説明

Akt活性の阻害剤

新規なピロール化合物、タンパク質キナーゼB活性の阻害剤としての、また、癌および関節炎の処置における、該化合物の使用が見出された。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本願は2008年6月26日に出願された米国仮出願第61/075843号公報の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規なピロール化合物、このような化合物のタンパク質キナーゼB(以下、PKB/Akt、PKB、またはAkt)活性の阻害剤としての使用、ならびに癌および関節炎の処置における使用に関する。
【0003】
背景技術
本発明は、セリン/トレオニンキナーゼAkt(タンパク質キナーゼBとも呼ばれる)の1以上のイソ型の活性の阻害剤であるピロール含有化合物に関する。本発明はまた、このような化合物を含んでなる医薬組成物、および癌および関節炎の処置において本化合物を用いる方法に関する(Liu et al. Current Opin. Pharmacology 3:317-22 (2003))。
【0004】
アポトーシス(プログラムされた細胞死)は、胚発達ならびに神経変性疾患、心血管疾患、および癌などの様々な疾患の病因において本質的な役割を果たす。最近の研究においては、プログラムされた細胞死の調節または実行に関与する様々なアポトーシス促進遺伝子産物および抗アポトーシス遺伝子産物の同定に至っている。Bcl2またはBcl−xなどの抗アポトーシス遺伝子の発現は、様々な刺激によって誘導されるアポトーシス細胞死を阻害する。一方で、BaxまたはBadnなどのアポトーシス促進遺伝子の発現は、プログラムされた細胞死をもたらす(Adams et al. Science, 281:1322-1326 (1998))。プログラムされた細胞死の実行は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9などを含む、カスパーゼ−1関連のプロテイナーゼにより媒介される(Thornberry et al. Science, 281:1312-1316 (1998))。
【0005】
ホスファチジルイノシトール3’−OHキナーゼ(PI3K)/Akt/PKB経路は、細胞の生存/細胞死を調節するのに重要であると思われる(Kulik et al. Mol.Cell.Biol. 17:1595-1606 (1997)、 Franke et al. Cell, 88:435-437 (1997)、 Kauffmann-Zeh et al. Nature 385:544-548 (1997)、 Hemmings Science, 275:628-630 (1997)、 Dudek et al. Science, 275:661-665 (1997))。血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)、およびインスリン様成長因子−1(IGF−1)などの生存因子は、PI3Kの活性を誘導することによって、様々な条件下で細胞の生存を促進する(Kulik et al. 1997, Hemmings 1997)。活性化されたPI3Kは、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)−三リン酸(PtdIns(3,4,5)−P3)の産生をもたらし、次いでそれは、プレクストリンホモログ(PH)ドメインを含むセリン/トレオニンキナーゼAktに結合し、その活性化を促進する(Franke et al Cell, 81:727-736 (1995)、Hemmings Science, 277:534 (1997)、Downward, Curr. Opin. Cell Biol. 10:262-267 (1998)、 Alessi et al., EMBO J. 15: 6541-6551 (1996))。PI3Kの特異的な阻害剤またはドミナントネガティブAkt/PKB変異体は、これらの成長因子またはサイトカインの生存促進活性を無効にする。これまでに、PI3Kの阻害剤(LY294002またはワートマニン)が上流キナーゼによるAkt/PKBの活性化を遮断することが開示されている。加えて、構成的に活性なPI3KまたはAkt/PKB変異体を導入すると、細胞が通常であればアポトーシスによる細胞死を受ける条件下で細胞の生存が促進される(Kulik et al. 1997, Dudek et al. 1997)。
【0006】
ヒト腫瘍におけるAktレベルの分析によれば、Akt2が、かなりの数の卵巣癌(J. Q. Cheung et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:9267-9271 (1992))および膵臓癌(J. Q. Cheung et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:3636-3641 (1996))で過剰発現されていることが示された。同様に、Akt3は、乳癌細胞系および前立腺癌細胞系で過剰発現されていることが見出された(Nakatani et al. J. Biol.Chem. 274:21528-21532 (1999))。Akt−2は、12%の卵巣癌で過剰発現されていたこと、そして、Aktの増幅は未分化腫瘍の50%で特に頻度が高かったことが示され、これは、Aktが腫瘍の攻撃性とも関係し得ることを示唆するものである(Bellacosa et al. Int. J. Cancer, 64, pp. 280-285, 1995)。Akt1キナーゼ活性の増加は、乳癌、卵巣癌および前立腺癌において報告されている(Sun et al. Am. J. Pathol. 159: 431-7 (2001))。
【0007】
PtdIns(3,4,5)−P3の3’リン酸を特異的に取り除くタンパク質および脂質ホスファターゼである腫瘍サプレッサーPTENは、PI3K/Akt経路の負のレギュレーターである(Li et al. Science 275:1943-1947 (1997)、Stambolic et al. Cell 95:29-39 (1998)、Sun et al. Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A. 96:6199-6204 (1999))。PTENの生殖細胞系突然変異は、カウデン病などのヒト癌症候群の原因となる(Liaw et al. Nature Genetics 16:64-67 (1997))。PTENは、高い割合のヒト腫瘍で欠失しており、機能的なPTENの無い腫瘍細胞系統は、高レベルの活性型Aktを示す(Liら前掲、Guldberg et al. Cancer Research 57:3660-3663 (1997)、Risinger et al. Cancer Research 57:4736-4738 (1997))。
【0008】
これらの所見は、PI3K/Akt経路が、腫瘍形成における細胞生存またはアポトーシスを調節するのに重要な役割を果たすことを示す。
【0009】
第2のメッセンジャーにより調節されるセリン/トレオニンタンパク質キナーゼのAkt/PKBサブファミリーの三つのメンバーが同定されており、それぞれAkt1/PKBα、Akt2/PKBβ、およびAkt3/PKBγと呼ばれている。これらのイソ型は、特に触媒ドメインをコードしている領域が相同である。Akt/PKBは、PI3Kシグナル伝達に応答して生じるリン酸化事象によって活性化される。PI3Kは、膜イノシトールリン脂質をリン酸化し、第2のメッセンジャーであるホスファチジル−イノシトール3,4,5−三リン酸およびホスファチジルイノシトール3,4−二リン酸を生成し、これがAkt/PKBのPHドメインと結合することが示されている。Akt/PKB活性化の現行モデルでは、3’リン酸化型ホスホイノシチドにより膜に酵素が補充され、そこで、上流キナーゼによるAkt/PKBの調節部位のリン酸化が生じることを提唱している(B.A. Hemmings, Science 275:628-630 (1997)、 B.A. Hemmings, Science 276:534 (1997)、 J. Downward, Science 279:673-674 (1998))。
【0010】
Akt1/PKBαのリン酸化は、二つの調節部位、すなわち、触媒ドメイン活性化ループ中のThr308と、カルボキシ末端付近のSer473とで生じる(D. R. Alessi et al. EMBO J. 15:6541-6551 (1996)およびR. Meier et al. J. Biol. Chem. 272:30491-30497 (1997))。同様の調節性リン酸化部位は、Akt2/PKBβとAkt3/PKBγに生じる。Akt/PKBを活性化ループ部位でリン酸化する上流キナーゼがクローニングされており、3’−ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ1(PDK1)と呼ばれている。PDK1は、Akt/PKBだけでなくp70リボソームS6キナーゼ、p90RSK、血清およびグルココルチコイド調節型キナーゼ(SGK)およびタンパク質キナーゼCをリン酸化する。カルボキシ末端付近のAkt/PKBの調節部位をリン酸化する上流キナーゼはまだ同定されていないが、最近の報告では、インテグリン連結型キナーゼ(ILK−1)、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼまたは自己リン酸化に対する役割が示唆されている。
【0011】
Aktの活性化および活性の阻害は、PI3KをLY294002およびワートマニンなどの阻害剤で阻害することにより達成することができる。しかしながら、PI3Kの阻害は、3つのAktアイソザイムのみならず、チロシンキナーゼのTecファミリーなどのPdtIns(3,4,5)−P3に依存する他のPHドメイン含有シグナル伝達分子にも無差別に影響を及ぼす可能性がある。さらにまた、AktがPI3K非依存的な増殖シグナルによって活性化され得ることも開示されている。
【0012】
あるいは、Akt活性は、上流キナーゼPDK1の活性を遮断することによって阻害され得る。化合物UCN−01は、すでに報告されているPDK1阻害剤である(Biochem. J. 375(2):255 (2003))。また、PDK1の阻害は、活性が非定型PKCイソ型、SGKおよびS6キナーゼなどのPDK1に依存する複数のタンパク質キナーゼの阻害をもたらす(Williams et al. Curr. Biol. 10:439-448 (2000))。
【0013】
Aktの小分子阻害剤は、腫瘍、特に活性化されたAktを伴う腫瘍(例えば、PTENヌル腫瘍およびras突然変異を伴う腫瘍)の処置に有用である。PTENはAktの重要な負のレギュレーターであり、その機能は、乳癌、前立腺癌、膠芽腫、およびバナヤン−ゾナナ症候群(Maehama, T. et al. Annual Review of Biochemistry, 70: 247 (2001))、カウデン病(Parsons, R.; Simpson, L. Methods in Molecular Biology (Totowa, NJ, United States), 222 (Tumor Suppressor Genes, Volume 1): 147 (2003))、およびレルミット−デュクロス病(Backman, S. et al. Current Opinion in Neurobiology, 12(5): 516 (2002))をはじめとするいくつかの癌症候群を含む、多くの癌で失われている。Aktの阻害は、白血病の処置に関連づけられている(J. C. Byrd, S. Stilgenbauer and I. W. Flinn "Chronic lymphocytic leukemia." Hematology / the Education Program of the American Society of Hematology. American Society of Hematology. Education Program (2004), 163-83)。Akt3は、エストロゲン受容体欠損乳癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系でアップレギュレートされており、Akt2は、膵臓癌および卵巣癌で過剰発現されている。Akt1は胃癌で増幅されており(Staal, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5034-7 (1987))、乳癌でアップレギュレートされている(Stal et al. Breast Cancer Res. 5: R37-R44 (2003))。従って、小分子Akt阻害剤は、これらのタイプの癌ならびに他のタイプの癌の処置に有用であると思われる。Akt阻害剤は、さらなる化学療法薬と組み合わせても有用である。
【0014】
本発明の目的は、Akt/PKBの阻害剤である新規な化合物を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、また、医薬担体と、本発明の方法に有用な化合物とを含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、また、このようなAkt/PKB活性阻害剤を投与することを含んでなる癌を処置する方法を提供することである。
【0017】
本発明の目的は、また、このようなAkt/PKB活性阻害剤を投与することを含んでなる関節炎を処置する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、下記式(I)の新規な化合物またはその塩に関する:
【化1】

[式中、
Qは、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および芳香環が置換されたベンジルから選択され、
Lは、窒素および−C(H)−から選択され、
Pは、窒素および−C(R40)−(ここで、R40は水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択される)から選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
X、YおよびZは、独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、および−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、
X、Y、およびZの多くとも一つが窒素であり、かつ
PおよびLの多くとも一つが窒素である)]。
【0019】
本発明は、式(I)の化合物の薬学上許容される塩に関する。
【0020】
本発明は、それを必要とする対象に有効量のAkt/PKBを阻害する式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩を投与することを含んでなる、癌を処置する方法に関する。
【0021】
本発明は、それを必要とする対象に有効量のAkt/PKBを阻害する式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩を投与することを含んでなる、関節炎を処置する方法に関する。
【0022】
本発明はまた、式(I)の化合物がAkt/PKBの阻害剤として有効であるという知見に関する。
【0023】
本発明のさらなる態様では、本発明のAkt/PKB阻害化合物の製造に有用な新規な方法が提供される。
【0024】
本発明には、医薬担体および本発明の方法に有用な化合物を含んでなる医薬組成物が含まれる。
【0025】
また、本発明には、本発明のAkt/PKB阻害化合物とさらなる有効成分を共投与する方法が含まれる。
【発明の具体的説明】
【0026】
本発明は、上記のような式(I)の化合物およびその塩、好適にはその薬学上許容される塩に関する。
【0027】
本発明の式(I)の化合物はAkt/PKB活性を阻害する。特に、本明細書に開示される化合物は、三つのAkt/PKBイソ型をそれぞれ阻害する。
【0028】
本発明の式(I)の化合物には、下記式(II)の化合物またはその塩が含まれる:
【化2】

[式中、
Qは、フェニル、ハロゲンおよびトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基により置換されたフェニル、ベンジル、ならびにその芳香環がハロゲンおよびトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基により置換されたベンジルから選択され、
は、水素、トリフルオロメチル、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
Lは、窒素および−C(H)−から選択され、
Pは、窒素および−C(R45)−(ここで、R45は水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択される)から選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
XおよびYは、独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、および−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、
XおよびYの多くとも一つが窒素であり、かつ
PおよびLの多くとも一つが窒素である)]。
【0029】
本発明の式(I)の化合物には、式(II)の化合物の薬学上許容される塩が含まれる。
【0030】
本発明の式(II)の化合物には、下記式(IIA)の化合物またはその塩が含まれる:
【化3】

[式中、
Qは、フェニル、1〜2個のフルオリド置換基により置換されたフェニル、ベンジル、およびその芳香環が1〜2個のフルオリド置換基により置換されたベンジルから選択され、
は、水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
は、水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
XおよびYは、独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲンおよび−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、かつ
XおよびYの多くとも一つが窒素である)]。
【0031】
本発明の式(II)の化合物には、式(IIA)の化合物の薬学上許容される塩が含まれる。
【0032】
本発明の式(I)の化合物には、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、および
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−4’−クロロ−2’,5−ジメチル−2’H−1,3’−ビピラゾール−3−カルボキサミド
またはその塩、好適には薬学上許容される塩が含まれる。
【0033】
式(I)の化合物およびその塩、好適には薬学上許容される塩は、本発明の医薬組成物に含まれ、本発明の方法に用いられる。
【0034】
本明細書に記載されるある種の化合物は、1以上のキラル原子を含んでもよく、あるいはそうでなければ、二つの鏡像異性体として存在し得る。従って、本発明の化合物は、鏡像異性体の混合物ならびに精製された鏡像異性体または実質的に鏡像異性体的に富化された混合物を含む。また、総ての互変異性体および互変異性体の混合物が式(I)の化合物の範囲内に含まれると理解される。
【0035】
本明細書に記載されるある種の化合物は溶媒和物を形成してもよく、溶媒和物は、溶質(本発明では、式(I)の化合物およびその塩、好適には薬学上許容される塩)と溶媒によって形成される様々な化学量論の複合体であると理解される。本発明の目的のためのこのような溶媒は、その溶質の生物活性に干渉しないものであろう。好適な溶媒の例としては、限定されるものではないが、水、メタノール、エタノール、および酢酸が挙げられる。好ましくは、用いる溶媒は薬学上許容される溶媒である。好適な薬学上許容される溶媒の例としては、限定されるものではないが、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。
【0036】
本明細書において「置換された」とは、特に断りのない限り、対象とする化学部分が、−CO20、C−Cアルキル、ヒドロキシC−Cアルキル、C−Cアルキルオキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、アミノC−Cアルキル、ジC−Cアルキルアミノ、ヒドロキシ、ニトロ、テトラゾール、シアノ、オキソ、ハロゲンおよびトリフルオロメチル(ここで、R20は水素、C−Cアルキル、およびトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜5個の置換基、好適には1〜3個の置換基を有することを意味する。
【0037】
好適には、本明細書において「置換された」とは、対象とする化学部分が、C−Cアルキル、ヒドロキシC−Cアルキル、C−Cアルキルオキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、アミノC−Cアルキル、ヒドロキシ、テトラゾール、ハロゲン、およびトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基を有することを意味する。
【0038】
好適には、本明細書において「置換された」とは、対象とする化学部分が、フルオリドおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1個の置換基を有することを意味する。
【0039】
本明細書において「ヘテロ原子」とは、酸素、窒素、または硫黄を意味する。
【0040】
本明細書において「ハロゲン」とは、ブロミド、ヨージド、クロリド、およびフルオリドから選択される置換基を意味する。
【0041】
「アルキル」およびその派生語は、「−(CH」、「−(CH」などにより定義されるアルキル鎖を含む本明細書における総ての炭素鎖では、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和炭化水素鎖を意味し、特に断りのない限り、炭素鎖は1〜12個の炭素原子を含む。本明細書で用いるアルキルの例としては、−CH、−CH−CH、−CH−CH−CH、−CH(CH、−CH−CH−C(CH、−C≡C−C(CH、−C(CH、−(CH−CH、−CH−CH(CH、−CH(CH)−CH−CH、−CH=CH、および−C≡C−CHが挙げられる。
【0042】
本明細書において「処置する」およびその派生語は、予防的療法および治療的療法を意味する。予防的療法は、例えば、対象が癌を発症するリスクが高いと考えられる場合などの、対象が癌の家族歴を有する場合、または対象が発癌物質に曝された場合に適当である。
【0043】
本発明の化合物の塩、好適には薬学上許容される塩は当業者によって容易に製造される。
【0044】
式(I)の化合物およびその薬学上許容される塩は、本発明の医薬組成物に含まれ、本発明の方法に用いられる。−COOHまたは−OH基が存在する場合には、薬学上許容されるエステルが使用可能であり、例えば、−COOHについてはメチル、エチル、ピバロイルオキシメチルなどであり、−OHについてはアセテート、マレエートなどであり、これらのエステルは、徐放処方物またはプロドラッグ処方物として用いるための、溶解度または加水分解特性の改良が当分野で知られている。
【0045】
式(I)の化合物は、以下のスキーム1〜4に示されるように、または類似の方法により製造される。総ての出発材料は、実験の節に反対のことが示されていない限り、商業的に入手可能であるか、商業的に入手可能な出発材料から当業者によって容易に作製されるか、または文献の報告に従って製造される。
【0046】
一般スキーム
スキーム1
【化4】

試薬:(a)BHTHF、HOAc/MeOH、(b)フタルイミド、PPh、DIAD、THF、RT、(c)HCl、ジオキサン/DCM、RT
アミノ酸(I−1)を、THF中のボランを用いて還元し、対応するアルコール(I−2)を得た。次に、アルコール(I−2)を光延条件下で反応させて、違った保護のジアミン(I−3)を得た。光延反応は有機合成の熟練者によく知られている。このような変換の方法および反応条件はSynthesis 1981, 1-28に述べられている。HClなどの酸を用いて(I−3)のBoc基の選択的脱保護を行い、アミン(I−4)を得た。当業者であれば多くの異なる保護基を利用でき、本明細書に挙げられている方法を妨げない限り、ここで使用可能である。アミン保護の方法は、Greene "Protective Groups in Organic Synthesis" (Wiley-lnterscienceにより出版)などの標準的な書籍に記載されている。
【0047】
スキーム2
【化5】

試薬:(a)1−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン、AcOH、90℃ (b)NCS、DMF、90℃ (c)NCS、 DMF 90℃ (d)6N NaOH、THF (e)2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、i−PrEtN、DCM、PyBrOP 25℃ (f)ヒドラジン、MeOH/THF 25℃
2,5−ビス(メチルオキシ)テトラヒドロ−3−フランカルボン酸メチル(II−1)を、酢酸中、1−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン上で環化し、ピロールエステル(II−2)を得た。その後、塩素化により、二つのモノクロロ位置異性体(II−3)と(II−4)の3:1混合物を得た。2倍過剰の塩素化剤では、三つの位置異性体(II−5)、(II−6)および(II−7)の2:1:1混合物が得られた。エステル加水分解およびPyBrOPなどの好適なカップリング試薬を用いたアミド形成の後、ヒドラジンでフタルイミドの脱保護を行い、ピロールアミドを得た。
【0048】
スキーム3
【化6】

試薬:(a)CuI、Fe(acac)、CsCO、DMF、90℃、(b)NCS、THF、50℃、(c)1M LiOH、THF、(d)2−[(2S)−2−アミノ−3−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、i−PrEtN、DCM、PyBrOP、25℃、(e)ヒドラジン、MeOH/DCM、25℃
5−ヨード−1−メチル−1H−ピラゾール(III−1)および1H−イミダゾール−4−カルボン酸メチル(III−2)のN−アリール化を、CsCOなどの塩基の存在下、CuIなどの適当な銅塩とFe(acac)などの助触媒により触媒し、イミダゾールエステル(III−3)を得た。次に、塩素化の後にエステル加水分解を行い、酸(III−4)を得た。PyBrOPなどの好適なカップリング試薬を用いたアミド形成の後、ヒドラジンでフタルイミドの脱保護を行い、イミダゾールアミド(III−6)を得た。
【0049】
スキーム4
【化7】

試薬:(a)i−PrMgCl、BocNNBoc、−78℃、(b)ジオキサン中4MのHCl、DCM、c)3−オキソ酪酸エチル、EtOH、還流、d)NCS、THF、50℃、(e)1M LiOH、THF、(f)2−[(2S)−2−アミノ−3−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、i−PrEtN、DCM、PyBrOP、25℃、(g)ヒドラジン、MeOH/DCM、25℃
iPrMgClを用いて5−ヨード−1−メチル−1H−ピラゾール(III−1)のハロゲン−金属交換反応を行った後、中間体アニオンをビス(1,1−ジメチルエチル)(E)−1,2−ジアゼンジカルボキシレートで急冷し、Boc保護ヒドラジン(IV−1)を得た。ジオキサン中4MのHClなどの酸でBocの脱保護を行った後、3−オキソ酪酸エチルを用いて環化し、目的の(IV−2)に有利な、分割可能な位置異性体の2:1混合物を得た。次に、塩素化およびエステル加水分解により酸(IV−3)を得た。PyBrOPなどの好適なカップリング試薬を用いたアミド形成の後、ヒドラジンでフタルイミドの脱保護を行い、イミダゾールアミド(IV−4)を得た。
【0050】
本明細書において「共投与する」およびその派生語は、本明細書に記載されるAKT阻害化合物と、化学療法および放射線治療を含む癌の処置に有用であることが知られているか、または関節炎の処置に有用であることが知られているさらなる有効成分または有効成分群との同時投与または任意の様式の個別逐次投与を意味する。本発明においてさらなる有効成分または有効成分群には、癌または関節炎に対する処置を必要とする患者に投与した際に有利な特性が知られている、または有利な特性を示すいずれの化合物または治療薬も含まれる。好ましくは、投与が同時でなければ、それらの化合物は互いに近接した時間内に投与される。さらに、これらの化合物は同一投与形態で投与されるか否かは重要でなく、例えば、一方の化合物が局所投与され、他方の化合物が経口投与されてもよい。
【0051】
一般に、本発明の癌の処置においては、処置される感受性腫瘍に対して活性を有する抗腫瘍剤を投与すればよい。このような薬剤の例としては、Cancer Principles and Practice of Oncology by VT. Devita and S. Hellman (編), 第6版 (February 15, 2001), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出せる。当業者ならば、どの薬剤組合せが有用であるか、その薬剤の個々の特徴と関与する癌に基づいて判断することができる。本発明で有用な典型的な抗腫瘍剤としては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの抗微小管剤、白金配位錯体、ナイトロジェンマスタード、オキサアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼンなどのアルキル化剤、アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物質、エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤、プリンおよびピリミジン類似体および抗葉酸化合物などの代謝拮抗物質、カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫治療薬、アポトーシス誘導薬、および細胞周期シグナル伝達阻害剤が挙げられる。
【0052】
本発明のAKT阻害化合物と組み合わせて用いられる、または共投与されるさらなる有効成分または有効成分群(抗腫瘍剤)の例として、化学療法薬がある。抗微小管または抗有糸分裂剤は、細胞周期のM期すなわち有糸分裂期の腫瘍細胞の微小管に対して活性のある細胞周期特異的薬剤である。抗微小管剤の例としては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。
【0053】
天然供給源に由来するジテルペノイドは、細胞周期のG/M期に働く細胞周期特異的な抗癌剤である。ジテルペノイドは微小管のβ−チューブリンサブユニットと結合することにより、このタンパク質を安定化すると考えられる。その後、このタンパク質の脱会合が阻害され、有糸分裂が抑えられ、細胞死に至るようである。ジテルペノイドの例としては、限定されるものではないが、パクリタキセルおよびその類似体のドセタキセルが挙げられる。
【0054】
パクリタキセル、(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−ベンゾエート13−エステルは、タイヘイヨウイチノの木(Pacific yew tree)Taxus brevifoliaから単離される天然のジテルペン産物であり、注射溶液タキソール(TAXOL)(商標)として商業的に入手可能である。それは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。Wani et al. J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971により1971年に最初に単離され、化学的方法およびX線結晶学的方法によって、その構造が同定された。その活性機構の一つは、チューブリンと結合することにより癌細胞の増殖を阻害するパクリタキセルの能力に関係する。Schiff et al. Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565 (1980)、 Schiff et al. Nature, 277:665-667 (1979)、 Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441 (1981)。いくつかのパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性についての総説としては、D. G. I. Kingston et al. Studies in Organic Chemistry vol. 26, 表題「New trends in Natural Products Chemistry 1986」, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne, 編. (Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235を参照。
【0055】
パクリタキセルは、米国で難治性卵巣癌の処置における臨床使用が認可されており(Markman et al. Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991、 McGuire et al. Ann. lntem, Med., 111:273, 1989)、また、乳癌の処置にも認可されている(Holmes et al. J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991)。これは、皮膚の腫瘍(Einzig et al. Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)および頭頸部癌(Forastire et al. Sem. Oncol., 20:56, 1990)の処置のための有力な候補である。該化合物はまた、多発性嚢胞腎疾患(Woo et al. Nature, 368:750. 1994)、肺癌およびマラリアの処置にも可能性を示す。パクリタキセルを用いた患者の処置は、閾値濃度(50nM)(Kearns, C.M. et al. Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)を上回る投与を行う期間と関連して、骨髄抑制をもたらす(multiple cell lineages, Ignoff, R.J. et al. Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
【0056】
ドセタキセル、5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾエートとの(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,13ーエステル三水和物は、注射溶液としてのタキソテール(TAXOTERE)(商標)として商業的に入手可能である。ドセタキセルは、乳癌の処置に関して指示される。ドセタキセルは、パクリタキセル(q.v.)の半合成誘導体であり、ヨーロッパイチイの木の針葉から抽出される天然前駆体10−デアセチル−バッカチン(baccatin)IIIを用いて製造される。ドセタキセルの用量制限毒性は、好中球減少である。
【0057】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ植物に由来する細胞周期特異的な抗腫瘍剤である。ビンカアルカロイドは、チューブリンに特異的に結合することにより細胞周期のM期(有糸分裂期)に作用する。結果的に、結合されたチューブリン分子は、微小管へと重合することができない。有糸分裂が分裂中期に抑えられ、細胞死に至ると考えられている。ビンカアルカロイドの例としては、限定されるものではないが、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンがある。
【0058】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、注射溶液としてのVELBAN(商標)として商業的に入手可能である。それらは、様々な固形腫瘍の二次療法としての適用の可能性を持つが、主として精巣癌、およびホジキン病を含む様々なリンパ腫、ならびにリンパ球性リンパ腫および組織球性リンパ腫の処置において指示される。骨髄抑制が、ビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0059】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチン,22−オキソ−硫酸塩は、注射溶液としてのオンコビン(ONCOVIN)(商標)として商業的に入手可能である。ビンクリスチンは、急性白血病の処置に対して指示され、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫に対する治療計画での使用も見られる。脱毛および神経作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、また、程度は低いが、骨髄抑制および消化管粘膜炎作用が生じる。
【0060】
酒石酸ビノレルビンの注射溶液(ナベルビン(NAVELBINE)(商標))として商業的に入手可能なビノレルビン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R,R)−2,3−ジヒドロキシブタンジオエート(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、様々な固形腫瘍、特に非小細胞肺癌、進行性乳癌、およびホルモン不応性前立腺癌の処置において、単剤として、または他の化学療法剤、例えばシスプラチンと組み合わせて指示される。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0061】
白金配位錯体は、非細胞周期特異的抗癌剤であり、DNAとの相互作用性がある。この白金配位錯体は腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAと鎖内および鎖間の架橋を形成して、腫瘍に有害な生物学的影響を引き起こす。白金配位錯体の例としては、限定されるものではないが、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。
【0062】
シスプラチン、シス−ジアンミンジクロロ白金は、注射溶液としてのプラチノール(PLATINOL)(商標)として商業的に入手可能である。シスプラチンは、主に転移性精巣癌および卵巣癌および進行性膀胱癌の処置に指示される。シスプラチンの主な用量制限副作用は腎毒性(水和および利尿により管理可能)および内耳神経毒性である。
【0063】
カルボプラチン、白金,ジアミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O’])は、注射溶液としてのパラプラチン(PARAPLATIN)(商標)として商業的に入手可能である。カルボプラチンは、主に進行性卵巣癌の第一処置および第二処置において指示される。骨髄抑制が、カルボプラチンの用量制限毒性である。
【0064】
アルキル化剤は、非細胞周期特異的抗癌剤であり、強力な求電子物質である。一般に、アルキル化剤は、アルキル化によって、ホスフェート、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシル、およびイミダゾール基などのDNA分子の求核部分を介してDNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化は核酸機能を破壊し、細胞死に至らせる。アルキル化剤の例としては、限定されるものではないが、シクロホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード類、ブスルファンなどのスルホン酸アルキル類、カルムスチンなどのニトロソ尿素類、およびダカルバジンなどのトリアゼン類が挙げられる。
【0065】
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド一水和物は、注射溶液または錠剤としてのシトキサン(CYTOXAN)(商標)として商業的に入手可能である。シクロホスファミドは、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、および白血病の処置において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて指示される。脱毛、嘔気、嘔吐、および白血球減少が、シクロホスファミドの最も一般的な用量制限副作用である。
【0066】
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、注射溶液または錠剤としてのアルケラン(ALKERAN)(商標)として商業的に入手可能である。メルファランは、多発性骨髄腫および卵巣の切除不能の上皮癌の待期療法として指示される。骨髄抑制が、メルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0067】
クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、リューケラン(LEUKERAN)(商標)錠剤として商業的に入手可能である。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫およびホジキン病などの悪性リンパ腫の待期療法として指示される。骨髄抑制が、クロラムブシルの最も一般的な用量制限副作用である。
【0068】
ブスルファン、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートは、ミレラン(MYLERAN)(商標)錠剤として商業的に入手可能である。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の待期療法にとして支持される。骨髄抑制が、ブスルファンの用量制限副作用である。
【0069】
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素、凍結乾燥物質の単一バイアルとしてのBiCNU(商標)として商業的に入手可能である。カルムスチンは、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫の待期療法として、単剤で、または他の薬剤と組み合わせて指示される。遅発性の骨髄抑制が、カルムスチンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0070】
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、単一バイアル材料としてのDTIC−Dome(商標)として商業的に入手可能である。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の処置のために、また、ホジキン病の第二処置のための他の薬剤と組み合わせて指示される。嘔気、嘔吐、および摂食障害が、ダカルバジンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0071】
抗生抗腫瘍剤は、DNAと結合または相互作用する、非細胞周期特異的薬剤である。一般に、その作用により、安定なDNA複合体または鎖の破損をもたらし、その核酸の正常な機能を破壊し、細胞死をもたらす。抗生抗腫瘍剤の例としては、限定されるものではないが、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン類、ダウノルビシン、およびドキソルビシなどのアントラサイクリン類(anthrocyclins)、ならびにブレオマイシン類が挙げられる。
【0072】
ダクチノマイシンは、アクチノマイシンDとしても知られ、注射製剤としてのコスメゲン(COSMEGEN)(商標)として商業的に入手可能である。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の処置に対して指示される。嘔気、嘔吐、および摂食障害が、ダクチノマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0073】
ダウノルビシン、(8S−シス−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソーム注射製剤としてのダウノキソム(DAUNOXOME)(商標)として、または注射製剤としてのセルビジン(CERUBIDINE)(商標)として商業的に入手可能である。ダウノルビシンは、急性非リンパ性白血病および進行性HIV関連カポジ肉腫の処置において緩解誘導のために指示される。骨髄抑制が、ダウノルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0074】
ドキソルビシン、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、注射製剤としてのルベックス(RUBEX)(商標)またはアドリアマイシンRDF(ADRIAMYCIN RDF)(商標)として商業的に入手可能である。ドキソルビシンは、主として、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の処置に対して指示されるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の処置においても有用な成分である。骨髄抑制が、ドキソルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0075】
ブレオマイシン、すなわち、放線菌(Streptomyces verticillus)株から単離される細胞傷害性グリコペプチド抗生物質の混合物は、ブレノキサン(BLENOXANE)(商標)として商業的に入手可能である。ブレオマイシンは、扁平上皮癌、リンパ腫、および精巣癌の待期療法として、単剤で、または他の試薬と組み合わせて指示される。肺および皮膚毒性が、ブレオマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0076】
トポイソメラーゼII阻害剤としては、限定されるものではないが、エピポドフィロトキシンが挙げられる。
【0077】
エピポドフィロトキシンは、マンドレーク植物に由来する細胞周期特異的抗腫瘍剤である。エピポドフィロトキシンは、一般に、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三重複合体を形成し、DNA鎖の破損を引き起こすことにより、細胞周期のS期およびG期の細胞に影響を及ぼす。これらの鎖の破損が蓄積し、細胞死に至る。エピポドフィロトキシンの例としては、限定されるものではないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0078】
エトポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液剤またはカプセル剤としてのVePESID(商標)として商業的に入手可能であり、一般にVP−16としても知られている。エトポシドは、精巣癌および非小細胞肺癌の処置において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて指示される。骨髄抑制が、エトポシドの最も一般的な用量制限副作用である。白血球減少の発生率が、血小板減少よりも重篤となる傾向がある。
【0079】
テニポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射溶液としてのブモン(VUMON)(商標)として商業的に入手可能であり、一般にVM−26として知られている。テニポシドは、小児における急性白血病の処置において、単剤として、または他の化学療法剤との組み合わせにより指示される。骨髄抑制が、テニポシドの最も一般的な用量制限副作用である。テニポシドは、白血球減少と、血小板減少との両方を誘発し得る。
【0080】
代謝拮抗腫瘍剤(Antimetabolite neoplastic agent)は、DNA合成を阻害するか、またはプリンもしくはピリミジン塩基の合成を阻害し、それによりDNA合成を制限することによって、細胞周期のS期(DNA合成期)に作用する細胞周期特異的な抗腫瘍剤である。結果として、S期が進行せず、細胞死に至る。代謝拮抗抗腫瘍剤の例としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン(mecaptopurine)、チオグアニン、およびゲムシタビンが挙げられる。
【0081】
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして商業的に入手可能である。5−フルオロウラシルの投与はチミジル酸合成の阻害をもたらし、RNAおよびDNAの双方に組み込まれる。その結果、一般に細胞死に至る。5−フルオロウラシルは、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、および膵臓癌の処置において、単剤として、または他の化学療法試剤と組み合わせて指示される。骨髄抑制および粘膜炎が、5−フルオロウラシルの用量制限副作用である。他のフルオロピリミジン類似体として、5−フルオロデオキシウリジン(フロキシウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0082】
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、サイトサール−U(CYTOSAR-U)(商標)として商業的に入手可能であり、一般にAra−Cとして知られている。シタラビンは、成長中のDNA鎖の末端にシタラビンが組み込まれることでDNA鎖の伸長を阻害することにより、S期に細胞周期特異性を示すと考えられている。シタラビンは、急性白血病の処置において、単剤として、または他の化学療法試剤と組み合わせて指示される。他のシチジン類似体としては、5−アザシチジンおよび2’,2’−ジフルオロデキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンは、白血球減少、血小板減少、および粘膜炎を誘発する。
【0083】
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、プリネトール(PURINETHOL)(商標)として商業的に入手可能である。メルカプトプリンは、詳細は未だ不明の機構によりDNA合成を阻害することで、S期に細胞周期特異性を示す。メルカプトプリンは、急性白血病の処置において、単剤として、または、他の化学療法剤と組み合わせて指示される。骨髄抑制および消化管粘膜炎が、高用量のメルカプトプリンの予想される副作用である。有用なメルカプトプリン類似体として、アザチオプリンがある。
【0084】
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、タブロイド(TABLOID)(商標)として商業的に入手可能である。チオグアニンは、詳細は未だ不明の機構によりDNA合成を阻害することで、S期に細胞周期特異性を示す。チオグアニンは、急性白血病の処置において、単剤として、または他の化学療法試剤と組み合わせて指示される。白血球減少、血小板減少、および貧血を含む骨髄抑制が、チオグアニン投与の最も一般的な用量制限副作用である。しかしながら、消化管副作用が生じ、用量制限となる場合がある。他のプリン類似体として、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン、およびクラドリビンが挙げられる。
【0085】
ゲムシタビン、2’−デオキシ−2’、2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−イソ型)は、ジェムザール(GEMZAR)(商標)として商業的に入手可能である。ゲムシタビンは、G1/S期の境界で細胞増殖を阻止することで、S期に細胞周期特異性を示す。ゲムシタビンは、局所的な進行性非小細胞肺癌の処置においてシスプラチンと組み合わせて、また、局所的な進行性膵臓癌の処置において単独で指示される。白血球減少、血小板減少、および貧血を含む骨髄抑制が、ムシタビン投与の最も一般的な用量制限副作用である。
【0086】
メトトレキサート、N−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして商業的に入手可能である。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジレートの合成に必要とされるジヒドロ葉酸(dyhydrofolic acid)還元酵素の阻害を通じ、DNA合成、修復、および/または置換を阻害することによりS期に細胞周期特異性を示す。メトトレキサートは、絨毛膜癌腫、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに乳房、頭部、頚部、卵巣および膀胱の癌腫の処置において、単剤として、または他の化学療法試剤と組み合わせて指示される。骨髄抑制(白血球減少、血小板減少および貧血)および粘膜炎が、メトトレキサートの投与の予想される副作用である。
【0087】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシン類は、トポイソメラーゼI阻害剤として入手可能であるか、または開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連があると考えられている。カンプトテシンの例としては、限定されるものではないが、イリノテカン、トポテカン、および下記の7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの様々な光学形態が挙げられる。
【0088】
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射溶液としてのカンプトサール(CAMPTOSAR)(商標)として商業的に入手可能である。
【0089】
イリノテカンは、その活性代謝産物SN−38とともに、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合する、カンプトテシン誘導体である。この細胞傷害性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカン(irintecan)またはSN−38三重複合体と複製酵素との相互作用により生じる回復不能な二本鎖破損の結果として生じると考えられる。イリノテカンは、結腸または直腸の転移癌の処置において指示される。イリノテカンHClの用量制限副作用は、好中球減少を含む骨髄抑制および下痢を含むGI作用である。
【0090】
トポテカンHCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射溶液としてのハイカムチン(HYCAMTIN)(商標)として商業的に入手可能である。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合するカンプトテシン誘導体であり、DNA分子のねじれ歪みに応じてトポイソメラーゼIにより生じる一本鎖破損の再連結を抑制する。トポテカンは、卵巣癌および小細胞肺癌の転移癌の第二処置として指示される。トポテカンHClの用量制限副作用は、骨髄抑制、主として好中球減少である。
【0091】
また、現在開発中の、下記式A:
【化8】

の、化学名「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン(ラセミ混合物)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)カンプトテシン(R鏡像異性体)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン(S鏡像異性体)」で知られるラセミ混合物(R,S)型ならびにRおよびS鏡像異性体を含むカンプトテシン誘導体も着目される。このような化合物ならびに関連化合物は、製造方法を含め、米国特許第6,063,923号公報、同第5,342,947号公報、同第5,559,235号公報、同第5,491,237号公報、および1997年11月24日に出願された継続米国特許出願第08/977217号公報に記載されている。
【0092】
ホルモンおよびホルモン類似体は、ホルモンと癌の増殖および/または増殖の欠如との間に関係がある癌を処置するのに有用な化合物である。癌治療で有用なホルモンおよびホルモン類似体の例としては、限定されるものではないが、小児の悪性リンパ腫および急性白血病の処置に有用なプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、アミノグルテチミドおよび他のアロマターゼ阻害剤、例えば、副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含むホルモン依存性乳癌の処置に有用なアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール(vorazole)およびエクセメスタン、プロゲストリン(progestrin)、例えば、ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の処置に有用な酢酸メゲストロール、エストロゲン、アンドロゲン、および抗アンドロゲン、例えば、前立腺癌および良性の前立腺肥大の処置に有用なフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンおよび5α−還元酵素、例えば、フィナステリドおよびデュタステライド、抗エストロゲン作用薬、例えば、ホルモン依存性乳癌および他の感受性癌の処置に有用なタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、ならびに選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMS)、例えば米国特許第5,681,835号公報、同第5,877,219号公報、および同第6,207,716号公報に記載のもの、ならびに前立腺癌の処置のための黄体形成ホルモン(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えば、LHRH促進薬および拮抗薬、例えば酢酸ゴセレリンおよびロイプロリド(luprolide)が挙げられる。
【0093】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を引き起こす化学的方法を遮断または阻害する阻害剤である。本明細書において、この変化は細胞増殖または分化である。本発明に有用なシグナル伝達阻害剤としては、受容体チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール(phosphotidyl inositol)−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達、およびRas癌遺伝子の阻害剤が含まれる。
【0094】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する様々なタンパク質の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、大きくは受容体または非受容体型キナーゼとして分類することができる。
【0095】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、トランスメンブランドメインおよびチロシンキナーゼドメインを有するトランスメンブランタンパク質である。受容体チロシンキナーゼは細胞増殖の調節に関与し、一般に成長因子受容体と呼ばれている。例えば過剰発現または突然変異による、これら多くのキナーゼの不適当または制御を欠いた活性化、すなわち異常なキナーゼ成長因子受容体活性は、制御を欠いた細胞増殖をもたらすことが示されている。従って、このようなキナーゼの異常な活性は、悪性組織増殖と関連づけられている。結果として、このようなキナーゼの阻害剤は、癌治療法を提供し得る。成長因子受容体としては、例えば、上皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮成長因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様ドメインおよび表皮性成長因子相同ドメインを含むチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン成長因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkBおよびTrkC)、エフリン(eph)受容体ならびにRET癌原遺伝子が挙げられる。成長受容体のいくつかの阻害剤が開発中であり、リガンド拮抗剤、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。成長因子受容体および成長因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803-818、Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 1997年2月、およびLofts, F. J et al, "Growth factor receptors as targets", New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy,Workman, Paul and Kerr, David編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0096】
成長因子受容体キナーゼでないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼと呼ばれる。抗癌剤の標的または潜在的な標的となる、本発明で用いられる非受容体型チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(焦点接着キナーゼ)、Brutonsチロシンキナーゼ、およびBcr−Ablが挙げられる。このような非受容体型キナーゼおよび非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8 (5): 465-80、およびBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
【0097】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3−Kp85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)、およびRas−GAPを含む様々な酵素またはアダプタータンパク質におけるSH2またはSH3ドメイン結合を乱す薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods 34(3) 125-32に述べられている。
【0098】
Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(Mitogen or Extracellular Regulated Kinase)(MEK)、および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬を含む、MAPキナーゼカスケード遮断薬を含むセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、ならびにPKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、ラムダ、イオタ、ゼータ)の遮断薬を含むタンパク質キナーゼCファミリーメンバー遮断薬。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、aktキナーゼファミリーメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/トレオニンキナーゼおよびそれらの阻害剤は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126 (5) 799-803、 Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107、 Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64、 Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27, Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226、 米国特許第6,268,391号公報、ならびにMartinez-Iacaci, L. et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
【0099】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PKおよびKuの遮断薬を含むホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤もまた本発明において有用であり得る。このようなキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8 (3) 412-8、 Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17 (25) 3301-3308、 Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29 (7):935-8、およびZhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
【0100】
また、本発明では、ミオイノシトールシグナル伝達阻害剤、例えば、ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトール類似体も着目される。このようなシグナル伝達阻害剤は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Paul Workman and David Kerr編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0101】
シグナル伝達経路阻害剤の別の群は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および免疫療法が含まれる。このような阻害剤は、野生型変異体rasを含む細胞においてrasの活性化を阻止し、それにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras癌遺伝子の阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4) 292-8、Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9 (2) 99-102、およびBioChim. Biophys. Acta, (19899) 1423(3):19-30に記載されている。
【0102】
上述のように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体拮抗剤もまた、シグナル伝達阻害剤として機能し得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤は、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用を含む。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286参照)、ハーセプチン(Herceptin)(商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kniases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183参照)、ならびに2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124参照)。
【0103】
非受容体型キナーゼ血管形成阻害剤は、本発明においても有用であり得る。血管形成関連VEGFRおよびTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤について上述されている(両受容体とも、受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害剤が血管形成、主にVEGF発現を阻害することが示されているので、血管形成は一般にerbB2/EGFRシグナル伝達阻害剤と関連する。従って、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンド、血管形成を阻害するインテグリン(αβ)の小分子阻害剤、エンドスタチンおよびアンギオスタチン(非RTK)とは結合する抗VEGF抗体も、本明細書で開示された化合物との組合せにおいて有用である(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935、 Schreiber AB, Winkler MEおよびDerynck R. (1986), Science, 232: 1250-1253、Yen L et al. (2000), Oncogene 19: 3460-3469を参照)。
【0104】
免疫療法計画に用いられる薬剤もまた、式(I)の化合物とのとの組合せにおいて有用であり得る。免疫応答を生じさせるには、多くの免疫学的戦略が存在する。これらの戦略は一般に腫瘍ワクチン接種の範囲にある。免疫学的アプローチの有効性は、小分子阻害剤を用いたシグナル伝達経路の組合せ阻害を通じて大きく増強され得る。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチに関する考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576、およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見出せる。
【0105】
アポトーシス誘導療法で用いられる薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた、本発明の組合せにおいて使用可能である。Bcl−2ファミリータンパク質のメンバーは、アポトーシスを阻止する。従って、bcl−2のアップレギュレーションは、化学療法耐性と関連づけられている。研究によれば、上皮細胞成長因子(EGF)がbcl−2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわち、mcl−1)を刺激することが示された。従って、腫瘍においてbcl−2の発現をダウンレギュレートするように設計された戦略は、臨床的利益が実証され、現在第II/III相治験にある(すなわち、ジェンタのG3139bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)。bcl−2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を用いるこのようなアポトーシス誘導戦略は、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823、およびKitada S et al. (1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に述べられている。
【0106】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼファミリー、およびそれらのサイクリンと呼ばれるタンパク質ファミリーとの相互作用は、真核生物の細胞周期の進行を制御する。細胞周期の正常な進行には、別のサイクリン/CDK複合体の同調的活性化および不活性化が必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6を含むサイクリン依存性キナーゼ、およびそれらの阻害剤の例は、例えばRosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
【0107】
一つの実施形態において、本発明の癌治療法は、式(I)の化合物と、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫治療薬、アポトーシス誘導薬、および細胞周期シグナル伝達阻害剤からなる群から選択されるものなどの少なくとも一つの抗腫瘍剤との共投与を含む。本発明の薬学上活性な化合物はAKT阻害剤として活性があることから、それらは癌および関節炎の処置における治療上の有用性を示す。
【0108】
よって、本発明は、ヒトを含む哺乳類において癌を処置する方法であって、該癌が脳腫瘍(神経膠腫)、膠芽腫、白血病、バナヤン−ゾナナ(Bannayan-Zonana)症候群、カウデン病、レルミット−デュクロス病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫、甲状腺癌、
リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、
悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、
神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰部癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、頬粘膜癌、口腔癌、GIST(消化管間質腫瘍)、および精巣癌
から選択され、
有効量の本発明のAKT阻害化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0109】
好適には、本発明は、脳腫瘍(神経膠腫)、膠芽腫、白血病、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロス病、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、および甲状腺癌からなる群から選択される癌を処置する方法に関する。
【0110】
好適にな、本発明は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌から選択される癌を処置する方法に関する。
【0111】
Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)の単離および精製
Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)を発現する昆虫細胞を、ポリトロン(5mL溶解バッファー/g細胞)を用い、25mM HEPES、100mM NaCl、20mMイミダゾール、pH7.5に溶解させた。細胞残渣を、28,000×gで30分間遠心分離することにより除去した。上清を4.5ミクロンフィルターで濾過した後、溶解バッファーで予め平衡化したニッケルキレートカラムにのせた。このカラムを5カラム容量(CV)の溶解バッファーで、次いで、5CVの20%バッファーB(ここで、バッファーBは25mM HEPES、100mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.5である)で洗浄した。Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)を、10CV以上のバッファーBの20%〜100%直線勾配で溶出した。Hisタグ付きAKT1(136〜480)溶出画分をプールし、バッファーC(ここで、バッファーCは、25mM HEPES、pH7.5である)で3倍希釈した。次いで、このサンプルを、バッファーCで予め平衡化したQ−セファロースHPカラムにてクロマトグラフィーに付した。このカラムを5CVのバッファーCで洗浄した後、5CVの10%D、5CVの20%D、5CVの30%D、5CVの50%Dおよび5CVの100%D(ここで、バッファーDは、25mM HEPES、1000mM NaCl、pH7.5である)で段階的に溶出した。Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)を含む画分をプールし、10kDa分子量カットオフのコンセントレータで濃縮した。Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)を、25mM HEPES、200mM NaCl、1mM DTT、pH7.5で予め平衡化したスーパーデックス(Superdex)75ゲル濾過カラムにてクロマトグラフィーに付した。Hisタグ付きAKT1(aa136〜480)画分を、SDS−PAGEと、質量分析とを用いて調べた。タンパク質をプールし、濃縮し、−80℃で冷凍した。
【0112】
Hisタグ付きAKT2(aa138〜481)およびHisタグ付きAKT3(aa135〜479)を同様に単離および精製した。
【0113】
Hisタグ付きAKT酵素アッセイ
基質リン酸化アッセイにおいて、本発明の化合物のAKT1、2および3タンパク質セリンキナーゼ阻害活性を試験した。このアッセイでは、小分子有機化合物の、ペプチド基質のセリンリン酸化阻害能を調べる。この基質リン酸化アッセイでは、AKT1、2、または3の触媒ドメインを用いる。AKT1、2、および3はまた、Upstate USA社から商業的に入手可能である。この方法では、ビオチニル化された合成ペプチド配列番号1(ビオチン−ahx−ARKRERAYSFGHHA−アミド)のセリン残基上のATPからのγリン酸基の転位を触媒する、単離された酵素の能力を測定する。基質のリン酸化は、以下の手順によって検出した。
【0114】
アッセイは、384ウェルU字底白色プレートで行った。10nMの活性化AKT酵素を、50mM MOPS、pH7.5、20mM MgCl、4μM ATP、8μMペプチド、0.04μCi[g−33P]ATP/ウェル、1mM CHAPS、2mM DTTおよび100%DMSO中の試験化合物1μLを含有する20μlのアッセイ容量中、室温にて40分間インキュベートした。この反応は、50μlのSPAビーズミックス(Mg2+およびCa2+を含まないダルベッコPBS、0.1%トリトンX−100、5mM EDTA、50μM ATP、2.5mg/mlストレプトアビジンコーティングSPAビーズ)を添加することにより停止させた。このプレートを密閉し、ビーズを一晩定着させた後、そのプレートを、パッカード・トップカウント・マイクロプレート・シンチレーション・カウンター(Packard Topcount Microplate Scintillation Counter)(Packard Instrument Co., Meriden, CT)にて計数した。
【0115】
用量応答データを、データ換算式:100×(U1−C2)/(C1−C2)[式中、Uは未知値であり、C1はDMSOに対して得られた平均対照値であり、C2は0.1M EDTAに対して得られた平均対照値である]を用いて計算した対照%として化合物濃度に対してプロットした。データは、y=((Vmax×x)/(K+x))[式中、Vmaxは上漸近線(upper asymptote)であり、KはIC50である]で示される曲線に当てはめる。
【0116】
全長ヒト(FL)AKT1のクローニング:
全長のヒトAKT1遺伝子を、5’プライマー:配列番号2 5’TATATAGGATCCATGAGCGACGTGGC3’および3’プライマー:配列番号3 AAATTTCTCGAGTCAGGCCGTGCTGCTGG3’を用い、ミリスチル化AKT1−ERを含むプラスミド(MTAの下、デューク大学Robert T. Abrahamから譲渡、Klippel et al. in Molecular and Cellular Biology 1998 Volume 18 p.5699に記載)からPCRにより増幅した。クローニングのために、5’プライマーはBamHI部位を含み、3’プライマーはXhoI部位を含んだ。得られたPCR産物を、BamHI/XhoI断片としてpcDNA3にサブクローニングした。システイン25をコードする配列(GC)における突然変異を、QuikChange(商標) Site Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いた部位特異的突然変異誘発によって、アルギニン25をコードする野生型AKT1配列(GC)に変換した。AKT1突然変異誘発プライマー:配列番号4 5’ACCTGGCGGCCACGCTACTTCCTCCと選択プライマー:配列番号5 5’CTCGAGCATGCAACTAGAGGGCC(pcDNA3の多重クローニング部位のXbaI部位を破壊するように設計)を、製造業者の指示に従って用いた。発現/精製のために、AKT1をBamHI/XhoI断片として単離し、pFastbacHTb(Invitrogen)のBamHI/XhoI部位にクローニングした。
【0117】
FLヒトAKT1の発現:
発現は、Invitrogen(カタログ#10359−016)のBAC‐to‐BACバキュロウイルス発現系を用いて行った。要するに、1)cDNAをFastBacベクターからバクミドDNAに移し、2)そのバクミドDNAを単離し、これを用いてSf9昆虫細胞をトランスフェクトし、3)そのウイルスをSf9細胞にて産生させ、4)T.ni細胞をこのウイルスに感染させ、精製に送った。
【0118】
FLヒトAKT1の精製:
全長AKT1の精製のため、130gのsf9細胞(バッチ#41646W02)を、25mM HEPES、100mM NaCl、および20mMイミダゾールを含む溶解バッファー(バッファーA、1L、pH7.5)に再懸濁させた。細胞溶解は、Avestinにより行った(15K〜20Kpsiで2回通す)。細胞残渣を16Krpmで1時間遠心分離することにより除去し、上清を4℃で一晩、10mlのニッケルセファロースHPビーズにバッチで結合させた。次いで、ビーズをカラムに移し、結合した物質をバッファーB(25mM HEPES、100mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.5)で溶出した。AKT溶出画分をプールし、バッファーC(25mM HEPES、5mM DTT、pH7.5)を用いて3倍希釈した。このサンプルを濾過し、バッファーCで予め平衡化した10mLのQ−HPカラムにて2mL/分でクロマトグラフィーに付した。
【0119】
このQ−HPカラムを、3カラム容量(CV)のバッファーCで洗浄した後、5CVの10%D、5CVの20%D、5CVの30%D、5CVの50%D、および5CVの100%Dで段階的に溶出した(ここで、バッファーDは、25mM HEPES、1000mM NaCl、5mM DTT、pH7.5である)。5mL画分を集めた。AKTを含む画分をプールし5mlまで濃縮した。次に、タンパク質を、25mM HEPES、200mM NaCl、5mM DTT、pH7.5で予め平衡化した120mlのスーパーデックス75サイズ分画カラムにのせた。2.5mL画分を集めた。
【0120】
AKT1溶出画分をプールし、分注し(1ml)、−80℃で保存した。質量分析およびSDS−PAGE分析を用いて、精製した全長AKT1の純度および属性を確認した。
全長(FL)AKT2および(FL)AKT3も同様に単離および精製した。
【0121】
全長AKT酵素アッセイ
基質リン酸化アッセイにおいて、本発明の化合物のAKT1、2、および3タンパク質セリンキナーゼ阻害活性を試験した。このアッセイでは、ペプチド基質のセリンリン酸化を阻害する小分子有機化合物の能力を調べる。基質リン酸化アッセイでは、AKT1、2、または3の触媒ドメインを用いる。この方法は、ビオチニル化された合成ペプチド配列番号1(ビオチン−ahx−ARKRERAYSFGHHA−アミド)のセリン残基上のATPからのγリン酸基の転位を触媒する、単離された酵素の能力を測定する。基質のリン酸化は、以下の手順によって検出した。
【0122】
アッセイは、384ウェルU字底白色プレートにて行った。10nMの活性化AKT酵素を、50mM MOPS、pH7.5、20mM MgCl、4μM ATP、8μMペプチド、0.04μCi[g−33P]ATP/ウェル、1mM CHAPS、2mM DTTおよび100%DMSO中の試験化合物1μlを含む20μlのアッセイ容量中、室温にて40分間インキュベートした。この反応は、50μlのSPAビーズミックス(Mg2+およびCa2+を含まないダルベッコPBS、0.1%トリトンX−100、5mM EDTA、50μM ATP、2.5mg/mlストレプトアビジンコーティングSPAビーズ)を添加することにより停止させた。このプレートを密閉し、ビーズを一晩定着させた後、そのプレートを、パッカード・トップカウント・マイクロプレート・シンチレーション・カウンター(Packard Topcount Microplate Scintillation Counter)(Packard Instrument Co., Meriden, CT)にて計数した。
【0123】
用量応答データを、データ換算式:100×(U1−C2)/(C1−C2)[式中、Uは未知値であり、C1はDMSOに対して得られた平均対照値であり、C2は0.1M EDTAに対して得られた平均対照値である]を用いて計算した対照%として化合物濃度に対してプロットした。データは、y=((Vmax×x)/(K+x))[式中、Vmaxは上漸近線(upper asymptote)であり、KはIC50である]で示される曲線に当てはめる。
【0124】
本発明の化合物の、AKT1、AKT2およびAKT3に対しての活性を上記のアッセイの1以上で試験する。
【0125】
実施例の化合物は、一般に上記のAKT酵素アッセイに従って試験し、少なくとも1回の実験で、全長AKT1に対してpIC50値≧6.6を示した。
【0126】
実施例2の化合物は、一般に上記のAKT酵素アッセイに従って試験し、少なくとも1回の実験で、全長AKT1に対してpIC50値8.2を示した。
【0127】
上記データにおいて、pIC50は−log(IC50)(IC50値はモル単位で表される)と定義される。
【0128】
本発明の範囲内にある薬学上有効な化合物は、それを必要とする哺乳類、特にヒトにおいてAKT阻害剤として有用である。
【0129】
従って、本発明は、癌、関節炎およびAKT阻害を必要とする他の症状を処置する方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩を投与することを含んでなる方法を提供する。式(I)の化合物はまたはその薬学上許容される塩はまた、それらがAkt阻害剤として作用する能力を示したことから、上記の適応病態を処置する方法を提供する。この薬物は、それを必要とする患者に、限定されるものではないが、静脈、筋肉内、経口、皮下、皮内、および非経口を含む通常の投与経路投与経路のいずれによって投与してもよい。
【0130】
本発明の薬学上有効な化合物は、カプセル剤、錠剤、または注射製剤などの通常の剤形に組み込まれる。固体または液体医薬担体が用いられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が挙げられる。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、食塩水、および水が挙げられる。同様に、担体は、モノステアリン酸グリセリル、またはジステアリン酸グリセリルなどの任意の徐放性物質を単独で、または、ワックスとともに含んでもよい。固体担体の量は幅広く異なるが、好ましくは、用量単位当たり約25mg〜約1gである。液体担体が用いられる場合、製剤は、例えば、シロップ剤、エリキシル剤、エマルション、ゼラチン軟カプセル剤、アンプルなどの滅菌注射液、または水性もしくは非水性液体懸濁液の形態であろう。
【0131】
医薬製剤は、混合、造粒および圧縮、要すれば、錠剤の場合には、成分を混合、充填、および溶解して、必要に応じて、所望の経口または非経口製品とすることを含む、通常の製薬化学技術に従って製造される。
【0132】
上記の医薬投薬単位における本発明の薬学上有効な化合物の用量は、有効であり、無毒な量で、好ましくは、有効化合物は0.001mg/kg〜100mg/kg、好ましくは0.001mg/kg〜50mg/kgの範囲から選択される。Akt阻害剤を必要とするヒト患者を処置する場合には、選択された用量を好ましくは毎日1回〜6回、経口または非経口投与する。非経口投与の好ましい形態としては、局所、直腸、経皮、注射、および連続注入が含まれる。ヒト投与のための経口および/または非経口投与単位は、好ましくは有効化合物0.05mg〜3500mgを含む。
【0133】
投与される最適用量は、当業者であれば容易に決定することができ、使用する特定のAkt阻害剤、調剤強度、投与様式、および疾患状態の進行によって異なる。患者の年齢、体重、食事、および投与時間を含む、処置される特定の患者に依存するさらなる因子も、用量調整の必要を生じるであろう。
【0134】
ヒトを含む哺乳類においてAkt阻害活性を誘導する本発明の方法は、このような活性を必要とする対象に、有効Akt阻害量の本発明の薬学上有効な化合物を投与することを含んでなる。
【0135】
本発明はまた、Akt阻害剤として用いるための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0136】
本発明はまた、治療に使用するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0137】
本発明はまた、癌の処置に用いるための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0138】
本発明はまた、関節炎の処置に用いるための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0139】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、薬学上許容される担体とを含んでなる、Akt阻害剤として用いるための医薬組成物を提供する。
【0140】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、薬学上許容される担体をと含んでなる、癌の処置に用いるための医薬組成物を提供する。
【0141】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、薬学上許容される担体とを含んでなる、関節炎の処置に用いるための医薬組成物を提供する。
【0142】
さらに、本発明の薬学上有効な化合物は、例えば癌または関節炎を処置することが知られている他の化合物またはAkt阻害剤と組み合わせて用いた場合に有用性を示すことが知られている化合物などのさらなる有効成分と共投与することができる。
【0143】
さらなる詳述を行わなくとも、当業者であれば、これまでの記載を用いて、本発明を最大限利用することができると考えられる。よって、以下の実施例は単に例として示すものであり、本発明の範囲を何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0144】
実験の詳細
実施例1〜9の化合物は、スキーム1〜4に従って、または類似の方法によって容易に製造される。
【0145】
製造例1
【化9】

2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンの製造
a)[(1S)−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル]カルバミン酸1,1−ジメチルエチル
【化10】

0℃で攪拌したTHF(200mL)中、N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−3−フルオロ−L−フェニルアラニン(10g、35.3mmol)の溶液に、BH−THF(88mL、THF中88mmol〜1M)を加えた。12時間後、反応をAcOH:MeOH(8:50、58mL)で急冷し、NaHCO飽和水溶液とDCMとで分液した。次に、水相をDCMで数回抽出した。合わせた有機画分を濃縮し、残渣をシリカゲルパッドに通し(ヘキサン/EtOAc、1:1)、生成化合物(7.0g、74%)を白色固体として得た。LCMS (ES) m/e 270 (M+H)+.
【0146】
b){(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}カルバミン酸1,1−ジメチルエチル
【化11】

25℃にて、THF(150mL)中、[(1S)−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル]カルバミン酸1,1−ジメチルエチル(7.0g、26.0mmol)、トリフェニルホスフィン(8.18g、31.2mmol)、およびフタルイミド(4.21g、28.6mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(7.58mL、39.0mmol)を加えた。室温で1時間攪拌した後、反応溶液を真空濃縮し、残渣をEtO(100mL)で摩砕し、濾過して粗生成物(22g)を白色固体として得、これをそれ以上精製せずにそのまま用いた。LCMS (ES) m/z 399 (M+H)+.
【0147】
c)2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
室温にて、DCM(200mL)中、1,1−ジメチルエチル{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}カルバミン酸1,1−ジメチルエチル(9.0g、22.6mmol)の溶液に、ジオキサン中4MのHCl(56mL、226ミリモル)を加えた。12時間後、この溶液を濾過し、DCM(50mL)で洗浄し、標題化合物(7.8g、99%)を白色HCl塩として得た。LCMS (ES) m/z 349 (M+H)+.
【0148】
実施例1
【化12】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
a)1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル
【化13】

酢酸(21.03ml)中、2,5−ビス(メチルオキシ)テトラヒドロ−3−フランカルボン酸メチル(4g,21.03mmol)[Sancelme, M.; Fabre, S.; Prudhomme, M. J. Antibio. 1994 47, 7, 792に従って製造]および1−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン(2.043g,21.03mmol)の溶液を90℃で120時間攪拌した。この反応混合物を濃縮した後、1N NaOH/DCMで分液した。水相をDCMで数回洗浄し、合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン中20〜75%EtOAc)により精製し、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(863mg、4.21mmol、収率20%)を透明な油状物として得た。LCMS (ES) m/e 206 (M+H)+.
【0149】
b)1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸
【化14】

テトラヒドロフラン(7.407ml)およびMeOH(1mL)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(152mg、0.741mmol)および6N水酸化ナトリウム(2.469ml、14.81mmol)の溶液を70℃で12時間攪拌した。この反応混合物をHO−DCMで分液し、水相のpHを〜4に調整し、DMCで数回洗浄した。合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(136mg、0.711mmol、収率96%)を白色固体として得た。LCMS (ES) m/e 192 (M+H)+.
【0150】
c)N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化15】

25℃にて、ジクロロメタン(7.113ml)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(136mg、0.711mmol)および2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(238mg、0.711mmol)[製造例に従って製造]の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.497ml、2.85mmol)、次いで、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(398mg、0.854mmol)を加えた。1時間後、この反応混合物をシリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30〜80%EtOAc)により精製し、N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(293mg、0.497mmol、収率69.9%)を透明な油状物として得た。LCMS (ES) m/e 472 (M+H)+
【0151】
d)N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化16】

25℃にて、テトラヒドロフラン(1.448ml)およびメタノール(1.448ml)中、N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(293mg、0.621mmol)の溶液に、ヒドラジン(0.156ml、4.97mmol)を滴下した。12時間後、この溶液を濃縮し、シリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(DCM(1%NHOH)中5〜15%MeOH)により精製した。この遊離塩基を、DCM(10ml)中の残渣に、過剰量(2ml)のエーテル中2MHClを加えることでHCl塩に変換し、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドのHCl塩(150mg、0.344mmol、収率55.3%)を白色固体として得た。LCMS (ES) m/z = 342 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.31 (d, J=8.34 Hz, 1 H) 8.16 (br. s., 3 H) 7.69 (t, J=1.89 Hz, 1 H) 7.52 (d, J=2.02 Hz, 1 H) 7.32 (td, J=8.02, 6.44 Hz, 1 H) 7.06 - 7.18 (m, 3 H) 7.02 (td, J=8.40, 2.15 Hz, 1 H) 6.76 (dd, J=2.91, 1.64 Hz, 1 H) 6.39 (d, J=2.02 Hz, 1 H) 4.39 (dd, J=7.83, 5.56 Hz, 1 H) 3.71 (s, 3 H) 2.85 - 3.05 (m, 4 H).
【0152】
実施例2
【化17】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
a)5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル
【化18】

テトラヒドロフラン(6.822ml)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(280mg、1.364mmol)[実施例1で製造]およびNCS(182mg、1.364mmol)の溶液を密閉試験管にて70℃で12時間にわたり攪拌した。この溶液をHO−DCMで分液し、水相をDCMで数回洗浄した。合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中10〜70%EtOAc)により精製し、5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(125.4mg、0.523mmol、収率38.3%)[分離できないクロロ位置異性体混合物(15:9:1)として存在する、1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(75.24mg、0.314mmol、収率23.01%)および2−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(8.36mg、0.035mmol、収率2.56%)を伴う主成分として(後にキラルHPLCを用いて分離、工程d参照]を得た。LCMS (ES) m/e 240, 242 (M, M+2)+.
【0153】
b)5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸
【化19】

水酸化ナトリウム(2.59ml、15.52mmol)、テトラヒドロフラン(3.472ml)およびメタノール(0.868ml)中、5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(186mg、0.776mmol)[1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチルおよび2−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチルを伴う分離できない(15:9:1)混合物の主成分として]の溶液を70℃で12時間攪拌した。この反応混合物をHO−DCMで分液し、水相のpHを〜4に調整し、DMCで数回洗浄した。合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(111.6mg、0.495mmol、収率63.7%)を白色固体として[1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(66.96mg、0.297mmol、収率38.2%)および2−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(7.44mg、0.033mmol、収率4.25%)を伴う分離できない混合物として、これらの化合物は後にキラルHPLCを用いて分離した、工程d参照]得た。LCMS (ES) m/e 225, 227 (M, M+2)+.
【0154】
c)5−クロロ−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化20】

25℃にて、ジクロロメタン(7.113ml)中、5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(186mg、0.824mmol)[1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸および2−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸を伴う分離できない(15:9:1)混合物として]および2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(276mg、0.824mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.576ml、3.30mmol)、次いで、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(461mg、0.989mmol)を加えた。1時間後、この反応混合物をシリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30〜80%EtOAc)により精製し、5−クロロ−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(174mg、0.344mmol、収率41.7%)[1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド(104.4mg、0.206mmol、収率25.03%)および2−クロロ−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(11.6mg、0.023mmol、収率2.78%)を伴う分離できない混合物として、これらの化合物は後にキラルHPLCを用いて分離した。工程d参照]を得た。LCMS (ES) m/e 472 (M+H)+.
【0155】
d)N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化21】

25℃にて、テトラヒドロフラン(2.866ml)およびメタノール(2.87ml)中、5−クロロ−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(290mg、0.573mmol)混合物[1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミドおよび1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド]を伴う分離できない混合物として]の溶液に、ヒドラジン(0.144ml、4.59mmol)を滴下した。12時間後、この溶液を濃縮し、シリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(DCM(1%NHOH)中5〜15%MeOH)により精製した。この混合物を、キラルセルOJ−HカラムとiPrOH/ヘプタン(0.1%iPrNH)溶媒系を用いるキラルHPLCにより精製した。これにより標題化合物の遊離塩基が得られ、これをMeOH(2mL)に溶解させ、過剰量の4M HClジオキサンで処理し、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの二塩酸塩(24mg、0.053mmol、収率9.33%)を得た。LCMS (ES) m/z = 376, 378 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.34 (d, J=8.59 Hz, 1 H) 8.09 (br. s., 3 H) 7.65 (d, J=1.77 Hz, 1 H) 7.61 (d, J=2.02 Hz, 1 H) 7.25 - 7.37 (m, 1 H) 7.12 (d, J=7.07 Hz, 2 H) 6.95 - 7.06 (m, 1 H) 6.86 (d, J=2.02 Hz, 1 H) 6.51 (d, J=2.02 Hz, 1 H) 4.30 - 4.45 (m, 1 H) 3.56 (s, 3 H) 2.92 - 3.01 (m, 4 H).
【0156】
実施例3
【化22】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
標題化合物は、実施例2の製造中(工程2(a)の塩素化はピラゾールもまた塩素化する)に黄色固体として製造され、これを多成分混合物から、キラルセルOJ−HカラムとiPrOH/ヘプタン(0.1%iPrNH)溶媒系を用いるキラルHPLCにより精製した。これにより、標題化合物の遊離塩基を得、これをMeOH(2mL)に溶解させ、過剰量の4M HClジオキサンで処理し、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの二塩酸塩(6mg、0.013mmol、収率2.333%)を得た。LCMS (ES) m/z = 376, 378 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.20 (br. s., 1 H) 8.01 (br. s., 3 H) 7.75 (s, 1 H) 7.61 (br. s., 1 H) 7.29 - 7.41 (m, 1 H) 7.07 - 7.17 (m, 3 H) 7.04 (t, J=9.09 Hz, 1 H) 6.80 (br. s., 1 H) 4.39 (d, J=7.58 Hz, 1 H) 3.66 (s, 3 H) 2.92 - 3.01 (m, 4 H).
【0157】
実施例4
【化23】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
a)5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(A)、2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(B)および2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(C)
【化24】

N,N−ジメチルホルムアミド(6.822ml)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(280mg、1.364mmol)[実施例1で製造]およびNCS(182mg、1.364mmol)の溶液を、密閉試験管にて70℃で1時間攪拌した。NCS(182mg、1.364mmol)を追加し、30分後、LCMSは生成物が3成分混合物であることを示した(〜1:1.3:1)。この溶液をHO−DCMで分液し、水相をDMCで数回洗浄した。合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中10〜50%EtOAC)により精製し、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(67mg、0.205mmol、収率15.05%)(A):LCMS (ES) m/e 274, 276 (M, M+2)+、2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(181mg、0.541mmol、収率39.7%)(B):LCMS (ES) m/e 274, 276 (M, M+2)+、および2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(52mg、0.153mmol、収率11.24%)(C):LCMS (ES) m/e 308, 310 (M, M+2)+を透明な油状物として得た。
【0158】
b)5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸
【化25】

THF(2.1ml)およびメタノール(0.52ml)中、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(72mg、0.263mmol)および水酸化ナトリウム(0.87ml、5.25mmol)の溶液を70℃で12時間攪拌した。この反応混合物をHO−DCMで分液し、水相のpHを〜4に調整し、DMCで数回洗浄した。合わせた有機画分をNaSOで乾燥させ、濃縮し、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(68mg、0.246mmol、収率94%)を黄色油状物として得た。LCM (ES) m/e 260, 262 (M, M+2)+.
【0159】
c)5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化26】

25℃にて、ジクロロメタン(2.615ml)中、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸(68mg、0.261mmol)、2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(88mg、0.261mmol)[製造例1で製造]の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.183ml、1.046mmol)、次いで、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(134mg、0.288mmol)を加えた。1時間後、この反応混合物をシリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中30〜80%EtOAc)により精製し、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド(90mg、0.157mmol、収率59.9%)を透明な油状物として得た。LCMS (ES) m/e 541 (M+H)+.
【0160】
d)N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【化27】

25℃にて、テトラヒドロフラン(833μl)およびメタノール(833μl)中、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1H−ピロール−3−カルボキサミド(90mg、0.167mmol)の溶液に、ヒドラジン(41.8μl、1.332mmol)を滴下した。12時間後、この溶液を濃縮し、シリカにドライロードし(dry loaded)、カラムクロマトグラフィー(DCM(1%NHOH)中5〜15%MeOH)により精製した。この遊離塩基を、DCM(10ml)中の残渣に過剰量(2ml)のエーテル中、2M HClを加えることでHCl塩に変換し、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドのHCl塩(33mg、0.064mmol、収率38.1%)を白色固体として得た。LCMS (ES) m/z = 410, 412 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.37 (d, J=8.34 Hz, 1 H) 8.07 (br. s., 3 H) 7.84 (d, J=2.78 Hz, 1 H) 7.69 (dd, J=8.46, 1.89 Hz, 1 H) 7.25 - 7.41 (m, 1 H) 7.12 (d, J=8.08 Hz, 2 H) 7.04 (t, J=8.34 Hz, 1 H) 6.95 (dd, J=15.03, 1.89 Hz, 1 H) 4.37 (d, J=7.07 Hz, 1 H) 3.61 (d, J=2.27 Hz, 3 H) 2.83 - 3.08 (m, 4 H).
【0161】
実施例5
【化28】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
標題化合物は、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチルの代わりに、2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(181mg、0.541mmol)を用いること以外は実施例4の手順に従い、白色固体として製造された。LCMS (ES) m/z = 410, 412 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.35 (br.s., 1 H) 8.14 (br. s., 3 H) 7.67 (t, J=2.02 Hz, 1 H) 7.34 (td, J=11.05, 3.16 Hz, 1 H) 7.13 (t, J=3.79 Hz, 2 H) 7.09 - 7.19 (m, 1 H) 7.04 (t, J=8.21 Hz, 1 H) 6.59 (dd, J=10.61, 2.02 Hz, 1 H) 4.25 - 4.49 (m, 1 H) 3.54 (d, J=3.79 Hz, 3 H) 2.94 (d, J=7.33 Hz, 3 H) 2.83 - 3.06 (m, 1 H).
【0162】
実施例6
【化29】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
標題化合物は、5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチルを2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボン酸メチル(52mg、0.153mmol)に置き換えること以外は実施例4の手順に従い、白色固体として製造された。LCMS (ES) m/z = 444, 446 (M, M+2)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.33 (br.s., 1H), 8.04 (br. s., 3 H) 7.93 (d, J=2.27 Hz, 1 H) 7.34 (t, J=7.83 Hz, 1 H) 7.11 - 7.15 (m, 2 H) 7.10 (d, J=1.77 Hz, 1 H) 7.05 (t, J=8.34 Hz, 1 H) 4.28 - 4.48 (m, 1 H) 3.63 (d, J=3.79 Hz, 3 H) 2.83 - 3.07 (m, 4 H).
【0163】
実施例7
【化30】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
標題化合物は、2−[(2S)−2−アミノ−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンを2−[(2S)−2−アミノ−3−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン[製造例1の手順に従って製造]に置き換えること以外は実施例4の手順に従い、白色固体として製造された。LCMS (ES) m/z = 428, 430 (M+H)+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.42 (d, J=8.59 Hz, 1 H) 8.12 (br. s., 3 H) 7.83 (d, J=2.78 Hz, 1 H) 7.70 (dd, J=9.85, 2.02 Hz, 1 H) 7.26 - 7.48 (m, 2 H) 7.14 (br. s., 1 H) 6.96 (dd, J=15.79, 1.89 Hz, 1 H) 4.36 (d, J=6.82 Hz, 1 H) 3.61 (d, J=2.02 Hz, 3 H) 2.86 - 3.11 (m, 4 H).
【0164】
実施例8
【化31】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの製造
a)1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸メチル
【化32】

N,N−ジメチルホルムアミド(2ml)中、5−ヨード−1−メチル−1H−ピラゾール(150mg、0.721mmol)[Effenberger, F.; Krebs, A. J. Org. Chem. 1984, 49, 4687に従って製造]、1H−イミダゾール−4−カルボン酸メチル(109mg、0.865mmol)、Fe(acac)(76mg、0.216mmol)、ヨウ化銅(13.73mg、0.072mmol)および炭酸セシウム(282mg、0.865mmol)の混合物をNでパージし、密閉し、90℃で24時間加熱した。粗反応混合物をロードし、25s Biotageカラムを用いて精製し、MeOH/DCM(0〜20%)で溶出させ、37mg(22%)の生成物を得た。LCMS (M+Na+): 229.0。この生成物の位置化学を13C化学シフト分析により決定した。
【0165】
b)1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸
【化33】

テトラヒドロフラン(1.5ml)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸メチル(37mg、0.179mmol)、N−クロロスクシンイミド(47.9mg、0.359mmol)の混合物をNでパージし、密閉し、50℃で2時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、1N LiOH(0.179ml、0.179mmol)水溶液を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、2N HClでpH3〜4まで中和し、EtOAcで抽出した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮し、30mgの粗生成物を得た。LCMS MS (M+H+): 227.0/229.0.
【0166】
c)1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−1−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]エチル}−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【化34】

ジクロロメタン(DCM)(1ml)中、1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸(30mg、0.132mmol)、2−[(2S)−2−アミノ−3−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(46.7mg、0.132mmol)[製造例の手順に従って製造]およびPyBroP(74.1mg、0.159mmol)の懸濁液に、ヒューニッヒ(Hunig's)塩基(0.069ml、0.397mmol)を加えた。室温で一晩攪拌した後、この反応混合物をそのまま25s Biotageカラムにロードし、MeOH/DCMで溶出させ、15mg(純度〜85%、18%)の生成物を白色固体として得た。LCMS (M+H+): 525.2/527.2.
【0167】
d)N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
ジクロロメタン(0.2mL)と、MeOH(0.2mL)との混合物中、1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−N−{(1S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−1−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]エチル}−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(15mg、85%、0.024mmol)およびヒドラジン水和物(5.89μl、0.121mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。白色沈殿が生じ、これを濾過し、DCMですすいだ。濾液を濃縮し、残渣をRP HPLCにより精製し、9.8mg(79%)の生成物をTFA塩として得た。LCMS MS (M+H+): 395.2/397.2. 1HNMR (400 MHz, d-MeOH) δ 8.37 (NH, d, J = 8.8 Hz, <1H), 7.99 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.28-7.08 (m, 3H), 4.60-4.51 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.26-2.92 (m, 4H).
【0168】
実施例9
【化35】

N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−4’−クロロ−2’,5−ジメチル−2’H−1.3’−ビピラゾール−3−カルボキサミドの製造
a)1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1,2−ヒドラジンジカルボン酸ビス(1,1−ジメチルエチル)
【化36】

−78℃にて、テトラヒドロフラン(5ml)中、5−ヨード−1−メチル−1H−ピラゾール(208mg、1.00mmol)[Effenberger, F.; Krebs, A. J. Org. Chem. 1984, 49, 4687に従って製造]の溶液に、塩化イソプロピルマグネシウム(0.55ml、1.10mmol)を加えた。この反応混合物をこの温度で30分間攪拌した。−78℃で、5mLのTHF中、(E)−1,2−ジアゼンジカルボン酸ビス(1,1−ジメチルエチル)(253mg、1.100mmol)の溶液を加えた。この反応混合物を室温まで温め、飽和NHCl溶液を加えて、反応を急冷した。有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。合わせた有機層を塩性溶液(brine)で洗浄し、乾燥させ(NaCO)、濃縮して粗生成物を得、これをシリカゲルカラムにて精製し、180mg(57.6%)の生成物を得た。LCMS MS (M+H+): 313.2.
【0169】
b)2’,5−ジメチル−2’H−1,3’−ビピラゾール−3−カルボン酸エチル
【化37】

ジクロロメタン(4ml)中、1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1,2−ヒドラジンジカルボン酸ビス(1,1−ジメチルエチル)(180mg、0.576mmol)の溶液に、ジオキサン中4MのHCl(1.152ml、4.61mmol)を加えた。得られた混合物を室温で攪拌した。12時間後、この反応混合物を濃縮し、その後、EtOHに溶解させた。2,4−ジオキソペンタン酸エチル(0.081ml、0.576mmol)を加えた。この反応混合物を1時間加熱還流した後、濃縮した。残渣をBiotage 25sカラムで精製し、EA/ヘキサンで溶出させ、63mg(46.7%)の生成物および位置異性体を得た。LCMS (M+H+): 235.2.この位置化学を13C化学シフト分析により決定した。
【0170】
c)N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−4’−クロロ−2’,5−ジメチル−2’H−1,3’−ビピラゾール−3−カルボキサミド
標題化合物は、8(b)で1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸メチルを2’,5−ジメチル−2’H−1,3’−ビピラゾール−3−カルボン酸エチルに置き換えること以外は実施例8(b)〜8(d)の手順に従って製造された。最終生成物を、2N HCl水溶液を用いてHCl塩に変換した。LCMS (M+H+): 409.2/411.2. 1HNMR (400 MHz, d-MeOH) δ 8.45 (NH, d, J = 9 Hz, <1H), 7.69 (s, 1H), 7.28-7.06 (m, 3H), 6.73 (s, 1H), 4.60-4.47 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.28-2.84 (m, 4H), 2.26 (s, 3H).
【0171】
実施例10−カプセル組成物
本発明を投与するための経口投与形態は、下表Iで示される割合で成分を含む標準的な二つ割りゼラチン硬カプセルに充填することにより製造される。
表I
成分
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル) 25 mg
メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5
−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(実施例1の
化合物)
ラクトース 55 mg
タルク 16 mg
ステアリン酸マグネシウム 4 mg
【0172】
実施例11−注射用非経口組成物
本発明を投与するための注射形態は、水中10容量%のプロピレングリコールにおいて1.5重量%のN−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(実施例2の化合物)を攪拌することにより製造される。
【0173】
実施例12−錠剤組成物
下表IIで示されるスクロース、硫酸カルシウム二水和物、およびAkt阻害剤を混合し、10%ゼラチン溶液を用い、示された割合で造粒する。これらの含水顆粒を篩にかけ、乾燥させ、デンプン、タルクおよびステアリン酸と混合し、篩いにかけ、打錠する。
表II
成分
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル) 20 mg
メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラ
ゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(実
施例3の化合物)
硫酸カルシウム脱水物 30 mg
スクロース 4 mg
デンプン 2 mg
タルク 1 mg
ステアリン酸 0.5 mg
【0174】
本発明の好ましい実施形態を上記で例示するが、本発明が本明細書で開示されるその厳密な説明に限定されず、また、特許請求の範囲内に入る総ての改変に対する権利が留保されているものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物またはその塩:
【化1】

[式中、
Qは、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および芳香環が置換されたベンジルから選択され、
Lは、窒素および−C(H)−から選択され、
Pは、窒素および−C(R40)−(ここで、R40は水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択される)から選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
X、Y、およびZは独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、および−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、
X、Y、およびZの多くとも一つが窒素であり、かつ
PおよびLの多くとも一つが窒素である)]。
【請求項2】
薬学上許容される塩の形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(II)で表される、請求項1に記載の化合物またはその塩:
【化2】

[式中、
Qは、フェニル、ハロゲンおよびトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基により置換されたフェニル、ベンジル、ならびに芳香環がハロゲンおよびトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルから選択され、
は、水素、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
Lは、窒素および−C(H)−から選択され、
Pは、窒素および−C(R45)−(ここで、R45は水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択される)から選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
XおよびYは、独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、および−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、
XおよびYの多くとも一つが窒素であり、かつ
PおよびLの多くとも一つが窒素である)]。
【請求項4】
薬学上許容される塩の形態である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
下記式(IIA)で表される、請求項3に記載の化合物またはその塩:
【化3】

[式中、
Qは、フェニル、1〜2個のフルオリド置換基により置換されたフェニル、ベンジル、および芳香環が1〜2個のフルオリド置換基により置換されたベンジルから選択され、
は、水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
は、水素、−C−Cアルキル、およびハロゲンから選択され、
Aは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、
Bは、−C(O)−および−N(H)−から選択され、かつ
XおよびYは、独立して、窒素、−C(H)−、および−C(R)−(ここで、Rはハロゲンおよび−C−Cアルキルから選択される)から選択される
(ただし、AとBは同一でなく、かつ
XおよびYの多くとも一つが窒素である)]。
【請求項6】
薬学上許容される塩の形態である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−2,5−ジクロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド、
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−1−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、および
N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−4’−クロロ−2’,5−ジメチル−2’H−1,3’−ビピラゾール−3−カルボキサミド、
から選択される、請求項1の化合物またはその塩。
【請求項8】
薬学上許容される塩の形態である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項2に記載の化合物と、薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
薬学上許容される担体または希釈剤と、有効量の請求項2に記載の式(I)の化合物とを含有する医薬組成物の製造方法であって、式(I)の化合物を薬学上許容される担体または希釈剤と会合させることを含んでなる、方法。
【請求項11】
哺乳類において癌および関節炎から選択される疾患または症状を処置する、またはその重篤度を軽減する方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効な量の請求項2に記載の式Iの化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
哺乳類において癌および関節炎から選択される疾患または症状を処置する、またはその重篤度を軽減する方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効な量の請求項3に記載の化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項14】
哺乳類がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、膠芽腫、白血病、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロス病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫、甲状腺癌、
リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、
悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、
神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰部癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、頬粘膜癌、口腔癌、GIST(消化管間質腫瘍)、および精巣癌
から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、膠芽腫、白血病、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロス病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫、甲状腺癌、
リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、
悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、
神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰部癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、頬粘膜癌、口腔癌、GIST(消化管間質腫瘍)、および精巣癌
から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
癌および関節炎から選択される疾患または症状の処置またはその重篤度の軽減に用いるための薬剤の製造における、請求項2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項18】
哺乳類においてAkt活性を阻害する方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効な量の請求項2に記載の式Iの化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項19】
哺乳類がヒトである、請求項18の方法。
【請求項20】
哺乳類において癌を処置する方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効な量の、
a)請求項2に記載の式(I)の化合物および
b)少なくとも一つの抗腫瘍剤
を投与することを含んでなる、方法。
【請求項21】
少なくとも一つの抗腫瘍剤が、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫治療薬、アポトーシス誘導薬、および細胞周期シグナル伝達阻害剤から本質的になる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がジテルペノイドおよびビンカアルカロイドから選択される抗微小管剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がジテルペノイドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がビンカアルカロイドである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの抗腫瘍剤が白金配位錯体である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がパクリタキセル、カルボプラチンまたはビノレルビンである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がパクリタキセルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がカルボプラチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がビノレルビンである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも一つの抗腫瘍剤がシグナル伝達経路阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
シグナル伝達経路阻害剤が、VEGFR2、TIE2、PDGFR、BTK、IGFR−1、TrkA、TrkB、TrkC、およびc−fmsからなる群から選択される成長因子受容体キナーゼの阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
シグナル伝達経路阻害剤が、rafk、akt、およびPKC−ゼータからなる群から選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
シグナル伝達経路阻害剤が、キナーゼのSrcファミリーから選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
シグナル伝達経路阻害剤がc−srcの阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
シグナル伝達経路阻害剤が、ファルネシルトランスフェラーゼおよびゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤から選択されるRas癌遺伝子の阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
シグナル伝達経路阻害剤が、PI3Kからなる群から選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一つの抗腫瘍剤が細胞周期シグナル伝達阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
細胞周期シグナル伝達阻害剤が、CDK2、CDK4、およびCDK6群の阻害剤から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
治療に使用するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項40】
癌の処置に有用な薬剤の製造のための、請求項20に記載の医薬の組合せの使用。

【公表番号】特表2011−525928(P2011−525928A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516554(P2011−516554)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048373
【国際公開番号】WO2009/158371
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】