説明

C型肝炎ウイルス感染の治療

【課題】HCV感染細胞からのHCVの放出を阻害する方法の提供。
【解決手段】VLDLアセンブリ阻害剤と細胞を接触させ、細胞からのHCV放出の生じた阻害を検出することにより、HCV感染細胞からのHCVの放出を阻害するための、方法及び組成物。前記VLDLアセンブリ阻害剤が、マイクロモル以下の量でMTPに結合し、かつ該MTPを阻害するMTP阻害剤(但し、BMS−201038(AERG−733)を除く)、及びアポリポタンパク質Bに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群より選択される剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Jin Ye(市民権:中華人民共和国;居住地:Dallas、TX)、Fang Sun(市民権:中華人民共和国;居住地:Cheshire、CT)、Hua Huang(市民権:中華人民共和国;居住地:Dallas、TX)及びMichael Gale、Jr.(市民権:米国;居住地:Dallas、TX)。
【0002】
指定代理人:Board of Regents、University of Texas System
この研究は、National Institute of Health交付番号5 P01 HL20948−30(題名、Molecular Basis of Cholesterol Metabolism)により支援されている。米国政府はこの出願において生ずるあらゆる特許において権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
多くのウイルスは、ある一定の特別の細胞型においてのみ大量に生じ得る。古典的な例はC型肝炎ウイルス(HCV)(フラビウイルス科の1本鎖のプラス鎖RNAウイルス)(Appelら、2006)であり、これは、肝細胞によってのみ大量に分泌され得る(Chisari、2005)。この限定に関与する因子は殆ど知られていない。HCVの場合、1つの手がかりは、トリグリセリド及びコレステロールエステルを血漿中に排出するために(Gibbonsら、2000)、少なくともHCVの一部が超低密度リポタンパク質(VLDL)(Andreら、2002;Nielsenら、2006)、肝臓でのみ産生される球状粒子のファミリー(Gibbonsら、2004)、との複合体となり血漿中で循環するという実験結果から得られる。HCV及びVLDLは一緒に循環するが、ウイルスのアセンブリ又は分泌におけるVLDLに対する役割は明らかになっていない。
【0004】
全てのプラス鎖RNAウイルスに関して、細胞質膜と関連してHCV RNA複製が起こる。HCVの場合、HCVのサブゲノムレプリコンを有する培養ヒト肝臓癌Huh7細胞において、「膜性ウェブ(membranous webs)」と呼ばれるこれらの構造が視覚化された(Gosertら、2003;Moradpourら、2004)。これらのレプリコンは、非構造(NS)タンパク質NS3、NS4A、NS4B、NS5A及びNS5Bに対するコード配列を含む、RNA複製に対する必須のエレメントを含有する改変HCV RNA分子である(Lohmannら、1999)。Huh7細胞への遺伝子移入後、レプリコンRNAは複製するが、これはウイルスのアセンブリ及び分泌に必要な構造タンパク質をコードしないので、感染性ウイルス粒子を産生しない(Lohmannら、1999)。HCV複製複合体を有する膜性ウェブは単離されておらず、それらの組成は未知である。
【0005】
VLDLアセンブリは現在、2つの異なる段階で起こると考えられている(Shelness及びSellers、2001)。第一段階において、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)は、新生アポリポタンパク質B、VLDLを構造的に完全なものにする巨大な540Kdaタンパク質、に脂質を輸送する(Olofsson及びBoren、2005)。十分な脂質結合なしで、apoBはユビキチン化され、翻訳中に分解される(Avramoglu及びAdeli、2004)。VLDLアセンブリの第一段階で産生されるapoB含有脂質粒子が含有するトリグリセリドは限られた量である(Gusarovaら、2003)。第二段階において、apoB含有前駆体粒子は、内腔コンパートメントでトリグリセリド滴と融合し(Shelness及びSellers、2001)、段階はおそらく、アポリポタンパク質E(apoE)(VLDLの別の主要なタンパク質成分)により促進される(Mensenkampら、2001)。直接的な融合現象に対して必須ではないが、細胞質から内腔コンパートメントへトリグリセリドを輸送するためにMTPが必要とされる(Shelness及びSellers、2001)。ヒト及びマウスにおいて、MTPにおける遺伝子異常によりVLDL分泌が大きく減少する(Sharpら、1993;Raabeら、1998)。VLDLアセンブリの第一段階が小胞体(ER)で起こることが知られている一方で(Gusarovaら、2003)、第二段階の正確な場所は意見の分かれるところである(Fisher及びGinsberg、2002)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Appel,N.,et al.(2006)J.Biol.Chem.281,9833−9836.
【非特許文献2】Chisari,F.V.(2005)Nature 436,930−932.
【非特許文献3】Gibbons,G.F.,et al.(2000)Biochimica et Biophysica Acta(BBA)−Molecular and Cell Biology of Lipids 1483,37−57.
【非特許文献4】Andre et al.,2002.
【非特許文献5】Nielsen,S.U.,et al.(2006)J.Virol.80,2418−2428.
【非特許文献6】Gibbons,G.F.,et al.(2004)Biochem.soc.trans.32,59−64.
【非特許文献7】Gosert,R.,et al.(2003)J.Virol.77,5487−5492.
【非特許文献8】Moradpour,D.,et al.(2004).J.Virol.78,7400−7409.
【非特許文献9】Lohmann,V.,et al.(1999)Science285,110−113.
【非特許文献10】Shelness and Sellers,2001.
【非特許文献11】Olofsson,S.O.and Boren,J.(2005)J.of Internal Medicine 258,395−410.
【非特許文献12】Avramoglu,R.K.and Adeli,K.(2004)Rev.Endocr.Metab.Disord.5,293−301.
【非特許文献13】Gusarova,V.,et al.(2003)J.Biol.Chem.278,48051−48058.
【非特許文献14】Mensenkamp,A.R.,et al.(2001)E.Journal of Hepatology 35,816−822.
【非特許文献15】Sharp,D.,et al.(1993)Nature 365,65−69.
【非特許文献16】Fisher,E.A.and Ginsberg,H.N.(2002)J.Biol.Chem.277,17377−17380.
【発明の概要】
【0007】
ある態様において、本発明は、a)VLDLアセンブリ阻害剤と細胞を接触させることと;b)細胞からのHCV放出の生じた阻害を検出することと、を含む、HCV感染細胞からのHCVの放出を阻害する方法である。特定の実施形態において、この細胞を阻害剤のマイクロモル以下の量と接触させる。様々な実施形態において、この阻害剤は、MTP阻害剤又は、アポリポタンパク質Bに対する、低分子干渉RNAもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、この接触段階は、インターフェロン及びリバビリンから選択される抗ウイルス剤に細胞を接触させることをさらに含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、a)VLDLアセンブリ阻害剤をHCV感染者に投与することと;b)HCV感染者の血清ウイルス血症の生じた低下を検出することと、を含む、HCV感染者の血清ウイルス血症を低下させる方法である。特定の実施形態において、血清ウイルス血症の低下は、MTP阻害剤などのVLDLアセンブリ阻害剤のマイクロモル以下の濃度により達成される。様々なその他の実施形態において、この阻害剤は、BMS−200150、BMS−212122、BMS−201038(AERG−733)、BMS−201030、BMS−197636、JTT−130、ミトラタピド(R−103757)、インプリタピド(BAY−139952)、CP−346086、CP−467688及びCP−319340からなる群から選択されるMTP阻害剤である。別の実施形態において、この阻害剤は、アポリポタンパク質Bに対する低分子干渉RNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばISIS 301012など、である。特定の実施形態において、この接触段階は、インターフェロン及びリバビリンから選択される抗ウイルス剤と細胞を接触させることをさらに含む。
【0009】
本発明の別の態様は、a)MTP阻害剤剤形の複数と;a)リバビリン剤形の複数と、を含む、HCV感染者の血清ウイルス血症を低下させるためのキットである。具体的な実施形態において、MTP阻害剤は、BMS−200150、BMS−212122、BMS−201038(AERG−733)、BMS−201030、BMS−197636、JTT−130、ミトラタピド(R−103757)、インプリタピド(BAY−139952)、CP−346086、CP−467688及びCP−319340からなる群から選択される。
【0010】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
発明者らは、a)VLDLアセンブリ阻害剤と細胞を接触させることと;b)細胞からのHCV放出の生じた阻害を検出することと、を含む、HCV感染細胞からのC型肝炎ウイルス(HCV)の放出を阻害する方法を記載する。
【0011】
VLDLアセンブリ阻害剤は、好ましくは、MTPの活性を阻害する又はApoBタンパク質の産生を限定することにより、VLDLのアセンブリ及び分泌を阻止する。
【0012】
ある実施形態において、VLDLアセンブリ阻害剤は、ApoBに対する、低分子干渉RNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一例として、ISIS 301012は、ヒトApoB−100を標的とする臨床開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチドである(Burnett、Curr Opin Mol Ther.(2006)8:461−7)。
【0013】
特定の実施形態において、VLDLアセンブリ阻害剤は、MTPに結合しMTP活性を阻害する分子であり、好ましくは、マイクロモル以下の濃度でMTP活性を阻害する合成(即ち非天然)分子である。合成MTP阻害剤は、BMS−200150(例えば、Jamilら、Proc Natl Acad Sci USA.(1996)93:11991−5参照)、BMS−212122(例えば、Roblら、J Med Chem.(2001)44:851−6参照)、BMS−201038(AERG−733として開発中;例えば、Sulskyら、Bioorg Med Chem Lett.(2004)14:5067−70参照)、BMS−197636(例えば、Wangら、J Biol Chem(1999)274:27793−800参照)、JTT−130(例えば、Aggarwalら、BMC Cardiovasc Disord(2005)5:30;及びBurnett、IDrugs(2006)9:495−9参照)、ミトラタピド(R−103757としても知られる;例えば、Verreckら、J Pharm Sci(2004)93:1217−28参照)、インプリタピド(BAY−139952としても知られる;例えば、Ueshimaら、Biol Pharm Bull(2005)28:247−52参照)、CP−346086(例えば、Chandlerら、J Lipid Res.(2003)44:1887−901参照)、CP−467688及びCP−319340(例えば、米国特許第5,919,795号参照)など、当技術分野で周知である。
【0014】
本発明は、細胞からのHCV放出の阻害について(これは、インビトロ又はHCV感染に対する動物モデルであるチンパンジーでのインシトゥであり得る。)VLDLアセンブリ阻害剤をスクリーニングするのに有用な方法を包含する。これらの実施形態において、細胞によりVLDLアセンブリ阻害剤の取り込みを達成するのに適切な何らかの方法を用いて接触段階が達成される。例えば、OligofectAMINETM試薬(Invitrogen)を用いて、インビトロで細胞にsiRNAを遺伝子移入し得る。上述のMTP阻害剤などの低分子阻害剤を培養において細胞の培地に単純に添加し得る。MTP阻害アッセイを用いて、本方法での使用のためのさらなるMTP阻害剤を同定することができ(例えば、Chandlerら、J Lipid Res.(2003)44:1887−901参照)、場合によっては、チンパンジーでさらに確認することができる。特定の実施形態において、VLDLアセンブリ阻害剤のマイクロモル以下の量と細胞を接触させる。例えば、細胞は、1000nM未満、好ましくは500、250、100又は10nM未満の培地中濃度を達成するためのVLDLアセンブリ阻害剤の量が添加される培養液中にあり得る。実施例2に記載のHCV放出アッセイなどの何らかの適切な方法を用いて、HCV放出の得られる阻害を検出する。VLDLアセンブリ阻害剤がリバビリン及び/又はインターフェロンなどのその他の抗ウイルス剤とともに有する相加又は相乗効果を評価するために、本発明を使用することができる。従って、本発明の接触段階は、インターフェロン及び/又はリバビリンから選択される抗ウイルス剤と細胞を接触させることをさらに含み得る。
【0015】
本発明は、HCV感染者において血清ウイルス血症を低下させる方法を包含し、この方法は、a)VLDLアセンブリ阻害剤をHCV感染者に投与することと;b)HCV感染者の血清ウイルス血症の生じた低下を検出することと、を含む。接触段階の前に、患者は、好ましくは、HCV感染を有するものとして診断されており、この診断は、何らかの医学的に許容可能な方法によるものであり得る。VLDLアセンブリ阻害剤は、高脂血症の治療に対して使用されている又は開発中の既知の薬物であり得る。
【0016】
VLDLアセンブリ阻害剤をヒトに投与するための適用可能なプロトコールは、当技術分野で公知であり、日常的に最適化される。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドISIS301012は、経口及び非経口投与経路によるバイオアベイラビリティーを示す(Isis Pharmaceuticals 2005 Annual Report)。低分子MTP阻害剤は、経口剤形で日常的に投与される。患者へのVLDLアセンブリ阻害剤の投与のための適切なプロトコールは、高脂血症の治療に対するVLDLアセンブリ阻害剤において行われている、大規模な臨床試験及び臨床前薬物動態試験から容易に導かれ得る。
【0017】
好ましい実施形態において、VLDLアセンブリ阻害剤、特にMTP阻害剤、のマイクロモル以下の血清濃度は、血清ウイルス血症を低下させる。特定の実施形態において、患者において血清ウイルス血症を低下させるのに十分な時間、阻害剤の活性のあるマイクロモル以下濃度を達成するために、MTP阻害剤1日あたり1mg/kg体重以下をヒトに投与する。例えば、MTP阻害剤のマイクロモル以下の血清濃度を達成するために、1日あたり0.03、0.1、0.3及び1.0mg/kg体重の経口剤形にMTP阻害剤を処方し、1日1回から4回送達させ得る。治療期間は、通常、患者による薬物の耐容性に依存して、約4週間から4ヶ月の範囲である。血清ウイルス血症の得られる低下は、当技術分野で公知の適切な方法を用いて定量的に検出され得る(例えば、Lunelら、Hepatology(1999)29:528−35参照)。特定の実施形態において、血清ウイルス血症の生じた低下は、治療前の力価と比較した血清HCV RNA力価の顕著な低下を明らかにすることにより検出される(例えば、NASBA(R)試験、Organon Teknika、Boxtel、The Netherlandsを用いて。)。特定の実施形態において、この方法の結果、少なくとも25%、50%、75%、80%以上血清HCV RNA力価が低下する。他の実施形態において、血清ウイルス血症の低下は、推論に基づき、例えば、患者のHCV症候の減少を観察することにより、又は間接的に、例えば、HCV感染のその他のある指標の改善を示すことなどにより、検出される(例えば、治療前レベルと比較したアミノトランスフェラーゼレベルの正規化)。
【0018】
本発明は、VLDLアセンブリ阻害剤によるもの以外の機構により作用する1以上のさらなる抗ウイルス剤と組み合わせてVLDLアセンブリ阻害剤を患者に投与することを含む、ヒトにおいてHCV感染を治療するための併用療法を提供する。特定の実施形態において、VLDLアセンブリ阻害剤は、MTPの活性又はApoBタンパク質の産生を標的とし、阻害するものであり、さらなる抗ウイルス剤はインターフェロン及び/又はリバビリンである。HCV感染者の血清ウイルス血症を低下させるためのキットは、併用抗ウイルス剤を含み得る。例えば、ある実施形態において、本キットは、VLDLアセンブリ阻害剤剤形の複数、好ましくは、経口投与されるカプセル又は錠剤、及びリバビリン剤形の複数を含む。あるいは、2以上の抗ウイルス剤を単一剤形中で処方し得る。本キットは、正しい毎日の投与を促すために、ブリスター包装中にパッケージ化される剤形を含み得る。具体的な実施形態において、本キットは、MTP阻害剤剤形の複数を含み、ここで、MTP阻害剤は、BMS−200150、BMS−212122、BMS−201038(AERG−733)、BMS−201030、BMS−197636、JTT−130、ミトラタピド(R−103757)、インプリタピド(BAY−139952)、CP−346086、CP−467688及びCP−319340からなる群から選択される。本キットは、経口投与可能なリバビリン及び/又はインターフェロン(例えば、Bernard、Curr Opin Investig Drugs(2002)3:693−7参照)剤形の複数をさらに含む。
【実施例1】
【0019】
apoBを標的とするsiRNAで処理された細胞からの感染性HCV粒子の分泌低下
発明者らは、Huh7−GL細胞、染色体に組み込まれた遺伝子型2aHCV cDNAを含有し、感染性ウイルスを構成的に産生するHuh7細胞の株(Caiら、2005)に、apoB又は対照としてGFPを標的とする二重siRNAを遺伝子移入した。血清不含培地中での温置後、培養液を回収し、培地中のapoB及びHCVの量を分析した。apoB siRNAでの細胞の遺伝子移入により、細胞内HCV RNAに影響を与えずに、apoB mRNAの量を約80%減少させた。apoB siRNAにより、培地中に分泌されるapoBの量が顕著に減少したが、α1−アンチトリプシンの分泌には影響がなかった。GFP siRNAで遺伝子移入した対照細胞において、HCVコピー数及び力価は、4時間の温置時間の間、10倍を超えて上昇した。apoB siRNAを受容した細胞において、ウイルスコピー数によりアッセイした場合、この上昇は約50%低下し、ウイルス力価によりアッセイした場合、70%低下した。
【実施例2】
【0020】
MTP阻害剤 BMS−2101038で処理された細胞からの感染性HCV粒子の分泌低下
MTP阻害剤BMS−210138の存在下又は非存在下でHuh7−GL細胞を温置した。血清不含培地中での温置後、培養液を回収し、培地中のHCV RNA、HCV力価及びapoBの量を測定した。MTP阻害剤との細胞の温置により、apoBの分泌は阻止されたが、α1−アンチトリプシンは阻止されなかった。MTP阻害剤での細胞の処理により、培地中のHCV RNAの量及びウイルス力価が約80%減少した。細胞内HCV RNAはMTP阻害剤の非存在下又は存在下で同じままであるので、培地中のHCV量の減少はHCV RNA合成の阻害によるものではない。阻害剤とともに温置しなかった細胞においてでさえも培地中で検出されるHCV RNAの量は細胞において見られる量の1%未満であったので、発明者らは、MTP阻害剤で処理した細胞において細胞内HCV RNAの蓄積を観察しなかった。
【実施例3】
【0021】
様々なMTP阻害剤がHCVの細胞放出を減少させる。
実施例2に記載のようにHuh7−GL細胞を培養する。第1日に、次のMTP阻害剤:BMS−201038(陽性対照)、BMS−200150、BMS−212122、BMS−197636、JTT−130、インプリタピド、ミトラタピド及びCP−346086の、1nM、10nM、100nM及び500nMで細胞を処理する。16時間後、第2日に、同量のMTP阻害剤の非存在下又は存在下で細胞の培地を血清不含培地に交換する。4時間温置した後、上記で調べたような培地中でのHCV RNAコピー数及び力価の低下により、試験した各阻害剤に対するウイルスの細胞放出の減少が明らかになる。
【実施例4】
【0022】
MTP阻害剤は血清HCVウイルス血症を低下させる。
インターフェロン単剤療法に無反応であったか不耐であった慢性HCV感染患者でのBMS201038の効能及び安全性を評価するために、無作為二重盲検プラセボ対照試験(Raymondら、Ann Intern Med.(1998)11月15日;129(10):797−800)を使用する。
【0023】
患者を募集し、インターフェロン療法の少なくとも3ヶ月後に血清学的試験でHCV RNAに対して陽性である場合、登録資格がある。倦怠感、神経精神病学的障害又は血小板減少症などの重篤な副作用のためにインターフェロンに耐えることができない患者も含まれる。脂質低下薬を摂取している、妊娠している、現在薬物もしくはアルコール依存である、肝臓癌である、HIVに対して血清学的に陽性である、顆粒球の絶対数が1000個/mm3未満であるか又は肝臓疾患の共存原因がある場合、その患者は除外する。
【0024】
二重盲検方式で患者を無作為に割り当て、1日2回の0.15mg/kg体重のBMS201038又は形態、色及び包装が活性薬物と同一であるプラセボの何れかの12週間のコースを受けさせる。医師及び患者は、治療の割り当てを知らされない。規則順守について(これは錠剤数により評価する。)、及び有害反応の進展について、3週間ごとに患者を評価する。以前の臨床試験(例えば、Cuchelら、N.Eng.J Med(2007)356:148−56参照)で明らかにされたように、BMS−201038の耐容性が高いことを考えると、これらの用量及び治療期間では有害反応は予想されない。評価のための各来院において、完全血球算定を行い、電解質の血清レベル、血中尿素窒素、クレアチニン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルブミン及び総ビリルビンを測定する。定性的複数回逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法を用いることによって、登録前、評価のための各来院時及び最終投与から6週間後に、血清HCV RNAの力価を評価する。5百万コピー/mLまで力価を計算し;力価が5百万コピー/mLより大きい場合、そのように単純に報告し、正確な値を与えない。ウイルス負荷の顕著な低下及びアミノトランスフェラーゼレベルの上昇の正規化により示されるように、血清ウイルス血症の低下によって、BMS−201038の効能が示される。
【0025】
上記で引用する参考文献は、そこで参照されるVLDLアセンブリ阻害剤の構造及び合成のそれらの開示に対して、参照により、本明細書中に組み込まれる。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)VLDLアセンブリ阻害剤と細胞を接触させることと;及び
b)細胞からのHCV放出の生じた阻害を検出することと、
を含む、HCV感染細胞からのHCVの放出を阻害する方法。
【請求項2】
細胞が、阻害剤のマイクロモル以下の量と接触させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
阻害剤が、マイクロモル以下の量のMTP阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
阻害剤が、アポリポタンパク質Bに対する、低分子干渉RNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
接触段階が、インターフェロン及びリバビリンから選択される抗ウイルス剤に細胞を接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)VLDLアセンブリ阻害剤をHCV感染者に投与することと;及び
b)HCV感染者における血清ウイルス血症の生じた低下を検出することと、
を含む、HCV感染者の血清ウイルス血症を低下させる方法。
【請求項7】
血清ウイルス血症の低下が、VLDLアセンブリ阻害剤のマイクロモル以下の濃度により達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
阻害剤がMTP阻害剤であり、血清ウイルス血症の低下がMTP阻害剤のマイクロモル以下の濃度により達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
阻害剤が、アポリポタンパク質Bに対する、低分子干渉RNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
阻害剤が、アポリポタンパク質Bに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
阻害剤がISIS 301012である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
阻害剤が、BMS−200150、BMS−212122、BMS−201038(AERG−733)、BMS−201030、BMS−197636、JTT−130、ミトラタピド(R−103757)、インプリタピド(BAY−139952)、CP−346086、CP−467688及びCP−319340からなる群から選択されるMTP阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
投与段階が、インターフェロン及びリバビリンから選択される抗ウイルス剤を感染者に投与することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
a)MTP阻害剤剤形の複数と;及び
a)リバビリン剤形の複数と、
を含む、HCV感染者の血清ウイルス血症を低下させるためのキット。
【請求項15】
MTP阻害剤が、BMS−200150、BMS−212122、BMS−201038(AERG−733)、BMS−201030、BMS−197636、JTT−130、ミトラタピド(R−103757)、インプリタピド(BAY−139952)、CP−346086、CP−467688及びCP−319340からなる群から選択される、請求項14に記載のキット。

【公開番号】特開2013−47237(P2013−47237A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−220962(P2012−220962)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2009−547354(P2009−547354)の分割
【原出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】