説明

CB1受容体阻害物質

【課題】天然物由来の素材から得られ、安全性が高いCB1受容体阻害物質含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミン属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含む組成物、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含む組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイド(CB)受容体は、7回膜貫通型ドメインを持つGたんぱく質共役型の受容体に属する。このうち、CB1受容体は、主に中枢神経系に分布するが、胃、脂肪組織、肝臓、骨格筋、膵臓などの末梢組織中にも発現していることが報告されている(非特許文献1参照)。CB2受容体は、主に免疫系の細胞に分布することが分かっている(非特許文献1参照)。CB1受容体とCB2受容体は48%の相同性を示し、CB1受容体は、ラット、マウス、ヒト間において97〜99%のアミノ酸配列相同性を保持している。
【0003】
今日、肥満症は、羅患率およびそれに伴う健康リスクの増大のため、主要な公衆衛生上の問題の1つであることが認識されている。これは肥満症の増加が、冠動脈性心疾患、卒中、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、骨関節炎、非アルコール性脂肪肝炎、癌および呼吸器障害と相関し、死亡率の増加に関連するからである。
【0004】
肥満症管理のための現在利用できる処方薬は、一般に満腹感を誘発する、または、食事脂肪の吸収を減少させることにより、体重を減少させる。一方、アンフェタミン、メタンフェタミンおよびフェンメトラジンなどのアドレナリン作動性減量薬は、それらの乱用のリスクのため、もはや推奨されない。さらに、フェンフルラミンおよびデクスフェンフルラミンなどのセロトニン作動性減量薬は、肺や心臓に重篤な副作用があるため、もはや使用できない。
【0005】
CB1受容体及びそのリガンドである内在性カンナビノイドはエネルギーバランスの制御に関与している。肥満時には、CB1受容体遺伝子発現や内在性カンナビノイド量が亢進しており、CB1受容体アンタゴニスト/逆アゴニストが肥満抑制薬として機能することが示唆されている(非特許文献2、3参照)。CB1受容体アンタゴニストは、視床下部に作用して一過性に摂食量を減少させる。しかし、摂食行動への効果に比べて、体重抑制効果は持続的であることから、末梢組織への作用も示唆されている。CB1受容体アンタゴニストによる末梢組織への作用のメカニズムとしては、例えば以下のものが挙げられる。酸素消費量を増加し、骨格筋における糖取り込みを増加させる。白色脂肪組織において、脂質合成に関与する酵素遺伝子の発現を抑制するなどの働きを持つアディポカインであるアディポネクチンの遺伝子発現量を促進する。肝臓において、脂肪合成系の転写因子の発現を抑制する。これら末梢組織への作用を介して、エネルギー消費を亢進させ、インスリン感受性を維持することが示唆されているが、CB1受容体アンタゴニストの抗肥満効果における主要なメカニズムはまだ議論となっている(非特許文献1参照)。
【0006】
また、CB2受容体は免疫系への関与が示唆されていることから、CB1受容体特異的なアンタゴニストが望ましい。
【0007】
CB1受容体アンタゴニストは、臨床試験からヒトにおける有効性も実証されている。
【0008】
このようにCB1受容体アンタゴニストは肥満を改善し、高脂血症や糖尿病などに関わるメタボリックシンドロームの予防及び/又は改善作用が期待される。
【0009】
CB1受容体アンタゴニストとしては、リモナバン、2環式ピラゾイルおよびイミダゾリル化合物などが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特表2007−509113号公報
【特許文献2】特表2006−524228号公報
【非特許文献1】Diabetes Metab Res Rev 2007;23:507-517.
【非特許文献2】FASEB J. 2005 Sep;19(11):1567-9
【非特許文献3】Cell Metab. 2008 Jan;7(1):68-78
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来的に公知である、上記したようなCB1受容体アンタゴニストは高価であり、副作用などの不都合があった。よって、安全性が高く、効果の高い、容易に入手可能なCB1受容体アンタゴニスト剤が望まれている。
【0012】
本発明は、天然物由来の素材から得られ、安全性が高いCB1受容体アンタゴニスト物質を含む組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、日常容易に入手又は食用とし得る天然物由来の素材である特定の植物がCB1受容体阻害活性を有する物質を含有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下[1]〜[11]の特徴を包含する。
[1] クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミナム属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含む組成物。
[2] 前記植物は、イチジク、ワカメ、クマザサ、ヨモギ、クミン、レッドクローバー、アシタバ、マジョラム、ベニナツメ、キク、クワ、ペパーミント、マイタケ、マツ、ガジュツ及びシジウムからなる群より選択される植物である、[1]の組成物。
[3] 前記CB1受容体阻害活性を有する物質は、前記植物又はその一部からの抽出物である[1]又は[2]の組成物。
[4] クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミナム属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物又はその一部を溶媒抽出に供し、抽出画分からCB1受容体阻害活性を有する物質を回収することを含む、CB1受容体阻害物質含有組成物の製造方法。
[5] 前記植物は、イチジク、ワカメ、クマザサ、ヨモギ、クミン、レッドクローバー、アシタバ、マジョラム、ベニナツメ、キク、クワ、ペパーミント、マイタケ、マツ、ガジュツ及びシジウムからなる群より選択される植物である、[4]の方法。
[6] 溶媒はエタノール、メタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群より選択される1種以上である、[4]又は[5]の方法。
[7] [4]〜[6]のいずれかの方法によって製造される、CB1受容体阻害物質含有組成物。
[8] 抗肥満効果を有する、[1]〜[3]又は[7]のいずれかの組成物。
[9] [1]〜[3]、[7]又は[8]のいずれかの組成物を含む、飲食品。
[10] 肥満を治療、改善、抑制及び/又は予防するためのものである旨の表示を付した、[9]の飲食品。
[11] [1]〜[3]、[7]又は[8]のいずれかの組成物を含む、医薬組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物は、CB1受容体の活性を有意に阻害することができる。
【0016】
また本発明の組成物は、長い間の食経験に基づいた天然物由来の組成物であるため、副作用等の心配が少なく、安価に、長期間にわたって継続的に摂取することができる。
【0017】
さらに、本発明の組成物は、CB1受容体の活性を阻害することによる抗肥満効果を有し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るCB1受容体阻害物質含有組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)及びその製造方法について説明する。
【0019】
本発明の組成物は、クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミナム属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種又は複数種由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に使用することができるクワ科イチジク属の植物としては、これに限定されるものではないが、イチジク(Ficus carica)、イヌビワ(Ficus erecta)、ヒメイタビ(Ficus stipulata)などを挙げることができる。特に、イチジクを使用することが好ましい。
【0021】
本発明に使用することができるチガイソ科ワカメ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)などを挙げることができる。特にワカメを使用することが好ましい。
【0022】
本発明に使用することができるイネ科ササ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、クマザサ(Sasa veitchii)、チシマザサ(Sasa kurilensis)、ミヤコザサ(Sasa nipponica)などを挙げることができる。特にクマザサを使用することが好ましい。
【0023】
本発明に使用することができるキク科ヨモギ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ヨモギ(Artemisia Princeps)、ニガヨモギ(Artemisia absinthium)、シロヨモギ(Artemisia stelleriana)などを挙げることができる。特にヨモギを使用することが好ましい。
【0024】
本発明に使用することができるセリ科クミナム属に属する植物としては、クミン(Cuminum Cyminu)などを挙げることができる。特にクミンを使用することが好ましい。
【0025】
本発明に使用することができるマメ科シャクジソウ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、レッドクローバー(Trifolium pratense)、シロツメクサ(Trifolium repens)、コメツブツメクサ(Trifolium dubium)などを挙げることができる。特にレッドクローバーを使用することが好ましい。
【0026】
本発明に使用することができるセリ科シシウド属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、アシタバ(Angelica keiskei)、イヌトウキ(Angelica shikokiana)、トウキ(Angelica acutiloba)などを挙げることができる。特にアシタバを使用することが好ましい。
【0027】
本発明に使用することができるシソ科ハナハッカ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、マジョラム(Origanum majorana)、オレガノ (Origanum vulgare)などを挙げることができる。特にマジョラムを使用することが好ましい。
【0028】
本発明に使用することができるクロウメモドキ科ナツメ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ナツメ(Ziziphus jujuba)、イヌナツメ(Ziziphus mauritiana)、サネブトナツメ(Ziziphus jujuba var.spinosa)などを挙げることができる。特にベニナツメを使用することが好ましい。ベニナツメは上記のナツメなどを乾燥させたもの全般を指す一般名称である。
【0029】
本発明に使用することができる、キク科キク属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、キク(Chrysanthemum morifolium)、イワギク(Chrysanthemum sawadskii)、シュンギク(Chrysanthemum coronarium)などを挙げることができる。特にコウザンコウギクを使用することが好ましい。
【0030】
本発明に使用することができるクワ科クワ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、マグワ(Morus alba)、ヤマグワ(Morus australis)、ケグワ(Morus cathayana)などを挙げることができる。
【0031】
本発明に使用することができるシソ科ハッカ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ペパーミント(mentha arvensis var. piperascens)、アップルミント(Mentha suaveolens)、ウォーターミント(Mentha aquatica)などを挙げることができる。特にペパーミントを使用することが好ましい。
【0032】
本発明に使用することができるサルノコシカケ科マイタケ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、マイタケ(Grifola frondosa)、チョレイマイタケ(Grifola umbellata)、シロマイタケ(Grifola albicans Imaz.)などを挙げることができる。特にマイタケを使用することが好ましい。
【0033】
本発明に使用することができるマツ科マツ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、アカマツ(Pinus kesiya)、クロマツ(Pinus thunbergii)、シロマツ(Pinus bungeana)などを挙げることができる。
【0034】
本発明に使用することができるショウガ科ウコン属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ガジュツ(Curcuma zedoaria)、ウコン(Curcuma longa)、マンゴージンジャー(Curcuma amada)などを挙げることができる。特にガジュツを使用することが好ましい。
【0035】
本発明に使用することができるフトモモ科バンジロウ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、シジウム(Psidium guajava)、テリハバンジロウ(Psidium cattleianum)、ストロベリーグァバ(Psidium longifolium)などを挙げることができる。特にシジウムを使用することが好ましい。
【0036】
本発明の組成物の素材となる上記植物は、その植物体全体を使用してもよいし、植物体の一部を使用してもよい。植物体の一部として、これに限定されるものではないが、つぼみ、葉、根、茎、花、果実、種子などを挙げることができ、本発明においてその1種以上を混合して使用することもできる。
【0037】
本発明において、上記植物は、品種及び産地は特に制限されず、野生種であってもよいし、交配により得られる栽培品種、園芸品種などであってもよい。
【0038】
上記「CB1受容体阻害活性を有する物質」(以下、「CB1受容体阻害物質」ともいう)とは、上記植物の植物体又はその一部に由来するCB1受容体阻害活性を有する任意の物質を指す。CB1受容体阻害物質は、精製品又は粗精製品のいずれであってもよい。粗精製品には、これに限定されるものではないが、例えば、植物自体若しくはその乾燥物又はこれらの破砕物、該破砕物の懸濁液若しくは懸濁物、或いは植物体若しくはその一部又はそれらの乾燥物若しくは乾燥破砕物からの抽出物などを挙げることができる。
【0039】
本発明において、CB1受容体阻害物質は、好ましくは上記植物又はその一部由来の抽出物である。このような抽出物は、当業者に公知の抽出方法によって得ることができ、例えば抽出方法として、有機溶媒抽出、超臨界流体抽出法、加温加圧抽出法などを挙げることができる。上記抽出方法は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数の抽出方法を組合せて用いてもよい。
【0040】
本発明において、特に好ましい抽出方法は溶媒抽出である。溶媒抽出は当業者に知られる一般的な手法を用いて行うことができる。具体的には、まず、各植物素材の粉砕物又は乾燥破砕物に水と有機溶媒とを添加して、室温又は加温にて抽出する。有機溶媒として、これに限定されるものではないが、例えばエタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトンなどを使用することができる。これらの有機溶媒は2種類以上を混合して用いてもよい。添加する溶媒の量は、植物素材の重量の1〜100倍、好ましくは5〜50倍、例えば10倍であり、抽出時間は、5分〜24時間、好ましくは30分〜3時間、例えば約1時間である。その後、ろ過や遠心分離などにより素材残渣を含む不溶性画分を取り除き、例えば減圧蒸発により有機溶媒画分(すなわち、抽出画分)を濃縮し、流体又は乾燥形態でCB1受容体阻害物質含有抽出物を得ることができる。場合により、有機溶媒抽出後の不溶性画分について有機溶媒による抽出を繰り返すことにより、有機溶媒抽出後の沈殿から本発明のCB1受容体阻害物質をさらに取得することもできる。有機溶媒画分に存在する本発明のCB1受容体阻害物質をさらに精製してもよく、この場合、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、液−液分配、有機溶媒沈澱、各種カラムクロマトグラフィー(例えばHPLC、シリカゲルクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、結晶化などを使用することができる。
【0041】
本発明のCB1受容体阻害物質は、上記のようにして各植物素材から取得することができるが、本発明の組成物は、既に製品化されている各植物素材のエキス製剤などをCB1受容体阻害物質として含むものであってもよい。そのようなエキス製剤としては、イチジクエキス、ワカメエキス、クマザサエキス、ヨモギエキス、クミンオイル、レッドクローバーエキス、アシタバエキス、マジョラムオイル、クワエキス、ペパーミントエキス、マイタケエキス、マツバエキス、ガジュツエキスなどを挙げることができる。
【0042】
本発明の組成物は、上記植物由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含む組成物であり、また本発明の組成物は、上記植物の抽出物を含有する、CB1受容体阻害活性を有する組成物である。
【0043】
本発明の組成物は、上記のようにして得られた本発明のCB1受容体阻害物質を常法により顆粒化、カプセル化、錠剤化若しくはペースト化したものであってもよい。
【0044】
本発明の組成物は、CB1受容体阻害活性を有する。当該活性は、公知の方法によって評価することが可能であるが、In vitroではCB1受容体安定発現細胞を用いた細胞内cAMP蓄積アッセイにより評価することが可能である。当該アッセイはCB1受容体阻害活性を直接測定する実験系である。さらに、CB1受容体にアゴニスト活性を有する化合物はインビボで体温低下の作用を示すことが知られている(J. Pharmacol. Exp. Ther., 1994, 270, 219-227;The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, Vol. 284, No. 3, 1209-1217, 1998)。
【0045】
よって、CB1受容体阻害活性は、本発明の組成物を前投与した後、CB1受容体アゴニスト、例えば、HU210を投与し、その後の体温低下を本発明の組成物が阻害するか否かを判定することにより評価することができる。
【0046】
また、本発明の組成物は抗肥満効果を有し得る。「抗肥満効果」とは、食欲抑制作用、体重増加抑制作用、体重減少作用、体脂肪蓄積抑制作用、体脂肪減少作用などの作用を指し、肥満の予防、抑制、改善および治療に有効である効果を意味する。特に本発明の組成物は、CB1受容体阻害による抗肥満効果を有し得る。
【0047】
すでに生体内において抗肥満効果が示されているリモナバンは、In vitroにおけるヒトCB1受容体安定発現CHO細胞を用いた細胞内cAMP蓄積アッセイ(The Journal of Neuroscience,July 15,1997,17(14):5327-53333)の結果よりCB1受容体阻害活性を有することが明らかとなっている。また、リモナバンは、In vivoにおける経口投与により体重増加抑制効果を有することが明らかとなっている(Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 284:R345-R353,2003)。
【0048】
これらの結果より、In vitroにおけるCB1受容体阻害活性とIn vivoにおける体重増加抑制効果とが相関関係を有することは明らかである。
【0049】
本発明の組成物、特に好ましくはイチジク、ワカメ、クマザサ、ヨモギ、クミン、レッドクローバー、アシタバ、マジョラム、ベニナツメ、キク、クワ、ペパーミント、マイタケ、マツバ、ガジュツ、シジウムの低極性抽出物は、CB1受容体阻害活性を有し、当該阻害活性による体重増加抑制効果を有し得る。このような抗肥満効果を有する本発明の組成物は、インスリン抵抗性、高脂血症、糖尿病及び肥満などの生活習慣病をはじめとするCB1受容体が関与する疾患の治療および予防に利用し得る。
【0050】
本発明の組成物は飲食品として提供することが可能である。本発明の飲食品はCB1受容体阻害活性を有する。また、本発明の飲食品の摂取により、抗肥満効果を生じ、肥満の予防、抑制、改善および治療に有効であり得る。
【0051】
本発明の組成物を飲食品として提供する場合には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示を付した食品とすることができる。疾病リスク低減表示としては、例えば肥満を治療、改善、抑制及び/又は予防するためのものである旨の表示が挙げられる。従って、本発明の組成物は、例えば植物の抽出物を含有する肥満を治療、改善、抑制及び/又は予防するためのものである旨の表示を付した飲食品である。
【0052】
本発明の飲食品の形態は、特に制限されず、各種飲料、食品に加工することができる。かかる飲料、食品の例として、これに限定されるものではないが、パン、ケーキ、クレープ、ビスケットなどの菓子類のほか、スープやソース、ジャムやペースト、濃縮果汁、パウダー、ワインや酢にも使うことができる。また、ガラムマサラ、チャツネ、カレー、スープ、ピクルス、ソーセージなどにも用いることができる。味噌汁などの汁物、酢の物、炒め物、サラダ、おひたしや汁物の具、草餅などにも用いることができる。さらに、茶や酒類として飲用したり、ゼリーやガムなどの菓子類に添加・配合したりすることもできる。ドライフルーツなどの形でそのまま食したり、ヨーグルトなどの乳製品、クッキーなどの焼き菓子類、ジャムなどの加工食品に添加・配合したりすることもできる。
【0053】
また、本発明の飲食品は、CB1受容体阻害効果を抑制しない限りにおいて、本発明のCB1受容体阻害物質の他、栄養補助成分などの他の成分を含むことができる。かかる成分には、ビタミン類(例えばビタミンA、ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等)、カロチノイド(例えばβカロチン、リコピン、フコキサンチン等)、ミネラル類(例えば海藻成分、CCM、ヘム鉄、鉄塩系、乳清カルシウム、発酵乳酸カルシウム、牛骨カルシウム、珊瑚カルシウム、卵殻カルシウム等)、各種植物体並びにその抽出物、精製物及び分画物(例えばオオバコ、クロレラ、スピルリナ、にんにく、いちょう葉、ギムネマ、杜仲の葉、しその葉、ハトムギ、大豆グロブリン、ルチン、緑茶抽出物、テアニン、ポリフェノール類、甘草、ユッカ、大豆サポニン、カフェイン、ホワトルベリーエキス、シャンピニオンエキス、ガルシニア・カンボジアエキス等)、微生物並びにその増殖因子及び微生物生産物(例えば乳酸菌、酵母、乳酸菌増殖因子等)、食物繊維及びその酵素分解物(例えばアップルファイバー、コーンファイバー、澱粉由来の食物繊維、難消化性デキストリン、グアガム酵素分解物、サツマイモ繊維、大豆繊維、海藻繊維、きのこ繊維、茶繊維、酸性多糖類、植物粘質物、小麦フスマ等)、動物体並びにその抽出物、精製物、分解物及び生産物(例えばローヤルゼリー、プロポリス、牡蠣エキス、キチン、キトサン、タウリン、コラーゲン、ゼラチン等)、各種オリゴ糖(例えばガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖等)、脂質(例えば不飽和脂肪酸(DHA、EPA等)、リン脂質、サラトリム等)、各種蛋白質及び蛋白分解物(例えばとうもろこし蛋白、大豆蛋白、TMP(トータルミルクプロテイン)、ラクトアルブミン、カゼイン、ホエー、グルタチオン、大豆ペプチド、卵白ペプチド、グルタミンペプチド等)、脱脂胚芽等の小麦胚芽などが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物を飲食品として摂取する場合には、飲食品中の有効成分としての本発明のCB1受容体阻害物質の含有量は、通常、0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%程度であり、成人1人につき、1日当たり1〜500mg、好ましくは1〜200mgの摂取量となるように摂取すればよい。
【0055】
本発明の組成物は、医薬組成物として提供することが可能である。本発明の医薬組成物はCB1受容体阻害活性を有する。また、本発明の医薬組成物の摂取により、抗肥満効果を生じ、肥満の予防、抑制、改善および治療に有効であり得る。
【0056】
本発明の組成物を医薬組成物として提供する場合には、本発明のCB1受容体阻害物質は、経口又は非経口(例えば静注、筋注、皮下投与、腹腔内投与、直腸投与、経皮投与など)のいずれかの投与経路用に製剤化することができる。また、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には静注、筋注などの注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠などの経口剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水性坐剤などの各種製剤形態に調製することができる。本発明の医薬組成物は、経口剤として提供することが特に好ましい。
【0057】
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、浸潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、着色剤、香味剤、及び安定化剤などを用いて、当業者に知られる公知の方法により製造することができる。
【0058】
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット及び結晶セルロースなどが、崩壊剤としては、例えば澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、炭酸マグネシウム及び合成ケイ酸マグネシウムなどが、結合剤としては、例えばメチルセルロース又はその塩、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール及び硬化植物油などが、その他の添加剤としては、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硝酸ソーダ及びリン酸ナトリウムなどがそれぞれ挙げられる。
【0059】
本発明の医薬組成物における有効成分としての本発明の組成物の投与量又は摂取量は、所与の症状や用法について治療効果を与え得る量であり、その量は、動物を用いた試験、臨床試験の実施により当業者によって適宜決定されるが、投与対象の年齢、性別、体重、適用疾患及びその症状、剤形、投与方法などが考慮されるべきである。本発明の医薬組成物が経口剤である場合には、上記投与量又は摂取量は、0.01〜20mg/Kg/日、好ましくは0.01〜8mg/Kg/日とすることができる。
【0060】
上記本発明の飲食品及び医薬組成物は、上記の通り、長い間の食経験に基づいた天然物由来の成分を有効成分として含むため、副作用等の心配が少なく、安価にかつ長期間にわたって継続的に摂取することができる。
【0061】
以下、本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)イチジク低極性抽出物の調製
イチジク乾燥粉末300mgに50倍量の80%アセトン含有水溶液を加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、減圧下乾固させて199.9mgを得た。これを100倍量の80%メタノール含有水溶液に溶解し、等量のヘキサンで3度分配した。得られた80%メタノール含有水溶液層を減圧下乾固させ、200倍量の水に溶解後、酢酸エチルで3度分配した。酢酸エチル層を減圧下乾固させて2.8mgの抽出物を得た。
【0063】
(実施例2)ワカメ低極性抽出物の調製
ワカメ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、12.8mgの抽出物を得た。
【0064】
(実施例3)クマザサ低極性抽出物の調製
クマザサ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、5.8mgの抽出物を得た。
【0065】
(実施例4)ヨモギ低極性抽出物の調製
ヨモギ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、13.3mgの抽出物を得た。
【0066】
(実施例5)クミン低極性抽出物の調製
クミン乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、7.3mgの抽出物を得た。
【0067】
(実施例6)レッドクローバー低極性抽出物の調製
レッドクローバー乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、9mgの抽出物を得た。
【0068】
(実施例7)アシタバ低極性抽出物の調製
アシタバ乾燥粉末500mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、14.7mgの抽出物を得た。
【0069】
(実施例8)マジョラム低極性抽出物の調製
マジョラム乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、14.5mgの抽出物を得た。
【0070】
(実施例9)ベニナツメ低極性抽出物の調製
ベニナツメ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、1.0mgの抽出物を得た。
【0071】
(実施例10)キク低極性抽出物の調製
キク乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、15.8mgの抽出物を得た。
【0072】
(実施例11)クワ低極性抽出物の調製
クワ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、5.1mgの抽出物を得た。
【0073】
(実施例12)ペパーミント低極性抽出物の調製
ペパーミント乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、13.1mgの抽出物を得た。
【0074】
(実施例13)マイタケ低極性抽出物の調製
マイタケ乾燥粉末300mgから実施例1と同様の抽出操作を行い、7.7mgの抽出物を得た。
【0075】
(実施例14)マツバエタノール抽出物の調製
マツバ乾燥粉末10.3gに20倍量の100%エタノールを加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、残渣に同量の100%エタノールを加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、先ほどの上清と合わせ、減圧下乾固させて854.5mgの抽出物を得た。
【0076】
(実施例15)ガジュツエタノール抽出物の調製
ガジュツ乾燥粉末10.1gから実施例1と同様の抽出操作を行い、380mgの抽出物を得た。
【0077】
(実施例16)シジウムエタノール抽出物の調製
シジウム乾燥粉末10.5gから実施例1と同様の抽出操作を行い、613.2mgの抽出物を得た。
【0078】
(実施例17)CB1安定発現細胞の樹立
ヒトCB1受容体cDNAを含んだpcDNA3.2プラスミドを、FuGENE 6(Roche)を用いてチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)に遺伝子導入した。遺伝子導入後、この細胞を1.5mg/ml GENETICIN(GIBCO)で選択し、GENETICIN耐性クローンを増殖させて細胞系を樹立した。同様にして、ヒトCB2受容体安定発現細胞も樹立した。
【0079】
(実施例18)抽出物のCB1受容体アンタゴニスト活性及び濃度依存性の検討
実施例1〜16で調製した各抽出物は、100mg/mlになるようにエタノールに溶解し、CB1受容体アンタゴニスト活性を評価した。
【0080】
実施例17で作製したヒトCB1受容体を安定発現させたCHO細胞を96穴培養プレートに1×10cells/wellとなるように播種し、37℃、5%CO条件下で18時間程度培養した。培地には、10%FBS、500U/mlペニシリン・ストレプトマイシン溶液、1.5mg/ml GENETICINを含むα-MEM,100ml/wellを用いた。播種18時間後に、実施例1〜16で示した抽出物、ホルスコリン、CB1受容体アゴニスト(HU210)を以下の表1のように含有した培地と交換し、30分培養した。
【0081】
【表1】

【0082】
その後、市販の測定キット(cAMP−ScreenTM System, Applied Biosystems)を用い、細胞溶解液の回収および細胞内cAMP量の定量を行った。HU210添加時のホルスコリン依存性cAMP蓄積の抑制程度(cAMP量((2)−(3))、表1参照)を100%とし、それに対する抽出物およびHU210添加時のホルスコリン依存性cAMP蓄積の抑制程度(cAMP量((4)−(3))、表1参照)をCB1受容体アンタゴニスト活性(%)として相対的に表した。実施例1〜16で示した抽出物の添加濃度を数段階設定し測定した結果、添加濃度依存的なCB1受容体アンタゴニスト活性の上昇が認められた(表2を参照)。
【0083】
【表2】

【0084】
(実施例19)CB1受容体特異性の評価
実施例18と同様に各抽出物のCB2受容体アンタゴニスト活性について評価し、CB1受容体アンタゴニスト活性と比較することで、CB1受容体特異性を評価した。HU210のKi値はCB1受容体、CB2受容体に対して、それぞれ0.061nM, 0.52nMである。そこでHU210の濃度を、CB1受容体アンタゴニスト活性測定時は、1nM、CB2受容体アンタゴニスト活性測定時は、10nMとした。実施例1〜16で示した抽出物(最終濃度0.2mg/mlで添加)のCB1受容体及びCB2受容体アンタゴニスト活性を測定した結果、各抽出物のCB2受容体アンタゴニスト活性はCB1受容体アンタゴニスト活性の50%以下であり、これら抽出物のCB1受容体特異性が認められた(表3を参照)
【0085】
【表3】

【0086】
(実施例20)イチジクエタノール抽出物の調製
イチジク乾燥粉末10.34gに20倍量の100%エタノールを加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、残渣に同量の100%エタノールを加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、先ほどの上清と合わせ、減圧下乾固させて1.1gの抽出物を得た。これを100mg/mlになるようにエタノールに溶解し、CB1受容体アンタゴニスト活性を評価した。
【0087】
(実施例21)ワカメエタノール抽出物の調製
ワカメ乾燥粉末5.05gから実施例1と同様の抽出操作を行い、139.2mgの抽出物を得た。
【0088】
(実施例22)クマザサエタノール抽出物の調製
クマザサ乾燥粉末6.11gから実施例1と同様の抽出操作を行い、106.3mgの抽出物を得た。
【0089】
(実施例23)ヨモギエタノール抽出物の調製
ヨモギ乾燥粉末5.28gから実施例1と同様の抽出操作を行い、97.2mgの抽出物を得た。
【0090】
(実施例24)クミンエタノール抽出物の調製
クミン乾燥粉末5.14gから実施例1と同様の抽出操作を行い、1557mgの抽出物を得た。
【0091】
(実施例25)レッドクローバーエタノール抽出物の調製
レッドクローバー乾燥粉末2.04gから実施例1と同様の抽出操作を行い、79.7mgの抽出物を得た。
【0092】
(実施例26)アシタバエタノール抽出物の調製
アシタバ乾燥粉末5.05gから実施例1と同様の抽出操作を行い、572.6mgの抽出物を得た。
【0093】
(実施例27)マジョラムエタノール抽出物の調製
マジョラム乾燥粉末5.00gから実施例1と同様の抽出操作を行い、156.1mgの抽出物を得た。
【0094】
(実施例28)ベニナツメエタノール抽出物の調製
ベニナツメ乾燥粉末5.23gから実施例1と同様の抽出操作を行い、798.8mgの抽出物を得た。
【0095】
(実施例29)キクエタノール抽出物の調製
キク乾燥粉末5.03gから実施例1と同様の抽出操作を行い、476.6mgの抽出物を得た。
【0096】
(実施例30)クワエタノール抽出物の調製
クワ乾燥粉末5.16gから実施例1と同様の抽出操作を行い、143.2mgの抽出物を得た。
【0097】
(実施例31)ペパーミントエタノール抽出物の調製
ペパーミント乾燥粉末2.02gから実施例1と同様の抽出操作を行い、71.3mgの抽出物を得た。
【0098】
(実施例32)マイタケエタノール抽出物の調製
マイタケ乾燥粉末2.38gから実施例1と同様の抽出操作を行い、136.1mgの抽出物を得た。
【0099】
(実施例33)エタノール抽出物のCB1受容体アンタゴニスト活性の測定
実施例18と同様に(HU210の濃度(10nM)のみ異なる)、実施例20〜33で示したエタノール抽出物(最終濃度は、イチジクは0.5mg/ml、ベニナツメは0.48mg/ml、それ以外は1.0mg/ml)のCB1受容体アンタゴニスト活性を評価した結果、イチジク、ベニナツメ、クワ、マイタケ以外のエタノール抽出物には、40%以上のCB1受容体アンタゴニスト活性が認められた(表4を参照)。
【0100】
【表4】

【0101】
(実施例34)抽出物のCB1受容体アンタゴニスト活性のIn vivo評価
抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性は、マウスに抽出物を前投与した後、CB1受容体アゴニスト(HU210)を投与し、その後のHU210による体温低下を抽出物が阻害するかにより評価した。実験にはJcI:ICR系雄性マウス(5週齢)を用いた。実施例1−3,15および24で示した抽出物を15%の濃度で生理食塩水もしくは水溶性ポリマー(PUREBRIGHT)に懸濁し、10ml/kgで腹腔内に投与した(最終濃度;150mg/kg)。control群およびvehicle群には溶媒のみ投与した。30分後に、体温測定用プローブを接続した温度計(Physitemp BAT−12)にて直腸温を測定した(この値を基準値とした。)。さらに15分後に0.15% DMSOに溶解したHU210(10μg/ml)、1% Tween80を含む生理食塩水を10ml/kgで腹腔内に投与した(最終濃度;100μg/kg)。control群には溶媒のみ投与した。その後30分ごとに90分まで、90分後からは90分ごとに270分まで直腸温を測定した。一群につき3〜5例で実験を行った。結果を図1−5に示す。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の組成物は、CB1受容体阻害活性および抗肥満効果を有し、インスリン抵抗性、高脂血症、糖尿病及び肥満などの生活習慣病をはじめとするCB1受容体が関与する疾患の治療および予防に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、イチジク低極性抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性の分析結果を示す。横軸はHU210投与後の時間、縦軸は各時間の直腸温と基準値との差である。
【図2】図2は、ワカメ低極性抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性の分析結果を示す。横軸はHU210投与後の時間、縦軸は各時間の直腸温と基準値との差である。
【図3】図3は、クマザサ低極性抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性の分析結果を示す。横軸はHU210投与後の時間、縦軸は各時間の直腸温と基準値との差である。
【図4】図4は、ヨモギエタノール抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性の分析結果を示す。横軸はHU210投与後の時間、縦軸は各時間の直腸温と基準値との差である。
【図5】図5は、ガジュツエタノール抽出物のIn vivoにおけるCB1受容体アンタゴニスト活性の分析結果を示す。横軸はHU210投与後の時間、縦軸は各時間の直腸温と基準値との差である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミナム属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のCB1受容体阻害活性を有する物質を含む組成物。
【請求項2】
前記植物は、イチジク、ワカメ、クマザサ、ヨモギ、クミン、レッドクローバー、アシタバ、マジョラム、ベニナツメ、キク、クワ、ペパーミント、マイタケ、マツ、ガジュツ及びシジウムからなる群より選択される植物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記CB1受容体阻害活性を有する物質は、前記植物又はその一部からの抽出物である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
クワ科イチジク属、チガイゾ科ワカメ属、イネ科ササ属、キク科ヨモギ属、セリ科クミナム属、マメ科シャクジソウ属、セリ科シシウド属、シソ科ハナハッカ属、クロウメモドキ科ナツメ属、キク科キク属、クワ科クワ属、シソ科ハッカ属、サルノコシカケ科マイタケ属、マツ科マツ属、ショウガ科ウコン属及びフトモモ科バンジロウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物又はその一部を溶媒抽出に供し、抽出画分からCB1受容体阻害活性を有する物質を回収することを含む、CB1受容体阻害物質含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記植物は、イチジク、ワカメ、クマザサ、ヨモギ、クミン、レッドクローバー、アシタバ、マジョラム、ベニナツメ、キク、クワ、ペパーミント、マイタケ、マツ、ガジュツ及びシジウムからなる群より選択される植物である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
溶媒はエタノール、メタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群より選択される1種以上である、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項記載の方法によって製造される、CB1受容体阻害物質含有組成物。
【請求項8】
抗肥満効果を有する、請求項1〜3又は請求項7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜3、7又は8のいずれか1項記載の組成物を含む、飲食品。
【請求項10】
肥満を治療、改善、抑制及び/又は予防するためのものである旨の表示を付した、請求項9記載の飲食品。
【請求項11】
請求項1〜3、7又は8のいずれか1項記載の組成物を含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−83796(P2010−83796A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253976(P2008−253976)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】