説明

BAFFアンタゴニストのための治療養生法

【課題】免疫障害および関連する障害の処置のための新しい治療ストラテジーを提供すること。
【解決手段】免疫学的障害および関連する障害の処置のためのBAFFアンタゴニストの投与のための、治療養生法が記載される。養生法は、一連の投与の前に、短期間のBAFFアンタゴニスト投与単位、その後の長時間の無処置期間を含む。本発明は、免疫学的障害の有効な処置が、治療有効量のBAFFアンタゴニストの短期間の投与、その後、次の投与期間前の長期間にわたってそのアゴニストの投与を一時的に中断することによって達成されるという理解から生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/512,880(2003年10月20日出願)に対する優先権を主張し、これは、本明細書に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、免疫学的障害および関連する障害を処置することにおいて使用される治療養生法に関する。より具体的には、本発明は、BAFF(TNFファミリーに属するB細胞活性化因子)のアンタゴニストを使用する、自己免疫疾患障害を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
B細胞は、獲得免疫において中心的役割を果たす。これらの細胞は、外来性の抗原(Ag)に対する迅速かつ直接的な抗体(Ab)応答を開始し、抗原提示細胞として作用する独特の能力を有する。B細胞ホメオスタシスおよび自己寛容状態を維持するために、成熟し末梢組織に移動するB細胞前駆体の持続的なプールを生成し、さらに自己反応性B細胞を除去するためにネガティブセレクションのプロセスを維持することが必要である。B細胞発生プロセスにおける調節不全は、B細胞の発生における妨害をもたらし得、それゆえ、免疫不全をもたらすか、あるいは反対に、自己免疫をもたらす自己反応性B細胞の逃避(escape)および拡大をもたらす。
【0004】
高親和性の体細胞性に過剰変異した自己抗体の産生は、自己免疫条件の1つの特徴である。自己抗体は、重篤な組織損傷(例えば、ループス腎炎で見られるような)または血液成分の喪失(例えば、免疫性血小板減少紫斑病において見られるような)を引き起こし得る。自己免疫障害に対する一般的な処置ストラテジーは、長期間の使用に伴って有害な副作用を有する包括的な免疫抑制薬を使用する。
【0005】
B細胞の生存および成熟因子FABB(TALL−1、THANK、BLyS、zTNF4およびTNFSF13Bとしてもまた公知である)に関する最近の発見から、自己反応性B細胞の機能について標的介入ストラテジーを開発するための独自の機会が提供された。B細胞成長因子として最初に説明されて以来、獲得免疫におけるBAFFの役割の解明が急速になってきている。BAFF(受託番号AAD25356)は、例えば、Schneiderら(1999)J.Exp.Med.,189:1697−1710;PCT公開WO99/12964および米国特許出願第09/911,777に記載される。研究から、正常よりも高いレベルのBAFFが、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)および関節リウマチ)の病原論に寄与し得ることが示されている。概説として、例えば、Mackayら(2002)Nature Reviews:Immunology,2:465−475;Kalledら(2003)Expert Opin.Ther.Targets,7(1):115−23を参照されたい。
【0006】
BAFFは、B細胞の同時刺激(Mooreら(1999)Science,285:260−263;Schneiderら(1999)J.Exp.Med.,189:1747−1756;Mukhopadhyayら(1999)J.Biol.Chem.,274:15978−15981);増加したB細胞増殖(Mooreら(1999)Science,285:260−263);ならびに正常に除去されたB細胞(Khareら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.,97:3370−3375;Grossら(2000)Nature,404:995−999;Mackayら(1999)J.Exp.Med.,190:1697−1710)と結びつけられている。BAFFに対する3つの同族レセプターが同定されている:(1)B細胞変異抗原(BCMA;受託番号S43486;Grossra(2000)Nature.404:995−999;PCT公開WO01/12812;米国特許出願第10/077,137);膜貫通活性化因子およびサイクロフィリンリガンドインタラクター(interactor)(TACI;受託番号AAP57629;Grossら、前出);ならびにごく最近の、BAFFR(BR3とも称される;受託番号AF373846;Thompsonら(2001)Science,293:2108−2111)。BAG¥FFRは、3つのレセプターのうち唯一BAFFに特異的である(Thompsonら、前出)。BCMAおよびTACIは、BAFFだけでなく、別のTNFファミリーリガンドであるAPRILにも結合する(Yuら(2000)Nat.Immunol.,1:252−256;Wuら(2000)J.Biol.Chem.,275:35478−35485;Rennertら(2000)J.Exp.Med.,192:1677−1684;PCT公開WO01/24811;米国特許出願第10/115,192)。
【0007】
BAFFがB細胞の生存および変異に必要な因子としてはっきりと同定されている一方で、B細胞ホメオスタシスにおけるAPRILの役割は、あまり十分に理解されないままである。APRILは、もともと、インビトロおよびインビボで腫瘍細胞の増殖を刺激することが見出された(Hahneら(1998)J.Exp.Med.,188:1185−1190)。最近の報告により、APRILもまたインビトロで一次B細胞および一次T細胞の同時刺激因子(costimulator)として作用し得ること、そしてインビトロで末梢血B細胞によるIgM産生を刺激し得ることが示された(Yuら(2000)Nat.Immunol.,1:252−256;Marstersら(2000)Curr.Biol.,10:785−788)。APRILのインビボ投与は、BAFFと同様に、B細胞集団の増殖および活性化T細胞のパーセンテージの増加に起因して巨脾腫を生じ(Yuら(2000)Nat.Immunol.,1:252−256)、このことは、APRILがリンパ系のホメオスタシスに関与し得ることを示唆する。APRIL−トランスジェニックマウスを使用して生成されたデータに基づくと、APRILは、T細胞非依存性2型(TI−2)液性応答において役割を果たすようである(Steinら(2002)J.Clin.Invest.,109(12):1587−1598)。さらに、A/WySnJマウスを使用して生成されたデータから、APRILがB細胞の発生および機能には必要でないことが示される(Thompsonら、前出)。
【0008】
BAFFレセプターの可溶性形態は、免疫グロブリンのFc部分にBAFFレセプターの細胞外ドメインを融合することによって作製されている。そのようなTACIまたはBCMAの可溶性形態(TACI−FcまたはBCMA−Fc)による正常マウスの処置は、減少したB細胞数および液性応答の欠如をもたらす(Shuら(1999)J.Leukoc.Biol.,65:680−683;Yanら(2000)Nat.Immunol.,1:37−41;Xiaら(2000)J.Exp.Med.,192:137−143;Wangら(2001)Nat.Immunol.,2:632−637;Yuら(2000)Nat.Immunol.,1:252−256)。例えば、関節リウマチ、B細胞成分およびT細胞成分の両方に関与する自己免疫疾患のマウスモデルにおいてTACI−Fcは、実質的に炎症を阻害し、疾患の進行を遅延させる(Wangら(2001)Nat.Immunol.,2(7):632−637)。これらの効果は、BAFF隔絶(sequestration)によるものであると考えられる。なぜなら、BAFF欠損マウスは、TACI−Fc処置マウスまたはBCMA−Fc処置マウスの表現型と類似の表現型を有するからである(成熟B細胞をほとんど完全に喪失し、液性応答をひどく欠損する)(Schiemannra(2001)Science,293:2111−2114;Grossら(2001)Immunity,15:289−302)。TACI−IgによるNZBWF1の5週間の処置は、処置の12週間目にSLE症状の軽減をもたらすが、自己抗体の減少は観察されず、このことは、処置のより長い経過が必要であり得ることを示す(Grossら(2000)Nature,404(6781):995−999)。
【0009】
最近、BAFF特異的因子(BAFFR−FcおよびBAFF抗体を含む)が、自己免疫障害および他の障害の処置のために開発されている(例えば、米国特許出願第09/911,777;10/380,703;10/045,574および60/458,707;Kalledら(2003)Expert Opin.Ther.Targets,7(1):115−23を参照のこと)。一旦、BAFF特異的因子の投与が終わり、その因子が血流から除去されると、処置前レベルへのB細胞再構成(病原性B細胞の回収を含む)が、約8週間以内に生じると期待される(例えば、Porpigliaら(2003)Clin.Immunol.,107:90−97;Berardiら(1997)Blood,89:3554−3564;Hiramatsuら(2003)Blood,102:873−880を参照のこと)。結果として、8週間未満の間隔でのこれらの因子の頻繁な投与が、治療の利益を維持するために必要であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、免疫障害および関連する障害の処置のために、依然として新しい治療ストラテジーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、免疫学的障害の有効な処置が、治療有効量のBAFFアンタゴニストの短期間の投与、その後、次の投与期間前の長期間にわたってそのアゴニストの投与を一時的に中断することによって達成されるという理解から生じる。
【0012】
本発明は、部分的に、軽度から中程度のSLEを有する腎炎のSNF1マウスにBAFFR−Fcを4週間の短期間投与することにより、長期間(少なくとも6ヶ月間)の臨床的利益が得られるという驚くべき知見に基づく。B細胞の回収はBAFFR−Fcの投与後に起こるが、新たに現れるB細胞は実質的に非病原性である。本発明はさらに、SNF1マウスにおける短期間のBAFFR−Fc投与の臨床的利益は、同じモデルにおけるTACI−Fcの投与の際に観察される臨床的利益と比較して、有意に顕著であり持続性であるという発見および実証に基づく。
【0013】
本発明は、哺乳動物において免疫学的障害および関連する障害(特に、自己免疫障害)を処置するための方法を提供し、そして哺乳動物において自己抗体産生を阻害するための方法、および/または病原性B細胞集団の生成を阻害するための方法を包含する(しかし、これらに限定されない)。本発明はさらに、腎線維症を処置するための方法、および/または腎機能(例えば、加圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌および全身血圧調節)を改善するための方法を提供する。本発明はなおさらに、心臓の炎症を軽減するための方法を提供する。本発明の方法において使用される投与方法および組成物もまた、提供される。
【0014】
特定の実施形態において、免疫学的障害を有する患者を処置する方法は、以下:
(a)その患者に治療有効量のBAFF(TNFファミリーに属するB細胞活性化因子)アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程;および
(c)工程(a)および工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である。
【0015】
いくつかの実施形態において、BAFFアンタゴニストは、可溶性BAFFレセプター(例えば、BAFFR、BCMAまたはTACI)、抗BAFF抗体または抗BAFFレセプター抗体である。特定の実施形態において、BAFFアンタゴニストは、例えば可溶性BAFFRのようにBAFF特異性である。
【0016】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
免疫学的障害を有する患者を処置する方法であって、該方法は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF(TNFファミリーに属するB細胞活性化因子)アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程;および
(c)工程(a)および工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、方法。
(項目2)
前記工程(a)の投与が、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間または7週間の間隔を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記BAFFアンタゴニストが、工程(a)において1週間に2回、3回、4回、5回、6回または7回投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記投与が、工程(b)において12週間、18週間、24週間、30週間、36週間、42週間、48週間またはそれ以上にわたって中断される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記処置の開始時に、前記患者が、以下:
(i)24時間あたり1gまたはそれ以上のタンパク尿、
(ii)約1mg/dlまたはそれ以上の血清中クレアチニンレベル、
(iii)97ml/分またはそれ以下のクレアチニンクリアランスレベル、
(iv)20mg/dlまたはそれ以上の血中尿素、
(v)血清中の自己抗体の異常な力価;および
(vi)700細胞/μlの末梢血B細胞カウント
のうちの1以上を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記患者がヒトである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、自己抗体力価を抑えるのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、B細胞過形成を減少させるのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、心臓の炎症を軽減するのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎機能を改善するのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記腎機能が、加圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌および全身血圧調節のうちの1以上である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎線維症の進行を抑えるのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎臓におけるリンパ球浸潤を減少させるのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、リンパ節症を軽減するのに十分である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記免疫学的障害が自己免疫障害である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記自己免疫障害が全身性エリテマトーデスである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記医薬が、LymphoStat−BTMである、項目1〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記BAFFアンタゴニストがBAFF特異的である、項目1〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記BAFFアンタゴニストが、可溶性BAFFレセプター、抗BAFF抗体および抗BAFFR抗体からなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記BAFFレセプターが、BAFFR、BCMA(B細胞成熟抗原)およびTACI(膜貫通活性化因子およびサイクロフィリンリガンドインタラクター)からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記可溶性BAFFRは、配列番号5のペプチドを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記可溶性BAFFレセプターは、BAFFRのBAFF結合ドメインを含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記可溶性BAFFRがヒトである、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記可溶性BAFFRが、配列番号6の配列を欠く、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記BAFFRのBAFF結合ドメインが、以下に示されるアミノ酸配列を有する、項目22に記載の方法:
(a)配列番号1のアミノ酸27〜アミノ酸32;
(b)配列番号1のアミノ酸18〜アミノ酸43;
(c)配列番号1のアミノ酸13〜アミノ酸50;
(d)配列番号1のアミノ酸3〜アミノ酸73;または
(e)配列番号3のアミノ酸2〜アミノ酸62。
(項目26)
前記BAFFRのBAFF結合ドメインが、免疫グロブリンの定常領域に融合される、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記免疫グロブリンが、IgGまたはIgGである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記免疫グロブリンの定常領域が、Fc部分を含む、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記BAFFR−Fcが、(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列、または(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
自己免疫障害を有する患者を処置する方法であって、該方法は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程、
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって該自己免疫障害を処置する工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、方法。
(項目31)
患者において自己抗体力価を減少させる方法であって、該方法は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって自己抗体力価を減少させる工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、方法。
(項目32)
患者において病原性B細胞の産生を阻害する方法であって、該方法は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって病原性B細胞の産生を阻害する工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、方法。
(項目33)
前記病原性B細胞が、IgMIgDである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記BAFF特異的アンタゴニストが、BAFFRの溶解性形態である、項目30〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記BAFF特異的アンタゴニストが抗BAFF抗体である、項目30〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
免疫学的障害の処置のための医薬の調製のためのBAFFアンタゴニストの使用であって、該処置養生法は、以下、
(a)治療有効量のBAFF(TNFファミリーに属するB細胞活性化因子)アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程;および
(c)工程(a)および工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、使用。
(項目37)
前記工程(a)の投与が、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間または7週間の間隔を含む、項目36に記載の使用。
(項目38)
前記BAFFアンタゴニストが、工程(a)において1週間に2回、3回、4回、5回、6回または7回投与される、項目36に記載の使用。
(項目39)
前記投与が、工程(b)において12週間、18週間、24週間、30週間、36週間、42週間、48週間またはそれ以上にわたって中断される、項目36に記載の使用。
(項目40)
前記処置の開始時に、前記患者が、以下:
(i)24時間あたり1gまたはそれ以上のタンパク尿、
(ii)約1mg/dlまたはそれ以上の血清中クレアチニンレベル、
(iii)97ml/分またはそれ以下のクレアチニンクリアランスレベル、
(iv)20mg/dlまたはそれ以上の血中尿素、
(v)血清中の自己抗体の異常な力価;および
(vi)700細胞/μlの末梢血B細胞カウント
のうちの1以上を有する、項目36に記載の使用。
(項目41)
前記患者がヒトである、項目40に記載の使用。
(項目42)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、自己抗体力価を抑えるのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目43)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、B細胞過形成を減少させるのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目44)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、心臓の炎症を軽減するのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目45)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎機能を改善するのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目46)
前記腎機能が、加圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌および全身血圧調節のうちの1以上である、項目45に記載の使用。
(項目47)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎線維症の進行を抑えるのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目48)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、腎臓におけるリンパ球浸潤を減少させるのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目49)
前記治療有効量の前記BAFFアンタゴニストが、リンパ節症を軽減するのに十分である、項目36に記載の使用。
(項目50)
前記免疫学的障害が自己免疫障害である、項目36に記載の使用。
(項目51)
前記自己免疫障害が全身性エリテマトーデスである、項目50に記載の使用。
(項目52)
前記医薬が、LymphoStat−BTMである、項目36〜51のいずれか1項に記載の使用。
(項目53)
前記BAFFアンタゴニストがBAFF特異的である、項目36〜51のいずれか1項に記載の使用。
(項目54)
前記BAFFアンタゴニストが、可溶性BAFFレセプター、抗BAFF抗体および抗BAFFR抗体からなる群より選択される、項目53に記載の使用。
(項目55)
前記可溶性BAFFレセプターが、BAFFR、BCMA(B細胞成熟抗原)およびTACI(膜貫通活性化因子およびシクロフィリンリガンドインタラクター)からなる群より選択される、項目54に記載の使用。
(項目56)
前記BAFFRは、配列番号5のペプチドを含む、項目55に記載の使用。
(項目57)
前記可溶性BAFFレセプターは、BAFFRのBAFF結合ドメインを含む、項目54に記載の使用。
(項目58)
前記可溶性BAFFRがヒトである、項目55に記載の使用。
(項目59)
前記可溶性BAFFRが、配列番号6の配列を欠く、項目55に記載の使用。
(項目60)
前記BAFFRのBAFF結合ドメインが、以下に示されるアミノ酸配列を有する、項目57に記載の使用:
(a)配列番号1のアミノ酸27〜アミノ酸32;
(b)配列番号1のアミノ酸18〜アミノ酸43;
(c)配列番号1のアミノ酸13〜アミノ酸50;
(d)配列番号1のアミノ酸3〜アミノ酸73;または
(e)配列番号3のアミノ酸2〜アミノ酸62。
(項目61)
前記BAFFRのBAFF結合ドメインが、免疫グロブリンの定常領域に融合される、項目57に記載の使用。
(項目62)
前記免疫グロブリンが、IgGまたはIgGである、項目61に記載の使用。
(項目63)
前記免疫グロブリンの定常領域が、Fc部分を含む、項目61に記載の使用。
(項目64)
前記BAFFR−Fcが、(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列、または(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、項目63に記載の使用。
(項目65)
自己免疫障害の処置のための医薬の調製のためのBAFF特異的アンタゴニストの使用であって、該処置養生法は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程、
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって自己免疫障害を処置する工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、使用。
(項目66)
患者において自己抗体力価を減少させるための医薬の調製のためのBAFF特異的アンタゴニストの使用であって、該処置は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって自己抗体力価を減少させる工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、使用。
(項目67)
患者において病原性B細胞の産生を阻害するための医薬の調製のためのBAFF特異的アンタゴニストの使用であって、該処置は、
(a)該患者に治療有効量のBAFF特異的アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程、および
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返し、それによって病原性B細胞の産生を阻害する工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である、使用。
(項目68)
前記病原性B細胞が、IgMIgDである、項目67に記載の使用。
(項目69)
前記BAFF特異的アンタゴニストが、BAFFRの溶解性形態である、項目65〜68のいずれか1項に記載の使用。
(項目70)
前記BAFF特異的アンタゴニストが抗BAFF抗体である、項目65〜68のいずれか1項に記載の使用。
【0017】
本発明のさらなる局面は、以下の説明で部分的に示され、部分的にその説明から理解されるかまたは本発明の実施により習得され得る。
【0018】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒトBAFFRのアミノ酸配列である(GenBankTM受託番号AF373846)。この配列について配列表中に示される特別な特徴:残基1−なしまたは任意のアミノ酸;残基2−メチオニン、なしまたは任意のアミノ酸:残基21−バリン(野生型)、アスパラギンまたは別のアミノ酸;残基28−リジン(野生型)、プロリンまたは別のアミノ酸;残基47−なし、任意のアミノ酸またはアラニン。
【0019】
配列番号3は、ヒトBAFFR−Fc融合タンパク質のアミノ酸配列であり、この配列は、シグナル配列(アミノ酸1〜22)およびヒトIgG1 Fc部分(アミノ酸95〜321)を含む。この配列について配列表中に示される特別な特徴:残基41−バリン(野生型)、アスパラギンまたは別のアミノ酸;残基48−リジン(野生型)、プロリンまたは別のアミノ酸;残基67−なし、任意のアミノ酸またはアラニン。
【0020】
配列番号2は、マウスBAFFRのアミノ酸配列である(GenBankTM受託番号Q96RJ3)。
【0021】
配列番号4は、マウスBAFFR−Fc融合タンパク質のアミノ酸配列であり、この配列は、シグナル配列(アミノ酸1〜22)およびマウスIgG1 Fc部分(アミノ酸88〜316)を含む。
【0022】
配列番号5は、BAFFRに由来するBAFF結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0023】
配列番号6は、米国特許出願第60/458,707号に記載されるΔBAFFRにおける最小欠失のアミノ酸配列である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A〜図1Dは、B細胞に対してビオチン−抗B220使用し、そしてT細胞に対して抗CD3を使用して、パラフィンに包埋した腎臓切片が免疫組織化学により評価されるように、短期間のBAFFR−Fc処置がSNF1マウスの腎臓における腎リンパ球浸潤を抑制することを示す(50倍の倍率)。図1Aおよび図1Bは、それぞれ、9週齢および50週齢の無処置のマウスに由来する代表的な腎臓切片を示す。2つの群のマウスに、200μgのマウスBAFFR−Fcまたは200μgのmlgG1のいずれかを、それぞれ、23週齢で開始して週に2回、連続して4週間投与し、50週齢または51週齢で屠殺した。図1Cおよび図1Dは、それぞれ、BAFFR−Fcで処置したマウスおよびmlgG1で処置したマウスに由来する代表的な腎臓切片を示す。
【図2】図2A〜図2Dは、B細胞に対してビオチン−抗B220を使用し、T細胞に対して抗CD3を使用して、パラフィンに包埋した腸間膜リンパ節(MLN)が免疫組織化学により評価されるように、短期間のBAFFR−Fc処置がSNF1マウスにおけるリンパ節症を抑制することを示す(50倍の倍率)。図2Aおよび図2Bは、それぞれ、9週齢および50週齢の無処置マウスに由来する代表的なMLN切片を示す。2つの群のマウスに、それぞれ、200μgのマウスBAFFR−Fcまたは200μgのmlgG1のいずれかを、23週齢で開始して、週に2回、連続して4週間投与した。図2および図2Dは、それぞれ、BAFFR−Fcで処置したマウスおよびmlgG1で処置したマウスに由来する代表的なMLN切片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明がより容易に理解され得るために、まず特定の用語が定義される。さらなる定義は、この詳細な説明全体にわたって示される。
【0026】
用語「抗体」とは、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリンまたはその一部分を指し、そして供給源、産生方法および他の特徴にかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体およびCDR移植抗体を包含するが、これらに限定されない。用語「抗原結合ドメイン」とは、抗原の一部またはすべてに対して特異的に結合するかまたは相補的な領域を含む抗原の部分を指す。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合し得る。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体の抗原結合ドメインとの特異的相互作用に関与する抗原分子の一部分である。抗原結合ドメインは、1以上の抗体可変ドメイン(例えば、VドメインからなるいわゆるFd抗体フラグメント)によって提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域(V)を含む。用語「抗BAFF抗体」および「BAFFに指向性の抗体(antibody directed against BAFF)」とは、BAFFの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体を指す。
【0027】
用語「BAFF」とは、免疫細胞における発現およびB細胞生存因子としての役割によって特徴付けられる、B細胞活性化因子を指す。BAFFの特性の概要は、Mackayら(2002)Nature Reviews:Immunology 2:465−475およびGavinら(2003)J.Biol.Chem.,278(40):38220−8に提供される。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「BAFFアンタゴニスト」とは、一般的に、BAFFの生物活性を直接ダウンレギュレートする化合物を指す。ある分子は、BAFF、BAFF遺伝子、BAFF転写産物またはBAFFレセプターと相互作用することにより、BAFFの生物活性を「直接ダウンレギュレート」する。BAFFアンタゴニストは、例えば、BAFFに結合し、BAFFの活性を中和し得る;BAFFの発現レベルを減少し得る;BAFFの安定性に影響を及ぼし得る;BAFFの膜結合形態のタンパク質分解的切断に影響を与え得る;BAFFと1以上のレセプターとの結合を妨げ得る;あるいはBAFFレセプターの細胞内シグナル伝達を妨げ得る。BAFFアンタゴニストは、タンパク質性(例えば、抗体、レセプター融合タンパク質、ペプチド)であるか、または非タンパク質性分子(例えば、有機低分子(500Da以下))であり得る。BAFFアンタゴニストの生物活性の中和を評価するための方法は、当該分野で公知である。
【0029】
用語「BAFFR」とは、他に記載されない限り、BCMAまたはTACI以外のBAFFに結合し得るBAFFの野生型レセプターまたは変異型レセプターの少なくとも一部分を含むタンパク質を指す。ヒトBAFFRのBAFF結合ドメインが配列番号1のアミノ酸27〜32を含むことが決定されている。BAFFRは、PCT公報WO02/24909および米国特許出願第10/380,703号および同第60/458,707号においてさらに定義され、そして具体的には、ヒトBAFFR(配列番号1;受託番号AAD25356;配列番号1のアミノ酸47はアイソフォームでは存在しない)、およびBAFFR(配列番号3;受託番号Q96RJ3)を含むが、これらに限定されない。「BAFFR」はまた、天然に存在する改変体(例えば、配列番号2のアミノ酸67に対応する配列番号1のアミノ酸47にアラニンを含むスプライス改変体)、およびBAFFRの機能的改変形態(例えば、少なくとも配列番号1のアミノ酸21およびアミノ酸28に変異を有するヒトBAFFR(例えば、V21NおよびL28P))も指す。用語「BAFFR−Fc」および「BAFFR−Ig」とは、BAFFRおよび抗体定常領域配列(例えば、Fc部分)を含む融合タンパク質を指す。
【0030】
用語「BAFF特異的アンタゴニスト」とは、(1)インビボおよびインビトロにおいて、例えば、1以上のBAFFレセプターの競合的遮断によって、BAFFの効果に対抗する能力を有し、そして(2)生理条件下でBAFFと比較的安定な複合体を選択的に形成するがTNFファミリーの他のリガンド(例えば、APRIL)とは比較的安定な複合体を選択的に形成しない、化合物を指す。典型的には、その結合は、BAFFに対する親和定数Kaが106M−1(好ましくは、108M−1)よりも大きく、一方で別のTNFファミリーに対する親和性が106M−1(好ましくは、105M−1)よりも小さい場合に、特異的であるとみなされるが、当業者は、たとえ相互作用のKaが比較的小さくあり得るとしても、特定の条件下で、親和性は低いがアビディティは高い結合もまた特異的であり得ることを認識する。いくつかの実施形態において、BAFFの少なくとも1つのアイソフォームに対するBAFF特異的アンタゴニストの親和定数Kaは、好ましくは、106M−1、107M−1、108M−1、109M−1、1010M−1、1011M−1または1012M−1よりも大きい。
【0031】
成句「実質的に同一」とは、所定の配列に対して関連するアミノ酸配列が、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であることを意味する。例えば、そのような配列は、様々な種に由来する改変体、または切断、欠失、アミノ酸置換もしくは付加によって得られた配列に由来し得る。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、標準的なアラインメントアルゴリズム(例えば、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.,215:403−410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanra(1970)(J.Mol.Biol.,48:444−453)のアルゴリズム、またはMeyersら(1988)(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17)のアルゴリズム)によって決定され得る。このようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラムに組み込まれている(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。そのようなプログラムを使用する場合、デフォルトのパラメータが使用され得る。例えば、ヌクレオチド配列に対して、以下の設定が「BLAST 2 Sequences」に使用され得る:program BLASTN、reward for match 2、penalty for mismatch −2、open gapおよびextension gap penalties それぞれ、5および2、gap x_dropoff 50、expect 10、word size 11、filter ON。アミノ酸配列に対して、以下の設定が「BLAST 2 Sequences」に使用され得る:program BLASTN、matrix BLOSUM62、open gapおよびextension gap penalties それぞれ、11および−1、gap x_dropoff 50、expect 10、word size 3、filter ON。
【0032】
用語「免疫学的障害」とは、免疫応答が異常である障害および状態を指す。その異常な応答は、異常な増殖、成熟、生存、分化、または免疫細胞(例えば、T細胞もしくはB細胞)の機能に起因し得る。免疫学的障害の例としては、関節リウマチ(RA)、喘息、乾癬、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、ウェーゲナー肉芽腫症、移植拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、過剰増殖性免疫障害、自己免疫疾患、B細胞癌、免疫調節、抗体媒介性病理(例えば、ITCP、重症筋無力症など)、およびシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物および組成物を用いて処置され得る障害としては、PCT公報WO02/24909および米国特許出願第09/911,777号;同第10/380,703号;同第10/045,574号;および同第60/458,707号に記載される障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
用語「治療的(therapeutic)」およびその同語源の語は、本明細書中で使用される場合、障害の臨床症状の回復、または所望の生物学的結果の産出を指す。望ましい結果の例としては、以下が挙げられる:減少したB細胞過形成;低下した自己抗体力価;減少した病原性B細胞集団;減少した心臓の炎症;腎機能(例えば、加圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌および全身血圧調節)の改善、遅延した腎線維症の進行、減少した腎リンパ球浸潤;減少したリンパ節症など。結果は、当該分野で公知の方法および/または本明細書中に記載されるような方法を用いて決定され得る。
【0034】
用語「病原性B細胞」とは、疾患病理に寄与する自己抗体を産生するB細胞を指す。
【0035】
本発明は、部分的に、軽度から中程度の全身性エリテマトーデス(SLE)を有する腎炎のSNF1マウスにBAFFR−Fcを4週間にわたって短期間投与することにより、長期間(少なくとも6ヶ月間)の臨床的利益が得られるという驚くべき知見に基づく。SNF1マウスにおけるBAFFR−Fcの短い循環半減期(3.7日)を考慮すると、一旦BAFFR−Fc投与を中止しBAFFR−Fcが血流から除去されると、B細胞再構成が約8週間以内に生じると考えられる。本発明に通じる実験において、B細胞回復がBAFFR−Fcの投与後に起こった。しかし、新たに現れるB細胞は実質的に非病原性であることが見出された。本発明はさらに、SNAF1マウスにおける短期間のBAFFR−Fc投与の臨床効果が、同じモデルにおけるTACI−Fcと比較して有意に顕著であり持続性であるという発見および実証に基づく。
【0036】
本発明の方法、本発明で使用される組成物、および本発明の他の局面は、以下に詳細に記載される。
【0037】
(方法)
本発明は、短期間のBAFFアンタゴニスト投与工程、その後、次の投与期間前の長時間の無処置期間を含む治療養生法を提供する。
【0038】
1つの局面において、本発明は、免疫学的障害または関連する障害を有する患者を処置するための治療養生法を提供する。その養生法は、以下:
(a)患者に治療有効量のBAFF(TNFファミリーに属するB細胞活性化因子)アンタゴニストをN週間未満のうちに少なくとも1回または1以上の間隔で投与する工程;
(b)工程(a)の投与をN週間またはそれ以上にわたって一時的に中断する工程;および
(c)工程(a)および工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程
を包含し、ここで、Nは、8、9、10、11または12である。
【0039】
さらなる実施形態において、工程(a)の投与は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間または7週間の間隔を含む。工程(a)において、BAFFアンタゴニストは、例えば、週に2回、3回、4回、5回、6回または7回、毎日、週2回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、11週間に1回または12週間に1回投与される。工程(a)の投与期間において、連続投与間の期間および投薬量は変化し得る。例えば、工程(a)の投与期間において、BAFFアンタゴニストは、最初の週に2回投与され、3週間中止され、1回投与され、次の5週間中止され、次いで1週間にわたって毎日投与され得る。種々の実施形態において、投与は、工程(b)において、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、18週間、24週間、30週間、36週間、42週間、48週間あるいはそれ以上の期間(50週間、80週間、110週間、140週間、180週間、210週間、260週間または300週間に限定され得る)であるように、一時的に中断される。
【0040】
1つの局面において、本発明は、哺乳動物において免疫学的障害および関連する障害(特に、自己免疫障害)を処置するための方法を提供し、自己抗体力価(例えば、抗ssDNA、抗Sm、抗RNPおよび抗Roのような抗核化抗体)を減少させるための方法を包含する(しかし、これに限定されない)。
【0041】
別の局面において、本発明はさらに、腎線維症を処置するため、および/または腎機能(例えば、加圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌および全身血圧調節)を改善するための方法を提供する。なお別の局面において、本発明はなおさらに、心臓の炎症を軽減するための方法を提供する。
【0042】
本発明はさらに、免疫障害を有する病原性のB細胞集団を減少させるための方法を提供する。特定の実施形態において、B細胞の病原性集団は、IgM−IgD+であるB細胞からなる。B細胞集団は、当該分野で公知の方法および/または実施例に記載される方法を使用して、例えば、一般に使用されるB細胞マーカー(例えば、CD45のB220アイソフォーム(Kincadeら(1981)J,Immunol.,127:2262−2268)、またはCD19(例えば、Kropら(1996)Eur.J.Immunol.,26:238−242を参照のこと))および代表的なアイソタイプ抗免疫グロブリン抗体を用いて決定され得る。
【0043】
本発明の組成物は、医学的に受容可能である任意の様式で投与され得る。「投与」は、いかなる特定の送達システムに限定されず、非経口投与(皮下注射、静脈内注射、髄内注射、関節内注射、筋肉内注射または腹腔内注射)、直腸投与、局所投与、経皮投与、あるいは経口投与(例えば、カプセル、懸濁液または錠剤で)が挙げられるが、これらに限定されない。個体への投与は、単一用量または反復投与で、そして種々の生理学的に受容可能な塩形態のうちのいずれかで、そして/あるいは薬学的組成物の一部として受容可能な薬学的キャリアおよび/または添加剤と共に、行われ得る(先に記載される)。生理学的に受容可能な塩形態および標準的な薬学的処方技術および賦形剤は、当業者に周知である(例えば、医師用卓上参考書(PDR)2003、第57版、Medical Economics Company,2002;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy編、Gennadoら、第20編、Lippincott,Williams & Wilkins,2000を参照のこと)。
【0044】
個体に対するアンタゴニストの投与はまた、遺伝子治療によって達成され得、そのアンタゴニストをコードする核酸配列がインビボで患者に投与されるか。またはインビトロで細胞に投与され患者に導入され、その核酸配列によってコードされる産物の発現によってアンタゴニストが産生される。
【0045】
特定の実施形態において、本発明の方法を用いて処置されるべき患者は、軽度の疾患、中程度の疾患または重篤な疾患を有する。種々の実施形態において、患者は、免疫学的障害を有する患者、および/または腎不全が発達する危険性が増大している患者である。処置は、24時間の期間あたり1g、1.2g、1.5g、1.7g、2.0gを超えるタンパク尿および/あるいは1.0mg/dl、1.5mg/dl、2.0mg/dl、2.5mg/dlまたはそれ以上の血清クレアチニンレベルを有する患者において、特に有用であり得る。他の指標としては、97ml/分、90ml/分、80ml/分、70ml/分、60ml/分(男性)未満のクレアチニンクリアランスレベルおよび88ml/分、80ml/分、70ml/分、60ml/分(女性)未満のクレアチニンクリアランスレベル、20mg/dl、25mg/dl、30mg/dlもしくはそれ以上の血中尿素、ならびに/または腎画像化(例えば、MRI、超音波)、または腎生検が挙げられる。さらに他の指標としては、血清中の上記抗核抗体の標準的な力価(例えば、抗ssDNA、抗Sm、抗RNPおよび抗Ro)、あるいは700細胞/μl、1000細胞/μl、1250細胞/μl、1500細胞/μl、2000細胞/μlの上記標準的な末梢血B細胞(例えば、CD19+)計数が挙げられる。これらのパラメータを評価するための試験は、当該分野で公知の方法、実施例に記載されるような方法、またはJacobsら(編)(2002)Laboratory test handbook;Concise with disease index(第2版)Husson,OH,Lexi−Comp.に記載される方法を用いて行われ得る。
【0046】
本発明の方法はまた、免疫学的障害(例えば、B細胞またはT細胞のような免疫細胞の異常な増殖、変異、生存、分化または機能が存在する)を有する患者を処置するために使用され得る。本発明の方法は、前B細胞もしくはB細胞白血病(例えば、形質細胞性白血病、慢性リンパ性白血病もしくは急性リンパ性白血病)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫、形質細胞性骨髄腫、内皮性骨髄腫および巨細胞骨髄腫)ならびにリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、バーキットリンパ腫、非バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、大細胞型リンパ腫(例えば、免疫芽球性リンパ腫)、辺縁層リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、他のB細胞リンパ腫、疾患(例えば、膜性腎症、IgA腎症(バージャー病)、IgM腎症、グッドパスチャー病、感染後糸球体腎炎、メサンギウム増殖性疾患、慢性リンパ性白血病および微少変化ネフローゼ症候群)に関連する糸球体腎炎、二次糸球体腎炎、脈管炎、腎盂腎炎、腎石灰症、腎石症、慢性間質性腎炎もしくは急性間質性腎炎、高血圧性血管疾患もしくは大血管疾患(腎動脈狭窄症または腎動脈閉塞およびコレステロール塞栓または腎塞栓を含む)、腎臓の新生物もしくは泌尿器科の新生物、多発性骨髄腫、リンパ腫、軽鎖ニューロパシー、アミロイドーシス、喘息および他の慢性気道疾患(例えば、気管支炎および気腫)、インスリン依存性真性糖尿病ならびにクローン病を処置するのに有用であり得る。本発明の方法はまた、エフェクターT細胞応答を阻害または中和するため、および特に関節痛、腫脹、貧血および敗血症性ショックを軽減するために免疫抑制を必要とする状態(例えば、移植片対宿主病および移植拒絶、慢性炎症性疾患)を処置するために使用され得る。
【0047】
本発明の方法において、アンタゴニストは、単一の活性化合物として投与され得るか、または他の化合物または組成物と組み合わせて投与され得る。他に示されない限り、投与されるアンタゴニストの用量は、約1μg/kgおよび250mg/kgであり、症状の重篤度および疾患の進行度に依存する。最も一般的には、抗体または免疫グロブリン融合タンパク質は、外来設定で、約0.1mg/kg〜10mg/kgがゆっくりとした静脈内(IV)注入により毎週投与される。アンタゴニストの適切な治療有効量は、処置する臨床家によって選択され、おおよそ、1μg/kg〜100mg/kg、1μg/kg〜50mg/kg、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、または500μg/kg〜5mg/kgの範囲である。あるいは、実施例において示されるかまたは医師用卓上参考書(PDR)2003、第57版、Medical Economics Company、2002において類似の薬剤について示される特定の投薬量が、使用され得る。
【0048】
(組成物)
本発明の方法において使用されるBAFFアンタゴニストとしては、BAFFに指向される抗体、少なくとも1つのBAFFレセプターの1以上のアイソフォームに指向される抗体、およびBAFFレセプターの可溶性形態が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。
【0049】
BAFFレセプターとしては、BAFF、BCMAおよびTACIが挙げられる。いくつかの実施形態において、BAFFアンタゴニストは、BAFF特異的(BAFFR)である一方で、特定の他の実施形態において、BAFFアンタゴニストはまたBAFF以外のTNFファミリーリガンド(例えば、APRILにも結合するBCMAおよびTACI)に結合し得る。いくつかの実施形態において、BAFFアンタゴニストは、BAFFがそのレセプターに結合するのをブロックする抗体である。BAFFおよびBAFFレセプターに指向される抗体は、以前に記載されている。そのような抗体を産生することは、当業者の技術の範囲内である(例えば、Antibody Engineering編、Borrebaeck、第2版、Oxford University Press、1995を参照のこと)。本発明の方法において使用するための抗体の例としては、PCT出願WO99/12964および米国特許出願第09/911,777号に記載される抗体、ならびに抗BAFF抗体LymphoStat−BTM(Human Genome Sciences,Rockville,MD)が挙げられる。さらなる実施形態において、本発明の抗体は、BAFFまたはBAFFRに加えて、それぞれ、BAFFRまたはBAFFRに実質的に同一である別のタンパク質に特異的に結合する。なおさらなる実施形態において、抗体は、BCMAおよび/TACIに指向される。また、任意の脊椎動物種由来の非ヒト抗体のヒト化形態および誘導体も、ヒトにおける使用に意図される。
【0050】
本発明の方法において使用するための抗体の他の例としては、ハイブリドーマクローン番号2.1(ATCC番号PTA−3689として寄託された)またはクローン番号9.1(ATCC番号PTA−3688として寄託された)によって産生されるマウスモノクローナル抗体、あるいはヒト化キメラ抗体または完全ヒト誘導体が挙げられる。
【0051】
BAFFレセプター融合タンパク質の可溶性形態は、BAFFR、BCMAおよび/またはTACIのBAFF結合ドメインを含み得る。BAFF結合ドメインは、細胞外ドメイン(ECD)(すなわち、通常はタンパク質を発現する細胞の外側に存在するタンパク質部分)に位置する。いくつかの実施形態において、可溶性BAFFRは、配列CHWDLLRHWVC(配列番号5)(Kayagakira(2002)Immunity,10:515−524)を有するジスルフィド結合したタンパク質、またはこの配列を含むポリペプチドである。さらに他の実施形態において、可溶性BAFFRは、配列番号1のアミノ酸27〜32または18〜43を含むポリペプチドである。
【0052】
特定の実施形態において、BAFFレセプターの可溶性形態は、免疫グロブリンの定常領域に融合されたBAFFレセプターのBAFF結合ドメイン(すなわち、BAFFR−Fcにあるような)を含む。いくつかの実施形態において、BAFFR−Igは、IgGのFc部分に融合された配列番号1の残基3〜73を含む。例示的な実施形態において、BAFFR−Fcは、配列番号2(ヒト)または配列番号4(マウス)を含む。いくつかの実施形態において、BAFFRは、配列番号1のアミノ酸51から始まるC末端欠失を有するヒトBAFFRであり、これは、変更されたO結合グリコシル化パターンを生じる(例えば、米国特許出願第60/458,707号に記載されるΔBAFFR)。いくつかの実施形態において、可溶性BAFFRは、少なくとも配列番号6(配列番号1のアミノ酸51〜57に対応する)の配列を欠くΔBAFFRを含む。
【0053】
BAFFRのBAFF結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸(aa)8〜aa50、aa13〜aa50、またはaa13〜aa43、またはaa18〜aa43を含む。特定の実施形態において、BAFF結合ドメインは、配列番号1のaa2〜aa63と同一もしくは実質的に同一であるか、または配列番号3のaa2〜aa62と同一もしくは実質的に同一であり、そのような配列がBAFFに結合する能力を維持する限り切断または変異される配列を含む。例示的な実施形態において、BAFFRは、配列番号3のaa2〜aa66に記載されるようなマウス配列である。他の実施形態において、BAFFRは、配列番号1の少なくとも20個連続したアミノ酸、25個連続したアミノ酸、30個連続したアミノ酸、35個連続したアミノ酸、40個連続したアミノ酸、45個連続したアミノ酸または50個連続したアミノ酸を含む。
【0054】
特定の実施形態において、免疫グロブリンの定常領域は、CH1定常領域、CH2定常領域またはCH3定常領域、あるいはFc部分全体(CH2またはCH3を含む)のうちのいずれか1つを、ヒンジ領域を伴ってかまたは伴わずに含む。さらなる実施形態において、第二のアミノ酸配列は、IgGのFc部分に由来する。関連する実施形態において、Fc部分は、IgG1、IgG4または別のIgGアイソタイプに由来する。例示的な実施形態において、免疫グロブリンの定常領域は、配列番号3のaa95〜aa321の配列、または配列番号4のaa88〜aa316の配列を含む。第二のアミノ酸配列は、ヒトIgG1のFc部分を含み得、ここで、Fcはエフェクター機能を最小化するように改変される。そのような改変としては、Fcレセプター結合のようなエフェクター機能を変え得る特定のアミノ酸残基を変更すること(Lundら(1991)J.Immun.,147:2657−2662およびMorganら(1995)Immunology,86:319−324)、または定常領域が由来する種を変更することが挙げられる。免疫グロブリンは、エフェクター機能(すなわち、Fcレセプター結合および補体活性化)を低下させる重鎖のCH2領域に変異を有し得る。例えば、免疫グロブリンは、米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に記載されるような変異を有し得る。IgG1重鎖またはIgG2重鎖において、例えば、そのような変異は、IgG1またはIgG2の全長配列中のアミノ酸234およびアミノ酸237に対応する残基においてなされ得る。抗体および免疫グロブリン−レセプター融合タンパク質はまた、免疫グロブリンの2つの重鎖の間のジスルフィド結合を安定化する変異(例えば、Angalra(1993)Mol.Immunol.,30:105−108に開示されるようなIgG4のヒンジ領域における変異)を有し得る。
【0055】
特定の実施形態において、BAFF結合ドメインは、C末端またはN末端において、リンカー配列を用いてかまたはリンカー配列を用いずに、免疫グロブリンの定常領域のC末端またはN末端に融合される。リンカーの正確な長さおよび配列、ならびに結合される配列に対するその方向は、変化し得る。リンカーは、例えば、1以上のGly−Serを含み得る。リンカーは、2、10、20、30またはそれ以上のアミノ酸長であり得、溶解度、長さおよび立体的分離(steric separation)、免疫原性などに基づいて選択される。当業者により、任意のタンパク質の配列中の特定のアミノ酸がそのタンパク質の活性に不利な影響を与えることなく他のアミノ酸に置換され得ることが理解される。種々の変更が、本発明のBAFFレセプターのアミノ酸配列、またはその結果それらの生物学的活性もしくは有用性の感知され得る損失を伴わないとして、コードするDNA配列においてなされ得ることが意図される。
【0056】
BAFFレセプターの誘導体およびアナログの使用もまた、本発明の範囲内である。その誘導体およびアナログは、機能的に活性である(すなわち、野生型BAFFRのリガンド結合ドメインに関連する1以上の活性を示し得る)べきである。この結合活性を保持するかまたはBAFFの生物学的活性を阻害する誘導体またはアナログは、当該分野で公知の手順および/または実施例に記載されるように生成および試験され得る。そのような誘導体およびアナログを生成する方法は、組換え法および合成法を含む(例えば、Maniatis(1990)Molecular Cloning;A Laboratory Manual,第2編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、およびBodanskyら(1995)The Practiceof Peptide Synthesis、第2編、Spring Verlag.Berlin、Germanyを参照のこと)。
【0057】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を提供する。代表的な手順がマウスにおいて行われ得るが、当業者は、これらがヒト被験体において臨床的に実行可能なパラメータの範囲内で、首尾よく行われ得ることを認識する。当業者は、本発明の精神または範囲を変更することなく行われ得る多くの改変およびバリエーションを認識する。そのような改変およびバリエーションは、本発明の範囲内に包含される。本実施例は、いかなる様式でも本発明を限定しない。
【実施例】
【0058】
以下は、後の実施例で記載される代表的な手順および実験で使用される材料および方法を記載する。
【0059】
(マウス)
雌性(SWR×NZB)F1(SNF1)マウスを、例えば、Gavalchinら(1987)J,Immunol.,138:138−148;Dattaら(1989)Clin.Immunol.Immunopathol.,51:141−56に以前に記載されたように繁殖させ、維持した。
【0060】
(タンパク質試薬)
マウスBAFFR−mulgG1(BAFFR−Fc)を含む発現ベクターを、マウスIg−k遺伝子に由来するシグナル配列を含むNot1+Aat2フラグメント、マウスBAFFR(受託番号AF373847)のaa2〜aa66をコードする配列を含むAat2+Sal1フラグメントおよびマウスIgG1のaa226〜aa478(Kabatシステムの番号付け)をコードする配列を含むSal+Not1フラグメントを、pCEP4(Invitrogen、Carlsbad、CA)の改変バージョン(EBNA−1遺伝子を含まない)のNot1部位に結合することによって構築し、CH269と称した。そのベクターを、LipofectamineTMを製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って使用して、EBNA−1遺伝子を含む293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションを、10%ウシ胎児血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン。100μg/mlストレプトマイシンおよび250μg/ml G418を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で維持した。培地を数週間にわたって4〜7日毎に回収した。その条件培地を、3倍体積の高塩濃度かつ高pHの緩衝液(1.5MグリシンpH8.9、3M NaCl)で希釈して、プロテインAに対するmBAFFR−mlgGの親和性を増大させた。BAFFR−Fcタンパク質を、アフィニティークロマトグラフィー(プロテインA)によって精製し、その後、サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。MOPC21ハイブリドーマによって産生されたマウスIgG1(mIgG1)を、類似の様式で精製し、ネガティブコントロールとして使用した。
【0061】
(処置プロトコル)
確立された腎炎(30mg/dL〜100mg/dLのタンパク尿)を有する23週齢の雌性SNF−1マウスを、10マウス/群の2つのコホートに分けた。一方のコホートには、200μgのマウスBAFFR−Fcを、他方には、200μgのmlgG1を、週に2回、連続4週間にわたって与え、その後、疾患の進行度についてモニタリングした。瀕死になったマウスを安楽死させ、そして組織サンプルおよび血液サンプルを屠殺前に、分析用として収集した。血液はまた、自己抗体決定のために血清を得るための通常の間隔で、眼窩後部洞(retro−orbital sinus)を介して収集される。本研究の最後に、腎臓、心臓および腸間膜リンパ節(MLN)を、10%中性緩衝化生理食塩水中に置き、組織学的分析のためにパラフィンブロックに包埋させた。脾臓を回収し、フローサイトメトリー用に使用した。
【0062】
(フローサイトメトリー)
単細胞懸濁液を、脾細胞を機械的破壊して作製した。赤血球を塩化アンモニウム溶液に溶解させ、次いで細胞を3回洗浄し、100ミクロンフィルターを通して濾過し、血球計を使用して計数した。脾細胞を、蛍光色素に結合した抗B220 mAbで染色して、Bリンパ球を、Thompsonら(2001)Science、293:21008−2111に記載されるように検出した。
【0063】
(組織学)
パラフィンに包埋した腸間膜リンパ節(MLN)および腎臓切片を、B細胞に対してラット抗B220 mAbを用いて、T細胞に対してラット抗CD3 mAbを用いて、その後、ビオチン化したウサギ抗ラットとアビジン−ビオチン−HRP溶液を用いてリンパ球浸潤を評価し、基板DAB(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いて可視化した。腎臓をMason三重染色およびビオチン標識した抗α平滑筋アクチンで染色し、その後、ストレプトアビジン−HRPとインキュベーションし、そしてDAB基板で可視化することによって、腎線維症を評価した。スライドをMayerヘマトキシリンで対比染色した。心臓の炎症をH & E染色した心臓組織の試験によって評価した。
【0064】
(腎疾患および心臓疾患の評価)
各マウスの尿を、毎週、AlbustixTM(Bayer Corp.,Research Triangle Park,NC)でモニタリングして、タンパク尿を測定した。H & E染色した腎臓切片を、組織学試験に使用し、以下についてスコア付けした:糸球体過形成、腫脹、半月体(crescent)、糸球体間質の肥厚、ループ(loop)、フィブリノイド壊死およびヒアリン;間質硬化、浸潤および脈管炎;ならびに細管脈管炎、萎縮およびキャスト(cast)。心臓組織を脈管の炎症および心臓の炎症ならびに心臓の空胞形成について試験した。試験した構造体の改善パーセントに基づいて0〜4+のグレードを与えた。0は、なしであり、4+は、100%の改善である。
【0065】
(ELISA)
血清抗ssDNA抗体を検出するために使用されるELISAアッセイを、Kalledら(1998)J.Immunol.,160:2158−2165に記載されるように行った。
【0066】
(実施例1:短期間のBAFFR−Fc投与は生存度を増加させる)
表1に示されるように、短期間のBAFFR−Fc処置は、mlgGコントロール処置したマウスと比較した場合、生存度を顕著に高めた。49週齢において、すべてのBAFFR−Fc処置マウスが生存し、一方でコントロールマウスのうちのわずか30%が生存を維持した。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例2:短期間のBAFFR−Fc投与は腎炎の進行を減少させる)
腎機能を、標準的な間隔でのタンパク尿決定によって評価した。表2に示されるように、重篤な腎炎(タンパク尿≧300mg/dL)への疾患の進行は、mlgG処置コントロールマウスと比較した場合に、BAFFR−Fc処置マウスで有意に減少した。49週齢までに、すべてのコントロールマウスは、重篤な腎炎を発症し、一方でどのBAFFR−Fc処置動物もこの週齢において重篤な腎炎を発症しなかった。別の実験において、週に2回で4週間にわたって、200μgのSNF1マウスをヒトIgGまたはヒトTACI−Fc(BAFFおよびAPRILの両方に結合するレセプター−Fc融合タンパク質)で処置した。TACI−Fc投与は最初、重篤な腎炎をいくらか減少させたが、最終的にはすべてのTACI−Fc処置マウスがコントロールと同様の重篤な腎炎を発症した(表2)。
【0069】
【表2】

【0070】
腎臓疾患を、組織学的アプローチによってさらに評価した。H & E染色した腎臓切片を、「材料および方法」で記載される個々の疾患パラメータのスコアと組み合わせることによって、腎疾患についてスコア付けした。表3に見られるように、BAFFR−Fc処置マウスは、mlgG処置マウスまたは無処置マウスと比較した場合に、有意に減少した累積疾患スコアを有し、そしてBAFFR−Fc処置マウスのスコアは、疾患発症前の若年SNF1マウスのスコアと近かった。
【0071】
【表3】

【0072】
nは、分析で使用したマウスの数を示す。
【0073】
SLE腎炎において、腎線維症がしばしば起こり、これは細胞外マトリクス(ECM)タンパク質、α−平滑筋アクチン(ASMA)およびコラーゲンの分泌、線維芽細胞ならびに血管間膜細胞によって媒介され得る。ECM産生は、腎臓における減少したASMA沈着(表4)および減少したコラーゲン(表5)によって観察されるように、無処置のSNF1マウスおよびmlgG処置したSNF1マウスと比較して、BAFFR−Fcで処置したマウスにおいて有意に(p<0.05、Student T検定)減少した。若年の9週齢のSNF1マウスを、疾患前コントロールとして使用した。
【0074】
【表4】

【0075】
70−111の糸球体を各マウスについて試験した。
【0076】
【表5】

【0077】
70−111の糸球体を各マウスについて試験した。
【0078】
健常な腎臓は、リンパ球性クラスターを有さない。しかし、このSLE腎炎モデルにおいて疾患を併発させることは、ヒト疾患と同様に、腎臓へ白血球が浸潤し(B細胞およびT細胞を含む)、濾胞様構造を形成することである。従って、T細胞浸潤およびB細胞浸潤の存在について、腎臓分泌を試験した。無処置のマウス(図1B)およびmlgG処置したマウス(図1D)において、二次リンパ組織の白脾領域を模倣する広領域のT細胞浸潤およびB細胞浸潤が、腎臓全体にわたって観察された。対照的に、短期間のBAFFR−Fc処置を与えたマウスの腎臓(図1C)において、B細胞およびT細胞の浸潤が、顕著に減少した(図1)。健常な9週齢の(疾患前)SNF1マウスではB細胞もT細胞もほとんどもしくは全く観察されなかった(図1A)。
【0079】
(実施例3:短期間のBAFFR−Fc投与は心臓の炎症を阻害する)
脈管炎症および心臓の炎症、ならびに心臓の空胞化について、H&E染色した心臓のパラフィン切片を試験した。表6に見られるように、BAFFR−Fcを与えたSNF1マウスは、mlgGマウスおよび無処置のマウスと比較した場合に、全体的に顕著に減少した心臓スコアを有した。
【0080】
【表6】

【0081】
nは、この分析で使用したマウスの数を示す。
【0082】
(実施例4:短期間のBAFFR−Fc投与はB細胞過形成を防止する)
BAFFR−Fc(週に1回100μgを連続して4週間)による正常なBALB/cマウスにおけるBAFF遮断の研究に基づいて、末梢B細胞数は、BAFFR−Fcの最終投与後約9週間以内に完全に回複することがわかっている(データは示さずかっている(データは示さず)。SNF1マウスにおける脾臓B細胞の数を、BAFFR−FcまたはmlgGの最終投与の26〜28週間後に決定した。表7に見られるように、短期間のBAFFR−Fc処置を与えたSNF1マウスは、無処置またはmlgG処置したコントロールマウスよりも有意に(p<0.05、Student T検定)減少した脾臓B細胞数を有した。時間とともに、コントロールマウスは重篤な脾臓B細胞過形成を発症した。対照的に、BAFFR−Fc処置したマウスは、長期間の利益を示し、研究の終わりには、脾臓B細胞数は、疾患前の9週齢SNF1マウスの脾臓B細胞数とB細胞増殖が始まった20週齢のSNF1マウスの脾臓B細胞数との間であった。
【0083】
【表7】

【0084】
さらに、MLNにおけるB細胞およびT細胞組織化の免疫組織化学的分析は、無処置のマウス(図2B)およびmlgG処置したマウス(図2D)が、大規模なB細胞増殖を有し、リンパ節症を生じることを示した。対照的に、BAFFR−Fc処置したマウス(図2C)は、B細胞過形成を示さす、疾患発症前の若年SNF1マウスと似ているように見えた(図2A)。
【0085】
(実施例5:短期間のBAFFR−Fc投与は自己抗体産生の増加を阻害する)
定期的な間隔でSNF1マウスから得た血清を、ELISAフォーマットを用いて、抗ssDNA抗体を循環させることについて分析した。処置の開始から37週齢まで、経時的に抗ssDNAレベルの変化を試験する場合、mlgG処置したマウスにおける抗ssDNAに有意な変化(増加)が存在するが(Student−Newman−Keuls法を用いて、p<0.05)、しかし、BAFFR−Fcを与えたマウスにおける自己抗体レベルの有意な変化は存在しない(表8)。このことは、BAFFR−FcによるBAFFの遮断が、自己抗体産生を阻害し、これがBAFFR−Fc処置したマウスにおける軽減した病理に寄与し得ることを示す。特に、自己抗体レベルは、BAFFR−Fcの最終用量が投与された10週間後のコントロール(37週齢)と比較して、減少されたままであった。
【0086】
【表8】

【0087】
値は相乗平均を反映している。
【0088】
(実施例6:短期間のBAFFR−Fc投与はIgMIgDB細胞のパーセンテージを減少させる)
本研究の最後において、BAFFR−Fc処置したマウスおよびmlgG処置したマウスは、B220B細胞に対する染色に基づいて、血中の総B細胞に関して類似の頻度を有した。しかし、特定のB細胞サブセットを試験した場合、BAFFR−Fc処置したマウスは、IgMIgDB細胞のパーセンテージにおいて統計学的に有意な減少(p<0.01、Student T検定)を示した(表9)。末梢B細胞の一般的な再構成(BAFFR−Fc処置したマウスにおけるIgMIgDB細胞の依然として選択的で顕著な減少および長期間の効力)は、BAFFR−Fcがこれらの推定病原性のB細胞において長期間の減少を引き起こすことを示唆する。
【0089】
【表9】

【0090】
マウスは分析の時点で49〜51週齢であった。
【0091】
本明細書は、本明細書中に引用される参考文献の教示を考慮して、最も十分に理解される。本明細書中の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供するが、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。当業者は、多くの他の実施形態が、本発明に包含されることを容易に理解する。本開示において引用されるすべての刊行物および特許ならびに配列は、その全体が参考として援用される。参考として援用される物(material)が本明細書と相反するか矛盾する範囲に対して、本明細書は、そのようないかなる物に優先する。本明細書中の任意の参考文献の引用は、そのような引用文献が本発明の先行技術であることを承認するものではない。
【0092】
他に示されない限り、以下を適用する:明細書、添付の特許請求の範囲において使用される成分の量、細胞培養物、処置条件などを表すすべての数字は、用語「約」によってすべての事例において改変されると理解されるべきである;一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その一連の要素ごとに参照されると理解されるべきである。当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、慣用的な実験を必要とすることなく理解するかまたは確認し得る。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
[配列表]
【0093】
【表10】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116794(P2011−116794A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−63379(P2011−63379)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2006−535436(P2006−535436)の分割
【原出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】