説明

C型肝炎ウイルス(HCV)に対するヒト抗体およびその使用

C型肝炎ウイルス(HCV)に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体、ならびにこれに関連する抗体ベースの組成物および分子が開示される。ヒト抗体は、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチングを受けることによって多数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体を産生し得るトランスフェクトーマまたは非ヒトトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)において産生され得る。また、ヒト抗体を含む薬学的組成物、非ヒト抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物およびハイブリドーマ、ならびに、ヒト抗体の治療的および診断的な使用方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2007年2月21日に出願された米国仮特許出願第60/902,432号に基づく優先権およびその利益を、この仮特許出願と共通の主題について主張している。上記で陳述された出願の開示は、本明細書によって、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
当初は「非A非B」(NANBH)と命名されたC型肝炎ウイルス(HCV)は、Flaviviridae科のプラスの一本鎖RNAウイルスである。そのゲノムは、約3000のアミノ酸残基のポリタンパク質をコードする単一のオープンリーディングフレームを含む(非特許文献1)。このポリタンパク質は、宿主細胞およびウイルスプロテアーゼによって、ウイルス複製に必要な3つの主要構造タンパク質およびいくつかの非構造タンパク質にプロセッシングされる。HCVのヌクレオチド配列は高度に可変であり、最も異なる単離株は、わずか60%のヌクレオチド配列相同性を共有するに過ぎない。わずかに異なるゲノム配列をもつHCVのいくかの異なる遺伝子型が識別されている。
【0003】
世界中からの単離株は、現在、6つの主型にグループ分けされ、各々は、配列データに基づき、いくつかの亜型をもつ(非特許文献2)。1〜3型はヨーロッパにおけるほとんどすべての感染を占め、4型はエジプトおよびザイールで、5型は南アフリカで、そして6型は香港で優勢である。
【0004】
このウイルスは、主に血液または血液製品によって感染する。感染した個体の大多数は、1990年(HCVに対する血液供給のスクリーニングが履行されたとき)以前に輸血を受けたか、または静脈内薬物を用いたかのいずれかである。全世界で約20000〜40000万人の人々がHCVで慢性的に感染され、これらの約200〜500万人は米国においてである。感染された人の約80%を占めるHCVの慢性感染は、一生存続し、そしてしばしば肝硬変および肝癌の発症に至る。
【0005】
HCVに対するワクチンの開発は、このウイルスの極度な抗原性の可変性によって遅延されている。利用可能であるときでさえ、ワクチンは、全世界で何百人の慢性HCVキャリアが面する問題を軽減しない。
【0006】
HCVに対する大部分の抗体は、中和抗体はまさに存在するけれども感染のクリアランスにおいて主要な役割を演じない。しかし、これらは、株特異的である傾向にあり、そして出現する株に対して有効ではない。
【0007】
現在、HCVで誘導される肝臓疾患に対して任意の示された効き目をもつ唯一の治療は、α−IFNの使用を含むが、このアプローチは、ほんの限られた成功を達成したに過ぎない。α−IFN処置を用いた最良の臨床試験でさえ、慢性の病人のほんの40〜50%が反応し、そしてこれら個体の50%は処置が停止されるとき再発することを報告する。α−IFN処置は、あるHCV遺伝子型に対してその他よりかなり有効でない証拠がまたある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chooら、(1989)Science 244:359−362
【非特許文献2】Simmondsら、(1995)Hepatology 21:570−83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、(α−IFNの他に)HCV感染に対して型どおりの薬物は、いまだ開発されていない。従って、HCV感染を処置および予防するための改良された免疫療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、前述の問題を、広範な種類のHCV単離株に特異的に結合し、そしてこのウイルスが細胞に感染する能力を阻害する組換え完全ヒト抗HCVモノクローナル抗体を提供することにより解決する。
【0011】
1つの実施形態では、これは、インビトロでHCVを(例えば、HCV偽ウイルス中和アッセイにおいて)中和(すなわち、阻害またはブロック)する抗体の能力によって示される。別の実施形態では、これは、動物またはヒトのような被験体においてHCV感染力を阻害する抗体能力によって示される。
【0012】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、実質的に制限されない量で、高度に精製された形態で効率的に作製され得る。従って、これら抗体は、HCVに曝されたか、曝されたことが疑われた個体を予後する、診断する、および/または処置するために適切である。これら抗体は、当該技術分野で公知のヒト抗体を作製するための種々の技法を用いて産生され得る。例えば、本明細書中で例示されるように、これら抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを発現するトランスジェニック動物、例えば、ヒトIg遺伝子座を含むトランスジェニックマウス中で生成され得る。さらに、これら抗体は、単独、または抗HCVワクチンまたはその他の抗体と組み合わせて投与され得、HCVに感染した被験体(例えば、動物およびヒト)の生存率を増加する。
【0013】
従って、本発明は、制限されないで以下を含むいくつかの利点を提供する:
−被験体において、HCVを予後する、診断する、および/または処置するため、例えば、HCV媒介疾病率または死亡率から保護または阻害する、完全ヒト組換え抗HCV抗体;
単独またはHCV感染を処置するための市販され入手可能なワクチンと組み合わせて用いられ得る1つ以上の完全ヒト組換え抗HCV抗体を含む組成物(例えば、薬学的)および/またはキット、および;
単独または能動的免疫療法(HCVワクチン)と組み合わせて用いられ得るHCV感染被験体を処置するための受動的免疫療法の改良された方法。
【0014】
1つの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体またはもその抗原結合性部分は、HCV E2タンパク質の非構造的エピトープに特異的に結合する。特定の抗体またはその抗原結合性部分は、HCV E2タンパク質内のエピトープに特異的に結合する。このようなエピトープは、例えば、HCV E2タンパク質のアミノ酸1−50、50−100、100−150、150−200、200−250、250−300、300−350、350−400、400−450、450−500、500−550、550−600、600−650、650−700、700−746内、またはその任意の間隔部分もしくはその範囲にあり得る。1つの実施形態では、これら抗体またはその抗原結合性部分は、ほぼアミノ酸残基412−464、412−423、または413−420の間のエピトープに特異的に結合し得る。別の実施形態では、HCV E2タンパク質のエピトープは、アミノ酸残基412−423を含む。別の実施形態では、HCV E2タンパク質のエピトープは、アミノ酸残基412−423からなる。1つの実施形態では、上記HCV E2タンパク質は、アミノ酸残基413、418、および/または420を含む。
【0015】
その他の実施形態では、上記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分は、HCV E2タンパク質に約10×10−6Mより小さいKで特異的に結合するとして特徴付けられ得る。特定の実施形態では、上記抗体またはその抗原結合性部分は、HCV E2タンパク質(またはそのフラグメント)に少なくとも約10×10−7M、少なくとも約10×10−8M、少なくとも約10×10−9M、少なくとも約10×10−10M、少なくとも約10×10−11M、または少なくとも約10×10−12MのKもしくはなおより好ましいKで特異的に結合する。
【0016】
種々のその他の実施形態では、上記抗体またはその抗原結合性部分は、クローン83−128(配列番号1)、95−2(配列番号3)または073−1(配列番号5)により産生される抗体の可変重鎖領域アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖領域を含む。
【0017】
その他の実施形態では、上記抗体またはその抗原結合性部分は、クローン83−128(配列番号2)、95−2(配列番号4)または073−1(配列番号6)によって産生される抗体の可変軽鎖アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0018】
なおその他の実施形態では、上記抗体またはその抗原結合性部分は、クローン83−128(配列番号1)、95−2(配列番号3)または073−1(配列番号5)によって産生される抗体の可変重鎖領域アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖領域、およびクローン83−128(配列番号2)、95−2(配列番号4)または073−1(配列番号5)の可変軽鎖アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域の両方を含む。
【0019】
特定のその他の実施形態では、上記抗体またはその抗原結合性部分は、クローン83−128、95−2または073−1によって産生される抗体によって結合されるエピトープと重複し、そして/またはクローン83−128、95−2または073−1によって産生される抗体と、HCV、またはその部分への結合について競合するエピトープに特異的に結合する。
【0020】
上記抗体またはその抗原結合性部分の可変重鎖領域および軽鎖領域は、代表的には、1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む。これらは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む。特定の実施形態では、上記可変重鎖CDRは、クローン83−128(配列番号7−9)、95−2(配列番号10−12)または073−1(配列番号13−15)によって産生される抗体のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上同一である。その他の特定の実施形態では、可変軽鎖CDRは、クローン83−128(配列番号16−18)、95−2(配列番号19−21)または073−1(配列番号22−24)によって産生される抗体の可変軽鎖領域のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上同一である。
【0021】
従って、本発明の特定の抗体またはフラグメントは、クローン83−128(配列番号7−9)、95−2(配列番号10−12)または073−1(配列番号13−15)によって産生される抗体の可変重鎖領域のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上同一である1つ以上の相補性決定領域(CDR)、およびクローン83−128(配列番号16−18)、95−2(配列番号19−21)または073−1(配列番号22−24)によって産生される抗体の可変軽鎖領域のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上同一である1つ以上のCDRを含む可変軽鎖領域を含む。
【0022】
上記抗体および抗原結合性部分の可変重鎖領域はまた、クローン83−128(配列番号7−9)、95−2(配列番号10−12)または073−1(配列番号13−15)によって産生される抗体の可変重鎖領域のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%、またはそれ以上同一であるすべての3つのCDR、および/またはクローン83−128(配列番号16−18)、95−2(配列番号19−21)または073−1(配列番号22−24)によって産生される抗体の可変軽鎖領域のCDRに少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上同一であるすべての3つのCDRを含み得る。
【0023】
別の実施形態では、上記抗体および抗原結合性部分の可変重鎖領域はまた、配列番号87−89に提示されるような1つ以上の重鎖コンセンサス配列CDRおよび/または配列番号90−92に提示される1つ以上の軽鎖コンセンサスCDRを含み得る。
【0024】
本発明の別の実施形態では、上記ヒト抗体および抗原結合性部分は、(a)ヒトVH3−33遺伝子によってコードされるかまたはそれに由来する(すなわちその産物)である可変重鎖領域を含み;および/または(b)ヒトVκL6遺伝子によってコードされるか、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む。
【0025】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、例えば、エフェクタードメイン(例えば、Fcドメイン)を含む完全長抗体、および単鎖抗体およびFabフラグメントのような抗体部分またはフラグメントを含む。これら抗体はまた、種々の治療薬剤(例えば、抗ウイルス剤またはトキシン)および/または標識に連結され得る。
【0026】
別の局面では、本発明は、ハイブリドーマクローン83−128、073−1、95−2、95−14、95−15、95−18、95−20、95−21、95−25、95−26、95−30、95−38、95−39、95−42、95−43、95−48、95−49、95−52、95−54、95−58、95−62によって産生される抗体の抗原結合性部分、およびそれらの組み合わせを含む単離されたポリペプチドを特徴とする。
【0027】
別の局面では、本発明は、配列番号25、27または29に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上同一である抗体重鎖可変領域をコードする配列を含む単離された核酸を特徴とする。本発明はまた、配列番号26、28または30に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上同一である抗体軽鎖可変領域コードする配列を含む単離された核酸を特徴とする。本発明はまた、前述の核酸のいずれかを単独または組み合わせのいずれか(例えば、1つ以上のベクターから発現される)で含む発現ベクター、およびこのような発現ベクターを含む宿主細胞を特徴とする。
【0028】
本発明の抗体を発現する適切な宿主細胞は、種々の真核細胞、例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター(CHO)細胞、NS0細胞、ミエローマ細胞、または植物細胞を含む。
【0029】
別の局面では、本発明は、HCVに特異的に結合し、そして哺乳動物細胞に感染するこのウイルスの能力を阻害する本明細書中に記載されるような1つ以上の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分を含む組成物およびキットを特徴とする。この組成物またはキットは、HCVに特異的に結合する1つ以上の抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)またはその抗原結合性部分をさらに含み得る。1つの実施形態では、上記ポリクローナル抗体またはその抗原結合性部分は、HCV E2タンパク質に特異的に結合する。特定の実施形態では、上記組成物またはキットは、(a)第1のHCV E2単離株に特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体;および(b)第2のHCV単離株に特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体の両方を含む。
【0030】
本発明はまた、被験体におけるHCV疾患を処置する方法を特徴にし、この被験体に、本明細書中に記載のような(すなわち、HCVに特異的に結合する)単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分を、HCV疾患、例えば、HCV−媒介徴候または疾病率を阻害するために有効な量で投与することによる。
【0031】
本発明のヒトモノクローナル抗体またはその一部分(およびこれら抗体またはその一部分を含む組成物)は、種々の適切な様式、例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)、または筋肉内(IM)で被験体に投与され得る。この抗体またはその抗原結合性部分は、単独、または別の治療薬剤、例えば、第2のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部位と組み合わせて投与され得る。1つの例では、この第2のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分は、第1の抗体に結合された単離株とは異なる第2のHCV単離株に特異的に結合する。別の例では、上記抗体は、別の薬剤、例えば、抗ウイルス剤とともに投与される。別の例では、上記抗体は、ポリクローナルγグロブリン(例えば、ヒトγグロブリン)とともに投与される。別の例では、上記抗体は、HCVワクチンの前、後、または同時に投与される。
【0032】
別の局面では、本発明は、HCVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分を作製する方法であることを特徴とする。1つの実施形態では、この方法は、ヒト重鎖トランスジーンおよびヒト軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物を、HCV、例えば、生ウイルスまたは不活性化ウイルスを含む組成物で免疫化すること、およびこの動物から、抗体、抗体産生細胞、または抗体をコードする核酸を単離することを含む。このHCVは、例えば、化学的処置および/または凍結乾燥によって不活性化され得る。上記方法はさらに、HCVまたはHCV E2タンパク質への上記抗体の結合を評価することを含み得る。
【0033】
本発明はまた、上記抗体またはその抗原結合性部分を作製する方法であることを特徴とし、宿主細胞においてヒト抗体をコードする核酸(例えば、抗体の抗原結合性部分をコードする核酸)を発現することによる。なお別の局面では、本発明は、前述の核酸を含むハイブリドーマまたはトランスフェクトーマを特徴にする。
【0034】
本発明はまた、HCVに特異的に結合する抗体を発現するハイブリドーマを作製する方法であることを特徴とし、ヒト重鎖トランスジーンおよびヒト軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物をHCVまたはHCV E2タンパク質を含む組成物で免疫すること;この動物からの脾細胞を単離すること;この脾細胞からハイブリドーマを生成すること;およびHCVまたはそのHCV E2タンパク質に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することによる。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、HCV E2タンパク質の非構造的エピトープ、アミノ酸412−464、412−423または413−420を含む抗原を提供する。この抗原は、抗HCV E2抗体を惹起、スクリーニング、またはその存在を検出するために用いられ得るか、または能動免疫療法における薬剤、例えば、ワクチンとして用いられ得る。ワクチンとして、上記抗原は、単独、または適切なアジュバントまたはハプテンと組み合わせて、例えば、化学的または遺伝子的いずれかで混合または複合体化されて用いられ得る。複合体は、制限されないで、トキソイド、ウイルス様粒子(VLP)、およびタンパク質キャリアを含み、これらすべては、ワクチン抗原に対する免疫応答を増大するよう設計されている。上記抗原はまた、能動免疫療法のために用いられるとき、受動免疫療法、例えば、本明細書に開示される任意の抗HCV E2抗体と組み合わせて用いられ得る。
【0036】
ヒトモノクローナル抗体でのヒトの処置は、いくつかの利点を提供する。例えば、上記抗体は、非ヒト抗体よりヒトにおいてより免疫原性でないようである。この治療はまた迅速である。なぜなら、HCV不活性化は、抗体が感染の部位に到達すると直ぐに起こり得、そして疾患を引き起こすHCVを直接中和するからである。ヒト抗体はまた、非ヒト抗体よりもヒトにおける適切な部位に効率的に局在化する。さらに、この処置はHCVに特異的であり、そして組換え体であって、かつ高度に精製され、伝統的な治療とは異なり、付随的な薬剤で汚染される可能性を避ける。
【0037】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、そして請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1Aおよび1Bは、ヒト抗体95−2(図1A)およびヒト 抗体83−128(図1B)の可溶性HCV遺伝子型1a E2−660(三角)および可溶性HCV遺伝子型1b E2−661(四角)への結合を示すグラフである。ELISAプレートを2μg/mlの抗原でコートし、そして2倍希釈で抗体を用いてプローブした。結合した抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPP基質に複合体化したヤギ−抗ヒト二次抗体で検出した。
【図2A】ヒト抗体95−2、83−128、および17C7(無関係のヒトmAb)の存在下、種々のHCV遺伝子型偽ウイルスでのHep3Bの感染の中和を示すグラフである。5倍希釈の抗体を各HCV偽ウイルスと1時間の間、室温でインキュベートした。このウイルス−抗体混合物をHep3B細胞に添加し、次いで37℃で72時間インキュベートした。感染は、Brightgloのルシフェラーゼアッセイで定量化し、そして光出力について、Victor3プレートリーダー中で読み取った。狂犬病に対する抗体(17C7)をネガティブコントロールとして用いた。
【図2B】ヒト抗体95−2、83−128、および17C7(無関係のヒトmAb)の存在下、種々のHCV遺伝子型偽ウイルスでのHep3Bの感染の中和を示すグラフである。5倍希釈の抗体を各HCV偽ウイルスと1時間の間、室温でインキュベートした。このウイルス−抗体混合物をHep3B細胞に添加し、次いで37℃で72時間インキュベートした。感染は、Brightgloのルシフェラーゼアッセイで定量化し、そして光出力について、Victor3プレートリーダー中で読み取った。狂犬病に対する抗体(17C7)をネガティブコントロールとして用いた。
【図3】図3Aおよび3Bは、還元(図3A)または非還元(図3B)SDS−PAGEに供し、次いで、PVDFメンブレンに移したHCV遺伝子型1aおよび1bからの精製された可溶性の哺乳動物で発現されたE2タンパク質(E2−661)への抗体結合を示す。Westernsブロットは、抗hisタグモノクローナル(his)、83−128および95−2で、HRPに複合体化した抗マウスIgG(his)または抗ヒトIgG(95−2および83−128)を、増大化学発光検出試薬とともに用いて実施した。可溶性E2の遺伝子型は、ブロットの上に示される。検出のために用いた一次抗体は、ブロットの下に列挙される。キロダルトンの分子量マーカーは、各セットのブロットの左に列挙される。
【図4】図4は、細菌融合タンパク質として発現されたHCV E2 412−423エピトープへのヒト抗体95−2および83−128の親和性を示す表である。ヤギ−抗ヒトIgG FcをBiacoreチップにアミド結合した。ヒト抗体95−2および83−128をこのチップ上に別個に捕捉し、そしてE2 412−423アミノ酸を含むE2−G細菌発現タンパク質を濃度を変えて溢れさせた。BIAevaluationTMソフトウェアを、曲線を適合し、そして親和性定数を算出するために用いた。
【図5】図5は、E1およびE2哺乳動物発現タンパク質の位置を示すHCVポリタンパク質のマップである。E1およびE2ポリタンパク質は、長く白い箱によって上部に示され、アミノ酸番号は上に記載されている。膜内外ドメイン(TM)は淡い灰色の箱によって示され、そしてE2の超可変ドメイン1(HVR1)は濃い灰色の箱によって示される。加工構築物から発現された哺乳動物タンパク質は、濃い灰色の棒として下に列記される。シグナルペプチダーゼ切断の部位は矢印によって示される。各タンパク質の名前には、コードされたアミノ酸が括弧内に、そして発現タンパク質中の総アミノ酸が続く。
【図6】図6AおよびBは、E2の哺乳動物発現C末端先欠形のレクチン捕捉ELISAの結果を示すグラフである。E2アミノ酸(図7に示される)を含むE2融合タンパク質の哺乳動物発現C末端先欠形を含む細胞培養上清液を、ELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈のヒト抗体95−2(図6A)および83−128(図6B)およびマウス6ヒスチジンタグ抗体(his tag)でプローブした。結合抗体は、ヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはアルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図7】図7は、E2のアミノ末端80アミノ酸のまたがる細菌で発現されたタンパク質を示すマップである。E2の最初の80アミノ酸が、白の箱によって上部に上にあるアミノ酸番号とともに表される。アミノ末端にある27アミノ酸の超可変領域1(HVR1)は、濃い灰色の箱によって示される。加工構築物から発現されたタンパク質は、薄い灰色の棒によって示され、棒の左には名前をともない、そしてタンパク質の開始および末端のアミノ酸は棒の下に列挙される。
【図8】図8A、8B、および8Cは、ヒト抗体95−2(図8A)および83−128(図8B)およびマウスヒスチジンタグ抗体(his tag)(図8C)の、E2の最初の80アミノ酸の細菌で発現された片への結合を示すグラフである。E2アミノ酸を含む細菌で発現された融合タンパク質(図7に示される)をELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈の抗体でプローブした。結合した抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図9A】ヒト抗体95−2(図9A)および83−128(図9B)およびマウス6ヒスチジンタグ抗体(his tag)(図9C)の、変異をもつE2アミノ酸412−423を含む細菌で発現された融合タンパク質への結合を示すグラフである。アラニンに変異した示されるアミノ酸をもつE2アミノ酸412−423を含むか、または変異を含まない(WT)細菌で発現された融合タンパク質を、ELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈の抗体でプローブした。結合抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図9B】ヒト抗体95−2(図9A)および83−128(図9B)およびマウス6ヒスチジンタグ抗体(his tag)(図9C)の、変異をもつE2アミノ酸412−423を含む細菌で発現された融合タンパク質への結合を示すグラフである。アラニンに変異した示されるアミノ酸をもつE2アミノ酸412−423を含むか、または変異を含まない(WT)細菌で発現された融合タンパク質を、ELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈の抗体でプローブした。結合抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図9C】ヒト抗体95−2(図9A)および83−128(図9B)およびマウス6ヒスチジンタグ抗体(his tag)(図9C)の、変異をもつE2アミノ酸412−423を含む細菌で発現された融合タンパク質への結合を示すグラフである。アラニンに変異した示されるアミノ酸をもつE2アミノ酸412−423を含むか、または変異を含まない(WT)細菌で発現された融合タンパク質を、ELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈の抗体でプローブした。結合抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図10】図10は、NIHによって支援されるLos Alamos HCV Sequence DatabaseからのE2アミノ酸412−423のアラインメントを示す表である。アミノ酸412−423についてプロトタイプ遺伝子型1a配列の1文字アミノ酸コードをこのチャート(1a)の上部左に列挙する。この1a配列と同一である任意のアミノ酸はダッシュで示され、そして任意の位置に列挙されるアミノ酸は、このプロトタイプ遺伝子型1a配列とは異なる。この12のアミノ酸配列が凝縮されたデータベース中で見出される回数は、カウントの下に列挙され、そして合計の%は、%の下に列挙される。本発明の遺伝子型1aおよび1b可溶性E2タンパク質の配列は、上の2行に列挙される。
【図11】図11は、その他の遺伝子型からのE2アミノ酸412−423を示す表である。アミノ酸412−423の1文字アミノ酸コードが、プロトタイプ遺伝子型1a配列からの変化(下線で示す)を含んだ単離株について列挙される。遺伝子型名は、括弧内のGenbank受託番号が続いて右に列挙される。
【図12】図12A、12B、および12Cは、ヒト抗体95−2(図12A)および83−128(図12B)およびマウス6ヒスチジンタグ(his tag)(図12C)の、その他の遺伝子型からのE2アミノ酸412−423への結合を示すグラフである。示された遺伝子型からの配列をもつE2アミノ酸412−423を含む細菌により発現された融合タンパク質をELISAプレート上でコートし、そして2倍希釈の抗体でプローブした。結合抗体は、アルカリホスファターゼおよびPNPPに複合体化したヤギ−抗ヒト(95−2および83−128)またはヤギ−抗マウス(his tag)で検出した。
【図13】図13は、制限部(太字の小文字で表される)、制限酵素切断を最適化するためのさらなるオーバーハング(下線を引いた小文字で表される)、コンセンサスKozak配列(太字で下線を引いた小文字で表される)およびATG開始コドン(太字の下線を引いた大文字で表される)を含む付加された端部を含むE1/E2コドンが最適化された1a H77配列(配列番号27)を描写する。
【図14】図14は、クローン83−128(配列番号1)、95−2(配列番号3)、95−14(配列番号32)、95−38(配列番号33)、95−25(配列番号34)、95−42(配列番号35)、95−43(配列番号36)、95−49(配列番号37)、95−54(配列番号38)、95−58(配列番号39)および95−62(配列番号40)由来で、そしてE2−660 HCV糖タンパク質のエピトープ412−423に対して反応性である抗体の重鎖可変領域のアラインメントを描写する。
【図15】図15は、クローン83−128(配列番号2)、073−1(配列番号6)、95−2(配列番号4)、95−14(配列番号44)および95−38(配列番号53)由来の抗体の軽鎖可変領域のアラインメントを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明がより容易に理解され得るために、特定の用語がまず定義される。さらなる定義は、詳細な説明を全体で提示される。
【0040】
(定義)
用語「C型肝炎ウイルス」、「HCV」、「非A非B」または「NANBH」は本明細書では交換可能に用いられ、そしてC型肝炎ウイルスのRNAによってコードされるか、または天然の対立遺伝子変形物によって生じるビリオンまたはその部分(例えば、HCVの遺伝子型1aのE2タンパク質の部分)の任意の「遺伝子型」または「亜遺伝子型」(亜型(サブタイプ)とも称される)を含む。
【0041】
HCVは、約3,010のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)が続く5’−非翻訳領域によって組織化される。このORFは、ヌクレオチド塩基対342から始まり8,955までであり、3’末端に別の非翻訳領域が続く。これらのアミノ酸は、5’から3’まで以下のような順序で10のタンパク質に分割される:C;E1;E2;NS1;NS2;NS3;NS4(aおよびb);ならびにNS5(aおよびb)。これらのタンパク質は、宿主プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼの両方によりより大きなポリタンパク質の切断から形成される。C、E1、およびE2タンパク質は構造的であり、そしてNS1−NS5タンパク質は、非構造的タンパク質である。C領域は、コアヌクレオキャプシドタンパク質をコードする。E1およびE2は、ウイルスをコートするグリコシル化エンベロープタンパク質である。NS2は亜鉛メタロプロテイナーゼであり得る。NS3はヘリカーゼである。NS4aはNS4bとNS5aとの間の切断に関与するセリンプロテアーゼコファクターとして機能する。NS5aはその機能が不明であるセリンホスホタンパク質である。NS5b領域は、RAN依存性RNAポリメラーゼおよびターミナルトランスフェラーゼ活性の両方を有する。
【0042】
コアタンパク質における改変によってカテゴリー分けされる約6の別個の遺伝子型(例えば、遺伝子型1、2、3、4、5および6)があり、そして各遺伝子型内にはさらなる改変を示す80を超える亜遺伝子型があり、そのいくつかは、:1a;1b;1c;2a;2b;2c;3a;3b;4a;4b;4c;4d;4e;5a;および6aを含む。
【0043】
本明細書で称されるとき用語「抗体」は、全抗体およびその任意の抗原結合性フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)またはその単鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合性部分をいう。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインC1、C2およびC3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略される)および軽鎖定常領域からなる。この軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。上記VおよびV領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに分割され得る。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含む。上記抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。
【0044】
抗体の用語「抗原結合性部分」(または単に「抗体の部分」)は、本明細書で用いられとき、抗原(例えば、HCV)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合性機能は、完全長抗体のフラグメントによって実施され得ることが示されている。用語抗体の「抗原結合性部分」内に包含される結合性フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、V、V、CおよびC1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VおよびC1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(v)VドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)または(vii)必要に応じて合成リンカーによって接続され得る2つ以上の単離されたCDRの組み合わせを含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVおよびVは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、VおよびV領域の対が一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーによって連結され得る。(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)。このような単鎖抗体もまた、抗体の用語「抗原結合性部分」内に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技法を用いて得られ、そしてフラグメントが、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合性部分は、組換えDNA技法により、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって産生され得る。
【0045】
「二特異的」または「二官能性抗体」は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二特異的抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai&Lachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−1553(1992)を参照のこと。
【0046】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で用いられるとき、単一の結合特異性および特定のエピトープに対する親和性を表す抗体をいう。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、単一の結合特異性を表し、そしてヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体をいう。1つの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、不死化細胞に融合されたヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェクマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0047】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で用いられるとき、組換え手段によって調製、発現、生成または単離されるすべてのヒト抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェクである動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを含む任意のその他の手段によって調製、発現、生成または単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する。特定の実施形態では、しかし、このような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発を受け得(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物が用いられるとき、インビボ体細胞突然変異誘発)、そしてそれ故、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系V配列およびV配列由来でありそしてそれに関連するけれども、インビボのヒト抗体生殖細胞系免疫レパートリー内には天然に存在しないかも知れない。
【0048】
用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の(存在する場合)可変領域および定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロのランダムまたは部位特異的変異誘発により、またはインビボの体細胞突然変異により導入された変異)。(Lonberg、N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859);Lonberg、N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Lonberg、N.およびHuszar、D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93、およびHarding、F.およびLonberg、N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546を参照のこと)。しかし、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系免疫由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上にグラフトされた抗体(すなわち、ヒト化抗体)は含まない。
【0049】
本明細書で用いられるとき、「異種抗体」は、このような抗体を産生するトランスジェク非ヒト生物に関連して規定される。この用語は、アミノ酸配列またはコードする核酸配列を有する抗体をいい、トランスジェク非ヒト動物からならない生物に見い出され、そして一般にこのトランスジェニック非ヒト動物のそれ以外の種からのそれに対応する。
【0050】
「単離された抗体」は、本明細書で用いられるとき、異なる抗原特異性を有するその他の抗体が実質的にない抗体をいうことが意図される(例えば、HCVに特異的に結合する単離された抗体は、HCV以外の抗原を特異的に結合する抗体が実質的にない)。さらに、単離された抗体は、代表的には、その他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まない。本発明の1つの実施形態では、異なるHCV特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせが、良好に規定された組成物において組み合わされる。
【0051】
用語「エピトープ」または「抗原性決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位をいう(例えば、HCVのE1またはE2、例えば、E2のアミノ酸412−464)。エピトープは、連続するアミノ酸またはタンパク質の三次折り畳みによって並列される非連続的アミノ酸の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、代表的には、変性溶媒への曝露に際し保持され、その一方、三次折り畳みにより形成されるエピトープは、変性溶媒での処理に際して失われる。エピトープは、代表的には、特有の空間的配座中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸を含む。エピトープの空間的配座を決定する方法は、当該技術分野における技法および本明細書中に記載される技法、例えば、x線結晶学および二次元核磁気共鳴を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66、G.E.Morris、編(1996)を参照のこと。好ましい実施形態では、エピトープ(または抗原性決定基)は直線状エピトープとして挙動し、そこでは、より大きなアミノ酸セグメントの場合、例えば、3次元構造を有するタンパク質であるときでさえ、エピトープ/抗原性決定基に対する親和性におけるさらなる増加は観察されない。
【0052】
本明細書で用いられるとき、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、および「特異的に結合する」は、所定の抗原上のエピトープへの抗体結合をいう。代表的には、抗体は、分析物として組換えHCVを、そしてリガンドとして抗体を用いて、BIACORE 3000機器において表面プラスモン共鳴(SPR)技術によって決定されるとき、10−8M、10−9Mまたは10−10Mまたはより低いような、ほぼ10−7Mより小さい親和性(K)で結合し、そして所定の抗原または緊密に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてその親和性より少なくとも2倍より親和性で所定の抗原に結合する。語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書においては用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いられる。
【0053】
また本発明に包含されるのは、本明細書中に記載されるヒト抗体と同じエピトープに結合する抗体、すなわち、HCVへの結合について競争する抗体である。同じエピトープを認識する抗体は、イムノアッセイのような慣用の技法を用いて同定され得、例えば、1つの抗体が標的抗原への別の抗体の結合をブロックする能力を示すこと、すなわち競争結合アッセイによる。競争結合は、試験下の免疫グロブリンがHCVのような共通抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイで決定される。多くのタイプの競争結合アッセイが知られ、例えば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競争アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymology 9:242(1983)を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol.137:3614(1986)を参照のこと);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと);I−125を用いる固相直接標識RIA(Morelら、Mol.Immunol.25(1):7(1988)を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら、Virology 176:546(1990)を参照のこと);および直接標識RIA.(Moldenhauerら、Scand.J.Immunol.32:77(1990)を参照のこと)。代表的には、このようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原またはこれらのいずれかを保持する細胞、非標識試験免疫グロブリンおよび標識参照免疫グロブリンの使用を含む。競争阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競争する抗体が過剰に存在するとき、それは、共通抗原への参照抗体の特異的結合を少なくとも50−55%、55−60%、60−65%、65−70%、70−75%またはそれ以上阻害する。
【0054】
本明細書で用いられるとき、用語「K」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数をいうことが意図される。代表的には、本発明のヒト抗体は、HCVに、分析物として組換えヒトHCVを、そしてリガンドとして抗体を用いるBIACORE 3000機器における表面プラスモン共鳴(SPR)技術によって決定されるとき、ほぼ10−8M、10−9Mまたは10−10Mより少ないような、ほぼ10−7Mより少ない解離平衡定数(K)で結合する。
【0055】
本明細書で用いられるとき、用語「Koff」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についてオフ速度定数をいうことが意図される。
【0056】
本明細書で用いられるとき、用語「EC50」は、インビトロまたはインビボアッセイいずれかで、最大応答の50%、すなわち、最大応答とベースラインとの間の半分である応答を誘導する抗体またはその抗原結合性部分の濃度をいう。
【0057】
本明細書で用いられるとき、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。1つの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、IgG1アイソタイプである。別の実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、IgG2アイソタイプである。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「HCVを中和する」、「HCVを阻害する」、および「HCVをブロックする」は、交換可能に用いられ、本発明の抗体のHCVが所定の細胞を感染する能力を妨げる能力をいう。
【0059】
本明細書で用いられるとき、用語「非構造的エピトープ」は、代表的には、このようなエピトープに結合し得る抗体との結合のために十分である連続的アミノ酸を含む直線状エピトープをいう。これは、エピトープと抗体との間の結合が生じるための3次元構造を形成する不連続アミノ酸配列を必要とする構造的エピトープとは対照的である。直線状エピトープはまた、構造的エピトープとは、変性条件下(例えば、本明細書に記載されるようなイムノブロットアッセイ)、エピトープがこのようなエピトープを認識する抗体によってなお結合され得るということで区別され得る。1つの実施形態では、本発明は、直線状、例えば非構造的、例えば残基412〜423を含むか、または残基412〜423からなるHCV E2エピトープを低供する。関連する実施形態では、本発明の抗体は、このような直線状エピトープに特異的に結合し、そして構造的エピトープには結合しない。なお、さらに、本発明は、このような直線状エピトープを、ワクチン開発、それに対する抗体を惹起することにおける使用に、そして/または能動的免疫療法のみにおける、もしくは受動的免疫療法と組み合わせにおける使用に適切であるとして提供する。
【0060】
本明細書で用いられるとき、「アイソタイプスイッチング」は、それによって、抗体のクラスまたはアイソタイプが1つのIgクラスからその他のIgクラスの1つに変化する現象をいう。
【0061】
本明細書で用いられるとき、「非スイッチアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチングが起こらなかったとき産生される重鎖のアイソタイプクラスをいい;非スイッチアイソタイプをコードするC遺伝子は、代表的には、機能的に再配列されたVDJ遺伝子の直ぐ下流にある最初のC遺伝子である。アイソタイプスイッチングは、古典的または非古典的アイソタイプスイッチングとして分類されている。古典的アイソタイプスイッチングは、トランスジーン中の少なくとも1つのスイッチ配列を含む組換え事象によって生じる。非古典的アイソタイプスイッチングは、例えば、ヒトσμとヒトΣμとの間の相同的組換え(δ−関連欠失)によって起こり得る。とりわけ、トランスジーン間および/または染色体間組換えのような代替の非古典的スイッチング機構が起こり得、そしてアイソタイプスイッチングを達成する。
【0062】
本明細書で用いられるとき、用語「スイッチ配列」は、スイッチ組換えの原因となるようなDNA配列をいう。「スイッチドナー」配列は、代表的にはμスイッチ領域であり、スイッチ組換えの間に欠失される構築領域の5’(すなわち上流)である。「スイッチアクセプター」領域は、欠失されるべき構築領域と置換定常領域(例えば、γ、εなど)との間にある。組換えが常に起こる特定の部位はないので、最終の遺伝子配列は、代表的には、構築物からは予見可能ではない。
【0063】
本明細書で用いられるとき、「グリコシル化パターン」は、タンパク質、より詳細には免疫グロブリンタンパク質に共有結合される炭水化物単位のパターンとして規定される。異質抗体のグリコシル化パターンは、当業者が異質抗体のグリコシル化パターンをトランスジーンのC遺伝子が由来する種に対してより非ヒトトランスジェニック動物の種におけるグリコシル化パターンを認識するであろうとき、非ヒトトランスジェニック動物の種によって産生される抗体上で天然に存在するグリコシル化パターンに実質的に類似しているとして特徴付けられ得る。
【0064】
目的物に適用されるように、本明細書で用いられるとき、用語「天然に存在する」は、目的物が天然に見出され得るという事実をいう。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然にある供給源から単離され得、そして人によって意図的に改変されていないそれは、天然に存在している。
【0065】
本明細書で用いられるとき、用語「再配列」は、Vセグメントが、本質的に完全VまたはVドメインをそれぞれコードする配座においてD−JまたはJセグメントに直ぐ隣接して位置する重鎖または軽鎖免疫グロブリンの形態をいう。再配列された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖細胞系DNAとの比較により識別され得;再配列された免疫遺伝子座は、少なくとも1つの組換えハプタマー/ナノマー相同性要素を有し得る。
【0066】
Vセグメントを参照して、用語「再配列されない」または「生殖細胞系形態」が本明細書で用いられるとき、VセグメントがDまたはJセグメントに直ぐ隣接するように組換えられない形態をいう。
【0067】
本明細書で用いられるとき、用語「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0068】
HCVに結合する抗体または抗体部分(例えば、V、V、CDR3)をコードする核酸を参照して本明細書で用いられるとき、用語「単離された核酸分子」は、抗体または抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、HCV以外の抗原を結合する抗体をコードするその他のヌクレオチド配列を含まない核酸分子をいうことが意図され、このその他の配列は、ヒトゲノムDNAにおいて核酸に天然に隣接し得る。
【0069】
本発明はまた、本発明の配列番号に提示される配列の「保存的配列改変」、すなわち、抗原に対する、ヌクレオチド配列によりコードされるか、またはアミノ酸配列を含む抗体の結合をなくしないヌクレオチドおよびアミノ酸配列改変を包含する。このような保存的配列改変は、ヌクレオチドおよびアミノ酸置換、付加および欠失を含む。例えば、改変は、部位特異的変異誘発およびPCR仲介変異誘発のような当該技術分野で公知の標準的技法によって導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸置換が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものを含む。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で規定されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を含む。それ故、ヒト抗HCV抗体中の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖のファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合をなくさないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Brummellら、Biochem.32:1180−1187(1993);Kobayashiら、Protein Eng.12(10):879−884(1999);およびBurksら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412−417(1997)を参照のこと)。
【0070】
あるいは、別の実施形態では、変異が、飽和変異誘発によるように抗HCV抗体コード配列のすべてまたは一部に沿ってランダムに導入され得、そして得られる改変された抗HCV抗体は、結合活性についてスクリーニングされ得る。
【0071】
「コンセンサス配列」は、関連する配列のファミリーにおいて最も頻繁にあるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列である(例えば、Winnaker、From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany 1987を参照のこと)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各々の位置は、そのファミリー中のその位置において最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が等しく頻繁に存在するとき、いずれもがコンセンサス配列中に含まれ得る。免疫グロブリンの「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域をいう。
【0072】
図14に描写されるように、1つの実施形態では、重鎖可変領域CDRについてのコンセンサス配列は、E2−660 HCV糖タンパク質のエピトープ412−423に対して反応性である抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列の最適アラインメントによって誘導される。例えば、クローン83−128(配列番号1)、95−2(配列番号3)、95−14(配列番号32)、95−38(配列番号33)、95−25(配列番号34)、95−42(配列番号35)、95−43(配列番号36)、95−49(配列番号37)、95−54(配列番号38)、95−58(配列番号39)および95−62(配列番号40)由来の抗体は、最低にアラインされてCDR1、CDR2およびCDR3のためのコンセサス配列を得る。従って、重鎖可変領域のCDR1のコンセンサス配列は、配列番号87に提示される「1YGMH」であることが見出され、ここで、「1」は、小さな、かつ極性アミノ酸残基を表す。重鎖可変領域のCDR2のコンセンサス配列は、配列番号88に示されるVIWXDX7NXYYADS1516Gであることが見出され、ここで、「X」は任意のアミノ酸残基であり得、「7」は小さな、かつ極性アミノ酸残基を表し、「15」は疎水性アミノ酸残基を表し、そして「16」は極性でかつ正に荷電したアミノ酸残基を表す。重鎖可変領域のCDR3のコンセンサス配列は、配列番号89に示される「ARDI567XR10X12IYFD17」であることが見出され、ここで「X」は任意のアミノ酸残基、「5」はフェニルアラニンは表すかまたはアミノ酸はなく、「6」はセリンまたはスレオニンを表し、「7」および「12」は疎水性アミノ酸残基を表し、「10」は小アミノ酸残基を表し、そして「17」は芳香族アミノ酸残基を表す。
【0073】
同様に、軽鎖可変領域のCDRのコンセンサス配列は、図15に示されるようなE2−660 HCV糖タンパク質のエピトープ412−423に対して反応性の抗体のアミノ酸配列の最適アラインメントによって誘導され得る。例えば、クローン83−128(配列番号2)、073−1(配列番号6)、95−2(配列番号4)、95−14(配列番号44)および95−38(配列番号53)由来の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、最適にアラインされて軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3のコンセンサス配列を得る。軽鎖可変領域のCDR1のコンセンサス配列は、配列番号90に提示される「RASQSVXSYLA」であることが見出され、ここで「X」は任意のアミノ酸残基であり得る。軽鎖可変領域のCDR2のコンセンサス配列は、配列番号91に提示される「DASNRAT」であることが見出される。軽鎖可変領域のCD3のコンセンサス配列は、配列番号92に示される「QQRSNW7T」であることが見出され、ここで「7」は小さな、そして疎水性アミノ酸残基を表す。
【0074】
核酸について、用語「実質的相同性」は、2つの核酸またはその指定された配列が最適にアラインされそして比較されるとき、適切なヌクレオチド挿入または欠失と、ヌクレオチドの約80%、通常少なくとも約90%〜95%、そしてより好ましくはヌクレオチドの少なくとも約98%〜99.5%同一であることを示す。あるいは、実質的相同性は、セグメントが、選択的ハイブリダセクイゼーション条件下、ストランドの相補物にハイブリダイズするときに存在する。
【0075】
2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入されることが必要であるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮して、これら配列によって共有される同じ位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の#/位置の合計#×100)。2つの配列間の配列の比較および%同一性の決定は、以下の非制限的な例で記載されるように、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。
【0076】
2つのヌクレオチド配列間の%同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70、または80のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さ重みを用い、GCGソフトウェア中のGAPプログラムを用いて決定され得る。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の%同一性はまた、PAM120重み残基テーブル、12のギャップ長さペナルティおよび4のギャップペナルティを用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に取り込まれたE.MeyersおよびW.Miller(CABIOS、4:11−17(1989))を用いて決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の%同一性は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを用い、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム中に取り込まれたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0077】
本発明の核酸およびタンパク質配列はさらに、例えば、関連配列を同定するために公開データベースに対してサーチを実施するための「クエリ配列」として用いられ得る。このようなサーチは、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施され得る。BLASTヌクレオチドサーチは、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長さ=12で実施され得、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得る。BLASTタンパク質サーチは、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長さ=3で実施され得、本発明のタンパク質分子に相同であるアミノ酸配列を得る。比較目的のためのギャップのあるアラインメントを得るために、ギャップBLASTが、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されるように利用され得る。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用するとき、個々のプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォールトパラメーターが用いられ得る。
【0078】
核酸は、完全な細胞で、細胞溶解物で、または部分精製または実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、その他の細胞成分またはその他の汚染物、例えば、その他の細胞核酸またはタンパク質とは別に精製されるとき、「単離される」か、または「実質的に純粋」であり得、標準的な技法により、アルカリ/SDS処理、CsClバンド処理、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動およびその他の当該技術分野で周知のその他による。F.Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、New York(1987)を参照のこと。
【0079】
cDNA、ゲノムまたはそれらの混合物からの本発明の核酸組成物は、(改変された制限部位などを除き)しばしばネイティブな配列であるが、標準的な技法に従って変異され得、遺伝子配列を提供する。コード配列のために、これら変異は、所望のようにアミノ酸配列に影響し得る。特に、ネイティブV、D、J、定常、スイッチおよび本明細書中に記載されるようなその他のそのような配列に実質的に相同、またはそれら由来のDNA配列が企図される(「由来する」は、配列が別の配列と同一であるか、または改変されていることを示す)。
【0080】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に配置されるとき「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されている。転写調節配列に関し、作動可能に連結されるは、連結されているDNA配列が連続しており、そして2つのタンパク質コード領域を接続することが必要な場合、連続的であり、かつ読み取り枠が合っていることを意味する。スイッチ配列については、作動可能に連結されたは、配列がスイッチ組換えを行い得ること示す。
【0081】
用語「ベクター」は、本明細書で用いられるとき、それに連結された別の核酸を輸送し得る核酸分子をいうことが意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、さらなるDNAセグメントがその中に連結され得る環状の二本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、その中ではさらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中に連結され得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製し得る(例えば、複製の細菌起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入に際し宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、そしてそれによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を行い得る。このようなベクターは、本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法における有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いられ得る。なぜなら、プラスミドは、ベクターの最も一般的に用いられる形態であるからである。しかし、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターのようなその他の形態を含むことが意図される。
【0082】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書で用いられるとき、組換え発現ベクターが導入された細胞をいう。このような用語は、特定の被検体細胞のみならず、このような細胞の子孫をもいうことが意図されることが理解されるべきである。変異または環境影響のいずれかに起因して特定の改変が次の世代で生じ得るので、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、なお本明細書で用いられるとき用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0083】
用語「処置する」、「処置すること」、および「処置」は、本明細書で用いられるとき、本明細書で記載れる治療または予防手段をいう。「処置」の方法は、障害または再発する障害の1つ以上の徴候を予防し、治療し、遅延し、その重篤度を低減し、または軽減するために、あるいは、被験体の生存をこのような処置の不在下で予期されるそれを超えて延ばすために、このような処置の必要のある被験体、例えば、HCV媒介障害を有する被験体または最終的にはそのような障害を獲得し得る被験体への本発明のヒト抗体の投与を採用する。
【0084】
用語「HCV媒介障害」は、本明細書で用いられるとき、HCV感染に付随する疾患状態および/または徴候を含む。一般に、用語「HCV媒介障害」は、HCVの関与を必要とする徴候の任意の障害、発症、進行または持続をいう。例示のHCV媒介障害は、制限されないで、例えば、肝硬変および肝癌を含む。
【0085】
用語「有効用量」または「有効投薬量」は、所望の効果を達成または少なくとも部分的に達成するに十分な量として規定される。用語「治療的に有効な用量」は、上記疾患を既に患う患者における疾患およびその合併症を治療または少なくとも部分的に制止するに十分な量として規定される。この使用のために有効な量は、処置される障害の重篤度および患者自身の免疫系の一般状態に依存する。
【0086】
用語「患者」は、予防または治療処置のいずれかを受けるヒトおよびその他の哺乳動物被験体を含む。
【0087】
本明細書で用いられるとき、用語「被験体」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。例えば、本発明の方法および組成物は、関節炎、例えばリウマチ様関節炎のような炎症性疾患をもつ被験体を処置するために用いられ得る。用語「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0088】
その他であることが規定されなければ、本明細書で用いられるすべての技術的および化学的用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似および等価なそれらは、本発明の実施または試験で用いられ得るけれども、適切な方法および材料は、以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および例は、例示に過ぎず、そして制限的であることは意図されない。
【0089】
本発明の種々の局面は、以下のサブセクションでより詳細に記載される。
【0090】
概説
HCVは、ヒトにおける致死的な肝細胞の病状である。本明細書に提供されるのは、HCV感染動物、特に、より詳細にはヒト被験体の処置および予防のための方法および組成物である。これら組成物は、HCV E2タンパク質、またはその部分を認識する抗体を含む。特に、組換え完全ヒトモノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、これらのヒトモノクローナル抗体は、(以下の記載される)ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを発現するマウスで産生される。抗HCV抗体の組み合わせもまた提供される。
【0091】
この新規の方法は、被験体におけるHCV媒介疾患を阻害するために被験体においてHCVに結合する抗体(およびその抗原結合性部分)を投与することを含む。例えば、本明細書に記載されるヒトモノクローナル抗HCV抗体は、HCV感染およびその後遺症、例えば、肝臓の肝硬変および/または肝癌を中和し得る。その他の例では、抗HCV抗体(例えば抗HCV E2タンパク質モノクローナル抗体)の組み合わせが、HCV媒介疾患を阻害するために投与され得る。このヒトモノクローナル抗体は、単独またはその他の治療と組み合わせて投与され得る。
【0092】
I.HCVに対するヒト抗体の産生
本発明は、HCV(例えば、ヒトHCV)に結合する例示のヒトモノクローナル抗体は、83−128、95−2、95−14、95−38および073−1を含む。
【0093】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495(1975)により記載される標準的体細胞ハイブリダイゼーション技法のような種々の公知の技法を用いて産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則的に、モノクローナル抗体を産生するためのその他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルスまたは腫瘍形成形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリーを用いるファージディスプレイ技法が採用され得る。
【0094】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するための好ましい動物システムは、マウスシステムである。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、当該技術分野で周知であり、免疫化プロトコールおよび免疫脾細胞を単離および融合するための技法を含む。
【0095】
1つの実施形態では、HCVに対して惹起されたヒトモノクローナル抗体は、マウスシステムよりはむしろヒト免疫システムの部分を保持しているトランスジェニックマウスを用いて生成される。1つの実施形態では、本発明は、本明細書では「HuMbマウス」と称されるトランスジェニックマウスを採用し、これは、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化変異(Lonberg、N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859)とともに、非配列ヒト重(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む。従って、このマウスは、マウスIgMまたはκの低減された発現を示し、そして免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランスジーンは、クラススイッチングおよび体細胞突然変異を受け、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を生成する(Lonberg、N.ら(1994)前述;Lonberg、N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101中の総説;Lonberg、N.およびHuszar、D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93、およびHarding、F.およびLonberg、N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546)。HuMAbマウスの調製は、以下のセクションII、および以下に詳細に記載されている:Taylor、L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen、J.ら(1993)International Immunology 5:647−656;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA90:3720−3724;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−123;Chen、J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859;Lonberg、N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Taylor、L.ら(1994)International Immunology 6:579−591;Lonberg、N.およびHuszar、D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93;Harding、F.およびLonberg、N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546;Fishwild、D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851。さらに、すべてLonbergおよびKay、ならびにGenPharm Internationalによる米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および同第5,770,429号;;Suraniらによる米国特許第5,545,807号;1998年6月11に公開された国際公開番号WO98/24884号;1994年11月10日に公開された国際公開番号WO94/25585号;1993年6月24日に公開された国際公開番号WO93/1227号;1992年12月23日に公開された国際公開第WO92/22645号;1992年3月19日に公開された国際公開第WO92/03918号を参照のこと。
【0096】
免疫化
HCVに対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウス(例えば、HCo12、HCo7)を、例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwildら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851および国際公開第WO 98/24884号に記載のように、HCV抗原の精製または濃縮調製物および/またはHCVを発現する細胞で免疫化し得る。本明細書に記載されるように、HuMAbマウスは、免疫原として組換えHCVタンパク質またはHCVを発現する細胞株のいずれかで免疫化される。あるいは、マウスは、HCVをコードするDNAで免疫され得る。好ましくは、マウスは、最初の注入に際し6〜16週齢である。例えば、組換えHCV抗原の精製または濃縮調製物(10〜100μg)を用い、HuMAbマウスを腹腔内に免疫化する。HCV抗原の精製または濃縮調製物を用いる免疫化我も抗体を生じない場合、マウスはまた、HCVタンパク質を発現する細胞、例えば細胞株で免疫化され得、免疫応答を促進する。例示の細胞株は、HCV過剰発現安定CHOおよびRaji細胞株を含む。
【0097】
種々の抗原での蓄積実績は、HuMAbトランスジェニックマウスは、はじめに完全Freundアジュバント中の抗原で腹腔内(IP)または皮下(SC)で、次いで不完全Freundアジュバント中の抗原で一週間毎のIP/SC免疫化(合計10まで)されるとき最も良く応答することを示した。この免疫応答は、後眼窩血より得られる血漿サンプルで免疫化プロトコールの経過に亘ってモニターされ得る。血漿がELISAによって(以下に記載されるように)スクリーニングされ得、そして抗HCVヒト免疫グロブリンの十分な力価をもつマウスか融合のために用いられ得る。マウスは、犠牲および脾臓の除去の3日前に抗原で静脈内にブーストされ得る。
【0098】
抗原を基礎にしたワクチンおよびその複合体
本発明はまた、HCV感染に対する活性免疫化のための使用のための、HCV E2エンベロープ糖タンパク質の保存された非構造的エピトープ、例えば、HCV E2タンパク質のアミノ酸412−464、412−423、または413−420を提供する。このエピトープは、単独、または、例えば、エピトープに対する免疫応答を増大するために改変されて用いられ得る。
【0099】
化学的に構築された抗原複合体は、種々の周知の、そして容易に利用可能な架橋試薬を用いて作製され得る。これらの架橋試薬は、例えば、選択された抗原上の異なる反応性アミノ酸または炭水化物側鎖と共有結合を形成する、SPDP、SATA、SMCC、DTNBのようなホモ官能性またはヘテロ官能性化合物であり得る。
【0100】
キャリアは、OMPC(Neisseria nieningitidisの外側メンブレンタンパク質複合体)、BSA(ウシ血清アルブミン)、OVA(オバルブミん)、THY(ウシチログロブリン)、KLH(キーホールリムペットヘモシアニン)、およびTT(破傷風トキソイドタンパク質)からなる群から選択され得る。ウイルス様粒子(VLP)に自己アセンブリする能力を有するその他のキャリアは、B型肝炎ウイルスのHbSAg(表面抗原タンパク質)およびHBcAg(コア抗原タンパク質)、ロタウイルスキャプシドタンパク質、ヒトパピローマウイルスのL1タンパク質、E型肝炎ウイルス粒子、ポリオーマウイルスタンパク質よびウシパピローマウイルス構造タンパク質(J.of Phar.Sciences 95:70−79(2005)を参照のこと)を含む。
【0101】
複合体化することは、遺伝子的または化学的に、例えば、マレイミド/チオールカップリング、ブロモアセトアミド/チオールカップリング、およびヒスチジン−選択的架橋の1つ以上を用いて達成され得る。この複合体化は、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、グルタルアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、ビス−ジアゾベンジジン(BDB)、N−アセチルホモシステインチオラクテート(NAHT)、およびN−[.イプシロン−マレイミドカプロイル]スルホスクシンイミドエステル(sEMCS)の1つ以上からなる群から選択される架橋リンカーを用いて達成され得る。1つの実施例では、この架橋リンカーは、N−[.ε.−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(sEMCS)である。
【0102】
HCVに対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
HCVに対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウスからの脾細胞およびリンパ節が単離され得、そしてマウスミエローマ細胞株のような、適切な不死化細胞株に融合させる。得られるハイブリドーマを次いで、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングし得る。例えば、免疫化マウスからの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を、50%PEG(w/v)でSP2/0−Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL1580)に融合し得る。細胞を、平底マイクロタイタープレート中、約1×10でプレートにまき、通常の試薬の他に10%胎児Clone Serumおよび1×HAT(Sigma)を含む選択培地中の2週間のインキュベーションし得る。適切に2週間後、細胞は、HATがHTで置換される培地中で培養され得る。個々のウェルを次いで、ELISAによりヒト抗HCVモノクローナルIgM抗体およびIgG抗体について、または、HCVタンパク質を発現する細胞、例えばHCVを発現するCHO細胞株の表面への結合についてFLISA(蛍光連結イムノソルベントアッセイ)によりスクリーニングし得る。一旦、多数のハイブリドーマの成長が起こると、培地は、通常10〜14日後に観察され得る。抗体を分泌するハイブリドーマは、再びプレートにまき、再びスクリニングし、そしてヒトIgG、抗HCVモノクローナル抗体についてなお陽性である場合、制限希釈によって少なくとも2回サブクローン化され得る。これら安定なサブクローンは、次いで、インビトロで培養され得、特徴付けのための組織培養培地中で抗体を生成する。
【0103】
HCVに対するヒトモノクローナル抗体を産生トランスフェクトーマの生成
本発明のヒト抗体は、例えば、当該技術分野で周知であるような組換えDNA技法と遺伝子トランスフェクション法との組み合わせ(Morrison、S.(1985)Science 229:1202)を用い、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生され得る。
【0104】
例えば、1つの実施形態では、目的の遺伝子(単数または複数)、例えば、ヒト抗体遺伝子は、国際公開第WO87/04462号,同第WO89/01036号および欧州特許第EP 338841号に開示されるGS遺伝子発現系、または当該技術分野で周知のその他の発現系によって用いられるような真核生物発現プラスミドのような発現ベクター中に連結され得る。クローン化された抗体遺伝子をもつ精製プラスミドは、CHO細胞もしくはNSO細胞、あるいは植物由来細胞、真菌細胞もしくは酵母細胞のようなその他の真核細胞のような真核生物宿主細胞中に導入され得る。これら遺伝子を導入するために用いられる方法は、エレクトロポーレーション、リポフェクタミンまたはその他のような当該技術分野で記載される方法であり得る。これら抗体遺伝子を宿主細胞中に導入した後、抗体を発現する細胞が同定および選択され得る。これらの細胞がトランスフェクトーマとなり、これは次いで、それらの発現レベルについて増幅され得、そして抗体を産生するようにアップスケールされる。組換え抗体は、これらの培養上清液および/または細胞から単離および精製され得る。
【0105】
あるいは、これらのクローン化抗体遺伝子は、E.coliまたは完全生物のような発現系で発現され得るか、または合成的に発現され得る。
【0106】
インタクトな抗体を発現するための部分抗体配列の使用
抗体は、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置されるアミノ酸残基を通じて優勢に標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列より個々の抗体間でより多様である。CDR配列は大部分の抗体−抗原相互作用の原因であるため、異なる性質をもつ異なる抗体からのフレームワーク配列上にグラフト化された特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現することが可能である。(例えば、Riechmann、L.ら、1998、Nature 332:323−327;Jones、P.ら、1986、Nature 321:522−525;およびQueen、C.ら、1989、Proc.Natl.Acad.U.S.A.86:10029−10033を参照のこと)。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースから得ることができる。これらの生殖細胞系配列は成熟抗体遺伝子配列とは異なる。なぜなら、それらは、B細胞成熟の間にV(D)J接続によって形成される完全にアセンブリされた可変遺伝子は含まないからである。生殖細胞系遺伝子配列はまた、個々で可変領域を均一に横切る高親和性二次レパートリー抗体の配列とは異なる。例えば、体細胞突然変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分およびフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分において比較的まれである。さらに、多くの体細胞突然変異は、抗体の結合性質を顕著には改変しない。この理由のため、当初の抗体の結合性質に類似の結合性質を有するインタクトな組換え抗体を再生成するために特定の抗体の完全DNA配列を得る必要は必ずしもない(1999年3月12日に出願されたPCT/US99/05535を参照のこと)。CDR領域にまたがる部分的な重鎖および軽鎖配列が、代表的には、この目的のために十分である。この部分配列は、どの生殖細胞系可変および接続遺伝子セグメントが組換え抗体可変遺伝子に寄与したかを決定するために用いられる。この生殖細胞系配列は、次いで、可変領域のなくなった部分を満たすために用いられる。重鎖および軽鎖リーダー配列はタンパク質成熟の間に切断され、そして最終抗体の性質には寄与しない。なくなる配列を付加するために、クローン化cDNA配列は、連結またはPCR増幅によって合成オリゴヌクレオチドと組み合わされ得る。あるいは、全可変領域は、1セットの短い重複するオリゴヌクレオチドとして合成され得、そしてPCR増幅によって合わせられ、完全に合成可変領域クローンを生成する。このプロセスは、特定の制限部位をなくすること、含めること、または特定コドンの最適化のような特定の利点を有している。
【0107】
ハイブリドーマからの重鎖および軽鎖転写物のヌクレオチド配列は、合成オリゴヌクレオチドの重複するセットを設計するために用いられ、天然配列と同じアミノ酸コード能力をもつ合成V配列を生成する。合成の重鎖およびκ鎖配列は、3つの様式で天然配列と異なる得る:繰り返しヌクレオチド塩基のストリングが中断され、オリゴヌクレオチド合成およびPCR増幅を容易にする;最適翻訳開始部位が、Kozakの規則に従って取り込まれ(Kozak、1991、J.Biol.Chem.266:19867−19870);そして、HindIII部位がこの翻訳開始部位の上流に加工される。
【0108】
重鎖および軽鎖可変領域の両方について、最適化されたコード、および対応する非コードのストランド配列が、この対応する非コードオリゴヌクレオチドのほぼ中点で開始する30〜50ヌクレオチドオリゴヌクレオチドにブレイクダウンされる。従って、各鎖について、これらオリゴヌクレオチドが、150〜400ヌクレオチドのセグメントにまたがる重複する二本鎖のセットにアセンブリされ得る。これらのプールが次いで、テンプレートとして用いられ、150〜400ヌクレオチドのPCR増幅産物を産生する。代表的には、単一の可変領域オリゴヌクレオチドセットが、2つのプールに破壊され、これらは別個に増幅され、2つの重複するPCR産物を生成する。これらの重複する産物は、次いで、PCR増幅によって合わせされ、完全可変領域を形成する。PCR増幅において重鎖または軽鎖定常領域(κ軽鎖のBbsI部位、またはγ重鎖のAgeI部位を含む)の重複するフラグメントを含めることがまた所望され得、発現ベクター構築物に容易にクローン化され得るフラグメントを生成する。
【0109】
再構築された重鎖および軽鎖可変領域は、次いで、クローン化されたプロモーター、リーダー配列、翻訳開始配列、リーダー配列、定常領域配列、3’非翻訳配列、ポリアデニル化配列、および転写終結配列と組み合わされ得、発現ベクター構築物を形成する。これら重鎖および軽鎖発現構築物は、単一ベクターに合わせられ得、宿主細胞に、同時トランスフェクトされ、連続的にトランスフェクトされるか、または別個にトランスフェクトされ、これらは次いで融合されて両方の鎖を発現する宿主細胞を形成する。
【0110】
発現ベクターの構築における使用のためのプラスミドは、PCR増幅されたV重鎖およびVκ軽鎖cDNA配列が完全重鎖および軽鎖ミニ遺伝子を再構築するするために用いられ得るように構築され得る。これらのプラスミドは、完全にヒトIgG1κまたはIgG4κ抗体を発現するために用いられ得る。本発明の完全ヒト抗体およびキメラ抗体はまた、IgG2、IgG3、IgE、IgA、IgM、およびIgD抗体を含む。類似のプラスミドが、その他の重鎖アイソタイプの発現のため、またはλ軽鎖を含む抗体の発現のために構築され得る。
【0111】
従って、本発明の別の局面では、本発明のヒト抗HCV抗体の1つ以上の構造特徴が、例えば、HCVに結合すること、またはHCVを中和することのような本発明の抗体の少なくとも1つの機能的性質を保持する構造的に関連するヒト抗HCV抗体を生成するために用いられる。1つの実施形態では、本発明の1つ以上のCDR領域は、既知のヒトフレームワーク領域およびCDRと組み換えにより合わせられ得、さらなる組み換えにより操作された本発明の抗HCV抗体を生成する。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、同じか、または異なるヒト抗体配列に由来し得る。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であり得るか、またはいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であり得る。Kettleboroughら、Protein Engineering 4:773(1991);Kolbingerら、Protein Engineering 6:971(1993)およびCarterら、国際公開第WO 92/22653号を参照のこと。
【0112】
従って、別の実施形態では、本発明は、ヒト抗HCV抗体を調製するための方法を提供し:(1)少なくとも1つのヒト重鎖CDRが本明細書中に記載されるヒト重鎖CDRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖フレームワーク領域およびヒト重鎖CDR;および(2)少なくとも1つのヒト重鎖CDRが本明細書中に記載されるヒト軽鎖CDRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖フレームワーク領域およびヒト軽鎖CDRを含む抗体であって、HCVに結合する能力を保持する抗体を調製することを含む。HCVを結合する抗体の能力は、実施例に提示されるようなアッセイ、(例えば、ELISAまたはFLISA)のような、標準的な結合アッセイを用いて決定され得る。
【0113】
抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインが抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を演じることが当該技術分野で周知である(Hallら、J.Imunol.、149:1605−1612(1992);Polymenisら、J.Immunol.、152:5318−5329(1994);Jahnら、Immunobiol.、193:400−419(1995);Klimkaら、Brit.J.Cancer、83:252−260(2000);Beiboerら、J.Mol.Biol、296:833−849(2000);Raderら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:8910−8915(1998);Barbasら、J.Am.Chem.Soc.、116:2161−2162(1994);Ditzelら、J.Immunol.、157:739−749(1996)を参照のこと)。従って、上記で提示されたように調製された本発明の組み換え抗体は、好ましくは、抗体83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1の重鎖および/または軽鎖CDR3を含む。これら抗体はさらに、抗体83−128、95−2、95−14、95−38および073−1のCDR2を含み得る。これら抗体はさらに、抗体83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1のCDR1を含み得る。これら抗体はさらに、これらCDRの任意の組み合わせを含み得る。
【0114】
従って、別の実施形態では、本発明はさらに:(1)ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1領域、ヒシ重鎖CDR2領域、およびヒト重鎖CDR3であって、ここで、このヒト重鎖CDR3領域が、83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1のCDR3から選択される、例えば、本明細書中に記載される配列表で示されるような95−2のヒト重鎖CDR3領域であるヒト重鎖CDR3領域であり;および(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1領域、ヒト軽鎖CDR2領域、およびヒト軽鎖CDR3領域であって、ここでこのヒト軽鎖CDR3領域が、83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1のCDR3から選択され、例えば、本明細書中に記載される配列表で示されるような95−2のヒト軽鎖CDR3領域である、を含む抗HCV抗体を提供する。上記抗体はさらに、抗体83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1の重鎖CDR2および/または軽鎖CDR2を含み得る。上記抗体はさらに、83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1の重鎖CDR1および/または軽鎖CDR1を含み得る。
【0115】
上記に記載される操作された抗体のCDR1、2および/または3領域は、本明細書にまさに開示される抗体83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1のようなアミノ酸(単数または複数)を含む。しかし、当業者は、まさに83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1のCDR配列からのいくつかの逸脱が可能であり得、その一方、なお、その抗体のHCVを結合する能力を保持することを認識する(例えば、保存的配列改変)。従って、別の実施形態では、上記操作された抗体は、抗体83−128、95−2、95−14、95−38、および073−1の1つ以上のCDRに、例えば、90%、95%、98%または99.5%同一である1つ以上のCDRを含み得る。
【0116】
別の実施形態では、CDRの1つ以上の残基は改変され得、結合を修飾し、理想的な結合定数が達成されるように、より好ましい結合速度(on−rate)の結合、より好ましい解離速度(off−rate)の結合を達成する。この戦略を用い、例えば、K10−10M以下の超高度の結合親和性を有する抗体が達成され得る。本明細書に記載されるような当該技術分野で周知の親和性成熟技法が、CDR領域(単数または複数)を改変するために用いられ得、結合における所望の変化のために得られる結合性分子のスクリーニングが続く。従って、CDR(単数または複数)が改変されるとき、結合親和性における変化、および免疫原性がモニターされ得、そして最良の合わせられた結合および低免疫原性について最適化された抗体が達成されるようにスコアされ得る。
【0117】
CDR内の改変に加え、またはそれに代わって、改変がまた、これらの改変が上記ヒト抗体の結合親和性をなくさない限り、ヒト抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のフレームワーク領域、FR1、FR2、FR3およびFR4の1つ以上内でなされ得る。フレームワーク内のいくつかの位置のアミノ酸は、多くの抗体においてCDR確認(例えば、CDRと相互作用し得る)を決定するために重要であることが知られている(ChothiaおよびLesk、前述Chothiaら、前述およびTramontanoら、J.Mol.Biol.215:175(1990)、これらすべては本明細書中に参考として援用される)。これらの著者は、いくつかの公知の抗体の構造の分析により、CDR配座に重要である保存されたフレームワーク残基を同定した。分析された抗体は、CDRの配座に基づき、限られた数の構造または「標準(canonical)」クラスに入る。標準残基は、軽鎖の残基2、25、29、30、33、48、64、71、90、94および95、ならびに重鎖の残基24、26、29、34、54、55、71および94を含む。さらなる残基(例えば、CDR構造−決定残基)は、MartinおよびThorton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法に従って、同定され得る。注目すべきことに、軽鎖の位置2、48、64および71、ならびに重鎖の位置26−30、71および94(番号付けは、Kabatによる)、多くの抗体においてCDRと相互作用し得ることが知られている。軽鎖中の位置35および重鎖中の位置93および103はまた、CDRと相互作用するようである。CDRの配座に影響し得るさらなる残基は、FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487の方法に従って同定され得る。このような残基は、「バーニア(vernier)」残基と称され、そしてCDRに緊密して下にある(すなわち、その下の「プラットホーム」を形成する)。
【0118】
「V−Vに参加する」残基、または「パッケージング」残基は、例えば、NovotnyおよびHaber、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4592−66(1985)またはChothiaら、前述によって規定されるように、VとVとの間の界面にあるような残基を含む。
【0119】
ときどき、特定のアミノ酸が上記で述べたカテゴリーの1つ以上内に入るか否かについていくらかの曖昧さがある。このような事例では、代替の改変体抗体が産生され、そのうちの1つはその特定の置換を有し、その他は有さない。そのように産生された代替の改変体抗体は、所望の活性について本明細書中に記載される任意のアッセイで試験され得、そして好まし抗体が選択される。
【0120】
フレームワーク領域内の置換のさらなる候補は、その位置でのヒト抗体について通常でない、または「希」であるアミノ酸である。これらのアミノ酸は、ヒト生殖細胞系配列に等価な位置から、またはより代表的なヒト抗体の等価な位置からのアミノ酸で置換され得る。例えば、置換は、ヒト抗体のヒトフレームワーク領域中のアミノ酸が、その位置には希であり、そして生殖細胞系配列における対応するアミノ酸が、ヒト免疫グロブリン配列におけるその位置について一般的であるとき;または、ヒト抗体中のアミノ酸がその位置について希であり、そして生殖細胞系配列における対応するアミノ酸がまた、その他のヒト配列に対して希であるとき、所望される。通常でないアミノ酸をヒト抗体について代表的にある生殖細胞系からのアミノ酸で近くすることにより、ヒト抗体は、免疫原性がより少なくされ得ることが企図される。
【0121】
用語「希」は、本明細書で用いられるとき、配列の代表的なサンプル中で、その位置において、配列の約20%より少なく、好ましくは約10%より少なく、より好ましくは約5%より少なく、なおより好ましくは約3%より少なく、なおより好ましくは約2%より少なく、そしてなおより好ましくは、約1%より少なく生じるアミノ酸を示し、そして用語「一般的」は、本明細書で用いられるとき、代表的なサンプル中で、配列の約25%より多いが、通常、約50%より多くあるアミノ酸を示す。例えば、すべてのヒト軽鎖および重鎖可変領域配列は、各々、互いに特に相同であり、そして特定の重要位置(Kabatら、前述)で同じアミノ酸を有する配列の「サブグループ」に分類される。ヒト抗体におけるアミノ酸が、ヒト配列の中で「希」または「一般的」であるか否かを決定するとき、ヒト抗体配列として同じサブグループにあるようなヒト配列のみを考慮することがしばしば好ましい。
【0122】
一般に、ヒト抗体のフレームワーク領域は、それらが派生するヒト生殖細胞系配列のフレームワーク領域に通常実質的に同一であり、そしてより通常にはそれと同一である。もちろん、フレームわーク領域中の多くのアミノ酸は、抗体の特異性または親和性にほとんど寄与しないか、または直接寄与しない。それ故、フレーム残基の多くの個々の保存的置換は、得られるヒト免疫グロブリンの特異性または親和性の認知資得る変化なくして仕立てられ得る。それ故、1つの実施形態では、ヒト抗体の可変フレームワーク領域は、ヒト生殖細胞系可変フレームワーク領域配列またはこのような配列のコンセンサスと少なくとも85%の配列同一性を共有する。別の実施形態では、ヒト抗体の可変フレームワーク領域は、ヒト生殖細胞系可変フレームワーク領域配列またはこのような配列のコンセンサスと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。
【0123】
HCV E2タンパク質の直線状エピトープを単に結合することに加えて、モノクローナル抗体は、HCV E2の複数の遺伝子型への結合、および/または10−9M以下のKのような超高度の親和性での結合のような、本発明の抗体のその他の機能的性質のその保持について選択され得る。
【0124】
HCVに対するヒトモノクローナル抗体の特徴付け
本発明のヒトモノクローナル抗体は、種々の公知技術を用いてHCVへの結合について特徴付けられ得る。一般に、抗体は、ELISAによって最初に特徴付けられる。簡単に述べると、マイクロタイタープレートがPBS中の精製HCVでコーティングされ、次いで、PBS中に希釈したウシ血清アルブミン(BSA)のような無関係のタンパク質でブロッキングされ得る。HCV免疫マウスからの血漿の希釈物を各ウェルに加え、そして、37℃にて1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tween 20で洗浄し、次いで、アルカリホスファターゼに結合させたヤギ−抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬と共に37℃で1時間インキュベートする。洗浄の後、プレートをABTS基質で発色させ、405のODで解析する。好ましくは、最も高い力価を発生するマウスが融合使用される。
【0125】
上述のようなELISAアッセイは、抗体、したがって、HCV免疫源と正の反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングに使用され得る。その後、好ましくは高い親和性でHCVに結合するハイブリドーマが、サブクローニングされ、そしてさらに特徴付けられ得る。(ELISAによって)親細胞の反応性を保持する各ハイブリドーマに由来する1つのクローンが、次いで、細胞バンクを作製するため、そして抗体精製のために選択され得る。
【0126】
ヒト抗HCV抗体を精製するために、選択したハイブリドーマを、ローラーボトル、2リットルのスピナーフラスコまたは他の培養システムにおいて増殖させ得る。上清を濾過および濃縮し、その後、プロテインA−セファロース(Pharmacia,Piscataway,NJ)を用いたアフィニティクロマトグラフィーを行い、タンパク質を精製し得る。培地をPBSに交換した後、1.43の吸光係数(extinction coefficient)を用いてOD280で、または、好ましくは、比濁計を用いた解析によって濃度を決定し得る。IgGは、ゲル電気泳動および抗原特異的な方法によって確認され得る。
【0127】
選択したヒト抗HCVモノクローナル抗体が固有のエピトープに結合するかどうかを判定するために、市販の試薬(Pierce,Rockford,IL)を用いて各抗体をビオチン化し得る。ビオチン化MAbの結合は、ストレプトアビジン標識プローブを用いて検出され得る。精製抗体のアイソタイプを決定するために、当該分野で認められた技術を用いてアイソタイプELISAが行われ得る。例えば、マイクロタイタープレートのウェルは、4℃にて一晩、10μg/mlの抗ヒトIgでコーティングされ得る。5% BSAでブロッキングした後、これらのプレートを、室温にて2時間、10μg/mlのモノクローナル抗体または精製アイソタイプコントロールと反応させる。次いで、これらのウェルは、ヒトIgG1または他のヒトアイソタイプ特異的に結合されたプローブのいずれかと反応させられ得る。上述のようにしてプレートを発色させ、そして、解析する。
【0128】
抗HCVヒトIgGは、さらに、ウェスタンブロッティングによってHCV抗原との反応性について検討され得る。簡単に述べると、HCVを発現する細胞からの細胞抽出物を調製し、これを、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し得る。電気泳動の後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、20%のマウス血清でブロッキングし、そして、検討されるべきモノクローナル抗体でプローブさせる。ヒトIgGの結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出され、そして、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO)を用いて発色させられ得る。
【0129】
II.ヒトモノクローナル抗HCV抗体を生成するトランスジェニック非ヒト動物の産生
なお別の局面では、本発明は、HCVに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を発現し得るトランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)を提供する。特定の実施形態では、本発明は、ヒト重鎖トランスジーンを含むゲノムを持つトランスジェニックマウスを提供し、このマウスは、HCV抗原および/またはHCV発現細胞で免疫されたときにヒト抗HCV抗体を産生する。トランスジェニック(例えば、HuMAb)マウスの場合、本明細書中に詳細に記載され、そして例示されるように、ヒト重鎖トランスジーンはマウスの染色体DNAに組み込まれ得る。このようなトランスジェニックマウスは、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチングを受けることによって、HCVに対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えば、IgG)を産生し得る。アイソタイプスイッチングは、例えば、古典的または非古典的なアイソタイプスイッチングによって生じ得る。
【0130】
異種抗体レパートリーを用いた外来抗原刺激に応答するトランスジェニック非ヒト動物の設計は、そのトランスジェニック動物に含まれる異種免疫グロブリントランスジーンが、B細胞発生の経路全体を通じて正しく機能することを必要とする。このことは、例えば、異種重鎖トランスジーンのアイソタイプスイッチングを含む。したがって、トランスジーンは、アイソタイプスイッチングと、そして、抗体の以下のうちの1つ以上を生じるように構築される:(1)高レベルかつ細胞のタイプに特異的な発現、(2)機能的な遺伝子の再配列、(3)対立遺伝子排除の活性化およびこれに対する応答、(4)十分な初代レパートリーの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞ハイパーミューテーション(hypermutation)、および(7)免疫応答中のトランスジーン抗体遺伝子座の支配。
【0131】
上記の基準が全て満たされる必要はない。例えば、トランスジェニック動物の内因性免疫グロブリン遺伝子座が機能的に破壊されている実施形態では、トランスジーンは、対立遺伝子排除を活性化する必要はない。さらに、トランスジーンが機能的に再配列された重鎖および/または軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含む実施形態では、少なくともそのトランスジーンがすでに再配列されているので、機能的な遺伝子の再配列という2番目の基準は不要である。分子免疫学についての背景に関しては、Fundamental Immunology,第2版、(1989)Paul William E.,ed.Raven Press,N.Y.を参照のこと。
【0132】
特定の実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体を作製するために使用されるトランスジェニック非ヒト動物は、そのトランスジェニック動物の生殖細胞系に、再配列されたか、再配列されていないか、あるいは、再配列と非再配列とが組み合わされた、異種免疫グロブリン重鎖および軽鎖トランスジーンを含む。重鎖トランスジーンは各々、少なくとも1つのC遺伝子を含む。さらに、重鎖トランスジーンは、トランスジェニック動物のB細胞において複数のC遺伝子をコードする異種トランスジーンのアイソタイプスイッチングを支援し得る、機能的なアイソタイプスイッチング配列を含み得る。このようなスイッチング配列は、トランスジーンのC遺伝子源として機能する種に由来する生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子座において天然に存在するものであっても、このようなスイッチング配列が、トランスジーン構築物を受容する予定の種(トランスジェニック動物)において生じるものに由来していてもよい。例えば、トランスジェニックマウスを産生するために使用されるヒトトランスジーン構築物は、マウス重鎖遺伝子座において天然に存在するものと同様の切換え配列を含む場合、より高い頻度のアイソタイプスイッチング事象を生じ得る。というのも、おそらく、マウススイッチング配列は、マウススイッチングリコンビナーゼ酵素系と共に機能するように最適化されているのに対し、ヒトスイッチング配列はそのように機能しないからである。スイッチング配列は、従来のクローニング法によって単離およびクローニングされても、免疫グロブリンのスイッチ領域配列に関する公開された配列情報に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドを重ねることによってデノボで合成されてもよい(Millsら、Nucl.Acids Res.15:7305−7316(1991);Siderasら、Intl.Immunol.1:631−642(1989))。上述のトランスジェニック動物の各々について、機能的に再配列された異種重鎖および軽鎖免疫グロブリントランスジーンは、トランスジェニック動物のB細胞の有意な画分(少なくとも10%)において見られる。
【0133】
本発明のトランスジェニック動物を作製するために使用されるトランスジーンとしては、少なくとも1つの可変遺伝子セグメント、1つの多様性遺伝子セグメント、1つの接合遺伝子セグメントおよび少なくとも1つの定常領域遺伝子セグメントをコードするDNAを含む重鎖トランスジーンが挙げられる。免疫グロブリン軽鎖トラスジーンは、少なくとも1つの可変遺伝子セグメント、1つの接合遺伝子セグメントおよび少なくとも1つの定常領域遺伝子セグメントをコードするDNAを含む、軽鎖および重鎖遺伝子セグメントをコードする遺伝子セグメントは、トランスジェニック非ヒト動物から構成されない種に由来する免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子セグメントをコードするDNAに由来するかまたはこれに対応するという点で、トランスジェニック非ヒト動物に対して異種である。本発明の一局面では、トランスジーンは、個々の遺伝子セグメントが再配列されない、すなわち、機能的な免疫グロブリン軽鎖または重鎖をコードするように再配列されていないように構築される。このような再配列されていないトランスジーンは、V、DおよびJ遺伝子セグメントの組換え(機能的な再配列)を支援し、そして好ましくは、HCV抗原に曝露されたときにトランスジェニック非ヒト動物において結果として生じる再配列された免疫グロブリン重鎖へのD領域遺伝子セグメントの全体もしくは一部分の組み込みを支援する。
【0134】
代替的な実施形態では、トランスジーンは、再配列されていない「ミニ遺伝子座(mini−locus)」を含む。このようなトランスジーンは、代表的に、C、DおよびJセグメントの実質的な部分、ならびに、V遺伝子セグメントのサブセットを含む。このようなトランスジーン構築物において、種々の調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、クラススイッチ領域、RNAプロセシングのスプライス−ドナーおよびスプライス−アクセプター配列、組換えシグナルなど)は、異種DNAに由来する対応する配列を含む。このような調節配列は、本発明において使用される非ヒト動物の同一種または関連種に由来するトランスジーンへと組み込まれ得る。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントは、トランスジーンにおいて、トランスジェニックマウスにおいて使用するためのげっ歯類免疫グロブリンエンハンサー配列と組み合され得る。あるいは、合成の調節配列がトランスジーンに組み込まれ得、そして、このような合成の調節配列は、哺乳動物のゲノム中に天然に存在することが知られる機能的なDNA配列に対して同種ではない。合成の調節配列は、例えば、スプライス−アクセプター部位またはプロモーター/エンハンサーモチーフの許容された配列を特定するもののような共通のルールにしたがって設計される。例えば、ミニ遺伝子座は、天然に存在する生殖細胞系のIgG遺伝子座と比較して、少なくとも1つの非必須DNA部分(例えば、介在配列;イントロンまたはその一部)の内部(すなわち、ある部分の末端にはない)の欠失を有するゲノム免疫グロブリン遺伝子座の一部分を含む。
【0135】
本発明の好ましい実施形態では、HCVに対するヒト抗体を作製するために使用されるトランスジェニック動物は、少なくとも1つ、代表的には2〜10、そしてときおり25〜50またはそれより多いコピー数の、WO 98/24884の実施例12に記載されるトランスジーン(例えば、pHC1またはpHC2)を含み、そして、WO 98/24884の実施例5、6、8または14に記載される単コピーの軽鎖トランスジーンを含む動物と交配され、そして、その子孫が、WO 98/24884の実施例10に記載されるJを欠失した動物と交配される。動物は、これらの3系統の各々についてホモ接合性となるように交配される。このような動物は、以下の遺伝子型を有する:(染色体の一倍体セットにつき)単コピーのヒト重鎖の再配列されていないミニ遺伝子座(WO 98/24884の実施例12に記載されるもの)、(染色体の一倍体セットにつき)単コピーの再配列されたヒトκ軽鎖構築物(WO 98/24884の実施例14に記載されるもの)、および、機能的なJセグメントを全て除去する、各内因性のマウス重鎖遺伝子座における欠失(WO 98/24884の実施例10に記載されるもの)。このような動物は、J欠失についてホモ接合性であり、かつ、ヒト重鎖および軽鎖構築物についてヘミ接合性である子孫を産生するために、Jセグメントの欠失についてホモ接合性のマウス(WO 98/24884の実施例10)と交配される。その結果得られる動物は、抗原が注射され、そして、これらの抗原に対するヒトモノクローナル抗体の産生のために使用される。
【0136】
このような動物から単離したB細胞は、各々単コピーのみの遺伝子を含むので、ヒト重鎖および軽鎖に関して単一特異的である。さらに、これらは、両方の内因性マウス重鎖遺伝子コピーが、WO 98/24884の実施例9および12に記載されるようにして導入されたJ領域にまたがる欠失によって非機能的となっているので、ヒトまたはマウスの重鎖に関して単一特異的である。さらに、単コピーの再配列されたヒトκ軽鎖遺伝子の発現が、B細胞の有意な画分におけるマウスκ鎖およびλ鎖遺伝子の再配列を対立遺伝子性かつアイソタイプ性に排除しているので、このB細胞の有意な画分は、ヒトまたはマウスの軽鎖に関して単一特異的である。
【0137】
本発明において用いられるトランスジェニックマウスは、理想的にはネイティブなマウスのものと実質的に同様の有意なレパートリーを持つ免疫グロブリン産生を示す。したがって、例えば、内因性のIg遺伝子が不活性化されている実施形態では、免疫グロブリンの総レベルは、血清1mlにつき約0.1〜10mg、好ましくは0.5〜5mg、理想的には少なくとも約1.0mgの範囲である。IgGからIgMへのスイッチを達成し得るトランスジーンがトランスジェニックマウスに導入された場合、成体マウスの、血清中のIgG:IgMの比は、好ましくは約10:1である。IgG:IgMの比は、未熟なマウスではかなりより低い。一般に、約10%より多く、好ましくは40〜80%の脾臓およびリンパ節のB細胞が専らヒトIgGタンパク質を発現する。
【0138】
レパートリーは、理想的には、ネイティブなマウスにおいて示されるものに近く、通常は少なくとも約10%の高さで、好ましくは25〜50%またはそれ以上である。一般に、主としてマウスゲノム中に導入された異なるV、JおよびD領域の数に依存して、少なくとも約1000の異なる免疫グロブリン(理想的にはIgG)、好ましくは、10〜10またはそれ以上の異なる免疫グロブリンが産生される。これらは、免疫グロブリンは代表的に、約2分の1またはそれ以上の高度に抗原性のタンパク質(例えば、ブドウ球菌のプロテインA)を認識する。代表的に、免疫グロブリンは、予め選択された抗原に対し、10−7Mを下回る(10−8M、10−9Mもしくは10−10Mを下回るか、またはなおより低い)親和性(K)を示す。
【0139】
予め決定された抗原のタイプに対して応答する抗体において表されるV遺伝子の選択を制限するために、予め決定されたレパートリーを持つマウスを作製することが好ましくあり得る。予め決定されたレパートリーを持つ重鎖トランスジーンは、例えば、ヒトにおける予め決定された抗原のタイプに対して応答する抗体において優先的に使用されるヒトV遺伝子を含み得る。あるいは、いくつかのV遺伝子は、種々の理由(例えば、予め決定された抗原に対して親和性の高いV領域をコードする可能性が低い;体細胞突然変異および親和性シャープニング(sharpening)を受ける傾向が低い;または、特定のヒトに対して免疫原性である)から、規定されたレパートリーから除外され得る。したがって、種々の重鎖または軽鎖遺伝子セグメントを含むトランスジーンの再配列の前に、このような遺伝子セグメントは、例えば、ハイブリダイゼーションまたはDNA配列決定によって、容易に、トランスジェニック動物のものとは異なる生物種に由来するものであるとして識別され得る。
【0140】
上記のトランスジェニックマウスは、例えば、HCV抗原および/またはHCVタンパク質を発現する細胞の精製もしくは富化された調製物を用いて免疫され得る。あるいは、トランスジェニックマウスは、HCVタンパク質をコードするDNAを用いて免疫され得る。マウスは次いで、トランスジーン内スイッチ組換え(cis−スイッチング)によってクラススイッチングを受け、そして、HCVと反応性の免疫グロブリンを発現するB細胞を産生する。免疫グロブリンは、重鎖および軽鎖ポリペプチドがヒトトランスジーン配列によってコードされたヒト抗体(また、「ヒト配列抗体」とも呼ばれる)であり得、このヒトトランスジーン配列は、体細胞突然変異およびV領域のコンビナトリアル接合によって誘導された配列、ならびに、生殖細胞系によりコードされる配列を含み得る;これらのヒト抗体は、ヒトVもしくはV遺伝子セグメントおよびヒトJもしくはDおよびJセグメントによってコードされるポリペプチド配列と実質的に同一のものと解釈され得るが、体細胞突然変異および差示的なV−JおよびV−D−J組換え接合の結果として、他の非生殖細胞系配列も存在し得る。各抗体鎖の可変領域は、代表的に、ヒトの生殖細胞系V、J遺伝子セグメントによって、そして、重鎖の場合には、D遺伝子セグメントによって少なくとも80%コードされ;頻繁に、少なくとも85%の可変領域が、トランスジーンに存在するヒト生殖細胞系配列によってコードされる;しばしば、90もしくは95%以上の可変領域配列が、トランスジーンに存在するヒト生殖細胞系配列によってコードされる。しかしながら、体細胞突然変異、ならびにVJおよびVDJ接合によって非生殖細胞系配列が導入されているので、ヒト配列抗体は頻繁に、マウスの生殖細胞系におけるヒトトランスジーンで見られるようにヒトV、DまたはJ遺伝子セグメントによってコードされない、いくつかの可変領域配列(そして、頻度は低いが、定常領域配列)を有する。代表的には、このような非生殖細胞系配列(または個々のヌクレオチド位置)は、CDR内もしくはその付近、または、体細胞突然変異によりクラスター形成することが知られる領域内でクラスター形成する。
【0141】
予め決定された抗原に結合するヒト抗体は、アイソタイプスイッチングから生じ得、その結果、ヒト配列γ鎖(例えば、γ1、γ2a、γ2Bまたはγ3)およびヒト配列軽鎖(例えば、κ鎖)を含むヒト抗体が産生される。このようなアイソタイプスイッチングしたヒト抗体はしばしば、親和性突然変異、および、特に二次的な(すなわち、その後の)抗原チャレンジの後の抗原によるB細胞の選択の結果として、代表的には可変領域において、そして、しばしば、CDRの約10残基内において、1以上の体細胞突然変異を含む。これらの高親和性ヒト抗体は、10−7Mを下回る(10−8M、10−9Mもしくは10−10Mを下回るか、またはなおより低い)結合親和性(K)を有し得る。
【0142】
本発明の別の局面は、本明細書中に記載されるようなトランスジェニックマウスに由来するB細胞を含む。このB細胞は、ヒトHCVに対して高い親和性(例えば、10−7Mより低いK)で結合するヒトモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを作製するために使用され得る。したがって別の実施形態では、本発明は、分析物として組換えヒトHCVを、そして、ヒトHCVに結合させるためのリガンドとして抗体を用い、BIACORE 3000機器において表面プラスモン共鳴(SPR)技術によって決定した場合に、10−7Mを下回る(10−8M、10−9Mもしくは10−10Mを下回るか、またはなおより低い)結合親和性(K)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを提供する。そしてこの場合、抗体は、以下を含む:
(1)ヒトV遺伝子セグメントおよびヒトJセグメントによってコードされるポリペプチド配列と実質的に同一のポリペプチド配列を持つ軽鎖可変領域、および(2)ヒトC遺伝子セグメントによってコードされるポリペプチド配列と実質的に同一のポリペプチド配列を持つ軽鎖定常領域から構成されるヒト配列軽鎖;ならびに
(1)ヒトV遺伝子セグメント、任意のD領域およびヒトJセグメントによってコードされるポリペプチド配列と実質的に同一のポリペプチド配列を持つ重鎖可変領域、および(2)ヒトC遺伝子セグメントによってコードされるポリペプチド配列と実質的に同一のポリペプチド配列を持つ重鎖定常領域から構成されるヒト配列重鎖。
【0143】
HCVに対する高親和性ヒトモノクローナル抗体の生成は、組み込まれたヒト免疫グロブリントランスジーンを有するゲノムを持つトランスジェニックマウスにおけるヒト可変領域遺伝子セグメントのレパートリーを拡張するための方法によって容易にされ得、上記方法は、ゲノム中に、上記組み込まれたヒト免疫グロブリントランスジーン中には存在しないV領域遺伝子セグメントを含むV遺伝子トランスジーンを導入する工程を包含する。しばしば、このV領域トランスジーンは、ヒトゲノムにおいて天然に存在し得るか、または、共に組換え法によって別々にスプライシングされ得る、ヒトVまたはV(V)遺伝子セグメントアレイの一部を含む酵母人工染色体であり、これは、機能しないかもしくは省略されたV遺伝子セグメントを含み得る。しばしば、少なくとも5種以上の機能的なV遺伝子セグメントがYACに含まれる。このバリエーションにおいては、Vレパートリー拡張法によって産生されたトランスジェニックマウスを作製することが可能であり、この場合、このマウスは、V領域トランスジーン上に存在するV領域遺伝子セグメントによってコードされる可変領域とヒトIgトランスジーン上にコードされるC領域とを含む免疫グロブリン鎖を発現する。Vレパートリー拡張法によれば、少なくとも5種の別個のV遺伝子を有するトランスジェニックマウスが作製され得る;この場合、マウスは、少なくとも約24種またはそれ以上のV遺伝子を含み得る。いくつかのV遺伝子セグメントは、非機能的(例えば、偽遺伝子など)であり得る;これらのセグメントは、保持されても、所望される場合は、当業者に利用可能な組換え法によって選択的に欠失されてもよい。
【0144】
マウス生殖細胞系が、実質的にはJおよびC遺伝子セグメントを含むヒトIgトランスジーン中に存在しない拡張されたVセグメントレパートリーを持つ機能的なYACを含むように遺伝子操作されると、この形質は、遺伝され、そして、他の遺伝的バックグラウンド(拡張されたVセグメントレパートリーを持つ機能的なYACが、異なるヒトIgトランスジーンを持つマウス生殖細胞系へと掛け合わされるバックグラウンドを含む)へと掛け合わされ得る。拡張されたVセグメントレパートリーを持つ多数の機能的なYACが、ヒトIgトランスジーン(または、多数のヒトIgトランスジーン)と共に機能するように、生殖細胞系へと掛け合わされ得る。本明細書中ではYACトランスジーンと呼ばれているが、このようなトランスジーンは、ゲノム中に組み込まれると、実質的に酵母の配列(例えば、酵母における自律性の複製に必要とされる配列;このような配列は、酵母における複製がもはや不必要となった後(すなわち、マウスES細胞またはプロ接合体(prozygote)への導入の前)に、必要に応じて遺伝子操作(例えば、制限消化、および、パルスフィールドゲル電気泳動または他の適切な方法)によって除去され得る)を欠失し得る。ヒト配列免疫グロブリンの発現形質を遺伝させる方法としては、ヒトIgトランスジーンを有し、必要に応じて、拡張されたVセグメントレパートリーを持つ機能的なYACも持つトランスジェニックマウスを交配させることが挙げられる。VおよびV遺伝子セグメントの両方が、YAC上に存在し得る。トランスジェニックマウスは、専門家によって必要とされるあらゆるバックグラウンド(他のヒトトランスジーン(ヒトIgトランスジーンおよび/または、他のヒトリンパ球タンパク質をコードするトランスジーンを含む)を有するバックグラウンドを含む)と交配され得る。本発明はまた、拡張されたV領域レパートリーのYACトランスジーンを持つトランスジェニックマウスによって産生される高親和性のヒト配列免疫グロブリンを提供する。上に、本発明のトランスジェニック動物の好ましい実施形態を記載してきたが、以下の4つのカテゴリーに分類される他の実施形態が企図される:
I.再配列されていない重鎖および再配列された軽鎖免疫グロブリントランスジーンを含むトランスジェニック動物;
II.再配列されていない重鎖および再配列されていない軽鎖免疫グロブリントランスジーンを含むトランスジェニック動物;
III.再配列された重鎖および再配列されていない軽鎖免疫グロブリントランスジーンを含むトランスジェニック動物;
IV.再配列された重鎖および再配列された軽鎖免疫グロブリントランスジーンを含むトランスジェニック動物。
【0145】
トランスジェニック動物のこれらのカテゴリーのうち、好ましい順序は、内因性の軽鎖遺伝子(または、少なくともκ遺伝子)が相同組換え(または他の方法)によってノックアウトされている場合には、II>I>III>IVの順であり、そして、内因性の軽鎖がノックアウトされておらず、対立遺伝子除外によって支配されなければならない場合には、I>II>III>IVの順である。
【0146】
III.抗体結合体/免疫毒素
別の局面では、本発明は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性同位体のような治療部分に結合されたヒト抗HCVモノクローナル抗体を特徴とする。細胞毒素に結合される場合、これらの抗体結合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒素または細胞傷害性因子は、細胞に対して有害な(例えば、殺傷する)あらゆる因子を含む。例としては、以下が挙げられる:タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、ならびに、これらのアナログまたはホモログ。治療因子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムビシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン類(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂因子(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)。本発明の抗体は、癌のようなHCV関連の障害を処置するための細胞傷害性の放射性医薬品を作製するために、放射性同位体(例えば、放射性ヨウ素)に結合され得る。
【0147】
本発明の抗体結合体は、所与の生物学的応答を変更するために使用され得る。治療部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとはみなされない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、酵素により活性となる毒素またはその活性なフラグメント(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素またはジフテリア毒素);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子またはインターフェロン−γ);または、生物学的応答修飾因子(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)または他のサイトカインもしくは増殖因子)が挙げられ得る。
【0148】
このような治療部分を抗体に結合するための技術は周知であり、例えば、以下を参照のこと:Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」,Controlled Drug Delivery(第2版),Robinsonら(編),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」,Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(編),pp.475−506(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編),pp.303−16(Academic Press 1985)およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと。
【0149】
IV.薬学的組成物
別の局面では、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと共に処方された本発明のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分の1種または組み合わせを含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。好ましい実施形態では、組成物は、複数(例えば、2以上)の本発明の単離されたヒト抗体の組み合わせを含む。好ましくは、組成物の抗体の各々は、別個の予め選択されたHCVエピトープに結合する。
【0150】
本発明の薬学的組成物はまた、併用療法において、すなわち、他の因子と組み合わせ投与され得る。例えば、併用療法は、本発明の組成物を、少なくとも1種またはそれより多いさらなる治療因子(例えば、抗炎症剤、DMARD(疾患修飾抗リウマチ薬)、免疫抑制剤、化学療法薬および乾癬治療剤)と共に含み得る。本発明の薬学的組成物はまた、放射線治療と組み合わせて投与され得る。他の抗体(例えば、CD4特異的抗体およびIL−2特異的抗体)との同時投与もまた、本発明によって包含される。このようなCD4特異的抗体またはIL−2特異的抗体との組み合わせは、自己免疫疾患および移植拒絶を処置するために特に有用であると考えられる。
【0151】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」とは、生理学的に適合性である任意および全ての溶剤、懸濁媒体、コーティング、抗微生物剤および抗菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、キャリアは、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適したものである。投与経路に依存して、活性化合物、すなわち、抗体、二重特異性(bispecific)および多重特異性(multispecific)の分子は、化合物を不活性化し得る酸および他の中性条件の作用から化合物を保護するために、ある材料中でコーティングされ得る。
【0152】
「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、かつ、任意の望ましくない毒性作用を与えない塩を指す(例えば、Berge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。このような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性の無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホスホン酸など)に由来するもの、ならびに、非毒性の有機酸(例えば、モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸など)に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)に由来するもの、ならびに、非毒性の有機アミン(例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなど)に由来するものが挙げられる。
【0153】
本発明の組成物は、当該分野で公知の種々の方法によって投与され得る。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望される結果に依存して変化する。活性な化合物は、急速な放出に対して化合物を保護するキャリアと共に調製され得る(例えば、制御放出処方物(移植物、経皮パッチおよびマイクロカプセル化された送達系が挙げられる))。生分解性かつ生体適合性のポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製のための多数の方法が特許になっているか、または、当業者に一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0154】
特定の投与経路によって本発明の化合物を投与するためには、化合物を、その不活性化を防ぐための物質でコーティングするか、または、このような物質と同時に投与する必要が存在し得る。例えば、化合物は、適切なキャリア(例えば、リポソームまたは希釈剤)中で被験体に投与され得る。薬学的に受容可能な希釈剤としては、生理食塩水および水性緩衝溶液が挙げられる。リポソームとしては、水中油中水CGFエマルジョンならびに従来のリポソームが挙げられる(Strejanら(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
【0155】
薬学的に受容可能なキャリアとしては、無菌の水性溶液もしくは懸濁液、および無菌の注射可能な溶液もしくは懸濁剤の即時調製のための無菌の粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体または因子が活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の薬学的組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。
【0156】
治療用組成物は、代表的に、製造および保存の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または、高い薬物濃度に適した他の規則正しい(ordered)構造として処方され得る。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または懸濁媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、懸濁液の場合には、必要とされる粒子径の維持、そして、界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張化剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)または、塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、組成物中に、吸収を遅延する因子(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0157】
無菌の注射可能な溶液は、必要に応じて、上に列挙された成分の1または組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を組み込み、その後、無菌マイクロフィルター処理することによって調製され得る。一般に、懸濁液は、塩基性の分散媒体と、上に列挙されたものからの必要とされる他の成分とを含む無菌のビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌な粉末の場合には、好ましい調製方法は、前もって無菌フィルター処理したその溶液から活性成分と任意のさらなる所望される成分との粉末をもたらす、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0158】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回のボーラスが投与され得るか、いくつかに分割された用量が経時的に投与され得るか、または、治療状況の要件によって示されるのに応じて加減され得る。例えば、本発明のヒト抗体は、皮下注射によって週に1回もしくは2回、または、皮下注射によって月に1回もしくは2回投与され得る。
【0159】
投与の簡便さおよび投薬量の均一性のためには、非経口用組成物を投薬単位で処方することが特に有益である。本明細書中で使用される場合、投薬単位形態とは、処置される被験体に対する分割できない投薬量として適合させた、物理的に個別の単位を指す;各単位は、必要とされる薬学的なキャリアと組み合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された所与の量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態についての細目は、(a)活性化合物に特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのような活性化合物の調合の分野に固有の制限によって決定され、そして、これらに直接依存している。
【0160】
薬学的に受容可能な抗酸化物質の例としては、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);および(3)金属キレート化剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0161】
治療用組成物について、本発明の処方物は、経口投与、経鼻投与、局所投与(頬側および舌下を含む)、直腸投与、膣投与および/または非経口投与に適したものを含む。処方物は、簡便には、単位投薬形態で存在し得、そして、薬学分野において公知の任意の方法によって調製され得る。単一の投薬形態を生じるためにキャリア物質と組み合され得る活性成分の量は、処置される被験体および特定の投与様式に依存して変化する。単一の投薬形態を生じるためにキャリア物質と組み合され得る活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100%のうち、この量は、約0.001%〜約90%の活性成分、好ましくは、約0.005%〜約70%の活性成分、最も好ましくは、約0.01%〜約30%の活性成分の範囲である。
【0162】
膣投与に適した本発明の処方物としてはまた、当該分野で適切であることが公知であるようなキャリアを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーの処方物が挙げられる。本発明の組成物の局所または経皮投与のための投薬形態としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が挙げられる。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアと、そして、必要とされ得る任意の保存料、緩衝剤または噴霧剤と混合され得る。
【0163】
語句「非経口投与」および「非経口投与される」は、本明細書中で使用される場合、経腸投与および局所投与以外の、通常は、注射による投与様式を意味し、そして、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外および胸骨内の注射および注入が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
本発明の薬学的組成物において用いられ得る適切な水性および非水性のキャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。例えば、レシチンのようなコーティングの使用、懸濁液の場合には、必要とされる粒子径の維持、そして、界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0165】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤のようなアジュバントを含み得る。微生物の存在の防止は、無菌処置(上掲)、ならびに、種々の抗細菌剤および抗菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)を含めることの両方によって確実なものとされ得る。また、組成物中に等張化剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含めることも望ましくあり得る。さらに、注射可能な薬学的形態の持続的な吸収は、吸収を遅延する因子(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0166】
本発明の化合物が医薬品としてヒトおよび動物に投与される場合、これらは、単独、または、例えば、0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%(例えば、0.001〜30%))の活性成分を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせ含む薬学的組成物として提供され得る。
【0167】
選択される投与経路とは無関係に、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって、薬学的に受容可能な投薬形態へと処方される。
【0168】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性を生じることなく、特定の患者、組成および投与様式に対する所望の治療応答を達成するために有効な活性成分の量を達成するように変化され得る。選択される投薬量レベルは、種々の薬物動態学的要因(用いられる本発明の特定の組成物または、そのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/もしくは物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態およびこれまでの病歴など、医学分野で周知の要因を含む)に依存する。当該分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方し得る。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルから開始し、そして、所望の効果が達成されるまで投薬量を次第に増加させ得る。一般に、本発明の組成物の適切な日用量は、治療効果を生じるために有効な最低の用量である化合物の量である。このような有効量は一般に、上記のような要因に依存する。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または、皮下であることが好ましく、好ましくは、標的部位の近位に投与される。所望される場合、治療用組成物の有効な日用量は、日中を通じて適切な間隔で、必要に応じて単位投薬形態において、2回、3回、4回、5回、6回またはそれより多い部分用量として投与され得る。本発明の化合物は単独で投与されることが可能であるが、化合物は、薬学的処方物(組成物)として投与することが好ましい。
【0169】
治療用組成物は、当該分野で公知の医療用デバイスを用いて投与され得る。例えば、好ましい実施形態では、本発明の治療用組成物は、無針の皮下注入用注入デバイス(例えば、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号または同第4,596,556号に開示されるようなデバイス)を用いて投与され得る。本発明において有用な周知の移植物およびモジュールの例としては、以下が挙げられる:制御された速度において医薬を分配するための移植可能なマイクロ注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を通して医薬を投与するために治療用デバイスを開示する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度において医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬物送達のための変動流の移植可能な注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバコンパートメントを有する浸透性薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号;および浸透性薬物送達システムを開示する米国特許第4,475,196号。多くの他のこのような移植物、送達システムおよびモジュールは当業者に公知である。
【0170】
特定の実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボでの適切な分布を確実なものとするように処方され得る。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を除く。本発明の治療用化合物がBBBを横切ることを確実にするために(必要とされる場合)、これらは、例えば、リポソーム中に処方され得る。リポソームの製造法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送される1以上の部分を含み、したがって、標的化された薬物送達を向上し得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照のこと)。例示的な標的化部分としては、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらによる米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawaら、(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owaisら(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);表面活性剤 プロテインAレセプター(Briscoeら(1995)Am.J.Physiol.1233:134)、本発明の処方物を含み得る異なる種、ならびに本発明の分子の成分;p120(Schreierら(1994)J.Biol.Chem.269:9090)が挙げられる。K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273もまた参照のこと。本発明の一実施形態では、本発明の治療用化合物は、リポソーム中に処方される;より好ましい実施形態では、リポソームは標的化部分を含む。最も好ましい実施形態では、リポソーム中の治療用化合物は、腫瘍または感染の近位部位へのボーラス注射によって送達される。組成物は、容易なシリンジ操作性が存在する程度に流動性でなければならない。組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、さらに、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0171】
慢性関節リウマチについての「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、患者においてACR20 Preliminary Definition of Improvement(ACR20の改善の予備的定義)、より好ましくは、ACR50 Preliminary Definition of Improvement(ACR50の改善の予備的定義)、なおより好ましくは、ARCD70 Preliminary Definition of Improvement(ACR70の改善の予備的定義)をもたらす。
【0172】
ACR20 Preliminary Definition of Improvementは、以下のように定義される:
圧痛のある関節数(TCJ)+腫脹のある関節数(SWJ)における≧20%の改善
そして、以下の5つの評価のうちの3つにおける≧20%の改善:患者の疼痛評価(VAS)、患者の全体的な評価(VAS)、医師の全体的な評価(VAS)、患者が自己評価した機能障害(HAQ)、急性期反応物質(CRPまたはESR)。
【0173】
ACR50およびACR70は、それぞれ、≧50%および≧70%の改善で上と同様に定義される。さらなる詳細については、Felsonら、American College of Rheumatology Preliminary Definition of Improvement in Rheumatoid Arthritis;Arthritis Rheumatism(1995)38:727−735を参照のこと。
【0174】
化合物が癌を阻害する能力は、ヒト腫瘍における効能を予測する動物モデル系において評価され得る。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に公知のアッセイによるインビトロでの阻害のような、化合物の阻害能を調べることによって評価され得る。治療用化合物の治療上有効な量は、腫瘍サイズを縮小させるか、または、他の方法で、被験体における症状を改善させ得る。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤さ、および選択される特定の組成物もしくは投与経路のような要因に基づいて、このような量を決定し得る。
【0175】
抗体の肝硬変(cirhossis)を処置または予防する能力もまた、当該分野で周知の方法にしたがって評価され得る。
【0176】
組成物は、無菌でかつ、シリンジによって送達可能な程度まで流動性でなければならない。水に加えて、キャリアは、等張の緩衝化生理食塩水溶液、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、懸濁液の場合には、必要とされる粒子径の維持、そして、界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張化剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、および塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期的な吸収は、組成物中に、吸収を遅延する因子(例えば、モノステアリン酸塩またはゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0177】
活性化合物が上述のように適切に保護される場合、化合物は、例えば、不活性の希釈剤または吸収できる食用キャリアを用いて経口投与され得る。
【0178】
V.本発明の使用および方法
HCVに対する本発明のヒト抗HCV抗体(抗体の誘導体および結合体を含む)および抗体を含む組成物は、インビトロおよびインビボでの種々の診断用途および治療用途において使用され得る。例えば、本発明のヒトモノクローナル抗体は、HCV媒介性の障害(肝硬変、肝細胞癌および肝臓の発癌のような肝障害が挙げられるがこれらに限定されない)を処置するために使用され得る。
【0179】
したがって、なお別の実施形態では、本発明は、HCVによって媒介される障害(例えば、肝障害)を処置または予防するのに有効な量の本発明のヒト抗体を被験体に投与することによる、上記障害を処置または予防する方法を提供する。抗体は、単独で、または、α−IFNもしくは細胞毒素のような、抗体と組み合わせてまたは抗体と相乗的に作用してHCV媒介疾患を処置または予防する別の治療因子と共に投与され得る。本発明の抗体を用いる処置に適した他の障害としては、HCV媒介性の肝細胞病理、肝臓のHCV媒介性の肝硬変、および/または、HCV媒介性の肝臓癌が挙げられる。
【0180】
さらに、本発明の抗体は、HCVによって媒介される種々の疾患の診断のために、インビトロまたはインビボで使用され得る。具体的には、抗体は、HCVのレベル、または、HCVを含む細胞のレベルを検出するために使用され得る。あるいは、抗体は、HCVの機能を阻害または中和するために使用され得、今度は、HCVの機能によって引き起こされる疾患症状を予防または改善し得る。
【0181】
また、本発明のヒト抗HCV抗体と、必要に応じて、その使用のための説明書とを備えるキットも、本発明の範囲内である。このキットはさらに、1以上のさらなる試薬(例えば、α−IFN)または1以上のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第一のヒト抗体とは別のHCV抗原のエピトープに結合する補完的な活性を有するヒト抗体)を含み得る。
【0182】
したがって、本発明の抗体で処置される患者は、さらに、(本発明のヒト抗体の投与の前、投与と同時、または投与の後に)ヒト抗体の治療効果を増強または増大させる別の治療剤を投与され得る。
【0183】
本発明の他の実施形態は、以下の実施例に記載される。
【0184】
本発明はさらに、以下の実施例によって例示されるが、以下の実施例は、さらに限定するものとしてみなされるべきではない。配列表、図面、ならびに、本願全体を通して引用される全ての参考文献、特許文献および公開特許公報の内容は、はっきりと本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0185】
本発明はさらに以下の実施例に記載されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0186】
材料および方法
実施例全体を通じて、他にそうでないと述べられない限り、以下の材料および方法を使用した。
【0187】
一般に、本発明の実施は、そうでないと示されない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば抗体技術)の従来の技術、および、ポリペプチド調製における標準的な技術を用いる。例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Antibody Engineering Protocols (Methods in Molecular Biology),510,Paul,S.,Humana Pr(1996);Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series,169),McCafferty編,Irl Pr(1996);Antibodies:A Laboratory Manual,Harlowら、C.S.H.L.Press,Pub.(1999);およびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,John Wiley & Sons(1992)を参照のこと。HCVの生物学をアッセイするためのインビトロおよびインビボのモデル系は、例えば、Cell culture models and animal models of viral hepatitis.Part II:hepatitis C,Lab.Anim.(NY).;34(2):39−47(2005)およびThe chimpanzee model of hepatitis C virus infections,ILAR J.;42(2):117−26(2001)に記載される。
【0188】
コドン最適化したHCV遺伝子型1a E1/E2発現構築物の組み立て
簡単に述べると、E2遺伝子型1aのH77株(プロトタイプ1a配列)のタンパク質配列をコードする核酸配列(Genbankアクセッション番号NC004102)を構築し、そして、pCDNAベクター中に工学技術により作製した。このヌクレオチド配列を、改善された哺乳動物発現について最適化されたコドン使用頻度について変更した。この配列をIDTから購入したオリゴヌクレオチドを用いたオーバーラッピングPCRを用いて組み立て、そして、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端にmycと6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−myc,his発現ベクター中にクローニングした。次いで、このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
【0189】
E1/E2コドンを最適化した1a H77配列に、制限酵素での切断(下線を付した小文字)を確実にするための制限部位(太字の小文字)と、追加のオーバーハングと、ATG開始コドン(太字の下線を付した大文字)の付いたコンセンサスKozak配列(太字の下線を付した小文字)とを含む末端を追加した(配列番号27および図13を参照のこと)。
【0190】
可溶性E2タンパク質を発現させるためのコドン最適化したHCV遺伝子型1a E2−661発現構築物(pCDNA−1a−CO−E2−661)の組み立て
E2タンパク質のアミノ酸364〜661をコードする部分を、pCDNA−1a−CO−E1/E2を鋳型として用いてPCRで増幅し、そして、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
【0191】
コドン最適化したHCV遺伝子型1a E2−661の発現および精製
293Tヒト組織培養細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて一過的にトランスフェクトした。分泌されたタンパク質を含む細胞からの上清を回収し、そして、この上清から、ニッケルアフィニティクロマトグラフィーを用いて1a E2−661を精製した。タンパク質の濃度をOD 280nmに基づいて決定し、そしてさらに、クーマシー染色したSDS−PAGE、および、Biodesign International製の市販のE2マウス抗体を用いたウェスタンブロットによって評価した。
【0192】
野生型HCV遺伝子型1a E1/E2発現ベクター(pCDNA−1a−E1/E2)の組み立て
HCV1a H77コード配列のE1/E2(アミノ酸165〜746)を、HindIIIおよびXbaIクローニング部位、コンセンサスKozak配列ならびに開始コドンを導入するためのプライマーを用いてPCRで増幅し、次いで、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
【0193】
野生型HCV遺伝子型1a E2−660発現ベクター(pCDNA−1a−E2−660)の組み立て
E2タンパク質のアミノ酸364〜660をコードする部分を、pCDNA−1a−E1/E2を鋳型として用いてPCRで増幅し、そして、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
【0194】
HCV遺伝子型1b、2b、3aおよび4aのE1/E2発現ベクター(pCDNA−E1/E2)の組み立て
高い力価の遺伝子型1b、2b、3aおよび4a HCV陽性患者の血清を入手し、そして、この血清からRNAを単離した。E1/E2遺伝子を挟む、コア遺伝子の末端とp7遺伝子とに対して相補的な遺伝子型特異的プライマーを用い、単離したRNAについてRT−PCRを行った。HindIIIおよびXbaIクローニング部位、コンセンサスKozak配列ならびに開始コドンを導入するためのプライマーを用いたPCRを用いてE1/E2コード配列(アミノ酸165〜746)を増幅した。この配列を、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングし、次いで配列決定した。blast検索によりこの配列が予想された遺伝子型であることを確認したが、データベース中にはこの配列と完全一致する配列はなかった。
【0195】
HCV遺伝子型1b E2−661発現ベクター(pCDNA−1b−E2−661)の組み立て
E2タンパク質のアミノ酸364〜661をコードする部分を、pCDNA−1b−E1/E2を鋳型として用いてPCRで増幅した。次いで、この配列を、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。次いでこのベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。発現および精製は、本質的には、1a E2−661について上述したようにして行った。
【0196】
HCV遺伝子型1a E2 HVR1欠失発現ベクターの組み立て
E2の超可変領域1(HVR1)をコードするヌクレオチドの欠失を持つE1/E2コード構築物を作製するために、アミノ酸411から始まるE2の領域(アミノ酸384〜410−HVR1を抜かした)についてのオーバーハングを含む3’プライマーを用い、そして、pCDNA−1a−E1/E2を鋳型として用いて、E1をPCRで増幅した。別の反応において、アミノ酸411〜746をコードするE2領域を、E1の3’末端についてのオーバーハングを含む5’プライマーを用いて、そして、pCDNA−1a−E1/E2を鋳型として用いて、PCRで増幅した。E1−E2接合部にE2についてのHVR1をコードする領域を含まない相補的なオーバーハングを含んだE1およびE2のPCR産物を混合し、次いで、HindIII部位を含むE1の5’末端に特異的なプライマーと、XbaI部位を含むE2の3’末端に特異的なプライマーとを用いて、PCRで増幅した。この配列を、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
【0197】
コドン最適化したHCV遺伝子型1a E2短縮型発現ベクターの組み立て
哺乳動物発現のために、E2のC末端からアミノ酸を取り除いた短縮型を工学技術により作製した。E2タンパク質の所望のアミノ酸をコードする部分を、pCDNA−1a−CO−E1/E2を鋳型として用いてPCRで増幅し、そして、HindIIIとXbaIとをインフレームで含み、C末端に6つのヒスチジンタグを持つpCDNA3.1−his発現ベクター中にクローニングした。このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。以下の構築物を作製した:
○ pCDNA−1a−CO−E2−624(E2アミノ酸384〜624)
○ pCDNA−1a−CO−E2−584(E2アミノ酸384〜584)
○ pCDNA−1a−CO−E2−544(E2アミノ酸384〜544)
○ pCDNA−1a−CO−E2−504(E2アミノ酸384〜504)
○ pCDNA−1a−CO−E2−464(E2アミノ酸384〜464)
各構築物からの発現および精製は、本質的には、1a E2−661について上述したようにして行った。
【0198】
レクチンのELISA
E2短縮型を用いてレクチン捕捉ELISAを行い、抗体の反応性を決定した。簡単に述べると、96ウェルプレートをGalanthus nivalis(GNA)レクチンでコーティングした。タンパク質を捕捉するために、一過的にトランスフェクトした293細胞の上清に由来するE2短縮型を、GNAレクチンでコーティングした96ウェルプレートに加えた。次いで、ハイブリドーマ上清を96ウェルプレートに加えて、タンパク質の反応性を決定した。結合した抗体を、抗ヒトアルカリホスファターゼ二次抗体およびPNPP基質を用いて検出した。
【0199】
HCV遺伝子型1a E2糖タンパク質のアミノ酸384〜464にまたがる細菌発現構築物の組み立て
次に、E2の小さな部分の産生を可能にするために、細菌発現のためのN末端チオレドキシン融合を用いて融合タンパク質を工学技術により作製した。
【0200】
第一セットのタンパク質について、E2タンパク質の所望のアミノ酸をコードする部分を、pCDNA−1a−E1/E2を鋳型として用いてPCRで増幅し、そして、EcoRIとHindIIIとをインフレームで含み、C末端にmycと6つのヒスチジンタグを持つpET32発現ベクター中にクローニングした。次いで、このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。以下の構築物を作製した:
○ pET32−E2−A(アミノ酸384〜463)
○ pET32−E2−B(アミノ酸411〜463)
○ pET32−E2−C(アミノ酸432〜463)
○ pET32−E2−D(アミノ酸436〜463)
○ pET32−E2−E(アミノ酸384〜431)
ベクターを、BL21−DE3 E.coli細菌(Invitrogen)に形質転換し、そして、IPTGで発現を誘導した。細菌を溶解させ、そして、目的のタンパク質を、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。タンパク質の濃度をOD 280nmに基づいて決定し、そしてさらに、クーマシー染色したSDS−PAGE、および、mycおよびヒスチジンタグに特異的なマウス抗体を用いたウェスタンブロットによって評価した。
【0201】
第二セットのタンパク質については、アニーリングした際にEcoRIおよびHindIIIのオーバーハングを生じ、そして、所望のアミノ酸をコードする、相補的なリン酸化オリゴヌクレオチドを調製した。このDNAを、EcoRIとHindIIIとをインフレームで含み、C末端にmycと6つのヒスチジンタグを持つpET32発現ベクター中にクローニングした。次いで、このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。以下の構築物を作製した:
○ pET32−E2−G(アミノ酸412〜423)
○ pET32−E2−H(アミノ酸432〜443)
○ pET32−E2−I(アミノ酸436〜447)
発現および精製は、第一セットのタンパク質について上述したようにして行った。
【0202】
HCV E2−412〜423エピトープのアラニン走査変異の作製
412〜423エピトープにおける各アミノ酸を、細菌発現構築物において、アラニンへと個別に変異させて、抗体に対する重要なアミノ酸の接触点を決定した。アニーリングした際にEcoRIおよびHindIIIのオーバーハングを生じ、そして、所望の変化を含んだE2の412〜423領域をコードする、相補的なリン酸化オリゴヌクレオチドを調製した。このDNAを、EcoRIとHindIIIとをインフレームで含み、C末端にmycと6つのヒスチジンタグを持つpET32発現ベクター中にクローニングした。次いで、このベクターを配列決定して、構築物が正しいものであることを確認した。
以下の構築物を作製した:
○ pET32−E2−G−Q412A(QからAまでの412アミノ酸)
○ pET32−E2−G−L413A
○ pET32−E2−G−I414A
○ pET32−E2−G−N415A
○ pET32−E2−G−T416A
○ pET32−E2−G−N417A
○ pET32−E2−G−G418A
○ pET32−E2−G−S419A
○ pET32−E2−G−W420A
○ pET32−E2−G−H421A
○ pET32−E2−G−I422A
○ pET32−E2−G−N423A
発現および精製は、他の細菌タンパク質について上述したようにして行った。
【0203】
偽ウイルスの作製および中和アッセイ
HIVエンベロープ糖タンパク質の発現を防止するための変異を含んだHIV骨格と、標的細胞におけるルシフェラーゼの発現を指向させるルシフェラーゼ遺伝子(pNL4−3.Luc.R−E−)とを有する偽ウイルスを作製した。HCV E1/E2糖タンパク質を、種々の遺伝子型(1a、1b、2b、3aおよび4a)に由来するpCDNA E1/E2とpNL4−3.Luc.R−E−とを用いた293細胞の同時トランスフェクションによってトランスで提供した。トランスフェクションから48〜72時間後に、細胞から分泌されたウイルス粒子を含む上清を回収し、そして、Centricon 70濃縮器および/または超遠心分離を用いて濃縮した。次いで、抗体の存在下または非存在下で、偽ウイルスを用いてHep3B細胞(ATCC)を感染させた。偽ウイルスは、Hep3B細胞に加える前に、室温で1時間、抗体と共にプレインキュベートした。72時間のインキュベーションの後、BrightGloルシフェラーゼアッセイ(Promega)を用いたルシフェラーゼの検出によって感染を定量化し、そして、Victor3プレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0204】
Biacoreによる親和性の決定
ヤギ抗ヒトIgG(Fc)を、フローセル1および2においてBiacore製のCM5センサチップにアミド結合させた。フローセル2では、HBS−Pバッファー(Biacore)のみを用いてヒト抗体(95−2または83−128)を捕捉した。HBS−Pバッファー中125nM、62.5nM、31.3nMおよび15.6nMのE2−Gを、50μl/分で200秒間、フローセル1(バックグラウンド用)およびフローセル2(ヒト抗体との特異的な相互作用のためのもの)の両方に流した。注入を停止した後、バッファーを両方のフローセルに流して解離データを回収した。BIAevaluationソフトウェアを用いて、データを評価し、そして、曲線を調整してアフィニティ定数を決定した。
【0205】
マウスの免疫
Medarex製のヒトIgG遺伝子についてのトランスジェニックなマウス(HuMabマウス)を、可溶性E2タンパク質で免疫して、免疫応答を生成させた。マウス85083を、1回の注射についてはフロイントアジュバントと共に、そして、14回の注射についてはMPL+TDMアジュバント(Sigma)と共に、1a E2−661で免疫した。マウス97895を、1回の注射についてはMPL+TDM+CWSアジュバント(Sigma)と共に、そして、5回の注射についてはMPL+TDMアジュバント(Sigma)と共に、1a E2−661で免疫した。
【0206】
脾臓の融合およびハイブリドーマの選択
マウスの脾臓を取り出し、そして脾細胞を単離した。標準的なPEG融合プロトコールに従って脾細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製した。次いで、ハイブリドーマの上清を、ELISAによって、1a E2−661に対して反応性の抗体の産生についてスクリーニングし、そして、陽性細胞をさらなる特徴付けに進めた。
【0207】
ハイブリドーマ抗体遺伝子の単離および配列決定
Qiagen RNeasyキットを用いてハイブリドーマ細胞からRNAを単離した。制限部位を含む遺伝子特異的なプライマーを用いて、重鎖可変領域についてRT−PCRを行い、得られた配列をクローニングし、そして、構築物を配列決定した。遺伝子特異的なプライマーを用いて、軽鎖可変領域についてRACEを行った。この配列をTOPOベクター中にクローニングし、そして、ベクターを配列決定した。遺伝子特異的なプライマーを設計し、そしてこれを用いて、PCRで増幅し、そして、制限部位を加えた。
【0208】
実施例1:抗HCVモノクローナル抗体の作製
マウスの免疫、ハイブリドーマの生成および選択
「HuMabマウスにおけるヒトモノクローナル抗体の生成」という表題の節において上述したようにして生成され、そして、Medarex,Milpitas,CAによって供給されるヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウスを、HCV遺伝子型1a E2エンベロープ糖タンパク質の可溶性バージョンで免疫した。抗原を、フロイントの完全アジュバントまたはRIBIアジュバントと組み合わせて投与した。可溶性E2タンパク質(1a E2−661)に対するマウスの血清応答を、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によってモニタリングした。免疫した動物から脾臓B細胞を単離し、そして、標準的な脾細胞融合法を用いてマウス骨髄腫(P3X−AG8.653)細胞に融合させた。クローン性のハイブリドーマを生成し、そして、E2−661に反応性の抗体の生成について、ELISAを用いてスクリーニングした。陽性のハイブリドーマを、減少する量のハイブリドーマ上清を用いたELISAによって、HCV遺伝子型1aおよび遺伝子型1bのE2−661に対する同等な反応性について調べた。遺伝子型1a E2−661と遺伝子型1b E2−661に対して同等な反応性を示したハイブリドーマを、Hep3B細胞のHCV偽ウイルス感染性を中和する能力について調べた。この選択プロセスにより、HCV偽ウイルスを中和し、そして、ELISAにより1aおよび1bのE2可溶性タンパク質に対して同等な反応性を有した20のハイブリドーマを得た。具体的には、以下のような19のハイブリドーマが、マウス#97895に由来するものであり、そして、IgG1抗体を生成した:95−2;95−14;95−15;95−18;95−20;95−21;95−25;95−26;95−30;95−38;95−39;95−42;95−43;95−48;95−49;95−52;95−54;95−58;および95−62。HCV偽ウイルスを中和し、そして、ELISAにより1aおよび1bのE2可溶性タンパク質に対して同等な反応性を有した1つのハイブリドーマ83−128もまた、マウス#85083から同定され、そして、これはIg3抗体を生成した。HCV偽ウイルスを中和し、そして、ELISAにより1aおよび1bのE2可溶性タンパク質に対して同等な反応性を有した1つのハイブリドーマ073−1もまた、マウス#113073から同定され、そして、これはIg3抗体を生成した。これらの21のハイブリドーマをさらに特徴付けた。
【0209】
抗体の配列決定およびクローニング
ヒト抗体83−128(マウス#85083に由来するハイブリドーマに由来)および073−1(マウス#113073に由来するハイブリドーマに由来)の重鎖可変配列および軽鎖可変配列を配列決定し、ヒトIgG1/κ抗体に対する重鎖および軽鎖の定常領域を含むベクター中にクローニングした。これにより、ヒト抗体83−128および073−1をIgG3抗体からIgG1抗体に変更させた。
【0210】
マウス#97895に由来の19のハイブリドーマに由来するヒト抗体の重鎖可変配列を配列決定して比較した。19の抗体は全て、かなりの配列同一性を共有する(すなわち、>96%同一)ことが分かった。中和アッセイのデータに基づいて3つのハイブリドーマ95−2、95−14および95−38を選択し、これらの軽鎖可変領域配列を決定した。ヒト抗体95−2、95−14および95−38の重鎖および軽鎖可変領域の配列を、ヒトIgG1/κ抗体に対する重鎖および軽鎖の定常領域を含むベクター中にクローニングした。抗体を、一過的なトランスフェクションにより発現させ、精製し、そして、HCV偽ウイルス中和アッセイにおいて直接比較した。マウス#97895に由来するヒト抗体95−2をさらなる特徴付けのために選択した。
【0211】
クローン95−14、95−49、95−62、95−42、95−58、95−25、95−43、95−54、95−2、95−38、83−128、073−1によって産生される抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号32、37、40、35、39、34、36、38、3、33、1および5に示す。クローン95−2、95−14、95−38、073−1および83−128によって産生される抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号4、44、53、6および2に示す。
【0212】
クローン95−2、95−14、95−38、073−1および83−128によって産生される抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号27、48、57、29および25に示し;そして、クローン95−2、95−14、95−38、073−1および83−128によって産生される抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号28、49、58、30および26に示す。
【0213】
実施例2:抗体の特徴付け
HCV遺伝子型1aおよび1b−可溶性E2のELISA
可溶性HCV遺伝子型1a E2−660(三角)および可溶性HCV遺伝子型1b E2−661(四角)に対するヒト抗体95−2(図1A)およびヒト抗体83−128(図1B)の反応性を比較した。ELISAプレートを2μg/mlの抗原でコーティングし、そして、2倍希釈で抗体を用いてプローブした。結合した抗体を、アルカリホスファターゼ、PNPP基質に結合させたヤギ抗ヒト二次抗体で検出した。両方のヒト抗体95−2および83−128が、両方の遺伝子型に対して同等に反応することが分かった(図1を参照のこと)。これらの実験をまた、95−14、95−38および073−1抗体についても行い、そしてこの3つ全てが、遺伝子型1aおよび1bを同等に認識した(データ示さず)。
【0214】
複数の遺伝子型に由来するHCV偽ウイルスの中和
ヒト抗体95−2および83−128の、HCV偽ウイルスの複数の遺伝子型の両方を中和する能力を、Hep3B細胞を用いて決定した。抗体の5倍希釈したものを、HCV偽ウイルスと共に室温にて1時間インキュベートした。ウイルス−抗体混合物をHep3B細胞に加え、その後、37℃にて72時間インキュベートした。BrightGloルシフェラーゼアッセイを用いて感染を定量化し、そして、発光についてVictor3プレートリーダーで読み取った。アイソタイプをマッチングさせた無関係のヒト抗体をネガティブコントロールとして用いた。両方のヒト抗体95−2および83−128が、HCV遺伝子型1a、1b、2b、3aおよび4aの偽ウイルス(それぞれ、図2A、2B、2C、2Dおよび2Eを参照のこと)を中和することが分かった。抗体073−1もまた、上に列挙した偽ウイルスの全てを中和することが示された(データ示さず)。
【0215】
遺伝子型1aおよび1bのE2可溶性タンパク質の還元性および非還元性のウェスタンブロット
還元性もしくは非還元性のSDS−PAGEに供したHCV遺伝子型1aおよび1bに由来する可溶性E2タンパク質(E2−661)に対するヒト抗体95−2および83−128の反応性を解析した。増強された化学発光検出試薬と共にHRPに結合させた抗マウスIgG(his)または抗ヒトIgG(95−2および83−128)を用いて、抗his tagモノクローナル(his)、83−128および95−2を用いたウェスタンブロットを行った。両方のヒト抗体95−2および83−128が、ゲルの変性、還元に供した後に、PVDFメンブレンに移したE2−661を認識することが分かった(図3を参照のこと)。
【0216】
細菌融合タンパク質として発現させたE2 412〜423エピトープに対するヒト抗体95−2および83−128の結合親和性
細菌融合タンパク質として発現させたE2 412〜423エピトープに対するヒト抗体95−2および83−128の結合親和性を決定し、そして図4にまとめた。ヤギ抗ヒトIgG Fcを、Biacoreチップにアミド結合させた。ヒト抗体95−2および83−128を、チップ上に別々に捕捉させ、そして、E2のアミノ酸412〜423を含むE2−G細菌発現タンパク質を、種々の濃度にて流した。BIAevaluationTMソフトウェアを用いて曲線を調整し、そして、アフィニティ定数を計算した。
【0217】
実施例3:エピトープ決定
ヒト抗体83−128および95−2が認識するE2タンパク質領域の決定
E2タンパク質のどの領域がヒト抗体83−128および95−2を認識するかを決定するために、哺乳動物に発現させたE2タンパク質のカルボキシ末端短縮型を、レクチンELISAによって捕捉し、そして、83−128および95−2でプローブした(構築物のマップについては図5を、そして、ELISAのデータについては図6を参照のこと)。データに基づけば、これらの抗体に対するエピトープは、E2のアミノ酸412〜464の範囲内である。予測されたとおりに、全ての抗体(95−14、95−49、95−62、95−42、95−58、95−25、95−43、95−54、95−2、95−38および073−1)がまた、E2タンパク質のこの領域にマッピングされた。
【0218】
エピトープをさらに定義するために、細菌により発現させた融合タンパク質を用いた。というのも、E2のより小さな断片は、哺乳動物の系では上手く発現しなかったからである。精製したタンパク質を、ELISAプレート上にコーティングし、そして、ヒト抗体83−128および95−2でプローブした(構築物のマップについては図7を、そして、ELISAのデータについては図8を参照のこと)。両方のヒト抗体83−128および95−2がE2のアミノ酸412〜423を含む全ての構築物を認識し、こうして、アミノ酸412〜423がエピトープとして同定された。この実験をまた、073−1抗体を用いても行い、そして、この抗体もまた412〜423エピトープを認識した(データ示さず)。
【0219】
412〜423エピトープ内の重要な接触点を決定するために、アラニン走査変異を用いて、E2−G細菌融合タンパク質において、412〜423エピトープにおける各アミノ酸を個別にアラニンに変化させた。精製したタンパク質をELISAプレート上にコーティングし、そして、両方のヒト抗体(83−128および95−2)でプローブした。融合タンパク質上の(His)エピトープに特異的な抗hisモノクローナル抗体を、プレートのコーティングについてのコントロールとして用いた(図9を参照のこと)。データに基づけば、残基413および420が、ヒト抗体95−2に対する結合に重要であることが分かり;残基413、418および420が、ヒト抗体83−128に対する結合に重要であることが分かった。
【0220】
412〜423エピトープ内で天然に存在する変化の頻度を決定するために、E2のこの領域を、Los Alamos HCV配列データベース(人の手による最適化によって完全な配列のみに濃縮されており、そして、類似配列は1つの配列に減らされている)において報告された配列について解析した。アラインメント(図10)に基づけば、濃縮されたデータベースにおける配列の77.7%が、本実施例において使用した1aおよび1bの発現されたE2タンパク質のこの領域における配列と同一である。したがって、ヒト抗体95−2および83−128は、これらのタンパク質を認識するはずである。
【0221】
この領域における報告された配列の差異のいくつかが、ヒト抗体95−2および83−128の認識に影響を及ぼすかどうかを決定するため、412〜423エピトープを含むE2−G細菌発現融合タンパク質に、配列の変化を工学技術により作製した(図11)。データベース中には存在しない、Tarrら(2006)Hepatologyにおいて報告された遺伝子型5系統に由来する配列(genbankアクセッション番号AY785283)を含めた。精製したタンパク質をELISAプレート上にコーティングし、そして、両方のヒト抗体(83−128および95−2)でプローブした。融合タンパク質上のhis tagに特異的な抗hisモノクローナル抗体を、プレートのコーティングについてのコントロールとして用いた(図12)。ヒト抗体95−2は、遺伝子型6aを除いて全ての構築物を認識し、この特定の遺伝子型5配列では認識が10倍低下していた。ヒト抗体83−128は、特定の遺伝子型5および6aの配列に由来するものを除いて全ての構築物を認識し、そして、5aの認識は弱かった。
【0222】
実施例4:インビトロモデル
本発明のヒト抗体を、抗ウイルス活性およびHCV感染を阻害する能力についてインビトロモデルにおいて検討する。HCV感染に対する多数のインビトロモデルが当該分野で公知であり、そして、本発明のヒト抗体を調べるために使用され、例えば、(i)HCVを用いた初代肝細胞の感染;(ii)肝細胞株の安定なトランスフェクション;および(iii)例えば、C.Guhaら(“Cell culture models and animal models of viral hepatitis.Part II:hepatitis C”Labs Animal(NY)2005,34(2):39−47)に記載されるような、全長または部分的なゲノムのレプリコンを用いたトランスフェクションが挙げられる。これらのインビトロモデルにおいて培養細胞は、本発明のヒト抗体、または、適切なコントロール抗体に曝露され、そして、当該分野で公知の標準的な技術(例えば、定量的リアルタイム逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)を用いて、HCVウイルスRNAを検出すること)によって、HCV感染およびウイルス活性に対する抗体の効果がモニタリングされる。
【0223】
実施例5:インビボ動物モデル
本発明のヒト抗体を、C型肝炎ウイルス感染を阻害する能力についてインビボ動物モデルにおいて検討する。特に、本発明のヒト抗体は、R.E.Lanfordら(ILAR J.2001;42(2):117−26)に記載されるようなチンパンジーの動物モデルにおいて調べられる。Lanfordらに記載されるように、チンパンジー(Pan troglodytes)は、C型肝炎ウイルス(HCV)による感染に対して感受性の唯一の実験動物であり、そして、非A型、非B型の肝炎に関する初期の研究(感染の臨床経過に対する観察、ウイルスの物理的特性の決定、およびHCV核酸の最終的なクローニングを含む)において役立ってきた。チンパンジーモデルは、HCV感染における早期の現象の解析に重要である。なぜなら、チンパンジーは、曝露の時点からサンプルが入手可能な集団を表しており、かつ、曝露された動物の全てが調べられるからである。この理由から、チンパンジーは、忠実に選択されていない集団を表している。対照的に、ヒトのコホートはしばしば、疾患状態または抗体の反応性について選択されており、代表的に、ここ10年間に感染した個体を含む。チンパンジーモデルは、ウイルスの浄化に関与する因子の理解の向上、感染に対する免疫応答の解析、およびワクチンの開発に必須である。HCVの感染性cDNAクローンの開発は、チンパンジーの使用に依存しており、そして、これらは、ウイルス複製のための重要な配列を評価するための逆遺伝学の使用において必要とされ続ける。さらに、チンパンジーは、HCV感染の過程の間、肝臓における遺伝子発現の変化の全スペクトルを追跡するために、DNAマイクロアレイ技術と組み合わせて使用されている。チンパンジーは、HCV疾患の理解および治療様式の開発に対する重要な局面を提供し続けるであろう。
【0224】
したがって、チンパンジーにHCVを接種し、そして、さらに、本発明のヒト抗体を投与する。コントロール動物には、HCVを接種し、そして、本発明のヒト抗体を投与しないか、または、適切なコントロール抗体を投与する。本発明のヒト抗体は、HCV接種の前、HCV接種の時、または、HCV接種に続いてのいずれかで、チンパンジーに投与される。次いで、HCVの感染、進行および浄化に対するヒト抗体の効果を、当該分野で標準的なアッセイを用いてモニタリングする。例えば、HCVの感染および/または浄化は、以下:(i)肝臓の損傷を示す、血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの増加を測定すること;(ii)例えば、定量的リアルタイム逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)によって血清中のHCVウイルスRNAを検出すること;および(iii)例えば、酵素結合イムノソルベントアッセイおよび組換えイムノブロットアッセイによって抗HCV抗体応答を評価することによってモニタリングされ得る。これらのアッセイは当業者に公知であり、そして例えば、Lanfordらに記載されるようにして行われる。さらに、上述のものと同様の実験において、HCV E1および/またはE2タンパク質に対する応答に対する、本発明の抗体の効果が、例えば、Lanfordらに記載されるようにして評価される。本発明のヒト抗体に曝露された動物における、コントロール動物と比較してのHCV感染のダウンレギュレーション、HCV進行の減少、または、HCV浄化の増加は、HCV感染の予防または処置に対する本発明の抗体の有効性を示している。
【0225】
さらに、感染の急性期の間およびウイルス浄化の全体を通じた多数の時点で、感染した動物の肝臓における遺伝子発現の変化をモニタリングすることによって、チンパンジーにおけるHCV感染の進行の変化に対する本発明のヒト抗体の効果をモニタリングするために、DNAマイクロアレイが使用される。DNAマイクロアレイ解析は、抗体に曝露された動物および抗体に曝露されていないコントロール動物において、感染前、ならびに、感染および浄化の全体を通して(例えば、感染から16週までの)多数の時点で得た肝臓組織に対して行われる。これらの研究は、例えば、本質的にはLanfordらに記載されたように、およそ6800遺伝子を表すオリゴヌクレオチドを含むAffymetrix Human FL DNAマイクロアレイを用いて行われ得る。
【0226】
実施例6:ヒトにおける投与のための抗HCV抗体の生成
本発明のヒト抗体は、公知の技術を用いてその産生を促進または増加させるために、クローニングし、そして組換え発現させ得る。
【0227】
本発明の抗体クローンの可変重鎖および可変軽鎖をコードする核酸配列を、標準的な組換えDNA方法論を用いてpIE−Uγ1Fベクター中にクローニングし得る。このベクターをE.coliにおいて増幅させ、精製し、そして、CHO細胞にトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞を96ウェルディッシュの1ウェルあたり4×10細胞でプレーティングし、そして、G418を用いてベクターのトランスフェクションについて選択する。G418耐性によって選択した耐性クローンを、次いで、IgG産生について他のトランスフェクトーマと共にアッセイする。抗体の発現は、増加する濃度のメトトレキサートの存在下で増殖させることによって増幅され得る。175nMのメトトレキサートにおいて増殖し得る培養物を、さらなる開発のための単一の細胞をクローニングするために選択する。96ウェルプレートに低密度で培養物をプレーティングし、単一の細胞またはクローンから生じる培養物の生成を可能にする。培養物をヒトIgGの生成についてスクリーニングし、そして、代表的には、最高レベルのIgGを生成する細胞をさらなる使用のために選択する。メトトレキサートにより増幅されたクローンを増やして、多数の細胞凍結バイアルを含む細胞バンクを生成する。あるいは、例えば、メチオニンスルホキシミンを用いて達成される細胞選択には、グルタミンシンテターゼ(GS)ベクターが使用され得る(例えば、米国特許第5,827,739号;同第5,122,464号;同第5,879,936号;および同第5,891,693号を参照のこと)。
【0228】
トランスフェクトした細胞から抗体を調製するために、前の工程で単離されたあるクローンに由来する細胞を培養し、そしてバイオリアクタのための接種原として増やす。バイオリアクタは、代表的に、500リットル容量の培養培地を保持する。細胞の生存率が低下するまで細胞をバイオリアクタ中で培養する。生存率の低下は、その培養物において最高の抗体濃度が生成されたことを示す。濾過によって細胞を取り除く。この濾液をプロテインAカラムにアプライする。抗体をカラムに結合させ、そして低いpHの洗浄液で溶離させる。次に、これらの抗体をQ−Sepharoseカラムにアプライして、残留した汚染物質(例えば、CHO細胞タンパク質、DNAおよび他の汚染物質(例えば、存在する場合、ウイルスの汚染物質))を除去する。抗体をQ−Sepharoseカラムから溶離させ、ナノフィルター処理し、濃縮し、そして、PBSのようなバッファー中で洗浄する。次いで、この調製物を、投与のためのバイアル中に無菌的に文注する。
【0229】
等価物
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または、慣用的に過ぎない実験を用いて確認することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。従属請求項に開示される実施形態の任意の組み合わせは、本発明の範囲内であることが企図される。
【0230】
参考としての援用
本明細書中で言及された全ての刊行物、特許文献および係属中の特許出願は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【0231】
【表1】

【0232】
【表2】

【0233】
【表3】

【0234】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)のE2タンパク質上の非構造的(線形)エピトープに結合し、かつ、該ウイルスの細胞感染能力を阻害する、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
HCV偽ウイルス中和アッセイにおいてHCVを中和する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体が、被験体におけるHCV感染をインビボで阻害する請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
被験体におけるHCV媒介性の肝細胞病理を阻害する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記抗体が、2種以上のHCV遺伝子型のHCV E2タンパク質またはそのフラグメントに結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
前記分子が、1a、1b、2b、3a、4a、5、5a、6a、6g、6kおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子型を有するHCVウイルスに由来するHCV E2タンパク質に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記エピトープが、E2タンパク質のアミノ酸残基412〜464、412〜423または413〜420の間にある、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
少なくとも約1×10−7M、1×10−8M、1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、1×10−12Mまたはこれより高いKでHCV E2タンパク質またはそのフラグメントに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
配列番号1(83−128)、配列番号3(95−2)または配列番号5(073−1)の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
配列番号2(83−128)、配列番号4(95−2)または配列番号6(073−1)の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
配列番号1(83−128)、配列番号3(95−2)または配列番号5(073−1)の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
配列番号2(83−128)、配列番号4(95−2)または配列番号6(073−1)の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
配列番号2(83−128)、配列番号4(95−2)または配列番号6(073−1)の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
HCV E2タンパク質上のエピトープに特異的に結合する、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、該HCV E2タンパク質上のエピトープは、クローン83−128、073−1、95−2、95−14、95−15、95−18、95−20、95−21、95−25、95−26、95−30、95−38、95−39、95−42、95−4、95−48、95−49、95−52、95−54、95−58、95−62およびこれらの組み合わせによって産生される抗体によって結合されるエピトープと重なる、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合部分の重鎖可変領域が、配列番号7〜9のうちの1以上(83−128)、または、配列番号10〜12のうちの1以上(95−2)、または、配列番号13〜15のうちの1以上(073−1)に対して少なくとも80%同一である1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合部分の軽鎖可変領域が、配列番号16〜18のうちの1以上(83−128)、または、配列番号19〜21のうちの1以上(95−2)、または、配列番号22〜24のうちの1以上(073−1)に対して少なくとも80%同一である1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合部分の重鎖可変領域が、配列番号7〜9のうちの1以上(83−128)、または、配列番号10〜12のうちの1以上(95−2)、または、配列番号13〜15のうちの1以上(073−1)に対して少なくとも95%同一である1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合部分の軽鎖可変領域が、配列番号16〜18のうちの1以上(83−128)、または、配列番号19〜21のうちの1以上(95−2)、または、配列番号22〜24のうちの1以上に対して少なくとも95%同一である1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項19】
重鎖可変領域が、配列番号7〜9のうちの1以上(83−128)、または、配列番号10〜12のうちの1以上(95−2)、または、配列番号13〜15のうちの1以上(073−1)の可変重鎖領域のCDRに対して少なくとも80%同一である3つのCDRを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合部分の軽鎖可変領域が、配列番号16〜18のうちの1以上(83−128)、または、配列番号19〜21のうちの1以上(95−2)、または、配列番号22〜24のうちの1以上(073−1)の可変軽鎖領域のCDRに対して少なくとも80%同一である3つのCDRを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
前記非構造的エピトープがHCV E2の残基412〜423を含む、請求項20に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
前記抗体がHCV E2の構造的エピトープに結合しない、請求項21に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
HCVに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、以下:
コンセンサス配列CDR1(配列番号87)、CDR2(配列番号88)、CDR3(配列番号89)またはこれらの組み合わせを有する重鎖可変領域と、
必要に応じて、コンセンサス配列CDR1(配列番号90)、CDR2(配列番号91)、CDR3(配列番号92)、またはこれらの組み合わせを有する軽鎖可変領域と
を含む、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項24】
HCVに特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、以下:
それぞれ、配列番号87〜89に示されるコンセンサス配列CDR1、CDR2、CDR3を有する重鎖可変領域と、
それぞれ、配列番号90〜92に示されるコンセンサス配列CDR1、CDR2、CDR3を有する軽鎖可変領域と
を含む、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
HCVに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、以下:
遺伝子VH 3〜33からコードされる重鎖可変領域と、
必要に応じて、Vκ L6からコードされる軽鎖可変領域と
を含む、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項26】
哺乳動物細胞に対するHCVの結合を阻害する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項27】
哺乳動物細胞に対するHCV E2タンパク質の結合を阻害する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項28】
前記抗体が全長抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれかに記載の抗体の抗原結合部分を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項30】
エフェクタードメインを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項31】
Fcドメインを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項32】
単鎖抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項33】
Fabフラグメントである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項34】
標識または毒素をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項35】
薬学的に受容可能なキャリア中に請求項1〜34のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分を含む組成物。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれかに記載の2以上の抗体を含む組成物であって、該抗体が1種以上のHCV E2タンパク質の異なるエピトープに結合する、組成物。
【請求項37】
HCVに結合するヒト抗体の可変領域をコードする単離された核酸であって、83−128の重鎖可変領域(配列番号25)、83−128の軽鎖可変領域(配列番号26)、95−2の重鎖可変領域(配列番号27)、95−2の軽鎖可変領域(配列番号28)、073−1の重鎖可変領域(配列番号29)、073−1の軽鎖可変領域(配列番号30)またはこれらの組み合わせに対して少なくとも90%同一である配列を含む、単離された核酸。
【請求項38】
HCVに結合するヒト抗体の可変領域をコードする単離された核酸であって、高ストリンジェンシー下で、83−128の重鎖可変領域(配列番号25)、83−128の軽鎖可変領域(配列番号26)、95−2の重鎖可変領域(配列番号27)、95−2の軽鎖可変領域(配列番号28)、073−1の重鎖可変領域(配列番号29)、073−1の軽鎖可変領域(配列番号30)の核酸にハイブリダイズする配列を含む、単離された核酸。
【請求項39】
請求項37または38に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項40】
請求項37または38に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項41】
HCV E2エンベロープ糖タンパク質の非構造的エピトープの単離されたタンパク質もしくはそのフラグメント、または、該エピトープをコードする核酸を含むHCVワクチン。
【請求項42】
単離されたHCV E2タンパク質の残基412〜423を含む、請求項41に記載のワクチン。
【請求項43】
ペプチド抗原に対する免疫応答を増強するためにキャリアに結合された単離されたHCV E2タンパク質の残基412〜423から構成される、請求項41に記載のワクチン。
【請求項44】
前記キャリアが、タンパク質キャリア、低分子キャリア、またはウイルス様粒子(VLP)キャリアからなる群より選択される、請求項43に記載のワクチン。
【請求項45】
請求項1に記載される1以上の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と、HCV媒介性疾患の処置における使用のための説明書とを備える、キット。
【請求項46】
被験体におけるHCV感染を処置する方法であって、以下:
該HCV感染の症状を阻害するのに有効な量の請求項1〜45のいずれかに記載の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を該被験体に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項47】
前記被験体がヒトである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体またはその抗原結合部分が前記被験体に対して静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体またはその抗原結合部分が、第二の治療因子と組み合わせて投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第二の因子が第二のヒト抗体またはその抗原結合部分である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第二の因子が抗ウイルス因子である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記第二の因子がHCVワクチンである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
HCVワクチンが、HCV E2タンパク質またはそのフラグメントである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
薬学的に受容可能なキャリア中に請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分を含む、哺乳動物におけるHCV媒介性の疾患または障害を処置するのに適した組成物。
【請求項55】
HCVに結合する第二のヒト抗体をさらに含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
哺乳動物におけるHCV感染を処置する方法であって、以下:
HCVによる細胞の感染性が阻害されるように、HCVまたはそのフラグメントに結合する請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを該哺乳動物に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項57】
前記抗体またはそのフラグメントが2種以上のHCV E2遺伝子型のHCV E2タンパク質またはそのフラグメントに結合する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
2以上の抗体またはそのフラグメントが投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記HCVに結合する抗体またはそのフラグメントが、83−128、073−1、95−2、95−14、95−15、95−18、95−20、95−21、95−25、95−26、95−30、95−38、95−39、95−42、95−4、95−48、95−49、95−52、95−54、95−58、95−62およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるヒトモノクローナル抗体である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
哺乳動物におけるHCV感染を検出する方法であって、以下:
哺乳動物の体液を請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントと接触させる工程と、
結合が生じるかどうかを決定する工程と
を包含し、該結合はHCV感染の存在を示す、方法。
【請求項61】
2種以上の遺伝子型のHCV E2タンパク質と交叉反応し得る抗体またはそのフラグメントを同定する方法であって、以下:
候補の抗体を、HCV E2タンパク質の非構造的エピトープと接触させる工程と、
結合が生じるかどうかを決定する工程と
を包含し、該非構造的エピトープへの結合は、2種以上の遺伝子型のHCV E2タンパク質と交叉反応し得る抗体を示す、方法。
【請求項62】
前記抗体がヒト抗体血清、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法に従って同定された、抗体またはそのフラグメント。
【請求項64】
非構造的であり、かつ、哺乳動物に導入された際に中和抗体を誘導し得るエピトープを含む、組換えHCV E2タンパク質。
【請求項65】
前記哺乳動物がヒト、霊長類またはマウスである、請求項64に記載のHCV E2タンパク質。
【請求項66】
前記マウスが、ヒト免疫グロブリン配列を含むトランスジェニックマウスである、請求項64に記載のE2タンパク質。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−518854(P2010−518854A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550888(P2009−550888)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/001922
【国際公開番号】WO2008/108918
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(505220170)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (6)
【氏名又は名称原語表記】University of Massachusetts
【Fターム(参考)】