AlxGa(1−x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1−x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法
【課題】高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、AlxGa(1-x)As(0≦x≦1)基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法を提供する。
【解決手段】AlxGa(1-x)As基板10aは、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10aであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。またAlxGa(1-x)As基板10aは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するGaAs基板13をさらに備えている。
【解決手段】AlxGa(1-x)As基板10aは、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10aであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。またAlxGa(1-x)As基板10aは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するGaAs基板13をさらに備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AlxGa(1-x)As(0≦x≦1)(以下、AlGaAs(アルミニウムガリウム砒素)とも言う。)化合物半導体を利用したLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)は、赤外の光源として広く用いられている。赤外の光源としての赤外LEDは、光通信、空間伝送などに使用されており、伝送するデ−タの大容量化、伝送距離の長距離化に伴い、出力の向上が要求されている。
【0003】
このような赤外LEDの製造方法は、たとえば特開2002−335008号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1には、以下の工程が実施されることが記載されている。具体的には、まず、LPE(液相成長法:Liquid Phase Epitaxy)法により、GaAs(ガリウム砒素)基板上に、AlxGa(1-x)As支持基板を形成している。このとき、AlxGa(1-x)As支持基板のAl(アルミニウム)組成比をほぼ均一にしている。その後、OMVPE(有機金属気相成長法:OrganoMetallic Vapor Phase Epitaxy)法またはMBE(Molecular Beam Epitaxy:電子ビーム蒸着)法によりエピタキシャル層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−335008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、AlxGa(1-x)As支持基板のAl組成比をほぼ均一にしている。本発明者は鋭意研究の結果、Al組成比が高い場合には、このAlxGa(1-x)As支持基板を用いて製造する赤外LEDの特性が悪くなるという問題があることを見出した。また、本発明者は鋭意研究の結果、Al組成比が低い場合には、AlxGa(1-x)As支持基板の透過特性が悪いという問題があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、AlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、Al組成比が高い場合には、このAlxGa(1-x)As支持基板を用いて製造する赤外LEDの特性が悪くなるという問題があることおよびその要因を見出した。具体的には、Alは酸化されやすい性質を有しているため、AlxGa(1-x)As基板の表面に酸化層が形成されやすい。酸化層はこのAlxGa(1-x)As基板上に成長させるエピタキシャル層を阻害するので、エピタキシャル層に欠陥が導入される要因となる。エピタキシャル層に欠陥が導入されると、このエピタキシャル層を備えた赤外LEDの特性が悪くなるという問題がある。
【0008】
また、本発明者は、鋭意研究の結果、Alの組成比が低い程、AlxGa(1-x)As基板の透過特性が悪くなることを見出した。
【0009】
そこで、本発明のAlxGa(1-x)As基板は、主表面と、この主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を備えたAlxGa(1-x)As基板であって、AlxGa(1-x)As層において、裏面のAlの組成比xは、主表面のAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。
【0010】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層は、複数の層を含み、複数の層は、裏面側の面から主表面側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している。
【0011】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0012】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。
【0013】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面のAlの組成比xが0.12以上である。
【0014】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面に接するGaAs基板をさらに備えている。
【0015】
本発明の赤外LED用のエピタキシャルウエハは、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、このAlxGa(1-x)As層の主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0016】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、上記エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い。
【0017】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0018】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0019】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。
【0020】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0021】
本発明の赤外LEDは、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、エピタキシャル層と、第1の電極と、第2の電極とを備えている。エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層の主表面上に形成され、かつ活性層を含んでいる。第1の電極は、エピタキシャル層の表面に形成されている。第2の電極は、AlxGa(1-x)As層の裏面に形成されている。第2の電極は、GaAs基板の裏面に形成されていてもよい。
【0022】
本発明のAlxGa(1-x)As基板の製造方法は、GaAs基板を準備する工程と、GaAs基板上に、LPE法により主表面と、主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を成長させる工程とを備えている。そして、AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、裏面のAlの組成比xが、主表面のAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層を成長させることを特徴としている。
【0023】
AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、裏面側の面から、主表面側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含むAlxGa(1-x)As層を成長させる。
【0024】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0025】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。
【0026】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面のAlの組成比xが0.12以上である。
【0027】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、GaAs基板を除去する工程をさらに備えていてもよい。
【0028】
本発明の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法は、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、AlxGa(1-x)As層の主表面上に、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方、あるいはその組み合わせにより活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程とを備えている。
【0029】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い。
【0030】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層を形成する工程では、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層のAlの組成比xは、活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0031】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層を形成する工程では、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0032】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。
【0033】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0034】
本発明のおける赤外LEDの製造方法は、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、AlxGa(1-x)As層の主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、AlxGa(1-x)As層の裏面またはGaAs基板の裏面に第2の電極を形成する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0035】
本発明のAlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法によれば、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスにできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図5】(A)〜(G)は、本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1におけるGaAs基板を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層を成長させた状態を概略的に示す断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、本発明の実施の形態1におけるAlの組成比xが単調減少する複数の層をAlxGa(1-x)As層が備えた場合の効果を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3における活性層を概略的に示す拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態4における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4におけるエピタキシャルウエハの製造方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態5における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態6における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態6における赤外LEDの製造方法を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態7における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図21】実施例1において、AlxGa(1-x)As層のAlの組成比xに対する透過特性を示す図である。
【図22】実施例1において、AlxGa(1-x)As層のAlの組成比xに対する表面の酸素量を示す図である。
【図23】実施例3における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図24】実施例3における多重量子井戸構造を有する活性層を備えた赤外LED用のエピタキシャルウエハ、および、ダブルへテロ構造の赤外LED用のエピタキシャルウエハの光出力を示す図である。
【図25】実施例4における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図26】実施例4における窓層の厚みと光出力との関係を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態4の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図28】本発明の実施の形態6の変形例における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図29】本発明の実施の形態7の変形例における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図30】実施例6において試料3および4の厚みとAlの組成比との関係を示す図である。
【図31】実施例6において試料5の厚みとAlの組成比との関係を示す図である。
【図32】実施例6の試料3および4において、厚みと、△Al/△tとの関係を示す図である。
【図33】実施例6の試料5において、厚みと、△Al/△tとの関係を示す図である。
【図34】実施例6において、Alの組成比が0以上0.3未満の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図35】実施例6において、Alの組成比が0.3以上0.5未満の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図36】実施例6において、Alの組成比が0.5以上1.0以下の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図37】実施例7におけるエピタキシャルウエハにおいて、酸素濃度および二次イオン強度と、厚みとの関係を示す断面図である。
【図38】実施例7におけるAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度と出力との関係を示す図である。
【図39】実施例7におけるAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度と出力との関係を示す図である。
【図40】実施例8における試料6〜9の順方向電圧を示す図である。
【図41】実施例10における赤外LEDの発光波長を測定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板について説明する。
【0038】
図1に示すように、AlxGa(1-x)As基板10aは、GaAs基板13と、GaAs基板13上に形成されたAlxGa(1-x)As層11とを備えている。
【0039】
GaAs基板13は、主表面13aと、この主表面13aと反対側の裏面13bとを有している。AlxGa(1-x)As層11は、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有している。
【0040】
GaAs基板13は、オフ角を有していても、有していなくてもよく、たとえば{100}面、または、{100}から0°を超え15.8°以下傾斜した主表面13aを有する。GaAs基板13は、{100}面、または、{100}から0°を超え2°以下傾斜した主表面13aを有していることが好ましい。GaAs基板13は、{100}面、または{100}から0°を超え0.2°以下傾斜した表面を有していることがより好ましい。GaAs基板13の表面は鏡面であっても粗面であってもよい。なお、{}は、集合面を示す。
【0041】
AlxGa(1-x)As層11は主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有している。主表面11aとは、GaAs基板13と接触している面と反対側の面である。裏面11bとは、GaAs基板13と接触している面である。
【0042】
AlxGa(1-x)As層11は、GaAs基板13の主表面13aに接するように形成されている。つまり、GaAs基板13はAlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するように形成されている。
【0043】
AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高い。なお、組成比xは、Alのモル比である。組成比(1−x)は、Gaのモル比である。
【0044】
ここで、AlxGa(1-x)As層11のモル比について図2〜図5を参照して説明する。図2〜図5中、縦軸は、AlxGa(1-x)As層11の裏面から主表面にかけて厚み方向の位置を示し、横軸は、各位置でのAlの組成比xを示す。
【0045】
図2に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、裏面11bから主表面11aにかけて、Alの組成比xが単調減少している。単調減少とは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bから主表面11aに向けて(成長方向に向けて)、組成比xが常に同じまたは減少しており、かつ裏面11bよりも主表面11aの方が組成比xが低いことを意味する。つまり、単調減少とは、この成長方向に向けて組成比xが増加している部分が含まれていない。
【0046】
図3〜図5に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、複数の層(図3〜5では2層)を含んでいてもよい。図3に示すAlxGa(1-x)As層11は、それぞれの層において裏面11b側から主表面11a側にかけて、Alの組成比xが単調減少している。また、図4に示すAlxGa(1-x)As層11のそれぞれの層のAlの組成比xは均一で、かつ裏面11b側の層は主表面11a側のAlの組成比xよりも高い。また、図5(A)に示すAlxGa(1-x)As層11の裏面11b側の層のAlの組成比xは均一で、かつ主表面11a側の層のAlの組成比xは単調減少し、かつ裏面11b側の層は主表面11a側のAlの組成比xよりも高い。つまり、図4および図5(A)に示すAlxGa(1-x)As層11は、全体としてAlの組成比xが単調減少している。
【0047】
なお、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xは、上記に限定されず、たとえば図5(B)〜(G)のような組成であってもよく、さらに別の例であってもよい。また、AlxGa(1-x)As層11は、裏面11bのAlの組成比xが主表面11aのAlの組成比xよりも高ければ、上述した1層または2層を含む場合に限定されず、3層以上の層を含んでいてもよい。
【0048】
AlxGa(1-x)As基板10aがLEDに用いられるときには、AlxGa(1-x)As層11はたとえば電流を拡散し、かつ活性層からの光を透過させる窓層の役割を担う。
【0049】
また、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えていることが好ましい。△Al/△tは大きいほど好ましいが、製造上の理由から、上限はたとえば6×10-2/μm以下であり、好ましくは3×10-2/μm以下である。
【0050】
△Al/△tは、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aから裏面11bにかけてたとえば1μmごとにEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)およびSIMSで△Alを測定することにより得られる。△Al/△tは、AlxGa(1-x)As層11の任意の位置で測定され得る。
【0051】
また、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であることが好ましい。
【0052】
続いて、図6を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法について説明する。
【0053】
図6および図7に示すように、まず、GaAs基板13を準備する(ステップS1)。
GaAs基板13は、オフ角を有していても、有していなくてもよく、たとえば{100}面、または、{100}から0°を超え15.8°以下傾斜した主表面13aを有する。GaAs基板13は、{100}面、または、{100}から0°を超え2°以下傾斜した主表面13aを有していることが好ましい。GaAs基板13は、{100}面、または{100}から0°を超え0.2°以下傾斜した主表面13aを有していることがより好ましい。
【0054】
図6および図8に示すように、次に、GaAs基板13上に、LPE法により主表面11aを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)11を成長させる(ステップS2)。このAlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2では、GaAs基板13との界面(裏面11b)のAlの組成比xが、主表面11aのAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層11を成長させる。また、裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であるAlxGa(1-x)As層11を成長させることが好ましい。
【0055】
LPE法は特に限定されず、徐冷法、温度差法などを用いることができる。なお、LPE法とは、液相からAlxGa(1-x)As(0≦x≦1)結晶を成長させる方法をいう。徐冷法とは、原料の溶液の温度を徐々に下げてAlxGa(1-x)As結晶を成長させる方法である。温度差法とは、原料の溶液に温度勾配をつくり、AlxGa(1-x)As結晶を成長させる方法をいう。
【0056】
AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが一定の層を成長させる場合には温度差法および徐冷法を用い、Alの組成比xが上方(成長方向)に向けて減少している層を成長させる場合には徐冷法を用いることが好ましい。量産性および低コストに優れているため、徐冷法を用いることが特に好ましい。またそれらを組み合わせてもよい。
【0057】
LPE法は、液相と固相との化学平衡を利用しているので成長速度が速い。このため、厚みの大きなAlxGa(1-x)As層11を容易に形成できる。具体的には、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは20μm以上140μm以下の厚みH11を有するAlxGa(1-x)As層11を成長させる。なお、このときの厚みH11は、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向において最も小さい厚みである。
【0058】
また、GaAs基板13の厚みH13に対するAlxGa(1-x)As層11の厚みH11の比(H11/H13)は、たとえば0.1以上0.5以下が好ましく、0.3以上0.5以下がより好ましい。この場合、GaAs基板13上にAlxGa(1-x)As層11を成長させた状態で、反りが発生するのを緩和することができる。
【0059】
また、たとえばZn(亜鉛)、Mg(マグネシウム)、C(炭素)などのp型ドーパントSe(セレン)、S(硫黄)、Te(テルル)などのn型ドーパントを含むようにAlxGa(1-x)As層11を成長させてもよい。
【0060】
このようにLPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長させると、図8に示すように、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aには凹凸が生じる。
【0061】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄する(ステップS3)。このステップS3では、アルカリ系溶液を用いて洗浄することが好ましい。なお、リン酸や硫酸などの酸化溶液などを用いてもよい。アルカリ系溶液は、アンモニアと過酸化水素とを含むことが好ましい。アンモニアと過酸化水素とを含むアルカリ系溶液で洗浄すると、主表面11aがエッチングされるので、空気に触れることにより主表面11aに付着した不純物を除去できる。この場合、たとえば0.2μm/min以下のエッチングレートで主表面11a側から0.2μm以下エッチングされるように制御することにより、主表面11aの不純物を低減できるとともにエッチング量が少なくなる。なお、この主表面11aを洗浄するステップS3は省略されてもよい。
【0062】
次に、アルコールでGaAs基板13およびAlxGa(1-x)As層11を乾燥する。なお、この乾燥するステップは省略されてもよい。
【0063】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨する(ステップS4)。研磨する方法は、特に限定されず、機械的研磨、化学機械研磨法、電界研磨法、化学研磨法などを用いることができ、研磨の容易性から機械的研磨または化学的研磨が好ましい。
【0064】
主表面11aの表面粗さRmsがたとえば0.05nm以下になるように、主表面11aを研磨する。表面粗さRmsは小さい程好ましい。なお、「表面粗さRms」とは、JIS B0601に規定する表面の二乗平均粗さ、すなわち、平均面から測定面までの距離(偏差)の二乗を平均した値の平方根を意味する。なお、この研磨するステップS4は省略されてもよい。
【0065】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄する(ステップS5)。この主表面11aを洗浄するステップS5は、研磨するステップS4実施前の主表面11aを洗浄するステップS3と同様であるので、その説明を繰り返さない。なお、この洗浄するステップS5は省略されてもよい。
【0066】
次に、GaAs基板13およびAlxGa(1-x)As層11を、AlxGa(1-x)As基板10aを用いてエピタキシャル成長前にH2(水素)、AsH3(アルシン)を流してサーマルクリーニングする。なお、このサーマルクリーニングするステップは省略されてもよい。
【0067】
以上のステップS1〜S5を実施することにより、図1に示す本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aを製造することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aは、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10aであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。そして、このAlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するGaAs基板13をさらに備えている。
【0069】
また本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法は、GaAs基板13を準備する工程(ステップS1)と、GaAs基板13上に、LPE法により主表面11aを有するAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)とを備えている。このAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)では、GaAs基板13との界面(裏面11b)のAlの組成比xが、主表面11aのAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層11を成長させることを特徴としている。
【0070】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aおよびAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によれば、裏面11bのAl組成比xは主表面11aのAl組成比xよりも高い。このため、酸化されやすい性質を有するAlが主表面11aに存在することを抑制できる。このため、AlxGa(1-x)As基板10aの表面(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11の主表面11a)に絶縁性の酸化層が形成されることを抑制できる。特に、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長させているので、主表面11aに以外の内部の領域には、酸素が取り込まれにくい。したがって、このAlxGa(1-x)As基板10a上にエピタキシャル層を成長させる際、エピタキシャル層に欠陥が導入されることを抑制することができる。その結果、このエピタキシャル層を備えた赤外LEDの特性を向上することができる。
【0071】
また、主表面11aのAlの組成比xは、裏面11bのAl組成比xよりも低い。本発明者は、鋭意研究の結果、Alの組成比xが高い程、AlxGa(1-x)As基板10aの透過特性が良くなることを見出した。裏面11b側にAlが多く含まれていても、表面に露出している時間が短いため、酸化層が形成されることは低減できる。このため、酸化層が形成されることを抑制できる部分に、Alの組成比xの高いAlxGa(1-x)As結晶を成長させることにより、透過特性を向上できる。
【0072】
このように、AlxGa(1-x)As層11において、主表面11a側でデバイスの特性を向上するようにAlの組成比xを低くし、裏面11b側で透過特性を向上するようにAlの組成比xを高くしている。よって、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、AlxGa(1-x)As基板10aを実現することができる。
【0073】
上記AlxGa(1-x)As基板10aにおいて好ましくは、図3に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、複数の層を含み、この複数の層は、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している。
【0074】
上記AlxGa(1-x)As基板10aの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)では、GaAs基板13との界面側の面(裏面11b)から、主表面11a側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含むAlxGa(1-x)As層11を成長させる。
【0075】
これにより、AlxGa(1-x)As基板10aに生じる反りを緩和することができることを本発明者は見出した。以下、図9(A)〜(C)を参照して、その理由を説明する。図9(A)は、図2に示すように、AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが単調減少する層が1層の場合を示す。図9(B)は、AlxGa(1-x)As層11において図3に示すようにAlの組成比xが単調減少する層が2層の場合を示す。図9(C)は、AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが単調減少する層が3層の場合を示す。図9(A)〜(C)において、横軸はAlxGa(1-x)As層11の裏面11bから主表面11aにかけての厚み方向の位置を示し、縦軸はAlxGa(1-x)As層11の各位置でのAlの組成比xを示す。図9(A)〜(C)に示すAlxGa(1-x)As層11は、裏面11bおよび主表面11aのAlの組成比xは同じである。
【0076】
図9(A)〜(C)において、Alの組成比xを示す傾斜y中の最も高い位置(点A)を下方向に延在し、かつ傾斜y中の最も低い位置(点B)を左方向に延在したときに交わる交点(点C)とにより、仮想の三角形が形成される。この三角形の面積の合計は、AlxGa(1-x)As層11に加わる応力である。この応力により、AlxGa(1-x)As層11に反りが生じる。
【0077】
この三角形の重心Gと、AlxGa(1-x)As層11の厚みの中心との距離zが大きくなる程、AlxGa(1-x)As層11に反りが発生することを本発明者は見出した。この重心Gは、図9(A)に示す場合には、傾斜yに基づいて形成した三角形の重心Gであり、図9(B)および(C)に示す場合には、傾斜yに基づいて形成した三角形の重心G1〜G3を結んだときの中心である。この重心Gは、AlxGa(1-x)As層11内で応力を足し合わせた合力の作用点になる。
【0078】
図9(A)〜(C)に示すように、Alの組成比xが単調減少する層の数が多い程、厚みの中心から重心Gが位置する厚みまでの距離zが短くなるので、AlxGa(1-x)As層11に生じる反りが小さくなる。このため、Alの組成比xが単調減少する層を複数形成することにより、AlxGa(1-x)As基板10aの反りを緩和できる。ここで図中の複数の三角形にて、Alの組成比xの最大値および最小値と、AlxGa(1-x)As層11の厚みとを同じにしているが、必ずしも同じにする必要はない。透過性、反り、界面状態などに応じて調整可能である。
【0079】
上記AlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向の異なる2点のAlの組成の差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0080】
これにより、主表面11aに向けて酸化が抑制されるので、AlxGa(1-x)As基板10aを用いて赤外LEDを作製したときに、出力を向上することができる。
【0081】
上記AlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。これにより、赤外LEDを作製したときに、出力をより向上することができる。
【0082】
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。図10を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bについて説明する。
【0083】
図10に示すように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bは、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aと基本的には同様の構成を備えているが、GaAs基板13を備えていない点において異なる。
【0084】
具体的には、AlxGa(1-x)As基板10bは、主表面11aと、主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えている。そして、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高い。
【0085】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As層11の厚みは、AlxGa(1-x)As基板10bが自立基板となる程度に厚いことが好ましい。このような厚みH11は、たとえば70μm以上である。
【0086】
続いて、図11を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法について説明する。
【0087】
図11に示すように、まず、実施の形態1と同様に、GaAs基板13を準備するステップS1、LPE法によるAlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2、洗浄するステップS3および研磨するステップS4が実施される。これにより、図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aが製造される。
【0088】
次に、GaAs基板13を除去する(ステップS6)。除去する方法は、たとえば研磨、エッチングなどの方法を用いることができる。研磨とは、ダイヤモンド砥石を持つ研削設備などで、アルミナ、コロイダルシリカ、ダイヤモンドなどの研磨剤を用いてGaAs基板13を機械的に削り取ることをいう。エッチングとは、たとえばアンモニア、過酸化水素などを最適に調合することでAlxGa(1-x)Asでエッチング速度が遅く、GaAsでエッチング速度が速い選択エッチング液を用いて、GaAs基板13の除去を行なうことをいう。
【0089】
AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上である場合には、GaAsとAlxGa(1-x)Asとの選択性が高くなる。このため、GaAs基板を生産性を向上して除去できる。
【0090】
次に、実施の形態1と同様に、洗浄するステップS5を実施する。
以上のステップS1〜S6を実施することにより、図10に示すAlxGa(1-x)As基板10bを製造することができる。
【0091】
なお、これ以外のAlxGa(1-x)As基板10bおよびその製造方法は、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bは、主表面11aと、主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10bであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。
【0093】
また本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法は、GaAs基板13を除去する工程(ステップS6)をさらに備えている。
【0094】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bおよびAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によれば、GaAs基板13を備えずにAlxGa(1-x)As層11のみを備えたAlxGa(1-x)As基板10bを実現できる。GaAs基板13は波長が900nm以下の光を吸収するので、GaAs基板13が除去されたAlxGa(1-x)As基板10b上にエピタキシャル層を成長させることにより、赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造することができる。この赤外LED用のエピタキシャルウエハを用いて赤外LEDを製造すると、高い透過特性を維持し、かつ高いデバイス特性を有する赤外LEDを実現することができる。
【0095】
上記AlxGa(1-x)As基板10bおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上である。Alの組成比xが0.12以上と高い場合には、GaAsに対しエッチングが速い溶液(ウエットエッチング法)、プラズマ、ガス種(ドライエッチング法)などを用いることができる。このため、GaAsとAlxGa(1-x)Asとの選択性が高いエッチングによりGaAs基板13を除去することができる。したがって、生産性を向上し、選択除去の歩留まりを向上することができる。なお、AlxGa(1-x)As層11が複数の層を含んでいる場合においては、GaAs基板13と接していた層(最下層)の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であれば同様の効果を有する。
【0096】
(実施の形態3)
図12を参照して、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20aを説明する。
【0097】
図12に示すように、エピタキシャルウエハ20aは、実施の形態1における図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。つまり、エピタキシャルウエハ20aは、GaAs基板13と、GaAs基板13上に形成されたAlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。活性層21は、AlxGa(1-x)As層11よりもバンドギャップが小さい。
【0098】
活性層21においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(裏面21c)のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11において活性層21と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。また、活性層21を含むエピタキシャル層において最も厚みの大きい層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11において活性層21と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。この場合、エピタキシャルウエハ20aに生じる反りを緩和することができる。
【0099】
AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下であることが好ましく、4×1019atom/cm3以下であることがより好ましい。
【0100】
AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下であることが好ましく、3.5×1014atom/cm2以下であることがより好ましい。
【0101】
上記AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層との界面の酸素濃度は、たとえばSIMSにより測定することができる。
【0102】
図13に示すように、活性層21は、多重量子井戸構造を有していることが好ましい。活性層21は、2層以上の井戸層21aを含んでいる。この井戸層21aは、井戸層21aよりもバンドギャップの大きな層であるバリア層21bでそれぞれ挟み込まれている。つまり、複数の井戸層21aと、井戸層21aよりもバンドギャップの大きい複数のバリア層21bとが交互に配置されている。活性層21は、複数の井戸層21aの全てがバリア層21bに挟み込まれていてもよく、あるいは、活性層21の少なくとも一方の表面に井戸層21aが配置され、表面に配置される井戸層21aは、表面側に配置されるガイド層、クラッド層(図示せず)などの他の層と、バリア層21bとにより挟み込まれていてもよい。なお、図13に示す領域XIIIは、活性層21中において上部とは限られない。
【0103】
活性層21は、好ましくは2層以上100層以下、より好ましくは10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有している。井戸層21aおよびバリア層21bが2層以上の場合、多重量子井戸層を構成する。井戸層21aおよびバリア層21bが10層以上の場合、発光効率を向上することにより光出力を向上できる。100層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストを低減できる。50層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストをより低減できる。
【0104】
活性層21の厚みH21は6nm以上2μm以下が好ましい。厚みH21が6nm以上の場合、発光強度を向上できる。厚みH21が2μm以下の場合、生産性を向上できる。
【0105】
井戸層21aの厚みH21aは3nm以上20nm以下が好ましい。バリア層21bの厚みH21bは、5nm以上1μm以下が好ましい。
【0106】
井戸層21aの材料は、バリア層21bよりもバンドギャップが小さければ特に限定されないが、GaAs、AlGaAs、InGaAs(インジウムガリウム砒素)、AlInGaAs(アルミニウムインジウムガリウム砒素)などを用いることができる。これらの材料は、AlGaAsとの格子整合度が適合する赤外発光の材料である。
【0107】
エピタキシャルウエハ20aが発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる場合には、井戸層21aの材料はInを含み、Inの組成比が0.05以上のInGaAsであることが好ましい。また、井戸層21aがInを含む材料を有する場合には、井戸層21aおよびバリア層21bを、それぞれ4層以下有する活性層21であることが好ましい。より好ましくは、それぞれ3層以下有する活性層21であることが好ましい。
【0108】
バリア層21bの材料は、井戸層21aよりもバンドギャップが大きければ特に限定されないが、AlGaAs、InGaP、AlInGaP、InGaAsPなどを用いることできる。これらの材料は、AlGaAsとの格子整合度が適合する材料である。
【0109】
エピタキシャルウエハ20aが発光波長が900nm以上、好ましくは940nm以上の赤外LEDに用いられる場合には、活性層21内のバリア層21bの材料はPを含み、Pの組成比が0.05以上のGaAsPまたはAlGaAsPであることが好ましい。また、バリア層21bがPを含む材料を有する場合には、井戸層21aおよびバリア層21bを、それぞれ3層以上有する活性層21であることが好ましい。
【0110】
活性層21を含むエピタキシャル層中の元素以外の元素(たとえば成長させる雰囲気中の元素など)の濃度が低いことが好ましい。
【0111】
なお、活性層21は、多重量子井戸構造に特に限定されず、1層よりなっていてもよく、ダブルへテロ構造であってもよい。
【0112】
また、本実施の形態ではエピタキシャル層として活性層21のみを含んでいる場合について説明したが、クラッド層、アンドープ層などの他の層をさらに含んでいてもよい。
【0113】
続いて、図14を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法について説明する。
【0114】
図14に示すように、まず、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10aを製造する(ステップS1〜S5)。
【0115】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)。
【0116】
このステップS7では、エピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(裏面21c)のAlの組成比xが、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高くなるように、エピタキシャル層を形成することが好ましい。また、エピタキシャル層において最も厚みの大きい層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。
【0117】
OMVPE法は原料ガスがAlxGa(1-x)As層11上で熱分解反応することにより活性層21を成長させ、MBE法は非平衡系で化学反応過程を介さない方法で活性層21を成長させるので、OMVPE法およびMBE法は活性層21の厚みを容易に制御できる。このため、2層以上の井戸層21aを複数有する活性層21を成長できる。
【0118】
また、AlxGa(1-x)As層11の厚みH11に対するエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)の厚みH21(H21/H11)は、たとえば0.05以上0.25以下が好ましく、0.15以上0.25以下がより好ましい。この場合、AlxGa(1-x)As層11上にエピタキシャル層を成長させた状態で、反りが発生するのを緩和することができる。
【0119】
また、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下であることが好ましく、4×1019atom/cm3以下であることがより好ましい。
【0120】
また、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下であることが好ましく、3.5×1014atom/cm2以下であることがより好ましい。
【0121】
このステップS7では、AlxGa(1-x)As層11上には、上述したような活性層21を含むエピタキシャル層を成長させる。
【0122】
具体的には、好ましくは2層以上100層以下、より好ましくは10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有する活性層21を形成する。
【0123】
また、6nm以上2μm以下の厚みH12を有するように活性層21を成長することが好ましい。また、3nm以上20nm以下の厚みH21aを有する井戸層21a、および、5nm以上1μm以下の厚みH21bを有するバリア層21bを成長させることが好ましい。
【0124】
また、GaAs、AlGaAs、InGaAs、AlInGaAsなどよりなる井戸層21a、およびAlGaAs、InGaP、AlInGaP、GaAsP、AlGaAsP、InGaAsPなどよりなるバリア層21bを成長させることが好ましい。
【0125】
活性層21は、AlxGa(1-x)As基板となるGaAsおよびAlGaAsに対して、格子不整(格子緩和)があっても、なくてもよい。井戸層21aが格子不整を有する場合、バリア層21bに逆方向の格子不整をもたせ、エピタキシャルウエハの構造全体としては、圧縮−伸張の結晶歪みをバランスさせてもよい。また、結晶歪量は、格子緩和する限界以下であっても、以上であってもよい。ただし、格子緩和する限界以上の場合、結晶を貫通した転位が発生しやすくなるため、限界以下の方が望ましい。
【0126】
一例として、井戸層21aにInGaAsを用いる場合を挙げる。InGaAsは、GaAs基板に対し、格子定数が大きいため、一定以上の厚みのエピタキシャル層を成長すると、格子緩和が発生する。そのため、格子緩和が発生する限度以下の厚みとすることで、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0127】
また、バリア層21bにGaAsPを用いると、GaAsPは、GaAs基板に対して格子定数が小さいため、一定以上の厚みのエピタキシャル層を成長すると、格子緩和が発生する。そのため、格子緩和が発生する限度以下の厚みとすることで、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0128】
最後に、GaAs基板に対し、InGaAsは格子定数が大きく、GaAsPが格子定数が小さいという特徴を活用し、井戸層21aにInGaAs、バリア層21bにGaAsPを用い、結晶全体の格子歪をバランスさせることにより、上記の限度以上まで、格子緩和を発生させず、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0129】
以上のステップS1〜S5およびS7を実施することにより、図12に示すエピタキシャルウエハ20aを製造できる。
【0130】
なお、GaAs基板13を除去するステップS6をさらに実施してもよい。このステップS6は、たとえばエピタキシャル層を成長させるステップS7の後に実施されるが、特にこの順序に限定されない。ステップS6は、たとえば研磨するステップS4と洗浄するステップS5との間に実施してもよい。このステップS6は、実施の形態2のステップS6と同様であるので、その説明を繰り返さない。このステップS6を実施した場合には、後述する図15のエピタキシャルウエハ20bと同様の構造になる。
【0131】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aは、実施の形態1のAlxGa(1-x)As基板10aと、AlxGa(1-x)As基板10aのAlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0132】
また本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法は、実施の形態1のAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10aを製造する工程(ステップS1〜S6)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法またはMBE法の少なくとも一方により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する工程(ステップS7)とを備えている。
【0133】
本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法によれば、裏面11bよりも主表面11aのAlの組成比xが低いAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10a上にエピタキシャル層を形成している。このため、高い透過特性を維持し、かつエピタキシャルウエハ20aを用いてデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0134】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(エピタキシャル層の裏面21c)のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面(主表面11a)のAlの組成比xよりも高い。
【0135】
これにより、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層とを一体としてみると、実施の形態1で記述した理由と同様に、エピタキシャルウエハ20aの反りを緩和できる。
【0136】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、GaAs基板13を準備する工程(ステップS1)と、GaAs基板13上に、LPE法により、電流を拡散し、かつ活性層からの光を透過させる窓層としてのAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨する工程(ステップS4)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方により、多重量子井戸構造を有し、AlxGa(1-x)As層11よりもバンドギャップが小さい活性層21を成長する工程(ステップS7)とを備えている。
【0137】
LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を成長している(ステップS2)ため、成長速度が速い。またLPE法では、高価な原料ガスおよび高価な装置を用いる必要がないので製造コストが低い。このため、OMVPE法およびMBE法よりも、コストを低減して厚みの大きなAlxGa(1-x)As層11を形成できる。このAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨することによりAlxGa(1-x)As層11の主表面11aの凹凸を低減することができる。このため、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に活性層21を含むエピタキシャル層を形成する際に、活性層21を含むエピタキシャル層の異常成長を抑制することができる。また原料ガスの熱分解反応によるOMVPE法または非平衡系で化学反応過程を介さないMBE法は、膜厚を良好に制御できる。このため、主表面11aを研磨するステップS4後に、OMVPE法またはMBE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成することにより、異常成長が抑制され、かつ活性層21の膜厚を良好に制御された、多重量子井戸構造(MQW構造)を有する活性層を形成することができる。
【0138】
特に、LEDは、LD(レーザーダイオード:Laser Diode)よりも膜厚が小さい場合が多いので、膜厚の制御性が良好なOMVPE法またはMBE法を用いることにより、多重量子井戸構造を有する活性層21を含むエピタキシャル層を形成できる。
【0139】
また、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長するステップS2後にOMVPE法またはMBE法により活性層21を成長させる。LPE法の後にOMVPE法またはMBE法で活性層21を成長させれば、活性層21に長時間の高温の熱が加えられることが防止される。このため、高温の熱によって活性層21に結晶欠陥が生じるなど結晶性が劣化することを防止でき、かつLPE法で導入するドーパントが活性層21へ拡散することを防止できる。
【0140】
本実施の形態では、活性層21を成長させるステップS6後に、LPE法で用いる高温の雰囲気に活性層21を曝さないので、たとえばAlxGa(1-x)As層11に導入した拡散しやすいp型ドーパントが活性層21内に拡散することを防止できる。このため、活性層21のZn、Mg、Cなどのp型キャリア濃度を、たとえば1×1018cm-3以下まで低くできる。このため、活性層21に、不純物準位が形成されてしまうことなどを防止でき、井戸層21aとバリア層21bとのバンドギャップの差を維持できる。
【0141】
したがって、性能を向上した多重量子井戸構造を有する活性層21を形成できるので、GaAs基板13を除去し(ステップS7)、かつ電極を形成すると、活性層21において状態密度を変化することにより、電子と正孔との再結合が効率よく行なわれる。このため、発光効率を向上した赤外LEDとなるエピタキシャルウエハ20aを成長することができる。
【0142】
なお、窓層としてのAlxGa(1-x)As層11は、AlxGa(1-x)As層11および活性層21の積層方向(図1において縦方向)と交差する方向(図1において横方向)に電流を拡散するので、光取り出し効率を向上することにより、発光効率を向上できる。
【0143】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2と研磨するステップS4との間、および研磨するステップS4およびエピタキシャル層を成長させるステップS7との間の少なくとも一方に、AlxGa(1-x)As層11の表面を洗浄するステップS3、S5をさらに備えている。
【0144】
これにより、AlxGa(1-x)As層11が大気に触れることによって、AlxGa(1-x)As層11に不純物が付着または混入した場合であっても、その不純物を除去できる。
【0145】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、洗浄するステップS3、S5では、アルカリ系溶液を用いて主表面11aを洗浄する。
【0146】
これにより、AlxGa(1-x)As層11に不純物が付着または混入した場合には、より効果的に不純物をAlxGa(1-x)As層11から除去できる。
【0147】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の厚みH11は、10μm以上1000μm以下が好ましく、20μm以上140μm以下であることがより好ましい。
【0148】
厚みH11が10μm以上の場合、発光効率を向上できる。厚みH11が20μm以上の場合、発光効率をより向上できる。厚みH11が1000μm以下の場合、AlxGa(1-x)As層11を形成するために要するコストを低減できる。厚みH11が140μm以下の場合、AlxGa(1-x)As層11を形成するために要するコストをより低減できる。
【0149】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、活性層21は、井戸層21aと、井戸層21aよりもバンドギャップの大きいバリア層21bとが交互に配置され、10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有している。
【0150】
10層以上の場合、発光効率をより向上できる。50層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストを低減できる。
【0151】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aの酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。また、上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面11aの酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0152】
これにより、主表面11a上にエピタキシャル層を形成したときに、界面の酸素のピーク濃度および酸素の面密度を低減できる。このため、AlxGa(1-x)As基板10aを用いて赤外LEDを作製したときに、出力を向上することができる。
【0153】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハおよびその製造方法であって、活性層21内の井戸層21aはIn含む材料を有し、井戸層21aの層数が4層以下である。発光波長は940nm以上であることがより好ましい。
【0154】
本発明者は、Inを含む材料を有し、4層以下の井戸層を有する活性層21を形成することによって、格子緩和が抑制されることを見い出した。このため、波長が900nm以上の赤外LEDに用いることができるエピタキシャルウエハを実現することができる。
【0155】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、井戸層21aは、インジウムの組成比が0.05以上のInGaAsである。
【0156】
これにより、波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる有用なエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0157】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハおよびその製造方法であって、活性層21内のバリア層21bはPを含む材料を有し、バリア層21bの層数が3層以上である。
【0158】
本発明者は、Pを含む材料を有する活性層21を形成することによって、格子緩和が抑制されることを見い出した。このため、波長が900nm以上の赤外LEDに用いることができるエピタキシャルウエハを実現することができる。
【0159】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法において好ましくは、バリア層21bは、Pの組成比が0.05以上のGaAsPまたはAlGaAsPである。
【0160】
これにより、波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる有用なエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0161】
(実施の形態4)
図15を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bについて説明する。
【0162】
図15に示すように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bは、実施の形態2における図10に示すAlxGa(1-x)As基板10bと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0163】
また本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bは、実施の形態3に示すエピタキシャルウエハ20aと基本的には同様の構成を備えているが、GaAs基板13を備えていない点において異なる。
【0164】
続いて、図16を参照して、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bの製造方法について説明する。
【0165】
図16に示すように、まず、実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10bを製造する(ステップS1〜S6)。
【0166】
次に、実施の形態3と同様に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)。
【0167】
以上のステップS1〜S7を実施することにより、図15に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bを製造することができる。
【0168】
なお、これ以外の赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法は、実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0169】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0170】
また本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bの製造方法は、GaAs基板13を除去する工程(ステップS6)をさらに備えている。
【0171】
本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bおよびその製造方法によれば、可視光を吸収するGaAs基板が除去されたAlxGa(1-x)As基板13を用いている。このため、エピタキシャルウエハ20bに電極をさらに形成すると、高い透過特性を維持し、かつ高いデバイス特性を維持した赤外LEDとなるエピタキシャルウエハ20bを実現することができる。
【0172】
(変形例)
図27を参照して、本実施の形態の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dについて説明する。図27に示すように、変形例におけるエピタキシャルウエハ20dは、基本的には図15に示すエピタキシャルウエハ20bと同様の構成を備えているが、エピタキシャル層がバッファ層25をさらに含んでいる点において異なっている。バッファ層25は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有している。つまり、変形例のエピタキシャルウエハ20dは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成されたバッファ層25と、バッファ層25上に形成された活性層21とを備えている。
【0173】
バッファ層25は、Alを含み、バッファ層25のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。ここで、活性層21のAl組成比xは、活性層21全体の平均的なAl組成比、あるいは、活性層21内のクラッド層のAl組成比を指している。
【0174】
バッファ層25のAlの組成比xが活性層21のAlの組成比xよりも低い場合、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層(本実施の形態ではバッファ層25)と接する面のAlの組成比xよりも低くてもよい。つまり、Alの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11>バッファ層25<活性層21となる。さらに言い換えると、Alの組成比は、活性層21>AlxGa(1-x)As層11の場合と、活性層21<AlxGa(1-x)As層11の場合とを含む。
【0175】
また、バッファ層25のAlの組成比xが活性層21のAlの組成比xよりも低い場合で、かつエピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xが、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い場合には、Alの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11<バッファ層25<活性層21となる。
【0176】
変形例におけるエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には実施の形態4と同様の構成を備えているが、エピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成している。
【0177】
具体的には、AlxGa(1-x)As層11を製造した後に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上にバッファ層25を形成する。バッファ層25の形成方法は特に限定されず、OMVPE法、MBE法などにより形成することができる。その後、バッファ層上に活性層21を形成する。バッファ層25はAlを含んでいることが好ましく、Alの組成比xは、上述したとおりである。
【0178】
以上説明したように、実施の形態4の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高く、かつエピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。
【0179】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dの製造方法は、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高く、かつエピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層25のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。
【0180】
また、変形例の赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dにおいて、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含み、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層21のAlの組成比xよりも低くてもよい。
【0181】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dの製造方法は、エピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層21のAlの組成比xよりも低くてもよい。
【0182】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記のようにAlの組成比xを制御したバッファ層25を含むエピタキシャル層を形成することにより、順方向電圧(VF)の絶対値およびばらつきを効果的に低減できることを見い出した。
【0183】
AlxGa(1-x)As層11を含むAlxGa(1-x)As基板を製造後、エピタキシャル層を形成するまで大気に曝される場合がある。本実施の形態のAlxGa(1-x)As層11の主表面11aに酸化層の形成が低減される効果を有するものの、大気との反応により酸化層が形成される場合がある。このAlxGa(1-x)As層11の主表面11aに酸化反応性が高い活性層21を接するように形成すると、AlxGa(1-x)As層11と活性層との間に、Alと酸素とが反応することによる欠陥が形成される。このことは、電気的なVFの増加およびばらつきの原因となる。しかし、変形例では、活性層21のAlの組成比よりも低いAlの組成比を有するバッファ層25をAlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成しているので、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層との界面に欠陥が形成されることを効果的に抑制できる。その結果、このエピタキシャルウエハ20dを備えた赤外LEDのVF特性を向上することができる。
【0184】
(実施の形態5)
図17を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cについて説明する。
【0185】
図17に示すように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20cは、基本的には実施の形態4におけるエピタキシャルウエハ20bと同様の構成を備えているが、エピタキシャル層がコンタクト層23をさらに含んでいる点において異なる。つまり、本実施の形態では、エピタキシャル層は、活性層21と、コンタクト層23とを含んでいる。
【0186】
具体的には、エピタキシャルウエハ20cは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成された活性層21と、活性層21上に形成されたコンタクト層23とを備えている。
【0187】
コンタクト層23は、たとえばp型GaAsよりなり、0.01μm以上の厚みH23を有している。
【0188】
続いて、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの製造方法について説明する。本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの製造方法は、実施の形態4におけるエピタキシャルウエハ20bの製造方法と同様の構成を備えているが、エピタキシャル層を形成するステップS7がコンタクト層23を形成するステップをさらに含んでいる点において異なる。
【0189】
具体的には、活性層21を成長させた後に、活性層21の表面上にコンタクト層23を形成する。コンタクト層23の形成方法は特に限定されないが、厚みの薄い層を形成できるため、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方、あるいはその組み合わせにより成長することが好ましい。活性層21と連続して成長できるため、活性層21と同じ方法で成長させることがより好ましい。
【0190】
なお、これ以外の赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法は、実施の形態4における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0191】
なお、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cおよびその製造方法は実施の形態4だけでなく実施の形態3にも適用することができる。
【0192】
(実施の形態6)
図18を参照して、本実施の形態における赤外LED30aについて説明する。図18に示すように、本実施の形態にける赤外LED30aは、実施の形態5における図17に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cと、このエピタキシャルウエハ20cの表面20c1および裏面20c2にそれぞれ形成された電極31、32と、ステム33とを備えている。
【0193】
エピタキシャルウエハ20cの表面20c1(本実施の形態ではコンタクト層23)に電極31が接して設けられており、裏面20c2(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11)には電極32が接して設けられている。電極31においてエピタキシャルウエハ20cと反対側には、ステム33が接して設けられている。
【0194】
具体的には、ステム33は、たとえば鉄系材料よりなる。電極31は、たとえばAu(金)Zn(亜鉛)との合金よりなるp型電極である。この電極31は、p型のコンタクト層23に対して形成されている。このコンタクト層23は、活性層21の上部に形成されている。この活性層21は、AlxGa(1-x)As層11の上部に形成されている。このAlxGa(1-x)As層11上に形成された電極32は、たとえばAuとGe(ゲルマニウム)との合金よりなるn型電極である。
【0195】
続いて、図19を参照して、本実施の形態における赤外LED30aの製造方法について説明する。
【0196】
まず、実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法(ステップS1〜S5、S7)により、エピタキシャルウエハ20aを製造する。なお、エピタキシャル層を成長させるステップS7では、活性層21およびコンタクト層23を形成する。次に、GaAs基板を除去する(ステップS6)。なお、このステップS6を実施すると、図17に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cを製造できる。
【0197】
次に、赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの表面20c1および裏面20c2に電極31、32を形成する(ステップS11)。具体的には、たとえば蒸着法により、表面20c1上にAuとZnとを蒸着して、また、裏面20c2上にAuとGeとを蒸着した後、合金化を施して、電極31、32を形成する。
【0198】
次に、このLEDを実装する(ステップS12)。具体的には、たとえば、電極31側を下にして、ステム33の上にAgペーストなどのダイボンド剤やAuSnなどの共晶合金でダイボンディングを行なう。
【0199】
上記ステップS1〜S12を実施することにより、図18に示す赤外LED30aを製造することができる。
【0200】
なお、本実施の形態では実施の形態5における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cを用いる場合について説明したが、実施の形態3および4の赤外LED用のエピタキシャルウエハ20a、20bを適用することも可能である。ただし、赤外LEDを完成する前に、GaAs基板13を除去するステップS6は実施されてもよい。
【0201】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED30aは、実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板10bと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層と、エピタキシャル層の表面20c1に形成された第1の電極31と、AlxGa(1-x)As層11の裏面20c2に形成された第2の電極32とを備えている。
【0202】
また本実施の形態における赤外LED30aは、実施の形態2のAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10bを製造する工程(ステップS1〜S6)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上にOMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する工程(ステップS7)と、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1に第1の電極31を形成する工程(ステップS11)と、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bに第2の電極32を形成する工程(ステップS11)とを備えている。
【0203】
本実施の形態における赤外LED30aおよびその製造方法によれば、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを制御したAlxGa(1-x)As基板10bを用いているので、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有する赤外LED30aを実現できる。
【0204】
また活性層21側に電極31を形成し、AlxGa(1-x)As層11側に電極32を形成している。この構造によれば、電極32からAlxGa(1-x)As層11によって赤外LED30aの全面に渡って電流をより拡散することができる。このため、発光効率をより向上した赤外LED30aが得られる。
【0205】
(変形例)
図28に示すように、変形例の赤外LED30dは、基本的には実施の形態6における赤外LED30aと同様の構成を備えているが、実施の形態4の変形例のエピタキシャルウエハ20dを用いている点において異なっている。この場合、VF特性を向上した赤外LED30aを実現することができる。
【0206】
(実施の形態7)
図20を参照して、本実施の形態における赤外LED30bについて説明する。図20に示すように、本実施の形態における赤外LED30bは、基本的には実施の形態6における赤外LED30aと同様の構成を備えているが、AlxGa(1-x)As層11側がステム33に配置されている点において異なる。
【0207】
具体的には、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1(本実施の形態ではコンタクト層23)に電極31が接して設けられており、裏面20c2(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11)に電極32が接して設けられている。
【0208】
電極31は、光を取り出すために、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1の一部を覆っている。このため、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1の残部は露出している。電極32は、エピタキシャルウエハ20cの裏面20c2の全面を覆っている。
【0209】
本実施の形態における赤外LED30bの製造方法は、基本的には実施の形態6における赤外LED30aの製造方法と同様の構成を備えているが、上述したような電極31、32を形成するステップS11において異なる。
【0210】
なお、これ以外の赤外LED30bおよびその製造方法は、実施の形態6における赤外LED30aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0211】
また、GaAs基板13が除去されない場合には、GaAs基板13の裏面に電極が形成されてもよい。実施の形態3のエピタキシャルウエハ20aにおいてエピタキシャル層がコンタクト層をさらに含んでいるエピタキシャルウエハを用いて赤外LEDを形成した場合、たとえば図29に示す赤外LED30cのような構造になる。この場合、代表例として図29に示すように、GaAs基板13側にステム33を配置する。この変形例として、GaAs基板13側がステム33と反対側に位置していてもよい。
【実施例1】
【0212】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことによる効果について調べた。具体的には、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法にしたがって、AlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0213】
より具体的には、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、このGaAs基板13上に、LPE法でAlの組成比xが0≦x≦1の種々のAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。
【0214】
このAlxGa(1-x)As層11について、発光波長が850nm、880nmおよび940nmのときの透過特性および表面の酸素量について調べた。これらの特性を確認するために、図1のAlxGa(1-x)As層11が深さ方向にAlの組成比が均一となるように、80μm〜100μmの厚みで作成し、図11のフローのようにGaAs基板13を除去し、図10の状態にし、透過率特性を透過率測定器にて測定した。酸素量は、同じ試料を図14のフローに従い作成し、OMVPE法でエピタキシャル層を成長し、GaAs基板13を除去する前に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aについて、SIMS(2次イオン質量分析)により測定した。その結果を図21および図22に示す。
【0215】
図21において、縦軸はAlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを示し、横軸は透過特性を示す。この透過特性は図21において右に位置するほど良好である。また発光波長が880nmの場合を見ると、より低Al組成でも透過特性が良好であることがわかった。また、発光波長が940nmの場合、より低Al組成でも透過率の低下が起こりにくいことが確認できた。
【0216】
次に、図22において、縦軸はAlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを示し、横軸は表面の酸素量を示す。この酸素量は図22において左に位置するほど良好である。なお、発光波長が850nm、880nmおよび940nmのときの表面の酸素量は同じであった。
【0217】
ここで、本実施例では、上記のように、深さ方向にAl組成比が均一となるとうにAlxGa(1-x)As層11を作成したが、酸素量は主に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAl組成比で決まるため、図2〜図5で示すようにAl組成比に勾配を持っている場合でも、主表面でのAl組成比と相関が強いことが上記と同様の実験により確認されている。
【0218】
同様の傾向が透過特性についても当てはまり、透過特性は、図2〜図5で示すようにAl組成比に勾配を持っている場合、最もAl組成比が低い部分に影響される。具体的には、図2〜図5のような勾配を持つ場合、勾配のパタン(層数、各層の勾配、厚み)、勾配(△Al/距離)が同じ場合には、層中での平均的なAl組成比の大小に透過特性との相関が強い。
【0219】
図21に示すように、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xが高いほど、透過特性が向上することがわかった。また図22に示すように、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xが低いほど、主表面に含まれる酸素量を低減できることがわかった。
【0220】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xを高くすることにより高い透過特性を維持し、主表面11aのAlの組成比xを低くすることにより主表面の酸素量を低減できることがわかった。
【実施例2】
【0221】
本実施例では、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している複数の層をAlxGa(1-x)As層11が備えていることの効果について調べた。具体的には、実施の形態1における図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法にしたがって、32種類のAlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0222】
より具体的には、2インチおよび3インチのGaAs基板を準備した(ステップS1)。
【0223】
次に、徐冷法によりAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、図2に示すようにAlの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層以上含むように成長させた。詳細には、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAl組成比x(Al組成比xの最小値)、各層において裏面11b側の面のAl組成比xと主表面11a側の面のAl組成比xとの差(Al組成比xの差)、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している層の数(層数)が下記の表に示すように32種類のAlxGa(1-x)As層11を成長させた。これにより、32種類のAlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0224】
これらのAlxGa(1-x)As基板10aについて、AlxGa(1-x)As基板10aに発生した反りを凸面を上面としたAlxGa(1-x)As基板10aと、平行台との隙間を、厚みゲージを用いて測定した。その結果を下記の表1に示す。表1中、AlxGa(1-x)As基板10aに生じた反りが、2インチのGaAs基板を用いたときに200μm以下で、かつ3インチのGaAs基板を用いたときに300μm以下の場合は○、2インチのGaAs基板を用いたときに200μmを超え、かつ3インチのGaAs基板を用いたときに300μmを超えた場合は×とした。
【0225】
【表1】
【0226】
表1に示すように、主表面11aのAl組成比xに関わらず、単調減少している層中のAl組成比xの差が小さいほど、AlxGa(1-x)As基板10aに反りは生じにくかった。Al組成比xの差が0.15以上0.35未満の場合には、AlxGa(1-x)As層11が単調減少している層を多く含むことにより、反りが緩和できることがわかった。このことから、Al組成比xの差が0.15以下と小さい場合であって、反りをさらに低減する場合には、単調減少する層数を増やすことが有効であることが推定される。またAl組成比xの差が0.35以上の場合でも、単調減少する層数を5層以上に増やすことで、反りを緩和できることが推定される。なお、2インチおよび3インチのGaAs基板を用いても、特性に差はなかった。
【0227】
以上説明したように、本実施例によれば、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している複数の層をAlxGa(1-x)As層11が含んでいることにより、AlxGa(1-x)As基板10aの反りを緩和できることが確認できた。
【実施例3】
【0228】
本実施例では、赤外LED用のエピタキシャルウエハが多重量子井戸構造の活性層を備えることの効果、および、バリア層および井戸層の好ましい層数について調べた。
【0229】
本実施例では、多重量子井戸構造の活性層21の厚みおよび層数のみを変更した図23に示す4種類のエピタキシャルウエハ40を成長した。
【0230】
具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、OMVPE法により、n型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43、p型クラッド層44、AlxGa(1-x)As層11およびコンタクト層23をこの順で成長した。各層の成長温度は、750℃であった。n型クラッド層41は0.5μmの厚みを有し、Al0.35Ga0.65Asよりなり、アンドープガイド層42は0.02μmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなり、アンドープガイド層43は0.02μmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなり、p型クラッド層44は0.5μmの厚みを有し、Al0.35Ga0.65Asよりなり、AlxGa(1-x)As層11は2μmの厚みを有し、p型Al0.15Ga0.85Asよりなり、コンタクト層23は0.01μmの厚みを有し、p型GaAsよりなっていた。また、活性層21は、発光波長840nm〜860nmとし、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5mmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ2層、10層、20層および50層有している多重量子井戸構造(MQW)であった。
【0231】
また、本実施例では、赤外LED用の別のエピタキシャルウエハとして、発光波長が870nmで、0.5μmの厚みを有する井戸層のみからなる活性層を備えた点のみ異なるダブルへテロ構造のエピタキシャルウエハを成長した。
【0232】
成長したそれぞれのエピタキシャルウエハについて、GaAs基板を除去せずに、エピタキシャルウエハをそれぞれ作製した。次に、コンタクト層23上にAuZnよりなる電極を、n型GaAs基板13上にAuGeよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した。これにより、赤外LEDが得られた。
【0233】
それぞれの赤外LEDについて、定電流源と光出力測定器(積分球)とにより、電流を20mA流した時の光出力を測定した。その結果を図24に示す。なお、図24の横軸において、「DH」はダブルへテロ構造を有するLEDを意味し、「MQW」とは活性層において井戸層およびバリア層を備えたLEDを意味し、層数は井戸層およびバリア層のそれぞれの層数を意味する。
【0234】
図24に示すように、ダブルへテロ構造を有するLEDに比べて多重量子井戸層を有する活性層を備えたLEDは光出力を向上できることがわかった。特に、井戸層およびバリア層が10層以上50層以下のLEDは、光出力を大幅に向上できることがわかった。
【0235】
ここで、本実施例では、AlxGa(1-x)As層11をOMVPE法により製造したが、OMVPE法は実施例1などのようにAlxGa(1-x)As層11の厚みが大きい場合には成長させるために非常に時間を要する。この点を除けば、形成した赤外LEDの特性は本発明のLPE法およびOMVPE法を用いた赤外LEDと同様であるので、本発明の赤外LEDに適用できる。なお、AlxGa(1-x)As層11の厚みが大きい場合には、LPE法を用いることで、AlxGa(1-x)As層11の成長させるために要する時間を短縮することができる効果をさらに奏する。
【0236】
また、本実施例では、赤外LED用のさらに別のエピタキシャルウエハとして、発光波長が940nmで、井戸層にInGaAsを有する井戸層を含む活性層を備えた点のみ異なる多重量子井戸構造(MQW)のエピタキシャルウエハを成長した。井戸層のInGaAsにおいて、厚みは2nm〜10nmで、Inの組成比は0.01〜0.03よりなっていた。また、バリア層はAl0.30Ga0.70Asよりなっていた。
【0237】
このエピタキシャルウエハについても上記と同様に、電極を形成して、赤外LEDを作成した。この赤外LEDについても、上記と同様に光出力を測定した結果、発光波長が940nmの光出力を得た。
【0238】
なお、バリア層については、GaAs0.90P0.10、ないし、Al0.30Ga0.70As0.90P0.10であっても、同様の結果を有することは、実験により確認されている。また、Inの組成比、Pの組成比についても、任意に調整可能であることも実験により確認されている。
【0239】
以上より、発光波長が840nm以上890nm以下の場合、GaAsを井戸層とするMQWを活性層として用い、また、発光波長が860nm以上890nm以下の場合、GaAsよりなるダブルへテロ(DH)構造が適用可能であることが確認できた。さらに、発光波長が850nm以上1100nm以下の場合、InGaAsよりなる井戸層により活性層が作成可能であることが確認できた。
【実施例4】
【0240】
本実施例では、赤外LED用のエピタキシャルウエハにおけるAlxGa(1-x)As層11の厚みの効果的な範囲について調べた。
【0241】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11の厚みのみを変更した図25に示す5種類のエピタキシャルウエハ50を成長した。
【0242】
具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、LPE法により、2μm、10μm、20μm、100μおよび140μmの厚みを有し、Znをドーパントとしたp型Al0.35Ga0.65AsよりなるAlxGa(1-x)As層11をそれぞれ形成した(ステップS2)。AlxGa(1-x)As層11を成長したLPE法の成長温度は780℃であり、成長速度は平均4μm/Hであった。次に、塩酸および硫酸を用いてAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS3)。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを化学機械研磨によって研磨した(ステップS4)。次に、アンモニアと過酸化水素とを用いてAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS5)。次に、OMVPE法によりp型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43、n型クラッド層44およびn型コンタクト層23を順に成長した(ステップS6)。これらの層を成長したOMVPE法の成長温度は750℃であり、成長速度は1〜2μm/Hであった。なお、p型クラッド層41、アンドープガイド層42、アンドープガイド層43、n型クラッド層44およびコンタクト層23は、実施例3と同様の厚みおよび材料(ドーパント以外)とした。また、活性層21は、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5nmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ20層有する活性層21を成長した。
【0243】
次に、GaAs基板13を除去した(ステップS7)。これにより、5種類の厚みを有するAlxGa(1-x)As層を備えた赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0244】
次に、コンタクト層23上にAuGeよりなる電極を、AlxGa(1-x)As層11の裏面11b上にAuZnよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した。これにより、赤外LEDを製造した。
【0245】
それぞれの赤外LEDについて、実施例3と同様に光出力を測定した。その結果を図26に示す。
【0246】
図26に示すように、20μm以上140μm以下の厚みを有するAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDは、光出力を大きく向上することができ、100μm以上140μm以下の厚みを有するAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDは、光出力を非常に大きく向上することができた。
【0247】
なお20μm以下でGaAs基板13を除去した効果が見えていないのは、発光像観察より発光面積の広がりにほとんど変化がないためと考える。それはZnドーパントのp型AlxGa(1-x)As層11では移動度が低いため電流が拡散してないためである。それは、Teドーパントのn型AlxGa(1-x)As層11とすることで移動度が高くなり改善できる。後述の実施例5で、Teドーパントにすることで発光像が広がり出力の向上が見られた。
【実施例5】
【0248】
本実施例では、本発明の赤外LEDによる活性層への拡散が小さいことの効果について調べた。
【0249】
(試料1)
試料1の赤外LED用のエピタキシャルウエハは、以下のように製造した。具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、LPE法により、Teがドーピングされ、20μmの厚みを有し、n型Al0.35Ga0.65AsよりなるAlxGa(1-x)As層11を成長した(ステップS2)。次に、塩酸と硫酸とを用いて、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS3)。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを化学機械研磨によって研磨した(ステップS4)。次に、アンモニアと過酸化水素とを用いて、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS5)。次に、OMVPE法により、図25に示すように、Siがドーピングされたn型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43およびZnがドーピングされたp型クラッド層44およびp型コンタクト層23を順に成長した(ステップS6)。なお、n型クラッド層41、アンドープガイド層42、アンドープガイド層43およびp型クラッド層44の厚みおよびドーパント以外の材料は、実施例3と同様にした。また、活性層21は、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5nmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ20層有する活性層21を成長した。なお、LPE法およびOMVPE法での成長温度および成長速度は、実施例4と同様とした。
【0250】
次に、GaAs基板13を除去した(ステップS7)。これにより、試料1の赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0251】
次に、pコンタクト層23上にAuZnよりなる電極を、AlxGa(1-x)As層11下にAuGeよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した(ステップS11)。これにより、赤外LEDを製造した。
【0252】
(試料2)
試料2は、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、OMVPE法により、p型クラッド層44、アンドープガイド層43、活性層21、アンドープガイド層42およびn型クラッド層41をこの順で、試料1と同様に成長した。次に、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を形成した。AlxGa(1-x)As層11の厚みおよび材料は、試料1と同様にした。
【0253】
次に、試料1と同様にGaAs基板13を除去して、試料2の赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0254】
次に、試料1と同様にエピタキシャルウエハの表面および裏面に電極を形成して、試料2の赤外LEDを製造した。
【0255】
(測定方法)
試料1および試料2の赤外LEDについて、Znの拡散長および光出力を測定した。具体的には、活性層とガイド層との界面におけるZnの濃度をSIMSにより測定し、さらに、このZnの濃度が1/10以下になる活性層内の位置をSIMSにより測定し、活性層とガイド層との界面から活性層への距離をZnの拡散長とした。また、光出力は実施例3と同様に測定した。その結果を下記の表2に記載する。
【0256】
【表2】
【0257】
(測定結果)
表2に示すように、LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を成長した後にOMVPE法で活性層を成長した試料1では、活性層よりも先に形成したAlxGa(1-x)As11にドーピングされたZnが活性層内に拡散することを防止でき、かつ活性層21中のZn濃度を低減できた。この結果、試料1の赤外LEDは、試料2に比べて光出力を大幅に向上できた。
【0258】
以上より、本実施例によれば、LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を形成した(ステップS2)後に、活性層を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)ことにより、光出力を向上できることが確認できた。
【実施例6】
【0259】
本実施例では、△Al/△tが0/μmを超えていることの効果について調べた。
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により種々の厚み、Alの組成比xを有するAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層以上含むように成長させた。次に、洗浄、研磨、洗浄の工程(ステップS3〜S5)に従い、GaAs基板が形成されたAlxGa(1-x)As基板を作製した。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を形成した(ステップS7)。次に、GaAs基板を除去した(ステップS6)。これにより、複数のエピタキシャルウエハを製造した。
【0260】
このエピタキシャルウエハの断面において、AlxGa(1-x)As基板の裏面から主表面に向けて1μm毎に、Alの組成比xを、EPMAにより測定した。Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層が1層の試料3、4と、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層が3層の試料5との結果を図30および図31に示す。なお、図30および図31において、横軸の厚み0は、AlxGa(1-x)As基板の裏面側に対応する。
【0261】
図30および図31に示すように、Alの組成比xを測定したAlxGa(1-x)As基板について、Al組成比の傾きである△Al/△t(単位:組成差/μm)を求めた。その結果を図32および図33に示す。なお、図32および図33において、AlxGa(1-x)As基板の裏面を厚みを0としている。
【0262】
図32に示す試料3または試料4の△Al/△tは、1×10-3/μm〜2×10-2/μmであった。図33に示す試料5の△Al/△tは、1×10-3/μm〜3×10-2/μmであった。
【0263】
このように、試料3〜5以外の複数のAlxGa(1-x)As基板についても同様に、△Al/△tを測定した。
【0264】
その後、このAlxGa(1-x)As基板を備えたエピタキシャルウエハを400μm角のLEDチップにした。そして、それらのLEDについて、20mA/チップでの光出力を測定し、リファレンス出力で規格化した。AlxGa(1-x)As層11の平均のAl組成比xが、0≦x<0.3の場合、0.3≦x<0.5の場合、0.5≦x≦1.0の場合の結果をそれぞれ図34〜図36に示す。
【0265】
また、比較例として、Alの組成比xが0.1、0.3、0.5で一定のAlxGa(1-x)As層11よりなるAlxGa(1-x)As基板を準備し、このAlxGa(1-x)As基板上に、同様にエピタキシャル層を形成し、LEDチップにした。このLEDについて、同様にリファレンス出力で規格化し、それぞれの結果を比較例として図34〜図36に示す。図34の比較例のAlの組成比は0.1であり、図35の比較例のAlの組成比は0.3であり、図36の比較例のAlの組成比は0.5であった。なお、比較例の△Al/△tは0であるが、比較のため、図34〜図36においては比較例のリファレンス出力を点線で示す。
【0266】
図34〜図36に示すように、Alの組成比xが一定の場合に比べて、△Al/△tが0を超えている本発明例は出力を向上することができた。
【0267】
また、図34に示すように、Alの組成比が低い(0≦x<0.3)場合には、透過性が低いため、出力は全体的に上がりにくいものの、△Al/△tが大きくなると、透過性が上がるという顕著な効果を有していた。
【0268】
また、図36に示すように、Alの組成比が高い(0.5≦x≦1.0)場合には、AlxGa(1-x)As層の主面が酸化されるため、組成比が一定の比較例の場合には出力が得られなかった。しかし、Alの組成比が高い場合であっても、△Al/△tが0を超えていると、主面の酸化が抑制され、出力を向上することができた。
【0269】
Alの組成が図34と図36との間である図35に示す場合(0.3≦x<0.5)には、Alの組成比が一定(0.3)の場合であっても、Alの組成比が0.1および0.5で一定の比較例よりは向上することはできた。しかし、△Al/△tが0を超えていた本発明例は、Alの組成比が0.3の比較例よりも出力を向上できた。
【0270】
以上より、本実施例によれば、△Al/△tが0を超えることにより、出力を向上できることが確認できた。
【0271】
また、△Al/△tが大きい程、出力を向上できることが確認できた。本実施例では、図35に示すように、△Al/△tが6×10-2/μm以下のAlxGa(1-x)As基板を製造することができた。
【0272】
さらに、Alの組成比xは、0.3を超えて1以下であると、出力を非常に向上できることが確認できた。
【実施例7】
【0273】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下であることの効果、および酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下であることの効果について調べた。
【0274】
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により種々の条件でAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、AlxGa(1-x)As層11の厚みは3.6μmであった。これにより、8種類のAlxGa(1-x)As基板を製造した。
【0275】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を形成した(ステップS7)。この活性層21の厚みは0.6μmであった。これにより、8種類のエピタキシャルウエハを製造した。
【0276】
1つのエピタキシャルウエハにおいてSIMSにより酸素濃度および二次イオン強度を測定した結果を図37に示す。図37中、横軸は、活性層の表面を0とし、活性層の表面からAlxGa(1-x)As層の裏面に向けての厚み(単位:μm)である。Al濃度と酸素濃度とが交わる点は、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面である。図37のエピタキシャルウエハでは、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面(AlxGa(1-x)As層の主面)の酸素のピーク濃度は3×1018atom/cm3であった。
【0277】
このように、8種類のエピタキシャルウエハについて酸素濃度と二次イオン強度とを測定した。そして、酸素濃度のピーク濃度を求めることにより、8種類のエピタキシャルウエハについて、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面、つまりAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度を測定した。また、二次イオン強度と厚みとから面密度を求めることにより、8種類のエピタキシャルウエハについて、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面、つまりAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度をそれぞれ測定した。その結果を図38および図39に示す。
【0278】
その後、このAlxGa(1-x)As基板を備えたエピタキシャルウエハを400μm角のLEDチップにした。そして、それらのLEDチップについて、20mA/チップでの光出力を測定し、リファレンス出力で規格化した。その結果を図38および図39に示す。
【0279】
図38に示すように、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3を超える場合には、出力がほとんど得られなかった。しかし、酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下の場合には出力が得られた。特に、4×1019atom/cm3以下の場合には出力が1を超え、出力を非常に向上できた。
【0280】
また、図39に示すように、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2を超える場合には、出力がほとんど得られなかった。しかし、酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下の場合には出力が得られた。特に、3.5×1014atom/cm2以下の場合には出力が1を超え、出力を非常に向上できた。
【0281】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下、または酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下であると、LEDを作製したときに出力を向上できることが確認できた。
【実施例8】
【0282】
本実施例では、AlxGa(1-x)As基板と活性層との間に、Alの組成比を制御したバッファ層を形成することの効果について調べた。
【0283】
(試料6)
試料6では、まず、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法によりAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAlの組成比xは0.25であった。また、AlxGa(1-x)As層11のキャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0284】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により、バッファ層25を形成した。バッファ層25のAlの組成比xは0.15で一定であり、厚みは100nmであり、キャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0285】
次に、バッファ層25上に、OMVPE法により活性層21を形成した。活性層中のクラッド層(n型、p型とも)のAlの組成比xは0.35で一定であり、厚みは500nmであり、n型クラッド層のキャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0286】
これにより、図27に示すエピタキシャルウエハ20dを20個製造した。試料6では、AlxGa(1-x)As基板の主表面のAlの組成比(0.25)>バッファ層25のAlの組成比(0.15)<活性層21のAlの組成比(0.35)であった。
【0287】
(試料7)
試料7のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料6と同様であったが、バッファ層および活性層において異なっていた。具体的には、バッファ層25のAlの組成比xを0、つまりGaAs層とした。また、バッファ層25の厚みを10nmとした。さらに、活性層21の内、クラッド層のAlの組成比xを0.6とした。試料7では、AlxGa(1-x)As基板の主表面のAlの組成比(0.25)>バッファ層25のAlの組成比(0)<活性層21のAlの組成比(0.6)であった。
【0288】
(試料8)
試料8のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料6と同様であったが、バッファ層を形成しなかった点において異なっていた。
【0289】
(試料9)
試料9のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料7と同様であったが、バッファ層を形成しなかった点において異なっていた。
【0290】
(測定方法)
試料6〜9の20個のエピタキシャルウエハを用いて20個のLEDを作製した。そして、それぞれのLEDについて、順方向測定時のIF=20mAでの電圧値である順方向電圧VFを測定した。それらの最大値、最小値および平均値をを図40に示す。
【0291】
(測定結果)
図40に示すように、Alの組成比の低いバッファ層25を形成した試料6および7では、バッファ層を形成しなかった試料8および9と比較して、順方向電圧VFのばらつきを抑制できた。
【0292】
また、試料7では、バッファ層25としてGaAs層を形成しているが、厚みを薄くしているので、光の吸収を抑制できた。このため、Alの組成比xが非常に低いバッファ層を形成した場合であっても、厚みを薄くすることで、光出力に及ぼす影響の小さなエピタキシャルウエハを実現できた。
【0293】
特に、試料9では、AlxGa(1-x)As基板に直接Al組成比が高い活性層を形成しているので、VFのばらつきが大きかった。しかし、バッファ層25を形成した試料7では、Al組成比が高い活性層を形成した場合であっても、VFのばらつきを抑制できた。
【0294】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As基板と活性層との間に、活性層よりもAlの組成比が低くなるように制御したバッファ層を形成することにより、LEDを作製したときに特性を向上できることが確認できた。
【実施例9】
【0295】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であることの効果について調べた。
【0296】
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により、AlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、裏面11bのAlの組成比xが異なるように、複数のAlxGa(1-x)As層11を成長させた。これにより、AlxGa(1-x)As基板を準備した。
【0297】
次に、アンモニア:過酸化水素水=1:10のエッチング溶液を準備した。このエッチング溶液を用いて、室温で複数のAlxGa(1-x)As基板のGaAs基板をエッチングした。
【0298】
その結果、AlxGa(1-x)As層11においてGaAs基板と接していた裏面11bのAlの組成比が0.12以上の場合、1分間に3〜5μm/分のエッチングレートでGaAs基板を除去することができた(ステップS3)。さらに、AlxGa(1-x)As層11においてGaAs基板と接していた裏面11bのAlの組成比が0.12以上の場合、このAlxGa(1-x)As層の裏面で選択的にエッチングを停止させることができた。
【0299】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xを0.12以上にすることにより、GaAs基板を効率的に除去できることが確認できた。
【実施例10】
【0300】
本実施例では、900nm以上の赤外LEDを作成できることの効果について調べた。
本実施例では、実施例4の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、活性層21においてのみ異なっていた。具体的には、本実施例では、6nmの厚みを有し、In0.12Ga0.88Asよりなる井戸層と、12nmの厚みを有し、GaAs0.9P0.1よりなるバリア層とを、それぞれ20層ずつ有する活性層21を成長した。
【0301】
この赤外LEDについて、発光波長を測定した。その結果を図41に示す。図41に示すように、発光波長が940nmの赤外LEDを製造できることが確認できた。
【実施例11】
【0302】
本実施例では、900nm以上の発光波長の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハの条件について調べた。
【0303】
(本発明例1〜4)
本発明例1〜4の赤外LEDは、実施例10の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、AlxGa(1-x)As層11および活性層21においてのみ異なっていた。具体的には、AlxGa(1-x)As層11の平均的なAlの組成比を下記の表3に記載の通りにした。AlxGa(1-x)As層11の主表面および裏面のAl組成比を、一例として(裏面、主表面)の順で挙げると、0.05の場合(0.10、0.01)、0.15の場合(0.25、0.05)、0.25の場合(0.35、0.15)、0.35の場合(0.40、0.30)である。ただし、平均的Al組成比および(裏面、主表面)の組成比は任意に調整可能である。なお、AlxGa(1-x)As層11において裏面から主表面に向けてAlの組成比は単調減少していた。また、活性層21は、InGaAs層よりなる井戸層と、GaAsよりなるバリア層とを、それぞれ5層ずつ有する活性層21を成長した。この赤外LEDは、890nmの発光波長を有していた。
【0304】
(本発明例5〜8)
本発明例5〜8の赤外LEDは、本発明例1〜4の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、発光波長が940nmである点において異なっていた。
【0305】
(比較例1、2)
比較例1、2の赤外LEDは、本発明例1〜4、本発明例5〜8の赤外LEDとそれぞれ同様に製造したが、AlxGa(1-x)As層11を備えていない点において異なっていた。つまり、AlxGa(1-x)As層11を形成せず、かつGaAs基板を除去しなかった。
【0306】
(測定方法)
本発明例1〜8および比較例1、2の赤外LEDについて、格子緩和を測定した。格子緩和は、PL法、X線回折法、表面の目視検査により行った。格子緩和しているエピタキシャルウエハを赤外LEDに作製すると、暗線(ダークライン)として確認された。また、本発明例1〜8および比較例1、2の赤外LEDについて、実施例3と同様に光出力を測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0307】
【表3】
【0308】
表3に示すように、発光波長が890nmの赤外LEDでは、基板がGaAs基板であってもAlxGa(1-x)As層であっても、格子緩和(格子不整)がなかった。また、GaAs基板のみからなる比較例2の赤外LEDでは、発光波長が940nmであっても、格子緩和がなかった。しかし、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層11を備え、発光波長が940nmの本発明例5〜8の赤外LEDでは、格子緩和があった。このように、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDにおいては、格子緩和がない赤外LEDの出力が5mW〜6mWに対して、格子緩和がある赤外LEDの出力は2〜3.5mWと低く、同一のウエハ面内でもばらつきが大きいことがわかった。より具体的には、2〜4インチφのウエハ径を有するウエハでの測定ばらつきである。
【0309】
このことから、GaAs基板上で適用できた技術は、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いるエピタキシャルウエハには適用できないことがわかった。
【0310】
そこで、本発明者は、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いるエピタキシャルウエハにおいて、格子緩和が抑制される条件を下記のように鋭意研究した。
【0311】
具体的には、以下のように、本発明例9〜24および比較例3〜6の発光波長が940nmの赤外LEDを製造した。
【0312】
(本発明例9〜12)
本発明例9〜12の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、井戸層およびバリア層の層数をそれぞれ3層ずつにした点において異なっていた。この井戸層のInの組成比は、0.12であった。
【0313】
(本発明例13〜16)
本発明例13〜16の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、バリア層をGaAsPとし、井戸層およびバリア層の層数を3層ずつにした点において異なっていた。このバリア層のPの組成比は、0.10であった。
【0314】
(本発明例17〜20)
本発明例17〜20の赤外LEDは、基本的には本発明例13〜16の赤外LEDと同様に製造したが、井戸層およびバリア層の層数を10層ずつにした点において異なっていた。
【0315】
(本発明例21〜24)
本発明例21〜24の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、バリア層をAlGaAsPとし、井戸層およびバリア層の層数を20層ずつにした点において異なっていた。このバリア層のPの組成比は、0.10であった。
【0316】
(比較例3〜6)
比較例3の赤外LEDは、基本的には本発明例9〜12、本発明例13〜16、本発明例17〜20、本発明例21〜24の赤外LEDとそれぞれ同様に製造したが、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層を備えていないGaAs基板を用いた点において異なっていた。
【0317】
(測定方法)
上記方法と同様に、格子緩和および光出力を測定した。その結果を下記の表4に示す。
【0318】
【表4】
【0319】
(測定結果)
表4に示すように、活性層21内の井戸層がInを含むInGaAsを有し、井戸層の層数が4層以下である本発明例9〜12は、格子緩和が生じなかった。
【0320】
また、活性層内のバリア層がPを含むGaAsPまたはAlGaAsPを有し、バリア層の層数が3層以上である本発明例13〜24は、格子緩和が生じなかった。
【0321】
以上より、本実施例によれば、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハにおいて、活性層内の井戸層はInを含む材料を有し、井戸層の層数が4層以下である場合、および、活性層内のバリア層はPを含む材料を有し、バリア層の層数が3層以上である場合には、格子不整を抑制できることを見い出した。
【0322】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0323】
10a,10b AlxGa(1-x)As基板、11 AlxGa(1-x)As層、11a,13a 主表面、11b,13b,20c2,21c 裏面、13 GaAs基板、20a,20b,20c,20d,40,50 エピタキシャルウエハ、20c1 表面、21 活性層、21a 井戸層、21b バリア層、23 コンタクト層、25 バッファ層、30a,30b,30c,30d LED、31,32 電極、33 ステム、41,44 クラッド層、42,43 アンドープガイド層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AlxGa(1-x)As(0≦x≦1)(以下、AlGaAs(アルミニウムガリウム砒素)とも言う。)化合物半導体を利用したLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)は、赤外の光源として広く用いられている。赤外の光源としての赤外LEDは、光通信、空間伝送などに使用されており、伝送するデ−タの大容量化、伝送距離の長距離化に伴い、出力の向上が要求されている。
【0003】
このような赤外LEDの製造方法は、たとえば特開2002−335008号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1には、以下の工程が実施されることが記載されている。具体的には、まず、LPE(液相成長法:Liquid Phase Epitaxy)法により、GaAs(ガリウム砒素)基板上に、AlxGa(1-x)As支持基板を形成している。このとき、AlxGa(1-x)As支持基板のAl(アルミニウム)組成比をほぼ均一にしている。その後、OMVPE(有機金属気相成長法:OrganoMetallic Vapor Phase Epitaxy)法またはMBE(Molecular Beam Epitaxy:電子ビーム蒸着)法によりエピタキシャル層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−335008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、AlxGa(1-x)As支持基板のAl組成比をほぼ均一にしている。本発明者は鋭意研究の結果、Al組成比が高い場合には、このAlxGa(1-x)As支持基板を用いて製造する赤外LEDの特性が悪くなるという問題があることを見出した。また、本発明者は鋭意研究の結果、Al組成比が低い場合には、AlxGa(1-x)As支持基板の透過特性が悪いという問題があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、AlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、Al組成比が高い場合には、このAlxGa(1-x)As支持基板を用いて製造する赤外LEDの特性が悪くなるという問題があることおよびその要因を見出した。具体的には、Alは酸化されやすい性質を有しているため、AlxGa(1-x)As基板の表面に酸化層が形成されやすい。酸化層はこのAlxGa(1-x)As基板上に成長させるエピタキシャル層を阻害するので、エピタキシャル層に欠陥が導入される要因となる。エピタキシャル層に欠陥が導入されると、このエピタキシャル層を備えた赤外LEDの特性が悪くなるという問題がある。
【0008】
また、本発明者は、鋭意研究の結果、Alの組成比が低い程、AlxGa(1-x)As基板の透過特性が悪くなることを見出した。
【0009】
そこで、本発明のAlxGa(1-x)As基板は、主表面と、この主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を備えたAlxGa(1-x)As基板であって、AlxGa(1-x)As層において、裏面のAlの組成比xは、主表面のAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。
【0010】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層は、複数の層を含み、複数の層は、裏面側の面から主表面側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している。
【0011】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0012】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。
【0013】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面のAlの組成比xが0.12以上である。
【0014】
上記AlxGa(1-x)As基板において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面に接するGaAs基板をさらに備えている。
【0015】
本発明の赤外LED用のエピタキシャルウエハは、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、このAlxGa(1-x)As層の主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0016】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、上記エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い。
【0017】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0018】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0019】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。
【0020】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハにおいて好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0021】
本発明の赤外LEDは、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、エピタキシャル層と、第1の電極と、第2の電極とを備えている。エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層の主表面上に形成され、かつ活性層を含んでいる。第1の電極は、エピタキシャル層の表面に形成されている。第2の電極は、AlxGa(1-x)As層の裏面に形成されている。第2の電極は、GaAs基板の裏面に形成されていてもよい。
【0022】
本発明のAlxGa(1-x)As基板の製造方法は、GaAs基板を準備する工程と、GaAs基板上に、LPE法により主表面と、主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を成長させる工程とを備えている。そして、AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、裏面のAlの組成比xが、主表面のAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層を成長させることを特徴としている。
【0023】
AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、裏面側の面から、主表面側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含むAlxGa(1-x)As層を成長させる。
【0024】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0025】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。
【0026】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の裏面のAlの組成比xが0.12以上である。
【0027】
上記AlxGa(1-x)As基板の製造方法において好ましくは、GaAs基板を除去する工程をさらに備えていてもよい。
【0028】
本発明の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法は、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、AlxGa(1-x)As層の主表面上に、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方、あるいはその組み合わせにより活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程とを備えている。
【0029】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い。
【0030】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層を形成する工程では、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層のAlの組成比xは、活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0031】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、エピタキシャル層を形成する工程では、AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層のAlの組成比xよりも低い。
【0032】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。
【0033】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0034】
本発明のおける赤外LEDの製造方法は、上記いずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、AlxGa(1-x)As層の主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、AlxGa(1-x)As層の裏面またはGaAs基板の裏面に第2の電極を形成する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0035】
本発明のAlxGa(1-x)As基板、赤外LED用のエピタキシャルウエハ、赤外LED、AlxGa(1-x)As基板の製造方法、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法および赤外LEDの製造方法によれば、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスにできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図5】(A)〜(G)は、本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層のAlの組成比xを説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1におけるGaAs基板を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As層を成長させた状態を概略的に示す断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、本発明の実施の形態1におけるAlの組成比xが単調減少する複数の層をAlxGa(1-x)As層が備えた場合の効果を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3における活性層を概略的に示す拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態4における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4におけるエピタキシャルウエハの製造方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態5における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態6における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態6における赤外LEDの製造方法を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態7における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図21】実施例1において、AlxGa(1-x)As層のAlの組成比xに対する透過特性を示す図である。
【図22】実施例1において、AlxGa(1-x)As層のAlの組成比xに対する表面の酸素量を示す図である。
【図23】実施例3における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図24】実施例3における多重量子井戸構造を有する活性層を備えた赤外LED用のエピタキシャルウエハ、および、ダブルへテロ構造の赤外LED用のエピタキシャルウエハの光出力を示す図である。
【図25】実施例4における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図26】実施例4における窓層の厚みと光出力との関係を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態4の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図28】本発明の実施の形態6の変形例における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図29】本発明の実施の形態7の変形例における赤外LEDを概略的に示す断面図である。
【図30】実施例6において試料3および4の厚みとAlの組成比との関係を示す図である。
【図31】実施例6において試料5の厚みとAlの組成比との関係を示す図である。
【図32】実施例6の試料3および4において、厚みと、△Al/△tとの関係を示す図である。
【図33】実施例6の試料5において、厚みと、△Al/△tとの関係を示す図である。
【図34】実施例6において、Alの組成比が0以上0.3未満の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図35】実施例6において、Alの組成比が0.3以上0.5未満の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図36】実施例6において、Alの組成比が0.5以上1.0以下の△Al/△tと、出力との関係を示す図である。
【図37】実施例7におけるエピタキシャルウエハにおいて、酸素濃度および二次イオン強度と、厚みとの関係を示す断面図である。
【図38】実施例7におけるAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度と出力との関係を示す図である。
【図39】実施例7におけるAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度と出力との関係を示す図である。
【図40】実施例8における試料6〜9の順方向電圧を示す図である。
【図41】実施例10における赤外LEDの発光波長を測定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板について説明する。
【0038】
図1に示すように、AlxGa(1-x)As基板10aは、GaAs基板13と、GaAs基板13上に形成されたAlxGa(1-x)As層11とを備えている。
【0039】
GaAs基板13は、主表面13aと、この主表面13aと反対側の裏面13bとを有している。AlxGa(1-x)As層11は、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有している。
【0040】
GaAs基板13は、オフ角を有していても、有していなくてもよく、たとえば{100}面、または、{100}から0°を超え15.8°以下傾斜した主表面13aを有する。GaAs基板13は、{100}面、または、{100}から0°を超え2°以下傾斜した主表面13aを有していることが好ましい。GaAs基板13は、{100}面、または{100}から0°を超え0.2°以下傾斜した表面を有していることがより好ましい。GaAs基板13の表面は鏡面であっても粗面であってもよい。なお、{}は、集合面を示す。
【0041】
AlxGa(1-x)As層11は主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有している。主表面11aとは、GaAs基板13と接触している面と反対側の面である。裏面11bとは、GaAs基板13と接触している面である。
【0042】
AlxGa(1-x)As層11は、GaAs基板13の主表面13aに接するように形成されている。つまり、GaAs基板13はAlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するように形成されている。
【0043】
AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高い。なお、組成比xは、Alのモル比である。組成比(1−x)は、Gaのモル比である。
【0044】
ここで、AlxGa(1-x)As層11のモル比について図2〜図5を参照して説明する。図2〜図5中、縦軸は、AlxGa(1-x)As層11の裏面から主表面にかけて厚み方向の位置を示し、横軸は、各位置でのAlの組成比xを示す。
【0045】
図2に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、裏面11bから主表面11aにかけて、Alの組成比xが単調減少している。単調減少とは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bから主表面11aに向けて(成長方向に向けて)、組成比xが常に同じまたは減少しており、かつ裏面11bよりも主表面11aの方が組成比xが低いことを意味する。つまり、単調減少とは、この成長方向に向けて組成比xが増加している部分が含まれていない。
【0046】
図3〜図5に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、複数の層(図3〜5では2層)を含んでいてもよい。図3に示すAlxGa(1-x)As層11は、それぞれの層において裏面11b側から主表面11a側にかけて、Alの組成比xが単調減少している。また、図4に示すAlxGa(1-x)As層11のそれぞれの層のAlの組成比xは均一で、かつ裏面11b側の層は主表面11a側のAlの組成比xよりも高い。また、図5(A)に示すAlxGa(1-x)As層11の裏面11b側の層のAlの組成比xは均一で、かつ主表面11a側の層のAlの組成比xは単調減少し、かつ裏面11b側の層は主表面11a側のAlの組成比xよりも高い。つまり、図4および図5(A)に示すAlxGa(1-x)As層11は、全体としてAlの組成比xが単調減少している。
【0047】
なお、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xは、上記に限定されず、たとえば図5(B)〜(G)のような組成であってもよく、さらに別の例であってもよい。また、AlxGa(1-x)As層11は、裏面11bのAlの組成比xが主表面11aのAlの組成比xよりも高ければ、上述した1層または2層を含む場合に限定されず、3層以上の層を含んでいてもよい。
【0048】
AlxGa(1-x)As基板10aがLEDに用いられるときには、AlxGa(1-x)As層11はたとえば電流を拡散し、かつ活性層からの光を透過させる窓層の役割を担う。
【0049】
また、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えていることが好ましい。△Al/△tは大きいほど好ましいが、製造上の理由から、上限はたとえば6×10-2/μm以下であり、好ましくは3×10-2/μm以下である。
【0050】
△Al/△tは、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aから裏面11bにかけてたとえば1μmごとにEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)およびSIMSで△Alを測定することにより得られる。△Al/△tは、AlxGa(1-x)As層11の任意の位置で測定され得る。
【0051】
また、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であることが好ましい。
【0052】
続いて、図6を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板の製造方法について説明する。
【0053】
図6および図7に示すように、まず、GaAs基板13を準備する(ステップS1)。
GaAs基板13は、オフ角を有していても、有していなくてもよく、たとえば{100}面、または、{100}から0°を超え15.8°以下傾斜した主表面13aを有する。GaAs基板13は、{100}面、または、{100}から0°を超え2°以下傾斜した主表面13aを有していることが好ましい。GaAs基板13は、{100}面、または{100}から0°を超え0.2°以下傾斜した主表面13aを有していることがより好ましい。
【0054】
図6および図8に示すように、次に、GaAs基板13上に、LPE法により主表面11aを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)11を成長させる(ステップS2)。このAlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2では、GaAs基板13との界面(裏面11b)のAlの組成比xが、主表面11aのAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層11を成長させる。また、裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であるAlxGa(1-x)As層11を成長させることが好ましい。
【0055】
LPE法は特に限定されず、徐冷法、温度差法などを用いることができる。なお、LPE法とは、液相からAlxGa(1-x)As(0≦x≦1)結晶を成長させる方法をいう。徐冷法とは、原料の溶液の温度を徐々に下げてAlxGa(1-x)As結晶を成長させる方法である。温度差法とは、原料の溶液に温度勾配をつくり、AlxGa(1-x)As結晶を成長させる方法をいう。
【0056】
AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが一定の層を成長させる場合には温度差法および徐冷法を用い、Alの組成比xが上方(成長方向)に向けて減少している層を成長させる場合には徐冷法を用いることが好ましい。量産性および低コストに優れているため、徐冷法を用いることが特に好ましい。またそれらを組み合わせてもよい。
【0057】
LPE法は、液相と固相との化学平衡を利用しているので成長速度が速い。このため、厚みの大きなAlxGa(1-x)As層11を容易に形成できる。具体的には、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは20μm以上140μm以下の厚みH11を有するAlxGa(1-x)As層11を成長させる。なお、このときの厚みH11は、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向において最も小さい厚みである。
【0058】
また、GaAs基板13の厚みH13に対するAlxGa(1-x)As層11の厚みH11の比(H11/H13)は、たとえば0.1以上0.5以下が好ましく、0.3以上0.5以下がより好ましい。この場合、GaAs基板13上にAlxGa(1-x)As層11を成長させた状態で、反りが発生するのを緩和することができる。
【0059】
また、たとえばZn(亜鉛)、Mg(マグネシウム)、C(炭素)などのp型ドーパントSe(セレン)、S(硫黄)、Te(テルル)などのn型ドーパントを含むようにAlxGa(1-x)As層11を成長させてもよい。
【0060】
このようにLPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長させると、図8に示すように、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aには凹凸が生じる。
【0061】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄する(ステップS3)。このステップS3では、アルカリ系溶液を用いて洗浄することが好ましい。なお、リン酸や硫酸などの酸化溶液などを用いてもよい。アルカリ系溶液は、アンモニアと過酸化水素とを含むことが好ましい。アンモニアと過酸化水素とを含むアルカリ系溶液で洗浄すると、主表面11aがエッチングされるので、空気に触れることにより主表面11aに付着した不純物を除去できる。この場合、たとえば0.2μm/min以下のエッチングレートで主表面11a側から0.2μm以下エッチングされるように制御することにより、主表面11aの不純物を低減できるとともにエッチング量が少なくなる。なお、この主表面11aを洗浄するステップS3は省略されてもよい。
【0062】
次に、アルコールでGaAs基板13およびAlxGa(1-x)As層11を乾燥する。なお、この乾燥するステップは省略されてもよい。
【0063】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨する(ステップS4)。研磨する方法は、特に限定されず、機械的研磨、化学機械研磨法、電界研磨法、化学研磨法などを用いることができ、研磨の容易性から機械的研磨または化学的研磨が好ましい。
【0064】
主表面11aの表面粗さRmsがたとえば0.05nm以下になるように、主表面11aを研磨する。表面粗さRmsは小さい程好ましい。なお、「表面粗さRms」とは、JIS B0601に規定する表面の二乗平均粗さ、すなわち、平均面から測定面までの距離(偏差)の二乗を平均した値の平方根を意味する。なお、この研磨するステップS4は省略されてもよい。
【0065】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄する(ステップS5)。この主表面11aを洗浄するステップS5は、研磨するステップS4実施前の主表面11aを洗浄するステップS3と同様であるので、その説明を繰り返さない。なお、この洗浄するステップS5は省略されてもよい。
【0066】
次に、GaAs基板13およびAlxGa(1-x)As層11を、AlxGa(1-x)As基板10aを用いてエピタキシャル成長前にH2(水素)、AsH3(アルシン)を流してサーマルクリーニングする。なお、このサーマルクリーニングするステップは省略されてもよい。
【0067】
以上のステップS1〜S5を実施することにより、図1に示す本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aを製造することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aは、主表面11aと、この主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10aであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。そして、このAlxGa(1-x)As層11の裏面11bに接するGaAs基板13をさらに備えている。
【0069】
また本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法は、GaAs基板13を準備する工程(ステップS1)と、GaAs基板13上に、LPE法により主表面11aを有するAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)とを備えている。このAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)では、GaAs基板13との界面(裏面11b)のAlの組成比xが、主表面11aのAlの組成比xよりも高いAlxGa(1-x)As層11を成長させることを特徴としている。
【0070】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10aおよびAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によれば、裏面11bのAl組成比xは主表面11aのAl組成比xよりも高い。このため、酸化されやすい性質を有するAlが主表面11aに存在することを抑制できる。このため、AlxGa(1-x)As基板10aの表面(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11の主表面11a)に絶縁性の酸化層が形成されることを抑制できる。特に、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長させているので、主表面11aに以外の内部の領域には、酸素が取り込まれにくい。したがって、このAlxGa(1-x)As基板10a上にエピタキシャル層を成長させる際、エピタキシャル層に欠陥が導入されることを抑制することができる。その結果、このエピタキシャル層を備えた赤外LEDの特性を向上することができる。
【0071】
また、主表面11aのAlの組成比xは、裏面11bのAl組成比xよりも低い。本発明者は、鋭意研究の結果、Alの組成比xが高い程、AlxGa(1-x)As基板10aの透過特性が良くなることを見出した。裏面11b側にAlが多く含まれていても、表面に露出している時間が短いため、酸化層が形成されることは低減できる。このため、酸化層が形成されることを抑制できる部分に、Alの組成比xの高いAlxGa(1-x)As結晶を成長させることにより、透過特性を向上できる。
【0072】
このように、AlxGa(1-x)As層11において、主表面11a側でデバイスの特性を向上するようにAlの組成比xを低くし、裏面11b側で透過特性を向上するようにAlの組成比xを高くしている。よって、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、AlxGa(1-x)As基板10aを実現することができる。
【0073】
上記AlxGa(1-x)As基板10aにおいて好ましくは、図3に示すように、AlxGa(1-x)As層11は、複数の層を含み、この複数の層は、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している。
【0074】
上記AlxGa(1-x)As基板10aの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)では、GaAs基板13との界面側の面(裏面11b)から、主表面11a側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含むAlxGa(1-x)As層11を成長させる。
【0075】
これにより、AlxGa(1-x)As基板10aに生じる反りを緩和することができることを本発明者は見出した。以下、図9(A)〜(C)を参照して、その理由を説明する。図9(A)は、図2に示すように、AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが単調減少する層が1層の場合を示す。図9(B)は、AlxGa(1-x)As層11において図3に示すようにAlの組成比xが単調減少する層が2層の場合を示す。図9(C)は、AlxGa(1-x)As層11においてAlの組成比xが単調減少する層が3層の場合を示す。図9(A)〜(C)において、横軸はAlxGa(1-x)As層11の裏面11bから主表面11aにかけての厚み方向の位置を示し、縦軸はAlxGa(1-x)As層11の各位置でのAlの組成比xを示す。図9(A)〜(C)に示すAlxGa(1-x)As層11は、裏面11bおよび主表面11aのAlの組成比xは同じである。
【0076】
図9(A)〜(C)において、Alの組成比xを示す傾斜y中の最も高い位置(点A)を下方向に延在し、かつ傾斜y中の最も低い位置(点B)を左方向に延在したときに交わる交点(点C)とにより、仮想の三角形が形成される。この三角形の面積の合計は、AlxGa(1-x)As層11に加わる応力である。この応力により、AlxGa(1-x)As層11に反りが生じる。
【0077】
この三角形の重心Gと、AlxGa(1-x)As層11の厚みの中心との距離zが大きくなる程、AlxGa(1-x)As層11に反りが発生することを本発明者は見出した。この重心Gは、図9(A)に示す場合には、傾斜yに基づいて形成した三角形の重心Gであり、図9(B)および(C)に示す場合には、傾斜yに基づいて形成した三角形の重心G1〜G3を結んだときの中心である。この重心Gは、AlxGa(1-x)As層11内で応力を足し合わせた合力の作用点になる。
【0078】
図9(A)〜(C)に示すように、Alの組成比xが単調減少する層の数が多い程、厚みの中心から重心Gが位置する厚みまでの距離zが短くなるので、AlxGa(1-x)As層11に生じる反りが小さくなる。このため、Alの組成比xが単調減少する層を複数形成することにより、AlxGa(1-x)As基板10aの反りを緩和できる。ここで図中の複数の三角形にて、Alの組成比xの最大値および最小値と、AlxGa(1-x)As層11の厚みとを同じにしているが、必ずしも同じにする必要はない。透過性、反り、界面状態などに応じて調整可能である。
【0079】
上記AlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の厚み方向の異なる2点のAlの組成の差を△Alとし、2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている。
【0080】
これにより、主表面11aに向けて酸化が抑制されるので、AlxGa(1-x)As基板10aを用いて赤外LEDを作製したときに、出力を向上することができる。
【0081】
上記AlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法において好ましくは、△Al/△tが6×10-2/μm以下である。これにより、赤外LEDを作製したときに、出力をより向上することができる。
【0082】
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板を概略的に示す断面図である。図10を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bについて説明する。
【0083】
図10に示すように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bは、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aと基本的には同様の構成を備えているが、GaAs基板13を備えていない点において異なる。
【0084】
具体的には、AlxGa(1-x)As基板10bは、主表面11aと、主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えている。そして、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高い。
【0085】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As層11の厚みは、AlxGa(1-x)As基板10bが自立基板となる程度に厚いことが好ましい。このような厚みH11は、たとえば70μm以上である。
【0086】
続いて、図11を参照して、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法について説明する。
【0087】
図11に示すように、まず、実施の形態1と同様に、GaAs基板13を準備するステップS1、LPE法によるAlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2、洗浄するステップS3および研磨するステップS4が実施される。これにより、図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aが製造される。
【0088】
次に、GaAs基板13を除去する(ステップS6)。除去する方法は、たとえば研磨、エッチングなどの方法を用いることができる。研磨とは、ダイヤモンド砥石を持つ研削設備などで、アルミナ、コロイダルシリカ、ダイヤモンドなどの研磨剤を用いてGaAs基板13を機械的に削り取ることをいう。エッチングとは、たとえばアンモニア、過酸化水素などを最適に調合することでAlxGa(1-x)Asでエッチング速度が遅く、GaAsでエッチング速度が速い選択エッチング液を用いて、GaAs基板13の除去を行なうことをいう。
【0089】
AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上である場合には、GaAsとAlxGa(1-x)Asとの選択性が高くなる。このため、GaAs基板を生産性を向上して除去できる。
【0090】
次に、実施の形態1と同様に、洗浄するステップS5を実施する。
以上のステップS1〜S6を実施することにより、図10に示すAlxGa(1-x)As基板10bを製造することができる。
【0091】
なお、これ以外のAlxGa(1-x)As基板10bおよびその製造方法は、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bは、主表面11aと、主表面11aと反対側の裏面11bとを有するAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10bであって、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことを特徴としている。
【0093】
また本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法は、GaAs基板13を除去する工程(ステップS6)をさらに備えている。
【0094】
本実施の形態におけるAlxGa(1-x)As基板10bおよびAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によれば、GaAs基板13を備えずにAlxGa(1-x)As層11のみを備えたAlxGa(1-x)As基板10bを実現できる。GaAs基板13は波長が900nm以下の光を吸収するので、GaAs基板13が除去されたAlxGa(1-x)As基板10b上にエピタキシャル層を成長させることにより、赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造することができる。この赤外LED用のエピタキシャルウエハを用いて赤外LEDを製造すると、高い透過特性を維持し、かつ高いデバイス特性を有する赤外LEDを実現することができる。
【0095】
上記AlxGa(1-x)As基板10bおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上である。Alの組成比xが0.12以上と高い場合には、GaAsに対しエッチングが速い溶液(ウエットエッチング法)、プラズマ、ガス種(ドライエッチング法)などを用いることができる。このため、GaAsとAlxGa(1-x)Asとの選択性が高いエッチングによりGaAs基板13を除去することができる。したがって、生産性を向上し、選択除去の歩留まりを向上することができる。なお、AlxGa(1-x)As層11が複数の層を含んでいる場合においては、GaAs基板13と接していた層(最下層)の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であれば同様の効果を有する。
【0096】
(実施の形態3)
図12を参照して、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20aを説明する。
【0097】
図12に示すように、エピタキシャルウエハ20aは、実施の形態1における図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。つまり、エピタキシャルウエハ20aは、GaAs基板13と、GaAs基板13上に形成されたAlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。活性層21は、AlxGa(1-x)As層11よりもバンドギャップが小さい。
【0098】
活性層21においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(裏面21c)のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11において活性層21と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。また、活性層21を含むエピタキシャル層において最も厚みの大きい層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11において活性層21と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。この場合、エピタキシャルウエハ20aに生じる反りを緩和することができる。
【0099】
AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下であることが好ましく、4×1019atom/cm3以下であることがより好ましい。
【0100】
AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下であることが好ましく、3.5×1014atom/cm2以下であることがより好ましい。
【0101】
上記AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層との界面の酸素濃度は、たとえばSIMSにより測定することができる。
【0102】
図13に示すように、活性層21は、多重量子井戸構造を有していることが好ましい。活性層21は、2層以上の井戸層21aを含んでいる。この井戸層21aは、井戸層21aよりもバンドギャップの大きな層であるバリア層21bでそれぞれ挟み込まれている。つまり、複数の井戸層21aと、井戸層21aよりもバンドギャップの大きい複数のバリア層21bとが交互に配置されている。活性層21は、複数の井戸層21aの全てがバリア層21bに挟み込まれていてもよく、あるいは、活性層21の少なくとも一方の表面に井戸層21aが配置され、表面に配置される井戸層21aは、表面側に配置されるガイド層、クラッド層(図示せず)などの他の層と、バリア層21bとにより挟み込まれていてもよい。なお、図13に示す領域XIIIは、活性層21中において上部とは限られない。
【0103】
活性層21は、好ましくは2層以上100層以下、より好ましくは10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有している。井戸層21aおよびバリア層21bが2層以上の場合、多重量子井戸層を構成する。井戸層21aおよびバリア層21bが10層以上の場合、発光効率を向上することにより光出力を向上できる。100層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストを低減できる。50層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストをより低減できる。
【0104】
活性層21の厚みH21は6nm以上2μm以下が好ましい。厚みH21が6nm以上の場合、発光強度を向上できる。厚みH21が2μm以下の場合、生産性を向上できる。
【0105】
井戸層21aの厚みH21aは3nm以上20nm以下が好ましい。バリア層21bの厚みH21bは、5nm以上1μm以下が好ましい。
【0106】
井戸層21aの材料は、バリア層21bよりもバンドギャップが小さければ特に限定されないが、GaAs、AlGaAs、InGaAs(インジウムガリウム砒素)、AlInGaAs(アルミニウムインジウムガリウム砒素)などを用いることができる。これらの材料は、AlGaAsとの格子整合度が適合する赤外発光の材料である。
【0107】
エピタキシャルウエハ20aが発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる場合には、井戸層21aの材料はInを含み、Inの組成比が0.05以上のInGaAsであることが好ましい。また、井戸層21aがInを含む材料を有する場合には、井戸層21aおよびバリア層21bを、それぞれ4層以下有する活性層21であることが好ましい。より好ましくは、それぞれ3層以下有する活性層21であることが好ましい。
【0108】
バリア層21bの材料は、井戸層21aよりもバンドギャップが大きければ特に限定されないが、AlGaAs、InGaP、AlInGaP、InGaAsPなどを用いることできる。これらの材料は、AlGaAsとの格子整合度が適合する材料である。
【0109】
エピタキシャルウエハ20aが発光波長が900nm以上、好ましくは940nm以上の赤外LEDに用いられる場合には、活性層21内のバリア層21bの材料はPを含み、Pの組成比が0.05以上のGaAsPまたはAlGaAsPであることが好ましい。また、バリア層21bがPを含む材料を有する場合には、井戸層21aおよびバリア層21bを、それぞれ3層以上有する活性層21であることが好ましい。
【0110】
活性層21を含むエピタキシャル層中の元素以外の元素(たとえば成長させる雰囲気中の元素など)の濃度が低いことが好ましい。
【0111】
なお、活性層21は、多重量子井戸構造に特に限定されず、1層よりなっていてもよく、ダブルへテロ構造であってもよい。
【0112】
また、本実施の形態ではエピタキシャル層として活性層21のみを含んでいる場合について説明したが、クラッド層、アンドープ層などの他の層をさらに含んでいてもよい。
【0113】
続いて、図14を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法について説明する。
【0114】
図14に示すように、まず、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10aを製造する(ステップS1〜S5)。
【0115】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)。
【0116】
このステップS7では、エピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(裏面21c)のAlの組成比xが、AlxGa(1-x)As層においてエピタキシャル層と接する面(本実施の形態では主表面11a)のAlの組成比xよりも高くなるように、エピタキシャル層を形成することが好ましい。また、エピタキシャル層において最も厚みの大きい層のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高いことが好ましい。
【0117】
OMVPE法は原料ガスがAlxGa(1-x)As層11上で熱分解反応することにより活性層21を成長させ、MBE法は非平衡系で化学反応過程を介さない方法で活性層21を成長させるので、OMVPE法およびMBE法は活性層21の厚みを容易に制御できる。このため、2層以上の井戸層21aを複数有する活性層21を成長できる。
【0118】
また、AlxGa(1-x)As層11の厚みH11に対するエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)の厚みH21(H21/H11)は、たとえば0.05以上0.25以下が好ましく、0.15以上0.25以下がより好ましい。この場合、AlxGa(1-x)As層11上にエピタキシャル層を成長させた状態で、反りが発生するのを緩和することができる。
【0119】
また、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下であることが好ましく、4×1019atom/cm3以下であることがより好ましい。
【0120】
また、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層(本実施の形態では活性層21)との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下であることが好ましく、3.5×1014atom/cm2以下であることがより好ましい。
【0121】
このステップS7では、AlxGa(1-x)As層11上には、上述したような活性層21を含むエピタキシャル層を成長させる。
【0122】
具体的には、好ましくは2層以上100層以下、より好ましくは10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有する活性層21を形成する。
【0123】
また、6nm以上2μm以下の厚みH12を有するように活性層21を成長することが好ましい。また、3nm以上20nm以下の厚みH21aを有する井戸層21a、および、5nm以上1μm以下の厚みH21bを有するバリア層21bを成長させることが好ましい。
【0124】
また、GaAs、AlGaAs、InGaAs、AlInGaAsなどよりなる井戸層21a、およびAlGaAs、InGaP、AlInGaP、GaAsP、AlGaAsP、InGaAsPなどよりなるバリア層21bを成長させることが好ましい。
【0125】
活性層21は、AlxGa(1-x)As基板となるGaAsおよびAlGaAsに対して、格子不整(格子緩和)があっても、なくてもよい。井戸層21aが格子不整を有する場合、バリア層21bに逆方向の格子不整をもたせ、エピタキシャルウエハの構造全体としては、圧縮−伸張の結晶歪みをバランスさせてもよい。また、結晶歪量は、格子緩和する限界以下であっても、以上であってもよい。ただし、格子緩和する限界以上の場合、結晶を貫通した転位が発生しやすくなるため、限界以下の方が望ましい。
【0126】
一例として、井戸層21aにInGaAsを用いる場合を挙げる。InGaAsは、GaAs基板に対し、格子定数が大きいため、一定以上の厚みのエピタキシャル層を成長すると、格子緩和が発生する。そのため、格子緩和が発生する限度以下の厚みとすることで、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0127】
また、バリア層21bにGaAsPを用いると、GaAsPは、GaAs基板に対して格子定数が小さいため、一定以上の厚みのエピタキシャル層を成長すると、格子緩和が発生する。そのため、格子緩和が発生する限度以下の厚みとすることで、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0128】
最後に、GaAs基板に対し、InGaAsは格子定数が大きく、GaAsPが格子定数が小さいという特徴を活用し、井戸層21aにInGaAs、バリア層21bにGaAsPを用い、結晶全体の格子歪をバランスさせることにより、上記の限度以上まで、格子緩和を発生させず、結晶を貫通した転位の発生を抑制した良好な結晶を得ることができる。
【0129】
以上のステップS1〜S5およびS7を実施することにより、図12に示すエピタキシャルウエハ20aを製造できる。
【0130】
なお、GaAs基板13を除去するステップS6をさらに実施してもよい。このステップS6は、たとえばエピタキシャル層を成長させるステップS7の後に実施されるが、特にこの順序に限定されない。ステップS6は、たとえば研磨するステップS4と洗浄するステップS5との間に実施してもよい。このステップS6は、実施の形態2のステップS6と同様であるので、その説明を繰り返さない。このステップS6を実施した場合には、後述する図15のエピタキシャルウエハ20bと同様の構造になる。
【0131】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aは、実施の形態1のAlxGa(1-x)As基板10aと、AlxGa(1-x)As基板10aのAlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0132】
また本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法は、実施の形態1のAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10aを製造する工程(ステップS1〜S6)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法またはMBE法の少なくとも一方により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する工程(ステップS7)とを備えている。
【0133】
本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法によれば、裏面11bよりも主表面11aのAlの組成比xが低いAlxGa(1-x)As層11を備えたAlxGa(1-x)As基板10a上にエピタキシャル層を形成している。このため、高い透過特性を維持し、かつエピタキシャルウエハ20aを用いてデバイスを作製したときに高い特性を有するデバイスとなる、赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0134】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面(エピタキシャル層の裏面21c)のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面(主表面11a)のAlの組成比xよりも高い。
【0135】
これにより、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層とを一体としてみると、実施の形態1で記述した理由と同様に、エピタキシャルウエハ20aの反りを緩和できる。
【0136】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、GaAs基板13を準備する工程(ステップS1)と、GaAs基板13上に、LPE法により、電流を拡散し、かつ活性層からの光を透過させる窓層としてのAlxGa(1-x)As層11を成長させる工程(ステップS2)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨する工程(ステップS4)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方により、多重量子井戸構造を有し、AlxGa(1-x)As層11よりもバンドギャップが小さい活性層21を成長する工程(ステップS7)とを備えている。
【0137】
LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を成長している(ステップS2)ため、成長速度が速い。またLPE法では、高価な原料ガスおよび高価な装置を用いる必要がないので製造コストが低い。このため、OMVPE法およびMBE法よりも、コストを低減して厚みの大きなAlxGa(1-x)As層11を形成できる。このAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを研磨することによりAlxGa(1-x)As層11の主表面11aの凹凸を低減することができる。このため、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に活性層21を含むエピタキシャル層を形成する際に、活性層21を含むエピタキシャル層の異常成長を抑制することができる。また原料ガスの熱分解反応によるOMVPE法または非平衡系で化学反応過程を介さないMBE法は、膜厚を良好に制御できる。このため、主表面11aを研磨するステップS4後に、OMVPE法またはMBE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成することにより、異常成長が抑制され、かつ活性層21の膜厚を良好に制御された、多重量子井戸構造(MQW構造)を有する活性層を形成することができる。
【0138】
特に、LEDは、LD(レーザーダイオード:Laser Diode)よりも膜厚が小さい場合が多いので、膜厚の制御性が良好なOMVPE法またはMBE法を用いることにより、多重量子井戸構造を有する活性層21を含むエピタキシャル層を形成できる。
【0139】
また、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を成長するステップS2後にOMVPE法またはMBE法により活性層21を成長させる。LPE法の後にOMVPE法またはMBE法で活性層21を成長させれば、活性層21に長時間の高温の熱が加えられることが防止される。このため、高温の熱によって活性層21に結晶欠陥が生じるなど結晶性が劣化することを防止でき、かつLPE法で導入するドーパントが活性層21へ拡散することを防止できる。
【0140】
本実施の形態では、活性層21を成長させるステップS6後に、LPE法で用いる高温の雰囲気に活性層21を曝さないので、たとえばAlxGa(1-x)As層11に導入した拡散しやすいp型ドーパントが活性層21内に拡散することを防止できる。このため、活性層21のZn、Mg、Cなどのp型キャリア濃度を、たとえば1×1018cm-3以下まで低くできる。このため、活性層21に、不純物準位が形成されてしまうことなどを防止でき、井戸層21aとバリア層21bとのバンドギャップの差を維持できる。
【0141】
したがって、性能を向上した多重量子井戸構造を有する活性層21を形成できるので、GaAs基板13を除去し(ステップS7)、かつ電極を形成すると、活性層21において状態密度を変化することにより、電子と正孔との再結合が効率よく行なわれる。このため、発光効率を向上した赤外LEDとなるエピタキシャルウエハ20aを成長することができる。
【0142】
なお、窓層としてのAlxGa(1-x)As層11は、AlxGa(1-x)As層11および活性層21の積層方向(図1において縦方向)と交差する方向(図1において横方向)に電流を拡散するので、光取り出し効率を向上することにより、発光効率を向上できる。
【0143】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11を成長させるステップS2と研磨するステップS4との間、および研磨するステップS4およびエピタキシャル層を成長させるステップS7との間の少なくとも一方に、AlxGa(1-x)As層11の表面を洗浄するステップS3、S5をさらに備えている。
【0144】
これにより、AlxGa(1-x)As層11が大気に触れることによって、AlxGa(1-x)As層11に不純物が付着または混入した場合であっても、その不純物を除去できる。
【0145】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法において好ましくは、洗浄するステップS3、S5では、アルカリ系溶液を用いて主表面11aを洗浄する。
【0146】
これにより、AlxGa(1-x)As層11に不純物が付着または混入した場合には、より効果的に不純物をAlxGa(1-x)As層11から除去できる。
【0147】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の厚みH11は、10μm以上1000μm以下が好ましく、20μm以上140μm以下であることがより好ましい。
【0148】
厚みH11が10μm以上の場合、発光効率を向上できる。厚みH11が20μm以上の場合、発光効率をより向上できる。厚みH11が1000μm以下の場合、AlxGa(1-x)As層11を形成するために要するコストを低減できる。厚みH11が140μm以下の場合、AlxGa(1-x)As層11を形成するために要するコストをより低減できる。
【0149】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、活性層21は、井戸層21aと、井戸層21aよりもバンドギャップの大きいバリア層21bとが交互に配置され、10層以上50層以下の井戸層21aおよびバリア層21bをそれぞれ有している。
【0150】
10層以上の場合、発光効率をより向上できる。50層以下の場合、活性層21を形成するために要するコストを低減できる。
【0151】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aの酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である。また、上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、AlxGa(1-x)As層の主表面11aの酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である。
【0152】
これにより、主表面11a上にエピタキシャル層を形成したときに、界面の酸素のピーク濃度および酸素の面密度を低減できる。このため、AlxGa(1-x)As基板10aを用いて赤外LEDを作製したときに、出力を向上することができる。
【0153】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハおよびその製造方法であって、活性層21内の井戸層21aはIn含む材料を有し、井戸層21aの層数が4層以下である。発光波長は940nm以上であることがより好ましい。
【0154】
本発明者は、Inを含む材料を有し、4層以下の井戸層を有する活性層21を形成することによって、格子緩和が抑制されることを見い出した。このため、波長が900nm以上の赤外LEDに用いることができるエピタキシャルウエハを実現することができる。
【0155】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、井戸層21aは、インジウムの組成比が0.05以上のInGaAsである。
【0156】
これにより、波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる有用なエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0157】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法において好ましくは、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハおよびその製造方法であって、活性層21内のバリア層21bはPを含む材料を有し、バリア層21bの層数が3層以上である。
【0158】
本発明者は、Pを含む材料を有する活性層21を形成することによって、格子緩和が抑制されることを見い出した。このため、波長が900nm以上の赤外LEDに用いることができるエピタキシャルウエハを実現することができる。
【0159】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法において好ましくは、バリア層21bは、Pの組成比が0.05以上のGaAsPまたはAlGaAsPである。
【0160】
これにより、波長が900nm以上の赤外LEDに用いられる有用なエピタキシャルウエハ20aを実現することができる。
【0161】
(実施の形態4)
図15を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bについて説明する。
【0162】
図15に示すように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bは、実施の形態2における図10に示すAlxGa(1-x)As基板10bと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成された活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0163】
また本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bは、実施の形態3に示すエピタキシャルウエハ20aと基本的には同様の構成を備えているが、GaAs基板13を備えていない点において異なる。
【0164】
続いて、図16を参照して、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20bの製造方法について説明する。
【0165】
図16に示すように、まず、実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10bを製造する(ステップS1〜S6)。
【0166】
次に、実施の形態3と同様に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)。
【0167】
以上のステップS1〜S7を実施することにより、図15に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bを製造することができる。
【0168】
なお、これ以外の赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法は、実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0169】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層とを備えている。
【0170】
また本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bの製造方法は、GaAs基板13を除去する工程(ステップS6)をさらに備えている。
【0171】
本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bおよびその製造方法によれば、可視光を吸収するGaAs基板が除去されたAlxGa(1-x)As基板13を用いている。このため、エピタキシャルウエハ20bに電極をさらに形成すると、高い透過特性を維持し、かつ高いデバイス特性を維持した赤外LEDとなるエピタキシャルウエハ20bを実現することができる。
【0172】
(変形例)
図27を参照して、本実施の形態の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dについて説明する。図27に示すように、変形例におけるエピタキシャルウエハ20dは、基本的には図15に示すエピタキシャルウエハ20bと同様の構成を備えているが、エピタキシャル層がバッファ層25をさらに含んでいる点において異なっている。バッファ層25は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有している。つまり、変形例のエピタキシャルウエハ20dは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成されたバッファ層25と、バッファ層25上に形成された活性層21とを備えている。
【0173】
バッファ層25は、Alを含み、バッファ層25のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。ここで、活性層21のAl組成比xは、活性層21全体の平均的なAl組成比、あるいは、活性層21内のクラッド層のAl組成比を指している。
【0174】
バッファ層25のAlの組成比xが活性層21のAlの組成比xよりも低い場合、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層(本実施の形態ではバッファ層25)と接する面のAlの組成比xよりも低くてもよい。つまり、Alの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11>バッファ層25<活性層21となる。さらに言い換えると、Alの組成比は、活性層21>AlxGa(1-x)As層11の場合と、活性層21<AlxGa(1-x)As層11の場合とを含む。
【0175】
また、バッファ層25のAlの組成比xが活性層21のAlの組成比xよりも低い場合で、かつエピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xが、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い場合には、Alの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11<バッファ層25<活性層21となる。
【0176】
変形例におけるエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には実施の形態4と同様の構成を備えているが、エピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成している。
【0177】
具体的には、AlxGa(1-x)As層11を製造した後に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上にバッファ層25を形成する。バッファ層25の形成方法は特に限定されず、OMVPE法、MBE法などにより形成することができる。その後、バッファ層上に活性層21を形成する。バッファ層25はAlを含んでいることが好ましく、Alの組成比xは、上述したとおりである。
【0178】
以上説明したように、実施の形態4の変形例における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dは、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高く、かつエピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含み、バッファ層のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。
【0179】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dの製造方法は、エピタキシャル層においてAlxGa(1-x)As層11と接する面のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高く、かつエピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層25のAlの組成比xは、活性層21のAlの組成比xよりも低い。
【0180】
また、変形例の赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dにおいて、エピタキシャル層は、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含み、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層21のAlの組成比xよりも低くてもよい。
【0181】
上記赤外LED用のエピタキシャルウエハ20dの製造方法は、エピタキシャル層を形成するステップS7では、AlxGa(1-x)As層11と接する面を有するバッファ層25をさらに含むエピタキシャル層を形成し、バッファ層25のAlの組成比xは、AlxGa(1-x)As層11においてエピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ活性層21のAlの組成比xよりも低くてもよい。
【0182】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記のようにAlの組成比xを制御したバッファ層25を含むエピタキシャル層を形成することにより、順方向電圧(VF)の絶対値およびばらつきを効果的に低減できることを見い出した。
【0183】
AlxGa(1-x)As層11を含むAlxGa(1-x)As基板を製造後、エピタキシャル層を形成するまで大気に曝される場合がある。本実施の形態のAlxGa(1-x)As層11の主表面11aに酸化層の形成が低減される効果を有するものの、大気との反応により酸化層が形成される場合がある。このAlxGa(1-x)As層11の主表面11aに酸化反応性が高い活性層21を接するように形成すると、AlxGa(1-x)As層11と活性層との間に、Alと酸素とが反応することによる欠陥が形成される。このことは、電気的なVFの増加およびばらつきの原因となる。しかし、変形例では、活性層21のAlの組成比よりも低いAlの組成比を有するバッファ層25をAlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成しているので、AlxGa(1-x)As層11とエピタキシャル層との界面に欠陥が形成されることを効果的に抑制できる。その結果、このエピタキシャルウエハ20dを備えた赤外LEDのVF特性を向上することができる。
【0184】
(実施の形態5)
図17を参照して、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cについて説明する。
【0185】
図17に示すように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20cは、基本的には実施の形態4におけるエピタキシャルウエハ20bと同様の構成を備えているが、エピタキシャル層がコンタクト層23をさらに含んでいる点において異なる。つまり、本実施の形態では、エピタキシャル層は、活性層21と、コンタクト層23とを含んでいる。
【0186】
具体的には、エピタキシャルウエハ20cは、AlxGa(1-x)As層11と、AlxGa(1-x)As層11上に形成された活性層21と、活性層21上に形成されたコンタクト層23とを備えている。
【0187】
コンタクト層23は、たとえばp型GaAsよりなり、0.01μm以上の厚みH23を有している。
【0188】
続いて、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの製造方法について説明する。本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの製造方法は、実施の形態4におけるエピタキシャルウエハ20bの製造方法と同様の構成を備えているが、エピタキシャル層を形成するステップS7がコンタクト層23を形成するステップをさらに含んでいる点において異なる。
【0189】
具体的には、活性層21を成長させた後に、活性層21の表面上にコンタクト層23を形成する。コンタクト層23の形成方法は特に限定されないが、厚みの薄い層を形成できるため、OMVPE法およびMBE法の少なくとも一方、あるいはその組み合わせにより成長することが好ましい。活性層21と連続して成長できるため、活性層21と同じ方法で成長させることがより好ましい。
【0190】
なお、これ以外の赤外LED用のエピタキシャルウエハおよびその製造方法は、実施の形態4における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20bおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0191】
なお、本実施の形態における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cおよびその製造方法は実施の形態4だけでなく実施の形態3にも適用することができる。
【0192】
(実施の形態6)
図18を参照して、本実施の形態における赤外LED30aについて説明する。図18に示すように、本実施の形態にける赤外LED30aは、実施の形態5における図17に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cと、このエピタキシャルウエハ20cの表面20c1および裏面20c2にそれぞれ形成された電極31、32と、ステム33とを備えている。
【0193】
エピタキシャルウエハ20cの表面20c1(本実施の形態ではコンタクト層23)に電極31が接して設けられており、裏面20c2(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11)には電極32が接して設けられている。電極31においてエピタキシャルウエハ20cと反対側には、ステム33が接して設けられている。
【0194】
具体的には、ステム33は、たとえば鉄系材料よりなる。電極31は、たとえばAu(金)Zn(亜鉛)との合金よりなるp型電極である。この電極31は、p型のコンタクト層23に対して形成されている。このコンタクト層23は、活性層21の上部に形成されている。この活性層21は、AlxGa(1-x)As層11の上部に形成されている。このAlxGa(1-x)As層11上に形成された電極32は、たとえばAuとGe(ゲルマニウム)との合金よりなるn型電極である。
【0195】
続いて、図19を参照して、本実施の形態における赤外LED30aの製造方法について説明する。
【0196】
まず、実施の形態3における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20aの製造方法(ステップS1〜S5、S7)により、エピタキシャルウエハ20aを製造する。なお、エピタキシャル層を成長させるステップS7では、活性層21およびコンタクト層23を形成する。次に、GaAs基板を除去する(ステップS6)。なお、このステップS6を実施すると、図17に示す赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cを製造できる。
【0197】
次に、赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cの表面20c1および裏面20c2に電極31、32を形成する(ステップS11)。具体的には、たとえば蒸着法により、表面20c1上にAuとZnとを蒸着して、また、裏面20c2上にAuとGeとを蒸着した後、合金化を施して、電極31、32を形成する。
【0198】
次に、このLEDを実装する(ステップS12)。具体的には、たとえば、電極31側を下にして、ステム33の上にAgペーストなどのダイボンド剤やAuSnなどの共晶合金でダイボンディングを行なう。
【0199】
上記ステップS1〜S12を実施することにより、図18に示す赤外LED30aを製造することができる。
【0200】
なお、本実施の形態では実施の形態5における赤外LED用のエピタキシャルウエハ20cを用いる場合について説明したが、実施の形態3および4の赤外LED用のエピタキシャルウエハ20a、20bを適用することも可能である。ただし、赤外LEDを完成する前に、GaAs基板13を除去するステップS6は実施されてもよい。
【0201】
以上説明したように、本実施の形態における赤外LED30aは、実施の形態2におけるAlxGa(1-x)As基板10bと、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に形成され、かつ活性層21を含むエピタキシャル層と、エピタキシャル層の表面20c1に形成された第1の電極31と、AlxGa(1-x)As層11の裏面20c2に形成された第2の電極32とを備えている。
【0202】
また本実施の形態における赤外LED30aは、実施の形態2のAlxGa(1-x)As基板10bの製造方法によりAlxGa(1-x)As基板10bを製造する工程(ステップS1〜S6)と、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上にOMVPE法により活性層21を含むエピタキシャル層を形成する工程(ステップS7)と、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1に第1の電極31を形成する工程(ステップS11)と、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bに第2の電極32を形成する工程(ステップS11)とを備えている。
【0203】
本実施の形態における赤外LED30aおよびその製造方法によれば、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを制御したAlxGa(1-x)As基板10bを用いているので、高い透過特性を維持し、かつデバイスを作製したときに高い特性を有する赤外LED30aを実現できる。
【0204】
また活性層21側に電極31を形成し、AlxGa(1-x)As層11側に電極32を形成している。この構造によれば、電極32からAlxGa(1-x)As層11によって赤外LED30aの全面に渡って電流をより拡散することができる。このため、発光効率をより向上した赤外LED30aが得られる。
【0205】
(変形例)
図28に示すように、変形例の赤外LED30dは、基本的には実施の形態6における赤外LED30aと同様の構成を備えているが、実施の形態4の変形例のエピタキシャルウエハ20dを用いている点において異なっている。この場合、VF特性を向上した赤外LED30aを実現することができる。
【0206】
(実施の形態7)
図20を参照して、本実施の形態における赤外LED30bについて説明する。図20に示すように、本実施の形態における赤外LED30bは、基本的には実施の形態6における赤外LED30aと同様の構成を備えているが、AlxGa(1-x)As層11側がステム33に配置されている点において異なる。
【0207】
具体的には、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1(本実施の形態ではコンタクト層23)に電極31が接して設けられており、裏面20c2(本実施の形態ではAlxGa(1-x)As層11)に電極32が接して設けられている。
【0208】
電極31は、光を取り出すために、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1の一部を覆っている。このため、エピタキシャルウエハ20cの表面20c1の残部は露出している。電極32は、エピタキシャルウエハ20cの裏面20c2の全面を覆っている。
【0209】
本実施の形態における赤外LED30bの製造方法は、基本的には実施の形態6における赤外LED30aの製造方法と同様の構成を備えているが、上述したような電極31、32を形成するステップS11において異なる。
【0210】
なお、これ以外の赤外LED30bおよびその製造方法は、実施の形態6における赤外LED30aおよびその製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0211】
また、GaAs基板13が除去されない場合には、GaAs基板13の裏面に電極が形成されてもよい。実施の形態3のエピタキシャルウエハ20aにおいてエピタキシャル層がコンタクト層をさらに含んでいるエピタキシャルウエハを用いて赤外LEDを形成した場合、たとえば図29に示す赤外LED30cのような構造になる。この場合、代表例として図29に示すように、GaAs基板13側にステム33を配置する。この変形例として、GaAs基板13側がステム33と反対側に位置していてもよい。
【実施例1】
【0212】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xは、主表面11aのAlの組成比xよりも高いことによる効果について調べた。具体的には、実施の形態1におけるAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法にしたがって、AlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0213】
より具体的には、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、このGaAs基板13上に、LPE法でAlの組成比xが0≦x≦1の種々のAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。
【0214】
このAlxGa(1-x)As層11について、発光波長が850nm、880nmおよび940nmのときの透過特性および表面の酸素量について調べた。これらの特性を確認するために、図1のAlxGa(1-x)As層11が深さ方向にAlの組成比が均一となるように、80μm〜100μmの厚みで作成し、図11のフローのようにGaAs基板13を除去し、図10の状態にし、透過率特性を透過率測定器にて測定した。酸素量は、同じ試料を図14のフローに従い作成し、OMVPE法でエピタキシャル層を成長し、GaAs基板13を除去する前に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aについて、SIMS(2次イオン質量分析)により測定した。その結果を図21および図22に示す。
【0215】
図21において、縦軸はAlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを示し、横軸は透過特性を示す。この透過特性は図21において右に位置するほど良好である。また発光波長が880nmの場合を見ると、より低Al組成でも透過特性が良好であることがわかった。また、発光波長が940nmの場合、より低Al組成でも透過率の低下が起こりにくいことが確認できた。
【0216】
次に、図22において、縦軸はAlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xを示し、横軸は表面の酸素量を示す。この酸素量は図22において左に位置するほど良好である。なお、発光波長が850nm、880nmおよび940nmのときの表面の酸素量は同じであった。
【0217】
ここで、本実施例では、上記のように、深さ方向にAl組成比が均一となるとうにAlxGa(1-x)As層11を作成したが、酸素量は主に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAl組成比で決まるため、図2〜図5で示すようにAl組成比に勾配を持っている場合でも、主表面でのAl組成比と相関が強いことが上記と同様の実験により確認されている。
【0218】
同様の傾向が透過特性についても当てはまり、透過特性は、図2〜図5で示すようにAl組成比に勾配を持っている場合、最もAl組成比が低い部分に影響される。具体的には、図2〜図5のような勾配を持つ場合、勾配のパタン(層数、各層の勾配、厚み)、勾配(△Al/距離)が同じ場合には、層中での平均的なAl組成比の大小に透過特性との相関が強い。
【0219】
図21に示すように、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xが高いほど、透過特性が向上することがわかった。また図22に示すように、AlxGa(1-x)As層11のAlの組成比xが低いほど、主表面に含まれる酸素量を低減できることがわかった。
【0220】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層11において、裏面11bのAlの組成比xを高くすることにより高い透過特性を維持し、主表面11aのAlの組成比xを低くすることにより主表面の酸素量を低減できることがわかった。
【実施例2】
【0221】
本実施例では、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している複数の層をAlxGa(1-x)As層11が備えていることの効果について調べた。具体的には、実施の形態1における図1に示すAlxGa(1-x)As基板10aの製造方法にしたがって、32種類のAlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0222】
より具体的には、2インチおよび3インチのGaAs基板を準備した(ステップS1)。
【0223】
次に、徐冷法によりAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、図2に示すようにAlの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層以上含むように成長させた。詳細には、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAl組成比x(Al組成比xの最小値)、各層において裏面11b側の面のAl組成比xと主表面11a側の面のAl組成比xとの差(Al組成比xの差)、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している層の数(層数)が下記の表に示すように32種類のAlxGa(1-x)As層11を成長させた。これにより、32種類のAlxGa(1-x)As基板10aを製造した。
【0224】
これらのAlxGa(1-x)As基板10aについて、AlxGa(1-x)As基板10aに発生した反りを凸面を上面としたAlxGa(1-x)As基板10aと、平行台との隙間を、厚みゲージを用いて測定した。その結果を下記の表1に示す。表1中、AlxGa(1-x)As基板10aに生じた反りが、2インチのGaAs基板を用いたときに200μm以下で、かつ3インチのGaAs基板を用いたときに300μm以下の場合は○、2インチのGaAs基板を用いたときに200μmを超え、かつ3インチのGaAs基板を用いたときに300μmを超えた場合は×とした。
【0225】
【表1】
【0226】
表1に示すように、主表面11aのAl組成比xに関わらず、単調減少している層中のAl組成比xの差が小さいほど、AlxGa(1-x)As基板10aに反りは生じにくかった。Al組成比xの差が0.15以上0.35未満の場合には、AlxGa(1-x)As層11が単調減少している層を多く含むことにより、反りが緩和できることがわかった。このことから、Al組成比xの差が0.15以下と小さい場合であって、反りをさらに低減する場合には、単調減少する層数を増やすことが有効であることが推定される。またAl組成比xの差が0.35以上の場合でも、単調減少する層数を5層以上に増やすことで、反りを緩和できることが推定される。なお、2インチおよび3インチのGaAs基板を用いても、特性に差はなかった。
【0227】
以上説明したように、本実施例によれば、裏面11b側の面から主表面11a側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している複数の層をAlxGa(1-x)As層11が含んでいることにより、AlxGa(1-x)As基板10aの反りを緩和できることが確認できた。
【実施例3】
【0228】
本実施例では、赤外LED用のエピタキシャルウエハが多重量子井戸構造の活性層を備えることの効果、および、バリア層および井戸層の好ましい層数について調べた。
【0229】
本実施例では、多重量子井戸構造の活性層21の厚みおよび層数のみを変更した図23に示す4種類のエピタキシャルウエハ40を成長した。
【0230】
具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、OMVPE法により、n型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43、p型クラッド層44、AlxGa(1-x)As層11およびコンタクト層23をこの順で成長した。各層の成長温度は、750℃であった。n型クラッド層41は0.5μmの厚みを有し、Al0.35Ga0.65Asよりなり、アンドープガイド層42は0.02μmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなり、アンドープガイド層43は0.02μmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなり、p型クラッド層44は0.5μmの厚みを有し、Al0.35Ga0.65Asよりなり、AlxGa(1-x)As層11は2μmの厚みを有し、p型Al0.15Ga0.85Asよりなり、コンタクト層23は0.01μmの厚みを有し、p型GaAsよりなっていた。また、活性層21は、発光波長840nm〜860nmとし、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5mmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ2層、10層、20層および50層有している多重量子井戸構造(MQW)であった。
【0231】
また、本実施例では、赤外LED用の別のエピタキシャルウエハとして、発光波長が870nmで、0.5μmの厚みを有する井戸層のみからなる活性層を備えた点のみ異なるダブルへテロ構造のエピタキシャルウエハを成長した。
【0232】
成長したそれぞれのエピタキシャルウエハについて、GaAs基板を除去せずに、エピタキシャルウエハをそれぞれ作製した。次に、コンタクト層23上にAuZnよりなる電極を、n型GaAs基板13上にAuGeよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した。これにより、赤外LEDが得られた。
【0233】
それぞれの赤外LEDについて、定電流源と光出力測定器(積分球)とにより、電流を20mA流した時の光出力を測定した。その結果を図24に示す。なお、図24の横軸において、「DH」はダブルへテロ構造を有するLEDを意味し、「MQW」とは活性層において井戸層およびバリア層を備えたLEDを意味し、層数は井戸層およびバリア層のそれぞれの層数を意味する。
【0234】
図24に示すように、ダブルへテロ構造を有するLEDに比べて多重量子井戸層を有する活性層を備えたLEDは光出力を向上できることがわかった。特に、井戸層およびバリア層が10層以上50層以下のLEDは、光出力を大幅に向上できることがわかった。
【0235】
ここで、本実施例では、AlxGa(1-x)As層11をOMVPE法により製造したが、OMVPE法は実施例1などのようにAlxGa(1-x)As層11の厚みが大きい場合には成長させるために非常に時間を要する。この点を除けば、形成した赤外LEDの特性は本発明のLPE法およびOMVPE法を用いた赤外LEDと同様であるので、本発明の赤外LEDに適用できる。なお、AlxGa(1-x)As層11の厚みが大きい場合には、LPE法を用いることで、AlxGa(1-x)As層11の成長させるために要する時間を短縮することができる効果をさらに奏する。
【0236】
また、本実施例では、赤外LED用のさらに別のエピタキシャルウエハとして、発光波長が940nmで、井戸層にInGaAsを有する井戸層を含む活性層を備えた点のみ異なる多重量子井戸構造(MQW)のエピタキシャルウエハを成長した。井戸層のInGaAsにおいて、厚みは2nm〜10nmで、Inの組成比は0.01〜0.03よりなっていた。また、バリア層はAl0.30Ga0.70Asよりなっていた。
【0237】
このエピタキシャルウエハについても上記と同様に、電極を形成して、赤外LEDを作成した。この赤外LEDについても、上記と同様に光出力を測定した結果、発光波長が940nmの光出力を得た。
【0238】
なお、バリア層については、GaAs0.90P0.10、ないし、Al0.30Ga0.70As0.90P0.10であっても、同様の結果を有することは、実験により確認されている。また、Inの組成比、Pの組成比についても、任意に調整可能であることも実験により確認されている。
【0239】
以上より、発光波長が840nm以上890nm以下の場合、GaAsを井戸層とするMQWを活性層として用い、また、発光波長が860nm以上890nm以下の場合、GaAsよりなるダブルへテロ(DH)構造が適用可能であることが確認できた。さらに、発光波長が850nm以上1100nm以下の場合、InGaAsよりなる井戸層により活性層が作成可能であることが確認できた。
【実施例4】
【0240】
本実施例では、赤外LED用のエピタキシャルウエハにおけるAlxGa(1-x)As層11の厚みの効果的な範囲について調べた。
【0241】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11の厚みのみを変更した図25に示す5種類のエピタキシャルウエハ50を成長した。
【0242】
具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、LPE法により、2μm、10μm、20μm、100μおよび140μmの厚みを有し、Znをドーパントとしたp型Al0.35Ga0.65AsよりなるAlxGa(1-x)As層11をそれぞれ形成した(ステップS2)。AlxGa(1-x)As層11を成長したLPE法の成長温度は780℃であり、成長速度は平均4μm/Hであった。次に、塩酸および硫酸を用いてAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS3)。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを化学機械研磨によって研磨した(ステップS4)。次に、アンモニアと過酸化水素とを用いてAlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS5)。次に、OMVPE法によりp型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43、n型クラッド層44およびn型コンタクト層23を順に成長した(ステップS6)。これらの層を成長したOMVPE法の成長温度は750℃であり、成長速度は1〜2μm/Hであった。なお、p型クラッド層41、アンドープガイド層42、アンドープガイド層43、n型クラッド層44およびコンタクト層23は、実施例3と同様の厚みおよび材料(ドーパント以外)とした。また、活性層21は、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5nmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ20層有する活性層21を成長した。
【0243】
次に、GaAs基板13を除去した(ステップS7)。これにより、5種類の厚みを有するAlxGa(1-x)As層を備えた赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0244】
次に、コンタクト層23上にAuGeよりなる電極を、AlxGa(1-x)As層11の裏面11b上にAuZnよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した。これにより、赤外LEDを製造した。
【0245】
それぞれの赤外LEDについて、実施例3と同様に光出力を測定した。その結果を図26に示す。
【0246】
図26に示すように、20μm以上140μm以下の厚みを有するAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDは、光出力を大きく向上することができ、100μm以上140μm以下の厚みを有するAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDは、光出力を非常に大きく向上することができた。
【0247】
なお20μm以下でGaAs基板13を除去した効果が見えていないのは、発光像観察より発光面積の広がりにほとんど変化がないためと考える。それはZnドーパントのp型AlxGa(1-x)As層11では移動度が低いため電流が拡散してないためである。それは、Teドーパントのn型AlxGa(1-x)As層11とすることで移動度が高くなり改善できる。後述の実施例5で、Teドーパントにすることで発光像が広がり出力の向上が見られた。
【実施例5】
【0248】
本実施例では、本発明の赤外LEDによる活性層への拡散が小さいことの効果について調べた。
【0249】
(試料1)
試料1の赤外LED用のエピタキシャルウエハは、以下のように製造した。具体的には、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、LPE法により、Teがドーピングされ、20μmの厚みを有し、n型Al0.35Ga0.65AsよりなるAlxGa(1-x)As層11を成長した(ステップS2)。次に、塩酸と硫酸とを用いて、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS3)。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを化学機械研磨によって研磨した(ステップS4)。次に、アンモニアと過酸化水素とを用いて、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aを洗浄した(ステップS5)。次に、OMVPE法により、図25に示すように、Siがドーピングされたn型クラッド層41、アンドープガイド層42、活性層21、アンドープガイド層43およびZnがドーピングされたp型クラッド層44およびp型コンタクト層23を順に成長した(ステップS6)。なお、n型クラッド層41、アンドープガイド層42、アンドープガイド層43およびp型クラッド層44の厚みおよびドーパント以外の材料は、実施例3と同様にした。また、活性層21は、7.5nmの厚みを有し、GaAsよりなる井戸層と、5nmの厚みを有し、Al0.30Ga0.70Asよりなるバリア層とを、それぞれ20層有する活性層21を成長した。なお、LPE法およびOMVPE法での成長温度および成長速度は、実施例4と同様とした。
【0250】
次に、GaAs基板13を除去した(ステップS7)。これにより、試料1の赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0251】
次に、pコンタクト層23上にAuZnよりなる電極を、AlxGa(1-x)As層11下にAuGeよりなる電極を、それぞれ蒸着法により形成した(ステップS11)。これにより、赤外LEDを製造した。
【0252】
(試料2)
試料2は、まず、GaAs基板13を準備した(ステップS1)。次に、OMVPE法により、p型クラッド層44、アンドープガイド層43、活性層21、アンドープガイド層42およびn型クラッド層41をこの順で、試料1と同様に成長した。次に、LPE法でAlxGa(1-x)As層11を形成した。AlxGa(1-x)As層11の厚みおよび材料は、試料1と同様にした。
【0253】
次に、試料1と同様にGaAs基板13を除去して、試料2の赤外LED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0254】
次に、試料1と同様にエピタキシャルウエハの表面および裏面に電極を形成して、試料2の赤外LEDを製造した。
【0255】
(測定方法)
試料1および試料2の赤外LEDについて、Znの拡散長および光出力を測定した。具体的には、活性層とガイド層との界面におけるZnの濃度をSIMSにより測定し、さらに、このZnの濃度が1/10以下になる活性層内の位置をSIMSにより測定し、活性層とガイド層との界面から活性層への距離をZnの拡散長とした。また、光出力は実施例3と同様に測定した。その結果を下記の表2に記載する。
【0256】
【表2】
【0257】
(測定結果)
表2に示すように、LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を成長した後にOMVPE法で活性層を成長した試料1では、活性層よりも先に形成したAlxGa(1-x)As11にドーピングされたZnが活性層内に拡散することを防止でき、かつ活性層21中のZn濃度を低減できた。この結果、試料1の赤外LEDは、試料2に比べて光出力を大幅に向上できた。
【0258】
以上より、本実施例によれば、LPE法によりAlxGa(1-x)As層11を形成した(ステップS2)後に、活性層を含むエピタキシャル層を形成する(ステップS7)ことにより、光出力を向上できることが確認できた。
【実施例6】
【0259】
本実施例では、△Al/△tが0/μmを超えていることの効果について調べた。
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により種々の厚み、Alの組成比xを有するAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層以上含むように成長させた。次に、洗浄、研磨、洗浄の工程(ステップS3〜S5)に従い、GaAs基板が形成されたAlxGa(1-x)As基板を作製した。次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を形成した(ステップS7)。次に、GaAs基板を除去した(ステップS6)。これにより、複数のエピタキシャルウエハを製造した。
【0260】
このエピタキシャルウエハの断面において、AlxGa(1-x)As基板の裏面から主表面に向けて1μm毎に、Alの組成比xを、EPMAにより測定した。Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層が1層の試料3、4と、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層が3層の試料5との結果を図30および図31に示す。なお、図30および図31において、横軸の厚み0は、AlxGa(1-x)As基板の裏面側に対応する。
【0261】
図30および図31に示すように、Alの組成比xを測定したAlxGa(1-x)As基板について、Al組成比の傾きである△Al/△t(単位:組成差/μm)を求めた。その結果を図32および図33に示す。なお、図32および図33において、AlxGa(1-x)As基板の裏面を厚みを0としている。
【0262】
図32に示す試料3または試料4の△Al/△tは、1×10-3/μm〜2×10-2/μmであった。図33に示す試料5の△Al/△tは、1×10-3/μm〜3×10-2/μmであった。
【0263】
このように、試料3〜5以外の複数のAlxGa(1-x)As基板についても同様に、△Al/△tを測定した。
【0264】
その後、このAlxGa(1-x)As基板を備えたエピタキシャルウエハを400μm角のLEDチップにした。そして、それらのLEDについて、20mA/チップでの光出力を測定し、リファレンス出力で規格化した。AlxGa(1-x)As層11の平均のAl組成比xが、0≦x<0.3の場合、0.3≦x<0.5の場合、0.5≦x≦1.0の場合の結果をそれぞれ図34〜図36に示す。
【0265】
また、比較例として、Alの組成比xが0.1、0.3、0.5で一定のAlxGa(1-x)As層11よりなるAlxGa(1-x)As基板を準備し、このAlxGa(1-x)As基板上に、同様にエピタキシャル層を形成し、LEDチップにした。このLEDについて、同様にリファレンス出力で規格化し、それぞれの結果を比較例として図34〜図36に示す。図34の比較例のAlの組成比は0.1であり、図35の比較例のAlの組成比は0.3であり、図36の比較例のAlの組成比は0.5であった。なお、比較例の△Al/△tは0であるが、比較のため、図34〜図36においては比較例のリファレンス出力を点線で示す。
【0266】
図34〜図36に示すように、Alの組成比xが一定の場合に比べて、△Al/△tが0を超えている本発明例は出力を向上することができた。
【0267】
また、図34に示すように、Alの組成比が低い(0≦x<0.3)場合には、透過性が低いため、出力は全体的に上がりにくいものの、△Al/△tが大きくなると、透過性が上がるという顕著な効果を有していた。
【0268】
また、図36に示すように、Alの組成比が高い(0.5≦x≦1.0)場合には、AlxGa(1-x)As層の主面が酸化されるため、組成比が一定の比較例の場合には出力が得られなかった。しかし、Alの組成比が高い場合であっても、△Al/△tが0を超えていると、主面の酸化が抑制され、出力を向上することができた。
【0269】
Alの組成が図34と図36との間である図35に示す場合(0.3≦x<0.5)には、Alの組成比が一定(0.3)の場合であっても、Alの組成比が0.1および0.5で一定の比較例よりは向上することはできた。しかし、△Al/△tが0を超えていた本発明例は、Alの組成比が0.3の比較例よりも出力を向上できた。
【0270】
以上より、本実施例によれば、△Al/△tが0を超えることにより、出力を向上できることが確認できた。
【0271】
また、△Al/△tが大きい程、出力を向上できることが確認できた。本実施例では、図35に示すように、△Al/△tが6×10-2/μm以下のAlxGa(1-x)As基板を製造することができた。
【0272】
さらに、Alの組成比xは、0.3を超えて1以下であると、出力を非常に向上できることが確認できた。
【実施例7】
【0273】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下であることの効果、および酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下であることの効果について調べた。
【0274】
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により種々の条件でAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、AlxGa(1-x)As層11の厚みは3.6μmであった。これにより、8種類のAlxGa(1-x)As基板を製造した。
【0275】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により活性層21を形成した(ステップS7)。この活性層21の厚みは0.6μmであった。これにより、8種類のエピタキシャルウエハを製造した。
【0276】
1つのエピタキシャルウエハにおいてSIMSにより酸素濃度および二次イオン強度を測定した結果を図37に示す。図37中、横軸は、活性層の表面を0とし、活性層の表面からAlxGa(1-x)As層の裏面に向けての厚み(単位:μm)である。Al濃度と酸素濃度とが交わる点は、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面である。図37のエピタキシャルウエハでは、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面(AlxGa(1-x)As層の主面)の酸素のピーク濃度は3×1018atom/cm3であった。
【0277】
このように、8種類のエピタキシャルウエハについて酸素濃度と二次イオン強度とを測定した。そして、酸素濃度のピーク濃度を求めることにより、8種類のエピタキシャルウエハについて、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面、つまりAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度を測定した。また、二次イオン強度と厚みとから面密度を求めることにより、8種類のエピタキシャルウエハについて、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面、つまりAlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度をそれぞれ測定した。その結果を図38および図39に示す。
【0278】
その後、このAlxGa(1-x)As基板を備えたエピタキシャルウエハを400μm角のLEDチップにした。そして、それらのLEDチップについて、20mA/チップでの光出力を測定し、リファレンス出力で規格化した。その結果を図38および図39に示す。
【0279】
図38に示すように、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3を超える場合には、出力がほとんど得られなかった。しかし、酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下の場合には出力が得られた。特に、4×1019atom/cm3以下の場合には出力が1を超え、出力を非常に向上できた。
【0280】
また、図39に示すように、AlxGa(1-x)As層の主表面の酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2を超える場合には、出力がほとんど得られなかった。しかし、酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下の場合には出力が得られた。特に、3.5×1014atom/cm2以下の場合には出力が1を超え、出力を非常に向上できた。
【0281】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層とエピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度が5×1020atom/cm3以下、または酸素の面密度が2.5×1015atom/cm2以下であると、LEDを作製したときに出力を向上できることが確認できた。
【実施例8】
【0282】
本実施例では、AlxGa(1-x)As基板と活性層との間に、Alの組成比を制御したバッファ層を形成することの効果について調べた。
【0283】
(試料6)
試料6では、まず、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法によりAlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、AlxGa(1-x)As層11の主表面11aのAlの組成比xは0.25であった。また、AlxGa(1-x)As層11のキャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0284】
次に、AlxGa(1-x)As層11の主表面11a上に、OMVPE法により、バッファ層25を形成した。バッファ層25のAlの組成比xは0.15で一定であり、厚みは100nmであり、キャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0285】
次に、バッファ層25上に、OMVPE法により活性層21を形成した。活性層中のクラッド層(n型、p型とも)のAlの組成比xは0.35で一定であり、厚みは500nmであり、n型クラッド層のキャリア濃度は5×1017cm-3であった。
【0286】
これにより、図27に示すエピタキシャルウエハ20dを20個製造した。試料6では、AlxGa(1-x)As基板の主表面のAlの組成比(0.25)>バッファ層25のAlの組成比(0.15)<活性層21のAlの組成比(0.35)であった。
【0287】
(試料7)
試料7のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料6と同様であったが、バッファ層および活性層において異なっていた。具体的には、バッファ層25のAlの組成比xを0、つまりGaAs層とした。また、バッファ層25の厚みを10nmとした。さらに、活性層21の内、クラッド層のAlの組成比xを0.6とした。試料7では、AlxGa(1-x)As基板の主表面のAlの組成比(0.25)>バッファ層25のAlの組成比(0)<活性層21のAlの組成比(0.6)であった。
【0288】
(試料8)
試料8のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料6と同様であったが、バッファ層を形成しなかった点において異なっていた。
【0289】
(試料9)
試料9のエピタキシャルウエハの製造方法は、基本的には試料7と同様であったが、バッファ層を形成しなかった点において異なっていた。
【0290】
(測定方法)
試料6〜9の20個のエピタキシャルウエハを用いて20個のLEDを作製した。そして、それぞれのLEDについて、順方向測定時のIF=20mAでの電圧値である順方向電圧VFを測定した。それらの最大値、最小値および平均値をを図40に示す。
【0291】
(測定結果)
図40に示すように、Alの組成比の低いバッファ層25を形成した試料6および7では、バッファ層を形成しなかった試料8および9と比較して、順方向電圧VFのばらつきを抑制できた。
【0292】
また、試料7では、バッファ層25としてGaAs層を形成しているが、厚みを薄くしているので、光の吸収を抑制できた。このため、Alの組成比xが非常に低いバッファ層を形成した場合であっても、厚みを薄くすることで、光出力に及ぼす影響の小さなエピタキシャルウエハを実現できた。
【0293】
特に、試料9では、AlxGa(1-x)As基板に直接Al組成比が高い活性層を形成しているので、VFのばらつきが大きかった。しかし、バッファ層25を形成した試料7では、Al組成比が高い活性層を形成した場合であっても、VFのばらつきを抑制できた。
【0294】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As基板と活性層との間に、活性層よりもAlの組成比が低くなるように制御したバッファ層を形成することにより、LEDを作製したときに特性を向上できることが確認できた。
【実施例9】
【0295】
本実施例では、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xが0.12以上であることの効果について調べた。
【0296】
具体的には、GaAs基板を準備した(ステップS1)。次に、徐冷法により、AlxGa(1-x)As層11を成長させた(ステップS2)。このステップS2では、Alの組成比xが成長方向に向けて常に減少している層を1層含むように成長させた。また、裏面11bのAlの組成比xが異なるように、複数のAlxGa(1-x)As層11を成長させた。これにより、AlxGa(1-x)As基板を準備した。
【0297】
次に、アンモニア:過酸化水素水=1:10のエッチング溶液を準備した。このエッチング溶液を用いて、室温で複数のAlxGa(1-x)As基板のGaAs基板をエッチングした。
【0298】
その結果、AlxGa(1-x)As層11においてGaAs基板と接していた裏面11bのAlの組成比が0.12以上の場合、1分間に3〜5μm/分のエッチングレートでGaAs基板を除去することができた(ステップS3)。さらに、AlxGa(1-x)As層11においてGaAs基板と接していた裏面11bのAlの組成比が0.12以上の場合、このAlxGa(1-x)As層の裏面で選択的にエッチングを停止させることができた。
【0299】
以上より、本実施例によれば、AlxGa(1-x)As層11の裏面11bのAlの組成比xを0.12以上にすることにより、GaAs基板を効率的に除去できることが確認できた。
【実施例10】
【0300】
本実施例では、900nm以上の赤外LEDを作成できることの効果について調べた。
本実施例では、実施例4の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、活性層21においてのみ異なっていた。具体的には、本実施例では、6nmの厚みを有し、In0.12Ga0.88Asよりなる井戸層と、12nmの厚みを有し、GaAs0.9P0.1よりなるバリア層とを、それぞれ20層ずつ有する活性層21を成長した。
【0301】
この赤外LEDについて、発光波長を測定した。その結果を図41に示す。図41に示すように、発光波長が940nmの赤外LEDを製造できることが確認できた。
【実施例11】
【0302】
本実施例では、900nm以上の発光波長の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハの条件について調べた。
【0303】
(本発明例1〜4)
本発明例1〜4の赤外LEDは、実施例10の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、AlxGa(1-x)As層11および活性層21においてのみ異なっていた。具体的には、AlxGa(1-x)As層11の平均的なAlの組成比を下記の表3に記載の通りにした。AlxGa(1-x)As層11の主表面および裏面のAl組成比を、一例として(裏面、主表面)の順で挙げると、0.05の場合(0.10、0.01)、0.15の場合(0.25、0.05)、0.25の場合(0.35、0.15)、0.35の場合(0.40、0.30)である。ただし、平均的Al組成比および(裏面、主表面)の組成比は任意に調整可能である。なお、AlxGa(1-x)As層11において裏面から主表面に向けてAlの組成比は単調減少していた。また、活性層21は、InGaAs層よりなる井戸層と、GaAsよりなるバリア層とを、それぞれ5層ずつ有する活性層21を成長した。この赤外LEDは、890nmの発光波長を有していた。
【0304】
(本発明例5〜8)
本発明例5〜8の赤外LEDは、本発明例1〜4の赤外LEDの製造方法と同様に製造したが、発光波長が940nmである点において異なっていた。
【0305】
(比較例1、2)
比較例1、2の赤外LEDは、本発明例1〜4、本発明例5〜8の赤外LEDとそれぞれ同様に製造したが、AlxGa(1-x)As層11を備えていない点において異なっていた。つまり、AlxGa(1-x)As層11を形成せず、かつGaAs基板を除去しなかった。
【0306】
(測定方法)
本発明例1〜8および比較例1、2の赤外LEDについて、格子緩和を測定した。格子緩和は、PL法、X線回折法、表面の目視検査により行った。格子緩和しているエピタキシャルウエハを赤外LEDに作製すると、暗線(ダークライン)として確認された。また、本発明例1〜8および比較例1、2の赤外LEDについて、実施例3と同様に光出力を測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0307】
【表3】
【0308】
表3に示すように、発光波長が890nmの赤外LEDでは、基板がGaAs基板であってもAlxGa(1-x)As層であっても、格子緩和(格子不整)がなかった。また、GaAs基板のみからなる比較例2の赤外LEDでは、発光波長が940nmであっても、格子緩和がなかった。しかし、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層11を備え、発光波長が940nmの本発明例5〜8の赤外LEDでは、格子緩和があった。このように、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層11を備えた赤外LEDにおいては、格子緩和がない赤外LEDの出力が5mW〜6mWに対して、格子緩和がある赤外LEDの出力は2〜3.5mWと低く、同一のウエハ面内でもばらつきが大きいことがわかった。より具体的には、2〜4インチφのウエハ径を有するウエハでの測定ばらつきである。
【0309】
このことから、GaAs基板上で適用できた技術は、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いるエピタキシャルウエハには適用できないことがわかった。
【0310】
そこで、本発明者は、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いるエピタキシャルウエハにおいて、格子緩和が抑制される条件を下記のように鋭意研究した。
【0311】
具体的には、以下のように、本発明例9〜24および比較例3〜6の発光波長が940nmの赤外LEDを製造した。
【0312】
(本発明例9〜12)
本発明例9〜12の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、井戸層およびバリア層の層数をそれぞれ3層ずつにした点において異なっていた。この井戸層のInの組成比は、0.12であった。
【0313】
(本発明例13〜16)
本発明例13〜16の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、バリア層をGaAsPとし、井戸層およびバリア層の層数を3層ずつにした点において異なっていた。このバリア層のPの組成比は、0.10であった。
【0314】
(本発明例17〜20)
本発明例17〜20の赤外LEDは、基本的には本発明例13〜16の赤外LEDと同様に製造したが、井戸層およびバリア層の層数を10層ずつにした点において異なっていた。
【0315】
(本発明例21〜24)
本発明例21〜24の赤外LEDは、基本的には本発明例5〜8の赤外LEDと同様に製造したが、バリア層をAlGaAsPとし、井戸層およびバリア層の層数を20層ずつにした点において異なっていた。このバリア層のPの組成比は、0.10であった。
【0316】
(比較例3〜6)
比較例3の赤外LEDは、基本的には本発明例9〜12、本発明例13〜16、本発明例17〜20、本発明例21〜24の赤外LEDとそれぞれ同様に製造したが、AlxGa(1-x)As基板としてAlxGa(1-x)As層を備えていないGaAs基板を用いた点において異なっていた。
【0317】
(測定方法)
上記方法と同様に、格子緩和および光出力を測定した。その結果を下記の表4に示す。
【0318】
【表4】
【0319】
(測定結果)
表4に示すように、活性層21内の井戸層がInを含むInGaAsを有し、井戸層の層数が4層以下である本発明例9〜12は、格子緩和が生じなかった。
【0320】
また、活性層内のバリア層がPを含むGaAsPまたはAlGaAsPを有し、バリア層の層数が3層以上である本発明例13〜24は、格子緩和が生じなかった。
【0321】
以上より、本実施例によれば、発光波長が900nm以上の赤外LEDに用いられるエピタキシャルウエハにおいて、活性層内の井戸層はInを含む材料を有し、井戸層の層数が4層以下である場合、および、活性層内のバリア層はPを含む材料を有し、バリア層の層数が3層以上である場合には、格子不整を抑制できることを見い出した。
【0322】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0323】
10a,10b AlxGa(1-x)As基板、11 AlxGa(1-x)As層、11a,13a 主表面、11b,13b,20c2,21c 裏面、13 GaAs基板、20a,20b,20c,20d,40,50 エピタキシャルウエハ、20c1 表面、21 活性層、21a 井戸層、21b バリア層、23 コンタクト層、25 バッファ層、30a,30b,30c,30d LED、31,32 電極、33 ステム、41,44 クラッド層、42,43 アンドープガイド層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面と、前記主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を備えたAlxGa(1-x)As基板であって、
前記AlxGa(1-x)As層において、前記裏面のAlの組成比xは、前記主表面のAlの組成比xよりも高いことを特徴とする、AlxGa(1-x)As基板。
【請求項2】
前記AlxGa(1-x)As層は、複数の層を含み、
前記複数の層は、前記裏面側の面から前記主表面側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している、請求項1に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項3】
前記AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、前記2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている、請求項1または2に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項4】
前記△Al/△tが6×10-2/μm以下である、請求項3に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項5】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面のAlの組成比xが0.12以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項6】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に接するGaAs基板をさらに備えた、請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層とを備えた、赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項8】
前記エピタキシャル層において前記AlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い、請求項7に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項9】
前記エピタキシャル層は、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項8に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項10】
前記エピタキシャル層は、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項7に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項11】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である、請求項7〜10のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項12】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である、請求項7〜11のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に形成された第1の電極と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に形成された第2の電極とを備えた、赤外LED。
【請求項14】
請求項6に記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に形成された第1の電極と、
前記GaAs基板の前記裏面に形成された第2の電極とを備えた、赤外LED。
【請求項15】
GaAs基板を準備する工程と、
前記GaAs基板上に、LPE法により主表面と、前記主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を成長させる工程とを備え、
前記AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、前記裏面のAlの組成比xが、前記主表面のAlの組成比xよりも高い前記AlxGa(1-x)As層を成長させることを特徴とする、AlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項16】
前記AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、前記裏面側の面から、前記主表面側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含む前記AlxGa(1-x)As層を成長させる、請求項15に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項17】
前記AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、前記2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている、請求項15または16に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項18】
前記△Al/△tが6×10-2/μm以下である、請求項17に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項19】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面のAlの組成比xが0.12以上である、請求項15〜18のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項20】
前記GaAs基板を除去する工程をさらに備えた、請求項15〜19のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に、OMVPE法またはMBE法の少なくとも一方により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程とを備えた、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項22】
前記エピタキシャル層において前記AlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い、請求項21に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項23】
前記エピタキシャル層を形成する工程では、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含む前記エピタキシャル層を形成し、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項22に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項24】
前記エピタキシャル層を形成する工程では、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含む前記エピタキシャル層を形成し、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項21に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項25】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である、請求項21〜24のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項26】
前記前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である、請求項21〜25のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項27】
請求項15〜19のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、
前記エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、
前記GaAs基板の前記裏面に第2の電極を形成する工程とを備えた、赤外LEDの製造方法。
【請求項28】
請求項20に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、
前記エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に第2の電極を形成する工程とを備えた、赤外LEDの製造方法。
【請求項1】
主表面と、前記主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を備えたAlxGa(1-x)As基板であって、
前記AlxGa(1-x)As層において、前記裏面のAlの組成比xは、前記主表面のAlの組成比xよりも高いことを特徴とする、AlxGa(1-x)As基板。
【請求項2】
前記AlxGa(1-x)As層は、複数の層を含み、
前記複数の層は、前記裏面側の面から前記主表面側の面に向けてAlの組成比xがそれぞれ単調減少している、請求項1に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項3】
前記AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、前記2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている、請求項1または2に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項4】
前記△Al/△tが6×10-2/μm以下である、請求項3に記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項5】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面のAlの組成比xが0.12以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項6】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に接するGaAs基板をさらに備えた、請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層とを備えた、赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項8】
前記エピタキシャル層において前記AlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い、請求項7に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項9】
前記エピタキシャル層は、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項8に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項10】
前記エピタキシャル層は、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項7に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項11】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である、請求項7〜10のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項12】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である、請求項7〜11のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハ。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に形成された第1の電極と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に形成された第2の電極とを備えた、赤外LED。
【請求項14】
請求項6に記載のAlxGa(1-x)As基板と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に形成され、かつ活性層を含むエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に形成された第1の電極と、
前記GaAs基板の前記裏面に形成された第2の電極とを備えた、赤外LED。
【請求項15】
GaAs基板を準備する工程と、
前記GaAs基板上に、LPE法により主表面と、前記主表面と反対側の裏面とを有するAlxGa(1-x)As層(0≦x≦1)を成長させる工程とを備え、
前記AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、前記裏面のAlの組成比xが、前記主表面のAlの組成比xよりも高い前記AlxGa(1-x)As層を成長させることを特徴とする、AlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項16】
前記AlxGa(1-x)As層を成長させる工程では、前記裏面側の面から、前記主表面側の面に向けてAlの組成比xが単調減少している複数の層を含む前記AlxGa(1-x)As層を成長させる、請求項15に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項17】
前記AlxGa(1-x)As層の厚み方向の異なる2点のAlの組成比xの差を△Alとし、前記2点の厚みの差(μm)を△tとした場合に、△Al/△tが0/μmを超えている、請求項15または16に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項18】
前記△Al/△tが6×10-2/μm以下である、請求項17に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項19】
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面のAlの組成比xが0.12以上である、請求項15〜18のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項20】
前記GaAs基板を除去する工程をさらに備えた、請求項15〜19のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上に、OMVPE法またはMBE法の少なくとも一方により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程とを備えた、赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項22】
前記エピタキシャル層において前記AlxGa(1-x)As層と接する面のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも高い、請求項21に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項23】
前記エピタキシャル層を形成する工程では、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含む前記エピタキシャル層を形成し、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項22に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項24】
前記エピタキシャル層を形成する工程では、前記AlxGa(1-x)As層と接する面を有するバッファ層をさらに含む前記エピタキシャル層を形成し、
前記バッファ層のAlの組成比xは、前記AlxGa(1-x)As層において前記エピタキシャル層と接する面のAlの組成比xよりも低く、かつ前記活性層のAlの組成比xよりも低い、請求項21に記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項25】
前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素のピーク濃度は、5×1020atom/cm3以下である、請求項21〜24のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項26】
前記前記AlxGa(1-x)As層と前記エピタキシャル層との界面の酸素の面密度は、2.5×1015atom/cm2以下である、請求項21〜25のいずれかに記載の赤外LED用のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項27】
請求項15〜19のいずれかに記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、
前記エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、
前記GaAs基板の前記裏面に第2の電極を形成する工程とを備えた、赤外LEDの製造方法。
【請求項28】
請求項20に記載のAlxGa(1-x)As基板の製造方法によりAlxGa(1-x)As基板を製造する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記主表面上にOMVPE法またはMBE法により活性層を含むエピタキシャル層を形成する工程と、
前記エピタキシャルウエハの表面に第1の電極を形成する工程と、
前記AlxGa(1-x)As層の前記裏面に第2の電極を形成する工程とを備えた、赤外LEDの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公開番号】特開2010−232622(P2010−232622A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104274(P2009−104274)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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