説明

CADデータ生成装置、CADデータ生成プログラムおよび記憶媒体

【課題】工程の各段階の構造物の3次元CADデータを生成する。
【解決手段】CADデータ生成装置100は、3次元オブジェクトを含む3次元CADデータを取得するCAD取得部111と、複数の作業工程および該作業工程の順序を規定した工程管理データと、各作業工程に対して3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルとを格納する記憶部150と、作業工程を取得する工程取得部111と、作業工程以前の作業工程を、第1作業工程群として前記工程管理データから抽出する工程抽出部112と、対照テーブルを参照して、第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出するCADデータ抽出部112と、第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを立体物模型のための3次元CADデータとして生成するCADデータ生成部113とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CADデータ生成装置、CADデータ生成プログラムおよび記憶媒体に関し、特に、3次元CADデータを生成するCADデータ生成装置、CADデータ生成プログラムおよび記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品開発や構造物設計においては、設計段階や開発段階にて幾つかの試作品を作成し、外観や性能の評価をしている。最も原始的な試作モデルには、粘土で作製したクレイモデルやウッド(木)を削り出して作製したウッドモデルがある。しかしながら、このようなモデル作製は、人手、時間、経費がかかり、再現性が悪く、モデル作製職人の技量に依存し過ぎるといった問題がある。このような従来の試作モデル作製技術に代わって、コンピュータ技術が進展した現在では、開発製品の造形データを3次元CADで作成し、この3次元CADデータを用いて試作モデルを作成する「ラピッドプロトタイピング」という技術が開発され、実用化されつつある。これは、3次元CADデータから目的とする「立体モデル」を人手や時間をかけずに、極めて、高速、かつ、低コストで作成する技術である。
【0003】
ラピッドプロトタイピングの代表的な技法は「積層造形法」であり、これは、対象物の3次元CADデータからスライス状データ(正確には、対象物を構成するわずかな厚さを持つ薄板)を作成し、このスライス状データを1層ずつ積層して立体物(立体模型)を形成するものである。そして、積層造形法で実用されているものとしては、大別して、レーザで光硬化性樹脂を固化させて造形する「光造影法」と、インクジェット方式などで固化剤/結合剤を供給して粉末を固めて造形する「粉末固着式積層法」とがあるが、低コスト、高速、カラー化という点で後者の方が優れている。「粉末固着式積層法」については、幾つかの関連特許が出願・取得されており、これを用いた3次元プリンタが市場に投入されている。例えば、従来技術としては「3次元物体の模型を製作する方法および装置」(特許文献1を参照されたい。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−538191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、作成済みの3次元データから、より正確に、より安価に、より短時間で目的の立体物を造形するかに主眼がおかれてきた。これは、開発している製品が機械部品や携帯電話端末などの単体商品、即ち、比較的小さな物品の造形物である場合には、このような開発目標の設定でもさほど問題はなく、このような用途には「光造影法」が適している。
【0006】
他方、「粉末固着式積層法」は、近年、技術的な革新があり、極めて低コストかつ高速に「カラーの立体物」を造形することが可能になった。そのため、機械部品などの物品造形物以外の様々な分野への応用が期待されるようになりつつある。
【0007】
しかしながら、建築物の立体模型の場合は、建築物の3次元CADデータをそのまま用いて立体模型を作成すると、ユーザが観察できるのは、「完成形の一体物」として作成された「完成立体模型の外観のみ」になってしまう。建築物や土木、建設の構造物の場合は、最終的な構造物の全体を観察することも大切ではあるが、構造物の完成に至るまでの各工程の段階での構造物の状況を把握することが非常に重要である。特に、大規模な構造物の構築プロジェクトでは、工程の各段階で中間検査が設定されているが、この各検査段階で構造物の外観を把握することは非常に有効であろうと考えられる。しかしながら、従来技術では、最終的な構造物の3次元CADデータが存在するが、そこから、途中の段階の構造物の3次元CADデータを抽出することは困難であり、現状では、中間段階の図面などの紙ベースで外観などを把握している。また、建築物や土木、建設の構造物の場合は、中間段階の構造物でも、外から観察できる外部構造も大切ではあるが、部屋割、内部構造、断面構造、層構造、コンクリートの配筋状況の方がより重要であることが多い。しかし、従来技術では、立体物の3次元データをそのまま使用したのでは、中間段階の建築物や構造物の内部を見ることができない。即ち、建設途中の構造物の建築物や構造物の部屋割、内部構造、断面構造、コンクリートの配筋状況を観察できる立体模型を作成することはできない。
【0008】
途中の段階の構造物の立体模型を作成するためには、複雑な操作を必要とする3次元CADソフトの熟練オペレータに、元の3次元CADデータを加工することを指示するなどして、建設途中の建築物を観察できるように、中間段階の「未完成立体模型」用のCADデータを作成する必要がある。或いは、複雑な操作を必要とする3次元CADソフトの熟練オペレータに部屋割、内部構造、断面構造、コンクリートの配筋状況を観察できるように、元の3次元CADデータを加工することを指示するなどして、建築物の断面を観察できるように建築物の一部を切り取った「切り欠き立体模型」用のCADデータを作成する必要がある。このように、専門技術を持ったCADオペレータの手を煩わして「切り欠き立体模型」用のCADデータを作成して、内部構造が観察できるようになったとしても、このような「切り欠き立体模型」では、今度は、建築物や土木工作物の「全体」の構造、外観を観察できないといったジレンマがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、3次元プリンタによる立体物作製に適したCADデータ生成装置、CADデータ生成プログラムおよび記憶媒体、特に、構築の各工程の段階の構造物の3次元CADデータを生成することである。また、本発明の別の目的は、目的とする立体物をあたかも一体物として作製しつつも、当該一体物を分割可能ならしめるように3次元CADデータを生成するCADデータ生成装置、CADデータ生成プログラムおよび記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明によるCADデータ生成装置は、
(少なくとも人工的な構造物(建物、ビル、ダム、橋、道路など)を含む)立体物の3次元CADデータであって、前記立体物を構成する複数の構成要素のための3次元オブジェクトを含むような3次元CADデータを取得するCAD取得部と、
立体物(立体物には、人工的な構造物、或いは、土、砂利、石などの自然物の層や丘、小さい山、崖地などを含む)を構築するための複数の作業工程および該作業工程の順序を規定した工程管理データと、各作業工程に対して、前記立体物に含まれる構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルと、を格納する記憶部と、
作業工程を取得する工程取得部(ユーザによる操作を受け付ける操作受付部、または、外部からの情報を取得する受信部など)と、
前記取得した作業工程および該作業工程よりも前の順序の作業工程を、第1作業工程群として前記工程管理データから抽出する工程抽出部と、
前記対照テーブルを参照して、該抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、該特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出するCADデータ抽出部と、
前記抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、前記取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成するCADデータ生成部と、
を有する。
【0011】
また、第2の発明によるCADデータ生成装置は、
前記工程管理データが、
作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含み、
前記工程取得部が、
前記工程管理データに含まれる検査情報を抽出し、該抽出した検査情報の時点の直前に行われる作業工程を自動的に取得する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明によるCADデータ生成装置は、
前記記憶部が、
前記立体物を構成する少なくとも1つの構成要素に対応する固有のパターンデータ(バーコード、2次元バーコード、記号、文字情報など)を規定したパターンテーブルを格納し、
前記CADデータ生成部が、
前記立体物の外部に露出した面であって前記構成要素の3次元オブジェクト、或いは、該構成要素の近傍の3次元オブジェクトに属する面に、前記構成要素に対応したパターンデータを貼り付けるように、前記3次元CADデータを加工する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明によるCADデータ生成装置は、
前記記憶部が、
ギャップ幅をさらに格納し、
前記CADデータ抽出部が、
前記対照テーブルを参照して、該抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、該特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出し、該第1の3次元オブジェクト群以外の3次元オブジェクトを特定し、該特定した3次元オブジェクトを第2の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出し、
前記CADデータ生成装置が、
前記抽出した第1の3次元オブジェクト群から構成されるべき第1の立体物と、前記抽出した第2の3次元オブジェクト群から構成されるべき第2の立体物との境目を第1分割面として設定する分割面設定部をさらに有し、
前記CADデータ生成部が、
前記第1分割面および前記ギャップ幅で規定された第1分割領域で、前記第1の立体物と前記第2の立体物とを分割するように、前記第1の3次元オブジェクト群と、前記第2の3次元オブジェクト群とを加工した3次元CADデータを生成する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明によるCADデータ生成装置は、
前記立体物を分割する1つ以上の分割指示面を指定する操作入力を受け付ける入力受付部と、
前記分割指示面および前記ギャップ幅で規定された第2分割領域で前記立体物を分割(切断)するように、前記3次元CADデータを加工するCADデータ加工部と、
をさらに有する、
ことを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明によるCADデータ生成装置は、
前記ギャップ幅は、前記立体物が印刷(立体造形)される3次元プリンタの3次元造形分解能に応じて規定される、
ことを特徴とする。
例えば、3次元プリンタの3次元造形分解能は、粉末を基材に使用して固化剤で基材の一部を固化するタイプの3次元プリンタの場合は、一回の基材散布層の厚さ、および、固化剤(造形剤、造形インク)の浸透厚さの少なくとも一方に応じて規定される。ギャップ幅は、できる限り薄くすることが好適である。
【0016】
また、第7の発明によるCADデータ生成装置は、
前記記憶部が、
前記立体物を構成する少なくとも1つの構成要素に対応する固有のパターンデータを規定したパターンテーブルを格納し、
前記CADデータ生成部が、
前記立体物を分割する面であって、前記構成要素の3次元オブジェクト、或いは、該構成要素の近傍の3次元オブジェクトに属する面に、前記構成要素に対応したパターンデータを貼り付けるように、前記3次元CADデータを加工する、
ことを特徴とする。
構成要素の3次元オブジェクトが、例えば、コンクリートの壁材に埋め込まれた鉄筋の場合には、コンクリートの壁材に鉄筋のパターンデータを貼り付けることが好適である。
【0017】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する他の態様の物、方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。なお、下記の方法やプログラムの各ステップは、データの処理においては必要に応じて、CPU、DSPなどの演算処理装置(プロセッサ)を使用するものであり、入力したデータや加工・生成したデータなどを磁気テープ、HDD、メモリなどの記憶装置に格納するものである。
【0018】
例えば、本発明を物として実現させた第8の発明による立体模型は、
上述した第1〜7のいずれかの発明に記載のCADデータ生成装置により生成されたCADデータを用いて3次元プリンタで造形された立体模型である。
【0019】
また、例えば、本発明を物として実現させた第9の発明によるプログラムは、
コンピュータを、上述した第1〜7のいずれかの発明に記載のCADデータ生成装置として機能させるためのCADデータ生成プログラムである。
【0020】
また、例えば、本発明を物として実現させた第10の発明による記憶媒体は、
上述した第1〜7のいずれかの発明に記載のCADデータ生成プログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体である。
【0021】
上述したように本発明の解決手段を装置や立体模型として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。なお、下記の方法やプログラムの各ステップは、データの処理においては必要に応じて、CPU、DSPなどの演算処理装置(プロセッサ)を使用するものであり、入力したデータや加工・生成したデータなどを磁気テープ、HDD、メモリなどの記憶装置に格納するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構築の各工程の段階の構造物の3次元CADデータを容易に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施態様1によるCADデータ生成装置の概要を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施態様1のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、記憶部に格納された盛り土タイプの道路工事の工程管理データを示す模式図である。
【図4】図4は、盛り土タイプの道路工事の作業工程に対して、立体物の構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルを示す模式図である。
【図5】図5は、図2および図3の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図6】図6は、図2および図3の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図7】図7は、記憶部に格納された切り土タイプの道路工事の工程管理データを示す模式図である。
【図8】図8は、切り土タイプの道路工事の作業工程に対して、立体物の構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルを示す模式図である。
【図9】図9は、図7および図8の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図10】図10は、図7および図8の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図11】図11は、本発明の実施態様2によるCADデータ生成装置の概要を示すブロック図である。
【図12】図12は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、N1−N3工事から構成される仮想工事の工程管理データおよびその対照テーブルを示す模式図である。
【図14】図14は、図13の諸データを用いて図12の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図15】図15は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、図13の諸データを用いて図15の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図17】図17は、図16で生成した3次元CADデータを詳細に説明する模式図である。
【図18】図18は、図13の諸データを用いて図15の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図19】図19は、実施態様2のCADデータ加工装置で処理された3次元CADデータを2次元平面に投影した投影図である。
【図20】図20は、粉末固着式積層法の原理を示す積層遷移図である。
【図21】図21は、実施態様2のCADデータ生成装置で処理された3次元CADデータを用いて粉末固着式積層法による3次元プリンタで立体物を造形する様子を示す積層遷移図である。
【図22】図22は、実施態様2のCADデータ生成装置で処理される立体物に設定される分割領域の厚さを示す投影図である。
【図23】図23は、実施態様2による装置またはプログラムで3次元CADデータを生成・加工した家屋を立体物として3次元プリンタで作製する様子を示す分解斜視図である。
【図24】図24は、図23で作製した一体物の家屋立体模型を示す図である。
【図25】図25は、図24に示した一体物の家屋立体模型を分割したときの分割面の様子を示す図である。
【図26】図26は、図24に示した一体物の家屋立体模型を分割したときの分割面の様子を示す図である。
【図27】図27は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図28】図28は、分割面を2つ設定した3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。
【図29】図29は、実施態様1または2による装置またはプログラムで生成・加工した3次元CADデータを3次元プリンタで出力した河川構造物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0025】
<実施態様1>
図1は、本発明の実施態様1によるCADデータ生成装置の概要を示すブロック図である。図に示すように、CADデータ生成装置100(CDG)は、制御部(CPUなどのプロセッサ)110と、入力部120と、出力部130と、通信部140と、記憶部150と、表示部160とを有する。記憶部150には、工程管理データPMDと、対照テーブルREFとが格納されている。制御部110は、取得部111、抽出部112、CADデータ生成部113、および3次元出力制御部114を有する。工程管理データPMDは、立体物(立体物には、人工的な構造物のみならず、或いは、土、砂利、石などの自然物の層や丘、小さい山、崖地などを含む)を構築するための複数の作業工程および該作業工程の順序を規定したものである。対照テーブルREFは、各作業工程に対して、前記立体物に含まれる構成要素の3次元オブジェクトを関連付けるテーブルである。工程管理データPMDは、本システムの記憶部内に格納してあるものを使用するのが好適であるが、処理でデータが必要になったときに、その都度、工程管理サーバPMSからネットワークNETを介して取得してもよい。
【0026】
取得部111は、CAD取得部として機能するときは、少なくとも人工的な構造物(建物、ビル、ダム、橋、道路など)を含む立体物の3次元CADデータであって、前記立体物を構成する複数の構成要素のための3次元オブジェクトを含むような3次元CADデータを取得する。取得した立体物の3次元CADデータは、CADシステムCD1で作成されたものであり、ネットワークNETを介して通信部140により受信され、記憶部150に格納しておく。取得した3次元CADデータは、3次元出力制御部114により、3次元空間上に3次元モデルとしてモデリングされ、この3次元モデル(立体物)を2次元の平面(投影面)に投影し、この投影された「立体物」を表示部160が表示する。取得部111は、工程取得部として機能するときは、作業工程を取得する。取得部111は、単独で作業工程を取得してもよいが、ユーザによる操作を受け付ける操作受付部(入力部)、または、外部からの情報を取得する受信部RCVなどと連携して情報を取得してもよい。
【0027】
抽出部112は、工程抽出部として機能するときは、取得した作業工程および該作業工程よりも前の順序の作業工程を、第1作業工程群として前記工程管理データから抽出する。抽出部112は、CADデータ抽出部として機能するときは、対照テーブルを参照して、抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。CADデータ生成部113は、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。
【0028】
取得した3次元CADデータ、取得した作業工程、抽出した作業工程群、抽出した3次元CADオブジェクト、生成した3次元CADデータは、記憶部150に中間データとして格納しておくことが望ましい。3次元出力制御部114は、3次元プリンタPRN1のデバイスドライバ或いは、その機能を有する機能部であり、生成された3次元CADデータを用いて、目的の立体物は出力部130を介して3次元CADプリンタPRN1に出力(立体印刷)される。3次元出力制御部114、或いは、通信部140を介して、加工後の3次元CADデータを外部の装置である端末PC1に送信/出力し、これらの端末上に格納させてもよい。このように、生成した情報や中間データおよび取得したデータを外部に送信したり、表示部に表示したり、生成した情報や中間データおよび取得したデータなどを記憶部に格納したりすることは、後述する他の実施態様でも同様に可能であることに注意されたい。なお、CADデータ生成装置100は、汎用コンピュータ、特定用途コンピュータ、サーバ、PCなどのコンピュータ、或いは、これらコンピュータに、本システムの機能部や処理手順(方法)をコンピュータ上で実現(実行)するプログラムモジュールをコンピュータが持つCPU(プロセッサやそのキャッシュ)や記憶部に保持したり、外部のサーバやストレージから読み込んだりすることで、コンピュータ上にCADデータ生成装置を構築することが好適であり、後続の各実施態様においても同様である。
【0029】
図2は、実施態様1のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図に示すように、ステップS11にて、取得部が少なくとも人工的な構造物(建物、ビル、ダム、橋、道路、砂利や土などの人工的な地質層など)を含む立体物の3次元CADデータであって、前記立体物を構成する複数の構成要素のための3次元オブジェクトを含むような3次元CADデータを取得する。次に、ステップS12では、記憶部が、立体物(立体物には、人工的な構造物、或いは、土、砂利、石などの自然物の層や丘、小さい山、崖地などを含む)を構築するための複数の作業工程および該作業工程の順序を規定した工程管理データと、各作業工程に対して、前記立体物に含まれる構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルとを格納する。このステップは毎回実行する必要はなく、対象とする立体物や工程管理データが変更されない限り1回だけ実行しておくことで足りる。続いて、ステップS13にて、取得部が作業工程を取得する。
【0030】
ステップS14では、抽出部は、取得した作業工程および該作業工程よりも前の順序の作業工程を、第1作業工程群として前記工程管理データから抽出する。ステップS15では、抽出部は、対照テーブルを参照して、抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。最後に、ステップS16にて、CADデータ生成部は、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。そして、図示していないが、3次元出力制御部は、生成された3次元データを外部の3次元プリンタやCADシステムに出力する。生成された3次元データは、施工段階の状況を確認するために、当該データを使って立体物を表示部に表示させたり、記憶部150に格納したりしてもよい。
【0031】
図3は、記憶部に格納された盛り土タイプの道路工事の工程管理データを示す模式図である。図に示すように、工程管理データPMD1は、横軸に時間、縦軸に工程の順序を規定したガンチャート形式とすることが好適である。本実施態様では、盛り土タイプの道路工事は、4つの作業工程から構成されるものとする。1番目の作業工程が盛り土工事P1であり、2番目の作業工程が法面補強工事P2であり、3番目の作業工程が路体工事P3であり、4番目の作業工程が道路工事P4である。このように、各作業工程は、順序が規定されている。
【0032】
図4は、盛り土タイプの道路工事の作業工程に対して、立体物の構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルを示す模式図である。図に示すように、対照テーブルREF1では、各作業工程に対して、目的とする立体物オブジェクトOB10のうち、当該作業工程に関連する構成要素の3次元オブジェクトの識別子が関連付けられている。例えば、盛り土工事P1は、当該作業工程が対象とする構成要素である地盤x1a、盛り土x1bとが関連付けられる。法面補強工事P2は、当該作業工程で作成される構成要素である法面補強コンクリートx2a,x2bが関連付けられる。路体工事P3は、当該作業工程で作成される構成要素である路体x3a.路床x3b、路体や路床を敷設する前に行うロードローラー(締め固め用機械)により凹む層x3cが関連付けられる。道路工事P4は、当該作業工程で作成される構成要素である下層路盤x4a,上層路盤x4b、表層x4cが関連付けられる。なお、図の下側に示した立体物オブジェクトOB10は、これら構成要素のための3次元オブジェクトの集合である3次元CADデータによって描画されたものである。
【0033】
図5は、図2および図3の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、工程取得部が作業工程として「法面補強工事」を取得したケースで説明する。図に示すように、対照テーブルREF1を参照して、抽出部が、法面補強工事P2の終了時点よりも以前の作業工程である、「法面補強工事P2」、「盛り土工事P1」を第1作業工程群として抽出する。そして、「法面補強工事P2」に関連付けられた構成要素である「法面補強コンクリートx2a,x2b」と、「盛り土工事P1」に関連付けられた構成要素である「地盤x1a」、「盛り土x1b」とが抽出される。このようにして、抽出部が、第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。CADデータ生成部が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。生成した3次元CADデータで描画したものが、工事の途中の立体物オブジェクトOB11である。生成した3次元CADデータを3次元プリンタで印刷・造形すれば、このような作業工程のある段階の終了時点の立体模型を作成することが可能となる。
【0034】
図6は、図2および図3の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、工程取得部が作業工程として「路体工事」を取得したケースで説明する。図に示すように、対照テーブルREF1を参照して、抽出部が、路体工事P3の終了時点よりも以前の作業工程である、「路体工事P3」、「法面補強工事P2」、「盛り土工事P1」を第1作業工程群として抽出する。そして、「路体工事P3」に関連付けられた構成要素である「路体x3a」、「路床x3b」、「ローラで凹んだ層x3c」と、「法面補強工事P2」に関連付けられた構成要素である「法面補強コンクリートx2a,x2b」と、「盛り土工事P1」に関連付けられた構成要素である「地盤x1a」、「盛り土x1b」とが抽出される。ここで、構成要素である「盛り土x1b」は、「路体x3a」、「路床x3b」と重なる位置を占めているが、この場合は、より後の作業工程である「路体x3a」、「路床x3b」を優先し、優先されたオブジェクトで「盛り土x1b」の一部を除外する。
【0035】
このように構造物やその設置場所の自然物などが構築段階においてその形状が変化する場合がある。それを正確に再現するには、他にも幾つか手法がある。例えば、図3のオブジェクトOB10−aに示したローラで凹んだ層x3cという3次元オブジェクトは、中身のない空間を示す特殊な3次元オブジェクトであり、この構成要素と盛り土x1bとを組み合わせると、中央上部が凹んだ盛り土(x1b)となる。その凹んだ箇所に、路体、路床を組み合わせると、OB12のような構成となる。また、路床の上は、作業工程上、何も存在しない空間であり、次の工程で他の層がスタックされる場所である。このようにして、抽出部が、第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。CADデータ生成部が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。生成した3次元CADデータで描画したものが、工事の途中の立体物オブジェクトOB12である。生成した3次元CADデータを3次元プリンタで印刷・造形すれば、このような作業工程のある段階の終了時点の立体模型を作成することが可能となる。
【0036】
図7は、記憶部に格納された切り土タイプの道路工事の工程管理データを示す模式図である。図に示すように、工程管理データPMD2は、横軸に時間、縦軸に工程の順序を規定したガンチャート形式とすることが好適である。本実施態様では、切り土タイプの道路工事は、4つの作業工程から構成されるものとする。1番目の作業工程が切り土工事M1であり、2番目の作業工程が法面補強工事M2であり、3番目の作業工程が路体工事M3であり、4番目の作業工程が道路工事M4である。このように、各作業工程は、順序が規定されている。作業工程は、順序の代わりに、時系列で規定してもよい。
【0037】
図8は、切り土タイプの道路工事の作業工程に対して、立体物の構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルを示す模式図である。図に示すように、対照テーブルREF2では、各作業工程に対して、目的とする立体物オブジェクトOB20のうち、当該作業工程に関連する構成要素の3次元オブジェクトの識別子が関連付けられている。例えば、切り土工事M1は、当該作業工程が対象とする構成要素である地盤y1b、切り土された傾斜地y1aとが関連付けられる。盛り土タイプの工事では、作業工程で除外されるべき対象である層やブロックを、中身のない空間を示す特殊な3次元オブジェクトで規定することによる巧みな処理を用いたが、この実施態様では、作業工程で変化していく構成要素は、オブジェクトB20−aのような変化した形状(或いは変化前の形状)の構成要素の3次元オブジェクトy1bとして用意することで処理する。法面補強工事M2は、当該作業工程で作成される構成要素である法面補強コンクリートy2が関連付けられる。路体工事M3は、当該作業工程で作成される構成要素である、路体や路床を敷設する前に行うロードローラー(締め固め用機械)により左の部分が締固めされた地盤y3a,路体y3b,路床y3cが関連付けられる。道路工事M4は、当該作業工程で作成される構成要素である下層路盤y4a,上層路盤y4b、表層y4cが関連付けられる。なお、図の下側に示した立体物オブジェクトOB20は、これら構成要素のための3次元オブジェクトの集合である3次元CADデータによって描画されたものである。
【0038】
図9は、図7および図8の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、工程取得部が作業工程として「法面補強工事」を取得したケースで説明する。図に示すように、対照テーブルREF2を参照して、抽出部が、法面補強工事P2の終了時点よりも以前の作業工程である、「法面補強工事M2」、「切り土工事M1」を第1作業工程群として抽出する。そして、「法面補強工事M2」に関連付けられた構成要素である「法面補強コンクリートy2」と、「切り土工事M1」に関連付けられた構成要素である「地盤y1b」、「切り土された傾斜地y1a」とが抽出される。このようにして、抽出部が、第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。CADデータ生成部が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。生成した3次元CADデータで描画したものが、工事の途中の立体物オブジェクトOB21である。生成した3次元CADデータを3次元プリンタで印刷・造形すれば、このような作業工程のある段階の終了時点の立体模型を作成することが可能となる。
【0039】
図10は、図7および図8の諸データを用いて図2の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、工程取得部が作業工程として「路体工事」を取得したケースで説明する。図に示すように、対照テーブルREF2を参照して、抽出部が、路体工事M3の終了時点よりも以前の作業工程である、「路体工事M3」、「法面補強工事M2」、「切り土工事M1」を第1作業工程群として抽出する。そして、「路体工事M3」に関連付けられた構成要素である「路体y3b」、「路床y3c」、「左がローラで圧縮され凹んだ地盤y3a」と、「法面補強工事M2」に関連付けられた構成要素である「法面補強コンクリートy2」と、「切り土工事M1」に関連付けられた構成要素である「地盤y1b」、「切り土された傾斜地y1a」とが抽出される。ここで、構成要素である「地盤y1b」と「左がローラで圧縮され凹んだ地盤y3a」が同じ位置を占める競合オブジェクトであるが、このような場合には、両オブジェクトの持つ順序属性や時間属性を比較して、より新しく実行される工程に関連するオブジェクトを優先して抽出する。この場合は、y3aが抽出される。このようにして、抽出部が、第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。CADデータ生成部が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。生成した3次元CADデータで描画したものが、工事の途中の立体物オブジェクトOB22である。生成した3次元CADデータを3次元プリンタで印刷・造形すれば、このような作業工程のある段階の終了時点の立体模型を作成することが可能となる。
【0040】
<実施態様2>
図11は、本発明の実施態様2によるCADデータ生成装置の概要を示すブロック図である。図に示すように、CADデータ生成装置200(CDG)は、制御部(CPUなどのプロセッサ)210と、入力部220と、出力部230と、通信部240と、記憶部250と、表示部260とを有する。実施態様1と同様或いは類似の名称/符号を持つ実施態様2のブロック/部材は、特に言及しない限り同様の機能を持つものとする。記憶部250には、工程管理データPMDと、対照テーブルREFとが格納されている。実施態様2では、記憶部250は、さらに、予め対象とする3次元プリンタで対象物体を分割するのに適したギャップ幅GAPと、立体物に貼り付けるべきパターンを含むパターンテーブルPTとを格納する。パターンテーブルPTには様々なパターンデータが含まれており、各パターンデータは、色彩、模様、文字、記号、1次元や2次元のバーコード、マーク、図形、配筋図、構造断面図、地図、設計図、配線図、および、立体形状からなる群から選択される1つまたは2つ以上のものから構成されている。制御部210は、取得部211、抽出部212、CADデータ生成部213、および3次元出力制御部214を有する。実施態様2では、制御部210は、さらに、データ加工部215、分割面設定部216を有する。CADデータ加工部215は、入力受付部として機能する入力部220が立体物を分割する1つ以上の分割指示面を指定する操作入力を受け付けると、入力された分割指示面およびギャップ幅で規定された第2分割領域を設定し、設定した第2分割領域で立体物を分割(切断)するように、3次元CADデータを加工する。
【0041】
即ち、入力部220は、立体物を分割する1つ以上の分割指示面を指定する操作入力を受け付ける。具体的には、例えば、ユーザが、入力部220およびマウスMSを介して、表示部260に表示された立体物の分割を所望する分割指示面を指定し、入力部220は、指定された分割指示面を受け付ける。CADデータ加工部215は、分割指示面およびギャップ幅で規定された分割領域で立体物を分割(切断)するように、3次元CADデータを加工する。
【0042】
ギャップ幅GAPは、立体物が印刷される3次元プリンタの3次元造形分解能に応じて規定される。例えば、3次元プリンタPRN1用に生成・加工する場合には、当該プリンタの3次元造形分解能に応じた数値をギャップ幅として規定し、予め記憶部250に格納しておく。同様に、3次元プリンタPRN2用に生成・加工する場合には、当該プリンタの3次元造形分解能に応じた数値をギャップ幅として規定し、予め記憶部250に格納しておく。幾つかのギャップ幅を記憶部250に格納しておき、出力先のプリンタを示す識別子の指定を入力部220から受け付け、この識別子に応じて、各プリンタに最適なギャップを用いて、分割領域(正確には、分割面から垂直方向の分割領域の厚さ)を決定することも可能である。例えば、3次元プリンタの3次元造形分解能は、粉末を基材に使用して固化剤で基材の一部を固化するタイプの3次元プリンタの場合は、一回の基材散布層の厚さ、および、固化剤(造形剤、造形インク)の浸透厚さの少なくとも一方に応じて規定される。なお、立体物を3次元プリンタで立体造形したときに、あたかも、一体物であるかのごとく見せるために、ギャップ幅はできる限り薄くすることが好適である。ギャップ幅GAPは、上述したように、3次元プリンタの3次元造形分解能に応じてプリンタ識別子に応じて自動的に設定するのが好適であるが、ユーザが所望の数値を適宜手動で設定することも可能である。
【0043】
図12は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図12のステップS21,S24〜S26は、図2のステップS11,S14〜S16と同様であるため、説明を省力し、異なるステップS22,S23のみを説明する。まず、本実施態様では、工程管理データが、作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含むものとする。即ち、図に示すように、ステップS22にて、記憶部250が、作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含む工程管理データを格納する。次にステップS23にて、取得部(工程取得部)211が、工程管理データに含まれる検査情報を抽出し、抽出した検査情報の時点の直前に行われる作業工程を自動的に取得する。このように自動設定された作業工程は、後続の処理で使用されることになるが、作業の各検査段階で構造物の構造や外観を把握するために資する3次元CADデータを自動的に生成することを可能にする。
【0044】
図13は、N1−N3工事から構成される仮想工事の工程管理データおよびその対照テーブルを示す模式図である。図に示すように、工程管理データPMD3は、横軸に時間、縦軸に工程の順序を規定したガンチャート形式とすることが好適である。本実施態様では、仮想工事は3つ仮想作業工程から構成されるものとする。1番目の作業工程がN1工事であり、2番目の作業工程がN2工事であり、3番目の作業工程がN3工事である。このように、各作業工程は、順序が規定されている。この工程管理データは、N1工事とN2工事との間に実行される第1検査INSP1と、N2工事とN3工事との間に実行される第1検査INSP2といった検査情報が含まれており、各作業工程と各検査との順序が規定されている。
【0045】
対照テーブルREF3は、仮想工事の作業工程に対して、当該工事で構築される立体物の構成要素の3次元オブジェクトを関連付けるテーブルである。図に示すように、対照テーブルREF3では、各作業工程に対して、目的とする立体物オブジェクトOB30のうち、当該作業工程に関連する構成要素の3次元オブジェクトの識別子が関連付けられている。例えば、N1工事は、当該作業工程が対象とする構成要素である第1階層n1が関連付けられる。N2工事は、当該作業工程が対象とする構成要素である第2階層n2が関連付けられる。N3工事は、当該作業工程が対象とする構成要素である第3階層n3が関連付けられる。なお、図の下側に示した立体物オブジェクトOB30は、これら構成要素のための3次元オブジェクトの集合である3次元CADデータによって描画されたものである。
【0046】
図14は、図13の諸データを用いて図12の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、取得部211(工程取得部)が、検査情報を工程管理データから自動的に取得し、それに基づき2つの作業工程を自動取得したケースで説明する。まず、取得部(工程取得部)211が、工程管理データPMD3に含まれる検査情報である第1検査INSP1、第2検査情報INSP2を抽出し、抽出した第1検査INSP1、第2検査情報INSP2の時点の直前に行われる作業工程として、N1工事、N2工事をそれぞれ自動的に取得する。
【0047】
そして、抽出部212が、第1検査INSP1に対して取得したN1工事に対しては、N1工事の終了時点よりも以前(即ち、第1検査INSP1よりも前)の作業工程である「N1工事」を第1作業工程群として抽出する。このように作業工程群は1つだけ作業工程を含むこともあり得る。そして、対照テーブルREF3を参照して、抽出部212が、抽出した第1作業工程群(N1工事)に関連付けられた構成要素の3次元オブジェクトn1を特定して、特定した3次元オブジェクトn1を第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。最後に、CADデータ生成部213が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。こうして生成された3次元CADデータが、図の左下に示した立体物オブジェクトOB31であり、これは、3次元オブジェクトn1の集合である3次元CADデータによって描画されたものである。
【0048】
この実施態様では、検査情報が2つあって作業工程が2つ取得されているため、本システムは、2つ目の作業工程(即ち、検査情報)に対する処理を次に行う。抽出部212が、第2検査INSP2に対して取得したN2工事に対しては、N2工事の終了時点よりも以前(即ち、第2検査INSP2よりも前)の作業工程である「N1工事」および「N2工事」を第1作業工程群として抽出する。この場合、作業工程群は2つの作業工程を含む。そして、対照テーブルREF3を参照して、抽出部212が、抽出した第1作業工程群(N1工事、N2工事)に関連付けられた構成要素の3次元オブジェクトn1,n2を特定して、特定した3次元オブジェクトn1,n2を第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。最後に、CADデータ生成部213が、抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成する。こうして生成された3次元CADデータが、図の右下に示した立体物オブジェクトOB32であり、これは、3次元オブジェクトn1,n2の集合である3次元CADデータによって描画されたものである。このように、本実施態様では、検査情報を含む施工管理データから、検査時の予想構造物を極めて簡便にCAD情報で描画することが可能であり、さらに、3次元プリンタで立体模型を作成することも可能であり、検査の効率が飛躍的に向上する。特に、検査するレビュアーは、立体模型を携行しながら、現地にして立体模型と現物の構造物とを目視し、見比べながら検査することが可能となり、その効用は計り知れない。
【0049】
図15は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図12のステップS31〜S34は、図12のステップS21〜S24と同様であるため、説明を省力し、異なるステップS35〜S38のみを説明する。まず、本実施態様では、工程管理データが、作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含むものとする。図に示すように、ステップS35にて、抽出部が、対照テーブルを参照して、抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出し、第1の3次元オブジェクト群以外の3次元オブジェクトを特定し、特定した3次元オブジェクトを第2の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。次にステップS36にて、分割面設定部が、抽出した第1の3次元オブジェクト群から構成されるべき第1の立体物と、抽出した第2の3次元オブジェクト群から構成されるべき第2の立体物との境目を第1分割面として設定する。そして、ステップS37にて、CADデータ生成部が、第1分割面およびギャップ幅で規定された第1分割領域で、第1の立体物と第2の立体物とを分割するように、第1の3次元オブジェクト群と、第2の3次元オブジェクト群とを加工した3次元CADデータを生成する。最後に、ステップS38にて、3次元出力制御部が、生成された3次元CADデータを3次元プリンタや表示部などに出力(3次元印刷、表示)する。このフローチャートでは、検査情報を工程管理データから自動的に取得する態様を説明したが、ユーザが検査情報を手動で入力してもよい。
【0050】
図16は、図13の諸データを用いて図15の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、取得部211(工程取得部)が、検査情報を工程管理データから自動的に取得し、それに基づき1つの作業工程を自動取得したケースで説明する。まず、取得部(工程取得部)211が、工程管理データPMD3に含まれる検査情報である第2検査INSP2を抽出し、抽出した第2検査情報INSP2の時点の直前に行われる作業工程として、N2工事を自動的に取得する。
【0051】
抽出部212が、第2検査INSP2に対して取得したN2工事に対しては、N2工事の終了時点よりも以前(即ち、第2検査INSP2よりも前)の作業工程である「N1工事」および「N2工事」を第1作業工程群として抽出する。この場合、作業工程群は2つの作業工程を含む。そして、対照テーブルREF3を参照して、抽出部212が、抽出した第1作業工程群(N1工事、N2工事)に関連付けられた構成要素の3次元オブジェクトn1,n2を特定して、特定した3次元オブジェクトn1,n2を第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。対照テーブルREF3を参照して、抽出部212は、特定した第1の3次元オブジェクト群以外の3次元オブジェクトを第2の3次元オブジェクトとして特定する。分割面設定部が、第1の3次元オブジェクト群(n1、n2)から構成されるべき第1の立体物と、第2の3次元オブジェクト群(n3)から構成されるべき第2の立体物との境目を第1分割面CPとして設定する。即ち、図に示すように立体物オブジェクトOB33には、第1の立体物の3次元オブジェクトn2と、第2の立体物の3次元オブジェクトn3との境目に第1分割面CPが設定される。立体物オブジェクトOB34に示すように、CADデータ生成部は、第1分割面およびギャップ幅で規定された第1分割領域CR(CRは分割面CPがほぼ中央に通るような領域とすることが好適である)で、第1の立体物と第2の立体物とを分割するように、第1の3次元オブジェクト群と、第2の3次元オブジェクト群と(即ち、元の完成構造物のための3次元CADデータ)を加工した3次元CADデータを生成する。
【0052】
図17は、図16で生成した3次元CADデータを詳細に説明する模式図である。図に示すように、第1の立体物と第2の立体物とを含む立体物オブジェクトOB34は、第1の立体物と第2の立体物との間に第1分割領域CRが設定される。これを3次元プリンタで造形すると、2つの立体物の間、即ち、第1分割領域CRに固化しない粉体(図示せず)を含む立体物オブジェクトOB34−pwdが出来上がる。2つの立体物の間、即ち、第1分割領域CRにある固化しない粉体(図示せず)を除去すると、あたかも一体成型物と見える立体物オブジェクトOB34−perfが完成する。立体物オブジェクトOB34−perfは、第1の立体物オブジェクトOB34−1と、第2の立体物オブジェクトOB34−2とに分離することができる。ユーザは、完成した構造物を観察することもできるし、ある作業工程が終了した段階(好適には検査段階)の構造物を観察することも可能である。また、第2の立体物オブジェクトOB34−2は、検査段階の後の作業工程で構築されるべき構造物の部分であり、ユーザはこのような構造物の部分だけを観察することも可能である。本実施態様では、1つの分割領域だけを設定したが、複数の分割領域を設定することも可能であり、作業工程1つずつに対応する構成要素に分割することも可能である。例えば、第1の立体物オブジェクトOB34−1を構成する3次元オブジェクトn1,n2に分割することも可能である。
【0053】
図18は、図13の諸データを用いて図15の処理により3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、取得部211(工程取得部)が、2つの検査情報を工程管理データから自動的に取得し、それに基づき2つの作業工程を自動取得したケースで説明する。まず、取得部(工程取得部)211が、工程管理データPMD3に含まれる検査情報である、第1検査情報INSP1と第2検査INSP2を抽出し、抽出した第1検査情報INSP1と第2検査情報INSP2の時点の直前に行われる作業工程として、N1工事とN2工事を自動的に取得する。後の処理は、図16ほぼ同様であるが、この例では、2つの分割面が設定され、構造物が3つに分離されるようなCADデータが生成される点が異なる。本構成によれば、複数の検査段階の構造物のCADデータ(およびその立体模型)をそれぞれ得ること可能となり、検査と検査との間の作業工程で構築される部分の立体物も得ることが可能となる。また、そのような立体物を一回の立体成型で得ることが可能である。
【0054】
図19は、実施態様2のCADデータ生成装置で処理された3次元CADデータを2次元平面に投影した投影図である。図19の上側には、分割後の上部立体物オブジェクトOB41uと、下部立体物オブジェクトOB41dから構成される立体物オブジェクトOB41を「積層法」を用いる3次元プリンタで造形した様子を示してある。スライス面SL1(正確には、わずかな厚さを持つスライス領域)、SL2、SL3からSLm−1まで[m-1]個を順次、円状に固化させて下部立体物オブジェクトOB41dが造形される。スライス面SLm−1の上に、スライス面SLm、SLm+1の2層は、固化しない領域となる。本実施態様では、2つのスライス面SLm、SLm+1を固化しない領域としたが、固化しない領域はできるだけ薄くすることが望ましく、印刷/造形時に使用される3Dプリンタの特性によるが、1つのスライス面だけを固化しない領域に設定して、立体物を分割することも可能であることに注意されたい。粉末固着式積層であれば、固化させずに粉末の基材のまま残す。この2つのスライス面が分割領域に相当する領域である。そして、固化させなかったスライス面SLm、SLm+1の上に、スライス面SLm+2からスライス面SLnまで[n-(m+1)]個だけ、順次、円上に固化させて上部立体物オブジェクトOB41uが造形される。このようにして、あたかも一体物かのようであるが、上部と下部に分割できる立体物オブジェクトOB41slを造形することができる。
【0055】
図19の下側には、比較のために分割操作前の立体物オブジェクトOB40を「積層法」を用いる3次元プリンタで造形した様子を示してある。立体物オブジェクトOB40slは、スライス面SL1(正確には、わずかな厚さを持つスライス領域)、SL2、SL3からSLnまで[n1]個を順次、円上に固化させて造形したものである。n個のスライス面はすべて固化しているため、相互に結合しており、分割することはできない。このように、分割領域が全体からすれば僅かな厚さであるため、分割できない立体物オブジェクトOB40slは、分割可能な立体物オブジェクトOB41slと、同様の外観を呈する。従って、ユーザは、立体物オブジェクトOB41slを1つ作成すれば、2つを組み合わせているときは、立体物の全体を観察できるし、分割領域で分割すれば、分割後の2つの外観を観察することが可能となる。また、例えば、OB41dがある検査情報の検査時の状態を示すものであるときは、実際に作業で作成された実物の構造物と、OB41dとを見比べて検査することが可能となる。後で詳述するが、分割面に模様、形状、記号などを付すことにより、断面構造を観察したり、凹凸などの触感を確認したりすることが可能となる。また、完成した構造物の外面が閉じている場合は、構造物を分割することによって、内部の区画された部屋の部屋割を観察することも可能となる。
【0056】
図20は、粉末固着式積層法の原理を示す積層遷移図である。左上から矢印の順に積層が進む。まず、筐体(図示せず)の底にスライス面を1層、形成する粉末を全面に散布する。このスライス面に立体物を形成する楕円の箇所(固化したい部分)にだけ、例えばインクジェット技法を用いて、粉末の基材を固化させる作用を持つ固化剤を塗布する。さらに、色付けしたい部分には、発色剤やインクなどの薬剤も、併せて或いは別途塗布する。その後は、最初と同様にスライス面1層に相当する量だけ、粉末を再度散布し、また、立体物を形成する楕円の箇所(固化したい部分)にだけ、固化剤を塗布する。これを繰り返して、固化しなかった粉末PWDを除去すれば、目的の立体物OB−slを得ることができる。この例では、円錐台を作成している。作図の便宜上4つのスライス面で立体物を形成させてあるが、通常は、何百、何千、何万、或いはさらに多くのスライス面で立体物を形成するものであることに注意されたい。
【0057】
図21は、実施態様1のCADデータ生成装置で処理された3次元CADデータを用いて粉末固着式積層法による3次元プリンタで立体物を造形する様子を示す積層遷移図である。これは、図19のOB41(分割領域を挟んだOB41u,OB41d)を粉末固着式積層法で造形する様子を示したものである。図に示すように、粉末の基材を円形に固化させたスライス面を積層させることによって、円柱を形成していく。そして、本装置で設定した空隙となるべき層を分割領域(粉末層/非固化層)SLpwdとする。そして、その上には、また、順次、円形に固化させたスライス面を形成していく。完成したのは、あたかも一体物に見える立体物オブジェクトOB41sl−pwdである。これは、中間に分割領域(粉末層/非固化層)SLpwdがあるため、上部立体物オブジェクトOB41usl、下部立体物オブジェクトOB41dslに簡単に分割できる。
【0058】
図22は、実施態様2のCADデータ生成装置で処理される立体物に設定される分割領域の厚さを示す投影図である。図中の(a)では、立体物オブジェクトOB42―1の分割領域CR1の厚さは距離GW1に設定される。図中の(b)では、立体物オブジェクトOB42−2の分割領域CR2の厚さ(ギャップ幅)は、距離GW1よりも厚い距離GW2に設定される。立体物オブジェクトOB42−1,42−2は、同じサイズ(高さ、半径)の円柱に分割領域を設定したものであるが、立体物が印刷(立体造形)される3次元プリンタの3次元造形分解能に応じて、分割領域の厚さをそれぞれ規定しているため、異なる距離GW1、GW2がそれぞれ設定されたものである。例えば、3次元プリンタの3次元造形分解能は、粉末を基材に使用して固化剤で基材の一部を固化するタイプの3次元プリンタの場合は、一回の基材散布層の厚さ、および、固化剤(造形剤、造形インク)の浸透厚さの少なくとも一方に応じて規定される。あるいは、分割領域CR2の厚さ(ギャップ幅)は、ユーザが任意に設定してもよい。ちなみに、最も好適なのは、3次元造形分解能に基づき設定したギャップ幅と、3次元プリンタの機種(機種名)とを関連付けて記憶部に格納しておき、使用する3次元プリンタの機種の入力に応じて、当該機種に関連付けられたギャップ幅を自動的に選択し、当該ギャップ幅を設定した分割領域を設定することである。
【0059】
図23は、実施態様2による装置またはプログラムで3次元CADデータを生成・加工した家屋を立体物として3次元プリンタで作製する様子を示す分解斜視図である。図に示すように、はじめに、床(基礎)を構成する幾つかのスライス面SLbtm(作図および説明の便宜上、スライス面1層で描画しているが実際には複数の層で構成される。以下、他の層でも同様である。)を3次元印刷/立体造形する。その上に、部屋割のための壁および外壁を含む中間のスライス面SLmdl−1、SLmdl−2、SLmdl−nを立体造形する。n個目のスライス面SLmdl−nの上に、本装置やプログラムで加工したデータによるスライス面である分割領域(粉末層/非固化層)SLpwdを造形する。但し、この領域は造形といっても、粉末であるため、あとで取り除かれることになる。そして、この上に天井/屋根を構成する幾つかのスライス面SLcelが造形される。このようにして、あたかも一体物のような家屋の立体模型が完成する。このとき、分割領域(分割面)は、ユーザにより入力された作業工程から自動的に設定されたり、検査情報から自動的に設定されたりしたものである。或いは、分割領域(分割面)は、ユーザが入力部を介して直接指定することも可能である。
【0060】
図24は、図23で作製した一体物の家屋立体模型を示す図である。図に示すように家屋立体模型Homeはあたかも一体物に見えるが、容易に、家屋天井部Home1と、家屋部屋割部Home2とに分割でき、分割したものも、容易に元通りの一体物の家屋立体模型Homeに復元することが可能である。発明の理解に資するために、図においてスライス層の境界を示すたに線を描画してあるが、実際には、線は見えず、外観上は均一な壁のように見えることに注意されたい。家屋天井部Home1の表面には、当該部材の属性情報を示すバーコードBAR−CD1が印刷されている。例えば、この天井に太陽電池パネルが敷設されている場合は、それの製品番号、ロット番号などの固有の情報が含まれる。同様に、家屋部屋割部Home2の側面には、当該部材の属性情報を示すバーコードBAR−CD2が印刷されている。例えば、この壁に断熱材が埋設されている場合は、それの製品番号、ロット番号などの固有の情報が含まれる。この例では、バーコードの内容である数字も併せて印刷されているが、もちろん、バーコードのみであってもよい。本システムの記憶部は、バーコードを示すパターンデータの情報と、当該パターンデータの情報に関連付けられた付加情報とを関連付けて格納することが好適である。例えば、付加情報には、メンテナンス情報として製造年月日、当該部材の耐用年数、保守検査予定日、製造業者、施工業者などの情報が含まれる。
【0061】
図25は、図24に示した一体物の家屋立体模型を分割したときの分割面の様子を示す図である。図に示すように、分割面に接するスライス面SLmdl−nの表面には、パターンデータとして横に配設した鉄筋RFstの色彩および模様が貼り付けられている。ユーザは、立体模型を分割した後、この面に描画されるパターンを見て、容易に内部構造(この例では、配設した鉄筋の状況)を理解することが可能となる。このパターンデータとして横に配設した鉄筋RFstは、分割面ではなく、側面に貼り付けることも可能である。側面に配置すれば、分離せずとも目視したり、携帯端末などのバーコードリーダで読み取ったりすることが可能である。携帯端末から、本システムにアクセスして、付加情報を読み出すことも可能である。
【0062】
図26は、図24に示した一体物の家屋立体模型を分割したときの分割面の様子を示す図である。図に示すように、分割面に接するスライス面SLmdl−nの表面を、今度は別パターンデータを貼り付けたスライス面SLmdl−n1として構成したものである。パターンデータとしては、縦に配設した鉄筋RFbarの色彩、模様、および形状が貼り付けられ、突起部となっている。また、鉄筋記号RFbar−txtが記号として貼り付けられており、これには当業者が使用する記号である「D22−@200」が記載されている。この意味は、直径22mmの鉄筋が200本敷設されることを意味しており、当業者は容易に部材を理解できる。ユーザは、立体模型を分割した後、この面に描画、および、立体形成された「突起部」や「記号」を見たり、触ったりして、容易に切断部の内部構造や内部空間の形状や部屋割などの空間的な構成を理解することが可能となる。パターンとして突起部が構成された部分に対向する家屋天井部Home1の面には、突起部と嵌め合うように、凹部が形成される。このような突起部と、凹部とは、復元時の位置決めのための部材として使用することも可能である。図25と同様に、図26においても、当該パターンの代わりにバーコードを使用したり、パターンを分割面ではなく、側面に貼り付けたりすることも可能である。側面に配置すれば、分離せずとも目視したり、携帯端末などのバーコードリーダで読み取ったりすることが可能である。携帯端末から、本システムにアクセスして、付加情報を読み出すことも可能である。
【0063】
図27は、実施態様2のCADデータ生成装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図27のステップS41〜S46、S49は、図15のステップS31〜S36,S38と同様であるため、説明を省力し、異なるステップS47、S48のみを説明する。まず、本実施態様では、工程管理データが、作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含むものとする。図に示すように、複数のステップの処理によって検査情報に基づき第1分割面が設定された後、ステップS47にて、ユーザにより入力部などを介した分割指示面(第2分割面)を指定する操作入力を受け付ける。そして、ステップS48にて、CADデータ生成部が、第1分割面およびギャップ幅で規定された第1分割領域で、第1の立体物と第2の立体物とを分割するように、前記第1の3次元オブジェクト群と、前記第2の3次元オブジェクト群とを加工した3次元CADデータを生成し、CADデータ加工部が、分割指示面(第2分割面)およびギャップ幅で規定された第2分割領域で、分割指示面通りに指定された部分を分割するように、生成された3次元CADデータを加工する。ちなみに、CADデータ生成部内にCADデータ加工部の機能を含めてもよいし、第1分割面、第2分割面を同時に設定した3次元CADデータを生成してもよい。最後に、ステップS49にて、3次元出力制御部が、生成された3次元CADデータを3次元プリンタや表示部などに出力(3次元印刷、表示)する。
【0064】
図28は、分割面を2つ設定した3次元CADデータを生成する仕組みを説明する模式図である。本実施態様では、取得部211(工程取得部)が、検査情報を工程管理データから自動的に取得し、それに基づき1つの作業工程を自動取得した後、手動でユーザが分割指示面を設定したケースで説明する。まず、取得部(工程取得部)211が、工程管理データPMD3に含まれる検査情報である第2検査INSP2を抽出し、抽出した第2検査情報INSP2の時点の直前に行われる作業工程として、N2工事を自動的に取得する。
【0065】
抽出部212が、第2検査INSP2に対して取得したN2工事に対しては、N2工事の終了時点よりも以前(即ち、第2検査INSP2よりも前)の作業工程である「N1工事」および「N2工事」を第1作業工程群として抽出する。この場合、作業工程群は2つの作業工程を含む。そして、対照テーブルREF3を参照して、抽出部212が、抽出した第1作業工程群(N1工事、N2工事)に関連付けられた構成要素の3次元オブジェクトn1,n2を特定して、特定した3次元オブジェクトn1,n2を第1の3次元オブジェクト群として3次元CADオブジェクトから抽出する。対照テーブルREF3を参照して、抽出部212は、特定した第1の3次元オブジェクト群以外の3次元オブジェクトを第2の3次元オブジェクトとして特定する。分割面設定部が、第1の3次元オブジェクト群(n1、n2)から構成されるべき第1の立体物と、第2の3次元オブジェクト群(n3)から構成されるべき第2の立体物との境目を第1分割面CPとして設定する。即ち、図に示すように、第1の立体物の3次元オブジェクトn2と、第2の立体物の3次元オブジェクトn3との境目に第1分割面CP1を設定する。CADデータ生成部は、第1分割面およびギャップ幅で規定された第1分割領域CR(CRは分割面CPがほぼ中央に通るような領域とすることが好適である)で、第1の立体物と第2の立体物とを分割するように、第1の3次元オブジェクト群と、第2の3次元オブジェクト群とを加工した3次元CADデータを生成する。
【0066】
ここで、N3工事では、3次元オブジェクトn3内に3次元オブジェクトn4(例えば、鉄筋やパイプなど)が埋設されるものとする。この埋設され外観を見ることができない3次元オブジェクトn4を観察し得るように、手動でユーザが分割指示面CP2(第2分割面CP2)を設定する。CADデータ加工部は、分割指示面CP2(第2分割面CP2)とギャップ幅で規定された分割領域で、図に示すように、3次元オブジェクトn3−L,n3−Rに分割し得るようなCADデータを生成する。図に示すように、n4も、3次元オブジェクトn4−L,n4−Rに分割され、分割面においてn4を観察することが可能となる。n4の分割面には、n4の構造を示すものが描画されることが好適であるが、上述したような何らかのパターンデータをそこに貼り付けてもよい。このように、通常の作業工程単位で生成したCADデータや分割面の設定では観察できない内部構造の把握を所望する場合には、このようなユーザによる分割指示面の設定が非常に有効である。
【0067】
図29は、実施態様1または2による装置またはプログラムで生成・加工した3次元CADデータを3次元プリンタで出力した河川構造物の模式図である。図に示すように、立体物オブジェクトOB50が完成形の河川構造物であり、本装置またはプログラムで生成・加工した3次元CADデータは、任意の施工段階の河川構造物を出力することが可能である。この例では、1つの自然石にアンカー付きシャフトを打ち込んで設置した工程が完了した状態の河川構造物の立体物オブジェクトOB51を3次元プリンタで出力した模式図が示されている。このように、本発明の実施態様によれば、このような複雑な構造物も任意の段階で出力することが可能となる。
【0068】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部、各ステップなどに含まれる処理や機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段/部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。或いは、本発明による装置、方法、プログラムなどの一部の構成要素、機能、処理、ステップなどを遠隔地のサーバなどに配置することも可能であることに注意されたい。実施態様では、「粉末固着式積層法」を使って構造物を造形(3次元印刷)したが、これは単なる例示であり、他の3次元造形法(例えば、レーザ照射固化方式など)に本発明を適用できることに留意されたい。
【符号の説明】
【0069】
100 CADデータ生成装置
110 制御部
111 取得部
112 抽出部
113 CADデータ生成部
114 3次元出力制御部
120 入力部
130 出力部
140 通信部
150 記憶部
160 表示部
200 CADデータ生成装置
210 制御部
211 取得部
212 抽出部
213 CADデータ生成部
214 3次元出力制御部
215 CADデータ加工部
216 分割面設定部
220 入力部
230 出力部
240 通信部
250 記憶部
260 表示部
BAR−CD1 バーコード
BAR−CD2 バーコード
CP 分割面
CP1 第1分割面
CP2 分割指示面(第2分割面)
CR 分割領域
CR1 第1分割領域
CR2 第2分割領域
GAP ギャップ幅
GW1 距離
GW2 距離
Home 家屋立体模型
Home1 家屋天井部
Home2 家屋部屋割部
INSP1 検査情報
INSP2 検査情報
M1 切り土工事
M2 法面補強工事
M3 路体工事
M4 道路工事
MS マウス
n1,n2,n3,n4 3次元オブジェクト
NET ネットワーク
OB10 立体物オブジェクト
OB11 立体物オブジェクト
OB12 立体物オブジェクト
OB20 立体物オブジェクト
OB21 立体物オブジェクト
OB22 立体物オブジェクト
OB30 立体物オブジェクト
OB31 立体物オブジェクト
OB32 立体物オブジェクト
OB33 立体物オブジェクト
OB34 立体物オブジェクト
OB40 立体物オブジェクト
OB40sl 立体物オブジェクト
OB41 立体物オブジェクト
OB41d 下部立体物
OB41dsl 下部立体物
OB41sl 立体物
OB41u 上部立体物
OB41usl 上部立体物
OB42 立体物オブジェクト
P1 切り土工事
P2 法面補強工事
P3 路体工事
P4 道路工事
PC1 端末
PMD 工程管理データ
PMD1 工程管理データ
PMD2 工程管理データ
PMD3 工程管理データ
PMS 工程管理サーバ
PRN1 3次元プリンタ
PRN2 3次元プリンタ
PT パターンテーブル
PWD 粉末
RCV 受信部
REF 対照テーブル
REF1 対照テーブル
REF2 対照テーブル
REF3 対照テーブル
RFbar 鉄筋記号
RFst 鉄筋
SL1 スライス面
SLbtm スライス面
SLcel スライス面
SLm スライス面
SLmdl スライス面
SLn スライス面
x1a 地盤
x1b 盛り土
x2a,x2b 法面補強コンクリート
x3a 路体
x3b 路床
x3c 層
x4a 下層路盤
x4b 上層路盤
x4c 表層
y1a 傾斜地
y1b 傾斜地
y1b 地盤
y2 法面補強コンクリート
y3a 地盤
y3b 路体
y3c 路床
y4a 下層路盤
y4b 上層路盤
y4c 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADデータ生成装置であって、
立体物の3次元CADデータであって、前記立体物を構成する複数の構成要素のための3次元オブジェクトを含むような3次元CADデータを取得するCAD取得部と、
立体物を構築するための複数の作業工程および該作業工程の順序を規定した工程管理データと、各作業工程に対して、前記立体物に含まれる構成要素の3次元オブジェクトを関連付ける対照テーブルと、を格納する記憶部と、
作業工程を取得する工程取得部と、
前記取得した作業工程および該作業工程よりも前の順序の作業工程を、第1作業工程群として前記工程管理データから抽出する工程抽出部と、
前記対照テーブルを参照して、該抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、該特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出するCADデータ抽出部と、
前記抽出した第1の3次元オブジェクト群を含む3次元CADデータを、前記取得した作業工程の終了段階の立体物を造形する中間段階の立体物模型のための3次元CADデータとして生成するCADデータ生成部と、
を有するCADデータ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCADデータ生成装置において、
前記工程管理データが、
作業工程と他の作業工程との間に行われる少なくとも1つの検査情報をさらに含み、
前記工程取得部が、
前記工程管理データに含まれる検査情報を抽出し、該抽出した検査情報の時点の直前に行われる作業工程を自動的に取得する、
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のCADデータ生成装置において、
前記記憶部が、
前記立体物を構成する少なくとも1つの構成要素に対応する固有のパターンデータを規定したパターンテーブルを格納し、
前記CADデータ生成部が、
前記立体物の外部に露出した面であって前記構成要素の3次元オブジェクト、或いは、該構成要素の近傍の3次元オブジェクトに属する面に、前記構成要素に対応したパターンデータを貼り付けるように、前記3次元CADデータを加工する、
ことを特徴とする。
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のCADデータ生成装置において、
前記記憶部が、
ギャップ幅をさらに格納し、
前記CADデータ抽出部が、
前記対照テーブルを参照して、該抽出した第1作業工程群に関連付けられた3次元オブジェクトを特定して、該特定した3次元オブジェクトを第1の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出し、該第1の3次元オブジェクト群以外の3次元オブジェクトを特定し、該特定した3次元オブジェクトを第2の3次元オブジェクト群として前記3次元CADオブジェクトから抽出し、
前記CADデータ生成装置が、
前記抽出した第1の3次元オブジェクト群から構成されるべき第1の立体物と、前記抽出した第2の3次元オブジェクト群から構成されるべき第2の立体物との境目を第1分割面として設定する分割面設定部をさらに有し、
前記CADデータ生成部が、
前記第1分割面および前記ギャップ幅で規定された第1分割領域で、前記第1の立体物と前記第2の立体物とを分割するように、前記第1の3次元オブジェクト群と、前記第2の3次元オブジェクト群とを加工した3次元CADデータを生成する、
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のCADデータ生成装置において、
前記立体物を分割する1つ以上の分割指示面を指定する操作入力を受け付ける入力受付部と、
前記分割指示面および前記ギャップ幅で規定された第2分割領域で前記立体物を分割するように、前記3次元CADデータを加工するCADデータ加工部と、
をさらに有する、
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のCADデータ生成装置において、
前記ギャップ幅は、前記立体物が印刷される3次元プリンタの3次元造形分解能に応じて規定される、
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のCADデータ生成装置において、
前記記憶部が、
前記立体物を構成する少なくとも1つの構成要素に対応する固有のパターンデータを規定したパターンテーブルを格納し、
前記CADデータ生成部が、
前記立体物を分割する面であって、前記構成要素の3次元オブジェクト、或いは、該構成要素の近傍の3次元オブジェクトに属する面に、前記構成要素に対応したパターンデータを貼り付けるように、前記3次元CADデータを加工する、
ことを特徴とするCADデータ生成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のCADデータ生成装置により生成されたCADデータを用いて3次元プリンタで造形された立体模型。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜8のいずれか1項に記載のCADデータ生成装置として機能させるためのCADデータ生成プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のCADデータ生成プログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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