説明

ASHRAE用途に適したフィルタ材

ASHRAE用途に使用し得るフィルタ材が記載されている。フィルタ材は繊維ウェブを含み、所望の性能特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はASHRAE用途に一般に使用してよいフィルタ材に関し、より具体的には所望の性能特性を有する繊維ウェブを含むフィルタ材に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ材は、様々な用途において汚染物質を除去するのに使用することができる。フィルタ材は、用途に応じて種々の性能特性を有するように設計してよい。フィルタ材は、暖房、換気、冷房(または冷凍)および空調用途に適用するために、米国冷暖房空調工業会(American Society of Heating,Refrigeration and Air Conditioning Engineers、ASHRAE)によって承認された性能特性を有するように設計することがある。そのようなフィルタ材をASHRAEフィルタ材と呼ぶ。ASHRAEフィルタ材を用いて一般に得られる性能特性とは異なる性能特性(例えば非常に高い効率)を必要とする用途(例えばクリーンルームまたはバイオメディカル用途)に対しては、高性能微粒子エア(HEPA)フィルタ(または高性能フィルタ)を含む他の種類のフィルタが用いられる。
【0003】
フィルタ材は繊維のウェブから形成することができる。繊維ウェブは多孔質構造をもたらし、その多孔質構造は、流体(例えばガス、空気)がフィルタ材を通過して流れることを許容する。流体中に含まれる汚染物質粒子は、繊維ウェブにおいて捕捉され得る。圧力損失、表面積および坪量等のフィルタ材特性は、フィルタ効率およびフィルタを通過する流体流れに対する抵抗を含むフィルタ性能に影響を及ぼす。一般に、フィルタ効率が高くなるほど、流体流れに対する抵抗が大きくなり、抵抗が大きくなるほど、フィルタを横切る所定の流量に対する圧力損失が大きくなる。
【0004】
ASHRAE用途に使用可能であり、かつ高い効率と、フィルタ材を横切る流体流れに対する小さい抵抗とを含む望ましいバランスの特性を有するフィルタ材が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
ASHRAE用途に使用してよいフィルタ材およびそのようなフィルタ材を製造する方法をここで説明する。
【0006】
一の要旨においてフィルタ材を提供する。フィルタ材は繊維ウェブを含む。フィルタ材は少なくとも11.5のガンマ値、1.2m/g未満の表面積、約5cfm/sf〜約250cfm/sfの透過性(または透過係数、permeability)、約10gsm〜約1000gsmの坪量および約0.10mm〜約50.0mmのキャリパー(または厚さ)を有する。
【0007】
一の要旨においてフィルタ材を提供する。フィルタ材は繊維ウェブを含む。フィルタ材は少なくとも10.5のガンマ値、0.5m/g未満の表面積、約5cfm/sf〜約250cfm/sfの透過性、約10gsm〜約1000gsmの坪量および約0.10mm〜約50.0mmのキャリパーを有する。
【0008】
本発明の他の要旨、態様、利点および特徴は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載のフィルタ材をASHRAE用途に使用してよい。フィルタ材は、例えばチョップドストランドグラスファイバーとマイクログラスファイバーとの組み合わせを有する繊維ウェブを含む。繊維ウェブは、合成繊維、バインダー成分および他の添加剤等の追加の成分も含有し得る。以下に更に説明するように、フィルタ材は、小さい繊維表面積および流体流れに対する小さい抵抗と共に高いガンマ値を含む望ましい特性を有する。フィルタ材は、パネルおよびバッグを含む種々のフィルタ要素製品に組み込んでよい。
【0010】
フィルタ材の繊維ウェブ(繊維マットとも呼ぶ)は通常、グラスファイバーを高い割合で含有する。例えば、グラスファイバーは、フィルタ材の総重量の少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%を構成してよい。いくつかの態様において、繊維ウェブは92重量%〜95重量%のグラスファイバーを含有する。特定の態様において、繊維ウェブはグラスファイバーを上述の範囲で含まなくてよく、または全く含まなくてよいことを理解するべきである。
【0011】
繊維ウェブは不織布であってよい。即ち、繊維ウェブは、以下に更に説明するように湿式(wet laid)法等の不織プロセスを用いて作製してよい。
【0012】
上述のように、繊維ウェブはチョップドストランドグラスファイバーとマイクログラスファイバーとの組み合わせを有してよい。チョップドストランドグラスファイバーおよびマイクログラスファイバーは当業者に公知である。当業者は、グラスファイバーがチョップドストランドであるか又はマイクログラスであるかを、観察(例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡)によって決定することができる。チョップドストランドグラスは、マイクログラスファイバーとの化学的な違いを有してもよい。いくつかの場合において、チョップドストランドグラスファイバーは、必要ではないが、マイクログラスファイバーより高含有量のカルシウムまたはナトリウムを含有してよい。例えば、チョップドストランドグラスファイバーは、酸化カルシウムおよびアルミナの含有量が高く、アルカリフリーに近くてよい。マイクログラスファイバーは10〜15%のアルカリ(例えば酸化ナトリウム、酸化マグネシウム)を含有してよく、比較的低い融点および加工温度を有してよい。用語は、グラスファイバーを製造するのに用いられる(1または複数の)技術を指す。そのような技術はグラスファイバーに特定の特性を与える。チョップドストランドグラスファイバーは一般に、ブッシングチップから引き出され、織物の製造と類似した方法で繊維へと切断される。マイクログラスファイバーは、ブッシングチップから引き出され、更に火焔吹き付け法または回転紡糸法に付される。いくつかの場合において、再溶融法を用いて細かい(または細い、fine)マイクログラスファイバーを作製してよい。但し、マイクログラスファイバーは細かくてよく、または粗くて(coarse)よい。チョップドストランドグラスファイバーは、マイクログラスファイバーよりも制御された方法で製造され、その結果、チョップドストランドグラスファイバーは一般に、繊維径および繊維長さにおけるバリエーション(または変動)がマイクログラスファイバーよりも小さいであろう。
【0013】
マイクログラスファイバーは、10.0ミクロン未満等の小さい直径を有し得る。例えば、直径は0.1ミクロン〜約9.0ミクロンであってよく、いくつかの態様において約0.3ミクロン〜約6.5ミクロンであってよい。一の態様において、マイクログラスファイバーは、約3.0ミクロンの平均繊維径を有してよい。もう1つの態様において、マイクログラスファイバーは約3.9ミクロンの平均繊維径を有してよい。他の態様において、マイクログラスファイバーは約0.5ミクロン、約0.6ミクロンまたは約0.65ミクロンの平均繊維径を有してよい。マイクログラスファイバーの平均径分布は一般に対数正規分布である。尤も、マイクログラスファイバーは他の任意の適切な平均径分布(例えばガウス分布)で与えられてよいことを理解することができる。
【0014】
上述のように、マイクログラスファイバーは細かくてよく、または粗くてよい。本明細書において用いる場合、細かいマイクログラスファイバーは直径が1ミクロン未満であり、粗い(coarse)マイクログラスファイバーは直径が1ミクロン以上である。
【0015】
マイクログラスファイバーは、方法のバリエーションの結果として長さがかなり変わることがある。マイクログラスファイバーのアスペクト比(直径に対する長さの比)は概して約100〜10,000の範囲であってよい。いくつかの態様において、マイクログラスファイバーのアスペクト比は約200〜2500の範囲または約300〜600の範囲であってよい。いくつかの態様において、マイクログラスファイバーの平均アスペクト比は約1,000または約300であってよい。上述の寸法は限定的なものでなく、マイクログラスファイバーは他の寸法を有してもよいことを理解するべきである。
【0016】
チョップドストランドグラスファイバーは一般に、マイクログラスファイバーの直径より大きい平均繊維径を有する。いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバーは約5ミクロンより大きい直径を有する。例えば、直径の範囲は約30ミクロンに達してよい。いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバーは約5ミクロン〜約12ミクロンの繊維径を有してよい。一の態様において、チョップドストランドグラスファイバーは約6.5ミクロンの平均繊維径を有してよい。チョップドストランドグラスファイバーの平均径分布は一般に対数正規分布である。チョップドストランドの直径は正規分布に従う傾向にある。しかし、チョップドストランドグラスファイバーは任意の適切な平均径分布(例えばガウス分布)で与えられてよいことを理解することができる。
【0017】
いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバーは約0.125インチ〜約1インチ(例えば、約0.25インチまたは約0.5インチ)の範囲の長さを有してよい。
【0018】
上述の寸法は限定的なものでなく、マイクログラスファイバーは他の寸法を有してもよいことを理解するべきである。
【0019】
いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバーは有機表面仕上げ剤(organic surface finish)を有してよい。そのような表面仕上げ剤は、例えば加工(または処理)の間の繊維の分散を向上させ得る。種々の態様において、表面仕上げ剤にはスターチ、ポリビニルアルコールまたは他の適切な仕上げ剤が含まれてよい。いくつかの場合において、表面仕上げ剤は、製造の間にチョップドストランドグラスファイバーを押し出す際にコーティングとして適用してよい。
【0020】
チョップドストランドグラスファイバーの重量パーセントとマイクログラスファイバーの重量パーセントとの比はフィルタ材に種々の特性をもたらす。一般に、細かいグラスファイバーの割合が増加するとフィルタ材全体の表面積は大きくなるであろう;また、粗いグラスファイバーの割合が低下するとフィルタ材全体の表面積は小さくなるであろう。従って、一般に、マイクログラスファイバーの量と比較してチョップドストランドグラスファイバーの量が増加すると、フィルタ材全体の表面積は小さくなる;また、チョップドストランドグラスファイバーの量と比較してマイクログラスファイバーの量が増加するとフィルタ材の表面積は大きくなる。フィルタ材中のチョップドストランドグラスファイバーの量が増加すると、フィルタ材のプリーツ性(即ち、フィルタのプリーツ付けされる能力)も増大する。
【0021】
フィルタ材中のチョップドストランドグラスファイバーおよびマイクログラスファイバー(例えば粗い及び/又は細かい)の割合は、所望の特性をもたらすように選択される。
【0022】
種々の割合のチョップドストランドグラスファイバーがウェブ中のグラスファイバーに含まれる。いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバーはウェブ中のグラスファイバーの約55重量%未満、グラスファイバーの約40重量%未満またはグラスファイバーの約20重量%未満を構成する。いくつかの場合において、チョップドストランドグラスファイバーはグラスファイバーの約5重量%〜約55重量%を構成する。例えば、チョップドストランドグラスファイバーはグラスファイバーの約5重量%〜約15重量%、グラスファイバーの約8重量%〜約12重量%またはグラスファイバーの約25重量%〜35重量%を構成してよい。
【0023】
加えて、種々の割合のマイクログラスファイバーがウェブ中のグラスファイバーに含まれる。いくつかの態様において、マイクログラスファイバーはグラスファイバーの約45重量%より多くを構成し、グラスファイバーウェブの約60重量%より多くを構成し、またはグラスファイバーの約80重量%より多くを構成する。いくつかの場合において、マイクログラスファイバーはグラスファイバーの約45重量%〜約95重量%を構成する。例えば、マイクログラスファイバーはグラスファイバーの約85重量%〜約95重量%、グラスファイバーの約88重量%〜約92重量%またはグラスファイバーの約65重量%〜75重量%を構成してよい。
【0024】
粗いマイクログラスファイバー、細かいマイクログラスファイバーまたはそれらのマイクログラスファイバーの組み合わせがウェブ中のグラスファイバーに含まれてよい。粗いマイクログラスファイバーに関しては、いくつかの態様において、粗いマイクログラスファイバーはグラスファイバーの約40重量%〜約90重量%を構成する。いくつかの場合において、例えば、粗いマイクログラスファイバーはグラスファイバーの約75重量%〜約90重量%またはグラスファイバーの約60重量%〜約70重量%を構成する。細かいマイクログラスファイバーに関しては、いくつかの態様において、細かいマイクログラスファイバーはグラスファイバーの約0重量%〜約25重量%を構成する。いくつかの場合において、例えば、細かいマイクログラスファイバーはグラスファイバーの約5重量%〜約10重量%またはグラスファイバーの約2重量%〜約12重量%を構成する。
【0025】
いくつかの態様において、5ミクロン以上の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約55重量%未満、グラスファイバーの約40重量%未満またはグラスファイバーの約20重量%未満を構成する。いくつかの場合において、5ミクロン以上の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約5重量%〜約55重量%を構成する。例えば、5ミクロン以上の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約5重量%〜約15重量%、グラスファイバーの約8重量%〜約12重量%またはグラスファイバーの約25重量%〜35重量%を構成してよい。
【0026】
いくつかの態様において、5ミクロン未満の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約45重量%より多く、グラスファイバーの約60重量%より多く又はグラスファイバーの約80重量%より多くを構成する。いくつかの場合において、5ミクロン未満の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約45重量%〜約95重量%を構成する。例えば、5ミクロン未満の繊維径を有するグラスファイバーがグラスファイバーの約85重量%〜約95重量%、グラスファイバーの約88重量%〜約92重量%またはグラスファイバーの約65重量%〜75重量%を構成してよい。
【0027】
フィルタ材は、グラスファイバーに加えて、合成繊維を含む他の成分を含有してもよい。合成繊維は通常、フィルタ材のほんの数重量パーセントを構成する。例えば、合成繊維はフィルタ材の総重量の約25%未満、約15%未満または約5%未満(例えば2%、3%)を構成してよい。開示した範囲外で合成繊維をフィルタ材中に組み込むことも可能であってよいことを理解するべきである。合成繊維は、加工(または処理)の間にウェブ中のグラスファイバーの接着を向上させ得る。合成繊維は、例えばバインダー繊維および/またはステープルファイバーであってよい。
【0028】
合成繊維は通常、任意の適切な組成を有してよい。いくつかの場合において、合成繊維は熱可塑性繊維を含む。合成繊維の限定的でない例として、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびアクリルが挙げられる。他の適切な合成繊維を使用してもよいことを理解するべきである。
【0029】
フィルタ材はバインダーを含有してもよい。バインダーは通常、フィルタ材のほんの数重量パーセントを構成する。例えば、バインダーはフィルタ材の総重量の約10%未満または約5%未満(例えば2%〜5%)を構成してよい。いくつかの態様において、バインダーはフィルタ材の約4重量%であってよい。以下に更に説明するように、バインダーは湿った繊維ウェブの状態の繊維に加えてよい。いくつかの態様において、バインダーは、繊維を被覆し、繊維を互いに接着させて繊維間の接着を容易にするのに用いられる。
【0030】
バインダーは通常、任意の適切な組成を有してよい。いくつかの態様において、バインダーは樹脂ベースである。バインダーは1またはそれより多くの成分の形態であってよい。いくつかの態様において、バインダーは軟質バインダー(soft binder)および硬質バインダー(hard binder)を含む。しかし、全ての態様がこれらの成分(例えば硬質バインダー)の全てを含むとは限らないこと、および他の適切な添加剤をバインダーに組み込んでよいことを理解するべきである。
【0031】
軟質バインダーは当業者に公知であり、一般に比較的低いガラス転移温度を有するバインダーを意味する。いくつかの態様において、軟質バインダーは約15℃未満のガラス転移温度を有してよい。いくつかの態様において、軟質バインダーは約0℃〜約2℃の範囲のガラス転移温度を有するであろう。一の適切な軟質バインダーはアクリルであるが、例えばポリエステル、ポリオレフィンおよびポリウレタン等の他の組成物も適切であり得ることを理解するべきである。軟質バインダーは、存在する場合、バインダーの主成分の1つであってよい。例えば、軟質バインダーはバインダーの総重量の約40%より多く又は約50%より多くを構成してよい。いくつかの態様において、軟質バインダーはバインダーの約50重量%〜約80重量%または約50重量%〜約55重量%を構成してよい。いくつかの場合において、軟質バインダーはバインダー全体を構成してよい。他の態様において、軟質バインダーは存在しない。
【0032】
硬質バインダーは当業者に公知であり、一般に比較的高いガラス転移温度を有するバインダーを意味する。バインダー樹脂において一緒に用いる場合、硬質バインダーは軟質バインダーより高いガラス転移温度を有するであろう。いくつかの場合において、硬質バインダーは約25℃〜約35℃の範囲のガラス転移温度を有するであろう。一の態様において、硬質バインダーは約30℃のガラス転移温度を有するであろう。例えば、硬質バインダーはポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル、スチレン、スチレンアクリルおよび/またはそれらの組み合わせであってよい。他の組成物も適切であり得る。
【0033】
ウェブ中の硬質バインダーの割合は、存在する場合、ウェブ中の軟質バインダーの割合より低くてよい。尤も、他の場合において、硬質バインダーの割合は軟質バインダーの割合より高くてよく、またはほぼ等しくてよい。例えば、硬質バインダーはバインダーの総重量の40%未満または30%未満を構成してよい。例えば、硬質バインダーはバインダーの総重量を基準として約25%〜約35%を構成してよい。いくつかの態様において、バインダー樹脂中の硬質バインダーの割合は約8重量%〜約10重量%である。いくつかの態様において、硬質バインダーは存在しない。
【0034】
上述のように、フィルタ材はフルオロカーボンポリマーを含有してよい。いくつかの態様において、フルオロカーボンポリマー(パーフルオロカーボンとも呼ぶ)は8炭素フルオロカーボンである。一の態様において、用いられるフルオロカーボンポリマーは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むフルオロアクリレート共重合体エマルジョンである。適切なフルオロカーボンの一例はLJ Specialties Limited(英国S42 5UWダービーシャー州チェスターフィールド、ホルムウッド、ホルムウッドインダストリアルパーク、エンタープライズドライブ)製のAsahi Guard AG 955(製品コード#930078)である。適切なフルオロカーボンのもう1つの例はMIC Specialty Chemicals,Inc.(RI 02878ティバートン、ミルストリート134)製のRepearl F−35 Fluorochemicalである。適切なフルオロカーボンの更なる例はHuntsman International,Textile Effects(NC 27265ハイポイント、プレミアドライブ4050)製のPhobol 8195である。他の任意の適切なフルオロカーボンポリマーおよび/またはそれらの組み合わせを、ここで示された点において適切に使用してよいことを理解することができる。
【0035】
いくつかの態様において、フルオロカーボンはフィルタ材の乾燥重量の約1.5%未満または約1.0%未満を構成してよい。いくつかの場合において、フルオロカーボンはフィルタ材の乾燥重量の約0.2%〜約0.75%の範囲であってよい。いくつかの態様において、フィルタ材はポリシロキサンを含有する。ポリシロキサンは、フルオロカーボンと組み合わせて使用する場合、フィルタ材に所望の特性(例えば高ガンマ特性)を付与するのに役立つことがある。いくつかの態様において、ポリシロキサンは多官能性アミノシロキサンであるが、他の適切なシロキサン組成物も可能であり得る。適切なポリシロキサンの一例はHexion Specialty Chemicals(SC 29376ローバック、レイルロードストリート200)製のSynthebond SF−30である。適切なポリシロキサンのもう1つの例はHuntsman International,Textile Effects製のUltratex FMW Silicone Softenerである。
【0036】
いくつかの態様において、ポリシロキサンはフィルタ材の乾燥重量の約1.5%未満、約1.2%未満または約1.0%未満を構成してよい。いくつかの態様において、ポリシロキサンはフィルタ材の乾燥重量の約0.1%より多くであってよい。例えば、ポリシロキサンはフィルタ材の乾燥重量の約0.1重量%〜約1.0重量%またはフィルタ材の乾燥重量の約0.1重量%〜約0.5重量%を構成してよい。
【0037】
フィルタ材は上述のバインダー成分、追加の成分および重量パーセントに限定されないことを理解するべきである。他のバインダー成分、追加の成分および重量パーセントが可能である。
【0038】
上述のバインダー、追加の成分、熱可塑性物質およびガラス成分に加えて、繊維ウェブはとりわけ界面活性剤、カップリング剤、架橋剤等、他の適切な様々の添加剤(通常はほんの数重量パーセント)を含有してよい。
【0039】
繊維ウェブは、フィルタ材をASHRAE用途に特によく適合させる種々の望ましい特性および特徴を有してよい。
【0040】
フィルタ材の表面積は通常1.2m/g未満である。いくつかの態様において、表面積は1.1m/g未満、1.0m/g未満、0.8m/g未満、0.6m/g未満、0.5m/g未満、0.4m/g未満または0.2m/g未満であってよい。一の態様において、表面積は0.1m/g以上であってよい。表面積が上述の上限および下限のいずれかの間であってよいことを理解するべきである。例えば、表面積は0.1m/g〜0.5m/g、0.2m/g〜0.8m/gまたは0.5m/g〜1.2m/gであってよい。本明細書において定められるように、表面積は標準的なBET表面積測定技術を用いて測定される。BET表面積はBattery Council International Standard BCIS−03A「Recommended Battery Materials Specifications Valve Regulated Recombinant Batteries」の第10章に従って測定され、第10章は「Standard Test Method for Surface Area of Recombinant Battery Separator Mat」である。この技術に従って、窒素ガスと共にBET表面分析装置(例えばMicromeritics Gemini II 2370 Surface Area Analyzer)を用いた吸着分析によってBET表面積を測定する;試料の量は3/4インチチューブにおいて0.5〜0.6グラムであり、試料は75℃で最低でも3時間脱気する。
【0041】
そのような表面積は通常、フィルタ材をASHRAE用途に使用するのを可能にする特性に寄与する。そのような表面積は、高効率が要求されるHEPAフィルタ材に必要とされる表面積より小さくてよい。しかし、表面積が小さいと、以下に更に説明するように、フィルタを横切る圧力損失(および空気流れに対する抵抗)を小さくし得る。
【0042】
他のフィルタ材特性が明らかであってよい。いくつかの態様において、例えば、フィルタ材の透過性は約5立方フィート毎分毎平方フィート(cfm/sf)〜約250cfm/sf、約7cfm/sf〜約200cfm/sfまたは約15cfm/sf〜約135cfm/sfの範囲であってよい。本明細書において定められるように、フィルタ材の透過性はTechnical Association of the Pulp and Paper Industry(TAPPI)Method T251に従って測定される。フィルタ材の透過性は流れ抵抗の逆関数であり、Frazier Permeability Testerを用いて測定可能である。Frazier Permeability Testerは、試料を横切る固定された差圧において、単位面積の試料を通過する単位時間当たりの空気体積を測定する。透過性は、0.5インチ水柱の差圧における立方フィート毎分毎平方フィートで表すことができる。
【0043】
いくつかの態様において、例えば、フィルタ材の坪量は約10グラム毎平方メートル(gsm)〜約1000gsm、約25gsm〜約150gsmまたは約55gsm〜約85gsmの範囲であってよい。本明細書において定められるように、フィルタ材の坪量はTAPPI Standard T410に従って測定される。その値は1平方メートル当たりのグラム(またはグラム毎平方メートル)または3,000平方フィート当たりのポンドで表わされる。坪量は一般に、精度が0.1グラムの実験用秤で測定可能である。好ましいサイズは95平方インチの面積である。
【0044】
いくつかの態様において、例えば、7.3ポンド毎平方インチ(psi)で測定したフィルタ材のキャリパーは約0.10mm〜約50.0mm、約0.10mm〜約10.0mm、約0.20mm〜約0.90mmまたは約0.25mm〜約0.50mmの範囲であってよい。本明細書において定められるように、フィルタ材のキャリパーはTAPPI Standard T411に従って測定される。この技術に従って、直径0.63インチ(16.0mm)の圧力フットを有し且つ7.3psi(50kPa)の負荷を与える電動キャリパーゲージTMIゲージ49−70を使用することができる。
【0045】
フィルタ材は他の特性によって更に特徴付けられてよい。透過率(または通過率、penetrationまたはpenetration percentage)はしばしば百分率として表され、下記式で定義される:

Pen=C/C

式中Cはフィルタを通過した後の粒子濃度であり、Cはフィルタを通過する前の粒子濃度である。通常の透過率試験は、ジオクチルフタレート(DOP)粒子を吹き付けてフィルタ材に通すこと、およびフィルタ材を透過する粒子の割合を測定することを含む。本明細書において使用する場合、DOP透過試験は、フィルタ材を通る約5.3cm/秒の面速度において、直径が約0.3ミクロンのDOPエアロゾル粒子にフィルタ材を曝すことを含む。フィルタ効率は下記式で定義される:

100−透過率(%)
【0046】
フィルタを横切る透過率と圧力損失との関係に基づいてフィルタ材を評価することが望ましいことがあるので、フィルタは、ガンマ値と呼ばれる値に従って評価してよい。傾きが急であるほど又はガンマ値が大きいほどフィルタ性能が優れていることを意味する。ガンマ値は下記式によって表される:

ガンマ=(−log(DOP透過率(%)/100)/圧力損失(mmHO))×100
【0047】
フィルタ材を横切る圧力損失(流れ抵抗とも呼ぶ)を、上述のDOP透過試験に基づいて測定する。フィルタ材を横切る圧力損失は概して25.0mmHO未満である。いくつかの態様において、例えば、フィルタ材の圧力損失は約0.5mmHO〜約20.0mmHOまたは約1.0mmHO〜約10.0mmHOの範囲であってよい。圧力損失は、空気流れが5.3センチメートル毎秒の速度で通る間の、フィルタ材を横切る差圧として測定される(標準状態の温度および圧力に対して補正されている)。その値は通常、水柱ミリメートルまたはパスカルとして記録される。
【0048】
上で論じたように、DOP透過率は、フィルタ材を透過する粒子の割合に基づいている。DOP透過率が低くて(即ち効率が高くて)粒子がフィルタ材を透過しにくいと、ガンマが増加する。圧力損失が小さいと(即ちフィルタを横切る流体流れに対する抵抗が小さいと)、ガンマが増加する(これは他の特性が一定のままであると仮定している)。
【0049】
フィルタ材は、特に上述の表面積と組み合わせて考えると、ASHRAE用途に対して非常に高いガンマ値を有する。いくつかの態様において、フィルタ材のガンマ値は10.5より大きく、11.5より大きく又は12より大きい。いくつかの場合において、ガンマ値は12.5より大きく又は13より大きい。いくつかの態様において、例えばガンマ値は10.5〜14、11.5〜13、12.0〜14.0または11.5〜14.0であってよい。いくつかの態様において、ガンマ値は14.0より大きくてよい。本明細書において定められるように、ガンマは、上述および下述のDOP透過試験に関連して説明するように、5.3cm/秒の面速度を受けるフィルタ材の測定に基づいて計算される。
【0050】
本明細書において開示されるDOP透過率は通常、特定のHEPAフィルタ材において認められ得るDOP透過率より大きい。いくつかの態様において、ASHRAEフィルタ材に関して、DOP透過率は75.0%より大きくてよく、50.0%より大きくてよく、25.0%より大きくてよく、15.0%より大きくてよく、10.0%より大きくてよく、1.0%より大きくてよく、0.1%より大きくてよく又は0.03%より大きくてよい。DOP透過率は一般に、フィルタ材におけるグラスファイバーの細かさに関連する。繊維が細かいほど(表面積が大きいほど)DOP透過率は低くなり、一方、繊維が粗いほど(表面積が小さいほど)DOP透過率は高くなるであろう。DOP透過率はASTM Standard D2986に従って測定する。100平方センチメートルの試料ホルダーを有するQ127透過度計を、ろ過効率を測定するのに使用する。直径が0.3マイクロメートルの均一なDOP煙状粒子は5.3cm/秒で試験試料を通過する。試料を通過するDOP粒子の割合を光散乱技術によって測定し、DOP透過率として記録する。
【0051】
フィルタ材は公知技術に基づく方法を用いて製造してよい。上述のように、フィルタ材は不織技術を用いて製造することができる。いくつかの場合において、フィルタ材は湿式加工(または処理)技術を用いて製造する。一般に、フィルタ材がグラスファイバーウェブを含む場合、グラスファイバー(例えばチョップドストランドおよびマイクログラス)を合成繊維と一緒に混合してグラスファイバースラリーをもたらしてよい。例えば、スラリーは水ベースのスラリーであってよい。いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバー、マイクログラスファイバーおよび合成繊維は、一緒に混合するに先立って、種々の保持タンクに別々に保存する。いくつかの態様において、これらの繊維は、一緒に混合する前にパルパーを用いて加工(または処理)する。いくつかの態様において、チョップドストランドグラスファイバー、マイクログラスファイバーおよび合成繊維の組み合わせは、一緒に混合するに先立ってパルパーおよび/または保持タンクを用いて加工(または処理)する。上で論じたように、マイクログラスファイバーには細かいマイクログラスファイバーおよび粗いマイクログラスファイバーが含まれてよい。
【0052】
グラスファイバースラリーを作製するのに適した任意の方法を用いてよいことを理解するべきである。いくつかの場合において、追加の添加剤をスラリーに加えて加工(または処理)を容易にする(または促進させる)。温度を適切な範囲、例えば華氏33度〜華氏100度(例えば華氏50度〜華氏85度)に調節してもよい。いくつかの態様において、スラリーの温度が保持される。いくつかの場合において、温度は能動的に調節しない。
【0053】
いくつかの態様において、常套的な紙製造法と類似した装置が湿式法に用いられ、それにはハイドロパルパー(hydropulper)、成形型(former)またはヘッドボックス、乾燥器および場合によりコンバータが含まれる。例えば、スラリーは1またはそれより多くのパルパーにおいて調製してよい。パルパーにおいてスラリーを適切に混合した後、スラリーをポンプでヘッドボックスに送ってよく、そのヘッドボックスにおいて、スラリーを他のスラリーと混合してよく若しくは混合しなくてよく、または添加剤を加えてよく若しくは加えなくてよい。スラリーは、最終的な繊維濃度が適切な範囲、例えば約0.1重量%〜0.5重量%等になるように追加の水で希釈してもよい。
【0054】
いくつかの場合において、グラスファイバースラリーのpHは要望通りに調節してよい。いくつかの態様において、グラスファイバースラリーのpHは約2〜約4または約2.5〜約3.5の範囲であってよい。いくつかの態様において、グラスファイバースラリーのpHは通常約2.7または約2.8である。いくつかの場合において、グラスファイバースラリーにおける酸性度は、スラリー中のグラスファイバー間のvan der Waals相互作用の増大をもたらし得る。グラスファイバーが例えばHEPAグラスファイバーメディアよりも小さい表面積を有すること原因として、グラスファイバー間のvan der Waals相互作用は、より大きい表面積を有するグラスファイバーと比較して小さい傾向にある。従って、より中性に近いpHのグラスファイバースラリーのvan der Waals相互作用と比較してグラスファイバー間のvan der Waals相互作用を大きくするために、より低いpHのグラスファイバースラリーが供給されることがある。
【0055】
その後、繊維を適切な速度でスクリーンまたはワイヤに集めてよい。スラリーをヘッドボックスに送る前に、スラリーを遠心分離型クリーナーに通して、繊維化されていない(unfiberized)ガラスまたはショットを除去してよい。スラリーは、繊維の分散を更に向上させるためにリファイナーまたはデフレーカー等の追加の装置に通してよく、または通さなくてよい。
【0056】
いくつかの態様において、プロセスはその後、前もって作製したグラスファイバーウェブへのバインダーの導入を含む。いくつかの態様において、グラスファイバーウェブを適切なスクリーンまたはワイヤに送る際に、バインダーに含まれる、個別のエマルジョンの形で存在してよい種々の成分(例えば軟質バインダー、場合により硬質バインダー)を、適切な技術を用いてグラスファイバーウェブに加える。フルオロカーボンを、バインダーと一緒に、またはバインダーから独立してグラスファイバーウェブに適切に加えてもよい。いくつかの場合において、バインダー樹脂の各成分は、他の成分および/またはグラスファイバーウェブと組み合わせるに先立って、エマルジョン状に混合する。フルオロカーボンもまた、バインダーと混合してグラスファイバーウェブに混入するに先立ってエマルジョンとして供給してよい。いくつかの態様において、フルオロカーボンと共にバインダーに含まれる成分は、例えば重力および/または真空(または減圧)を用いて、グラスファイバーウェブを通して引き出して(pulled through)よい。いくつかの態様において、バインダー樹脂に含まれる成分の1つ若しくはそれより多く及び/又はフルオロカーボンは軟水で希釈してよく、グラスファイバーウェブへポンプで送ってよい。
【0057】
いくつかの態様において、バインダーおよびフルオロカーボン成分を加えた後にポリシロキサンを加えてよい。例えば、バインダーおよびフルオロカーボン成分を既にウェブ中に導入した後の下流工程において、ポリシロキサンをグラスファイバーウェブに導入してよい。もうひとつの例において、バインダーおよびフルオロカーボン成分と一緒にポリシロキサンをグラスファイバーウェブに導入してよく、この例において、ポリシロキサンは、繊維ウェブへの添加ポイントの直前に、プロセスの最後に加えられる。
【0058】
バインダー、フルオロカーボンおよびポリシロキサンをグラスファイバーウェブに組み込んだ後に、湿式繊維ウェブを適切に乾燥させてよい。いくつかの態様において、湿式繊維から排水してよい。いくつかの態様において、湿式繊維ウェブは、一連のドラム乾燥機に通して適切な温度(例えば華氏約275度〜325度、または乾燥に適した他の任意の温度)で乾燥させてよい。いくつかの場合に関して、通常の乾燥時間は、複合繊維の水分含有量が望み通りになるまで様々であってよい。いくつかの態様において、湿式繊維ウェブの乾燥は赤外線ヒーターを用いて行ってよい。いくつかの場合において、乾燥は、繊維ウェブを硬化させるのに役立つであろう。加えて、乾燥した繊維ウェブは、下流のフィルタ材処理(または加工)のために適切に巻き取ってよい。
【0059】
種々のグラスファイバーウェブ層を所望の特性に基づいて組み合わせてフィルタ材を製造してよい。例えば、いくつかの態様において、比較的粗い前置フィルタ(またはプレフィルタ)のファイバーグラスウェブを、比較的細かいファイバーグラスウェブと平行して組み立てて多相(例えば2相)フィルタ材を形成してよい。多相繊維メディアは適切な方法で形成してよい。一例として、フィルタ材は湿式法で製造してよく、その方法において、グラスファイバースラリー(例えば水等の水性溶媒中のグラスファイバー)を含有する第1分散物(例えばパルプ)を、紙製造装置(例えば長網抄紙機(またはフォードリニア)またはロトフォーマー)のワイヤコンベア上に適用し、第1層を形成する。その後、別のグラスファイバースラリー(例えば水等の水性溶媒中のグラスファイバー)を含有する第2分散物(例えば別のパルプ)を第1層の上に適用する。上述のプロセスの間、繊維の第1および第2分散物に真空を連続的に適用して繊維から溶媒を除去し、それにより第1相および第2相を有するフィルタ材が得られる。その後、形成したフィルタ材を乾燥させる。フィルタ材は、各グラスファイバーウェブの成分に基づいて適切に調整してよいだけでなく、適切な組み合わせにおいて種々の特性を有する複数のグラスファイバーウェブを用いる効果に従って適切に調整してもよいことを理解することができる。
【0060】
形成後、種々の公知技術に従ってフィルタ材を更に加工(または処理)してよい。例えば、フィルタ材は、プリーツを付けてプリーツフィルタ要素に使用してよい。いくつかの態様において、フィルタ材またはフィルタ材の種々の層は、互いに離れた適切な間隔の距離に折り線を形成し、その折り線によりフィルタ材を折り曲げることによって適切にプリーツを付けてよい。任意の適切なプリーツ付け技術を用いてよいことを理解するべきである。
【0061】
フィルタ材がグラスファイバーウェブに加えて他の部材を含んでよいことを理解するべきである。いくつかの態様において、フィルタ材は1つより多くのグラスファイバーウェブを含んでよい。いくつかの態様において、更なる加工(または処理)は、1つまたはそれより多くの構造的特徴および/または補強要素の組み込みを含む。(1または複数の)グラスファイバーウェブはポリマーメッシュおよび/または金属メッシュ等の追加の構造的特徴と組み合わせてよい。例えば、スクリーンバッキング(またはスクリーン状裏材、screen backing)をフィルタ材に配置して更なる補強を提供してよい。いくつかの場合において、スクリーンバッキングはプリーツ構造を保持するのに役立ち得る。例えば、スクリーンバッキングはエキスパンドメタルワイヤまたは押し出しプラスチックメッシュであってよい。
【0062】
フィルタ材は、ASHRAEフィルタ材用途を含む種々の用途で使用するのに適した種々のフィルタ要素に組み込んでよい。フィルタ材は一般に、任意の空気ろ過用途に使用してよい。例えば、フィルタ材は加熱および空調ダクトに使用してよい。フィルタ材は、例えば高効率フィルタ用途(例えばHEPA)のための前置フィルタとして機能する等、前置フィルタとして他のフィルタと組み合わせて使用してもよい。フィルタ要素は、バグフィルタおよびパネルフィルタを含む当該技術分野において公知の任意の適切な構造を有してよい。
【0063】
いくつかの場合において、フィルタ要素は、フィルタ材の周りに配置してよいハウジングを有する。ハウジングは種々の構造を有し得、その構造は意図する用途によって様々である。いくつかの態様において、ハウジングは、フィルタ材の外辺の周りに配置されるフレームから形成してよい。例えば、フレームは外辺の周りに熱シールしてよい。いくつかの場合において、フレームは、略長方形のフィルタ材の4辺全てを囲む略長方形の構造を有する。フレームは、例えばカードボード、金属、ポリマーまたは適切な材料の任意の組み合わせを含む種々の材料から形成してよい。フィルタ要素は、当該技術分野において公知の他の種々の特徴、例えばフレームに対してフィルタ材を固定するための固定要素、スペーサーまたは他の任意の適切な特徴等を有してもよい。
【0064】
上述のように、いくつかの態様において、フィルタ材はバグ(またはポケット)フィルタ要素に組み込むことができる。バグフィルタ要素は、2つのフィルタ材を一緒に置き(または1つのフィルタ材を半分に折り)、3辺(または折り畳んだ場合には2辺)を互いに接合して1辺のみが開いたままになるようにし、それによりフィルタ内部にポケットを形成することによって作製してよい。いくつかの態様において、複数のフィルタポケットをフレームに取り付けてフィルタ要素を形成してよい。各ポケットは、開口端がフレーム内に存在し、従って各ポケットへの空気流れが可能になるように設けてよい。いくつかの態様において、フレームは、各ポケット内に広がって各ポケットを保持する長方形リングを有してよい。フレームが実質上任意の構造を有し得、当該技術分野において公知の種々の接合技術を、ポケットをフレームにつなぐのに使用してよいことを理解するべきである。更に、フレームは任意の数のポケット、例えば6〜10個等のポケットを有してよく、このことはバグフィルタに関して共通である。
【0065】
いくつかの態様において、バグフィルタは、バグフィルタ内に設けられて互いに離れた間隔の距離でフィルタの対向する側壁を保持するように構成される任意の数のスペーサーを有してよい。スペーサーは、スレッド(thread)または側壁間に延びる他の任意の構成要素であり得る。バグフィルタまたはポケットフィルタと共に使用される当該技術分野において公知の種々の特徴を、本明細書において開示されるフィルタ材に組み込み得ることを理解することができる。
【0066】
フィルタ材およびフィルタ要素が種々の異なる構造を有してよく、特定の構造はフィルタ材およびフィルタ要素を使用する用途によって決まることを理解するべきである。いくつかの場合において、フィルタ材に基材を加えてよい。
【0067】
フィルタ要素は、フィルタ材に関連して上で述べた特性値と同じ特性値を有してよい。例えば、上述のガンマ値はフィルタ要素においても認められ得る。
【0068】
使用している間、流体(例えば空気)がフィルタ材を通って流れる際に、フィルタ材は繊維ウェブ上で汚染物質粒子を機械的に捕捉する。フィルタ材は、汚染物質の捕捉を向上させるために帯電させる必要がない。従って、いくつかの態様において、フィルタ材は帯電させない。尤も、いくつかの態様において、フィルタ材を帯電させてよい。
【0069】
いくつかの態様において、フィルタ材は水放出特性を有してよい。他の態様において、フィルタ材は水放出特性を有しない。
【実施例】
【0070】
以下の限定的でない実施例により、本明細書において論じた要旨に従って作製したASHRAE用途に適したフィルタ材を説明する。
【0071】
[実施例1]
チョップドストランドグラスファイバー(繊維ウェブの8重量%)、マイクログラスファイバー(繊維ウェブの89重量%)およびポリビニルアルコール繊維(繊維ウェブの3重量%)を、水と共に個別のパルパーに供給し、各々の保持タンクに移した。次いで、チョップドストランドグラスファイバー、マイクログラスファイバーおよびポリビニルアルコール繊維を一緒に混合してグラスファイバースラリーを形成した。軟水で希釈したアクリル(軟質バインダー)、ポリアクリル酸(硬質バインダー)およびフルオロアクリレート共重合体の個別のエマルジョン(または乳濁液)を作製し、保持タンクに保存した。グラスファイバースラリーをキャリアワイヤ(carrier wire)上に配置し、次いで、重力および真空に付してスラリーから水を排出させ、それによりグラスファイバーウェブを形成した。その後、アクリル、ポリアクリル酸およびフルオロアクリレート共重合体のエマルジョンをポンプでグラスファイバーウェブに通すための領域に向かって、グラスファイバーウェブを移動させた。アクリル、ポリアクリル酸およびフルオロアクリレート共重合体のエマルジョンの各々をろ過し、同じ供給ラインでグラスファイバーウェブに向かってポンプで送った。次いで、軟水で希釈したポリシロキサンを、軟質バインダー、硬質バインダーおよびフルオロアクリレート共重合体と同じ供給ラインで(しかしそれら他の成分の後のラインの更に下流で)加えた。次いで、バインダー、フルオロアクリレート共重合体およびポリシロキサンを、重力および真空を用いて、グラスファイバーウェブを通して引き出し(pulled through)、その結果、グラスファイバーウェブ全体にわたるバインダー樹脂および他の成分の比較的均一な分布が形成された。その後、グラスファイバーウェブをドライヤーシリンダーおよび赤外線ヒーターで乾燥させ、更なる試験および加工(または処理)のために巻き取った。
【0072】
この実施例において、DOP透過率は、他の実施例と比較して比較的細かいグラスファイバーを使用したことに基づいて16.2%に保持された。フィルタ材を横切る67Paの圧力損失が測定された。ガンマ値は11.5と測定された。坪量は67g/mと測定された。フィルタ材の厚さは0.52mmと測定された。7.3psiにおけるフィルタ材のキャリパー厚さは0.39と測定された。BET表面積は0.70m/gと測定された。
【0073】
[実施例2]
フィルタ材は、粗いグラスファイバーを実施例1と比較して高い割合で用いたことに基づいてDOP透過率が34.0%に保持されたことを除いて、実施例1と同様の方法で製造した。フィルタ材を横切る38Paの圧力損失が測定された。ガンマ値は12.1と測定された。坪量は68g/mと測定された。フィルタ材の厚さは0.57mmと測定された。7.3psiにおけるフィルタ材のキャリパー厚さは0.42と測定された。
【0074】
[実施例3]
フィルタ材は、粗いグラスファイバーを実施例1および2と比較して高い割合で用いたことに基づいてDOP透過率が50.8%に保持されたことを除いて、実施例1および2と同様の方法で製造した。フィルタ材を横切る23Paの圧力損失が測定された。ガンマ値は12.4と測定された。坪量は67g/mと測定された。フィルタ材の厚さは0.60mmと測定された。7.3psiにおけるフィルタ材のキャリパー厚さは0.45と測定された。
【0075】
[実施例4]
フィルタ材は、粗いグラスファイバーを実施例1、2および3と比較して高い割合で用いたことに基づいてDOP透過率が75.6%に保持されたことを除いて、実施例1、2および3と同様の方法で製造した。フィルタ材を横切る11Paの圧力損失が測定された。ガンマ値は10.8と測定された。坪量は67g/mと測定された。フィルタ材の厚さは0.60mmと測定された。7.3psiにおけるフィルタ材のキャリパー厚さは0.43と測定された。BET表面積は0.31m/gと測定された。
【0076】
[実施例5]
フィルタ材は、チョップドストランド、粗いマイクロファイバーグラスおよびPVOH繊維を一緒にパルプにした(またはパルプ化した)ことを除いて、前述の実施例と類似した方法で製造した。細かいマイクロファイバーは別にパルプ化し、異なる保持チェストに送った。加えて、飽和混合(saturant mix)に用いた水は軟水化しなかった。使用した繊維ブレンドは、28重量%のチョップドストランド、3重量%のポリビニルアルコール繊維および69重量%のマイクロファイバーのグラスファイバーウェブであった。特性は、DOP透過率が34.8%に保持され、フィルタ材を横切る34Paの圧力損失が測定された点で、実施例2と類似していた。ガンマ値は13.1と計算された。坪量は77g/mと測定された。フィルタ材のキャリパー厚さは7.3psiにおいて0.39mmと測定された。BET表面積は0.59m/gと測定された。
【0077】
本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの要旨を上述のように説明したので、種々の別法、変更および改良が当業者によって容易に行われるであろうことが理解されるべきである。そのような別法、変更および改良は、本明細書の開示事項の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内であることが意図される。従って、上述の詳細な説明および図面は例示を目的とするのみである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブを含むフィルタ材であって、前記フィルタ材が少なくとも11.5のガンマ値、1.2m/g未満の表面積、約5cfm/sf〜約250cfm/sfの透過性、約10gsm〜約1000gsmの坪量および約0.10mm〜約50.0mmのキャリパーを有する、フィルタ材。
【請求項2】
前記繊維ウェブがグラスファイバーウェブを含む、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項3】
前記フィルタ材の表面積が0.5m/gと1.2m/gとの間である、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項4】
前記グラスファイバーウェブがグラスファイバーを含有し、グラスファイバーの重量パーセントが前記繊維ウェブの総重量の少なくとも90%である、請求項2に記載のフィルタ材。
【請求項5】
前記グラスファイバーウェブがチョップドストランドグラスファイバーおよびマイクログラスファイバーを含有する、請求項4に記載のフィルタ材。
【請求項6】
前記チョップドストランドグラスファイバーが前記グラスファイバーの約55重量%未満を構成する、請求項5に記載のフィルタ材。
【請求項7】
前記マイクログラスファイバーが前記グラスファイバーの約45重量%より多くを構成する、請求項5に記載のフィルタ材。
【請求項8】
前記マイクログラスファイバーが細かいマイクログラスファイバーおよび粗いマイクログラスファイバーを含む、請求項5に記載のフィルタ材。
【請求項9】
前記細かいマイクログラスファイバーが前記グラスファイバーの約25重量%未満を構成する、請求項8に記載のフィルタ材。
【請求項10】
前記粗いマイクログラスファイバーが前記グラスファイバーの約40重量%〜約90重量%を構成する、請求項8に記載のフィルタ材。
【請求項11】
前記繊維ウェブが合成繊維を含有し、該合成繊維は前記繊維ウェブの約5重量%未満である、請求項1のフィルタ材。
【請求項12】
前記繊維ウェブがバインダーを含有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項13】
前記バインダーが軟質バインダーおよび硬質バインダーを含む、請求項12に記載のフィルタ材。
【請求項14】
前記フィルタ材が少なくとも12.0のガンマ値を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項15】
前記フィルタ材が少なくとも12.5のガンマ値を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項16】
前記フィルタ材が11.5〜14のガンマ値を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項17】
前記フィルタ材が約10m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項18】
前記フィルタ材が約0.6m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項19】
前記フィルタ材が約0.1m/gと約1.2m/gとの間の表面積を有する、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項20】
前記フィルタ材のDOP透過率が約15%より大きい、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項21】
前記フィルタ材の透過性が約15cfm/sf〜約135cfm/sfである、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項22】
前記フィルタ材の圧力損失が約0.2mmHO〜約20mmHOである、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項23】
フィルタ材の坪量が約55gsm〜約85gsmである、請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項24】
請求項1に記載のフィルタ材を含むフィルタ要素。
【請求項25】
前記フィルタ要素がバグフィルタ要素である、請求項24に記載のフィルタ要素。
【請求項26】
前記フィルタ要素がパネルフィルタ要素である、請求項24に記載のフィルタ要素。
【請求項27】
繊維ウェブを含むフィルタ材であって、前記フィルタ材が少なくとも10.5のガンマ値、0.5m/g未満の表面積、約5cfm/sf〜約250cfm/sfの透過性、約10gsm〜約1000gsmの坪量および約0.10mm〜約50.0mmのキャリパーを有する、フィルタ材。
【請求項28】
前記繊維ウェブがグラスファイバーウェブを含む、請求項27に記載のフィルタ材。
【請求項29】
前記フィルタ材が0.1m/gと0.5m/gとの間の表面積を有する、請求項27に記載のフィルタ材。

【公表番号】特表2012−518527(P2012−518527A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551075(P2011−551075)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/000537
【国際公開番号】WO2010/098841
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(501475963)ホリングワース・アンド・ボーズ・カンパニー (5)
【Fターム(参考)】