説明

ApoE模倣剤

【課題】本発明は、炎症又は神経変性疾患の予防又は治療用医薬の製造するための二量体オリゴカチオン誘導体の使用、並びに化合物、及びその使用のための医薬組成物の提供。
【解決手段】自己免疫疾患、炎症性疾患又は神経変性疾患を治療するための医薬の製造に適した低分子量apoE模倣剤を提供することによる。さらに具体的に、一般式(I):(X)a−L−(X)b,[式中、各Xは、生理的pHで性の荷電を有する(潜在的に異なる)化学基であり、aとbは独立に3〜6の数であり、そしてLはリンカーである]の化合物の使用に関し、当該化合物は、各々が生理的pHで正の荷電を有すれば、異なるX基(リンカーLの両サイド)を有していてもよく、例えばX1−X2−X3−L−X4−X5−X6、X1−X1−X1−L−X2−X3−X4、又はX1−X1−X1−L−X2−X2−X2、又はX1−X1−X1−L−X2−X2−X2であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症又は神経変性障害の予防又は治療を意図する医薬の製造のための、二量体オリゴカチオン性誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、体内の不所望な細胞をプログラムされた細胞死に導く生理的プロセスに与えられた名前である。アポトーシスは、発生のあいだ(例えば指の間に存在する手の細胞のアポトーシスが指の分離をもたらす)、並びに成人においても(例えば、アポトーシスは、白血球細胞が最早必要でなくなった際に治癒段階において炎症部位から白血球細胞が除去される主要なメカニズムである)重要なプロセスである。
【0003】
アポトーシスの間に、細胞内容物は、膜結合ベシクルへと注意深くパッケージングされる。これは、細胞内容物が漏れ出すことを防ぐために必須である(漏出は、未制御の細胞死、いわゆるネクローシスにおいて生じ、ネクローシスは、例えば多くの化学毒素に応答して生じる)。細胞内容物が偶発的に漏出した場合、多くの有害な結果:局所的には、以前は隔離されていたプロテアーゼなどの強力な酵素が自由になり、複数の基質を損傷すること;全身的には、免疫系が細胞内に通常遮蔽されていたタンパク質に出くわすこと、をもたらし得る。この後者の相互作用は、自己免疫系疾患の発達に重要な役割を果たすと考えられている。なぜなら、細胞内抗原への繰り返しの曝露は、自己抗体の発達を導きうるからである。アポトーシスは、プログラムされた細胞死の間に細胞破砕物をパッケージングすることによりこれらの問題を限定的なものにする。
【0004】
しかしながら、細胞破砕物の膜結合ベシクルはどうなるのであろうか?免疫系の必須機能は、アポトーシス細胞の残余物を取り込み、そして細胞代謝にリサイクルすることができる基本構造ブロックにまで当該成分を分解することである。その結果、アポトーシス残余物の効果的な除去は、必須の生理的機能であり、そして当該プロセスのいずれかが欠如すると、除去されない細胞破砕物の蓄積が導かれうる。
【0005】
その結果、2個の主要な因子が、組織内で除去されない細胞破砕物の量:細胞死の割合及び残余物除去割合、を決定する。細胞死の割合を増加させる露出(例えば、外傷性組織損傷)は、残余物除去メカニズムに対する圧力を増加させるであろう。不十分な除去能力が存在する場合、残余物は少なくとも短い期間のあいだ蓄積するであろう。こうして、異なる個人が、遺伝的又は環境的要因のため異なる残余物除去割合又は能力を有する場合、彼らは、通常の条件下、及び外傷性組織損傷などのストレス又は条件下の両方で様々な組織において不所望な細胞破砕物を蓄積する高い傾向を示すが、ストレス又は条件下でより可能性が高い。
【0006】
破砕物の除去の欠如は、細胞内酵素及び抗原への局所的及び全身的曝露を超えたさらに重大な結果をもたらす。白血球細胞、及び特にマクロファージなどの食細胞は、破砕物の除去に関与し;こうして蓄積した破砕物は、マクロファージのリクルートを刺激するように作用する。こうしてリクルートされた食細胞がその除去責務の点で不十分である場合、多数の組織マクロファージが破砕物除去を維持するために必要とされる。高密度の組織マクロファージは、局所及び全身の炎症性メディエーターのレベルの増加をもたらし、持続性の炎症状態を継続する。
【0007】
発明者らは、in vitro及びin vivoの両方においてマクロファージによる残余物の除去の効力を制御する新規のメカニズムを記載してきた。タンパク質apoEが、不所望の細胞破砕物を取り込むマクロファージの効率を増加するように何らかの方法でマクロファージにシグナルを送っているということが発明者らにより示された。結果として、apoE遺伝子を欠損するマウスは、広範囲の組織(例えば、肝臓、肺、皮膚、及び脳)においてアポトーシスによる細胞残余物を蓄積する高い傾向を示し、そしてこれらの各組織において高密度の組織マクロファージを伴う付随する炎症性状態を示す(Graingerら、Journal of Immunology (2004) 173: 6366)。apoEタンパク質での治療が、通常の除去割合及び能力を回復させ、そして炎症性状態を軽減した。
【0008】
同様の経路は、ヒトにおいて作動している可能性がある。ApoEは、apoE2、E3、及びE4と名づけられる3個の対立遺伝子多型として存在する。特にapoE4の存在は、通常の組織構造の慢性的変性に関連する様々な疾患の高い有病率と関連する。例えば、E4をコードする少なくとも1のアレルを有する個人は、65歳の誕生日までにアルツハイマー病を発達させる2倍を超える可能性を有する。アポトーシス細胞の除去を刺激する異なる能力が、この強力な疾患との遺伝的関連の基礎をなすメカニズムの1つである可能性がある。
【0009】
結果として、apoEミメティクスは、不完全な細胞破砕物の除去が病原メカニズムの成分である疾患を予防又は治癒するための潜在的な新たな治療選択である。この疾患は、自己免疫疾患、他の炎症疾患及び慢性的変性疾患、例えば神経変性を含む可能性がある。実際、細胞死の割合が増加するか又は破砕物の除去が通常組織構造の維持を制限する疾患は、apoE模倣剤で治療される可能性がある。
【0010】
これまでに発明者らは、アポトーシス細胞の除去の生理的に関連する調節因子としてのapoEの役割を発見したと記載し(Graingerら; Journal of Immunology (2004) 173:6366)、そして適応症の治療に有用であるapoE模倣剤の同定に適した一連の方法であって、当該適応症において細胞破砕物の不十分な除去が病原メカニズムの原因である上記方法を記載した(Grainger DJ;2004年10月25日に出願された英国特許出願第GB0423658.4号)。
【0011】
他の者が、これまでにapoEの様々な機能を模倣できるペプチドを記載してきた(が、アポトーシス細胞除去を刺激する目的ではなく、当該目的は、他のapoE機能と比べて異なるapoEと受容体との相互作用を介して媒介されるようである)。例えば、Laskowitzと共同研究者は、タンパク質全体の特定の機能を模倣できるヒトapoEの配列から取られた様々なペプチドを記載した(Laskowitzら、Downregulation of microglial activation by apolipoprotein E and apoE-mimetic peptides. Exp. Neurol. (2001) 167:74; 米国特許出願第US2002/0164789号及び第US2003/0077641号)。Dyer及び共同実験者は、タンパク質全体の機能を模倣できるapoE配列に由来するペプチドを記載した(Dyerら、Journal of Biological Chemistry (1991) 266:15009; Dyer & Curtiss. Journal of Biological Chemistry (1991) 266:22803; Dyerら、Lipid Research (1995) 36:80)。同様のペプチドは、Crutcher及びHarmony(2001年6月12日付けの米国特許第6,245,751号)により特許請求された。しかしながら、これらのどれも、ヒトapoEの配列に由来するペプチド以外のapoEミメティクスを記載しておらず、そしてどれもapoEの他の機能以上にアポトーシス細胞の除去を刺激する選択的能力を有する化合物を記載していない。
【発明の概要】
【0012】
本明細書において、本発明者らは、自己免疫疾患、炎症性疾患又は神経変性疾患を治療するための医薬を製造するのに適した第一ファミリー低分子量apoE模倣剤(the first family low molecular weight apo E mimetic agent)を記載する。
【0013】
本発明は、炎症性障害の治療を意図する医薬の製造のための、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
各Xは、生理的pHにおいて正電荷を有する(潜在的に異なる)化学的部分であり、
a及びbは、独立して3〜6の数であり、そして
Lは、2〜20の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分;又は二置換シクロペンタン(1,2置換又は1,3置換のいずれか)、シクロヘキサン(1,2置換、1,3置換又は1,4置換のいずれか)、又は他の二置換シクロアルカン又はポリシクロアルカン、例えばアダマンタン、デカリン又はビシクロオクタン(ここで各置換基は、0〜10の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である);又は二置換芳香環系、例えばベンジル(メタ、オルト又はパラ置換のいずれか)、ピリジニル、クマリル、ナフタレニル及びピリミジル(ここで各置換基は0〜10個の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である)からなるリンカーである]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩の使用を提供する。
【0014】
場合により、一般式(I)の化合物は、生理的pHにおいて正電荷を有する限り、(リンカーLの両側に)化合物中の他の全てのX部分とは異なっているX部分を有してもよい。このような化合物は、一般構造X1-X2-X3-L-X4-X5-X6でありうる。
【0015】
或いは、リンカーLの1の側のX部分の全てが、生理的pHで正の電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよく、一方リンカーLのもう一方のX部分は、この繰り返しX部分と同じであってもよいし又は全てが異なってもよいということが予期される。このような化合物は、一般構造:X1-X1-X1-L-X2-X3-X4でありうる。
【0016】
或いは、リンカーLの1の側のX部分の全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよいし、一方、リンカーLのもう一方のX部分も、生理的pHで正電荷を有する異なるX部分の繰り返しであってもよいということが予期される。このような化合物は、一般構造X1-X1-X1-L-X2-X2-X2でありうる。
【0017】
或いは、リンカーLの両側のX部分の全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよいということが予期される。このような化合物は、一般構造X1-X1-X1-L-X2-X2-X2でありうる。
【0018】
好ましくは、一般式(I)の化合物は、以下の一般式(II)、(III)又は(IV)のうちの1に記載されるポリアミドである。
【化2】

[式中、
L、a及びbは上と同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれる;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
場合により、分子中の各R基は、(生理的pHで正電荷を有する限り)異なる構造であってもよく、或いはリンカーLの片側又は両側のR基全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよく、或いは当該化合物のR基の全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよい。
【0019】
【化3】

[式中、
L、a及びbは上と同じ意味を有し;
Cは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
Dは、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
場合により、分子中の各R基は、(生理的pHで正電荷を有する限り)異なる構造であってもよく、或いはリンカーLの片側又は両側のR基全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよく、或いは当該化合物のR基の全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよい。
【0020】
【化4】

[式中、
L、a及びbは上と同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
場合により、分子中の各R基は、(生理的pHで正電荷を有する限り)異なる構造であってもよく、或いはリンカーLの片側又は両側のR基全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよく、或いは当該化合物のR基の全てが、生理的pHで正電荷を有する同じ部分の繰り返しであってもよい。
【0021】
好ましくは、式(II)、(III)又は(IV)の化合物は、1から10の炭素原子からなり、直線状、分岐状、環状、及び多環アルキル残基を含む、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル又はアルキルアミノトリアルキルのリストから独立して選ばれる各Rを有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の化合物の例の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、活性成分として、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、及び少なくとも1の医薬として許容される賦形剤及び/又は単体を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
医薬として許容される塩は、特に、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、二リン酸及び硝酸などの無機酸、並びに酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、パモ酸及びステアリン酸などの有機酸の添加塩を意味する。これらが、使用できる場合、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの塩基から形成される塩も本発明の範囲内である。医薬として許容される塩の他の例について、"Salt selection for basic drugs", Int. J. Pharm. (1986), 33, 201-217を参照のこと。
【0025】
固体形態の医薬組成物は、固体の形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、ゼラチンカプセル、リポソーム又は座剤でありうる。適切な固体支持体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン及びワックスでありうる。他の適切な医薬として許容される賦形剤及び/又は担体は、当業者に知られていよう。
【0026】
本発明に記載される医薬組成物は、液体形態、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液又はシロップで存在し得る。適切な液体支持体は、例えば、水、有機溶媒、例えばグリセロール又はグリコール類、並びに様々な割合で水に溶かしたその混合物でありうる。
【0027】
本発明は、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物及びその塩を提供する。
【0028】
特に、本発明の任意の態様に記載される一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の好ましい化合物、及びその塩は、以下の:
N,N'-ビス-(5-アミノ-1-{5-アミノ-1-[5-アミノ-1-(5-アミノ-1-カルバモイル-ペンチルカルバモイル)-ペンチルカルバモイル]-ペンチルカルバモイル}-ペンチル)-マロンアミド(化合物A);
N,N'-ビス-(5-アミノ-1-{5-アミノ-1-[5-アミノ-1-(5-アミノ-1-カルバモイル-ペンチルカルバモイル)-ペンチルカルバモイル]-ペンチルカルバモイル}-ペンチル)-テレフタルアミド(化合物B);
N,N'-ビス-(2-{2-[2-(2-アミノ-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ)-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ]-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ}-5-グアニジノ-ペンタノイル)-1,3-ジアミノプロパン(化合物C)
【化5】

及びその塩からなる群から選ばれる。
【0029】
本発明は、当該化合物が水和又は溶媒和形態である上に定義される化合物、組成物及びその使用を含む。
【0030】
本発明は、上に定義される化合物、組成物及びその使用を含み、ここで当該化合物は、生理的条件下で放出される保護基と反応して、in vivoでの投与にさらに適している誘導体を生成する。例えば、化合物Cのグアニジウム基は、オキシム誘導体として保護することができ、当該誘導体は、in vivoで遊離グアニジウム基に変換される(「the development of the pro-drug Ximelogatran from the direct thrombin inhibitor Melogatran」;Gustafssonら、A new Oral Anticoagulant: the 50-year Challenge. Nature Reviews Drug Discovery (2004) 3:649に概説される原理に基く)。
【0031】
本明細書に記載される二量体オリゴカチオン性化合物は、単純なペプチドではない機能的apoEミメティクスの第一クラスである。これらは、当業者に周知の容易な合成経路を用いて合成するのに比較的コストがかからない。これらは、高度に強力かつ有効な抗炎症薬である。まとめると、これらの性質により、二量体のオリゴカチオン性化合物が、これまでに記載された化合物を超えた利点を有するapoEミメティクスとなることが示唆される。
【0032】
従来技術と比較して、本発明のさらなる改善点は、LDL受容体に結合し、そしてLDL受容体に関連する機能を調節するその能力以上に、受容体のLRPファミリー、特にLRP1、におけるアゴニスト性質を通してアポトーシス細胞の貪食を選択的に促進するこれらの化合物の性質にある。ApoE自体及び当該技術分野において以前から知られているapoEの単純なペプチド誘導体は、LDL受容体に優先的に結合するか、又はLDL受容体とLRPとの間に優先傾向を示さなかった。LDL受容体との相互作用がリポタンパク質の輸送及び代謝を妨げるので、本発明の化合物は、従来技術の化合物よりも有意に少ない副作用を有する可能性がある。
【0033】
本発明によると、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)或いは医薬として許容されるその塩、或いはこれらを活性成分として含む医薬組成物又は医薬品による予防又は治療を意図される炎症障害としては特に以下の:
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、グレーブス病、重症筋無力症、紅斑性狼瘡、強皮症、シューグレン症候群、自己免疫性I型糖尿病;
血管障害、例えばストローク、冠動脈疾患、心筋梗塞、不安定狭心症、粥状動脈硬化又は血管炎、例えばベーチェット症候群、巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群血管炎、ヘノッホ・シェンライン紫斑病及び皮膚粘膜リンパ節症候群;
ウイルス感染症又はウイルス複製、例えばポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、ヘルペスウイルス・サミリ(Herpesvirus samiri)、サイトメガロウイルス (CMV)又はレンチウイルスを含むウイルスの複製又は当該ウイルスのため生じる感染症;
喘息、アレルギー疾患又は慢性閉塞性肺疾患(COPD);
骨粗鬆症(骨ミネラル密度の低下);
腫瘍増殖;
例えば腎移植患者における臓器移植拒絶及び/又は遅延移植又は臓器機能遅延;
高いTNF-αレベルにより特徴付けられる障害;
乾癬;
皮膚創傷;
細胞内寄生虫、例えばマラリア又は結核菌により引き起こされる障害;
アレルギー
が挙げられる。
【0034】
本発明に従うと、さらなる炎症性障害として:
ALS;
線維症(特に、肺線維症、非限定的に肺で生じる線維症);
接着の形成(特に、腹膜及び骨盤領域における);
抗原誘導性リコール応答(antigen induced recall response)
免疫応答抑制
が挙げられる。
【0035】
これらの臨床兆候は、炎症性障害又はTNFαレベルの増加により特徴付けられる障害の一般的定義に分類される。
【0036】
本発明に従うと、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はその医薬として許容される塩、或いは活性成分としてそれらを含む医薬組成物又は医薬により予防又は治療を意図される神経変性障害として、特に:
アルツハイマー病、及び神経変性から生じる他の特発性認知症;
パーキンソン病;
ハンチントン病;
外傷性脳障害 (例えば、自動車事故から生じる頭部外傷など)、並びにこのような急性外傷性障害から生じる慢性続発症(例えば、記憶障害)
が挙げられる。
【0037】
法的に許容できる場合、本発明はまた、抗炎症量の本出願で特許請求される化合物、組成物、又は医薬を患者に投与することによって、炎症性疾患(例えば、任意の薬剤に対する有害な炎症反応)又は神経変性疾患の症状の治療、寛解、又は予防法を提供する。
【0038】
本発明に記載される医薬の投与は、筋中注射などにより、局所、経口、非経口経路により行われ得る。
【0039】
本発明に記載される医薬について予測される投与量は、用いられる活性化合物のタイプに依存して0.1mg〜10gからなる。
【0040】
本発明に従って、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物は、以下に記載される製造方法を用いて製造することができる。
【0041】
一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物の製法
一般式(I)の化合物は、当業者に知られている一般的な方法に従って製造できる。
一般的に、化合物は2ステップで製造される。第一ステップでは、短いオリゴカチオン性誘導体が、適切なカチオン性モノマーを重合することにより合成される。(II)、(III)又は(IV)などのポリアミド薬剤では、ポリカチオン性オリゴペプチドは、当業者に周知の固相合成法により合成されうるか、又は多くの販売元(例えばBachem)から直接購入することができる。任意の遊離アミノ基又はカルボキシル基は、当業者に周知の適切な化学保護基を用いて保護されてなければならない(例えば、遊離アミン基は、Boc又はZ基を用いて保護され得る)。
【0042】
第二ステップでは、短いオリゴカチオン性誘導体は、本発明の二量体オリゴカチオン性誘導体を二官能性リンカーと反応させて、本発明の二量体オリゴカチオン性薬剤を生成する。(II)、(III)又は(IV)などのポリアミド薬剤について、本発明の薬剤を生成するために、ポリカチオン性オリゴペプチドを、ジカルボン酸、ジアミン又はアミノ酸と反応させる。このような反応は、溶液相でのアミド結合を形成するために、当該技術分野に周知の条件下で行われる。
【0043】
合成に続き、合成の第二ステップの間に用いられる任意の保護基を、当該技術分野に周知の方法を用いて取り除いた。
【0044】
定義
「約」という語句は、意図する値の周りのある範囲を指す。本特許出願に使用される場合、「約X」は、X-Xの10%〜X+Xの10%の範囲、そして好ましくはX-Xの5%〜X+Xの5%の範囲を意味する。
【0045】
本記載における数値範囲の使用は、当該範囲内の全ての個々の整数及び所定の範囲の最も広い範囲内の上限と下限の組合せを本発明の範囲内に含むことを明らかに意図する。その結果、例えば、(とりわけ)式Iの点で特定される1〜20の炭素原子の範囲が、明確に示されるか否かに関わらず、4〜20の全ての整数及び上限と下限の各組み合わせの部分範囲の間の全ての整数を含むことが意図される。
【0046】
本明細書に使用される場合、「含む」という用語は、「含む」と「からなる」の両方の意味として読むべきである。結果として、本発明が、「活性成分として化合物を含む医薬組成物」に関する場合、当該技術は、他の活性成分が存在しうる組成物と、定義される1の活性成分のみからなる組成物の両方をカバーすることを意図する。
【0047】
本明細書に使用される「ペプチド部分」という用語は、以下の天然のタンパク質を作り上げる20のアミノ酸残基を含むことを意図する:
【表1】

【0048】
改変アミノ酸及び異常アミノ酸残基、並びにペプチドミメティクスも、「ペプチド部分」の定義内に包含されることを意図する。
【0049】
他に定義されない場合、本明細書に使用される技術及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。同様に、本明細書に言及される全ての公開、特許出願、全ての特許及び全ての他の引用文献は、(法的に許容される場合に)本明細書に援用される。
【0050】
以下の実施例は、上記方法を説明するために提供され、そして本発明の範囲を制限するものとして考慮するべきではない。
【実施例】
【0051】
実施例1:マロニル-ジ-(Lys)4-アミド(化合物A)
Nα-(Nα-(Nα-(Nα-Boc-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジンの遊離カルボン酸を、アンモニア及びペプチドカップリング試薬、例えばPyBOPを用いて、一級アミドに変換させた。酸でBoc基を取り除いた後に、次にアンモニウム塩を塩基性にし、そして標準的な方法により、1-ω-ジーカルボン酸(この場合、マロン酸)へと二回カップリングさせ、対称的な中間体を形成させた。次にCbz保護基を、加水分解により取り除いて、必要とされる産物をもたらした。
【0052】
実施例2:ベンゼン-1,4-ジカルボン酸-ジ-(Lys)4-アミド(化合物B)
Nα-(Nα-(Nα-(Nα-Boc-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジル)-Nε-Cbz-リジンの遊離カルボン酸を、PyBOPなどのペプチド結合剤を用いて一級アミドへと変換させた。Boc基を酸で取り除いた後に、次にアンモニウム塩を塩基性にし、そして標準的な方法により、1-ω-ジ-カルボン酸(この場合、テレフタル酸)へ二回カップリングさせて、対称的な中間体を形成させた。次にCbz保護基を加水分解により取り除いて、必要とされる産物を生成した。
【0053】
実施例3:1,4-ジアミノブタン-ジ-(Arg)3-アミド(化合物C)
代わりに、ペプチド断片は、関連する方法により「C末端同士で」結合され得る。2個の同じNα-(Nα-(Nα-(Nα-Boc-NG-Pbf-アルギニル)-NG-Pbf-アルギニル)-NG-Pbf-アルギニル)-NG-Pbf-アルギニン(Pbf=2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル、酸で除去可能な保護基(Carpinoら、Tetrahedron Lett. 1993, 34, 7829及び Fieldsら、Tetrahedron Lett. 1993, 34, 6661を参照のこと))を、標準のペプチド・カップリング試薬、例えばPyBOPで活性化させ、そして1-ω-ジ-アミン(この場合、1,4-ジアミノブタン)と反応させて、酸による全体の脱保護の後に、標的物質を与えた。
【0054】
本発明の産物の薬理試験
マクロファージ貪食の刺激
アッセイ原理
当該アッセイの原理は、所定の期間培養されたマクロファージにより取りこまれる粒子の平均数を計測することである。一般的に、蛍光標識粒子が使用され、その結果、調査された粒子数が、フローサイトメトリーにより容易に測定できる。このアッセイの原理は、これまでにどの文献でも詳細に記載された(Grainger DJ; 2004年10月25日に出願された英国特許出願GB0423658.4)。
【0055】
材料
CellTracker Green色素を、Molecular Probes Inc.から購入した。細胞培養のプラスチック容器をNuncから購入した。ウシ胎児血清、細胞培養培地、及び種々の化学薬品をSigmaから購入した。
【0056】
試験プロトコル
(a)培養マクロファージを、様々な濃度の推定のapoE模倣物へと曝露した
ヒト骨髄単球細胞株THP-1のin vitro分化によりマクロファージを生成した。組織培養ウェルに、1ウェルあたり凡そ105細胞でTHP-1細胞をプレートし、そして200nMでホルボールミリスチルアセテート(PMA)に24時間晒して、マクロファージへの分化を誘導した。24時間後、分化の成功を、マクロファージをプラスチックに接着させることにより(並びに、CD14発現の上方制御により)確認する。(接着性でない)未分化細胞の全てを洗い流した。次に、推定のapoEミメティクスを適切な濃度で複製ウェルの範囲に適した濃度、典型的には10pM〜10mM、より一般的に1nM〜100μMの範囲で加えた。apoE模倣物は、当該技術分野に知られている生物学的に適合性の任意の適した緩衝液中に加え、最も好ましくは、PBSなどの水性緩衝塩溶液中に加えてもよい。一般的に、培養マクロファージの3個のウェルを、異なる濃度のapoE模倣物に晒した(例えば、対照ウェルをビヒクルのみに晒すことを含む)。37℃で2時間細胞をapoE模倣物に晒し、次のステップを行った。
【0057】
(b)貪食に適した条件下でアポトーシス細胞に細胞マクロファージを曝露する
(もともと密度勾配遠心により単離された)ヒト末梢血由来の1〜4日培養された初代リンパ球から24時間血清を除くことによりアポトーシス細胞を得た。血清が除かれた期間の間、蛍光色素、CellTracker Greenを培地に100μg/mlの終濃度で加えて、アポトーシスをしているリンパ球を標識した。典型的に、使用される集合の50%超の細胞が、標識アネキシンVで染色することにより定義されるアポトーシスを引き起こした。106のアポトーシスを起こしている細胞を、マクロファージの同型ウェルにそれぞれ加える一方、apoE模倣物は、貪食が生じる時間の間、培養培地中に存在させた。次にマクロファージを37℃で1時間インキュベートし、その時間のあいだに貪食を生じさせた。これらの実験条件下で最大10%の添加されたアポトーシス細胞が、マクロファージにより摂取され、取り込みについての微粒子の利用能が制限となっていないことを保証した。
【0058】
(c)貪食によりマクロファージ注に取り込まれたアポトーシスを起こしている細胞の数の検出
(内部に存在するのではなく細胞表面に結合された全ての粒子を取り除くために)貪食期間の終わりに、細胞を氷冷PBSで3回激しく洗浄した。次に顕微鏡により適切な条件下で蛍光標識を検出することにより、標識されたアポトーシス細胞を同定及び計数した。貪食を引き起こしているマクロファージの総数と供に、摂取されたアポトーシスを起こした細胞の数を計数した。実験の終わりに、典型的に、所定の期間に生じた貪食の程度(貪食の平均割合の見積もりとして)を、1時間あたりの1のマクロファージあたりに取り込まれる胸腺細胞の数として表現する。一般的に、この値は、apoE模倣物の不存在下において野生型細胞中で2〜4のであった。次に、apoE模倣物の効果は、apoE模倣物に晒されていない対照細胞と比較された倍数変化として表現される。
【0059】
結果
実施例1〜3の化合物が試験され、そしてこの試験において少なくとも2倍に貪食速度を刺激する事が示された。この効果についてのED50は10μM未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性又は神経変性障害を治療することを意図した医薬の製造のための、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
各Xは、生理的pHにおいて正電荷を有する(潜在的に異なる)化学的部分であり、
a及びbは、独立して3〜6の数であり、そして
Lは、2〜20の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分;又は二置換シクロペンタン(1,2置換又は1,3置換のいずれか)、シクロヘキサン(1,2置換、1,3置換又は1,4置換のいずれか)、又はアダマンチン、デカリン又はビシクロオクタンを含む他の二置換シクロアルカン又はポリシクロアルカン(ここで各置換基は、0〜10の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である);或いはベンジル(メタ、オルト又はパラ置換)、ピリジニル、クマリル、ナフタレニル及びピリミジルを含む二置換芳香環系(ここで各置換基は0〜10個の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である)からなるリンカーである]
で表される化合物又は医薬として許容されるその塩の使用。
【請求項2】
炎症性又は神経変性障害を治療することを意図する医薬の製造のための、以下の式(II):
【化2】

[式中、
L、a及びbは、請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩の使用。
【請求項3】
炎症性又は神経変性障害を治療することを意図する医薬の製造のための、以下の式(III):
【化3】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
Cは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、H、0〜10の炭素原子を含む直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル又はシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
Dは、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物又は医薬として許容されるその塩の使用。
【請求項4】
炎症性又は神経変性障害を治療することを意図する医薬の製造のための、以下の式(IV):
【化4】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物又は医薬として許容されるその塩の使用。
【請求項5】
活性成分として、以下の式(I):
【化5】

[式中、
各Xは、生理的pHにおいて正電荷を有する(潜在的に異なる)化学的部分であり、
a及びbは、独立して3〜6の数であり、そして
Lは、2〜20の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分;又は二置換シクロペンタン(1,2置換又は1,3置換のいずれか)、シクロヘキサン(1,2置換、1,3置換又は1,4置換のいずれか)、又はアダマンチン、デカリン又はビシクロオクタンを含む他の二置換シクロアルカン又はポリシクロアルカン(ここで各置換基は、0〜10の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である);或いはベンジル(メタ、オルト又はパラ置換)、ピリジニル、クマリル、ナフタレニル及びピリミジルを含む二置換芳香環系(ここで各置換基は0〜10個の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である)からなるリンカーである]
で表される化合物又は医薬として許容されるその塩、及び少なくとも1の医薬として許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項6】
活性成分として、以下の式(II):
【化6】

[式中、
L、a及びbは、請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、及び少なくとも1の医薬として許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
活性成分として、以下の式(III):
【化7】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
Cは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
Dは、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、及び少なくとも1の医薬として許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項8】
活性成分として、以下の式(IV):
【化8】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、及び少なくとも1の医薬として許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
以下の一般式(I):
【化9】

[式中、
各Xは、生理的pHにおいて正電荷を有する(潜在的に異なる)化学的部分であり、
a及びbは、独立して3〜6の数であり、そして
Lは、2〜20の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分;又は二置換シクロペンタン(1,2置換又は1,3置換のいずれか)、シクロヘキサン(1,2置換、1,3置換又は1,4置換のいずれか)、又はアダマンチン、デカリン又はビシクロオクタンを含む他の二置換シクロアルカン又はポリシクロアルカン(ここで各置換基は、0〜10の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である);或いはベンジル(メタ、オルト又はパラ置換)、ピリジニル、クマリル、ナフタレニル及びピリミジルを含む二置換芳香環系(ここで各置換基は0〜10個の炭素原子からなる直線状又は分岐状アルキル部分である)からなるリンカーである]
で表される化合物。
【請求項10】
以下の式(II):
【化10】

[式中、
L、a及びbは、請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物。
【請求項11】
以下の式(III):
【化11】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
Cは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはNZZ'(ここで、Z及びZ'は独立して又は一緒に、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
Dは、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物。
【請求項12】
以下の式(IV):
【化12】

[式中、
L、a及びbは請求項1に定義されるのと同じ意味を有し;
C及びDは、独立して、H、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカル、或いはCOZ(ここで、Zは、H、OH、0〜10の炭素原子を含むシクロアルキル若しくはポリシクロアルキルラジカル又は直線状又は分岐状のアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルラジカルから選ばれる)から選ばれ;
各Rは、生理的pHで正電荷を有する(潜在的に異なる)化学部分である]
で表される化合物。
【請求項13】
Rが、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル又はアルキルアミノトリアルキルである、請求項2、3、4、6、7、8、10、11又は12のいずれか一項に記載の一般式(II)、(III)又は(IV)で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩の化合物、組成物、及び使用。
【請求項14】
Rが、アルキルグアニジウムラジカルである、請求項2、3、4、6、7、8、10、11又は12のいずれか一項に記載の一般式(II)、(III)又は(IV)で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩の化合物、組成物、及び使用。
【請求項15】
前記化合物が以下の:
N,N'-ビス-(5-アミノ-1-{5-アミノ-1-[5-アミノ-1-(5-アミノ-1-カルバモイル-ペンチルカルバモイル)-ペンチルカルバモイル]-ペンチルカルバモイル}-ペンチル)-マロンアミド;
N,N'-ビス-(5-アミノ-1-{5-アミノ-1-[5-アミノ-1-(5-アミノ-1-カルバモイル-ペンチルカルバモイル)-ペンチルカルバモイル]-ペンチルカルバモイル}-ペンチル)-テレフタルアミド;
N,N'-ビス-(2-{2-[2-(2-アミノ-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ)-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ]-5-グアニジノ-ペンタノイルアミノ}-5-グアニジノ-ペンタノイル)-1,3-ジアミノプロパン
及び医薬として許容されるその塩
からなる群から選ばれる、請求項1に記載の使用又は請求項5に記載の医薬組成物、又は請求項9に記載の化合物。
【請求項16】
前記炎症性障害が、自己免疫疾患、血管障害、ウイルス感染症又はウイルス複製、喘息、骨粗鬆症(骨ミネラル密度の低下)、腫瘍増殖、リューマチ様関節炎、多発性硬化症、臓器移植拒絶及び/又は遅延移植又は臓器機能遅延、高いTNF-αレベルにより特徴付けられる障害、乾癬、皮膚創傷、細胞内寄生虫により引き起こされる障害、アレルギー、抗原誘導性リコール応答、免疫応答抑制、多発性硬化症、ALS、線維症、及び接着形成から選ばれる、請求項1、2、3、4、13、14及び15のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物の使用。
【請求項17】
前記神経変性障害が、アルツハイマー病、特発性認知症、パーキンソン疾患、ハンチントン疾患又は外傷性脳損傷及びその慢性的臨床的に重大な続発症からなる群から選ばれる、請求項1、2、3、4、13、14及び15のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物の使用。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載される抗炎症量の化合物、組成物又は医薬を患者に投与することにより、炎症疾患の症状(例えば、任意の薬剤に対する有害な炎症反応)を治療、寛解、又は予防する方法。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載される抗炎症量の化合物、組成物又は医薬を患者に投与することにより、神経変性疾患を治療、寛解、又は予防する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197310(P2012−197310A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−138635(P2012−138635)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2008−526535(P2008−526535)の分割
【原出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(508049824)ティーシーピー イノベーションズ リミティド (3)
【Fターム(参考)】