説明

CBOC拡散波形により変調された無線ナビゲーション信号を受信する方法および受信機

【課題】GPSとガリレオシステムとの間の相互運用性および適合性を保証すること
【解決手段】BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(nとnとは異なる)の実数値の係数のリニアな組み合わせを含む複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信するために、長さTの時間インターバルにわたり、ローカル波形と前記複合波形との間の相関化を実行する。前記ローカル波形は少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントと少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントとを含む、交番系列波形により前記時間インターバルにわたって形成される二進波形であり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、αtの全時間長さを有し、αは厳密に0と1との間にあり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、(1−α)Tの全時間長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CBOC拡散波形により変調された無線ナビゲーション信号を受信する方法および受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システム、例えばGPS(全地球測位システム)、ガリレオ、GLONASS、QZSSおよびその他のシステムは、スペクトル拡散変調されたナビゲーション信号を利用している。これら信号は、基本的には周期的に繰り返される数値シーケンスから構成された疑似ランダム符号を搬送しており、この数値シーケンスの主な機能は、符号分割多重アクセス(CDMA)および衛星が送信した信号に対する伝搬時間を正確に測定することを可能にすることにある。衛星測位信号は、付随的に有効データを搬送することもできる。
【0003】
GPSの場合、1575.42MHzを中心とするL1周波数バンドおよび1227.6MHzを中心とするL2周波数バンドでナビゲーション信号が送信される。GPSを改良するにあたって、1176.45MHzを中心とするL5バンドが追加されることになっている。ガリレオコンステレーションの衛星は、次のバンド:E2−L1−E1(GPSの中心バンドと同じ中心バンドL1部分)、E5a(ガリレオ用語集によれば、GPS用のL5バンド)、E5b(1207.14MHzを中心とするバンド)およびE6(1278.75MHzを中心とするバンド)で送信を行うことになっている。
【0004】
中心(キャリア)周波数を変調することにより、複数のナビゲーション信号が形成され、これまで既に種々の変調方式が設定されているか、またはナビゲーション信号を形成するために少なくとも検討中である。GPSとガリレオシステムとの間の相互運用性および適合性を保証するために、米国および欧州共同体(EU)は、双方のシステムによって使用されているL1バンドにおける信号変調方式に関する所定の点については既に同意している。提案されている変調方式に関する詳細については、刊行物、MBOC:ハイン氏外著「ガリレオL1 OSおよびGPS L1Cに推奨される最適な新しい拡散変調方法」InsideGNSS、2006年5/6月号、57〜65ページから得ることができよう。
【0005】
ガリレオOS L1信号を変調するための候補として選択された変調方式のうちの1つは、CBOC(複合二進オフセットキャリアの略)変調なる名称で知られているものである。キャリア(搬送波)を変調するCBOC拡散波形は、第1のBOC(1、1波形)と第2のBOC(m、1)波形とのリニアな組み合わせであり、BOCは、二進オフセットキャリア(Binary Offset Carrier)の略であり、一般にBOC(n、m)は次の式によって定められる時間tの関数となっている。
【0006】
【数1】

ここで、C(t)は、値+1または−1となるチップレートm×1.023Mcpsの疑似ランダム符号であり、fscは周波数n×1.023MHzである。nおよびmに適用される1つの条件は、2n/mの比を整数とすることである。ガリレオのオープンサービス(OS)の場合、チップレートは1.023Mcps(1秒当たりのメガチップス)に設定されている。この場合、CBOC波形を次のように記載できる。
【0007】
【数2】

ここで、VおよびWは、BOC(1、1)およびBOC(m、1)の成分の相対的な重み付けを定める実数の係数である。CBOC波形の場合、これら2つのBOC成分が同一の疑似ランダム符号を搬送する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CBOC波形は、例えば欧州特許出願第05290083.4に記載されている複合波形のファミリーに属す特定の波形と見なすことができる。上記同じ欧州特許出願明細書には、複合波形によって変調された信号を受信するための方法も記載されている。記載されている第1の方法によれば、CBOC波形によって変調された着信信号とこのCBOC波形のローカルレプリカと間の相関化を実行する。しかしながら、この解決方法は、受信機においてレプリカCBOCを発生しなければならない。従って、少なくとも2ビットのアーキテクチャを必要とする相関器の入力において、4レベルの量子化を実施しなければならない。記載されている第2の方法によれば、着信信号と第1BOC成分のローカルレプリカとの間、および着信信号と第2BOC成分のローカルレプリカとの間で、それぞれ相関化が実行され、これら2つの相関化の結果を組み合わせる。この解決方法では、ローカルレプリカは1ビットであり、このことは第1の解決方法よりも好ましいと見なすことができる。生じる負担は第1の解決方法と比較して相関化の演算回数が2倍となることであり、その他のすべての点は同じである。
【0009】
本発明の目的は、複合拡散波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信するための新規な方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0011】
BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(nとnとは異なる)の実数値の係数のリニアな組み合わせを含む複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信するために、長さTの時間インターバルにわたり、ローカル波形と前記複合波形との間の相関化を実行することが提案される。本発明の重要な特徴によれば、前記ローカル波形は少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントと少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントとを含む、交番系列波形により前記時間インターバルにわたって形成される二進波形であり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、αtの全時間長さを有し、αは厳密に0と1との間にあり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、(1−α)Tの全時間長さを有する。これまで説明した受信方法とは異なり、本発明にかかわる方法は、3つ以上のレベルを有する波形を必要とせず、かつより多い数の相関器を必要としない。
【0012】
本発明の好ましい実施例では、前記BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分は、同一の疑似ランダム符号を搬送し、前記ローカル波形はこのランダム符号の少なくとも1つの所定の部分を搬送する。衛星無線ナビゲーションで使用される疑似ランダム符号は、全体が所定の符号(パイロットチャンネルの場合)または所定の部分およびデータ部分(データチャンネルの場合)を含む符号のいずれかである。データ部分は所定部分のチップレートよりも著しく低いシンボルレートとして送信される。
【0013】
=1およびm=1である場合、リニアな組み合わせは次の式
【数3】

によって定められるCBOC(n、1)波形であり、
ここで、VとWとは実数値の重み付け係数である。将来のガリレオOS L1信号に対するCBOC候補に関して、n=6であることが更に同意されている。所定のケースでは、CBOC(n、1)信号を受信するためにはαを基準値W/(V+W)に少なくともほぼ等しくすることが望ましいと証明できる。別のケースでは、αをこの基準値より小さいかまたは大きくすることが適当である場合がある。
【0014】
ローカル波形は単一のBOC(n、m)波形セグメントと、単一のBOC(n,m)波形セグメントとを含む交番系列波形を含むことができる。本発明の別の実施例では、交番系列波形は、全時間長さαTの複数のBOC(n、m)波形セグメントおよび/または全時間長さ(1−α)Tの複数のBOC(n、m)波形セグメントとを含む。
【0015】
本発明に係わる方法を実施するために、BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(nとnとは異なる)の実数値の係数のリニアな組み合わせを含む複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信できる受信機であって、ローカル波形発生器と長さTの時間インターバルにわたり、ローカル波形と前記複合波形との間の相関化を実行するための相関器の1組を備える受信機が提供される。前記ローカル波形発生器は少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントと少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントとを含む、交番系列波形の前記時間インターバルにわたって形成されるローカル二進波形を発生するようになっており、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、αtの全時間長さを有し、αは厳密に0と1との間であり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、(1−α)Tの全時間長さを有する。
【0016】
好ましい実施形態によれば、受信機は、(a)BOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間的順序、および/または(b)BOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間長さに影響するように、ローカル波形発生器に作用する制御ユニットを含む。この実施形態は将来のガリレオOS L1信号およびGPS L1C信号に適した受信機に対して特に好ましい。その理由は、後者のGPS L1C信号用の変調は、BOC(1、1)成分とBOC(6、1)成分を有する時間多重化されたBOC変調(TMBOC、時間多重化されたBOC)信号であるからである。ガリレオOS L1用に選択される変調方式が、CBOC(6、1)変調である場合、同じ受信機で双方の信号を受信することが可能となる。BOC(1、1)セグメントおよびBOC(6、1)セグメントの時間的順序および/またはそれらセグメントの時間長さに作用することにより、制御ユニットはGPSからのTMBOCまたはガリレオからのCBOCの双方を受信できるように、ローカル波形を最適化できる。
【0017】
以下、添付図面を参照し、非限定的な例により、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CBOC(6、1)波形の時間表示である。
【図2】BOC(1、1)波形とBOC(6、1)波形との間の相関性の表示である。
【図3】異なる重み付けファクターを有する2つのCBOC(6、1)波形の自己相関性の表示である。
【図4】本発明に係わる方法で使用できるローカル二進波形の時間表示である。
【図5】CBOC(6、1、1/11)の自己相関関数と、図4に示されるようなCBOC(6、1、1/11)とローカル二進波形との間の相関関数との間の比較を示す。
【図6】CBOC(6、1、2/11)とローカル二進波形との間の異なる相関関数を示す。
【図7】CBOC(6、1、1/11)およびCBOC(6、1、2/11)の場合のパラメータαの関数としてのC/N比の劣化の表示である。
【図8】ローカル波形が複合CBOC(6、1)波形である場合の、マルチエラーエンベロープと、ローカル波形が図4に示されるような二進波形である場合のマルチエラーエンベロープとの比較を示す。
【図9】複合信号を受信できる受信機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、次の式によって定められるCBOC(6.1)の波形10を示す。
【数4】

【0020】
ここで、VおよびWは重み付けファクターであり、以下、次の表記を使用する。
【数5】

【0021】
ここで、CP(t)は2つの成分に共通する疑似ランダム符号を示す。
【0022】
VおよびWの異なる値は、ガリレオOS L1信号の多重化方式に応じて決まるこの信号のための値と見なされる。更なる細部については、本明細書の導入部に述べた完全な参考文献であるInsidGNSSに記載されているハイン氏外による論文に見ることができる。
【0023】
所定の表記を導入し、本発明の利点を良好に説明するために、以下、欧州特許出願第05290083.4号に原理が記載されている、CBOC10信号をトラッキングする方法について検討する。この方法では、パラレルに実行すべき2つの相関化、すなわちローカルレプリカBOC(1、1)との相関化と、ローカルレプリカBOC(6、1)との相関化がある。ローカルレプリカは次のとおりである。
【数6】

【0024】
ここで、インデックスIおよびQはローカルレプリカの合相成分および直交成分をそれぞれ示し、fはキャリア周波数であり、φ^は位相である。
CBOC信号をsI1と相関化すると、次の式が得られる。
【数7】

【0025】
ここで、τ^は受信された信号の疑似ランダム符号の位相τから推定されるローカルレプリカ信号の疑似ランダム符号の位相であり、φ^は受信した信号のキャリアの位相φから推定されるローカルレプリカ信号のキャリアの位相であり、Tは積分インターバルの時間であり、RBOC(1、1)はBOC(1、1)波形の自己相関関数であり、RBOC(1、1)/BOC(6、1)はBOC(1、1)波形とBOC(6、1)波形との間の相関関数であり、ετ=τ^-τおよびεφ=φ^-φである。
同じように、次の式を記載できる。
【数8】

ここで、RBOC(6、1)はBOC(6、1)波形の自己相関関数である。
【0026】
相関性を再び組み合わせ、BOC(1、1)波形とBOC(6、1)波形との間の相関性が図2に示されるように対称的であるという事実を利用することにより、次のようにCBOC波形の自己相関関数を見つける。
【数9】

【0027】
図3には、2つのCBOC波形の自己相関関数12、14が示されている。データチャンネルとパイロットチャンネルの各々が信号のパワーの50%を搬送すると仮定した場合、インデックス1/11および2/11は、無線ナビゲーション信号に対して使用される多重化方式を示し、BOC(1、1)とBOC(6、1)成分の所定の重み付けを参照する。CBOC(6、1、1/11)に対してV=0.383998であり、W=0.121431であり、他方、CBOC(6、1、2/11)に対してV=0.358235であり、W=0.168874である。参照符号12は、CBOC(6、1、1/11)の場合の自己相関関数を示し、参照符号14はCBOC(6、1、2/11)の場合の自己相関関数を示す。
【0028】
上記の方法の欠点は、この方法を実施するのに必要な相関器の数にある。本発明は、上記CBOC(6、1)波形10を受信するのに着信信号と時間多重化されたローカル信号16との相関化を実施することを提案し、時間多重化されたローカル信号16は、純粋なBOC(1、1)のあるセグメントまたはいくつかのセグメント、および純粋なBOC(6、1)の1つのセグメントまたはいくつかのセグメントを含む。図4は、ローカル波形sLOC(t)の時間表示を示し、このローカル波形は、積分インターバルのスタート時のBOC(6、1)波形セグメント18と、積分インターバルの終了時のBOC(1、1)波形セグメント20を有する。ローカル波形16は、2つの値(受信波形)しか有しないので、1ビットで符号化できる。ローカル波形16は、CBOC(6、1)信号を変調する疑似ランダム符号の既知の部分を搬送する。疑似ランダム符号の値の変化は、図4のx座標4.07および4.11で識別できる。ローカル波形16は着信無線ナビゲーション信号10を変調する複合波形と著しく異なることが理解できよう。
【0029】
Tは積分インターバルの期間を示し、αTは純粋なBOC(6、1)のセグメントの全期間(この場合、0<α<1である)を示し、βTは純粋なBOC(1、1)のセグメント20の全期間(この場合、β=1−αである)を示す。CBOC(6、1)波形10によって変調されるナビゲーション信号と、二進ローカル波形16によって変調される無線ナビゲーション信号との間の相関化の結果を分析するために、相関性を次のように分解できる。
【数10】

【0030】
前の例において示されているものを別の見方で見ると、更にインターバル[0、αT]および[αT、T]に対応する疑似ランダム符号のシーケンスは、自ら疑似ランダム符号の近似であると仮定した場合、次の近似を行うことができる。
【数11】

【0031】
従って、相関関数は次のようになる。
【数12】

【0032】
CBOC自己相関関数12または14におけるBOC(1、1)波形、およびBOC(6、1)の自己相関関数の同じ相対的寄与分の、ある乗算ファクターまで生じさせるには、α=W/(V+W)であり、β=V/(V+W)であることが必要であると理解できよう。
【0033】
従って、CBOC(6、1、1/11)方式の場合、α=0.2403およびβ=0.7597を選択することが好ましい。図5は、一方で既に図2に示されているCBOC(6、1、1/11)の自己相関関数12を示し、他方、CBOC(6、1、1/11)とα=0.2403およびβ=0.7597である場合のローカル二進波形16との間の自己相関関数22も示している。ローカル二進波形16の外観に関して、このことは疑似ランダム符号の4096個のチップのうち、約984個のチップがBOC(6、1)波形セグメントを形成し、3112個のチップがBOC(1、1)波形セグメントを形成することを意味している。
【0034】
CBOC(6、1、2/11)の場合、α=W/(V+W)であれば、α=0.3204およびβ=0.6796となり、この場合、疑似ランダム符号の4096個のチップのうちで、約1312個のチップがBOC(6、1)波形セグメントを形成し、2784個のチップがBOC(1、1)波形セグメントを形成する。
【0035】
図6は、パラメータαの異なる値に対して得られる、CBOC(6、1、2/11)方式10を使用して変調された無線ナビゲーション信号と時間多重化されたローカル二進波形16との間の相関関数24、26、28および30のファミリーを示す。αの値は相関関数の形状に作用できることが理解できよう。α=0を選択した場合、曲線24が得られ、α=0.1を選択した場合、曲線26が得られ、α=0.2を選択した場合、曲線28が得られ、α=0.3を選択したした場合、曲線30が得られる。αの値に応じて中心ピーク32および二次ピーク34は多少とも顕著になる。
【0036】
図7は、C/N比、すなわちスペクトルノイズ密度に対する受信信号の比の劣化を示す。RBOC(1、1)/BOC(6、1)は対称的であり、0にて値0を有するので、C/Nの劣化は次の式によって計算できる。
【数13】

上記式とは異なり、次のようにも表記できる。
【数14】

【0037】
図7は、CBOC(6、1、1/11)(曲線36)およびCBOC(6、1、2/11)(曲線38)の場合のC/Nの劣化を示す。ローカル波形が純粋なBOC(1、1)となっている場合に対応するα=0の場合における、BOC(6、1)(1/11および2/11)にそれぞれ割り当てられている信号のパワー部分に関連する劣化は生じないことが理解できよう。α=0.2403であるCBOC(6、1、1/11)の場合に、1.97dBsのC/N比の劣化が生じる。α=0.3204となっているCBOC(6、1、2/11)の場合に、2.56dBsのC/N比の劣化が生じる。
【0038】
CBOC(6、1、1/11)の場合において、図8はローカル波形が対応する複合CBOC(6、1)波形となっている場合のマルチパスエラーエンベロープ40を左側に示し、ローカル波形がα=0.2403における時間多重化された二進波形である場合のマルチパスエラーエンベロープ42を右側に示す。マルチパスエラーエンベロープ40と42とは、基本的には同一であることが理解できよう。
【0039】
ある比例ファクター内で、CBOC自己相関関数に類似する相関関数を得るだけが、αの値を最適にする上での基準ではないことにも留意すべきである。その理由は、特に(a)C/N比の劣化を最小にすること、(b)ガウス白色ノイズに起因するトラッキングエラーを最小にすること、(c)着信信号とローカル波形との間の相関関数の形状を最適にすること、および(d)マルチパスエラーを低減することの基準に基づき、ローカル二進波形を選択することもできるからである。従って、αの値を選択するためにある程度の自由度を得ることができる。
【0040】
図9は、複合信号、例えばCBOC信号を受信できる受信機44の受信チャンネルの略図を示す。説明のために、ローカルキャリアを無視した、ベースバンド処理された信号が仮定されている。受信機44は、相関器の一組46を示し、これら相関器のうちの3つが例として示されている。チャンネルごとにこれら相関器46.1、46.2、46.3のうちの2つを設けてもよいし、1つを設けてもよいが、例えば取得時間を短縮し、および/またはマルチパスエラーを低減するために、これよりも多くすることもできる。各相関器は、着信CBOC信号とローカル二進波形SLOCのコピーとを混合するミキサー48.1、48.2および48.3と、混合された信号を積分し、出力信号を発生する積分回路50.1、50.2および50.3を備える。衛星が送信するいくつかの信号を受信するためには、1台の受信機は複数の受信チャンネルを必要とする。受信機の各受信チャンネルに対し、かかる相関器の一組が設けられ、これら相関器の出力信号は、合波され、信号取得モードでは受信した信号のエネルギーの推定値を形成し、信号トラッキングモードでは疑似ランダム符号の識別信号を形成する。
【0041】
第1の「早期」相関器46.1は、着信CBOC(t−τ)信号と、ローカル二進SLOC(t-τ^-Δ/n)波形の早期コピーの相関性の値を発生する。ここで、τは受信した信号の疑似ランダム符号の位相であり、τ^はτの推定値であることを思い出すべきである。Δは1つのチップの時間であり、nはローカル二進波形のコピーの推定値τ^の早期に対する時間長さの割合を決定する。第2の「合相」相関器46.2は、着信CBOC(t−τ)信号とローカル二進SLOC(t-τ^)波形の合相コピーとの相関性の値を発生する。第3の「後期」相関器46.3は、着信CBOC(t−τ)信号とローカル二進SLOC(t-τ^+Δ/n)波形の後期コピーとの相関性の値を発生する。
【0042】
LOC(t-τ^-Δ/n)信号、SLOC(t-τ^)信号およびSLOC(t-τ^+Δ/n)信号を発生するために、受信機44は一組の発生器を備える。明瞭にするために、ローカル波形のSLOC(t-τ^+Δ/n)コピーを発生する発生器52しか示されていない。この発生器52は制御ユニット54によって制御される。発生器52は、例えば数値制御された発振器(NCO)を含むことができる。この場合、NCOは、NCOがBOC(n、m)波形を出力するのか、またはBOC(n、m)波形を出力するのかを決定する二進値と共に、ドップラー補正されたチップレートに対応する設定ポイントの発振周波数を入力信号として受信する。二進値は受信機の作動モードに応じ、すなわち受信機が取得モードであるのか、トラッキングモードであるのかに応じ、または受信機がCBOC信号を受信するのか、TMBOC信号を受信するのかに応じ、制御ユニットによって供給される。この制御ユニットは、特にBOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間長さと共に、BOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間的順序を決定する。
【符号の説明】
【0043】
44−−−受信機
46−−−相関器
48.1〜48.3−−−ミキサー
50.1〜50.3−−−積分器
52−−−発生器
54−−−制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(nとnとは異なる)の実数値の係数のリニアな組み合わせを含む複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信するための方法であって、長さTの時間インターバルにわたり、ローカル波形と前記複合波形との間の相関化を実行する方法において、
前記ローカル波形は少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントと少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントとを含む、交番系列波形により前記時間インターバルにわたって形成される二進波形であり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、αtの全時間長さを有し、αは厳密に0と1との間にあり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、(1−α)Tの全時間長さを有することを特徴とする、無線ナビゲーション信号を受信するための方法。
【請求項2】
前記BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分は、同一の疑似ランダム符号を搬送し、前記ローカル波形はこのランダム符号の少なくとも1つの所定の部分を搬送する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
=1およびm=1であり、従ってリニアな組み合わせは次の式
【数1】

によって定められるCBOC(n、1)波形であり、
ここで、VとWとは実数値の重み付け係数である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
=6である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
αは、少なくともW/(V+W)にほぼ等しい、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
全時間長さαTの複数のBOC(n、m)波形セグメントと、全時間長さ(1−α)Tの複数のBOC(n、m)波形セグメントとを含む交番系列波形の全時間インターバルにわたって全ローカル波形を形成する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(nとnとは異なる)の実数値の係数のリニアな組み合わせを含む複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信できる受信機であって、ローカル波形発生器と長さTの時間インターバルにわたり、ローカル波形と前記複合波形との間の相関化を実行するための相関器の1組を備える受信機において、
前記受信機は、前記ローカル波形発生器が少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントと少なくとも1つのBOC(n、m)波形セグメントとを含む、交番系列波形の前記時間インターバルにわたって形成されるローカル二進波形を発生するようになっており、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、αtの全時間長さを有し、αは厳密に0と1との間であり、前記少なくとも1つのBOC(n、m)セグメントは、(1−α)Tの全時間長さを有することを特徴とする、無線ナビゲーション信号を受信するための受信機。
【請求項8】
BOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間的順序、
および/またはBOC(n、m)セグメントおよびBOC(n、m)セグメントの時間長さに影響するように、ローカル波形発生器に作用する制御ユニットを含むことを特徴とする、請求項7に記載の受信機。
【請求項9】
=6、n=1およびm=1である、請求項7または8に記載の受信機。
【請求項10】
BOC(n、m)成分およびBOC(n、m)成分(ここでnとnとは異なる)の実係数のリニアな組み合わせを含む、複合波形によって変調された無線ナビゲーション信号を受信するための、請求項7〜9のうちのいずれか1項に記載の受信機の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−542065(P2009−542065A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515852(P2009−515852)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056030
【国際公開番号】WO2007/147807
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(507233361)セントル・ナショナル・デチュード・スパシアル (7)
【Fターム(参考)】