説明

ATSシステムの登録データ検証装置

【課題】机上又はシミュレータによらないで、現実的な妥当性検証を行うことができるATSシステムの登録データ検証装置10を提供すること。
【解決手段】検証装置10は、列車を実際の運行条件で検証対象線路を走行させ、サンプリング測位地点情報をGPS受信器から取得し記憶部に記憶する。検証装置10は、速度照査パターン発生地点などの登録位置対応情報もGPS受信器から取得し記憶部に記憶する。検証装置は、前記サンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を表示画面上にプロット表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の信号保安装置として新たに開発された車上速度照査式ATS(ATS−X)システムをはじめとする距離情報に基づく速度照査を実施するATSシステムにおける登録データの妥当性の検証装置に関する。前記登録データとは、ATSシステムの車上装置及び地上装置に登録された距離情報等の制御データである。
【背景技術】
【0002】
ATSシステムは、運転士が停止信号を誤認して進行するなどのヒューマンエラーが発生したときに、自動的に列車のブレーキを動作させて列車を停止信号手前までに停止させる機能を有する。また、線路の曲線などの速度制限箇所に対し、列車が許容速度以上で進入した場合においても、列車を許容速度以下に、又は停止させる機能を有する。
【0003】
近年、導入が進んでいる連続制御式ATSシステムは、非特許文献2〜3に記載されている如く、車上での距離積算及び地上からの情報により、車上装置で目標地点までの距離並びに目標速度を算出し、現在速度と照査することで、ブレーキ制御を行っている。これらのATSシステムは、従来の点制御式ATSシステムと比較すると格段に保安度の向上が図られている。しかしながら、ATSシステムに登録する距離情報等の制御データに誤りがあると本来機能を発揮することが出来なくなるばかりか、誤り方によっては危険側となるという問題がある。
【0004】
そこで、ATSシステムに登録する距離情報等の制御データを事前に検証することが必須である。ところが、距離情報に基づく速度照査を実施するATSシステムの登録データの妥当性は、従来は検証対象の登録データを机上並びにシミュレータを用いて検証するだけであった。特許文献1や特許文献2に記載されている制御データの妥当性の検証システムも同様である。しかしながら、このような机上やシミュレータでは、登録データの現実的な妥当性検証を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−320933号公報
【特許文献2】特開2008−198230号公報
【特許文献3】特開平09−240470号公報
【特許文献4】特開2008−247219号公報
【特許文献5】特表2001−516076号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】論文番号517「GPS利用過速度検知装置について」、第37回鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集、2000年11月
【非特許文献2】財団法人鉄道総合技術研究所の会報RRR 2008.7「ATCとATSで列車を安全に走らせる」
【非特許文献3】財団法人鉄道総合技術研究所のホームページ 「主な研究成果(2005年度) 8.現行ATSと互換性のある車上速度照査式ATS」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、机上又はシミュレータによらないで、現実的な妥当性検証を行うことができるATSシステムの登録データ検証装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するATSシステムの登録データ検証装置は、ATS車上装置を備えた列車を実際の運行条件で走行させて検証対象線路の登録データの検証を行う登録データ検証装置であって、前記列車に搭載され前記ATS車上装置から登録データ及びその関連情報が入力される制御部と、列車の現在位置を測位して前記制御部に測位地点情報を入力するGPS受信器と、前記制御部に入力された情報並びに前記制御部から出力された情報を記憶する記憶部とから構成されている。
そして、本発明に係るATSシステムの登録データ検証装置は、列車位置を所定のサンプリング時間間隔でGPS受信器から取得し、サンプリング測位地点情報として記憶部に記憶し、列車が登録位置を通過した時刻に前記ATS車上装置が発生する信号をトリガーとして当該時刻における列車位置をGPS受信器から取得し、登録位置対応情報として記憶部に記憶し、前記サンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を前記制御部で処理して登録データに対応する実測データを生成し、前記実測データと比較することによって登録データを検証する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ATSシステム用の登録データの検証装置を低コストで提供できるようになった。また、本発明により、新規に導入するATSシステムの登録されたデータの妥当性を検証することができ、登録データの誤りによる保安度の低下を防ぐことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1のATSシステムの登録データ検証装置のブロック構成図と使用態様の説明図である。
【図2】速度照査パターンの一例を示す図である。
【図3】本発明のATSシステムの登録データ検証装置により作成された登録データ検証用の列車走行軌跡図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
列車位置検出などの分野で既に利用されているGPSやジャイロコンパスの技術を利用して、実際の運行条件で検証対象の線路を走行する列車の位置情報を時系列的に取得するようにした。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1は、ATS車上装置6を備えた列車5を実際の運行条件で走行させて検証対象の線路1の登録データの検証を行う登録データ検証装置10である。列車5には車上子3と速度発電機4が取り付けられている。
【0013】
列車5が地上子2の上を通過すると、車上子3と地上子2との間に電磁的結合が行われ、地上子2から車上子3に固定情報が送信される。車上子3が受信した地上子2の固定情報は当該地上子の設置位置情報を含み、この情報は車上装置6に入力される。従って、車上子3が地上子2から固定情報を受信し車上装置6に入力した時刻が、地上子2を列車が通過した時刻である。車上装置6は、ATSシステムに必要なデータが登録されたデータ記憶部を備えており、車上子3が受信した地上子2の固定情報から、当該地上子の設置位置が速度照査パターン発生地点であると判断した場合には、トリガーパルスを検証装置10に入力する。また、車上速度照査式ATS−Xシステムでは、地上子結合だけでなく、車上装置に登録した曲線等の設備データにより速度照査パターンを作成するため、列車5が速度発電機による距離積算によって、あらかじめ車上装置6に登録している曲線等(基準地点からの距離を登録)のパターン発生地点と認識した時点でもトリガーパルスを検証装置10に入力する。
【0014】
検証装置10は、車上装置6から登録データ及びその関連情報が入力される制御部と、列車5の現在位置を測位し前記制御部に測位地点情報を入力するGPS受信器11と、列車5の進行方位を測定し前記制御部に方位情報を入力するジャイロコンパス12と、前記制御部に入力された情報並びに前記制御部から出力された情報を記憶する記憶部とから構成されている。図示しないが、検証装置10には前記制御部に接続されたキーボードなどの入力部、前記制御部の出力情報を表示する表示部、前記制御部の出力情報をプリントするプリンタ部を備える。
【0015】
【表1】

【0016】
以下、表1並びに図2と図3を参照しながら、本発明の一実施例のATSシステムの登録データ検証装置10の動作を説明する。
【0017】
(サンプリング測位地点情報の取得と記憶)
検証装置10は、実際の運行条件で検証対象の線路を走行する列車に搭載され、所定のサンプリング間隔でGPSによる測位を行い、測位時刻における位置情報Pn、即ち緯度xnと経度ynで特定する測位地点情報P(xn, y)を記憶部に記憶する。
【0018】
即ち、検証装置10は、先ず、列車のスタート時刻T1に始発地点である基準地点をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報P1(x1, y1)を記憶部に記憶する。なお、ATS−Xシステムでは車上子が位置確定用地上子と結合した時点を基準位置とするため、上記列車のスタート時刻T1は車上子が位置確定用地上子と結合した時刻となる。
続いて、検証装置10は、第2回目の測位時刻である測位時刻T2に現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報P2(x2, y2)を記憶部に記憶する。
続いて、第3回目の測位時刻である測位時刻T3に現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報P3(x3, y3)を記憶部に記憶する。
以下、GPSによる測位とその測位地点情報の記憶部への記憶は、列車5が対象線路1の終点に到達するまで続けられる。
【0019】
(登録位置対応情報の取得と記憶)
検証装置10には車上装置6から測位指令が入力されるようになっている。測位指令はトリガーパルス信号であって、列車が速度照査パターンの発生地点に到達した時刻Tα、列車が曲線開始地点を通過した時刻Tβ、列車5が曲線終了地点を通過した時刻Tγに車上装置6において発生し、リアルタイムで検証装置10に入力される。
【0020】
図2に示す如く、速度照査パターンの発生地点はATS地上子2の設置位置であって、ATS車上子3がATS地上子2と電磁的に結合した時刻に車上装置6は前記トリガーパルスを発生する。また、列車5が速度発電機による距離積算によって、あらかじめ車上装置6に登録している曲線等(基準地点からの距離を登録)のパターン発生地点と認識した時刻にも、トリガーパルスを発生する。
【0021】
測位指令が入力されると、直ちに検証装置10は現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報と、測位時刻を記憶部に記憶する。
即ち、車上装置6が速度照査パターンを発生する地点に列車5が到達した時刻Tαに測位指令のトリガーが入力されると、検証装置10は現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報Pα(xα, yα)と、測位時刻Tαを記憶部に記憶する。
列車5が曲線開始地点を通過した時刻Tβに測位指令のトリガーが入力されると、検証装置10は現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報Pβ(xβ, yβ)と、測位時刻Tβを記憶部に記憶する。
列車5が曲線終了地点を通過した時刻Tγに測位指令のトリガーが入力されると、検証装置10は現在位置をGPS受信器11で測位し、その測位地点情報Pγ(xγ, yγ)と、測位時刻Tγを記憶部に記憶する。
【0022】
所定のサンプリング時間間隔毎の測位時刻とその時刻における現在位置である測位地点、及び車上装置6から測位指令のトリガーパルスが入力された測位指令時刻とその時刻における現在位置である測位地点の情報が、検証対象線路1の始発駅から終着駅までの全工程にわたって記憶部に記憶された後に、検証作業員は登録データの検証作業を以下に説明する方法で行う。
【0023】
(GPSによる測位ができない区間の走行距離の実測)
トンネル区間などのGPS受信器11による測位ができない区間の走行距離等のデータの取得は、車上装置からの列車走行速度情報とジャイロコンパス12による方位情報を用いて、例えば次のようにして行う。
【0024】
第M回目の測位時刻TmにGPSによる測位ができなかったとする。すると、検証装置10は車上装置6にアクセスして列車5の走行速度vmを取得して記憶部に記憶する。続いて、ジャイロコンパス12による方位測定を行い、方位情報θmを取得し、記憶部に記憶する。第M+1回目の測位時刻Tm+1に、検証装置10は車上装置6にアクセスして列車5の走行速度vm+1を取得して記憶部に記憶する。続いて、ジャイロコンパスによる方位測定を行い、その時刻における方位情報θm+1を取得し、記憶部に記憶する。以下、GPSによる測位ができる区間に達するまで、測位時刻毎の列車5の走行速度並びに方位情報の取得と記憶部への記憶を行う。なお、表2は、方位情報、走行速度、及び推定測位地点の対応関係を示す。
【0025】
【表2】

【0026】
GPS受信器11による測位ができない区間の測位時刻における推定測位地点情報Pm(xm, y)は、次のようにして求める。検証装置10の制御部は第M−1回目の測位時刻Tm-1におけるGPSによる測位地点情報Pm-1(xm-1、ym-1)を読み出し、走行速度vm、方位情報θm、サンプリング時間間隔、及び測位地点情報Pm-1を用い、所定の演算を行って求められる。
【0027】
(速度照査パターン発生地点の登録データの検証)
列車5が速度照査パターン発生地点に到達した時刻Tαが第P回目の測位時刻Tと第P+1回目の測位時刻Tp+1との間であるとすると、検証装置10は測位地点Pαと隣接する直前の測位地点PPとの隣接地点間距離dαを算出する。隣接地点間距離dαは、検証装置10の制御部が測位地点情報Pα(xα, yα)とPP(xp, y)を記憶部から読み出し、所定の演算を行って算出する。続いて、検証装置10の制御部が基準地点から測位地点Pαまでの走行距離Dαを、数式1を用いて算出する。
【0028】
【数1】

【0029】
上述の如く、検証装置10の制御部はサンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を処理し、登録データに対応する実測データを生成する。この場合のサンプリング測位地点情報は第1回目から第P回目のサンプリングにより取得され記憶部に記憶された全ての測位地点情報であり、登録位置対応情報は列車が速度照査パターン発生地点に到達した時刻Tαにおける測位地点情報Pα(xα, yα)である。
【0030】
数式1で算出された基準地点である始発駅からの実際の走行距離Dα、即ち、登録データに対応する実測データを車上装置6に登録されている距離データLαと比較し、登録データの妥当性を検証作業員が検証する。もしも妥当でないと判断したら、登録データを実データに置き換えるなどの修正を行う。
【0031】
(列車が曲線開始地点を通過した地点の登録データの検証)
列車5が曲線開始地点を通過した時刻Tβが第Q回目の測位時刻Tと第Q+1回目の測位時刻である測位時刻Tq+1との間であるとすると、検証装置10は測位地点Pβと隣接する直前の測位地点Pとの隣接地点間距離dβを算出する。隣接地点間距離dβは、検証装置10の制御部が測位地点情報Pβ(xβ, yβ)とPq(xq, yq)を記憶部から読み出し、所定の演算を行って算出する。続いて、検証装置10の制御部が基準地点から測位地点Pβまでの走行距離Dβを、数式2を用いて算出する。
【0032】
【数2】

【0033】
上述の如く、検証装置10の制御部はサンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を処理し、登録データに対応する実測データを生成する。この場合のサンプリング測位地点情報は第1回目から第Q回目のサンプリングにより取得され記憶部に記憶された全ての測位地点情報であり、登録位置対応情報は列車が速度照査パターン発生地点に到達した時刻Tβにおける測位地点情報Pβ(xβ, yβ)である。
【0034】
数式2で算出された基準地点である始発駅からの実際の走行距離Dβ、即ち、登録データに対応する実測データを車上装置6に登録されている距離データLβと比較し、登録データの妥当性を検証作業員が検証する。もしも妥当でないと判断したら、登録データを実データに置き換えるなどの修正を行う。
【0035】
(列車が曲線終了地点を通過した地点の登録データの検証)
列車5が曲線終了地点を通過した時刻Tγが第R回目の測位時刻Tと第R+1回目の測位時刻である測位時刻Tr+1との間であるとすると、検証装置10は測位地点Pγと隣接する直前の測位地点Pとの隣接地点間距離dγを算出する。隣接地点間距離dβは、検証装置10の制御部が測位地点情報Pγ(xγ, yγ)とPr(xr, yr)を記憶部から読み出し、所定の演算を行って算出する。続いて、検証装置10の制御部が基準地点から測位地点Pγまでの走行距離Dγを、数式3を用いて算出する。
【0036】
【数3】

【0037】
上述の如く、検証装置10の制御部はサンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を処理し、登録データに対応する実測データを生成する。この場合のサンプリング測位地点情報は第1回目から第R回目のサンプリングにより取得され記憶部に記憶された全ての測位地点情報であり、登録位置対応情報は列車が速度照査パターン発生地点に到達した時刻Tγにおける測位地点情報Pγ(xγ, yγ)である。
【0038】
数式3で算出された基準地点である始発駅からの実際の走行距離Dγ、即ち、登録データに対応する実測データを車上装置に登録されている距離データLγと比較し、登録データの妥当性を検証作業員が検証する。もしも妥当でないと判断したら、登録データを実データに置き換えるなどの修正を行う。
【0039】
(曲線開始地点と曲線終了地点の検証)
曲線開始地点と曲線終了地点の登録データは、実際の線路1の曲線で特定される曲線開始地点と曲線終了地点を図面上で対比することで妥当性を検証する。
【0040】
検証装置10は、特定の速度照査パターン発生地点、曲線開始地点、曲線終了地点の線路を、図3に示す如く、測位地点情報を表示画面上にプロットして表示する。表示に用いられた測位地点情報は、速度照査パターン発生地点Pαの直前の測位地点Pより前の任意の測位地点から、曲線終了地点Pγの直後の測位地点Pr+1より後の任意の測位地点までである。
【0041】
次に検証装置10は、速度照査パターン発生地点への到達時刻Tαの測位地点Pα、曲線開始地点の通過時刻Tβの測位地点Pβ、曲線終了地点の通過時刻Tγの測位地点Pγを表示画面上にプロットする。
【0042】
このようにして表示された表示画面上から、検証作業員は、実際の線路1の曲線の開始地点と終了地点を特定する。或いは、このようにして表示された表示画面をプリントした印刷画面を見て、検証作業員は、実際の線路の曲線の開始地点と終了地点を特定する。
【0043】
なお、列車5が通過した軌跡及び列車が登録位置を通過した時刻における位置は、GISから取得した地図情報を処理した地図上にプロット表示し、或いはこれをプリントアウトすることによって、登録データの妥当性の検証が更に容易になる。また、GISに信号機建植位置や分岐器、橋梁等の情報を登録することで、これらに対するデータ検証を行うことも可能になる。
【0044】
図3から表3の如きデータが一目瞭然に読み取れ、これによって登録データの妥当性の検証が容易になされることが理解されるであろう。
【0045】
【表3】

【0046】
ところで、上述の実施例では、ATS車上子3がATS地上子2と電磁的に結合した時刻、又は、列車5が速度発電機による距離積算によって、あらかじめ車上装置6に登録している曲線等(基準地点からの距離を登録)のパターン発生地点と認識した時刻にトリガーパルスを発生するものとした。しかしながら、前記トリガーパルスは、列車に添乗している検証作業員が検証装置10に備えた入力ボタンを操作して任意の時刻に発生させるようにしてもよい。任意時刻にトリガーパルスを発生させるようにすることで、キロポストや構造物等に対してのマーカーを検証作業員が検証装置10に入力できるようになり、これらに関する登録データの検証が可能になる。
【0047】
また、上述の実施例では、GPSによる測位ができない区間の走行距離の実測にジャイロコンパス12により得られる方位情報を利用するとして説明した。しかしながら、ジャロコンパス12により得られる方位情報θはサンプリング時刻毎に取得し、検証装置10の記憶部に記憶するようにしてもよい。この場合、測位時刻T1、T、T・・・・Tにジャイロコンパス12が出力した方位情報θ、θ、θ・・・・θが測位地点情報と共に検証装置の記憶部に記憶される。このようにすることで、例えば或る測位時刻における測位地点情報が欠損し又は異常値を示した場合には、これらの方位情報と当該測位情報の前後の測位情報で当該測位情報を推定することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 線路
2 地上子
3 車上子
4 速度発電機
5 列車
6 車上装置
10 検証装置
11 GPS受信器
12 ジャイロコンパス



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATS車上装置を備えた列車を実際の運行条件で走行させて検証対象線路の登録データの検証を行う登録データ検証装置であって、
前記列車に搭載され前記ATS車上装置から登録データ及びその関連情報が入力される制御部と、列車の現在位置を測位して前記制御部に測位地点情報を入力するGPS受信器と、前記制御部に入力された情報並びに前記制御部から出力された情報を記憶する記憶部とから構成され、
列車位置を所定のサンプリング時間間隔でGPS受信器から取得し、サンプリング測位地点情報として記憶部に記憶し、
列車が登録位置を通過した時刻に前記ATS車上装置が発生する信号をトリガーとして当該時刻における列車位置をGPS受信器から取得し、登録位置対応情報として記憶部に記憶し、
前記サンプリング測位地点情報と登録位置対応情報を前記制御部で処理して登録データに対応する実測データを生成し、
前記実測データと比較することによって登録データを検証するATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項2】
前記列車が登録位置を通過した時刻は、車上子と地上子が電磁的に結合した時刻であることを特徴とする請求項1に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項3】
前記列車が登録位置を通過した時刻は、列車が速度発電機による距離積算によって予め車上装置に登録している曲線等のパターン発生地点と車上装置が認識した時刻であることを特徴とする請求項1に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項4】
前記列車には更にジャイロコンパスが搭載されており、GPS受信器による測位ができない区間では、所定のサンプリング時間間隔で前記ジャイロコンパスの方位情報を取得してサンプリング方位情報として記憶部に記憶し、前記制御部は前記ATS車上装置から入力された走行速度情報と前記サンプリング方位情報から推定サンプリング測位地点情報を生成して記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項5】
前記制御部は表示器を備えたものであって、前記表示器には前記時サンプリング測位地点情報と前記登録対応位置情報に基づいて、列車が通過した軌跡及び列車が登録位置を通過した時刻における位置がプロット表示されることを特徴とする請求項1又は4に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項6】
前記列車が通過した軌跡及び列車が登録位置を通過した時刻における位置は、GISから取得した地図情報を処理した地図上にプロット表示されることを特徴とする請求項5に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項7】
前記制御部はプリンタを備えたものであって、前記プリンタは前記サンプリング位置情報と前記登録対応位置情報に基づいて、列車が通過した軌跡及び列車が登録位置を通過した時刻における位置がプロットでプリントすることを特徴とする請求項1又は4に記載のATSシステムの登録データ検証装置。
【請求項8】
前記列車が通過した軌跡及び列車が登録位置を通過した時刻における位置は、GISから取得した地図情報を処理した地図上にプロットでプリントすることを特徴とする請求項7に記載のATSシステムの登録データ検証装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−215157(P2010−215157A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66118(P2009−66118)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】