説明

C型肝炎ウイルス改変体

【課題】薬物もしくは他の治療に耐性を示す変異型HCVまたは他のウイルスを同定し、そしてこれらの変異型ウイルスに対して有効である新規なウイルス治療を提供する。
【解決手段】本発明は、HCV改変体、および関連の方法および組成物を提供する。特に、VX−950のような1種以上のプロテアーゼインヒビターに対する感受性が低下している、HCV改変体および改変体HCVプロテアーゼが、提供される。1つの局面において、本発明は、単離されたHCV NS3プロテアーゼをコードするHCVポリヌクレオチド、その生物学的に活性なアナログ、またはその生物学的に活性なフラグメントを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)改変体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界中で1億7千万人を超える人々に感染し、慢性肝炎の主要な原因であり、この慢性肝炎は、最終的に、末期の肝硬変および肝細胞癌をもたらす。HCV感染についての現在の標準的な処置は、ペグ化インターフェロンα(Peg−IFN)とリバビリン(RBV)との組み合わせである。HCV治療の目標は、持続的ウイルス応答(sustained viral response)(SVR)を得ることによってウイルス感染を消滅させることであり、抗ウイルス処置の6ヵ月後に血液中にHCV−RNAが検出されないことによって定義される。不運なことに、現在の処置は、遺伝子型1を有する被験体の約50%において有効でなく、そして副作用が大きい。したがって、新しい抗ウイルス標的および改善された処置戦略が、必要とされている(非特許文献1、非特許文献2)。
非構造(NS)3−4Aプロテアーゼは、HCV複製のために必須であり、そして新規な抗HCV治療についての有望な標的である。強力かつ特異的なNS3−4AプロテアーゼインヒビターであるVX−950は、HCV遺伝子型1に感染した被験体の第1b相臨床試験(Study VX04−950−101)において実質的な抗ウイルス活性を示した。被験体が処置に応答する程度およびウイルスの跳ね返りが観察される割合は、プロテアーゼインヒビターに対する感受性における遺伝子型による相違に部分的に起因し得る。HCVの迅速な複製速度およびHCVのポリメラーゼの忠実度の低さは、HCVのゲノム全体の変異の蓄積をもたらす(非特許文献3)。プロテアーゼ領域における配列の変化性が、酵素の触媒効率またはインヒビターの結合に影響する程度は、知られていない。さらに、顕著な配列変化を有する多くのウイルスゲノムの産生は、抗ウイルス治療によって処置される被験体における薬物耐性ウイルスの出現の問題の可能性を提示する。実際、抗ウイルス薬物(例えば、HIVプロテアーゼインヒビター)に対する薬物耐性は、よく報告されている(非特許文献4)。薬物耐性変異は、HCVプロテアーゼインヒビターの存在下でインビトロで発生することが、既に示されている(非特許文献5〜8)。プロテアーゼインヒビターBILN 2061に対して耐性である変異が、NS3遺伝子におけるR155Q、A156T、およびD168V/A/Yの位置において見出されているが、NS4領域またはNS4プロテアーゼ切断部位においては変異は未だ観察されていない。VX−950耐性変異もまた、A156Sの位置においてインビトロで見出されている。VX−950およびBILN 2061の両方に対する交差耐性変異もまた、156位(A156V/T)においてインビトロでの発生が示されている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Pawlotsky,J.M.,およびJ.G.McHutchison,2004,「Hepatitis C.Development of new drugs and clinical trials:promises and pitfalls.Summary of an AASLD hepatitis single topic conference,Chicago,IL,February 27−March 1,2003」,Hepatology 39:554−67
【非特許文献2】Strader,ら,2004,「Diagnosis,management,and treatment of Hepatitis C.」,Hepatology 39:1147−71
【非特許文献3】Simmonds,P.,2004,「Genetic diversity and evolution of Hepatitis C Virus−15 years on.」,J.Gen.Virol.85:3173−88
【非特許文献4】Johnson,ら,2004,Top.HIV Med.12:119−24
【非特許文献5】Linら,2005,「In vitro studies of cross−resistance mutations against two Hepatitis C Virus serine protease inhibitors,VX−950 and BILN 2061.」,J.Biol.Chem.280:36784−36791
【非特許文献6】Lin,ら,2004,「In vitro resistance studies of Hepatitis C virus serine protease inhibitors,VX−950 and BILN 2061:Structural analysis indicates different resistance mechanisms.」,J.Biol.Chem.279:17508−17514
【非特許文献7】Lu,ら,2004,Antimicrob.Agents Chemother.48:2260−6
【非特許文献8】Trozzi,ら,2003,「In vitro selection and characterization of Hepatitis C virus serine protease variants resistant to an active−site peptide inhibitor.」,J.Virol.77:3669−79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、薬物もしくは他の治療に耐性を示す変異型HCVまたは他のウイルスを同定する必要、およびこれらの変異型ウイルスに対して有効である新規なウイルス治療を開発する必要が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
したがって、本発明は、HCV改変体、および関連の方法および組成物を提供する。特に、VX−950のような1種以上のプロテアーゼインヒビターに対する感受性が低下している、HCV改変体および改変体HCVプロテアーゼが、提供される。
【0006】
1つの局面において、本発明は、単離されたHCV NS3プロテアーゼをコードするHCVポリヌクレオチド、その生物学的に活性なアナログ、またはその生物学的に活性なフラグメントを提供する。この単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156に対応する少なくとも1つのコドンを有し、この少なくとも1つのコドンは、対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている。該野生型HCVポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列またはその一部分(例えば、配列番号1の最初の543ヌクレオチド)を含んでもよい。あるいは、該野生型HCVポリヌクレオチドは、配列番号1の配列に対して少なくとも60%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上同一であるヌクレオチド配列、またはその一部分を含んでもよい。
【0007】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36に対応するコドンを含み、このコドンは、Vをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、M、L、A、またはGをコードする。
【0008】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン41に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Qをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、Hをコードする。
【0009】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン43に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Fをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、Sをコードする。
【0010】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン54に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Tをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、SまたはAをコードする。
【0011】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン148に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Gをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、Eをコードする。
【0012】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン155に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Rをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、K、M、S、T、G、I、またはLをコードする。
【0013】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン156に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、Aをコードしない。特定の実施形態において、このコドンは、S、T、V、またはIをコードする。
【0014】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択される任意の2つのコドンに対応する2つのコドンを含み、そしてこの2つのコドンは、どちらかが上記野生型HCVポリヌクレオチドの対応するコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように、変異されている。例えば、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36に対応するコドンを含み、そしてこのコドンは、AまたはMをコードする;上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型ポリヌクレオチドのコドン155に対応するコドンをさらに含み、そしてこのコドンは、KまたはTをコードする;あるいは、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型ポリヌクレオチドのコドン156に対応するコドンをさらに含み、そしてこのコドンは、Tをコードする。
【0015】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択される任意の3つのコドンに対応する3つのコドンを含み、そしてこの3つのコドンは、この3つのコドンの各々が、上記野生型HCVポリヌクレオチドの対応するコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように、変異されている。
【0016】
特定の実施形態において、上記単離されたHCVポリヌクレオチドは、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156に対応する4つのコドンを含み、そしてこの4つのコドンは、この4つのコドンの各々が、上記野生型HCVポリヌクレオチドの対応するコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように、変異されている。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のHCVポリヌクレオチドを含む方法および組成物を提供する。例えば、上記HCVポリヌクレオチドを含む発現系が提供され、そしてこのような発現系は、プロモーターに作動可能に連結した上記HCVポリヌクレオチドを含むベクターを含み得る;このベクターでトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入された宿主細胞もまた、提供される。あるいは、本発明の発現系は、mRNAディスプレイ技術(例えば、米国特許第6,258,558号に記載されるRNA−タンパク質融合技術、または米国特許第6,361,943号に記載されるインビトロ「ウイルス」技術)に基づく。
【0018】
別の局面において、本発明は、単離されたHCV改変体を提供する。単離されたHCV改変体は、HCV NS3プロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを含み得、ここで、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択されるコドンに対応する該ポリヌクレオチドの少なくとも1つのコドンは、該野生型HCVポリヌクレオチドの対応するコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている。本発明のさらなる実施形態は、上記HCV改変体を含む方法および組成物を提供する。例えば、本発明のHCV改変体の複製を阻害し得る化合物を同定するための方法が、提供される;本発明のHCV改変体によって感染した細胞が、提供される。
【0019】
別の局面において、本発明は、単離されたHCVプロテアーゼ、特にHCV NS3プロテアーゼを提供する。単離されたHCV NS3プロテアーゼは、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含み得る。上記野生型HCV NS3プロテアーゼは、配列番号2のアミノ酸配列またはその一部分(例えば、配列番号2の最初の181アミノ酸)を含み得る。上記単離されたHCV NS3プロテアーゼは、HCV NS3プロテアーゼの生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含み得る(例えば、上記単離されたHCV NS3プロテアーゼは、配列番号2のN末端の5、10、15、20、30、35、40、45、または48アミノ酸を有さない場合がある)。
【0020】
単離されたHCV NS3プロテアーゼはまた、NS4A補因子(例えば、配列番号2の最後の54アミノ酸によって表されるようなNS4Aタンパク質)を含み得る。単離されたHCV NS3プロテアーゼは、NS4A補因子をNS3プロテアーゼドメインに繋留(tether)することによって形成されるタンパク質複合体であってもよい(例えば、米国特許第6,653,127号および同第6,211,338号に記載される)。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、本発明のHCVプロテアーゼに特異的な抗体を提供する。この抗体は、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含むHCV NS3プロテアーゼを認識し得る。本発明のさらなる実施形態は、本発明の抗HCVプロテアーゼ抗体を含む方法および組成物を提供する。例えば、本発明の抗体を含む診断キット、ならびに本発明の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物が、提供される。
【0022】
別の局面において、本発明は、ストリンジェントな条件下で本発明のHCVポリヌクレオチドの核酸配列にハイブリダイズ可能なヌクレオチドプローブまたはプライマーを提供する。本発明のさらなる実施形態は、上記プローブまたはプライマーを含む方法および組成物を提供する。例えば、本発明のプローブもしくはプライマーを含む診断キットまたは検出キットが提供され、そしてこのキットは、例えば、本発明のHCV改変体またはHCV NS3プロテアーゼがサンプル中に存在するか否かを決定するために有用である。
【0023】
さらなる局面において、本発明は、患者におけるHCV感染のプロテアーゼインヒビターに対する薬物耐性または感受性を評価するための方法を提供する。このような方法は、HCV感染患者から生物学的サンプルを収集する工程、ならびに該サンプルが該野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含むHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸を含むか否かを評価するかまたは決定する工程を、包含する。上記プロテアーゼインヒビターは、VX−950であってもよく、または別のプロテアーゼインヒビターであってもよい。
【0024】
患者におけるHCV感染のための処置を指示するか、または治療レジメンを設計するための方法もまた、提供される。この方法は、該患者のプロテアーゼインヒビターに対する薬物耐性または感受性を評価する工程、および該薬物耐性または感受性に基づいて該患者のためのレジメンを決定する工程を、包含し得る。例えば、薬物耐性が予測されるかまたは検出される(例えば、VX−950のようなプロテアーゼインヒビターに対する感受性の低下)場合、1種以上の他の化合物または薬剤が、該患者の処置計画もしくは治療レジメンに含められ得る。この方法は、該患者におけるHCV NS3プロテアーゼの配列を決定する工程(例えば、遺伝子型決定(genotyping))、該患者におけるHCV NS3プロテアーゼのプロテアーゼインヒビターに対する感受性を決定(例えば、表現型決定(phenotyping))する工程、または患者のHCVのウイルス適応度(fitness)レベルを決定する工程の任意の組み合わせを含み得る。この表現型決定は、無細胞系(例えば、インビトロプロテアーゼアッセイ)および細胞ベースの系(例えば、レプリコンアッセイまたはウイルス感染もしくはウイルス複製アッセイ)において実施され得る。
【0025】
別の局面において、本発明は、患者におけるHCV感染を処置するための候補化合物を同定するための方法を、提供する。このような方法は、本発明のHCV改変体によって感染したサンプルを提供する工程、および該サンプル中で該HCV改変体の活性を阻害する候補化合物の能力をアッセイする工程を、包含し得る。HCV改変体に感染したサンプルは、患者から得られ得る(例えば、細胞サンプルもしくは血漿サンプル)。HCV改変体に感染したサンプルはまた、培養細胞であってもよい。HCV改変体の活性は、感染するか、複製するか、そして/または放出されるその能力によって決定され得る。
【0026】
あるいは、このような方法は、本発明のHCVポリヌクレオチドを含むレプリコンRNAを提供する工程、および候補化合物が該レプリコンRNAの複製を阻害するか否かを適切なアッセイにおいて決定する工程を、包含し得る。
【0027】
別の代替の方法は、本発明の単離されたHCV NS3プロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を提供する工程、および該HCV NS3プロテアーゼ活性が、候補化合物の存在下で低下するか否かを決定する工程を包含し得る;該HCV NS3プロテアーゼおよび/または該プロテアーゼ基質は、細胞ベースの系において存在してもよく(例えば、培養細胞中で発現される)、または該HCV NS3プロテアーゼおよび/または該プロテアーゼ基質は、無細胞系(例えば、HCV NS3プロテアーゼおよびペプチド基質を含む反応混合物)において存在してもよい。該HCV NS3プロテアーゼは、米国特許第6,258,558号において記載されるようなRNA−タンパク質融合分子であってもよく、このような融合分子は、プロテアーゼ活性を評価する無細胞アッセイに含まれてもよい。
【0028】
患者におけるHCV感染を処置するための候補化合物を評価するためのさらなる代替方法は、本発明のHCVポリヌクレオチドおよびインジケーターをコードする指示遺伝子を含むベクターを、宿主細胞に導入する工程、および該インジケーターを候補化合物の存在下および候補化合物の非存在下で測定する工程を、包含する。本発明の別の局面は、HCV NS3プロテアーゼ(例えば、VX−950に対して耐性になっているHCV NS3プロテアーゼ)に対するVX−950の活性をレスキューし得る化合物を同定するための方法を提供する。そのような化合物はまた、「二次化合物」とも呼ばれる。この方法は、本発明のHCV NS3プロテアーゼを候補化合物と接触させる工程、および該HCV NS3プロテアーゼの活性を阻害するVX−950の能力をアッセイする工程を、包含し得る。この方法はまた、VX−950に対する低下した感受性を有する改変体HCV NS3プロテアーゼのインシリコ(in silico)モデリングの工程(例えば、IC50および/またはKを測定することによって決定する工程)、ならびにVX−950の活性をレスキューし得る化合物を設計するかそして/または選択する工程をも包含し得る。
【0029】
また、患者におけるHCV感染を処置するための方法が提供され、該方法は、該患者に、VX−950の活性をレスキューし得る二次化合物の薬学的有効量を投与する工程を包含する。この二次化合物は、該患者に単独で投与されても、VX−950と組み合わせて投与されてもよい。この二次化合物は、該患者の治療レジメンにおけるVX−950と、一時的にまたは永久に置き換わってもよい。例えば、一時的な置き換え治療レジメンにおいて、VX−950は、該化合物が該患者に投与され、そしてVX−950の活性がレスキューされた後で、該患者に、再び投与される。
【0030】
HCV NS3プロテアーゼ活性を低下させるために有効な化合物を同定するための方法が、さらに提供される。この方法は、本発明のHCV NS3プロテアーゼの三次元モデルを得る工程、および化合物を設計するかまたは選択する工程を包含し得る。この方法は、インシリコ、インビトロ、および/またはインビボで、該プロテアーゼに結合するかまたは該プロテアーゼと相互作用する化合物の能力を評価する工程を、さらに包含し得る。この方法はまた、設計されたかまたは選択された該化合物が、HCV NS3プロテアーゼ、特に、VX−950のようなプロテアーゼインヒビターに対して低下した感受性を有する改変体HCV NS3プロテアーゼの活性を阻害し得るか否かを、無細胞アッセイあるいは細胞ベースのアッセイで決定する工程を包含し得る。この方法はさらに、あるいは代替的に、細胞またはサンプル中でHCV複製を阻害する設計されたかまたは選択された化合物の能力をアッセイする工程を包含し得る。このHCV複製は、本発明のHCV改変体または本発明のHCVレプリコンの複製を測定することによって、決定され得る。
【0031】
本発明の別の局面は、生物学的サンプルまたは医療用装置もしくは研究室装置のHCV汚染を除去するかまたは減少させるための方法を提供する。この方法は、該生物学的サンプルまたは医療用装置もしくは研究室装置を、本発明の化合物(例えば、本明細書中で記載の方法によって同定された化合物)と接触させる工程を包含し得る。
【0032】
本発明のさらなる局面は、患者におけるHCV感染を処置するための方法を提供する。この方法は、本発明の方法によって同定された化合物の薬学的に有効な量または治療的に有効な量を、単独でまたは別の抗ウイルス剤と組み合わせて該患者に投与する工程を包含し得る。
【0033】
本発明の別の局面は、コンピューターツールに関し、このツールは、機械読み取り可能データでコードされたデータ記憶マテリアルを含む機械読み取り可能データ記憶媒体を提供し、該機械読み取り可能データは、HCV改変体または生物学的サンプルに関連する少なくとも2つの特徴についての指標値を含む。該特徴は、以下:a)プロテアーゼインヒビターに対する感受性の低下について耐性を示す能力;b)野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が、野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含む、HCVプロテアーゼ;c)患者の病的状態または回復可能性;ならびにd)該HCV改変体の改変された(増大したかまたは減少した)複製能力、からなる群より選択される。
【0034】
本発明のさらなる局面は、HCV感染患者におけるHCV改変体のプロフィールを得る方法を提供する。この方法は、患者からサンプル(例えば、血漿サンプル)を得る工程、および該サンプルから少なくとも2種、20種、50種、100種、200種、500種またはそれより多くのHCVビリオン由来のHCVプロテアーゼを遺伝子型決定するか、そして/または表現型決定する工程を包含し得る。例えば、このような遺伝子決定は、該血漿サンプル由来の少なくとも2種、20種、50種、100種、200種、500種またはそれより多くのHCVビリオンのヌクレオチドを配列決定する工程を包含し得る。
【0035】
特定の実施形態において、このようなプロファイリングに供される患者は、VX−950のようなプロテアーゼインヒビターで処置されていてもよく、または処置されるように選択されてもよい。特定の実施形態において、血漿サンプルは、2回以上の異なる時点でこのようなプロファイリングに供される患者から得られる。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
HCV NS3プロテアーゼをコードする単離されたHCVポリヌクレオチド、その生物学的に活性なアナログ、またはその生物学的に活性なフラグメントであって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群から選択されるコドンに対応する少なくとも1つのコドンは、対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている、ポリヌクレオチド、その生物学的に活性なアナログ、またはその生物学的に活性なフラグメント。
(項目2)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、前記野生型HCVポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列またはその一部分を含む、HCVポリヌクレオチド。
(項目3)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、前記野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36に対応するコドンは、Vをコードしない、HCVポリヌクレオチド。
(項目4)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン54に対応するコドンは、Tをコードしない、HCVポリヌクレオチド。
(項目5)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、前記野生型HCVポリヌクレオチドのコドン155に対応するコドンは、Rをコードしない、HCVポリヌクレオチド。
(項目6)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、前記野生型HCVポリヌクレオチドのコドン156に対応するコドンは、Aをコードしない、HCVポリヌクレオチド。
(項目7)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択される任意の2つのコドンに対応する2つのコドンが、いずれかのコドンが対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている、HCVポリヌクレオチド。
(項目8)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択される任意の3つのコドンに対応する3つのコドンが、該3つのコドンの各々が対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている、HCVポリヌクレオチド。
(項目9)
項目1に記載の単離されたHCVポリヌクレオチドであって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156に対応するコドンが、4つのコドンの各々が、対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている、HCVポリヌクレオチド。
(項目10)
HCV NS3プロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む単離されたHCV改変体であって、野生型HCVポリヌクレオチドのコドン36、コドン41、コドン43、コドン54、コドン148、コドン155、およびコドン156からなる群より選択されるコドンに対応する該ポリヌクレオチドの少なくとも1つのコドンが、対応する該野生型HCVポリヌクレオチドのコドンによってコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするように変異されている、HCV改変体。
(項目11)
単離されたHCVプロテアーゼであって、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が、該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含む、HCVプロテアーゼ。
(項目12)
項目11に記載のHCVプロテアーゼであって、前記野生型HCV NS3プロテアーゼは、配列番号2のアミノ酸配列またはその一部分を含む、HCVプロテアーゼ。
(項目13)
項目11に記載のHCVプロテアーゼであって、HCV NS3プロテアーゼの生物学的に活性なアナログを含む、HCVプロテアーゼ。
(項目14)
項目11に記載のHCVプロテアーゼであって、HCV NS3プロテアーゼの生物学的に活性なフラグメントを含む、HCVプロテアーゼ。
(項目15)
項目11に記載のHCVプロテアーゼであって、NS4A補因子を含む、HCVプロテアーゼ。
(項目16)
抗HCVプロテアーゼ抗体であって、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が、該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含むHCV NS3プロテアーゼを認識する、抗HCVプロテアーゼ抗体。
(項目17)
ストリンジェントな条件下で、項目1に記載のHCVポリヌクレオチドの核酸配列にハイブリダイズ可能である、ヌクレオチドプローブまたはヌクレオチドプライマー。
(項目18)
項目1に記載のHCVポリヌクレオチドを含む発現系。
(項目19)
項目18に記載の発現系であって、ベクターを含み、該ベクターは、プロモーターに作動可能に連結した項目1に記載のHCVポリヌクレオチドを含む、発現系。
(項目20)
項目19に記載のベクターでトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入された宿主細胞。
(項目21)
mRNAディスプレイ系である、項目18に記載の発現系。
(項目22)
患者においてHCV感染のプロテアーゼインヒビターに対する薬物耐性または感受性を評価するための方法であって、該方法は、以下:
a)HCV感染患者からの生物学的サンプルを収集する工程;および
b)該サンプルが、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が、該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含むHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸を含むか否かを評価する工程
を包含する方法。
(項目23)
患者におけるHCV感染のための処置を指示するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目22に記載の方法にしたがって、該患者のプロテアーゼインヒビターに対する薬物耐性または感受性を評価する工程;
b)a)において評価した該薬物耐性または感受性に基づいて、該患者のための処置レジメンを最適化する工程
を包含する方法。
(項目24)
患者におけるHCV感染を処置するための候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目10に記載のHCV改変体に感染したサンプルを提供する工程;
b)該サンプルにおける該HCV改変体の活性を阻害する該候補化合物の能力をアッセイする工程
を包含する方法。
(項目25)
項目24に記載の方法であって、前記HCV改変体の前記活性は、複製である、方法。
(項目26)
患者におけるHCV感染を処置または予防するための候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目1に記載のポリヌクレオチドを含むレプリコンRNAを提供する工程;
b)該候補化合物が、a)の該レプリコンRNAの複製を阻害するか否かを決定する工程を包含する方法。
(項目27)
患者におけるHCV感染を処置するための候補化合物を同定する方法であって、該方法は、以下:
a)項目11に記載の単離されたHCV NS3プロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を提供する工程であって、該プロテアーゼおよび該基質は、細胞ベースの系または無細胞系の中に存在する、工程;
b)該HCV NS3プロテアーゼを該候補化合物と、該基質の存在下で接触させる工程;および
c)該HCV NS3プロテアーゼの活性が低下するか否かを決定する工程
を包含する方法。
(項目28)
患者におけるHCV感染を処置するための候補化合物を評価するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目1に記載のポリヌクレオチドおよびインジケーターをコードする指示遺伝子を含むベクターを、宿主細胞に導入する工程;
b)該宿主細胞を培養する工程;および
c)該インジケーターを、該候補化合物の存在下および該候補化合物の非存在下で測定する工程
を包含する方法。
(項目29)
生物学的サンプルまたは医療用装置もしくは研究室装置のHCV汚染を除去するかまたは減少させる方法であって、該生物学的サンプルまたは該医療用装置もしくは該研究室装置を、項目24〜28のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する方法。
(項目30)
患者におけるHCV感染を処置する方法であって、該患者に、項目24〜28のいずれか1項に記載の化合物の薬学的有効量を投与する工程を包含する方法。
(項目31)
VX−950に対し耐性であるHCV NS3プロテアーゼに対するVX−950の活性をレスキューし得る化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目1に記載のHCV NS3プロテアーゼを候補化合物と接触させる工程;
b)a)の該プロテアーゼの該活性を阻害するVX−950の能力をアッセイする工程
を包含する方法。
(項目32)
患者におけるHCV感染を処置する方法であって、該方法は、該患者に、薬学的有効量の項目31に記載の化合物を投与する工程を包含する方法。
(項目33)
項目32に記載の方法であって、前記化合物は、前記患者に、VX−950と組み合わせて投与される、方法。
(項目34)
項目32に記載の方法であって、前記化合物は、前記患者の処置においてVX−950と置き換わる、方法。
(項目35)
項目34に記載の方法であって、VX−950は、前記化合物が前記患者に投与された後に該患者に投与され、そしてVX−950の該活性がレスキューされている、方法。
(項目36)
HCV NS3プロテアーゼ活性を低減するために有効な化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)項目1に記載のHCV NS3プロテアーゼの三次元モデルを得る工程;
b)化合物を設計もしくは選択する工程;
c)a)の該プロテアーゼに結合するか、または該プロテアーゼと相互作用する該化合物の能力を評価する工程
を包含する、方法。
(項目37)
項目36に記載の方法であって、前記設計されたかもしくは選択された化合物のHCV
NS3プロテアーゼ活性を阻害する能力を、無細胞アッセイもしくは細胞ベースのアッセイで評価する工程をさらに包含する、方法。
(項目38)
項目36に記載の方法であって、前記設計されたかもしくは選択された化合物のHCV複製を阻害する能力を、感染細胞もしくは感染サンプル中でアッセイする工程をさらに包含する、方法。
(項目39)
機械読み取り可能データでコードされたデータ記憶マテリアルを含む機械読み取り可能データ記憶媒体であって、該機械読み取り可能データは、HCV改変体または生物学的サンプルに関連する少なくとも2つの特徴についての指標値を含み、ここで、該特徴は、以下:
a)プロテアーゼインヒビターに対する感受性の低下について耐性を示す能力;
b)野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、および156位からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸が、該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含む、HCVプロテアーゼ;
c)患者の病的状態または回復可能性;ならびに
d)該HCV改変体の改変された(増大したかまたは減少した)複製能力
からなる群より選択される、機械読み取り可能データ記憶媒体。
(項目40)
HCV感染患者におけるHCV改変体のプロフィールを得る方法であって、該方法は、以下:
a)該患者から血漿サンプルを得る工程;
b)該血漿サンプルからの少なくとも2種のHCVビリオン由来のHCVプロテアーゼのヌクレオチド配列を決定する工程
を包含する方法。
(項目41)
項目40に記載の方法であって、少なくとも20種のHCVビリオンが同定される、方法。
(項目42)
項目40に記載の方法であって、少なくとも50種のHCVビリオンが同定される、方法。
(項目43)
項目40に記載の方法であって、少なくとも100種のHCVビリオンが同定される、方法。
(項目44)
項目40に記載の方法であって、少なくとも200種のHCVビリオンが同定される、方法。
(項目45)
項目40に記載の方法であって、なくとも500種のHCVビリオンが同定される、方法。
(項目46)
項目40に記載の方法であって、前記HCVプロテアーゼのヌクレオチド配列が、項目1に記載のポリヌクレオチドの配列を含む、方法。
(項目47)
項目40に記載の方法であって、前記患者が、プロテアーゼインヒビターで処置されている、方法。
(項目48)
項目40に記載の方法であって、少なくとも2つの血漿サンプルが、前記患者から少なくとも2回の異なる時点で得られる、方法。
(項目49)
生物学的サンプル中のHCV改変体の存在を検出するための方法であって、該生物学的サンプル中の項目1に記載のポリヌクレオチドの存在を検出する工程を包含する、方法。
(項目50)
項目16に記載の抗体を含む、診断キット。
(項目51)
項目17に記載のヌクレオチドプローブまたはプライマーを含む、診断キット。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、未処置遺伝子型1 HCV感染被験体由来のNS3タンパク質のN末端543ヌクレオチドの基線配列の系統発生分析を図示する。
【図2】図2は、遺伝子型1aおよび1bのプロテアーゼ改変体についてのTelaprevir(VX−950)の基線IC50を示す。
【図3】図3は、VX−950に対するウイルス応答に基づく被験体のグループ分けを図示する。
【図4】図4(カラー図)は、変異パターンに対応するウイルス応答をまとめる。
【図5】図5は、VX−950に対するプロテアーゼ一重耐性変異体の、酵素IC50および参照HCV−Hの遺伝子型1a株からの変化倍数を示す。
【図6】図6は、VX−950に対するプロテアーゼ二重耐性変異体の、酵素IC50および参照HCV−Hの遺伝子型1a株からの変化倍数を示す。
【図7】図7は、VX−950に対する耐性と適応度との間の逆相関を示す。
【図8】図8は、2種のHCVプロテアーゼインヒビター:VX−950およびBILN 2061の構造を図示する。
【図9】図9は、構造研究にしたがって、HCVプロテアーゼにおけるVX−950変化の位置を図示する。
【図10】図10は、HCVウイルス改変体の表現型分析についての方法を概説する。
【図11】図11は、VX−950に対する低レベルの耐性を付与するV36置換を示す。
【図12】図12は、V36M改変体プロテアーゼのX線構造を示す。
【図13】図13は、VX−950と直接接触しないV36を示す。
【図14】図14は、低レベルの耐性およびよりよい適応度を有する、G1aにおけるV36M改変体を示す。
【図15】図15は、低レベルの耐性およびより悪い適応度を有する、G1a/bにおけるV36A改変体を示す。
【図16】図16は、低レベルの耐性およびより悪い適応度を有する、G1bにおけるV36G改変体を示す。
【図17】図17は、耐性を有さず、G1において希少であるV36L改変体を示す。
【図18】図18もまた、HCVウイルス改変体の表現型分析のための方法を概説する。
【図19】図19は、VX−950に対する低レベル耐性を付与するR155置換を示す。
【図20】図20は、R155K改変体プロテアーゼのX線構造を示す。
【図21】図21は、R155K改変体プロテアーゼに対するVX−950結合のコンピューターモデルを示す。
【図22】図22は、VX−950に対する低レベルの耐性を付与するV36またはT54の置換を示す。
【図23】図23は、V36M改変体プロテアーゼに対するVX−950結合のコンピューターモデルを示す。
【図24】図24は、VX−950に対する耐性の付与において、V36MおよびR155Kが相加的であることを示す。
【図25】図25は、構造研究の結果を示す:(A)NS4A補因子との複合体におけるLys155改変体NS3プロテアーゼドメインおよびArg155野生型NS3プロテアーゼドメインのX線構造の重ね合わせ。野生型プロテアーゼ(青)およびR155K改変体プロテアーゼ(赤)の両方のCα原子追跡を、線で示す。残基155は、球と棒モデル(ball and stick model)(Arg155)またはリコリスモデル(Liquorice model)(Lys155)のどちらかにより、窒素を青で、酸素を赤で強調されている。(B)野生型NS3−4AにおけるArg155、Asp168およびArg123の側鎖と、R155K改変体における対応するLys155、Asp168およびArg123の側鎖の重ね合わせ。R155K改変体プロテアーゼの3つの領域(Arg123、Asp168、およびLys155)は、リコリスモデルで示され、野生型プロテアーゼのArg155もまたリコリスモデルで示される。野生型プロテアーゼのArg123およびAsp168残基は、細い線で示される。全ての窒素は、青で示され、酸素は赤で示される。
【図26】図26は、telaprevirとNS4A補因子との複合体におけるHCV NS3プロテアーゼドメインとの共複合体(co−complex)のコンピューターモデルを示す。全ての3種のモデル(野生型プロテアーゼ(A)、R155K改変体プロテアーゼ(B)またはR155T改変体プロテアーゼ(C)を含む)において、telaprevirは、水色の棒で示され、窒素は青、酸素は赤で示される。活性部位残基(His57、Asp81、およびSer139)は、灰色の棒で示される。Arg123残基およびAsp168残基は、紫色で示され、一方、残基155側鎖は、黄色で示される。Lys155またはThr155側鎖は、伸びたコンホメーションのままであり、telaprevirのP2基と最小限の接触を行う。
【図27】図27は、VX−950耐性レプリコン改変体が、IFN−αに対する完全な感受性を留めることを示す。
【図28】図28は、VX−950耐性レプリコン改変体が、リバビリンに対する完全な耐性を留めることを示す。
【図29】図29は、VX−950組み合わせ治療が、投薬の間、ウイルスの耐性の出現を抑制し、そしてウイルス突破を防いだことを示す。
【図30】図30は、HCV配列のダイバーシティおよび耐性変異に関する要点を提供する。
【図31】図31は、先行研究を含むHCVプロテアーゼインヒビターに対して耐性であるウイルス改変体のメカニズムをまとめる。
【図32】図32は、先行研究および本研究を含むHCVプロテアーゼインヒビターに対して耐性であるウイルス改変体のメカニズムに関する結論を概説する。
【図33】図33は、本研究に基づく一定の結論をまとめる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明の詳細な説明)
本発明は、HCV改変体に関する。詳細には、プロテアーゼインヒビターに対する耐性を示すHCV改変体が、提供される。また、このHCV改変体に関する方法および組成物も、提供される。この方法および組成物は、ウイルス改変体(HCVおよび他のウイルスの改変体を含む)を同定し、そして抗ウイルス化合物を評価しそして同定し、そしてウイルス感染に対する治療を開発しそして最適化するために有用である。
本発明は、臨床試験(Study VX04−950−101)に含められた34人の被験体から、VX−950を投薬する前に単離されたHCVのNS3プロテアーゼドメインにおける配列ダイバーシティの程度を最初に特徴付けた研究に基づく。次いで、インビボでのVX−950に対する耐性の出現は、X−950を投薬する14日間の後の被験体におけるプロテアーゼNS3−4Aの配列分析によってモニタリングされた。フォローアップサンプルを、投薬の終了後さらに7〜10日間収集し、投薬の間に発生した何らかの薬物耐性変異が、VX−950の除去後も血漿中に維持されたか否かを見た。集団において基線より高く増大したことが見出された任意の変異を、潜在的薬物耐性変異とみなした。薬物耐性変異は、測定可能レベルまで蓄積するのに時間を要し得るので、この研究は、(野生型ウイルスおよびウイルス改変体の集団における優勢種ではなく)改変体の少数集団を検出するための新しい方法を含んだ。この方法は、1回の時点あたり、1人の被験体あたり多くの(例えば、80〜85個の)個々のウイルスクローンから配列を得、それによって、VX−950を投薬した14日間に出現し得たウイルス改変体を、集団の約5%の感度で検出し得そして同定し得た。このような80/85の個々のウイルスクローンは、80/85の異なるビリオンを表し得る。
【0038】
(HCV改変体ならびに関連のポリヌクレオチドおよびプロテアーゼ)
本発明は、HCV改変体を提供する。詳細な実施形態において、HCV改変体は、プロテアーゼインヒビター(「改変体HCVプロテアーゼ」とも呼ばれる)、例えばVX−950に対する低下した感受性を有するHCVプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む。本明細書中で使用される場合、野生型HCVとは、プロテアーゼインヒビター(詳細な実施形態において、このプロテアーゼインヒビターは、VX−950である)に対する通常のまたは望ましい感受性を有するHCVプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド(「野生型ポリヌクレオチド」とも呼ばれる)を含むHCVをいう。同様に、野生型HCVプロテアーゼとは、プロテアーゼインヒビター(詳細な実施形態において、このプロテアーゼインヒビターは、VX−950である)に対する通常のまたは望ましい感受性を有するHCVプロテアーゼをいう。
【0039】
本明細書中で使用される場合、HCVは、任意の遺伝子型またはサブタイプ(例えば、遺伝子型1〜6)のHCVであってもよい。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「NS3プロテアーゼ」または「HCV NS3プロテアーゼ」とは、HCV NSタンパク質3またはセリンプロテアーゼ活性を有するHCV
NSタンパク質3の部分をいう。例えば、NS3プロテアーゼは、配列番号2(685アミノ酸)の最初の631アミノ酸配列によって表されるNS3タンパク質であってもよい;あるいは、NS3プロテアーゼは、配列番号2の最初の181アミノ酸によって表されるタンパク質であってもよい;この181アミノ酸のフラグメントはまた、当該分野で、NS3プロテアーゼドメインとも呼ばれる。NS3プロテアーゼはまた、米国特許第6,653,127号;同第6,211,338号において記載される複合体のような、NS3−NS4Aタンパク質複合体であってもよい。「NS3プロテアーゼ活性」は、HCV NSタンパク質3またはその部分の、NS4Aタンパク質またはその生物学的に活性な部分の存在下もしくは非存在下におけるプロテアーゼ活性を意味する。NS4Aタンパク質(例えば、配列番号2の最後の54アミノ酸配列で表される)は、通常、NS3プロテアーゼについての補因子として機能し、そしてNS3−NS4Aセリンプロテアーゼ複合体を形成し得る;NS4Aタンパク質の生物学的に活性な部分とは、NS3プロテアーゼに対する補因子としてのNS4Aタンパク質の機能を維持する、NS4Aタンパク質のフラグメントを意味する。
【0041】
本発明はまた、単離されたHCV改変体、単離された改変体HCV NS3プロテアーゼ、および改変体HCV NS3プロテアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドも、提供する。用語「単離された」は、一般に、そのウイルス、プロテアーゼ、またはポリヌクレオチドの天然の環境の構成要素から分離されたか、そして/または回収されたことを意味する。
【0042】
特定の実施形態において、改変体HCVプロテアーゼは、野生型HCV NS3プロテアーゼの36位、41位、43位、54位、148位、155位、または156位の位置からの1つ以上の位置におけるアミノ酸が、該野生型HCV NS3プロテアーゼの対応する各位置におけるアミノ酸と異なっているアミノ酸配列を含む改変体HCV NS3プロテアーゼであってもよい。上記野生型HCV NS3プロテアーゼは、配列番号2のアミノ酸配列またはその部分(例えば、配列番号2の最初の181アミノ酸)を含み得る。単離されたHCV NS3プロテアーゼは、HCV NS3プロテアーゼの生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含み得、例えば、この単離されたHCV NS3プロテアーゼは、配列番号2のN末端の5、10、15、20、30、35、40、45、または48アミノ酸を有さなくてもよい。
【0043】
改変体HCV NS3プロテアーゼの種々の位置におけるアミノ酸置換または変異の例は、表1〜4に示される。本明細書中の表、図面、および実施例はまた、野生型HCV NS3プロテアーゼまたは野生型HCVと比較した、改変体HCV NS3プロテアーゼまたはHCVウイルス改変体によって得られる種々のデータを提供する。
【0044】
本発明の改変体HCV NS3プロテアーゼの生物学的に活性なフラグメントまたはアナログもまた、提供される。Bartenschlagerら(1994,J.Virology68:5045−55)は、HCV NS3タンパク質の種々のフラグメント(例えば、N末端の7残基または23残基の欠失)は、NS4B/5A部位における切断を廃止するが、NS3プロテアーゼ活性に供される他の切断部位に影響を及ぼさないこと;そしてN末端の39残基の欠失は、NS4B/5A部位およびNS5A/5B部位における切断を廃止し、そしてNS4A/4B部位におけるNS3プロテアーゼ活性を低下させることを記載した。Faillaら(1995,J.Virology69:1769−77)は、野生型NS3タンパク質のN末端の10残基の欠失は、NS3プロテアーゼ活性に影響を有さず、N末端の15残基または28残基は、部分的プロテアーゼ活性(NS5A/5Bにおける通常の切断、しかしNS4A/4B部位およびNS4B/5A部位において低下)を有するNS3タンパク質を生じ、N末端の49残基の欠失は、完全に不活性なNS3プロテアーゼを生じ、そしてNS3タンパク質におけるNS3プロテアーゼドメインのC末端の10残基の欠失もまた、完全に不活性なNS3プロテアーゼを生じることを記載した。
【0045】
例えば、本発明の改変体HCVプロテアーゼを作製するための発現系が、提供される。発現系は、本発明のHCVポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含み得る。本発明のHCVポリヌクレオチド(または「核酸」、本明細書中で相互交換可能に使用される)を含む適切な原核生物ベクターまたは真核生物ベクター(例えば、発現ベクター)は、適切な方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)によって適切な宿主細胞に導入され得、それにより、このポリヌクレオチドは、1つ以上の発現コントロールエレメントに作動可能に連結される(例えば、ベクター内で、または宿主細胞ゲノム内に組み込まれる)。産生のために、宿主細胞は、発現に適した条件下で(例えば、誘導因子、適切な塩を有する適切な培地補充物質、成長因子、抗生物質、栄養補助物質、などの存在下で)維持され得、それにより、コードされるポリペプチドが、産生される。所望される場合、コードされるタンパク質は、(例えば、宿主細胞または培地から)回収され得、そして/または単離され得る。トランスジェニック動物の宿主細胞における発現を包含する産生方法は、明らかである(例えば、WO 92/03918参照)。発現系は、米国特許第6,258,558号に記載のRNA−タンパク質融合技術または米国特許第6,361,943号に記載のインビトロ「ウイルス」のような無細胞系に基づき得る。リボソームディスプレイ方法もまた、例えば、米国特許第5,843,701号において記載されるような方法が、使用され得る。
【0046】
種々のアッセイ(例えば、HCVの表現型決定に適したアッセイ)が、提供される。このアッセイは、ウイルス活性(例えば、感染、複製、および/またはウイルス粒子の放出)、あるいは酵素活性(例えばプロテアーゼ活性)を測定することを指向し得る。ウイルス活性アッセイは、活性が測定されるウイルスまたはウイルス改変体に感染した細胞あるいはサンプルを使用し得る。細胞またはサンプルは、患者(例えばヒト患者)から得られ得る。あるいは、細胞またはサンプルは、インビトロで培養されそしてウイルスまたはウイルス改変体に感染され得る。ウイルス活性アッセイは、レプリコンベースの系、例えば、Trozziら(13)および米国特許出願第20050136400号に記載されるレプリコンベースのアッセイを使用してもよい。
【0047】
酵素活性は、一般に目的の酵素またはその生物学的に活性なフラグメントもしくアナログおよび目的の酵素の基質を含む、無細胞系または細胞ベースの系において決定され得る。例えば、米国特許出願第20030162169号は、HCV NS3プロテアーゼの活性をアッセイするための代替的な細胞ベースの系および方法を記載する。Trozziら(13)は、ペプチド基質およびHPLC系を使用する、インビトロ無細胞プロテアーゼアッセイを記載する。
【0048】
本発明は、NS3/4Aプロテアーゼの三次元構造が明らかにした事実を利用する(例えば、WO98/11134参照)。本発明の改変体プロテアーゼの三次元モデルが、得られ得る;化合物は、例えば、改変体プロテアーゼの三次元構造と相互作用するその能力に基づいて設計されるかまたは選択され、そして、このプロテアーゼに結合するかまたはこのプロテアーゼと相互作用する能力は、インシリコのモデリングによって評価され、そしてさらに、インビトロアッセイもしくはインビボアッセイによってさらに評価され得る。
【0049】
上記化合物は、コンビナトリアルケミカルライブラリーから同定されたものであっても、合理的な薬物設計を通して調製されたものでもよい。例示的な実施形態において、この化合物は、合理的な薬物設計を通して調製され、VX−950のような公知のプロテアーゼインヒビターの構造から誘導された化合物である。合理的な薬物設計はまた、潜在的なプロテアーゼインヒビター薬物標的が、コンビナトリアルライブラリー由来の化合物によって試験される、ラージスケールスクリーニング実験の体系的方法と組み合わされてもよい。合理的な薬物設計は、候補薬物を同定するかまたは作製するための薬物レセプターまたはその天然のリガンドのひとつの構造に関する情報を使用する、注目されているアプローチである。タンパク質の三次元構造は、X線結晶学または核磁気共鳴分光学のような方法を使用して決定され得る。本発明において、残基36、41、43、54、148、155、または156の1つ以上の変異を含むHCV NS3プロテアーゼの改変体の三次元構造は、ここで、慣用的なX線結晶学および/またはNMR分光学の技術を使用して容易に決定され得る。合理的な薬物設計はまた、潜在的なプロテアーゼインヒビター薬物標的が、コンビナトリアルライブラリー由来の化合物によって試験される、ラージスケールスクリーニング実験の体系的方法と組み合わされてもよい。多くの異なる化合物の構造を含むデータベースを検索するために、コンピュータープログラムが、開発され得る。このコンピューターは、改変体HCV NS3プロテアーゼと相互作用する可能性が最も高い化合物を選択し得、そしてこのような同定された化合物は、プロテアーゼインヒビターを評価するために適したアッセイ(例えば、ウイルスアッセイまたは酵素アッセイ)において、試験され得る。
【0050】
特定の実施形態において、同定された化合物は、この化合物および薬学的に受容可能なキャリア、佐剤またはビヒクルを含む組成物に処方される。好ましくは、この組成物は、上記化合物を、HCV NS3セリンプロテアーゼの活性を低下するために有効な量で含有する。なおより好ましくは、この組成物は、患者への投与のために処方される。この組成物はまた、以下から選択される追加の薬剤を含み得る:免役調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第二のインヒビター;HCV生活環における別の標的のインヒビター;シトクロムP−450インヒビター;またはこれらの組み合わせ。種々の組成物が、以下により詳細に記載される。
【0051】
別の局面において、本発明は、HCVプロテアーゼ、特に、野生型HCV NS3プロテアーゼと比較して1つ以上のアミノ酸が変化しているHCV NS3プロテアーゼに特異的な抗体を提供する。用語「抗体」は、広範な意味において使用され、そして、限定することなく、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体および抗体フラグメントから形成された多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)を、具体的に網羅する。用語「免疫グロブリン」は、種々の構造的に関連するタンパク質を含み、これらは必ずしも抗体ではない。
【0052】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域すなわち可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、およびFvフラグメント;ディアボディ(diabody);直鎖抗体(Zapataら,Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995));単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成された多重特異的抗体が挙げられる。
【0053】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、1つのポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望される構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,RosenburgおよびMoore編(Springer−Verlag:New York,1994),pp.269−315を参照されたい。
【0054】
用語「ディアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントをいい、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。同じ鎖における2つのドメインの間を対形成するためには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成させられ、そして2つの抗原結合部位を形成する。ディアボディは、より完全に、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;およびHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に記載される。
【0055】
改変体HCVプロテアーゼに対する抗体は、HCV NS3タンパク質に対する公知の抗体から、例えば分子進化を介して開発され得る。米国特許出願第20040214994号は、HCV NS3タンパク質に対するヒト組換え抗体を記載する。アミノ酸配列改変体は、適切なヌクレオチド変化を公知の抗体のDNAに導入することにより、またはペプチド合成により、調製される。このような改変体は、例えば、公知の抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または該残基への挿入、および/または該残基の置換を含む。最終構築物が所望の特定を有する限り、欠失、挿入および置換の任意の組み合わせが行われて、最終構築物に到達する。アミノ酸変化はまた、抗体の翻訳後プロセスを改変し得る(例えば、グリコシル化部位の数または位置の変化)。
【0056】
本発明の抗体は、診断用途および治療用途を有し得る。特定の実施形態において、本発明の抗体は、標識される。本開示の種々の抗体が、改変体HCV NS3プロテアーゼの発現を検出するかまたは測定するために使用され得、したがって、これらはまた、診断目的または研究目的のための、細胞選別および画像化のような用途(例えば、フローサイトメトリ、および蛍光活性化細胞選別)において有用である。本明細書中で使用される場合、用語「標識」または「標識された」は、抗体における別の分子の組み込みをいう。1つの実施形態において、この標識は、検出可能マーカーであり、例えば、放射性標識アミノ酸の組み込み、あるいはマーカーをつけたアビジン(例えば、光学的方法または比色方法によって検出可能である蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチン化部分のポリペプチドへの結合である。別の実施形態において、標識またはマーカーは、治療薬であり得、例えば、薬物結合体または毒素であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が、当該分野で公知であり、そして使用され得る。ポリペプチドのための標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチン化基、二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープ、磁気薬剤(例えば、ガドリニウムキレート)、毒素(例えば、百日咳毒素)、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびプロマイシンならびにこれらのアナログもしくはホモログ。いくつかの実施形態において、標識は、立体障害の可能性を低下させるために、種々の長さのスペーサー腕によって結合される。
【0057】
特定の局面において、生物学的サンプル中のHCVウイルス、改変体HCV NS3ポリヌクレオチドまたは改変体HCVプロテアーゼの存在の検出において使用するためのキットもまた、提供され得る。このようなキットは、本発明の改変体HCV NS3プロテアーゼを認識する抗体、ならびに、上記抗体と上記改変体プロテアーゼまたはその一部分との間の複合体の存在の検出に適した1種以上の補助試薬を含み得る。あるいは、このようなキットは、本発明のプローブまたはプライマーを含み得、このようなプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件下で、本発明の改変体HCV NS3ポリヌクレオチドとハイブリダイズし得る。本発明のプローブまたはプライマーは、目的の被験体を検出するために使用され得るPCRまたはRT−PCRに適し得る。あるいは、このようなキットは、市販のPCRベースのHCV診断キットまたは非PCRベースのHCV診断キット(例えば、RNA3.0アッセイ(bDNA)およびRNA定性的アッセイ(TMA)を含む、Roche Cobas Amplicor systemおよびBayer Versant system)に基づき得る。AMPLICOR HCV MONITOR(登録商標)Test、v2.0は、ヒト血清または血漿中のHCV RNAの定量のためのインビトロ核酸増幅試験である。VERSANT(登録商標)HCV RNA 3.0アッセイ(bDNA)は、2log10の微量を検出する信頼性が証明されているウイルス負荷アッセイである。VERSANT(登録商標)HCV RNA定性的アッセイは、従来技術の転写媒介型増幅(Transcription−Mediated Amplification:TMA)技術に基づく。
【0058】
(薬学的組成物および処方物)
本発明の別の局面は、本発明の化合物(例えば、VX−950の活性をレスキューし得ると同定された二次化合物、もしくはHCV改変体に対して有効であると同定された化合物(例えば、ウイルス改変体の複製を減少させ得る化合物)および/または改変体HCV
NS3プロテアーゼに対して有効であると同定された化合物(例えば、改変体プロテアーゼの酵素活性を低下させ得る化合物))を含有する薬学的組成物または処方物を提供する。。
【0059】
本発明の別の局面は、医薬(例えば、患者におけるHCV感染を処置するための医薬)の製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【0060】
本発明の別の局面は、患者におけるHCV感染を処置するための方法を提供する。このような方法は、一般に、患者に薬学的にもしくは治療的に有効な量の本発明の化合物を、単独でまたは別の抗ウイルス剤と組み合わせて(順次もしくは同時に)投与する工程を包含する。化合物または薬剤の「有効量」は、一般に、HCV NS3プロテアーゼの発現もしくは活性、HCV産生、複製、またはビルレンス、HCV感染を、複製的に減少させるため、あるいは、HCV感染の1つ以上の症状の緩和または軽減を生じるために、このような化合物または薬剤の非存在下における上記パラメータのレベルと比較して、有効な量をいう。
【0061】
別の局面において、本発明の方法および組成物は、プロテアーゼインヒビター(例えば、VX−950)および別の抗ウイルス剤(好ましくは抗HCV剤)を含む。HCVを標的化する組み合わせ治療もまた、米国特許第6,924,270号;同第6,849,254号において記載される。
【0062】
別の抗ウイルス剤はまた、プロテアーゼインヒビター、特にHCVプロテアーゼインヒビターであり得る。当該分野で公知のHCVプロテアーゼインヒビターとしては、以下が挙げられる:VX−950(図8)、BILN 2061(図8、PCT公開番号WO 00/59929;米国特許第6,608,027号もまた参照されたい)、化合物1(13)、インヒビターA、B、およびC(PCT公開番号WO 04/039970)。潜在的なHCVプロテアーゼインヒビターはまた、以下の番号のPCT公開および米国特許出願公開に記載されている:WO 97/43310、US20020016294、WO 01/81325、WO 02/08198、WO 01/77113、WO 02/08187、WO 02/08256、WO 02/08244、WO 03/006490、WO 01/74768、WO 99/50230、WO 98/17679、WO 02/48157、US20020177725、WO 02/060926、US20030008828、WO 02/48116、WO 01/64678、WO 01/07407、WO 98/46630、WO 00/59929、WO 99/07733、WO 00/09588、US20020016442、WO 00/09543、WO 99/07734、US20020032175、US20050080017、WO 98/22496、WO 02/079234、WO 00/31129、WO 99/38888、WO 99/64442、WO 2004072243、およびWO 02/18369、ならびに米国特許第6,018,020号;同第6,265,380号;同第6,608,027号;同第5,866,684号;M.Llinas−Brunetら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,8、pp.1713−18(1998);W.Hanら,Bioorg.Med.Chem.Lett,10,711−13(2000);R.Dunsdonら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,10,pp.1571−79(2000);M.Llinas−Brunetら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,10、pp.2267−70(2000);およびS.LaPlanteら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,10,pp.2271−74(2000)。多くのNS3プロテアーゼインヒビターはまた、Schering Corp.、Schering A.G.、および他の会社によって開発されており、これらは、以下の番号の米国特許出願公開で記載されている:20050249702;20050153900;20050245458;20050222047;20050209164;20050197301;20050176648;20050164921;20050119168;20050085425;20050059606;20030207861;20020147139;20050143439;20050059606;20050107304;20050090450;20040147483;20040142876;20040077600;20040018986;20030236242;20030216325;20030207861;米国特許第6,962,932号;同第6,914,122号;同第6,911,428号;同第6,846,802号;同第6,838,475号。
【0063】
抗ウイルス剤としてはまた、以下が挙げられるが、これらに限定されない:免役調節剤(例えば、α−、β−、およびγ−インターフェロン、ペグ化誘導体化インターフェロン−α化合物、およびサイモシン;他の抗ウイルス剤、例えばリバビリン、アマンタジンおよびテルビブジン(telbivudine);他のC型肝炎プロテアーゼのインヒビター(NS2−NS3インヒビターおよびNS3−NS4Aインヒビター);HCV生活環の他の標的のインヒビター(ヘリカーゼインヒビターおよびポリメラーゼインヒビターが挙げられる);内部リボソーム侵入のインヒビター;広範なウイルスインヒビター(例えば、IMPDHインヒビター(例えば、米国特許第5,807,876号、同第6,498,178号、同第6,344,465号、同第6,054,472号、WO97/40028、WO98/40381、WO00/56331の化合物、およびミコフェノール酸およびその誘導体、ならびに、以下を含むが、これらに限定されない:VX−497、VX−148、および/またはVX−944);あるいは、上記の任意の抗ウイルス剤の組み合わせ。W.Marklandら,Antimicrobial & Antiviral Chemotherapy,44、p.859(2000)および米国特許第6,541,496号もまた、参照されたい。
【0064】
以下の定義が、本明細書中で使用される:
「Peg−Intron」は、PEG−Intron(登録商標)(pegインターフェロンα−2b)を意味し、Schering Corporation、Kenilworth、NJ.から入手可能である;「Intron」は、Intron−A(登録商標)(インターフェロンα−2b)を意味し、Schering Corporation、Kenilworth、NJ.から入手可能である;「リバビリン」は、リバビリン(1−β−D−リボフラノシル−lH−l,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)を意味し、ICN Pharmaceuticals,Inc.、CostaMesa、Calif.から入手可能である;Merck Index、記載番号8365、第12版に記載される;また、Schering Corporation、Kenilworth、NJ.からのRebetol(登録商標)、またはHoffmann−La Roche、Nutley、NJ.からのCopegus(登録商標)としても入手可能である;「Pagasys」は、Pegasys(登録商標)(peg−インターフェロンα−2a)を意味し、Hoffmann−La Roche、Nutley、NJ.ぁら入手可能である;「Roferon」は、Roferon(登録商標)(組換えインターフェロンα−2a)を意味し、Hoffmann−La Roche、Nutley、NJ.から入手可能である;「Berofor」は、Berofor(登録商標)(インターフェロンα−2)を意味し、Boehringer Ingelheim Pharmaceutical,Inc.、Ridgefield、Conn.から入手可能である;Sumiferon(登録商標)(天然のαインターフェロン(例えばSumiferon)の精製混合物)は、Sumitomo、Japanから入手可能である;Wellferon(登録商標)(インターフェロンα n1)は、Glaxo Wellcome Ltd.、GreatBritainから入手可能である;Alferon(登録商標)(天然αインターフェロンの混合物)は、Interferon Sciencesによって製造され、Purdue Frederick Co.、CT.から入手可能である。
【0065】
用語「インターフェロン」は、本明細書中で使用される場合、ウイルス複製および細胞増殖を阻害し、そして免役応答を調節する、高度に相同な種特異的タンパク質のファミリーのメンバーを意味し、例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、またはインターフェロンγである。Merck Index、記載番号5015、第12版。本発明の1つの実施形態にしたがい、インターフェロンは、α−インターフェロンである。別の実施形態にしたがい、本発明の治療組み合わせは、天然のαインターフェロン2aを利用する。あるいは、本発明の治療組み合わせは、天然のαインターフェロン2bを利用する。別の実施形態において、本発明の治療組み合わせは、組換えαインターフェロン2aまたは2bを利用する。なお別の実施形態において、上記インターフェロンは、ペグ化αインターフェロン2aまたは2bである。本発明に適したインターフェロンとしては、以下が挙げられる:(a)Intron(インターフェロン−α2B、Schering Plough)、(b)Peg−Intron、(c)Pegasys、(d)Roferon、(e)Berofor、(f)Sumiferon、(g)Wellferon、(h)Amgen,Inc.、Newbury Park、Califから入手可能であるコンセンサスαインターフェロン、(i)Alferon;(j)Viraferon(登録商標);(k)Infergen(登録商標)。
【0066】
プロテアーゼインヒビターは、経口投与されてもよく、一方、インターフェロンは、代表的には、経口投与されない。しかし、本発明の方法または組み合わせを、いかなる特定の投薬形態またはレジメンにも、本明細書中で限定しない。したがって、本発明にしたがう組み合わせの各構成要素が、別個に、一緒に、順次または同時に、あるいはその任意の組み合わせで、投与され得る。
【0067】
1つの実施形態において、上記プロテアーゼインヒビターおよびインターフェロンは、別個の投薬形態で投与される。1つの実施形態において、任意のさらなる薬剤が、プロテアーゼインヒビターを有する単一の投薬形態の一部として投与されるか、または別個の投薬形態として投与される。本発明は、化合物および/または薬剤の組み合わせを包含するが、各化合物または薬剤の特定の量は、組み合わせ中の化合物のお互いの特定の量に依存し得る。インターフェロンの投薬量は、代表的に、IUで測定される(例えば、約4,000,000IU〜約12,000,000IU)。
【0068】
したがって、本発明の化合物との組み合わせにおいて試用され得る薬剤(免役調節剤として作用するかまたはそれ以外として作用するかにかかわらない)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:インターフェロン−α2B(Intron A、Schering Plough);レバトロン(Rebatron)(Schering Plough、インターフェロンα2B+リバビリン);ペグ化インターフェロンα(Reddy,K.R.ら、「Efficacy and Safety of Pegylated(40−kd)interferon alpha−2a compared with interferon alpha−2a in noncirrhotic patients with chronic hepatitis C」、Hepatology、33、pp.433−438(2001);コンセンサスインターフェロン(Kao,J.H.ら、「Efficacy of Consensus Interferon in the Treatment of Chronic Hepatitis」、J.Gastroenterol.Hepatol.15、pp.1418−1423(2000)、インターフェロン−α2A(Roferon A;Roche)、リンホブラストイド(lymphoblastoid)または「天然の」インターフェロン;インターフェロンτ(Clayette,P.ら、「IFN−tau,A New Interferon Type I with Antiretroviral activity」、Pathol.Biol.(Paris)47、pp.553−559(1999);インターロイキン2(Davis,G.L.ら、「Future Options for the Management of Hepatitis C」、Seminars in Liver Disease、19、pp.103−112(1999);インターロイキン6(Davis,G.L.ら、前出;インターロイキン12(Davis,G.L.ら、前出;リバビリン;および1型ヘルパーT細胞応答の発生を増強する化合物(Davis,G.L.ら、前出)。インターフェロンは、直接的抗ウイルス作用を発揮することによって、そして/または感染に対する免役応答を改変することによって、ウイルス感染を緩和し得る。インターフェロンの抗ウイルス作用は、多くの場合、ウイルスの透過もしくは脱外皮(uncoating)、ウイルスRNAの合成、ウイルスタンパク質の転写、ならびに/またはウイルスアセンブリおよび放出の阻害を介して媒介される。
【0069】
細胞におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhova,E.B.ら、「Russian Experience in Screening,analysis,and Clinical Application of Novel Interferon Inducers」、J.Interferon Cytokine Res.、21pp.65−73)としては、単独で、またはトブラマイシンおよびイミキモッド(3M Pharmaceuticals;Sauder,D.N.、「Immunomodulatory and Pharmacologic Properties of Imiquimod」、J.Am.Acad.Dermatol、43pp.S6−11(2000))と組み合わせた二本鎖RNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の化合物と組み合わせて使用され得る他の非免役調節化合物および免役調節化合物としては、本明細書中に参考として援用されるWO 02/18369(例えば、273頁、9〜22行および274頁、4行〜276頁、11行を参照、これらは本明細書中でその全体が参考として援用される)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
細胞におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhovaら、J.Interferon Cytokine Res.21、65−73))としては、単独で、またはトブラマイシンおよびイミキモッド(3M Pharmaceuticals)(Sauder、J.Am.Arad.Dermatol.43、S6−11(2000))と組み合わせた二本鎖RNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
HCV抗ウイルス活性を有することが公知であるか、または有し得る他の化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:リバビリン(ICN Pharmaceuticals);イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼインヒビター(VX−497、本明細書中で式が提供される);アマンタジンおよびリマンタジン(rimantadine)(Younossiら、In Seminars in Liver Disease 19、95−102(1999));LY217896(米国特許第4,835,168号)(Colacinoら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy 34、2156−2163(1990));および9−ヒドロキシイミノ−6−メトキシ−1,4a−ジメチル1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1−カルボン酸メチルエステル;6−メトキシ−1,4aジメチル−9−(4−メチル−ピペラジン−1−イルイミノ)−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1カルボン酸メチルエステル−塩酸塩;1−(2−クロロ−フェニル)−3−(2,2−ビフェニル−エチル)−尿素(米国特許第6,127,422号)。
【0073】
上記の分子についての処方、用量および投与の経路は、以下に引用される参考文献に教示されるか、または当該分野で周知であり、例えば、F.G.Hayden、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、Hardmanら編、McGraw−Hill、NewYork(1996)、第50章、pp.1191−1223、およびその中に引用される参考文献において開示されている。あるいは、HCV抗ウイルス活性(特に、HCVの薬物耐性株に対する抗ウイルス活性)を示す化合物が一旦同定されると、該化合物の薬学的有効量は、当業者に周知の技術を用いて決定され得る。例えば、Benetら、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、Hardmanら編、McGraw−Hill、NewYork(1996)、第1章、pp.3−27、およびその中に引用される参考文献に留意されたい。したがって、このような化合物の適切な処方、用量範囲および投薬レジメンは、慣用的方法によって容易に決定され得る。
【0074】
本発明の組み合わせ治療に関連する組成物は、細胞(単数または複数)に対して、またはヒト患者に対して、同時にもしくは順次投与される別個の薬学的に受容可能な処方物、1種より多くの治療剤を含む処方物、または単剤処方物および多剤処方物の取り合わせのいずれかにおいて、提供され得る。投与の経路にかかわらず、これらの薬物組み合わせは、薬学的に受容可能な処方物の構成要素の抗HCV有効量を形成する。
【0075】
本発明の方法において使用され得る多数の他の免役調節因子および免役刺激因子が、現在利用可能であり、以下が挙げられる:AA−2G;アダマンチルアミドジペプチド;アデノシンデアミナーゼ、Enzonアジュバント、Alliance;アジュバント、Ribi;アジュバント、Vaxcel;Adjuvax;アゲラスフィン(agelasphin)−11;AIDS治療、Chiron;藻類グルカン、SRI;アルガヌヌリン(alganunulin)、Anutech;Anginlyc;抗細胞因子、Yeda;アンチコート(Anticort);抗ガストリン−17免役原、Ap;抗原送達系、Vac;抗原処方物、IDBC;抗GnRH免役原、Aphton;抗ヘパリン(Antiherpin);アルビドール(Arbidol);アザロール(azarole);Bay−q−8939;Bay−r−1005;BCH−1393;ベタフェクチン(Betafectin);ビオスチン(Biostim);BL−001;BL−009;ブロンコスタット(Broncostat);カンタスチン(Cantastim);CDRI−84−246;セフォジザイム(cefodizime);ケモカインインヒビター、ICOS;CMVペプチド、City of Hope;CN−5888;サイトカイン放出因子、St;DHEAS、Paradigm;DISC TA−HSV;J07B;I01A;I01Z;ジチオカルブナトリウム;ECA−10−142;ELS−1;内毒素、Novartis;FCE−20696;FCE−24089;FCE−24578;FLT−3リガンド、Immunex;FR−900483;FR−900494;FR−901235;FTS−Zn;G−タンパク質、Cadus;グルダプシン(gludapcin);グルタウリン;グリコホスホペプチカル(glycophosphopeptical);GM−2;GM−53;GMDP;成長因子ワクチン、EntreM;H−BIG、NABI;H−CIG、NABI;HAB−439;ヘリコバクターピロリワクチン;ヘルペス特異的免役因子;HIV治療、United Biomed;HyperGAM+CF;ImmuMax;Immun BCG;免役治療、Connective;免役調節因子、Evans;免役調節因子、Novacell;imreg−1;imreg−2;インドミューン(Indomune);イノシンプラノベックス(inosine pranobex);インターフェロン、Dong−A(α2);インターフェロン、Genentech(γ);インターフェロン、Novartis(α);インターロイキン−12、Genetics Ins;インターロイキン−15、Immunex;インターロイキン−16、Research Cor;ISCAR−1;J005X;L−644257;リコマラスミン酸(licomarasminic acid);LipoTher;LK−409、LK−410;LP−2307;LT(Rl926);LW−50020;MAF、Shionogi;MDP誘導体、Merck;met−エンケファリン、TNI;メチルフリルブチロラクトン;MIMP;ミリモスチン(mirimostim);混合細菌ワクチン、Tem、MM−1;モニリアスタット(moniliastat);MPLA、Ribi;MS−705;ムラブチド;マラブチド(marabutide)、Vacsyn;ムラミルジペプチド誘導体;ムラミルペプチド誘導体ミエロピド(myelopid);−563;NACOS−6;NH−765;NISV、Proteus;NPT−16416;NT−002;PA−485;PEFA−814;ペプチド、Scios;ペプチドグリカン、Pliva;ペルトン(Perthon)、Advanced Plant;PGM誘導体、Pliva;Pharmaprojects No.1099;No.1426;No.1549;No.1585;No.1607;No.1710;No.1779;No.2002;No.2060;No.2795;No.3088;No.3111;No.3345;No.3467;No.3668;No.3998;No.3999;No.4089;No.4188;No.4451;No.4500;No.4689;No.4833;No.494;No.5217;No.530;ピドチモド;ピメラウチド;ピナフィド;PMD−589;ポドフィロトキシン、Conpharm;POL−509;ポリ−ICLC;ポリ−ICLC、Yamasa Shoyu;ポリA−ポリU;多糖類A;プロテイン A、Berlux Bioscience;PS34W0;シュードモナスMAb、Teijin;プソマグロビン(Psomaglobin);PTL−78419;ピレキソール(Pyrexol);ピリフェロン(pyriferone);レトロゲン(Retrogen);レトロペプ(Retropep);RG−003;ライノスタット(Rhinostat);リファマキシル(rifamaxil);RM−06;ローリン(Rollin);ロムルチド;RU−40555;RU−41821;風疹抗体、ResCo;S−27649;SB−73;SDZ−280−636;SDZ−MRL953;SK&F−107647;SL04;SL05;SM−4333;ソルテイン(Solutein);SRI−62−834;SRL−172;ST−570;ST−789;staphage溶解物;スティミュロン(Stimulon);サプレッシン(suppressin);T−150R1;T−LCEF;タビラウチド;テムルチド;Theradigm−HBV;Theradigm−HBV;Theradigm−HSV;THF、Pharm & Upjohn;THF、Yeda;チマルファシン;胸腺ホルモン画分;サイモカルチン(thymocartin);サイモリンホトロピン(thymolymphotropin);サイモペンチン(thymopentin);サイモペンチンアナログ;サイモペンチン、Peptech;サイモシン画分5、α;サイモスティミュリン(thymostimulin);チモトリナン;TMD−232;TO−115;転移因子、Viragen;タフシン(tuftsin)、Selavo;ウベニメクス;ウルサスタット(Ulsastat);ANGG−;CD−4+;Collag+;COLSF+;COM+;DA−A+;GAST−;GF−TH+;GP−120−;IF+;IF−A+;IF−A−2+;IF−B+;IF−G+;IF−G−1B+;IL−2+;IL−12+;IL−15+;IM+;LHRH−;LIPCOR+LLYM−B+;LYM−NK+;LYM−T+;OPI+;PEP+;PHG−MA+;RNA−SYN−;SY−CW−;TH−A−I+;TH−5+;TNF+;UN。
【0076】
本発明において有用な代表的なヌクレオシド化合物およびヌクレオチド化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(+)−シス−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−[1,3−オキサチオラン−5イル]シトシン;(−)−2’−デオキシ−3’−チオシチジン−5’−トリホスフェート(3TC);(−)−シス−5−フルオロ−1−[2(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);(−)2’,3’,ジデオキシ−3’−チアシチジン[(−)−SddC];1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン(FIAC);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシントリホスフェート(FIACTP);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウラシル(FMAU);1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド;2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチル−デキソシチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−クロロ−5−メチル−デキソシチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチル−デキソシチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチル−シチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−クロロ−5−メチル−シチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチル−シチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロチミジン(FddThd);2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−フルオロシチジン(β−L−FddC)2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−チアシチジン;2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−シチジン(β−L−ddC);9−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)グアニン;2’−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシトシン;3’−アミノ−5−メチル−デキソシチジン(AddMeCyt);2−アミノ−1,9−[(2−ヒドロキシメチル−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ]メチル]−6H−プリン−6−オン(ガンシクロビル(gancyclovir));2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9イルエチル)−1,3−プロパンジルジアセテート(ファムシクロビル);2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシ−エトキシ)メチル]6H−プリン−6−オン(アシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブタ−1−イル)グアニン(ペンシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブタ−1−イル)−6−デオキシ−グアニンジアセテート(ファムシクロビル);3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT);3’−クロロ−5−メチル−デキソシチジン(ClddMeCyt);9−(2−ホスホニル−メトキシエチル−)−2’,6’−ジアミノプリン−2’、3’−ジデオキシリボシド;9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−アデニン(PMEA);アシクロビルトリホスフェート(ACVTP);D−炭素環−2’−デオキシグアノシン(CdG);ジデオキシ−シチジン;ジデオキシ−シトシン(ddC);ジデオキシ−グアニン(ddG);ジデオキシ−イノシン(ddl);E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジントリホスフェート;フルオロ−アラビノフラノシル−ヨードウラシル;1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−1−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨード−ウラシル(FIAU);スタブジン;9−β−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミンモノヒドレート(Ara−A);9−β−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミン−5’−モノホスフェートモノヒドレート(Ara−AMP);2−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシチジン;2’,3’−ジデオキシ−グアニン;および2’,3’−ジデオキシ−グアノシン。
【0077】
本発明において有用であるヌクレオシドおよびヌクレオチドの調製のための合成方法は、当該分野で周知であり、Acta Biochim Pol、43、25−36(1996);Swed.Nucleosides Nucleotides 15、361−378(1996);Synthesis 12、1465−1479(1995);Carbohyd.Chem.27、242−276(1995);Chena Nucleosides Nucleotides 3、421−535(1994);Ann.Reports in Med.Chena、Academic Press;およびExp.Opin.Invest.Drugs 4、95−115(1995)において開示される。
【0078】
先に引用される参考文献に記載される化学反応は、一般に、本発明の化合物の調製に対するその最も広い適用の観点から開示されている。時折、これらの反応は、本明細書において開示される化合物の範囲内に含まれる化合物の各々に対して、記載されるようには適用可能でない場合がある。この状態が生じる化合物は、当業者により容易に認識される。全てのこのような場合において、これらの反応は、当業者に公知の従来の修正によって(例えば、干渉基の適切な保護によって、代替的な従来の試薬に変更することによって、反応条件の慣用的な修正によって、など)首尾よく実施され得るか、または、本明細書において開示されるか、もしくは、他の従来の反応が、本発明の対応する化合物の調製に対して適用可能であるかのいずれかである。あらゆる調製法において、あらゆる出発物質が公知であるか、または、公知の出発物質から容易に調製可能である。
【0079】
ヌクレオシドアナログは一般に、そのままで抗ウイルス因子として用いられるが、ヌクレオチド(リン酸ヌクレオシド)は時々、その細胞膜を横切る輸送を促進するために、ヌクレオシドへと変換されなければならない。細胞に進入し得る化学修飾されたヌクレオチドの一例は、S−1−3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピルシトシン(HPMPC,Gilead Sciences)である。本発明において使用されるヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物(酸である)は、塩を形成し得る。例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム)との塩、または、有機塩基もしくは塩基性四級アンモニウム塩との塩が挙げられる。
【0080】
当業者はまた、シトクロムP450モノオキシゲナーゼインヒビターを投与することを選択し得る。このようなインヒビターは、シトクロムP450により阻害される化合物の肝臓濃度を増加させ、そして/またはこのような化合物の血中レベルを増加させるのに有用であり得る。CYPインヒビターを必要とする本発明の一実施形態について、関連するNS3/4Aプロテアーゼの薬物動態を向上するあらゆるCYPインヒビターが、本発明の組成物中に含まれ得、そして/または、本発明の方法において使用され得る。これらのCYPインヒビターとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:リトナビル(WO 94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アムプレナビル(amprenavir)、ホスアムプレナビル(fosamprenavir)、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944およびVX−497。好ましいCYPインヒビターとしては、リトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリンおよびクロメチアゾールが挙げられる。リトナビルの好ましい投薬形態については、米国特許第6,037,157号およびこの米国特許において引用される文献(米国特許第5,484,801号、米国特許出願第08/402,690号、ならびに国際出願WO 95/07696およびWO 95/09614)を参照のこと。
【0081】
シトクロムP 50モノオキシゲナーゼ活性を阻害する化合物の能力を測定するための方法は公知である(米国特許第6,037,157号およびYunら、Drug Metabolism & Disposition,vol.21,pp.403−407(1993)を参照のこと)。
【0082】
免疫調節因子、免疫刺激因子および本発明の併用療法の方法において有用な他の因子は、当該分野で従来どおりの量よりも少ない量で投与され得る。例えば、インターフェロンαは、HCV感染の処置のために、代表的には、1人あたり約1×10単位で1週間に3回〜1人あたり約10×10単位で1週間に3回の量で、ヒトに投与される(Simonら、Hepatology 25:445−448(1997))。本発明の方法および組成物において、この用量は、1人あたり約0.1×10単位で1週間に3回〜1人あたり約7.5×10単位で1週間に3回の範囲;より好ましくは、1人あたり約0.5×10単位で1週間に3回〜1人あたり約5×10単位で1週間に3回の範囲;最も好ましくは、1人あたり約1×10単位で1週間に3回〜1人あたり約3×10単位で1週間に3回の範囲であり得る。本発明のHCVセリンプロテアーゼインヒビターの存在下でのC型肝炎ウイルスに対する免疫調節因子、免疫刺激因子または他の抗HCV因子の増強された抗ウイルス効果に起因して、これらの免疫調節因子/免疫刺激因子の減らした量が、本明細書において企図される処置方法および組成物において用いられ得る。同様に、免疫調節因子および免疫刺激因子の存在下でのC型肝炎ウイルスに対する本発明のHCVセリンプロテアーゼインヒビターの増強された抗ウイルス効果に起因して、これらのHCVセリンプロテアーゼインヒビターの減らした量が、本明細書において企図される方法および組成物において用いられ得る。このような減らした量は、治療を受けている感染患者におけるC型肝炎ウイルスの力価を慣用的にモニタリングすることによって決定され得る。これは、例えば、スロットブロット、ドットブロットもしくはRT−PCR技術により患者の血清中のHCV RNAをモニタリングすることによって、または、HCVの表面抗原もしくは他の抗原を測定することによって行われ得る。患者は、本明細書において開示されるHCVセリンプロテアーゼインヒビターと抗HCV活性を有する他の化合物(例えば、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの抗ウイルス因子)とを用いる併用療法の間に同様にモニターされて、併用される場合の各々の最低有効用量を決定し得る。
【0083】
本明細書において開示される併用療法の方法において、ヌクレオシドもしくはヌクレオチドの抗ウイルス化合物またはこれらの混合物は、1日1人あたり約0.1mg〜約500mgの範囲の量;好ましくは、1日1人あたり約10mg〜約300mgの範囲の量;より好ましくは、1日1人あたり約25mg〜約200mgの範囲の量;なおより好ましくは、1日1人あたり約50mg〜約150mgの範囲の量;そして、最も好ましくは、1日1人あたり約1mg〜約50mgの範囲の量で、ヒトに投与され得る。
【0084】
化合物の用量は、単一の用量または見合った用量で投与され得る。後者の場合、投薬単位の組成物は、その分量(submultiples)のこのような量を含んで1日の用量を構成し得る。1日あたりに複数の用量を用いることもまた、1日の総用量を増加させ得、これは、薬物を処方する人によって望まれるはずである。
【0085】
HCV感染に苦しむ患者を、本発明の化合物および/または組成物を用いて処置するためのレジメンは、種々の要因(患者の年齢、体重、性別、食事および医学的状態、感染の重篤度、投与経路、用いられる特定の化合物の効能、薬物動態および毒物学プロフィール、ならびに、薬物送達システムが利用されるかどうか、を含む)に従って選択される。本明細書において開示される薬物の組み合わせの投与は、一般に、ウイルスの力価が容認可能なレベルに到達し、感染が制御または根絶されたことを示すまで、数週間〜数ヶ月または数年の期間にわたり継続されるべきである。本明細書において開示される薬物の組み合わせを用いた処置を受けている患者は、治療の有効性を決定するために、スロットブロット、ドットブロットもしくはRT−PCR技術により患者の血清中の肝炎ウイルスRNAを測定することにより、または、血清中のC型肝炎ウイルス抗原(例えば、表面抗原)を測定することによって慣用的にモニターされ得る。これらの方法により得られるデータの継続的な解析は、組み合わせ中の各成分の最適な量が投与され、そして、処置の期間もまた決定され得るように、治療の間に処置レジメンを修正することを可能にする。従って、処置レジメン/投薬計画は、組み合わせて使用される抗ウイルス化合物(これらは、合わせて、満足のいく抗C型肝炎ウイルス効果を示す)の最小量が投与され、そして、感染の首尾よい処置が必要である限り長きに渡ってこのような抗ウイルス化合物の併用での投与が継続されるように、治療の経過にわたり、合理的に修正され得る。
【0086】
本発明は、患者(特に、VX−950および他の標準的なプロテアーゼインヒビターによる処置に対する耐性を生じた、HCV感染を有する患者)においてHCV感染を処置または防止する抗HCV活性を有する上記および類似の型の化合物との種々の組み合わせでの、本明細書において開示されるHCVセリンプロテアーゼインヒビターの使用を包含する。例えば、1種以上のHCVセリンプロテアーゼインヒビターが、以下との組み合わせで使用され得る:1種以上のインターフェロンもしくは抗HCV活性を有するインターフェロン誘導体;1種以上の抗HCV活性を有する非インターフェロン化合物;または1種以上のインターフェロンもしくは抗HCV活性を有するインターフェロン誘導体と1種以上の抗HCV活性を有する非インターフェロン化合物。ヒト患者においてHCV感染を処置または予防するために組み合わせで使用される場合、本明細書において開示されるHCVセリンプロテアーゼインヒビターのいずれかと、抗HCV活性を有する上記化合物とは、薬学的有効量または抗HCV有効量で存在し得る。その相加的または相乗的な効果の観点から、上記の組み合わせで使用される場合、各々はまた、不顕性の(subclinical)薬学的有効量または抗HCV有効量(すなわち、単独で使用される場合には、HCVビリオンの蓄積を完全に阻害もしくは減少させるか、そして/または、患者におけるHCV感染もしくは病理に関連する状態もしくは症状を低減もしくは改善することにおいて、このようなHCVセリンプロテアーゼインヒビターと抗HCV活性を有する化合物とが薬学的有効量で使用される場合と比較して、減少した薬学的有効性を提供する量)で存在し得る。さらに、本発明は、HCV感染を処置または防止するための、HCVセリンプロテアーゼインヒビターと上記のような抗HCV活性を有する化合物との組み合わせの使用を包含し、ここで、1種以上のこれらのインヒビターまたは化合物は、薬学的有効量で存在し、そして、その他は、その相加的または相乗的な効果のために、不顕性の薬学的有効量または抗HCV有効量で存在する。本明細書において使用される場合、用語「相加的効果」は、単独で投与した各因子の効果の合計と等しい、2(またはそれ以上)の薬学的に活性な因子の組み合わせた効果を記載する。「相乗的効果」は、2(またはそれ以上)の薬学的に活性な因子の組み合わせた効果が、単独で投与した各因子を効果の合計よりも大きい場合の効果である。
【0087】
患者の状態が改善すると、本発明の化合物、組成物または組み合わせの維持用量が、必要に応じて投与され得る。その後、投薬量もしくは投与頻度、またはその両方が、症状の関数として、症状が所望のレベルまで改善したときに、その改善された状態が維持されるレベルまで減少され得る。しかし患者は、何らかの疾患の症状が再発したときに、長期を基礎とした間欠性の処置を必要とし得る。
【0088】
任意の特定の患者についての特異的な投薬量および処置レジメンは、種々の要因(用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、および処置する医師の判断、ならびに、処置される特定の疾患の重篤度を含む)に依存する。活性成分の量はまた、特定の記載される化合物、および、組成物中のさらなる抗ウイルス因子の存在または非存在、およびその性質に依存する。
【0089】
従って、治療的処置に有用な本願の因子は、単独で、適切な薬学的キャリアを含む組成物において、または、他の治療剤と組み合わせて投与され得る。投与される因子の有効量は、ケースバイケースを基礎として決定され得る。通常考慮されるべき要因としては、年齢、体重、状態の段階、他の疾患状態、処置期間、および最初の処置に対する応答性が挙げられる。代表的には、因子は、液性溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能であるように調製される。しかし、注射前の液体ビヒクルにおける溶液または懸濁液のために適切な固体形態もまた調製され得る。因子はまた、当該分野で公知の方法に従って、腸溶性コーティングされた錠剤またはゲルカプセルへと処方され得る。本願の因子は、医学的に受容可能なあらゆる方法で投与され得、この投与方法は、因子の同一性および/または処置される疾患の状態もしくは処置される損傷に依存し得る。可能な投与経路としては、非経口経路(例えば、血管内、静脈内、硬膜内など)による注射、ならびに、例えば、吸入、エアロゾル化または噴霧化による、経口、経鼻腔、経眼、経直腸、局所、または経肺での投与が挙げられる。因子はまた、例えば外科手術の間に、組織表面に直接適用され得る。デポー注射、経皮パッチ、または腐食可能な移植物のような手段による持続放出投与もまた本願に具体的に含められる。
【0090】
別の実施形態によれば、本発明は、ウイルスの生活環に必要なウイルスによりコードされるセリンプロテアーゼによって特徴付けられるウイルスに感染した患者を処置するか、または、このようなウイルスによる感染を防止するための方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与することによるものである。好ましくは、本発明の方法は、HCV感染に苦しむ患者を処置するために使用される。このような処置は、ウイルス感染を完全に根絶し得るか、または、その重篤度を低減し得る。より好ましくは、患者は人間である。
【0091】
用語「処置する」は、予防的(例えば、防止する)および/または治療的な処置を包含する。用語「予防的または治療的な」処置は、当該分野において認識され、そして、1以上の本発明の組成物の宿主への投与を包含する。処置が望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)が臨床上発現する前に実施される場合、その処置は予防的なものであり(すなわち、その処置は、宿主が望ましくない状態を発症することに対して保護する)、一方で、処置が望ましくない状態が発現した後に実施される場合、その処置は治療的なものである(すなわち、その処置は、既存の望ましくない状態またはその副作用を減少、改善または安定化することが意図される)。
【0092】
代替的な実施形態において、本発明の方法はさらに、抗ウイルス因子(好ましくは、抗HCV因子)を上記患者に投与する工程を包含する。このような抗ウイルス因子としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:免疫調節因子(例えば、α−インターフェロン、β−インターフェロンおよびγ−インターフェロン、ペグ化され誘導体化されたインターフェロンα化合物ならびにサイモシン);他の抗ウイルス因子(例えば、リバビリンおよびアマンタジン);C型肝炎ウイルスプロテアーゼの他のインヒビター(NS2−NS3インヒビターおよびNS3−NS4Aインヒビター);HCVの生活環における他の標的のインヒビター(ヘリカーゼインヒビターおよびポリメラーゼインヒビターを含む);内部リボソーム進入のインヒビター;IMPDHインヒビターのような広域スペクトルウイルスインヒビター(例えば、VX−497および米国特許第5,807,876号に開示される他のIMPDHインヒビター、ミコフェノール酸およびその誘導体);または、上記のいずれかの組み合わせ。
【0093】
このようなさらなる因子は、本発明の化合物およびさらなる抗ウイルス因子の両方を含有する単一の投薬形態の一部として上記患者に投与され得る。あるいは、さらなる因子は、本発明の化合物とは別個に、複数の投薬形態の一部として投与され得、この場合、上記さらなる因子は、本発明の化合物を含有する組成物の前、本発明の化合物を含有する組成物と一緒に、または、本発明の化合物を含有する組成物の跡に投与される。
【0094】
なお別の実施形態において、本発明は、患者への投与のために意図される生物学的な物質を前処理する方法を提供し、この方法は、上記の生物学的な物質を、本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物と接触させる工程を包含する。このような生物学的な物質としては、血液およびその成分(例えば、血漿、血小板、血球の亜種);腎臓、肝臓、心臓、肺などのような臓器;精子および卵子;骨髄およびその成分、ならびに、患者内に注入される予定の他の流体(例えば、生理食塩水、デキストロースなど)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0095】
別の実施形態によれば、本発明は、ウイルスの生活環に必要なウイルスによりコードされるセリンプロテアーゼによって特徴付けられるウイルスと潜在的に接触し得る物質を処理する方法を提供する。この方法は、上記物質を本発明に従う化合物に接触させる工程を包含する。このような物質としては、外科手術用の機器および衣服;研究所用の機器および衣服;血液回収の装置および物質;ならびに、シャント、ステントなどのような侵襲性デバイスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
別の実施形態においては、本発明の化合物は、ウイルスによりコードされるセリンプロテアーゼの単離を補助するための研究所用のツールとして使用され得る。この方法は、固体支持体に結合された本発明の化合物を提供する工程;上記固体支持体をウイルスのセリンプロテアーゼに、上記プロテアーゼを上記固体支持体に結合させる条件下で接触させる工程;および、上記固体支持体から上記セリンプロテアーゼを溶出する工程を包含する。好ましくは、この方法により単離されたウイルスのセリンプロテアーゼは、HCV NS3プロテアーゼである。より具体的には、本明細書に記載されるVX−905および/またはBILN 2061による処置に対して抵抗性であるのは、変異型HCV NS3プロテアーゼである。代表的なこのようなプロテアーゼとしては、配列番号2のタンパク質の36位、41位、43位、54位、148位、155位および/または156位に変異(すなわち非野生型)残基を有するような、本明細書において記載されるプロテアーゼが挙げられる。
【実施例】
【0097】
本開示はここで一般的に記載されているが、以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。以下の実施例は、単に本開示の特定の局面および実施形態を例示する目的のために含まれ、本開示を制限することは意図されない。
【0098】
(実施例1 患者の集団と研究設計)
VX−950(研究VX04−950−101)についての、第1b相の無作為化盲検の用量増加臨床試験に参加した、遺伝子型1のHCVに感染した34人の患者が、この研究の被験体であった。全ての患者は、18歳と65歳との間の年齢であり、少なくとも10IU/mLの基線HCV RNAレベルを有し、そして、B型肝炎ウイルス(HBV)およびHIVに対してはネガティブであった。患者を3つの群に分け、連続した14日間にわたり、450(q8h)mg、750(q8h)mg、または1250(ql2h)mgのVX−950を与えた。各投薬群に、2人のプラシーボの患者を含んだ。研究の患者から、3つの時点において4ミリリットル(mL)の血液サンプルを採取した:投薬前日(基線サンプル)、投薬の14日目すなわち処置の終了時(ETRサンプル)、および、研究薬物の最後の投薬から7〜10日目(追跡サンプル)。血液を前腕の静脈の静脈穿刺によりEDTA(K)抗凝固薬を含むチューブに採取した。10分間の遠心分離により血漿を分離し、凍結し、そして、−80℃にて6ヶ月を下回る期間にわたり保存した。配列解析のために、この血漿からビリオンを単離した。
【0099】
(実施例2 患者の血漿からのHCV NS3プロテアーゼの増幅および配列決定)
HCVの配列解析を、血漿ウイルスからの534塩基対(bp)の全NS3セリンプロテアーゼ領域を含むHCV RNAフラグメントの半ネスト化逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による増幅によって行った。変性条件下でビリオンを溶解し、そして、標準的な市販のシリカゲル膜結合法(QIAamp Viral RNA Minikit;Qiagen,Valencia,CA)を用いて、HCV RNAを単離した。ウイルスRNAからNS3セリンプロテアーゼ領域を含む相補鎖DNA(cDNA)フラグメントを合成し、そして、市販の1段階逆転写酵素PCR(Superscript III RNase H−Reverse Transcriptase with High Fidelity Platinum Taq DNA Polymerase;Invitrogen Corp,Carlsbad,CA)を用いて増幅した。912bpのNS3のコード領域を、NS3領域に隣接するプライマー(NS3−1b−1s:GGCGTGTGGGGACATCATC(配列番号3);およびNS3−1b−3a:GGTGGAGTACGTGATGGGGC(配列番号4))を用いて増幅した。1×専売反応緩衝液中0.5μMのプライマー(Invitrogen Custom Primers)、0.2mMのdNTPs(Invitrogen Corp)、1.2mMのMgSOおよび34.8単位のRNAガード(guard)(ブタRNaseインヒビター,Amersham Biosciences)の最終濃度において、各サンプルにつき2ラウンドのネストPCRを行った。反応混合物を、まず、30分間の逆転写反応のために47℃でインキュベートし、その後、94℃での変性段階を3分間、次いで、94℃で30秒間、51℃で30秒間そして68℃で45秒間の30サイクルを行った。最初のPCR産物を1:10に希釈し、そして、1.25単位のAccuPrime Pfx DNAポリメラーゼ、0.5μMのプライマー(NS3−1b−1sおよびNS3−1b−4a;CATATACGCTCCAAAGCCCA(配列番号5))、0.3mMのdNTPs、1mMのMgSO、および1×反応緩衝液を用いた、別の半ネスト化反応において使用した。外側PCRからのDNA産物を、94℃で3分間変性させ、そして、94℃で30秒間、53℃で30秒間そして68℃で30秒間の30サイクルで増幅した。次いで、このPCRからのDNAを、1%アガロースゲル上で分離し、そして、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を用いて、適切なサイズの生成物(830bp)を精製した。次いで、単離したDNAを、Zero Blunt TOPO PCR Cloningキット(Invitrogen Corp)を用いてクローニングした。クローニングプレートを、SeqWright(Houston,TX)に送り、ここで、96個のクローンを増幅し、そして、患者ごと時点ごとに配列決定した。
【0100】
(実施例3 配列アラインメントおよび系統発生解析)
配列を整列させ、そして、ソフトウェアMutational Surveyor(SoftGenetics,State College,PA)を用いて変異について解析した。NS3プロテアーゼのN末端の543個のヌクレオチド(181アミノ酸)を解析した。各患者についてのコンセンサス配列を、84個の基線配列の平均から明らかにし、そして、14日目と、追跡中(研究薬物の最終投薬から7〜10日後)に各患者について81個の配列の平均を得た。PHYLIP(Felsenstein,J.1993.PHYLIP(Phylogeny Inference Package)バージョン3.5c.著者により配布。Department of Genetics,University of Washington,Seattle,WA)Dnadist and Quick Tree(http://www.hcv.lanl.gov/content/hcv−db,2005年6月にアクセスした)を用いて、系統樹を作製した。
【0101】
(実施例4 組換えNS3プロテアーゼタンパク質の発現および精製)
HCV NS3プロテアーゼのMet〜Ser181をコードするDNAフラグメントを、各HCV改変体に特異的なオリゴヌクレオチドを用いて、患者からの単離体の選択されたプラスミドクローンから増幅した。DNAフラグメントを、前にはHCV NS3プロテアーゼの181残基が、そして、後ろにはC末端のヘキサヒスチジンタグ(配列番号6)がある状態でEscherichia coli発現プラスミドpBEV11へとクローニングした。次いで、組換え6×Hisタグ(配列番号6)化NS3プロテアーゼを、以前に刊行された漏出発現法(4)を用いて、E.coliにおいて発現させた。NS3プロテアーゼ発現プラスミドを用いて新たに形質転換したE.coli BL21(DE3)の5〜7個の単離したコロニーを用いて、100μg/mLのカルベニシリンを含む5mLのLB培地を播種した。これらの接種培養物を、OD620が0.3と1との間に達するまで、振盪させながら(250rpm)、37℃にてインキュベートし、次いで、これを用いて、250mLのエルレンマイアーフラスコ中で、100μg/mLのカルベニシリンを含有する50mLの4×TY培地(32g/Lのトリプトン、20g/Lの酵母抽出物、5g/LのNaCl)を播種した(最初のOD620は約0.010であった)。この発現培養物を、周囲温度(約25℃)にて250rpmで振盪させながら24時間インキュベートした。3000×gで30分間遠心分離させることにより細胞を回収し、このペレットを即座に−80℃のエタノール浴内で凍結し、そして、プロテアーゼを精製するまで−80℃にて保存した。
【0102】
組換えプロテアーゼを、刊行された方法(7)の修正法を用いて、E.coliから精製した。凍結した細胞ペレットを解凍し、そして、6.8mLの冷緩衝液A(50mM N−2−ヒドロキシエチルピペリジン−N’−エタンスルホン酸[HEPES,pH8.0];1M NaCl;10%[vol/vol]グリセロール;5mM イミダゾール;5mM β−メルカプトエタノール;0.1% オクチルβ−D−グルコピラノシド[Sigma,Saint Louis,MO];2μg/mL ロイペプチン[Sigma,Saint Louis,MO];1μg/mL E−64[Sigma,Saint Louis,MO];2μg/mL ペプスタインA[Sigma,Saint Louis,MO])中に再懸濁した。0.8mLの10×BugBuster試薬(Novogen/EMD Biosciences,Madison,WI)および8μLの1000×Benzonuclease(Novogen/EMD Biosciences,Madison,WI)を加え、その後、4℃にて30分間やさしくロッキングすることによって、細胞を溶解した。細胞溶解物を、16,000×gで遠心分離して、不溶性の物質を除去した。各上清を、使い捨てのポリプロピレンカラム(Biorad,Hercules,CA)内の、緩衝液Aで平衡化した0.25mLのベッドボリュームのTALON金属親和性樹脂(BD Biosciences,Palo Alto,CA)にアプライした。溶解物/樹脂のスラリーを、4℃にて30分間ロッキングした。溶解物をカラムから排出し、そして、樹脂を、3〜5mL容量の緩衝液Aで洗浄した。緩衝液B(50mM HEPES[pH8.0];1M NaCl;25%[vol/vol]グリセロール;300mM イミダゾール;5mM β−メルカプトエタノール;0.1% オクチルβ−D−グルコピラノシド;2μg/mL ロイペプチン;1μg/mL E−64;2μg/mL ペプスタインA])の2つのアリコート(各々0.25mL)を用いて、カラムに結合したタンパク質を溶出し、2つの画分をプールし、小さなアリコートに分けて、そして、−80℃に保存した。Coomassieタンパク質アッセイ(Biorad,Hercules,CA)をウシ血清アルブミン標準物質と共に製造業者の説明書に従って用いて、この溶出したタンパク質の濃度を決定した。Biosafe Coomassie Blue(Biorad,Hercules,CA)で染色した変性アクリルアミドゲル(SDS−PAGE)上で分解させたタンパク質サンプルから、プロテアーゼの純度を、1D Image Analysis Software(Kodak,Rochester,NY)を用いて見積もった。
【0103】
(実施例5 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインについての酵素的アッセイ)
VX−950プロテアーゼインヒビターおよびBILN 2061プロテアーゼインヒビターの両方を含む96ウェルマイクロタイタープレート(Corning NBS 3990)において、刊行されたように(7)して、インビトロプロテアーゼ活性をアッセイした。BILN 2061は、Boehringher Ingelheim,Laval,Quebec,Canadaにより発見されたHCV NS3・4Aプロテアーゼインヒビターである。簡単に述べると、プロテアーゼを5μMの補因子KK4Aと共に25℃にて10分間、そして、30℃にて10分間インキュベートした。DMSO中で段階希釈したプロテアーゼインヒビター(VX−950またはBILN 2061)を加え、そして、30℃にてさらに15分間インキュベートした。5μMのRET−S1(Anaspec Inc.San Jose,CA)および内部クエンチした蛍光デプシペプチド基質を加えることにより反応を開始し、30℃にてインキュベートした。Tecan SpectraFluorPlusプレートリーダーにおいて、生成物の放出を20分間モニターした(360nmにおいて励起、そして500nmにおいて放射)。データを、シンプルなIC50の式:Y=V/(1+(X/IC50))にフィットさせた。
【0104】
(実施例6 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインタンパク質のK決定)
内部でクエンチした蛍光デプシペプチド基質であるRET−S1(Ac−DED(EDANS)EEαAbuψ[COO]ASK(DABCYL)−NH2(配列番号7))(Talianiら(1996)Anal.Biochem.240(1),60−67)を用いて、基質の反応速度論パラメーターを決定した。プロテアーゼを、50mM HEPES(pH7.8)、100mM NaCl、20% グリセロール、5mM ジチオスレイトール中5μMの補因子ペプチドKK4A(KKGSVVIVGRIVLSGK(配列番号8))(Landroら(1997)Biochemistry 36(31),9340−9348)と共に、25℃にて10分間、そして、30℃にて10分間事前インキュベートした。RET−S1基質(Anaspec Incorporated,San Jose,CA)を加えることにより反応を開始し、30℃にて10分間インキュベートした。アッセイの総容量は100μLであった。この反応を、25μLの10%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えることによりクエンチした。反応生成物を、40℃に加熱した逆相マイクロボア高速液体クロマトグラフィーカラム(Penomenex Jupiter 5μ C18 300 Aカラム,150×2.0mm)において分離した。HO/0.1% TFA(溶媒A)およびアセトニトリル/0.1% TFA(溶媒B)を用い、流速は0.2ml/分であった。以下のとおりに線形勾配を用いた:1分間にわたり5%〜30%の溶媒B、15分間にわたり30%〜40%の溶媒B、次いで、1分間にわたり、40%〜100%の溶媒B、3分間の定組成、その後、1分間で100%〜5%のB、そして、10分間5%のBにおける平衡。DABCYL−ペプチド生成物を500nmにおいて検出し、そして、代表的には、17分付近で溶出した。GraphPrismソフトウェアを用いてデータをミカエリス−メンテン式にフィットさせることにより、Kを決定した。
【0105】
(実施例7 HCV NS3セリンプロテアーゼドメイン改変体のテラプレビル(Telaprevir)(VX−950)のKi(aap,1h)の決定)
以前に刊行されたようにして(Linら(2004)J.Biol.Chem.279(17),17508−17514)、NS3プロテアーゼドメイン改変体のテラプレビルに対する感受性を96ウェルマイクロタイタープレート(Corning NBS 3990;Corning,NY)において決定した。簡単に述べると、NS3プロテアーゼドメインを、50mM HEPES(pH7.8)、100mM NaCl、20% グリセロール、5mM ジチオスレイトール中5μMのKK4Aと共に、25℃にて10分間、そして、30℃にて10分間事前インキュベートした。DMSO中で段階希釈したテラプレビルをこのプロテアーゼ混合物に加え、そして、30℃にてさらに60分間インキュベートした。5μMのRET−S1基質を加えることにより反応を開始し、30℃にてインキュベートした。Tecan SpectraFluorPlusプレートリーダー(Tecan US,Durham,NC)において、生成物の放出を20分間モニターした(360nmにおいて励起、そして500nmにおいて放射)。アッセイの総容量は100μlであった。アッセイの経過の間に、10〜20%の基質がターンオーバーするように、プロテアーゼの濃度を選択した。見かけの阻害定数(Ki(aap,1h))の値を計算するために、GraphPrismソフトウェアを用いて、密な結合阻害についてのMorrisonの式(38)の積分形態にデータをフィットさせた。定常状態アッセイは、野生型の酵素と、全てのR155K/T/I/S改変体とが、検出限界(100μM)よりも高いRET−S1についてのKを有したことを示した。従って、Ki(aap,1h)値を計算するために、Kを100μMに設定した。Kを有意に下回る基質濃度(5μM)において、インヒビター研究を行った。それゆえ、真のKと、計算に使用したKとの間の偏差は、Ki(aap,1h)の計算において無視できる作用を有するはずである。
【0106】
(実施例8 基線サンプルの配列解析)
各患者のHCV集団についてのコンセンサス配列を、HCV cDNAを含む84の独立したプラスミドクローンの平均から導いた。コンセンサス配列の系統解析は、配列が患者特異的であったことを示した(図1)。平均した患者間のアミノ酸準種の複雑性(intra−patient amino acid quasispecies complexity)(Shannonエントロピー)および多様性(Hamming距離)は低く(それぞれ、0.332±0.109および0.421±0.195)、準種の異質性と、基線におけるHCV RNA血漿濃度との相関性は観察されなかった。患者内のアミノ酸の多様性(この試行においては、個々のコンセンサスを、患者の遺伝子型1aまたは1bのコンセンサス配列と比較した)は、遺伝子型1aについて1.3%であり、そして、遺伝子型1bについて2%であった。構造モデリング解析は、全ての患者のコンセンサス配列間で観察されるサブタイプ内のアミノ酸の差は、VX−950の結合に対してほとんど影響を有さないか、または、影響がないものと予測した。
【0107】
次いで、患者特異的なプロテアーゼクローンを発現させ、そして、VX−950による阻害について試験した。モデリングでの観察と一致して、特定のサブタイプ内での異なる患者の単離体に由来するこれらのプロテアーゼの酵素的IC50値には有意な差は存在しなかった。しかし、遺伝子型1bの患者についての平均IC50は、遺伝子型1aの患者についての平均IC50よりもわずかに高かった(図2)。この知見は、HCV−H(1a)およびHCV Con1(1b)についてのK値を測定した以前のインビトロでの結果(7)と一致している。1a遺伝子型の1b遺伝子型に対するモデリング解析は、インヒビター/基質の結合に影響し得る重要な差が、残基の132位にあり、一方で、他の差は、結合ポケットの外側に位置することを示唆した。遺伝子型1bのプロテアーゼのVal132側鎖は、VX−950のP3第三級ブチル−グリシン基と1つのファンデルワールス接触のみを形成し、一方で、遺伝子型1aのプロテアーゼのIle132側鎖は、2つの接触を形成する。この相互作用における構造的な差は、遺伝子型1bのプロテアーゼに比べて、より低い遺伝子型1aのプロテアーゼとの酵素的IC50を示す実験データと一致する。サブタイプ間にわずかな差が存在するが、両方のサブタイプが依然としてVX−950に対してはっきりと感受性である。まとめると、HCV NS3セリンプロテアーゼにおいて観察される配列の多様性にもかかわらず、遺伝子型1の患者は、プロテアーゼインヒビターVX−950を用いた処置に対して応答性であることが期待される。VX−950に対するウイルスの応答において有意な差が観察されなかったという臨床データは、この知見を支持する。
【0108】
(実施例9 遺伝子型データ:ETRおよび追跡サンプルの配列分析
処理終了時(ETR)のHCV NS3プロテアーゼ配列を、各患者について基線でのコンセンサス配列と比較して、潜在的耐性変異を同定した。80配列の平均を各ETRサンプルについて得て、そして181の位置の各々での改変体のパーセントを計算した。最初に、ETRサンプルの任意の1アミノ酸位置での、基線と比較して5%以上の頻度の増加を、潜在的耐性変異であると考えた。5%カットオフ値を用いた。なぜなら、これは、分析したクローン数およびPCRの誤りの割合に基づく本発明者らの配列決定プロトコルのより低いレベルの感度であったからである。基線で多型である部位での変化は、耐性変異とは考えなかった。投薬の終了時のみに存在して複数の患者において観察された部位での変化を、潜在的耐性変異であると考え、次いでこれらを全ての患者において分析した。
【0109】
分析に関しては、患者を、VX−950に対するウイルス量(血漿HCV RNAレベル)応答に基づいてグループに分けた。患者を、ウイルス動的分析において「初期応答者」または「継続応答者」グループ分けした。ウイルス配列分析において、「初期応答者」群を、最初の減少後の血漿HCV RNAの増加に基づいてさらに2つの群に分けた。測定された最低HCV RNAレベルから投薬の最後までの0.75のlog10未満の増加を有する患者を、HCV RNAの「プラトー」な患者と分類した。0.75のlog10よりも大きな血漿HCV RNA増加を有する患者を、HCV RNAの「跳ね返り」のある患者と分類した。未処置患者におけるHCV RNAの正常の変動は、約0.5のlog10であり、これらのグループ分けは、抗ウイルス応答ならびにウイルス変異パターンに基づいた。2つのタイプの分析間でこれらのカテゴリーが不一致である2人の患者が存在した。患者12308は、底から投薬終了(14日目)までで0.05のlog10の増加を有し、同じ配列分析について「プラトー」と分類されたが、ウイルスの動的分析については、12308は、「継続応答者」群に入れられた。患者3112は、11日目に検出不可能な血漿HCV RNA(<10 IU/ml)を有したが、投薬終了時(14日目)には35IU/mlの検出可能な血漿HCV RNAを有した。HCV RNAにおけるこの増加は、この患者がウイルス動的分析に関して「初期応答者」群に入れられることを引き起こした;しかし、配列分析においては、HCV RNAのレベルは、配列決定アッセイによって検出不可能なままであり、それゆえこの患者は「継続応答者」群に入れられた。
【0110】
配列分析は、以下によって患者をグループ分けした:応答なし(プラシーボ);投薬中の低下、続いて跳ね返り(跳ね返り);投薬中の低下、続いてプラトー(プラトー);および投薬全体を通しての継続低下(継続応答者)(図3)。さらに、これらの群内で、患者を、用量群および遺伝子型サブ群(1aまたは1b)によって分析した。最後に、変異を、VX−950の投薬中止後7〜10日間収集した追跡サンプルにおいて分析して、何らかの変異の存続ならびに基線改変体からの何らかのシフトをモニタリングした。81のクローンの平均を、各追跡サンプルに関して分析した。完全は配列分析は、患者のうちの28人について利用可能であり、そして残りの6人の患者の分析は現在進行中である。分析は、跳ね返りを有する2人の患者、プラトーを有する3人の患者、および継続低下を有する1人の患者に関して進行中である。プラシーボ患者の最初の群(n=6)においては、どの患者のいずれの位置においても基線からの顕著な変化は存在しなかった。
【0111】
(実施例10 投薬中のHCV RNAの跳ね返りを有する患者)
HCV RNAにおいて2より大きなlog10低下でVX−950に対して最初に応答したが、VX−950を投薬しながらも最終的に跳ね返りし始めた、13人の患者が存在した。これらの13人の患者のうち、6人は450mgのq8h用量群であり、1人は750mgのq8h用量群であり、そして6人は1250mgのq12h用量群であった。完全な配列分析は、14日目のこれらの患者のうち11人について利用可能である(表1)。これらの患者の全てが、36位の変異における顕著な増加を有した。36位では、遺伝子型1bの患者では、野生型バリンがアラニン(V36A)に変異し(平均60%、範囲31%〜86%)、そして遺伝子型1aの患者では、アラニンまたはメチオニン(V36M)のいずれかに変異した(平均62%、範囲18%〜90%)。サブタイプ1bにおいてV36Mが存在しないのは、サブタイプ1aにおいてはほんの1つの変化であるのに対して、サブタイプ1bにおいては2つのヌクレオチド置換が必要であることによるようである。V36A変異は、サブタイプ1aまたは1bのいずれにおいても1ヌクレオチド変化を必要とする。36位でのグリシンへの変異(V36G)もまた、遺伝子型1bの患者においてみられ、ロイシンへの変異(V36L)は1a患者においてみられたが、その頻度はずっと低かった。3人の患者はまた、54位において、トレオニンからアラニンへの変異(T54A)(平均35%、範囲8%〜67%)を有し、より低い頻度でセリンへの変異(T54S)を有した。興味深いことに、36位および54位での変異は、相互に排他的であるようである。さらに、遺伝子型1aである、この群における全ての患者は、155位においてアルギニンからリジン(R155K)またはトレオニン(R155T)のいずれかへの変異(平均60%、範囲22%〜99%)を、そしてより低い頻度でイソロイシン(R155I)、セリン(R155S)、メチオニン(R155M)またはグリシン(R155G)への変異を含んだ。R155におけるこれらの変異がサブタイプ1a患者に制限されるという観察もまた、1b患者においては基線からの2つのヌクレオチドの変化を必要とするのに対して、1a患者においては1ヌクレオチドの変化を必要とすることによるようである。この群からの追跡サンプルにおいては、野生型ウイルスは、再度出現し始めたが、ETRにおいて見られた全ての変異は、おそらくウイルスの適応度の相違に起因して頻度は異なるが、依然として存在した。配列決定サンプルは、各患者に関して跳ね返りが最初に観察された時点では利用可能ではなく、それゆえ、他の変異がそれよりも前に存在していたのかは明確ではない。
【0112】
(実施例11 投薬中にプラトーなHCV RNA応答を有する患者)
次の群(n=8)において、患者は、VX−950に最初は応答したが、それらのHCV RNA応答は安定化され、低下し続けなかったが、HCV RNAの増加はみられなかった。これらの患者のうちの2人は450mg q8h用量群であり、2人は750mg q8h用量群であり、そして4人は1250mg q12h用量群であった。分析は、14日目にこれらの患者のうちの5人について完了する(表1)。全ての患者は、156位においてアラニンからバリン(A156V)またはトレオニン(A156T)への変異を発達させ、そして非常に稀な頻度でセリン(A156S)またはイソロイシン(A156I)への変異を発達させた。このA156V/T変異は、この群における患者のうちの3人において非常に高い頻度(100%)で見られ、そして他の変異はこれらの患者において見られなかった。他の2人の患者(02104および12308)は、それぞれ、8%のA156T変異ウイルスおよび30%のA156V変異ウイルスを有するのみであったが、これらの患者はまた、他の位置において変異を有した(患者02104に関しては47%のV36A/Mおよび36%のR155K/T;患者12308に関しては68%のT54A)。跳ね返り群からの1人の患者02102はまた、類似の頻度(11%)の変異を156位に有した。追跡時間点では、156位の変異は、野生型ウイルスまたは36位、54位および/もしくは155位の変異を有する変異のいずれかによってほぼ完全に置き換えられた。156位のセリンへの変化(A156S)は、VX−950のインビトロ耐性研究(7)の間に見られた優勢な変異であった。A156V/T変異もまた、インビトロ研究(7)においてVX−950およびBILN 2061の両方に対する交差耐性として同定された。
【0113】
(実施例12 投薬中に継続応答を有する患者)
残りの7人の患者は、HCV RNAレベルが14日間の投薬期間全体を通して継続的に減少して、VX−950に応答した。これらの患者のうちの5人は、750mg q8h用量群であり、そして2人は450mg q8h用量群であった。これらの患者は、14日目に非常に低いレベルのHCV RNA(64IL/mLから検出不可能(<10 IL/mL))を有し、そして配列決定データは、この時点では得られなかった。しかし、HCV cDNAは、これらの患者に関して追跡サンプルから成功裏に増幅された。そして分析は、これらの7人の患者のうち6人について完了している(表1)。14日目までに検出不可能なレベルに達した遺伝子型1aの患者(03205)は、追跡の時点で3つの変異(V36A/M(67%)、T54A(11%)、およびR155K/T(26%))を有した。追跡において、2人の遺伝子型1bの患者は、V36A変異(21%および25%)およびT54A変異(54%および20%)を有し、そして別の2人の1b患者は、ほんの低レベルのV36A変異(3%および9%)およびT54A変異(6%および1%)を有した。14日目に検出不可能なHCV RNAレベル(<10IL/mL)を有した最後の1b患者においては、変異は、追跡において検出されなかった。
【0114】
(実施例13 二重変異の頻度)
患者において見出された二重変異の頻度もまた分析した。36位の変異が、155位(36/155二重変異)および156位(36/156二重変異)の両方での変異と組み合わせて見出された。遺伝子型1aの患者のみが、36/155二重変異を有した。これは、14日目のETRにおいて、跳ね返り群において分析された8人全ての1a患者(平均27.6%、範囲10%〜77%)およびプラトー群における2人の1a患者のうちの1人(9%)において見られた。36/156二重変異は、ずっと頻度が低く、そして14日目のETRにおいて、跳ね返り群において3人の患者(3%、範囲1%〜5%)およびプラトー群において2人の患者(1%および4%)において見出された。二重変異もまた、追跡サンプルにおいて、36/155については類似の頻度で見出されたが、36/156については、ETRサンプルと比較してより低い頻度で見出された。低下し続けた患者の群に関しては、ほんの1人の患者が36/155二重変異を有したが、これは、5%で存在した。
【0115】
単独または組み合わせのいずれかで見出された変異の頻度を図4に示す。耐性パターンのまとめを図5に示す。図5は、各患者群に関する変異したアミノ酸の平均パーセントを示す。
【0116】
(実施例14 表現型データ:耐性変異の酵素的IC50分析)
82個の独立した配列決定クローンの平均を遺伝子型分析に供したので、表1に示すように、各患者においてビリオンの混合物が存在した。上記配列分析において見られた全ての変異体(V36A/M/G、T54A/S、R155K/T/M/G/S、およびA156T/V/S)の酵素、ならびにインビボで見出されたこれらの変異の任意の観察された組み合わせのIC50を、少なくとも2つの異なる患者特異的な遺伝的背景において決定した。1つの遺伝子型内の全ての患者に関する基線IC50は、実施例6において報告されたとおり類似していた。耐性プロテアーゼの酵素のIC50値は、遺伝子型1a HCV−H参照株と比較して倍数変化と報告されている。この参照株のIC50は、この酵素アッセイにおいて64nMであることが見出された。
【0117】
図5は、1変異体に関して、酵素のIC50値および参照株に対する倍数変化を示す。所定の位置での任意のアミノ酸変化が類似している値を、この図においてボックス内に一緒にグループ化する。36位における1変異は、VX−950に対する低レベルの耐性を付与する。V36A/M/L変異は、特異的アミノ酸の変化にかかわらず、酵素IC50における約1.5〜10倍の増加を示す。トレオニンからセリンへの54位の置換(T54S)は、IC50を重大には増加させなかった。しかし、T54A変異は、酵素のIC50を約10倍増加させた。155位の置換はまた、アルギニンからトレオニンへの変化(R155T)、アルギニンからリジンへの変化(R155K)、アルギニンからメチオニンへの変化(R155M)またはアルギニンからセリンへの変化(R155S)のいずれについても、ごく低いレベルの耐性(IC50における約5〜15倍の増加)を与えた。アラニンからバリンへの156位の変異(A156V)、アラニンからトレオニンへの156位の変異(A156T)またはアラニンからイソロイシンへの156位の変異(A156I)は、高レベルの耐性(酵素IC50における約400〜500倍の増加)を与えた。興味深いことに、A156S変異は、この位置における他のアミノ酸変化よりもVX−950に対してずっと耐性が低く(IC50におけるほんの22倍の増加)、このことは、インビトロでの耐性研究(6、7)と一貫している。
【0118】
図6は、二重変異体について、実際の酵素IC50値ならびに参照株に対する倍数変化を示す。これらの位置での二重変体は、いずれの単一変異よりも高いレベルの耐性を与える。155位または156位のいずれかの変異と組み合わせた36位の変異は、それぞれの単一変異体のさらに約10倍の耐性増加を与える。表2は、VX−950ならびに別のHCVプロテアーゼインヒビターBILN2061に対して試験した全ての変異体に関する実際のIC50値を列挙する。36位および54位の変異は、BILN2061に対してよりもずっと大きくVX−950に対する感受性に影響を与えるが、一方、残基155での変異は、BILN2061に対するずっと互いレベルの耐性を付与する。156位での変異ならびに二重変異は全て、両方のインヒビターに対する高レベルの耐性を付与する。しかし、A156S変異体は、VX−950に対してより耐性であり、これは、以前にインビトロで示されている(7)。表3は、所定の位置での全ての変異の酵素のIC50および参照株に対する倍数変化の平均および標準偏差の値を示す。
【0119】
(実施例15 各患者に関する平均表現型)
ここで行った遺伝子型分析は、各患者内での異なる耐性変異の相対比率の詳細な実験を可能にした。これらのウイルス混合物によって付与される表現型耐性のレベルをより良く理解するために、調査分析を行って、各患者に関する平均表現型を得た。所定の単一変異または二重変異内のビリオンのパーセントに、所定のその変異体に関する酵素IC50内の平均倍率変化(表3)をかけ、次いで全ての値を各患者に加えた。相対数(100によって割った値)を、表1の最後の欄に示す。跳ね返り群の患者に関する平均値は、14日目に27(範囲6〜70)であり、そして追跡において15(範囲3〜29)であった。プラトー群の患者に関する平均値は、14日目に272(範囲26〜466)であり、そして追跡において32(範囲1〜126)であった。低下し続けた最後の群の患者は、追跡において平均値4を有した(範囲0〜10)。これらの非常に予備的な計算から、全ての患者群における耐性のレベルは、最後の用量の後に(14日目から追跡まで)低下したようである。このことは、予想外ではない。なぜなら、薬物圧は、耐性ビリオンの選択に関してもはや存在しないからである。跳ね返り群の患者が、プラトーである患者よりも低いレベルの耐性を有するようでもある。薬物動態学的データと耐性パターンとを相関させる分析が現在行われている。
【0120】
(実施例16 耐性変異の適応度分析)
これらのウイルス改変体の耐性プロファイルに加えて、これらのウイルス改変体の別の重要な局面は、適応度のレベルである。単一変異体および二重変異体のウイルス適応度を計算した(表4)。所定の時点での個々の患者における各HCV改変体の感染単位の絶対数(IU/mL)を決定した。例えば、14日目の患者03201におけるA156V/T変異内の改変体の感染単位の絶対数を以下の通りに計算した:VLd14(A156V/T,3201)=VLd14(全体,3201)×% A156V/Td14(3201)。投薬終了時(14日目,VLd14(全体,3201))または追跡(21日目,VLd21(全体,3201))のいずれかでの総HCV RNAを、Roche COBAS Taqman HCVアッセイによって決定したとおりの血漿HCV RNAレベルの分析から得た。検出不可能なレベルのHCV RNAは、5IU/mLであると考えられた。投薬終了時(14日目,%A156V/Td14(3201))または追跡(21日目,%A156V/Td21(3201))のいずれかでの各個々の改変体群(例えば、A156V/T)の百分率を、上記の配列分析から得た(表1)。次に、投薬後(14日目〜21日目)の個々の患者の血漿中の各HCV改変体およびHCV集団全体に関する血漿HCVウイルス量の正味の増加倍率(NVL)を決定した。例えば、
NVL(A156V/T,3201)=VLd21(A156V/T,3201)/VLd14(A156V/T,3201)
NVL(全体,3201)=VLd21(全体,3201)/VLd14(全体,3201)
各HCV改変体のNVLを、各患者における血漿HCV集団全体のNVLに対して正規化した:%NVL(A156V/T,3201)=NVL(A156V/T,3201)/NVL(全体,3201)
【0121】
次いで、個々の患者における各HCV改変体の正規化したウイルス量の正味の増加倍率を、log10に変換した値(Log10[%NVL(A156V/T,3201)])に変換し、そして1つの改変体に関する平均値を全ての患者から決定した。次いで、HCV変異体の適応度を計算した:A156V/T変異に関する適応度=10Log(適応度,A156V/T)。この相対適応度スコアを、各変異体の耐性レベルを用いて分析した。図7に示すとおり、全ての変異体は、野生型よりも適応度がより低かった。そして一般に、この分析を用いると、単一変異体の適応度と耐性との間に逆の相関が存在する。しかし、二重変異体36/155は、適応度にそれほど影響を与えずに耐性における有意な増加を有する。これは、耐性を依然として付与しながらも適応度の喪失を代償する変異の相互作用に起因し得る。
【0122】
(実施例17 R155K改変体プロテアーゼのX線構造)
NS4Aペプチド補因子との複合体におけるHCV−H株プロテアーゼドメインの精製されたR155K改変体(Kimら,(1996)Cell 87(2),343−355)(濃度8.0mg/ml)を、結晶化試験に用いた。このタンパク質の結晶を、0.1M MES(pH6.2)、1.4M NaCl、0.3M KHPO、および10mM β−メルカプトエタノールのレザバ液体で成長させた。単結晶を、2日間にわたる平衡化後にぶら下げた液滴において得た。0.15×0.15×0.35mmの寸法の単結晶を、窒素ガス流中で100Kまで瞬間冷却(flush−cool)される直前に25%グリセロールが添加された母液の凍結防止剤溶液中に移した。回折像を、ALSビームライン5,01に取り付けられたCCD4画像プレート機器を用いて収集した。2.5Åの解像度でのデータを指数化し、そしてHKL(2000,HKL Incorporated,Charlottesville,VA)およびCCP4ソフトウェアを用いて統合した。これらの結晶は、a=225.31Å、b=225.31Å、c=75.66Å、α=90.00°,β=90.00°およびγ=120.00°の単位格子寸法を有する空間群R32に属する。後の精密化において試験自由R因子に割り当てられたデータの5%が存在する。ここで研究したR155K改変体の結晶は、以前に公開された野生型プロテアーゼNS3−4Aの結晶格子(Kimら,前出)と同一の結晶格子を有する。公開されたNS3−4Aプロテアーゼドメイン(PDBコード:1A1R)を用いて、このモデルの最初の剛体および位置精密化を行った。残基155の側鎖における相違がArgの代わりのLysであることを電子密度地図において確認した。このタンパク質分子を、QUANTAプログラムを用いて電子密度地図に対して視覚的に調べた。さらに、20.0から2.5Åの解像度の範囲で精密化および個々のB因子精密化において溶媒分子を含ませることにより、R因子および自由R因子がそれぞれ22.0%および24.7%に減少した。精密化モデルに含まれた残基は、結晶非依存性分子および2つのZn金属イオンに関して、NS3プロテアーゼドメインのアミノ酸1〜181およびNS4A補因子の残基21〜39の範囲に及ぶ。
【0123】
(実施例18 コンピュータモデリング)
テラプレビルを、以前に記載された手順(Linら,前出)に従って、NS4A補因子ペプチドとの複合体におけるR155K改変体アポ酵素のX線結晶構造を用いてR155K改変体NS3プロテアーゼドメインの活性部位にモデル化した。テラプレビルのケトアミド基をモデル化して、si面付着のSer139側鎖を有する共有結合付加物を形成した。この結合モードは、類似のケトアミドインヒビター(Perniら,(2004)Bioorg.Med.Chem.Lett.14(6),1441−1446)およびケト酸インヒビター(Di Marcoら,(2000)J.Biol.Chem.275(10),7152−7157)に関して観察された。このインヒビターの主鎖は、これらのケトアミドインヒビターおよびケト酸インヒビターの類似の主鎖上に重ねられた。その結果、テラプレビル主鎖は、以下の骨格水素結合の全てを作成する:Lys155カルボニルとのP1 NH、Ala157 NHとのP3カルボニル、Ala157カルボニルとのP3 NH、およびCys159のNHとのP4キャップカルボニル。この結合モードでは、Lys155側鎖を移動することを全く必要とせずに、テラプレビルのP2基をS2ポケットに配置した。テラプレビルのt−ブチル基およびシクロヘキシル基を、それぞれ、S3ポケットおよびS4ポケットに配置した。このインヒビターを、2段階でエネルギーを最小化した。第1段階では、このインヒビターおよびこのプロテアーゼのArg123、Lys155、およびAsp168の側鎖原子のみを、1000工程のエネルギー最小化中に移動させた。第2段階では、このプロテアーゼの全ての側鎖原子を、さらに1000工程についてこのインヒビターとともに移動させた。このモデル化構造は、以前に記載された野生型NS3プロテアーゼの活性部位でのテラプレビルモデル(Linら,前出)を密接に模倣する。Lys155側鎖または他の活性な残基の側鎖の位置での有意なシフトは観察されなかった。同じ手順をテラプレビルを、NS3プロテーアゼドメインのR155T改変体の活性部位にドッキングさせるために繰り返した。しかし、この場合の酵素の構造は、X線結晶構造ではなく、R155K改変体結晶構造を用いて構築されたモデルである。Lys155残基をThr側鎖で置換し、そしてThr155側鎖以外の固定された酵素の全ての原子を保持することにより最小化した。このモデルでは、Thr155側鎖のヒドロキシル基は、Asp81の側鎖と水素結合を形成する。全てのモデリングおよび最小化の手順を、QUANTA分子モデリングソフトウェア(Accelrys Incorporated,San Diego,CA)を用いて実施した。
【0124】
(実施例19 研究結果)
酵素アッセイおよび構造研究からの結果を、本発明の特定の改変体についての上記の考察に加えてここに提示する。
【0125】
1)NS3プロテアーゼのArg155での置換は、HCVレプリコン細胞中でテラプレビルに対する低レベルの耐性を付与する。
【0126】
HCV NS3プロテアーゼドメインのArg155の観察された置換が、テラプレビル(VX−950)に対する耐性を付与するのに充分であるか否かを決定するために、NS3の残基155でのいくつかの置換(R155K、R155T、R155S、R155I、R155MまたはR155G)を高効率サブゲノムレプリコンプラスミド(Con1−mADE)に導入した。安定なHCVレプリコン細胞をこれらの改変体の各々に関して作製し、NS3 Arg155の異なる残基での置換が、細胞中でのHCV RNA複製がなくならなかったことを示した。野生型HCVレプリコンCon1−mADE細胞中のテラプレビルの平均48時間IC50値は、0.485±0.108μMであった。これは、異なるセットの適応変異を有するCon1ベースのHCVレプリコン細胞中で以前に決定された値(0.354μM)(24−2)(25,41)よりもわずかに高い。2つの主要Arg155改変体(R155KおよびR155T)は、テラプレビル単独での第Ib相試験において観察され、R155Kに関して3.59±0.28μMの、そしてR155Tに関して9.60±0.87μMの、平均48時間テラプレビルIC50値を有した。これはそれぞれ、野生型Conl−mADEレプリコンと比較して7.4倍の増加または20倍の増加に対応する(表I)。テラプレビルに対する感受性の類似の減少は、Arg155での他の4つのマイナーな改変体を含むHCVレプリコン細胞において観察された:R155S、R155I、R155M、またはR155G;表I。これらの4つの改変体は、テラプレビルの第Ib相試験においてR155K/Tよりもずっと低い頻度で見出された。これらの4つの改変体に関するレプリコン48時間IC50値は、1.97±0.21μM(R155S)、11.7±2.5μM(R155I)、2.68±0.21μM(R155M)、および3.58±0.24μM(R155G)であった。これは、テラプレビルに対する4.1倍、24倍、5.5倍、および7.4倍の感受性喪失に対応する(表I)。これらの結果は、NS3 Arg155の置換が、置換された残基(これは、正に荷電した残基(Lys)、親水性残基(ThrまたはSer)、疎水性残基(IleまたはMet)、または側鎖を欠く残基(Gly)を含む)の物理的特性とは独立して、HCVレプリコン細胞におけるテラプレビルに対する低レベル(<25倍)の耐性をもたらしたことを示す。
【0127】
【表1】

安定な野生型(mADE)および改変体のHCVサブゲノムレプリコン細胞株を、対応する高効率Con1レプリコンプラスミドからのT7 RNAランオフ(runoff)転写産物を用いて作製した。テラプレビルの平均IC50値およびSDを、3つの独立した実験において、48時間のアッセイにおいてHCVレプリコン細胞株について決定した。倍数変化を、所定の改変体のIC50を、野生型HCVレプリコンのIC50によって割ることによって決定した。
【0128】
2)HCV NS3プロテアーゼのArg155での置換は、酵素アッセイにおけるテラプレビル感受性の低下をもたらした。
【0129】
HCV NS3プロテアーゼドメイン中のArg155での置換が、酵素レベルで、テラプレビルに対する感受性の欠如を引き起こすに充分であるか否かを確認するために、Arg155を、NS3プロテアーゼドメイン(遺伝子型1a)(ここからテラプレビルを投薬する前に患者におけるHCVサンプル由来の配列を誘導した)において、Lys、Thr、SerまたはIleで置換した。R155K変異、R155T変異、R155S変異、またはR1551変異を含むNS3セリンプロテアーゼドメインのタンパク質をE.coliにおいて発現させ、そしてテラプレビルに対する酵素感受性の決定前に精製した。テラプレビルに対する耐性を、Ki(app,1h)における倍数変化によって規定した。Ki(app,1h)は、テラプレビルとの1時間の事前インキュベーション後に測定した見かけのKである。
【0130】
Arg155での置換を有する改変体に対する、KK4A補因子ペプチドと共複合体化(co−complexed)した野生型HCVプロテアーゼドメインについてのテラプレビルの感受性の比較を、表IIに示す。KK4Aペプチドと複合体化した、野生型遺伝子型1aの患者のNS3プロテアーゼドメインに対するテラプレビルの平均Ki(app,1h)値は、0.044±0.033μMであった(表II)。対照的に、テラプレビルの平均Ki(app,1h)値は、R155Kプロテアーゼに関して約11倍高く、そしてR155Tプロテアーゼに関して9倍高かった(表II)。この2つの主な改変体は、テラプレビル単独の第Ib相試験において観察された。テラプレビルの第Ib相試験において観察されたマイナーなArg155改変体のうちの2つであるR155SおよびR155Iは、それぞれ、野生型プロテアーゼのKi(app,1h)値と比較して、22倍および16倍のKi(app,1h)値の増加を示した(表II)。これらのデータは、別の正に荷電した残基(Lys)の保存的置換を含めた、異なるアミノ酸でのArg155の置換が、テラプレビルに対する感受性の低下をもたらすことを示す。
【0131】
【表2】

テラプレビルの平均Ki(app,1h)値およびSDを、3〜5つの独立した実験においてKK4A補因子ペプチドおよびFRET基質を用いて、精製された野生型および4つの改変体HCV NS3セリンプロテアーゼドメインについて決定した。倍数変化を、野生型プロテアーゼのKi(app,1h)によって、所定の改変体のKi(app,1h)を割ることによって決定した。
【0132】
3)R155K HCV NS3プロテアーゼのX線構造
正に荷電したアミノ酸(Lys)を含めた別の残基によるArg155の置換が、テラプレビルに対する感受性の欠如をなぜもたらすのかを理解するために、R155K NS3プロテアーゼのX線結晶構造を決定した。R155K変異を操作して、NS4A補因子ペプチドと共複合体化した野生型プロテアーゼの構造を決定するために以前に用いられたT7−タグ融合HCV−Hプロテアーゼ構築物にした。2.5Åの解像度での、NS4A補因子ペプチドと共複合体化したR155Kプロテアーゼドメインのアンサンブル構造は、以前に記載された野生型HCV−H株プロテアーゼ複合体のアンサンブル構造(Kimら,前出)と非常に類似する。手短に述べると、1分子のNS3プロテアーゼドメイン(残基1〜181)および1分子の補因子NS4A(残基21〜39)は、球状の実体を形成し、これは次いで、非対称単位において、別の球状実体とのホモダイマーを形成する。NS4A補因子との複合体におけるLys155改変体プロテアーゼの1つの球状単位は、野生型Arg155共複合体と重なった。Cα原子のrms偏差はほんの0.314Åであったので、これらの2つのプロテアーゼの構造にはほとんど相違が存在しない。
【0133】
S2ポケットおよびS4ポケットにおけるNS3プロテアーゼの残基123、168および155の側鎖のクローズアップ図を図25(B)に示す。残基155の側鎖(Lys155対Arg155)の全体的なシフトは、残基155のCδと、触媒三つ組み残基のうちの1つであるAsp81のCβとの間の距離によって実証されるように小さい:Lys155について4.26Å、そしてArg155について4.24Å。R155Kプロテアーゼにおいて、Lys155の最後のアミン(Nz)とAsp81のCβとの間の距離は3.5Åであり、Lys155のCδとAsp81のCβとの間の距離は3.6Åである。野生型プロテアーゼでは、Arg155のNH1およびNzはそれぞれ、そのAsp81のCβとは離れており、5.6Åおよび5.3Åである。従って、R155Kプロテアーゼ中のLys155の末端アミン基は、Arg155の匹敵する末端アジド基よりもAsp81のカルボキシル基により近い。対照的に、野生型プロテアーゼにおけるArg155の末端NH2およびAsp168のOε2の対応する対が3.2Åであるのと比較して、Lys155のNzとAsp168のカルボキシル原子Oε2との間の距離はR155Kプロテアーゼにおいて5.8Åである。従って、R155KプロテアーゼにおけるLys155の末端アミン基は、Arg155の匹敵する末端アジド基よりもAsp168のカルボキシル基からさらに離れている。それゆえ、残基155でのLysによるArgの置換は、S2結合ポケットの形状を変化させ、その結果、Lys155のNz原子における正の電荷は、野生型Arg155とAsp168対の場合のようには、Asp168の隣接する側鎖によって中和され得ない。
【0134】
4)R155K改変体またはR155T改変体のテラプレビルに対する耐性の機構
テラプレビルとNS3プロテアーゼとの間の相互作用の構造モデルが以前に記載されている(例えば、Linら,前出)。R155K酵素とのテラプレビルの共複合体のモデルでは、残基155の側鎖での相違以外は、同じ相互作用が維持された。野生型プロテアーゼ構造では、Arg155側鎖は、テラプレビルの二環式P2基上で曲がって、いくつかの直接的ファンデルワールス接触を行い、そしてテラプレビルのP2基に疎水性環境を提供する(図26(A))。しかし、R155K酵素のLys155側鎖は、伸びたコンホメーションを有し、そしてP2基との1つまたは2つのみの直接接触を行い、従って、テラプレビルのP2基を、溶媒に対してより露出させたままにする(図26(B))。この観察は、インビトロ酵素アッセイで示されたように、R155K酵素がテラプレビルに対して感受性がより低いことと一貫している。R155M改変体がMet155側鎖の伸びたコンホメーションを有し、それゆえ、インヒビターの結合の観察された減少と一貫して、テラプレビルのP2基との同様により少ない相互作用を有すると仮定することは合理的である。
【0135】
155位により短い側鎖を有する残基を有する改変体に対するテラプレビルの結合の機構を理解するために、テラプレビルと複合体化したR155T改変体酵素のモデルを用いた。Thr155側鎖がインヒビターのP2基に疎水性カバーを提供するには短すぎることは、このモデルから明白である(図26(C))。Ile、SerおよびGIyのような他の短い側鎖は、サイズが同様に短いかまたはさらに短く、そしてP2基との相互作用を失うと予想され、そしてテラプレビルに対する、より低下した結合親和性を有すると予想される。
【0136】
5)NS3プロテアーゼのArg155に置換を有するHCV改変体レプリコンは、IFN−αに対する感受性を完全に保持する。
【0137】
NS3残基155に置換を有するテラプレビル耐性改変体レプリコン細胞がIFN−αまたはリバビリンに対して感受性のままであるか否かをまた決定した。表IIIに示すように、IFN−αまたはリバビリンのIC50は、R155K変異、R155T変異、またはR155M変異を含むHCVレプリコン細胞について、野生型レプリコン細胞と比較して実質的に同じままであった。これらの結果は、IFN−αとリバビリンありまたはリバビリンなしでの組み合わせが、NS3プロテアーゼ残基155での置換を有するHCV改変体の出現を抑制するための潜在的治療ストラテジーであり得ることを示唆する。
【0138】
【表3】

安定な野生型HCVおよび改変体HCVのサブゲノムのレプリコン細胞株を、対応する高効率Con1レプリコンプラスミド由来のT7 RNAランオフ転写産物を用いて作製した。IFN−αおよびリバビリンの平均IC50値およびSDを、3回の独立した実験において48時間アッセイにて、HCVレプリコン細胞株について決定した。所定の改変体のIC50を野生型HCVレプリコンのIC50で割ることにより、倍数変化を決定した。
【0139】
(実施例20 研究結果のまとめ)
1つの研究は、VX−950が14日間投薬された遺伝子型1のC型肝炎を有する被験体におけるHCVプロテアーゼNS3−4A領域の配列分析により、VX−950単独療法に対する薬物耐性変異の可能な出現をモニタリングすることであった。伝統的に、抵抗性遺伝子型決定は、集団ベースの配列決定によって行われている。これは、血漿ウイルスにおける優勢な配列を検出する。ウイルス集団のうちの20%未満を構成するあらゆる配列は、この方法によっては検出されない。薬物耐性変異は、14日間よりも長くかかって、この測定可能なレベルを蓄積し得るので、改変体のマイナーな集団を検出するための新たな方法が開発された。配列を、1つの時点で1人の被験体から約80〜85の個々のウイルスクローンから得て、その結果、集団のうちの約5%まで低下した感度で、VX−950の14日間の投薬中に出現し得る耐性変異が同定され得る。
【0140】
VX−950に対するウイルス応答によってグループ分けされた被験体では、別個の変異パターンが観察された。HCV RNAが投薬期間中に跳ね返りをした第1群の被験体では、野生型ウイルスは、ETRおよび追跡において36位、54位または155位の変異を含む3つのウイルス改変体のうちの1つによってほぼ完全に置き換えられた。V36A変異は、遺伝子型1b被験体において見出され、一方、V36A/MまたはR155K/Tは、遺伝子型1a被験体において見られた。いくつかの改変体はまた、1a被験体において36位および155位の二重変異を含んだ。T54A変異は、1aおよび1bの両方のサブタイプにおいて見られた。36位および54位の変異は、相互に排他的のようであった。なぜなら、これらは同じゲノムにおいて稀にしか一緒に見出されなかったからである。第2群の被験体は、14日間の投薬期間の最後にレベルオフになった最初のHCV RNA低下を有した。これらの被験体は、156位にアラニンからバリン(A156V)またはトレオニン(A156T)のいずれかへの変異を含んだウイルスを保有した。156位でのこの変異は、VX−950の存在下でインビトロで発達することが以前に示された(6,7)。何人かの被験体は、36位および156位において二重変異も含んだいくつかの改変体を保有した。
【0141】
被験体特異的プロテアーゼクローンを発現させ、そしてVX−950による阻害について試験した。1つのサブタイプ内の異なる被験体単離体から誘導された基線のプロテアーゼの酵素のIC50値に有意な相違は存在しなかった。しかし、変異体プロテアーゼのIC50値は、VX−950に対する種々の程度の感受性減少を示す。最後の群の被験体におけるHCV RNAは、投薬期間を通して低下し続け、そしていくつかは、現行のアッセイの検出限界(10IU/mL)未満のレベルに到達した。本発明者らの配列決定アッセイの感度の限界(>100IU/mL)に起因して、ウイルス配列データは、投薬14日目にこれらの被験体について入手可能ではない。しかし、VX−950の最後の用量の7〜10日後に採取されたサンプルは、全ての被験体について成功裏に配列決定された。最初の2つの応答群からの追跡サンプルでは、耐性変異が、全ての被験体の血漿において持続することが見出された。しかし、多くの場合、156位での変異頻度は、野生型ならびに36位または54位の変異が比例して増加し始めたので、有意に減少した。155位の変異を有するビリオンの比率は、比較的一定のままであった。変異パターンにおけるこれらのシフトは、薬物選択圧の非存在下での改変体間の適応度の相違に起因するようである。36位、54位または155位に変異を有するウイルスは、野生型よりも適応度が低いにもかかわらず、依然として合理的に適合するが、一方、残基156の変異体は、薬物の非存在下では極めて適合しないようである。これらのデータから、種々の単一変異体に関して耐性レベルと適応度との間に逆の相関が存在するようである。血漿HCV RNAがプラトーの被験体群から得られたデータは、所定の臨床応答を生じることにおけるウイルス学的耐性および適応度の影響を示した。従って、臨床応答自体は、基礎となるウイルス学を示すことはできない。
【0142】
投薬中に連続したHCV RNA低下を有して低レベルのHCV RNAに到達した最後の群の被験体の分析は、追跡時に存在するウイルスが、大部分が36位および54位での低レベルの耐性変異からなっていたこと、および被験体のうちの3人がほとんど変異を保有せず、大部分または完全に野生型であったことを明らかにする。あったにしろどのような改変体が14日目に存在していたかは不明であるが、この結果は、VX−950に対する最適な応答を用いて、単独療法での、または他の抗ウイルス化合物(例えば、Peg−IFN)の追加による、臨床耐性を回避することが可能であり得ることを示唆する。投薬レジメンを最適化することは、この応答をより多数の患者へと広げ得る。
【0143】
まとめると、これらの結果は、この研究におけるVX−950の投薬レジメンが、種々のレベルの薬物耐性を有するNS3プロテアーゼにおける異なる変異の選択をもたらし得ることを示す。増加した濃度のVX−950は、(36位、54位および155位の)低レベルの耐性を有するウイルスの出現を予防すると予想される。(156位での)残りの高レベルの耐性ウイルスは、併用治療を含めた異なる処置選択肢を通して克服され得る。より高い薬物濃度は、ウイルス複製をより完全に阻害して、より急な勾配の最初の低下を引き起こし得る;従って、耐性変異が選択されて臨床耐性を引き起こす機会を減らす。VX−950処置に対するPeg−IFNの追加は、これらのウイルスの免疫媒介性クリアランスを増強し得、そして免疫媒介クリアランスの有効性は、耐性改変体の存在によって影響されないはずである。156位での変異は高レベルの耐性を付与するが、VX−950の非存在下でのその相対的な複製速度によって測定された場合、顕著な適応度コストを有するようになるようである。抗ウイルス薬物耐性が、損なわれたウイルス適応度と関連するというますます増加している証拠が存在する。これは、臨床利益へと翻訳され得る(1〜3,9)。このような低いレベルで複製する耐性ウイルスは、代償的適応度変異を直ちに蓄積せず、宿主免疫系または他の薬物(例えば、Peg−IFN)が残りのウイルスをクリアランスするのを可能にし得る。
【0144】
(参考文献)
【0145】
【化1】

【0146】
【化2】

【0147】
【化3−1】

【0148】
【化3−2】

底から14日目(投薬の終了)までのHCV RNAの対数変化。患者3108は、14日目のHCV RNA値を有さなかったので、11日目の値と17日目の値とを使用して推測した。
VX−950の最初の投薬からの日数
82クローンの平均に基づく割合
(アミノ酸位置の変異%)×(全ての単一および二重変異についてのアミノ酸についてのIC50の平均の倍数変化)/100の合計
ETR=処置の終了(14日目)
FU=追跡(ETR後、7〜10日)
n/a=利用可能ではない(進行中)
nd=検出不能。
【0149】
表2.VX−950およびBILN2061での単一変異および二重変異のIC50分析
【0150】
【化4】

nd=調べていない
【0151】
【化5】

【0152】
【化6】

(参考としての援用)
本明細書で言及される全ての刊行物および特許は、あたかも各々個々の刊行物または特許が具体的かつ個別に参考として援用されることが示されるように、それらの全体が参考として援用される。
【0153】
本開示の具体的な実施形態が議論されたが、上記の明細書は例示的であり、かつ限定的ではない。本開示の多くのバリエーションが、本明細書および上記の特許請求の範囲を鑑みることにより当業者に明らかになる。本開示の完全な範囲が、特許請求の範囲(その等価物の完全な範囲とともに)、本明細書(このようなバリエーションとともに)を参照することによって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含む単離されたC型肝炎ウイルス(HCV)ポリヌクレオチドであって、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つのコドン位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号1の核酸配列の1位〜543位までの領域と少なくとも60%の配列同一性を有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記核酸配列が、配列番号1の核酸配列の1位〜543位までの領域と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記核酸配列が、配列番号1の核酸配列の1位〜543位までの領域と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む単離されたC型肝炎ウイルス(HCV)改変体であって、該核酸配列は、配列番号2のアミノ酸位置36位または156位に対応する配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つのコドン位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、HCV改変体。
【請求項6】
セリンプロテアーゼ活性を有する単離されたC型肝炎ウイルス(HCV)プロテアーゼであって、該プロテアーゼは核酸配列によってコードされ、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つのコドン位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置におけるアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、HCVプロテアーゼ。
【請求項7】
セリンプロテアーゼ活性を有するC型肝炎ウイルス(HCV)NS3プロテアーゼに対して特異的に結合する抗HCVプロテアーゼ抗体であって、該プロテアーゼは、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位および156位からなる群より選択される位置に対応する少なくとも1つの位置において、アミノ酸残基が、配列番号2の対応する位置におけるアミノ酸残基と異なっているアミノ酸配列を含み、但し、該抗体は、配列番号2のアミノ酸位置79〜83位からなるエピトープに結合する抗体を除く、抗HCVプロテアーゼ抗体。
【請求項8】
請求項1に記載のHCVポリヌクレオチドを含む発現系。
【請求項9】
請求項8に記載の発現系であって、ベクターを含み、該ベクターは、プロモーターに作動可能に連結した請求項1に記載のHCVポリヌクレオチドを含む、発現系。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターでトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入された宿主細胞。
【請求項11】
mRNAディスプレイ系である、請求項8に記載の発現系。
【請求項12】
患者においてC型肝炎ウイルス(HCV)感染のプロテアーゼインヒビターに対する薬物の耐性または感受性を評価するための指標として、セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列であって、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応するコドン位置においてコドン変化を有する核酸配列、の存在または不在を用いる方法であって、該方法は、以下:
a)該HCV感染患者から収集した生物学的サンプルが、セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含むか否かを評価する工程であって、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位および156位からなる群から選択されるコドン位置に対応する少なくとも1つのコドン位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、工程
を包含する方法。
【請求項13】
患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染を処置するための候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むHCV改変体に感染したサンプルを提供する工程であって、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つのコドン位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、工程;
b)該サンプルにおける該HCV改変体の活性を阻害する該候補化合物の能力をアッセイする工程
を包含する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記HCV改変体の前記活性は、複製である、方法。
【請求項15】
患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染を処置または予防するための候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a)セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むレプリコンRNAを提供する工程であって、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つの位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、工程;
b)該候補化合物が、a)の該レプリコンRNAの複製を阻害するか否かを決定する工程を包含する方法。
【請求項16】
患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染を処置するための候補化合物を同定する方法であって、該方法は、以下:
a)セリンプロテアーゼ活性を有する単離されたHCV NS3プロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を提供する工程であって、該プロテアーゼは1位〜543位までの核酸配列によってコードされ、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つの位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、該プロテアーゼおよび該基質は、細胞ベースの系または無細胞系の中に存在する、工程;
b)該HCV NS3プロテアーゼを該候補化合物と、該基質の存在下で接触させる工程;および
c)該HCV NS3プロテアーゼの活性が低下するか否かを決定する工程
を包含する方法。
【請求項17】
患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染を処置するための候補化合物を評価するための方法であって、該方法は、以下:
a)セリンプロテアーゼ活性を有するHCV NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドおよびインジケーターをコードする指示遺伝子を含むベクターを、宿主細胞に導入する工程であって、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つの位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、工程;
b)該宿主細胞を培養する工程;および
c)該インジケーターを、該候補化合物の存在下および該候補化合物の非存在下で測定する工程
を包含する方法。
【請求項18】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者から収集した生物学的サンプルまたは医療用装置もしくは研究室装置のHCV汚染を除去するかまたは減少させる方法であって、該生物学的サンプルまたは該医療用装置もしくは該研究室装置を、請求項13〜17のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する方法。
【請求項19】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者から収集した生物学的サンプル中のHCV改変体の存在を検出するための方法であって、該生物学的サンプル中のポリヌクレオチドの存在を検出する工程を包含し、該ポリヌクレオチドは、セリンプロテアーゼ活性を有するHCV
NS3プロテアーゼをコードする核酸配列を含み、該核酸配列は、配列番号1のコドン位置36位または156位に対応する少なくとも1つの位置においてコドン変化を有し、そして該コドン変化は、配列番号2のHCV NS3プロテアーゼアミノ酸配列の36位または156位に対応する位置における対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置36位における該コドン変化は、MおよびGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じ、そして、配列番号1のコドン位置156位における該コドン変化は、SおよびIからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする核酸配列を生じる、方法。
【請求項20】
前記核酸配列が、配列番号1のコドン位置36位、54位および156位からなる群から選択されるコドン位置に少なくとも1つのさらなるコドン変化を有し、該コドン位置が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸位置36位、54位および156位に対応する、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項21】
前記核酸配列が、配列番号1のコドン位置36位、54位および156位からなる群から選択されるコドン位置に少なくとも1つのさらなるコドン変化を有し、該コドン位置が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸位置36位、54位および156位に対応する、請求項5に記載の単離されたHCV改変体。
【請求項22】
前記プロテアーゼが、配列番号1のコドン位置36位、54位および156位からなる群から選択されるコドン位置に少なくとも1つのさらなるコドン変化を有する核酸配列によってコードされ、該コドン位置が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸位置36位、54位および156位に対応する、請求項6に記載の単離されたHCVプロテアーゼ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate


【公開番号】特開2012−196230(P2012−196230A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−152702(P2012−152702)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−540291(P2008−540291)の分割
【原出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】