説明

CATVシステムおよび光タップ

【課題】複数のCMTSを用いて複数の双方向通信サービスを運用するFTTC方式のCATVシステムにおいて、OBIが発生しないようにする。
【解決手段】FTTC方式のCATVシステムは、センターに配置されるCMTS10A、10Bと、各加入者宅近傍のフィールドに配置される複数の光タップ11と、各加入者宅内に配置される複数のCM12A、12Bと、を有している。光タップ11は光ファイバーケーブルに挿入されている。光タップ11には4本の同軸ケーブル17が接続し、この同軸ケーブル17は加入者宅50に引き込まれている。光タップ11は、光ファイバーケーブル13を2分岐する光分岐器と、ONUと、同軸ケーブル17を4分配する分配器と、によって構成され、ONUは2つのE/O変換器を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FTTC(Fiber To The Curb)型のCATVシステムに関し、特に複数の双方向通信サービスを運用した場合に上り通信において光信号の干渉によるビート雑音が発生しないCATVシステムに関する。また、本発明はそのCATVシステムに用いる光タップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーケーブルを用いたCATVシステムとして、HFC、FTTC、FTTHなどの方式がある。HFCは、センターと加入者とを結ぶネットワーク網のうち、幹線部分を光ファイバーケーブル、支線部分を同軸ケーブルとした構成である。また、FTTCは、センターから加入者宅の近傍まで光ファイバーケーブルを敷設し、そこから加入者宅内に同軸ケーブルを引き込む構成である。また、FTTHは、センターから加入者宅内まで光ファイバーケーブルを引き込む構成である。近年、通信速度の向上や上り通信時の流合雑音の抑制などの理由から、同軸ケーブルによるCATVシステムやHFC方式のCATVシステムから、FTTC方式やFTTH方式のCATVシステムへと移行したいとの需要がある。また、FTTH方式は、同軸ケーブルをすべて光ファイバーケーブルに置き換えるのが高コストであり、光ファイバーケーブルを加入者宅内に引き込む工事が加入者に敬遠される場合があるため、加入者宅内に引き込まれた既設の同軸ケーブルをそのまま利用できるFTTC方式が望まれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の同軸ケーブルによるCATVシステムでは、異なった双方向通信サービスを行う場合に、それぞれ専用の端末装置をサービスの加入者宅に設置し、その双方向通信サービスごとに専用の端末制御装置をセンターに設置して、それぞれの双方向通信サービスごとに異なった周波数を割り当てて通信制御を行っている場合が多い。
【0005】
しかし、このような異なる通信制御装置を用いて異なる双方向通信サービスの提供をFTTH方式のCATVシステムにおいて行おうとすると、それぞれのサービスに用いているケーブルモデムが同時に送信する可能性がある。その場合、光信号同士の光ビート干渉(OBI;Optical Beat Interference)が発生してしまい、伝送品質が大きく劣化し、上り通信が不可能となってしまう。
【0006】
そこで本発明の目的は、FTTC方式のCATVシステムにおいて2以上の双方向通信サービスを運用する場合に、OBIが発生しないようなCATVシステムとすることである。また、他の目的は、このようなFTTC方式のCATVシステムに適用可能な光タップを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、センターに配置された複数の端末制御装置と、加入者宅に配置され、端末制御装置にそれぞれ対応する複数の端末装置との間で、光伝送路を介して複数の双方向通信サービスが運用されるFTTC方式のCATVシステムにおいて、光伝送路には、加入者宅近傍のフィールドに配置され、光伝送路を分岐する光タップが挿入され、光タップは、光信号入出力側が分岐された光伝送路に接続し、電気信号入出力側が電気伝送路を介して複数の端末装置に接続するONU(Optical Network Unit;)を有し、ONUは、端末制御装置の数と同数のE/O変換器を有する、ことを特徴とするCATVシステムである。
【0008】
光タップは、ONUの電気信号入出力側に接続する電気伝送路を分配する分配器をさらに有していてもよく、分配された電気伝送路がそれぞれ加入者宅内の複数の端末装置に接続するように構成してもよい。
【0009】
複数のE/O変換器は、出力する上り光信号の波長が互いに異なっていてもよいし、いくつかのE/O変換器、あるいはすべてのE/O変換器で波長が同一であってもよい。波長が異なるE/O変換器を用いる場合には、波長多重装置を用いて一心の光ファイバーケーブルに接続するようにしてもよい。波長が同一のE/O変換器を用いる場合には、多心の光ファイバーケーブルに接続するようにすればよい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、複数の双方向通信サービスは、インターネット通信サービスと電話サービスであることを特徴とするCATVシステムである。
【0011】
第3の発明は、FTTC方式のCATVシステムで使用される光タップにおいて、光伝送路を複数に分岐する光分岐器と、光信号入出力側が分岐された光伝送路の一端に接続し、電気信号入出力側が電気伝送路に接続するONUと、電気伝送路を複数に分配する分配器と、を有し、ONUは、端末制御装置の数と同数のE/O変換器を有する、ことを特徴とする光タップである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のFTTC方式のCATVシステムによれば、上り通信時にOBIが生じることがなくなり、異なる双方向通信サービスを運用することができる。また、本発明の光タップを用いれば、複数の端末制御装置を用いて複数の双方向通信サービスを提供する、既設の同軸ケーブルを用いたCATVシステムやHFC方式のCATVシステムから、FTTC方式のCATVシステムへと容易に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のFTTC方式のCATVシステムの構成を示した図。
【図2】光タップ11の構成を示した図。
【図3】ONU21の構成を示した図。
【図4】他のONU21の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1のFTTC方式のCATVシステムの構成を示した図である。FTTC方式のCATVシステムは、センターに配置されるCMTS(ケーブルモデムターミナルシステム)10A、10Bと、各加入者宅近傍のフィールドに配置される複数の光タップ11と、各加入者宅内に配置される複数のCM(ケーブルモデム)12A、12Bと、を有している。CMTS10A、10Bは、本発明の端末制御装置に相当し、CM12A、12Bは、本発明の端末装置に相当する。また、CMTS10A、10Bは、混合器14に接続し、混合器14は光送受信機15に接続している。光送受信機15はセンターに配置されている。光送受信機15は光ファイバーケーブル13を介して光分配器16に接続している。光ファイバーケーブル13は光分配器16によって分配されて、分配された各光ファイバーケーブルには光タップ11が挿入されている。光タップ11には4本の同軸ケーブル17が接続し、この同軸ケーブル17は加入者宅50に引き込まれている。そして、同軸ケーブル17は加入者宅50内の分波器18に接続し、分波器18は同軸ケーブル17を介して同じく加入者宅50内のCM12A、12Bに接続している。
【0016】
この実施例1のFTTC方式のCATVシステムでは、CMTS10AとCM12A間でのインターネット通信と、CMTS10BとCM12B間での電話の2種の双方向通信サービスが運用される。
【0017】
図2は、光タップ11の構成を示した図である。光タップ11は、光ファイバーケーブル13に接続し、これを分岐する光分岐器20と、光分岐器20により分岐された光ファイバーケーブル13に接続するONU(Optical Network Unit)21と、ONU21の電気信号出力側に同軸ケーブル17を介して接続し、その同軸ケーブル17を4分配する分配器22と、によって構成されている。
【0018】
なお、分配器22の分配数は上記に限るものではなく、分配器22の分配数は2以上であればよい。また、分配器22を省いた構成であってもよい。
【0019】
図3は、ONU21の構成を示した図である。ONU21は、E/O変換器100、101と、O/E変換器102と、バースト制御部103、104と、増幅部105、106と、分波器107、108と、光分波器109と、によって構成されている。E/O変換器100の光信号出力側およびO/E変換器102の光信号入力側は、光ファイバーケーブル13の心線13Aに接続し、E/O変換器101の光信号出力側は、光ファイバーケーブル13の心線13Bに接続している。E/O変換器100、101の電気信号入力側は分波器108に接続し、分波器108およびO/E変換器102の電気信号出力側は、それぞれ増幅部105、106を介して分波器107に接続し、分波器107は同軸ケーブル17に接続している。ONU21を駆動するための電力は、同軸ケーブル17を介して供給するようにしてもよいし、商用電源から供給するようにしてもよい。
【0020】
E/O変換器100、101は、レーザーを用いて上り電気信号を上り光信号へと変換する装置である。E/O変換器100とE/O変換器101は出力する光信号の波長は異なっていてもよいし、同一でもよい。CM12A、Bからの上り電気信号は、分波器108によって分波され、それぞれ別のE/O変換器100、101に入力される。E/O変換器100、101には、それぞれCM12A、Bのどちら側からの上り電気信号が入力されてもよい。ただし、インターネット通信サービスでの上り通信と電話サービスでの上り通信とでは、電話サービスでの上り通信の方がより高い信頼性を求められる。そこで、インターネット通信サービスの上り電気信号はE/O変換器100に入力し、電話サービスの上り電気信号はE/O変換器101に入力するように構成するとよい。E/O変換器100から出力される上り光信号は、光下り光信号と多重化されてファイバーケーブル12の心線13Aを伝送するのに対し、E/O変換器101から出力される上り光信号は多重化されずに光ファイバーケーブル13の心線13Bを伝送するため、通信品質の劣化を抑制することができる。そのため、E/O変換器101側に電話サービスの上り電気信号を入力して上り通信を行えば、電話サービスの信頼性をより高めることができる。
【0021】
なお、E/O変換器100、101として、出力する光信号の波長が異なるものを用いる場合には、図4のように、波長多重装置200を用いてE/O変換器100、101の光信号出力側、およびO/E変換器102の光信号入力側を、1心の光ファイバーケーブル13に接続するようにしてもよい。
【0022】
バースト制御部103、104は、上り電気信号が来た時にE/O変換器100、101を駆動して上り電気信号を上り光信号に変換して出力し、上り電気信号が入力されない時はE/O変換器100、101をオフにして光が出力されないように制御する。これによりCN比の向上を図り、通信品質の劣化を抑制している。
【0023】
次に、実施例1のFTTC方式のCATVシステムにおける上り通信時の動作について説明する。
【0024】
実施例1のFTTC方式のCATVシステムでは、CMTS10Aによって各加入者のCM12Aからの上り通信のタイミングが制御されており、CMTS10Bによって各加入者のCM12Bからの上り通信のタイミングが制御されている。そのため、各加入者のCM12A間の上り通信、および各加入者のCM12B間の上り通信は衝突しないように制御されており、通信品質の低下を抑制している。
【0025】
一方、CMTS10AはCM12Bからの上り通信のタイミングを制御しておらず、CMTS10BはCM12Aからの上り通信のタイミングを制御していない。そのため、CM12AとCM12Bとの間では上り光信号同士によるOBI(光ビート干渉)が発生して通信品質が低下する可能性がある。
【0026】
そこで、実施例1のFTTC方式のCATVシステムでは、ONU21に2つのE/O変換器100、101を設け、CM12Aからの上り電気信号と、CM12Bからの上り電気信号をそれぞれ別のE/O変換器100、101で上り光信号へ変換するようにしている。これにより、CM12AからCMTS10Aへの上り光信号とCM12BからCMTS10Bへの上り光信号とを光ファイバーケーブル12の別々の心線13A、13Bによって伝送させることができ、OBIが発生しないようにすることができる。図4のようにONU21を構成した場合にも、E/O変換器100、101の出力する上り光信号の波長が異なるので、波長多重装置200によって一心の光ファイバーケーブル12によって上り光信号を伝送させることができ、同様にOBIが発生しないようにすることができる。
【0027】
そのため、CM12A−CMTS10A間のインターネット通信における上り通信と、CM12B−CMTS10B間の電話における上り通信とで、それぞれ別の変調方式を採用することができ、それぞれに最適な変調方式を採用することができる。たとえば、インターネット通信における上り通信では、QAMなどの変調方式を用い、電話の上り通信ではQPSKなどの変調方式を用いることができ、信頼性の高い電話サービスと、上り通信速度の早いインターネットサービスを同時に提供することができる。
【0028】
また、実施例1に示した光タップ11を用いれば、CMTS10A、Bを用いてインターネット通信サービスと電話サービスの2つの双方向通信サービスを提供する、既設の同軸ケーブルを用いたCATVシステムやHFC方式のCATVシステムから、FTTC方式のCATVシステムへと容易に移行することができる。たとえば、加入者宅に引き込まれた同軸ケーブル17や、CMTS10A、B、CM12A、Bはそのまま流用し、同軸ケーブル17を分配するタップを本発明の光タップ11に置換し、センターから光タップ11までの間に光ファイバーケーブル13を敷設することで、容易に従来のCATVシステムからFTTC方式のCATVシステムに移行することができる。
【0029】
なお、実施例1では通信制御装置が2台で2つのサービスを運用する例を示したが、3つ以上の通信サービスを運用する場合にも本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、FTTC方式のCATVシステムにおいて、2以上の双方向通信サービス(たとえば電話とインターネットサービス)を運用する場合に適している。また、本発明の光タップを用いれば、容易にFTTC方式のCATVシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0031】
10A、10B:CMTS
11:光タップ
12A、12B:CM
13:光ファイバーケーブル
14:混合器
15:光送受信機
16:光分配器
17:同軸ケーブル
18:分波器
20:光分岐器
21:ONU
22:分配器
100、101:E/O変換器
102:O/E変換器
103、104:バースト制御部
105、106:増幅部
107、108:分波器
109:光分波器
200:波長多重装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターに配置された複数の端末制御装置と、加入者宅に配置され、前記端末制御装置にそれぞれ対応する複数の端末装置との間で、光伝送路を介して複数の双方向通信サービスが運用されるFTTC方式のCATVシステムにおいて、
前記光伝送路には、前記加入者宅近傍のフィールドに配置され、前記光伝送路を分岐する光タップが挿入され、
前記光タップは、光信号入出力側が分岐された前記光伝送路に接続し、電気信号入出力側が電気伝送路を介して複数の前記端末装置に接続するONUを有し、
前記ONUは、前記端末制御装置の数と同数のE/O変換器を有する、
ことを特徴とするCATVシステム。
【請求項2】
複数の前記双方向通信サービスは、インターネット通信サービスと電話サービスであることを特徴とする請求項1に記載のCATVシステム。
【請求項3】
FTTC方式のCATVシステムで使用される光タップにおいて、
光伝送路を複数に分岐する光分岐器と、
光信号入出力側が分岐された前記光伝送路の一端に接続し、電気信号入出力側が電気伝送路に接続するONUと、
前記電気伝送路を複数に分配する分配器と、
を有し、
前記ONUは、前記端末制御装置の数と同数のE/O変換器を有する、
ことを特徴とする光タップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−186710(P2012−186710A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49172(P2011−49172)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000116677)シンクレイヤ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】