVFRSSREKARDADIFI (配列番号11);
TVFRSSREKRASADIFI (配列番号12);
TVFRSSREKRRAADIFI (配列番号13);
TVFRSSREKRRSAAIFI (配列番号14);
TVFRSSREKRRSADAFI (配列番号15);
TVFRSSREKRRSADIAI (配列番号16);
TVFRSSREKRRSADIFA (配列番号17);
tVFRSSREKRRSADIFI (配列番号18);
TvFRSSREKRRSADIFI (配列番号19);
TVfRSSREKRRSADIFI (配列番号20);
TVFrSSREKRRSADIFI (配列番号21);
TVFRsSREKRRSADIFI (配列番号22);
TVFRSsREKRRSADIFI (配列番号23);
TVFRSSrEKRRSADIFI (配列番号24);
TVFRSSReKRRSADIFI (配列番号25);
TVFRSSREKrRSADIFI (配列番号26);
TVFRSSREKRrSADIFI (配列番号27);
TVFRSSREKRRSADiFI (配列番号28);
TVFRSSREKRRSADIFi (配列番号29);
TVFRSSREKRRsADIFI (配列番号30);
TVFRSSREKRRSaDIFI (配列番号31);
TVFRSSREKRRSAdIFI (配列番号32);
TVFRSSREkRRSADIFI (配列番号33);
TVFWSSREKRRSADIFI (配列番号34);
VFRSSREKRRSADIFI (配列番号35);
FRSSREKRRSADIFI (配列番号36);
SSREKRRSADIFIAS (配列番号37);
RSSREKRRSADIFI (配列番号38);
FRSSREKRRSADIA (配列番号39);
FRSSREKRRSADIV (配列番号40);
TVFRSSREKRRSAD (配列番号41);
SSREKRRSADIFIA (配列番号42);
VSSREKRRSADIFI (配列番号43);
SSREKRRSADIFI (配列番号44);
FRSSREKRRSADI (配列番号45);
FRSSREKRRSAD (配列番号46);
SREKRRSADIFI (配列番号47);
REKRRSADIFI (配列番号48);
RSSREKRRSAD (配列番号49);
REKRRSADIF (配列番号50);
SSREKRRSAD (配列番号51);
REKRRSADI (配列番号52);
SREKRRSAD (配列番号53);
EREKRRSAD (配列番号54);
REKRRSAD (配列番号55)
から選択される配列である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Pが前記i2ループから誘導され、以下の構造式
−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y−Y10−Y11−Y12−Y13−Y14−Y15−Y16−Y17−Y18−Y19−Y20−Y2122−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはチロシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはアスパラギン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはロイシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはバリン残基またはロイシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアラニンであり、ただし、Y〜Y22のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、Y14のうちの少なくとも3個が存在する、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
がアルギニン残基であり、
がプロリン残基であり、
10がバリン残基であり、
11がアラニン残基である、
請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
12がアスパラギン残基であり、
13がアラニン残基であり、
14がアルギニン残基であり、
15がロイシン残基である、
請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
【化14】


【化15】


【化16】


【化17】


【化18】


または上記のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
Pが、前記i2ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
Pが、以下の配列:DRYLAIVRPVANARLRLRVSGA(配列番号56)から誘導される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
Pが、
DRYLAIVRPVANARLRLRVSGA (配列番号56);
LAIVRPVANARLRLRVSG (配列番号57);
AIVRPVANARLRLRVSG (配列番号58);
IVRPVANARLRLRVSG (配列番号59);
VRPVANARLRLRVSG (配列番号60);
RPVANARLRLRVSG (配列番号61);
VRPVANARLRLRVS (配列番号62);
AIVRPVANARLRL (配列番号63);
RPVANARLRLRVS (配列番号64);
VRPVANARLRLLL (配列番号65);
VRPVANARLRLRV (配列番号66);
RPVANARLRLRV (配列番号67);
VRPVANARLRLR (配列番号68);
RPVANARLRLR (配列番号69);
VRPVANARLRL (配列番号70);
RPVANARLRL (配列番号71);
VRPVANARLR (配列番号72);
VRPVANARL (配列番号73)
から選択される配列である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Pが前記i3ループから誘導され、以下の構造式
Pは、Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z−Z10−Z11−Z12−Z13−Z14−Z15−Z16−Z17−Z18−Z19−Z20−Z21−Z22−Z23−Z24−Z25−Z26−Z27−Z28−Z29−Z30−Rである
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはトレオニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基またはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基またはセリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
は、存在しないか、あるいはヒスチジン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基であり、
13は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
15は、存在しないか、あるいはグルタミン酸残基またはグリシン残基であり、
16は、存在しないか、あるいはグリシン残基であり、
17は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
18は、存在しないか、あるいはアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19は、存在しないか、あるいはリシン残基であり、
20は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
21は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
22は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
23は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
24は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、
25は、存在しないか、あるいはセリン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基であり、
26は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
27は、存在しないか、あるいはイソロイシン残基であり、
28は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
29は、存在しないか、あるいはバリン残基であり、
30は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、Z〜Z30のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19のうちの少なくとも4個が存在する、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
12がグルタミン酸残基であり、
13は、アルギニン残基であり、
14がイソロイシン残基であり、
15がグルタミン酸残基またはグリシン残基である、
請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
16がグリシン残基であり、
17がロイシン残基であり、
18がアルギニン残基またはグリシン残基であり、
19がリシン残基である、
請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
21、Z22、Z23、Z24、Z25のうちの少なくとも4個が存在する、請求項25に記載の化合物。
【請求項30】
21がアルギニン残基であり、
22がアルギニン残基であり、
23がロイシン残基であり、
24がロイシン残基であり、
25が、セリン残基あるいは、アラニン残基、フェニルアラニン残基またはトリプトファン残基である、
請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
25がアラニン残基である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
、Z、Z、Zが存在する、請求項25に記載の化合物。
【請求項33】
がグルタミン残基であり、
がトレオニン残基であり、
がイソロイシン残基であり、
がアラニン残基である、
請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
がグリシン残基であり、
がセリン残基であり、
がグリシン残基であり、
がセリン残基である、
請求項32に記載の化合物。
【請求項35】
【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


または上記のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項36】
Pが、前記i3ループの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
Pが、以下の配列:IAQTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLSIIVVL(配列番号74)から誘導される、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
Pが、
IAQTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLSIIVVL (配列番号74);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号75);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号76);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLF (配列番号77);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRLLW (配列番号78);
GSGSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号79);
SGSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号80);
IAGHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号81);
QTIAGHFRKERIEGLRKRRRL (配列番号82);
GSGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号83);
SGHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号84);
GHFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号85);
QTIAGHFRKERIEGLRKRR (配列番号86);
GHFRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号87);
HFRKERIEGLRKRRRLLS (配列番号88);
QTIAGHFRKERIEGLRK (配列番号89);
FRKERIEGLRKRRRLLA (配列番号90);
RKERIEGLRKRRRLLS (配列番号91);
ERIEGLRKRRRLLSII (配列番号92);
HFRKERIEGLRKRRRL (配列番号93);
FRKERIGGKRRRLLA (配列番号94);
ERIEGLRKRRRLLS (配列番号95);
HFRKERIEGLRKRR (配列番号96);
QTIAGHFRKERI (配列番号97);
EGLRKRRRLLA (配列番号98);
QTIAGHFRKER (配列番号99)
から選択される配列である、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
Pが前記i4ドメインから誘導され、以下の構造式
−M−M−M−M−M−M−M−M−M10−M11−M12−M13−M14−R
で表されるか、その薬学的に許容される塩であり、
式中、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアスパラギン酸残基であり、
は、存在しないか、あるいはプロリン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはフェニルアラニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアルギニン残基であり、
は、存在しないか、あるいはグルタミン残基であり、
は、存在しないか、あるいはアラニン残基であり、
10は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
11は、存在しないか、あるいはトレオニン残基であり、
12は、存在しないか、あるいはセリン残基であり、
13は、存在しないか、あるいはメチオニン残基であり、
14は、存在しないか、あるいはロイシン残基であり、ただし、M〜M14のうちの少なくとも5個が存在し、
は、ORまたはN(Rであり、
各Rは独立に、水素または(C〜C10)アルキルであり、
0〜5個のアミノ酸残基がD配置で存在する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項40】
がアスパラギン酸残基であり、
がプロリン残基であり、
がアルギニン残基であり、
がフェニルアラニン残基である、
請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
Pが、前記i4ドメインの少なくとも3個の近接したアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
Pが、以下の配列:FFDPRFRQACTSMLCCGQSRCAGTSHSSSGEKSASYSSGHSQGPGPNMGKGGEQMHEKSIPYSQETLVVD(配列番号100)から誘導される、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
Pが、
FFDPRFRQASTSML (配列番号101);
FDPRFRQASTSML (配列番号102);
DPRFRQASTSML (配列番号103)
から選択される配列である、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
Tが、置換されていてもよい(C〜C30)アルキル、(C〜C30)アルケニル、(C〜C30)アルキニルであり、0〜3個の炭素原子が、酸素、硫黄、窒素またはこれらの組み合わせで置換される、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項45】
Tが、CH(CH16、CH(CH15、CH(CH14、CH(CH13、CH(CH12、CH(CH11、CH(CH10、CH(CH、CH(CH、CH(CHOPh−、CH(CHC=C(CH、CH(CH11O(CH、CH(CHO(CHからなる群から選択される、請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
Tが脂肪酸誘導体である、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項47】
前記脂肪酸が、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレイン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
Tが胆汁酸誘導体である、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項49】
前記胆汁酸が、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、コラン酸、コール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、イソウルソデオキシコール酸、ラゴデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ヒオコール酸、ヒオデオキシコール酸からなる群から選択される、請求項48に記載の化合物。
【請求項50】
Tが、ステロール;プロゲスターゲン;糖質コルチコイド;ミネラルコルチコイド;アンドロゲン;エストロゲンから選択される、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項51】
Tが、
【化23】


から選択される、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項52】
TLが、
CH(CH15−C(O);
CH(CH13−C(O);
CH(CHO(CHC(O);
CH(CH10O(CHC(O);
CH(CHC=C(CH−C(O);
LCA−C(O);
CH(CHOPh−C(O)
から選択され、
【化24】


である、請求項1〜12、14〜20、22〜34および36〜43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項53】
心疾患、癌、糖尿病、幹細胞輸送、体液恒常性、細胞増殖、免疫機能、肥満症、転移性疾患、HIV感染を、その治療が必要な患者において治療する方法であって、請求項1〜52のいずれか1項に記載の化合物を有効量で、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項54】
前記心疾患が高血圧症および心不全から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記心不全が鬱血性心不全である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項1〜55のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容されるキャリアとを含む、医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2012−507523(P2012−507523A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534531(P2011−534531)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/005974
【国際公開番号】WO2010/053545
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511107522)アンカー セラピューティクス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】