説明

APO−2リガンド/TRAIL変異体とその使用法

【課題】Apo−2リガンド変異体ポリペプチドを提供する。
【解決手段】Apo−2リガンド/TRAILの天然配列中に一又は複数のアミノ酸置換を含むApo−2リガンド/TRAIL変異体。Apo−2リガンド/TRAIL変異体はシステイン置換を含み得る。Apo−2リガンド/TRAIL変異体ポリペプチドを含み、これはポリ(エチレングリコール)2000などの1又は複数のポリオール群に対して抱合又は結合する。そのようなApo−2リガンド/TRAIL変異体をコードする核酸分子、及びApo−2リガンド/TRAIL変異体をコードする核酸分子を含むベクターと宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、Apo−2リガンド/TRAIL変異体、そのような変異体の調製方法、及びそのような変異体を利用した組成物とアッセイに関する。特に、本発明は、天然配列Apo−2リガンド/TRAILとは異なり、Apo−2リガンド/TRAILレセプターのDR4及びDR5に対して結合親和特性を有するApo−2リガンド/TRAIL変異体に関する。加えて、本発明は、システイン置換を有することにより、例えば、ポリエチレングリコール等の部分による化学修飾を促進できるApo−2リガンド/TRAIL変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
哺乳動物における細胞数のコントロールは、細胞増殖と細胞死のバランスにより部分的に決定されると考えられている。しばしば壊死性細胞死と称される細胞死の一形態は、典型的には、ある種の外傷又は細胞傷害の結果生じる細胞死の病理的形態として特性付けられる。これに対して、通常は規則的又はコントロールされた状態で進行する細胞死の他の「生理的」形態がある。細胞死のこの規則的又はコントロールされた形態は、しばしば「アポトーシス」と称される[例えば、Barr et al., Bio/Technology, 12:487-493(1994);Steller et al., Science, 267:1445-1449(1995)を参照]。アポトーシス性細胞死は、免疫系におけるクローン選択と胚の発達を含む多くの生理的プロセスにおいて自然に生じる[Itoh et al., Cell, 66:233-243(1991)]。
【0003】
様々な分子、例えば腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーのメンバーとして同定されている[例えば、Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404(1995);Schmid et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtry et al., Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pitti et al., J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996);Wiley et al., Immunity, 3:673-682(1995);Browning et al., Cell, 72:847-856(1993);Armitage et al., Nature, 357:80-82(1992), 1997年1月16日公開の国際公開97/01633;1997年7月17日公開の国際公開97/25428;Marsters et al., Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheportiche et al., Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahne et al., J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開の国際公開98/28426;1998年10月22日公開の国際公開98/46751;1998年5月7日公開の国際公開98/18921;Moore et al., Science, 285:260-263(1999);Shu et al., J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneider et al., J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyay et al., J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。これらの分子のなかでも、TNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド、Apo−2リガンド(Apo2L/TRAIL)及びApo-3リガンド(TWEAK)は、アポトーシス性細胞死に関与していることが報告されている。
【0004】
Apo−2L/TRAILはサイトカインのTNFファミリーのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWiley et al., Immunity, 3:673-682 (1995);Pitti et al., J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);2001年9月4日発行の米国特許第6284236を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素による切断を通して、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Mariani et al., J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitz et al., Molec. Cell, 4:563-571 (1999); Hymowitz et al., Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitz et al.;Bodmer et al., J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
Apo2L/TRAILは、リウマチ様関節炎のような自己免疫疾患を含む免疫系の調節に役割を担っている可能性があることが文献において報告されている[例えば、Thomas et al., J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsen et al., Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffith et al., J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Song et al., J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)]。
【0005】
Apo−2L/TRAILの可溶型はまた大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含むインビトロの様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWiley et al.;上掲のPitti et al.;Rieger et al., FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenazi et al., J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczak et al., Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane et al., Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutani et al., Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yu et al., Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyan et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法又は放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenazi et al.;上掲のWalzcak et al.;Gliniak et al., Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyan et al.;Roth et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999)を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenazi et al.;上掲のWalzcak et al.]。JoらはApo−2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Jo et al., Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、死亡対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrence et al., Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qin et al., Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0006】
TNFファミリーのサイトカインが介在する種々の細胞応答の誘導は、特異的な細胞レセプターに結合することにより開始されると考えられている。約55-kDa(TNFR1)と75-kDa(TNFR2)の2つの異なるTNFレセプターが同定され[Hohman et al., J. Biol. Chem., 264:14927-14934(1989);Brockhaus et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131(1990);1991年3月20日に公開された欧州特許第417563号]、両者のレセプター型に対応するヒト及びマウスcDNAが単離され特徴付けられている[Loetscher et al., Cell, 61:351(1990);Schall et al., Cell, 61:361(1990);Smith et al., Science, 248:1019-1023(1990);Lewis et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834(1991);Goodwin et al., Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026(1991)]。広範な多型が両方のTNFレセプター遺伝子に伴っている[例えばTakao et al., Immunogenetics, 37:199-203 (1993)]。両方のTNFRが細胞外、膜貫通及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有している。双方のレセプターの細胞外部分はまた可溶型TNF結合タンパク質として天然に見出されている[Nophar, Y et al., EMBO J., 9:3269(1990);及びKohno, T et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8331(1990)]。組換え可溶型TNFレセプターのクローニングはHale等[J. Cell. Biochem. 増補15F, 1991, p.113(P424)]によって報告されている。類似のプロリンリッチ領域がTNFR2に見出されるが、TNFR1では見出されない。
【0007】
1型又は2型のTNFR(TNFR1及びTNFR2)の細胞外部分は、NH-末端から出発して、1から4と命名される4つのシステインに富んだドメイン(CRD)の反復アミノ酸配列パターンを含む。各CRDは約40アミノ酸長で、よく保存されている位置に4から6のシステイン残基を含んでいる[Schall et al., 上掲;Loetscher et al., 上掲;Smith et al., 上掲;Nophar et al., 上掲;Kohno et al., 上掲]。TNFR1において、4つのCRDのおおよその境界は次の通りである:CRD1−約14から約53までのアミノ酸;CRD2−約54から約97までのアミノ酸;CRD3−約98から約138までのアミノ酸;CRD4−約139から約167までのアミノ酸。TNFR2において、CRD1は17から約54までのアミノ酸;CRD2−約55から約97までのアミノ酸;CRD3−約98から約140までのアミノ酸;及びCRD4−約141から約179までのアミノ酸を含む[Banner et al., Cell, 73:431-435 (1993)]。リガンド結合におけるCRDの潜在的な役割はまた上掲のBannerらに記載されている。
【0008】
CRDの類似の反復パターンが、p75神経成長因子レセプター(NGFR)[Johnson et al., Cell, 47:545(1986);Radek et al., Nature, 325:593(1987)]、B細胞抗原CD40[Stamenkovic et al., EMBO J., 8:1403(1989)]、T細胞抗原OX40[Mallet et al., EMBO J., 9:1063(1990)]及びFas抗原[Yonehara et al., J. Exp. Med. 及びItoh et al., Cell, 66:233-243(1991)]を含む幾つかの他の細胞表面タンパク質に存在している。また、CRDはショープ(Shope)及び粘液腫ポックスウィルスの可溶型TNFR(sTNFR)様のT2タンパク質にも見出されている[Upton et al., Virology, 160:20-29(1987);Smith et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 176:335(1991);Upton et al., Virology, 184:370(1991)]。これらの配列の最適なアラインメントは、システイン残基の位置が良好に保存されていることを示している。これらレセプターは、しばしば集合的に、TNF/NGFレセプタースーパーファミリーのメンバーと称される。p75NGFRに関する最近の研究では、CRD1の欠失[Welcher A.A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:159-163 (1991)]又はこのドメインでの5-アミノ酸の挿入がNGF結合には殆ど又は全く効果がないことを示した[上掲のYan, H. and Chao, M.V.]。p75NGFRはそのCRD4及び膜貫通領域の間に約60のアミノ酸のプロリンリッチなストレッチを含んでおり、これはNGF結合には関与していない[Peetre, C. et al., Eur. J. Hematol., 41:414-419 (1988);Seckinger, P et al., J. Biol. Chem., 264:11966-11973 (1989);上掲のYan, H. and Chao, M.V.]。
【0009】
リンホトキシン-αを除き、今日までに同定されているTNFファミリーのリガンドは、II型の膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外にある。これに対して、今日までに同定されているTNFレセプター(TNFR)ファミリーのほとんどのレセプターはI型の膜貫通タンパク質である。しかしながら、TNFリガンド及びレセプターファミリーの双方において、ファミリーメンバー間で同定された相同性は、主として細胞外ドメイン(「ECD」)において見出されている。TNF-α、Apo-1リガンド及びCD40リガンドを含むTNFファミリーサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク分解的に切断され;それぞれの場合に得られるタンパク質は、典型的には、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体分子を形成する。また、TNFレセプターファミリーのタンパク質は、通常、タンパク分解的に切断され、同族のサイトカインの阻害剤として機能し得る可溶性レセプターのECDを放出する。
最近になって、TNFRファミリーの他のメンバーが同定されている。このような新たに同定されたTNFRのメンバーは、CAR1、HVEM及びオステオプロテジェリン(OPG)[Brojatsch et al., Cell, 87:845-855 (1996);Montgomery et al., Cell, 87:427-436 (1996);Marsters et al., J.Biol.Chem., 272:14029-14032 (1997);Simonet et al., Cell, 89:309-319 (1997)]を含む。上掲のSimonetらは、他の周知のTNFR様分子とは異なり、OPGは疎水性の膜貫通−スパニング配列を含まないと報告している。下記にて検討されているように、OPGはデコイ(囮)レセプターのように作用すると考えられている。
【0010】
Panらは、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリーのメンバーを開示している[Pan et al., Science, 276:111-113(1997)]。DR4は細胞自殺機構に関与可能な細胞質デスドメインを含むと報告されている。Panらは、DR4がApo−2リガンド又はTRAILとして知られているリガンドに対するレセプターであると考えられることを開示している。
Sheridan et al., Science, 277: 818-821 (1997)及びPan et al., Science, 277: 815-818 (1997)においては、Apo−2L/TRAILに対するレセプターと思われる他の分子が記載されている[1998年11月19日に公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629もまた参照のこと]。この分子は、DR5と呼ばれる(あるいは、Apo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている[Screaton et al., Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak et al., EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu et al., Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1998年2月25日公開の国際公開99/09165;1999年3月11日公開の国際公開99/11791])。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含み、アポトーシスをシグナル伝達可能であると報告されている。Apo−2L/TRAIL及びDR5の間に形成される複合体の結晶構造はHymowitz et al., Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0011】
最近同定されたTNFRファミリーメンバーの更なるグループは、「デコイレセプター」と称され、シグナル伝達トランスデューサーというよりはむしろ阻害剤として機能すると考えられている。このグループには、DCR1(TRID、LIT又はTRAIL-R3とも称される)[Pan et al., Science, 276:111-113(1997);Sheridan et al., Science, 277:818-821 (1997);McFarlane et al., J. Biol. Chem., 272:25417-25420(1997);Schneider et al., FEBS Letters, 416:329-334(1997);Degli-Esposti et al., J. Exp. Med., 186:1165-1170(1997);及びMongkolsapaya et al., J. Immunol., 160:3-6(1998)]及びDCR2(TRUNDD,又はTRAIL-R4とも称される)[Marsters et al., Curr. Biol., 7:1003-1006(1997);Pan et al., FEBS Letters, 424:41-45(1998);Degli-Esposti et al., Immunity, 7:813-820(1997)]が含まれ、両者とも細胞表面分子であり、更にOPG[上掲のSimonet et al.]及びDCR3[Pitti et al., Nature, 396:699-703(1998)]も含まれ、これら両者は分泌性の可溶性タンパク質である。Apo−2L/TRAILはDcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合すると報告されている。
Apo−2L/TRAILは細胞表面「デスレセプター」DR4及びDR5を通して作用してカスパーゼ、又は細胞内細胞死プログラムを実施する酵素を活性化させると考えられている。[例えば、Salvesen et al., Cell, 91:443-446 (1997)を参照のこと]。リガンド結合の際、DR4とDR5は、双方共、FADD/Mort1[Kischkel et al., Immunity, 12:611-620 (2000);Sprick et al., Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmer et al., Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]と称されるデスドメイン含有アダプター分子を通してアポトーシス発動因子であるカスパーゼ-8を独立して補充し活性化することによってアポトーシスを惹起しうる。DR4及びDR5とは対照的に、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0012】
サイトカインのTNFファミリー及びそれらのレセプターの概説については、Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308(1998);Ashkenazi and Dixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753(1997);上掲のGruss and Dower、及びNagata, Cell, 88:355-365(1997);Locksley et al., Cell, 104:487-501 (2001);Wallach, “TNF Ligand and TNF/NGF Receptor Families", Cytokine Research, Academic Press, 377-411頁(2000)を参照のこと。
多様な境界面に関与するあるタンパク質のタンパク質-タンパク質相互作用において、亜鉛結合部位は構造的役割を担うことが示されているが[Feese et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 91:3544-3548(1994);Somers et al., Nature, 372: 478-481(1994);Raman et al., Cell, 95: 939-950(1998)]、TNFファミリー(CD40リガンド、TNF-α、又はTNF-β)で以前に構造的に特徴付けられたメンバーには、金属へ結合するものはない。ヒト成長ホルモン(hGH)ような種々のホルモンの製剤における亜鉛のような金属イオンの利用は、文献に記載されている。[例えば、1992年10月15日公開の国際公開92/17200を参照のこと]。レセプターへのhGHの結合における亜鉛の関与は同様に1992年3月5日公開の国際公開92/03478に記載されている。インターフェロン-α二量体及びインターフェロン-β二量体における亜鉛結合の役割は、それぞれWalter et al., Structure, 4:1453-1463(1996)及びKarpusas et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94:11813-11818(1997)に報告されている。亜鉛のような種々の金属イオンの構造的及び生物学的役割は、当該分野で概説されていおり、例えば、Christianson et al., Advances in Protein Chemistry, 42: 281-355(1991)を参照のこと。
【発明の概要】
【0013】
本発明はApo−2リガンド/TRAIL変異体を提供する。特に、本発明は、図1に示すApo−2リガンド/TRAILの天然配列(図1)中に一又は複数のアミノ酸置換を含むApo−2リガンド/TRAIL変異体を提供する。場合によっては、Apo−2リガンド/TRAIL変異体は図9に同定されるようなシステイン置換を含み得る。コレに関連する本発明の実施態様は、図9に示すApo−2リガンド/TRAIL変異体ポリペプチドを含み、これはポリ(エチレングリコール)2000などの1又は複数のポリオール群に対して抱合又は結合する。本発明はまた、そのようなApo−2リガンド/TRAIL変異体をコードする核酸分子、及びApo−2リガンド/TRAIL変異体をコードする核酸分子を含むベクターと宿主細胞を提供する。
本発明はまた、表II、III、VII及びVIIIに示すような置換を含むApo−2リガンド/TRAIL変異体を提供し、該置換により変異体のDR4レセプター及び/又はDR5レセプター結合特性が変更されている。驚くべきことに、表II、III、VII及びVIIIに示すようなApo−2リガンド/TRAIL変異体のDR4及び/又はDR5に関する結合親和性が(図1に示す天然Apo−2リガンドと比較して)変化し、さらにはDR4レセプター又はDR5レセプターに対する選択的結合親和性を示すことが分かった。本発明はまた、そのようなApo−2リガンド/TRAILをコードする核酸分子、並びにApo−2リガンド/TRAIL変異体をコードする核酸分子を有するベクター及び宿主細胞を提供する。
【0014】
本発明の更なる実施態様は、そのようなApo−2リガンド/TRAIL変異体を含む製造品及びキットを提供する。製造品及びキットには、容器、容器貼付ラベル、及び容器内に収容される薬剤が含まれる。容器貼付ラベルは、薬剤(又は薬剤を含む組成物)が特定の治療的又は非治療的用途に使用できるものであることを示す。薬剤は、本明細書に開示する1又は複数のApo−2リガンド/TRAIL変異体を含む。
加えて、本明細書に開示するApo−2リガンド/TRAIL変異体を使用する治療法及び非治療法が提供される。本発明の実施形態は、哺乳動物の細胞にアポトーシスを誘発する方法を含み、この方法は、DR4レセプター及びDR5レセプターからなる群から選択されたレセプターを発現する哺乳動物の細胞を、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチドの治療的有効量に接触させることを含む。本発明の更なる実施形態は、哺乳動物の癌を治療する方法を含み、本方法は、そのような哺乳動物に対し、単離されたApo−2リガンド変異体の有効量を投与することを含む。場合によっては、該方法において、癌は肺癌、乳癌、神経膠腫、大腸癌又は結腸直腸癌であり得る。本発明のさらなる実施形態は、哺乳動物の免疫関連疾患の治療法を含み、この方法は、そのような哺乳動物に対し、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量を投与することを含む。場合によっては、該方法において、免疫関連疾患は関節炎又は多発性硬化症であり得る。
【0015】
本発明の様々な実施形態を以下に挙げる:
1.図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチドの配列とは異なり、図1の(配列番号1)の残基位置のアミノ酸置換S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cのうち1又は複数を有するアミノ酸配列を含んでなる単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
2.図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、該変異が表IIに示す1又は複数のアミノ酸置換からなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
3.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR4レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項2のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
4.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項2のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
5.前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項4のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
6.前記DR4レセプターが図2A−2B(配列番号3)のアミノ酸1〜218を有する、請求項3のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
7.前記1又は複数のアミノ酸突然変異が天然Apo−2リガンド配列の位置189、193、199又は201に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項2のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
8.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項2のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
9.図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、
Y189A:R191K:Q193K、
Y189A:R191K:Q193K:H264A、
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q、
Y189A:R191K:Q193K:H264D:I266L:D267Q:D269E、及び
Y189A:R191K:Q193R:H264S:I266L:D269E
からなるグループから選択される、図1(配列番号1)の残基位置の1群(1セット)のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
10.図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を含んでなり、該突然変異が表IIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を含む、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
11.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項10のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
12.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項10のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
13.前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項12のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
14.前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項11のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
15.前記1又は複数のアミノ酸突然変異が天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項10のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
16.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項10のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
17.図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、該突然変異が表VIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を有する、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
18.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項17のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
19.前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項17のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
20.前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項19のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
21.前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項18のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
22.図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、図1(配列番号1)の残基位置に:
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q;
Y189Q:R191K:Q193R;及び
Y189Q:R191K:Q193R:I266L
からなるグループから選択される1群(1セット)のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
23.前記ポリペプチドが1又は複数のポリオールに抱合又は結合する、請求項1ないし22のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
24.前記ポリオールがポリエチレングリコールである、請求項23のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
25.前記ポリエチレングリコールの平均分子量が約1000から25000ダルトンである、請求項24のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
26.請求項1ないし22のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチドをコードするDNAを含む単離された核酸分子。
27.請求項26のコード化DNAを含むベクター。
28.請求項27のベクターを含む宿主細胞。
29.前記宿主細胞が大腸菌、CHO細胞又は酵母細胞である、請求項28の宿主細胞。
30.請求項28の宿主細胞を前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること、及び前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドを前記培養物から回収することを含む、Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの生成方法。
31.請求項1ないし25のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチドを含む組成物。
32.前記組成物が、1又は複数の二価金属イオンを含む、製薬的に許容可能な製剤を含む、請求項31の組成物。
33.DR4及び/又はDR5レセプターを発現する哺乳動物細胞を、請求項1ないし25のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチドに接触させることを含む、哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する方法。
34.哺乳動物の癌細胞を、請求項1ないし25のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量に接触させることを含む、癌治療法。
35.前記哺乳動物の癌細胞が、肺癌細胞、乳癌細胞、神経膠腫癌細胞、或いは大腸又は結腸直腸癌細胞を含む、請求項34の方法。
36.前記方法が、前記哺乳動物の癌細胞を、プロドラッグ、細胞障害剤、化学療法剤、成長阻害剤、又はサイトカインに接触させることを更に含む、請求項34の方法。
37.前記哺乳動物に対し、請求項1ないし25のいずれかのApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量を投与することを含む、哺乳動物の免疫関連疾患治療法。
38.前記免疫関連疾患が関節炎又は多発性硬化症である、請求項37の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒトApo−2リガンドcDNA(配列番号2)のヌクレオチド配列と、それに得られたアミノ酸配列(配列番号1)を示す。ヌクレオチド位置447(配列番号2)の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」又は「G」であることを示すために使用されている。
【図2A】完全長ヒトDR4レセプターのcDNAのヌクレオチド配列(配列番号4)と、それに得られたアミノ酸配列(配列番号3)を示す。ヒトDR4レセプターの対応するヌクレオチド配列とアミノ酸配列は、Pan et al., Science, 276:111 (1997)にも開示されている。
【図2B】完全長ヒトDR4レセプターのcDNAのヌクレオチド配列(配列番号4)と、それに得られたアミノ酸配列(配列番号3)を示す。ヒトDR4レセプターの対応するヌクレオチド配列とアミノ酸配列は、Pan et al., Science, 276:111 (1997)にも開示されている。
【図3A】1998年11月19日公開の国際公開98/51793に開示されているヒトDR5レセプターの411アミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図3B】1998年8月20日公開の国際公開98/35986に開示されている、ヒトDR5の別の形態である410アミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図3C】1998年8月20日公開の国際公開98/35986に開示されている、ヒトDR5の別の形態である410アミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図4A】Apo−2Lの結晶構造を示す。三重の軸に沿った三量体が示されている。単量体はみな同一である。残基120から始まるタンパク質構造は秩序正しく、残基131−141と195−201は乱れている(破線で示す)。対象な関係にある3つのシステインを含む亜鉛結合部位及び溶媒リガンドを図中の空白として示す。
【図4B】亜鉛結合部位の拡大立体斜視図である。Sγ−亜鉛−Sγ間の角度は112度であり、Sγ−亜鉛−溶媒間の角度は107度であり、このときの結合距離は亜鉛−硫黄間で2.3Å、及び亜鉛−溶媒間で2.3Åであった。図4BはプログラムMolscript[Kraulis et al., J. Appl. Cryst., 24:946-950 (1991)]及びRaster3D[Merrit et al., Acta Cryst., D50:869-873 (1994)]を用いて作成した。
【図4C】結晶学的データのまとめである。
【図5】選択したTNFファミリーメンバー、即ちApo2L(配列番号7);TNF−β(配列番号8);TNF−α(配列番号9);CD40(配列番号10);FasL(配列番号11);RANKL(配列番号12)の配列アラインメントを示す。配列の上の矢印は、Apo2L中のβ鎖を示す。整列させた配列上の番号は図1(配列番号1)に示したApo2L配列番号と対応している。
【図6】Apo−2Lの空間を満たすモデル上にマッピングした突然変異の分析を示す。アラニンに変異導入されたとき生理活性が5分の1未満に低下した残基を標識し、濃いグレーで示した。変異導入された他の残基が中程度の濃さのグレーで示され、うち数個が標識されている。
【図7A】Apo2L・DR5複合体(Hymowitz等, (1999) Mol. Cell. 4, 563)のX線結晶構造に見られる「パッチA」接触を示す。Apo2Lのバックボーンの跡と選択された側鎖が濃いグレーで、DR5のバックボーンの跡と選択された側鎖が薄いグレーで示されている。DR5のレセプター配列として配列番号5のアミノ酸143−157、及びDR4のレセプター配列として配列番号3のアミノ酸194−208が示されている。
【図7B】Apo2L・ECD複合体に決定されたX線構造を示す別の図である。
【図8A】Apo−2L変異体の同定に使用される一価のファージディスプレイの概略図である。
【図8B】Apo−2Lファージディスプレイライブラリーの実施形態を例示する。
【図8C】DR4(グレー)又はDR5(黒)への特異的結合のファージライブラリーの濃縮を示すグラフである。各回における濃縮は、空のウェルからの溶出に対する、レセプターでコーティングしたウェルから溶出されたファージの比として計算した。DR4−IgGへの結合についてDR4ライブラリーを5回ソーティングし、3−5回目には競合者としてDR5−IgGを含めた。DR5ライブラリーをDR5−IgGへの結合について8回ソーティングし、5−8回目には競合者としてDR4−IgGを含めた。
【図9】列挙された残基にシステイン置換を有する様々な天然及びペグ化Apo−2L変異体のED50比を示すグラフである。
【図10A】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10B】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10C】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10D】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10E】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10F】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図10G】Apo−2Lと、ポリエチレングリコール(PEG)及びヨードアセトアミド(IAM)等の成分で修飾したApo−2Lシステイン置換変異体の、アポトーシス誘発活性を示す。これらApo−2L分子のアポトーシス誘発活性を、SK−MES肺癌細胞とアラマーブルーアッセイを用いて評価した。「Apo2L.0」は配列番号1のアミノ酸114−281からなるApo−2リガンドを、「Apo2L.2」は配列番号1のアミノ酸91−281からなるApo−2リガンドを、「K179C.0−PEG」は、K179C置換変異体(つまり、配列中179の位置においてシステインが置換されたApo2Lの114−281アミノ酸形態)で、この残基に2000分子量のPEG成分が付加されているものを、「K179C.0−IAM」はこの残基にヨードアセトアミド成分が付加されているK179C置換変異体を、「R170C−5Kp」はこの残基に5000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、「R170C−20Kp」はこの残基に20000分子量のPEG成分が付加されている、部分的にペグ化されたR170C置換変異体を、それぞれ示す。
【図11】図11A及び11Bは、マウスにおける部分的にペグ化された5K及び20KのPEG−R170C又は2K−PEG−K179C及びApo2L.0の薬物動態を示す。0時間目に、マウスにApo2L.0(10mg/kg)又はPEG−R170C−Apo2L.0(10mg/kg)又は2K−PEG−K179Cを腹腔内注射した。これらのデータは、部分的にペグ化した変異体がApo2L.0よりも長い半減期を持つことを示す。
【図12】図12A及び12Bは、マウス異種移植モデルにおける部分的にペグ化されたApo−2Lシステイン置換変異体のヒトCOLO205腫瘍に対する効果を示す。胸腺欠損ヌードマウス(Jackson Laboratories)に5×10のCOLO205ヒト大腸癌細胞(NCI)を皮下注射した。腫瘍を形成させてノギス測定の結果約500−1500mmの体積になるまで成長させた。マウスにビヒクル(2×/週)、Apo2L.0(10mg/kg、2×/週)、又はペグ化したApo−2L変異体(10mg/kg、2×/週)を腹腔内注射した。3日ごとに腫瘍体積を測定し、2週間後に処置をやめた。
【図13】クリスタルバイオレットアッセイにおけるApo−2LとK179C−Apo2L.0のカニクイザルの肝細胞に対する効果を示す。
【図14】オンライン光分散検出器(MALS)(Wyatt Technology, Inc.)を備えたクロマトグラフシステムを使用したSuperdex200カラム(Amersham Biotech)上におけるサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)により5K又は20KのPEG−マレイミドを用いて部分的にペグ化されたR170C−Apo2Lの分析結果を示す。実線はUVトレースを表し、記号は光分散データから計算したモル質量を示す。
【図15】DR4−IgGを用いたDR4ライブラリークローンによる競合ファージELISAの結果を示す。ファージELISAではDR4−IgG及び抗M13抗体−HRPコンジュゲートでコーティングしたマイクロタイタプレートのウェルを使用して結合ファージを検出した。DR4−IgGの溶液濃度結合を増大することにより結合を競合させた。
【図16】DR5−IgGを用いたDR4ライブラリークローンによる競合ファージELISAの結果を示す。ファージELISAではDR4−IgG及び抗M13抗体−HRPコンジュゲートでコーティングしたマイクロタイタプレートのウェルを使用して結合ファージを検出した。DR5−IgGの溶液濃度結合を増大することにより結合を競合させた。
【図17】flagでタグをつけたApo2L/TRAIL突然変異体によるColo205大腸癌細胞上のアポトーシス誘発のアッセイを示す。Hymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640に開示された蛍光アッセイを使用してDR5選択性(パネルA)又はDR4選択性(パネルB)突然変異体を試験した。「抗Flag」とは、2μg/mLのM2抗体(Sigma)が特定の濃度のApo2L/TRAIL突然変異体と共に添加されていることを示す。曲線は4パラメータ式を用いた適合を示す。
【図18】Apo2L/TRAILのレセプター選択性突然変異体によるジャーカット細胞上のアポトーシス誘発のアッセイを示す。Hymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640に開示された蛍光アッセイを使用してDR5選択性(パネルA)又はDR4選択性(パネルB)突然変異体を試験した。「抗Flag」とは、2μg/mLのM2抗体(Sigma)が特定の濃度のApo2L/TRAIL突然変異体と共に添加されていることを示す。曲線は4パラメータ式を用いた適合を示す。
【図19】指定濃度の変異体Apo2L/TRAIL及び2μg/mLのM2抗体(Sigma)存在下におけるカニクイザル肝細胞の生存度を示す。クリスタルバイオレット染色を使用して肝細胞の生存度を測定した。
【図20】オンライン光分散検出器(MALS)(Wyatt Technology, Inc.)を備えたクロマトグラフシステムを用いたSuperdex200カラム(Amersham Biotech)上におけるサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)による2KPEG−K179C−Apo2L及びカルボキシアミドメチル化したK179C−Apo2L(IAM−K179C−Apo2L)の分析結果を示す。実線はUVトレースを表し、塗りつぶした四角の記号は光分散データから計算したモル質量を示す。
【図21】マウスにおけるペグ化K179C−Apo2L及びApo2L.0の薬物動態を示す。マウスに5mg/kg又は30mg/kgのタンパク質を静脈内注射した。指定の時間に血清試料を回収し、Apo2L濃度をELISAにより決定した。
【図22】マウス異種移植モデルにおけるCOLO205腫瘍の成長に対するペグ化K179C−Apo2Lの効果を示す。30mg/kgのApo2L.0又はペグ化K179C−Apo2Lを1回だけマウスに静脈内注射した。マウスの別のグループには、「標準的」な処置計画に対応する処置として、60mg/kgのApo2L.0を5回腹腔内投与した。
【0017】
好適な実施態様の詳細な説明
I.定義
「Apo−2リガンド」、「Apo−2L」、「Apo2L」、「Apo−2リガンド/TRAIL」及び「TRAIL」という用語は、ここでは図1(配列番号1)に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114−281、95−281、残基92−281、残基91−281、残基41−281、残基39−281、残基15−281、又は残基1−281、並びに上記配列の生物学的に活性な断片、欠失、挿入、又は置換変異体を含むポリペプチド配列を意味するものとして互換可能に使用される。一実施態様では、ポリペプチド配列は図1(配列番号1)の残基114−281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は図1(配列番号1)の残基92−281又は残基91−281を含む。Apo−2Lポリペプチドは図1に示された天然ヌクレオチド配列によってコードされていてもよい。場合によっては、残基Pro119(図1;配列番号2)をコードするコドンは「CCT」又は「CCG」でありうる。場合によっては、断片又は変異体は生物学的に活性であり、上記の配列の何れか一と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。この定義には、その天然のアミノ酸の少なくとも一がアラニン残基のような他のアミノ酸によって置換されているApo−2リガンドの置換変異体が包含される。随意的な置換変異体は、以下の図9及び表II、III、VII及びVIIIに特定された残基の置換の一又は複数を含む。定義には、組換え又は合成法によって調製された、又はApo−2リガンド源から単離された天然配列Apo−2リガンドもまた包含される。本発明のApo−2リガンドは1997年1月16日公開の国際公開97/01633、1997年7月17日公開の国際公開97/25428、1999年7月22日公開の国際公開99/36535、2001年1月4日公開の国際公開01/00832、2002年2月7日公開の国際公開02/09755、及び2000年12月14日公開の国際公開00/75191に開示されたApo−2リガンド又はTRAILと称されるポリペプチドを含む。本用語は、一般に、ポリペプチドの単量体、二量体、三量体、六量体又は命令オリゴマーを含むApo−2リガンドの形態を意味するものとして使用される。Apo−2L配列において言及されているアミノ酸残基の全ての番号付けは、特に他の定義を述べない限り、図1(配列番号:1)における番号付けを使用している。例えば、「D203」又は「Asp203」は図1(配列番号:1)に与えられた配列中、位置203のアスパラギン酸残基を意味する。
【0018】
本明細書で使用する「Apo−2リガンド選択的変異体」という用語は、天然Apo−2リガンド配列に1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプター又はDR5レセプターに対して選択的な結合親和性を有するApo−2リガンドポリペプチドを指す。一実施形態では、Apo−2リガンド変異体はDR4レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、199、201、又は209のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Apo−2リガンド変異体はDR5レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269のいずれか1つに1又は複数のアミノ酸置換を含む。
好ましいApo−2リガンド選択的変異体は、1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンド変異体がDR4レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示す。さらに好ましくは、Apo−2リガンド変異体は、DR5レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドがDR5に対して示すより小さい(<)結合親和性を示す。このようなApo−2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo−2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo−2リガンド変異体の結合親和性はDR4レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR4選択性Apo−2リガンド変異体は、DR5レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR5レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo−2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo−2Lの結合特性と比較することができる。これについては実施例で後述する。本発明の好ましいDR4選択性Apo−2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性を実施例のアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR4選択性Apo−2リガンド変異体の、Apo−2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0019】
さらなる好ましいApo−2リガンド選択的変異体は、1又は複数のアミノ酸変異を含み、DR5レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドがDR5レセプターに対して示す以上(≧)の結合親和性を示し、さらに好ましくは、そのようなApo−2リガンド変異体は、DR4レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドがDR4に対して示すより小さい結合親和性を示す。このようなApo−2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo−2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性は、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、それより小さいか、殆ど消滅しており、ここでの目的のため、Apo−2リガンド変異体の結合親和性はDR5レセプターについて「選択性」であると考えられる。好ましい本発明のDR5選択性Apo−2リガンド変異体は、DR4レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)10分の1以下の結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR4レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)100分の1以下の結合親和性を有する。Apo−2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、本技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形式等の)天然Apo2Lの結合特性と比較することができる。これについては実施例で後述する。本発明の好ましいDR4選択性Apo−2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘発し、そのようなアポトーシス活性を実施例のアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR5選択性Apo−2リガンド変異体の、Apo−2Lのデコイレセプターのいずれかに対する結合親和性は、変化していても、していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと呼ぶ。
【0020】
本明細書に開示するApo−2リガンド変異体を省略して表記するため、天然配列Apo−2リガンドのアミノ酸配列(図1参照)に沿ったアミノ酸残基の位置に番号を付与する。アミノ酸の識別には以下のようなアミノ酸のアルファベット1文字を使用する。
Asp D アスパラギン酸
Thr T スレオニン
Ser S セリン
Glu E グルタミン酸
Pro P プロリン
Gly G グリシン
Ala A アラニン
Cys C システイン
Val V バリン
Met M メチオニン
Ile I イソロイシン
Leu L ロイシン
Tyr Y チロシン
Phe F フェニルアラニン
His H ヒスチジン
Lys K リジン
Arg R アルギニン
Trp W トリプトファン
Gln Q グルタミン
Asn N アスパラギン
【0021】
ここで使用される「DR4」及び「DR4レセプター」という用語は、Pan et al., Science, 276:111-113 (1997);1998年7月30日公開の国際公開98/32856;2002年1月29日発行の米国特許第6342363号;及び1999年7月29日公開の国際公開99/37684に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR4レセプターの完全長アミノ酸配列は、貼付図面の図2A−2Bに与えられている。DR4の細胞外ドメインを有するIg−融合タンパク質を以下の実施例に開示する。
ここで使用される「DR5」及び「DR5レセプター」という用語は、Sheridan et al., Science, 277:818-821 (1997);Pan et al., Science, 277:815-818 (1997)、2000年6月6日発行の米国特許第6072047号、1998年11月19日公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629;Screaton et al., Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak et al., EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu et al., Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870827号;1998年10月22日公開の国際公開98/46643;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1999年2月25日公開の国際公開99/09165;1999年3月11日公開の国際公開99/11791に記載されているレセプターの完全長可溶性細胞外ドメイン型を意味する。DR5レセプターは当該分野においてApo−2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている。ここで使用されるDR5という用語には、図3Aに提供された完全長411アミノ酸ポリペプチド及び図3B−3Cに提供された完全長440アミノ酸ポリペプチドが含まれる。DR5の細胞外ドメインを有するIg−融合タンパク質を以下の実施例に開示する。
【0022】
ここで使用される場合の「ポリオール」という用語は広義に多価アルコール化合物を意味する。ポリオールは例えば任意の水可溶型ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには、一又は複数のヒドロキシル位置に化学基、例えば1から4の炭素を有するアルキル基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを、ここでPEGについて記載した抱合技術を使用して用いることができることが分かるであろう。本発明のポリオールには当該分野でよく知られたもの及び公的に入手可能なもの、例えば商業的に利用可能な供給源からのものが含まれる。
「抱合(コンジュゲート)」という用語は、ここではその最も広い定義で使用され、共に接合(joined)又は結合(linked)されていることを意味する。分子は、接合されているように作用又は機能する場合、「抱合」されている。
【0023】
「細胞外ドメイン」又は「ECD」という用語は、膜貫通及び細胞質ドメインを本質的に持たないリガンド又はレセプターの型を意味する。通常、可溶性ECDは、そのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満だけ有する。
「Apo−2リガンド単量体」又は「Apo−2L単量体」という用語はApo−2Lの細胞外ドメイン配列の共有結合鎖を意味する。
「Apo−2リガンド二量体」又は「Apo−2L二量体」という用語はジスルフィド結合を介して共有結合によって結合した二つのApo−2L単量体を意味する。ここで使用される該用語には、Apo−2Lの三量体型内にあるApo−2L二量体及び遊離しているApo−2L二量体が含まれる(すなわち、他のApo−2L単量体と結合している)。
「Apo−2リガンド三量体」又は「Apo−2L三量体」という用語は非共有的に結合している(associated)三つのApo−2L単量体を意味する。
【0024】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したApo−2リガンド、又はApo−2リガンド変異体、又はそれらの部分等のタンパク質を含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、抗体が産生され得るモノに対するエピトープを提供するのに十分な残基を有しているが、Apo−2リガンド又はApo−2リガンド変異体の活性を阻害しないよう十分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8から約50のアミノ酸残基(好ましくは約10から約20の残基)を有する。
「二価の金属イオン」という用語は、二つの正電荷を有する金属イオンを称する。本発明において使用される二価金属イオンの例には、限定されるものではないが、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム、及びマンガンが含まれる。かかる金属の特定の形態は塩形態(例えば、製薬剤的に許容可能な塩形態)、例えば、上述の二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩形態を含むものが用いられうる。本発明において使用される好適な二価金属イオンは、亜鉛、より好ましくはその塩形態、硫酸亜鉛である。ここにおいて記載の二価金属イオンは、好ましくは、例えば、(1)所望する期間にわたってApo−2L三量体の貯蔵安定性を高め、(2)組換え細胞培養又は精製法においてApo−2L三量体の生産又は収量を高め、(3)Apo−2L三量体の溶解性を高め(又は凝集性を低下させ)、又は(4)Apo−2L三量体の形成を高めるのに十分な濃度又は量(例えば有効量)で用いられる。
【0025】
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療的な使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで充分なほど精製される。Apo−2リガンドの自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツでのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
「単離された」Apo−2リガンド核酸分子は、同定され、Apo−2リガンド核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたApo−2リガンド核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたApo−2リガンド核酸分子は、天然の細胞中に存在するApo−2リガンド核酸分子とは区別される。しかし、単離されたApo−2リガンド核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるApo−2リガンドを通常発現する細胞に含まれるApo−2リガンド核酸分子を含む。
【0026】
ここで特定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要ならば最大のパーセント配列同一性を得るために間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、Apo−2リガンド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法で達成可能であり、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要なアルゴリズムを割り当てることを含み、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸同一性値は、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードが米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、South San Francisco, CAを通して公に入手可能である。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適なコントロール配列は、例えばプロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0027】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合する」とは、結合されたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
ここにおける目的のための「生物学的に活性」又は「生物学的活性」は、(a)インビボ又はエキソビボで少なくとも一種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)又はウイルス感染細胞において、アポトーシスを誘導し又は刺激する能力を有すること;(b)抗体を産生することが可能であること、すなわち免疫原性であること;(c)DR4、DR5、DcR1、DcR2、又はOPG等のApo−2L/TRAILのレセプターへ結合し及び/又はこれを刺激することが可能あること;又は(d)天然又は天然に生じるApo−2Lポリペプチドの活性を保持することを意味する。
【0028】
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、細胞質の凝結、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を典型的に伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を指す。この活性は、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析、DNA電気泳動法により決定し測定することができる。
「癌」、「癌性」及び「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、黒色腫、肉腫、及び白血病を含む癌腫が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、多形神経膠芽腫、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌及び肝細胞腫などの肝臓癌、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、骨髄腫(多発性骨髄腫等)、唾液腺癌、腎細胞癌及びウィルム腫瘍等の腎臓癌、基底細胞癌、黒色腫、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、及び神経芽細胞び頭部及び頸部の様々な癌が含まれる。
【0029】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患等の炎症性及び線維性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
本明細書の「自己免疫疾患」という語は広義で使用され、一般的な意味で、自己の組織成分に対する個体の体液又は細胞の免疫反応から正常又は健康な組織の破壊が生じる、哺乳動物の障害、又は状態を指す。例として、これらに限定するものではないが、エリテマトーデス、甲状腺炎、リウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症、自己免疫糖尿病、及び炎症性腸疾患(IBD)が挙げられる。
【0030】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤(parent drug)に比較して癌細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化されるか又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman,「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting, Belfast (1986),及びStella et al.,「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt et al.(編), pp.247-267, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、これらに限られないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、サルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、後述の化学療法剤が含まれる。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は抑制し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び小分子毒素又は細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素等の毒素、並びにそれらの断片及び/又は変異体を含むことを意図する。
【0031】
「化学療法剤」は、癌のような状態の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin );デュカロマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin );サルコデイチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin );クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγI及びカリケアマイシンθI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カリミノマイシン(carminomycin)、カルチノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)のようなマイトマイシン(mitomycins);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin )のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0032】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、成長阻害剤は、S期でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを含む。G1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami et al., (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0033】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αあるいはTGF−βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン−α、−β、及び−γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);LIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0034】
ここで使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」とは、治癒的療法、予防的療法及び防護的療法を称する。
ここで使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、犬及びネコを含む哺乳類と分類されるあらゆる動物に相当する。本発明の好ましい実施態様では、哺乳類はヒトである。
【0035】
II.本発明の組成物及び方法
TNFリガンドファミリーに関連した新規サイトカインで、ここにおいて「Apo−2リガンド」又は「TRAIL」と特定されたサイトカインが記載されている。ヒト天然Apo−2リガンドの予測成熟アミノ酸配列は、281個のアミノ酸を含み、約32.5kDaの計算上の分子量を有する。シグナル配列が存在せず内在性疎水性領域が存在することは、Apo−2リガンドがII型膜貫通タンパク質であることを示唆する。また、可溶性細胞外ドメインApo−2リガンドポリペプチドが記載されている。例えば1997年7月17日に公開のWO97/25428を参照のこと。Apo−2L置換変異体がさらに記載されている。アラニンスキャンニング技術が、生物学的活性を有する種々の置換変異体分子を同定するために利用されてきた。Apo−2リガンドの特定の置換変異体は、少なくとも一つのアミノ酸がアラニン残基等の別のアミノ酸残基によって置換されているものを含む。これら置換変異体は、例えば「D203A」、「D218A」及び「D269A」として同定されている。この命名法は、位置203、218、及び/又は269(図1(配列番号1)に示した番号を使用)の残基がアラニン残基によって置換されているApo−2リガンド変異体を同定するために利用されている。場合によっては、Apo−2L変異体は、図9に示されているか、又は下記の表II、III、VII及びVIIIに記載されている置換の一又は複数を含んでもよい。場合によっては、このようなApo−2L変異体はDR4又はDR5レセプター選択的変異体である。このようなDR4又はDR5レセプター選択的変異体は様々な用途、例えばDR4レセプター又はDR5レセプターのいずれかのみを発現する癌細胞の治療、及びDR4及びDR5レセプターの標本の精製において、有用である。
Apo−2リガンドの細胞外ドメインのX線結晶構造が本明細書に開示され、アラニンスキャンニング突然変異誘発が、そのレセプター接触領域のマッピングを提供するために実施されている。Apo−2リガンドに対して得られた構造は、Apo−2リガンド三量体分子の三つのサブユニットの相互作用を統合する新規な二価金属イオン(亜鉛)結合部位を含むホモ三量体タンパク質を明らかにする。
【0036】
Apo−2LのX線構造は、TNF-αのモデルを利用する分子置換[Eck et al., J. Bio. Chem., 264: 17595-17605 (1989)]によって決定され、3.9オングストローム(114−281残基形態に対して)及び1.3オングストローム(D218A変異体;91−281形態に対して)まで精緻化される。TNFファミリーの他のメンバーのように、Apo−2Lは、約5100平方オングストローム(単量体当たり平方1700オングストローム)を埋めて球状三量体を形成する、三つのゼリーロール単量体からなる緻密な三量体を含むと思われる(図4を参照のこと)。コアのβストランドの位置は、TNFファミリーの他の構造的に特徴付けられたメンバーのTNF-α[Eck et al., 上掲;Jones et al., Nature, 338:225-228(1989)]、TNF-β[Eck et al., J. Biol. Chem., 267:2119-2122(1992)]、及びCD40L[Karpusas et al., Structure, 3:1031-1039(1995)]で、TNF-α又はTNF-β のコアストランドと比較して0.8オングストロームのr.m.s.d.のものと比較して良好に保持されている。Apo−2L三量体の境界面のどの残基も、現在知られている全てのヒトTNFファミリーメンバーの配列において完全に保持されているものはないようである;しかしながら、これら残基の疎水化学的性質は保持されている。Apo−2L三量体における保境界面の保持された残基は、塩基の近傍(三量体の最も広い部分)及び三回転軸に沿ってクラスターを形成する。Cys230の近傍のApo−2L三量体境界面の頂点の近くでは、構造は分岐しているように思われ、190及び230のループのコンホメーションは各構造において変動する。
β骨格コアとは対照的に、レセプター結合表面及びループの構造は、TNFファミリーメンバーの中でかなり変化する。Apo−2リガンドの構造とTNF-α、TNF-β、及びCD40Lの構造の間の一つの違いは、ストランドA及びA’の間の接合である。TNF-α、TNF-β、及びCD40Lでは、ストランドAの後に、緻密なループが続いている。Apo−2リガンドでは、15残基の挿入がこのループを長くし、そのコンホメーションを変える。ループの最初の部分(残基131から141)は、ループの二番目の部分(残基142から154)がCD40Lに類似するコンホメーションをそのC末端部分に有して、分子の表面を一つの単量体-単量体境界面から次へと越える際に乱れる。
【0037】
三量体化境界面の頂点の近くに、二価金属イオン(亜鉛)結合部位が埋もれている。TNFファミリーメンバーは、配列分析によって、Cys230に関して三つのグループに分けられる:(1)Cys230に対応する位置のシステイン残基に、金属イオンとの相互作用を妨げるジスルフィド結合を形成することが可能な隣接ループ(Apo−2Lの194−203ループ)の中の他のシステインが伴っているTNF-α及びFasリガンドのようなタンパク質、(2)Cys230に対応するシステインを持たないタンパク質(例えばTNF−β及びOPGL)、及び(3)Cys230に対応するシステイン残基を一つのみ有するタンパク質である。Apo−2L及び他の種におけるそのオルソログは、後者の基準に当てはまり(すなわち、Cys230のみを持つタンパク質)、三量体表面において二価金属イオンと結合することが期待される。Apo−2LのCys230の直ぐ前の主要鎖のコンホメーションは、TNF-α及びCD40LのようなTHFファミリーメンバーを含むジスルフィドとは異なる。Apo−2Lでは、Cys230の側鎖は、境界面から遠ざかるのではなく、境界面に向かっている。
【0038】
各Apo−2L単量体のCys230残基は内部を三量体軸へ向いて内方を指し、内部の溶媒分子と共に二価金属イオンを配位する。この二価金属イオン結合部位は、亜鉛結合部位にとって適切な結合及び角度を持つ僅かに歪んだ四面体幾何を示し、溶媒へは完全に接触不可能である。結合金属の同一性は、誘導結合プラズマ原子発光分光分析法(ICP−AES)を利用して確認された。ICP-AESを利用したCd、Co、Zn、Ni及びCuの定量分析では、Apo−2L三量体の一分子当たり0.79モルのZnと0.06モルのCoが検出され、構造中の結合イオンが、約1対1のモル比の亜鉛であることが示された。この部位の重要性は、Cys230のアラニン置換が8倍未満のアポトーシス活性の減少となったという観察によって立証された。更に、キレート試薬に対する透析によるApo−2Lからの結合金属の除去により、DR5親和性の7倍の低下及びアポトーシス活性の90倍未満の低下が生じた。Znの除去によって、システインは酸化されやすくなり、アポトーシス活性が低下したジスルフィド結合Apo−2L二量体が形成された。金属結合部位はApo−2L三量体構造に埋もれているように思われ、レセプターに接触するとは予想されないことから、データは、二価金属イオン結合が、Apo−2Lの安定性と三量体構造を維持するのに重要であろうことを示唆している。
【0039】
Apo−2リガンドのレセプター結合部位をマッピングするために、レセプター結合及び生物学的活性にとって重要なアミノ酸残基がアラニンスキャンニング突然変異誘発法によって同定された[Cunningham et al., Science, 244:1081-1085(1989)]。残基Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236、又はTyr237での一つのアラニン置換により、バイオアッセイのアポトーシス活性が5分の1未満に減少し、レセプターに対する親和性の減少が示された。DR4、DR5及びDcR2へのApo−2Lの結合は、残基Gln205、Tyr216、Glu236、又はTyr237でのアラニン置換によって最も影響を受け、これによって三つのレセプターすべてに対する親和性が5分の1以下に減少した。また、減少したアポトーシス活性を有するこれら変異体のすべては、DR4又はDR5のどちらか(又は両方)に対して正常に機能しない結合を示したが、これはレセプター結合がアポトーシス活性に必要であることを示している。
残基Asp218及びAsp269でのアラニン置換は、アポトーシス活性が増大したApo−2L変異体を生じた。残基Asp218は、Tyr216に近くに位置し、アポトーシス活性にとっては必要な残基の一つである。低分解Apo−2L構造(114−281形態)との比較により、216−220ループの高次構造がD218A変異の存在によって有意に改変されたように思えないことが示された。
【0040】
突然変異誘発分析の結果をApo−2L三量体構造にマッピングした際、レセプター結合及び生物活性のためのApo−2L上の機能的エピトープは、TNF−ベータに類似し、二つの単量体の接合点によって形成された表面に位置することが発見された。単量体−単量体境界面の浅い溝は、結合部位へ寄与する両単量体を有するレセプター結合部位を形成する。また、TNF−アルファの残基Arg32、Tyr87、及びAsp143(Apo−2Lの残基Arg158、Tyr216、及びAsp267に対応する)TNFレセプター結合へ寄与する[Goh et al., Protein Engineering, 4:785-791(1991)]。対照的に、TNF−アルファの残基(Apo−2Lの残基Gln205、Glu236、及びTyr237に対応する)は、TNFR結合において比較的重要ではない役割を担う。従って、TNF−アルファにとって、レセプター結合へは三量体構造の底部が最も重要な貢献をする一方で、Apo−2Lでは、重要なレセプター結合残基は、同じく三量体構造の頂点に存在している。Apo−2Lは、その標的レセプターとの相互作用のため接触表面がより大きく、拡張している点で、構造が知られているTNFファミリーメンバーの中では独特であると思われる。随意的実施形態において、Apo−2L変異体は、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236、及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基(すなわち、変異されていない)を含むと考えられている。
下記の説明は、核酸をコードするApo−2リガンドを含むベクターで形質転換又は形質移入された宿主細胞の培養、及び細胞培養からポリペプチドを回収することによって、本明細書に開示するApo−2リガンド変異体等のApo−2リガンドを生産する方法に関する。
【0041】
Apo−2リガンドをコードするDNAは、Apo−2リガンドmRNAを有し、これを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製された任意のcDNAライブラリーから得ることできる。従って、ヒトApo−2リガンドDNAは、国際公開97/25428に記載されているヒト胎盤cDNAのバクテリオファージライブラリーのような、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることが可能である。また、Apo−2リガンドコード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又はオリゴヌクレオチド合成によって得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(Apo−2リガンドに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングすることができる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。Apo−2リガンドをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook et al., 上掲;Dieffenbach et al., PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0042】
Apo−2リガンドのアミノ酸配列断片又は変異体は、Apo−2リガンドDNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、所望のApo−2リガンドポリペプチドを合成することにより調製することができる。このような断片又は変異体は、完全長Apo−2リガンドについて図1(配列番号1)に示したアミノ酸配列の、又は細胞内領域、膜貫通領域、又は細胞外領域の内部あるいは一方又は両方の末端に残基の挿入、置換及び/又は欠失を示す。最終構築物が例えばここに定義するように所望の生物活性、例えばアポトーシス活性を有する限り、挿入、置換及び/又は欠失の任意の組み合わせで最終構造物に到達することができる。場合によっては、実施例に開示するようなファージライブラリー選択法によりApo−2リガンド変異体を同定できる。好ましい実施態様では、断片又は変異体は、Apo−2リガンドの細胞内、膜貫通、又は細胞外領域についてここで同定した配列、あるいはApo−2リガンドの完全長配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。また、アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数と位置の変化、又は膜係留特性(膜アンカー特性)の改変のように、Apo−2リガンドの翻訳後プロセスを改変し得る。
ここで記載されているApo−2リガンド配列における変異は、米国特許第5364934号に記載された保存的あるいは非保存的突然変異に関する技術とガイドラインの任意のものを使用して生じさせることができる。これらは、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を含む。
【0043】
近接配列に沿った一又は複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析法を使用することができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。変異体の主鎖構造をあまり改変することなく、ベータ炭素を越えた側鎖が除去されるため、アラニンがこの群のなかで好ましいスキャニングアミノ酸である[Cunningham et al., Science, 244: 1081 (1989)]。またアラニンは最も一般的なアミノ酸であることによっても好ましい。さらに、アラニンは埋設及び露出位置の双方に頻繁に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.);Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。
本発明の特定のApo−2L変異体は、図9又は下記の表II、III、VII又はVIIIに与えられた一又は複数の列挙された置換を含むApo−2Lポリペプチドを含む。このようなApo−2L変異体は、典型的には、少なくとも一又は複数のアミノ酸が天然配列Apo−2Lアミノ酸配列(例えば、図1(配列番号1)に提供のもの、Apo−2Lの完全長又は成熟形態あるいはその細胞外ドメイン配列、例えば114−281アミノ酸形態)と異なる非天然に生じるアミノ酸配列を含む。場合によっては、天然Apo−2Lと比較してApo−2L変異体において異なる一又は複数のアミノ酸は、図9又は表II、III、VII又はVIIIに示されたもののようなアミノ酸置換を含む。本発明のApo−2L変異体は、図1(配列番号1)の残基39−281、41−281、91−281、92−281、95−281、96−281又は114−281を含んでなり、図9又は表II、III、VII又はVIIIに記載されている一又は複数のアミノ酸置換を有する可溶性Apo−2L変異体を含む。好ましいApo−2L変異体は、図1(配列番号1)の残基91−281、92−281、95−281又は114−281を含んでなり、表II、III、VII又はVIIIに記載された一又は複数のアミノ酸置換を有し、これによりDR4又はDR5のレセプター結合又はレセプター選択性など生物活性が増強される。
【0044】
また、本発明の範囲に含まれるApo−2リガンド配列の変異体は、アミノ末端誘導体又は修飾形にも関連する。このようなApo−2リガンド配列は、ポリペプチド配列のN末端にメチオニン又は修飾メチオニン(例えばホルミルメチオニル又は他のブロックされたメチオニル種など)を有するここに記載した任意のApo−2リガンドポリペプチドを含む。
天然又は変異体Apo−2リガンドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー成分、プロモーター、及び転写終結配列であり、それぞれを以下に説明する。用いられるであろう任意のシグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント及び転写終結配列は当該分野で知られており、WO97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0045】
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、Apo−2リガンド核酸配列に作用可能に結合したプロモーターを含む。プロモーターは、作用可能に結合したApo−2リガンド核酸配列のような特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子(一般的に約100ないし1000塩基対)の開始コドンの上流側(5')に位置する未翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には、誘発的なクラス及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘発的なプロモーターは、例えば、栄養分の存在あるいは不存在、温度変化などの培養条件のある変化に対応してその制御の下でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモーターである。現時点において多種の可能な宿主細胞により認識される非常に多くのプロモーターがよく知られている。これらのプロモーターは、制限酵素の消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、ベクターに単離したプロモーター配列を挿入することで、Apo−2リガンドをコードするDNAに作用的に結合している。天然のApo−2リガンドプロモーター配列及び多くの異種性プロモーターはいずれもApo−2リガンドDNAの直接増幅及び/又は発現に用いることができる。
原核生物及び真核生物宿主に適したプロモーターは当該分野で知られており、WO97/25428にさらに詳しく記載されている。
【0046】
大腸菌における可溶性Apo−2Lの生産の好ましい方法には、生産物発現の制御のための誘発的プロモーターが用いられる。制御可能な誘発的なプロモーターの利用は、生産物発現の誘発、及び宿主によってよく耐えることのできないかなりの量の生産物の蓄積の前に、所望する細胞密度への培養成長を可能にする。
Apo−2L(114−281形態)の発現のために、三つの誘発的なプロモーター系(T7ポリメラーゼ、trp及びアルカリホスファターゼ(AP))が出願人によって評価された。これら三つのプロモーターのそれぞれの利用は、収集細胞ペーストから回収されたかなりの量の可溶性で生物学的に活性なApo−2L三量体を結果として生じた。しっかりとしたプロモーターコントロール、及び収集細胞ペーストにおいて到達したより高い細胞密度及び力価のために、試験されたこれら三つの誘発的なプロモーター系の中でAPプロモーターが好まれている。
【0047】
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい形態に再びライゲーションする。作成されたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、形質転換細胞を好適に選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又は当該分野で知られている標準的技術を利用して配列を決定する[例えば、Messing et al., Nucleic Acids Res., 9:309 (1981);Maxam et al., Methods in Enzymology, 65:499 (1980)を参照のこと]。
Apo−2リガンドをコードしているDNAの哺乳動物細胞における一過性発現をもたらす発現ベクターを使用することができる。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む[Sambrook et al., 上掲]。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で確実な同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なApo−2リガンドであるApo−2リガンドの類似物及び変異体を同定する目的に特に有用である。
【0048】
組換え脊椎動物細胞培養でのApo−2リガンドの合成に適応化させるのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething et al., Nature, 293:620-625 (1981);Mantei et al., Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117060号;及び欧州特許第117058号に記載されている。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びにバシラス、例えば枯草菌及びバシラス・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシラス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。
【0049】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo−2リガンドをコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。グリコシル化Apo−2リガンドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。CHO細胞を含むすべてのこのような宿主細胞の例は、さらに国際公開97/25428に記載されている。
宿主細胞を形質移入し、好ましくは上述のApo−2リガンド産生のための発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された標準栄養培地で培養する。
形質移入は、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数のトランスフェクションの方法が当業者に知られている。例えば、CaPO及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功したトランスフェクションが一般に認められる。
【0050】
形質転換は、染色体外の成分としてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookらにより記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw et al., Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開された国際公開91/00358に記載されているように、超音波処理を用いて植物をトランスフェクションすることもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、Graham and van der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van Solingen et al., J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown et al., Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour et al., Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0051】
Apo−2リガンドを生産するために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookらにより記載されているような適切な培地で培養される。大腸菌の培養に用いることができる培養培地の特定の形態は、後述の実施例でさらに説明する。大腸菌の培養に用いられうる培養培地の特定の形態は、下記の実施例にさらに記載されている。Apo−2リガンドを生産するための哺乳動物宿主細胞は、種々の培養培地において培養することができる。
市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地(「MEM」、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地(「DMEM」、シグマ)が含まれる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0052】
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)に見出すことができる。
本発明の一側面では、宿主細胞の培養又は発酵のために、典型的には一又は複数の二価金属イオンが培養培地へ添加されるかあるいは含まれる。二価金属イオンは、好ましくは、貯蔵安定性を増すため、溶解性を増すため、又は一又は複数の亜鉛イオンによって調整される安定なApo−2L三量体の形成を補助するために十分な濃度レベルで培養培地に存在するかあるいは添加される。添加されうる二価金属イオンの量は、一部は培養中の宿主細胞密度又はこのような二価金属イオンへの潜在的な宿主細胞感受性に依存する。培養におけるより高い細胞密度では、二価金属イオンの濃度を増すことは有益である。宿主細胞による生産物の発現中又は発現後に二価金属イオンが添加される場合は、宿主細胞による産物の発現が増加するのに応じて二価金属イオン濃度を調節又は増加させることが望ましい。典型的な普通に入手可能な細胞培養培地に存在しうる微量レベルの二価金属イオンは、安定な三量体形成には十分ではないと一般的に考えられている。したがって、本明細書に開示するように、更なる量の二価金属イオンの添加が好ましい。
【0053】
培養中の宿主細胞の成長期の間に二価金属イオンが添加される場合は、二価金属イオンは、逆に又は負の方向に宿主細胞へ影響しない濃度で培養培地へ添加されるのが好ましい。振盪フラスコ培養では、1mMより高い濃度でのZnSOの添加は、結果として低い宿主細胞密度を生じる可能性がある。当業者であれば、細菌細胞は、細胞マトリックスと金属イオン複合体を形成することで、効果的に金属イオンを隔離することが可能であることが分かる。従って、細胞培養では、成長期の後(所望する宿主細胞密度に達した後)又は宿主細胞による生産物発現の直前に、選択された二価金属イオンを添加することが好ましい。十分な量の二価金属イオンが存在していることを確かめるために、更なる二価金属イオンを、生産物発現期の間に細胞培養培地へ添加又は供給することができる。
培養培地の二価金属イオン濃度は、宿主細胞に対して有害又は毒性でありうる濃度を越えてはならない。宿主細胞として大腸菌を用いる本発明の方法では、培養培地の二価金属イオンの濃度が約1mM(好ましくは≦1mM)を越えないことが好ましい。さらにより好ましくは、培養培地の二価金属イオン濃度は、約50マイクロモルから約250マイクロモルである。最も好ましくは、このような方法で使用される二価金属イオンは硫酸亜鉛である。金属イオン及びApo−2リガンド三量体が1対1モル比で存在することが可能である量の二価金属イオンを細胞培養へ添加することが望ましい。
【0054】
二価金属イオンは、細胞培養へ如何なる許容可能な形態でも添加が可能である。例えは、金属イオンの溶液は水を使って調製することが可能であり、次に、二価金属イオン溶液は培養培地へ添加又は供給することが可能である。
Apo−2Lの発現は、例えば、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、一般的なサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾ヌクレオチドを用いる方法もまた使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤又は酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位となる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、検定を実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等である。
【0055】
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳類において調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列Apo−2リガンドポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はApo−2リガンドDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
Apo−2リガンドは、好ましくは培養培地から分泌されたポリペプチドとして回収されるが、分泌シグナル無しで直接産生される場合は宿主細胞溶菌液から回収してもよい。Apo−2リガンドが膜結合性である場合は、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)を用いて膜から引き離すか、又は酵素的切断によりその細胞外領域を切り離すことができる。
【0056】
Apo−2リガンドがヒト起源のもの以外の組換え細胞でつくられる場合は、Apo−2リガンドはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを含まない。しかしながら、Apo−2リガンドに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え細胞タンパク又はポリペプチドからApo−2リガンドを精製することが通常必要である。第一段階として、培地又は溶菌液を遠心分離して粒状の細胞屑を除去することができる。ついで、Apo−2リガンドを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製される:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAE又はCM;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
好ましい実施態様では、Apo−2リガンドはアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。残基が欠失され、挿入され、又は置換されたApo−2リガンド断片又は変異体は、その変異によってしばしば惹起される実質的な性質変化を考慮に入れて、天然Apo−2リガンドと同じようにして回収することができる。例えば、他のタンパク質又はポリペプチド、例えば細菌性もしくはウイルス性抗原とのApo−2リガンド融合体の調製は精製を容易にする;抗原に対する抗体を含む免疫アフィニティーカラムを、融合ポリペプチドを吸着させるために使用することができる。
【0057】
例えばフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターもまた精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。天然Apo−2リガンドに適切な精製方法は、組換え細胞培養の発現の際におけるApo−2リガンド又はその変異体の特性の変化の起因となる改変が必要となることは、当業者であれば分かるであろう。
このような精製工程では、回収されたApo−2Lを二価金属イオン含有溶液又は一又は複数の二価金属イオンを含有する精製物質(例えばクロマトグラフィー媒体又は支持体)へ曝露することが望ましいであろう。好ましい実施態様では、二価金属イオン及び/又は還元剤は、Apo−2Lの精製又は回収の間に使用される。場合によっては、DTT又はBMEのような二価金属イオン及び還元剤の両方を、Apo−2Lの精製又は回収の間に使用してもよい。精製又は回収の間に二価金属イオンを使用することは、Apo−2L三量体の安定性を提供するか、あるいは細胞培養段階の間に形成されるApo−2L三量体を維持すると考えられる。
【0058】
以下の記載はまた一又は複数の化学基に共有的に結合した(以下「抱合された(conjugated)」)Apo−2リガンド変異体を製造する方法に関する。本発明のApo−2L抱合体に使用するのに適した化学基は好ましくは有意に毒性又は免疫原性ではない。化学基は場合によっては保存することができ保存に適した条件下で使用できるApo−2L変異体抱合体を製造するために選択される。ポリペプチドに抱合されうる様々な例示的化学基が当該分野で知られており、例えば糖タンパク質に天然に生じる炭水化物のような炭水化物、ポリグルタミン、及び非タンパク様ポリマー、例えばポリオールが含まれる(米国特許第6245901号を参照)。
例えばポリオールは、上掲の国際公開93/00109に開示されているように、リジン残基を含む一又は複数のアミノ酸残基においてApo−2L変異体のようなポリペプチドに抱合されうる。用いられるポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとでき、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには一又は複数のヒドロキシル位置で1から4の炭素を有するアルキル基のような化学基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、よって記載を簡単にするために、以下の議論においては、用いるポリオールがPEGである例示的な実施態様に関するものとし、ポリペプチドにポリオールを抱合させる方法を「ペグ化(pegylation)」と称する。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを、PEGに対してここに記載した抱合法を使用して用いることができることは理解できるであろう。
【0059】
Apo−2L変異体のペグ化に用いられるPEGの平均分子量は変動し得、典型的には約500から約30000ダルトン(D)の範囲でありうる。好ましくは、PEGの平均分子量は約1000から約25000Dであり、より好ましくは約2000から約5000Dである。一実施態様では、ペグ化は約2000Dの平均分子量を持つPEGを用いて実施される。場合によっては、PEGホモポリマーは未置換であるが、一端にアルキル基が置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基はC1−C4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。PEG調製物は商業的に入手可能であり、典型的には本発明において使用するのに適したPEG調製物は平均分子量に応じて販売されている非均一調製物である。例えば、市販のPEG(5000)調製物は典型的には分子量が僅かに変動し、通常は±500Dの分子を含む。
本発明のApo−2リガンド変異体は単量体形態又は三量体形態(3つの単量体を含む)等、様々な形態でありうる。場合によっては、Apo−2L変異体三量体は、PEG分子が三量体Apo−2L変異体を構成する3つの単量体の1つ、2つ、又は全てに結合又は抱合されるようにペグ化される。そのような実施態様では、用いられるPEGは約2000から約5000Dの平均分子量を有するのが好ましい。また、Apo−2L変異体三量体は「部分的に」ペグ化され得、つまり、三量体を構成する三の単量体の一又は二だけがPEGに結合又は抱合される。そのような「部分的に」ペグ化されたApo−2L変異体では、場合によっては、用いられるPEGが約5000D又は5000Dを超える平均分子量を有する。
【0060】
タンパク質をペグ化するための様々な方法が当該分野で知られている。PEGに抱合したタンパク質を製造するための特定の方法には、米国特許第4179337号、米国特許第4935465号及び米国特許第5849535号に記載された方法が含まれる。典型的には、タンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量等々に応じて、ポリマーの末端反応性基にタンパク質のアミノ酸残基の一又は複数を介して共有的に結合される。反応性基を有するポリマーはここでは活性化ポリマーと命名する。反応性基はタンパク質の遊離のアミノ又は他の反応性基と選択的に反応する。PEGポリマーは無作為な形又は部位特異的な形の何れかの形でタンパク質上のアミノ又は他の反応性基に結合しうる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応性基のタイプと量、並びに用いられるポリマーのタイプは、反応性基がタンパク質上の余りに多くの特に活性な基と反応することを避けるために用いられる特定のタンパク質又はタンパク質変異体に依存するものと理解される。これは完全に避けることができないであろうため、タンパク質1モル当たり一般に約0.1から1000モル、好ましくは2から200モルの活性化ポリマーを、タンパク質濃度に応じて用いることが推奨される。タンパク質1モル当たりの活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持し、同時に可能ならばタンパク質の循環半減期を最適化するためのバランス量である。
残基はタンパク質の任意の反応性アミノ酸、例えばN末端アミノ酸基であってもよいが、好ましくは反応性アミノ酸はシステインであり、これは、例えば国際公開99/03887、国際公開94/12219、国際公開94/22466、米国特許第5206344号、米国特許第5166322号、及び米国特許第5206344号に示されているように、その遊離のチオール基を介して活性化ポリマーの反応性基に結合している。あるいは、反応性基はリジンであり、これは、活性化ポリマーの反応性基にその遊離のイプシロン-アミノ基を介して結合しており、あるいはグルタミン酸又はアスパラギン酸であり、これはアミド結合を介してポリマーに結合している。ついで、この反応性基は例えばタンパク質のα及びεアミンと反応して共有結合を形成する。簡便には、PEG分子の他端はメトキシ基のような非反応性基で「ブロック」されて、タンパク質分子のPEG架橋複合体の形成を低減させることができる。
【0061】
好適な活性化PEGは多くの一般的な反応によって生成させることができる。例えば、PEGのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(M-NHS-PEG)は、Buckmann and Merr, Makromol. Chem., 182:1379-1384 (1981)の方法に従って、PEG-モノメチルエーテル(ユニオンカーバイド社から市販されている)から、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)との反応によって調製することができる。また、PEG末端ヒドロキシ基は、例えば臭化チオニルと反応させてPEG-Brを生成した後、過剰のアンモニアでアミノ分解してPEG-NHを形成することによって、アミノ基に転換できる。ついで、PEG-NHは標準的なカップリング試薬、例えばウッドワード試薬Kを使用して対象のタンパク質に抱合される。更に、PEG末端-CHOH基は、例えばMnOでの酸化によってアルデヒド基に転換できる。アルデヒド基は水素化シアノホウ素のような試薬を用いる還元性アルキル化によってタンパク質に抱合される。あるいは、本発明における使用に適した活性化PEGは多数の製造元から購入することができる。例えば、Shearwater Polymers, Inc. (Huntsville, Ala.)は、メトキシ-PEGのスクシンイミジル炭酸塩及びメトキシ-PEGスクシンイミジルプロピオン酸塩に加えて、分子量2000のメトキシ-PEG-マレイミドを販売している。
本発明のApo−2L変異体のペグ化の度合いを調節して、対応する非ペグ化Apo−2L変異体と比較してインビボ半減期(以下、「半減期」)を望ましく増加させることができる。ペグ化Apo−2L変異体の半減期は典型的にはペグ化の度合いが増加するのに応じて徐々に増加する。タンパク質のペグ化の度合いと部位は、例えば(1)ペグ化部位の数と反応性(例えば第一級アミン)及び(2)ペグ化反応条件によって、決まる。タンパク質におけるペグ化部位のいくつかは相対的に非反応性である可能性が高いので、標準的なペグ化反応では典型的には完全なペグ化にはならない。
【0062】
標準的な突然変異誘発法を用いてタンパク質中の潜在的なペグ化部位の数を変えることができる。よって、アミノ酸置換がシステインやリジンのようなアミノ酸を導入又は置換する程度まで、本発明のApo−2L変異体は(図1に示された)天然配列Apo−2Lよりもより多い又は少ない数の潜在的ペグ化部位を含むことができる。ペグ化の度合いと部位はまた反応条件、例えば活性化PEG及びタンパク質の相対濃度並びにpHを調節することによって操作することができる。所望の度合いのPEG化に対する好適な条件は、標準的なペグ化反応のパラメータを変えることによって経験的に決定することができる。
Apo−2L変異体のペグ化は任意の簡便な方法によって実施される。例示的な実施態様では、R170C-Apo2L.0のCys170側鎖(つまり、図1のアミノ酸114−281を持ち、位置170の天然アルギニン残基がシステイン残基に置換された変異体Apo−2L)は、分子量2000Dのメトキシ-PEG-マレイミド(Shearwater Polymers)との反応によって共有結合的に修飾される。簡便には、R170C-Apo2L.0は、最初に約30分間、周囲温度で10mMのDTTを用いて還元し、ついでPD-10ゲル濾過カラムに通して、平衡にし、HICバッファー(0.45MのNa2SO4、25mMのTris-HCl、pH7.5)で溶出させて還元剤を除去することによって、修飾の準備がなされる。ついで、一定量のPEG-マレイミド溶液(dH20中10MM)を直ぐに添加する。完全な反応を確実なものにするために必要な時間と試薬濃度の条件は経験的に決定することができる。0.5から5倍の範囲のR170CApo−2L.0単量体に対するPEG-マレイミドのモル濃度比と2又は24時間の反応時間を使用することができる。反応は、あらゆる未ペグ化Cys170チオールがカルボキシアミドメチル化されるように、R170C-Apo2L.0単量体濃度に対して10倍のモルの過剰のヨードアセトアミドを添加することによって停止される。ヨードアセトアミドでの修飾は約30分であり、その後、過剰な試薬は、平衡化されPBSで溶出されるNAP-5カラム(Pharmacia)でのゲル濾過によって除去される。
【0063】
ペグ化タンパク質はSDS-PAGE、ゲル濾過、NMR、ペプチドマッピング、液体クロマトグラフィー-質量分析法、及びインビトロ生物学的アッセイによって特徴付けすることができる。ペグ化の度合いは典型的にはSDS-PAGEによって最初に示される。10%のSDS中でのポリアクリルアミドゲル電気泳動は、典型的には溶出バッファーとして10mMのTris-HCl、pH8.0、100mMのNaCl中で実施される。どの残基がペグ化されているかを証明するために、トリプシン及びLys-Cプロテアーゼのようなプロテアーゼ類を使用するペプチドマッピングを実施することができる。しかして、ペグ化及び非ペグ化R170C-Apo2L.0の試料を、Lys-Cプロテアーゼのようなプロテアーゼで消化させ、得られたペプチドを逆相HPLCのような方法で分離することができる。生成されたペプチドのクロマトグラフィーパターンを、Apo−2L.0ポリペプチドに対して過去に決定したペプチドマップと比較することができる。ついで、各ピークをピーク中のフラグメントのサイズを証明するために質量分析によって分析することができる。PEG基を有するフラグメントは、通常、注入後にはHPLCカラムに保持されておらず、クロマトグラフから消失している。クロマトグラフからのそのような消失は、少なくとも一のペグ化可能なアミノ酸残基を含んでいるに違いない特定のフラグメントに対するペグ化を示している。ペグ化Apo−2L変異体は、Apo−2Lレセプターと相互作用し、及び/又は哺乳動物においてアポトーシスを誘導する能力について、及び/又は他の生物学的活性について、当該分野で知られている方法を使用して、更にアッセイすることができる。
さらに、本明細書に開示するApo2L変異体を、当該分野で知られている技術を用いてロイシンジッパー配列に結合させる又は融合させることも考慮する。
【0064】
また、Apo−2リガンド変異体及び1又は複数の二価の金属イオンを含有する製剤が、本発明により提供される。このような製剤は、治療的投与のみならず、特に貯蔵に適している(及びApo−2L三量体の維持)。好ましい製剤は、Apo−2L及び亜鉛又はコバルトを含む。より好ましくは、この製剤は金属がタンパク質に対して<2Xモル比であるApo−2L変異体及び亜鉛又はコバルト溶液を含む。水溶性懸濁液が所望されるならば、製剤中の二価金属イオンはタンパク質に対して>2Xモル比であってもよい。硫酸亜鉛を用いて、当出願人はApo−2L(114−281形態)沈殿物を発見し、製剤中の硫酸亜鉛の濃度が約100mMの水溶懸濁液を作った。当業者であれば、>2Xモル比では、金属が製剤にとって有害になりうるか又は治療用製剤として望ましくない製剤中の二価金属イオン濃度の上限範囲がありうることが分かるであろう。
製剤は、既知の技術で調製することが可能である。例えば、Apo−2L製剤はゲル濾過カラム上でのバッファー交換によって調製することが可能である。
【0065】
典型的には、適量の製薬的に許容可能な塩が、製剤を等浸透圧にするために製剤において使用される。製薬的に許容可能な担体の例には、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液が含まれる。製剤のpHは、好ましくは約6〜約9、さらに好ましくは約7〜約7.5である。好ましくは、亜鉛がApo−2Lへ結合したままであることを確かなものにするためにpHは選択される。pHが高すぎる又は低すぎるならば、亜鉛はApo−2Lへ結合したままではなく、結果としてApo−2Lの二量体が形成される傾向となる。例えばApo−2リガンド及び二価金属イオンの濃度及び投与経路よっては、ある種の担体がより好ましくなることは、当業者には明らかである。
Apo−2Lの治療用製剤は、凍結乾燥製剤、水溶液又は水性分散液の形態で、任意的な製薬上許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編 (1980))と、適切な純度を有する所望のApo−2L分子を混合することにより調製される。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、トリス(Tris)、HEPES、PIPES、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0066】
このような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばグリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、及びセルロースベースの物質である。局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。
インビボ投与に使用されるApo−2Lは滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。Apo−2Lは通常は凍結乾燥形態又は全身投与される場合には溶液中に貯蔵される。凍結乾燥形態にある場合、Apo−2Lは典型的には使用時の適当な希釈剤を含む他の成分と組み合わせて処方される。Apo−2Lの液体製剤の例は、皮下注射用の1回投与バイアルに充填された無菌の、透明な、無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。
【0067】
治療的Apo−2L変異体製剤は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルに入れられる。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えば欧州特許第257956号参照)。
また、Apo−2L変異体は、徐放性調製物の形態で投与することが可能である。徐放性調製物の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech. 12: 98-105 (1982)に記載されたポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidman et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langer et al., 上掲)、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微小球)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)が含まれる。
【0068】
ここに記載されたApo−2L変異体及びその製剤は、種々の治療的及び非治療的応用へ用いられる。これら応用は、種々の癌及びウイルス性症状の治療の方法である。このような治療的及び非治療的応用は、例えば、国際公開97/25428及び国際公開97/01633に記載されている。
ここに記載のApo2L変異体は種々の病理状態、例えば免疫関連疾患又は癌を治療するのに有用である。ここに記載した様々な病理状態の哺乳動物における診断は、熟練した実務者によって行うことが可能である。例えば、哺乳動物の癌又は免疫関連疾患の診断と検出を可能にする診断技術は、当該分野で利用可能である。例えば、癌は、限定されるものではないが、触診(法)、血液分析、X線、NMR等々を含む技術を通して同定され得る。また、免疫関連疾患は容易に同定できる。全身性エリテマトーデスでは、疾患の中心媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体、及び引き続き起こる免疫媒介炎症の産生である。腎臓、肺、骨格筋系、皮膚と粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を包含する複数の臓器と系が、臨床的に影響を受ける。リウマチ様関節炎(RA)は、主に複数の関節の滑膜に係る慢性全身性自己免疫疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存であり、リウマチ因子、自己IgGに対する自己抗体の生成を伴い、結果として関節体液及び血液において高レベルに達する免疫複合体が形成される。関節におけるこれらの複合体は、滑膜へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発しうる;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば関節空間/体液でもである。影響を受けている組織は、多くの場合対称的パターンで主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患も生じる。一方の形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の局部的障害、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発達である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、RA疾患経路の末期、時々は関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾腫大の存在に関与する。これは、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う多数の器官及び血管炎に付随する。多くの場合、患者では、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;小結節は、混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAで生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
【0069】
Apo−2L変異体は、周知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨液内、くも膜腔内、経口、局所的、又は吸入の経路により投与できる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプでの注入によって実施することもできる。
Apo2L変異体の投与の有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。単独又は複数の用量が使用されうる。単独に使用されるApo2L変異体の効果的な用量又は量は一日当り約1μg/kgから約100mg/kg体重あるいはそれ以上までの範囲であると現在は考えられる。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordenti et al., Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような当該分野で知られている方法で実施することができる。
【0070】
Apo2L変異体のインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。当業者であれば、投与されなければならないApo2L変異体の用量が、例えば、Apo2L変異体を受入れる哺乳動物、投与経路、及び哺乳動物に投与されている他の薬剤又は治療法に依存して変わりうることは理解できるであろう。
更なる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法には、これらに限定されるものではないが、当該技術分野において既知であり、前述のセクションIにおいてさらに詳細に定義された、放射線療法、サイトカイン、成長阻害剤、化学治療剤、細胞障害剤、チロシンキナーゼ阻害因子、ラスファルネシルトランスフェラーゼ阻害因子、血管形成阻害因子、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の投与が含まれる。そのような他の治療法を、Apo2L変異体とは別の薬剤として、並びにApo2L変異体分子自体に結合させるか接合させて使用できることも考慮する。更に、治療法は、リツキサン(Rituxan)TM又はハーセプチン(Herceptin)TMなどの腫瘍抗原を標的とする治療的抗体並びに抗VEGFなどの抗血管形成抗体、又はDR5又はDR4のようなApo2Lレセプターを標的とする抗体に基づく。
【0071】
化学治療剤に対する調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される。そのような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapy Service, M.C.Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。また、化学療法剤は、Apo2L変異体の投与に先行し、又はその後に行い、又はそれらと共に与えられてもよい。
また、CD20、CD11a、CD18、CD40、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又は血管内皮因子(VEGF)、又は他のTNFRファミリーメンバー(例えばDR4、DR5、OPG、TNFR1、TNFR2、GITR、Apo−3、TACI、BCMA、BR3)に結合する抗体などの他の抗原に対する抗体を投与することも好ましい。他の方法として、又は付加的に、同一の抗原又はここに開示した二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有益である。一実施態様では、ここにおけるApo2L変異体は、成長阻害剤と同時投与される。例えば、まず成長阻害剤を投与し、続いて当該発明のApo2L変異体を投与する。
【0072】
Apo2L変異体(及び一又は複数の他の治療剤)は同時的又は経時的に投与される。Apo2L変異体の投与の後、インビトロにおいて処理された細胞を分析することができる。インビボでの治療がなされた場合、治療された哺乳動物は熟練した実務家にとって周知の様々な方法によりモニターすることができる。例えば、壊死をアッセイするために腫瘍細胞を病理検査することができ、又は血清の免疫系応答を分析することができる。
ここに記載した疾患の診断又は治療に有用なApo−2L変異体を含むキットのような製造品は、少なくとも容器及びラベルを具備する。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような種々の物質から形成できる。容器は、状態の診断又は治療に有効なApo−2L変異体製剤を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを具備する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。容器上又は添付されるラベルには、製剤が選択した状態の診断又は治療に使用されることが示されている。この製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝塩水、リンガー液、及びデキストロース溶液を収容した第2の容器をさらに具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を備えた包装挿入物を含め、商業的及び使用者の立場から望ましい他の材料を具備してもよい。また、この製造品は、上述の他の活性剤を収容した第2又は第3の容器を具備してもよい。
【0073】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書において引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【実施例】
【0074】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
【0075】
実施例1
Apo2L/TRAILファージディスプレイライブラリーの設計と生産
ファージディスプレイライブラリーに含めるため、Apo2L/TRAIL・DR−5ECD複合体について決定されたX線構造の検査に基づいてApo2L/TRAILの残基を選択した(例えば、Hymowitz et al., (1999) Molecular Cell 4, 563-571参照)。加えて、Apo2L/TRAILのアラニン−スキャンにより得られた情報(例えば、Hymowitz et al., (2000) Biochemistry 38, 633-640参照)を使用してライブラリー設計の際の指針とした。例えば、アラニン置換により試験した全Apo2L/TRAILレセプター(例えばGln205)に対する結合の親和性が(5分の1未満まで)大きく減少した部位はライブラリーに選択しなかった。アラニンで置換したとき中程度の変化(5倍未満)しか示さなかった部位は、変異した際にレセプター選択性が増大しやすかった。この種の部位の一例はGln193であり、この場合アラニン置換によるDR4への親和性減少が1.7倍になるが、DR5及びDcR2に対する結合には影響が無い(例えばHymowitz et al., (2000) Biochemistry 38, 633-640参照)。レセプター親和性のさらなる変化は、Gln193をアラニン以外の残基で置換することにより得られる。この理論を使用して、部位189、191、193、199、201及び209をランダム化して有する(DR4ライブラリー)か、又は部位189、191、193、264、266、267及び269をランダム化して有する(DR5ライブラリー)2つのApo2L/TRAILライブラリーを設計した。図7Aに示すように、これらの残基はX線結晶構造に観察される「パッチA」接触内部又は近傍にある(例えばHymowitz et al., (1999) Molecular Cell 4, 563-571)。これらライブラリーは特定の部位に「NNS」コドンを含み、よって全20のアミノ酸及び1つだけの終止コドンがこれらの位置に可能であった。
【0076】
Apo2L/TRAILの発現のために設計されたファージミドベクター(図1;配列番号1の残基96−281)をM13バクテリオファージの遺伝子IIIタンパク質への融合物として以下のように構成した。NsiI部位(5’オリゴ)及びBamHI部位(3’オリゴ)を生成するオリゴヌクレオチドを使用して、Apo2L/TRAILの96−281部分をコードするDNAをテンプレートプラスミドpAPOK5からのPCRにより増幅した(例えばHymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640)。NsiI及びBamHIによる切断の後、この断片をNsiI/BamHI切断pTFAA−g3に連結させた(例えばLee, G.F. and Kelley, R.F. (1998)J. Biol. Chem 273, 4149-4154参照)。制限消化分析により、適切な挿入についてプラスミドクローンをスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド配列決定によりポジティブなクローンを確認した。結果として得られたプラスミド(pAPOK4)は、Apo2L/TRAILの96−281のN末端に融合した断片stII細菌シグナル配列を有する断片をコードする。配列G・S・Aを有するトリペプチドリンカーをApo2L/TRAILのC末端に付加した後、インフレームのアンバー終止コドン及びM13バクテリオファージの遺伝子3生成物を付加した。アルカリフォスファターゼプロモーターを直接発現に使用した。アンバー終止コドンの抑制能を有する大腸菌株(supE遺伝子型)中において、stII−Apo2L/TRAIL(96−281)−遺伝子3からなる融合タンパク質を周辺質に分泌させた。アンバー終止コドンの抑制は100%有効ではないので、遊離stII−Apo2L/TRAILのいくらかも同様に分泌される。周辺質において、stIIシグナルペプチドは大腸菌シグナルペプチダーゼによって除去されると推定される。ヘルパーファージとの同時感染により組立タンパク質を供給すると、表面上にApo2L/TRAIL(96−281)−遺伝子3を有するファージ粒子が産出される。表面に現れたタンパク質の正確な組成は不明であるが、Apo2L/TRAIL(96−281)−遺伝子3の1分子が遊離Apo2L/TRAIL(96−281)の2分子を有する三量体に集合したものと思われる。遺伝子8に対して遺伝子3を使用してApo2L/TRAILを示していることから、これは、各ファージ粒子が1−5を超えるApo2L/TRAIL分子のコピーを示さない「一価の表示」に相当する(例えばLowman, H.B. and Wells, J.A. (1993) J. Mol. Biol. 234, 564-578を参照)。
【0077】
pAPOK4ベクターの最初の試験により、正しく構築されたApo2L/TRAIL(表1)のファージ上の表出が小さいことが示された。固定DR5−IgGを用いたファージELISAは、特定の結合シグナルを1週間だけ示した。精製したApo2L/TRAILにより結合は抑制されなかったが、代わりに外来性リガンドによりファージELISAで測定したシグナルが増大し、これはファージ上の不完全な三量体構築と呼応するものであった。加えて、DR5−IgGに対するファージの保存による濃縮はごく小さく、限定的なものであった。通常の37℃でなく、30℃で成長させてファージを産出させた場合、特定の結合が増大した。pAPOK4を使用した場合の表出が小さいと仮定し、様々なプロモーターを用いた構築を表出の増大について試験した。pAPOK4中のアルカリフォスファターゼプロモーターをtacプロモーターで置換することにより、PAPOK4.2を構築した。これは、pAPOK4中でAPプロモーターを有するEcoRI/NsiI制限断片を、プラスミドpW1205a由来のtacプロモーターを有するEcoRI/NsiI断片(例えばSidhu et al., (2000) Methods n Enzymology 328, 333-363を参照)で置換することにより行われた。ファージELISA及び濃縮両方によるpAPOK4.2ベクターからの発現の分析の結果、pAPOK4よりも良好なApo2L/TRAILのファージディスプレイが認められた(表1)。最適な表出は、1μMのIPTGを加えることによりtacプロモーターを誘導した30℃でのファージ産出において得られた。
【0078】
Sidhu等によって開示されたように(Sidhu et al., (2000) Methods Enzymology 328, 333-363参照)ライブラリーを構築した。DR5ライブラリーでは、「TAA」終止コドンをpAPOK4.2の位置189、191、193、264、266、267、及び269に導入した。Kunkelのプロトコル(例えばKunkel, T.A. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82, 488-492)を適合させて用い、この「終止」テンプレートをオリゴヌクレオチド指向突然変異のテンプレートとして使用した。突然変異反応には2つのオリゴヌクレオチドを使用した。まずライブラリー位置189、191、及び193において「NNS」コドンがコード化され、第2に部位264、266、267、269においてNNSコドンが産出された。終止テンプレートの使用により、変異しなかったテンプレートDNAがKunkel選択後も残存し、機能的Apo2L/TRAILを産出しないことが確実となる。DR4ライブラリーでは、TAA終止を位置189、191、193、199、201、209に導入した。過去の実験(データは示さない)で、ファージ上のApo2Lの表出が向上し、且つDR5に対する親和性の低減が示されていたため、変異Y213W:S215Dも終止テンプレートに導入した。部位189、191、193、199、201、209でNNSコドンをコードするオリゴヌクレオチドを使用してこの終止テンプレートの突然変異を誘発した。SS−320大腸菌内へ電気穿孔すると、DR5ライブラリーは2.5×10独立クローンの力価を生じさせた。ライブラリー由来の10個のクローンの配列決定を行ったところ、両部位において7/10が変異していることが示され、実際のライブラリーサイズが1.75×10クローンであることが示された。DR4ライブラリーは5×10クローンの力価を生じさせ、配列決定により5/10が変異したことが示され、よって実際のライブラリーサイズが2.5×10であることが示された。SS−320細胞はアンバー抑制因子を有さないので、XL−1大腸菌を使用して選別のためのファージ粒子を生成した。ライブラリーを用いて電気穿孔されたSS−320を、50μg/mLのカルベニシリンと1×1010PFU/mLのVCS(Stratagene, Inc.)ヘルパーファージを含む500mLの2YT培地中で成長させた。200RPMで動作する回転式振盪培養機上に置いた4Lのバッフルフラスコ中で37℃で一晩成長させた後、遠心分離により細胞を除去し、20%のPEG 2.5M NaClの1/5容量を添加することで上清からファージを沈殿させた。遠心分離によりファージを回収し、初期対数期のXL−1大腸菌の培養液500mlを感染させるために使用した。37℃での成長を1時間継続し、VCSヘルパーファージを1×1010PFU/mLに添加し、回転式振盪培養機(200RPM)上に置いた4Lのバッフルフラスコ中で培養液を30℃で一晩成長させた。上述のようにしてファージを回収し、4mLのPBS中に再度懸濁した。このファージストックを親和性に基づく選別に使用した。上述のようにしてXL−1の感染により選別の各回の間にファージを増幅させた。但し、使用する培養液の容量を500から50mLに減少させた。
【0079】
実施例2
レセプター選択性によるファージライブラリーの選別
マイクロタイタプレート(Nunc-Maxisorp)のウェルに吸収させたレセプター−IgG融合タンパク質を用いてレセプター結合によるファージ選別を行った。レセプター−IgGタンパク質をコーティング緩衝液中(50mLの炭酸ナトリウム、pH9.6)で2−10μg/mLに希釈し、この溶液100μLを96ウェルプレートの複数のウェルに加えた。第1回目の選別では、96ウェル全てを使用し、続く回では使用するウェルの数を減らした。周囲温度で2時間に亘って穏やかに振盪しながらコーティング緩衝液をマイクロタイタプレート上でインキュベートした。その後コーティング緩衝液を除去し、0.05%のTween−20及び5%の粉末状スキムミルク(ブロッキング緩衝液)を含むPBS200μLを用いてウェルをブロックした。ブロッキングは室温で1時間行い、ついでウェルをPBS/0.05%Tween−20(洗浄緩衝液)ですすいだ。
Apo−2L/TRAILライブラリーファージ溶液をブロッキング緩衝液中で10倍に希釈し、次いでこの溶液100μLをレセプター−IgGでコーティングしたプレートのウェルに添加した。加えて、先にタンパク質コーティングを行うことなくブロッキング緩衝液でウェルをブロックすることにより準備した空のプレートの等しい数のウェルに希釈したファージを添加した。プレート上において、回転式振盪培養機(Bellco)で穏やかに振盪しながら、周囲温度で2時間溶液をインキュベートした。ファージ溶液を捨て、噴出瓶から洗浄緩衝液をウェルに注ぎ、その後洗浄液を捨てることを繰り返す(6回)ことによりウェルをすすいだ。10mMのHcl100μLを添加することによりウェルから結合したファージを溶出した。20分間振盪しながらインキュベートした後、溶出液をピペットで取って除去し、2MのTris base pH11の1/20容量を添加することによりpHを中性にした。レセプタープレートの溶出液の半分を使用してXL−1大腸菌を感染させ、よって次回の選別ためファージ(50mLの培養液)を伝播させた。レセプタープレートと空のプレートから得た溶出液の一部を使用して、大腸菌とのコロニー形成単位(CFU)を測ることによりファージ濃度を推定した。簡単に説明すると、ファージ溶液の一連の10倍希釈液を対数期XL−1を用いて37℃で30分間インキュベートし、次いで50μg/mLカルベニシリンを含むLB寒天板上に細胞を筋状に出した。一晩37℃でインキュベートした後、カルベニシリン耐性コロニーの数を目視による検査により決定した。親ファージミド(pAPOK4.2)がアンピシリン耐性遺伝子を有しているので、コロニーの数はファージ濃度に比例する。レセプター結合による選択の質の向上は、空のプレートから溶出したものに対するレセプタープレートから溶出したファージの比から計算される。
【0080】
ウェルにコーティングしたDR4−IgG(構成を以下の実施例3に示す)に対し、2回にわたってDR4ライブラリーを選別し、その後競合するDR5−IgG(構成を以下の実施例3に示す)の存在下でDR4結合について3回選別した。第3、4、及び5回目の選別の際、それぞれ50、250、及び750nMのDR5−IgGを用いて30分間ファージをインキュベートした後、これら溶液をDR4−IgGでコーティングしたプレートに添加した。DR5ライブラリーについては、ファージをDR5−IgGでコーティングしたウェルに対して4回にわたって選別し、その後DR4−IgGを競合に使用して4回選別を行った。第5、6、7、及び8回目には、ファージをそれぞれ1、10、100、及び500nMのDR4−IgGでインキュベートし、その後DR5−IgG結合について選択を行った。図8Cに示すように、DR4ライブラリーとDR5ライブラリーの両方においてレセプター結合に特定の品質向上が見られた。選別が完了したら、選択されたライブラリーから得た個々のクローンを「点ELISA」により特定の結合についてスクリーニングした。XL−1大腸菌をファージプールで感染させることにより個々のクローンを得た後、LB/カルベニシリン寒天板に細胞を筋状に出した。単一のコロニーを選び、50μg/mLカルベニシリンと1×1010PFU/mLのVCSヘルパーファージを含む5mLのLB培養液をインキュベートするのに使用した。30℃で一晩成長させた後、培養液上清のPEG/NaCl沈降によりファージを回収した。点ELISAにおいて、ファージコロニーを結合緩衝液で10倍に希釈し、マイクロタイタプレートにコーティングした様々なタンパク質への結合について試験した。M13バクテリオファージのコーティングタンパク質に対するHRP結合抗体(Pharmacia)を用いて結合したファージを検出した。DR4ライブラリークローンについて、試験タンパク質はDR4−IgG、DR5−IgG、TNFR1−IgG、及びBSAであった。ELISAによりDR4−IgGだけに反応し、それ以外のタンパク質には反応しなかったクローンだけをさらなる分析に使用した。DR5ライブラリークローンの試験タンパク質はDR5−IgGとハーセプチン(Herceptin)(登録商標)(Genentech, Inc., South San Francisco, CA)であった。DR5−IgG結合に対してポジティブで、ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)に対してはそうでないクローンをさらなる研究のために選択した。
【0081】
実施例3
レセプター選択性クローンの特徴付け
実施例2に記載されている2つのライブラリーの各々から得たレセプター選択性クローンをさらなる分析のために選択した。Qiaprep Spin M13キット(Qiagen)を用いて一本鎖DNAをファージ粒子から単離し、染料ターミネーターサイクルキット(Beckman-Coulter)を用いたジデオキシヌクレオチド配列決定を行った。tacプロモーターの一部に相補的なプライマー(mal-fl: 5'-TGTAAAACGACGGCCAGTCACACAGGAAACAGCCAG-3' 配列番号13)を使用して配列決定反応を初回抗原刺激した。CEQ2000XLキャピラリーシークエンサー(Beckman-Coulter)で配列決定反応を分析することによりApo2L/TRAILのコード化領域の配列全体を決定することができた。ライブラリー位置のDNA配列から推論したアミノ酸同一性を表II(DR4選択性)及び表III(DR5選択性)に示す。ライブラリー位置の外部において偽配列変更は検出されなかった。
DR4ライブラリーのクローン4つに対する相対的結合強度を競合ファージELISAにより決定した(図15及び16)。このアッセイでは、溶液中のレセプター−IgGの濃度を次第に増加させながら、レセプター−IgGでコーティングしたウェルに固定濃度のファージを添加した。インキュベーションにより結合させ、結合しなかったファージを洗浄した後、HRP結合、抗M13抗体(Pharmacia)により結合ファージを測定した。4パラメータ適合を使用した溶液中のレセプター−IgG濃度により変化するELISAシグナルの分析により、IC50値を得た。IC50値はファージ濃度によって変化するので、まずファージクローンをタイターすることにより、4つのクローンのシグナル強度が等しくなるような希釈を決定した。4つのクローンの全てにおいて、ファージ上に表出した野生型(天然配列)Apo2L/TRAILについて測定されたものと類似か、それよりも少し小さいIC50値がDR−4結合に対して得られた(図15)。対照的に、可溶性DR5−IgGによる競合の不足により示されたように、クローンのいずれもがDR5−IgGに結合しないように見受けられた(図16)。
【0082】
DR5ライブラリーの代表的な配列のいくつかをpAPOK5.0にサブクローンしてさらなる試験に使用した。サブクローニングは、Apo2L/TRAILコード化セグメントの5’及び3’末端に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いたファージクローン上でのPCR反応により行われた。MluI及びBamHIによる制限消化の後、PCR断片をMluI/BamHI切断pAPOK5.0に結合させて、野生型Apo2L/TRAIL配列を変異DNAで置換した。ジデオキシヌクレオチド配列決定により配列を確認した。
Apo2L/TRAIL(114−281)突然変異体(変異体)を発現させて精製し、前述したように、BIAcore(登録商標)及びSK−MES肺癌細胞上の生理活性により精製したタンパク質をレセプター結合についてアッセイした(例えばHymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640)。簡単に説明すると、Apo2L変異体の結合のレセプターイムノアドヘシン固定化の解離定数(Kd)(表II及びIIIを参照)をParmacia BIAcore3000で表面プラスモン共鳴(SPR)測定値から決定した。それぞれ1998年11月19日公開の国際公開98/51793及び1999年3月9日公開の国際公開99/10484に開示されているようにして、DR5−IgG(Apo−2−IgGとも呼ぶ)とDcR2−IgGレセプターイムノアドヘシンを調製した。DR4−IgGを以下のように調製した。成熟DR4 ECD配列(アミノ酸1−218;Pan等, 上掲)を、Flagシグナル配列の下流でpCMV−1 Flagベクター(Kodak)にクローニングし、前述[Aruffo et al., Cell, 61:1303-1313 (1990)]のようにして、ヒトイムノグロブリンG重鎖のCH1領域、ヒンジ領域及びFc領域に融合させた。Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:10535-10539 (1991)に開示されているようにして、イムノアドヘシンをヒト293細胞への一過性形質移入により発現させ、タンパク質A親和性クロマトグラフィーにより細胞の上清から精製した。アミン結合化学(Pharmacia Biosensor)を使用して、レセプターイムノアドヘシンタンパク質を300−500共鳴ユニットのレベルでセンサーチップの表面に結合した。2倍に増大した際の15.6nMから500nMの濃度におけるApo−2L結合についてsensorgramを記録した。非線形回帰分析により動力学的定数を決定し、結合定数を計算した。
【0083】
アラマーブルーアッセイを使用してインビトロでのApo−2L変異体のアポトーシス活性を特徴付けた。SK−MES細胞はDR4とDR5の両方を発現し、野生型Apo2L/TRAILによるアポトーシス誘導に対して感受性であった。簡単に説明すると、蛍光染料の代謝転換から細胞の生存度を測定するバイオアッセイを使用してApo−2L変異体のアポトーシス活性を決定した。Apo−2L(114−281)又はApo−2L変異体(例えば表II及び表III参照)の連続する2倍の希釈物を、0.1%のBSAを含むRPMI−1640培地(Gibco)中に作成し、各希釈物50μLを96ウェルファルコン組織培養マイクロプレートの個々のウェルに移した。50μMのSK−MES−1ヒト肺癌細胞(ATCC HTB58)(RMPI−1640中、0.1%BSA)を2×10細胞/ウェルの濃度で添加した。これら混合物を37℃で24時間インキュベートした。20時間目に、25μLのアラマーブルー(AccuMed, Inc., Westlake, Ohio)を添加した。530nmで励起後590nmにおける相対的蛍光度を測定することにより細胞数を決定した。4パラメータ適合を用いてこれらのデータを分析し、ED50を計算し、細胞生存度を50%に低下させるApo−2Lの濃度を求めた。
表IVにまとめたように、DR5選択的変異体は通常DR4に対する親和性を低下させ、DR5に対する親和性を野生型Apo2L/TRAIL(114−281)と同程度にするか、又はそれよりやや減少させる。驚くべきことに、DR5選択的変異体(表IIIに同定されたDR5−21及びDR5−23)のうち、DR4に対する親和性が10分の1、及び100分の1まで低下した2つの変異体は、それぞれインビトロでのSK−MES細胞のアポトーシス誘導に対する活性が大きかった。
【0084】
実施例4
flagでタグをつけたApo2L/TRAIL変異体の生成及び試験
DR4が非架橋及び架橋リガンドに応答できるのに対し、DR5が架橋Apo2L/TRAILにしか応答しないことが言われている(例えばMuhlenbeck et al., (2000) J. Biol. Chem. 275, 32208-32213)。ここに開示するレセプター選択的変異体のシグナル伝達及び活性特性を調べるため、一部の変異体にエピトープでタグをつけたものを調製し、アッセイした。M2抗flag抗体(Sigma-Aldrich Chemical Co.)との架橋を可能にするN末端のflagタグにより突然変異体を生成した。
flagでタグをつけたApo2L/TRAIL変異体の大腸菌発現のために設計されたプラスミドは、Apo2L/TRAIL(114−281)をpFLAG−MAC(Sigma)に導入したプラスミド(pFLAG-Apo2L; Genentech)のオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発により作成した。PFLAG−Apo2Lは、N末端にflagでタグをつけたApo2L/TRAIL(114−281)の細胞質発現をtacプロモーターの制御下に方向付ける。突然変異誘発のテンプレートは、Kunkelのプロトコル(例えばKunkel, T.A. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82, 488-492参照)を用いて生成したプラスミドの一本鎖型であった。ジデオキシヌクレオチド配列決定により突然変異体を同定した。Apo2L/TRAIL変異体の発現のため、突然変異によるプラスミドを大腸菌株43E7に形質転換した。形質転換した大腸菌を、カルベニシリン50μg/mLを含む2YT培地500mL中で37℃で初期対数期まで成長させ、IPTG添加により発現を誘発し、最終濃度を0.4mMとした。タグをつけていないタンパク質について前述したように(例えばHymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640)、但し酸性ペプチドflagはタンパク質のPI低下を招くので陽イオン交換カラムのpHを下げ、flagでタグをつけたApo2L/TRAIL変異体を精製した。
【0085】
flagでタグをつけたタンパク質の生成に、DR4選択的変異体クローン番号8及び9、並びにDR5選択的変異体クローン番号1、2、8、21、及び23を選択した。表Vに示すように、まずBIAcore(登録商標)によりDR4とDR5結合について、及び抗flag架橋した場合としない場合のSK−MES上のアポトーシス誘発について、精製したflagタグApo2L/TRAIL変異体を試験した。Flag−Apo2L.DR4−8及び9のDR5に対する親和性は1000分の1に低下する一方で、DR4への結合に対しては高い親和性を維持していた。Flag−Apo2L.DR4−8のDR4に対する親和性は5倍に増大し、一方Flag−Apo2L.DR4−9の親和性は4分の1に低下した。いずれのDR4選択性タンパク質もSK−MES細胞におけるアポトーシス誘発の活性を大きく低下させた。抗flag架橋した場合の活性の増大も、野生型Flag−Apo2Lに見られたものよりずっと小さいものであった。抗flag架橋によってFlag−Apo2L.DR4−8の活性は増大せず、野生型タンパク質について30倍の活性増大が観察されたのに比較して、Flag−Apo2L.DR4−9の活性増大は6倍に過ぎなかった。
【0086】
DR5選択的変異体全てのDR4に対する親和性は低下し、その一方でDR5への結合には高い親和性を維持していた。Flag−Apo2L.DR5−1、2、及び21の場合、DR5への結合に対しては2分1以下の低下しか示さなかったのに対し、DR4に対する親和性は11分の1まで低下した。Flag−Apo2L.DR5−23のDR4に対する親和性は100分の1に低下したが、DR5への結合の低下は2.4分の1程度であった。Flag−Apo2L.DR5−8にはDR4への結合が全く見られなかったが、この変異体のDR5への結合は野生型タンパク質と等しいか、それよりも大きかった。DR4選択的変異体に見られた結果と対照的に、DR5選択性タンパク質の全てはSK−MES上のアポトーシス誘発について高い活性を保持していた。実際、Flag−Apo2L.DR5−1、2、及び8は、野生型と比較して、アポトーシス誘発に活性増大(ED50低下)を示した。抗flag抗体と架橋すると、DR5選択的変異体の全てについて、架橋野生型Apo2Lに観察された値(ED50)に活性が増大した。これらの結果は、SK−MES上でのアポトーシスシグナル伝達においてDR5結合のほうがDR4結合より重要であることを示している。完全に理解されているわけではないが、DR4に対する親和性が低下した変異体の一部の方がアポトーシス誘発に高い影響力を持つので、DR4は弱いシグナル伝達を行うことができ、DR5により生成されるシグナルを弱め得ると考えられている。
【0087】
実施例5
Colo205及びヒト白血病T細胞株に対するFlag−Apo2L/TRAIL変異体の活性
さらに、Flag−Apo2L.DR4−8及びFlag−Apo2l.DR5−8のアポトーシス誘発活性を、Colo205大腸癌細胞及びヒト白血病T細胞株を用いて調べた。Colo205細胞はDR4とDR5の両方を発現し、SK−MESよりも野生型Apo2L/TRAILによるアポトーシス誘発に対して影響を受けやすい。FurkatT細胞はDR5しか発現しないと思われた。Colo205細胞は、野生型Apo2L/TRAILよりもDR5選択的変異体に対して感受性であった(図17A)。Flag−Apo2L.DR5−8の抗flag架橋により、Colo205における活性にさらなる有意な増大は起こらなかった。対照的に、Flag−Apo2L.DR4−8に対するColo205の感受性は低かった(図17B)。この変異体の抗flag架橋により、活性が少し増大した。ヒト白血病T細胞株は、リガンド架橋に関係なく、Flag−Apo2L.DR4−8に感受性でなかった(図18B)。Flag−Apo2L.DR5−8は架橋無しでヒト白血病T細胞株にアポトーシスを誘発した。抗flag架橋は架橋野生型Flag−Apo2Lで測定されたレベルまで活性を増大させた。
【0088】
実施例6
AlphaQuest(登録商標)アッセイによるレセプター結合
さらに、AlphaQuest(登録商標)を使用して、5つの既知のApo2L/TRAILレセプター(DcR1、DcR2、POG、DR4、DR5)に対するApo−2L変異体の結合を調べた。このアッセイは、「ドナー」と「アクセプター」ビーズを近づけることにより一重項酸素媒介、蛍光共鳴エネルギー伝達を促進すると、シグナルを生成する。この場合、ドナービーズはストレプトアビジンで被覆されており、ビオチン化したApo2L/TRAILの捕獲に使用される。レセプターに対するApo2L/TRAILの結合により、ビーズが近づき、シグナルが伝達される。結合のIC50値は、ビオチン化リガンドを非ビオチン化リガンドで置換することにより決定することができる。Apo2L/TRAILの各々について置換曲線を生成し、表VIに示した相対的IC50値を決定するために使用した。DR4及びDR5結合に関して、IC50値の変化はBIAcore(登録商標)により測定した傾向と一致していた。アッセイしたApo−2L変異体のOPGに対する結合は大幅に縮小していた。DR4選択的変異体はDcR1に対する親和性を示し、DcR2についてはそれよりもやや小さい親和性を示した。DR5選択的変異体の全てはDcR1に対する親和性の大きな低下を示したが、Flag−Apo2L.DR5−8を例外に、DcR1よりもDcR2に対する結合能を保持していた。Flag−Apo2L.DR5−8はDcr1、DcR2、OPG、及びDR4に対する親和性の大きな低下を示したが、DR5には比較的高い親和性で結合した。
【0089】
実施例7
正常カニクイザル肝細胞へのApo−2L変異体の作用
インビトロでリガンドに曝した後の肝細胞生存度を測定することにより、レセプター選択的変異体2つ(Flag−Apo2L.DR4−8及びFlag−Apo2L.DR5−23)の正常細胞に対する影響を調べた。通常肝細胞は、リガンドが凝集していない限りApo2L/TRAILに対して感受性でない(例えば、Lawrence et al., (2001) Nature Medicine 7, 383-385参照)。アッセイのため、カニクイザル由来の肝細胞を使用してクリスタルバイオレット染色により生存度を測定した。抗flag架橋後のDR4選択性及びDR5選択的変異体の肝細胞に対する毒性は、架橋野生型リガンドよりも小さかった(図19)。
【0090】
実施例8
Apo2Lシステイン置換変異体の生産
Apo-2Lのシステイン置換変異体は、プラスミドpAPOK5.0の一本鎖型でのオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発(Kunkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 82:488-492 (1985);Kunkel et al., Methods in Enzymology, 154: 367-382 (1987))によって構築した。このプラスミドは、トリプトファン(trp)プロモーターにより推進されるApo2Lの114−281アミノ酸型の細胞内大腸菌発現のために設計した。pAPOK5.0はApo-2Lの残基91−113(図1)をコードしているDNAセグメントの欠失突然変異誘発によってpAPOK5(1999年7月22日公開の国際公開99/36535)から構築した。pAPOK5は、trpプロモーターを持つプラスミドpS1162へApo-2L cDNA(図1の残基91−281をコードする)をクローニングするためのPCRを利用して構築した。突然変異誘発後に、プラスミドの同一性をプラスミドのApo2Lの全体部分のジデオキシヌクレオチド配列決定(Sanger)によって確認した。
ついで、システイン置換タンパク質をコードするプラスミドを、発現のための大腸菌株294に形質転換した。培養物をLuriaブロス+50μg/mLカルベニシリン中で37℃にて飽和するまで一晩成長させた。続いて、飽和した培養物を50倍希釈してNaHPO(6g/L)、KHPO(3g/L)、NaCl(0.5g/L)、NHCl(1g/L)、グルコース(4.9g/L)、カザミノ酸(4.9g/L)、27mMのMgSO、0.003%チアミンHCl及び適量の蒸留水+カルベニシリン40μg/mLからなる滅菌濾過培地中に蒔いた。A500が0.5−0.8になるまで培養物を37℃にて成長させた後、25μg/mLの最終濃度になるまで3-α-インドールアクリル酸(IAA)(Sigma, St.Louis, MO)を添加して発現を誘導した。振盪しながら細胞を30℃で一晩成長させ、遠心分離して収集し、後述のようにその後Apo2Lを回収するために−20℃で凍結保存した。
【0091】
モデルM110-Fマイクロフルイダイザー(Microfluidics Corporation, Newton, MA)を使用して、凍結した大腸菌細胞ペレットから、10容量(wt/vol)の100mMのTris、pH8.0/200mMのNaCl/5mMのEDTA/1mMのDTT中での均質化によってApo-2Lタンパク質を抽出した。ポリエチレンイミン(PEI)を0.5%(vol/vol)の最終濃度までホモジネートに添加して、これをついで遠心分離して細胞片を除去した。固形の硫酸アンモニウムを撹拌しながら周囲温度にて45%の飽和度の最終濃度になるまで抽出上清に加え、遠心分離によってペレットを回収した。硫酸アンモニウムペレットを50%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄して残留EDTAを除去した後、50容積(wt/vol)の50mMのHEPES、pH7.5/0.1%トリトンX-100中に再懸濁させた。得られた溶液を遠心分離によって透明にし、5mLのHiTrapキレーティングセファロースカラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)を使用して固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。カラムに、100mMのNiSO/300mMのTris、pH7.5中のニッケルを充填し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の350mMのNaClで平衡化した。充填後、カラムを、PBS中350mMのNaClで洗浄し、PBS中50mMのイミダゾール/350mMのNaClで溶出させた。IMAC溶出液を20mMのTris、pH7.5に対して透析し、遠心分離によって透明にし、更に、平衡化し20mMのTris、pH7.5で洗浄した5mLのHiTrap SPセファロースカラム(Pharmacia)を使用する陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。HiTrap SPカラムを20mMのTris、pH7.5/0.5MのNaClで溶出させた。SPカラム溶出液を2mMのDTTで還元し、続いて周囲温度で45%の飽和度の最終濃度になるまで撹拌しながら固形の硫酸アンモニウムを加えることによって沈殿させた。硫酸アンモニウムペレットを3.5mLの20mMのTris、pH7.5/100mMのNaCl中に再懸濁させ、PD10カラム(Pharmacia)を使用するゲル濾過クロマトグラフィーによって20mMのTris、pH7.5/100mMのNaCl/2mMのDTTの最終バッファー中に交換した。精製したApo-2Lシステイン置換タンパク質を、クーマシー染色SDS-PAGE及び質量分析によって特徴付けし、−20℃で凍結して保存した。
【0092】
実施例9
Cys残基でのApo-2Lのペグ化
システイン置換Apo2Lタンパク質を、メトキシ−PEG−マレイミド、分子量2000、5000又は20000D(Shearwater Polymers)との、或いはヨードアセトアミド(IAM)との反応により共有結合的に修飾した。PD-10ゲル濾過カラムを通過させて保存バッファー中に含まれるDTTを最初に除去して、Apo2L変異体のペグ化の準備をした。カラムを平衡化し、HICバッファー(0.45MのNaSO、25mMトリス-HCl pH 7.5)又はアルギニン製剤バッファー(0.5Mのコハク酸アルギニン、20mMトリス-HCl pH 7.5)で溶出させた。一定量のPEG−マレイミド溶液(dHO中10mM)を直ぐに添加した。1:1、2:1、5:1又は10:1のシステイン変異体−Apo2L.0単量体に対するPEG−マレイミドのモル濃度比及び2から24時間の反応時間を使用した。反応を、2mMになるまでDTTを添加することにより終結させ、周囲温度で30分インキュベーションした後、ヨードアセトアミドを10mMになるまで添加した。この反応停止手順によって、反応中に生じたあらゆるジスルフィド結合を減少させ、あらゆる未ペグ化Cysをカルボキシアミドメチル化させた。ヨードアセトアミドでの修飾は30分間で、その後、過剰な試薬を、平衡化されPBSで溶出されるNAP-5カラム(Pharmacia)でのゲル濾過によって除去した。これらの試料をSDS-PAGE及びSEC-MALSによって分析した。またSK-MES細胞に対するアポトーシス誘導活性を本明細書に記載のようにアッセイした。
【0093】
実施例10
部分的にペグ化されたApo2Lシステイン変異体の調製
ペグ化されたApo2Lシステイン変異体のクリアランスが遅いにも関わらず、システイン残基に起こり得るジスルフィド二量体形成が回避されるという特性を有するAPO2L三量体を生産することを目的にペグ化の実験を行い、その際、cysをApo2L単量体に導入した後3PEG分子を三量体に添加するのではなく1−2のPEG分子を三量体に添加して、残った3番目のcysをカルボキシメチルヨードアセトアミド(IAM)でブロックし、よって三量体の形成を防いだ。
各三量体につき1−2個の共有結合的に添加されたPEG鎖を有するAPO−2Lの三量体形式は、有意な生理活性特性及びジスルフィド二量体を形成する傾向の低下など、最適な特徴を同時に多数示すと考えられる。
【0094】
5K又は20KのPEG−マイレミドを用いてR170C−Apo2Lの部分的ペグ化を以下のように行った。コハク酸アルギニン製剤バッファーで平衡化したPD-10(Amersham Biotec)ゲル濾過カラムを通過させてDTTを最初に除去し、修飾のためのApo2L変異体のペグ化の準備をした。直ぐに280nmでの吸光測定によりタンパク質濃度を決定した後、PEG−マイレミド(5000又は20000分子量;Shearwater, Inc.)をまず0.7PEG:1.0Apo2L単量体の比で添加した。PEG−マイレミドは、水中で新しく調製した保存液10mMであった。反応溶液を周囲温度で一晩インキュベートした。ペグ化反応を、2mMになるまでDTTを添加することにより終結させ、この溶液を室温で1時間インキュベーションした後、ヨードアセトアミドを10mMになるまで添加した。さらに一晩インキュベートすることにより、PBSで溶出したSephacryl S−200(Amersham Biotech)ゲル濾過カラム上でペグ化タンパク質を分画した。280nmでの吸光によりタンパク質溶出をモニターし、修飾されていないApo2L/TRAILよりも先に溶出する分画を含むタンパク質を収集してプールした。この手順は5K又は20KのPEG−マイレミドを用いてR170C−Apo2Lを部分的にペグ化するのに使用された。オンライン光分散(SEC-MALS)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによってこれらの調製物を分析したところ(図14)、各三量体につき1又は2のPEG鎖を有する三量体を主に含む混合物から構成されることが示された。調製物の両方が含んでいる、各三量体につき1又は3のPEG鎖を有する三量体の量は、いずれも少なかった。図10Gに示すように、これら混合物のSK−MES細胞上のアポトーシス誘発の活性レベルは高かった。5Kp−R170C.0及び20Kp−R170C.0のマウスにおける半減期はApo2L.0よりも長く(図11A、B)、修飾されていない野生型Apo2Lよりも異種移植モデルにおける腫瘍の容積を大きく減少させた(図12A、B)。
【0095】
実施例11
天然及びペグ化システイン変異体のアポトーシス活性
蛍光染料の代謝転換から細胞生存度を測定するバイオアッセイを使用して天然及びペグ化Apo2Lシステイン変異体のアポトーシス活性を決定した(例えばHymowitz et al., (2000) Biochemistry 39, 633-640参照)。簡単に説明すると、0.1%のBSAを含むRPMI−1640培地(Gibco)中でApo−2L.0又はApo2L変異体の連続する2倍希釈物を作成し、各希釈物50μLを96ウェルFalcon組織培養マイクロプレートの個々のウェルに移した。SK−MES−1ヒト肺癌細胞(ATCC HTB58)(RMPI−1640中、0.1%BSA)を2×10細胞/ウェルの濃度で添加した。これらの混合物を37℃で24時間インキュベートした。20時間目に、25μLのアラマーブルー(AccuMed, Inc., Westlake, Ohio)を添加した。530nmで励起した後、590nmにおける相対的蛍光度を決定した。4パラメータ適合を用いてこれらのデータを分析し、ED50、即ち細胞生存度を50%減少させるApo2L.0の濃度を計算した。
これらアッセイの結果を図9に示す。
【0096】
実施例12
PEG−R170C-Apo2L.0の薬物動態学
Apo2Lのクリアランスに対するペグ化の効果をマウスで試験した。時間ゼロにおいてマウスにApo2L.0(10mg/kg)、PEG−R170C−Apo2L.0(10mg/kg)、又はPEG-R179C-Apo2L.0(10mg/kg)を腹腔内注射した。24時間後に血漿試料を収集した。Apo2L濃度をELISAによって定量した。 図11A及び11Bに示すように、Apo2L.0は循環から迅速に排除されるのに対して、PEG−R170C-Apo2L.0とPEG−K179C−Apo2Lはそれよりもゆっくりと排除された。よって、Apo2L変異体に対するPEGの部位特異的付着により、クリアランス速度が有意に減少した。
【0097】
実施例13
マウス異種移植モデルにおけるヒトCOLO205腫瘍の成長に対するPEG−R170C-Apo2L.0及びPEG−K179C−Apo2Lの効果
胸腺欠損ヌードマウス(Jackson Laboratories)に5x10のCOLO205ヒト大腸癌細胞(NCI)を皮下注射した。腫瘍を生じさせ、ノギスでの測定で約500−1500mmの体積になるまで成長させた。マウスにビヒクル(2×/週)、Apo2L.0(10mg/kg、2x/週)、PEG−R179C−Apo2L.0(10mg/kg、2×/週)、又はPEG−R170C-Apo2L.0(10mg/kg、2×/週)を腹腔内注射した。腫瘍体積を三日毎に測定し、二週間後に治療を停止した。図12A及び12Bに示すように、10mg/kgのPEG−R170C-Apo2L.0又はPEG又はPEG−K179C−Apo2L.0での処置は、Apo2L.0の等価な投薬量よりも腫瘍体積を大きく減少させた。よって、Cys170又はCys179でのApo2Lのペグ化は、このヒト癌異種移植モデルにおいて効果を達成するのに必要な投薬量を低減させる。
【0098】
実施例14
DR5レセプター選択的変異体の置換の選択
ファージディスプレイ法を使用して、変異Apo2L/TRAIL.DR5−8に見られる置換のDR5選択性決定における役割を決定した。「復帰細胞ライブラリー」を構築し、189、191、193、264、266及び267における残基を、野生型残基又はDR5−8アミノ酸として変化させた。以下のコドンを使用した:189−YAS、Tyrコード化、アンバー、Gln、His;191−ARR、Arg及びLysコード化;193−CRA、Gln又はArgコード化;264−CRC、His及びArgコード化;266−MTT、Ile及びLeuコード化;267−SAS、His、Glin、Asp、及びGluコード化。このライブラリーの多様性は、512のヌクレオチド配列によって記述される192のアミノ酸配列であった。Kunkelの突然変異誘発を使用して実施例1に開示したようにこのライブラリーを構築したが、但しXL−1大腸菌を電気穿孔法に使用した。このライブラリーは2.5×1010クローンの力価を与えるもので、配列決定により5/12が正しく突然変異していることが示され、よってライブラリーの実際のサイズは1×1010であった。上述のようにしてファージを生成し、回収した。
マイクロタイタプレートにコーティングしたDR5−IgGに対して復帰細胞ライブラリーを1回選別した後、競合するDR4−IgGの存在下でDR5結合について3回選別した。2、3、及び4回の選別について、それぞれ100nM、1μM、及び4μMのDR4−IgGを用いて30分間ファージをインキュベートし、その後これらの溶液をDR−IgGでコーティングしたプレートに添加した。第3回目の選別により、1000倍を超える濃縮が得られた。点ELIZAにより、第2回目の選別の後、22/24のクローンがDR5結合に対してポジティブであり、7/24がDR4に結合できることが示された。第3回目の後、24/24のクローンがDR5に結合し、1/24だけがDR4に結合した。これら48個のファージクローンから単離した一本鎖DNAのヌクレオチド配列を上述のようにして決定した。DR5に対してポジティブであるがDR4に対してはポジティブでないライブラリー位置のDNA配列から推定したアミノ酸同一性を表VIIに示す。これらの結果により、位置264と267における残基同一性は、これらの位置にDR5−8アミノ酸が存在しないことからDR5選択性に重要でないことが示された。対照的に、DR5−8アミノ酸は位置189、191、193及び266において優勢であり、これはこれらの部位がDR5選択性に重要であることが示された。位置189において、Glnコドンにより、又はアンバー終止コドンの抑制により発現されるGlnに対し、優先度が強いことが示された。
【0099】
ファージ選択に見られる優先度に基づき、2つの変異体をpAPOK5.0にサブクローニングし、さらに試験した。DR5−8Bは、Y189Q、R191k及びQ193Rにより野生型Apo2L/TRAILとは異なり、DR5−8Cは加えてI266Lの置換を有する。これらの変異体を発現させて精製し、上述したように、精製したタンパク質をBIAcore(登録商標)によりレセプター結合について、及びSK−MES肺癌細胞上の生理活性についてアッセイした(例えばHymowitz等, (2000) Biochemistry 39, 633-640)。表VIIIに示すように、DR5−8BとDR5−8Cの両方において、DR4に対する親和性が低下し、一方DR5に対する親和性がやや増大した。変異体DR5−8Cは、ED50値に反映されているように、アポトーシス誘発について活性を有し、それは野生型タンパク質に観察されるものと同等か、やや良好であった。DR5−8Bのアポトーシス誘発活性は3分の1に低下した。比較すると、DR5−8において、DR4に対する親和性が大きく低下しており、一方野生型Apo2L/TRAILと同等のアポトーシス誘発活性を維持していた。この実験において、DR4に対するDR5−8の親和性はKd値を測定するには弱すぎた。これらの結果により、アミノ酸置換H264R及びD267QによりDR4結合に対してさらなる選択が行われることが示された。
【0100】
実施例15
マウス異種移植モデルにおけるPEG−K179C−Apo2Lの抗腫瘍活性に対するPEG鎖長の効果
上述のようにして、マウス異種移植モデルにおいて抗COLO205腫瘍活性に対するPEG鎖長の効果を調べた。これらの実験では、Apo2L/TRAIL(114−281)のK179C変異体を試験した。結果として各三量体につき3つのPEG鎖(各単量体につき1つ)が付加される条件下(上記実施例9に記載)において、分子量1000、2000、又は5000のメトキシ−PEG−マレイミドのモル比2:1でK179C−Apo2Lを反応させた。CM−セファロースのカラム上での陽イオン交換クロマトグラフィーにより、PEG−K179C−Apo2L調製物から非ペグ化タンパク質のトレースレベル、及び加えて過剰非反応PEG−マレイミドを除去した。2000−PEG−K179Cの分析的ゲル濾過(図20)により、三量体への3−2000分子量のPEG鎖の付加と一致する光分散データから計算されたモル質量を有する均質なペグ化三量体タンパク質が示された。ペグ化−K179C−Apo2L調製物の各々をSK−MES細胞でのアポトーシス活性についてアッセイした。K179C−Apo2Lのペグ化により、このアッセイではPEG差の長さに応じてED50が増大した。Apo2L.0と比較した場合、1000分子量のPEG−K179C−Apo2LのED50は4.3倍に増大し、2000分子量のPEG−K179C−Apo2LのED50は8.7倍に増大し、また5000分子量のPEG−K179C0−Apo2LのED50の増大は23.2倍で活性が最も弱かった。
【0101】
PEG鎖長に対するクリアランスの依存をマウスで試験した。上述のように薬物動態試験を行い、但しその際PEG−K179C−Apo2L又はApo2L.0の注射を静脈注射により行った。注射した容量は、Apo2L.0を5又は30mg/kg、1000分子量のPEG−K179C−Apo2Lを30mg/kg、及び2000と5000分子量のPEG−K179C−Apo2Lを5mg/kgであった。対照としての5mg/kgのApo2L.0と、2000及び5000分子量のPEG−K179C−Apo2Lについて、血漿試料を注射の1分、2時間、6時間及び24時間後に回収した。1000分子量のPEG−K179C−Apo2Lと30mg/kgのApo2L.0だけは、1分後及び24時間後の試料を採取した。Apo2Lの濃度をELISAによって決定し、図21に示すような薬物動態曲線を導き出した。データは、ペグ化によりApo2Lのクリアランスが減少し、半減期がPEGの鎖長とともに増大することを示している。24時間後には、用量5mg/kgで、2つのペグ化種の血漿濃度がインビトロのバイオアッセイで測定されたED50を超えており、Apo2L.0は検出不可能なレベルに低下した。
【0102】
マウス異種移植モデルにおいて1000、2000、及び5000分子量のPEG−K179C−Apo2LのCOLO205腫瘍の成長に対する効果を試験した。これらの実験では、静脈内投与(30mg/kg)を1回行った。ペグ化タンパク質に対する効果を、30mg/kgのApo2L.0を1回静脈内投与した場合の効果、並びに60mg/kgのApo2L.0の腹腔内投与を5×/wkで1週間行う「標準的」処置と比較した。腫瘍体積を2週間測定した。図22に示すように、2000分子量のPEG−K179C−Apo2Lは、同量のApo2L.0と同様に腫瘍の成長を抑制したのに対し、5000分子量のPEG−K179C−Apo2Lによる腫瘍成長の抑制効果はそれよりも小さかった。1000分試料のPEG−K179C−Apo2Lによる腫瘍成長の抑制効果は、同量のApo2L.0よりも大きかった。有意な点は、この活性が、10倍のApo2L.0を投与する標準的な治療の活性に匹敵するものであったことである。1000分子量のPEG−K179C−Apo2Lの半減期の増大と、生理活性が良好に保持されるという組合せにより、分子の効果が向上した。
【0103】

表I 特異的DR5−IgG−結合の濃縮により決定されたファージ上の機能的Apo2L/TRAILのファージディスプレイ

結合してDR5−IgGウェルから溶出したファージの、空のウェルに観察されたものに対する比から濃縮を計算した。2つの野生型Apo2L/TRAILファージミド構築物を2種類の成長温度で試験した。
【0104】
表II DR4−選択性ファージクローンのDNA配列から推定したライブラリー位置におけるアミノ酸配列

「X」は、満足な配列決定データが無いために残基同一性が決定できない位置を示す。本開示において、例えば「DR4−8」は、表中に同定されたDR4選択的変異体クローン番号8を指す。「WT」は野生型を意味する。
【0105】
表III DR5−選択性ファージクローンのDNA配列から推定したライブラリー位置におけるアミノ酸配列

【0106】
表IV DR5−選択性Apo2L/TRAIL突然変異体タンパク質のレセプター結合及びアポトーシス誘発活性

Apo2L/TRAILの114−281作成物においてDR5選択性突然変異体を生成し、精製し、SK−MES上のアポトーシス誘発、及びBIAcoreによるレセプター結合についてアッセイした。野生型に対する突然変異体の比を示す。
【0107】
表V DR4選択性及びDR5選択性Apo2L/TRAIL変異体のレセプター結合及びアポトーシス誘発(flagでタグをつけたもの)
BIAcore分析によりK値を決定し、野生型タンパク質について計算された値に対する比で示す。アポトーシス誘発は、2μg/mLのM2抗体(Sigma)がある場合と無い場合について、ED50値(ng/mL)から評価した。

【0108】
表VI CARB−AQああ正により決定されたflagでタグをつけたApo2L/TRAIL変異体のレセプター結合
IC50値に基づいて突然変異体を野生型Flag−Apo2L/TRAILと比較した。記号「>」は、アッセイで試験した突然変異体の最高濃度よりIC50値が高く、よってレセプター結合の倍増には低い制限しか予測できないことを示す。

【0109】
表VII 復帰細胞ライブラリーから選択された配列

【0110】
表VIII DR5−8変異体の相対的レセプター結合親和性及び生理活性

a:アミノ酸変化は野生型Apo2Lに対するものである。
b:レセプター結合と生理活性の値は野生型Apo2Lに対する比である。
【0111】
1. 図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、次の図1(配列番号1)の残基位置のアミノ酸置換:S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cのうち1又は複数を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
2. 図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、該変異が表IIに示す1又は複数のアミノ酸置換を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
3. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR4レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
4. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
5. 前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項4に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
6. 前記DR4レセプターが図2A−2B(配列番号3)のアミノ酸1〜218を有する、請求項3に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
7. 前記1又は複数のアミノ酸突然変異が、天然Apo−2リガンド配列の位置189、193、199又は201に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
8. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
9. 図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、
Y189A:R191K:Q193K、
Y189A:R191K:Q193K:H264A、
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q、
Y189A:R191K:Q193K:H264D:I266L:D267Q:D269E、及び
Y189A:R191K:Q193R:H264S:I266L:D269E
からなるグループから選択される、図1(配列番号1)の残基位置の1群のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
10. 図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を含んでなり、該突然変異が表IIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を含む、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
11. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
12. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
13. 前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項12に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
14. 前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項11に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
15. 前記1又は複数のアミノ酸突然変異が、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
16. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
17. 図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、前記突然変異が表VIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を有する、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
18. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項17に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
19. 前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項17に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
20. 前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項19に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
21. 前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項18に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
22. 図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q;
Y189Q:R191K:Q193R;及び
Y189Q:R191K:Q193R:I266L
からなるグループから選択される、図1(配列番号1)の残基位置の1群のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
23. 前記ポリペプチドが1又は複数のポリオールに抱合又は結合する、請求項1ないし22のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
24. 前記ポリオールがポリエチレングリコールである、請求項23に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
25. 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が約1000ダルトンから25000ダルトンである、請求項24に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
26. 請求項1ないし22のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸分子。
27. 請求項26のコード化DNAを含んでなるベクター。
28. 請求項27のベクターを含んでなる宿主細胞。
29. 前記宿主細胞が大腸菌、CHO細胞又は酵母細胞である、請求項28の宿主細胞。
30. 請求項28に記載の宿主細胞を前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドを前記培養物から回収することを含んでなる、Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの製造方法。
31. 請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドを含有する組成物。
32. 前記組成物が、1又は複数の二価金属イオンを含む製薬的に許容可能な製剤を含む、請求項31に記載の組成物。
33. DR4及び/又はDR5レセプターを発現する哺乳動物細胞を、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量にさらすことを含んでなる、哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する方法。
34. 哺乳動物の癌細胞を、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量にさらすことを含む、癌治療法。
35. 前記哺乳動物の癌細胞が、肺癌細胞、乳癌細胞、神経膠腫癌細胞、或いは大腸又は結腸直腸癌細胞を含む、請求項34に記載の方法。
36. 前記方法が、前記哺乳動物の癌細胞を、プロドラッグ、細胞障害剤、化学療法剤、成長阻害剤、又はサイトカインにさらすことを更に含む、請求項34に記載の方法。
37. 前記哺乳動物に対し、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量を投与することを含んでなる、哺乳動物の免疫関連疾患治療法。
38. 前記免疫関連疾患が関節炎又は多発性硬化症である、請求項37に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、次の図1(配列番号1)の残基位置のアミノ酸置換:S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cのうち1又は複数を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項2】
図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、該変異が表IIに示す1又は複数のアミノ酸置換を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項3】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR4レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項4】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項5】
前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項4に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項6】
前記DR4レセプターが図2A−2B(配列番号3)のアミノ酸1〜218を有する、請求項3に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項7】
前記1又は複数のアミノ酸突然変異が、天然Apo−2リガンド配列の位置189、193、199又は201に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項8】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項2に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項9】
図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、
Y189A:R191K:Q193K、
Y189A:R191K:Q193K:H264A、
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q、
Y189A:R191K:Q193K:H264D:I266L:D267Q:D269E、及び
Y189A:R191K:Q193R:H264S:I266L:D269E
からなるグループから選択される、図1(配列番号1)の残基位置の1群のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項10】
図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を含んでなり、該突然変異が表IIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を含む、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項11】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項12】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項13】
前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項12に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項14】
前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項11に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項15】
前記1又は複数のアミノ酸突然変異が、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267、又は269に1又は複数のアミノ酸置換を有する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項16】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが、Arg149、Gln205、Val207、Tyr216、Glu236及び/又はTyr237に対応する位置に天然残基を保持する、請求項10に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項17】
図1(配列番号1)の天然Apo−2リガンドポリペプチド配列のアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸突然変異を有し、前記突然変異が表VIIに示す1又は複数のアミノ酸置換を有する、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項18】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドがDR5レセプターに対する選択的結合親和性を有する、請求項17に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項19】
前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドが少なくとも1種類の哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する、請求項17に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項20】
前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項19に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項21】
前記DR5レセプターが図3A(配列番号4)のアミノ酸1〜184を有する、請求項18に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項22】
図1(配列番号1)の天然配列Apo−2リガンドポリペプチド配列とは異なり、
Y189Q:R191K:Q193R:H264R:I266L:D267Q;
Y189Q:R191K:Q193R;及び
Y189Q:R191K:Q193R:I266L
からなるグループから選択される、図1(配列番号1)の残基位置の1群のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項23】
前記ポリペプチドが1又は複数のポリオールに抱合又は結合する、請求項1ないし22のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項24】
前記ポリオールがポリエチレングリコールである、請求項23に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が約1000ダルトンから25000ダルトンである、請求項24に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチド。
【請求項26】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸分子。
【請求項27】
請求項26のコード化DNAを含んでなるベクター。
【請求項28】
請求項27のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項29】
前記宿主細胞が大腸菌、CHO細胞又は酵母細胞である、請求項28の宿主細胞。
【請求項30】
請求項28に記載の宿主細胞を前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、前記Apo−2リガンド変異体ポリペプチドを前記培養物から回収することを含んでなる、Apo−2リガンド変異体ポリペプチドの製造方法。
【請求項31】
請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドを含有する組成物。
【請求項32】
前記組成物が、1又は複数の二価金属イオンを含む製薬的に許容可能な製剤を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
DR4及び/又はDR5レセプターを発現する哺乳動物細胞を、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量にさらすことを含んでなる、哺乳動物細胞にアポトーシスを誘発する方法。
【請求項34】
哺乳動物の癌細胞を、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量にさらすことを含む、癌治療法。
【請求項35】
前記哺乳動物の癌細胞が、肺癌細胞、乳癌細胞、神経膠腫癌細胞、或いは大腸又は結腸直腸癌細胞を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記哺乳動物の癌細胞を、プロドラッグ、細胞障害剤、化学療法剤、成長阻害剤、又はサイトカインにさらすことを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物に対し、請求項1ないし25のいずれか1項に記載のApo−2リガンド変異体ポリペプチドの有効量を投与することを含んでなる、哺乳動物の免疫関連疾患治療法。
【請求項38】
前記免疫関連疾患が関節炎又は多発性硬化症である、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−65037(P2010−65037A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−233816(P2009−233816)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【分割の表示】特願2004−516142(P2004−516142)の分割
【原出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】