説明

CCI−779多形及びその使用

本発明は、CCI−779多形II型を提供する。本発明はまた、CCI−779多形II型を調製するための方法及びCCI−779多形II型を含有する医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、CCI−779多形、その調製のための方法及び前記多形を含有する医薬組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)は、ラパマイシンのエステルである。シロリムスとも称されるラパマイシンは、ストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって生産される大環状トリエン抗生物質である。CCI−779を含む、ラパマイシンのヒドロキシエステルの調製及び使用は、米国特許第5,362,718号及び同第6,277,983号に記載されている。
【0003】
CCI−779は多くの腫瘍細胞型に対してインビトロ及びインビボでの活性を有すると記述されてきた。CCI−779は、腫瘍の進行までの時間又は腫瘍再発までの時間を遅延させるとの仮説が立てられている。この作用機構は、細胞傷害性薬剤よりも細胞増殖抑制性薬剤により典型的であり、シロリムスの作用機構に類似する。
【0004】
CCI−779は、酵素mTOR(FKBP12−ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)としても知られる、ラパマイシンの哺乳動物標的)を阻害する、細胞質タンパク質FKBPと結合して、複合体を形成する。mTORのキナーゼ活性の阻害は、様々なシグナル伝達経路、例えばサイトカイン刺激性細胞増殖、細胞周期のG1期を調節するいくつかの重要なタンパク質についてのmRNAの翻訳、及びIL−2誘導性転写を阻害し、G1期からS期への細胞周期の進行の阻害を導く。
【0005】
CCI−779を含む、ラパマイシンのヒドロキシエステルの調製及び使用は、米国特許第5,362,718号及び同第6,277,983号に記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
1つの態様では、本発明は、CCI−779多形II型を提供する。
【0007】
もう1つの態様では、本発明は、CCI−779多形II型を調製するための方法を提供する。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を提供する。
【0009】
さらにもう1つの態様では、本発明は、CCI−779多形II型を含むキットを提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を調製する方法を提供する。
【0011】
本発明の他の態様及び利点を、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明においてさらに記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、CCI−779多形II型を提供する。CCI−779多形II型を単離し、X線回折(XRD)、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)によって特性決定した。
【0013】
ベンチ規模で、CCI−779 II型(プレート状)についての形態学から、CCI−779がI型(針状)よりも良好な粉体流特性を有することが観察されている。他の予備的データでは、一部の証拠が、II型がI型よりも熱力学的により安定であることを示した。
【0014】
(I.定義)
本明細書において使用される場合、「CCI−779」又は「CCI−779 I型」という用語は、特徴的で容易に使用可能な又は入手可能な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)保持時間、X線結晶構造、粉末XRDパターン及びDSCサーモグラムによって同定される、現在当該分野で入手可能なCCI−779型を指す。CCI−779の粉末XRDパターンは当業者に容易に入手可能であり、約7.6°、9.5°、11.4°、15.0°、16.8°、18.2°、18.5°及び21.2°の2θで様々な強さのいくつかの特徴的ピークを含む。示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、160〜166℃の開始温度を有する単一融解吸熱によって特徴付けられる。
【0015】
本明細書によって使用される場合、「多形」という用語は、固体構造をとるとき、異なる形態として存在する化合物(例えばCCI−779)を指す。望ましくは、CCI−779多形は、化合物の固体形態、例えば中でも特に、結晶、微結晶、泡状物質及び粉末を含む。好ましくは、本発明のCCI−779多形は結晶質である。多形は、典型的には、多形の格子内の分子の配列(order)のためにそれらの物理的性質が異なる。加えて、多形の物理的性質は、多形の格子内に組み込まれた溶媒和物又は他の分子の存在のために異なり得る。典型的には、多形は、融点、溶解速度、赤外(IR)分光法及びラマン分光法、並びにX線回折、例えば結晶及び粉末手法のような手法を用いて容易に識別される。
【0016】
本明細書において使用される場合、「非晶質(無定形)」という用語は、決まった結晶構造又は形態を持たない化合物を指す。本出願において、非晶質という用語は、固体として又は溶液中で非晶質形態で存在し得る非晶質CCI−779を指す。
【0017】
「沈殿」又は「沈殿する(させる)こと」という用語によって、それによって溶解した化合物を含有する溶液から固体形態の化合物が析出する工程を表わすことが意味されている。本明細書において使用される場合、沈殿によって、好ましくはt−ブチルメチルエーテル中の、CCI−779の溶液からCCI−779多形II型を沈殿させることを表わすことが意味されている。
【0018】
従って本発明は、CCI−779多形II型を調製するための方法を提供し、その方法は、
(a)CCI−779を開始溶媒(例えばアセトン)に溶解する工程;
(b)工程(a)の前記開始溶媒を除去して、固体泡状物質を形成する工程;
(c)固体泡状物質をt−ブチルメチルエーテル(t−BME)と混合する工程;及び
(d)前記CCI−779多形II型を収集する工程
を含む。
【0019】
工程c)において、固体懸濁液を形成するのに十分な量でt−BMEを添加し得る。懸濁液をt−BMEで洗浄し、真空下で乾燥させて乾燥結晶II型固体を得ることができる。
【0020】
工程c)から生じるt−BMEと固体泡状物質の混合物を、固体懸濁液を形成するためにn−ヘプタンと混合し得る。さらなる工程では、固体を収集し、n−ヘプタンで洗浄して、真空下で乾燥させて、乾燥結晶II型固体を得る。
【0021】
「室温」という用語によって、約23〜約25℃の温度を表わすことが意味されている。しかし当業者は、具体的な室温は、CCI−779多形II型の形成の間に使用される条件及び環境条件に依存して異なり得ることを容易に理解する。
【0022】
(II.CCI−779多形II型の特性決定)
CCI−779多形II型の特性決定及びCCI−779からそれを識別することは、当業者に公知の手法を用いて達成される。具体的には、CCI−779多形II型が沈殿の後に存在することの確認は、融点、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、質量分析(MS)、燃焼分析、ラマン分光法、元素分析、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むクロマトグラフィーを含む手法を用いて実施することができる。示差走査熱量測定(DSC)及びX線回折(XRD)を含む他の技法も、多形を識別する上で、具体的にはCCI−779多形II型からCCI−779多形I型を識別する上で有用である。
【0023】
(A)分光を用いた同定
HPLCは、上述したようにして得た生成物がCCI−779多形II型であることを確認するために利用できる。好ましくは、CCI−779 II型多形は、French et al., Clinical Chemistry, 47(7): 1316 (2001)およびHolt et al, Clinical Chemistry, 46(8): 1179 (2000)(これらは、これによって参考として援用される)に記載されている手法を用いて、HPLC−紫外(UV)分光法又はHPLC−質量スペクトル分析(MS)分光法を使用して分析される。
【0024】
望ましくは、CCI−779多形II型のHPLCクロマトグラフは、上記French及びHoltに記載されている条件を用いたCCI−779のHPLCクロマトグラフと同じである。CCI−779多形II型のHPLCクロマトグラフは、当業者によって容易に特定され得る不純物に対応する付加的なピークを含み得る。しかし当業者は、不純物の存在がCCI−779多形II型の同定及び特性決定を妨げないことを容易に理解する。
【0025】
HPLCクロマトグラフを得るために有用な様々なHPLC条件は、当業者が容易に決定することができ、本発明に対する限定と解釈されるべきではない。これらのHPLC条件は、中でも特に、カラム温度、流速、検出波長、カラムの種類、カラムの大きさ、移動相のバリエーションを含む。他の実施形態では、HPLC−MS条件としては、上述したHoltに述べられている条件が挙げられる。例えば条件としては、5ミクロン(μ)ODS粒子を含む15cm×4.6mmのSupelcosilTMLC−18−DBカラム、約50℃の温度、及び約1.0mL/分の流速が挙げられる。CCI−779多形II型のHPLC−UVクロマトグラフを得るために様々な移動相が利用できる。1つの実施形態では、移動相は、必要により酢酸アンモニウム溶液又は他の溶媒、例えば特にアセトニトリル及び/又はジオキサンを添加した、メタノール:水(例えば80:20の容積比)溶液である。
【0026】
上述したようなHPLC−MS条件を使用することにより、CCI−779多形II型についてのHPLCクロマトグラフはCCI−779多形I型のものと同じ保持時間を有する。CCI−779多形II型のHPLC−MSクロマトグラフを、次に、同じHPLC−MS条件を用いてCCI−779のHPLC−MSと比較することができる。本発明において、CCI−779多形II型についての保持時間はCCI−779 I型についての保持時間と同じでなければならない。
【0027】
典型的には、CCI−779多形II型が存在することを実証するためのさらなる確認としてXRD及びDSCの手法が使用される。
【0028】
(B)X線回折を用いた同定
XRD手法は、CCI−779多形II型をCCI−779から識別するために利用される。当業者は、CCI−779多形II型のXRDパターンを得るために必要な条件を容易に決定することができる。様々なXRD機器が使用可能であり、中でも特に、回折マネージメントソフトウエアNTプログラムを用いたScintagTMX-2 Advanced Diffraction System機器が挙げられる。
【0029】
このように、本明細書において記載されるCCI−779多形II型の粉末XRDパターンは、当業者に公知のX線結晶学手法を用いて得られた。1つの実施形態では、CCI−779多形II型のXRDパターンは、CCI−779 I型について得られたXRDピークとは異なる多数のピークを含む。もう1つの実施形態では、CCI−779多形II型のXRDパターンは、1つの大きなピークといくつかのより小さなピークとを含む。さらなる実施形態では、CCI−779多形II型のXRDパターンは、約6.6°、9.8°、14.0°、14.1°、14.5°及び18.8°の2θで代表的なピークを含む。
【0030】
他のピークもCCI−779多形II型のXRDパターンに存在することがあり、これは試料中の不純物に対応する。その他のピークは、典型的には少量のCCI−779及び/又はCCI−779多形II型のマトリックスに組み込まれていない遊離t−ブチルメチルエーテルに対応する。
【0031】
CCI−779多形II型を特性決定することに加えて、XRDは、CCI−779多形II型の形成をモニタリングするために使用できる。典型的には、試料は、溶解溶媒中で溶解の間及びCCI−779多形II型の沈殿の間の様々な段階で、例えば使用する溶媒系のスラリーとして、溶媒湿潤ケークとして、恒量及びそれらから得られるXRDパターンによって測定される、部分乾燥(空気又は窒素ガス下で)固体として及び乾燥固体として得られる。
【0032】
(C)示差走査熱量測定を用いた同定
示差走査熱量測定(DSC)手法も、CCI−779からCCI−779多形II型を識別するために利用できる。当業者は、CCI−779多形II型のDSCサーモグラムを得るために必要な条件を容易に決定することができる。様々な示差走査熱量計が当業者に使用可能であり、数多くの機器及び条件の中でも特に、約25℃〜約220℃の温度及び5℃/分、10℃/分及び30℃/分を含む様々な速度での昇温を使用する、PyrisTM1 DSC装置が挙げられる。
【0033】
本発明に従って調製したCCI−779多形II型のDSCサーモグラムは、I型多形についてのDSCサーモグラムには存在しない、約105℃の開始温度を有する吸熱を含む。図2を参照のこと。CCI−779多形II型のDSCサーモグラムはまた、分解吸熱を含み得る。
【0034】
(D)熱重量分析(TGA)を用いた同定
TGAも、CCI−779多形II型の試料中の、t−BME分子のような溶媒和分子の存在を測定するために利用できる。本発明において、II型多形についてのTGAデータは、25℃〜150℃で加熱した際に1重量%未満の緩やかな重量減量を示す。当業者は、TGAにおいて使用される機器及び条件を容易に決定することができる。
【0035】
(III.CCI−779多形II型を含有する組成物)
CCI−779多形II型を含有する組成物も本発明に従って調製することができる。そのような組成物は、CCI−779多形II型と薬学的に受容可能な担体を組み合わせることによって調製される。
【0036】
1つの実施形態では、本発明は、1又はそれ以上の他の結晶、多形、溶媒和物、非晶質、又は他の形態のCCI−779と共にCCI−779多形II型の組成物又は混合物を提供する。例えばそのような組成物は、1又はそれ以上の他の形態のCCI−779、例えばCCI−779及び/又はCCI−779多形I型と共にCCI−779多形II型を含有し得る。例えば組成物は、組成物の総量に基づき1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%又は50重量%未満のCCI−779多形II型又はCCI−779多形I型を含有し得る。
【0037】
投与の前に、及びさらなる実施形態では、CCI−779多形II型は、1又はそれ以上の薬学的に受容可能な担体と組み合わせてCCI−779多形II型の有効投与量を含有する医薬組成物として製剤化され得る。
【0038】
さらにもう1つの実施形態では、医薬組成物は、少なくともあるパーセンテージのCCI−779多形II型(組成物中に存在するCCI−779の総量に基づく、すなわちCCI−779の総量を100%とする)を含むCCI−779組成物の有効量を含有する。言い換えると、医薬組成物内に存在するCCI−779の少なくともあるパーセンテージはCCI−779多形II型として存在し、CCI−779の残りの部分は、CCI−779、CCI−779多形I型、又は何らかの他の結晶、多形、溶媒和物又は非晶質形態を含む(がこれらに限定されない)、異なる形態である。本明細書において記載されるCCI−779多形II型を含有する組成物は、CCI−779多形II型の薬学的有効量を使用して所望の送達経路に適した何らかの形態で製剤され得る。例えば本発明の組成物は、経口、皮膚、経皮、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、膣、直腸、舌下、頭蓋内、硬膜外、気管内のような経路によって、又は持続放出によって送達することができる。好ましくは、送達は経口的である。
【0039】
本発明の経口投与錠剤組成物はまた、CCI−779多形II型の誘導体、例えば、限定を伴わずに、エステル、カルバミン酸塩、硫酸塩、エーテル、オキシム、炭酸塩、当業者に公知の同様のものを含有する経口投与錠剤を製造するために使用できる。
【0040】
CCI−779多形II型の薬学的有効量は、特定化合物、送達様式、処置する状態の重症度、及び組成物中で使用される何らかの他の有効成分に依存して異なり得る。投与レジメンも、最適治療応答を与えるように調整することができる。いくつかの分割用量を1日に送達する、例えば分割用量を1日2〜4回送達することができ、あるいは単回用量を送達することができる。用量は、しかしながら、治療状況の緊急性によって指示される場合には比例的に減少又は増加することができる。1つの実施形態では、送達は、毎日、毎週又は毎月ベースである。もう1つの実施形態では、送達は毎日の送達である。しかし、定期的送達に基づき1日用量を低下してもよいし上昇させてもよい。
【0041】
CCI−779多形II型は、1又はそれ以上の薬学的に受容可能な担体又は賦形剤、例えば、限定を伴わずに、本発明の組成物と適合性の固体担体及び液体担体と組み合わせることができる。そのような担体としては、中でも特に、アジュバント、シロップ、エリキシル、希釈剤、結合剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、潤滑剤、界面活性剤、造粒剤、崩壊剤、皮膚軟化薬、金属キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、懸濁化剤及び安定化剤、並びにそれらの組合せが挙げられる。1つの実施形態では、CCI−779多形II型は、金属キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤及び結合剤と組み合わされる。
【0042】
アジュバントとしては、限定を伴わずに、着香料、着色料、防腐剤、及びビタミンE、クエン酸、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、d,l−α−トコフェロール、モノチオグリセロール及び没食子酸プロピルを含み得る、補助抗酸化剤を含み得る。本発明において使用される経口製剤中で利用される抗酸化剤の典型的濃度は、0.0005〜0.5%w/vの範囲の濃度で使用され得る。
【0043】
潤滑剤は、中でも特に、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、滑石、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、及びフマル酸ステアリルナトリウムを含み得る。1つの実施形態では、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はフマル酸ステアリルナトリウムである。もう1つの実施形態では、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0044】
造粒剤は、限定を伴わずに、中でも特に二酸化ケイ素、微結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、ペクチン、及びクロスポビドン、ポリプラスドンを含み得る。
【0045】
結合剤、充填剤及び崩壊剤としては、デンプン、マンニトール、リン酸カルシウム、スクロースのような糖、カオリン、ラクトース及びデキストロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、アカシアゴム及びアラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶セルロース、微結晶セルロース、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、デキストレート、デキストリン、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、置換重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、プレゼラチン化デンプン(pregelatinized starch)、クロスポビドン、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、(ポビドン、PVP)、コレステロール、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)を挙げることができ、同様のものを経口製剤に組み入れることもできる。
【0046】
皮膚軟化薬としては、限定を伴わずに、ステアリルアルコール、ミンク油、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、オリーブ油、石油ゼリー、パルミチン酸、オレイン酸及びミリスチルミリステートを挙げることができる。
【0047】
界面活性剤としては、非イオン性物質及び陰イオン性物質、例えばポリソルベート20及び80のようなポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマー188のようなポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル乳化ワックス(cetomacrogol emulsifying wax)、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、又はレシチンと組み合わせ得る胆汁酸の塩(タウロコレート(taurocholate)、グリココレート、コレート、デオキシコレート等)を挙げることができる。界面活性剤としてはまた、エトキシル化植物油、例えばクレモフォールEL又はペグ化ヒマシ油(例えばCremophor EL、BASFの製品名で、固体であるPEG−35ヒマシ油など)、ビタミンEトコフェロールプロピレングリコールスクシネート(ビタミンE TGPS)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、及びポロキサマーを挙げることができる。界面活性剤は、組成物の0.5〜100%w/v、0.5〜10%w/v、5〜80%w/v、10〜75%w/v、15〜60%w/v、及び好ましくは組成物の少なくとも5%w/v又は少なくとも10%w/vを構成し得ると予想される。
【0048】
金属キレート化剤は、CCI−779多形II型の安定性を高めることができる、生理的に受容可能なキレート化剤、例えばエデト酸、リンゴ酸、フマル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はグリシンのようなアミノ酸を含み得る。1つの実施形態では、金属キレート化剤は、エデト酸である。
【0049】
pH調節剤はまた、CCI−779を含有する溶液のpHを約4〜約6に調整するために使用できる。1つの実施形態では、CCI−779を含有する溶液のpHは、約4.6のpHに調整される。pH調整剤は、生理的に受容可能な物質、例えばクエン酸、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸又は希塩酸、及びそれらの塩を含み得る。1つの実施形態では、pH調整剤はクエン酸である。
【0050】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)及びシクロデキストリン又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーは、2.5〜60キロダルトンの間の分子量を有するPVPであることが好ましい。本発明において有用な任意の所与の経口製剤は、各々のクラスの構成成分からなる複数の成分を含有し得る。例えば抗酸化剤を含有する経口製剤は、1又はそれ以上の抗酸化剤を抗酸化剤成分として含み得る。
【0051】
懸濁化剤又は安定化剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合シリケート、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、滑石、乾燥デンプン及び粉糖を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0052】
希釈剤としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレン400、ポリエチレン600、ポリエチレン1000、又はこれらのポリエチレングリコールの1又はそれ以上を含む混合物、プロピレングリコール及び他の薬学的に受容可能な共溶媒又は溶液浸透圧を調節する物質、例えば塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトール又は他の非経口的に受容可能な糖、ポリオール及び電解質が挙げられる。
【0053】
1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する組成物は、錠剤、カプレット又はカプセル、マイクロカプセル、分散性粉末、顆粒、懸濁液、シロップ、エリキシル及びエーロゾルによって経口的に送達される。望ましくは、CCI−779多形II型を含有する組成物が経口的に送達されるとき、送達は、錠剤及び硬カプセル又は液体充填カプセルによる。
【0054】
非アルコール性溶媒は、中でも特に、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル又はそれらの混合物を含み得る。
【0055】
アルコール性溶媒は、製剤のアルコール性溶媒成分としての1又はそれ以上のアルコールを含み得る。
【0056】
CCI−779多形II型のための特に適切な経口製剤としては、CCI−779に関して使用される経口製剤があげられ、米国特許公開第US−20040077677号及び国際公開公報第WO2004/026280号(これらは、これによって参考として援用される)に記載されている。そのような経口製剤は、湿式造粒工程を用いて調製される顆粒を含む。顆粒は、CCI−779多形II型、水溶性ポリマー、pH調節剤、界面活性剤及び抗酸化剤を含有し得る。1つの実施形態では、製剤は、0.1〜30%、0.5〜25%、1〜20%、5〜15%、又は7〜12%(wt/wt)のCCI−779多形II型;0.5〜50%、1〜40%、5〜35%、10〜25%、又は15〜20%(w/w)の水溶性ポリマー;0.5〜10%、1〜8%、又は3〜5%(wt/wt)の界面活性剤;及び0.001〜1%、0.01〜1%、又は0.1〜0.5%(wt/wt)の抗酸化剤を含有する。しかし、他の実施形態は、より多い又はより少ないこれらの成分を含有し得る。
【0057】
もう1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する組成物は、無菌注射用溶液、懸濁液、分散、及び容易に注射できる程度に流動性である粉末の形態で、静脈内、筋肉内、皮下、非経口的及び腹腔内経路で送達され得る。そのような注射用組成物は、無菌で、製造及び保存の条件下で安定であり、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用を含まない。通常の保存及び使用の条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を予防するための防腐剤を含有する。
【0058】
本発明において有用な非経口製剤は、単一溶液として調製され得るか、又は好ましくは、CCI−779多形II型、アルコール性溶媒及び抗酸化剤を含有する共溶媒濃縮物として調製することができ、その後希釈溶媒及び適切な界面活性剤を含有する希釈剤と組み合わされる。
【0059】
単一溶液又は分散として調製されるとき、CCI−779多形II型は希釈剤と組み合わされる。1つの実施形態では、CCI−779多形II型は水と組み合わされ、必要によりヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と混合される。分散は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの油中混合物において調製することができる。
【0060】
CCI−779多形II型のための特に適切な注射用製剤としては、国際公開公報第WO2004/011000号及び米国特許公開第US2004−0167152−Al号(これらは、これによって参考として援用される)においてCCI−779のために使用される注射用製剤が挙げられる。本発明において有用な任意の所与の製剤は、各々のクラスの構成成分からなる複数の成分を含有し得る。1つの実施形態では、非経口的に受容可能な溶媒は、非アルコール性溶媒、アルコール性溶媒又はそれらの混合物を含み得る。本発明の製剤において有用な溶媒の例としては、限定を伴わずに、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化及びラクトン開裂による分解がこれらの共溶媒についてはより低い程度で起こるので、これらの溶媒が特に望ましい。さらに、より可燃性の低い生成物を生産するためにエタノールとプロピレングリコールを組み合わせることができるが、混合物中のエタノールの量がより多いことが一般により良好な化学的安定性を生じさせる。混合物中のエタノールの30〜100%v/vの濃度が好ましい。
【0061】
非経口的に受容可能なアルコール性共溶媒におけるCCI−779多形II型の安定性は、製剤への抗酸化剤の添加によって高めることができる。一般に、本発明のこの実施形態において有用な非経口製剤は、共溶媒濃縮物の0.001〜1%w/v、又は0.01〜0.5%w/vの範囲の濃度で抗酸化剤成分を含有するが、より低い濃度又はより高い濃度が望ましいこともあり得る。抗酸化剤のうちで、d,l−α−トコフェロールは特に望ましく、共溶媒濃縮物の0.01〜0.1%w/vの濃度で使用され、好ましい濃度は0.075%w/vである。
【0062】
好都合には、本発明において有用な非経口製剤のある実施形態では、水性注入液又は血液で希釈されたときのCCI−779多形II型の沈殿は、希釈剤溶液中に含有される界面活性剤の使用を通して予防される。1つの特に望ましい界面活性剤は、以下で述べるように、ポリソルベート20又はポリソルベート80である。しかし、当業者は他の適切な界面活性剤を容易に選択し得る。
【0063】
使用前に、共溶媒濃縮物を、希釈溶媒を含む希釈剤及び界面活性剤と混合する。CCI−779多形II型を本発明に従った共溶媒濃縮物として調製するとき、濃縮物は、0.05mg/mLから、2.5mg/mLから、5mg/mLから、10mg/mLから又は25mg/mLから約50mg/mLまでのCCI−779多形II型の濃度を含み得る。濃縮物は、1mg/mLから、5mg/mLから、10mg/mLから、20mg/mLから約25mg/mLまでのCCI−779多形II型の濃度を有する所与の非経口製剤を与えるために、およそ濃縮物1:希釈剤1の割合までの希釈剤と混合することができる。例えば非経口製剤中のCCI−779多形II型の濃度は、約2.5〜10mg/mLであり得る。本発明はまた、共溶媒濃縮物中のCCI−779多形II型の濃度がより低い製剤、及び1の割合の濃縮物が1より大きい割合の希釈剤と混合されている、例えば濃縮物:希釈剤を約1:1.5、1:2、1:3、1:4、1:5又は1:9v/v等の比率で混合して、最低検出レベルまでの低さのCCI−779多形II型濃度を有するCCI−779多形II型非経口製剤の使用を包含する。
【0064】
本開示の目的に対して、経皮投与は、上皮及び粘膜組織を含む体表面及び身体通路の内層を横切る全ての投与を含むことが理解される。そのような投与は、ローション、クリーム、泡状物質、パッチ、懸濁液、溶液及び坐薬(直腸及び膣)中でCCI−779多形II型又は薬学的に受容可能なその塩を使用して実施され得る。
【0065】
経皮投与は、CCI−779多形II型と、CCI−779多形II型に対して不活性であり、皮膚に非毒性であって、皮膚を通した血流中への全身吸収のための薬剤の送達を可能にする担体とを含有する経皮パッチの使用を通して達成され得る。担体は、いかなる形態をとってもよく、例えばクリーム及び軟膏、ペースト、ゲル及び閉塞デバイス(occlusive device)であり得る。クリーム及び軟膏は、水中油型又は油中水型のいずれかの粘性液体又は半固体乳剤であり得る。CCI−779多形II型を含有する石油又は親水性石油中に分散した吸収性粉末から成るペーストも適切であり得る。様々な閉塞デバイス、例えば担体と共に又は担体なしでCCI−779多形II型を含有するレザバーを覆う半透膜、又はCCI−779多形II型を含有するマトリックスは、CCI−779多形II型を血流中に放出するために使用し得る。他の閉塞デバイスが文献において公知である。
【0066】
さらなる実施形態では、CCI−779多形II型を含有する組成物は、従来の坐薬の形態で直腸経路によって送達することができる。坐薬製剤は、従来の材料から、例えば坐薬の融点を変化させるためのろうを添加した又は添加していないココアバター、及びグリセリンから製造することができる。水溶性坐薬基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールも使用できる。
【0067】
もう1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する組成物は、従来の坐薬、クリーム、ゲル、リング又はコーティングされた子宮内器具(IUD)の形態で膣経路によって送達することができる。
【0068】
さらにもう1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する組成物は、エーロゾルの形態で鼻内又は気管支内経路で送達することができる。
【0069】
また、CCI−779多形II型を含有する本発明の組成物は、抗拒絶反応化学療法剤を含む1又はそれ以上の他の薬剤と同時投与できることも企図される。
【0070】
CCI−779多形II型の投与必要量は、呈する症状の重症度、処置される特定被験者及び投与経路に依存して異なり得る。当業者は、必要なCCI−779多形II型の量を容易に決定することができる。1つの実施形態では、約2〜約100mg/日のCCI−779多形II型を投与する。他の実施形態では、5mg/日〜75mg/日、10mg/日〜50mg/日、15mg/日〜35mg/日、又は約20mg/日〜25mg/日のCCI−779多形II型を投与する。
【0071】
処置は、所望効果を生じさせるために必要な投与量よりも低く、一般にCCI−779多形II型の最適用量より低い、CCI−779多形II型の投与量で開始することができる。その後、状況下で最適効果が達成されるまで投与量を増加することができる。厳密な投与量は、処置される個々の被験者に関する経験に基づき、投与する医師によって決定される。一般に、本発明の組成物は、最も望ましくは、いかなる有害又は有毒な副作用を生じさせることなく有効な結果を与える濃度で通常投与される。
【0072】
(IV.CCI−779多形II型を含有する投与可能な組成物を調製する方法)
1つの態様では、本発明は、CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を調製する方法を含む。組成物は、上述したようないくつかの異なる経路によって哺乳動物被験体に投与することができ、望ましくは固体形態又は液体形態で経口的に投与される。
【0073】
CCI−779多形II型を含有する経口製剤は、何らかの慣例的に使用される経口形態、例えば錠剤、カプセル、口腔形態、トローチ、ロゼンジ及び経口液体、懸濁液又は溶液を含み得る。CCI−779多形II型を含有するそのような経口製剤は、上述した成分の1又はそれ以上とCCI−779多形II型を混合することによって形成できる。1つの実施形態では、組成物の成分を乾式又は湿式で混合する。もう1つの実施形態では、成分を乾式造粒する。さらなる実施形態では、成分を液体中に懸濁又は溶解し、哺乳動物被験体への投与に適した形態に添加する。経口製剤はまた、CCI−779多形II型の吸収を変化させるための標準的な遅延放出剤又は持続放出製剤を含み得る。経口製剤はまた、必要に応じて適切な可溶化剤又は乳化剤を含有する、水又は果汁中でCCI−779多形II型を投与することから成り得る。
【0074】
カプセルは、CCI−779多形II型と充填剤及び/又は希釈剤、例えば上述した薬学的に受容可能なデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖、人工甘味料、粉末セルロース、例えば結晶セルロース及び微結晶セルロース、小麦粉、ゼラチン、ゴム等との混合物を含有し得る。
【0075】
有用な錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒又は乾式造粒法によって製造でき、薬学的に受容可能な希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)を使用し得る。水とアルコールを含むハイドロアルコール溶媒系(hydroalcoholic solvent system)で湿式造粒を実施することが好ましく、エタノールが好ましいアルコール成分である。
【0076】
CCI−779多形II型を含有する液体形態は、哺乳動物被験体への投与に適した液体中にCCI−779多形II型を溶解又は懸濁することによって形成され得る。
【0077】
1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を調製する方法は、CCI−779多形II型、金属キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、結合剤、崩壊剤及び潤滑剤を組み合わせることを含む。
【0078】
もう1つの実施形態では、CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を調製する方法は、CCI−779多形II型、金属キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、少なくとも1つの充填剤、結合剤、崩壊剤及び潤滑剤を組み合わせることを含む。
【0079】
本発明はまた、本発明における使用のために設計された医薬組成物のキット又は包装を提供する。本発明のキットは、CCI−779多形II型及び上述したような哺乳動物被験体への投与に適する担体を含み得る。本発明は、それ故、哺乳動物を処置するときに使用するためのCCI−779多形II型を含有する製品を含む。本発明はまた、個々の哺乳動物のための新生物の一連の処置物質(treatment)を含む医薬パックを包含し、前記パックは、単位投与形態のCCI−779多形II型を含有する。
【0080】
このように、本発明のCCI−779多形II型は医薬組成物として製剤することができ、必要により、哺乳動物の処置における使用のためにキットの形態に構築され得る。
【0081】
(V.CCI−779多形II型を使用する方法)
CCI−779多形II型は、CCI−779が処置又は予防することが公知である、当業者に公知の様々な条件の処置又は予防において使用できる。CCI−779多形II型は、それ故、免疫抑制、抗拒絶反応、抗真菌、抗炎症、抗腫瘍及び抗増殖の活性を有し得る。
【0082】
具体的には、CCI−779多形II型単独又は上述したように調製した組成物又はキット中のCCI−779多形II型は、抗腫瘍薬として、特に肉腫及び癌腫を含む固形腫瘍の処置において、より特定すると神経膠星状細胞腫、前立腺癌、乳癌、結腸癌、小細胞肺癌及び卵巣癌;並びに成人T細胞白血病/リンパ腫に対して、使用することができる。CCI−779多形II型を含む組成物及びキットはまた、移植片拒絶反応、例えば腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、膵臓(膵島細胞)、角膜、小腸及び皮膚の同種異系移植片、及び心臓弁異種移植片に対する拒絶反応の処置又は抑制において;対宿主性移植片病の処置又は抑制において;自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデスを含む狼瘡、慢性関節リウマチ、糖尿病、重症筋無力症及び多発性硬化症の処置又は抑制において;及び炎症性疾患、例えば乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏、炎症性腸疾患を含む腸疾患、肺炎症(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、急性呼吸促迫症候群、気管支炎等を含む)、心臓炎症性疾患、及びブドウ膜炎のような眼炎症;貧血;成人T細胞白血病/リンパ腫;真菌感染;悪性癌;再狭窄のような過増殖性血管病;移植血管アテローム性動脈硬化症(graft vascular atheroscleosis);及び心臓血管疾患、大脳血管疾患、及び末梢血管疾患、例えば冠状動脈疾患、脳血管疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、非アテローム性動脈硬化症(nonatheromatous arteriosclerosis)、免疫媒介性血管損傷を導く細胞事象からの血管壁損傷、平滑筋細胞増殖及び血管損傷後の内膜肥厚の処置又は抑制において;及び卒中又は多発梗塞性痴呆(multiinfarct dementia)を抑制することにおいても有用である。
【0083】
適切な投与レジメンは、本明細書において提供される情報に基づいて容易に決定することができる。
【0084】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供するものであり、その範囲を限定しない。当業者は、特定の試薬及び条件が以下の実施例において概説されるが、修正が可能であり、それらは本発明の精神及び範囲に包含されることが意図されていることを認識する。
【実施例1】
【0085】
結晶II型の調製
【0086】
A.方法1
CCI−779(I型)0.032gを5mLガラスバイアルに添加した。アセトン(2ml)を添加し、混合物を22℃で攪拌して透明な溶液を得た。この溶液を0.45μmシリンジフィルターでろ過し、次に22〜30℃及び100mmHg真空で蒸留して、固体泡状物質を得た。t−ブチルメチルエーテル(t−BME、1mL)をその泡状物質に添加して、固体懸濁液を得た。懸濁液を22℃で15時間攪拌し、その後ろ過した。生じた固体をt−BME(1mL)で洗い、真空下に22℃で乾燥して、乾燥結晶II型固体(0.025g)を得た。
【0087】
B.方法2
CCI−779(I型)0.75gを、間接攪拌(overhead stirring)しながら50mLガラス反応器に添加した。アセトン(20ml)を添加し、混合物を22℃で攪拌して透明な溶液を得た。溶液を0.45μmシリンジフィルターでろ過し、次に22〜30℃及び100mmHg真空で蒸留して、固体泡状物質を得た。t−ブチルメチルエーテル(t−BME、30mL)をその泡状物質に添加して、混濁溶液を得た。n−ヘプタン(20ml)を40mL/時の速度でt−BME溶液に添加した。n−ヘプタンの添加を続けると固体沈殿物が認められた。生じた懸濁液(固体沈殿物が溶媒中に懸濁している)を22℃で15時間攪拌し、その後ろ過した。湿潤固体をn−ヘプタン(5mL)で洗い、真空下に22℃で乾燥して、乾燥結晶II型固体(0.66g)を得た。
【0088】
安定なII型は、上述したように調製し、室温及び常圧下でI型へ変換することなく3ヶ月間以上保存することができる。
【実施例2】
【0089】
CCI−779多形II型の特性決定
【0090】
A.I型及びII型の粉末XRDパターン
粉末X線回折パターンを、基本的に製造者の指示に従って操作したRigaku Miniflex Diffraction System(Rigaku MSC Inc.)で得た。粉末試料をゼロバックグラウンドの研磨したシリコン試料ホルダー上に置いた。3.00から40.00°2θまで0.25°/分のNi Kβフィルター走査を備える0.45kWの標準焦点銅X線管(normal focus copper x-ray tube)をX線源として使用した。データ処理は、Jade6.0ソフトウエアを使用して実施した。
【0091】
結果を図1に示す。
【0092】
B.X線回折パターン
II型についての代表的XRDパターンは、6.6°、9.8°、14.0°、14.1°、14.5°及び18.8°の2θ値で特徴的な線を示す。これらの結果を図2に示す。
【0093】
C.示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータを、製造者の指示に従って操作した、Q1000 DSC(TA機器)を用いて収集した。試料は、10℃/分の勾配(ramp rate)で25〜200℃に加熱した。
【0094】
DSCデータは、I型についてのDSCプロフィールと容易に識別される、105〜115℃の特徴的な開始温度を有する広い融解事象を示す。これらの結果を図3A及び図3Bに示す。
【0095】
D.熱重量分析(TGA)
TGAデータを、製造者の指示に従って操作した、Q500熱重量分析計(TA機器)を用いて収集した。試料は、10℃/分で25〜300℃に加熱した。
【0096】
TGAデータは、25〜150℃に加熱した際の約1重量%の緩やかな重量減量を示す。これらの結果を図4に示す。
【0097】
本明細書の中で引用する全ての刊行物は、本明細書において参考として援用される。本発明を特に好ましい実施形態への参照とともに説明したが、本発明の精神から逸脱することなく修正を行い得ることは認識される。そのような修正は、添付される特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、CCI−779 I型(上部セットのピーク)及びII型(下部の2セットのピーク)の粉末X線回折(XRD)パターンである。粉末XRD回折パターンは、Rigaku Miniflex Diffraction System(Rigaku MSC Inc.)で得た。粉末試料をゼロバックグラウンドの研磨したシリコン試料ホルダー上に置いた。3.00から40.00°2θまで0.25°/分のNi Kβフィルター走査を備える0.45kWの標準焦点銅X線管をX線源として使用した。データ処理は、Jade6.0ソフトウエアを使用して実施した。
【図2】図2は、6.6°、9.8°、14.0°、14.1°、14.5°及び18.8°の2θ値で特徴的な線を示す、CCI−779 II型についての代表的XRDパターンである。
【図3A】図3A及び図3Bは、II型についての代表的示差走査熱量測定(DSC)プロフィールである。図3Aは、t−BMEスラリーから得たII型試料である。図3Bは、t−BME/n−ヘプタンスラリーから得たII型試料である。これらの図は、I型についてのDSCプロフィールと容易に識別される、105〜110℃の特徴的な開始温度を有する広い融解事象を示す。DSCデータはQ1000 DSC(TA機器)を用いて収集した。試料は、窒素流下に10℃/分の勾配で25〜200℃に加熱した。
【図3B】図3A及び図3Bは、II型についての代表的示差走査熱量測定(DSC)プロフィールである。図3Aは、t−BMEスラリーから得たII型試料である。図3Bは、t−BME/n−ヘプタンスラリーから得たII型試料である。これらの図は、I型についてのDSCプロフィールと容易に識別される、105〜110℃の特徴的な開始温度を有する広い融解事象を示す。DSCデータはQ1000 DSC(TA機器)を用いて収集した。試料は、窒素流下に10℃/分の勾配で25〜200℃に加熱した。
【図4】図4は、CCI−779 II型のサーモグラフィ分析(TGA)であり、25〜150℃に加熱した際にで約1重量%の緩やかな重量減量を示す。TGAデータはQ500熱重量分析計(TA機器)を用いて収集した。試料は、窒素流下に10℃/分で25〜300℃に加熱した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7.6、9.5、11.4、15.0、16.8、18.2、18.5及び21.2の2θ値でピークがないX線回折ピークパターンを有するCCI−779多形。
【請求項2】
前記多形が、以下の特徴:
(a)約6.6、9.8、14.0、14.1、14.5及び18.8の2θにピークを含むX線回折ピークパターン;及び
(b)約110℃の開始温度での吸熱を有する示差走査熱量測定サーモグラム
を有するII型である、請求項1に記載のCCI−779多形。
【請求項3】
25℃〜150℃で加熱した際に1重量%未満の重量減少の熱重量分析を有する、請求項1に記載のCCI−779多形II型。
【請求項4】
非晶質CCI−779及びt−ブチルメチルエーテルを含有する懸濁液からCCI−779多形II型を沈殿させることによって入手可能なCCI−779多形II型。
【請求項5】
CCI−779多形II型を調製するための方法であって、
(a)CCI−779を開始溶媒に溶解する工程;
(b)工程(a)の前記開始溶媒を除去して、固体泡状物質を形成する工程;
(c)固体泡状物質をt−ブチルメチルエーテル(t−BME)と混合する工程;及び
(d)前記CCI−779多形II型を収集する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記開始溶媒がアセトンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
t−BMEを、固体懸濁液を形成するのに十分な量で添加する、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
t−BMEで懸濁液を洗浄する工程及び乾燥結晶II型固体を得るために真空下で乾燥する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体懸濁液を形成するためにt−BMEと固体泡状物質の混合物にn−ヘプタンを混合する工程をさらに含む、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項10】
固体を収集する工程、前記固体をn−ヘプタンで洗浄する工程、及び乾燥結晶II型固体を得るために真空下で乾燥する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CCI−779多形II型及び薬学的に受容可能な担体を含有する、医薬組成物。
【請求項12】
CCI−779多形II型及び哺乳動物被験体への投与に適する担体を含む、キット。
【請求項13】
CCI−779多形II型を含有する医薬組成物を調製する方法であって、
(i)CCI−779多形II型;
(ii)金属キレート化剤;
(iii)pH調整剤;
(iv)界面活性剤;
(v)少なくとも1つの充填剤;
(vi)結合剤;
(vii)崩壊剤;及び
(viii)潤滑剤
の1又はそれ以上を組み合わせることを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−530090(P2008−530090A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555124(P2007−555124)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/003098
【国際公開番号】WO2006/086172
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】