Ba−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子
【課題】本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、優れた発光強度、発光効率、および色純度を有するBa−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子を提供する。
【解決手段】Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、紫外線照射によって白色発光する。
【解決手段】Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、紫外線照射によって白色発光する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ba−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子に関する。さらに詳細には、白色蛍光体として用いた際に、優れた発光強度、発光効率、および色純度を有するBa−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を利用した白色発光素子は、白熱電球に比べて寿命が長く、小型化が容易であり、低電圧での駆動が可能であることから、家庭用蛍光灯、液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)のバックライトを始めとする照明分野の全般にわたって、次世代の光源として注目されている。
【0003】
このような白色発光素子を用いて白色光を得る方式としては、(1)光の3原色である赤色、緑色、青色の3色の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を組み合わせて白色光を得る方式、(2)青色LEDを光源として使用して、黄色蛍光体を励起させることによって白色光を得る方式、および(3)紫外線(UV:UltraViolet)LEDを光源として使用して、3原色の蛍光体を励起させて白色光を得る方式の3つがある。
【0004】
上記(1)の、3色(赤色、緑色、および青色)のLEDを使用する方法は、製造コストが高く、駆動回路が複雑であるため、製品のサイズが大きくなるという短所がある。さらに、3つのLEDの温度特性が異なるため、製品の光学的特性および信頼性の観点から好ましくない影響を及ぼす虞がある。
【0005】
上記(2)の、青色LEDを光源として使用して、黄色蛍光体を励起させることによって白色光を得る方式は、UV LEDを光源として使用して、3原色の蛍光体を励起させて白色光を作る方式と比較して、発光効率には優れるが、赤色再現性が低いので、病院や食料品店などの照明として用いるには好ましくない。
【0006】
前述した(1)〜(3)の方式のうち、(3)の方式によれば、高電流下での使用が可能であり、色感に優れるので、最近では、(3)の方式の白色発光素子の研究が最も盛んに行われている。
【0007】
上記(3)の方式によって白色光を得るために、従来は、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の混合物を使用していた。特許文献1および2には、白色蛍光体として青色発光するZnS:Zn蛍光体と、黄色発光する(ZnxCd1−x)S:Ag蛍光体とを一定割合で混合した、複合相の蛍光体が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記複合相の蛍光体のうち、カドミウム(Cd)は、嘔吐、下痢、痙攣を引き起こすイタイイタイ病の主要原因となった金属であり、毒性が高いという問題がある。また、上記複合相の蛍光体を使用すればするほど、二つの蛍光体の劣化特性の差によって、蛍光体の色相が変質し、発光輝度が低下するという問題点を有している。
【0009】
最近では、上述のように、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の混合物を使用することなく、白色発光を実現できる化合物の開発が進められている。従来のように、それぞれ合成条件の異なる赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を別々に製造する場合と比較して、白色発光する化合物を一種類製造すれば足りるので、製造工程が単純化されるという利点がある。
【0010】
しかしながら、これまで開発された白色発光する化合物は、発光スペクトルで赤色発光の強度が相対的に低いために、所望の高純度の白色光を得られないという問題点があった。
【特許文献1】特開平03−239787号公報
【特許文献2】特開平04−138793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、優れた発光強度、光変換効率、および色純度を有する白色蛍光体ならびにこれを含む白色発光素子であって、紫外線の照射を利用する白色発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、紫外線照射によって白色発光する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物によると、紫外線の照射によって、発光強度が強い光が、広い波長領域にわたって均一に得られる。すなわち、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体は、優れた発光効率および色純度を有する。したがって、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色発光素子は、従来の赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の3色の蛍光体の混合物を使用する白色発光素子と比べて、優れた白色光を得ることが可能である。また、1種の蛍光体のみを製造すれば足りるので、製造工程を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
本実施形態は、Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、紫外線照射によって白色発光することを特徴とする、Ba−Sr−Ca含有化合物に関する。
【0016】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、新規な化合物であって、白色発光する物質であるということは確認しているが、本発明者は、その正確な化学式、実験式、または分子式および分子の結晶構造を正確には把握していない。しかしながら、従来公知の、分子の結晶構造がブレディガイト(Bredigite)構造を有するBa−Sr−Ca含有化合物は、緑色発光物質として知られており、白色発光を行うBa−Sr−Ca含有化合物は知られていない。したがって、以上の事実より、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、白色発光物質という点で従来のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なる新規な化合物であると言える。
【0017】
本発明者は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が、従来公知のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なり、白色発光する理由に対して以下の2つの可能性を推測している。第一は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が、公知のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なる新規化学式を有する可能性である。第二は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物の分子結晶構造が、公知のBa−Sr−Ca含有化合物が有するブレディガイト構造とは異なる構造を有する可能性である。特に、第二の可能性の場合、たとえ、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が公知のBa−Sr−Ca含有化合物と同一の実験式または分子式を有するとしても、公知の緑色発光物質のBa−Sr−Ca含有化合物とその結晶構造が異なるため、白色発光するという説明が可能である。
【0018】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の出発物質は、上述のように各元素の酸化物からなる混合物でありうるが、酸化物の代わりに、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、および水酸化物などを使用しても、合成時に高温により、最終的には酸化物に変換される。したがって、出発物質は、含有元素のmol比が所定の範囲にあれば、金属酸化物だけでなく、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、水酸化物など他の形態のものも使用できる。また、金属酸化物を全く用いずに、上記形態の金属のみを用いても勿論よい。例えば、Ba含有酸化物の代わりに、BaCO3、BaCl2、Ba(NO3)2、およびBa(OH)2などが出発物質として用いられうる。同様に、Sr酸化物の代わりに、SrCO3、SrCl2、Sr(NO3)2、およびSr(OH)2などが用いられうる。Ca酸化物の代わりに、CaCO3、CaCl2、Ca(NO3)2、およびCa(OH)2などが用いられうる。Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはBiの酸化物の代わりに、Eu2(CO3)3、Eu(NO3)3、EuCl3、MnCO3、MnCl2、Mn(NO3)2、Sm(NO3)3、SmCl3、SnCl2、SnCl4、SbCl3、CeCl3、Ce(NO3)3、Ce(OH)4、Pr2(CO3)3、Pr(NO3)3、PrCl3、Nd2(CO3)3、Nd(NO3)3、NdCl3、Gd2(CO3)3、Gd(NO3)3、GdCl3、Tb2(CO3)3、Tb(NO3)3、TbCl3、Dy2(CO3)3、Dy(NO3)3、DyCl3、Ho2(CO3)3、Ho(NO3)3、HoCl3、Er2(CO3)3、Er(NO3)3、ErCl3、Tm2(CO3)3、Tm(NO3)3、TmCl3、Yb2(CO3)3、Yb(NO3)3、YbCl3などが用いられうる。Mg酸化物の代わりに、Mg2CO3、MgCl、MgNO3、MgOHなどが用いられうる。
【0019】
Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはBiの酸化物は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が白色発光するとき、賦活剤として作用する。これらの酸化物のうち、Eu2O3を用いることが好ましい。
【0020】
また、Si酸化物またはGe酸化物としては、SiO2を用いることが好ましい。
【0021】
還元雰囲気は、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種で形成される。
【0022】
混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiまたはGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4である。混合物中の各元素のmol比が上記範囲を外れると、発光効率が低下したり、色純度が悪化したりする虞がある。
【0023】
熱処理の温度は、通常は900〜1400℃、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1100〜1200℃でありうる。また、熱処理の時間は、通常は1〜20時間、好ましくは3〜10時間、より好ましくは5〜8時間でありうる。この熱処理によって、金属酸化物の混合物が焼結される。かような範囲の温度で熱処理を行うことによって、結晶性が高く、優れた発光効率および色純度を有するBa−Sr−Ca含有化合物が得られうる。
【0024】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物の発光領域は非常に広く、青色波長領域から赤色波長領域(約400〜750nm)にわたるため、これらの光が組み合わされて白色光が得られる(図3および図7を参照)。また、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、そのBa−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を変化させることによって、白色発光の色温度を調節することが可能である。よって、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を調節するという簡便な方法によって、所望の色調の白色発光を得ることができる。例えば、Eu元素またはSr元素のmol比が大きくなるにつれ、白色光の色温度が低くなりうる。また、例えば、Ca元素のmol比が大きくなるにつれ、白色光の色温度が高くなりうる。
【0025】
本発明者は、Ba−Sr−Ca含有化合物の分子結晶構造は、製造時の合成温度と関連したものであって、次のように推測する。これについて、図1を参照して説明する。
【0026】
図1は、Ba−Sr−Ca含有化合物の合成温度による結晶構造の変化を示す概略図である。
【0027】
図1において、三角形ABCは、Ba−Sr−Ca含有化合物中に含まれるCa、Ba、およびSrの含有量のmol比率を示す三角グラフである。三角グラフとは、正三角形の各辺をグラフ化する3項目とし、それらの項目の比率を正三角形内部の点から各辺への垂線の長さで表現したグラフである。例えば、図1に示すように、三角形ABCの各頂点A、B、またはCは、それぞれ、化合物中にCa、Ba、またはSrのみが含まれている場合を表す点である。すなわち、Ba−Sr−Ca含有化合物中に含まれるCaのmol比率は、任意の点から辺BCまでの垂線の長さで表される。同様に、Baのmol比率は、任意の点から辺CAまでの垂線の長さで表され、Srのmol比率は任意の点から辺ABまでの垂線の長さで表される。これにより、三角形ABCの全ての点におけるBa、Sr、およびCaのmol比率を表すことができる。例えば、任意の点が三角形AB、BC、CAの3辺のうちのいずれかの辺上に存在する場合は、それぞれ、CaおよびBa、BaおよびSr、またはSrおよびCaの二つの成分のみを含む混合物からなる化合物を表す。なお、Ba、Sr、およびCaのそれぞれのmol比率を、Ba、Sr、およびCaの全mol数に対する百分率で表す場合(つまり、mol%で表す場合)、垂線までの長さの合計は常に100mol%となる。すなわち、三角形ABCの内部の任意の点は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の混合物に含まれる、Ba、Sr、およびCaのそれぞれのmol比率を表す。
【0028】
図1において、長方形ACDEの内部に示される黒点は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の熱処理工程の温度(以下、「合成温度」とも称する)の予測分布である。縦軸は、合成温度を示し、横軸は、上記で説明した三角形ABCの内部の任意の点から、辺CAへ引いた垂線と辺CAとの交点を表す。すなわち、横軸の値は、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれるCaおよびSrのmol比率による値である。本発明者は本発明のBa−Sr−Ca含有化合物に含まれるCaおよびSrのmol比率と合成温度との間に、曲線Lのような一定の関係があるものと推測している。この曲線Lは、1200℃近傍に存在する。すなわち、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を得るためには合成温度を1200℃近傍にすることが好ましいと考えている。逆に、曲線Lを大きく外れた高温では、従来公知の分子の結晶構造がブレディガイト構造を有する緑色発光物質であるBa−Sr−Ca含有化合物が得られることが分かっている。
【0029】
放出される白色光は、色温度として定義される。本発明のBa−Sr−Ca含有化合物による発光は、好ましくは色温度3000〜6500Kの範囲の発光であり、より好ましくは3500〜6000Kの範囲の発光であり、さらに好ましくは4000〜5500Kの範囲の発光である。色温度の調節は、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を変化させることによって可能である。したがって、色温度の範囲をさまざまに調節することで、各種の商業用途に最適な白色蛍光体を提供できる。
【0030】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、紫外線(波長200〜430nm)によって励起して、白色光を発光する。紫外線の波長は、好ましくは370〜430nmのであり、より好ましくは390〜420nmである。かような範囲の波長の紫外線を照射することによって、発光強度が高く、色純度の良好な白色光が得られうる。したがって、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、紫外線白色発光素子用の白色蛍光体として好適に用いられうる。
【0031】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、白色蛍光体として用いられうる。特に、従来公知の白色発光体は、約550nm前後の波長領域での発光強度が低かったが、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、このような問題点を解決したものであって(図3および図7参照)、全波長帯域で均一な発光強度を有するので、白色蛍光体として非常に有用である。本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、赤色光領域でも十分な発光強度を有し、色温度が比較的高い白色光を放出するので、特に病院、食料品店、博物館などで好適に用いられうる。
【0032】
本発明の他の実施形態によれば、上記Ba−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子が提供される。
【0033】
該白色発光素子は、紫外線発光ダイオードをさらに含みうる。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係る白色発光素子の構造を示す概略図である。ここでは、白色発光素子の具体例として、高分子レンズタイプの表面実装型発光素子を示す。なお、高分子レンズとしては、エポキシレンズを使用する。
【0035】
図2を参照すれば、紫外線発光ダイオードチップ10が金ワイヤ20を通じて電気リード線30とダイボンディングされている。紫外線発光ダイオードチップ10は、紫外線を放出する役割を有する。白色蛍光体40は、エポキシモールド層50に含まれている。紫外線発光ダイオードチップ10から放出された紫外線は、エポキシモールド層50に含まれた白色蛍光体40を励起させ、そして、白色光が放出される。エポキシモールド層50は、エポキシ系樹脂を含みうるが、エポキシ系樹脂は、市販のものを適宜採用することができる。成形モールド60の内部は、アルミニウムまたは銀でコーティングされた反射膜で形成され、これは、紫外線発光ダイオードチップ10から放出された紫外線を上方に反射する役割およびエポキシモールド層50を包含する役割を有する。エポキシモールド層50の上部には、エポキシドームレンズ70が形成されており、このエポキシドームレンズ70の形状は、所望の白色光の照射角度によって適宜変更されうる。
【0036】
本発明の白色発光素子は、図2の構造にのみ限定されるものではなく、これ以外にもさまざまな形態に変更することができる。例えば、発光素子に蛍光体が実装されるタイプ、砲弾型、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の表面実装型タイプの構造を有する発光素子でありうる。
【0037】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子は、光源として用いられうる。本発明の白色発光素子は、信号灯、通信機器、および各種のディスプレイ装置のバックライトとして好適に用いられることができ、次世代の照明としても用いることができる。
【0038】
上記紫外線発光ダイオードが放出する紫外線の波長は、通常370〜430nmであり、好ましくは390〜420nmである。
【0039】
本発明の白色発光素子は、白色蛍光体以外に赤色蛍光体をさらに含みうる。この場合、さらに演色指数の高い光が得られるため、外科手術室の照明、博物館の照明、食料品店の照明などの用途として特に有用である。
【0040】
赤色蛍光体の例としては、Y2O3:Eu3+,Bi3+(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu2+,Mn2+;(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)BO3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)(P,V)O4:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa2S4:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+;(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu2+(0.5≦x≦3.1、5≦y≦8、0<z≦3)、および(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2SiO4:Eu2+、Mn2+などがあり、これらを単独で用いてもよいし、混合物の形態で用いてもよい。
【0041】
本発明白色発光素子は、水銀ランプ、キセノンランプのようなランプまたは自己発光LCDにも適用可能である。
【0042】
本発明のさらに他の実施形態によると、Ba酸化物;Sr酸化物;Ca酸化物;Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;Mg酸化物;およびSi酸化物またはGeの酸化物を、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4となる割合で混合して、出発物質を形成する工程と、出発物質を還元雰囲気下で熱処理して蛍光体を得る工程と、を含む蛍光体の製造方法を提供する。
【0043】
上記蛍光体の製造方法は、蛍光体を粉砕する工程と、蛍光体を蒸留水で洗浄する工程と、蛍光体を例えばオーブンで乾燥して白色蛍光体を得る工程と、をさらに含みうる。
【0044】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の白色発光素子において、紫外線発光ダイオードが放出する紫外線を白色蛍光体に照射して、白色蛍光体から白色光を発光させる発光方法が提供される。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]出発物質にEuを1mol%で混合
出発物質として、BaCO3 5.65g、SrCO3 4.23g、CaCO3 2.87g、Eu2O3 0.31g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを混合した。得られた混合物は、Ba:Sr:Ca=1:1:1のmol比であり、Euを1mol%で含んだ。この混合物をアルミナ坩堝に入れて、これを電気炉に置いた。還元性雰囲気下(5% H2および95% N2)で、1200℃で5時間熱処理した。このようにして得た焼結体を粉砕して粉末状にし、蒸留水で洗浄し、最後に100℃のオーブンで乾燥して白色蛍光体サンプル1を得た。この白色蛍光体を用いて、励起光源として紫外線発光ダイオード(波長:390nm)を使用して、図2に示すような白色発光素子1を製造した。
【0047】
[実施例2]出発物質にEuを3mol%で混合
出発物質として、BaCO3 5g、SrCO3 7.48g、CaCO3 2.54g、Eu2O3 0.41g、MgO 0.45g、およびSiO2 2.69gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:2:1のmol比で、Euを3mol%を含む混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法同様の方法で白色蛍光体サンプル2および白色発光素子2を得た
[実施例3]Euを5mol%で混合
出発物質として、BaCO3 6.68g、SrCO3 5g、CaCO3 6.78g、Eu2O3 0.55g、MgO 0.6g、およびSiO2 3.60gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:1:2のmol比を有し、Euを5mol%を含む混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法同様の方法で白色蛍光体サンプル3および白色発光素子3を得た。
【0048】
[実施例4]Ba:Sr:Ca=4:1:1のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 11.08g、SrCO3 2.07g、CaCO3 1.40g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=4:1:1のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル4および白色発光素子4を得た。
【0049】
[実施例5]Ba:Sr:Ca=1:4:1のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 2.77g、SrCO3 8.29g、CaCO3 1.40g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:4:1のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル5および白色発光素子5を得た。
【0050】
[実施例6]Ba:Sr:Ca=1:1:4のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 2.77g、SrCO3 2.07g、CaCO3 5.62g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:1:4のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル6および白色発光素子6を得た。
【0051】
[比較例1]
市販の赤色蛍光体のLa2O2S:Eu3+、市販の緑色蛍光体のBAM:Eu2+、Mn2+および市販の青色蛍光体のSr5(PO4)3Cl:Eu2+を用いて、白色発光素子とした際に、5000K day white color(昼白色)となるように混合物を製造した。そして、実施例と1と同様の方法で、白色蛍光体(比較例1)および白色発光素子(比較例1)を得た。
【0052】
結果を以下に示す。
【0053】
図3は、実施例1〜3および比較例1の白色蛍光体の、波長400〜760nmにおける発光強度を示す発光スペクトルである。波長520〜620nm領域において、比較例1の白色発光素子は発光強度が低かったが、実施例1〜3の白色発光素子は、広い波長領域において均一で、高い発光強度を維持することが示された。
【0054】
図4は、実施例1〜3および比較例1の白色発光素子の色座標を示すグラフである。図4で、黒体軌跡(BBL:Black Body Locus)は、光を完全に吸収して反射しない黒体を加熱したとき、黒体が放出する光の色を表す。BBL上の光の色は、白色であるが、黒体軌跡に沿って右側に行くほどやや赤い白色となり、左側に行くほどやや青い白色となる。図4より、実施例1〜3の白色発光素子の色座標はBBLと近接していることから、商業的に有用な白色発光が得られるということが確認できた。
【0055】
図5は、図3で示した比較例1の発光スペクトルを積分した値を100%とした場合の、実施例1〜3の発光スペクトルを積分した値を示すグラフである。すなわち、発光スペクトルを積分した値は、発光強度を表すので、この値が高いほど、蛍光体の発光効率が高いということを表す。図5から、実施例1〜3はいずれも十分な発光強度を有することから、白色発光素子用の白色蛍光体として実用化が可能であることが確認できた。
【0056】
図6は、実施例4〜6および比較例1の白色蛍光体の、波長400〜750nmにおける発光強度を示す発光スペクトルである。比較例1の白色蛍光体は、波長570〜620nm領域での発光強度が低いのに対し、実施例4〜6の白色蛍光体は、拾いは長老域において均一で、高い発光強度を維持することが示された。
【0057】
図7は、実施例4〜6の白色発光素子の色座標を示すグラフである。図4の場合と同様に、実施例4〜6の白色発光素子の色座標はBBLと近接していることから、商業的に有用な白色発光が得られることが確認できた。
【0058】
図8は、実施例4〜6の白色蛍光体に含まれる、Ba、Sr、およびCaのmol比率を表す三角グラフである。括弧内の数値は、図6の比較例1の発光スペクトルを積分した値を100%とした際の、図6の実施例4〜6の発光スペクトルを積分した値の割合である。実施例4〜6の白色蛍光体はいずれも十分な発光強度を有することから、白色発光素子用の白色蛍光体として実用化が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、発光素子関連の分野に好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】Ba−Sr−Ca含有化合物の合成温度による結晶構造の変化を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る白色発光素子の構造を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1〜3および比較例1の白色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1〜3および比較例1の白色発光素子の色座標を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1〜3の、比較例1に対する相対発光強度を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例4〜6および比較例1の白色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】本発明の実施例4〜6の白色発光素子の色座標を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例4〜6について、白色発光体に含まれるBa、Sr、およびCaのmol比率、および比較例1に対する相対発光強度を示す図面である。
【符号の説明】
【0061】
10 紫外線発光ダイオードチップ、
20 金ワイヤ、
30 電気リード線、
40 白色蛍光体、
50 エポキシモールド層、
60 成形モールド、
70 エポキシドームレンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ba−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子に関する。さらに詳細には、白色蛍光体として用いた際に、優れた発光強度、発光効率、および色純度を有するBa−Sr−Ca含有化合物およびこれを含む白色発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を利用した白色発光素子は、白熱電球に比べて寿命が長く、小型化が容易であり、低電圧での駆動が可能であることから、家庭用蛍光灯、液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)のバックライトを始めとする照明分野の全般にわたって、次世代の光源として注目されている。
【0003】
このような白色発光素子を用いて白色光を得る方式としては、(1)光の3原色である赤色、緑色、青色の3色の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を組み合わせて白色光を得る方式、(2)青色LEDを光源として使用して、黄色蛍光体を励起させることによって白色光を得る方式、および(3)紫外線(UV:UltraViolet)LEDを光源として使用して、3原色の蛍光体を励起させて白色光を得る方式の3つがある。
【0004】
上記(1)の、3色(赤色、緑色、および青色)のLEDを使用する方法は、製造コストが高く、駆動回路が複雑であるため、製品のサイズが大きくなるという短所がある。さらに、3つのLEDの温度特性が異なるため、製品の光学的特性および信頼性の観点から好ましくない影響を及ぼす虞がある。
【0005】
上記(2)の、青色LEDを光源として使用して、黄色蛍光体を励起させることによって白色光を得る方式は、UV LEDを光源として使用して、3原色の蛍光体を励起させて白色光を作る方式と比較して、発光効率には優れるが、赤色再現性が低いので、病院や食料品店などの照明として用いるには好ましくない。
【0006】
前述した(1)〜(3)の方式のうち、(3)の方式によれば、高電流下での使用が可能であり、色感に優れるので、最近では、(3)の方式の白色発光素子の研究が最も盛んに行われている。
【0007】
上記(3)の方式によって白色光を得るために、従来は、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の混合物を使用していた。特許文献1および2には、白色蛍光体として青色発光するZnS:Zn蛍光体と、黄色発光する(ZnxCd1−x)S:Ag蛍光体とを一定割合で混合した、複合相の蛍光体が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記複合相の蛍光体のうち、カドミウム(Cd)は、嘔吐、下痢、痙攣を引き起こすイタイイタイ病の主要原因となった金属であり、毒性が高いという問題がある。また、上記複合相の蛍光体を使用すればするほど、二つの蛍光体の劣化特性の差によって、蛍光体の色相が変質し、発光輝度が低下するという問題点を有している。
【0009】
最近では、上述のように、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の混合物を使用することなく、白色発光を実現できる化合物の開発が進められている。従来のように、それぞれ合成条件の異なる赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を別々に製造する場合と比較して、白色発光する化合物を一種類製造すれば足りるので、製造工程が単純化されるという利点がある。
【0010】
しかしながら、これまで開発された白色発光する化合物は、発光スペクトルで赤色発光の強度が相対的に低いために、所望の高純度の白色光を得られないという問題点があった。
【特許文献1】特開平03−239787号公報
【特許文献2】特開平04−138793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、優れた発光強度、光変換効率、および色純度を有する白色蛍光体ならびにこれを含む白色発光素子であって、紫外線の照射を利用する白色発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、紫外線照射によって白色発光する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物によると、紫外線の照射によって、発光強度が強い光が、広い波長領域にわたって均一に得られる。すなわち、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体は、優れた発光効率および色純度を有する。したがって、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色発光素子は、従来の赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体の3色の蛍光体の混合物を使用する白色発光素子と比べて、優れた白色光を得ることが可能である。また、1種の蛍光体のみを製造すれば足りるので、製造工程を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
本実施形態は、Ba酸化物と、Sr酸化物と、Ca酸化物と、Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、Mg酸化物と、Si酸化物またはGe酸化物と、を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、紫外線照射によって白色発光することを特徴とする、Ba−Sr−Ca含有化合物に関する。
【0016】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、新規な化合物であって、白色発光する物質であるということは確認しているが、本発明者は、その正確な化学式、実験式、または分子式および分子の結晶構造を正確には把握していない。しかしながら、従来公知の、分子の結晶構造がブレディガイト(Bredigite)構造を有するBa−Sr−Ca含有化合物は、緑色発光物質として知られており、白色発光を行うBa−Sr−Ca含有化合物は知られていない。したがって、以上の事実より、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、白色発光物質という点で従来のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なる新規な化合物であると言える。
【0017】
本発明者は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が、従来公知のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なり、白色発光する理由に対して以下の2つの可能性を推測している。第一は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が、公知のBa−Sr−Ca含有化合物とは異なる新規化学式を有する可能性である。第二は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物の分子結晶構造が、公知のBa−Sr−Ca含有化合物が有するブレディガイト構造とは異なる構造を有する可能性である。特に、第二の可能性の場合、たとえ、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が公知のBa−Sr−Ca含有化合物と同一の実験式または分子式を有するとしても、公知の緑色発光物質のBa−Sr−Ca含有化合物とその結晶構造が異なるため、白色発光するという説明が可能である。
【0018】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の出発物質は、上述のように各元素の酸化物からなる混合物でありうるが、酸化物の代わりに、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、および水酸化物などを使用しても、合成時に高温により、最終的には酸化物に変換される。したがって、出発物質は、含有元素のmol比が所定の範囲にあれば、金属酸化物だけでなく、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、水酸化物など他の形態のものも使用できる。また、金属酸化物を全く用いずに、上記形態の金属のみを用いても勿論よい。例えば、Ba含有酸化物の代わりに、BaCO3、BaCl2、Ba(NO3)2、およびBa(OH)2などが出発物質として用いられうる。同様に、Sr酸化物の代わりに、SrCO3、SrCl2、Sr(NO3)2、およびSr(OH)2などが用いられうる。Ca酸化物の代わりに、CaCO3、CaCl2、Ca(NO3)2、およびCa(OH)2などが用いられうる。Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはBiの酸化物の代わりに、Eu2(CO3)3、Eu(NO3)3、EuCl3、MnCO3、MnCl2、Mn(NO3)2、Sm(NO3)3、SmCl3、SnCl2、SnCl4、SbCl3、CeCl3、Ce(NO3)3、Ce(OH)4、Pr2(CO3)3、Pr(NO3)3、PrCl3、Nd2(CO3)3、Nd(NO3)3、NdCl3、Gd2(CO3)3、Gd(NO3)3、GdCl3、Tb2(CO3)3、Tb(NO3)3、TbCl3、Dy2(CO3)3、Dy(NO3)3、DyCl3、Ho2(CO3)3、Ho(NO3)3、HoCl3、Er2(CO3)3、Er(NO3)3、ErCl3、Tm2(CO3)3、Tm(NO3)3、TmCl3、Yb2(CO3)3、Yb(NO3)3、YbCl3などが用いられうる。Mg酸化物の代わりに、Mg2CO3、MgCl、MgNO3、MgOHなどが用いられうる。
【0019】
Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはBiの酸化物は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物が白色発光するとき、賦活剤として作用する。これらの酸化物のうち、Eu2O3を用いることが好ましい。
【0020】
また、Si酸化物またはGe酸化物としては、SiO2を用いることが好ましい。
【0021】
還元雰囲気は、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種で形成される。
【0022】
混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiまたはGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4である。混合物中の各元素のmol比が上記範囲を外れると、発光効率が低下したり、色純度が悪化したりする虞がある。
【0023】
熱処理の温度は、通常は900〜1400℃、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1100〜1200℃でありうる。また、熱処理の時間は、通常は1〜20時間、好ましくは3〜10時間、より好ましくは5〜8時間でありうる。この熱処理によって、金属酸化物の混合物が焼結される。かような範囲の温度で熱処理を行うことによって、結晶性が高く、優れた発光効率および色純度を有するBa−Sr−Ca含有化合物が得られうる。
【0024】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物の発光領域は非常に広く、青色波長領域から赤色波長領域(約400〜750nm)にわたるため、これらの光が組み合わされて白色光が得られる(図3および図7を参照)。また、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、そのBa−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を変化させることによって、白色発光の色温度を調節することが可能である。よって、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を調節するという簡便な方法によって、所望の色調の白色発光を得ることができる。例えば、Eu元素またはSr元素のmol比が大きくなるにつれ、白色光の色温度が低くなりうる。また、例えば、Ca元素のmol比が大きくなるにつれ、白色光の色温度が高くなりうる。
【0025】
本発明者は、Ba−Sr−Ca含有化合物の分子結晶構造は、製造時の合成温度と関連したものであって、次のように推測する。これについて、図1を参照して説明する。
【0026】
図1は、Ba−Sr−Ca含有化合物の合成温度による結晶構造の変化を示す概略図である。
【0027】
図1において、三角形ABCは、Ba−Sr−Ca含有化合物中に含まれるCa、Ba、およびSrの含有量のmol比率を示す三角グラフである。三角グラフとは、正三角形の各辺をグラフ化する3項目とし、それらの項目の比率を正三角形内部の点から各辺への垂線の長さで表現したグラフである。例えば、図1に示すように、三角形ABCの各頂点A、B、またはCは、それぞれ、化合物中にCa、Ba、またはSrのみが含まれている場合を表す点である。すなわち、Ba−Sr−Ca含有化合物中に含まれるCaのmol比率は、任意の点から辺BCまでの垂線の長さで表される。同様に、Baのmol比率は、任意の点から辺CAまでの垂線の長さで表され、Srのmol比率は任意の点から辺ABまでの垂線の長さで表される。これにより、三角形ABCの全ての点におけるBa、Sr、およびCaのmol比率を表すことができる。例えば、任意の点が三角形AB、BC、CAの3辺のうちのいずれかの辺上に存在する場合は、それぞれ、CaおよびBa、BaおよびSr、またはSrおよびCaの二つの成分のみを含む混合物からなる化合物を表す。なお、Ba、Sr、およびCaのそれぞれのmol比率を、Ba、Sr、およびCaの全mol数に対する百分率で表す場合(つまり、mol%で表す場合)、垂線までの長さの合計は常に100mol%となる。すなわち、三角形ABCの内部の任意の点は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の混合物に含まれる、Ba、Sr、およびCaのそれぞれのmol比率を表す。
【0028】
図1において、長方形ACDEの内部に示される黒点は、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を製造する際の熱処理工程の温度(以下、「合成温度」とも称する)の予測分布である。縦軸は、合成温度を示し、横軸は、上記で説明した三角形ABCの内部の任意の点から、辺CAへ引いた垂線と辺CAとの交点を表す。すなわち、横軸の値は、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれるCaおよびSrのmol比率による値である。本発明者は本発明のBa−Sr−Ca含有化合物に含まれるCaおよびSrのmol比率と合成温度との間に、曲線Lのような一定の関係があるものと推測している。この曲線Lは、1200℃近傍に存在する。すなわち、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を得るためには合成温度を1200℃近傍にすることが好ましいと考えている。逆に、曲線Lを大きく外れた高温では、従来公知の分子の結晶構造がブレディガイト構造を有する緑色発光物質であるBa−Sr−Ca含有化合物が得られることが分かっている。
【0029】
放出される白色光は、色温度として定義される。本発明のBa−Sr−Ca含有化合物による発光は、好ましくは色温度3000〜6500Kの範囲の発光であり、より好ましくは3500〜6000Kの範囲の発光であり、さらに好ましくは4000〜5500Kの範囲の発光である。色温度の調節は、Ba−Sr−Ca含有化合物に含まれる各成分の組成比を変化させることによって可能である。したがって、色温度の範囲をさまざまに調節することで、各種の商業用途に最適な白色蛍光体を提供できる。
【0030】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、紫外線(波長200〜430nm)によって励起して、白色光を発光する。紫外線の波長は、好ましくは370〜430nmのであり、より好ましくは390〜420nmである。かような範囲の波長の紫外線を照射することによって、発光強度が高く、色純度の良好な白色光が得られうる。したがって、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、紫外線白色発光素子用の白色蛍光体として好適に用いられうる。
【0031】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、白色蛍光体として用いられうる。特に、従来公知の白色発光体は、約550nm前後の波長領域での発光強度が低かったが、本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、このような問題点を解決したものであって(図3および図7参照)、全波長帯域で均一な発光強度を有するので、白色蛍光体として非常に有用である。本発明のBa−Sr−Ca含有化合物は、赤色光領域でも十分な発光強度を有し、色温度が比較的高い白色光を放出するので、特に病院、食料品店、博物館などで好適に用いられうる。
【0032】
本発明の他の実施形態によれば、上記Ba−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子が提供される。
【0033】
該白色発光素子は、紫外線発光ダイオードをさらに含みうる。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係る白色発光素子の構造を示す概略図である。ここでは、白色発光素子の具体例として、高分子レンズタイプの表面実装型発光素子を示す。なお、高分子レンズとしては、エポキシレンズを使用する。
【0035】
図2を参照すれば、紫外線発光ダイオードチップ10が金ワイヤ20を通じて電気リード線30とダイボンディングされている。紫外線発光ダイオードチップ10は、紫外線を放出する役割を有する。白色蛍光体40は、エポキシモールド層50に含まれている。紫外線発光ダイオードチップ10から放出された紫外線は、エポキシモールド層50に含まれた白色蛍光体40を励起させ、そして、白色光が放出される。エポキシモールド層50は、エポキシ系樹脂を含みうるが、エポキシ系樹脂は、市販のものを適宜採用することができる。成形モールド60の内部は、アルミニウムまたは銀でコーティングされた反射膜で形成され、これは、紫外線発光ダイオードチップ10から放出された紫外線を上方に反射する役割およびエポキシモールド層50を包含する役割を有する。エポキシモールド層50の上部には、エポキシドームレンズ70が形成されており、このエポキシドームレンズ70の形状は、所望の白色光の照射角度によって適宜変更されうる。
【0036】
本発明の白色発光素子は、図2の構造にのみ限定されるものではなく、これ以外にもさまざまな形態に変更することができる。例えば、発光素子に蛍光体が実装されるタイプ、砲弾型、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の表面実装型タイプの構造を有する発光素子でありうる。
【0037】
本発明のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子は、光源として用いられうる。本発明の白色発光素子は、信号灯、通信機器、および各種のディスプレイ装置のバックライトとして好適に用いられることができ、次世代の照明としても用いることができる。
【0038】
上記紫外線発光ダイオードが放出する紫外線の波長は、通常370〜430nmであり、好ましくは390〜420nmである。
【0039】
本発明の白色発光素子は、白色蛍光体以外に赤色蛍光体をさらに含みうる。この場合、さらに演色指数の高い光が得られるため、外科手術室の照明、博物館の照明、食料品店の照明などの用途として特に有用である。
【0040】
赤色蛍光体の例としては、Y2O3:Eu3+,Bi3+(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu2+,Mn2+;(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)BO3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)(P,V)O4:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa2S4:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+;(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu2+(0.5≦x≦3.1、5≦y≦8、0<z≦3)、および(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2SiO4:Eu2+、Mn2+などがあり、これらを単独で用いてもよいし、混合物の形態で用いてもよい。
【0041】
本発明白色発光素子は、水銀ランプ、キセノンランプのようなランプまたは自己発光LCDにも適用可能である。
【0042】
本発明のさらに他の実施形態によると、Ba酸化物;Sr酸化物;Ca酸化物;Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;Mg酸化物;およびSi酸化物またはGeの酸化物を、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4となる割合で混合して、出発物質を形成する工程と、出発物質を還元雰囲気下で熱処理して蛍光体を得る工程と、を含む蛍光体の製造方法を提供する。
【0043】
上記蛍光体の製造方法は、蛍光体を粉砕する工程と、蛍光体を蒸留水で洗浄する工程と、蛍光体を例えばオーブンで乾燥して白色蛍光体を得る工程と、をさらに含みうる。
【0044】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の白色発光素子において、紫外線発光ダイオードが放出する紫外線を白色蛍光体に照射して、白色蛍光体から白色光を発光させる発光方法が提供される。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]出発物質にEuを1mol%で混合
出発物質として、BaCO3 5.65g、SrCO3 4.23g、CaCO3 2.87g、Eu2O3 0.31g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを混合した。得られた混合物は、Ba:Sr:Ca=1:1:1のmol比であり、Euを1mol%で含んだ。この混合物をアルミナ坩堝に入れて、これを電気炉に置いた。還元性雰囲気下(5% H2および95% N2)で、1200℃で5時間熱処理した。このようにして得た焼結体を粉砕して粉末状にし、蒸留水で洗浄し、最後に100℃のオーブンで乾燥して白色蛍光体サンプル1を得た。この白色蛍光体を用いて、励起光源として紫外線発光ダイオード(波長:390nm)を使用して、図2に示すような白色発光素子1を製造した。
【0047】
[実施例2]出発物質にEuを3mol%で混合
出発物質として、BaCO3 5g、SrCO3 7.48g、CaCO3 2.54g、Eu2O3 0.41g、MgO 0.45g、およびSiO2 2.69gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:2:1のmol比で、Euを3mol%を含む混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法同様の方法で白色蛍光体サンプル2および白色発光素子2を得た
[実施例3]Euを5mol%で混合
出発物質として、BaCO3 6.68g、SrCO3 5g、CaCO3 6.78g、Eu2O3 0.55g、MgO 0.6g、およびSiO2 3.60gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:1:2のmol比を有し、Euを5mol%を含む混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法同様の方法で白色蛍光体サンプル3および白色発光素子3を得た。
【0048】
[実施例4]Ba:Sr:Ca=4:1:1のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 11.08g、SrCO3 2.07g、CaCO3 1.40g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=4:1:1のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル4および白色発光素子4を得た。
【0049】
[実施例5]Ba:Sr:Ca=1:4:1のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 2.77g、SrCO3 8.29g、CaCO3 1.40g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:4:1のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル5および白色発光素子5を得た。
【0050】
[実施例6]Ba:Sr:Ca=1:1:4のmol比で混合
出発物質として、BaCO3 2.77g、SrCO3 2.07g、CaCO3 5.62g、Eu2O3 0.92g、MgO 0.5g、およびSiO2 2.98gを用いて、Ba:Sr:Ca=1:1:4のmol比で混合物を製造した点を除いては、実施例1と同様の方法で白色蛍光体サンプル6および白色発光素子6を得た。
【0051】
[比較例1]
市販の赤色蛍光体のLa2O2S:Eu3+、市販の緑色蛍光体のBAM:Eu2+、Mn2+および市販の青色蛍光体のSr5(PO4)3Cl:Eu2+を用いて、白色発光素子とした際に、5000K day white color(昼白色)となるように混合物を製造した。そして、実施例と1と同様の方法で、白色蛍光体(比較例1)および白色発光素子(比較例1)を得た。
【0052】
結果を以下に示す。
【0053】
図3は、実施例1〜3および比較例1の白色蛍光体の、波長400〜760nmにおける発光強度を示す発光スペクトルである。波長520〜620nm領域において、比較例1の白色発光素子は発光強度が低かったが、実施例1〜3の白色発光素子は、広い波長領域において均一で、高い発光強度を維持することが示された。
【0054】
図4は、実施例1〜3および比較例1の白色発光素子の色座標を示すグラフである。図4で、黒体軌跡(BBL:Black Body Locus)は、光を完全に吸収して反射しない黒体を加熱したとき、黒体が放出する光の色を表す。BBL上の光の色は、白色であるが、黒体軌跡に沿って右側に行くほどやや赤い白色となり、左側に行くほどやや青い白色となる。図4より、実施例1〜3の白色発光素子の色座標はBBLと近接していることから、商業的に有用な白色発光が得られるということが確認できた。
【0055】
図5は、図3で示した比較例1の発光スペクトルを積分した値を100%とした場合の、実施例1〜3の発光スペクトルを積分した値を示すグラフである。すなわち、発光スペクトルを積分した値は、発光強度を表すので、この値が高いほど、蛍光体の発光効率が高いということを表す。図5から、実施例1〜3はいずれも十分な発光強度を有することから、白色発光素子用の白色蛍光体として実用化が可能であることが確認できた。
【0056】
図6は、実施例4〜6および比較例1の白色蛍光体の、波長400〜750nmにおける発光強度を示す発光スペクトルである。比較例1の白色蛍光体は、波長570〜620nm領域での発光強度が低いのに対し、実施例4〜6の白色蛍光体は、拾いは長老域において均一で、高い発光強度を維持することが示された。
【0057】
図7は、実施例4〜6の白色発光素子の色座標を示すグラフである。図4の場合と同様に、実施例4〜6の白色発光素子の色座標はBBLと近接していることから、商業的に有用な白色発光が得られることが確認できた。
【0058】
図8は、実施例4〜6の白色蛍光体に含まれる、Ba、Sr、およびCaのmol比率を表す三角グラフである。括弧内の数値は、図6の比較例1の発光スペクトルを積分した値を100%とした際の、図6の実施例4〜6の発光スペクトルを積分した値の割合である。実施例4〜6の白色蛍光体はいずれも十分な発光強度を有することから、白色発光素子用の白色蛍光体として実用化が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、発光素子関連の分野に好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】Ba−Sr−Ca含有化合物の合成温度による結晶構造の変化を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る白色発光素子の構造を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1〜3および比較例1の白色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1〜3および比較例1の白色発光素子の色座標を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1〜3の、比較例1に対する相対発光強度を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例4〜6および比較例1の白色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】本発明の実施例4〜6の白色発光素子の色座標を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例4〜6について、白色発光体に含まれるBa、Sr、およびCaのmol比率、および比較例1に対する相対発光強度を示す図面である。
【符号の説明】
【0061】
10 紫外線発光ダイオードチップ、
20 金ワイヤ、
30 電気リード線、
40 白色蛍光体、
50 エポキシモールド層、
60 成形モールド、
70 エポキシドームレンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba酸化物と、
Sr酸化物と、
Ca酸化物と、
Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、
Mg酸化物と、
Si酸化物またはGe酸化物と、
を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、
前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、
紫外線照射によって白色発光することを特徴とするBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項2】
前記白色発光は、色温度3000〜6500Kの範囲の発光であることを特徴とする、請求項1に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項3】
前記白色発光は、色温度3500〜6000Kの範囲の発光であることを特徴とする、請求項2に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項4】
前記熱処理は、1000〜1300℃で3〜10時間焼結することによる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項5】
前記Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物が、Eu2O3であり、
前記Si酸化物またはGe酸化物が、SiO2であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子。
【請求項7】
紫外線発光ダイオードをさらに含む、請求項6に記載の白色発光素子。
【請求項8】
前記紫外線発光ダイオードが放出する光は、370〜430nmの波長を有する紫外線であることを特徴とする、請求項7に記載の白色発光素子。
【請求項9】
前記光は、390〜420nmの波長を有する紫外線であることを特徴とする、請求項8に記載の白色発光素子。
【請求項10】
赤色蛍光体をさらに含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の白色発光素子。
【請求項11】
前記赤色蛍光体は、Y2O3:Eu3+,Bi3+(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu2+,Mn2+;(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)BO3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)(P,V)O4:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa2S4:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+;(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu2+(0.5≦x≦3.1、5≦y≦8、0<z≦3)および(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2SiO4:Eu2+、Mn2+からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項10に記載の白色発光素子。
【請求項12】
信号灯、通信機器、ディスプレイ装置のバックライト、または照明に用いられることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子。
【請求項13】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子を含むランプ。
【請求項14】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子を含む自己発光液晶表示素子。
【請求項15】
Ba酸化物;Sr酸化物;Ca酸化物;Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;Mg酸化物;ならびにSi酸化物またはGe酸化物を、各元素のmol比が、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4となる割合で混合して、出発物質を形成する工程と、
前記出発物質を還元雰囲気下で熱処理して蛍光体を得る工程と、
を含む蛍光体の製造方法。
【請求項16】
前記蛍光体を粉砕する工程と、
粉砕した前記蛍光体を蒸留水で洗浄する工程と、
洗浄した前記蛍光体を乾燥して白色蛍光体を得る工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記還元雰囲気は、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種で形成されることを特徴とする、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の白色発光素子において、
前記紫外線発光ダイオードが放出する紫外線を前記白色蛍光体に照射して、前記白色蛍光体から白色光を発光させる発光方法。
【請求項1】
Ba酸化物と、
Sr酸化物と、
Ca酸化物と、
Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、
Mg酸化物と、
Si酸化物またはGe酸化物と、
を含む混合物を出発物質として、還元雰囲気下で熱処理して得られうるBa−Sr−Ca含有化合物であって、
前記混合物中の各元素のmol比は、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4であり、
紫外線照射によって白色発光することを特徴とするBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項2】
前記白色発光は、色温度3000〜6500Kの範囲の発光であることを特徴とする、請求項1に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項3】
前記白色発光は、色温度3500〜6000Kの範囲の発光であることを特徴とする、請求項2に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項4】
前記熱処理は、1000〜1300℃で3〜10時間焼結することによる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項5】
前記Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物が、Eu2O3であり、
前記Si酸化物またはGe酸化物が、SiO2であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のBa−Sr−Ca含有化合物を含む白色蛍光体を有する白色発光素子。
【請求項7】
紫外線発光ダイオードをさらに含む、請求項6に記載の白色発光素子。
【請求項8】
前記紫外線発光ダイオードが放出する光は、370〜430nmの波長を有する紫外線であることを特徴とする、請求項7に記載の白色発光素子。
【請求項9】
前記光は、390〜420nmの波長を有する紫外線であることを特徴とする、請求項8に記載の白色発光素子。
【請求項10】
赤色蛍光体をさらに含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の白色発光素子。
【請求項11】
前記赤色蛍光体は、Y2O3:Eu3+,Bi3+(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu2+,Mn2+;(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)BO3:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)(P,V)O4:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa2S4:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+;(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu2+(0.5≦x≦3.1、5≦y≦8、0<z≦3)および(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2SiO4:Eu2+、Mn2+からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項10に記載の白色発光素子。
【請求項12】
信号灯、通信機器、ディスプレイ装置のバックライト、または照明に用いられることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子。
【請求項13】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子を含むランプ。
【請求項14】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の白色発光素子を含む自己発光液晶表示素子。
【請求項15】
Ba酸化物;Sr酸化物;Ca酸化物;Eu酸化物、Mn酸化物、Sm酸化物、Sn酸化物、Sb酸化物、Ce酸化物、Pr酸化物、Nd酸化物、Gd酸化物、Tb酸化物、Dy酸化物、Ho酸化物、Er酸化物、Tm酸化物、Yb酸化物、およびBi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;Mg酸化物;ならびにSi酸化物またはGe酸化物を、各元素のmol比が、Ba:Sr:Ca:(Eu、Mn、Sm、Sn、Sb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBi):Mg:(SiおよびGe)=x:y:z:(7−x−y−z):a:bとした場合に、0<x<7、0<y<7、0<z<7、x+y+z<7、0.9<a<1.1、および3.6<b<4.4となる割合で混合して、出発物質を形成する工程と、
前記出発物質を還元雰囲気下で熱処理して蛍光体を得る工程と、
を含む蛍光体の製造方法。
【請求項16】
前記蛍光体を粉砕する工程と、
粉砕した前記蛍光体を蒸留水で洗浄する工程と、
洗浄した前記蛍光体を乾燥して白色蛍光体を得る工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記還元雰囲気は、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種で形成されることを特徴とする、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の白色発光素子において、
前記紫外線発光ダイオードが放出する紫外線を前記白色蛍光体に照射して、前記白色蛍光体から白色光を発光させる発光方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−255356(P2008−255356A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85903(P2008−85903)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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