説明

BCL−2ファミリ−に属するタンパク質およびそのフラグメント、ならびに癌患者におけるそれらの使用

【課題】抗癌性免疫応答を誘発することができる単離されたアポトーシス調節タンパク質またはそのペプチドフラグメントを提供する。
【解決手段】本発明は、薬学的組成物において使用するための、Bcl2ファミリーに属するタンパク質およびそのペプチドフラグメントに関する。開示されるタンパク質およびペプチドフラグメントは、特に、癌の処置のためのワクチン組成物において有用である。本発明はさらに、上記の組成物を用いた処置方法に関する。開示されるタンパク質およびペプチドフラグメントを特異的に認識するT細胞およびT細胞レセプターを提供することもまた、本発明の1つの態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、癌の予防と治療の分野に関係する。具体的には、抗癌性免疫応答を誘発することができる単離されたアポトーシス調節タンパク質またはそのペプチドフラグメントが提供される。特に、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するそのようなタンパク質、およびその免疫原性ペプチドフラグメントの、がんの処置、診断、および予後診断における使用が提供される。
【背景技術】
【0002】
(技術的背景および先行技術)
広範囲の種々の化学療法薬に対する癌細胞による耐性発現は、癌の処置の成功への大きな障害となっている。薬剤耐性は、広い範囲の癌細胞のタイプにおいて観察されている。多くの機構が薬剤耐性の原因となっており、これには、薬剤の不活化、細胞膜ポンプによる薬剤の押し出し、薬剤標的の変異、およびアポトーシスを開始できないことが含まれる。アポトーシスの妨げは、ミトコンドリア膜電位の保持、およびサイトカイン刺激を含む種々の状態によって起こり得る。
【0003】
薬剤耐性の表現型に関与しているタンパク質についての研究は、抗アポトーシス性分子Bcl−2に関係している。Bcl−2の過剰発現は、白血病や他のアポトーシスの傾向がある腫瘍における薬剤耐性の発現において役割を担っており、結果として、種々のヒトの癌においては、予後は不良となる。Bcl−2は1つのタンパク質のファミリーであるBcl−2ファミリーに属する。これらのメンバーはアポトーシスを調節する。このファミリーには、プロアポトーシス性のメンバーと、抗アポトーシス性のメンバーの両方が含まれている。Bcl−2がその抗アポトーシス効果をどのようにして発揮するかについての正確な理解は未だはっきりしないままであるが、これは、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、および乳癌を含む多くの癌、さらには、白血病およびリンパ腫において過剰発現されていることが明らかにされている。
【0004】
したがって、Bcl−2は、そのタンパク質の高い発現レベルが、アポトーシスの刺激に対する抵抗性を与え、それにより、癌の発病と進行に関係しているので、重要な細胞性因子である。
【0005】
哺乳動物の免疫システムが外因性物質または外来物質を認識してそれと反応するプロセスは、複雑なプロセスである。このシステムの重要な面はT細胞応答である。この応答には、T細胞が、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)を構成するヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる細胞表面分子とペプチドの複合体を認識してこれと相互作用することが必要である。ペプチドは大きな分子に由来し、これは細胞によってプロセシングされ、順にHLA/MHC分子を提示する。T細胞とHLA/ペプチドの複合体との相互作用は制限され、HLA分子とペプチドの特定の組み合わせについて特異的であるT細胞が必要である。特異的T細胞が存在しなければ、たとえそのパートナーである複合体が存在していてもなお、T細胞応答は生じない。同様に、特異的複合体が存在していなければ、T細胞が存在していても応答は生じない。
【0006】
T細胞が細胞の異常を認識する機構もまた癌に関係している。例えば、特許文献1においては、ペプチドへとプロセシングされ、次いで、細胞表面で発現され、そして特異的CTLによる腫瘍細胞の溶解を導くことができる遺伝子のファミリーが開示されている。これらの遺伝子は、MAGEファミリーと呼ばれ、「腫瘍拒絶抗原前駆体」、すなわち「TRAP」分子をコードすると言われており、これらに由来するペプチドは、「腫瘍拒絶抗原」、すなわち「TRA」と呼ばれている。
【0007】
特許文献2では、HLA−A1分子に結合するノナペプチドが開示されている。この参考文献には、特定のHLA分子に対する特定のペプチドの既知の特異性を前提とすると、1つの特定のペプチドは1つのHLA分子に結合するが他の分子には結合しないと予想されるはずであることが開示されている。このことは、種々の個体が異なるHLA表現型を有しているので、重要である。結果として、特定のHLA分子についてのパートナーであるとして特定のペプチドを同定することには診断効果および治療効果があるが、これらはその特定のHLA表現型を有している個体についてのみ関係がある。
【0008】
したがって、MHC分子の状況において、腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチドエピトープが細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって抗原として認識され得ることは十分に確立される。しかし、一般的には、全てではないがほとんどの腫瘍が抗原性であると受け入れられているが、ごく一部のものは、腫瘍の進行が免疫系によって容易に制御されるという意味において実際に免疫原性である。
【0009】
この限界を克服するために、いくつかの免疫療法の研究、例えば、TAA由来のペプチドでのワクチン接種が開始されている。それについてのCTLによって定義されるTAAの最大数が特徴とされている腫瘍である黒色腫については、抗原に対する強力なCTL応答がワクチン接種によって誘導されており、一部の患者については、その疾患の完全な緩解が得られている。しかし、これらのワクチン接種試験に使用されたペプチドエピトープのほとんどは、黒色腫特異的なものであり、これらのペプチドは黒色腫以外を起源とする腫瘍については適用できない。さらに、これらのTAAの発現は、種々の患者に由来する腫瘍の間でも不均一であり、1人の患者から得られた複数の転移の間でさえも異なり得る。しかし、過去2〜3年の間に、多数の種々の癌において発現される多数の腫瘍特異的ペプチド抗原、すなわち、HER−2、Muc−1、およびテロメラーゼが同定されている。
【0010】
アポトーシスは、細胞の自殺についての遺伝的プログラムであり、アポトーシスの阻害は、トランスフォーミング変異の蓄積を好む細胞の寿命を延ばすことによって、癌の形成に関与している重要な機構であることが示唆されている。サービビン(survivin)は、最近同定されたアポトーシスタンパク質の阻害因子(IAP)のファミリーのメンバーである。約400万個の転写物についての全体的な遺伝子発現の分析において、サービビンは、多くのタイプの癌において必ずアップレギュレートされているトップクラスの遺伝子の1つとして同定されたが、これは、正常な組織においてはアップレギュレートされていない。サービビンを過剰発現する充実性悪性腫瘍としては、肺癌、結腸癌、乳癌、膵臓癌、および前立腺癌、ならびに造血器悪性腫瘍が挙げられる。さらに、一連の黒色腫、および黒色腫以外の皮膚癌は、必ずサービビンポジティブであることが報告されている。ほとんどのヒトの癌におけるサービビンの過剰発現は、腫瘍の進行におけるアポトーシスの阻害の一般的な役割、結腸直腸癌および膀胱癌、ならびに神経芽細胞種の症例におけるその観察により確認された概念、サービビンの発現が、好ましくない予後を伴うことを示唆している。対照的に、サービビンは、正常な成体組織においては検出することはできない。これらの特徴により、サービビンは、診断目的および治療目的の両方について適切なTAAであるとみなされている。
【0011】
したがって、最近の10年間の間に、主要組織適合性複合体(MHC)制限様式でCTLによって認識される多数のTAAが同定されている。サービビンは、ほとんどのヒトの癌において過剰に発現されており、その機能の阻害はアポトーシスの増大を生じるので、このタンパク質は、治療的なCTL応答の標的とできる可能性がある。
【0012】
サービビンタンパク質、およびその診断的および治療的使用の可能性は、(1)と特許文献3(これは、引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されている。サービビンは、RINGフィンガーの代わりに、B細胞前駆体中に導入されると成長因子(IL−3)の回収によって誘導されるアポトーシスを阻害する、1つのBIRと高電荷のカルボキシ末端のコイルドコイル領域を含む、16.5kDaの細胞質タンパク質である。サービビンをコードする遺伝子は、エフェクター細胞プロテアーゼレセプター−1(Effector Cell Protease Receptor−1:EPR−1)の配列とほぼ同じであるが、反対方向を向いており、したがって、このことは、頭と頭をつきあわせた状態の構造で重複している2つの別の遺伝子が存在することを示唆している。したがって、サービビンは、アンチセンスEPR−1産物と記載することができる。機能的には、その天然のアンチセンスEPR−1転写物をアップレギュレートすることによるサービビンの発現の阻害によって大規模なアポトーシスが生じ、細胞増殖が減少する。
【0013】
特許文献3には、精製されたサービビンの単離が開示されており、これによって、サービビンタンパク質をコードする核酸分子、ならびに、サービビンに結合する抗体および他の分子が提供されている。特許文献3にはまた、サービビンタンパク質の抗アポトーシス活性を有しているフラグメント、ならびに、開示されているサービビン配列のN末端もしくはC末端に、またはその内部にアミノ酸残基が挿入されているその変異体も開示されている。このようなペプチドはアポトーシスに必要な重要な機能を有している残基、すなわち、67位のTrp、73位のPro、および84位のCycを含まなければならないことが、具体的に開示されている。
【0014】
最近の10年間の間には、多数の臨床試験により、癌患者において抗腫瘍T細胞応答を誘導するためのペプチド特異的ワクチン接種の実現可能性が示されている。しかし、患者の臨床的な経過は、ほとんどの症例において改善されなかった。この不一致は、多数の症例において、腫瘍細胞の免疫回避機構によって説明されている。癌の増殖において十分ではない役割を担っている抗原を標的化する治療ストラテジーについては、抗原を欠損している癌細胞の選択が、十分に認識されている限界である。
【0015】
しかし、乳癌患者の場合には、Bcl−2タンパク質の矛盾する役割が観察されている。原発性の乳房の腫瘍においては、Bcl−2は、悪い臨床結果にネガティブに関係している。さらに、Bcl−2タンパク質の過剰発現はBcl−2遺伝子のプロモーター領域中にあるエストロゲンレセプター応答エレメントによって媒介されるエストロゲンレセプター陽性腫瘍に関係していることが報告されている。エストロゲン陽性腫瘍の予後は、エストロゲンレセプター陰性腫瘍の予後よりもさらに好ましい。これらの一見矛盾する結果についてのいくつかの可能性のある説明が示唆されており、例えば、細胞増殖に対するBcl−2の阻害作用、Bcl−2発現のエストロゲンによる調節、および/またはその細胞防御機能を阻害するBcl−2アンタゴニストの存在である。
さらに、上記の研究によって、また、乳癌におけるBcl−2の過剰発現が薬剤耐性に関係していること、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるBcl−2のダウンレギュレーションによってアポトーシスに関係している薬剤感受性が調節されることも示されている。さらに、Bcl−2の乳癌細胞株への遺伝子トランスフェクションは、アポトーシスに対する抵抗性の増大を一様に生じる。さらに、乳癌における別のアポトーシス阻害因子であるタンパク質サービビンの存在は、Bcl−2の発現と、アポトーシス指数(AI)の低下、および全体的な低い生存性に強く関係していることが記載されている。サービビンとBcl−2との間での同様の関連性が、神経芽細胞腫、胃癌、結腸直腸癌、高悪性度の非ホジキンリンパ腫において記載されている。したがって、ほとんどの他のヒトの癌においてそうであるのと同様に乳癌においても、アポトーシスの阻害は一般的な特徴であり、抗アポトーシス性遺伝子、例えば、サービビンおよび/またはBcl−2遺伝子の発現により、アポトーシス指数の低下において反映されるようなさらに強い抗アポトーシス効果が生じ得る。最近、サービビンが、種々の癌を有している患者において自然に発生するT細胞応答の標的であることが示されている。これらの初期の発見は後に確認され、深められた(彼ら自身によって、および他者によって)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第92/20356号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/05304号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,245,523号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、MHCクラスI制限ペプチドを、MHCクラスI HLA分子に結合することができ、それによって癌疾患に罹患している患者においてCTL免疫応答を誘発することができる、サービビン以外の種々のクラスのアポトーシス調節タンパク質、すなわち、Bcl−2タンパク質ファミリーから導くことができることの発見に基づく。これらの発見は、細胞によってインビボでTRA機能を有しているペプチドにプロセシングされるBcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質がTRAP分子として作用することを示している。これらの発見により、癌疾患の制御に一般的に適応することができる新規の治療アプローチおよび診断アプローチへの道が開かれた。
【0018】
本発明により、Bcl−2は広範な癌疾患に対する免疫療法の適切な標的であることが開示される。Bcl−2は重要な細胞因子であり、その発現は腫瘍細胞の生存に重要である。したがって、Bcl−2は、このタンパク質の発現のダウンレギュレーションまたは発現の欠損による免疫回避によって持続的な腫瘍の増殖が損なわれるので、ワクチン接種の魅力的な標的である。さらに、本発明に至る研究において、本発明者らは、乳癌患者においてBcl−2に由来するペプチドに対してPBL中に自然に生じるT細胞反応性について、ELISPOTアッセイを使用して研究し、これを検出した。
【0019】
したがって、本発明は、第1の態様においては、癌の予防または処置において医薬として使用するための、Bcl−2タンパク質ファミリーに属する単離されたタンパク質、またはその免疫原性活性のあるペプチドフラグメントに関する。具体的には、本発明は、癌の予防または処置において医薬として使用するための、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質に由来する免疫原性活性のある単離されたペプチドフラグメントに関する。
【0020】
さらなる態様においては、本発明によって、本発明の上記タンパク質および/またはペプチドフラグメントを含む薬学的組成物が提供される。
【0021】
癌の予防または処置において医薬として使用するための、Bcl−2タンパク質ファミリーに属する単離されたタンパク質またはその免疫原性活性のあるペプチドフラグメント、あるいは、上記タンパク質または上記ペプチドフラグメントをコードする核酸を含むワクチン組成物を提供することもまた、本発明の別の態様である。
【0022】
なおさらなる態様においては、本発明は、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーと反応するPBL中または腫瘍組織中のT細胞が癌患者の中に存在することの、エキソビボまたはインサイチュでの診断のための診断キットに関する。このキットには、上記で定義された本発明のペプチドフラグメント;本発明のペプチドフラグメントとクラスI HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体が含まれる。
【0023】
癌患者において、Bcl−2タンパク質ファミリーメンバー反応性T細胞の存在を検出する方法を提供することもまた、本発明の目的である。この方法には、腫瘍組織または血液サンプルを上記で定義された本発明の複合体と接触させること、組織または血液細胞に対する複合体の結合を検出することが含まれる。
【0024】
さらに、本発明のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子、およびそのような結合をブロックすることができる分子が提供される。
【0025】
別の態様においては、本発明は、癌疾患を処置する方法に関する。この方法には、有効量の本発明の薬学的組成物、本発明のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる本発明の分子、および/またはそのような結合をブロックすることができる本発明の分子を、疾患に罹患している患者に投与することが含まれる。
【0026】
さらに別の態様においては、本発明により、癌疾患の処置のための医薬を製造することにおける、本明細書中で定義されるタンパク質またはペプチドフラグメントの使用が提供される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
Bcl−2タンパク質ファミリーに属する単離されたタンパク質もしくはその免疫原性活性のあるペプチドフラグメント、または、該タンパク質もしくは該ペプチドフラグメントをコードする核酸を含む、医薬として使用するためのワクチン組成物。
(項目2)
前記ワクチン組成物は、癌患者に投与される場合、癌疾患に対する免疫応答を誘発し得る、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記ワクチン組成物は、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーが発現される癌患者に投与される場合、癌疾患に対する免疫応答を誘発し得る、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記タンパク質が、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシス性のメンバーからなる群より選択される、項目1〜3のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目5)
前記タンパク質が、Bcl−2、Bcl−w、Mcl−1、Bfl−1/A1、Bcl−b、Bcl2−L−10、およびBcl−Xからなる群より選択される、項目1〜3のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目6)
前記タンパク質が、Bax、Bok/Mtd、Bad、Bik/Nbk,Bid、Hrk/DP5、Bim、Noxa、Bmf、およびPUMA/bbc3からなる群より選択される、項目1〜3のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目7)
前記タンパク質がBcl−2である、項目5に記載のワクチン組成物。
(項目8)
前記タンパク質がBcl−Xである、項目5に記載のワクチン組成物。
(項目9)
前記タンパク質がMcl−1である、項目5に記載のワクチン組成物。
(項目10)
癌の予防または処置において医薬として使用するための、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質に由来する単離された免疫原性活性のあるペプチドフラグメント。
(項目11)
前記タンパク質が、Bcl−2、Bcl−w、Mcl−1、Bfl−1/A1、Bcl−b、Bcl2−L−10、およびBcl−Xからなる群より選択される、項目10に記載のペプチドフラグメント。
(項目12)
前記タンパク質が、Bax、Bok/Mtd、Bad、Bik/Nbk、Bid、Hrk/DP5、Bim、Noxa、Bmf、およびPUMA/bbc3からなる群より選択される、項目10に記載のペプチドフラグメント。
(項目13)
前記タンパク質がBcl−2である、項目11に記載のペプチドフラグメント。
(項目14)
前記タンパク質がBcl−Xである、項目11に記載のペプチドフラグメント。
(項目15)
前記タンパク質がMcl−1である、項目11に記載のペプチドフラグメント。
(項目16)
癌患者において細胞性免疫応答を誘発し得る、項目10〜15のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目17)
以下の特徴:
(i)クラスI HLA分子の最大回復量の半分を回復し得るペプチドの量(C50値)によって測定される親和性で制限される、クラスI HLA分子に結合する能力、であって、該C50値は、本明細書中に記載されるアセンブリ結合アッセイによって決定した場合に、最大50μMである、能力
(ii)ELISPOTアッセイによって決定した場合に10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度で、癌患者のPBL集団中にIFN−γを産生する細胞を誘発する能力、および/または
(iii)エピトープペプチドと反応するCTLを、腫瘍組織中においてインサイチュで検出する能力
のうちの少なくとも1つを有するMHC クラスI制限ペプチドである、項目10〜16のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目18)
最大30μMであるC50値を有する、項目17に記載のペプチドフラグメント。
(項目19)
最大20μMであるC50値を有する、項目17に記載のペプチドフラグメント。
(項目20)
MHCクラスI HLA−A分子によって制限される、項目17に記載のペプチドフラグメント。
(項目21)
HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11、およびHLA−A24からなる群より選択されるMHCクラスI HLA種によって制限される、項目20に記載のペプチドフラグメント。
(項目22)
HLA−A2によって制限される、項目17に記載のペプチドフラグメント。
(項目23)
ALVGACITL(配列番号1)、ALSPVPPVV(配列番号2)、SLALVGACI(配列番号3)、KTLLSLALV(配列番号4)、LLSLALVGA(配列番号5)、WLSLKTLLSL(配列番号6)、AAAGPALSPV(配列番号7)、PLFDFSWLSL(配列番号8)、FTARGRFATV(配列番号9)、YLNRHLHTWI(配列番号10)、NIALWMTEYL(配列番号11)からなる群より選択される配列を含む、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目24)
前記ペプチドが、TAYQSFEQV(配列番号43)、YLNDHLEPWI(配列番号42)、RIAAWMATYL(配列番号45)、WMATYLNDHL(配列番号46)、VLVSRIAAWM(配列番号48)およびVAFFSFGGAL(配列番号49)からなる群より選択される配列を含む、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目25)
前記ペプチドが、配列RIAAWMATY(配列番号50)を含む、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目26)
前記ペプチドが、RLLFFAPTR(配列番号55)およびRTKRDWLVK(配列番号56)からなる群より選択される配列を含む、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目27)
前記ペプチドが、PAEEEEDDLY(配列番号58)およびQSLEIISRY(配列番号60)からなる群より選択される配列を含む、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目28)
前記ペプチドが、RLKRDWLVK(配列番号62)、QSDEIISRY(配列番号63)、およびQSEEIISRY(配列番号64)からなる群より選択される、項目10〜11、および16〜19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目29)
MHCクラスI HLA−B分子によって制限される、項目17に記載のペプチドフラグメント。
(項目30)
HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27、およびHLA−B51からなる群より選択されるMHCクラスI HLA−B種によって制限される、項目29に記載のペプチドフラグメント。
(項目31)
最大20個のアミノ酸残基を含む、項目10〜30のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目32)
最大15個のアミノ酸残基を含む、項目31に記載のペプチドフラグメント。
(項目33)
ノナペプチドまたはデカペプチドである、項目32に記載のペプチドフラグメント。
(項目34)
哺乳動物種から単離されたかまたは哺乳動物種に由来する天然の配列である、項目10〜33のいずれかに記載のタンパク質またはペプチドフラグメント。
(項目35)
前記タンパク質がヒトタンパク質である、項目10〜34のいずれかに記載のタンパク質またはペプチドフラグメント。
(項目36)
少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、欠失、または付加によって天然のBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの配列から誘導される、項目10〜33のいずれかに記載のタンパク質またはペプチドフラグメント。
(項目37)
各々の特定のHLA対立遺伝子について、以下の表に示されるアミノ酸残基のいずれかを含む、項目10〜36のいずれかに記載のペプチドフラグメント:
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】


(項目38)
10個のPBLあたり少なくとも10個の頻度で癌患者のPBL集団中にINF−γを産生する細胞を誘発することができる、項目10〜37のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目39)
Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質が発現される癌疾患を有する患者のPBL集団においてIFN−γを産生する細胞を誘発し得る、項目10〜38のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
(項目40)
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、項目39に記載のペプチドフラグメント。
(項目41)
項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含む、項目1〜9のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目42)
項目29に記載のペプチドフラグメントと組み合わせて項目18に記載のペプチドフラグメントを含む、項目41に記載のワクチン組成物。
(項目43)
前記ワクチンが、ワクチン接種した患者において癌細胞に対して細胞傷害性作用を有するエフェクターT細胞の産生を誘発する、項目1〜9、および41〜42のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目44)
Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないか、またはBcl−2タンパク質ファミリーには由来しないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択される免疫原性タンパク質またはペプチドフラグメントをさらに含む、項目1〜9、および41〜43のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目45)
前記Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないかまたはBcl−2タンパク質ファミリーには由来しないタンパク質またはペプチドフラグメントが、細胞のアポトーシスの調節に関係するタンパク質、またはそれに由来するペプチドフラグメントである、項目44に記載のワクチン組成物。
(項目46)
前記Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないかまたはBcl−2タンパク質ファミリーには由来しないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択される免疫原性タンパク質またはペプチドフラグメントが、サービビンまたはそのペプチドフラグメントである、項目44に記載のワクチン組成物。
(項目47)
前記Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないかまたはBcl−2タンパク質ファミリーには由来しないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択される免疫原性タンパク質またはペプチドフラグメントが、ML−IAPまたはそのペプチドフラグメントである、項目44に記載のワクチン組成物。
(項目48)
アジュバントを含む、項目1〜9、および41〜47のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目49)
前記アジュバントが、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、およびイミダゾキニリンからなる群より選択される、項目48に記載のワクチン組成物。
(項目50)
前記ワクチン組成物が、タンパク質もしくはペプチドフラグメントまたは核酸を含む抗原提示細胞を含む、項目1〜9、および41〜49のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目51)
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、項目50に記載のワクチン組成物。
(項目52)
前記組成物がリポソームを含む、項目1〜9、および41〜51のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目53)
前記核酸が項目10〜40のいずれかに記載のペプチドをコードする、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目54)
前記核酸がベクター中に含まれる、項目1および53のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目55)
前記ベクターがウイルスベクターおよび細菌ベクターからなる群より選択される、項目54に記載のワクチン組成物。
(項目56)
前記ベクターが、T細胞刺激ポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、項目54〜55のいずれかに記載のワクチン組成物。
(項目57)
前記T細胞刺激ポリペプチドが、B7.1、ICAM−1、およびLFA−3からなる群より選択される、項目56に記載のワクチン組成物。
(項目58)
項目1〜9、および41〜57のいずれかに記載のワクチン組成物と、さらなる抗癌剤とを含む、キット。
(項目59)
前記抗癌剤が抗体である、項目58に記載のキット。
(項目60)
前記抗癌剤がサイトカインである、項目59に記載のキット。
(項目61)
癌患者における、PBL中または腫瘍組織中でのBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーと反応性のT細胞の存在をエキソビボまたはインサイチュで診断するための組成物であって、項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含む、組成物。
(項目62)
癌患者における、PBL中または腫瘍組織中でのBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーと反応性のT細胞の存在をエキソビボまたはインサイチュで診断するための診断キットであって、項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含む、診断キット。
(項目63)
項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメントと、クラスI HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体。
(項目64)
モノマーである、項目63に記載の複合体。
(項目65)
マルチマーである、項目63に記載の複合体。
(項目66)
癌患者においてT細胞と反応性のBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの存在を検出する方法であって、該方法は、腫瘍組織または血液サンプルを項目63に記載の複合体と接触させる工程、および該組織または該血液細胞に対する該複合体の結合を検出する工程を包含する、方法。
(項目67)
項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメントに特異的に結合し得る、分子。
(項目68)
抗体またはそのフラグメントである、項目67に記載の分子。
(項目69)
前記分子がT細胞レセプターである、項目67に記載の分子。
(項目70)
項目67または69に記載の分子の結合をブロックし得る、分子。
(項目71)
癌疾患を処置する方法であって、該方法は、項目1〜9、および41〜57のいずれかに記載の組成物、項目67に記載の分子、または項目70に記載の分子、あるいは、項目58〜60のいずれかに記載のキットの有効量を、該疾患に罹患する患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目72)
前記処置される疾患が、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーが発現される癌疾患である、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、項目71に記載の方法。
(項目74)
さらなる癌の処置と併用される、項目71に記載の方法。
(項目75)
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫賦活性物質での処置、遺伝子治療、抗体での処置、および樹状細胞を用いる処置からなる群より選択される、項目71に記載の方法。
(項目76)
癌疾患の処置または予防のための医薬の製造における、項目10〜40のいずれかに記載のペプチドフラグメント、または項目1〜9および41〜57のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
(項目77)
前記処置される疾患が、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーが発現される癌疾患である、項目76に記載の使用。
(項目78)
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、項目76〜77のいずれかに記載の使用。
(項目79)
さらなる癌の処置と併用される、項目76〜78のいずれかに記載の使用。
(項目80)
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫賦活性物質での処置、遺伝子治療、抗体での処置、および樹状細胞を用いる処置からなる群より選択される、項目79に記載の使用。
(項目81)
免疫をモニタリングする方法であって、該方法は、以下の工程:
i)個体から血液サンプルを提供する工程、
ii)Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントを提供する工程、
iii)該血液サンプルが、該タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞レセプターを含むT細胞を含むかどうかを決定する工程、
iv)それによって、該個体において該タンパク質またはペプチドに対する免疫応答が惹起されているかどうかを決定する工程、
を包含する、方法。
(項目82)
前記ペプチドフラグメントがいずれかの項目に記載のペプチドフラグメントである、項目81に記載の方法。
(項目83)
項目69に記載のT細胞レセプターを含む、単離されたT細胞。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、Bcl−2由来のHLA−A2結合ペプチドの同定を示す。クラスIMHC重鎖のバンドを、Phosphorimagerを使用して定量した。安定化させられたHLA−A2重鎖の量は、添加されたペプチドの結合親和性と直接関係している。HLA−A2制限ポジティブ対照ペプチドHIV Pol476(黒四角)の結合を、ペプチドBcl172(黒三角)、Bcl180(黒丸)、およびBcl200(白丸)と比較した。
【図2】図2は、Bcl172、Bcl180、Bcl208、およびBcl214に対するT細胞応答を示す。15人の乳癌患者に由来するPBLを分析した。Tリンパ球をペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドをともなわずに、またはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。
【図3】図3は、IFN−γ ELISPOTによって測定したBcl−2に対するT細胞応答を示す。10人のHLA−A2ポジティブCLL患者、3人のHLA−A2ポジティブAML患者、および2人の膵臓癌患者(PC)由来のPBLを分析した。ペプチドBcl208(A)およびBcl214(B)を試験した。Tリンパ球をペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドをともなわずに、またはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図4】図4は、granzyme B ELISPOTによるBcl−2特異的CTLの検出を示す。4人の別々の後期乳癌患者(b19、b20、b22、b16)と、健常な対照(h1)に由来するTリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドBcl208(A)またはBcl214(B)をともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的Granzyme Bスポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図5】図5は、Bcl−2特異的CTL.bcl208反応性CTLの細胞溶解能力を、HLA−A2/bcl208でコーティングした磁気ビーズを使用して、乳癌患者由来のPBLから単離したことを示す。A)単離したバルクの培養物を、bcl208ペプチドを用いて(黒四角)、またはペプチドを伴わずに(白四角)、T2細胞の特異的溶解について分析した。B)HLA−A2ポジティブ乳癌細胞株MDA−MB−213(黒丸)およびHLA−A2ネガティブ乳癌細胞株ZR75−1(白丸)のbcl208で単離したT細胞による溶解。
【図6】図6は、INF−γ ELISPOTによって測定した、Bcl−Xに対するHLA−A2制限T細胞応答を示す。12人の健常な個体、18人の乳癌患者(BC患者)、6人の黒色腫患者、および2人の膵臓癌患者(PC患者)に由来するPBLを分析した。全ての個体がHLA−A2ポジティブであった。ペプチドBcl−XL173−182(YLNDHLEPWI)(配列番号48)(A)、Bcl−XL141−150(VAFFSFGGAL)(配列番号49)(B)、Bcl−XL161−170(VLVSRIAAWM)(配列番号48)(C)、およびBcl−XL165−174(RIAAWMATYL)(配列番号45)(D)を試験した。Tリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、関連するペプチドをともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図7】図7は、granzyme B ELISPOTによるBcl−X特異的CTLの検出を示す。3人の異なる乳癌患者(BC35、BC36、およびBC17)に由来するTリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドBclーXL173−182(YLNDHLEPWI)をともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり3×10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的Granzyme Bスポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図8】図8は、乳癌患者由来のPBL中の、Bcl−X特異的CD8ポジティブ細胞の分析を示す。患者BC36由来のPBLを、エキソビボでBcl−XL173−182で1回刺激し、CD8+細胞を分析の前に単離した。抗CD8抗体および五量体複合体HLA−A2/Bcl−XL173−182を用いた培養物のFACS染色により、細胞の95.5%がCD8ポジティブであり、これらの0.24%が五量体ポジティブであったことが明らかになった(A)。HLA−A2/HIV五量体を、ネガティブ対照として使用した(B)。細胞培養物をELISPOTによってさらに分析した(C)。
【図9】図9は、INF−γ ELISPOTによって測定した、Bcl−Xに対するHLA−A2制限T細胞応答を示す。12人の健常な個体、18人の乳癌患者(BC患者)、6人の黒色腫患者、および2人の膵臓癌患者(PC患者)に由来するPBLを分析した。全ての個体がHLA−A2ポジティブであった。ペプチドBcl−XL118−126(TAYQSFEQV)(配列番号43)(A)およびBcl−XL169−178(WMATYLNDHL)(配列番号46)(B)を試験した。Tリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、関連するペプチドをともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図10】図10は、INF−γ ELISPOTによって測定した、Bcl−Xに対するHLA−A3制限T細胞応答を示す。Tリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドBcl−XL165−173(RIAAWMATY)(配列番号50)をともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり10個の細胞をプレートした。7人の健常な個体、5人の乳癌患者、4人の黒色腫患者、2人の膵臓癌患者、および5人の多発性骨髄腫患者に由来するPBLを試験した。全ての患者が、HLA−A3ポジティブであった。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。
【図11】図11は、INF−γ ELISPOTによって測定した、Mcl−1に対するHLA−A3制限T細胞応答を示す。Tリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドをともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり3×10個の細胞をプレートした。10人の健常な個体、6人の乳癌患者(BC患者)、2人の膵臓癌(PC)患者、および6人のCLL患者に由来するPBLを、Mcl−195−103ペプチド(左)およびMcl−1300−308ペプチド(右)に対して試験した。全ての個体がHLA−A3ポジティブであった。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【図12】図12は、IFN−γ ELISPOTによって測定した、Mcl−1に対するHLA−A1制限T細胞応答を示す。Tリンパ球を、ペプチドで1回刺激し、その後、ペプチドMcl−1166−175またはMcl−1177−185をともなわずに、あるいはペプチドとともにのいずれかで、3連で1ウェルあたり3×10個の細胞をプレートした。6人の健常な個体、4人の乳癌患者(BC患者)、7人の黒色腫患者に由来するPBLを、Mcl−195−103ペプチド(左)およびMcl−1300−308ペプチド(右)に対して試験した。全ての個体がHLA−A1ポジティブであった。ペプチド特異的スポットの平均の数(ペプチドを添加しなかったスポットを引き算した後)を、ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用してそれぞれの患者について計算した。応答細胞(10個のリンパ球あたり、>25の抗原特異的スポットの平均数±1/2標準偏差と定義した)を、黒四角として印した。一方、応答のない個体は白四角で印した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な開示)
本発明のおもな目的は、癌の予防または処置において医薬として使用するための、Bcl−2タンパク質ファミリーに属する単離されたタンパク質、またはその免疫原性活性のあるペプチドフラグメントを提供することである。
Bcl−2タンパク質ファミリーには、アポトーシスを調節するいくつかのタンパク質が含まれる。このファミリーには、プロアポトーシス性のメンバーと抗アポトーシス性のメンバーの両方が含まれている。本明細書中では、このタンパク質ファミリーの、癌における薬学的または診断的活性がある物質としての可能性が、Bcl−2タンパク質に具体的に言及して研究されている。さらに、薬学的および診断的活性がある物質としてのBcl−XおよびMcl−1の可能性が詳細に記載される。しかし、Bcl−2タンパク質またはそのフラグメントに対して観察されたものと同様の免疫応答が存在しているか、あるいはそのような免疫応答が、Bcl−2タンパク質ファミリーの他のメンバー、例えば、Mcl−1またはBcl−Xのような他の抗アポトーシス性タンパク質(これらは、癌における薬剤耐性および過剰発現にも関係している)に対して癌患者において導入され得る可能性が非常に高いと見られる。したがって、本発明は、Bcl−2タンパク質ファミリーの任意ンメンバーに、好ましくは、癌患者において免疫応答を誘発することができる任意の抗アポトーシス性のメンバーに関する。例えば、タンパク質は、Bcl−2、Bcl−w、Mcl−1、Bfl−1/A1、Bcl−b、Bcl2−L−10、およびBcl−Xからなる群より選択され、好ましくは、Bcl−2、Mcl−1、Bcl−w、およびBcl−Xからなる群より選択され、さらに好ましくは、Bcl−2、Mcl−1、およびBcl−Xからなる群より選択される。
【0029】
Bcl−2抗アポトーシス性ファミリーメンバーは、通常は死滅する運命にある細胞のアポトーシスを阻害し、それによってインビボでの細胞の蓄積を促進することによってその発癌作用を発揮する。
【0030】
Bcl−2タンパク質ファミリーの全てのメンバーには、Bcl−2相同(BH)ドメイン(BH1、BH2、BH3、およびBH4)として知られている4つの保存されているモチーフのうちの少なくとも1つが含まれている。BHドメインの存在に加えて、好ましい抗アポトーシス性分子は、カルボキシル末端に膜結合ドメイン(TM)を有している。Bcl−2およびBcl−Xのような抗アポトーシス性のメンバーは、膜貫通ドメインとともに、全部で4つのBHドメインを含む。BaxおよびBakのような多ドメインプロアポトーシス性タンパク質には、BH4ドメイン以外の全てが含まれている。「BH3ドメインのみ」のタンパク質として知られているプロアポトーシス性タンパク質の第2のサブグループ(例えば、BadおよびBid)は、BH3ドメインのみを含み、他のBHドメインを含まない分子から構成される。Bcl−XおよびMcl−1Sのようなプロアポトーシス性タンパク質は、bcl−xおよびmcl−1遺伝子の選択的スプライシングされた形態をそれぞれ示し、BH1ドメインとBH2ドメインを欠失している。さらに、Mcl−1Sは、膜貫通ドメインを欠失している。Bcl−2ファミリーに属するタンパク質は、例えば、ref.6に記載されている。
【0031】
Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質が抗アポトーシス特性を有していることが好ましいが、Bcl−2ファミリーに属するタンパク質がプロアポトーシス性タンパク質であり、例えば、Bax、Bok/Mtd、Bad、Bik/Nbk,Bid、Hrk/DP5、Bim、Noxa、Bmf、およびPUMA/bbc3からなる群より選択されるタンパク質であり得る場合もまた、本発明に含まれる。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質はBcl−2であり、好ましくは、ヒトBcl−2であり、さらに好ましくは、SwissProtデータベースの第一登録番号P10415を有している配列のBcl−2である。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態においては、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質はBcl−Xであり、好ましくは、ヒトBcl−Xであり、さらに好ましくは、SwissProtデータベースの第一登録番号Q07817を有している配列のBcl−Xである。
【0034】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、Bcl−2ファミリーに属するタンパク質はMcl−1であり、好ましくは、ヒトMcl−1であり、さらに好ましくは、SwissProtデータベースの第一登録番号Q07820を有している配列のMcl−1である。
【0035】
多数のヒトの癌は高レベルでBcl−2とBcl−2ファミリーの他のメンバーを発現するので、これらの抗原に照準を定める免疫療法ストラテジーには広範囲の臨床的用途がある。このようなアプローチの主要な懸案は、自己反応性免疫応答の誘導である。したがって、このタンパク質ファミリーのメンバーベースのワクチン接種についての将来性は、治療効率と、免疫後に生じ得る副作用のタイプの両方に依存する。メラニン形成細胞の分化抗原に由来するペプチドをIV期の黒色腫を有している患者を処置するために最初に使用した場合には、これによって黒色腫の顕著な崩壊が導かれ得ることが想定された。黒色腫の顕著な崩壊は、次いで、例えば、白斑または網膜炎のような臨床症状を発現する。しかし、臨床試験は、ワクチンを接種された患者における白斑の罹患率は、他の形態の治療を受けた患者における黒色腫に関係している低色素沈着の罹患率よりも顕著には高くはない。さらに、自己抗原に対する種々のワクチン接種試験においては、重篤な副作用は報告されていない。
【0036】
1つの有用な実施形態においては、新規のMHCクラスI制限ペプチドフラグメント(本明細書中では「ペプチド」とも呼ばれる)が提供される。これは、いくつかの特徴のうちの少なくとも1つを有していることを特徴とする。これらの特徴のうちの1つは、本明細書中に記載されるアセンブリ結合アッセイによって決定すると、最大で50μMである、クラスI HLA分子の最大回復量の半分を回復させることができるペプチドの量(C50値)によって測定される親和性について制限される、クラスI HLA分子に結合する能力である。このアセンブリアッセイは、以前に記載されている(2)ように行われ、これは、ペプチド輸送因子欠損細胞株T2に対するペプチドの負荷の後のHLA分子の安定化に基づく。次に、正確に折り畳まれた安定なHLA重鎖が、立体構造依存性抗体を使用して免疫沈降させられ、ペプチドの結合が定量される。
【0037】
このアッセイにより、上記の親和性で所定のHLA対立遺伝子分子に結合するそれらの能力について候補のペプチドをスクリーニングする単純な手段が提供される。好ましい実施形態においては、本発明のペプチドフラグメントは、最大で30μMであるC50値を有しているものであり、例えば、最大で10μMであるようなC50値、最大で5μMであるようなC50、および最大で2μMであるようなC50を含む、最大で20μMであるようなC50値を有しているものである。
【0038】
しかし、本発明のより好ましいペプチドは、ELISPOTアッセイ、例えば、実施例1のセクション4において本明細書中で以下に記載されるELISPOTアッセイによって決定されるような、特異的T細胞応答を惹起させることができるペプチドである。高い親和性でMHCに結合することはないいくつかのペプチドはなお、ELISPOTによって決定した場合にはT細胞応答を生じる場合がある。高い親和性でMHCに結合することができる他のペプチドもまた、ELISPOTによって決定するとT細胞応答を生じる。いずれの種のペプチドも、本発明の好ましいペプチドである。
【0039】
したがって、本発明の好ましいペプチドは、ELISPOTアッセイによって測定した場合に特異的T細胞応答を惹起させることができるペプチドである。ここでは、10個の細胞あたり50を越えるペプチド特異的スポット、より好ましくは、10個の細胞あたり50を越えるペプチド特異的スポット、なおより好ましくは、10個の細胞あたり50を越えるペプチド特異的スポット、よりさらに好ましくは、10個の細胞あたり50を越えるペプチド特異的スポット、例えば、10個の細胞あたり50を越えるペプチド特異的スポットが測定される。
【0040】
上記のように、HLAシステムは、ヒトの主要組織適合性(MHC)システムを示す。一般的には、MHCシステムは、複数の特徴の範囲を制御する:移植抗原、胸腺依存性免疫応答、特定の補体因子、および特定の疾患についての素因。さらに具体的には、MHCは3つの異なるタイプの分子、すなわち、クラスI、II、およびIIIの分子をコードする。これらは、MHCのより一般的な特徴を決定する。これらの分子のうち、クラスI分子は、いわゆるHLA−A、HLA−B、およびHLA−C分子であり、これらは、ほとんどの有核細胞および血小板の表面に提示される。
【0041】
本発明のペプチドは、特定のMHCクラスI HLA分子に結合する(それによって制限される)それらの能力によって特徴づけられる。したがって、1つの実施形態においては、ペプチドは、以下を含むMHCクラスI HLA−A分子によって制限されるペプチドである:HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A9、HLA−A10、HLA−A11、HLA−Aw19、HLA−A23(9)、HLA−A24(9)、HLA−A25(10)、HLA−A26(10)、HLA−A28、HLA−A29(w19)、HLA−A30(w19)、HLA−A31(w19)、HLA−A32(w19)、HLA−Aw33(w19)、HLA−Aw34(10)、HLA−Aw36、HLA−Aw43、HLA−Aw66(10)、HLA−Aw68(28)、HLA−A69(28)。より簡易な表記もまた、この文献を通じて使用され、ここでは、おもな数字の表記だけが使用され、例えば、HLA−Aw19とHLA−A24(49)の代わりに、HLA−A19またはHLA−A24がそれぞれ使用される。特定の実施形態においては、本発明のペプチドは、HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11、およびHLA−A24からなる群より選択されるMHCクラスI HLA種を制限する。
【0042】
本発明のペプチドは、例えば、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの既知の配列(3)から導くことができる。本発明の好ましい実施形態においては、ペプチドには、Bcl−2タンパク質ファミリーの上記メンバーの、好ましくは、SwissProtデータベースにおいて第一登録番号P10415を有しているBcl−2、第一登録番号Q07820を有しているMcl−1、または第一登録番号Q07817を有しているBcl−Xに由来する1つの、最大で200個の、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、例えば、最大で10個、例えば、9個から10個の範囲の連続しているアミノ酸が含まれる(あるいは、より好ましくは、それらから構成される)。
【0043】
特定のHLA分子に結合する能力を有している可能性があるペプチドの選択は、それによってペプチド中の特定の位置の少数の関連するアミノ酸の優位を明らかにするための、特定のHLA分子に結合する既知の配列のアラインメントによって行うことができる。このような優位なアミノ酸残基はまた、「アンカー残基」、または「アンカー残基モチーフ」と本明細書中で呼ばれる。利用可能なデータベースにおいて見ることができる既知の配列に基づくこのような比較的単純な手順に従うことによって、特定のHLA分子におそらく結合するであろうペプチドを、Bcl−2タンパク質ファミリーの分子から導くことができる。HLA分子の範囲についてのこのような分析の代表的な例が、以下の表に提供される。
【0044】
【表2−1】

【0045】
【表2−2】

【0046】
【表2−3】

【0047】
【表2−4】

1つの実施形態においては、この位置については特異的なアンカー残基は存在していないが、好ましい実施形態においては、アンカー残基はRまたはAである。
【0048】
したがって、一例として、HLA−A1に結合する能力を有している可能性のあるノナペプチドは、以下の配列の1つを有する:Xaa−T−D−Xaa−Xaa−Xaa−L−Xaa−Y、Xaa−T−E−Xaa−Xaa−Xaa−L−Xaa−Y;Xaa−S−D−Xaa−Xaa−Xaa−L−Xaa−YまたはXaa−S−E−Xaa−Xaa−Xaa−L−Xaa−Y(Xaaは、任意のアミノ酸残基を示す)。同様の様式において、任意の他のHLA分子に結合する能力を有している可能性がある配列を設計することができる。
【0049】
当業者であれば、所定のHLA分子について「アンカー残基モチーフ」をさらに同定することができることは明らかである。
【0050】
したがって、有用な実施形態においては、本発明のペプチドには、その配列が、表に列挙した特異的HLA対立遺伝子のそれぞれについて、表に示したアミノ酸残基のいずれかを含むペプチドが含まれる。
【0051】
したがって、本発明のペプチドは、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーに由来する連続している配列を含む上記のペプチドのいずれかであり得る。ここでは、1個から10個の範囲、好ましくは、1個から5個の範囲、より好ましくは、1個から3個の範囲、なおさらに好ましくは、1個から2個の範囲、なおより好ましくは、1個のアミノ酸が、別のアミノ酸で、好ましくは、ペプチドが上記の表に示した所定のHLA−A特異的ペプチドの1つ以上、好ましくは全てのアンカー残基を含むような様式で、置き換えられている。
【0052】
所定のHLA−A特異的ペプチドのアンカー残基を含むBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーのペプチドを調製するための方法の1つの限定的ではない例が、実施例3において「修飾されたペプチド応答」のセクションに記載されている。したがって、本発明の1つの実施形態においては、ペプチドは、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてRLKRDWLVK(配列番号62)、QSDEIISRY(配列番号63)、およびQSEEIISRY(配列番号64)からなる群より選択される、より好ましくは、RLKRDWLVK(配列番号62)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0053】
したがって、本発明のペプチドを同定するための簡単なアプローチには、以下の工程が含まれる:特定のHLA分子、例えば、所定の集団において高い割合で生じるものを選択する工程、Bcl−2タンパク質ファミリーのタンパク質において「アンカー残基モチーフ」を同定するために上記に記載されるアラインメント分析を行う工程、1つ以上の同定されたアンカー残基を含む適切な大きさのペプチドを単離または構築する工程、ならびに、(i)特定のHLA分子に結合する能力について、本明細書中に記載されるアセンブリアッセイを使用して(ii)本明細書中に記載されるELISPOTアッセイによって決定した場合に10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度で、癌患者のPBL集団中にIFN−γを産生する細胞を誘発するペプチドの能力について、および/または(iii)試験されるエピトープペプチドと反応する腫瘍組織CTL中でインサイチュで検出するペプチドの能力について、得られたペプチドを試験する工程。
【0054】
特定の実施形態においては、本発明のペプチドは、以下から選択される配列を有しているHLA−A2制限Bcl−2由来のペプチドである:ALVGACITL(配列番号1)、ALSPVPPVV(配列番号2)、SLALVGACI(配列番号3)、KTLLSLALV(配列番号4)、LLSLALVGA(配列番号5)、WLSLKTLLSL(配列番号6)、AAAGPALSPV(配列番号7)、PLFDFSWLSL(配列番号8)、FTARGRFATV(配列番号9)、YLNRHLHTWI(配列番号10)、NIALWMTEYL(配列番号11)。
【0055】
1つの好ましい実施形態においては、ペプチドは、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてALVGACITL(配列番号1)、ALSPVPPVV(配列番号2)、SLALVGACI(配列番号3)、KTLLSLALV(配列番号4)、LLSLALVGA(配列番号5)、WLSLKTLLSL(配列番号6)、AAAGPALSPV(配列番号7)、PLFDFSWLSL(配列番号8)、FTARGRFATV(配列番号9)、YLNRHLHTWI(配列番号10)、NIALWMTEYL(配列番号11)からなる群より選択される配列、より好ましくは、NIALWMTEYL(配列番号11)、YLNRHLHTWI(配列番号10)、PLFDFSWLSL(配列番号8)、およびWLSLKTLLSL(配列番号6)からなる群より選択される、なおより好ましくは、PLFDFSWLSL(配列番号8)およびWLSLKTLLSL(配列番号6)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0056】
別の好ましい実施形態においては、ペプチドは、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてEMQVLVSRI(配列番号44)、TAYQSFEQV(配列番号43)、YLNDHLEPWI(配列番号42)、RIAAWMATYL(配列番号45)、WMATYLNDHL(配列番号46)、VLVSRIAAWM(配列番号48)、およびVAFFSFGGAL(配列番号49)からなる群より選択される、より好ましくは、TAYQSFEQV(配列番号43)、YLNDHLEPWI(配列番号42)、RIAAWMATYL(配列番号45)、WMATYLNDHL(配列番号46)、VLVSRIAAWM(配列番号48)、およびVAFFSFGGAL(配列番号49)からなる群より選択される、なおより好ましくは、TAYQSFEQV(配列番号43)、VAFFSFGGAL(配列番号49)、VLVSRIAAWM(配列番号48)、およびRIAAWMATYL(配列番号45)からなる群より選択される、あるいはTAYQSFEQV(配列番号43)およびWMATYLNDHL(配列番号46)からなる群より選択される、あるいは、YLNDHLEPWI(配列番号42)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0057】
なお別の好ましい実施形態においては、ペプチドは、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてRIAAWMATY(配列番号50)およびALCVESVDK(配列番号51)からなる群より選択される、より好ましくは、RIAAWMATY(配列番号50)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0058】
なお別の好ましい実施形態においては、ペプチドは、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてYLREQATGAK(配列番号52)、SITDVLVRTK(配列番号53)、LISFGAFVAK(配列番号54)、RLLFFAPTR(配列番号55)、RTKRDWLVK(配列番号56)、およびDIKNEDDVK(配列番号57)からなる群より選択される、より好ましくは、RLLFFAPTR(配列番号55)およびRTKRDWLVK(配列番号56)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0059】
なお別の好ましい実施形態においては、最大で200個、好ましくは、最大で100個、より好ましくは、最大で50個、なおより好ましくは、最大で25個、なおさらに好ましくは、最大で20個、なおさらに好ましくは、最大で15個、なおより好ましくは、最大で10個のアミノ酸から構成され、そしてPAEEEEDDLY(配列番号58)、SPEEELDGY(配列番号59)、QSLEIISRY(配列番号60)、およびAGVGAGLAY(配列番号61)からなる群より選択される、より好ましくは、PAEEEEDDLY(配列番号58)およびQSLEIISRY(配列番号60)からなる群より選択される配列を含む(またはより好ましくは、これらの配列から構成される)任意のペプチドであり得る。
【0060】
さらに有用な実施形態においては、本発明のペプチドは、以下のいずれかを含むMHCクラスI HLA−B分子によって制限されるペプチドである:HLA−B5、HLA−B7、HLA−B8、HLA−B12、HLA−B13、HLA−B14、HLA−B15、HLA−B16、HLA−B17、HLA−B18、HLA−B21、HLA−Bw22、HLA−B27、HLA−B35、HLA−B37、HLA−B38、HLA−B39、HLA−B40、HLA−Bw41、HLA−Bw42、HLA−B44、HLA−B45、HLA−Bw46およびHLA−Bw47。特定の実施形態においては、それに対して本発明のペプチドが結合することができるMHCクラスI HLA−B種は、以下から選択される:HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27およびHLA−B51。
【0061】
さらに有用な実施形態においては、本発明のペプチドは、以下のいずれかを含むMHCクラスI HLA−C分子によって制限されるペプチドである:HLA−Cw1、HLA−Cw2、HLA−Cw3、HLA−Cw4、HLA−Cw5、HLA−Cw6、HLA−Cw7、およびHLA−Cw1。
【0062】
好ましくは、本発明のペプチドフラグメントは、50個未満のアミノ酸残基を含み、より好ましくは、本発明のペプチドフラグメントは、最大で20個のアミノ酸残基を含み、例えば、最大で10個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態においては、ペプチドはヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、またはウンデカペプチドである。
【0063】
本発明のペプチドは、上記のように、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーまたはそのフラグメントから導くことができる。それからペプチドを導くことができるタンパク質は、その中でそのタンパク質が発現される任意の動物種に由来する任意のBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーであり得る。好ましい実施形態においては、出発タンパク質は、齧歯類種(ウサギ)および霊長類種(例えば、ヒト)を含む哺乳動物種に由来する。選択されたタンパク質の配列に基づいて、本発明のペプチドは、上記に示した適切な大きさのペプチドを生じる、タンパク質出発物質の任意の適切な化学的または酵素的処理によって導くことができ、また、本発明のペプチドは、当業者がよく知っている任意の従来のペプチド合成手順によって、合成することもできる。
【0064】
本発明のペプチドは、それが由来するBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの天然の配列である配列を有し得る。しかし、任意の所定のHLA分子に対して高い親和性を有しているペプチドは、例えば、所定のHLA分子に関するアンカー残基モチーフがそれによって同定される上記に記載された手順に基づいて、少なくとも1つのアミノ酸を置換、欠失、または付加することによって配列を修飾することにより、そのような天然の配列から誘導することができる。
【0065】
本発明のペプチドの有意な特徴は、INF−γを産生する応答細胞T細胞、すなわち、細胞傷害性T細胞(CTL)を認識または誘発するその能力であり、これは、癌患者のPBL集団または腫瘍細胞(標的細胞)中の特定のペプチドを特異的に認識する。この活性は、参考文献(4)と以下の実施例に記載されるように、ELISPOTアッセイに患者に由来するPBLまたは腫瘍細胞を供することによって、容易に決定される。アッセイの前に、細胞を試験されるペプチドと接触させることによって、アッセイされるPBL集団または腫瘍細胞を刺激することが有利であり得る。好ましくは、ペプチドは、本明細書中で使用されるELISPOTアッセイによって決定した場合に、10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でIFN−γを産生するT細胞を誘発または認識することができる。より好ましくは、頻度は、10個のPBLあたり少なくとも5個であり、最も好ましくは、10個のPBLあたり少なくとも10個であり、例えば、10個のPBLあたり少なくとも50個または100個である。
【0066】
ELISPOTアッセイは、Bcl−2ファミリーに由来するペプチド特異的T細胞応答をモニタリングするための強力なツールを象徴する。しかし、ELISPOT反応性は多くの場合において標的細胞を溶解させるCTLの能力と相関関係にあることが示されているが、この概念についての決定的な証拠は、直接的にしか提供することができていない。したがって、本明細書中での発見についての重要な意味は、本発明のペプチドが癌細胞上で発現され、HLA分子と複合体を形成することである。これにより、これらの癌細胞はCTLによって崩壊させられやすくなり、新生物の増殖を制御するためのBcl−2ファミリータンパク質での免疫の潜在的有用性が強まる。乳癌患者に由来するPBL中にHLA制限Bcl−2由来ペプチドエピトープに対する自発的なCTL応答が存在することは、乳癌患者においてのみこれらの腫瘍抗原の免疫治療の可能性を具体化するのではなく、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーは、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌において、ならびに白血病およびリンパ腫を含む多くの癌において過剰発現されているので、広い範囲の癌疾患においても具体化される。
【0067】
したがって、別の好ましい実施形態においては、本発明のペプチドは、造血器悪性腫瘍(例えば、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病)、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、および前立腺癌を含む、Bcl−2タンパク質ファミリーが発現される癌疾患を有している患者のPBL集団においてINF−γを産生する細胞を誘発することができる。
【0068】
PBL集団において免疫応答を誘発するそれらの能力に加えて、本発明のペプチドはインサイチュにおいて、すなわち充実性腫瘍組織中で、細胞溶解性免疫応答を誘発できることもまた想定される。これは、例えば、マルチマー化させられて検出可能な標識とともに提供される、HLA−ペプチド複合体を提供し、そして本発明のエピトープペプチドと反応する腫瘍組織CTL中で検出するための免疫組織化学的染色においてそのような複合体を使用することによって明らかにされ得る。したがって、本発明のペプチドのさらに重要な特徴は、エピトープペプチドと反応するCTLを腫瘍組織中でのインサイチュで検出することができることである。
【0069】
本発明のペプチドは、HLA分子に結合して、細胞表面上でのHLAとペプチドの複合体(この複合体は、次いで、細胞溶解性T細胞についてのエピトープまたは標的として作用する)の提示を生じるその能力に加えて、複合体に対する抗体の産生を生じるB細胞応答、および/または遅延型過敏(DTH)反応のような他のタイプの免疫応答を誘発することもできることもまた想定される。後者のタイプの免疫応答は、本発明のペプチドの注射部位での発赤および触診可能な硬化として同定される。
【0070】
本発明のワクチン組成物には、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントをコードする核酸が含まれ得る。したがって、上記の核酸は、上記のタンパク質およびペプチドフラグメントのいずれかをコードし得る。核酸は、例えば、DNA、RNA、LNA、HNA、PNAであり得、好ましくは、核酸はDNAまたはRNAである。
【0071】
本発明の核酸は、任意の適切なベクター、例えば、発現ベクターに含めることができる。多数のベクターが利用可能であり当業者は特定の目的に有用なベクターを選択することができる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、または人工染色体の形態であり得る。適切な核酸配列は、種々の手順によってベクターに挿入することができる。例えば、DNAは、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に、当該分野で周知の技術を使用して挿入することができる。本発明の核酸配列とは別に、ベクターにはさらに、1つ以上のシグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列が含まれ得る。ベクターにはまた、さらなる配列が含まれる場合もある。1つ以上のこれらの成分を含む適切なベクターの構築には、当業者に公知である標準的な連結技術が使用される。ベクターは、好ましくは、適切な細胞中でその発現を指示する調節核酸配列に動作可能であるように連結させられた核酸を含む発現ベクターである。本発明の範囲においては、上記調節核酸配列は、一般的には、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞中で、さらに好ましくは、抗原提示細胞中で発現を指示することができるはずである。
【0072】
1つの好ましい実施形態においては、ベクターはウイルスベクターである。上記ウイルスベクターには、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーまたはそのペプチドフラグメントをコードする核酸に加えて、T細胞刺激ポリペプチドをコードする第2の核酸配列が含まれる場合がある。T細胞刺激ポリペプチドは、好ましくは、B7.1、ICAM−1、およびLFA−3からなる群より選択される。
【0073】
ベクターはまた、細菌ベクター、例えば、弱毒化された細菌ベクターである場合もある。弱毒化された細菌ベクターは、感染部位での持続的な粘膜免疫応答を誘導し、持続させるために使用することができる。種々の組み換え細菌がベクターとして使用される場合もある。例えば、細菌ベクターは、サルモネラ種(Salmonella)、乳酸菌(Lactococcus)、およびリステリア種(Listeria)からなる群より選択され得る。一般的には、異種抗原HPV16 L1またはE7に対する免疫の誘導は、マウスにおける強いCTL誘導および腫瘍の退縮を用いて示すことができる。
【0074】
本発明はまた、
i)本明細書中に記載されるワクチン組成物のいずれか、および/または
ii)本明細書中に記載されるBcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質のいずれか、および/または
iii)本明細書中に記載されるii)のタンパク質のペプチドフラグメントのいずれか、および/または
iv)ii)のタンパク質またはiii)のペプチドをコードする核酸のいずれか、
と、さらなる抗癌剤を含むキットにも関係する。
【0075】
キットの成分は、好ましくは、個々の組成物に含まれる。しかし、キットの全ての成分が同じ組成物に含まれるものも本発明の範囲に含まれる。したがって、キットの成分は、同時に、または任意の順序で順番に投与され得る。
【0076】
抗癌剤は、化学療法または遺伝子治療において使用される薬剤、免疫賦活性物質または抗体であり得る。免疫賦活性物質は、例えば、サイトカインであり、例えば、GM−CSF、I型IFN、インターロイキン12、およびインターロイキン15からなる群より選択されるサイトカインである。抗体は、好ましくは、免疫賦活性の抗体であり、例えば、抗CD40抗体または抗CTLA−4抗体である。免疫賦活性物質はまた、免疫阻害性細胞(例えば、調節T細胞)または因子を枯渇させることができる物質である場合もあり、上記の物質は、例えば、E3ユビキチンリガーゼであり得る。E3ユビキチンリガーゼ(HECT、RING、およびU−boxタンパク質)は、免疫細胞機能の鍵となる分子調節因子と考えられており、それぞれがタンパク質分解的崩壊のために特異的阻害性分子を標的化することによって感染の間の免疫応答の調節に関係し得る。いくつかのHECTおよびRING E3タンパク質はまた、現在、自己免疫寛容の誘導および維持に関係づけられている:c−Cbl、Cbl−b、GRAIL、Itch、およびNedd4はそれぞれ、T細胞増殖因子の産生および増殖をネガティブに調節する。
【0077】
本発明の知見により、本発明のタンパク質またはペプチドフラグメントの治療適用ならびに診断適用の基礎が提供されることは明らかである。
【0078】
したがって、さらなる態様においては、本発明により、本発明のタンパク質またはペプチドフラグメントを含む薬学的組成物、具体的には、癌患者に投与された場合に、癌細胞に対する細胞傷害性作用を有しているエフェクターT細胞の産生をワクチン接種した患者において誘発することを含む、癌疾患に対する免疫応答を誘発することができる薬学的組成物が提供される。
【0079】
周知であるように、種々のHLA分子は、主要なヒトの集団において異なる陽性率で存在しているので、本発明の方法にしたがって処置することができる患者の集団を拡大するために、いくつかのHLAクラスI分子に制限されるペプチドエピトープを同定することが必要である。種々のHLA制限エレメントを有している複数のBcl−2エピトープの特徴づけにより、2つの重要な方法でこの標的抗原の臨床的な可能性を広げる:(i)Bcl−2由来のペプチドに基づく免疫療法にふさわしい患者の数を増大させる。HLA−A2抗原は、白人およびアジア人の集団においてはおよそ50%によって発現されており、HLA−A1およびHLA−A3抗原はいずれも、白人のおよそ25%、アジア人のおよそ5%によって発現されているが、HLA−A11抗原は、白人のおよそ15%、アジア人のおよそ30%によって発現されている。これらの数は同時発現が原因で増大させることはできないが、これらの多様性によって制限されるペプチドの組み合わせは、ほとんどの癌患者を確実に網羅する。(ii)個々の患者におけるいくつかの制限エレメントをまとめて標的化することは、おそらく、HLA−対立遺伝子の欠失による免疫回避のリスクを減少させる。1つのHLA対立遺伝子の欠失は、癌細胞について記載されているMHCの変化の有意な成分であるが、クラスI発現の全ての欠失はむしろ滅多に起こらない事象である。したがって、種々のHLA対立遺伝子に制限されるBcl−2エピトープの同定により、対立遺伝子が重複している患者において同時に1つ以上のHLA分子を標的化することができる。
【0080】
したがって、高免疫原性多エピトープワクチンを開発することが可能である。好ましくは、このようなワクチンは、本明細書中で以下に記載される他の適切なペプチドおよび/またはアジュバントと状況に応じて組み合わせて、最も適しているBcl−2由来のペプチドの同時投与を容易にするように設計されるべきである。本発明には、Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないかまたはそれらには由来しないさらなるタンパク質もしくはペプチド、および/または本明細書中で以下に記載されるようなアジュバント、および/または以下に記載されるようなクラスII−MHC制限エピトープと状況に応じて組み合わせて、Bcl−2由来のペプチドを含むそのような多エピトープワクチンが含まれる。
【0081】
その腫瘍が一般的にクラスII MHCを発現しないという事実にもかかわらず、腫瘍特異的Tヘルパー細胞性免疫を誘発すること、すなわち、クラスII−MHC制限エピトープを用いてワクチン接種することに、注目が集まっている。このことは、ワクチンによって誘導される抗腫瘍応答の誘導および効率には、多くの場合においては、腫瘍特異的CD4ポジティブT細胞の連携が必要であるという最近の発見に基づく。したがって、より複雑な組成を有しているワクチンの開発を推進する、例えば、注意深く選択されるCTLおよびT細胞エピトープのコレクションを含むかまたはそれらをコードするワクチンを設計することによる、複数の腫瘍抗原を標的化するための重要な因子が望まれる。
【0082】
明らかに、多エピトープワクチンは、癌タンパク質のような有害である可能性のあるタンパク質(をコードする遺伝子)を導入することを必要とはせずに、いくつかの種々の抗原に由来するエピトープに対する免疫性を高める1つの効果的な方法を構成する。このようなワクチンはまた、亜優性である曖昧なT細胞エピトープに対する免疫性の選択的な誘導もできる。これは、それについての寛容性が正常な組織において顕著に提示されるエピトープについて存在し得る、腫瘍関連自己抗原の場合に特に重要であり得る。さらに、抗原提示細胞は、抗原提示細胞の免疫プロテアソームとほとんどの腫瘍細胞中に存在する「構成的」プロテアソームとの間の機能的な差が原因で、腫瘍細胞上で発現される特定のエピトープを提示することができない場合がある。ペプチドベースのワクチンの場合には、このようなエピトープは、「MHC準備」形態で投与することができ、これは、抗原の取り込みとは無関係な外部負荷、および宿主の抗原提示細胞によるプロセシングを通じた提示が可能である。
【0083】
本発明のペプチドは比較的小さい分子であるので、このような組成物においては、ペプチドを、ワクチン、免疫原性組成物などを製造するためのアジュバントのような種々の物質と組み合わせることが必要とされ得る。広く定義されているアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。多くの場合には、選択されるアジュバントは、フロイトの完全もしくは不完全アジュバント、または、例えば、ミョウバンで沈殿させられた抗原と組み合わせて使用される、死滅させられた百日咳菌(B.pertussis)生物である。アジュバントについての一般的な議論は、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles & Practice(2nd edition、1986)61〜63頁に提供されている。しかし、Godingは、目的の抗原が低分子量であるか、または免疫原性が乏しい場合には、免疫原性のキャリアに対してカップリングさせることが望ましいと記載している。このようなキャリア分子の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、およびニワトリ免疫グロブリンが挙げられる。種々のサポニン抽出物もまた、免疫原性組成物においてアジュバントとして有用であることが示唆されている。最近、アジュバントとして、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、周知のサイトカインを使用することが提案されている(WO97/28816)。
【0084】
本発明のワクチン組成物には、アジュバントおよび/またはキャリアが含まれることが好ましい。有用なアジュバントおよびキャリアの例は、本明細書中で以下に提供される。したがって、組成物中に存在するBcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントは、例えば、タンパク質または抗原提示細胞(例えば、T細胞に対してBcl−2タンパク質ファミリーまたはそのペプチドフラグメントを提示することができる樹状細胞(DC))のようなキャリアと会合させることができる。
【0085】
アジュバントは、そのワクチン組成物への混合によってBcl−2タンパク質ファミリーまたはそのペプチドフラグメントに対する免疫応答を増大させるか、または別の方法で変更する任意の物質である。キャリアは、それに対してBcl−2タンパク質ファミリーまたはそのペプチドフラグメントを会合させることができる骨格構造、例えば、ポリペプチドまたは多糖である。
【0086】
アジュバントは、例えば、以下からなる群より選択することができる:AlK(SO、AlNa(SO、AlNH(SO)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)Ca(PO、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−DMP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11687、nor−MDPとも呼ばれる)、N−アセチルムラミウル−L−アラニル−D−イソグルタミニルーL−アラニン−2−(1’2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEとも呼ばれる)、2%のスクワレン/Tween−80.R.T.M.エマルジョン中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リポ多糖およびその種々の誘導体(リピッドA(lipid A)を含む)、フロイトの完全アジュバント(FCA)、フロイトの不完全アジュバント、Merck Adjuvant 65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、ヒト型結核菌由来のwax D、コリネバクテリウム・パルバム、百日咳菌、およびブルセラ属のメンバー中に見られる物質、リポソームまたは他の脂質エマルジョン、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(US 58767および米国特許第5,554,372号を参照のこと)、Lipid A誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成のペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタナイドISA−51およびQS−21。本発明と共に使用される好ましいアジュバントとしては、モンタナイドアジュバント(Seppic,Belgiumから入手できる)のような、油/界面活性剤ベースのアジュバントであり、好ましくは、モンタナイド ISA−51である。他の好ましいアジュバントは、細菌DNAベースのアジュバントであり、例えば、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントである。なお他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNAベースのアジュバントであり、例えば、ポリI:Cである。イミダゾキニリン(Imidazochiniline)は、好ましいアジュバントのなお別の例である。さらに、好ましいアジュバントはリポソームである。最も好ましいアジュバントは、ヒトへの使用に適しているアジュバントである。
【0087】
モンタナイドアジュバント(全てSeppic,Belgiumから入手できる)は、モンタナイドISA−51、モンタナイドISA−50、モンタナイドISA−70、モンタナイドISA−206、モンタナイドISA−25、モンタナイドISA−720、モンタナイドISA−708、モンタナイドISA−763A、モンタナイドISA−207、モンタナイドISA−264、モンタナイドISA−27、モンタナイドISA−35、モンタナイドISA 51F、モンタナイドISA 016D、およびモンタナイドIMSからなる群より選択することができ、好ましくは、モンタナイドISA−51、モンタナイドIMS,およびモンタナイドISA−720からなる群より選択され、より好ましくは、モンタナイドISA−51からなる群より選択される。モンタナイドISA−51(Seppic,Inc.)は、その中で種々の界面活性剤が、代謝不可能なミネラルオイル、代謝可能なオイル、または2つの混合物のいずれかと結合されている、油/界面活性剤ベースのアジュバントである。これらは、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントを含む水溶液とともにエマルジョンとして使用するために調製される。界面活性剤は、オレイン酸マンナイド(minnide oleate)である。QS−21(Antigenics;Aquila Biopharmaceuticals,Framingham,MA)は高度に精製された水溶性サポニンであり、これは、水溶液として取り扱うことができる。QS−21およびモンタナイドISA−51アジュバントは、滅菌の使い捨てバイアル中に提供され得る。
【0088】
アジュバントについての一般的な議論は、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles & Practice(2nd edition,1986)61〜63頁に提供されている。しかし、Godingは、目的の抗原が低分子量であるか、または免疫原性が乏しい場合には、免疫原性のキャリアに対してカップリングさせることが望ましいと記載している。このようなキャリア分子の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、およびニワトリ免疫グロブリンが挙げられる。種々のサポニン抽出物もまた、免疫原性組成物においてアジュバントとして有用であることが示唆されている。最近、アジュバントとしての周知のサイトカインである顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を使用することが提案されている(WO97/28816)。
【0089】
本発明にしたがって使用することができるアジュバントの好ましい機能は、以下の表に列挙される。
【0090】
【表3−1】

【0091】
【表3−2】

本発明のワクチン組成物には、1つ以上の種々のアジュバントが含まれる場合がある。さらに、本発明には、上記のいずれかを含む任意のアジュバント物質、またはそれらの組み合わせをさらに含む治療用組成物が含まれる。Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントとアジュバントを、任意の適切な順序で別々に投与できることもまた想定される。
【0092】
キャリアは、アジュバントとは無関係に存在し得る。キャリアの機能は、例えば、その活性または免疫原性を高めること、安定性を付与すること、生物学的活性を高めること、または血清半減期を延長させるために、特にペプチドフラグメントの分子量を大きくすることであり得る。さらに、キャリアは、T細胞に対してBcl−2ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントを提示することを補助することができる。キャリアは、当業者に公知の任意の適切なキャリアであり得、例えば、タンパク質または抗原提示細胞であり得る。キャリアタンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(例えば、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリン、またはオボアルブミン)、免疫グロブリン、あるいは、ホルモン(例えば、インシュリンまたはパルミチン酸)であり得るが、これらに限定されない。ヒトの免疫のためには、キャリアは、ヒトに対して生理学的に許容されるキャリアであり、安全でなければならない。しかし、破傷風毒素および/またはジフテリア毒素は、本発明の1つの実施形態において適切なキャリアである。あるいは、キャリアは、デキストラン、例えば、セファロースであり得る。
【0093】
したがって、本発明には、上記のいずれかまたはそれらの組み合わせを含むアジュバント物質をさらに含む治療用組成物が含まれる。抗原、すなわち、本発明のペプチドおよびアジュバントを、同時に、または任意の適切な順序で別々に投与できることもまた想定される。
【0094】
本発明の薬学的組成物中の抗原の選択は、当業者によって決定されるパラメーターに応じて変化する。記載されているように、本発明の種々のペプチドのそれぞれは、特定のHLA分子により細胞表面上に提示される。このように、処置される被験体がHLA表現型に関してタイプ分けされている場合は、その特定のHLA分子に結合することが知られているペプチド(単数または複数)が選択される。
【0095】
あるいは、目的の抗原は、所定の集団における種々のHLA表現型の陽性率に基づいて選択される。一例として、HLA−A2は白人の集団において最も陽性率が高い表現型であり、したがって、HLA−A2に結合するサービビンに由来するペプチドを含む組成物が、この集団の大部分において活性である。しかし、本発明の組成物にはまた、2つ以上のサービビンに由来するペプチドの組み合わせが含まれる場合もある。サービビンに由来するペプチドのそれぞれは、異なるHLA分子と特異的に相互作用し、その結果、標的集団の大部分をカバーする。したがって、一例として、薬学的組成物には、HLA−A分子によって制限されるペプチドと、HLA−B分子によって制限されるペプチドの組み合わせ、例えば、標的集団中のHLA表現型の陽性率に対応させられたそのようなHLA−A分子とHLA−B分子を含む組み合わせ、例えば、HLA−A2とHLA−B35の組み合わせが含まれ得る。さらに、組成物には、HLA−C分子によって制限されるペプチドが含まれる場合もある。
【0096】
本発明の有用な免疫原性組成物には、本明細書中で定義されるBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーに由来するペプチドに加えて、本明細書中で定義されるもののような免疫学的有効量のBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーまたはその免疫原性のフラグメントが含まれる場合もあることが想定される。
【0097】
薬学的組成物中の本発明の免疫原性ペプチドの量は、特定の用途に応じて変化し得る。しかし、免疫原の単回用量は、好ましくは、約10μgから約5000μgまでのいずれかであり、より好ましくは、約50μgから約2500μgまでのいずれか、例えば、約100μgから約1000μgまでである。投与の態様としては、皮内、皮下、および静脈内投与、徐放処方物の形態での移植などが挙げられる。当該分野で公知の任意のおよび全ての投与形態が本明細書中で含まれる。注射可能な免疫原性ペプチド組成物の処方に適している当該分野で公知の任意のおよび全ての従来の投与量形態、例えば、必要に応じて、従来の薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、保存剤、アジュバント、緩衝成分などを含む、凍結乾燥形態、および溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態もまた、含まれる。
【0098】
薬学的組成物は、当業者に公知の任意の従来のプロトコールを使用して調製し、投与することができる。実施例5には、本発明のワクチン組成物の調製について限定的ではない例、ならびにそのようなワクチンの投与についての限定的ではない例が提供される。このプロトコールを、本明細書中に記載されるワクチン組成物の任意のものに容易に適応させることができることは、当業者に明らかである。
【0099】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明の薬学的組成物は、その患者における癌の進行の間に、癌細胞が化学療法的に活性である抗癌剤および/または放射線治療に対する感度の低下を生じる場合に、癌患者の処置に有用である。
【0100】
本発明の薬学的組成物には、Bcl−2タンパク質ファミリーには属さないかまたはそれらに由来しないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択された、少なくとも1つのさらなる免疫原性タンパク質またはそのペプチドフラグメントが含まれることが有利である場合がある。このようなタンパク質には、細胞のアポトーシスの調節に関係しているタンパク質またはそれに由来するペプチドフラグメントが含まれる。一例としては、そのようなさらなるタンパク質またはペプチドは、上記で定義されたサービビン、またはそのペプチドフラグメントである。特定の実施形態においては、さらなる免疫原性のサービビンに由来するペプチドは、以下から選択される配列を有しているHLA−A2制限ペプチドである:FLKLDRERA(サービビン101−109)(配列番号12)、TLPPAWQPFL(サービビン5−14)(配列番号13)、ELTLGEFLKL(サービビン95−104)(配列番号14)、LLLGEFLKL(配列番号15)、およびLMLGEFLKL(配列番号16)。(カッコ内の数字は、米国特許第6,245,523号に開示されているサービビンタンパク質中の残基の位置を示す)。LLLGEFLKL(配列番号15)は、「L」でペプチドの2位の「T」を置換することによって、サービビン96−104から誘導される配列であり、そしてLMLGEFLKL(配列番号16)は、「M」で2位の「T」を置換することによってサービビン96−104から誘導される。さらに特定の実施形態においては、さらなる免疫原性のサービビンに由来するペプチドは、以下から選択される配列を有しているHLA−B35制限サービビン由来ペプチドである:CPTENEPDL(サービビン46−54)(配列番号17)、EPDLAQCFF(サービビン51−59)(配列番号18)、CPTENEPDY(配列番号19)、およびEPDLAQCFY(配列番号20)。(カッコ内の数字は、米国特許第6,245,523号に開示されているサービビンタンパク質中の残基の位置を示す)。CPTENEPDY(配列番号19)は、「Y」でペプチドのC末端の「L」を置換することによってサービビン46−54から誘導される配列であり、そしてEPDLAQCFY(配列番号20)は、「Y」でC末端2の「F」残基を置換することによってサービビン51−59から誘導される。
【0101】
なおさらなる実施形態においては、さらなるペプチドは、以下から選択される配列を有しているHLA−A1制限ペプチドである:サービビン38−46(Sur38Y9)(P9でCがYに変化させられている、MAEAGFIHY)(配列番号21)、サービビン47−56(Sur47Y10)(P10でQがYに変化させられている、PTENEPDLAY(配列番号22))、サービビン92−101(Sur92−101)(QFEELTLGEF)(配列番号23)、およびサービビン93−101(Sur93T2)(P2でEがTに変化させられている、FTELTLGEF(配列番号24))。本発明のペプチドはまた、サービビン18−24(Sur18K10)(P10でFがKに変化させられている、RISTFKNWPK(配列番号25))のようなHLA−A3制限ペプチド、および/またはサービビン53−62(Sur53−62)(DLAQCFFCFK)(配列番号26)のようなHLA−A11制限ペプチド、および/またはサービビン18−28(Sur18−28)(RISTFKNWPFL)(配列番号27)のようなHLA−A2制限ペプチドでもある場合もある。
【0102】
しかし、本発明の1つの好ましい実施形態においては、ワクチン組成物にはサービビンまたはそのフラグメントは含まれない。
【0103】
他の有用なさらなるペプチドには、既知のアポトーシス阻害因子ポリペプチドML−IAPが含まれ、これは、かなり選択的な発現を有しており、黒色腫において検出される。したがって、特異的T細胞応答、すなわち、細胞傷害性T細胞応答またはヘルパーT細胞応答を誘発することができるML−IAPのフラグメントを、状況に応じて、本発明の組成物に含めることができる。ML−IAPの有用なペプチドフラグメントには、特許出願WO2004/089980(これは、引用によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されているML−IAPフラグメントの任意のものが含まれ、好ましくは、ML−IAP245(RLQEERTCKV)(配列番号28)、ML−IAP280(QLCPICRAPV)(配列番号29)、ML−IAP90(RLASFYDWPL)(配列番号30)、ML−IAP154(LLRSKGRDFV)(配列番号31)、ML−IAP230(VLEPPGARDV)(配列番号32)、ML−IAP98(PLTAEVPPEL)(配列番号33)、ML−IAP34(SLGSPVLGL)(配列番号34)、ML−IAP54(QILGQLRPL)(配列番号35)、ML−IAP99(LTAEVPPEL)(配列番号36)、ML−IAP83(GMGSEELRL)(配列番号37)およびML−IAP200(ELPTPRREV)(配列番号38)。
【0104】
他の有用なさらなるペプチドとしては、TRAG−3およびそのペプチドフラグメントが挙げられる。TRAG−3は少なくとも2つの選択的スプライシングされた形態で存在し、そしてTRAG−3スプライシング形態のペプチドの全てが、さらなるペプチドとして有用である。具体的には、任意のTRAG−3スプライシング形態のフラグメント(ここでは、上記のフラグメントは、特異的なT細胞応答、すなわち、細胞傷害性T細胞応答またはヘルパーT細胞応答を誘発することができる)を、状況に応じて本発明の組成物中に含めることができる。
【0105】
さらに、本発明の組成物は、本明細書中において上記で定義されたクラスI制限エピトープとクラスII制限エピトープを含む、多エピトープワクチンとして提供される場合もある。
【0106】
本発明の組成物の免疫防御効果は、例えば、WO97/28816(前出)に記載されているようないくつかのアプローチを使用して決定することができる。良好な免疫応答は、免疫後のDTH反応の発生、および/またはワクチン組成物のペプチド(単数または複数)を特異的に認識する抗体の検出によって、決定することもできる。
【0107】
好ましい実施形態においては、本発明の薬学的組成物はワクチン組成物である。したがって、薬学的組成物は、癌疾患に対する免疫応答を誘発することができる免疫原性組成物またはワクチンであり得る。本明細書中で使用される場合は、表現「免疫原性組成物またはワクチン」は、癌細胞に向けられた少なくとも1つのタイプの免疫応答を誘発する組成物をいう。したがって、このような免疫応答は、上記のタイプのいずれかであり得る:CTL応答(ここでは、細胞表面上に提示されるHLA/ペプチド複合体を認識して、それによって細胞溶解を生じることができるCTLが生じる、すなわち、ワクチン接種された被験体において、癌細胞に対して細胞傷害作用を有しているエフェクターT細胞の産生;抗癌抗体の産生を生じるB細胞応答;および/またはDTH型の免疫応答を誘発する。
【0108】
有用な実施形態においては、癌疾患に対する免疫原性応答は、患者に由来する抗原提示細胞(APC)上のMHCクラスI分子を負荷することによって、患者からPBLを単離し、患者に細胞を注射によって戻す前にペプチドとともに細胞をインキュベートすることによって、あるいは、患者から前駆体APCを単離し、サイトカインと抗原を使用して細胞をProfessional APCに分化させ、その後、細胞を患者に注射によって戻すことによってのいずれかで、本発明のペプチドを投与することによって、誘発される。
【0109】
したがって、Bcl−2ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメント、あるいは、上記タンパク質または上記ペプチドフラグメントをコードする核酸を含む抗原提示細胞を含むワクチン組成物を提供することが、本発明の1つの態様である。抗原提示細胞は、T細胞に対して抗原を提示することができる任意の細胞であり得る。好ましい抗原提示細胞は樹状細胞である。樹状細胞(DC)は、任意の適切なプロトコールにしたがって、例えば、本明細書において以下に記載されるように、調製することができ、治療手順において使用することができる。プロトコールを、種々のHLAタイプおよび種々の疾患を有している患者について使用するために適応させることができることは、当業者に明らかである。
【0110】
樹状細胞(DC)は、50μg/mlのHLA制限ペプチド(GMP品質で合成された)で37℃で1時間パルスされ、ペプチドと5×10個の細胞が、1日目と14日目、その後4週間おきに皮下投与され、5回のワクチン接種後にさらに白血球搬出法が行われる。臨床的な使用および品質管理のためのDCの作成は、本質的には、ref.5に記載されているように行うことができる。
【0111】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、癌患者を処置するための方法は、患者の抗原提示細胞(APC)に対してエキソビボでペプチドを提示すること、その後、処理されたAPCを患者に注射によって戻すことによって、ペプチドが投与される方法である。これを行うための別の方法は少なくとも2つ存在する。1つの別の方法は、癌患者からAPCを単離し、MHCクラスI分子をペプチドと共にインキュベートする(負荷する)ことである。MHCクラスI分子を負荷することは、APCをペプチドとともにインキュベートすることを意味し、その結果、ペプチドに特異的なMHCクラスI分子を有しているAPCはペプチドに結合し、したがって、T細胞に対してそれを提示することができる。続いて、APCは患者に再度注射される。もう1つの別の方法は、樹状細胞の生物学の分野でなされた最近の発見による。この場合は、単球(樹状細胞前駆体である)が患者から単離され、サイトカインと抗原の使用によってprofessional APC(または樹状細胞)へとエキソビボで分化させられる。その後、エキソビボで作成されたDCがペプチドでパルスされ、患者に注射される。
【0112】
Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーは一定の範囲の癌の形態において発現されているようであるという事実により、本発明のワクチンは、そのようなタンパク質が発現される任意のタイプの癌疾患を制御するために提供され得る可能性が非常に高い。したがって、例として、本発明のワクチン組成物は、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌に対して免疫学的活性がある。
【0113】
上記から、本発明のタンパク質および/またはペプチドが癌の診断ツールとして有用であることは、当業者に明確に理解される。したがって、本発明のペプチドは、広範囲に適用することができる癌疾患に関する診断手順および予防手順を開発するための基礎を提供する。したがって、他の有用な実施形態においては、本発明の組成物は、例えば、PBLのうちのBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーに反応するT細胞検出に基づいて癌患者の中での、または腫瘍組織の中での、その存在のエキソビボまたはインサイチュでの診断のための組成物である。
【0114】
したがって、なおさらなる態様においては、本発明の1つ以上のペプチドを含む、PBLのうちのBcl−2ファミリーのメンバーに反応するT細胞が癌患者の中に、または腫瘍組織の中に存在することの、エキソビボまたはインサイチュでの診断のための診断用キット、ならびに、そのような反応性T細胞の存在を癌患者において検出する方法が提供される。この方法には、腫瘍組織または血液サンプルを、本発明のペプチドとクラスI HLA分子またはそのような分子のフラグメントの複合体と接触させて、組織または血液細胞に対する複合体の結合を検出することが含まれる。
【0115】
別の有用な診断または予防アプローチは、異種動物種において抗体を作成すること、例えば、本発明のヒトBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーに由来するペプチドに対するマウス抗体を作成することに基づく。抗体は次いで、例えば、ペプチドを提示する癌細胞の存在を診断するために使用され得る。このような免疫の目的のためには、ペプチドの量は、上記のようなインビボでの方法において使用されるペプチドの量よりも少なくできる。一般的には、好ましい用量は、約1μgから約750μgまでのペプチドの範囲であり得る。本発明のペプチドでの免疫に基づいてモノクローナル抗体を産生することもまた可能である。したがって、本発明はまた、本発明のペプチドに対して特異的に結合することができる分子(具体的には、そのフラグメントを含むモノクローナルまたはポリクローナル抗体)、ならびに、そのような結合をブロックすることができる分子(例えば、本発明のペプチドに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体に対して惹起させられた抗体)にも関する。本発明はさらに、本発明のペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することができる単離されたT細胞レセプター、さらには、それをコードする単離された核酸に関する。このようなT細胞レセプターは、例えば、当業者に周知の標準的な技術を使用して、タンパク質またはペプチド特異的T細胞からクローニングすることができる。
【0116】
1つの態様においては、本発明はまた、本明細書中に記載されるBcl−2ファミリーに属するタンパク質および/またはそのペプチドフラグメントのいずれかに特異的に結合することができるT細胞レセプターを含む単離されたT細胞にも関する。単離されたT細胞は、好ましくは、エキソビボで増殖させられたT細胞である。エキソビボでT細胞を増殖させる方法は当業者に周知である。このようなT細胞は、特に、適応性の導入または自己細胞の導入による癌の処置において有用であり得る。したがって、本発明はまた、Bcl−2ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞レセプターを含むT細胞を個体(例えば、癌に罹患しているヒト)に投与することを含む処置方法に関する。本発明はさらに、Bcl−2ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞レセプターを含むT細胞を、癌の処置のための医薬の調製のために使用することに関する。自己細胞の導入は、本質的には、ref.7に記載されているように行うことができる。
【0117】
1つの態様においては、本発明により、本発明のペプチドと、クラスI HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体が提供される。これは、上記のような診断試薬として有用である。このような複合体は、モノマーまたはマルチマーであり得る。
【0118】
本発明により、癌疾患を緩和または治癒させるための手段が提供される。したがって、例えば、以下を含む、Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの発現に関係している癌疾患を処置する方法を提供することが、本発明のさらなる態様である:慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、および前立腺癌。この方法には、有効量の本発明の薬学的組成物、本発明のペプチドに特異的に結合することができる分子、および/またはそのような分子の結合をブロックすることができる分子を、これらの疾患に罹患している患者に投与することが含まれる。
【0119】
いくつかの場合には、本発明の処置方法を、化学療法、放射線治療、免疫賦活性物質での処置、遺伝子治療、抗体での処置、および樹状細胞を使用する処置のような、従来の癌の処置と組み合わせることが適切である。腫瘍細胞中でのBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーの高い発現は薬剤耐性に関係しているので、本発明によって開示されるBcl−2に基づく免疫治療の、細胞傷害性化学療法との組み合わせは、癌を処置するための有効なアプローチである可能性がある。
【0120】
1つの態様においては、本発明は、免疫をモニタリングする方法に関する。上記方法には以下の工程が含まれる:
i)個体に由来する血液サンプルを提供する工程、
ii)Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントを提供する工程であって、上記タンパク質またはペプチドは、本明細書中に記載されるタンパク質またはペプチドのいずれかであり得る、工程。
【0121】
iii)上記血液サンプルが、タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞レセプターを含むT細胞を含むかどうかを決定する工程、
iv)それによって、上記個体において上記タンパク質またはペプチドに対する免疫応答が惹起されているかどうかを決定する工程。
【0122】
個体は、好ましくはヒトであり、例えば、Bcl−2タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメント、あるいは上記タンパク質またはペプチドをコードする核酸で免疫されたヒトである。
【0123】
本発明は、本明細書中の以下の限定的ではない実施例と図面によって、ここで説明される。
【実施例】
【0124】
(実施例1 乳癌患者におけるBcl−2に対する免疫応答)
(材料および方法)
(1.患者)
末梢血リンパ球(PBL)を乳癌患者から採取した。PBLをLymphoprep分離器、HLA型(Department of Clinical Immunology,University Hospital,Copenhagen,Denmark)を使用して単離し、10%のDMSOを含むFCS中で凍結させた。いずれの患者にも、採血の前には免疫療法を行わなかった。
【0125】
(2.MHCクラスI分子に対するペプチドの結合についてのアセンブリアッセイ)
合成のペプチド(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)の、[35S]−メチオニンで代謝によって標識したHLA−A2分子に対する結合親和性を、以前に記載されているように、アセンブリアッセイにおいて測定した。このアッセイは、TAP欠損細胞株T2から細胞溶解の際に放出される、空のHLA分子のペプチドに媒介される安定化に基づく。安定に折り畳まれたHLA分子を、HLAクラスI特異的立体構造依存性mAb W6/32を使用して免疫沈降させ、等電点(IEF)ゲル電気泳動によって分離した。MHC重鎖のバンドを、ImageGauge Phosphorimagerプログラム(FUJI photo film Co.,Carrollton,TX,USA)を使用して定量した。バンドの強度は、アッセイの間に回復したペプチドが結合したクラスI MHC複合体の量と直接関係している。したがって、HLA−A2の安定性の程度は、添加されたペプチドの結合親和性に直接関係している。HLA−A2の回復を、50、5、0.5、0.05μMの関連するペプチドの存在下で測定した。C50値を、最大の安定性の半分に十分なペプチド濃度として、それぞれのペプチドについて計算した。
【0126】
(3.PBLの抗原刺激)
ELISPOTアッセイの感度を高めるために、PBLを、分析の前にエキソビボで一回刺激した。0日目に、PBLまたは粉砕したリンパ節を融解させ、24ウェルプレート(Nunc,Denmark)において2ml/ウェルで、2×10個の細胞の濃度で、10μMのペプチドの存在下でX−vivo培地(Bio Whittaker,Walkersville,Maryland)、5%の熱不活化ヒト血清、および2mMのL−グルタミン中にプレートした。2日後、20IU/mlの組み換えインターロイキン−2(IL−2)(Chiron,Ratingen,Germany)を培養物に添加した。培養細胞を、12日目に、反応性についてELISPOTにおいて試験した。
【0127】
(4.ELISPOTアッセイ)
ELISPOTアッセイを使用して、以前に記載された(4)ように、ペプチドエピトープ特異的インターフェロン−γ放出エフェクター細胞を定量した。簡単に説明すると、ニトロセルロース膜ボトム96ウェルプレート(MultiScreen MAIP N45,Millipore,Hedehusene,Denmark)を、抗IFN−γ抗体(1−D1K,Mebtech,Nacka,Sweden)でコーティングした。ウェルを洗浄し、X−vivo培地によってブロックし、細胞を種々の細胞濃度で二連で添加した。その後、ペプチドを各ウェルに添加し、プレートを一晩インキュベートした。翌日、培地を捨て、ウェルを洗浄した後、ビオチニル化二次抗体(7−B6−1−ビオチン、Mabtech)を添加した。プレートを2時間インキュベートし、洗浄し、そしてアビジン−酵素結合体(AP−アビジン、Calbiochem,Life Technologies)を各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、酵素基質であるNBT/BCIP(Gibco,Life Technologies)を各ウェルに添加し、室温で5〜15分間インキュベートした。反応を、濃い紫色のスポットが突然発生した時点で水道水で洗浄することによって停止させた。スポットをImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(CTL Analyzers,LLC,Cleveland,US)を使用して数え、ペプチド特異的CTLの頻度を、スポットを形成する細胞の数から計算した。全てのアッセイを、各ペプチド抗原について三連で行った。
【0128】
(5.結果)
(HLA−A2に対するBcl−2由来ペプチドの結合)
Bcl−2タンパク質のアミノ酸配列を、最も可能性のあるHLA−A2ノナマーであるペプチドエピトープおよびデカマーであるペプチドエピトープについて、主要なHLA−A2特異的アンカー残基(2)を使用してスクリーニングした。13個のBcl−2由来ペプチドを合成し、HIV−1 pol476−484(ILKEPVHGV)(配列番号39)由来のHLA−A2高親和性ポジティブ対照エピトープとの比較によって、アセンブリアッセイによりHLA−A2に対する結合について試験した。アセンブリアッセイは、TAP欠損細胞株T2に対して種々の濃度のペプチドを負荷した後のクラスI分子の安定性に基づく。その後、正確に折り畳まれた安定なMHC重鎖を、立体構造依存性の抗体を使用して免疫沈降させた。クラスI MHC分子の安定性の程度は、図1に示すように、添加したペプチドの結合親和性に直接関係していた。クラスI MHC分子の最大回復量の半分の回復に必要なペプチド濃度(C50値)は、HIV−1 pol476−484については0.7μMであった(表1)。8個のBcl−2由来ペプチドは、ポジティブ対照とほぼ同じ高い親和性で結合した;Bcl224、Bcl85、Bcl222、Bcl218、Bcl220、Bcl214、Bcl124、およびBcl172(それぞれ、C50=0.7、1、1、2、1、3、1、および2μM)(表1)。ペプチドBcl80、Bcl208、およびBcl180は、中程度または弱い親和性でしか結合しなかった(それぞれ、C50=36.7、および20μM)。試験したペプチドのうちの2つ(Bcl216、Bcl200)は、HLA−A2には全く結合しなかった。この研究に含めたペプチドのリストを表1に示す:
【0129】
【表4】

下付き文字で示した数字の並びは、配列中の最初のアミノ酸の位置を示す。
50値は、HLA−A2に対する最大の結合の半分に必要なペプチドの濃度である。
【0130】
(化学療法で処置した乳癌患者におけるBCL−2由来ペプチドに対するCTL応答)
ELISPOT IFN−γ分泌アッセイを使用して、本発明者らは、乳癌患者由来の末梢血T細胞中のBcl−2由来ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在を試験した。この方法は、癌患者において腫瘍特異的CTLを同定する場合には、かねてより非常に有効である。
【0131】
15人のHLA−A2ポジティブ乳癌患者由来のPBLを、ELISPOTでの試験の前に1回、エキソビボで刺激した。この手順は、記載されている(4)ように、ELISPOTの感度を高めるために選択した。多くの記載されているCTLエピトープは実際には低親和性ペプチドであるので、本発明者らは、全部で13個のBcl−2推定ペプチドを実験の第一選択に含めた。Bcl172、Bcl180、Bcl208、およびBcl214に対する応答が検出され、これらのペプチドによるデータだけを図2に示す。自発的なCTL応答は、Bcl172に対しては8人の患者に由来するPBL(50%)において、そしてBcl180に対しては4人の患者において(約25%)検出された(図2)。しかし、最も頻度の高い応答は、Bcl208とBcl214に対して検出された。なぜなら、12人の患者(約80%)がBcl208に対する検出可能なCTL応答を有しており、11人の患者(約75%)がBcl214応答を有していたからである(図2)。
【0132】
(実施例2 癌患者におけるBcl−2の免疫原性)
(概要)
本明細書中で、本発明者らは、無関係な腫瘍タイプ、すなわち、膵臓癌、AML、およびCLLに罹患している患者由来の末梢血中でのBcl−2に対する自発的なT細胞反応性について記載する。さらに、本発明者らは、これらのBcl−2反応性T細胞が実際にペプチド特異的細胞傷害性エフェクター細胞であることを示す。したがって、Bcl−2は、抗癌免疫療法ストラテジーについて、例えば、従来の放射線治療および化学療法との組み合わせにおいて、重要な、広く適用できる標的としての役割を担うことができる。
【0133】
(序論)
Bcl−2ファミリーには、アポトーシスの調節におけるいくつかの重要な役割が含まれており、これには、プロアポトーシス性分子、さらには抗アポトーシス性分子が含まれる。Bcl−2は、癌の病因および進行に関係している重要な細胞因子である。本研究において、本発明者らは、癌患者におけるBcl−2の自然界における細胞性の免疫原性について試験した。
【0134】
(方法)
(患者)
PBLを、Lymphoprep分離器HLA型(Department of Clinical Immunology,University Hospital,Copenhagen,Denmark)を使用して単離し、10%のDMSOを含むFCS中で凍結させた。いずれの患者にも、採血前には免疫療法は行わなかった。これらの全ての測定の前に患者からインフォームドコンセントを得た。末梢血リンパ球(PBL)を、第IV期疾患を定義する遠隔転移を有している進行性疾患を示している13人のHLA−A2ポジティブ乳癌患者から採取した。患者の大部分は、1つ以上の腫瘍部位を有していた(8/13人の患者)。前療法には、化学療法、内分泌療法、および放射線治療が含まれていた。8人の患者は、すでに化学療法によって処置されているが、5人の患者は内分泌療法が行われただけであり、研究に含められる前には化学療法は施されていなかった。さらに、限局性の手術可能な乳癌を有している12人のHLA−A2ポジティブ患者を含め、血液サンプルを、最初の外科手術および化学療法の前に採取した。さらに、PBLを、第IV期疾患を定義する遠隔転移のある進行性の疾患を示している2人のHLA−A2ポジティブ膵臓癌患者から採取した。最後に、10人のHLA−A2と新たに診断されたCLL患者、および3人のAML患者に由来するPBLを、治療の前に採取した。12人のHLA−A2ポジティブである健常な個体に由来するPBLを対照とした。
【0135】
(Granzyme B ELISPOT)
Granzyme B(GrB)ELISPOTアッセイを、記載されているように抗原特異的CTL細胞傷害性を測定するために使用した。簡単に説明すると、ニトロセルロースで閉止した96ウェルプレート(MultiScreen MAIP N45,Millipore)を、GrB捕捉抗体(Capture Antibody)(BD Biosciences,Brondby,Denmark)でコーティングした。ウェルを洗浄し、5%のヒト血清を含むX−vivo培地によってブロックした。細胞を種々の細胞濃度で添加した。その後、T2細胞とペプチドを各ウェルに添加し、プレートを4時間インキュベートし、培地を捨て、ウェルを洗浄した後、GrB検出抗体(Detection Antibody)(BD Biosciences)を添加した。プレートを2時間インキュベートし、洗浄し、そしてアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ(BD Biosciences)を各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、AEC基質試薬(Substrate Reagent)(BD Biosciences)を各ウェルに添加し、室温で5〜10分間インキュベートした。反応を、赤色のスポットが突然発生した時点で水道水で洗浄することによって停止させた。スポットを数え、ペプチド特異的CTLの頻度を、INF−γ ELISPOTと同様に計算した。全てのアッセイを、各ペプチド抗原について二連または三連で行った。
【0136】
(ペプチド特異的T細胞の単離)
抗原特異的細胞を、Bcl208/HLA−A2でコーティングした磁気ビーズによって、以前に記載されたように単離した。ビオチニル化されたモノマー(ProImmune,Oxford,UK)をストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ(Dynabeads M−280,Dynal A/S,Oslo,Norway)に対して、2.5μgのモノマーを5×10個のビーズとともに40μlのPBS中で室温で20分間インキュベートすることによって結合させた。磁気複合体を、磁場(Dynal A/S,Oslo,Norway)においてPBS中で3回洗浄し、その後、5%のBSAを含むPBS中で1:10の割合で、PBLと混合し、非常に穏やかに1時間回転させた。磁気複合体と会合している抗原特異的CD8T細胞を穏やかに3回洗浄した。単離した細胞を、5%のHSを含むX−vivo中に何度も再懸濁させ、2時間インキュベートし、その後、磁気ビーズを遊離させて細胞懸濁物から除去した。この単離した細胞を、48ウェルプレートにおいて5%のHSと、10個の抗CD28、抗CD3でコーティングした、4−1BBリ癌ド(4−1BBL)を発現する人工細胞ベースの抗原提示細胞(K32/41BBL)(Carl H.June博士,Department of Pathology and Laboratory Medicine,University of Pennsylvaniaから懇意によって譲り受けた)を含むX−vivo中で培養した。1日後、単離した20単位/mlのIL−2を添加し、5日目に、標的細胞を死滅させるこれらの細胞の能力を、標準的な51Cr放出アッセイにおいていずれかを試験した。
【0137】
(限界希釈によるクローニング)
CTLクローンを、96ウェルプレート中での限界希釈により、5%のHSを含むX−vivo中に、40 IU/ml IL−2と1μg/mlのPHAの存在下で、フィーダー細胞として放射線照射したPBMCを使用して、単離した培養物から確立させた。新しい培地とIL−2を、3〜4日おきにクローンに添加した。
【0138】
(細胞傷害性アッセイ)
CTL媒介性細胞傷害性についての従来の[51Cr]放出アッセイを、別の場所に記載したように行った。標的細胞は、関連ペプチドを有しているT2細胞、または関連ペプチドを有していないT細胞、HLA−A2ポジティブ乳癌細胞株MDA−MB−231、およびHLA−A2ネガティブ乳癌細胞株ZR75−1であった。両方の乳癌細胞株は、逆転写PCRによって試験すると、Bcl−2を発現していた(データは示さない)。
【0139】
(結果)
(Bcl−2由来ペプチドに対するCTL応答)
Bcl−2特異的T細胞が白血病患者に由来するPBL中にも存在するかどうかを試験するために、本発明者らは、10人のHLA−A2ポジティブCLL患者、および3人のAML患者に由来するPBLを、2つのペプチドであるbcl208とbcl214に対する反応性について試験した。Bcl−2応答は、5人のCLL患者と、2人のAML患者に存在していた(図3)。さらに、本発明者らは、2人の膵臓癌患者に由来するPBLを試験し、いずれの患者もbcl208とbcl214ペプチドに対するCTL応答を有していたことを明らかにした(図3)。同様に、12人の健常なHLA−A2ポジティブ個体を試験した。驚くべきことに、健常な個体のうちの1人においてbcl208に対する弱いCTL応答が検出された(データは示さない)。
【0140】
(PBL中でのBcl−2特異的Granzyme Bの放出)
GrB ELISPOTを使用して、本発明者らは、PBL中で検出されたbcl−2特異的T細胞が細胞傷害機能を示すかどうかを評価した。したがって、3人のbcl−2反応性乳癌の患者(pt.no.:19、20、および22)に由来するPBLを、2つのエピトープbcl208とbcl214に対する反応性について分析した(図4)。3人の患者の全てにおいて、両方のペプチドに対する応答を検出することができ、頻度は、10個のPBLあたり、約50〜140個のペプチド特異的CTLであった。対照として、本発明者らは、IFN−γ ELISPOTにおいてbcl172に対する応答だけではなく、bcl208およびbcl214に対しての応答も検出できなかった患者(pt.no.:16)と健常な対照(h1)を含めた。予想したとおり、bcl208またはbcl214に対するGrBの放出は、乳癌患者no.16においても、さらには健常な対照においても、検出されなかった。
【0141】
(Bcl−2反応性CTLの機能)
Bcl−2反応性CTLの機能をさらに特徴づけるために、これらの細胞を、記載された様に、HLA−A2/bcl208複合体でコーティングした磁気ビーズによって富化させた。細胞を、単離の前にエキソビボで1回、ペプチドで刺激した。単離した細胞のうちの少数を限界希釈によってクローン化した。増殖しつつある細胞を、ペプチドを伴わずに、またはbcl208を用いてパルスするかのいずれかによって、GrB ELISPOTにおいてT2細胞の認識について試験した。これらのクローンのうちのいくつかは、bcl208でパルスしたT2細胞の特異的な認識を示した(データは示さない)。しかし、残念なことに、本発明者らは、さらなる分析のためにこれらのクローンを拡大させることはできなかった。
【0142】
1日後、単離したIL−2を残りの細胞に添加し、5日目に、ペプチドを負荷したT2細胞を死滅させる細胞の能力を、標準的な51Cr放出アッセイにおいて試験した。この目的のために、負荷していないT2細胞またはbcl208ペプチドを負荷したT2細胞のいずれかを標的とした。このアッセイにより、bcl208でパルスしたT2細胞だけが死滅させられたことが明らかになった(図5a)。これらの富化させられ、エキソビボで刺激されたbcl208反応性T細胞を、HLA−A2ポジティブであるBcl−2を発現する乳癌細胞株MDA−MB−231を死滅させる能力について試験するためにさらに使用した。富化させられたT細胞は、MDA−MB−231細胞を効率よく溶解させたが、一方では、対照的に、Bcl−2を発現するHLA−A2ネガティブ乳癌細胞株ZR75−1に対する細胞傷害性は観察されなかった(図5b)。
【0143】
(実施例3 癌患者におけるBcl−X(L)の免疫原性)
(概要)
ここでは、本発明者らは、Bcl−Xが癌患者においてT細胞認識についての標的であることを明らかにする。したがって、本発明者らは、Bcl−Xに由来するペプチドエピトープに対する自発的に生じるHLA−A2およびHLA−A3制限細胞傷害性T細胞応答を、ELISPOTおよびフローサイトメトリー染色によって記載する。したがって、Bcl−2ファミリーのタンパク質に類似しているアポトーシス阻害因子に対する細胞性免疫応答は、癌において一般的な現象を示すようであり、結果として、タンパク質のこのグループは、抗癌免疫療法についての魅力的な共通の標的タンパク質を示す。さらに、細胞中でのこれらのタンパク質の高い発現は薬剤耐性に関係しているので、免疫療法の細胞傷害性化学療法との組み合わせは、癌を処置するための非常に魅力的な方法である。
【0144】
(序論)
抗アポトーシス性タンパク質Bcl−Xは、bcl−x遺伝子の長い選択的スプライシングされた形態から産生されるが、一方、プロアポトーシス性タンパク質Bcl−Xは、同じ遺伝子の短い選択的スプライシングされた形態に由来する。Bcl−Xは従来の形態の治療に対する耐性、および不良な予後に直接関係しているので、癌において重要な役割を果たしている。Bcl−Xの機能阻害によりアポトーシスのプロセスは回復し、新生物細胞は化学療法や放射線治療に対して敏感に反応するようになるが、高レベルのBcl−Xを発現するように癌細胞株を操作すると多剤耐性の表現型が生じる。Bcl−Xの高い発現は、AMLおよび多発性骨髄腫、さらには、膀胱癌、乳癌、膵臓癌、および黒色腫などの充実性腫瘍を含む多種多様な悪性腫瘍において報告されている。
【0145】
免疫療法の理想的な標的は、正常な組織においては静止した状態にあり、癌細胞においては過剰発現され、そして腫瘍細胞の生存および腫瘍の進行に直接関係している遺伝子産物である。
【0146】
(材料および方法)
(患者)
末梢血リンパ球(PBL)を、種々の起点の癌に罹患している患者から、および健常な対照から採取し、Lymphoprep分離器HLA型(Department of Clinical Immunology,University Hospital,Copenhagen,Denmark)を使用して単離し、10%のDMSOを含むFCS中に凍結させた。いずれの患者にも、採血前には免疫療法は行わなかった。これらの全ての測定の前に患者からインフォームドコンセントを得た。
【0147】
(フローサイトメトリー(FACS))
乳癌患者に由来するPBLを、エキソビボで1回、関連するペプチドで刺激し、7日目に、CD8+細胞を、Dynal CD8ネガティブ単離キット(Dynal Biotech ASA,Oslo,Norway)を使用してPBLから単離した。得られたCD8+ポジティブT細胞培養物をPE couplet Pro5TM MHCペンタマー(ProImmune,Oxford,UK)で染色し、その後、フルオロクロム結合mAb:CD8−APCおよびCD3−FITC(Beckton Dickinson,Immunocytometry Systems,San Jose,CA)で抗体染色した。いずれの染色も、PBS+2%のFCS中で、暗所にて4℃で30分間行った。使用したPro5TMMHCペンタマー複合体は:HLA−A2/Bcl−XL173−182(YLNDHLEPWI)(配列番号42)およびHLA−A2/HIV−1 pol476−484(ILKEPVHGV)(配列番号39)であった。サンプルを、BD FACS ariaで、DIVAソフトウェア(BD,San Jose,CA)を使用して分析した。
【0148】
(結果)
(Bcl−X由来ペプチドに対する自発的なCTL応答)
bcl−x遺伝子は選択的スプライシングによって2つのmRNAに転写される。抗アポトーシス性Bcl−Xは、長い選択的スプライシングによって産生され、一方、プロアポトーシス性Bcl−Xは、この遺伝子の短い選択的スプライシシング形態から誘導される。大きいBCL−Xのタンパク質産物は、挿入されている領域(アミノ酸126〜188)によってBcl−Xとは異なる。したがって、Bcl−Xが癌患者においてT細胞についての自然界での標的であるかどうかを調べるために、本発明者らは、主要なHLA−A2特異的アンカー残基を使用して推定のHLA−A2エピトープについてこの挿入されている領域(それぞれの末端に9個のアミノ酸を含む)を精査した。その後、本発明者らは7個のBcl−X推定ペプチド(Bcl−XL158−166(EMQVLVSRI)(配列番号44)、Bcl−XL118−126(TAYQSFEQV)(配列番号43)、Bcl−XL173−182(YLNDHLEPWI)(配列番号42)、Bcl−XL165−174(RIAAWMATYL)(配列番号45)、Bcl−XL169−178(WMATYLNDHL)(配列番号46)、Bcl−XL161−170(VLVSRIAAWM)(配列番号48)、およびBcl−XL141−150(VAFFSFGGAL)(配列番号49))を合成し、種々の起点のHLA−A2+癌患者に由来するPBLを、これらのペプチドに対するELISPOTによって精査した。この方法は、癌患者の腫瘍特異的CTLを同定するために非常に有効であることが以前に示されている。実際、強く頻繁なCTL応答が、種々の起点の癌患者において試験したペプチドのうちの4つ(Bcl−XL173−182、Bcl−XL141−150、Bcl−XL161−170、およびBcl−XL165−174)に対して検出された(図6)。全体的には、18人のHLA−A2+乳癌患者のうちの15人が、これらの4個のBcl−Xペプチドのうち少なくとも1つに対して免疫応答を有していた(応答細胞は、10個の細胞あたり>25の抗原特異的細胞の平均数±標準偏差と定義する)。同様に、6人の試験した黒色腫患者のうちの4人、および2人の試験した膵臓癌患者のうちの1人は、これらの4つのペプチドの少なくとも1つに対して免疫応答を有していた。したがって、18人の試験した乳癌患者のうちの9人は、Bcl−XL173−181に対する免疫応答を有しており、一方、6人の試験したHLA−A2+黒色腫患者のうちの2人はこのペプチドに対する免疫応答を有していた(図6a)。18人の試験した乳癌患者のうちの4人はBcl−XL141−150に対する免疫応答を有しており、一方、本発明者らは、試験した2人の膵臓癌患者のうちの1人に由来するPBLにおいて応答を検出した。本発明者らは、試験した5人の黒色腫患者のいずれに由来するPBLにおいても、このペプチドに対する応答は検出できなかった(図6b)。同様に、本発明者らは、6人の乳がん患者、および1人の試験した膵臓癌患者に由来するPBLおいて、Bcl−XL161−170に対する応答を検出した(図6c)。最後に、4人の乳癌患者、2人の黒色腫患者、および1人の膵臓癌患者は、Bcl−XL165−174に対する応答を有していた(図6d)。対照として、12人の健常なHLA−A2+個体に由来するPBLを試験した。重要なことは、健常な個体のいずれにおいても、Bcl−XL173−182、Bcl−XL141−150、Bcl−XL161−170、またはBcl−XL165−174の全てに対する応答は検出されなかったことである(図6)。
【0149】
(PBL中でのBcl−X特異的Granzyme Bの放出)
GrB ELISPOTを使用して、本発明者らは、PBL中で検出されたBcl−X特異的T細胞が細胞傷害機能を示すかどうかを評価した。したがって、2人のBcl−X反応性乳癌の患者(pt.no.:35および36)に由来するPBLを、Bcl−XL173−182に対する反応性について分析した(図7)。いずれの患者においても、Bcl−XL173−182に対する応答を検出することができ、頻度は、3×10個の細胞あたり、約50〜100のペプチド特異的CTLであった。対照として、本発明者らは、IFN−γ ELISPOTにおいてBcl−XL141−150に対する応答だけではなく、Bcl−XL173−182に対しての応答も検出できなかった患者(pt.no.:17)を含めた。予想したとおり、Bcl−XL173−182に対するGrBの放出は、乳癌患者no.17においては検出されなかった。
【0150】
(Bcl−X特異的T細胞のFACS分析)
乳癌患者由来のPBL中のBcl−XL173−182特異的CTLの自発的な発生を、さらにFACS分析およびPro5(登録商標)MHC Pentamer染色を使用して評価した。乳癌患者no.36に由来するPBLを、エキソビボで1回、ペプチドで刺激し、CD8ポジティブ細胞を単離した。この培養物をHLA−A2/BCL−Xペンタマー複合体で染色した。FACS分析により、CD8T細胞の0.24%を構成するペンタマーポジティブT細胞の集団を容易に検出できることが明らかになった(図8a)。対照的に、同じCD8+T細胞は、ELISPOTによって分析すると、約1.4%のBcl−XL173−182特異的、IFN−γ分泌CD8T細胞を示した。
【0151】
(Bcl−X(L)に対する別のHLA−A2制限エピトープ)
本発明者らは、種々の起点のHLA−A2+癌患者に由来するPBLを、Bcl−XL118−126(TAYQSFEQV)(配列番号43)(図9a)およびBcl−XL169−178(WMATYLNDHL)(配列46)(図9b)に対して、ELISPOTによって精査して、種々の起点の癌患者において両方のペプチドに対する弱い自発的なCTL応答を同定した。
【0152】
(Bcl−X(L)に対するHLA−A3制限応答)
さらに、本発明者らは、主要なHLA−A3特異的アンカー残基を使用して推定のHLA−A3エピトープについて挿入されている領域(それぞれの末端に9個のアミノ酸を含む)を精査した。その後、本発明者らは2つのペプチド:Bcl−XL165−173(RIAAWMATY)(配列番号50)およびBcl−XL149−157(ALCVESVDK)(配列番号51)を合成した。次に、種々の起点のHLA−A3+癌患者に由来するPBLを、Bcl−XL165−173(RIAAWMATY)(配列番号50)およびBcl−XL149−157(ALCVESVDK)(配列番号51)ペプチドに対して、ELISPOTによって精査した。この方法は、癌患者の腫瘍特異的CTLを同定するために非常に有効であることが以前に示されている。実際、強く頻繁なCTL応答が、種々の起点の癌患者においてBcl−XL165−173(RIAAWMATY)(配列番号50)に対して検出された。本発明者らは、5人の試験した乳癌患者のうちの4人において、HLA−A3+PBL中でBcl−XL165−173に対する応答を検出することができ(応答細胞は、10個の細胞あたり>25の抗原特異的細胞の平均数±標準偏差と定義する)、4人の試験した黒色腫患者のうちの4人、および2人の試験した膵臓癌患者のうちの2人、さらには、4人の試験した多発性骨髄腫患者のうちの1人において、HLA−A3+PBL中でBcl−XL165−173に対する応答を検出することができた(図10)。重要なことは、本発明者らによっては、対照として本発明者らが試験した7人のHLA−A3+である健常な個体のいずれにおいても、応答は検出されなかったことである(図10)。
【0153】
(実施例4 癌患者におけるMcl−1の免疫原性)
(概要)
ここでは、本発明者らは、Mcl−1が癌患者においてT細胞認識についての標的であることを明らかにする。したがって、本発明者らは、Mcl−1に由来するペプチドエピトープに対する自発的に生じるHLA−A1およびHLA−A3制限細胞傷害性T細胞応答を、ELISPOTによって記載する。
【0154】
(序論)
骨髄性細胞因子−1(Mcl−1)は、初期の単球の分化において発現され、そして未熟な骨髄性細胞へのトランスフェクションの際の生存を促進することができる、Bcl−2ファミリーの死亡を阻害するメンバーである。トランスジェニックマウスにおいては、Mcl−1は広い範囲の造血性の細胞型においては生存性を、そして骨髄性細胞の不死化を促進する。高いレベルのMcl−1は、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、乳癌、卵巣癌患者、および子宮頸部癌、さらには、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)を含む多数のヒトの癌について、さらには、AMLおよびALLにおいては再発の際に、報告されている。B−CLL患者においては、高いレベルのMcl−1は単独療法後には完全な緩解を得ることができないことと強く関係している。多発性骨髄腫においては、Mcl−1は、悪性細胞の生存において重要な役割を果たしている。これに関しては、その自身のプロモーターの制御下でmcl−1トランス遺伝子を発現するマウスが、高い頻度でB細胞新生組織形成を生じ、これは濾胞性リンパ腫からびまん性大細胞型リンパ腫にまでの範囲に及ぶことが明らかにされている。
【0155】
(Mcl−1に対するHLA−A3制限応答)
Mcl−1が癌患者においてT細胞についての自然界での標的であるかどうかを調べるために、本発明者らは、主要なHLA−A3特異的アンカー残基を使用して、最も可能性の高いHLA−A3ノナマーのペプチドエピトープおよびデカマーのペプチドエピトープについてのタンパク質配列を試験した。その後、本発明者らは6個のMcl−1推定ペプチド(Mcl−1185−194(YLREQATGAK)(配列番号52)、Mcl−1293−302(SITDVLVRTK)(配列番号53)、Mcl−1267−276(LISFGAFVAK)(配列番号54)、Mcl−195−103(RLLFFAPTR)(配列番号55)、Mcl−1300−308(RTKRDWLVK)(配列番号56)、Mcl−1236−244(DIKNEDDVK)(配列番号57))を合成し、種々の起点のHLA−A3+癌患者に由来するPBLを、ELISPOTアッセイを利用して、これらのペプチドに対する反応性について精査した。この方法は、癌患者の腫瘍特異的CTLを同定するために非常に有効であることが以前に示されている。実際、強く頻繁なCTL応答が、種々の起点の癌患者において、2つのMcl−1由来ペプチドに対して検出された(Mcl−195−103およびMcl−1300−108)(図11)。全体的には、6人の試験したHLA−A3+乳癌患者のうちの5人が、これらの2つのMcl−1ペプチドのうちの1つに対して免疫応答を有していた。したがって、5人の乳癌患者は、Mcl95−103に対する応答を有しており(応答細胞は、10個の細胞あたり>25の抗原特異的細胞の平均数±標準偏差と定義する)、3人の患者はMcl−1300−308に対する応答を有していた(図11)。さらに、2人の試験したHLA−A3+膵臓癌患者のうちの2人は、Mcl−195−103ペプチドに対して免疫応答を有しており、一方、これらのうちの1人は、Mcl−1300−308に対しても免疫反応を有していた。さらに、本発明者らは、B−CLLに罹患している6人の患者に由来するPBLを試験し、これらの患者のうちの2人においてMcl−195−103に対する応答を同定した。対照として、10人の健常なHLA−A3+個体に由来するPBLを試験した。重要なことは、健常なドナーのいずれにおいても、Mcl−195−103またはMcl−1300−308のいずれに対しても応答は検出されなかったことである(図11)。同様に、癌患者または健常な対照のいずれにおいても、別の4個のMcl−1に由来するペプチドのいずれに対する応答も検出されなかった(データは示さない)。
【0156】
(Mcl−1に対するHLA−A1制限応答)
Mcl−1が癌患者においてT細胞についての自然界での標的であるかどうかを調べるために、本発明者らは、主要HLA−A1特異的アンカー残基を使用して、最も可能性の高いHLA−A1ノナマーのペプチドおよびデカマーのペプチドエピトープについてのタンパク質配列を試験した。その後、本発明者らは4個のMcl−1推定ペプチド(Mcl−1166−175(PAEEEEDDLY)(配列番号58)、Mcl−1121−129(SPEEELDGY)(配列番号59)、Mcl−1177−185(QSLEIISRY)(配列番号60)、Mcl−1339−347(AGVGAGLAY)(配列番号61))を合成し、種々の起点のHLA−A1+癌患者に由来するPBLを、ELISPOTアッセイを利用して、これらのペプチドに対する反応性について精査した。実際、CTL応答が、種々の起点の癌患者において、2つのMcl−1由来ペプチドに対して検出された(Mcl−1166−175およびMcl−1177−185)(図12)。全体的には、4人の試験したHLA−A1+乳癌患者のうちの3人が、Mcl−1177−185に対する応答を有しており、そのうちの1人はさらに、Mcl−1166−175に対する応答も有していた(図12)。さらに、7人の黒色腫患者のうちの1人は、Mcl−1177−185ペプチドに対する免疫応答を有しており、それ以外の患者は、Mcl−1166−175に対する応答を有していた。対照として、6人の健常なHLA−A1+個体に由来するPBLを試験した。重要なことは、健常なドナーのいずれにおいても、Mcl−1166−175ペプチドまたはMcl−1177−185ペプチドのいずれに対する応答も検出されなかったことである(図12)。
【0157】
(修飾されたペプチド応答)
HLA−A3制限ペプチドMcl−1300−308の免疫原性は、より良好なHLA−A3アンカー残基、すなわちロイシンで2位のスレオニンを置き換えることによって(Mcl−1300−300L2(RLKRDWLVK)(配列番号62))高くなった。Mcl−1300−308L2に対する自発的な免疫応答は、2人の乳癌患者において検出された(データは示さない)。同様に、より免疫原性の高いエピトープを作成するために、本発明者らは、HLA−A1制限ペプチドMcl−1177−185(QSLEIISRY)(配列番号60)の3位を修飾して、2つのペプチドMcl−1177−185D3(QSDEIISRY)(配列番号63)およびMcl−1177−185E3(QSEEIISRY)(配列番号64)を作成した。
【0158】
(考察)
ほぼ全ての悪性腫瘍は、アポトーシスの情報伝達の障害によって特徴づけられる。これにより悪性腫瘍細胞は、内因性のアポトーシスの刺激、さらには、外因性の刺激、例えば、化学療法薬および放射線に対して耐性となる。ヒトの癌において見られるアポトーシスの障害は、多くの場合は、Bcl−2タンパク質ファミリーの抗アポトーシス性タンパク質、すなわち、Bcl−2、Bcl−X、およびMcl−1、Bcl−w、Bfl−1A1、Bcl−b、およびBcl2−L−10の過剰発現の結果生じる。このようなアポトーシスタンパク質の阻害因子をワクチン接種の目的のために使用することは、免疫回避のいくつかの形態としてのこれらのタンパク質のダウンレギュレーションまたはその発現の欠損が持続的な腫瘍の増殖を損なうので有効である。この理由は、腫瘍細胞の生存にはBcl−2ファミリーの機能的に活性なメンバーが必要であることである。治療ストラテジーについては、腫瘍細胞の増殖および生存、抗原欠損腫瘍の選択に関係して重要ではない役割を担っている抗原の標的化が、周知の限界である。さらに、Bcl−2ファミリーのタンパク質の細胞中での高い発現が薬剤耐性に関係しているので、Bcl−2ファミリーベースの免疫療法の細胞傷害性化学療法との組み合わせは、非常に期待される癌の処置のための新しい方法である。
【0159】
本発明者らは、Bcl−2、Bcl−X(L),およびMcl−1タンパク質をペプチド結合モチーフの存在についてスキャンし、これらを癌患者の特異的T細胞応答を検索するために使用した。この目的のため、無関係な腫瘍型、すなわち、膵臓癌、乳癌、黒色腫AMLおよびCLLに罹患している患者におけるBcl−2ファミリーの全てのメンバーに対する自発的なT細胞反応性を、ELISPOTによって検出した。癌患者に由来するPBL中にBcl−X特異的CD8+細胞が存在することを、CD8/ペンタマーFACS染色によって確認した。まとめると、これらのデータは、CTLによって定義されるこれらのタンパク質に由来するエピトープは、癌に対する治療用ワクチンにおいて広く適用することができ、したがって、免疫療法において実質的な有用性があることを示している。
【0160】
さらに、乳癌患者のうちの11人がBcl−2特異的CTLを有しており、これらの患者のうちの8人は少なくとも1つのタイプの化学療法で以前に処置されていた。2人の患者(pt.no.:14および17)においては、4つの異なるBcl−2ペプチドに対するCTL応答は検出できなかった。いずれの患者も、抗ホルモン療法を以前に施されていたが、化学療法は受けていなかった。同様に、本発明者らは、化学療法の前の原発性の限局性の乳癌を有している患者においてもいずれの応答も検出することはできなかった。したがって、乳癌患者においては、Bcl−2応答は、化学療法を施された患者においてしか検出されなかった。腫瘍の負荷は重要な役割を果たしている可能性があるが、これは、免疫応答が、処置によって誘導されたBcl−2発現の増大の結果として導入されるかまたは増大させられることを示している。これは、Bcl−2ファミリーベースの免疫療法の細胞傷害性化学療法との組み合わせによって現在の応答率が相乗的に改善するであろうとのシナリオを指摘している。Bcl−X(L)およびMcl−1応答について試験した患者の処置状態は入手できなかった。
【0161】
本研究においては、本発明者らは、CrB ELISPOTアッセイを利用して、患者のPBL中のBcl−2またはBcl−X(L)特異的CTLが実際に細胞傷害性であるエフェクター細胞であることを明らかにした。さらに、この考えを証明するために、本発明者らは患者のPBLに由来するBcl−2反応性T細胞を富化させ、得られたT細胞株が従来の51Cr放出アッセイにおいてペプチドでパルスされたT2細胞を溶解させることができることを示した。さらに、このBcl−2反応性T細胞株は、HLA適合性乳癌細胞株を死滅させることができたが、一方、HLA−A2ネガティブ標的細胞は死滅させることはできなかった。これらの発見は、癌細胞が、実際にHLA−A2分子の状況においてBcl−2ペプチドをプロセシングして、これを呈することを示している。最後に、本発明者らは、これらの単離された細胞をクローニングすることができ、これらがBcl−2ペプチドエピトープに対して極めて特異的に反応することを示した。
【0162】
メラニン形成細胞分化抗原に由来するペプチドを、メラニン形成細胞の崩壊の加速を導くことができると想定される第IV期の黒色腫(これは、次いで、臨床症状、すなわち、白斑または網膜炎を呈する、)の患者を処置するために最初に使用した。しかし、臨床試験により、ワクチン接種を受けた患者における白斑の発症が、他の形態の治療を受けた患者における黒色腫に伴う低色素沈着の発症よりも明らかに高くはないことが明らかになった。さらに、重症の副作用は、自己抗原に対する種々のワクチン接種試験においては報告されなかった。本発明者らのデータは、まとめると、Bcl−2ファミリーのタンパク質のグループに対する細胞性の免疫応答が癌の一般的な特徴であることを証明している。免疫療法の効果を最大にするための試みにおいては、処置される特定の疾患、疾患段階において選択される標的の発現プロフィールおよび予後的意義を考慮するための、興味深いストラテジーが存在する。したがって、Bcl−2、Mcl−1、およびBcl−Xの同時発現がいくつかの癌または特定の疾患段階において見られるが、他の癌は1つのタンパク質または他のタンパク質の排他的な発現を示す。したがって、卵巣癌のようないくつかの疾患においてはMcl−1の発現は、Bcl−2とは異なり、進行期に付随し、Mcl−1が自己抗原であり得るという理由のために生存性が低く、一方、Bcl−2とMcl−1が同時に過剰発現されるCLLのような疾患においては、両方のタンパク質を同時に標的化することは、いずれかの分子のみを標的化するよりもはるかに有効なストラテジーを示す。同様に、Tanaka et al.,には、乳癌におけるアポトーシスタンパク質の別の阻害因子であるサービビンの存在が、Bcl−2の発現と、そしてアポトーシス指数(AI)の低下、および全体的な低い生存性に強く関係していることが記載されている。サービビンとBcl−2との間での同様の会合は、神経芽細胞種、胃癌、結腸直腸癌、および高悪性度の非ホジキンリンパ腫において記載されている。癌に対する治療用ワクチンにおけるサービビンに由来するペプチドの安全性と潜在的な効力は、現在、第I/II期の臨床試験において研究されている(J.Becker,個人的な連絡)。したがって、期待される免疫療法のストラテジーは、特に、Bcl−2タンパク質ファミリーとサービビンの両方を標的化することであり、その理由は、これらが種々の細胞性の経路を通じて抗アポトーシス性の機能を実行するからである。
【0163】
(実施例5 ペプチドワクチン)
Bcl−2タンパク質ファミリーのペプチドは、例えば、合成(例えば、遊離のアミドNH末端と遊離酸COOH末端を用いて、UVA Biomolecular Core Facilityで)することができる。それぞれは、凍結乾燥させられたペプチドとして提供され、これは次いで、滅菌水中で再構成され、緩衝液としての乳酸加リンガー液(LR,Baxter,Healthcare,Deerfield,IL)で、67〜80%の最終水中乳酸加リンガー濃度になるように希釈される。これらの溶液は、次いで、滅菌濾過され、ホウケイ酸塩ガラスバイアルに入れられ、IND6453に規定されたFDAガイドラインにしたがって、実体、滅菌性、一般的な安全性、および純度の確認を含む一連の品質保証試験について検討される。ペプチドの安定性試験は、これらのペプチドを−20℃で3年間保存した際には、純度、またはペプチドの濃度の低下は示さなかった。
【0164】
実際の環境では、患者には、約100μgのクラスI HLA制限ペプチドを、クラスII HLA制限ヘルパーペプチドとともに、またはそれを伴わずに含むワクチンが投与される。患者は、例えば、アジュバント中の約100μgのクラスI HLAペプチドのみでワクチン接種されるか、または、例えば、約100μgのHLAクラスI制限ペプチドと190μgのクラスII制限ヘルパーペプチドでワクチン接種される。等モル量のヘルパーと細胞傷害性エピトープを提供するためには、高用量のヘルパーペプチドが計算される。さらに、患者に、両方のペプチドのアミノ酸配列を含むより長いペプチドをワクチン接種することもできる。
【0165】
上記のペプチドは、1mlの水溶液中で、約100μgのQS−21とともに溶液/懸濁液として、または約1mlのモンタナイドISA−51アジュバントとともにエマルジョンとしてのいずれかで、投与することができる。
【0166】
患者は、例えば、0日目、および1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、および12ヶ月目に、ペプチドとアジュバントで、全部で7回の免疫で、免疫することができる。まれな例外を除いて、ワクチン接種は、それぞれのワクチンについて同じ腕に投与される。ペプチドは、好ましくは、s.c.で投与される。
【0167】
(参考文献)
【0168】
【表5】

【0169】
【表6】

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するための、Bcl−Xタンパク質に由来する最大15アミノ酸を含む単離された免疫原性活性のあるペプチドであって、YLNDHLEPWI(配列番号42)、RIAAWMATYL(配列番号45)、VLVSRIAAWM(配列番号48)、およびVAFFSFGGAL(配列番号49)からなる群より選択される配列を含む、ペプチド。
【請求項2】
以下の特徴:
(i)クラスI HLA分子の最大回復量の半分を回復し得るペプチドの量(C50値)によって測定される親和性で制限される、クラスI HLA分子に結合する能力、であって、該C50値は、アセンブリ結合アッセイによって決定した場合に、最大50μMである、能力
(ii)ELISPOTアッセイによって決定した場合に10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度で、癌患者のPBL集団中にIFN−γを産生する細胞を誘発する能力、および/または
(iii)エピトープペプチドと反応するCTLを、腫瘍組織中においてインサイチュで検出する能力
のうちの少なくとも1つを有するMHC クラスI制限ペプチドである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
最大30μMであるC50値を有する、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
最大20μMであるC50値を有する、請求項に記載のペプチド。
【請求項5】
最大10μMであるC50値を有する、請求項に記載のペプチド。
【請求項6】
癌患者において細胞性免疫応答を誘発し得る、請求項1〜5のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
MHCクラスI HLA−A分子またはMHCクラスI HLA−B分子によって制限される、請求項1〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11、およびHLA−A24からなる群より選択されるMHCクラスI HLA−A種によって制限される、請求項に記載のペプチド。
【請求項9】
HLA−A2によって制限される、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27、およびHLA−B51からなる群より選択されるMHCクラスI HLA−B種によって制限される、請求項7に記載のペプチド。
【請求項11】
ノナペプチドまたはデカペプチドである、請求項1〜10のいずれかに記載のペプチド。
【請求項12】
10個のPBLあたり少なくとも10個の頻度で癌患者のPBL集団中にINF−γを産生する細胞を誘発することができる、請求項11のいずれかに記載のペプチド。
【請求項13】
Bcl−タンパク質が発現される癌疾患を有する患者のPBL集団においてIFN−γを産生する細胞を誘発し得る、請求項11のいずれかに記載のペプチド。
【請求項14】
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1〜14のいずれかに記載のBcl−に由来する単離された免疫原性活性のあるペプチドまたは該ペプチドをコードする核酸を含む、ワクチン組成物であって、該ペプチドが、以下の特徴:
(i)クラスI HLA分子の最大回復量の半分を回復し得るペプチドの量(C50値)によって測定される親和性で制限される、クラスI HLA分子に結合する能力、であって、該C50値は、アセンブリ結合アッセイによって決定した場合に、最大50μMである、能力
(ii)ELISPOTアッセイによって決定した場合に10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度で、癌患者のPBL集団中にIFN−γを産生する細胞を誘発する能力、および/または
(iii)エピトープペプチドと反応するCTLを、腫瘍組織中においてインサイチュで検出する能力
のうちの少なくとも1つを有するMHC クラスI制限ペプチドである、ワクチン組成物。
【請求項16】
前記ワクチンが、ワクチン接種した患者において癌細胞に対して細胞傷害性作用を有するエフェクターT細胞の産生を誘発する、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
アジュバントを含む、請求項1516のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項18】
MHCクラスI HLA−B分子によって制限されるペプチドと組み合わせて、MHCクラスI HLA−A分子によって制限されるペプチドを含む、請求項1517のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記アジュバントが、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、およびイミダゾキニリンからなる群より選択される、請求項1518のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項20】
請求項1519のいずれかに記載のワクチン組成物と、さらなる抗癌剤とを含む、キット。
【請求項21】
前記抗癌剤が抗体である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記抗癌剤がサイトカインである、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
癌疾患の処置または予防のための医薬の製造における、請求項1〜14のいずれかに記載のペプチドまたは請求項15〜19のいずれかに記載のワクチン組成物の使用
【請求項24】
前記処置される疾患が、Bcl−タンパク質ファミリーのメンバーが発現される癌疾患である、請求項23に記載の使用
【請求項25】
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、請求項2324のいずれかに記載の使用
【請求項26】
さらなる癌の処置と併用される、請求項2425のいずれかに記載の使用
【請求項27】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫賦活性物質での処置、遺伝子治療、抗体での処置、および樹状細胞を用いる処置からなる群より選択される、請求項26に記載の使用
【請求項28】
癌疾患の処置または予防のための医薬として使用するための請求項1〜14のいずれかに記載のペプチドまたは請求項1519のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記癌疾患が、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病を含む造血器悪性腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮頸部癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、ならびに前立腺癌からなる群より選択される、請求項28に記載のペプチドまたはワクチン組成物。
【請求項30】
前記処置がさらなる癌の処置と併用される、請求項28に記載のペプチドまたはワクチン組成物。
【請求項31】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫賦活性物質での処置、遺伝子治療、抗体での処置、および樹状細胞を用いる処置からなる群より選択される、請求項30に記載のペプチドまたはワクチン組成物。
【請求項32】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−246496(P2011−246496A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−198605(P2011−198605)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−540170(P2006−540170)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(506168495)
【Fターム(参考)】