説明

BCR−ABLチロシンキナーゼ活性測定用試薬

【課題】
本発明は、CML患者の薬剤抵抗性を調べる際に有用な、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性検出用試薬と、それを用いた薬剤抵抗性の確認方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、BCR−ABLによってリン酸化される基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬。
本発明の試薬は、患者から採取される血液検体に含まれる微量の腫瘍細胞を用いてBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出することができる。またその検出は簡便迅速であり、かつ高感度で広いダイナミックレンジにおいて行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の化合物により修飾された、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬と、それを用いた慢性骨髄性白血病(CML)及び一部の急性リンパ性白血病(ALL)患者からの検体に含まれるチロシンキナーゼの薬物感受性を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病は、これを放置すると重大な合併症により死に至る血液腫瘍性疾患である。白血病の一種である慢性骨髄性白血病(CML)および一部の急性リンパ性白血病(ALL)においては、9・22番染色体の相互転座により生じる特徴的なフィラデルフィア(Ph)染色体転座によりbcr−abl融合遺伝子が形成され、この遺伝子から恒常的なチロシンキナーゼ活性をもつ細胞質タンパク質(BCR−ABL)が発現されること、そしてこのBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性によって種々のタンパク質がリン酸化されることが発症に関連していること、等が知られている。
【0003】
白血病の治療法としては、一般に、抗癌剤等の投与による薬学的治療又は造血幹細胞移植等の移植治療のいずれか、あるいはその両方が選択される。特に、CMLの薬学的治療は、2−フェニルアミノピリミジン系化合物であるチロシンキナーゼ阻害剤の投与を中心に行われており、現在では、登録商標名「イマニチブ」(imatinib、STI−571又は登録商標名グリーベック(Gleevec)とも呼ばれる)の投与が標準的な薬学的治療法となりつつある。
【0004】
イマニチブは、BCR−ABLのキナーゼドメインにおけるATP結合部位を標的とする、選択性の高い分子標的薬物の一種である。一般に、分子標的薬物の使用は、その特異性から高い安全性と効果が期待される、理想の治療法の一つである。しかし同時に、分子標的薬物の使用は、突然変異を有する標的分子を持つ患者に対してはその期待される薬効が発揮され難いという問題を伴うことが多く、イマニチブを代表とするBCR−ABLを標的分子とした2−フェニルアミノピリミジン系化合物であるチロシンキナーゼ阻害剤もその例外ではない。
【0005】
標準的な治療法であるイマチニブの投与によっても症状の改善を期待することが出来ない白血病患者にとって、イマニチブ以外の白血病治療薬の投与へと治療方針を速やかに変更すること、或いは白血病と診断された初期の段階から治療効果が望まれるイマニチブ以外の適切な薬物を選択して投与することは極めて重要であり、それは当該患者のイマニチブ耐性を検査することの重要性に通ずる。
【0006】
現在、白血病患者のイマニチブ耐性の検査は、主に、患者のbcr−abl遺伝子の塩基配列を決定してBCR−ABLの変異の種類を確認する方法(例えば非特許文献1)又はBCR−ABLの基質タンパク質であるCrkLのリン酸化をイムノブロッティングで検出する方法(例えば非特許文献2)によって、行われている。
【0007】
しかし、前記2つの方法は何れも比較的多量の検体(腫瘍細胞)を必要とする他に、感度やダイナミックレンジの点で十分とは言えないこと、さらにイムノブロッティングでは細胞の可溶化が必要であることから、再解析のためには採血や骨髄穿刺を繰り返す必要があること、などの問題が指摘されている。
【非特許文献1】Shahら、Cancer cell、2002年、第2巻、第2号、第117−125頁
【非特許文献2】ten Hoeveら、Cancer Res.、1994年、第54巻、第10号、第2563−2567頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、CML患者におけるBCR−ABLの薬剤抵抗性を調べる際に有用な、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬と、それを用いたBCR−ABLの薬剤抵抗性の確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、2種の蛍光マーカーで修飾したCrkLを基質としてBCR−ABLに作用させることによって、高感度かつ広いダイナミックレンジを伴って、BCR−ABL のチロシンキナーゼ活性を検出できることを見いだし、下記の各発明を完成した。
【0010】
(1)蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、BCR−ABLによってリン酸化される基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬。
【0011】
(2)前記基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる基質タンパク質又はその1〜222番目までのアミノ酸配列からなるペプチド断片である、(1)に記載の試薬。
【0012】
(3)前記タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片のN末端とC末端がそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、(1)又は(2)に記載の試薬。
【0013】
(4)蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子が、前記タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片のN末端及びC末端に融合タンパク質として連結された蛍光タンパク質である、(1)〜(3)に記載の試薬。
【0014】
(5)蛍光タンパク質が、GFP、eGFP、YFP、CFP、DsRed及びそれらの変異体よりなる群から選ばれる蛍光タンパクである、(4)に記載の試薬。
【0015】
(6)前記融合タンパク質が、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、(4)又は(5)に記載の試薬。
【0016】
(7)チロシンキナーゼ阻害剤と請求項1〜6の何れかに記載の試薬と患者から採取された検体とをインキュベートする工程、及び前記試薬からの蛍光発光を検出する工程を含む、前記検体に含まれるチロシンキナーゼの前記阻害剤に対する抵抗性を確認する方法。
【0017】
(8)蛍光発光が、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子間における蛍光共鳴エネルギー移動により生ずる蛍光発光である、(7)に記載の方法。
【0018】
(9)検体が腫瘍細胞であり、インキュベートが当該腫瘍細胞の内部で行われる、(7)又は(8)に記載の方法。
【0019】
(10)試験化合物の存在下で請求項1〜6の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程、及び前記試薬からの蛍光発光を測定する工程を含む、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害剤をスクリーニングする方法。
【0020】
(11)試験化合物の存在下で請求項1〜6の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程が、BCR−ABLを発現することのできる細胞の内部で行われる、(10)に記載の方法。
【0021】
(12)SH2ドメインを含むタンパク質とBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質の2種のタンパク質からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬であって、前記2種のペプチドがそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子により修飾されていることを特徴とする、前記試薬。
【0022】
(13)前記SH2ドメインを含むタンパク質及び前記被リン酸化部位を含むタンパク質がいずれも配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、(12)に記載の試薬。
【0023】
(14)前記SH2ドメインを含むタンパク質が配列番号9に示されるアミノ酸配列からなる、(12)に記載の試薬。
【0024】
(15)前記被リン酸化部位が配列番号2に示されるアミノ酸配列の204〜211番目のアミノ酸配列である、(12)〜(14)の何れかに記載の試薬。
【0025】
(16)蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子が、前記SH2ドメインを含むタンパク質のN末端と前記被リン酸化部位を含むペプチドのC末端に融合タンパク質として連結された異なる蛍光タンパク質である、(12)〜(15)の何れかに記載の試薬。
【0026】
(17)蛍光タンパク質が、GFP、eGFP、YFP、CFP、DsRed及びそれらの変異体よりなる群から互いに異なって選ばれる蛍光タンパクである、(16)に記載の試薬。
【0027】
(18)チロシンキナーゼ阻害剤と請求項12〜17の何れかに記載の試薬と患者から採取された検体とをインキュベートする工程、及び前記試薬からの蛍光発光を検出する工程を含む、前記検体に含まれるチロシンキナーゼの前記阻害剤に対する抵抗性を確認する方法。
【0028】
(19)蛍光発光が、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子間における蛍光共鳴エネルギー移動により生ずる蛍光発光である、(18)に記載の方法。
【0029】
(20)検体が腫瘍細胞であり、インキュベートが当該腫瘍細胞の内部で行われる、(18)又は(19)に記載の方法。
【0030】
(21)試験化合物の存在下で(12)〜(17)の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程、及び前記試薬からの蛍光発光を測定する工程を含む、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害剤をスクリーニングする方法。
【0031】
(22)試験化合物の存在下で(12)〜(17)の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程が、BCR−ABLを発現することのできる細胞の内部で行われる、(21)に記載の方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明の試薬は、患者から採取される血液検体に含まれる微量の腫瘍細胞を用いてBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出することができる。またその検出は核酸の塩基配列決定やイムノブロッティングなどのような多段各かつ複雑な工程を必要とせず簡便迅速であり、かつ高感度で広いダイナミックレンジにおいて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、BCR−ABLによってリン酸化される基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬に関する。
【0034】
本発明の試薬は、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾されている。蛍光共鳴エネルギー移動(Fluoreacense Resonance Energy Transfer、以下FRETと表す)は、電子励起状態の異なる2種以上の分子間の相互作用であり、一方の分子(ドナー分子)が外部の光源による励起の後、他方の分子(アクセプター分子)にそのエネルギーが転移される現象である。
【0035】
一般的に、FRETを利用する場合、ドナー分子とアクセプター分子は互いに異なる分子が使用される。この場合において、FRETはアクセプターの増感蛍光の出現によって、またはドナー分子からの蛍光消光によって検出され得る。また、FRETを達成するためには、ドナー分子は、光を吸収するとともにアクセプター分子に対して励起された電子の共鳴を通じて転移させることのできる分子であることが必要である。さらに、FRETを生じさせるために、ドナー分子の発光波長はアクセプター分子の励起波長よりも低いことが必要である。
【0036】
本発明における2種以上の分子は、上記の条件を満たすFRETを可能とするドナー分とアクセプター分子の組合せとして選択され、使用される。かかるドナー分子とアクセプター分子としては、一般的にはいずれも蛍光色素が選択される。
【0037】
本発明における好適なドナー分子とアクセプター分子は、例えばカルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5,6−カルボキサミドヘキサン酸又はフルオレセインイソチオシアネート等のフルオレセイン、Alexa Fluor 488又はAlexa Fluor 594等のAlexa Fluor色素、Cy2、Cy3、Cy5又はCy7などのシアニン色素、クマリン、R−フィコエリトリン、アロフィコエリトリン、XL665などの修飾アロフィコシアニン、テキサスレッド、プリンストンレッド、フィコビリプロテイン、ユーロピウムクリプテート、XL665、アビジン、ストレプトアビジン、ローダミン、エオシン、エリスロシン、ナフタレン、ピレン、ピリジルオキサゾール、ベンゾオキサジアゾールおよびスルホインドシアニン、それらの誘導体又はそれらの複合体等を挙げることができる。本発明においては、これらに代表されるドナー分子とアクセプター分子の中からFRETを可能とする上記の要件を満たす組合せを選択して使用すればよい。
【0038】
本発明で使用される前記分子の適当な組合せの例としては、ローダミンBスルホニルクロリドおよびフルオレセインマレイミド、N−ヨードアセチル−N′−(5−スルホ−1−ナフチル)エチル−エンジアミン(1,5−IAEDANS)又はヨードアセトアミドとスシンイミジル6−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサノエート(NBD−X,SE)、(ジエチルアミノ)クマリン(DEAC)又はN−メチル−アントラニロイルデオキシグアニンヌクレオチド(例えばMantdGDP又はMantdGTP)とsNBD(スクシンイミジル6−[(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]ヘキサノエート)などを挙げることができる。
【0039】
また、基質タンパク質を効率的に修飾するために、前記分子はアミンまたはチオール反応性試薬、例えばイソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アルキル、ハロアセトアミド、マレイミド、アジリジン、またはエポキシドの形態を有することが好ましく、それぞれによるBCR−ABLの基質タンパク質の修飾は、分子毎に当業者に知られたタンパク質の化学修飾法に従って行えばよい。
【0040】
また本発明では、FRETを可能とする2種以上の分子として、いわゆる蛍光タンパク質を使用することができる。本発明においては種々の生物由来の蛍光タンパク質を利用することができるが、特に発光クラゲの一種であるイクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する蛍光タンパク質、いわゆるGFP(Green Fluorescent Protein)とその変異体の使用が好ましい。
【0041】
GFPは、395nmに励起極大を示す励起スペクトルと509nmに発光極大を示す発光スペクトルを有し、緑色に発光するタンパク質である(Chalfieら、Science、1994年、第263巻、第802−805頁)が、特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換させた、GFPとは異なる励起・発光極大を有する人為的変異体であるBFP(Heimら、1994年、Proc.Nat1.Acad.Sci.USA、第91巻、第12501−12504頁)、CFP(Heimら、Curr. Biol.、1996年、第6巻、第178−182頁)、YFP(Ormoら、1994年、Science、第273巻、第1392−1395)などが開発されている。また、それぞれの蛍光強度が高められたさらなる変異体も開発されている。さらに、発光クラゲとは異なる種由来の蛍光タンパク質としてDsRed(Terskikhら、2000年、Science、第290巻、第1585−1588頁)も単離されている。
【0042】
本発明の試薬においては、上記に例示される蛍光タンパク質の中から、前記のFRETを可能とする要件を満たす組合せを選択して使用することが好ましい。本発明の試薬において好ましい蛍光タンパク質の組合せは、CFP(ドナー分子)とYFP(アクセプター分子)である。
【0043】
FRETを生じさせるもう一つの条件は、ドナー分子とアクセプター分子の間の距離である。FRETの効率、つまりアクセプター分子からの発光強度乃至ドナー分子の蛍光消失の程度は、両分子間の距離の6乗に反比例し、一般的に100オングストローム以下、好ましくは50オングストローム以下であることが必要と考えられている。本発明では、この「距離」の問題は、BCR−ABLの基質タンパク質にFRETを可能とする2種以上の分子を結合させる、つまりFRETを可能とする2種以上の分子で修飾された、BCR−ABLの基質タンパク質を使用することで解決される。
【0044】
BCR−ABLは、先に述べたように、フィラデルフィア(Ph)染色体転座の結果として得られるbcr−abl融合遺伝子にコードされる、恒常的なチロシンキナーゼ活性をもつ細胞質タンパク質であり、生体内の種々のタンパク質を基質として認識してそのチロシン残基をリン酸化する、チロシンキナーゼ活性を有する。このBCR−ABLによってリン酸化される基質タンパク質の代表的な例が、CrkL(配列番号2)である。
【0045】
CrkLは、シグナル伝達タンパク質に多く見られるドメインの代表例であるSH2(Src相同性2)ドメインとSH3(Src相同性3)ドメインとを有するアダプタータンパク質である。SH2ドメインはリン酸化チロシンを含む配列を、SH3ドメインはプロリンに富む配列を認識する機能を有すると理解されている。また、CrkLの207番目のチロシン残基がBCR−ABLによってリン酸化される。
【0046】
意外なことに、FRETを可能とする2種以上の分子である2種の蛍光タンパク質(前記YFPとCFP)を融合させたCrkLをBCR−ABLでリン酸化し、これに励起光を照射することで、蛍光タンパク質間のFRETが観測されることが見いだされた。
【0047】
推論ではあるが、BCR−ABLによってリン酸化されたCrkLの207番目のチロシン残基をCrkLのSH2ドメインが認識して結合することで、CrkLのN末端とC末端に位置する2つの蛍光タンパク質が、FRETが可能となる距離内に近接するようになる結果、FRETが観察されるものと考えられる。
【0048】
さらに、CrkLをBCR−ABLの基質タンパク質として利用する場合において、非リン酸化部位である207番目のチロシン残基のC末端側のアミノ酸残基の殆どがトランケートされたペプチド断片、具体的にはCrkLの1〜222番目のアミノ酸残基からなるペプチド断片を用いることが好ましい。このペプチド断片の両末端に上記の蛍光タンパク質を融合させた融合タンパク質を用いた場合のBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性の検出感度は、CrkL全長の両末端に上記の蛍光タンパク質を融合させた融合タンパク質を用いた場合と比較して、33%程上昇する。
【0049】
また、CrkL全長又は前記ペプチド断片のC末端側に融合させる蛍光タンパク質のアミノ酸配列の順序を変更することでも、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性の検出感度が上昇することが見いだされた。具体的には、CFP(前記Heimら)の1〜172番目までのアミノ酸配列と173〜238番目までのアミノ酸配列を前後するように入れ替えた、すなわちCFPの173番目のアミノ酸が新たにN末端となり、172番目のアミノ酸が新たにC末端となる様にアミノ酸配列が入れ替えたCFPの変異体(以下、CFP変異体とする)を、CrkL全長又は前記ペプチド断片のC末端側に連結させた融合タンパク質とすることで、CrkL全長の両末端に上記の蛍光タンパク質を融合させた融合タンパク質を用いた場合と比較して検出感度が86%上昇する。
【0050】
この様に、本発明においてBCR−ABLの基質タンパク質としてCrkLを選択し、さらにFRETを可能とする2種以上の分子として蛍光タンパク質を選択して前記基質タンパク質に融合させた融合タンパク質を使用する場合の好ましい態様は、N末端から順に、YFP−CrkL−CFP(配列番号4)、YFP−CrkL−CFP変異体、YFP−CrkLの1〜222アミノ酸残基からなるペプチド断片−CFP(配列番号6)、及びYFP−CrkLの1〜222アミノ酸残基からなるペプチド断片−CFP変異体(配列番号8)という構成を有する融合タンパク質である。特に好ましい態様は、YFP−CrkLの1〜222アミノ酸残基からなるペプチド断片−CFP変異体(配列番号8)という構成を有する融合タンパク質である。なお、N末端とC末端に連結させる蛍光タンパク質は、相互に位置を入れ替えて使用してもよい。
【0051】
また本発明は、上記とは異なる別態様として、SH2ドメインを含むタンパク質とBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質の2種のタンパク質からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬であって、前記2種のタンパク質がそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子により修飾されていることを特徴とする、前記試薬を提供する。ここで、SH2ドメイン、BCR−ABL、及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を可能とする分子については、先に説明したとおりである。
【0052】
上記別態様におけるSH2ドメインを含むペプチドとBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質は、いずれも配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、すなわちCrkLか、又はその非リン酸化部位である207番目のチロシン残基のC末端側のアミノ酸残基の殆どがトランケートされたペプチド断片、具体的にはCrkLの1〜222番目のアミノ酸残基からなるペプチド断片であってよい。
【0053】
すなわち、上記別態様は、アミノ酸配列レベルでは同一であるが、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子により修飾された点で相違する2種のタンパク質からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬に関する。
【0054】
この態様における好ましい例は、上記に説明したFRETのドナー分子で修飾されたCrkLとアクセプター分子で修飾されたCrkLからなる試薬、FRETのドナー分子で修飾された前記ペプチド断片とアクセプター分子で修飾された前記ペプチド断片とからなる試薬である。特に、YFPとCrkLとの融合タンパク質とCrkLとCFPとの融合タンパク質とからなる試薬、又はYFPと前記ペプチド断片との融合タンパク質と前記ペプチド断片とCFPとの融合タンパク質とからなる試薬が好ましい。
【0055】
さらに上記別態様は、実質的にSH2ドメインからなるタンパク質と、実質的にBCR−ABLによって認識されリン酸化される最小単位を構成するアミノ酸配列とからなるタンパク質の2種類のタンパク質からなり、前記タンパク質がそれぞれFRETを可能にする異なる分子で修飾されている、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬も提供する。
【0056】
この別態様における好ましい例は、上記に説明したFRETのアクセプター分子で修飾されたSH2ドメインからなるタンパク質とドナー分子で修飾されたBCR−ABLによって認識されリン酸化される最小単位を構成するアミノ酸配列からなるタンパク質とからなる試薬である。ここで実質的にSH2ドメインからなるタンパク質は、例えば配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり得、またBCR−ABLによって認識されリン酸化される最小単位を構成するアミノ酸配列は、CrkLの204〜211番目のアミノ酸配列であり得る。
【0057】
上記の別態様における特に好ましい態様は、YFPとSH2ドメインからなるタンパク質との融合タンパク質とCrkLの204〜211番目のアミノ酸配列からなるタンパク質とCFPとの融合タンパク質とからなる試薬、及びYFPとSH2ドメインからなるタンパク質との融合タンパク質とCrkLの204〜211番目のアミノ酸配列からなるタンパク質と前記CFP変異体との融合タンパク質である。
【0058】
上記に述べた本発明における試薬はいずれも、BCR−ABLの基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片、SH2ドメインを含むタンパク質、又はBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質を、遺伝子組み換え技術により作製し、これらを先に説明したFRETを可能とする分子を用いて修飾することにより製造することができる。あるいは、FRETを可能とする分子として蛍光タンパク質が選択される本発明の好ましい態様は、BCR−ABLの基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片、SH2ドメインを含むタンパク質、又はBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質を、当業者に広く知られた一般的な融合タンパク質の製造方法に従って作ることができる。
【0059】
基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片、SH2ドメインを含むタンパク質、又はBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質、あるいは本発明の好ましい態様である融合タンパク質(以下、本発明に係るタンパク質と表す)は、Molecular Cloning(Maniatis T.ら、a Laboratory Manual,Cold Spring harbor Laboratory,New York,1982年)その他の、遺伝子工学に関する実験操作法を紹介したマニュアルに記載された種々の方法を用いて、いわゆる組み換えタンパク質として製造することができる。
【0060】
典型的には、本発明に係るタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを構築し、適当な宿主に当該ベクターを組み込んで形質転換細胞を作製し、この細胞に本発明に係るタンパク質を発現させ、公知の方法によって本発明に係るタンパク質を回収し、さらに必要に応じて精製して使用すればよい。
【0061】
前記本発明に係るタンパク質をコードする核酸は、本願配列表に記載された塩基配列情報を基に、ホスホアミダイト法などの化学合成的手法により、あるいは市販のDNAシンセサイザー等を用いて製造することができる。また、CrkLや蛍光タンパク質は何れも公知のタンパク質であることから、これらタンパク質をコードする当業者が入手可能な核酸又はその核酸を含むベクター等から、PCRその他の方法によって適宜増幅して利用してもよい。
【0062】
前記本発明に係るタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。かかる発現ベクターは、前記本発明に係るタンパク質をコードする核酸の塩基配列の他に、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。
【0063】
遺伝子組み換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明に係るタンパク質をコードする核酸に付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させたりあるいは消失させたりすることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、当業者は本発明に係るタンパク質をコードする核酸を基に任意かつ容易に加工することができる。
【0064】
また本発明に係るタンパク質をコードする核酸を保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることが可能であるが、利用可能な市販の発現ベクターとしては、pET―23d(Novagen社製)、pET―28a(Novagen社製)、等を例示することができる。
【0065】
本発明に係るタンパク質をコードする核酸は、適当な発現プロモーターに連結させて使用することが好ましい。その様な発現プロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主がエシェリヒア属細菌、好ましくは大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主がバチルス属細菌、好ましくはB.subtillisである場合にはP43プロモーター,vegIプロモーター、xylose―inducible プロモーター、tetracycline inducible プロモーター等を挙げることができる。また、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーター、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。
【0066】
本発明に係るタンパク質は、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)やtBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の、有機化学的合成方法、あるいは市販されている適当なペプチド合成機を用いて製造することもできるが、遺伝子組換え技術によって、前記の核酸、特に発現ベクターに組み込まれたDNAを原核生物もしくは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた好適な発現系に導入することによって製造することが好ましい。
【0067】
宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌の他に、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、エルウニア(Erwinia)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ストレプトミセス(Streptomyces)属微生物、ザイモモナス(Zymomonas)属微生物、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母等の微生物を挙げることができる。またカイコなどの昆虫細胞、HEK293細胞、MEF細胞、Vero細胞、Hela細胞、CHO細胞、WI38細胞、BHK細胞、COS−7細胞、MDCK細胞、C127細胞、HKG細胞、ヒト腎細胞株等の動物細胞も利用可能である。
【0068】
宿主細胞に発現ベクターを導入する方法としては、前記のManiatis T.らを初めとする実験操作マニュアル書に記載されている方法、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等により行うことができる。Sf9やSf21等の昆虫細胞の利用については、バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、New York、1992年)やBio/Technology、1988年、第6巻、第47頁等に記載されている。
【0069】
本発明に係るタンパク質は、前記の発現ベクターを上記の宿主細胞内で発現させ、宿主細胞或いは培地から目的とするタンパク質を回収し、精製することによって得ることができる。タンパク質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
【0070】
なお、本発明におけるタンパク質は、そのN末端及び/又はC末端に、さらにCrkL以外の機能性タンパク質又はポリペプチドを付加させて作製してもよい。特にFLAGタグ、ヒスチジンタグ又はキチン結合配列のように、組み換えタンパク質の製造、特に組み換えタンパク質の精製を容易にする機能性ポリペプチドの利用が好ましい。
【0071】
本発明に係るタンパク質を他の機能性タンパク質やタグ等との融合タンパク質として発現させた場合には、その機能性タンパク質やポリペプチドに特徴的な精製法を採用することが好ましい。融合タンパク質は、適当なプロテアーゼ(トロンビン、トリプシン等)を用いて切断し、本発明のタンパク質を回収することができる。また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
【0072】
さらに本発明は、上記のいずれかの試薬とチロシンキナーゼ阻害剤と患者から採取された検体とをインキュベーションする工程、及び前記試薬からの蛍光発光を検出する工程を含む、前記検体に含まれるチロシンキナーゼの前記阻害剤に対する抵抗性を確認する方法を提供する。
【0073】
本発明の試薬は、先に説明した様に、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性により所定のチロシン残基がリン酸化されると、試薬に含まれる2種以上の分子は蛍光共鳴エネルギー移動が可能となる距離に接近する。ここに前記分子の一方(ドナー分子)に対する励起波長の光を照射することによってFRETが生じ、もう一方の分子(アクセプター分子)からの蛍光発光が観察される。例えば、本発明に係る好適な試薬である配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質を用いる場合、ドナー分子であるCFPの励起波長である440nmの光を照射することによって、アクセプター分子であるYFPから530nmの発光を測定する。
【0074】
この反応系において、BCR−ABLが含まれると想定される患者から採取された検体とチロシンキナーゼ阻害剤とを共存させると、チロシンキナーゼ阻害剤がBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を阻害し得るものである場合には、所定のチロシン残基のリン酸化が阻害される結果、FRETによる蛍光強度が減少あるいは観測されなくなる。したがって、このFRETを測定することで、患者から採取された検体に含まれると想定されるBCR−ABLが当該チロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性を示すか否かを確認することができる。
【0075】
本発明の方法は、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を直接測定することでBCR−ABLの薬剤への抵抗性を確認するため、任意の変異が生じたBCR−ABLであっても薬剤抵抗性の評価を行うことができる。また、bcr−abl遺伝子の塩基配列を解析する方法やイムノブロッティングを用いた方法では、それらの実施に際して10個又はそれ以上の腫瘍細胞が必要となるのに対して、本発明の方法の実施に必要とされる腫瘍細胞の数はわずかに10個程度で足り、よりも少ない検体量(細胞数)で実施可能である。
また、既存の方法、例えばイムノブロッティングを用いた方法におけるBCR−ABLの薬剤抵抗性を判定する際の、当該薬剤の有効濃度は、概ね1μM以上、特に10μM以上であるのに対して、本発明の方法は、薬剤の濃度が0.1μM以下であっても、また10μM以上であっても、その薬剤に対するBCR−ABLの抵抗性を判定することができる。このことは本発明の方法は、既存の方法よりも広いダイナミックレンジを有する方法として、既存の方法よりも定量的な情報を取得することが可能である点で有利な方法であることを意味する。
【0076】
本発明の方法は、患者から採取された検体中の腫瘍細胞から適当な方法によって細胞抽出液を調製し、これをBCR−ABLとして使用してもよい。また、細胞抽出液を調製する代わりに、本発明の試薬を検体中の腫瘍細胞に導入し、生きた腫瘍細胞内でBCR−ABLと反応させて、腫瘍細胞内でのFRETを観測ないし測定することもできる。本発明の試薬として好適な例として先に説明した融合タンパク質を使用する場合には、前記融合タンパク質をコードする核酸を含み、前記融合タンパク質を適当な条件下で発現することのできる発現ベクターを用いて腫瘍細胞を形質転換させ、前記融合タンパク質の発現を誘導することで、腫瘍細胞内でのFRETを観測ないし測定することができる。
【0077】
また本発明の試薬を用いることで、蛍光強度の変化からBCR−ABLの当該チロシンキナーゼ阻害剤に対する抵抗性を定量化することができる。このことは、チロシンキナーゼ阻害剤又はチロシンキナーゼ活性を阻害すると期待される物質のBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害作用を検出し、さらにはその阻害作用を定量化することもできることを意味する。この様に、本発明は、本発明に係る試薬を用いて、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害剤をスクリーニングする方法も提供するものである。
【0078】
本発明のスクリーニング方法は、必要とされる構成物が少なく、また反応も比較的単純な工程で終了するため、ハイスループットスクリーニング(HTP)への応用が可能であり、CMLやALLに対する治療薬の探索や開発に利用することができる。
【0079】
以下、非限定的な実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0080】
<実施例1>
(1)発現カセットを有するベクターの構築
EYFPの変異体であるVenusをコードする塩基配列を含むDNA(理化学研究所 宮脇敦史博士から譲渡を受けた)に対して、増幅後のDNA断片が、当該塩基配列の終止コドンが欠失され、かつ増幅後のcDNAの5’及び3’末端にそれぞれ制限酵素EcoRIとXhoIの認識配列が導入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いて、前記VenusをコードするDNAに対してPCR反応を行い、増幅DNA断片1を得た。
【0081】
また、ベクターpECFP−C1(Clontech社)のECFPをコードする領域に対して、増幅後のcDNAが、その5’及び3’末端にそれぞれ制限酵素NotIとBglIIの認識配列が導入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いて、前記ベクターpECFP−C1に対してPCR反応を行い、増幅DNA断片2を得た。
【0082】
前記増幅DNA断片1を、制限酵素EcoRIとXhoIで開環させた真核生物発現ベクターpCAGGS(Miyazakiら、Gene、1989年、第79巻、第2号、第269‐277頁)に組み換えて、pCAGGS−Venusを得た。さらにこのpCAGGS−Venusを制限酵素NotIとBglIIで開環させ、上記増幅DNA断片2を組み換えて、pCAGGS−Venus−ECFPを得た。
【0083】
(2)YFP−CrkL−CFY用発現ベクターの構築
CrkLの全長アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むベクターpCXN2−FLAG−CrkL(ロックフェラー大学Knudsen博士から分与を受けた)に対して、増幅後のcDNAが、当該塩基配列の終止コドンが欠失され、かつ5’及び3’末端にそれぞれ制限酵素XhoIとNotIの認識配列が導入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片3を得た。
【0084】
この増幅DNA断片3を、制限酵素XhoIとNotIで開環させたpCAGGS−Venus−ECFPに組み換えて、EYFPとCFPがそれぞれCrkLのN末端とC末端に連結された融合タンパク質を発現することのできるベクターpCAGGS−Venus−CrkL−ECFPを得た。以下、このベクターをpPickle_1.0と、またこれにコードされる融合タンパク質をPickles1.0と表す。
【0085】
(3)YFP−CrkL1〜222−CFP用発現ベクターの構築
CrkLの全長アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むベクターpCXN2−FLAG−CrkLに対して、増幅後のcDNAがCrkLの1〜222番目までのアミノ酸配列をコードし、かつ5’及び3’末端にそれぞれ制限酵素XhoIとNotIの認識配列が導入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片4を得た。
【0086】
この増幅DNA断片4を、制限酵素XhoIとNotIで開環させたpCAGGS−Venus−ECFPに組み換えて、EYFPとCFPがそれぞれCrkLの1〜222番目までのアミノ酸配列のN末端とC末端に連結された融合タンパク質を発現することのできるベクターpCAGGS−Venus−CrkL222−ECFPを得た。以下、このベクターをpPickle_2.0と、またこれにコードされる融合タンパク質をPickles2.0と表す。
【0087】
(4)YFP−Crkl222−CFP変異体用発現ベクターの構築
ベクターpECFP−C1(Clontech社)のECFPをコードする領域に対して、増幅後のcDNAが、当該領域の終止コドンが欠失され、かつ5’及び3’末端にそれぞれ制限酵素NotIとBglIIの認識配列が導入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いてPCR反応を行って増幅DNA断片5を得た。
【0088】
この増幅DNA断片5を、制限酵素NotIとBamHIで開環させた市販のクローニングベクターpBluescript SKII(+)(Stratagene社)に組み換えて、pBluescript−ECFPを得た。
【0089】
同様に、増幅後のcDNAが、その5’および3’末端にそれぞれ制限酵素BamHIとBglIIの認識配列が挿入された塩基配列を有するように設計合成されたプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片6を得、制限酵素BamHIとBglIIで開環させたpBluescript−ECFPに組み換えて、pBluescript−ECFP−ECFPを得た。
【0090】
さらに、YFPの変異体であるVenusに対して行われたNagaiらの方法(Nagai et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004年、第101巻、第29号、第10554−9頁)に従い、pBluescript−ECFP−ECFPを鋳型として、CFP変異体をコードする塩基配列及び5’並びに3’末端に制限酵素NotIとBglIIの認識配列が挿入された塩基配列を有するように設計・合成されたプライマーDNAを用いてPCR反応を行った。
【0091】
この方法により得られる塩基配列がコードするCFP変異体は、全238アミノ酸残基からなる変異前のCFPをCFP1−238と表すと、下記の通りとなる。
【0092】
Pickle2.1:CFP49−238・1−48
Pickle2.2:CFP157−238・1−156
Pickle2.3:CFP173−238・1−172
Pickle2.4:CFP195−238・1−194
Pickle2.5:CFP229−238・1−228
【0093】
なお、CFP49−238・1−48は、そのCFP変異体のアミノ酸配列が、変異前のECFPの49番目のアミノ酸から238番目のアミノ酸がN末端側となり、これに続いて変異前のECFPの1−48番目のアミノ酸配列がC末端部分のアミノ酸配列として連結されたアミノ酸配列であることを示す。その他のCFP変異体も、この表記に倣う。
【0094】
このようにして得たPickle2.1〜2.5をコードする増幅DNA断片を、制限酵素NotIとBglIIで開環させた発現ベクターpPickle2.0に組み換えて、それぞれpPickle2.1〜2.5を作製した。
【0095】
(5)BCR−ABL発現ベクターの構築
BCR−ABL全長の翻訳領域を含むcDNA(カリフォルニア工科大学Baltimore博士より分与を受けた)には、bcr−ablの開始コドンの5’側にEcoRIの認識配列、870−871番目のアミノ酸に相当する部位にHindIIIの認識配列、及び終止コドンの3’側にSpeIの認識配列が存在する。このcDNAをSpeIで消化し、dNTP存在下でDNAポリメラーゼI(Klenow酵素、Invitrogen社)を反応させて平滑末端化した後、HindIIIで消化して、cDNA断片(BCR−ABL(3’))を調製した。
【0096】
市販の発現ベクターpCMV−3Myc−2A(invitrogene社)をXhoIによる消化し、dNTP存在下でDNAポリメラーゼIによる平滑末端化を行い、さらにHindIIIによる消化を行って開環させた。この開環させた発現ベクターにBCR−ABL(3’)を組み換えて、pCMV−Myc−BCR−ABL(3’)を作製した。
【0097】
次に、BCR−ABL全長の翻訳領域を含むcDNAをEcoRIとHindIIIで消化して、BCR−ABLの翻訳領域の5’末端側の一部を含むcDNA断片(BCR−ABL(5’))を得た。このcDNA断片を、EcoRIとHindIIIで開環させたpCMV−Myc−BCR−ABL(3’)に組み換えて、pCMV−Myc−BCR−ABLを作製した。
【0098】
(6)遺伝子導入
293F細胞(Invirtogen社)をFree style 293 medium(同社)中で培養し、293fection(同社)に添付されたプロトコールに従って、pCMV−Myc−BCR−ABLとpPickle1.0〜2.5を導入し、前記培地中で24〜36時間インキュベーション後、遠心分離で細胞を回収した。細胞を可溶化バッファー(15mM NaCl、0.5% TritonX−100を含む20mMトリス塩酸緩衝液pH7.5)で溶解し、遠心分離後の上清をサンプルとして、分光光度計FP−750(日本分光社)を用いて、420nmの励起光により生じる蛍光発光(530nm)を測定した。蛍光強度の比較は、pPickle1.0〜2.5のみを導入した各コントロールとの間で行った。
【0099】
この結果、Pickle1.0、2.0及び2.3において、各コントロール細胞に対してBCR−ABL依存的な蛍光発光の上昇が確認された(図1)。特に、Pickle2.0ではコントロールに対して20%、Picle2.3ではコントロールに対して100%の上昇が見られた。また、Pickle1.0に対してPickle2.0は1.33倍、Pickle1.0に対してPickle2.3は1.86倍、それぞれ強度が上昇した。
【0100】
<実施例2>
実施例1の(6)と同様にして293F細胞にpCMV−Myc−BCR−ABLとpPickle2.0を導入して、前記培地中で24〜36時間培養した。BCR−ABLの発現量を導入するベクター量の調整を行うことによって段階的に調節し、それぞれのロットにおける蛍光発光を、(6)と同様にして測定した。また、各ロットの細胞抽出物を、SDSゲルを用いて電気泳動した後、抗CrkL抗体、抗リン酸化CrkL抗体(いずれもCell Signalling Technology社)及び抗c−Abl抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いてウエスタンブロッティングを行った。
【0101】
その結果、Pickle2.0からの蛍光発光は、BCR−ABLの容量に依存して上昇することが確認された(図2)。またこの蛍光発光の上昇とPickleのリン酸化に正の相関があることも確認された(図3)。
【0102】
<実施例3>
実施例1の(6)と同様にして293F細胞にpCMV−Myc−BCR−ABLとpPickle2.0を導入して、さらに所定量(0.01〜10μM)のイマニチブ(ノバルティス社から供与を受けた)を培地に添加して、24〜48時間培養を行った。各ロットにおける蛍光発光を、実施例1の(6)と同様にして測定した。また、実施例2と同様にしてウエスタンブロッティングを行った。
【0103】
その結果、Pickle2.0からの蛍光発光は、イマニチブの添加に対して時間依存的に抑制されること(図4)、イマニチブの容量依存的に抑制されること(図5)が確認された。一方、イムノブロッティングによるリン酸化されたPickleの量の検出では、高濃度(1〜10μM以上)のイマニチブにおいて確認可能であり(図6)、本発明の試薬を用いた検出がイムノブロッティング方よりも高感度であることが確認された。
【0104】
<実施例4>
BCR−ABL陽性であるヒト慢性骨髄性白血病由来K562細胞を、10%牛胎児血清を添加したRPMI1640培地(Sigma社)中で、37℃、5%CO下で24時間培養した後、NucleofectorT−020 SolutionV(Amaxa社)を用いてpPickle2.0を導入した。細胞を1μMのイマニチブを含む前記培地/ポリLリジンコートした35mmガラス底培養皿に移し、提示毎にタイムラプス顕微鏡で観察を行いながら、48時間インキュベートした。観察法およびFRETの計算は、Ohbaらの方法(EMBO J.、2003年、第22巻、第4号、第859−869頁)に従って行った。
【0105】
その結果、腫瘍細胞の内部におけるBCR−ABL、イマニチブ及びPickle2.0のインキュベーションにより、時間依存的にPickle2.0からの蛍光発光が低下することが確認された(図7)
【0106】
また、イマニチブの投与量を0.01〜10μMの範囲で段階的に変化させて上記と同様にしてインキュベーションした細胞から、(6)と同様にして細胞抽出液を調製し、抗CrkL抗体と抗リン酸化CrkL抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、リン酸化されたPickle2.0の検出量の低下は、イマニチブの濃度が10μMの場合において観察された(図8)。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】Pickle1.0、2.0及び2.3を用いてBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を測定したときの、各コントロール細胞に対する蛍光発光の上昇を示すグラフである。左図が蛍光スペクトルチャートを、右図が上昇率を数値化したグラフを示す。
【図2】Pickle2.0を用いたBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性測定における蛍光発光が、BCR−ABLの用量依存的に上昇することを示すグラフである。左図が蛍光スペクトルチャートを、右図が上昇率を数値化したグラフを示す。
【図3】Pickle2.0を用いたBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性測定において、BCR−ABLの用量依存的にリン酸化されたPickleが増加することを示す、ウエスタンブロッティングの結果である。
【図4】Pickle2.0を用いたBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性測定において、イマニチブの存在により時間依存的に蛍光発光が減少することを示すグラフである。左図が蛍光スペクトルチャートを、右図が減少率を数値化したグラフを示す。
【図5】Pickle2.0を用いたBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性測定において、イマニチブの用量依存的に蛍光発光が減少することを示すグラフである。左図が蛍光スペクトルチャートを、右図が減少率を数値化したグラフを示す。
【図6】Pickle2.0を用いたBCR−ABLのチロシンキナーゼ活性測定において、イマニチブの用量依存的にリン酸化されたPickleおよび内在性のCrkLが減少することを示す、ウエスタンブロッティングの結果である。
【図7】ヒト腫瘍細胞内にPickle2.0を発現させ、さらにイマニチブ投与したときに、イマニチブの用量依存的に蛍光発光が減少することを示す、タイムラプス顕微鏡による観察結果を示す写真(左図)と、減少率を数値化したグラフ(右図)である。
【図8】ヒト腫瘍細胞内にPickle2.0を発現させ、さらにイマニチブ投与したときに、イマニチブの用量依存的にリン酸化された内在性CrkL量が減少することを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、BCR−ABLによってリン酸化される基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬。
【請求項2】
前記基質タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる基質タンパク質又はその1〜222番目までのアミノ酸配列からなるペプチド断片である、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
前記タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片のN末端とC末端がそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子により修飾された、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項4】
蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子が、前記タンパク質又は被リン酸化部位を含むそのペプチド断片のN末端及びC末端に融合タンパク質として連結された蛍光タンパク質である、請求項1〜3に記載の試薬。
【請求項5】
蛍光タンパク質が、GFP、eGFP、YFP、CFP、DsRed及びそれらの変異体よりなる群から選ばれる蛍光タンパクである、請求項4に記載の試薬。
【請求項6】
前記融合タンパク質が、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項4又は5に記載の試薬。
【請求項7】
チロシンキナーゼ阻害剤と請求項1〜6の何れかに記載の試薬と患者から採取された検体とをインキュベートする工程、及び前記試薬からの蛍光発光を検出する工程を含む、前記検体に含まれるチロシンキナーゼの前記阻害剤に対する抵抗性を確認する方法。
【請求項8】
蛍光発光が、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子間における蛍光共鳴エネルギー移動により生ずる蛍光発光である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検体が腫瘍細胞であり、インキュベートが当該腫瘍細胞の内部で行われる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
試験化合物の存在下で請求項1〜6の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程、及び前記試薬からの蛍光発光を測定する工程を含む、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害剤をスクリーニングする方法。
【請求項11】
試験化合物の存在下で請求項1〜6の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程がBCR−ABLを発現することのできる細胞の内部で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
SH2ドメインを含むタンパク質とBCR−ABLによって認識される被リン酸化部位を含むタンパク質の2種のタンパク質からなる、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性を検出するための試薬であって、前記2種のペプチドがそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子により修飾されていることを特徴とする、前記試薬。
【請求項13】
前記SH2ドメインを含むタンパク質及び前記被リン酸化部位を含むタンパク質がいずれも配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の試薬。
【請求項14】
前記SH2ドメインを含むタンパク質が配列番号9に示されるアミノ酸配列からなる、請求項12に記載の試薬。
【請求項15】
前記被リン酸化部位が配列番号2に示されるアミノ酸配列の204〜211番目のアミノ酸配列である、請求項12〜14の何れかに記載の試薬。
【請求項16】
蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする異なる分子が、前記SH2ドメインを含むタンパク質のN末端と前記被リン酸化部位を含むペプチドのC末端に融合タンパク質として連結された異なる蛍光タンパク質である、請求項12〜15の何れかに記載の試薬。
【請求項17】
蛍光タンパク質が、GFP、eGFP、YFP、CFP、DsRed及びそれらの変異体よりなる群から互いに異なって選ばれる蛍光タンパクである、請求項16に記載の試薬。
【請求項18】
チロシンキナーゼ阻害剤と請求項12〜17の何れかに記載の試薬と患者から採取された検体とをインキュベートする工程、及び前記試薬からの蛍光発光を検出する工程を含む、前記検体に含まれるチロシンキナーゼの前記阻害剤に対する抵抗性を確認する方法。
【請求項19】
蛍光発光が、蛍光共鳴エネルギー移動を可能とする2種以上の分子間における蛍光共鳴エネルギー移動により生ずる蛍光発光である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
検体が腫瘍細胞であり、インキュベートが当該腫瘍細胞の内部で行われる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
試験化合物の存在下で請求項12〜17の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程、及び前記試薬からの蛍光発光を測定する工程を含む、BCR−ABLのチロシンキナーゼ活性に対する阻害剤をスクリーニングする方法。
【請求項22】
試験化合物の存在下で請求項12〜17の何れかに記載の試薬とBCR−ABLとを反応させる工程が、BCR−ABLを発現することのできる細胞の内部で行われる、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−278942(P2009−278942A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135973(P2008−135973)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)平成19年11月25日 第30回日本分子生物学会年会 第80回日本生化学会大会 合同大会 講演要旨集(発行所:特定非営利活動法人 日本分子生物学会,社団法人日本生化学会) (2)平成19年12月14日 第30回日本分子生物学会年会 第80回日本生化学会大会 合同大会 プログラム及びスライド資料(主催者名:特定非営利活動法人 日本分子生物学会,社団法人日本生化学会)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】