説明

ATM網におけるAISセル発生方法

【課題】 ATM網おいて物理レイヤ故障を検出してからAISセルの発生を迅速に行うことができるAISセル発生方法を提供する。
【解決手段】 物理レイヤ終端部10内で、物理レイヤの故障を検出した際、その故障情報をネットワーク装置内の主信号セル流内の空きセルにマッピングし、その空きセル内にマッピングされた故障情報に基づいて、AISセルを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)で情報の伝送が行われるネットワークにおけるOAM(Operation,Administration andMaintenance:保守運用管理)機能の一つである障害検出時のAIS(Alarm Indication Signal :警報表示信号)セルの送出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ATMネットワークを構成し、物理レイヤを終端する装置(交換機、伝送装置等)において、入力信号断やフレーム同期外れ等の物理レイヤ故障を検出したとき、図8に示すように、故障原因や故障箇所等の警報情報をAISセルを使って下流の装置に対して通知ようになっている。AISセルは、ネットワークの保守・運用機能としてITU(InternationalTelecommunication Union :国際電気通信連合)で標準化されているいくつかのOAMセルの1つであり、図9に示すようなセルフォーマットが規定されている。
【0003】例えば、ATM伝送の一形態としてITUで標準化されているSDH(Synchronous Digital Hierachy:同期デジタル・ハイアラーキ)ベースの伝送では、物理レイヤのインタフェース構造としてSDHが規定されている。この場合、主な物理レイヤ故障として図1010に示すようなものがある。そして、交換機や伝送装置のような物理レイヤを終端する装置でこのような物理レイヤ故障を検出した場合、図10に例を示したようなこの故障原因に予め割り振られた符号が、図9に示すようなAISセルのペイロード内の故障種別のフィールドに書き込まれ、また、故障個所のフィールドに障害を検出した装置に予め割り振られた符号が、図9に示すようなAISセルのペイロード内の故障個所のフィールドに書き込まれたAISセルによって下流装置に通知される。
【0004】ここで、図10に示した故障原因は一例であり、装置構成により項目が異なる可能性がある。また、故障原因に割り振った符号、“a”、“b”、“c”…も一例である。
【0005】ここで、符号の割振りについては現状では標準化されていないが、現在検討されている。そして、下流装置、又はユーザ端末では、このAISセル受信し、AISセルのペイロード内のこれらの内容識別することによって、上流のどの装置でどのような障害が起こったかのかを検出することができるようになっている。
【0006】また、AISセルの具体的な送出方法については標準化されていないが、物理レイヤ故障をATMレイヤのOAMセルによって後段装置に伝達するためには、物理レイヤからATMレイヤに対して故障情報の伝達が必要になり、従来では、ソフトウェアを介して装置制御部で発生を指示する方法が考えられていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のAISセル発生方法では、物理レイヤ故障の検出情報を、装置を監視する制御部で収集し、この情報を元に制御部からAISセル送出部に対して指示することによって、AISセルの送出をするものであるが、このようなソフトウェアを介在させる方法の場合、障害検出からAISセル送出までに時間がかかるという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係るATM網におけるAISセル発生方法は、ATM網における物理レイヤを終端する交換機や伝送装置などのネットワーク装置において物理レイヤの終端処理を行う物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際に発生させるAISセルの発生方法において、物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際、その故障情報をネットワーク装置内の主信号セル流内の空きセルにマッピングし、その空きセル内にマッピングされた故障情報に基づいて、AISセルを発生させるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明の背景となるOAMセルの処理について説明する。ここでは、物理レイヤの伝送フレームとして、SDHを使用する場合について説明する。SDHベースの伝送の場合、ATMセルはSTM−n(SynchronousTransport Module-n:同期トランスポート・モジュールn、n=0,1,4,16)フレームに収容されて転送されるものである。例として、図6R>6に、156Mbit/s伝送において使用されるSTM−1フレームにATMセルを収容する方法を示す。
【0010】また、図7(a)に示すように交換機や伝送装置のような物理レイヤを終端する装置では、転送されてきた信号が入力されるインタフェース部とATMセルを各方路に振り分けるスイッチ部分が主な構成であり、インタフェース部は図7(b)に示すように物理レイヤ処理部とOAMセル処理部を含む各種セル処理を行うATMレイヤ処理部によって構成されている。
【0011】そして、SDHベース伝送の場合、この物理レイヤ処理部では、物理レイヤ終端処理として、図6に示したような、RSOH(Regenerater Section Overhead:中継器セクションオーバーヘッド)、MSOH(Multiplexer Section Overhead:多重セクションオーバーヘッド)からなるSOH(Section Overhead :セクションオーバーヘッド),POH(Path Overhead :パスオーバーヘッド)と呼ばれるオーバーヘッド部分を終端し、更にセルの同期検出を行うことによって、フレームに多重化されているセルを取り出す。ここで、RSOHは物理レイヤにおけるOAMの階層の中継器セクションレベルにおいて管理され、MSOHは物理レイヤにおけるOAMの階層のデジタル・セクションレベルにおいて管理され、POHは物理レイヤにおけるOAMの階層のトランスミッション・パス・レベルにおいて管理されるものである。
【0012】さらに、ここで示す、OAMセルは、さらに上位のATMレイヤにおけるOAM機能を実現するATMセルであり、ATMレイヤは、VP(Virtual Path)、VC(Virtual Channel )の2階層から構成される。AISセルもVPレイヤを管理するVP−AISセル、VCレイヤを管理するVC−AISセルに分類され、装置構成によって物理レイヤ故障を検出したとき、VP−AISセル、VC−AISセルのいずれかが挿入される。
【0013】そして、フレームより終端されたセルは、OAMセルの挿入/検出処理等のVPあるいはVCレイヤでのATMレイヤ処理をした後、スイッチ部に出力され、セル単位に各方路に振り分けられ、スイッチに振り分けられたセルは、再びSDHフレームへ収容された後、次装置に伝送される。本発明は、幾つかの種類が規定されているOAMセルの内、AISセルの発生及びその挿入についてのものである。
【0014】実施の形態1.まず、この実施の形態の概要について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るAISセル発生方法の概要を説明するためのブロック図である。図において、10は物理レイヤ終端部、11はAISセル送出部である。まず、物理レイヤ終端部10では物理レイヤ故障を検出したとき、この故障種別情報を空セルにマッピングして出力する。ATMセルはヘッダ(5バイト)+ペイロード(48バイト)の53バイトのセル長が規定されているため、伝送路上では53バイトのセルが伝送されるが、装置内ではスイッチング用のタグを付加する等の装置内で必要となる情報を付加するために、装置独自のヘッダに変換することが一般に行われている。
【0015】従って、この装置内でのヘッダ領域に故障種別情報をマッピングする領域を確保することによって、空セルのヘッダ領域を使って故障種別情報を伝達する。又は、空セルの未使用領域であるペイロードの一部を使って故障種別情報を伝達することもできる。SDHベースの伝送の場合、物理レイヤの主な故障検出には図1010に示すような種類の項目がある。
【0016】そして、AISセル送出部11ではこの空セルを検出し、故障種別情報からAISセルの組み立てを行う。また、AISセルには故障箇所情報もマッピングされる。この故障箇所情報は障害を検出した装置、さらには装置内の各構成部分を識別するための識別子であり、予め装置に対して固有の番号を割り振られたもので、ATMセル送出部11に記憶させておくものである。
【0017】また、物理レイヤ故障時には、上位のATMレイヤの処理はすべて処理できない。つまり、SDHベースの伝送の場合、物理レイヤ障害の検出されたSDHフレームに収容されているすべてのセルが認識できなくなるため、ここでサービスされているすべてのコネクションに対してAISセルを送出しなければならない。従って、AISセル送出部11ではここでサービスしているすべてのコネクションを認識している必要があり、これらのコネクションのVPI(Virtual PathIdentifier :仮想パス識別子),VCI(Virtual Channel Identifier :仮想チャネル識別子)に対応するAISセルを送出する必要がある。また、送出の周期は、各コネクションに対して約1秒周期で送出することがITUで規定されている。
【0018】次に、この実施の形態の具体例について説明する。図2はこの実施の形態の具体例を説明するためのブロック図である。この実施の形態は、ATMネットワークにおけるSDHベース伝送時の交換機や伝送装置のインタフェース機能の一部となっており、図2に示すように物理レイヤ終端部10とAISセル送出部11より構成されている。図において、20はSOH終端部、21はPOH終端部、22はセル同期処理部、23はセル処理部、24はセルバッファ、25は故障種別判定部、26は故障種別情報生成部、27は空きセル生成部、28は第1セレクタ、30は物理レイヤ故障検出部、31は故障個所情報テーブル、32はAISセル挿入タイミング制御部、33はサービスコネクションテーブル、34はAISセル挿入部である。
【0019】次に、この実施の形態の具体例の動作について説明する。まず、伝送路を転送されてきた信号は、交換機や伝送装置のインタフェース部の物理レイヤ終端部10に入力される。ここで、物理レイヤ終端部10の動作の説明として、最初に物理レイヤでの故障が検出されない場合の通常の動作を説明する。
【0020】そして、物理レイヤ終端部10に入力されたATMセルは、SOH終端部20、POH終端部21でそれぞれSOH,POHが終端され、更にセル同期処理部22においてセル同期が検出される。そして、セル同期処理部22でセル同期が確立されたセルは、セル処理部23に入力され、セルのヘッダの誤り訂正、ペイロードのデスクランブル処理が行われた後、セルバッファ24に入力される。
【0021】ここで、セルバッファ24には、セル同期処理部22でセル同期が確立され、セル処理部23でセルヘッダで誤りが検出されなかったセル、あるいは誤りが訂正された有効なセルのみが書き込まれる。ただし、空セルは、書き込まれない。また、セルバッファ24からは、バッファ内にセルが存在する場合には、セルが出力されるが、バッファ内にセルがない場合には、空セル生成部27より空セルが出力される。
【0022】そして、セルバッファ24の内部にセルが存在するか、存在しないかのバッファ蓄積情報が空セル生成部27、及び第1セレクタ28に出力され、空セル生成部27はこのバッファ蓄積情報を基に空セルを出力する。また、空セル生成部27から出力される空セルには、図1に示すように故障情報を搭載する領域が確保されており、故障が検出されない場合には、図10に示すような故障種別の内の“故障なし”を示す符号“a”が搭載される。そして、第1セレクタ28ではセルバッファ24からのバッファ蓄積情報を基にセルバッファ24と空セル生成部27の出力を選択して出力する。
【0023】一方、物理レイヤ終端部10に信号入力され、SOH終端部20、POH終端部21、セル同期処理部22において、図10に示すような故障が検出がされた場合、それぞれのブロックより検出された故障情報は故障種別判定部25に入力され、物理レイヤでの故障種別が特定される。
【0024】ここで、図10に示す物理レイヤ故障内容(2)〜(7)は、この順序でより低位なレベルで検出されるものであり、低位レベルの故障はこれより高いレベルの故障を引き起こす。たとえば、(2)の入力信号断の故障が検出された場合、時間的なずれは生じるが、結果として(3)〜(7)の故障も検出される。従って、故障内容(2)〜(7)の内、複数の故障が検出された場合、故障原因は一番低位レベルの故障が物理レイヤ故障として、特定される。
【0025】そして、故障種別判定部25は、このような優先処理を行うことによって、物理レイヤ故障の特定を行い、故障種別判定部25で特定された故障情報は、故障種別情報生成部26で、図10に示すような符号(図10に示す符号“b”〜“g”のいずれか)に変換され、空セル生成部27に出力される。そして、空セル生成部27では、空セルに故障種別情報を搭載し、第1セレタタ28に出力する。そして、物理レイヤ故障が検出された場合には、いずれの故障の場合にも復帰するまでの間、セル同期が確立しないため、セルバッファ24にセルが入力されない。従って、故障が検出されている間はこの故障種別情報が搭載された空セルが物理レイヤ終端部10の出力情報としてAISセル送出部11に出力される。
【0026】そして、AISセル送出部11に入力されたATMセルは、物理レイヤ故障検出部30で空セルを検出し、空セルに搭載されている故障種別情報を識別する。そして、故障種別情報が図10に示すような故障種別の内の“故障なし”を示す符号“a”以外の符号が確認された場合、物理レイヤ終端部10で故障が検出されたことを意味するため、AISセル挿入部34に対して故障種別情報を出力すると同時にAISセル挿入タイミング制御部32に対してAISセル発生トリガ信号を出力する。
【0027】そして、AISセル挿入タイミング制御部32では、物理レイヤ故障検出部30からのAISセル発生トリガ信号に基づいて、AISセル挿入部34に対してAIS挿入タイミング信号とAISセルのヘッダ情報を出力する。ここで、AISセルは、このインタフェース上でサービスしているコネクションのすべてに対して、図4に示すように約1秒周期で出力される必要があるため、AISセル挿入タイミング制御部32はサービスコネクションテーブル33からサービス中のコネクション情報を参照し、各コネクションに対して1秒周期の挿入タイミングと、各コネクションに対応するAISセルのヘッダ情報をAISセル挿入部34に対して出力する。
【0028】そして、AISセル挿入部34では、AISセル挿入タイミング制御部32からのAISセル挿入タイミング信号に基づいて、主信号セル流内の空セルのヘッダ、及びペイロードの内容を変更することによってAISセルを生成する。
【0029】ここで、AISセルのフォーマットは図9に示すようになっており、AISセルのペイロードには、AISセルに対する固有値であるOAM種別ビット(=“0001”)、機能種別ビット(=“0000”)と、物理レイヤ故障検出部30から入力される故障種別情報と、故障箇所情報テーブル31から入力される故障箇所情報が搭載される。更にペイロードに対して、CRC(Cyclic Redundancy Check :巡回冗長検査)演算され、CRC符号が搭載された後、AISセルとして出力される。
【0030】次に、AISセル送出部11のAISセル挿入部34について説明する。図3は、AISセル挿入部34の構成を示すブロック図である。図において、40は第2セレクタ、41はセレクタ制御部、42はCRC演算部である。
【0031】次に、AISセル挿入部34の動作について説明する。まず第2セレクタ40は、主信号流を流れる空セルに対して、AISセルにそれぞれの情報(ヘッダ情報、OAM/機能種別ビット、故障種別情報、故障箇所情報)を搭載する位置で切替えを行うことによってAISセルの生成を行う。また、第2セレクタ40の切替制御は、セレクタ制御部41より行う。
【0032】そして、セレクタ制御部41は、AISセル挿入タイミング制御部32からAISセル挿入タイミング信号がないセル時間には、主信号セル流のセルを通過させるように第2セレクタ40を切替える。そして、第2セレクタ40から出力されたAISセルは、CRC演算部42においてペイロードに対するCRC演算が行われる。
【0033】そして、第3セレクタ43は、通常AISセルを通過させる側を選択されており、ペイロードのCRCの演算結果の挿入位置でCRC演算部42の出力を選択するように切替わることによってAISセルのペイロードの定められた位置にCRC符号を搭載する。このように、図9に示すようなAISセルのフォーマットに基づいて、主信号セル流に対してそれぞれの情報を挿入する位置で第2セレクタ40を切替えることによってAISセルの生成を行うようになっている。
【0034】この実施の形態では、物理レイヤ終端部10で検出した物理レイヤ故障の故障種別情報を、主信号セル流内の空きセルに搭載して転送することによってAISセル送出部11に故障情報を伝えることが可能となる。これによって、物理レイヤ故障を検出してからAISセルの発生において、ソフトウェア等の手段を介在することなく行えるため、より迅速にAISセルの発生が行えることになる。
【0035】また、物理レイヤ終端部10とAISセル送出部11の間で直接に制御信号をやり取りする必要がないため、物理レイヤ終端部10とAISセル送出部11間の信号のやり取りのタイミングを考える必要もなく、相互の接続を簡素にすることが可能となる。このことは、物理レイヤ終端部10とAISセル送出部11をそれぞれ別のLSIで実現化するような場合、LSI間の信号を設定する必要が無いため、ピン数の削減が可能となる。
【0036】また、物理レイヤ故障時には、物理レイヤ終端部10からAISセル送出部11への主信号上には空セルしか転送されておらず、有効なユーザーセルは転送されていないため、確実に空セルによって故障情報の転送が可能となる。したがって、ユーザセルの転送されない帯域を有効利用できる。
【0037】実施の形態2.実施の形態1では、物理レイヤ故障種別情報を空きセルにマッピングすることによって、AISセル送出部11に転送する方法について示したが、この実施の形態では、装置内で故障情報を転送する特殊なセルを定義するようにしたものである。この実施の形態の物理レイヤ終端部10では、物理レイヤ故障を検出した場合、故障種別情報をマッピングした故障通知セルを挿入し、AISセル送出部11に対して故障情報を伝達するようになっている。
【0038】図5は本発明の他の実施の形態に係るAISセル発生方法を説明するためのブロック図である。図において、50はSOH終端部、51はPOH終端部、52はセル同期処理部、53はセル処理部、54はセルバッファ、55は故障種別判定部、56は故障種別情報生成部、57は空きセル生成部、58は故障通知セル生成部、59はセレクタ制御部、60は第1セレクタ、70は物理レイヤ故障検出部、71は故障個所情報テーブル、72はAISセル挿入タイミング制御部、73はサービスコネクションテーブル、74は故障通知セル破棄処理部、75はAISセル挿入部である。
【0039】ここで、実施の形態1に対して、この実施の形態では、第1セレクタ60にはセルバッファ54、空きセル生成部57の他に故障通知セル生成部58が接続されており、また、セレクタ制御部59は、故障種別情報生成部56から入力される物理レイヤ故障の検出の有無を示す信号とセルバッファ54の内部のセルの有無を示す信号によって制御されている。また、AISセル送出部11には故障通知セルを廃棄する故障通知セル廃棄処理部74が追加されている。
【0040】次に、この実施の形態の動作について説明する。まず、物理レイヤ終端部10に入力された信号は、実施の形態1と同様に、SOH終端部50、POH終端部51でそれぞれSOH,POHが終端され、更にセル同期処理部52においてセル同期が検出される。そして、セル同期処理部52でセル同期が確立されたセルは、セル処理部53に入力され、セルのヘッダの誤り訂正、ペイロードのデスクランブル処理が行われた後、セルバッファ54に入力され、また、SOH終端部50、POH終端部51、セル同期処理部52において、図10R>0に示すような故障が検出がされた場合、それぞれのブロックより検出された故障情報は故障種別判定部55に入力され、物理レイヤでの故障種別が特定される。
【0041】そして、物理レイヤ故障検出時、故障種別情報生成部56は、故障種別判定部55からの情報に基づいて、故障種別を特定し、故障種別情報を故障通知セル生成部58に出力する。そして、故障通知セル生成部58は、入力された故障種別情報をマッピングした故障通知セルを生成する。このセルは装置内でローカルに定義されるセルで、装置内で識別可能な識別子を持つものである。そして、第1セレクタ60には、セルバッファ54、空きセル生成部57、故障通知セル生成部58が接続され、いずれかの出力がセレクタ制御部59によって選択される。
【0042】また、セレクタ制御部59にはセルバッファ54から内部に存在するセルの有無を示す信号と、故障種別情報生成部56より物理レイヤ故障の検出の有無を示す信号が入力され、これらの信号から第1セレクタ60の切替えを行う。そして、故障が検出されていない状態でセルバッファ54内にセルが存在している場合にはセルバッファ54の出力が選択され、故障が検出されていない状態でセルバッファ54内にセルが存在していない場合には空きセル生成部57の出力が選択される。さらに、物理レイヤ故障が検出されている場合には、故障通知セル生成部58の出力が選択される。これによって、故障種別情報がマッピングされた故障通知セルが、物理レイヤ終端部10より出力される。
【0043】そして、AIS送出部11に入力されるセル流の内、故障通知セルは物理レイヤ故障検出部70によって検出され、故障通知セル内の故障種別情報が認識され、AISセル挿入部75に出力される。また、故障通知セルは装置でローカル定義されたセルであるため、故障通知セル廃棄処理部74で廃棄される。以上の動作によって、実施の形態1と同様にAISセルの挿入を行うことができる。
【0044】この実施の形態では、物理レイヤ終端部10で検出した物理レイヤ故障の故障種別情報を、装置内でローカルに定義した故障通知セルに搭載して転送することによってAISセル送出部11に故障情報を伝えることが可能となる。一般に装置内では、装置内処理で必要なビットをヘッダに割り付けるため、装置独自のヘッダ構成に変換し、ルーティング等の処理がなされている。従って、限られたヘッダ内に故障情報を割り当てることが困難な場合もあり、また、ペイロードにマッピングする場合には、ヘッダ情報から空きセルを検出し、その後にペイロードを解析することによって故障状態が判別できるが、即時には故障状態に移行することができないが、この実施の形態のように、故障通知セルを使う場合、AISセル送出部11は、このセルを受信すると即時に故障状態に移行することができる。
【0045】また、一般に図7(b)に示すような構成が取られるネットワーク装置のインタフェース部では、物理レイヤ終端部とAISセル送出部の間に空セルを利用したセル処理機能が配置される場合があり、このとき、例えば、空きセルを廃棄あるいは挿入することによって速度調整が行われたり、別のOAMセルが空セルに置き換えて挿入された場合、故障情報が通知できない、あるいは通知に時間がかかる等の問題が生じるが、この実施の形態のように、新たに規定した通知セルであれば、途中のこのような処理に関らず、正しく故障情報の転送が可能である。
【0046】なお、実施の形態1及び実施の形態2では、ATMネットワークにおけるSDHベースのATMセルの伝送する場合について示したが、特に物理レイヤインタフェースはSDHに限定されるものではなく、あらゆる伝送形態においても適用することができる。
【0047】つまり、ATM伝送においては、一般に、運用保守機能は、物理レイヤの管理とATMレイヤの管理が階層化されており、物理レイヤを終端する装置では物理レイヤの故障情報を1つ上位のATMレイヤに属するAISセルによって下流装置に対して転送することになっており、従って、従来の日本でのハイアラーキであるPDH(Plesiochronous Digital Hierarchy)ネットワーク等、物理レイヤでの故障検出機能を持つあらゆるネットワークにおいて、同様にAISセルの発生が可能である。
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際、その故障情報をネットワーク装置内の主信号セル流内の空きセルにマッピングし、その空きセル内にマッピングされた故障情報に基づいて、AISセルを発生させるようにしたので、物理レイヤ故障を検出してからAISセルの発生を迅速に行うことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の一実施の形態に係るAISセル発生方法の概要を説明するためのブロック図である。
【図2】実施の形態1の具体例を説明するためのブロック図である。
【図3】AISセル挿入部34の構成を示すブロック図である。
【図4】AISセルの出力周期を説明するための説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るAISセル発生方法を説明するためのブロック図である。
【図6】STM−1フレームにATMセルを収容する方法を説明するための説明図である。
【図7】ネットワーク装置及びインターフェース部の概要を説明するための説明図である。
【図8】従来のAISセルの送出を説明するための説明図である。
【図9】AISセルのフォーマットを説明するための説明図である。
【図10】物理レイヤの故障種別を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10 物理レイヤ終端部
11 AISセル送出部
20 SOH終端部
21 POH終端部
22 セル同期処理部
23 セル処理部
24 セルバッファ
25 故障種別判定部
26 故障種別情報生成部
27 空きセル生成部
28 第1セレクタ
30 物理レイヤ故障検出部
31 故障個所情報テーブル
32 AISセル挿入タイミング制御部
33 サービスコネクションテーブル
34 AISセル挿入部
40 第2セレクタ
41 セレクタ制御部
42 CRC演算部
50 SOH終端部
51 POH終端部
52 セル同期処理部
53 セル処理部
54 セルバッファ
55 故障種別判定部
56 故障種別情報生成部
57 空きセル生成部
58 故障通知セル生成部
59 セレクタ制御部
60 第1セレクタ
70 物理レイヤ故障検出部
71 故障個所情報テーブル
72 AISセル挿入タイミング制御部
73 サービスコネクションテーブル
74 故障通知セル破棄処理部
75 AISセル挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ATM網における物理レイヤを終端する交換機や伝送装置などのネットワーク装置において物理レイヤの終端処理を行う物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際に上位レイヤであるATMレイヤより発生させるAISセルの発生方法において、前記物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際、その故障情報を前記ネットワーク装置内の主信号セル流内の空きセルにマッピングし、その空きセル内にマッピングされた故障情報に基づいて、AISセルを発生させることを特徴とするATM網におけるAISセル発生方法。
【請求項2】 ATM網における物理レイヤを終端する交換機や伝送装置などのネットワーク装置において物理レイヤの終端処理を行う物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際に発生させるAISセルの発生方法において、前記物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を検出した際、その故障情報を装置内部でローカルに定義する故障通知セルにマッピングし、その故障通知セル内にマッピングされた故障情報に基づいて、AISセルを発生させることを特徴とするATM網におけるAISセル発生方法。
【請求項3】 前記物理レイヤ終端部内で、物理レイヤの故障を複数検出したとき、最も低位のレベルの故障を故障情報とすることを特徴とする請求項1又は2記載のATM網におけるAISセル発生方法。

【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【公開番号】特開平10−308741
【公開日】平成10年(1998)11月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−115409
【出願日】平成9年(1997)5月6日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)