説明

CATVシステム

【課題】 双方向増幅器で増幅可能な周波数帯域と異なる周波数帯域を有する電気信号も双方向通信に利用できるCATVシステムを提供する。
【解決手段】CATVシステム1は、双方向増幅器15と、第1のモデム信号を生成するケーブルモデム33AとCATV伝送路13Aとの第1の接続部27Bと、双方向増幅器との間に設けられ、モデム信号を選択的に減衰させる第1のフィルタ41Aと、モデム信号を生成するケーブルモデム33BとCATV伝送路13Bとの第2の接続部27Cと、双方向増幅器との間に設けられ、モデム信号を選択的に減衰させる第2のフィルタ41Bと、第1及び第2の接続部と第1及び第2のフィルタとの間に両端が接続されておりモデム信号を選択的に通す第3のフィルタを有する第3のCATV伝送路13Fと、光ノードと接続部27Bとの間に設けられておりモデム信号を選択的に減衰させる第4のフィルタ41Dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向通信が可能なCATVシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
もともと、CATVシステムは、同軸ケーブルなどから構成されるCATV伝送路を介してヘッドエンドから加入者宅に映像信号などを配信する片方向伝送であった。しかし、近年、CATV伝送路の広帯域性を利用してケーブルインターネットやケーブルテレビ電話などを実現するために、加入者宅側からヘッドエンド側へも情報を発信できるいわゆる双方向通信が可能なCATVシステムが開発されている。このような双方向通信が可能なCATVシステムでは、同じCATV伝送路によって伝送される下り信号及び上り信号を区別するために、使用する周波数帯域を変えている。例えば、下り信号は、周波数帯域として70MHz〜770MHzを利用し、上り信号は、周波数帯域として10MHz〜55MHzを利用している。
【0003】
双方向通信可能なCATVシステムを利用してケーブルインターネットを実現する際には、PCなどの端末はケーブルモデムを介してCATV伝送路に接続されることになる。このケーブルモデムとして、従来の上り信号や下り信号で利用されていない800MHz〜1.5GHzの周波数帯域での任意の50MHz帯を利用することによって高速データ伝送を可能ならしめるケーブルモデムが知られている。
【特許文献1】特開平10―229551号公報
【特許文献2】特開平2001―358742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の上り信号や下り信号で利用されていない周波数帯域の電気信号を利用するケーブルモデムを、マンションなどの集合住宅を含むCATVシステムに適用する場合、次のような問題が生じていた。
【0005】
すなわち、集合住宅がCATVシステムに加入している場合、集合住宅内でヘッドエンドからの電気信号を分配することになる。この分配による電気信号の劣化を防止するために、集合住宅内には電気信号を増幅する増幅器が設置されるが、前述したような双方向CATVシステムでは、下り信号及び上り信号を増幅する双方向増幅器が利用されることになる。この双方向増幅器は、従来の下り及び上りの電気信号が利用する周波数帯域の周波数成分を有する信号の増幅を補償するように設計されているので、上記のように、従来使用されていない周波数帯域を利用した場合、双方向増幅器を介してデータ伝送ができないという問題点が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、双方向増幅器で増幅可能な周波数帯域と異なる周波数帯域を有する電気信号も双方向通信に利用できるCATVシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るCATVシステムは、ヘッドエンドと集合住宅内の加入者宅との間で双方向通信が可能なCATVシステムであって、(1)ヘッドエンドに光ノードを介して接続される第1のCATV伝送路及び加入者宅に接続される第2のCATV伝送路に接続されており、第1のCATV伝送路から入力される下り信号を増幅して第2のCATV伝送路に出力すると共に、第2のCATV伝送路から入力される上り信号を増幅して第1のCATV伝送路に出力する双方向増幅器と、(2)下り信号及び上り信号の周波数帯域と異なる周波数帯域の周波数成分を有する第1のモデム信号を生成する第1のケーブルモデムと第1のCATV伝送路との第1の接続部と、双方向増幅器との間の第1のCATV伝送路上に設けられており、第1のモデム信号を選択的に減衰させる第1のフィルタと、(3)下り信号及び上り信号の周波数帯域と異なる周波数帯域の周波数成分を有する第2のモデム信号を生成すると共に加入者宅に設置される第2のケーブルモデムと第2のCATV伝送路との第2の接続部と、双方向増幅器との間の第2のCATV伝送路上に設けられており、第2のモデム信号を選択的に減衰させる第2のフィルタと、(4)第1の接続部と第1のフィルタとの間の第1のCATV伝送路に接続される一端と、第2の接続部と第2のフィルタとの間に接続される他端とを有する第3のCATV伝送路と、(5)第3のCATV伝送路上に設けられており、第1及び第2のモデム信号を選択的に通す第3のフィルタと、(6)光ノードと第1の接続部との間の第1のCATV伝送路上に設けられており、第1及び第2のモデム信号を選択的に減衰させる第4のフィルタとを備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、第1のケーブルモデムで生成された第1のモデム信号は、第1の接続部を介して第1のCATV伝送路に入力される。これによって、第1の接続部よりも下流側の第1のCATV伝送路では、ヘッドエンドからの下り信号に第1のモデム信号が含まれ、第1のモデム信号は双方向増幅器側に向かって伝送されることになる。また、第2のケーブルモデムで生成される第2のモデム信号は第2の接続部を介して第2のCATV伝送路に入力される。これによって、第2の接続部よりも上流側の第2のCATV伝送路では、上り信号に第2のモデム信号が含まれることになる。
【0009】
そして、上記CATVシステムでは、第3のCATV伝送路の一端が、第1の接続部と第1のフィルタとの間の第1のCATV伝送路に接続され、他端が、第2の接続部と第2のフィルタとの間の第2のCATV伝送路上に接続されている。すなわち、第1及び第2のCATV伝送路は、第3のCATV伝送路によって双方向増幅器を介さず接続されることになる。この第3のCATV伝送路上には、モデム信号を選択的に通す第3のフィルタが設けられているので、第1のCATV伝送路によって伝送される下り信号に含まれる第1のモデム信号は、第3のCATV伝送路に主に流れて双方向増幅器を介さずに第2のCATV伝送路に入力されることになる。同様に、第2のCATV伝送路によって伝送される上り信号に含まれる第2のモデム信号は、双方向増幅器を介さずに第1のCATV伝送路に入力されることになる。
【0010】
そして、第1のCATV伝送路に入力された第2のモデム信号は、第1の接続部を介して第1のケーブルモデムに到達することになり、また、第2のCATV伝送路に入力された第1のモデム信号は、第2の接続部を介して第2のケーブルモデムに到達することになる。すなわち、上記構成のCATVシステムでは、ヘッドエンドと加入者宅とを繋ぐ伝送経路上に双方向増幅器が設けられていても双方向増幅器の増幅特性に依存せずに、第1及び第2のケーブルモデム間で第1〜第3のCATV伝送路及び第1及び第2の接続部を介して第1及び第2のモデム信号を送受信できる。
【0011】
また、ヘッドエンドからの下り信号及び加入者宅からの上り信号のうち第3のCATV伝送路に流れた第1及び第2のモデム信号以外の電気信号は、第1及び第2のモデム信号を選択的に減衰させる第1及び第2のフィルタを通って双方向増幅器に入力される。これによって、双方向増幅器にはモデム信号の周波数帯域以外の周波数帯域を有する下り信号及び上り信号が入力されることになる。そして、双方向増幅器は、入力された下り信号及び上り信号を増幅して第2のCATV伝送路及び第1のCATV伝送路に出力する。したがって、下り信号及び上り信号のうち第1及び第2のモデム信号の周波数帯域以外の帯域を利用した電気信号を双方向増幅器で確実に増幅することができる。
【0012】
更に、第1及び第2のモデム信号を選択的に減衰させる第4のフィルタが光ノードと第1の接続部との間に設けられているので、第1及び第2のモデム信号が高いレベルで光ノードに到達しない。そのため、ヘッドエンドから光ノードに入力された下り信号が、第1及び第2のモデム信号によって影響を受けないようになっている。
【0013】
更に、本発明に係るCATVシステムでのモデム信号が有する周波数帯域は、800MHz〜1.5GHzであることが考えられる。
【0014】
また、本発明に係るCATVシステムでは、第2のCATV伝送路上であって第2の接続部よりも下流側に設けられておりヘッドエンドからの下り信号を受信する受信端末と、第2の接続部と受信端末との間の第2のCATV伝送路上に設けられており、第1のモデム信号を選択的に減衰させる第5のフィルタを更に備えることが好ましい。
【0015】
上記の構成では、第2の接続部と受信端末との間に第5のフィルタが設けられているので、第3のCATV伝送路及び第2のCATV伝送路を伝送してきた第1のモデム信号が受信端末に入力されることがない。その結果として、第1のモデム信号によってヘッドエンドからの下り信号が劣化することがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明のCATVシステムによれば、双方向増幅器で増幅可能な周波数帯域と異なる周波数帯域を有する電気信号を利用して双方向通信を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面と共に本発明に係るCATVシステムの好適な実施形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、CATVシステム1は、複数の加入者宅3,3,3を有するマンションなどの集合住宅5をそのサービスエリア内に有する。CATVシステム1は、加入者宅3に放送番組等を配信するヘッドエンド7を有しており、ヘッドエンド7と加入者宅3との間で双方向通信が可能な双方向CATVシステムである。なお、ヘッドエンド7は、図示していない電話網などにも接続されており、ケーブルテレビ電話なども実現できるようになっている。
【0019】
CATVシステム1では、ヘッドエンド7からサービスエリア内に設置された光ノード9までは光ファイバケーブル11が敷設されており、光ノード9から集合住宅5までは同軸ケーブルからなるCATV伝送路(第1のCATV伝送路)13Aが敷設されている。そして、集合住宅5内では同軸ケーブルからなるCATV伝送路(第2のCATV伝送路)13Bによってネットワークが形成されている。
【0020】
上記光ノード9は光信号と電気信号とを相互に変換し、ヘッドエンド7から送信された光信号としてのCATV信号を周波数帯域70MHz〜770MHzの電気信号に変換してCATV伝送路13Aに出力する。また、加入者宅3から送信されCATV伝送路13A,13Bを介して伝送されてきた電気信号としての上り信号を光信号に変換してヘッドエンド7に送信する。
【0021】
以下の説明では、ヘッドエンド7から加入者宅3に向けて配信される放送信号や映像信号等の電気信号をCATV信号とも称す。また、ヘッドエンド7側から加入者宅3側に向かう信号の流れを「下り」と称し、加入者宅3側からヘッドエンド7側に向かう信号の流れを「上り」と称す。
【0022】
集合住宅5の棟内には、CATV伝送路13Aに接続された双方向増幅器15が設けられている。また、集合住宅5には、BS放送を受信するための受信器17(例えば、アンテナ)が設けられている。受信器17は、受信した放送信号を周波数帯域が1032MHz〜1350MHzである電気信号に変換し、その電気信号を同軸ケーブルからなるCATV伝送路13Cを介して双方向増幅器15に入力する。周波数帯域1032MHz〜1350MHzの電気信号をBS信号とも称す。
【0023】
双方向増幅器15は、一端にCATV伝送路13A,13Cが接続されており、他端にCATV伝送路13Bが接続されている。そして、双方向増幅器15は、CATV伝送路13A,13CとCATV伝送路13Bとを電気的に接続している。双方向増幅器15は、周波数帯域1000MHz以上の周波数成分を有する電気信号を選択的に通す一対のハイパスフィルタ19A,19B、周波数帯域70MHz〜770MHz内の周波数成分を有する電気信号を選択的に通す一対のミディアムパスフィルタ21A,21B及び周波数帯域5MHz〜55MHz内の周波数成分を有する電気信号を選択的に通す一対のローパスフィルタ23A,23Bを有する。
【0024】
ハイパスフィルタ19A,19B同士は、下り信号を増幅する増幅器25Aを介して接続されている。同様に、ミディアムパスフィルタ21A,21B同士は、下り信号を増幅する増幅器25Bを介して接続されている。また、ローパスフィルタ23A,23B同士は、上り信号を増幅する増幅器25Cを介して接続されている。
【0025】
したがって、双方向増幅器15にCATV伝送路13A,13Cからそれぞれ電気信号が入力されると、その電気信号がCATV信号であれば、電気信号は、ミディアムパスフィルタ21Aを通って増幅器25Bで電気的に増幅される。そして、増幅器25Bによって増幅された電気信号は更にミディアムパスフィルタ21Bを通過してCATV伝送路13Bに出力される。
【0026】
また、上流側から入力された電気信号がBS信号であれば、電気信号は、ハイパスフィルタ19Aを通って増幅器25Aで電気的に増幅される。そして、増幅器25Aによって増幅された電気信号は更にハイパスフィルタ19Bを通過してCATV伝送路13Bに出力される。
【0027】
更に、下流側から電気信号が入力されると、その電気信号のうち周波数帯域5MHz〜55MHzの周波数成分を有する電気信号は、ローパスフィルタ23Bを通過して増幅器25Cで電気的に増幅される。そして、増幅器25Cによって増幅された電気信号は、更にローパスフィルタ23Aを通過してCATV伝送路13Aに出力される。
【0028】
このように上記構成の双方向増幅器15では、下り信号に含まれるCATV信号及びBS信号の増幅が確実に補償されている。また、上り信号に含まれる電気信号であって、例えば、周波数帯域10MHz〜55MHzを有する電気信号の増幅も確実に補償されることになる。
【0029】
双方向増幅器15から加入者宅3,3,3までは同軸ケーブルからなるCATV伝送路13Bが敷設されている。CATV伝送路13Bは、分岐・混合器27Aを介して複数に分岐することで双方向増幅器15と加入者宅3,3,3との間のネットワークを構成している。加入者宅3内に引き込まれたCATV伝送路13Bには、CATV信号の受信端末としてのセットトップボックス(以下、「STB」と称す)29が設けられている。
【0030】
STB29にはテレビ受像機31が接続されており、STB29は、高周波変調された、70MHz〜770MHzのアナログ・デジタル信号(CATV信号)を復調し、映像をテレビ受像機31に出力する。また、STB29は、ヘッドエンド7への画像配信要求等の要求信号などを10MHz〜55MHzの電気信号としてヘッドエンド7に向けて出力する機能を有することも好適である。なお、CATV伝送路13Bには、加入者宅3内に設置された電話などもモデムを介して接続されており、電話などの音声が周波数帯域10MHz〜55MHzの電気信号に変換されて上流側に音声信号として伝送されることになる。
【0031】
また、テレビ受像機31には、STB29の前段に設けられた分岐・混合器27Fを介してCATV伝送路13Bに接続されたBSチューナ32が接続されている。BSチューナ32は、分岐・混合器27Fを介して入力される1032MHz〜1350MHzのアナログ・デジタル信号(BS信号)を復調し、映像をテレビ受像機31に出力する。
【0032】
また、CATVシステム1では、ケーブルインターネットを実現するために、第1のケーブルモデム(以下、単に「モデム」と称す)33A及び第2のケーブルモデム(以下、単に「モデム」と称す)33Bを有する。モデム33A,33Bは、例えば、c.Link技術を利用したc.Linkモデムである。
【0033】
モデム33A,33Bは、インターネット網35で伝送されるインターネット信号とCATVシステム1で伝送可能なモデム信号(例えば、c.Link信号)とを互いに変換する。このモデム信号は、CATV信号、BS信号及び音声信号などで利用されていない周波数帯域800MHz〜1.5GHzのうち任意の50MHz帯域幅を利用している。そして、このようなモデム信号を利用することによって、CATVシステム1では、モデム33A,33B間での高速のデータ伝送が可能になっている。
【0034】
図1に示すように、モデム33Aは、集合住宅5の棟外に設けられており、インターネット網35に例えばイーサネット(登録商標)ケーブルC1を介して接続されている。また、モデム33Aは、同軸ケーブルからなるCATV伝送路13Dを介してCATV伝送路13Aに接続されている。より具体的には、CATV伝送路13Dは、CATV伝送路13A上に設けられた分岐・混合器27B(第1の接続部)を介してCATV伝送路13Aと接続されている。
【0035】
モデム33Aは、インターネット網35から入力されるインターネット信号を変換することによってモデム信号を生成してCATV伝送路13Dに出力する。このモデム33Aが生成するモデム信号を第1のモデム信号とも称す。また、モデム33Aは、CATV伝送路13Dから入力されるモデム信号をインターネット信号に変換してインターネット網35に出力する。
【0036】
CATV伝送路13A,13Dを接続する分岐・混合器27Bは、モデム33AからCATV伝送路13Dに出力され伝送されてきた第1のモデム信号を受けてCATV伝送路13Aに出力する。また、分岐・混合器27Bは、CATV伝送路13Aによって伝送される上り信号を分岐させて上り信号に含まれるモデム信号をCATV伝送路13Dに出力する。その結果として、上り信号に含まれるモデム信号がモデム33Aに入力されることになる。なお、分岐・混合器27Bが、上り信号からモデム信号を選択的に抽出してCATV伝送路13Dに出力することは好適である。
【0037】
この分岐・混合器27Bと光ノード9との間のCATV伝送路13A上には、周波数帯域800MHz〜1.5GHzを有する電気信号(モデム信号)を遮断するノッチフィルタ(第4のフィルタ)41Dが設けられている。これによって、CATV伝送路13Aによって伝送されるモデム信号が光ノード9に入力されないようになっている。なお、ノッチフィルタをNFとも称す。
【0038】
また、モデム33Bは、加入者宅3内に設置されており、インターネット信号を送受信するインターネット用端末としてのパソコン(以下、単に「PC」とする)37に例えばイーサネット(登録商標)ケーブルC2を介して接続されている。
【0039】
モデム33Bは、同軸ケーブルからなるCATV伝送路13Eを介してCATV伝送路13Bに接続されている。より具体的には、CATV伝送路13Eは、CATV伝送路13B上に設けられた分岐・混合器27C(第2の接続部)に接続されている。
【0040】
モデム33Bは、PC37から入力されたインターネット信号を変換してモデム信号を生成する。このモデム33Bが生成するモデム信号を、第2のモデム信号とも称す。なお、第1のモデム信号と第2のモデム信号は、同じ周波数成分を有する信号である。また、モデム33Bは、CATV伝送路13Eを介して入力されるモデム信号をインターネット信号に変換してイーサネット(登録商標)ケーブルC2を介してPC37に入力する。
【0041】
CATV伝送路13B,13Eを接続する分岐・混合器27Cは、モデム33BからCATV伝送路13Eに出力され伝送されてきた第2のモデム信号を受けてCATV伝送路13Bに入力する。また、分岐・混合器27Cは、CATV伝送路13Bによって伝送されてきた下り信号を分岐させて下り信号に含まれるモデム信号をCATV伝送路13Eに入力する。その結果として、上り信号に含まれるモデム信号がモデム33Bに入力されることになる。なお、分岐・混合器27Cが、下り信号からモデム信号を選択的に抽出してCATV伝送路13Eに出力することは好適である。
【0042】
ところで、棟内のネットワークを構成するCATV伝送路13Bと棟外のネットワークを構成しているCATV伝送路13とは双方向増幅器15によって接続されているが、前述したように双方向増幅器15は第1及び第2のモデム信号の周波数帯域を増幅するように設計されていない。そこで、モデム33Aとモデム33Bとの間で第1及び第2のモデム信号が互いに送受信できるように、CATVシステム1では、バイパス用の伝送路としてのCATV伝送路(第3のCATV伝送路)13Fを有する。
【0043】
CATV伝送路13Fは、同軸ケーブルからなり、その一端13Faは、分岐・混合器27Bと双方向増幅器15との間のCATV伝送路13Aに分岐・混合器27Dを介して接続されている。またCATV伝送路13Fの他端13Fbは、分岐・混合器27Cよりも上流側に配置される(より具体的には、双方向増幅器15に一番近い)分岐・混合器27Aと双方向増幅器15との間のCATV伝送路13Bに分岐・混合器27Eを介して接続されている。
【0044】
そして、CATV伝送路13Fには、周波数帯域800MHz〜1.5GHzの周波数成分を有する電気信号を選択的に通し、他の周波数帯域の周波数成分を有する電気信号を遮断するバンドパスフィルタ(以下、「BPF」と称す)39が設けられている。
【0045】
また、分岐・混合器27Dと双方向増幅器15との間のCATV伝送路13A上には、周波数帯域800MHz〜1.5GHzを有する電気信号を遮断するノッチフィルタ(第1のフィルタ)41Aが設けられている。これによって、分岐・混合器27Dよりも下流側のCATV伝送路13A内を伝搬する下り信号に第1のモデム信号が含まれていてもノッチフィルタ41Aによって遮断されるので、双方向増幅器15に第1のモデム信号が入力しないようになっている。
【0046】
また、分岐・混合器27Eと双方向増幅器15との間には、ノッチフィルタ41Aと同じ構成のノッチフィルタ41Bが設けられている。これによって、分岐・混合器27Dよりも上流側のCATV伝送路13B内を伝搬する電気信号に第2のモデム信号が含まれていてもノッチフィルタ41Bによって第2のモデム信号が遮断されるので、第2のモデム信号が双方向増幅器15に入力されないようになっている。なお、図1では、ノッチフィルタ41A,41Bは、NF41A,41Bと表記している。
【0047】
上記のようにバイパス伝送路としてのCATV伝送路13Fを設けることで、より高レベル(言い換えれば、高い強度)のモデム信号がモデム33A,33B間で送受信されることになる。この場合、仮に、分岐・混合器27Cよりも下流のSTB29に高いレベルの第1のモデム信号がCATV信号等と一緒に入力されると、STB29によって下り信号から変換される音声・画像データが影響を受ける虞がある。
【0048】
そこで、CATVシステム1では、分岐・混合器27Bと分岐・混合器27Fとの間のCATV伝送路13B上にノッチフィルタ41Aと同じ構成のノッチフィルタ(第5のフィルタ)41Cを設けている。このノッチフィルタ41Cによって電気信号内の第1のモデム信号が遮断されるのでSTB29に第1のモデム信号が入力することが抑制され、また、仮に入力されたとしても音声・画像データへの影響がない。
【0049】
上記構成のCATVシステム1の動作について説明する。
【0050】
光信号としてのCATV信号がヘッドエンド7から光ファイバケーブル11に出力されると、光ノード9は、その光信号を周波数帯域70MHz〜770MHzの電気信号に変換してCATV伝送路13Aに出力する。これによって、光ノード9より下流のCATV伝送路13Aには、CATV信号が伝送されることになる。
【0051】
また、インターネット網35からモデム33Aにインターネット信号が入力されると、モデム33Aは、インターネット信号を第1のモデム信号に変換してCATV伝送路13Dに出力する。CATV伝送路13Dによって伝送される第1のモデム信号は、分岐・混合器27Bを介してCATV伝送路13Aに出力される。これによって、分岐・混合器27Bよりも下流のCATV伝送路13Aでは下り信号にCATV信号及び第1のモデム信号が含まれることになる。
【0052】
CATV伝送路13A上には、分岐・混合器27Bから下流に向かって分岐・混合器27D及びノッチフィルタ41Aが順に設けられている。そして、分岐・混合器27Dに接続されたCATV伝送路13F上には、第1及び第2のモデム信号を選択的に通し、CATV信号、音声信号及びBS信号などのモデム信号以外の周波数帯域の電気信号を遮断するBPF39が設けられている。その結果として、分岐・混合器27Bより下流側のCATV伝送路13Aを伝搬する下り信号内の第1のモデム信号は主にCATV伝送路13Fによって伝送されてCATV伝送路13Bに入力されることになる。
【0053】
また、分岐・混合器27Dを通過してCATV伝送路13Aを伝搬する下り信号は、ノッチフィルタ41Aに入力される。これによって、下り信号に含まれる第1のモデム信号が遮断され、第1のモデム信号を含まない下り信号(すなわち、CATV信号)が双方向増幅器15に入力されることになる。そして、その入力された下り信号は、双方向増幅器15によって増幅された後にCATV伝送路13Bに出力される。この際、CATV伝送路13Cを介して双方向増幅器15に入力されるBS信号も増幅されてCATV伝送路13Bに出力されている。したがって、双方向増幅器15から出力される下り信号にはCATV信号及びBS信号が含まれることになる。
【0054】
そして、双方向増幅器15から出力された下り信号は、ノッチフィルタ41Bを通過した後、分岐・混合器27EによってCATV伝送路13Fを伝送してきた第1のモデム信号と重畳された後に加入者宅3に伝送される。
【0055】
加入者宅3内において、下り信号に含まれる第1のモデム信号は、分岐・混合器27C及びCATV伝送路13Eを介してモデム33Bに入力される。そして、モデム33Bは、入力された第1のモデム信号をインターネット信号に変換した後、イーサネット(登録商標)ケーブルC2に出力する。これによって、第1のモデム信号に対応するインターネット信号がPC37に入力される。
【0056】
また、分岐・混合器27Bを通過した下り信号は、ノッチフィルタ41Cを通過した後にSTB29に入力される。これによって、STB29には、CATV信号及びBS信号が入力される一方、第1のモデム信号が入力されないようになっている。そして、STB29は、受信した下り信号に含まれるCATV信号を復調して、映像をテレビ受像機37に入力する。また、分岐・混合器27Bを通過した下り信号の一部は、分岐・混合器27Fによって分岐されてBSチューナ32に入力される。そして、BSチューナ32は、下り信号に含まれるBS信号を復調して、その映像をテレビ受像機37に入力する。
【0057】
次に、上り信号について説明するが、下り信号と流れが逆であること以外は動作は同様であるので、簡単に説明する。PC37から出力されたインターネット信号は、モデム33Bによって第2のモデム信号に変換される。
【0058】
そして、モデム33Bから出力された第2のモデム信号はCATV伝送路13E及び分岐・混合器27Cを介してCATV伝送路13Bに入力される。この際、STB29や電話などから出力された10MHz〜55MHzの周波数帯域の上り信号に第2のモデム信号が重畳されるので、第2のモデム信号を含む上り信号が双方向増幅器15側に伝送されることになる。
【0059】
BPF39を有するCATV伝送路13Fが接続された分岐・混合器27Eが、CATV伝送路13B上に設けられているので、上り信号に含まれる第2のモデム信号は、主にCATV伝送路13Fを介することによって双方向増幅器15をバイパスしてCATV伝送路13Aに入力される。
【0060】
一方、分岐・混合器27Eを通過した上り信号は、ノッチフィルタ41Bを通過することによって第2のモデム信号が遮断された後、双方向増幅器15に入力される。これによって、双方向増幅器15には、上り信号として周波数帯域10MHz〜55MHzを有する電気信号(音声信号など)が確実に入力されることになる。入力された上り信号は、双方向増幅器15によって増幅されてCATV伝送路13Aに出力される。そして、ノッチフィルタ41Aを通過した後、分岐・混合器27Dによって更に第2のモデム信号が重畳される。
【0061】
これにより、分岐・混合器27Dよりも上流側のCATV伝送路13Aによって伝送される上り信号には、10MHz〜55MHzの音声信号などに加えて第2のモデム信号が含まれることになるが、第2のモデム信号は、分岐・混合器27Bを介してCATV伝送路13Dに入力される。
【0062】
そして、CATV伝送路13Dによって伝送された第2のモデム信号は、モデム33Aに入力され、インターネット信号に変換された後にインターネット網35に出力される。また、分岐・混合器27Bを通過した10MHz〜55MHzの電気信号としての上り信号は、ノッチフィルタ41Dを通過して光ノード9によって光信号に変換された後にヘッドエンド7に入力される。
【0063】
以上説明したようにCATVシステム1では、800MHz〜1.5GHzの周波数帯域のうちの任意の50MHz帯域を利用してデータ伝送をするモデム33A,33Bを利用することによって、例えば、最大270Mbpsの高速のデータ伝送が可能である。
【0064】
そして、CATV伝送路13Fを利用して双方向増幅器15をバイパスさせることによって、棟外のCATV伝送路13AからCATV伝送路13Bに向けて、第1のモデム信号を伝送させることができ、CATV伝送路13BからCATV伝送路13Aに向けて第2のモデム信号を伝送させることができる。これによって、モデム33A,33B間で確実に第1及び第2のモデム信号の送受信をすることが可能である。したがって、高速なケーブルインターネットが確実に実現できる。
【0065】
また、双方向増幅器15の上流及び下流にそれぞれノッチフィルタ41A,41Bを設けているので、双方向増幅器15内にモデム信号(より具体的には、第1及び第2のモデム信号)が入力されることが抑制されている。その結果として、モデム信号の影響を受けずに双方向増幅器15がより正確に動作するので、CATV信号及びBS信号の劣化が抑制され、その結果として、テレビ受像機31でより鮮明な画像を表示できる。
【0066】
ところで、モデム信号(第1及び第2のモデム信号)が光ノード9に入力されると、光ノード9内で歪みが発生し、CATV信号に影響を与えてしまう虞がある。これに対して、CATVシステム1では、光ノード9と分岐・混合器27Bとの間にノッチフィルタ41Dを設置している。これにより、分岐・混合器27Bを通過した第2のモデム信号や分岐・混合器27Bから上流側に流れてしまった第1のモデム信号が光ノード9に入力されることが防止されている。その結果として、モデム信号によってCATV信号が影響を受けない。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、モデム33A,33Bは、双方向増幅器15に入力される下り信号及び上り信号の周波数帯域、より具体的には、周波数帯域10MHz〜55MHz、周波数帯域70MHz〜770MHz及び周波数帯域1032MHz〜1350MHzと異なる周波数帯域内の周波数成分を利用してデータ伝送をするものであればよく、必ずしも、前述したc.Link技術を使用しなくてもよい。
【0068】
また、ノッチフィルタ41A〜41Dは、周波数帯域800MHz〜1.5GHz内の周波数成分を有する電気信号を遮断するとしたが、双方向増幅器15、STB29及び光ノード9に影響を与えない程度に減衰させればよい。なお、ノッチフィルタ41A〜41Dの構成は同じとしたが、ノッチフィルタ41A〜41Dが遮断又は減衰させる周波数帯域は、モデム33A,33Bで生成される第1及び第2のモデム信号に応じて変えればよい。具体的には、ノッチフィルタ41Aは、第1のモデム信号を選択的に減衰又は遮断できればよく、ノッチフィルタ41Bは、第2のモデム信号を選択的に減衰又は遮断できればよい。更に、ノッチフィルタ41Cは、第1のモデム信号を選択的に減衰又は遮断できればよい。また、ノッチフィルタ41Dは、第1及び第2のモデム信号を選択的に減衰又は遮断するようになっていればよい。
【0069】
また、集合住宅5をマンションとしたが、例えば、ビル、ホテルなど複数の加入者が含まれているものであればよい。更に、上記実施形態では、モデム33A、BPF39及びノッチフィルタ41A,41Dは棟外に設置されているとしたが、棟内に設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るCATVシステムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1…CATVシステム、3…加入者宅、5…集合住宅、7…ヘッドエンド、13A…CATV伝送路(第1のCATV伝送路)、13B…CATV伝送路(第2のCATV伝送路)、13D…CATV伝送路、13E…CATV伝送路、13F…CATV伝送路(第3のCATV伝送路)、13Fa…第3のCATV伝送路の一端、13Fb…第3のCATV伝送路の他端、15…双方向増幅器、33A…モデム(第1のケーブルモデム)、33B…モデム(第2のケーブルモデム)、35…インターネット網、37…PC(インターネット用端末)、39…バンドパスフィルタ(第3のフィルタ)、41A…ノッチフィルタ(第1のフィルタ)、41B…ノッチフィルタ(第2のフィルタ)、41C…ノッチフィルタ(第5のフィルタ)、41D…ノッチフィルタ(第4のフィルタ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドエンドと集合住宅内の加入者宅との間で双方向通信が可能なCATVシステムであって、
前記ヘッドエンドに光ノードを介して接続される第1のCATV伝送路及び前記加入者宅に接続される第2のCATV伝送路に接続されており、前記第1のCATV伝送路から入力される下り信号を増幅して前記第2のCATV伝送路に出力すると共に、前記第2のCATV伝送路から入力される上り信号を増幅して前記第1のCATV伝送路に出力する双方向増幅器と、
前記下り信号及び前記上り信号の周波数帯域と異なる周波数帯域の周波数成分を有する第1のモデム信号を生成する第1のケーブルモデムと前記第1のCATV伝送路との第1の接続部と、前記双方向増幅器との間の前記第1のCATV伝送路上に設けられており、前記第1のモデム信号を選択的に減衰させる第1のフィルタと、
前記下り信号及び前記上り信号の周波数帯域と異なる周波数帯域の周波数成分を有する第2のモデム信号を生成すると共に前記加入者宅に設置される第2のケーブルモデムと第2のCATV伝送路との第2の接続部と、前記双方向増幅器との間の前記第2のCATV伝送路上に設けられており、前記第2のモデム信号を選択的に減衰させる第2のフィルタと、
前記第1の接続部と前記第1のフィルタとの間の前記第1のCATV伝送路に接続される一端と、前記第2の接続部と前記第2のフィルタとの間に接続される他端とを有する第3のCATV伝送路と、
前記第3のCATV伝送路上に設けられており、前記第1及び第2のモデム信号を選択的に通す第3のフィルタと、
前記光ノードと前記第1の接続部との間の前記第1のCATV伝送路上に設けられており、前記第1及び第2のモデム信号を選択的に減衰させる第4のフィルタと、
を備えることを特徴とするCATVシステム。
【請求項2】
前記第1及び第2のモデム信号が有する周波数帯域は800MHz〜1.5GHzであることを特徴とする請求項1に記載のCATVシステム。
【請求項3】
前記第2のCATV伝送路上であって前記第2の接続部よりも下流側に設けられており前記ヘッドエンドからの下り信号を受信する受信端末と、前記第2の接続部と前記受信端末との間の前記第2のCATV伝送路上に設けられており、前記第1のモデム信号を選択的に減衰させる第5のフィルタを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のCATVシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−262380(P2006−262380A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80271(P2005−80271)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(500241273)株式会社ブロードネットマックス (10)
【Fターム(参考)】