説明

B細胞リンパ腫の治療のためのヒトBリンパ球限定分化抗原に対するキメラ抗体と放射能標識抗体の療法利用

【課題】抗−CD20抗体依存性細胞介在性細胞溶解をCD20+ 細胞に対して誘導する新規な抗体及びその利用の提供。
【解決手段】抗−CD20抗体依存性細胞介在性細胞溶解をCD20+ 細胞に対して誘導し且つATCC寄託番号69119 のトランスフェクトーマにより生産されるキメラ抗体と実質的に同じB−細胞涸渇活性を有するキメラ抗CD20抗体、及びその利用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この文書を通して言及される参考文献は、単にこの文書の出願日より前にその中に記載された情報について説明するのであって、該参考文献が「先行技術」であるということや、前に提出された出願に基づいた優先権または先行発明者によって本発明者らがそのような記載よりも日時が先行する権利を与えられないということの明白なまたは暗黙の認可であると解釈してはならない。
本発明は、B細胞表面抗原Bp35("CD20")に対する放射能標識抗体およびキメラ抗体を使ったB細胞リンパ腫の治療に向けられる。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物(例えば霊長類、例えはヒト、類人猿、サル等を含む)の免疫系は多数の器官および細胞種から成り、これは脊椎動物宿主を侵略する外来微生物(「抗原」)を正確且つ特異的に認識するもの;そのような外来微生物に特異的に結合するもの;およびそのような外来微生物を排除/破壊するものへと発展していった。中でもリンパ球は免疫系にとって重要である。リンパ球は胸腺、脾臓および骨髄(成人)中で生産され、そしてヒト(成人)の循環系中に存在する全白血球の約30%を占める。リンパ球には2つの主な小集団、即ちT細胞とB細胞がある。
【0003】
T細胞は細胞性免疫の原因であり、一方B細胞は抗体産生(体液性免疫)を引き起こす。しかしながら、T細胞とB細胞は相互依存であると見なすことができる。典型的免疫応答では、抗原提示細胞の表面上の主要組織適合複合体(「MHC」)糖タンパク質に結合している抗原の断片にT細胞レセプターが結合するとT細胞が活性化される。そのような活性化が生物学的媒介物質(「インターロイキン」)の放出を引き起こし、これが本質的にB細胞を刺激して分化させそして該抗原に対する抗体(「免疫グロブリン」)を生産させる。
【0004】
宿主中の各B細胞はその表面上に異なる抗体を発現する。よって、或るB細胞は或る抗原に特異的な抗体を発現し、別のB細胞は別の抗原に特異的な抗体を発現するだろう。従って、B細胞は非常に多様であり、この多様性が免疫系にとって重要である。ヒトでは、各B細胞が無数の抗体分子(即ち約107 〜108 )を生産することができる。そのような抗体産生は、最も典型的には外来抗原が中和された時に停止する(または実質的に減少する)。しかし、時に、特定のB細胞の増殖が衰えずに続くことがある。そのような増殖は「B細胞リンパ腫」と呼ばれる癌を引き起こし得る。
【0005】
T細胞とB細胞は共に、識別と同定のための「マーカー」として利用することができる細胞表面タンパク質を含んで成る。1つのそのようなヒトB細胞マーカーは、「CD20」と呼ばれるヒトBリンパ球限定分化抗原Bp35である。CD20は初期プレB細胞発達の間に発現され、形質細胞分化まで残存する。特に、CD20分子は細胞周期開始と分化に必要とされる賦活過程の中の一段階を調節すると思われ、通常、新生物性(「腫瘍」)B細胞上に非常に高レベルで発現される。CD20は、定義上、「正常」B細胞と「悪性」B細胞(即ち衰えない増殖がB細胞リンパ腫を引き起こし得るB細胞)の両方の上に存在する。よって、CD20表面抗原はB細胞リンパ腫の「ターゲティング(標的指向)」の候補者として働く可能性を有する。
【0006】
本質的には、そのようなターゲティングは次のようにして発生させることができる:B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を例えば患者に注射する。それらのCD20抗体は正常B細胞と悪性B細胞の両方(表向きは)のCD20表面抗原に特異的に結合する。CD20表面抗原に結合した抗CD20抗体は新生物性B細胞の破壊と涸渇を引き起こすことができる。その上、腫瘍を破壊する可能性を有する化学物質または放射能標識が例えば新生物性B細胞に特異的に送達されるように、そのような物質を抗CD20抗体に接合することができる。アプローチにかかわりなく、主目標は腫瘍を破壊することである。特定のアプローチは使用する特定の抗CD20抗体により決定され得るので、従ってCD20抗原をターゲティングするための利用可能なアプローチは異なり得る。
【0007】
例えば、CD20表面抗原のターゲティングの試みが報告されている。報告によればネズミ(マウス)モノクローナル抗体 1F5(抗CD20抗体)を連続点滴静注によりB細胞リンパ腫患者に投与した。報告によれば循環している腫瘍細胞を涸渇させるのに非常に高レベル(>2グラム)の1F5 が必要であり、結果は「一時的」であると記載された。Press ら、"Monoclonal Antibody 1F5 (Anti-CD20) Sero-therapy of Human B-Cell Lymphomas." Blood 69/2:584-591(1987)。
【0008】
このアプローチに伴う潜在的問題は、非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)が典型的にはヒトエフェクター機能を欠くこと、即ちそれらが特に補体依存性細胞溶解を媒介したり抗体依存性細胞障害もしくはFcレセプター媒介性食作用を通してヒト標的細胞を溶解したりできないことである。更に、非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主により外来タンパク質として認識され得る。従って、そのような外来抗原の反復注入は、有害な過敏性反応となる免疫応答を誘導し得る。マウス由来のモノクローナル抗体については、これはヒト抗マウス抗体応答または"HAMA"と呼ばれている。その上、それらの「外来」抗体は宿主の免疫系によって攻撃され、その結果それらが標的部位に到達する前に事実上中和されてしまうことがある。
【0009】
リンパ球およびリンパ腫細胞は、幾つかの理由で放射線療法に対して本質的に感受性である。放射能標識抗体のイオン化放射線の局所放出は、抗原に結合した抗体の極めて近位に標的抗原(例えばCD20)を有するまたは有しない細胞を殺すことができ;透過性放射線は嵩張ったまたは血管形成の乏しい腫瘍中の抗体への接近の制限という問題を除去することができ;そして、必要とされる抗体の総量を減らすことができる。放射性核種は、細胞修復機構が細胞を生存させておくことができない箇所に環状DNAに損傷を与えることができる放射性粒子を発生する。従って、標的が腫瘍ならば、放射能標識は腫瘍細胞を有利に殺傷する。放射能標識抗体は、定義によれば、患者(即ち可能な骨髄移植)と健全な提供者(即ち放射能で処理する時に高度の注意を払う必要性)の両方に対して用心する必要性がある放射性物質の使用を含む。
【0010】
従って、B細胞障害の治療に効果的であるマウスモノクローナル抗体の能力を改善するアプローチは、放射能標識または毒素が腫瘍部位に局在化されるように標識または毒素を抗体に接合させることであった。例えば、上述のIF5 抗体はヨウ素131 (「131 I」)で「標識」され、そして伝えられるところによれば2人の患者で生体内分布について評価された。Eary, J.F.ら、"Imaging and Treatment of B-Cell Lymphoma" J. Nuc. Med. 31/8:1257-1268 (1990) を参照のこと。
【0011】
また Press, O.W.ら、"Treatment of Refractory Non-Hodgkin's Lymphoma with Radiolabeled MB-1 (Anti-CD37) Antibody" J. Clin. Onc. 7/8:1027-1038 (1989) (131I標識IF-5で治療した1人の患者が「部分応答」を達成したことを指摘している);Goldenberg, D.M.ら、"Targeting, Dosi-metry and Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphomas with Iodine-131-Labeled LL2 Monoclonal Antibody" J. Clin. Onc. 9/4:548-564 (1991) (複数回注射を受けた8人の患者のうちの3人がHAMA応答を発生したことを報告している);Appelbaum, F.R. "Radiolabeled Monoclonal Antibodies in the Treatment of Non-Hodgkin's Lymphoma" Hem./Onc. Clinics of N.A. 5/5:1013-1025 (1991)(総説文献);Press, O.W. ら、"Radiolabeled-Antibody Therapy of B-Cell Lymphoma with Autologous Bone Marrow Support." New England Journal of Medicine 329/17:1219-12223 (1993)(ヨウ素131-標識抗CD20抗体IF5 およびB1)およびKaminski, M.G.ら "Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphoma with [131I] Anti-B1 (Anti-CD20) Antibody" NEJM 329/7 (1993) (ヨウ素131-標識抗CD20抗体B1;以後"Kaminski"と称する)も参照のこと。
【0012】
毒素(即ち、ドキソルビシンやミトマイシンCのような化学療法剤)も抗体に接合されている。例えば、PCT出願公開WO 92/07466 (1992年5月14日公開)を参照のこと。
「接合」抗体の代わりとして、「キメラ」抗体、即ち2以上の異なる種(例えばマウスとヒト)からの部分を含んで成る抗体が開発されている。例えば、Liu, A.Y. ら、"Production of a Mouse-Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc-Dependent Biologic Activity" J. Immun. 139/10:3521-3526 (1987) は、CD20抗原に対して向けられたマウス/ヒトキメラ抗体を記載している。PCT公報第WO 88/04936 号も参照のこと。しかしながら、B細胞障害の治療のためのそのようなキメラ抗体の能力、効力または実用性に関する情報は該文献中に全く与えられていない。
【0013】
試験管内機能分析〔例えば補体依存性細胞溶解("CDC") ;抗体依存性細胞障害("ADCC")等〕は、特異抗原を発現している標的細胞を破壊または涸渇させるキメラ抗体の生体内能力を本質的に予測することはできないと言及されている。例えば、Robinson, R.D.ら、"Chimeric mouse-human anti-carcinoma antibodies that mediatedifferent anti-tumor cell biological activities", Hum. Anti-bod. Hybridomas 2:84-93 (1991)(検出不可能なADCC活性を有するキメラマウス−ヒト抗体)を参照のこと。従って、キメラ抗体の治療効力は生体内実験によってのみ正しく評価することができる。
必要とされ且つ大きな技術進歩になると思われるものは、霊長類(ヒトを含むがそれに限定されない)におけるB細胞リンパ腫の治療のためにCD20抗原をターゲティングする治療法である。
【発明の開示】
【0014】
B細胞障害、特にB細胞リンパ腫の治療用に考案された治療法が本明細書中に開示される。それらのプロトコールは、リンパ腫に関係するB細胞を含む末梢血B細胞の涸渇のための免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の投与;局在化されそして末梢B細胞に関係づけられた腫瘍をターゲティングするための放射能標識抗CD20抗体の投与;および協同的療法(組合せ療法)におけるキメラ抗CD20抗体と放射能標識抗CD20抗体の投与に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般的に、抗体は2つの軽鎖分子と2つの重鎖分子から構成される。それらの鎖は通常「Y」字形を形成し、軽鎖と重鎖の両方がYのアーム部分を形成し、重鎖がYのつけ根部分を形成している。軽鎖と重鎖は構造的および機能的相同性の領域(ドメイン)に分けられる。軽鎖の可変領域(「VL 」)と重鎖の可変領域(「VH 」)は認識と特異性を決定する。軽鎖の定常領域((「CL 」)と重鎖の定常領域(「CH 」)は重要な生物学的性質、例えば抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動性、Fcレセプター結合補体結合等を付与する。抗体産生細胞における免疫グロブリン遺伝子発現をもたらす一連の現象は複雑である。
【0016】
可変領域遺伝子配列は、「VH 」,「D」および「JH 」、または「VL 」および「JL 」と呼ばれる別々の生殖細胞系列遺伝子セグメントの中に位置している。それらの遺伝子セグメントがDNA再配列により連結して、それぞれ重鎖および軽鎖中に現れる完全なV領域を形成する。次いで、再配列され連結されたVセグメント(VL −JL およびVH −D−JH )が、それぞれ軽鎖および重鎖の完全な可変領域または抗原結合領域をコードする。
【0017】
抗CD20マウスモノクローナル抗体(1F5 )を使ったヒトB細胞リンパ腫の血清療法はPress らにより記載されている(69 Blood 584, 1987, 前掲)。この報告された療法応答は不運にも一時的であった。更に、報告によれば、試験した患者の25%が該血清療法に対してヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を発生した。Press らは、毒素または放射性同位体に接合したそれらの抗体が未接合抗体よりも長く持続する臨床的利益を付与するかもしれないことを示唆している。
【0018】
B細胞リンパ腫の消耗性作用と、この病気に実行可能な治療法を提供するごく現実的な必要性のために、我々はアプローチ間を共通に結び付けるものとして特定の抗体2B8 を有する様々なアプローチに着手した。1つのそのようなアプローチは、末梢血B細胞を容易に且つ効率的に再生させる哺乳動物系の能力を有利に活用する。このアプローチを使って、我々は本質的にB細胞リンパ腫を除去する手段として末梢血およびリンパ系組織中のB細胞を追放または涸渇させようと試みる。特に免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の使用によりこれを達成する。別のアプローチでは、放射性標識による破壊のため腫瘍細胞をターゲティング(標的指向)しようと試みる。
【0019】
本明細書中で使用する時、用語「抗CD20抗体」は、典型的にはヒトBリンパ球限定分化抗原Bp35と命名された、一般的にCD20と呼ばれる35,000ダルトンの細胞表面非グリコシル化リンタンパク質を特異的に認識する抗体である。本明細書中で使用する時、抗CD20抗体に関して使用する時の用語「キメラ」は、最も好ましくは組換えデオキシリボ核酸技術を使って誘導され、ヒト(免疫学的「親類」種、例えばチンパンジーを含む)成分と非ヒト成分の両方を含んで成る抗体を包含する。キメラ抗体の定常領域は、最も好ましくは天然ヒト抗体の定常領域と実質的に同じであり;キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは非ヒト源に由来し、CD20細胞表面抗原に対する所望の抗原性と特異性を有する。
【0020】
非ヒト源は、ヒトCD20細胞表面抗原またはヒトCD20細胞表面抗原を含んで成る物質に対する抗体を産生させるのに使うことができる任意の脊椎動物源であることができる。そのような非ヒト源としては、齧歯類(例えばウサギ、ラット、マウス等)および非ヒト霊長類(例えば類人猿、サル等)が挙げられるがそれらに限定されない。最も好ましくは、非ヒト成分(可変領域)はマウス源に由来する。本明細書中で使用する時、キメラ抗CD20抗体に関して使用する時の「免疫学的に活性な」という語は、ヒトC1q を結合し、ヒトBリンパ系細胞系の補体依存性細胞溶解("CDC") を媒介し、且つ抗体依存性細胞障害("ADCC")を通してヒト標的細胞を溶解するキメラ抗体を意味する。
【0021】
本明細書中で使用する時、「間接標識」および「間接標識アプローチ」という用語は共に、キレート化剤が抗体に共有結合的に取り付けられ、そして該キレート化剤中に少なくとも1つの放射性核種が挿入されることを意味する。好ましいキレート化剤および放射性核種はSrivagtava, S.C.およびMease, R.C., "Progress in Research on Ligands, Nuclides and Techniques for Labeling Monoclonal Antibodies," Nucl. Med. Bio. 18/6: 589-603 (1991) ("Srivagtava") 中に記載されている。
【0022】
これは参考として本明細書中に組み込まれる。特に好ましいキレート化剤は1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸("MX-DTPA" )であり;間接標識に特に好ましい放射性核種としてはインジウム[111] とイットリウム[90]が挙げられる。本明細書中で使用する時、「直接標識」および「直接標識アプローチ」という用語は、放射性各種が抗体に共有結合的に直接取り付けられる(典型的にはアミノ酸残基によって)ことを意味する。好ましい放射性核種は"Srivagtava"中に与えられている。直接標識に特に好ましい放射性核種は、チロシン残基によって共有結合的に取り付けられるヨウ素[131] である。間接標識アプローチが特に好ましい。
【0023】
本明細書中に開示される治療方法は、末梢血B細胞を迅速に回復または再生させる霊長類の免疫系の能力に基づいている。その上、霊長類の主要な免疫応答はT細胞により誘発されるので、免疫系が末梢血B細胞欠損を有する時は、「特別な」用心(例えば患者の隔離など)の必要はない。霊長類の免疫系のそれらおよび他の繊細さの結果として、我々のB細胞障害の治療方法は、免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体を使った末梢血B細胞の浄化(purging )を考慮に入れている。
【0024】
末梢血B細胞障害は、定義上、治療目的で血液に接近する必要性があることを示し得るので、免疫学的に活性な抗CD20抗体と放射能標識抗CD20抗体の投与経路は好ましくは非経口である。本明細書中で使用する時、「非経口」なる用語は静脈内、筋内、皮下、直腸、膣内または腹腔内投与を包含する。それらのうち静脈内投与が最も好ましい。
【0025】
免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体と放射能標識抗CD20抗体は、典型的には、標準技術により、医薬上許容される緩衝液、例えば無菌塩類溶液、無菌緩衝化水、プロピレングリコール、前記のものの組合せ、等の中に提供されるだろう。非経口投与可能な薬剤の調製方法はPharmaceutical Carriers & Formulations, Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 第15版 (Mack Pub. Co.,Easton, PA 1975)に記載されている。これは参考として本明細書中に組み込まれる。任意の与えられた患者において独特の治療効果を生じさせるのに有用である免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の特定の治療的有効量は、当業者に公知の標準技術により決定することができる。
【0026】
免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の有効量(即ち治療的有効量)は、約0.001 〜約30mg/kg体重、より好ましくは約0.01〜約25mg/kg体重、最も好ましくは約0.4 〜約20.0mg/kg体重の範囲である。他の用量も実行できる。用量に影響を及ぼす因子としては、病気の重度;前の治療方法;患者の全体的健康;存在する他の病気等が挙げられるがそれらに限定されない。当業者は、特定の患者を評価しそして前記範囲内に入る適当な用量、または必要ならば範囲の外側の用量を容易に決定することができると思う。
【0027】
それらの用量範囲での免疫学的に活性な抗CD20抗体の導入は、1回治療または一連の治療として行うことができる。キメラ抗体に関しては、そのような導入が一連の治療として実施されるのが好ましい。この好ましいアプローチは、この病気に関係する治療方法論の上に基づいている。何ら特定の理論に結び付けようとしなくても、免疫学的に活性な抗CD20抗体は免疫学的に活性であり且つCD20に結合するため、個体への免疫学的に活性な抗CD20抗体の初回導入と同時に、末梢血B細胞涸渇が始まるだろう。我々は、点滴注入治療後約24時間以内にほぼ完全なB細胞涸渇を観察した。
【0028】
このため、患者への免疫学的に活性な抗CD20抗体(または放射能標識抗CD20抗体)のその後の導入は、a)残っている末梢血B細胞を浄化する;b)リンパ節からのB細胞涸渇を開始する;c)他の組織源、例えば骨髄、腫瘍等からのB細胞涸渇を開始すると推定される。繰り返し言うと、免疫学的に活性な抗CD20抗体の反復導入を使うことにより、一連の現象が起こる。我々は、これらの各現象を病気の有効治療に重要と見なした。第一の「現象」は、主に患者の末梢血B細胞を実質的に涸渇させることを指令するものとして見なすことができ;次の現象は主に、同時にもしくは連続的に系から残りのB細胞を浄化し、リンパ節B細胞を浄化しまたは他の組織B細胞を浄化することを指令するものとして見なすことができる。
【0029】
実際には、1回投薬は有利であって病気治療/管理に効果的に利用することができるけれども、好ましい治療過程は数段階に渡り起こり、約2〜10週間に渡り、最も好ましくは約4週間に渡り、1週間に1回、約0.4 〜約20mg/kg体重の免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体が患者に投与される。
【0030】
放射能標識抗CD20抗体に関しては、該抗体は非キメラであるのが好ましい。この好ましさは、マウス抗体と比較するとキメラ抗体の循環半減期が有意に長いことに基づいている(即ち、循環半減期が長ければ、放射性核種が長期間に渡り患者内に存在する)。しかしながら、マウス抗体と比べてより低いミリキューリー("mCi" )線量でキメラ抗体と組み合わせて使用することにより、放射性キメラ抗体を有利に使用することができる。この筋書きは、治療的効用を維持しながら、許容できるレベルへの骨髄毒性の減少を考慮に入れている。
【0031】
本発明には様々な放射性核種が適用でき、当業者は様々な状況下でどの放射性核種が最も適当であるかを容易に決定する能力を有すると思われる。例えば、ヨウ素[131] は標的免疫療法に使われる公知の放射性核種である。しかしながら、ヨウ素[131] の臨床的有用性は次に挙げる幾つかの因子により制限され得る:8日の物理的半減期;血液中と腫瘍部位の両方におけるヨウ素化抗体の脱ハロゲン化;および腫瘍中への局在化された用量沈着にとって次善となり得る発光性質(例えば多量のγ成分)。優れたキレート化剤の出現により、金属キレート化基をタンパク質に取り付ける機会が、インジウム[131] やイットリウム[90]といった他の放射性核種を利用する機会を増加させた。
【0032】
イットリウム[90]は、放射性免疫療法応用への利用に幾つかの利点を提供する。イットリウム[90]の64時間という半減期は腫瘍による抗体蓄積を可能にするのに十分長く、そして例えばヨウ素[131] と異なり、イットリウム[90]は100 〜1000細胞直径の組織の範囲で、それの崩壊の間に全く付随のγ放射を伴わない高エネルギーの純粋なβ発射体である。更に、透過する放射線の最小線量はイットリウム[90]標識抗体の外来患者投与を考慮に入れる。また、細胞致死に標識抗体の介在を必要とせず、そしてイオン化放射線の局所放出が標的抗原を欠く近隣の腫瘍細胞にも致死的であるだろう。
【0033】
イットリウム[90]に対する1つの非療法的制限は、それを使った画像診断を難しくする有意なγ線の欠如に基づく。この問題を回避するために、イットリウム[90]標識抗CD20の治療線量の投与前に腫瘍の位置と相対的大きさを決定するのに「画像診断用」放射性核種、例えばインジウム[111] を使うことができる。インジウム[111] は診断用放射性核種として特に好ましい。何故なら、約1〜約10mCi の間は検出可能な毒性を伴わずに安全に投与することができ;そして画像診断データは一般にその後のイットリウム[90]標識抗体の分布を予測する。
【0034】
大部分の画像診断研究は5 mCi インジウム[111] 標識抗体を利用する。というのは、この線量は安全であり且つ低線量に比較して増大された画像診断効率を有するからである。この場合、最適な画像診断は抗体投与後3〜6日目に行う。例えば、Murray, J.L., 26 J. Nuc. Med. 3328 (1985) およびCarraguillo, J.A. ら, 26 J. Nuc. Med. 67 (1985) を参照のこと。
【0035】
イットリウム[90]標識抗C20 抗体の1回治療有効量(即ち治療的有効量)は約5〜約75 mCi、より好ましくは約10〜約40 mCiの範囲である。ヨウ素[131] 標識抗C20 抗体の非骨髄剥離的1回治療有効量は約5〜約70 mCi、より好ましくは約5〜約40 mCiの範囲である。ヨウ素[131] 標識抗C20 抗体の剥離的1回治療有効量(即ち、自系骨髄移植を必要とし得る)は約30〜約600 mCi 、より好ましくは約50〜約500 mCi 未満の範囲である。キメラ抗C20 抗体と組み合わせた場合、マウス抗体に比較してより長い循環半減期のため、ヨウ素[131] 標識キメラ抗C20 抗体の非骨髄剥離的1回治療有効量は、約5〜約40 mCi、より好ましくは約30 mCi未満の範囲である。例えばインジウム[111] 標識の画像診断基準は、典型的には約5mCi 未満である。
【0036】
放射能標識抗C20 抗体に関しては、それを使った療法は1回療法処置または複数回処置を利用して行うことができる。放射性核種成分のため、治療前に、放射線から生じる潜在的に致死的な骨髄毒性を経験している患者については末梢幹細胞("PSC") または骨髄("BM")を「収穫」することが好ましい。標準技術を使ってBMおよび/またはPSC を収穫し、次いでパージし、そして可能な再注入のために凍結しておく。また、治療前に診断用標識抗体(例えばインジウム[111] を使ったもの)を使って患者に診断的線量計測研究を行うことが最も好ましい。その目的は、治療用標識抗体(例えばイットリウム[90]を使ったもの)がいずれかの正常な器官または組織において不必要に「濃縮」されたりしないことを保証することである。
【0037】
キメラマウス/ヒト抗体は記載されている。例えば、Morrison, S.L.ら、PNAS 11:6851-6854 (1984年11月);欧州特許公開第173494号;Boulianne, G.L. ら、Nature 312:642(1984年12月);Neubeiger, M.S. ら、Nature 314:268(1985年3月);欧州特許公開第125023号;Tan ら、J. Immunol. 135:8564(1985年11月);Sun, L.K. ら、Hybridoma 5/1:517 (1986);Sahagan ら、J. Immunol. 137:1066-1074 (1986)を参照のこと。一般的には、Muron, Nature 312:597 (1984年12月);Dickson, Genetic Engineering News 5/3 (1985年3月);Marx, Science 229, 445(1985年8月);およびMorrison, Science 229:1202-1207 (1985年9月)を参照のこと。
【0038】
Robinsonらは、PCT 公開番号第WO 88/04936 号において、ヒト定常領域とマウス可変領域を有し、CD20のエピトープに対して特異性を有するキメラ抗体を記載している。Robinson参考文献のキメラ抗体のマウス部分は2H7 マウスモノクローナル抗体に由来する(γ2b,κ)。この参考文献は記載のキメラ抗体がB細胞障害の治療に向けての「第一候補者」であることを記載しているが、特にこの参考文献は治療効能の断定を支持するデータを欠いており、また重要なことに、霊長類またはヒトといったより高等の哺乳動物を使ったデータも欠いているため、この記述は、この提言がこの特定抗体に的確であるかどうかを決定するための当業者への提言に過ぎないと見なすことができる。
【0039】
キメラ抗体を作製する方法論は当業者に利用可能である。例えば、別々のプラスミド中の免疫グロブリン軽鎖と免疫グロブリン重鎖を使って、軽鎖と重鎖を別々に発現させることができる。次いでそれらを精製し、試験管内で完全な抗体に構築することができる。そのような構築を達成するための方法論は記載されている。例えば、Scharff, M., Harvey Lectures 69:125 (1974)を参照のこと。
【0040】
還元され単離された軽鎖と重鎖からIgG 抗体を形成させるための試験管内反応パラメーターも記載されている。例えば、Beychok, S., Cells of Immunogloblin Synthesis, Academic Press, New York, p. 69, 1979を参照のこと。完全なH2L2 IgG抗体への重鎖と軽鎖の細胞内会合および連鎖を達成するために同一細胞中での軽鎖と重鎖の同時発現も可能である。そのような同時発現は、同一宿主細胞中で同一プラスミドまたは異なるプラスミドのいずれかを使って達成することができる。
【0041】
別のアプローチ、即ちキメラ非ヒト/ヒト抗CD20抗体を作製するための我々の最も好ましいアプローチであるものは、ヒト起源の重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAを最初から含有する発現ベクターの利用に基づく。そのようなベクターは、様々な非ヒト抗CD20抗体を生成し、分泌しそして種々の特性(例えば結合特異性の型、エピトープ結合領域等)について分析することができるように、非ヒト可変領域をコードするDNAの挿入を考慮に入れる。その後で、好ましいかまたは所望の抗CD20抗体からの軽鎖および重鎖可変領域をコードするcDNAを該ベクター中に組み込むことができる。本発明者らはそれらの型のベクターを縦列式キメラ抗体発現("TCAE")ベクターと呼ぶ。
【0042】
リンパ腫の治療処置のための免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体を生産するのに使用した最も好ましいTCAEベクターはTCAE 8である。TCAE 8は、本特許文書の譲渡人が所有するベクター(TCAE 5.2と命名)の誘導体であり、TCAE 5.2では優性選択可能マーカー(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、"NEO" )の翻訳開始部位が共通Kozak 配列であり、TCAE 8ではこの領域が部分的に損傷された共通Kozak 配列であるという点が異なる。タンパク質発現に対するTCAEベクター("ANEX ベクター" とも呼称される)の優性選択可能マーカーの開始部位の影響に関する詳細は、本出願と一緒に出願された同時係属出願の中に詳細に開示されている。
【0043】
TCAE 8は4つの転写カセットを含んで成り、それらは縦列に置かれ、即ち可変領域を欠くヒト免疫グロブリン軽鎖;可変領域を欠くヒト免疫グロブリン重鎖;DHFR;およびNEO の順に置かれる。各転写カセットはそれ自身の真核プロモーターとポリアデニル化領域を含有する(TCAE 8ベクターの略図である図1を参照のこと)。詳しくは、
1)免疫グロブリン重鎖の前のCMVプロモーター/エンハンサーは、−350 位の NheI部位から−16位の SstI部位まで、軽鎖の前のプロモーター/エンハンサーの先端が切り取られた変形である(41 Cell, 521, 1985を参照のこと)。
【0044】
2)ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域は、PCR反応によるcDNAの増幅によって誘導された。TCAE 8では、これはヒト免疫グロブリン軽鎖κ定常領域〔Kabat 番号付け法でアミノ酸108-214 、アロタイプKm 3(Kabat, E.A. "Sequences of proteins of immunological interest," NIH Publication, 第5版,No.91-3242, 1991を参照のこと)〕およびヒト免疫グロブリン重鎖γ1定常領域〔Kabat 番号付け法でアミノ酸114-478 、アロタイプGmla, Gmlz〕であった。
【0045】
軽鎖は正常ヒト血液(IDEC Pharmaceuticals Corpora- tion, La Jolla, CA)から単離され;そこから得たRNAを使ってcDNAを合成し、次いでPCR技術を使ってcDNAを増幅させた(Kabat からの共通配列に関してプライマーを誘導した)。ヒトIgG1ベクター(3 Prot. Eng. 531, 1990;ベクターpNγ162 )によりトランスフェクトされた細胞から誘導されたRNAから調製したcDNAから重鎖を単離した(PCR技術を使って)。Kabat からの共通アミノ酸配列と一致させるために、単離されたヒトIgG1中の2つのアミノ酸が変更され、即ち、アミノ酸225 がバリンからアラニンに(GTT からGCA に)変更され、そしてアミノ酸287 がメチオニンからリジンに(ATG からAAG に)変更された。
【0046】
3)ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖カセットは、免疫グロブリン鎖の分泌のために合成シグナル配列を含有する。
4)ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖カセットは、転写解読枠を維持し且つ免疫グロブリン鎖の中に通常見つかるアミノ酸を変更しないような軽鎖および重鎖免疫グロブリン可変領域の挿入を考慮した特定のDNA制限部位を含有する。
【0047】
5)DHFRカセットは、それ自身の真核プロモーター(マウスβ−グロビン主要プロモーター、"BETA")とポリアデニル化領域(ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域、"BGH" )を含んだ。
6)NEO カセットは、それ自身の真核プロモーター(BETA)とポリアデニル化領域(SV40初期ポリアデニル化領域、"SV")を含んだ。
TCAE 8ベクターとNEO カセットに関しては、Kozak 領域は部分的に損傷された共通Kozak 配列(上流の ClaI部位を含む)であった:
【0048】
【化1】

(TCAE 5.2ベクターでは、Cla IとATG 領域の間に変更がある、即ちccAcc )。
【0049】
TCAE 8の完全な配列表(4つの転写カセットの特定成分を含む)は図2〜図11に与えられる(配列番号1)。
当業者により認識されるように、TCAEベクターは、免疫学的に活性なキメラ抗C20 抗体を生産させる上で実質的に時間を削減することを考慮に入れる。非ヒト軽鎖および重鎖可変領域の調製と単離、次いでそれらをヒト軽鎖定常転写カセットとヒト重鎖定常転写カセット中に組み込むことは、免疫学的に活性なキメラ抗C20 抗体の生産に備える。
【0050】
本発明者らは、マウス源とハイブリドーマ技術を使って、CD20抗原に対する特異性を有する最も好ましい非ヒト可変領域を誘導した。ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)技術を使って、マウス軽鎖および重鎖可変領域を直接TCAE 8ベクター中にクローニングした。これはTCAEベクター中への非ヒト可変領域の組み込みのための最も好ましいルートである。この好ましさは主として、PCR反応の効率と挿入の精度に基づいている。しかしながら、この作業を達成する他の同等の手順も利用可能である。例えば、TCAE 8(または同等のベクター)を使って、非ヒト抗CD20抗体の可変領域の配列を得、次いで該配列の一部分、または適当ならば全配列のオリゴヌクレオチド合成を行い、その後で、該部分または全合成配列をベクター中の適当な位置に挿入することができる。当業者はこの作業を達成する能力を有すると思う。
【0051】
我々の最も好ましい免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体は、CD20に対するモノクローナル抗体から誘導したマウス可変領域を含むTCAE 8ベクターの使用により誘導した。この抗体(下記に詳細に記載する)は"2B8" と称する。TCAE 8中の2B8 から得られた可変領域の完全配列("TCAE 8 中の抗CD20" )は図12〜21に記載される(配列番号2)。
【0052】
タンパク質発現に使う宿主細胞系は、最も好ましくは哺乳動物起源のものである。当業者はその中で発現させようとする所望の遺伝子産物に最も適する特定の宿主細胞系を優先的に決定する能力を有すると思われる。典型的な宿主細胞系としては、DG44とDUXBII(チャイニーズハムスター卵巣細胞系、DHFR- )、HELA(ヒト頸部癌)、CVI (サル腎臓系)、COS (SV40T抗原を有するCVI の誘導体)、R1610 (チャイニーズハムスター繊維芽細胞)、BALBC/3T3 (マウス繊維芽細胞)、HAK (ハムスター腎臓系)、SP2/0 (マウスミエローマ)、P3x63-Ag3.653 (マウスミエローマ)、BFA-lclBPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293 (ヒト腎臓)が挙げられるがそれらに限定されない。宿主細胞系は典型的には商業施設から、the American Tissue Culture Collectionからまたは発表された文献から入手することができる。
【0053】
好ましくは、宿主細胞系はDG44("CHO") かSP2/O のいずれかである。Urland, G.ら、"Effect of gamma rays and the dihydroforate reductase locus: deletions and inversions." Som. Cell & Mol.Gen. 12/6:555-566 (1986)およびSchulman, M.ら、"A better cellline for making hybridomas secreting specific antibodies." Nature 276:269 (1987)をそれぞれ参照のこと。最も好ましくは、宿主細胞系はDG44である。
【0054】
宿主細胞中へのプラスミドのトランスフェクションは、当業界で利用可能な任意の技術を使って達成することができる。それらとしては、トランスフェクション(電気泳動およびエレクトロポレーションを含む)、エンベロープDNAを使った細胞融合、マイクロインジェクション、およびそのままのウイルスによる感染が挙げられるがそれに限定されない。Ridgway, A.A. G., "Mammalian Expression Vectors." 第24.2章, 470-472 頁, Vectors, RodriguesおよびDenhardt編(Butterworths, Boston, MA1988)を参照のこと。最も好ましいのは、エレクトロポレーションによる宿主中へのプラスミド導入である。
【実施例】
【0055】
次の実施例は、本発明を限定するつもりではなく、また本発明を限定すると解釈してはならない。それらの実施例は、放射能標識抗CD20抗体("I2B8");放射能標識抗CD20抗体("Y2B8");および特定ベクター("TCAE 8")とマウス抗CD20モノクローナル抗体("2B8" )由来の可変領域を使って誘導された免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体("C2B8")、を使った用量イメージングを証明するつもりである。
【0056】
I.放射能標識抗CD20抗体 2B8
A.抗CD20モノクローナル抗体(マウス)産生("2B8" )
BALB/Cマウスを3〜4カ月の期間に渡る毎週の注射によりヒトリンパ芽球様細胞系SB(Adams, R.A. ら、"Direct implantation and serial transplantation of human acute lymphoblastic leukemia in hamsters, SB-2." Can. Res. 28:1121-1125 (1968) を参照のこと;この細胞系はATCC受入れ番号ATCC CCL 120のもとにthe American Tissue Culture Collection, Rockville, MD.から入手可能である)で繰り返し免疫処置した。
【0057】
既知のCD20特異抗体の阻害により測定した時に抗CD20抗体(使用した抗CD20抗体は、Leu 16, Beckton Dickinson, San Jose, CA, カタログNo.7670 ;およびB1, Coulter Corp., Hialeah, FL, カタログNo.6602201であった)の高血清力価を証明するマウスを同定した。次いでそのようなマウスの脾臓を切除した。Einfeld, D.A. ら (1988) EMBO 7:711に記載されたプロトコールに従って脾臓細胞をマウスミエローマSP2/0 と融合させた(SP2/0 はATCC受入れ番号ATCC CRL 8006 を有する)。
【0058】
CD20特異性についてのアッセイはラジオイムノアッセイにより行われた。簡単に言えば、Valentine, M.A. ら(1989) J. Biol. Chem. 264:11282 に記載されたようなヨードビーズ法により、精製した抗CD20 B1 を125 Iで放射能標識した。(125 I−ヨウ化ナトリウム,ICN, Irvine, CA, カタログNo.28665H )。各々の融合ウエルからの培地0.05mlを、1% BSA, PBS (pH 7.4)中の125 I標識抗CD20 B1 (10 ng) 0.05mlおよび100,000 個のSB細胞を含む同緩衝液 0.05 mlと一緒にインキュベーションすることにより、ハイブリドーマをスクリーニングした。
【0059】
室温で1時間インキュベーションした後、96ウエルのタイタープレート(V&P Scientific, San Diego, CA )に移すことにより細胞を収集し、徹底的に洗浄した。未標識抗CD20 B1 を含有する複製ウエルと阻害抗体を全く含まないウエルを、それぞれ正の対照と負の対照として使用した。50%阻害以上を含有するウエルを増殖させ、クローニングした。クローニングした細胞系から最大阻害を示す抗体が誘導され、これを"2B8" と命名した。
【0060】
B.MX-DTPA 接合体の調製
i.MX-DTPA
14Cで標識された1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(" 14C標識MX-DTPA")を2B8 への放射能標識の接合のためのキレート化剤として使用した。無金属条件を維持するためにMX-DTPA の操作を行った。即ち、無金属試薬を使用し、そして可能な時には、Alconox で洗浄しMilli-Q 水で濯いだポリプロピレン製プラスチック容器(フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、ピペットチップ)を同様に使用した。MX-DTPA をOtto Gansow 博士(National Institute of Health, Bethesda, MD)から乾燥固体形態として入手し、4℃で乾燥保存した(遮光下で)。Milli-Q 水中に2 〜5 mMの濃度の原液を調製し、−70℃で保存した。MX-DTPA は水中の二ナトリウム塩としてCoulter Immunology (Hialeah, Florida) からも得られ、これを−70℃で保存した。
【0061】
ii.2B8 の調製
CENTRICON 30TMスピンフィルター(30,000D, MWCO; Amicon )を使った繰り返し緩衝液交換を利用して、150mM NaClを含む無金属の50mMバイシン−NaOH, pH 8.6中に2B8 抗体を移すことにより、MX-DTPA との接合用の精製2B8 を調製した。一般に、該フィルター装置に50〜200 μlのタンパク質(10mg/nl)を加え、次いで2mlのバイシン緩衝液を加えた。Sorval SS-34ローター中で4℃で該フィルターを遠心した(6,000 rpm, 45 分)。滞留液容量は約50〜100 μlであった。同フィルターを使ってこの工程を2回繰り返した。滞留液をポリプロピレン製1.5 mlスクリューキャップ付試験管に移し、タンパク質について分析し、10.0mg/mlに希釈し、使用まで4℃で保存した。上述のプロトコールを使って同様に該タンパク質を150mM NaClと0.05%アジ化ナトリウムを含む50mMクエン酸ナトリウム, pH 5.5中に移した。
【0062】
iii .2B8 とMX-DTPA の接合
2B8 とMX-DTPA の接合は、周囲温度でポリプロピレン試験管中で実施した。凍結したMX-DTPA 原液を使用直前に解凍した。10mg/mlのタンパク質50〜200 mlを、4:1のMX-DTPA :2B8 のモル比においてMX-DTPA と反応させた。MX-DTPA 原液を添加しそして穏やかに混合することにより反応を開始した。接合は周囲温度で一晩(14〜20時間)進行させておいた。実施例I. B. ii. において上述したような0.05%アジ化ナトリウムを含む無金属生理的食塩水(0.9 %w/v )中への透析または反復限外濾過により、接合体から未反応のMX-DTPA を除去した。タンパク質濃度を10mg/mlに調整し、放射能標識するまでポリプロピレン試験管中に4℃で保存した。
【0063】
iv.MX-DTPA 取り込みの測定
シンチレーションカウンティングしそして精製接合体を使って得られた値を炭素[14]標識MX-DTPA の比活性と比較することにより、MX-DTPA の取り込みを測定した。非放射性MX-DTPA (Coulter Immunology)を使用した幾つかの研究には、該接合体を既知濃度と既知比活性のイットリウム[90]の過剰の放射性担体溶液と共にインキュベートすることにより、MX-DTPA 取り込みを評価した。
【0064】
既知濃度の塩化イットリウムの原液を無金属の0.05 N HCl中に調製し、そこに無担体のイットリウム[90](塩化物塩)を加えた。この溶液のアリコートを液体シンチレーションカウンティングにより分析し、この試薬の正確な比活性を決定した。抗体に結合させようとするキレートのモル数の3倍に等しい塩化イットリウム試薬の量(典型的には2モル/モル抗体)をポリプロピレン試験管に加え、2M酢酸ナトリウムでpHを4.0-4.5 に調整した。次いで接合抗体を加え、混合物を周囲温度で15〜30分間インキュベートした。20mM EDTAを1 mMの最終濃度に加えることにより反応を失活させ、そして2M酢酸ナトリウムを使って溶液のpHを約pH 6に調整した。
【0065】
5分間のインキュベーション後、全容量を高性能サイズ排除クロマトグラフィー(後述)により精製した。溶出されたタンパク質含有画分を合わせ、タンパク質濃度を測定し、そしてアリコートを放射能についてアッセイした。塩化イットリウム[90]調製物の比活性とタンパク質濃度を使ってキレートの取り込みを算出した。
【0066】
v.2B8-MX-DTPA の免疫反応性
全細胞ELISA を使って接合2B8 の免疫反応性を評価した。対数期中期のSB細胞を遠心により培養物から収得し、1×HBSSで2回洗浄した。細胞をHBSS中1〜2×106 細胞/mlに希釈し、50,000〜100,000 細胞/ウエルになるように96ウエルのポリスチレンマイクロタイタープレート中にアリコートに分けた。プレートを40〜45℃にて2時間真空乾燥して細胞をプラスチックに固定させた。使用するまで該プレートを−20℃で保存した。アッセイ用に、使用直前にプレートを周囲温度に温め、次いで1% BSAを含有する 1×PBS, pH 7.2-7.4 でブロックした(2時間)。アッセイ用試料を 1×PBS /1% BSA中に希釈し、プレートに添加し、同緩衝液中に系列希釈(1:2)した。
【0067】
プレートを周囲温度で1時間インキュベートした後、1×PBS で3回プレートを洗浄した。二次抗体(ヤギ抗マウスIgG1特異的HRP 接合体、50μl)をウエルに添加し(1×PBS /1% BSA中1:1500希釈液)、そして周囲温度で1時間インキュベートした。プレートを1×PBS で4回洗浄した後、ABTS基質溶液(0.01% ATBSと0.001% H2O2 を含有する50mMクエン酸ナトリウム、pH 4.5)を加えた。15〜30分間インキュベーション後、プレートを405 nmで読んだ。非特異的結合をモニタリングするために抗原陰性HSB 細胞をアッセイに含めた。吸光度値を各希釈率に対してプロットし、そして同一プレート上で試験した未変性抗体から得られた値(100 %免疫反応性を意味する)と比較することにより、該接合体の免疫反応性を計算した。滴定プロフィールの直線部分上にある数個の値を比較し、平均値を決定した。
【0068】
vi.インジウム[111] 標識2B8-MX-DTPA ("I2B8")の調製
無担体インジウム[111] を使って接合体を放射能標識した。0.05M HCl 中の同位体のアリコート(0.1 〜2 mCi /mg抗体)をポリプロピレン試験管に移し、約1/10容の無金属2M HClを加えた。5分間インキュベーション後、無金属2M酢酸ナトリウムを加え、該溶液をpH 4.0-4.4に調整した。生理的食塩水中、または0.05%アジ化ナトリウムを含む50mMクエン酸ナトリウム/150mM NaCl中の10.0mg/ml DTPA 原液から約0.5 mgの2B8-MX-DTPA を加え、次いで該溶液を即座に穏やかに混合した。pH試験紙で溶液のpHを調べ、4.0 〜4.5 の値であることを確認し、該混合物を周囲温度で15〜30分間インキュベートした。次いで、20mM EDTA を1 mMの最終濃度になるように加えることにより反応を失活させ、2M酢酸ナトリウムを使って反応混合物を約pH 6.0に調整した。
【0069】
5〜10分間のインキュベーション後、結合しなかった放射性同位体をサイズ排除クロマトグラフィーにより除去した。HPLC装置は、それぞれWaters U6KまたはRheodyne 700注入弁を備えた Waters Model 6000またはTosoHaas Model TSK-6110 溶媒供給システムから成った。クロマトグラフィー分離は、ゲル浸透カラム(BioRad SEC-250;7.5 ×300 mmまたは同等のTosoHaasカラム)とSEC-250 ガードカラム(7.5 ×100 mm)を使って実施した。このシステムに、フラクションコレクター(Pharmacia Frac200 )および280 nmフィルターを取り付けたUVモニター(Pharmacia model UV-1)を装備した。試料を適用し、1×PBS, pH 7.4 を使って1.0 ml/分の流速で溶離させた。1/2 ml画分をガラス試験管中に収集し、それらのアリコートをγカウンター中でカウントした。上下の窓をそれぞれ100 と500 KeV に設定した。
【0070】
溶出したタンパク質ピークに関連する放射能を加算し、そしてこの数をカラムから溶出された全放射能で割ることにより、放射能取り込みを算出した。次いでこの値を百分率(%)として表した(データは示してない)。或る場合には、即席薄層クロマトグラフィー("ITLC")を使って放射能取り込みを測定した。放射能標識接合体を1×PBS 中または1×PBS /1mM DTPA中に1:10または1:20希釈し、次いで1μlをITLC SG 紙の1×5cm片の一端から1.5 cmのところにスポットした。この紙をメタノール:水(1:1, v/v)中の10%酢酸アンモニウムを使った上昇クロマトグラフィーにより展開した。紙片を乾燥し、横に半分に切り、γカウンティングにより各部分に結合した放射能を測定した。紙片の下半分に結合した放射能(タンパク質結合放射能)を、上半分と下半分の両方の値を加算することにより決定された全放射能の百分率として表した(データは示してない)。
【0071】
放射能標識接合体の適当なアリコートの放射能を測定することにより、比活性を決定した。この値をカウンター効率(典型的には75%)について補正し、280 nmでの吸光度により前に決定された該接合体のタンパク質濃度と関連させ、得られた値をmCi /mgタンパク質として表した。
ある実験では、上述のものと同様であるがHPLCによる精製を実施しないプロトコールに従って、2B8-MX-DTPA をインジウム[111] で放射能標識した。これを「ミックス&シュート」プロトコールと名付けた。
【0072】
vii .イットリウム[90]標識2B8-MX-DTPA ("Y2B8")の調製
2 ng HClを使用しないこと以外、I2B8の調製について記載したのと同じプロトコールに従ってイットリウム[90]標識2B8-MX-DTPA ("Y2B8")を調製した。イットリウム標識接合体の全調製物は上述のものと同じサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。
【0073】
C.非ヒト動物実験
i.放射能標識2B8-MX-DTPA の生体内分布
I2B8を6〜8週齢のBALB/cマウスにおいて組織分布について評価した。上述の「ミックス&シュート」プロトコールに従って臨床用2B8-MX-DTPA を使って放射能標識接合体を調製した。該接合体の比活性は 2.3 mCi/mgであり、該接合体を50mg/ml HSAを含むPBS, pH 7.4 中に配合した。
【0074】
マウスに100 μlのI2B8(約21μCi)を静注し、3匹のマウスのグループを0, 24, 48 および72時間目に頸部脱臼により犠牲にした。犠牲後、尾、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉および大腿を取り出し、洗浄し、重さを量った。分析のため血液試料も採取した。各標本に結合した放射能をガンマカウンティングにより測定し、次いで組織1gあたりの%注入線量を決定した。個々の器官に付随する血液により与えられる活性寄与を割り引く試みは行わなかった。
【0075】
別のプロトコールでは、4℃と30℃で10週間インキュベートした2B8-MX-DTPA のアリコートを両調製物について 2.1 mCi/mgの比活性になるようにインジウム[111] で放射能標識した。次いでそれらの接合体を上述と同じマウスでの生体内分布実験に使用した。
線量計測のため、2B8-MX-DTPA を2.3 mCi /mgの比活性になるようにインジウム[111] で放射能標識し、そして約1.1 μCiを20匹のBALB/cマウスの各々に注射した。次いで、各々5匹のマウスから成るグループを1, 24, 48 および72時間目に犠牲にし、それらの器官を取り出し、分析用に調製した。加えて、皮膚、筋肉および骨の一部分を取り出し、分析用に処理し、尿と糞便も収集し、24〜74時間の時点で分析した。
【0076】
同様のアプローチを使って2B8-MX-DTPA をイットリウム[90]でも放射能標識し、その生体内分布を72時間に渡りBALB/cマウスにおいて評価した。HPLCサイズ排除クロマトグラフィーによる精製の後、各々5匹のマウスから成るグループに臨床用に配合した約1μCiの接合体(比活性:12.2 mCi/mg)を静注し、次いで1, 24, 48 および72時間目にマウスを犠牲にし、それらの器官と組織を上述の如く分析した。γシンチレーションカウンターを使って制動放射エネルギーを測定することにより、各組織標本に結合した放射能を決定した。次いで活性値を%注入線量/g組織としてまたは%注入線量/器官として表した。器官または他の組織を繰り返しすすいで血液を除去したが、器官に灌流は行わなかった。よって、内部に付随した血液により与えられる活性寄与について器官活性値を割り引かなかった。
【0077】
ii.I2B8の腫瘍局在化
放射能標識2B8-MX-DTPA の局在化は、ラモスB細胞腫を有する無胸腺症マウスにおいて測定した。6〜8週齢の無胸腺症マウスに、無胸腺症マウス中での増殖用に前に順応させておいた1.2 ×107 個のラモスB細胞腫を含む0.1 mlのRPMI-1640 を皮下注射(左後方側腹部)した。腫瘍は2週間以内に出現し、0.07〜1.1 グラムの重さに及んだ。マウスに100 μlのインジウム[111] 標識2B8-MX-DTPA (16.7μCi)を静注し、0, 24, 48 および72時間目に頸部脱臼により3匹のマウスのグループを犠牲にした。犠牲後、尾、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉、大腿および腫瘍を取り出し、洗浄し、重さを量った。分析用に血液試料も採取した。各標本に結合した放射能をγカウンティングにより測定し、%注入線量/g組織を測定した。
【0078】
iii .放射能標識2B8-MX-DTPA を使った生体内分布および腫瘍局在化実験
上述した予備的生体内分布実験(実施例I. B. viii. a. )に従って、接合2B8 をインジウム[111] で2.3 mCi /mgの比活性に放射能標識し、およそ1.1 μCiを20匹のBALB/cマウスの各々に注射して放射能標識物質の生体内分布を調べた。続いて、各々5匹から成るグループを1, 24, 48 および72時間目に犠牲にし、それらの器官と皮膚、筋肉および骨の一部分を取り出し、分析用に処理した。加えて、尿と糞便も収集し、24〜72時間の時点に渡り分析した。
【0079】
血液中の放射能レベルは、1時間目の40.3%の注入線量/gから72時間目には18.9%へと低下した(データは示してない)。心臓、腎臓、筋肉および脾臓の値は実験の間中0.7 〜9.8 %の範囲にとどまった。肺に検出される放射能のレベルは、1時間目の14.2%から72時間目に7.6 %に減少し;同様に、それぞれの肺の注入線量/gの値は10.3%と9.9 %であった。それらのデータは、後述するI2B8の放射線吸収線量推定値を決定する際に使用した。
【0080】
12.2 mCi/mg抗体の比活性を有するイットリウム[90]標識抗体の生体内分布をBALB/cマウスにおいて評価した。>90%の放射能取り込みが得られ、放射能標識抗体をHPLCにより精製した。放射能の組織沈着を主要器官並びに皮膚、骨および尿と糞便において72時間に渡り評価し、そして%注入線量/g組織として表した。
【0081】
結果(示してない)は、血液に関係する放射能レベルが1時間目の約39.2%注入線量/gから72時間後はほぼ15.4%に低下し、一方で尾、心臓、肝臓、筋肉および脾臓に関係する放射能は実験の間中10.2%またはそれ未満でまったく一定のままであった。重要なことには、骨に関係する放射能は1時間目の4.4 %の注入線量/g骨から72時間目の3.2 %までに及んだ。それらの結果を合わせると、該接合体に結合した遊離のイットリウムがほとんどなかったこと、そして遊離の放射性金属がほとんど実験の間に放出されなかったことを示唆する。それらのデータは、後述するY2B8の放射線吸収線量推定値を決定する際に使用した。
【0082】
腫瘍局在化実験のため、2B8-MX-DTPA を調製し、インジウム[111] で2.7 mCi/mgの比活性に放射能標識した。100 μlの標識接合体(約24μCi)を、ラモスB細胞腫を有する12匹の無胸腺症マウスの各々に注射した。腫瘍は0.1 〜1.0 グラムの範囲であった。注射後0, 24, 48 および72時間目の時点で眼窩後方穿刺により50μlの血液を採取し、そして尾、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉、大腿および腫瘍を取り出した。組織を処理して重さを量った後、各組織標本に結合した放射能をγカウンターにより測定し、gあたりの%注入線量として表した。
【0083】
結果(示してない)は、111In-2B8-MX-DTPA の腫瘍濃度が実験の進行の間中一様に増加することを証明した。注入線量の13%が72時間後に腫瘍に蓄積された。対比して、血液レベルは、0時での30%から72時間目の13%へと実験の間に低下した。他の全ての組織(筋肉を除く)は、実験の終了までに1.3 〜6.0 %注入線量/g組織を含んだ。筋肉組織は約13%注入線量/gを含んだ。
【0084】
D.ヒト実験
i.2B8 と2B8-MX-DTPA :ヒト組織を使った免疫組織学的研究
アセトンで固定した32の異なるヒト組織のパネルを使ってマウスモノクローナル抗体 2B8の組織反応性を評価した。抗体2B8 は、非常に限定された組織分布パターンを有した抗CD20抗原と反応する。該抗原は、造血起源のものを含むリンパ系組織中の細胞のサブセットにおいてのみ観察される。
【0085】
リンパ節では、免疫反応性は皮質性成熟Bリンパ球集団と、胚中心の増殖細胞において観察された。末梢血、扁桃のB細胞領域、脾臓の白色脾髄、および胸腺中に見つかる髄質リンパ球の40〜70%で陽性の反応性が観察された。陽性の反応性は大腸の粘膜固有層のリンパ小節(パイアー斑)においても認められた。最後に、膀胱、乳房、頸、食道、肺、耳下腺、前立腺、小腸および胃を含む種々の器官の支質中の集合または散在リンパ系細胞も、抗体2B8 に陽性であった(データは示してない)。
【0086】
全ての単純な上皮細胞、並びに種々の器官の重層上皮および上皮は、非反応性であることがわかった。同様に、大脳、脊髄および末梢神経中のものを含む神経外胚葉細胞では全く反応性が観察されなかった。間葉要素、例えば骨格筋および平滑筋細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、並びに多形核炎症細胞も陰性であることがわかった(データは示してない)。
【0087】
アセトンで固定されている16のヒト組織のパネルを使って2B8-MX-DTPA 接合体の組織反応性を評価した。未接合抗体を使って前に証明されたように(データは示してない)、2B8-MX-DTPA 接合体は、高度に限定された分布パターンを示しリンパ系起源の細胞のサブセットの上にのみ見つかるCD20抗原を認識する。リンパ節では、B細胞集団に免疫反応性が観察された。脾臓の白色脾髄と胸腺の髄質リンパ球において強い反応性が観察された。膀胱、心臓、大腸、肝臓、肺および子宮中の散在リンパ球においても免疫反応性が観察され、これはそれらの組織中にある炎症細胞の存在に起因するものであった。未接合抗体と同様に、神経外胚葉細胞または間葉要素では全く反応性が観察されなかった(データは示してない)。
【0088】
ii.I2B8(画像診断)およびY2B8(治療)の臨床分析
a.第I/II相臨床実験:単一線量療法研究
I2B8(画像診断)の第I/II相臨床分析に続くY2B8の単一治療線量での処置を目下実施している。単一線量研究では、次のスキームに従う:
1.灌流による末梢幹細胞(PSC) または骨髄(BM)の収得;
2.I2B8画像診断;
3.Y2B8治療(3つの線量レベル);および
4.PSC または自己BM移植(必要なら、連続3日間の500 /mm3 以下の絶体好中球数または20,000/mm3 以下の血小板数に基づいて、骨髄検査に関する骨髄回収の証拠なしで)
Y2B8の線量レベルは次の通りである:
【0089】
【表1】

最大耐容線量("MTD" )の決定のため上記線量レベルの各々で3人の患者を処置する。
【0090】
画像診断(線量計測)実験を次の通り実施する:各患者を、2通りのI2B8を使った生体内分布実験に含める。第一の実験では、2 mgのI2B8 (5mCi) を1時間に渡り点滴静注(i.v.)として投与し、1週間後に2B8 (即ち未接合抗体)を250 mg/時間を越えない速度でi.v.により投与し、その後すぐに2 mgのI2B8 (5 mCi)を1時間に渡りi.v.により投与した。両実験とも、I2B8点滴静注後すぐに、各患者を画像診断し、画像診断をt=14〜18時間(指摘した場合);t=24時間;t=72時間;およびt=92時間(指摘した場合)の時点で繰り返した。インジウム[111] 標識についての全身平均保持時間を測定した。そのような測定を識別可能な器官または腫瘍病巣(「着目領域」)についてもおこなった。
【0091】
着目領域を該標識の全身濃度と比較する;この比較に基づいて、標準プロトコールを使ってY2B8の局在化と濃度の推定値を決定することができる。Y2B8の推定蓄積線量が推定全身線量の8倍より大きければ、または肝臓の推定蓄積線量が1500 cGyを越えるならば、Y2B8を使った治療は行うべきでない。
画像診断実験が許容できれば、0.0 または1.0 mg/kg患者体重の2B8 を点滴静注により250 mg/時間を越えない速度で投与する。この後、Y2B8 (10, 20または40 mCi) を20 mCi/時間の点滴静注速度で投与する。
【0092】
b.第I/II相臨床実験:複数線量療法実験
Y2B8の第I/II相臨床分析を現在実施している。複数線量研究の場合、次のスキームに従っている:
1.PSC またはBMの収得;
2.I2B8画像診断
3.4線量または80 mCiの全蓄積線量でのY2B8治療(3線量レベル);および
4.PSC または自己BM移植(臨床医の決定に基づく)
Y2B8の線量レベルは次の通りである:
【0093】
【表2】

【0094】
MTD の決定のため3人の患者を上記線量レベルの各々で処置する。
画像診断(線量計測)実験を次の通り実施する:最初の2人の患者を使って未標識抗体(即ち2B8 )の好ましい画像診断線量を決定する。最初の2人の患者に250 ccの生理的食塩水中の100 mgの未標識2B8 を4時間に渡り投与し、次いで0.5 mCi のI2B8を投与する--t=0、t=10分、t=120 分、t=24時間およびt=48時間の時点で生体内分布データ用に血液をサンプリングする。t=2時間、t=24時間およびt=48時間の時点で患者を多領域γカメラ画像でスキャンする。t=48時間でスキャンした後、患者に上述と同様に250 mgの2B8 に次いで4.5 mCi のI2B8を投与する--- 次いで上述と同様に採血とスキャンニングを行う。
【0095】
100 mgの2B8 が良好な画像を生成したら、次の2人の患者に上述と同様に50mgの2B8 を投与し、その後で0.5 mCi のIB28、その48時間後に100 mgの2B8 、次いで4.5 mCi のI2B8を投与する。250 mgの2B8 が良好な画像を生成したら、次の2人の患者に上述と同様に250 mgの2B8 を投与し、その後で0.5 mCi のIB28、その48時間後に500 mgの2B8 、次いで4.5 mCi のI2B8を投与する。その次の患者は最適な画像を生成する2B8 の最小量で処理する。最適な画像化は(1) 抗体が最も遅く消失する最も効率的な画像化;(2) 単一器官中の区画化を最小にする最良分布;および(3) 病変の最良の対象分解能(腫瘍/バックグラウンド対比)により定義されるだろう。
【0096】
最初の4人の患者には、最終線量のI2B8の14日後に、第一の治療線量のY2B8を開始する。その後の患者には、I2B8の2〜7日後に第一の治療線量のY2B8を開始する。
Y2B8での処置の前に、最初の4人を除く患者には、上述と同様に2B8 を投与し、次いで5 〜10分間に渡りY2B8を点滴静注により投与する。t=0、t=10分、t=120 分、t=24時間およびt=48時間の時点で生体内分布用に血液をサンプリングする。患者にほぼ6〜8週間毎にそれぞれの線量のYB28(第一の線量の場合と同じ線量を投与する)を4線量の最大値または80 mCiの全蓄積線量になるように投与する。患者のWBC が3,000 以上であり且つAGC が1000,000以上となるまで、患者に次の線量のY2B8を投与しないことが最も好ましい。
3線量レベル実験の完了の後、MTD の範囲を限定する。次いで追加の患者を実験に登録し、MTD を投与する。
【0097】
II.キメラ抗CD20抗体の産生("C2B8")
A.キメラ抗CD20免疫グロブリンDNA発現ベクターの作製
2B8 マウスハイブリドーマ細胞からRNAを単離し(Chomczynki, P.ら、"Single step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction." Anal.Biochem. 162:156-159 (1987)に記載された通りに)、そしてそれからcDNAを調製した。5′末端においてマウス軽鎖シグナル配列と相同性を有するDNAプライマーと3′末端においてマウス軽鎖J領域と相同性を有するDNAプライマーのセットを使ったポリメラーゼ連鎖反応により、該cDNAからマウス免疫グロブリン軽鎖可変領域DNAを単離した。プライマー配列は次の通りであった:
【0098】
1.VL センス(配列番号3)
5' ATC AC AGATCT CTC ACC ATG GAT TTT CAG GTG CAG ATT ATC AGC TTC 3'
(下線を引いた部分はBgl II部位であり、上に線を引いた部分は開始コドンである)
2.VL アンチセンス(配列番号4)
5' TGC AGC ATC CGTACG TTT GAT TTC CAG CTT 3'
(下線を引いた部分はBsi WI部位である)
TCAE 8中の対応するBgl II部位とBsi WI部位については図1および図3を、そしてTCAE 8中の抗CD20中の対応する部位については図12〜21を参照のこと。
【0099】
生成したそれらのDNA断片を、TCAE 8ベクター中にヒトκ軽鎖定常領域の前のところに直接クローニングし、配列決定した。マウス可変領域軽鎖について決定されたDNA配列を図22(配列番号5)に示す。図13のヌクレオチド978 〜1362も参照のこと。図22は更に、このマウス可変領域、CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列も提供する。2B8 からのマウス軽鎖可変領域はマウスκVIファミリーに属する。Kabat (前掲)を参照のこと。
【0100】
同様にマウス重鎖可変領域を単離し、ヒトIgG1定常領域の前にクローニングした。プライマーは次の通りであった:
1.VH センス(配列番号6)
5' GCG GCT CCC ACGCGT GTC CTG TCC CAG 3'
(下線を引いた部分はMlu I部位である)
2.VH アンチセンス(配列番号7)
5' GG(G/C) TGT TGT GCTAGC TG(A/C) (A/G)GA GAC (G/A)GT GA 3'
(下線を引いた部分はNhe I部位である)
【0101】
TCAE 8中の対応する MluI部位と NheI部位については図1および図4を、そしてTCAE 8中の抗CD20中の対応する部位については図12〜21を参照のこと。
このマウス重鎖配列は図23(配列番号8)に示される。図14〜15のヌクレオチド2401〜2820も参照のこと。図23はこのマウス可変領域、CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列も提供する。2B8 からのマウス重鎖可変領域はマウスVH 2B ファミリーに属する。
Kabat (前掲)を参照のこと。
【0102】
B.キメラ抗CD20産生CHO およびSP2/0 トランスフェクトーマの作製
チャイニーズハムスター卵巣("CHO") 細胞DG44はヒポキサンチンとチミジンを欠くSSFM II 培地(Gibco, Grand Island, NY, Form No.91-0456PK)中で増殖させ;SP2/0 マウスミエローマ細胞は5%ウシ胎児血清と20ml/lのグルタミンが補足されたダルベッコ改良イーグル培地("DMEM")(Irvine Scientific, Santa Ana, Ca.,カタログ No.9024)中で増殖させた。 0.4mlの使い捨てキュベット中でBTX 600 エレクトロポレーション装置(BTX, San Diego, CA)を使って、 NotIで制限された25μg のCHO または50μg のSP2/0 プラスミドDNAを用いて400 万個の細胞をエレクトロポレーションした。
【0103】
条件は、CHO の場合は210 ボルトまたはSP2/0 の場合は180 ボルト、400 マイクロファラデー、13オームであった。各エレクトロポレーション物を6枚の96ウエルプレート中に置いた(約7,000 細胞/ウエル)。エレクトロポレーションの2日後とコロニーが形成するまでそれから2または3日後に、CHO の場合は 400μg/ml活性化合物またはSP2/0 の場合は 800μg/mlにおいてG418(GENETICIN,Gibco,カタログNo. 860-1811)を含有する培地(培地は更に50μM ヒポキサンチンと8 μM チミジンを含有する)をプレートに供給した。
【0104】
コロニーからの上清を、ヒト抗体に特異的なELISA によりキメラ免疫グロブリンの存在についてアッセイした。最大量の免疫グロブリンを生産するコロニーを増殖させ、メトトレキセート(SP2/0 の場合は25 nM 、CHO の場合は5 nM)を含む培地を入れた96ウエルプレート中で平板培養し、2または3日毎に栄養補給した。上述の通り上清をアッセイし、最大量の免疫グロブリンを生産するコロニーを増殖させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使って上清からキメラ抗CD20抗体を精製した。
【0105】
精製したキメラ抗CD20抗体をポリアクリルアミドゲル中での電気泳動により分析し、約95%より高い純度であると見積もった。2B8 を基準にしてキメラ抗体の親和性と特異性を測定した。直接および競合結合アッセイにおいて試験したキメラ抗CD20抗体は、マウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 と比較すると、多数のCD20陽性B細胞系に対して同等の親和性と特異性を証明した(データは示してない)。125 I放射能標識キメラ抗CD20の直接結合により該キメラ抗体の見かけの親和定数("Kap" )を決定し、Scatchard プロットにより放射能標識2B8 と比較した。推定Kap はCHO で生産されたキメラ抗CD20抗体については5.2 ×10-9Mであり、SP2/0 で生産された抗体については7.4 ×10-9Mであった。
【0106】
2B8 についての推定Kap は3.5 ×10-9Mであった。ラジオイムノアッセイによる直接競合分析を使って、2B8 と効率的に競争する能力を比較することにより、該キメラ抗体の特異性と免疫反応性の保持の両方を確かめた。B細胞上のCD20抗原への結合を50%阻害するのに実質的に当量のキメラ抗CD20抗体と2B8 抗体が必要であった(データは示してない)。即ち、おそらくキメラ化によるのであろう抗CD20抗体の阻害活性の損失は最少であった。
実施例II. B. の結果は、特に、キメラ抗CD20抗体がTCAE 8ベクターを使ってCHO およびSP2/0 トランスフェクトーマから生産され、そしてそれらのキメラ抗体がマウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 と実質的に同じ特異性と結合力を有したことを指摘している。
【0107】
C.キメラ抗CD20抗体の免疫学的活性の測定
i.ヒトC1q 分析
CHO とSP2/0 の両細胞系により生産されたキメラ抗CD20抗体を、フルオレセイン標識C1q (C1q はQuidel, Mira Mesa, CA, Prod. No. A400 から得られ、そしてFITC標識はSigma, St. Louis MO, Prod. No. F-7250 から得られた)を使ったフローサイトメトリーアッセイにおいてヒトC1q 結合について評価した。C1q のFITC標識は、Selected Methods In Cellular Immunology, Michell & Shiigi 編(W.H. Freeman & Co., San Francisco, CA, 1980, p.292)に記載されたプロトコールに従って行った。Becton Dickinson FACScanTMフローサイトメーターを使って分析結果を誘導した(515 〜545 nmの領域に渡ってフルオレセインを測定した)。
【0108】
当量のキメラ抗CD20抗体、ヒトIgG1、κミエローマタンパク質(Binding Site, San Diego, Ca, Prod. No. BP078)および2B8 を当量数のCD20陽性SB細胞と共にインキュベートし、次いでFACS緩衝液(PBS 中 0.2% BSA,pH 7.4, 0.02% アジ化ナトリウム)での洗浄段階により未結合抗体を除去し、次いでFITC標識C1q と共にインキュベートした。30〜60分間のインキュベーション後、細胞を再び洗浄した。対照としてFITC標識C1q を含む3条件を、製造業者の取扱説明書に従ってFACScan TM上で分析した。結果を図24に与える。
図24の結果として、キメラ抗CD20抗体条件についてのみ蛍光の有意な増加が観察された。即ち、付着性キメラ抗CD20抗体を有するSB細胞のみがC1q 陽性であり、一方他の条件は対照と同じパターンを生じた。
【0109】
ii.補体依存性細胞溶解
キメラ抗CD20抗体をヒト血清(補体源)の存在下でリンパ腫細胞系を溶解する能力について分析した。100 μCiの51Crと1×106 個のSB細胞を37℃で1時間混合することにより、CD20陽性SB細胞を51Crで標識した。次いで標識SB細胞を、当量のヒト補体と当量(0〜50μg/ml)のキメラ抗CD20抗体または2B8 のいずれかの存在下で37℃にて4時間インキュベートした(Brunner, K.T. ら、"Quantitative assay of the lytic action of immune lymphoid cells on 51Cr-labeled allogeneic target cells in vitro." Immunology 14:181-189 (1968)を参照のこと)。結果を図25に与える。
図25の結果は、特に、キメラ抗CD20抗体がそれらの条件下で有意な溶解(49%)をもたらすことを示す。
【0110】
iii .抗体依存性細胞障害エフェクターアッセイ
このアッセイには、CD20陽性細胞(SB)とCD20陰性細胞〔T細胞白血病系HSB; Adams, Richard, "Formal Discussion," Can. Res. 27:2479-2482 (1967) を参照のこと;ATCC寄託番号ATCC CCL 120.1〕を使用した。両者を51Crで標識した。Brunner, K.T. ら、"Quantitative assay of the lytic action of immune lymphoid cells on 51Cr-labeled allogeneic target cells in vitro ; inhibition by isoantibody and drugs." Immunology 14:181-189 (1968)中に記載されたプロトコールに従って分析を行った。
【0111】
37℃で4時間のインキュベーションの終わりにCD20陽性SB標的細胞(51Cr標識したもの)の実質的なキメラ抗CD20抗体依存性細胞媒介性溶解を観察し、そしてこの作用をCHO とSP2/0 により生産された抗体の両方について観察した(エフェクター細胞はヒト末梢リンパ球であり;エフェクター細胞:標的の比は 100:1であった)。標的細胞の効率的溶解は3.9 μg/mlにおいて観察された。これに対して、同一条件下で、マウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 は統計上有意でない作用を有し、そしてCD20陰性HSB 細胞は溶解されなかった。結果を図26に与える。
実施例IIの結果は、特に、実施例Iのキメラ抗CD20抗体が免疫学的に活性であったことを示す。
【0112】
III .キメラ抗CD20を使った生体内B細胞の涸渇
A.非ヒト霊長類実験
3種類の別々の非ヒト霊長類実験を実施した。便宜上、それらを「キメラ抗CD20 : CHO & SP2/0」、「キメラ抗CD20 : CHO」および「高用量キメラ抗CD20」と名付ける。条件は次の通りであった。
キメラ抗CD20 : CHO & SP2/0
【0113】
4.5 〜7 kgの体重を有する6匹のマカクザル(White Sands Research Center, Alamogordo, NM )を各々2匹のサルの3グループに分けた。各グループの両方のサルに同用量の免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体を投与した。各グループの一方のサルにはCHO トランスフェクトーマにより生産された精製抗体を投与し、他方のサルにはSP2/0 により生産された抗体を投与した。3つのグループには、連続4日間に渡りそれぞれ0.1 mg/kg、0.4 mg/kgおよび1.6 mg/kgに相当する抗体量を毎日投与した。免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体は、生理的食塩水と混合して点滴静注により投与した。各点滴静注の前に血液試料を採取した。最後の注入の24時間後(T=0)に始まり、その後第 1, 3, 7, 14および28日にも追加の血液試料を採取した。血液試料はその後、第90日に実験が終了するまで二週間間隔で採取した。
【0114】
各動物からの約5mlの全血を2000 RPMで5分間遠心分離した。可溶性キメラ抗CD20抗体レベルのアッセイ用に血漿を除去した。ペレット(末梢血白血球と赤血球を含有する)は蛍光標識抗体分析用にウシ胎児血清中に再懸濁した(下記の「リンパ系細胞集団の蛍光抗体標識」を参照のこと)。
キメラ抗CD20 : CHO
【0115】
4.5 〜6 kgの体重を有する6匹のマカクザル(White Sands )を各々2匹のサルの3グループに分けた。全動物にCHO トランスフェクトーマにより生産された免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体(無菌の食塩水中)を投与した。3つのグループを次の通りに分けた:サブクループ1には4日間に渡り0.01mg/kgの抗体を毎日静注し;サブクループ2には4日間に渡り0.04mg/kgの抗体を毎日静注し;サブクループ3には6.4 mg/kgの抗体を1回静注した。
【0116】
3つのサブグループ全てについて、処置の開始前に血液試料を得、更に、上述のような最後の注射後のT=0, 1, 3, 7, 14および28日目においても血液試料を採取した。それらの試料を蛍光標識抗体分析用に処理した(下記の「蛍光抗体標識」を参照のこと)。末梢血B細胞の定量に加えて、最後の注射後7, 14 および28日目にリンパ節生検試料を取り、そして単細胞集団をフローサイトメトリーによるリンパ球集団の定量用に染色した。
【0117】
高用量キメラ抗CD20
2匹のマカクザル(White Sands )に、CHO トランスフェクトーマから生産された16.8mg/kgの免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体(無菌の食塩水中)を連続4週間の期間に渡り毎週点滴注入した。処置の終わりに、骨髄切除のために両動物を麻酔した。リンパ節生検試料も取った。両方の組織セットを、Ling, N.R.ら、"B-cell and plasma cell antigens." Leucocyte Typing III White Cell Differentiation Antigens, A.J. McMichael 編 (Oxford University Press, Oxford UK, 1987), p.302に記載されたプロトコールに従って、Bリンパ球の存在下でフローサイトメトリーによりLeu 16で染色した。
【0118】
リンパ系細胞集団の蛍光抗体標識
血漿の除去後、白血球をハンクス平衡塩類溶液("HBSS")で2回洗浄し、血漿と同容量のウシ胎児血清(56℃で30分間熱不活性化したもの)中に再懸濁する。この細胞調製物の0.1 ml容量を6本の15ml遠心管の各々に分配した。TおよびBリンパ球集団を同定するために、ヒトリンパ球表面マーカーCD2 (AMAC, Westbrook, ME) 、CD20 (Becton Dickinson) およびヒトIgM (Binding Site, San Diego, CA) に対して特異性を有する蛍光標識モノクローナル抗体を3本の試験管に加えた。全ての試薬は対応するサルリンパ球抗原に陽性であることを前に試験しておいた。
【0119】
4本目の試験管において、フィコエリスリンと接合させたポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(AMAC)を使って、サルB細胞表面CD20に結合したキメラ抗CD20抗体を測定した。この試薬は、サルIgに対する交差反応性を除去するためにサルIg−セファロースカラム上に予備吸着させてあり、よって細胞に結合したキメラ抗CD20抗体の特異的検出および定量が可能である。5本目の試験管は、二重染色B細胞集団のために抗IgM と抗ヒトIgG 試薬の両方を含んだ。6本目の試験管は自己蛍光の測定のために全く試薬を含まなかった。
【0120】
細胞を蛍光抗体と共に30分間インキュベートし、洗浄し、そして0.5 mlの固定緩衝液(0.15M NaCl, 1%パラホルムアルデヒド, pH 7.4)で固定し、そしてBecton Dickinson FACScanTM装置上で分析した。未標識の白血球を使ったドットプロットビット地図において前方対直角光散乱器により最初にリンパ球集団が同定された。次いで他の全ての現象をゲート制御することにより、全リンパ球集団が単離された。その後の蛍光測定は、ゲート制御されたリンパ球特異的現象のみを反映した。
【0121】
末梢血Bリンパ球の涸渇
生体内のB細胞を涸渇させることにおいてCHO とSP2/0 により生産された抗体の効力の間には何ら観察できる差は確認できなかったが、CHO トランスフェクトーマから誘導されたキメラ抗CD20抗体を1.6 mg/kgと6.4 mg/kgの用量レベルで注射したサルと、SP2/0 により生産された抗体を0.4 mg/kgの用量レベルで注射したサルについては、第7日後に始まるB細胞再生のわずかな増加が観察された。図27、図28および図29はキメラ抗CD20 : CHO & SP2/0実験から得られた結果を与え;図27は0.4 mg/kg用量レベルに向けられ;図28は1.6 mg/kg用量レベルに向けられ;そして図29は6.4 mg/kg用量レベルに向けられる。
【0122】
図27〜29から明らかなように、全ての試験用量範囲に渡って治療処置後に末梢血B細胞レベルの大幅な減少(>95%)が認められ、それらのレベルが注入後7日間まで維持された。この期間の後でB細胞再生が始まり、そして再生開始の時期は用量レベルに無関係であった。
【0123】
キメラ抗C20:CHO 実験では、4回の毎日の注射(合計0.04mg/kg)に渡り1/10の抗体用量濃度(0.01mg/kg)を使用した。図30はこの実験の結果を与える。この用量は、抗表面IgM またはLeu 16抗体のいずれかを使って推定される正常レベルの約50%へ末梢血B細胞集団を涸渇させた。この結果は、免疫学的に活性なキメラ抗CD20を使って非ヒト霊長類に対してこの期間に渡りこの用量濃度でBリンパ球集団上のCD20抗原の飽和が達成されなかったことも示す。治療処置後最初の3日間の間は血液試料中に該抗体で覆われたBリンパ球が検出された。しかしながら、7日目までには、抗体で覆われた細胞は検出できなくなった。
【0124】
表3は、末梢血集団に対する免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の単一用量および複数用量の結果を要約する。単一用量条件は6.4 mg/kgであり;複数用量条件は連続4日間に渡る0.4 mg/kgであった(それらの結果は上述のサルから誘導された)。
【0125】
【表3】

【0126】
表3に要約したデータは、抗体過剰の条件下での末梢血中のB細胞の涸渇が単一または複数用量レベルにかかわらず迅速且つ効率的に起こったことを示す。更に、最後の注射後少なくとも7日間は涸渇が観察され、21日目までに部分的なB細胞再生が観察された。
表4は、表3の治療方法を使ったリンパ節の細胞集団に対する免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の効果を要約する(0.4 mg/kgの4日分量;6.4 mg/kgの1回量);正常リンパ節(対照サル、腋窩およびそ径部)および正常骨髄(2匹のサル)についての比較値も提供する。
【0127】
【表4】

【0128】
表4の結果は、両治療方法についてBリンパ球の効率的涸渇を証明する。表4は更に、非ヒト霊長類について免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体によるリンパ系組織中のB細胞の完全な飽和が達成されなかったことも示す。その上、抗体で覆われた細胞が処置後7日目に観察され、次いで14日目にはリンパ節B細胞の著しい涸渇が観察された。
【0129】
このデータに基づき、主に薬物学/毒物学測定の方に目を向けながら、上記に言及した単一高用量キメラ抗CD20実験を実施した。即ち、この実験はキメラ抗体の投与に関連する何らかの毒性、並びに末梢血リンパ節と骨髄からのB細胞涸渇の効力を評価するために実施した。更に、表4のデータは、その実験で、処置後7〜14日目にリンパ節B細胞の大部分が涸渇され、毎週投薬法がより有効な結果を示すかもしれないことを指摘する。表5は高用量キメラ抗CD20実験の結果を要約する。
【0130】
【表5】

【0131】
両動物とも、対照リンパ節の場合の40%(上記表4参照)に比べて、治療停止後22日目に5%未満のB細胞を含むことを証明した。同様に、キメラ抗CD20抗体で治療した動物の骨髄では、正常動物の場合の11〜15%(上記表4参照)に比べて、CD20陽性細胞のレベルが3%未満であった。治療停止後36日目に評価した動物では、そのうちの1匹(H)はリンパ節中に約12%のB細胞と骨髄中に4.4 %のB細胞を有しており、別の動物(H)はリンパ節中に約5%のB細胞と骨髄中に0.8 %のB細胞を有していた。このデータは有意なB細胞涸渇を示している。
【0132】
実施例III.A. の結果は、特に、免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体が霊長類において長期の末梢血B細胞涸渇を引き起こすことを指摘する。該データはまた、該抗体の高用量を反復投与した時、末梢リンパ節と骨髄においてB細胞集団の有意な涸渇が達成されたことも示す。試験動物に対して継続して行った追跡調査は、治療の第一週の間にそのような末梢Bリンパ球の著しい涸渇があってさえも、何ら健康に悪影響が観察されなかったことも示した。更に、B細胞集団の再生が観察されたため、この治療によってそれらの霊長類の多能性幹細胞に悪影響はなかったという結論が引き出される。
【0133】
B.C2B8の臨床分析
i.C2B8の第I/II相臨床実験:単一用量療法研究
組織学的に実証されたB細胞リンパ腫を有する15人の患者を第I/II相臨床実験においてC2B8で処置した。用量増加実験において各患者に単一用量のC2B8を投与した;次の用量:10mg/m2 ;50mg/m2 ;100 mg/m2 ;250 mg/m2 および500 mg/m2 につき3人の患者を使用した。処置は、生理的食塩水中250 ccの最終容量または1mg/mlの最大濃度に希釈されたC2B8を、0.22ミクロンの並列フィルターを通して点滴静注することにより行った。初期速度は最初の1時間の間50cc/時であった。全く毒性が観察されなければ、投与速度を最大200 cc/時まで上げることが可能であった。
【0134】
毒性(臨床医により指摘される)は「無し」、「軽度」、「中程度」(2人の患者)そして「重度」(1人の患者)に渡った。全患者が治療処置を完了した。特にT細胞とB細胞に対するC2B8の効果を測定するために、末梢血リンパ球を分析した。全患者に一貫して、C2B8の点滴注入後に末梢血Bリンパ球が涸渇され、そしてそのような涸渇は二週間を越えて維持された。
【0135】
1人の患者(100 mg/m2 のC2B8を投与)は、C2B8処置に対して部分的応答(PR)(全ての測定可能な指標病巣の垂直直径の積の和に、4週間以上持続する50%以上の減少が観察され、その期間の間は全く新たな病巣が出現せず、現存する病巣はいずれも拡大しないであろう)を証明した。また、少なくとも1人の患者(500 mg/m2 を投与)はC2B8処置に対してわずかな応答(MR)(全ての測定可能な指標病巣の2つの最長垂直直径の積の和に、少なくとも25%で且つ50%未満の減少が観察される)を証明した。表示効率について、PBL の結果を図34〜35に与える;PRを示す患者のデータを図34に与え;MRを示す患者のデータを図35に与える。図34〜35において次のものを適用する:
【0136】
【表6】

【0137】
明らかなように、二週間以上の期間に渡りB細胞マーカーCD20とCD19、カッパおよびラムダが涸渇された。T細胞数のわずかな初期減少があったが、それらは比較的速い時間枠においてほぼ基準線レベルに戻った。
【0138】
ii.C2B8の第I/II相臨床実験:複数用量療法研究
測定可能な進行性疾患を伴う組織学的に確証されたB細胞リンパ腫を有する患者は、2部に分けられるこの実験に適格である。第I相は、用量制限する毒性を特徴づけるための用量増加と生物学的に活性な耐容量レベルの決定から成り、この段階では3人の患者から成るグループに合計4回の点滴静注による毎週の点滴静注を行う。3レベルの各々における蓄積量は次の通りである:500 mg/m2 (125 mg/m2 /点滴注入);1000mg/m2 (250 mg/m2 /点滴注入);1500mg/m2 (375 mg/m2 /点滴注入)。生物学的に活性な耐容用量は、耐容できる毒性と適度の活性の両方を有する最低用量として定義され、決定されるだろう。第II相では、C2B8の4回量の活性を決定することに重点をおいて、追加の患者に生物学的に活性な耐容用量を投与する。
【0139】
VI.組合せ療法:C2B8とY2B8
B細胞リンパ芽球腫(ラモス腫瘍細胞)を使用するマウス異種移植モデル(nu/nu マウス、雌、約10週齢)において、C2B8とY2B8を使った組合せ療法アプローチを研究した。比較目的で、別のマウスもC2B8とY2B8で処置した。
【0140】
ラモス腫瘍細胞(ATCC, CRL 1596)を、10%ウシ胎児血清とグルタミンが補足されたRPMI-1640 を使って37℃および5% CO2にて培養することにより維持した。25 gの針が付けられた1ccの注射器を使って0.10mlの容量(HBSS)で1.7 ×106 個のラモス細胞を皮下注射することにより、7〜10週齢の9匹の雌ヌードマウス中に腫瘍を発生させた。全ての動物は層状フローフードの中で処理し、そして籠、寝床、餌および水は全てオートクレーブ処理した。腫瘍を切除しそして40メッシュ網を通すことにより腫瘍細胞を濾過し、細胞を遠心分離(1300 RPM)により1×HBSS(50ml)で洗浄し、1×HBSS中に10×106 細胞/mlに再懸濁し、そして使用まで−70℃で凍結保存した。
【0141】
実験条件に向けて、幾つかの凍結ロットからの細胞を解凍し、遠心分離(1300 RPM)によりペレット化し、そして1×HBSSで2回洗浄した。次いで細胞を約2.0 ×106 細胞/mlに再懸濁した。約9〜12匹のマウスに、25 gの針が付けられた1ccの注射器を使って該細胞懸濁液0.1 mlを注射(s.c.)した。注射は動物の左側のほぼ中央領域に行った。腫瘍は約2週間で発達した。腫瘍を切除し、上述の通り処理した。実験用マウスには上述と同様にして0.10mlのHBSS中の1.67×106 細胞を注射した。
【0142】
予備的用量決定実験に基づいて、200 mgのC2B8と100 μCiのY2B8を実験に使用することを決定した。90匹の雌nu/nu マウス(約10週齢)に腫瘍細胞を注射した。約10日後、各グループにおいて同等の腫瘍サイズ分布(腫瘍の長さと幅の積として表される平均腫瘍サイズは約80 mm2であった)を維持することを試みながら、24匹のマウスを4つの実験グループ(6匹のマウス/グループ)に割り当てた。25 gの針が付けられた100 μlハミルトン注射器を使った尾静脈注射により、次のグループを指示の通り処置した:
【0143】
A.生理的食塩水
B.Y2B8 (100 μCi)
C.C2B8 (200 μg) および
D.Y2B8 (100 μCi) + C2B8 (200μg)
C2B8により試験したグループには、1回目の注射の7日後に2回目のC2B8注射(200 μg/マウス)を与えた。腫瘍測定はキャリパーを使って2または3日毎に行った。
処置材料の調製は次のプロトコールに従った:
【0144】
A.Y2B8の調製
塩化イットリウム[90](60 mCi)をポリプロピレン試験管に移し、無金属2M酢酸ナトリウムを使ってpH 4.1-4.4に調整した。2B8-MX-DTPA (生理的食塩水中0.3 mg;2B8-MX-DTPA の調製については上記を参照のこと)を加え、渦動攪拌により穏やかに混合した。15分間のインキュベーション後、0.05×容の20mM EDTA と0.05×容の2M酢酸ナトリウムを加えることにより反応を失活させた。この反応混合物 5.0μlを、75mg/ml HSAと1mM DTPAを含む2.5 mlの1×PBS (「配合緩衝液」)中に希釈することにより放射能濃度を測定した。
【0145】
計測は10.0μlを20mlのEcolume TMシンチレーションカクテルに添加することによって行った。反応混合物の残りを3.0 mlの配合緩衝液に加え、滅菌濾過し、使用まで2〜8℃で保存した。反応混合物に添加した抗体の量に基づいて算出されたタンパク質濃度と放射能濃度とを使って比活性(注射の時点で14 mCi/mg)を算出した。タンパク質に関係する放射能は即席薄層クロマトグラフィーを使って測定した。放射能取り込みは95%であった。Y2B8は使用直前に配合緩衝液中に希釈し、滅菌濾過した(最終放射能濃度は 1.0mCi /mlであった)。
【0146】
B.C2B8の調製
上記と同様にしてC2B8を調製した。C2B8は生理的食塩水中の無菌試薬として5.0 mg/mlで供給した。注射前に生理的食塩水中に2.0 mg/mlに希釈し、次いで滅菌濾過した。
C.結果
処置後、腫瘍サイズを長さと幅の積として表し、そして図31(Y2B8対食塩水);図32(C2B8対食塩水)および図34(Y2B8+C2B8対食塩水)に指摘した日に測定値をとった。標準誤差も決定した。
図34に示されるように、Y2B8とC2B8の組合せは、Y2B8またはC2B8のいずれかにより得られる効果と同等の殺腫瘍性効果を示した。
【0147】
V.別の治療方法
前の実施例を考慮して認められる別の治療方法は明らかである。1つのそのような方策は、C2B8の治療用量の後で約一週間以内に2B8 と放射能標識2B8 (例えばY2B8);または2B8, C2B8 およびY2B8;またはC2B8と例えばY2B8のいずれかの組合せを使用する。他の方策は放射能標識C2B8の使用である--- そのような方策はC2B8の免疫学的活性部分の利益に加えて放射能標識に関係する利益の利用を考慮したものである。好ましい放射能標識としては、マウス抗体2B8 に比較して大きなC2B8の循環半減期を仮定すればイットリウム90が挙げられる。
【0148】
B細胞を涸渇させるC2B8の能力と、放射能標識の使用から誘導されるであろう利益のため、好ましい別の方策は、全部ではないにしても大部分のB細胞が涸渇されてしまうように患者をC2B8で治療することである(単一用量または複数用量のいずれかで)。次いでこの後で放射能標識2B8 を使用する。末梢B細胞の涸渇のため、放射能標識2B8 が腫瘍細胞をターゲッティングする見込みがかなりある。この標識に関して文献中に報告された結果の型(Kaminski参照)を仮定すれば、ヨウ素[131] 標識2B8 が好ましく使用される。別の選択は、腫瘍の透過性を増加させようとして最初に放射能標識2B8 (またはC2B8)を使用し、次いでC2B8による1回または複数回処置を行うことを含む。
【0149】
この方策の意図は、腫瘍塊の内側と外側の両方に届くC2B8の機会を増加させることである。他の方策はC2B8と組み合わせた化学療法剤の使用を含む。それらの方策としては、いわゆる「互い違い」処置、即ち化学療法剤での処置の後でC2B8での処置、次いでこのプロトコールの反復、が挙げられる。あるいは、単一用量または複数用量のC2B8での最初の処置、その後で化学療法処置が有効である。好ましい化学療法剤としては、シクロホスファミド;ドキソルビシン;ビンクリスチン;およびプレドニソンが挙げられるがそれらに限定されない。Armitage, J.O.ら、Cancer 50:1695 (1982) を参照のこと。これは本明細書中に参考として組み込まれる。
上記の別の治療方法は限定のつもりでなくむしろ例示として与えられる。
【0150】
VI.寄託物情報
特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約( 「ブタペスト条約」)の規定のもとに、TCAE 8中の抗CD20(寄託の目的でE.コリ中に形質転換せしめたもの)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC), 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland, 20852に寄託した。該微生物は1992年11月9日にATCCにより試験され、そしてその日に生存可能であると決定された。ATCCはこの微生物に次のATCC寄託番号を付与した:ATCC 69119(TCAE 8中の抗CD20)。ブタペスト条約の規定のもとに1993年6月22日にハイブリドーマ2B8 をATCCに寄託した。該培養物の生存可能性は1993年6月25日に決定され、ATCCはこのハイブリドーマに次のATCC寄託番号を付与した:HB 11388。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の生産に有用な縦列式キメラ抗体発現ベクター ("TCAE 8") の略図である。
【図2】図2は、図1のベクターの核酸配列である。
【図3】図3は、図1のベクターの核酸配列である。
【図4】図4は、図1のベクターの核酸配列である。
【図5】図5は、図1のベクターの核酸配列である。
【図6】図6は、図1のベクターの核酸配列である。
【図7】図7は、図1のベクターの核酸配列である。
【図8】図8は、図1のベクターの核酸配列である。
【図9】図9は、図1のベクターの核酸配列である。
【図10】図10は、図1のベクターの核酸配列である。
【図11】図11は、図1のベクターの核酸配列である。
【図12】図12は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20" ) の核酸配列である。
【0152】
【図13】図13は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図14】図14は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20" ) の核酸配列である。
【図15】図15は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図16】図16は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20" ) の核酸配列である。
【図17】図17は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図18】図18は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20" ) の核酸配列である。
【図19】図19は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図20】図20は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図21】図21は、マウス軽鎖および重鎖可変領域を更に含んで成る図1のベクター("TCAE 8 中の抗CD20")の核酸配列である。
【図22】図22は、マウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 由来のマウス可変領域軽鎖の核酸配列とアミノ酸配列 (CDR とフレームワーク領域を含む) である。
【図23】図23は、マウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 由来のマウス可変領域重鎖の核酸配列とアミノ酸配列(CDR とフレームワーク領域を含む)である。
【図24】図24は、対照として標識C1q ;標識C1q とマウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 ;および標識C1q とヒトIgG1,kを含む、キメラ抗CD20抗体への蛍光標識ヒトC1q の結合を証明するフローサイトメトリー結果である。
【0153】
【図25】図25は、キメラ抗CD20抗体とマウス抗CD20モノクローナル抗体2B8 を比較する補体依存性連細胞溶解の結果を示す。
【図26】図26は、キメラ抗CD20抗体と2B8 を比較する生体内ヒトエフェクター細胞による抗体媒介性細胞障害の結果を示す。
【図27】図27は、0.4 mg/kgの免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の点滴注入後の非ヒト霊長類末梢血Bリンパ球涸渇の結果を与える。
【図28】図28は、1.6 mg/kgの免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の点滴注入後の非ヒト霊長類末梢血Bリンパ球涸渇の結果を与える。
【図29】図29は、6.4 mg/kgの免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の点滴注入後の非ヒト霊長類末梢血Bリンパ球涸渇の結果を与える。
【図30】図30は、特に、0.01mg/kgの免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体の点滴注入後の非ヒト霊長類末梢血Bリンパ球涸渇の結果を与える。
【図31】図31は、B細胞リンパ芽球腫を使ったマウス異種移植モデルにおけるY2B8の殺腫瘍性攻撃の結果を与える。
【図32】図32は、B細胞リンパ芽球腫を使ったマウス異種移植モデルにおけるC2B8の殺腫瘍性攻撃の結果を与える。
【図33】図33は、B細胞リンパ芽球腫を使ったマウス異種移植モデルにおけるY2B8とC2B8の組合せの殺腫瘍性攻撃の結果を与える。
【図34】図34は、病気の部分緩解を証明する患者について或る期間に渡るB細胞集団涸渇の証拠となるC2B8の第I/II相臨床分析からの結果を与える。
【図35】図35は、病気の微緩解を証明する患者について或る期間に渡るB細胞集団涸渇の証拠となるC2B8の第I/II相臨床分析からの結果を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫学的に活性なキメラ抗−CD20抗体の軽鎖及び重鎖をコードする核酸を含んでなる宿主細胞において、前記軽鎖をコードする配列が、図4に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基+1〜+107をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、そして前記重鎖をコードする配列が、図5に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基+1〜+113をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項2】
前記軽鎖をコードする配列が、ヒトκ軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を更に含んであり、そして前記重鎖をコードする配列が、ヒトγ1重鎖定常領域をコードするヌクレオチドを更に含んでなる、請求項1に記載の宿所細胞。
【請求項3】
免疫学的に活性なキメラ抗−CD20抗体を生産することが出来る、請求項1又は2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
哺乳類細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項6】
SP2/0細胞である、請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項7】
請求項3に記載の宿主細胞中の核酸配列によりコードされる軽鎖及び重鎖を発現せしめ、そして当該細胞により生産された抗体を精製することを含んでなる、精製された抗体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2006−262907(P2006−262907A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135870(P2006−135870)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【分割の表示】特願2000−126317(P2000−126317)の分割
【原出願日】平成5年11月12日(1993.11.12)
【出願人】(398050098)バイオジェン・アイデック・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biogen Idec Inc.
【Fターム(参考)】