説明

Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ

【課題】Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤに関し、特に低電流域から遷移領域で長時間溶接する場合においても、スパッタ発生量が少なくワイヤ送給性が良好で、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れたAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤを提供する。
【解決手段】Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤにおいて、ワイヤ成分として、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.40〜0.95%、Mn:1.0〜1.95%、Ti:0.03〜0.15%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体の潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤに関し、特に低電流域から遷移領域の溶接電流で長時間溶接する場合においても、スパッタ発生量が少なくワイヤ送給性が良好で、さらにコンタクトチップ(以下、チップという。)の摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れたAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスシールドアーク溶接方法は、全姿勢溶接が可能で、信頼性の高い溶接継手が得られる。したがって、建築、橋梁、化工機を主体とする大型構造物や自動車等の輸送機器の鋼構造物製造に広く使用されている。シールドガスとしては、経済性と耐欠陥性からCO2 ガスを使用する場合が多いが、CO2 ガスを使用するとスパッタ発生量が多く、溶接箇所周囲の鋼板表面の清掃作業(タガネやグラインダー等によるスパッタの除去作業)や溶接トーチ先端のシールドノズルの清掃作業(スパッタの除去)が必要となる。
【0003】
したがって、特にロボットを用いて溶接する場合にスパッタの発生を抑制するためにArに5〜25体積%のCO2 ガスを混合した混合ガスを使用することが多い。この混合ガスを使用する場合は、高電流域では溶滴の移行形態がスプレー状となり、スパッタ発生量は極めて少ない。しかし、低電流域ではCO2 ガスを用いた溶接の場合と同様にスパッタ発生量が多くなる。また、高電流域と低電流域の中間である遷移領域の溶接電流においても比較的スパッタ発生量が多い。
【0004】
そのため、低電流域でのパッタ発生量を抑制する技術として、例えば特開平9−99390号公報(特許文献1)や特開平10−305389号公報(特許文献2)にパルス電源を用いたAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用ワイヤの提案がある。
しかし、これらの技術では低電流域から遷移領域の溶接電流でのスパッタ発生量は少なくなるが、使用するパルス電源が非常に高価であり、一般の溶接電源による溶接でのスパッタ発生量が少ない溶接用ワイヤが求められている。
【0005】
Ar−CO2 混合ガスを用いてスパッタ発生量を抑制した技術として、例えば特開平8−132280号公報(特許文献3)や特開2000−246485号公報(特許文献4)にワイヤに微量のCa、Kを含有させる溶接用ワイヤの提案がある。
しかし、これらの技術は何れも高電流域での溶接、すなわち、溶滴の移行状態がスプレー状でのスパッタの低減を図ったものであって、低電流域での溶接においてはスパッタ抑制に十分ではない。
【0006】
また、ロボットを用いた場合の溶接作業は、ワイヤ供給装置の送給ローラにより、コンジットケーブルの内部に内包され螺旋状に形成されたコンジットチューブとそれにつながる溶接トーチのチップから連続的にワイヤを送り出しながらAr−CO2 ガスの雰囲気でアーク溶解する方法で使用される。この場合、コンジットケーブルは溶接トーチの動きを容易にするために長尺でかつ軟質の物が用いられ、ワイヤ送給装置から溶接部までの距離の調整や狭隘部の溶接をするために上下あるいは左右に曲げたり、ループ状に巻きつけて使用されることが多い。このような状況で使用された場合、前述の溶接用ワイヤでは螺旋状のコンジットチューブ内の表面と接触摩擦部が増えて送給抵抗が増し、ワイヤを円滑に送給することが困難となる。
【0007】
一方、最近ではワイヤ表面に銅めっきが施されていないワイヤについても種々検討されており、例えば特開平9−263679号公報(特許文献5)や特開2004−1061号公報(特許文献6)には、銅めっき無しでスパッタ発生量を少なくした溶接用ワイヤの開示がある。しかし、これらの技術では長時間溶接しているとチップ摩耗が激しくアークが不安定になるので頻繁にチップを交換する必要がある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−99390号公報
【特許文献2】特開平10−305389号公報
【特許文献3】特開平8−132280号公報
【特許文献4】特開2000−246485号公報
【特許文献5】特開平9−263679号公報
【特許文献6】特開2004−1061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤに関し、特に低電流域から遷移領域の溶接電流で長時間溶接する場合においても、スパッタ発生量が少なくワイヤ送給性が良好で、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れたAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤにおいて、ワイヤ成分として、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.40〜0.95%、Mn:1.0〜1.95%、Ti:0.03〜0.15%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体の潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有することを特徴とする。
【0011】
また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算術平均粗さRaが0.04〜0.12μmであることを特徴とする。
さらに、ワイヤ表面潤滑剤にワイヤ10kg当たりKを0.004〜0.25g含有することも特徴とするAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤによれば、特に低電流域から遷移領域の溶接電流で長時間溶接する場合においても、スパッタ発生量が少なくワイヤ送給性が良好で、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた溶接が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために低電流域から遷移領域の溶接電流(例えば、ワイヤ径1.2mm、シールドガス:Ar−20%CO2 の場合150〜280A程度)で、ワイヤ成分、ワイヤ表面に塗布する送給潤滑剤およびワイヤ表面状態について種々検討した。その結果、ワイヤ成分中C、Si、MnおよびTiの含有量を限定することによってアークの安定およびスパッタの発生を抑制し、潤滑剤中にKを適量含有することによって、溶滴が微粒になり極めてアークが安定する。
【0014】
また、ワイヤ表面に二硫化モリブデン、リン脂質および常温で液体である潤滑油を適量塗布するとともにワイヤ表面粗さを限定することによって、軟質で長尺のコンジットケーブルを使用して低電流域から遷移領域の溶接電流で長時間溶接する場合においてもスパッタ発生量が少なく、ワイヤ送給性が良好で、チップ摩耗も極めて少なくなり安定したアークが得られることを見出した。
【0015】
ワイヤ成分中のCは、スパッタ発生量の抑制のために添加する。Cが0.02質量%(以下、%という。)未満であるとスパッタ発生量が多くなる。一方、Cが0.10%を超えると大粒のスパッタ発生量が多くなる。
Siは、アークの安定のために添加する。Siが0.40%未満であるとアークが不安定となる。0.95%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
【0016】
MnもSiと同様にアークの安定のために添加する。Mnが1.0%未満であるとアークが不安定となる。1.95%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
Tiは、特に低電流域の溶接電流で溶滴を小さくしてスパッタ発生を抑制する。Tiが0.03%未満であるとその効果がなく大粒のスパッタが多発する。一方、Tiが0.15%を超えると逆にスパッタ発生量が多くなる。
なお、溶接金属の強度調整としてNi、Mo、Cr、Al、Zr、VおよびNbを微量添加できる。
【0017】
ワイヤ表面に塗布する潤滑剤は、ワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体である潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g(以下、g/10kgWという。)とする。
二硫化モリブデンは、コンジットチューブ内で送給抵抗を抑制してワイヤ送給性を良好にするとともに、チップ内壁とワイヤ表面の摩擦抵抗を下げてチップの摩耗を少なくする。二硫化モリブデンが0.005g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となるとともに、チップの摩耗量が多くなってアークが不安定になる。逆に、二硫化モリブデンが0.50g/10kgWを超えると、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。なお、二硫化モリブデンの粒径は1.0μm以下であることが送給抵抗を低減してワイヤ送給性を良好にするので好ましい。
【0018】
リン脂質は、後述する常温で液体である潤滑油と共存することによりワイヤ表面の二硫化モリブデンを均一に分散させる作用を有する。リン脂質が0.008g/10kgW未満であると、ワイヤ表面の二硫化モリブデンが均一に付着せず、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなる部分がありワイヤ送給性が不良になるとともに、チップの摩耗量が多くなってアークが不安定になる。逆に、リン脂質が0.15g/10kgWを超えると、スパッタ発生量が多くなる。
【0019】
本発明にいうリン脂質とは、レシチン(フォスファチジルコン)、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファジルイニシトールなどのリン脂質を主成分とするものを意味し、例えば、大豆や卵黄などから得られるリン酸脂質を95%程度含有する粉末状のもの、リン脂質を約65%および大豆油などの植物油を35%程度含有するペースト状のものなどあり、いずれも使用することができ、中でも大豆油から得られるレシチンが好ましい。
【0020】
潤滑剤中の常温で液体である潤滑油は、ワイヤ表面に皮膜を有し、ワイヤ送給時に二硫化モリブデンの潤滑作用を補完しワイヤ送給性を向上させる。潤滑油は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。潤滑油中にはさらに潤滑性能を向上させるため、各種の脂肪酸をはじめとする油性剤やりん系、ハロゲン系、イオウ系の極圧添加剤を加えても良く、また、潤滑油の酸化を防ぐための添加剤(酸化防止剤)を加えてもよい。
【0021】
ワイヤ表面に含む潤滑剤は、前記二硫化モリブデン、レシチンおよび常温で液体である潤滑油の合計で0.5〜2.5g/10kgWとする。潤滑剤の合計量が0.5g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となるとともに、チップの摩耗量が多くなってアークが不安定になる。逆に、2.5g/10kgWを超えると、送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
【0022】
ワイヤ表面の銅めっきは、コンジットチューブ内での摩擦抵抗を低減するとともにチップ先端での通電性を良好にしアークを安定させる。さらに、長時間溶接してもチップ摩耗が極めて少なく安定したアークを持続させることができる。しかし、JIS B0601−1994で規定されるワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが0.12μmを超えると、コンジットチューブ内の摩擦によって送給抵抗が大きくなり、ワイヤ送給性が悪くなってアークが不安定になる。
【0023】
また、チップ内壁とワイヤ表面の摩擦抵抗によって長時間溶接しているとチップの摩耗量が多くなってアークが不安定となる。銅めっきは通電性、潤滑性およびチップの耐摩耗性を向上させるとともに防錆性向上の効果も有する。めっき厚は0.3〜1.2μm程度が好ましい。また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが0.04μm未満であると、ワイヤ送給装置の送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
【0024】
さらに、ワイヤ表面潤滑剤にKを0.004〜0.25g/10kgW含むことによって、溶滴が微粒になり極めてアークが安定する。ワイヤ表面潤滑剤のKが0.004g/10kgW未満では効果が発揮できず、0.25g/10kgWを超えると、スパッタ発生量が多くなる。
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤは、ワイヤ原線を一時伸線したワイヤ素線のワイヤ表面に銅めっきを施し、湿式孔ダイス伸線で縮径して縮径率をコントロールして目的のワイヤ表面粗さとし、仕上げ伸線または仕上げ伸線後に前記送給潤滑剤をワイヤ表面に塗布して製造する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
表1に示すワイヤ径1.2mmの溶接用ワイヤの成分、ワイヤ表面状態および潤滑剤塗布量を変えたものを試作してスプール巻きワイヤとした。
【0026】
【表1】

【0027】
各試作ワイヤにつきワイヤ送給性、チップ摩耗量、アーク状態およびスパッタ発生量を調査した。ワイヤ送給性、チップ摩耗量およびアーク状態の評価は、図1に示す装置を用いて行った。図1において送給機1にセットされたスプール巻きワイヤ2は、送給ローラ3により引き出され、コンジットケーブル4に内包されたコンジットチューブを経てその先端のトーチ5からチップ6まで送給される。そしてチップ6と鋼板7との間でビードオンプレート溶接を行う。コンジットケーブル4は6m長さで、送給抵抗を与えるために150mm径のループを2つ形成した屈曲8を設けた。送給機1には送給ローラの周速度Vr(設定ワイヤ速度)の検知器(図示せず)およびワイヤの実速度Vw検出器9を備えている。
【0028】
ワイヤ送給性評価指標のスリップ率SLは、SL=(Vr−Vw)/Vr×100で表される。また、送給ローラ部分に設けられたロードセル10によりワイヤ送給時にワイヤがコンジットチューブから受ける反力を送給抵抗Rとして検出した。溶接は試作ワイヤ毎に新しいコンジットチューブを用いて表2に示す条件No.1の溶接条件で45分溶接し、溶接開始後15分から溶接終了までの30分間スリップ率SLと送給抵抗Rを測定して平均値を求めた。スリップ率SLが10%以下で送給抵抗Rが6kgf以下の場合にワイヤ送給性良好と判定した。また、チップの摩耗量は、試作ワイヤ毎に新しいチップ(内径1.4mm)を用いて溶接終了後最も摩耗の大きい箇所の内径を測定した。チップ摩耗量の評価は、摩耗量が0.05mm以下を良好として評価した。
【0029】
【表2】

【0030】
スパッタ発生量は、上記ワイヤ送給性およびチップ摩耗性の試験終了後、コンジットチューブおよびチップを交換せずに銅製の捕集箱を用いて、ビードオンプレート溶接により表2に示す条件No.1およびNo.2の溶接条件で5回溶接(1回の溶接時間1.5min)して捕集したスパッタを1分間の発生量に換算した。スパッタ発生量は0.5g/min以下でアークが安定して作業性が良好である。それらの結果を表3にまとめて示す。
【0031】
【表3】

【0032】
表1および表3中、ワイヤNo.1〜9が本発明例、ワイヤNo.10〜18が比較例である。本発明例である試験No.1〜9は、ワイヤ成分範囲が適正で、ワイヤ表面の潤滑剤である二硫化モリブデン、リン脂質、Kの付着量および潤滑油を含む潤滑剤の合計量とワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した算術平均粗さRaが適正であるので、スリップ率SLおよび送給抵抗Rが低くワイヤ送給性が良好で、チップ摩耗量および低電流域から遷移領域の溶接電流でのスパッタ発生量も少なくアークが安定して溶接作業性が良好であるなど極めて満足な結果であった。
【0033】
比較例中ワイヤNo.10は、ワイヤ成分のCが低いのでスパッタ発生量が多かった。また、Siが低いのでアークが不安定であった。さらに、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが低いのでスリップ率SLが高くワイヤ送給性も不良であった。
ワイヤNo.11は、ワイヤ成分のCが高いので大粒のスパッタが発生した。また、Mnが低いのでアークが不安定であった。
【0034】
ワイヤNo.12は、ワイヤ成分のSiが高いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが高いので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となり、チップの摩耗量も多くなってアークが不安定になった。
ワイヤNo.13は、ワイヤ成分のMnが高いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面潤滑剤中のKが少ないのでややアークが不安定となった。
【0035】
ワイヤNo.14は、ワイヤ成分のTiが高いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面潤滑剤の二硫化モリブデンが少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となり、チップの摩耗量も多くなってアークが不安定になった。
ワイヤNo.15は、ワイヤ成分のTiが低いので大粒のスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面潤滑剤のリン脂質(レシチン)が少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となり、チップの摩耗量も多くなってアークが不安定になった。
【0036】
ワイヤNo.16は、ワイヤ表面潤滑剤の二硫化モリブデンが多いのでアークが不安定でスパッタ発生量も多くなった。また、ワイヤ表面潤滑剤の合計量が少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良でチップ摩耗量も多くなってアークも不安定になった。
ワイヤNo.17は、ワイヤ表面潤滑剤のリン脂質(レシチン)が多いのでスパッタ発生量が多くなった。また、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良でチップ摩耗量も多くなってアークも不安定になった。
ワイヤNo.18は、ワイヤ表面潤滑剤の合計量が多いのでスリップ率SLが高くワイヤ送給性も不良であった。また、ワイヤ表面潤滑剤中のKが多いのでスパッタ発生量が多かった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例におけるワイヤ送給試験の装置を示す図面である。
【符号の説明】
【0038】
1 送給機
2 スプール巻きワイヤ
3 送給ローラ
4 コンジットケーブル
5 トーチ
6 チップ
7 鋼板
8 コンジットケーブルの屈曲部
9 ワイヤの実速度検出器
10 ロードセル


特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ar−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤにおいて、ワイヤ成分として、質量%で、0.02〜0.10%、Si:0.40〜0.95%、Mn:1.0〜1.95%、Ti:0.03〜0.15%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体の潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有することを特徴とするAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ。
【請求項2】
ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算術平均粗さRaが0.04〜0.12μmであることを特徴とする請求項1記載のAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ。
【請求項3】
ワイヤ表面潤滑剤にワイヤ10kg当たりKを0.004〜0.25g含有することを特徴とする請求項1または2記載のAr−CO2 混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−175452(P2006−175452A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368702(P2004−368702)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(302040135)日鐵住金溶接工業株式会社 (172)
【Fターム(参考)】