説明

C5−C6においてアネル化されたナフトピラン、その調製並びにそれらを含有する組成物および(コ)ポリマーマトリクス

【課題】位置5,6においてアネル化された炭素環を有するナフトピラン型の新規の化合物を提供する。
【解決手段】これらの化合物は、Aが、芳香環と必要に応じてアネル化された脂環であり、2つの隣接するR3が少なくとも1つの環、例えば、ベンゾ基を互いに形成できる化学式(I)のものである。これらの化合物(I)は興味深いフォトクロミック特性を有する。本発明は、これらの化合物(I)を調製する方法、並びに、それらを含有するフォトクローム:組成物および(コ)ポリマーマトリクスとしての用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にフォトクロミック特性を有する、新規のアネル化(annelated)ナフトピラン型化合物に関する。本発明はまた、そのナフトピランを含有するフォトクロミック組成物およびフォトクロミック眼用製品(例えば、レンズ)に関する。本発明はこれらの新規のナフトピランの調製も包含する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物は、多色光または単色光(例えば、紫外線)の影響下で色を変え、その光照射が停止されたとき、または最初とは異なる多色光または単色光および/または温度の影響下で、最初の色に戻ることができる。
【0003】
フォトクロミック化合物には、様々な分野、例えば、眼用レンズ、コンタクトレンズ、ソーラー保護ガラス、フィルタ、カメラ光学素子または撮影装置用光学素子もしくは他の光学素子や、観察装置、窓ガラス、装飾物品、紙幣要素の製造に関する、または光学的刻印(コーディング)による情報記憶に関する用途が見出されている。
【0004】
眼用光学素子の分野、特に眼鏡業界において、一種類以上のフォトクロミック化合物を含むフォトクロミックレンズは:
− 紫外線の不在下での高透過率、
− 太陽光の元での低透過率(高着色適性)、
− 適合された着色および脱色反応速度、
− 消費者に受け入れられる色合い(好ましくは、グレーまたはブラウン)、好ましくは、レンズの着色および脱色中にも選択された色合いが維持される、
− 0-40℃の温度範囲内での性能、特性の維持、
− 求められているこれらの対物レンズが精巧な補正レンズであり、したがって、高価であるので、著しい耐久性、
を有さなければならない。
【0005】
これらのレンズの特徴は、それらが含有する活性フォトクロミック化合物により実際に決定される。それら混合物は、レンズを構成する有機または無機基材と完全に相溶性でなければならない。
【0006】
さらに、グレーまたはブラウンの色合いを得るには、異なる色の、すなわち、可視において別個の最大吸収波長を有する少なくとも2つのフォトクロームを使用する必要があるかもしれないことに留意すべきである。この組合せのために、フォトクロミック化合物に他の必要条件が課せられる。特に、(2つ以上の)組み合わされた活性フォトクロミック化合物の着色および脱色反応速度は、実質的に同一でなければならない。同じことが、時間に関する安定性や、プラスチックまたは無機基材との相溶性についても当てはまる。
【0007】
従来技術において記載された数多くのフォトクロミック化合物の中でも、以下の特許または特許出願:特許文献1−16に記載されているベンゾピランまたはナフトピランを引用してもよい。それらは、以下の単純化された化学式のものである:
【化1】

【0008】
特許文献11には、ナフト骨格の炭素5および6に連結したインデノ基を有するナフトピランが記載されている:
【化2】

【0009】
特許文献10には、ナフト骨格の炭素5および6に連結したナフトフラノまたはベンゾ基を有するナフトピランが記載されている。
【化3】

【0010】
特許文献17には、非置換脂環基を有するナフトピランが記載されている。
【化4】

【0011】
これらの既知の化合物A,B,C,D,Eは、先に定義された仕様を満たすものと言われている。現実には、これらの化合物が実際に、紫外線の存在しない状況下での高透過率および太陽光の元での高着色適性のような、求められている基本特性の1つ以上を有していたとしても、これまでに記載されたどの化合物も、満足のいく製品の製造のために必要とされる、求められている特性の完全な組合せは有していない。特に、これらの化合物のどれも固有のグレーまたはブラウンではなく、これらの2つの色合いの内の一方を得るために追加のフォトクロームを用いる必要性がまだある。
【0012】
特許文献11によるフォトクロミック化合物は、トルエンおよびカリウムtert−ブトキシドの存在下で、ジメチルエステルのような琥珀酸エステルと反応できる置換または非置換ベンゾフェノンから得られる。アセトキシナフタレンに転化され、次いで、環状化されてベンゾフラノン残基と融合されたナフトールを得るカルボキシナフトールに引き続いて転化される半エステルがこのように生成される。DBSAの存在下での、このナフトールとプロパルギルアルコールとの反応により、インデノン環と融合されたナフトピランが誘導される。このナフトピランのインデン同族体は、還元されたケトン官能基を有する前駆体で開始することにより得られる。該インデンのこの炭素は様々な様式で置換することができる。
【0013】
特許文献10によるベンゾまたはナフトフラン残基と融合されたナフトピランに関しては、それらは、一方で、インデノン環またはナフトフラン環と、他方で、プロパルギルアルコールと融合されたナフトールの反応により調製される。例えば、特許文献11に記載されたようなインデノン環と融合されたナフトールが得られる。一方で、ナフトフラン環と融合されたナフトールは、少なくとも1つのヒドロキシのその後のメチル化の有無にかかわらず、ナフトキノンおよび1,3−ジヒドロキシナフタレン間の反応から生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第3,567,605号明細書
【特許文献2】米国特許第3,627,690号明細書
【特許文献3】米国特許第4,826,977号明細書
【特許文献4】米国特許第5,200,116号明細書
【特許文献5】米国特許第5,238,981号明細書
【特許文献6】米国特許第5,411,679号明細書
【特許文献7】米国特許第5,429,744号明細書
【特許文献8】米国特許第5,451,344号明細書
【特許文献9】米国特許第5,458,814号明細書
【特許文献10】米国特許第5,651,923号明細書
【特許文献11】米国特許第5,645,767号明細書
【特許文献12】米国特許第5,698,141号明細書
【特許文献13】国際公開第95/05382号パンフレット
【特許文献14】仏国特許第2,718,447号明細書
【特許文献15】国際公開第96/14596号パンフレット
【特許文献16】国際公開第97/21698号パンフレット
【特許文献17】米国特許第5,783,116号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この点に関して、上述したナフトピランに関心を持ち、少なくとも1つの炭素環とC5−C6において融合したこの一族のナフトピランの中で、特に有益なフォトクロミック特性を有する特定の分子の群を選択したことが本発明者の功績である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、第1の態様によれば、化学式(I)の化合物に関する:
【化5】

【0017】
ここで:
・ R1およびR2は、同じかまたは異なり、独立して:
− 水素、
− 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 基本構造において、それぞれ、6から24までの炭素原子または4から24までの炭素原子と、硫黄、酸素および窒素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを含むアリールまたはヘテロアリール基であって、該基本構造が必要に応じて、以下に挙げられる置換基の全て:
+ ハロゲン、特に、フッ素、塩素および臭素、
+ ヒドロキシ基、
+ 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
+ 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルコキシ基、
+ 少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、それぞれ上述した(C1−C12)アルキルまたはアルコキシ基に対応するハロアルキルまたはハロアルコキシ基、特にこの種のフルオロアルキル基、
+ 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
+ 2から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルケニル基、特に、ビニル基またはアリル基、
+ −NH2基、
+ Rが1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基である、−NHR基、

【化6】

【0018】
ここで、R’およびR”は、同じかまたは異なり、独立して、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェニル基を表し、またはそれらが結合している窒素原子とともに、酸素、硫黄および窒素から選択される少なくとも1つの他のヘテロ原子を含み得る5または7員環を表し、該窒素が、必要に応じて、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基であるR”’により置換されている、
+ メタクリロイル基またはアクリロイル基、
から選択される少なくとも1つの置換基により置換されており、
− アラルキルまたはヘテロアラルキル基、ここで、そのアルキル基が1から4までの炭素原子を含む線状または枝分れのものであり、そのアリールおよびヘテロアリール基が上述した定義を有している、
を表し、
または、
前記2つの置換基R1およびR2が互いにアダマンチル、ノルボルニル、フルオレニリデン、ジ(C1−C6)アルキルアントラセニリデンまたはスピロ(C5−C6)シクロアルキルアントラセニリデン基を形成し、該基が必要に応じて、アリールまたはヘテロアリール基に対応する、R1、R2に関して上述した置換基の内の少なくとも1つにより置換されている;
・ R3が、同じかまた異なり、独立して:
− ハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素、
− 1から12までの炭素原子(好ましくは1から6までの炭素原子)を含む線状または枝分れアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 1から12までの炭素原子(好ましくは1から6までの炭素原子)を含む線状または枝分れアルコキシ基、
− 特にフッ素、塩素および臭素から選択される少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、それぞれ、上述したアルキル、シクロアルキル、アルコキシ基に対応するハロアルキル、ハロシクロアルキル、またはハロアルコキシ基、
− R1、R2について前出のように与えられたものと同一の定義を有するアリールまたはヘテロアリール基、
− アラルキルまたはヘテロアラルキル基、ここで、そのアルキル基が1から4までの炭素原子を含む線状または枝分れのものであり、そのアリールおよびヘテロアリール基がR1、R2について前出のように与えられた定義を有している、
− 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
− アミンまたはアミド基:−NH2、−NHR、−CONH2、−CONHR、
【化7】

【0019】
ここで、R、R’、R”が、R1、R2:アリールまたはヘテロアリール基のアミン置換基について前出のように与えられものと同一の定義をそれぞれ有し、
− −OCOR8または−COOR8、ここで、R8が、1から6までの炭素原子を含む直鎖または枝分れアルキル基、または3から6までの炭素原子を含むシクロアルキル基、またはR1、R2:アリールまたはヘテロアリール基に関して上述した置換基の内の少なくとも1つにより必要に応じて置換されているフェニル基である、
を表し;
・ mが0から4までの整数であり;
・ Aが:
【化8】

【0020】
を表し、これらのアネル化環(A1)から(A5)までにおいて:
Δ 点線が、化学式(I)のナフトピラン環の炭素C5炭素C6結合を表し;
Δ アネル化環(A4)または(A5)のα結合が、化学式(I)のナフトピラン環の炭素C5または炭素C6に普通に結合されることができ;
Δ R4が、同じかまたは異なり、独立して、OH、線状または枝分れでありかつ1から6までの炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基を表し、もしくは2つのR4がカルボニル(CO)を形成し;
Δ R5、R6およびR7が、独立して:
− ハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素、
− 1から12までの炭素原子(好ましくは1から6までの炭素原子)を含む線状または枝分れアルキル基、
− 少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、上述した線状または枝分れアルキル基に対応するハロアルキル基、特にフルオロアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルコキシ基、
− 化学式(I)のR1、R2基がアリールまたはヘテロアリール基に独立して対応する場合には、R1、R2基の定義において上述された置換基の内の少なくとも1つにより必要に応じて置換されたフェニルまたはベンジル基、
− −NH2、−NHR、
【化9】

【0021】
ここで、R、R’、R”が、R1、R2:アリールまたはヘテロアリール基のアミン置換基について前出のように与えられものと同一の定義をそれぞれ有し、
− 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
− −COR9、−COOR9または−CONHR9基、ここで、R9が、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、または3から6までの炭素原子を含むシクロアルキル基、または化学式(I)のR1、R2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R1、R2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つにより必要に応じて置換されたフェニルまたはベンジル基、
− 2つの隣接するR5基が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むことのできる5から6員の芳香環または非芳香環を互いに形成することでき;
Δ nが0から6までの整数であり、oが0から2までの整数であり、pが0から4までの整数であり、qが0から3までの整数である;
ここで、(A1)および(A2)において、少なくとも2つの隣接する置換基R3が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環または2つのアネル化された環を有する少なくとも1つの芳香環基または非芳香環基を形成する場合のみにnがゼロであり、このまたはこれらのアネル化環が、R1および/またはR2を形成できるアリール基について上述された定義を有するものから選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換される条件に従う。
【0022】
化学式(I)のナフトピランである、本発明の化合物は、求められている用途に適用される変色反応速度と組み合わされた、40℃でさえ高い着色適性を有する。容易に達成できる色は、オレンジから青までに及ぶ。
【0023】
本発明の第1の態様によれば、考えられる化合物は、Aが上述したようなアネル化環(A1)または(A2)の内の1つに対応する化学式(I)のものである。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、考えられる化合物は、Aが上述したようなアネル化環(A3)、(A4)または(A5)の内の1つである化学式(I)のものに対応する。
【0025】
本発明は、A=(A1)である化合物(I)、A=(A2)であるもの、A=(A3)であるもの、A=(A4)であるものおよびA=(A5)であるものからなる群より選択される少なくとも1つの異なる種類に属する化合物(I)の混合物も包含することは言うまでもない。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、包含される化合物は、化合物が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環(例えば、フェニル基)または2つのアネル化された環(例えば、ベンゾフラン基)であって、R1および/またはR2を形成できるアリールまたはヘテロアリール基について上述した定義を有するものから選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換されている環を有する芳香族または非芳香族の環基を互いに形成する少なくとも2つの隣接するR3基を有する化学式(I)のものである一族に属する化合物である。
【0027】
この第3の態様による一族は、特に、2つの隣接するR3が少なくとも1つのアネル化環、例えば、ベンゾ基を形成し、フェナントレン骨格の炭素5および6が、(A1)、(A2)、(A3)、(A4)または(A5)に対応する少なくとも1つの脂環および/または芳香環に連結されている化合物(I)を含む。
【0028】
本発明の第四の態様によれば、予測される化合物は、Aが、水素とは異なる少なくとも1つのR4置換基を有する(A1)または(A2)に対応し、かつ少なくとも2つの隣接するR3が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環(例えば、フェニル基)または2つのアネル化された環(例えば、ベンゾフラン基)であって、R1および/またはR2を形成できるアリールまたはヘテロアリール基について上述した定義を有するものから選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換されている環を有する少なくとも1つの芳香族または非芳香族の環基を互いに形成しない化合物を除いた、上述した化学式(I)のものである。
【0029】
この第4の態様による化合物は、特に、2つのR3がアネル化環を形成しない、例えば、m=1およびR3=−OMeであり、かつナフト骨格の炭素5および6が、(A1)および(A2)とは異なる少なくとも1つの脂環Aに連結されているナフトピラン(I)である。
【0030】
好ましくは、本発明による化合物は、
− R1、R2が、同じかまたは異なり、独立して、その基本構造が、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピリジル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、N−(C1−C6)アルキルカルバゾール、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ユロリジニル基からなる群より選択される、必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール基を表し、R1および/またはR2は好ましくはパラ置換されたフェニル基を表す;
− またはR1およびR2がアダマンチルまたはノルボルニル基を互いに形成する、
化学式(I)のものである。
【0031】
本発明者は、フォトクロームの分野において、炭素5および6でアネル化された少なくとも1つの炭素環と融合されたナフトピランの新規の合成経路であって、この経路において、ナフトール型の前駆体が、少なくとも1つの炭素を含み、少なくとも1つのシアン酢酸アルキルと反応できる少なくとも1つのケトンから得られ、得られた生成物に環化を行う経路を提案した功績が認められている。
【0032】
本発明は、第2の態様によれば、特に、上述した化学式(I)の化合物の調製方法にも関する。この方法は:
→ 以下の化学式(II)を有する少なくとも1つの化合物の:
【化10】

【0033】
ここで、R3、Aおよびmが化学式(I)に関して先に定義されたようなものであり;
→ 以下の化学式(III)を有する、プロパルギルアルコールの少なくとも1つの誘導体との:
【化11】

【0034】
ここで、R1およびR2が化学式(I)に関して先に定義されたようなものであり;
(II)/(III)の縮合が好ましくは触媒の存在下で行われ、この触媒は好ましくは、パラトルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸およびブロム酢酸からなる群より選択される、
または以下の化学式(III')を有する、少なくとも1つのアルデヒド誘導体との:
【化12】

【0035】
ここで、R1およびR2が化学式(I)に関して先に定義されたようなものであり;
(II)/(III')の縮合が好ましくは金属錯体、好ましくは、チタン錯体の存在下で行われ、チタン(IV)エトキシドが特に好ましい、
縮合を行うことから実質的になる。
【0036】
実際には、化合物(II)と(III)との間の縮合反応は、トルエン、キシレンまたはテトラヒドロフランのような溶剤中で行うことができ、これには、必要に応じて、適切な触媒が加えられる。
【0037】
化合物(II)と(III')との縮合に関しては、詳細は、ヨーロッパ特許出願公開第0562915号を参照のこと。
【0038】
化学式(III)の前記化合物は、当業者に知られており、特に、国際特許出願公開第WO96/14596号に記載された方法にしたがって対応するケトンから得られる。このケトンは、それ自体市販されており、またはフリーデル・クラフト法(WO96/14596および引用文献を参照のこと)のような既知の方法にしたがって調製される。(III)から誘導されたアルデヒドは、酸媒質中での転位により得られる(J.Org.Chem., 1966, 42.3403参照)。
【0039】
化学式(II)の前記化合物は、その様々な工程が既知の方法の適用である、合成計画にしたがって得られる。好ましい一般合成計画が以下に与えられている。
【化13】

【0040】
この合成経路は、Sepiol等(Synthesis 1979, 290)の研究から思いついたものである。
【0041】
そこから、本発明は、以下の基本工程:
1−化学式:
【化14】

【0042】
の前駆体(Ip1)の、中間体生成物(Ip2):
【化15】

【0043】
を得るように、Ra=アルキル、好ましくはエチルである化学式CN−CH2−COORaの少なくとも1つのシアン酢酸アルキルとの反応;
2−中間体(Ip3):
【化16】

【0044】
に導かれる(Ip2)の熱環化;
3−中間体(II)を生成するための(Ip3)の高温脱シアン化;
を含むという点で特徴付けられる化学式(II)のナフトールを調製する方法も包含することになる。
【0045】
この方法の全体についての詳細が以下の具体例に与えられている。それは実際には、フォトクロームの分野における新規な合成経路の問題である。この経路により、実施の容易さおよび経済的な観点から利点が与えられる。
【0046】
第3の態様によれば、本発明の目的は、前出のように定義された少なくとも1つの化合物(I)を含む少なくとも1つのモノマーを重合および/または架橋させることにより得られる(コ)ポリマーおよび/または網状体にある。したがって、本発明による化合物(I)は、それ自体が(コ)モノマーであっても、および/または(共)重合性および/または架橋性(コ)モノマーに含まれていても差し支えない。このように得られた(コ)ポリマーおよび/または網状体は、以下の示すようなフォトクロミックマトリクスを構成できる。
【0047】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の化学式(I)の化合物のフォトクロミック剤としての使用に関する。したがって、本発明の目的は:
− 第1に、上述のごとく定義されたようなナフトピラン誘導体により、単独またはそれらの混合物で、および/または別の種類の少なくとも1つの他のフォトクロミック化合物と共に、および/または少なくとも1つの非フォトクロミック着色剤とともに、構成される新規なフォトクロミック化合物;
− 第2に、少なくとも1つのナフトピラン誘導体(I)、および上述したようなその誘導体の内の1つ、および/またはその構造に本発明による化合物(I)を少なくとも1つ含有する少なくとも1つの線状または架橋された(コ)ポリマーを含む新規のフォトクロミック組成物にある。そのようなフォトクロミック組成物は、別の種類の少なくとも1つの他のフォトクロミック化合物および/または少なくとも1つの非フォトクロミック着色剤および/または少なくとも1つの安定剤を含有することができる。別の種類のフォトクロミック化合物、非フォトクロミック着色剤、および安定剤は、当業者に知られた従来技術の生成物である。
【0048】
本発明の文脈においては、本発明のフォトクロミック化合物の組合せおよび/または本発明のフォトクロミック化合物と従来技術により別の種類のフォトクロミック化合物との組合せが特に推奨される。そのような組合せは、眼鏡またはサングラスのような用途において公衆に望まれている、グレーまたはブラウンの色合いを生成するのに適しているという点で興味深い。これらの追加のフォトクロミック化合物は、当業者に知られており、文献に記載されているもの、例えば、クロメン(米国特許第3,567,605号、同第5,238,981号、国際特許出願第WO94/22850号、ヨーロッパ特許出願公開第0562915号)、スピロピランまたはナフトスピロピラン(米国特許第5,238,981号)およびスピロキサジン(Crano et al., "Applied Photochromic Polymer Systems", Ed.Blackie & Son Ltd, 1992, chapter 2)であっても差し支えない。
【0049】
本発明による前記組成物は:
− 前記色合いの調節を可能にする非フォトクロミック着色剤、
− および/または例えば、酸化防止剤のような1つ以上の安定剤、
− および/または1つ以上の抗紫外線剤、
− および/または1つ以上の抗ラジカル剤、
− および/または1つ以上のフォトクロミック励起状態奪活剤
を含んでも差し支えない。
【0050】
これらの添加剤は、特に、前記組成物の耐久性を改善できるようにする。
【0051】
フォトクロミック用途の内容に含まれると考えられる本発明の化合物は、溶液中で用いることができる。したがって、フォトクロミック溶液は、前記化合物の少なくとも1つを、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランまたはエタノールのような有機溶剤中に溶解させることにより得られる。得られた溶液は一般的に無色透明である。太陽光に露出されると、それら溶液は濃い色を呈し、太陽光への露出が少ない区域に置かれると、または言い換えれば、もはや紫外線を受けなくなると、無色の状態を取り戻す。一般的に、非常の低濃度の生成物(約0.01から5重量%)が、濃い色を得るのに十分である。
【0052】
本発明による化合物は、有機ポリマーまたは無機材料の基材マトリクスと、前記マトリクス中に含まれる形態、並びに該マトリクスのコーティングの形態で、相溶性がある。
【0053】
また、フォトクロミック用途に関する本発明の第4の態様の内容において、本発明の目的は:
− 前出のように定義された少なくとも1つの化合物(I);
− 前出のように定義された少なくとも1つの(コ)ポリマーおよび/または網状体;
− 上述したような、少なくとも1つの組成物;
を含むマトリクスにある。
【0054】
本発明の化合物の最も興味深い適用例は、実際に、フォトクロームが、ポリマーおよび/またはコポリマーおよび/または(コ)ポリマーの混合物により形成されたマトリクスの表面上またはその内部に均一に分散されているものである。
【0055】
溶液中のそれらの挙動の具体例に従えば、ポリマーマトリクス中に含まれる化合物(I)は、初期状態で無色かまたはわずかに着色されており、紫外線(365nm)の元または太陽光型の光源の元で急速に濃い色を発する。最後に、それら化合物は、照射が停止されると、初期の色を取り戻す。
【0056】
そのようなマトリクスを得るために考えられる実施方法は非常に様々である。当業者に知られているものの中でも、例えば、シリコーン油中、脂肪族または芳香族炭化水素中、またはグリコール中のフォトクロームの懸濁液または溶液からの、もしくは別のポリマーマトリクスからの前記(コ)ポリマー中の拡散が挙げられる。拡散は通常、ポリマーマトリクスの性質に応じて、15分間から数時間までの期間に亘り、50℃から200℃までの温度で行われる。別の実施技法は、前記フォトクロームを重合性マトリクスの配合物中に混ぜ合わせ、この混合物を表面上または金型内に付着させ、次いで、共重合を行う各工程を含む。これらと他の実施技法が、Applied Photochromic Polymer Systems, Ed.Blackie and Son Ltd - 1992において発行されたCrano et al.による文献 "Spiroxazines and their use in photochromic lenses" に記載されている。
【0057】
以下の生成物は、本発明によるフォトクロミック化合物の光学用途において有用なマトリクスを形成するための好ましいポリマー材料の具体例として挙げられる:
− 必要に応じてハロゲン化された、または少なくとも1つのエーテルおよび/またはエステルおよび/またはカーボネートおよび/またはカルバメートおよび/またはチオカルバメートおよび/または尿素および/またはアミド基を含む、アルキル、シクロアルキル、(ポリまたはオリゴ)エチレングリコール、アリールまたはアリールアルキルモノ,ジ,トリまたはテトラアクリレートまたはモノ,ジ,トリまたはテトラメタクリレート、
− ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAポリカーボネート、ジアリルジエチレングリコールポリカーボネート)、ポリカルバメート、ポリエポキシ、ポリウレア、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、脂肪族または芳香族ポリエステル、ビニルポリマー、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースまたはプリビニルブチラール、
− 以下の化学式を有する二官能性モノマー:
【化17】

【0058】
ここで:
Δ R10、R’10、R11およびR’11は、同じかまたは異なり、独立して水素またはメチル基を表し;
Δ m1およびn1は、独立して、0から4までの(含む)整数であり、好ましくは、独立して、1または2に等しい;
Δ XおよびX’は、同じかまたは異なり、ハロゲンであり、好ましくは、塩素および/または臭素を表し;
Δ p1およびq1は、独立して、0から4までの(含む)整数である;
− 前に列記されたポリマーの前駆体モノマーから選択される、少なくとも2種類の共重合性モノマーのコポリマー、および好ましくは、(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、およびそれらの混合物からなる群に属するもの。
【0059】
特に好ましい様式において、本発明のフォトクロームは、ナノビフェイシック(nanobiphasic)構造を有し、少なくとも2つの異なる特定の二官能性モノマーを共重合させることにより得られる樹脂と共に用いられる。そのような樹脂がフランス国特許出願公開第2762845号に記載されている。
【0060】
(コ)ポリマーマトリクス中に用いられるフォトクロームの量は、所望の暗色化の程度に依存する。通常、0.001重量%から20重量%までの量が用いられる。
【0061】
フォトクロームとしてのナフトピラン(I)の用途に関して第4の態様によれば、本発明の別の目的は:
・ 少なくとも1つの本発明による化合物、
・ および/または本発明の化合物から少なくとも一部が形成された少なくとも1つの(コ)ポリマーおよび/または網状体、
・ および/または前に定義したような少なくとも1つのフォトクロミック組成物、
・ および/または有機ポリマー材料または無機材料の、もしくはハイブリッド型無機−有機材料の、(前に定義したような)少なくとも1つのマトリクスであって、本発明の化合物を少なくとも1つ最初に必要に応じて含んでもよいマトリクス、
を含む眼鏡またはサングラスのような眼用製品にある。
【0062】
実際には、本発明により特に好ましく被覆される製品としては、眼用レンズまたフォトクロミックソーラーレンズ、窓ガラス(建物、機関車、自動車用の窓)、光学素子、装飾製品、ソーラー保護製品、情報記憶等が挙げられる。
【0063】
本発明を、本発明の化合物(I)(ナフトピラン)の合成およびフォトクロミック性の証明を含む具体例により説明する。本発明の化合物は、従来技術の化合物C1およびC2と比較されている。
【実施例】
【0064】
具体例
具体例1:化合物(1)の合成
【化18】

【0065】
工程1:
以下の混合物:70mlのトルエン中の、8.0gの1−フェニル−3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オン(Mills et al., J.Chem.Soc. 1956, 4213にしたがって合成した)、3.9mlのシアン酢酸エチル、7gの酢酸アンモニウム、3.6mlの酢酸を、16時間に亘りディーン・スタークコレクタを備えた100mlの三角フラスコ中還流下で加熱した。次いで、トルエンを蒸留して除去し、混合物を220℃で数時間に亘り放置した(Ip2型の中間体の環化)。次いで、反応混合物を50mlのトルエン中ですりつぶし、次いで、濾過した。中間体化合物2−シアノ−1−ナフトール(構造Ip3)に対応する7.27gの黄色の固体を得た。
【0066】
工程2:
以下の混合物:30mlのn−ブタノール中の、2.0gの工程1の生成物、3gの水酸化カリウムを、6時間に亘り125mlの反応器中約200-220℃で加熱した。冷却後、その混合物をフラスコに移し、次いで、乾燥状態まで減少させた。次いで、ペーストを100mlの水中に溶解させ、濃塩酸(4ml)をゆっくりと徐々に加えることにより中和した。沈殿物を濾過により回収し、20mlの水で4回洗浄し、次いで、一晩に亘り40℃の真空下で乾燥させた。収率は90%であった。
【0067】
工程3:
以下の混合物:808mgの工程2の生成物、1.05gの1,1−ビス(パラ−メトキシフェニル)−プロピン−1−オールを、6時間に亘り100mlの反応器において45mlのキシレン中の触媒量のブロム酢酸の存在する状態で還流下で加熱した。次いで、この混合物を乾燥状態まで蒸発させ、生成物をシリカのクロマトグラフィーを用いてトルエンで溶離することにより単離した。最も純度の高いフォトクロミック分画を組み合わせ、乾燥状態まで減少させた。THF/ヘプタン中での再結晶化後、640mgの化合物(1)を固体形態で回収した。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0068】
具体例2:化合物(2)の合成
以下の混合物:701mgの具体例1の工程2の生成物、930mgの1−パラ−ジメチルアミノフェニル−1−フェニル−プロピン−1−オールを、6時間に亘り
100mlの反応器において25mlのキシレン中の触媒量のブロム酢酸の存在する状体で還流下で加熱した。次いで、この混合物を乾燥状態まで蒸発させ、生成物をシリカのクロマトグラフィーを用いてトルエンで溶離することにより単離した。最も純度の高いフォトクロミック分画を組み合わせ、乾燥状態まで減少させた。120mgの化合物(2)を固体形態で得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0069】
具体例3
【化19】

【0070】
工程1:
1−(p−メトキシフェニル)−6−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン誘導体(Org.Synth.Coll. Vol III, p729にしたがって合成した)を、対応するブロムヒドリンの塩基性媒質中の転位によりエポキシ誘導体に転化させた。次いで、このエポキシ誘導体の酸性媒質中の転位によりケトンを得た。
【0071】
工程2:
具体例1におけるように工程1の誘導体の、1,1−ビス(p−メトキシフェニル)−プロピン−1−オールとの反応により化合物(3)を得た。この生成物(3)は精製後に得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0072】
具体例4:化合物(4)の合成
化合物(4)は、具体例1におけるように具体例3のII型の誘導体中間体の、1−パラジメチルアミノフェニル−1−p−メトキシ−フェニル−プロピン−1−オールとの反応により得た。この生成物(4)は精製後に得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0073】
具体例5:化合物(5)の合成
【化20】

【0074】
化合物(5)は、具体例1おけるように、還流時間を2時間にして、上述したナフトール誘導体(500mg)(Newman et al., J.Amer.Chem.Soc. 1938, 60, 2947に記載された方法にしたがって得た)の、1,1−ビス(p−メトキシフェニル)−プロピン−1−オール(560mg)との反応により得た。300mgの化合物(5)を精製後に得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0075】
具体例6:化合物(6)の合成
【化21】

【0076】
工程1:
2−(1−ナフチル)シクロヘキサノン誘導体を、1−ブロモナフタレンのマグネシウム誘導体の、エポキシシクロヘキサン(Takahashi et al., Tetrahedron Asym. 1995, 6, 617による)との反応、およびその後の塩化クロム酸ピリジニウム(Corey et al., Tetrahedron Lett. 1975, 2647による)による酸化により調製した。以下の混合物:40mlのトルエン中の、8.4gの2−(1−ナフチル)シクロヘキサノン、4.3gのシアン酢酸エチル、4gの酢酸アンモニウム、4mlの酢酸を、8時間に亘り、ディーン・スタークコレクタを備えた100mlのフラスコ中において還流下で加熱した。次いで、トルエンを蒸発させて除去し、15gのアセトアミドを加えた。次いで、200℃の温度を3時間に亘り維持した。次いで、熱い媒質を200mlの水中に注ぎ入れ、固体の沈殿物を濾過により採集した。エタノールからの再結晶化により、7.6gのシアン化(cyanated)ナフトール(Ip3)を得ることができた。
【0077】
工程2:
以下の混合物:20mlのn−ブタノール中の、3.5gの工程1の生成物、5gの水酸化カリウムを、8時間に亘り125mlの反応器中薬200-230℃で加熱した。冷却後、混合物をフラスコ中に移し、次いで、乾燥状態まで減少させた。次いで、ペーストを100mlの水中に溶解させ、濃塩酸をゆっくりと徐々に添加することにより中和した。沈殿物を濾過により回収し、20mlの水で4回洗浄し、一晩に亘り40℃の真空下で乾燥させた。このようにナフトール(II型)を計量可能な収量で得た。
【0078】
工程3:
以下の混合物:1gの工程2の生成物、1.5gの1,1−ビス(パラ−メトキシフェニル)−プロピン−1−オールを、5時間に亘り100mlの反応器において15mlのキシレン中の触媒量のブロム酢酸の存在する状態の還流下で加熱した。次いで、生成物をシリカのクロマトグラフィーを用いてトルエン/ヘプタン(70/30)混合物で溶離することにより精製した。最も純度の高いフォトクロミック分画を組み合わせ、乾燥状態まで減少させた。トルエン/ヘプタンからの再結晶後、230mgの化合物(6)を回収した。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0079】
具体例7:化合物(7)の合成
【化22】

【0080】
化合物(7)は、化合物(6)について記載したものと同じ様式で合成した。最後の工程については、1gのナフトールを、20mlのトルエン中の触媒量のブロム酢酸の存在下で1.1gの1,1−ビス(パラ−メトキシフェニル)−プロピン−1−オールと反応させた。次いで、生成物を、シリカのクロマトグラフィーを用いてトルエン/ヘプタン(80/20)混合物での溶離により精製した。最も純度の高い分画を組み合わせ、乾燥状態まで減少させた。トルエン/ジイソプロピルエーテル混合物からの再結晶化後に、800mgの化合物(7)を回収した。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0081】
具体例8:化合物(8)の合成
化合物(8)を、具体例6に記載したものと類似の様式で、ナフトール誘導体を1−(パラ−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニル−プロピン−1−オールと反応させることにより得た。
【0082】
具体例9:化合物(9)の合成
【化23】

【0083】
化合物(9)を、具体例6に記載したものと類似の様式で、2−(1−ナフチル)シクロペンタノンから出発することにより得た。
【0084】
具体例10:化合物(10)の合成
【化24】

【0085】
中間体のフェナントロールを、具体例3に記載したのと同じ方法にしたがって得た。次いで、化合物(10)を、具体例1に記載したように、1−(パラ−モルフォリノフェニル)−1−フェニル−プロピン−1−オールとの結合により得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0086】
具体例11:化合物(11)の合成
【化25】

【0087】
中間体のナフトール化合物を、具体例3に示された方法と同様の方法にしたがって、テトラロンの代わりにベンゾテトラロン(A.Eirin et al., Arch.Pharm. 1987, 320, 1110にしたがって得た)から得た。次いで、化合物(11)を、具体例1に記載されたように、1−(パラ−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニル−プロピン−1−オールと結合させ、次いで、クロマトグラフィーによる精製により得た。その構造をNMR分光分析法により確認した。
【0088】
具体例12:化合物(12)の合成
化合物(12)を、具体例の最後の工程に記載されたように、具体例1の中間体のナフトールを1−チエニル−1−フェニル−プロピン−1−オールと反応させ、次いで、クロマトグラフィーによる精製により得た。その構造をNMRにより確認した。
【0089】
具体例13:化合物(13)の合成
【化26】

【0090】
化合物(13)を、中間体のナフトール(Robinson, J.Chem.Soc., 1938, 1390にしたがって得た)を、1,1−ビス(パラ−メトキシ−フェニル)−プロピン−1−オールと反応させ、次いで、クロマトグラフィーによる精製により得た。その構造をNMRにより確認した。
【0091】
具体例14:化合物C1、C2およびC3
比較化合物C1を、1−ナフトールおよび1,1−ビス(p−メトキシフェニル)−プロピン−1−オールから合成した。それは化学式(C1)のものである。
【0092】
化合物C2は、化学式:
【化27】

【0093】
のものである。化合物C2は市販されている。
【0094】
化合物C3は米国特許第5,783,116号に記載されている。
【0095】
具体例15
前記化合物(1)から(13)まで、C1、C2およびC3のフォトクロミック特性を評価した。
【0096】
前記化合物を50mlのTHF中に5mgの比率で溶解させ、次いで、紫外線−可視光の吸収率を、365nmの紫外線に露出した前後で測定した(1cmの光路)。発生した色合いおよび強度の観察は、溶液を太陽光中または太陽光型シミュレータの前に配置することにより行った。これらの化合物の特性が以下の表に上げられている。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0097】
太陽光または紫外線の存在する状体での溶液の観察により、本発明の化合物は、より長い波長に向かってシフトした(深色シフト)λ1およびλ2、並びに同族の化合物C1、C2およびC3に匹敵する速い退色反応速度を有することが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)の化合物であって:
【化1】

ここで:
・ R1およびR2は、同じかまたは異なり、独立して:
− 水素、
− 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 基本構造において、それぞれ、6から24までの炭素原子または4から24までの炭素原子と、硫黄、酸素および窒素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを含むアリールまたはヘテロアリール基であって、該基本構造が必要に応じて、以下に挙げられる置換基の全て:
+ ハロゲン、
+ ヒドロキシ基、
+ 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
+ 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルコキシ基、
+ 少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、それぞれ上述した(C1−C12)アルキルまたはアルコキシ基に対応するハロアルキルまたはハロアルコキシ基、
+ 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
+ 2から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルケニル基、
+ −NH2基、
+ Rが1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基である、−NHR基、

【化2】

ここで、R’およびR”は、同じかまたは異なり、独立して、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェニル基を表し、またはそれらが結合している窒素原子とともに、酸素、硫黄および窒素から選択される少なくとも1つの他のヘテロ原子を含み得る5または7員環を表し、該窒素が、必要に応じて、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基であるR”’により置換されている、
+ メタクリロイル基またはアクリロイル基、
から選択される少なくとも1つの置換基により置換されており、
− アラルキルまたはヘテロアラルキル基、ここで、そのアルキル基が1から4までの炭素原子を含む線状または枝分れのものであり、そのアリールおよびヘテロアリール基が上述した定義を有している、
を表し、
または、
前記2つの置換基R1およびR2が互いにアダマンチル、ノルボルニル、フルオレニリデン、ジ(C1−C6)アルキルアントラセニリデンまたはスピロ(C5−C6)シクロアルキルアントラセニリデン基を形成し、該基が必要に応じて、アリールまたはヘテロアリール基に対応する、R1、R2に関して上述した置換基の内の少なくとも1つにより置換されている;
・ R3が、同じかまた異なり、独立して:
− ハロゲン、
− 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルコキシ基、
− 少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、それぞれ、上述したアルキル、シクロアルキル、アルコキシ基に対応するハロアルキル、ハロシクロアルキル、またはハロアルコキシ基、
− R1、R2について前出のように与えられたものと同一の定義を有するアリールまたはヘテロアリール基、
− アラルキルまたはヘテロアラルキル基、ここで、そのアルキル基が1から4までの炭素原子を含む線状または枝分れのものであり、そのアリールおよびヘテロアリール基がR1、R2について前出のように与えられた定義を有している、
− 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
− アミンまたはアミド基:−NH2、−NHR、−CONH2、−CONHR、
【化3】

ここで、R、R’、R”が、R1、R2:アリールまたはヘテロアリール基のアミン置換基について前出のように与えられものと同一の定義をそれぞれ有し、
− −OCOR8または−COOR8、ここで、R8が、1から6までの炭素原子を含む直鎖または枝分れアルキル基、または3から6までの炭素原子を含むシクロアルキル基、またはR1、R2:アリールまたはヘテロアリール基に関して上述した置換基の内の少なくとも1つにより必要に応じて置換されているフェニル基である、
を表し;
・ mが0から4までの整数であり;
・ Aが:
【化4】

を表し、これらのアネル化環において:
Δ 点線が、化学式(I)のナフトピラン環の炭素C5炭素C6結合を表し;
Δ アネル化環(A4)のα結合が、化学式(I)のナフトピラン環の炭素C5または炭素C6に普通に結合されることができ;
Δ R4が、同じかまたは異なり、独立して、OH、線状または枝分れでありかつ1から6までの炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基を表し、もしくは2つのR4がカルボニル(CO)を形成し;
Δ R5が、:
− ハロゲン、
− 1から12までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、
− 少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、上述した線状または枝分れアルキル基に対応するハロアルキル基、
− 3から12までの炭素原子を含むシクロアルキル基、
− 1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルコキシ基、
− 化学式(I)のR1、R2基がアリールまたはヘテロアリール基に独立して対応する場合には、R1、R2基の定義において上述された置換基の内の少なくとも1つにより必要に応じて置換されたフェニルまたはベンジル基、
− −NH2、−NHR、
【化5】

ここで、R、R’、R”が、R1、R2:アリールまたはヘテロアリール基のアミン置換基について前出のように与えられものと同一の定義をそれぞれ有し、
− 1から6までの炭素原子を含む少なくとも1つの線状または枝分れアルキルまたはアルコキシ基により必要に応じて置換されたフェノキシまたはナフトキシ基、
− −COR9、−COOR9または−CONHR9基、ここで、R9が、1から6までの炭素原子を含む線状または枝分れアルキル基、または3から6までの炭素原子を含むシクロアルキル基、または化学式(I)のR1、R2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R1、R2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つにより必要に応じて置換されたフェニルまたはベンジル基、
− 2つの隣接するR5基が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むことのできる5から6員の芳香環または非芳香環を互いに形成することでき;
Δ Aが(A)を示す場合、nが0から2までの整数であり、pが0から4までの整数であり、Aが(A)を示す場合、nが0から2までの整数である;
ここで、(A2)において、少なくとも2つの隣接する置換基R3が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環または2つのアネル化された環を有する少なくとも1つの芳香環基または非芳香環基を形成する場合のみにnがゼロであり、このまたはこれらのアネル化環が、R1および/またはR2を形成できるアリール基について上述された定義を有するものから選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換される条件に従う;
ことを特徴とする化学式(I)の化合物。
【請求項2】
Aが請求項1記載のアネル化された環(A2)に対応することを特徴とする請求項1記載の化学式(I)の化合物。
【請求項3】
Aが請求項1記載のアネル化された環(A4)に対応することを特徴とする請求項1記載の化学式(I)の化合物。
【請求項4】
少なくとも2つの隣接するR3基が、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択された少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環または2つのアネル化された環を有する少なくとも1つの芳香族または非芳香族の環基を互いに形成し、前記環またはアネル化された環が、R1および/またはR2を形成できるアリールまたはヘテロアリール基について請求項1記載の定義を有するものから選択された少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の化学式(I)の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、
− R1、R2が、同じかまたは異なり、独立して、その基本構造が、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピリジル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、N−(C1−C6)アルキルカルバゾール、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ユロリジニル基からなる群より選択される、必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール基を表す;
− またはR1およびR2がアダマンチルまたはノルボルニル基を互いに形成する、
化学式(I)のものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の化学式(I)の化合物を調製する方法であって、
→ 以下の化学式(II)を有する少なくとも1つの化合物の:
【化6】

ここで、R3、Aおよびmが化学式(I)に関して請求項1から5いずれか1項に定義されたものであり;
→ 以下の化学式(III)を有する、プロパルギルアルコールの少なくとも1つの誘導体との:
【化7】

ここで、R1およびR2が化学式(I)に関して請求項1から5いずれか1項に定義されたものであり;
または以下の化学式(III')を有する、少なくとも1つのアルデヒド誘導体との:
【化8】

ここで、R1およびR2が化学式(I)に関して請求項1から5いずれか1項に定義されたものであり;
縮合を行うことから実質的になることを特徴とする方法。
【請求項7】
化学式(II)の出発化合物が、
以下の基本工程:
1−化学式:
【化9】

の前駆体(Ip1)の、中間体生成物(Ip2):
【化10】

を得るように、Ra=アルキルである化学式CN−CH2−COORaの少なくとも1つのシアン酢酸アルキルとの反応;
2−中間体(Ip3):
【化11】

に導かれる(Ip2)の熱環化;
3−中間体(II)を生成するための(Ip3)の高温脱シアン化;
を実施することにより精製されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1から5いずれか1項記載の少なくとも1つの化合物により構成された少なくとも1つのモノマーを重合および/または架橋することにより得られた(コ)ポリマーおよび/または網状体。
【請求項9】
請求項1から5いずれか1項記載の化合物により、または請求項1から5いずれか1項記載の化合物の少なくとも2つの混合物により、または請求項1から5いずれか1項記載の化合物の少なくとも1つと別の種類の少なくとも1つの他のフォトクロミック化合物および/または少なくとも1つの非フォトクロミック着色剤との混合物により構成されることを特徴とするフォトクロミック化合物。
【請求項10】
− 請求項1から5いずれか1項記載の少なくとも1つの化合物、
− および/またはその構造において請求項1から5いずれか1項記載の少なくとも1つの化合物(I)を有する少なくとも1つの線状または架橋(コ)ポリマー、
− および、必要に応じて、別の種類の少なくとも1つの他のフォトクロミック化合物および/または少なくとも1つの非フォトクロミック着色剤および/または少なくとも1つの安定剤、
を含むことを特徴とするフォトクロミック組成物。
【請求項11】
− 請求項1から5いずれか1項記載の少なくとも1つの化合物(I)、
− および/または請求項10記載の少なくとも1つの組成物、
− および/または請求項8記載の少なくとも1つの(コ)ポリマーおよび/または網状体、
を含むことを特徴とする(コ)ポリマーマトリクス。
【請求項12】
前記マトリクスを構成する(コ)ポリマーが、以下のリスト:
− 必要に応じてハロゲン化された、または少なくとも1つのエーテルおよび/またはエステルおよび/またはカーボネートおよび/またはカルバメートおよび/またはチオカルバメートおよび/または尿素および/またはアミド基を含む、アルキル、シクロアルキル、(ポリまたはオリゴ)エチレングリコール、アリールまたはアリールアルキルモノ,ジ,トリまたはテトラアクリレートまたはモノ,ジ,トリまたはテトラメタクリレート、
− ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカルバメート、ポリエポキシ、ポリウレア、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、脂肪族または芳香族ポリエステル、ビニルポリマー、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースまたはプリビニルブチラール、
− 以下の化学式を有する二官能性モノマー:
【化12】

ここで:
Δ R10、R’10、R11およびR’11は、同じかまたは異なり、独立して水素またはメチル基を表し;
Δ m1およびn1は、独立して、0から4までの整数であり;
Δ XおよびX’は、同じかまたは異なり、ハロゲンであり;
Δ p1およびq1は、独立して、0から4までの整数である;
− 前に列記されたポリマーの前駆体モノマーから選択される、少なくとも2種類の共重合性モノマーのコポリマー;
から選択されることを特徴とする請求項11記載のマトリクス。
【請求項13】
− 請求項1から5いずれか1項記載の少なくとも1つの化合物(I)、
− および/または請求項10記載の少なくとも1つの組成物、
− および/または請求項8記載の少なくとも1つの(コ)ポリマーおよび/または網状体、
− および/または請求項11または12記載の少なくとも1つのマトリクス、
を含むことを特徴とする眼用またはソーラー製品。
【請求項14】
レンズ、窓ガラス、または光学素子により構成されることを特徴とする請求項13記載の製品。

【公開番号】特開2011−144181(P2011−144181A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28893(P2011−28893)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2000−570167(P2000−570167)の分割
【原出願日】平成11年9月7日(1999.9.7)
【出願人】(591006966)コーニング ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】