説明

CD1d−拘束NKT細胞の細菌糖脂質による活性化

NKT細胞を活性化する方法、対象者で免疫応答を刺激する方法、ワクチンの有効性を改善する方法、及び感染を治療する方法が開示される。更にまた、対象者での腫瘍の拒絶、癌治療、自己免疫の調節、及びアレルゲン誘発過敏症の抑制を促進する方法が開示される。前記方法は、CD1分子と複合体を形成した細菌糖脂質とNKT細胞を接触させて、前記NKT細胞を活性化すること含む。前記細菌糖脂質は、アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから由来することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用:本出願は、米国仮特許出願60/648,153(2005年1月28日出願)の権利を主張する。前記仮特許出願は参照により本明細書に含まれる。
連邦政府支援研究に関する記載:本発明は、アメリカ予防衛生研究所、アレルギー感染症研究所のグラントAI053725により合衆国政府の支援を受けて達成された。合衆国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
序論
CD1d分子は、β2ミクログロブリン関連分子のCD1ファミリーのメンバーである。それぞれCD8+及びCD4+ T細胞にタンパク質抗原を提示するクラスI及びII主要組織適合複合体(MHC)とは対照的に、CD1分子は、T細胞への提示のために外来及び自己脂質抗原の両方を捕捉し処理するために進化してきた。CD1a、b及びc分子は、外来の細菌抗原をヒトTCRαβT細胞に提示することが示された。対照的に、CD1d拘束T細胞(又はNKT細胞)は、NKレセプター及び保存された半不変TCR(マウスのVα14-Jα18/Vβ8、ヒトのVα24-Jα18/Vβ11)の両方を発現する、類先天性(innate-like)メモリー/エフェクター細胞集団である。NK細胞のように、NKT細胞は、IFN-γのmRNAを構成的に発現するが、しかしそれらの平衡を保たれたエフェクターステージから立証されるようにタンパク質は発現しない。NKT細胞は、自己免疫及び移植片拒絶、病原体に対する抵抗性の促進、並びに腫瘍免疫の促進に関与している。
NKT細胞は、α-ガラクトシルセラミド(αGal-Cer)(海洋性海綿動物に由来する代用リガンドである)に応答することは知られているが、それらの天然の抗原に関する情報の欠如は、それらの胸腺での発達のメカニズムと同様に、末梢におけるそれらの活性化及び補充のメカニズムの理解をこれまで妨げてきた。
【0003】
本発明者らはこれまでに、天然の内因性抗原、イソグロボトリヘキソシルセラミド(iGb3)を同定した(前記はLPS活性化樹状突起細胞によってNKTに提示される)。この成果は、iGb3はNKT細胞の主要なリガンドであることを提唱した。しかしながら、TCRのβ鎖の部分的多様性は、多数の天然抗原特異性が可能であることを示唆している。
【発明の開示】
【0004】
発明の要旨
本明細書に開示されるものは、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)綱のメンバーから得られる糖脂質はまた、CD1d分子の天然のリガンドとして作用しNKT細胞を活性化するという、我々の驚くべき発見である。
ある特徴では、本発明は、CD1d分子と複合体を形成した細菌の糖脂質とNKT細胞を接触させることを含む、NKT細胞を活性化する方法を提供する。いくつかの実施態様では、細菌糖脂質は、アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから誘導することができる。
【0005】
別の特徴では、本発明は、CD1d分子と複合体を形成した細菌糖脂質とNKT細胞のT細胞レセプターを接触させることを含む、NKT細胞によるサイトカイン発現を誘発する方法を提供する。
更に別の特徴では、本発明は、CD1d分子と複合体を形成した細菌糖脂質とNKT細胞のT細胞レセプターを接触させることによって活性化されたNKT細胞の有効量を対象者に投与することを含む、対象者で免疫応答を刺激する方法を提供する。
更に別の特徴では、本発明は、アルファプロテオバクテリア綱のメンバーにから由来する細菌糖脂質の有効量を投与することによって、ワクチンの有効性を改善する方法、腫瘍拒絶を促進する方法、自己免疫を調節する方法、アレルゲン誘発過敏症を抑制する方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施態様の詳細な説明
CD1拘束T細胞はエフェクター機能及びヘルパー機能の双方を保持し、多様な細胞タイプ(マクロファージ、樹状突起細胞、NK細胞、T細胞及びB細胞を含む)と相互作用し、それによって先天性及び獲得免疫応答の双方に寄与する。これらT細胞のサブセットであるNKT細胞(またCD1d拘束T細胞又はCD1dテトラマー+ T細胞として知られている)は、一様なTCRα鎖、自己脂質反応性、及び迅速なエフェクター応答を特徴とする。これらの細胞は、多数の免疫機能(抗微生物応答、抗腫瘍免疫、及び寛容と自己免疫との間の均衡調節を含む)で重要な役割を果たす。
【0007】
外来抗原の非存在下では、NKT細胞は、CD1+ 抗原提示細胞(例えば単球、樹状突起細胞(DC)及びマクロファージ)に暴露されることによって刺激される。NKT細胞に提示されこれに認識され得る自己抗原の種類には、リン脂質(例えばホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルグリセロール)とともにスフィンゴ脂質が含まれる。しかしながら、サイトカインの放出という点に関しては全ての種類がNKT細胞で応答を誘引するというわけではない。
NKT細胞はまた、α-ガラクトシルセラミド(αGal-Cer)(海洋性海綿動物で見出されるグリコスフィンゴリピド)を認識することが知られている。この分子は、哺乳動物で公知の免疫学的又は他の生理学的機能をもたないが、NKT活性化の実験で研究者らに広く用いられている。本発明より前には、微生物糖脂質の直接提示によるNKTの活性化は知られてなかった。
【0008】
NKT細胞は、CD1d提示極性脂質抗原による刺激に際して迅速に活性化される。 “活性化”とは、本明細書及び当分野で前記用語が用いられるとき、CD1d提示刺激抗原との接触時に、NKT細胞によってIFN-γ、IL-4、IL-2、IL-10、IL-13、GM-CSF若しくはTNF-α、又はこれらサイトカインの組み合わせが分泌されることを指す。また別には、“活性化”は、活性化されたT細胞の細胞表面マーカー(例えばCD69)のアップレギュレートされた発現を指すことができる。
【0009】
本発明のNKT細胞の活性化は、NKT細胞(より具体的にはNKT細胞のT細胞レセプター(TCR))をCD1dと複合体を形成した細菌の極性脂質と接触させることを含む。糖脂質は極性脂質の適切なものである。従って、いくつかの実施態様では、NKT細胞の活性化は、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)綱のメンバーから誘導された細菌糖脂質とNKT細胞を接触させることを含む。“NKT細胞のT細胞レセプター”とは、本明細書及び当分野で前記用語が用いられるとき、NKT細胞の保存された半不変TCRを指し、前記は、例えばマウスのVα14-Jα18/Vβ8及びヒトのVα24-Jα18/Vβ11を含む。本明細書で用いられる、“接触”は、固定された可溶性若しくは不溶性CD1d分子への溶液中の細菌糖脂質のin vitro添加、又は細胞表面CD1d分子を発現する抗原提示細胞を有する対象者への細菌糖脂質のin vivo投与を指す。
【0010】
NKT細胞の活性化は、任意の適切な手段によってin vitro又はex vivoで測定することができる。NKT細胞の活性化を判定することができるin vitro検査の例は、NKT細胞を抗原提示細胞(APC)(例えば樹状突起細胞(DC))と細菌糖脂質アクチベーター又は推定アクチベーターの存在下で同時培養し、続いて上清のIFN-γ又は他の分泌サイトカインをアッセイすることである。また別には、NKT細胞の活性化は、細菌糖脂質抗原を対象者に投与するか、又は細菌糖脂質とのex vivo接触後にCD1d+抗原提示細胞を対象者に投与することによってex vivoで測定することができる。これら対象者由来のNKT細胞を、例えばCD1d-テトラマー染色及びフローサイトメトリーによるゲート処理によって単離し、続いて表面CD69(初期T細胞活性化抗原)及び/又は細胞内IFN-γについて適切な方法によりアッセイすることができる。
【0011】
アルファプロテオバクテリアはプロテオバクテリア門の1つの綱であり、主として2つの主要な表現型(紅色非硫黄細菌及び好気性バクテリオクロロフィル含有細菌)を含む。アルファプロテオバクテリア綱の細菌性メンバーは主として土壌、湖又は池から単離される。いくつかのメンバーは公知のヒト病原体である。
【0012】
アルファプロテオバクテリア綱には以下の6つの目(order)が含まれる:ロドスピリラ目(Rhodospirillales)、リケッチア目(Rickettsiales)、ロドバクター目(Rhodobacterales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonadales)、カウロバクター目(Caulobacterales)、及びリゾビア目(Rhizobiales)(G.M. Garrity et al. Taxonomic Outline of the Procaryotic Genera, BERGEY'S MANUAL of Systematic Bacteriology, 2nd Ed., April 2001(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。NKT細胞の活性化で有用であり得る細菌糖脂質は、任意のこれらの目のメンバーから誘導することができる。しかしながらリケッチア目、スフィンゴモナス目及びリゾビア目のメンバーが特に適切であると考えられる。
【0013】
リケッチア目には以下の3つの科(family)が含まれる:リケッチア科(Rickettsiaceae)、エールリキア科(Ehrlichiaceae)、及びホロスポラ科(Holosporaceae)。エールリキア科のエールリキア(Ehrlichia)属のメンバーから誘導される極性脂質が、本発明の方法で適切に使用されると考えられる。例えばE.ムリス(E. muris)由来の糖脂質が適切であり得る。
スフィンゴモナス目にはスフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)が含まれる。この科のスフィンゴモナス(Sphingomonas)属のメンバー(例えばS.カプスラタ(S. capsulata))から誘導される糖脂質が適切であると考えられる。
【0014】
リゾビア目には以下の10の科が含まれる:リゾビア科(Rhizobiaceae)、バルトネラ科(Bartonellaceae)、ブルセラ科(Brucellaceae)、フィロバクテリア科(Phyllobacteriaceae)、メチロシスト科(Methylocystaceae)、ベイジェリンキア科(Beijerinckiaceae)、ブラディリゾビア科(Bradyrhizobiaceae)、ヒホミクロビア科(Hyphomicrobiaceae)、メチロバクテリア科(Methylobacteriaceae)、及びロドビア科(Rhodobiaceae)。ブルセラ科のブルセラ(Brucella)属のメンバーから誘導される糖脂質が、本発明の方法で適切に使用されると考えられる。
【0015】
スフィンゴモナス・カプスラタはアルファプロテオバクテリア綱の病原体である。前記はグラム陰性、リポ多糖類(LPS)-陰性細菌であり、その細胞壁脂質は重点的に性状が調べられた。これら細菌の細胞壁由来の糖脂質は、本発明に従ってNKT細胞を活性化するために用いることができる。
【0016】
同様に、エールリキア属(genus)のメンバーはグラム陰性でLPS-陰性細菌である、その細胞壁脂質はNKT細胞の活性化に用いることができる。エールリキアの細胞膜脂質は、スフィンゴモナス・カプスラタの細胞膜脂質のようには十分に性状が調べられていないが、この属のメンバーは、in vivoと同様に適切な活性化アッセイでNKT細胞を活性化する機能を有するであろうと考えられる。
【0017】
ブルセラ(Brucella)は病原性を有することが知られているこのクラスのまた別の属である。ヒトに感染し得るこの属の4つの種には、ウシ流産菌(B. abortus)、ブタブルセラ症菌(B. suis)、マルタ熱菌(B. melitensis)及びイヌブルセラ症菌(B. canis)が含まれる。ヒトのブルセラ症は、急性発熱性疾患又は多様な症状を示す持続性疾患を特徴とする。前記は、本質的に全てのヒトの感染が動物からもたらされるという点で典型的な人獣共通伝染病である。エールリキア及びスフィンゴモナス菌とは対照的に、この菌の細胞外膜は優勢なLPS成分及び3つの主要なタンパク質群を含む。これら細菌の細胞膜の特定の分画又は成分は、本発明に従ってNKT細胞を直接活性化するために用いることができる。
【0018】
特筆したように、細菌糖脂質はアルファプロテオバクテリア綱の細菌から適切に由来する。“〜から由来する”とは、細菌源から単離及び/又は精製することを指し、更にまた細菌性化合物のde novo合成、又は当分野で公知の適切な合成プロセスにより細菌性化合物を土台にして合理的に設計された化合物も指す。当業者には理解されるところであるが、“細菌糖脂質”はまた、本発明の方法に関して加熱殺菌又は弱毒化細菌も含むことができる。例えば、NKT細胞と細菌糖脂質との接触には、適切には、NKT細胞と加熱殺菌又は弱毒化細菌との接触も、単離又は合成細菌糖脂質との接触と同様に含まれる。
“糖脂質”という用語は、疎水性部分(例えばアシルグリセロール、スフィンゴイド、セラミド(N-アシルスフィンゴイド)又はフェニルホスフェート)とグリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖類を含む任意の化合物を指す。特にセラミド部分と結合した1つ以上の糖類が、NKTの活性化に特に有用であり得る。
【0019】
NKT細胞を活性化する方法で使用される適切な細菌糖脂質は、一般的には下記の構造式(I)を有する:
【0020】
【化1】

【0021】
式中、----は、Xが水素若しくは低級アルキルである場合には一重結合を、又はXが対イオンである場合にはイオン結合のどちらかを示し;R1及びR2は、それぞれ別個に-H、-OH、単糖類及びオリゴ糖類から成る群から選択され;R3は、-H又は-OHであり;R4は-H又は-OHであるか、又はR7と一緒になって二重結合を形成し;R5及びR6は、それぞれ別個にC1−C30アルキルであり、ここでC1−C30アルキルは飽和若しくは不飽和であるか、又は1つ以上のシクロプロピル基を含み;更にR7は-Hであるか、又はR4と一緒になって二重結合を形成する。本明細書で用いられる、“低級アルキル”という用語は、1つから4つの炭素原子を有する、直鎖若しくは分枝した飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルを意味する。そのような炭化水素ラジカルの具体的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、イソプロペニル、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル又はシクロプロピルである。更にまた本明細書で用いられる、“対イオン”は、糖脂質上の陰性に荷電したカルボキシレートとイオン結合により結合することができる、任意の陽性荷電種である。
【0022】
CD1d分子と複合体を形成し、NKT細胞を活性化する適切な細菌糖脂質の代表的ないくつかの例は、図5に示されている。PBS 30、PBS 45及びPBS 59は、公知のスフィンゴモナスの細胞膜分子をベースにして合成され、in vitroでNKT細胞を活性化することが見出された。逆に、PBS 50及びPBS 60はNKT細胞を活性化しない。図5に示した残りの化合物は、NKT細胞を活性化することができる糖脂質に共通であると決定された以下の特質を基準に合理的に設計された:1)α型グリコシド結合及び2)糖脂質の炭水化物部分の6位の酸化。
【0023】
いくつかの実施態様では、本発明の細菌糖脂質の投与によるNKTの活性化は、対象者で免疫応答を刺激することができる手段を提供することができる。本明細書で用いられる、“免疫応答”は、対象者の基準値又は非刺激状態と比較したとき、対象者で測定可能な液性又は細胞性応答レベルの任意の上昇を指す。液性及び細胞性免疫応答の双方を測定する方法は当分野では周知である。NKT細胞のin vivo応答は、部分的には活性化時の細胞性環境によって影響を受けることは理解されよう。TH1免疫応答は、主として例えばIL-2、IFN-γ、IL-2及びTNF-αの放出を特徴とする。対照的に、TH2サイトカインは、主としてIL-4、IL-5、IL-6、IL-10及びIL-13を含む。NKT細胞のin vivo応答はまた、抗原濃度又は以前の若しくは反復された抗原暴露によって影響を受け得る。活性化は、更にNKT細胞及びAPC上の補助刺激分子との相互作用(例えばCD40/CD40L相互作用)によって仲介される。
【0024】
サイトカイン分泌に加えて、活性化NKT細胞は、グラニュリシンと同様にパーフォリン及びグランザイムの放出を介して強力に細胞溶解性であり、これら分子の分泌を介して細菌細胞及び/又は腫瘍細胞死滅に直接寄与することができる。
従って、有効量の細菌糖脂質を対象者に投与することによって対象者でNKT細胞を活性化することは、抗微生物免疫応答を生じさせ、それによって前記対象者で感染を治療する手段を提供することができる。前記感染はウイルス性でも細菌性でも寄生虫性でもよく、前記抗微生物免疫応答は、微生物(ウイルス、細菌又は寄生虫を含む)の増殖を阻害又は死滅させるために十分であり得る。投与は、当分野で用いられる任意の方法によって実施することができる。前記方法には、とりわけ、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、経口、鼻咽頭又は粘膜吸収が含まれる。
【0025】
記載したように、本発明の方法はまた、哺乳動物で抗過剰増殖免疫応答を誘発することによって、癌の治療で又は腫瘍の拒絶促進で用いることができる。哺乳動物での癌の“治療”には以下の1つ以上が含まれる:(1)癌の増殖の抑制、すなわちその進行の停止、(2)癌の拡散の防止、すなわち転移の防止、(3)癌の緩和、すなわち癌の退縮惹起、(4)癌の再発の防止、(5)癌の症状の軽減、及び(6)1つ以上の固形腫瘍の拒絶の促進。
【0026】
具体的な実施態様では、本発明の細菌糖脂質はアジュバントとして投与され、ワクチンと同時投与されるときにワクチンの有効性を改善することができる。本明細書で用いられる、“同時投与”は、少なくとも2つの成分が共存的に、すなわち時間的に同じ又は連続して投与されること、すなわち1つの成分の投与に続いて他の成分が投与されることを指す。
【0027】
養子伝達法は、細菌糖脂質とex vivoで接触させた細胞を投与して、対象者の免疫応答を刺激することを基本にしている。いくつかの実施態様では、前記細胞は、例えば癌細胞又は微生物に対する免疫応答を提供又は強化するために、ex vivoで活性化され対象者に注入されるNKT細胞であろう。いくつかの実施態様では、活性化されたNKT細胞の投与は、抗過剰増殖免疫応答を誘発して、固形腫瘍の拒絶を促進することができる。他の実施態様では、前記細胞は、抗原提示細胞(例えば樹状突起細胞)によって発現されたCD1d分子と細菌糖脂質との複合体を形成させるために、ex vivoで細菌糖脂質と接触させた抗原提示細胞であろう。続いて抗原提示細胞は、対象者に例えば注射によって投与され、適切な免疫応答を提供することができる。この投与方法は、対象者又は対象者の細胞の最小限の細菌糖脂質への暴露で免疫応答の刺激を可能にする。
【0028】
NKT細胞の活性化はまた、自己免疫を調節する方法又はアレルゲン誘発性過敏症を抑制する方法で用いることができる。細菌糖脂質の直接投与と同様に養子伝達法もこれら個々の治療で意図される。
以下の実施例は本発明の更なる理解を促進するために提供される。用いられる個々の材料及び条件は本発明を更に例示することを目的とし、本発明の合理的範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1:NKT細胞の加熱殺菌細菌によるin vitro刺激
細菌株、スフィンゴモナス・カプスラタ(ATCC14666)及びネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)R71はミューラー・ヒントン寒天で増殖させた。エールリキア・ムリス(Ehrlichia muris)は文献の記載に従って調製した(N. Ismail et al. J. Immunol. 2004, 172:1786-1800(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。細菌は、74℃に2時間暴露して加熱殺菌し、2.5−5x106 cfu等価物/ウェルをin vitro刺激に用いた。
【0030】
刺激アッセイは、全脾臓細胞(5x106/200μLウェル)又は精製T細胞及び抗原提示細胞を用いて実施した。アッセイに用いたT細胞集団は、仕分けしたCD1d-αGal-Cer+マウス脾臓細胞(5x104/200μLウェル)、ヘパリン血のフィコール遠心後に得られたヒト末梢血リンパ球(PBL)(5x105/200μLウェル)又はヒトNKT細胞(5x105/200μLウェル)を含んでいた。ヒトVα24 NKT細胞は、αGal-Cerで刺激したPBLから誘導し、照射PBMC及びin vitroでのEBV形質転換B細胞の存在下でPHA及びIL-2による反復刺激によって維持した。抗原提示細胞は骨髄由来の樹状突起細胞であり、マウスのアッセイのためにはGMCSF/IL-4(2ng/mL、及び5ng/mL、Biosource)で刺激し2.5x105/200μLウェルで培養し、ヒトのアッセイのためには、新鮮な又は組換えヒトGMCSF/IL-4(各サイトカイン100μg/mL、R&D Systems)で5日間培養した放射線照射アロジェネイックヒトPBMCで刺激した(2x105/200μLウェル)。細胞は2回洗浄し、刺激実験に添加する前に培養液のみで6時間スターブさせた。
NKT細胞は、上記に示した加熱殺菌細菌で48時間、96ウェルの丸底プレートでRPMI1640(Biofluids)中で刺激した(前記RPMI1640は、グルタミン、抗生物質、5x10-5Mの2-ME及び10%FCS(マウスの実験の場合)又は5%AB血清(ヒトの実験の場合)を補充されていた)。上清中のマウス及びヒトIFN-γの濃度を、対応するELISAキット(BD Bioscience, 下方検出限界12.5pg/mL)を用いて48時間で測定した。
【0031】
全脾臓細胞を5x106の加熱殺菌細菌又は100ng/mLのαGal-Cerで刺激し、CD1d-αGal-Cer+ NKT細胞の頻度を刺激時並びに刺激後2、4及び6日に測定した。
刺激後6日で、CD1d-αGal-Cer、CFSE及びαB220(BD Pharmingen)標識及び染色工程を実施し、細胞をFACSで分析した。CD1d-αGal-Cerテトラマーを生成するために、5μLのαGal-Cer(DMSO中の1mg/mLのストック溶液から)、10μLのPBS 0.5%トゥイーン20、10μLのビオチニル化CD1d(1mg/mL)及び75μLのPBSの混合物を37℃で1時間インキュベートし、脂質添付CD1dは遠心透析によって精製し、ストレプトアビジン-APCで複合体を形成させた(K. Benlagha et al. J. Exp. Med. 2000, 191:1895-1903)。細胞は、FACSCalibur(BD Biosciences)でCellQuestソフトウェアを用いて解析した。
【0032】
結果は図1A−Cに示されている。新鮮な骨髄から得たCD1+/-又はCD1-/- DCと同時培養した、マウスのCD1dテトラマーにより仕分けしたNKT細胞は、加熱殺菌スフィンゴモナス及びエールリキアで刺激したとき、コントロールのサルモネラ及びαGal-Cerと同様にCD1d-依存態様でIFN-γを分泌した(図1A、左)。同様に、PBMC由来DCと同時培養したヒトNKT細胞は、刺激に際してCD1d依存態様でIFN-γを分泌した。この場合、CD1d依存性は、1μg/mLの抗CD1d抗体又はコントロールIgG1によるブロッキングを用いて示された(図1A、右)。加熱殺菌細菌の存在下で6日間培養した全脾臓細胞懸濁物は、NKT細胞の顕著な拡張及び増殖を示し、これは純粋なαGal-Cerによって誘発される拡張及び増殖よりわずかに低いだけであった(図1B−C)。
【0033】
実施例2:サルモネラと対比されるスフィンゴモナス及びエールリキアに対するIFN-γ応答のための弁別的要件
遺伝型がMyD88-/-、Triflps2/lps2及びMyD88-/-Triflps2/lps2(1つ又は2つのアダプターMyD88及びTLRシグナリングのTRIFを欠く)のDC、又はCD1-/-のDCと同時培養した全脾臓細胞を、5x106の加熱殺菌したサルモネラ、スフィンゴモナス又はエールリキアで48時間刺激した。上清のマウス及びヒトIFN-γの濃度を、対応するELISAキット(BD Bioscience, 下方検出限界12.5pg/mL)を用いて48時間で測定した。
実施例1に記載したようにDCを加熱殺菌細菌でパルスし調製し、更にIB4(グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia Simplicifolia)イソレシチンB4)(Vector Laboratories)の存在下でNKT細胞調製物に添加した(IB4はiGb3の末端二糖類と結合するが、αGal-Cerとは結合しない)。IFN-γ産生を48時間で測定した。
Hexb-/-DC(iGb4の末端GalNAcを除去するために必要なb-ヘキソサミニダーゼを欠くので、リソソーム中でiGb3を生成することができない)を上記に記載したように加熱殺菌細菌でパルスし、NKT細胞培養に添加した。IFN-γの濃度を48時間で測定した。
【0034】
結果は図2A−Cに示されている。全脾臓細胞培養アッセイでは、サルモネラ誘発IFN-γは、1つ又は2つのTLRアダプターの非存在下では、平均してコントロールの2−15%に劇的に減少した(図2A)。極めて対照的に、LPS-陰性のエールリキア及びサルモネラに対する脾臓のIFN-γ応答は大半がMyD88及びTRIFに左右されなかった。NKT細胞を欠くCD1d-/-脾臓細胞は、スフィンゴモナス及びエールリキアに応答することができず、一方、サルモネラに対する応答は極めてわずか減少しただけであった(図2A、左)。同様に、MyD88-欠損DCと同時培養した野生型NKT細胞は、スフィンゴモナス及びエールリキアには応答したが、サルモネラには応答しなかった(図2A、右)。総合すれば、これらの結果は、加熱殺菌サルモネラに暴露された全脾臓では、IFN-γ産生は、抗原提示細胞のTLRシグナリング及びそれに続くNKT細胞とともに他の細胞タイプ(例えばNK細胞)の補充の後で開始されることを示唆した。対照的に、エールリキア及びスフィンゴモナスによるIFN-γ刺激は主としてNKT細胞及びCD1dに依存し、TLRの寄与は極めて小さかった。
【0035】
同様に、レシチンIB4結合は、加熱殺菌エールリキア又はスフィンゴモナスでパルスしたDCによるNKT細胞の刺激を障害せず、異なる微生物抗原の直接的認識と一致した。しかしながら、レシチンは、サルモネラによる刺激を容易に阻止し(図2B)、サルモネラNKT応答のためには、内因性iGb3が蓋然性の高いリガンドであることを示唆した。
加熱殺菌エールリキア又はスフィンゴモナスでパルスしたHexb-/-DCは、NKT細胞を野生型DCと同様に刺激した(図2C)。対照的に、サルモネラでパルスしたHexb-/-DCはNKT細胞を刺激しなかった。
総合すれば、これらの結果は、サルモネラ感染に対するNKT細胞の応答におけるそれらの標的として微生物抗原ではなく内因性iGb3を容認している。
【0036】
実施例3:合成糖脂質抗原に対するNKT細胞刺激性応答
α-グルクロノシルセラミド(PBS30)及びα-ガラクツロノシルセラミド(PBS59)(公知のスフィンゴモナス科の細胞膜抗原に由来)を実施例5に記載したように合成した。BS50、β-グルクロノシルセラミドはコントロール化合物として供した。これらの化合物の構造は図3Aに示されている。
上記化合物のNKT細胞における免疫学的特性を測定した。ヒトVα24-Jα18 NKT細胞及び新しく精製したマウスNKT細胞を、0.001から1000ng/mLの範囲の濃度のαGal-Cer又は合成糖脂質でパルスしたDCと一緒に同時培養した。IFN-γの産生は上記に記載したように48時間で測定した。
【0037】
CD1dテトラマーは、合成糖脂質PBS30、PBS59及びPBS50並びにαGal-Cerを用いて実施例1に記載したように調製し、ヒトNKT細胞及びマウス脾臓細胞の染色に用いた。
結果は図3B−Cに示されている。α-グルクロノシルセラミド(PBS30)及び前記よりその程度は劣るがα-ガラクツロノシルセラミド(PBS59)はともに、マウス及びヒトのNKT細胞の分裂をIFN-γの分泌と同様に強力に活性化させたが、一方、コントロールのβ-グルクロノシルセラミド(PBS50)は活性化させなかった。CD1d-α-グルクロノシルセラミド(PBS30)は全てのヒトNKT細胞及び〜25%のマウスNKT細胞を染色した(図3C)。従って、これらの発見は、グラム陰性細菌のいくつかの種の細胞壁の脂質交換LPSは、類先天性NKT細胞の保存されたTCRによって直接認識され得ることを示した。
【0038】
実施例4:微生物感染時のNKT細胞のin vivoでの役割
CD1d-/-マウスはシカゴ大学で作成し、Jα18-/-マウスはタニグチ博士(千葉大学、日本)から入手し、Hexb-/-マウスはR. Proia(アメリカ予防衛生研究所)から入手した。全てのマウスのバックグラウンドはC57/BLであった。全ての事例で、ヘテロ接合体の交配から得た同腹仔はPCRによって遺伝型を決定し、比較分析に用いた。全てのマウスは、シカゴ大学で学内の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)のガイドラインに従って一定の病原体の存在しない環境下で飼育した。
6から7週齢のC57/BL6マウスの静脈内に、PBSに懸濁した100μLのスフィンゴモナス(1x107)、エールリキア(1x108)又はサルモネラ(1x106)を接種した。感染後24時間して、テトラマー+/B220-としてゲート処理した単離NKT細胞を、表面CD69(初期T細胞活性化抗原)及び細胞内IFN-γについてFACSによって解析した。図4Aに示した結果によって、NKT細胞は、in vivo感染後24時間以内に活性化され、IFN-γを分泌することが確認された。
【0039】
サルモネラ及びスフィンゴモナスのin vivo感染に対する応答で、抗原処理のためにhexbが必要か否かを決定するために、Hexb+/-及びHexb+/-同腹仔を5x106のスフィンゴモナス又はサルモネラで腹腔内チャレンジした。チャレンジ後2時間して、5x106のCFSE-標識Vα14トランスジェニック胸腺細胞を50μLの体積で脾臓内に注射した(A. Bendelac et al. J. Exp. Med. 1996, 184:1285-12293(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。チャレンジ後24時間して、IFN-γの細胞内染色を実施した。結果は図4Bに示されている。Hexb+/-及びHexb+/-間の相違は、サルモネラでチャレンジしたマウスでのみ統計的に有意であり、サルモネラ感染に対する応答でNKT細胞によるIFN-γ産生はリソソームのiGb3を必要とするが、一方、スフィンゴモナスに対するNKT細胞の応答にはリソソームのiGb3は要求されないことを示した。
【0040】
in vivoでの感染制御におけるNKT細胞の役割の特徴を調べるために、Jα18-/-及びCD1-/-マウス並びにそれらの同腹仔コントロールの静脈内に5x106又は1x106のスフィンゴモナスを注射した。肺の細菌負荷を図4Cに表示した間隔で判定した。細菌算定は、0.5%のトリトンX-100中で組織を均質化し、コロニー形成のために培養した後で実施した。結果は、Jα18-/-及びCD1-/-マウスはともに、ヘテロ接合体の同腹仔コントロールと比較して、初期時点で肺に12−14倍高い細菌負荷があり細菌除去が遅れることを示した。
生存実験のために、Jα18-/-及びCD1-/-マウス並びにそれらの同腹仔コントロールの静脈内に5x108の高用量のスフィンゴモナスを注射した。死亡又は瀕死(安楽死させた)のマウスを感染後2−4時間毎に記録した。図4Dに示した結果は、高用量のスフィンゴモナスによる感染は野生型マウスを急速に死に至らしめるが、一方、大半のNKT欠損マウスは生存することを示した。
致死性はサイトカイン放出に付随するのか否かを調べるために、スフィンゴモナス(1x1067)をJα18-/-及びCD1-/-マウス並びにそれらの同腹仔コントロールの静脈内に注射した。図4Eに示した間隔で、IFN-γ及びIL-12 p40の血清レベルを測定した。結果は、野生型マウスの致死性は血清中へのIFN-γ及びIL-12の爆発的放出に付随するが、一方、NKT欠損マウスは有意に少ないサイトカインしか産生しないことを示した。
エールリキア感染実験のために、マウスをエールリキア・ムリスストックの10-1希釈500μLで腹腔内感染させた。CD1d-/-マウス及びに同腹仔コントロールの肺、肝及び脾のエールリキア負荷を、感染後2日及び7日にエールリキアdsb遺伝子のリアルタイムPCRによって決定した(N. Ismail et al. J. Immunol. 2004, 172:1786-1800)。図4Fに示した結果は、NKT欠損マウスはエールリキアを除去できないことを示した。
【0041】
実施例5:細菌糖脂質PBS61の合成
図6はPBS61合成の適切なルートを示す。激しく攪拌されているCH2Cl2(3mL)及び水(1.5mL)中の化合物“1”(H. Ando, S. Manabe, Y. Nakahara, Y. Ito, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40:4725-4728)(453mg, 0.976mmol)の溶液に、TEMPO(60.8mg, 0.390mmol)及びビス(アセトキシ)ヨードベンゼン(BAIB)(345mg, 1.07mmol)を添加し、図6の中間化合物“2”を生成した。1時間後に更なるBAIB(345mg, 1.07mmol)を添加した。TLCによって出発物質の完全な変換が示されるまで(〜1.5時間)、前記反応物を攪拌した。前記反応混合物をCH2Cl2で2回抽出し、一緒にした有機層をMgSO4上で乾燥させて濃縮した。短いフラッシュカラム(SiO2、CH3OH/CH2Cl2 1:10)によって粗グルクロン酸を得た。CH2Cl2(3mL)中の粗グルクロン酸溶液を新しく調製したジアゾメタンのエーテル溶液でガスの発生が止むまで処理した。続いて、反応混合物をAcOH(2mL)で処理し、真空中で濃縮した。
【0042】
フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、EtOAc/ヘキサン 1:4−1:3)によって対応するメチルグルクロネート(186mg, 0.378mmol, 2工程の収量は39%)を得た。1H NMR (CDCl3) δ7.31-7.27 (m, 4 H), 6.87-6.86 (m, 4 H), 4.83-4.67(m, 4 H), 4.49 (d, J = 9.8 Hz, 1 H), 3.87-3.80 (m, 2 H), 3.78 (s, 3 H), 3.51 (t, J = 7.8 Hz, 1 H), 3.39 (t, J = 8.8 Hz, 1 H), 2.80-2.70 (m, 2 H), 1.32 (t, J = 7.3 Hz, 3 H). 13C NMR (CDCl3) δ169.65, 159.47, 159.40, 130.65, 130.10, 129.71, 114.02, 113.89, 86.01, 84.83, 80.36, 75.28, 75.26, 71.91, 55.34, 52.79, 25.29, 15.13。
【0043】
高解析高速原子衝撃質量分析法(チオグリセロール+Na+マトリックス)m/e([M+Na]+)515.1716(100.0%);計算値515.1714。メチルグルクロネート(186mg, 0.378mmol)をCH2Cl2(10mL)及びEt3N(0.5mL)に溶解し、続いて触媒量のDMAP(20mg)及びAc2O(0.2mL)を導入した。12時間後に真空中で溶媒を除去し、残留物をクロマトグラフィー(SiO2、EtOAc/ヘキサン 1:4)に付し、透明な油として生成物を得た(172mg, 0.392mmol, 収量87%)。1H NMR (CDCl3) δ7.31-7.18 (m, 4 H), 6.88-6.85 (m, 4 H), 5.12 (t, J = 9.8 Hz, 1 H), 4.83-4.61(m, 4 H), 4.47 (d, J = 9.8 Hz, 1 H), 3.86 (d, J = 10.3 Hz, 1 H), 3.80 (s, 3 H), 3.71 (s, 3 H), 3.65 (t, J = 8.8 Hz, 1 H), 3.49 (t, J = 8.8 Hz, 1 H), 2.82-2.68 (m, 2 H), 1.95 (s, 3 H), 1.32 (t, J = 7.3 Hz, 3 H). 13C NMR (CDCl3) δ169.72, 167.94, 159.63, 159.48, 130.38, 130.29, 130.02, 129.66, 113.99, 85.56, 82.80, 80.61, 76.64, 75.49, 75.22, 71.33, 55.47, 52.92, 25.17, 20.89, 15.15. 高解析高速原子衝撃質量分析法(チオグリセロール+Na+マトリックス)m/e([M+Na]+)557.1827(100.0%);計算値557.1822。
【0044】
中間化合物“6”を調製するために、化合物“2”(172mg, 0.329mmol)、化合物“3”(150mg, 0.328mmol)、及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルピリジン(67.6mg, 0.329mmol)の混合物を4Åの分子篩(300mg)とともに室温で1時間攪拌した。次に、ジメチル(メチルチオ)スルホニウムトリフレート(66.8mg, 0.329mmol)を加え、更に8時間攪拌を続けた。前記混合物を濃縮し、1:1のEtOAc/ヘキサンを用いてSiO2プラグを通過させた。真空中で溶媒を除去し、残留物でクロマトグラフィーを実施し(SiO2, EtOAc/ヘキサン1:5−1:4)、生成物“4”(61.1mg, 0.0657mmol, α-β-アノマーの混合物、収量20%)を得た。ピリジン(10mL)及び水(2mL)中の化合物“4”(61.1mg, 0.0657mmol, α-β-アノマーの混合物)の溶液を硫化水素流で15分処理した。前記溶液を12時間攪拌し、続いて再び硫化水素で15分泡立たせた。真空下で溶媒を蒸発させ、更に残留物をトルエンとともに共蒸発させた。残留物をCH2Cl2(10mL)に溶解し、続いて“5”(43.1mg, 0.131mmol)を導入した。CH2Cl2中のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(27.0mg, 0.131mmol)及びジメチルアミノピリジン(DMAP)(6.3mg, 0.052mmol)の溶液を添加し、更に6時間攪拌を続けた。前記混合物を濃縮し、1:1のEtOAc/ヘキサンを用いてSiO2プラグを通過させた。真空中で溶媒を除去し、残留物でクロマトグラフィーを実施し(SiO2, EtOAc/ヘキサン1:5−1:4)、生成物“6”(22.3mg, 0.0184mmol, α-アノマーの収量28%)を得た。
【0045】
1H NMR (CDCl3) δ8.07-8.04 (m, 2 H), 7.61-7.58 (m, 1 H), 7.47-7.44 (m, 2 H), 7.27-7.16 (m, 4 H), 6.87-6.81 (m, 4 H), 6.67 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 5.36-5.29 (m, 3 H), 5.18 (t, J = 5.9 Hz, 1 H), 5.00 (t, J = 9.3 Hz, 1 H), 4.79 (d, J = 3.4 Hz, 1 H), 4.74-4.54 (m, 4 H), 4.52-4.49 (m, 1 H), 4.14 (d, J = 9.8 Hz, 1 H), 3.85-3.74 (m, 8 H), 3.69-3.62 (m, 4 H), 3.55 (dd, J = 9.3, 3.4 Hz, 1 H), 2.01-1.96 (m, 7 H), 1.88-1.78 (m, 2 H), 1.36-1.09 (m, 55 H), 0.90-0.87 (m, 6 H). 13C NMR (CDCl3) δ177.19, 170.04, 169.84, 168.71, 166.45, 159.60, 159.40, 133.53, 130.76, 130.01, 129.46, 128.73, 114.03, 113.94, 98.56, 78.49, 78.19, 74.49, 73.97, 73.18, 71.18, 69.18, 67.96, 55.48, 52.92, 50.91, 49.38, 38.99, 34.16, 32.14, 31.99, 29.99, 29.86, 29.80, 29.65, 29.57, 29.19, 27.42, 27.30, 25.81, 25.57, 25.15, 24.84, 22.90, 20.91, 14.34. 高解析高速原子衝撃質量分析法(チオグリセロール+Na+マトリックス)m/e([M+Na]+)1236.7557(100.0%);計算値1236.7539。
【0046】
PBS-61の調製:化合物“6”(22.3mg, 0.0184mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(1mL)及び水(0.5mL)に溶解し、続いてトリフルオロ酢酸(TFA)(2mL)を導入した。出発物質の下方スポットへの完全な変換がTLCによって示されるまで(〜1.0時間)、前記反応物を攪拌した。前記反応混合物をトルエンで希釈し、続いて真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(SiO2, MeOH/ CH2Cl2 1:40−1:24)の後で透明なガラス(10.0mg, 0.0103mmol, 56%収量)としてジアルコールが得られた。
【0047】
1H NMR (CDCl3) δ8.02-8.00 (m, 2 H), 7.64-7.61 (m, 1 H), 7.50-7.46 (m, 2 H), 6.67 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 5.35-5.33 (m, 2 H), 5.22-5.18 (m, 1 H), 5.08 (t, J = 6.4 Hz, 1 H), 4.98 (t, J = 9.8 Hz, 1 H), 4.82 (d, J = 3.9 Hz, 1 H), 4.51-4.50 (m, 1 H), 4.22 (d, J = 9.8 Hz, 1 H), 3.99 (dd, J = 10.2, 3.4 Hz, 1 H), 3.93 (t, J = 9.8 Hz, 1 H), 3.72 (s, 3 H), 3.58 (dd, J = 9.3, 3.4 Hz, 1 H), 3.40 (dd, J = 10.3, 7.4 Hz, 1 H), 2.11 (s, 3 H), 2.05-1.98 (m, 4 H), 1.88-1.78 (m, 2 H), 1.36-1.09 (m, 64 H), 0.89-0.86 (m, 6 H). 13C NMR (CDCl3) δ177.99, 170.94, 170.44, 168.67, 167.14, 134.07, 130.15, 130.01, 129.19, 128.92, 99.47, 74.98, 74.60, 72.23, 71.76, 71.51, 69.23, 68.35, 53.06, 51.61, 39.11, 32.28, 32.13, 31.99, 31.78, 29.86, 29.73, 29.63, 29.57, 29.40, 29.19, 27.42, 27.22, 25.68, 25.07, 22.91, 22.87, 20.97, 14.35.
【0048】
高解析高速原子衝撃質量分析法(チオグリセロール+Na+マトリックス)m/e([M+Na]+)996.6404(100.0%);計算値996.6388。前記ジアルコール(10.0mg, 0.0103mmol)をMeOF(1mL)及びTHF(1mL)に溶解し、続いてNaOMe(MeOH中の1MのNaOMe溶液の0.2mL)及び3滴の水を添加した。混合物を12時間攪拌し、続いて水(2mL)を添加した。前記反応混合物を真空中で濃縮し、残留物をクロマトグラフィー(SiO2, CHCl3/MeOH/H2O 60:30:4)に付してPBS-61(5.0mg, 0.069mmol, 収量67%)を得た。1H NMR (1滴のDCl及び3滴のD2Oを含むDMSO-d6 0.7ml, 55℃) δ5.36-5.34 (m, 2 H), 4.79 (d, J = 3.4 Hz, 1 H), 3.94 (t, J = 5.9 Hz, 1 H), 3.88 (d, J = 9.7 Hz, 1 H), 3.82-3.79 (m, 1 H), 3.71-3.63 (m, 2 H), 3.58-3.56 (m, 1 H), 3.50 (t, J = 9.3, 1 H), 3.38 (t, J = 9.3 Hz, 1 H), 3.30 (dd, J = 9.3, 3.4 Hz, 1 H), 2.01-1.99 (m, 4 H), 1.60-1.55 (m, 2 H), 1.36-1.09 (m, 64 H), 0.90-0.87 (m, 6 H). 13C NMR (1滴のDCl及び3滴のD2Oを含むDMSO-d6 0.7ml, 55℃) δ174.21, 171.39, 130.29, 100.46, 100.38, 73.35, 72.37, 71.54, 69.98, 68.02, 53.22, 41.09, 34.93, 34.22, 31.92, 31.75, 31.56, 29.93,29.71, 29.32, 28.89, 27.26, 25.70, 24.97, 22.68, 14.54. 高解析高速原子衝撃質量分析法(チオグリセロール+Na+マトリックス)m/e([M+Na]+)752.5289(100.0%);計算値752.5284。
【0049】
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、本発明が属する技術分野の通常の技術レベルを明らかにする。本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許及び特許出願が引用により具体的に及びそれぞれ個別に表示されたかのように同程度に参照により本明細書に含まれる。本発明の開示と前記本明細書に含まれる刊行物、特許及び特許出願との間に矛盾が生じる場合は、本発明の開示が優先するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】加熱殺菌した細菌又はαGal-Cerで刺激したマウス及びヒトNKT細胞によるCD1d-依存IFM-γ分泌を示す。3つの実験の平均及び標準偏差が示されている。
【図1B】加熱殺菌した細菌又はαGal-Cerで刺激した脾臓細胞培養におけるNKT細胞分裂を示す。データの点は、3つの別個の実験の平均及び標準偏差が示している。
【図1C】細菌刺激又はαGal-Cerに対する応答におけるNKT細胞の分裂を示す。上段:表示のNKT細胞ゲート及びパーセンテージによる脾臓細胞のCD1d-αGal-Cer/B220染色。下段:5x103のゲート処理NKT細胞のCFSE希釈プロフィル。
【図2A】加熱殺菌したネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、スフィンゴモナス・カプスラタ(Sphingomonas capsulate)及びエールリキア・ムリス(Ehrlichia muris)とともに48時間培養し全脾臓細胞によって放出されたIFN-γを示す。左図:野生型コントロールのパーセンテージとして示したデータ。右図:2つから3つの別個の実験の平均及び標準偏差として示したデータ。
【図2B】ヒトNKT細胞のDC+抗原に対する応答のレシチンIB4による阻止を示す。2つの実験で同様なデータが得られた。
【図2C】Hexb+/-又はHexb-/-DCによって提示された細菌抗原に対するマウスNKT細胞応答の刺激を示す。2つの実験で同様なデータが得られた。
【図3A】合成のスフィンゴモナス細胞壁抗原の構造を示す。PBS50はコントロールβ-グルクロノシルセラミドである。
【図3B】合成脂質抗原及びDCによって刺激した、ヒトVα24-Jα18 NKT株及び新しく精製したマウスNKT細胞のIFN-γ応答を示す。表示のデータは、2つの別個の実験の平均及び標準偏差である。
【図3C】合成糖脂質によるヒトNKT(上段)及びマウス脾臓細胞(下段)のCD1dテトラマーの染色を示す。NKT細胞ゲート及びパーセンテージは表示のとおりである。
【図4A】スフィンゴモナス(1x107)、エールリキア(1x108)及びサルモネラ(1x106)による静脈内感染後24時間のNKT細胞のin vivo活性化を示す。同様な結果が2つの実験で得られた。
【図4B】サルモネラに応答したNKT細胞によるIFN-γの産生を示す。Hexb+/+とHexb-/-との間の相違はサルモネラについて顕著であった(p=0.001)。1群につき3匹のマウスを解析し、2つの別個の実験で同様な結果が得られた。
【図4C】表示のCFUのスフィンゴモナスを感染させた後のCD1d+/-及びCD1d-/-マウスの肺内の細菌負荷を示す(各棒線は4から5匹のマウスを表す)。増加の倍数及びp値が表示されている。2つの代表的な実験が示されている。
【図4D】高接種量のスフィンゴモナス・カプスラタ(5x108)を接種した後のマウスの急性致死性を示す。CD1d+/-及びCD1d-/-(それぞれn=24、p<0.0001)並びにJα18+/-及びJα18-/-(それぞれn=12、p<0.034)を比較した別個の実験が示されている。
【図4E】1x107のスフィンゴモナス・カプスラタを感染させた後の、CD1d及びJα18のヘテロ接合並びにホモ接合マウス変異体及び同腹仔コントロールにおける血清中への急性期IFN-γ及びIL-12の放出を示す。同様な結果が2つの別個の実験で得られた。
【図4F】感染後2日目及び7日目に回復したCD1d+/-及びCD1d-/-マウスの肺、肝及び脾のエールリキアPCRカウントを示す。(各棒線は3匹のマウスを表す)。増加の倍数及びp値が表示されている。1つの代表的な実験が示されている。
【図5】アルファプロテオバクテリア綱の細菌から誘導されるいくつかの合成糖脂質を示す。
【図6】糖脂質PBS61の例示的合成模式図を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5−1】

【図5−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
NKT細胞を、CD1d分子と複合化した細菌糖脂質と接触させることを特徴とする、NKT細胞を活性化する方法。
【請求項2】
前記細菌糖脂質が、アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルファプロテオバクテリア綱のメンバーが、リケッチア目、スフィンゴモナス目、及びリゾビア目からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リケッチア目のメンバーが、エールリキア科のメンバーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エールリキア科のメンバーが、エールリキア属のメンバーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エールリキア属のメンバーが、エールリキア・ムリスである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スフィンゴモナス目のメンバーが、スフィンゴモナス科のメンバーである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記スフィンゴモナス科のメンバーが、スフィンゴモナス属のメンバーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スフィンゴモナス属のメンバーが、スフィンゴモナス・カプスラタである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リゾビア目のメンバーが、ブルセラ科のメンバーである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ブルセラ科のメンバーが、ブルセラ属のメンバーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブルセラ属のメンバーが、マルタ熱菌、ウシ流産菌、イヌブルセラ症菌、又はブタブルセラ症菌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NKT細胞の活性化が、サイトカインの発現増加を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記サイトカインが、IFN-γである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD1d分子が、細胞によって発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、抗原提示細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原提示細胞が、樹状突起細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CD1d分子が、テトラマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
対象者における免疫応答を刺激する方法であって、対象者に、
a)アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから由来する細菌糖脂質、
b)請求項1の方法に従って活性化したNKT細胞、
c)アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから由来する細菌糖脂質と接触させたCD1d+ 抗原提示細胞、又は
d)前記の組み合わせ、
の有効量を投与することを特徴とする方法。
【請求項20】
前記免疫応答が、抗過剰増殖応答である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫応答が、腫瘍の退縮を促進する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫応答が、自己免疫を調節する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫応答が、アレルゲン誘発過敏症である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫応答が、抗微生物免疫応答である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗微生物免疫応答が、微生物の増殖阻害に有効である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記微生物が、ウイルス、細菌及び寄生虫から成る群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ワクチン及びアジュバントを同時投与することを含む、ワクチンの有効性を改善する方法であって、前記アジュバントが、アルファプロテオバクテリア綱のメンバーから由来する細菌糖脂質、請求項1の方法に従って活性化したNKT細胞の有効量、又は前記の組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
NKT細胞を、下記式(I)の化合物と接触させることを含むことを特徴とするNKT細胞を活性化する方法。
【化1】

式中、
----は、Xが水素若しくは低級アルキルである場合には、一重結合を、又はXが対イオンである場合には、イオン結合のどちらかを示し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、-H、-OH、単糖類及びオリゴ糖類から成る群から選択され、
R3は、-H又は-OHであり、
R4は、-H又は-OHであるか、又はR7と一緒になって二重結合を形成し、
R5及びR6は、それぞれ別個にC1−C30アルキルであり、ここでC1−C30アルキルは飽和若しくは不飽和であるか、又は1つ以上のシクロプロピル基を含み、更に
R7は、-Hであるか、又はR4と一緒になって二重結合を形成する。
【請求項29】
式中、Xが、メチルであり、R1が、-Hであり、R2が、-OHであり、R3が、-OHであり、R4が、-Hであり、R5が、C16アルキルであり、R6が、C15アルキルであり、R7が、-Hである、請求項28に記載の方法。

【図6】
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【公表番号】特表2008−528608(P2008−528608A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553225(P2007−553225)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/002781
【国際公開番号】WO2006/083671
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507069771)ブリガム ヤング ユニヴァーシティー (3)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【出願人】(501242712)ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ (19)
【Fターム(参考)】