説明

B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストを用いた自己免疫疾患の治療

【課題】造血プロセス中に骨髄で生産される多くの種類の白血球の1つであるリンパ球の中のBリンパ球(B細胞)表面マーカーに結合する治療的有効量のアンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患の患者を治療する方法の提供。
【解決手段】CD19又はCD20等のB細胞表面マーカーに結合する治癒的有効量のアンタゴニストを用いた、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法。アンタゴニストは抗体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞表面マーカー、例えばCD19又はCD20に結合するアンタゴニストを用いた自己免疫疾患の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球は造血プロセス中に骨髄で生産される多くの種類の白血球の一つである。リンパ球には、主として2つの集団:Bリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)がある。ここで特に関心あるリンパ球はB細胞である。
B細胞は骨髄内で成熟し、骨髄がその細胞表面に抗原結合性抗体を発現するようにする。まず、未処置のB細胞は、その膜結合性抗体が特異的な抗原と遭遇すると、速やかに分裂し始め、その子孫が記憶B細胞及び「形質細胞」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。記憶B細胞はより長い寿命を持ち、最初の親細胞と同じ特異性を有する膜結合性抗体を発現し続ける。形質細胞は膜結合性抗体を産生しないが、代わりに分泌可能な形態の抗体を産生する。分泌される抗体は体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0003】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも称される)はプレB細胞及び成熟Bリンパ球上に局在する、約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287(1989)、及びEinfeldら, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。また、前記抗原はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)上の90%以上で発現している(Andersonら, Blood 63(6):1424-1433(1984))が、造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞又は他の正常な組織においては見出されていない(Tedderら, J. Immunol. 135(2):973-979(1985))。CD20は細胞分裂周期の開始と分化に対する活性化プロセスの初期段階を調節し(Tedderら, 上掲)、カルシウムイオンチャンネルとして機能する可能性がある(Tedderら, J. Cell. Biochem. 14D:195(1990))。
B細胞リンパ腫でCD20が発現すると、この抗原は、そのようなリンパ腫の「ターゲティング」のための候補薬となり得る。本質的に、このようなターゲティングは以下のように一般化される:B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗CD20抗体は正常及び悪性B細胞の双方のCD20抗原(見かけ上)に特異的に結合する。さらに、腫瘍を破壊する可能性のある化学薬剤又は放射活性標識を、該薬剤が新生物B細胞に特異的に「送達」されるように、抗CD20抗体にコンジュゲートさせることができる。アプローチに関係なく、第1の目的は腫瘍を破壊することであり;特定のアプローチは利用する特定の抗CD20抗体により決定され、よってCD20抗原をターゲティングするために有用なアプローチはかなり多様である。
【0004】
CD19はB系統の細胞の表面で発現する他の抗原である。CD20と同様、CD19は、幹細胞段階から形質細胞への末端分化の直前までの該系列の分化の間の全体にわたって細胞に見出される(Nadler, L. Lymphocyte Typing II:3-37と付録, Renlingら, eds.(1986), Springer Verlag)。しかしながら、CD20とは異なり、CD19に結合する抗体はCD19抗原の内部移行を引き起こす。CD19抗原は、特にHD237-CD19抗体(「B4」抗体とも称される)により同定される(Kieselら, Leukemia Research II, 12:1119(1987))。CD19抗原は、末梢血単核細胞の4-8%、及び末梢血、脾臓、リンパ節又は扁桃から単離されたB細胞の90%以上に存在する。CD19は末梢血T細胞、単球又は顆粒球においては検出されない。実際、全ての非T細胞急性リンパ芽球白血病(ALL)、B細胞慢性リンパ球白血病(CLL)及びB細胞リンパ腫では、抗体B4により検出可能なCD19が発現している(Nadlerら, J. Immunol. 131:244(1983);及びNadlerら, Progress in Hematology Vol.XII pp.187-206. Brown, E. ed.(1981), Grune & Stratton, Incによる)。
B細胞系列の細胞により発現した分化段階に特異的な抗原を認識する更なる抗体が同定されている。これらのなかには、CD21抗原に対するB2抗体;CD22抗原に対するB3抗体;及びCD10抗原に対するJ5抗体(CALLAとも称される)がある。1997年1月21日に発行された米国特許第5,595,721号を参照。
【0005】
リツキシマブ(リツキサン(登録商標))抗体は、CD20抗原に対する遺伝子操作されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行された米国特許第5,736,137号(Andersonら)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキサン(登録商標)は、再発性又は難治性の軽度又はろ胞性の、CD20が陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫を患ってる患者に対して効能がある。インビトロの作用機序の研究では、リツキサン(登録商標)はヒト補体に結合し、補体依存性細胞障害(CDC)によりリンパ系B細胞系を溶解することが証明されている(Reffら, Blood 83(2):435-445(1994))。さらに、抗体依存性細胞障害(ADCC)のアッセイでは、有意な活性を有する。より最近では、リツキサン(登録商標)はトリチウム化チミジン導入アッセイにおいて抗増殖効果を有し、直接アポトーシスを誘発するが、他の抗CD19及び抗CD20抗体ではこのようなことはないことが示されている(Maloneyら, Blood 88(10):637a(1996))。また、リツキサン(登録商標)と化学療法剤と毒素との相乗作用が実験的に観察されている。特にリツキサン(登録商標)は、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞毒性効果に対して薬剤耐性を有するヒトB細胞リンパ腫細胞系を感作させる(Demidemら, Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186(1997))。インビボでの前臨床的研究では、リツキサン(登録商標)は、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からのB細胞を、おそらくは補体及び細胞媒介性プロセスにより涸渇させることが示されている(Reffら, Blood 83(2):435-445(1994))。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明は、B細胞表面マーカーに結合する治療的有効量のアンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、容器と該容器に収容される組成物を含んでなる製造品に関し、ここで組成物はB細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストを含有し、また組成物が自己免疫疾患を患っているか、又はその素因を有している患者を治療することを使用者に指示するための包装挿入物をさらに含む製造品に関する。
【0007】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで「B細胞表面マーカー」とは、そこに結合するアンタゴニストにより標的にされ得るB細胞の表面で発現する抗原である。B細胞表面マーカーの例には、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面マーカーが含まれる。特に関心あるB細胞表面マーカーは哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞で優先的に発現しており、前駆体B細胞及び成熟B細胞の双方で発現し得る。一実施態様では、マーカーは、CD20又はCD19のように、幹細胞段階から形質細胞への末端分化の直前までの系列の分化の間の全体にわたってB細胞に見出されるものである。ここで好ましいB細胞表面マーカーはCD19及びCD20である。
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面で見出される〜35kDaの非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は初期のプレB細胞発育中に発現し、形質細胞分化まで残る。CD20は正常なB細胞及び悪性のB細胞の双方に存在する。文献でのCD20の他の名称には「Bリンパ球制限抗原」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えばClarkら, PNAS(USA)82:1766(1985)に記載されている。
「CD19」抗原とは、例えばHD237-CD19又はB4抗体により同定される〜90kDaの抗原を意味する(Kieselら, Leukemia Research II, 12:1119(1987))。CD20と同様、CD19は幹細胞段階から形質細胞への末端分化の直前までの系列の分化の間の全体にわたって細胞に見出されるものである。CD19にアンタゴニストが結合することで、CD19抗原の内部移行が引き起こされる。
【0008】
ここで「自己免疫疾患」とは、非悪性疾患又は個人の自身の組織から生じる、また該組織に対する疾病のことである。ここでの自己免疫疾患には、特に悪性又は癌腫の疾患又は病状は含まれず、中でも、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球リンパ腫(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞白血病及び慢性骨髄芽球白血病は含まれない。自己免疫疾患又は疾患の例には、これらに限るものではないが、炎症反応、例えば乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連した反応;呼吸困難症候群(成人性呼吸困難症候群;ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状、例えば湿疹及び喘息及びT細胞の浸潤に関連した他の病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば、I型真性糖尿病又はインシュリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;及び結核に典型的に見出されるTリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽種症及び血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血(限定するものではないが、クリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;stiff-man症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病等が含まれる。
【0009】
「アンタゴニスト」は、B細胞表面マーカーに結合すると、哺乳動物のB細胞を破壊又は涸渇させ、及び/又は例えばB細胞により誘導される体液性反応を低減又は防止することにより、一又は複数のB細胞機能に干渉する分子である。アンタゴニストは、好ましくはそれで治療される哺乳動物における、B細胞を涸渇させることができる(すなわち循環B細胞レベルの低減)。そのような涸渇は、種々のメカニズム、例えば抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)、B細胞増殖阻害、及び/又はB細胞死の誘発(例えばアポトーシス)を介して達成される。本発明の範囲内に含まれるアンタゴニストには、抗体、合成又は天然配列ペプチド、及び場合によっては細胞障害剤とコンジュゲート又は融合してB細胞表面マーカーに結合する小分子アンタゴニストが含まれる。好ましいアンタゴニストは抗体を含んでなる。
【0010】
「抗体依存性媒介細胞障害」および「ADCC」は、Fcレセプター(FcRs)を発現する非特異的細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識し、ついでその標的細胞の溶解を引き起こす、細胞が媒介する反応を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞のNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464ページの表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記述されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。あるいは、もしくは更に、対象分子のADCC活性は、例えば、Clynesら, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいてインビボで評価することが可能である。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCsとNK細胞が好適である。
【0011】
「Fcレセプター」もしくは「FcR」なる用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述するために使用される。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的スプライシング形態が含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性化レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン活性化モチーフ(ITAM)を含んでいる。阻害レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン阻害モチーフ(ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch及びKinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haasら, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。他のFcRsは、将来同定されるものを含めて、ここでの「FcR」という用語に包含される。また、該用語は、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプター「FcRn」(Guyerら, J. Immunol. 117:587 (1976) Kimら, J. Immunol.24:249 (1994))も包含する。
【0012】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が同族抗原と複合した分子(例えば抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているようにして実施することができる。
「成長阻害」アンタゴニストは、アンタゴニストが結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止又は低減するものである。例えば、アンタゴニストはインビトロ及び/又はインビボでB細胞の増殖を防止又は低減可能である。
「アポトーシスを誘発する」アンタゴニストは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等の標準的なアポトーシスアッセイにより決定される、例えばB細胞の、プログラム細胞死を誘発するものである。
【0013】
ここで「抗体」なる用語は最も広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限りは抗体断片を包含する。
「抗体断片」は無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;ダイアボディー;線形抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0014】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖とからなる、約150,000ダルトンの異種四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合されているが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。また各重鎖及び軽鎖も規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(V)を有し、それに多数の定常ドメインが続く。各軽鎖は一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0015】
「可変」なる用語は、可変ドメインの或る部分が抗体間で配列が広範囲に相違し、各特定の抗体のその特定抗原への結合及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかし、可変性は抗体の可変領域全体に均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方における高度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、βシート構造を連結し、その一部を形成することもあるループを形成する、3つの高度可変領域により連結された、主としてβシート構造を採る4つのFR領域を含む。各鎖の高度可変領域はFR領域により近接して保持され、他の鎖からの高度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照のこと)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係しないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)への抗体の寄与を示す。
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残りの「Fc」断片が産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、更に抗原を架橋させ得るF(ab')断片が生じる。
【0016】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構造では、各可変ドメインの3つの高度可変領域が相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1つのフリーのチオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。抗体断片の他の化学カップリング法も知られている。
【0017】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体を異なるクラスに割り当てることができる。無傷の抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらのいくつかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられる。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、σ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
【0018】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFVが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を指し、その断片は同じポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP 404,097; WO 93/11161; 及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)においてより詳細に記載されている。
【0019】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む通常の(ポリクローナル)抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256, 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)、及びMarksほか, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0020】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号; Morrisonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで対象キメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、例えばヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル)から誘導された可変自己免疫疾患抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
【0021】
非ヒト(例えば、アウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分においてヒト化抗体は、レシピエントの高度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Reichmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0022】
ここで使用される場合、「高度可変領域」なる用語は、抗原結合性を生じる抗体のアミノ酸残基を意味する。高度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89-97(L3)及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高度可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。「フレームワーク」又は「FR」残基はここに定義した高度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0023】
B細胞表面マーカー等の対象抗原に「結合する」アンタゴニストは、該アンタゴニストが抗原を発現する細胞をターゲティングするための治療剤として有用であるように、十分な親和性及び/又はアビジチを有する抗原に結合可能なものである。
CD20抗原に結合するアンタゴニストの例には、「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と称される「C2B8」(出典明示によって明示的にここに取り込まれる米国特許第5,736,137号)、「Y2B8」と呼称されるイッテリウム-[90]-ラベル2B8マウス抗体(出典明示によって明示的にここに取り込まれる米国特許第5,736,137号);131Iでラベルされて「131I-B1」抗体を生じるマウスIgG2a「B1」(BEXXARTM)(出典明示によって明示的にここに取り込まれる米国特許第5,595,721号);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Pressら, Blood 69(2):584-591(1987));「キメラ2H7」抗体(出典明示によって明示的にここに取り込まれる米国特許第5,677,180号);及びインターナショナル・ロイコサイト・タイピング・ワークショップから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentineら, In:Leukocyte Typing III(McMichael, Ed, p.440, Oxford University Press)(1987))が含まれる。
【0024】
CD19抗原に結合する抗体の例には、Hekmanら, Cancer Immunol. Immunother. 32:364-372(1991)及びVlasveldら, Cancer Immunol. Immunother. 40:37-47(1995)の抗CD19抗体;及びKieselら, Leukemia Research II, 12:1119(1987)のB4抗体が含まれる。
ここで、「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、ここに出典明示によって明示的に取り込まれる米国特許第5,736,137号において「C2B8」と命名された遺伝子操作されたCD20抗原に対するキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を指す。抗体はマウス軽鎖及び重鎖可変領域配列、ヒト定常領域配列を含むIgGカッパ免疫グロブリンである。リツキシマブは約8.0nMのCD20抗原対する結合親和性を有する。
【0025】
「単離された」アンタゴニストとは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、そのアンタゴニストの診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、アンタゴニストは、(1)ローリー法で測定してアンタゴニストの95重量%を越え、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使ったN末端又は内在するアミノ酸配列の少なくとも15残基を取り出すのに十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元状態の下でのSDS−PAGEにより均一になるまで、精製される。単離されたアンタゴニストは、アンタゴニストの自然な環境の少なくとも一成分が存在しないことから、組換え細胞のインサイツアンタゴニストを含む。しかしながら、通常は、単離されたアンタゴニストは少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0026】
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「治療」は、治癒的処置、予防的及び防止的療法の両方を意味する。治療が必要なものとは、既に疾患又は疾病に罹っているもの、並びに疾患又は疾病が防止されるべきものを含む。よって、哺乳動物は疾患又は疾病を患っていると診断されているか、又は疾患にかかりやすいか、又はこれの影響を受けやすいと診断されている。
「治療的有効量」なる表現は、当該問題の自己免疫疾患を防止、改良又は治療するのに有効なアンタゴニストの量を意味する。
【0027】
添加剤療法についてここで用いられる「免疫抑制剤」という用語は、ここで治療される哺乳動物の免疫系を抑制又はマスクするために作用する物質を意味する。サイトカイン生成を抑制する、自己抗原発現をダウンレギュレート又は抑制する、あるいはMHC抗原をマスクする物質を含む。このような薬剤の例は、2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号参照、、その開示はここに参考として取り入れるものとする);アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソーン;グルタルアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されているように、MHC抗原をマスクする);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;グルココルチコステロイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニソロン、及びデキサメタゾンなどのステロイド、抗インターフェロン-γ、-β又は-α抗体を含むサイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、抗腫瘍壊死因子-α抗体、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体及び;抗IL-2レセプター抗体;抗CD11a及び抗CD28抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;全T抗体、好ましくは抗CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを持つ可溶性ペプチド(7/26/90に発行されたWO 90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主からのRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin);ラパマイシイン(rapamycin);T細胞レセプター(Cohen等, 米国特許第5,114,721号);T細胞レセプター断片(Offner等, Science, 251: 430-432 (1991); WO 90/11294; Ianeway, nature, 341: 482 (1989); 及びWO 91/01133);及びT10B9等のT細胞レセプター抗体(欧州特許第340,109号)を含む。
【0028】
ここで用いられる「細胞障害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制する及び/又は細胞破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素又は小分子毒素等の毒素、又はその断片を含むことが意図されている。
【0029】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン類、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イソフラミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン(melphalan)、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);抗代謝生成物、例えばメトトキサレート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトキサレート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FU;アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(商品名), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(TAXOTERE(商品名), Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトキサレート;プラチナ類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantron);テニポシド(teniposide);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン類(esperamicins);カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。この定義にさらに含まれるものは、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(toremifene)(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体である。
【0030】
「サイトカイン」なる用語は、1つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害物質;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられているところでは、サイトカインなる用語は、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質と天然配列サイトカインの生物学的な活性等価物を含む。
【0031】
本願において使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を意味る。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStellaら,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardtら,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、前掲の化学療法剤が含まれる。
【0032】
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤(例えば、ここで開示されているアンタゴニスト、場合によっては化学療法剤)の送達に有用な、種々の種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞体である。リポソームの成分は、通常、生物膜の脂質配置に似た2層構造に配されている。
「パッケージ挿入物」という用語は効能、用法、用量、投与方法、禁忌及び/又はかかる治療製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の市販用パッケージに通常含まれるインストラクションを指すために使用される。
【0033】
II. アンタゴニストの製造
本発明の方法及び製造品は、B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストを使用するか、これを導入したものである。従って、このようなアンタゴニストを生産するための方法を以下に記載する。
アンタゴニスト(類)の製造又はスクリーニングに使用されるB細胞表面マーカーは、例えば所望のエピトープを含む抗原又はそれらの一部の可溶形態のものであってよい。あるいは、又は付加的に、アンタゴニスト(類)を生産又はスクリーニングするために、その細胞表面にB細胞表面マーカーを発現する細胞を使用することもできる。アンタゴニストの生産に有用な他の形態のB細胞表面マーカーは当業者には明らかであろう。好ましくは、B細胞表面マーカーはCD19又はCD20抗原である。
好ましいアンタゴニストは抗体であるが、ここでは抗体以外のアンタゴニストを考慮することとする。例えば、アンタゴニストには細胞障害剤(例えば上述したもの)と融合又はコンジュゲートしてもよい小分子アンタゴニストが含まれ得る。小分子のライブラリーは、抗原に結合する小分子を同定するために、ここで対象B細胞表面マーカーに対してスクリーニングされる。さらに小分子は、その拮抗特性がスクリーニングされ、及び/又は細胞障害剤とコンジュゲートされる。
また、アンタゴニストは、理論的設計又はファージディスプレイ(例えば、1998年8月13日に公開された国際公開第98/35036号)により生産されるペプチドであってもよい。一実施態様において、分子は「CDR模倣物」又は抗体のCDRに基づいて設計された抗体類似物が選択されてもよい。このようなペプチドはそれ自体で拮抗作用を示すが、ペプチドの拮抗特性を高める又は添加するために、細胞障害剤とペプチドを融合させてもよい。
以下に、本発明で使用される抗体アンタゴニストの生産のための例示的技術を示す。
【0034】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRによりコンジュゲートさせることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7日ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0035】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0036】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫細胞系は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0037】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0038】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0039】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、免疫グロブリンタンパク質を産生等しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)が含まれる。
【0040】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0041】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0042】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、ヒト抗体の該当する配列を高度可変領域配列で置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))に本質的に従って実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0043】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0044】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高度可変領域は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0045】
(iv) ヒト化抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号、同5,589,369号及び同5,545,807号を参照されたい。
【0046】
別に、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13の大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
また、ヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号を参照)。
【0047】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってよい。
【0048】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体は第1のB細胞表面マーカーに結合し、さらに第2のB細胞表面マーカーに結合する。あるいは、抗B細胞表面マーカー結合アームは、B細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞表面マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0049】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開93/08829号及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0050】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0051】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0052】
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体もまた含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(国際公開91/00360号、同92/00373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野において良く知られており、幾つかの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0053】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、大腸菌からのFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0054】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0055】
III. アンタゴニストのコンジュゲート及び他の修飾
ここでの方法に使用され、製造品に包含されるアンタゴニストは、通常細胞障害剤とコンジュゲートされる。
このようなアンタゴニスト-細胞障害剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は上述したものである。
また、ここではカリチーマイシン(calicheamicin)、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコセン(trichothene)、及びCC1065等の、一又は複数の小分子毒素とアンタゴニストとのコンジュゲートが考えられる。本発明の一実施態様において、アンタゴニストは一又は複数のメイタンシン分子(例えば、アンタゴニスト1分子当たり、メイタンシン1〜10分子)とコンジュゲートされる。例えば、メイタンシンはMay-SH3に還元され、修飾されたアンタゴニストと反応するMay-SS-Meに転化され(Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992))、メイタンシノイド-アンタゴニストコンジュゲートを生産する。
【0056】
別法では、アンタゴニストは一又は複数のカリチーマイシンにコンジュゲートされる。マリチーマイシンファミリーの抗生物質はサブピコモル濃度で二重ストランドDNAを破壊することができる。限定するものではないが、使用されるカリチーマイシンの構造類似体には、γ、α、α、N-アセチル-γ、PSAG及びθが含まれる(Hinmanら, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)及びLodeら, Cancer Research, 58:2925-2928(1998))。
【0057】
使用可能な酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明では、ヌクレオサイティック活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNase)とコンジュゲートしたアンタゴニストをさらに考慮する。
種々の放射活性同位体も放射性コンジュゲートアンタゴニストの生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体が含まれる。
【0058】
アンタゴニストと細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がアンタゴニストに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチターゼ過敏性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992))。
別法として、アンタゴニスト及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。
【0059】
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にアンタゴニストをコンジュゲートし、ここでアンタゴニスト-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いてキレート剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0060】
また、本発明のアンタゴニストは、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公開第88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
このようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞障害形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。アンタゴニスト-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0061】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上述にて検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、アンタゴニストに共有的に結合させることができる。あるいは、本発明のアンタゴニストの少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608(1984))。
アンタゴニストの他の修飾をここで考察する。例えば、アンタゴニストは種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーに結合してもよい。
【0062】
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。アンタゴニストを含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号;及び1997年10月23日に公開された国際公開第97/38731号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲートされ得る。化学療法剤は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
【0063】
ここで記載のタンパク質又はペプチドアンタゴニストのアミノ酸配列の修飾(類)を考察する。例えば、アンタゴニストの結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。アンタゴニストのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をアンタゴニスト核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、アンタゴニストのアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数の変化などの変異抗体の翻訳後過程を変更しうる。
【0064】
突然変異誘発に適した好ましい位置にある残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現されたアンタゴニスト変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0065】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つアンタゴニスト又は細胞障害ポリペプチドに融合したアンタゴニストを含む。アンタゴニスト分子の他の挿入変異体は、アンタゴニストの血清半減期を向上させる酵素又はポリペプチドのアゴニストのN-又はC-末端への融合物を含む。
【0066】
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、アンタゴニスト分子において少なくとも一つのアミノ酸残基が異なる残基が挿入されている。置換突然変異について最も関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR交互変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。これらの置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。

【0067】
アンタゴニストの生物学的特性における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はへリックス構造、(b)標的部位もしくは(c)側鎖全体における分子の電荷又は疎水性、を維持する効果において実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループ分けできる:
(1)疎水性:norleucine, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類のものに交換することが必要であろう。アンタゴニストの適切な配置の維持に含まれない任意のシステイン残基は、一般的にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、アンタゴニストにシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特に、アンタゴニストがFv断片などの抗体断片である場合)。
【0068】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択されて得られた変異体は、それらが生成された親抗体に比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法はファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡単に述べれば、高度可変領域部位(例えば、6-7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価形式で表示される。ファージディスプレイ変異体は、次いで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾の候補となる高度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高度可変領域残基を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原との接点を同定するのが有利である。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0069】
アンタゴニストのアミノ酸変異の他の型は、アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、アンタゴニストに見られる一又は複数の炭水化物部分の欠失、及び/又はアンタゴニストに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N-結合又はO-結合の何れかである。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)というトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O-結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0070】
アンタゴニストへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。この変化は、元のアンタゴニスト配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
アンタゴニストのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、これらに限られないが、天然源からの単離(自然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は部位指向性)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による初期調製された変異体又はアンタゴニストの非変異体の調製を含む。
【0071】
本発明のアンタゴニストをエフェクター機能について改変し、例えばアンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)を増強することが望ましい。このことは、抗体アンタゴニストのFc領域に一又は複数のアミノ酸置換基を導入することにより達成される。別に、又は付加的にシステイン残基(類)をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合を形成させる。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善された内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
アンタゴニストの血清半減期を増加させるために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されているようにして、アンタゴニスト(特に抗体断片)にサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで用いられる場合、用語「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期を向上させる原因となるIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG、又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する。
【0072】
IV. 製薬用調製物
本発明で使用されるアンタゴニストの治療用調製物は、所望される程度の純度を持つアンタゴニストを、凍結乾燥調製物又は水性溶液の形態で、任意の製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)TM、プルロニクス(PLURONICS)TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0073】
例示的な抗CD20抗体調製物は、出典明示によって明示的に取り込まれる国際公開第98/56418号に記載されている。この公報には、40mg/mLのrutuximab、25mMのアセタート、150mMのトレハロース、0.9%のベンジルアルコール、0.02%のポリソルベート20、pH5.0を含有し、2-8℃で2年間保管される最小寿命を有する液状多用量調製物が記載されている。関心ある他の抗CD20調製物は、10mg/mLのrutuximab、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80、及び注射用の滅菌水、pH6.5を含有する。
皮下投与に適した凍結乾燥調製物は、国際公開第97/04801号に記載されている。このような凍結乾燥調製物は適切な希釈剤で高濃度タンパク質に再構成され、再構成された調製物はここで治療される哺乳動物に皮下的に投与される。
ここでの調製物は、特に治療的指示に必要な1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補足的活性を有するものをさらに含有する。例えば、細胞障害剤、化学療法剤、サイトカイン又は免疫抑制剤(例えば、T細胞に作用するもの、例えばシクロスポリン、又はT細胞に結合する抗体、例えばLFA-1に結合するもの)をさらに提供することが望ましい。このような他の薬剤の有効量は、調製物中に存在するアンタゴニストの量、疾患又は疾病又は治療の種類、及び上述した他の要因に依存する。これらは一般的に、同じ用量、上において使用したような投与経路、又は上において使用した用量の1〜99%で使用される。
【0074】
活性成分はまたコロイド状薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)、又はマクロエマルションにおいて、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに捕捉されている。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Osol編 (1980)に開示されている。
【0075】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、アンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放性調製物の好適な例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、Lグルタミン酸γ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセタート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
インビボ投与に使用される調製物は滅菌されなくてはならない。これは滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0076】
V. アンタゴニストを用いた治療
B細胞表面抗原に結合するアンタゴニストを含有する組成物は、良好な医療実務に合致する方式で調製され、調薬され、そして投与される。このときに考慮する因子は、治療される特定の疾患又は疾病、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患又は疾病の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与の日程計画、及び医療実務者に知られた他の因子を含む。投与されるアンタゴニストの治療的有効量は、そのような考察によって決定される。
一般的な提案として、腸管外投与される調薬当たりのアンタゴニストの治療的有効量は、患者体重1kg当たり1日に約0.1〜20mgであり、用いられるアンタゴニストの典型的な初期範囲は約2〜10mg/kgの範囲である。
【0077】
好ましいアンタゴニストは、細胞障害剤とコンジュゲートしていない抗体、例えばリツキサン(登録商標)等の抗体である。非コンジュゲート抗体の適切な用量は、例えば約20mg/m〜1000mg/mの範囲である。一実施態様において、抗体の用量はリツキサン(登録商標)で現在推奨されている量とは異なる。例えば、抗体は実質的に375mg/m未満の用量で、一又は複数回患者に投与され、例えばここでその用量は約20mg/m〜約250mg/m、例えば約50mg/m〜約200mg/mの範囲である。
さらに、抗体を一又は複数回初期投与し、続いて一又は複数回二次投与してもよく、ここで、二次投与の抗体のmg/m用量は、初期投与の抗体のmg/m用量を越える。例えば、初期投与は約20mg/m〜約250mg/m(例えば約50mg/m〜約200mg/m)の範囲であってよく、二次投与は約250mg/m〜約1000mg/mの範囲であってよい。
【0078】
しかしながら、上述したようなアゴニストの提案量はかなり多くの治療的判断力による。適切な用量及びスケジュールの選択における重要な要因は上述したようにして得られた結果である。例えば、比較的高用量は進行性及び急性疾患の治療に当初必要である。最も効果的な結果を得るためには、アンタゴニストを疾患又は疾病に応じて、疾患又は疾病の最初の徴候、診断、外観、又は発生が可能な限り収束するか、又は疾患又は疾病が緩和されるように投与する。
【0079】
アンタゴニストは、腸管外、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻内、そして局所的免疫抑制治療が望まれる場合は、病変部内投与を含む任意の適当な手段によって投与される。腸管外注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与を含む。さらにアンタゴニストは、例えば減少させたアンタゴニスト用量で、パルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投与は注射によって、最も好ましくは、部分的には投与が簡潔か慢性的かに応じて、静脈内又は皮下注射によってなされる。
【0080】
ここでは、他の化合物、例えば細胞障害剤、化学療法剤、免疫抑制剤及び/又はサイトカインを、アンタゴニストと共に投与してもよい。組合せ投与には、別々の調製物又は単一の製薬用調製物を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間がある、いずれかの順での連続投与が含まれる。
タンパク質アンタゴニストの患者への投与の他に、本出願は遺伝子治療によるアンタゴニストの投与が考えられる。アンタゴニストをコードする核酸の投与は「アンタゴニストを治療的有効量で投与する」という表現に含まれる。例えば、遺伝子治療を用いた細胞内抗体の生産に関する、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号を参照のこと。
【0081】
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボ及びエキソビボという2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常はアンタゴニストが必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ処理では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、又は例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(米国特許第4,892,538号及び第5,283,187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、又は対象とする宿主にインビボで移入されるかに依る。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などを含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスである。
【0082】
現在インビボ核酸移入技術で好ましいのは、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス(AAV))、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)での形質移入を含む。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体又は標的細胞、標的細胞上のレセプターのリガンドなどとともに提供するのが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、ターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いられ、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem., 262:4429-4432 (1987)及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。現在知られている遺伝子標識化及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science, 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、WO 93/25673及びそこに引用された参考文献も参照。
【0083】
VI. 製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患又は疾病の治療に有用な物質を含む製造品が提供される。この製造品は容器とラベル又は容器内に挿入されるか添付されるパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。容器は、疾患又は疾病の治療に有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は通常、B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物がここで列挙されたような自己免疫疾患を患っているか、又はかかりやすい患者の治療のために使用されることを示す。製造品はさらに、製薬的に許容可能な希釈バッファー、例えば注射用の静菌水、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的実施例により例証する。本明細書における全ての引用文の開示は、出典明示によって明示的にここに取り込まれる。
【0084】
実施例1
慢性関節リウマチ(RA)と臨床診断された患者をリツキシマブ(リツキサン(登録商標))抗体を用いて治療する。治療された患者はB細胞悪性腫瘍を有してはいない。さらに患者は場合によっては、RAの治療に使用される一又は複数の薬剤、例えばサリチラート;非ステロイド性炎症剤、例えばインドメタシン、フェニルブタゾン、フェニル酢酸誘導体(例えばイブプロフェン及びフェノプロフェン)、ナフタレン酸(ナプロクサン)、ピロールアルカン酸(トメチン(tometin))、インドール酢酸(スリンダク)、ハロゲン化アントラニル酸(メクロフェナミン酸ナトリウム(meclofenamate sodium))、ピロキシカム、ゾメピラック(zomepirac)及びジフルニーサル;抗マラリア剤、例えばクロロキン;金塩;ペニシラミン;又は免疫抑制剤、例えばメトトレキサート又はコルチコステロイドを、このような薬剤の既知の用量又はそれよりも少ない用量でさらに治療する。しかしながら好ましくは、患者はリツキサン(登録商標)のみで治療される。
【0085】
リツキサン(登録商標)は任意の次の投与スケジュールに従い、RA患者に静脈内(IV)に投与される:
(A) 1日に50mg/m2IV
8、15及び22日に150mg/m2IV
(B) 1日に150mg/m2IV
8、15及び22日に375mg/m2IV
(C) 1、8、15及び22日に375mg/m2IV
一次反応をポールインデックス(Paulus index)(Paulusら, Athritis Rheum. 33:477-484(1990))、すなわち朝のこわばり、痛みがあり炎症を起こした関節の数、赤血球沈降速度(ESR)の改善と、患者及び医師により評価される、5ポイントの疾患重度性における少なくとも2ポイントの改善とによって決定される。リツキサン(登録商標)の投与により、上述のようにして治療された患者のRAの一又は複数の徴候が緩和されるであろう。
【0086】
実施例2
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、例えばクリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血と診断された患者をリツキサン(登録商標)抗体で治療する。AIHAは、自己抗体が患者の赤血球と反応する後天性溶血性貧血である。治療された患者はB細胞悪性腫瘍を有してはいない。
リツキサン(登録商標)は任意の次の投与スケジュールに従い、患者に静脈内(IV)に投与される:
(A) 1日に50mg/mIV
8、15及び22日に150mg/mIV
(B) 1日に150mg/mIV
8、15及び22日に375mg/mIV
(C) 1、8、15及び22日に375mg/mIV
【0087】
さらなる補助治療(例えば、糖質コルチコイド、プレドニゾン、プレドニゾン、アザチオプリン、シクロホスファミド、ビンカ搭載血小板又はダナゾール)をリツキサン(登録商標)治療と組合せてもよいが、好ましくは患者は治療中を通して単一の薬剤としてリツキサン(登録商標)で治療される。
全反応速度は、血球数の改善、輸血の必要性減少、ヘモグロビンレベルの改善、及び/又は通常の化学的パラメータにより決定される溶血現象の形跡の低減に基づいて決定される。リツキサン(登録商標)の投与により、上述のようにして治療された患者の溶血性貧血の一又は複数の徴候が改善されるであろう。例えば、上述のようにして治療された患者は、少なくとも1g/dlまでヘモグロビンが増加し、溶血性の化学的パラメータが50%まで改善するか、又は血清乳酸デヒドロゲナーゼ、ビリルビンにより正常まで回復するであろう。
【0088】
実施例3
成人性免疫血小板減少性紫斑病(ITP)は最も一般的な免疫媒介性血小板減少症を構成する比較的希少な血液疾患である。この疾患は、典型的には、骨髄における正常な又は増加した巨大核細胞の存在下で、急性出血に関連したある種の血小板減少性紫斑病である。ITPを患っている多くの患者は、血小板膜の外面において標的抗原を直接指向するIgG抗体を有し、結果として脾臓において血小板が腐敗し、血小板の細網内皮系破壊が促進させる。(Bussell, J.B.Hematol. Oncol. Clin. North Am.(4):179(1990))。いくつかの治療的干渉がITPの治療に有効であることが示されている。ステロイドは第一線級の治療であると考えられており、多くの患者が静脈免疫グロブリン(IVIG)の候補薬、脾臓摘出、ビンクリスチン又は免疫抑制/細胞障害剤を含む他の医学的治療を受ける。当初、ITPを患っている患者の80%までがステロイドに反応していたが、完全で持続性のある鎮静を得たものはごく僅かである。脾臓摘出はステロイド性機能不全のための標準的な第二線級治療として推奨されており、ほぼ60%のケースにおいて鎮静の長期化に至っているが、感染に対する免疫性が低減する結果となっている。脾臓摘出は主要な外科的手法であり、実質的罹患率(15%)及び死亡率(2%)である。IVIGは第二線級医学的治療として使用されているが、ITPを患っている成人患者の少集団しか鎮静を達成できない。
コルチコステロイド及び/又は脾臓摘出により生じる罹患に係ることなくB細胞を活性化することにより自己抗体の生産に干渉する治療的意見が、ITPを患っている患者集団への重要な治療的アプローチを提供している。
【0089】
ITPと臨床診断された患者(例えば、血小板数<50000/μLであるもの)をリツキシマブ(リツキサン(登録商標))抗体を用いて、場合によってはステロイド治療を組合せて治療する。治療された患者はB細胞悪性腫瘍を有していない。
リツキサン(登録商標)は任意の次の投与スケジュールに従い、ITP患者に静脈内(IV)に投与される:
(A) 1日に50mg/mIV
8、15及び22日に150mg/mIV
(B) 1日に150mg/mIV
8、15及び22日に375mg/mIV
(C) 1、8、15及び22日に375mg/mIV
【0090】
患者には、リツキサン(登録商標)の注入前に、ジフェンヒドラミンを静脈内に25-50mg、アセタミドフェンを経口的に650mg、各用量で予め投与しておく。滅菌シリンジと21ゲージかより大きな針を使用し、必要量のリツキサン(登録商標)を滅菌した発熱物質フリーの0.9%塩化ナトリウム、USP(塩水)を含むIVバッグ内のバイアルを介して移入する。リツキサン(登録商標)の最終濃度は約1mg/mLである。当初の投薬注入速度は、最初の30分間は25mg/時間で開始し、ついで30分の間隔で50mg/時間増加させ、200mg/時間の最大速度まで増加させた。リツキサン(登録商標)の最初のコースに良好な耐性があったならば、続くコースの注入速度を50mg/時間でスタートし、30分の間隔で100mg/時間までカスケード的に増加させ、最大速度が300mg/時間を超えないようにする。生命徴候(血圧、脈、呼吸、温度)を15分毎×4、又は安定するまで、ついで1時間毎に注入が終了するまでモニターする。
【0091】
全反応速度は、2週間、別に続けて4週間、リツキサン(登録商標)で治療した2つの連続した機会において測定された血小板数に基づいて決定される。リツキサン(登録商標)を用いて治療された患者は、プラシーボを用いて治療された患者と比べて血小板数に改善がみられるであろう。例えば、血小板数<20000/μlの患者においては、血小板数≧20000/μlに増加しているといった反応が考えられ;血小板数>20000/μlと出血といった臨床的形跡がある患者においては、10000/μl又はそれ以上の血小板数の全増加、及び徴候の消散といった反応が考えられる。出典明示によって明示的にここに取り込まれるGeorgeら,「Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:A Practice Guideline Developed by Explicit Methods for The American Society of Hematology」Blood 88:3-40(1996)を参照のこと。
【0092】
実施態様
1. B細胞表面マーカーに結合する治療的有効量のアンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法。
2. B細胞表面マーカーがCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86からなる群から選択される実施態様1に記載の方法。
3. アンタゴニストが抗体を含む実施態様1に記載の方法。
4. 抗体がCD20に結合する実施態様3に記載の方法。
5. 抗体がCD19に結合する実施態様3に記載の方法。
6. 自己免疫疾患が、乾癬;皮膚炎;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患に関連した反応;クローン病;潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群;成人性呼吸困難症候群(ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状;湿疹;喘息;T細胞の浸潤に関連した病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;Tリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応;結核;サルコイドーシス;多発性筋炎;肉芽種症;血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;stiff-man症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病からなる群から選択される実施態様1に記載の方法。
7. 哺乳動物がヒトである実施態様1に記載の方法。
8. 抗体が細胞障害剤とコンジュゲートしていない実施態様3に記載の方法。
9. 抗体がリツキシマブ(リツキサン(登録商標))を含んでなる実施態様4に記載の方法。
10. 抗体が細胞障害剤とコンジュゲートした実施態様3に記載の方法。
11. 細胞障害剤が放射活性化合物である実施態様10に記載の方法。
12. 抗体がY2B8又は131I-B1(BEXXARTM)を含んでなる実施態様11に記載の方法。
13. アンタゴニストを静脈内投与することを含む実施態様1に記載の方法。
14. アンタゴニストを皮下投与することを含む実施態様1に記載の方法。
15. 哺乳動物に実質的に375mg/m未満の用量で投与することを含む実施態様3に記載の方法。
16. 用量が約20mg/m〜約250mg/mの範囲である実施態様15に記載の方法。
17. 用量が約50mg/m〜約200mg/mの範囲である実施態様15に記載の方法。
18. 抗体を初期投与し、続いて二次投与することを含んでなり、二次投与における抗体のmg/m用量が初期投与における抗体のmg/m用量を越える実施態様3に記載の方法。
19. 自己免疫疾患が免疫血小板減少性紫斑病(ITP)である実施態様6に記載の方法。
20. 自己免疫疾患がリウマチ様関節炎である実施態様6に記載の方法。
21. 自己免疫疾患が溶血性貧血である実施態様6に記載の方法。
22. 溶血性貧血がクリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血である実施態様21に記載の方法。
23. 自己免疫疾患が血管炎である実施態様6に記載の方法。
24. 哺乳動物にアンタゴニストを投与することから本質的になる実施態様1に記載の方法。
25. 容器と該容器に収容される組成物を含んでなる製造品において、組成物がB細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストを含有し、自己免疫疾患を患っているか、又はその素因を有している患者を治療することを使用者に指示するための包装挿入物をさらに含む製造品。
26. 自己免疫疾患が、乾癬;皮膚炎;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患に関連した反応;クローン病;潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群;成人性呼吸困難症候群(ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状;湿疹;喘息;T細胞の浸潤に関連した病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;Tリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応;結核;サルコイドーシス;多発性筋炎;肉芽種症;血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;stiff-man症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病からなる群から選択される実施態様25に記載の製造品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞表面マーカーに結合する治療的有効量のアンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項2】
B細胞表面マーカーがCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アンタゴニストが抗体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体がCD20に結合する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗体がCD19に結合する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
自己免疫疾患が、乾癬;皮膚炎;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患に関連した反応;クローン病;潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群;成人性呼吸困難症候群(ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状;湿疹;喘息;T細胞の浸潤に関連した病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;Tリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応;結核;サルコイドーシス;多発性筋炎;肉芽種症;血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;stiff-man症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗体が細胞障害剤とコンジュゲートしていない請求項3に記載の方法。
【請求項9】
抗体がリツキシマブ(リツキサン(登録商標))を含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項10】
抗体が細胞障害剤とコンジュゲートした請求項3に記載の方法。
【請求項11】
細胞障害剤が放射活性化合物である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗体がY2B8又は131I-B1(BEXXARTM)を含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アンタゴニストを静脈内投与することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アンタゴニストを皮下投与することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物に実質的に375mg/m未満の用量で投与することを含む請求項3に記載の方法。
【請求項16】
用量が約20mg/m〜約250mg/mの範囲である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
用量が約50mg/m〜約200mg/mの範囲である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
抗体を初期投与し、続いて二次投与することを含んでなり、二次投与における抗体のmg/m用量が初期投与における抗体のmg/m用量を越える請求項3に記載の方法。
【請求項19】
自己免疫疾患が免疫血小板減少性紫斑病(ITP)である請求項6に記載の方法。
【請求項20】
自己免疫疾患がリウマチ様関節炎である請求項6に記載の方法。
【請求項21】
自己免疫疾患が溶血性貧血である請求項6に記載の方法。
【請求項22】
溶血性貧血がクリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
自己免疫疾患が血管炎である請求項6に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物にアンタゴニストを投与することから本質的になる請求項1に記載の方法。
【請求項25】
容器と該容器に収容される組成物を含んでなる製造品において、組成物がB細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストを含有し、自己免疫疾患を患っているか、又はその素因を有している患者を治療することを使用者に指示するための包装挿入物をさらに含む製造品。
【請求項26】
自己免疫疾患が、乾癬;皮膚炎;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患に関連した反応;クローン病;潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群;成人性呼吸困難症候群(ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギーによる病状;湿疹;喘息;T細胞の浸潤に関連した病状及び慢性炎症反応;アテローム性動脈硬化症;白血球付着欠損症;リウマチ様関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レノー症候群;自己免疫甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;ショルゲン(Sjorgen)症候群;若年発症糖尿病;Tリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延高血圧に関連した免疫反応;結核;サルコイドーシス;多発性筋炎;肉芽種症;血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出に関連した疾患;中枢神経系(CNS)炎症疾病;多臓器傷害症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;クレーブス病;ランベルト-イートン筋無力症症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;stiff-man症候群;ベーチット疾患;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫血小板減少病からなる群から選択される請求項25に記載の製造品。

【公開番号】特開2010−159255(P2010−159255A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2582(P2010−2582)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2000−616821(P2000−616821)の分割
【原出願日】平成12年5月4日(2000.5.4)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【出願人】(398050098)バイオジェン・アイデック・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biogen Idec Inc.
【Fターム(参考)】