説明

B細胞慢性リンパ性白血病の診断及び治療のための方法及び組成物

抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤が提供され、ここで、軽鎖及び抗体重鎖遺伝子は、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する1体以上の患者間で同じである。これらの遺伝子を含むベクター、及びこれらのベクターを含む細胞もまた、抗体遺伝子によりコードされた単離且つ精製された抗体として提供される。抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体、ペプチド及びアプタマーがさらに、抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する複数の結合部位を含む多量体分子として提供される。B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者が、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有するかを決定する方法も、患者におけるB−CLLの治療の進行を追う方法として提供される。さらに、B−CLLを有する患者を治療する方法も、B−CLLに対する治療薬を同定する方法として提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
本発明は包括的に、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を診断及び治療する方法に関する。より詳細には、本発明は、共通するB細胞受容体遺伝子を有するB−CLL患者セットの存在に基づく、B−CLLを診断及び治療する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2003年10月8日付けで出願された米国仮出願第60/509,473号の利益を主張するものである。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
米国政府は、本発明に支払済みの実施権(Paid-up license)を有し、且つ米国立衛生研究所により与えられた助成金第CA81554号及び第CA87956号の条件により提供されるような妥当な条件で限定された状況において特許所有権者が他者に許可を与えることを要求する権利を有する。
【背景技術】
【0004】
[(2)関連技術の記載]
B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)は、高齢者において発達する、ゆっくりと増殖するCD5Bリンパ球が蓄積する疾患である。B−CLLを有する患者の一部は痛みを伴なわない経過(indolent course)を有し、長い年月を経てから無関係な原因により死ぬのに対して、他の患者では非常に速く進行し、患者はこの現在不治の白血病により数年内に死ぬ。過去十年にわたり、これらの白血病細胞により使用されるB細胞抗原受容体(BCR)の構造及び機能の研究が、この疾患の性質を再定義するのに役立ってきた。
【0005】
B−CLL患者内のCD5Bリンパ球は、抗原に対する受容体(BCR)として役割を果たす表面膜Igを低いレベルで発現する。可変(V)領域に突然変異がないIgを有する患者は、IgのV領域にかなりの数の突然変異を有する患者よりも著しく悪い結果を有するため、このIgの遺伝学は臨床的関連を有する。Ig分子/BCRがこれらの別個の結果と関連する生物学的根拠は明確ではない。
【0006】
B−CLLの進行(evolution)にIg分子が果たす役割を支持する、いくつかの証拠の系列(lines)が存在する。V領域遺伝子カセットの使用の解析により、B−CLL細胞上のIg分子は偶然の産物ではないという推論上の証拠がもたらされた。B−CLLクローンにより使用される可変領域遺伝子カセットの分布(非特許文献31)は、正常細胞において見られるものとは異なり(非特許文献3)、増加した頻度のV3−07、V4−34及びV1−69遺伝子を有する(非特許文献10)。さらに、これらの特異的V遺伝子を使用するB−CLLケース間の突然変異の分布は、選択的であり、且つ著しくバイアスがかかっている。例えば、B−CLLケースのV遺伝子の〜40%は、最も類似した生殖細胞系列遺伝子と2%より少ない相違を含有し、〜25%は生殖細胞系列V相対物(counterpart)と同一である。しかし、V1−69を使用するケースの80%は生殖細胞系列であり、これらの〜90%は2%より少ない突然変異を有する。反対に、93%のケースにおいて、V3−07遺伝子はかなりの数の突然変異を示す(生殖細胞系列遺伝子と2%以上の相違)。遺伝子使用における偶然性からのこれらの逸脱及び体細胞突然変異の獲得は、抗体分子の構造、及びおそらくはその抗原特異性が、特定のB細胞の白血病性突然変異において役割を果たすことを暗示する。
【0007】
つい最近になって、類似性の高いIg分子を有するB−CLLケースのセットが同定された。本発明者等の研究室では、BCRの構造が際立って類似した、5つの非突然変異IgG発現B−CLLケースを同定した(非特許文献14)。これらのIg分子は同じV、D及びJを使用し、ある場合においては全ては同じVκ−Jκを使用した。さらに、HCDR3はそれらの配列において類似性が高く、LCDR3は、インバリアントな非鋳型アルギニンコドンを含有するVκ−Jκ接合部と実質的に同一であった。V3−21/J3H鎖及びVλ−3h/Jλ3L鎖を発現している患者のより大きいセットが、非特許文献40により記載されている。これらのケースも、小さく且つ非常に類似した配列であるHCDR3を有する。V3−21遺伝子は北ヨーロッパ以外では高頻度で発見されることがなく、環境的又は遺伝的な影響が示唆される。これらの両群からの患者は、患者のV突然変異状態と必ずしも関連しない厳密でない臨床経過を有する。
【0008】
機能的な研究から、非突然変異IgのV領域を有する患者は、シグナルをB細胞受容体(BCR)を介して伝達する(transduce)ことができる一方、突然変異BCRはこれができないということが示された。この発見は、BCRに結合している抗原がin vivoで白血病細胞の生物学に影響を与え得る手段を提供することから、大きな意味を持ち得た。多くのB−CLLケースは、自己反応性Ig/BCR分子を合成するため(非特許文献4;非特許文献2;非特許文献38)、且つ/又は自己抗体中にしばしば見られるV遺伝子を使用するため(非特許文献10)、このことは特に関連する。このことは、正常な個体においては主要な自然抗体源とみなされるCD5B細胞からの白血病細胞の逸脱と一致する(非特許文献5)。
【0009】
【非特許文献1】ベンデラック,A.、M.ボニービル及びJ.F.カーニー、「設計による自己反応性:生得的なB及びTリンパ球」(Bendelac, A., M. Bonneville, and J. F. Kearney. Autoreactivity by design: innate B and T lymphocytes)、Nat Rev Immunol. 2001: 1:177-186
【非特許文献2】ボルシュ,L他(Borche L et al.)、Blood, 1990; 76:562-569
【非特許文献3】ブレジンシェック,HP、フォスター,SJ、ブレジンシェック,RI、ドーナー,T、ドミアティ−サード,R、リプスキー,PE、「ヒトVH遺伝子レパートリーの解析。選択及び体細胞過剰突然変異のヒト末梢CD5(+)/IgM+及びCD5(−)/IgM+B細胞に対する分化効果」(Brezinschek HP, Foster SJ, Brezinschek RI, Dorner T, Domiati-Saad R, Lipsky PE. Analysis of the human VH gene repertoire. Differential effects of selection and somatic hypermutation on human peripheral CD5(+)/IgM+ and CD5(-)/IgM+ B cells)、J Clin Invest. 1997; 99: 2488-2501
【非特許文献4】ブローカー,BM他(Broker BM et al.)、J Autoimmun 1988; 1: 469-481
【非特許文献5】カザリ,P、シェッチノ,EW、「自然抗体の構造及び機能。微生物学及び免疫学における最新の主題」(Casali P, Schettino EW. Structure and function of natural antibodies. Current Topics in Microbiology & Immunology)、1996; 210: 167-179
【非特許文献6】チャップマン,CJ、スペラバーグ,MB、スミス,GA、カーター,SJ、ハムリン,TJ、スティーブンソン,FK、「伝染性単核症を有する患者により合成された自己抗赤血球抗体はVH4−21遺伝子セグメントを利用する」(Chapman CJ, Spellerberg MB, Smith GA, Carter SJ, Hamblin TJ, Stevenson FK. Autoanti-red cell antibodies synthesized by patients with infectious mononucleosis utilize the VH4-21 gene segment)、Journal of Immunology, 1993; 151: 1051-1061
【非特許文献7】チョラッジ,N.及びM.フェラリーニ、「免疫グロブリン可変領域遺伝子の特徴及び表面膜の表現型が、別個の臨床経過を伴なうB−CLLサブグループを規定する」(Chiorazzi, N., and M. Ferrarini. Immunoglobulin Variable Region Gene Characteristics and Surface Membrane Phenotype Define B-CLL Subgroups with Distinct Clinical Courses)、「慢性リンパ性白血病」、B.D.チェーソン編、マーセル・デッカー社、ニューヨーク(In Chronic Lymphoid Leukemias. B. D. Cheson, editor. Marcel Dekker, New York)、2001; 81-109
【非特許文献8】チョラッジ,N.及びM.フェラリーニ、「B細胞慢性リンパ性白血病:B細胞抗原受容体の研究から分かる教え」(Chiorazzi, N., and M. Ferrarini. B Cell Chronic Lymphocytic Leukemia: Lessons Learned from Studies of the B Cell Antigen Receptor)、Annual Review of Immunology. W.E.ポール編(W. E. Paul, editor)、2003; 21: 841-894
【非特許文献9】ダムリ,R.N.、T.ワシル、F.フェイス、F.ジオット、A.ヴァレット、S.L.アレン、A.バッチバインダー、D.バッドマン、K.ディトマー、J.コリッツ、S.M.リッチマン、P.シュルマン、V.P.ヴィンシゲラ、K.R.レイ、M.フェラリーニ及びN.チョラッジ、「慢性リンパ性白血病における新規な診断指標としてのIgV遺伝子突然変異の状態及びCD38発現」(Damle, R. N., T. Wasil, F. Fais, F. Ghiotto, A. Valetto, S. L. Allen, A. Buchbinder, D. Budman, K. Dittmar, J. Kolitz, S. M. Lichtman, P. Schulman, V. P. Vinciguerra, K. R. Rai, M. Ferrarini, and N. Chiorazzi. Ig V gene mutation status and CD38 expression as novel prognostic indicators in chronic lymphocytic leukemia)、Blood, 1999; 94: 1840-1847
【非特許文献10】フェイス,F、ジオット,F、ハシモト,S、セラーズ,B、ヴァレット,A、アレン,SL、シュルマン,P、ヴィンシゲラ,VP、レイ,K、ラセンティ,LZ、キップス,TJ、ディジエロ,G、シュローダー,HW,Jr.、フェラリーニ,M、チョラッジ,N、「慢性リンパ性白血病B細胞は、突然変異型及び非突然変異型抗原受容体の制限されたセットを発現する」(Fais F, Ghiotto F, Hashimoto S, Sellars B, Valetto A, Allen SL, Schulman P, Vinciguerra VP, Rai K, Rassenti LZ, Kipps TJ, Dighiero G, Schroeder HW, Jr., Ferrarini M, Chiorazzi N. Chronic lymphocytic leukemia B cells express restricted sets of mutated and unmutated antigen receptors)、J Clin Invest. 1998; 102: 1515-1525
【非特許文献11】フェイス,F.、G.ガイダノ、D.カペリョ、A.グロギーニ、F.ジオット、S.ロンセラ、A.カルボン、N.チョラッジ及びM.フェラリーニ、「免疫グロブリンV領域遺伝子の使用及び構造は、AIDS関連原発性浸出液リンパ腫における抗原選択を示唆する」(Fais, F., F. Gaidano, D. Capello, A. Gloghini, F. Ghiotto, S. Roncella, A. Carbone, N. Chiorazzi, and M. Ferrarini. Immunoglobulin V region gene use and structure suggest antigen selection in AIDS-related primary effusion lymphomas)、Leukemia, 1999; 13: 1093-1099
【非特許文献12】ゲイガー,K.D.、U.クレイン、A.ブロウニンガー、S.バーガー、K.リダー、K.ラジェフスキー、M.L.ハンスマン及びR.クッパース、「健康な高齢者におけるCD5陽性B細胞はポリクローナルB細胞集団である」(Geiger, K. D., U. Klein, A. Brauninger, S. Berger, K. Leder, K. Rajewsky, M. L. Hansmann, and R. Kuppers. CD5-positive B cells in healthy elderly humans are a polyclonal B cell population)、Eur J Immunol. 2000; 30: 2918-2923
【非特許文献13】ギア,P.、G.プラト、C.シエルゾ、S.ステラ、M.ギュウナ、G.グイダ及びF.カリガリス−カッピオ、「モノクローナルCD5+及びCD5−Bリンパ球増大は、高齢者の末梢血において頻繁である」(Ghia, P., G. Prato, C. Schielzo, S. Stella, M. Geuna, G. Guida, and F. Caligaris-Cappio. Monoclonal CD5+ and CD5- B-lymphocyte expansions are frequent in the peripheral blood of the elderly)、Blood. 2004; 103: 2337-2342
【非特許文献14】ジオット,F.、F.フェイス、A.ヴァレット、E.アルベシアーノ、S.ハシモト、M.ドノ、H.イケマツ、S.L.アレン、K.R.レイ、M.ナルジーニ、A.トラモンターノ、M.フェラリーニ及びN.チョラッジ、「慢性リンパ性白血病を有する患者のサブセットの顕著な類似した抗原受容体」(Ghiotto, F., F. Fais, A. Valetto, E. Albesiano, S. Hashimoto, M. Dono, H. Ikematsu, S. L. Allen, K. R. Rai, M. Nardini, A. Tramontano, M. Ferrarini, and N. Chiorazzi. Remarkable similar antigen receptors among a subset of patients with chronic lymphocytic leukemia)、J Clin Invest. 2004; 113: 1008-1016
【非特許文献15】ハムリン,T.J.、Z.デイビス、A.ガーディナー、D.G.オシアー及びF.K.スティーブンソン、「非突然変異型IgV(H)遺伝子は、より進行型の慢性リンパ性白血病に関連する」(Hamblin, T. J., Z. Davis, A. Gardiner, D. G. Oscier, and F. K. Stevenson. Unmutated Ig V(H) genes are associated with a more aggressive form of chronic lymphocytic leukemia)、Blood. 1999; 94: 1848-1854
【非特許文献16】ハシモト,S.、M.ワカイ、J.シルバー及びN.チョラッジ(Hashimoto, S., M. Wakai, J. Silver, and N. Chiorazzi)、Ann. NY. Acad. Sci. 1992; 651: 477-479
【非特許文献17】ヒ,X、ゴロンジー,JJ、チョン,W、シェ,C、ウェイアンド,CM、「VH3−21B細胞は、リューマチ関節炎における耐薬性状態から免れ、且つリューマチ因子を分泌する」(He X, Goronzy JJ, Zhong W, Xie C, Weyand CM. VH3-21 B cells escape from a state of tolerance in rheumatoid arthritis and secrete rheumatoid factor)、Mol Med. 1995; 1: 768-780
【非特許文献18】イサクソン,P.G.、「胃のMALTリンパ腫:治癒の観点から」(Isaacson, P. G. Gastric MALT lymphoma: from concept to cure)、Ann Oncol. 1999; 10: 637-645
【非特許文献19】ジャン,S、シュワブ,J、ハンセン,A、ヘイダー,H、シュローダー,C、ルコフスキー,A、アッチマン,M、マッテス,H、キーシグ,ST、ヴォルク,HD、「慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者のCD5+Bリンパ球に由来するヒトハイブリドーマは、多重特異的自然IgM(κ)抗体を生産する」(Jahn S, Schwab J, Hansen A, Heider H, Schroeder C, Lukowsky A, Achtman M, Matthes H, Kiessig ST, Volk HD. Human hybridomas derived from CD5+ B lymphocytes of patients with chronic lymphocytic leukemia (B-CLL) produce multi-specific natural IgM (kappa) antibodies)、Clin Exp Immunol. 1991; 83: 413-417
【非特許文献20】ジョンソン,TA、ラセンティ,LZ、キップス,TJ、「B細胞慢性リンパ性白血病において発現したIgのVH1遺伝子は、別個の分子的特徴を示す」、Johnson TA, Rassenti LZ, Kipps TJ. Ig VH1 genes expressed in B cell chronic lymphocytic leukemia exhibit distinctive molecular features)、J Immunol. 1997; 158: 235-246
【非特許文献21】カークハム,P.M.、F.モルタリ、J.A.ニュートン及びH.W.シュローダー,Jr.(Kirkham, P. M., F. Mortari, J. A. Newton, and H. W. Schroeder)、EMBO. J. 1997; 11: 603-609
【非特許文献22】キップス,TJ、トムハブ,E、プラット,LF、デュフィ,S、チェン,PP、カーソン,DA、「慢性リンパ性白血病において高頻度で発現する、発生的に制限された免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子」(Kipps TJ, Tomhave E, Pratt LF, Duffy S, Chen PP, Carson DA. Developmentally restricted immunoglobulin heavy chain variable region gene expressed at high frequency in chronic lymphocytic leukemia)、Proc Natl Acad Sci USA. 1989; 86: 5913-5917
【非特許文献23】クマー.S.、S.ナグル、J.K.カルシ、C.T.ラビラジャン、D.アスワル、D.S.ラッチマン、L.H.パール及びD.A.アイゼンバーグ、「抗カルジオリピン/ベータ−2糖タンパク質活性は、ヒト抗DNA抗体軽鎖上に共存する」(Kumar, S., S. Nagl, J. K. Kalsi, C. T. Ravirajan, D. Athwal, D. S. Latchman, L. H. Pearl, and D. A. Isenberg. Anti-cardiolipin/beta-2 glycoprotein activities co-exist on human anti-DNA antibody light chains)、Mol Immunol. 2003; 40: 517-530
【非特許文献24】マン,D.L.、P.ドサンティス、G.マーク、A.フェイファー、M.ニューマン、N.ギッブス、M.ポポビック、M.G.サーンガドハラン、R.C.ガリョ、J.クラーク他、「HTLV−I関連B細胞CLL:白血病発生におけるレトロウイルスに関する間接的な役割」(Mann, D. L., P. DeSantis, G. Mark, A. Pfeifer, M. Newman, N. Gibbs, M. Popovic, M. G. Sarngadharan, R. C. Gallo, J. Clark, and et al. HTLV-I-associated B-cell CLL: indirect role for retrovirus in leukemogenesis)、Science. 1987; 236: 1103-1106
【非特許文献25】マーティン,F.及びJ.F.カーニー、「B細胞サブセット及び成熟した前免疫レパートリー。「自然免疫メモリ」の一部としての周縁帯及びB1B細胞」(Martin, F., and J. F. Kearney. B-cell subsets and the mature preimmune repertoire. Marginal zone and B1 B cells as part of a "natural immune memory")、Immunol Rev. 2000; 175: 70-79
【非特許文献26】パスカル、V.、K.ビクター、M.スペラバーグ、T.J.ハムリン、F.K.スティーブンソン及びJ.D.カプラ、「ヒト寒冷凝集素間のVH制限。抗I及び抗i特異性をコードするためにはVH4−21遺伝子セグメントが必要である」(Pascual, V., K. Victor, M. Spellerberg, T. J. Hamblin, F. K. Stevenson, and J. D. Capra. VH restriction among human cold agglutinins. The VH4-21 gene segment is required to encode anti-I and anti-i specificities.)、J Immunol. 1992; 149: 2337-2344
【非特許文献27】ポッター,M.、「マウスの抗原結合骨髄腫タンパク質」(Potter, M. Antigen-binding myeloma proteins of mice)、Adv Immunol. 1977; 25: 141-211
【非特許文献28】ピュー−バーナード,AE、シルバーマン,GJ、カピオーネ,AJ、ヴィラーノ,ME、ライアン,DH、インセル,RA、サンツ,I.、「ヒトB細胞耐薬性の維持における生来自己反応性VH4−34B細胞の制御」(Pugh-Bernard AE, Silverman GJ, Cappione AJ, Villano ME, Ryan DH, Insel RA, Sanz I. Regulation of inherently autoreactive VH4-34 B cells in the maintenance of human B cell tolerance)、The Journal of Clinical Investigation. 2001; 108: 1061-1070
【非特許文献29】ラディック,M.Z.及びM.ウェイガート、「抗DNA抗体の抗原選択に関する遺伝的及び構造的な証拠」(Radic, M. Z., and M. Weigert. Genetic and structural evidence for antigen selection of anti-DNA antibodies)、Annu Rev Immunol. 1994; 12: 487-520
【非特許文献30】ローストロン,A.C.、M.J.グリーン、A.クズミッキ、B.ケネディ、J.A.フェントン、P.A.エヴァンズ、S.J.オコナー、S.J.リチャーズ、G.J.モーガン、A.S.ジャック及びP.ヒルメン、「「痛みを伴なわない」慢性リンパ性白血病の特徴を有するモノクローナルBリンパ球は、正常な血球計数を有する成人の3.5%に存在する」(Rawstron, A. C., M. J. Green, A. Kuzmicki, B. Kennedy, J. A. Fenton, P. A. Evans, S. J. O'Connor, S. J. Richards, G. J. Morgan, A. S. Jack, and P. Hillmen. Monoclonal B lymphocytes with the characteristics of "indolent" chronic lymphocytic leukemia are present in 3.5% of adults with normal blood counts)、Blood. 2002; 100: 635-639
【非特許文献31】シュローダー,HWJ、ディジエロ,G.、「慢性リンパ性白血病の病因:抗体レパートリーの解析(コメントを参照)」(Schroeder HWJ, Dighiero G. The pathogenesis of chronic lymphocytic leukemia: analysis of the antibody repertoire [see comments])、Immunol Today. 1994; 15: 288-294
【非特許文献32】スコット,M.G.、D.L.クリミンス、D.W.マッコート、I.ゾッチャー、R.シーブ、H.G.ツァッハウ及びM.H.ナム、「ヒトIgG抗体レパートリーのインフルエンザ菌b型多糖類に対するクローナル特徴化。III。単一VKII遺伝子及び複数のJK遺伝子のうちの1つが、インバリアントアルギニンにより結合され、最も一般的なL鎖V領域を形成する」(Scott, M. G., D. L. Crimmins, D. W. McCourt, I. Zocher, R. Thiebe, H. G. Zachau, and M. H. Nahm. Clonal characterization of the human IgG antibody repertoire to Haemophilus influenzae type b polysaccharide. III. A single VKII gene and one of several JK genes are joined by an invariant arginine to form the most common L chain V region)、J Immunol. 1989; 143: 4110-4116
【非特許文献33】シードル,K.J.、J.D.マッケンジー、D.ワン、A.B.カンター、E.A.カバット及びL.A.ハーゼンバーグ、「同一な重鎖及び軽鎖Ig再配列の頻繁な発生」(Seidl, K. J., J. D. MacKenzie, D. Wang, A. B. Kantor, E. A. Kabat, and L. A. Herzenberg. Frequent occurrence of identical heavy and light chain Ig rearrangements)、Int Immunol. 1997; 9: 689-702
【非特許文献34】シルバーマン,G.J.、R.D.ゴールドフィン、P.チェン、R.A.マギード、R.ジェフェリス、F.ゴニ、B.フランジョン、S.フォン及びD.A.カーソン、「ヒトモノクローナルリューマチ因子のイディオタイプ及びサブグループの解析。ヒトにおける自己抗体の構造的及び遺伝的な基礎に関する影響」(Silverman, G. J., R. D. Goldfien, P. Chen, R. A. Mageed, R. Jefferis, F. Goni, B Frangione, S. Fong, and D. A. Carson. Idiotypic and subgroup analysis of human monoclonal rheumatoid factors. Implications for structural and genetic basis of autoantibodies in human)、J Clin Invest. 1988; 82: 469-475
【非特許文献35】スミス,G、スペラバーグ,M、ブルトン,F、ロールク,D、スティーブンソン,F、「免疫グロブリンVH遺伝子であるVH4−21は、I又はi抗原に対する自己抗赤血球抗体を特異的にコードする」(Smith G, Spellerberg M, Boulton F, Roelcke F, Stevenson F. The immunoglobulin VH gene, VH4-21, specifically encodes autoanti-red cell antibodies against the I or i antigens)、Vox Sang. 1995; 68: 231-235
【非特許文献36】スティーブンソン,FK、スペラバーグ,MB、チャップマン,CJ、ハムリン,TJ、「ヒトB細胞腫瘍による自己抗体関連VH遺伝子、すなわちVH4−21の差次的な使用」(Stevenson FK, Spellerberg MB, Chapman CJ, Hamblin TJ. Differential usage of an autoantibody-associated VH gene, VH4-21, by human B-cell tumors)、Leukemia & Lymphoma. 1995; 16: 379-384
【非特許文献37】ストーガー,Z.M.、M.ワカイ、D.B.ツェ、V.P.ヴィンシゲラ、S.L.アレン、D.R.バッドマン、S.M.リッチマン、P.シュルマン、L.R.ワイゼルバーグ及びN.チョラッジ、「慢性リンパ性白血病を有する患者からのCD5発現Bリンパ球による自己抗体の生産」(Sthoeger, Z. M., M. Wakai, D. B. Tse, V. P. Vinciguerra, S. L. Allen, D. R. Budman, S. M. Lichtman, P. Schulman, L. R. Weiselberg, and N. Chiorazzi. Production of autoantibodies by CD5-expressing B lymphocytes from patients with chronic lymphocytic leukemia)、J Exp Med. 1989; 169: 255-268
【非特許文献38】ストーガー,ZM他(Sthoeger ZM et al.)、Am J Hematol 1993; 43: 259-264
【非特許文献39】トビン,G.、U.ツンベルグ、A.ジョンソン、I.ソーン、O.ソダーバーグ、M.ハルツィン、J.ボトリング、G.エンブラッド、J.サルストロム、C.サンドストロム、G.ルース及びR.ローセンクイスト、「体細胞的に突然変異したIgV(H)3−21遺伝子は、慢性リンパ性白血病の新規なサブセットを特徴付ける」(Tobin, G., U. Thunberg, A. Johnson, I. Thorn, O. Soderberg, M. Hultdin, J. Botling, G. Enblad, J. Sallstrom, C. Sundstrom, G. Roos, and R. Rosenquist. Somatically mutated Ig V(H)3-21 genes characterized a new subset of chronic lymphocytic leukemia)、Blood. 2002; 99: 2262-2264
【非特許文献40】トビン,G.他(Tobin G et al.)、Blood 2003; 101: 4952-4957
【非特許文献41】ワカイ,M、ハシモト,S、オマタ,M、ストーガー,ZM、アレン,SL、リッチマン,SM、シュルマン,P、ヴィンシゲラ,VP、ダイアモンド,B、ドノ,M他、「IgG+、CD5+ヒト慢性リンパ性白血病B細胞。減少した自己反応性及びIgGサブクラス傾斜を示すIgG抗体の生産」(Wakai M, Hashimoto S, Omata M, Sthoeger ZM, Allen SL, Lichtman SM, Schulman P, Vinciguerra VP, Diamond B, Dono M, et al. IgG+, Cd5+ human chronic lymphocytic leukemia B cells. Production of IgG antibodies that exhibit diminished autoreactivity and IgG subclass skewing)、Autoimmunity. 1994: 19: 39-48
【非特許文献42】ゼムリン,M.、M.クリンガー、J.リンク、C.ゼムリン、K.バウアー、J.A.エングラー、H.W.シュローダー,Jr.及びP.M.カークハム、「発現したマウス及びヒトの等しい長さのCDR−H3区間は、アミノ酸組成及び予想された範囲で構造が異なる別個のレパートリーを示す」(Zemlin, M., M. Klinger, J. Link, C. Zemlin, K. Bauer, J. A. Engler, H. W. Schroeder, Jr., and P. M. Kirkham. Expressed murine and human CDR-H3 intervals of equal length exhibit distinct repertoires that differ in their amino acid composition and predicted range of structures)、J Mol Biol. 2003; 334: 733-749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
B−CLLにおける結果と関連するいくつかの生物マーカの最近の同定にもかかわらず、この疾患に対するさらなる診断指標が必要とされている。また、B−CLLにおける治療標的及び新規な治療モダリティに対する長年にわたる必要性も存在する。なぜならば、一般的に許容可能な且つ特異的な治癒レジメン(curative regimen)が存在しないからである。本発明はこれらの必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明者等は、進行型の疾患を有するかなりの割合のB−CLL患者のB−CLL細胞は、他のB−CLL患者と同じクラスのV、D、J、V及びJ抗体遺伝子を共有し、相同性の高い複数のB細胞受容体を有するB−CLL患者の「セット」を形成することを発見した。この発見は、さまざまな治療及び診断方法を実用的にする。
【0012】
したがって、いくつかの実施の形態において、本発明は、抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤を対象とする。これらの製剤において、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、V4−39/D6−13/J5/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットI)、V4−34/D5−5/J6/VκA17/Jκ1/κ2(セットII)、V3−21/J6/Vλ3h/Jλ3(セットIII)、V1−69/D3−16/J3/VκA27/Jκ1/κ4(セットIV)、V1−69/D3−10/J6/Vλ1c/Jλ1(セットV)、V1−02/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIa)、V1−03/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIb)、V1−18/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1(セットVIc)、V1−46/D6−19/J4(セットVId)、V5−51/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ2(セットVIe)、V1−69/D3−3/J4/VκA19/Jκ4(セットVII)、及びV1−69/D2−2/J6/VκL6/2/Jκ3(セットVIII)から成る群より選択される。
【0013】
本発明はまた、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子を含む少なくとも1つのベクターを含む培養細胞(cells in culture)を対象とする。
【0014】
他の実施の形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる、単離且つ精製された抗体を対象とする。
【0015】
さらなる実施の形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体を対象とする。
【0016】
本発明は、上記した抗体のいずれかを発現するハイブリドーマをさらに対象とする。
【0017】
関連する実施の形態において、本発明は、上記した抗イディオタイプ抗体の結合部位と、別のB細胞抗原に結合する結合部位とを含む、二重特異性抗体を対象とする。
【0018】
本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するペプチド抗原をさらに対象とする。
【0019】
さらなる実施の形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するアプタマーを対象とする。
【0020】
本発明はまた、第一の結合部位及び第二の結合部位を少なくとも含む多量体分子を対象とする。これらの実施の形態において、第一の結合部位は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合し、第二の結合部位は、(a)セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII若しくはセットVIIIの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域、又は(b)B細胞抗原のいずれかに結合する。
【0021】
本発明は、抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤をさらに対象とする。これらの実施の形態において、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子の遺伝子ファミリー成員は2体以上の患者のB細胞内に存在し、ここで、B細胞の抗体鎖はまた同じアイソタイプのJ、D及びJ領域を共有し、B細胞は患者内においてリンパ球増殖性であるか、又は患者はB細胞を伴なう自己免疫疾患を有する。
【0022】
他の実施の形態において、本発明は、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者が、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有する(bear)B−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有するかを決定する方法を対象とする。この方法は、患者のB−CLL細胞上のB細胞受容体が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するかを決定することを含む。
【0023】
関連する実施の形態において、本発明は、上記した方法により、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有すると同定された患者におけるB−CLLの治療の進行(progression)を追う(following)方法を対象とする。この方法は、B−CLL細胞上のB細胞受容体が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するかを決定することを含む。
【0024】
さらなる実施の形態において、本発明は、B−CLLを有する患者を治療する方法を対象とし、ここで、B−CLLはセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId若しくはセットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子を含むB細胞により引き起こされる。この方法は、患者に、上記した抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原若しくはアプタマー、又はこれらの混合物を投与することを含む。
【0025】
さらなる実施の形態において、本発明は、B−CLLセットを同定する方法を対象とする。この方法は、B−CLL細胞上に存在するV、D、J、V及びJ抗体遺伝子ファミリーを同定することを含み、ここで、同じ抗体遺伝子ファミリーは全て1体より多いB−CLL患者に存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[発明の詳細な説明]
本発明は、進行型の疾患と一致する遺伝子及びタンパク質マーカ、又はマーカにかかわらず明らかに進行型の疾患を有するB−CLL患者のかなりの割合が、他のB−CLL患者も有する抗体遺伝子ファミリー成員によりコードされるB細胞受容体を有するB−CLL細胞を有するという発見に基づく。本発明者等は、少なくとも10セットの患者(実施例中の表1を参照)を同定し、ここで、各セット内の患者等は、同じB−CLL細胞受容体抗体遺伝子を有する。これはB−CLL患者のおよそ10%を占め、進行型の疾患に一致する遺伝子及びタンパク質マーカを有するこれらの患者等の約20%を占める。これらのセットの発見に関する詳細は実施例を参照されたい。
【0027】
知られているように、進行型のB−CLLは、比較的少ないIgV遺伝子突然変異を有し且つZAP−70の細胞間発現を有するB細胞、並びにCD38及びCD23の細胞表面発現と関連する。これらのマーカは、治療過程を決定するために、どの患者が進行型の疾患を有し得るかを予測する診断として当初は評価されている。共通したB細胞受容体遺伝子を有する同定された「セット」に属する患者からのB−CLL細胞はIgV突然変異が少ないか又はIgV突然変異がないため(実施例中の表1を参照)、これらのセットのそれぞれからのB−CLL細胞を有する患者は進行型の疾患を有するであろうと予測される。
【0028】
図面は、セット中の数体の患者のB−CLL細胞のB細胞受容体抗体及び抗体遺伝子の関連する配列を提供する。V−D−J及びV−J組み換え中に添加されたヌクレオチド数内に、各セット中の比較的少量の変異が存在することに留意されたい。
【0029】
これらのセットのうちの2つ(セットI及びセットII)が事前に同定されている一方、これらの2つのセットは変則的(anomalous)であると信じられており、B−CLLケースの一部よりも多くを占めるとは予期されていなかった。したがって、本明細書中に開示される、B−CLL、特に明白に進行型の疾患を有する患者のかなりの割合を占める複数の他のセットの発見は、同定されたセットに基づいた、B−CLLを診断及び治療するさまざまな方法及び組成物の使用を実用的にする。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤を対象とする。これらの製剤の抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、以下のセットのいずれか1つを構成する:V4−39/D6−13/J5/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットI);V4−34/D5−5/J6/VκA17/Jκ1/κ2(セットII);V3−21/J6/Vλ3h/Jλ3(セットIII);V1−69/D3−16/J3/VκA27/Jκ1/κ4(セットIV);V1−69/D3−10/J6/Vλ1c/Jλ1(セットV);V1−02/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIa);V1−03/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIb);V1−18/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1(セットVIc);V1−46/D6−19/J4(セットVId);V5−51/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ2(セットVIe);V1−69/D3−3/J4/VκA19/Jκ4(セットVII);及びV1−69/D2−2/J6/VκL6/2/Jκ3(セットVIII)。いくつかの好ましい実施形態においては、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択され、他の好ましい実施形態においては、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。さらなる好ましい実施形態において、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される。さらに他の好ましい実施形態において、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。
【0031】
12個の同定されたセットそれぞれの抗体遺伝子を含むこれらの製剤は、以下に記載される診断及び治療方法用の試薬を調製するのに有用である。このような有用な試薬は、さらに以下に記載されるようなこれらの遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合部位に特異的に結合する化合物を含む。
【0032】
これらのセット中の抗体遺伝子は、必要以上の実験無しに、例えば実施例中に記載されるような既知の方法により、通常のシーケンス法を使用して同定することができる。抗体遺伝子は、本明細書中では、抗体遺伝子がいくつかの突然変異を有していようとも、特定の生殖細胞系列遺伝子からとして類別される。
【0033】
抗体遺伝子の組み合わせはいかなる形態であり得、当該技術分野において知られるような単鎖遺伝子を含む。好ましくは、抗体遺伝子は、プラスミド又はウイルスベクター等の1つのベクター又は複数のベクター上に存在し、それにより、クローニングベクターとして抗体遺伝子の維持を容易にし、且つ、発現ベクターとしてこれらの遺伝子によりコードされる抗体を生産することを可能にする。セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子を含むベクターを含む培養細胞も予見される。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。
【0034】
他の実施形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの1つからの抗体遺伝子によりコードされる、単離且つ精製された抗体を対象とする。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。すでに検討したように、同定されたセット中の固体からのB−CLL細胞上のB細胞受容体として発現されるこれらの抗体は、抗体の抗原結合部位に結合する試薬を同定するのに使用することができる。これらの抗体は、任意の既知の方法により生産することができる。この非限定的な例として、CLL細胞から作られたハイブリドーマからの抗体、及びクローン抗体遺伝子からの抗体が含まれる。本明細書中で使用される場合、抗体は、少なくとも1つの抗原結合領域を含む任意の形態であり得る。したがって「抗体」という用語は、Fab、Fab2又はFvフラグメントを含む。本発明はまた、上記した抗体を生産するハイブリドーマを含む。
【0035】
当該技術分野において知られているように、各セットに対するコンセンサス配列は、セットの全ての成員の抗体配列に最も類似したアミノ酸配列を提供するものとして同定することができる。このコンセンサス配列は、セットの全ての成員に最も類似した抗体結合部位を同定するのに使用することができ、それにより、このセットの全ての成員に結合する結合パートナー(例えば抗イディオタイプ抗体)を最も効率的に生産する。したがって、本発明は、これらのコンセンサスなアミノ酸配列及びこのコンセンサスな配列をコードするヌクレオチド配列も対象とする。
【0036】
また本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体を対象とする。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe又はセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。これらの抗イディオタイプ抗体は、進行型の疾患を有するB−CLL患者のかなりの部分からのB−CLL細胞のB細胞受容体である、抗体の抗体結合部位に結合するため、抗イディオタイプ抗体は、B−CLLに関するさまざまな診断及び治療方法において使用することができる。
【0037】
これらの実施形態の抗イディオタイプ抗体は、標準方法、例えば、ファージディスプレーライブラリをスクリーニングすること、又は上述したさまざまなB−CLL遺伝子セットによりコードされる抗体の抗原結合部位に対するモノクローナル抗体を作るハイブリドーマを生産することにより作製することができる。このようなものとして、これらの抗イディオタイプ抗体は、いかなる脊椎動物種に由来し得るが、マウス抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体が好ましい。このような抗体は、必要以上の実験無しに既知の方法により作製することができる。本発明は、上記の抗イディオタイプ抗体を生産するハイブリドーマも含む。
【0038】
関連する実施形態において、本発明は、上述した抗イディオタイプ抗体のいずれかの結合部位、及び別のB細胞抗原に結合する結合部位を含む二重特異性抗体を対象とする。B細胞抗原は、シグナル伝達抗原(表面又は細胞間のいずれか)又は表面抗原等の、B細胞上に存在する任意の抗原であり得る。多くのケースにおいて、抗イディオタイプ抗体はアビディティーが低いことがあり得るため、B細胞表面抗原に対する結合部位を有する二重特異性抗体は、2つの抗イディオタイプ結合ドメインを有する抗体よりも、B細胞により密に結合するであろうことが期待される。シグナル伝達抗原に対する結合部位を有する二重特異性抗体は、末端分化経路又はアポトーシス経路等のシグナル経路を促進し(expedite)、従って、B−CLL疾患に寄与しているB細胞の消失を促進することが期待されるであろう。
【0039】
上記の抗イディオタイプ抗体は、1つ以上のセットからの結合部位を対象とする抗体を提供する混合物において組み合わせることもできる。この混合物は、所望されるかぎり多くの抗イディオタイプ抗体を、これらの任意の組み合わせ又は全セットを含んで、含有することができる。後者の混合物は、ただ1つのセットよりも、全セットに関する診断又は治療方法において効率的であろう。
【0040】
治療方法に使用される場合、上述した抗イディオタイプ抗体又はその混合物は、医薬上許容可能な賦形剤中に存在するであろう。
【0041】
上述した抗イディオタイプ抗体組成物は、必要以上の実験無しに、ヒトを含む哺乳類への投与に、特定用途に関して適切であるように、配合され得る。さらに、組成物の適切な投与量を、必要以上の実験無しに、標準的な容量反応プロトコルを使用して決定することができる。
【0042】
したがって、経口、舌、舌下、頬及び頬内投与用に設計された組成物は、必要以上の実験無しに、当該技術においてよく知られた手段により、例えば、不活性希釈剤又は食用担体を用いて作製することができる。組成物は、ゼラチンカプセル中に封入されるか、錠剤に圧縮されてよい。経口治療投与の目的で、本発明の医薬組成物は、賦形剤と混合し、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース及びチューイングガム等の形態で使用してよい。
【0043】
錠剤、ピル、カプセル及びトローチ等は、結合剤(binder)、レシピエント、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤及び香味剤を含有してもよい。結合剤のいくつかの例として、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、スターチ又はラクトースが含まれる。崩壊剤のいくつかの例としては、アルギン酸及びコーンスターチ等が挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤(glidant)の一例はコロイド状二酸化ケイ素である。甘味剤のいくつかの例として、スクロース及びサッカリン等が挙げられる。香味剤の例としては、ペパーミント、サリチル酸メチル及びオレンジフレーバー等が含まれる。これらのさまざまな組成物を調製するのに使用される材料は、医薬的に純粋であり、且つ使用される量で非毒性であるべきである。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明の抗イディオタイプ抗体組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、皮下的、腹腔内注射等、また最も好ましい実施形態においては、静脈内注射により、容易に非経口的に投与することができる。非経口投与は、本発明の組成物を溶液又は懸濁液中に混合することにより達成することができる。このような溶液又は懸濁液としては、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の滅菌希釈剤も挙げられる。非経口配合物は、また、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン類等の抗菌剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、及びEDTA等のキレート剤を含む。酢酸、クエン酸又はリン酸等の緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張性を調整する薬剤も添加してよい。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ又はガラス製若しくはプラスチック製の複数投与(multiple dose)バイアル中に封入することができる。
【0045】
直腸投与として、医薬組成物を直腸又は大腸内に投与することが挙げられる。これは、座薬又は浣腸を使用してなされることができる。座薬配合物は、当該技術分野において既知の方法により容易に作製することができる。例えば、グリセリンを約120℃に加熱すること、このグリセリン中に組成物を溶解させること、加熱したグリセリンに純水を添加した後混合すること、及び熱い混合物を座薬鋳型(mold)中に注ぐことにより、座薬配合物を調製することができる。
【0046】
経皮(transdermal)投与としては、抗イディオタイプ抗体組成物を皮膚を介して経皮的(percutaneous)に吸収させることが挙げられる。経皮配合物には、パッチ(よく知られたニコチンパッチ等)、軟膏剤、クリーム及びゲル、軟膏等が含まれる。
【0047】
本発明は、哺乳類に、治療効果のある量の組成物を経鼻投与することを含む。本明細書中で使用する場合、経鼻投与すること又は経鼻投与は、組成物を、患者の鼻道(nasal passage)又は鼻腔(nasal cavity)の粘膜に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、組成物の経鼻投与用の医薬組成物には、よく知られた投与方法、例えば、経鼻スプレー、点鼻薬、懸濁液、ゲル、軟膏剤、クリーム又は粉末により調製される、治療効果のある量の組成物が含まれる。抗イディオタイプ抗体組成物の投与は、経鼻タンポン又はスポンジを使用して行ってもよい。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するペプチド抗原を対象とする。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。このようなペプチド抗原は、よく知られた方法、例えば、ファージディスプレーライブラリ又は高密度ペプチドライブラリにより、必要以上の実験無しに作製することができる。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「ペプチド抗原」という用語は、類似アミノ酸ペプチドと同じ結合能を保持する、ペプチド模倣薬としても知られているペプチド模倣物を含む。ペプチド模倣物は、D−アミノ酸等のアミノ酸アナログからなるペプチドであり、これらのL−アミノ酸ペプチド相対物よりもプロテアーゼ分解に対してより耐性がある。さまざまなペプチド模倣物が当該技術分野において知られているが、いかなるペプチド模倣物も、必要以上の実験無しに生産することができる。
【0050】
抗イディオタイプ抗体と相同性であるように、これらのペプチド抗原は、B−CLLセットのいくつか又はその全てに関して有用な診断又は治療試薬を提供するために、混合物として調製することができる。また、抗イディオタイプ抗体と同様に、ペプチド抗原は、治療用途用、好ましくは非経口投与用の医薬上許容可能な賦形剤に有用に提供することもできる。
【0051】
さらなる実施形態において、本発明は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するアプタマーを対象とする。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。知られているように、アプタマーとは、一本鎖のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアナログであり、特定の標的分子、この場合は抗体結合部位に結合する。したがって、アプタマーは抗体に対するオリゴヌクレオチド類似性(analogy)である。しかし、アプタマーは抗体より小さく、通常は50〜100ntの範囲である。これらの結合は、アプタマーオリゴヌクレオチドにより形成される二次構造に非常に依存する。RNA及び一本鎖DNA(又はアナログ)の両方のアプタマーが知られている。したがって、これらのアプタマーはすでに検討した抗イディオタイプ抗体及びペプチド抗原に対して類似性である。このようなものとして、患者の1つより多いセットを利用することを可能にする試薬を有するため、2つ以上の混合物として提供することもできる。アプタマーは、治療目的用、好ましくは非経口投与用の医薬上許容可能な賦形剤中に提供することもできる。
【0052】
いくつかの実施形態において、すでに記載されたような抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又はこれらの混合物を、有用に官能化(functionalize)又は誘導体化することができる。1つの有用な誘導体化としては細胞毒(cellular toxin)が挙げられる。このような試薬は、B−CLL療法の「特効薬」アプローチに有用であり、ここで、毒が抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマーが結合したB−CLL細胞のみを殺傷することが期待されるであろう。当該技術分野においてこれらの実施形態に関して既知であるいくつかの細胞毒を、このアプローチに使用することができ、放射性部分(moiety)、リシン及び化学療法薬(chemotherapeutic agent)を含む。
【0053】
他の実施形態において、すでに記載されたような抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又はこれらの混合物を、有用にさらに官能化して、蛍光体等の検出可能部分、又は着色した反応産物を生産するために基質と処理され得る酵素を含むことができる。後者の酵素の非限定的な例として、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼがある。このようなラベルされた抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又は混合物は、診断目的、例えば、蛍光活性化細胞選別解析のために又は細胞の組織学的な観察のためにB−CLL細胞をラベルすることにおいて、使用することができる。これらの方法を以下により十分に記載する。
【0054】
さらなる実施形態において、本発明は、第一の結合部位と第二の結合部位とを少なくとも含む多量体分子を対象とし、第一の結合部位は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合し、第二の結合部位は、(a)第一の結合部位と同じ抗体の抗原結合領域に又は(b)別のB細胞抗原のいずれかに結合する。好ましくは、抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群、又はセットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群、又はセットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される。多量体結合部位を特定のセットに提供することにより、これらの多量体組成物が、上述したような、単一結合部位ペプチド抗原若しくは単一結合部位アプタマー、又は二重結合部位抗イディオタイプ抗体よりも効率的に結合することが期待されるであろう。好ましい実施形態において、これらの実施形態の多量体分子は5つより多い結合部位を含む。これらの多量体分子は、必要以上の実験無しに当業者により作成することができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、多量体分子の結合部位の全ては、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する。これらの結合部位は、1つのエピトープを、抗原結合領域の1つより多いエピトープを、又は1つより多いセットの抗原結合領域を対象とすることができる。
【0056】
これらの多量体分子において、結合部位は、全て抗体結合部位、全てペプチド結合部位、全てアプタマー結合部位又はこれらの組み合わせであり得る。
【0057】
より一般的には、本発明は、抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤をさらに対象とし、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子の遺伝子ファミリー成員は2体以上の患者のB細胞内に存在し、ここで、B細胞の抗体鎖はまた同じアイソタイプのJ、D及びJ領域を共有し、B細胞は患者内においてリンパ球増殖性であるか、又は患者はB細胞を伴なう自己免疫疾患を有する。
【0058】
B−CLL患者を、共通した抗体鎖を有するセットに分類することができるという発見は、B細胞を伴なう他のリンパ球増殖性又は自己免疫性の疾患もセットに分類することができる可能性を提起し、ここで、各患者セットは、同じ抗体遺伝子を有する疾患に伴なうB細胞を共有する。この開示はこのことの証拠を提供する。なぜなら、セットIの患者は免疫細胞腫を有し、セットIIの患者は小リンパ球性リンパ腫(small cell lymphocytic lymphoma)(SLL)を有し、セットVIaの患者は辺縁帯リンパ腫(SMZL)を有するためである(図1)。他のB−CLLセットが存在することもほぼ確実である。
【0059】
これらの実施形態内の好ましいリンパ球増殖性障害には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、骨髄腫、抗体介在性神経学的障害(impairment)を伴なう単クローン性免疫グロブリン血症、重大さが不明な単クローン性免疫グロブリン血症、及び重大さが未決定な単クローン性リンパ球増加症が含まれる。これらの実施形態内の好ましい自己免疫性疾患には、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、I型真性糖尿病、自己免疫性末梢神経障害及び自己免疫性溶血性貧血が含まれる。
【0060】
すでに検討したように、上記の組成物は、本発明の一部として予見されるさまざまな診断及び治療方法に有用である。
【0061】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者が、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有するかを決定する、又は
(b)イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有する患者におけるB−CLLの治療の進行を追う方法を対象とする。これらの実施形態において、この方法は、B−CLL細胞上のB細胞受容体が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するかを決定することを含む。B細胞受容体が特異的イディオタイプを有するということの決定は、患者が明白に進行型のB−CLLを有すること、及びB−CLLを、上述した抗イディオタイプ、ペプチド、アプタマー、混合物若しくは多量体分子、特に細胞毒と共役させたものを使用して治療することができるということを同時に確立する。さらに、患者からのB細胞のイディオタイプを継続的にモニタリングすることにより、効果的な治療はB−CLLセットからのイディオタイプを有するB細胞の量が減少することを示すであろうため、治療の行程を追うことができる。B−CLLセットからのイディオタイプを有するB細胞がないということは、患者がB−CLLの一時的な緩和状態(remission)又はB−CLLが治癒したということを意味する。
【0062】
したがって、B−CLLセットからのイディオタイプを有するB細胞を定量することにより治療の進行をモニタリングすることは、B細胞の量の減少が効果的な治療を示す一方、B細胞の量の増加は非効果的な治療を示すため、有用であることが分かる。
【0063】
これらの方法において、決定する過程は、当該技術分野において知られるいかなる手段により成すことができる。この非限定的な例として、(a)抗体遺伝子又はmRNAのイディオタイプ決定領域を、例えばポリメラーゼ連鎖反応により増幅し、増幅された領域が問題となっているB−CLLセットから増幅されるかを評価すること;(b)増幅された領域をシーケンスすること;(c)増幅された領域が、問題となっているB−CLLセットからの同等な領域とハイブリダイズするかを評価すること;(d)患者が、問題となっているB−CLLセットからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有する循環抗体を有するかを評価すること;(e)患者が、問題となっているセットからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプに特異的な結合剤(例えば、上述したような抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー、好ましくは検出可能部分を含む)に結合する抗体を有するかを評価すること;又は(f)ラベルされた抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマーを、患者のリンパ球と混合すること及び組成物に結合するリンパ球が存在するかを、例えばコールターカウンター又は細胞ソータを使用して決定することが含まれる。
【0064】
上記の方法は、前白血病、早期白血病及び明らかな白血病状態を含む、任意の疾患段階にあるB−CLL患者に使用することができる。さらに、B−CLL細胞は、血液、骨髄、脾臓及び/又はリンパ節から、初期の診断の結果及び疾患の段階に応じて、得ることができる。
【0065】
本発明はまた、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子を含むB細胞により引き起こされるB−CLLを有する患者を治療する方法を対象とする。この方法は、患者に、上述した抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又は混合物をすでに記載したように、薬学的に許容可能な賦形剤で投与することを含む。
【0066】
抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又は混合物は細胞内でアポトーシスカスケードを促し得るため、それ自体がB細胞を消失させるのに有効的にあり得ても、抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原、アプタマー又は混合物は、上述したように細胞を直接殺傷することができる細胞毒を含むことが好ましい。
【0067】
さらに、本発明は、他のB−CLLセットを同定する方法を対象とする。この方法は、B−CLL細胞上に存在する抗体遺伝子のV、D、J、V及びJクラスを同定することを含み、ここで、同一のクラスは全て1体より多いB−CLL患者に存在する。データベース及びコンピュータ制御された比較法が、この同定プロセスにおいて採用され得ることが理解される。
【0068】
さらなるセットが一旦同定されると、抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原性部位に結合する化合物を、すでに記載された方法により同定することができ、ここで、この化合物は治療及び診断目的に有用である。実施例中に提供された結果から、B−CLL患者のかなりの割合が他の患者と同じB−CLL抗体遺伝子を共有するセット内にあることが確立されるため、他のセットが発見されるであろうことは大いにあり得る。
【0069】
当業者は、これらの方法における治療剤は、1つの「セット」に特有の抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合部位に結合する、抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプトマーであることが好ましいことを理解するであろう。
【0070】
本発明の好ましい実施形態を以下の実施例中に記載する。本明細書の特許請求の範囲内の他の実施形態は、本明細書中に開示される本発明の明細又は実施を考慮することにより、当業者に明白であろう。明細書は、実施例と併せて、実施例に続く、請求の範囲により示される本発明の範囲及び精神とともに、例示的にのみ見なされることを意図する。
【実施例】
【0071】
実施例1.複数の別個のセットのステレオタイプ抗原受容体は、慢性リンパ性白血病の促進において抗原の役割を果たす
実施例の概要
以前の研究は、B−CLL細胞のIgのH鎖の発現した可変(V)領域レパートリーの多様性は制限されていることを示唆している。H及びL鎖V領域の一次構造において著しい制約(marked constraint)の限定された例が存在するにもかかわらず、このレベルの制限はこの疾患において一般原則である可能性は以前には知られていなかった。この報告は、8セットの患者、そのほとんどは非突然変異又は突然変異が最少なIgV遺伝子を有し、長さ、アミノ酸組成及び組み換え接合部(junction)での固有アミノ酸残基等のCDR3構造特徴を共有する、共通したH及びLのV領域遺伝子セグメントの使用から生じる著しく類似したBCRを有する。したがって、以前に評価されていたよりも、より著しい程度の全BCRの構造制限、及びより高頻度の受容体共有化が患者間に存在する。このデータは、B−CLL細胞のかなりの割合がその発生のいくつかの時点で抗原エピトープの限定されたセットにより選択されたか、及び/又はこれらは、限定されたIgのV領域多様性を有する別個のB細胞亜集団に由来するかのいずれかを暗示する。これらの共有化されたステレオタイプなIg分子は、抗原同定に対して価値あるプローブであり、且つ交差反応イディオタイプ療法に対して重要な標的であり得る。セットII、セットIV、セットV、セットVI及びセットVIIIはメスマー(Messmer)他(2004年)において記載され、これらはそれぞれ、セットIV、セットI、セットIII、セットV及びセットIIと命名されている。
【0072】
[初めに]
慢性リンパ性白血病(B−CLL)において増大したBリンパ球クローンは、低いレベルの表面膜Ig、すなわちB細胞抗原受容体(BCR)を発現する。このIgの遺伝学は、Ig可変(V)領域に突然変異を有さないか又は少量の突然変異を有するクローンを有する患者は、かなりの数のIgV突然変異を有する患者よりも著しく悪い結果を示すことから、臨床的関連性を有する(ダムリ(Damle)他、1999年;ハムリン(Hamblin)他、1999年)。この関連性の基礎を成す生物学は不明瞭である。
【0073】
B−CLLの進行にBCRが果たす役割を支持する、いくつかの証拠の系列が存在する(チョラッジ及びフェラリーニ(Chiorazzi and Ferrarini)、2003年)。B−CLLクローン中の個々のIgVの分布は正常細胞において見られるものとは異なり(フェイス(Fais)他、1998年)、増加した頻度のV1−69、V4−34及びV3−07を有する(フェイス他、1998年;シュローダー及びディジエロ(Shcroeder and Dighiero)、1994年;ジョンソン(Johnson)他、1997年)。さらに、これらの特異的V遺伝子を使用したB−CLLケース間の突然変異の分布は、選択的にバイアスがかかっている(フェイス他、1998年;シュローダー及びディジエロ、1994年;キップス(Kipps)他、1989年)。
【0074】
最近、著しく類似した全BCR(H及びL鎖のV領域)を有する2つB−CLL亜集団が同定された(トビン(Tobin)他、2003年;ジオット(Ghiotto)、2004年)。これらの発見は刺激的であるものの、或る場合においてクローンはIgGを発現し(ジオット、2004年)、他の地理特性及び民族性が関連し得る(トビン、2002年)ため、これらは稀であり、変則的であり得ると考えられた。この報告は、H及びL鎖において類似性が高いIgV領域により特徴付けられる、著しく類似した一次構造、特にH及びLのCDR3コンフィギュレーションを有するBCRを発現する、別の8つのB−CLL患者群を記載する。したがって、個体を認識することができる制約された抗原結合部位を有するBリンパ球に由来するB−CLLクローンのかなりの割合は、構造的に類似したエピトープを有する、別個の抗原(複数可)又はクラスである。
【0075】
[材料と方法]
IgV遺伝子シーケンス
DJ及びV配列を、すでに記載した方法(フェイス他、1998年;ジオット他、2004年)により決定した。
【0076】
データベース検索
本発明者等のコレクション(n=255)からのB−CLLのIgH鎖Vアミノ酸配列と、公共のデータベース(n=197)とを、ヌクレオチド及びタンパク質データベースの両方のBLAST検索にかけて、類似した配列を同定した。類似した再配列したVDJの「セット」を定義するのに使用された規準は、A)同じV、D及びJ生殖細胞系列遺伝子の使用、B)同じDセグメントのリーディングフレーム及びV+又は−1コドンに関連する位置の使用、及びC)60%以上の同一性を有するHCDR3内でのアミノ酸類似性である。さらに、全てのB−CLLIgHタンパク質配列をアライメントし、ClustalWアライメントアルゴリズムを使用してクラスタ化した。密にクラスタ化している配列を、視覚により類似性を調べた。これらの検索の全ては、完全長VDJを使用し、このようなものは同じV遺伝子を使用する配列に重み付けした。類似したHCDR3を有するが、異なるV遺伝子を有する配列を同定するために、さまざまなセットからのCDR3モチーフを使用して公共のデータベースで、ProteinInfo検索エンジン(http://prowl.rockefeller.edu/)を使用して検索した。セットVの成員に対する規準を改変して、同じIgVクランの成員であった異なるIgV遺伝子の使用を可能にする一方、再配列されたVに対する規準は保持した。同じ特異的IgV遺伝子及び85%以上のLCDR3同一性の使用が、1つのセット内の再配列された随伴性(companion)のVの包含に必要であった。
【0077】
CD5及びCD5周辺Bリンパ球からの538個のVH配列(トビン他、2002年;ゲイガー(Geiger)他、2000年)を、公共のデータベースからダウンロードした。これらの538個の配列を、それぞれ、コロンビア大学のコロンビアゲノムセンターにあるAMDeCバイオインフォマティックス・コア・ファシリティ(AMDeC Bioinformatics Core Facility)で、BlastMachine上のtblastnを使用して翻訳されたデータベースと比較した。
【0078】
ここに記載される、接合領域の詳細なヌクレオチド及びアミノ酸配列アライメント、及びこの配列の完全長タンパク質配列アライメントを、図面に提供する。
【0079】
[結果と考察]
非常に制限されたVDJセグメント及び共有化されたHCDR3コンフィギュレーションを有するB−CLL患者の亜集団の同定
本発明者等のデータベース中の各B−CLL由来のVDJ配列を、本発明者等のコレクション(n=255)中の全てのB−CLL配列、並びに公共のIgV遺伝子データベース(n=197)中の全てのB−CLL配列と、ヌクレオチド及びタンパク質配列BLASTを使用して比較した。さらに、全ての可能なB−CLLH鎖V領域配列を、ClustalW法を用いて、すなわち、一緒にクラスタ化された配列をHCDR3配列類似性に関してさらに解析して、系統学的にグループ化した。これらのスクリーニング法により、同一なD(同定可能な場合)及びJセグメントの使用、Dセグメントリーディングフレーム、IgVに対して類似したDセグメント位置、及びHCDR3長、並びに著しい(60%以上)アミノ酸配列同一性により生じた、同じIgVから成る配列のセット(表1)が同定された。
【0080】
【表1】

【0081】
セットVIの1つの3つのサブセット(VIa、VIb及びVIe)は、異なるIgV遺伝子を利用するが、同じD及びJセグメント、同じVκを使用し、且つ非常に類似したHCDR3コンフィギュレーションを有する配列を含有した。したがって、本発明者等は、これらの3つのサブセットに共通したHCDR3モチーフを使用して、公共のデータベースを、異なるIgVセグメントを伴い得る同じHCDR3コンフィギュレーションを有するさらなる配列を検索した。この検索はB−CLL配列に限定されなかった。このアプローチにより、すでに同定されたサブセットが確認され、2つのさらなるセットVIのサブセット(VIc及びVId)が同定された。
【0082】
公共のデータベースの検索により、8個の独立したセットのうちの1つに属する、21個のVDJ配列が同定され、これらのセット間の配列の総数を45にした。興味深いことに、公共のデータベースから引き抜かれた21個の配列のうち2個のみが、B−CLL細胞に由来しなかった。これら2つは、B細胞を生産する抗カルジオリピン抗体に由来するもの(セットIV)及び脾臓の周縁帯リンパ腫に由来するもの(セットVIa)であった。類似配列の分布は、この検索時に、公共のデータベースは、合計で8,500個を超えるH鎖V領域配列のうち、B−CLL患者からのIgH鎖V領域配列を197個しか含有していない(本発明者等の研究室に由来するものは除く)ことから、特に顕著である(「ヒト免疫グロブリン重鎖可変」という用語でEntrezを検索し、ヌクレオチドデータベースにおいて8,874件のヒット、及びタンパク質データベースにおいて6,183件を超えるヒットを生み出した(2003年12月16日))。
【0083】
セット中のVDJセグメントとの制限されたV再配列のペアリング
5セットの共有化VDJに対応するV配列は、本発明者等のB−CLLケースのほとんどに、及び公共のデータベースにおいて同定されたもののいくつかに関して利用可能であった。注目すべきことに、利用可能なIgVはセット内で高度に保存されており、対応するJは非常に制限されている(表1及び図2)。利用可能なL鎖を有する8つのセットのうちの6つが、κアイソタイプを発現した。
【0084】
独立したセットのIgV遺伝子突然変異状態とアイソタイプ制限
各セット内のIgV配列のほとんどは、平均突然変異レベルが3.0%であったセットIIを除いて、最も類似した生殖細胞系列遺伝子から2.0%未満異なった。とりわけ、通常の2%閾値を使用して「突然変異した」と見なされる、これらの配列中の推定されるタンパク質構造は、生殖細胞系列とは比較的低いレベルで異なった。セットII(CLLのID47、図2)からのただ1つの配列は、その生殖細胞系列相対物とは5%より多く異なった。各セット内の対応するIgVは、低いレベルの突然変異を示し、いくつかの場合において、Vは2.0%より低い違いを示した一方、Vは生殖細胞系列配列とは2%以上の差を有した(表1及び図2)。
【0085】
H鎖アイソタイプは、1つのセットの成員間では同じであった。IgGケースから成るセットIVを除く全てのセットがIgMを発現し、これは、以前に報告された患者群と類似していた(ジオット他、2004年)。
【0086】
独立したセットのH及びLのCDR3の特徴
本発明者等は、H及びLのCDR3を含む残基、特にこれらのVH−D及びD−J接合部の化学的、構造的又は機能的特性における傾向を同定した。例えば、これらのセットのHCDR3内のDセグメントは、正常な細胞(ゼムリン(Zemlin)他、2003年)及びB−CLL細胞(フェイス他、1999年)におけるものよりもより頻繁に疎水性の停止リーディングフレーム内で読み取られた。セットVIにおける全てのケースに関して、D6−19セグメントがタンパク質を生成しない(non-productive)リーディングフレーム内で読み取られる。しかし、末端IgV配列と重なる領域内に位置する生殖細胞系列の停止コドンはトリミングされており、それにより、J4セグメントとのタンパク質生成可能な(productive)再配列を可能にした(図8)。
【0087】
また、いくつかのセット内のDセグメント中にある、非生殖細胞系列にコードされた特定のアミノ酸の繰り返しの出現にも注目すべきである。例えばセットVIIIの全成員において、Mへの変化はDセグメントの3’末端で見られるが(図5)、これは、多型であることが知られていない位置である。セットV中の7つの配列のうちの3つが、また、多型であるとは記載(list)されていないD3−10セグメント内で、RからQへの変化を有した(図6)。セットII中の5つのケースのうち4つにおいて、正規のD5−5セグメントによりコードされるHCDR3の一部でAがPに置換されていた。このことは共通した突然変異というよりもDセグメントの多型性であり得るが、このセット中の5つの配列の残り(CLLのID47)もまた、正規のD5−5配列とこのコドンで逸脱し、Dで置換されている(図7)。したがって、これらのアミノ酸変化が多型性を提示するとしても、各セット内のこれらの相対的な一貫性(relative consistency)は、これらの残基の選択を示唆している。
【0088】
いくつかのセットの成員は、任意の既知の生殖細胞系列遺伝子セグメントにより鋳型にされず、したがって、おそらくは組み換え構築中のトリミング及び/又は付加に起因する、共通した接合部残基を有する。セットIV中の配列の全ては、V−D接合部に1対のG、及びD−J接合部に1つのNを含有する(図4)。発見された非常に類似したV−D接合部はセットVIII内に存在する(図5)。セットII中のすべての配列は、V−Dに芳香族残基、及びD−J接合部に1対の塩基性残基(R又はK)を含有する(図7)。
【0089】
H及びLのCDR3の組成物における他の傾向は、他のセット内で見られる。これらの傾向、及び各セットに関するVDJ及びV接合部のヌクレオチド及びアミノ酸配列の詳細を、補足データに示し検討する(図4〜図8を参照)。
【0090】
セットの成員間のBCRの構造的類似性
ステレオタイプなセットの各成員に関する推定されるVDJ及びVタンパク質配列を、図2及び図3に提示する。セットのほとんどの成員が、主に非突然変異形態において、同じD及びJセグメントに付随する同じIgVを使用するため、及び、これらの再配列は事実上、常に結合したJにおいて制限されている同一のIgVと対を成すため、各セットの全BCRの一次構造の特徴は著しく類似している。さらに、独立したセットの成員のHCDR1、HCDR2、LCDR1及びLCDR2のアミノ酸配列は、同一でない場合には極めて類似している(例えば、セットIV、セットV、セットVIII及びセットVIのサブセット)。セットIIにおいて、いくつかのアミノ酸の違いが、体細胞突然変異に応じてこれらの領域内に存在する。
【0091】
これらのデータは、以前に評価されていたよりも、B−CLLにおけるBCRの一次構造のより著しい制約を示す。またこれらは、この原理が相当数の患者において生じることを示す。まとめると、本発明者等の内部研究室B−CLLデータベース内の全配列の〜12%(255個のうち31個:この研究からは22個、本発明者等の以前の研究(ジオット他、2004年)からは5個、及び別の記載されたセット(トビン他、2002年;2003年)と合致する4個)、及び、ここで記載される8つのステレオタイプセットのうち1つ又は上述した2つの患者群のうち1群に属する非突然変異IgVを有するもの(トビン他、2002年;2003年;ジオット他、2004年)の〜20%(131個のうち27個)である。ほぼ同じ総頻度(〜12%)が、公共のデータベースからの配列間でも見出された(197個のうち21個)が、非突然変異である公共のB−CLL配列の割合は決定されなかった。これらのセットの再配列のほとんどは、体細胞突然変異を欠くか又はわずかな体細胞突然変異しか有さず、Vが2%閾値を上回るものが、著しいIgV遺伝子突然変異を規定する基準として共通して使用されても(フェイス他、1998年;シュローダー及びディジエロ他、1994年)、このレベルをわずかに上回るだけである。このことは、制限されたBCR構造が、より悪い臨床経過及び結果を有する患者の主な特徴であることを示唆する(ダムリ他、1999年;ハムリン他、1999年)。非突然変異BCRを有する5つのB−CLLケースのうち1つは、これらの規定されたセットの1つに適合すると思われる。さらなるセットは、より多くのIgV領域配列がB−CLLにおいて定義されるに従って明らかにされ得るであろう。そして、すべての非突然変異ケースは、別個の数の原型的セットのうちの1つに類似し得る。セットIV、セットV、セットVII及びセットVIIIは非突然変異1−69を使用するのにもかかわらず、これらのセットは、特異的D及びJセグメント会合における制限を有する、以前記載した1−69発現B−CLLケース(フェイス他、1998年;ジョンソン他、1997年)とは異なる。これらの違いには、J(セットI中のJ3対J6)、D(セットVIII中の、D2対D3ファミリー、及び極めて短いLCDR3を有するVκL6)及びL鎖(セットV中のλ対κ)遺伝子の使用が含まれる。
【0092】
IgV又はVDJのみを検討した初期の研究(フェイス他、1998年;シュローダー及びディジエロ、1994年;ジョンソン他、1997年;チョラッジ及びフェラリーニ、2001年)は、B−CLLの抗原結合部位における限定された構造多様性を指摘した。しかし、本発明者等の結果は、1つのセット内の配列の著しい類似性、及びこの類似性が偶然に生じることは事実上の数学的に不可能であるため、より際立っている。B−CLLにおける遺伝子セグメントの使用が無作為であったなら、独立した白血病(又は正常な)B細胞におけるVKJとVセグメントとの同じ組み合わせを見出す可能性は、1×10−6より大きいであろう。したがって、100万より多いケースが解析されるまで、同じVDJ/Vから成るBCRを有する2体のB−CLL患者を同定することは期待されないであろう。この計算は、かなり広範なV−D、D−J及びV−J接合部での多様性(潜在的に1×10−9を上回り、1×10−12に達し得る)を占めないため、受容体編集及び改訂がこれらの可能性を多少限定し得るにもかかわらず、この計算は保存的である。それにもかかわらず、ここで報告された患者のクラスタ中のBCR構造制限のレベル及び頻度は、並外れており、今日報告されているB又はT細胞リンパ球増殖性障害のほかのどれよりも高いように思われる。
【0093】
類似したIgH鎖V領域配列を公共のデータベースのホモロジー検索により発見することは、いくつかのIgVはバイアスがかかった様式で発現され、〜6,600個の異なるV−D−J組合せが生じ得るため、全く驚くべきことではない。データベースはこの数より多いIgH鎖V領域配列を含むため、同じ組み換え遺伝子セグメントを同定することはあり得ないことはない。本発明者等が538個のCD5及びCD5のB細胞に由来するH鎖V領域配列を解析したところ、本発明者等は多くの類似した配列対及びいくつかの類似した配列群を同定した。しかし、類似性が偶然の産物であることが期待されるように、これらの群は多様な源のB細胞に由来した。反対に、本発明者等のデータベースにおいて検出された所定のB−CLL由来配列に対する類似性は、データベース全体を検索したにもかかわらず、ほぼ他のB−CLL配列(19/21)又は他のリンパ球増殖性障害(1/21)のみ生じた。ただ1つ同定された配列は、非B−CLLクローンに由来し、自己抗体をコードするものであった(表I及び図2)。B−CLLクローンと比較されるべき適切な正常B細胞レパートリーが未解決のままであるものの(チョラッジ及びフェラリーニ、2003年)、これらの結果は、制限された細胞源の配列セットは、公共のデータベースにおいて一般化された現象ではないことを実証する。
【0094】
したがって、B−CLLの発達には、制限されたIgV及び/又はBCR構造を有するB細胞クローンを伴なわなければならない。特定のBCR遺伝子組合せの発現が白血病誘発の単独促進因子であろうとは考えにくい一方、特にB−CLLの源ととなる細胞はいまだ不特定であるため(チョラッジ及びフェラリーニ、2003年)、遺伝子セグメント会合における強い固有なバイアス、及びB−CLLを起こすB細胞集団におけるVDJ/V対形成(pairing)は正式には除外することができない。抗原の経験の前に、特定のIgV遺伝子セグメントの組み換えにおけるバイアスに関する証拠がマウスにおいて存在する(シードル(Seidl)他、1997年)ものの、これらの場合におけるH鎖及びL鎖両方のV遺伝子座での、特にV−(D)−J接合部での組み換えバイアスにより与えられる制限の程度は、ここで記載されるセットにおけるものほど厳密ではない。本発明者等が知る限り、類似した再配列の頻度、すなわち抗原選択の独立性が、これらのB−CLLケース間と同じくらい大きいヒトB細胞の亜集団は知られていない。
【0095】
したがって、抗原選択は、正常なBリンパ球のB−CLL細胞への形質転換に強い制限を与える影響を有し得る。単純なモデルは、形質転換事象は抗原特異性と結び付けされる、すなわち多様性の高い集団からの個々のBリンパ球が結合でき、且つ形質転換剤(例えばウイルス)をそのBCRを介して内在化することができると仮定するであろう。これはあり得ないように見えるが、このようなメカニズムはB−CLLに関して暗示されている(マン(Mann)他、1987年)。
【0096】
さらに、抗原は形質転換の促進因子であり得、もともと多様なBリンパ球集団からの増大に特異的なクローンを選択し、これらの発達を形質転換状態に及び形質転換状態で助長する(チョラッジ及びフェラリーニ、2003年)。これは、B−CLLの影響を受けやすい細胞集団が、抗原反応性に関して、したがって、これらの発達中に別個の抗原又は抗原クラスにさらされることにより、BCR構造に関して予め選択されたケースであろう。これらのクローンは患者間で、特に、選択抗原が外来性又は自己由来で且つ多型性であり得る場合、異なり得る。これらのクローンの増大から、1つの成員は、抗原に依存しない白血病誘発カスケードを広めるであろう初期の形質転換病変を発達させ得る。
【0097】
最終的に、初期の形質転換事象は、多様性を有するB細胞集団又は事前に抗原選択された集団内で無作為に起こり得、それに続く形質転換クローンの臨床的B−CLLへの育成には、抗原による継続的なBCRの関与(engagement)が必要であり得る(チョラッジ及びフェラリーニ、2003年)。最近では、B−CLLの表現型特徴を有するB細胞のクローン増大が、正常な年配個体において発見された(ローストロン(Rawstron)他、2002年;ギア(Ghia)他、2004年)。これらのクローンの臨床的関連はまだ隔離されていない。しかし、これらの発見は、B−CLLの遺伝的病変のいくつかを有するが、クローンを臨床的B−CLLに成熟させるのに十分な継続的な刺激をもたらすであろうBCR特異性を欠くクローンを提示し得る。
【0098】
各セットの成員間でのBCR全体の著しいタンパク質類似性(図2及び図3)は、これらが同じ又は類似した抗原を認識し得ることを示唆する。抗原(複数可)の性質はここで提示されるIg配列から直接推定することができないが、これらが自己抗原、又は細菌若しくはウイルス外皮(coat)に由来し得る炭水化物、又はこれら2つの組み合わせであることを疑ういくつかの理由が存在する。
【0099】
1−69(セットI、セットII及びセットII)及びV3−21(トビン他、2002年;2003年において以前に記載されたセット)は、リューマチ因子間で富んでいる(シルバーマン(Silverman)他、1988年;ヒ(He)他、1995年)。V4−34(セットII)は、単クローン寒冷凝集素疾患のすべての場合(パスカル(Pascual)他、1992年)及び自己免疫性症状においてに使用される。実に、このVセグメントに固有の自己反応性は、4−34B細胞を高親和性に多様化させること、すなわちB細胞をアイソタイプ交換(isotype-switch)させることを避ける免疫系により、主要な阻害プロセスを引き出す(ピュー−バーナード(Pugh-Bernard)他、2001年)。セットIVの一員として同定された抗カルジオリピン抗体は、このセットの他の成員はカルジオリピン又はDNAに対して特異的であり得ることを暗示する。なぜなら、前者に対するいくつかの抗体は後者とも反応するからである(クマー(Kumar)他、2003年)。さらに、制限されたVDJ及び/又はV遺伝子セグメントは、ヒト(スコット(Scott)他、1989年)及びマウス(ポッター(Potter)、1977年)における抗炭水化物mAbを生産するB細胞の特徴である。
【0100】
特徴的な接合部残基もまた、抗炭水化物mAb及び自己抗体の特徴であり、塩基性接合部残基は、セットII、セットIV及びセットVIe(図2)に示すように、DNA等の酸性標的との反応性をしばしば示す(ラディック及びウェイガート(Radic and Weigert)、1994年)。多くのB−CLLクローンによる自己反応性Ig/BCR分子の合成(ストーガー他、1989年;ボルシュ(Borche)他、1990年)は、これらのセット及び自己抗体に特有のBCR構造特徴間の関連を支持する。
【0101】
これらのB−CLLステレオタイプと適合する非B−CLLIg配列は、B−CLL前駆細胞(複数可)の同定に対する洞察を与え得る。これらの2つのうち、1つは脾臓周縁帯リンパ腫(SMZL;セットVIa、図2)に由来し、もう一方は自己抗体生産B細胞(セットIV、図2)に由来する。興味深いことに、正常なMZ B細胞は、胸腺依存性II型抗原及び自己抗原を認識することができるmAbを生産する(ベンデラック(Bandelac)他、2001年)。さらに、マウスMZ B細胞のIgV領域レパートリーは、遺伝子セグメントの使用、及び発生させるために無傷のBCRシグナル伝達を必要とする構造において非常に制限されている(マーティン及びカーネット(Martin and Kearnet)、2000年)。MZ B細胞は、胃のMALTリンパ腫に対する前駆体であると考えられ(イサクソン(Isaacson)、1999年)、B−CLL細胞の前駆型(precursor)として提唱されている(チョラッジ及びフェラリーニ、2003年)。1つのセット内の類似した配列に基づいて、共通した抗原反応性を推測する場合、B−CLLケース、特に非突然変異IgV遺伝子を有するケースのかなりの割合が、限定された別個の抗原又はエピトープアレイのうち1つを認識するmAbを生産する。このような説明で、いくつかのB−CLLケースは、悪性腫瘍の促進における抗原推進源(antigenic drive)(この場合は、ピロリ菌)の役割に関与する胃のMALTリンパ腫に似ることがある。ここで報告されたステレオタイプIg分子は、B−CLLにおいて、白血病誘発プロセスを推進する抗原を同定するのに価値のあるプローブであり得る。
【0102】
最終的に、これらのステレオタイプIg分子セットは、B−CLL細胞上で治療標的として役立ち得る。BCRを腫瘍特異的抗原として標的化することの概念的な難点は、各患者に対して個別化された試薬を作製する明白な必要性であった。しかし、本発明者等のデータは、B−CLLケース群間で、潜在的なBCR構造及び特異性に広範な重なりが存在することを示すため、このアプローチははるかに易しいものとなり得る。実際、非突然変異IgV遺伝子を有するケースの〜20%がこれらのセットのうちの1つに含まれるため、このような標的化は、最も悪い予後を有するケース、治療に対する反応性が最も少ないケース、及び最も進行性の臨床経過を有するケースにおいて最も効果的であり得る(ダムリ他、1999年;ハムリン他、1999年)。
【0103】
上記を鑑みて、本発明のいくつかの利点が達成され、且つ他の利点も獲得されることが示されるであろう。
【0104】
本発明の範囲を逸脱することなく、上記した方法及び組成物においてさまざまな変化を作ることができるので、上記した説明に含まれ、且つ添付の図面に示される全ての事柄は、説明的なものと解釈され、限定する意味ではないことが意図される。
【0105】
本明細書中で引用した文献の全ては、参照されて本明細書中の一部とする。本明細書中における文献の検討は、著者等により作られた主張を要約しようとするに過ぎず、いかなる文献も従来技術を構成するとは認められない。出願人は、引用文献の正確性及び妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1−1】セットIのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−2】セットIIのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−3】セットVIaのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−4】セットVIb、セットVIc及びセットVIdのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−5】セットIVのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−6】セットVのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−7】セットIIIのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−8】セットVIeのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図1−9】セットI〜VIeのB−CLL細胞に由来する抗体遺伝子のV、D及びJ領域を提供する図である。
【図2】セットII、セットIV、セットV、セットVIa〜VIe及びセットVIIIにおける全配列のH鎖V領域のアミノ酸アライメントを示す図である。ピリオドは生殖細胞系列遺伝子とのホモロジーを示す。灰色のアミノ酸は、生殖細胞系列にコードされた残基と化学的に類似している。下線位置は、既知の対立遺伝子多型性部位である。セットに対するコンセンサスな配列を、各アライメントの底部に示す。
【図3】セットII、セットIV、セットV、セットVI及びセットVIIIにおける全配列のL鎖可変領域のアミノ酸アライメントを示す図である。詳細は上記の図2を参照。
【図4】セットIVの、CDR3のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列並びにその接合部を示す図である。H鎖配列を左に示し、L鎖配列を右に示す。最も類似した生殖細胞系列遺伝子を上部に示す。点は、生殖細胞系列配列とのホモロジーを示す。長点(dash)は、その位置に配列がないことを示す。底部の数字は、参照するときに利便性のためであり、任意である。公共のデータベースからの配列は、ケースIDの下の括弧内にGenBankアクセッション番号を有する。V−D接合部の1対のGコドン、及びD−J接合部のNコドンを含む、特殊な接合部残基が存在する。V−D接合部でのGコドンの作製には、Nの付加と共に、IgVの末端で3’アデノシンヌクレオチドをトリミングすることが必要である。また、Dセグメントの5’末端での限定されたトリミングは、全てのケースにおいて第一のYコドン対を消失させた。2つの場合において、DはYを置換し、2つの他の場合においてはNが同じことを行った。これらの両方とも、カイト−ドゥーリトル(Kyte-Doolittle)スケールの陰性末端で適合する荷電した残基である。D遺伝子の3’末端のYコドンはまた、このセットの全ての配列において消失された。まとめると、これらの保存された接合部調整は、HCDR3構造に関する強い選択を示唆する。3つの再配列されたL鎖配列が、このセットに関して利用可能であり、その全てはJκ1、Jκ4又はJκ5に伴なうVκA27遺伝子を含有した。
【図5】セットVIIIの、CDR3のアミノ酸及びヌクレオチド配列並びにその接合部を示す図である。V−D接合部は、非鋳型Gにより支配される。D−J接合部は、トリミング及び穴埋め(fill-in)の証拠を、Dをコードする最後の残基が見つかる、Mへの改変とともに、示す。この説明を排除することはできないが、これは既知の多型性部位ではない。ただ1つのL鎖配列がこのセット(CO13)に利用可能であり、これはVκL6及びJκ3遺伝子から成る。V−J接合部で生殖細胞系列セグメント間の著しい重なりが存在した。
【図6】セットVの、CDR3のアミノ酸及びヌクレオチド配列並びにその接合部を示す図である。これらの配列において、生殖細胞系列D遺伝子の5’末端は、生殖細胞系列IgVセグメントの3’末端と重なって、V−D接合部を形成した。生殖細胞系列配列のいずれとも重なり領域で適合しない複数のヌクレオチドの存在は、トリミング及び付加が生じ、それにより、小さい側鎖(A、S及びV)を有する又は側鎖のない(G)残基の好ましい挿入が生じることを示唆する。D−J接合部でのアミノ酸は、あまり保存されてない。しかし、VとDとの間で重なる領域は、優先(preferential)組み換えに関して予測され得たよりも著しいホモロジーを含有しないため、V、D及びJセグメントの矛盾しない相対位置決めは興味をそそるものである。このことは、HCDR3コンフィギュレーション、及び特異的な接合部残基よりもDにコードされる残基に対する選択を示唆する。2つの再配列されたL鎖配列がこのセットから利用可能であり(RF22及びGN12)、両者はVλ1.16(lc)及びJλ1セグメントを含んでいた。セットIV、セットV及びセットVIIIの成員におけるH及びL鎖両方の突然変異レベルは、常に2%未満であり、B−CLLにおけるV1−69内の突然変異の頻繁な欠如又は欠乏に関する報文と矛盾しない(キップス他、1989年;シュローダー他、1994年;フェイス他、1998年)。
【図7】セットIIの、CDR3のアミノ酸及びヌクレオチド配列並びにその接合部を示す図である。このセット、5ケース中の配列のH鎖接合部はかなり制約されている。V(V4−34)とJ(J6)セグメントの両方に関係するD(D5−5)の位置は各成員において同一であり、等しいHCDR3長が生じる。V−D及びD−J接合部は両方ともトリミング及び付加の証拠を含んでいる。これらのプロセスは、V−D接合部(位置5)に芳香族残基(W、Y、F)、続いて疎水性残基(位置6にG、P又はA)に生じさせ、D−JH接合部(位置12及び13)に塩基性残基(K又はR)をコードするコドン対を生じさせる。Dセグメントの位置9では、5つのHCDR3配列中の4つが、公共のデータベースにおいて蓄積されている正規のD5−5セグメントにおいて見られるAではなくPを示す。これは、共通した突然変異というよりもD5−5セグメントの多型性である可能性が最も高いが、このセット中の5つの配列のうちの最後の1つ(CLL ID47)は、このコドンでの正規のD5−5配列からも逸脱し、Dで置換されている。V−D−JH接合部のこれらの高度に保存された改変は、非常に特有なHCDR3構造の選択を示唆している。このセットの再配列されたL鎖もまた非常に類似している。利用可能なV配列の3つ全てがVκA17及びJκ1又はJκ2のいずれかを使用する。接合部は、接合部のPをCLL240から取り除く省略(abbreviated)組み換えにより生じた、ただ1つの違いを有し、非常に類似している。これらのケースはIgGアイソタイプである。交換アイソタイプを示すほとんどのIgGB−CLLケース(フェイス他、1998年;ハシモト(Hashimoto)他、1992年;ジオット他、2004年)のように、これらのケースは、生殖細胞系列とは2%を超える、わずかではあるが違いを有するため、突然変異したものとして分類される。
【図8】セットVIの、CDR3のアミノ酸及びヌクレオチド配列並びにその接合部を示す図である。V1−02生殖細胞系列を示す。表示された領域に関して、V1−02と、V1−03、1−18、1−46又は5−51との間には配列の違いは存在しない。Jκ1遺伝子が示され、Jκ2及びJκ1の生殖細胞系列配列が違う位置でのCLL011とCLL−412とJκ2との間のホモロジーを*印で示す。このセットは5つのサブセットから成り、HCDR3及びVの特徴を共有するが、異なるIgV遺伝子(1−02、1−03、1−18、1−46及び5−51)を含む合計22体の患者から成る。これらのサブセットHCDR3は全て正確なVD重なりを共有する。奇妙なことに、D6−19セグメントが、タンパク質を生成しないリーディングフレーム内で使用された。しかし、この停止コドンは、末端IgV配列との重なり領域内に存在し、トリミングされ、それにより、JH4セグメントとのタンパク質生成可能な再配列を可能にした。D−JH接合部はトリミング及び付加の証拠を含む。Dセグメントの後の第一の非生殖細胞系列により鋳型にされたコドンは、重複(redundant)Lコドンに富むが、残りの接合部のコドンは厳密には保存されていない。このセットに利用可能な再配列されたL鎖は全て、Jκ1及びJκ2に制限されたJκの使用とともにVκ012/2遺伝子を使用する。これらの10配列のうち、9本は、LCDR3中の生殖細胞系列及び接合部領域の配列と基本的に同一である。したがって、このセットは、その共通するHCDR3構造及びモチーフだけでなく、非常に制限されたLCDR3組成を有する事実上同一なVパートナーの使用にもよって一つにまとめられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体軽鎖(L鎖)遺伝子と抗体重鎖(H鎖)遺伝子との結合体(a combination)である、単離且つ精製された製剤であって、
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子のファミリー成員は、V4−39/D6−13/J5/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットI)、V4−34/D5−5/J6/VκA17/Jκ1/κ2(セットII)、V3−21/J6/Vλ3h/Jλ3(セットIII)、V1−69/D3−16/J3/VκA27/Jκ1/κ4(セットIV)、V1−69/D3−10/J6/Vλ1c/Jλ1(セットV)、V1−02/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIa)、V1−03/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1/κ2(セットVIb)、V1−18/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ1(セットVIc)、V1−46/D6−19/J4(セットVId)、V5−51/D6−19/J4/VκO12/2/Jκ2(セットVIe)、V1−69/D3−3/J4/VκA19/Jκ4(セットVII)、及びV1−69/D2−2/J6/VκL6/2/Jκ3(セットVIII)から成る群より選択される、
抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、製剤。
【請求項2】
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子の前記ファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子の前記ファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子の前記ファミリー成員は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子の前記ファミリー成員は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記抗体遺伝子は単鎖遺伝子である、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記抗体遺伝子はベクター上に存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記ベクターはクローニングベクターである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記ベクターは発現ベクターである、請求項7に記載の製剤。
【請求項10】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子を含むベクターを含む、培養細胞。
【請求項11】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項10に記載の培養細胞。
【請求項12】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項10に記載の培養細胞。
【請求項13】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項10に記載の培養細胞。
【請求項14】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項10に記載の培養細胞。
【請求項15】
前記培養細胞は、前記抗体遺伝子によりコードされる抗体を発現する、請求項10に記載の培養細胞。
【請求項16】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる、単離且つ精製された抗体。
【請求項17】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項16に記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項16に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項16に記載の抗体。
【請求項21】
ハイブリドーマに由来する、請求項16に記載の抗体。
【請求項22】
クローン抗体遺伝子に由来する、請求項16に記載の抗体。
【請求項23】
Fab、Fab2又はFvから基本的に成る、請求項16に記載の抗体。
【請求項24】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【請求項25】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項26】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項27】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項28】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項29】
マウス抗体である、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項30】
ヒト抗体である、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項31】
ヒト化抗体である、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項32】
請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体の結合部位と、別のB細胞抗原に結合する結合部位とを含む、二重特異性抗体。
【請求項33】
前記B細胞抗原はシグナル伝達抗原である、請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
前記B細胞抗原は表面抗原である、請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
前記B細胞抗原は細胞内抗原である、請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体の2つ以上の混合物。
【請求項37】
請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体の少なくとも1つを医薬上許容可能な賦形剤中に含む、医薬組成物。
【請求項38】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するペプチド抗原。
【請求項39】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項40】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項41】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項42】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項43】
請求項38に記載のペプチド抗原の2つ以上の混合物。
【請求項44】
請求項38に記載のペプチド抗原の少なくとも1つを医薬上許容可能な賦形剤中に含む、医薬組成物。
【請求項45】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合するアプタマー。
【請求項46】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項47】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項48】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項49】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項50】
請求項45に記載のアプタマーの2つ以上の混合物。
【請求項51】
請求項45に記載のアプタマーの少なくとも1つを医薬上許容可能な賦形剤中に含む、医薬組成物。
【請求項52】
細胞毒をさらに含む、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項53】
細胞毒をさらに含む、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項54】
細胞特をさらに含む、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項55】
前記細胞毒は放射性部分である、請求項52〜54のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー。
【請求項56】
前記細胞毒はリシンである、請求項52〜54のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー。
【請求項57】
前記細胞毒は化学療法薬である、請求項52〜54のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー。
【請求項58】
検出可能部分をさらに含む、請求項24に記載の抗イディオタイプ抗体。
【請求項59】
検出可能部分をさらに含む、請求項38に記載のペプチド抗原。
【請求項60】
検出可能部分をさらに含む、請求項45に記載のアプタマー。
【請求項61】
前記検出可能部分は蛍光体である、請求項58〜60のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー。
【請求項62】
前記検出可能部分は酵素である、請求項58〜60のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマー。
【請求項63】
第一の結合部位と第二の結合部位とを少なくとも含む多量体分子であって、前記第一の結合部位は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合し、前記第二の結合部位は、(a)前記第一の結合部位と同じ抗体の抗原結合領域、又は(b)別のB細胞抗原のいずれかに結合する、多量体分子。
【請求項64】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項65】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項66】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項67】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項68】
5つより多い結合部位を含む、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項69】
前記結合部位の全ては、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項70】
前記結合部位の全ては同じエピトープに結合する、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項71】
前記結合部位の全ては抗体結合部位である、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項72】
前記結合部位の全てはペプチド抗原である、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項73】
前記結合部位の全てはアプタマーである、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項74】
前記結合部位は、抗原結合部位、ペプチド抗原及びアプタマーから成る群より選択される少なくとも2つの結合部位の混合物である、請求項63に記載の多量体分子。
【請求項75】
請求項63に記載の多量体分子を医薬上許容可能な賦形剤中に含む、組成物。
【請求項76】
請求項16に記載の抗体を生産するハイブリドーマ。
【請求項77】
請求項24に記載の抗体を生産するハイブリドーマ。
【請求項78】
抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、単離且つ精製された製剤であって、
前記抗体軽鎖遺伝子及び前記抗体重鎖遺伝子の遺伝子ファミリー成員は2体以上の患者のB細胞内に存在し、ここで、該B細胞の抗体鎖はまた同じアイソタイプのJ、D及びJ領域を共有し、該B細胞は前記患者内においてリンパ球増殖性であるか、又は前記患者は該B細胞を伴なう自己免疫疾患を有する、
抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子との結合体である、製剤。
【請求項79】
前記患者はB細胞慢性リンパ性白血病を有する、請求項78に記載の製剤。
【請求項80】
前記患者は前記B細胞を伴なう障害を有し、該障害は、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、骨髄腫、抗体介在性神経学的障害を伴なう単クローン性免疫グロブリン血症、重大さが不明な単クローン性免疫グロブリン血症、及び重大さが未決定な単クローン性リンパ球増加症から成る群より選択される、請求項78に記載の単離且つ精製された製剤。
【請求項81】
前記患者は、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、I型真性糖尿病、自己免疫性末梢神経障害及び自己免疫性溶血性貧血のいずれかを有する、請求項78に記載の単離且つ精製された製剤。
【請求項82】
(a)B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者が、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有するかを決定する方法、又は
(b)イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有する患者におけるB−CLLの治療の進行を追う方法であって、
前記B−CLL細胞上の前記B細胞受容体が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するかを決定することを含む、方法。
【請求項83】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記抗体遺伝子は、セットII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIIから成る群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体遺伝子は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe及びセットVIIから成る群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するB細胞受容体を有する前記細胞が定量化される、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
前記決定する過程は、前記抗体遺伝子又はmRNAのイディオタイプ決定領域を増幅すること、及び、増幅された領域が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIの抗体遺伝子から増幅されるかを評価することを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項89】
前記評価する過程は、前記増幅された領域をシーケンスすることを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記評価する過程は、前記増幅された領域が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの同等な領域とハイブリダイズするかを評価することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記決定する過程は、前記患者が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有する循環抗体を有するかを評価することを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項92】
前記評価する過程は、前記患者が、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプに特異的な結合薬剤に結合する抗体を有するかを評価することにより実行される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記結合薬剤は、抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原又はアプタマーである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記結合薬剤は、検出可能部分をさらに含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記評価する過程は、セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIから成る群より選択される抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する薬剤であって、検出可能部分をさらに含む剤と、前記患者のリンパ球とを共に混合すること、及び
次いで、前記薬剤に結合するリンパ球が存在するかを決定すること
により実行される、請求項82に記載の方法。
【請求項96】
前記薬剤は、抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原及びアプタマーから成る群より選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記決定する過程は、コールターカウンター又はフローサイトメーターを利用する、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記患者は前白血病である、請求項82に記載の方法。
【請求項99】
前記患者は初期白血病状態にある、請求項82に記載の方法。
【請求項100】
前記患者は明らかな白血病状態にある、請求項82に記載の方法。
【請求項101】
前記患者の血液に由来するB−CLL細胞が評価される、請求項82に記載の方法。
【請求項102】
骨髄、脾臓及び/又はリンパ節に由来するB−CLL細胞が評価される、請求項82に記載の方法。
【請求項103】
(a)B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者が、イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有するかを決定する方法、又は
(b)イディオタイプ特異的B細胞受容体を有するB−CLL細胞を消失させることを対象とする治療の影響を受けやすいB−CLLの形態を有する患者におけるB−CLLの治療の進行を追う方法であって、
前記B−CLL細胞上の前記B細胞受容体が、請求項78に記載の抗体遺伝子の規準を満たす抗体遺伝子によりコードされるイディオタイプを有するかを決定することを含む、方法。
【請求項104】
セットI、セットII、セットIII、セットIV、セットV、セットVIa、セットVIb、セットVIc、セットVId、セットVIe、セットVII又はセットVIIIからの抗体遺伝子を含むB細胞により引き起こされるB−CLLを有する患者を治療する方法であって、該患者に、前記抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する薬剤を投与することを含む、治療する方法。
【請求項105】
前記剤は、抗イディオタイプ抗体、ペプチド抗原及びアプタマーから成る群より選択される、請求項104に記載の治療する方法。
【請求項106】
前記薬剤は細胞毒をさらに含む、請求項104に記載の治療する方法。
【請求項107】
前記薬剤は、前記抗体遺伝子によりコードされる1つより多い抗体に結合する、請求項104に記載の治療する方法。
【請求項108】
前記1つより多い抗体のそれぞれは、同じ抗原結合領域を含む、請求項107に記載の治療する方法。
【請求項109】
前記1つより多い抗体は、少なくとも2つの異なる抗原結合領域を含む、請求項107に記載の治療する方法。
【請求項110】
B−CLLセットを同定する方法であって、B−CLL細胞上に存在する抗体遺伝子のV、D、J、V及びJクラスを同定することを含み、ここで、同じクラスは全て1体より多いB−CLL患者に存在する、方法。
【請求項111】
前記抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原性部位に結合する薬剤を同定することをさらに含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記薬剤は、前記抗体遺伝子によりコードされる前記抗体の前記抗原性部位に結合する抗イディオタイプ抗体を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記薬剤は、前記抗体遺伝子によりコードされる前記抗体の前記抗原性部位に結合するペプチド抗原を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記薬剤は、前記抗体遺伝子によりコードされる前記抗体の前記抗原性部位に結合するアプタマーを含む、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
請求項78に記載の抗体遺伝子の前記規準を満たす抗体遺伝子を含むB細胞により引き起こされるB−CLLを有する患者を治療する方法であって、該患者に、前記抗体遺伝子によりコードされる抗体の抗原結合領域に結合する薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項116】
患者が、1つのセットに属するB−CLLを有するかを決定する方法であって、
該患者のB−CLL細胞上に存在するB細胞受容体の抗体遺伝子のV、D、J、V及びJ領域の配列を決定すること、
これらの領域を有するIg生殖細胞系列遺伝子、又はこれらの配列を有する最も近い遺伝子を同定すること、及び
これらの同定された生殖細胞系列遺伝子を、他の複数のB−CLL患者からの生殖細胞系列遺伝子のデータベースと比較すること
を含み、B−CLL患者からの該データベース中で、該同定された生殖細胞系列遺伝子の全てを同定することは、該患者が1つのセットに属するB−CLLを有することを示す、方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−510622(P2007−510622A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534362(P2006−534362)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033176
【国際公開番号】WO2005/034733
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】