説明

CD1により提示される抗原の単離方法、CD1により提示される抗原から成るワクチン、および該方法に使用する細胞株

【課題】脊椎動物において特異的なT細胞応答を誘導するワクチンの提供。
【解決手段】CD1がT細胞の特定の亜集団に対し外来抗原および自己免疫抗原を提示する機能を有するという観察に基づき、試料中におけるCD1により提示される抗原の存在を検出する方法、CD1により提示される抗原を精製する方法、CD1により提示される抗原を含むワクチン、CD1抗原提示をブロッキングする方法、CD1ブロッキング物質を同定および/または単離する方法、CD1発現を誘導する方法、および本明細書で開示される方法に使用されるT細胞株を提供する。本発明のCD1により提示される抗原は、MHCにより提示される抗原と異なり、非ペプチド性の疎水性抗原である。特に、細菌種から単離されたCD1bにより提示される抗原はミコール酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許出願第07/989,790号(1992年12月10日出願、放棄済み)の一部継続出願である米国特許出願第08/080,072号(1993年6月21日出願)の一部継続出願である。
【0002】
発明における政府の権利に関する声明
本発明が成立するに至る過程で実施された研究の一部は米国政府の助成金を受けて成されたものであり、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本明細書に開示する発明は、試料にCD1により提示される抗原が含まれているかどうかを判定する方法、試料からCD1により提示される抗原を単離する方法、CD1により提示される抗原から成るワクチン、およびCD1により提示される抗原の単離、同定、およびキャラクタライゼーションに有用な細胞株に関する。本発明のCD1により提示される抗原はMHCにより提示される抗原と同様に、α:βTCR T細胞を刺激して増殖性応答を起こさせるが、CD1により提示される抗原はMHCにより提示される抗原とは異なり、非ポリペプチド性の疎水性抗原である。とくにミコバクテリウムの種から単離されたCD1bにより提示される抗原はミコール酸を含有する。
【背景技術】
【0004】
背景技術の説明
免疫系とT細胞
動物は、有害作用を及ぼす可能性のある外来細胞または内因性ではあるが異常な細胞(たとえば細菌やウイルスなどの病原体およびガン細胞や病原体感染細胞などでそれぞれ代表される)を認識し、攻撃するが、内因性の正常細胞は許容する免疫系と総称される複雑な分子防御機構・細胞防御機構を持っている。外来性または異常な生体分子の刺激を受けると、この免疫系は、その外来性または異常生体分子と関連がある病原体やガン細胞や病原体感染細胞を中和し破壊するように仕組まれた一連の作用を受ける。これらの作用は免疫応答と総称され、細胞性免疫応答、液性(抗体性)免疫応答、または細胞性応答と液性応答の両要素を含む免疫応答から成る。
【0005】
液性免疫応答には、特定の外来性または異常な生体分子と結合する糖タンパク質である抗体が関与する。抗体とは、鳥類の嚢または哺乳動物の骨髄中で発生して他器官、とくに脾臓へ移動して成熟するリンパ球であるB細胞によって産生される免疫グロブリン(Ig)分子である[ロバートソン(Robertson, M.)、Nature 301:114 (1983)]。細胞性免疫応答は、動物の胸腺内で成熟するリンパ球であるT細胞の作用によって起きる[ティザード(Tizard, I.R.)、Immunology: An Introduction, 2d Ed., Saunders, Philadelphia(以下「ティザード」(Tizard)という)、p. 163, 1988]。T細胞とB細胞はどちらも動物体内の様々な器官および/または組織の間を移動する[リドヤードとグロッシ(Lydyard, P., and Grossi, C.)、Chapter 3 in Immunology, 2d Ed.,Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。
【0006】
T細胞は少なくとも2つの一般的なタイプの免疫機能、すなわちエフェクター機能と調節機能を媒介するが、このことは、同じ動物の体内でもT細胞亜集団が異なればT細胞作用も大幅に異なるという事実を反映している[ルーク(Rook, G.)、Chapter 9 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。エフェクター機能としては、遅延過敏反応、同種移植片拒絶反応、腫瘍免疫、および移植片対宿主反応などが挙げられる。エフェクター機能は、一部のT細胞がリンホカインと呼ばれるタンパク質を分泌する能力および他のT細胞(「細胞傷害性」または「キラー」T細胞)が他細胞を殺す能力を反映している。T細胞の調節機能としては、「ヘルパー」T細胞の能力が代表的である。ヘルパーT細胞は、B細胞と細胞傷害性T細胞の両者と相互作用して、両者の挙動に影響を及ぼす生体分子を産生することで、それぞれ抗体産生と細胞傷害性作用を促進、制御する[モシエル(Mosier, D.E.)、Science 158:1573-1575 (1967)]。他にもサプレッサーT細胞やメモリーT細胞などのT細胞クラスも存在する[ミエデマとメリーフ(Miedema, F., and Melief, C.J.M.)、Immunol. Today 6:258-259 (1983);ティザード(Tizard)、pp. 225-228]。
【0007】
T細胞クラスは、T細胞が異なるとその表面上に表出(display)されるCDタンパク質も異なるという事実に基づき、ある程度区別される。未成熟T細胞はCD4タンパク質とCD8タンパク質の両者を表出し(すなわち、未成熟T細胞はCD4++ である)、成熟ヘルパーT細胞はCD4+- であり(すなわちCD4タンパク質を表出し、CD8タンパク質を表出しない)、成熟細胞傷害性T細胞はCD4-+ である(すなわちCD8タンパク質を表出し、CD4タンパク質を表出しない)[スミス(Smith, L.)、Nature 326:798-800 (1987);ワイスマンとクーパー(Weissman, I.L., and Cooper, M.D.)、Sci. American 269:65-71 (1993)]。
【0008】
抗原認識
動物の免疫系のT細胞とB細胞が正しく機能するためには、それらが出くわした外来性(「非自己」)または内因性(「自己」)であるが発現が異常な組成物に由来する無数の分子組成物を正しく確実に同定しなければならない。免疫系による認識と同定は分子レベルで起きる。免疫応答を引き起こす能力を有する分子組成物である抗原は、エピトープと呼ばれる1つ以上の分子大の同定要素から成る。たとえば100個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を有するポリペプチド抗原は、それぞれ約3個ないし約25個のアミノ酸から成るポリペプチドの一部分によって規定される数十個のエピトープから成るかも知れない。ポリペプチドだけから誘導できるエピトープの数は、約1千万個と推定される[ティザード(Tizard)、p.25]。
【0009】
動物のT細胞またはB細胞が出くわした抗原は、正常な内因性(すなわち自己)抗原、すなわちそれに対して免疫応答を示すと動物に傷害を引き起こす抗原か、外来性または異常な(すなわち非自己)抗原、すなわちそれに対して免疫応答を示さねばならない抗原)のいずれかと関連があるものとして同定される。免疫系の抗原同定手段の一部として、個々のT細胞とB細胞は、それらの表面上に表出されて特異的抗原と結合する抗原受容体を産生する[ターナー(Turner, M.)、Chapter 5 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。B細胞は、Ig重鎖およびIg軽鎖と呼ばれる2つの抗体サブユニットのそれぞれの可変領域にあるユニークなアミノ酸配列によるユニークな抗原結合部分を有するIg分子を含む抗原受容体を産生し、表出する。各B細胞膜は20,000ないし200,000個の同じIg分子でできている[ティザード(Tizard)、pp. 78-80 and 202]。
【0010】
個々のT細胞によって産生されT細胞上で表出されるT細胞抗原受容体(TCR)は、T細胞表面上でジスルフィド結合によって結合している重鎖(TCRβ)と軽鎖(TCRα)(ポリペプチドのサブユニット)を含む。各TCRαサブユニットとTCRβサブユニットは、T細胞ごとの変化がないアミノ酸配列であるカルボキシ末端定常領域、およびT細胞ごとに変化するアミノ酸配列であるアミノ末端可変領域を有している。TCRαサブユニットとTCRβサブユニットが会合すると、TCRαポリペプチドサブユニットとTCRβポリペプチドサブユニットの可変領域が一体化して、α:βTCRのユニークな抗原結合部分ができる。第2のタイプのTCRヘテロダイマーであるγ:δが記載されているが、それが何らかの機能を果たしているとしても内容は不明である[デービスとブジョルクマン(Davis, M.M., and Bjorkman, P.J.)、Nature 334:395-404 (1988)]。機能が不明の少なくとも1つの混合TCRヘテロダイマーすなわちβ:δTCRが記載されているが、成熟動物ではα:βTCR分子を有するT細胞が数的に優勢である[ホッホステンバックとブレナー(Hochstenbach, F., and Brenner, M.B.)、Nature 340:562-565 (1989)]。
【0011】
各T細胞またはB細胞は同じ抗原受容体を表出するが、表出された受容体は細胞ごとに異なる。したがって、動物体内の抗原受容体の種類は非常に多様である。この多様性の遺伝的基礎は次のとおりである。Ig重鎖の可変領域またはTCRβ鎖の可変領域は、可変セグメント(V)、多様セグメント(D)、および連結セグメント(J)という3つの遺伝子セグメントによってコードされる。Ig軽鎖の可変領域またはTCRα鎖の可変領域は、VとJの遺伝子セグメントによってコードされる。多くの異なるV、D、およびJの遺伝子セグメントをコードする多重DNA配列が、生殖系列DNA中に未発現コピーとして存在し、TCRサブユニットを構成する類似のしかし異なる可変遺伝子セグメント群も存在する。動物の発育過程で、VとDとJの遺伝子セグメントまたはVとJの遺伝子セグメントの無差別連結によって、多様な可変領域をコードする遺伝子が免疫系の個々の細胞中に形成される。Ig重鎖サブユニットまたはTCRβサブユニットの無差別に組み合わされた可変領域ができるDNA転位の過程をV−D−J連結と呼び、Ig軽鎖サブユニットまたはTCRαサブユニットの転位可変領域ができる類似過程をV−J連結と呼ぶ[サカノら(Sakano, H., et al.)、Nature280:288-294 (1979);アーリーら(Early, P., et al.)、Cell 19:981-992 (1980);アルトら(Alt, F.W., et al.)、Science 238:1079-1087 (1987);ハーローとレーン(Harlow, E., and Lane, D.)、Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, pages 10-18, 1988;デービスとブジョルクマン(Davis, M.M., and Bjorkman, P.J.)、Nature 334:395-404 (1988)]。
【0012】
機能的転位を受けたIgまたはTCRサブユニット遺伝子とは、V−D−JまたはV−J連結のDNA転位によって、終止コドンまたはフレームシフト突然変異の導入のために未成熟に終止する読み取り枠を生じてはいないサブユニット遺伝子である。免疫系の各T細胞またはB細胞は、機能的転位を受けたユニークな可変領域が存在するそれぞれの抗原受容体をコードする遺伝子を発現するので、ユニークな抗原認識領域を有するタンパク質をそれぞれが産生する多くの異なるT細胞またはB細胞ができる[ヘイ(Hay, F.)、Chapter 6 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。動物のT細胞上に表出される様々な抗原受容体の完全なリストをその動物のTCRレパートリーと呼ぶ[ベバンら(Bevan, M.J., et al.)、Science 264:796-797 (1994)]。
【0013】
成熟したT細胞またはB細胞の場合、抗原が細胞の抗原受容体に結合するとその細胞が活性化される。すなわち、細胞が刺激されて、細胞性または液性免疫応答の発生に関係する作用を示すようになる。通常、活性化された成熟T細胞またはB細胞は抗原に応答して増殖する。一方、未成熟のT細胞またはB細胞の場合は、それぞれ表出されたTCRまたはB細胞抗原受容体に抗原が結合すると、陰性選択またはクローン欠失と呼ばれる過程によってその細胞が除去される。クローン欠失は健康な野生動物の正常な発育の過程で起きるが、これが、免疫系がその動物の正常な内因性(自己)抗原を許容すること、すなわちその動物の自己抗原を非免疫原性抗原として処理することを学ぶ機構である。免疫系が自己抗原許容性の獲得や維持ができなくなると、ヒトを含む動物の自己免疫疾患にまで達する可能性のある自己免疫応答(すなわち自己抗原に対する自己免疫応答)が起きることがある。自己免疫疾患は、非自己抗原に対する適当な免疫応答が免疫エフェクター生体分子(たとえば自己抗体)や自己抗原と交差反応を起こす細胞の産生もたらす場合に起こりうる。ヒトの自己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)や全身性紅斑性狼痕)などの肢体不自由障害などが挙げられる[ロイット(Roitt, I.)、Chapter 23 in Immunology, 2d Ed., Roitt,I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989;ステインマン(Steinman, L.)、Sci. American 269:107-114 (1993)]。
【0014】
抗原提示
B細胞の抗原受容体は可溶性抗原と直接結合することができるが、T細胞は抗原提示細胞(APC)と総称される他の特定のクラスの細胞上に表出される場合に限って抗原に典型的に応答する[フェルドマンとメイル(Feldmann, M., and Male, D.)、Chapter 8 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。たとえばマクロファージや樹状突起細胞などのAPCは、APCの表面上で表出されるMHC(主要組織適合性複合体)として知られる糖タンパク質を介してポリペプチド由来の抗原を提示する[ベバンら(Bevan, M.J., et al.)、Seicnece 264:796-797 (1994)]。MHC遺伝子産物の命名は種ごとに異なる。たとえば、ヒトMHCタンパク質はヒトリンパ球抗原(HLA)とも呼ばれ、ネズミMHCタンパク質はH−2抗原とも呼ばれ、ラットMHCタンパク質はRT1抗原とも呼ばれる[ティザード(Tizard)、p. 181]。特定のMHCタンパク質は、限られた特異性を有する一部クラスの抗原と結合する。たいていの場合、TCR:Ag:MHC複合体中に存在する特異性決定基は(1)TCRの可変部分のユニークなポリペプチド配列と(2)抗原のユニークなポリペプチド配列であるが、MHCにより提示されるオリゴペプチド抗原はある程度はMHC分子内に埋め込まれており、抗原のTCR認識は適当なクラスのMHC分子が関与している場合に限って起きる[ジャネウエイ(Janeway,C.A.)、Sci. American 269:73-79 (1993)]。この現象はMHC拘束と呼ばれ、T細胞の抗原認識と生理において基本的に重要である[ジンケルナーゲルとドハーティー(Zinkernagel, R.M., and Doherty, P.C.)、Nature 248:701-702 (1974)]。
【0015】
MHCが媒介する抗原提示においては、α:βT細胞抗原受容体がMHC遺伝子産物と合わせてペプチド抗原を認識する。可溶性抗原の場合、認識はクラスIIの分子と合わせて起きる。ウイルス抗原の場合は、認識はクラスIの分子と合わせて起きる。さらに、大型の可溶性抗原がマクロファージや樹状突起細胞などの適当な附属細胞によってポリペプチドから処理される。
【0016】
MHC拘束におけるT細胞によるポリペプチド抗原の認識に関係する一連の事象は次のとおりである。ポリペプチド抗原が抗原提示細胞による食作用を受け、内部に取り込まれ、プロセシングされた後、該ポリペプチドに由来するペプチドが、クラスIまたはクラスIIのMHC分子と共に細胞表面上で表出される。抗原を提示するためには、MHCクラスI分子はさらに別のタンパク質すなわちβ2 ミクログロブリンを必要とする[ティザード(Tizard)、pp. 181-183]。次いで、T細胞抗原受容体であるα:βヘテロダイマーがペプチド抗原とMHC遺伝子産物を合わせて認識する。ペプチド抗原だけあるいはMHC遺伝子産物だけが認識されても、T細胞活性化を引き起こすには不十分である。MHC:Ag複合体だけがTCR分子によって正しく認識されうる[スチュワード(Steward, M.)、Chapter 7 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。
【0017】
MHCタンパク質をコードする遺伝子は多様であるが、同じ動物個体内でも細胞ごとに異なるIg分子やTCR分子と異なり、MHC抗原は動物個体ごとにあるいは近縁動物個体の群ことに異なる。マウスでは近交系マウスで代表されるファミリー群のメンバーは類似のMHC抗原を共有しているが、他系統のマウスの個体とはそれを共有しない[スネル(Snell, G.D.)、Science 213:172-178 (1981);オーエン(Owen, M.)、Chapter 4 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。変異体MHC分子は異なる様々な抗原と結合する能力を有するであろうから、T細胞が認識し(すなわちMHC関与状態で特異的に結合する)応答する抗原はマウスの系統間で異なる[クーケ(Cooke, A.)、Chapter 11 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。ヒトでは、MHC(HLA)分子をコードする特定の対立遺伝子がさらに高度に自己免疫疾患と関連しているが、これはおそらく、これらのMHC分子が自己抗原と結合する点(したがってT細胞への提示の時点)でより応答能が高まるためであろう[バウグハン(Vaughan)、Immunological Diseases, 3rd Ed.,Vol. II, Samter, M., ed., pp. 1029-1037 (1978);スタインマン(Steinman, L.)、Sci. American 269:107-114 (1993)]。
【0018】
二重陰性T細胞
一般に、CD8+ Tリンパ球はMHCクラスI複合体を認識し、CD4+細胞は抗原提示細胞上のMHCクラスII複合体を認識する。α:βTCRによる抗原認識にはCD8とCD4の関与が重要である。CD4分子とCD8分子はTCR相互作用Ag:MHC複合体の親和性を増大させるので、共受容体と呼ばれることもある[ビエラーら(Bierer, B.E., et al.)、Ann. Rev. Immunol. 7:579-599 (1989);スチュワード(Steward, M.)、Chapter 7 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。MHCの関与がある場合の抗原認識ではCD4とCD8が重要であるため、CD4-- (二重陰性、DN)のT細胞は古くから未成熟胸腺T細胞前駆体であると考えられてきた[リドヤードとグロッシ(Lydyard, L., and Grossi, C.)、Chapters 2 and 14 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989;スミス(Smith, L.)、Nature 326:798-800 (1987);ストロミンジャーら(Strominger, J.L., et al.)、Int. J. Cancer Suppl. 4:43-47 (1989);シライら(Shirai, T., et al.)、J. Immunology 144:3756-3761 (1990);ワイスマンとクーパー(Weissman, I.L. and Cooper, M.D.)、Sci. American 269:65-71 (1993)]。
【0019】
DN亜集団のT細胞は、それらが表出するTCRに特徴がある。末梢血から単離されたヒトDN T細胞の大部分はδ:γTCRを発現する[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Immunological Reviews 120:137-183 (1991)]。ネズミDNα:βTCR T細胞は高比率(約60%)でVβ8遺伝子産物を発現する[フォウルケスら(Fowlkes, B.J., et al.)、Nature 329:251-254 (1987);ビックスら(Bix, M., et al.)、J. Exp. Med. 178:901-903 (1993)]。マウスを使ったいくつかの分析で、連結(V−JまたはV−D−J)の多様性が顕著に欠落していること、およびとくにTCRαサブユニットの生殖系列VおよびJ遺伝子要素の利用が制限されていることがわかる[コセキら(Koseki, J., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5248-5252 (1990);クボタら(Kubota, H., et al.)、J. Immunol. 149:1143-1150 (1992)]。ヒトの新鮮DNα:βTCR T細胞を調べたところ、N領域付加を受けていない非変異体(規定配列)のVα24−JαQ転位が顕著に優勢であることがわかった[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、J. Exp. Med. 178:1-16 (1993)]。これらの知見を総合すると、DNα:βTCR T細胞は、抗原と抗原提示分子の両方または一方の限られたセットを認識することを反映する限られた受容体レパートリーを有する特徴的なTリンパ球亜集団に相当するものであることが示唆される。
【0020】
CD1タンパク質
CD1座位の遺伝子によってコードされるポリペプチド分子は、α:βTCRまたはγ:δTCRのいずれかを発現する一部のCD4-- T細胞クローンによって認識される[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Nature 341:447-450(1989);ファウレら(Faure, F., et al.)、Eur. J. Immun. 20:703-706 (1990)]。ヒト染色体番号1の上にある遺伝子によってコードされるCD1分子はヒト染色体番号6の上にある遺伝子によってコードされるMHC分子と構造的に似ているため[カラビとミルステイン(Calabi, F. and Milstein, C.)、Nature 323:540-543 (1986);バルクら(Balk, S.P., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:252-256 (1989)]、CD1はMHC遺伝子によってコードされるものとは別の抗原提示分子のファミリーに相当することが示唆されている[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Nature341:447-450 (1989);ストロミンジャー(Strominger, J.L.)、Cell 57:895-898 (1989);ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Immun. Rev. 120:137-183 (1991)]。
【0021】
5つのCD1遺伝子はMHCクラスI遺伝子のものと似たエキソン・ドメイン構造(α1、α2、α3)を持っているが、生じるタンパク質は配列的に遠縁であるにすぎない。CD1ファミリーのすべてのメンバーは保存されたα3ドメインを共有しているが、このドメインですらクラスIのMHCα3ドメインのコンセンサス残基とのアミノ酸配列相同性は32%にすぎず、α1ドメインとは相同性が認められない。MHC分子とCD1分子の大きな違いは多型性である。ヒトMHC遺伝子は多型性が非常に高く、多数の対立遺伝子が既知のMHC座位のそれぞれに存在することが記載されている。一方、CD1遺伝子は明らかに非多型性である。これらの違いにも関わらず、CD1タンパク質はMHCクラスI分子と同様に、β2ミクログロブリンと非共有結合的に結合した大型サブユニット(重鎖)として発現される[バン・アグトーベンとテルホルスト(Van Agthoven, A., and Terhorst, C.J.)、Immunol. 128:426-432 (1982);テルホルストら(Terhorst, C., et al.)、Cell23:771-780 (1981)]。
【0022】
これまでにCD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1eという5種類のCD1遺伝子がヒトで同定されている。これら5つのCD1遺伝子産物のうちの4つは血清学的に定義されており、CD1a、CD1b、CD1c、およびCD1dと呼ばれ、それぞれおよそ49kDa、45kDa、43kDa、および48kDaの分子量を有するユニークな重鎖によって区別される[アミオットら(Amiot, M., et al.)、J. Immunol. 136:1752-1758 (1986);ポーセリら(Procelli, S., et al.)、Immunol. Rev. 120:137-183 (1991);ブレイヒャーら(Bleicher, P.A., et al.)、Scinece 250:679-682 (1990)]。CD1タンパク質は、ランゲルハンス細胞(皮膚における主な樹状突起抗原提示細胞)、活性化B細胞、リンパ節の樹状突起細胞、および活性化血液単球などの幾つかのAPCの上に表出される[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Nature360:593-597 (1992);Leukocyte Typing IV, Knapp, W., ed., Oxford University Press, Oxford, U.K., pp. 251-269, 1989;Tissue Antigens, Kissmeyer-Nielsen, F., ed., Munksgard, Copenhagen, Denmark,pp. 65-72, 1989]。
【0023】
過去の研究で、CD1タンパク質はSLE患者由来のCD4-- T細胞株によって認識されることが示されている[ポーセリら(Porcelli, et al.)、Nature 341:447-450 (1989)]。外来(非自己)抗原が存在しない場合でも、CD1タンパク質発現白血病細胞はMHC拘束と無関係なT細胞によって溶解される。DN T細胞は抗原の非存在下でCD1依存的に白血病細胞を溶解した。したがって、CD1タンパク質は自己免疫疾患に何らかの役目を果たしている可能性がある。
【0024】
免疫系は通常は自己に対して反応しないというのが免疫学のセントラルドグマであった。自己免疫とは、自己に対する自然の無応答性すなわち許容性がなくなる状態と定義される。その結果、抗体または細胞が自己の成分と反応して疾患を引き起こす。様々な自己免疫障害の起源と病態発生を説明できる統一概念は未確立である。疾患過程は、様々な原因のなかでもとくに感作Tリンパ球によって引き起こされるのかもしれない。これらのリンパ球は、破壊的なリンホカインの放出を伴うかもしれない、あるいは他の炎症細胞を病変部に引きつける未解明の機構によって組織病変を作り出す。自己免疫については、既報文献[テオフィロポウロス(Theofilopoulos, A.N.)、Chapter 11 in Basic and Clinical Immunology, 6th Ed., Stites, D.P., et al., eds., Appleton and Lang, 1987]を参照されたい。
【0025】
ミコバクテリアとミコール酸
ミコバクテリアは、宿主に侵入すると単球およびマクロファージのエンドソーム画分内で生存するようになる好気性細胞内細菌の1属である。ヒトのミコバクテリア疾患としては、結核(M.ツベルクロシスによって引き起こされる)、らい(M.レプラエによって引き起こされる)、ブルーリ潰瘍(Bairnsdale ulcers)(M.ウルセランスによって引き起こされる)、およびM.マリヌム、M.カンサシイ、M.スクロフラセウム、M.スズルガイ、M.キセノピ、M.フォルツイツム、M.チェロネイ、M.ハエモフィルム、およびM.イントラセルラーレによって引き起こされる様々な感染症などが挙げられる[ウォリンスキー(Wolinsky, E.)、Chapter 37 in Microbiology: Including Immunology and Molecular Genetics, 3rd Ed., Harper & Row, Philadelphia, 1980;ダニエル、ミラーおよびフリードマン(Daniel, T.M., Miller, R.A. and Freedman, S.D.)、それぞれChapters119, 120 and 121, in Harrison's Principles of Internal Medicine, 11th Ed., Braunwald, E., et al., eds., McGraw-Hill, New York, 1987]。世界人口の3分の1はM.ツベルクロシス(M.tb)を保菌しており、15〜59歳の成人の死因の18.5%を占める結核(TB)を発症する危険性がある[ブルームとムレイ(Bloom, B.R., and Murray,C.J.L.)、Science 257:1055-1064 (1992)]。公衆衛生と抗生物質療法の進歩により米国におけるTBの発生率と重症度は大幅に低下したので、上記の警告的統計値は主に第3世界諸国から得られたものである。不幸にも、エイズの出現により結核はほぼ対数的に増加しつつあり、多剤抵抗性株が出現しつつあって、現在ではニューヨーク市の全症例の3分の1を占めるに至っている[ブルームとムレイ(Bloom, B.R.,and Murray, C.J.L.)、Science 257:1055-1064 (1992);米国議会技術評価局(U.S. Congress, Office of Technology Assessment)、The Continuing Challenge of Tuberculosis, OTA-H-574, U.S. Government Printing Office, Washington, D.C., 1993]。かつては病原性を有さない株と考えられていたミコバクテリア株(たとえばM.アビウム)が今や免疫が抑制されたエイズ患者を死に至らしめる大きな原因となっている。さらに、現在のミコバクテリアワクチンは、M.ツベルクロシスに対するBCGワクチンの場合には不適当であり、M.レプラエに関しては利用できない[カウフマン(Kaufmann, S.)、Microbiol. Sci. 4:324-328 (1987);米国議会技術評価局(U.S. Congress, Office of Technology Assessment)、The Continuing Challenge of Tuberculosis, pp.62-67, OTA-H-574, U.S. Government Printing Office, Washington, D.C., 1993]。
【0026】
ミコバクテリアに対する主要応答では、生物の細胞内死および閉じ込め効果または壁防止効果(肉芽腫形成)に大きな役目を果たしているT細胞やマクロファージとの細胞性遅延過敏反応(DTH)が起きる。主要T細胞応答には、ミコバクテリア熱ショックタンパク質(hsp65など)を免疫優性抗原として認識するCD4+ リンパ球が関与している[カウフマンら(Kaufmann, S.H., et al.)、Eur. J. Immunol. 17:351-357 (1987)]。ところが、ミコバクテリアはリピドを極めて高い含有率で含んでおり、桿菌の乾物重の40%、細胞壁の60%を占める[ゴーレンとブレナン(Goren, M.B., and Brennan, P.J.)、Mycobacterial Lipids: Chemistry and Biologic Activities in Tuberculosis, 1979]。おそらく最も数が多く多様なミコバクテリアリピドはミコール酸であろう。これらのα分岐βヒドロキシ脂肪酸は、ミコバクテリアおよび近縁細菌種に見られるユニークな構造体の1群である[ウォリンスキー(Wolinsky, E.)、"Mycobacteria," Chapter 37 in Microbiology: Including Immunology and Molecular Genetics, 3rd Ed., Davis, B.H., ed., Harper & Row, Philadelphia, 1980 ]。
【0027】
ミコール酸は主に細胞壁に含まれており、エステル化されてコアペプチドグリカンと結合したアラビノガラクタン重合体となっていて[マックニールとブレナン(McNeil, M.R., and Brennan, P.J.)、Res. Microbiol. 142:451-563 (1991);ベスラ(Besra, G.S.)、Biochemistry 30:7772-7777 (1991);マックニールら(McNeil, M., et al.)、Journal of Biological Chemistry 266:13217-13223 (1991)]、アルカリまたは酸加水分解(鹸化)によって遊離することができる[ミニキン(Minnkin, D.E.)、"Mycolic acids" in CRC Handbook of Chromatography: Analysis of Lipids, Murhergee, K.D., and Weber, N., eds., CRC Press, 1993]。ミコール酸は生物を覆うリピド被膜の主成分であり、生物に疎水性面と特徴的な耐酸染色性を与えている[ゴーレンとブレナン(Goren, M.B., and Brennan, P.J.)、Mycobacterial Lipids: Chemistry and Biologic Activities in Tuberculosis, 1979]。
【0028】
サイズがC12−C24の幅がある真核生物や細菌の脂肪酸と異なり、ミコバクテリアのミコール酸のサイズはC60−C90の幅がある[ミニキン(Minnikin, D.E.)、"Lipids: Complex Lipids, their Chemistry, Biosynthesis and Roles" in The Biology of Mycobacteria, Vol. 1, Ratledge, C., and Sanford, J., eds., Academic Press, London, 1982]。ミコール酸は直鎖状脂肪酸と異なり、α炭素部分に分岐アルキル基を、またβ炭素部分にヒドロキシル基を持っている[ゴーレンとブレナン(Goren, M.B., and Brennan, P.J.)、Mycobacterial Lipids: Chemistry and Biiologic Activities in Tuberculosis, 1979;ミニキン(Minnikin, D.E.)、"Lipids: Complex Lipids, their Chemistry, Biosynthesis and Roles" in The Biology of Mycobacteria, Vol. 1, Ratledge, C., and Sanford, J., eds., Academic Press, London, 1982;タカヤマとクレシ(Takayama, I., and Qureshi, N.)、"Structure and Synthesis of Lipids" in The Mycobacteria: A Sourcebook, Part A, Kubica, G.P., and Wayne, L.G., eds., Marcel Dekker, New York & Basel, 1984]。ミコール酸の主要アルキル長鎖(いわゆるメロ基)は長さと置換官能基の両者が不均一である。アルケン基(二重結合)以外のミコール酸官能基としては、メトキシル基、ケト基、孤立メチルバランス(lone methyl barances)、エチレン基、およびシクロプロパノイド基などが挙げられる[ミニキン(Minnikin, D.E.)、"Lipids: Complex Lipids, their Chemistry, Biosynthesis and Roles" in The Biology of Mycobacteria, Vol. 1, Ratledge, C., and Sanford, J.,eds., Academic Press, London, 1982]。ミコール酸が利用できる官能基は多数あること、鎖長が様々であること、および株間で不均一であることから、ミコール酸は、アミノ酸側鎖間の不均一性を有するペプチドによって提供されるものと同程度に高度の抗原変異性を示すことができる。したがって、これらのリピド分子はかつてはあまり注目されなかった免疫学的意味合いを持っているかもしれない。各ミコバクテリア種ごとに、含まれる免疫系分子のパターンに基づく特有のフィンガープリントが存在する。このパターンは、薄層クロマトグラフィー(TLC)[ミニキン(Minnikin, D.E.)、"Lipids: Complex Lipids, their Chemistry, Biosynthesis and Roles" in The Biology of Mycobacteria, Vol. 1, Ratledge, C., and Sanford, J., eds., Academic Press, London, 1982;ドブソンら(Dobson, G., et al.)、Chemical Methods in Bacterial Systematics, Academic Press, 1985;バレロ−グイレンら(Valero-Guillen, P.L., et al.)、Journal of Applied Bacteriology 59:113-126 (1985)]、ガスクロマトグラフィー(GC)[バレロ−グイレンら(Valero-Guillen, P.L., et al.)、Journal of Applied Bacteriology 59:113-126 (1985);アタルイエら(Athalye,M., et al.)、Journal of Applied Bacteriology 58:507-512 (1985);ルクインら(Luquin, M. et al.)、Journal of Clinical Microbiology 29:120-130 (1991)]、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)[クレシら(Qureshi, N., et al.)、Journal of Biological Chemistry 253:5411-5417 (1978);クレシら(Qureshi, N., et al.)、Journal of Biological Chemistry 255:182-189 (1980);ブットラーら(Butler, W.R., et al.)、Journal of Clinical Microbiology 29:2468-2472 (1991);ブットラーとキルバーン(Butler, W.R., and Kilburn, J.O.)、Journal of Clinical Microbiology 28:2094-2098 (1990)]によって種ごとに決定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
発明の概要
本発明は、CD1分子がT細胞に対する自己免疫抗原と同様に外来の抗原をも提示する機能を有するという新規なかつ予想外の観察に基づいている。本発明はさらに、単離された血液単球がCD1を発現するように誘導され、従って単球を顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびインターロイキン−4(IL−4)と接触させることによりT細胞に対する抗原を提示する能力を持つに至るという観察に基づいている。これらの二つの観察に基づき、本発明はCD1により提示される抗原を同定し、単離し、そして精製するために使用されるCD1+ 抗原提示細胞(CD1+ APCs)を単離する方法、試料が1種以上のCD1により提示される抗原を含むか否かを判定する方法、CD1により提示される抗原を単離しそして精製する方法、本明細書に開示されている方法によって単離され精製されたCD1により提示される抗原、および単離されたCD1により提示される抗原をワクチンに使用する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
一つの態様においては、本発明は試料がCD1により提示される抗原を含むか否かを判定する方法を提供する。かかる方法の一つでは、試料中にCD1により提示される抗原が存在することは、(1)この試料をCD1タンパク質を発現するように誘導された細胞と接触させ、(2)第1のステップで得られる細胞を、CD1により提示される抗原を特異的に認識するCD4- - (二重陰性;DN)T細胞と接触させ、そして(3)DN T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定ことにより判定することができる。ここでそれぞれ、T細胞増殖の増加またはCD1+ 標的細胞のT細胞を介する細胞溶解が起これば、CD1により提示される抗原の存在と相関する。関連する一つの態様においては、本発明は、試料がCD1ブロッキング物質、即ちCD1拘束性抗原提示を阻害する組成物を含むか否かを判定する方法を提供する。この関連態様においては、上述のCD1により提示される抗原の測定は2重に行われ、第1の(対照の)測定は上記のように行い、そして第2の測定はさらにCD1ブロッキング物質を含むと思われる試料を加えて行う。試料中にCD1ブロッキング物質が存在すると、第2の測定におけるT細胞増殖性応答または細胞溶解性応答が第1の測定で得られたものよりも小さいことと相関する。
【0031】
本発明はさらに、CD1+ 抗原提示細胞(APCs)を生成させるために、単球のような細胞中でCD1発現を誘導する方法を提供する。一つの方法では、1種以上のサイトカインと血液の単球を接触させることにより、単離されたこの細胞中でCD1発現が誘導される。CD1誘導のためのサイトカインとしては、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−4と組み合わせたGM−CSF、またはインターロイキン−3が好ましい。CD1+ APCsは、CD1タンパク質を発現しそして表出する細胞であり、従ってDNα:βTCR T細胞に対するCD拘束性抗原を提示する能力を有する。CD1+ APCsは本明細書に開示される方法の幾つかで使用されている。
【0032】
本発明はさらに、本明細書に開示される方法で使用するためのCD4- - (DN)α:βTCR T細胞を提供する。(DN)α:βTCR T細胞はCD1結合抗原を認識(即ち特異的に結合)し、そして該認識の結果として増殖する。本明細書には、DN1、DN2およびDN6と名付けられたこのような単離された細胞株3株が記載されている。
【0033】
本発明はさらに、CD1により提示される抗原を試料から単離する方法を提供する。そのような方法の一つでは、CD1により提示される抗原を含む試料をまず通常の技術を用いて分画する。ついで、その結果得られる画分を本明細書に開示される手順を用いてCD1により提示される抗原が存在するか否かをテストする。ついで、CD1により提示される抗原を含む画分はワクチンの開発に用いられるか又はより高純度のCD1により提示される抗原を得るためにさらに分画される。
【0034】
本発明はさらにCD1により提示される抗原を試料から単離する別の方法を提供する。この方法は単離されたCD1または細胞表面で発現されたCD1と結合するCD1により提示される抗原の能力に依存する。そのような方法の一つでは、CD1により提示される抗原を含む試料をCD1+ APCsまたは精製されたCD1分子のいずれかとインキュベートする。ついで、その結果生ずる抗原:CD1+ APCs複合体または抗原:CD1分子複合体を試料から取り出し、CD1分子が結合しているCD1により提示される抗原を放出する条件の下に置く。ついで、放出されたCD1により提示される抗原を精製してCD1+ APCsまたは精製CD1分子を除き、さらに通常の免疫学的、生化学的および/または遺伝学的方法を用いて特性を調べる。ついで、精製されたCD1により提示される抗原、またはそれらの合成によるもしくは遺伝子工学的に作られた誘導体を本明細書に開示される手順でCD1により提示される抗原の活性を測定し、そして、ワクチンの処方に用いられてもよい。
【0035】
CD1により提示される抗原を単離する上記の手順を用いて、本発明はさらに本明細書に開示される方法によって調製された、単離されたCD1により提示される抗原を提供する。これらの開示される方法によって調製されるCD1により提示される抗原は、CD1により提示される抗原の性質の特性を明らかにするために、ワクチンの開発または処方のために、あるいは自己免疫治療の開発のために使用することができる。
【0036】
本発明はさらに、CD1媒介抗原提示が自己免疫疾患の増悪の根拠として役立ち得るという観察に基づく。この観察に基づき、本発明はCD1+ APCによりCD1媒介抗原提示を阻害する方法および手段を提供する。CD1媒介抗原提示は本明細書に記述されるまたは本発明の方法によって単離されるさまざまな組成物により阻害することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
好適な態様の説明
用語
抗原:(1)動物における免疫応答を誘導するとともに、(2)その動物の免疫系の1つ以上の抗原認識成分と特異的に相互作用を示す分子または組成物。
【0038】
外来抗原:正常健康動物にとって内因性でない抗原。
【0039】
自己免疫抗原:特定の自己免疫疾患における抗原であって、動物体内の正常内因性分子または組成物である抗原。「自己抗原」および「自家抗原」と同義。
【0040】
CD1により提示される抗原:CD1ファミリーのタンパク質の1メンバーによって結合され、CD1+ APCの表面上に表出される抗原。CD1により提示される抗原は起源およびそれらを認識するCD1ファミリーのメンバーによってサイズと組成が異なる。本明細書で使用する場合、「CD1により提示される抗原」という用語は、本明細書中で同定される抗原および本明細書に開示される手順を用いて単離される抗原の両方または一方を含む。「CD1拘束性抗原」と同義。「CD1結合抗原」とは、適当なCD1分子に結合しているCD1により提示される抗原をいう。
【0041】
CD1ファミリーのタンパク質:構造、免疫学的交差反応性、および/または分布に基づき既知のCD1分子と関連していることが確認されるタンパク質の1群。ある特定のCD1タンパク質を、CD1ファミリーのタンパク質のメンバーということもできる。CD1ファミリーのタンパク質のメンバーとしては、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、およびCD1eなどが挙げられるが、これらに限定されない[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Immun. Rev. 120:137-183 (1991)参照]。
【0042】
CD1陽性細胞:CD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現し、表出する細胞。「CD1+ 細胞」と同義。当該分野に熟練せる者であれば、本明細書で説明する手順または当該分野において既知の手順を用いて、ある細胞がCD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現しているかどうかを判定することができる[実施例1およびポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Immun. Rev. 120:137-183 (1991)参照]。
【0043】
抗原提示細胞(APC):タンパク質担体を介して表面上に抗原分子を表出し、T細胞に対して抗原を提示する細胞。抗原結合タンパク質担体としては、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、およびCD1分子などが挙げられ、対応するAPCはMHCI+ APC、MHCII+ APC、およびCD1+APCと呼ばれる。
【0044】
CD1拘束性T細胞:CD1に結合したCD1により提示される抗原を認識しうる成熟末梢血TCR陽性(TCR+ )リンパ球。CD1拘束性T細胞の定義は、CD1に結合したCD1により提示される抗原と相互作用を示すT細胞サブセットに限定されているので、その定義は当該分野で認められているT細胞の定義より狭い。本発明の好ましいCD1拘束性T細胞はCD4-- であることを特徴とする。
【0045】
CD4- - T細胞:CD4とCD8を発現しない成熟末梢血TCR+ リンパ球。「二重陰性T細胞」および「DN T細胞」と同義。CD4-- T細胞を同定する技術は当該分野において既知であり、たとえば実施例1および既報[パンチョムーシーら(Panchomoorthy, G., et al.)、J. Immuno. 147:3360-3369 (1991)]に記載されているようにしてフローサイトメトリーを用いて本発明に容易に使用することができる。このような手順を用いて、DN1、DN2、およびDN6という3つのCD4-- T細胞株が単離されているが、これらについても本明細書で説明する。DN6の方が良好な成長率を示すという点を除けばDN2とDN6は同等であると思われる。
【0046】
アジュバント:抗原とともに動物に導入されるとその抗原に対する免疫応答を強化する分子または組成物。
【0047】
遺伝子操作を受ける:遺伝子変化を導入する目的で人為的操作に付すこと。
【0048】
試料:本明細書に開示する手順を用いて試験することができる溶液、乳剤、懸濁液、または抽出物。試料は可溶性抽出物または有機抽出物であってもよいが、これらに限定されない。実施例1と2にミコバクテリウム ツベルクロシスから得られる様々なタイプの試料を示す。
【0049】
接触:ある対象物を別の対象物の存在下でインキュベートする過程。したがって、ある細胞を試料と接触させるということは、その細胞をその試料とともにインキュベートするということである。
【0050】
分画:試料を、限定されないが、サイズ、電荷、溶解度、組成などの物理的または化学的性質に基づき、その成分を分離する条件または手順に付すこと。分画手順の例としては、選択的沈殿、有機抽出、サイズ排除透析またはクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
発現:DNA分子の転写によって対応するmRNA分子ができ、それがリボソームおよび関連細胞性因子によってポリペプチドへと翻訳されることによって遺伝子産物ができる過程。
【0052】
表出(Displaying) :タンパク質またはタンパク質:抗原複合体が第2の細胞または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場である細胞最外面にタンパク質またはタンパク質:抗原複合体が局在化される過程。タンパク質またはタンパク質:抗原複合体は、細胞の最外面に存在しているという理由で第2の細胞および/または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場合にその細胞によって表出されるという。
【0053】
抗原のプロセシング:表出能を示すようにするために細胞性因子によって抗原が処理される過程。
【0054】
CD1ブロッキング剤:CD1により提示される抗原とCD1の相互作用をブロックする能力またはCD1:抗原複合体とそれらのコグネートT細胞受容体の相互作用をブロックする能力を有する組成物または化合物。ブロッキング剤としては、(1)CD1と結合する薬剤、(2)CD1により提示される抗原と結合する薬剤、(3)CD1:抗原複合体と結合する薬剤、(4)CD1:抗原複合体を認識するT細胞受容体と結合する薬剤、および(5)CD1により提示される抗原のプロセシングを防止する薬剤などが挙げられる。
【0055】
本発明は、CD1分子がT細胞に対する抗原を提示する機能を果たすという予想外の新知見に基づくものである。本発明はさらに、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)やインターロイキン−4(IL−4)などのサイトカインと接触させることによってCD1を発現させるように誘導することでT細胞に対する抗原提示の応答能を細胞にもたせることができるというという知見に基づくものである。これら2つの知見に基づき、本発明は、試料がCD1により提示される抗原を含んでいるかどうかを判定する様々な方法、CD1により提示される抗原を単離精製する方法、本明細書に開示する方法によって単離された精製CD1により提示される抗原、ならびにCD1により提示される抗原の同定、単離、および精製に使用することができるCD1陽性細胞を単離する方法を開示するものである。
【0056】
1つの態様においては、本発明は、試料がCD1により提示される抗原を含んでいるかどうかを判定する方法を提供する。1つのそのような方法においては、試料中のCD1により提示される抗原の存在は、まず試料をCD1陽性細胞と接触させ、次いでその第1段階の細胞をT細胞と接触させた後、T細胞の増殖を測定することによって判定することができる。
【0057】
T細胞のクラスをキャラクタライゼーションする方法およびT細胞の亜集団を単離する方法が記載されている[ワイソッキとサトー(Wysocki, L.J., and Sato, V.L.)、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 75:2844:2848 (1978);ワシクとモリモト(Wasik, M.A., and Morimoto, C.)J.Immunol. 144:3334-3340 (1990);ハリマンら(Harriman, G.R., et al.)、J. Immunol. 145:4206-2414 (1990);コウロバら(Koulova, L., et al.)、J. Immunol. 145:2035-2043 (1990);スチュワードとメイル(Steward, M., and Male, D.)、Chapter 25 in Immunology, 2d Ed., Roitt, I., et al., eds., Gower Medical Publishing, London, New York, 1989]。イン・ビトロでT細胞を培養する方法、およびT細胞をミエローマなどの非生育制限細胞と融合させて不死化させる方法が記載されている[パウルら(Paul, W.E., et al.)、Nature294:697-699 (1981);ウイリアムス(Williams, N.)、Nature 296:605-606 (1982)]。CD4-- T細胞を同定する技術は当該分野において既知であり、たとえば実施例1および既報[パンチョムーシーら(Panchomoorthy, G., et al.)、J. Immuno. 147:3360-3369 (1991)]に記載されているようにしてフローサイトメトリーを利用して、本発明に使用することができる。本発明は、T細胞集団を強化することでCD1により提示される抗原に対して反応性を示す単離T細胞クローンを得る方法を提供することによって、これらの技術をさらに進歩せしめるものである。T細胞の集団を細胞分裂させ、CD1+APCおよびCD1により提示される抗原の存在下の増殖の有無に基づき、またはCD1により提示される抗原の存在下でのCD1分子を発現するトランスフェクト細胞に対する細胞傷害性活性の有無に基づき、混合T細胞亜集団を単離する。このような手順を用いて、DN1、DN2、およびDN6という3つのCD4-- T細胞株を単離したが、これらについて本明細書で説明する。DN6の方が成長率が高いという点を除けば、DN2とDN6は同等であると思われる。
【0058】
本発明はさらに、細胞上にCD1発現を誘導する方法を提供する。1つのそのような方法においては、細胞を1つ以上のサイトカインと接触させることによってCD1の発現を誘導することができる。好ましいCD1誘導用サイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、GM−CSFとインターロイキン−4(IL−4)を組み合わせたもの、あるいはやインターロイキン−3(IL−3)である。実施例1は、10%ウシ胎仔血清を加えたRPMI−1640培地中で単球をそれぞれ100単位のGM−CSFとIL−4に60時間接触させることによって、CD1ファミリーの様々なメンバーを発現するよう誘導することができることを開示している。当該分野に熟練せる者であれば、本明細書で開示する方法と材料を用いて、接触工程がCD1発現の誘導に十分である場合に、接触時間、サイトカインのタイプと濃度、および接触条件を変更して同様の結果を容易に得ることができる。
【0059】
当該分野においてはT細胞増殖を判定するいくつかの手順が既知であり、上記方法に使用することができる。当該分野に熟練せる者であれば、このような手順を本発明における使用に適応させることが容易に可能である。実施例1で説明する1つのそのような手順では、液体シンチレーションおよび既報[モリタら(Morita, C.T., et al.)、Eur. J. Immunol. 21:2999-3007 (1991)]に記載の方法によって3 Hチミジンの取り込み率を測定する。
【0060】
本発明はさらに、試料からCD1により提示される抗原を単離する方法を提供する。1つのそのような方法においては、試料をまず常法を用いて分画する。次いで、上記で概説したようにして、試料の画分にCD1により提示される抗原が含まれているかどうかを調べる。実施例2と3は、クロロホルム:メタノールによる有機抽出とケイ酸クロマトグラフィーを用いてM.ツベルクロシス抽出物含有試料を分画することでCD1により提示される抗原を精製する分画手順について説明している。
【0061】
本発明はさらに、CD1により提示される抗原へのCD1結合の特異性に基づきCD1により提示される抗原を単離する方法を提供する。1つのそのような方法においては、まずCD1により提示される抗原を含有する試料を精製CD1またはCD1を発現し表出する細胞(「CD1+ 細胞」)と接触させる。次いで、生じた抗原:CD1複合体または抗原:CD1+ 細胞複合体を試料から分離する。この手順を用いて、精製された抗原:CD1複合体または抗原CD1+ 細胞複合体が得られる。CD1により提示される抗原をさらに精製するためには、いずれかのタイプの複合体をCD1結合抗原のCD1分子からの遊離に適した条件下で処理する。
【0062】
当該分野の熟練者であれば、上記2つの単離方法を組み合わせて別のCD1により提示される抗原の単離方法を確立することができる。1つのそのような組み合わせにおいては、CD1に対するCD1により提示される抗原の結合に基づく精製方法を実施する前に、上記のようにして試料を分画する。
【0063】
本発明はさらに、本明細書に開示する手順を用いて同定または単離されるCD1により提示される抗原を提供する。MHCにより提示される抗原とは異なり、CD1により提示される抗原はポリペプチドではない。実施例2〜4で詳細に説明している1つのCD1により提示される非ペプチド抗原は、M.ツベルクロシスから単離されたミコール酸を含んで成るリピド抗原である。実施例5と6で説明している別のCD1により提示される抗原はさらに複雑なリピドである。このような抗原はワクチンの処方と開発に用途がある。
【0064】
本発明のCD1により提示される抗原(本明細書に開示する手順を用いて同定または単離されたもの)はワクチンとして容易に使用できる。当該分野の熟練者であれば、通常の処方方法を用いてワクチン用単離CD1により提示される抗原を処方することができる[Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, A.R., ed., Mack, Easton, 1990;The Pharmacologist Basis of Therapeutics, 7th Ed.,Gilman, A.G., et al., eds., MacMillan, New York, 1985参照]。
【0065】
本発明のCD1により提示される抗原は、本明細書に開示するようにして広範囲の純度に精製することができる。当該分野の熟練者にとっては、様々な精製方法を用いて、目的に必要な程度まで精製されたCD1により提示される抗原を得る手段が公知である。
【0066】
本発明のワクチンは、精製されたCD1により提示される抗原を用いて処方することができる。また、CD1結合抗原を用いて処方することもできる。CD1拘束性抗原は抗原とCD1の複合体としてT細胞に提示されるので、場合によっては抗原:CD1複合体の使用によってさらに優れた免疫特性を得ることができる。
【0067】
本発明はさらに、T細胞に対するCD1拘束性抗原提示の阻害物質すなわちCD1ブロッキング剤の測定方法を提供する。1つのそのような方法においては、CD1ブロッキング剤を用いてCD1拘束性抗原がCD1に結合する能力をブロックすることによってCD1抗原の提示を阻害する。本明細書で使用する場合、(1)CD1分子に対するCD1により提示される抗原の結合または(2)コグネートT細胞受容体へのCD1:CD1により提示される抗原複合体の結合を低下させる場合に、CD1ブロッキング剤が「CD1拘束性抗原提示を阻害する」という。そのような結合を検出不可能なレベルまでブロックしうるCD1ブロッキング剤もあれば、そのような結合をわずかしか低下させないCD1ブロッキング剤もある。CD1ブロッキング剤としては、(1)CD1と結合する薬剤、(2)CD1により提示される抗原と結合する薬剤、(3)CD1:抗原複合体と結合する薬剤、および(4)CD1:抗原複合体を認識するT細胞受容体と結合する薬剤などが挙げられる。それぞれのブロッキング剤の具体例としては、(1)CD1により提示される抗原と結合するCD1分子の一部分に結合してそれをブロックするポリクローナルまたはモノクローナル抗体、(2)CD1と結合するCD1により提示される抗原の一部分に結合してそれをブロックするポリクローナルまたはモノクローナル抗体、(3)T細胞受容体のCD1:抗原結合部分に由来する合成オリゴペプチドであって、無傷のT細胞受容体によって結合されているCD1:抗原複合体の一部分に結合してそれをブロックするもの、および(4)精製CD1分子またはその合成誘導体に化学的に結合させたCD1により提示される抗原から成る合成化合物などが挙げられる。
【0068】
CD1拘束性抗原の抗原提示を阻害する別の方法においては、抗原:CD1複合体とT細胞上のTCR分子との相互作用をブロックするCD1ブロッキング剤を用いることができる。提示段階を阻害することによって、特定のT細胞サブセットの活性化を阻害することができる。TCR分子由来ペプチドを用いて自己免疫疾患(MS)患者を治療するパイロット試験が進行中である[オクセンベルグら(Oksenberg, J.R., et al.)、J. Neurol. Sci. 115 (Suppl.):S29-S37 (1993)]。本発明のCD1により提示される抗原を認識するT細胞によって表出されるTCRポリペプチドをコードするDNA分子は当該分野において既知の方法によって単離される[オクセンベルグら(Oksenberg, J.R., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86:988-992 (1989);オクセンベルグら(Oksenberg, J.R., et al.)、Nature 345:344-346 (1990)および正誤表、Nature 353:94 (1991);ウエマツら(Uematsu, Y., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88:534-538 (1991) ;パンザラら(Panzara, M.A., et al.)、Biotechniques 12:728-735 (1992);ウエマツ(Uematsu, Y.)、Immunogenet. 34:174-178 (1991)]。DNA配列をポリペプチド配列に変換し、TCRポリペプチドの抗原結合可変領域に対応するポリペプチド配列の一部を用いて、APC上のCD1:抗原複合体と結合し、それにより抗原提示を阻害する合成オリゴペプチドを設計する。オリゴペプチドは常法[スチュワードとヤング(Steward and Young)、Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Co., Rockland, Illinois, 1985]に従い化学的に合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって反応混合物から精製する。付加的にあるいは代替的に、抗TCR抗体および抗TCR結合ペプチドを作成する方法もMHC提示に関しては当該分野において公知であり、本明細書に開示するCD1提示方式に容易に適応させることができる[ストロミンジャー(Strominger, J.L.)、Cell 57:895-898 (1989);デービスとブジョルクマン(Davis, M.M., and Bjorkman, P.J.)、Nature 334:395-404 (1989)]。
【0069】
当該分野の熟練者であれば、公知の抗体作成方法ならびに妥当なブロッキング剤デザインを利用して、本発明のブロッキング剤を容易に得ることができる[ハーローとレーン(Harlow, E., and Lane, D.)、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 1988;Synhtetic Peptides: Answers Guide, Freeman, W.H., New York, 1991;カスプルザク(Kasprzak, A.A.)、Biochemistry 28:9230-9238 (1989)]。付加的にあるいは代替的に、分子量的に多様な分子のライブラリーをスクリーニングして、CD1ブロッキング剤である個々のメンバーの分子を検出することができる。CD1介在T細胞増殖性応答と細胞傷害性応答の両方または一方を阻害する能力に基づき、本明細書に説明する材料と方法を用いて、有効なCD1ブロッキング剤を同定することができる。
【0070】
上記本発明の態様は、単独で、または互いに組み合わせるか、他の補足的方法および/または組成物と組み合わせて、目的の用途に使用することができる。
【0071】
当該分野に熟練せる者であれば、以下の実施例を参照することによって本発明の実施手順と方法をさらに詳細に理解できるが、これらの実施例は本発明の範囲および本発明に係る請求の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1: CD1b による抗原提示
方法
流動血球計算は、下記のモノクロナール抗体(mAbs)を用いて既報に記載されているような(パンチャモオルシィー(Panchamoorthy, G.)ら、J. Immunology 147:3360-3369 (1991))方法で実施された:P3 (IgG1 コントロール; パンチャモオルシィー(Panchamoorthy, G.) ら、J. Immunology 147:3360-3369 (1991)) 、OKT6 (anti-CD1a;ラインハーツ (Reinherz, E.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77:1588-1592 (1980)), 4A7.6 (anti-CD1b;オリーブ (Olive, D.)ら、Immunogenetics 20:253-264 (1984)), 10C3 (anti-CD1c;マーチン (Martin, L.H)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 84:9189-9193 (1987)), W6/32 (anti-HLA-A,B,C; ブロドスキー(Brodsky, F.M.) およびパーハム (Parham, P.P.) J. Immunology 128:129-135(1982)),BMA031 (anti-α: βTCR;ラニエル(Lanier, L.L.)ら、in Leukocyte Typing III, McMichael, A.J., ed., pp. 175-178、Oxford University Press, 1987), OKT4 (anti-CD4; ラインハーツ (Reinherz, E.) ら、Proc. Natl. Acad Sci. (USA) 77 :1588-1592 (1980)), OKT8 (anti-CD8α: ラインハーツ (Reinherz, E.) ら、Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 77:1588-1592 (1980))および 2ST8-5H7 (anti-CD8β; シューエ (Shiue, L.)ら、J. Exp. Med. 168:1993-2005 (1988) )。
【0073】
単球を正常なドナーの濃縮白血球からプラスティック接着により単離した( アネゴン(Anegon, I.)ら、J. Immunology 147:3973-3980 (1991), そして 0.53 mM EDTA を含む燐酸緩衝食塩水 (PBS) (PBS/EDTA) の中で 37 ℃下でインキュベートすることにより分離した。接着細胞は通常>90% CD14+ および MHC classII+ であり、又表面染色により CD1a, CD1b および CD1c に対して陰性であることが判った( データは示されていない) 。CD1 発現を誘発する為に、単球を 1ml当たり 100単位の GM-CSF および IL-4 (Genetics Research Institute)をそれぞれ含む10%仔牛胎児血清 (FCS, Hyclone) を含む RPMI-1640(Gibco) の中で60時間培養した。細胞は上記のように PBS/EDTA を用いて採取した。
【0074】
T細胞株 DN1は、無作為に選ばれた正常ドナーの抹消血液から確立した。非接着性の単核球細胞を mAbs OKT4および OKT8 およびうさぎの補体を用いて処理し、そして残りの生存細胞をOKT4 mAb(anti-CD4)、OKT8 mAb (anti-CD8α) およびanti-TCRδ1 mAb(ポルセリー(Porcelli,S.) ら、Immun.Rev.120:137-183(1991))の混合物の中に1時間懸濁し、洗浄し、そしてやぎの抗マウス免疫グロブリンと結合した磁気ビーズ(Dynal) を用い4℃で30分間インキュベートした。CD4+ および/又は CD8+ および/又はδ -TCR 細胞の磁気分離および除去の後に、残りのCD4-- α: βTCR + 細胞を1ml当たり 100単位のGM-CSFおよびIL-4をそれぞれ含む完全媒地 (10% FCS およびモリタ (Morita, C.T.) ら、により以前に記載された追加の添加物 (Eur. J. Immun. 21:2999-3007 (1991)を含む RPM-1640)の中の同数の自己由来単球と共に培養された。脱湿された桿菌 (H37Ra 株(Difco))をPBS の中で超音波処理し、ついで超音波被処理物を透明化する (即ち、不溶物質を除去する為に) 為に 100,000g で遠心分離することにより作られたM.ツベルクロシス可溶性抽出物が加えられて10μg/mlのバクテリアタンパク質濃度にされた。超音波処理のプロセス中にCHAPS 又はオクチルグルコシドのような界面活性剤を加えることにより、M.tb.の可溶水性超音波被処理体から可溶性の更に高い抗原性 (即ちT細胞増殖性の) 活性が得られる;上記の界面活性剤を加えることがなければ超音波処理後の清澄化中に抗原性の活性の 90 から95% が失われる。培養物は、10日から14日毎に完全媒地中のM.ツベルクロシスおよび異種 CD1+ 単球 (上述のように CD1を発現するように誘発された) を用いて改めて刺載を与え、そして3日から4日毎に 1nM組換えインターロイキン-2 (IL-2) を含む新鮮な媒地を補給した。
【0075】
T細胞増殖応答測定はそれぞれ 5×104 のT細胞および 96 ウエルの平底マイクロタイタープレート (Linbro) の中の完全媒質 200μlの中の照射された (5,000 Rad)APCs を用いて3重に実施された。M.ツベルクロシスに関して記載されたと同様に、M.レプレ( leprae )およびエシェリヒア・コリ( Escherichia coli )可溶性抽出物が作られた。モノクロナール抗体を精製免疫グロブリンとして 25 μg/mlの最終濃度で加えた。培養物を、 1μCi3H−チミジン (6.7 Ci/mmol, New England Nuclear) による6時間のパルスの後5日目 (mAb ブロッキングの場合には3日目) に採取し、そして 3H の取り込みを液体シンチレーションカウンティングにより測定した。結果は、3つの培養物の 3H −チミジン取り込みの1分当たりの平均カウント (CPM)として表した。取り出された単球又は全抹消血液の単核球細胞 (PBMCs)は、上述のように組換え GM-CSF および組換え IL-4 により或は IFNγ 100単位/mlを用いて60時間処理した後、それらをT細胞と組み合わせて増殖測定に使用された。T細胞クローンDN1.C7 は、限界希釈培養する際にフィトヘマグルチニン (PHA)刺激によりDN1 から誘導され、そして上述のように PHA刺激および IL-2 を用いて増殖せしめられた4つの広汎に特性化されたサブクローンの代表である。 (Morita, C.T.) ら、Eur. J. Immun. 21:2999-3007 (1991)。 DN1株から誘導されたすべてのクローンは、図 1b に示されたもの、即ち、α: βTCR 発現、CD4 の発現不能および CD8の最小発現又は発現不能とは識別出来ぬ表面表現型を持っていた。
【0076】
T細胞の細胞溶解性応答測定は下記のように行われた。C1R 細胞のトランスフェクションの方法および 51Cr 放出による特異的細胞溶解活性の測定方法は既に報告されている。それぞれ、バルク (Balk, S.P.) ら、Science 253:1411-1415 (1991) およびモリタ (Morita, C.T.) ら、Eur. J. Immun.21:2999-3007 (1991)。CD1aを示す細胞を溶解させるα: βTCR細胞障害性T細胞クローンである BK6は上述のような SLEを持つ患者の血液から単離され( ポルセリー(Porcelli, S.)ら、Nature 341:447-450 (1989))、そしてCD1cを示す細胞を溶解させるα: β TCRを細胞障害性T細胞クローンであるクローン 3C8は同じ方法を用いて正常なドナーの血液から単離された。トランスフェクトされた細胞は、 51Cr で標識されそして約 50:1 のエフエクター (T細胞) 対ターゲット (トランスフェクトされた細胞) 比で細胞溶解測定にターゲット細胞として用いられた。51Cr放出の測定法および比溶解パーセンテージを計算する方法は記載されている。ブレンネル(Brenner, M.B.)ら、Nature 325:689-694 (1987) 。
【0077】
T2細胞の安定なトランスフェクタントを、 C1R細胞に対して記載された方法を用いて作られた。バルク (Balk, S. P.)ら、Science 253:1411-1415 (1991)。グルタルアルデヒド固定およびクロロキン実験の為の APCs は、上述のように GM-CSF 処理された PBMCsおよび IL-4 処理された PBMCsであり、そして APCs のグルタルアデヒド固定およびクロロキン処理は公表された方法によって行った。チェスナット (Chesnut, R. W.)ら、J. Immun. 129:2382-2388 (1982); ロンカルオロ (Roncarolo, M. G.) ら、J. Immunol. 147:781-787 (1991)。CD4 + T 細胞株 DG.1 は、滑液リンパ球を自己由来の EBV- 形質転換された B 細胞およびM.ツベルクロシスの精製タンパク質誘導体 (PPD, Statens Serum Institute; データは示されていない) で反復刺激された HLA-DR7+ リューマチ性間節炎患者由来のものであった。増殖性応答測定は上述のように行われたが、但しこの場合にはウエル毎に 2×105 のAPCsが加えられ、そして3H−チミジンの取り込みは3日後に測定された。
【0078】
結果
CD1分子による抗原提示を検出するために、通常は有意なレベルのこれらの分子を発現せぬ末梢血液単球について CD1a, CD1b および CD1c の発現を誘発する各種の組替えサイトカインの能力を評価した。Leukocyte Typing IV, Knapp, W., ed., Oxford University Press, Oxford, U.K., pp. 251-269, 1989。CD1a, CD1bおよび CD1c の高レベルが、顆粒球/単球コロニー刺激因子 (GM-CSF) とインターロイキン-4 (IL-4) を組合わせて培養された際の単球において一貫して観察された( 図 1a)。上記の代わりに、 GM-CSF を単独で使用することが出来るが、この場合には GM-CSF と IL-4 の組合わせの場合と比較してCD1 発現の得られたレベルは幾らか低い。インターロイキン-3 (IL-3) も又単独又は他のサイトカインとの組合わせで用いることが出来る。サイトカインなしで培養された単球又はインターフェロン- γと共に培養された単球は、有意のレベルでは CD1a, CD1b 又は CD1c を発現しなかった (データは示されない) 。
【0079】
単球は有効な抗原提示細胞 (APCs) であるから、我々は CD1+ 単球は、外因性抗原に対する CD1拘束性T細胞応答を刺激するのではないかと考えた。今日まで同定された大抵のCD1特異的T細胞はダブルネガティブ(DN;CD4 --)表現型(ポルセリー (Porcelli, S.) ら、Nature 341:447-450 (1989);ファウレ (Faure, F.)ら、Eur. J. Immun.20:703-706(1990) )であるから、我々はこの細胞の集合に注目し、そしてα: βTCR +CD4-- T細胞の末梢血液をM.ツベルクロシスの可溶性抽出物および異種CD1+ 単球の可溶性抽出物で反復刺激することによりT細胞株を作り出した(図 1b)。
【0080】
得られたT細胞株 (DN1 と称される) の機能を調べると、これらのT細胞はM.ツベルクロシスからおよび密接に関連を持つ M. レプレ桿菌由来の抗原に対しては特異的増殖性応答を示したが、しかし E. coli由来の抗原や破傷風毒素のような関係のない細菌性抗原には該応答を示さなかった (図 2a)。これらの応答はGM-CSFおよび IL-4 ( 図 2b)により予め処理されている単球に依存しており、そして多形性 MHC決定基により拘束されることはなかった (図 2c)。この MHC拘束性の欠如は、非 MHC分子による抗原提示上の拘束性と一致した。CD1 分子がM.ツベルクロシス抗原提示に必要であるか否かを決定する為に、 CD1分子又は MHC分子に特異的なモノクロナール抗体(mAbs)のM.ツベルクロシスにより誘発されるT細胞株 DN1および代表的なサブクローン、DN1. C7 の増殖に対する効果を測定した。anti-CD1b mAb はM.ツベルクロシスにより誘発される増殖性応答の有意な遮断を示すに過ぎず、又 anti-CD1a mAb又は CD1c mAb 又は MHCクラスI又はクラスII分子の単形性決定基に対する mAbを使用しては一貫性のある効果は認められなかった (図 2d)。
【0081】
B細胞トランスフェクタントは α: β TCR CD4- 8 -細胞溶解性T細胞活性に対する有効なターゲットである。Bリンパ芽球様細胞株 C1R (ゼンモール (Zenmour, J.)ら、J.Immun. 148:1941-1948 (1992))を用いることにより、同等のレベルで CD1a, CD1b 又は CD1c を発現し機能する安定なトランスフェクタントが作り出され、そして細胞溶解性測定に於いてM.ツベルクロシスを提示するそれらの能力がテストされた。CD1bをコードする DNA配列を用いてトランスフェクトされ、かつ側定前にM.ツベルクロシスと共にインキュベートされた C1R細胞のみが、α: β TCR DN T細胞株DN1 およびそのサブクローン DN1. C7により溶解された (図 4a および b) 。このCD1b拘束性応答の特異性はM.ツベルクロシス抗原に暴露されることなく分裂誘発因子刺激により誘導された2つのコントロール CD4- 8 - α: β TCR+ T細胞クローン、BK6 および 3C8を用いて確認された。既報の報告はBK6および 3C8はそれぞれ CD1a および CD1c を発現するターゲット細胞株を溶解することを実証している( データは示されない) 。この開示の行われる以前に記載されているすべての他の CD1反応性T細胞クローンに関しては(ポルセリー(Porcelli, S.) ら、Nature 341:447-450 (1989); ファウレ (Faure, F.)ら、Eur. J. Immun. 20:703-706 (1990); バルク (Balk, S.P.) ら、Science 253:1411-1415 (1991))、これらのクローンは自己反応的であると考えられ、外因性の抗原の存在せぬ場合には自己の非多形性CD1 リガンドを認識する。予想される通り、クローン BK6および 3C8はそれぞれCD1a 又は CD1c を発現する C1Rトランスフェクタントのみを溶解した。そしてこの溶解は、ターゲット細胞をM.ツベルクロシスと予めインキュベートすることによって有意な影響を受けなかった(図 4c および d) 。
【0082】
既報の実験により実証された MHC拘束性の欠如から、 MHCにコードされた抗原提示分子は、DN1株に対するM.ツベルクロシス抗原の CD1b 拘束性提示には関与していないと主張された。この仮説を更に厳密に裏付けるものとして、両 MHC位置に広汎な染色体の欠失を与えた結果、 MHCクラスII分子の発現が完全に欠如しているT2細胞株のCD1bトランスフェクタントが形成された。サルター(Salter, R.D.)ら、Immunogenetics21:235:246 (1985); エルリッヒ (Erlich, H.) ら、Hum. Immun. 16:205-219 (1986) 。MHC によりリンクされたトランスポータ遺伝子TAP-1 および TAP-2 (パーハム (Parham, P.) Nature 357:193-194 (1992) の中でレビューされている) も又T2から欠落することにより、 MHCクラスI分子の発現と機能に欠陥をもたらす。ホスケン (Hosken, N.A.) およびビーバン (Bevan, M.) Science 248:367-370 (1990); ウェイ (Wei, M.)およびクレスウエル (Cresswell, P.)Nature 356:443-446 (1992) 。ところが CD1b がT2にトランスフェクトされると、細胞表面上に他のトランスフェクトされたB細胞株に見られるレベルと類似のレベルで CD1b を発現させ(データは示さない)、そしてM.ツベルクロシスを DN1株に提示するターゲット細胞を生成させた (図5a)。
【0083】
T細胞に対する外因性抗原の提示には一般に抗原提示細胞による複合タンパク質抗原分子の取り込みおよび処理を必要とするが、この処理は APC表面のアルデハイド固定によりおよびクロロキンのような好リソソームアミンによりブロックされる。ツェグラー (Ziegler, H.K.) およびウナニュエ (Unanue, E.R.) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:175-179 (1982);チェスナット (Chesnut, R.W.)ら、J. Immun. 129:2382-2388 (1982)。これらの基準により、M.ツベルクロシスのCD1b拘束性提示も又抗原の取り込みおよび処理を必要としていることが明かとなった。グルタルアルデヒドによる CD1b + APCsのゆるやかな固定は、それらのM.ツベルクロシス溶解性抗原の存在下での DN1株を刺激する能力を完全に消滅させたが、固定前にM.ツベルクロシスによりパルス処理された同じ APCs は、増殖性の応答を刺激する能力を保持していた (図 5b)。更に DN1株に対するM.ツベルクロシス抗原の提示は、クロロキンによりミコバクテリウム抗原の MHCクラスIIにより媒介される提示の阻害の場合と事実上同一の投与量依存性を以って強く阻害され (図 5c)、CD1b および MHCクラスII拘束性応答のための抗原の処理には同様の経路又は細胞内器官が関与することがあり、或は経路は一つ以上のクロロキン感受性の細胞因子を共有することを示している。T2細胞は最近、それが DMAおよびDMB 遺伝子を欠いている故に、MHC クラスII分子により提示される抗原の処理には欠陥を持つことが実証された(リバディー (Riberdy,J.M.) およびクレスウェル (Cresswell, P.) J. Immun. 148:2586-2590 (1992) )ことは興味のあることである。モーリス (Morris, P.) ら、Nature 368:551-554 (1994); フライング (Fling, S.P.)ら、Nature 368:554-558 (1994) 。この様に、CD1bをトランスフェクトされたT2細胞は、 DN1にM.ツベルクロシスを提示し得るという我々の実験結果は、抗原処理におけるCD1bおよびMHC クラスII分子の必要性はクロロキン感受性に関して類似しているものの、同じではないことを示唆する。
【0084】
幾人かの研究者達は、CD4 および CD8分子の両者の発現を欠くT細胞が古典的な MHCクラスIおよびIIの位置によりコードされるもの以外の細胞表面分子により提示される抗原を認識することが出来るのではと考えた。ポルセリー (Porcelli, S.) ら、Immun. Rev. 120:137-183 (1991); ジャンウエイ(Janeway, C.A. Jr.) ら、Immun. Today 6:73-76 (1988);ブルーストーン (Bluestone, J.A.) およびマチス (Matis,L.A.) J. Immun. 142:1785-1788 (1989) 。上記の結果は、CD1 ファミリの一つのメンバーである CD1b が MHC非拘束性CD4-8 - T細胞の外因性異種抗原に対する特異的応答を拘束することができることを実証するものである。他の CD1タンパク質と同様に、CD1bの重鎖はβ2-ミクログロブリンに非共有的に結合し (オリーブ (Olive, D.)ら、Immunogenetics 20:253-264 (1984)) そして両 MHCクラスIおよびII分子に対して限定されているが、しかし有意な配列の相同性を示す。カラビィ (Calabi, F.) およびミルステーン (Milstein, C.) Nature323:540-543 (1986);バルク (Balk, S.P.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA86:252-256 (1989)。CD1b のこれらの構造的な特徴は、抗原の認識における重要なその役割と共に、CD1bが MHCにリンクされていない遺伝子上の位置によりコードされている非多形性抗原提示分子であるという結論を支持する。
【0085】
これらの結果は正常な宿主を細菌性疾患から守る際のCD1 拘束性T細胞の役割の可能性を示す。上記の結果は、CD1 とMHCクラスII分子との間の機能的平行性を示唆する。何故ならば両者ともクロロキン感受性の経路を通じて処理された外因性抗原の提示を両者は媒介し、又両者は自己反応性T細胞のTCRsに対するリガンドとして作用することも出来るからである。ポルセリー (Porcelli, S.) ら、Nature 341:447─450(1989);グリムチャー(Glimcher, L.H.)およびシーバック(Shevach, E.M.) J. Exp. Med. 156:640-645 (1982) 。in vivo でのCD1 分子の限定された組織分布は更に MHCクラスIIファミリーとの類似性を明らかにする、何故ならばランゲルハンス細胞、リンパ様のおよび多くの他の組織の中の樹状細胞、8細胞および多分サイトカインにより活性化された単球を含むT細胞に対する抗原提示に関与する細胞タイプ上で両ファミリーのメンバーの発現が顕著に認められるからである。ポルセリー(Porcelli, S.)ら、Immun. Rev. 120:137-183 (1991)。上記と異なり、本明細書の記載のCD1 分子の構造的多形性欠如、それらの単球に於けるユニークなサイトカイン調整および CD1拘束性T細胞の CD4- 8 - 表現型は、 CD1とMHC の抗原提示システムを識別する為の重要な差異である。これらの差異は細胞を媒介させた免疫性に於ける CD1拘束性T細胞の明確な役割を指し示す。
【0086】
実施例2:非ペプチド抗原は CD1b により提示される
方法
CD1bにより提示された抗原は透析不能の巨大分子である( データは示さない) 。抗原性の高い( すなわちT細胞増殖性の) 活性は、M. tb.の可溶性水性超音波処理物から、超音波処理中にCHAPS 又はオクチルグルコシドのような界面活性剤を加えることにより、得ることが出来た(上記参照)。この結果はこの抗原が疎水性であることを示唆する。
【0087】
CD1により提示された抗原の化学的性質を明らかにする為に、ミコバクテリウム抗原を非病原性のM. tb.株 H37Ra (Difco)および M. フォルツイツム(fortuitum) ( 同様に抗原活性を含む急速に成長する株) から精製した。細菌は市販のもの(M. tb. H37Ra, Difco)か又は培養され採取されたもの(M. フォルツイツム) であり、超音波処理を行い逐次分画プロトコールを施し、そして生物学的活性を分析した。得られたすべての画分について、照射し、GM-CSF- 処理および IL-4-処理した単球を APCs として用い、かつ6時間のパルス処理での 3H-チミジンの取り込みを測定することにより5日間の増殖測定中にDNT細胞株DN1 を刺激するそれら画分の能力をテストした(ポルセリー (Porcelli, S.) ら、Nature 360:593-597 (1992) )。細胞壁、細胞膜並びに細胞原形質部分を公表されたプロトコールから採用された方法を用いて M. tb. 又は M. フォルツイツムの何れかから調製した。ハンター (Hunter, S.W.) ら、Journal of Biological Chemistry 265:14065-14068 (1990)。簡略に述べれば、細胞を凍結乾燥し、PBS /オクチルグルコシドの中に再懸濁し、20分間超音波処理を行い、そして分画超遠心分離を施すことにより細胞ゾル、細胞膜および細胞壁の各画分を調製した。細胞壁ペレットは分画スクロース勾配により更に精製した。3つの画分の特徴的な構造上の特性は電子顕微鏡を用いてネガティブ染色により確認された。 DN1細胞株に対する生物的活性の大部分は細胞壁画分内に存在した( データは示さない) 。
【0088】
CD1b 拘束性抗原がタンパク質であるか否かを直接評価する為に、抗原の一連のプロテアーゼ消化を実施した。限定されたアミノ酸特異性( キモトリプシン( 疎水性残基) 、トリプシン (lys, arg) および V-8 (酸性))、又は広汎なアミノ酸認識( ズブチリシン、プロテイナーゼ K、プロナーゼ) を持つ各種のエンドペプチダーゼを用い、M. tb.又は M. フォルツイツムの超音波処理物を消化し、ついでT細胞増殖性応答を誘発する能力を測定した。コントロールとして、この研究室で誘導されたミコバクテリウム PPD (精製されたタンパク質誘導体) の決定基を認識する DR7 拘束性の、CD4 + T細胞クローン DG.1 もテストした。SDS-PAGEによる分析およびその後の銀染色はV8プロテアーゼ、プロテイナーゼ K、プロナーゼ E 又はズブチリシンによる消化がミコバクテリウム抗原標品に含まれるタンパク質を分解することを実証した( データは示さない) 。
【0089】
結果
代表的な CD4+ MHC クラスII拘束性T細胞株である DG.1により認識されるM.ツベルクロシス抗原は、 V8 プロテアーゼ、プロテイナーゼ K、又はトリプシンによる処理により効力を失わされる( 図 6) 。図 6 に示すように、DG.1細胞はミコバクテリウムの超音波処理物の偽消化物に応じて強力に増殖したが、キモトリプシンを除き他のすべてのプロテアーゼ処理は増殖性応答を完全に停止した。
【0090】
上記に反し、CD1bにより株 DN1に提示されたM.ツベルクロシスおよびM.フォルツイツム抗原はこれらの広域反応性プロテアーゼによって影響されることはない( それぞれ図7 および図8)。CD1b により提示されたミコバクテリウム抗原はMHC クラスIおよびII抗原提示分子により提示されるものとは基本的に異なる。MHC 分子はクラスIに対して約 8-9アミノ酸の又クラスIIに対して 13-25アミノ酸のペプチド抗原と結合し、かつ提示することが充分確認されている。この CD1b により提示された抗原はプロテアーゼに対し耐性を持つ巨大分子である為にペプチドであるとは考えられない。この様にして CD1システムはペプチド以外の外来性物質をα: βTCR + T細胞に提示する最初の知られた抗原提示システムである。
【0091】
実施例3: CD1b により提示される抗原の精製
方法
M. フォルツイツムバクテリアを液体培養で定常期まで増殖させ、遠心分離により収菌し、スチーム(stream)オートクレーブ (250 ℃, 18 psi) により滅菌し、そして凍結乾燥した。脱湿された M. tb. (H37Ra株、Difco )又は M. フォルツイツムバクテリアを燐酸緩衝食塩水の中に懸濁し (5 mLPBS 当たり 200 mg バクテリア) 、そしてバクテリア懸濁液をプローブソニケータで超音波処理することにより細胞を破砕した。得られた超音波処理物は、ミコバクテリウムのリピドを定量的に有機相に抽出するFolch の2相抽出系( クロロフォルム/メタノール/水) の有機溶媒で抽出した。ゴレン (Goren, M.B.) およびブレンナン(Brennan, P.J.) ミコバクテリアリピド:Tuberculosis における化学および生物学的活性、1979。この超音波処理物をガラス容器の中で3倍容量のクロロフォルム:メタノール(2:1 v/v)溶液と混合し、この混合物を室温で24時間激しく撹拌した。混合物を800gの遠心分離により相分離し、そして有機相を集めてガラス沸騰フラスコに移した。各画分を次にロータリーエバポレーターにより乾燥し (有機相) 或は凍結乾燥した(水性相および界面相) 。蒸発後、有機相はフラスコの表面上に蝋性の物質の薄膜を残した。T細胞増殖測定においてテストされる材料を作る為に、各画分の分別部分に水を加え (最初の超音波処理物中のバクテリアの200 mg当たり 20 mL) 続いて水浴ソニケータでの超音波処理により各画分をリポソームとして再構成した。得られた粗懸濁液を次に 0.1 nm フィルタメンブランを反復して強制的に通すことにより均一なサイズのリポソーム懸濁液を作成した。あるいは、10%仔牛胎児血清を含むT細胞培地を乾燥画分に加え、追加的な処理を伴うことなく超音波処理を施した。
【0092】
上述のM.ツベルクロシスから抽出された物質をさらに精製するために、ヘキサンに溶かして珪酸のカラムにかけた。シリカカラム上で極性を増大させながら有機溶剤で溶出することにより、リピドがその極性に基づいて分離された。燐脂質のような極性の最も高いリピドはシリカカラムに最も強く結合する為に最後に溶出したのに対し、グリコリピドは一般に結合が強くなく早い時点で溶出する。トリグリセライド又はステロールのような中性脂質は結合が最も弱く、従って最初に溶出する。
【0093】
固相抽出(SPE) 小型開放カラム (BakerBond, JT Baker) は多くのサンプルを同時に処理することが出来る為に好まれた。シアン (CN) 官能基と (共有的に) " 結合" されたシリカをベースとするカラムがM. tb.の有機抽出物の分別に用いられた。バクテリアのクロロフォルム/メタノール抽出物の有機相を乾燥して、ヘキサン中に再懸濁した。200 μL ヘキサン中の脱湿バクテリアの 5.3 mg 当量を0.5 グラム CN SPE カラムに負荷した。カラムをヘキサンにより、ついでヘキサン中に25% (v/v) クロロフォルムを混入して洗浄した。次に生物活性画分をヘキサン中の 85% (v/v) クロロフォルムで溶出させ、生物活性を 100% 以上で回収した。クプケ及びツォイグナー(Kupke and Zeugner )の方法により(クリスティエ (Christie, W.W.) Lipid Analysis, 117 頁、Pergamon Press, Oxford, U.K., (1982))、シリカをベースとしたTLC プレート上での活性画分の分析によれば、リピドの2つの主要な種類のみが酢酸銅により可視化した( データは示されていない) 。これは遊離脂肪酸およびミコール酸に相当する。この結果は出発有機物質からの顕著な精製の反映である。
【0094】
増殖測定は2日目 (DG. SF68) 、3日目 (DG.1) 又は5日目 (DN1)に採取された。DG. SF68はこの研究室において作り出された Vγ2Vδ2 T細胞クローンである (PNAS印刷中、CM)。APCsはGM-CSFにより処理された単球および IL-4 により処理された単球 (DN1)又は PBMC (DR7+ ) (DG.1)であるか又は処理されぬ PBMC(DG. SF68) であった。細胞溶解測定は比溶解%として表され、そして上述のように実施された。ポルセリー (Porcelli, S.) ら、Nature 341:447-450 (1989) 。示されたデータ (図 9) は 50:1 のターゲットに対するエフェクタ比および 1:20 の希釈でのM.ツベルクロシス抗原を用いている。
【0095】
結果
M.ツベルクロシスの関連の抗原は H37Ra株 (Difco)の市販製剤から上述のようなクロロフォルムおよびメタノールの混合物中に抽出することにより単離される。界面相は95% 以上のタンパク質を含んでいるが、ミコバクテリウム抽出物のCD1b拘束性抗原活性 (即ちα: β TCR DN T細胞増殖性応答を誘導する能力) の100%が有機相中に含まれている (図 9a)。この事は関連バクテリア抗原の性質が非ペプチド性であるという当初の結論を強く支持するものである。これとは逆に、DNγ: δ TCR+ T細胞により認識される従来の MHCクラスIIに拘束性抗原は、水性相と有機相の界面の相中に存在した ( 図 9b)。しかし上記に反し、4つの独立した抗原製剤ではCD1b 拘束性抗原は定量的に有機相の中に分配された。これらの相のトランスフェクタント細胞溶解測定の結果により、CD1b により提示された抗原が有機相に存在することが確認された( 図 10)。
【0096】
これらの条件下では、ミコバクテリウムの CD1により提示される抗原の活性の100%がCN SPEクロマトグラフィーの後に定量的に回収された。更に有機相抽出は優れた精製ステップとして役立ち、そして有機相はその後のクロマトグラフィーの為の出発物質として用いられた。上記と別の幾らかより一般的な後続のクロマトグラフィーのための抗原精製手順は、バクテリア全体又は超音波処理されたバクテリアを鹸化し、そしてヘキサンの酸性溶液で抽出することである。抗原を更に精製することは上述のような珪酸クロマトグラフィーを用いて達成される。
【0097】
実施例4:ミコール酸は CD1b により提示される抗原である
方法
上記の結果、並びに活性が CN 修飾されたシリカ HPLC カラム上で遊離脂肪酸アシル鎖標品と共クロマトグラフされたことを示唆する予備データ (データは示されていない) から見れば、このCD1bにより提示される抗原はユニークなミコバクテリウムリピド、多分ミコール酸であると考えるのが妥当であろう。この点を解明する為に、 C18逆相カラムクロマトグラフィー上でミコール酸を分離するHPLC法を使用して、ミコール酸が作られた。バッテラー (Butler, W.R.) ら、Journal of Clinical Microbiology 23:182-185 (1986); バッテラー(Butler, W.R.)ら、Journal of Clinical Microbiology26:50-53 (1988);フロイド (Floyd, M.M.)ら、Journal of Clinical Microbiology 30:1327-1330 (1992)。逆相クロマトグラフィーは主としてアシル鎖の長さ又は "炭素数" に基づいてアシル鎖を分離する。従って遊離脂肪酸と遥かに大きいミコール酸とを確実に分離することは比較的容易である。
【0098】
このHPLC法では先ずサンプルの鹸化が必要であり、続いてアシル鎖のカルボキシル末端に結合する紫外線 (OD254)吸収性化合物であるp−ブロモフェナシルブロミドで脂肪酸又はミコール酸の誘導体化を行う。予備実験においては我々はp−フェナシルブロミドでバクテリアの画分を誘導体化するプロセスが生物活性を破壊することを認めた。しかし CD1b 拘束性抗原性活性は、その後メタノール性KOH による鹸化により回復することが可能であった。このプロセスは、フェナシルブロミド基を切り離すことにより、アシル鎖のカルボキシル末端をフリーにするものである(HPLC 上でOD254 により検定されるように) 。この結果は、 CD1ポジティブ APCs により提示することの出来る形を実現するにはアシル鎖が切断されねばならぬこと、および/又は遊離のカルボキシル基が CD1b 拘束性抗原の提示の為に不可欠であることを示すものである。これは抗原がアシル鎖を含むことの別の証拠である。
【0099】
SPE CNカラムで精製された標品( 実施例3) は C18クロマトグラフィーの為の出発物質として用いられた。試料をメタノール性 KOHで鹸化し、そして紫外線吸収基であるブロモフェナシルブロミドを用いて誘導体化した。活性画分を C18カラム (Alltech Nucleosil C18 5 μm, 25 cm × 4.6 mm)上、メタノール中メチレンクロライドの30〜90%の直線濃度勾配を用い 50 分間にわたり 1mL/分の割合で流した。コントロールとしてC90内部標準 (Ribi) を用いて得られたクロマトグラム (図 12 、パネル a 、上部) は公表された結果と同等のパターンを示す。フロイド (Floyd, M.M.)ら、Journal of Clinical Microbiology 30:1327-1330 (1992)。画分は 10% FCSを含む完全培地中に再懸濁化し、そして最初の超音波処理物容量に対する 1:17 希釈でテストした。
【0100】
結果
T細胞増殖性応答測定により測定された生物活性はミコール酸の領域内の早期ピークと共に移行することが見い出された (図 12a) 。ミコール酸が CD1b により提示されることを確認する為に、ミコール酸の別の給源である精製されたコードファクタ (トレハロースジミコレート、図11)をテストした。鹸化すると M. tb. (Sigma から) 又は M. kansasii(Patrick Brennan から) から得られた精製されたトレハロースジミコレートはT細胞株 DN1の増殖を刺激した (図 12b) 。しかし鹸化により遊離されるミコール酸を含まず、2つのC22脂肪酸鎖を含むコードファクタの合成誘導体である鹸化されたトレハロースジミコレートから作られた物質によっては刺激は達成できなかった。このことはトレハロース (サンプルの各々に存在する) でも脂肪酸でもなく、ミコール酸がダブルネガティブα: β TCRT細胞株 DN1に対してCD1bにより提示された抗原であることを充分に想定させる。次に鹸化されたSigma コードファクタの HPLC 分析を実施し、再び生物活性が早期のミコール酸ピークに対応する画分に見出された (図 12c) 。合わせると、上記のデータは、T細胞株 DN1 により認識される CD1b 拘束性ミコバクテリウム抗原はミコール酸の一つの種類であることを示す。
【0101】
ミコバクテリウムは極めて有効なアジュバントであることが知られている。アルドビニィ (Aldovini,A.)およびヤング(Young, R.A.) Nature 351:479-482 (1991)。この場合に使用されている CD1b により提示される抗原の一つ給源であるミコール酸はトレハロースジミコレート(即ちミコバクテリウムのコードファクタ) であり、これは抗体形成を増大せしめ(ベカイエルカンスト (Bekierkunst, A.)ら、J. Bacteriol. 100:95-102 (1969);ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 4:245-255 (1971);ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 4:256-263 (1971))そして細菌感染(パラント (Parant, M.) ら、Infect.Immun. 20:12-19 (1978) )および腫瘍(ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 10:1044-1050 (1974))に対する非特異的免疫を刺激することが実証された。
【0102】
精製された抗原活性が真実の抗原を含み不特定の分裂誘発因子を含まぬことを確かめる為に、我々は粗 M. tb. 標品並びに M. tb. および鹸化されたコードファクタからの HPLC により精製されたミコール酸に対するT細胞増殖性応答の特異性を調べた。M. tb.の超音波処理物の全体 (図 14 、上部パネル) は MHCクラスII拘束性 CD4+ α: β TCR+ T細胞株DG.1 により認識される抗原、並びに CD1b 拘束性T細胞株DN1および CD1c 拘束性T細胞株 DN6により認識される抗原を含む (下の実施例5を参照のこと) 。しかし M. tb. ( 図14 、中部パネル) から又は鹸化されたコードファクタ (図14 、下部パネル) からの HPLC により精製されたミコール酸 (図 14 、下部パネル) は CD1b 拘束性 DN1T細胞によってのみ認識される抗原を含む。この特異性も又トランスフェクタントの細胞溶解測定において実証されている (図 13)。
【0103】
DN1のCD1b拘束性応答は抗-CD1b 抗体によりブロックされたが、しかし MHCクラスI又はIIに対する抗体によっては影響を蒙らなかった (図 15 、上部パネル) 。
【0104】
実施例5: CD1c による抗原提示
実施例1に於いて開示された CD1b による抗原の提示に加え CD1c 分子も又抗原を提示する。GM-CSFおよび IL-4 (CD1発現を誘発する為に) およびM.ツベルクロシス抗原により処理された単球による反復刺激により誘導された別個の CD4- 8 - α: β TCR+ T細胞株を単離し、そして DN2 (8.23. DN1 とも呼ばれる) と命名された。DN2 の増殖は CD1c に対する mAbs を与えることにより完全に阻害されるが、しかしCD1b に対する mAbs によっては影響を受けない(図15、下部パネル)。細胞溶解測定によりこの結果は裏付けられる:ベクターのみ又はCD1a、CD1b又は CD1c をコードするベクターでトランスフェクトされた C1R細胞をM.ツベルクロシス超音波処理物の存在下または非存在下に予めインキュベートし、ついで細胞溶解測定のターゲットとして用いた。CD1c+ C1R 細胞のみが認識される(図16);認識は超音波処理物との予備インキュベーションにより高められる。従って CD1c 分子はM.ツベルクロシス抗原を DN2 T細胞に提示する。
【0105】
GM-CSF および IL-4 (CD1 発現を誘発する為) およびM.ツベルクロシス抗原により処理された単球による反復刺激により誘発された第2 CD1c 拘束性CD4 - 8 - α: β TCR+ T細胞株を単離し、 DN6と名付けた。細胞溶解測定 (図 17)によれば、 DN6は M. tb. 抗原の存在下で CD1c + 細胞を溶解することが示される。
【0106】
実施例6: CD1c により提示される抗原の特性化
CD1cにより DN6T細胞に提示される抗原はミコール酸ではない (図 14 、中央パネル) 。しかし DN6により認識される抗原の化学特性化によれば、抗原は複合リピドであることが判る。M. tb.の超音波処理物をクロロフォルム:メタノールにより抽出する時 (実施例3に記載のように) 抗原活性は実質的に界面相と有機相の両者に見出される (図 18)。有機相から回収される抗原は CN SPE カラムに結合することができ、そして溶出される( 実施例3に記載された如く) 。これらの実験により抗原は疎水性であり又クロマトグラフィーではリピドの性質を持つことが実証される。
【0107】
しかし CD1b 拘束性ミコバクテリウム抗原と異なり、追加実験の結果は、DN6 により認識されCD1cにより提示される抗原が複合リピドであり、遊離アシル鎖ではないことを示す。M. tb.の超音波処理物を鹸化すると、 DN6の増殖性応答は消失する( 図 20)。鹸化はアシル鎖を炭水化物バックボーンに接続するエステル結合を切断するから、この結果はDN6 T細胞により認識される抗原が遊離アシル鎖以外の或る部分であるか又は追加的な部分であることを示唆している。鹸化は多分例えばポリサッカライドバックボーン又は分岐点であるかもしれない追加的部分を破壊し、又は除去するのであろう。従って DN1T細胞株による遊離ミコール酸の認識とは異なり、DN6 T細胞株はより複合的なリピド構造を認識する。
【0108】
T細胞株 DN1 および DN6 により認識される CD1により提示される抗原は、M.ツベルクロシスにユニークではないことは特筆に値する。寧ろDN1 およびDN6 により認識されるCD1により提示される抗原は、今日テストされている多くのミコバクテリウムの種に見られる抗原に対して交叉反応性を示す (M.フォルツイツム、M.アビウム(avium))、M. ボービス(bovis)(BCG) および M. レプレ(leprae)) 。DN6 T細胞による CD1c 拘束性の場合には、別の属であるがミコール酸を産生する近縁の属の細菌であるコリネバクテリウム(Corynebacteria)において一つの抗原が認識される (データは示されず) 。タカヤマ(Takayama, K.)およびクレシ (Qureshi, N.) "Structure and Synthesis of Lipids" in The Mycobacteria:A Sourcebook, Part A,キュービカ (Kubica, G.P.) およびウエイン (Wayne, L.G.)編、 Marcel Dekker, New York& Basel, 1984。この様に CD1により提示された抗原は少なくとも幾つかの細菌リピド抗原を含む;自己免疫の場合にはCD1により提示される抗原は内因性リピド抗原を含む。
【0109】
実施例7: CD1により提示される抗原を含むワクチン
本開示以前には、リピドが潜在的に強力な特異的T細胞媒介免疫原性を持つことは知られていなかった。本明細書に記載のCD1 により提示されるリピド抗原はミコバクテリウム病原体に対するワクチンとして機能もするようにデザインされる組成の必須成分として用いることが出来る。CD1 により提示される抗原を含むワクチンは注射により直接投与することが出来る。或は上記の代わりに胃腸管の上皮に見られる細胞上の CD1の存在(ブレイチャー (Bleicher, P.A.) ら、Science 250:679-682 (1990))の故に、 CD1により提示される抗原を含むワクチンの経口投与が CD1により提示された抗原を含むワクチンを必要とする動物にかかるワクチンを投与する為に用いることが出来る。
【0110】
本発明の CD1により提示される抗原を含むワクチンは、既知の方法に従って処方される。Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版、ゲンナロ (Gennaro, A.R.)編、Mack, Easton, 1990; The Pharmacologist Basis of Therapeutics,第7版、ギルマン (Gilman, A.G.) ら編、MacMillian,NewYork, 1985.この分野の熟練者に知られている薬学的に許容されるリピド安定剤およびリピド可溶化剤はその有効性を高める為に CD1により提示される抗原を含むワクチンに加えることが出来る。テング (Teng, N.) ら、PCT 特許出願 WO 91/01750号公報 (1991年 2月 21 日) 。ナンバーグ (Nunberg,J.H.)米国特許第 4,789,702号 (1988年 12 月 6日) 。
【0111】
実施例8: CD1拘束性抗原提示を阻止する為の手段と方法
CD1 抗原提示システムの開示は、CD1 拘束性抗原提示を阻害する為の各種の手段と方法を可能にする。CD1 により提示される抗原の処理を阻害し、抗原の CD1分子への結合を妨害し又は CD1: 抗原複合体のTCR 分子への結合を妨害する組成物があれば、抗原の CD1拘束性提示を阻害するであろう。かかる組成物は、CD1 ブロッキング物質と呼ばれるが、例えば自己免疫疾患において生じる好ましくないT細胞媒介免疫をコントロールする為に有用である。オクセンバーグ (Oksenberg, J.R.)ら、J. Neurol. Sci. 115 (Suppl.):S29-S37 (1993) 。
【0112】
CD1 ブロッキング物質は下記に限定されることはないが、(1) 精製されたCD1 分子、又はその合成誘導体であってCD1 により提示される抗原を結合し、かつ APCs 上で表出され、CD1 と抗原との相互作用を防止することの出来るもの;(2) 精製されたTCR ポリペプチド又はその合成誘導体であってCD1 + APC 上でCD1−抗原複合体に結合することが可能であり、かつ複合体とT細胞受容体との相互作用を防止することの出来るもの;(3) 化学的に修飾された CD1により提示される抗原を含む抗原拮抗体又はCD1 により提示される抗原の合成誘導体;(4) 精製された CD1−抗原複合体又はその合成誘導体であって CD1+ APC 上で CD1−抗原複合体を認識するT細胞受容体に結合し、かつT細胞受容体と CD1−抗原複合体との相互作用を阻止することの出来るもの;(5) CD1 分子と結合し、こうして CD1分子と CD1により提示される抗原との相互作用を阻止する抗体;(6) CD1:抗原複合体と結合し、これにより CD1: 抗原複合体とそのコグネート(cognate)TCR との相互作用を阻止するポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体;(7) CD1 により提示される抗原を認識するTCR と結合し、これによりTCR とそのコグネートCD1:抗原複合体との相互作用を阻止するポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体;および(8) CD1 により提示される抗原が表出される前に処理される経路中の不可欠なステップをブロックする組成物を含む。
【0113】
上記の実施例は下記の如き CD1 ブロッキング剤の類例を含む。
【0114】
タイプ (5)の CD1ブロッキング物質は、CD1b拘束性抗原提示を特異的に阻害する、CD1bに対するモノクロナール抗体WM25(図 15 、上部パネル)およびCD1c拘束性抗原提示を特異的に阻害する、CD1cに対するモノクロナール抗体 10C3(図 15 、下部パネル) をその代表とする。タイプ (6)又は(7) のCD1 ブロッキング物質として作用する抗体を単離する為の本明細書に記載の方法を熟練者は使用することが可能であり、又この分野の熟練者は治療の目的で抗体を処方する方法を知っている。A Critical Analysis of Antibody Therapy in Transplantation, バーリントン (Burlington, W.J.) 編、 CRCPress, Boca Raton, 1992 。
【0115】
タイプ(8) のCD1 ブロッキング物質の代表的なものはクロロキン( 図 5c)であり、これは CD1b 拘束性抗原の処理の中の或るステップを阻害する。クロロキンの処方および投与の方法はこの分野の熟練者には既知である。ウエブスター (Webster, L.T.) "Drugs Used in the Chemotherapy of Protozoal Infections,"in Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 41章及び42章、第8版、ギルマン (Gilman, A.G.) ら編、Pergamon Press, New York, 1990。クロロキンも MHC拘束性抗原提示を阻害するが、この分野の熟練者は本明細書中に開示されている方法を用いてCD1 拘束性抗原の処理を特異的に阻害する組成物を特定しおよび/又は単離することが出来る。
【0116】
タイプ(3) のブロッキング物質、即ち抗原拮抗物質は本発明の方法により単離されるCD1 拘束性抗原から誘導することが出来る。オリジナルペプチド抗原よりも低い親和性で結合するMHC 拘束性ペプチド抗原の変種は、 MHC拘束性抗原提示に於ける成熟T細胞に対する拮抗物質として作用する。ライス (Wraith, D.C.) ら、Cell 59:247-255 (1989); スミイレク (Smilek, D.E.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88:9633-9637 (1991)。同様にCD1 により提示される抗原は本発明の方法により単離され、かつ標準技法により化学的に修飾することにより非抗原性又は弱抗原性のCD1 により提示される抗原誘導体を作り出すことが出来る。例えば p−ブロモフェナシルブロミドにより誘導体化されたミコール酸は非抗原性である (実施例 4) 。抗原拮抗物質はCD1 により提示される抗原誘導体として同定される。これはオリジナルの、非修飾CD1 により提示される抗原の存在する時にのみ起きるT細胞増殖性応答又はCD1 トランスフェクタント細胞溶解性応答を阻害又は防止する( 実施例 1) 。
【0117】
タイプ(2) のブロッキング物質、即ち抗原:CD1 複合体とT細胞上のTCR 分子との相互作用をブロックする TCR 誘導体はこの分野の熟練者により本開示に基づいて作ることが出来る。CD1 により提示される本発明の抗原を認識するT細胞株により表出されるTCR ポリペプチドをコードするDNA 分子は、この分野における既知の方法に基づいて単離される。オスケンバーグ (Oskenberg, J.R.)ら、Proc. Natl. Acad.Sci.(USA) 86:988-992 (1989); オクセンバーグ (Oksenberg, J.R.)ら、Nature 345:344-346 (1990) 及び修正版(and erratum )、 Nature 353:94 (1991);ウエマツ (Uematsu Y.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88:534-538 (1991); パンザラ (Panzara, M.A.)ら、Biotechniques 12:728-735 (1992); ウエマツ、 Immunogenet. 34:174-178 (1991) 。このDNA 配列はポリペプチド配列に変換され、そしてTCR ポリペプチドの抗原結合可変領域に該当するポリペプチド配列の一部は、 APCs 上で CD1: 抗原複合体と結合しこれにより抗原提示を阻害する合成オリゴペプチドをデザインするのに用いられる。オリゴペプチドは標準的手法に従って化学的に合成され(ステバルト及びヤン(Stewart and Young), Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Co., Rockland, Illinois, 1985)そして逆相高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により反応混合物から精製される。自己免疫疾患、MS, を持つヒトの治療の最初の試みが、MHC 拘束性α: βTCR 分子から誘導されたペプチドを用いて現在進行中である。オクセンバーグ (Oksenberg, J.R.)ら、J. Neurol. Sci. 115 (Suppl.): S29-S37 (1993)。CD1 ブロッキング物質として機能する TCR−誘導ペプチドは、CD1 により提示される抗原の存在下で起きるT細胞増殖性応答又は CD1トランスフェクタント細胞溶解性応答を阻害又は防止する TCR誘導ペプチドとして同定される (実施例 1) 。
【0118】
本明細書に記載されたCD1 により提示される抗原の測定は、分子ライブラリーからCD1 ブロッキング剤をスクリーニングするために用いることが出来る。分子的に種々な組成を持つライブラリーは、化学的、生化学的および/又はバイオテクノロジー的な手段により作られる。この様なライブラリーの中には、合成ペプチドの組合わせライブラリー(combinatorial libraries) ( ホウテン(Houghten, R.A.)ら、BioTechniques 13:412-421 (1992) )および組換え DNAテクノロジーにより作られる融合タンパク質、例えばファージ表出ライブラリーが含まれる。コイバンネン (Koivunen, E.) ら、J. Biol. Chem. 268:20205-20210 (1993) 。これらのライブラリーは、本明細書に記載のDNT細胞増殖性応答および/又は CD1細胞溶解性応答を阻害又は防止するメンバーの有無についてスクリーニングされる。CD1 ブロッキングメンバーは、この分野での既知でしかも用いられたライブラリーのタイプに適合した技法に基づいてライブラリーから単離される。ローマン (Lowman, H.B.) ら、Biochemistry30:10832-10838 (1991); ヘリシイア (Felicia, F.)ら、J. Mol. Biol. 22:301-310 (1991);ダンデカル (Dandekar, T.) ら、Neurochem. Int. 7:247-253 (1985); オーウェン (Owens, R.A.)ら、Biophys. Res. Commun. 181:402-408 (1991)。
【0119】
サンプル中からCD1 ブロッキング物質を検出する為には、CD1により提示される抗原に対する測定を2重に実施する。第1の (コントロール) 測定は、実施例1に記載の方法と実質的に同様に行われるT細胞増殖性又は細胞溶解性測定である。第2の測定は次の点を除きあらゆる点で第1の測定と同一である:すなわち第2の測定はCD1 ブロッキング物質を含む可能性のあるサンプルを追加的に含む。サンプル中の CD1ブロッキング物質の存在と第1の測定で測定されたよりも有意に少ない第2の測定におけるT細胞増殖性応答又は細胞溶解性応答との間に相関関係が認められる。
【0120】
参照による挿入
本明細書中に引用されたすべての刊行物は、参照の形でその全文が本明細書の中に挿入されている。
【0121】
本発明は、以下の態様を含む:
[1] 試料中のCD1により提示される抗原を検出する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)該試料をCD1陽性細胞と接触させ、
(b)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(c)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程;
[2] CD1により提示される該抗原がCD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[1]記載の方法;
[3] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[1]記載の方法;
[4] 該CD1陽性細胞がCD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[1]記載の方法;
[5] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである前記[4]記載の方法;
[6] CD1により提示される抗原を試料から単離する方法であって、下記の工程からなる方法:
(a)CD1結合抗原を表出するCD1陽性細胞を生成させるためにCD1により提示される該抗原と結合するCD1陽性細胞と共に該試料をインキュベートし、
(b)CD1結合抗原を表出する該CD1陽性細胞を該試料から分離し、そして
(c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞からCD1により提示される該抗原を分離する工程;
[7] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである前記[6]記載の方法;
[8] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[6]記載の方法;
[9] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[6]記載の方法;
[10] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[9]記載の方法;
[11] CD1により提示される抗原を試料から単離する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)CD1により提示される抗原を含む試料を分画して2個以上の画分とし、そして
(b)CD1により提示される該抗原の有無を確認するために該画分をテストする工程;
[12] 該テスト工程(b)が下記の工程を含むものである、前記[11]記載の方法:
(A)該試料をCD1陽性細胞と接触させ、
(B)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(C)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程;
[13] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[12]記載の方法;
[14] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである前記[11]記載の方法;
[15] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[11]記載の方法;
[16] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[12]記載の方法;
[17] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[16]記載の方法;
[18] 下記の工程を含む方法によって作製され単離された、CD1により提示される抗原:
(a)CD1により提示される該抗原と結合するCD1陽性細胞と共に試料をインキュベートしてCD1結合抗原を表出するCD1陽性細胞を生成させ、
(b)CD1結合抗原を表出する該CD1陽性細胞を該試料から分離し、そして
(c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞からCD1により提示される抗原を分離する工程;
[19] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[20] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[21] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[20]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[22] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[23] CD1により提示される該抗原が、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離されるものである、前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[24] CD1により提示される該抗原がリピドである、前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[25] CD1により提示される該抗原がミコール酸である、前記[18]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[26] 下記の工程を含む方法によって作製されるCD1により提示される単離された抗原:
(a)CD1により提示される抗原を含む試料を2個以上の画分に分画し、そして
(b)CD1により提示される抗原の有無について該画分をテストする工程;
[27] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[28] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[29] CD1により提示される該抗原が、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離されるものである、前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[30] CD1により提示される該抗原がリピドである、前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[31] CD1により提示される該抗原がミコール酸である、前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[32] 該テスト工程(b)が下記の工程を含むものである、前記[26]記載のCD1により提示される単離された抗原:
(A)該試料をCD1陽性細胞と接触させ、
(B)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(C)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程;
[33] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[32]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[34] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[32]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[35] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[34]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[36] CD1により提示される抗原を含むワクチンを作製する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)CD1により提示される抗原を含む試料をCD1陽性細胞と共にインキュベートし、
(b)CD1結合抗原を表出する該CD1陽性細胞を該試料から分離し、
(c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞からCD1により提示される抗原を分離し、
そして
(d)該分離されたCD1により提示される抗原を処方してワクチンを調製する工程;
[37] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[36]記載の方法;
[38] CD1により提示される抗原を含むワクチンを製造する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)CD1により提示される抗原を含む試料を2個以上の画分に分画し、
(b)CD1により提示される抗原の有無について該画分をテストし、そして
(c)CD1により提示される該抗原を含む1個以上の画分を処方してワクチンを調製する工程;
[39] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[36]記載の方法;
[40] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[36]記載の方法;
[41] 該テスト工程(b)が下記の工程を含むものである前記[38]記載の方法:
(A)該試料をCD1陽性細胞と接触させ、
(B)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(C)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程;
[42] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[41]記載の方法;
[43] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[41]記載の方法;
[44] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[43]記載のCD1により提示される単離された抗原;
[45] CD1により提示される抗原を含むワクチンであって、該抗原が下記の工程を含む方法によって製造されるものであるワクチン:
(a)CD1により提示される抗原を含む試料をCD1陽性細胞と共にインキュベートし、
(b)CD1結合抗原を表出する該CD1陽性細胞を該試料から分離し、
(c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞からCD1により提示される抗原を分離し、
そして
(d)分離された該CD1により提示される抗原を処方してワクチンを調製する工程;
[46] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[45]記載のワクチン;
[47] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[45]記載のワクチン;
[48] CD1により提示される該抗原が、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離されるものである、前記[45]記載のワクチン;
[49] CD1により提示される該抗原がリピドである、前記[45]記載のワクチン;
[50] CD1により提示される該抗原がミコール酸である、前記[45]記載のワクチン;
[51] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[45]記載のワクチン;
[52] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[51]記載のワクチン;
[53] 下記の工程によって製造されるCD1により提示される抗原を含むワクチン、
(a)CD1により提示される抗原を含む試料を2個以上の画分に分画し、
(b)CD1により提示される抗原の有無について該画分をテストし、そして
(c)CD1により提示される該抗原を含む1個以上の画分を処方してワクチンを調製する工程;
[54] CD1により提示される該抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[53]記載のワクチン;
[55] CD1により提示される該抗原が、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)、M.ボービス(M. bovis)、M.レプラエ(M. leprae) 、M.フォルツイツム(M. fortuitum)およびM.アビウム(M. avium)からなる群より選択されるミコバクテリウムの1種から単離されるものである前記[53]記載のワクチン;
[56] CD1により提示される該抗原が、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離されるものである、前記[53]記載のワクチン;
[57] 該テスト工程(b)が下記の工程を含むものである、前記[53]記載のワクチン:
(A)該試料をCD1陽性細胞と接触させ、
(B)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(C)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程;
[58] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[57]記載のワクチン;
[59] 該CD1陽性細胞が、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[57]記載のワクチン;
[60] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[59]記載のワクチン;
[61] 抗体、合成ペプチド、CD1拘束性抗原提示の阻害剤、およびCD1により提示される抗原由来の抗原拮抗物質からなる群より選択される、CD1拘束性抗原提示を阻害するCD1ブロッキング物質;
[62] CD1陽性細胞によりCD1拘束性抗原提示を阻害する方法であって、CD1分子を表出する細胞を前記[61]記載のCD1ブロッキング物質と接触させる工程を含む方法;
[63] CD1陽性細胞によりCD1拘束性抗原提示を阻害する方法であって、CD1分子を表出する細胞を該CD1分子に結合する抗体と接触させる工程を含み、該抗体が該CD1分子とCD1拘束性抗原との相互作用をブロックするものであり、そして該抗体が該CD1分子のCD1拘束性抗原への結合を阻害するのに十分な量で供給されるものである方法;
[64] CD1陽性細胞によりCD1拘束性抗原提示を阻害する方法であって、CD1分子を表出する細胞をCD1結合抗原に結合するTCRα分子またはTCRβ分子の可変領域由来のポリペプチドと接触させる工程を含み、該ポリペプチドがTCR分子とCD1結合抗原との相互作用をブロックするものであり、そして該ポリペプチドが該TCR分子の該CD1結合抗原への結合を阻害するのに十分な量で供給されるものである方法;
[65] CD1陽性細胞によりCD1拘束性抗原提示を阻害する方法であって、CD1分子を表出する細胞をCD1により提示される抗原由来の抗原拮抗物質と接触させる工程を含み、該抗原拮抗物質が該CD1分子と該CD1拘束性抗原との相互作用をブロックするものであり、そして該抗原拮抗物質が該CD1分子の該CD1拘束性抗原への結合を阻害するのに十分な量で供給されるものである方法;
[66] 該CD1分子が自己免疫抗原を提示するものである、前記[62]〜[65]いずれか1項に記載の方法;
[67] 細胞内でCD1発現を誘導する方法であって、CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と該細胞を接触させる工程を含む方法;
[68] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[67]記載の方法;
[69] 該細胞が単球である前記[67]記載の方法;
[70] CD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と該細胞とを接触させることによって製造されるCD1陽性細胞;
[71] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[70]記載のCD1陽性細胞;
[72] 該CD1陽性細胞が単球である前記[70]記載の細胞;
[73] 該CD1が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択されるものである前記[70]記載のCD1陽性細胞;
[74] CD1により提示される抗原を認識する単離されたCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞;
[75] 前記[74]記載の単離されたCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞であって、該CD1により提示される抗原がCD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである細胞;
[76] 試料中のCD1ブロッキング物質を検出する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)対照試料を以下の工程を含む方法によって試験し、
(1)該試料をCD1陽性細胞およびCD1により提示される抗原と接触させ、
(2)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(3)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程、
(b)CD1ブロッキング物質を含むと思われる試料を以下の工程を含む方法によって試験し、
(1’)該試料をCD1陽性細胞およびCD1により提示される抗原と接触させ、
(2’)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させ、そして
(3’)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程、および
(c)工程(a)の増殖性応答または細胞溶解性応答を工程(b)のそれと比較する工程、そして工程(a)の増殖性応答または細胞溶解性応答と比べて工程(b)の増殖性応答または細胞溶解性応答の減少は工程(b)の試料中にCD1ブロッキング物質が存在することと相関する;
[77] 該CD1により提示される抗原がCD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群より選択される1種のCD1分子によって提示されるものである、前記[76]記載の方法;
[78] 該T細胞がCD4- CD8- α:βTCR+ T細胞である、前記[76]記載の方法;
[79] 該CD1陽性細胞がCD1発現を誘導するために1種以上のサイトカインを含む組成物と接触させられた単球である、前記[76]記載の方法; および
[80] 1種以上のサイトカインを含む該組成物が、インターロイキン−3、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子とインターロイキン−4を含むものである、前記[79]記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(パネルaとb):GM−CSFおよびIL−4の存在下で培養した単球によるCD1a、CD1b、およびCD1cの発現、およびミコバクテリウム ツベルクロシスに対して特異的なCD1b拘束性T細胞の表面表現型。 パネルa:GM−CSFとIL−4を含む培地中で60時間培養したCD1a、CD1b、およびCD1cの発現を示した末梢血単球のフローサイトメトリー分析。細胞を対照モノクローナル抗体(mAb)(点線)または各ヒストグラムボックスに示した特異性を有するmAb(実線)で染色した。サイトカインの非存在下またはインターフェロン−γの存在下で培養した単球は有意量のCD1a、CD1b、CD1cを発現しなかった(データは示さない)。 パネルb:α:βTCRの発現を示し、CD4の発現は示さず、CD8の発現はほとんどあるいは全く示さなかったT細胞株DN1のフローサイトメトリー分析(点線と実線はパネルaと同様に対照および特異的mAbを示す)。
【図2】(パネルa−d):CD4- - T細胞株DN1およびそのサブクローンDN1.C7の増殖性応答の抗原特異性と自己制限性。 パネルa:M.ツベルクロシス(黒塗り四角)、M.レプラエ(黒塗り丸)、エシェリキア コリ(白抜き丸)、および破傷風毒素(白抜き丸)に対するDN1の増殖性応答(3 H−チミジン取り込み量の1分あたり計数値(CPM))。抗原提示細胞は不均一のGM−CSF処理およびIL−4処理CD1+ 単球であった。抗原濃度(タンパク質含有率換算)はx軸上に示した。 パネルb:M.ツベルクロシス(1μgタンパク質/ml)に対するT細胞株DN1の増殖性応答には、CD1+ 抗原提示細胞(CD1+ APC)が必要である。APCは次の記号で示した。APCなし、白抜き四角;GM−CSF処理およびIL−4処理単球(CD1+ APC)、黒塗り丸;IFNγ処理単球(CD1+ )、白抜き丸;新鮮単離単球(CD1+ )、白抜き三角。各培養物に添加したAPCの数をx軸上に示した。 パネルc:調べたすべてのドナーのAPCは、M.ツベルクロシスに対してT細胞株DN1が増殖性応答を示したことに根拠を与えるものであった。白抜きバーはM.ツベルクロシス非存在下のT細胞とAPCを示し、黒塗りバーはM.ツベルクロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のT細胞とAPCを示す。APCは5名の未処理ドナーのGM−CSF処理およびIL−4処理末梢血単核細胞であった。HLAタイプ分画を行なったところ、5名のドナー全員がHLA−A、−B、−C、−DR、−DP、または−DQ座位の対立遺伝子を共有していないことが判明した(データは示さない)。 パネルd:抗CD1bmAbはM.ツベルクロシス(1μgタンパク質/ml)に対するDN1およびDN1.C7の増殖性応答を特異的に阻害した。APCはGM−CSF処理およびIF−4処理単球であった。黒塗りバーはM.ツベルクロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のAPCに対するT細胞の増殖性応答を示し、波線はM.ツベルクロシス非存在下のAPCに対する応答を示し、「nd」は測定していないことを示す。使用したモノクローナル抗体は、P3(対照IgG)、OKT6(抗CD1a)、WM−25[抗CD1b;ファバロロら(Favaloro, E.J., et al.)、Disease Markers 4:261-270 (1986))]、10C3(抗CD1c)、W6/32(抗MHCクラスI)、およびIVA12[抗MHCクラスII;ショー(Shaw, S.)、Hum. Immun. 12:191-211 (1985)]であった。
【図3】抗原提示細胞株CR1およびサイトカイン刺激単球が、T細胞株DN1から得られたクローンであるT細胞株2.13DN1およびG7の成長を刺激する能力の比較。白抜きバーはM.ツベルクロシス非存在下のT細胞とAPCを示し、黒塗りバーはM.ツベルクロシスの存在下(1μgタンパク質/ml)のT細胞とAPCを示す。
【図4】(パネルa−d):リンパ芽球様細胞株C1RのCD1トランスフェクタントによるM.ツベクロシスの提示。ベクターpSRα−NEO DNA(モック)または図に示したCD1分子をコードするcDNAを含むpSRα−NEOの構築物(CD1a、CD1b、CD1c)で安定的にトランスフェクトされたC1R細胞を培地のみ(白抜きバー)またはM.ツベルクロシスを含む培地(25μgタンパク質/ml、黒塗りバー)中で12時間培養し、51Crで標識し、様々なエフェクターT細胞の存在下で細胞溶解性測定の標的細胞として使用した。標的細胞に対するエフェクターT細胞の比率は50:1であった。 パネルa:M.tbCD1bにより提示されるAg特異的T細胞株DN1。 パネルb:DN1サブクローンDN1.C7。 パネルc:CD1a自己反応性クローンBK6。 パネルd:CD1c自己反応性クローン3C8。
【図5】(パネルa−c):M.ツベルクロシス抗原のCD1b拘束性提示はMHCクラスII領域によってコードされた分子を必要としないが、クロロキン感受性経路による抗原プロセシングが関与している。 パネルa:T細胞株DN1によるCD1T2トランスフェクタントの溶解。ベクターDNAのみでトランスフェクトされたT2細胞(モックトランスフェクタント)を丸で示し、CD1bでトランスフェクトされたT2細胞を三角で示した。白抜き記号はM.ツベルクロシスの存在下で前培養しなかった標的細胞を示し、黒塗り記号はM.ツベルクロシス(10μgタンパク質/ml)の存在下で12時間の前培養を行なった標的細胞を示す。フローサイトメトリー分析で、CD1bでトランスフェクトされたT2細胞をM.ツベルクロシスの存在下で培養してもCD1b発現に影響を及ぼさないことが示された(データは示さない)。 パネルb:CD1b+ APCをグルタールアルデヒドで固定すると、細胞株DN1に対するM.ツベルクロシスの提示が防止される。CD1b+ APC(GM−CSF処理およびIF−4処理末梢血単核細胞、PBMC)をM.ツベルクロシスの存在下(1μgタンパク質/ml、「パルス化APC」)または非存在下培地(「非パルス化APC」)中で12時間培養し、集菌し、各細胞懸濁液の一定量を0.0125%グルタールアルデヒドで30秒間固定した。生じたAPC調製物が、可溶性M.ツベルクロシス抗原(1μgタンパク質/ml)の非存在下(白抜きバー)または存在下(黒塗りバー)で細胞株DN1の増殖を刺激する能力があるかどうかを調べた。 パネルc:クロロキンによるM.ツベルクロシスのCD1b拘束性提示の阻害。HLA−DR7+ の個体から得たCD1b+ APCを図に示した濃度のクロロキンの存在下37℃で60分間M.ツベルクロシス抗原でパルス化し、グルタールアルデヒドで固定し、細胞株DN1(黒塗り丸)またはM.ツベルクロシス特異的HLA−DR7+ 拘束性CD4+ T細胞株DG.1(白抜き三角)の存在下での増殖測定にAPCとして使用した。結果は、クロロキン非存在下でM.ツベルクロシスでパルス化した固定APCに対する応答阻害率で表わしたが、数字は同様の3つの実験の代表値である。
【図6】図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に対するT細胞株DG.1の増殖性応答に及ぼす影響。
【図7】図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に対するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響。
【図8】図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.フォルツイツム抗原に対するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響。
【図9】(パネルa−c):DNα:βTCR+ T細胞株によって認識されるミコバクテリア抗原は有機溶媒による抽出後に有機相中に定量的に分配され、CD1b拘束を受ける。有機溶媒による抽出を行なうと、CD1B拘束性ミコバクテリア抗原が、従来のMHCクラスII拘束性CD4+ α:βTCR+ T細胞株によって認識されるミコバクテリア抗原およびDNγ:δ(Vγ2Vδ2)TCR+ T細胞によって認識される小型の非タンパク質性ミコバクテリアリガンドと区別される[プフェッファーら(Pfeffer, K., et al.)、J. Immunology 148:575-583 (1992)]。全ミコバクテリア超音波処理物をクロロホルム/メタノール/H2 Oで抽出し、生じた3相を、CD1+ 単球および図に示した希釈率で希釈した様々な抗原調製物の存在下でT細胞を培養することによって測定した。 パネルa:全ミコバクテリア超音波処理物(■、破線)、有機相(□、実線)、水相(○、実線)、またはインターフェース(■、実線)に対するCD1b拘束性DN T細胞株DN1の増殖性応答。x軸上の抗原濃度は全超音波処理物標品に対して正規化させた希釈率の逆数で示した。 パネルb:有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するHLA−DR7(MHC)拘束性ミコバクテリア特異的CD4+ T細胞株DG.1の増殖性応答。 パネルc:有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するVγ2Vδ2T細胞クローンDG.SF68の増殖性応答。
【図10】ミコバクテリア抗原調製物でパルス化したC1R細胞のCD1トランスフェクタントに対するDN1細胞株の細胞溶解性応答。C1Rリンパ芽球様細胞のCD1bまたはCD1cトランスフェクタント[ポーセリら(Porcelli, S., et al.)、Nature 341:447-450 (1989)]を、有機溶媒(+) で抽出した後のミコバクテリア抗原調製物または培地単独(−)のいずれかでパルス化した標準細胞溶解性測定の標的として使用した。CD1bでトランスフェクトしたC1R細胞のT細胞株DN1による認識は抗原でパルス化した場合に限って起きる。CD1c+ 標的に対しては抗原特異的認識は起きない。
【図11】6,6−トレハロースジミコレート(コード因子)の化学構造。
【図12】(パネルa−c):CD1b拘束性T細胞株DN1によって認識されるミコバクテリア抗原はミコール酸である。 パネルa:CD1b拘束性T細胞株DN1の増殖性応答は逆相C18HPLC上のミコール酸ピークと相関する。CD1b拘束性抗原をすべて含んでいる精製ミコバクテリアアシル鎖画分を逆相HPLCを用いるクロマトグラフィーに付し、生じた画分がT細胞株DN1による増殖性応答を刺激する能力を測定した。パネルの上段は溶出物の254オングストロームにおける吸光度スペクトル(光学密度単位OD、x10-4で表わす)(実線)ならびに対応する溶出勾配の塩化メチレン濃度(破線)を示す。2分と6分の間に溶出する大きな吸光度ピークは誘導剤として使用した遊離の臭化ブロモフェナシルである。パネルの下段は、それぞれの1分間画分に対するT細胞株DN1の増殖性応答を示す。CD1b拘束性抗原応答はミコール酸と相関する広いピークとして見られる。 パネルb:鹸化6,6−トレハロースジミコレート(コード因子)はCD1b拘束性T細胞株DN1による増殖性応答を刺激するが、鹸化トレハロースジベヘネートは刺激しない。M.ツベルクロシス(H37Ra)またはM.カンサシイのいずれかから精製されたトレハロースジミコレートの鹸化によってミコール酸ができた。トレハロースジベヘネート(合成コード因子)も同じやり方で処理した。抗原濃度はx軸上にコード因子1mlあたりのμgで示した。 パネルc:M.ツベルクロシス(H37Ra)から精製したトレハロースジミコレート(H37Ra)を逆相HPLCで分析すると、ミコール酸ピークに対応する画分によるCD1b拘束性T細胞株DN1の刺激が起きる。M.ツベルクロシスの鹸化トレハロースジミコレートをパネルaに示した実験と同様のクロマトグラフィーに付し、画分が細胞株DN1による増殖性応答を誘導する能力があるかどうか調べた。パネルaからわかるように、生理活性は早期ミコール酸ピークと相関する。
【図13】M.ツベルクロシスのコード因子(Sigma社)から鹸化によって調製したミコール酸でパルス化したC1R細胞のCDトランスフェクタントに対するDN1T細胞株の細胞溶解性応答。C1Rリンパ芽球様細胞のCD1a、CD1b、CD1c、またはモックトランスフェクタントを、トレハロースジミコレート(+)から調製したミコール酸または培地のみ(−)でパルス化したものを細胞溶解性測定の標的として使用した。結果は特異的溶解率(%)で示した。
【図14】ミコール酸は分裂促進性はないが、CD1bによって拘束されT細胞株DN1によって認識される特異的抗原である。ミコバクテリアに対して特異的な4つのT細胞株と別の2つのT細胞株について、全M.ツベルクロシス超音波処理物、精製コード因子から調製したミコール酸調製物、またはM.tb超音波処理物かコード因子からHPLC精製したミコール酸のいずれかに対する応答能力があるかどうかを調べた。3つの代表的なミコバクテリア特異的T細胞株の応答を次のように示した。DN1(■)(DN、CD1b拘束、α:βTCR+ )、DG.1(□)(CD4+ 、HLA−DR7拘束、α:βTCR+ )およびDN6(○)(DN、CD1c拘束、α:βTCR+ )。調べた6つのT細胞株のすべてについて、HLA−DR7陽性個体のGM−CSF処理およびIL−4処理(CD1+ )PBMCがAPCであった。 上段パネル:M.tb(H37Ra、Sigma社)の全超音波処理物に対する3つのミコバクテリア特異的T細胞株の増殖性応答。抗原濃度はx軸上にcpm x 10- 3で示した。図に示した3つのT細胞株はいずれも全ミコバクテリア超音波処理物に応答する。 中段パネル:M.tb超音波処理物から単離したHPLC精製ミコール酸に対する増殖性応答。CD1b拘束性T細胞株DN1だけが精製ミコール酸に応答する。 下段パネル:精製M.tbコード因子(Sigma社)から作成したHPLC精製ミコール酸に対する増殖性応答。CD1b拘束性T細胞株DN1だけが、コード因子ミコール酸に応答して増殖する。同じ実験で調べた他の3つのT細胞株すなわちSP−F3[ロンカルロら(Roncarlo, M.G., et al.)、J. Exp. Medicine 168:2139-2152 (1988)](CD4+ α:βTCR+ 、DR拘束、破傷風毒素特異的)、CP.1.15[モリタら(Morita, C.T., et al.)、Eur. J. Immunol.21:2999-3007 (1991)](DN、Vγ2Vδ2TCR+ 、ミコバクテリア特異的)、およびBK6[ポーセリ(Porcelli, S.)、Nature 341:447-450 (1989)](DN、α:βTCR+ 、CD1aに対して自己反応性)はここでは示さない。3つの株すべてが精製ミコール酸に応答したわけではなく、2つが特異的抗原(破傷風毒素−SP−F3、<1kDaM.ツベルクロシス調製物−CP.1.15)に対して応答して増殖した。BK6はCD1aに対して細胞溶解活性を示すが、調べたどのタイプのCD1a+ APCに対しても応答して増殖することができない[ポーセリ(Porcelli, S.)、Nature 341:447-450 (1989)]。
【図15】図に示したモノクローナル抗体がT細胞株2.13.DN1(DN1、上段パネル)および8.23.DN1(DN2、下段パネル)の増殖性応答に及ぼす影響。
【図16】T細胞株DN2に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1c拘束性提示。ベクター(モック、パネルa)および図に示したCD1タンパク質をコードするDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c)でトランスフェクトしたCR1細胞の細胞溶解測定の結果。トランスフェクトされた細胞はM.ツベルクロシスの存在下(黒塗り丸)または非存在下(白抜き丸)で前培養した。
【図17】T細胞株DN6に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1c拘束性提示。ベクター(モック、パネルa)および図に示したCD1タンパク質をコードするDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c)でトランスフェクトしたCR1細胞の細胞溶解測定の結果。トランスフェクトされた細胞はM.ツベルクロシスの存在下(黒塗り丸)または非存在下(白抜き丸)で前培養した。
【図18】有機溶媒による抗原抽出後の超音波処理物中のM.ツベルクロシス抗原に対するCD1c拘束性細胞株DN6の増殖性応答。増殖はy軸上にcpm(3 Hチミジン取り込み量)単位で示した。APCはCD1発現単球であった。6つの対数点における抗原力価を求め、代表的な対数点(抗原の1:3,750希釈物)の結果を示した。バックグランドcpm(培地のみ対照から求めた)をすべての値から差し引いた。
【図19】抗原の鹸化前後の超音波処理物中のM.tb抗原に対するCD1c拘束性細胞株DN6の増殖性応答。増殖性応答をy軸上にcpm単位で示し、抗原濃度(希釈倍率の逆数で示す)をx軸上に示した。M.tb(H37Ra株、Difco社)の10mg相当量をPBS中で超音波処理し、そのまままたは鹸化してから使用した。すべての抗原希釈液は5ml中の200mg凍結乾燥菌体の標準初期濃度に対して正規化した。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図2−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離される抗原、炭水化物またはポリサッカライドバックボーンに連結された1つ以上のアシル鎖を含む複合リピド、およびミコール酸からなる群より選ばれる抗原を処方してワクチンを調製する工程を含む、CD1により提示される抗原を含むワクチンを作製する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法によって製造される、CD1により提示される抗原を含むワクチン。
【請求項3】
特異的なT細胞の誘導にとって有効量のCD1により提示される抗原であって、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離される抗原、炭水化物またはポリサッカライドバックボーンに連結された1つ以上のアシル鎖を含む複合リピド、およびミコール酸からなる群より選ばれる抗原と製薬学的に許容され得る担体とを含んでなる、脊椎動物に投与した場合に該脊椎動物において特異的なT細胞応答を誘導するワクチン。
【請求項4】
特異的なT細胞応答を誘導するための、その必要がある個体へのワクチン接種に使用する医薬の製造のための、鹸化された6,6−トレハロース ジミコレートから単離される抗原、炭水化物またはポリサッカライドバックボーンに連結された1つ以上のアシル鎖を含む複合リピド、およびミコール酸からなる群より選ばれるCD1により提示される抗原の使用方法。

【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−104206(P2006−104206A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322180(P2005−322180)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【分割の表示】特願平7−503031の分割
【原出願日】平成6年6月21日(1994.6.21)
【出願人】(500070259)ブリガム アンド ウイミンズ ホスピタル (1)
【Fターム(参考)】