説明

CD69アンタゴニストを含む肝炎治療用組成物

【課題】肝炎等の炎症症状を治療する新たな手段を提供すること。
【解決手段】CD69アンタゴニストを含む組成物であって、炎症症状又は炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するために使用される組成物、例えばCD69を特異的に認識する抗体(抗CD69抗体)をCD69アンタゴニストとして含む、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するために使用される薬剤又は医薬組成物、並びに、炎症症状又は炎症症状に対する感受性の治療又は低減におけるCD69アンタゴニストの使用、例えば、肝炎又は肝炎に対する感受性の治療又は低減におけるCD69アンタゴニストとしての抗CD69抗体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD69アンタゴニストを含む組成物であって、炎症症状又は炎症症状に対する感受性(susceptibility)を治療又は低減するために使用される組成物に関し、具体的には肝炎又は肝炎に対する感受性を治療又は低減するために使用される組成物に関する。より詳しくは、本発明はCD69アンタゴニストとしてCD69を特異的に認識する抗体(抗CD69抗体)を含む、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療又は低減するために使用される薬剤又は医薬組成物に関する。また、本発明は、肝炎の治療におけるCD69アンタゴニストの使用に関し、より具体的には、肝炎又は肝炎に対する感受性の治療又は低減における、CD69アンタゴニストとしての抗CD69抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性疾患の中でも肝炎は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫により惹起される疾患であり、インターフェロン(IFN)による抗ウイルス療法や副腎皮質ステロイドによる治療が行われているが、劇症肝炎では血漿交換や血液ろ過透析などの治療が必要で、適切な治療を行わないと高頻度で死に至る。
【0003】
T細胞媒介性免疫応答は、自己免疫性肝炎、ウイルス性肝炎及びアルコール性肝炎を含む様々な肝疾患の発症及び進行に関与する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。コンカナバリンA(ConA)誘導性肝炎は、ヒト自己免疫性肝炎及びウイルス性肝炎と共通した幾つかの病理学的性質を有する自己免疫性肝炎及びウイルス性肝炎のマウスモデルである(非特許文献8)。ConA誘導性肝炎は、T細胞介在性肝傷害のモデルとしても用いられている(非特許文献9)。これらの肝疾患は、活性化T細胞を含む様々なリンパ球サブセットの浸潤と関連する。肝臓へのCD4 T細胞の浸潤は、ヒト自己免疫性肝炎及びウイルス性肝炎に関与する(非特許文献3、非特許文献6、非特許文献7)。T細胞は、誘導期及びエフェクター期を含むConA誘導性肝炎の病因に関与することが報告されている(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。抗Thy−1モノクローナル抗体、抗CD4モノクローナル抗体、FK506又はシクロスポリンAといったT細胞特異抗体又は免疫抑制剤による前処理はConA誘導性肝炎を阻害した。これらによりCD4 T細胞及びそのT細胞受容体(TCR)媒介性シグナル伝達活性化が、ConA誘導性肝炎の誘導に関与することが示唆される(非特許文献9)。また、IFN−γがConA誘導性肝炎の発症に関与するようである(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。NKT細胞及びそのIFN−γ産生は、ConA誘導性肝炎の発症に関っている(非特許文献13)。
【0004】
CD69(早期T細胞活性化抗原p60としても知られる;メンデリアン・インヘリタンス・イン・マン(Mendelian Inheritance in Man)のID番号*107273を参照することができる)は、強くグリコシル化されたサブユニットのホモ二量体として発現されるII型膜タンパク質である(非特許文献14)。T細胞及びB細胞の両方が刺激後数時間以内にCD69を発現する。CD69はリンパ球の早期活性化マーカー抗原である(非特許文献15)。選択イベントを受けている新たに調製した胸腺細胞はCD69を発現する(非特許文献16、非特許文献17)。CD69発現には、胸腺でのT細胞発生における調節的な役割、及びB細胞発生に対する軽度の影響があるかもしれない(非特許文献18)。CD69の構成的発現が血小板において認められており、活性化好中球及び好酸球はその細胞表面上にCD69を発現する。CD69は、おそらく複数の標的過程が関与するコラーゲン誘導性関節炎モデル及び抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて調節的な役割をもっているであろう(非特許文献19、非特許文献20)。また、アレルギー性気道炎症の発症におけるCD69の役割が報告されている(非特許文献21)。リンパ球輸送におけるCD69の機能が提唱されている(非特許文献22)。しかしながら、肝炎等の他の炎症症状の発症におけるCD69の役割は知られていない。
【0005】
上記及び本明細書全体で言及される全ての特許及び出版物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Heneghan et al., Hepatology, 35:7-13 (2002)
【非特許文献2】Bogdanos et al., Dig. Liver Dis., 32:440-446 (2000)
【非特許文献3】Chang, K.M. et al., Hepafology, 33:267-276, 23 (2001)
【非特許文献4】Chedid et al., Gastroenterology, 105:254-266 (1993)
【非特許文献5】Kita et al., Gastroenterology, 120:1485-1501 (2001)
【非特許文献6】Rehermann et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 242:299-325 (2000)
【非特許文献7】Eggink et al., Clin. Exp. Immunol., 50:17-24 (1982)
【非特許文献8】Lohr et al., Hepatology, 24:1416-1421 (1996)
【非特許文献9】Tiegs et al., A. J. Clin. Invest., 90:196-203 (1992)
【非特許文献10】Kusters et al., Gastroenterology, 111:462-471 (1996)
【非特許文献11】Mizuhara et al., Hepatology, 23:1608-1615 (1996)
【非特許文献12】Toyonaga et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:614-618 (1994)
【非特許文献13】Kaneko et al., J. Exp. Med., 191:105-114 (2000)
【非特許文献14】Ziegler et al., Eur. J. Immunol., 23:1643-1648 (1993)
【非特許文献15】Testi et al., Immunol. Today, 15:479-483 (1994)
【非特許文献16】Nakayama et al., J. Immunol., 168:87-94 (2002)
【非特許文献17】Feng et al., Int. Immunol., 14:535-544 (2002)
【非特許文献18】Lauzurica et al., Blood, 95:2312-2320 (2000)
【非特許文献19】Sancho et al., J. Clin. Invest., 112:872-882 (2003)
【非特許文献20】Murata et al., Int. Immunol., 15:987-992 (2003)
【非特許文献21】Miki-Hosokawa et al., J. Immunol., 183:8203-8215 (2009)
【非特許文献22】Shiow et al., Nature, 440:540-544 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような現状において、肝炎等の炎症症状を治療する新たな療法が必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、肝炎等の炎症症状を治療する新たな手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行い、CD69欠損マウスは野生型マウスと比較してConA誘導性肝炎についてその症状が軽減されていることを見出した。さらに、野生型マウスに抗CD69抗体を投与し、それによりConA誘導性肝炎の症状が軽減されることを見出した。そして、これら知見を利用することにより本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、CD69の阻害によって、炎症症状又は炎症症状に対する感受性を治療する又は低減する薬剤又は医薬組成物、及び方法を提供することを特徴とする。本発明は特に、CD69の阻害によって、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減する薬剤又は医薬組成物、及び方法を提供する。
【0011】
本発明の特徴及び利点を、一部は以下の明細書に示すが、その一部は明細書から明らかであり、又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の目的及び他の利点は、明細書及び添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせを用いて実現及び達成される。
【0012】
これら及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、本明細書中に具体化され、記載されているように、本発明は、少なくとも1つの炎症症状又は該炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するために使用される薬剤又は医薬組成物であって、少なくとも1つのCD69アンタゴニストを、肝炎又は肝炎に対する感受性であると診断されている対象に、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するのに効果的な量で含む薬剤又は医薬組成物に関する。
【0013】
また本発明は、少なくとも1つの炎症症状又は該炎症症状に対する感受性を治療する又は低減する方法であって、少なくとも1つのCD69アンタゴニストを、肝炎又は肝炎に対する感受性であると診断されている対象に、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するのに効果的な量で投与することを含む方法に関する。
【0014】
任意の数のCD69アンタゴニストを単独で、あるいは肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減する他の治療薬と組み合わせて利用することができる。CD69アンタゴニストは抗CD69抗体、抗CD69アプタマー、CD69 mRNAアンタゴニスト、低分子医薬品、又はそれらの任意の組み合わせの1つ又は複数を含み得る。単独での、又は1つ若しくは複数の治療薬と組み合わせた、少なくとも1つのCD69アンタゴニストの投与は、肝炎等の炎症症状の1つ又は複数の症状が持続している場合に継続することができ、又はかかる症状が減少若しくは消失した場合に中止することができる。2つ以上のCD69アンタゴニスト、又は1つ若しくは複数のCD69アンタゴニストと1つ若しくは複数の治療薬との組み合わせにより、炎症症状の1つ又は複数の症状を相乗的に減少することができる。
【0015】
上述の概要及び以下の詳細な説明がどちらも例示及び説明を目的とするに過ぎず、クレームされるように本発明のさらなる説明を提供することを意図するものであることが理解されよう。
【0016】
本願の一部に援用され、その一部を成す添付の図面は、本発明の実施形態の幾つかを図示するものであり、明細書と共に本発明の原理を説明する役目を果たす。
【0017】
本発明は特に、CD69アンタゴニストを含む肝炎の治療用組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、CD69アンタゴニストがCD69を特異的に認識する抗体である、上記肝炎の治療用組成物に関する。
【0019】
本発明はさらに、肝炎の治療におけるCD69アンタゴニストの使用に関する。
【0020】
本発明はさらにまた、CD69アンタゴニストがCD69を特異的に認識する抗体である、上記CD69アンタゴニストの使用に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、CD69アンタゴニスト、例えばCD69を特異的に認識する抗体を含む肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するために使用される薬剤又は医薬用組成物を提供することができる。
【0022】
本発明により、CD69アンタゴニスト、例えばCD69を特異的に認識する抗体を使用することを特徴とする、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減する新たな療法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】CD69欠損マウスにおけるConA誘導性肝炎の軽減を実証するデータを示す一連の棒グラフである。ConA(10mg/kg、静脈内)注射の12時間後のCD69 KOマウス及びWTマウスの血漿アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。結果はWTマウスと比較した平均±SDとして表す(n=5;*p<0.05)。
【図1B】図1Aに関して記載した実験に関するさらなるデータを示す図である。肝臓をConA注射の12時間後に回収し、肝損傷をヘマトキシリン−エオジン染色によって評価した。
【図2A】抗CD69抗体投与によるConA誘導性肝炎の軽減を実証するデータを示す一連の棒グラフである。ConA誘導性肝炎におけるマウスの血漿AST及びALTレベルを示す。ConA注射の30分前に、WT C57BL/6マウスを抗CD69 モノクローナル抗体(抗CD69 mAb、400μg/マウス)又は対照ハムスターIgGで腹腔内処理した。血漿をConA注射の12時間後に回収した。結果は平均±SDとして表す(n=5;*<0.05)。
【図2B】図2Aに関して記載した実験に関するさらなるデータを示す図である。肝臓をConA注射の12時間後に回収し、肝損傷をヘマトキシリン−エオジン染色によって評価した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、炎症症状又は該炎症症状に対する感受性(susceptibility)を治療する又は低減するために使用される薬剤又は医薬組成物であって、少なくとも1つのCD69アンタゴニストを含有し、肝炎又は肝炎に対する感受性であると診断されている対象に投与される薬剤又は医薬組成物が提供される。
【0025】
「炎症症状」とは、生体に作用する各種の傷害因子に対する全体的又は部分的な一連の生体防御反応、例えば、免疫系の細胞の数の変化、該細胞の移動速度の変化、及び該細胞の活性の変化により生じる組織的障害又は病理学的状態を意味する。免疫系の細胞としては、例えば、T細胞、B細胞、単球若しくはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、小膠細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、又は免疫に特異的に関連する他のあらゆる細胞、例えば、サイトカイン産生内皮細胞若しくはサイトカイン産生上皮細胞を挙げることができる。
【0026】
「炎症症状に対する感受性(susceptibility)」とは、炎症症状の起こし易さをいう。
【0027】
「治療する」とは、ある処置をすることにより、疾患やその症状を消失させるか、低減させるか、あるいはその進行を止めることを意味する。「治療する」には、疾患の発症を防止することも含まれ得る。
【0028】
「アンタゴニスト」は、拮抗薬、括抗剤、遮断薬とも呼ばれる。アンタゴニストとは、受容体に結合するが、受容体に結合する生体物質であるリガンドと異なり生体反応を起こさず、またその結合によってリガンドと受容体の結合を阻害して、リガンドによる受容体を介した細胞内の情報伝達系の機能を抑制して該リガンドによる細胞の活性発現を妨げる物質をいう。CD69アンタゴニストとは、CD69に結合するが、CD69に結合する生体物質であるリガンドと異なり生体反応を起こさず、またその結合によってリガンドとCD69の結合を阻害して、リガンドによるCD69を介した細胞内の情報伝達系の機能を抑制して該リガンドによる細胞の活性発現を妨げる物質をいう。
【0029】
本発明においてまた、炎症症状又は該炎症症状に対する感受性(susceptibility)を治療する又は低減する方法であって、少なくとも1つのCD69アンタゴニストを、肝炎又は肝炎に対する感受性であると診断されている対象に、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するのに効果的な量で投与することを含む方法が提供される。
【0030】
上記方法は肝炎の少なくとも1つの症状をモニタリングすることをさらに含むことができる。肝炎の症状の例としては、急性炎症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルの上昇、及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの上昇の少なくとも1つが挙げられる。本発明に係る方法は少なくとも1つの症状が持続する、所与の範囲内にある、又は閾値より高い若しくは低いままである場合、投与を継続すること、又は少なくとも1つの症状が持続しない、所与の範囲内にない、又は閾値より高く若しくは低くなくなった場合、投与を中止することをさらに含むことができる。
【0031】
任意の種類(複数可)の肝炎を、治療又は感受性の低減の対象とすることができる。本発明の対象とされる肝炎は、好ましくはウイルス性肝炎及び自己免疫性肝炎である。肝炎は、肝細胞障害が急激に起きて6カ月以内に沈静化する急性肝炎と、肝機能障害が6カ月以上持続する慢性肝炎とに分けられる。本発明の対象とされる肝炎は、より好ましくは急性のウイルス性肝炎及び急性の自己免疫性肝炎である。ウイルス性肝炎は、より詳しくはA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎又はそれらの任意の組み合わせが可能である。A型肝炎の症状は倦怠感、発熱、筋肉痛、頭痛、腹痛、吐き気、食欲不振、体重減少、黄疸又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。B型肝炎の症状は黄疸、倦怠感、微熱、頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、筋肉痛、関節痛、皮膚発疹又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。C型肝炎の症状は倦怠感、関節痛、腹痛、痒み、筋肉痛、黄疸又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0032】
肝炎又は肝炎に対する感受性の診断又はモニタリングは、肝機能(ビリルビンレベルの増大、アルブミンレベルの減少、プロトロンビン(凝固)時間の異常、抗A型、B型又はC型肝炎抗体又は抗原等)を調べるための1回又は複数回の血液検査を含むことができる。肝炎又は肝炎に対する感受性の診断及びモニタリングは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、乳酸脱水素酵素(LDH)等の血中酵素レベルの増大に対する1回又は複数回の試験を含むことができる。肝生検も利用することができる。肝炎ウイルスRNA等の病原性核酸を診断目的及びモニタリングのために試験してもよい。
【0033】
CD69アンタゴニストの投与は、1つ又は複数の抗肝炎治療薬と組み合わせて行うことができる。さらなる抗A型肝炎治療薬の例としては、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つの免疫グロブリン又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。さらなる抗B型肝炎治療薬の例としては、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つのインターフェロン、少なくとも1つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。インターフェロンとしてはインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、それらの任意のPEG化(pegylation)又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(NRTI)はアデフォビル、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、それらの任意の塩、それらの任意のプロドラッグ又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。さらなる抗C型肝炎治療薬の例としては、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つのペグインターフェロン、リバビリン及び/又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0034】
投与されるCD69アンタゴニストは、抗体又は抗体の抗原結合断片を含有するポリペプチドを含むことができる。投与される抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を含み得る。投与される抗体又はポリペプチドは、CD69の細胞外ドメインに結合する抗体の抗原結合断片を含むことができる。該抗体又はポリペプチドはCD69の活性を阻害することができる。CD69アンタゴニストは、小分子(低分子量)薬物、塩、プロドラッグ又はそれらの組み合わせを含有することができる。該アンタゴニストはCD69活性を阻害することができる。任意のCD69アミノ酸配列を、CD69に結合する抗体又はアプタマーの産生に利用することができる。かかる配列の例としては、アクセッション番号BAF84558、ABM87473、ABM84101、EAW96123、EAW96122、Q53ZX0、AAO63584、AAH07037、NP_001772、Q07108、CAA83017、CAA80298又はAAB46359を有する配列、その変種(versions)、その一部又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
CD69のエピトープ、例えばCD69の細胞外ドメインに特異的な抗体、及びその抗原結合断片を含有するポリペプチドが、それを利用する方法、使用、組成物及びキットと共に提供される。CD69のエピトープに特異的な抗体、又はそのポリペプチド若しくは断片を形成する方法が提供される。かかる方法は、CD69ポリペプチド又は免疫学的に特異的なそのエピトープを含有するポリペプチドをコードする核酸を準備すること、単離した核酸に由来するCD69アミノ酸配列を含むCD69ポリペプチド、又は免疫学的に特異的なそのエピトープを含有するポリペプチドを発現させること、及び得られるポリペプチド又はその抗原結合断片を含有するポリペプチドに特異的な抗体を生成することを含むことができる。上述の方法によって作製される抗体、又はその抗原結合断片を含むポリペプチドが提供される。CD69アミノ酸配列を含有するCD69のエピトープに特異的に結合する単離した抗体、又はその抗原結合断片を含有する単離したポリペプチドが提供される。かかる抗体は、当該技術分野で既知の任意の許容可能な方法(複数可)を用いて生成することができる。抗体、抗体を利用するキット、方法及び/又は本発明の他の態様は、以下の1つ又は複数を含むことができる:ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、一価抗体、ダイアボディ(diabody)及び/又はヒト化抗体。
【0036】
天然の抗体構造単位は、典型的には四量体を含有する。かかる四量体は各々、ポリペプチド鎖の2つの相同対(各々の対は1つの全長「軽」鎖(例えば、約25kDa)及び1つの全長「重」鎖(例えば、約50kDa〜70kDa)を有する)から構成される。典型的には、各々の鎖のアミノ末端部は、典型的に抗原認識に関与する約100個〜110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各々の鎖のカルボキシ末端部は、典型的にはエフェクター機能に関与し得る定常領域を規定する。ヒト軽鎖は典型的にはκ軽鎖及びλ軽鎖として分類される。重鎖は典型的にはμ、δ、γ、α又はεとして分類され、抗体アイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして規定される。IgGはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが、これらに限定されない幾つかのサブクラスを有する。IgMはIgM1及びIgM2を含むが、これらに限定されないサブクラスを有する。IgAも同様に、IgA1及びIgA2を含むが、これらに限定されないサブクラスに細分される。軽鎖及び重鎖においては、可変領域及び定常領域は約12アミノ酸以上の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10アミノ酸以上の「D」領域を含み得る。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N. Y. (1989))(全ての目的のためにその全体が参照により援用される)を参照できる。各々の軽/重鎖対の可変領域は、典型的には抗原結合部位を形成する。
【0037】
可変領域は、典型的には3つの超可変領域(相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる)によって連結される比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という同じ全体構造を呈する。各々の対の2つの鎖からのCDRは、典型的にはフレームワーク領域によって整列し、これにより特異的なエピトープへの結合が可能となる。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の両方は、N末端からC末端へ、典型的にはドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含有する。各々のドメインへのアミノ酸の割り当ては、典型的にはKabatのSequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Chothia et al., Nature 342:878-883 (1989)に記載の定義に従う。
【0038】
「抗体断片」は、無傷抗体(intact antibody)の一部、例えば無傷抗体の抗原結合領域又は可変領域等を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab1断片、F(ab’)2断片及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン分解は、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片(「Fab」断片と呼ばれる)、及び残りの「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映する名称である)を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することが可能なF(ab’)2断片を生じる。「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体から成る。単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含有するFvの半分)は、抗原を認識し、結合することができる。「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含むが、この場合これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。FvポリペプチドはVHドメインとVLドメインとの間に、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含有することができる。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照できる。
【0039】
抗体はプローブ、治療的処置及び他の用途に使用することができる。抗体はマウス、ウサギ、ヤギ又は他の動物に、翻訳産物又はその合成ペプチド断片を注射することによって作製することができる。これらの抗体は診断分析に、又は医薬組成物中の活性成分として有用である。
【0040】
投与される抗体又はポリペプチドは、機能的薬剤と複合させて、免疫複合体(immunoconguate)を形成することができる。機能的薬剤は、抗生物質、細胞毒性薬、例えば化学療法剤、毒素(例えば細菌起源、真菌起源、植物起源若しくは動物起源の酵素的活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち、放射性複合体(radioconjugate))、核酸分解酵素、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。化学療法剤、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他のインターカレート剤(intercalating agent)、核酸分解酵素等の酵素及び/又はその断片、抗生物質、並びに細菌起源、真菌起源、植物起源又は動物起源の小分子毒素又は酵素的活性毒素等の毒素(その断片及び/又は変異体を含む)、並びに下記で開示される様々な抗腫瘍剤又は抗癌剤は、免疫複合体の生成において使用することができる。使用することができる酵素的活性毒素及びその断片としては、例えばジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に由来する)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害薬、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害薬、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン(tricotheeenes)が挙げられる。当該技術分野で既知であるか、又は別に利用可能な任意の適切な放射性ヌクレオチド又は放射性薬剤を、放射性複合抗体を作製するために使用することができる。
【0041】
抗体と細胞毒性薬との複合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP);イミノチオラン(IT);イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCl等);活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジル等);アルデヒド(グルタルアルデヒド等);ビスアジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等);ビスジアゾニウム誘導体(ビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン等);ジイソシアネート(トリレン−2,6−ジイソシアネート等);ビス活性(bis-active)フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン等);マレイミドカプロイル(MC);バリン−シトルリン(プロテアーゼによって切断可能なリンカー中のジペプチド部位)(VC);2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸PAB=p−アミノベンジルカルバモイル(リンカーの「自己犠牲」部分)(シトルレン(Citrulene));N−メチル−バリン−シトルリン(カテプシンBによるその切断を防止するためにリンカーペプチド結合が修飾されている)(Me);抗体システインに結合したマレイミドカプロイル−ポリエチレングリコール;N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP);及びN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)といった様々な二官能性タンパク質結合剤を用いて作製できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science, 238:1098 (1987)に記載されるように調製することができる。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(triaminepentaacetic acid)(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドと抗体との複合のための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照することができる。抗体は、腫瘍前標的化(pre-targetting)において利用するために「受容体」(ストレプトアビジン等)と複合させることができる(ここでは、抗体−受容体複合体は対象に投与され、続いて除去剤(clearing agent)を用いて血液循環から非結合複合体が除去された後、細胞毒性薬(例えば放射性ヌクレオチド)と複合した「リガンド」(例えばアビジン)が投与される)。
【0042】
本発明に係る抗体は、当該技術分野で既知の技法によって検出可能なマーカーと直接的又は間接的に結合させることができる。検出可能なマーカーは、例えば分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的な手段によって検出可能な薬剤である。有用な検出可能なマーカーとして、蛍光色素、化学発光化合物、放射性同位体、高電子密度試薬、酵素、着色粒子、ビオチン又はジゴキシゲニンを挙げることができるが、これらに限定されない。検出可能なマーカーは多くの場合、放射能、蛍光、色又は酵素活性といった測定可能なシグナルを発生させる。検出可能な薬剤と複合した抗体は、診断目的又は治療目的で使用できる。検出可能な薬剤の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光体、発光体、生物発光体、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影を用いる陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンを挙げることができる。検出可能な物質は、当該技術分野で既知の技法を用いて抗体に直接、又は中間物、例えば当該技術分野で既知のリンカーを介して間接的に結合又は複合させることができる。例えば、診断用途のために金属イオンと抗体とを複合させることを記載する米国特許第4,741,900号を参照することができる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族錯体/複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光体の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが挙げられ、発光体の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光体の例としては、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられる。
【0043】
本発明を実施する上で有用な抗体は、実験動物において、又は以下の方法を用いた組み換えDNA技法によって調製することができる。ポリクローナル抗体は、動物において、フロインドアジュバント(完全又は不完全)等のアジュバントと組み合わせた遺伝子産物分子又はその断片の頻回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって生じさせることができる。免疫原性を向上させるためには、最初に標的アミノ酸配列を含有する遺伝子産物分子又は断片を、免疫化する種において免疫原性のあるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシン抑制因子と、二官能性薬剤又は誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して複合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl等を用いて複合体とするのが有用である。代替的には、免疫原性複合体は、組み換え技術によって融合タンパク質として作製することができる。
【0044】
動物は、約1mg又は約1μgの複合体(それぞれウサギ又はマウスに対する)を、約3容量のフロインド完全アジュバントと合わせ、溶液を複数の部位に皮内注射することによって、免疫原性複合体又は誘導体(標的アミノ酸配列を含有する断片等)に対して免疫化することができる。およそ7日〜14日後、動物から採血し、血清を抗体力価について分析する。動物を、力価が停滞状態になるまで抗原で繰り返し追加免疫する。動物は、初回の免疫化に使用したものと同じ分子又はその断片で、異なるタンパク質と複合させて、及び/又は異なる架橋剤を介して追加免疫することができる。また、免疫応答を向上させるためにミョウバン等の凝集剤を注射に使用することができる。
【0045】
投与される抗体はキメラ抗体を含み得る。投与される抗体はヒト化抗体を含み得る。投与される抗体は完全ヒト化抗体を含み得る。抗体はヒト化又は部分ヒト化であり得る。非ヒト抗体は当該技術分野で既知の任意の適用可能な方法を用いてヒト化することができる。ヒト化抗体は、免疫系が部分的又は完全にヒト化されたトランスジェニック動物を用いて作製できる。本発明に係る任意の抗体又はその断片は、部分的又は完全にヒト化できる。キメラ抗体は当該技術分野で既知の任意の技法を用いて作製することができる。例えば、米国特許第5,169,939号、同第5,750,078号、同第6,020,153号、同第6,420,113号、同第6,423,511号、同第6,632,927号及び同第6,800,738号を参照できる。
【0046】
投与される抗体はモノクローナル抗体、すなわちモノクローナル抗体であり得る本発明に係る抗CD69抗体を含み得る。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)によって記載されているもののようなハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を、典型的には免疫剤を用いて免疫化して、特異的に免疫剤に結合する抗体を産生するか又は産生することが可能なリンパ球を誘導する。代替的には、リンパ球をインビトロ(in vitro)で免疫化することができる。モノクローナル抗体は、例えばHarlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, New York (1988)、Goding, Monoclonal Antibodies, Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York (1986)に記載されるようにスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、翻訳産物との特異的な免疫反応性、及び対応する原型的な遺伝子産物に対する免疫反応性の欠如について試験することができる。
【0047】
モノクローナル抗体は、免疫化した動物から脾臓細胞を回収すること、及び細胞を従来の方式で、例えば骨髄腫細胞との融合により不死化することによって調製することができる。このクローンを次いで所望の抗体を発現するものについてスクリーニングする。モノクローナル抗体は好ましくは他の遺伝子産物と交差反応しない。所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準方法によって増殖させることができる。この目的で好適な培養培地としては、例えばダルベッコ変法イーグル培地及びRPMI−1640培地が挙げられる。代替的には、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物の腹水のようなインビボで増殖させることができる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体を、培養培地又は腹水から、従来の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィー等によって単離又は精製することができる。
【0048】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されているもののような組み換えDNA方法によっても作製することができる。本発明に係るモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離及びシークエンシングすることができる。本発明に係るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、かかるDNAの好ましい供給源とすることができる。DNAを単離した後、発現ベクター内に入れ、これを次いで、免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクションして、組み換え宿主細胞でモノクローナル抗体を合成してもよい。DNAはまた、例えば相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列で置換すること、又は免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾されていてもよい。かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ二価抗体を生じるように本発明に係る抗体の定常ドメインを置換していても、又は本発明に係る抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換していてもよい。ファージミドディスプレイ方法等の組み換えDNA方法を用いた抗体の調製は、市販のキット、例えばファルマシア(Pharmacia,Uppsala,Sweden)から入手可能なRecombinant Phagemid Antibody System、又はSurfZAP(商標)ファージディスプレイシステム(Stratagene Inc.,La Jolla,Calif.)を用いて達成される。
【0049】
本発明に係るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、形質転換B細胞株及び宿主細胞;これらのハイブリドーマ、形質転換B細胞株及び宿主細胞の子孫又は誘導体;並びにハイブリドーの均等物又は等価物のハイブリドーマ、形質転換B細胞株及び宿主細胞も本発明に含まれる。ハイブリドーマ細胞株の例としては、H1.2F3(BioLegend, Inc.,San Diego,Calif.)が挙げられるが、これに限定されない。
【0050】
抗体はダイアボディでもあり得る。「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は同じポリペプチド鎖(Vn−VL)で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短かいリンカーを用いることで、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生じさせることができる。ダイアボディは、例えば欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに十分に記載されている。
【0051】
投与される抗体は一本鎖抗体を含み得る。抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体を調製する方法は当該技術分野で既知である。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組み換え発現を必要とする。重鎖は概して、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断され得る。代替的には、関連システイン残基は架橋を防止するように別のアミノ酸残基で置換されているか、又は欠失している。インビトロでの方法も一価抗体を調製するのに好適である。その断片、特にFab断片を生じる抗体の消化は、当該技術分野で既知の日常的な技法を用いて達成できる。
【0052】
抗体は二重特異性であり得る。1つのタンパク質に特異的に結合し、病理学及び/又は治療に関連する他の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体は、文献に記載される標準手順を用いて産生され、単離され、試験される[例えば、Pluckthun & Pack, Immunotechnology, 3:83-105 (1997)、Carter, et al., J. Hematotherapy, 4:463-470 (1995)、Renner & Pfreundschuh, Immunological Reviews, 1995, No. 145, pp. 179-209、Pfreundschuhの米国特許第5,643,759号、Segal, et al., J. Hematotherapy, 4:377-382 (1995)、Segal, et al., Immunobiology, 185:390-402 (1992)及びBolhuis, et al., Cancer Immunol. Immunother., 34:1-8 (1991)を参照することができる]。
【0053】
本明細書中に開示される抗体は、イムノリポソーム(immunoliposomes)として処方することができる。抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985)、Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980)、並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号によって記載されるような、当該技術分野で既知の方法によって調製される。促進された循環時間を有するリポソームが米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、規定の孔径のフィルタを通して押し出し、所望の直径を有するリポソームを得ることができる。本発明に係る抗体のFab断片は、Martin et al., J. Biol. Chem., 257:286-288 (1982)に記載されているようなリポソームと、ジスルフィド交換反応を介して複合させることができる。任意の治療薬をさらにリポソーム内に含有することができる。また、Gabizon et al, J. National Cancer Inst., 81(19):1484 (1989)を参照できる。
【0054】
CD69アンタゴニストは、CD69に結合するアプタマーを含み得る。アプタマーは核酸、RNA、DNA及びアミノ酸の1つ又は複数を含有し得る。アプタマーは任意の好適な技法又はプロトコルを用いて選択及び作製することができる。例えば、18ヌクレオチド〜50ヌクレオチドの範囲の長さの可変領域を有するオリゴヌクレオチドライブラリを、RNAアプタマーのランダムプールを生成するラン−オフ転写反応の鋳型として使用することができる。このアプタマープールを、次いで非特異的相互作用の種を除去するために非複合基質(unconjugated matrix)に曝露することができる。次いで、残存するプールを固定化した標的と共にインキュベーションする。このプール中のアプタマー種の大部分は標的に対して低親和性を有し、洗い流されて、より少量のより特異的な基質に結合したプールが残り得る。このプールを次いで溶出させ、沈殿させ、逆転写し、ラン−オフ転写の鋳型として使用することができる。5回の選択の後、一定分量を取り出し、クローニング及びシークエンシングすることができる。同様の配列が再現性良く回収されるまで選択を継続することができる。
【0055】
アプタマー産生はビーズベースの選択系を用いて行うことができる。このプロセスでは、各々のビーズが天然及び修飾ヌクレオチドから構成された同一の配列を有するアプタマー集団でコーティングされた、ビーズのライブラリが生成される。100000000個を超えるユニーク配列を含有し得るこのビーズライブラリを、蛍光色素等のタグと複合させた、CD69又はその一部、例えば細胞外ドメインに相当するペプチドと共にインキュベーションすることができる。洗浄した後、最も高い結合親和性を示すビーズを単離し、続く合成のためにアプタマー配列を決定することができる。
【0056】
投与されるCD69アンタゴニストは、mRNAアンタゴニストを含み得る。mRNAアンタゴニストの例としては、少なくとも1つの低分子干渉RNA(siRNA)又は少なくとも1つのリボザイムを挙げることができる。本発明によると、CD69アンタゴニストはsiRNA等の治療用核酸であり、CD69ヌクレオチド配列、その相補体、又はそれらの任意の組み合わせを標的とすることができる。任意の好適なCD69配列を利用することができる。合成siRNAのCD69標的配列は、アクセッション番号NM_001781、NR_026672、NR_026671、AK303383、AK303174、AK291869、DQ896474、DQ893175、CH471094、AY238518、BC007037、AC007068、Z38109、Z30426、Z22576又はL07555を有するヒトCD69ヌクレオチド配列、又はその任意の一部若しくは組み合わせに対して設計されているか、又はCD69転写変異体(transcript variants)の全部若しくは一部サブセットを認識することができる。
【0057】
本発明に利用されるCD69アンタゴニストは、CD69発現の減少を引き起こすことができる。CD69 mRNAアンタゴニストはかかるアンタゴニストの一例である。CD69アンタゴニストは、CD69又はその相補体をコードする標的核酸に特異的に結合し、それに相補的な少なくとも10ヌクレオチドの長さの核酸であり得る。この場合、CD69アンタゴニストの投与は、核酸を対象の細胞に導入することを含む。RNA干渉(RNAi)を利用することができ、CD69アンタゴニストはsiRNAであってもよい。CD69アンタゴニストの投与は対象の細胞に導入することを含み、この場合、細胞はCD69を、CD69の発現を干渉するのに十分な条件下で、有効量のsiRNA核酸として一時的に発現することが可能である。siRNA核酸は突出を含み得る。すなわち、全てのヌクレオチドが標的配列への結合を必要とするとは限らない。siRNA核酸はRNAを含有し得る。siRNA核酸はまた、DNA、すなわちデオキシリボ核酸ヌクレオチドを含有し得る。任意の種類の好適な低分子干渉RNAを利用することができる。内在性マイクロRNA(miRNA)を利用してもよい。本発明に従って使用することができる他のRNA干渉剤としては、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、トランス作動性siRNA(tasiRNA)、反復配列関連(repeat-associated)siRNA(rasiRNA)、低分子スキャン(small-scan)(scn)RNA及びPiwi相互作用(pi)RNAが挙げられる。利用されるRNA干渉核酸は、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、少なくとも35、及び/又は40ヌクレオチド〜50ヌクレオチドの長さであり得る。RNAi剤は1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチドも含み得る。RNAi剤、例えばsiRNA又はshRNAは、適切なベクター系等のより大きな核酸構築物のカセットとして含まれ得る。かかるベクター系の例としては、レンチウイルスベクター系及びアデノウイルスベクター系が挙げられる。好適な系の一例は、Aagaard et al., Mol. Ther., l5(5):938-45 (2007)に記載されている。より大きな核酸構築物の一部として存在する場合、得られる核酸は含まれるRNAi核酸より長い、例えば50ヌクレオチドを超える長さであり得る。利用されるRNAi剤は標的mRNAを切断しても、又は切断しなくてもよい。
【0058】
RNA干渉に加えて又はRNA干渉の代替として、他の核酸アンタゴニストを利用することができる。CD69アンタゴニストは、CD69をコードする遺伝子から転写されたRNA分子を特異的に切断するリボザイムであり得るが、ここでリボザイムは、標的基質結合部位、基質結合部位中の触媒配列(基質結合部位はCD69遺伝子から転写されたRNA分子の一部に相補的である)を含有する。CD69アンタゴニストは、CD69をコードする核酸又はその相補体の少なくとも8ヌクレオチドに相補的であるヌクレオチド配列を含有するアンチセンス核酸であり得る。アンチセンス核酸は、アンチセンス核酸が非CD69ヌクレオチド配列と交差反応しないよう、十分な長さ及び配列含量のCD69配列に相補的であり得る。交差反応が起こっても、実質的な有害な副作用を引き起こさない場合もある。
【0059】
投与されるCD69アンタゴニストは、低分子医薬品を含み得る。例えば、CD69無効化(disabling)小ペプチド模倣薬を利用することができる。かかる模倣薬は、標的タンパク質CD69の二次構造的特徴に類似するように構成され得る。
【0060】
本発明によると、2つ以上のCD69アンタゴニストを投与することができる。少なくとも1つのCD69アンタゴニストが、肝炎又は肝炎に対する感受性を対象とする1つ又は複数のさらなる治療薬と組み合わせて投与され得る。1つ又は複数のCD69アンタゴニストを含む2つ以上の治療薬は、同時に、順次に、又は併用して投与することができる。したがって、2つ以上の治療薬を投与する場合、同時に又は同じ方法で又は同じ用量で投与する必要はない。同時に投与する場合、2つ以上の治療薬は同じ組成物中又は異なる組成物中で投与することができる。2つ以上の治療薬は、同じ投与経路又は異なる投与経路を用いて投与することができる。異なる時間で投与する場合、治療薬は互いに前後して投与され得る。2つ以上の治療薬の投与順序は代替的であり得る。1つ又は複数の治療薬のそれぞれの用量は、時間とともに変化させてもよい。1つ又は複数の治療薬の種類は、時間とともに変化させてもよい。別々の時間で投与する場合、2回以上の投与の間隔は任意の期間であってもよい。複数回投与する場合、期間の長さを変化させることができる。2つ以上の治療薬の投与の間隔は、0秒間、1秒間、5秒間、10秒間、30秒間、1分間、5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、45分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、7.5時間、10時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、1.5日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、10日間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、6週間、8週間、3ヶ月、6ヶ月、1年間又はそれ以上であり得る。
【0061】
2つ以上のCD69アンタゴニストは、少なくとも1つの炎症症状又は該炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するように相乗的に作用することができる。少なくとも1つのCD69アンタゴニスト及び1つ又は複数のさらなる治療薬は、少なくとも1つの炎症症状又は該炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するように相乗的に作用することができる。1つ又は複数のCD69アンタゴニストを含む2つ以上の治療薬は、相乗作用量(synergistic amounts)で投与することができる。したがって、2つ以上の治療薬の投与は、同時に、順次に、又は任意の組み合わせで投与するかにかかわらず、肝炎の1つ又は複数の症状を減少する上で相乗効果を有し得る。第1の治療薬が、第2の治療薬を単独で利用した場合と比べて第2の治療薬の有効性を増大させるか、又は第2の治療薬が第1の治療薬の有効性を増大させるか、又はその両方であり得る。2つ以上の治療薬の投与の効果は、肝炎の1つ又は複数の症状の減少に対する効果が、各々が単独で投与される場合の相加効果よりも大きいようなものであり得る。相乗作用量で与える場合、1つの治療薬は、1つ又は複数の治療薬単独での量が肝炎の1つ又は複数の症状に対して実質的な効果を与えない場合でも、肝炎の1つ又は複数の症状の減少に対する1つ又は複数の他の治療薬の有効性を向上させる場合がある。相乗効果の測定及び計算は、Teicher, "Assays for In Vitro and In Vivo Synergy," in Methods in Molecular Medicine, vol. 85: Novel Anticancer Drug Protocols, pp. 297-321 (2003)に記載されるように、及び/又はCalcuSynソフトウェアを用いて併用指数(combination index)(CI)を算出することによって行うことができる。
【0062】
正確な処方、投与経路及び投与量は、医師個人によって患者の状態を考慮して選択できる[例えば、Fingl et. al., in The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975, Ch. 1 p. I.を参照することができる]。担当医は、毒性又は臓器機能不全のために投与を終了、中断又は調整することができる。反対に、担当医は、臨床応答が適切でない場合、治療をより高いレベルに調整して、毒性を排除することもできる。対象の障害の管理における投与用量の程度は、治療される障害の重症度及び投与経路によって異なる。障害の重症度は、例えば部分的には、標準的な予後評価方法によって評価することができる。用量及び投薬頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によって異なる。上記で論考されたものに相当するプログラムを動物用薬剤に使用することができる。
【0063】
本発明の実施に関して本明細書中に開示される化合物を全身投与に好適な投与量に処方するための薬学的に許容可能な担体の使用は、本発明の範囲内である。担体の適切な選択及び実際に製造するに好適となるように、本発明に関連する組成物、特に溶液として処方される組成物は、非経口的に、例えば静脈内注射によって投与することができる。化合物は、当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に好適な投与量に容易に処方することができる。かかる担体は、本発明に関連する化合物を、治療を受ける患者による経口摂取のための錠剤、丸薬、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリー、錠剤、糖剤、溶液、懸濁液等に処方することを可能にする。
【0064】
治療剤は、それが投与される体内への放出を可能にするためにデポー形態で調製することができ、時間及び体内の局所に関して制御される(例えば、米国特許第4,450,150号を参照することができる)。治療剤のデポー形態は、例えば治療剤及びポリマー等の多孔質又は非多孔質材料を含有する埋込み型組成物(治療剤は材料中に封入されるか、又は材料全体に拡散する、及び/又は非多孔質材料の分解によって放出される)であり得る。デポーは次いで体内の所望の位置に埋め込まれ、治療剤が埋め込み物から所定の速度で放出される。
【0065】
本発明に使用される治療剤は、組成物、例えば担体及び治療化合物を含有する医薬組成物等として形成することができる。治療剤を含有する医薬組成物は、2つ以上の治療剤を含むことができる。医薬組成物は、代替的には他の薬学的に活性な薬剤又は薬物と組み合わせて治療剤を含有することができる。
【0066】
担体は任意の好適な担体であり得る。例えば、担体は薬学的に許容可能な担体であり得る。医薬組成物に関して、担体は、溶解度及び活性化合物(複数可)との反応性の欠如、及び投与経路といった物理化学的要件を考慮して従来使用される担体のいずれであってもよい。以下に記載される医薬組成物に加えて、又はその代替として、本発明の方法の治療化合物は、シクロデキストリン包接錯体等の包接錯体又はリポソームとして処方することができる。
【0067】
本明細書中に記載される薬学的に許容可能な担体、例えばビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤は、当業者に既知であり、一般に容易に利用可能なものである。薬学的に許容可能な担体は、活性薬剤(複数可)に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有しないものであり得る。担体の選択は、部分的には特定の治療剤、及び治療化合物を投与するために用いられる特定の方法によって決まる。本発明の医薬組成物には様々な好適な処方がある。経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、経皮投与、経粘膜投与、腸内投与、髄内注射、直接脳室内(direct intraventricular)投与、静脈内投与、鼻腔内投与、眼内投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下投与、腹腔内投与、直腸投与及び膣内投与のための以下の処方が例であるが、決して限定するものではない。2つ以上の経路を治療剤を投与するために使用することができ、場合によっては、特定の経路が別の経路よりも即時的で効果的な応答をもたらすことができる。治療される具体的な障害に応じて、かかる薬剤を処方し、全身的又は局所的に投与することができる。処方及び投与のための技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)に見ることができる。
【0068】
経口投与に好適な処方は、(a)液体溶液、例えば水、生理食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤中に溶解させた有効量の阻害薬、(b)各々が所定量の活性成分を固体又は顆粒として含有するカプセル、サシェ(sachets)、錠剤、舐剤(lozenges)及びトローチ(troches)、(c)粉末、(d)適切な液体中の懸濁液、並びに(e)好適なエマルジョンを含み得る。液体製剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤を添加した、又は添加していない、水及びアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコール等の希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば界面活性剤、滑剤、及びラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤を含有する通常のハードシェル又はソフトシェルゼラチンタイプのものであり得る。錠剤形態はラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモでんぷん、アルギン酸、微結晶性セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味料、及び他の薬理学的に適合する賦形剤の1つ又は複数を含み得る。舐剤形態は、香料、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴム中の阻害薬、並びにゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性基剤中に阻害薬を含有するパステル剤、加えて当該技術分野で既知の賦形剤を含有するエマルション、ジェル等を含有し得る。
【0069】
経口的に使用することができる医薬調製品としては、ゼラチンで作られた押込み型カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトール等の可塑剤で作られたソフト密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、でんぷん等の結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウム等の滑剤、及び任意で安定化剤と混合して活性成分を含有し得る。ソフトカプセル中では、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールといった好適な液体中に溶解又は懸濁され得る。また、安定化剤が添加されていてもよい。
【0070】
治療剤は、単独で又は他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤とすることができる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧した許容可能な噴射剤中に入れることができる。エアロゾル製剤はまた、非加圧型調製品用の医薬品、例えばネブライザー又はアトマイザー内の医薬品として処方することができる。かかる噴霧製剤は粘膜に噴霧するためにも使用することができる。局所製剤は当業者に既知である。かかる製剤は本発明において皮膚に適用するのに特に好適である。
【0071】
注射可能な製剤は本発明に従う。注射可能な組成物のための効果的な医薬担体のパラメータは、当業者に既知である[例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincolt Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238250 (1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622 630 (1986)を参照することができる]。注射のために、本発明の薬剤を水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理食塩緩衝液等の生理学的に適合する緩衝液中に処方することができる。かかる経粘膜投与のために、透過する障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は当該技術分野で一般に知られている。
【0072】
非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、及び製剤を予定されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張無菌注射液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液を挙げることができる。治療剤は、水、生理食塩水、デキストロース水溶液及び関連する糖(related sugar)の溶液、アルコール(エタノール又はヘキサデシルアルコール等)、グリコール(プロピレングリコール又はポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)400、グリセロール等)、ジメチルスルホキシド、ケタール(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール等)、エーテル、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドを含む無菌の液体又は液体の混合物等の医薬品担体中の生理学的に許容可能な希釈剤中で、石ケン剤若しくは洗剤等の薬学的に許容可能な界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁剤、又は乳化剤及び他の医薬アジュバントを添加して、又は添加せずに投与できる。
【0073】
非経口製剤に使用することができる油としては、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体例としては、ラッカセイ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン及び鉱油が挙げられる。非経口製剤に使用するのに好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは好適な脂肪酸エステルの例である。
【0074】
非経口製剤に使用するのに好適な石ケン剤としては、脂肪酸アルカリ金属(fatty alkalimetal)、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗剤としては、(a)陽イオン洗剤、例えばハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム及びハロゲン化アルキルピリジニウム等、(b)陰イオン洗剤、例えばアルキル、アリール及びオレフィンのスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドの硫酸塩及びスルホコハク酸塩等、(c)非イオン洗剤、例えば脂肪アミンオキシド(fatty amine oxides)、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー等、(d)両性洗剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキル−イミダゾリン第四級アンモニウム塩、並びに(e)それらの混合物が挙げられる。
【0075】
非経口製剤は、約0.5重量%〜約25重量%の薬物を溶液中に含有し得る。防腐剤及び緩衝液を使用することができる。注射部位での刺激を最小限に抑えるか、又は解消するために、かかる組成物は約12〜約17の親水性油性バランス(HLB)を有する1つ又は複数の非イオン性界面活性剤を含有し得る。かかる製剤中の界面活性剤の量は、典型的には約5%重量%〜約15重量%の範囲内である。好適な界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタン等のポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、疎水性基剤を有するエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、アンプル及びバイアルといった単回投与又は複数回投与用密封容器として提供することができ、注射用の無菌液体賦形剤、例えば水を使用の直前に添加することだけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保管することができる。即時注射液及び懸濁液は、無菌粉末、顆粒、及び先に記載した種類の錠剤から調製することができる。
【0076】
治療剤は、乳剤性基剤又は水溶性基剤等の様々な基剤と混合することによって坐剤とすることができる。膣内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて、当該技術分野で適切であると知られる担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォーム又は噴霧製剤として与えられ得る。
【0077】
細胞内に投与することが意図される薬剤は、当業者に既知の技法を用いて投与できる。例えば、かかる薬剤はリポソーム内に封入することができる。リポソームは、内部が水性の球状脂質二重層である。リポソーム形成時に水溶液中に存在する分子は、水性の内部に組み込まれる。リポソーム内容物は、外部微小環境から保護され、かつリポソームが細胞膜と融合するため、細胞質中に効率的に送達される。さらに、有機低分子は、その疎水性のために、細胞内に直接投与することができる。本発明の一態様に記載の材料及び方法を、本発明の他の態様にも利用することができる。例えば、スクリーニング分析における使用について記載される核酸又は抗体等の材料は、治療剤としても利用することができ、逆もまた同様である。
【0078】
本発明は、以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序及び/又は任意の組み合わせで含むことができる:
1.本発明は、少なくとも1つの炎症症状及び/又は少なくとも1つの炎症症状に対する感受性を治療する又は低減する方法であって、
少なくとも1つのCD69アンタゴニストを、肝炎又は肝炎に対する感受性であると診断されている対象に、肝炎又は肝炎に対する感受性を治療する又は低減するのに効果的な量で投与することを含む、方法に関する。
2.肝炎の少なくとも1つの症状をモニタリングすることをさらに含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
3.症状が急性炎症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの上昇、及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの上昇の少なくとも1つを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
4.少なくとも1つの症状が持続する、所与の範囲内にある、又は閾値より高い若しくは低いままである場合、投与を継続すること、又は
少なくとも1つの症状が持続しない、所与の範囲内にない、又は閾値より高く若しくは低くなくなった場合、投与を中止することをさらに含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
5.症状が急性炎症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの上昇、及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの上昇の少なくとも1つを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
6.投与されるCD69アンタゴニストが、抗体、又は該抗体の抗原結合断片を含むポリペプチドを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
7.抗体がキメラ抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
8.抗体がヒト化抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
9.抗体が完全ヒト化抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
10.抗体がモノクローナル抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
11.抗体がポリクローナル抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
12.抗体が一本鎖抗体である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
13.抗体又はポリペプチドが機能的薬剤と複合して、免疫複合体を形成する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
14.機能的薬剤が抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素、毒素、又はそれらの任意の組み合わせである細胞毒性薬である、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
15.抗体、又は抗体の抗原結合断片を含むポリペプチドが、CD69の細胞外ドメインと結合する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
16.CD69アンタゴニストがCD69に結合するアプタマーを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
17.アプタマーが核酸を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
18.アプタマーがRNAを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
19.アプタマーがDNAを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
20.アプタマーがアミノ酸を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
21.CD69アンタゴニストがmRNAアンタゴニストを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
22.mRNAアンタゴニストがRNA干渉を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
23.mRNAアンタゴニストがリボザイムを含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
24.2つ以上のCD69アンタゴニストを投与する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
25.2つ以上のCD69アンタゴニストが、炎症症状及び/又は少なくとも1つの炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するように相乗的に作用する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
26.少なくとも1つのCD69アンタゴニストを、肝炎又は肝炎に対する感受性を対象とする1つ又は複数のさらなる治療薬と組み合わせて投与する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
27.少なくとも1つのCD69アンタゴニストと、1つ又は複数のさらなる治療薬との組み合わせが、少なくとも1つの炎症症状に対する感受性を治療する又は低減するように相乗的に作用する、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
28.CD69アンタゴニストが抗CD69抗体を含み、1つ又は複数のさらなる治療薬が、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つの免疫グロブリン、又はそれらの任意の組み合わせである、1つ又は複数の抗A型肝炎治療薬を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
29.CD69アンタゴニストが抗CD69抗体を含み、1つ又は複数のさらなる治療薬が、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つのインターフェロン、少なくとも1つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、又はそれらの任意の組み合わせである、1つ又は複数の抗B型肝炎治療薬を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
30.CD69アンタゴニストが抗CD69抗体を含み、1つ又は複数のさらなる治療薬が、少なくとも1つのワクチン、少なくとも1つのペグインターフェロン、少なくとも1つのリバビリン、又はそれらの任意の組み合わせである、1つ又は複数の抗C型肝炎治療薬を含む、任意の前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
【0079】
本発明は、文及び/又は段落中に記述したように、上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組み合わせを含むことができる。本明細書中に開示される特徴の任意の組み合わせは、本発明の一部であると見なされ、組み合わせることができる特徴について限定は意図されない。
【0080】
本明細書において、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は上位の好ましい値及び下位の好ましい値のリストで与えられる場合、これは任意の範囲又は好ましい値の上限及び任意の範囲又は好ましい値の下限の任意の組から成る全ての範囲を、範囲が別々に開示されているか否かを問わず、具体的に開示するものと理解される。数値の範囲が本明細書中に列挙される場合、特に指定のない限り、その範囲は、その端点並びに範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。本発明の範囲が、範囲を規定する際に列挙される具体的な値に限定されることは意図されない。
【0081】
以下の実施例は本発明の本質を説明するために与えられる。しかしながら、本発明はこれらの実施例に示される具体的な条件又は詳細に限定されないことが理解されよう。データは平均±SEMとして表され得る。疾患活性指数は、マンホイットニーU検定を用いて統計的に分析することができる。パラメータデータの差は、スチューデントt検定によって評価することができる。p<0.05の差は特に指定のない限り統計的に有意であると見なされる。群の分散は、t検定分析の前のF検定によって等しさについて試験することができる。CD69の役割は肝炎のマウスモデルを用いて調べられており、CD69が肝炎の誘導において重要な役割を果たすことが見出される。さらに、抗CD69 モノクローナル抗体(抗CD69 mAb)の投与は肝炎の程度の劇的な低減をもたらし、CD69 mAbが肝炎、並びに関連する炎症症状に対する感受性の治療又は低減に使用することができることが立証されている。
【実施例1】
【0082】
CD69欠損マウスにおけるConA誘導性肝炎の軽減
ConA誘導性肝炎におけるCD69の生理学的役割を、CD69欠損マウスを用いて検査した。CD69欠損(CD69−KO)マウス(非特許文献20)は、BALB/c又はC57BL/6と15回戻し交配することによって得た。全ての動物の世話は、千葉大学及び山口大学のガイドラインに従って行った。ConA(Sigma)をパイロジェンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解させ、10mg/kgの用量でC57BL/6マウスに尾静脈を通して静脈内注射した。個々のマウスからの血清を、ConA注射の12時間後に得た。血清アミノトランスフェラーゼ[アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)]活性を、自動分析器(富士フイルムメディカル株式会社、東京、日本)を用いて、標準的な測光法によって測定した。
【0083】
ConA注射(10mg/ml)の12時間後、血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを測定することによって、肝炎を評価した。ConA誘導性肝炎モデルでは、AST及びALTのレベルはConA注射の4時間後に増大し、その後急速に増大して12時間の時点でピーク値に到達した。AST及びALTのレベルは、CD69欠損マウスにおいてWTマウスと比較して減少した(図1A)。肝臓の組織学的分析も行った。ConA注射後、肝細胞のアポトーシスの増大を伴う肝損傷は、CD69欠損マウスにおいて、WTマウスにおいて観察されたものと比較して明らかに軽減した(図1B)。
【実施例2】
【0084】
抗CD69抗体投与によるConA誘導性肝炎の軽減
抗CD69 mAbの投与を検討して、かかる投与がConAの静脈内注射によって誘導される肝傷害を阻害するか確認を行った。抗CD69抗体処理については、マウスに抗CD69 mAb(H1.2F3、400μg/マウス)をConA注射の30分前に腹腔内注射した。組織学的分析については、個々のマウスから得た肝臓を10%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、薄片にし、組織学的検査のためにH&E染色した。標本を光学顕微鏡下で検査した。
【0085】
ConA注射前の抗CD69 mAb(400μg/マウス)の投与は、AST及びALTのレベルの増大を有意に抑制した(図2A)。ConA注射の12時間後の肝臓における組織学的変化も評価した。H&E染色による肝臓の組織学的検査によって、ConA注射マウスの中心静脈と門脈路との間の領域における巣状又は広範な重度の壊死が明らかとなった(図2B)。抗CD69 mAbの事前投与は、肝臓における重度の壊死及びアポトーシスを明らかに抑制した(図2B)。抗CD69 mAb単独での正常マウスの処理は、AST及びALTのレベルに影響を与えなかった。このように、ConA誘導性肝炎モデルにおいて抗CD69抗体の治療効果が示された。IFN−γ産生CD4 T細胞及びNKT細胞も、ConA誘導性肝炎における良好な治療標的細胞である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD69アンタゴニストを含む肝炎の治療用組成物。
【請求項2】
CD69アンタゴニストがCD69を特異的に認識する抗体である請求項1に記載の肝炎の治療用組成物。
【請求項3】
肝炎の治療におけるCD69アンタゴニストの使用。
【請求項4】
CD69アンタゴニストがCD69を特異的に認識する抗体である請求項3に記載のCD69アンタゴニストの使用。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公開番号】特開2012−102100(P2012−102100A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247036(P2011−247036)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】