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BBF2H7発現増加剤
説明

BBF2H7発現増加剤

【課題】BBF2H7の発現量を増大させる、BBF2H7発現増加剤を提供する。
【解決手段】インスリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、植物抽出物から選択される一以上を含んでなるBBF2H7発現増加剤であって、前記植物が、アルニカ、ウコン、エイジツ、エンメイソウ、ガイヨウ、カミツレ、甘草葉、キョウニン、クジン、クス、ハガシワ、ケイヒ、月桃葉、サイシン、スターフルーツ、ソウハクヒ、タイソウ、テンニンカ、ヒマラヤラズベリー、ビワ、ブッチャーズブルーム、マタタビ、マロニエ、メリッサ及びローズマリーから選択される、BBF2H7発現増加剤、及びこれを含む、コラーゲン産生促進用組成物、ならびに皮膚老化防止・改善用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BBF2H7発現増加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚において、細胞外マトリクスがバランスよく含まれていることが正しい構造や機能につながる。細胞外マトリクスの中でもコラーゲンは力学的な強度に関わっている。肌の老化の兆候は皮膚機能の低下やシワなどの様々な外見的変化といった形で現れ、原因の一つとしてコラーゲンをはじめとする細胞外マトリクスネットワークの崩壊があげられる。すなわち、コラーゲンの産生を高めることが肌の老化の兆候は皮膚機能の低下やシワなどの様々な外見的変化の予防や治療につながると考えられており、コラーゲンの産生を高める対策に対する要望は高い。
【0003】
インスリン様増殖因子は、プロインスリンに似た構造を持つポリペプチドであり、細胞増殖や生存、遊走やコラーゲンを含む細胞外マトリクスの産生に関与することが知られている(非特許文献1)。しかし、インスリン様増殖因子によるコラーゲン産生誘導時における細胞内輸送のメカニズムの詳細は明らかにされていない。
【0004】
いっぽう、小胞体ストレスとは、小胞体に非ホールディングタンパク質が蓄積した状態であることが知られている。真核生物はこの小胞体ストレスを対処できるよう順応している。このシステムにおいて機能するタンパク質が3つ同定されており、どのタンパク質も小胞体の内腔において非ホールディングタンパク質を感知し、核にシグナル伝達を行い、標的遺伝子の転写の活性化、翻訳停止またはタンパク質の分解を行う(非特許文献2)。cAMP応答配列結合タンパク質として同定された、BBF2 human homologue on chromosome 7(以下、本明細書において、BBF2H7と指称する)は小胞体膜タンパクであり、小胞体ストレスに応答し、小胞体ストレスを対処するためのシグナル伝達に重要な役割を担うことが示されてきた(非特許文献3)。
【0005】
また、軟骨細胞において、BBF2H7が小胞体からゴルジ体への輸送を行うコートタンパク複合体の構成タンパク質の一つであるSec23Aの転写因子として働き、BBF2H7−Sec23A経路は細胞外マトリクスのコートタンパク複合体を経た小胞体からゴルジ体への輸送を促進させ、軟骨細胞の分化において、小胞体内で過剰に産生されたタンパク質を効率的に輸送させることが報告されている(非特許文献4)。一方、Sec23Aのナンセンス変異により頭蓋・水晶体・縫合異形成症となることが知られており、それはSec23Aの機能が欠損することでコートタンパク質複合体による輸送が障害を受けるためだと示されている(非特許文献5)。また、Sec23Aの欠損は皮膚におけるI型コラーゲンの分泌を障害することもわかっている。
【0006】
しかしながら、インスリン様増殖因子などによる恒常的なコラーゲンの産生メカニズムとBBF2H7との関連は全く明らかにされていない。
【0007】
また、小胞体ストレス誘導化合物であるタプシガルギン(Thapsigargin)やツニカマイシン(tunicamycin)は、BBF2H7の発現を増加することが知られている。しかし、これらは、よく知られた小胞体内における異常タンパク質の蓄積を伴う小胞体ストレス応答の一つであって、BBF2H7の発現増加の結果、コラーゲン産生、輸送増大につながるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Edmondson SR, Thumiger SP, Werther GA , Endocr Rev 24, 737-64. (2003)
【非特許文献2】Rutkowski DT , Hegde RS,J Cell Biol 189: 783-794(2010)
【非特許文献3】Kondo S, Saito A, Hino S, Mol Cell Biol 27: 1716-29(2007)
【非特許文献4】Saito A, Hino S, Murakami T, Nat Cell Biol 11,1197-204(2009)
【非特許文献5】Boyadjiev SA, Fromme JC, Ben J, Nat Genet 38: 1192-7(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、皮膚線維芽細胞において、BBF2H7の発現量を増大させるBBF2H7発現増加剤、およびこれを含んでなる肌細胞のコラーゲンの産生を促進させる組成物、皮膚の老化を防止又は改善する皮膚老化防止・改善組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、皮膚線維芽細胞において、インスリン様増殖因子のコラーゲン産生のメカニズムについて検討した。その結果、インスリン様増殖因子によりBBF2H7の発現量が増加すること、そしてBBF2H7をノックダウンした細胞では、コラーゲンの産生量が減少することから、BBF2H7がコラーゲンの産生に関与することを見出した。また、BBF2H7をノックダウンした細胞において、輸送に障害が生じた際に観察されるゴルジ体の断片化が観察されたことから、BBF2H7がコラーゲンの小胞体からゴルジ体への輸送に関係し、コラーゲンの産生を増加させることが見出された。
【0011】
すなわち、従来、軟骨細胞及び神経細胞への作用が知られていたに過ぎないBBF2H7が、皮膚細胞においても作用することが、本願発明者らにより見出された。そして、BBF2H7の発現量を増加させる物質を用いることにより、コラーゲンの産生を増加させ、シワなどの皮膚老化を防止又は改善できることがわかった。さらには、インスリン様増殖因子以外にも、同様に、BBF2H7の発現量を増加させ、コラーゲンの産生を増加させる物質を探索、検討し、本願を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、一態様によれば、BBF2H7発現増加剤であって、インスリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、植物抽出物から選択される一以上を含んでなり、前記植物が、アルニカ、ウコン、エイジツ、エンメイソウ、ガイヨウ、カミツレ、甘草葉、キョウニン、クジン、クス、ハガシワ、ケイヒ、月桃葉、サイシン、スターフルーツ、ソウハクヒ、タイソウ、テンニンカ、ヒマラヤラズベリー、ビワ、ブッチャーズブルーム、マタタビ、マロニエ、メリッサ及びローズマリーから選択される、BBF2H7発現増加剤を提供する。
【0013】
本発明は、別の態様によれば、BBF2H7発現増加剤を含む、コラーゲン産生促進用組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また別の態様によれば、BBF2H7発現増加剤を含む、皮膚老化防止・改善用組成物を提供する。
【0015】
本発明は、さらにまた別の態様によれば、BBF2H7発現増加剤のスクリーニング方法であって、被検物質を、皮膚線維芽細胞と共にインキュベートするステップと、前記細胞におけるBBF2H7の発現量を測定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るBBF2H7発現増加剤によれば、皮膚細胞において異常タンパク質の蓄積を伴わない小胞体ストレス応答としてBBF2H7の発現量を増大させ、その結果として、コラーゲンの産生及び輸送の増大を誘導することができる。そして、その結果として、皮膚老化防止・改善を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ヒト皮膚線維芽細胞における、インスリン様増殖因子による、BBF2H7の発現誘導を示すグラフである。図中、**は基剤に対する有意差(p<0.01)を示す。
【図2】図2は、ヒト皮膚線維芽細胞における、インスリン様増殖因子による、Sec23Aの発現誘導を示すグラフである。図中、*は基剤に対する有意差(p<0.05)、**は有意差(p<0.01)を示す。
【図3】図3は、ヒト皮膚線維芽細胞においてBBF2H7をノックダウンするとコラーゲンの産生亢進が減弱することを示すグラフである。図中、**は基剤に対する有意差(p<0.01)を示す。
【図4】図4は、LaminA/Cの遺伝子をノックダウンした場合(左のパネル)、Sec23Aの遺伝子をノックダウンした場合(中央のパネル)、BBF2H7の遺伝子をノックダウンした場合(右のパネル)における、細胞免疫染色の共焦点顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施の形態を挙げてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明は、一実施形態によれば、BBF2H7発現増加剤である。BBF2H7発現増加剤は、BBF2H7の発現を増加させる物質を含む。BBF2H7の発現を増加させる物質としては、インスリン様増殖因子(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、およびこれらの擬似物質が含まれる。これらの擬似物質としては、特には植物抽出物が挙げられる。
【0020】
抽出対象となる植物としては、アルニカ、ウコン、エイジツ、エンメイソウ、ガイヨウ、カミツレ、甘草葉、キョウニン、クジン、クス、ハガシワ、ケイヒ、月桃葉、サイシン、スターフルーツ、ソウハクヒ、タイソウ、テンニンカ、ヒマラヤラズベリー、ビワ、ブッチャーズブルーム、マタタビ、マロニエ、メリッサ、ローズマリーが挙げられるが、これらには限定されない。また、これらの植物の、頭花、根、果実、葉、茎、種子、樹皮のいずれか一以上の部分からの抽出物を用いることができる。
【0021】
抽出方法としては、生の上記植物もしくは植物の部分(以下、植物等と指称する)から、または上記植物等に対して、細切・乾燥・粉砕等の処理後に抽出することが好ましい。抽出操作は、抽出溶媒に植物等を浸漬して行うことができる。抽出効率を上げるために撹拌してもよく、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。更に、抽出を、2〜4回繰り返して抽出効率を高めることも可能である。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒沸点以下の温度とすることが好ましく、抽出圧力は、0.5〜15MPa程度の加圧下で行うことが好ましい。抽出時間は、溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが好ましい。
【0022】
抽出において使用される溶媒は、有効成分を効果的に抽出し得る溶媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、クロロホルム、DMSO、グリセリン、エチルエーテル、プロピルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、エチルメチルケトン、生理食塩水、リン酸緩衝液及びリン酸緩衝生理食塩水から選択される、1種又は2種以上を選択して用いることが好ましい。
【0023】
なお、本実施形態による植物抽出物は、単一の植物種から得られたものであっても良く、2種以上の植物を混合した後、上記抽出方法を適用して得られたものであってもよい。また、単一の植物種から抽出した抽出成分の二種類以上を組み合せて、植物抽出物として用いることもできる。
【0024】
これらの植物等の上記溶媒による抽出物は、そのまま、BBF2H7発現増加剤の有効成分として用いることもできる。あるいは、不活性な夾雑物を除去して用いることもできるし、濃縮・乾固物を水や極性溶媒に再度溶解して用いることもできる。さらには、BBF2H7発現増加作用を損なわない範囲で、抽出液に対し、脱色、脱臭、脱塩の精製処理を行ったり、カラムクログラフィーによる分画抽出を行ったりした後で、用いることもできる。
【0025】
さらに、本実施形態に係るBBF2H7発現増加剤においては、上記インスリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、植物抽出物を組み合せて含むものであっても良い。
【0026】
次に、BBF2H7発現増加剤の使用態様について説明する。BBF2H7発現増加剤は、そのまま細胞等に作用させて使用することもできるし、皮膚に適用する皮膚外用剤組成物として使用することもできる。いずれの場合であっても、インスリン様増殖因子(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)の量(濃度)は、組成物全体の重量に対し、0.000000001〜0.00005重量%とすることが好ましく、0.0000001〜0.0005重量%とすることがさらに好ましい。また、植物抽出物を用いるときは、BBF2H7発現増加剤の全重量に対して、乾燥固形物に換算して0.00001〜5重量%、特に好ましくは0.0001〜2重量%である。
【0027】
本実施形態におけるBBF2H7発現増加剤は、好ましくは、皮膚外用剤として、皮膚に適用するために用いることができる。ここで、皮膚外用剤とは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の外用剤として用いられるものをいう。その剤型は本発明の効果が発揮される限り、特に限定されるものではない。例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック等の、通常、皮膚外用剤として用いられるものであってよく、剤型は、特定のものには限定されない。
【0028】
特には、BBF2H7発現増加剤は、コラーゲン産生促進用組成物に含めて用いることができる。または、皮膚老化防止・改善用組成物に含めて用いることができる。
【0029】
これらの組成物には、BBF2H7発現増加剤に加えて、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分を配合することができる。例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、ワックス、ワセリン、油性成分、殺菌剤、抗炎症剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を含有させてもよい。
【0030】
本実施形態によるBBF2H7発現増加剤は、BBF2H7の発現を増加させることができる。特には、生体において種々の役割を果たしているBBF2H7の発現を、よく知られた小胞体ストレスとは異なり、異常タンパク質の蓄積を伴わない小胞体ストレス応答として恒常的に増加促進することができる。また、その結果として、コラーゲンの産生を促進することができ、皮膚の老化防止・改善剤としての役割を果たすこともできる。
【0031】
本発明は、他の実施形態によれば、BBF2H7発現増加剤のスクリーニング方法であって、被検物質を、皮膚細胞と共にインキュベートするステップと、前記細胞におけるBBF2H7の発現量を測定するステップとを含む。
【0032】
皮膚細胞は、皮膚線維芽細胞であることが好ましく、ヒトの皮膚由来の皮膚線維芽細胞であることがさらに好ましく、新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞が最も好ましい。他にも、マウス、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウシ等の皮膚由来の皮膚線維芽細胞を用いることができる。皮膚線維芽細胞は、L-glutamateおよびglucoseを添加した、Dulbecco’s modified Eagle培地に非働化させたウシ血清を混合させた培地にて培養することが好ましい。
【0033】
インキュベートするステップでは、皮膚線維芽細胞は、培養のために、通常の培養用デッシュや、コラーゲンコートされたデッシュに播種することが好ましい。皮膚線維芽細胞の播種時の初期濃度は、デッシュ面積あたりで表すと2万個細胞/cm〜4万個細胞/cmとするのが好ましい。例えば、直径60mmのデッシュであれば、1デッシュ当り54万個〜108万個の細胞を播種するのが好ましい。
【0034】
インキュベーションは、上記の培地で培養した細胞に被検物質の抽出液を、0.01〜5体積%で適宜コントロールした濃度で添加し、通常の細胞培養用の条件、例えば、5体積%のCO存在下、37℃で8時間〜24時間、好ましくは8〜10時間程度培養することが好ましい。いっぽう、被検物質を含まない溶媒のみのコントロールを調製し、皮膚線維芽細胞に添加して、同様の細胞培養条件下でインキュベートすることが好ましい。
【0035】
インキュベーション後、細胞のBBF2H7の発現量を測定する工程を行う。BBF2H7の発現量は、リアルタイムPCR、ウェスタンブロッティングなどにより定量することができる。特には、リアルタイムPCRが簡便でより好ましい。被検物質を添加した試料、コントロールの試料ともに、BBF2H7の発現量を測定し、コントロールの試料におけるBBF2H7の発現量を1とし、被検物質を添加した試料における発現量の相対量を比較するのが好ましい。
【0036】
本実施形態によれば、BBF2H7の発現量を測定することにより、BBF2H7の発現を増加させ、コラーゲンの産生を促進して、皮膚老化防止・改善を促す、BBF2H7発現増加剤をスクリーニングすることが可能となる。
【0037】
以下に製造例、試験例及び実施例を挙げ、本発明について更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0038】
(1) インスリン様増殖因子によるBBF2H7の発現誘導
[培養細胞]
新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞は、2%ウシ血清、human skin fibroblast growth supplementを添加した106培地で、5%CO−37℃にて継代培養した。0.584g/LのL−glutamateおよび4.5g/Lのグルコースを添加した、Dulbecco’s modified Eagle培地と0.146g/LのL−glutamate、1.8g/Lのグルコース、2.5g/Lの炭酸ナトリウム、および0.5%非働化させたウシ血清を混合させた培地にて培養した。
【0039】
[リアルタイムPCR解析]
新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞を、6ウェルプレートにて上記のように培養し、インスリン様増殖因子(R&Dシステムズ)を添加処理する24時間前に無血清状態とした。細胞にインスリン様増殖因子を50μg/Lで添加処理した後、培地を吸引除去し、PBSで洗浄した。細胞からRNAを抽出し、逆転写反応を行った。生成したcDNAを用いて、リアルタイムPCR反応を行い、18Sを基準として、BBF2H7のmRNAの相対量を算出した。リアルタイムPCR反応に用いたプライマーは、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assays assay ID: Hs00811200_m1であった。
【0040】
図1に結果を示す。BBF2H7は、ヒト皮膚線維芽細胞において、インスリン様増殖因子により発現誘導されることが明らかとなった。なお、データは示さないが、インスリン様増殖因子に替えてトランスフォーミング増殖因子−βを10μg/L添加した場合にも、BBF2H7の発現誘導が同程度に観察された。
【0041】
次に、同じ細胞を用いて、Sec23Aの誘導量についても測定した。上記と同様に、リアルタイムPCR反応を行い、18Sを基準として、Sec23AのmRNAの相対量を算出した。用いたプライマーは、TaqMan(登録商標)Gene Expression assay ID: Hs00197232_m1であった。
【0042】
図2に結果を示す。BBF2H7に誘導されることが知られているSec23Aは、ヒト皮膚線維芽細胞において、インスリン様増殖因子により発現誘導されることが明らかとなった。
【0043】
(2) インスリン様増殖因子によるコラーゲン産生促進の確認
[遺伝子ノックダウン]
新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞は、6ウェルプレートにて標的の低分子干渉RNA20nMとともに24時間培養して標的遺伝子をノックダウンした後、インスリン様増殖因子(R&Dシステムズ社製)を添加した試料、添加しない試料を調製した。インスリン様増殖因子の添加濃度は50μg/Lとした。BBF2H7のノックダウンに使用した低分子干渉RNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)は、GGUUACGUCCAUUAGGAAA(配列番号1)、CAGAGAAGAGUGUGUCAAU(配列番号2)、CCAAAUUGCCCCUGUCAAA(配列番号3)、GAGCGAGAGAUGACACAAU(配列番号4)で、それぞれ、5nMずつ用いた。いっぽう、LaminA/Cのノックダウンに使用した低分子干渉RNA(キアゲン社製)は、CUGGACUUCCAGAAGAACAdTdT(配列番号5)であった。
【0044】
BBF2H7遺伝子をノックダウンした試料、LaminA/C遺伝子をノックダウンした試料において、それぞれ、インスリン様増殖因子を添加した場合、添加しない場合の合計4つの試料細胞について、リアルタイムPCR反応を行い、18Sを基準として、I型コラーゲン遺伝子であるCOL1A1のmRNAの相対量を算出した。結果を図3に示す。
【0045】
図3に示すグラフから、本発明のBBF2H7をノックダウンすると、ヒト皮膚線維芽細胞において、インスリン様増殖因子の刺激有無の状態で供にコラーゲンの産生亢進が減弱することから、コラーゲンの産生においてBBF2H7が恒常的に必要であることが明らかとなった。
【0046】
(3)インスリン様増殖因子によるBBF2H7の産生促進及びコラーゲンの細胞内輸送促進
[細胞免疫染色]
新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞は、(2)で説明した方法により、LaminA/C、BBF2H7、Sec23Aの各遺伝子をノックダウンした。Sec23Aのノックダウンに使用した低分子干渉RNAは、SEC23A siRNA(サンタクルズ社製)であった。それぞれの遺伝子をノックダウンした新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞は6ウェルプレートにおいて、カバーグラス上にて培養し、48時間培養した後、培地を吸引除去し、PBSで洗浄した。4%ホルマリンを含むPBSで10分インキュベートし、PBSで3回洗浄した。1%Triton−X100を含むPBSで20分インキュベートし、PBSで3回洗浄した後、さらにブロッキング溶液中で30分インキュベートを行い非特異的な結合を減らした。カバーグラスは抗GM130抗体(BDサイエンス株式会社製)で一晩、4℃で反応させた。さらにカバーグラスを洗浄後、蛍光色素付加の2次抗体で1時間反応させ、スライドグラスに封入し、共焦点顕微鏡で観察した。GM130はゴルジ体に存在するタンパク質であり、ゴルジ体マーカーとして使用されるものである。
【0047】
結果を図4に示す。本発明のBBF2H7をノックダウンすると、ゴルジ体の断片化が観察された(右のパネル)。いっぽう、ポジティブコントロールであるLaminA/Cの遺伝子をノックダウンしても、ゴルジ体の断片化は観察されなかった。輸送に関連する遺伝子がノックダウンされたときにゴルジ体の断片化が見られることが知られている。輸送に関連することが知られているコートタンパク質複合体の構成タンパク質であるSec23Aにおいても同様の現象が確認されており(中央のパネル)、BBF2H7が輸送に関与することが明らかとなった。
【0048】
上記実施例から、インスリン様増殖因子によりBBF2H7の産生が促進されること、BBF2H7はコラーゲンの細胞内輸送に機能的に働き、さらにコラーゲンの産生の増幅にも寄与することが見出された。
【実施例2】
【0049】
(1) BBF2H7の発現増加剤の調製
以下の表1で示される植物群について、植物の所定の部位から、所定の溶媒を用いて植物抽出物を得た。抽出方法は、所定の植物部位を細切または乾燥処理後に、常温、常圧下で、表に記載の所定の溶媒に浸漬し、3日間程度にわたって静置することにより行った。植物部位を除去し、残存した各種抽出液を蒸発固形残分0.20%から4.5%まで適宜コントロールした濃度まで希釈を行い、BBF2H7の発現増加剤とした。
【0050】
【表1】

【0051】
(2) BBF2H7の発現量の測定
実施例1の(1)[培養細胞]にしたがって培養した細胞に、[リアルタイムPCR解析]にしたがってインスリン様増殖因子に替えて、表2に示す各種植物抽出液を、BBF2H7発現増加剤の有効成分である蒸発固形残分、0.001重量%から0.0225重量%まで適宜コントロールした濃度で添加し、BBF2H7の発現量を測定した。なお、表2中の添加vol%は、上記抽出液の、細胞培養液(細胞濃度:2×105 個/mL)に対する添加量を示す。また、BBF2H7発現増加剤の有効成分であるインスリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子βを同様にして、下記表に示す濃度で添加して、BBF2H7の発現量を測定した。表1に示す各植物抽出液で処理した試料と、処理していないコントロールの試料について、コントロールの試料におけるBBF2H7の発現量を1としたときの、各植物抽出液で処理した試料の発現量を表2に示す。表2に示す各植物抽出は、BBF2H7の遺伝子発現量を増加させたことがわかった。
【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、植物抽出物から選択される一以上を含んでなるBBF2H7発現増加剤であって、
前記植物が、アルニカ、ウコン、エイジツ、エンメイソウ、ガイヨウ、カミツレ、甘草葉、キョウニン、クジン、クス、ハガシワ、ケイヒ、月桃葉、サイシン、スターフルーツ、ソウハクヒ、タイソウ、テンニンカ、ヒマラヤラズベリー、ビワ、ブッチャーズブルーム、マタタビ、マロニエ、メリッサ及びローズマリーから選択される、BBF2H7発現増加剤。
【請求項2】
請求項1に記載のBBF2H7発現増加剤を含む、コラーゲン産生促進用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のBBF2H7発現増加剤を含む、皮膚老化防止・改善用組成物。
【請求項4】
BBF2H7発現増加剤のスクリーニング方法であって、
被検物質を、皮膚細胞と共にインキュベートするステップと、
前記細胞におけるBBF2H7の発現量を測定するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100236(P2013−100236A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243428(P2011−243428)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】