説明

CCR3阻害活性を有するピペラジン誘導体

遊離形または塩形態の、式I
【化1】


[式中、Ar、R、R、R、XおよびTは、本明細書中に記載の意味を有する。]
で示される化合物は、CCR−3が介在する状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患のような炎症性またはアレルギー性状態を処置するために有用である。この化合物を含む医薬組成物およびこの化合物を製造するための方法もまた、記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、それらの製造および医薬としての使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
1つの局面において、本発明は、遊離形または塩形態の、式I
【化1】

[式中、
Arは、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−アルキルチオまたはC−C−シクロアルキルにより置換されていてよいフェニルであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;
は、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはメチルであり;
Xは、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tは、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルカルボニル、C−C−ハロアルキルカルボニルまたはC−C−アルコキシカルボニルにより置換されていてよい。
ただし、RおよびRが、両方とも水素であるとき、Rが、ヒドロキシ以外である。]
で示される化合物を提供する。
【0003】
本明細書で用いる用語は、下記の意味を有する:
【0004】
“所望により置換されていてよい”は、その基が、その前に列記されたラジカルのいずれか1個またはいずれかの組み合わせにより1箇所以上で置換されていてよいことを意味する。
【0005】
本明細書で用いる“ハロ”または“ハロゲン”は、元素の周期表の17族(以前は、VII族)に属する元素を示し、それらは、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。好ましくは、ハロは、フッ素、塩素または臭素である。
【0006】
本明細書で用いる“C−C−アルキル”は、1から8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルを示す。好ましくは、C−C−アルキルは、C−C−アルキルである。
【0007】
本明細書で用いる“C−C−アルコキシ”は、1から8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルを示す。好ましくは、C−C−アルコキシは、C−C−アルコキシである。
【0008】
本明細書で用いる“C−C−ハロアルキル”は、1個以上のハロゲン原子、好ましくは1個、2個または3個のハロゲン原子、好ましくはフッ素または塩素原子により置換された、上記のC−C−アルキルを示す。好ましくは、C−C−ハロアルキルは、1個、2個または3個のフッ素または塩素原子により置換されたC−C−アルキルである。
【0009】
本明細書で用いる“C−C−アルキルチオ”は、1から8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルチオを示す。好ましくは、C−C−アルキルチオは、C−C−アルキルチオである。
【0010】
“C−C−シクロアルキル”は、3から8個の環炭素原子を有するシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルのような単環式基(その内のいずれも、1個以上、通常1個または2個のC−C−アルキル基により置換され得る。)を示すか、またはビシクロヘプチルもしくはビシクロオクチルのような二環式基を示す。好ましくは、“C−C−シクロアルキル”は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルである。
【0011】
本明細書で用いる“C−C−アルケニル”は、2個から8個の炭素原子および1個以上の炭素−炭素二重結合を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を示す。好ましくは、“C−C−アルケニル”は、“C−C−アルケニル”である。
【0012】
本明細書で用いる“窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む、5員または6員のヘテロ環式環”は、飽和または不飽和であり得、例えばピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チオフェン、イソチアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、オキサジン、チアゾール、モルホリノ、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インダンまたはインデンを含む。好ましいヘテロ環式環は、イソオキサゾール、チオフェンおよびキノリンを含む。
【0013】
本明細書で用いる“C−C−アルキルカルボニル”、“C−C−ハロアルキルカルボニル”および“C−C−アルコキシカルボニル”は、炭素原子によりカルボニル基に結合した、上記のC−C−アルキル、C−C−ハロアルキルまたはC−C−アルコキシをそれぞれ示す。
【0014】
本明細書中および特許請求の範囲において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語“包含(comprise)”、または“含む(comprises)”もしくは“含んでいる(comprising)”のような変形は、指定された個体(integer)もしくは段階(step)または複数の個体もしくは複数の段階の群を含むことを意味するが、全ての他の個体もしくは段階または複数の個体もしくは複数の段階の群を除外するものではないことは理解されるであろう。
【0015】
遊離形または塩形態の、好ましい式Iの化合物には、
Arが、所望によりハロにより置換されていてよいフェニルであり;
、RおよびRが、それぞれ水素であり;
Xが、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tが、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりシアノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−アルキルカルボニルにより置換されていてよい、
で示されるものが含まれる。
【0016】
遊離形または塩形態の、さらに好ましい式Iの化合物には、
Arが、所望により、とりわけ示したメチレン基に、炭素原子に対してパラ位に結合するハロにより置換されていてよいフェニルであり;
、RおよびRが、それぞれ水素であり;
Xが、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tが、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環、好ましくは不飽和ヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりシアノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−アルキルカルボニルにより置換されていてよい、
で示されるものが含まれる。
【0017】
式Iで示される化合物の多くは、酸付加塩、特に薬学的に許容される酸付加塩を形成し得る。式Iの化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、無機酸、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸のようなハロゲン化水素酸;および有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸および酪酸のような脂肪族モノカルボン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸のような脂肪族ヒドロキシ酸、マレイン酸またはコハク酸のようなジカルボン酸、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸またはトリフェニル酢酸のような芳香族性カルボン酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸または3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸のような芳香族性ヒドロキシ酸、およびメタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸のようなスルホン酸、の酸付加塩が含まれる。これらの塩は、既知の塩形成方法により式Iの化合物から製造され得る。
【0018】
酸性基、例えばカルボキシル基を含む式Iの化合物は、塩基、特に、当技術分野で公知のような薬学的に許容される塩基と共に塩を形成することもできる;適するそのような塩には、金属塩、特にナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩もしくはカルシウム塩のようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、またはアンモニアまたは薬学的に許容される有機アミンまたはエタノールアミン、ベンジルアミンもしくはピリジンのようなヘテロ環式塩基との塩が含まれる。これらの塩は、既知の塩形成方法により式Iの化合物から製造することができる。
【0019】
化合物中に不斉炭素原子が存在するとき、この化合物は、個々の光学活性異性体またはその混合物、例えばラセミ混合物またはジアステレオマー混合物として存在する。本発明は、個々の光学活性RおよびS異性体の両方、ならびにその混合物、例えばラセミ混合物またはジアステレオマー混合物を包含する。
【0020】
特定のとりわけ好ましい本発明の化合物を、下記の実施例に記載する。
【0021】
本発明はまた、
(i)式II
【化2】

[式中、Ar、R、RおよびRは、上記の通りである。]
で示される化合物を、式III
【化3】

[式中、XおよびTは、上記の通りであり、Qは、クロロまたはフルオロである。]
で示される化合物と反応させる工程;および
(ii)遊離形または塩形態の産物を回収する工程
を含む、式Iの化合物の製造方法を提供する。
【0022】
この方法は、ピペリジンと、フッ化スルホニルまたは塩化スルホニルを反応させる公知の方法、または同様の方法を用いて、例えば、下記の実施例に記載の通りに行うことができる。反応を、有機溶媒、例えばジクロロメタン(DCM)、および塩基、例えばトリエチルアミン(TEA)を用いて都合良く行う。適する反応温度は、10℃から40℃、例えば室温である。
【0023】
式IIの化合物は新規であり、式IV
【化4】

[式中、Ar、R、RおよびRは、上記の通りであり、Wは、式示のメチレン基と化学的に結合した固相基質を示す。]
で示される化合物を、式示のN−と−COOCH−W間の結合を切断する試薬を用いて加水分解し、それにより前記基質の−COOCH−Wを水素に置き換えながら、式IIの化合物を分離させることにより製造することができる。反応を、基質から基質に結合するアミノ化合物を分離させる公知の方法、または同様の方法を用いて、例えば、下記の実施例に記載の通りに行うことができる。反応を、酸性条件下で、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)およびジクロロメタン(DCM)のような有機溶媒を用いて都合良く行う。適する反応温度は、10℃から40℃、例えば室温である。
【0024】
式IIIの化合物は、市販されているか、またはフッ化スルホニルまたは塩化スルホニルを製造するための既知の方法により製造することができる。
【0025】
式IVの化合物は、アミノ化合物とヨウ化アルキルを反応させる公知の方法、または同様の方法を用いて、例えば、下記の実施例に記載の通りに、式V
【化5】

(本明細書中、“Wang−ヨウ化物樹脂”)[式中、RおよびWは、上記の通りである。]
で示される化合物を、式VI
【化6】

[式中、Ar、RおよびRは、上記の通りである。]
で示される化合物と反応させることにより製造することができる。反応を、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA/ヒューニッヒ塩基)のような非求核性酸スカベンジャーの存在下で、ジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒を用いて都合良く行うことができる。適する反応温度は、高温、例えば50℃から80℃であるが、好ましくは約55℃である。
【0026】
式Vの化合物を、例えば、都合良くは10℃から40℃の温度、例えば室温にて、例えばトリアリールホスフィンおよびイミダゾールのような塩基の存在下、テトラヒドロフラン(THF)およびアセトニトリルのような不活性溶媒中での反応のような公知の方法を用いて、式VII
【化7】

[式中、Wは、上記の通りである。]
で示される対応する第一級アルコールを、ヨウ素と反応させることにより製造することができる。
【0027】
式VIの化合物は、市販されているか、または置換もしくは非置換ベンジルピペラジンを製造するための公知の方法を用いて製造することができる。
【0028】
式VIIの化合物は、式VIII
【化8】

[式中、Rは、上記の通りである。]
で示される化合物を、式IX
【化9】

[式中、Wは、固相基質である。]
で示される化合物(この樹脂ベースの式IXの化合物を、下記に“Wang−パラ−ニトロフェノール樹脂”または“Wang−PNP樹脂”と称する。)と反応させるか、または同様に、例えば下記の実施例に記載の通りに製造することができる。前記反応を、ジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒を用いて都合良く行う。適する反応温度は、10℃から40℃であるが、好ましくは室温である。
【0029】
式VIIIの化合物は、市販されているか、または公知の方法を用いて製造することができる。
【0030】
式IXの化合物は、ハロホルマート(haloformate)をアルコールと反応させる公知の方法、または同様の方法、例えば下記の実施例に記載の通りに、p−ニトロフェニルクロロホルマートを、式X
【化10】

[式中、Wは、上記の通りである。]
で示される化合物と反応させることにより製造することができる。反応を、有機塩基、例えばN−メチルモルホリンの存在下、ジクロロメタン(DCM)のような有機溶媒を用いて都合良く行う。適する反応温度は、10℃から40℃であるが、好ましくは室温である。
【0031】
樹脂ベースの式Xの化合物は、例えばポリスチレンの骨格ベンゼン環と結合するp−ヒドロキシメチル−置換フェノキシアルキルを有するWang樹脂のような修飾ポリスチレン樹脂として市販されている。
【0032】
遊離形の式Iの化合物は、常套的な方法で塩形態に変換可能であり、かつ逆もまた同様に可能である。遊離形または塩形態の化合物を、水和物または結晶化のために用いられる溶媒を含む溶媒和物の形態で得ることができる。式Iの化合物を、常套的な方法で反応混合物から回収し、精製することができる。エナンチオマーのような異性体を、常套的な方法、例えば分別結晶化によりまたは相応して非対称に置換された、例えば光学活性の、出発物質からの不斉合成により得ることができる。
【0033】
“本発明の薬剤”と称することもある、遊離形または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物は、医薬として有用である。従って、本発明はまた、医薬としての使用のための、遊離形または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物を提供する。本発明の薬剤は、CCR−3受容体アンタゴニストとして作用し、それ故に炎症細胞、特に好酸球の浸潤および活性化を阻害し、かつアレルギー反応を阻害する。本発明の薬剤の阻害特性は、下記のアッセイで実証され得る:
【0034】
ヒトCCR−3を発現する組換え細胞を、小麦胚芽凝集素(WGA)ポリビニルトルイジン(PVT)SPAビーズ(Amershamから市販されている)により、WGAと細胞表面上の糖タンパク質の炭水化物残基との特異的相互作用を介して捕捉する。[125I]−ヒトエオタキシン(Amershamから市販されている)は、SPAビーズの近くに[125I]−ヒトエオタキシンをもたらすCCR−3受容体に特異的に結合する。その接近により[125I]−ヒトエオタキシンから放出された 粒子は、ビーズ中の蛍光プローブを励起し、光を生じる。溶液中の遊離[125I]−ヒトエオタキシンは、シンチラント(scintillant)に接近せず、そのため光を生じない。従って、シンチレーション計数は、試験化合物が、どの程度CCR−3へのエオタキシンの結合を阻害するかの尺度である。
【0035】
アッセイ緩衝液の調製:5.96gのHEPESおよび7.0gの塩化ナトリウムを、蒸留水に溶解し、1MのCaCl水溶液(1ml)および1MのMgCl水溶液(5ml)を加える。pHを、NaOHを用いて7.6に合わせ、そして溶液を、蒸留水を用いて最終容量1lにする。その後、5gのウシ血清アルブミンおよび0.1gのアジ化ナトリウムを前記溶液中に溶解し、得られた緩衝液を4℃で保存する。COMPLETE(商標)プロテアーゼインヒビターカクテル錠(Boehringerにより市販されている)を、使用する日に緩衝液50ml当たり1錠添加する。
【0036】
均質化緩衝液の調製:トリス−塩基(2.42g)を蒸留水に溶解し、溶液のpHを塩酸を用いて7.6に合わせ、溶液を、蒸留水を用いて最終容量1lまで希釈する。得られた緩衝液を4℃で保存する。COMPLETE(商標)プロテアーゼインヒビターカクテル錠を、使用する日に緩衝液50ml当たり1錠添加する。
【0037】
膜の調製:CCR3を安定に発現するコンフルエントのラット好塩基性白血病細胞(RBL−2H3)を、酵素不含有細胞解離緩衝液を用いて組織培養フラスコから取り出し、リン酸緩衝食塩水中に再懸濁する。細胞を遠心し(800g、5分)、ペレットを、細胞1グラム当たり1mlの均質化緩衝液を用いて氷冷均質化緩衝液中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートする。細胞を、ガラス乳棒および乳鉢で氷上にて10回均質化する。ホモジネートを遠心し(800g、5分、4℃)、上清をさらに遠心し(48,000g、30分、4℃)、そしてペレットを10%(v/v)グリセロールを含む均質化緩衝液中に再溶解する。膜調製物のタンパク質成分を、Bradford法(Anal. Biochem. (1976) 72:248)により概算し、アリコートを素早く冷凍し、−80℃で保存する。
【0038】
アッセイを、OPTIPLATE(商標)マイクロプレート(例えば、Canberra Packard)の1ウェル当たり、最終容量250μlで行う。マイクロプレートの選択したウェルに、5%DMSOを含むアッセイ緩衝液(0.01nMから10μMの濃度)中試験化合物の溶液50μlを添加する。全体の結合を決定するために、5%DMSOを含むアッセイ緩衝液50μlを、他の選択したウェルに添加する。非特異的な結合を決定するために、5%DMSOを含むアッセイ緩衝液中100nMヒトエオタキシン(例えば、R&D Systems)50μlを、さらに選択したウェルに添加する。全てのウェルに、250pMの濃度の、5%DMSOを含むアッセイ緩衝液中[125I]−ヒトエオタキシン(例えば、Amersham)50μl(ウェル当たり50pMの最終濃度を与える)、アッセイ緩衝液中WGA−PVT SPAビーズ50μL(ウェル当たり1.0mgのビーズの最終濃度を与える)およびアッセイ緩衝液中100μgのタンパク質濃度の膜調製物100μl(ウェル当たり10μgのタンパク質の最終濃度を与える)を添加する。その後、プレートを室温で4時間インキュベートする。プレートを、製造業者の説明書に従いTOPSEAL−S(商標)(例えば、Canberra Packard)を用いて密封する。得られるシンチレーションを、Canberra Packard TopCount(商標)を用いて計数し、各ウェルを1分間計数する。50%阻害を起こす試験化合物の濃度(IC50)を、常套法にて濃度阻害曲線から決定する。
【0039】
下記の実施例の化合物は、上記のアッセイにて1μM以下程度のIC50値を有する。例えば、実施例1、2および3の化合物は、それぞれ0.257、0.290および0.056μMのIC50値を有する。
【0040】
CCR−3の結合のそれらの阻害を考慮して、本発明の薬剤は、CCR−3が介在する状態、特に炎症性またはアレルギー性状態の処置に有用である。本発明による処置は、対症的または予防的であり得る。
【0041】
従って、本発明の薬剤は、炎症性または閉塞性気道疾患の処置に有用であり、結果として、例えば、組織損傷、気道炎症、気管支過敏症、再形成または疾患の進行の低下をもたらす。本発明を適用可能な炎症性または閉塞性気道疾患には、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方、軽い喘息、中程度の喘息、重度の喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息および微生物感染後に誘発される喘息を含む、どんな型または原因の喘息も含まれる。喘息の処置には、喘鳴症状を示し、「喘鳴のある幼児」(主要な医学的関心事の確立された患者分類であり、現在、多くの場合に初期または早期の喘息として同定される)と診断されたかまたは診断され得る、例えば4歳または5歳以下の対象の処置が包含されるとも解される(便宜上、この特定の喘息状態を、「喘鳴のある幼児症候群」と称する。)。
【0042】
喘息の処置における予防的効果は、発作症状、例えば急性喘息または気管支収縮性の発作の頻度または重症度の減少、肺機能の改善または気道過敏症の改善により明らかであろう。それは、さらに、他の対症療法、すなわち発作症状が起こったとき、症候的発作を限定するまたは途中で止めるための、またはそれを意図した治療、例えば抗炎症剤(例えば、コルチステロイド)または気管支拡張剤の必要性が減ることによっても明らかであり得る。喘息における予防の恩恵は、特に、「モーニング・ディッピング(morning dipping)」の傾向にある対象に現れ得る。「モーニング・ディッピング」とは、喘息症候群として認識され、かなりの割合の喘息に共通し、そして、例えば、およそ午前4時から6時の間、すなわち、前回の対症的喘息治療薬を投与してから、通常かなり時間の隔たった時の喘息発作により特徴付けられる。
【0043】
本発明が適用可能な他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態には、急性肺損傷(ALI)、急性/成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患、慢性の気管支炎またはそれに関連する呼吸困難を含む気道または肺の疾患(COPD、COADまたはCOLD)、気腫、ならびに他の薬剤治療、特に、他の吸入薬治療の結果としての気道過敏症の悪化が含まれる。本発明はまた、例えば、急性、アラキン酸性、カタル性、クループ性、慢性または肺結核性気管支炎を含む、どんな型または起源の気管支炎の処置にも適用可能である。さらに、本発明が適用可能な炎症性または閉塞性気道疾患には、例えば、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、ダチョウ塵肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含む、どんな型または起源の塵肺(炎症性の、通常職業病的な肺の疾患であり、気道閉塞により頻繁に起こり、慢性または急性のどちらかであり、そしてほこりの吸入の繰り返しにより引き起こされる)も含まれる。
【0044】
それらの抗炎症活性を考慮して、特に、好酸球活性化の阻害に関して、本発明の薬剤はまた、好酸球関連疾患、例えば、好酸球増加症、特に気道および/または肺に影響を及ぼす過剰好酸球増加症を含む気道の好酸球関連疾患(例えば、肺組織の病的な好酸球性の浸潤に関係する)、ならびに、例えば、レフラー症候群の結果としてかまたは付随した気道の好酸球関連疾患、好酸球性肺炎、寄生生物(特に、後生動物)感染症(熱帯性好酸球増加症を含む)、気管支肺アスペルギルス症、結節性多発性動脈炎(チャーグ・ストラウス症候群を含む)、薬剤反応により起こる気道に生じる好酸球性肉芽腫および好酸球関連疾患の処置に有用である。
【0045】
本発明の薬剤はまた、皮膚の炎症性またはアレルギー性状態、例えば、乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形紅斑、疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑、過敏性血管炎、蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、エリテマトーデス、天疱瘡、後天性表皮水疱症、および皮膚の他の炎症性またはアレルギー性状態の処置に有用である。
【0046】
本発明の薬剤はまた、他の疾患または状態、特に炎症性成分を有する疾患または状態の処置、例えば、結膜炎、乾性角結膜炎、および春季結膜炎のような眼の疾患および状態、アレルギー性鼻炎を含む鼻に影響する疾患、および胃腸管の炎症状態、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患の処置に用いることができる。
【0047】
炎症性状態、例えば炎症性気道疾患の阻害における本発明の薬剤の効果を、動物モデル、例えば気道炎症または他の炎症性状態のマウスまたはラットモデルにて実証可能であり、例えば、Szarka et al,J. Immunol. Methods (1997) 202:49−57; Renzi et al,Am. Rev. Respir. Dis. (1993) 148:932−939;Tsuyuki et al.,J. Clin. Invest. (1995) 96:2924−2931;および、Cernadas et al (1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 20:1−8に記載の通りである。
【0048】
本発明の薬剤はまた、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬のような他の薬剤成分との組み合わせにおける使用のための共治療薬として有用であり、特に、上記のような閉塞性または炎症性気道疾患の処置にて、例えばかかる薬剤の治療的活性の増強剤としてか、またはかかる薬剤の必要投与量を減らすかもしくは潜在的な副作用を減らす手段として有用である。本発明の薬剤は、固定した医薬組成物中に他の薬剤成分と混合され得るか、またはそれは、他の薬剤成分と別々に、それより前に、同時にまたはそれより後に投与され得る。
【0049】
かかる抗炎症性薬剤には、ステロイド、特に、ブデソニドのようなグルココルチステロイド、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニド(ciclesonide)またはフランカルボン酸モメタゾン、またはWO02/88167、WO02/12266、WO02/100879、WO02/00679(とりわけ、その実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101)、WO03/35668、WO03/48181、WO03/62259、WO03/64445、WO03/72592、WO04/39827およびWO04/66920に記載のステロイド;DE10261874、WO00/00531、WO02/10143、WO03/82280、WO03/82787、WO03/86294、WO03/104195、WO03/101932、WO04/05229、WO04/18429、WO04/19935およびWO04/26248に記載されるような非ステロイド系グルココルチコイド受容体アゴニスト;BIIL284、CP−195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY293111、LY255283、CGS025019C、CP−195543、ONO−4057、SB209247、SC−53228および米国特許第5451700号に記載のもののようなLTB4アンタゴニスト;モンテルカスト、プランルカスト、ザフィルルカスト、アコレート、SR2640、Wy−48,252、ICI198615、MK−571、LY−171883、Ro24−5913およびL−648051を含むようなLTD4アンタゴニスト;カベルゴリン、ブロモクリプチン、ロピニロールおよび4−ヒドロキシ−7−[2−[[2−[[3−(2−フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル]エチル]−アミノ]エチル]−2(3H)−ベンゾチアゾロンおよびそれらの薬学的に許容される塩(Viozan(登録商標)である塩酸塩−AstraZeneca)のようなドーパミン受容体アゴニスト;シロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering−Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke−Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(田辺)、KW−4490(協和発酵工業)のようなPDE4阻害剤、ならびにWO92/19594、WO93/19749、WO93/19750、WO93/19751、WO98/18796、WO99/16766、WO01/13953、WO03/104204、WO03/104205、WO03/39544、WO04/000814、WO04/000839、WO04/005258、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/018431、WO04/018449、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/019944、WO04/019945、WO04/045607およびWO04/037805に開示のもの;EP409595A2、EP1052264、EP1241176、WO94/17090、WO96/02543、WO96/02553、WO98/28319、WO99/24449、WO99/24450、WO99/24451、WO99/38877、WO99/41267、WO99/67263、WO99/67264、WO99/67265、WO99/67266、WO00/23457、WO00/77018、WO00/78774、WO01/23399、WO01/27130、WO01/27131、WO01/60835、WO01/94368、WO02/00676、WO02/22630、WO02/96462、WO03/086408、WO04/039762、WO04/039766、WO04/045618、WO04/046083に記載のようなA2aアゴニスト;ならびに、WO02/42298に記載のようなA2bアンタゴニストが含まれる。
【0050】
かかる気管支拡張剤には、抗コリン薬または抗ムスカリン薬、特に臭化イプラトロピウム(ipratropium bromide)、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム塩およびCHF4226(Chiesi)、ならびにグリコピロレートだけでなく、EP424021、US3714357、US5171744、WO01/04118、WO02/00652、WO02/51841、WO02/53564、WO03/00840、WO03/33495、WO03/53966、WO03/87094、WO04/018422およびWO04/05285に記載のもの;および、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、および、とりわけ、フォルモテロール、カルモテロールおよびその薬学的に許容される塩などのようなベータ(β)−2−アドレナリン受容体アゴニスト、およびWO00/75114(参照により本明細書中に包含される)の式Iの化合物(遊離形または塩形態または溶媒和物の形態)であり、好ましくは、その実施例の化合物、とりわけ式
【化11】

で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩、ならびにWO04/16601の式Iの化合物(遊離形または塩形態または溶媒和物の形態)、およびまた、EP1440966、JP05025045、WO93/18007、WO99/64035、US2002/0055651、WO01/42193、WO01/83462、WO02/66422、WO02/70490、WO02/76933、WO03/24439、WO03/42160、WO03/42164、WO03/72539、WO03/91204、WO03/99764、WO04/16578、WO04/22547、WO04/32921、WO04/33412、WO04/37768、WO04/37773、WO04/37807、WO04/39762、WO04/39766、WO04/45618、WO04/46083、WO04/80964、EP1460064、WO04/087142、WO04/089892、EP01477167、US2004/0242622、US2004/0229904、WO04/108675、WO04/108676、WO05/033121、WO05/040103およびWO05/044787の化合物が含まれる。
【0051】
共治療用の抗ヒスタミン薬剤成分には、セチリジン塩酸塩、アセトアミノフェン、クレマスチンフマル酸塩、プロメタジン、ロラタジン、デスロラタジン、ジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジン塩酸塩、アクチバスチン(activastine)、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテフェナジン(tefenadine)、ならびにWO03/099807、WO04/026841、JP2004107299に開示のものが含まれる。
【0052】
本発明の薬剤および1種以上のステロイド、ベータ−2アゴニスト、PDE4阻害剤またはLTD4アンタゴニストの組み合わせは、例えば、COPDまたは、特に喘息の処置において用いることができる。本発明の薬剤および抗コリン性薬剤または抗ムスカリン性薬剤、PDE4阻害剤、ドーパミン受容体アゴニストまたはLTB4アンタゴニストの組み合わせは、例えば、喘息の処置または、特に、COPDの処置にて用いることができる。
【0053】
本発明の薬剤と抗炎症剤の他の有用な組み合わせは、ケモカイン受容体、例えばCCR−1、CCR−2、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9およびCCR10の他のアンタゴニスト、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、特に、シェリング・プラウ(Schering−plough)のアンタゴニストであるSC−351125、SCH−55700およびSCH−DなどのCCR−5アンタゴニスト、N−[[4−[[[6,7−ジヒドロ−2−(4−メチルフェニル)−5H−ベンゾシクロヘプテン−8−イル]カルボニル]アミノ]フェニル]−メチル]テトラヒドロ−N,N−ジメチル−2H−ピラン−4−塩化アミニウム(TAK−770)などの武田(Takeda)のアンタゴニスト、US6166037(特に、請求項18および19)、WO00/66558(特に、請求項8)、およびWO00/66559(特に、請求項9)、WO04/018425およびWO04/026873に記載のCCR−5アンタゴニストとのものである。
【0054】
上記に従い、本発明はまた、CCR−3が介在する状態、例えば炎症性またはアレルギー性状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための方法であって、上記の遊離形または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物の有効量を、それを必要とする対象、特にヒト対象に投与することを含む方法を提供する。他の局面において、本発明は、CCR−3が介在する状態、例えば炎症性またはアレルギー性状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための薬剤の製造を目的とした、上記の遊離形または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物の使用を提供する。
【0055】
本発明の薬剤は、何らかの適当な経路、例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口的に;例えば、静脈内に非経腸的に;例えば、炎症性または閉塞性気道疾患の処置にて、吸入により;例えば、アレルギー性鼻炎の処置にて、経鼻的に;例えば、アトピー性皮膚炎の処置にて、皮膚に局所的に;または、例えば、炎症性腸疾患の処置にて経直腸的に投与され得る。
【0056】
さらなる局面において、本発明はまた、活性成分として遊離形または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物を、要すれば、その薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物を提供する。前記組成物は、上記の抗炎症剤または気管支拡張剤のような共治療薬を含み得る。かかる組成物は、通常の希釈剤または賦形剤、および製剤技術にて公知の技術を用いて製造され得る。故に、経口投与量形態には、錠剤およびカプセルが含まれ得る。局所投与のための製剤は、クリーム、軟膏、ジェルまたは経皮的な送達系、例えばパッチの形態をとり得る。吸入のための組成物には、エアロゾルまたは他の噴霧可能製剤または乾燥粉末製剤が含まれ得る。
【0057】
前記組成物がエアロゾル製剤を含むとき、それは、好ましくは、例えば、HFA134aまたはHFA227などのヒドロフルオロアルカン(HFA)噴射剤またはそれらの混合物を含み、そして1種以上の、エタノール(重量で20%まで)のような当業者に公知の共溶媒、および/または1種以上の、オレイン酸または三オレイン酸ソルビタンのような界面活性剤、および/または1種以上の、ラクトースのような充填剤を含み得る。前記組成物が乾燥粉末製剤を構成するとき、それは、好ましくは、例えば、10ミクロンまでの粒径を有する式Iの化合物を含み、要すれば所望の粒子サイズ分布の、ラクトースのような希釈剤または担体を一緒に含んでいてよく、そして湿度による産物の性能の低下に対する保護を助ける化合物、例えばステアリン酸マグネシウムを含む。前記組成物がネブライザー製剤を含むとき、それは、好ましくは、例えば、水含有ビヒクル、エタノールまたはプロピレングリコールなどの共溶媒、およびスタビライザー(それは界面活性剤であり得る)中に、溶解されたかまたは懸濁された式Iの化合物を含む。
【0058】
本発明は、(A)吸入可能形態、例えばエアロゾルまたは他の噴霧可能組成物、または吸入可能粒子、例えば微粉末化形態の、本発明の薬剤;(B)吸入可能形態の本発明の薬剤を含む吸入可能薬剤;(C)吸入装置と共に、かかる吸入可能形態の本発明の薬剤を含む医薬品;および、(D)吸入可能形態の本発明の薬剤を含む吸入装置を含む。
【0059】
本発明の実行に用いられる本発明の薬剤の投与量は、もちろん、処置される特定の状態、望まれる効果および投与方法に依存して変化するであろう。一般に、吸入による投与に好ましい日用量は、0.01から30mg/kg程度であるが、経口投与に好ましい日用量は、0.01から100mg/kg程度である。
【0060】
本発明を、下記の実施例により説明する。
【実施例】
【0061】
実施例
式Iの化合物は、式XI
【化12】

[式中、Ar、XおよびTは、下記の表に示す通りである。]
で示される化合物でもあり、その製造方法を以下に記載する。表はまた、特徴的質量分析データ([MH]+)も示す。
【表1】

【0062】
出発物質の製造
Wang−PNP樹脂
ジクロロメタン(DCM)500ml中、溶液としての4−ニトロフェニルクロロホルメート(260g、1.30mmol)を、DCMおよびN−メチルモルホリン(196ml、1.79mmol)1000ml中に懸濁したWang樹脂(p−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、例えばCalbiochem−Novabiochem、350g、0.60mmol)に添加し、室温で18時間撹拌する。その樹脂をろ過し、メタノール、DCMおよびエーテルを連続で用いて洗浄し、WANGパラ−ニトロフェノール樹脂を得る[IR.1761.5cm−1;ローディング 1.20mmol/g]。
【0063】
Wang−ヨウ化物樹脂
ピペリジン−4−イル メタノール(40.3g、350mmol)を、DMF中116.4mmolのWANG−PNP樹脂93gの懸濁液に添加し、室温で18時間撹拌する。その混合物をろ過し、樹脂をメタノール、DCMおよび最後にエーテルで連続して洗浄し、Wang−ピペリジニルメタノール樹脂(Wang−PM樹脂)を得る。これに、テトラヒドロフラン(THF)およびアセトニトリル(1000ml、1:1v/v)の混合物を添加し、次いで、トリフェニルホスフィン(91.8g、350mmol)、ヨウ素(88.83g、350mmol)およびイミダゾール(23.83g、350mmol)を添加する。この懸濁液を室温で24時間撹拌し、ろ過し、その後大量のDMF、DCMおよびメタノールで洗浄し、WANG−ヨウ化物樹脂を得る。
【0064】
実施例1
[1−[1−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−スルホニル)−ピペリジン−4−イル−メチル]−4−(4−フルオロベンジル)−ピペラジン
1−(4−フルオロベンジル)ピペラジン(2.26g、11.66mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2.00ml、11.66mmol)を、ジメチルホルムアミド(100ml)中、WANG−ヨウ化物樹脂(4.00g、5.83mmol)の懸濁液に添加し、55℃で60時間撹拌する。混合物を冷却し、ろ過し、樹脂をDMF(8×40ml)、メタノール(2×50ml)およびDCM(12×40ml)を連続して用いて洗浄する。その後、樹脂を、トリフルオロ酢酸/ジクロロ−メタン(50ml、1:1v/v)の混合物を用いて室温で40分間処理し、ろ過し、そしてろ液を蒸発させ、オフホワイト色の固体を得た(4.42g)[MH 292.06]。残渣を、塩基性樹脂(AMBERLYST(商標)A−21)と共に撹拌し、式IIの樹脂中間体Iを得た。
【0065】
トリエチルアミン(382mg、3.77mmol)および3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−スルホニルクロライド(738mg、3.77mmol)を、DCM(20ml)中、樹脂中間体I(1g、3.43mmol)の溶液に添加し、室温で2時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー[シリカゲル、溶離剤としてメタノール−DCM混合物(1:19v/v)を用いる]により精製し、白色固体として表題化合物を得る[MH 451.2]。
【0066】
実施例2の化合物を、実施例1で用いた方法と同様の方法を用いて製造する。
【0067】
実施例3
1−[1−(2,5−ジメトキシベンゼンスルホニル)ピペリジニル−4−イルメチル]−4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン
1−(4−フルオロベンジル)ピペラジン(2.26g、11.66mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2.00ml、11.66mmol)を、ジメチルホルムアミド(100ml)中、WANG−ヨウ化物樹脂(4.00g、5.83mmol)の懸濁液に添加し、55℃で60時間撹拌する。混合物を冷却し、ろ過し、樹脂をDMF(8×40ml)、メタノール(2×50ml)およびDCM(12×40ml)を連続で用いて洗浄する。その後、樹脂を、トリフルオロ酢酸/ジクロロ−メタン(50ml、1:1v/v)の混合物を用いて室温で40分間処理し、ろ過し、そしてろ液を蒸発させ、オフホワイト色の固体を得た(4.42g)[MH 292.06]。残渣を、塩基性樹脂(AMBERLYST(商標)A−21)と共に撹拌し、式IIの樹脂中間体Iを得た。
【0068】
トリエチルアミン(382mg、3.77mmol)および2,5−ジメトキシベンゼンスルホニルクロライド(892mg、3.77mmol)を、DCM(20ml)中、樹脂中間体I(1g、3.43mmol)の溶液に添加し、室温で2時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー[シリカゲル、溶離剤としてメタノール−DCM混合物(1:19v/v)を用いる]により精製し、白色固体として表題化合物を得る[MH 492.2]。
【0069】
実施例4から6の化合物を、実施例3で用いた方法と同様の方法を用いて製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形または塩形態の、式I
【化1】

[式中、
Arは、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−アルキルチオまたはC−C−シクロアルキルにより置換されていてよいフェニルであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;
は、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはメチルであり;
Xは、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tは、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルカルボニル、C−C−ハロアルキルカルボニルまたはC−C−アルコキシカルボニルにより置換されていてよい。
ただし、RおよびRが、両方とも水素であるとき、Rが、ヒドロキシ以外である。]
で示される化合物。
【請求項2】
Arが、所望によりハロにより置換されていてよいフェニルであり;
、RおよびRが、それぞれ水素であり;
Xが、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tが、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりシアノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−アルキルカルボニルにより置換されていてよい、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが、所望により、とりわけ示したメチレン基に、炭素原子に対してパラ位に結合するハロにより置換されていてよいフェニルであり;
、RおよびRが、それぞれ水素であり;
Xが、結合またはC−C−アルケニルであり;そして
Tが、フェニルおよび5員から10員のヘテロ環式環、好ましくは不飽和ヘテロ環式環(ここで、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される。)からなる群から選択される環式基であり、該環式基は、所望によりシアノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−アルキルカルボニルにより置換されていてよい、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
本明細書中、実施例のいずれか1つに実質的に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
医薬としての使用を目的とした、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬と組み合わせた請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物(該化合物および該薬物は、同一または異なる医薬組成物中に含まれる。)。
【請求項7】
活性成分として請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を、所望により薬学的に許容される希釈剤またはその担体と共に含む医薬組成物。
【請求項8】
CCR−3が介在する状態の処置のための医薬の製造を目的とした、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
炎症性またはアレルギー性状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬の製造を目的とした、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
(i)式II
【化2】

[式中、Ar、R、RおよびRは、請求項1に記載の通りである。]
で示される化合物を、式III
【化3】

[式中、XおよびTは、請求項1に記載の通りであり、Qは、クロロまたはフルオロである。]
で示される化合物と反応させる工程;および
(ii)遊離形または塩形態の産物を回収する工程
を含む、請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法。
【請求項11】
遊離形または塩形態の、式II
【化4】

[式中、
Arは、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−アルキルチオまたはC−C−シクロアルキルにより置換されていてよいフェニルであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;
は、水素、ハロ、シアノ、カルボキシ、所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルキル、または所望によりヒドロキシもしくはハロにより置換されていてよいC−C−アルコキシであり;そして、
は、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはメチルである。]
で示される化合物。

【公表番号】特表2008−509183(P2008−509183A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525243(P2007−525243)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008648
【国際公開番号】WO2006/015851
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】