説明

ATRPのための開始剤としての、多価アルコールとのα−ハロゲノカルボン酸エステル

【課題】原子移動ラジカル重合の開始剤として用いることができ、分枝状ポリマー構造体、たとえば星形ポリマー、樹枝状ポリマー、くし形ポリマーなどの合成に適した重合開始剤を提供する。
【解決手段】α−ハロゲノカルボン酸またはその反応可能な官能性の酸誘導体を、多価の、少なくとも3価のアルコールおよびこれらの化合物の異性体、または反応可能なアルコール誘導体と反応させて得られる重合開始剤、及び該開始剤を用いて得られるポリマー又はブロックポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ATRPのための開始剤として使用可能な、多価アルコールとのα−ハロゲノカルボン酸エステル、これらの開始剤の製造方法、これらの開始剤を用いて製造できるポリマーまたはコポリマー、これらのポリマーまたはコポリマーを用いた組成物、これらの製造方法、および末端基・Xが非環鎖状(offenkettige)もしくは環状のR′R″N−O・基によって置き換えられているポリマーまたはブロックコポリマーの製造のためのこれらの使用である。
【0002】
原子移動ラジカル重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)は、長年にわたって知られていて、特に低い分散度、およびそれに加えてあらかじめ決められた分子量を有する、“リビング”ポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどを製造するのに適した重合方法である。
【0003】
それの明白な利点にもかかわらず、分枝状ポリマー構造体の製造に適した重合方法にとって、好適な開始剤に関する選択の乏しいのが欠点である。既知の重合開始剤、例としてWO96/30421に記載されているような、たとえば2−クロロ−もしくは2−ブロモ酢酸または2−クロロ−もしくは2−ブロモイソ酪酸は、直鎖状であって分枝状ではないポリマー鎖構造へと導き、このため得られるポリマーには乏しい構造変種が可能になるにすぎない。
【0004】
本発明は、分枝状ポリマー構造体、たとえば星形ポリマー、樹枝状ポリマー、くし形ポリマーなどの合成に適した重合開始剤を製造するという課題に基づいている。この課題は、簡単なアシル化方法によって製造できるα−ハロゲノカルボン酸多価アルコールエステルに関する、本発明によって解決される。
【0005】
本発明の対象は、式:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
1は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
Xは、塩素、臭素またはヨウ素であり;そして
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基である)
の化合物、およびこれら化合物の異性体であるα−ハロゲノカルボン酸類である。
【0008】
本発明の記述中で使用されている概念および表示は、好ましくは以下に定義するとおりである。
【0009】
1〜C4アルキルは、メチル、エチル、n−もしくはイソプロピル、またはn−、s−もしくはt−ブチルである。
1〜C4アルキルフェニルは、好ましくはp−メチルフェニルである。
Xは、好ましくは塩素または臭素である。
【0010】
1は、好ましくはα−C原子と一緒になって、2−ハロアシル基、例として2−ハロ−C3〜C4アルカノイル、たとえば2−ハロプロピオニル、2−ハロ−n−ブチリルまたは2−ハロイソブチリル、たとえば2−クロロ−もしくは2−ブロモプロピオニルまたはα−クロロ−もしくはα−ブロモイソブチリル、あるいはα−ハロフェニルアセチル基、たとえばα−クロロ−またはα−ブロモフェニル酢酸残基を形成する。
【0011】
アシル化された分枝状の3価アルコールの残基であるR2は、好ましくは1,3,5−トリヒドロキシベンゼンまたはトリメチロールエタンから誘導され、そしてたとえば部分式:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Raはα−ハロアシルを意味する)
の基である。α−ハロアシルの意味を有するRaは、好ましくは、部分式:
【0014】
【化3】

【0015】
に合致する基、例としてα−ハロ−C3〜C4アルカノイルまたはα−ハロフェニルアセチル、たとえばα−クロロプロピオニル、α−ブロモプロピオニルまたはα−クロロフェニルアセチルである。
【0016】
完全または部分アシル化された直鎖状の4価アルコールの残基であるR2は、たとえばエリトリトールおよびその3種の異性体、たとえばD−、L−およびメソエリトリトールから誘導される。
【0017】
好ましくは、完全または部分アシル化された分枝状の4価アルコールの残基であるR2は、たとえばペンタエリトリトールから誘導され、そしてたとえば部分式:
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Raは、前述の意味を有するα−ハロアシルである)
の基である。
【0020】
完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基は、例として直鎖状ペンチトール類、たとえばD(+)−およびL(−)−アラビトール、アドニトールもしくはキシリトール、または直鎖状ヘキシトール類、たとえばD−ソルビトール、D−マンニトールもしくはズルシトールから誘導され、ここでそれらの水酸基が完全または部分的にRa(=α−ハロアシル)により置換されているものである。
【0021】
完全または部分アシル化された直鎖状または環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基は、例としてC4アルドース類、たとえばD(−)−およびL(+)−エリトロースまたはD(−)−およびL(+)−トレオース、C5アルドース類たとえばD(−)−およびL(+)−アラビノース、D(−)−リボースまたはD(+)−キシロース、C6アルドース類たとえばD(+)−グルコース、D(+)−マンノースまたはD(+)−ガラクトース、あるいはC6ケトース、たとえばフルクトースまたはL(−)−ソルボース、およびそれらのエピマー体から誘導され、ここでそれらの水酸基が同様に、完全または部分的にRa(=α−ハロアシル)により置換されているものである。
【0022】
完全または部分アシル化された二糖類の残基は、たとえばサッカロース、乳糖またはマルトースから誘導され、それらの水酸基が同じく完全または部分的にRa(=α−ハロアシル)により置換されているものである。
【0023】
異性体の概念は、糖アルコールおよび炭水化物の化学において周知の異性体、たとえば光学的に純粋な立体異性体(鏡像体類)、ジアステレオマー類またはエピマー類またはラセミ混合体類を包含する。
【0024】
本発明の好ましい実施態様の1種は、α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)
(式中、
1は、C1〜C3アルキルまたはフェニルであり;
Xは、塩素または臭素であり;そして
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、たとえばRaでアシル化された1,3,5−トリヒドロキシベンゼンまたはトリメチロールエタンの残基、完全または部分アシル化された直鎖状または分枝状の4価アルコールの残基、たとえばRaで完全アシル化されたペンタエリトリトールの残基、あるいは完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基である)
およびこれらの化合物の異性体に関する。
【0025】
これらの好ましい実施態様においては、Raはα−ハロアシルの意味、特にα−クロロプロピオニルおよびα−ブロモプロピオニルの意味を有している。
【0026】
特に好ましい実施態様は、式:
【0027】
【化5】

【0028】
または式:
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、Xは臭素またはヨウ素を意味する)
のα−ハロゲノカルボン酸エステルに関する。
【0031】
同様に、本発明の対象は、α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)(ここで、R1、R2およびXは、少し前に述べた意味を有する)の製造方法であって、式:
【0032】
【化7】

【0033】
のα−ハロゲノカルボン酸またはその反応可能な官能性の酸誘導体を、アルコール:
HO−R2′ (IV)
(式中、R2′はそのOH基と一緒になって、分枝状の3価アルコール、直鎖状もしくは分枝状の4価アルコール、直鎖状の5価または6価アルコール、直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトース、あるいは二糖類を意味する)
およびこれらの化合物の異性体、または反応可能なアルコール誘導体と反応させることを特徴とする方法である。
【0034】
α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)の製造には、たとえばα−ハロゲノカルボン酸(II)の反応可能な官能性の酸誘導体、例として酸ハロゲン化物、たとえば酸塩化物の、アルコール(III)の価数に対応した当量を、このアルコールと反応させることによるか、またはα−ハロゲノカルボン酸(II)を、アルコール(III)の反応可能な官能性の誘導体、たとえばこのアルコールのエステル、たとえばハロゲン化物たとえば塩化物、またはこのアルコールのスルホン酸エステル、たとえばp−トルエンスルホン酸エステルの当量と反応させることによる、通常のエステル化方法が使用される。
【0035】
本発明のさらなる対象は、式:
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、
1は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状または環状C4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基であり;
AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり;
xおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、そして他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい数であり;
Xは、塩素、臭素またはヨウ素であり;そして
mは、3〜6の整数を意味する)
のポリマーまたはブロックコポリマーに関する。
【0038】
同様に、本発明の対象は、ポリマーまたはブロックコポリマー(V)(ここで、R1、R2、A、B、X、x、yおよびmは、前述の意味を有する)の製造方法であって、重合開始剤としてのα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)(ここで、R1、R2およびXは前述の意味を有する)、および酸化可能な遷移金属錯体触媒の存在下における原子移動ラジカル重合(ATRP)によって、ポリマーブロックAおよびBのもとになるエチレン基含有脂肪族モノマーに重合反応させることを特徴とする製造方法である。
【0039】
ポリマーの概念は、オリゴマー類、コオリゴマー類、ポリマー類またはコポリマー類、たとえばブロックコポリマー類、マルチブロックコポリマー類、星形、傾斜、ランダム、分枝状および樹枝状コポリマー類およびグラフトコポリマー類を包含する。コポリマーブロックAおよびBは、少なくとも1個または複数個のオレフィン性二重結合を有する重合可能な脂肪族性のモノマー類からなる反復構造単位を、少なくとも2個含有する。
【0040】
この種のオレフィン性二重結合を有する重合可能な脂肪族性のモノマー類は、たとえばスチレン類、アクロレイン、アクリル酸またはメタクリル酸またはそれの塩類、無水アクリル酸または−メタクリル酸、アクリル酸−またはメタクリル酸−C1〜C24アルキルエステル、アクリル酸−もしくはメタクリル酸のモノ−またはジ−C1〜C4アルキルアミノC2〜C4アルキルエステル、アクリル酸−またはメタクリル酸ヒドロキシC2〜C4アルキルエステル、アクリル酸−またはメタクリル酸(C1〜C4アルキル)3シリルオキシC2〜C4アルキルエステル、アクリル酸−またはメタクリル酸(C1〜C4アルキル)3シリルC2〜C4アルキルエステル、アクリル酸−またはメタクリル酸ヘテロシクリルC2〜C4アルキルエステル、アクリル−またはメタクリル酸エステルであって、それ自体が置換されたC1〜C24アルコキシ基によってエステル化されていてもよいポリC2〜C4アルキレングリコールエステル基を有するもの、アクリル酸−またはメタクリル酸アミド類、アクリル酸−もしくはメタクリル酸のモノ−またはジ−C1〜C4アルキルアミド類、アクリル酸−またはメタクリル酸アミノC2〜C4アルキルアミド類、およびアクリロニトリルを含む群から選ばれる。
【0041】
適したスチレン類は、そのフェニル基において、ヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ、たとえばメトキシまたはエトキシ、ハロゲン、たとえば塩素、アミノ、およびC1〜C4アルキル、たとえばメチルまたはエチルを含む群からの置換基1〜3個によって置換されていてよい。
【0042】
適したアクリル酸またはメタクリル酸の塩は、たとえば(C1〜C4アルキル)4アンモニウム−または(C1〜C4アルキル)3NH塩、たとえばテトラメチル−、テトラエチル−、トリメチルアンモニウム−またはトリエチルアンモニウム塩、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム−またはトリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム−またはジエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩である。
【0043】
適したアクリル酸−またはメタクリル酸C1〜C24アルキルエステルは、たとえばメチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、イソボルニル、イソデシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルまたはベヘニルによってエステル化されているものである。
【0044】
アクリル酸−またはメタクリル酸モノ−またはジ−C1〜C4アルキルアミノC2〜C4アルキルエステルの例は、アクリル酸−またはメタクリル酸2−モノメチルアミノエチルエステル、アクリル酸−またはメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルエステルまたはそれらに対応する2−モノエチルアミノエチルエステルまたは2−ジエチルアミノエチルエステル、およびアクリル酸−またはメタクリル酸2−t−ブチルアミノエチルエステルである。
【0045】
アクリル酸−またはメタクリル酸ヒドロキシC2〜C4アルキルエステルの例は、アクリル酸−またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル(HEA、HEMA)あるいはアクリル酸−またはメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル(HPA、HPMA)である。
【0046】
アクリル酸−またはメタクリル酸シリルオキシC2〜C4アルキルエステルの例は、アクリル酸−またはメタクリル酸2−トリメチルシリルオキシエチルエステル(TMS−HEA、TMS−HEMA)である。アクリル酸−またはメタクリル酸(C1〜C4アルキル)3シリルC2〜C4アルキルエステルの例は、アクリル酸−もしくはメタクリル酸2−トリメチルシリルエチルエステル、またはアクリル酸−もしくはメタクリル酸3−トリメチルシリル−n−プロピルエステルである。
【0047】
アクリル−またはメタクリル酸エステルであって、それ自体が置換されたC1〜C24アルコキシ基によってエステル化されていてよいポリC2〜C4アルキレングリコールエステル基を有するものは、式:
【0048】
【化9】

【0049】
(式中、R1およびR2は、互いに独立に、水素またはメチルであり、そしてR3は、C1〜C24アルキル、たとえばメチル、エチル、n−またはイソプロピル、n−、イソ−またはt−ブチル、n−またはネオペンチル、ラウリル、ミリスチルまたはステアリル、あるいはアリールC1〜C24アルキル、たとえばベンジルまたはフェニル−n−ノニル、ならびにC1〜C24アルキルアリールまたはC1〜C24アルキルアリールC1〜C24アルキルを意味する)
に相当する。
【0050】
アクリル酸−およびメタクリル酸−ヘテロシクリルC2〜C4アルキルエステルの例は、アクリル酸−もしくはメタクリル酸−2−(N−モルホリニル、2−ピリジル、1−イミダゾリル、2−オキソ−1−ピロリジニル、4−メチルピペリジン−1−イルまたは2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルエステルである。
【0051】
前述のアクリル酸−またはメタクリル酸モノ−またはジ−C1〜C4アルキルアミド類、アクリル酸−またはメタクリルジC1〜C4アルキルアミノC2〜C4アルキルアミド類あるいはアクリル酸−またはメタクリル酸アミノC2〜C4アルキルアミド類の例は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、2−アミノエチルアクリルアミドおよび2−アミノエチルメタクリルアミドである。
【0052】
指数xおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数を示し、ここでxおよびyの一方の値が0で、そして他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい整数である。xおよびyについて、数の範囲は2〜1,000であるのが好ましい。
【0053】
ブロックコポリマー(V)中のブロックAおよびBの好ましい分子量範囲は、約1,000〜100,000、特に約1,000〜50,000である。とりわけ特に好ましい分子量範囲は、約2,000〜15,000である。
【0054】
本発明の特に好ましい実施態様は、ブロックコポリマー(V):
(式中、
1は、C1〜C3アルキルまたはフェニルであり;
Xは、塩素または臭素であり;そして
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、あるいは完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基であり;
ポリマーブロックAおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるものであり;
xおよびyは、0より大きい整数を意味し、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数を表し;そして
mは、3または4を意味する)
に関する。
【0055】
本発明はまた、α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)およびATRP法を用いて製造できるポリマー類およびブロックコポリマー類のすべてに関する。本発明の対象は、仮にこの方法による生成物が前述した式Vの定義に当てはまらなくても、または式Vがそれの構造を正確に定義していなくても、この方法による生成物(“product-by-process”)のすべてである。
【0056】
ブロックコポリマー(V)の中で、Xは、ポリマー鎖の末端に存在する塩素、臭素またはヨウ素を示す。これらの末端基は、ATRP法に応じた開始剤を用いることで得られる。ポリマー鎖の末端基としてのハロゲンは、不利であり得る。そこでハロゲンは、後続の工程において他の適切な末端基により置き換えることができるが、この末端基は、TEMPO(=2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−1−オキシド)およびその誘導体類から導かれ、下記の部分式:
【0057】
【化10】

【0058】
(式中、
1およびR2の一方はC1〜C7アルキルを、そして他方はC1〜C4アルキルか、またはC1〜C4アルコキシカルボニルもしくはC1〜C4アルコキシで置換されたC1〜C4アルキルを意味し;あるいは
1およびR2は、隣接するC原子と一緒になってC3〜C7シクロアルキルを意味し;
3およびR4は、R1およびR2の意味を有し;
aは、C1〜C4アルキル、シアノ、C1〜C4アルコキシカルボニル、C1〜C4アルカノイルオキシ、C1〜C4アルカノイルオキシC1〜C4アルキル、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、モノ−もしくはジ−2−ヒドロキシエチルカルバモイル、アミジノ、2−イミダゾリル、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−プロピルカルバモイル、または1,1−ジヒドロキシメチル−2−ヒドロキシカルバモイルを意味し;そして
bは、Raの意味を有するか;または
aおよびRbは、一緒になって、2価の基を表し、そして5、6、7もしくは8員環の脂肪族または芳香族複素環基を形成し、それは窒素、酸素および硫黄の群からの追加のヘテロ原子1〜3個を含有できる)
の構造を示す。
【0059】
好ましい実施態様の1つは、4−位置において、1個または2個の置換基によって置換されていてよい、部分式:
【0060】
【化11】

【0061】
(該部分式A1中:
1、R2、R3およびR4は、C1〜C4アルキルを意味し;
5、R6、R7およびR8は、水素を意味し;そして
9およびR10の一方は、互いに独立に、水素またはさらなる置換基を意味する)
の基を包含する。
【0062】
部分式A1の基の代表例は、基:
【0063】
【化20】

【0064】
(式中、
mが1のとき;
aは、水素、1個または複数個の酸素で中断されていてもよいC1〜C18アルキル、2−シアノエチル、ベンゾイル、グリシジルであるか、あるいは脂肪族C2〜C12カルボン酸の、脂環式C7〜C15カルボン酸の、a,b−不飽和C3〜C5カルボン酸の、または芳香族C7〜C15カルボン酸のアシル基を意味し;
mが2のとき;
aは、脂肪族C2〜C36ジカルボン酸の2価アシル基を意味し;
nが1のとき;
bは、C1〜C12アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C7〜C8アラルキル、C2〜C18アルカノイル、C3〜C5アルケノイルまたはベンゾイルを意味し;そして
は、C1〜C18アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C2〜C8アルケニルであって、シアノ、カルボニルもしくはカルバミド基により置換されていてよいもの、グリシジル、または部分式−CH2CH(OH)−Z、−CO−Zもしくは−CONH−Zの基であって、Zが水素、メチルもしくはフェニルであるもの、を意味する)
である。
【0065】
さらなる好ましい実施態様は、部分式A1(式中の基R9およびR10の一方が水素を、そして他方がC1〜C4アルカノイルまたはC1〜C4アルカノイルアミノを意味する)の基に関する。
【0066】
さらなる本発明の対象は、式:
【0067】
【化12】

【0068】
(式中、
1′は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
2′は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状、分枝状もしくは環状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基であり;
AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり;
xおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、そして他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい整数であり;
Xは、塩素、臭素またはヨウ素であり;
mは、3〜6の整数を意味し;
1およびR2の一方はC1〜C7アルキルを、そして他方はC1〜C4アルキルか、またはC1〜C4アルコキシカルボニルもしくはC1〜C4アルコキシで置換されたC1〜C4アルキルを意味するか;あるいは
1およびR2は、隣接するC原子と一緒になってC3〜C7シクロアルキルを意味し;
3およびR4は、R1およびR2の意味を有し;
aは、C1〜C4アルキル、シアノ、C1〜C4アルコキシカルボニル、C1〜C4アルカノイルオキシ、C1〜C4アルカノイルオキシC1〜C4アルキル、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、モノ−もしくはジ−2−ヒドロキシエチルカルバモイル、アミジノ、2−イミダゾリル、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−プロピルカルバモイル、または1,1−ジヒドロキシメチル−2−ヒドロキシカルバモイルであり;そして
bは、Raの意味を有するか;あるいは
aおよびRbは、一緒になって、2価の基を表し、そして5、6、7もしくは8員環の脂肪族または芳香族複素環基を形成し、それは窒素、酸素および硫黄の群からの追加ヘテロ原子1〜3個を含有できる)
のN→O置換ポリマーまたはブロックコポリマーに関する。
【0069】
この重合方法は、水または有機溶媒またはこれらの混合物の存在下で実行できる。反応混合物には、追加的な共溶媒または界面活性剤、たとえばグリコール類またはカルボン酸アンモニウム塩類を加えてよい。溶媒の量は、できるだけ少なく保つべきである。反応混合物は、前述のモノマー類またはオリゴマー類を、重合物中のモノマー量に対して、1.0〜99.9重量%、好ましくは5.0〜99.9重量%、特に好ましくは50.0〜99.9重量%の濃度で含有できる。
【0070】
適した有機溶媒類は、アルカン類(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン)、炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン)、アルカノール類(メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル)、エステル(酢酸エステル)またはエーテル類(ジエチル−、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン)、またはこれらの混合物である。
【0071】
溶媒として水を使用する場合には、反応混合物に水混和性または親水性の溶媒を加えることができる。その際、重合反応の間は反応混合物が単一の均質相状態を保ち、沈殿または相分離を起こさないように注意しなければならない。適した共溶媒類は、脂肪族アルコール類、グリコール類、エーテル類、グリコールエーテル類、ピロリジン類、N−アルキルピロリジノン類、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、アミド類、カルボン酸類およびその塩類、エステル、オルガノスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、アルコール誘導体類、ヒドロキシエーテル誘導体類、たとえばブチルカルビトールまたはセロソルブ類、アミノアルコール類、ケトン類、それらの誘導体および混合物の群から選ばれるものであって、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ジオキサン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、テトラヒドロフランまたは他の水溶性もしくは水混和性溶媒またはそれらの混合物である。
【0072】
親水性のモノマー類、ポリマー類およびコポリマー類は、通例の方法の応用、たとえば蒸留、沈殿、抽出、pH範囲の変更、または他の分離方法によって、反応混合物から分離できる。重合反応のための温度範囲は、約50〜約180℃、好ましくは約80〜約150℃である。
【0073】
ATRP法において使用できる酸化可能な遷移金属錯体触媒は、レドックス系の低段階側にある酸化可能な錯体イオンの形態で存在する。この種のレドックス系の好ましい例は、周期律系の V(B)、VI(B)、VII(B)、VIII、IBおよびIIB族の元素から形づくられる、たとえばCu+/Cu2+、Cu0/Cu+、Fe0/Fe2+、Fe2+/Fe3+、Cr2+/Cr3+、Co+/Co2+、Co2+/Co3+、Ni0/Ni+、Ni+/Ni2+、Ni2+/Ni3+、Mn0/Mn2+、Mn2+/Mn3+、Mn3+/Mn4+またはZn+/Zn2+のレドックス系である。酸化可能な遷移金属錯体触媒中の遷移金属または遷移金属カチオンは、低酸化段階側から高段階側へと変換される。この方法の好ましい実施態様においては、Cu(I)錯体触媒塩は、対応するCu(II)酸化段階へと変換される。
【0074】
ATRP法において使用できる酸化可能な遷移金属錯体触媒は、別個の前段階で、または好ましくはその場で、配位子および金属塩、たとえばCu(I)Clから製造可能であって、この金属塩は、配位子形成体、たとえばエチレンジアミン、EDTA、Me6TRENまたはPMDETAを添加することにより、その後、錯化合物へと転換される。
【0075】
イオン電荷は、遷移金属の錯体化学によって既知のアニオン性配位子、例としてヒドリドイオン(H-)か、または無機もしくは有機酸のアニオン類、たとえばF-、Cl-、Br-もしくはI-;BF4-、PF6-、SbF6-もしくはAsF6-形のフッ素錯体;酸素酸、アルコラートもしくはアセチリドのアニオン;またはシクロペンタジエンアニオン形のアニオンによって調整される。
【0076】
酸素酸のアニオン類は、たとえば硫酸アニオン、リン酸アニオン、過塩素酸アニオン、過臭素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオン、アンチモン酸アニオン、ヒ酸アニオン、硝酸アニオン、炭酸アニオン、C1〜C8カルボン酸類のアニオン、たとえばギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、安息香酸アニオン、フェニル酢酸アニオン、モノ−、ジ−もしくはトリクロロ酢酸アニオンまたは−フルオロ酢酸アニオン、スルホン酸類アニオン、たとえばメシル酸アニオン、エタン−、プロパン−またはn−ブタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(Triflat)、あるいはベンゼン−またはベンジルスルホン酸アニオンであって、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲン、特にフッ素、塩素もしくは臭素で置換されていてよいもの、たとえばトシル酸アニオン、ブロシル酸アニオン、p−メトキシ−もしくはp−エトキシベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸または2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸アニオン、ホスホン酸類アニオン、たとえばメチル−、エチル−、n−プロピル−またはn−ブチルホスホン酸アニオン、フェニルホスホン酸アニオン、p−メチルフェニルホスホン酸アニオンまたはベンジルホスホン酸アニオン、およびC1〜C12アルコラートアニオン、たとえばメタノラートアニオンまたはエタノラートアニオンである。
【0077】
中性またはアニオン性の配位子は、好ましい配位数、特に4、5および6まで存在することができる。負の総電荷は、カチオン類、例として1価カチオン、たとえばNa+、K+、NH4+または(C1〜C4アルキル)4+により調整される。
【0078】
適した中性配位子は、遷移金属の錯体化学から既知である。それらは、配位中心に、たとえばσ−、π−、μ−、η−結合またはこれらの組合せのような、種々の結合種の形態で、錯カチオンの好ましい配位数にまで配位する。適した配位子は、アコ(H2O)、アミノ、窒素、一酸化炭素、ニトロシル、ホスフィン類、たとえば(C653P、(i−C373P、(C593Pまたは(C6113P、アミン類、たとえばエチレンジアミン、エチレンジアミノテトラアセタート(EDTA)、N,N−ジメチル−N′,N′−ビス(2−ジメチルアミノエチル)エチレンジアミン(Me6TREN)、カテコール、N,N′−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、2−(メチルアミノ)フェノール、3−(メチルアミノ)−2−ブタノール、N,N′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−1,2−エタンジアミンまたはN,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチルトリアミン(PMDETA)、C1〜C8グリコール類またはグリセリド類、たとえばエチレン−またはプロピレングリコール、またはそれらの誘導体類、たとえばジ−、トリ−もしくはテトラグリム、そして単座形もしくは二座形の複素環式e-−ドナー配位子類を包含する群から選ばれる。
【0079】
複素環式e-−ドナー配位子は、たとえば非置換または置換されたヘテロアレーン類であって、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ビスピリジン、ピコリルイミン、γ−ピラン、γ−チオピラン、フェナントロリン、ピリミジン、ビスピリミジン、ピラジン、インドール、クマリン、チオナフテン、カルバゾール類、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピラゾール、インドール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ビスチアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、キノリン、ビスキノリン、イソキノリン、ビスイソキノリン、アクリジン、クロマン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、トリアジン、チアントレン、プリン、ビスイミダゾールおよびビスオキサゾールを含む群から誘導される。
【0080】
重合反応に続いて、重合物(V)を単離するか、またはこれを式:
【0081】
【化13】

【0082】
(式は、部分式A0の基に対応しており、そして式中、R1〜R4ならびにRaおよびRbは、前述の意味を有する)
のN→O化合物とともに、好ましくはその場で反応させて、N→O置換ポリマーまたはブロックコポリマー(VII)を製造する。重合物の単離は、例として既知の方法、たとえば未反応モノマーの留去および濾過によって実施できる。
【0083】
ポリマーまたはブロックコポリマー(VII)(式中、・Xは、非環鎖状または環状のR′R″N−O・基により置き換えられている)を製造するための、ポリマーまたはブロックコポリマー(V)の使用は、同様に本発明の対象である。
【0084】
重合物をN→O化合物(VIII)で置換した後、遷移金属錯体触媒を分離し、溶媒を蒸発させるか、またはN→O基で置換されたポリマー(VII)を適当な液相から沈殿させ、該ポリマーを濾別し、そして洗浄し、引き続いて乾燥する。
【0085】
除去する基−X、たとえばハロゲンの脱離、および重合物のN→O化合物(VIII)による置換は、たとえば重合物(V)を溶媒に溶解し、N→O化合物(VIII)を添加することによって実施される。この反応は、室温〜反応混合物の沸点、好ましくは室温〜100℃の温度領域において実行可能である。
【0086】
ATRP法による重合および引き続いてのN→O化合物(VIII)による誘導体化は、“リビング”重合という特徴を有しているので、随意にこれを開始させ、そして終了させることが可能である。本方法により得られるブロックコポリマー(V)および(VII)は、きわめて低いポリ分散度を有している。主として1.01〜2.2、好ましくは1.01〜1.9、とりわけ1.01〜1.5のポリ分散度が得られる。
【0087】
N→O化合物(VIII)は既知である。これは市場で入手可能であるか、または米国特許第5,204,473号もしくは4,581,429号明細書、およびそれらに引用された刊行物に記載されている方法によって製造可能である。
【0088】
ATRP法およびそのさまざまな利点は、たとえば ACS Symp.Ser.Vol.685(1998),p2〜30のK. Matyjaszewskiによる発表に記述されている。ポリマーおよびコポリマーは、通常の方法によってさらなる加工ができ、そして大抵の場合、さらなる精製工程なしに使用可能である。このことは、工業的応用を考慮し、出発点からのある比率での拡大(“スケールアップ”)を意図する場合に有利である。
【0089】
本発明はまた、α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)、式VIIIのN→O化合物、およびATRP法を使用することによって製造できる、N→O置換ポリマーおよびブロックコポリマーのすべてに関する。本発明の対象は、仮にこの方法による生成物が前述した式VIIの定義に当てはまらなくても、または式VIIがそれの構造を正確に定義していなくても、この方法による生成物(“product-by-process”)のすべてである。
【0090】
さらなる本発明の対象は、ポリマーおよびブロックコポリマー(V)(ここでR1、R2、A、B、x、yおよびmは、前述の意味を有する)、およびポリマー組成物類に含まれる通例の添加剤を含有するポリマー組成物に関する。
【0091】
同様に本発明の対象は、ポリマーまたはブロックコポリマー(V)とN→O置換ポリマーまたはブロックコポリマー(VII)との混合物、およびポリマー組成物類に含まれる通例の添加剤を含有するポリマー組成物に関する。
【0092】
この種の添加物は、少量添加することができ、例を挙げるとUV吸収剤または光保護剤であって、たとえばヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン類、オキサルアミド類またはヒドロキシフェニル−s−トリアジン類の系列からのものである。特に適しているのは、いわゆる立体障害性アミン類(HALS)、たとえば2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン−または2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール型の群からの光保護剤類である。2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン型の光保護剤類の例は、特許文献、たとえばUS−A−4,619,956、EP−A−434608、US−A−5,198,498、US−A−5,322,868、US−A−5,369,140、US−A−5,298,067、WO−94/18278、EP−A−704437、GB−A−2297091またはWO−96/28431から知られている。
【0093】
この組成物は、さらなる通例の添加物も含有でき、例を挙げると、充填剤たとえば炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラスまたはガラス繊維材料、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物および金属水酸化物、カーボンブラック、黒鉛、木材粉末および他の天然産品の粉末または繊維状材料、合成繊維、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、流動性調節剤(Fliessmittel)、触媒、光学的増白剤、防炎剤、帯電防止剤または噴射剤である。
【0094】
該組成物は、前述のポリマーを、組成物中のモノマー量に対して約0.01〜99.0重量%、好ましくは0.1〜95重量%、特に1.0〜90.0重量%、とりわけ5.0〜80.0重量%の濃度で含有できる。
【0095】
さらなる本発明の対象は、
a)式中のR1、R2、A、B、x、yおよびmが、前述の意味を有しているポリマーまたはブロックコポリマー(V);および
b)式:
x−By (IX)
(式中、AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり、そしてxおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、そして他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい整数である)
のさらなるポリマーまたはオリゴマー;
を含有するポリマー組成物である。
【0096】
同様に、本発明の対象は、
a′)N→O置換ポリマーまたはブロックコポリマー(VII)、および
b′)さらなるポリマーまたはオリゴマー(IX)
を含有するポリマー組成物である。
【0097】
この組成物は、前述した通例の添加物およびポリマー−またはオリゴマー成分a)およびb)、またはa′)およびb′)を、組成物中のモノマー量に対して約0.01〜99.0重量%、好ましくは0.1〜95重量%、特に1.0〜90.0重量%、とりわけ5.0〜80.0重量%の濃度で含有できる。
【0098】
本発明のポリマーおよび組成物は、種々の異なる技術的用途のための使用が可能であり、たとえば、接着剤、洗剤用助剤、洗浄剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、腐食抑制剤、粘度改良剤、潤滑剤、流動性改良剤、増稠剤、架橋剤として、水処理、電子材料、着色剤およびラッカー、被覆剤、インキ、写真現像液、“超吸収剤(Superabsorbant)”、化粧品、保存料のための添加剤として、またはアスファルト、織物、セラミックスおよび木材のための防菌剤または改質剤および助剤として、使用が可能である。
【実施例】
【0099】
例1
化合物:
【0100】
【化14】

【0101】
の製造
出発材:
1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(Fluka、高純度級(purum))26.84g(0.2mol);2−ブロモプロパノイルブロミド(Fluka、工業用(pract.)95%)136.4g(0.6mol);ピリジン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))47.5g(0.6mol);THF(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))500mL;還流冷却器および機械撹拌機を備えた1,500mLスルホン化フラスコ(Sulfierkolben)。
【0102】
1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンおよびピリジンのTHF320mL溶液に、10〜15℃に冷却しながら2−ブロモプロパノイルブロミドのTHF180mL溶液を45分間かけて滴下した(軽度の発熱反応)。その後、60℃に3時間加温し、そして反応混合物を冷却して濾過した。t−ブチルメチルエーテル500mLで希釈し、そして中性反応を示すまで、毎回150mLずつの水で2回抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥して濾過し、そしてロータリーエバポレーター中で完全に濃縮した。粗収量:116.95g。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤としてトルエン)により精製した。純品収量:70.48g(65%)。
【0103】
【表1】

【0104】
例2
化合物:
【0105】
【化15】

【0106】
の製造
出発材:
1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(Fluka、高純度級(purum))26.84g(0.2mol);2−クロロプロパノイルクロリド(Fluka、工業用(pract.)97%)76.18g(0.6mol);ピリジン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))47.5g(0.6mol);THF(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))500mL;還流冷却器および機械撹拌機を備えた1,500mLスルホン化フラスコ。
【0107】
例1と同様にして、純粋な生成物66.32g(82%)を得た。
【0108】
【表2】

【0109】
例3
化合物:
【0110】
【化16】

【0111】
の製造
出発材:
ペンタエリトリトール(Fluka、高純度級(purum))27.20g(0.2mol);2−ブロモプロパノイルブロミド(Fluka、工業用(pract.)97%)181.7g(0.8mol);ピリジン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))63.2g(0.8mol);THF(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))500mL;還流冷却器および機械撹拌機を備えた1,500mLスルホン化フラスコ。
【0112】
例1と同様にして実施した。粗生成物(150mg)をイソプロパノール中で再結晶して精製した。純粋な生成物35.48g(26%)を得た。融点:95℃;
【0113】
【表3】

【0114】
例4
化合物:
【0115】
【化17】

【0116】
の製造
出発材:
ペンタエリトリトール(Fluka、高純度級(purum))2.72g(0.02mol);2−クロロプロパノイルクロリド(Fluka、工業用(pract.)97%)10.15g(0.08mol);ピリジン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))6.32g(0.08mol);THF(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))50mL;還流冷却器および機械撹拌機を備えた100mLスルホン化フラスコ。
【0117】
例3と同様にして(原料1/10)、純粋な生成物6.10g(48%)を得た;融点:84℃。
【0118】
【表4】

【0119】
例5:
a)低い分子量を有する“3星形”重合物の製造
出発材:
アクリル酸n−ブチル(Fluka、高純度級(purum))30.76g(0.24mol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)0.57g(4.0mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))0.52g(3.0mmol);1−(2−ブロモプロピオニルオキシ)−2−ビス(2−ブロモプロピオニルオキシメチル)ブタン(例1の開始剤)10.78g(20.0mmol);ジオキサン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))30.76g;還流冷却器、機械撹拌機および滴下漏斗を備えた150mLスルホン化フラスコ;減圧およびN2用の継手。
【0120】
Cu(I)Brおよびアクリル酸n−ブチルモノマーを反応容器中に仕込み、ジオキサン20gを加え、そしてこれを数回の排気およびN2を流すことにより脱気した。配位子形成体PMDETA(N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン)を加え、排気し、そしてN2を流して雰囲気を新しくした。油浴(85℃)中に浸漬して、混合物を50℃に加熱し、この温度で、ジオキサン10.76gに溶解した開始剤(例1)を滴下漏斗から急速に加えた。約85℃で強い発熱重合反応が始まり、急速に温度が上昇した。氷浴を用いて冷却することにより、温度を95〜100℃に維持した。20分の重合時間後に100%の反応が達成され(1H−NMRで判定)、反応混合物を冷却し、そしてジオキサン50mLで希釈した。Al23(Alox(登録商標))30gを加え、1時間撹拌して濾過した。ポリマー溶液をロータリーエバポレーター中で減圧下80℃で完全に濃縮した。収量:39.5g(95%)。
【0121】
GPC(THF、PS基準):Mn=1,700(計算値:2,080)、Mw=2,160、PDI=1.27;MALDI−TOF MS:Mn=2,030、Mw=2,300、PDI=1.17;
【0122】
【表5】

【0123】
b)Br末端基の4−ベンゾイルオキシ−TEMPOによる置き換え
出発材:
例5a)のBr置換ポリマー5.0g(Br末端基12.0mmol);4−ベンゾイルオキシ−TEMPO 3.31g(12.0mmol);CuBr0.86g(6.0mmol);PMDETA2.07g(12.0mmol);ジオキサン7.5mL。
【0124】
磁気撹拌機を備えた25mL三つ口フラスコ中、N2下で上述の試薬を混合し(配位子形成体PMDETAを除く)、そして3回の排気およびN2を流すことによって酸素を除いた。室温において配位子形成体PMDETAを加え、油浴中で65℃に加熱したところ、混合物は、急速にオレンジ色から黒色を経て緑色へと変色した。65℃でさらに4時間反応させ、濾過した。その後、ジオキサン10mLを加え、そして酸化アルミニウムを5gずつ4回加えて(残存Cu錯体を吸着するため)そのつど撹拌し、そのつどヌッチェで濾過した。溶液をロータリーエバポレーター中、60℃で2時間濃縮した。生成物6.6g(90%)を得た。
【0125】
GPC:Mn=2,172(計算値:2,290);Mw=2,600;PDI=1.20;N−含有量:2.48%;Br含有量:<0.3%、これから、置換率は97.4%より高いと計算された。
【0126】
c)より高い分子量を有する“3星形”重合物の製造
出発材:
アクリル酸n−ブチル(Fluka、高純度級(purum))17.96g(0.14mol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)0.111g(0.8mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))0.139g(0.8mmol);1−(2−ブロモプロピオニルオキシ)−2−ビス(2−ブロモプロピオニルオキシメチル)ブタン(例1の開始剤)2.10g(3.9mmol);ジオキサン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))30.76g;還流冷却器、機械撹拌機および滴下漏斗を備えた150mLスルホン化フラスコ;減圧およびN2用の継手。
【0127】
Cu(I)Brおよびアクリル酸n−ブチルモノマー14.0gを反応容器中に仕込み、そしてこれを数回の排気およびN2を流すことにより脱気した。配位子形成体(N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン)を加え、排気し、そしてN2を流して雰囲気を新しくした。油浴(85℃)中に浸漬して、混合物を50℃に加熱し、この温度で、残りのモノマー3.96gに溶解した開始剤を滴下漏斗から急速に加えた。約85℃で強い発熱重合反応が始まり、急速に温度が上昇した。氷浴を用いて冷却することにより、温度を最高105℃に維持した。45分の重合時間後に100%の反応が達成され(1H−NMRで判定)、反応混合物を冷却してジオキサン50mLで希釈した。Alox(登録商標)30gを加え、1時間撹拌して濾過した。ポリマー溶液をロータリーエバポレーター中で、減圧下に80℃で完全に濃縮した。収量:18.5g(92%)。
【0128】
GPC(THF、PS基準):Mn=4,890(計算値:5,150)、Mw=6,520、PDI=1.33;
【0129】
【表6】

【0130】
d)1.ポリ(n−BA)ブロックおよび2.ポリ−DMAEAブロックを有する“3星形”共重合物の製造
出発材:
例5a)の低分子量“3星形”重合物5.15g;アクリル酸2−ジメチルアミノエチル(DMAEA、BASF、技術級(techn.))0.71g(5mmol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)72.0mg(0.5mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))87.0mg(0.5mmol);磁気撹拌機およびセプタム(注入口隔壁(Septum))を備えた25mL丸底フラスコ。
【0131】
Cu(I)Br、例5a)の低分子量“3星形”重合物、およびDMAEAを反応容器中に仕込み、そしてこれを数回の排気およびN2を流すことにより脱気した。これに配位子形成体PMDETAを加え、排気し、そしてN2を流して雰囲気を新しくした。油浴中に浸漬して、この混合物を50℃に加熱し、そしてこの温度で30分間反応させ、約100%の反応を達成させた(1H−NMRで判定)。冷却して酢酸エチル20mLで希釈し、そしてAl23(Alox(登録商標))5gを加え、30分間撹拌して濾過した。ポリマー溶液をロータリーエバポレーター中、80℃で完全に濃縮した(1時間)。生成物5.0g(85%)を得た。
【0132】
GPC(THF、PS基準):Mn=5,590(計算値:5,870)、Mw=7,520、PDI=1.35
【0133】
【表7】

【0134】
e)1.ポリ(n−BA)ブロックおよび2.ポリ−HEAブロックを有する“3星形”共重合物の製造
出発材:
例5a)の低分子量“3星形”重合物5.15g;アクリル酸2−ヒドロキシエチル(DMAEA、BASF、技術級(techn.))0.58g(5mmol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)72.0mg(0.5mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))87.0mg(0.5mmol);磁気撹拌機およびセプタムを備えた25mL丸底フラスコ。
【0135】
例5d)と同様にして、生成物5.0g(85%)を得た。
【0136】
GPC(THF、PS基準):Mn=6,530(計算値:5,730)、Mw=9,690、PDI=1.48
【0137】
【表8】

【0138】
例6
a)低分子量を有する“4星形”重合物の製造
出発材:
アクリル酸n−ブチル(Fluka、高純度級(purum))15.38g(0.12mol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)0.28g(2.0mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))0.35g(2.0mmol);1,2,2,3−テトラキス(2−ブロモプロピオニルオキシメチル)プロパン(例3の開始剤)6.76g(20.0mmol);ジオキサン(Fluka、最高純度級分析用(puriss.p.a.))15.38g;還流冷却器、機械撹拌機および滴下漏斗を備えた50mLスルホン化フラスコ;減圧およびN2用の継手。
【0139】
例5)と同様にして90℃で反応させ、90分の重合時間後に約100%の反応(1H−NMRで判定)を得た。純粋な生成物19.9g(90%)を単離した。
【0140】
GPC(THF、PS基準):Mn=1,770、Mw=2,080、PDI=1.17(計算値:Mn=2,210);MALDI−TOF MS:Mn=1,920、Mw=2,020、PDI=1.09;
【0141】
【表9】

【0142】
b)Br末端基の4−ヒドロキシ−TEMPOによる置き換え
出発材:
例6a)のBr置換ポリマー5.0g(Br末端基8.3mmol);4−ヒドロキシ−TEMPO 1.43g(8.3mmol);CuBr1.20g(8.3mmol);式:
【0143】
【化18】

【0144】
のMe6TREN1.91g(8.3mmol)。
【0145】
磁気撹拌機を備えた25mL三つ口フラスコ中、N2下で上述の試薬を混合し(配位子形成体Me6TRENを除く)、そして3回の排気およびN2を流すことによって酸素を除いた。そこで、室温において配位子形成体Me6TRENを加えると、混合物は、急速にオレンジ色から黒色を経て緑色へと変色し、そして温度が上昇して50℃になった。室温でさらに1時間反応させ、濾過した。その後、ジオキサン10mLを加え、そして酸化アルミニウムを毎回5gずつ加えて(残存Cu錯体を吸着するため)撹拌し、ヌッチェで濾過することを2回実施した。溶液をロータリーエバポレーター中60℃で2時間濃縮した。生成物5.2g(90%)を得た。
【0146】
GPC:Mn=2,280(計算値:2,140)、Mw=2,630、PDI=1.15。
【0147】
【表10】

【0148】
Br含有量から、置換率を91.5%と算出した。
【0149】
c)より高い分子量を有する“4星形”重合物の製造
出発材:
アクリル酸n−ブチル(Fluka、高純度級(purum))269.4g(2.1mol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)1.67g(12.0mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))2.09g(3.0mmol);1,2,2,3−テトラキス(2−ブロモプロピオニルオキシメチル)プロパン(例3の開始剤)39.54g(20.0mmol);還流冷却器、機械撹拌機および滴下漏斗を備えた1,000mLスルホン化フラスコ;減圧およびN2用の継手。
【0150】
例5c)と同様にして、45分の重合時間の後に、約100%の反応が達成され(1H−NMRで判定)、そして酢酸エステル中、Al23で処理して、純粋な生成物297.0g(96%)を単離した。
【0151】
GPC(THF、PS基準):Mn=5,080(計算値:Mn=5,290)、Mw=6,190、PDI=1.22
【0152】
【表11】

【0153】
d)1.ポリ(n−BA)ブロックおよび2.ポリ−DMAEAブロックを有する“4星形”共重合物の製造
出発材:
例6a)の低分子量“4星形”重合物80.0g;アクリル酸2−ジメチルアミノエチル(DMAEA、BASF、技術級(techn.))10.74g(75mmol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)1.08g(7.5mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))1.23g(7.5mmol);機械撹拌機およびセプタムを備えた750mLスルホン化フラスコ。
【0154】
Cu(I)Br、例6a)の低分子量“4星形”重合物、およびDMAEAを反応容器に仕込み、そしてこれを数回の排気およびN2を流すことにより脱気した。これに配位子形成体(N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン)を加え、排気し、そしてN2を流して雰囲気を新しくした。油浴中に浸漬して、この混合物を90℃に加熱し、そして60分間反応させ、約100%の反応を達成させた(1H−NMRで判定)。冷却して酢酸エチル150mLで希釈し、そしてAl23(Alox(登録商標))80.0gを加え、60分間撹拌して濾過した。ポリマー溶液をロータリーエバポレーター中80℃で完全に濃縮した(1時間)。生成物76.6g(85%)を得た。
【0155】
GPC(THF、PS基準):Mn=5,820(計算値:Mn=5,800)、Mw=7,410、PDI=1.27
【0156】
【表12】

【0157】
e)1.ポリ(n−BA)ブロックおよび2.ポリ−HEAブロックを有する“4星形”共重合物の製造
出発材:
例6a)の低分子量“4星形”重合物80.0g;アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA、BASF、技術級(techn.))8.71g(75mmol);Cu(I)Br(Fluka、高純度級(purum)、酢酸で洗浄して乾燥)1.08g(7.5mmol);N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(Fluka、高純度級(purum))1.23g(7.5mmol);機械撹拌機およびセプタムを備えた750mLスルホン化フラスコ。
【0158】
例6d)と同様にして、生成物68.4g(77%)を得た。
【0159】
GPC(THF、PS基準):Mn=6,880(計算値:Mn=5,660)、Mw=9,730、PDI=1.41
【0160】
【表13】

【0161】
例7
1,3,5−トリス(2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ)ベンゼン:
【0162】
【化19】

【0163】
の製造
100mL丸底フラスコ中で、磁気撹拌機で撹拌しながら、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(Fluka、最高純度級(puriss.))5.0g(39.6mmol)をTHF40mL中に溶解し、これにピリジン(Fluka、最高純度級(puriss.))9.40g(118.8mmol)を加えた。この溶液を5℃に冷却し、そしてTHF20mL中に溶解したα−ブロモイソ酪酸ブロミド(Fluka、工業用(pract.))27.34g(118.8mmol)を、攪拌しながらゆっくり1時間かけて加えた。添加後、60℃でさらに1時間撹拌し、その懸濁液を室温に冷却して濾過した。ロータリーエバポレーター中で溶媒を留去し、残分を水で洗浄し、そしてイソプロパノールから再結晶した。収量:白色結晶11.04g(48.2%)。薄層クロマトグラフィーで精製した生成物の融点:186.4℃。
【0164】
【表14】

【0165】
例8
1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(2−クロロプロパノイルオキシ)−n−ヘキサン
【0166】
【化20】

【0167】
の製造
100mL丸底フラスコ中で、磁気撹拌機で撹拌しながら、ソルビトール(Fluka、最高純度級(puriss.))5.0g(27.4mmol)をTHF10mL中に溶解し、これにピリジン(Fluka、最高純度級(puriss.))13.0g(164.4mmol)を加えた。この溶液を室温に冷却し、そしてTHF20mL中に溶解した2−クロロプロパノイルクロリド(Fluka、工業用(pract.))23.35g(164.4mmol)を、撹拌しながらゆっくり1時間かけて加えた。添加後、60℃でさらに4時間撹拌し、その懸濁液を室温に冷却して濾過した。ロータリーエバポレーター中で溶媒を留去し、残分をt−ブチルメチルエーテルに溶解して水で洗浄し、そして活性炭上で濾過した。溶媒を0.05mbarの減圧で除去した。収量:帯黄色油状物11.85g(59.6%)。これをさらにカラムクロマトグラフィー(“フラッシュ”法)によりシリカゲル上で精製した。薄層クロマトグラフィーにより精製した生成物の収量:7.02g(35.3%)。
【0168】
【表15】

【0169】
例9
より高い分子量を有する“3星形”重合物の製造
セプタムおよび磁気撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、メタクリル酸メチル(MMA、Fluka、最高純度級(puriss.))4.71g(47mmol)を、窒素雰囲気下、以下のように重合した。すなわち、それぞれの量のCu(I)Br触媒(Fluka、高純度級(purum))、例7の1,3,5−トリス(2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ)ベンゼン開始剤、溶媒(必要に応じ)およびMMAをフラスコに仕込み、ゴム製セプタムで密閉した。撹拌しながらその容器を排気し、窒素で洗浄することを3回実施した。引き続いて配位子形成体PMDETA(N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、Fluka、高純度級(purum))を注射器で添加した。容器を油浴中で90℃に加熱し、そして一定時間ごとの試料採取およびCDCl3中のNMR測定により、反応の進行を観察した。表1に反応条件を示す。
【0170】
【表16】

【0171】
処理:ポリマーを酢酸エステル20mL中に溶解して濾過した後、エタノール150mLから沈殿させた。濾過して、減圧下に、50℃で乾燥した後、重合物(ポリ(MMA))を白色粉末として得た。表2に、収率ならびにGPC(THF、PS基準)および光散乱法(LS、Wyatt Down DSP:“Multi Angle Laser Scattering Instrument”)による分子量測定値のような特性データの報告を含む。
【0172】
【表17】

【0173】
PDI値が小さく、そしてLSのMw値がGPCのそれに比べて大きいことは、これらの星形巨大分子の緻密な分子構造を示唆している。
【0174】
例10
より高い分子量を有する6分枝構造の重合物の製造
セプタムおよび磁気撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、アクリル酸n−ブチル(n−BA、Fluka、最高純度級(puriss.))4.71g(47mmol)を、窒素雰囲気下で以下のように重合した。すなわち、それぞれの量のCu(I)Br触媒(Fluka、高純度級(purum))、例8の1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(2−クロロプロパノイルオキシ)−n−ヘキサン開始剤、溶媒(必要に応じ)およびn−BAをフラスコに仕込み、ゴム製セプタムで密閉した。撹拌しながら容器を排気し、窒素を流すことを3回実施した。引き続いて配位子形成体PMDETA(N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、Fluka、高純度級(purum))を注射器で添加した。容器を油浴中で90℃に加熱し、そして一定時間ごとの試料採取およびCDCl3中のNMR測定により、反応の進行を観察した。表3に反応条件を示す。
【0175】
【表18】

【0176】
処理:反応混合物を酢酸エステル25mLで希釈し、そしてAl23(触媒の吸着)1.5gの混合、濾過、そして減圧下100℃での乾燥後(<0.4mbar、1時間)、ポリ(n−BA)を油状物として得た。表3に、収率およびGPC(THF、PS基準)および光散乱法(LS、Wyatt Down DSP:“Multi Angle Laser Scattering Instrument”)による分子量測定値のような特性データの報告を含む。
【0177】
【表19】

【0178】
PDI値が小さく、そしてLSのMw値がGPCのそれに比べて大きいことは、これらの星形巨大分子の緻密な分子構造を示唆している。
【0179】
例11
例3と同様にして、1,2,2,3−テトラキス(2−ブロモプロピオニルオキシメチル)プロパン開始剤を製造した。アクリル酸n−ブチル(n−BA)を、例5a)と同様にしてこの開始剤と反応させ、4腕形星状ポリマーに転換した:特性値の記載:Mn=5,080、Mw=6,200、PDI=1.22、Br(測定値):5.56%。
【0180】
この4腕形星状ポリ(アクリル酸−n−ブチル)80.0gおよびCuBr(Fluka、酢酸洗浄により精製)1.08g(7.5mmol)を、機械撹拌機を備えた750mL丸底フラスコ中に仕込んだ。撹拌ならびに3回の排気および窒素を流すことにより空気を排除した。PMDETA(Fluka/高純度級(purum))1.23g(1.57mL、7.5mmol)を注射器でセプタムを通して注入した。容器を排気し、窒素を流して雰囲気を新しくした。この混合物を撹拌により均質にした後、これを油浴上で60℃に加熱した。アクリル酸2−ジメチルアミノエチル(BASF、技術級(technische Qualitaet))10.74g(11.47mL、75mmol)を、注射器でセプタムを通して注入した。温度を90℃に1時間(重合時間)昇温した。CDCl3中の1H−NMR測定により、反応率を約100%と判定した。室温に冷却後、酢酸エチル150mLおよび中性酸化アルミニウム(クロマトグラフィー用のAlox(登録商標))80gを加えた。室温で1時間撹拌し、濾過して、ロータリーエバポレーター中、高減圧下に80℃で1時間乾燥してポリマーを得た。収量:76.62g(85%)。
【0181】
【表20】

【0182】
Cu:166ppm(蛍光X線);GPC(THF):Mn=5,800、
w=7,370、PDI=1.27

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化21】


(式中、
1は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基である)
の化合物、およびこれら化合物の異性体であるα−ハロゲノカルボン酸エステル。
【請求項2】
式(I)中、
1は、C1〜C3アルキルまたはフェニルであり;
Xは、塩素または臭素であり、そして
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、あるいは完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基である
化合物、およびこれら化合物の異性体である、請求項1記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)。
【請求項3】
残基R2が、部分式:
【化22】


(式中、Raは、α−ハロアシルを意味する)の基である、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基である、請求項1記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)。
【請求項4】
残基R2が、部分式:
【化23】


(式中、Raは、α−ハロアシルを意味する)の基である、アシル化された分枝状の4価アルコールの残基である、請求項1記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)。
【請求項5】
α−ハロアシルが、α−クロロプロピオニルまたはα−ブロモプロピオニルの意味を有する、請求項3または4記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)。
【請求項6】
式:
【化24】


(式中、Xは、臭素またはヨウ素を意味する)の、請求項1記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル。
【請求項7】
式:
【化25】


(式中、Xは、臭素またはヨウ素を意味する)の、請求項1記載のα−ハロゲノカルボン酸エステル。
【請求項8】
式:
【化26】


(式中、
1は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基であり;
AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり;
xおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい数であり;
Xは、塩素、臭素またはヨウ素であり;そして
mは、3〜6の整数を意味する)
のポリマーまたはブロックコポリマー。
【請求項9】
式(V)中、
1は、C1〜C3アルキルまたはフェニルであり;
Xは、塩素または臭素であり、そして
2は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、あるいは完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基であり、
AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり;
xおよびyは、0より大きい整数であって、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であり;そして
mは、3または4を意味する、
請求項8記載のブロックコポリマー(V)。
【請求項10】
式:
【化27】


(式中、
1′は、水素、C1〜C4アルキル、シアノ、フェニルまたはC1〜C4アルキルフェニルであり;
2′は、アシル化された分枝状の3価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは分枝状の4価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状の5価または6価アルコールの残基、完全または部分アシル化された直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトースの残基、あるいは完全または部分アシル化された二糖類の残基であり;
AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり;
xおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい整数であり;
Xは、塩素、臭素またはヨウ素であり;
mは、3〜6の整数を意味し;
1およびR2の一方がC1〜C7アルキルで、他方がC1〜C4アルキルか、またはC1〜C4アルコキシカルボニルもしくはC1〜C4アルコキシで置換されたC1〜C4アルキルを意味し;あるいは
1およびR2は、隣接するC原子と一緒になってC3〜C7シクロアルキルを意味し;
3およびR4は、R1およびR2の意味を有し;
aは、C1〜C4アルキル、シアノ、C1〜C4アルコキシカルボニル、C1〜C4アルカノイルオキシ、C1〜C4アルカノイルオキシC1〜C4アルキル、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、モノ−もしくはジ−2−ヒドロキシエチルカルバモイル、アミジノ、2−イミダゾリル、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−プロピルカルバモイルまたは1,1−ジヒドロキシメチル−2−ヒドロキシカルバモイルであり;そして
bは、Raの意味を有するか;または
aおよびRbは、一緒になって、2価の基を表し、そして5、6、7もしくは8員環をもつ脂肪族または芳香族複素環基を形成し、それは窒素、酸素および硫黄の群からの追加のヘテロ原子1〜3個を含有できる)
のポリマーまたはブロックコポリマー。
【請求項11】
式(V)中のR1、R2、A、B、x、yおよびmが前述の意味を有する、請求項8記載のポリマーまたはブロックコポリマー(V)、およびポリマー組成物中に通常使用される添加剤類を含有するポリマー組成物。
【請求項12】
a)式(V)中のR1、R2、A、B、x、yおよびmが前述の意味を有する、請求項8記載のポリマーまたはブロックコポリマー(V);および
b)式:
x−By (IX)
(式中、AおよびBは、エチレン性不飽和モノマー単位からなるポリマーブロックであり、そしてxおよびyは、ブロックAおよびB中のモノマー単位の数であって、ここでxおよびyの一方の値が0で、他方の値が0より大きい整数であるか、またはxおよびyの両方の値とも0より大きい整数である)
のさらなるポリマーまたはオリゴマー;
を含有するポリマー組成物。
【請求項13】
式(I)中のR1、R2およびxが、請求項1記載の意味を有するα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)の製造方法であって、式:
【化28】


のα−ハロゲノカルボン酸またはその反応可能な官能性の酸誘導体を、アルコール:
HO−R2′ (IV)
(式中、R2′はそのOH基と一緒になって、分枝状の3価アルコール、直鎖状もしくは分枝状の4価アルコール、直鎖状の5価または6価アルコール、直鎖状もしくは環状のC4〜C6アルドースまたはC4〜C6ケトース、あるいは二糖類、およびこれらの化合物の異性体を意味する)、
または反応可能なアルコール誘導体と反応させることを特徴とする、α−ハロゲノカルボン酸エステル(I)の製造方法。
【請求項14】
式(V)中のR1、R2、A、B、X、x、yおよびmが、請求項1および8記載の意味を有するポリマーまたはブロックコポリマー(V)の製造方法であって、重合開始剤としてのα−ハロゲノカルボン酸エステル(I)(ここで、R1、R2およびXは前述の意味を有する)、および酸化可能な遷移金属錯体触媒の存在下における原子移動ラジカル重合(ATRP)によって、ポリマーブロックAおよびBのもとになるエチレン基をもつ脂肪族モノマー類に重合反応をさせることを特徴とする方法。
【請求項15】
式(V)中の・Xが、非環鎖状(offenkettige)もしくは環状のR′R″N−O・基によって置き換えられているポリマーまたはブロックコポリマーの製造のための、ポリマーまたはブロックコポリマー(V)の使用。

【公開番号】特開2012−46762(P2012−46762A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227082(P2011−227082)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2000−594762(P2000−594762)の分割
【原出願日】平成12年1月10日(2000.1.10)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】