説明

BRAFバイオマーカー

【課題】ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターベースの癌治療に対する癌の感受性を予測するためのバイオマーカーを提供する。
【解決手段】本発明は、とりわけ、癌などの疾患を媒介する細胞内のBRAFの対立遺伝子の存在を検出することによってERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対するその疾患の感受性を予測するための方法を提供する。本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法を提供し、この方法は、前記細胞が、ホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E BRAF遺伝子型、またはホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいは機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF遺伝子型を特徴とするか否かを判定する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/991,351号、2008年3月7日に出願された米国仮特許出願第61/034,615号の利益を主張し、この米国仮特許出願の各々の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明の分野は、概して、ERK1(細胞外シグナル制御キナーゼ)インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する所与の疾患の感受性を予測するための方法、ならびにそのような疾患の処置方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍の成長、進行および転移に関与するプロセスは、癌細胞において活性化されるシグナル伝達経路によって媒介される。ERK経路は、リガンドが結合した細胞表面チロシンキナーゼレセプター(例えば、erbBファミリーのメンバー、PDGFレセプターチロシンキナーゼ、FGFレセプターチロシンキナーゼおよびVEGFレセプターチロシンキナーゼ)からの細胞外シグナルを中継することによって哺乳動物細胞の成長を制御する際に中心的役割を果たす。ERK経路の活性化は、Rasの活性化から始まるリン酸化事象のカスケードを介する。Rasの活性化によって、セリン−トレオニンキナーゼであるRafの動員および活性化がもたらされる。この経路のRAF成分は、セリン/トレオニンキナーゼであり、MEK−ERKカスケードを活性化する3つのアイソフォーム(BRAF、ARAFおよびRAF1)を有する。次いで、活性化されたRafは、MEK1/2をリン酸化し、そして活性化し、次いでそれにより、ERK1/2がリン酸化され、活性化される。ERK1/2は、活性化されると、細胞骨格の変化および転写の活性化をはじめとした多数の細胞性事象に関与するいくつかの下流の標的をリン酸化する。ERK/MAPK経路は、細胞増殖にとって最も重要な経路の1つであり、ERK/MAPK経路は、しばしば多くの腫瘍において活性化されると考えられている。ERK1/2の上流であるRas遺伝子は、結腸直腸腫瘍、メラノーマ腫瘍、乳房腫瘍および膵腫瘍を含むいくつかの癌において変異している。高いRas活性は、多くのヒト腫瘍において高いERK活性を伴う。さらに、Rafファミリーのセリン−トレオニンキナーゼであるBRAFの変異は、キナーゼ活性の増加に関連する。これらの観察結果は、ERK1/2シグナル伝達経路が、広範囲のヒト腫瘍における抗癌治療のための魅力的な経路であることを示唆している。
【0004】
ERK1およびERK2のいくつかのインヒビターが知られており(例えば、特許文献1を参照のこと)、実際に、有効な抗癌剤であると証明されている。しかしながら、例えば個体の遺伝的変異性をはじめとした因子のせいで、特定の患者が所与の治療に対して非応答性になり得る。したがって、所与の治療に対する応答性についてバイオマーカーを使用することは、一連の処置を開始する前に、患者の応答性を迅速かつ便利に判定するための有用なツールである。所与の癌を早期に首尾よく処置することが、患者の臨床成績にとって重大であることが多い。バイオマーカーの使用は、所与の患者において有効である可能性のある処置の特定を迅速に助けること、および/または所与の患者において有効でない可能性のある処置の除外を助けることによって、このプロセスに役立ち得る。バイオマーカーの使用の別の利点は、患者のコンプライアンスに関する。所与のインヒビター治療が特定の腫瘍に対して有効である可能性があると保証された患者は、調合されたインヒビターベースのレジメンを長期にわたり継続する高い見込みを示すだろう。ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターベースの癌治療に対する癌の感受性を予測するためのバイオマーカーが、当該分野において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/70398号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEK(例えば、MEK1またはMEK2)インヒビターに対する癌細胞の拡散、成長または生存の感受性を予測する際に有効なBRAF遺伝的バイオマーカーを提供することによって、当該分野におけるこの必要性に取り組むものである。
【0007】
発明の要旨
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEK(例えば、MEK1またはMEK2)インヒビターに対する癌細胞の拡散、成長または生存の感受性を予測する際に有効なBRAF遺伝的バイオマーカーを提供することによって、当該分野におけるこの必要性に取り組むものである。
【0008】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法を提供し、この方法は、前記細胞が、ホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E BRAF遺伝子型、またはホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいは機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF遺伝子型を特徴とするか否かを判定する工程を包含し;ここで、前記遺伝子型が検出された場合に、前記細胞が感受性であると判定される。本発明の実施形態において、前記悪性細胞または新形成細胞は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌(tetracarcinoma)、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する。本発明の実施形態において、前記ERKインヒビターまたはMEKインヒビターは、
【0009】
【化1】

からなる群から選択される構造式によって表される。本発明の実施形態において、ホモ接合性のV600E BRAF遺伝子型を特徴とする細胞が、感受性であると判定される。本発明の実施形態において、その細胞は、インビトロまたはインビボの供給源から得られる。例えば、本発明の実施形態において、本方法は、(a)被験体の身体から1つ以上の悪性細胞または新形成細胞のサンプルを得る工程;(b)前記悪性細胞または新形成細胞が、ホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E BRAF遺伝子型、またはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいは機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF遺伝子型を特徴とするか否かを判定する工程を包含し;ここで、前記遺伝子型が前記細胞において検出された場合に、その細胞が前記インヒビターに対して感受性であると判定される。本発明の実施形態において、その方法は、悪性細胞または新形成細胞が感受性であると判定された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはカルシトリオール)と必要に応じて併用して、治療有効量のそのインヒビターを被験体に投与することによって、その被験体における悪性細胞または新形成細胞を処置する工程をさらに包含する。
【0010】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを用いて処置するための、悪性細胞または新形成細胞を有する被験体を選択するための方法も提供し、この方法は、本明細書中で述べられる方法によって前記インヒビターに対するその悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、前記細胞が感受性であると判定された場合に、前記被験体が選択される。本発明の実施形態において、前記悪性細胞または新形成細胞は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する。本発明の実施形態において、その方法は、被験体が選択された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはカルシトリオール)と必要に応じて併用して、治療有効量の上記インヒビターを前記被験体に投与することによって、その被験体における悪性細胞または新形成細胞を処置する工程をさらに包含する。
【0011】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対して感受性である悪性細胞または新形成細胞を有する被験体を確認するための方法を提供し、この方法は、本明細書中で述べられる方法によって前記インヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、前記細胞が感受性であると判定された場合に、前記被験体が確認される。本発明の実施形態において、悪性細胞または新形成細胞は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する。本発明の実施形態において、その方法は、被験体が確認された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはカルシトリオール)と必要に応じて併用して、治療有効量の上記インヒビターを前記被験体に投与することによって、その被験体における悪性細胞または新形成細胞を処置する工程をさらに包含する。
【0012】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを用いて、悪性細胞または新形成細胞によって媒介される病状を処置するための方法をさらに提供し、この方法は、本明細書中に示される方法によって、前記インヒビターに対するその悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程、および前記細胞が感受性であると判定された場合に、その被験体に治療的に有効な用量の上記インヒビターを投与することによる処置を継続するか、または開始する工程を包含する。本発明の実施形態において、病状は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される。例えば、本発明の実施形態において、前記悪性細胞または新形成細胞は、腫瘍内に存在するか、または非固形癌を媒介する。
【0013】
本発明の範囲は、悪性細胞または新形成細胞によって媒介される病状を有する患者に対する治療を選択するための方法も包含し、この方法は、本明細書中で述べられる方法によって、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対するその細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、前記細胞がそのインヒビターに対して感受性であると判定された場合に、前記インヒビターが治療薬として選択される。本発明の実施形態において、病状は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される。本発明の実施形態において、その方法は、治療薬が選択された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはカルシトリオール)と必要に応じて併用して、治療有効量の上記インヒビターを被験体に投与することによって、その被験体における病状を処置する工程をさらに包含する。
【0014】
本発明の範囲は、悪性細胞または新形成細胞によって媒介される病状を有する被験体に投与されるべきERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターの用量を選択するための方法も包含し、この方法は、本明細書中に示される方法によって、その細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、前記細胞が感受性であると判定された場合は、前記細胞が感受性であると判定されない場合に選択される用量よりも低用量が選択される。本発明の実施形態において、病状は、胃癌、任意の腎癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される。本発明の実施形態において、その方法は、治療有効量のさらなる化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはカルシトリオール)と必要に応じて併用して、選択された用量の上記インヒビターを前記被験体に投与する工程をさらに包含する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法であって、該細胞が、ホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E BRAF遺伝子型、またはホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいはBRAF機能獲得型表現型を特徴とする任意の遺伝子型を特徴とするか否かを判定する工程を包含し;ここで、前記遺伝子型が検出された場合に、前記細胞が感受性であると判定される、方法。
(項目2) 前記悪性細胞または新形成細胞が、胃癌、腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌腫、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記インヒビターが、以下:
【化31】

【化32】

からなる群から選択される構造式によって表される、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記細胞がホモ接合性のV600E BRAF遺伝子型を含むか否かが判定される、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記細胞が、インビトロの供給源から得られる、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記細胞が、インビボの供給源から得られる、項目1に記載の方法。
(項目7) (a)被験体の身体から1つ以上の悪性細胞または新形成細胞のサンプルを得る工程;
(b)該悪性細胞または新形成細胞が、ホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E
BRAF遺伝子型、またはホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいは機能獲得型表現型で特徴付けられるBRAFの任意の遺伝子型を特徴とするか否かを判定する工程;
を包含し、ここで、該遺伝子型が該細胞において検出された場合に、該細胞が前記インヒビターに対して感受性であると判定される、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記悪性細胞または新形成細胞が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記悪性細胞または新形成細胞が感受性であると判定された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤と必要に応じて併用して、治療有効量の前記インヒビターを前記被験体に投与することによって、該被験体における該細胞を処置する工程をさらに包含する、項目7に記載の方法。
(項目10) ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを用いて前記悪性細胞または新形成細胞を処置するために、該細胞を有する被験体を選択するための方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって、前記インヒビターに対する該悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、該細胞が感受性であると判定された場合に、該被験体が選択される、方法。
(項目11) 前記悪性細胞または新形成細胞が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する、項目10に記載の方法。
(項目12) 治療有効量のさらなる化学療法剤と必要に応じて併用して、前記選択された被験体に治療有効量の前記インヒビターを投与することによって、該被験体における前記悪性細胞または新形成細胞を処置する工程をさらに包含する、項目10に記載の方法。(項目13) ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対して感受性である悪性細胞または新形成細胞を有する被験体を確認するための方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって該インヒビターに対する該悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、該細胞が感受性であると判定された場合に、該被験体が確認される、方法。
(項目14) 前記悪性細胞または新形成細胞が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される病状を媒介する、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記被験体が確認された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤と必要に応じて併用して、治療有効量の前記インヒビターを該被験体に投与することによって、該被験体における前記悪性細胞または新形成細胞を処置する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目16) ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを用いて、悪性細胞または新形成細胞によって媒介される病状を処置するための方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって、該インヒビターに対する該悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程、および該細胞が感受性であると判定された場合に、治療的に有効な用量の該インヒビターを該被験体に投与することによって、該インヒビターを用いた処置を継続するかまたは開始する工程を包含する、方法。
(項目17) 前記病状が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される、項目16に記載の方法。
(項目18) 前記悪性細胞または新形成細胞が、腫瘍内に存在する、項目16に記載の方法。
(項目19) 前記悪性細胞または新形成細胞が、非固形癌を媒介する、項目16に記載
の方法。
(項目20) 悪性細胞または新形成細胞によって媒介される病状を有する被験体に対する治療を選択するための方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する該細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、該細胞が該インヒビターに対して感受性であると判定された場合に、該インヒビターが該治療として選択される、方法。
(項目21) 前記病状が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22) 前記治療が選択された場合に、治療有効量のさらなる化学療法剤と必要に応じて併用して、治療有効量の前記インヒビターを前記被験体に投与することによって、該被験体における前記病状を処置する工程をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目23) 悪性細胞または新形成細胞を処置するための処置レジメンにおいて、該細胞によって媒介される病状を有する被験体に投与されるべきERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターの用量を選択するための方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって該細胞の感受性を評価する工程を包含し;ここで、該細胞が感受性であると判定された場合は、該細胞が感受性でないと判定された場合に選択される用量よりも低用量が選択される、方法。
(項目24) 前記病状が、胃癌、任意の腎癌、非固形癌、横紋筋肉腫、胆管癌、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目25) 治療有効量のさらなる化学療法剤と必要に応じて併用して、前記選択された用量の前記インヒビターを前記被験体に投与する工程をさらに包含する、項目23に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
細胞、例えば細胞株のBRAF遺伝子型の状態(ホモ接合性のV600E BRAFもしくはヘテロ接合性のV600E BRAF、またはホモ接合性のV600D BRAFもしくはヘテロ接合性のV600D BRAF、あるいは機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF遺伝子型)は、ERK1/2キナーゼインヒビターまたはMEKキナーゼインヒビターに対する化合物感受性(例えば、患者における腫瘍内の細胞の化合物感受性)についての新規の予測的なバイオマーカーである。本発明の重要な特徴および利点は、V600 BRAF変異遺伝子型の状態が、追加のERK1/2インヒビター化合物またはMEKインヒビター化合物に対する感受性についての予測的なバイオマーカーとして使用され得ること、ゆえに、黒色腫を含むヒトの癌に対する新規の化学療法薬の開発に役立ち得ることである。ERK1/2インヒビター薬物応答またはMEKインヒビター薬物応答と、認識されている癌遺伝子であるBRAFの変異状態との相関は、ヒト腫瘍組織、細胞株およびマウス異種移植片モデルにおいてERK1/2化合物感受性プロファイルおよびMEK化合物感受性プロファイルを予測する、BRAFに対する診断テストの開発を可能にする。
【0016】
本発明の実施形態において、成長の阻害が、約100nM以下のIC50値を特徴とする場合、一般に、細胞は、ERK1インヒビターまたはERK2インヒビターに対してより感受性であると考えられる。100nMを超えるIC50値は、一般に、抵抗性(すなわち、より低い感受性)と考えられる。
【0017】
成長の阻害が、約10nM以下のIC50値を特徴とする場合、一般に、細胞は、MEKインヒビターに対してより感受性であると考えられる。10nMを超えるIC50値は、一般に抵抗性(すなわち、より低い感受性)と考えられる。
【0018】
通常、本明細書中に示されるようなBRAF V600変異体遺伝子型と関連するMEKインヒビターまたはERKインヒビター(例えば、本明細書中に示されるようなもの)の感受性は、以下の通りランクづけられる、ホモ接合体>ヘテロ接合体>野生型。
【0019】
被験体には、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物を含む、任意の生物が包含される。
【0020】
新形成細胞は、異常に高いレベルの増殖を示し、腫瘍または塊を形成し得る。新生物は、良性または悪性であり得る。一般に、悪性細胞および悪性腫瘍は、浸潤し得、近くの組織および器官を破壊し得、そして身体の他の部分に広がり得る。
【0021】
本発明は、悪性細胞もしくは新形成細胞または病状を処置するための方法を提供する。そのような方法は、そのような細胞の成長、生存または拡散(例えば、転移)が任意の程度に阻害される実施形態を含む。
【0022】
本発明の範囲は、固形腫瘍疾患および非固形腫瘍疾患が処置される実施形態も包含する。非固形腫瘍疾患は、その疾患が固形腫瘍または塊によって媒介されない実施形態、例えば、白血病などの血液癌を含む。
【0023】
BRAFに関する用語「機能獲得型」は、任意の当業者によって理解されるであろう(例えば、Hoeflichら、Cancer Res.(2006)66(2):999−1006を参照のこと)。例えば、本発明の実施形態において、機能獲得型BRAF遺伝子型は、例えば、MEK(例えば、MEK1またはMEK2)の高いまたは構成的なリン酸化によって、例えば、細胞増殖の増加および/または形質転換された表現型をもたらし得る、高いまたは構成的なBRAF媒介性細胞内シグナル伝達を促進する。
【0024】
BRAF
用語BRAFは、いかなるヒトBRAF遺伝子またはタンパク質も包含する。BRAFは、いくつかの名称によって知られており、それらとしては、例えば、B−Raf癌原遺伝子セリン/トレオニン−タンパク質キナーゼ、94kDa B−rafタンパク質、およびv−Rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1が挙げられる。BRAFのV600EまたはV600D変異体は、600位におけるバリンの代わりにグルタミン酸またはアスパラギン酸を含む。本発明は、そのような変異体BRAFポリペプチドおよびポリヌクレオチドならびにそれらの使用(例えば、本明細書中に説明されるような使用)を含む。
【0025】
本発明の実施形態において、BRAFは、以下のアミノ酸配列を含む:
【0026】
【化2】

V600E変異体ではグルタミン酸に、またはV600D変異体ではアスパラギン酸に、変異しているバリン600は、下線が引かれており、太字のフォントで示されている。
【0027】
本発明の実施形態において、BRAFは、以下のポリヌクレオチドによってコードされる:
【0028】
【化3】

BRAFにおけるV600EまたはV600D変異などの対立遺伝子の位置は、タンパク質翻訳のための開始コドン(ATG)に対する、コンセンサス配列または参照配列における位置によって特定され得る。特定の対立遺伝子の位置が、コンセンサス配列または参照配列と比較される個体において1つ以上の挿入または欠失が存在することに起因して、目的の集団内の各個体では、その参照配列またはコンテクスト配列における位置と正確に同じ位置に見出されないことがあることを当業者は理解する。したがって、参照配列またはコンテクスト配列における特定の位置を参照することによって(またはそのような配列における開始コドンに関して)本明細書中に記載される任意の対立遺伝子の位置を特定することは、単に便利さのためであること、および文献上で明確に列挙される任意のヌクレオチド位置は、同じ対立遺伝子が、本明細書中に記載される遺伝子型同定方法(genotyping method)または当該分野で周知の他の遺伝子型同定方法のいずれか
を用いて本発明のバイオマーカーの存在または非存在について試験されている任意の個体における同じ遺伝子座に実際に位置するどんなヌクレオチド位置も含むことを当業者は理解するだろう。
【0029】
V600E変異体ではグルタミン酸に、またはV600D変異体ではアスパラギン酸に、変異しているバリン600をコードするコドンは、下線が引かれており、太字のフォントで示されている。本発明は、そのコドンが、変異体対立遺伝子において、バリンをコードする任意のコドン(例えば、GTT、GTC、GTAまたはGTG)であるか、またはグルタミン酸をコードするコドンが、任意のそのようなコドン(例えば、GAAまたはGAG)であるか、またはアスパラギン酸をコードするコドンが、任意のそのようなコドン(例えば、GATまたはGAC)である、実施形態を包含する。
【0030】
本発明の実施形態において、V600D変異は、TG1796−97ATというタンデム変異によって引き起こされる。
【0031】
ERKおよびMEK
p44 MAPキナーゼおよびp42 MAPキナーゼとも呼ばれる細胞外シグナル制御キナーゼ1および2(ERK1およびERK2)は、真核生物に見られるタンパク質のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーのメンバーである。44kDa ERK1および42kDa ERK2は、高度に相同性であり、かつその両方が、同じタンパク質キナーゼカスケードにおいて機能するので、この2つのタンパク質は、ERK1/2またはp44/p42 MAPキナーゼと集合的に称されることが多い。ERK1/2シグナル伝達カスケードは、細胞分化、細胞生理学および神経機能の決定的な制御因子であることが示されている。ERK1/2活性の異常な調節は、癌および自己免疫疾患をはじめとした種々の病理学的状態に関わっている。
【0032】
用語「ERK1/2」および「ERK」などは、ERK1およびERK2のことを指す。用語「MEK」および「MEK1/2」などは、MEK1およびMEK2のことを指す。
【0033】
ERK1の正式名称は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ3である。本発明の実施形態において、ヒトERK1は、以下のアミノ酸配列:
【0034】
【化4】

または以下のアミノ酸配列:
【0035】
【化5】

を含む。
【0036】
本発明の実施形態において、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ1;p40;p41;ERT1;MAPK2;PRKM1;PRKM2;P42MAPK;またはp41mapkとしても知られるヒトERK2は、以下のアミノ酸配列:
【0037】
【化6】

または以下のアミノ酸配列:
【0038】
【化7】

を含む。
【0039】
本発明の実施形態において、MAP2K1、MKK1;MAPKK1;PRKMK1としても知られるヒトMEK1は、以下のアミノ酸配列:
【0040】
【化8】

を含む。
【0041】
本発明の実施形態において、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ2、MAP2K2;MAPKK2、MKK2、PRKMK2としても知られるヒトMEK2は、以下のアミノ酸配列を含む。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、MAPキナーゼキナーゼファミリーに属する二重特異性タンパク質キナーゼである。このキナーゼは、マイトジェン成長因子シグナル伝達において決定的な役割を果たすことが知られている。それは、MAPK1/ERK2をリン酸化し、ゆえに活性化する。
【0042】
【化9】

ERKインヒビターおよびMEKインヒビター
ERK1/2インヒビターおよびMEKインヒビターは、ERK1(p44としても知られる)、ERK2(p42としても知られる)またはMEK(MEK1およびMEK2を含む)を任意の程度に阻害する任意のそのようなインヒビターを含む。一般に、ERK1を阻害する物質は、ERK2も阻害し、その逆もまた同じである。そのようなインヒビターは、ERK1/2インヒビターまたはERKインヒビターと称されることがある。
【0043】
本発明の実施形態において、ERK1インヒビターまたはERK2インヒビターは、公開されている国際特許出願番号WO2007/070398に示されている任意のインヒビターである。
【0044】
本発明の実施形態において、ERK1/2インヒビターは、以下:
【0045】
【化10】

のうちのいずれかもしくは他の任意の小分子ERK1/2インヒビターであるか、あるいはERK1もしくはERK2に特異的に結合し、いかなる程度でもそのような酵素の活性を阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0046】
本発明の実施形態において、MEKインヒビターは、以下:
【0047】
【化11】

のうちのいずれか;または他の任意の小分子MEKインヒビターであるか、MEKに特異的に結合し、いかなる程度でもそのような酵素の活性を阻害する任意の抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0048】
本発明の実施形態において、ERK1またはERK2インヒビターは、以下の構造式(1.0):
【0049】
【化12】

またはその任意の薬学的に許容できる塩によって表され、ここで、
、YおよびYは、各々独立して、−CH=、−N=および−CR=からなる群から選択され;
zは、1〜3であり;
Qは:
【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

からなる群から選択される置換基であり、
各Qは、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から独立して選択される環を表し、ここで、前記置換された環は、R10部分からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているが;但し、Qが、アリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであるとき、その環結合点における炭素原子は、置換されず;
は、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される環を表し、ここで、前記置換された環は、R10部分からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
は、−(C(R24−を表し、ここで、各R24は、H、アルキルおよびFからなる群から独立して選択され、wは、1、2または3であり;
は、−N(R44)−、−O−および−C(R46−からなる群から選択され;mは、1〜6であり;
nは、1〜6であり;
pは、0〜6であり;
tは、0、1または2であり;
は、
(1)−CN、
(2)−NO
(3)−OR10
(4)−SR10
(5)−N(R10
(6)R10
(7)−C(O)R10
(8)−(C(R30−NR32−C(O)−R10
(9)−(C(R30−NR32−S(O)−R10
(10)−(C(R30−NR32−C(O)−N(R32)−R10
(11)
【0052】
【化15】

(12)−CF
(13)−C(O)OR10
(14)−(C(R3013(例えば、−(CH13)、
(15)アルケニル、
(16)−NR32−C(O)−R14
(17)
【0053】
【化16】

(ここで、各R10は、独立して選択される)、
(18)
【0054】
【化17】

(ここで、各R10は、独立して選択される)、
(19)
【0055】
【化18】

(20)−C(O)−NR32−(C(R30−OR10
(21)−C(O)N(R10(ここで、各R10は、独立して選択される)、
(22)−C(O)−NR32−C(R18
(23)−C(O)−NR32−(C(R30−C(O)−N(R10
(24)ヘテロシクロアルケニル、
(25)
【0056】
【化19】

および
(26)アリールアルケニル−
からなる群から選択され;
は:
(1)H、
(2)−CN、
(3)ハロ、
(4)アルキル、
(5)置換アルキル(ここで、前記置換アルキルは、(a)−OH、(b)−O−アルキル(例えば、−O−(C−Cアルキル)、(c)1〜3個のF原子で置換された−O−アルキル、および(d)−N(R40(ここで、各R40は、(i)H、(ii)C−Cアルキル、(iii)−CF、および(e)ハロからなる群から独立して選択される)からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されている)、
(6)アルキニル、
(7)アルケニル、
(8)−(CH11
(9)−N(R26
(10)−OR23
(11)−N(R26)C(O)R42
(12)シクロアルキル、
(13)シクロアルキルアルキル、
(14)
【0057】
【化20】

(15)−O−(置換アルキル)(ここで、前記置換アルキルは、1〜3個のF原子で置換されている)、
(16)−S(O)−アルキル、
(17)−C(O)−アルキル、
(18)
【0058】
【化21】

(19)
【0059】
【化22】

(ここで、各アルキルは、独立して選択される)、
(20)
【0060】
【化23】

(各アルキルは、独立して選択される)、
(21)
【0061】
【化24】

(ここで、各アルキルは、独立して選択される)、
(22)−N(R48)−C(O)−R48(ここで、各R48は、Hおよびアルキルからなる群から独立して選択される)、および
(23)−C(O)−アルキル、例えば、−C(O)−(C−Cアルキル)など、例えば、−C(O)CHなど、
からなる群から選択され;
、R、R、RおよびRの各々は、
(1)H、
(2)アルケニル、
(3)置換アルケニル、
(4)アルキル、
(5)置換アルキル、
(6)シクロアルキル、
(7)置換シクロアルキル、
(8)シクロアルキルアルキル−、
(9)置換シクロアルキルアルキル−、
(10)ヘテロシクロアルキル、
(11)置換ヘテロシクロアルキル、
(12)ヘテロシクロアルキルアルキル−、
(13)置換ヘテロシクロアルキルアルキル−、
(14)−C(O)R10
(15)アリールヘテロアリール−、
(16)置換アリールヘテロアリール−、
(17)ヘテロアリールアリール−、
(18)置換ヘテロアリールアリール−、
(19)アリール、
(20)置換アリール、
(21)ヘテロアリール、
(22)置換ヘテロアリール、
(23)ヘテロアリールヘテロアリール−、
(24)置換ヘテロアリールヘテロアリール−、
(25)アリールアミノヘテロアリール−、
(26)置換アリールアミノヘテロアリール−、
(27)アリールアルキニル−、
(28)置換アリールアルキニル−、
(29)ヘテロアリールアルキニル−、
(30)置換ヘテロアリールアルキニル−
からなる群から独立して選択され、
ここで、前記R、R、R、RおよびRで置換された基(7)、(9)、(11)、(13)、(16)、(18)、(20)、(22)、(24)、(26)、(28)および(30)は、−NH、アルキル、アルケニル、ハロ、−C(O)−NH−R28、−C(O)OR28および−C(O)R28からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され、
ここで、前記R、R、R、RおよびRで置換された基(3)および(5)は、−NH、ハロ(例えば、F、ClおよびBr、ならびに別の例ではF)、−C(O)−NH−R28(例えば、−C(O)−NH−CH)、−C(O)OR28(例えば、−C(O)OC)および−C(O)R28(例えば、−C(O)CH)からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
5Aは、ハロ、−OHおよび−O−アルキルからなる群から選択され;
は、H、−OH、−N(R10、−NR10C(O)R12およびアルキルからなる群から選択され;
各Rは、ハロゲン、−CN、−NO、−OR10、−SR10、−N(R10およびR10からなる群から独立して選択され;
各R10は、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アルキルヘテロアリール−、アルキルアリール−、置換アルキル、置換アリール、置換アリールアルキル、置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリールアルキル、置換シクロアルキル、置換シクロアルキルアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキルアルキル、置換アルキルヘテロアリール−、置換アルキルアリール−、ヘテロシクロアルケニルおよび置換ヘテロシクロアルケニルからなる群から独立して選択され、ここで、前記R10置換アルキルは、−NH、−NHR20、−NO、−CN、−OR26、ハロ、−C(O)−NH−R26、−C(O)OR26および−C(O)R26からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され、そして
前記R10置換アリール、R10置換アリールアルキル、R10置換ヘテロアリール、R10置換ヘテロアリールアルキル、R10置換シクロアルキル、R10置換シクロアルキルアルキル、R10置換ヘテロシクロアルキル、R10置換ヘテロシクロアルキルアルキル、R10置換アルキルヘテロアリール−およびR10置換アルキルアリール−は、(1)−NH、(2)−NO、(3)−CN、(4)−OH、(5)−OR20、(6)−OCF、(7)独立して選択される1〜3個のハロ原子で置換されたアルキル、(8)−C(O)R38、(9)アルキル、(10)アルケニル、(11)ハロ、(12)−C(O)−NH−R26、(13)−C(O)OR38、(14)−C(O)−NR32−(C(R30−N(R38、(15)−S(O)38、(16)−C(O)−NR32−R38、(17)−NR32−C(O)−R38
(18)
【0062】
【化25】

(19)−NHR20、および(20)シクロアルキルからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
11は、F、−OH、−CN、−OR10、−NHNR10、−SR10およびヘテロアリールからなる群から選択され;
12は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルアルキルからなる群から選択され;
14は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル−、ヘテロシクロアルキル、アルキルヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル−、アルキルヘテロアリール−およびアルキルアリール−からなる群から選択され;
15は、H、−OH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル−、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルアルキル−、アルキルヘテロアリール−およびアルキルアリール−からなる群から選択され;
20は、アルキルを表し;
23は、H、アルキル、アリール、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル−からなる群から選択され;
各R26は、Hおよびアルキルからなる群から独立して選択され;
28は、アルキルであり;
各R30は、H、アルキルおよびFからなる群から独立して選択され;
各R32は、Hおよびアルキルからなる群から独立して選択され、ここで、各R32は、通常Hであり;
各R35は、HおよびC〜Cアルキルからなる群から独立して選択され;
36は、H、アルキルおよび−O−アルキルからなる群から選択され;
各R38は、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アルキルヘテロアリール−、アルキルアリール−、置換アルキル、置換アリール、置換アリールアルキル、置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリールアルキル、置換シクロアルキル、置換シクロアルキルアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキルアルキル、置換アルキルヘテロアリール−および置換アルキルアリール−からなる群から独立して選択され、ここで、前記R38置換アルキルは、−NH、−NO、−CN、−OR26、ハロ、−C(O)−NH−R28、−C(O)OR28および−C(O)R28からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され、そして
前記R38置換アリール、置換アリールアルキル、置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリールアルキル、置換シクロアルキル、置換シクロアルキルアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキルアルキル、置換アルキルヘテロアリール−および置換アルキルアリール−は、(1)−NH、(2)−NO、(3)−CN、(4)−OH、(5)−OR20、(6)−OCF、(7)−CF、(8)−C(O)R26、(9)アルキル、(10)アルケニル、(11)ハロ、(12)−C(O)−NH−R26、(13)−C(O)OR26、(14)−C(O)−NR32−(C(R30−N(R26、(15)−S(O)26、(16)−C(O)N(R32)(R26)、(17)−NR32C(O)R26
(18)
【0063】
【化26】

および
(19)−NHR20
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
42は、アルキル、アリール、ヘテロアリールおよびシクロアルキルからなる群から選択され;
44は、H、アルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルからなる群から選択され;そして
各R46は、H、アルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルからなる群から独立して選択される。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、別途明記されない限り、以下の用語は、以下の意味を有し、別途明記されない限り、用語が個別に、または別の用語の構成要素として、使用されるとき、その各用語(すなわち、部分または置換基)の定義が適用される(例えば、アリールの定義は、アリールに対する定義およびアリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルキニルなどのアリール部に対する定義と同じである):
「アシル」とは、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−またはシクロアルキニル−C(O)−基のことを意味し、ここで、その様々な基は、以下に定義されるとおりであり(そしてアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分は、以下に定義されるように置換され得る);親部分に対する結合は、カルボニルを介し;好ましいアシルは、低級アルキルを含み;適当なアシル基の非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルが挙げられ;
「アルケニル」とは、炭素と炭素との二重結合を少なくとも1つ含む脂肪族炭化水素基(鎖)のことを意味し、ここで、その鎖は、直鎖または分枝鎖であり得、前記基は、約2〜約15個の炭素原子を含み;好ましいアルケニル基は、その鎖内に約2〜約12個の炭素原子;より好ましくは、その鎖内に約2〜約6個の炭素原子を含み;分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)またはアルケニル基が、線状アルケニル鎖に結合されていることを意味し;「低級アルケニル」とは、その鎖内に約2〜約6個の炭素原子を含むアルケニル基のことを意味し、その鎖は、直鎖または分枝鎖であり得;用語「置換アルケニル」とは、アルケニル基が、独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味し、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシおよび−S(アルキル)からなる群から独立して選択され;適当なアルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニルおよびデセニルが挙げられ;
「アルコキシ」とは、アルキル−O−基(すなわち、親部分への結合は、エーテル酸素を介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または以下に記載されるように置換され;適当なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが挙げられ;
「アルコキシカルボニル」とは、アルキル−O−CO−基(すなわち、親部分への結合は、カルボニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;適当なアルコキシカルボニル基の非限定的な例としては、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられ;
「アルキル」(トリフルオロアルキルおよびアルキルオキシなどの他の部分のアルキル部を含む)とは、直鎖または分枝鎖であり得る脂肪族炭化水素基(鎖)のことを意味し、ここで、前記基は、その鎖内に約1〜約20個の炭素原子を含み;好ましいアルキル基は、その鎖内に約1〜約12個の炭素原子を含み;より好ましいアルキル基は、その鎖内に約1〜約6個の炭素原子を含み;分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が、線状アルキル鎖に結合されていることを意味し;「低級アルキル」とは、その鎖内に約1〜約6個の炭素原子を含む基のことを意味し、前記鎖は、直鎖または分枝鎖であり得;用語「置換アルキル」とは、アルキル基が、独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味し、ここで、各置換基は:ハロ、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、−C(O)O−アルキルおよび−S(アルキル)からなる群から独立して選択され;適当なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルが挙げられ;
「アルキルアリール」(またはアルカリール(alkaryl))とは、アルキル−アリール−基(すなわち、親部分への結合は、アリール基を介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され;好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含み;適当なアルキルアリール基の非限定的な例としては、o−トリル、p−トリルおよびキシリルが挙げられ;
「アルキルヘテロアリール」とは、アルキル−ヘテロアリール−基(すなわち、親部分への結合は、ヘテロアリール基を介する)のことを意味し、ここで、そのアルキルは、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され;
「アルキルスルフィニル」とは、アルキル−S(O)−基(すなわち、親部分への結合は、スルフィニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;好ましい基は、アルキル基が低級アルキルである基であり;
「アルキルスルホニル」とは、アルキル−S(O)−基(すなわち、親部分への結合は、スルホニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;好ましい基は、アルキル基が低級アルキルである基であり;
「アルキルチオ」とは、アルキル−S−基(すなわち、親部分への結合は、硫黄を介する)のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、非置換であるか、または前に記載されたように置換され;適当なアルキルチオ基の非限定的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオおよびヘプチルチオが挙げられ;
「アルキニル」とは、炭素と炭素との三重結合を少なくとも1つ含む脂肪族炭化水素基(鎖)のことを意味し、ここで、その鎖は、直鎖または分枝鎖であり得、そしてその基は、中に約2〜約15個の炭素原子を含み;好ましいアルキニル基は、その鎖内に約2〜約12個の炭素原子;より好ましくは、その鎖内に約2〜約4個の炭素原子を含み;分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が線状アルキニル鎖に結合されていることを意味し;「低級アルキニル」とは、その鎖内に約2〜約6個の炭素原子を含むアルキニル基のことを意味し、その鎖は、直鎖または分枝鎖であり得;適当なアルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニルおよびデシニルが挙げられ;用語「置換アルキニル」とは、そのアルキニル基が、独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味し、そして各置換基が、アルキル;アリールおよびシクロアルキルからなる群から独立して選択され;
「アミノとは、−NH基のことを意味し;
「アラルケニル」(またはアリールアルケニル)とは、アリール−アルケニル−基(すなわち、親部分への結合は、アルケニル基を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され、そのアルケニル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;好ましいアラルケニルは、低級アルケニル基を含み;適当なアラルケニル基の非限定的な例としては、2−フェネテニルおよび2−ナフチルエテニルが挙げられ;
「アラルキル」(またはアリールアルキル)とは、アリール−アルキル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキル基を介する)のことを意味し、ここで、そのアリールは、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され、そのアルキルは、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含み;適当なアラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルが挙げられ;
「アラルキルオキシ」(またはアリールアルキルオキシ)とは、アラルキル−O−基(すなわち、親部分への結合は、エーテル酸素を介する)のことを意味し、ここで、そのアラルキル基は、非置換であるか、または前に記載されたように置換され;適当なアラルキルオキシ基の非限定的な例としては、ベンジルオキシおよび1−または2−ナフタレンメトキシが挙げられ;
「アラルコキシカルボニル」とは、アラルキル−O−C(O)−基(すなわち、親部分への結合は、カルボニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアラルキル基は、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;適当なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルであり;
「アラルキルチオ」とは、アラルキル−S−基(すなわち、親部分への結合は、硫黄を介する)のことを意味し、ここで、そのアラルキル基は、非置換であるか、または前に記載されたように置換され;適当なアラルキルチオ基の非限定的な例は、ベンジルチオであり;
「アロイル」とは、アリール−C(O)−基(すなわち、親部分への結合は、カルボニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され;適当な基の非限定的な例としては、ベンゾイルならびに1−および2−ナフトイルが挙げられ;
「アリール」(時折、「ar」と省略される)とは、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは、約6〜約10個の炭素原子を含む芳香族の単環式または多環式(multicyclic)の環系のことを意味し;そのアリール基は、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)で必要に応じて置換され得る。適当なアリール基の非限定的な例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられ;
「アリールアルキニル」とは、アリール−アルキニル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキニル基を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアルキニル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「アリールアミノヘテロアリール」とは、アリール−アミノ−ヘテロアリール基(すなわち、親部分への結合は、ヘテロアリール基を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアミノ基は、上で定義されたとおり(すなわち、ここでは−NH−)であり、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され;
「アリールヘテロアリール」とは、アリール−ヘテロアリール基−(すなわち、親部分への結合は、ヘテロアリール基を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され;
「アリールオキシ」とは、アリール−O−基(すなわち、親部分への結合は、エーテル酸素を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;適当なアリールオキシ基の非限定的な例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられ;
「アリールオキシカルボニル」とは、アリール−O−C(O)−基(すなわち、親部分への結合は、カルボニルを介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;適当なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙げられ;
「アリールスルフィニル」とは、アリール−S(O)−基(すなわち、親部分への結合は、スルフィニルを介する)のことを意味し、ここで、アリールは、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;
「アリールスルホニル」とは、アリール−S(O)−基(すなわち、親部分への結合は、スルホニルを介する)のことを意味し、ここで、アリールは、非置換であるか、または前に定義されたように置換され;
「アリールチオ」とは、アリール−S−基(すなわち、親部分への結合は、硫黄を介する)のことを意味し、ここで、そのアリール基は、非置換であるか、または前に記載されたように置換され;適当なアリールチオ基の非限定的な例としては、フェニルチオおよびナフチルチオが挙げられ;
「シクロアルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは、約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し;好ましいシクロアルケニル環は、約5〜約7個の環原子を含み;そのシクロアルケニルは、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)で必要に応じて置換され得;適当な単環式シクロアルケニルの非限定的な例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどが挙げられ;適当な多環式シクロアルケニルの非限定的な例は、ノルボルニレニルであり;
「シクロアルキル」とは、約3〜約7個の炭素原子、好ましくは、約3〜約6個の炭素原子を含む非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し;そのシクロアルキルは、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)で必要に応じて置換され得;適当な単環式シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられ;適当な多環式シクロアルキルの非限定的な例としては、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられ;
「シクロアルキルアルキル」とは、シクロアルキル−アルキル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキル基を介する)のことを意味し、ここで、そのシクロアルキル部分は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアルキル部分は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基のことを意味し;好ましいハロは、フルオロ、クロロまたはブロモであり、より好ましいのは、フルオロおよびクロロであり;
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のことを意味し;好ましいハロゲンは、フッ素、塩素および臭素であり;
「ハロアルキル」とは、そのアルキル上の1つ以上の水素原子が上で定義されたようなハロ基で置換されている、上で定義されたようなアルキルのことを意味し;
「ヘテロアラルケニル」とは、ヘテロアリール−アルケニル−基(すなわち、親部分への結合は、アルケニル基を介する)のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され、そのアルケニル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアラルキル」(またはヘテロアリールアルキル)とは、ヘテロアリール−アルキル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキル基を介する)のことを意味し、ここで、そのヘテロアリールは、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され、そのアルキル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基であるアルキル基を含み;適当なアラルキル基の非限定的な例としては、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルが挙げられ;
「ヘテロアラルキルチオ」とは、ヘテロアラルキル−S−基のことを意味し、ここで、そのヘテロアラルキル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリール」とは、約5〜約14個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含む芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し、ここで、その環原子のうちの1つ以上は、単独で、または組み合わせて、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄であり;好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含み;「ヘテロアリール」は、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)によって必要に応じて置換され得;ヘテロアリールの語根(root name)の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアとは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在していることを意味し;ヘテロアリールの窒素原子は、必要に応じて、対応するN−オキシドに酸化され得;適当なヘテロアリールの非限定的な例としては、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられ;
「ヘテロアリールアルキニル」(またはヘテロアラルキニル)とは、ヘテロアリール−アルキニル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキニル基を介する)のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアルキニル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリールアリール」(またはヘテロアラリール(heteroararyl))とは、ヘテロアリール−アリール−基(すなわち、親部分への結合は、アリール基を介する)のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され、そのアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリールヘテロアリールアリール」とは、ヘテロアリール−ヘテロアリール−基(すなわち、親部分への結合は、最後のヘテロアリール基を介する)のことを意味し、ここで、各ヘテロアリール基は、独立して、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリールスルフィニル」とは、ヘテロアリール−SO−基のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリールスルホニル」とは、ヘテロアリール−SO−基のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロアリールチオ」とは、ヘテロアリール−S−基のことを意味し、ここで、そのヘテロアリール基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロシクレニル」(またはヘテロシクロアルケニル)とは、約3〜約10個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含む非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し、ここで、その環系内の原子のうちの1つ以上は、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素および硫黄原子からなる群から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子)であり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含み;その環系内に存在する酸素および/または硫黄原子は、隣接せず;好ましいヘテロシクレニル環は、約5〜約6個の環原子を含み;ヘテロシクレニルの語根の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアとは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が環原子として存在することを意味し;ヘテロシクレニルは、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)によって必要に応じて置換され得;ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに酸化され得;適当な単環式アザヘテロシクレニル基の非限定的な例としては、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニルなどが挙げられ;適当なオキサヘテロシクレニル基の非限定的な例としては、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニルなどが挙げられ;適当な多環式オキサヘテロシクレニル基の非限定的な例は、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルであり;適当な単環式チアヘテロシクレニル環の非限定的な例としては、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどが挙げられ;
「ヘテロシクロアルキルアルキル」(またはヘテロシクリルアルキル)とは、ヘテロシクロアルキル−アルキル−基(すなわち、親部分への結合は、アルキル基を介する)のことを意味し、ここで、そのヘテロシクロアルキル基(すなわち、ヘテロシクリル基)は、非置換であるか、または以下に定義されるように置換され、そのアルキル基は、非置換であるか、または上で定義されたように置換され;
「ヘテロシクリル」(またはヘテロシクロアルキル)とは、約3〜約10個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含む非芳香族の飽和の単環式または多環式の環系のことを意味し、ここで、その環系内の原子のうちの1つ以上は、単独で、または組み合わせて、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄であり;その環系内に存在する酸素および/または硫黄原子は、隣接せず;好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含み;ヘテロシクリルの語根の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアとは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在することを意味し;ヘテロシクリルは、独立して選択される1つ以上の「環系置換基」(以下で定義される)によって必要に応じて置換され得;ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに酸化され得;適当な単環式ヘテロシクリル環の非限定的な例としては、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられ;
「ヒドロキシアルキル」とは、HO−アルキル−基のことを意味し、ここで、そのアルキル基は、上で定義されたように、置換されるか、または非置換であり;好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含み;適当なヒドロキシアルキル基の非限定的な例としては、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが挙げられ;そして
「環系置換基」とは、例えば、環系上の利用可能な水素を置換する、芳香族または非芳香族の環系に結合された置換基のことを意味し;環系置換基は、各々独立して:アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル、R6065N−、R6065N−アルキル−、R6065NC(O)−およびR6065NSO−からなる群から選択され、ここで、R60およびR65は、各々独立して:水素、アルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から選択され;「環系置換基」とは、3〜7個の環原子の環式環のことも意味し、ここで、1〜2個の環原子は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロシクレニル環上の2つの環水素原子を同時に置換することによって、前記アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロシクレニル環に結合されたヘテロ原子であり得;非限定的な例としては:
【0065】
【化27】

などが挙げられる。
【0066】
環の中に引かれる線は、示される結合が、置換可能な環炭素原子のいずれかに結合され得ることを意味する。
【0067】
本明細書中の本文、スキーム、実施例、構造式および任意の表における満たされていない原子価を有する任意の炭素またはヘテロ原子は、水素原子またはその原子価を満たす原子を有すると想定される。
【0068】
本発明の1つ以上の化合物は、溶媒和物としても存在し得るか、または必要に応じて溶媒和物に変換され得る。溶媒和物の調製方法は、一般に知られている。したがって、例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceutical Sci.,93(3),601−611(2004)には、水からの調製方法と同様に、酢酸エチル中の抗真菌性フルコナゾールの溶媒和物の調製方法が記載されている。溶媒和物、半溶媒和物(hemisolvate)、水和物などの同様の調製方法は、E.C.van Tonderら、AAPS PharmSciTech.,5(1),article 12(2004);およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.,603−604(2001)によって記載されている。代表的で非限定的なプロセスは、外界温度よりも高い温度においてインヒビター化合物を所望量の所望の溶媒(有機溶媒もしくは水またはそれらの混合物)に溶解する工程、およびその溶液を、結晶を形成するのに十分な速度で冷却し、次いで、標準的な方法によって単離する工程を包含する。例えば、I.R.分光法などの分析技術によって、溶媒和物(または水和物)としての結晶内の溶媒(または水)の存在が示される。
【0069】
治療方法および投与
本明細書中に示されるERK1インヒビターおよびERK2インヒビターならびにMEKインヒビターは、癌などの任意の過剰増殖性障害を処置するために使用され得る。本明細書中に示されるインヒビターを用いて処置可能な癌としては、例えば、胆管癌(choloangiocarcinoma)、肺癌、膵癌、結腸癌、骨髄性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌、間葉系起源の癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、ヘパトーム、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌が挙げられる。
【0070】
本明細書中で述べられるERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターの投与によって処置可能な黒色腫は、任意のステージまたはタイプのその疾患を含む。それらのインヒビターは、被験体の身体の任意の部分における黒色腫を処置するために使用され得る。例えば、本明細書中で述べられるインヒビターは、悪性黒子型黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫および末端部黒子型黒色腫を処置するために使用され得る。
【0071】
本明細書中で述べられるERK1インヒビターおよびERK2インヒビターもしくはMEKインヒビターならびに/または薬学的に許容できるその塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態およびサイズならびに処置される症状の重症度などの因子を考慮して、主治医の判断に従って制御される。経口投与用の代表的な治療的に有効な1日投与レジメンは、約0.04mg/日〜約4000mg/日の範囲であり得る。
【0072】
代表的には、任意の薬剤(例えば、本明細書中で述べられるようなさらなる化学療法剤)の投与および投薬は、可能であれば、Physicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(2002年11月)における、承認された薬剤の製品情報シートに列挙されているスケジュールならびに当該分野で公知の治療プロトコルに従って行われる。
【0073】
実際に使用される投薬量は、患者の必要条件および処置される状態の重症度に応じて変動し得る。特定の状況に対する適正な投与レジメンの決定は、当該分野の技術範囲内である。便宜上、1日総投薬量は、必要に応じていくらかに分割されて、その日中に分けて投与され得る。
【0074】
本明細書中に記載されている化合物から薬学的組成物を調製する場合、不活性で薬学的に許容できるキャリアは、固体または液体であり得る。固体の形態の調製物としては、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。散剤および錠剤は、約5〜約95パーセントの活性成分を含み得る。適当な固体キャリアは、当該分野で公知であり、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖またはラクトースである。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固体剤形として使用され得る。調合に関する全般的な情報については、例えば、Gilmanら、(eds.)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania.;Avisら、(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York;Liebermanら、(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;およびLiebermanら、(eds.)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,Kenneth A.Walters(ed.)(2002)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekkerを参照のこと。
【0075】
液体の形態の調製物としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。例として、非経口注射のための水または水−プロピレングリコール溶液、または経口用の溶液、懸濁液およびエマルジョンのための甘味料および乳白剤の添加は、本発明の一部を形成する。液体の形態の調製物には、鼻腔内投与用の溶液も含まれ得る。
【0076】
吸入に適したエアロゾル調製物としては、溶液および粉末の形態の固体が挙げられ得、それらは、不活性な圧縮ガス、例えば、窒素などの薬学的に許容できるキャリアと組み合わすことができる。
【0077】
使用の直前に、経口投与または非経口投与のための液体の形態の調製物に変換されることを目的としている固体の形態の調製剤もまた含まれる。そのような液体の形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0078】
本明細書中で述べられるERK1インヒビターおよびERK2インヒビターならびにMEKインヒビターは、経皮的に送達可能でもあり得る。経皮的組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/またはエマルジョンの形状をとり得、それは、この目的のために、当該分野において従来の通りのマトリックスタイプまたはレザバタイプの経皮パッチ内に含めることができる。
【0079】
本発明の実施形態において、インヒビターは、経口的に投与される。
【0080】
本発明の実施形態において、薬学的調製物は、単位剤形である。そのような形態では、調製物は、適切な量、例えば、所望の目的を達成するのに有効な量の活性成分を含む適当なサイズの単位用量に小分けされる。
【0081】
調製物の単位用量における活性な化合物の量は、特定の適用法に応じて、約0.01mg〜約1000mg、好ましくは、約0.01mg〜約750mg、より好ましくは、約0.01mg〜約500mg、最も好ましくは、約0.01mg〜約250mgで変動し得るか、または調整され得る。
【0082】
さらなる化学療法剤
本発明の実施形態は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを、任意のさらなる化学療法剤(例えば、抗癌治療剤)または治療的な手技(例えば、抗癌放射線治療または外科的な腫瘍摘出術)と併用して投与することによって、癌などの病状を処置する方法を包含する。
【0083】
さらなる化学療法剤としては、例えば、微小管作用剤(microtubule affecting agent)、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然物およびそれらの誘導体、ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む)ならびに合成物が挙げられる。
【0084】
アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素およびトリアゼンを含む)の例としては:ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホラミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミドが挙げられる。
【0085】
代謝拮抗物質(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよびアデノシンデアミナーゼインヒビターを含む)の例としては、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチンおよびゲムシタビンが挙げられる。
【0086】
天然物およびそれらの誘導体(ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンフォカインおよびエピポドフィロトキシンを含む)の例としては:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、パクリタキセル(パクリタキセルは、微小管作用剤であり、Taxol(登録商標)として市販されている)、パクリタキセル誘導体(例えば、タキソテール)、ミトラマイシン、デオキシコ−ホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン(特に、IFN−a)、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0087】
ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む)の例としては:17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、メチルプレドニゾロン、メチル−テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェンおよびゾラデックス(Zoladex)が挙げられる。
【0088】
合成物(白金配位錯体などの無機錯体を含む)の例:シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾールおよびヘキサメチルメラミン。
【0089】
他の化学療法薬の例としては、ナベルベン(Navelbene)、CPT−11、アナストラゾール(Anastrazole)、レトラゾール(Letrazole)、カペシタビン(capecitabinbe)、レロキサフィン(Reloxafine)およびドロロキサフィン(Droloxafine)が挙げられる。
【0090】
微小管作用剤(例えば、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体またはパクリタキセル様化合物)は、本明細書中で使用されるとき、微小管の形成および/または脱重合および/または作用に影響する化合物を含む。そのような薬剤は、例えば、微小管安定化剤または微小管形成を妨害する薬剤であり得る。
【0091】
本発明の方法において有用である微小管作用剤は、当業者に周知であり、それらとしてはは、アロコルヒチン(Allocolchicine)(NSC406042)、ハリコンドリンB(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC33410)、ドラスタチン10(NSC376128)、マイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、NSC125973)、パクリタキセル誘導体(例えば、タキソテール、NSC608832)、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン(NSC83265)、ビンブラスチンサルフェート(NSC49842)、ビンクリスチンサルフェート(NSC67574)、エポチロンA、エポチロン、ディスコデルモリド(Discodermolide)(Service,(1996)Science,274:2009を参照のこと)、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような薬剤の例は、例えば、Bulinski(1997)J.Cell Sci.110:3055−3064,Panda(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:10560−10564,Muhlradt(1997)Cancer Res.57:3344−3346,Nicolaou(1997)Nature 387:268−272,Vasquez(1997)Mol.Biol.Cell.8:973−985およびPanda(1996)J.Biol.Chem.271:29807−29812に記載されている。
【0092】
パクリタキセル様活性を有する化学療法剤としては、パクリタキセルならびにパクリタキセル誘導体(パクリタキセル様化合物)およびパクリタキセルアナログが挙げられるが、これらに限定されない。パクリタキセルおよびその誘導体(例えば、タキソールおよびタキソテール)は、市販されている。さらに、パクリタキセルならびにパクリタキセルの誘導体およびアナログを生成する方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第5,569,729号;同第5,565,478号;同第5,530,020号;同第5,527,924号;同第5,508,447号;同第5,489,589号;同第5,488,116号;同第5,484,809号;同第5,478,854号;同第5,478,736号;同第5,475,120号;同第5,468,769号;同第5,461,169号;同第5,440,057号;同第5,422,364号;同第5,411,984号;同第5,405,972号;および同第5,296,506号を参照のこと)。
【0093】
より詳細には、用語「パクリタキセル」とは、本明細書中で使用されるとき、Taxol(登録商標)(NSC番号:125973)として市販されている薬物のことを指す。Taxol(登録商標)は、チューブリン部分が、有糸分裂に対して適正な構造に再編成することができない安定化した微小管束に重合することを増加させることによって、真核生物細胞の複製を阻害する。多くの利用可能な化学療法薬のうち、パクリタキセルは、薬剤不応性腫瘍(卵巣腫瘍および乳腺腫瘍を含む)に対する臨床試験において有効であったので、関心が寄せられている(Hawkins(1992)Oncology,6:17−23,Horwitz(1992)Trends Pharmacol.Sci.13:134−146,Rowinsky(1990)J.Natl.Canc.Inst.82:1247−1259)。
【0094】
追加の微小管作用剤は、当該分野で公知の多くのそのようなアッセイ(例えば、パクリタキセルアナログのチューブリン重合活性を測定する半自動化アッセイ)の1つを、細胞の有糸分裂を阻止するこれらの化合物の能力を測定する細胞アッセイと組み合わせて用いることにより、評価され得る(Lopes(1997)Cancer Chemother.Pharmacol.41:37−47を参照のこと)。
【0095】
他のさらなる化学療法剤としては、セツキシマブ、エルロチニブおよびゲフィチニブが挙げられる。
【0096】
用語「と併用して(in association with)」は、本発明の組成物の成分が、同時送達のための単一組成物に製剤化され得ること、または2つ以上の組成物(例えば、キット)に別々に製剤化され得ることを示す。さらに、各成分は、他の成分が投与される時点とは異なる時点で被験体に投与され得る;例えば、各投与は、所与の期間にわたっていくつかの間隔において同時でなく(例えば、別々に、または順次)投与され得る。さらに、別個の成分は、同じ経路または異なる経路によって被験体に投与され得る。
【0097】
感受性を予測するバイオマーカーの使用
本発明は、例えば、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法を提供し、この方法は、前記細胞がV600EもしくはV600D BRAF対立遺伝子または機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF対立遺伝子(例えば、前記対立遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性を有するもの)を含むか否かを判定する工程を包含し;ここで、前記遺伝子型が検出された場合に、前記細胞が感受性であると判定される。
【0098】
本発明は、細胞がV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子についてホモ接合性またはヘテロ接合性である実施形態を提供する。ホモ接合性のV600EまたはV600D BRAF遺伝子型を有する細胞は、MEKインヒビターまたはERK1/2インヒビターに対して特に感受性である。
【0099】
本発明は、例えば、表2(以下を参照のこと)において明記されているような所与の腫瘍タイプ由来の細胞が、表2に明記されているような対応する遺伝子型を含む場合に、その腫瘍タイプが、その腫瘍タイプの細胞株において観察されるものと少なくとも同程度の(例えば、正確に同程度、またはほぼ同程度の)ERKまたはMEKインヒビター感受性(例えば、IC50として表現される)を含むと判定される実施形態を含む。例えば、本発明の実施形態において、Malme3M細胞株に関連して観察されたようなV600Eホモ接合性遺伝子型を含む黒色腫は、ERKインヒビターまたはMEKインヒビターに対して感受性であると判定される。本発明は、所与の腫瘍タイプの細胞が、1コピーの所与の対立遺伝子のV600DまたはV600E BRAF変異の観察結果に基づいて感受性であると判定された場合、次は、V600DまたはV600E変異(例えば、ホモ接合性のV600E、ホモ接合性のV600Dまたはヘテロ接合性のV600E/ヘテロ接合性のV600D)のさらなるコピーを含むその腫瘍タイプの他の細胞が、同様に感受性であると判定され得る、実施形態も含む。
【0100】
本発明の実施形態において、非小細胞肺癌の腫瘍は、1つ以上のBRAF V600DまたはV600E対立遺伝子を含む場合に、ERKまたはMEKインヒビター感受性であると判定される。本発明の実施形態において、胆管癌の腫瘍は、1つ以上のV600DまたはV600E対立遺伝子を含む場合に、MEKまたはERKインヒビター感受性であると判定される。
【0101】
遺伝子型は、例えば本明細書中で述べられる方法を含む当該分野で公知の標準的な方法を用いて判定され得る。例えば、ピロシーケンスまたはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法、例えば、Taqmanアッセイが、遺伝子型検出のために使用され得る。
【0102】
感受性がそのような方法を用いて評価され得る細胞は、任意の供給源から得られ得る。例えば、細胞は、被験体内の固形腫瘍から、例えば、生検から、または血液、血清もしくは血漿サンプルによる非固形癌(例えば、白血病)から、得られ得る。あるいは、細胞は、インビトロの供給源、例えば、細胞培養物(例えば、ATCC)から得られ得る。
【0103】
例えば、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する細胞の感受性を評価するための方法は、(a)被験体の身体から1つ以上の悪性細胞または新形成細胞のサンプル(例えば、血液癌を有する被験体由来の血液サンプルの固形腫瘍からの細胞の生検)を得る工程;(b)前記悪性細胞または新形成細胞が、V600EもしくはV600D BRAF対立遺伝子または機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF対立遺伝子(例えば、ホモ接合性またはヘテロ接合性の遺伝子型)を含むか否かを判定する工程を包含し;ここで、前記遺伝子型が前記細胞において検出される場合に、その細胞が、前記インヒビターに対して感受性であると判定される。
【0104】
本発明はまた、患者から採取された細胞(例えば、腫瘍細胞)の感受性を評価するための方法も提供し、ここで、細胞が採取された患者の非存在下において工程が行われる。例えば、そのような方法は、
(a)被験体の身体から1つ以上の悪性細胞または新形成細胞のサンプルを得る工程(例えば、血液癌を有する被験体由来の血液サンプルの固形腫瘍からの細胞の生検);
(b)前記悪性細胞または新形成細胞がV600EまたはV600D
BRAF対立遺伝子を含むか否かを判定するために、研究室または他の適当な試験施設または第3者(例えば、検査技師)にそのサンプルを送付する工程;および(c)そのサンプル中の細胞がそのような対立遺伝子を含むか否かを判定する工程(例えば、患者の非存在下において)を包含し得;ここで、前記遺伝子型が前記細胞において検出される場合に、その細胞が、前記インヒビターに対して感受性であると判定される。あるいは、本発明は、感受性を判定する工程が、いかなる患者からも独立して行われる方法を提供する。例えば、本発明は、前記悪性細胞または新形成細胞(例えば、任意の供給源から得られるそれらの細胞)がV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子を含むか否かを判定する工程を包含するそのような方法を提供し;ここで、前記遺伝子型が前記細胞において検出される場合に、その細胞が、前記インヒビターに対して感受性であると判定される。
【0105】
ERK1/2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法は、いくつかの有用な適用のいずれかにおいて使用され得る。例えば、その方法は、被験体の癌を処置するためのERK1/2インヒビターもしくはMEKインヒビターの受取り(receipt)の候補である被験体の選択;前記インヒビターに対して感受性である悪性細胞もしくは新形成細胞を有する被験体の確認;悪性細胞または新形成細胞を有する被験体にとって適切もしくは有益であり得る治療の選択;または前記インヒビターの適切な投薬量の選択に役立ち得る。
【0106】
本発明の実施形態において、被験体の悪性細胞または新形成細胞が、本明細書中に示される方法によって(解析した細胞におけるV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の同定によって)感受性であると判定された場合に、その被験体が、そのインヒビターを用いる処置に対して選択される。本発明の実施形態において、被験体が選択された場合に、処置が開始され得;ここで、その被験体は、治療的に許容できる用量または治療的に有効な用量のインヒビターを、さらなる化学療法(例えば、抗癌)剤および/または治療的な(例えば、抗癌)手技と必要に応じて併用して、投与される。
【0107】
本発明の実施形態において、本明細書中で述べられるようなERK1/2またはMEKインヒビター感受性を評価するための方法を用いて、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対して感受性である悪性細胞または新形成細胞を有する被験体を確認することができる。そのような方法では、解析された細胞が、解析された細胞におけるV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の同定によるなどで評価された場合に、その被験体は、感受性の細胞を有すると確認される。
【0108】
ERK1/2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価するための方法は、前記細胞を有する被験体に対して適切な治療を選択するための基準としても使用され得る。被験体の細胞が、そのインヒビターに対して感受性であると判定された場合に(解析された細胞におけるV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の同定によって)、そのインヒビターが、治療薬として選択される。
【0109】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターを用いて腫瘍または癌性状態を処置するための方法も提供し、この方法は、前記腫瘍内に存在するかまたは前記癌性状態を媒介する悪性細胞または新形成細胞の、前記インヒビターに対する感受性を評価する工程、およびその細胞が感受性であると判定された場合に(解析された細胞におけるV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の同定によって)、その被験体に、治療的に有効な用量のそのインヒビターを投与することによる処置を継続するか、または開始する工程を包含する。
【0110】
さらに、本発明は、腫瘍または癌性状態を有する被験体に投与されるべきERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターの用量を選択するための方法を提供し、この方法は、腫瘍内に存在するかまたは癌性状態を媒介する悪性細胞または新形成細胞の感受性を評価する工程(そのインヒビターに対するそれらの細胞の感受性を評価する工程を含む)を包含し;ここで、前記細胞が感受性であると判定された場合は(解析された細胞におけるV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の同定によって)、低用量が選択され、そして前記細胞がより低い感受性であると判定された場合は、高用量(例えば、本明細書中に示される0.04mg/日〜4000mg/日の用量の範囲の上半分)が選択される。処置される細胞が、そのインヒビターに対して高度に感受性である場合、細胞が感受性でない場合または細胞が低感受性を示した場合に必要とされるよりも少ないそのインヒビター(例えば、本明細書中に示される0.04mg/日〜4000mg/日の用量範囲の下半分)で同じ治療的結果を達成することができる。正確な投薬量の調整は、被験体時間の必要性(needs of subject time)、ならびに被験体の特定の特徴、他の医薬、医学的な背景、特定の状況に対する必要性および緊急性に基づいて、処置する医師または臨床医によって行われ得る。
【0111】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターあるいは薬学的に許容できるその組成物、あるいは前記インヒビターまたは組成物の投与を含む治療レジメンを広告する方法も提供し、この方法は、V600EまたはV600D BRAF対立遺伝子を含む悪性細胞または新形成細胞によって媒介される腫瘍または癌性状態を有する患者または患者集団を処置するためのそのインヒビターまたは組成物の使用を目的の大衆(target audience)に宣伝促進する工程を包含する。広告は、例えば、印刷物、音声、電子媒体または視覚的媒体をはじめとした任意の形態をとり得る。
【0112】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターあるいは薬学的に許容できるキャリアを含むその薬学的組成物;およびそのインヒビターまたは薬学的組成物が、悪性細胞もしくは新形成細胞を含む腫瘍、またはV600EもしくはV600D BRAF対立遺伝子を含む悪性細胞もしくは新形成細胞によって媒介される癌性状態を有する患者を処置するために必要であることを述べているラベルを一緒に包装されて含んでいる製造品をさらに提供する。ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビター、あるいは薬学的に許容できるキャリアを含むその薬学的組成物を製造するための方法もまた提供され、前記方法は、そのインヒビターまたは組成物;およびそのインヒビターまたは組成物が、悪性細胞もしくは新形成細胞を含む腫瘍を有するかまたはV600EもしくはV600D BRAF対立遺伝子を含む悪性細胞もしくは新形成細胞によって媒介される癌性状態を有する患者を処置するために必要であることを表すラベルまたは添付文書を、包装内において組み合わせる工程を包含する。その添付文書は、任意の許容できる媒体、例えば、印刷された紙の挿入物であり得る。例えば、薬物動態、薬力学、臨床研究、有効性パラメータ、適応症および用法、禁忌、警告、注意、有害反応、過量、適正な投薬量および投与、どのように供給されるか、適正な保存条件、参考文献ならびに特許情報に関する情報をはじめとした、他の関連情報もまた、そのような添付文書の中に含められ得る。
【0113】
本発明は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する、患者から採取された細胞(例えば、腫瘍細胞)の感受性を予測するためのキットをさらに含み、そのキットは、そのインヒビター、およびその細胞の遺伝子型がホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600E BRAF遺伝子型、またはホモ接合性もしくはヘテロ接合性のV600D BRAF遺伝子型、あるいは機能獲得型表現型を特徴とする任意のBRAF遺伝子型を含むか否かを判定するための試薬セットを備える。例えば、対立遺伝子判定に有用なPCRプライマーが、そのようなキットの中に含められ得る(例えば、以下のV600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の解析および判定という項に示される対立遺伝子の検出方法を行うために有用なプライマーまたは他の試薬)。
【0114】
上で述べたように、本方法は、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する、インビトロにおける細胞もしくは細胞株または異種移植片内の細胞(例えば、マウスモデルにおけるヒト細胞)の感受性を予測するために使用され得る。例えば、インビトロにおける細胞またはマウス異種移植片モデルに加えられる細胞の遺伝子型は、例えば、本明細書中で述べられる方法のいずれかを用いて判定され得る。遺伝子型判定の後、例えば、任意のERKインヒビターまたはMEKインヒビター(本明細書中に示される任意のインヒビターが挙げられるがこれらに限定されない)に関するその細胞の真の感受性レベル(例えば、IC50)が、測定され得る。
【0115】
V600EまたはV600D BRAF対立遺伝子の解析および判定
本発明の局面は、被験体の遺伝子型が、特定の対立遺伝子のBRAF(V600EまたはV600D)を含むか否かを判定することを含む。遺伝子型は、当該分野で公知の数多くの方法のいずれかによって、例えば、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドライゲーション、配列決定、Taqman解析およびピロシーケンスによって、被験体において判定され得る。
【0116】
ASO(対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション)としても知られる対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションによって、1塩基だけ異なる2つのDNA分子を識別することに依存する。探している多型をコードし、そして固体基材に固定化しているプライマーへのハイブリダイゼーションによって、サンプルDNAを調べる。SNPの存在について評価するサンプルDNAを、変性し、そしてオリゴヌクレオチド/固体支持体にハイブリダイズさせる。固定化したオリゴヌクレオチドにアニールしたサンプルDNAの一部は、そのSNPもコードする。そのサンプルDNA/オリゴヌクレオチド/固体支持体複合体は、必要に応じて洗浄され、検出可能なプローブが、サンプルDNAのアニールしていない隣接部分にアニールされる。その複合体上のプローブの存在は、そのサンプルDNA中のSNPの存在を示す。いくつかの検出可能なプローブが、当該分野で公知である。例えば、Baoら(Nucleic Acids Res(2005)33(2):e15)は、金ナノ粒子プローブの使用を開示している。
【0117】
プライマー伸長法は、PCRによって標的領域を増幅した後、1塩基が欠けている多型部位にアニールするプライマーを用いて一塩基シーケンシング反応を行う工程を含む。通常、プライマー伸長は、まずSNPヌクレオチドのすぐ上流の塩基へのプローブのハイブリダイゼーションと、その後の、「ミニシーケンシング」反応(ここで、DNAポリメラーゼが、SNPヌクレオチドに相補的な塩基を付加することによって、ハイブリダイズされたプライマーを伸長する)を含む2段階のプロセスである。この組み込まれた塩基が、検出され、そしてSNP対立遺伝子を判定する。プライマー伸長が、高度に正確なDNAポリメラーゼ酵素に基づくので、この方法は、一般に、非常に信頼性が高い。通常、蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(ddNTP)または蛍光標識されたデオキシヌクレオチド(dNTP)のいずれかの組み込みを使用する主要なアプローチが2つある。ddNTPプライマー伸長法を用いるとき、オリゴヌクレオチドプローブは、SNPヌクレオチドのすぐ上流の標的DNAにハイブリダイズし、DNAポリメラーゼが添加されると、SNP対立遺伝子に相補的な単一のddNTPが、プローブの3’末端に付加される(デデオキシヌクレオチド(dedioxynucleotide)中の欠損した3’−ヒドロキシルが、さらなるヌクレオチドの付加を妨げる)。各ddNTPは、異なる蛍光シグナルで標識されている。したがって、特定の蛍光シグナルを有する伸長産物の検出は、1つのddNTPまたは別のものが、そのプライマーの3’末端に付加されたことを示唆する。言い換えると、これは、どのヌクレオチドが目的の位置に存在するかを示唆する。
【0118】
dNTPプライマー伸長法を用いるとき、調べられているSNP対立遺伝子の各々に相補的な3’塩基を有する対立遺伝子特異的プローブが、使用される。標的DNAが、そのプローブの3’塩基に相補的な対立遺伝子を含む場合、その標的DNAは、そのプローブに完全にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼがそのプローブの3’末端から伸長することが可能になる。伸長は、そのプローブの末端上への蛍光標識されたdNTPの組み込みによって検出される。標的DNAが、そのプローブの3’塩基に相補的な対立遺伝子を含まない場合、その標的DNAは、そのプローブの3’末端においてミスマッチを生じ、DNAポリメラーゼは、そのプローブの3’末端から伸長することができない。
【0119】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドライゲーションは、DNAリガーゼが、直接隣接するDNAフラグメントの5’末端への、DNAフラグメントの3’末端のライゲーションを触媒する能力に依存する。この機序を用い、SNP多型部位に対して直接2つのプローブをハイブリダイズすることによって、SNPを調べることができるが、そこでは、プローブが標的DNAと同一である場合にライゲーションが生じ得る。オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイでは、2つのプローブが設計される;標的DNAにハイブリダイズして、その3’塩基がSNPヌクレオチドに対して直接位置する対立遺伝子特異的プローブ、およびライゲーション反応用の5’末端をもたらすSNP多型部位の上流にハイブリダイズする第2のプローブ。対立遺伝子特異的プローブが、標的DNAにマッチする場合、そのプローブは、標的DNAに十分にハイブリダイズし、ライゲーションが生じ得る。ミスマッチの3’塩基が存在するときは、ライゲーションは、通常生じない。ライゲーションされた産物またはライゲーションされていない産物は、例えば、ゲル電気泳動、MALDI−TOF質量分析またはキャピラリー電気泳動によって検出され得る。
【0120】
配列決定は、SNP検出のための一般的な方法である。配列決定の最も一般的な形態は、a)色素−プライマーおよび非標識ターミネーター、またはb)非標識プライマーおよび色素−ターミネーターのいずれかを用いるプライマー伸長に基づくものである。次いで、その反応産物は、キャピラリー電気泳動またはスラブゲルのいずれかを使用する電気泳動を用いて分離される。
【0121】
TaqDNAポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性が、SNP遺伝子型同定のためのTaqmanアッセイにおいて使用される。Taqmanアッセイは、PCR反応と同時に行われ、結果は、PCR反応の進行とともにリアルタイムに読み出され得る。このアッセイには、SNP多型部位を含む領域を増幅する順方向および逆方向のPCRプライマーが必要である。対立遺伝子の識別は、SNP多型部位にハイブリダイズする1つまたは2つの対立遺伝子特異的プローブと組み合わされるFRETを用いて達成される。そのプローブは、5’末端に結合されたフルオロフォアおよびその3’末端に結合されたクエンチャー分子を有する。そのプローブがそのまま(intact)である間は、クエンチャーは、フルオロフォアに近位のままであり、フルオロフォアのシグナルを排除する。PCR増幅工程の間、対立遺伝子特異的プローブが、SNP対立遺伝子に完全に相補的である場合、その対立遺伝子特異的プローブは、標的DNA鎖に結合し、次いで、TaqポリメラーゼがPCRプライマーからそのDNAを伸長するにつれて、そのTaqポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性によって分解される。プローブの分解によって、クエンチャー分子からフルオロフォアが分離し、その結果、検出可能なシグナルが生成される。対立遺伝子特異的プローブが完全に相補的でない場合、そのプローブは、より低い融解温度を有し、そして効率的に結合しない。これにより、ヌクレアーゼがプローブ上で作用することが妨げられる(McGuiganら、Psychiatr.Genet.(2002)12(3):133−136)。
【0122】
本発明の実施形態において、所与の遺伝子型の存在について評価される細胞は、任意の合理的な様式で被験体から得られ得る。本発明の実施形態は、外科生検(例えば、内視鏡生検、切除生検または切開生検、穿刺吸引(FNA)生検)によって、細胞を被験体の身体から得る実施形態を含む。例えば、皮膚生検は、黒色腫であると疑われるかまたは黒色腫であると知られている皮膚サンプルの外科的切除、薄片生検またはパンチ生検によって採取され得る。特に、関与する疾患が白血病などの非固形腫瘍疾患である、そのようなサンプルは、前記被験体から血液、血清もしくは血漿サンプルを採取することによって、または患者の骨髄のサンプルを採取する(例えば、胸骨または腸骨稜寛骨から)ことによってもまた、得られ得る。遺伝子型の判定のために、その後のそのような生検サンプルの処理は、当該分野で公知の方法を用いて行われ得る。
【0123】
ピロシーケンシングもまた、細胞内のV600変異の存在を判定するために使用され得る(Spittleら、J.Molec.Diagnostics(2007)9(4):464−471)。ピロシーケンシングは、当該分野で周知の手法である。簡潔には、ピロシーケンシングは、検出可能に標識されたヌクレオチドを用いる、目的の染色体位置の周囲の小領域の配列決定を含む。BRAFのコドン600を配列決定するための市販のキットが、販売されていることがある(例えば、PyromarkTM BRAF,Biotage,AB;Isogen Life Science,Netherlandsを参照のこと)。
【実施例】
【0124】
本発明では、本発明を例示することを意図し、その限定を意図するものではない。以下に開示される任意の方法または組成物は、本発明の範囲に含まれる。
【0125】
実施例1:BRAFバイオマーカーの同定および評価
この実施例では、BRAF V600バイオマーカーを同定し、それが、ERK1インヒビターもしくはERK2インヒビターまたはMEKインヒビターに対する細胞の感受性の正確な予測子であると判定した。
【0126】
結果
本発明者らは、野生型BRAF、ヘテロ接合性のV600E BRAF変異、ホモ接合性のV600E BRAF変異または異種性V600D BRAF変異を含む細胞株を同定するために、41個の腫瘍細胞株についてBRAF遺伝子型の状態を判定した。さらに、ERK1/2キナーゼインヒビター(化合物a)およびMEKキナーゼインヒビター(化合物b)に対する細胞増殖IC50値も決定した。
【0127】
細胞株のBRAF遺伝子型の状態を、ERK1/2インヒビター化合物aまたはMEKインヒビター化合物bに対する細胞増殖IC50値と比較したとき、V600E BRAFホモ接合性細胞株遺伝子型と、ERK1/2キナーゼインヒビター化合物aまたはMEKキナーゼインヒビター化合物bに対する高いIC50感受性との間に強い相関が見られた(表2)。ホモ接合性のV600E BRAF変異を含む細胞株は、ヘテロ接合体V600E BRAF変異または野生型BRAF遺伝子型を含む細胞株と比べて高い感受性を有した(これは、化合物aまたは化合物bに対する比較的低い細胞増殖IC50値によって測定される)(表2)。試験された9個のV600E BRAFホモ接合性の遺伝子型細胞株のうちの9個が、ERK1/2キナーゼインヒビター化合物aに対して<100nMのIC50値を有する(表2)。試験された9個のV600E BRAFホモ接合性遺伝子型細胞株のうちの8個が、MEKキナーゼインヒビター化合物bに対して≦10nMのIC50値を有する(表2)。ヘテロ接合体V600E BRAF変異または野生型BRAF遺伝子型を有する細胞株は、ERK1/2キナーゼインヒビター化合物a(試験された32個の細胞株のうち25個が>100nMのIC50値を有した)またはMEKキナーゼインヒビター化合物b(試験された32個の細胞株のうち23個が、>10nMのIC50を有した)に対してより低い感受性だった(表2)。ヘテロ接合性のV600D
BRAF変異を含む2つの細胞株(WM−266−4およびWM−155)は、ERK1/2インヒビター化合物aまたはMEKインヒビター化合物bの両方に対して高い感受性を有した(化合物aに対して<100nMというIC50値および化合物bに対して<10nMというIC50値)(表2)。
【0128】
材料および方法
BRAF保存キナーゼドメイン領域(エキソン11〜18)内またはBRAFのV600アミノ酸を含むBRAFエキソン15内の一塩基多型を同定するために、表2に列挙された腫瘍細胞株からの細胞株DNAサンプルを配列決定した。BRAFキナーゼドメイン領域(アクセッション番号NM_004333)UCSCヒト染色体領域chr7:140,080,753〜140,271,032(BRAFエキソン11〜18を含む)を、以下のPCRアッセイおよびPCRプライマーを用いて配列決定した。
【0129】
BRAFエキソン塩基対の位置。各BRAFエキソンに対するUSCSヒト7番染色体ロケーション7q34位を以下に示す。
エキソン1:140,080,753〜140,081,038、エキソン2:140,086,080〜140,086,214、エキソン3:140,095,555〜140,095,686、エキソン4:140,099,543〜140,099,661、エキソン5:140,100,455〜140,100,501、エキソン6:140,123,180〜140,123,356、エキソン7:140,124,259〜140,124,343、エキソン8:140,127,844〜140,127,961、エキソン9:140,129,289〜140,129,425、エキソン10:140,133,816〜140,133,852、エキソン11:140,140,576〜140,140,735、エキソン12:140,146,630〜140,146,749、エキソン13:140,147,680〜140,147,828、エキソン14:140,154,228〜140,154,330、エキソン15:140,155,160〜140,155,263、エキソン16:140,180,877〜140,181,140、エキソン17:140,196,379〜140,196,480、エキソン18:140,270,834〜140,271,032。
【0130】
University of California Santa Cruz(UCSC)におけるCenter for Biomolecular Science and Engineering(CBSE)内の複数部門にまたがるチームであるGenome Bioinformatics Groupによって、UCSCゲノムブラウザが開発され、維持されている。
【0131】
BRAF PCRアッセイ。いくつかのポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、関連性のあるBRAFエキソンを配列決定した。これらの反応を以下に要約する。
【0132】
名称(アッセイ番号_順方向プライマー名_逆方向プライマー名)
【0133】
【化28】

PCRプライマー。上で述べた各ポリメラーゼ連鎖反応において使用されたプライマーセットは、以下のとおりである:
【0134】
【化29】

ゲノムDNAの単離。製造者の指示書(Qiagen;Valencia,CA)に従ってQiagen DNeasy Blood and Tissue Kitを利用して、腫瘍細胞株からDNAを得た。
【0135】
ポリメラーゼ連鎖反応。Primer3ソフトウェア(www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgiを参照のこと)を用いて、BRAFのエキソンL、M、N、O、P、Q、Rを増幅するためのPCRプライマーを設計した。順方向および逆方向プライマーを、ユニバーサルシーケンシングプライマー(それぞれ、−21M13:5’TGTAAAACGACGGCCAGT(配列番号19)およびM13REV:CAGGAAACAGCTATGACC(配列番号20))で5’テイル化した。腫瘍細胞株ゲノムDNA(12ng)を含むPCR反応物を、製造者の指示書に従ってFideliTaqTM PCR Master Mix(2×)(USB Corporation;Cleveland,Ohio)またはAccuPrime SuperMix II(Invitrogen;Carlsbad,CA)を用いてPCR増幅した。
【0136】
DNAシーケンシングおよび解析。DNA増幅後、PCR反応物を、0.25μlのExoSAP−IT(USB Corporation;Cleveland,OH)を含むPCR緩衝液中20μlに希釈し、そして37℃で15分間インキュベートした後、80℃で15分間、酵素を失活させた。製造者の指示書に従ってABI PRISM BigDyeターミネーターv3.1 Cycle Sequencing DNA Sequencing Kit(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いて、順方向および逆方向におけるサイクルシーケンシングを行った。簡潔には、1μlの各PCR産物を鋳型として使用し、そして5pmolのM13シーケンシングプライマー(−21M13またはM13Rev)、0.5×シーケンシング緩衝液および0.25μlのBDTv3.1混合物を含む4μlのシーケンシング反応混合物と併せた。シーケンシング反応物を96℃で1分間変性した後、96℃10秒間、50℃5秒間および60℃4分間を25サイクル行った。シーケンシング反応物を、Montage SEQ384プレート(Millipore Corp.;Bedford,MA)を用いる濾過によって精製し、25μlの脱イオン水に溶解し、そしてApplied
Biosystems3730XL DNA Analyzerにおけるキャピラリーゲル電気泳動によって分離した。クロマトグラムをUnix(登録商標)ワークステーション(DEC alpha,Compaq Corp)に移し、Phred(バージョン0.990722.g)を用いて塩基を呼び出し、Phrap(バージョン3.01)を用いてアセンブルし、Polyphred(バージョン3.5){Nickerson,1997 #33}でスキャンし、そして結果を、Consed(バージョン9.0)(Phred、PhrapおよびConsedは、www.genome.washington.eduにおいて入手可能であり、PolyPhredは、droog.mbt.washington.eduにおいて入手可能である)を用いて考察した。解析パラメータはすべて、個別のソフトウェアのデフォルトの設定に維持した。
【0137】
BRAFアミノ酸配列を以下のとおり示す。本明細書中で述べられる研究において配列決定されたBRAF領域を以下に太字で下線が引かれたフォントで示す。
【0138】
【化30】

IC50細胞増殖測定。ERK1/2インヒビター化合物aまたはMEKインヒビター化合物b(PD0325901)のいずれかに連続的に曝露した4日後に、細胞増殖を、表2に示される41個の腫瘍細胞株においてPromega Cell Titer Glo試薬(Promega Corp,Madison,WI)を用いて評価した。PromegaのCellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assayは、安定型のルシフェラーゼを用いて生細胞の指標としてATPを測定する、細胞増殖をアッセイするための感度の高い方法である。この試薬は、ATPの定量によって細胞数を決定する均一な方法を可能にする。生成されるルシフェラーゼ発光シグナルは、培養物中に存在する生細胞の数に比例する。
【0139】
各化合物の8個の希釈物を含む1000×化合物の用量反応曲線を96ウェルプレート上に調製した。化合物を、以下の(1000×)濃度(複数)まで100%DMSO中に希釈した:化合物b:1000μM、333μM、111μM、37μM、12μM、4.1μM、1.4μMおよび0.5μM;化合物a:3000μM、1000μM、333μM、111μM、37μM、12μM、4.1μMおよび1.4μM。この化合物供給源プレートを密閉し、使用しない間は凍結し続けた。
【0140】
細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミンおよび非必須アミノ酸が補充されたRPMI 1640培地中または同じ補充物を含むDMEM/F12培地中で増殖させた。0日目に、細胞をトリプシン処理し、計数し、そして50μlの完全培地中、1500〜2000細胞/ウェルという密度で96ウェルWallac TC Isoplate(Perkin−Elmer Wallac,Gaithersburg,MD)のウェルにプレーティングした。同じ密度の細胞の追加の6〜8個の複製ウェルを、別のWallac TC Isoplate上にプレーティングした。このプレートを1日目に発光させる(develop)ことにより、細胞−増殖ベースラインを決定した。
【0141】
処理の1日目に、化合物を培地中に2×に希釈し、そして以下のとおり、直ちに細胞に加えた:1mlの培地を深ウェル96ウェルプレートの各ウェルに加え、そして2μlの1000×化合物を混合しながら加えることにより、培地中に2×化合物を調製した。各ウェルに対する最終濃度が表1に概説されるとおりになるように2つ組の点において、2×化合物を含む50μlの培地を細胞プレートに加えた。次いで、そのプレートを37℃の恒温器に戻し、そして4日間静置した。1日目(ベースライン)のプレートを、まず50μlの培地(化合物を含まない)を加えることにより、各ウェル内の体積を100μlにし、次いで、100μlのCell Titer Glo試薬を加える(以下のとおり)ことによって発光させた。
【0142】
処理の4日後に、Cell Titer Glo(CTG)試薬(Promega Corp.;Madison,WI)を用いてプレートを発光させた。製品の挿入物に記載されているように、試薬を再構成した。100μlの試薬をすべての処理ウェルおよびコンロールウェルに加え、そのプレートを5分間穏やかに振盪し、次いで、さらに5分間インキュベートした後、Luminescenceの設定を用いてAnalyst AD(Molecular Devices Corporation;Sunnyvale,CA)で読み出した。
【0143】
解析
XLfit4.2、当てはめ(fit)モデル#205(Dose Response
One Site)を用いるExcelにおいてデータを解析した。
当てはめ方程式:当てはめ=(A+((B−A)/(1+((C/x)^D))))
ここで:A=ベースライン(1日目)CTG読み取り値
B=4日の増殖CTG読み取り値
C=IC50
D=Hill勾配。
【0144】
x=化合物のLog濃度(nM)
1日目から倍加した細胞の数もまた計算した(細胞の倍加が2.0未満の場合は結果を使用しなかった)。
使用した材料は、以下のとおりであった:
RPMI−1640培地 Gibco(Invitrogen)11875
DMEM/F12培地 Gibco(Invitrogen)
200mM L−グルタミン Gibco(Invitrogen)25030
MEM非必須アミノ酸 Gibco(Invitrogen)11140
ウシ胎仔血清 Gibco(Invitrogen)10082−147
トリプシン Gibco(Invitrogen)25200
Isoplate TC Wallac 1450−516
DMSO Sigma−Aldrich 276855−100Cell Titer Glo Reagent Promega G7571
【0145】
【表1】

【0146】
【表2−1】

【0147】
【表2−2】

上で述べられたように、本発明の実施形態において、増殖阻害が、約100nM以下のIC50値を特徴とする場合、細胞は、通常、ERK1インヒビターまたはERK2インヒビターに対してより感受性であると考えられる。100nMを超えるIC50値は、通常、抵抗性(すなわち、より低い感受性)と考えられる。MEKインヒビターの増殖阻害が約10nM以下のIC50値を特徴とする場合、細胞は、通常、MEKインヒビターに対してより感受性であると考えられる。10nMを超えるIC50値は、通常、抵抗性(すなわち、より低い感受性)であると考えられる。
【0148】
本発明は、本明細書中に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるべきでない。実際に、本発明の範囲は、本明細書中に明確に示される実施形態および本明細書中に明確に示されない他の実施形態を含む;本明細書中に明確に示される実施形態は、必ずしも網羅的であると意図されない。本明細書中に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前記の説明から当業者には明らかになるだろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0149】
特許、特許出願、刊行物、製品の説明およびプロトコルが、本願全体にわたって引用され、それらの開示は、すべての目的のためにそれらの全体が本明細書中で参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2013−31455(P2013−31455A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−241641(P2012−241641)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2010−536166(P2010−536166)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】One Merck Drive,Whitehouse Station,New Jersey 08889,U.S.A.
【Fターム(参考)】