説明

C1orf59ペプチドおよびそれを含むワクチン

本発明は、HLA抗原に結合し、かつ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導能を有する、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列を有する単離されたペプチドまたはその免疫学的活性断片を提供する。本発明はさらに、前述のペプチドまたは断片に対する1個、2個、または数個のアミノ酸の挿入、置換、または付加を含むが、細胞傷害性T細胞誘導能をなお有するペプチドを提供する。前述のこれらのペプチドのいずれかをコードする核酸、ならびに前述のペプチドまたは核酸のいずれかを含む薬学的な剤および組成物をさらに提供する。がんまたは腫瘍を治療するために、本発明のペプチド、核酸、薬学的な剤および組成物を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月24日に出願した特願2008−327358、および2009年1月20日に出願した米国仮特許出願第61/145,912号の恩典を主張し、それらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、生物科学の分野、より具体的にはがん治療の分野に関連する。特に本発明は、がんワクチンとして極めて有効な新規ペプチド、ならびに腫瘍を治療および予防するための薬物に関連する。
【背景技術】
【0003】
CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子上の腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、その後、腫瘍細胞を殺傷することが実証されている。TAAの最初の例としてメラノーマ抗原(MAGE)ファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが、主に免疫学的アプローチによって発見されている(Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2): 177-80(非特許文献1);Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3): 725-9(非特許文献2))。これらTAAのいくつかは、免疫療法の標的として臨床開発の過程にある。
【0004】
強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し得る新規TAAの同定により、様々な種類のがんに対するペプチドワクチン接種戦略の臨床的適用のさらなる発展が保証される(Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55(非特許文献3);Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42(非特許文献4);Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9(非特許文献5);van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14(非特許文献6);Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8(非特許文献7);Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72(非特許文献8);Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66(非特許文献9);Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94(非特許文献10))。これまでに、これらの腫瘍関連抗原由来ペプチドを用いた試験がいくつか臨床で報告されている(Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80(非特許文献11);Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42(非特許文献12);Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15(非特許文献13))。
【0005】
クロモソーム1オープンリーディングフレーム59(C1orf59)は、Mammalian Gene Collection(MGC)によりcDNAライブラリースクリーニングを通して同定された(MGC Program Team, Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Dec 24; 99(26):16899-903(非特許文献14))。しかしながら、C1orf59が、腫瘍を有する患者に対するがん免疫療法の標的として使用できるかどうかは確認されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boon T, Int J Cancer 1993 May 8, 54(2): 177-80
【非特許文献2】Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med 1996 Mar 1, 183(3): 725-9
【非特許文献3】Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55
【非特許文献4】Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42
【非特許文献5】Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9
【非特許文献6】van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14
【非特許文献7】Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8
【非特許文献8】Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72
【非特許文献9】Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66
【非特許文献10】Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94
【非特許文献11】Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80
【非特許文献12】Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42
【非特許文献13】Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15
【非特許文献14】MGC Program Team, Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Dec 24; 99(26):16899-903
【発明の概要】
【0007】
本発明は、免疫療法の適切な標的の発見に一部基づいている。TAAは概して免疫系にとって「自己」として認識され、したがって免疫原性がない場合が多いため、適切な標的を発見することは極めて重要である。上述したように、C1orf59(SEQ ID NO:43、GenBankアクセッション番号NM_144584(SEQ ID NO:42)の遺伝子によってコードされる)が、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、および小細胞肺がん(SCLC)などのがんの組織において上方制御されると同定された。したがって、C1orf59は免疫療法の候補標的である。
【0008】
本発明は、C1orf59に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導する能力を有する、C1orf59の特異的エピトープペプチドの同定に少なくとも一部基づいている。以下に詳述するように、健常ドナーから得られた末梢血単核細胞(PBMC)を、C1orf59由来のHLA−A0201またはHLA−A2402結合候補ペプチドを用いて刺激した。その後、各候補ペプチドをパルスしたHLA−A02またはHLA−A24陽性標的細胞に対する特異的細胞傷害性を有するCTL株が樹立された。これらの結果から、これらのペプチドが、C1orf59を発現する細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A02またはHLA−A24拘束性エピトープペプチドであることが実証される。これらの結果から、C1orf59は免疫原性が強く、そのエピトープは腫瘍免疫療法の有効な標的であることが実証される。
【0009】
したがって、HLA抗原に結合する、C1orf59(SEQ ID NO:43)由来の単離されたペプチド、またはその免疫学的活性断片を提供することは、本発明の目的である。本発明のペプチドは、CTL誘導能を有すると予測される。それらは、CTLをエクスビボで誘導するために用いることができ、または膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCなどのがんに対する免疫応答を誘導するために、対象に投与することができる。好ましくは、ペプチドはノナペプチドまたはデカペプチドであり、典型的には、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41の群より選択されるアミノ酸配列からなり、強力なCTL誘導能を示す。
【0010】
本発明は、改変ペプチドが元のCTL誘導能を保持する限り、1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41のアミノ酸配列を有する改変ペプチドを意図する。
【0011】
さらに本発明は、本発明のペプチドのいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、本発明のペプチドと同様に、CTL誘導能を有する抗原提示細胞(APC)を誘導するために用いることができ、またはがんに対する免疫応答を誘導するために、対象に投与することができる。
【0012】
対象に投与した場合、本発明のペプチドはAPCの表面上に提示され、その後各ペプチドを標的とするCTLを誘導する。したがって、CTLを誘導するための本発明の任意のペプチドまたはポリヌクレオチドを含む剤を提供することは、本発明の1つの局面である。さらに、該ペプチドまたはポリヌクレオチドのいずれかを含む剤は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCなどのがんの治療および/もしくは予防(prophylaxis)、ならびに/またはその術後再発の予防に用いることができる。したがって、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドのいずれかを含む、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤を提供することは、本発明のさらに別の目的である。本発明の剤または薬剤は、有効成分として、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドの代わりに、またはそれに加えて、本発明のペプチドのいずれかを提示するAPCまたはエキソソームを含んでもよい。
【0013】
本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを用いて、例えば、対象由来のAPCを本発明のペプチドと接触させるか、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入することによって、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示するAPCを誘導することができる。そのようなAPCは標的ペプチドに対する高いCTL誘導能を有し、がん免疫療法に有用である。したがって、CTL誘導能を有するAPCを誘導する方法、および該方法によって得られるAPCを提供することは、本発明の別の目的である。
【0014】
CTLを誘導する方法であって、CD8陽性細胞を、本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCもしくはエキソソームと共培養する段階、または本発明のペプチドに結合するT細胞受容体(TCR)サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入する段階を含む方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。本発明の方法によって得られ得るCTLは、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCなどの、C1orf59が過剰発現するがんを治療および/または予防するのにも使用される。したがって、本発明の方法によって得られ得るCTLを提供することは、本発明の別の目的である。
【0015】
さらに、がんに対する免疫応答を誘導する方法であって、C1orf59もしくはその免疫学的活性断片、C1orf59もしくはその断片をコードするポリヌクレオチド、またはC1orf59もしくはその断片を提示するエキソソームもしくはAPCを含む剤または組成物を投与する段階を含む方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0016】
本発明は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCなどのがんを含む、C1orf59過剰発現に関連する任意の疾患に適用しうる。
【0017】
本発明の前述の概要および以下の詳細な説明はいずれも例示的な態様のものであり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の様々な局面および適用は、以下の図面の簡単な説明ならびに本発明の詳細な説明およびその好ましい態様を考慮することで、当業者に明白となるであろう。
【図1】C1orf59由来のペプチドで誘導したCTLにおけるIFN−γ ELISPOTアッセイの結果を示す一連の写真(a)〜(j)を含む。C1orf59−A02−9−261(SEQ ID NO:1)で刺激したウェル番号#6(a)、C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)で刺激した#2および#7(b)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)で刺激した#4および#6(c)、C1orf59−A02−9−122(SEQ ID NO:7)で刺激した#3(d)、C1orf59−A02−10−240(SEQ ID NO:9)で刺激した#5(e)、C1orf59−A02−10−90(SEQ ID NO:13)で刺激した#4(f)、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)で刺激した#7(g)、C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)で刺激した#4および#8(h)、ならびにC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)で刺激した#2(i)中のCTLは、それぞれ対照と比較して強力なIFN−γ産生を示した。長方形の囲みで示したウェル中の細胞を増殖させて、CTL株を樹立した。対照的に、陰性データの典型的な例として、C1orf59−A02−10−261(SEQ ID NO:8)で刺激したCTLについては、特異的なIFN−γ産生は検出されなかった(j)。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」は、いずれのペプチドもパルスしなかった標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図2】IFN−γ ELISAアッセイによる、C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)(a)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)(b)、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)(c)、C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)(d)、およびC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)(e)で刺激したCTL株のIFN−γ産生を示す一連の折れ線グラフ(a)〜(e)を含む。各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株は、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示した。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」は、いずれのペプチドもパルスしなかった標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図3】C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)(a)、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)(b)、およびC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)(c)で刺激したCTL株から限界希釈により樹立されたCTLクローンのIFN−γ産生を示す。本明細書に示した結果から、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示したことが実証される。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」は、いずれのペプチドもパルスしなかった標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図4】C1orf59およびHLA−A0201を外因的に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す一連の折れ線グラフ(a)〜(c)を含む。HLA−A0201または全長C1orf59遺伝子をトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)(a)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)(b)、およびC1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)(c)を用いて樹立されたCTL株は、C1orf59およびHLA−A0201を両方ともトランスフェクトしたCOS7細胞に対して特異的CTL活性を示した(黒菱形)。対照的に、HLA−A0201(三角)またはC1orf59(丸印)のいずれかを発現する標的細胞に対して、有意な特異的CTL活性は検出されなかった。
【図5】C1orf59由来のペプチドで誘導したCTLにおけるIFN−γ ELISPOTアッセイの結果を示す写真を示す。C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)で刺激したウェル番号#5(a)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)で刺激した#3(b)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)で刺激した#4(c)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)で刺激した#5(d)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)で刺激した#7(e)中のCTLは、それぞれ対照と比較して強力なIFN−γ産生を示した。これらの写真のウェル上の四角は、対応するウェルからの細胞を増殖させてCTL株を樹立したことを示す。図中、「+」はウェル中の細胞に適切なペプチドをパルスしたことを示し、「−」は細胞にペプチドをパルスしなかったことを示す。
【図6】ELISAによる、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)(a)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)(b)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)(c)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)(d)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)(e)で刺激したCTL株のIFN−γ産生を示す折れ線グラフを示す。それにより、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株が、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示すことが実証された。図中、「+」は細胞に適切なペプチドをパルスしたことを示し、「−」は細胞にいずれのペプチドもパルスしなかったことを示す。
【図7】C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)(aおよびb)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)(c)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)(d)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)(e)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)(f)で刺激したCTL株から限界希釈により樹立されたCTLクローンのIFN−γ産生を示す。それにより、これらのペプチドによって樹立されたCTLクローンが、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示すことが実証された。図中、「+」は、細胞にSEQ ID NO:26(aおよびb)、SEQ ID NO:32(c)、SEQ ID NO:34(d)、SEQ ID NO:40(e)、およびSEQ ID NO:41(f)をパルスしたことを示し、「−」は細胞にいずれのペプチドもパルスしなかったことを示す。
【図8】C1orf59およびHLA−A2402を発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す折れ線グラフを示す。HLA−A2402のみまたは全長C1orf59遺伝子のみをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)を用いて樹立されたCTLクローンは、C1orf59およびHLA−A2402を両方ともトランスフェクトしたCOS7細胞に対して特異的CTL活性を示した(黒菱形)。一方、HLA−A2402(三角)またはC1orf59(丸印)のいずれかを発現する標的細胞に対して、有意な特異的CTL活性は検出されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
態様の説明
本発明の態様を実施または試験するにあたって、本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは同等な任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法、装置、および材料をここに記載する。しかしながら、本材料および方法について記載する前に、本明細書に記載の特定の大きさ、形状、寸法、材料、方法論、プロトコール等は慣行的な実験法および最適化に従って変更可能であるため、本発明がこれらに限定されないことが理解されるべきである。本記載に使用する専門用語は特定の型または態様のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも、同様に理解されるべきである。
【0020】
本明細書において言及される各出版物、特許、または特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。しかしながら、本明細書中のいかなるものも、本発明が先の発明によるそのような開示に先行する権利を与えられないことを承認するものとしては解釈されるべきではない。
【0021】
矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は単に例示であり、限定することを意図しない。
【0022】
I.定義
本明細書で用いる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、特に他に具体的に指示がない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0023】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1個または複数個のアミノ酸残基が修飾された残基であるか、または対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体などの非天然残基であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーとに適用される。
【0024】
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。アミノ酸は、L−アミノ酸またはD−アミノ酸のいずれかであり得る。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、同様の機能を有する化合物を指す。
【0025】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の推奨する、一般に公知の3文字表記または1文字表記により参照されてもよい。
【0026】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、かつ、他に特記しない限り、これらは、一般に受け入れられている1文字コードにより参照されるアミノ酸と同様である。
【0027】
特記しない限り、「がん」という用語はC1orf59を過剰発現するがんを指し、例としては膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、および小細胞肺がん(NSCL)を含むが、それらに限定されない。
【0028】
特記しない限り、「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」、および「CTL」という用語は本明細書において互換的に用いられ、特に別段の定めのない限り、非自己細胞(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞)を認識し、そのような細胞の死滅を誘導することができるTリンパ球の亜群を指す。
【0029】
特記しない限り、「HLA−A02」という用語は、HLA−A0201またはHLA−A0206などのサブタイプを含むHLA−A2型を指す。
【0030】
特記しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。
【0031】
II.ペプチド
C1orf59由来のペプチドが、CTLによって認識される抗原として機能することを実証するために、C1orf59(SEQ ID NO:43)由来のペプチドを解析して、それらが、一般的に遭遇するHLA対立遺伝子であるHLA−A02またはHLA−A24によって拘束される抗原エピトープであるかどうかを判定した(Date Y et al., Tissue Antigens 47: 93-101, 1996;Kondo A et al., J Immunol 155: 4307-12, 1995;Kubo RT et al., J Immunol 152: 3913-24, 1994)。C1orf59由来のHLA−A02結合ペプチドの候補を、HLA−A02に対するそれらの結合親和性に基づいて同定した。以下のペプチドが候補ペプチドである:
C1orf59−A02−9−261 (SEQ ID NO:1)、
C1orf59−A02−9−333 (SEQ ID NO:2)、
C1orf59−A02−9−152 (SEQ ID NO:3)、
C1orf59−A02−9−121 (SEQ ID NO:4)、
C1orf59−A02−9−271 (SEQ ID NO:5)、
C1orf59−A02−9−63 (SEQ ID NO:6)、
C1orf59−A02−9−122 (SEQ ID NO:7)、
C1orf59−A02−10−240 (SEQ ID NO:9)、
C1orf59−A02−10−260 (SEQ ID NO:10)、
C1orf59−A02−10−270 (SEQ ID NO:11)、
C1orf59−A02−10−346 (SEQ ID NO:12)、
C1orf59−A02−10−90 (SEQ ID NO:13)、
C1orf59−A02−10−334 (SEQ ID NO:14)、
C1orf59−A02−10−188 (SEQ ID NO:15)、
C1orf59−A02−10−121 (SEQ ID NO:16)、
C1orf59−A02−10−122 (SEQ ID NO:17)、
C1orf59−A02−10−30 (SEQ ID NO:18)、
C1orf59−A02−10−183 (SEQ ID NO:19)、
C1orf59−A02−10−196 (SEQ ID NO:20)、
C1orf59−A02−10−10 (SEQ ID NO:21)、
C1orf59−A02−10−66 (SEQ ID NO:22)、
C1orf59−A02−10−326 (SEQ ID NO:23)、および
C1orf59−A02−10−252 (SEQ ID NO:24)。
【0032】
これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によってT細胞をインビトロで刺激した後、以下のペプチドのそれぞれを用いてCTLの樹立に成功した:
C1orf59−A02−9−261 (SEQ ID NO:1)、
C1orf59−A02−9−152 (SEQ ID NO:3)、
C1orf59−A02−9−121 (SEQ ID NO:4)、
C1orf59−A02−9−122 (SEQ ID NO:7)、
C1orf59−A02−10−240 (SEQ ID NO:9)、
C1orf59−A02−10−90 (SEQ ID NO:13)、
C1orf59−A02−10−188 (SEQ ID NO:15)、
C1orf59−A02−10−122 (SEQ ID NO:17)、および
C1orf59−A02−10−196 (SEQ ID NO:20)。
【0033】
C1orf59由来のHLA−A24結合ペプチドの候補を、HLA−A24に対するそれらの結合親和性に基づいて同定した。以下のペプチドが候補ペプチドである:
C1orf59−A24−9−385−25 (SEQ ID NO:25)、
C1orf59−A24−9−221−26 (SEQ ID NO:26)、
C1orf59−A24−9−338−27 (SEQ ID NO:27)、
C1orf59−A24−9−339−28 (SEQ ID NO:28)、
C1orf59−A24−9−182−29 (SEQ ID NO:29)、
C1orf59−A24−9−35−30 (SEQ ID NO:30)、
C1orf59−A24−9−253−31 (SEQ ID NO:31)、
C1orf59−A24−9−66−32 (SEQ ID NO:32)、
C1orf59−A24−9−145−33 (SEQ ID NO:33)、
C1orf59−A24−9−200−34 (SEQ ID NO:34)、
C1orf59−A24−9−257−35 (SEQ ID NO:35)、
C1orf59−A24−9−144−36 (SEQ ID NO:36)、
C1orf59−A24−9−151−37 (SEQ ID NO:37)、
C1orf59−A24−9−338−38 (SEQ ID NO:38)、
C1orf59−A24−9−97−39 (SEQ ID NO:39)、
C1orf59−A24−9−124−40 (SEQ ID NO:40)、および
C1orf59−A24−9−363−41 (SEQ ID NO:41)。
【0034】
これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によってT細胞をインビトロで刺激した後、以下のペプチドのそれぞれを用いてCTLの樹立に成功した:
C1orf59−A24−9−221−26 (SEQ ID NO:26)、
C1orf59−A24−9−66−32 (SEQ ID NO:32)、
C1orf59−A24−9−200−34 (SEQ ID NO:34)、
C1orf59−A24−9−124−40 (SEQ ID NO:40)、 および
C1orf59−A24−9−363−41 (SEQ ID NO:41)。
【0035】
樹立されたこれらのCTLは、各ペプチドをパルスした標的細胞に対して強力な特異的CTL活性を示す。本明細書におけるこれらの結果から、C1orf59がCTLによって認識される抗原であること、およびこれらのペプチドがHLA−A02またはHLA−A24によって拘束されるC1orf59のエピトープペプチドであることが実証される。
【0036】
C1orf59遺伝子は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCなどのがん細胞では過剰発現するが、大部分の正常器官では発現しないため、これは免疫療法のための優れた標的である。したがって本発明は、CTLによって認識されるC1orf59のエピトープに相当するノナペプチド(アミノ酸残基9個からなるペプチド)およびデカペプチド(アミノ酸残基10個からなるペプチド)を提供する。本発明のノナペプチドおよびデカペプチドの特に好ましい例には、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41の中より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドが含まれる。
【0037】
一般的に、インターネット上で現在利用可能なソフトウェアプログラム、例えばParker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75に記載されているソフトウェアプログラムなどを用いて、インシリコで種々のペプチドとHLA抗原との間の結合親和性を算出することができる。例えばParker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75;およびKuzushima K et al., Blood 2001, 98(6): 1872-81を参照して、HLA抗原との結合親和性を測定することができる。結合親和性を決定する方法は、例えばJournal of Immunological Methods, 1995, 185: 181-190;Protein Science, 2000, 9: 1838-1846に記載されている。したがって、そのようなソフトウェアプログラムを使用して、HLA抗原との高い結合親和性を有するC1orf59由来の免疫学的活性断片を選択することができる。したがって本発明は、そのような公知のプログラムを用いて同定された、HLA抗原と結合するC1orf59由来の任意の免疫学的活性断片からなるペプチドを包含する。本発明のペプチドは、C1orf59の全長からなるペプチドであってもよい。
【0038】
本発明のペプチドには、結果として得られたペプチドがそのCTL誘導能を保持する限り、付加的なアミノ酸残基を隣接させることができる。本発明のペプチドに隣接させるアミノ酸残基は、それらが元のペプチドのCTL誘導能を損なわない限り、任意の種類のアミノ酸から構成され得る。したがって本発明は、C1orf59に由来するペプチドを含み、かつHLA抗原に対する結合親和性を有するペプチドを包含する。そのようなペプチドは典型的には、約40アミノ酸未満であり、多くの場合には約20アミノ酸未満であり、通常は約15アミノ酸未満である。
【0039】
一般的に、あるペプチド中の1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸の改変は、該ペプチドの機能に影響を及ぼさず、かつ、場合によっては元のタンパク質の所望の機能を増強することさえあると考えられる。実際に、改変ペプチド(すなわち、元の参照配列と比較して、1個、2個、および/または数個のアミノ酸残基が改変された(すなわち、置換、欠失、付加、または挿入された)アミノ酸配列から構成されるペプチド)は、元のペプチドの生物活性を保持することが知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 1984, 81: 5662-6;Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 1982, 10: 6487-500;Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79: 6409-13)。従って、1つの態様において、本発明のペプチドは、CTL誘導能、ならびに1個、2個、またはさらにそれ以上のアミノ酸が付加、挿入、および/または置換されている、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41の中から選択されるアミノ酸配列の双方を有してよい。
【0040】
当業者は、単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変更する、アミノ酸配列に対する個々の付加または置換が、元のアミノ酸配列の特性の保存をもたらす傾向があることを認識する。従って、それらは通常「保存的置換」または「保存的改変」と称され、この場合、タンパク質の変化により元のタンパク質と類似の機能を有する改変タンパク質が生じる。機能的に類似しているアミノ酸を提示する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。保存するのが望ましいアミノ酸側鎖の特性の例には、例えば、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖が含まれる:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基含有側鎖(S、T、Y);硫黄原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。加えて、以下の8群はそれぞれ、相互に保存的置換であるとして当技術分野で認められるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照されたい)。
【0041】
このような保存的改変ペプチドもまた、本発明のペプチドと見なされる。しかしながら、本発明のペプチドはこれらに限定されず、改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、非保存的な改変を含み得る。さらに、改変ペプチドは、C1orf59の多型バリアント、種間相同体、および対立遺伝子のCTL誘導可能なペプチドを排除しない。
【0042】
必要なCTL誘導能を保持するために、少数の(例えば、1個、2個、または数個の)またはわずかな割合のアミノ酸を改変する(挿入する、欠失させる、付加する、および/または置換する)ことができる。本明細書において、「数個」という用語は、5個またはそれ未満のアミノ酸、例えば4個、3個、またはそれ未満を意味する。改変すべきアミノ酸の割合は、好ましくは20%またはそれ未満、より好ましくは15%またはそれ未満、さらにより好ましくは10%もしくはそれ未満または1〜5%である。
【0043】
さらに、より高い結合親和性を得るために、本発明のペプチドにアミノ酸残基を挿入する、本発明のペプチドをアミノ酸残基で置換する、もしくは本発明のペプチドにアミノ酸残基を付加することができ、またはアミノ酸残基を欠失させてもよい。免疫療法との関連で用いた場合、本発明のペプチドは、好ましくはHLA抗原との複合体として、細胞またはエキソソームの表面上に提示されるべきである。天然に提示されるペプチドに加えて、HLA抗原に対する結合によって提示されるペプチドの配列の規則性は既知であることから(J Immunol 1994, 152: 3913;Immunogenetics 1995, 41: 178;J Immunol 1994, 155: 4307)、そのような規則性に基づいた改変を本発明の免疫原性ペプチドに導入することができる。例えば、HLA−A24結合性を増大させるためには、N末端から2番目のアミノ酸をフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンで置換すること、および/またはC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンで置換することが望ましい場合がある。したがって、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンで置換されている、ならびに/またはSEQ ID NO:26、32、34、40、および41のアミノ酸配列のC末端がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンで置換されている、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドは、本発明によって包含される。一方、高いHLA−A02結合親和性を有するペプチドは、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンで置換されている、およびC末端のアミノ酸がバリンもしくはロイシンで置換されている。したがって、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンで置換されている、および/またはC末端がバリンもしくはロイシンで置換されている、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20のアミノ酸配列を有するペプチドは、本発明によって包含される。末端のアミノ酸においてのみならず、ペプチドの潜在的なT細胞受容体(TCR)認識部位においても、置換を導入することができる。いくつかの研究は、例えばCAP1、p53(264−272)、Her−2/neu(369−377)、またはgp100(209−217)など、アミノ酸置換を有するペプチドが元のものと同等であるかまたはより優れたものであり得ることを実証している(Zaremba et al. Cancer Res. 57, 4570-4577, 1997、T. K. Hoffmann et al. J Immunol. (2002) Feb 1;168(3):1338-47.、S. O. Dionne et al. Cancer Immunol immunother. (2003) 52: 199-206、およびS. O. Dionne et al. Cancer Immunology, Immunotherapy (2004) 53, 307-314)。
【0044】
本発明はまた、記載したペプチドのN末端および/またはC末端への1個、2個、または数個のアミノ酸の付加を意図する。高いHLA抗原結合親和性を有し、かつCTL誘導能を保持するそのような改変ペプチドもまた、本発明に含まれる。
【0045】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因性または外因性のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、自己免疫障害および/または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘発される可能性がある。したがって、ペプチドの配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避するために、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を最初に行うことが好ましい。相同性検索から、対象ペプチドと比較して1つまたは2つのアミノ酸の違いを有するペプチドさえも存在しないことが明らかになった場合には、そのような副作用のいかなる危険も伴わずに、HLA抗原とのその結合親和性を増大させるため、および/またはそのCTL誘導能を増大させるために、対象ペプチドを改変することができる。
【0046】
上記のようにHLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドは、非常に効果的であると予測されるが、指標としての高い結合親和性の存在に従って選択された候補ペプチドを、CTL誘導能の存在についてさらに調べる。本明細書において「CTL誘導能」という語句は、抗原提示細胞(APC)上に提示された場合に、CTLを誘導するペプチドの能力を示す。さらに、「CTL誘導能」は、CTL活性化を誘導する、CTL増殖を誘導する、CTLによる標的細胞の溶解を促進する、およびCTLのIFN−γ産生を増加させるペプチドの能力を含む。
【0047】
CTL誘導能の確認は、ヒトMHC抗原を保有するAPC(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞(DC))、またはより具体的にはヒト末梢血単核白血球由来のDCを誘導し、ペプチドによる刺激後にCD8陽性細胞と混合し、その後、標的細胞に対してCTLによって産生および放出されたIFN−γを測定することにより達成される。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ, Hum Immunol 2000 Aug, 61(8): 764-79, Related Articles, Books, Linkout Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) responseに記載されているもの)を用いることができる。例えば、標的細胞を51Cr等で放射標識することができ、標的細胞から放出された放射能から細胞傷害活性を算出することができる。あるいは、固定化ペプチドを保有するAPCの存在下で、CTLによって産生および放出されたIFN−γを測定し、抗IFN−γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害領域を可視化することによって、CTL誘導能を評価することができる。
【0048】
上記のようにペプチドのCTL誘導能を調べた結果として、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41によって示されるアミノ酸配列からなるペプチドより選択されるノナペプチドまたはデカペプチドが、HLA抗原に対する高い結合親和性に加えて、特に高いCTL誘導能を示すことが判明した。したがって、これらのペプチドは本発明の好ましい態様として例証される。
【0049】
さらに、相同性解析の結果から、これらのペプチドが任意の他の公知のヒト遺伝子産物に由来するペプチドと有意な相同性を有していないことが示された。そのため、免疫療法に用いた場合の未知または望ましくない免疫応答の可能性が低くなる。したがって、この局面からもまた、これらのペプチドはがん患者においてC1orf59に対する免疫を誘発するのに使用される。よって、本発明のペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【0050】
上記した本発明のペプチドの改変に加えて、記載されるペプチドは、それらが元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、他の物質にさらに連結させることができる。例示的な物質には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成のポリマー等が含まれる。本発明のペプチドは、修飾によって元のペプチドの生物活性が破壊されない限り、糖鎖付加、側鎖酸化、および/またはリン酸化などの修飾を含み得る。このような種類の修飾は、付加的な機能(例えば、標的化機能および送達機能)を付与すること、および/またはペプチドを安定化しうる。
【0051】
例えば、ポリペプチドのインビボ安定性を高めるために、D−アミノ酸、アミノ酸模倣体、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野で知られており、この概念を本発明のポリペプチドに適合させることもできる。ポリペプチドの安定性は、多くの方法でアッセイすることができる。例えば、ペプチダーゼ、ならびにヒトの血漿および血清などの様々な生体媒質を用いて、安定性を試験することができる(例えば、Verhoef et al., Eur J Drug Metab Pharmacokin 1986, 11: 291-302を参照されたい)。
【0052】
本明細書において、本発明のペプチドはまた、「C1orf59ペプチド」または「C1orf59ポリペプチド」とも記載され得る。
【0053】
III.C1orf59ペプチドの調製
周知の技術を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。例えば、組換えDNA技術または化学合成を用いて、ペプチドを合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドから構成されるより長いポリペプチドとして、合成することができる。その後ペプチドを単離すること、すなわち他の天然の宿主細胞タンパク質およびそれらの断片、または他の任意の化学物質を実質的に含まないように、精製または単離することができる。
【0054】
選択されたアミノ酸配列に基づいた化学合成によって、本発明のペプチドを得ることができる。この合成に適合させることのできる従来のペプチド合成法の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
(i)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii)Peptide Synthesis(日本語), Maruzen Co., 1975;
(iv)Basics and Experiment of Peptide Synthesis(日本語), Maruzen Co., 1985;
(v)Development of Pharmaceuticals (second volume)(日本語), Vol. 14 (peptide synthesis), Hirokawa, 1991;
(vi)WO99/67288;および
(vii)Barany G. & Merrifield R.B., Peptides Vol. 2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
【0055】
あるいは、ペプチドを作製するための任意の公知の遺伝子工学的方法(例えば、Morrison J, J Bacteriology 1977, 132: 349-51;Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology (eds. Wu et al.) 1983, 101: 347-62)を適合させて、本発明のペプチドを得ることができる。例えば、最初に、発現可能な形態で(例えば、プロモーター配列に相当する調節配列の下流に)目的のペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞に入れて形質転換する。次いで、該宿主細胞を培養して、関心対象のペプチドを産生させる。インビトロ翻訳系を適用して、ペプチドをインビトロで作製することもできる。
【0056】
IV.ポリヌクレオチド
本発明はまた、前述の本発明のペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを提供する。これらは、天然のC1orf59遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_144584、(SEQ ID NO:42))由来のポリヌクレオチド、およびその保存的に改変されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。本明細書において「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、数多くの機能的に同一な核酸が任意の特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。従って、あるコドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置において、コードされるポリペプチドを変化させることなく、該コドンを記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸の変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。ペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列は、該核酸の可能性のあるあらゆるサイレント変異をも表す。核酸中の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を得ることができることを、当業者は認識するであろう。従って、ペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、公開した各配列において非明示的に記載されている。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、およびそれらの誘導体から構成され得る。DNAはA、T、C、およびGなどの塩基から適切に構成され、RNAではTはUに置き換えられる。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドは、介在するアミノ酸配列を間に伴って、または伴わずに、本発明の複数のペプチドをコードし得る。例えば、介在するアミノ酸配列は、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を提供し得る。さらに、ポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の付加的配列を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現に必要な調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってよく、またはマーカー遺伝子等を有する発現ベクター(プラスミド)であってもよい。一般に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる従来の組換え技術によりポリヌクレオチドを操作することによって、そのような組換えポリヌクレオチドを調製することができる。
【0059】
組換え技術および化学合成技術の両方を用いて、本発明のポリヌクレオチドを作製することができる。例えば、適切なベクター内に挿入することによってポリヌクレオチドを作製することができ、これはコンピテント細胞にトランスフェクトした場合に発現され得る。あるいは、PCR技術または適切な宿主内での発現を用いて、ポリヌクレオチドを増幅することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage SL & Iyer RP, Tetrahedron 1992, 48: 2223-311;Matthes et al., EMBO J 1984, 3: 801-5に記載されているような固相技術を用いて、ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0060】
V.エキソソーム
本発明は、本発明のペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体を自身の表面上に提示する、エキソソームと称される細胞内小胞をさらに提供する。エキソソームは、例えば公表特許公報 特表平11−510507号およびWO99/03499に詳述されている方法を用いることによって調製することができ、治療および/または予防(prevention)の対象となる患者から得られたAPCを用いて調製することができる。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様の様式で、ワクチンとして接種することができる。
【0061】
複合体中に含まれるHLA抗原の型は、治療および/または予防を必要とする対象のものと一致しなければならない。例えば日本人集団では、HLA−A02(特にA0201およびA0206もまた)およびHLA−A24(特にA2402)がよく見られ、したがって日本人患者の治療に適していると考えられる。日本人および白人の間で高発現するA02型またはA24型の使用は、有効な結果を得るのに好ましい。典型的には、診療所では、治療を必要とする患者のHLA抗原の型があらかじめ調べられ、これにより、特定の抗原に対して高レベルの結合親和性を有する、または抗原提示によるCTL誘導能を有するペプチドの適切な選択が可能となる。さらに、高い結合親和性およびCTL誘導能の両方を有するペプチドを取得するために、天然のC1orf59部分ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、1個、2個、または数個のアミノ酸の置換、挿入、および/または付加を行うことができる。
【0062】
本発明のエキソソームに対してA02型HLA抗原を用いる場合には、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20のいずれか1つの配列を有するペプチドが使用される。あるいは、本発明のエキソソームに対してA24型HLA抗原を用いる場合、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41のいずれか1つの配列を有するペプチドが使用される。
【0063】
VI.抗原提示細胞(APC)
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの間に形成された複合体をその表面上に提示する単離されたAPCを提供する。APCは、治療および/または予防の対象となる患者に由来することが可能で、単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくはCTLを含む他の薬物と併用して、ワクチンとして投与することができる。
【0064】
APCは特定の種類の細胞に限定されず、これには、リンパ球によって認識されるようにその細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られているDC、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞が含まれる。DCは、APCの中で最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCであるため、DCは本発明のAPCとして使用される。
【0065】
例えば、本発明のAPCは、末梢血単球からDCを誘導し、次にそれらをインビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明のペプチドと接触させる(で刺激する)ことによって得ることができる。本発明のペプチドを対象に投与した場合、本発明のペプチドを提示するAPCが対象の体内で誘導される。したがって、本発明のAPCは、本発明のペプチドを対象に投与した後、該対象からAPCを回収することによって得ることができる。あるいは、本発明のAPCは、対象から回収されたAPCを本発明のペプチドと接触させることによって得ることができる。
【0066】
対象においてがんに対する免疫応答を誘導するために、本発明のAPCを単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくはCTLを含む他の薬物と併用して対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含み得る:
a:第1の対象からAPCを回収する段階、
b:段階aのAPCをペプチドと接触させる段階、および
c:段階bのAPCを第2の対象に投与する段階。
【0067】
第1の対象と第2の対象は同一の個体でありえ、または異なる個体であってもよい。段階bによって得られたAPCを、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCを含むがんを治療および/または予防するためのワクチンとして投与することができる。
【0068】
本発明はまた、APCを誘導する薬学的組成物を製造するための方法またはプロセスであって、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体と共に混合するまたは製剤化する段階を含む方法を提供する。
【0069】
本発明の1つの局面によると、APCは高レベルのCTL誘導能を有する。「高レベルのCTL誘導能」という用語における高レベルとは、ペプチドと接触させていないAPC、またはCTLを誘導し得ないペプチドと接触させたAPCによるCTL誘導能のレベルと比較したものである。高レベルのCTL誘導能を有するそのようなAPCは、上記の方法に加え、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビトロでAPCに導入する段階を含む方法によって調製することができる。導入する遺伝子は、DNAまたはRNAの形態でありうる。導入の方法の例には、特に制限なく、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法などの、当分野において慣習的に行われる種々の方法が含まれる。より具体的には、Cancer Res 1996, 56: 5672-7;J Immunol 1998, 161: 5607-13;J Exp Med 1996, 184: 465-72;公表特許公報特表2000−509281号に記載されているように、それを行うことができる。遺伝子をAPCに導入することによって、該遺伝子は細胞内で転写、翻訳等を受け、次いで、得られたタンパク質はMHCクラスIまたはクラスIIによってプロセシングされ、提示経路を経てペプチドが提示される。
【0070】
VII.細胞傷害性Tリンパ球(CTL)
本発明のペプチドのいずれかに対して誘導されたCTLは、インビボでがん細胞を標的とする免疫応答を強化し、そのためペプチド自体と同様の様式でワクチンとして用いることができる。したがって本発明はまた、本発明のペプチドのいずれかよって特異的に誘導または活性化された、単離されたCTLを提供する。
【0071】
そのようなCTLは、(1)本発明のペプチドを対象に投与し、該対象からCTLを回収すること;(2)対象由来のAPCおよびCD8陽性細胞もしくは末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させた(で刺激した)後、CTLを単離すること;(3)CD8陽性細胞もしくは末梢血単核白血球を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示するAPCもしくはエキソソームとインビトロで接触させた後、CTLを単離すること;または(4)本発明のペプチドに結合するT細胞受容体(TCR)サブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をCTLに導入することによって得ることができる。前述のAPCおよびエキソソームは上記の方法によって調製することができ、(4)の方法は以下の「VIII.T細胞受容体(TCR)」の章において詳述する。
【0072】
本発明のCTLは、治療および/または予防の対象となる患者に由来することが可能で、単独で、または効果を調節する目的で本発明のペプチドもしくはエキソソームを含む他の薬物と併用して投与することができる。得られたCTLは、本発明のペプチド、例えば誘導に用いた同一のペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、がん細胞のようにC1orf59を内因的に発現する細胞、またはC1orf59遺伝子をトランスフェクトした細胞でありえ、本発明のペプチドによる刺激によって該ペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、活性化されたCTLの攻撃の標的となり得る。
【0073】
VIII.T細胞受容体(TCR)
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成し得るポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、およびそれを使用する方法を提供する。TCRサブユニットは、C1orf59を発現する腫瘍細胞に対する特異性をT細胞に付与するTCRを形成する能力を有する。当技術分野における公知の方法を用いることにより、本発明のペプチドで誘導されたCTLが保有するTCRサブユニットのα鎖およびβ鎖をコードする核酸配列を同定することができる(WO2007/032255、およびMorgan et al., J Immunol, 171, 3288 (2003))。例えば、TCRサブユニットをコードする核酸配列を解析するためには、PCR法が好ましい。解析のためのPCRプライマーは、例えば、5’側プライマーとしての5’−Rプライマー(5’−gtctaccaggcattcgcttcat−3’)(SEQ ID NO:44)、および3’側プライマーとしての、TCRα鎖C領域に特異的な3−TRa−Cプライマー(5’−tcagctggaccacagccgcagcgt−3’)(SEQ ID NO:45)、TCRβ鎖C1領域に特異的な3−TRb−C1プライマー(5’−tcagaaatcctttctcttgac−3’)(SEQ ID NO:46)、またはTCRβ鎖C2領域に特異的な3−TRβ−C2プライマー(5’−ctagcctctggaatcctttctctt−3’)(SEQ ID NO:47)でありうるが、これらに限定されない。TCR誘導体は、C1orf59ペプチドを提示する標的細胞と高い結合力で結合することができ、任意で、C1orf59ペプチドを提示する標的細胞の効率的な殺傷をインビボおよびインビトロで媒介することができる。
【0074】
TCRサブユニットをコードする核酸を、適切なベクター、例えばレトロウイルスベクターに組み込むことができる。これらのベクターは、当技術分野において周知である。該核酸またはそれらを含むベクターを、当技術分野で周知の方法を用いて、T細胞、例えば患者由来のT細胞に導入することができる。有利には、本発明は、患者自身のT細胞(または別の哺乳動物のT細胞)の迅速な改変を可能にして、優れたがん細胞殺傷特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に作製する、容易に入手可能な組成物を提供する。
【0075】
本発明のペプチドによって誘導されたCTLから単離された核酸によってコードされるTCRは、TCRがT細胞の表面上に保有される場合に、本発明のペプチドとHLA分子との複合体を特異的に認識して、標的細胞に対するT細胞特異的活性を付与することができる。そのような特異的認識は任意の公知の方法によって確認することができ、好ましい方法には、例えば、HLA分子および本発明のペプチドを用いる四量体解析(例えば、Altman et al. Science. 274, 94-96 (1996);McMichael et al. J Exp Med. 187, 1367-1371 (1998))、ならびにELISPOTアッセイが含まれる。ELISPOTアッセイを行うことにより、細胞表面上にTCRを発現しているT細胞がTCRによって細胞を認識すること、およびシグナルが細胞内で伝達され、次にIFN−γなどのサイトカインがT細胞から放出されることを確認することができる。当技術分野で周知の方法を用いて、標的細胞に対するT細胞の細胞傷害活性を調べることができる。好ましい方法には、例えば、C1orf59を発現するHLA陽性細胞を標的細胞として用いるクロム放出アッセイが含まれる。
【0076】
また本発明は、HLA−A02との関連で、例えばSEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20のC1orf59ペプチド、ならびにまたHLA−A24との関連で、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41のC1orf59ペプチドに結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を形質導入することによって調製されるCTLを提供する。形質導入されたCTLは、インビボでがん細胞にホーミングすることができ、周知のインビトロ培養法によって増殖させることができる(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-3461 (1989))。本発明のCTLを用いて、治療または防御を必要としている患者におけるがんの治療または予防に有用な免疫原性組成物を形成することができる(WO2006/031221)。
【0077】
IX.薬学的な剤または組成物
予防(preventionおよびprophylaxis)は、疾患による死亡率または罹患率の負荷を軽減する任意の行為を含む。予防(preventionおよびprophylaxis)は、「第一次、第二次、および第三次の予防レベルで」行われ得る。第一次の予防(preventionおよびprophylaxis)が疾患の発生を回避するのに対し、第二次および第三次レベルの予防(preventionおよびprophylaxis)は、疾患の進行および症状の出現の予防(preventionおよびprophylaxis)することに加え、機能を回復させ、かつ疾患関連の合併症を軽減することによって、既存の疾患の悪影響を軽減することを目的とした行為を包含する。あるいは、予防(preventionおよびprophylaxis)は、特定の障害の重症度を軽減すること、例えば腫瘍の増殖および転移を減少させること、血管新生を軽減することを目的とした広範囲の予防的治療を含む。
【0078】
がんの治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防は、以下の、がん細胞の外科的切除、がん性細胞の増殖の阻害、腫瘍の退行または退縮、寛解誘導およびがんの発生の抑制、腫瘍退縮、ならびに転移の低減または阻害などの段階のいずれかを含む。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを低下させ、かつがんに伴う検出可能な症状を緩和する。例えば、症状の軽減または改善は効果的な治療を構成し、および/または予防は10%、20%、30%、もしくはそれ以上の、軽減もしくは安定した疾患を含む。
【0079】
C1orf59の発現は、正常組織と比較して、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCを含むがんにおいて特異的に上昇するため、本発明のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを、がんもしくは腫瘍の治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防に用いることができる。したがって本発明は、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドの1種または複数種を有効成分として含む、がんもしくは腫瘍の治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防のための薬学的な剤または組成物を提供する。あるいは、薬学的な剤または組成物として用いるために、本発明のペプチドを、前述のエキソソームまたはAPCなどの細胞のいずれかの表面上に発現させることができる。加えて、本発明のペプチドのいずれかを標的とする前述のCTLもまた、本発明の薬学的な剤または組成物の有効成分として用いることができる。
【0080】
別の態様において、本発明はまた、がんまたは腫瘍を治療するための薬学的な組成物または剤の製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0081】
あるいは、本発明はさらに、がんまたは腫瘍の治療において用いるための、以下の中より選択される有効成分を提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0082】
あるいは、本発明はさらに、がんまたは腫瘍を治療するための薬学的な組成物または剤を製造するための方法またはプロセスであって、有効成分としての、以下の中より選択される有効成分と共に薬学的にまたは生理学的に許容される担体を製剤化する段階を含む方法またはプロセスを提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0083】
別の態様において、本発明はまた、有効成分を薬学的にまたは生理学的に許容される担体と混合する段階を含む、がんまたは腫瘍を治療するための薬学的な組成物または剤を製造するための方法またはプロセスであって、この有効成分が以下の中より選択される方法またはプロセスを提供する:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0084】
あるいは、本発明の薬学的な組成物または剤を、がんまたは腫瘍の予防およびその術後再発の予防のいずれかまたは両方に用いてもよい。
【0085】
本発明の薬学的な剤または組成物は、ワクチンとして使用される。本発明との関連において、「ワクチン」(「免疫原性組成物」とも称される)という語句は、動物に接種した際に、抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。
【0086】
本発明の薬学的な剤または組成物は、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒ、およびチンパンジー、特に商業的に重要な動物または家畜を含むが、これらに限定されない任意の他の哺乳動物を含む対象または患者において、がんもしくは腫瘍を治療および/もしくは予防する、ならびに/またはその術後再発を予防するために用いることができる。
【0087】
本発明により、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、20、26、32、34、40、および41のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A02もしくはHLA−A24拘束性エピトープペプチドまたはその候補であることが判明した。したがって、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20のアミノ酸配列を有するこれらのペプチドのいずれかを含む本発明の薬学的な剤または組成物は、HLA抗原がHLA−A02である対象に投与するのに特に適しており、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41のアミノ酸配列を有するペプチドは、HLA抗原がHLA−A24である対象に投与するのに特に適している。同じことが、これらのペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を含む薬学的な剤および組成物にも当てはまる。
【0088】
本発明の薬学的な剤または組成物によって治療すべきがんまたは腫瘍は限定されず、これには、例えば膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCを含む、C1orf59が関与するすべての種類のがんまたは腫瘍が含まれる。
【0089】
本薬学的な剤または組成物は、前述の有効成分に加えて、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有するその他のペプチド、該その他のペプチドをコードするその他のポリヌクレオチド、該その他のペプチドを提示するその他の細胞等を含み得る。本明細書において、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有するその他のペプチドは、がん特異的抗原(例えば、同定されたTAA)によって例証されるが、これに限定されない。
【0090】
必要に応じて、本発明の薬学的な剤は、例えば本発明のペプチドのいずれかといった有効成分の抗腫瘍効果をその他の治療物質が阻害しない限り、有効成分として該治療物質を任意に含み得る。例えば、製剤は、抗炎症剤、鎮痛剤、化学療法剤等を含み得る。医薬自体に他の治療物質を含めることに加えて、本発明の医薬を、1つまたは複数の他の薬理学的な剤と連続してまたは同時に投与することもできる。医薬および薬理学的な剤の量は、例えば、使用される薬理学的な剤の種類、治療する疾患、ならびに投与のスケジュールおよび投与経路に依存する。
【0091】
本明細書において特に言及される成分に加えて、本発明の薬学的な剤は、当該製剤の種類を考慮して、当技術分野において慣例的な他の剤または組成物も含み得ることが理解されるべきである。
【0092】
本発明の1つの態様において、本薬学的な剤または組成物を、例えばがんのような治療されるべき疾患の病態を治療するのに有用な材料を含む製品およびキットに含めることができる。該製品は、ラベルを有する本薬学的な剤または組成物のいずれかの容器を含み得る。適切な容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器上のラベルには、剤が、疾患の1つまたは複数の状態の治療または予防のために用いられることが示されるべきである。ラベルはまた、投与等に関する指示も示し得る。
【0093】
上記の容器に加えて、本発明の薬学的な剤または組成物を含むキットは、任意で、薬学的に許容される希釈剤を収容した第2の容器をさらに含み得る。それは、使用のための指示書と共に、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、シリンジ、および添付文書を含む、商業上および使用者の立場から見て望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0094】
必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置にて、薬学的な剤または組成物を提供することができる。該パックは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する指示書が添付され得る。
【0095】
(1)有効成分としてペプチドを含む薬学的な剤または組成物
本発明のペプチドは、薬学的な剤もしくは組成物として直接投与することができ、または必要であれば、従来の製剤方法によって製剤化される。後者の場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常用いられる担体、賦形剤等が特に制限なく適宜含まれ得る。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液等である。さらに、薬学的な剤または組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤等を含み得る。本発明の薬学的な剤または組成物は、抗がん目的に用いることができる。
【0096】
インビボでCTLを誘導するために、本発明のペプチドを、本発明のペプチドの2種またはそれ以上から構成される組み合わせとして調製することができる。ペプチドの組み合わせはカクテルの形態をとってよく、または標準的な技術を用いて互いにコンジュゲートしてもよい。例えば、該ペプチドを化学的に結合させても、または単一の融合ポリペプチド配列として発現させてもよい。組み合わせにおけるペプチドは、同一であっても異なっていてもよい。本発明のペプチドを投与することによって、該ペプチドはHLA抗原によってAPC上に高密度で提示され、次いで、提示されたペプチドと該HLA抗原との間に形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、対象由来のAPC(例えば、DC)を本発明のペプチドで刺激することによって得られ得る、本発明のペプチドのいずれかをその細胞表面上に提示するAPCを、対象に投与してもよく、結果として、対象においてCTLが誘導され、がん細胞に対する攻撃性を増大させることができる。
【0097】
有効成分として本発明のペプチドを含む、がんもしくは腫瘍の治療および/または予防のための薬学的な剤または組成物は、効率的に細胞性免疫を誘導することが知られているアジュバントもまた含み得る。あるいは、薬学的な剤または組成物は、他の有効成分と共に投与することができ、顆粒内への製剤化によって投与されうる。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(または連続して)投与した場合に、該タンパク質に対する免疫応答を増強させる化合物を指す。本明細書において意図されるアジュバントには、文献(Clin Microbiol Rev 1994, 7: 277-89)に記載されているものが含まれる。適切なアジュバントの例には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、コレラ毒素、サルモネラ毒素等が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
さらに、リポソーム製剤、直径数マイクロメートルのビーズにペプチドが結合している顆粒製剤、およびペプチドに脂質が結合している製剤を好都合に用いてもよい。
【0099】
本発明の別の態様において、本発明のペプチドは、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。塩の好ましい例には、アルカリ金属との塩、金属との塩、有機塩基との塩、有機酸との塩、および無機酸との塩が含まれる。
【0100】
いくつかの態様において、本発明の薬学的な剤は、CTLを刺激する(prime)成分をさらに含み得る。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激し得る剤または組成物として同定された。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のεアミノ基およびαアミノ基に付着させ、次に本発明のペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子の状態で直接投与すること、リポソーム中に取り込ませること、またはアジュバント中に乳化させることができる。CTL応答の脂質による刺激の別の例として、適切なペプチドに共有結合している場合、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(P3CSS)などの大腸菌(E.coli)リポタンパク質を用いてCTLを刺激することができる(例えば、Deres et al., Nature 1989, 342: 561-4を参照されたい)。
【0101】
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等、および全身投与または標的部位の近傍への局所投与であってよい。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によって強化することもできる。本発明のペプチドの用量を、治療する疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に従って適切に調節することができ、これは通常0.001 mg〜1000 mg、例えば0.001 mg〜1000 mg、例えば0.1 mg〜10 mgであり、数日から数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0102】
(2)有効成分としてポリヌクレオチドを含む薬学的な剤または組成物
本発明の薬学的な剤または組成物はまた、本明細書に開示するペプチドをコードする核酸を発現可能な形態で含み得る。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞内に導入された場合に、抗腫瘍免疫を誘導するポリペプチドとしてインビボで発現され得ることを意味する。例示的な態様において、関心対象のポリヌクレオチドの核酸配列は、該ポリヌクレオチドの発現に必要な調節エレメントを含む。ポリヌクレオチドには、標的細胞のゲノム中への安定的な組み込みが達成されるように、必要なものを備えさせることができる(相同組換えカセットベクターの説明に関しては、例えばThomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8;米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO 98/04720を参照されたい。DNAに基づく送達技術の例には、「裸のDNA」、促進された(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0103】
ウイルスベクターまたは細菌ベクターによって、本発明のペプチドを発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアウイルスまたは鶏痘ウイルスなどの弱毒化ウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターとして、ワクシニアウイルスの使用を伴う。宿主内に導入すると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。治療的投与または免疫化に有用である多種多様な他のベクター、例えばアデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が明らかであろう。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71;Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806;Hipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
【0104】
ポリヌクレオチドの対象内への送達は、直接的であってもよいし(この場合、ポリヌクレオチドを保有するベクターに対象を直接曝露する)、または間接的であってもよい(この場合、まずインビトロで細胞を関心対象のポリヌクレオチドで形質転換し、次いで該細胞を対象内に移植する)。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボおよびエクスビボの遺伝子治療として公知である。
【0105】
遺伝子治療の方法の一般的な総説に関しては、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 1993, 12: 488-505;Wu and Wu, Biotherapy 1991, 3: 87-95;Tolstoshev, Ann Rev Pharmacol Toxicol 1993, 33: 573-96;Mulligan, Science 1993, 260: 926-32;Morgan & Anderson, Ann Rev Biochem 1993, 62: 191-217;Trends in Biotechnology 1993, 11(5): 155-215を参照されたい。本発明にも用いることのできる、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、eds. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1993;およびKrieger, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY, 1990に記載されている。
【0106】
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等であってよく、全身投与または標的部位の近傍への局所投与が用いられる。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によって強化することもできる。適切な担体中のポリヌクレオチドの用量、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換した細胞の用量を、治療する疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に従って適切に調節することができ、これは通常0.001 mg〜1000 mg、例えば0.001 mg〜1000 mg、例えば0.1 mg〜10 mgであり、数日に1度〜数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0107】
X.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法
APCおよびCTLを誘導するために、本発明のペプチドおよびポリヌクレオチドを用いることができる。CTLを誘導するために、本発明のエキソソームおよびAPCを用いることもできる。ペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、およびAPCは、任意の他の化合物がそれらのCTL誘導能を阻害しない限り、該化合物と組み合わせて用いることができる。従って、前述の本発明の薬学的な剤または組成物のいずれかをCTLを誘導するために用いることができ、それに加えて、前記ペプチドおよびポリヌクレオチドを含むものを、以下に議論され説明されるように、APCを誘導するために用いることもできる。
【0108】
(1)抗原提示細胞(APC)を誘導する方法
本発明は、本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドを用いて、高いCTL誘導能を有するAPCを誘導する方法を提供する。
【0109】
本発明の方法は、APCを本発明のペプチドとインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる段階を含む。例えば、APCを該ペプチドとエクスビボで接触させる方法は、以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを回収する段階;および
b:段階aのAPCを該ペプチドと接触させる段階。
【0110】
APCは特定の種類の細胞に限定されず、これには、リンパ球によって認識されるようにその細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られているDC、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞が含まれる。APCの中では、その最も強力なCTL誘導能のために、DCを用い得ることが好ましい。本発明の任意のペプチドを、段階bのペプチドとして単独で、または本発明の他のペプチドと組み合わせて用いることができる。
【0111】
あるいは、本発明のペプチドを対象に投与して、該ペプチドをAPCとインビボで接触させてもよい。結果的に、高いCTL誘導能を有するAPCが対象の体内で誘導され得る。したがって、本発明はまた、APCをインビボで誘導するために、本発明のペプチドを対象に投与する方法を意図する。本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な形態で対象に投与して、本発明のペプチドを発現させ、APCとインビボで接触させて、結果的に高いCTL誘導能を有するAPCを対象の体内で誘導することも可能である。したがって、本発明はまた、APCをインビボで誘導するために、本発明のポリヌクレオチドを対象に投与する方法も意図する。「発現可能な形態」という語句は、上記の「IX.薬剤(2)有効成分としてポリヌクレオチドを含む薬剤」の章に定義されている。
【0112】
さらに本発明は、CTL誘導能を有するAPCを誘導するために、本発明のポリヌクレオチドをAPCに導入することを含む。例えば、本方法は以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを回収する段階;および
b:本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入する段階。
【0113】
段階bは、「VI.抗原提示細胞」の章に上記した通りに行うことができる。
【0114】
(2)CTLを誘導する方法
さらに本発明は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、またはエキソソームもしくはAPCを用いてCTLを誘導する方法を提供する。
【0115】
本発明はまた、本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するT細胞受容体(TCR)サブユニットを形成し得るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて、CTLを誘導する方法を提供する。好ましくは、CTLを誘導する方法は、以下からなる群より選択される少なくとも1つの段階を含む:
a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示する抗原提示細胞および/またはエキソソームと接触させる段階;ならびに
b)本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するTCRサブユニットを形成し得るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをCD8陽性細胞に導入する段階。
【0116】
本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、またはエキソソームを対象に投与すると、該対象の体内でCTLが誘導されて、がん細胞を標的とする免疫応答の強さが強化される。したがって、本発明はまた、CTLを誘導するために、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、APC、またはエキソソームを対象に投与する段階を含む方法を意図する。
【0117】
あるいは、CTLをエクスビボ使用によって誘導することもできる。そのような場合には、CTLの誘導後に活性化CTLを対象に戻す。例えば、CTLを誘導するための本発明の方法は以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを回収する段階;
b:段階a)のAPCをペプチドと接触させる段階;および
c:段階bのAPCをCD8陽性細胞と共培養する段階。
【0118】
上記の段階cにおいてCD8陽性細胞と共培養すべきAPCは、「VI.抗原提示細胞」の章で上記したように、本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子をAPCに導入することによって調製することもできるが、これに限定されず、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に効率的に提示する任意のAPCを本方法に用いることができる。
【0119】
そのようなAPCの代わりに、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示するエキソソームを用いることもできる。すなわち、本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示するエキソソームをCD8陽性細胞と共培養する方法も意図する。そのようなエキソソームは、「V.エキソソーム」の章で上記した方法によって調製しうる。
【0120】
さらに、本発明のペプチドに結合するTCRサブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をCD8陽性細胞に導入することによって、CTLを誘導することもできる。そのような形質導入は、「VIII.T細胞受容体(TCR)」の章で上記した通りに行うことができる。
【0121】
加えて、本発明は、CTLを誘導する薬学的な剤または組成物を製造するための方法またはプロセスであって、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体と共に混合するまたは製剤化する段階を含む方法を提供する。
【0122】
(3)免疫応答を誘導する方法
さらに本発明は、C1orf59に関連する疾患に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。適切な疾患にはがんが含まれ、その例には、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、NSCLC、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、およびSCLCが含まれる。
【0123】
本方法は、本発明のペプチドまたはそれらをコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む剤または組成物を投与する段階を含む。本発明の方法はまた、本発明のペプチドのいずれかを提示するエキソソームまたはAPCの投与を意図する。詳細については、「IX.薬学的な剤または組成物」の項目、特に本発明の薬学的な剤および組成物のワクチンとしての使用について記載している部分を参照されたい。加えて、免疫応答を誘導するために本発明の方法に使用できるエキソソームおよびAPCは、前記の「V.エキソソーム」、「VI.抗原提示細胞(APC)」、ならびに「X.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法」の(1)および(2)の項目において詳述されている。
【0124】
本発明はまた、免疫応答を誘導する薬学的な剤または組成物を製造するための方法またはプロセスであって、本発明のペプチドを薬学的に許容される担体と共に混合するまたは製剤化する段階を含む方法を提供する。
【0125】
あるいは、本発明の方法は、以下を含むワクチンまたは薬学的組成物を投与する段階を含み得る:
(a)本発明のペプチド;
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸;
(c)本発明のペプチドをその表面上に提示するAPCまたはエキソソーム;および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0126】
本発明において、C1orf59を過剰発現するがんをこれらの有効成分で治療することができる。がんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、および小細胞肺がん(SCLC)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物を投与する前に、治療すべきがん細胞または組織におけるC1orf59の発現レベルが同じ器官の正常細胞と比較して増強されているかどうかを確認することが好ましい。したがって1つの態様において、本発明は、以下の段階を含み得る、C1orf59を(過剰)発現するがんを治療する方法を提供する:
i)治療すべきがんを有する対象から得られたがん細胞または組織において、C1orf59の発現レベルを測定する段階;
ii)C1orf59の発現レベルを正常対照と比較する段階;および
iii)上記の(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を、正常対照と比較してC1orf59を過剰発現するがんを有する対象に投与する段階。
【0127】
あるいは、本発明はまた、C1orf59を過剰発現するがんを有する対象への投与において用いるための、上記の(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含むワクチンまたは薬学的組成物を提供する。換言すれば、本発明はさらに、本発明のC1orf59ポリペプチドで治療すべき対象を同定する方法であって、対象由来のがん細胞または組織におけるC1orf59の発現レベルを測定する段階を含んでよく、該遺伝子の正常対照レベルと比較して該レベルが上昇していることにより、対象が本発明のC1orf59ポリペプチドで治療され得るがんを有することが示される方法を提供する。
【0128】
本発明に従って、対象から得られたがん細胞または組織におけるC1orf59の発現レベルを測定する。発現レベルは、当技術分野で公知の方法を用いて、転写(核酸)産物レベルで測定することができる。例えば、C1orf59のmRNAを、ハイブリダイゼーション法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)によってプローブを用いて定量することができる。検出は、チップまたはアレイ上で行ってもよい。アレイの使用は、C1orf59の発現レベルを検出するのに好ましい。当業者は、C1orf59の配列情報を使用して、そのようなプローブを調製することができる。例えば、C1orf59のcDNAをプローブとして用いてもよい。必要に応じて、プローブを、色素、蛍光物質、および同位体などの適切な標識で標識してもよく、該遺伝子の発現レベルをハイブリダイズした標識の強度として検出してもよい。
【0129】
さらに、増幅に基づく検出法(例えば、RT−PCR)によりプライマーを用いて、C1orf59の転写産物を定量してもよい。そのようなプライマーは、該遺伝子の入手可能な配列情報に基づいて調製しうる。
【0130】
具体的には、本発明の方法に用いられるプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下、または低ストリンジェントな条件下で、C1orf59のmRNAとハイブリダイズする。本明細書で使用する「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブまたはプライマーがその標的配列とはハイブリダイズするが、その他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況下では異なる。より長い配列の特異的ハイブリダイゼーションは、短い配列よりも高い温度で観察される。一般に、ストリンジェントな条件の温度は、所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の融解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmとは、平衡状態で、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度における)温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される。典型的には、ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜8.3において塩濃度がナトリウムイオン約1.0 M未満、典型的にはナトリウムイオン(または他の塩)約0.01〜1.0 Mであり、かつ温度が、短いプローブまたはプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃、およびより長いプローブまたはプライマーに関しては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成してもよい。
【0131】
あるいは、C1orf59発現レベルを測定するために、翻訳産物を検出してもよい。例えば、C1orf59タンパク質の量を測定しうる。翻訳産物としてタンパク質の量を測定する方法には、タンパク質を特異的に認識する抗体を用いる免疫測定法が含まれる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。さらに、断片または改変抗体がC1orf59タンパク質への結合能を保持する限り、抗体の任意の断片または改変物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fv等)で検出してもよい。タンパク質を検出するためのこのような種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意の方法を使用して、そのような抗体およびその等価物を調製してもよい。
【0132】
C1orf59遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出する別の方法として、C1orf59タンパク質に対する抗体を用いた免疫組織化学的解析により、染色強度を観察してもよい。すなわち、この測定では、強力な染色により、該タンパク質の存在/レベルの増加が示され、それと同時にC1orf59遺伝子の高発現レベルが示される。
【0133】
がん細胞におけるC1orf59遺伝子の発現レベルは、そのレベルが、標的遺伝子の対照レベル(例えば、正常細胞におけるレベル)から例えば10%、25%、もしくは50%上昇しているか、または1.1倍超、1.5倍超、2.0倍超、5.0倍超、10.0倍超、もしくはそれ以上まで上昇している場合に、上昇していると見なすことができる。
【0134】
対照レベルは、疾患状態(がん性または非がん性)がわかっている対象から予め回収し保存しておいた試料を用いることにより、がん細胞と同時に測定することができる。加えて、治療すべきがんを有する器官の非がん性領域から得られた正常細胞を、正常対照として用いてもよい。あるいは、対照レベルは、疾患状態がわかっている対象由来の試料中のC1orf59遺伝子の予め測定された発現レベルを解析することによって得られた結果に基づいて、統計的方法により決定してもよい。さらに、対照レベルは、以前に試験された細胞に由来する発現パターンのデータベースに由来し得る。
【0135】
さらに、本発明の1つの局面に従って、対象由来の試料中のC1orf59遺伝子の発現レベルを、複数の参照試料から測定される複数の対照レベルと比較してもよい。対象由来の試料の組織型と類似の組織型に由来する参照試料から測定された対照レベルを用いることが好ましい。さらに、疾患状態が判明している集団におけるC1orf59遺伝子の発現レベルの基準値を用いることが好ましい。基準値は、当技術分野において公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値 +/− 2 S.D.または平均値 +/− 3 S.D.の範囲を、基準値として用いることができる。
【0136】
本発明との関連において、非がん性であるとわかっている生体試料から測定された対照レベルは「正常対照レベル」と称される。一方、対照レベルががん性生体試料から測定される場合、これは「がん性対照レベル」と称される。
【0137】
C1orf59遺伝子の発現レベルが正常対照レベルと比較して上昇しているか、またはがん性対照レベルと類似している/同等である場合、対象は本発明のワクチンまたは薬学的組成物による治療を受けることが好ましい。
【0138】
より具体的には、本発明は、(i)対象が治療すべきがんを有するかどうかを診断する方法、および/または(ii)がん治療のための対象を選択する方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
a)治療すべきがんを有する疑いのある対象から得られたがん細胞または組織におけるC1orf59の発現レベルを測定する段階;
b)C1orf59の発現レベルを正常対照レベルと比較する段階;
c)C1orf59の発現レベルが正常対照レベルと比較して上昇している場合に、該対象が治療すべきがんを有すると診断する段階;および
d)段階c)において対象が治療すべきがんを有すると診断される場合に、がん治療のために該対象を選択する段階。
【0139】
あるいは、そのような方法は以下の段階を含む:
a)治療すべきがんを有する疑いのある対象から得られたがん細胞または組織におけるC1orf59の発現レベルを測定する段階;
b)C1orf59の発現レベルをがん性対照レベルと比較する段階;
c)C1orf59の発現レベルががん性対照レベルと比較して類似しているか、または同等である場合に、該対象が治療すべきがんを有すると診断する段階;および
d)段階c)において対象が治療すべきがんを有すると診断される場合に、がん治療のために該対象を選択する段階。
【0140】
本発明はまた、本発明のC1orf59ポリペプチドで治療され得るがんに罹患している対象を判定するためのキットを提供し、このキットはまた、がん免疫療法の有効性を評価および/またはモニターするのにも有用であり得る。好ましくは、がんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、および小細胞肺がん(SCLC)が含まれるが、これらに限定されない。より詳細には、キットは、対象由来のがん細胞におけるC1orf59遺伝子の発現を検出するための少なくとも1つの試薬を含むことが好ましく、試薬は以下の群より選択され得る:
(a)C1orf59遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)C1orf59タンパク質を検出するための試薬;および
(c)C1orf59タンパク質の生物活性を検出するための試薬。
【0141】
C1orf59遺伝子のmRNAを検出するのに適した試薬には、C1orf59 mRNAの一部に対する相補的配列を有するオリゴヌクレオチドなどの、C1orf59 mRNAに特異的に結合するか、またはC1orf59 mRNAを特異的に同定する核酸が含まれる。このような種類のオリゴヌクレオチドは、C1orf59 mRNAに特異的なプライマーおよびプローブによって例証される。このような種類のオリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法に基づいて調製しうる。必要に応じて、C1orf59 mRNAを検出するための試薬を固体基質上に固定化しうる。さらに、C1orf59 mRNAを検出するための2つ以上の試薬をキットに含めてもよい。
【0142】
一方、C1orf59タンパク質を検出するのに適した試薬には、C1orf59タンパク質に対する抗体が含まれる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。さらに、断片または改変抗体がC1orf59タンパク質への結合能を保持する限り、抗体の任意の断片または改変物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fv等)を試薬として用いてもよい。タンパク質を検出するためのこのような種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意の方法を使用して、そのような抗体およびその等価物を調製してもよい。さらに、直接連結または間接標識技術により、抗体をシグナル発生分子で標識してもよい。標識、および抗体を標識し、その標的に対する抗体の結合を検出する方法は当技術分野において周知であり、任意の標識および方法を本発明のために使用してもよい。さらに、C1orf59タンパク質を検出するための2つ以上の試薬をキットに含めてもよい。
【0143】
キットは、前述の試薬のうちの2つ以上を含み得る。例えば、がんに罹患していないまたはがんに罹患している対象から得られた組織試料は、有用な対照試薬として役立ち得る。本発明のキットは、緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を備えた包装封入物(例えば、文書、テープ、CD−ROM等)を含む、商業上の観点および使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含んでもよい。これらの試薬等は、ラベルを貼った容器中に保持されてもよい。適切な容器には、瓶、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。
【0144】
本発明の1つの態様において、試薬がC1orf59 mRNAに対するプローブである場合には、該試薬を多孔性ストリップなどの固体基質上に固定化して、少なくとも1つの検出部位を形成してもよい。多孔性ストリップの測定または検出領域は、それぞれが核酸(プローブ)を含む複数の部位を含み得る。検査ストリップはまた、陰性および/または陽性対照用の部位を含み得る。あるいは、対照部位は、検査ストリップとは別のストリップ上に位置してもよい。任意で、異なる検出部位は異なる量の固定化核酸を含んでよい、すなわち、第1検出部位ではより大量の固定化核酸を、および以降の部位ではより少量の固定化核酸を含んでよい。試験試料を添加すると、検出可能なシグナルを呈する部位の数により、試料中に存在するC1orf59 mRNAの量の定量的指標が提供される。検出部位は、適切に検出可能な任意の形状で構成されてもよく、典型的には、検査ストリップの幅全体にわたってバーまたはドットの形状である。
【0145】
本発明のキットは、陽性対照試料またはC1orf59標準試料をさらに含み得る。本発明の陽性対照試料は、C1orf59陽性試料を回収し、次にそれらのC1orf59レベルをアッセイすることによって調製することができる。あるいは、精製C1orf59タンパク質またはポリヌクレオチドを、C1orf59を発現しない細胞に添加して、陽性試料またはC1orf59標準試料を形成してもよい。本発明において、精製C1orf59は組換えタンパク質であってよい。陽性対照試料のC1orf59レベルは、例えばカットオフ値よりも高い。
【0146】
以下の実施例は、本発明を説明するため、ならびに当業者が同じものを作製および使用するのを支援するために提供される。実施例は、本発明の範囲をいかなる形であれ他の方法で限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0147】
実施例1
材料および方法
細胞株
ヒトBリンパ芽球様細胞株であるT2(HLA−A2)、およびアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
【0148】
C1orf59由来のペプチドの候補選択
HLA−A0201分子に結合するC1orf59由来の9merおよび10merペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(www-bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind)(Parker et al., J Immunol 1994, 152(1): 163-75)、Kuzushima et al., Blood 2001, 98(6): 1872-81))を用いて予測した。これらのペプチドは、標準的な固相合成法に従ってBiosynthesis(Lewisville, Texas)によって合成され、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。ペプチドの純度(>90%)および同一性を、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって測定した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に20 mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
【0149】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞(APC)として用いて、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCをインビトロで作製した(Nakahara S et al., Cancer Res 2003 Jul 15, 63(14): 4112-8)。具体的には、Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA−A0201陽性)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、プラスチック製の組織培養皿(Becton Dickinson)への付着によって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%加熱非働化自己血清(AS)を含むAIM−V培地(Invitrogen)中で、1,000 U/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(R&D System)および1,000 U/mlのインターロイキン(IL)−4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮した集団を培養した。培養の7日後、サイトカインで誘導したDCに、AIM−V培地中で3時間、37℃にて、3μg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下で20μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製した細胞は、その細胞表面上に、CD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをX線照射(20 Gy)により不活化し、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+ T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に準備し、各ウェルは、0.5 mlのAIM−V/2% AS培地中に、1.5×10個のペプチドパルスしたDC、3×10個のCD8+ T細胞、および10 ng/mlのIL−7(R&D System)を含んだ。3日後、これらの培養物に、IL−2(CHIRON)を最終濃度20 IU/mlになるように補充した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。DCは上記と同じ方法によって毎回調製した。21日目の3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたT2細胞に対してCTLを試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0150】
CTL増殖手順
Riddell et al.(Walter EA et al., N Engl J Med 1995 Oct 19, 333(16): 1038-44;Riddell SR et al., Nat Med 1996 Feb, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を用いて、CTLを培養液中で増殖させた。全部で5×10個のCTLを、40 ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、マイトマイシンCによって不活化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、25 mlのAIM−V/5% AS培地中に懸濁した。培養開始1日後に、120 IU/mlのIL−2を該培養物に添加した。5、8、および11日目に、30 IU/mlのIL−2を含む新たなAIM−V/5% AS培地を、培養物に供給した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0151】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3個、1個、および3個のCTL/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1×10細胞/ウェルの2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30 ng/mlの抗CD3抗体、および125 U/mlのIL−2と共に、全部で150μl/ウェルの5%AS含有AIM−V培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL−2を、125 U/ml IL−2の最終濃度に到達するように培地に添加した。14日目にCTL活性を試験し、上記と同じ方法を用いてCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0152】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、インターフェロン(IFN)−γ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよびIFN−γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行った。具体的には、ペプチドパルスしたT2(1×10個/ウェル)を刺激細胞として調製した。48ウェル中の培養細胞を応答細胞として用いた。IFN−γ ELISPOTアッセイおよびIFN−γ ELISAアッセイは、製造手順の下で行った。
【0153】
標的遺伝子およびHLA−A02のいずれか一方または両方を外因的に発現する細胞の調製
標的遺伝子またはHLA−A02のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物をpCAGGSベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、標的遺伝子およびHLA−A02のヌル細胞株であるCOS7にプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)で回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5×10細胞/ウェル)として使用した。
【0154】
結果
がんにおけるC1orf59発現の増強
cDNAマイクロアレイを用いて様々ながんから得られた包括的遺伝子発現プロファイルデータから、C1orf59(GenBankアクセッション番号NM_144584;SEQ ID NO:42)発現が上昇していることが明らかになった。C1orf59発現は、対応する正常組織と比較して、膀胱がん33例中31例、乳がん70例中34例、子宮頸がん12例中11例、結腸直腸がん8例中8例、食道がん57例中25例、NSCLC 10例中2例、骨肉腫16例中8例、卵巣がん1例中1例、膵がん6例中3例、前立腺がん41例中20例、SCLC 13例中7例、および軟部組織腫瘍34例中25例において確かに上昇していた(表1)。
【0155】
(表1)対応する正常組織と比較してがん組織においてC1orf59の上方制御が認められた症例の比率

【0156】
C1orf59由来のHLA−A02結合ペプチドの予測
表2は、C1orf59のHLA−A02結合ペプチドを、結合親和性の高い順に示す。潜在的なHLA−A02結合能を有する全部で24種類のペプチドを選択し、エピトープペプチドを決定するために調べた(表2)。
【0157】
(表2)C1orf59に由来する9merおよび10merのHLA−A02結合ペプチド

開始位置は、C1orf59のN末端からのアミノ酸残基の数を示す。
結合スコアは「BIMAS」から導き出している。
【0158】
HLA−A0201拘束性のC1orf59由来の予測ペプチドによるCTLの誘導
C1orf59由来のペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN−γ ELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図1(a)〜(i))。それにより、C1orf59−A02−9−261(SEQ ID NO:1)で刺激したウェル番号#6(a)、C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)で刺激した#2および#7(b)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)で刺激した#4および#6(c)、C1orf59−A02−9−122(SEQ ID NO:7)で刺激した#3(d)、C1orf59−A02−10−240(SEQ ID NO:9)で刺激した#5(e)、C1orf59−A02−10−90(SEQ ID NO:13)で刺激した#4(f)、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)で刺激した#7(g)、C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)で刺激した#4および#8(h)、ならびにC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)で刺激した#2(i)が、対照ウェルと比較して強力なIFN−γ産生を示すことが示された。一方、表1に示した他のペプチドはHLA−A0201との結合活性を有すると考えられたにもかかわらず、これらのペプチドによる刺激によって特異的CTL活性は測定されなかった。陰性データの典型的な例として、C1orf59−A02−10−261(SEQ ID NO:8)で刺激したCTLについては、特異的なIFN−γ産生は検出されなかった(図1(j))。結果として、C1orf59由来の9種のペプチドが、強力なCTLを誘導し得るペプチドとしてスクリーニングされた。
【0159】
C1orf59特異的ペプチドに対するCTL株およびクローンの樹立
C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)で刺激したウェル番号#7、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)で刺激した#6、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)で刺激した#7、C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)で刺激した#8、およびC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)で刺激した#2中の、IFN−γ ELISPOTアッセイによって検出されるペプチド特異的CTL活性を示した細胞を増殖させ、CTL株として樹立した。これらのCTL株の各CTL活性を、IFN−γ ELISAアッセイによって測定した(図2(a)〜(e))。それにより、すべてのCTL株が、ペプチドをパルスしなかった標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN−γ産生を示すことが示された。さらに、「材料および方法」に記載した通りにCTL株から限界希釈することによりCTLクローンを樹立し、ペプチドをパルスした標的細胞に対するCTLクローンからのIFN−γ産生を、IFN−γ ELISAアッセイによって測定した(図3(a)〜(c))。C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)、C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)、およびC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)で刺激したCTLクローンから、強力なIFN−γ産生が測定された。
【0160】
C1orf59およびHLA−A0201を外因的に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
これらのペプチドに対して産生された樹立CTL株を、C1orf59およびHLA−A0201分子を内因的に発現する標的細胞を認識する能力について調べた。C1orf59の全長およびHLA−A0201分子遺伝子を両方ともトランスフェクトしたCOS7細胞(C1orf59およびHLA−A0201遺伝子を外因的に発現する標的細胞の特異的モデル)に対する特異的CTL活性を、対応するペプチドによって産生されたCTL株をエフェクター細胞として用いて試験した。C1orf59遺伝子の全長またはHLA−A0201のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。図4において、C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)(a)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)(b)、およびC1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)(c)で刺激したCTLは、C1orf59およびHLA−A0201を両方とも発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した。一方、対照に対して有意な特異的CTL活性は検出されなかった。したがってこれらのデータにより、C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)、C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)、およびC1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)がHLA−A0201分子と共に標的細胞上に天然で提示され、CTLによって認識されることが明確に実証される。これらの結果から、C1orf59に由来するこれらのペプチドが、C1orf59を発現する腫瘍を有する患者に対してがんワクチンを適用するために利用できる可能性があることが示される。
【0161】
抗原ペプチドの相同性解析
C1orf59−A02−9−261(SEQ ID NO:1)、
C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)、
C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)、
C1orf59−A02−9−122(SEQ ID NO:7)、
C1orf59−A02−10−240(SEQ ID NO:9)、
C1orf59−A02−10−90(SEQ ID NO:13)、
C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)、
C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)、および
C1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)で刺激したCTLは、有意でかつ特異的なCTL活性を示した。この結果は、C1orf59−A02−9−261(SEQ ID NO:1)、
C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)、
C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)、
C1orf59−A02−9−122(SEQ ID NO:7)、
C1orf59−A02−10−240(SEQ ID NO:9)、
C1orf59−A02−10−90(SEQ ID NO:13)、
C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)、
C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)、
およびC1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同的であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて、クエリーとしてのこれらのペプチド配列に対して相同性解析を行ったが、有意な相同性を有する配列は認められなかった。相同性解析の結果から、
C1orf59−A02−9−261(SEQ ID NO:1)、
C1orf59−A02−9−152(SEQ ID NO:3)、
C1orf59−A02−9−121(SEQ ID NO:4)、
C1orf59−A02−9−122(SEQ ID NO:7)、
C1orf59−A02−10−240(SEQ ID NO:9)、
C1orf59−A02−10−90(SEQ ID NO:13)、
C1orf59−A02−10−188(SEQ ID NO:15)、
C1orf59−A02−10−122(SEQ ID NO:17)、および
C1orf59−A02−10−196(SEQ ID NO:20)の配列は固有のものであり、したがって、本発明者らの知る限りでは、これらの分子が、ある非関連分子に対して予期しない免疫応答を引き起こす可能性はほとんどないことが示される。
【0162】
結論として、C1orf59由来の新規なHLA−A02エピトープペプチドが同定され、がん免疫療法に適用可能であることが実証された。
【0163】
実施例2
材料および方法
細胞株
HLA−A24陽性ヒトBリンパ球をエプスタイン・バーウイルスで形質転換することによって、A24リンパ芽球様細胞株(A24LCL)を樹立した。アフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7は、ATCCから購入した。
【0164】
C1orf59由来のペプチドの候補選択
HLA−A2402分子に結合するC1orf59由来の9merおよび10merペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(www-bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind)(Parker et al.(J Immunol 1994, 152(1): 163-75)、Kuzushima et al.(Blood 2001, 98(6): 1872-81))を用いて予測した。これらのペプチドを、標準的な固相合成法に従ってSigma(札幌、日本)によって合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性を、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって測定した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に20 mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
【0165】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞(APC)として用いて、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCをインビトロで作製した(Nakahara S et al., Cancer Res 2003 Jul 15, 63(14): 4112-8)。具体的には、Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA−A2402陽性)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)への付着によって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱非働化した自己血清(AS)を含むAIM−V培地(Invitrogen)中で、1000 U/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(R&D System)および1000 U/mlのインターロイキン(IL)−4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮した集団を培養した。培養7日後、サイトカインで誘導したDCに、AIM−V培地中で3時間、37℃にて、3 μg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下で20 μg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製した細胞は、その細胞表面上に、CD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCを、X線照射で不活化し(20Gy)、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+ T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に準備し;各ウェルは、0.5 mlのAIM−V/2% AS培地中に、1.5×10個のペプチドパルスしたDC、3×10個のCD8+ T細胞、および10 ng/mlのIL−7(R&D System)を含んだ。3日後、これらの培養物に、IL−2(CHIRON)を最終濃度20 IU/mlまで補充した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。該DCは上記と同じ方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたA24LCLまたはT2細胞に対してCTLを試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9; Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7; Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0166】
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995 Oct 19, 333(16): 1038-44;Riddell SR et al., Nat Med 1996 Feb, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を用いて、CTLを培養液中で増殖させた。40 ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、MMCによって不活化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、合計5×10個のCTLを25 mlのAIM−V/5% AS培地中に懸濁した。培養開始1日後に、120 IU/mlのIL−2を該培養物に添加した。5、8、および11日目に、30 IU/mlのIL−2を含む新たなAIM−V/5% AS培地を、該培養物に供給した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0167】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3個、1個、および3個のCTL/ウェルとなるように、希釈を行った。CTLを、1×10細胞/ウェルの2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30 ng/mlの抗CD3抗体、および125 U/mlのIL−2と共に、合計150μl/ウェルの5%AS含有AIM−V培地中で培養した。10日後、50μl/ウェルのIL−2を、最終濃度でIL−2が125 U/mlに到達するように培地に添加した。14日目にCTLのCTL活性を試験し、上記と同じ方法を用いてCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0168】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、インターフェロン(IFN)−γ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよびIFN−γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行った。具体的には、ペプチドパルスしたA24LCL(1×10個/ウェル)を刺激細胞として調製した。48ウェル中の培養細胞を応答細胞として使用した。IFN−γ ELISPOTアッセイおよびIFN−γ ELISAアッセイは、製造元の手順に従って行った。
【0169】
標的遺伝子およびHLA−A24のいずれか一方または両方を強制的に発現する細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA−A24のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCR増幅産物をpCAGGSベクターにクローニングした。製造業者の推奨する手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、標的遺伝子およびHLA−A24のヌル細胞株であるであるCOS7にプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクトした細胞をベルセン(Invitrogen)で回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5×10細胞/ウェル)として使用した。
【0170】
結果
C1orf59由来のHLA−A24結合ペプチドの予測
表3は、C1orf59のHLA−A24結合ペプチドを、結合親和性の高い順に示す。潜在的なHLA−A24結合能を有する全部で17種類のペプチドを選択し、エピトープペプチドを決定するために調べた(表3)。
【0171】
(表3)C1orf59に由来する9merおよび10merのHLA−A24結合ペプチド

開始位置は、C1orf59のN末端からのアミノ酸残基の数を示す。
結合スコアは「BIMAS」から導き出している。
【0172】
HLA−A2402拘束性のC1orf59由来の予測ペプチドによるCTLの誘導、およびC1orf59由来ペプチドで刺激したCTL株の樹立
C1orf59由来のペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN−γ ELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図5a〜e)。それにより、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)で刺激したウェル番号#5(a)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)で刺激した#3(b)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)で刺激した#4(c)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)で刺激した#5(d)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)で刺激した#7(e)が、対照ウェルと比較して強力なIFN−γ産生を示すことが示された。さらに、陽性ウェル中のこれらの細胞をすべて増殖させ、CTL株を樹立した。これらのCTL株のCTL活性を、IFN−γ ELISAアッセイによって測定した(図6a〜e)。それにより、すべてのCTL株が、ペプチドをパルスしなかった標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN−γ産生を示すことが示された。一方、表3に示した他のペプチドはHLA−A2402との結合活性を有する可能性があると考えられたにもかかわらず、該ペプチドによる刺激によってCTL株は樹立され得なかった(データは示さない)。結果として、これにより、C1orf59由来の5種のペプチドが、強力なCTL株を誘導し得るペプチドとしてスクリーニングされたことが示された。
【0173】
C1orf59特異的ペプチドに対するCTLクローンの樹立
「材料および方法」に記載した通りにCTL株から限界希釈することによりCTLクローンを樹立し、ペプチドをパルスした標的細胞に対するCTLクローンからのIFN−γ産生をIFN−γ ELISAアッセイによって測定した。図7において、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)で刺激したCTLクローンから、強力なIFN−γ産生が測定された。
【0174】
C1orf59およびHLA−A2402を外因的に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
これらのペプチドに対して産生された樹立CTL株を、C1orf59およびHLA−A2402分子を発現する標的細胞を認識する能力について調べた。C1orf59の全長およびHLA−A2402分子遺伝子を両方ともトランスフェクトしたCOS7細胞(C1orf59およびHLA−A2402遺伝子を発現する標的細胞の特異的モデル)に対する特異的CTL活性を、対応するペプチドによって産生されたCTL株をエフェクター細胞として用いて試験した。C1orf59遺伝子の全長またはHLA−A2402のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。図8において、SEQ ID NO:26で刺激したCTLは、C1orf59およびHLA−A2402を両方とも発現するCOS7細胞に対して強力なCTL活性を示した。一方、対照に対して有意な特異的CTL活性は検出されなかった。したがってこれらのデータにより、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)が天然で切断され、HLA−A2402分子と共に標的細胞に発現されたこと、および複合体がCTLによって認識されることが明確に実証された。これらの結果から、C1orf59に由来するこのペプチドが、C1orf59を発現する腫瘍を有する患者に対してがんワクチンを適用するために利用できる可能性があることが示される。
【0175】
抗原ペプチドの相同性解析
C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)で刺激したCTLは、有意でかつ特異的なCTL活性を示した。この結果は、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同的であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて、クエリーとしてのこれらのペプチド配列に対して相同性解析を行ったが、有意な相同性を有する配列は認められなかった。相同性解析の結果から、C1orf59−A24−9−221(SEQ ID NO:26)、C1orf59−A24−9−66(SEQ ID NO:32)、C1orf59−A24−9−200(SEQ ID NO:34)、C1orf59−A24−10−124(SEQ ID NO:40)、およびC1orf59−A24−10−363(SEQ ID NO:41)の配列は固有のものであり、したがって、本発明者らの知る限りでは、これらの分子が、ある非関連分子に対して予期しない免疫応答を引き起こす可能性はほとんどないことが示された。
【0176】
結論として、C1orf59由来の新規なHLA−A24エピトープペプチドが同定された。さらに、C1orf59のエピトープペプチドががん免疫療法に利用できる可能性があることが実証された。
【0177】
産業上の利用可能性
本発明は、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し、幅広いがんの種類に対する適用性を有する新規TAA、詳細にはC1orf59由来の新規TAAについて記載する。このようなTAAは、C1orf59過剰発現に関連した疾患、例えばがん、より詳細には膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、および小細胞肺がん(SCLC)に対するペプチドワクチンとして有用である。
【0178】
本発明はその特定の態様に関して本明細書において詳細に記載されるが、前述の説明は本質的に例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を説明することを意図していることが理解されるべきである。ルーチンな実験を通して、当業者は、その境域および境界が添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正がなされ得ることを容易に認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA抗原に結合し、かつ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導能を有する単離されたペプチドであって、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列からなるか、またはその免疫学的活性断片である単離された、ペプチド。
【請求項2】
HLA抗原がHLA−A02である、請求項1記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2記載の単離されたペプチド。
【請求項4】
ノナペプチドまたはデカペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項記載の単離されたペプチド。
【請求項5】
1個、2個、または数個のアミノ酸が挿入、置換、欠失、または付加されている、SEQ ID NO:1、3、4、7、9、13、15、17、および20からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項4記載の単離されたペプチド。
【請求項6】
以下の特徴の一方または両方を有する、請求項5記載のペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸が、ロイシンおよびメチオニンの群より選択される;ならびに
(b)C末端のアミノ酸が、バリンおよびロイシンの群より選択される。
【請求項7】
HLA抗原がHLA−A24である、請求項1記載の単離されたペプチド。
【請求項8】
SEQ ID NO:26、32、34、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または7記載の単離されたペプチド。
【請求項9】
ノナペプチドまたはデカペプチドである、請求項7または8記載の単離されたペプチド。
【請求項10】
1個、2個、または数個のアミノ酸が挿入、置換、欠失、または付加されている、SEQ ID NO:26、32、34、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項9記載の単離されたペプチド。
【請求項11】
以下の特徴の一方または両方を有する、請求項9記載のペプチド:
(a)N末端から2番目のアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびトリプトファンの群より選択される;ならびに
(b)C末端のアミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、およびメチオニンの群より選択される。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
CTLを誘導するための剤であって、請求項1〜11のいずれか一項記載の1種もしくは複数種のペプチド、または請求項12記載の1種もしくは複数種のポリヌクレオチドを含む剤。
【請求項14】
がんの治療および/もしくは予防、ならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤であって、請求項1〜11のいずれか一項記載の1種もしくは複数種のペプチド、または請求項12記載の1種もしくは複数種のポリヌクレオチドを含む、薬剤。
【請求項15】
HLA抗原がHLA−A02またはHLA−A24である対象に投与するために製剤化される、請求項14記載の薬剤。
【請求項16】
がんを治療するために製剤化される、請求項14または15記載の薬剤。
【請求項17】
CTL誘導能を有する抗原提示細胞(APC)を誘導する方法であって、以下の段階の1つを含む方法:
(a)APCを請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドとインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる段階;および
(b)請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをAPCに導入する段階。
【請求項18】
以下の段階の少なくとも1つを含む方法のいずれかによって、CTLを誘導する方法:
(a)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドとの複合体をその表面上に提示するAPCと共培養する段階;
(b)CD8陽性T細胞を、HLA抗原と請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドとの複合体をその表面上に提示するエキソソームと共培養する段階;および
(c)請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドに結合するT細胞受容体(TCR)サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をT細胞に導入する段階。
【請求項19】
HLA抗原と請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドとの複合体をその表面上に提示する単離されたAPC。
【請求項20】
請求項17記載の方法によって誘導される、請求項19記載のAPC。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチドを標的とする単離されたCTL。
【請求項22】
請求項18記載の方法によって誘導される、請求項21記載のCTL。
【請求項23】
対象においてがんに対する免疫応答を誘導する方法であって、請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチド、その免疫学的活性断片、または該ペプチドもしくは該断片をコードするポリヌクレオチドを含む剤を対象に投与することを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−513742(P2012−513742A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527091(P2011−527091)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2009/006944
【国際公開番号】WO2010/073551
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】