説明

BHT、BHAまたは没食子酸プロピルなどの吸収促進剤

本発明は、(a)活性巨大分子成分、および(b)ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤であって、その芳香族アルコール吸収促進剤が該活性巨大分子成分の量と重量比でそれより多量または等量存在しているもの、の混合物を含んでいる医薬組成物、ならびにさらに(a)活性巨大分子成分、(b)没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤であって、その芳香族アルコール吸収促進剤が該活性巨大分子成分の量と重量比でそれより多量または等量存在しているもの、ならびに(c)水性溶媒中で該芳香族アルコール吸収促進剤の溶解性を増大させることのできる可溶化助剤、の混合物を含んでいる医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性な巨大分子を含む分子を、腸管の内腔から腸管壁を横切って取り込むために都合の良い、生体内への取り込みを促進させる芳香族アルコールの使用に関する。特に、本発明は、生体内に吸収されることとなる、好ましくは腸管壁を通過して吸収されることとなる活性巨大分子成分(active macromolecular principle)を含んでいる新規の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性芳香族アルコール、とりわけそのヒドロキシル基が芳香環に直接的に結合していないもの、例えば、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、およびベンジルアルコールなどは医薬品製造で溶剤および可塑剤として長年にわたり用いられており、経口経路を含む種々の投与経路で投与された場合の毒性は低い。それらの化合物は全て、室温で液体であり、水性溶媒中に容易に溶解させることができる。
【0003】
フェノキシエタノールならびにその関連化合物であるフェニルエタノールおよびベンジルアルコールなどの親水性芳香族アルコールは、腸管の細胞に対して様々な作用を有しており、そのうちの1つとして、比較的高い局所濃度で存在した場合には、芳香族アルコールは腸管細胞のバリアー層の透過性を一時的に増大させるという作用がある。
【0004】
このことはこれらの細胞間のタイトジャンクションが開くことによって、大きな分子(巨大分子)であっても拡散によって通過しうるような孔が作り出されることによるものと考えられる。
【0005】
腸管細胞のバリアー層の透過性の増大が親水性芳香族アルコールが局所に比較的高濃度で存在する場合にのみ認められる、との知見に基づいて、出願人らの研究では、親水性芳香族アルコールを検出可能な分子とともに経口的に(エリキシルとして)投与したとき取り込みの促進は見られないことが判明した。このことは、その分子が吸収される部位(腸管内)に到達する前に、親水性アルコールが腸管内で効力を発揮することのできない濃度以下に急速に希釈されてしまうためであろうと考えられる。さらに、取り込ませようとしている分子もまた、腸管に達する前に希釈されてしまう。別のクラスの芳香族アルコールも透過促進剤としての性質を示すことが見出された。そのような化合物は芳香環に直接的に結合したヒドロキシル基を有し、さらにOH基に対してパラの位置に置換があり、典型的には抗酸化性を示し、その抗酸化性は浸透促進剤として作用する能力と関連している可能性があるが、そうでないかもしれない。このクラスの化合物の例としては、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、およびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。驚くべきことに、これらの物質は主として脂質ベースの製剤中で通常は抗酸化剤として、少なくとも20年間は医薬品製造に日常的に用いられてきたが、これらの物質が浸透促進剤として作用しうるとの報告はこれまでに行われたことがない。このことはおそらく、これらの化合物が全て水にやや溶けにくい固体であり、そのために水をベースとした医薬品製剤中に高濃度で取り込むことが困難であり、その製剤が腸管腔内、または浸透の促進が必要とされるその他の何らかの粘膜表面の近傍で拡散される際に、高濃度で促進剤として作用させるための可溶性の形態とすることができないためであろう。
【0006】
没食子酸エステルまたはそのうちでも特に没食子酸プロピルの使用については、没食子酸プロピルがチトクロームP450(特にCY3PA、これは小胞体内に存在する)を阻害し、そのことによって腸管細胞を通過する小分子の通路(細胞間経路として知られている)でのその小分子の代謝による分解を低減させるという機作を介して,小分子のバイオアベイラビリティーの増強剤として、それぞれ米国特許第6,180,666号および第5,962,522号で報告されている。没食子酸プロピルおよびその他の没食子酸エステルはチトクロームP450の強力な阻害剤と考えられ、溶解助剤を用いることなく、著しい効果を発揮するのに十分な量の没食子酸プロピルを製剤中に含有させることができるとされている。しかし、没食子酸プロピルについて報告されている酵素阻害剤としての機作は、巨大分子のバイオアベイラビリティーの増強を期待することができないが、それは巨大分子は助力のない状態で腸管細胞内へ侵入することができず、酵素が存在する小胞体と接触しえないからである。さらに、ペプチドやタンパク質などの巨大分子はチトクロームP450の作用を小さな薬剤分子と比べてはるかに受けにくい。従って、P450による分解が、腸管から、またはその他の粘膜組織からの巨大分子のバイオアベイラビリティーが低いことの主因ではない。はるかに大きなバリアーは単にその分子の大きさ自体であり、その大きさのために、粘膜組織、そこでは組織を内張している細胞が連続的な通過不可能な壁面を形成しているが、その粘膜細胞を内張している細胞中に助力なしでは入り込むかまたはその細胞を通過することができない。
【発明の開示】
【0007】
驚くべきことに、没食子酸プロピル、BHT、BHA、ならびにそれらの類似体および誘導体などの芳香族アルコールが、粘膜細胞の物理的透過性を増大させることによって粘膜のバリアーを通過する巨大分子の通過を促進させることができることが見出された。このことが起こる機作として考えうることの1つは粘膜細胞間のタイトジャンクションが一時的に開き、巨大分子が通過しうるチャンネルが作られること(細胞間隙経路)である。別の作用機作としては液相飲作用の増強が考えられる。そのような機作によって小胞中の巨大分子とともに、多量の液体の内部化をもたらし、それらの小胞は細胞の片側からもう一方の側へと運ばれる。その他の機作も依然として明確に理解されているわけではなく、また、そのような機作である可能性もあるとはいえ、巨大分子が実際に細胞内部の細胞質コンパートメントと直接的にアクセスすることはないものと考えられる。この現象は濃度依存性であることが見出され、芳香族透過促進剤を高濃度で用いるとin vivoでその効果が増大されることが見出されている。その結果、それらの化合物、特に没食子酸プロピルにとって、可溶化助剤の使用は、粘膜組織からの巨大分子のバイオアベイラビリティーを増強させるために有利である。
【0008】
また、可溶化助剤として既知のある種の作用物があり、それらを芳香族アルコール透過続伸剤の可溶化の助剤として用いることができ、また、さらに、水性の溶媒に暴露されると促進剤の溶解性、および/または溶解速度を増加させることができる。このことは芳香族アルコール透過促進剤として最大の効果を発揮させようとする場合に重要であることは明らかである。
【0009】
本発明は次のものの混合物を含んでいる医薬組成物を提供する:
(a)活性を有する巨大分子成分;および
(b)ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤であって、活性巨大分子成分の重量と等しいかそれより多く存在する芳香族アルコール吸収促進剤。
【0010】
本発明はさらに、次のものの混合物を含んでいる医薬組成物を提供する:
(a)活性を有する巨大分子成分;および
(b)没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤、および
(c)該芳香族アルコール吸収促進剤の水性溶媒中への溶解性を増大させることのできる可溶化助剤であって、活性巨大分子成分の重量と等しいかそれより多く存在する芳香族アルコール吸収促進剤。
【0011】
本発明はまた、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、医薬組成物中に含まれた形での、生体内への巨大分子の吸収の促進剤としての使用をも提供する。
【0012】
さらに別の1実施形態においては、本発明は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、活性巨大分子成分を含有する医薬品(医薬組成物)の製造において、ヒトまたは動物の体内への活性巨大分子成分の吸収を促進するための使用をも提供する。
【0013】
本発明はまた、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールを、該芳香族アルコール吸収促進剤の水性溶媒中での溶解性を増大させることのできる可溶化助剤とともに、巨大分子の生体内への吸収の促進剤として医薬組成物中で使用することをも提供する。
【0014】
さらに別の1実施形態においては、本発明は没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールを、該芳香族アルコール吸収促進剤の水性溶媒中での溶解性を増大させることのできる可溶化助剤とともに、活性巨大分子成分を含有する医薬品(医薬組成物)の製造において、ヒトまたは動物の体内への活性巨大分子成分の吸収を促進するために使用することをも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
該芳香族アルコール吸収促進剤は没食子酸プロピルまたはそれの類似体もしくは誘導体とすることができ、好ましくは没食子酸プロピルである。没食子酸プロピルの適切な類似体および誘導体としては没食子酸のエステルが含まれる。それらのエステルは直鎖状または分枝したC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルエステルとすることができる。それらの化合物は任意で、ハロゲン、直鎖状または分枝したC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルエステルで置換されたものとすることができる。また、芳香族アルコール吸収促進剤はBHT、BHA、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択されたものとすることができる。BHTまたはBHAの適切な類似体および誘導体としては、ヒドロキシトルエンまたはヒドロキシアニソールの類似体および誘導体であって、芳香環に結合しているメチル基またはメトキシ基、および/またはヒドロキシル基に対してオルトの位置にある水素が直鎖状または分枝した置換されていないか何らかの位置で特にハロゲン原子によって置換されたものであるC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルで置換された類似体および誘導体が含まれる。好ましくは、該芳香族アルコール吸収促進剤は没食子酸プロピル、BHT、およびBHAから選択されたものである。
【0016】
製薬に抗酸化剤として用いられる、上記で開示した芳香族アルコールは、製剤全体の0.1 w/v%までの濃度で含まれている(「医薬品添加物ハンドブック」"Handbook of Pharmaceutical Excipients", WadeとWeller編, The Pharmaceutical Press, London UK, 第2版, 1994中の個々の化合物の記載を参照せよ)。該化合物をより高濃度で用いても付加的な抗酸化作用による有益性は見られないと一般的には考えられており、従って、標準的な製薬では製剤中の抗酸化剤の濃度を0.1%以下に制限している。しかし、本発明で吸収促進剤として用いる場合には、これらの化合物の有効性はこのレベルよりもはるかに高いレベルに至るまで濃度依存性であり、医薬品製剤中のこれらの化合物の比率は先行技術でこれまでに報告されてきたものよりもはるかに高いものであった。
【0017】
出願者の知る限りでは、先行技術ではこれらの作用物を医薬品製剤中に抗酸化剤として使用することは示唆されていない。これらの作用物のいずれもが経口経路での巨大分子の吸収促進に役割を果たしておらず、これらの作用物は標準的な製薬で抗酸化剤として用いられている量よりも高い濃度で製剤中に含有させることができる。
【0018】
例えば、EP-A-0295941は、経口投与用の製剤について開示しており、その開示ではBHA、BHT、またはPGを任意で含有させることができるとしており、それゆえ、それらを含有させることがその製剤の生物学的有効性に必須のものではないことは明らかである。これらの作用物の濃度については特定されておらず、その製剤は徐放性投与形態を意図したものであって、カプセルからの急速な放出を確保するために直ちに溶解することが望ましい本発明とは著しく異なる。
【0019】
WO-A-0222158は、シクロスポリン(巨大分子ではない)ならびにBHA、BHT、およびPGを一般的に抗酸化剤として含有している組成物を提供している。それらの抗酸化剤の濃度は特定されていないが、これらの化合物の抗酸化剤としての使用はその量が重量で0.1%以下であることを示唆している。
【0020】
米国特許第A-5756450号は、水不溶性ポロペプチド、特にシクロスポリンなどのシクロペプチドを含む低分子水不溶性化合物を含む組成物を開示している。BHAまたはBHTは、非常に低い量で抗酸化剤として含まれていてもよい。
【0021】
米国特許第A-5342625号も、シクロスポリンを含んでいる組成物を開示している。シクロスポリンのマイクロエマルジョン前濃縮物(microemulsion pre-concentrate)の形成を助けるために可溶化助剤を含有させることができる。BHAまたはBHTは抗酸化剤として少量含有させることができる。
【0022】
BHAおよびBHTはまた、米国特許第A-3996355号の組成物中の抗酸化剤として存在させることができ、その製剤は植物油ビヒクルの存在下で安定なものであればどのような薬剤でも、より特定して述べれば苦みを有する感水性の(water-sensitive)薬剤を含有させることができる。巨大分子については考慮されていない。
【0023】
可溶化助剤として適切なものとしては、限定はされないが、タウロコール酸ナトリウムまたはタウロデオキシコール酸などの胆汁酸または胆汁酸塩、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、トランスクトール(transcutol)、またはイソプロパノールが含まれる。
【0024】
本発明の範囲内にある活性巨大分子成分としては、ヒトまたは動物の体内に吸収、特に腸管壁を通過して吸収されて有益な効果を示すことのできる全ての分子が含まれる。そのような有益な効果とは、例えば、治療、化粧、または予防薬または避妊薬などの予防での効果である。活性巨大分子成分は天然物(生物学的なもの)、合成品、または半合成品を起源とするものとすることができる。
【0025】
巨大分子とは、好ましくは分子量が1000 Daを超えるもの、より好ましくは2000 Daを超えるもの、最も好ましくは3000 Daを超えるものと定義される。巨大分子の例としては、活性巨大分子成分が含まれ、そのようなものとしては次のものが含まれる:
1. インスリン;カルシトニン;ヒト血清アルブミン;成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;ガラニン;副甲状腺ホルモン;キノゲン(kinogen)、プロトロンビン、フィブリノゲン、第VII因子、第VIII因子、または第IX因子などの血液凝固タンパク質;エリスロポエチンおよびEPO疑似体;GCSFおよびGMCSFを含むコロニー刺激因子;血小板由来成長因子;上皮成長因子;線維芽細胞増殖因子;トランスフォーミング成長因子;GLP-1;GAG;サイトカイン;インスリン様成長因子;骨および軟骨誘導因子;神経栄養因子;IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL=10、IL-11、IL-12を含むインターロイキン;インターフェロン-γ、インターフェロン-1a、インターフェロン-αを含むインターフェロン;TNF-α;TNF-β;TGF-β;コレラ毒素AおよびBフラグメント;大腸菌(E.coli)内毒素AおよびBフラグメント;セクレチン;ヒストンデアセチラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、カルボヒドラーゼ、ヌクレオチダーゼ、ポリメラーゼ、キナーゼ、およびホスファターゼなどの酵素;運搬または結合タンパク質で特にビタミン、金属イオン、アミノ酸、または脂質もしくはリポタンパク質と結合またはそれらを運搬するもの、例えばコレステロールエステル転送タンパク質、リン脂質転送タンパク質、HDL結合タンパク質など;コラーゲン、エラスチン、またはフィブロネクチンなどの結合組織タンパク質;アクチン、ミオシン、ジストロフィン、またはミニ・ジストロフィンなどの筋肉タンパク質;神経、肝臓、心臓、または脂肪細胞のタンパク質;細胞傷害性タンパク質;チトクローム;細胞の複製、増殖、または分化を起こさせるタンパク質;細胞内シグナル伝達タンパク質または細胞外シグナル伝達タンパク質(例えばホルモン)などのシグナル伝達分子;BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、VEGF、NT3、T3、およびHARPなどの栄養因子;アポリポタンパク質;抗体分子;可溶性の形態の受容体、例えばT細胞受容体およびサイトカイン、インターフェロン、またはケモカインの受容体;抗原性のエピトープおよびフラグメントを含んでいるタンパク質またはペプチド;ならびに上記のもののいずれかの誘導体、コンジュゲート、および配列変異体。これらのタンパク質およびその他のタンパク質はヒト、植物、動物、細菌もしくは真菌のソース由来のものとすることができ、また天然のソースから抽出されたもの、発酵によって組換え体として調製されたもの、または化学的に合成されたものとすることができる。
【0026】
2. 長鎖の直鎖状または環状の、一本鎖、二本鎖、または三本鎖DNA、一本鎖、二本鎖、または三本鎖RNA、アンチセンスDNAまたはRNAなどのオリゴヌクレオチド、およびPNAおよびホスホチオエート誘導体を含むそれらの類似体。1実施形態においては、本発明で用いられるポリヌクレオチドがCpGモチーフを含んでいることが好ましい。該ポリヌクレオチドのコード配列は、治療用に用いられる産物をコードするものとすることができ、特にそのコード配列は、細胞外タンパク質(例えば分泌されるタンパク質);細胞内タンパク質(例えば細胞質性タンパク質、核タンパク質、または膜タンパク質);細胞膜に存在するタンパク質;凝固系のタンパク質(例えば、キノゲン(kinogen)、プロトロンビン、フィブリノゲン、第VII因子、第VIII因子、または第IX因子)などの血液タンパク質;異化性、同化性の胃腸に存在する酵素、代謝性(解糖系またはクレブス回路)酵素、またはシグナル伝達酵素;脂質、脂肪酸、グリコーゲン、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)、または炭水化物を分解または修飾する酵素(例えばプロテアーゼ、リパーゼ、またはカルボヒドラーゼ)、タンパク質修飾酵素、例えばタンパク質に化学的部分を付加もしくは取り去る酵素(例えば、キナーゼもしくはホスファターゼ);運搬または結合タンパク質(例えば、ビタミン、金属イオン、アミノ酸、または脂質と結合および/またはそれらを運搬するもの、例えばコレステロールエステル転送タンパク質、リン脂質転送タンパク質、HDL結合タンパク質など);結合組織タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、またはフィブロネクチン);アクチン、ミオシン、ジストロフィン、またはミニ・ジストロフィンなどの筋肉タンパク質;神経、肝臓、心臓、または脂肪細胞のタンパク質;細胞傷害性タンパク質;チトクローム;細胞の複製、増殖、または分化を起こさせるタンパク質;遺伝子の転写または翻訳を助けるかまたは転写もしくは翻訳を調節するタンパク質(例えば、転写因子もしくは転写因子あるいはポリメラーゼと結合するタンパク質);細胞内シグナル伝達分子または細胞外シグナル伝達分子(例えばホルモン)などのシグナル伝達分子;免疫系のタンパク質、例えば、抗体、T細胞受容体、MHC分子、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、TNF-α、TNF-β、TGF-β)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-γ、インターフェロン-1a、インターフェロン-α)、ケモカイン(例えば、MIP-1、MIP-1、RANTES);免疫受容体(上述のサイトカイン、インターフェロン、およびケモカインのいずれかのものの受容体などの、サイトカイン、インターフェロン、またはケモカインの受容体)、または細胞表面マーカー(例えば、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、または樹状細胞表面マーカー)(例えば、CD1、2、3、4、5、6、7、8、16、18、19、28、40、もしくは45;またはそれらの天然のリガンド)、栄養因子(例えば、BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、VEGF、NT3、T5、HARP)またはアポリポタンパク質;腫瘍サプレッサー(例えば、p53、Rb、Rap1a、DCC、またはK-rev);自殺タンパク質(チミジンキナーゼまたはシトシンデアミナーゼ);または遺伝子サプレッサー。本発明で有用なポリヌクレオチドでコードされるタンパク質およびペプチドは免疫原性のもの、すなわち、そのタンパク質の活性に対して特異的な抗原を含んだもので、免疫系によってそれに対する抗体が作成される。
【0027】
そのポリヌクレオチドはコード配列に機能を有する形で連結された制御配列を有するものとすることができる。その制御配列は典型的には何らかの真核生物の制御配列、またはそのような真核生物に感染するウイルスの制御配列とすることができる。該ポリヌクレオチドは複製起点を含んだものとすることができる。
【0028】
該ポリヌクレオチドは化学的に修飾することができる。このことによってそれらのポリヌクレオチドのヌクレアーゼに対する抵抗性を増強するか、またはそれらが細胞中に入り込む能力を増強することができる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いることができる。その他のデオキシヌクレオチド類似体としては、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロジチオエート、N3'P5'-ホスホロアミデート、およびオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエート、ならびにそれらの2'-O-アルキル類似体、および2'-O-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが挙げられる。あるいはまた、混合した骨格のオリゴヌクレオチド(MBO)を用いることができる。MBOはホスホチオエートオリゴデオキシヌクレオチドのセグメント、および適切に置かれた修飾されたオリゴデオキシ-またはオリゴリボヌクレオチドのセグメントを含んでいる。MBOは、ホスホロチオエートリンケージのセグメントおよびその他の非イオン性でヌクレアーゼに対して非常に抵抗性が高い修飾オリゴヌクレオチド、例えばメチルホスホネートなどで、または2'-O-アルキルオリゴリボヌクレオチドのセグメントを有している。
【0029】
本発明での使用に適したポリヌクレオチドは、好ましくは、細胞、または細胞性の、原核生物性、真核生物性、核、クロマチン、ヒストン、またはタンパク質を実質的に含まない形態かまたはそれらと会合した形態である。そのポリヌクレオチドは実質的に単離された形態とすることができ、または実質的に精製された形態とすることができ、その場合には、その形態の調製品中に乾燥重量に対する比率として90%を超える、例えば95%、98%、または99%(その値を超える、または少なくともその値)の該ポリヌクレオチドを含んでいる。従って、該ポリヌクレオチドは"裸のDNA"の形態とすることができる。
【0030】
3. ヘパリン、低分子量ヘパリン、ポリマンノース、シクロデキストリン、およびリポポリ多糖などのポリ多糖。
【0031】
4. 上述のもののいずれかまたは全てをお互いに別々にまたは組み合わせて(例えばヘテロコンジュゲートの形態に)、またはさらに別の試薬を追加したもの。
【0032】
本発明の好ましい実施形態においては、吸収されることとなる活性巨大分子成分は、カルシトニン、インスリン、低分子量ヘパリン、エリスロポエチン、ヒト成長ホルモン、および副甲状腺ホルモンから選択され、特にカルシトニン、インスリン、および副甲状腺ホルモンである。
【0033】
用いられる添加物の性質によっては、本発明の医薬組成物は、液体、固体、半固体、またはゲルの形態をとることができる。本発明の医薬組成物は種々の粘膜組織へ何らかの経路を経由して投与することに適しており、例えば、口腔および舌下粘膜、鼻腔および口蓋(nasal palate)、肺、直腸、腸管(大腸および小腸を含む)ならびに膣などの経路がある。液体、半固体、またはゲル製剤の場合には、製剤を無水のものまたは水性のもののいずれかとすることができる。
【0034】
本発明の組成物の意図している作用部位が腸管である場合には、その組成物が腸溶性コーティング内に封じ込められていることが望ましく、そのコーティングは胃で壊されることなく、その製剤の各コンポーネントはともに、希釈されずにそれらが小腸または結腸に到達するまでまとまった状態にある。このような製剤は無水のものであることが好適であろう。液状の組成物は腸溶性コーティングを施したカプセルとして投与することが適しており、固体の製剤は腸溶性コーティングを施したカプセル中、または錠剤の形態、好ましくは腸溶性コーティングを施した錠剤として投与することができる。
【0035】
腸溶性コーティングは胃の自然な状態に耐え、腸の所望の位置で透過性となる適切なものが選択される。好ましくはこのことは、腸の長さ方向に沿って変わっていくpH条件によって定められる。作用部位が小腸である場合には、腸溶性コーティングがpH3から7、好ましくは5.5から7、より好ましくは5.5から6.5で透過性となりその内容物が放出されることが好ましい。意図する作用部位が結腸である場合には、腸溶性コーティングがpH6.8以上で透過性となって内容物が放出されることが好ましい。
【0036】
適切な腸溶性コーティングは当業界ではよく知られており、そのようなものとしては、酢酸セルロース、フタル酸塩、シェラック、ならびにLシリーズおよびSシリーズのオイドラギット(Eudragit)、特にオイドラギット L12.5P、L12.5、L100、L100-55、L30D-55、S12.5P、およびS100などのポリメタクリレートが挙げられる。適切な可塑剤または湿潤剤、例えばクエン酸トリエチル、およびポリソルベート80なども、コーティング用混合液中に含有させることができる。
【0037】
カプセルとしてはHPMCまたはゼラチンカプセルが好ましいが、そのカプセルの適切なコーティングの選択は、当業者であればその知識およびオイドラギット製品の参照文献に基づいて容易に作成することができる。
【0038】
意図している作用部位が鼻粘膜である場合には、製剤は水溶液の形態または乾燥粉末とすることができ、製剤はスプレーで投与することができる。
【0039】
意図している作用部位が直腸である場合には、適切な投与方法は、カプセル性のシェル内に封じ入れるかまたは徐々に崩壊する坐薬のマトリクス内に取り込ませた無水の液体または固体として投与することである。
【0040】
膣への適用には、製剤をゲルの形態で投与することも適切である。
【0041】
該芳香族アルコール吸収促進剤は好ましくは水に不溶性である。該促進剤は組成物中で重量比で1から40%、好ましくは重量比で5から35%、より好ましくは重量比で10から30%の量、存在することが好適である。
【0042】
本発明の組成物中では、該芳香族アルコール吸収促進剤は活性巨大分子成分と等量またはそれより多量(重量比で)存在する。このことによって、腸管細胞バリヤー層(腸管壁)での芳香族アルコール吸収促進剤の有効濃度が提供されて、共存している適切な量の活性巨大分子の吸収が促進され、その活性巨大分子成分は吸収されるとその本来の有益な効果を発揮することとなる。本発明の実施者は、治療上の有効性を発揮するのに必要な活性巨大分子成分の量(例えば、血中濃度)に基づいて、芳香族アルコール吸収促進剤および活性巨大分子成分の量を選択するであろう。カプセル中に含まれている混合物中の活性巨大分子成分に対する芳香族アルコール吸収促進剤の重量比は少なくとも1:1、好ましくは少なくとも5:1、例えば1:1から100:1、好ましくは3:1から50:1、最も好ましくは5:1から20:1であることが好適である。
【0043】
芳香族アルコール吸収促進剤に対する可溶化助剤の比は少なくとも1:1、好ましくは1:1から10:1、最も好ましくは1.5:1から5:1であることが好適である。
【0044】
活性巨大分子成分の絶対量は、用いられる投与計画および対象となる患者に関連してその分子の本来の有益な効果を発揮するために必要とされるその物質の投与量に基づいて選択されることとなろう。それらの量の決定は本発明の実施者の行いうる範囲内のことである。 経口投与用の組成物では、カプセルの内容物に活性巨大分子成分がその本来の治療効果を達成することのできる適切な量を含んだものであることが好ましい。例えば、該組成物はカプセル内容物の重量(カプセル自体の重量は含まずに)に基づいた重量比で0.05から50%、好ましくは0.1から25%、より好ましくは0.1から10%の活性巨大分子成分を含有させることができる。
【0045】
本発明の組成物はさらに、1種以上のその他の吸収促進剤化合物、例えば、中鎖脂肪酸、および中鎖モノグリセリドを含むものとすることができる。
【0046】
本発明の組成物は任意でさらに医薬品製剤の製剤化に従来から用いられている何らかの添加物を含有させることができ、そのようなものとしては、例えば、抗酸化剤、抗微生物剤、懸濁剤、充填剤、希釈剤、吸着剤、流動促進剤、結合剤、固結防止剤、滑沢剤、崩壊時、膨潤剤、粘度調整剤、可塑剤、および酸性調節剤(特に腸管の環境を7から7.5の間に調整するもの)が挙げられる。適切な膨潤剤としては、グリコール酸ナトリウムデンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、クロスプロビドン(crosprovidone)、およびアルミン酸ケイ酸マグネシウム、またはそれらの混合物が挙げられる。グリコール酸ナトリウムデンプンおよびその他の多糖をベースとした膨潤剤を重量比で5から10%の量、含有させることができる。クロスプロビドンを重量比で5から30%含有させることができる。
【0047】
本発明の組成物はさらに任意で、該組成物の所望の作用を相乗的に増強することのできる活性成分をさらに追加することができる。例えば、活性巨大分子成分がインスリンである場合には、組成物は吸収されたインスリンに対する生体の応答を増加させることのできるインスリン増感剤(sensitizer)をも含んだものとすることができる。このようなやり方で用いうる増感剤の例としては、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、およびその他のグリタゾン類に分類される分子が挙げられる。
【0048】
該混合物がカプセルまたは錠剤中に含まれている場合には、芳香族アルコール吸収促進剤および活性巨大分子成分を含んでいる本発明の組成物では、製剤は実質的に無水であることが好ましい。本発明のより好ましい実施形態では、組成物全体が無水のものである。本発明の文脈で実質的に無水である、とは該混合物中の重量比で水分が5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0049】
本発明の組成物は、それに用いられている活性巨大分子成分の如何によって、ヒトまたは動物の種々の状態および疾患の治療に用いることができ、あるいはまた、ヒトまたは動物体内の疾患および状態の診断用に不可欠な巨大分子を導入するために用いることができる。本発明の組成物は好ましくは医薬組成物または化粧品用組成物である。
【0050】
本発明の組成物では、カプセル中の混合物は液体、半固体、またはゲルとすることができ、それは溶液、または微粒子分散液のいずれかの形態をとる。すなわち吸収させようとする活性巨大分子成分は、溶液または微粒子分散液のいずれかの形態で製剤中に取り込まれている。あるいはまた、該組成物は固体の形態をとることもできる。
【0051】
本発明の組成物は、活性巨大分子成分および芳香族アルコール吸収促進剤の実質的に無水の混合物を調製し、次いで任意でコーティングを施していないカプセルにその混合物を充填し、任意で所望の浸透特性を達成するためにそのカプセルを適切なポリマー混合物を用いてコーティングすることによって製造することが好適である。
【0052】
下記の実施例は本発明を説明するためのものであって、限定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0053】
実施例1 細胞培養単層を透過性とする効果
Caco-2細胞(ヒト結腸癌由来の細胞系統)をコンフルエントな単層として有孔膜(孔径0.4μm、表面積0.33cm2)の表面上に増殖させて2つの水性コンパートメントに分け、上部のコンパートメントには培地を200μL満たし、下部のコンパートメントには600μLの培地を入れる。その単層を横切る電気抵抗を、単層の両側の上部コンパートメントと下部コンパートメントの培地中に挿入した電極と接続させた上皮電圧計(epithelial voltometer)を用いて測定する。この経上皮電気抵抗(TEER)は、上部コンパートメントへの芳香族アルコール添加の前と15分後に測定する(代表的な結果を下記の表に示す)。各化合物について4回反復測定するが、それらの濃度については下記の表に示している。TEERの低下は、細胞単層を横切る物質(大きな液相を含む)の流れの増加を示しているものと考えられる。
【0054】
初期値の50%を下回る値への低下は有意なものと考えられる。濃度を低下させると観察される効果が低下する傾向がある。
【表1】

【0055】
実施例2 インスリン、没食子酸プロピル、およびタウロコール酸ナトリウム含有製剤の調製
150mgのタウロコール酸ナトリウムを75mgの没食子酸プロピルとガラスバイアル瓶中で混合し、825μLの蒸留水を添加する。長時間振盪しても室温では溶解できないが、超音波浴中で短時間超音波処理して加温すると無色透明な溶液が得られる。8.4mgのウシインスリンをその溶液に撹拌しつつ添加した後、そのインスリン懸濁液をボルテックスしつつ10μLの氷酢酸を添加する。澄明な溶液でpHが3.15のものが急速に得られる。そのバイアル瓶の内容物を振盪しつつ急速凍結し、一晩凍結乾燥させる。翌日、乾燥固形物が得られる。その固形物の10mgを2mLのバイアル瓶に量り取り、50μLの蒸留水を添加する。澄明な溶液が急速に形成される。
【0056】
実施例3 インスリン、没食子酸プロピル、およびタウロデオキシコール酸ナトリウム含有製剤の調製
実施例2に記載の条件と同一条件で行い、タウロコール酸塩の替わりにタウロデオキシコール酸塩を用いる。最終の溶液の乾燥前のpHは3.36である。前述の実施例と同様に、乾燥固形物に蒸留水を添加すると急速に澄明な溶液となる。
【0057】
実施例4 カルシトニン、没食子酸プロピル、およびタウロコール酸ナトリウム含有製剤の調製
2.3mgのサケカルシトニンを蒸留水中に溶解し、その溶液全体をタウロコール酸ナトリウムおよび没食子酸プロピルの混合物中に添加することを除いては、実施例2に記載の条件と同一条件で行う。前述の実施例と同様に、蒸留水を添加すると急速に澄明な溶液となる。
【0058】
実施例5 カルシトニン、没食子酸プロピル、およびタウロデオキシコール酸ナトリウム含有製剤の調製
タウロコール酸塩の替わりにタウロデオキシコール酸塩を用いることを除いては、実施例4に記載の条件と同一条件で行う。
【0059】
実施例6 副甲状腺ホルモン、没食子酸プロピル、およびタウロコール酸ナトリウム含有製剤の調製
カルシトニンの替わりに0.5mgの副甲状腺ホルモンを用いることを除いては、実施例4に記載の条件と同一条件で行う。
【0060】
実施例7 副甲状腺ホルモン、没食子酸プロピル、およびタウロデオキシコール酸ナトリウム含有製剤の調製
タウロコール酸塩の替わりにタウロデオキシコール酸塩を用いることを除いては、実施例6に記載の条件と同一条件で行う。
【0061】
実施例8 副甲状腺ホルモン、没食子酸プロピル、およびタウロデオキシコール酸ナトリウム含有製剤の調製
胆汁酸塩/PG混合物をタンパク質を添加することなく乾燥し、副甲状腺ホルモンを乾燥粉末として添加して凍結乾燥後に乾燥残査とすることを除いては、実施例7に記載の条件と同一条件で行う。
【0062】
実施例9 ヒト成長ホルモン、没食子酸プロピル、およびタウロデオキシコール酸ナトリウム含有製剤の調製
副甲状腺ホルモンの替わりに20mgのヒト成長ホルモンを用いることを除いては、実施例8に記載の条件と同一条件で行う。
【0063】
実施例10 カルシトニン、没食子酸プロピル、およびプロピレングリコール含有製剤の調製
75mgの没食子酸プロピルを200μLのプロピレングリコール中にボルテックスして溶解する。得られた溶液200μLを、1mgの固形のカルシトニンを入れたバイアル瓶に移す。そのバイアル瓶を短時間ボルテックスして固形物を分散させた後、37℃で1時間振盪して澄明な溶液を得る。
【0064】
実施例11 カルシトニン、没食子酸プロピル、およびベンジルアルコール含有製剤の調製
100mgの没食子酸プロピルを200μLのベンジルアルコール中でボルテックスし、室温で数分後に澄明な溶液を得る。得られた溶液200μLを1mgの固形のカルシトニンを入れたバイアル瓶に移す。そのバイアル瓶を短時間ボルテックスして固形物を分散させる。
【0065】
実施例12 カルシトニン、没食子酸プロピル、およびトランスクトール含有製剤の調製
100mgの没食子酸プロピルを200μLのトランスクトール中でボルテックスし、室温で1分後に澄明な溶液を得る。得られた溶液200μLを1mgの固形のカルシトニンを入れたバイアル瓶に移す。そのバイアル瓶を37℃で1時間、短時間ボルテックスして固形物を分散させ、澄明な溶液を得る。得られた溶液200μLを、1mgの固形のカルシトニンを入れたバイアル瓶に移す。そのバイアル瓶を短時間ボルテックスして固形物を分散させた後、37℃で1時間振盪して澄明な溶液を得る。その溶液100μLを別の新しいバイアル瓶に移し、そのバイアル瓶に100μLの蒸留水を添加する。全てのコンポーネントは溶液中に単一相の澄明な液体として含まれる。
【0066】
実施例13 カルシトニン、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびトランスクトール含有製剤の調製
100mgのブチル化ヒドロキシトルエンを200μLのトランスクトール中でボルテックスし、室温で数分後に澄明な溶液を得る。得られた溶液200μLを1mgの固形のカルシトニンを入れたバイアル瓶に移す。そのバイアル瓶を短時間ボルテックスして固形物を分散させ、37℃で1時間振盪して澄明な溶液を得る。その溶液100μLを別の新しいバイアル瓶に移し、そのバイアル瓶に100μLの蒸留水を添加して、37℃で澄明な乳白色の溶液を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性巨大分子成分、および
(b)ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤であって、その芳香族アルコール吸収促進剤が該活性巨大分子成分の量と比較して重量比でそれより多量または等量存在しているもの、
の混合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
(a)活性巨大分子成分、および
(b)没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコール吸収促進剤であって、その芳香族アルコール吸収促進剤が該活性巨大分子成分の量と比較して重量比でそれより多量または等量存在しているもの、および
(c)水性溶媒中で該芳香族アルコール吸収促進剤の溶解性を増大させることのできる可溶化助剤、
の混合物を含んでいる医薬組成物。
【請求項3】
混合物が、重量比で5%未満の水を含んでいる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、pH 3から7で透過性となる腸溶性コーティングを施されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
混合物が、重量比で少なくとも1%の芳香族アルコール吸収促進剤を含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
芳香族アルコール吸収促進剤の活性巨大分子成分に対する重量比が少なくとも5:1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
混合物が溶液または微粒子分散液の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
混合物が固体の形態である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
活性巨大分子成分が、ポリペプチドもしくはタンパク質、ポリヌクレオチド、多糖、またはそれらの混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
芳香族アルコール吸収促進剤が、BHT、BHA、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択されたものであり、芳香環に結合したメチル基またはメトキシ基、および/またはヒドロキシル基に対してオルトの位置の水素が、何れかの位置で特にハロゲン原子によって置換されているかまたは置換されていない、直鎖状または分枝したC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルで置換されたヒドロキシトルエンまたはヒドロキシアニソールの類似体および誘導体を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
芳香族アルコール吸収促進剤が、没食子酸エステルを含む没食子酸プロピルまたはそれの類似体もしくは誘導体であり、エステルは直鎖状または分枝したC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルエステルであり、それらの化合物はハロゲン、直鎖状または分枝したC1-12アルキル、C1-12アルキルオキシ、C1-12アルキルチオ、またはC2-12アルケニルエステルで置換されているか、または置換されていない、請求項2〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
可溶化助剤が、胆汁酸またはその塩、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、トランスクトール、およびイソプロパノールから選択されたものである、請求項2〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
活性巨大分子成分が、インスリン、カルシトニン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、またはエリスロポエチン、ならびにそれらの誘導体および類似体で、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
活性巨大分子成分が、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、またはそれらの誘導体もしくは類似体で、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
活性巨大分子成分が、インスリン、またはそれの誘導体もしくは類似体で、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものであり、さらにインスリン増感剤を含んでいる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトまたは動物の体の治療的または診断的処置に使用するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、腸管壁を横切る巨大分子の吸収のための促進剤としての、医薬組成物中での使用。
【請求項18】
ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、活性巨大分子成分を含有する医薬品の製造における、該活性巨大分子成分のヒトまたは動物体内への吸収を促進するための使用。
【請求項19】
没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、水性溶媒中での該芳香族アルコール吸収促進剤の溶解性を増大させることのできる可溶化助剤と共に用いる、腸管壁を横切る巨大分子の吸収の促進剤としての、医薬組成物中での使用。
【請求項20】
没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにそれらの類似体および誘導体から選択された芳香族アルコールの、水性溶媒中での該芳香族アルコール吸収促進剤の溶解性を増大させることのできる可溶化助剤と共に用いる、活性巨大分子成分のヒトまたは動物体内への吸収を促進するための、該活性巨大分子成分を含有する医薬品の製造における使用。
【請求項21】
組成物が、重量比で5%未満の水分を含んでいる、請求項17〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
可溶化助剤が、コンジュゲートされた胆汁酸またはその塩、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、トランスクトール、およびイソプロパノールから選択されたものである、請求項19または20に記載の使用。
【請求項23】
医薬品が、溶液の形態で、微粒子分散液として、または固体として提供される、請求項18または20に記載の使用。
【請求項24】
活性巨大分子成分/吸収されることとなる巨大分子が、ポリペプチドもしくはタンパク質、ポリヌクレオチド、多糖、またはそれらの混合物である、請求項17〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
吸収されることとなる巨大分子/吸収されることとなる活性巨大分子成分が、インスリン、カルシトニン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、およびエリスロポエチン、ならびにそれらの誘導体および類似体であって、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
吸収されることとなる巨大分子/吸収されることとなる活性巨大分子成分が、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、またはそれらの誘導体もしくは類似体であって、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
巨大分子成分が、インスリンまたはそれの誘導体もしくは類似体であって、合成したものまたは天然のソース由来のもののいずれかであり、ヒトまたは動物のいずれかに由来する構造と一致するものであり、インスリン増感剤も存在している、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
活性巨大分子成分の患者体内での吸収を促進させる方法であって、該患者に請求項1〜16のいずれか1項の組成物を投与することを含む方法。
【請求項29】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物の投与によって、治療可能な状態または疾患に罹患している患者を治療する方法。

【公表番号】特表2006−523662(P2006−523662A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506134(P2006−506134)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001650
【国際公開番号】WO2004/091584
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505385996)アクセス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】