説明

C1q関連タンパク質

本発明は、本明細書でゼリー-ロールフォールドを含有する分泌タンパク質として、特にサイトカインのTNF(腫瘍壊死因子)様ファミリーのメンバーとして、具体的にはC1q様タンパク質として同定された、INSP163と名付けられた新規なタンパク質、並びに疾患の診断、予防及び治療におけるこのタンパク質及びそのコード遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、本明細書でゼリー-ロールフォールドを含有する分泌タンパク質として、特にサイトカインのTNF(腫瘍壊死因子)様ファミリーのメンバーとして、具体的にはc1q様タンパク質として同定された、INSP163と名付けられた新規なタンパク質、並びに疾患の診断、予防及び治療におけるこのタンパク質及びそのコード遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。
本明細書で引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体を本明細書に参考文献として組み入れる。
【0002】
背景技術
機能ゲノム学の時代が、機を熟したことから、薬物発見のプロセスは、現在根本的な変革期にある。「機能ゲノム学(functional genomics)」なる用語は、対象とするタンパク質配列に機能を帰属させるためのバイオインフォーマティクス手段を利用する方法に適用される。配列データ発生速度が、研究室の、これらタンパク配列に機能を帰属させる能力を、凌駕していることから、このような手段が、益々必要となってきている。
バイオインフォーマティクス手段の能力及び精度が高まるにつれて、これらの手段は、迅速に、生化学的な特徴付けに関する従来の技術に取って代りつつある。事実、本発明を同定するに際して使用している、最新のバイオインフォーマティクス手段は、高度に信頼することのできる、結果を出すことを可能とする。
様々な機関及び工業的な組織体が、配列データを検討している。というのは、これらが利用可能であり、しかも多大な発見が、継続的になされているからである。しかしながら、更なる遺伝子及びこれらがコードするポリペプチドを、研究の目的及び薬物発見の目的で同定し、かつ特徴付けするための、絶え間ない需要が存在する。
【0003】
緒言
分泌タンパク質
細胞外タンパク質を製造し、また分泌する細胞の能力は、多くの生物学的な過程にとって中心となるものである。酵素、成長因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル発生分子は、全て細胞によって分泌される。これは、分泌小胞と細胞膜との融合を通して行われる。全ての場合ではないが、多くの場合において、タンパク質は小胞体に導かれ、シグナルペプチドによって分泌小胞に送られる。シグナルペプチドは、細胞質から膜結合区画、例えば分泌小胞までの、ポリペプチド鎖の輸送に影響を与える、シス作用配列である。分泌小胞に送られるポリペプチドは、細胞外マトリックスに分泌されるか、あるいは細胞膜内に保持される。細胞膜内に保持される該ポリペプチドは、1又はそれ以上の貫膜ドメインを持つであろう。細胞の機能発揮において中心的な役割を演じる、分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着性分子)、プロテアーゼ、及び成長並びに分化因子である。これらタンパク質の特性に関する幾つかの説明は、以下の通りである。
【0004】
サイトカイン
サイトカインは主に白血球から分泌される成長因子ファミリーであり、かつナノモル以下の濃度で細胞プロセスを達成できる強力なレギュレータとして作用するメッセンジャータンパク質である。インターロイキン、好中球、成長因子、インターフェロン及びケモカインは、全て細胞レセプターと共に働いて細胞増殖と細胞分化を調節するサイトカインファミリーを定義する。これらの大きさは、サイトカインを体中に迅速に輸送して必要な時に分解できるようにする。広範な細胞機能、特に免疫反応及び細胞成長を制御するときのこれらの役割は、最近20年にわたる広範囲の研究によって明らかにされてきた(Boppana, S.B (1996) Indian. J. Pediatr. 63(4):447-52)。他の成長因子に関しては、サイトカインはちょうど1つの特異的組織又は腺ではなくいくつかの異なる細胞タイプによって生産され、また標的細胞上にある特異的な高アフィニティーレセプターとの相互作用によって広範な細胞に影響を及ぼすという事実によって古典的なホルモンとは異なる。
全てのサイトカイン伝達系は多面発現性(1つのメッセンジャー生成多面作用)と冗長性の両方を示す(各作用は1つより多くのメッセンジャーによって生じる)(Tringali, G. et al., (2000) Therapie. 55(1):171-5; Tessarollo, L. (1998) Cytokine Growth Factor Rev. 9(2):125-137)。細胞に及ぼす個々のサイトカインの作用は、その濃度、他のサイトカインの濃度、サイトカインの一時的配列、及び細胞の内部状態(細胞周期、隣接細胞の存在、癌性)によっても左右されうる。
サイトカインは典型的には小タンパク質(200未満のアミノ酸)であるが、翻訳後にスプライシングされる、より大きな前駆体から形成されることが多い。mRNA選択的スプライシング経路に加え、これが各サイトカイン(それぞれ生物学的効果は実質的に異なりうる)の変異体の広いスペクトルを与える。多くのサイトカインの膜及び細胞外マトリックス関連形態も単離されている(Okada-Ban, M. et al., (2000) Int. J. Biochem. Cell Biol. 32(3):263-267; Atamas, S.P. (1997) Life Sci. 61(12):1105-1112)。
サイトカインをファミリーに分類できるが、大部分は無関係である。配列類似性が非常に低いことが多いので、分類は通常二次構造組成に基づく。ファミリーは原型メンバーにちなんで命名され、例えばIFN様、IL-2様、IL-1様、IL-6様及びTNF様である(Zlotnik, A. et al., (2000) Immunity. 12(2):121-127)。
研究は、サイトカインが免疫反応調節(Nishihira, J. (1998) Int. J. Mol. Med. 2(1):17-28)、炎症(Kim, P.K. et al., (2000) Surg. Clin. North. Am. 80(3):885-894)、創傷治癒(Clark, R.A. (1991) J. Cell Biochem. 46(1):1-2)、胚形成と胚発生、及びアポトーシス(Flad, H.D. et al., (1999) Pathobiology. 67(5-6):291-293)のような多細胞生物における多くの重要な反応に関与することを示した。HIV及びカポジ肉腫関連ウイルスのような病原生物(ウイルスと細菌の両方)は抗-サイトカイン因子及びサイトカイン類似体をコードしており、病原生物がサイトカインレセプターと相互作用して体の免疫反応を制御できるようにしている(Sozzani, S. et al., (2000) Pharm. Acta. Helv. 74(2-3):305-312; Aoki, Y. et al., (2000) J. Hematother. Stem Cell Res. 9(2):137-145)。ウイルス的にコード化されたサイトカインであるウイロカイン(virokine)は、宿主免疫系を模倣して滅亡させる能力によるウイルスの病原性に必要であることが分かっている。
ウイルス的にコード化されたサイトカインであるマクロファージ阻害タンパク質-IIは、Th2型細胞の選択的加入を媒介して細胞毒性免疫反応を回避できることが分かっている(Weber KS et al., (2001), Eur J Immunol. 2001 31(8):2458-66)。これらデータは、炎症細胞加入をTh1型からTh2型反応に方向づけることによって細胞毒性反応からの回避を容易にするときのvMIP-IIの免疫調節役割の証拠を与える。従って、サイトカインを用いて、Th1型免疫反応の過剰刺激に関係する疾患、例えば過敏性大腸症候群を和らげることができる。別の研究で、Kawamoto Sらは(Int Immunol. 2001 13(5):685-94)、vIL-10が自己免疫性糖尿病の治療で細胞性IL-10よりずっと優れることを示す結果を提供した。これらの結果は、ウイルス的にコード化されたサイトカインはウイルスクリアランスのみを越える治療利益を有する可能性があることを示している。
サイトカインの臨床用途は、免疫系のレギュレータとしての役割に集中しており(Rodriguez, F.H. et al., (2000) Curr. Pharm. Des. 6(6):665-680)、例えば甲状腺癌に対する反応を促進する(Schmutzler, C. et al., (2000) 143(1):15-24)。細胞の成長と分化のこれらサイトカインの制御はサイトカイン抗癌標的をも生じさせた(Lazar-Molnar, E. et al., (2000) Cytokine. 12(6):547-554; Gado, K. (2000) 24(4):195-209)。サイトカイン及びサイトカインレセプターの新規な突然変異は疾患抵抗性を克服する場合があることが分かっている(van Deventer, S.J. et al., (2000) Intensive Care Med. 26 (Suppl 1):S98:S102)。活性を調節して副作用の可能性を排除するために合成サイトカイン(ムテイン(mutein))を創造することも研究の重要な道だった(Shanafelt, A.B. et al., (1998) 95(16):9454-9458)。
腫瘍壊死因子(TNF)α及びβはサイトカインの例であり、TNFレセプターを介して作用して多くの生体プロセス(感染及びショックや炎症性疾患の誘発に対する防御を含む)を調節する。TNF分子は“TNFリガンド”スーパーファミリーに属し、そのレセプター又は反-リガンド、“TNFレセプター”スーパーファミリーと一緒に作用する。従来、TNFリガンドスーパーファミリーの多くのメンバーが同定されており、TNFレセプタースーパーファミリーのいくつかのメンバーが特徴づけされている。
これらリガンドには、TNF-α、リンホトキシン-α(LT-α、TNF-βとしても知られる)、LT-β(複合体ヘテロトリマーLT-α2-βに見られる)、FasL、CD40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、OX40L及び神経成長因子(NGF)が包含される。TNFレセプターのスーパーファミリーとして、p55TNFレセプター、p75TNFレセプター、TNFレセプター関連タンパク質、FAS抗原又はAPO-1、CD40、CD27、CD30、4-1BB、OX40、低アフィニティーp75及びNGF-レセプターが挙げられる(Meager, A., Biologicals 22:291-295 (1994))。
TNFリガンドスーパーファミリーの多くのメンバーは活性化T-細胞によって発現され、細胞の個体発生と機能を強調する他の細胞型とT-細胞の相互作用に必要であることを暗示している(Meager, A., [上記])。
TNFレセプターファミリーの数メンバーの本質的機能への考慮すべき洞察はこれらタンパク質の発現を撤廃する突然変異体の同定及び創造から得られた。例えば、Fas抗原及びそのリガンド中に天然に存在する突然変異がリンパ滲出性疾患を引き起こす(Watanabe-Fukunaga. et al., Nature 356:314 (1992))。これはおそらくプログラム細胞死の失敗を反映しているだろう。CD40リガンドの突然変異は、血漿中の高レベルの免疫グロブリンMと低レベルの免疫グロブリンGを特徴とするX染色体免疫不全状態を生じさせ、不完全なT-細胞依存性B-細胞活性化を示している(Allen et al., Science 259:990 (1993))。低アフィニティー神経成長因子レセプターの標的突然変異は、末梢構造の不完全な感覚革新を特徴とする障害を引き起こす(Lee et al., Cell 69:737 (1992))。
【0005】
C1q
C1qは、血清補体系を活性化するC1酵素複合体のサブユニットである。C1qは、N-末端の非らせん部、三重らせん(膠原性)部及びC-末端の球状ヘッド(c1qドメインと呼ばれる)から成る共通構造を共有する鎖A、B及びCの9個のジスルフィド連結ダイマーで構成されている(Smith et al. 1994 Biochem. J. 301:249-256)。c1q及びTNFスーパーファミリーのメンバーは宿主側防御、炎症、アポトーシス、自己免疫、細胞分化、器官形成、冬眠及びインスリン抵抗性肥満に関与している。c1qファミリーでは5つの厳密保存残基が同定されている(Kishore et al. Trends in Immunology 2004. 25(10):551-561)。各c1qドメインは、2つの5本鎖β-シート(A'、A、H、C、F)及び(B'、B、G、D、E)(それぞれ逆平行鎖で構成される)から成るゼリー-ロールトポロジーを有する10本鎖β-サンドイッチフォールドを示す。c1qタンパク質ファミリー内の5つの各保存残基はc1qドメインの疎水性コアに属する。β鎖を連結している有意な可変性を示すループとは対照的に、β鎖は異なる(配向とサイズに関して)c1qドメイン内で強く保存されている。c1qドメイン内には2つのよく保存された領域があり、そのドメインの最初の半分には芳香族モチーフがあり、他の保存領域はC-末端の先端近傍にある。
C1q及びTNFファミリーのタンパク質は同様の遺伝子構造を有し、そのc1q又はTHDドメインはそれぞれ1つのエクソン内にコードされ、両ファミリーのイントロンはそれぞれのN-末端コラーゲン又は柄領域に制限されている。ゼリー-ロール構造は、植物組織及び哺乳類ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス及びポリオウイルスを含む)のキャプシドタンパク質と著しく類似している。
【0006】
c1q含有タンパク質として以下のものが挙げられる。
−補体c1q亜成分鎖A、B及びC。C1の効率的な活性化は、c1qの球状ヘッドが免疫複合体中に存在するIgG又はIgM抗体のFc部と相互作用すると起こる。
−角膜内皮細胞の基底膜の主成分である、脊椎動物のVIII型短鎖コラーゲン。これは、短いN-末端と、より大きいC-末端(c1qドメインを含む)の間にある三重らせんドメインで構成されている。
−VIII型コラーゲンと同様の構造を有する、脊椎動物のX型コラーゲン。これは肥大性軟骨細胞の産物である。
−ブルーギル(Bluegill)の内耳特異性構造タンパク質。この短鎖コラーゲンは耳石膜内に微細構造マトリックスを形成する。
−シマリスの冬眠関連血漿タンパク質HP-20、HP-25及びHP-27。これらタンパク質は特に冬眠中の血液から消失する。これらタンパク質は、N-末端及びC-末端のc1qドメインの近傍にコラーゲン様ドメインを含む。
−プルキンエ(Purkinje)細胞のシナプス後構造内にあるヒト前小脳。おそらく膜結合型。小脳はシナプス活性に関与する。
−ラットの前小脳様糖タンパク質、おそらく膜タンパク質。c1qドメインはC-末端の細胞外先端にある。
−ヒトの内皮細胞マルチメリン(multimerin)(ECM)、血小板因子V/VA用キャリヤータンパク質。
−脊椎動物の30Kd脂肪細胞補体関連タンパク質(ACRP30)、ApM1又はAdipoQとしても知られる。
【0007】
c1qは古典的経路駆動生得免疫とIgG又はIgM媒介獲得免疫との連鎖に相当する(c1q及び腫瘍壊死因子スーパーファミリーはKishore et al. 2004 Trends in Immunology. 25(10):551-561によって精査されている)。IgG又はIgM含有免疫複合体がc1qドメインに結合し、コラーゲン領域の構造変化を誘導する。c1qは、抗菌防御、アポトーシス細胞のクリアランスによる免疫耐性の維持、細菌の食作用、レトロウイルスの中和、細胞接着、並びに特定のレトロウイルスのエンベロープタンパク質、β-アミロイド原繊維、リポ多糖(LPS)、グラム陰性菌由来のポリン、リン脂質(PL)、アポトーシス細胞及びいくつかの急性期炎症反応因子(ペントラキシンを含む)のようなリガンドの過剰の作用による樹枝状(dentritic)細胞(DC)、B細胞及び線維芽細胞の調節に関与する(Kishore et al.)。ほとんど全てのリガンドはヘテロトリマーc1qドメイン(約140残基長)によって認識される。
c1qドメインは他の種々のタンパク質と相互作用する。他のタンパク質として以下のものが挙げられる。
・C-反応性タンパク質(CRP)(主要な急性期炎症反応因子)。CRPはクロマチンに結合し、壊死細胞から染色体材料を取り除くときに主要な役割を果たしうる。
・補体活性化をもたらすSAP。
・アポトーシス細胞における補体活性化を媒介するPTX3。
・組織内の古典的経路の活性化を調節するデコリン。
・脂質A、LPS及びポリン経由のグラム陰性細菌タンパク質。OmpK36(肺炎桿菌由来)はc1qへの結合について直接IgGと競合する。
・ウイルスタンパク質(エンベロープ型又は非エンベロープ型)様のエンベロープタンパク質(HIV-1のgp41、HTLV-1のgp21、MuLVのp15e)。ウイルスに結合しているc1qドメインはウイルス中和をもたすだろう。c1q-gp41相互作用は、ウイルス溶解の代わりに補体-レセプター-支持細胞の感染を増強させる。HTLV-Iペプチドとc1qドメインの相互作用はシンチウム形成に必要な融合プロセスに作用するだろう。
・アポトーシス細胞上のペントラキシン。c1q欠損は、アポトーシス細胞の障害性クリアランスの結果としてSLEを引き起こしうる。自己抗原を含有するアポトーシスケラチノサイト及び末梢血単層の表面小疱はSLEで標的にされる。免疫沈着のある糸球体腎炎を有するc1qノックアウトマウスでは、疾患糸球体中に多数のアポトーシス体も存在する。c1qは、アポトーシス細胞の効率的な認識と生理的クリアランスでオプソニンとして働くことによって自己免疫を防御し、それゆえに免疫耐性を維持するのに必要だろう。
・β-アミロイド及び家族性痴呆ペプチド(N-末端領域に対する)。古典的経路活性化は神経突起プラーク内の炎症をもたらす。
・カルジオリピン及び他のアニオン性PL。アポトーシス細胞及び壊死細胞のクリアランスでの役割の可能性を示唆する。
【0008】
c1q亜成分及びVIII型とX型コラーゲンのC-末端球状ドメインは三重らせんの正確なフォールディング及びアラインメントとタンパク質-タンパク質認識の両事象で重要である。X型コラーゲンでは、該ドメインはタンパク質の正確な構築の開始と維持で重要であると示唆されている(Kwan et al. 1991 J. Cell Biol.. 114:597-604)。アジポネクチンでは、c1qドメインは全長アジポネクチンより高血糖症及び高インスリン血症をずっと軽減することができる。アジポネクチンは、成熟マクロファージの食作用活性とそのTNF-αのLPS-誘導生産を有意に阻害することによって成熟マクロファージ機能を抑制することが示されており、炎症を分散させうるだろう。アジポネクチンは、肥満マウスの筋肉と肝臓内のトリグリセリド含量を減らすことによって肥満に伴うインスリン抵抗性を逆転させることも分かっている。アジポネクチンの減少は、肥満及び2型糖尿病のマウスモデルでのインスリン抵抗性の発生に関係している。成長板異常と関係ある穏やかな常染色体障害(“シュミット型骨幹端軟骨異形成”と呼ばれる)は、コラーゲンX内のc1qドメインのミスセンス突然変異と関係しており、これが疎水性コアを破壊してトリマー構築を混乱させる。CTRP5のc1qドメイン内での特異的な突然変異は遅発性網膜変性症に関係している。
【0009】
コラーゲンドメインは、結合組織構造の形成に関与している、通常細胞外構造タンパク質であるコラーゲン内で見られる。このドメインは、三重らせんを形成するG-X-Yリピートを20コピー含む。このリピートの第1位はグリセリンであり、第2及び第3位はいずれの残基でもありうるが、プロリン及びヒドロキシプロリンであることが多い。コラーゲンはプロリンヒドロラーゼによって翻訳後修飾されてヒドロキシプロリン残基を形成する。欠失ヒドロキシル化は壊血病の原因である。コラーゲンスーパーファミリーには結合組織構造に関与しないメンバーもあるが、同一の三重らせん構造を共有する。ヒト線維芽細胞に及ぼすc1qの抗増殖(G1有糸分裂静止)及びアポトーシス促進効果は、カルレティキュリン-CD91複合体を解してコラーゲン領域によって媒介される。この相互作用が、マクロファージ内での炎症誘発性サイトカイン及びケモカインのp38 MARK活性化、NF-κB活性及び生産を促進する。
従って、c1qドメイン含有タンパク質の活性化を変えることが疾患表現型を変える手段を提供し、これらタンパク質は上述した疾患のみならず他の疾患状態の治療の開発で役割を果たし、或いは有用でありうるので、それ自体このタイプの新規タンパク質の同定が大いに関係がある。
【0010】
発明の開示
本発明は、上記INSP163ポリペプチドが、ゼリー-ロールフォールド含有タンパク質ファミリーのメンバーであり、特にTNF様タンパク質ファミリーのメンバーであり、具体的にはc1q関連タンパク質であるという発見に基づくものである。
本発明の第一の局面に係る一態様では、以下のようなポリペプチドを提供する:
(i) 配列番号2(選択的成熟INSP163)、配列番号34(成熟INSP163)、配列番号4(INSP163-A)、配列番号6(INSP163-B)、配列番号8(INSP163-C)、配列番号10(INSP163-D)、配列番号12(INSP163-E)、及び/又は配列番号14(INSP163-F)から成るポリペプチド、
(ii) 生物学的活性ポリペプチドとして機能し、及び/又は前記(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を持つ、該ポリペプチドのフラグメントであるポリペプチド、又は
(iii) 前記(i)又は(ii)と機能的に等価なポリペプチド。
好ましくは、本発明の該第一局面に従うポリペプチドは、c1qドメイン及びコラーゲンドメイン含有ポリペプチドである。
【0011】
配列番号2に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「選択的成熟INSP163ポリペプチド」と呼ぶ。配列番号34に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「成熟INSP163ポリペプチド」と呼ぶ。配列番号4に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Aポリペプチド」と呼ぶ。配列番号6に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Bポリペプチド」と呼ぶ。配列番号8に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Cポリペプチド」と呼ぶ。配列番号10に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Dポリペプチド」と呼ぶ。配列番号12に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Eポリペプチド」と呼ぶ。配列番号14に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163-Fポリペプチド」と呼ぶ。
出願人は、この理論に拘泥されたくないが、成熟INSP163ポリペプチドは、25アミノ酸長であるシグナルポリペプチドをN-末端にさらに含むと推定される。
さらに、選択的成熟INSP163ポリペプチドは、20アミノ酸長であるシグナルポリペプチドをN-末端にさらに含むと推定される
それぞれ推定されるシグナル配列を有する全長の成熟INSP163ポリペプチド及び選択的成熟INSP163ポリペプチドの配列は配列番号30に記載される。
配列番号30に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「INSP163ポリペプチド」と呼ぶ。
【0012】
本発明の第一局面のポリペプチドは、さらにヒスチジンタグを含みうる。好ましくは、ヒスチジンタグは該ポリペプチドのC-末端で見られる。好ましくは、ヒスチジンタグは1〜10のヒスチジン残基(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の残基)を含み、さらに好ましくは、ヒスチジンタグは6の残基を含む。従って、好ましいポリペプチドは、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号32及び/又は配列番号36に記載の配列を含むポリペプチドである。
配列番号16に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグ選択的成熟INSP163ポリペプチド」と呼ぶ。配列番号18に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Aポリペプチド」と呼ぶ。配列番号20に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Bポリペプチド」と呼ぶ。配列番号22に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Cポリペプチド」と呼ぶ。配列番号24に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Dポリペプチド」と呼ぶ。配列番号26に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Eポリペプチド」と呼ぶ。配列番号28に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163-Fポリペプチド」と呼ぶ。配列番号32に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグINSP163ポリペプチド」と呼ぶ。配列番号36に記載の配列を持つポリペプチドは、以後「ヒスチジンタグ成熟INSP163ポリペプチド」と呼ぶ。
ここで使用する「INSP163ポリペプチド」なる用語は、選択的成熟INSP163ポリペプチド、成熟INSP163ポリペプチド、INSP163-Aポリペプチド、INSP163-Bポリペプチド、INSP163-Cポリペプチド、INSP163-Dポリペプチド、INSP163-Eポリペプチド、INSP163-Fポリペプチド、INSP163ポリペプチド、ヒスチジンタグ選択的成熟INSP163ポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Aポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Bポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Cポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Dポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Eポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163-Fポリペプチド、ヒスチジンタグINSP163ポリペプチド及びヒスチジンタグ成熟INSP163ポリペプチドを包含する。
【0013】
好ましくは、本発明の上記局面のいずれか1つのポリペプチドは、TNF様タンパク質ファミリーのメンバーとして、さらに好ましくはc1qドメイン含有タンパク質及び/又はコラーゲンドメイン含有タンパク質として機能する。
「TNF様タンパク質ファミリーのメンバーとして機能する」とう表現により、該TNF様タンパク質ファミリーのポリペプチドに保存されている特徴として同定できるアミノ酸配列又は構造的特徴を含むポリペプチドを指す。このようなサイトカインの臨床用途として免疫系のレギュレータとしての使用、細胞の成長と分化及びアポトーシスの制御が挙げられる。
「c1qドメイン含有タンパク質として機能する」という表現により、該c1qドメイン含有タンパク質ファミリーのポリペプチドに保存されている特徴として同定できるアミノ酸配列又は構造的特徴を含むポリペプチドを指す。特に、該ポリペプチドのジスルフィド結合の形成を可能にする特異的位置にシステイン残基が存在することを指す。c1q自体と同様に、INSP163ポリペプチドは免疫機能を持つことがあり、該ポリペプチドは細胞外マトリックスの一部としても機能しうる。このタンパク質は骨又は軟骨の形成及び修復でも機能し、あるいはエネルギー代謝でも役割を有しうる。
「コラーゲンドメイン含有タンパク質として機能する」という表現により、該コラーゲンドメイン含有タンパク質ファミリーのポリペプチドに保存されている特徴として同定できるアミノ酸配列又は構造的特徴を含むポリペプチドを指す。特に、該ポリペプチドのジスルフィド結合の形成を可能にする特異的位置にシステイン残基が存在することを指す。さらに、このようなポリペプチドは抗増殖作用及び/又はアポトーシス促進作用を有しうる。
【0014】
INSP163は、内耳特異性構造タンパク質(SwissProt Acc. Code: COLE_LEPMA; Davis et al. 1995 Science 267:1031-1034)、魚耳石のオトリン-1(otolin-1)(SwissProt Acc. Code: OTO1_ONCKE; Murayama et al. Eur. J. Biochem 2002. 269:688-696)、異なるタイプのヒトα1、α2及びα4鎖(例えばCOL8A1, SwissProt Acc. Code: CA18_HUMAN and COL8A2, SwissProt Acc. Code: CA28_HUMAN; Muragaki et al. 1991 Eur. J. Biochem. 197:615-622; Ota et al. Nat. Genet. 2004. 36:40-45)、コラーゲンα1(X)鎖前駆体(COL10A1, SwissProt Acc. Code: CA1A_HUMAN; Thomas et al. 1991 Biochem. J. 280:617-623)、アジポネクチン(SwissProt Acc. Code: APM1_HUMAN)、補体c1q腫瘍壊死因子関連タンパク質3(CORS26; SwissProt Acc. Code: CQT3_HUMAN)、補体c1q腫瘍壊死因子関連タンパク質5(UNQ303; SwissProt Acc. Code: CQT5_HUMAN)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13B(TNFSF-13B、BAFF、TALL-1、BLyS、THANK、zTNF-4とも呼ばれる; SwissProt Acc. Code: T13B_HUMAN)、エクトディスプラシンA(Ectodysplasin A)(EDA, SwissProt Acc. Code: EDA_HUMAN)、セレベリン2(cerebellin 2)(CBLN2, SwissProt Acc. Code: CBN2_HUMAN)及びハツカネズミの18日の胚全体cDNA(SwissProt Acc. Code: Q9CQI8)と構造的に関連することが分かっている(図4)。
【0015】
内耳特異性構造タンパク質は、おそらく球形嚢上皮外周の特殊分泌支持細胞の耳石膜内に微細構造マトリックスを形成するだろう。オトリン-1は耳石の内部枠組みの一部であり、そこで核形成部位を供給して石灰化を促しうる(耳石、耳石膜のゼラチン層、及び移行上皮の一部に局在化されるている球形嚢内で選択的に発現される)。COL8A1とCOL8A2は角膜内皮細胞のデスメー膜の主成分であり、一緒にホモトリマー、又はヘテロトリマー会合体を形成する(マウスの肺及び乳腫瘍で組織発現)。COL8A2でのミスセンス突然変異は、2種の型の角膜内皮ジストロフィーを引き起こす(Biswas et al. 2001 Hum. Mol. Genet. 10:2415-2423)。COL8A2の欠乏は後部多形性角膜ジストロフィーの原因である。PPCDは角膜内皮の緩徐な進行性遺伝障害であり、通常、成年期に程度の異なる視覚機能障害をもたらす。PPCDは、通常、常染色体優性形質として遺伝する。COL8A2の欠乏はフックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)の原因でもある。FECDは、先進国の角膜内皮の最も一般的な主要障害である。角膜の代償不全から疼痛性視覚損失の症候が生じる。兆候は寿命が進む40年から存在しうる。典型的に、デスメー膜からの限局性のいぼ様滴粒状産物が中心角膜に発生し、異常なコラーゲン沈着によってデスメー膜が厚くなる。FECDは、通常散発性であるが、常染色体優性遺伝を示す家族性の高度に貫通刺胞型も確認されている。さらに、VIII型コラーゲン遺伝子の発現上昇はApoE欠損マウスのアテローム斑で見いだされており、アテローム性動脈硬化症でのCOL8A鎖の役割を示唆している(Yasuda et al. 2001 Ann N Y Acad Sci. 947:312-5)。COL8A1の過剰発現は胃腸間質性腫瘍で検出された(Koon et al. 2004 Gut. 53(2):235-40)。X型コラーゲン(ホモトリマーサブユニット)は肥大性軟骨細胞の産物であり、ヒアリン軟骨の推定上の鉱化ゾーンに局在化している。COL10A1の欠乏はシュミット型骨幹端軟骨異形成の原因である(SMCD; Wallis et al. 1994 Am. J. Hum. Genet. 54:169-178)。SMCDは骨格の優性遺伝障害である。その表現型の基本的特徴は穏やかな低身長、コアクスバラ(coax vara)及び動揺性歩行である。X線撮影は通常肋骨の硬化、骨幹端の張出し、及び特に膝の幅広の不正成長板を示す。COL10A1の欠乏は、日本型脊椎骨幹端異形成症(SMD)の原因でもある。SMDは、脊椎の椎体及び管状骨の骨幹端の変形を特徴とする異質群の遺伝性骨格異形成症を含む。アジポネクチン(ACDC遺伝子)は、造血及び免疫系で重要なネガティブレギュレータである。アジポネクチンは、その阻害機能によって終了炎症反応に関与しうる。アジポネクチンは、cAMP依存経路による内皮NF-κBシグナル発生及び内皮接着分子のTNF-α誘導発現を阻害する。アジポネクチンは、脂肪代謝とインスリン感受性の制御に関与する。アジポネクチンは脂肪細胞によって排他的に合成され、血漿中に分泌される。ACDCの欠乏はアジポネクチン欠損症の原因である。その結果は非常に低濃度の血漿アジポネクチンである。アジポネクチン血漿レベルの低下は肥満性インスリン抵抗性及び2型糖尿病に関係する。CORS-26は関節炎、骨又は骨格疾患、骨肉腫、軟骨芽細胞腫及び巨細胞腫瘍に関与しているだろう(Schaffler et al. 2003 Biochim Biophys Acta. 1628(1):64-70. 2003 Biochim Biophys Acta. 1630(2-3):123-9)。補体c1q腫瘍壊死因子関連タンパク質5のc1qドメインにおける突然変異は、遅発性網膜変性(L-ORD)、年齢関連性黄斑変性症(AMD)及び/又は失明につながりうる(Hayward et al. 2003 Hum Mol Genet. 12(20):2657-67)。
【0016】
BAFF及びアポトーシスリガンドAPRIL(TALL-2、TRDL-1及びTNFSF-13とも言われる)はEDA及びTWEAKを含むTHDファミリーの亜群に属する。この亜科は細胞の生存や分化のような機能特性、及びタンパク質の柄領域内のフューリンコンバターゼ切断部位及び分子内のE鎖とF鎖のジスルフィド結合連結の存在等の構造的特徴を共有する(Mackay and Ambrose, 2003 Cytokine Growth Factor Rev. 14(3-4):311-24)。可溶性BAFFは血清中で検出され(フューリン切断部位RNKR↓)及びAPRILは可溶性分子として優勢に分泌される(フューリン切断部位RKRR↓)。切断部位はINSP163でも検出されている。BAFFはB細胞の生存、成熟及び活性化(B細胞免疫反応に関与)、T細胞活性化、及びIg-分泌細胞の維持に関与しており、体液性反応の促進及び免疫耐性の維持における重大な役割を示唆している。BAFFは以下の疾患で役割を有する。
1.自己免疫疾患及び炎症。BAFFはリウマチ性関節炎(RA)、骨関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、及び多発性硬化症に関係している(Thangarajh et al. 2004 J Neuroimmunol. 152(1-2):183-90)。
2.癌。BAFFは、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL))、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、白血病(慢性リンパ球白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL))、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLCL)、B細胞過形成に関係している。
3.感染症。BAFFはHIV、連鎖球菌性肺炎及び回虫感染症に関係している。
【0017】
BAFFの拮抗作用は、例えば可溶性形態のBAFF又はBAFFを標的とした抗体によって、自己免疫疾患の有用な治療アプローチでありうる。WO00/40716は、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、多発性硬化症、又はリウマチ性関節炎)、喘息、気管支炎又は気腫、腎不全(糸球体腎炎、血管炎、腎炎又は腎盂腎炎)、腎性新生物、多発性骨髄腫、リンパ腫、軽鎖神経障害又はアミロイド症、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、糖尿病又はクローン病及び感染症(関節痛、腫脹、貧血、又は敗血症性ショック)の治療に有用な、ztnf4を阻害する可溶性分泌型TNFレセプターポリペプチドを開示している。自己免疫疾患の治療のための、融合タンパク質様の膜貫通アクチベータ及びカルシウムモジュレータ並びにサイクロフィリンリガンドインテラクター(interactor)(TACI)-Ig又はB細胞成熟Ag(BCMA)-Igの単独又は他の融合タンパク質(例えばCTLA4-Ig)あるいは可溶性TACI又はBCMAの使用についても提言されている(例えばRamanujam et al. 2004 J Immunol. 173(5):3524-34; US200301033986)。WO04/039841は、リウマチ性関節炎、乾癬及びクローン病の治療に有用なトリマーサイトカイン(例えばBAFF)と結合可能なトリマー結合ユニットを開示している。WO04/024076は、免疫関連疾患、例えばエリテマトーデス、リウマチ性関節炎、骨関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、特発性炎症性筋障害、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、糖尿病、免疫媒介腎疾患、中枢神経系と末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄多発神経障害、肝胆道系疾患、例えば感染性、自己免疫性慢性進行性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン感受性腸疾患、及びウィップル病、自己免疫性若しくは免疫媒介皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形紅斑及び接触皮膚炎を含む)、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹、肺の免疫疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性間質性肺炎、移植関連疾患(移植片拒絶反応及び移植片対宿主病を含む)免疫関連疾患の診断と治療用タンパク質(例えばPRO738=BAFF)含有組成物を開示している。WO03/016468は、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、サルコイドーシス、感染症、寄生生物症、女性の不妊症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、シェーグレン症候群、及び癌の治療用のTNFSF13bに特異的に結合するヒトモノクロナール抗体を開示している。
【0018】
エクトディスラピン(ectodyslapin)Aは外胚葉の分化で重要な役割を果たし、かつ外胚葉の異形成に関与している(例えばX-連鎖発汗低下性外胚葉異形成症(HED)。Chang and Chaudhary. 2004 Protein Expr Purif. 37(1):162-9)。
副腎皮質腫瘍及び副腎皮質で産生される腫瘍はセレベリン(cerebellin)のようなペプチドを生成して分泌する(Takahashi et al. 2002 Exp Clin Endocrinol Diabetes. 110(8):373-80)。これらペプチドは、ステロイドホルモン分泌の調節と、オートクリン及び/又はパラクリン因子として副腎皮質細胞の増殖に関与する。高橋らは、副腎皮質で産生されるペプチドが副腎皮質の炎症性疾患、虚血性疾患又は新生物疾患の病理学に関与すると述べている。セレベリンは、副腎腫瘍、ガングリオ神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫及びコルチゾール産生性副腎皮質アデノーマで発現されることが分かっている(Satoh et al. 1997 J Endocrinol. 154(1):27-34)。セレベリンは脊髄小脳変性に関連する疾患、すなわちオリーブ核小脳萎縮(OPCA)及びシャイ-ドレーガー症候群のような小脳疾患にも関与している(Mizuno et al. No To Shinkei. 1995 47(11):1069-74); Mizuno et al. 1995 Brain Res. 686(1):115-8)。
【0019】
第二局面では、本発明は本発明の第一局面のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
好ましくは、精製核酸分子は、配列番号1(選択的成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号3(INSP163-Aポリペプチドをコードする)、配列番号5(INSP163-Bポリペプチドをコードする)、配列番号7(INSP163-Cポリペプチドをコードする)、配列番号9(INSP163-Dポリペプチドをコードする)、配列番号11(INSP163-Eポリペプチドをコードする)、配列番号13(INSP163-Fポリペプチドをコードする)、配列番号15(ヒスチジンタグ選択的成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号17(ヒスチジンタグINSP163-Aポリペプチドをコードする)、配列番号19(ヒスチジンタグINSP163-Bポリペプチドをコードする)、配列番号21(ヒスチジンタグINSP163-Cポリペプチドをコードする)、配列番号23(ヒスチジンタグINSP163-Dポリペプチドをコードする)、配列番号25(ヒスチジンタグINSP163-Eポリペプチドをコードする)、配列番号27(ヒスチジンタグINSP163-Fポリペプチドをコードする)、配列番号29(INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号31(ヒスチジンタグINSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号33(成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号35(ヒスチジンタグ成熟INSP163ポリペプチドをコードする)に記載の核酸配列で構成される。
【0020】
さらに、本発明は、精製核酸分子が配列番号1(選択的成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号3(INSP163-Aポリペプチドをコードする)、配列番号5(INSP163-Bポリペプチドをコードする)、配列番号7(INSP163-Cポリペプチドをコードする)、配列番号9(INSP163-Dポリペプチドをコードする)、配列番号11(INSP163-Eポリペプチドをコードする)、配列番号13(INSP163-Fポリペプチドをコードする)、配列番号15(ヒスチジンタグ選択的成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号17(ヒスチジンタグINSP163-Aポリペプチドをコードする)、配列番号19(ヒスチジンタグINSP163-Bポリペプチドをコードする)、配列番号21(ヒスチジンタグINSP163-Cポリペプチドをコードする)、配列番号23(ヒスチジンタグINSP163-Dポリペプチドをコードする)、配列番号25(ヒスチジンタグINSP163-Eポリペプチドをコードする)、配列番号27(ヒスチジンタグINSP163-Fポリペプチドをコードする)、配列番号29(INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号31(ヒスチジンタグINSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号33(成熟INSP163ポリペプチドをコードする)、配列番号35(ヒスチジンタグ成熟INSP163ポリペプチドをコードする)に記載の核酸配列から成る精製核酸分子を提供する。
【0021】
第三局面では、本発明は、高いストリンジェンシー条件下で本発明の第二局面の核酸分子とハイブリダイズする精製核酸分子を提供する。
第四局面では、本発明は、本発明の第二又は第三局面の核酸分子を含む、発現ベクター等のベクターを提供する。
第五局面では、本発明は、本発明の第四局面のベクターによって形質転換されている、宿主細胞を提供する。
第六局面では、本発明は、TNF様タンパク質ファミリーのタンパク質メンバー、具体的には本発明の第一局面のc1q関連タンパク質に特異的に結合するリガンドを提供する。好ましくは、該リガンドは、TNF様タンパク質ファミリーのメンバー、具体的にはc1q関連タンパク質である本発明の第一局面のポリペプチドの機能を阻害する。本発明のポリペプチドに対するリガンドは、種々の形態で出現してよく、天然又は変性された基質、酵素、レセプター、小生物分子(2000Daまで、好ましくは800Da以下の小さい天然又は合成生物分子のような)、ペプチド模倣物、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、上記の構造的又は機能的模倣物質が挙げられる。
第七局面では、本発明は、本発明の第一局面のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現を変更する、又は本発明の第一局面のポリペプチドの活性を調節するのに有効な化合物を提供する。
本発明の第七局面の化合物は、前記遺伝子の発現レベル又は前記ポリペプチドの活性レベルを増加(アゴナイズ)又は減少(アンタゴナイズ)させうる。重要なことは、INSP163ポリペプチドの機能の同定が、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定できるスクリーニング方法の設計を可能にすることである。本発明の第六及び第七局面のリガンド及び化合物は、このような方法を利用して同定することができる。これら方法は本発明の局面として包含される。
【0022】
INSP163及び/又はそのフラグメント(例えば、c1q及び/又はコラーゲンドメインを含有するフラグメント)は、他のc1qドメイン含有タンパク質が治療活性を示す疾患の診断及び/又は治療で有用でありうる。
従って、第八局面では、本発明は、TNF様タンパク質ファミリーのメンバーが関係している疾患の治療又は診断において使用するための、本発明の第一局面のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三局面の核酸分子、又は本発明の第四局面のベクター、又は本発明の第五局面の宿主細胞、又は本発明の第六局面のリガンド、又は本発明の第七局面の化合物を提供する。このような疾患として、細胞増殖性障害、自己免疫性/炎症性疾患、遺伝的障害、成長障害、神経系障害、代謝障害、感染症及び他の病的状態;特に免疫障害、例えば自己免疫疾患、リウマチ性関節炎、骨関節炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、及び多発性硬化症;炎症性障害、例えばアレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、敗血症、内毒素性ショック、敗血症性ショック、悪液質、筋肉痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス感染後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道炎症、創傷治癒、子宮内膜症、皮膚科疾患、ベーチェット病;新生物障害、例えば黒色腫、肉腫、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、血液疾患、骨髄増殖性疾患、アポトーシスの無調節に伴う疾患、ホジキン病、骨粗しょう症、肥満症、糖尿病、痛風、心臓血管障害、再潅流傷害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、肝臓疾患、AIDS、AIDS関連合併症、神経障害、男性の不妊症、加齢及び感染症(変形体感染、細菌感染及びウイルス感染を含む)、遺伝性疾患(過IgM症候群(HIM、CD40L)、I型自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS、Fas/FasL)、TNF-R1関連周期性発熱症候群(TRAPS、TNF-R1)、発汗低下性外胚葉異形成症(HED、EDA/EDAR)、家族性膨張性骨溶解(FEO、RANK)を含む)及び他の病的状態が挙げられる。好ましくは、疾患は自己免疫疾患、自己免疫性内耳疾患、内耳炎、メニエール病及びメニエール症候群、外リンパ若しくは内耳瘻、耳鳴、神経変性疾患、アミロイド症、アルツハイマー病、パーキンソン病、家族性痴呆、炎症(関節痛、腫脹、貧血又は敗血症性ショック)、感染症、寄生生物症、微生物病、細菌性疾患、ウイルス性疾患(HIV、HTLV、MuLV、肺炎連鎖球菌及び回虫感染症)、糸球体腎炎、肥満症、糖尿病、真性糖尿病、シュミット型骨幹端軟骨異形成、角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、アテローム性動脈硬化症、壊血病、癌、胃腸間質性腫瘍、骨肉腫、軟骨芽細胞腫、巨細胞腫瘍、日本型脊椎骨幹端異形成症(SMD)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、白血病(慢性リンパ球白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL))、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLCL)、B細胞過形成、骨形成不全症、エーレルス-ダンロー症候群、頸動脈切開に対する感受性、大動脈瘤、耳脊椎巨大骨端異形成症(otospondylomegaepiphyseal dysplasia)、聴力障害(聾)、Weissenbacher-Zweymuller症候群、骨若しくは骨格疾患、遅発性網膜変性症(L-ORD)、年齢関連性黄斑変性症(AMD)、失明、関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、骨関節炎、ライム関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、中枢神経系及び末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄多発神経障害、重症筋無力症、気管支炎、気腫、腎不全(糸球体腎炎、血管炎、腎炎又は腎盂腎炎)、腎性新生物、腎細胞腺癌、腎臓腫瘍、軽鎖神経障害又はアミロイド症、臓器移植に伴う急性若しくは慢性免疫疾患、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、クローン病、全身性硬化症、特発性炎症性筋障害、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫媒介腎疾患、肝胆道系疾患、例えば感染性、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン感受性腸疾患、及びウィップル病、自己免疫性若しくは免疫媒介皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形紅斑及び接触皮膚炎を含む)、乾癬、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹、肺の免疫疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性間質性肺炎、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、サルコイドーシス、女性の不妊症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、シェーグレン症候群、外胚葉異形成症、X-連鎖発汗低下性外胚葉異形成症(HED)、副腎皮質の炎症性、虚血性又は新生物疾患、副腎腫瘍、ガングリオ神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫、コルチゾール産生性副腎皮質アデノーマ、脊髄小脳変性症関連疾患、小脳疾患、オリーブ核小脳萎縮(OPCA)及び/又はシャイ-ドレーガー症候群から選択される。
これら分子は、このような疾患の治療用医薬の製造においても使用できる。これら分子は、避妊でも又は不妊症を含む生殖障害の治療のためにも使用できる。
【0023】
第九局面では、本発明は患者における疾患の診断方法を提供し、この方法は、患者由来の組織内の、本発明の第一局面のポリペプチドをコードする、天然遺伝子の発現レベルを評価するか、あるいは本発明の第一局面のポリペプチドの活性を評価する工程、及び該発現又は活性のレベルを、コントロールレベルと比較する工程を含み、この方法においては、該コントロールレベルと異なるレベルが疾患の指標となる。このような方法は、好ましくはインビトロで行われる。同様な方法を、患者内の疾患の治療処置をモニターするために使用でき、この場合、所定期間にわたってポリペプチド又は核酸分子の発現レベル又は活性レベルがコントロールレベルに向かって変化することは該疾患の後退の指標となる。
本発明の第一局面のポリペプチドを検出するための好ましい方法は、(a) 本発明の第六局面のリガンド(抗体のような)を、リガンド-ポリペプチド複合体を生成するのに適した条件下で生物学的サンプルと接触させる工程、及び(b) 前記複合体を検出する工程とを含む。
当業者は、本発明の第九局面に従う多数の異なる方法、例えば短いプローブと核酸とのハイブリダイゼーション、点突然変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び抗体を使用して、異常タンパク質レベルを検出する方法等が存在することに気付くであろう。短期又は長期にわたり同様な方法を利用して疾患の治療処置を患者内でモニターすることができる。本発明は、疾患を診断するためのこれら方法で有用なキットをも提供する。
【0024】
第十局面では、本発明は、本発明の第一局面のポリペプチドの、TNFタンパク質ファミリーのメンバー、具体的にはc1q関連タンパク質としての使用を提供する。本発明のポリペプチドの、TNF様タンパク質ファミリーのメンバーとして及びc1q関連タンパク質としての使用は、生殖力制御及び卵胞発生のための使用、レセプター/リガンド対の一部としての使用、及び上述したリストから選択される生理的又は病理学的状態に関する診断マーカーとしての使用を包含する。
第11局面では、本発明は薬理組成物を提供し、この組成物は、本発明の第一局面のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三局面の核酸分子、又は本発明の第四局面のベクター、又は本発明の第五局面の宿主細胞、又は本発明の第六局面のリガンド、又は本発明の第七局面の化合物を、製薬上許容される担体と共に含有する。
第12局面では、本発明は、疾患を診断又は治療するための医薬の製造において使用するための、本発明の第一局面のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三局面の核酸分子、又は本発明の第四局面のベクター、又は本発明の第五局面の宿主細胞、又は本発明の第六局面のリガンド、又は本発明の第七局面の化合物を提供する。
【0025】
第13局面では、本発明は、患者における疾患の治療法を提供し、この方法は、本発明の第一局面のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三局面の核酸分子、又は本発明の第四局面のベクター、又は本発明の第五局面の宿主細胞、又は本発明の第六局面のリガンド、又は本発明の第七局面の化合物を、患者に投与する工程を含む。
本発明の第一局面のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現、又は本発明の第一局面のポリペプチドの活性が、健康な患者における該発現又は活性のレベルと比較した場合に、疾患にかかっている患者においてより低いような疾患については、該患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアゴニストとなるはずである。逆に、該天然遺伝子の発現又は該ポリペプチドの活性が、健康な患者における該発現又は活性のレベルと比較した場合に、疾患にかかっている患者においてより高いような疾患については、該患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物は、アンタゴニストとなるはずである。このようなアンタゴニストの例として、アンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド、例えば抗体が挙げられる。
第14局面では、本発明は、本発明の第一局面のポリペプチドを、より高い又はより低いレベルで発現し、又はこれを発現しないように形質転換されている、トランスジェニック又はノックアウト非-ヒト動物を提供する。このようなトランスジェニック動物は、疾患研究用の極めて有用なモデルであり、またこのような疾患の治療又は診断において有効な化合物を同定するためのスクリーニング管理体制において使用することも可能である。
【0026】
本発明を利用するために使用できる標準的な技術及び手順の概要を以下に与える。本発明が、記載されるこれら特定の方法論、プロトコール、細胞系、ベクター及び試薬に限定されるものではないことを理解すべきである。また、ここで使用する用語は、特定の態様を説明する目的においてのみ使用するものであり、この用語によって本発明が何等限定されるものではないと、理解すべきである。本発明の内容は、添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
本明細書においては、ヌクレオチド及びアミノ酸に対して標準的な略号を用いる。
本発明の実施では、特に断らない限り、当業者の実務範囲内である、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の公知の技術を使用する。
このような技術は、文献において十分に説明されている。参照するのに特に適したテキストの例は、以下に列挙する通りである:サムブロックモレキュラークローニング;アラボラトリーマニュアル(Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual),第二版(1989);DNAクローニング(DNA Cloning), vols. I & II (D.N. Glover編, 1985); オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)(M.J. Gait編, 1984); 核酸のハイブリッド化(Nucleic Acid Hybridization)(B.D. Hames & S.J. Higgins編, 1984); 転写及び翻訳(Transcription and Translation)(B.D. Hames & S.J. Higgins編, 1984); 動物細胞培養(Animal Cell Culture)(R.I. Freshney編, 1986); 固定化細胞及び酵素(Immobilized Cells and Enzymes)(IRLプレス, 1986); B. Perbal, 分子クローニングに関する実務ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)(1984); 酵素学における方法(the Methods in Enzymology)シリーズ(アカデミックプレス社),特にvols. 154 & 155; 哺乳動物細胞に関する遺伝子トランスファーベクター(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)(J.H. Miller & M.P. Calos編, 1987,コールドスプリングハーバーラボラトリー);細胞及び分子生物学における免疫化学的方法(Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology)(Mayer & Walker編, 1987,アカデミックプレス、ロンドン); Scopes, (1987),タンパク質の精製:原理と実際(Protein Purification: Principles and Practice)(スプリンガーフェアラグ(Springer Verlag), N.Y.);及び実験的免疫学の手引き(Handbook of Experimental Immunology), vols. I-IV (D.M. Weir & C.C. Blackwell編, 1986)。
【0027】
ここで使用する用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合、又は修飾ペプチド結合、即ちペプチドアイソスターによって相互に結合した、2又はそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。この用語は、単鎖(ペプチド及びオリゴペプチド)及びより長い連鎖(タンパク質)両者に関連する。
本発明のポリペプチドは、成熟タンパク質状態であり得、またプレ-、プロ-又はプレプロ-タンパクであり得、該プレ-、プロ-又はプレプロ-タンパクの開裂により活性化して、活性な成熟ポリペプチドを生成することができる。このようなポリペプチドにおいて、該プレ-、プロ-又はプレプロ-配列は、リーダー又は分泌配列であり得、また該成熟ポリペプチド配列の精製の目的で使用される配列であり得る。
本発明の第一局面のポリペプチドは、融合タンパクの一部を形成し得る。例えば、分泌又はリーダー配列、プロ-配列、精製において役立つ配列、又は例えば組換え体の製造中に、より高いタンパクの安定性を付与する配列を含むことができる、1又はそれ以上の追加のアミノ酸配列を含むことが、しばしば有利である。あるいはまた、もしくは付随的に、該成熟ポリペプチドは、他の化合物、例えば該ポリペプチドの半減期を長くする化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合することができる。
【0028】
さらに好ましい実施態様では、INSP163と少なくとも85%の相同性を有する配列を含む本発明のポリペプチドは融合タンパク質である。
この融合タンパク質は、INSP163と少なくとも85%の相同性を有する配列を含むポリペプチドをコードするポリペプチドを、異種タンパク質配列のコード配列にインフレームクローニングして得ることができる。
ここで使用する用語「異種」は、ヒトINSP163ポリペプチド以外のいずれのポリペプチドをも表すことを意図する。
N-末端又はC-末端のいずれかで可溶性融合タンパク質に含まれうる異種配列の例は以下のとおりである:膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部(Fc部)、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質のドメイン、シグナル配列、搬出配列、又はアフィニティークロマトグラフィーによる精製を可能にする配列。
これら異種配列の多くは、これら配列に融合されるタンパク質の特有の生物活性を有意に減じることなく追加の特性を与えるためにこれら配列が融合タンパク質に一般的に含まれるので(Terpe K, 2003 Appl Microbiol Biotechnol, 60:523-33)、発現プラスミドの状態で市販されている。このような追加の特性の例は、体液内でのより長く持続する半減期、細胞外局在化、又はいわゆる「ヒスチジンタグ」を形成するひと配列のヒスチジン(Gentz et al., 1989 Proc Natl Acad Sci USA, 86:821-4)又はインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープである「HA」タグ(Wilson et al., Cell, 37: 767-78, 1994)によって可能になるようなより簡単な精製手順である。必要な場合、例えばタンパク質と異種配列との間にタンパク質分解性開裂部位を挿入することによって、また精製融合タンパク質を適切なプロテアーゼにさらすことによってタンパク質分解性開裂で異種配列を排除することができる。これら特徴は、融合タンパク質の製造及び薬理組成物の調製での使用を容易にするので、融合タンパク質にとって特に重要なものである。例えば、実施例(INSP163)で使用するタンパク質は、INSP163のC-末端で融合されるヘキサ-ヒスチジンペプチドの手段で精製することができる。融合タンパク質が免疫グロブリン領域を含む場合、融合は直接的でよく、あるいは短いリンカーペプチドを介してもよい。この短いリンカーの長さは1〜3程度のアミノ酸残基の長さ又はそれより長い、例えば13のアミノ酸残基の長さでよい。前記リンカーは、例えば、配列E-F-M(Glu-Phe-Met)のトリペプチド、又は本発明の物質の配列と免疫グロブリン配列の間にGlu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-Val-Leu-Gly-Gly-Gln-Phe-Metが導入された13-アミノ酸リンカー配列でよい。結果として生じる融合タンパク質は特性が改良され、例えば、体液中の滞留時間(半減期)が延長し、特異的活性が向上し、発現レベルが増加し、又は融合タンパク質の精製が容易になる。
好ましい実施態様では、Ig分子の定常部にタンパク質を融合する。好ましくは、例えばヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖部にタンパク質を融合する。IgG2若しくはIgG4のようなIg分子の他のアイソフォーム、又は例えばIgM若しくはIgAのような他のIgクラスも本発明の融合タンパク質の生成に適する。融合タンパク質はモノマー又はマルチマー、ヘテロマルチマー若しくはホモマルチマーでもよい。
さらに好ましい実施態様では、機能誘導体は、アミノ酸残基上の1又はそれ以上の側鎖として存在する1又はそれ以上の官能基に結合した少なくとも1つの部分を含む。好ましくは、この成分はポリエチレン(PEG)部分である。PEG化は、例えばWO99/55377に記載された方法のような公知の方法で行うことができる。
【0029】
ポリペプチドは、20種の遺伝子によりコードされるアミノ酸以外のアミノ酸、即ち翻訳後のプロセシング等の自然の過程により、あるいは当分野において周知の化学的変性技術によって修飾されたアミノ酸を含むことができる。本発明のポリペプチドにおいて通常存在し得る、該公知の修飾としては、グリコシル化、脂質の付着、硫酸化、グルタミン酸残基等のγ-カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化がある。他の可能な修飾はアセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合による付着、ヘム部分の共有結合による付着、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合による付着、脂質誘導体の共有結合による付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合による付着、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合性の架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解プロセシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、アルギニル化等の、タンパク質に対するアミノ酸のtRNA媒介付加、及びユビキチン化を包含する。
修飾は、ポリペプチドの骨格、そのアミノ酸側鎖、及びそのアミノ又はカルボキシル末端を含む、該ポリペプチドのどの部分でも起こり得る。事実、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端、又はこれら両者における、共有結合による遮断は、天然に産するポリペプチド及び合成ポリペプチドにおいて共通であり、またこのような修飾は、本発明のポリペプチドにおいても存在する。
【0030】
ポリペプチドにおいて起こるこれら修飾は、しばしば該ポリペプチドを製造した方法の関数である。組換えにより製造したポリペプチドに関して、その大部分における該修飾の性質及び程度は、特定の宿主細胞の翻訳後の修飾能力及び問題とするポリペプチドのアミノ酸配列中に存在する修飾シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる型の宿主細胞間で変化する。
本発明のポリペプチドは、任意の適当な方法で製造できる。このようなポリペプチドは、単離された天然に産するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製されたもの)、組換え技術により製造したポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成により製造したポリペプチド又はこれら方法の組合せにより製造したポリペプチドを包含する。
本発明の第一局面による、機能的に等価なポリペプチドは、INSP163ポリペプチドと相同性のポリペプチドであり得る。2種のポリペプチドは、その一方のポリペプチドの配列が、その他方のポリペプチドの配列に対して十分に高い同一性又は類似性の度合いを持つ場合に、ここで使用する用語の意味としての、「相同」であるといわれる。「同一性」とは、整列された配列中の、任意の特定位置において、そのアミノ酸残基が、これら配列間で同一であることを示す。「類似性」とは、整列された配列中の、任意の特定位置において、そのアミノ酸残基が、これら配列間で類似型のものであることを示す。同一性又は類似性の度合いは、容易に計算できる(計算機による分子生物学(Computational Molecular Biology), A.M. Lesk編, Oxford University Press, NY, 1988; バイオコンピューティングインフォーマティックス及びゲノムプロジェクツ(Biocomputing Informatics and Genome Projects), D.W. Smith編, アカデミックプレス, NY, 1993; 配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data), Part I, A.M. Griffin & H.G. Griffin編, フマナプレス, NJ, 1994; 分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology), von Heinje, G., アカデミックプレス, 1987; 及び配列分析、プライマー((Sequence Analysis Primer), M. Gribskov & J. Devereux編, M Stockton Press, NY, 1991)。ここで使用する場合、同一性の割合は、BLASTバージョン2.1.3を用い、NCBI(国立生物工学情報センター(the National Center for Biotechnology Information); http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメーター[Blosum 62 マトリックス;ギャップオープンペナルティー=11及びギャップ伸長ペナルティー=1]を用いて決定されるとおりである。
【0031】
従って、相同ポリペプチドは、該INSP163ポリペプチドの、天然産の生物学的変異体(例えば、該ポリペプチドを誘導した種内の、対立変異体又は地理的変異体)及び突然変異体(例えば、アミノ酸置換、挿入又は欠失を含む突然変異体)を包含する。このような突然変異体は、1以上のアミノ酸残基が、保存性又は非-保存性のアミノ酸残基(好ましくは、保存性アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含むことができ、またこのような置換アミノ酸残基は、遺伝コードによってコードされるものであっても、コードされないものあってもよい。典型的なこの種の置換は、Ala、Val、Leu及びIle間で、SerとThrとの間で、酸性残基AspとGluとの間で、AsnとGlnとの間で、塩基性残基LysとArgとの間で、あるいは芳香族性残基PheとTyrとの間で起こる。特に好ましいものは、幾つかの、即ち5と10、1と5、1と3、1と2又は1のみのアミノ酸が、任意の組合せで置換、欠失又は付加されている変異体である。とりわけ好ましいものは、沈黙置換、付加及び欠失であり、これらは該タンパク質の特性及び活性を変更しない。同様に、この点に関して特に好ましいものは、保存性の置換である。このような突然変異体は、また1又はそれ以上のアミノ酸残基が、置換基を含むポリペプチドを包含する。
典型的には、2つのポリペプチド間の30%を越える同一性は、機能的に等価なものを示すものと考えられる。好ましくは、本発明の第一局面の機能的に等価なポリペプチドは、80%を越える、該INSP163ポリペプチドとの、又はその活性フラグメントとの配列同一性を持つ。より好ましくは、ポリペプチドは、夫々85%、90%、95%、98%又は99%を越える程度の同一性を持つ。
【0032】
本発明の第一局面の機能的に等価なポリペプチドは、1又はそれ以上の構造的な整列技術を利用して同定されたポリペプチドであっても良い。例えば、バイオペンジウム(BiopendiumTM)検索データベースを生成するのに使用する研究手段の一局面を構成するインファーマチカゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(PCT出願WO 01/69507を参照のこと)、現時点において未知の機能を持つポリペプチドを同定することができる。未知の機能を持つポリペプチドはINSP163ポリペプチドと比較して低い配列同一性を持つが、INSP163ポリペプチド配列との有意な構造上の相同性を持つことによって、TNF様タンパク質ファミリーのメンバーであると予想されている。「有意な構造上の相同性」とは、インファーマチカゲノムスレッダーが、2種のタンパク質について、10%及びそれ以上の確実性にて、構造上の相同性を共有しているものと予測したことを意味する。
ポリペプチドをフラグメントに分割してもよく、かつ機能的等価物の類似性フラグメントが存在しうる。このようなフラグメントは、全長ポリペプチドと同じタンパク質ファミリーのメンバーであるか、あるいは全長ポリペプチドと共通の抗原決定基を持つことによって同定される。
【0033】
ここで使用する用語「フラグメント」とは、あるポリペプチド又は当該ポリペプチドの機能的等価物の一種の、アミノ酸配列の全てではないが、その一部と同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドを意味する。これらフラグメントは、少なくともn個の、該配列由来の連続するアミノ酸を含み、また特定の配列に依存して、このnは、好ましくは7又はそれ以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20又はそれ以上)である。小さなフラグメントが、抗原決定基を形成し得る。
完全な長さのポリペプチドのフラグメントは、それぞれ該ポリペプチド配列内の1、2、3、4、5、6、7又は8個すべての隣接するエキソン配列の組合せからなり得る。例えば、このような組合せとして、エキソン1と2、エキソン2と3又はエキソン1、2及び3等が挙げられる。このようなフラグメントは、本発明の範囲に包含される。
このようなフラグメントは、「それ自体独立した(free-standing)」ものであり得、即ち他のアミノ酸又はポリペプチドの一部でも、これと融合されたものでもなく、あるいはこれらは、より大きなポリペプチド内に含まれ、その一部又は領域を構成するものであっても良い。より大きなポリペプチド内に含まれる場合、本発明のフラグメントは、最も好ましくは単一の連続する領域を構成する。例えば、幾つかの好ましい態様は、アミノ末端に対して融合したプレ-及び/又はプロ-ポリペプチド領域を持つフラグメント及び/又は該フラグメントのカルボキシ末端に対して融合した追加の領域を持つフラグメントに関連する。しかし、幾つかのフラグメントは、単一の大きなポリペプチド内に含まれるものであり得る。
【0034】
本発明のポリペプチド又はその免疫原性フラグメント(少なくとも一つの抗原決定基を含む)は、該ポリペプチドに対して免疫特異的である、ポリクローナル又はモノクローナル抗体等のリガンドを生成するのに利用できる。このような抗体は、本発明のポリペプチドを発現するクローンの単離又は同定のために、又はアフィニティークロマトグラフィーによる該ポリペプチドの精製の目的で使用できる。これら抗体は、当業者には明らかな如く、他にも用途があるが、特に診断又は治療用助剤として使用することもできる。
上記用語「免疫特異的(immunospecific)」とは、これらの抗体が、公知の他の関連するポリペプチドに対するアフィニティーよりも、本発明のポリペプチドに対して、実質的に大きなアフィニティーを持つことを意味する。ここで使用する用語「抗体」とは、問題とする抗原決定基と結合することができる完全な分子並びにFab、F(ab')2及びFvのようなそのフラグメントを意味する。従って、このような抗体は、本発明の第一局面のポリペプチドと結合する。
「実質的に大きなアフィニティー」なる用語によって、我々は、既知の分泌されたタンパク質に対するアフィニティーと比較して、本発明のポリペプチドに対するアフィニティーに、測定可能な増加が見られることを意味する。
【0035】
好ましくは、このアフィニティーは、既知の分泌されたタンパク質、例えばTNF様タンパク質ファミリーのメンバーに対するアフィニティーよりも、本発明のポリペプチドに対して、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103-倍、104-倍、105-倍、106-倍又はそれ以上である。
ポリクローナル抗体が望ましい場合には、選択された哺乳動物、例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマを、本発明の第一局面のポリペプチドにより、免疫感作することができる。該動物を免疫感作するのに使用する該ポリペプチドは、組換えDNA技術によって誘導することができ、あるいは化学的に合成することができる。望ましい場合、該ポリペプチドは、担体タンパク質との複合体を形成することができる。該ポリペプチドを化学的に結合できる、通常使用される担体として、ウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニンが挙げられる。次いで、この結合したポリペプチドを用いて該動物を免疫感作する。この免疫化した動物から血清を集め、公知の手順、例えばイムノアフィニティークロマトグラフィーによって処理する。
本発明の第一局面のポリペプチドに対するモノクローナル抗体も、当業者は容易に製造できる。ハイブリドーマ技術を用いた、モノクローナル抗体を製造するための一般的な方法は周知である(例えば、Kohler, G. & Milstein, C., Nature, 1975, 256:495-497; Kozbor等, Immunology Today, 1983, 4:72; Cole等, モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy), pp. 77-96, Alan R. Liss, Inc. (1985)を参照のこと)。
【0036】
本発明の第一局面のポリペプチドに対して製造したモノクローナル抗体のパネルを、様々な特性、例えばイソタイプ、エピトープ、アフィニティー等についてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それが向けられる個々のポリペプチドの精製において、特に有用である。あるいは、対象とするモノクローナル抗体をコードする遺伝子は、ハイブリドーマから、例えば当分野において公知のPCR技術によって単離し、また適当なベクターにクローニングし、かつそこで発現させることができる。
非-ヒト可変部が、ヒト定常部と結合もしくは融合するキメラ抗体(例えば、Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1987, 84:3439)も有用であり得る。
この抗体は、例えばヒト化によって、個体内で、低免疫原性のものとなるように変性することができる(以下の文献を参照のこと:Jones等, Nature, 1986, 321:522; Verhoeyen等, Science, 1988, 239:1534; Kabat等, J. Immunol., 1991, 147:1709; Queen等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:10029; Gorman等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991, 88:34181;及びHodgson等, Bio/Technology, 1991, 9:421)。本明細書で使用する「ヒト化抗体」とは、非-ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変部ドメインにおけるCDRアミノ酸及び選択された他のアミノ酸が、ヒト抗体における等価なアミノ酸の代わりに置換されている、抗体分子を意味する。従って、このヒト化抗体は、ヒト抗体と厳密に類似するが、該ドナー抗体の結合能を持つ。
更にまた、該抗体は、「二重特異性」抗体であり得、これは2つの異なる抗体結合ドメインを持つ抗体であり、各ドメインは異なるエピトープに対するものである。
【0037】
ファージディスプレイ技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードする遺伝子を、関連する抗体の存在につきスクリーニングした、ヒト由来のリンパ細胞の、PCR増幅されたV-遺伝子のレパートリーから、あるいはナイーブ(naive)ライブラリーから選別することができる(McCafferty, J.等, Nature, 1990, 348:552-554; Mark, J.等, Biotechnology, 1992, 10:779-783)。これら抗体のアフィニティーは、連鎖シャッフリングによっても改善できる(Clackson, T.等, Nature, 1991, 352:624-628)。
ポリクローナルであれ、モノクローナルであれ、上記技術により生成された抗体は、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)における試薬として使用できる点で、付随的な有用性を持つ。これら用途において、これら抗体は、放射性同位元素、蛍光性分子又は酵素等の、分析により検出可能な試薬で標識することができる。
本発明の第二及び第三局面の好ましい核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び/又は配列番号36に記載のようなポリペプチド配列及び機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これらの核酸分子は、ここに記載する方法並びに用途において使用することができる。本発明の核酸分子は、好ましくは少なくともn個の、ここに記載する該配列由来の連続するヌクレオチドを含み、この場合、特定の配列に依存して、このnは、10又はそれ以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40又はそれ以上)である。
本発明の核酸分子は、上記の核酸分子に対して相補的な配列(例えば、アンチセンス又はプロービングのための)をも包含する。
【0038】
本発明の核酸分子は、mRNA等のRNA、例えばcDNA、合成DNA又はゲノムDNA等を包含するDNAの形状を持つことができる。このような核酸分子は、クローニング、化学的な合成技術、又はこれらの組合せによって得ることができる。これら核酸分子は、例えば固相ホスホロアミダイト化学合成等の技術を用いて、ゲノム又はcDNAライブラリーから、あるいは生物からの分離によって、製造することができる。RNA分子は、一般にDNA配列のインビボ又はインビトロ転写によって、生成し得る。
これらの核酸分子は一本鎖又は二本鎖何れであっても良い。一本鎖DNAは、センスストランドとしても知られる、コードストランドであり得、あるいはアンチセンスストランドとしても知られる、非-コードストランドであっても良い。
用語「核酸分子」とは、DNA及びRNAの類似体、例えば修飾された骨格を持つもの及びペプチド核酸(PNA)を含む。ここで使用する用語「PNA」とは、好ましくはリジンで終結する、アミノ酸残基のペプチド骨格と結合した、少なくとも5個のヌクレオチドに相当する長さを持つオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子又はアンチ-ジーン(anti-gene)剤を意味する。該末端リジンは、この構造に溶解性を付与する。PNAは、ペギレート化(pegylated)して、細胞内でのその寿命を延長することができ、ここで該PNAは、相補性の一本鎖DNA及びRNAと優先的に結合しかつ転写物の伸長を停止することができる(Nielsen, P.E.等, Anticancer Drug Des., 1993, 8:53-63)。
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、ここに記載する核酸分子の1種又はそれ以上のコード配列と同一であり得る。
【0039】
これらの分子は、遺伝的コード縮重の結果として、ポリペプチド:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34又は配列番号36をコードする、異なった配列を持つこともできる。このような核酸分子として、限定するものではないが、該成熟ポリペプチド自体に対するコード配列;該成熟ポリペプチドに対するコード配列及び追加のコード配列、例えばプロ-、プレ-又はプレプロ-ポリペプチド配列等のリーダー又は分泌配列をコードするもの;上記追加のコード配列との組合せで又は単独で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合及びmRNAの安定性においてある役割を演じる、転写された、非-翻訳配列等の、非-コード5'及び3'配列を包含する、更なる追加の非-コード配列を含む、該成熟ポリペプチドに対するコード配列が挙げられる。これらの核酸分子は、付随的な官能性をもたらすもの等の、追加のアミノ酸をコードする、付随的な配列をも包含しうる。
本発明の第二及び第三局面の核酸分子は、本発明の第一局面のポリペプチドの機能的等価物をもコードし得る。このような核酸分子は、天然に産する変異型、例えば天然に産するアレリック変異型であり得、あるいは該分子は、天然に産することが知られていない変異型であり得る。該核酸分子の天然産以外のこのような変異型は、突然変異誘発技術、例えば核酸分子、細胞又は生体に適用されるものを含むこれら技術により、製造することができる。
【0040】
この点に関連して、変異型としては、特にヌクレオチド置換、欠失又は挿入によって、上記核酸分子とは異なる変異体を挙げることができる。この置換、欠失又は挿入は、1又はそれ以上のヌクレオチドを含み得る。該変異体は、コード領域、非-コード領域又は両者が変更していてよい。コード領域における変更は、保存性又は非-保存性アミノ酸の置換、欠失又は挿入を生じさせうる。
また、本発明の核酸分子は、該遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシング、及び/又は発現を含む様々な理由で、当業者において一般的に公知の方法を用いて、操作することができる。ランダムフラグメント化及び遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再構築(PCR reassembly)によるDNAシャッフリングは、該ヌクレオチド配列を操作するために使用できる技術として含まれる。部位特異的突然変異誘発を利用して、新たな制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変更し、コドンの優先性を変え、スプライス変異体を生成し、突然変異を導入するなどができる。
本発明の第一局面のポリペプチドをコードする核酸分子を異種配列と連結して、その結合核酸分子が融合タンパク質をコードするようにすることができる。このような結合核酸分子は、本発明の第二又は第三の局面に含まれる。例えば、該ポリペプチドの活性の阻害剤に関するペプチドライブラリーをスクリーニングするため、このような結合核酸分子を用いて、市販品として入手できる抗体により認識できる融合タンパク質を発現させることは有用だろう。融合タンパク質を、本発明のポリペプチドの配列と、異種タンパク質の配列との間に位置する開裂部位を含むように操作して、該ポリペプチドを、該異種タンパク質から開裂させてこれから精製し得るようにすることが可能である。
【0041】
本発明の核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、またその結果として該コード核酸分子とハイブリッドを形成する(ハイブリッド化)、アンチセンス分子をも含む。このようなアンチセンス分子、例えばオリゴヌクレオチドは、当業者には公知であるように、本発明のポリペプチドをコードする、標的核酸を認識し、特異的にこれと結合し、かつその転写を阻止するように設計することができる(例えば、Cohen, J.S. Trends in Pharm. Sci., 1989, 10:435; Okano, J. Neurochem. 1991, 56:560; O'Connor, J. Neurochem. 1991, 56:560; Lee等, Nucleic Acids Res. 1979, 6:3073; Cooney等, Science, 1988, 241:456; Dervan等, Science, 1991, 251:1360を参照のこと)。
ここで使用する用語「ハイブリダイゼーション」とは、2つの核酸分子の、水素結合による相互の会合を意味する。典型的には、1個の分子が固形支持体に固定され、また他方の分子は溶液中で遊離状態にある。次いで、これら2つの分子を、水素結合にとって好ましい条件下で、相互に接触状態に置くことができる。この結合に影響を及ぼす因子として、溶媒のタイプ及び体積、反応温度、ハイブリダイゼーション時間、撹拌、液相分子の固形支持体への非-特異的な結合を遮断する試薬(デンハート試薬又はBLOTTO);分子の濃度、分子の会合速度を高めるための化合物の使用(デキストランサルフェート又はポリエチレングリコール)、及びハイブリダイゼーション後の洗浄条件のストリンジェンシーが挙げられる(Sambrook等の[上記文献]を参照のこと)。
標的分子と完全に相補的な分子のハイブリダイゼーションの阻害は、当分野において公知である如く、ハイブリダイゼーションアッセイを利用して検討することができる(例えば、Sambrook等の[上記文献]を参照のこと)。従って、実質的に相同な分子は、Wahl, G.M. & S.L. Berger (Methods Enzymol. 1987, 152:399-407)及びKimmel, A.R. (Methods Enzymol. 1987, 152:507-511)において教示されているように、様々なストリンジェンシー条件下で、標的分子と完全に相補的な分子の結合と競合し、かつ阻害するであろう。
【0042】
「ストリンジェンシー」とは、非常に似通っている分子同士の結合を、異なる分子間の結合よりも好ましいものとする、ハイブリッド化反応における条件を意味する。高ストリンジェンシーハイブリッド化条件は、50%のホルムアミド、5XSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸3ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5xデンハート溶液、10%デキストランサルフェート、及び20μg/mlの変性、剪断サケ精液DNAを含む溶液中で、42℃にて一夜インキュベートし、次いで該フィルターを約65℃にて0.1X SSCで洗浄するものとして定義される。低ストリンジェンシー条件は、このハイブリッド化反応を35℃にて行うことを含む(Sambrook等の[上記文献]を参照のこと)。好ましくは、ハイブリッド化のために使用するこれら条件は、高度にストリンジェンシーな条件である。
本発明のこの局面の好ましい態様は、INSP163ポリペプチドをコードする核酸分子に対して、同一性が、全長に渡り少なくとも70%である核酸分子、及びこのような核酸分子に対して実質的に相補的な核酸分子である。好ましくは、本発明のこの局面による核酸分子は、このようなコード配列に対して、同一性が、全長に渡り少なくとも80%である領域を含み、あるいは該コード配列に対して相補的な核酸分子である。この点に関連して、該コード配列に対して、同一性が、全長に渡り少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、99%又はそれ以上である核酸分子が、特に好ましい。この点に関連して好ましい態様は、該INSP163ポリペプチドと同一の生物学的機能又は活性を実質的に維持する、ポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0043】
本発明は、また本発明の核酸分子を検出するための方法をも提供するものであり、この方法は、以下に列挙する諸工程を含む:(a) 本発明による核酸プローブと、生物学的サンプルとを、デュプレックスを形成するハイブリッド化条件下で、接触させる工程、及び(b) 形成されるあらゆるこのようなデュプレックスを検出する工程。
以下において、本発明に従って使用することのできるアッセイとの関連で、付随的に論じるように、上記のような核酸分子は、RNA、cDNA又はゲノムDNAに対するハイブリッド化用のプローブとして使用して、該INSP163ポリペプチドをコードする完全な長さのcDNA及びゲノムクローンを単離し、またこのポリペプチドをコードする遺伝子に対して高い配列類似性を持つ、相同又はオーソロガス遺伝子のcDNA及びゲノムクローンを単離することができる。
この点に関連して、当分野において公知の、特に以下の技術を利用することができ、またこれらを例示の目的で以下に論じる。DNAの配列決定法及び分析法は周知であり、また当分野において一般的に利用でき、実際に、ここで論じる本発明の多くの態様を実施するのに利用できる。このような方法は、酵素、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、シーケナーゼ(Sequenase; OH、クリーブランドのUSバイオケミカル社(US Biochemical Corp.))、Taqポリメラーゼ(パーキンエルマー(Perkin Elmer))、熱安定性T7ポリメラーゼ(IL、シカゴのアマーシャム(Amersham))、又はポリメラーゼとプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ、例えばギブコ/BRL(MD、ガイザースバーグ)により市販されている、ELONGASE増幅システム(Amplification System)において見出されるものとの組合せを使用することができる。好ましくは、配列決定法は、ハミルトンミクロラブ(Hamilton Micro Lab) 2200 (NV、レノのハミルトン社)、ペルチェサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)(PTC200; MA、ウォータータウンのMJリサーチ(MJ Research)社)及びABIキャタリスト(Catalyst)及び373及び377DNAシーケンサ(Sequencers;パーキンエルマー)等の装置を使用して、自動化することができる。
【0044】
INSP163ポリペプチドと等価な機能を持つポリペプチドをコードする核酸分子を単離するための一つの方法は、当分野において認識されている標準的な手順を用いて、天然又は人工的に設計したプローブを用いて、ゲノム又はcDNAライブラリーを精査することである(例えば、アウスベル(Ausubel)等(編)の「カレントプロトコールインモレキュラーバイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)」, Greene Publishing Association & John Wiley Interscience, NY, 1989, 1992を参照のこと)。適当なコード遺伝子(配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35)由来の核酸配列に相当する、あるいはこれに対して相補的な、少なくとも15個の、好ましくは少なくとも30個の、さらに好ましくは少なくとも50個の、連続する塩基を含むプローブが、特に有用なプローブである。このようなプローブは、分析により検出可能な試薬で標識して、その同定を簡略化することができる。有用な試薬は、放射性同位元素、蛍光性染料及び検出可能な生成物の形成を触媒することのできる酵素を含むが、これらに限定されない。これらのプローブを使用することにより、当業者は、ヒト、哺乳動物又は他の動物源由来の、対象とするタンパク質をコードする、ゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの、相補的なコピーを単離し、かつこのような源を、関連する配列、例えばファミリー、タイプ及び/又はサブタイプの付随的なメンバーについてスクリーニングすることが可能となる。
【0045】
多くの場合、単離cDNA配列は、該ポリペプチドをコードする領域が、通常は5'末端において、短く切断される点において、不完全である。幾つかの方法を利用して、完全な長さのcDNAを得、もしくは短いcDNAを伸長する。部分的なヌクレオチド配列を使用し、かつ当分野において公知の様々な方法を利用して、このような配列を伸長して、上流側の配列、例えばプロモータ及び調節要素を検出することができる。例えば、使用可能な方法の一つは、cDNA末端の迅速な増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends)方法に基くものである(RACE;例えばFrohman等, PNAS USA 1988, 85:8998-9002を参照)。例えば、マラソン(MarathonTM)技術(クロンテックラボラトリーズ社(Clontech Laboratories Inc.))によって代表される、この技術の最近の改良は、より長いcDNAに関する探索を、大幅に簡略化した。「制限-部位」PCRと呼ばれる、幾分異なる技術は、既知の遺伝子座と隣接する未知の核酸配列を探し出すために、普遍プライマーを使用する(Sarkar, G., PCR Methods Applic., 1993, 2:318-322)。また、逆PCRを利用して、既知領域に基いて、多様型プライマーを用いて、配列を増幅し、あるいは伸長することができる(Triglia, T.等, Nucleic Acids Res., 1988, 16:8186)。使用できるもう一つの方法は、捕獲PCRであり、この方法はヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける既知の配列に隣接するDNAフラグメントのPCR増幅を含む(Lagerstrom, M.等, PCR Methods Applic., 1991, 1:111-119)。未知の配列を捜し出すために使用できるもう一つの方法は、Parkar, J.D.等の方法(Nucleic Acids Res., 1991, 19:3055-3060)である。更に、PCR、ネステッドプライマー、及びプロモータファインダ(PromoterFinderTM)ライブラリーを使用して、ゲノムDNAを探すことができる(CA, パロアルトのクロンテック(Clontech)社)。この方法は、ライブラリーをスクリーニングする必要性を排除し、またイントロン/エキソン結合を見出す上で有用である。
【0046】
完全な長さのcDNAをスクリーニングするに際して、より大きなcDNAを含めるように、サイズ-選別されているライブラリーを使用することが好ましい。また、遺伝子の5'領域を含む配列をより多く含む点において、無秩序に刺激されたライブラリーが好ましい。無秩序に刺激されたライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが、完全な長さのcDNAを生成しない状況に対して、特に好ましい可能性がある。ゲノムライブラリーは、5'非-転写調節領域に、配列を伸長するために有用であり得る。
本発明の一態様において、本発明の核酸分子は染色体を局在化するために使用できる。この技術において、核酸分子を、特に目標とし、また個々のヒト染色体上の特定の位置で、これとハイブリッド化することができる。本発明による染色体と関連する配列のマッピングは、遺伝子関連疾患と、これら配列との確証的関連付けにおいて重要な段階である。一度、配列が、正確な染色体位置に関してマッピング(位置決定)されると、該染色体上の該配列の物理的な位置は、遺伝子マップデータと関連付けすることができる。このようなデータは、例えばV. McKusick, ヒトにおけるメンデル遺伝(Mendelian Inheritance in Man)(ジョーンズホプキンス大学ウエルチメディカルライブラリー(Johns Hopkins University Welch Medical Library)を通してオンラインで入手可能である)に見られる。次いで、同一の染色体領域にマッピングされている遺伝子と疾患との関連性を、結合分析(物理的に隣接する遺伝子の同時遺伝)によって同定する。これは、位置クローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて、疾患遺伝子を探索する研究者に、価値ある情報を提供する。
一旦、該疾患又は症候群が、特定のゲノム領域に対する遺伝的結合によって、大雑把に局在化されれば、該当領域に関するあらゆる配列マッピングが、更なる検討のための、関連又は調節遺伝子を表す可能性がある。該核酸分子は、また正常な、キャリヤとしての又は罹患した個体における、転位、逆位等による、染色体位置における差異の検出のために使用することができる。
【0047】
本発明の核酸分子は、また組織の局在化にとっても価値がある。このような技術は、また組織内のポリペプチドの発現パターンを、該ポリペプチドをコードするmRNAの検出により、決定することを可能とする。これら技術は、その場でのハイブリッド化技術及びヌクレオチド増幅技術、例えばPCR技術を包含する。これらの研究により得られる結果は、該生物における該ポリペプチドの正常な機能の指標を与える。更に、mRNAの正常な発現パターンと、突然変異遺伝子によってコードされるmRNAによる発現パターンとの比較研究は、疾患における突然変異ポリペプチドの役割に関する有益な見識を与える。このような不適当な発現は、時間的、空間的又は定量的特性を持つものである。
遺伝子のサイレンシングアプローチは、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在的発現をダウンレギュレーションすることも可能である。RNA干渉(RNAi)(Elbashir, SM等, Nature, 2001, 411:494-498)は、利用することのできる、配列特異的な転写後の遺伝子サイレント化法(gene silencing)の一つである。短いdsRNAオリゴヌクレオチドを、インビトロで合成し、かつ細胞内に導入する。これらdsRNAオリゴヌクレオチドの、配列特異的結合は、標的mRNAの分解を開始させ、標的タンパク発現を減少又は削除する。
上で評価した遺伝子サイレント化法の有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えば、ウエスタンブロッティング法による)を通して、またTaqManを基本とする方法を利用して、RNAレベルで評価することができる。
【0048】
本発明のベクターは、本発明の核酸分子を含み、またクローニング又は発現ベクターであり得る。本発明のベクターによって形質転換、トランスフェクション又は形質導入することのできる、本発明の宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞何れであっても良い。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中のコード核酸分子の発現により、組換え体として作ることができる。このような発現法は、当業者には周知であり、またその多くは、Sambrook等[上記文献]及びFernandez & Hoeffler(1998, 編,「遺伝子発現系。発現技術に関する特徴を利用(Gene expression systems. Using nature for the art of expression)」アカデミックプレス、サンジエゴ、ロンドン、ボストン、NY、シドニー、東京、トロント)に詳しく記載されている。
一般に、所定の宿主内でポリペプチドを製造するためには、核酸分子を維持し、増殖させ又は発現させるのに適した、任意の系又はベクターを使用することができる。この適当なヌクレオチド配列を、様々な周知かつルーチン技術、例えばSambrook等[上記文献]に記載されている技術の何れかによって、発現系に挿入することができる。一般に、該コード遺伝子は、制御要素、例えばプロモータ、リボソーム結合系(バクテリア発現の場合)及び場合によってはオペレータの制御下に置いて、該所定のポリペプチドをコードする該DNA配列を、該形質転換された宿主細胞内のRNAに転写することができる。
【0049】
適当な発現系の例は、例えば染色体、エピソーム及びウイルス由来の系、例えばバクテリアプラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入要素、酵母染色体要素、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス、例えばSV40、ワクチニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス由来のベクター又はこれらの組合せ、例えばコスミド及びファージミドを含む、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝子要素由来のものを包含する。ヒトの人工的な染色体(HACs)も、プラスミド内に含まれ、かつ発現し得るものよりも大きなDNAフラグメントを放出するのに使用できる。ベクターpCR4-TOPO-INSP163、pENTR_INSP163-6HIS、pEAK12d_INSP163-6HIS、pDEST12.2_INSP163-6HISが、INSP163に関連する本発明の局面に従って使用するのに適したベクターの好ましい例である。
特に適した発現系は、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリア等の微生物;酵母発現ベクターにより形質転換された酵母;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)発現ベクターにより形質転換された昆虫細胞系;ウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)発現ベクター又はバクテリア発現ウイルス(例えば、Ti又はpBR322プラスミド)により形質転換された植物細胞系;又は動物細胞系を包含する。また、細胞を含まない翻訳系を使用して、本発明のポリペプチドを製造することも可能である。
【0050】
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル、例えばDavis等の分子生物学における基本的な方法(Basic Methods in Molecular Biology)(1986)及びSambrook等[上記文献]に記載されている方法により、行うことができる。特に適した方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレイプローディング(scrape loading)、弾道導入又は感染を包含する(例えば、Sambrook等, 1989 [上記文献]; Ausubel等, 1991 [上記文献]; Spector, Goldman & Leinwald, 1998を参照のこと)。真核生物細胞において、発現系は、系の必要に応じて一時的(例えば、エピソーム性)又は永続的(染色体への組込み)の何れかであり得る。
コード核酸分子は、例えば小胞体の内腔、細胞質空間又は細胞外環境に、翻訳されたポリペプチドを分泌するために望ましい、コントロール配列をコードする配列、例えばシグナルペプチド又はリーダー配列を含んでも、含まなくても良い。これらシグナルは、該ポリペプチドに対して内在性であり得、あるいはこれらは、異種シグナルであり得る。
リーダー配列は、翻訳後のプロセッシングにおいてバクテリア宿主により除去され得る。
【0051】
コントロール配列に加えて、該宿主細胞の成長と相対的に、該ポリペプチドの発現を調節することを可能とする、調節配列を付加することが望ましい可能性がある。調節配列の例は、調節化合物の存在を含む化学的又は物理的な刺激、又は様々な温度又は代謝条件に応答して、遺伝子発現の増減を引起すものである。調節配列は、該ベクターの非-翻訳領域のもの、例えばエンハンサ、プロモータ及び5'及び3'未翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパクと相互作用して、転写及び翻訳を行う。このような調節配列の長さ及び特異性は、変動し得る。使用したベクター系及び宿主に依存して、構成的及び誘導性プロモータを含む、任意の数の適当な転写及び翻訳要素を用いることができる。例えば、バクテリア系内でクローニングする場合、誘導性プロモータ、例えばBluescriptファージミド(CA、ラジョラのストラタジーヌ(Stratagene))又はpSportlTMプラスミド(ギブコBRL)等のハイブリッドlacZプロモータ等を使用することができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモータを、昆虫細胞内で使用することができる。植物細胞ゲノム由来(例えば、熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク遺伝子)又は植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモータ又はリーダー配列)由来のプロモータ又はエンハンサを、このベクターにクローニングすることができる。哺乳動物細胞系においては、哺乳動物遺伝子又は哺乳動物ウイルス由来のプロモータが好ましい。該配列の複数のコピーを含む細胞系を生成する必要がある場合には、SV40又はEBVに基くベクターを適当な選別マーカーと共に使用することができる。
【0052】
発現ベクターを、適当な核酸コード配列が、適当な調節配列を含むベクター内に位置するように構築する。ここで、該調節配列に対する、該コード配列は、このコード配列が、該調節配列の「制御」の下で転写されるように、配置され、かつ配向されている。即ち、該コントロール配列において該DNA分子と結合しているRNAポリメラーゼは、該コード配列を転写する。幾つかの場合において、該配列を修飾して、これを、適当な配向で、該コントロール配列に結合できることが必要である。即ち、該読み取り枠を維持することが必要であり得る。
該コントロール配列又は他の調節配列を、ベクター内に挿入する前に、該核酸コード配列と連結することができる。あるいはまた、該コード配列は、既に該コントロール配列及び適当な制限サイトを含んでいる発現ベクターに、直接クローニングすることができる。
組換えポリペプチドを、長期に渡り、高収率で生産するためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象とする該ポリペプチドを安定に発現する細胞系は、ウイルス起源の複製及び/又は内在性の発現要素及び選別可能なマーカー遺伝子を、同一の又は別々のベクター内に含むことのできる、発現ベクターを用いて形質転換することができる。該ベクターの導入に続いて、細胞を選別培地での培養に切り替える前に、これらを1-2日間に渡り、栄養強化培地で育成することができる。選別可能なマーカーを用いる目的は、選別に対する抵抗性を付与することにあり、その存在は、該導入された配列を首尾よく発現する細胞の育成及び回収を可能とする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンを、この種の細胞にとって適当な、組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0053】
発現用の宿主として利用できる哺乳動物細胞系は、当分野において公知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection; ATCC)から入手できる、多くの不死化細胞系を包含し、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サルの腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK 293、ボウエ(Bowes)黒色腫、及びヒト肝細胞癌腫(例えば、Hep G2)細胞及び多くの他の細胞系を含むが、これらに限定されない。
バキュロウイルス系において、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系用の物質は、市販品として、特にCA、サンジエゴのインビトロゲン(Invitrogen)社から、キット(マックスバック(MaxBac)キット)として入手できる。これらの技術は、一般に当業者には公知であり、Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555 (1987)に十分に記載されている。この系において使用するのに特に適した宿主細胞は、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila) S2及びスポドプテラ(Spodoptera) Sf9細胞である。
当分野において公知の、多くの植物細胞培養物及び全植物遺伝子発現系がある。適当な植物細胞遺伝子発現系の例は、米国特許第5,693,506号、同第5,659,122号及び同第5,608,143号に記載されているものを包含する。植物細胞培養物中の遺伝子発現系の更なる例は、Zenk, Phytochemistry, 1991, 30:3861-3863に記載されている。
【0054】
特に、プロトプラストを単離し、かつ培養して全再生植物を与えることのできる、全ての植物を使用することができ、従って全植物を回収することができ、これは該伝達された遺伝子を含む。実際に、全ての植物は、培養細胞又は組織から再生することができる。サトウキビ、サトウダイコン、綿、果実及び他の樹木、マメ科植物及び野菜の主な種の全てを含むが、これらに制限されない。
特に好ましいバクテリア宿主細胞の例は、ストレプトコッカス(streptococci)、スタフィロコッカス(staphylococci)、E.コリ(E. coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)、及びバチルスズブチリス(Bacillus subtilis)細胞を包含する。
真菌発現用に特に適した宿主細胞の例は、酵母細胞(例えば、S.セレビシアエ(S. cerevisiae))及びアスペルギルス(Aspergillus)細胞を含む。
形質転換細胞系を回収するのに使用できる、多数の選別系が、当分野において公知である。その例は、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, M.等, Cell, 1977, 11:223-32)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, I.等, Cell, 1980, 22:817-23)遺伝子を含み、これらは夫々、tk-又はaprt±細胞において使用できる。また、代謝拮抗物質、抗生物質又は除草剤耐性を、選別用の基礎として使用することができ、例えばメトトレキセートに対する耐性を付与する、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(Wigler, M.等, Proc. Natl. Acad. Sci., 1980, 77:3567-70);アミノグリコシドネオマイシン及びG-418に対する耐性を付与する、npt(Colbere-Garapin, F.等, J. Mol. Biol., 1981, 150:
1-14);及び夫々クロルスルフロン(Chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼ対する耐性を付与するals又はpatである。更なる選別可能な遺伝子が記載されており、その例は、当業者には明らかであろう。
【0055】
マーカー遺伝子発現の有無は対象とする遺伝子も存在することを示唆するが、その存在及び発現を確認する必要があることもある。例えば、関連する配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が無いことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を同定することができる。あるいは、単一のプロモータの制御下、本発明のポリペプチドをコードする配列とタンデム状態でマーカー遺伝子を配置することができる。誘導又は選別に応じたマーカー遺伝子の発現は、通常、このタンデム遺伝子の発現をも示す。
あるいはまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、また該ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者には公知の様々な手順で同定できる。これらの手順は、DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリッド化、及びタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)、又はイムノアッセイ技術(例えば、酵素結合イムノソルベントアッセイ[ELISA]及びラジオイムノアッセイ[RIA])を含むが、これらに限定されず、これらは、膜、溶液又はチップを基本とする、核酸又はタンパク質の検出及び/又は定量用の技術を包含する(Hampton, R.等, 血清学的方法(Serological Methods), 研究室用マニュアル(a Laboratory Manual), APS Press, MN、セントポール及びMaddox, D.E.等, J. Exp. Med., 1983, 158:1211-1216を参照のこと)。
【0056】
広範囲に渡る標識及び複合化技術が当業者には公知であり、また様々な核酸及びアミノ酸アッセイにおいて利用できる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と関連する配列を検出するための、標識されたハイブリッド化又はPCRプローブを製造するための手段は、オリゴ標識化(oligolabelling)、ニックトランスレーション、末端標識、又は標識したポリヌクレオチドを使用するPCR増幅を包含する。あるいはまた、本発明のポリペプチドをコードする配列は、mRNAプローブを製造するために、ベクター中にクローニングすることができる。このようなベクターは当業者において公知であり、市販品として入手可能であり、またインビトロにて、適当なRNAポリメラーゼ、例えばT7、T3、又はSP6及び標識されたヌクレオチドの添加により、RNAプローブを合成するために利用できる。これらの手順は、様々な市販品として入手できるキット(ファルマーシア&アップジョン(MI、カラマゾー);プロメガ(WI、マディソン);及びU.S.バイオケミカル社(U.S. Biochemical Corp., OH、クリーブランド))を用いて、実施することができる。
欠失を容易にするために使用できる、適当なリポータ分子又はラベルは、放射性核種、酵素及び蛍光性物質、化学発光物質又は色素原物質並びに基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子等を含む。
本発明による核酸分子は、またトランスジェニック動物、特に齧歯目の動物を創造するのに使用することができる。このようなトランスジェニック動物は、本発明の更なる局面を構成する。これは、体細胞の変性により、あるいは生殖系列療法(germ line therapy)によって局所的に行って、遺伝性の修飾を組込むことができる。このようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレータとして効果的な薬物分子に対する、動物モデルの生成において、特に有用であり得る。
【0057】
該ポリペプチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組換え細胞培養物から回収し、かつ精製することができる。精製のためには、高性能液体クロマトグラフィーが特に有用である。該ポリペプチドが、その単離及び/又は生成中に変性する場合には、その活性な立体配座を再生するために、タンパク質再生用の周知の技術を利用することができる。
また、特殊なベクター構造を使用して、所望の如く、本発明のポリペプチドをコードする配列と、可溶性のタンパク質の精製を容易にするであろう、ポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列とを結合することにより、タンパク質の精製を簡略化することができる。このような精製を簡略化するドメインの例は、金属キレート化ペプチド、例えば固定化金属上での精製を可能とするヒスチジン-トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能とするプロテインAドメイン、及びFLAGS/アフィニティー精製システム(WA、シアトルのイムネックス社(Immunex Corp.))において使用されるドメインを包含する。開裂可能なリンカー配列、例えばファクタXA又はエンテロキナーゼ(CA、サンジエゴのインビトロゲン社)に対して特異的なものの、該精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間への挿入は、精製を容易化する目的で利用できる。このような発現ベクターの一つは、本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現のために準備する。
該融合タンパク質は、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ開裂サイトよりも先行する、幾つかのヒスチジン残基と融合している。これらのヒスチジン残基は、IMAC(Porath, J.等, Prot. Exp. Purif., 1992, 3:263-281に記載されているような、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー)による精製を簡略化するが、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ開裂サイトは、該融合タンパク質から該ポリペプチドを精製するための手段を与える。融合タンパク質を含有するベクターに関する議論は、Kroll, D.J.等(DNA Cell Biol., 1993, 12:441-453)によって与えられている。
【0058】
該ポリペプチドを、スクリーニングアッセイにおいて使用する目的で発現させる場合には、一般に、これを発現する宿主細胞の表面において製造することが好ましい。この点に関連して、該宿主細胞は、例えば蛍光活性化細胞分別(FACS)又はイムノアフィニティー技術を用いて、該スクリーニングアッセイで使用する前に収穫することができる。該ポリペプチドが該培地中に分泌される場合、該培地を回収して、発現された該ポリペプチドを回収し、かつ精製することができる。ポリペプチドが細胞内で製造される場合、該ポリペプチドを回収するに先立って、まず該細胞を溶解する必要がある。
本発明のポリペプチドは、様々な薬物スクリーニング技術の何れかにおいて、化合物のライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。このような化合物は、該遺伝子の発現レベル又は本発明のポリペプチドの活性レベルを、活性化(活発化)又は阻害(拮抗、相殺)することができ、また本発明の更なる局面を構成する。好ましい化合物は、本発明の第一局面のポリペプチドをコードする、天然遺伝子の発現を変更し、あるいは本発明の第一局面のポリペプチドの活性を調節するのに有効である。
アゴニスト又はアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、細胞を含まない処方物、化学ライブラリー又は天然生成物の混合物から単離することができる。これらのアゴニスト又はアンタゴニストは、天然又は変性基質、リガンド、酵素、レセプター、又は構造的又は機能的擬似物質であり得る。このようなスクリーニング技術に関する適当な概説に関しては、Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991, 1(2):第5章を参照のこと。
【0059】
高い可能性で良好なアンタゴニストであると考えられる化合物は、結合した際に、本発明のポリペプチドの生物学的な効果を誘発することなしに、該ポリペプチドと結合する分子である。有力なアンタゴニストは、小さな有機分子、ペプチド、ポリペプチド、及び本発明のポリペプチドと結合してその活性を阻害し、もしくは消滅させる抗体を包含する。このように、該ポリペプチドの正常な細胞結合分子との結合を、阻害することができ、結果的に該ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻止される。
このようなスクリーニング技術において使用される本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離状態とし、固形支持体に固定し、細胞表面上に担持させ、又は細胞内に配置させることができる。一般に、このようなスクリーニング手順は、該ポリペプチドを発現する適当な細胞又は細胞膜の使用を含み、該ポリペプチドは、結合、又は機能的応答の刺激又は阻害を観察するためのテスト化合物と接触される。該テスト化合物と接触状態にある、該細胞の該機能的な応答を、次に該テスト化合物と接触していないコントロール細胞とを比較する。このようなアッセイは、適当な検出系を用いて、該テスト化合物が、該ポリペプチドの活性化によってシグナルを発生することになるか否かを評価することができる。活性化の阻害剤は、一般に既知アゴニストの存在下で検定され、該テスト化合物の存在下における、該アゴニストによる活性化に及ぼされる効果が観測される。
【0060】
本明細書で述べるタイプのアッセイで検出可能なシグナルの生成方法は当業者には周知である。特定の例は、本発明のポリペプチドを発現する構成物、又は標的との結合の原因であるフラグメントを、GAL4 DNA結合ドメインとの融合において、リポータプラスミド、例えばpFR-Luc(Stratagene Europe, Amsterdam, The Netherlands)と一緒に細胞中にコトランスフェクト(cotransfect)することである。この特定のプラスミドは、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を制御するGAL4結合部位の5個のタンデムリピートを有する合成プロモータを含む。可能性のある標的又はリガンドを細胞に加えると、その標的又はリガンドがGAL4-ポリペプチド融合物と結合してルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘発する。ルシフェラーゼ発現のレベルは蛍光リーダーを用いてその活性によってモニターすることができる(例えば、Lehman et al. JBC 270, 12953, 1995; Pawar et al. JBC, 277, 39243, 2002参照)。
【0061】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定するための好ましい方法は、以下の諸工程を含む:
(a) 標識化合物又は非標識化合物を、いずれかの固形支持体(例えばビーズ、プレート、マトリックス支持体、チップ)上に固定化した前記ポリペプチドと接触させて、前記標識を測定し、又は前記化合物自体の存在を測定することによって前記化合物を検出する工程;又は
(b) 前記ポリペプチドを表面上に発現する細胞を、該細胞膜に該ポリペプチドを人工的に固定させる手段によって、あるいは該ポリペプチドに対するある化合物の結合に応答して、検出可能なシグナルを発生することのできる第二の成分と結合しているキメラレセプターを構築することによって、該ポリペプチドとの結合を可能とする条件下で、スクリーニングすべき化合物と接触させる工程;及び
(c) 該化合物と該ポリペプチドとの相互作用により発生するシグナルのレベルを、該化合物が存在しない場合のシグナルレベルと比較することにより、該化合物が該ポリペプチドと結合し、かつ活性化又は阻害するか否かを決定する工程。
例えば、ペプチドコアクチベータの存在下で該ポリペプチドに結合されるリガンドのFRET検出のような方法を使用しうる(Norris et al., Science 285, 744, 1999)。
さらに好ましい態様では、上記一般的方法は、該ポリペプチド用の標識リガンド又は非標識リガンドの存在下でアゴニスト又はアンタゴニストの同定を行う工程をさらに含むことができる。
【0062】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定するための別の態様は、以下の工程を含む:
該ポリペプチドとの結合を可能とする条件下、候補化合物の存在下で、いずれかの固体又はその細胞表面上の本発明のポリペプチドとのリガンドの結合の阻害を測定する工程、及び該ポリペプチドと結合したリガンドの量を測定する工程。リガンド結合量を低下することのできる化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストとして作用しうる競合物質と考えられる。好ましくは、リガンドは標識されている。
より具体的には、ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト化合物をスクリーニングする方法は、以下の諸工程を含む:
(a) 標識したリガンドと、いずれかの固形支持体若しくはその細胞表面上の本発明のポリペプチド、又は本発明のポリペプチドを含有する細胞膜と共にインキュベートする工程;
(b) 該固形支持体上のポリペプチド、該全細胞又は該細胞膜と結合した標識リガンドの量を測定する工程;
(c) 標識されたリガンドと、上記工程(a)の該固形支持体上に固定化されたポリペプチド、該全細胞又は該細胞膜との混合物に候補化合物を添加し、かつ該混合物を平衡状態にする工程;
(d) 該工程(c)の完了後、該固定化ポリペプチド又は該全細胞又は該細胞膜と結合した標識リガンドの量を測定する工程;及び
(e) 上記工程(b)及び(d)で結合した該標識リガンドの差異を比較する工程。結果的に、該工程(d)における結合量に減少を生じさせた化合物がアゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。
【0063】
上記アッセイにおいて、本ポリペプチドが用量依存様式で種々の生理的及び病理学的プロセスを調節することが分かる。従って、本発明のポリペプチドの「機能的等価物」は、上記アッセイにおいて、用量依存様式でいずれかの同一調節活性を呈するポリペプチドを含む。用量依存活性の程度は、本発明のポリペプチドの程度と同一である必要はないが、好ましくは、該「機能的等価物」は本発明のポリペプチドと比較した場合に、所定の活性に関するアッセイにおいて、実質的に同様の用量依存性を示すであろう。
上記態様の幾つかにおいて、簡単な結合アッセイを使用することができ、ここで該ポリペプチドを担持する表面に対するテスト化合物の接着力は、該テスト化合物と直接又は間接的に結合した標識によって、あるいは標識された競合物質との競合を含むアッセイにおいて検出される。他の態様では、競合的薬物スクリーニングアッセイを利用することができ、ここでは、該ポリペプチドと結合できる中和抗体が、結合に関して、テスト化合物と特異的に競合する。この方法では、該抗体を用いて、該ポリペプチドに対する特異的な結合アフィニティーを持つ、任意のテスト化合物の存在を検出することができる。
【0064】
また、細胞内での該ポリペプチドをコードするmRNAの製造に及ぼす、添加したテスト化合物の効果を検出するように、アッセイを設計することも可能である。例えば、モノクローナル又はポリクローナル抗体を用いて、当分野において公知の標準的な方法によって、ポリペプチドの分泌レベル又は細胞-結合レベルを測定するようにELISAを構成することができ、またこれを用いて、適当に操作された細胞又は組織による、ポリペプチドの生成を阻害又は増強しうる化合物を探索することができる。次いで、ポリペプチドとテストすべき化合物との間の結合複合体の形成を測定することができる。
また、本発明の用語に包含されるアッセイ法は、過剰発現アッセイ又は消耗アッセイで本発明の遺伝子とポリペプチドを使用することを含む。このようなアッセイは、細胞内のこれら遺伝子/ポリペプチドのレベルの操作と、操作された細胞の生理機能に及ぼすこの操作事象の影響の評価を含む。例えば、このような実験は特定の遺伝子/ポリペプチドが関係するシグナル発生及び代謝経路の詳細を明らかにし、研究されるポリペプチドが相互作用するポリペプチドのアイデンティティーに関する情報を生成し、かつ関連する遺伝子及びタンパク質を調節する方法についての手がかりを与える。
使用可能なもう一つの薬物スクリーニング技術は、対象とするポリペプチドに対する適当な結合アフィニティーを持つ化合物の高いスクリーニング能力を与える(国際特許出願WO 84/03564を参照)。この方法では、多数の異なる小さなテスト化合物を固体基質上で合成し、次いでこれらを本発明のポリペプチドと反応させ、洗浄することができる。該ポリペプチドを固定化する一つの方法は、非-中性抗体を用いることである。次いで、結合したポリペプチドを、当分野において周知の方法を用いて検出することができる。また、精製したポリペプチドをプレート上に直接塗布して上記の薬物スクリーニング技術で使用することも可能である。
【0065】
本発明のポリペプチドは、当分野において公知の標準的なレセプター結合技術を用いて、膜-結合した又は可溶性レセプターを同定するために使用でき、該結合技術は、例えばリガンド結合及び架橋アッセイであり、そこでは、該ポリペプチドは、放射性同位元素で標識されており、あるいはその検出又は生成を簡単化する、ペプチド配列と融合されており、また該ポリペプチドは、推定上のレセプターの源(例えば、細胞、細胞膜、細胞上澄み、組織抽出物、又は体液)と共にインキュベートされる。この結合の効力は、生物物理的な技術、例えば表面プラスモンレゾナンス及びスペクトル分析を用いて測定できる。
結合アッセイは、該レセプターの精製及びクローニングのために利用できるが、該ポリペプチドとそのレセプターとの結合と競合する、該ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定することもできる。スクリーニングアッセイを実施するための標準的な方法は、当分野において十分に理解されている。
本発明は、また上記のようなアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質、酵素を同定する方法において有用なスクリーニングキットをも含む。
本発明は、これらのアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質及び酵素、並びに上記方法によって発見された本発明のポリペプチドの活性又は抗原性を変調する他の化合物をも包含する。
本発明は、また本発明のポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物を、適当な製薬上の担体と共に含む薬理組成物をも提供する。これら組成物は、治療薬又は診断用の試薬として、ワクチンとして、又は以下において詳細に概説するように、他の免疫原性組成物として適したものであり得る。
【0066】
本明細書で使用する用語によれば、ポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物[X]を含む組成物は、この組成物の全量[X+Y] (ここで、Yは不純物である)に対して少なくとも85質量%がXである場合には、不純物(Y)を「実質的に含まない」ものである。好ましくは、Xは該組成物全重量[X+Y]の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95%、98%、又は99質量%でありさえする。
これら薬理組成物は、好ましくは治療上有効な量の、本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物を含むべきである。ここで使用する用語「治療上有効な量」とは、標的とする疾患又は状態を治療し、改善し又は予防するに要する、あるいは検出可能な治療又は予防効果を示すのに要する治療薬の量を意味する。任意の化合物に対して、治療上有効な用量は、初めに例えば腫瘍細胞の細胞培養アッセイ、通常マウス、ウサギ、イヌ又はブタである動物モデルにおいて見積もることができる。該動物モデルは、また適当な濃度範囲又は投与経路を決定するために使用することも可能である。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定することができる。
【0067】
ヒトを対象とする際の正確な有効量は、疾患状態の重篤度、該対象の一般的な健康状態、該対象の年齢、体重及び性別、食事、投与時間とその頻度、薬物の組合せ、反応に対する敏感性及び治療に対する寛容度/応答性に依存するであろう。この量は、ルーチン実験により決定することができ、また臨床医の判断の範囲内にある。一般に、有効投与量は、0.01mg/kg〜50mg/kgなる範囲、好ましくは0.05mg/kg〜10mg/kgなる範囲内にある。組成物は、個別に患者に投与することができ、あるいは他の薬剤、薬物又はホルモンとの組合せで投与することができる。
薬理組成物は、治療薬の投与のために製薬上許容される担体を含むこともできる。このような担体は、抗体及び他のポリペプチド、遺伝子及び他の治療薬、例えばリポソームを含むが、該担体それ自体は、該組成物を受容れる個体にとって有害な抗体の産生を誘発することが無く、しかも不当に毒性を示すことなしに投与できるものであることを条件とする。適当な担体は、大きな、徐々に代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活化されたウイルス粒子であり得る。
ここでは、製薬上許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機酸の塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸との塩を使用することも可能である。製薬上許容される担体に関する十分な議論は、レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(Mack Pub. Co. N.J. 1991)において入手できる。
【0068】
治療組成物における製薬上許容される担体は、更に水、塩水、グリセロール及びエタノール等の液体を含むこともできる。更に、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質等の補助的物質も、このような組成物に存在し得る。このような担体は、該薬理組成物を、患者に摂取させるために、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁剤として処方することを可能とする。
一旦処方した後には、本発明の組成物は、対象に直接投与することができる。治療すべき対象は、動物であり得、特にヒトを治療の対象とすることができる。
本発明で使用する該薬理組成物は、あらゆる数の経路で、例えば経口、静脈内、筋肉内、動脈内、延髄内、鞘内、心室内、経皮(transdermal)又はトランスクタニアス(transcutaneous))(例えば、WO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、経小腸、局所、舌下、膣内、又は直腸内投与手段を含む(これらに限定されない)経路で投与できる。遺伝子銃又はハイポスプレイを使用して、本発明の薬理組成物を投与することもできる。典型的には、これら治療組成物は、注射可能な、溶液又は懸濁液として、注射前に液状ビヒクルの溶液又は懸濁液とするのに適した、固体形状で調製できる。
この組成物の直接的な放出は、一般に注射、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内投与によって達成され、あるいは組織の間隙空間に放出される。これら組成物は、また病巣に投与することも可能である。投薬による治療は、単一投与スケジュール又は多重投与スケジュールであり得る。
【0069】
本発明のポリペプチドの活性が、特定の疾患状態において顕著である場合、幾つかの方法を利用できる。その一つの方法は、上記のように、対象に、製薬上許容される担体と共に、阻害性化合物(アンタゴニスト)を投与することを含むが、その量は、例えばリガンド、基質、酵素、レセプターの結合を遮断することによって、あるいは第二のシグナルを阻害することによって、該ポリペプチドの機能を阻害し、結果的にこの異常な状態を軽減するのに有効なものである。好ましくは、このようなアンタゴニストは抗体である。最も好ましくは、このような抗体は、前に記載したように、その免疫原性を最小化するために、キメラ及び/又はヒト化されたものである。
もう一つの方法において、問題とする、リガンド、基質、酵素、レセプターに対する結合アフィニティーを維持する、該ポリペプチドの可溶性型を投与することができる。典型的には、該ポリペプチドは、関連する部分を保持しているフラグメントとして投与することもできる。
【0070】
別の方法において、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、発現遮断技術、例えば内部で生成される又は外部から投与された、アンチセンス核酸分子(上記のような)の使用により阻害することができる。遺伝子発現の変更は、該ポリペプチドをコードする遺伝子の調節領域(シグナル配列、プロモータ、エンハンサ及びイントロン)又はコントロール5'に対する、相補配列又はアンチセンス分子(DNA、RNA又はPNA)を設計することによって得ることができる。同様に、阻害は、「トリプルヘリックス」塩基対形成法を利用して達成できる。トリプルヘリックス対形成法は、この対形成が、ダブルヘリックスの、ポリメラーゼ、転写ファクタ又は調節分子の結合を受容れる十分な能力を阻害することから、有用である。トリプレックスDNAを用いる最近の治療における進歩は、文献に記載されている(Gee, J.E.等(1994) In: Huber, B.E. & B.I. Carr, 分子的及び免疫学的研究法(Molecular and Immunologic Approaches),フツラ(Futura)出版社NY、Mt.キスコ)。該相補配列及びアンチセンス分子は、また転写生成物の、リボソームに対する結合を阻害することにより、mRNAの翻訳を遮断するように設計することができる。このようなオリゴヌクレオチドを投与することができ、あるいはこれをインビボでの発現によりその場で生成することができる。
【0071】
更に、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に対して特異的なリボザイムを用いることにより阻害し得る。リボザイムは、触媒的に活性なRNAであり、これは天然又は合成何れであっても良い(例えば、Usman, N.等, Curr. Opin. Struct. Biol., 1996, 6(4):527-33を参照のこと)。合成リボザイムは、選択された位置でmRNAを特異的に開裂するように設計して、該mRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を阻害することができる。
リボザイムは、通常RNA分子において見られるように、天然リボースホスフェート骨格及び天然塩基を用いて合成することができる。あるいは、また、このリボザイムは、非-天然型骨格、例えば2'-O-メチルRNAを用いて合成し、リボヌクレアーゼによる分解から保護することができ、また修飾した塩基を含むことができる。
RNA分子を変性して、細胞内安定性を高め、かつ半減期を延長することが可能である。
可能な変性は、該分子の5'及び/又は3'末端におけるフランキング配列の付加、又は該分子骨格内での、ホスホジエステル結合ではなく、寧ろホスホロチオエート又は2'-O-メチルの使用を含むが、これらに限定されない。この概念は、PNAの製造において固有のものであり、非-伝統的塩基、例えばイノシン、キューオシン(queosine)及びブトシン並びにアセチル-、メチル-、チオ-及び同様に修飾された形状にあるアデニン、シチジン、グアニン、チミン及び/又はウリジンを含めることによって、これらの分子全てに拡張できる。上記塩基は、内在性のエンドヌクレアーゼによって、容易に認識されるものではない。また、本発明のポリペプチドの過少発現及びその活性と関連した、異常な状態を処置するために、幾つかの方法を利用することができる。その一つは、対象に、治療的に有効な量の、該ポリペプチドを活性化する化合物、即ち上記したアゴニストを投与して、該異常な状態を軽減する工程を含む。あるいは、適当な製薬担体と組み合わせた、治療的量の該ポリペプチドを投与して、ポリペプチドの関連する生理的なバランスを回復させることが可能である。
【0072】
遺伝子療法を利用して、該対象内における関連細胞による、該ポリペプチドの内的生産を行うことができる。欠陥遺伝子を、修正された治療用の遺伝子で置換することによって、該ポリペプチドの不適当な生産性を、永続的に処置する目的で遺伝子療法を利用する。
本発明の遺伝子療法は、インビボ又はエクスビボ(ex vivo)にて実施できる。エクスビボ遺伝子療法は、患者細胞の単離及び精製、治療遺伝子の導入及び遺伝的に変更した細胞の患者への再度の導入を必要とする。逆に、インビボ遺伝子療法は、患者細胞の単離及び精製を必要としない。
該治療用遺伝子は、典型的に患者に投与するために「包装される」。遺伝子放出ビヒクルは、非-ウイルス性のビヒクル、例えばリポソーム、又は複製能力に乏しいウイルス、例えばBerkner, K.L., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 1992, 158:39-66に記載されているようなアデノウイルス、又はMuzyczka, N., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 1992, 158:97-129及び米国特許第5,252,479号に記載されているような、アデノ-関連ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を、複製能力に乏しいレトロウイルスベクター内で発現するように操作することができる。次いで、この発現構築物を単離し、該ポリペプチドをコードするRNAを含む、レトロウイルスプラスミドベクターで、形質導入したパッケージング細胞内に導入する。結果的に、該パッケージング細胞は、今や、対象とする遺伝子を含む感染ウイルス粒子を製造する。これらの産生細胞は、インビボで細胞を操作し、かつインビボで該ポリペプチドの発現を行うため、対象に投与することができる(遺伝子療法及び他の分子遺伝学的治療法(Gene Therapy and other Molecular Genetic-based Therapeutic Approaches),第20章(及びそこに引用されている文献)、ヒューマンモレキュラージェネチックス(Human Molecular Genetics)(1996), T. Strachan & A.P. Read, BIOS サイエンティフィック(Scientific)出版社)。
【0073】
他の方法は、該治療用の遺伝子が、直接血流中又は筋肉組織内に注射される、「裸のDNA」の投与である。
本発明のポリペプチド又は核酸分子が、疾患の原因薬剤となっている状況下では、本発明は、これらをワクチンにおいて使用して、該疾患原因薬剤に対する抗体を生成する方法を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(即ち、感染防止)又は治療的(即ち、感染後の疾患の治療)何れであっても良い。このようなワクチンは、免疫感作抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を、通常上記のような製薬上許容される担体と共に含有し、該担体は、それ自体、この組成物を受容れる個人に対して有害な抗体の生産を誘発しない、任意の担体を包含する。更に、これらの担体は、免疫刺激剤(アジュバント)として機能することもできる。その上、該抗原又は免疫原は、バクテリアトキソイド、例えばジフテリア、狂犬病、コレラ、H.ピロリ及び他の病原体由来のトキソイドと複合化することも可能である。
ポリペプチドは胃において分解される恐れがあるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは腸管外(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、又は皮内注射)投与される。腸管外投与に適した処方物は、水性及び非水性滅菌注射溶液を含み、これらは酸化防止剤、バッファー、静菌剤、レシピエントの血液に対して該処方物を等張性にする溶質を含むことができ、また水性及び非水性滅菌懸濁液をも含み、これらは懸濁剤又は増粘剤を含むことができる。
【0074】
本発明のワクチン処方物は、単位投与容器内又は多重投与容器内で調製することができる。例えば、封止されたアンプル及びバイアルを、凍結乾燥された状態で保存することができ、これらは、使用の直前に無菌液状担体の添加のみを必要とする。投与量は、該ワクチンの特異的な活性に依存し、また容易にルーチン実験により決定できる。
本発明によるポリペプチドと結合する抗体の遺伝子的放出も、国際特許出願WO98/55607に記載されているように、効果的である。
ジェット注入(jet injection)と呼ばれる技術(例えば、www.powderject.comを参照のこと)も、ワクチン組成物の処方において有用である。
予防接種に関する多くの適当な方法及びワクチン放出系が、国際特許出願WO00・29428に記載されている。
本発明は、また本発明による核酸分子の、診断用試薬としての使用にも関連する。機能不全と関連する本発明の核酸分子によって特徴付けられる遺伝子の、突然変異型の検出は、診断手段をもたらし、この手段は、又は該遺伝子の過少発現、過剰発現又は変更された空間的又は時間的な発現に起因する、疾患又は疾患に対する感受性の診断に追加し、あるいはこれを定義することを可能とする。遺伝子に突然変異を含む個体は、様々な技術で決定される、DNAレベルによって検出できる。
【0075】
診断用の核酸分子は、対象の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織の生検又は剖検材料から得ることができる。該ゲノムDNAは、検出のために直接使用することができ、また分析に先立って、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ストランド置換増幅(SDA)、又は他の増幅技術(Saiki等, Nature, 1986, 324:163-166; Bej等, Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 1991, 26:301-334; Birkenmeyer等, J. Virol. Meth., 1991, 35:117-126; Van Brunt, J., Bio/Technology, 1990, 8:291-294を参照)を利用することにより、酵素を利用して増幅することができる。
一態様において、本発明のこの局面は、患者における疾患を診断する方法を提供し、この方法は、本発明によるポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現レベルを評価する工程及びこの発現レベルと、コントロールレベルとを比較する工程を含み、ここで該コントロールレベルと異なる遺伝子発現レベルは、疾患存在の指標となる。この方法は以下のような諸工程を含むことができる:
a) 該患者を由来とする組織のサンプルと、核酸プローブとを、本発明の核酸分子と該プローブとの間に、ハイブリッド複合体の形成を可能とするストリンジェント条件下で接触させる工程と、
b) コントロールサンプルと該プローブとを、上記工程a)において使用したものと同一の条件下で接触させる工程と、
c) 該サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程とを含み、
ここで、該コントロールサンプルにおける該ハイブリッド複合体レベルとは異なる、該患者サンプルにおける該ハイブリッド複合体レベルの検出が、疾患の指標となる。
【0076】
本発明の更なる局面は、以下の様な諸工程を含む、診断法を包含する:
a) 疾患につきテストすべき患者由来の組織を得る工程と、
b) 該組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程と、
c) 該核酸分子における、該疾患と関連する突然変異の存在を検出することにより、該患者を該疾患について診断する工程。
上記方法における核酸分子の検出を助けるために、例えばPCRを利用する増幅段階を含むことができる。
欠失及び挿入は、正常な遺伝子型と比較した際の該増幅生成物のサイズにおける変化により検出できる。点突然変異は、増幅されたDNAと、本発明の標識したRNA、あるいはまた本発明の標識されたアンチセンスDNA配列とハイブリッド化することにより同定できる。完全に一致する配列は、RNase消化、又は溶融温度における差異を評価することによって、適合しない二重鎖から識別することができる。該患者における突然変異の有無は、DNAと、ハイブリッド二本鎖分子を形成するためのストリンジェント条件下で、このDNAとハイブリッド化する核酸プローブとを接触させることによって、検出することができる。ここで、該ハイブリッド二本鎖分子は、疾患と関連する突然変異と対応する任意の部分に、該核酸プローブストランドのハイブリッド化されていない部分を含み、また該DNAストランドの対応する部分における疾患関連突然変異の有無の指標として、該プローブストランドのハイブリッド化されていない部分の有無を検出する。
かかる診断は、出生前及び新生児のテストに対してさえも、極めて有用である。
【0077】
点突然変異及び基準遺伝子と「突然変異」遺伝子との間の他の配列差は、他の周知の技術、例えば直接的DNA配列決定又は一本鎖の配座多形性等により同定することができる(Orita等, Genomics, 1989, 5:874-879を参照のこと)。例えば、配列決定プライマーを、二本鎖PCR生成物又は改良PCRによって生成された、一本鎖鋳型分子と共に使用することができる。この配列決定は、放射性標識されたヌクレオチドを使用した公知の手順により、又は蛍光性タグを用いた自動配列決定手順によって行われる。クローニングされたDNAセグメントを、特定のDNAセグメントを検出するためのプローブとして使用することもできる。この方法の感度は、PCRと組み合わせた場合、大幅に高められる。更に、点突然変異及び他の配列上の変動、例えば多形性は、上記のようにして、例えば単一のヌクレオチドだけ異なる配列の、PCR増幅のために、対立遺伝子-特異的オリゴヌクレオチドを使用することによって、検出することができる。
DNA配列差は、変性剤の存在下又は不在下での、ゲル中でのDNAフラグメントの電気泳動移動度における変動により、あるいは直接的なDNA配列決定によって検出することも可能である(例えば、Myers等, Science, 1985, 230:1242)。特定の位置における配列変化も、ヌクレアーゼ保護アッセイ、例えばRNase及びS1保護又は化学的開裂法によって明らかにすることができる(Cotton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1985, 85:4397-4401を参照のこと)。
【0078】
公知のゲル電気泳動法及びDNA配列決定法に加えて、突然変異、例えばマイクロ欠失(microdeletions)、異数性、転座、逆位をも、その場での分析によって検出することができる(例えば、Keller等, DNA Probes, 1993, 第2版,ストックトンプレス(Stockton Press), NY, NY, USAを参照のこと)、即ち細胞内のDNA又はRNA配列は、これらを単離し、及び/又は膜上に固定化する必要なしに、突然変異につき分析することができる。その場での蛍光ハイブリッド化(FISH)は、現時点において最も一般的に利用される方法であり、またFISHに関する多くの概説が提出されている(例えば、Tranchuck等, Science, 1990, 250:559-562及びTrask等, Trends, Genet., 1991, 7:149-154を参照のこと)。
本発明のもう一つの態様では、本発明による核酸分子を含む、オリゴヌクレオチドのアレイを、遺伝的変異、突然変異及び多形性を効果的にスクリーニングするために構築することができる。アレイ技術は周知であり、一般的な応用性を有し、また遺伝子発現、遺伝子結合、及び遺伝子の変異性を包含する、分子遺伝学における様々な問題点を扱う上で利用することができる(例えば、M. Chee等, Science, 1996, 274:610-613を参照のこと)。
【0079】
一態様において、該アレイは、PCT出願WO95/11995(Chee等);Lockhart, D.J.等, Nat. Biotech., 1996, 14:1675-1680;及びSchena, M.等, Proc. Natl. Acad. Sci., 1996, 93:10614-10619に記載されている方法に従って、製造し、かつ使用される。オリゴヌクレオチド対は、2〜1,000,000以上なる範囲であり得る。これらオリゴマーは、光-誘発科学的方法を利用して、基質上で、指定された場所で合成される。該基質は、紙、ナイロン、又は他の型の膜、フィルタ、チップ、ガラススライド又は任意の他の適当な固体支持体であり得る。別の局面では、PCT出願WO95/25116(Baldeschweiler等)に記載されているように、化学的なカップリング手順及びインクジェット塗布装置を用いて、該基質の表面上にオリゴヌクレオチドを合成することができる。別の態様では、ドット(又はスロット)ブロットに類似する、「グリッド状」のアレイを使用して、cDNAフラグメント又はオリゴヌクレオチドを配置させ、かつこれと基質表面とを排気系、熱、UV、機械的又は化学的結合手順を用いて、結合することができる。上記のようなアレイは、手作業で、又は利用可能なデバイス(スロットブロット又はドットブロット装置)、材料(任意の適当な固体支持体)、及び装置(ロボット装置を含む)を利用して製造でき、また8、24、96、384、1536又は6144個のオリゴヌクレオチド、あるいは2〜1,000,000以上なる範囲内の任意の数のオリゴヌクレオチドを含むことができ、このような数のオリゴヌクレオチドは、市販品として入手できる装置の効果的な使用にとって適している。
【0080】
上で論じた方法に加えて、疾患は、対象由来のサンプルから、ポリペプチド又はRNAレベルの異常な増加又は減少を測定する工程を含む方法によって、診断することができる。
発現における増大又は減少は、ポリヌクレオチドの定量のために、当分野において周知の何れかの方法、例えば核酸増幅、例えばPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロッティング及び他のハイブリッド化法を利用して、RNAのレベルにつき測定できる。
宿主由来のサンプルにおける、本発明のポリペプチドのレベルを測定するために利用できるアッセイ技術は、当業者には周知であり、上において幾分詳しく論じた(ラジオイムノアッセイ、競合的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析及びELISAアッセイを包含する)。本発明のこの局面は、診断法を提供するものであり、この方法は、以下の諸工程を含む:(a) 上記のリガンドと、生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体を生成するのに適した条件下で接触させる工程、及び(b) 該複合体を検出する工程。
ポリペプチドレベルを測定するための、ELISA、RIA、及びFACS等のプロトコールは、付随的に、変更された又は異常なポリペプチド発現レベルに関する診断の基礎を与える。ポリペプチド発現の正常な又は標準的な値は、正常な哺乳動物の対象から採取した、体液又は細胞抽出物と、該ポリペプチドに対する抗体とを、複合体の形成に適した条件下で結合させることによって設定される。この標準的な複合体形成量は、様々な方法、例えば測光的手段により低了することができる。
【0081】
本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体は、該ポリペプチドの発現により特徴付けられる状態又は疾患の診断のために、あるいは本発明の該ポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物で治療している患者を、監視するためのアッセイにおいて使用することができる。診断の目的にとって有用な抗体は、治療法に関連して上記したものと同様な方法で製造できる。該ポリペプチドに関する診断アッセイは、ヒト体液及び細胞又は組織の抽出物における該ポリペプチドを検出するために、抗体及び標識を使用する方法を含む。これらの抗体は、変性し又は変性せずに使用でき、またこれらを、共有結合的に又は非-共有結合的にリポータ分子と結合することによって、標識することができる。当分野において公知の広範囲に及ぶリポータ分子を使用することができ、その幾つかは上に記載されている。
対象、コントロール及び生検処理した組織由来の疾患サンプル中で発現されたポリペプチドの量を、その標準値と比較する。該標準値と対象の値との間のズレは、疾患を診断するためのパラメータを設定する。診断アッセイは、ポリペプチドの存在、不在及び過剰発現間の識別、及び治療による介入があった際のポリペプチドレベルの調節を監視するために、利用することができる。このようなアッセイは、動物研究、臨床上の試み又は個々の患者に対する治療を監視する際に、特定の治療処置養生の効能を評価するのに使用することも可能である。
【0082】
本発明の診断用のキットは、以下のものを含むことができる:
(a) 本発明の核酸分子;
(b) 本発明のポリペプチド;又は
(c) 本発明のリガンド。
本発明の一局面において、診断キットは、ストリンジェント条件下で、本発明による核酸分子とハイブリッドを形成する核酸プローブを含む、第一の容器;該核酸分子を増幅するのに有用なプライマーを含む、第二の容器;及び疾患の診断を容易にするための、該プローブ及びプライマーの使用に関連する取扱説明書を含む。このキットは、更にハイブリッド化されていないRNAを消化するための試薬を収容した、第三の容器をも含むことができる。
本発明の別の局面においては、診断キットは、核酸分子のアレイを含み、その少なくとも一つは、本発明の核酸分子であり得る。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する、1種又はそれ以上の抗体、及び該抗体と該ポリペプチドとの間の結合反応を検出するのに有用な試薬を含むことができる。
【0083】
このようなキットは、上記TNF様タンパク質ファミリーのメンバーが関与している疾患又は該疾患に罹り易さを診断する上で有用である。このような疾患として、細胞増殖性障害、自己免疫性/炎症性疾患、遺伝的障害、成長障害、神経系障害、代謝障害、感染症及び他の病的状態;特に免疫障害、例えば自己免疫疾患、リウマチ性関節炎、骨関節炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、及び多発性硬化症;炎症性障害、例えばアレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、敗血症、内毒素性ショック、敗血症性ショック、悪液質、筋肉痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス感染後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道炎症、創傷治癒、子宮内膜症、皮膚科疾患、ベーチェット病、新生物障害、例えば黒色腫、肉腫、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、血液疾患、骨髄増殖性疾患、アポトーシスの無調節に伴う疾患、ホジキン病、骨粗しょう症、肥満症、糖尿病、痛風、心臓血管障害、再潅流傷害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、肝臓疾患、AIDS、AIDS関連合併症、神経障害、男性の不妊症、加齢及び感染症(変形体感染、細菌感染及びウイルス感染を含む)、遺伝性疾患(過IgM症候群(HIM、CD40L)、I型自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS、Fas/FasL)、TNF-R1関連周期性発熱症候群(TRAPS、TNF-R1)、発汗低下性外胚葉異形成症(HED、EDA/EDAR)、家族性膨張性骨溶解(FEO、RANK)を含む)及び他の病的状態が挙げられる。好ましくは、疾患は自己免疫疾患、自己免疫性内耳疾患、内耳炎、メニエール病及びメニエール症候群、外リンパ若しくは内耳瘻、耳鳴、神経変性疾患、アミロイド症、アルツハイマー病、パーキンソン病、家族性痴呆、炎症(関節痛、腫脹、貧血又は敗血症性ショック)、感染症、寄生生物症、微生物病、細菌性疾患、ウイルス性疾患(HIV、HTLV、MuLV、肺炎連鎖球菌及び回虫感染症)、糸球体腎炎、肥満症、糖尿病、真性糖尿病、シュミット型骨幹端軟骨異形成、角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、アテローム性動脈硬化症、壊血病、癌、胃腸間質性腫瘍、骨肉腫、軟骨芽細胞腫、巨細胞腫瘍、日本型脊椎骨幹端異形成症(SMD)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、白血病(慢性リンパ球白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL))、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLCL)、B細胞過形成、骨形成不全症、エーレルス-ダンロー症候群、頸動脈切開に対する感受性、大動脈瘤、耳脊椎巨大骨端異形成症(otospondylomegaepiphyseal dysplasia)、聴力障害(聾)、Weissenbacher-Zweymuller症候群、骨若しくは骨格疾患、遅発性網膜変性症(L-ORD)、年齢関連性黄斑変性症(AMD)、失明、関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、骨関節炎、ライム関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、中枢神経系及び末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄多発神経障害、重症筋無力症、気管支炎、気腫、腎不全(糸球体腎炎、血管炎、腎炎又は腎盂腎炎)、腎性新生物、腎細胞腺癌、腎臓腫瘍、軽鎖神経障害又はアミロイド症、臓器移植に伴う急性若しくは慢性免疫疾患、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、クローン病、全身性硬化症、特発性炎症性筋障害、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫媒介腎疾患、肝胆道系疾患、例えば感染性、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン感受性腸疾患、及びウィップル病、自己免疫性若しくは免疫媒介皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形紅斑及び接触皮膚炎を含む)、乾癬、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹、肺の免疫疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性間質性肺炎、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、サルコイドーシス、女性の不妊症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、シェーグレン症候群、外胚葉異形成症、X-連鎖発汗低下性外胚葉異形成症(HED)、副腎皮質の炎症性、虚血性又は新生物疾患、副腎腫瘍、ガングリオ神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫、コルチゾール産生性副腎皮質アデノーマ、脊髄小脳変性症関連疾患、小脳疾患、オリーブ核小脳萎縮(OPCA)及び/又はシャイ-ドレーガー症候群から選択される。このようなキットは、不妊症を含む生殖障害の検出のためにも使用できる。
【0084】
実施例
以下、本発明の様々な局面及び態様を特にINSP163ポリペプチドを参照して実施例により詳述する。
実施例1:ゲノムスレッダー
図1は、INSP163のゲノムスレッダー(Genome Threader)出力を示す。68%〜84%の信頼値を有するヒット5〜9はTNFタンパク質についてである。
実施例2:INSP163シグナル配列
異なる予測手段を用いて、INSP163について2種の異なるシグナルペプチドを予測した。SignalP(Nielsen, H. et al. 1997, Protein Engineering, 10, 1-6; Nielsen, H., and Krogh, A.: Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model. In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB 6), AAAI Press, Menlo Park, California, pp. 122-130 (1998))は、残基25と26の間の開裂を予測する。しかし、内部予測手段は残基20と21の間の開裂を予測する。従って、2つの選択的シグナルペプチド開裂部位があり得る。
【0085】
実施例3
INSP163でプロタンパク質コンバターゼの開裂部位が同定された(表1参照)。ズブチリシン様プロタンパク質コンバターゼ及びN-Arg二塩基性コンバターゼのメンバーは、潜在性前駆体タンパク質をその生物学的に活性な産物に加工するプロタンパク質コンバターゼである(Sheidah et al. 1999 Proc. Natl. Acad. Sci. 96(4):1321-6のレビュー参照)。この開裂から予測される活性産物はINSP163-A、INSP163-B、INSP163-C、INSP163-D、INSP163-E及びINSP163-Fである(図3)。プロテアーゼは、INSP163のc1qドメインの前又はコラーゲンドメインの前のどちらかを切断する。INSP163-A、INSP163-B及びINSP163-Cはc1q及びコラーゲンドメインを含有するが、INSP163-D、INSP163-E及びINSP163-Fはc1qドメインのみを内部にもつ(図2から推論される)。
【0086】
異なるメンバーが同定された。ズブチリシン/ケキシンアイソザイム-1(SKI-1)プロテアーゼは、別個の機能性ドメインで構成される哺乳類ズブチラーセ(subtilase)である。ズブチリシン様プロタンパク質コンバターゼは哺乳類の神経細胞及び内分泌細胞内で広範に発現され、ニューロペプチドとペプチドホルモン前駆体の両方のタンパク質分解プロセシングで主要な役割を果たす。SKI-1の主要基質には、ステロール調節要素結合タンパク質、調節コレステロール及び脂肪酸ホメオスタシスがある。他の基質として、転写因子-6を活性化するストレス応答因子、脳誘導神経栄養因子、及びアレナウイルス属のファミリーに属する高い感染性のウイルスの表面糖タンパク質が挙げられる(Elagoz et al. 2002 J Biol Chem. 277(13):11265-75)。プロホルモン-プロセシングイーストKEX2プロテアーゼは、細胞内膜タンパク質又は可溶性の分泌エンドペプチダーゼとして作用しうる。このタンパク質はα-因子及びキラートキシンの前駆体のプロセシングに必要である。PCSK1(プロタンパク質コンバターゼ1、NEC1)及びPCSK2(プロタンパク質コンバターゼ2、NEC2)は、I型プロインスリン-プロセシング酵素であり、インスリン生合成の調節で重要な役割を果たす。これらはプロオピオメラノコルチン、プロレニン、プロエンケファリン、プロダイノルフィン、プロソマトスタチン及びプロガストリンを開裂することも分かっている。PACE4(対の塩基性アミノ酸開裂系4、SPC4)は、これらコンバターゼの対の塩基性アミノ酸プロセシング部位で前駆体タンパク質を開裂できる、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼである。その基質のいくつかは形質転換成長因子β関連タンパク質、プロアルブミン、及びフォンビルブラント因子である。フューリン(PACE、対の塩基性アミノ酸開裂酵素、膜関連レセプタータンパク質)は、基質のプロセシング多様性の原因であるセリンエンドプロテアーゼである(プロ副甲状腺ホルモン、形質転換成長因子β1前駆体、プロアルブミン、プロ-β-セクレターゼ、1-型膜マトリックスメタロプロテイナーゼ、プロ-神経成長因子及びフォンビルブラント因子のβサブユニット)。PC7(プロタンパク質コンバターゼズブチリシン/ケキシン7型)はPACE及びPACE4に密接に関連する。このカルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼはトランス-ゴルジネットワーク内に集中し、膜と会合して分泌されない。それはプロアルブミンを加工できる。PC7とフューリンもHIVエンベロープ糖タンパク質gp160及びgp140の活性化の原因であるプロテアーゼの1つであると考えられている。
N-Argニ塩基性コンバターゼ(NDR)は、主にラットの大脳皮質及び精巣からクローニングされるメタロエンドペプチダーゼであり、ニ塩基性ストレッチ内のArg残基のN末端上のペプチド基質を開裂する。NDRは、好ましくは-Xaa-+-Arg-Lys-でポリペプチドを加水分解するが、-Arg-+-Arg-Xaaでの加水分解はあまり一般的でない。ここで、XaaはArg又はLysでない。NDRはα-ネオエンドルフィン、ANF、ダイノルフィン、プレプロニューロテンシン及びソマトスタチンを開裂できることが分かっている。また、活性NDRの細胞外局在化の証拠もある。




【0087】
表1

【0088】
実施例4:INSP163のクローニング
〔ヒトcDNA鋳型の調製〕
まず種々のヒト組織の全RNAサンプル(Clontech, Stratagene, Ambion, Biochain Institute及び社内製品)から、Superscript II又はSuperScript III RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を用いて製造業者のプロトコールに従ってストランドcDNAを調製した。
Superscript IIについて:オリゴ(dT)15プライマー(1μl、500μg/mlで)(Promega)、2μgのヒト全RNA、1μlの10mM dNTPミックス(10mMの各dATP、dGTP、dCTP及びdTTP、中性pHで)及び滅菌蒸留水で最終容量12μlを1.5mlのエッペンドルフチューブ内で混ぜ合わせ、5分間65℃に加熱し、氷上で冷却した。簡易遠心分離で中身を収集し、4μlの5X First-Strandバッファー、2μlの0.1M DTT、及び1μlのRnaseOUTTM組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40単位/μl,Invitrogen)を加えた。チューブの中身を穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベートしてから1μl(200単位)のSuperScript IITM酵素を加え、ピペット操作で穏やかに混合した。混合物を42℃で50分間インキュベートしてから70℃で15分間加熱して不活性化した。cDNAに相補性のRNAを除去するため、1μl(2単位)の大腸菌RNase H(Invitrogen)を添加し、反応混合物を37℃で20分間インキュベートした。
SuperScript IIIについて:1μlのオリゴ(dT)20プライマー(50μM,Invitrogen)、2μgのヒト全RNA、1μlの10mM dNTPミックス(10mMの各dATP、dGTP、dCTP及びdTTP、中性pHで)及び滅菌蒸留水で最終容量10μlを1.5mlのエッペンドルフチューブ内で混ぜ合わせ、65℃に5分間加熱してから氷上で冷却した。各RT反応では以下のようにcDNA合成ミックスを調製した:2μlの10X RTバッファー、4μlの25mM MgCl2、2μlの0.1M DTT、1μlのRNaseOUTTM(40U/μl)及び1μlのSuperScript IIITM RT酵素を別個のチューブ内で混ぜ合わせてからこのミックス10μlを、RNA/プライマー混合物を含有するチューブに添加した。チューブの中身を穏やかに混合し、簡易遠心分離で収集し、50℃で50分間インキュベートした。80℃で5分間インキュベートして反応を終わらせてから反応混合物を氷上で冷却し、簡易遠心分離で収集した。cDNAに相補性のRNAを除去するため、1μl(2単位)の大腸菌RNase H(Invitrogen)を添加し、反応混合物を37℃で20分間インキュベートした。
最後の21μlの反応混合物に179μlの滅菌水を加えて希釈し、総量200μlを得た。これは、それぞれ個々のcDNA鋳型の約20ng/μlに相当した。
【0089】
〔PCR用の遺伝子特異性クローニングプライマー〕
プライマー設計ソフトウェア(Primer Designer Software)(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用いて18〜30塩基の長さを有する1対のPCRプライマーを設計してINSP163予測cdsの全長を増幅した。55±10℃に近いTmと40〜60%のGC含量を有するようにPCRプライマーを最適化した。ほとんど又はまったく特別のプライミングなしで標的配列(INSP163)に対して高い選択性を有するプライマーを選択した。
〔ヒトcDNA鋳型由来のINSP163のPCR増幅〕
遺伝子特異性クローニングプライマー(INSP163-CP1及びINSP163-CP2、図2、表2)を設計してINSP163cdsの全長をカバーする929bpのcDNAフラグメントを増幅した。INSP163予測のある公共のEST配列データベースの質問は、該配列が正常な腎臓、クローン病の腎臓及び癌組織由来のcDNA鋳型かもしれないことを示唆した。従って、このプライマー対はPCR鋳型としてこれらソース由来の個々のcDNAサンプルと共に使用した。PCRは、1X Platinum(登録商標)Taqハイフィデリティー(High Fidelity)(HiFi)バッファー、2mM MgSO4、200μM dNTPs、0.2μMの各クローニングプライマー、1単位のPlatinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼハイフィデリティー(HiFi)(Invitrogen)、約20ngの個々cDNA鋳型、及び0X、1X又は2X PCRxエンハンサー溶液(Invitrogen)を含有する最終量50μlで行った。以下のようにプログラムしたMJ Research DNA Engineを用いてサイクリングを行った:94℃,2分;94℃,30秒、66℃,30秒、及び68℃,1分を40サイクル;次に68℃で8分間を1サイクル及び4℃の保持サイクル。
30μlの各増幅産物を1X TAEバッファー(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化した。MinElute DNA精製システム(Qiagen)を用いて、予測した分子量の産物をゲルから精製し、10μlのEBバッファー(10mM Tris.Cl, pH 8.5)に溶出し、直接サブクローニングした。
【0090】
〔PCR産物のサブクローニング〕
Invitrogen社から購入したTAクローニングキットを用い、製造業者が指定した条件で、PCR産物をトポイソメラーゼI修飾クローニングベクター(pCR4-TOPO)にサブクローニングした。要するに、4μlのゲル精製PCR産物を1μlのTOPOベクター及び1μlの塩溶液と15分間室温でインキュベートした。次に以下のように反応混合物を大腸菌株TOP10(Invitrogen)に形質転換した:50μl分量のOne Shot TOP10細胞を氷上で解かし、2μlのTOPO反応を加えた。混合物を15分間氷上でインキュベートしてから正確に30秒間42℃でインキュベートして熱ショックを与えた。サンプルを氷上に戻し、250μlの温かい(室温)SOC媒体を加えた。サンプルを振とうさせながら(220rpm)1時間37℃でインキュベートした。アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に形質転換混合物を塗布し、一晩37℃でインキュベートした。
〔コロニーPCR〕
コロニーを滅菌つまようじで50μlの滅菌水中に接種した。1X AmpliTaqTMバッファー、200μM dNTPs、20pmolesのT7プライマー、20pmolesのT3プライマー、及び1単位のAmpliTaqTM(Applied Biosystems)を含有する総反応量20μlのPCRにMJ Research DNA Engineを用いて10μl分量の接種材料を供した。サイクリング条件は以下のとおりだった:94℃,2分間;94℃,30秒、48℃,30秒及び72℃1分30秒を30サイクル。さらなる分析前にサンプルを4℃で維持(保持サイクル)した。
PCR反応産物を1X TAEバッファー中1%アガロースゲル上で分析した。ほぼ予想した分子量(929bp+105bp(マルチプルクローニング部位(MCS)による))を与えたコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)を含有する5mlのL-ブロス(LB)中、220rpmで振とうさせながら37℃で一晩成長させた。
〔プラスミドDNA調製及びシークエンシング〕
Biorobot 8000ロボットシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ番号1460)を用い、製造業者の説明書に従って5mlの培養からミニプレッププラスミドDNAを調製した。プラスミドDNAを80μlの滅菌水に溶出した。エッペンドルフBO測光計又はSpectramax 190測光計(Molecular Devices)を用いてDNA濃度を測定した。BigDyeターミネーターシステム(Applied Biosystemsカタログ番号4390246)を用い、製造業者の説明書に従ってプラスミドDNA(200〜500ng)をT7及びT3シークエンシングプライマーによるDNAシークエンシングに供した(表2、図2)。Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーアッププレート(Milliporeカタログ番号LSKS09624)を用いてシークエンシング反応を精製してからApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
配列解析は正常な腎臓のcDNA鋳型から増幅されたクローンを同定し、予想したINSP163配列を含んでいた。このクローン化cDNAフラグメントの配列を図2に示す。クローン化PCR産物のプラスミドマップはpCR4-TOPO-INSP163である。
【0091】
表2

下線付き配列=コザック配列
“”付き配列=終止コドン
[]内配列 =Hisタグ
【0092】
実施例5:INSP163用哺乳類細胞発現ベクターの構築
ゲートウエイ(GatewayTM)クローニング方法論(Invitrogen)を使用し、pCR4-TOPO-INSP163をPCR鋳型として用いて6HISタグをコードする3'配列を有するINSP163 ORF配列を含むpEAK12d及びpDEST12.2発現クローンを生じさせた。
〔インフレーム6HISタグ配列に融合したゲートウエイ適合性INSP163 ORFの生成〕
ゲートウエイクローニングプロセスの第1段階は、5'末端でattB1組換え部位及びコザック配列と隣接し、3'末端でインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグをコードする配列、終止コドン及びattB2組換え部位(ゲートウエイ適合性cDNA)と隣接しているINSP163のORFを生成する2工程PCR反応に関係する。第1PCR反応(最終量50μl)はそれぞれ以下の成分を含む:1μl(40ng)のプラスミドpCR4-TOPO-INSP163、1.5μlのdNTPs(10mM)、10μlの10X Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、0.5μlの各遺伝子特異性プライマー(100μM)(INSP163-EX1及びINSP163-EX2)、10μlの10X EnhancerTM溶液(Invitrogen)及び0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)。PCR反応は、95℃で2分間の初期変性工程後、94℃で15秒間の12サイクル;55℃で30秒間及び68℃で2分間;及び4℃び保持サイクルの工程で行った。増幅産物は、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い、製造業者の説明書に従って直接で精製し、50μlの無菌水中に回収した。
第2PCR反応(最終量50μl)は10μlの精製PCR1産物、1.5μlのdNTPs(10mM)、5μlの10X Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、0.5μlの各ゲートウエイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワードとGCPリバース)及び0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼを含有した。第2PCR反応の条件は以下のとおりだった:95℃で1分間;94℃で15秒間の4サイクル;50℃で30秒及び68℃で2分間;94℃で15秒間の25サイクル;55℃で30秒及び68℃で2分;次に4℃の保持サイクル。PCR産物を1X TAEバッファー(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化し、Wizard PCR Preps DNA精製システム(Promega)を用い、製造業者の説明書に従って予測分子量(976bp)で移動する一団をゲルから精製し、50μlの無菌水に回収した。
【0093】
〔ゲートウエイ適合性INSP163 ORFのゲートウエイエントリーベクターpDONR221へのサブクローニングと発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2〕
ゲートウエイクローニングプロセスの第2段階は以下のとおりのゲートウエイ修飾PCR産物のゲートウエイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen)へのサブクローニングを含む:PCR2からの5μlの精製産物を1.5μlのpDONR221ベクター(0.1μg/μl)、2μlのBPバッファー及び1.5μlのBPクロナーゼ酵素ミックス(Invitrogen)と最終量10μlでRTにて1時間インキュベートした。プロテイナーゼKを1μl(2μg/μl)添加して反応を停止し、さらに10分間37℃でインキュベートした。この反応の一定分量(1μl)を用いて以下のように大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションで形質転換した:25μl分量のDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)を氷上で解かし、1μlのBP反応ミックスを添加した。冷却した0.1cmのエレクトロポレーションキュベットに混合物を移し、BioRad Gene-PulserTMを用いて製造業者が推奨するプロトコールに従って細胞をエレクトロポレートした。予め室温に温めておいたSOC培地(0.5ml)をエレクトロポレーション直後に加えた。混合物を15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振とうさせながら(220rpm)1時間37℃でインキュベートした。この形質転換混合物の一定分量(10μlと50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に塗布した。
生成した6つのコロニー由来の5mlの培養からQiaprep BioRobot 8000システム(Qiagen)を用いてプラスミドミニプレップDNAを調製した。BigDyeターミネーターシステム(Applied Biosystemsカタログ番号4336919)を用い、製造業者の説明書に従ってプラスミドDNA(150〜200ng)を21M13及びM13RevプライマーによるDNAシークエンシングに供した。このプライマーを表2に示す。Montage SEQ 96クリーンアッププレート(Milliporeカタログ番号LSKS09624)を用いてシークエンシング反応を精製してからApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
正しい配列(pENTR_INSP163-6HIS)を含むクローンの1つから得たプラスミド溶出液(2μl又は約150ng)を、1.5μlのpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクターのどちらか(0.1μg/μl)、2μlのLRバッファー及び1.5μlのLRクロナーゼ(Invitrogen)を最終体積10μlに含有する組換え反応で使用した。混合物をRTで1時間インキュベートし、プロテイナーゼK(2μg)を添加して反応を停止し、さらに10分間37℃でインキュベートした。この反応の一定分量(1μl)を用いて以下のように大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションで形質転換した:25μl分量のDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)を氷上で解かし、1μlのLR反応ミックスを添加した。混合物を冷却0.1cmエレクトロポレーションキュベットに移し、BioRad Gene-PulserTMを用い、製造業者が推奨するプロトコールに従って細胞をエレクトロポレートした。予め室温に温めておいたSOC培地(0.5ml)をエレクトロポレーション直後に加えた。混合物を15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振とうさせながら(220rpm)1時間37℃でインキュベートした。形質転換混合物の一定分量(10μlと50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に塗布し、 一晩37℃でインキュベートした。
その結果各ベクターにサブクローニングされた6つのコロニーから得た5mlの培養から、Qiaprep BioRobot 8000システム(Qiagen)でプラスミドミニプレップDNAを調製した。上述したとおりのpEAK12F及びpEAK12RプライマーによるDNAシークエンシングにpEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)を供した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)は、上述したとおりの21M13及びM13RevプライマーによるDNAシークエンシングに供した。プライマー配列は表2に示す。
配列検証したクローン(pEAK12d_INSP163-6HIS)の500mlの培養から、Sambrook J.ら, 1989(in Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている方法でCsCl勾配精製マキシプレップDNAを調製した。プラスミドDNAを無菌水(又は10mM Tris-HCl pH 8.5)中1μg/μlの濃度で再懸濁させて-20℃で貯蔵した。
配列検証したクローン(pDEST12.2_INSP163-6HIS)の500ml培養から、EndoFree Plasmid Megaキット(Qiagen)を用い、製造業者の説明書に従って、内毒素フリーのマキシプレップDNAを調製した。内毒素フリーTEバッファーに少なくとも3μg/μlの最終濃度で精製プラスミドDNAを再懸濁させて-20℃で貯蔵した。
【0094】
実施例6:INSP163の発現及び精製
さらに実験を行い、ここに記載したヌクレオチド及びアミノ酸配列に基いてINSP163ポリペプチドのインビボ組織内分布及び発現レベルを決定することができる。
INSP163の転写物の存在は、異なるヒト組織由来のcDNAをPCR増幅することにより検討することができる。このINSP163転写物は、テストしたサンプル中に極めて低レベルで存在しうる。従って、RNA調製物中の少量のゲノムコンタミネーションが誤った正の結果を与えるので、様々なヒト組織における転写物の存在を確認するための実験を設計するに際しては、細心の注意が必要となる。従って、逆転写のために使用する前に、全てのRNAをDNAseで処理すべきである。更に、各組織については逆転写が行われなかったコントロール反応(-ve RTコントロール)を設定することができる。
例えば、各組織由来の全RNA1μgを使用し、マルチスクリプト(Multiscript)逆転写酵素(ABI)及びランダムヘキサマープライマーを用いてcDNAを生成することができる。各組織に対して、該逆転写酵素以外の全ての成分を添加するコントロール反応(-ve RTコントロール)を設定する。逆転写されたRNAサンプル及びマイナスRTコントロールに基いて各組織についてPCR反応を設定する。INSP163-特異的プライマーは、ここで与えた配列情報に基いて容易に設計することができる。逆転写されたサンプル中の正しい分子量の産物の存在と共にマイナスRTコントロール中の産物の非存在が当該組織中の転写物の存在の証拠であると考えられる。上述したように生成されるもののみならず、いずれの適宜のcDNAライブラリーを使用しもINSP163転写物をスクリーニングすることができる。
【0095】
INSP163ポリペプチドの組織分布パターンは、これらポリペプチドの機能に関連するさらに有用な情報を与えるだろう。また、発現ベクターを用いてさらなる実験を行うことができる。哺乳類細胞系のこれらベクターによるトランスフェクションは、INSP163タンパク質の高レベル発現を可能とし、ひいてはINSP163ポリペプチドの機能的な特徴の継続的研究を可能にする。以下に挙げる物質及び方法は、このような実験に適した物質及び方法の例である:
細胞培養
エプシュタインバールウイルスの核抗原(Epstein-Barr virus Nuclear Antigen)を発現するヒト胚腎293細胞(HEK293-EBNA、インビトロゲン)は、Ex-細胞VPRO血清-フリー培地(種子保存、維持培地、JRH)中に懸濁状態で維持される。トランスフェクション前の16〜20時間(Day-1)、細胞を2xT225フラスコに播種した(DMEM/F12(1:1)含有2%FBS播種培地(JRH)中で2x105細胞/mlの密度でフラスコ当たり50ml)。翌日(トランスフェクション日0)、JetPEITM試薬(2μl/μgのプラスミドDNA,ポリプラス(PolyPlus)-トランスフェクション)を用いて、トランスフェクションを引き起す。各フラスコに対して、プラスミドDNAをGFP(蛍光リポータ遺伝子)DNAによって同時にトランスフェクトする。次いで、このトランスフェクション混合物を2xT225フラスコに添加し、37℃(5%CO2)で6日間インキュベートする。正のトランスフェクションの確認は1日目及び6日目に定性的蛍光実験により実施することができる(アキシオバート10ザイス(Axiovert 10 Zeiss))。
【0096】
6日目(収穫日)に2本のフラスコ由来の上清をプールし、濃縮(例えば、4℃で400gまで)し、かつ特有の同定装置を備えたポット内に置く。1アリコート(500μl)を6HIS-タグタンパク質QC(内部バイオプロセシングQC)用として保存する。
BP/PEI/HH/02/04として引用される“懸濁細胞のPEIトランスフェクション”と呼ばれるプロトコールに従い、トランスフェクション剤としてPolyscienceから入手可能なポリエチレンイミンを用いてスケールアップバッチを製造することができる。
精製法
C-末端6Hisタグを持つ組換えタンパク質を含有する培養培地のサンプルを冷バッファーA(50mM NaH2PO4; 600mM NaCl; 8.7%(w/v)グリセロール、pH 7.5)で希釈する。次に、このサンプルを滅菌フィルタ(ミリポア)を介して濾過し、無菌の角型培地ボトル(ナルゲン(Nalgene)製)中で、4℃にて保存する。
【0097】
この精製は、自動サンプル搭載装置(ラボマチック(Labomatic))と接続した、VISIONワークステーション(アプライドバイオシステムズ製)上で、4℃にて行う。この精製手順は、2つの連続する段階、即ちNiイオンで帯電した、ポロス(Poros) 20MC(アプライドバイオシステムズ製)カラム(4.6x50mm、0.83ml)上での、金属アフィニティークロマトグラフィー、これに続くセファデックスG-25メジアム(アマーシャムファルマーシア)カラム(1.0x10cm)上でのゲル濾過で構成される。該第一のクロマトグラフィー段階に関連して、該金属アフィニティーカラムは、30カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA、1mM NaCl、pH 8.0)で再生し、15カラム容積の100mM NiSO4溶液で洗浄することにより、Niイオンを再度付加し、10カラム体積のバッファーA、次いで7カラム体積のバッファーB(50mM NaH2PO4、600mM NaCl、8.7%(w/v)グリセロール、400mMのイミダゾール、pH 7.5)で洗浄し、最終的に15mMのイミダゾールを含む15カラム体積のバッファーAで平衡化させる。該サンプルを、該ラボマチックサンプル搭載装置によって、200mlのサンプルループに移し、次いで10ml/分なる流量で、該Ni金属アフィニティーカラムに充填する。このカラムを、12カラム体積のバッファーA、次いで28カラム体積の、20mMのイミダゾールを含むバッファーAで洗浄する。この20mMのイミダゾール洗浄中に、緩く結合した汚染タンパク質は、該カラムから溶出される。該組換えHis-タグタンパク質は、最終的に10カラム体積のバッファーBにより、流量2ml/分にて溶出され、また溶出するタンパク質は回収される。
【0098】
該第二のクロマトグラフィー段階に関連して、該セファデックスG-25ゲル-濾過カラムは、2mlのバッファーD(1.137M NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、8mM Na2HPO4、pH 7.2)で再生し、次いで4カラム体積のバッファーC(137mM NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、8mM Na2HPO4、20%(w/v)グリセロール、pH 7.4)で平衡化させる。このNi-カラムから溶出するピーク画分を、該VISIONの組込まれたサンプル搭載装置を介して、該セファデックスG-25カラムに自動的に充填し、タンパク質を流量2ml/分にてバッファーCで溶出する。この画分を、滅菌した遠心分離用のフィルタ(ミリポア)を介して濾過し、-80℃にて凍結し、かつ保存する。このサンプルのアリコートを、抗-His抗体を用いて、SDS-PAGE(4-12% NuPAGEゲル、ノベックス(Novex))ウエスタンブロットで分析する。このNuPAGEゲルは、0.1%クーマシーブルーR250染色溶液(30%メタノール、10%酢酸)中で、室温にて1時間染色し、次いでバックグラウンドが透明になり、またタンパク質のバンドが、明らかに見えるまで、20%メタノール、7.5%酢酸中で脱染色する。
【0099】
この電気泳動に引続き、該タンパク質を該ゲルから、ニトロセルロース膜に電気的に転写させる(electro-transferred)。この膜は、バッファーE(137mM NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、8mM Na2HPO4、0.1%ツイーン(Tween) 20、pH 7.4)中の5%ミルク粉末で、室温にて1時間遮断させ、次いで2.5%ミルク粉末中の2羽のウサギのポリクローナル抗-His抗体(G-18及びH-15、各0.2μg/ml、サンタクルーズ(Santa Cruz))の混合物と共に、バッファーE中で4℃にて一夜インキュベートする。室温にて、更に1時間インキュベートした後、この膜を、バッファーE(3x10分)で洗浄し、次いで2.5%ミルク粉末を含むバッファーEで1/3000倍に希釈した、第二のHRP-複合化抗-ウサギ抗体(DAKO、HRP 0399)と共に、室温にて2時間インキュベートする。バッファーE(3x10分)で洗浄した後、この膜をECRキット(アマーシャムファルマーシア)で1分間現像する。この膜を、引続きハイパーフィルム(Hyperfilm)(アマーシャムファルマーシア)に暴露し、該現像した膜及びウエスタンブロット像を肉眼で分析する。
クーマシー染色によって検出可能なタンパク質バンドを示すサンプルについて、該タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを用いて、BCAタンパク質アッセイキット(ピアース(Pierce))を利用して測定できる。
更に、細胞系におけるこれらポリペプチドの過剰発現又はその発現の低減を、該宿主細胞ゲノムの、転写活性に及ぼす効果の決定に利用することができる。該INSP163ポリペプチドの二量化用パートナー及び同時リプレッサー(co-repressors)は、ウエスタンブロット法と組合わせた免疫沈降及び質量スペクトル法と組合わせた免疫沈降によって同定できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】INSP163ポリペプチド配列(配列番号30)のゲノムスレッダー出力。キー:Top 7(非リダンダント)スタンド-アローン-GTヒット。1gr3 : ヒトコラーゲンx nc1トリマーの構造(C-末端c1qドメインを含む)。1c28 : 補体-1qファミリータンパク質の結晶構造は腫瘍壊死因子への進化的結合を示唆する(c1q)。4tsv : ヒトTNF-α変異体(TNF)の高解像結晶構造2tnf : マウス腫瘍壊死因子の、その選択性及びトリマー化の調節に関する1.4 a解像構造(TNF)1kxg : blys、b リンパ球刺激因子の2.0 ang 解像構造(TNF)1d2q : ヒト腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(trail)の結晶構造(TNF)1dg6 : apo2l/trailの結晶構造 (TNF)
【図2】プライマーINSP163-CP1及びINSP163-CP2を用いてクローニングしたINSP163 PCR産物の翻訳のあるヌクレオチド配列。c1qドメインは枠で囲み、コラーゲンドメインに影を付け、矢印でプライマーの位置と意味を示している。
【図3】プロタンパク質開裂後に推定される生物学的に活性な産物のポリペプチド配列(開裂部位は表1に示されている)。A) INSP163-A、B) INSP163-B、C) INSP163-C、D) INSP163-D、E) INSP163-E、及びF) INSP163-F。
【図4】INSP163、内耳特異性構造タンパク質(SwissProt Acc. Code: COLE_LEPMA)、魚の耳石中のオトリン(otolin)-1(SwissProt Acc. Code: OTO1_ONCKE)、ヒトα1及びα2(VIII)連鎖(COL8A1, SwissProt Acc. Code: CA18_HUMAN and COL8A2, SwissProt Acc. Code: CA28_HUMAN)、コラーゲンα1(X)連鎖前駆体(COL10A1, SwissProt Acc. Code: CA1A_HUMAN)、アジポネクチン(SwissProt Acc. Code: APM1_HUMAN)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13B(BAFF, TALL-1; SwissProt Acc. Code: T13B_HUMAN)、エクトディスプラシン(Ectodysplasin) A (EDA, SwissProt Acc. Code: EDA_HUMAN)、セレブリン(cerebellin) 2 (CBLN2, SwissProt Acc. Code: CBN2_HUMAN)及びハツカネズミの18-日目の胚全体のcDNA(SwissProt Acc. Code: Q9CQI8)の略ドメイン図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 配列番号2(選択的成熟INSP163)、配列番号34(成熟INSP163)、配列番号4(INSP163-A)、配列番号6(INSP163-B)、配列番号8(INSP163-C)、配列番号10(INSP163-D)、配列番号12(INSP163-E)、及び/又は配列番号14(INSP163-F)に記載のアミノ酸配列から成るポリペプチド、
(ii) 生物学的活性ポリペプチドとして機能し、及び/又は前記(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を持つ、該ポリペプチドのフラグメントであるポリペプチド、又は
(iii) 前記(i)又は(ii)と機能的に等価なポリペプチド。
【請求項2】
(i)配列番号2、配列番号34、配列番号4、配列番号6及び/又は配列番号8に記載のアミノ酸配列に相同性であり、かつc1q及びコラーゲンドメイン含有ポリペプチドであり、
(ii)配列番号10、配列番号12及び/又は配列番号14に記載のアミノ酸配列に相同性であり、かつc1qドメイン含有ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1の項目(iii)に記載の機能的に等価なポリペプチドであるポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2、配列番号34に記載のアミノ酸配列又はその活性フラグメントと50%を超える配列同一性、好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、98%又は99%を超える配列同一性を有する、請求項1の項目(ii)に記載のフラグメント又は機能的に等価なポリペプチド。
【請求項4】
配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12及び/又は配列番号14に記載のアミノ酸配列又はその活性フラグメントと50%を超える配列同一性、好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、98%又は99%を超える配列同一性を有する、請求項1の項目(ii)に記載のフラグメント又は機能的に等価なポリペプチド。
【請求項5】
配列番号2、配列番号34、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12及び/又は配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと有意な構造上の相同性を示す、請求項1〜4の何れか1項に記載の機能的に等価なポリペプチド。
【請求項6】
配列番号2、配列番号34、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12及び/又は配列番号14の配列由来の7又はそれ以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20又はそれ以上)のアミノ酸残基から成る、請求項1の項目(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載のフラグメント。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項8】
前記ポリペプチドがヒスチジンタグを含む、請求項7記載のポリペプチド。
【請求項9】
その配列が配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号36及び/又は配列番号28に記載されている、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
その配列が配列番号30及び/又は配列番号32に記載されている、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドをコードする、精製核酸分子。
【請求項13】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号33、配列番号35及び/又は配列番号31に記載の核酸配列を含む、あるいは前記核酸配列から成る、請求項12記載の精製核酸分子。
【請求項14】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号33、配列番号35及び/又は配列番号31に記載の核酸配列から成る、あるいは前記核酸配列のリダンダント等価物又はフラグメントである、請求項12又は13記載の精製核酸分子。
【請求項15】
高いストリンジェンシー条件下で、請求項12〜14の何れか1項に記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項16】
請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項16記載のベクターによって形質転換されている、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する、リガンド。
【請求項19】
抗体である、請求項18記載のリガンド。
【請求項20】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドの発現又は活性のレベルを増加又は減少させる化合物。
【請求項21】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドに、前記ポリペプチドの生物学的作用の何れをも誘導することなく結合する、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
天然の又は変性された基質、リガンド、酵素、レセプター又は構造的もしくは機能的模倣物である、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
疾患の治療又は診断において使用するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子、請求項16記載のベクター、請求項17記載の宿主細胞、請求項18若しくは19記載のリガンド、又は請求項20〜22の何れか1項に記載の化合物。
【請求項24】
患者の疾患を診断する方法であって、前記患者由来の組織内の、請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現レベルを評価するか、あるいは請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドの活性を評価する工程と、前記発現又は活性のレベルをコントロールのレベルと比較する工程とを含み、前記コントロールレベルと異なるレベルが疾患の指標となる、前記方法。
【請求項25】
インビトロで行う、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a) 請求項18又は19記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程、及び
(b) 前記複合体を検出する工程
を含む、請求項24又は25記載の方法。
【請求項27】
(i) 前記患者由来組織のサンプルと、核酸プローブとを、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子と該プローブとの間にハイブリッド複合体の形成を可能とするストリンジェント条件下で接触させる工程、
(ii) コントロールサンプルと前記プローブとを、前記工程(i)で使用したものと同一の条件下で接触させる工程、及び
(iii) 前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程を含み、
前記コントロールサンプルにおける該ハイブリッド複合体レベルと異なる、前記患者サンプルにおける該ハイブリッド複合体レベルの検出が疾患の指標となる、請求項24又は25記載の方法。
【請求項28】
(i) 前記患者の組織由来の核酸サンプルと核酸プライマーとを、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子と該プライマーとの間にハイブリッド複合体の形成を可能とするストリンジェント条件下で接触させる工程、
(ii) コントロールサンプルと前記プライマーとを、前記工程(i)で使用したものと同一の条件下で接触させる工程、
(iii) 前記サンプル核酸を増幅する工程、及び
(iv) 前記患者及びコントロールの両サンプル由来の増幅された核酸のレベルを検出する工程を含み、
前記コントロールサンプル内の増幅核酸レベルとは有意に異なる、前記患者サンプル内の増幅核酸レベルの検出が疾患の指標となる、請求項24又は25記載の方法。
【請求項29】
(i) 疾患についてテストすべき患者由来の組織サンプルを得る工程、
(ii) 前記組織サンプルから、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子を単離する工程、及び
(iii) 前記疾患と関連する突然変異の存在を、前記疾患の指標として前記核酸分子中で検出することによって、前記疾患について患者を診断する工程
を含む、請求項24又は25記載の方法。
【請求項30】
さらに、前記核酸分子を増幅して増幅産物を生成する工程と、前記増幅生成物における突然変異の有無を検出する工程を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記核酸分子を、この核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に関連する突然変異に対応する任意の部分に前記核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させ、かつ疾患関連突然変異の有無の指標として、前記プローブ鎖の未ハイブリダイズ部分の有無を検出することによって、前記患者における前記突然変異の有無を検出する、請求項29又は30記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、自己免疫疾患、自己免疫性内耳疾患、内耳炎、メニエール病及びメニエール症候群、外リンパ若しくは内耳瘻、耳鳴、神経変性疾患、アミロイド症、アルツハイマー病、パーキンソン病、家族性痴呆、炎症(関節痛、腫脹、貧血又は敗血症性ショック)、感染症、寄生生物症、微生物病、細菌性疾患、ウイルス性疾患(HIV、HTLV、MuLV、肺炎連鎖球菌及び回虫感染症)、糸球体腎炎、肥満症、糖尿病、真性糖尿病、シュミット型骨幹端軟骨異形成、角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、アテローム性動脈硬化症、壊血病、癌、胃腸間質性腫瘍、骨肉腫、軟骨芽細胞腫、巨細胞腫瘍、日本型脊椎骨幹端異形成症(SMD)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、白血病(慢性リンパ球白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL))、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLCL)、B細胞過形成、骨形成不全症、エーレルス-ダンロー症候群、頸動脈切開に対する感受性、大動脈瘤、耳脊椎巨大骨端異形成症、聴力障害(聾)、Weissenbacher-Zweymuller症候群、骨若しくは骨格疾患、遅発性網膜変性症(L-ORD)、年齢関連性黄斑変性症(AMD)、失明、関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、骨関節炎、ライム関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、中枢神経系及び末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄多発神経障害、重症筋無力症、気管支炎、気腫、腎不全(糸球体腎炎、血管炎、腎炎又は腎盂腎炎)、腎性新生物、腎細胞腺癌、腎臓腫瘍、軽鎖神経障害又はアミロイド症、臓器移植に伴う急性若しくは慢性免疫疾患、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、クローン病、全身性硬化症、特発性炎症性筋障害、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫媒介腎疾患、肝胆道系疾患、例えば感染性、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン感受性腸疾患、及びウィップル病、自己免疫性若しくは免疫媒介皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形紅斑及び接触皮膚炎を含む)、乾癬、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹、肺の免疫疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性間質性肺炎、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、サルコイドーシス、女性の不妊症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、シェーグレン症候群、外胚葉異形成症、X-連鎖発汗低下性外胚葉異形成症(HED)、副腎皮質の炎症性、虚血性又は新生物疾患、副腎腫瘍、ガングリオ神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫、コルチゾール産生性副腎皮質アデノーマ、脊髄小脳変性症関連疾患、小脳疾患、オリーブ核小脳萎縮(OPCA)及び/又はシャイ-ドレーガー症候群である、請求項24〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が、c1qドメイン及び/又はコラーゲンドメイン含有タンパク質が関与している疾患である、請求項24〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドの、c1qドメイン及び/又はコラーゲンドメイン含有タンパク質としての使用。
【請求項35】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子、請求項16記載のベクター、請求項17記載の宿主細胞、請求項18若しくは19記載のリガンド、又は請求項20〜22の何れか1項に記載の化合物を含む、薬理組成物。
【請求項36】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド又は請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子を含む、ワクチン組成物。
【請求項37】
自己免疫疾患、自己免疫性内耳疾患、内耳炎、メニエール病及びメニエール症候群、外リンパ若しくは内耳瘻、耳鳴、神経変性疾患、アミロイド症、アルツハイマー病、パーキンソン病、家族性痴呆、炎症(関節痛、腫脹、貧血又は敗血症性ショック)、感染症、寄生生物症、微生物病、細菌性疾患、ウイルス性疾患(HIV、HTLV、MuLV、肺炎連鎖球菌及び回虫感染症)、糸球体腎炎、肥満症、糖尿病、真性糖尿病、シュミット型骨幹端軟骨異形成、角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、アテローム性動脈硬化症、壊血病、癌、胃腸間質性腫瘍、骨肉腫、軟骨芽細胞腫、巨細胞腫瘍、日本型脊椎骨幹端異形成症(SMD)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、白血病(慢性リンパ球白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL))、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLCL)、B細胞過形成、骨形成不全症、エーレルス-ダンロー症候群、頸動脈切開に対する感受性、大動脈瘤、耳脊椎巨大骨端異形成症、聴力障害(聾)、Weissenbacher-Zweymuller症候群、骨若しくは骨格疾患、遅発性網膜変性症(L-ORD)、年齢関連性黄斑変性症(AMD)、失明、関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、骨関節炎、ライム関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、中枢神経系及び末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄多発神経障害、重症筋無力症、気管支炎、気腫、腎不全(糸球体腎炎、血管炎、腎炎又は腎盂腎炎)、腎性新生物、腎細胞腺癌、腎臓腫瘍、軽鎖神経障害又はアミロイド症、臓器移植に伴う急性若しくは慢性免疫疾患、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、クローン病、全身性硬化症、特発性炎症性筋障害、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫媒介腎疾患、肝胆道系疾患、例えば感染性、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン感受性腸疾患、及びウィップル病、自己免疫性若しくは免疫媒介皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形紅斑及び接触皮膚炎を含む)、乾癬、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びじんま疹、肺の免疫疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性間質性肺炎、潰瘍性結腸炎、炎症性腸疾患、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、サルコイドーシス、女性の不妊症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、シェーグレン症候群、外胚葉異形成症、X-連鎖発汗低下性外胚葉異形成症(HED)、副腎皮質の炎症性、虚血性又は新生物疾患、副腎腫瘍、ガングリオ神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫、コルチゾール産生性副腎皮質アデノーマ、脊髄小脳変性症関連疾患、小脳疾患、オリーブ核小脳萎縮(OPCA)及び/又はシャイ-ドレーガー症候群の治療用医薬の製造において使用するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子、請求項16記載のベクター、請求項17記載の宿主細胞、請求項18若しくは19記載のリガンド、請求項20〜21の何れか1項に記載の化合物、又は請求項35記載の薬理組成物。
【請求項38】
c1qドメイン及び/又はコラーゲンドメイン含有タンパク質が関与している疾患の治療用医薬の製造において使用するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子、請求項16記載のベクター、請求項17載の宿主細胞、請求項18若しくは19記載のリガンド、請求項20〜22の何れか1項に記載の化合物、又は請求項35記載の薬理組成物。
【請求項39】
患者の疾患を治療する方法であって、前記患者に、請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子、請求項16記載のベクター、請求項17記載の宿主細胞、請求項18若しくは19記載のリガンド、請求項20〜22の何れか1項に記載の化合物、又は請求項35記載の薬理組成物を投与する、前記方法。
【請求項40】
健康な患者における天然遺伝子の発現レベル又はポリペプチドの活性レベルと比較して、疾患にかかっている患者における前記遺伝子の発現又は前記ポリペプチドの活性がより低下している疾患に対して、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアゴニストである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
健康な患者における天然遺伝子の発現レベル又はポリペプチドの活性レベルと比較して、疾患にかかっている患者における前記遺伝子の発現又は前記ポリペプチドの活性がより高くなっている疾患に対して、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアンタゴニストである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドの発現又は活性レベル、又は請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子の発現レベルを、ある期間にわたって前記患者由来の組織でモニターすることを含む、患者において疾患の治療をモニターする方法であって、前記所定期間にわたる前記発現又は活性レベルがコントロールレベルに向かって変化することが、前記疾患の後退の指標である、前記方法。
【請求項43】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチド、又は請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子を、前記ポリペプチド又は核酸分子に対して結合親和性を有すると疑われる1種又はそれ以上の化合物と接触させる工程、及び前記核酸分子又はポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択する工程を含む、疾患の治療及び/又は診断で有効な化合物の同定方法。
【請求項44】
請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第1容器と、前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第2容器と、疾患の診断を容易にするための前記プローブ及びプライマーの使用説明書とを含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項45】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第3容器をさらに含む、請求項44のキット。
【請求項46】
核酸分子のアレイを含むキットであって、前記核酸分子の少なくとも1つが請求項12〜15の何れか1項に記載の核酸分子である前記キット。
【請求項47】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドと結合する1種又はそれ以上の抗体、及び前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応を検出するのに有用な試薬を含む、キット。
【請求項48】
請求項1〜11の何れか1項に記載のポリペプチドを、より高いレベル若しくはより低いレベルで発現するように、又は発現しないように形質転換されている、非-ヒトトランスジェニック動物又は非-ヒトノックアウト動物。
【請求項49】
請求項48記載の非-ヒトトランスジェニック動物を候補化合物と接触させ、かつ前記動物の疾患に及ぼす前記化合物の作用を決定することによって、疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−502306(P2008−502306A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537409(P2006−537409)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004544
【国際公開番号】WO2005/042576
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】