APO2LレセプターアゴニストおよびNK細胞活性化因子の使用方法
Apo-2LレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはその活性化剤を用いた、哺乳動物細胞のアポトーシスまたは細胞溶解活性を亢進する方法を提供する。前記方法において用いられうるApo-2Lレセプターアゴニストには、Apo-2リガンドまたはTRAILとして知られるリガンド、並びに一又は複数のApo-2Lレセプターに対するアゴニスト抗体が含まれる。前記方法において用いられうるNK細胞活性化剤には、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2004年6月18日提出の米国特許仮出願番号第60/581,129号の優先権を主張する出願であり、ここに出典明記により組み込まれるものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞溶解活性の誘導を亢進する方法に関する。特に、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞溶解活性を誘導するために、Apo-2LレセプターアゴニストおよびNK細胞、またはその活性化剤の使用に関する。本発明で考慮される様々なApo-2Lレセプターアゴニストには、Apo-2リガンドまたはTRAIL、並びに一または複数のApo-2Lレセプターに対するアゴニスト抗体として知られるリガンドが含まれる。本発明で考慮される様々なNK細胞活性化剤には、限定するものではないが、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれる。
【0003】
(発明の背景)
哺乳動物の細胞数の制御は、細胞増殖および細胞死の間のバランスによってある程度測定されると思われる。時に壊死細胞死と称される細胞死の1タイプは、一般的に、いくつかの外傷又は細胞性損傷から生じる細胞死の病理学的形態に特徴がある。対照的に、通常規則的ないしは制御された様式で進行する細胞死の「生理的」形態がある。細胞死の規則的ないしは制御された形態は、「アポトーシス」と称される[例としてBarr 等, Bio/Technology, 12:487-493 (1994);Steller 等, Science, 267:1445-1449 (1995)を参照]。アポトーシスの細胞死は、胚発生および免疫系のクローン選択を含む多くの生理的過程において自然に生じる[Itoh 等, Cell, 66:233-243 (1991)]。
【0004】
様々な分子、例えば腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリのメンバーとして同定されている[例えば、Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404(1995);Schmidら, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtryら, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996);Wileyら, Immunity, 3:673-682(1995);Browningら, Cell, 72:847-856(1993);Armitageら, Nature, 357:80-82(1992), 1997年1月16日公開の国際公報97/01633;1997年7月17日公開の国際公報97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開の国際公報98/28426;1998年10月22日公開の国際公報98/46751;1998年5月7日公開の国際公報/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。これらの分子のなかでも、TNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド、Apo-2リガンド(Apo2L/TRAIL)及びApo-3リガンド(TWEAK)は、アポトーシス性細胞死に関与していることが報告されている。
【0005】
Apo-2L/TRAILはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996));2001年9月4日発行の米国特許第6,284,236号を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素による切断を通して、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Hymowitzら, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら;Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
Apo2L/TRAILは、リウマチ様関節炎などの自己免疫疾患を含む免疫系の調節に役割を担っている可能性があることが文献において報告されている[例えば、Thomasら, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsenら, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffithら, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Songら, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
【0006】
Apo-2L/TRAILの可溶型はまた大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含むインビトロの様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;Riegerら, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenaziら, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczakら, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keaneら, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutaniら, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yuら, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyanら, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法又は放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999)を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo-2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、死亡対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
TNFファミリのサイトカインが介在する種々の細胞応答の誘導は、特異的な細胞レセプターに結合することにより開始されると考えられている。約55-kDa(TNFR1)と75-kDa(TNFR2)の2つの異なるTNFレセプターが同定されており[Hohmanら, J. Biol. Chem., 264:14927-14934(1989);Brockhausら, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131(1990);1991年3月20日に公開された欧州特許第417563号]、両レセプタータイプに対応するヒトおよびマウスのcDNAが単離して特徴付けられている[Loetscherら, Cell, 61:351(1990);Schallら, Cell, 61:361(1990);Smithら, Science, 248:1019-1023(1990);Lewisら, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834(1991);Goodwinら, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026(1991)]。多くの染色体の多型は、両TNFレセプター遺伝子と関係していた[例としてTakao 等, Immunogenetics, 37:199-203 (1993)を参照]。両TNFRは細胞外、膜貫通及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有している。双方のレセプターの細胞外部分はまた可溶型TNF結合タンパク質として天然に見出されている[Nophar, Yら, EMBO J., 9:3269(1990);及びKohno, Tら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8331(1990)]。組み換え可溶性TNFレセプターのクローニングはHale等によって報告された[J. Cell. Biochem. 増補15F, 1991, p.113(P424)]。
【0008】
1型および2型TNFR(TNFR1およびTNFR2)の細胞外部分は、NH2-末端から1から4まであるシステイン-豊富なドメイン(CRD)の反復性アミノ酸配列パターンを含有する。各々のCRDは、およそ40アミノ酸長であって、保存性の高い位置に4〜6のシステイン残基を含有する[Schall 等, 上掲;Loetscher 等, 上掲;Smith 等, 上掲;Nophar 等, 上掲;Kohno 等, 上掲]。TNFR1では、4つのCRDのおよその境界は以下の通りである:CRD1−アミノ酸14〜およそ53;CRD2−アミノ酸およそ54からおよそ97;CRD3−アミノ酸およそ98からおよそ138;CRD4−アミノ酸およそ139からおよそ167。TNFR2では、CRD1はアミノ酸17〜およそ54を含む;CRD2−アミノ酸およそ55からおよそ97;CRD3−アミノ酸およそ98からおよそ140;そして、CDR4−アミノ酸およそ141から179[Banner 等, Cell, 73:431-435 (1993)]。リガンド結合のCRDの潜在的役割については、上掲のBanner 等にも記載されている。
【0009】
CRDの類似の反復パターンが、p75神経成長因子レセプター(NGFR)[Johnsonら, Cell, 47:545(1986);Radekら, Nature, 325:593(1987)]、B細胞抗原CD40[Stamenkovicら, EMBO J., 8:1403(1989)]、T細胞抗原OX40[Malletら, EMBO J., 9:1063(1990)]及びFas抗原[Yoneharaら, J. Exp. Med., 169:1747-1756 (1989)及びItohら, Cell, 66:233-243(1991)]を含む幾つかの他の細胞表面タンパク質に存在している。また、CRDはショープ(Shope)及び粘液腫ポックスウィルスの可溶型TNFR(sTNFR)様のT2タンパク質にも見出されている[Uptonら, Virology, 160:20-29(1987);Smithら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 176:335(1991);Uptonら, Virology, 184:370(1991)]。これらの配列の最適なアラインメントは、システイン残基の位置が良好に保存されていることを示している。これらレセプターは、しばしば集合的に、TNF/NGFレセプタースーパーファミリのメンバーと称される。近年のp75NGFRに関する研究では、CRD1の欠失 [Welcher, A.A. 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:159-163 (1991)]又はこのドメインへの5-アミノ酸挿入[Yan, H.およびChao, M.V., J. Biol. Chem., 266:12099-12104 (1991)]はNGF結合に対してほとんどまたは全く影響しないことを示した[Yan, H.およびChao, M.V., 上掲]。p75NGFRは、CRD4と膜貫通領域の間に、およそ60アミノ酸のプロリン-豊富な範囲を含有する。これはNGF結合に関与しない[Peetre, C. 等, Eur. J. Hematol., 41:414-419 (1988);Seckinger, P. 等, J. Biol. Chem., 264:11966-11973 (1989);Yan, H.およびChao, M.V., 上掲]。同種のプロリン-豊富な領域は、TNFR1でなくTNFR2にみられる。
【0010】
リンホトキシン-αを除き、今日までに同定されているTNFファミリのリガンドは、II型の膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外にある。これに対して、今日までに同定されているTNFレセプター(TNFR)ファミリのほとんどのレセプターはI型の膜貫通タンパク質である。しかしながら、TNFリガンド及びレセプターファミリの双方において、ファミリメンバー間で同定された相同性は、主として細胞外ドメイン(「ECD」)において見出されている。TNF-α、Apo-1リガンド及びCD40リガンドを含むTNFファミリサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク分解的に切断され;それぞれの場合に得られるタンパク質は、典型的には、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体分子を形成する。また、TNFレセプターファミリのタンパク質は、通常、タンパク分解的に切断され、同族のサイトカインの阻害剤として機能し得る可溶性レセプターのECDを放出する。
近年ではTNFRファミリの他のメンバーが同定された。TNFRファミリのこのような新規に同定されたメンバーは、CAR1、HVEMおよびオステオプロテジェリン(OPG)が含まれる [Brojatsch 等, Cell, 87:845-855 (1996);Montgomery 等, Cell, 87:427-436 (1996); Marsters 等, J. Biol. Chem., 272:14029-14032 (1997);Simonet 等, Cell, 89:309-319 (1997)]。他の公知のTNFR様分子とは異なり、上掲のSimonet等は、OPGが疎水性の膜貫通広域配列を含有することを報告している。後述のように、OPGはおとりレセプターとして作用すると考えられている。
【0011】
Panらは、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリのメンバーを開示している[Panら, Science, 276:111-113(1997)]。DR4は細胞自殺機構に関与可能な細胞質デスドメインを含むと報告されている。Panらは、DR4がApo-2リガンドまたはTRAILとして知られているリガンドに対するレセプターであると考えられることを開示している。
Sheridanら, Science, 277: 818-821 (1997)及びパンら, Science, 277: 815-818 (1997)においては、Apo-2L/TRAILに対するレセプターと思われる他の分子が記載されている[1998年11月19日に公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629もまた参照のこと]。この分子は、DR5と呼ばれる(あるいは、Apo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている[例としてScreatonら, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開98/46643;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791]。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含み、アポトーシスをシグナル伝達可能であると報告されている。Apo-2L/TRAIL及びDR5の間に形成される複合体の結晶構造はHymowitzら, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0012】
最近同定されたTNFRファミリメンバーの更なるグループは、「デコイレセプター」と称され、シグナル伝達トランスデューサーというよりはむしろ阻害剤として機能すると考えられている。このグループには、DCR1(TRID、LIT又はTRAIL-R3とも称される)[Panら, Science, 276:111-113(1997);Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997);McFarlaneら, J. Biol. Chem., 272:25417-25420(1997);Schneiderら, FEBS Letters, 416:329-334(1997);Degli-Espostiら, J. Exp. Med., 186:1165-1170(1997);及びMongkolsapayaら, J. Immunol., 160:3-6(1998)]及びDCR2(TRUNDD又はTRAIL-R4とも称される)[Marstersら, Curr. Biol., 7:1003-1006(1997);Panら, FEBS Letters, 424:41-45(1998);Degli-Espostiら, Immunity, 7:813-820(1997)]が含まれ、両者とも細胞表面分子であり、更にOPG[上掲のSimonetら]及びDCR3[Pitti等, Nature, 396:699-703(1998)]も含まれ、これら両者は分泌性の可溶性タンパク質である。Apo-2L/TRAILはDcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合すると報告されている。
Apo-2L/TRAILは細胞表面「デスレセプター」DR4及びDR5を通して作用してカスパーゼ、又は細胞内細胞死プログラムを実施する酵素を活性化させると考えられている[例えばSalvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)を参照]。リガンド結合の際、DR4とDR5は、双方共、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を通してアポトーシス発動因子であるカスパーゼ-8を独立して補充し活性化することによってアポトーシスを惹起しうる[Kischkelら, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprickら, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmerら, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。DR4及びDR5とは対照的に、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0013】
サイトカインのTNFファミリ及びそれらのレセプターの概説については、Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308(1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753(1997);上掲のGruss及びDower;Nagata, Cell, 88:355-365(1997);Locksleyら, Cell, 104:487-501 (2001);Wallach, “TNF Ligand and TNF/NGF Receptor Families”, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁を参照。
Tollレセプタ(TLR)ファミリの多くの分子がヒトにおいて同定されており、その中のTLR2、4、5および9は、リポタンパク質、LPS、フラジェリンおよび非メチル化CpG DNAなどのぞれぞれ保存性の高い微生物産物によって活性化されると考えられている。TLR3は、ウイルス複製の間に産生されることが多い二本鎖RNAによって活性化される一方で、TLR7は、抗ウイルスイミダゾキノリン:イミキモドおよびR-848などの小分子化合物によって活性化される。また、ヒトTLR8はR-848によって活性化されうる。最近の報告では一重鎖RNAがTLR8の生理的リガンドを表すことが示唆されている。
【0014】
TLRは、病原体に対して本来有する応答に重要である細胞に、広範囲に発現される。抗原提示細胞(「APC」)である異なるTLRの活性化により、特定の病原体に対する適応反応を決定する共刺激分子およびサイトカインの産生を含む様々な応答が生じる。NK細胞もTLRファミリのメンバーを発現する。精製されたNK細胞はTLR3を発現し、特定の腫瘍細胞に対する細胞溶解反応がポリ(I:C)によって活性化されうる。
NK細胞は、標的細胞を同定して取り除くために、一連の活性化および抑制性レセプターを用いる。NK細胞障害性を誘発するレセプターを活性化する1つの種類はNCR(天然の細胞障害性レセプター)と称され、これにはイムノグロブリンファミリメンバーNKp46、NKp30およびNKp44およびC-タイプレクチン、NKG2Dが含まれる。NCRの活性は、正常細胞に本質的に発現されている、典型的なMHCクラスI分子に特異的な抑制性レセプターからのシグナル伝達によって妨害される。パーフォリン依存性細胞障害性顆粒エキソサイトーシス経路は、NK細胞が標的細胞を殺傷するメカニズムにとても特徴がある。細胞障害性顆粒は、孔形成タンパク質パーフォリンを含有する分化した分泌ライソソームでありグランザイムとして知られているセリンプロテアーゼのファミリであり、標的細胞の迅速なアポトーシスを誘発する。また、NK細胞は細胞表面の「パーフォリン非存性」メカニズムを用いて、標的細胞の細胞障害性を誘発する。
【0015】
(発明の概要)
出願人は、Apo-2リガンド又は他のApo-2LレセプターアゴニストとNK細胞、ないしは他の活性化剤が、哺乳動物細胞、特に罹患した哺乳動物細胞においてアポトーシスまたは細胞溶解活性を誘発するために組み合わせて有効に用いることができることを見出した。
本発明は、哺乳動物細胞のアポトーシスまたは細胞溶解活性を亢進するのためのApo-2リガンド及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の様々な使用方法を提供する。例えば、本発明は、哺乳動物細胞、例えば癌細胞またはウイルスないしは細菌に感染した細胞を、NK細胞ないしはNK細胞活性化剤及び一又は複数のApo-2リガンドレセプターアゴニストにさらすことを含んでなるアポトーシスの誘発方法を提供する。
細胞は、細胞培地中又は哺乳動物、例えば細胞のアポトーシスの誘発が所望される症状又は癌に罹っている哺乳動物中にあってもよい。従って、本発明はここで開示されるように、有効量のApo-2リガンド及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を投与することを含んでなる、癌またはウイルス感染などの疾患に罹っている哺乳動物の治療方法を包含する。
【0016】
場合によっては、本方法はApo-2リガンドのアポトーシス活性に似たアゴニストの抗-Apo-2リガンドレセプター抗体を使用しうる。よって、本発明は哺乳動物細胞のアポトーシスを誘発するためのApo-2リガンドレセプターアゴニスト抗体及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の様々な使用方法を提供する。好ましい実施態様では、アゴニスト抗体は、DR4又はDR5レセプターに対する抗体を含むであろう。
また任意の実施態様では、哺乳動物癌細胞を、有効量のNK細胞ないしはNK細胞活性化剤及びApo-2リガンドレセプターアゴニストにさらすことを含む、哺乳動物癌細胞のアポトーシスを亢進する方法を提供することにあり、ここで、該哺乳動物癌細胞を、該Apo-2リガンドレセプターアゴニストにさらす前に、NK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらす。場合によっては、Apo-2リガンドレセプターアゴニストは、Apo2Lポリペプチド又は抗-DR4レセプター抗体又は抗-DR5レセプター抗体を含んでもよい。
【0017】
また、本発明は、Apo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体および/またはNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含有する組成物を提供する。場合によっては、本発明の組成物は、製薬的に許容可能な担体又は希釈剤を含みうる。好ましくは、前記組成物は、哺乳動物細胞のアポトーシスを相乗的に誘発するために有効な量のApo-2リガンド又はアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含みうる。
本発明はまた、Apo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含む製造品およびキットを提供する。
【0018】
更なる選択的な実施態様を以下の様式にて例示する:
1.哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞障害性を亢進する方法。
2.前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがApo-2リガンドポリペプチドを含有してなる、請求項1に記載の方法。
3.前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
4.前記哺乳動物細胞がウイルスに感染しているないしは細菌感染細胞である、請求項1に記載の方法。
5.前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸39から281またはその生物学的に活性な断片を含有してなる、請求項2に記載の方法。
6.前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸114から281を含有してなる、請求項5に記載の方法。
7.前記Apo-2リガンドポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール(PEG)分子に連結されたものである、請求項5に記載の方法。
8.前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがアゴニストの抗Apo-2リガンドレセプター抗体である、請求項1に記載の方法。
9.前記アゴニストの抗体が抗DR4抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
10.前記アゴニストの抗体が抗DR5抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
11.前記抗DR4抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項9に記載の方法。
12.前記抗DR5抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項10に記載の方法。
13.前記NK細胞がドナー哺乳動物から精製したNK細胞である、請求項1に記載の方法。
14.前記NK細胞活性化剤が、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-αおよびIFN-βからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
15.前記NK細胞活性化剤が、NKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【0019】
(発明の詳細な説明)
I.定義
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を称す。この活性は、当該技術で公知の技術、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法、そしてより詳細にはアネキシンVの結合、DNAの断片化、PARP切断、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化、及び/又は膜ベジクル(アポトーシス体と呼ばれる)の生成により、決定し測定することができる。これらの技術及びアッセイは、当該分野において、例えば国際公開第97/25428号及び国際公開第97/01633号に記載されている。
ここで使用される場合、「相乗」又は「相乗効果」又は「相乗的に」という用語は、組み合わせた効果がその個々の効果の合計よりもより大きいような2又はそれ以上の薬剤の相互作用を称する。
【0020】
「Apo-2リガンド」、「Apo-2L」又は「TRAIL」という用語は、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996)の図1Aに示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基95-281、114-281、残基91-281、残基92-281、残基41-281、残基15-281、又は残基1-281(ここでは図4に提供されている)、並びに上記配列の生物活性な(例えばアポトーシス活性)断片、欠失、挿入又は置換変異体を含むポリペプチドを称する。一実施態様において、ポリペプチド配列は、図4の残基114-281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は、少なくとも残基91-281又は残基92-281を有する。他の好適な実施態様では、生物活性な断片又は変異体は、上記配列の何れかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性、そして更により好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有する。本定義は、(図4に示す配列の番号を用いて)位置203、218又は269で少なくとも1のアミノ酸がアラニン残基によって置換される、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996)の図1Aのアミノ酸91-281を含んでなるApo-2リガンドの置換変異体を包含する。本定義は、例えばヒト組織型又は他の供給源のようなApo-2リガンド供給源から単離されるか、組み換え又は合成法により調製されたApo-2リガンドを包含する。Apo-2リガンドという用語はまた上掲の国際公開第97/25428号及び上掲の国際公開第97/01633号に記載されたポリペプチドを称する。Apo-2リガンドポリペプチドはポリエチレングリコールのような一又は複数のポリマー分子に結合しうるものと考えられる。
【0021】
ここで同定されているApo-2Lポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、Apo-2L配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。場合によっては、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。しかしながら、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://ww.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードできる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全てはデフォルト値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
【0022】
「アゴニストの抗-Apo-2リガンドレセプター抗体」に関して使用される「抗体」という用語は広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが一又は複数のApo-2リガンドと結合し、及び/又は一又は複数のApo-2リガンドレセプターを発現している哺乳動物細胞のアポトーシスシグナル伝達経路を活性化させるか、又はApo-2リガンドのアポトーシス活性を模倣する(例えば、それに匹敵するもしくは少なくとも等しい)か、又はApo-2よりも大きなアポトーシス活性を有する限り抗体断片をカバーする。
【0023】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当該分野において「DR4」及び「DR5」と称されるレセプターを含む。Pan等は、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリのメンバーを開示している[Pan等, Science, 276:111-113(1997);また1998年7月30日公開の国際公開第98/32856号を参照]。DR4レセプターは、細胞自殺機構に関わることが可能な細胞質死ドメインを含むことが報告されている。Pan等は、DR4がApo2L/TRAILとして知られるリガンドのレセプターであると考えられると開示している。全長DR4レセプターのアミノ酸配列は、ここでは配列番号:2として提供されている。Sheridan等, Science, 277:818-821 (1997)及びPan等, Science, 277:815-818 (1997)においては、Apo-2L/TRAILの他のレセプターが記載されている。[1998年11月19日発行の国際公開第98/51793号;1998年9月24日発行の国際公開第98/41629号を参照のこと]。このレセプターはDR5とも呼ばれる。(該レセプターはまた、Apo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれる;Screaton等,Curr.Biol., 7:693-696(1997);Walczak等,EMBO J., 16:5386-5387(1997);Wu等,Nature Genetics, 17:141-143(1997);1998年8月20日に公開の国際公開第98/35986号(米国特許第6,072,047号に対応);1998年10月14日に公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日に公開の国際公開第98/46643号;1999年1月21日に公開の国際公開第99/02653号;1999年2月25日に公開の国際公開第99/09165号;1999年3月11日に公開の国際公開第99/11791号]。DR4のように、DR5は細胞質死ドメインを含み、アポトーシスのシグナル伝達が可能であると報告されている。国際公開第98/35986号(米国特許第6,072,047号に対応)の全長DR5レセプター配列は、440のアミノ酸のポリペプチドであることが報告されており、そのアミノ酸配列は配列番号:3で提供されている。国際公開第98/51793号の全長DR5レセプター配列は、441のアミノ酸のポリペプチドであることが報告されており、そのアミノ酸配列は配列番号:4で提供されている。前記されるように、Apo-2Lに対する他のレセプターはDcR1、DcR2、及びOPGを含む[Sheridan等、上掲;Marsters等、上掲;及びSimonet等、上掲を参照のこと]。ここで使用される場合の「Apo-2Lレセプター」という用語は天然配列レセプター及びレセプター変異体を含む。これらの用語は、ヒトを含む様々な動物で発現されるApo-2Lレセプターを含む。Apo-2Lレセプターは、様々なヒト組織系統で自然に発生して内因的に発現されても、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo-2Lレセプター」は、自然から誘導したApo-2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。よって、天然配列Apo-2Lレセプターは、任意の動物から自然に発生したApo-2Lレセプターのアミノ酸配列を有することができる。このような天然配列Apo-2Lレセプターは、自然から単離することができ、あるいは組換え又は合成法によって作成することもできる。「天然配列Apo-2Lレセプター」なる用語は、特にレセプターの自然に発生する切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列を含む可溶化形態など)、自然に発生する変異形態(例えば選択的にスプライシングされた形態)及び自然に発生する対立遺伝子変異体を含む。レセプター変異体は天然配列Apo-2Lレセプターの断片又は欠失突然変異を含みうる。
【0024】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは反対に、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に指向する。それらの特性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培地で合成され、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」との修飾は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、また、Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol.Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することができる。
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0025】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、あるいはそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分において、ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細については、Jones等, Nature, 321:522-525(1986);Reichmann等, Nature, 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992)参照。ヒト化抗体はPRIMATIZEDTMを含み、抗体の抗原結合領域が、関心ある抗原でマカク属サルに免疫性を与えることで生成される抗体から得られる。
【0026】
抗体は、典型的には、特定の抗原に結合特異性を示すタンパク質又はポリペプチドである。天然抗体は、通常はヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一な軽(L)鎖と2つの同一な重(H)鎖とからなる。典型的には、各軽鎖は共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。また各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に多数の定常ドメインに続く可変ドメイン(VH)を持つ。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている[Chothia等, J. Mol. Biol., 186:651-663 (1985);Novotny及びHaber, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82:4592-4596 (1985)]。任意の脊髄動物種からの抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンには5つの大きなクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、そのうちの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、及びIgG-4;IgA-1及びIgA-2に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、各々、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。
【0027】
「抗体断片」は無傷の抗体の一部、一般的には無傷の抗体の抗原結合性又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片、ダイアボディ(diabodies)、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
ここで「可変」という用語は、抗体間で配列が異なり各特定の抗体のその抗原に対する結合性及び特異性の使用される可変ドメインの或る一部を記述するのに用いられる。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインを通して常に均一に分布しているわけではない。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメインにおいて相補性決定領域(CDR)又は高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存される部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFR領域を含み、これは大きくβ-シート配置をとり、3つのCDRに結合してループ状結合を形成するが、β-シート構造の一部を形成する場合もある。各鎖のCDRは、FR領域の直近に保持され、他の鎖からのCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する[Kabat, E.A.等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987)参照]。定常ドメインは抗体の抗原への結合には直接含まれないが、抗体依存的細胞毒性における抗体の寄与といった様々なエフェクター機能を示す。
ここで、モノクローナル抗体は、起源の種又は免疫グロブリンクラス又はサブクラスの命名にかかわらず、キメラ、定常ドメインを有する抗-Apo-2Lレセプター抗体の可変(高頻度可変を含む)ドメインをスプライシングすることによって生産されるハイブリッド及び組換え抗体(例えば「ヒト化」抗体)、又は重鎖を有する軽鎖、又は他の種からの鎖を有するある種からの鎖、又は異種タンパク質との融合体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限り抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を特に含む。例えば、米国特許第4,816,567号、及びMage等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79-97(Marcel Dekker, Inc.:ニューヨーク, 1987)を参照。
【0028】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を製造するいずれかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体この定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、この分野で知られている種々の技術を使用することによって生産することが可能である。一実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughan等, Nature Biotechnology 14:309-314 (1996):Sheetsら. PNAS, (USA)95:6157-6162(1998);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。この試みでは、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものと密接に類似しているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチ法は、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994);Morrison等, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14:845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を生産するヒトBリンパ球の固定化によって調製されてもよい(そのようなBリンパ球は、個々から回収されてもよいし、インビトロで免疫化してもよい)。例えば、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991);及び米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0029】
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化で生じ得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異体Fc領域である。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、又は約位置Pro230からFc領域のカルボキシル末端まで伸展すると定義される(ここにおいては、Kabatら,上掲の番号方式を使用)。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、二つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。
ここで「Fc領域鎖」とは、Fc領域の二つのポリペプチド鎖のうちの一つを意味する。
ヒトIgGFc領域の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は通常アミノ酸残基で約位置231からアミノ酸残基で約位置340まで伸展する。CH2ドメインは、他のドメインと密接には対をなさないという点で独特である。むしろ、2つのN-結合分岐炭水化物鎖が未変性の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在されている。炭水化物はドメイン-ドメイン対形成に対する代替物を提供し、CH2ドメインを安定化させるのに役立つと推測されてきた。Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985)。ここにおけるCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又は変異体CH2ドメインであってもよい。
「CH3ドメイン」は、残基C末端からFc領域のCH2ドメインへの伸長を含む(すなわち、IgGのアミノ酸残基で約位置341からアミノ酸残基で約位置447)。ここにおけるCH3領域は、天然配列CH3ドメイン又は変異体CH3ドメインでもよい(例えば、その一つの鎖の導入された「突出部(protroberance)」を伴うCH3ドメイン、及びその他の鎖の相当する導入された「空洞(キャビティ)」;米国特許第5,821,333号を参照のこと)。
【0030】
「ヒンジ領域」は、ヒトIgG1の約Glu216、又は約Cys226から約Pro230の伸展として一般に定義されている(Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配することにより、IgG1と整列させられうる。ここにおけるヒンジ領域は、天然配列ヒンジ領域又は変異体ヒンジ領域であってもよい。変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、一般的に、ポリペプチド鎖当たり少なくとも一つのシステイン残基を保持し、変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、二つの鎖の間でジスフィルド結合を形成できる。ここにおける好ましいヒンジ領域は、天然配列ヒトヒンジ領域で、例えば天然配列ヒトIgG1ヒンジ領域である。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも一つの「エフェクター機能」を有する。模範的な「エフェクター機能」は、C1q結合を含む;補体依存性細胞障害性(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介障害活性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表層レセプターの下方制御(例えば、B細胞レセプター;BCR)等。このようなエフェクター機能は、一般的に、結合ドメインと結合するFc領域を必要とし(例えば、抗体可変ドメイン)、そのような抗体エフェクター機能を評価するための分野で知られた種々のアッセイを使用して評価できる。
【0031】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異体Fc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較し、少なくとも一つの一アミノ酸置換を有する、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、約1から約10アミノ酸置換、及び好ましくは約1から約5アミノ酸置換である。ここにおける変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%配列同一性、最も好ましくは少なくとも約90%配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%配列同一性を有する。
「Fcレセプター」又は「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述するために使用される。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITIM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)に概説されている)。FcRsはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRsが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGsの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyer等, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0032】
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、抗体の一又は複数のCDRにおける一又は複数の変化を伴うものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られる手順によって生産される。Marksら. Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメイン混合による親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier 等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol., 155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896(1992)に記載されている。
ここで用いられる場合の「アゴニスト」及び「アゴニスト性」という用語は、直接的又は間接的に、実質的にApo-2リガンドに対するレセプターの生物学的活性又は活性化を含む、促進する又は向上させることのできる分子を称するか、又は記述する。場合によっては、「アゴニストApo-2Lレセプター抗体」は、Apo-2リガンドに類似する又は匹敵する活性を有する抗体である。好ましくは、アゴニストは哺乳動物細胞、好ましくは哺乳動物癌細胞のアポトーシスを含むことのできる分子である。さらに好ましくは、アゴニストはApo-2Lレセプターに対する抗体であり、該抗体はApo-2Lポリペプチドよりも大きいか又は等しいアポトーシス活性を有する。場合によっては、このような分子のアゴニスト活性は、一又は複数の癌細胞のアポトーシスを検査するためのアッセイにおいて、該分子をアッセイすることにより決定することができる。アゴニストは一又は複数のポリマー分子、例えばポリエチレングリコールに結合すると考えられる。
【0033】
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分なほど精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも1つの精製工程により調製される。
ここでの目的における「生物学的に活性な」又は「生物学的活性」とは、(a)インビボ及び/又はエキソビボで、少なくとも一種類の哺乳動物細胞(例えば癌細胞)又はウイルス感染した細胞においてアポトーシスを誘発又は刺激する能力を有する;(b)抗体を産生する能力がある、すなわち免疫原である;又は(c)天然又は天然に生じるApo-2リガンドポリペプチドの活性を保持していることを意味する。
【0034】
本明細書中で用いる「NK細胞」は、一般的に細胞表面マーカーとして発現されるCD16および/またはNCAMおよび/またはCD56分子を有するが、CD3を発現しないリンパ球を指す。NK細胞は、細胞の精製された集団の形態でインビトロに存在するか、あるいは哺乳動物のインビボに存在する細胞を指す。
本明細書中で用いる「NK細胞活性化試薬」は、哺乳類の癌細胞またはウイルス感染細胞の静止(または無処置の) NK細胞の細胞溶解活性を亢進するかまたは増やすことが可能である試薬を指す。このような薬剤には、一又は複数のTollレセプターを活性化する薬剤、例としてグランザイムA又はグランザイムB、様々なインターロイキン、例として、IL-2、IL-12、IL-15、およびインターフェロン、例として、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
ここで使用される場合の「成長阻害剤」とは、インビトロ及び/又はインビボにおいて細胞の成長を阻害する化合物又は組成物のことを称する。従って、成長阻害剤には、S期の細胞の割合を著しく減少させるようなものでありうる。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の時点において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。典型的なM期ブロッカーには、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、トポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。また、G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0035】
この出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、癌細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を称する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStella等,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardt等,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、下記の化学療法剤が含まれる。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質のことをいう。この用語は放射活性アイソトープ(例えばAt211,I131,I125,Y90,Re186,Re188,Sm153,Bi212,P32,及びLuの放射性アイソトープ)、化学療法剤、及び断片及び/又はその変異体を含む細菌性、真菌性、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素又は小分子毒素等の毒素を含むことが意図されている。
【0036】
「化学療法剤」は、癌のような症状の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin );デュカロマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin );サルコデイチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin );クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンθI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カリミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FUのようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin )のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0037】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;マレリアン(mullerian)阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-αのような神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロンα、β、γコロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);TNF-α又はTNF-βのような腫瘍壊死因子;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合は、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0038】
「処理」又は「治療」とは、双方とも、治癒的処理、及び予防的又は防護的処置を称する。
「有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、腫瘍の負荷又は体積の評価、例えば病状の進行時間(TTP)の評価、及び/又は応答速度(RR)の測定により測定される。
【0039】
処置又は治療を目的とした「哺乳動物」とは、ヒト、家畜及び農場飼育動物、及び動物園、スポーツ、又は愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳類に分類される任意の動物を称する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
「癌」、「癌性」又は「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を称するか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、大腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、精巣癌、骨髄腫、食道癌、胃腸癌、腎臓癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、神経膠腫、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫(hepatoma)、乳癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)及び様々な種類の頭頸部癌が含まれる。
【0040】
II. 方法と材料
A.方法
一般に、哺乳動物細胞のアポトーシスまたは細胞障害性を誘発する本発明の方法は、該細胞をApo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む。Apo-2リガンドないしはアゴニスト抗体およびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にて治療される例示的症状または疾患には、良性または悪性の癌、並びにウイルス感染症が含まれる。
Apo-2Lレセプターアゴニストによる治療と組み合わせたNK細胞ないしはNK細胞活性化剤による哺乳動物の治療方法は、単独治療としての薬剤の投与よりも多くの利点がある。特に、上記のように、これらの方法は薬剤の併用投与に適する症状を同定することによって治療様式を円滑にすることができる。したがって、アポトーシス反応を最適化する方法を見極めることによって、医療従事者はより便利で患者が好む様式で薬剤を施すことができうる。具体的に、アポトーシス反応を最適化する方法を行う医療従事者は、薬剤を複数回注射より単回ボーラス投与するか、低濃度の薬剤を投与するか、短期間で薬剤を投与してもよい。
本発明の一実施態様では、哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む哺乳動物細胞のアポトーシスを誘導する方法を提供する。前記方法では、Apo-2リガンドレセプターアゴニストは、一般的にApo2L/TRAILまたは抗DR4ないしは抗DR5レセプター抗体を含有する。本発明の更なる実施態様では、癌細胞を一又は複数の成長阻害剤または放射線にさらすなどの付加的な治療様式を行うものなどの方法に変更が加えられる。
【0041】
B. 材料
本方法において使用することができるApo-2Lには、上掲のPitti等、上掲の国際公開第97/25428号、及び上掲の国際公開第97/0163号に記載されたApo-2Lポリペプチド(TRAILと称されるポリペプチド)を含む。全長ポリペプチド並びに細胞外ドメイン(ECD)配列を含んでなるApo-2Lの可溶型のような、Apo-2Lの様々な形態を使用することができると考えられる。そのような可溶型ECD配列の例には、ここで図4であり、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996)の図1Aに示されたApo-2L配列のアミノ酸114-281、95-281、91-281又は92-281を含んでなるポリペプチドが含まれる。アミノ酸92-281を含んでなるポリペプチはApo-2Lの天然に切断した型であると現在は信じられている。本出願人は、CHO細胞においてヒトApo-2Lを発現させ、92-281ポリペプチドがApo-2Lの発現型であることを見出した。国際公開第97/25428号に記載された共有結合的に修飾された型のようなApo-2Lの修飾型が含まれる。特に、ポリエチレングリコールのような非タンパク性ポリマーに結合したApo-2Lが本方法に使用されるものに含まれる。Apo-2Lポリペプチドは国際公開第97/25428号に記載された方法の何れかにより調製することができる。
該方法で使用されうるアポトーシス活性を有するApo-2リガンドの変異体は、例えばアラニンスキャン技術により同定されたものを含む。特に置換変異体は、位置203、218又は269でアミノ酸の少なくとも1種がアラニン残基で置換された、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996)の図1Aのアミノ酸91-281を含んでなる。場合によっては、Apo-2リガンド変異体は1又は複数のこれら3つの異なった部位の置換を含みうる。
【0042】
Apo-2Lのアポトーシス活性を模倣する分子がまた現在開示した方法において使用しうると考えられる。そのような分子の例には、Apo-2Lに少なくとも匹敵するか、もしくは同様な方法でアポトーシスを誘発しうるアゴニスト抗体が含まれる。特に、これらのアゴニスト抗体はApo-2Lのレセプターの一又は複数に結合する抗体を含む。好ましくは、アゴニスト抗体は、DR4又はDR5のような細胞質死ドメインを含むApo-2Lレセプターに対する。さらに好ましくは、アゴニスト抗体は、そのようなレセプターに結合し、その結合は例えばFACS分析又はELISAを用いて決定することができる。DR5(又はApo-2)と呼ばれるレセプターに対するアゴニスト抗体は、以下に記載するような融合技術を使用して調製されている。DR5又はApo-2レセプターアゴニスト抗体の一つは3F11.39.7と呼ばれ、1998年1月13日に寄託番号HB-12456としてATCCに寄託されている。他のDR5レセプター抗体は3H3.14.5を含み、ここで示されるようにATCCに寄託された。Apo-2Lレセプター抗体のアゴニスト活性は、アポトーシス活性の様々な検査方法を使用して測定することができ、さらに場合によっては、このような抗体のアポトーシス活性は、DR4又はDR5のようなApo-2Lレセプターを発現する細胞のアポトーシスを検査するためのアッセイにおいて、Fc免疫グロブリン又は補体を用いて、抗体、単独又は架橋結合した形態でアッセイすることにより決定される。
さらに、DR4と呼ばれる他のApo-2Lレセプターに対するアゴニスト抗体もまた、調製される。DR4アゴニスト抗体の1つは、4H6.17.8と称され、1998年1月13日に寄託番号HB-12455としてATCCに寄託されている。またさらにアゴニストDR4抗体は、以下に記載されるようにATCCに寄託されている抗体4E7.24.3、1H5.25.9、4G7.18.8、及び5G11.17.1を含む。Apo-2Lレセプター抗体のアゴニスト活性は、アポトーシス活性の様々な検査方法を使用して測定することができ、さらに場合によっては、このような抗体のアポトーシス活性は、アポトーシス活性を検査するための様々なアッセイを用いて測定してもよいし、場合によっては、Fc免疫グロブリン又は補体を用いて、抗体、単独又は架橋結合した形態をアッセイすることにより測定することもできる。
【0043】
本発明において考察されているアゴニスト抗体には、1つのApo-2Lレセプター又は1以上のApo-2Lレセプターと結合する抗体が含まれる。1以上のApo-2Lレセプターを結合する抗体は、例えばELISA又はFACSにより決定される、2又はそれ以上のそれぞれ異なる抗原と「交差反応し」、それぞれの異なる抗原と結合することができる抗体として特徴づけられうる。場合によっては、2又はそれ以上の異なる抗原と「特異的に交差反応する」抗体は、第1の抗原と結合するもので、さらに第2の異なる抗原と結合し、約10μg/mLの抗体濃度で第2の抗原に対する抗体の結合能力は、捕獲ELISAで決定されるように第1の抗原の結合能力の約50%〜約100%(好ましくは約75%〜約100%)である。例えば抗体は、DR5(「第1抗原」)と特異的に結合しても、更にDR4のような他のApo-2レセプター(「第2抗原」)と特異的に交差反応してもよく、ここで、約10μg/mLの抗体のDR4との結合の範囲は、ここでの捕獲ELISAにおいてDR5に対する抗体の結合能力の約50%〜約100%である。様々なApo-2Lレセプターとの抗体の交差反応は、国際特許出願番号PCT/US99/13197の更なる詳細に記載される。
以下に記載されるように、このような抗体の例示的な形態としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
【0044】
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物において、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射することにより哺乳動物に注射する。免疫化剤は、DR4又はDR5ポリペプチド(又はDR4又はDR5ECD)又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を、免疫化される哺乳動物で免疫原性が知られたタンパク質に抱合させるのが有用である。そのような免疫原性タンパク質の例は、限定するものではないが、キーホール・リンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。哺乳動物から採血し、血清を検定して抗体価を求める。望まれるならば、抗体価が増加又は平坦化するまで哺乳動物に追加免疫を施す。
【0045】
2.モノクローナル抗体
本発明の抗体は、あるいは、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するかあるいは産生可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはDR4又はDR5ポリペプチド又はその融合タンパク質、例えばDR4又はDR5ECD-IgG融合タンパク質を含む。
一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親の細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0046】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これはカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。そのようなマウス骨髄腫細胞株の例は、P3X63AgU.1である。ヒトモノクローナル抗体産生ためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、次いでApo-2Lレセプターに対するモノクローナル抗体の存在について検定することができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0047】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程を経てサブクローニングし、標準的な方法で増殖させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地又はRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培地又は腹水液から分離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順によって(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。
【0048】
本発明の抗体は、「架橋」抗体を含む。ここにおいて使用されている「架橋」という用語は、一(又は単)分子を形成するための、少なくとも二つのIgG分子が互いに結合することを称する。Apo-2Lレセプター抗体は種々のリンカー分子を使用して架橋されてもよく、場合によっては、DR4抗体は、抗IgG分子、補体、化学修飾又は分子工学を使用して架橋される。一度抗体が細胞表層膜へ結合すると、補体が抗体分子に対して比較的に高い親和性を有することは、当業者とっては高く評価されることである。従って、細胞表層膜へ結合している二又はそれ以上の抗体を連結するための架橋分子として、補体を使用してもよいと考えられる。種々のマウスIgアイソタイプの中で、IgM、IgG2a及びIgG2bは、補体を固定することが知られている。
本発明の抗体は、抗体の多価型と同様に、二量体抗体を任意に含むことができる。当業者は、当該分野で知られている技術及びここにおける抗Apo-2Lレセプター抗体を使用して、そのような二量体又は多価型を組み立てることができる。
本発明の抗体は一価抗体を含み得る。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連したシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0049】
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の調製は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。例えば、消化はパパインの使用により行うことができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開された国際公開第94/29348号、及び米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、典型的には、Fab断片と呼ばれ、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原の架橋が尚も可能なF(ab')2断片が得られる。
また、抗体の消化により生産されたFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体のヒンジ領域から一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されているということで、Fab断片とは異なっている。Fab'-SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、本来は、それらの間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
また、Iliades等, FEBS Letters, 409:437-441 (1997)に記載されているように、一本鎖Fv断片も産生されうる。このような一本鎖断片の種々のリンカーを用いた結合は、Kortt等, Protein Engineering, 10:423-433 (1997)に記載されている。
【0050】
上記に記載の抗体に加えて、キメラ又はハイブリッド抗体が、架橋剤を含む合成タンパク質化学における周知の方法を用いてインビトロで調製されうると考えられる。例えば、免疫毒素はジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合の形成により作成することができる。この目的に好適な薬剤の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが含まれる。
本発明のApo-2Lレセプター抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン共通配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann 等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0051】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野で良く知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的にウィンター(Winter)及び共同研究者の方法[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]に従って、齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。そのような移入残基又は移入可変ドメイン(又はCDR)の元になるものは、ここで開示される寄託された抗Apo-2Lレセプター抗体4H6.17.8、3F11.39.7、4E7.24.3、1H5.25.9、4G7.18.8、5G11.17.1、及び3H3.14.5を含む。
抗原性の軽減のためには、ヒト化抗体を作成するために使用するヒトの可変ドメイン、軽鎖及び重鎖両方の選択が非常に重要である。「ベストフィット法」に従うと、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。齧歯動物のものと最も近いヒトの配列を次にヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる[Sims等, J. Immunol., 151:2296-2308 (1993);Chothia及びLesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987)]。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる[Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623-2632 (1993)]。
【0052】
さらに、抗体は、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは入手可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原と結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性を高めるといった、望ましい抗体特徴が得られるように、FR残基を共通及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている[1994年、3月3日に公開された国際公開第94/04679号を参照]。
【0053】
ヒトモノクローナル抗体は、ヒトBリンパ球を融合パートナーとして使用する、Kohler及びMilsteinによって最初に記載されたハイブリドーマ法を適応することによって作製することができる。関心ある抗体を生産するヒトBリンパ球は、例えば、インフォームド・コンセントを得た後に、ヒト個人から単離される。例えば、個人は、全身性紅斑性狼瘡(Shoenfeldら,J.Clin. Invest., 70:205(1982))、免疫媒介血小板新生紫斑病(ITP)(Nugentら,Blood, 70(1):16-22(1987))、又は癌のようなある疾患とともに生じる自己抗原に対する抗体を生産している。或いは、又は付加的に、リンパ球はインビトロで免疫化される。例えば、単離されたヒト末梢血リンパ球をlysomotrophic agent(例えばL-ロイシン-O-メチルエステル、L-グルタミン酸ジメチルエステル又はL-ロイシル-L-ロイシン-O-メチル エステル)(米国特許第5,567,610号、Borrebaeck等,)へ暴露させる;及び/又はインビトロでT細胞欠損ヒト末梢血リンパ球を8-メルカプトグアノシン及びサイトカインのようなアジュバントで処理(米国特許第5,229,275号、Goroff等)してもよい。
被検者より回収されたかインビトロで免疫化されたBリンパ球は、次には通常、ヒトモノクローナル抗体を生成するために不死化される。限定されるものではないが、Bリンパ球を不死化する技術は、(a)ヒトBリンパ球とヒト、マウスミエローマ又はマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞との融合;(b)ウイルスによる形質転換(例えば、エプスタイン・バーウイルス;例えば、Nugentら,上掲を参照のこと);(c)リンパ芽球腫細胞株との融合;又は(d)リンパ腫細胞との融合、を含む。
【0054】
リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, pp.590-103(Academic Press, 1986))。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、成長させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。適切なヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株が記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により成長させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, pp.59-103(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0055】
また、ヒト抗体は、ヒト抗体を生産することのできるマウスのような非ヒト宿主を使用して生成してもよい。上記のように、免疫化することで、内在性免疫グロブリンが生成されない状態でもヒト抗体の完全リパートリを生成することができるトランスジェニックマウスを利用することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異マウスにおいて抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子をホモ接合的に欠失させると内在性抗体生産の完全な阻害が生じることが記述されている。このような生殖系列変異マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列を移すと、抗原投与時にヒト抗体の生成が生じる。例えば、Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551(1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号;米国特許第5,589,369号;及び米国特許第5,545,807号を参照のこと。また、ヒト抗体は、SCID-huマウス(Duchosalら,Nature 355:258-262(1992))を使用して作製してもよい。
【0056】
その他の実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリより選択してもよい。抗体又はその断片のライブラリの調製は当該分野で良く知られており、宿主細胞へ導入可能な形質転換ベクターのファミリの構築のためには、いずれの既知の方法を使用してもよい。ファージ中の抗体軽鎖及び重鎖(Huseら,Science, 246:1275(1989))、又はファージ或いはファージミド中の融合タンパク質のライブラリは、既知の方法によって調製が可能である。例えば、Vaughan等, Nature Biotechnology 14:309 -314(1996);Barbasら,Proc. Nalt. Acad. Sci., USA, 88:7978-7982(1991);Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597(1991);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381-388 (1992);Barbasら,Proc. Nalt. Acad. Sci., USA, 89:4457-4461(1992);Griffiths等, EMBO Journal, 13:3245-3260(1994);de Kruifら,J. Mol. Biol., 248:97-105(1995);国際公開第98/05344号;国際公開第98/15833号;国際公開第97/47314;国際公開第97/44491号;国際公開第97/35196号;国際公開第95/34648号;米国特許第5,712,089号;米国特許第5,702,892号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,432,018号;米国特許第5,270,170号;国際公開第92/06176号;国際公開第99/06587号;米国特許第5,514,548号;国際公開第97/08320号;及び米国特許第5,702,892号を参照のこと。関心ある抗原は、標的抗原と結合するファージ抗体を選択するための分野において既知の方法を使用し、ファージライブラリに対して選別される。
【0057】
ここに記載のApo-2Lレセプター抗体は、場合によっては一又は複数の所望する生物活性又は特性を有する。そのような抗体は、限定されないが、キメラ、ヒト化、ヒト、及び親和性成熟抗体を包含してもよい。記載されているように、抗体は、これらの所望する活性又は特性を達成するための種々の技術を使用して構築又は設計される。一実施態様では、Apo-2Lレセプター抗体は、少なくとも105M−1、好ましくは106M−1から107M−1の範囲、さらに好ましくは少なくとも108M−1から1012M−1の範囲、及びよりさらに好ましくは少なくとも109M−1から1012M−1の範囲のDR4又はDR5レセプター結合親和性を有する。抗体の結合親和性は、スキャッチャード分析法(Munsonら、上掲を参照のこと)を包含する当該分野において既知の技術に従った抗体の試験による過度の実験なしに測定することができる。
その他の実施態様では、本発明のApo-2Lレセプター抗体は、Apo-2Lが結合するDR4又はDR5上の同じエピトープと結合するか、又はApo-2Lが結合するDR4又はDR5上のエピトープと一致又は重複するDR4又はDR5上のエピトープと結合する。また、Apo-2リガンドがDR4又はDR5へ結合することを妨げる立体構造を作り出すように、抗体は相互作用する。本発明の抗体のエピトープ結合特性は、当該分野において既知の技術を用いて決定されてもよい。例えば、抗体は、競争阻害アッセイのような、DR4又はDR5へのApo-2Lの結合をブロック又は阻害する抗体の能力を測定するためのインビトロアッセイにおいて試験されてもよい。場合によっては、例えばDR4-IgGコンストラクト又はDR4発現細胞へApo-2Lポリペプチドの結合を阻害するDR4抗体の能力を測定するために、抗体は競争阻害アッセイにおいて試験されてもよい。場合によっては、抗体は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、及びなおさらに好ましくは少なくとも90%、レセプターへのApo-2Lの結合を遮断又は阻害することができ、これは一例として、Apo-2リガンド(TRAIL)の可溶型及びDR4 ECD-IgGを使用するインビトロ競争阻害アッセイにおいて測定されてもよい。
【0058】
好ましい実施態様では、抗体は、Apo-2リガンド(TRAIL)に匹敵する、又はこれに類する活性を有するアゴニスト抗体を含む。好ましくは、そのようなアゴニストDR4又はDR5抗体は、少なくとも一種類の癌又は腫瘍細胞株或いは原発性腫瘍においてアポトーシスを誘導する。アゴニストDR4又はDR5抗体のアポトーシス活性は、既知のインビトロ又はインビボアッセイを使用して測定してもよい。インビトロでは、アポトーシス活性は、アネキシンV結合(AnnexinV binding)のような既知の技術を使用して測定することが可能である。インビボでは、アポトーシス活性は、例えば、腫瘍の負担又は容積の減少を測定することで決定してもよい。
【0059】
3.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本ケースにおいて、結合特異性の一方はApo-2Lレセプターに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生成方法は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えたため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を作成でき、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を生成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0060】
4.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有的に結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対して標的化させるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開第91/00360号;国際公開号92/200373号;欧州特許第03089号]提案された。本抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を使用してインビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な薬剤の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0061】
5.トリアボディ(triabodies)
トリアボディも本発明の範囲内である。このような抗体は、例えば上掲のIliades等及び上掲のKortt等に記載されている。
【0062】
6.他の修飾
Apo-2Lレセプター抗体の他の修飾はここにおいて考慮されている。また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素、又は細胞障害剤(毒素分子等)に抗体をコンジュゲートさせることにより修飾することができる。例えば国際公開第88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。また、この技術は、「抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法」(ADEPT)と呼ばれている。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;カスパーゼ、例えばカスパーゼ-3;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、当該技術において「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0063】
この酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えばヘテロ二官能性架橋剤を使用することにより、抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608[1984])。
さらなる抗体の修飾が考察されている。例えば、抗体は種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーに結合してもよい。また抗体は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)にコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Oslo編(1980)に開示されている。抗体の血清半減期を増大させるために、米国特許第5,739,277号に記載されているように抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープを組み込んでもよい。ここで使用される「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清半減期を増加させる原因となるIgG分子(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを称する。
【0064】
7.組み換え体方法
本発明はまたここに開示した抗体をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター及び宿主細胞、及び抗体の生産に対する組換え技術を提供する。
抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、従来の手法(例えば、抗体をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用するもの)を用いて配列決定される。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である。
ここにおける方法は、抗Apo-2Lレセプター抗体軽鎖又は重鎖(又は軽鎖及び重鎖の両方)をコードするDNA配列を含んでなるベクターを提供する、宿主細胞をベクターでトランスフェクト又は形質転換する、及び組み換え体抗Apo-2Lレセプター抗体産物を産生するのに十分な条件下で宿主細胞を培養する段階を含む、キメラ又は組み換え体抗Apo-2Lレセプター抗体の生産のための方法を包含する。
【0065】
(i)シグナル配列成分
本発明の抗Apo-2Lレセプター抗体は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、好ましくはシグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても産生される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母の分泌に関しては、天然シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。このような前駆体領域のDNAは、抗体をコードするDNAにリーディングフレームが結合される。
【0066】
(ii)複製開始点成分
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、この配列はクローニングベクターにおいて、宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は様々な細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点が典型的には初期プロモーターを有しているため用いられる)。
【0067】
(iii)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシラス菌に対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換したこれらの細胞は、抗薬物性を付与し、選択療法を生存するタンパク質を生産する。このような優性選択の例としては、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンが使用される。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することのできるもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である。
【0068】
あるいは、抗Apo-2Lレセプター抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地における細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、トリプトファンの不存在下における成長による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC20,622あるいは 38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する安定した複数コピー発現ベクターも開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
【0069】
(iv)プロモーター成分
通常、発現及びクローニングベクターは、宿主生体により認識され、抗体核酸に作用可能に結合するプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗Apo-2Lレセプター抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。事実上、全ての真核生物の遺伝子は、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0070】
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的利点を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許第73657号に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
【0071】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗Apo-2Lレセプター抗体転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーターによって、提供されるこのようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点をさらに含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現する系が、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変更例は米国特許第4,601,978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0072】
(v)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による本発明の抗Apo-2Lレセプター抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0073】
(vi)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、多価抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示した発現ベクターを参照されたい。
【0074】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びB.リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD 266,710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo-2Lレセプター抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(欧州特許第402,226号);ピチア・パストリス(欧州特許第183,070号);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(欧州特許第244,234号);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属(Aspergillus)宿主、例えば偽巣性コウジ菌(A. nidulans)及びクロカビ(A. niger)が使用できる。
【0075】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、このようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
【0076】
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になった。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株[293又は懸濁培養での成長のためにサブクローン化された293細胞、Grahamほか, J. Gen Virol., 36:59 (1977)];ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞[TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980)];サルの腎細胞 (CVI ATCC CCL 70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞 (BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562, ATTC CCL51);TRI細胞[Motherほか, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982)];MRC5細胞;FS4細胞;ヒト肝癌株(HepG2);及びミエローマ又はリンパ腫細胞(例えば、Y0, J558L, P3及びNS0細胞)(米国特許第5,807,715号を参照のこと)である。
宿主細胞は、抗体生成のための上述した発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適当に修飾された常套的栄養培地で培養する。
【0077】
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を生成するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704号;同4,657,866号;同4,927,762号;同4,560,655号;又は同5,122,469号;国際公開第90/03430;国際公開第87/00195;又は米国特許再発行第30,985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0078】
(ix)精製
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔内に生成されるか、又は培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内に生成される場合、第1段階として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は限外濾過にかけて取り除く。Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるタンパク質を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には第1に市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0079】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5:15671575 (1986))。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリクスも使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他の技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0080】
NK細胞は当分野で公知の技術を用いて哺乳動物から得ることができる。場合によっては、NK細胞はヒトドナーから採取し精製したヒト細胞である。NK細胞は、限定するものではないが以下の実施例に記載のものを含む、市販されて容易に入手可能な材料を用いて精製してもよい。
NK細胞活性化剤には、様々な小分子、サイトカインおよび抗体、例えばTollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれる。このような薬剤は市販されて容易に入手可能である。
【0081】
C.製剤
Apo-2リガンド又はApo-2Lレセプターアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は好ましくは担体で投与される。分子は、単一の担体で投与することができ、あるいは別個の担体に含めることができる。適した担体とその製剤は、Osloらにより編集されたRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed.., 1980, Mack Publishing Co.に記載されている。典型的には、適当量の製薬的に許容可能な塩が製剤を等張にするために担体中に使用される。担体の例には、生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液が含まれる。溶液のpHは好ましくは約5から約8、より好ましくは約7.4から約7.8である。例えば投与経路及び投与される薬剤の濃度に応じてある種の担体がより好ましいことは当業者には明らかであろう。担体は凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態をとりうる。
許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、好ましくは、用いる投与量及び濃度では細胞及び/又はレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0082】
また、製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。あるいは、又は加えて、組成物は、細胞障害剤、サイトカイン又は成長阻害剤を含有してもよい。このような分子は、好適には、意図した目的に有効な量で組合せて存在する。
またApo-2L又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションの、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo,A.編(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸等のポリマーは100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。
【0083】
D.投与方法
Apo-2L又はApo-2Lレセプターアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は、公知の方法、例えばボーラスとしてもしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により投与することができる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプ流入によって実施することもできる。
Apo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与の有効な用量は経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。単独に使用されるApo-2リガンドの効果的な用量又は量は一日当り約1μg/kgから約100mg/kg体重あるいはそれ以上までの範囲であると現在は考えられる。単独に使用されるNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の効果的な用量又は量は約1mg/m2から約150mg/m2の範囲である。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordenti等, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような当該分野で知られている方法で実施することができる。当業者であれば、投与されなければならないApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の用量は、例えばApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を受ける哺乳動物、投与経路、及び哺乳動物に投与されている他の薬物又は治療法に応じて変化することを理解するであろう。
【0084】
細胞の型及び/又は病気の重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入の何れであれ、約1μg/kgないし15mg/kg(例えば0.1−20mg/kg)のアゴニスト抗体が、投与の最初の候補用量である。上述した要因に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、病気の徴候の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。しかしながら、他の投薬計画も有効であろう。
一又は複数のApo-2Lレセプターアゴニストが本方法において使用されると考えられている。例えば、当業者であれば、Apo-2リガンド、DR4アゴニスト抗体、DR5アゴニスト抗体、又はそれらの組合せを使用するであろう。場合によっては、Apo-2Lレセプターアゴニスト抗体は、DR4及びDR5の双方に結合する交差反応抗体を含むであろう。
さらなる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法には、これらに限定されるものではないが、他の化学療法(又は化学療法剤)及び/又は放射線療法、免疫アジュバント、成長阻害因子、サイトカイン、及び他の非Her-2抗体をベースとした治療法が含まれる。例としては、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6)、白血病抑制因子、インターフェロン、TGF-β、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、及び抗VEGF抗体が含まれる。哺乳動物においてアポトーシスを誘発することが知られている他の薬剤もまた使用することができ、それら薬剤には、TNF-α、TNF-β(リンホトキシン-α)、CD30リガンド、4-1BBリガンド、及びApo-1リガンドが含まれる。
【0085】
本発明により考えられる化学療法には、当該分野で知られ、商業的に入手可能な化学物質又は薬物、例えばアドリアマイシン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、ロイコボリン、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、トキソテレ(Toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、マイトキサントロン、ビンクレイスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号参照)、メルファラン及び他の関連ナイトロジェン・マスタードが含まれる。また含まれるものは、タモキシフェン及びオナプリストーンのような腫瘍のホルモン作用を調節又は阻害するように作用する薬剤である。
このような化学療法の調製と用量スケジュールは、製造者の指示書に従って使用されるか、有能な実務者により経験的に決定されて使用される。このような化学療法の調製と用量スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo-2L又はアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与の前でも後でもよく、またはそれと同時に与えてもよい。
【0086】
化学療法は、好ましくは、上述したもののような担体で投与される。化学療法の投与方法は、Apo-2リガンドないしはアゴニスト抗体又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤に対して使用するものと同じ方法、あるいは異なった方法で投与することもできる。
放射線療法は、当該分野で一般的に使用され、当業者に知られているプロトコルに従って施すことができる。このような療法には、セシウム、イリジウム、ヨウ素又はコバルト照射が含まれる。放射線療法は、体全体の照射でも、体の中又は上の特定の部位又は組織に局所的に向けられるものでもよい。典型的には、放射線療法は、約1週から約2週の期間にわたって、パルスで施される。しかしながら、放射線療法をより長い時間、施してもよい。場合によっては、放射線療法は、単一用量又は複数の連続用量として施されうる。
Apo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与に続いて、インビトロの治療細胞を分析することができる。インビボ治療があった場合、治療された哺乳動物は熟練した実務者によく知られた様々な方法でモニターすることができる。例えば、身体的に、バイオプシーにより、あるいは標準的なX線画像法により腫瘍を観察することができる。
【0087】
III. 製造品
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器及びラベルを含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌したアクセスポートを有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤はApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤である。容器上の又は容器に伴うラベルには、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガル液及びブドウ糖液を収容する第2の容器をさらに具備する。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用指示書を含むパッケージ挿入物を含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0088】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、限定するものではない。本明細書で引用した全ての文献を、出典明示によりここに取り込む。
【実施例】
【0089】
実施例1
4T1細胞に対するTollレセプター活性化因子およびNK細胞の効果
4T1細胞(BALB/Cマウス由来の転移性乳癌細胞株、Fred Miller, Karmanos Cancer Instituteから入手)をインビトロ細胞障害性アッセイにおいて検定し、様々なTollレセプター(「TLR」)活性化因子およびNK細胞の殺腫瘍性効果を調べた。4T1標的細胞を、10%FCS、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したIDMEM培養液中にて培養し、37℃で1時間、100mCi 51Crにて標識し、次いで培養液にて3回洗浄した。
アッセイのための精製したエフェクターNK細胞を調製するために、健康なヒトドナーのPBMCを、フィコール-プラークプラス(Pharmacia)を用いた標準的密度勾配遠心分離法によって単離した。まず、CD3陽性細胞を抗CD3ミクロビーズ(Miltenyiより入手)を用いて枯渇させ、次いでNK細胞を抗CD56ミクロビーズ(Miltenyi)を用いて精製した。NK細胞調製の純度は、マウス抗ヒトCD56 PEおよびマウス抗ヒトCD14 PEコンジュゲート(BD Biosciences)にて染色することによって測定して、95%以上とした。単離した細胞を、熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミン、および10mM HEPESを添加したRPMI1640中で培養した。
【0090】
104の標識した4T1細胞を、1:1、3:1、6:1、12:1、25:1および50:1それぞれの比率で、数の異なる精製されたNK細胞(無処理の対照NK細胞または特定の薬剤で処理したNK細胞)に添加した。NK細胞を、以下のTLR活性化剤の何れか一つで18時間処理した:sBLP(1μg/ml、Bachem);ポリ(I:C)(50μg/ml、Pharmacia);大腸菌055:B5 LPS(フェノール抽出、1μg/ml、Sigma);フラジェリン(1μg/ml、A. Gewirtz, Emory Univerity);R-848(5μg/ml、Invivogen);CpGオリゴヌクレオチド(2006および2216、5μM、Invivogen)。細胞障害性アッセイを丸底96ウェルプレートで行い、試料を37℃、5%CO2にて4時間、2通りのウェルにインキュベートした。熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640を用いてインキュベートした。
4時間のインキュベーションの後、ウェルから上清を吸引し、ガンマカウンタを用いて51Cr放出について調べた。特異的細胞溶解の割合は、100×(実験のcpm−天然のcpm)/(総cpm−天然のcpm)として算出した。少なくとも3回の実験のうちの代表のデータを示し、<5%SDを観察した。
結果は、図1において示される。対照(静止) NK細胞で処理した場合、高いエフェクター:標的(E:T)比であっても4T1細胞の細胞溶解はほとんどあるいは全く観察されなかったのに対して、該細胞はポリ(I:C)にて活性化したNK細胞によって効率的に溶解された。加えて、また、TLR7およびTLR8活性化因子であるR-848で処理したNK細胞は、4T1標的細胞を効率的に殺した。特定のアッセイ条件下で、BLP、LPS、フラジェリン、CpGオリゴヌクレオチドの何れも、4T1標的に対して精製されたNK細胞の細胞毒性活性を誘発しなかった。
【0091】
実施例2
NK細胞によるApo2L/TRAILの誘導
高密度オリゴヌクレオチドアレイ(GeneChip, Affymetrix)を用いたマイクロアレイベースの遺伝子発現分析を、静止およびポリ(I:C)処理NK細胞のRNAを用いて行った(NK細胞は、上記の実施例1に記載の技術を用いて4の健康ドナーから採取して精製した)。NK細胞を、熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640中でポリ(I:C)(50μg/ml、Pharmacia)にて終夜処理した。RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを単離し、RNアーゼのないDNアーゼ-I(Ambion)にて処理して、混入するDNAの除去を行った。NK細胞は、完全プロテアーゼインヒビター混合液(Roche)を添加した溶解緩衝液(50mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、1.5mM MgCl2、1mM EGTA、10%グリセロールおよび1%トリトンX-100)中で溶解した。
【0092】
Affymetrix U133AおよびB GeneChipプローブアレイを用いて、差次的に発現する転写物を同定した。まず最初に、遺伝子をペアワイズ比較との一致に従って分類し、Mann-Whitneyペアワイズ比較判定法を用いて有意差を算出した。100%一致した遺伝子を、更なる分析のために選択した。この方法は、リアルタイムRT-PCRによって確認することによって差次的に発現された遺伝子を同定するために、既に有効とされている。表1に示される信頼区間を決定するために、対照とする遺伝子のプローブセット、または治療群および対照群について、平均log10-シグナルを計算した。算定されたlog10倍数的変化を、これらの平均間の相違として定めた。2群の平均についての標準偏差の合算(各プローブセット毎に算出)を用いて、log10倍数的変化の95%の信頼区間を計算した。算定されたlog10倍数的変化およびその95%の信頼区間の2つのエンドポイントを元のシグナルスケールへ累乗し、倍数的変化の算定および対応する95%の信頼区間を求めた。U133プローブセットについての付加的情報は、製造業者Affymetrixから入手可能である。
この分析で観察されたIL-6、IL-8およびIFN-γの誘導は、Schmidt 等, J. Immunol., 172:138-143 (2004)によって以前に報告された結果を裏付けるものであり、TLR活性化によって制御される他の遺伝子を分析するためこの方法は有効である(表1)。
【0093】
表1
表1:ポリ(I:C)処理NK細胞における遺伝子発現の分析。
倍数的変化値および関連する95%の信頼区間(degree of freedom=6)を、無処置のNK細胞との相対としてポリ(I:C)による処理の際の対象の遺伝子について測定した。対象の遺伝子に対応するAffymetrix U133チップシリーズに存在する各プローブセットのデータを示す。
【0094】
TNFα、FasL、IL-8およびCCL20などの遺伝子の場合、倍数的変化の信頼区間の下限は、2.0以下であった。これは、ドナーの変動性、主にドナー#1の大きな変動性に起因しうる。NK細胞機能、例えばNCR、死レセプターリガンド、およびパーフォリン依存性細胞障害性に関係する遺伝子の潜在的に重要なエフェクターであると思われる遺伝子に注目した(表1)。NK細胞のポリ(I:C)処置により、膜混乱性タンパク質パーフォリンおよびグラヌリシンをコードするmRNA、グランザイムA、B、M、又は細胞表面活性化レセプターNKG2DおよびNKp44の発現の有意な変化は生じなかった。グランザイムHおよびNKp30の発現は、3〜5分の一に減少した。出願人等は、グランザイムHが細胞死を誘発するという報告を現在のところ知らないが、その生理的役割は十分によく理解されている[Edwards 等, J. Biol.Chem., 274:30468-30473 (1999)]。対照的に、ポリ(I:C) 処置により、Apo2L/TRAILの発現がほぼ10倍増加した。また、FasLおよびTNFαのmRNAの発現のより小さいが、再生可能な増加は、NK細胞上のTLR3の活性化に続いて見られた。
もう一方の実験では、精製されたNK細胞を、熱不活性化10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640中で、10μg/mlのシクロヘキシミドの存在下または非存在下において、ポリ(I:C)(50μg/ml)、R-848(5μg/ml)又はhIFN-α(1000U/ml、Sigma)にて18時間処理して、抽出したRNA中のApo2L/TRAILを測定した。RT-PCRを行って、cDNAの量をRT-QPCR分析によって定量化し、RPL19に正規化して、対照に対する倍数的な誘導量を図2Aに示した。プライマーは指示(Primer Express)通りに設定し、配列は以下の通りである:hRPL19-プローブ:AGGTCTAAGACCAAGGAAGCACGCAA(配列番号:7);hRPL19-For:ATGTATCACAGCCTGTACCTG(配列番号:8);hRPL19-Rev:TTCTTGGTCTCTTCCTCCTTG(配列番号:9);hApo2L-プローブ:CCCAATGACGAAGAGAGTATGAACAGCCC(配列番号:10);hApo2L-For:TCCAAAAGTGGCATTGCTTG(配列番号:11);hApo2L-Rev:CTGACGGAGTTGCCACTTGA(配列番号:12)。cDNAは、Zarember 等, J. Immunol., 168(2): 554-61 (2002)にて説明したように、RT-QPCR (Applied Biosystems)によってRPL19およびApo2L/TRAILの発現について分析した。較正物質遺伝子RPL19と比較して、任意の単位として倍数的増加値を表した。
【0095】
Apo2L/TRAILが様々な癌細胞株においてアポトーシスを誘発し、4T1細胞がDR4レセプターを発現するので、Apo2L/TRAILの発現増加は重要なようである(データは示さない)。ポリ(I:C)およびR-848処置によりApo2L/TRAIL mRNAがそれぞれ26および25倍増加したことが定量的RT-PCR分析に示された(図2Aを参照)。加えて、IFN-αで処理したNK細胞においてApo2L/TRAIL mRNAの同様な増加が観察された。これは、Biron, 等, Semin. Immunol., 10:383-390 (1998)に報告された以前の結果とも一致する。これらの刺激された細胞におけるApo2L/TRAILメッセージの誘導はタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドによってブロックされなかった。これは、Apo2L/TRAILメッセージの上昇がNK細胞に対するTLR刺激の主要な作用であることを示唆している。
静止およびポリ(I:C)刺激性NK細胞溶解物又はその培養液上清を定量的ELISA(kit, BD Biosciences)によってApo2L/TRAILタンパク質の存在について評価した。ポリ(I:C)又はR848によるNK細胞の活性化の後に増加するApo2L/TRAILタンパク質発現を確認するために、ELISAを行った。Apo2L/TRAILタンパク質は無処置の細胞又はその上清において検出されなかったのに対して、Apo2L/TRAILタンパク質は、ポリ(I:C)にて刺激された細胞において細胞結合型で存在した(図2B)。刺激された細胞の上清に放出される、有意なレベルのApo2L/TRAILはみられなかった。
【0096】
また、ポリ(I:C)、R-848又はhIL-2(30ng/ml、BD Biosciences)にて処理した精製したNK細胞上の細胞表面Apo2L/TRAILを血球計算によって分析した。アイソタイプ対照(IgG2a、Sigma)および抗Apo2L/TRAIL抗体(5C2)を、Alexa488 (Molecular Probes)にて標識した。5×105の細胞を2μgのヒトIgGとともにインキュベートしてFcRをブロックし、1μgの直接的標識mAbとともに4℃で45分間、その後2回洗浄した。染色した細胞を、FACScan血球計算器(Becton Dickenson)およびCellquestソフトウェアを用いて分析した。
結果を図2Cに示す。太線はアイソタイプ対照に、細線はApo2L/TRAIL染色に対応する。3つすべてのパネルに示される結果は、(3人以上のドナーのうちの)典型的なドナーのものを示す。細胞のR-848又はポリ(I:C)処理により、フローサイトメトリを用いた膜結合性Apo2L/TRAILタンパク質のレベルが高くなった(図2C)。Apo2L/TRAILが無処置のNK細胞の表面に検出されなかったのに対して、ポリ(I:C)又はR-848による処理によって、Apo2L/TRAILの検出可能な細胞表面発現が生じた。また、ポジティブ対照、NK細胞のIL-2処置により細胞表面Apo2L/TRAILの発現が増加した。[Zamai 等, J. Exp. Med., 188:2375-2380 (1998)]
【0097】
実施例3
NK細胞の細胞溶解反応をブロックする際の抗Apo2L Abの効果
Apo2L/TRAILがTLRアゴニストで処理されたNK細胞の活性亢進の原因であることを示す実験を行った。以下の変更を除いて実施例1にて説明したように、細胞障害性アッセイを行った。精製されたNK細胞を、ポリ(I:C)又はR-848で終夜処理し、4T1細胞とともにインキュベートした。TNFα、FasLおよびApo2L/TRAILの役割は、それぞれのリガンドに対する中和抗体とともにNK細胞のプレインキュベーションによって評価した。以下の中和抗体は2μg/mlの終濃度で加えた:抗Fas-L(mIgG2b、R&D Systems)、抗TNFα(mIgG1、Genentech)、および抗Apo2L/TRAIL(5C2、mIgG2a、ATCC HB-12258および1D1、mIgG2b;ATCC HB-12257)。アイソタイプ対照抗体はBD Biosciencesから入手した。アイソタイプに一致するmAbを対照として用いた;これらの抗体は、静止細胞または活性化NK細胞の溶解活性を変更しなかった。
Apo2L/TRAILに対する中和抗体を用いると、R-848又はポリ(I:C)の何れかによって活性化されるNK細胞の細胞毒性活性が無効になるのに対して、TNFα又はFasLの何れかに対する抗体が効果を示さなかった(図3A)。また、4T1細胞に対するTLR刺激性NK細胞の細胞毒性活性は、DR5-Fc融合タンパク質、すなわちApo2L/TRAILを結合して、それによってその機能の効力を中和するDR5の細胞外ドメインの組換え型を用いて遮断した(データは示さない)。
【0098】
精製されたNK細胞をポリ(I:C)又はR-848で処理し、示した比率でB16BL10メラノーマ細胞(ATCC)とともにインキュベートした。R-848によって刺激された精製NK細胞は、示した比率でHCT116標的細胞(ATCC)とともにインキュベートした。パネルBおよびCの細胞溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割は、中和(5C2)および非中和(1D1)の抗Apo2L/TRAIL mAbsとともにプレインキュベーションすることによって決定した。データは少なくとも3ドナーからのNK細胞にて確認し、5%未満のSDを観察した。
非刺激NK細胞は、B16BL6細胞に対して細胞障害性でなく、高いE/T比率のHCT116細胞に対して限られた活性を示した(図3B、C)。対照的に、ポリ(I:C)又はR-848刺激NK細胞はB16BL6細胞を効率的に殺傷し、Apo2L/TRAILの中和によりこの活性を十分に遮断した(図3B)。面白いことに、ポリ(I:C)(データは示さない)又はR-848刺激NK細胞も、HCT116細胞に対する細胞毒性の亢進を示し、この活性はApo2L/TRAIL活性の中和反応によって部分的に遮断されるだけであった。NK細胞のTLR活性化によっても標的細胞依存性のApo2L/TRAIL非依存性細胞障害性経路が誘発されることが示唆される。これらのデータは、Apo2L/TRAILの誘導が、腫瘍細胞に対するNK細胞毒性活性のTLR媒介性刺激において重要な工程であることを示唆する。
【0099】
TLR活性化に続くApo2L/TRAILの誘導は、単球およびDCなどの他の生来の免疫細胞において既に確認されている。しかしながらこれらの場合、Apo2L/TRAILの発現増強は二次的な効果であった。具体的には、ポリ(I:C)による精製されたDCの刺激によりApo2L/TRAIL発現が誘発されるIFN-βの分泌が意図的に導かれた[Vidalain 等, J. Immunol., 167:3765-3772 (2001)]。CpGオリゴデオキシヌクレオチドによってPBMCを処理した際にも同様な二次的効果が観察された。これは、形質細胞様DCによって分泌されるIFN-αにより単球でのApo2L/TRAILの発現が亢進された[Kemp 等, J. Immunol., 171:212-218 (2003)]。この概念と一致して、Apo2L/TRAIL欠損マウスの使用またはApo2L/TRAIL活性の中和反応を用いた研究により、腫瘍転移を制御する際のApo2L/TRAIL発現NK細胞の役割が明らかとなった[Cretney 等, J. Immunol., 168:1356-1361 (2002);Takeda 等, J. Exp. Med., 195:161-169 (2002)]。
【0100】
実施例4
腫瘍細胞に対するApo2L/TRAILと活性化NK細胞との併用効果
実施例1にて説明したように、細胞障害性アッセイを行って、組換えApo2L/TRAIL(アミノ酸114−281、Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999)にて説明したように調製する)を、200ng/ml濃度で選択されたウェルに加えた。腫瘍細胞の耐性の評価のために、2μg/ml以下の濃度のApo2L/TRAILも用いた。4T1細胞を、Apo2L/TRAILタンパク質の濃度の範囲で処理するが、細胞溶解には耐性であった。
また、静止NK細胞がApo2L/TRAILタンパク質の添加によって活性化されうるかどうかを決定するための実験を行った。静止NK細胞(実施例1にて説明したように精製する)を、4T1標的細胞と漸増濃度のApo2L/TRAILタンパク質とともにインキュベートした。4T1細胞の用量依存性の細胞溶解が観察され、これによってApo2L/TRAILが静止NK細胞と協同しうることが示唆された。Apo2L/TRAILの添加の際に活性化されたNK細胞の場合にいくらかの増加が見られた。これは、おそらく活性化されたNK細胞によってすでに発現されたApo2L/TRAILの十分な量に起因する。
【0101】
これらの結果は、また、マウス腫瘍細胞株、乳房上皮C57MGおよびメラノーマ起源B16BL10にも観察された。これでは、静止NK細胞へのApo2L/TRAILの添加により観察される細胞溶解が増加した(活性化NK細胞の場合には有意な増加が観察されなかった)。また、HCT116細胞を5ng/mlのApo2L/TRAIL又は静止NK細胞および両方の組合せで処理した場合にも同様な結果が観察された。HCT116細胞の細胞溶解が観察されなかったので、5ng/mlの濃度のApo2L/TRAILを選択した。限定した比率の静止NK細胞へApo2L/TRAILを添加した結果、細胞毒性効果が亢進する。したがって、Apo2L/TRAILと静止NK細胞との併用処理によって、Apo2L/TRAIL単独によって誘発される死に耐性である以外は癌細胞の細胞溶解が生じうる、あるいは、Apo2L/TRAILに対する癌細胞の感受性が亢進されうる。
【0102】
実施例5
腫瘍細胞に対するApo2L/TRAILとNK細胞との併用効果
さらに、癌細胞に対するApo-2Lタンパク質とNK細胞の効果を示すか確認するためのアッセイを行った。
技術および材料:
NK細胞は健常なドナーの末梢血から単離し、NK細胞は上記の通りに精製した。NK細胞は、熱不活性FCS、ストレプトマイシン、ペニシリン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mMのHEPES、pH7.4を添加したRPMI-1640培養液中で培養した。活性化NK細胞を、5μg/mlのR848(Invivogen、1mg/mlを水に溶解;活性化因子TLR7およびTLR8)、IL-2、IL-12およびIL-15とともに16時間処理することによって得た。4T1細胞(BALB/c由来乳癌;Fred Miller, Karmanos Cancer Instituteから入手)とB16メラノーマ(ATCC)細胞を、10%FCS、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンをそれぞれ添加したIDMEMおよびDMEM中で維持した。PI9をpRKN-Flag、ClaおよびAscI部位にサブクローニングし、PI9のc末端タグ付加型とした。Polyfectを用いてpRKN-PI9 Flag又は空のベクターに形質移入した後、4T1細胞又はB16細胞の安定細胞株を得た。ジェネテシン(Gibco)(4T1細胞およびB16細胞にそれぞれ1および2mg/ml)を添加した培養液中でクローンを選択した。PI9の発現は抗Flag抗体(M2クローン、Sigma)によって検出した。
細胞障害性アッセイのために、標的細胞を100mCiの51Crとともに37℃で1時間標識して、次いで使用前に3回洗浄した。104の標的細胞を、示された比率で数の異なるエフェクター細胞に添加し、二通りずつ、37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、ガンマカウンタを用いて上清に放出される51Crを測定した。細胞障害性アッセイは丸底96ウェルプレートで行い、特異的な細胞溶解の割合を、100X(実験的cpm−自然発生的なcpm)/(総cpm−自然発生的なcpm)として算出した。標的細胞の細胞溶解の際にNK細胞によって発現されるApo2L/TRAILの役割を、抗Apo2L/TRAIL mAb(5C2および1D1、Genentech, Inc.)を用いて評価した。アイソタイプ対照抗体はBD Biosciencesから入手した。これらの対照抗体はNK細胞の溶解活性を変化させなかった。
【0103】
タンパク質分析アッセイでは、イムノブロッティング分析のために、ウサギ抗mPARP(Asp-214)、カスパーゼ3(8G10)および切断型活性化カスパーゼ-3(Asp-175 5A1)抗体を製造業者(Cell Signaling Technology)が推奨するように用いた。フラグ(Flag)エピトープ抗体(M2、Sigma) をFlagエピトープ標識したPI9の検出のために用いた。総細胞抽出物は溶解緩衝液(0.1M トリスpH8.0、500mM NaCl、2mM EDTA、1%トリトンX-100、10%グリセロール、完全プロテアーゼインヒビター混合液を添加、Roche)を用いて4T1細胞から調製し、溶解物を4℃で10分間、16,000回転数/分で遠心することによって精製した。溶解物は、SDS-PAGEによって分画し、ニトロセルロース膜へ移した。HRP-コンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした後、示した抗体とともに膜をインキュベートした(ヤギ抗ウサギ、Cell Signaling Technology;および、ヤギ抗マウス、Jackson Immunoresearch)。免疫複合体を、亢進した化学発光(Amersham)を用いて検出した。
【0104】
アッセイ結果:
アッセイ結果は、図8−10に示す。4T1細胞株およびB16細胞株は、Apo2L/TRAIL依存的な方法で活性化NK細胞によって溶解される一方、Apo2L/TRAILタンパク質の濃度の範囲でこれらの細胞を処理するとそのアポトーシスの効果に特定の耐性を示した。既に報告されたように、同様な濃度のApo2L/TRAILはHCT-116細胞またはSKMES-1細胞による51Crの放出を効果的に媒介する。
NK細胞がパーフォリン依存性標的細胞殺傷機構を含有する細胞障害性顆粒を有するので、4T1細胞の細胞溶解中の他の細胞障害性顆粒含有量およびパーフォリンの役割を調べた。グランザイムB(「GraB」)の細胞浸透性ペプチド基質インヒビターによって活性化NK細胞を処理すると、4T1細胞の細胞溶解が減退した。対照的に、一般的なカスパーゼインヒビターペプチドによる処理によって(データは示さない)、GraBインヒビターの特性と、その膜透過処理がカスパーゼの活性化に近い現象であることを示すCrの放出がブロックされなかった。パーフォリンの成熟をブロックするコンカナマイシンAもNK細胞の細胞毒性活性をブロックした。標的細胞との接触領域への細胞障害性顆粒の運搬はPI3Kシグナル伝達によって媒介され、PI3Kのインヒビターにより細胞障害性顆粒の動きがなくなった。PI3Kのインヒビターであるワートマニンによる活性化NK細胞の処置によって溶解活性がブロックされるのに対して、他のキナーゼインヒビターの付加によってはNK細胞活性に影響しなかった。これらの結果により、活性化NK細胞による4T1細胞の細胞溶解におけるパーフォリン依存性経路の役割がまとめて示唆される。
【0105】
4T1細胞を、Apo2L/TRAIL又は活性化NK細胞で処理し、カスパーゼー3活性化と切断型DNA修復酵素、ポリ(ADP-リボシル) ポリメラーゼ(「PARP」)、カスパーゼー3の基質の産生について評価した。Apo2L/TRAIL処理によってプロカスパーゼー3およびPARPの切断が起こるが、活性化NK細胞は4T1細胞の強力なカスパーゼ-3活性化能力およびPARP切断能力を有した。したがって、活性化NK細胞による腫瘍細胞の処理によって、アポトーシスの細胞死の特徴的な現象であるカスパーゼー3およびPARPの活性型が生じた。
細胞表面Apo2L/TRAILとパーフォリン顆粒の両方が4T1細胞の細胞溶解に必須であるので、可溶性Apo-2L/TRAILタンパク質の添加によって静止NK細胞が「準備されうる」かどうかを試験するためにアッセイを行った。結合した膜およびTNFファミリメンバーの可溶型は、標的細胞への結合の際に差次的な動きを示すために優先する。51Cr放出アッセイを強めるために、4T1細胞のクローン原性能力を、可溶性Apo2L/TRAILおよび静止NK細胞で処理することによって評価した。Cr放出試験にみられるように、25:1の比率で可溶性Apo2L/TRAIL又は静止NK細胞によって個々に処理した4T1細胞はクローン原性能力に関して影響を受けなかったが、可溶性Apo2L/TRAILおよびNK細胞にて同時に処理すると、5日後に観察される4T1細胞のクローンが著しく減少した。活性化NK細胞とともにインキュベートした4T1細胞の場合に、同様なクローン数の減少が観察された。活性化NK細胞の場合、5C2中和抗体の添加によって4T1細胞生存度が保護されたため、4T1細胞の細胞溶解はApo2L/TRAIL活性に厳密に依存していた。
【0106】
HCT116細胞に対する効果を調べるアッセイでは、可溶性Apo2L/TRAILおよび限られた比率の静止NK細胞による処理によって細胞毒性効果が亢進した。したがって、Apo2L/TRAILおよび静止NK細胞の添加によって、HCT116細胞の場合に観察されたように、Apo2L/TRAIL単独によって誘発される死に耐性がある場合以外、あるいはApo2L/TRAILに対する腫瘍細胞感受性が増加されうる腫瘍細胞株が溶解しうると思われる。
活性化NK細胞による4T1細胞の処置により、カスパーゼー3およびPARPが活性化される。また、4T1細胞を静止NK細胞又は可溶性Apo2L/TRAIL、あるいはそれらの併用によって処置した。静止NK細胞による4T1細胞の処置によりPARPの切断が生じないが、可溶性Apo2L/TRAILと静止NK細胞との併用処置によって、切断されたPARPが生じた。これは、静止NK細胞および可溶性Apo2L/TRAILの複合効果がアポトーシスを生じさせたことを示唆する(上記のクローン原性および塩化クロム放出アッセイの所見と一致)。グランザイムBがこの相乗効果又は共同効果において重要なNK細胞成分でありうると思われる。
【0107】
材料の寄託
次の材料をアメリカ培養細胞系統保存機関, 10801 University Blvd., Manassas, VA20110-2209, USA(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
4H6.17.8 HB−12455 1998年1月13日
3F11.39.7 HB−12456 1998年1月13日
4E7.24.3 HB−12454 1998年1月13日
1H5.25.9 HB−12695 1999年4月 1日
4G7.18.8 PTA−99 1999年5月21日
5G11.17.1 HB−12694 1999年4月 1日
3H3.14.5 HB−12534 1998年6月 2日
【0108】
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、35USC122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に後代を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による記載は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。本発明は、ここに呈された実施例によりその範囲が限定されるものではない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】51Cr放出アッセイによって測定した、ヒトNK細胞の活性に対する様々なTLR活性化因子の効果。
【図2A】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。シクロヘキシミドの存在下または非存在下においてポリ(I:C)、R-848またはヒトインターフェロン-αでNK細胞を処理し、Apo2L/TRAILの信号を抽出したRNAにて測定した。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図2B】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。静止細胞溶解物およびポリ(I:C)刺激性NK細胞溶解物ないしは細胞培養物上清を、量的ELISAによってApo2L/TRAILタンパク質の有無を測定した。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図2C】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。それぞれのグラフに示す薬剤にて処置した精製NK細胞についての細胞表面Apo2L/TRAILの染色。太線はアイソタイプ対照を示し、細線はApo2L/TRAIL染色を示す。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図3A】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。50:1比のE:Tで得られた溶解の割合(%)。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図3B】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。精製したNK細胞をポリ(I:C)またはR-848で処理して、示した比率のB16BL10細胞とともにインキュベートした。溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割を中和および非中和の抗Apo2L/TRAIL抗体にて予めインキュベートすることによって測定した。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図3C】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。R-848で刺激した精製NK細胞を示した比率のHCT116標的細胞とともにインキュベートした。パネルB及びCの溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割を中和および非中和の抗Apo2L/TRAIL抗体にて予めインキュベートすることによって測定した。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図4】ヒトApo-2リガンドcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:1)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」はヌクレオチド塩基「T」または「G」を示す。
【図5A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:3)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。ヒトDR4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のそれぞれは、Pan 等, Science, 276:111 (1997)にも報告されている。
【図5B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:3)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。ヒトDR4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のそれぞれは、Pan 等, Science, 276:111 (1997)にも報告されている。
【図6】1998年11月19日公開の国際公報98/51793にあるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図7A】ヒトDR5の転写スプライシング変異体を示す。このDR5スプライシング変異体は1998年8月20日公開の国際公報98/35986にあるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図7B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体を示す。このDR5スプライシング変異体は1998年8月20日公開の国際公報98/35986にあるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図8】図8Aは、B16メラノーマ細胞に対する列挙した薬剤の効果を示し、細胞がApo2L/TRAILに依存して活性化されたNK細胞によって溶解されたことを示唆する。図8Bは、B16細胞を51Crにて標識し、示した比率の精製された静止NK細胞又は刺激されたNK細胞とともに培養したときのアッセイ結果を示す。Apo2L/TRAILの役割は、中和(5C2)又は非中和性(1D1) mAbとともにNK細胞を予めインキュベートすることによって評価した。細胞溶解の割合(%)をプロットし、結果を3つの実験の代表例とする(5%未満のSDが観察される)。図8Bに示されるように、示した細胞株および樹状細胞(DC)から得たプライマリ単球を51Crにて標識し、濃度を変えた可溶性Apo2L/TRAILタンパク質(「sApo2L」と示す)とともにインキュベートした。次いで上清をCr放出について評価した。少なくとも3つの実験において類似の細胞溶解の結果が得られた。
【図9】図9Aは、活性化NK細胞の細胞障害性顆粒が4T1細胞の細胞溶解に必須でありうることを示唆するアッセイ結果の棒線図。静止NK細胞および活性化NK細胞の細胞溶解反応を4T1標的細胞との相対で評価した。活性化NK細胞は、細胞障害性顆粒の役割を評価するために、パーフォリン成熟(コンカナマイシンA)、GraB(Z-AAD-FMK)、PI3K(ワートマニン)、MEK1キナーゼ(PD98059)、S6キナーゼ(ラパマイシン)およびJNK(SP)のインヒビターで処置した。E/T比率は25〜1とし、示される結果は(3ドナー中)代表的な1ドナーのものである。図9Bは、活性化NK細胞が4T1細胞のカスパーゼー3の活性化を誘発しうることを示唆するアッセイ結果を示す。4T1標的細胞を、Apo2L/TRAILタンパク質(100ng/ml)または活性化NK細胞(「ActNK」)にて、30分、1時間又は4時間処置した。E/T比率は10:1であった。4T1細胞の抽出物を、プロカスパーゼー3、切断型カスパーゼー3および切断型PARPについて、SDS-PAGEおよびイムノブロット分析によって分析した。
【図10】PARP切断アッセイの結果を示す。4T1細胞を、Apo2L/TRAIL、静止NK細胞(「NK」)又は活性化NK細胞(「ActNK」)の別々ないしは組み合わせにて処置した。溶解物を、カスパーゼー3活性化因子の誘導因子であるPARPについて分析した。複数のドナーからのNK細胞を用いて、代表的な1ドナーの結果を示す。
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2004年6月18日提出の米国特許仮出願番号第60/581,129号の優先権を主張する出願であり、ここに出典明記により組み込まれるものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞溶解活性の誘導を亢進する方法に関する。特に、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞溶解活性を誘導するために、Apo-2LレセプターアゴニストおよびNK細胞、またはその活性化剤の使用に関する。本発明で考慮される様々なApo-2Lレセプターアゴニストには、Apo-2リガンドまたはTRAIL、並びに一または複数のApo-2Lレセプターに対するアゴニスト抗体として知られるリガンドが含まれる。本発明で考慮される様々なNK細胞活性化剤には、限定するものではないが、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれる。
【0003】
(発明の背景)
哺乳動物の細胞数の制御は、細胞増殖および細胞死の間のバランスによってある程度測定されると思われる。時に壊死細胞死と称される細胞死の1タイプは、一般的に、いくつかの外傷又は細胞性損傷から生じる細胞死の病理学的形態に特徴がある。対照的に、通常規則的ないしは制御された様式で進行する細胞死の「生理的」形態がある。細胞死の規則的ないしは制御された形態は、「アポトーシス」と称される[例としてBarr 等, Bio/Technology, 12:487-493 (1994);Steller 等, Science, 267:1445-1449 (1995)を参照]。アポトーシスの細胞死は、胚発生および免疫系のクローン選択を含む多くの生理的過程において自然に生じる[Itoh 等, Cell, 66:233-243 (1991)]。
【0004】
様々な分子、例えば腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリのメンバーとして同定されている[例えば、Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404(1995);Schmidら, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtryら, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996);Wileyら, Immunity, 3:673-682(1995);Browningら, Cell, 72:847-856(1993);Armitageら, Nature, 357:80-82(1992), 1997年1月16日公開の国際公報97/01633;1997年7月17日公開の国際公報97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開の国際公報98/28426;1998年10月22日公開の国際公報98/46751;1998年5月7日公開の国際公報/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。これらの分子のなかでも、TNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド、Apo-1リガンド、Apo-2リガンド(Apo2L/TRAIL)及びApo-3リガンド(TWEAK)は、アポトーシス性細胞死に関与していることが報告されている。
【0005】
Apo-2L/TRAILはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996));2001年9月4日発行の米国特許第6,284,236号を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素による切断を通して、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Hymowitzら, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら;Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
Apo2L/TRAILは、リウマチ様関節炎などの自己免疫疾患を含む免疫系の調節に役割を担っている可能性があることが文献において報告されている[例えば、Thomasら, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsenら, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffithら, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Songら, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
【0006】
Apo-2L/TRAILの可溶型はまた大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含むインビトロの様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;Riegerら, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenaziら, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczakら, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keaneら, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutaniら, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yuら, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyanら, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法又は放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999)を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo-2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、死亡対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
TNFファミリのサイトカインが介在する種々の細胞応答の誘導は、特異的な細胞レセプターに結合することにより開始されると考えられている。約55-kDa(TNFR1)と75-kDa(TNFR2)の2つの異なるTNFレセプターが同定されており[Hohmanら, J. Biol. Chem., 264:14927-14934(1989);Brockhausら, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131(1990);1991年3月20日に公開された欧州特許第417563号]、両レセプタータイプに対応するヒトおよびマウスのcDNAが単離して特徴付けられている[Loetscherら, Cell, 61:351(1990);Schallら, Cell, 61:361(1990);Smithら, Science, 248:1019-1023(1990);Lewisら, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834(1991);Goodwinら, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026(1991)]。多くの染色体の多型は、両TNFレセプター遺伝子と関係していた[例としてTakao 等, Immunogenetics, 37:199-203 (1993)を参照]。両TNFRは細胞外、膜貫通及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有している。双方のレセプターの細胞外部分はまた可溶型TNF結合タンパク質として天然に見出されている[Nophar, Yら, EMBO J., 9:3269(1990);及びKohno, Tら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8331(1990)]。組み換え可溶性TNFレセプターのクローニングはHale等によって報告された[J. Cell. Biochem. 増補15F, 1991, p.113(P424)]。
【0008】
1型および2型TNFR(TNFR1およびTNFR2)の細胞外部分は、NH2-末端から1から4まであるシステイン-豊富なドメイン(CRD)の反復性アミノ酸配列パターンを含有する。各々のCRDは、およそ40アミノ酸長であって、保存性の高い位置に4〜6のシステイン残基を含有する[Schall 等, 上掲;Loetscher 等, 上掲;Smith 等, 上掲;Nophar 等, 上掲;Kohno 等, 上掲]。TNFR1では、4つのCRDのおよその境界は以下の通りである:CRD1−アミノ酸14〜およそ53;CRD2−アミノ酸およそ54からおよそ97;CRD3−アミノ酸およそ98からおよそ138;CRD4−アミノ酸およそ139からおよそ167。TNFR2では、CRD1はアミノ酸17〜およそ54を含む;CRD2−アミノ酸およそ55からおよそ97;CRD3−アミノ酸およそ98からおよそ140;そして、CDR4−アミノ酸およそ141から179[Banner 等, Cell, 73:431-435 (1993)]。リガンド結合のCRDの潜在的役割については、上掲のBanner 等にも記載されている。
【0009】
CRDの類似の反復パターンが、p75神経成長因子レセプター(NGFR)[Johnsonら, Cell, 47:545(1986);Radekら, Nature, 325:593(1987)]、B細胞抗原CD40[Stamenkovicら, EMBO J., 8:1403(1989)]、T細胞抗原OX40[Malletら, EMBO J., 9:1063(1990)]及びFas抗原[Yoneharaら, J. Exp. Med., 169:1747-1756 (1989)及びItohら, Cell, 66:233-243(1991)]を含む幾つかの他の細胞表面タンパク質に存在している。また、CRDはショープ(Shope)及び粘液腫ポックスウィルスの可溶型TNFR(sTNFR)様のT2タンパク質にも見出されている[Uptonら, Virology, 160:20-29(1987);Smithら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 176:335(1991);Uptonら, Virology, 184:370(1991)]。これらの配列の最適なアラインメントは、システイン残基の位置が良好に保存されていることを示している。これらレセプターは、しばしば集合的に、TNF/NGFレセプタースーパーファミリのメンバーと称される。近年のp75NGFRに関する研究では、CRD1の欠失 [Welcher, A.A. 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:159-163 (1991)]又はこのドメインへの5-アミノ酸挿入[Yan, H.およびChao, M.V., J. Biol. Chem., 266:12099-12104 (1991)]はNGF結合に対してほとんどまたは全く影響しないことを示した[Yan, H.およびChao, M.V., 上掲]。p75NGFRは、CRD4と膜貫通領域の間に、およそ60アミノ酸のプロリン-豊富な範囲を含有する。これはNGF結合に関与しない[Peetre, C. 等, Eur. J. Hematol., 41:414-419 (1988);Seckinger, P. 等, J. Biol. Chem., 264:11966-11973 (1989);Yan, H.およびChao, M.V., 上掲]。同種のプロリン-豊富な領域は、TNFR1でなくTNFR2にみられる。
【0010】
リンホトキシン-αを除き、今日までに同定されているTNFファミリのリガンドは、II型の膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外にある。これに対して、今日までに同定されているTNFレセプター(TNFR)ファミリのほとんどのレセプターはI型の膜貫通タンパク質である。しかしながら、TNFリガンド及びレセプターファミリの双方において、ファミリメンバー間で同定された相同性は、主として細胞外ドメイン(「ECD」)において見出されている。TNF-α、Apo-1リガンド及びCD40リガンドを含むTNFファミリサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク分解的に切断され;それぞれの場合に得られるタンパク質は、典型的には、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体分子を形成する。また、TNFレセプターファミリのタンパク質は、通常、タンパク分解的に切断され、同族のサイトカインの阻害剤として機能し得る可溶性レセプターのECDを放出する。
近年ではTNFRファミリの他のメンバーが同定された。TNFRファミリのこのような新規に同定されたメンバーは、CAR1、HVEMおよびオステオプロテジェリン(OPG)が含まれる [Brojatsch 等, Cell, 87:845-855 (1996);Montgomery 等, Cell, 87:427-436 (1996); Marsters 等, J. Biol. Chem., 272:14029-14032 (1997);Simonet 等, Cell, 89:309-319 (1997)]。他の公知のTNFR様分子とは異なり、上掲のSimonet等は、OPGが疎水性の膜貫通広域配列を含有することを報告している。後述のように、OPGはおとりレセプターとして作用すると考えられている。
【0011】
Panらは、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリのメンバーを開示している[Panら, Science, 276:111-113(1997)]。DR4は細胞自殺機構に関与可能な細胞質デスドメインを含むと報告されている。Panらは、DR4がApo-2リガンドまたはTRAILとして知られているリガンドに対するレセプターであると考えられることを開示している。
Sheridanら, Science, 277: 818-821 (1997)及びパンら, Science, 277: 815-818 (1997)においては、Apo-2L/TRAILに対するレセプターと思われる他の分子が記載されている[1998年11月19日に公開の国際公開98/51793;1998年9月24日公開の国際公開98/41629もまた参照のこと]。この分子は、DR5と呼ばれる(あるいは、Apo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている[例としてScreatonら, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開98/46643;1999年1月21日公開の国際公開99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791]。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含み、アポトーシスをシグナル伝達可能であると報告されている。Apo-2L/TRAIL及びDR5の間に形成される複合体の結晶構造はHymowitzら, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0012】
最近同定されたTNFRファミリメンバーの更なるグループは、「デコイレセプター」と称され、シグナル伝達トランスデューサーというよりはむしろ阻害剤として機能すると考えられている。このグループには、DCR1(TRID、LIT又はTRAIL-R3とも称される)[Panら, Science, 276:111-113(1997);Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997);McFarlaneら, J. Biol. Chem., 272:25417-25420(1997);Schneiderら, FEBS Letters, 416:329-334(1997);Degli-Espostiら, J. Exp. Med., 186:1165-1170(1997);及びMongkolsapayaら, J. Immunol., 160:3-6(1998)]及びDCR2(TRUNDD又はTRAIL-R4とも称される)[Marstersら, Curr. Biol., 7:1003-1006(1997);Panら, FEBS Letters, 424:41-45(1998);Degli-Espostiら, Immunity, 7:813-820(1997)]が含まれ、両者とも細胞表面分子であり、更にOPG[上掲のSimonetら]及びDCR3[Pitti等, Nature, 396:699-703(1998)]も含まれ、これら両者は分泌性の可溶性タンパク質である。Apo-2L/TRAILはDcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合すると報告されている。
Apo-2L/TRAILは細胞表面「デスレセプター」DR4及びDR5を通して作用してカスパーゼ、又は細胞内細胞死プログラムを実施する酵素を活性化させると考えられている[例えばSalvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)を参照]。リガンド結合の際、DR4とDR5は、双方共、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を通してアポトーシス発動因子であるカスパーゼ-8を独立して補充し活性化することによってアポトーシスを惹起しうる[Kischkelら, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprickら, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmerら, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。DR4及びDR5とは対照的に、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0013】
サイトカインのTNFファミリ及びそれらのレセプターの概説については、Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308(1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753(1997);上掲のGruss及びDower;Nagata, Cell, 88:355-365(1997);Locksleyら, Cell, 104:487-501 (2001);Wallach, “TNF Ligand and TNF/NGF Receptor Families”, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁を参照。
Tollレセプタ(TLR)ファミリの多くの分子がヒトにおいて同定されており、その中のTLR2、4、5および9は、リポタンパク質、LPS、フラジェリンおよび非メチル化CpG DNAなどのぞれぞれ保存性の高い微生物産物によって活性化されると考えられている。TLR3は、ウイルス複製の間に産生されることが多い二本鎖RNAによって活性化される一方で、TLR7は、抗ウイルスイミダゾキノリン:イミキモドおよびR-848などの小分子化合物によって活性化される。また、ヒトTLR8はR-848によって活性化されうる。最近の報告では一重鎖RNAがTLR8の生理的リガンドを表すことが示唆されている。
【0014】
TLRは、病原体に対して本来有する応答に重要である細胞に、広範囲に発現される。抗原提示細胞(「APC」)である異なるTLRの活性化により、特定の病原体に対する適応反応を決定する共刺激分子およびサイトカインの産生を含む様々な応答が生じる。NK細胞もTLRファミリのメンバーを発現する。精製されたNK細胞はTLR3を発現し、特定の腫瘍細胞に対する細胞溶解反応がポリ(I:C)によって活性化されうる。
NK細胞は、標的細胞を同定して取り除くために、一連の活性化および抑制性レセプターを用いる。NK細胞障害性を誘発するレセプターを活性化する1つの種類はNCR(天然の細胞障害性レセプター)と称され、これにはイムノグロブリンファミリメンバーNKp46、NKp30およびNKp44およびC-タイプレクチン、NKG2Dが含まれる。NCRの活性は、正常細胞に本質的に発現されている、典型的なMHCクラスI分子に特異的な抑制性レセプターからのシグナル伝達によって妨害される。パーフォリン依存性細胞障害性顆粒エキソサイトーシス経路は、NK細胞が標的細胞を殺傷するメカニズムにとても特徴がある。細胞障害性顆粒は、孔形成タンパク質パーフォリンを含有する分化した分泌ライソソームでありグランザイムとして知られているセリンプロテアーゼのファミリであり、標的細胞の迅速なアポトーシスを誘発する。また、NK細胞は細胞表面の「パーフォリン非存性」メカニズムを用いて、標的細胞の細胞障害性を誘発する。
【0015】
(発明の概要)
出願人は、Apo-2リガンド又は他のApo-2LレセプターアゴニストとNK細胞、ないしは他の活性化剤が、哺乳動物細胞、特に罹患した哺乳動物細胞においてアポトーシスまたは細胞溶解活性を誘発するために組み合わせて有効に用いることができることを見出した。
本発明は、哺乳動物細胞のアポトーシスまたは細胞溶解活性を亢進するのためのApo-2リガンド及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の様々な使用方法を提供する。例えば、本発明は、哺乳動物細胞、例えば癌細胞またはウイルスないしは細菌に感染した細胞を、NK細胞ないしはNK細胞活性化剤及び一又は複数のApo-2リガンドレセプターアゴニストにさらすことを含んでなるアポトーシスの誘発方法を提供する。
細胞は、細胞培地中又は哺乳動物、例えば細胞のアポトーシスの誘発が所望される症状又は癌に罹っている哺乳動物中にあってもよい。従って、本発明はここで開示されるように、有効量のApo-2リガンド及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を投与することを含んでなる、癌またはウイルス感染などの疾患に罹っている哺乳動物の治療方法を包含する。
【0016】
場合によっては、本方法はApo-2リガンドのアポトーシス活性に似たアゴニストの抗-Apo-2リガンドレセプター抗体を使用しうる。よって、本発明は哺乳動物細胞のアポトーシスを誘発するためのApo-2リガンドレセプターアゴニスト抗体及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の様々な使用方法を提供する。好ましい実施態様では、アゴニスト抗体は、DR4又はDR5レセプターに対する抗体を含むであろう。
また任意の実施態様では、哺乳動物癌細胞を、有効量のNK細胞ないしはNK細胞活性化剤及びApo-2リガンドレセプターアゴニストにさらすことを含む、哺乳動物癌細胞のアポトーシスを亢進する方法を提供することにあり、ここで、該哺乳動物癌細胞を、該Apo-2リガンドレセプターアゴニストにさらす前に、NK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらす。場合によっては、Apo-2リガンドレセプターアゴニストは、Apo2Lポリペプチド又は抗-DR4レセプター抗体又は抗-DR5レセプター抗体を含んでもよい。
【0017】
また、本発明は、Apo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体および/またはNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含有する組成物を提供する。場合によっては、本発明の組成物は、製薬的に許容可能な担体又は希釈剤を含みうる。好ましくは、前記組成物は、哺乳動物細胞のアポトーシスを相乗的に誘発するために有効な量のApo-2リガンド又はアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含みうる。
本発明はまた、Apo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を含む製造品およびキットを提供する。
【0018】
更なる選択的な実施態様を以下の様式にて例示する:
1.哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞障害性を亢進する方法。
2.前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがApo-2リガンドポリペプチドを含有してなる、請求項1に記載の方法。
3.前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
4.前記哺乳動物細胞がウイルスに感染しているないしは細菌感染細胞である、請求項1に記載の方法。
5.前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸39から281またはその生物学的に活性な断片を含有してなる、請求項2に記載の方法。
6.前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸114から281を含有してなる、請求項5に記載の方法。
7.前記Apo-2リガンドポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール(PEG)分子に連結されたものである、請求項5に記載の方法。
8.前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがアゴニストの抗Apo-2リガンドレセプター抗体である、請求項1に記載の方法。
9.前記アゴニストの抗体が抗DR4抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
10.前記アゴニストの抗体が抗DR5抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
11.前記抗DR4抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項9に記載の方法。
12.前記抗DR5抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項10に記載の方法。
13.前記NK細胞がドナー哺乳動物から精製したNK細胞である、請求項1に記載の方法。
14.前記NK細胞活性化剤が、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-αおよびIFN-βからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
15.前記NK細胞活性化剤が、NKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【0019】
(発明の詳細な説明)
I.定義
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を称す。この活性は、当該技術で公知の技術、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法、そしてより詳細にはアネキシンVの結合、DNAの断片化、PARP切断、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化、及び/又は膜ベジクル(アポトーシス体と呼ばれる)の生成により、決定し測定することができる。これらの技術及びアッセイは、当該分野において、例えば国際公開第97/25428号及び国際公開第97/01633号に記載されている。
ここで使用される場合、「相乗」又は「相乗効果」又は「相乗的に」という用語は、組み合わせた効果がその個々の効果の合計よりもより大きいような2又はそれ以上の薬剤の相互作用を称する。
【0020】
「Apo-2リガンド」、「Apo-2L」又は「TRAIL」という用語は、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996)の図1Aに示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基95-281、114-281、残基91-281、残基92-281、残基41-281、残基15-281、又は残基1-281(ここでは図4に提供されている)、並びに上記配列の生物活性な(例えばアポトーシス活性)断片、欠失、挿入又は置換変異体を含むポリペプチドを称する。一実施態様において、ポリペプチド配列は、図4の残基114-281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は、少なくとも残基91-281又は残基92-281を有する。他の好適な実施態様では、生物活性な断片又は変異体は、上記配列の何れかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性、そして更により好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有する。本定義は、(図4に示す配列の番号を用いて)位置203、218又は269で少なくとも1のアミノ酸がアラニン残基によって置換される、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996)の図1Aのアミノ酸91-281を含んでなるApo-2リガンドの置換変異体を包含する。本定義は、例えばヒト組織型又は他の供給源のようなApo-2リガンド供給源から単離されるか、組み換え又は合成法により調製されたApo-2リガンドを包含する。Apo-2リガンドという用語はまた上掲の国際公開第97/25428号及び上掲の国際公開第97/01633号に記載されたポリペプチドを称する。Apo-2リガンドポリペプチドはポリエチレングリコールのような一又は複数のポリマー分子に結合しうるものと考えられる。
【0021】
ここで同定されているApo-2Lポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、Apo-2L配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。場合によっては、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。しかしながら、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://ww.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードできる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全てはデフォルト値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
【0022】
「アゴニストの抗-Apo-2リガンドレセプター抗体」に関して使用される「抗体」という用語は広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが一又は複数のApo-2リガンドと結合し、及び/又は一又は複数のApo-2リガンドレセプターを発現している哺乳動物細胞のアポトーシスシグナル伝達経路を活性化させるか、又はApo-2リガンドのアポトーシス活性を模倣する(例えば、それに匹敵するもしくは少なくとも等しい)か、又はApo-2よりも大きなアポトーシス活性を有する限り抗体断片をカバーする。
【0023】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当該分野において「DR4」及び「DR5」と称されるレセプターを含む。Pan等は、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリのメンバーを開示している[Pan等, Science, 276:111-113(1997);また1998年7月30日公開の国際公開第98/32856号を参照]。DR4レセプターは、細胞自殺機構に関わることが可能な細胞質死ドメインを含むことが報告されている。Pan等は、DR4がApo2L/TRAILとして知られるリガンドのレセプターであると考えられると開示している。全長DR4レセプターのアミノ酸配列は、ここでは配列番号:2として提供されている。Sheridan等, Science, 277:818-821 (1997)及びPan等, Science, 277:815-818 (1997)においては、Apo-2L/TRAILの他のレセプターが記載されている。[1998年11月19日発行の国際公開第98/51793号;1998年9月24日発行の国際公開第98/41629号を参照のこと]。このレセプターはDR5とも呼ばれる。(該レセプターはまた、Apo-2;TRAIL-R、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれる;Screaton等,Curr.Biol., 7:693-696(1997);Walczak等,EMBO J., 16:5386-5387(1997);Wu等,Nature Genetics, 17:141-143(1997);1998年8月20日に公開の国際公開第98/35986号(米国特許第6,072,047号に対応);1998年10月14日に公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日に公開の国際公開第98/46643号;1999年1月21日に公開の国際公開第99/02653号;1999年2月25日に公開の国際公開第99/09165号;1999年3月11日に公開の国際公開第99/11791号]。DR4のように、DR5は細胞質死ドメインを含み、アポトーシスのシグナル伝達が可能であると報告されている。国際公開第98/35986号(米国特許第6,072,047号に対応)の全長DR5レセプター配列は、440のアミノ酸のポリペプチドであることが報告されており、そのアミノ酸配列は配列番号:3で提供されている。国際公開第98/51793号の全長DR5レセプター配列は、441のアミノ酸のポリペプチドであることが報告されており、そのアミノ酸配列は配列番号:4で提供されている。前記されるように、Apo-2Lに対する他のレセプターはDcR1、DcR2、及びOPGを含む[Sheridan等、上掲;Marsters等、上掲;及びSimonet等、上掲を参照のこと]。ここで使用される場合の「Apo-2Lレセプター」という用語は天然配列レセプター及びレセプター変異体を含む。これらの用語は、ヒトを含む様々な動物で発現されるApo-2Lレセプターを含む。Apo-2Lレセプターは、様々なヒト組織系統で自然に発生して内因的に発現されても、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo-2Lレセプター」は、自然から誘導したApo-2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。よって、天然配列Apo-2Lレセプターは、任意の動物から自然に発生したApo-2Lレセプターのアミノ酸配列を有することができる。このような天然配列Apo-2Lレセプターは、自然から単離することができ、あるいは組換え又は合成法によって作成することもできる。「天然配列Apo-2Lレセプター」なる用語は、特にレセプターの自然に発生する切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列を含む可溶化形態など)、自然に発生する変異形態(例えば選択的にスプライシングされた形態)及び自然に発生する対立遺伝子変異体を含む。レセプター変異体は天然配列Apo-2Lレセプターの断片又は欠失突然変異を含みうる。
【0024】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは反対に、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に指向する。それらの特性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培地で合成され、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」との修飾は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、また、Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol.Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することができる。
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0025】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、あるいはそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分において、ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細については、Jones等, Nature, 321:522-525(1986);Reichmann等, Nature, 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992)参照。ヒト化抗体はPRIMATIZEDTMを含み、抗体の抗原結合領域が、関心ある抗原でマカク属サルに免疫性を与えることで生成される抗体から得られる。
【0026】
抗体は、典型的には、特定の抗原に結合特異性を示すタンパク質又はポリペプチドである。天然抗体は、通常はヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一な軽(L)鎖と2つの同一な重(H)鎖とからなる。典型的には、各軽鎖は共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。また各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に多数の定常ドメインに続く可変ドメイン(VH)を持つ。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている[Chothia等, J. Mol. Biol., 186:651-663 (1985);Novotny及びHaber, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82:4592-4596 (1985)]。任意の脊髄動物種からの抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンには5つの大きなクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、そのうちの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、及びIgG-4;IgA-1及びIgA-2に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、各々、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。
【0027】
「抗体断片」は無傷の抗体の一部、一般的には無傷の抗体の抗原結合性又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片、ダイアボディ(diabodies)、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
ここで「可変」という用語は、抗体間で配列が異なり各特定の抗体のその抗原に対する結合性及び特異性の使用される可変ドメインの或る一部を記述するのに用いられる。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインを通して常に均一に分布しているわけではない。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメインにおいて相補性決定領域(CDR)又は高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存される部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFR領域を含み、これは大きくβ-シート配置をとり、3つのCDRに結合してループ状結合を形成するが、β-シート構造の一部を形成する場合もある。各鎖のCDRは、FR領域の直近に保持され、他の鎖からのCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する[Kabat, E.A.等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987)参照]。定常ドメインは抗体の抗原への結合には直接含まれないが、抗体依存的細胞毒性における抗体の寄与といった様々なエフェクター機能を示す。
ここで、モノクローナル抗体は、起源の種又は免疫グロブリンクラス又はサブクラスの命名にかかわらず、キメラ、定常ドメインを有する抗-Apo-2Lレセプター抗体の可変(高頻度可変を含む)ドメインをスプライシングすることによって生産されるハイブリッド及び組換え抗体(例えば「ヒト化」抗体)、又は重鎖を有する軽鎖、又は他の種からの鎖を有するある種からの鎖、又は異種タンパク質との融合体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限り抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を特に含む。例えば、米国特許第4,816,567号、及びMage等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79-97(Marcel Dekker, Inc.:ニューヨーク, 1987)を参照。
【0028】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を製造するいずれかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体この定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、この分野で知られている種々の技術を使用することによって生産することが可能である。一実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughan等, Nature Biotechnology 14:309-314 (1996):Sheetsら. PNAS, (USA)95:6157-6162(1998);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。この試みでは、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものと密接に類似しているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチ法は、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994);Morrison等, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14:845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を生産するヒトBリンパ球の固定化によって調製されてもよい(そのようなBリンパ球は、個々から回収されてもよいし、インビトロで免疫化してもよい)。例えば、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991);及び米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0029】
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化で生じ得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異体Fc領域である。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、又は約位置Pro230からFc領域のカルボキシル末端まで伸展すると定義される(ここにおいては、Kabatら,上掲の番号方式を使用)。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、二つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。
ここで「Fc領域鎖」とは、Fc領域の二つのポリペプチド鎖のうちの一つを意味する。
ヒトIgGFc領域の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は通常アミノ酸残基で約位置231からアミノ酸残基で約位置340まで伸展する。CH2ドメインは、他のドメインと密接には対をなさないという点で独特である。むしろ、2つのN-結合分岐炭水化物鎖が未変性の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在されている。炭水化物はドメイン-ドメイン対形成に対する代替物を提供し、CH2ドメインを安定化させるのに役立つと推測されてきた。Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985)。ここにおけるCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又は変異体CH2ドメインであってもよい。
「CH3ドメイン」は、残基C末端からFc領域のCH2ドメインへの伸長を含む(すなわち、IgGのアミノ酸残基で約位置341からアミノ酸残基で約位置447)。ここにおけるCH3領域は、天然配列CH3ドメイン又は変異体CH3ドメインでもよい(例えば、その一つの鎖の導入された「突出部(protroberance)」を伴うCH3ドメイン、及びその他の鎖の相当する導入された「空洞(キャビティ)」;米国特許第5,821,333号を参照のこと)。
【0030】
「ヒンジ領域」は、ヒトIgG1の約Glu216、又は約Cys226から約Pro230の伸展として一般に定義されている(Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配することにより、IgG1と整列させられうる。ここにおけるヒンジ領域は、天然配列ヒンジ領域又は変異体ヒンジ領域であってもよい。変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、一般的に、ポリペプチド鎖当たり少なくとも一つのシステイン残基を保持し、変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、二つの鎖の間でジスフィルド結合を形成できる。ここにおける好ましいヒンジ領域は、天然配列ヒトヒンジ領域で、例えば天然配列ヒトIgG1ヒンジ領域である。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも一つの「エフェクター機能」を有する。模範的な「エフェクター機能」は、C1q結合を含む;補体依存性細胞障害性(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介障害活性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表層レセプターの下方制御(例えば、B細胞レセプター;BCR)等。このようなエフェクター機能は、一般的に、結合ドメインと結合するFc領域を必要とし(例えば、抗体可変ドメイン)、そのような抗体エフェクター機能を評価するための分野で知られた種々のアッセイを使用して評価できる。
【0031】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異体Fc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較し、少なくとも一つの一アミノ酸置換を有する、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、約1から約10アミノ酸置換、及び好ましくは約1から約5アミノ酸置換である。ここにおける変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%配列同一性、最も好ましくは少なくとも約90%配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%配列同一性を有する。
「Fcレセプター」又は「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述するために使用される。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITIM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)に概説されている)。FcRsはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRsが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGsの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyer等, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0032】
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、抗体の一又は複数のCDRにおける一又は複数の変化を伴うものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られる手順によって生産される。Marksら. Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメイン混合による親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier 等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol., 155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896(1992)に記載されている。
ここで用いられる場合の「アゴニスト」及び「アゴニスト性」という用語は、直接的又は間接的に、実質的にApo-2リガンドに対するレセプターの生物学的活性又は活性化を含む、促進する又は向上させることのできる分子を称するか、又は記述する。場合によっては、「アゴニストApo-2Lレセプター抗体」は、Apo-2リガンドに類似する又は匹敵する活性を有する抗体である。好ましくは、アゴニストは哺乳動物細胞、好ましくは哺乳動物癌細胞のアポトーシスを含むことのできる分子である。さらに好ましくは、アゴニストはApo-2Lレセプターに対する抗体であり、該抗体はApo-2Lポリペプチドよりも大きいか又は等しいアポトーシス活性を有する。場合によっては、このような分子のアゴニスト活性は、一又は複数の癌細胞のアポトーシスを検査するためのアッセイにおいて、該分子をアッセイすることにより決定することができる。アゴニストは一又は複数のポリマー分子、例えばポリエチレングリコールに結合すると考えられる。
【0033】
「単離された」とは、ここで開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分なほど精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも1つの精製工程により調製される。
ここでの目的における「生物学的に活性な」又は「生物学的活性」とは、(a)インビボ及び/又はエキソビボで、少なくとも一種類の哺乳動物細胞(例えば癌細胞)又はウイルス感染した細胞においてアポトーシスを誘発又は刺激する能力を有する;(b)抗体を産生する能力がある、すなわち免疫原である;又は(c)天然又は天然に生じるApo-2リガンドポリペプチドの活性を保持していることを意味する。
【0034】
本明細書中で用いる「NK細胞」は、一般的に細胞表面マーカーとして発現されるCD16および/またはNCAMおよび/またはCD56分子を有するが、CD3を発現しないリンパ球を指す。NK細胞は、細胞の精製された集団の形態でインビトロに存在するか、あるいは哺乳動物のインビボに存在する細胞を指す。
本明細書中で用いる「NK細胞活性化試薬」は、哺乳類の癌細胞またはウイルス感染細胞の静止(または無処置の) NK細胞の細胞溶解活性を亢進するかまたは増やすことが可能である試薬を指す。このような薬剤には、一又は複数のTollレセプターを活性化する薬剤、例としてグランザイムA又はグランザイムB、様々なインターロイキン、例として、IL-2、IL-12、IL-15、およびインターフェロン、例として、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
ここで使用される場合の「成長阻害剤」とは、インビトロ及び/又はインビボにおいて細胞の成長を阻害する化合物又は組成物のことを称する。従って、成長阻害剤には、S期の細胞の割合を著しく減少させるようなものでありうる。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の時点において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。典型的なM期ブロッカーには、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、トポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。また、G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0035】
この出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、癌細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を称する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStella等,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardt等,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、下記の化学療法剤が含まれる。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質のことをいう。この用語は放射活性アイソトープ(例えばAt211,I131,I125,Y90,Re186,Re188,Sm153,Bi212,P32,及びLuの放射性アイソトープ)、化学療法剤、及び断片及び/又はその変異体を含む細菌性、真菌性、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素又は小分子毒素等の毒素を含むことが意図されている。
【0036】
「化学療法剤」は、癌のような症状の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin );デュカロマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin );サルコデイチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin );クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンθI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カリミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FUのようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin )のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0037】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;マレリアン(mullerian)阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-αのような神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロンα、β、γコロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);TNF-α又はTNF-βのような腫瘍壊死因子;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合は、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0038】
「処理」又は「治療」とは、双方とも、治癒的処理、及び予防的又は防護的処置を称する。
「有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、腫瘍の負荷又は体積の評価、例えば病状の進行時間(TTP)の評価、及び/又は応答速度(RR)の測定により測定される。
【0039】
処置又は治療を目的とした「哺乳動物」とは、ヒト、家畜及び農場飼育動物、及び動物園、スポーツ、又は愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳類に分類される任意の動物を称する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
「癌」、「癌性」又は「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を称するか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、大腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、精巣癌、骨髄腫、食道癌、胃腸癌、腎臓癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、神経膠腫、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫(hepatoma)、乳癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)及び様々な種類の頭頸部癌が含まれる。
【0040】
II. 方法と材料
A.方法
一般に、哺乳動物細胞のアポトーシスまたは細胞障害性を誘発する本発明の方法は、該細胞をApo-2リガンドないしはApo-2Lレセプターアゴニスト抗体及びNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む。Apo-2リガンドないしはアゴニスト抗体およびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にて治療される例示的症状または疾患には、良性または悪性の癌、並びにウイルス感染症が含まれる。
Apo-2Lレセプターアゴニストによる治療と組み合わせたNK細胞ないしはNK細胞活性化剤による哺乳動物の治療方法は、単独治療としての薬剤の投与よりも多くの利点がある。特に、上記のように、これらの方法は薬剤の併用投与に適する症状を同定することによって治療様式を円滑にすることができる。したがって、アポトーシス反応を最適化する方法を見極めることによって、医療従事者はより便利で患者が好む様式で薬剤を施すことができうる。具体的に、アポトーシス反応を最適化する方法を行う医療従事者は、薬剤を複数回注射より単回ボーラス投与するか、低濃度の薬剤を投与するか、短期間で薬剤を投与してもよい。
本発明の一実施態様では、哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む哺乳動物細胞のアポトーシスを誘導する方法を提供する。前記方法では、Apo-2リガンドレセプターアゴニストは、一般的にApo2L/TRAILまたは抗DR4ないしは抗DR5レセプター抗体を含有する。本発明の更なる実施態様では、癌細胞を一又は複数の成長阻害剤または放射線にさらすなどの付加的な治療様式を行うものなどの方法に変更が加えられる。
【0041】
B. 材料
本方法において使用することができるApo-2Lには、上掲のPitti等、上掲の国際公開第97/25428号、及び上掲の国際公開第97/0163号に記載されたApo-2Lポリペプチド(TRAILと称されるポリペプチド)を含む。全長ポリペプチド並びに細胞外ドメイン(ECD)配列を含んでなるApo-2Lの可溶型のような、Apo-2Lの様々な形態を使用することができると考えられる。そのような可溶型ECD配列の例には、ここで図4であり、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996)の図1Aに示されたApo-2L配列のアミノ酸114-281、95-281、91-281又は92-281を含んでなるポリペプチドが含まれる。アミノ酸92-281を含んでなるポリペプチはApo-2Lの天然に切断した型であると現在は信じられている。本出願人は、CHO細胞においてヒトApo-2Lを発現させ、92-281ポリペプチドがApo-2Lの発現型であることを見出した。国際公開第97/25428号に記載された共有結合的に修飾された型のようなApo-2Lの修飾型が含まれる。特に、ポリエチレングリコールのような非タンパク性ポリマーに結合したApo-2Lが本方法に使用されるものに含まれる。Apo-2Lポリペプチドは国際公開第97/25428号に記載された方法の何れかにより調製することができる。
該方法で使用されうるアポトーシス活性を有するApo-2リガンドの変異体は、例えばアラニンスキャン技術により同定されたものを含む。特に置換変異体は、位置203、218又は269でアミノ酸の少なくとも1種がアラニン残基で置換された、Pitti等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996)の図1Aのアミノ酸91-281を含んでなる。場合によっては、Apo-2リガンド変異体は1又は複数のこれら3つの異なった部位の置換を含みうる。
【0042】
Apo-2Lのアポトーシス活性を模倣する分子がまた現在開示した方法において使用しうると考えられる。そのような分子の例には、Apo-2Lに少なくとも匹敵するか、もしくは同様な方法でアポトーシスを誘発しうるアゴニスト抗体が含まれる。特に、これらのアゴニスト抗体はApo-2Lのレセプターの一又は複数に結合する抗体を含む。好ましくは、アゴニスト抗体は、DR4又はDR5のような細胞質死ドメインを含むApo-2Lレセプターに対する。さらに好ましくは、アゴニスト抗体は、そのようなレセプターに結合し、その結合は例えばFACS分析又はELISAを用いて決定することができる。DR5(又はApo-2)と呼ばれるレセプターに対するアゴニスト抗体は、以下に記載するような融合技術を使用して調製されている。DR5又はApo-2レセプターアゴニスト抗体の一つは3F11.39.7と呼ばれ、1998年1月13日に寄託番号HB-12456としてATCCに寄託されている。他のDR5レセプター抗体は3H3.14.5を含み、ここで示されるようにATCCに寄託された。Apo-2Lレセプター抗体のアゴニスト活性は、アポトーシス活性の様々な検査方法を使用して測定することができ、さらに場合によっては、このような抗体のアポトーシス活性は、DR4又はDR5のようなApo-2Lレセプターを発現する細胞のアポトーシスを検査するためのアッセイにおいて、Fc免疫グロブリン又は補体を用いて、抗体、単独又は架橋結合した形態でアッセイすることにより決定される。
さらに、DR4と呼ばれる他のApo-2Lレセプターに対するアゴニスト抗体もまた、調製される。DR4アゴニスト抗体の1つは、4H6.17.8と称され、1998年1月13日に寄託番号HB-12455としてATCCに寄託されている。またさらにアゴニストDR4抗体は、以下に記載されるようにATCCに寄託されている抗体4E7.24.3、1H5.25.9、4G7.18.8、及び5G11.17.1を含む。Apo-2Lレセプター抗体のアゴニスト活性は、アポトーシス活性の様々な検査方法を使用して測定することができ、さらに場合によっては、このような抗体のアポトーシス活性は、アポトーシス活性を検査するための様々なアッセイを用いて測定してもよいし、場合によっては、Fc免疫グロブリン又は補体を用いて、抗体、単独又は架橋結合した形態をアッセイすることにより測定することもできる。
【0043】
本発明において考察されているアゴニスト抗体には、1つのApo-2Lレセプター又は1以上のApo-2Lレセプターと結合する抗体が含まれる。1以上のApo-2Lレセプターを結合する抗体は、例えばELISA又はFACSにより決定される、2又はそれ以上のそれぞれ異なる抗原と「交差反応し」、それぞれの異なる抗原と結合することができる抗体として特徴づけられうる。場合によっては、2又はそれ以上の異なる抗原と「特異的に交差反応する」抗体は、第1の抗原と結合するもので、さらに第2の異なる抗原と結合し、約10μg/mLの抗体濃度で第2の抗原に対する抗体の結合能力は、捕獲ELISAで決定されるように第1の抗原の結合能力の約50%〜約100%(好ましくは約75%〜約100%)である。例えば抗体は、DR5(「第1抗原」)と特異的に結合しても、更にDR4のような他のApo-2レセプター(「第2抗原」)と特異的に交差反応してもよく、ここで、約10μg/mLの抗体のDR4との結合の範囲は、ここでの捕獲ELISAにおいてDR5に対する抗体の結合能力の約50%〜約100%である。様々なApo-2Lレセプターとの抗体の交差反応は、国際特許出願番号PCT/US99/13197の更なる詳細に記載される。
以下に記載されるように、このような抗体の例示的な形態としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
【0044】
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物において、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射することにより哺乳動物に注射する。免疫化剤は、DR4又はDR5ポリペプチド(又はDR4又はDR5ECD)又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を、免疫化される哺乳動物で免疫原性が知られたタンパク質に抱合させるのが有用である。そのような免疫原性タンパク質の例は、限定するものではないが、キーホール・リンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。哺乳動物から採血し、血清を検定して抗体価を求める。望まれるならば、抗体価が増加又は平坦化するまで哺乳動物に追加免疫を施す。
【0045】
2.モノクローナル抗体
本発明の抗体は、あるいは、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するかあるいは産生可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはDR4又はDR5ポリペプチド又はその融合タンパク質、例えばDR4又はDR5ECD-IgG融合タンパク質を含む。
一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親の細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0046】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これはカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。そのようなマウス骨髄腫細胞株の例は、P3X63AgU.1である。ヒトモノクローナル抗体産生ためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、次いでApo-2Lレセプターに対するモノクローナル抗体の存在について検定することができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0047】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程を経てサブクローニングし、標準的な方法で増殖させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地又はRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培地又は腹水液から分離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順によって(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。
【0048】
本発明の抗体は、「架橋」抗体を含む。ここにおいて使用されている「架橋」という用語は、一(又は単)分子を形成するための、少なくとも二つのIgG分子が互いに結合することを称する。Apo-2Lレセプター抗体は種々のリンカー分子を使用して架橋されてもよく、場合によっては、DR4抗体は、抗IgG分子、補体、化学修飾又は分子工学を使用して架橋される。一度抗体が細胞表層膜へ結合すると、補体が抗体分子に対して比較的に高い親和性を有することは、当業者とっては高く評価されることである。従って、細胞表層膜へ結合している二又はそれ以上の抗体を連結するための架橋分子として、補体を使用してもよいと考えられる。種々のマウスIgアイソタイプの中で、IgM、IgG2a及びIgG2bは、補体を固定することが知られている。
本発明の抗体は、抗体の多価型と同様に、二量体抗体を任意に含むことができる。当業者は、当該分野で知られている技術及びここにおける抗Apo-2Lレセプター抗体を使用して、そのような二量体又は多価型を組み立てることができる。
本発明の抗体は一価抗体を含み得る。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連したシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0049】
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の調製は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。例えば、消化はパパインの使用により行うことができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開された国際公開第94/29348号、及び米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、典型的には、Fab断片と呼ばれ、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原の架橋が尚も可能なF(ab')2断片が得られる。
また、抗体の消化により生産されたFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体のヒンジ領域から一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されているということで、Fab断片とは異なっている。Fab'-SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、本来は、それらの間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
また、Iliades等, FEBS Letters, 409:437-441 (1997)に記載されているように、一本鎖Fv断片も産生されうる。このような一本鎖断片の種々のリンカーを用いた結合は、Kortt等, Protein Engineering, 10:423-433 (1997)に記載されている。
【0050】
上記に記載の抗体に加えて、キメラ又はハイブリッド抗体が、架橋剤を含む合成タンパク質化学における周知の方法を用いてインビトロで調製されうると考えられる。例えば、免疫毒素はジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合の形成により作成することができる。この目的に好適な薬剤の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが含まれる。
本発明のApo-2Lレセプター抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン共通配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann 等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0051】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野で良く知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的にウィンター(Winter)及び共同研究者の方法[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]に従って、齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。そのような移入残基又は移入可変ドメイン(又はCDR)の元になるものは、ここで開示される寄託された抗Apo-2Lレセプター抗体4H6.17.8、3F11.39.7、4E7.24.3、1H5.25.9、4G7.18.8、5G11.17.1、及び3H3.14.5を含む。
抗原性の軽減のためには、ヒト化抗体を作成するために使用するヒトの可変ドメイン、軽鎖及び重鎖両方の選択が非常に重要である。「ベストフィット法」に従うと、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。齧歯動物のものと最も近いヒトの配列を次にヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる[Sims等, J. Immunol., 151:2296-2308 (1993);Chothia及びLesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987)]。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる[Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623-2632 (1993)]。
【0052】
さらに、抗体は、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは入手可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原と結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性を高めるといった、望ましい抗体特徴が得られるように、FR残基を共通及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている[1994年、3月3日に公開された国際公開第94/04679号を参照]。
【0053】
ヒトモノクローナル抗体は、ヒトBリンパ球を融合パートナーとして使用する、Kohler及びMilsteinによって最初に記載されたハイブリドーマ法を適応することによって作製することができる。関心ある抗体を生産するヒトBリンパ球は、例えば、インフォームド・コンセントを得た後に、ヒト個人から単離される。例えば、個人は、全身性紅斑性狼瘡(Shoenfeldら,J.Clin. Invest., 70:205(1982))、免疫媒介血小板新生紫斑病(ITP)(Nugentら,Blood, 70(1):16-22(1987))、又は癌のようなある疾患とともに生じる自己抗原に対する抗体を生産している。或いは、又は付加的に、リンパ球はインビトロで免疫化される。例えば、単離されたヒト末梢血リンパ球をlysomotrophic agent(例えばL-ロイシン-O-メチルエステル、L-グルタミン酸ジメチルエステル又はL-ロイシル-L-ロイシン-O-メチル エステル)(米国特許第5,567,610号、Borrebaeck等,)へ暴露させる;及び/又はインビトロでT細胞欠損ヒト末梢血リンパ球を8-メルカプトグアノシン及びサイトカインのようなアジュバントで処理(米国特許第5,229,275号、Goroff等)してもよい。
被検者より回収されたかインビトロで免疫化されたBリンパ球は、次には通常、ヒトモノクローナル抗体を生成するために不死化される。限定されるものではないが、Bリンパ球を不死化する技術は、(a)ヒトBリンパ球とヒト、マウスミエローマ又はマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞との融合;(b)ウイルスによる形質転換(例えば、エプスタイン・バーウイルス;例えば、Nugentら,上掲を参照のこと);(c)リンパ芽球腫細胞株との融合;又は(d)リンパ腫細胞との融合、を含む。
【0054】
リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, pp.590-103(Academic Press, 1986))。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、成長させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。適切なヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株が記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により成長させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, pp.59-103(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0055】
また、ヒト抗体は、ヒト抗体を生産することのできるマウスのような非ヒト宿主を使用して生成してもよい。上記のように、免疫化することで、内在性免疫グロブリンが生成されない状態でもヒト抗体の完全リパートリを生成することができるトランスジェニックマウスを利用することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異マウスにおいて抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子をホモ接合的に欠失させると内在性抗体生産の完全な阻害が生じることが記述されている。このような生殖系列変異マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列を移すと、抗原投与時にヒト抗体の生成が生じる。例えば、Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551(1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号;米国特許第5,589,369号;及び米国特許第5,545,807号を参照のこと。また、ヒト抗体は、SCID-huマウス(Duchosalら,Nature 355:258-262(1992))を使用して作製してもよい。
【0056】
その他の実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリより選択してもよい。抗体又はその断片のライブラリの調製は当該分野で良く知られており、宿主細胞へ導入可能な形質転換ベクターのファミリの構築のためには、いずれの既知の方法を使用してもよい。ファージ中の抗体軽鎖及び重鎖(Huseら,Science, 246:1275(1989))、又はファージ或いはファージミド中の融合タンパク質のライブラリは、既知の方法によって調製が可能である。例えば、Vaughan等, Nature Biotechnology 14:309 -314(1996);Barbasら,Proc. Nalt. Acad. Sci., USA, 88:7978-7982(1991);Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597(1991);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381-388 (1992);Barbasら,Proc. Nalt. Acad. Sci., USA, 89:4457-4461(1992);Griffiths等, EMBO Journal, 13:3245-3260(1994);de Kruifら,J. Mol. Biol., 248:97-105(1995);国際公開第98/05344号;国際公開第98/15833号;国際公開第97/47314;国際公開第97/44491号;国際公開第97/35196号;国際公開第95/34648号;米国特許第5,712,089号;米国特許第5,702,892号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,432,018号;米国特許第5,270,170号;国際公開第92/06176号;国際公開第99/06587号;米国特許第5,514,548号;国際公開第97/08320号;及び米国特許第5,702,892号を参照のこと。関心ある抗原は、標的抗原と結合するファージ抗体を選択するための分野において既知の方法を使用し、ファージライブラリに対して選別される。
【0057】
ここに記載のApo-2Lレセプター抗体は、場合によっては一又は複数の所望する生物活性又は特性を有する。そのような抗体は、限定されないが、キメラ、ヒト化、ヒト、及び親和性成熟抗体を包含してもよい。記載されているように、抗体は、これらの所望する活性又は特性を達成するための種々の技術を使用して構築又は設計される。一実施態様では、Apo-2Lレセプター抗体は、少なくとも105M−1、好ましくは106M−1から107M−1の範囲、さらに好ましくは少なくとも108M−1から1012M−1の範囲、及びよりさらに好ましくは少なくとも109M−1から1012M−1の範囲のDR4又はDR5レセプター結合親和性を有する。抗体の結合親和性は、スキャッチャード分析法(Munsonら、上掲を参照のこと)を包含する当該分野において既知の技術に従った抗体の試験による過度の実験なしに測定することができる。
その他の実施態様では、本発明のApo-2Lレセプター抗体は、Apo-2Lが結合するDR4又はDR5上の同じエピトープと結合するか、又はApo-2Lが結合するDR4又はDR5上のエピトープと一致又は重複するDR4又はDR5上のエピトープと結合する。また、Apo-2リガンドがDR4又はDR5へ結合することを妨げる立体構造を作り出すように、抗体は相互作用する。本発明の抗体のエピトープ結合特性は、当該分野において既知の技術を用いて決定されてもよい。例えば、抗体は、競争阻害アッセイのような、DR4又はDR5へのApo-2Lの結合をブロック又は阻害する抗体の能力を測定するためのインビトロアッセイにおいて試験されてもよい。場合によっては、例えばDR4-IgGコンストラクト又はDR4発現細胞へApo-2Lポリペプチドの結合を阻害するDR4抗体の能力を測定するために、抗体は競争阻害アッセイにおいて試験されてもよい。場合によっては、抗体は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、及びなおさらに好ましくは少なくとも90%、レセプターへのApo-2Lの結合を遮断又は阻害することができ、これは一例として、Apo-2リガンド(TRAIL)の可溶型及びDR4 ECD-IgGを使用するインビトロ競争阻害アッセイにおいて測定されてもよい。
【0058】
好ましい実施態様では、抗体は、Apo-2リガンド(TRAIL)に匹敵する、又はこれに類する活性を有するアゴニスト抗体を含む。好ましくは、そのようなアゴニストDR4又はDR5抗体は、少なくとも一種類の癌又は腫瘍細胞株或いは原発性腫瘍においてアポトーシスを誘導する。アゴニストDR4又はDR5抗体のアポトーシス活性は、既知のインビトロ又はインビボアッセイを使用して測定してもよい。インビトロでは、アポトーシス活性は、アネキシンV結合(AnnexinV binding)のような既知の技術を使用して測定することが可能である。インビボでは、アポトーシス活性は、例えば、腫瘍の負担又は容積の減少を測定することで決定してもよい。
【0059】
3.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本ケースにおいて、結合特異性の一方はApo-2Lレセプターに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生成方法は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えたため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を作成でき、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を生成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0060】
4.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有的に結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対して標的化させるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開第91/00360号;国際公開号92/200373号;欧州特許第03089号]提案された。本抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を使用してインビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な薬剤の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0061】
5.トリアボディ(triabodies)
トリアボディも本発明の範囲内である。このような抗体は、例えば上掲のIliades等及び上掲のKortt等に記載されている。
【0062】
6.他の修飾
Apo-2Lレセプター抗体の他の修飾はここにおいて考慮されている。また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素、又は細胞障害剤(毒素分子等)に抗体をコンジュゲートさせることにより修飾することができる。例えば国際公開第88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。また、この技術は、「抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法」(ADEPT)と呼ばれている。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;カスパーゼ、例えばカスパーゼ-3;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、当該技術において「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0063】
この酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えばヘテロ二官能性架橋剤を使用することにより、抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608[1984])。
さらなる抗体の修飾が考察されている。例えば、抗体は種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーに結合してもよい。また抗体は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)にコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Oslo編(1980)に開示されている。抗体の血清半減期を増大させるために、米国特許第5,739,277号に記載されているように抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープを組み込んでもよい。ここで使用される「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清半減期を増加させる原因となるIgG分子(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを称する。
【0064】
7.組み換え体方法
本発明はまたここに開示した抗体をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター及び宿主細胞、及び抗体の生産に対する組換え技術を提供する。
抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、従来の手法(例えば、抗体をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用するもの)を用いて配列決定される。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である。
ここにおける方法は、抗Apo-2Lレセプター抗体軽鎖又は重鎖(又は軽鎖及び重鎖の両方)をコードするDNA配列を含んでなるベクターを提供する、宿主細胞をベクターでトランスフェクト又は形質転換する、及び組み換え体抗Apo-2Lレセプター抗体産物を産生するのに十分な条件下で宿主細胞を培養する段階を含む、キメラ又は組み換え体抗Apo-2Lレセプター抗体の生産のための方法を包含する。
【0065】
(i)シグナル配列成分
本発明の抗Apo-2Lレセプター抗体は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、好ましくはシグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても産生される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母の分泌に関しては、天然シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。このような前駆体領域のDNAは、抗体をコードするDNAにリーディングフレームが結合される。
【0066】
(ii)複製開始点成分
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、この配列はクローニングベクターにおいて、宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は様々な細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点が典型的には初期プロモーターを有しているため用いられる)。
【0067】
(iii)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシラス菌に対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換したこれらの細胞は、抗薬物性を付与し、選択療法を生存するタンパク質を生産する。このような優性選択の例としては、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンが使用される。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することのできるもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である。
【0068】
あるいは、抗Apo-2Lレセプター抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地における細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、トリプトファンの不存在下における成長による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC20,622あるいは 38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する安定した複数コピー発現ベクターも開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
【0069】
(iv)プロモーター成分
通常、発現及びクローニングベクターは、宿主生体により認識され、抗体核酸に作用可能に結合するプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗Apo-2Lレセプター抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。事実上、全ての真核生物の遺伝子は、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0070】
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的利点を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許第73657号に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
【0071】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗Apo-2Lレセプター抗体転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーターによって、提供されるこのようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点をさらに含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現する系が、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変更例は米国特許第4,601,978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0072】
(v)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による本発明の抗Apo-2Lレセプター抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0073】
(vi)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、多価抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示した発現ベクターを参照されたい。
【0074】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びB.リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD 266,710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo-2Lレセプター抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(欧州特許第402,226号);ピチア・パストリス(欧州特許第183,070号);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(欧州特許第244,234号);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属(Aspergillus)宿主、例えば偽巣性コウジ菌(A. nidulans)及びクロカビ(A. niger)が使用できる。
【0075】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、このようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
【0076】
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になった。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株[293又は懸濁培養での成長のためにサブクローン化された293細胞、Grahamほか, J. Gen Virol., 36:59 (1977)];ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞[TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980)];サルの腎細胞 (CVI ATCC CCL 70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞 (BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562, ATTC CCL51);TRI細胞[Motherほか, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982)];MRC5細胞;FS4細胞;ヒト肝癌株(HepG2);及びミエローマ又はリンパ腫細胞(例えば、Y0, J558L, P3及びNS0細胞)(米国特許第5,807,715号を参照のこと)である。
宿主細胞は、抗体生成のための上述した発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適当に修飾された常套的栄養培地で培養する。
【0077】
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を生成するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704号;同4,657,866号;同4,927,762号;同4,560,655号;又は同5,122,469号;国際公開第90/03430;国際公開第87/00195;又は米国特許再発行第30,985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0078】
(ix)精製
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔内に生成されるか、又は培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内に生成される場合、第1段階として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は限外濾過にかけて取り除く。Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるタンパク質を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には第1に市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0079】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5:15671575 (1986))。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリクスも使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他の技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0080】
NK細胞は当分野で公知の技術を用いて哺乳動物から得ることができる。場合によっては、NK細胞はヒトドナーから採取し精製したヒト細胞である。NK細胞は、限定するものではないが以下の実施例に記載のものを含む、市販されて容易に入手可能な材料を用いて精製してもよい。
NK細胞活性化剤には、様々な小分子、サイトカインおよび抗体、例えばTollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、およびNKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体が含まれる。このような薬剤は市販されて容易に入手可能である。
【0081】
C.製剤
Apo-2リガンド又はApo-2Lレセプターアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は好ましくは担体で投与される。分子は、単一の担体で投与することができ、あるいは別個の担体に含めることができる。適した担体とその製剤は、Osloらにより編集されたRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed.., 1980, Mack Publishing Co.に記載されている。典型的には、適当量の製薬的に許容可能な塩が製剤を等張にするために担体中に使用される。担体の例には、生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液が含まれる。溶液のpHは好ましくは約5から約8、より好ましくは約7.4から約7.8である。例えば投与経路及び投与される薬剤の濃度に応じてある種の担体がより好ましいことは当業者には明らかであろう。担体は凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態をとりうる。
許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、好ましくは、用いる投与量及び濃度では細胞及び/又はレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0082】
また、製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。あるいは、又は加えて、組成物は、細胞障害剤、サイトカイン又は成長阻害剤を含有してもよい。このような分子は、好適には、意図した目的に有効な量で組合せて存在する。
またApo-2L又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションの、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo,A.編(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸等のポリマーは100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。
【0083】
D.投与方法
Apo-2L又はApo-2Lレセプターアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤は、公知の方法、例えばボーラスとしてもしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により投与することができる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプ流入によって実施することもできる。
Apo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与の有効な用量は経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。単独に使用されるApo-2リガンドの効果的な用量又は量は一日当り約1μg/kgから約100mg/kg体重あるいはそれ以上までの範囲であると現在は考えられる。単独に使用されるNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の効果的な用量又は量は約1mg/m2から約150mg/m2の範囲である。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordenti等, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような当該分野で知られている方法で実施することができる。当業者であれば、投与されなければならないApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の用量は、例えばApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤を受ける哺乳動物、投与経路、及び哺乳動物に投与されている他の薬物又は治療法に応じて変化することを理解するであろう。
【0084】
細胞の型及び/又は病気の重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入の何れであれ、約1μg/kgないし15mg/kg(例えば0.1−20mg/kg)のアゴニスト抗体が、投与の最初の候補用量である。上述した要因に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、病気の徴候の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。しかしながら、他の投薬計画も有効であろう。
一又は複数のApo-2Lレセプターアゴニストが本方法において使用されると考えられている。例えば、当業者であれば、Apo-2リガンド、DR4アゴニスト抗体、DR5アゴニスト抗体、又はそれらの組合せを使用するであろう。場合によっては、Apo-2Lレセプターアゴニスト抗体は、DR4及びDR5の双方に結合する交差反応抗体を含むであろう。
さらなる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法には、これらに限定されるものではないが、他の化学療法(又は化学療法剤)及び/又は放射線療法、免疫アジュバント、成長阻害因子、サイトカイン、及び他の非Her-2抗体をベースとした治療法が含まれる。例としては、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6)、白血病抑制因子、インターフェロン、TGF-β、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、及び抗VEGF抗体が含まれる。哺乳動物においてアポトーシスを誘発することが知られている他の薬剤もまた使用することができ、それら薬剤には、TNF-α、TNF-β(リンホトキシン-α)、CD30リガンド、4-1BBリガンド、及びApo-1リガンドが含まれる。
【0085】
本発明により考えられる化学療法には、当該分野で知られ、商業的に入手可能な化学物質又は薬物、例えばアドリアマイシン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、ロイコボリン、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、トキソテレ(Toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、マイトキサントロン、ビンクレイスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号参照)、メルファラン及び他の関連ナイトロジェン・マスタードが含まれる。また含まれるものは、タモキシフェン及びオナプリストーンのような腫瘍のホルモン作用を調節又は阻害するように作用する薬剤である。
このような化学療法の調製と用量スケジュールは、製造者の指示書に従って使用されるか、有能な実務者により経験的に決定されて使用される。このような化学療法の調製と用量スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo-2L又はアゴニスト抗体及び/又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与の前でも後でもよく、またはそれと同時に与えてもよい。
【0086】
化学療法は、好ましくは、上述したもののような担体で投与される。化学療法の投与方法は、Apo-2リガンドないしはアゴニスト抗体又はNK細胞ないしはNK細胞活性化剤に対して使用するものと同じ方法、あるいは異なった方法で投与することもできる。
放射線療法は、当該分野で一般的に使用され、当業者に知られているプロトコルに従って施すことができる。このような療法には、セシウム、イリジウム、ヨウ素又はコバルト照射が含まれる。放射線療法は、体全体の照射でも、体の中又は上の特定の部位又は組織に局所的に向けられるものでもよい。典型的には、放射線療法は、約1週から約2週の期間にわたって、パルスで施される。しかしながら、放射線療法をより長い時間、施してもよい。場合によっては、放射線療法は、単一用量又は複数の連続用量として施されうる。
Apo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤の投与に続いて、インビトロの治療細胞を分析することができる。インビボ治療があった場合、治療された哺乳動物は熟練した実務者によく知られた様々な方法でモニターすることができる。例えば、身体的に、バイオプシーにより、あるいは標準的なX線画像法により腫瘍を観察することができる。
【0087】
III. 製造品
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器及びラベルを含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌したアクセスポートを有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤はApo-2リガンド又はアゴニスト抗体とNK細胞ないしはNK細胞活性化剤である。容器上の又は容器に伴うラベルには、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガル液及びブドウ糖液を収容する第2の容器をさらに具備する。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用指示書を含むパッケージ挿入物を含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0088】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、限定するものではない。本明細書で引用した全ての文献を、出典明示によりここに取り込む。
【実施例】
【0089】
実施例1
4T1細胞に対するTollレセプター活性化因子およびNK細胞の効果
4T1細胞(BALB/Cマウス由来の転移性乳癌細胞株、Fred Miller, Karmanos Cancer Instituteから入手)をインビトロ細胞障害性アッセイにおいて検定し、様々なTollレセプター(「TLR」)活性化因子およびNK細胞の殺腫瘍性効果を調べた。4T1標的細胞を、10%FCS、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したIDMEM培養液中にて培養し、37℃で1時間、100mCi 51Crにて標識し、次いで培養液にて3回洗浄した。
アッセイのための精製したエフェクターNK細胞を調製するために、健康なヒトドナーのPBMCを、フィコール-プラークプラス(Pharmacia)を用いた標準的密度勾配遠心分離法によって単離した。まず、CD3陽性細胞を抗CD3ミクロビーズ(Miltenyiより入手)を用いて枯渇させ、次いでNK細胞を抗CD56ミクロビーズ(Miltenyi)を用いて精製した。NK細胞調製の純度は、マウス抗ヒトCD56 PEおよびマウス抗ヒトCD14 PEコンジュゲート(BD Biosciences)にて染色することによって測定して、95%以上とした。単離した細胞を、熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミン、および10mM HEPESを添加したRPMI1640中で培養した。
【0090】
104の標識した4T1細胞を、1:1、3:1、6:1、12:1、25:1および50:1それぞれの比率で、数の異なる精製されたNK細胞(無処理の対照NK細胞または特定の薬剤で処理したNK細胞)に添加した。NK細胞を、以下のTLR活性化剤の何れか一つで18時間処理した:sBLP(1μg/ml、Bachem);ポリ(I:C)(50μg/ml、Pharmacia);大腸菌055:B5 LPS(フェノール抽出、1μg/ml、Sigma);フラジェリン(1μg/ml、A. Gewirtz, Emory Univerity);R-848(5μg/ml、Invivogen);CpGオリゴヌクレオチド(2006および2216、5μM、Invivogen)。細胞障害性アッセイを丸底96ウェルプレートで行い、試料を37℃、5%CO2にて4時間、2通りのウェルにインキュベートした。熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640を用いてインキュベートした。
4時間のインキュベーションの後、ウェルから上清を吸引し、ガンマカウンタを用いて51Cr放出について調べた。特異的細胞溶解の割合は、100×(実験のcpm−天然のcpm)/(総cpm−天然のcpm)として算出した。少なくとも3回の実験のうちの代表のデータを示し、<5%SDを観察した。
結果は、図1において示される。対照(静止) NK細胞で処理した場合、高いエフェクター:標的(E:T)比であっても4T1細胞の細胞溶解はほとんどあるいは全く観察されなかったのに対して、該細胞はポリ(I:C)にて活性化したNK細胞によって効率的に溶解された。加えて、また、TLR7およびTLR8活性化因子であるR-848で処理したNK細胞は、4T1標的細胞を効率的に殺した。特定のアッセイ条件下で、BLP、LPS、フラジェリン、CpGオリゴヌクレオチドの何れも、4T1標的に対して精製されたNK細胞の細胞毒性活性を誘発しなかった。
【0091】
実施例2
NK細胞によるApo2L/TRAILの誘導
高密度オリゴヌクレオチドアレイ(GeneChip, Affymetrix)を用いたマイクロアレイベースの遺伝子発現分析を、静止およびポリ(I:C)処理NK細胞のRNAを用いて行った(NK細胞は、上記の実施例1に記載の技術を用いて4の健康ドナーから採取して精製した)。NK細胞を、熱不活性10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640中でポリ(I:C)(50μg/ml、Pharmacia)にて終夜処理した。RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを単離し、RNアーゼのないDNアーゼ-I(Ambion)にて処理して、混入するDNAの除去を行った。NK細胞は、完全プロテアーゼインヒビター混合液(Roche)を添加した溶解緩衝液(50mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、1.5mM MgCl2、1mM EGTA、10%グリセロールおよび1%トリトンX-100)中で溶解した。
【0092】
Affymetrix U133AおよびB GeneChipプローブアレイを用いて、差次的に発現する転写物を同定した。まず最初に、遺伝子をペアワイズ比較との一致に従って分類し、Mann-Whitneyペアワイズ比較判定法を用いて有意差を算出した。100%一致した遺伝子を、更なる分析のために選択した。この方法は、リアルタイムRT-PCRによって確認することによって差次的に発現された遺伝子を同定するために、既に有効とされている。表1に示される信頼区間を決定するために、対照とする遺伝子のプローブセット、または治療群および対照群について、平均log10-シグナルを計算した。算定されたlog10倍数的変化を、これらの平均間の相違として定めた。2群の平均についての標準偏差の合算(各プローブセット毎に算出)を用いて、log10倍数的変化の95%の信頼区間を計算した。算定されたlog10倍数的変化およびその95%の信頼区間の2つのエンドポイントを元のシグナルスケールへ累乗し、倍数的変化の算定および対応する95%の信頼区間を求めた。U133プローブセットについての付加的情報は、製造業者Affymetrixから入手可能である。
この分析で観察されたIL-6、IL-8およびIFN-γの誘導は、Schmidt 等, J. Immunol., 172:138-143 (2004)によって以前に報告された結果を裏付けるものであり、TLR活性化によって制御される他の遺伝子を分析するためこの方法は有効である(表1)。
【0093】
表1
表1:ポリ(I:C)処理NK細胞における遺伝子発現の分析。
倍数的変化値および関連する95%の信頼区間(degree of freedom=6)を、無処置のNK細胞との相対としてポリ(I:C)による処理の際の対象の遺伝子について測定した。対象の遺伝子に対応するAffymetrix U133チップシリーズに存在する各プローブセットのデータを示す。
【0094】
TNFα、FasL、IL-8およびCCL20などの遺伝子の場合、倍数的変化の信頼区間の下限は、2.0以下であった。これは、ドナーの変動性、主にドナー#1の大きな変動性に起因しうる。NK細胞機能、例えばNCR、死レセプターリガンド、およびパーフォリン依存性細胞障害性に関係する遺伝子の潜在的に重要なエフェクターであると思われる遺伝子に注目した(表1)。NK細胞のポリ(I:C)処置により、膜混乱性タンパク質パーフォリンおよびグラヌリシンをコードするmRNA、グランザイムA、B、M、又は細胞表面活性化レセプターNKG2DおよびNKp44の発現の有意な変化は生じなかった。グランザイムHおよびNKp30の発現は、3〜5分の一に減少した。出願人等は、グランザイムHが細胞死を誘発するという報告を現在のところ知らないが、その生理的役割は十分によく理解されている[Edwards 等, J. Biol.Chem., 274:30468-30473 (1999)]。対照的に、ポリ(I:C) 処置により、Apo2L/TRAILの発現がほぼ10倍増加した。また、FasLおよびTNFαのmRNAの発現のより小さいが、再生可能な増加は、NK細胞上のTLR3の活性化に続いて見られた。
もう一方の実験では、精製されたNK細胞を、熱不活性化10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mM HEPESを添加したRPMI1640中で、10μg/mlのシクロヘキシミドの存在下または非存在下において、ポリ(I:C)(50μg/ml)、R-848(5μg/ml)又はhIFN-α(1000U/ml、Sigma)にて18時間処理して、抽出したRNA中のApo2L/TRAILを測定した。RT-PCRを行って、cDNAの量をRT-QPCR分析によって定量化し、RPL19に正規化して、対照に対する倍数的な誘導量を図2Aに示した。プライマーは指示(Primer Express)通りに設定し、配列は以下の通りである:hRPL19-プローブ:AGGTCTAAGACCAAGGAAGCACGCAA(配列番号:7);hRPL19-For:ATGTATCACAGCCTGTACCTG(配列番号:8);hRPL19-Rev:TTCTTGGTCTCTTCCTCCTTG(配列番号:9);hApo2L-プローブ:CCCAATGACGAAGAGAGTATGAACAGCCC(配列番号:10);hApo2L-For:TCCAAAAGTGGCATTGCTTG(配列番号:11);hApo2L-Rev:CTGACGGAGTTGCCACTTGA(配列番号:12)。cDNAは、Zarember 等, J. Immunol., 168(2): 554-61 (2002)にて説明したように、RT-QPCR (Applied Biosystems)によってRPL19およびApo2L/TRAILの発現について分析した。較正物質遺伝子RPL19と比較して、任意の単位として倍数的増加値を表した。
【0095】
Apo2L/TRAILが様々な癌細胞株においてアポトーシスを誘発し、4T1細胞がDR4レセプターを発現するので、Apo2L/TRAILの発現増加は重要なようである(データは示さない)。ポリ(I:C)およびR-848処置によりApo2L/TRAIL mRNAがそれぞれ26および25倍増加したことが定量的RT-PCR分析に示された(図2Aを参照)。加えて、IFN-αで処理したNK細胞においてApo2L/TRAIL mRNAの同様な増加が観察された。これは、Biron, 等, Semin. Immunol., 10:383-390 (1998)に報告された以前の結果とも一致する。これらの刺激された細胞におけるApo2L/TRAILメッセージの誘導はタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドによってブロックされなかった。これは、Apo2L/TRAILメッセージの上昇がNK細胞に対するTLR刺激の主要な作用であることを示唆している。
静止およびポリ(I:C)刺激性NK細胞溶解物又はその培養液上清を定量的ELISA(kit, BD Biosciences)によってApo2L/TRAILタンパク質の存在について評価した。ポリ(I:C)又はR848によるNK細胞の活性化の後に増加するApo2L/TRAILタンパク質発現を確認するために、ELISAを行った。Apo2L/TRAILタンパク質は無処置の細胞又はその上清において検出されなかったのに対して、Apo2L/TRAILタンパク質は、ポリ(I:C)にて刺激された細胞において細胞結合型で存在した(図2B)。刺激された細胞の上清に放出される、有意なレベルのApo2L/TRAILはみられなかった。
【0096】
また、ポリ(I:C)、R-848又はhIL-2(30ng/ml、BD Biosciences)にて処理した精製したNK細胞上の細胞表面Apo2L/TRAILを血球計算によって分析した。アイソタイプ対照(IgG2a、Sigma)および抗Apo2L/TRAIL抗体(5C2)を、Alexa488 (Molecular Probes)にて標識した。5×105の細胞を2μgのヒトIgGとともにインキュベートしてFcRをブロックし、1μgの直接的標識mAbとともに4℃で45分間、その後2回洗浄した。染色した細胞を、FACScan血球計算器(Becton Dickenson)およびCellquestソフトウェアを用いて分析した。
結果を図2Cに示す。太線はアイソタイプ対照に、細線はApo2L/TRAIL染色に対応する。3つすべてのパネルに示される結果は、(3人以上のドナーのうちの)典型的なドナーのものを示す。細胞のR-848又はポリ(I:C)処理により、フローサイトメトリを用いた膜結合性Apo2L/TRAILタンパク質のレベルが高くなった(図2C)。Apo2L/TRAILが無処置のNK細胞の表面に検出されなかったのに対して、ポリ(I:C)又はR-848による処理によって、Apo2L/TRAILの検出可能な細胞表面発現が生じた。また、ポジティブ対照、NK細胞のIL-2処置により細胞表面Apo2L/TRAILの発現が増加した。[Zamai 等, J. Exp. Med., 188:2375-2380 (1998)]
【0097】
実施例3
NK細胞の細胞溶解反応をブロックする際の抗Apo2L Abの効果
Apo2L/TRAILがTLRアゴニストで処理されたNK細胞の活性亢進の原因であることを示す実験を行った。以下の変更を除いて実施例1にて説明したように、細胞障害性アッセイを行った。精製されたNK細胞を、ポリ(I:C)又はR-848で終夜処理し、4T1細胞とともにインキュベートした。TNFα、FasLおよびApo2L/TRAILの役割は、それぞれのリガンドに対する中和抗体とともにNK細胞のプレインキュベーションによって評価した。以下の中和抗体は2μg/mlの終濃度で加えた:抗Fas-L(mIgG2b、R&D Systems)、抗TNFα(mIgG1、Genentech)、および抗Apo2L/TRAIL(5C2、mIgG2a、ATCC HB-12258および1D1、mIgG2b;ATCC HB-12257)。アイソタイプ対照抗体はBD Biosciencesから入手した。アイソタイプに一致するmAbを対照として用いた;これらの抗体は、静止細胞または活性化NK細胞の溶解活性を変更しなかった。
Apo2L/TRAILに対する中和抗体を用いると、R-848又はポリ(I:C)の何れかによって活性化されるNK細胞の細胞毒性活性が無効になるのに対して、TNFα又はFasLの何れかに対する抗体が効果を示さなかった(図3A)。また、4T1細胞に対するTLR刺激性NK細胞の細胞毒性活性は、DR5-Fc融合タンパク質、すなわちApo2L/TRAILを結合して、それによってその機能の効力を中和するDR5の細胞外ドメインの組換え型を用いて遮断した(データは示さない)。
【0098】
精製されたNK細胞をポリ(I:C)又はR-848で処理し、示した比率でB16BL10メラノーマ細胞(ATCC)とともにインキュベートした。R-848によって刺激された精製NK細胞は、示した比率でHCT116標的細胞(ATCC)とともにインキュベートした。パネルBおよびCの細胞溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割は、中和(5C2)および非中和(1D1)の抗Apo2L/TRAIL mAbsとともにプレインキュベーションすることによって決定した。データは少なくとも3ドナーからのNK細胞にて確認し、5%未満のSDを観察した。
非刺激NK細胞は、B16BL6細胞に対して細胞障害性でなく、高いE/T比率のHCT116細胞に対して限られた活性を示した(図3B、C)。対照的に、ポリ(I:C)又はR-848刺激NK細胞はB16BL6細胞を効率的に殺傷し、Apo2L/TRAILの中和によりこの活性を十分に遮断した(図3B)。面白いことに、ポリ(I:C)(データは示さない)又はR-848刺激NK細胞も、HCT116細胞に対する細胞毒性の亢進を示し、この活性はApo2L/TRAIL活性の中和反応によって部分的に遮断されるだけであった。NK細胞のTLR活性化によっても標的細胞依存性のApo2L/TRAIL非依存性細胞障害性経路が誘発されることが示唆される。これらのデータは、Apo2L/TRAILの誘導が、腫瘍細胞に対するNK細胞毒性活性のTLR媒介性刺激において重要な工程であることを示唆する。
【0099】
TLR活性化に続くApo2L/TRAILの誘導は、単球およびDCなどの他の生来の免疫細胞において既に確認されている。しかしながらこれらの場合、Apo2L/TRAILの発現増強は二次的な効果であった。具体的には、ポリ(I:C)による精製されたDCの刺激によりApo2L/TRAIL発現が誘発されるIFN-βの分泌が意図的に導かれた[Vidalain 等, J. Immunol., 167:3765-3772 (2001)]。CpGオリゴデオキシヌクレオチドによってPBMCを処理した際にも同様な二次的効果が観察された。これは、形質細胞様DCによって分泌されるIFN-αにより単球でのApo2L/TRAILの発現が亢進された[Kemp 等, J. Immunol., 171:212-218 (2003)]。この概念と一致して、Apo2L/TRAIL欠損マウスの使用またはApo2L/TRAIL活性の中和反応を用いた研究により、腫瘍転移を制御する際のApo2L/TRAIL発現NK細胞の役割が明らかとなった[Cretney 等, J. Immunol., 168:1356-1361 (2002);Takeda 等, J. Exp. Med., 195:161-169 (2002)]。
【0100】
実施例4
腫瘍細胞に対するApo2L/TRAILと活性化NK細胞との併用効果
実施例1にて説明したように、細胞障害性アッセイを行って、組換えApo2L/TRAIL(アミノ酸114−281、Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999)にて説明したように調製する)を、200ng/ml濃度で選択されたウェルに加えた。腫瘍細胞の耐性の評価のために、2μg/ml以下の濃度のApo2L/TRAILも用いた。4T1細胞を、Apo2L/TRAILタンパク質の濃度の範囲で処理するが、細胞溶解には耐性であった。
また、静止NK細胞がApo2L/TRAILタンパク質の添加によって活性化されうるかどうかを決定するための実験を行った。静止NK細胞(実施例1にて説明したように精製する)を、4T1標的細胞と漸増濃度のApo2L/TRAILタンパク質とともにインキュベートした。4T1細胞の用量依存性の細胞溶解が観察され、これによってApo2L/TRAILが静止NK細胞と協同しうることが示唆された。Apo2L/TRAILの添加の際に活性化されたNK細胞の場合にいくらかの増加が見られた。これは、おそらく活性化されたNK細胞によってすでに発現されたApo2L/TRAILの十分な量に起因する。
【0101】
これらの結果は、また、マウス腫瘍細胞株、乳房上皮C57MGおよびメラノーマ起源B16BL10にも観察された。これでは、静止NK細胞へのApo2L/TRAILの添加により観察される細胞溶解が増加した(活性化NK細胞の場合には有意な増加が観察されなかった)。また、HCT116細胞を5ng/mlのApo2L/TRAIL又は静止NK細胞および両方の組合せで処理した場合にも同様な結果が観察された。HCT116細胞の細胞溶解が観察されなかったので、5ng/mlの濃度のApo2L/TRAILを選択した。限定した比率の静止NK細胞へApo2L/TRAILを添加した結果、細胞毒性効果が亢進する。したがって、Apo2L/TRAILと静止NK細胞との併用処理によって、Apo2L/TRAIL単独によって誘発される死に耐性である以外は癌細胞の細胞溶解が生じうる、あるいは、Apo2L/TRAILに対する癌細胞の感受性が亢進されうる。
【0102】
実施例5
腫瘍細胞に対するApo2L/TRAILとNK細胞との併用効果
さらに、癌細胞に対するApo-2Lタンパク質とNK細胞の効果を示すか確認するためのアッセイを行った。
技術および材料:
NK細胞は健常なドナーの末梢血から単離し、NK細胞は上記の通りに精製した。NK細胞は、熱不活性FCS、ストレプトマイシン、ペニシリン、10mM ナトリウムピルベート、2mM L-グルタミンおよび10mMのHEPES、pH7.4を添加したRPMI-1640培養液中で培養した。活性化NK細胞を、5μg/mlのR848(Invivogen、1mg/mlを水に溶解;活性化因子TLR7およびTLR8)、IL-2、IL-12およびIL-15とともに16時間処理することによって得た。4T1細胞(BALB/c由来乳癌;Fred Miller, Karmanos Cancer Instituteから入手)とB16メラノーマ(ATCC)細胞を、10%FCS、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンをそれぞれ添加したIDMEMおよびDMEM中で維持した。PI9をpRKN-Flag、ClaおよびAscI部位にサブクローニングし、PI9のc末端タグ付加型とした。Polyfectを用いてpRKN-PI9 Flag又は空のベクターに形質移入した後、4T1細胞又はB16細胞の安定細胞株を得た。ジェネテシン(Gibco)(4T1細胞およびB16細胞にそれぞれ1および2mg/ml)を添加した培養液中でクローンを選択した。PI9の発現は抗Flag抗体(M2クローン、Sigma)によって検出した。
細胞障害性アッセイのために、標的細胞を100mCiの51Crとともに37℃で1時間標識して、次いで使用前に3回洗浄した。104の標的細胞を、示された比率で数の異なるエフェクター細胞に添加し、二通りずつ、37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、ガンマカウンタを用いて上清に放出される51Crを測定した。細胞障害性アッセイは丸底96ウェルプレートで行い、特異的な細胞溶解の割合を、100X(実験的cpm−自然発生的なcpm)/(総cpm−自然発生的なcpm)として算出した。標的細胞の細胞溶解の際にNK細胞によって発現されるApo2L/TRAILの役割を、抗Apo2L/TRAIL mAb(5C2および1D1、Genentech, Inc.)を用いて評価した。アイソタイプ対照抗体はBD Biosciencesから入手した。これらの対照抗体はNK細胞の溶解活性を変化させなかった。
【0103】
タンパク質分析アッセイでは、イムノブロッティング分析のために、ウサギ抗mPARP(Asp-214)、カスパーゼ3(8G10)および切断型活性化カスパーゼ-3(Asp-175 5A1)抗体を製造業者(Cell Signaling Technology)が推奨するように用いた。フラグ(Flag)エピトープ抗体(M2、Sigma) をFlagエピトープ標識したPI9の検出のために用いた。総細胞抽出物は溶解緩衝液(0.1M トリスpH8.0、500mM NaCl、2mM EDTA、1%トリトンX-100、10%グリセロール、完全プロテアーゼインヒビター混合液を添加、Roche)を用いて4T1細胞から調製し、溶解物を4℃で10分間、16,000回転数/分で遠心することによって精製した。溶解物は、SDS-PAGEによって分画し、ニトロセルロース膜へ移した。HRP-コンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした後、示した抗体とともに膜をインキュベートした(ヤギ抗ウサギ、Cell Signaling Technology;および、ヤギ抗マウス、Jackson Immunoresearch)。免疫複合体を、亢進した化学発光(Amersham)を用いて検出した。
【0104】
アッセイ結果:
アッセイ結果は、図8−10に示す。4T1細胞株およびB16細胞株は、Apo2L/TRAIL依存的な方法で活性化NK細胞によって溶解される一方、Apo2L/TRAILタンパク質の濃度の範囲でこれらの細胞を処理するとそのアポトーシスの効果に特定の耐性を示した。既に報告されたように、同様な濃度のApo2L/TRAILはHCT-116細胞またはSKMES-1細胞による51Crの放出を効果的に媒介する。
NK細胞がパーフォリン依存性標的細胞殺傷機構を含有する細胞障害性顆粒を有するので、4T1細胞の細胞溶解中の他の細胞障害性顆粒含有量およびパーフォリンの役割を調べた。グランザイムB(「GraB」)の細胞浸透性ペプチド基質インヒビターによって活性化NK細胞を処理すると、4T1細胞の細胞溶解が減退した。対照的に、一般的なカスパーゼインヒビターペプチドによる処理によって(データは示さない)、GraBインヒビターの特性と、その膜透過処理がカスパーゼの活性化に近い現象であることを示すCrの放出がブロックされなかった。パーフォリンの成熟をブロックするコンカナマイシンAもNK細胞の細胞毒性活性をブロックした。標的細胞との接触領域への細胞障害性顆粒の運搬はPI3Kシグナル伝達によって媒介され、PI3Kのインヒビターにより細胞障害性顆粒の動きがなくなった。PI3Kのインヒビターであるワートマニンによる活性化NK細胞の処置によって溶解活性がブロックされるのに対して、他のキナーゼインヒビターの付加によってはNK細胞活性に影響しなかった。これらの結果により、活性化NK細胞による4T1細胞の細胞溶解におけるパーフォリン依存性経路の役割がまとめて示唆される。
【0105】
4T1細胞を、Apo2L/TRAIL又は活性化NK細胞で処理し、カスパーゼー3活性化と切断型DNA修復酵素、ポリ(ADP-リボシル) ポリメラーゼ(「PARP」)、カスパーゼー3の基質の産生について評価した。Apo2L/TRAIL処理によってプロカスパーゼー3およびPARPの切断が起こるが、活性化NK細胞は4T1細胞の強力なカスパーゼ-3活性化能力およびPARP切断能力を有した。したがって、活性化NK細胞による腫瘍細胞の処理によって、アポトーシスの細胞死の特徴的な現象であるカスパーゼー3およびPARPの活性型が生じた。
細胞表面Apo2L/TRAILとパーフォリン顆粒の両方が4T1細胞の細胞溶解に必須であるので、可溶性Apo-2L/TRAILタンパク質の添加によって静止NK細胞が「準備されうる」かどうかを試験するためにアッセイを行った。結合した膜およびTNFファミリメンバーの可溶型は、標的細胞への結合の際に差次的な動きを示すために優先する。51Cr放出アッセイを強めるために、4T1細胞のクローン原性能力を、可溶性Apo2L/TRAILおよび静止NK細胞で処理することによって評価した。Cr放出試験にみられるように、25:1の比率で可溶性Apo2L/TRAIL又は静止NK細胞によって個々に処理した4T1細胞はクローン原性能力に関して影響を受けなかったが、可溶性Apo2L/TRAILおよびNK細胞にて同時に処理すると、5日後に観察される4T1細胞のクローンが著しく減少した。活性化NK細胞とともにインキュベートした4T1細胞の場合に、同様なクローン数の減少が観察された。活性化NK細胞の場合、5C2中和抗体の添加によって4T1細胞生存度が保護されたため、4T1細胞の細胞溶解はApo2L/TRAIL活性に厳密に依存していた。
【0106】
HCT116細胞に対する効果を調べるアッセイでは、可溶性Apo2L/TRAILおよび限られた比率の静止NK細胞による処理によって細胞毒性効果が亢進した。したがって、Apo2L/TRAILおよび静止NK細胞の添加によって、HCT116細胞の場合に観察されたように、Apo2L/TRAIL単独によって誘発される死に耐性がある場合以外、あるいはApo2L/TRAILに対する腫瘍細胞感受性が増加されうる腫瘍細胞株が溶解しうると思われる。
活性化NK細胞による4T1細胞の処置により、カスパーゼー3およびPARPが活性化される。また、4T1細胞を静止NK細胞又は可溶性Apo2L/TRAIL、あるいはそれらの併用によって処置した。静止NK細胞による4T1細胞の処置によりPARPの切断が生じないが、可溶性Apo2L/TRAILと静止NK細胞との併用処置によって、切断されたPARPが生じた。これは、静止NK細胞および可溶性Apo2L/TRAILの複合効果がアポトーシスを生じさせたことを示唆する(上記のクローン原性および塩化クロム放出アッセイの所見と一致)。グランザイムBがこの相乗効果又は共同効果において重要なNK細胞成分でありうると思われる。
【0107】
材料の寄託
次の材料をアメリカ培養細胞系統保存機関, 10801 University Blvd., Manassas, VA20110-2209, USA(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
4H6.17.8 HB−12455 1998年1月13日
3F11.39.7 HB−12456 1998年1月13日
4E7.24.3 HB−12454 1998年1月13日
1H5.25.9 HB−12695 1999年4月 1日
4G7.18.8 PTA−99 1999年5月21日
5G11.17.1 HB−12694 1999年4月 1日
3H3.14.5 HB−12534 1998年6月 2日
【0108】
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、35USC122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に後代を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による記載は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。本発明は、ここに呈された実施例によりその範囲が限定されるものではない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】51Cr放出アッセイによって測定した、ヒトNK細胞の活性に対する様々なTLR活性化因子の効果。
【図2A】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。シクロヘキシミドの存在下または非存在下においてポリ(I:C)、R-848またはヒトインターフェロン-αでNK細胞を処理し、Apo2L/TRAILの信号を抽出したRNAにて測定した。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図2B】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。静止細胞溶解物およびポリ(I:C)刺激性NK細胞溶解物ないしは細胞培養物上清を、量的ELISAによってApo2L/TRAILタンパク質の有無を測定した。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図2C】ヒトNK細胞に対するApo2L/TRAILの誘導。それぞれのグラフに示す薬剤にて処置した精製NK細胞についての細胞表面Apo2L/TRAILの染色。太線はアイソタイプ対照を示し、細線はApo2L/TRAIL染色を示す。(3ないしはそれ以上のドナーからの)代表的ドナーの結果を表す。
【図3A】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。50:1比のE:Tで得られた溶解の割合(%)。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図3B】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。精製したNK細胞をポリ(I:C)またはR-848で処理して、示した比率のB16BL10細胞とともにインキュベートした。溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割を中和および非中和の抗Apo2L/TRAIL抗体にて予めインキュベートすることによって測定した。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図3C】活性化NK細胞活性におけるApo2L/TRAILの役割を示すアッセイの結果を示す。R-848で刺激した精製NK細胞を示した比率のHCT116標的細胞とともにインキュベートした。パネルB及びCの溶解アッセイにおけるApo2L/TRAILの役割を中和および非中和の抗Apo2L/TRAIL抗体にて予めインキュベートすることによって測定した。少なくとも3ドナーからのNK細胞にてデータを確認し、5%未満のSDを観察した。
【図4】ヒトApo-2リガンドcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:1)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」はヌクレオチド塩基「T」または「G」を示す。
【図5A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:3)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。ヒトDR4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のそれぞれは、Pan 等, Science, 276:111 (1997)にも報告されている。
【図5B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:3)およびそれから得られるアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。ヒトDR4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のそれぞれは、Pan 等, Science, 276:111 (1997)にも報告されている。
【図6】1998年11月19日公開の国際公報98/51793にあるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図7A】ヒトDR5の転写スプライシング変異体を示す。このDR5スプライシング変異体は1998年8月20日公開の国際公報98/35986にあるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図7B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体を示す。このDR5スプライシング変異体は1998年8月20日公開の国際公報98/35986にあるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図8】図8Aは、B16メラノーマ細胞に対する列挙した薬剤の効果を示し、細胞がApo2L/TRAILに依存して活性化されたNK細胞によって溶解されたことを示唆する。図8Bは、B16細胞を51Crにて標識し、示した比率の精製された静止NK細胞又は刺激されたNK細胞とともに培養したときのアッセイ結果を示す。Apo2L/TRAILの役割は、中和(5C2)又は非中和性(1D1) mAbとともにNK細胞を予めインキュベートすることによって評価した。細胞溶解の割合(%)をプロットし、結果を3つの実験の代表例とする(5%未満のSDが観察される)。図8Bに示されるように、示した細胞株および樹状細胞(DC)から得たプライマリ単球を51Crにて標識し、濃度を変えた可溶性Apo2L/TRAILタンパク質(「sApo2L」と示す)とともにインキュベートした。次いで上清をCr放出について評価した。少なくとも3つの実験において類似の細胞溶解の結果が得られた。
【図9】図9Aは、活性化NK細胞の細胞障害性顆粒が4T1細胞の細胞溶解に必須でありうることを示唆するアッセイ結果の棒線図。静止NK細胞および活性化NK細胞の細胞溶解反応を4T1標的細胞との相対で評価した。活性化NK細胞は、細胞障害性顆粒の役割を評価するために、パーフォリン成熟(コンカナマイシンA)、GraB(Z-AAD-FMK)、PI3K(ワートマニン)、MEK1キナーゼ(PD98059)、S6キナーゼ(ラパマイシン)およびJNK(SP)のインヒビターで処置した。E/T比率は25〜1とし、示される結果は(3ドナー中)代表的な1ドナーのものである。図9Bは、活性化NK細胞が4T1細胞のカスパーゼー3の活性化を誘発しうることを示唆するアッセイ結果を示す。4T1標的細胞を、Apo2L/TRAILタンパク質(100ng/ml)または活性化NK細胞(「ActNK」)にて、30分、1時間又は4時間処置した。E/T比率は10:1であった。4T1細胞の抽出物を、プロカスパーゼー3、切断型カスパーゼー3および切断型PARPについて、SDS-PAGEおよびイムノブロット分析によって分析した。
【図10】PARP切断アッセイの結果を示す。4T1細胞を、Apo2L/TRAIL、静止NK細胞(「NK」)又は活性化NK細胞(「ActNK」)の別々ないしは組み合わせにて処置した。溶解物を、カスパーゼー3活性化因子の誘導因子であるPARPについて分析した。複数のドナーからのNK細胞を用いて、代表的な1ドナーの結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞障害性を亢進する方法。
【請求項2】
前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがApo-2リガンドポリペプチドを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物細胞がウイルスに感染しているないしは細菌感染細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸39から281またはその生物学的に活性な断片を含有してなる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸114から281を含有してなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール(PEG)分子に連結されたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがアゴニストの抗Apo-2リガンドレセプター抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アゴニストの抗体が抗DR4抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アゴニストの抗体が抗DR5抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗DR4抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗DR5抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞がドナー哺乳動物から精製したNK細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞活性化剤が、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-αおよびIFN-βからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記NK細胞活性化剤が、NKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物細胞を有効量のApo-2リガンドレセプターアゴニストおよびNK細胞ないしはNK細胞活性化剤にさらすことを含む、哺乳動物細胞におけるアポトーシスまたは細胞障害性を亢進する方法。
【請求項2】
前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがApo-2リガンドポリペプチドを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物細胞がウイルスに感染しているないしは細菌感染細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸39から281またはその生物学的に活性な断片を含有してなる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが図4に記載のアミノ酸114から281を含有してなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Apo-2リガンドポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール(PEG)分子に連結されたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記Apo-2リガンドレセプターアゴニストがアゴニストの抗Apo-2リガンドレセプター抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アゴニストの抗体が抗DR4抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アゴニストの抗体が抗DR5抗体を含有してなる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗DR4抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗DR5抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞がドナー哺乳動物から精製したNK細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞活性化剤が、Tollレセプター活性化剤、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-αおよびIFN-βからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記NK細胞活性化剤が、NKp30、NKp44、NKG2Dなどの活性化レセプターに対するアゴニスト抗体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−503468(P2008−503468A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516678(P2007−516678)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021117
【国際公開番号】WO2006/009731
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021117
【国際公開番号】WO2006/009731
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
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