説明

CD40抗体製剤および方法

【課題】CD40アゴニスト抗体を患者に投与することを含む、患者における腫瘍の治療方法および非経口投与に適した安定な液体医薬製剤の提供。
【解決手段】CD40アゴニスト抗体またはそれらのフラグメントを、少なくとも2サイクルの断続的な投与計画に従って投与する。該サイクルはそれぞれ、(a)投与期間(この間に、前記患者に前記CD40アゴニスト抗体の治療上有効な量が投与される)、および、それに続く(b)休止期間、を含む。一実施態様において、上記投与は、少なくとも3時間にわたり抗体の血漿濃度0.01μg/ml〜10μg/mlを生産し、上記休止期間は、少なくとも1週間である。該製剤は、抗CD40抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および、ポリソルベート80を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CD40は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーの構成要素である。これは、抗原提示細胞(B細胞、樹状細胞、単球)、造血細胞前駆体、内皮細胞、平滑筋細胞、上皮細胞で発現され、同様に、ほとんどのヒト腫瘍でも発現される。(GrewalおよびFlavell,Ann.Rev.Immunol.,1996,16:111〜35;ToesおよびSchoenberger,Seminars
in Immunology,1998,10(6):443〜8)。CD40アゴニスト剤を用いた研究によれば、CD40受容体の刺激は、抗腫瘍活性に関連する作用のカスケードを惹起することを報告している。例えば、抗原提示細胞におけるCD40受容体の刺激は、それらの成熟、抗原提示機能、副刺激の可能性、および、それらの免疫調節サイトカインの放出を増強することが示されている(Lee等,PNAS
USA,1999,96(4):1421〜6;Cella等,J.Exp.Med.,1996;184(2):747〜52)。また、CD40アゴニストは、CD40+腫瘍のアポトーシスを促進し、それらの樹状細胞によってプロセシングされる能力を増強することも報告されている(von
Leoprechting等,Cancer Res.,1999,59:1287〜94;Sotomayo等,Nature Medicine,1999,5(7):780〜87;Eliopoulos等,Mol.Cell
Biol.,2000,29(15):5503〜15;Ziebold等,Arch.Immunol.Therapiae
Experimentalis,2000,48(4):225〜33;Hoffmann等,J.Immunol.,2001,24(2):162〜71)。これらの免疫刺激の重要性と直接的な抗腫瘍作用は、動物モデルで説明されており、それによれば、CD40アゴニスト抗体は、腫瘍成長を阻害し、腫瘍の耐性をリバースさせることが示されている(Diehl等,Nature
Med.,1999,5(7):774〜9;Francisco等,Cancer
Res.,2000,60(12):32225〜31)。CD40抗体は、以下の特許公報で言及されている:U.S.5,786,456;U.S.5,674,492;WO02/088186;US2003059427;US20020142358;WO01/56603;U.S.5,801,227;EP806963;WO88/06891;および、WO94/04570。しかしながら、CD40抗体に関する高度に有効な投与方法および製剤は説明されていない。また、このような治療に使用するのに適した安定な製剤も有用と思われる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、CD40アゴニスト抗体またはそれらのフラグメントを前記患者に投与することを含む、ガン治療が必要な患者におけるガンの治療方法に関する、前記抗体は、少なくとも2サイクルの断続的な投与計画に従って投与され、該サイクルはそれぞれ、(a)投与期間(この間に、前記患者に前記CD40アゴニスト抗体の治療上有効な量が投与される)、および、それに続く(b)休止期間、を含む。一実施態様において、上記投与は、少なくとも3時間にわたり抗体の血漿濃度0.01μg/ml〜10μg/mlを生産し、上記休止期間は、少なくとも1週間である。その他の実施態様において、上記投与期間は、少なくとも1日、1〜5日間、または、1〜3日間である。その他の実施態様において、上記休止期間は、1〜8、1〜6週間、2〜5週間、または、3〜4週間である。
【0003】
特定の実施態様において、CD40アゴニスト抗体の治療上有効な量は、3〜120時間にわたり、前記抗体の血漿濃度約0.03μg/ml〜10μg/ml、約0.03μg/ml〜1μg/ml、約0.03μg/ml〜0.3μg/ml、または、約0.1μg/ml〜0.3μg/mlを生産する。いくつかの実施態様において、このような特定の血漿濃度が、少なくとも1日、24〜30時間、24〜36時間、24〜48時間、24〜72時間、24〜96時間、または、24〜120時間維持される。いくつかの実施態様において、上記血漿濃度は、3〜96時間、または、12〜72時間維持される。
【0004】
特定の実施態様において、投与期間中に投与されるCD40アゴニスト抗体の治療上有効な量は、約0.03〜3.0mg/kg/日、0.1〜3.0mg/kg/日、0.1〜1.0mg/kg/日、または、約0.1〜0.3mg/kg/日である。一実施態様において、上記用量は、1〜5日間、または、1〜3日間、連続的に、または、1日おきのいずれかで投与される。
【0005】
また、腫瘍の治療に関して上述したように、CD40アゴニスト抗体の断続的な投与計画も患者の免疫反応を増強することにおいて有用であるため、本発明はこのような使用も提供する。特定の実施態様において、患者の免疫反応を増強することにより、患者の全血中のB細胞におけるCD23またはMHC−II発現の増加(これは、例えば投与期間の終了時に測定してもよい)が起こる。
【0006】
いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、原発性および/または複合免疫不全に罹った患者、例えば、高IgM症候群を伴うCD40依存性免疫不全、分類不能型免疫不全、ブルトン型無γグロブリン血症、IgGサブクラス欠損症、および、X連鎖SCID(共通ガンマ鎖の突然変異)に罹った患者に投与される。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、免疫抑制された(例えば化学療法により)患者、または、免疫を衰弱させる疾患(例えば、HIVのようなあらゆる後天性免疫不全疾患)を有する患者を治療するために投与される。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、高齢の患者の免疫性を増強するために投与される。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、細菌、ウイルス、真菌または寄生虫感染を有する患者を治療するために投与される。いくつかの実施態様において、ヒトのアゴニスト抗CD40抗体は、年齢、病気または全身的に悪い健康状態のために感染を起こしやすい患者に、感染を予防する、または感染数または重症度を低減させるために、予防的に投与してもよい。
【0007】
本発明はまた、CD40アゴニスト抗体、および、DNA複製阻害剤、好ましくはプラチン(platin)誘導体、特にシスプラチンを投与することを含む、患者における腫瘍の治療方法を提供する。特定の実施態様において、シスプラチンは、静脈内投与される。いくつかの実施態様において、シスプラチンは、患者の体表面領域の約25〜300mg/m2、約50〜150mg/m2、または、約75〜100mg/m2の量で投与される。一実施態様において、シスプラチンは、一回用量(例えば、一回の静脈内注入)で投与される。その他の実施態様において、これは、2〜5日間にわたり投与される。特定の実施態様において、シスプラチンと併用して投与されるCD40抗体の量は、約0.1〜3.0mg/kg、または、約0.1〜1.0mg/kg、または、約0.1〜0.3mg/kgの用量で投与される。
【0008】
その他の形態において、シスプラチンの投与は、CD40抗体の断続的な投与計画と併用され、ここにおいて、シスプラチンは、1回またはそれ以上の投与期間または休止期間の間に投与される。
【0009】
その他の形態において、本発明は、腫瘍の治療が必要な患者に、CD40アゴニスト抗体またはそれらのフラグメントを1mg/kg/日未満の用量で投与することによって、腫瘍の治療が必要な患者における腫瘍の治療方法に関し、ここにおいて、上記抗体の投与によって生じた患者のCmax血清濃度は、50μg/ml未満である。一実施態様において、上記用量は、0.1〜0.3mg/kgであり、患者における上記抗体のCmax血清濃度は、0.5〜10μg/mlである。
【0010】
その他の形態において、本発明は、pH5.0〜6.0の抗CD40抗体と、製薬上許容できるキャリアーとを含む、非経口投与に適した安定な液体医薬製剤に関し、本製剤は、少なくとも3ヶ月の期間安定である。本製剤のCD40抗体の濃度は、好ましくは、少なくとも約5mg/mlである。一実施態様において、本製剤は、抗CD40抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および、ポリソルベート80を含む。好ましくは、本製剤は、20mM酢酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウム、および、0.2mg/mLポリソルベート80を含む。抗CD40抗体は、好ましくは、抗体21.4.1、または、3.1.1からなる群より選択される抗体のアミノ酸配列を有する。
【0011】
図面の簡単な説明
図1は、免疫細胞の存在下のCD40アゴニスト抗体によるCD40(−)腫瘍K562の成長の阻害を示す。動物は、腫瘍の攻撃時間に、21.4.1またはKLHの1回の注射(IP)を受けた。腫瘍の大きさは、それぞれ個々の動物について、21日目にmm2で報告されている(10動物/グループ)。この研究は、少なくとも5回の別々の研究を代表するものである。
【0012】
図2は、CD40アゴニスト抗体によるヒト乳房腫瘍細胞系BT474の成長の阻害を示す。この値は、6匹の動物/グループを用いて、注射後53日目に行われた個々の腫瘍測定を示す。この研究は、2回の別々の実験を代表するものである。各治療グループの平均は、水平線で示される。
【0013】
図3は、単独または免疫細胞の存在下での、CD40アゴニスト抗体によるCD40(+)腫瘍成長の阻害を示す。動物は、腫瘍の攻撃時間に、21.4.1の1回の注射を受けた。腫瘍を、(a)単独で、または、(b)ヒト末梢血液T細胞およびDCと共に注射した。このデータポイントは、それぞれ個々の動物における腫瘍の大きさ(mm2)を示す。各治療グループの平均(N=10)は、水平線で示される。この研究は、少なくとも3回の別々の実験を代表するものである。
【0014】
図4は、CD40アゴニスト抗体の、B細胞リンパ腫(Daudi)により誘発された死亡率を遅らせる作用を示す。このデータポイントは、生存した動物の平均数を意味する(N=10/グループ)。
【0015】
図5は、CD40アゴニスト抗体とシスプラチンとの併用療法によって生じる腫瘍の縮小を示す。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
用語「アゴニストCD40抗体」または「アゴニスト抗CD40抗体」は、本明細書で用いられる場合、ヒトCD40分子に特異的に結合する抗体であって、さらに、CD40を発現する細胞、組織または生物に添加された場合、1種またはそれ以上のCD40活性を少なくとも約20%増加させるものを意味する。いくつかの実施態様において、このような抗体は、CD40活性を、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、または、85%活性化する。いくつかの実施態様において、このような活性化は、CD40Lの存在下で生じる。いくつかの実施態様において、活性化している抗体の活性は、全血の表面分子のアップレギュレーション分析を用いて測定される。その他の実施態様において、活性化している抗体の活性は、IL−12放出を測定するための樹状細胞分析を用いて測定される。その他の実施態様において、活性化している抗体の活性は、インビボでの腫瘍モデルを用いて測定される。
【0017】
用語「抗体」は、本明細書で用いられる場合、無傷の抗体、または、無傷の抗体と特異的な結合で競合するそれらの結合フラグメントを意味する。結合フラグメントは、組換えDNA技術、または、無傷の抗体の酵素的または化学的な切断によって生産される。結合フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、および、単鎖抗体が挙げられる。本明細書において無傷の(例えば、全体、全長など)抗体という場合、重鎖で末端のリシンが欠失(組換え発現の際に一般的に発生する)した抗体を含むものと理解される。
【0018】
好ましくは、アゴニストCD40抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、可変および定常ドメイン配列がヒト配列から誘導されている抗体を意味する。ヒトCD40抗体は、2001年11月9日付けで出願された米国仮出願番号60/348,980、および、2002年11月8日付けで出願されたPCT国際出願番号PCT/US02/36107(現在、WO03/040170として公開)で詳細に説明されており、これらの全開示は、参照により本発明に含める。ヒト抗体は、ヒト患者における非ヒト抗体の使用に付随する免疫原性およびアレルギー性応答を最小化できると予想されるため、本発明の治療方法に実質的な利点を提供する。
【0019】
本発明に有用な典型的なヒト抗CD40抗体としては、3.1.1、3.1.1H−A78T、3.1.1H−A78T−V88A−V97A、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1H−C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H−D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V、および、23.28.1L−C92Aと称される抗体、同様に、典型的な抗体のいずれかのCDRまたは可変領域を含む抗体のアミノ酸配列を有する抗体が挙げられる。
【0020】
また、上記典型的な抗体のいずれかと同一または類似のエピトープを認識する抗体またはそれらの一部も、本発明に有用であり得る。すなわち、当業者には本明細書で示される開示に基づき理解できると思われるが、本発明の抗体と競合する抗体(例えば、3.1.1、3.1.1H−A78T、3.1.1H−A78T−V88A−V97A、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1H−C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H−D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V、および、23.28.1L−C92Aなど)は、本明細書の他所で開示されているように、有用であり得る。本明細書で例示された抗体と競合する対象の抗体は、抗体を特徴付けるための当業界周知の方法を用いて容易に同定することができる。より特定には、抗体の結合の特徴を評価するための分析、同様に、それらの結合の特徴と、その他の抗体の結合の特徴とを比較するための分析は当業界周知である。このような方法
としては、これらに限定されないが、ELISAに基づく分析、ビアコア(Biacore)結合研究の使用、同様に、Walker等のUS特許出願公報番号2003/0157730A1で詳述されている方法が挙げられる。
【0021】
用語「競合する」は、本明細書において抗体に関して用いられる場合、第一の抗体と第二の抗体とが結合において競合しており、ここにおいて、第一の抗体とその同源のエピトープとの結合は、第二の抗体の非存在下における第一の抗体の結合と比較して、第二の抗体の存在下で検出可能に減少することを意味する。しかしながら、第二の抗体のそのエピトープへの結合もまた、第一の抗体の存在下で検出可能に減少するような別の場合は、必ずしも当てはまらない。すなわち、第一の抗体は、第二の抗体が第一の抗体のそれらそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく、第二の抗体のそのエピトープへの結合を阻害することができる。しかしながら、各抗体が、その他の抗体とその同源のエピトープまたはリガンドとの結合を検出可能に阻害する場合、その阻害が同程度なのか、より大きい程度なのか、または、より小さい程度なのかにかかわらず、その抗体は、それらそれぞれのエピトープの結合に関して互いに「交差競合する」と称される。例えば、交差競合する抗体は、本発明の抗体(例えば、3.1.1、3.1.1H−A78T、3.1.1H−A78T−V88A−V97A、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1H−C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H−D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V、および、23.28.1L−C92A)が結合するエピトープまたはそのエピトープの一部に、結合することができる。競合する抗体と、交差競合する抗体はいずれも、本発明に包含される。このような競合または交差競合が発生するメカニズム(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または、共通エピトープまたはそれらの一部への結合、など)に関係なく、当業者には当然であるが、本明細書で示される教示に基づき、このような競合および/または交差競合する抗体が包含され、本明細書で開示された方法に有用であることができる。
【0022】
加えて、上記典型的な抗体は、抗体が抗原に結合する能力を損なうことなく、1個またはそれ以上のアミノ酸残基の置換、付加または欠失によってさらに修飾され、そのアゴニスト機能を作用させてもよい。実際に、「3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V」と称される抗体は、重鎖可変領域に3つのアミノ酸置換を含み、すなわち、アミノ酸残基番号78におけるアラニンからスレオニンへの置換、アミノ酸残基番号88におけるバリンからアラニンへの置換、および、アミノ酸残基番号97におけるバリンからアラニンへの置換(配列番号9)であり、これらは全て、抗体3.1.1の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)に対応している。加えて、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V抗体は、抗体3.1.1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)と比較して、軽鎖可変領域(配列番号10)において、アミノ酸残基番号4におけるロイシンからメチオニンへのアミノ酸置換、および、アミノ酸残基番号83におけるロイシンからバリンへの置換をさらに含む。3.1.1、および、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V抗体の重鎖(配列番号2)および軽鎖(配列番号4)の定常領域のアミノ酸配列は、同一である。また、抗体3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vは、「3.1.1H3L2」とも称され、これは、この抗体は、抗体3.1.1に比べて重鎖に3つのアミノ酸置換を含み、軽鎖に2つのアミノ酸置換を含む、ということを反映している。
【0023】
従って、いくつかの実施態様において、上記典型的な抗体は、例えばCDRまたはフレームワーク領域において、1〜10個、1〜5個、または、1〜3個のアミノ酸残基の置換、付加または欠失によって修飾されていてもよい。これらの典型的な抗体、および、それらを生産する方法は、2001年11月9日付けで出願された米国仮出願番号60/348,980、および、2002年11月8日付けで出願されたPCT国際出願番号PCT/US02/36107(WO03/040170)で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、これらのアミノ酸置換、またはその他のあらゆるアミノ酸置換に限定されない。むしろ、当業者であれば、本明細書で示された教示をもとに多種多様のアミノ酸置換が本発明に包含され得ることが理解されるだろう。
【0024】
ブダペスト条約に従って、ハイブリドーマ3.1.1、7.1.2、10.8.3、15.1.1、および、21.4.1を、2001年8月6日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American
Type Culture
Collection;ATCC;10801University Boulevard,マナサス,バージニア州20110−2209)に寄託した。ハイブリドーマ21.2.1、22.1.1、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.29.1、および、24.2.1を、2002年7月16日にATCCに寄託した。これらのハイブリドーマには、以下の寄託番号が付与された:
【0025】
【表1】

【0026】
これらの抗体の配列は既知であり、WO03/040170に記載されている。便宜上、これらの抗体のうち2種の重鎖および軽鎖アミノ酸配列を、以下に示す:
【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
従って、21.4.1抗体のアミノ酸配列は、配列番号5〜8に記載のアミノ酸配列を含み、3.1.1抗体のアミノ酸配列は、配列番号1〜4に記載のアミノ酸配列を含み、および、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V抗体のアミノ酸配列は、配列番号9、配列番号2、配列番号10、および、配列番号4に記載の配列を含む。3.1.1と、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vとの間で異なるアミノ酸は、下線で示した。
【0030】
当然ながら、本明細書で示される開示に基づき、本発明の3.1.1抗体は、本明細書に記載の重鎖および/または軽鎖可変領域のあらゆる組み合わせを包含する。すなわち、抗体は、可変領域のあらゆる組み合わせを含んでいてもよく、このような組合せとしては、これらに限定されないが、3.1.1H(配列番号1)/3.1.1L(配列番号3)、3.1.1H(配列番号1)/3.1.1L−L4M−L83V(配列番号10)、3.1.1H−A78T−V88A−V97A(配列番号9)/3.1.1L(配列番号3)が挙げられ、より好ましくは、3.1.1H−A78T−V88A−V97A(配列番号9)/3.1.1L−L4M−L83V(配列番号10)である。しかしながら、本発明は、これらの、またはその他のあらゆる特定の組み合わせに少しも限定されることはない。
【0031】
特定の実施態様において、腫瘍の治療とは、ガン細胞の増殖を阻害する、腫瘍の質量または体積の増加を阻害または予防する、および、/または、腫瘍の質量または体積の減少を起こすことである。いくつかの実施態様において、腫瘍の治療は、患者の寿命を延長させる。特定の実施態様において、腫瘍成長は、治療されていない場合と比較して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害される。いくつかの実施態様において、腫瘍は、CD40陽性である。いくつかの実施態様において、腫瘍は、CD40陰性である。腫瘍は、充実性腫瘍でもよいし、または、リンパ腫のような非充実性腫瘍でもよい。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体が、癌性の腫瘍を有する患者に投与される。
【0032】
抗CD40抗体または抗体の一部で治療できる患者としては、これらに限定されないが、脳ガン、肺ガン、骨ガン、膵臓ガン、皮膚ガン、頭部および頚部のガン、皮膚または眼内黒色腫、子宮ガン、卵巣ガン、直腸ガン、肛門領域の癌、胃ガン(stomach
cancer,gastric cancer)、結腸直腸ガン、結腸ガン、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頚の癌腫、膣の癌腫、または、陰門の癌腫)、食道ガン、小腸ガン、内分泌系のガン(例えば、甲状腺ガン、副甲状腺ガンまたは副腎ガン)、軟部組織肉腫、白血病、骨髄腫、多発性骨髄腫、尿道ガン、陰茎ガン、前立腺ガン、慢性もしくは急性白血病、小児の充実性腫瘍、ホジキン病、リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、膀胱ガン、肝臓ガン、腎臓ガン、腎臓または尿道ガン(例えば、腎細胞ガン、腎盂ガン)、または、中枢神経系の新生物(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸の腫瘍、脳幹グリオーマもしくは下垂体腺腫)、神経膠腫、または、線維肉腫を有すると診断された患者が挙げられる。
【0033】
本明細書で用いられる場合、用語「患者」は、交叉反応するCD40を発現するヒトまたはヒト以外の哺乳動物(例えば、霊長類、カニクイザルまたはアカゲザル)を意味する。好ましくは治療される患者はヒトである。
【0034】
本明細書で用いられる場合、用語「断続的な投与計画」は、CD40アゴニスト抗体を投与すること、それに続く休止期間を含む投与計画を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる場合、用語「休止期間」は、患者にCD40アゴニスト抗体が投与されない期間を意味する。例えば、抗体が毎日投与されている場合、毎日の投与が、例えば数日間または数週間中止されれば、それは休止期間といえる。用量が様々なスケジュールで投与される場合、しばらくの間投与が中止されるような休止期間も考えられる。あるいは、抗体の濃度が治療レベルより低く維持されるような休止期間もあり得る。
【0036】
一実施態様において、上記抗体は、第二の休止期間の後に投与されない、すなわち、本発明の方法が2サイクルを含む場合、第二の休止サイクルの後、薬物は、投与しなくてもよい。
【0037】
好ましくは、休止期間の間、上記抗体の血漿濃度は、治療レベルより低く維持される。
【0038】
上記抗体の投与期間および/または用量は、サイクル間で同一でも異なっていてもよい。
【0039】
総治療時間(すなわち、治療のためのサイクルの数)は、患者それぞれに応じて、確実な医療的判断と治療される患者に特有の要因に基づき様々であると予想される。一般的に、このような治療は、十分な応答が得られるまで施される。本発明の特定の実施態様において、治療期間は、2〜20、2〜15、2〜10、2〜7、2〜5サイクル、または、2〜3サイクルを含む。
【0040】
上記抗体は、あらゆる望ましい手段によって投与することができ、このような手段としては、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、腫瘍内、および、経皮投与が挙げられる。一実施態様において、CD40抗体は、静脈内投与される。あるいは、CD40抗体は、微細針装置を用いて投与される;このような
装置は周知であり、例えば、WO03/084598で説明されている装置が挙げられる。
【0041】
DNA複製阻害剤(例えばシスプラチン)と組み合わせて投与される場合、上記抗体は、このような阻害剤の投与の前に、その最中に、または、その後に投与されてもよい。
【0042】
一形態において、本発明は、pHが約5.0〜6.0、好ましくはpHが約5.5の、静脈注射のための水溶液に関する。このような溶液は、酢酸ナトリウム(三水和物)、酢酸(氷酢酸)、ポリソルベート80、塩化ナトリウムおよび水と共に製剤化されてもよい。好ましくは、上記抗体溶液を冷蔵温度2℃〜8℃で保存し、凍結させないことである。
【0043】
本発明によれば、腫瘍の治療が必要な患者において腫瘍を治療する方法も提供され、本方法は、前記患者に、治療上有効な量のCD40アゴニスト抗体と、治療上有効な量のDNA複製阻害剤(例えばプラチン誘導体)との組み合わせを投与することを含む。特定の実施態様において、組み合わせの抗腫瘍作用がそれぞれの化合物の単独投与から予測される作用より大きくなるように、CD40アゴニスト抗体と、プラチン誘導体化合物(特にシスプラチン)とを、相乗的に組み合わせて作用させる。
【0044】
プラチン誘導体は、DNA複製を妨害することによって抗腫瘍活性を示すことが周知の化合物群である。特定の実施態様において、プラチン誘導体は、シスプラチン(シスジアミンジクロロプラチナム、メルクインデックス(Merck
Index)を参照)、カルボプラチン、および、オキサリプラチンからなる群より選択される。
【0045】
以下の実施例を参照することによって、本発明をさらによく理解できると思われる。しかしながら、これら実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。全ての文献の参照は、参照により開示に含まれる。
【実施例】
【0046】
実施例1:ガン患者からのリンパ節細胞に対する抗体の作用
自己腫瘍細胞で刺激されたガン患者から得られたリンパ節細胞に対するヒト抗CD40抗体(21.4.1)の作用を試験した。
腎細胞ガン、非小細胞肺癌、膀胱の移行細胞癌、結腸ガン、前立腺ガン、および、頭部および頚部のガンを有する患者から、リンパ節細胞と腫瘍を採取した。そのリンパ節細胞を、21.4.1(1μg/mL;6.7nM)の存在または非存在下で、放射線照射したコラゲナーゼ処理腫瘍(上記の同じ患者より採取)と共に培養下に置いた。96時間後に、増殖を3H−チミジンを用いて評価した。INFγ生産細胞の数を、ELISPOT、その後の再刺激で評価した。
腫瘍抗原で刺激されたリンパ節細胞の培養において、上記抗体は、IFNγ+陽性T細胞の数を高めた。さらに、これらのリンパ節細胞の腫瘍抗原に応答した増殖は3〜4倍に高められた。
腫瘍抗原で刺激されると、上記抗体は、ガン患者から得られたリンパ節細胞の増殖とサイトカイン生産能を高めた。
【0047】
実施例2:抗体のFc受容体への結合
抗CD40抗体(21.4.1)の、ヒトおよびカニクイザルの白血球におけるFc受容体への結合を試験した。
フローサイトメトリー研究によれば、ヒト白血球で、FcRタイプのFcγRII(CD32)、および、FcγRIII(CD16)、同様に、極めて低いレベルのFcγRI(CD64)が発現されたことが示された。21.4.1の、ヒトまたはカニクイザルの末梢血液の白血球におけるFc受容体(FcR)への結合を、125I−21.4.1と、ヒトIgG1コントロールmAbを用いることによって決定した。正常なドナーからのヒト白血球またはカニクイザルの白血球を、血漿ゲルを用いて全血から単離し、徹底的に洗浄し、受容体に結合した血清免疫グロブリンを解離させた。スクロースの緩衝材を通過させた遠心分離を用いて、細胞に結合した抗体と、遊離の抗体とを分離した。研究は、受容体の内在化を予防するために、アジ化ナトリウムの存在下で4℃で行われた。
21.4.1を、FcRへの特異的結合に関して、競合物質として、抗体と競合する過量の非標識ヒトIgG2アイソタイプを用いることによって試験した。ヒト白血球におけるFcRへの125I−21.4.1の特異的結合(n=5ドナー)は、−1.0±8.5%であり、カニクイザルの白血球におけるFcRへの特異的結合(n=4)は、15±13%であった。125I−21.4.1の白血球のCD40受容体、同様にFcRへのあらゆる特異的な結合をブロックし得る非標識21.4.1を500倍過量で添加することによって、ヒトおよびカニクイザルの白血球における125I−21.4.1のCD40受容体への特異的な結合は、それぞれ49%および67%であることが示された(CD40への特異的結合の%は、全ての特異的な結合の%からFcRへの結合の%を引くことによって計算された)。コントロールとして、125I−IgG1は、ヒトおよびカニクイザルの白血球への特異的結合を矛盾なく実証している。ヒトおよびカニクイザルの白血球におけるIgG1コントロール抗体のFcRへの特異的な結合は、全ての結合した放射活性のそれぞれ56%および51%を占めた。
これらの研究により、上記抗体は、ヒトおよびカニクイザルの白血球においてFc受容体へ特異的結合が最小であることが示される。
【0048】
実施例3:全血のサイトカイン放出分析
ヒトにおける抗体が介在するサイトカイン放出の誘導と相関するインビトロでの全血分析を用いて、抗CD40抗体(21.4.1)を、それらの刺激されていないヒト全血からのサイトカインの放出を誘導する能力に関して試験した。21.4.1を、1、10および100μg/mLで、ポジティブコントロールとして、Fc介在経路を介してサイトカイン放出を誘導するマウスの抗ヒトCD3IgG1、および、第二のポジティブコントロールとしてマクロファージを刺激することによってサイトカインを誘導するLPSと共に用いて試験した。用いられたドナーには、マウス抗体とLPSの両方に応答した個体(4ドナー)、同様に、LPSのみに応答した個体(3ドナー)が含まれる。ヘパリン化された全血を、21.4.1と5時間培養し、血漿を回収し、ELISAによって(市販のキットを使用)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターフェロンガンマ(INF−γ)およびインターロイキン−6(IL−6)に関して解析した。また、培養物を、48時間インキュベートし、インターロイキン−1ベータ(IL−β)に関しても解析した。
1または10μg/mLの21.4.1と培養されたヒト血液の血漿においてサイトカインは検出されなかった。100μg/mLの上記抗体で処理された1つのドナーのみが、低いが測定可能なレベルの2種のサイトカイン(34pg/mLのTNF−α、および、90pg/mLのIL−6)を示した。その後、このドナーを再試験したところ、検出可能なTNF−αまたはIL−6の誘導は示されなかった。いずれのサンプルにおいてもINFγまたはIL−1βの上昇はみられなかった。
これらの研究によれば、21.4.1は、ヒト全血において炎症性サイトカインを誘導しないことが示される。
【0049】
実施例4:抗体の薬力学および薬物動態学
CD40抗体(21.4.1)を、様々な用量(1mg/kg
n=4、3mg/kg n=4、5mg/kg n=2、および、10mg/kg
n=2)でカニクイザルに静脈内投与した。これらのサルから、投与前後の様々なタイムポイントでヘパリン化された血液を採取した。この血液をアリコートにし、染色した。ベクトン・ディッキンソン(Becton
Dickinson)のFACSCaliburを用いてデータを得て、セルクエスト(CellQuest)ソフトウェアで解析した。結果を、中央値の蛍光強度の投与前の値と比較した増加の倍数として計算した。
B細胞の活性化状態と抗原提示能を反映するMHCクラスII発現が、投与してから24時間までに、試験された全ての用量に関して、2.5〜3倍増加したが、明確な用量応答関係は観察されなかった。CD23発現、その他のB細胞活性化のマーカーについて、動物2匹を3mg/kgで、動物1匹を10mg/kgで評価した。CD23発現が、投与後24時間で、≧20倍に増加したが、用量の作用は観察されなかった。両方の表面マーカーのアップレギュレーションは持続したが(≧2倍の増加)、21.4.1レベルは1μg/mlを超えたままだった。また、CD71(トランスフェリン受容体)とCD86の副刺激分子のレベルも、中程度のアップレギュレーションを示したが、一方で、CD80発現はそれほど変化しなかった。
インビボのカニクイザルのB細胞において、21.4.1は、表面マーカーをアップレギュレートした。CD20+細胞におけるMHCクラスII、および、CD23発現は、処理によって増加し、1mg/kg(4日間で、〜20μg/mLのCmax、および、≧0.1μg/mLの接触に相当する)が、カニクイザルのB細胞において飽和した薬力学反応を生産するようである。この反応の持続時間は、より高い用量ではより長かった。
カニクイザルにおける、1、3、5または10mg/kgの単回静脈内(IV)投与の後の抗CD40抗体(21.4.1)の薬物動態学的特性を試験した。21.4.1は、低い全身クリアランス(0.0133〜0.0635mL/分/kg)、および、定常状態における少ない分配量(0.0459〜0.0757L/kg)であり、見かけの平均除去半減期が0.75〜2.0日間(表1)になったことが特徴的であった。21.4.1の薬物動態学は、試験された用量範囲にわたり用量依存性のようであった。クリアランス値は、概して、用量を1mg/kgから10mg/kgに高めると減少し、見かけの平均除去半減期は、1mg/kgで0.75日間から、10mg/kgで2.0日間に増加した。定常状態における分配量は、様々な用量で類似していた(0.0575L/kgの平均)。
【0050】
観察された用量依存性クリアランスは、部分的には、21.4.1の、正常な組織で広く発現されるCD40受容体への結合、それに続く内在化、および、抗体−受容体複合体の除去に起因している可能性がある。また、霊長類の抗ヒト抗体(PAHA)応答の開発も、数種のサルにおいて、クリアランスの促進に寄与する可能性がある。試験血清中に21.4.1が存在するとPAHA分析を妨害するため、それぞれの21.4.1の血清濃度が定量の下限(LLOQ,0.03μg/mL)に達した後だけ、PAHAを評価した。3、5および10mg/kgの用量のグループの全てのサルで、抗体投与後14〜28日目に抗21.4.1抗体を検出した。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例5:抗体の抗腫瘍活性
腫瘍細胞単独(1×107)、または、ヒトDC(1×105)、および、同じドナーからのT細胞(5×105)を皮下注射されたSCID−ベージュマウスにおいて、CD40抗体(21.4.1)の腫瘍成長の阻害活性を決定した。腫瘍細胞のDCおよびT細胞に対する比率は、100:1:5であった。特に他の指定がない限り、結果は、コントロール動物における腫瘍成長が300〜400mm2の大きさに達し、実験を継続することがもはや人道的ではない時点であることが予め決定されている1つの固定タイムポイント(反応速度論実験より)における腫瘍の大きさ(mm2)に関して示される。全ての場合において、>30日間のT1/2を有する21.4.1の注射を1回だけ、SCID−ベージュマウスに投与した。
【0053】
実施例5(a):CD40(−)ヒト腫瘍に対する抗体の作用
CD40(−)腫瘍(例えば、赤白血病および結腸ガン)の成長に対するCD40抗体(21.4.1)の作用を試験した。特に、CD40(−)の低い免疫原性の(クラスIおよびII陰性)腫瘍に対する21.4.1の有効性を評価するのに、K562腫瘍を選択した。
SCID−ベージュマウスに、CD40(−)赤白血病の腫瘍、K562(ATCC
CCL−243)を、単独で、または、ヒト末梢血液T細胞およびDCの存在下で皮下注射した。腫瘍注射の時、または、5日間後のいずれかに、1回の21.4.1のIP注射を様々な用量レベルを用いて動物に与えた。
腫瘍の攻撃後の21日目で示されるように(図1)、1回の21.4.1のIP注射により、免疫細胞が存在すると、K562腫瘍成長の用量依存性の阻害が生じた。腫瘍成長の50%阻害を引き起こす21.4.1の量は、0.005mg/kg(Cmax血清濃度0.05μg/mLに相当する)であった。CD40(−)結腸ガン、Lovo(ATCC CCL−229)でも同様の結果が観察された。腫瘍の攻撃から0日目または+5日目に21.4.1を投与したところ、結果は同一であった。これらのCD40(−)腫瘍の成長は、免疫細胞の非存在下だと、21.4.1によって阻害されなかった。
21.4.1は、免疫細胞が存在する場合、CD40(−)腫瘍の成長を阻害するが、これは、免疫が介在する抗腫瘍活性の増強を示唆している。これは、結腸ガンと赤白血病の腫瘍に対して実証された。また、この抗腫瘍活性も、結腸ガンには抗体3.1.1、および、赤白血病の腫瘍には3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V抗体(IC50<0.01mg/kg)を用いて実証された。従って、本明細書で開示されたデータは、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V抗体は、インビボで、3.1.1抗体活性を有することを実証する。これらのインビボでの腫瘍の結果は、2種の抗体を比較して得られた類似のインビトロでのデータを考慮すると、抗体3.1.1、および、抗体3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vは、インビボでも類似の様式で性能を示すだろうということを、さらに裏付けている。従って、3.1.1を用いて得られた結果は、この分析、および、その他の分析において、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vにも当てはまる。
【0054】
実施例5(b):抗体のヒト乳房および前立腺腫瘍成長に対する作用
抗D40抗体(21.4.1)の乳房および前立腺腫瘍の成長阻害に対する作用を試験した。
SCID−ベージュマウスの皮下を、ヒト乳房腫瘍、BT474(ATCC
HTB−20)をヒト末梢血液T細胞およびDCと共に用いて攻撃した。腫瘍を注射した時に、動物は、21.4.1の単回投与(IP)を受けた。
図2で示されるように、21.4.1の1回の注射は、免疫細胞の存在下でBT474細胞の成長を阻害した。腫瘍成長を50%減少を起こすのに必要な21.4.1の量は、0.005mg/kg(Cmax血清濃度0.05μg/mLに相当する)であった。ヒト前立腺ガン細胞系、PC−3(ATCC CRL−1435)に対しても、同様の結果が観察された。これもまた、抗体3.1.1を用いて実証され、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vについても予想可能である。
21.4.1は、ヒト乳房、および、前立腺腫瘍の成長を阻害する。
【0055】
実施例5(c):CD40(+)腫瘍に対する抗体の抗腫瘍作用
抗CD40抗体(21.4.1)のCD40(+)腫瘍に対する抗腫瘍活性への作用、および、免疫細胞の存在および非存在下における有効性の変化を研究した。
SCID−ベージュマウスに、CD40(+)Raji
B細胞リンパ腫(ATCC CCL−86)(SC)を皮下注射し、それに続いて、腫瘍の注射の時に21.4.1の単回投与を与えた(IP)。また、数匹の動物には、ヒトT細胞およびDCも注射した。21日目に腫瘍成長を評価した。
図3で示されるように、免疫細胞の非存在下で腫瘍成長の50%阻害を引き起こす21.4.1の量は、0.02mg/kg(Cmax血清濃度0.2μg/mLに相当する)であった。腫瘍細胞が免疫細胞と共に注射された場合、腫瘍成長の50%阻害を起こすのに必要な21.4.1の量は、20分の1の0.001mg/kgに減少した(Cmax血清濃度=0.01μg/mL)。
これらの結果は、21.4.1は、CD40(+)腫瘍に対して直接的な抗腫瘍活性を有することを説明している。また、この観察は、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V(IC50<0.01mg/kg)にも当てはまる。この抗体21.4.1に関する抗腫瘍活性は、免疫細胞が存在する場合に高められ、これもまた、抗体3.1.1でも実証され、抗体3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vについても予想される。
【0056】
実施例5(d):B細胞リンパ腫に対する抗体の抗腫瘍作用
CD40(+)の全身性腫瘍モデルにおいて、B細胞リンパ腫を用いて、本発明に係る抗CD40抗体(21.4.1)の死亡を遅らせる能力を評価した。
SCID−ベージュマウスに、B細胞リンパ腫(Daudi)(ATCC
CCL−213)を静脈内注射した。腫瘍の注射の時に、21.4.1を1回の注射(IP)で投与した。死亡を58日間モニターした。
図4で示されるように、21.4.1の1回の注射によって、全身投与された腫瘍細胞系により誘導された死亡が阻害された。
B細胞リンパ腫を用いたCD40(+)全身性腫瘍モデルにおいて、21.4.1は死亡を遅らせる。これもまた、3.1.1を用いて実証され、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vについても類似の結果が予想される。
【0057】
実施例6:抗体のシスプラチン併用の治療効果
ヒト乳房腫瘍の成長を阻害することにおける、抗CD40抗体(21.4.1)の、単独、および、シスプラチンの存在下における治療効果を試験した。
SCID−ベージュマウスに、乳房腫瘍、BT474を皮下注射した。腫瘍が200mm2のサイズに達したら、上記抗体(1mg/kg,IP)および/またはシスプラチン(2.5mg/kg,IP)を1回の注射で投与した。攻撃の後の84日目に、腫瘍成長を測定した。
図4で示されるように、21.4.1またはシスプラチンの1回の注射は、腫瘍成長を阻害した。しかしながら、両方の処理を併用すると、8匹の動物のうち7匹において腫瘍の縮小が達成された。
21.4.1は、腫瘍が定着した際に単独で投与された場合、腫瘍成長を阻害し、シスプラチンと組み合わせて投与された場合、腫瘍の縮小を引き起こす。これもまた、抗体3.1.1を用いて実証され、同様に、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vでも起こり得る。
【0058】
実施例7:抗体の複数回用途の薬物動態学
複数回投与の研究において、カニクイザル(2/性別/用量)に、0.3、1.0および10mg/kgの用量で、1、3、5、7および9日目(総投与回数5回)に21.4.1を静脈内投与した。投与前の1日目と9日目に、および、投与後と投与前の0.5、6および24時間目に、および、投与後5日目の0.5時間に血液を回収し、血清薬物濃度を測定した。21.4.1への全身性の接触は、平均Cmax、および、平均AUC(0-24)での評価の通り、1日目と9日目の両方において、用量が0.3から10mg/kgに増加するにつれて増加した(表2)。類似の接触(平均Cmax、および、平均AUC)を、1日目と9日目に、0.3mg/kg、および、1mg/kgの用量グループで観察した。10mg/kgの用量グループにおいて、平均Cmax、および、平均AUC(0-24)値は、1日目から9日目でそれぞれ2.6倍および2.8倍に増加した。接触における性別に関連する差は観察されなかった。
【0059】
【表5】

【0060】
実施例8:抗体製剤
30kDaの分子量でカットオフするカセットを含む限外ろ過ユニットを用いて、CD40抗体を約11.0mg/mL±0.8mg/mLに濃縮した。次に、この濃縮物を、ダイアフィルターでろ過して、20mM酢酸ナトリウム/140mM塩化ナトリウム緩衝液(pH5.5)にした。2%ポリソルベート80溶液を、ダイアフィルターで濃縮した生成物に添加し、0.02%ポリソルベート80の最終濃度を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】免疫細胞の存在下のCD40アゴニスト抗体によるCD40(−)腫瘍K562の成長の阻害を示す。
【図2】CD40アゴニスト抗体によるヒト乳房腫瘍細胞系BT474の成長の阻害を示す。
【図3】単独または免疫細胞の存在下での、CD40アゴニスト抗体によるCD40(+)腫瘍成長の阻害を示す。
【図4】CD40アゴニスト抗体の、B細胞リンパ腫(Daudi)により誘発された死亡率を遅らせる作用を示す。
【図5】CD40アゴニスト抗体とシスプラチンとの併用療法によって生じる腫瘍の縮小を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3ヶ月の期間安定な、CD40アゴニスト抗体と、製薬上許容できるキャリアーとをpH5.0〜6.0で含む非経口投与に適した安定な液体医薬製剤。
【請求項2】
CD40抗体の濃度が少なくとも約5mg/mlである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
抗CD40抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および、ポリソルベート80を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記抗CD40抗体は、21.4.1、3.1.1、および、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vからなる群より選択される抗体のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
pH5.0〜6.0のCD40アゴニスト抗体および製薬上許容できるキャリアーを含む非経口投与に適した液体医薬製剤であって、ここで該抗体は3.1.1、3.1.1H−A78T、3.1.1H−A78T−V88A−V97A、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1H−C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H−D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1L−L4M−L83V、および、23.28.1L−C92Aからなる群より選択され、そして該製薬上許容できるキャリアーは酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80から選択される、製剤。
【請求項6】
該抗体の濃度は少なくとも約5mg/mlである、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および、ポリソルベート80を含む、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
抗体が、21.4.1、3.1.1、および3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83Vからなる群より選択される、請求項7に記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184446(P2011−184446A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100868(P2011−100868)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−546357(P2006−546357)の分割
【原出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】