B型インフルエンザ菌糖ワクチン用ポリアニオン性ポリマーアジュバント
【課題】 この発明はワクチンの分野に関し、特にpH7.0の低い等電点の抗原を含むワクチンに関し、特にB型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜多糖又はオリゴ糖(PRP)に関する。
【解決手段】 免疫原性組成物及びこのような組成物を作る方法は、ポリアニオン性ポリマー(例えばPLG-ポリ-L-グルタミン酸)を組成物に添加することによって、驚くべきことに、PRPが免疫干渉から保護されることにより提供される。
【解決手段】 免疫原性組成物及びこのような組成物を作る方法は、ポリアニオン性ポリマー(例えばPLG-ポリ-L-グルタミン酸)を組成物に添加することによって、驚くべきことに、PRPが免疫干渉から保護されることにより提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワクチンの分野に関し、特に、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)などの低い等電点の抗原を含む免疫原性組成物に関する。本発明は、PRPを含む免疫原性組成物及びコンビネーションワクチンを提供し、ここでこのPRPは、PRPを他の抗原製剤、特にDTPaを含む製剤と組合せた場合に生じることがある免疫干渉から、ある程度保護される。DTPaは、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)及び無細胞百日咳(B. pertussis)成分を含む、よく知られた「三価の」コンビネーションワクチンであり(典型的には解毒された百日咳トキソイド(PT)及び線維状赤血球凝集素(FHA)と、任意にパータクチン(PRN)及び/又は凝集素2及び3を含む)、典型的には水酸化アルミニウムアジュバントに(少なくとも部分的に)吸着されている。例えば市販のワクチンINFANRIX-DTPaTM(GlaxoSmithKline Biologicals)は、DT、TT、PT、FHA及びPRN抗原を含み、これらすべてが水酸化アルミニウムアジュバントに吸着されている。また、(例えばDTPaを含む)コンビネーションワクチンでPRPの干渉を低減する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
多糖類を利用したワクチンは当業界で公知である。例えば、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae B)感染を予防するためのPRPワクチンは、担体タンパク質と結合したB型インフルエンザ菌莢膜のオリゴ糖又は多糖(PRP)を基本としている。この多糖は、リボース、リビトール及びリン酸のポリマーである。担体タンパク質の例として、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイド、髄膜炎菌(N.meningitidis)外膜タンパク質が挙げられる。例えば、米国特許第4,365,170号、同第4,673,574号、欧州特許第208375号、同第477508号及び同第161188号を参照されたい。
【0003】
このような結合ワクチンは、他の抗原又はワクチンと同時に投与することが望ましく、これには複数の注射が必要とされ得る。複数の注射に伴う問題として、投与手順がより複雑化すること、全注射量が大量になることが挙げられる。これらの問題はワクチンが幼児を対象とした場合に特に重大な問題である。幼児と医師の両方にとって、必要な抗原すべてを通常量のワンショットで注射し、したがってワクチン接種の手順が幼児にとってショックと痛みが少なくなり、医師にとってはより手際良く効率的に行えるのが望ましい。
【0004】
そのため、多糖結合ワクチンと、DTPaやDTPw(百日咳成分は死菌全細胞百日咳菌(Bordetella pertussis)である)等の他のワクチンとを組合わせることが提案され、より複雑なコンビネーションワクチンが作られるようになった。また、そのようなコンビネーションワクチンに、更にB型肝炎又はポリオなどの疾患予防用の抗原を加えることも提案されている(B型肝炎に対する抗原並びにジフテリア、破傷風及び百日咳に対する抗原(HepB、DTPa)を含むコンビネーションワクチンは、国際公開第93/24148号に記載されている)。同様にDTP-PRPコンビネーションワクチンを開示する国際公開第98/00167号及び国際公開第99/13906号も参照されたい。
【0005】
しかしながら、コンビネーションワクチンの成分を単に混合しても、すべての抗原が効果的に一緒に混合されるわけではなく、複雑になっていることが分かった。抗原を他の成分と組合わせて投与する場合(特定の抗原を単独投与する場合と比較して)、抗原の免疫原性が減少することは、干渉として知られている。例えば、DTPaコンビネーションワクチンをアジュバントを含まないPRP結合体と即時的に混合すると、PRP多糖に対する抗体力価が減少することが知られている(国際公開第97/00697号)。また国際公開第97/00697号では、PRP結合体が水酸化アルミニウムに吸着されると、多糖成分に対する抗体力価が有意に減少することが示された。これらの結果は、DTPaワクチンの水酸化アルミニウムとPRPとの間に干渉があったことを示していた。このような即時的に調製されるコンビネーションワクチンにおける干渉を最小限にしようとするため、PRPをリン酸アルミニウムに前もって吸着(pre-adsorb)させた。
【0006】
理論に縛られることはないが、前記干渉の問題は、PRP(2よりも小さい低い等電点を有する)が水酸化アルミニウム(高い等電点を有する)と強い相互作用を形成する結果であると考えられる。この相互作用により、特にPRP/AlOHの相互作用により粒子が網目状になると(目視又は光学顕微鏡で観察可能な凝結(flocculation)と呼ばれる現象(図5参照))、免疫担当(competent)細胞からPRPエピトープを遮蔽することがある。
【0007】
国際公開第96/37222号も干渉の問題を記載している。このケースでは、PRP結合体と他のDTPa成分を、7.2よりも低いゼロ点電荷(zero point charge、ZPC)を有するアルミニウムベースのアジュバント、例えばリン酸アルミニウムに吸着させることにより、またはアニオン性塩が添加されてゼロ点電荷が約10又は11から7.2未満に低下した水酸化アルミニウムに吸着させることにより、PRP結合体の抗原性を安定化する。
【0008】
コンビネーションワクチンに対してもっぱらリン酸アルミニウムを用いるときに問題となるのが、コンビネーションワクチン中の多くの抗原が水酸化アルミニウムに吸着されているから免疫学的に有益であるということ−例えばパータクチン(pertactin)である。これらの抗原の多く(例えばパータクチン)は、リン酸アルミニウムに適切に吸着され得ず、またゼロ点電荷を7.2未満に低下するのに十分なアニオン性塩が添加されると水酸化アルミニウムから脱着する。パータクチンは百日咳ワクチンの最も重要な成分の1つである。理論に縛られることはないが、抗原のアジュバントへの吸着が有意に低くなると、T細胞の応答及び無細胞百日咳ワクチン全体としての効力が低下しうる。pH6.1(DTPaワクチンの典型的なpH)では、24時間の吸着工程で、水酸化アルミニウムに90%を超えるパータクチンを吸着させることができるが、リン酸アルミニウムでは50%未満である(他の抗原と組合わせた場合は更に減少する)。
【0009】
従って、水酸化アルミニウムに吸着した抗原とPRPを含むコンビネーションワクチンにおいては、PRPに対する干渉を低減させ、それでも水酸化アルミニウムと効果的に結合している抗原の吸着度をかなり高く維持するという技術的な問題がある。更に、pIの低い抗原が、アジュバント粒子と凝集(aggregate)(又は凝結)を形成して使用に適さないワクチンになり得るという、技術的な問題もある。
【0010】
国際公開第99/48525号によれば、この問題に対して、干渉を最小限に抑えてPRPを添加するために抗原を吸着して混合する複雑な工程を含むひとつの解決手段が提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記の問題に対する、より簡単で有利な別の解決手段が求められている。即ち、簡単な工程がひとつだけ追加されたり、一種類のPRP保護賦形剤を免疫原性組成物に単に添加したりすることを含む解決手段である。本発明はこのような解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、PRPの干渉の問題を低減し、その上、最も高い免疫原性を有するアルミニウムベースのアジュバントと効果的に結合した抗原の吸着度を高く維持できるようにするため、即時的に調製可能であるか、または液状のPRP/DTPaコンビネーションワクチン(又はPRP/DTPw)を作成することができる、一般的な方法に関する。このとき、本発明のコンビネーションワクチン中の百日咳抗原は、最も効能のある形で安定的に維持され得る。更に、本発明は、免疫干渉からある程度保護されるPRPを含む、免疫原性組成物、ワクチン及びコンビネーションワクチンを提供する。本発明者らは、驚くべきことに、ポリアニオン性ポリマー賦形剤をPRP含有ワクチンと組合わせることにより、前記課題を達成できることを見出した。理論に縛られることはないが、ポリアニオン性ポリマーはPRPと競合し、ワクチン中に存在する水酸化アルミニウムからPRPを保護することができ(例えばPRPのアジュバントへの結合量又は割合、及び/又は凝結の程度又は割合を低減することによる)、更に驚くべきことに、水酸化アルミニウムに既に吸着されている抗原は、有意に脱着しなくなる。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む免疫原性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Al(OH)3のPLG(106残基)によるプリサチュレーションの図である。
【図2】PRP-T及びPLG(85残基)間の競合の図である。
【図3】ウサギモデルにおけるHib-PLG製剤の評価の図である。
【図4】インファントラットモデルにおけるInfanrix Pentaと共に投与した新しいPLG Hib製剤のPLGの影響及び免疫原性の評価の図である。
【図5】吸着及び凝結の略図である。
【図6】臨床試験のスキームである。
【図7】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図8】凝結したサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図9】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図10】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図11】凝結したサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図12】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この明細書を通じPRPについて説明するが、同一の解決手段によれば、低い等電点(4未満又は3未満、好ましくは2未満)を有する他のオリゴ糖類又は多糖類(又は一般的に抗原)を保護できると考えられ、従って、本明細書でPRPについて説明しているどんな場合であっても、このような他のオリゴ糖類、多糖類又は抗原を本発明の一部として代わりに含めることができる。前述の等電点(pI)は結合が起こる前の糖類部分の等電点である。特に髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型A群又はC群から単離された莢膜多糖又はオリゴ糖を代わりに使用でき、ポリアニオン性ポリマーは、例えば本発明のワクチン(例えばDTPa又はDTPwコンビネーションに基づく)に起こりえる凝集及び/又は免疫原性の低減を防止するように機能する(実施例2参照)。このように、低いpIを有する抗原(好ましくは糖類)とポリアニオン性ポリマーとを含む免疫原性組成物が考えられる。
【0016】
「オリゴ糖」及び「多糖」は、病原体(例えば細菌細胞の莢膜の多糖)から単離された糖類のエピトープを意味する。細菌から直接単離してもよいし、また本発明のワクチンに使用する前に何らかの方法で加工処理してもよい。例えば微細流動化(microfluidisation)などの公知技術によってサイズを小さくできる(このようなサイズを小さくする他の技術については欧州特許第497524号を参照のこと)。従って、本明細書を通じて用語「多糖又はオリゴ糖」は、用語「糖類」に置き換えることができる。
【0017】
高いpIを有するアジュバント(例えばAlOH)から低いpIを有する抗原を「保護」するということは、以下のいずれか又は全部を意味する:a)ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、アジュバントに対する抗原の結合が減少すること、及び/又はb) ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、抗原とアジュバントとの間の凝結が減少すること(好ましくは防止する)(例えば実施例2の光学顕微鏡技術を使って評価され、図8及び11は凝結したサンプルを示し、図7、9、10、12は非凝結のサンプルを示す)、及び/又は、c) ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、抗原に対する免疫干渉を低減すること(好ましくは防止する)(免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体のGMT又はGMCを確立するELISAテストで測定する)。
【0018】
本明細書で用語「含む(comprising, comprise, comprises)」は、あらゆる場合に用語「から成る(consisting of, consist of, consists of)」で置換され得ることを意図する。
【0019】
好ましい態様において、PRP(又は低いpIの抗原)はTヘルパー細胞のエピトープの供給源である担体タンパク質に結合している。
【0020】
本発明の多糖又はオリゴ糖結合体にとって好ましい担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、髄膜炎菌などの細菌由来の外膜タンパク質、及び型別不能(non-typeable)のインフルエンザ菌由来のプロテインDである(欧州特許第594610号)。最も好ましくは、PRP(又は低いpIの他の糖類抗原)と破傷風トキソイドとを結合させる。B型インフルエンザ菌の莢膜多糖(PRP)と破傷風トキソイド(TT)の結合体の合成については、例えば国際公開第97/00697号に記載されている。
【0021】
本発明の多糖又はオリゴ糖結合体は公知のカップリング技術によって調製することができる。例えば多糖を、チオエーテル結合を介してカップリングすることができる。この結合方法では、多糖を1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化することにより、シアン酸エステルを形成する。このようにして活性化された多糖は、直接又はスペーサー基を介して担体タンパク質のアミノ基とカップリングできる。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンとカップリングし、チオエーテル結合の形成を伴うヘテロライゲーション化学反応によりアミノ誘導体化多糖と担体タンパク質を結合させる。このような結合体はPCT公開第93/15760号(Uniformed Services University)に記載されている。
【0022】
また、米国特許第4365170号(Jennings)及び第4673574号(Anderson)に記載されている直接還元アミノ化方法により、結合体を調製することもできる。また欧州特許第161188号、第208375号及び第477508号に他の方法が記載されている。
【0023】
別の方法として、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化した臭化シアン活性化多糖を、カルボジイミド縮合でタンパク質担体にカップリングする方法が挙げられる。そのような結合はChu C.ら、Infec. Immunity、1983, 245, 256に説明されている。
【0024】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、pH7(好ましくはpH6.1−本発明のDTPa及びDTPwの典型的なpHである)の水性媒体に溶解したときに、アニオン性構成繰り返し単位(例えば硫酸、スルホン酸、カルボン酸、リン酸及びホウ酸基を含む単位)の存在により、負の電荷を帯びる。構成繰り返し単位またはモノマーは、ポリマーの最小構成単位をいう。ポリアニオン性ポリマーは、2つ以上の異なるアニオン性構成繰り返し単位を含むポリアニオン性へテロポリマーでもよいし、又は単一のアニオン性構成繰り返し単位から成るポリアニオン性ホモポリマーでもよい。好ましいとはいえ、本明細書に述べられたポリアニオン性ポリマーの能力、特にPRPと水酸化アルミニウムアジュバントとの間の凝結を防止する能力及び/又は水酸化アルミニウムに効果的に吸着した抗原を有意に脱着しない能力を有するように本発明のポリアニオン性ポリマーに十分な負電荷があるかぎりは、明らかに各モノマー/繰り返し単位が負の電荷を帯びる必要はない。
【0025】
本発明のポリアニオン性ポリマーは化学ポリマーでよく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、エチルスルホン酸、ビニル硫酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-メタクリルアミド-3-メチルブタン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルリン酸、4-ビニル安息香酸、3-ビニルオキシプロパン-1-スルホン酸、N-ビニルスクシンイミド酸及びこれらの塩からなる群から得られるアニオン性の構成繰り返し単位を含むことができる。
【0026】
あるいは、本発明のポリアニオン性ポリマーはデキストランなどのオリゴ又は多糖であってもよい(又は、これは好ましい形態ではないので、これでなくてもよい)。
【0027】
最も好ましくは、本発明のポリアニオン性ポリマーは、オリゴペプチド又はポリペプチドである。このようなペプチドはD-又はL-ペプチドでよく(好ましくは、ペプチドが生物分解性で好都合になるように後者である)、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、非天然のアニオン性アミノ酸(又はこれらの塩又はアニオン性の化学的誘導体)などのアニオン性構成繰り返し単位(又はモノマー)からなる。
【0028】
本発明の目的において、本発明のポリアニオン性ポリマーは、モノマー含有量が30、40、50、60、70、80、90%以上又は好ましくは100%のL-アスパラギン酸及び/又はL-グルタミン酸であるオリゴペプチド又はポリペプチドである。
【0029】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、好ましくは平均で4〜200又は5〜200モノマー、好ましくは8〜117モノマー、より好ましくは15〜32又は15〜18モノマー、最も好ましくは17モノマー(ペプチドの場合は残基)から成る。ポリマーは、長さが違う場合もある分子の複雑な集団であるので、「平均で」とは、MALLSで測定したポリアニオン性ポリマーの重量-平均分子量(即ちMw)÷モノマーの分子量、でモノマー又は残基の数を計算することを意味する。好ましくはポリアニオン性ポリマーの多分散性(均一性の程度)は3未満である。多角度レーザー光散乱(MALLS)は、ポリマーのMWを得るため、また多分散性測定のための周知の技術である(典型的には、TSKG3000PWXL HPLCカラムを使用し、流速0.75ml/分、10mMリン酸バッファーpH7.6、130mM NaClで溶出して行う)。また本発明のポリアニオン性ポリマーは、異なるMwを有する2種類以上のポリアニオン性ポリマーの混合物からなっていてもよいと考えられる。例えば同じタイプのポリマーの16merと8mer、又は16merと4merとの混合物を、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0030】
理論に縛られることはないが、AlOHアジュバントのPRPとの結合及び/又は凝結を防止するには、アニオンは高濃度でワクチン中に存在しなければならないので、ポリアニオン性ポリマーは、アニオン又はアニオン性のモノマーの使用よりも優れた利点を有すると考えられる。高濃度では、アジュバントに効果的に吸着した抗原が脱着するようになる。ポリアニオン性ポリマーは、低いpIと、PRPの干渉/凝結の問題を防止するには十分であるがAlOHに効果的に吸着した抗原が脱着を有意に又は過剰に起こすには不十分な低濃度の賦形剤を使用可能にするAlOHに対する高い結合親和性とという一対になった特性を有すると考えられる。
【0031】
特に好ましい態様において、本発明のポリアニオン性ポリマーはポリ-L-グルタミン酸(PLG)ホモポリマーである。投与後の身体から最適にクリアランスするため、また宿主における免疫応答自体を誘発させないためには、低分子量PLG(6000MW未満、好ましくは640〜5000)が特に好ましい(例えばMWが2178の平均17残基のPLG)。
【0032】
PLGは、各繰り返し単位にペンダントした遊離のγ-カルボシキル基を有する完全に生物分解性のポリアミノ酸であり(pKa4.1)、pH7で負に帯電し、そのためこのホモポリマーは水溶性になり、かつポリアニオン性構造になる。PLGは従来のペプチド合成技術を使って作ることができる。また、比較的多分散性のポリマーの形態(例えば約2.6の多分散性を有する17mer)でSigma-Aldrichから入手可能であり、又は比較的単分散性のポリマーの形態(例えば1に近い単分散性を有する8、16、24又は32mer)でNeosystemから入手可能である。本発明の好ましい17mer(例えばSigmaより)において、典型的には、PLGは290μg/mlの濃度で存在する。本発明の好ましい16mer(例えばNeosystemsより)において、典型的には、PLGは125〜600μg/mlの濃度で存在し、好ましくは約300又は400μg/mlであるが、ワクチンの正確な組成により前記の量がある程度変わり得ることは、当業者に理解できるであろう。
【0033】
α-PLGはこれまでのところ2つの主要な生物医学的用途に用いられている。即ち、がん治療用ドラッグデリバリー(Liら、Clin. Cancer. Res. 6:2829-2834, 2000)と、生物学的接着剤(Iwataら, Biomaterials 19:1869-1876, 1998)である。α-PLGが筋肉内投与ワクチンの賦形剤としてこれまで使用されたことはない。
【0034】
ワクチンサンプル中にはいくつかの可変要因が存在し、それにより当業者は、ワクチンに使用すべきポリアニオン性ポリマー(又は異なるMwのポリアニオン性ポリマーの混合物)の適切な量を決定することが可能になる。一般的に、凝結及び/又はPRP免疫干渉を防ぐのに、ちょうど十分な量のみのポリアニオン性ポリマーを使用すべきである。多くの場合、ポリアニオン性ポリマーはワクチン中でPRP糖類の濃度よりも高い濃度で存在する。使用するポリアニオン性ポリマーの量を決定するときに考慮すべき要因は以下の通りである。
【0035】
1)ポリアニオン性ポリマーの電荷。即ち、電荷が負になるにつれて、サンプル中に要求される濃度は低くなる。2)ポリアニオン性ポリマー鎖の大きさ(平均)。即ち、大きくなるにつれて、サンプルに要求される濃度は低くなる。3)ポリアニオン性ポリマーの多分散性。即ち、(分散にむらがあって)サンプル中の低分子量種に偏っていると、より多くの量が要求されることがある。4)PRP(又は低いpIを有する糖抗原)の量。これは1〜20μg/用量/PSでよいが、量を増やすにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されることがある。5)PRP(又は低いPIを有する糖抗原)の大きさ。即ち、大きさがオリゴ糖から多糖へと大きくなるにつれて、(例えば)AlOHアジュバントに対する結合親和性が増加し得、それによってより多くのポリアニオン性ポリマーが要求されるだろう。5)PRP(糖):担体の割合(5:1〜1:5w/w)。即ち、結合体中の立体障害が増加するにつれて、ポリアニオン性ポリマーの量を調節する必要があり得る。6)アジュバント(ZPC>8を有する)の電荷。即ち、同じpHで電荷が増加するにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されるはずである。7)アジュバント(例えばAlOH)粒子の大きさ。即ち、常に注射可能な大きさであるべきであるが、アジュバンドが一定量で、大きさが大きくなるにつれて、ポリアニオン性ポリマーをより少なくすることが要求されるはずである。8)アジュバントの量(ワクチンにおける許容範囲は50〜1250μg/用量Al3+である)。即ち、この量が増加するにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されることがある。9)他の吸着した抗原の存在。即ち、アジュバントの表面により多くの量のAgが吸着されるにつれて、ポリアニオン性ポリマーをより少なくすることが要求されるはずである。
【0036】
凝結の評価は、沈降特性や、光学顕微鏡的(実施例2)又は目視観察等の当分野で公知の技術によって容易に行うことができる。一般にZPC>8のアジュバントを含む本発明のワクチンは、PRP糖類とこのワクチンを15分間混合した後、ポリアニオン性ポリマーの入っていない同等の製剤と比べると凝集が少ない(好ましくは観察される凝結がない)はずである。抗PRP抗体力価の維持(又は力価の発現に対する干渉の低減)は、標準的なELISAテストで評価することができる。
【0037】
本発明の特に好ましい免疫原性組成物は、(好ましくは結合した)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含み、組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度(μM)にpH7.0におけるポリアニオン性ポリマーの正味の負電荷を乗じて、免疫原性組成物の用量0.5ml中に存在するPRP量(μg)で割った結果が、300〜6000、好ましくは400〜4000、より好ましくは500〜2000、560〜1100、610〜900、640〜800又は660〜700、最も好ましくはおよそまたは正確に680になるように、有利に処方される。
【0038】
組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度は、使用したポリアニオン性ポリマーのMwに従って測定され、典型的には、30〜2000μM、好ましくは80〜1000μM、100〜500μM、150〜300μMの範囲、最も好ましくはおよそ又は正確に200μMである。これとは別に、濃度をμg/mlの単位で表すことができ、典型的には、45〜3000μg/ml、好ましくは120〜1500μg/ml、150〜750μg/ml、225〜450μg/mlの範囲、最も好ましくはおよそまたは正確に290又は300μg/mlである。
【0039】
ポリアニオン性ポリマーのpH7.0における正味の負電荷は、何らかの適切な方法で計算することができる。ここでもこの値はポリマーの平均特性であり、使用したポリアニオン性ポリマーのMwについて計算すべきである。例えば、平均17残基を有するPLGポリマーは、17の正味の負電荷を有するはずである。好ましくは、正味の負電荷は少なくとも8又は少なくとも17、好ましくは8〜106、10〜80、12〜60、14〜40、16〜20、最も好ましくはおよそまたは正確に17である。
【0040】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、pH7.0で3モノマー当たり少なくとも平均1の正味の負電荷を有し、好ましくは3モノマー当たり少なくとも2、最も好ましくは各モノマーに対して少なくとも平均1の正味負電荷を有する。電荷は、ポリマーの長さにわたって偏在して配置されていてもよいが、ポリマーの長さにわたって均一に広がっているのが好ましい。
【0041】
本発明の免疫原性組成物は、典型的には、用量0.5ml当たりPRP(好ましくは担体タンパク質に結合しているが、その重量はここでの計算では計算されない)を、1〜20μg、好ましくは2.5〜10μg、最も好ましくはおよそまたは正確に5μg含む。最も好ましくは、PRPはいかなるアジュバントにも故意的に吸着されない。
【0042】
きわめて好ましい態様において、免疫原性組成物は、担体タンパク質(好ましくは破傷風トキソイド)に結合したPRPを5μgと、ヒト用量0.5ml当たり218μgのポリ-α-L-グルタミン酸ナトリウム(約200μM)とを含み、ここでPLGは平均で17グルタミン酸残基を含む(好ましくはMw2178、任意に2.6の多分散性を有する)。
【0043】
前述のすべての免疫原性組成物において、さらに賦形剤を既に述べたものに加えてもよい。特に、PRPはリン酸アルミニウムアジュバントに吸着させてもよい(国際公開第97/00697号、第99/48525号に述べられている)が、未吸着であることが好ましい。免疫原性組成物は、組成物のpHを安定化できるpKaを有するいずれかの適切なバッファーで緩衝することができる−典型的にはpH6〜7、最も好ましくはpH6.1である。例えばヒスチジンバッファーを使用することができ、またはマレイン酸バッファーが好ましい。一般的にバッファー(及び使用する量)は、組成物におけるポリアニオン性ポリマーの有益な効果に著しく影響しないように選択すべきである。一般的に、バッファーが存在する場合、10、5、4、3、2、1、0.5又は0.1mM未満のバッファーを使用すべきであり、好ましくは約2mMである。
【0044】
保存を目的として、本発明の免疫原性組成物を凍結乾燥する場合、安定化用賦形剤(又は凍結保護剤)を本発明の免疫原性組成物に添加することが好ましい。グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトースなど、どんな賦形剤を使用してもよいが、好ましくはスクロースを使用する。このような賦形剤は、典型的には1〜5%の量で、好ましくはおよそまたは正確に2.5%(w/v)で存在させる。
【0045】
本発明の免疫原性組成物は、(好ましくはタンパク質担体に結合した)PRPのみからなる抗原を含有していてもよいが、1種類以上の別の抗原を含んでいてもよい。PRPはこれらの他の抗原と混合し保存してもよいし、又は(必要とする患者に組成物を投与する直前、医師によって)即時的に他の抗原を添加してもよい。PRPを1種類以上の他の抗原と組合わせる前に、ポリアニオン性ポリマーをこれらの他の抗原に添加してもよく、又は好ましくは他の抗原をPRPと組合わせる前に、保護剤としてポリアニオン性ポリマーをPRPと一緒に存在させる。別の抗原の幾つかは、PRPと一緒に保存してもよく(凍結乾燥するのが好ましい)、また幾つかは分けて保存して(液体が好ましい)即時的にこれらを一緒にしてもどしてもよく、ポリアニオン性ポリマーは、各組成物中に存在してもよいが、PRPと一緒に存在することが好ましい。
【0046】
好ましくは、免疫原性組成物は、(好ましくは結合した)PRP及びポリアニオン性ポリマーの他に、MenC、MenY、MenA及びMenW(例えばA+C、A+Y、A+W、C+Y、C+W、Y+W、A+C+Y、A+C+W、A+Y+W、C+Y+W、A+C+Y+W)から成る群から選択される、1種類以上の髄膜炎菌の莢膜オリゴ糖又は好ましくは多糖−担体タンパク質結合体(Tヘルパーエピトープ、最も好ましくは破傷風トキソイドからなる好ましい担体タンパク質については前述参照のこと)を更に含む。好ましくは、MenC及び/又はMenYを含み、全4種類を含むのが最も好ましい。これらの髄膜炎菌成分はいかなるアジュバントにも意図的に吸着されないことが好ましい。このような免疫原性組成物を有益に凍結乾燥し、別の抗原(例えばDTPa-又はDTPw-ベース組成物)でもどすことができ、即時的にもどすのが好ましい。本明細書でいう「即時的(expemporaneously)」とは、組合わせたワクチンを作って1.5時間又は1時間以内、好ましくは0.5時間以内、最も好ましくは15分以内でそのワクチンが投与されることを意味する。
【0047】
前述の髄膜炎抗原の代わりに、又は前記髄膜炎菌抗原に加えて、免疫原性組成物は、1種類以上の肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体(Tヘルパーエピトープ、最も好ましくはCRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド又はプロテインDからなる好ましい担体タンパク質について前述参照のこと)を含んでもよい。
【0048】
典型的には、本発明の組成物中に配合する肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖(好ましくは後者)は少なくとも4つの血清型の肺炎球菌由来の抗原を含む。4つの血清型は6B、14、19F及び23Fからなるのが好ましい。より好ましくは、少なくとも7つの血清型が組成物に含まれ、例えば血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fに由来するものからなる。より好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ(11価)、例えば血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fに由来するものからなる。本発明の好ましい態様においては少なくとも13のこのように結合した肺炎球菌の抗原が含まれるが、別の抗原、例えば23価(血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fなど)も、本発明に包含される。
【0049】
年配者のワクチン接種のため(例えば肺炎の予防のため)、前述した11価の肺炎球菌抗原性組成物に血清型8及び12Fを(最も好ましくは15及び22も)加えて15価の組成物を作るのがよく、(中耳炎がもっと懸念される)乳児又は幼児に対しては、13価の組成物を作るために血清型6A及び19Aを含めるのがよい。
【0050】
更に肺炎球菌抗原を含むこのような免疫原性組成物を凍結乾燥するのが有益であり、別の抗原(例えばDTPa-ベース組成物)で、好ましくは即時的にもどすことができる。
【0051】
本発明の免疫原性組成物は、PRP及びポリアニオン性ポリマーのほかに、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)及び全細胞又は1種類以上の無細胞百日咳(B.pertussis)抗原から成る群から選択された1種類以上(2種類又は好ましくは全3種類[DTPw又はDTPa組成物])の別の抗原又は抗原グループを更に含むことができる。含めてもよい1種類以上の(2、3、4、又は5つ全部)の無細胞百日咳抗原は、百日咳トキソイド(PT)、FHA、パータクチン(PRN)、凝集素2及び凝集素3から成る群から選択できる(好ましくは最初の3つを含む)。
【0052】
このようなDTPa又はDTPw組成物は、不活化ポリオワクチン(IPV)(典型的には混合前未吸着)及びB型肝炎表面抗原(国際公開第93/24148号に説明されているようにリン酸アルミニウムに好ましくは吸着される)のいずれか又は両方を更に含んでもよい。
【0053】
DT、TT、PT、FHA及びPRNは当該分野で周知である。PT成分を化学的又は遺伝学的にトキソイドにすることができ、例えば欧州特許第515415号に説明されている。また百日咳抗原の調製については欧州特許第427462号、国際公開第91/12020号を参照されたい。任意に、PT成分を組換えてもよい(例えば欧州特許出願第306318号、第322533号、第396964号、第322115号及び第275689号に説明されている)。また任意に、DT及びTT成分も組換えてもよい。典型的には、PT、FHA、PRN、HBsAg(B型肝炎表面抗原)及びPRP成分は、バルクワクチン用量0.5ml当たり8〜25μgの範囲である。DT、TT及びIPV(不活化3価ポリオウイルスワクチン)成分は、典型的には、バルクワクチン用量0.5ml当たりそれぞれ約15〜25Lf(凝結単位(flocculating unit))、10Lf及び40/8/32(タイプI/II/III)DUとして存在すべきである。
【0054】
このようなワクチンに使用する適切な成分は、既に市販されており、詳細は世界保健機構から得ることができる。例えばIPV成分は、Salk不活化ポリオワクチンでよい。B型肝炎表面抗原は、Engerix-BTM(SmithKline Beecham Biologicals)中の‘S’抗原からなり得る。
【0055】
凍結乾燥した又は液体のPRP(未アジュバント化(unadjuvanted)又はリン酸アルミニウムに吸着されている)のいずれかを組成物の他成分の溶液に添加することを、即時的に(前述参照)行ってもよいし、ワクチンが製造者から出荷される前に行ってもよい。PRPを他の成分に添加する前に、ポリアニオン性ポリマーと組合わせてもよく、ポリアニオン性ポリマーを更に含む他の成分にPRPを添加してもよい。
【0056】
本発明の免疫原性組成物は、典型的には、8、9又は10よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを更に含めることができ、典型的にはアルミニウム塩、最も多くの場合、ミョウバン又は水酸化アルミニウムを含む。これは、特に、DTPa含有組成物の場合であり、1種類以上のDTPa成分が水酸化アルミニウムに優先的に吸着される。通常このようなアジュバントは、用量0.5ml当たり50〜1250μg又は100〜1000μg、通常用量0.5ml当たりおよそまたは正確に500μgの量で免疫原性組成物中に存在し、アジュバントの約50、60、70、80、90又は95%が、その表面に特異的に吸着された抗原(非PRP、通常1種類以上のDTPa抗原)を有する。
【0057】
普通、このようなアジュバントの存在は、組成物中に存在するPRPと凝結する傾向にあるであろう。しかしながら本発明の免疫原性組成物においては、ポリアニオン性ポリマーの存在によってこれが阻止される。
【0058】
これとは別に、好ましくは更に、ポリアニオン性ポリマーの存在により、アジュバントがPRPに対して有している免疫学的干渉を20、30、40、50、60、70、80、90%以上又は好ましくは100%まで減少させることができる(干渉は、適切なモデル[例えばマウス又はラット、あるいは十分に管理されたヒトの臨床実験]において、PRPワクチンを単独で投与したときと、前述のアジュバントを含む免疫原性組成物として同一のPRPワクチンを投与したときの抗PRP GMT力価(μg/ml)の差をとることによって測定される;本発明のポリアニオン性ポリマーを免疫原性組成物に添加することにより、免疫原性組成物でのGMTが、PRPワクチン単独のGMTに戻る程度に干渉が低減される)。
【0059】
前記アジュバント(8、9、10又は11よりも大きいゼロ点電荷を有する)が本発明の免疫原性組成物に含まれる場合、これは普通、組成物中のある種の抗原はこのようなアジュバント(特に水酸化アルミニウム)の表面に吸着されたときに最も効果的だからである。
【0060】
本発明の組成物の有利な点は、ポリアニオン性ポリマーの存在により(通常のアニオン性塩とは違って)、前記アジュバント(即ち8よりも大きいゼロ点電荷を有する)に特異的に吸着された抗原の有意な脱着を起こさないことである。「有意な脱着」を起こさないとは、典型的には、特異的にアジュバントに吸着された(即ち他のワクチン成分と混合する前に意図的に吸着された及び/又は別の吸着工程で吸着された)抗原の50、60、70、80又は好ましくは90%を超える抗原が、ポリアニオン性ポリマーを本発明の免疫原性組成物に添加して15分又は1時間後に、アジュバントに吸着されたままであることを意味する。一般的には、そのようにして、適切なモデル(例えばマウス又はラット、あるいは十分に管理されたヒト臨床試験)での抗-抗原GMT力価(μg/ml)が、同じモデルでポリアニオン性ポリマーを含んでいない同じ免疫原性組成物での抗原のGMT力価の50、60、70、80、90又は95%を超えるようにするために、十分な抗原がアジュバントに吸着されたままであることが好ましい。
【0061】
典型的には、以下の抗原の1種類以上を本発明の免疫原性組成物に存在させてもよく、本発明の免疫原性組成物の他の成分と混合する前に8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(好ましくは水酸化アルミニウム)に特異的に(及び好ましくは個別に)吸着されてもよい:ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチン(PRN)。好ましくは、少なくともPRNが水酸化アルミニウムに吸着され、最も好ましくは、5つの成分全部が水酸化アルミニウムに吸着される。
【0062】
DTPa及びDTPw抗原をアルミニウムアジュバントに吸着させる方法は当該分野で公知である。例えば国際公開第93/24148号及び第97/00697号を参照されたい。通常、アジュバントに吸着させる成分は、本発明のコンビネーション免疫原性組成物中で抗原と一緒に混合する前に、ほとんどの、好ましくはすべての抗原を吸着させるのに適切なpHで、少なくとも10分間室温に置かれる。
【0063】
他の成分は、未吸着(例えばIPV)又は他のアジュバントに特異的に吸着されることが好ましい−B型肝炎表面抗原(HepBsa)は、他の成分と混合する前にリン酸アルミニウムに吸着されることが好ましい(国際公開第93/24148号で説明される)。
【0064】
本発明の典型的なコンビネーションワクチンは、DTPa IPV HepBsa PRP(好ましくはTTに結合した) PLG; DTPa IPV HepBsa PLG PRP MenC及び/又はMenY(好ましくは莢膜の糖類はTTに結合する)を含む。前述したように、PLGは、一定のワクチン中の髄膜炎菌の莢膜の糖類エピトープの免疫原性を低減させる凝集現象を減らすことができる。このような本発明のコンビネーションは、DTPw HepBsa PLG Hib MenA及び/又はMenC(好ましくは莢膜の糖類はTTに結合する)を含んでもよい。
【0065】
好ましい態様において、本発明の免疫原性組成物と製薬上許容できる賦形剤を含むワクチンが提供される。本発明のワクチンのpHは、通常pH6〜7、好ましくはpH6.1である。
【0066】
ワクチンの調製は、Vaccine Design - The Subunit and adjuvant approach Ed Powell and Newman; Pellum Pressで一般的に説明されている。本発明によるコンビネーションワクチンは小児科のワクチンに好都合である。
【0067】
各ワクチン用量中の多糖又はオリゴ糖結合抗原の量は、典型的なワクチン接種を受ける人に重大な副作用を起こすことなく免疫保護(immunoprotective)応答を誘発する量として選択される。この量は、使用する具体的な免疫原によって変化し得る。一般的に、各用量は、結合した多糖又はオリゴ糖を1〜1000μg(糖の量で表す)、好ましくは2〜100μg、より好ましくは4〜40、2〜15又は3〜10μg、最も好ましくは約または正確に5μg含むと予想される。
【0068】
ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は、典型的には1〜100μg、好ましくは5〜50μg、最も典型的には5〜25μgの範囲にある。
【0069】
特定のワクチンに対する最適な抗原量は、患者の抗体力価や他の応答の観察を含む標準的な研究によって確認することができる。最初のワクチン接種に続いて、患者は、1回又は2回のブースター注射を約4週間の間隔またはそれよりも長い間隔で受けることができる。
【0070】
本発明のワクチン調製物は、感染に感受性のある哺乳動物(好ましくはヒト)を保護又は治療するのに使用することができ、全身的又は粘膜のルートを経由して前記ワクチンを投与する方法による。これらの投与としては、筋肉内、腹腔内、皮内又は皮下のルートを介しての注射;または(それほど好ましくはないが)経口/消化管、気道、尿生殖路への粘膜を介する投与が挙げられる。
【0071】
本発明の医薬的に有効な量のワクチンを必要とする患者に投与することにより、B型インフルエンザ菌の疾患(又は本発明の低いpIの抗原に関連する疾患)を予防又は治療する方法が更に提供され、また、B型インフルエンザ菌疾患の予防又は治療用薬剤の製造における本発明の免疫原性組成物又はワクチンの使用が提供される。
【0072】
更に本発明は、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)(好ましくは結合している)の免疫学的干渉及び/又は凝結を、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(前述したように好ましくは水酸化アルミニウム)に吸着された1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチン(PRPと少なくとも1種類の別の抗原を含む本発明のワクチン)中で低減するための方法を提供し、この方法は、以下のステップ、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、
(ii)ポリアニオン性ポリマーを1種類以上の別の抗原に添加するステップ、及び
(iii)次に、PRPを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含むか、又は以下のステップ、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、及び
(ii)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含む本発明の免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む。
【0073】
前者の場合、アジュバントは、PRPを添加する前に管理され(police)、後者の場合、PRPは、アジュバントに添加される前に保護される。好ましくは、いずれかの方法において成分を即時的に混合する。PRPを含む免疫原性組成物を、安定性を最大にするため、最も好ましくは安定化用賦形剤(前述)の存在下で、凍結乾燥することが好ましい。PRPを含む免疫原性組成物を、1種類以上の結合した髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類及び/又は1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類(前述)と組合わせることが好ましい。
【0074】
アジュバントに吸着される1種類以上の別の抗原は、前述したように、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンから選択されることが好ましく、すべて選択されることが最も好ましい。最も好ましくは、前述したように、コンビネーションワクチン中のポリアニオン性ポリマーの存在によって、アジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原の有意な脱着を起こさない。
【0075】
更に、好ましくは結合した、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫応答を保護するための手段として、PRPを更に含む免疫原性組成物におけるポリアニオン性ポリマー(前述)の使用が提供される。免疫応答を保護することとは、免疫原性組成物が、後に、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(前述)を含むワクチンと組合わされるかどうかに関係なく、PRP成分単独の抗PRP GMT力価の50、60、70、80、90又は95%超が保たれることを意味する。
【0076】
更に、i)B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)(好ましくは結合している)とポリアニオン性ポリマー(前述)とを含む第一の免疫原性組成物、及びii)8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(好ましくは水酸化アルミニウム)に吸着された1種類以上の抗原を含む第二の免疫原性組成物、を含むキットが提供される。好ましくは、第一の免疫原性組成物は凍結乾燥され、更に安定化用賦形剤(前述)、好ましくはスクロースを含み、また第二の免疫原性組成物は液状である。キットの内容物は、第一の免疫原性組成物を第二の免疫原性組成物で即時的にもどして、得られた混合組成物を投与することによって、簡単に投薬できると考えられる。本発明のポリアニオン性ポリマーは、PRPやPRP結合体が水溶液に溶けるよりも早く溶けることが非常に好ましく、一緒に凍結乾燥(co-lyophilise)された場合、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを含む液状組成物でもどされるときにゆっくり溶解するPRPを、ポリマー(例えばPLG)によって効果的に保護することができる。
【0077】
好ましくは、第一の免疫原性組成物は、MenC、 MenY、 MenA及びMenW (例えばA+C、 A+Y、 A+W、 C+Y、 C+W、 Y+W、 A+C+Y、 A+C+W、 A+Y+W、 C+Y+W、 A+C+Y+W) から成る群から選択された1種類以上の結合した髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類、好ましくはMenC 及び/又はMenY、及び/又は1種類以上の結合型肺炎球菌莢膜のオリゴ糖類又は多糖類(前述)を更に含む。好ましくは、第二の免疫原性組成物は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンから成る群から選択された1種類以上(最も好ましくはすべて)の抗原を含む。代わりにDTPwを含んでもよい。
【0078】
前述したように、本明細書でPRPに関するすべての態様は、低いpIの他の抗原又は糖類にまで同等に(又はその代わりに)及び、それでもなお本発明の利益をうまく生かすことができる(例えば凝結/凝集現象の低減又は防止など)。
【0079】
更に、免疫原性組成物で生じる凝集又は凝結を防止するための前記組成物の製造における、本発明のポリアニオン性ポリマーの使用が提供される。好ましくは、免疫原性組成物は本発明の免疫原性組成物であり、例えば前述したものである。
【0080】
以下の実施例により、本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0081】
破傷風トキソイドと結合したPRP多糖(PRP-T)をPLG(Hib-PLG)実験用ロットと組み合わせて用いて多数の実験を行った。以下のパラメータを評価した。
【0082】
・PLGの分子量及び含量
・PRP-Tの含量
・凍結乾燥用安定剤。
【0083】
以下の結果は、前記実験用ロットのインビトロでの臨床前及び効力試験から得たものである。
【0084】
実験用ロットでの結果
Hib-PLGのインビトロデータ
PRP-TとAl(OH)3との間の物理的相互作用の低減におけるPLGの有効性を実証するために、市販のInfanrix PentaTMワクチンをHib-PLGワクチンと混合することを含む、3つのタイプの混合ステップを行なった。
【0085】
・ステップ1:プリサチュレーション。すなわち、まずPLGをAl(OH)3に吸着させ、次にPRP-Tを添加した;
・ステップ2:競合。すなわち、PLGをPRP-Tと競合させてAl(OH)3へ吸着させた;
・Infanrix-PentaTM/Hib-PLG:すなわち、PLGとPRP-Tを一緒に凍結乾燥し、次に500μgのAl(OH)3を含むInfanrix-PeNTaTMワクチン中で競合吸着させた。
【0086】
3ステップすべてにおいて、PLGはPRP-Tによって誘発される凝結を回避できた(図1及び2参照)。
【0087】
以下の理由により、200μM PLG(Mw 2,200)の含量を臨床製剤用に選択した:
・凝結が観察されなかった;
・80%近いPRP-Tが吸着されなかった(Dionexテストによる);
・PLGは完全に吸着される;
・Infanrix の全主要成分(DT、TT、PT、FHA、PRN [又は69K]、IPV及びHB表面抗原)が影響を受けなかった;
・ラクトース及びスクロースの両方とも、有効な凍結保護剤であることが分かった。
【0088】
図1に、PLG(106残基)によるAl(OH)3のプリサチュレーションを示す。10μg PRP/用量、500μg AlOH。また、2000uM PLG(Mw 1043−8残基)により、上清中にPRP-Tの80%(10μg PRP/用量、500μg AlOH)を、凝結を起こすことなく保てることもわかった。
【0089】
図2は、PRP-T及びPLG(85残基)間の競合を示す。100μM PLG Mw 10,900により、500μgのAl(OH)3(=Infanrix PeNTa中の全Al(OH)3用量)と同様、10μgのHibが50μgのAl(OH)3(Infanrix PeNTa中の仮想の遊離Al(OH)3を模倣するため)に吸着するのを抑制することができる。
【0090】
更に、500μm PLG Mw 2,178(17残基)は、75μM PLG Mw 10,900(85残基)で可能なように、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、10μgのHib がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)。
【0091】
PLG Mw 2,178(17残基)は、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、5μgのHib(PRP-T)がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)−凝結が存在せず、かつInfanrix抗原の吸着が保持されるという点で、175及び200μMが最適な濃度であった。
【0092】
PLG Mw 10,800(85残基)は、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、5μgのHib(PRP-T中のPRP量)がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)−凝結が存在せず、かつInfanrix抗原の吸着が保持されるという点で、30及び35μMが最適な濃度であった。
【0093】
Hib-PLGの臨床前免疫原性データ
Hib-PLG実験用製剤を、免疫原性のためのウサギモデルと、Infanrix Penta と Hibワクチンの組合わせで誘発されるHib(PRP-T結合体)免疫干渉の評価が可能なベビーラットモデルで評価した。更に、Infanrix Pentaの有効性に対するHib-PLGの影響を、百日咳(B. pertussis)が肺に定着(コロニー形成)したマウスモデルで評価した。
【0094】
免疫原性のためのウサギモデル
研究設計
このモデルでは、5週齢のニュージーランドメスウサギを2週間間隔で3回(0、14、28日目)、ヒト用量の1/4のワクチンで筋肉注射で免疫した。1グループ10匹のサンプルサイズを用いた。血液サンプルを21、28、35及び42日目に採取した。抗PRP抗体をELISAで測定し、μg/mlで示す。
【0095】
投与したワクチン
高い(10900Mw)及び低い(2200Mw)分子量のPLGを含むPRP-T(5μg PRP)の製剤を、2つの濃度で評価した。PLGが無い以外は同様にしたHib製剤をコントロールとして含めた。グループごとに投与したワクチンの詳細については以下を参照されたい。
【表1】
【0096】
結果
図3を参照されたい。
【0097】
PRP応答の変動がいくらかウサギモデルで観察されるが、グループ間で有意な差は示されなかった。
【0098】
Hib-PLG L Mw 175μMを受けたウサギにおいて、免疫原性がわずかに低減したことが観察されたが、他のすべての製剤は、PLGを添加しなかったHibコントロールグループと同等の抗PRP抗体レベルを誘発した。
【0099】
これらのHib−PLGの実験用製剤でウサギを免疫した後の抗PLG抗体の誘発は実証されなかった。
【0100】
Hib干渉のためのベビーラットモデル
研究設計
7日齢のOFAラットを2週間間隔で3回(0、14、28日目)、ヒト用量0.5mlのワクチンの1/10で筋肉注射で免疫した。オス及びメスラットの配分は均等にした。1グループ当たり20匹のサンプルサイズを用いた。血液サンプルを35日目に採り、抗PRP抗体をELISAで測定し、μg/mlで表した。
【0101】
投与したワクチン
ベビーラットモデルの干渉のコントロールとして、Infanrix-Penta (10μg PRP)と組合わせたHibを投与し、またHib(10μg)と共にInfanrix-Pentaを同時投与した。単独で処方したHib(5μg)または様々な量のPLGを含むHibをInfanrix-Pentaでもどした後に評価した。
【0102】
グループごとに投与したワクチンの詳細は以下を参照されたい。
【表2】
【0103】
結果
図4を参照されたい。
【0104】
HibをInfanrix-Pentaと共に投与した場合、Infanrix-Pentaと別々に同時投与したHibと比較して、免疫干渉が観察された。
【0105】
Hib製剤中のPLGの存在により、抗Hib応答の一部又は全部が回復した。実際、PLGを含むHib製剤のすべてで、コントロールグループ(グループ7)と比較して、PRPに対するより高い免疫応答が観察された。
【0106】
これらの結果は、PLGを添加して、Al(OH)3への吸着とのHib相互作用を防止することにより、一価のHibワクチンにより誘発される高い抗PRP抗体力価を回復できることを示す。
【0107】
これらのHib-PLG実験用製剤を用いてベビーラットを免疫した後の抗PLG抗体の誘導は実証されなかった。
【0108】
水酸化アルミニウムへの抗原の吸着の維持
PRP-T(Hib)5μg(糖類)を、異なる量のMw 2,600のPLG(Sigma)と組合わせて、もどしたワクチンにおいてそれぞれ最終濃度0、175又は200μMになるようにした。サンプルをスクロースの存在下で凍結乾燥した。次に、サンプルをInfanrix PeNTaでもどし、1時間後、上清(s/n)中の未吸着抗原の回収率を測定した。その結果を以下に示した。
【表3】
【0109】
結論:AlOHアジュバントに効果的に吸着すべき抗原(TT及びパータクチン)は、吸着された状態で大部分維持されている。IPVタイプIIIは脱着に対して最も敏感なようだが、ある程度吸着される。また、IPV抗原は、他の抗原と組合わせる前、アジュバントに特異的に吸着されないことに注意すべきである;もっと正確にいえば、IPVは未吸着状態で他の抗原と混合される。興味深いことに、この実験では、Hibがアジュバントに完全に吸着されるようにみえるが、やはりPLGは凝結現象(及びHib免疫干渉)が発生するのを防いでいる。典型的には、アジュバントは200μM(290μg/ml)のPLGでは飽和されず、約60% のPRPが溶液中に遊離している濃度約650μg/mlでようやく飽和される(溶液中に遊離のPLGが存在し始める)ようになる。PLGワクチンは、百日咳負荷試験(pertussis challenge test)を含む効力QC免除基準(potency QC release criteria)をパスする。
【実施例2】
【0110】
光学顕微鏡による[DTPw/MenACHib]コンビネーションの分析
DTPaHepB IPVをHib結合体でもどすことにより、DTPaHepB IPVに含まれるアルミニウムの凝結が誘発される(図5参照)。これらは目視及び光学顕微鏡で観察でき、サイズ及び沈降分析によって測定することができる。図7はInfanrix-peNTa (DTPaHepBIPV)の光学顕微鏡写真を示す。図8はPRP-TTの5μgの糖類をサンプルに添加したときのサンプル凝結を示す。図9は200μM PLG Mw 2,200(Sigma)の存在下では凝結が起きないことを示す。
【0111】
この実験は、MenACHib-TTの多糖結合体が、DTPwHBワクチンと混合されたときにアルミニウムの凝結の出現を誘導するかどうか、PLGがこれを緩和できるかどうかを見つけようとしたものである。
【0112】
方法及び材料
テストしたDTPaHepB IPV (Infanrix)には、ヒト用量当たり500μg Al(OH)3、200μg AlPO4が含まれていた。テストしたDTPwHepB (Tritanrix)には、ヒト用量当たり260μg Al(OH)3、370μg AlPO4が含まれていた。PRP-TT(Hib)は、MenA-TT 及び MenC-TT莢膜多糖の結合体と同様に、アジュバントを含んでいなかった。用量当たり5μg糖類の結合体をすべての実験で使用した。
【0113】
分析は、画像解析機(KS400 システム)につなげた光学顕微鏡によって行った。DTPwサンプルとPLGを含むMenACHibサンプルとを、観察前に15分間、混合した。
【0114】
結果
DTPwコントロールでは凝結は観察されなかった(図10)が、MenACHib-TTでもどしたDTPwサンプルでは観察された(図11)。MenACHib-TT単独は凝結しない。
【0115】
おそらく、ポリアニオン性MenA, MenC 及び Hib多糖結合体とカチオン性Al(OH)3の間の静電的相互作用が、この現象の理由であろう(図5)。
【0116】
凝結は、競合するポリアニオン性賦形剤、例えばPLGの添加によって減少できる。図12は、250μM PLGによりDTPwHepB/MenACHibが減少した凝結を見せることを示す。
【0117】
結論
MenACHib-TT結合体は、[DTPw / MenACHib]コンビネーションにおいてアルミニウム凝結を誘発することができる。これは、競合するポリアニオン性賦形剤の添加によって低減することができる。
【実施例3】
【0118】
2、3及び4ヶ月の健康な乳児に対して一次ワクチン接種(primary vaccination)として投与した場合の、GSK Biologicals認可済DTPa-HBV-IPV/Hib ワクチン(INFANRIX HEXATM)、及び、GSK Biologicals認可済DTPa-HBV-IPV (INFANRIX PENTATM)ワクチンとHib (HIBERIXTM)ワクチンの併用投与に対して比較した、GSK BiologicalsコンビネーションDTPa-HIV-IPV/Hibワクチン(PLGを有する新製剤)の免疫原性及び反応原性(reactogenicity)を評価する、フェーズIIの無作為化一部盲検の臨床試験
研究はポーランドの9つのセンターで行われた。
【0119】
目的
第一:
・DTPa-HBV-IPV (INFANRIX PENTATM)と同時投与したHib(HIBERIXTM)と比較して、またDTPa-HBV-IPV/Hib (INFANRIX HEXATM、認可済製剤)と比較して、3回投与の一次接種コース後1ヶ月に、抗PRP抗体応答の観点から、DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)の免疫原性を評価すること。
【0120】
第二:
・DTPa-HBV-IPVと同時投与されたHibと比較して、またDTPa-HBV-IPV/Hib(認可済製剤)と比較して、3回投与の一次接種コース後1ヶ月に、すべての他のワクチン抗原に対する抗体応答の観点から、DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)の免疫原性を評価すること。
【0121】
・3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月に、抗体検出及び濃度の観点からポリLグルタミン酸(PLG)に対する免疫応答を評価すること。
【0122】
・応答型の(Solicited)症状、非応答型の(unsolicited)症状及び重篤有害事象(SAE)の観点から研究ワクチンの安全性及び反応原性(reactogenicity)を評価すること。
【0123】
研究設計
3つの並行したグループでの一部盲検、無作為の研究:
− DTPa-HBV-IPV/Hib (PLGを含む新しい製剤)
− DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)
− DTPa-HBV-IPV + Hib (認可済製剤)
DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)及びDTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)を受けるグループについての単純盲検方法で本研究を行った。2つに分けた注射(DTPa-HBV-IPV + Hib)を受けたグループはオープンであった。
【0124】
各ワクチンの3回の投与を、最初の投与をするときの月齢が2ヶ月である健康な乳児に、0、1ヶ月のスケジュールに従って、筋肉注射で投与した(図6)。2つの血液サンプル(2ヶ月及び5ヶ月齢)を各患者から採取した。
【0125】
患者の数:
完了(completed):149(DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ50、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ50)
安全性:ワクチン接種したコホート全部:150(DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ50、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ51)
免疫原性:ATPコホート:147 (DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ48、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ50)。
【0126】
試験対象患者に含めるかどうかについての診断及び基準
最初のワクチン投与時の週齢が8〜12週で、36〜42週の標準的な妊娠期間後に生まれた乳児であって、試験に入る前の病歴及び臨床検査により確認された明らかな健康問題がなく、患者の親又は保護者から得られた書面による同意のある乳児。
【0127】
研究用ワクチン、用量、投与の形態
ワクチン接種のスケジュール/部位:
各研究用ワクチンを、2、3及び4月齢のときに投与した。ワクチンは、B型インフルエンザ菌ワクチンについて左太もも、他のすべてのワクチンについて右太ももに、一回の筋肉注射で投与した。
【0128】
DTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(新製剤及び認可済製剤)を調製するため、液状のDTPa-HBV-IPVワクチンをそれぞれのHibワクチンでもどした。B型インフルエンザ菌ワクチンを提供された生理食塩水希釈液でもどした。
【0129】
ワクチン組成/用量:
・以下の成分からなる、GSK BiologicalsDTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(新製剤)の1回分の用量
DTPa-HBV-IPV成分:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0130】
Hib成分:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)5μg、破傷風トキソイド10〜20μg、スクロース2.52%及びポリLグルタミン酸200μM[290μg/ml](Mw 2,200、17残基)。
【0131】
・以下の成分から成るGSK BiologicalsDTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(認可済製剤)の1回分の用量
DTPa-HBV-IPV成分:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0132】
Hib成分:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)10μg、破傷風トキソイド20〜40μg、アルミニウム0.12mg及びラクトース12.6mg。
【0133】
・以下の成分から成るGSK Biologicals DTPa-HBV-IPVワクチンの1回分の用量:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0134】
・以下の成分から成るGSK Biologicals B型インフルエンザ菌ワクチンの1回分の用量:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)10μg、破傷風トキソイド20〜40μg及びラクトース10.08mg。
【0135】
評価の基準:
免疫原性
第一エンドポイント
3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月の抗PRP抗体濃度。
【0136】
第二エンドポイント
免疫原性:
3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月に、
・ワクチン抗原に対するセロプロテクション状態は以下の通りであった:
-抗PRP抗体濃度≧0.15μg/ml及び≧1.0μg/ml
-抗HBs抗体濃度≧10mIU/ml
-抗ジフテリアトキソイド抗体濃度≧0.1IU/ml
-抗破傷風トキソイド抗体濃度≧0.1IU/ml
-抗ポリオウイルスタイプ1抗体力価≧8
-抗ポリオウイルスタイプ2抗体力価≧8
-抗ポリオウイルスタイプ3抗体力価≧8
・抗PT、抗FHA及び抗PRN血清反応陽性率(抗体濃度≧5EL.U/ml)。
【0137】
・抗PT、抗FHA、抗PRN、抗ジフテリア及び抗破傷風トキソイド、抗ポリオウイルスタイプ1、2及び3、及び抗HBs抗体濃度。
【0138】
・PT、FHA及びPRNに対するワクチン反応率を、ワクチン接種前の時点で血清反応陰性(即ち抗体濃度<5EL./Uml)だった患者に抗体が出現したことと考えるか、又はワクチン接種前の時点で血清反応陽性(即ち抗体濃度≧5EL/U/ml)だった患者のワクチン接種前抗体濃度を少なくとも維持していることと考え、母方の抗体の減少を考慮に入れる。
【0139】
・抗PLG抗体検出及び濃度。
【0140】
安全性:各研究用ワクチン接種後4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型の症状(痛み、赤み、腫れ、眠気、熱、被刺激性/神経質(fussiness)、食欲不振)の記録。各研究用ワクチン接種後0日目〜30日目に起きた非応答型の症状及び全研期間中の重篤有害事象(SAE)の記録。
【0141】
・ワクチン接種後の4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型局所的症状の発生。
【0142】
・ワクチン接種後の4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型全身的症状の発生。
【0143】
・ワクチン接種後の31日のフォローアップ期間(0日目〜30日目)中の非応答型症状の発生。
【0144】
全研究中の重篤有害事象の発生。
【0145】
統計学的方法:
免疫原性の分析:免疫原性の分析をATPコホートで行った。以下の分析を各時点で各治療グループについて行い、血清的結果を得た:95%信頼区間(CI)の相乗平均抗体濃度/力価(GMC/GMT)を、抗PRPについて及び各ワクチン抗原に対する抗体について表にした。血清反応陽性/セロプロテクション率と正確な95%CIを表にした。百日咳抗原に対するワクチン反応率(投与3回後)とその正確な95%CIを表にし、投与3回後の各抗原に対する抗体の濃度/力価の分布を逆累積分布曲線を用いて示した。
【0146】
DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新製剤)ワクチンの免疫原性を、3回目のワクチン投与後1ヶ月の各抗原についてグループのGMC/GMT比の95%CIと、3回目のワクチン投与後1ヶ月の各抗原についてセロプロテクション/血清反応陽性率の差の標準化された漸近的95%CIの両方を計算することにより、認可済ワクチンの免疫原性と比較した。
【0147】
安全性の分析:安全性の分析をワクチン接種をしたコホート全部で行った。ワクチン接種後4日以内に発生した各応答型の症状の発生率を、全グループの各投与ごと及び3回の投与が終わったときの両方について、症状のあった投与の割合とその95%CIを表にすることによって、また全グループの症状があった患者の割合とその95%CIを表にすることによって、グループごとに決定した。未応答型の症状があった患者の割合と95%CIを、グループごと及びWHOの優先項目(WHO preferred term)ごとに表にし、同様の表作成をグレード「3」の未応答型症状とワクチン接種に関連がありそうな未応答型症状について行った。更に、全研究期間中に少なくとも1つの重篤有害事象(SAE)を経験した患者の数を報告した。ワクチン接種後4日以内に直腸熱>39.0℃の患者の割合とワクチン接種後4日以内に解熱剤を受けた患者の割合と同様、ワクチン接種後4日以内にあらゆる強さの一定の症状があった患者の割合について、DTPa-HBV-IPV/Hib(新製剤)と各コントロールグループとの間の差のフィッシャーの直接確率検定(Fisher exact test)による両側p値と標準化された漸近的95%CIを計算した。
【0148】
免疫原性の結果:
・DTPa-HBV-IPV/Hib PLGをワクチン接種した後のPRPに対する免疫応答は、GMC及びセロプロテクション率の両方の点で、Hiberixに対する応答と同等であり、またInfanrix hexaに対する応答よりも統計学的に高かった(p<0.05)(表1)。
【0149】
・ワクチンの全抗原成分に対する免疫応答は、ジフテリア、破傷風、肝炎及びポリオウイルスについてセロプロテクション率の点で、また百日咳抗原に対するワクチン反応率の点で同等であった(表2)。
【表4】
【表5】
【0150】
安全性の結果:局所的な又は全身的な症状の発生率は、3つの研究グループ間で同等であった。発生率は、DTPa-HBV-IPV/HibPLGを受けたグループでは、他の3つの研究グループと比較して、増加しなかった。39.5℃を超える熱(直腸温)は、どのグループでも報告されなかった。39.0℃を超える熱(直腸温)はDTPa-HBV-IPV/HibPLGのグループで報告されなかった。
【表6】
【0151】
重篤有害事象:研究のコース中に、11のSAEが報告された。これらのいずれもが、治験担当医師によるワクチン接種に原因があるとするものではなかった。
【0152】
結論:
・DTPa-HBV-IPV/HibPLGでワクチン接種した後のHib応答は、DTPa-HBV-IPV/Hibと比較して有意に高かった。また独立型のHib結合ワクチンHiberixの応答と変わらなかった。従って、新製剤にHib免疫干渉問題は観察されなかった。
【0153】
・投与された他の抗原に対する応答は、セロプロテクション率とワクチン反応の点からDTPa-HBV-IPV/HibとDTPa-HBV-IPVに対する反応と同等であった。他の抗原は、ワクチン賦形剤としてのPLGと両立するようである。パータクチン及びIPVタイプIに対するGMC力価は、DTPa-HBV-IPV/Hibと比較してDTPa-HBV-IPV/HibPLGで低下したにもかかわらず(しかしながらGMC力価はDTPa-HBV-IPV + Hibグループの力価と同等であった)、パータクチンに対するワクチン反応及び全ワクチンにおけるIPVタイプIのセロプロテクション率は同等であった。
【0154】
・DTPa-HBV-IPV/Hib PLGは、DTPa-HBV-IPV/Hibワクチンと同等の反応原性を示した。
【技術分野】
【0001】
本発明はワクチンの分野に関し、特に、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)などの低い等電点の抗原を含む免疫原性組成物に関する。本発明は、PRPを含む免疫原性組成物及びコンビネーションワクチンを提供し、ここでこのPRPは、PRPを他の抗原製剤、特にDTPaを含む製剤と組合せた場合に生じることがある免疫干渉から、ある程度保護される。DTPaは、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)及び無細胞百日咳(B. pertussis)成分を含む、よく知られた「三価の」コンビネーションワクチンであり(典型的には解毒された百日咳トキソイド(PT)及び線維状赤血球凝集素(FHA)と、任意にパータクチン(PRN)及び/又は凝集素2及び3を含む)、典型的には水酸化アルミニウムアジュバントに(少なくとも部分的に)吸着されている。例えば市販のワクチンINFANRIX-DTPaTM(GlaxoSmithKline Biologicals)は、DT、TT、PT、FHA及びPRN抗原を含み、これらすべてが水酸化アルミニウムアジュバントに吸着されている。また、(例えばDTPaを含む)コンビネーションワクチンでPRPの干渉を低減する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
多糖類を利用したワクチンは当業界で公知である。例えば、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae B)感染を予防するためのPRPワクチンは、担体タンパク質と結合したB型インフルエンザ菌莢膜のオリゴ糖又は多糖(PRP)を基本としている。この多糖は、リボース、リビトール及びリン酸のポリマーである。担体タンパク質の例として、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイド、髄膜炎菌(N.meningitidis)外膜タンパク質が挙げられる。例えば、米国特許第4,365,170号、同第4,673,574号、欧州特許第208375号、同第477508号及び同第161188号を参照されたい。
【0003】
このような結合ワクチンは、他の抗原又はワクチンと同時に投与することが望ましく、これには複数の注射が必要とされ得る。複数の注射に伴う問題として、投与手順がより複雑化すること、全注射量が大量になることが挙げられる。これらの問題はワクチンが幼児を対象とした場合に特に重大な問題である。幼児と医師の両方にとって、必要な抗原すべてを通常量のワンショットで注射し、したがってワクチン接種の手順が幼児にとってショックと痛みが少なくなり、医師にとってはより手際良く効率的に行えるのが望ましい。
【0004】
そのため、多糖結合ワクチンと、DTPaやDTPw(百日咳成分は死菌全細胞百日咳菌(Bordetella pertussis)である)等の他のワクチンとを組合わせることが提案され、より複雑なコンビネーションワクチンが作られるようになった。また、そのようなコンビネーションワクチンに、更にB型肝炎又はポリオなどの疾患予防用の抗原を加えることも提案されている(B型肝炎に対する抗原並びにジフテリア、破傷風及び百日咳に対する抗原(HepB、DTPa)を含むコンビネーションワクチンは、国際公開第93/24148号に記載されている)。同様にDTP-PRPコンビネーションワクチンを開示する国際公開第98/00167号及び国際公開第99/13906号も参照されたい。
【0005】
しかしながら、コンビネーションワクチンの成分を単に混合しても、すべての抗原が効果的に一緒に混合されるわけではなく、複雑になっていることが分かった。抗原を他の成分と組合わせて投与する場合(特定の抗原を単独投与する場合と比較して)、抗原の免疫原性が減少することは、干渉として知られている。例えば、DTPaコンビネーションワクチンをアジュバントを含まないPRP結合体と即時的に混合すると、PRP多糖に対する抗体力価が減少することが知られている(国際公開第97/00697号)。また国際公開第97/00697号では、PRP結合体が水酸化アルミニウムに吸着されると、多糖成分に対する抗体力価が有意に減少することが示された。これらの結果は、DTPaワクチンの水酸化アルミニウムとPRPとの間に干渉があったことを示していた。このような即時的に調製されるコンビネーションワクチンにおける干渉を最小限にしようとするため、PRPをリン酸アルミニウムに前もって吸着(pre-adsorb)させた。
【0006】
理論に縛られることはないが、前記干渉の問題は、PRP(2よりも小さい低い等電点を有する)が水酸化アルミニウム(高い等電点を有する)と強い相互作用を形成する結果であると考えられる。この相互作用により、特にPRP/AlOHの相互作用により粒子が網目状になると(目視又は光学顕微鏡で観察可能な凝結(flocculation)と呼ばれる現象(図5参照))、免疫担当(competent)細胞からPRPエピトープを遮蔽することがある。
【0007】
国際公開第96/37222号も干渉の問題を記載している。このケースでは、PRP結合体と他のDTPa成分を、7.2よりも低いゼロ点電荷(zero point charge、ZPC)を有するアルミニウムベースのアジュバント、例えばリン酸アルミニウムに吸着させることにより、またはアニオン性塩が添加されてゼロ点電荷が約10又は11から7.2未満に低下した水酸化アルミニウムに吸着させることにより、PRP結合体の抗原性を安定化する。
【0008】
コンビネーションワクチンに対してもっぱらリン酸アルミニウムを用いるときに問題となるのが、コンビネーションワクチン中の多くの抗原が水酸化アルミニウムに吸着されているから免疫学的に有益であるということ−例えばパータクチン(pertactin)である。これらの抗原の多く(例えばパータクチン)は、リン酸アルミニウムに適切に吸着され得ず、またゼロ点電荷を7.2未満に低下するのに十分なアニオン性塩が添加されると水酸化アルミニウムから脱着する。パータクチンは百日咳ワクチンの最も重要な成分の1つである。理論に縛られることはないが、抗原のアジュバントへの吸着が有意に低くなると、T細胞の応答及び無細胞百日咳ワクチン全体としての効力が低下しうる。pH6.1(DTPaワクチンの典型的なpH)では、24時間の吸着工程で、水酸化アルミニウムに90%を超えるパータクチンを吸着させることができるが、リン酸アルミニウムでは50%未満である(他の抗原と組合わせた場合は更に減少する)。
【0009】
従って、水酸化アルミニウムに吸着した抗原とPRPを含むコンビネーションワクチンにおいては、PRPに対する干渉を低減させ、それでも水酸化アルミニウムと効果的に結合している抗原の吸着度をかなり高く維持するという技術的な問題がある。更に、pIの低い抗原が、アジュバント粒子と凝集(aggregate)(又は凝結)を形成して使用に適さないワクチンになり得るという、技術的な問題もある。
【0010】
国際公開第99/48525号によれば、この問題に対して、干渉を最小限に抑えてPRPを添加するために抗原を吸着して混合する複雑な工程を含むひとつの解決手段が提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記の問題に対する、より簡単で有利な別の解決手段が求められている。即ち、簡単な工程がひとつだけ追加されたり、一種類のPRP保護賦形剤を免疫原性組成物に単に添加したりすることを含む解決手段である。本発明はこのような解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、PRPの干渉の問題を低減し、その上、最も高い免疫原性を有するアルミニウムベースのアジュバントと効果的に結合した抗原の吸着度を高く維持できるようにするため、即時的に調製可能であるか、または液状のPRP/DTPaコンビネーションワクチン(又はPRP/DTPw)を作成することができる、一般的な方法に関する。このとき、本発明のコンビネーションワクチン中の百日咳抗原は、最も効能のある形で安定的に維持され得る。更に、本発明は、免疫干渉からある程度保護されるPRPを含む、免疫原性組成物、ワクチン及びコンビネーションワクチンを提供する。本発明者らは、驚くべきことに、ポリアニオン性ポリマー賦形剤をPRP含有ワクチンと組合わせることにより、前記課題を達成できることを見出した。理論に縛られることはないが、ポリアニオン性ポリマーはPRPと競合し、ワクチン中に存在する水酸化アルミニウムからPRPを保護することができ(例えばPRPのアジュバントへの結合量又は割合、及び/又は凝結の程度又は割合を低減することによる)、更に驚くべきことに、水酸化アルミニウムに既に吸着されている抗原は、有意に脱着しなくなる。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む免疫原性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Al(OH)3のPLG(106残基)によるプリサチュレーションの図である。
【図2】PRP-T及びPLG(85残基)間の競合の図である。
【図3】ウサギモデルにおけるHib-PLG製剤の評価の図である。
【図4】インファントラットモデルにおけるInfanrix Pentaと共に投与した新しいPLG Hib製剤のPLGの影響及び免疫原性の評価の図である。
【図5】吸着及び凝結の略図である。
【図6】臨床試験のスキームである。
【図7】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図8】凝結したサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図9】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図10】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図11】凝結したサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図12】非凝結のサンプルの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この明細書を通じPRPについて説明するが、同一の解決手段によれば、低い等電点(4未満又は3未満、好ましくは2未満)を有する他のオリゴ糖類又は多糖類(又は一般的に抗原)を保護できると考えられ、従って、本明細書でPRPについて説明しているどんな場合であっても、このような他のオリゴ糖類、多糖類又は抗原を本発明の一部として代わりに含めることができる。前述の等電点(pI)は結合が起こる前の糖類部分の等電点である。特に髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型A群又はC群から単離された莢膜多糖又はオリゴ糖を代わりに使用でき、ポリアニオン性ポリマーは、例えば本発明のワクチン(例えばDTPa又はDTPwコンビネーションに基づく)に起こりえる凝集及び/又は免疫原性の低減を防止するように機能する(実施例2参照)。このように、低いpIを有する抗原(好ましくは糖類)とポリアニオン性ポリマーとを含む免疫原性組成物が考えられる。
【0016】
「オリゴ糖」及び「多糖」は、病原体(例えば細菌細胞の莢膜の多糖)から単離された糖類のエピトープを意味する。細菌から直接単離してもよいし、また本発明のワクチンに使用する前に何らかの方法で加工処理してもよい。例えば微細流動化(microfluidisation)などの公知技術によってサイズを小さくできる(このようなサイズを小さくする他の技術については欧州特許第497524号を参照のこと)。従って、本明細書を通じて用語「多糖又はオリゴ糖」は、用語「糖類」に置き換えることができる。
【0017】
高いpIを有するアジュバント(例えばAlOH)から低いpIを有する抗原を「保護」するということは、以下のいずれか又は全部を意味する:a)ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、アジュバントに対する抗原の結合が減少すること、及び/又はb) ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、抗原とアジュバントとの間の凝結が減少すること(好ましくは防止する)(例えば実施例2の光学顕微鏡技術を使って評価され、図8及び11は凝結したサンプルを示し、図7、9、10、12は非凝結のサンプルを示す)、及び/又は、c) ポリアニオン性ポリマーが存在する場合に、抗原に対する免疫干渉を低減すること(好ましくは防止する)(免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体のGMT又はGMCを確立するELISAテストで測定する)。
【0018】
本明細書で用語「含む(comprising, comprise, comprises)」は、あらゆる場合に用語「から成る(consisting of, consist of, consists of)」で置換され得ることを意図する。
【0019】
好ましい態様において、PRP(又は低いpIの抗原)はTヘルパー細胞のエピトープの供給源である担体タンパク質に結合している。
【0020】
本発明の多糖又はオリゴ糖結合体にとって好ましい担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、髄膜炎菌などの細菌由来の外膜タンパク質、及び型別不能(non-typeable)のインフルエンザ菌由来のプロテインDである(欧州特許第594610号)。最も好ましくは、PRP(又は低いpIの他の糖類抗原)と破傷風トキソイドとを結合させる。B型インフルエンザ菌の莢膜多糖(PRP)と破傷風トキソイド(TT)の結合体の合成については、例えば国際公開第97/00697号に記載されている。
【0021】
本発明の多糖又はオリゴ糖結合体は公知のカップリング技術によって調製することができる。例えば多糖を、チオエーテル結合を介してカップリングすることができる。この結合方法では、多糖を1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化することにより、シアン酸エステルを形成する。このようにして活性化された多糖は、直接又はスペーサー基を介して担体タンパク質のアミノ基とカップリングできる。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンとカップリングし、チオエーテル結合の形成を伴うヘテロライゲーション化学反応によりアミノ誘導体化多糖と担体タンパク質を結合させる。このような結合体はPCT公開第93/15760号(Uniformed Services University)に記載されている。
【0022】
また、米国特許第4365170号(Jennings)及び第4673574号(Anderson)に記載されている直接還元アミノ化方法により、結合体を調製することもできる。また欧州特許第161188号、第208375号及び第477508号に他の方法が記載されている。
【0023】
別の方法として、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化した臭化シアン活性化多糖を、カルボジイミド縮合でタンパク質担体にカップリングする方法が挙げられる。そのような結合はChu C.ら、Infec. Immunity、1983, 245, 256に説明されている。
【0024】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、pH7(好ましくはpH6.1−本発明のDTPa及びDTPwの典型的なpHである)の水性媒体に溶解したときに、アニオン性構成繰り返し単位(例えば硫酸、スルホン酸、カルボン酸、リン酸及びホウ酸基を含む単位)の存在により、負の電荷を帯びる。構成繰り返し単位またはモノマーは、ポリマーの最小構成単位をいう。ポリアニオン性ポリマーは、2つ以上の異なるアニオン性構成繰り返し単位を含むポリアニオン性へテロポリマーでもよいし、又は単一のアニオン性構成繰り返し単位から成るポリアニオン性ホモポリマーでもよい。好ましいとはいえ、本明細書に述べられたポリアニオン性ポリマーの能力、特にPRPと水酸化アルミニウムアジュバントとの間の凝結を防止する能力及び/又は水酸化アルミニウムに効果的に吸着した抗原を有意に脱着しない能力を有するように本発明のポリアニオン性ポリマーに十分な負電荷があるかぎりは、明らかに各モノマー/繰り返し単位が負の電荷を帯びる必要はない。
【0025】
本発明のポリアニオン性ポリマーは化学ポリマーでよく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、エチルスルホン酸、ビニル硫酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-メタクリルアミド-3-メチルブタン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルリン酸、4-ビニル安息香酸、3-ビニルオキシプロパン-1-スルホン酸、N-ビニルスクシンイミド酸及びこれらの塩からなる群から得られるアニオン性の構成繰り返し単位を含むことができる。
【0026】
あるいは、本発明のポリアニオン性ポリマーはデキストランなどのオリゴ又は多糖であってもよい(又は、これは好ましい形態ではないので、これでなくてもよい)。
【0027】
最も好ましくは、本発明のポリアニオン性ポリマーは、オリゴペプチド又はポリペプチドである。このようなペプチドはD-又はL-ペプチドでよく(好ましくは、ペプチドが生物分解性で好都合になるように後者である)、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、非天然のアニオン性アミノ酸(又はこれらの塩又はアニオン性の化学的誘導体)などのアニオン性構成繰り返し単位(又はモノマー)からなる。
【0028】
本発明の目的において、本発明のポリアニオン性ポリマーは、モノマー含有量が30、40、50、60、70、80、90%以上又は好ましくは100%のL-アスパラギン酸及び/又はL-グルタミン酸であるオリゴペプチド又はポリペプチドである。
【0029】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、好ましくは平均で4〜200又は5〜200モノマー、好ましくは8〜117モノマー、より好ましくは15〜32又は15〜18モノマー、最も好ましくは17モノマー(ペプチドの場合は残基)から成る。ポリマーは、長さが違う場合もある分子の複雑な集団であるので、「平均で」とは、MALLSで測定したポリアニオン性ポリマーの重量-平均分子量(即ちMw)÷モノマーの分子量、でモノマー又は残基の数を計算することを意味する。好ましくはポリアニオン性ポリマーの多分散性(均一性の程度)は3未満である。多角度レーザー光散乱(MALLS)は、ポリマーのMWを得るため、また多分散性測定のための周知の技術である(典型的には、TSKG3000PWXL HPLCカラムを使用し、流速0.75ml/分、10mMリン酸バッファーpH7.6、130mM NaClで溶出して行う)。また本発明のポリアニオン性ポリマーは、異なるMwを有する2種類以上のポリアニオン性ポリマーの混合物からなっていてもよいと考えられる。例えば同じタイプのポリマーの16merと8mer、又は16merと4merとの混合物を、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0030】
理論に縛られることはないが、AlOHアジュバントのPRPとの結合及び/又は凝結を防止するには、アニオンは高濃度でワクチン中に存在しなければならないので、ポリアニオン性ポリマーは、アニオン又はアニオン性のモノマーの使用よりも優れた利点を有すると考えられる。高濃度では、アジュバントに効果的に吸着した抗原が脱着するようになる。ポリアニオン性ポリマーは、低いpIと、PRPの干渉/凝結の問題を防止するには十分であるがAlOHに効果的に吸着した抗原が脱着を有意に又は過剰に起こすには不十分な低濃度の賦形剤を使用可能にするAlOHに対する高い結合親和性とという一対になった特性を有すると考えられる。
【0031】
特に好ましい態様において、本発明のポリアニオン性ポリマーはポリ-L-グルタミン酸(PLG)ホモポリマーである。投与後の身体から最適にクリアランスするため、また宿主における免疫応答自体を誘発させないためには、低分子量PLG(6000MW未満、好ましくは640〜5000)が特に好ましい(例えばMWが2178の平均17残基のPLG)。
【0032】
PLGは、各繰り返し単位にペンダントした遊離のγ-カルボシキル基を有する完全に生物分解性のポリアミノ酸であり(pKa4.1)、pH7で負に帯電し、そのためこのホモポリマーは水溶性になり、かつポリアニオン性構造になる。PLGは従来のペプチド合成技術を使って作ることができる。また、比較的多分散性のポリマーの形態(例えば約2.6の多分散性を有する17mer)でSigma-Aldrichから入手可能であり、又は比較的単分散性のポリマーの形態(例えば1に近い単分散性を有する8、16、24又は32mer)でNeosystemから入手可能である。本発明の好ましい17mer(例えばSigmaより)において、典型的には、PLGは290μg/mlの濃度で存在する。本発明の好ましい16mer(例えばNeosystemsより)において、典型的には、PLGは125〜600μg/mlの濃度で存在し、好ましくは約300又は400μg/mlであるが、ワクチンの正確な組成により前記の量がある程度変わり得ることは、当業者に理解できるであろう。
【0033】
α-PLGはこれまでのところ2つの主要な生物医学的用途に用いられている。即ち、がん治療用ドラッグデリバリー(Liら、Clin. Cancer. Res. 6:2829-2834, 2000)と、生物学的接着剤(Iwataら, Biomaterials 19:1869-1876, 1998)である。α-PLGが筋肉内投与ワクチンの賦形剤としてこれまで使用されたことはない。
【0034】
ワクチンサンプル中にはいくつかの可変要因が存在し、それにより当業者は、ワクチンに使用すべきポリアニオン性ポリマー(又は異なるMwのポリアニオン性ポリマーの混合物)の適切な量を決定することが可能になる。一般的に、凝結及び/又はPRP免疫干渉を防ぐのに、ちょうど十分な量のみのポリアニオン性ポリマーを使用すべきである。多くの場合、ポリアニオン性ポリマーはワクチン中でPRP糖類の濃度よりも高い濃度で存在する。使用するポリアニオン性ポリマーの量を決定するときに考慮すべき要因は以下の通りである。
【0035】
1)ポリアニオン性ポリマーの電荷。即ち、電荷が負になるにつれて、サンプル中に要求される濃度は低くなる。2)ポリアニオン性ポリマー鎖の大きさ(平均)。即ち、大きくなるにつれて、サンプルに要求される濃度は低くなる。3)ポリアニオン性ポリマーの多分散性。即ち、(分散にむらがあって)サンプル中の低分子量種に偏っていると、より多くの量が要求されることがある。4)PRP(又は低いpIを有する糖抗原)の量。これは1〜20μg/用量/PSでよいが、量を増やすにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されることがある。5)PRP(又は低いPIを有する糖抗原)の大きさ。即ち、大きさがオリゴ糖から多糖へと大きくなるにつれて、(例えば)AlOHアジュバントに対する結合親和性が増加し得、それによってより多くのポリアニオン性ポリマーが要求されるだろう。5)PRP(糖):担体の割合(5:1〜1:5w/w)。即ち、結合体中の立体障害が増加するにつれて、ポリアニオン性ポリマーの量を調節する必要があり得る。6)アジュバント(ZPC>8を有する)の電荷。即ち、同じpHで電荷が増加するにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されるはずである。7)アジュバント(例えばAlOH)粒子の大きさ。即ち、常に注射可能な大きさであるべきであるが、アジュバンドが一定量で、大きさが大きくなるにつれて、ポリアニオン性ポリマーをより少なくすることが要求されるはずである。8)アジュバントの量(ワクチンにおける許容範囲は50〜1250μg/用量Al3+である)。即ち、この量が増加するにつれて、より多くのポリアニオン性ポリマーが要求されることがある。9)他の吸着した抗原の存在。即ち、アジュバントの表面により多くの量のAgが吸着されるにつれて、ポリアニオン性ポリマーをより少なくすることが要求されるはずである。
【0036】
凝結の評価は、沈降特性や、光学顕微鏡的(実施例2)又は目視観察等の当分野で公知の技術によって容易に行うことができる。一般にZPC>8のアジュバントを含む本発明のワクチンは、PRP糖類とこのワクチンを15分間混合した後、ポリアニオン性ポリマーの入っていない同等の製剤と比べると凝集が少ない(好ましくは観察される凝結がない)はずである。抗PRP抗体力価の維持(又は力価の発現に対する干渉の低減)は、標準的なELISAテストで評価することができる。
【0037】
本発明の特に好ましい免疫原性組成物は、(好ましくは結合した)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含み、組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度(μM)にpH7.0におけるポリアニオン性ポリマーの正味の負電荷を乗じて、免疫原性組成物の用量0.5ml中に存在するPRP量(μg)で割った結果が、300〜6000、好ましくは400〜4000、より好ましくは500〜2000、560〜1100、610〜900、640〜800又は660〜700、最も好ましくはおよそまたは正確に680になるように、有利に処方される。
【0038】
組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度は、使用したポリアニオン性ポリマーのMwに従って測定され、典型的には、30〜2000μM、好ましくは80〜1000μM、100〜500μM、150〜300μMの範囲、最も好ましくはおよそ又は正確に200μMである。これとは別に、濃度をμg/mlの単位で表すことができ、典型的には、45〜3000μg/ml、好ましくは120〜1500μg/ml、150〜750μg/ml、225〜450μg/mlの範囲、最も好ましくはおよそまたは正確に290又は300μg/mlである。
【0039】
ポリアニオン性ポリマーのpH7.0における正味の負電荷は、何らかの適切な方法で計算することができる。ここでもこの値はポリマーの平均特性であり、使用したポリアニオン性ポリマーのMwについて計算すべきである。例えば、平均17残基を有するPLGポリマーは、17の正味の負電荷を有するはずである。好ましくは、正味の負電荷は少なくとも8又は少なくとも17、好ましくは8〜106、10〜80、12〜60、14〜40、16〜20、最も好ましくはおよそまたは正確に17である。
【0040】
本発明のポリアニオン性ポリマーは、pH7.0で3モノマー当たり少なくとも平均1の正味の負電荷を有し、好ましくは3モノマー当たり少なくとも2、最も好ましくは各モノマーに対して少なくとも平均1の正味負電荷を有する。電荷は、ポリマーの長さにわたって偏在して配置されていてもよいが、ポリマーの長さにわたって均一に広がっているのが好ましい。
【0041】
本発明の免疫原性組成物は、典型的には、用量0.5ml当たりPRP(好ましくは担体タンパク質に結合しているが、その重量はここでの計算では計算されない)を、1〜20μg、好ましくは2.5〜10μg、最も好ましくはおよそまたは正確に5μg含む。最も好ましくは、PRPはいかなるアジュバントにも故意的に吸着されない。
【0042】
きわめて好ましい態様において、免疫原性組成物は、担体タンパク質(好ましくは破傷風トキソイド)に結合したPRPを5μgと、ヒト用量0.5ml当たり218μgのポリ-α-L-グルタミン酸ナトリウム(約200μM)とを含み、ここでPLGは平均で17グルタミン酸残基を含む(好ましくはMw2178、任意に2.6の多分散性を有する)。
【0043】
前述のすべての免疫原性組成物において、さらに賦形剤を既に述べたものに加えてもよい。特に、PRPはリン酸アルミニウムアジュバントに吸着させてもよい(国際公開第97/00697号、第99/48525号に述べられている)が、未吸着であることが好ましい。免疫原性組成物は、組成物のpHを安定化できるpKaを有するいずれかの適切なバッファーで緩衝することができる−典型的にはpH6〜7、最も好ましくはpH6.1である。例えばヒスチジンバッファーを使用することができ、またはマレイン酸バッファーが好ましい。一般的にバッファー(及び使用する量)は、組成物におけるポリアニオン性ポリマーの有益な効果に著しく影響しないように選択すべきである。一般的に、バッファーが存在する場合、10、5、4、3、2、1、0.5又は0.1mM未満のバッファーを使用すべきであり、好ましくは約2mMである。
【0044】
保存を目的として、本発明の免疫原性組成物を凍結乾燥する場合、安定化用賦形剤(又は凍結保護剤)を本発明の免疫原性組成物に添加することが好ましい。グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトースなど、どんな賦形剤を使用してもよいが、好ましくはスクロースを使用する。このような賦形剤は、典型的には1〜5%の量で、好ましくはおよそまたは正確に2.5%(w/v)で存在させる。
【0045】
本発明の免疫原性組成物は、(好ましくはタンパク質担体に結合した)PRPのみからなる抗原を含有していてもよいが、1種類以上の別の抗原を含んでいてもよい。PRPはこれらの他の抗原と混合し保存してもよいし、又は(必要とする患者に組成物を投与する直前、医師によって)即時的に他の抗原を添加してもよい。PRPを1種類以上の他の抗原と組合わせる前に、ポリアニオン性ポリマーをこれらの他の抗原に添加してもよく、又は好ましくは他の抗原をPRPと組合わせる前に、保護剤としてポリアニオン性ポリマーをPRPと一緒に存在させる。別の抗原の幾つかは、PRPと一緒に保存してもよく(凍結乾燥するのが好ましい)、また幾つかは分けて保存して(液体が好ましい)即時的にこれらを一緒にしてもどしてもよく、ポリアニオン性ポリマーは、各組成物中に存在してもよいが、PRPと一緒に存在することが好ましい。
【0046】
好ましくは、免疫原性組成物は、(好ましくは結合した)PRP及びポリアニオン性ポリマーの他に、MenC、MenY、MenA及びMenW(例えばA+C、A+Y、A+W、C+Y、C+W、Y+W、A+C+Y、A+C+W、A+Y+W、C+Y+W、A+C+Y+W)から成る群から選択される、1種類以上の髄膜炎菌の莢膜オリゴ糖又は好ましくは多糖−担体タンパク質結合体(Tヘルパーエピトープ、最も好ましくは破傷風トキソイドからなる好ましい担体タンパク質については前述参照のこと)を更に含む。好ましくは、MenC及び/又はMenYを含み、全4種類を含むのが最も好ましい。これらの髄膜炎菌成分はいかなるアジュバントにも意図的に吸着されないことが好ましい。このような免疫原性組成物を有益に凍結乾燥し、別の抗原(例えばDTPa-又はDTPw-ベース組成物)でもどすことができ、即時的にもどすのが好ましい。本明細書でいう「即時的(expemporaneously)」とは、組合わせたワクチンを作って1.5時間又は1時間以内、好ましくは0.5時間以内、最も好ましくは15分以内でそのワクチンが投与されることを意味する。
【0047】
前述の髄膜炎抗原の代わりに、又は前記髄膜炎菌抗原に加えて、免疫原性組成物は、1種類以上の肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体(Tヘルパーエピトープ、最も好ましくはCRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド又はプロテインDからなる好ましい担体タンパク質について前述参照のこと)を含んでもよい。
【0048】
典型的には、本発明の組成物中に配合する肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖(好ましくは後者)は少なくとも4つの血清型の肺炎球菌由来の抗原を含む。4つの血清型は6B、14、19F及び23Fからなるのが好ましい。より好ましくは、少なくとも7つの血清型が組成物に含まれ、例えば血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fに由来するものからなる。より好ましくは、少なくとも11の血清型が組成物に含まれ(11価)、例えば血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fに由来するものからなる。本発明の好ましい態様においては少なくとも13のこのように結合した肺炎球菌の抗原が含まれるが、別の抗原、例えば23価(血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fなど)も、本発明に包含される。
【0049】
年配者のワクチン接種のため(例えば肺炎の予防のため)、前述した11価の肺炎球菌抗原性組成物に血清型8及び12Fを(最も好ましくは15及び22も)加えて15価の組成物を作るのがよく、(中耳炎がもっと懸念される)乳児又は幼児に対しては、13価の組成物を作るために血清型6A及び19Aを含めるのがよい。
【0050】
更に肺炎球菌抗原を含むこのような免疫原性組成物を凍結乾燥するのが有益であり、別の抗原(例えばDTPa-ベース組成物)で、好ましくは即時的にもどすことができる。
【0051】
本発明の免疫原性組成物は、PRP及びポリアニオン性ポリマーのほかに、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)及び全細胞又は1種類以上の無細胞百日咳(B.pertussis)抗原から成る群から選択された1種類以上(2種類又は好ましくは全3種類[DTPw又はDTPa組成物])の別の抗原又は抗原グループを更に含むことができる。含めてもよい1種類以上の(2、3、4、又は5つ全部)の無細胞百日咳抗原は、百日咳トキソイド(PT)、FHA、パータクチン(PRN)、凝集素2及び凝集素3から成る群から選択できる(好ましくは最初の3つを含む)。
【0052】
このようなDTPa又はDTPw組成物は、不活化ポリオワクチン(IPV)(典型的には混合前未吸着)及びB型肝炎表面抗原(国際公開第93/24148号に説明されているようにリン酸アルミニウムに好ましくは吸着される)のいずれか又は両方を更に含んでもよい。
【0053】
DT、TT、PT、FHA及びPRNは当該分野で周知である。PT成分を化学的又は遺伝学的にトキソイドにすることができ、例えば欧州特許第515415号に説明されている。また百日咳抗原の調製については欧州特許第427462号、国際公開第91/12020号を参照されたい。任意に、PT成分を組換えてもよい(例えば欧州特許出願第306318号、第322533号、第396964号、第322115号及び第275689号に説明されている)。また任意に、DT及びTT成分も組換えてもよい。典型的には、PT、FHA、PRN、HBsAg(B型肝炎表面抗原)及びPRP成分は、バルクワクチン用量0.5ml当たり8〜25μgの範囲である。DT、TT及びIPV(不活化3価ポリオウイルスワクチン)成分は、典型的には、バルクワクチン用量0.5ml当たりそれぞれ約15〜25Lf(凝結単位(flocculating unit))、10Lf及び40/8/32(タイプI/II/III)DUとして存在すべきである。
【0054】
このようなワクチンに使用する適切な成分は、既に市販されており、詳細は世界保健機構から得ることができる。例えばIPV成分は、Salk不活化ポリオワクチンでよい。B型肝炎表面抗原は、Engerix-BTM(SmithKline Beecham Biologicals)中の‘S’抗原からなり得る。
【0055】
凍結乾燥した又は液体のPRP(未アジュバント化(unadjuvanted)又はリン酸アルミニウムに吸着されている)のいずれかを組成物の他成分の溶液に添加することを、即時的に(前述参照)行ってもよいし、ワクチンが製造者から出荷される前に行ってもよい。PRPを他の成分に添加する前に、ポリアニオン性ポリマーと組合わせてもよく、ポリアニオン性ポリマーを更に含む他の成分にPRPを添加してもよい。
【0056】
本発明の免疫原性組成物は、典型的には、8、9又は10よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを更に含めることができ、典型的にはアルミニウム塩、最も多くの場合、ミョウバン又は水酸化アルミニウムを含む。これは、特に、DTPa含有組成物の場合であり、1種類以上のDTPa成分が水酸化アルミニウムに優先的に吸着される。通常このようなアジュバントは、用量0.5ml当たり50〜1250μg又は100〜1000μg、通常用量0.5ml当たりおよそまたは正確に500μgの量で免疫原性組成物中に存在し、アジュバントの約50、60、70、80、90又は95%が、その表面に特異的に吸着された抗原(非PRP、通常1種類以上のDTPa抗原)を有する。
【0057】
普通、このようなアジュバントの存在は、組成物中に存在するPRPと凝結する傾向にあるであろう。しかしながら本発明の免疫原性組成物においては、ポリアニオン性ポリマーの存在によってこれが阻止される。
【0058】
これとは別に、好ましくは更に、ポリアニオン性ポリマーの存在により、アジュバントがPRPに対して有している免疫学的干渉を20、30、40、50、60、70、80、90%以上又は好ましくは100%まで減少させることができる(干渉は、適切なモデル[例えばマウス又はラット、あるいは十分に管理されたヒトの臨床実験]において、PRPワクチンを単独で投与したときと、前述のアジュバントを含む免疫原性組成物として同一のPRPワクチンを投与したときの抗PRP GMT力価(μg/ml)の差をとることによって測定される;本発明のポリアニオン性ポリマーを免疫原性組成物に添加することにより、免疫原性組成物でのGMTが、PRPワクチン単独のGMTに戻る程度に干渉が低減される)。
【0059】
前記アジュバント(8、9、10又は11よりも大きいゼロ点電荷を有する)が本発明の免疫原性組成物に含まれる場合、これは普通、組成物中のある種の抗原はこのようなアジュバント(特に水酸化アルミニウム)の表面に吸着されたときに最も効果的だからである。
【0060】
本発明の組成物の有利な点は、ポリアニオン性ポリマーの存在により(通常のアニオン性塩とは違って)、前記アジュバント(即ち8よりも大きいゼロ点電荷を有する)に特異的に吸着された抗原の有意な脱着を起こさないことである。「有意な脱着」を起こさないとは、典型的には、特異的にアジュバントに吸着された(即ち他のワクチン成分と混合する前に意図的に吸着された及び/又は別の吸着工程で吸着された)抗原の50、60、70、80又は好ましくは90%を超える抗原が、ポリアニオン性ポリマーを本発明の免疫原性組成物に添加して15分又は1時間後に、アジュバントに吸着されたままであることを意味する。一般的には、そのようにして、適切なモデル(例えばマウス又はラット、あるいは十分に管理されたヒト臨床試験)での抗-抗原GMT力価(μg/ml)が、同じモデルでポリアニオン性ポリマーを含んでいない同じ免疫原性組成物での抗原のGMT力価の50、60、70、80、90又は95%を超えるようにするために、十分な抗原がアジュバントに吸着されたままであることが好ましい。
【0061】
典型的には、以下の抗原の1種類以上を本発明の免疫原性組成物に存在させてもよく、本発明の免疫原性組成物の他の成分と混合する前に8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(好ましくは水酸化アルミニウム)に特異的に(及び好ましくは個別に)吸着されてもよい:ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチン(PRN)。好ましくは、少なくともPRNが水酸化アルミニウムに吸着され、最も好ましくは、5つの成分全部が水酸化アルミニウムに吸着される。
【0062】
DTPa及びDTPw抗原をアルミニウムアジュバントに吸着させる方法は当該分野で公知である。例えば国際公開第93/24148号及び第97/00697号を参照されたい。通常、アジュバントに吸着させる成分は、本発明のコンビネーション免疫原性組成物中で抗原と一緒に混合する前に、ほとんどの、好ましくはすべての抗原を吸着させるのに適切なpHで、少なくとも10分間室温に置かれる。
【0063】
他の成分は、未吸着(例えばIPV)又は他のアジュバントに特異的に吸着されることが好ましい−B型肝炎表面抗原(HepBsa)は、他の成分と混合する前にリン酸アルミニウムに吸着されることが好ましい(国際公開第93/24148号で説明される)。
【0064】
本発明の典型的なコンビネーションワクチンは、DTPa IPV HepBsa PRP(好ましくはTTに結合した) PLG; DTPa IPV HepBsa PLG PRP MenC及び/又はMenY(好ましくは莢膜の糖類はTTに結合する)を含む。前述したように、PLGは、一定のワクチン中の髄膜炎菌の莢膜の糖類エピトープの免疫原性を低減させる凝集現象を減らすことができる。このような本発明のコンビネーションは、DTPw HepBsa PLG Hib MenA及び/又はMenC(好ましくは莢膜の糖類はTTに結合する)を含んでもよい。
【0065】
好ましい態様において、本発明の免疫原性組成物と製薬上許容できる賦形剤を含むワクチンが提供される。本発明のワクチンのpHは、通常pH6〜7、好ましくはpH6.1である。
【0066】
ワクチンの調製は、Vaccine Design - The Subunit and adjuvant approach Ed Powell and Newman; Pellum Pressで一般的に説明されている。本発明によるコンビネーションワクチンは小児科のワクチンに好都合である。
【0067】
各ワクチン用量中の多糖又はオリゴ糖結合抗原の量は、典型的なワクチン接種を受ける人に重大な副作用を起こすことなく免疫保護(immunoprotective)応答を誘発する量として選択される。この量は、使用する具体的な免疫原によって変化し得る。一般的に、各用量は、結合した多糖又はオリゴ糖を1〜1000μg(糖の量で表す)、好ましくは2〜100μg、より好ましくは4〜40、2〜15又は3〜10μg、最も好ましくは約または正確に5μg含むと予想される。
【0068】
ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は、典型的には1〜100μg、好ましくは5〜50μg、最も典型的には5〜25μgの範囲にある。
【0069】
特定のワクチンに対する最適な抗原量は、患者の抗体力価や他の応答の観察を含む標準的な研究によって確認することができる。最初のワクチン接種に続いて、患者は、1回又は2回のブースター注射を約4週間の間隔またはそれよりも長い間隔で受けることができる。
【0070】
本発明のワクチン調製物は、感染に感受性のある哺乳動物(好ましくはヒト)を保護又は治療するのに使用することができ、全身的又は粘膜のルートを経由して前記ワクチンを投与する方法による。これらの投与としては、筋肉内、腹腔内、皮内又は皮下のルートを介しての注射;または(それほど好ましくはないが)経口/消化管、気道、尿生殖路への粘膜を介する投与が挙げられる。
【0071】
本発明の医薬的に有効な量のワクチンを必要とする患者に投与することにより、B型インフルエンザ菌の疾患(又は本発明の低いpIの抗原に関連する疾患)を予防又は治療する方法が更に提供され、また、B型インフルエンザ菌疾患の予防又は治療用薬剤の製造における本発明の免疫原性組成物又はワクチンの使用が提供される。
【0072】
更に本発明は、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)(好ましくは結合している)の免疫学的干渉及び/又は凝結を、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(前述したように好ましくは水酸化アルミニウム)に吸着された1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチン(PRPと少なくとも1種類の別の抗原を含む本発明のワクチン)中で低減するための方法を提供し、この方法は、以下のステップ、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、
(ii)ポリアニオン性ポリマーを1種類以上の別の抗原に添加するステップ、及び
(iii)次に、PRPを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含むか、又は以下のステップ、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、及び
(ii)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含む本発明の免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む。
【0073】
前者の場合、アジュバントは、PRPを添加する前に管理され(police)、後者の場合、PRPは、アジュバントに添加される前に保護される。好ましくは、いずれかの方法において成分を即時的に混合する。PRPを含む免疫原性組成物を、安定性を最大にするため、最も好ましくは安定化用賦形剤(前述)の存在下で、凍結乾燥することが好ましい。PRPを含む免疫原性組成物を、1種類以上の結合した髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類及び/又は1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類(前述)と組合わせることが好ましい。
【0074】
アジュバントに吸着される1種類以上の別の抗原は、前述したように、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンから選択されることが好ましく、すべて選択されることが最も好ましい。最も好ましくは、前述したように、コンビネーションワクチン中のポリアニオン性ポリマーの存在によって、アジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原の有意な脱着を起こさない。
【0075】
更に、好ましくは結合した、B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫応答を保護するための手段として、PRPを更に含む免疫原性組成物におけるポリアニオン性ポリマー(前述)の使用が提供される。免疫応答を保護することとは、免疫原性組成物が、後に、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(前述)を含むワクチンと組合わされるかどうかに関係なく、PRP成分単独の抗PRP GMT力価の50、60、70、80、90又は95%超が保たれることを意味する。
【0076】
更に、i)B型インフルエンザ菌の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)(好ましくは結合している)とポリアニオン性ポリマー(前述)とを含む第一の免疫原性組成物、及びii)8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバント(好ましくは水酸化アルミニウム)に吸着された1種類以上の抗原を含む第二の免疫原性組成物、を含むキットが提供される。好ましくは、第一の免疫原性組成物は凍結乾燥され、更に安定化用賦形剤(前述)、好ましくはスクロースを含み、また第二の免疫原性組成物は液状である。キットの内容物は、第一の免疫原性組成物を第二の免疫原性組成物で即時的にもどして、得られた混合組成物を投与することによって、簡単に投薬できると考えられる。本発明のポリアニオン性ポリマーは、PRPやPRP結合体が水溶液に溶けるよりも早く溶けることが非常に好ましく、一緒に凍結乾燥(co-lyophilise)された場合、8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを含む液状組成物でもどされるときにゆっくり溶解するPRPを、ポリマー(例えばPLG)によって効果的に保護することができる。
【0077】
好ましくは、第一の免疫原性組成物は、MenC、 MenY、 MenA及びMenW (例えばA+C、 A+Y、 A+W、 C+Y、 C+W、 Y+W、 A+C+Y、 A+C+W、 A+Y+W、 C+Y+W、 A+C+Y+W) から成る群から選択された1種類以上の結合した髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖類又は多糖類、好ましくはMenC 及び/又はMenY、及び/又は1種類以上の結合型肺炎球菌莢膜のオリゴ糖類又は多糖類(前述)を更に含む。好ましくは、第二の免疫原性組成物は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンから成る群から選択された1種類以上(最も好ましくはすべて)の抗原を含む。代わりにDTPwを含んでもよい。
【0078】
前述したように、本明細書でPRPに関するすべての態様は、低いpIの他の抗原又は糖類にまで同等に(又はその代わりに)及び、それでもなお本発明の利益をうまく生かすことができる(例えば凝結/凝集現象の低減又は防止など)。
【0079】
更に、免疫原性組成物で生じる凝集又は凝結を防止するための前記組成物の製造における、本発明のポリアニオン性ポリマーの使用が提供される。好ましくは、免疫原性組成物は本発明の免疫原性組成物であり、例えば前述したものである。
【0080】
以下の実施例により、本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0081】
破傷風トキソイドと結合したPRP多糖(PRP-T)をPLG(Hib-PLG)実験用ロットと組み合わせて用いて多数の実験を行った。以下のパラメータを評価した。
【0082】
・PLGの分子量及び含量
・PRP-Tの含量
・凍結乾燥用安定剤。
【0083】
以下の結果は、前記実験用ロットのインビトロでの臨床前及び効力試験から得たものである。
【0084】
実験用ロットでの結果
Hib-PLGのインビトロデータ
PRP-TとAl(OH)3との間の物理的相互作用の低減におけるPLGの有効性を実証するために、市販のInfanrix PentaTMワクチンをHib-PLGワクチンと混合することを含む、3つのタイプの混合ステップを行なった。
【0085】
・ステップ1:プリサチュレーション。すなわち、まずPLGをAl(OH)3に吸着させ、次にPRP-Tを添加した;
・ステップ2:競合。すなわち、PLGをPRP-Tと競合させてAl(OH)3へ吸着させた;
・Infanrix-PentaTM/Hib-PLG:すなわち、PLGとPRP-Tを一緒に凍結乾燥し、次に500μgのAl(OH)3を含むInfanrix-PeNTaTMワクチン中で競合吸着させた。
【0086】
3ステップすべてにおいて、PLGはPRP-Tによって誘発される凝結を回避できた(図1及び2参照)。
【0087】
以下の理由により、200μM PLG(Mw 2,200)の含量を臨床製剤用に選択した:
・凝結が観察されなかった;
・80%近いPRP-Tが吸着されなかった(Dionexテストによる);
・PLGは完全に吸着される;
・Infanrix の全主要成分(DT、TT、PT、FHA、PRN [又は69K]、IPV及びHB表面抗原)が影響を受けなかった;
・ラクトース及びスクロースの両方とも、有効な凍結保護剤であることが分かった。
【0088】
図1に、PLG(106残基)によるAl(OH)3のプリサチュレーションを示す。10μg PRP/用量、500μg AlOH。また、2000uM PLG(Mw 1043−8残基)により、上清中にPRP-Tの80%(10μg PRP/用量、500μg AlOH)を、凝結を起こすことなく保てることもわかった。
【0089】
図2は、PRP-T及びPLG(85残基)間の競合を示す。100μM PLG Mw 10,900により、500μgのAl(OH)3(=Infanrix PeNTa中の全Al(OH)3用量)と同様、10μgのHibが50μgのAl(OH)3(Infanrix PeNTa中の仮想の遊離Al(OH)3を模倣するため)に吸着するのを抑制することができる。
【0090】
更に、500μm PLG Mw 2,178(17残基)は、75μM PLG Mw 10,900(85残基)で可能なように、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、10μgのHib がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)。
【0091】
PLG Mw 2,178(17残基)は、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、5μgのHib(PRP-T)がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)−凝結が存在せず、かつInfanrix抗原の吸着が保持されるという点で、175及び200μMが最適な濃度であった。
【0092】
PLG Mw 10,800(85残基)は、[Hib-PLG]のケーキをInfanrix PeNTaでもどした後、5μgのHib(PRP-T中のPRP量)がAl(OH)3に吸着するのを抑制することができる(1時間の接触、次に6分間6500gの遠心分離、ELISA PRR’P-TTによる上清中のHib用量又はDionex用量)−凝結が存在せず、かつInfanrix抗原の吸着が保持されるという点で、30及び35μMが最適な濃度であった。
【0093】
Hib-PLGの臨床前免疫原性データ
Hib-PLG実験用製剤を、免疫原性のためのウサギモデルと、Infanrix Penta と Hibワクチンの組合わせで誘発されるHib(PRP-T結合体)免疫干渉の評価が可能なベビーラットモデルで評価した。更に、Infanrix Pentaの有効性に対するHib-PLGの影響を、百日咳(B. pertussis)が肺に定着(コロニー形成)したマウスモデルで評価した。
【0094】
免疫原性のためのウサギモデル
研究設計
このモデルでは、5週齢のニュージーランドメスウサギを2週間間隔で3回(0、14、28日目)、ヒト用量の1/4のワクチンで筋肉注射で免疫した。1グループ10匹のサンプルサイズを用いた。血液サンプルを21、28、35及び42日目に採取した。抗PRP抗体をELISAで測定し、μg/mlで示す。
【0095】
投与したワクチン
高い(10900Mw)及び低い(2200Mw)分子量のPLGを含むPRP-T(5μg PRP)の製剤を、2つの濃度で評価した。PLGが無い以外は同様にしたHib製剤をコントロールとして含めた。グループごとに投与したワクチンの詳細については以下を参照されたい。
【表1】
【0096】
結果
図3を参照されたい。
【0097】
PRP応答の変動がいくらかウサギモデルで観察されるが、グループ間で有意な差は示されなかった。
【0098】
Hib-PLG L Mw 175μMを受けたウサギにおいて、免疫原性がわずかに低減したことが観察されたが、他のすべての製剤は、PLGを添加しなかったHibコントロールグループと同等の抗PRP抗体レベルを誘発した。
【0099】
これらのHib−PLGの実験用製剤でウサギを免疫した後の抗PLG抗体の誘発は実証されなかった。
【0100】
Hib干渉のためのベビーラットモデル
研究設計
7日齢のOFAラットを2週間間隔で3回(0、14、28日目)、ヒト用量0.5mlのワクチンの1/10で筋肉注射で免疫した。オス及びメスラットの配分は均等にした。1グループ当たり20匹のサンプルサイズを用いた。血液サンプルを35日目に採り、抗PRP抗体をELISAで測定し、μg/mlで表した。
【0101】
投与したワクチン
ベビーラットモデルの干渉のコントロールとして、Infanrix-Penta (10μg PRP)と組合わせたHibを投与し、またHib(10μg)と共にInfanrix-Pentaを同時投与した。単独で処方したHib(5μg)または様々な量のPLGを含むHibをInfanrix-Pentaでもどした後に評価した。
【0102】
グループごとに投与したワクチンの詳細は以下を参照されたい。
【表2】
【0103】
結果
図4を参照されたい。
【0104】
HibをInfanrix-Pentaと共に投与した場合、Infanrix-Pentaと別々に同時投与したHibと比較して、免疫干渉が観察された。
【0105】
Hib製剤中のPLGの存在により、抗Hib応答の一部又は全部が回復した。実際、PLGを含むHib製剤のすべてで、コントロールグループ(グループ7)と比較して、PRPに対するより高い免疫応答が観察された。
【0106】
これらの結果は、PLGを添加して、Al(OH)3への吸着とのHib相互作用を防止することにより、一価のHibワクチンにより誘発される高い抗PRP抗体力価を回復できることを示す。
【0107】
これらのHib-PLG実験用製剤を用いてベビーラットを免疫した後の抗PLG抗体の誘導は実証されなかった。
【0108】
水酸化アルミニウムへの抗原の吸着の維持
PRP-T(Hib)5μg(糖類)を、異なる量のMw 2,600のPLG(Sigma)と組合わせて、もどしたワクチンにおいてそれぞれ最終濃度0、175又は200μMになるようにした。サンプルをスクロースの存在下で凍結乾燥した。次に、サンプルをInfanrix PeNTaでもどし、1時間後、上清(s/n)中の未吸着抗原の回収率を測定した。その結果を以下に示した。
【表3】
【0109】
結論:AlOHアジュバントに効果的に吸着すべき抗原(TT及びパータクチン)は、吸着された状態で大部分維持されている。IPVタイプIIIは脱着に対して最も敏感なようだが、ある程度吸着される。また、IPV抗原は、他の抗原と組合わせる前、アジュバントに特異的に吸着されないことに注意すべきである;もっと正確にいえば、IPVは未吸着状態で他の抗原と混合される。興味深いことに、この実験では、Hibがアジュバントに完全に吸着されるようにみえるが、やはりPLGは凝結現象(及びHib免疫干渉)が発生するのを防いでいる。典型的には、アジュバントは200μM(290μg/ml)のPLGでは飽和されず、約60% のPRPが溶液中に遊離している濃度約650μg/mlでようやく飽和される(溶液中に遊離のPLGが存在し始める)ようになる。PLGワクチンは、百日咳負荷試験(pertussis challenge test)を含む効力QC免除基準(potency QC release criteria)をパスする。
【実施例2】
【0110】
光学顕微鏡による[DTPw/MenACHib]コンビネーションの分析
DTPaHepB IPVをHib結合体でもどすことにより、DTPaHepB IPVに含まれるアルミニウムの凝結が誘発される(図5参照)。これらは目視及び光学顕微鏡で観察でき、サイズ及び沈降分析によって測定することができる。図7はInfanrix-peNTa (DTPaHepBIPV)の光学顕微鏡写真を示す。図8はPRP-TTの5μgの糖類をサンプルに添加したときのサンプル凝結を示す。図9は200μM PLG Mw 2,200(Sigma)の存在下では凝結が起きないことを示す。
【0111】
この実験は、MenACHib-TTの多糖結合体が、DTPwHBワクチンと混合されたときにアルミニウムの凝結の出現を誘導するかどうか、PLGがこれを緩和できるかどうかを見つけようとしたものである。
【0112】
方法及び材料
テストしたDTPaHepB IPV (Infanrix)には、ヒト用量当たり500μg Al(OH)3、200μg AlPO4が含まれていた。テストしたDTPwHepB (Tritanrix)には、ヒト用量当たり260μg Al(OH)3、370μg AlPO4が含まれていた。PRP-TT(Hib)は、MenA-TT 及び MenC-TT莢膜多糖の結合体と同様に、アジュバントを含んでいなかった。用量当たり5μg糖類の結合体をすべての実験で使用した。
【0113】
分析は、画像解析機(KS400 システム)につなげた光学顕微鏡によって行った。DTPwサンプルとPLGを含むMenACHibサンプルとを、観察前に15分間、混合した。
【0114】
結果
DTPwコントロールでは凝結は観察されなかった(図10)が、MenACHib-TTでもどしたDTPwサンプルでは観察された(図11)。MenACHib-TT単独は凝結しない。
【0115】
おそらく、ポリアニオン性MenA, MenC 及び Hib多糖結合体とカチオン性Al(OH)3の間の静電的相互作用が、この現象の理由であろう(図5)。
【0116】
凝結は、競合するポリアニオン性賦形剤、例えばPLGの添加によって減少できる。図12は、250μM PLGによりDTPwHepB/MenACHibが減少した凝結を見せることを示す。
【0117】
結論
MenACHib-TT結合体は、[DTPw / MenACHib]コンビネーションにおいてアルミニウム凝結を誘発することができる。これは、競合するポリアニオン性賦形剤の添加によって低減することができる。
【実施例3】
【0118】
2、3及び4ヶ月の健康な乳児に対して一次ワクチン接種(primary vaccination)として投与した場合の、GSK Biologicals認可済DTPa-HBV-IPV/Hib ワクチン(INFANRIX HEXATM)、及び、GSK Biologicals認可済DTPa-HBV-IPV (INFANRIX PENTATM)ワクチンとHib (HIBERIXTM)ワクチンの併用投与に対して比較した、GSK BiologicalsコンビネーションDTPa-HIV-IPV/Hibワクチン(PLGを有する新製剤)の免疫原性及び反応原性(reactogenicity)を評価する、フェーズIIの無作為化一部盲検の臨床試験
研究はポーランドの9つのセンターで行われた。
【0119】
目的
第一:
・DTPa-HBV-IPV (INFANRIX PENTATM)と同時投与したHib(HIBERIXTM)と比較して、またDTPa-HBV-IPV/Hib (INFANRIX HEXATM、認可済製剤)と比較して、3回投与の一次接種コース後1ヶ月に、抗PRP抗体応答の観点から、DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)の免疫原性を評価すること。
【0120】
第二:
・DTPa-HBV-IPVと同時投与されたHibと比較して、またDTPa-HBV-IPV/Hib(認可済製剤)と比較して、3回投与の一次接種コース後1ヶ月に、すべての他のワクチン抗原に対する抗体応答の観点から、DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)の免疫原性を評価すること。
【0121】
・3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月に、抗体検出及び濃度の観点からポリLグルタミン酸(PLG)に対する免疫応答を評価すること。
【0122】
・応答型の(Solicited)症状、非応答型の(unsolicited)症状及び重篤有害事象(SAE)の観点から研究ワクチンの安全性及び反応原性(reactogenicity)を評価すること。
【0123】
研究設計
3つの並行したグループでの一部盲検、無作為の研究:
− DTPa-HBV-IPV/Hib (PLGを含む新しい製剤)
− DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)
− DTPa-HBV-IPV + Hib (認可済製剤)
DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新しい製剤)及びDTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)を受けるグループについての単純盲検方法で本研究を行った。2つに分けた注射(DTPa-HBV-IPV + Hib)を受けたグループはオープンであった。
【0124】
各ワクチンの3回の投与を、最初の投与をするときの月齢が2ヶ月である健康な乳児に、0、1ヶ月のスケジュールに従って、筋肉注射で投与した(図6)。2つの血液サンプル(2ヶ月及び5ヶ月齢)を各患者から採取した。
【0125】
患者の数:
完了(completed):149(DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ50、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ50)
安全性:ワクチン接種したコホート全部:150(DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ50、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ51)
免疫原性:ATPコホート:147 (DTPa-HBV-IPV/Hib (新製剤)のグループ48、DTPa-HBV-IPV/Hib (認可済製剤)のグループ49、DTPa-HBV-IPV + Hibのグループ50)。
【0126】
試験対象患者に含めるかどうかについての診断及び基準
最初のワクチン投与時の週齢が8〜12週で、36〜42週の標準的な妊娠期間後に生まれた乳児であって、試験に入る前の病歴及び臨床検査により確認された明らかな健康問題がなく、患者の親又は保護者から得られた書面による同意のある乳児。
【0127】
研究用ワクチン、用量、投与の形態
ワクチン接種のスケジュール/部位:
各研究用ワクチンを、2、3及び4月齢のときに投与した。ワクチンは、B型インフルエンザ菌ワクチンについて左太もも、他のすべてのワクチンについて右太ももに、一回の筋肉注射で投与した。
【0128】
DTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(新製剤及び認可済製剤)を調製するため、液状のDTPa-HBV-IPVワクチンをそれぞれのHibワクチンでもどした。B型インフルエンザ菌ワクチンを提供された生理食塩水希釈液でもどした。
【0129】
ワクチン組成/用量:
・以下の成分からなる、GSK BiologicalsDTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(新製剤)の1回分の用量
DTPa-HBV-IPV成分:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0130】
Hib成分:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)5μg、破傷風トキソイド10〜20μg、スクロース2.52%及びポリLグルタミン酸200μM[290μg/ml](Mw 2,200、17残基)。
【0131】
・以下の成分から成るGSK BiologicalsDTPa-HBV-IPV/Hibワクチン(認可済製剤)の1回分の用量
DTPa-HBV-IPV成分:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0132】
Hib成分:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)10μg、破傷風トキソイド20〜40μg、アルミニウム0.12mg及びラクトース12.6mg。
【0133】
・以下の成分から成るGSK Biologicals DTPa-HBV-IPVワクチンの1回分の用量:
ジフテリアトキソイド≧30IU(25Lf)、破傷風トキソイド≧40IU(10Lf)、百日咳トキソイド(PT)25μg、線維状赤血球凝集素(FHA)25μg、パータクチン(PRN)8μg、B型肝炎表面抗原(リコンビナント)10μg、ポリオウイルスタイプ1:40D抗原ユニット、タイプ2:8D抗原ユニット、タイプ3:32D抗原ユニット、アルミニウム塩0.7mg、2-フェノキシエタノール≦2.5mg、塩化ナトリウム150mM、ホルマリン≦100μg、硫酸ネオマイシン≦25μg及びポリソルベート≦50μg。
【0134】
・以下の成分から成るGSK Biologicals B型インフルエンザ菌ワクチンの1回分の用量:
リン酸ポリリボシルリビトール(PRP)10μg、破傷風トキソイド20〜40μg及びラクトース10.08mg。
【0135】
評価の基準:
免疫原性
第一エンドポイント
3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月の抗PRP抗体濃度。
【0136】
第二エンドポイント
免疫原性:
3回投与の一次ワクチン接種コース後1ヶ月に、
・ワクチン抗原に対するセロプロテクション状態は以下の通りであった:
-抗PRP抗体濃度≧0.15μg/ml及び≧1.0μg/ml
-抗HBs抗体濃度≧10mIU/ml
-抗ジフテリアトキソイド抗体濃度≧0.1IU/ml
-抗破傷風トキソイド抗体濃度≧0.1IU/ml
-抗ポリオウイルスタイプ1抗体力価≧8
-抗ポリオウイルスタイプ2抗体力価≧8
-抗ポリオウイルスタイプ3抗体力価≧8
・抗PT、抗FHA及び抗PRN血清反応陽性率(抗体濃度≧5EL.U/ml)。
【0137】
・抗PT、抗FHA、抗PRN、抗ジフテリア及び抗破傷風トキソイド、抗ポリオウイルスタイプ1、2及び3、及び抗HBs抗体濃度。
【0138】
・PT、FHA及びPRNに対するワクチン反応率を、ワクチン接種前の時点で血清反応陰性(即ち抗体濃度<5EL./Uml)だった患者に抗体が出現したことと考えるか、又はワクチン接種前の時点で血清反応陽性(即ち抗体濃度≧5EL/U/ml)だった患者のワクチン接種前抗体濃度を少なくとも維持していることと考え、母方の抗体の減少を考慮に入れる。
【0139】
・抗PLG抗体検出及び濃度。
【0140】
安全性:各研究用ワクチン接種後4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型の症状(痛み、赤み、腫れ、眠気、熱、被刺激性/神経質(fussiness)、食欲不振)の記録。各研究用ワクチン接種後0日目〜30日目に起きた非応答型の症状及び全研期間中の重篤有害事象(SAE)の記録。
【0141】
・ワクチン接種後の4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型局所的症状の発生。
【0142】
・ワクチン接種後の4日のフォローアップ期間(0日目〜3日目)中の応答型全身的症状の発生。
【0143】
・ワクチン接種後の31日のフォローアップ期間(0日目〜30日目)中の非応答型症状の発生。
【0144】
全研究中の重篤有害事象の発生。
【0145】
統計学的方法:
免疫原性の分析:免疫原性の分析をATPコホートで行った。以下の分析を各時点で各治療グループについて行い、血清的結果を得た:95%信頼区間(CI)の相乗平均抗体濃度/力価(GMC/GMT)を、抗PRPについて及び各ワクチン抗原に対する抗体について表にした。血清反応陽性/セロプロテクション率と正確な95%CIを表にした。百日咳抗原に対するワクチン反応率(投与3回後)とその正確な95%CIを表にし、投与3回後の各抗原に対する抗体の濃度/力価の分布を逆累積分布曲線を用いて示した。
【0146】
DTPa-HBV-IPV/Hib(PLGを含む新製剤)ワクチンの免疫原性を、3回目のワクチン投与後1ヶ月の各抗原についてグループのGMC/GMT比の95%CIと、3回目のワクチン投与後1ヶ月の各抗原についてセロプロテクション/血清反応陽性率の差の標準化された漸近的95%CIの両方を計算することにより、認可済ワクチンの免疫原性と比較した。
【0147】
安全性の分析:安全性の分析をワクチン接種をしたコホート全部で行った。ワクチン接種後4日以内に発生した各応答型の症状の発生率を、全グループの各投与ごと及び3回の投与が終わったときの両方について、症状のあった投与の割合とその95%CIを表にすることによって、また全グループの症状があった患者の割合とその95%CIを表にすることによって、グループごとに決定した。未応答型の症状があった患者の割合と95%CIを、グループごと及びWHOの優先項目(WHO preferred term)ごとに表にし、同様の表作成をグレード「3」の未応答型症状とワクチン接種に関連がありそうな未応答型症状について行った。更に、全研究期間中に少なくとも1つの重篤有害事象(SAE)を経験した患者の数を報告した。ワクチン接種後4日以内に直腸熱>39.0℃の患者の割合とワクチン接種後4日以内に解熱剤を受けた患者の割合と同様、ワクチン接種後4日以内にあらゆる強さの一定の症状があった患者の割合について、DTPa-HBV-IPV/Hib(新製剤)と各コントロールグループとの間の差のフィッシャーの直接確率検定(Fisher exact test)による両側p値と標準化された漸近的95%CIを計算した。
【0148】
免疫原性の結果:
・DTPa-HBV-IPV/Hib PLGをワクチン接種した後のPRPに対する免疫応答は、GMC及びセロプロテクション率の両方の点で、Hiberixに対する応答と同等であり、またInfanrix hexaに対する応答よりも統計学的に高かった(p<0.05)(表1)。
【0149】
・ワクチンの全抗原成分に対する免疫応答は、ジフテリア、破傷風、肝炎及びポリオウイルスについてセロプロテクション率の点で、また百日咳抗原に対するワクチン反応率の点で同等であった(表2)。
【表4】
【表5】
【0150】
安全性の結果:局所的な又は全身的な症状の発生率は、3つの研究グループ間で同等であった。発生率は、DTPa-HBV-IPV/HibPLGを受けたグループでは、他の3つの研究グループと比較して、増加しなかった。39.5℃を超える熱(直腸温)は、どのグループでも報告されなかった。39.0℃を超える熱(直腸温)はDTPa-HBV-IPV/HibPLGのグループで報告されなかった。
【表6】
【0151】
重篤有害事象:研究のコース中に、11のSAEが報告された。これらのいずれもが、治験担当医師によるワクチン接種に原因があるとするものではなかった。
【0152】
結論:
・DTPa-HBV-IPV/HibPLGでワクチン接種した後のHib応答は、DTPa-HBV-IPV/Hibと比較して有意に高かった。また独立型のHib結合ワクチンHiberixの応答と変わらなかった。従って、新製剤にHib免疫干渉問題は観察されなかった。
【0153】
・投与された他の抗原に対する応答は、セロプロテクション率とワクチン反応の点からDTPa-HBV-IPV/HibとDTPa-HBV-IPVに対する反応と同等であった。他の抗原は、ワクチン賦形剤としてのPLGと両立するようである。パータクチン及びIPVタイプIに対するGMC力価は、DTPa-HBV-IPV/Hibと比較してDTPa-HBV-IPV/HibPLGで低下したにもかかわらず(しかしながらGMC力価はDTPa-HBV-IPV + Hibグループの力価と同等であった)、パータクチンに対するワクチン反応及び全ワクチンにおけるIPVタイプIのセロプロテクション率は同等であった。
【0154】
・DTPa-HBV-IPV/Hib PLGは、DTPa-HBV-IPV/Hibワクチンと同等の反応原性を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記PRPが、Tヘルパー細胞のエピトープの供給源である担体タンパク質と結合している、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197及びプロテインDから成る群から選択される、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記ポリアニオン性ポリマーが、アニオン性構成繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記ポリアニオン性ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、エチルスルホン酸、ビニル硫酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-メタクリルアミド-3-メチルブタン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルリン酸、4-ビニル安息香酸、3-ビニルオキシプロパン-1-スルホン酸、N-ビニルスクシンイミド酸及びそれらの塩からなる群から得られるアニオン性構成繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記ポリアニオン性ポリマーが、オリゴ糖又は多糖である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記ポリアニオン性ポリマーが、オリゴペプチド又はポリペプチドであり、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸及びそれらの塩から成る群から得られるアニオン性構成繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記ポリアニオン性ポリマーが、モノマー含有量が30、40、50、60、70、80、90%以上又は100%のL-アスパラギン酸及び/又はL-グルタミン酸を有するオリゴペプチド又はポリペプチドである、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記オリゴペプチド又はポリペプチドが、平均で4〜200又は5〜200残基、又は8〜117残基、又は15〜18残基、又は17残基から成る、請求項7又は8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリアニオン性へテロポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記ポリアニオン性へテロポリマーが、2つの異なるアニオン性構成繰り返し単位から成る、請求項10記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリアニオン性ホモポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリ-L-グルタミン酸(PLG)である、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記ポリアニオン性ポリマーの濃度(μM)に、ポリアニオン性ポリマーのpH7.0における正味の負電荷を乗じ、免疫原性組成物の用量0.5ml中に存在するPRP量(μg)で割った結果が、300〜6000、400〜4000、500〜2000、560〜1100、610〜900、640〜800、660〜700、又は680である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度が30〜2000μMである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記ポリアニオン性ポリマーが、pH7.0において、平均で少なくとも8、又は少なくとも17の正味の負電荷を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記ポリアニオン性ポリマーが、pH7.0において、3モノマー当り少なくとも平均1、又は3モノマー当り少なくとも2、又は各モノマーに対して少なくとも平均1の正味の負電荷を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記免疫原性組成物の用量0.5ml中のPRP量が、1〜20μg、2.5〜10μg、又は5μgである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記免疫原性組成物が1種類以上の別の抗原を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記1種類以上の別の抗原が、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された1種類以上の髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体を含む、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記1種類以上の別の抗原が、1種類以上の肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体を含む、請求項19又は20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197及びプロテインDから成る群から選択される、請求項20又は21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記1種類以上の別の抗原が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、不活化全細胞百日咳菌、又は1種類以上の無細胞百日咳菌抗原を含む、請求項19〜22のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記1種類以上の別の抗原が、百日咳トキソイド、FHA、パータクチン、凝集原2及び凝集原3から成る群から選択された1種類以上の無細胞百日咳菌抗原を含む、請求項19〜23のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記1種類以上の別の抗原が、不活化ポリオワクチン(IPV)及びB型肝炎表面抗原のいずれか又は両方を含む、請求項19〜24のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
B型肝炎表面抗原がリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを更に含み、ポリアニオン性ポリマーが当該アジュバントとPRPとの間の凝結を防止し及び/又は当該アジュバントがPRPに対して起こす免疫学的干渉を低減する、請求項19〜26のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記アジュバントがミョウバン及び水酸化アルミニウムから成る群から選択される、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記アジュバントが、用量0.5ml当り100〜1000μgの量で免疫原性組成物中に存在する、請求項27又は28に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記1種類以上の別の抗原のうち少なくとも1種類がアジュバントに吸着されている、請求項27〜29のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記ポリアニオン性ポリマーの存在により、アジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原が有意に脱着を起こさない、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
水酸化アルミニウムに吸着された、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチン抗原を含む、請求項30又は31に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
吸着されていないIPV及び/又はリン酸アルミニウムに吸着されたB型肝炎表面抗原を更に含む、請求項32に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
凍結乾燥されており、グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びメレジトースから成る群から選択された安定化用賦形剤を更に含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物と製薬上許容される賦形剤とを含むワクチン。
【請求項36】
請求項35記載のワクチンの医薬的に効果のある量を含む、B型インフルエンザ菌(Hib)の疾患を予防又は治療するための薬剤。
【請求項37】
B型インフルエンザ菌(Hib)の疾患の予防又は治療用の薬剤の製造における、請求項1〜34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物又は請求項35に記載のワクチンの使用。
【請求項38】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着した1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチンにおいて、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫学的干渉を低減させる方法であって、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、
(ii)ポリアニオン性ポリマーを前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、及び
(iii)次に、PRPを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む、方法。
【請求項39】
前記コンビネーションワクチンが、請求項27〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチンにおいて、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫学的干渉を低減させる方法であって、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、及び
(ii)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む、方法。
【請求項41】
前記免疫原性組成物が、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記コンビネーションワクチンが、請求項27〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫原性組成物を、前記1種類以上の別の抗原に即時的に添加する、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫原性組成物を、グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びメレチトースから成る群から選択された安定化用賦形剤の存在下で凍結乾燥する、請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫原性組成物が、1種類以上の結合した、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項38〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫原性組成物が、1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記1種類以上の別の抗原が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンを含む、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記コンビネーションワクチン中のポリアニオン性ポリマーの存在によって、アジュバントに吸着された前記1種類以上の別の抗原が有意に脱着を起こさない、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)が担体タンパク質と結合している、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
ポリアニオン性ポリマー及びB型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)を含む免疫原性組成物を含む、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫応答を保護するための薬剤。
【請求項52】
前記免疫原性組成物が請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物である、請求項51に記載の薬剤。
【請求項53】
i) B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む第一の免疫原性組成物と、ii)8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着した1種類以上の抗原を含む第二の免疫原性組成物とを含むキット。
【請求項54】
第一の免疫原性組成物が請求項1〜26のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
第一の免疫原性組成物が、凍結乾燥されており、かつ安定化用賦形剤を更に含み、第二の免疫原性組成物が液体である、請求項53又は54に記載のキット。
【請求項56】
安定化用賦形剤がスクロースである、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
第一の免疫原性組成物が液体であり、第二の免疫原性組成物が液体である、請求項53又は54に記載のキット。
【請求項58】
第一の免疫原性組成物が、1種類以上の結合した、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項53〜57のいずれか1項に記載のキット。
【請求項59】
第一の免疫原性組成物が、1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項53〜58のいずれか1項に記載のキット。
【請求項60】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項53〜59のいずれか1項に記載のキット。
【請求項61】
第二の免疫原性組成物が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンからなる群から選択された1種類以上の抗原を含む、請求項53〜60のいずれか1項に記載のキット。
【請求項62】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)が担体タンパク質と結合している、請求項53〜61のいずれか1項に記載のキット。
【請求項63】
第一の免疫原性組成物が、第二の免疫原性組成物に即時的に添加される、請求項53〜62のいずれか1項に記載のキット。
【請求項64】
免疫原性組成物の製造における、該組成物に生じる凝集又は凝結を防止するためのポリアニオン性ポリマーの使用。
【請求項65】
pIが3よりも小さい糖類抗原とポリアニオン性ポリマーとを含む、免疫原性組成物。
【請求項1】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記PRPが、Tヘルパー細胞のエピトープの供給源である担体タンパク質と結合している、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197及びプロテインDから成る群から選択される、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記ポリアニオン性ポリマーが、アニオン性構成繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記ポリアニオン性ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、エチルスルホン酸、ビニル硫酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、2-メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-メタクリルアミド-3-メチルブタン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルリン酸、4-ビニル安息香酸、3-ビニルオキシプロパン-1-スルホン酸、N-ビニルスクシンイミド酸及びそれらの塩からなる群から得られるアニオン性構成繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記ポリアニオン性ポリマーが、オリゴ糖又は多糖である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記ポリアニオン性ポリマーが、オリゴペプチド又はポリペプチドであり、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸及びそれらの塩から成る群から得られるアニオン性構成繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記ポリアニオン性ポリマーが、モノマー含有量が30、40、50、60、70、80、90%以上又は100%のL-アスパラギン酸及び/又はL-グルタミン酸を有するオリゴペプチド又はポリペプチドである、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記オリゴペプチド又はポリペプチドが、平均で4〜200又は5〜200残基、又は8〜117残基、又は15〜18残基、又は17残基から成る、請求項7又は8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリアニオン性へテロポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記ポリアニオン性へテロポリマーが、2つの異なるアニオン性構成繰り返し単位から成る、請求項10記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリアニオン性ホモポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリ-L-グルタミン酸(PLG)である、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記ポリアニオン性ポリマーの濃度(μM)に、ポリアニオン性ポリマーのpH7.0における正味の負電荷を乗じ、免疫原性組成物の用量0.5ml中に存在するPRP量(μg)で割った結果が、300〜6000、400〜4000、500〜2000、560〜1100、610〜900、640〜800、660〜700、又は680である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記組成物中のポリアニオン性ポリマーの濃度が30〜2000μMである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記ポリアニオン性ポリマーが、pH7.0において、平均で少なくとも8、又は少なくとも17の正味の負電荷を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記ポリアニオン性ポリマーが、pH7.0において、3モノマー当り少なくとも平均1、又は3モノマー当り少なくとも2、又は各モノマーに対して少なくとも平均1の正味の負電荷を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記免疫原性組成物の用量0.5ml中のPRP量が、1〜20μg、2.5〜10μg、又は5μgである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記免疫原性組成物が1種類以上の別の抗原を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記1種類以上の別の抗原が、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された1種類以上の髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体を含む、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記1種類以上の別の抗原が、1種類以上の肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖−担体タンパク質結合体を含む、請求項19又は20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197及びプロテインDから成る群から選択される、請求項20又は21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記1種類以上の別の抗原が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、不活化全細胞百日咳菌、又は1種類以上の無細胞百日咳菌抗原を含む、請求項19〜22のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記1種類以上の別の抗原が、百日咳トキソイド、FHA、パータクチン、凝集原2及び凝集原3から成る群から選択された1種類以上の無細胞百日咳菌抗原を含む、請求項19〜23のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記1種類以上の別の抗原が、不活化ポリオワクチン(IPV)及びB型肝炎表面抗原のいずれか又は両方を含む、請求項19〜24のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
B型肝炎表面抗原がリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントを更に含み、ポリアニオン性ポリマーが当該アジュバントとPRPとの間の凝結を防止し及び/又は当該アジュバントがPRPに対して起こす免疫学的干渉を低減する、請求項19〜26のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記アジュバントがミョウバン及び水酸化アルミニウムから成る群から選択される、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記アジュバントが、用量0.5ml当り100〜1000μgの量で免疫原性組成物中に存在する、請求項27又は28に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記1種類以上の別の抗原のうち少なくとも1種類がアジュバントに吸着されている、請求項27〜29のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記ポリアニオン性ポリマーの存在により、アジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原が有意に脱着を起こさない、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
水酸化アルミニウムに吸着された、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチン抗原を含む、請求項30又は31に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
吸着されていないIPV及び/又はリン酸アルミニウムに吸着されたB型肝炎表面抗原を更に含む、請求項32に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
凍結乾燥されており、グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びメレジトースから成る群から選択された安定化用賦形剤を更に含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物と製薬上許容される賦形剤とを含むワクチン。
【請求項36】
請求項35記載のワクチンの医薬的に効果のある量を含む、B型インフルエンザ菌(Hib)の疾患を予防又は治療するための薬剤。
【請求項37】
B型インフルエンザ菌(Hib)の疾患の予防又は治療用の薬剤の製造における、請求項1〜34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物又は請求項35に記載のワクチンの使用。
【請求項38】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着した1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチンにおいて、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫学的干渉を低減させる方法であって、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、
(ii)ポリアニオン性ポリマーを前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、及び
(iii)次に、PRPを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む、方法。
【請求項39】
前記コンビネーションワクチンが、請求項27〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着された1種類以上の別の抗原を含むコンビネーションワクチンにおいて、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫学的干渉を低減させる方法であって、
(i)1種類以上の別の抗原をアジュバントに吸着させるステップ、及び
(ii)PRP及びポリアニオン性ポリマーを含む免疫原性組成物を前記1種類以上の別の抗原に添加するステップ、
を含む、方法。
【請求項41】
前記免疫原性組成物が、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記コンビネーションワクチンが、請求項27〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫原性組成物を、前記1種類以上の別の抗原に即時的に添加する、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫原性組成物を、グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びメレチトースから成る群から選択された安定化用賦形剤の存在下で凍結乾燥する、請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫原性組成物が、1種類以上の結合した、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項38〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫原性組成物が、1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記1種類以上の別の抗原が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンを含む、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記コンビネーションワクチン中のポリアニオン性ポリマーの存在によって、アジュバントに吸着された前記1種類以上の別の抗原が有意に脱着を起こさない、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)が担体タンパク質と結合している、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
ポリアニオン性ポリマー及びB型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)を含む免疫原性組成物を含む、B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)の免疫応答を保護するための薬剤。
【請求項52】
前記免疫原性組成物が請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物である、請求項51に記載の薬剤。
【請求項53】
i) B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)とポリアニオン性ポリマーとを含む第一の免疫原性組成物と、ii)8よりも大きいゼロ点電荷を有するアジュバントに吸着した1種類以上の抗原を含む第二の免疫原性組成物とを含むキット。
【請求項54】
第一の免疫原性組成物が請求項1〜26のいずれか1項に記載の免疫原性組成物である、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
第一の免疫原性組成物が、凍結乾燥されており、かつ安定化用賦形剤を更に含み、第二の免疫原性組成物が液体である、請求項53又は54に記載のキット。
【請求項56】
安定化用賦形剤がスクロースである、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
第一の免疫原性組成物が液体であり、第二の免疫原性組成物が液体である、請求項53又は54に記載のキット。
【請求項58】
第一の免疫原性組成物が、1種類以上の結合した、MenC、MenY、MenA及びMenWから成る群から選択された髄膜炎菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項53〜57のいずれか1項に記載のキット。
【請求項59】
第一の免疫原性組成物が、1種類以上の結合した肺炎球菌の莢膜のオリゴ糖又は多糖を更に含む、請求項53〜58のいずれか1項に記載のキット。
【請求項60】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項53〜59のいずれか1項に記載のキット。
【請求項61】
第二の免疫原性組成物が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、FHA及びパータクチンからなる群から選択された1種類以上の抗原を含む、請求項53〜60のいずれか1項に記載のキット。
【請求項62】
B型インフルエンザ菌(Hib)の莢膜の多糖又はオリゴ糖(PRP)が担体タンパク質と結合している、請求項53〜61のいずれか1項に記載のキット。
【請求項63】
第一の免疫原性組成物が、第二の免疫原性組成物に即時的に添加される、請求項53〜62のいずれか1項に記載のキット。
【請求項64】
免疫原性組成物の製造における、該組成物に生じる凝集又は凝結を防止するためのポリアニオン性ポリマーの使用。
【請求項65】
pIが3よりも小さい糖類抗原とポリアニオン性ポリマーとを含む、免疫原性組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−82200(P2012−82200A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245283(P2011−245283)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2006−515935(P2006−515935)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2006−515935(P2006−515935)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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