CD93またはその可溶性断片の用途
本発明は、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を用いた抗炎症性組成物、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを用いた炎症性疾患診断方法、及び炎症性疾患診断キットに関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を用いた抗炎症性組成物、炎症性疾患診断方法、及び炎症性疾患診断キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトCD93(C1qRp、AA4.1(mouse))は、染色体の20番、p11.21に位置したタイプ1膜通過糖蛋白質である(非特許文献1、2、3)。前記タンパク質は、B細胞発達において細胞・細胞間相互作用と食作用(phagocytosis)に関連することが報告されている(非特許文献2、4、5、6)。
【0003】
CD93は、総652個アミノ酸で構成され、リーダー配列、cタイプ炭水化物認知ドメイン、5個のEGF類似ドメイン、ムチンドメイン、一つの膜通過ドメイン、47個アミノ酸の細胞内ドメインを含んでいる(非特許文献2、7、8)。また、CD93は、骨髄系、造血母細胞、NK細胞、血小板、小膠細胞及び血管内皮細胞などで発現する(非特許文献9〜14)。また異なる研究結果では、CD93が大食細胞では発現しないが、血管内皮細胞では多く発現すると報告されている(非特許文献15〜17)。CD93は元来、抗CD93抗体を用いた結果において食作用のC1q−媒介増強(C1q−mediated enhancement of phagocytosis)に関与するとされ、C1qに対する受容体としての可能性が提議されてきた。しかし、後続の実験でC1qと直接結合しないことが多くのグループから報告された(非特許文献8、18、19)。
【0004】
CD93ノックアウトマウス実験では、CD93の不在によって死滅細胞の除去機能に問題が起こることが明かされ、試験管内(in vitro)実験ではそのような機能異常がみられない、相反した結果が導出された(非特許文献5、20)。このような食作用機能は、免疫反応において初期に重要な役割を担当していて、細胞死滅した細胞の除去に重要な役割をしている(非特許文献21)。
【0005】
このような機能に対する糸口を解く最近の研究結果として、CD93がTNF−a、LPSなど炎症の初期段階で細胞外部分(ectodomain)が切断される断片化(shedding)が起きるという報告があった(非特許文献7、22、23)。また、CD93と同じ系列細胞であるU937細胞で、PMA(phorbol−12−myristate−13−acetate)処理によって断片化が起きて可溶性断片で切断されるという報告もあった(非特許文献29)。同時に、特許文献1には、CD93−関連多形体が第1型糖尿病と赤斑性狼瘡の診断に有用であると記載している。しかし、CD93を炎症性疾患治療または診断に使用し報告はない。
【0006】
それで、本発明者等は、CD93またはその可溶性断片の炎症との関連性を研究した結果、CD93の可溶性断片が優秀な抗炎症効能を有して、CD93またはその可溶性断片が炎症誘導物質または炎症性環境で過発現することを確認することによって、CD93の可溶性断片は抗炎症性組成物の有効成分として用いることができ、CD93またはその可溶性断片は、炎症性疾患診断用マーカーとして用いられることを明らかにして本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開特許WO2008/082519号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Malhotra,R.等,Immunology,1993年,第78巻,p.341−348
【非特許文献2】Nepomuceno,R.R.等,Immunity,1997年,第6巻,p.119−129
【非特許文献3】Steinberger,P.等,Biol.2002年,第71巻,p.133−140
【非特許文献4】Petrenko,O.等,Immunity,1999年,第10巻,p.691−700
【非特許文献5】Norsworthy,P.J.等,J.Immunol.2004年,第172巻,p.3406−3414
【非特許文献6】McGreal,E.P.等,J.Immunol.2002年,第168巻,p.5222−5232
【非特許文献7】Park,M.等,J.Cell Physiol.2003年,第196巻,p.512−522
【非特許文献8】Nepomuceno,R.R.等,J.Immunol.1999年,第162巻,p.3583
【非特許文献9】Nepomuceno,R.R.等,Immunity,1997年,第6巻,p.119
【非特許文献10】Nepomuceno,R.R.等,J.Immunol.1998年,第160巻,p.1929
【非特許文献11】Danet G.H.等,Proc Natl Acad Sci USA,2002年,第99巻,p.10441−5
【非特許文献12】Lovik G.等,J Immunol,2000年,第30巻,p.3355−62
【非特許文献13】Fonseca M.I.等,J Leukoc Biol,2001年,第70巻,p.793−800
【非特許文献14】Webster,S.D.等,J.Leukocyte Biol.2000年,第67巻,p.109
【非特許文献15】Petrenko,O.等,Immunity,1999年,第10巻,p.691
【非特許文献16】Dean,Y.D.等,J.Immunol.第31巻,p.1370
【非特許文献17】Fonseca,M.I.等,J.Leukocyte Biol.2001年,第70巻,p.793
【非特許文献18】McGreal,E.P.等,J.Immunol.2002年,第168巻,p.5222
【非特許文献19】Steinberger,P.等,J.Leukocyte Biol.2002年,第71巻,p.133
【非特許文献20】Guan,E.等,J.Immunol.1994年,第152巻,p.4005−4016
【非特許文献21】Brown,E.J.Phagocytosis.Bioessays,1995年,第17巻,p.109−117
【非特許文献22】Suzanne S.Bohlson等,J.immunol.2005年,第175巻,p.1239−1247
【非特許文献23】Ikewaki N.,Tamauchi H.,and Inoko H.Decrease in CD93expression in a human monocyte−like cell line(U937)treated with various apoptosis−inducing chemical substances.Microbiol.Immunol.,2007年,第51(12)巻,p.1189−1200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、CD93の可溶性断片を用いた抗炎症性組成物を提供することである。
【0010】
本発明のまた別の目的は、CD93またはその可溶性断片を用いた炎症性疾患診断用キット、及びそれを用いた炎症性疾患診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列からなるCD93水溶性断片に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができる、siRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は前記組成物を炎症にかかった個体に投与する工程を含む炎症の治療方法を提供する。
【0014】
また、本発明は前記組成物を個体に投与する工程を含む炎症の予防方法を提供する。
【0015】
また、本発明はCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断用キットを提供する。
【0016】
同時に、本発明は前記炎症性疾患診断用キットを用いて炎症性疾患を診断する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、CD93の可溶性断片に対する抗体を有効成分として含む抗炎症性薬学的組成物を提供することができ、前記組成物を用いて炎症性疾患の予防または治療に有用に用いることができる。また、本発明は、CD93またはその可溶性断片を炎症性疾患の診断マーカーとしての用途を提供することができ、前記マーカーを用いて炎症性疾患のモニタリングまたは診断に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】全長のCD93タンパク質のアミノ酸配列(図1A)とsCD93タンパク質のアミノ酸配列(図1B)を示した図である。
【図2】HEK293E細胞でsCD93_Fcを発現及び精製した後の電気泳動写真である。ここで、Nは還元されない状態のタンパク質で、Rは還元された状態のタンパク質である。
【図3】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞がディッシュ(dish)表面に付着した程度を示した写真である。
【図4】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞の付着率を示したグラフである。
【図5】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞が大食細胞に分化した程度を示した写真である。
【図6】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、大食細胞分化標識の発現程度を示したグラフである。
【図7】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、phospho−Erk 1/2、phospho−p38及び全体p38をウエスタンブロットで定量化した電気泳動写真である。
【図8】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、phospho−Erk 1/2がsCD93タンパク質処理後の時間によって定量化した電気泳動写真である。
【図9】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、TNF−α及びIL−6の発現量をRNA水準で測定した結果である。
【図10】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、IL−1β及びiNOSの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図11】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、IL−12、CXCL12、SPHK−1及びCLEC4Aの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図12】sCD93タンパク質処理後、TNF−αの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図13】sCD93タンパク質が基質金属タンパク質プロテアーゼ(MMP)の発現に及ぼす影響を示した電気泳動写真である。
【図14】sCD93タンパク質の食作用の誘導効果を示した写真である。
【図15】sCD93タンパク質の食作用の誘導効果を示したFACS分析グラフである。
【図16】CD93タンパク質抗体のTNF−α生成阻害効果を示したグラフである。
【図17】CD93遺伝子に対するsiRNAのTNF−a及びIL−6の生成阻害効果を示したグラフである。
【図18】ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞にLPS、TNF−aまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93発現様相をFACSで分析した結果を示したグラフである。
【図19】THP−1細胞にLPS、TNF−aまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93発現様相とその可溶性断片をウエスタンブロットで観察した結果を示した図である。
【図20】THP−1細胞にLPSまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93mRNA発現をRT−PCRで測定して定量した結果を示したグラフである。
【図21】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93の発現様相を腹膜大食細胞でFACSで分析した結果を示したグラフである。
【図22】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93の発現様相をPBMCと腹膜大食細胞からウエスタンブロットで観察した結果を示した図である。
【図23】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93可溶性断片の量を血清と腹膜液でサンドイッチELISA方法で測定した結果を示したグラフである。
【図24】リウマチ性関節炎患者(RA)と退行性関節炎患者(OA)から得た滑膜組織をCD93抗体で染色してその発現様相を免疫組織化学方法で分析した結果を示した図である。
【図25】リウマチ性関節炎患者(RA)と退行性関節炎患者(OA)から得た滑膜液に存在するCD93可溶性断片の量をサンドイッチELISA方法で測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の実施のための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
本発明は、CD93水溶性断片のsCD93に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、CD93水溶性断片のsCD93に対する特異的な抗体を抗炎症性組成物の製造に用いる用途を提供する。
【0022】
本発明者等は、sCD93をヒト由来単核球細胞であるTHP−1細胞に処理した時、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化が媒介されてTHP−1細胞がマクロファージに分化して食作用が誘導され、またTNF−α、IL−1β、IL−6等の炎症性サイトカインの分泌が増加して、基質金属蛋白質分解酵素(matrix metalloproteinase、MMP)の分泌が促進されるなど炎症反応が誘導されることを確認することができた。
【0023】
前記でMAPKは、細菌性脂質多糖類など炎症誘発物質によって活性化して炎症性サイトカインの分泌などを促進することが知られていて、MMPは炎症反応が誘導される過程でその分泌が促進されることが知られている。
【0024】
本発明者等は、このようなsCD93の炎症反応誘導効果に着眼して、それの抗体をTHP−1細胞に処理した時、活性化した単核細胞や大食細胞によって一次的に生成されることが知られたサイトカインであるTNF−aが減少することも確認することができた。
【0025】
本発明は、このような実験結果に基づいて提供されるもので、本発明の抗炎症性薬学的組成物は、sCD93に対する特異的な抗体を有効成分として含むことを特徴とする。
【0026】
本明細書で、「sCD93」は全長のCD93タンパク質から離れたCD93タンパク質の水溶性断片を意味し、それのアミノ酸配列と塩基配列は<図1のB>及び<配列番号1及び2>に開示されている。本明細書で標的タンパク質は、特別に異なる言及がない限りsCD93を意味する。全長のCD93タンパク質の配列は、<図1のA>及び<配列番号3>に開示されていて、前記タンパク質遺伝子の塩基配列は、<配列番号4>に開示されている。
【0027】
本明細書で、「抗炎症性」の意味は、炎症や炎症性疾患の予防、改善、治療、及び発病遅延を含む意味である。
【0028】
本明細書で、前記「炎症性疾患」というのは、外部の物理または化学的刺激またはバクテリア、かび、ウイルス、各種アレルギー誘発物質など外部感染源の感染に対する局所的または全身的生体防御反応で特定される状態として定義され得る。このような反応は、各種炎症媒介因子と免疫細胞と関連する酵素(例えば、iNOS、COX−2等)活性化、炎症媒介物質の分泌(例えば、NO、TNF−α、IL−6、IL−1β、PGE2の分泌)、体液浸潤、細胞移動、組織破壊などの一連の複合的な生理的反応を伴って、赤斑、痛み、むくみ、発熱、身体の特定機能の低下または喪失などの症状によって外的に現れる。前記炎症性疾患は、急性、慢性、潰瘍性、アレルギー性または壊死性を帯びることができるので、ある疾患が前記のような炎症性疾患の定義に含まれる限りそれが急性でも、慢性でも、潰瘍性でも、アレルギー性でもまたは壊死性であっても構わない。具体的に前記炎症性疾患には、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染(例えば、C型感染)、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、鞏膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹、多発性硬化症などが含まれる。
【0029】
本明細書で「有効成分」というのは、単独に目的とする活性を示すかまたはそれ自体は活性がない薬学的に許容される担体などとともに活性を示すことができる成分を意味する。前記「薬学的に許容される」の意味に対しては下記で説明する。
【0030】
本明細書で、「特異的結合」の意味は、抗体がその標的タンパク質であるsCD93と抗原抗体結合体を形成して、異なるタンパク質とは実質的にそのような結合体を形成しない場合を意味する。ここで、「実質的に」というのは、程度は低いが非特異的な結合体は形成することができるということを意味する。前記「特異的結合」の意味は、別の表現ではその結合がタンパク質の特定構造すなわち抗原の決定部位であるエピトープによって決定される結合であると表現することもできる。
【0031】
本明細書で、「エピトープ」というのは、標的タンパク質であるsCD93で抗原性または免疫原性を有する部分のアミノ酸領域(抗原決定基)を示す。エピトープは通常少なくとも10個のアミノ酸を含む。このようなエピトープは、当業界の公知されたエピトープ解釈法、例えば、ファージ提示法、逆免疫遺伝学(reverse immunogenetics)などによって同定することができる。
【0032】
本明細書で、「抗体」は標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合するものならすべての形態の物を含む意味である。したがって、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(すなわち二つ以上の抗原または二つ以上のエピトープに対して結合特異性を有する抗体であり、例えば二特異的抗体などをいう)、ヒト化抗体、ヒト抗体を含むこと以外に、標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合することができる能力を保有する抗体の断片、組換え抗体、化学的に修飾された抗体を含む。
【0033】
前記ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)がマウス、うさぎ、ねずみ、霊長類など非ヒト種のCDRで代替された抗体であり免疫拒否反応を最小化した抗体をいい、このような抗体の製造方法は当業界に公知されている。詳細な内容は、文献[Riechmann L.等,Nature,1988年,第332巻,p.323−327]、文献[Nakatani T.等,Protein Engineering,1994年,第7巻,p.435−443]、文献[Jones等,Nature,1986年,第321巻,p.522−525]、文献[Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992年,第2巻,p.593−596]などを参照することができる。
【0034】
前記ヒト抗体は、内因性免疫グロブリンを産生することができる遺伝子を破壊したマウスなどの動物にヒト免疫グロブリン遺伝子を導入させて、その動物に特定抗原を免疫させて得られる抗体をいう。具体的な内容は、文献[Jakobovits等,Proc、Natl.Acad,Sci.米国,1993年,第90巻,p.2551]、文献[Jakobovits等,Nature,1993年,第362巻,p.255−258]、文献[Bruggermann等,Year in Immuno.,1993年,第7巻,p.33]、文献[Hoogenboom等,J.Mol.Biol.,1991年,第227巻,p.381;Marks等,J.Mol.Bio.,1991年,第222巻,p.581−597]などを参照することができる。
【0035】
前記抗体の断片の例としては、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、scFv(重鎖や軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させた抗体)、Fv断片、Fab/c(1個のFabと完全なFcを有する抗体)、線形抗体(Zapata等,Protein Eng.,1995年,第8(10)巻,p.1057−1062)、抗体をタンパク質切断酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理して得られた抗体断片、断片に対する遺伝子を後述のように遺伝子組換え方法で宿主細胞に導入及び発現させて得られる抗体断片を含む意味である。前記抗体のグロブリン類型も標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合するものなら特別に限定されず、そのグロブリン類型は、IgG、IgM、IgA、IgE、IgY及びIgD中でいずれか一つであり得る。
【0036】
一方、ポリクローナル抗体は、鳥類(例えば、ニワトリなど)、哺乳動物(例えば、うさぎ、やぎ、馬、ひつじ、なずみ、非ヒト霊長類(さる、チンパンジー、ゴリラなど)に標的タンパク質であるsCD93を免疫させることで製造することができる。通常、最終免疫日から6〜60日後に酵素免疫測定法(EIA及びELISA)、放射免疫測定法(RIA)などで抗体価を測定して、最大抗体価を示す時に採血する過程を踏むようになる。抗体は、免疫された動物の血液から当業界の公知または慣用の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィーなどの方法を用いて精製することができる。
【0037】
モノクローナル抗体は、標的タンパク質であるsCD93に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株によって得ることができる。このようなハイブリドーマ細胞株を産生するための方法として、例えば動物(例えば、マウス)を標的タンパク質であるsCD93で免疫させて、その免疫させた動物から脾臓細胞を採取して、その脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させて、それによってハイブリドーマ細胞を生成して、そして目的とするモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞株を同定する方法を挙げることができる。そのような細胞株からモノクローナル抗体の分離または回収は、当業界の公知または慣用の技術によって可能である。
【0038】
このようなモノクローナル抗体の製造に対して、下記により詳しく説明する。
【0039】
まず、モノクローナル抗体を得るためには、免疫源の標的タンパク質であるsCD93を哺乳動物、例えばラット、マウス、うさぎ、さる、やぎ、非ヒト霊長類(さる、チンパンジー、ゴリラ)などに投与する必要がある。免疫源の1回投与量は、当業者が免疫動物の種類、投与経路などを考慮してその通常の能力範囲内で適切に決定することができる。通常は、動物1匹当たり約50〜200μgである。投与は、通常、免疫源をPBS(phospate−buffered saline)や生理食塩水などで適量希釈または懸濁して、通常のアジュバントを混合して乳化した後に皮下、腹腔内に注入して行なうことができる。このような投与は、初めの投与後、数日から数週の間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で2〜10回、好ましくは3〜4回にわたって行なわれる。免疫源の投与を継続しながらELISA方法などによって免疫動物の血清中の抗体価を測定して抗体価が頂点(plateau)に到達した時は、最終的に免疫源を静脈内または腹腔内に投与して、その最終投与日から2〜5日後に抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞では、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞などを挙げることができるが、脾臓細胞またはリンパ節細胞が好ましい。
【0040】
抗体産生細胞を採取した後には、投与された免疫源すなわち本発明の標的タンパク質であるsCD93に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を製造する。このようなハイブリドーマは、当業界の公知または慣用の技術によって産生して同定することが可能である。通常は、抗体産生細胞、好ましくは脾臓細胞を免疫された動物から採取して、その脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させてハイブリドーマ細胞を製造して、免疫源に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する工程を経ることになる。抗体産生細胞と融合するのに用いられる骨髄腫細胞株は、マウスなどの動物に由来した細胞株を使用することができるが、このような細胞株は商業的に入手可能である。好ましい骨髄腫細胞株は、免疫動物と同種系の動物に由来して、抗生剤などに対する薬剤選択性を有して、脾臓細胞と融合されない状態では、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミンを含むHAT選択培地で生存することができず、脾臓細胞と融合した状態でのみ生存することができる特性を有することが好ましい。骨髄腫細胞株の具体的な例としては、BALB/cマウス由来のHGPRT(hypoxantine guanine phosporibosyl−transferase)欠損細胞株であるP3X63(ATCC TIB9)などを挙げることができる。
【0041】
抗体産生細胞である脾臓細胞と骨髄腫細胞株の融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で抗体産生細胞と骨髄腫細胞株を適正な割合(約1:1〜20:1の割合)で混合して、細胞融合促進剤の存在下で融合反応を遂行することで成立つようになる。細胞融合促進剤として平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコールなどを約10〜80%の濃度で使用することができる。また、場合によっては融合効率を高めるため、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用することもできる。また、市販されている細胞融合装置を用いて融合させることもできる。
【0042】
細胞融合処理後、目的とするハイブリドーマを選別しなければならない。通常細胞懸濁液を牛胎児血清含有RPMI−1640培地などに適当に希釈した後、マイクロタイタープレート上に細胞をウェル当り200万個程度で分注して、各ウェルに選択培地を添加して、以後同一な選択培地に適切に交換して新鮮な培地を供給しながら培養する。培養温度は、通常20〜40℃である。骨髄腫細胞株がHGPRT欠損株またはチミジンキナーゼ欠損株の場合には、ヒポキサンチン、アミノプテリンまたはチミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることで、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養して増殖させることができる。それで選択培地で培養開始後約14日前後で生育した細胞をハイブリドーマとして得ることができる。続いて、増殖されたハイブリドーマの上澄み培養物から目的とする抗体の存在有無をスクリーニングする。このようなハイブリドーマのスクリーニングは、当業界の公知または慣用の技術にしたがってなされ得る。そのよう技術として例えば、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay及びELISA)、放射免疫測定法などを挙げることができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法などによって行なうことができる。
【0043】
クローニングされたハイブリドーマは、10%牛胎児血清含有RPMI−1640培地、DMEM培地、無血清培地など動物細胞培養培地で通常の培養条件(例えば、37℃、5% CO2濃度)で培養すれば良い。培養期間は2〜10日程度である。モノクローナル抗体は、その上澄み培養物から得ることができる。
【0044】
モノクローナル抗体は、当業界の公知または慣用の技術を用いて回収することができる。そのような当業界の公知または慣用の技術としては、硫酸アンモニウム塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法またはこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体の産生には、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングして適当なベクターに挿入させてそれを適当な宿主細胞に導入及び発現させて得る遺伝子組換え技術を用いることもできる(Vandamme,A.M.等,Eur.J.Biochem.,1990年,第192巻,p.767−775)。
【0046】
具体的に本発明の抗体を産生するハイブリドーマから本発明の抗体の可変領域(V領域)を暗号化するmRNAを得る。このよなmRNAの収得は、当業界の公知または慣用の方法、例えばグアニジン超遠心分離法(Chirgwin,J.M.等,Biochemistry.,1979年,第18巻,p.5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.等,Anal.Biochem.,第162巻,p.156−159)などを用いて全体RNAを収得して、その全体mRNAからmRNA Purification Kit(Pharmacia社)などを用いて目的とするmRNAを収得することで成される。代案的には、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製品)を用いることで、mRNAを直接収得することもできる。
【0047】
収得されたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体可変領域のcDNAを合成する。必要ならcDNA合成または増幅にRACE PCR方法などを適用することもできる。このように得られた可変領域を暗号化するcDNAを抗体の不変領域(C領域)を暗号化するDNAを含む発現ベクターに挿入する。このような発現ベクターは、本発明の標的タンパク質であるsCD93のDNA組換え産生方法と関連して後述するようにプロモーター、エンハンサー、複製開示点、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位など調節配列を含むことができる。この発現ベクターが宿主細胞に形質転換されると抗体の産生が可能になる。抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)を暗号化するDNAをそれぞれ発現ベクターに組換えして宿主細胞を同時形質転換させても構わず、または重鎖及び軽鎖を暗号化するDNAを単一の発現ベクターに挿入して宿主細胞を形質転換させても構わない(WO94/11523号公報)。
【0048】
一方、本発明の抗体を得るために用いた免疫源としての本発明の標的タンパク質であるsCD93は、当業界の公知または慣用のDNA組換え技術によって得ることができる。一般的には、本発明の標的タンパク質であるsCD93のcDNAを製作してそのcDNAを発現ベクターに挿入し、その発現ベクターを原核または真核宿主細胞に形質転換させてその形質転換された宿主細胞を適当な培地で培養して、その培養液または細胞から得るようになる。前記cDNAは、GenBankなどの遺伝子/タンパク質データベースが提供する遺伝子配列または本明細書が提供する配列に基づいて当業者の通常の能力範囲内で製作可能である。
【0049】
このようなcDNAの製造には、ホスホアミダイト法などを用いるDNA合成装置、RT−PCR法、cDNAライブラリから目的とするcDNAを得るための混成化方法などを用いることができ、必要によってはPCR方法などによって目的とするcDNAを増幅することもできる。
【0050】
前記で発現ベクターは、バイオテクノロジーの会社、例えばノバジェン(Novagen)社、ダカラ酒造、キアゲン(Qiagen)社、ストラタジーン(Stratagene)社、プロメガ(Promega)社、ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnositics)社、インビトロジェン(Invitrogen)社、ジェネティクスインスティチュート(Genetics Institute)社などから商業的に入手可能である。
【0051】
このような発現ベクターには、本発明の標的タンパク質であるsCD93をコードするDNA以外に調節エリメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム、結合部位、複製開示点、ターミネーター、選択マーカー、単離または精製を容易にするための標識ペプチド配列(例えば、ヒスチジン反復配列を暗号化する塩基配列)などを含むことができる。
【0052】
宿主細胞は、細菌などの原核細胞(例えば、大腸菌、枯草菌)、及び酵母(例えば、サッカロマイセスセレビシア(Saccharomyces cerevisiae))、昆虫細胞(例えば、Sf細胞)、ホ乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK)などの真核細胞を使用することができる。
【0053】
宿主細胞またはその培養物から本発明の標的タンパク質の精製には、限外ろ過、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィー(標識ペプチドが結合された場合)、HPLC、疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどの方法やこれらを組み合わせる方法を用いることができる。
【0054】
DNA組換え技術による本発明の標的タンパク質の産生に対しては、本明細書の記載内容以外に「Samrook等,Molecular Cloning A Laboratory Mannual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,米国(1989年)」、「Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology,Jon Willey & Sons,米国(1993年)」及び「Sambrook,J.& Russel,D.著,Molecular Cloning,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001年1月15日発行の第1巻p.7.42〜7.45,第2巻,p.8.9〜8.17」などの文献を参照することができる。これらの文献は、本明細書の一部として見なされる。
【0055】
本発明の抗体を産生するための免疫源としての本発明の標的タンパク質は、その断片(sCD93の断片)や全長のタンパク質(CD93自体)を用いることもできる。断片や全長のタンパク質を用いて得られる抗体も、本発明の標的タンパク質に特異的に結合する能力を保有する可能性があるからである。
【0056】
また、本発明は、配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができるsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上のものを有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0057】
また、本発明は、前記CD93遺伝子の発現を抑制することができるsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上のものを抗炎症性組成物の製造に用いる用途を提供する。
【0058】
本発明者等は、CD93遺伝子に対するsiRNAをTHP−1に処理した時、炎症誘発物質であるLPS(lipopolysaccharide)処理時に増加する炎症性サイトカインであるTNF−a及びIL−6の発現量を減少させることを確認した。
【0059】
特定遺伝子に対する短い二重RNAであるsiRNA(small interfering RNA)やshRNA(short haripin RNA)が細胞内に導入される場合、リボヌクレアーゼであるダイサー(dicer)によってプロセッシングされてRISC(RNA induced gene sciencing complex)に結合することでRNAiを誘導することが知られている(Nature,1998年,第391巻,p.806−811;Genes Dev.2001年,第15巻,p.485−490;Nature,2001年,第411巻,p.494−498;Science,2000年,第287巻,p.2494−2497;Cell,2000年,第101巻,p.25−33)。このようなRNAiには、ヘリカーゼとエンドヌクレアーゼが関与するが、ヘリカーゼによってsiRNAの二重鎖のRNAが解かれてその中のアンチセンスは標的遺伝子のmRNAに結合するが、この結合された部位はエンドヌクレアーゼによって加水分解されるようになる(Cell,2000年,第101巻,p.25−33;Science,2002年,第296巻,p.1265−1269、2002;J.Biol.Chem.2003年2月28日,第278(9)巻,p.7108−18)。
【0060】
本明細書で、「siRNA」はその標的遺伝子のRNAに対してRNAi現象を誘導することができる10〜40塩基対を有する二重鎖RNA、好ましくは15〜30の塩基対を有する二重鎖RNA、さらに好ましくは20〜22塩基対を有する二重鎖RANを意味する。このようなsiRNAは、ブラント(blunt)末端を有するか突出(overhang)末端を有することができ、突出末端を有する場合それは、3’末端と5’末端の両方で可能である。好ましくは3’末端が突出した場合である。突出した末端の塩基数は1〜5で、2〜3塩基であることが好ましい。
【0061】
本明細書で、「shRNA」は2〜10塩基のループ領域を有するヘアピン構造の二重鎖RNAをいう。このようなループ領域の塩基は、当業界に公知されたものなどを使用することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002年,第99(8)巻,p.5515−5520;Nature Biotechnology,2002年,第20巻,p.505−508;Nature Biotechnology,202年,第20巻,p.500−505;Nat Cell Biol.,2003年,第5巻,p.489−490;Proc.Natl.Acad.Sci.米国,2002年,第99(9)巻,p.6047−6052)。shRNAの二重鎖部分は、前記siRNAと同一に構成することができるので、siRNAと関連した説明がそのまま適用できる。
【0062】
本明細書で、「shRNAの発現ベクター」は、shRNAのコード配列を含むことによって、細胞内でshRNAを発現させることができるベクターを意味する。前記shRNAコード配列は、CD93遺伝子の一部配列とループ領域を構成するスペーサー(spacer)配列及びそのCD93遺伝子の一部配列に相補的な配列で構成されるが、shRNAコード配列は、用いる発現ベクターによってRNAやDNAであり得、発現ベクターの調節配列(例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナルなど)に作動可能に連結されるようになる。発現ベクターは、プラスミド由来の発現ベクターまたはレンチウイルスベクターであることができる。プラスミド由来の発現ベクターは、プロメガ(Promega)社(Cat Nos.C8750、C8760、C8770、C8780、C8790、C7800等)、ゲンスクリプト(Genscript)社((Cat.Nos.SD1201、SD1202、SD1207)など生命工学会社が市販するものを購入して使用するか自己製作して使用することができる。レンチウイルスベクターの利用に対して国際特許第WO2004/065549号の開示内容を参照することができる。
【0063】
一方、本発明の組成物は、sCD93に対する抗体やsiRNA、shRNAなどを含む以外に、一般的に製薬上許容される担体を含むことができる。ここで「製薬上許容される」の意味は、有効成分の活性を抑制せずに適用(処方)対象が適応可能以上の毒性を持たない(充分に低い毒性)意味である。このような担体の例としては、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エチルアルコール、ポリアルコール(例、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0064】
本発明の組成物は、その保存寿命を延長したり有効性を保存したりするために、保存剤、抗酸化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、非イオン系界面活性剤などを含むこともできる。このような保存剤、抗酸化剤、湿潤剤などとして適当なものは当業界で公知されている。
【0065】
本発明の組成物は、多様な形態に剤形化することができ、例えば液状溶液、懸濁液、シロップ、錠剤、丸薬などに剤形化することができるが、これに限定されるのではない。
【0066】
本発明の組成物は、ヒトを含むホ乳動物に経口または非経口で投与することができるが、通常は抗体を有効成分として含むバイオ医薬品と同じく静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内注射によって投与することができるが、これに限定されるのではない。
【0067】
本発明の組成物の投与量は、前記組成物の有効成分の含有量、疾病の重症度、患者の体重、薬物形態、投与経路、投与期間によって医学的専門家によって決定されるが、通常は1日に0.01μg/kg〜100mg/kgの範囲内で決定することができるが、これに限定されるのではない。
【0068】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片を有効成分として含む炎症性疾患診断用マーカーを提供する。
【0069】
前記CD93は、配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0070】
前記CD93可溶性断片は、膜通過タンパク質であるCD93タンパク質が細胞培養後放出された細胞外部分(ectodomain)であり、95kDa程度の断片であることが好ましいが、これに限定されない。
【0071】
本発明によるCD93の発現が、ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でLPS、TNF−aによって増加し、PMA処理によってはあまり増加しない。しかし、CD93可溶性断片の量は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて増加する。また、マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、腹膜細胞中の大食細胞でのマウスCD93発現は、LPS処理によって最も大きく増加して、チオグリコレート処理によっても類似に増加する。また、血清内CD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレートによって大きく変化しないが、腹膜液内のCD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレート処理によって顕著に増加する。
【0072】
また、退行性関節炎患者から得た滑膜組織よりリウマチ性関節炎患者から得た滑膜組織でCD93の発現が顕著に高く示されて、リウマチ性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片の量が退行性関節炎患者群より顕著に高く示される。
【0073】
前記のように、本発明によるCD93またはその可溶性断片は、炎症誘導物質による、または炎症性環境でCD93発現が増加してCD93可溶性断片の量が増加する。したがって、本発明によるCD93またはその可溶性断片は、炎症性疾患の診断マーカーとして有用に用いることができる。
【0074】
前記炎症性疾患は、喘息、アレルギー性及びに非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、腹膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹、多発性硬化症などを含むが、これに限定されない。
【0075】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断キットを提供する。
【0076】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを炎症性疾患診断用キットの製造に用いる用途を提供する。
【0077】
前記炎症性疾患診断キットは、本発明のCD93またはその可溶性断片マーカーを用いて当業界で一般的に用いる製造方法によって容易に製造することができる。前記アプタマーは、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合することができる特徴を有した単一鎖核酸(DNA、RNAまたは変形核酸)である。
【0078】
前記炎症性疾患診断キットは、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体、基質との反応によって発色する標識体が接合された2次抗体接合体(conjugate)、前記標識体と発色反応する発色基質溶液、洗浄液及び酵素反応停止溶液などを含むことができる。
【0079】
また、本発明は、本発明のCD93またはその可溶性断片マーカーを用いて炎症性疾患を診断する方法を提供する。
【0080】
具体的に、前記方法は、下記の工程で遂行することが好ましいが、これに限定されない:
1)生物学的試料及び対照群のタンパク質を固定体にコーティングさせる工程、
2)前記固定体に炎症性疾患診断用マーカーであるCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を添加して抗原抗体結合反応を遂行する工程、
3)前記抗原抗体結合反応を通じて生成された抗原抗体結合反応物を2次抗体接合体の標識体及び発色基質溶液を用いて検出する工程、及び
4)生物学的試料と対照群に対する検出結果とを比較する工程。
【0081】
前記生物学的試料は、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便及び大便からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。
【0082】
前記方法において、2次抗体接合体の標識体は、発色反応をする通常の発色剤が好ましく、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、塩基性脱リン酸化酵素(アルカリホスファターゼ)、コロイドゴールド(coloid gold)、FITC(ポリ−L−リジン−フルオレセインイソチオシアネート)、RITC(ローダミン−B−イソチオシアネート)などの蛍光物質、及び色素などを用いることができる。
【0083】
前記方法において、発色基質溶液は標識体によって使用することが好ましく、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)、ABTS[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]、OPD(o−フェニレンジアミン)などを使用することができる。ここで、発色基質は緩衝溶液(0.1M NaOAc、pH5.5)に溶解された状態で提供することがさらに好ましい。
【0084】
前記洗浄液は、リン酸塩緩衝溶液、NaCl及びツイーン20を含むことが好ましく、0.02Mリン酸塩緩衝溶液、0.13M NaCl、及び0.05%ツイーン20で構成された緩衝溶液(PBST)がさらに好ましい。洗浄液は、抗原抗体結合反応後、抗原抗体結合体に2次抗体を反応させた後、適量を固定体に加えて3回ないし6回洗浄することが好ましいが、これに限定されない。反応停止溶液は、硫酸溶液を用いることができる。
【0085】
本発明は、生物学的試料でCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を用いた抗原抗体結合反応を通じてCD93またはその可溶性断片を検出して、炎症性疾患の診断または予後を早期に予測することができる。前記生物学的試料は、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便または大便を含むが、これに限定されない。具体的には、生物学的試料内のCD93またはその可溶性断片をSDS−PAGEで電気泳動して分画して固定体に移して固定させた後、固定されたCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を加えて抗原抗体結合反応を遂行して、CD93またはその可溶性断片の発現水準を測定する。すなわち、生物学的試料でCD93またはその可溶性断片の発現水準が高ければ、炎症性疾患を有すると診断するか、炎症性疾患の可能性を有すると予測するものである。
【0086】
前記方法において、抗原抗体結合反応のための固定体では、ニトロセルロース膜、PVDF膜(ポリビニリデン・ジフルオライド膜)、ポリビニル樹脂またはポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラス製のスライドガラスなどを用いることができる。
【0087】
前記方法において、抗原抗体結合反応は通常の酵素免疫分析法(ELISA)、放射能免疫分析法(RIA)、サンドイッチELISA法、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、免疫組織化学染色法、蛍光免疫法、酵素基質発色法、抗原抗体凝集法、SPR(surface plasmon resonance)、バイオチップ(DNA、RNA)、電気泳動法、PCR、RT−PCRなどの方法を用いて測定することができる。
[発明の実施のための形態]
【0088】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。
【0089】
しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供するものであって、実施例によって本発明の内容が限定されるのではない。
<実施例1>sCD93タンパク質の準備
<1−1>pYW600の製作
<1−1−1>oriPの挿入
まず、oriPをクローニングするため、pMEP4(Invitrogen、米国)を鋳型に正方向プライマー(5’−gtagatctgcaggaaaaggacaagc−3’;配列番号27)及び逆方向プライマー(5’−cgagatctggttgacttccctaatgt−3’;配列番号28)を用いて95℃30秒、60℃30秒、72℃1分、30サイクルの条件でPCR反応を遂行した後、2187bpの大きさのPCR産物をPCR精製キット(Promega、米国)を用いて精製した。その後、前記PCR産物をBglII酵素(Invitrogen、米国)で切断した後、切断産物をまた精製した。前記精製された切断断片をpcDNA3.1(Invitrogen、米国)のCMVプロモーター上部に存在するBglII認識部位にBglII酵素(Invitrogen、米国)を用いて線形化したベクターに挿入した後、大腸菌に形質転換させて形質転換体を収得した(pcDNA3.1−oriP)。前記形質転換体からプラスミドを通常の方法で抽出した後、塩基配列分析を通じてoriPが正しく挿入されたかどうか確認した。
<1−1−2>ヒト抗体Fcをコードするポリヌクレオチドの挿入
前記製造したoriPが挿入されたpcDNA3.1ベクターにヒト抗体Fcをコードするポリヌクレオチドを挿入するため、pLCN−MoHベクター(韓国登録特許第450266号)を鋳型に、「Bam HI−SfiI−human immunoglobulin Fc N−terminal sequence」で構成された正方向プライマー(5’−cgg gat cc g gcc gtg ggg gcc gac aaa a ct cac aca tgc c−3’:配列番号29)と「XbaI−stop codon−human immunoglobulin Fc C−terminal sequence」で構成された逆方向プライマー(5’−cgagtc tca ttt acc cgg aga cag gga−3’:配列番号30)を用いてPCR反応を遂行した(94℃、4分処理後、95℃、30秒、60℃、30秒、72℃、1分過程を30回反復した後72℃、10分間延長)。
【0090】
続いて、PCR産物をPCR精製キット(Promega、米国)を用いて精製した。前記精製されたPCR産物を制限酵素BamHI及びXbaIで切断した後、どうようにBamHI及びXbaIで切断した前記で製造したoriPが挿入されたpcDNA3.1ベクター(pcDNA3.1−oriP)に挿入して、pcDNA3.1−oriP−Fcを製造した。以後、前記のように製造された組換えプラスミドで大腸菌(DH5a)を形質転換させて、形質転換体を分離した後、プラスミドを収得して、Fcをコードするポリヌクレオチドが正しく挿入されたかどうか確認した。このようにしてpYW600が完成された。
<1−1−3>sCD93_Fcの発現精製
sCD93_Fcを動物細胞であるHEK293E細胞で発現/精製するためにsCD93_Fcを発現させることができる発現ベクターを製作した。
【0091】
ヒトIgG1 Fc断片を含んだ自己製作された前記pYW600をSfiIで切断した後、PCRを通じて得られたCD93断片をSfiIで切断した後、挿入した。CD93断片を増幅するために、CD93プラスミド(Kugi分譲,hMU003993,Kugi No.IRAT−49−A06)を鋳型に用い、正方向プライマーに5’−CAGGGGGCCGTGGGGGCCACGGGAGCTGACACGGAGGC−3’(配列番号31)を、逆方向プライマーに5’−TAGCGGCCGACGCGGCCAAGTCCACACAGTCCAGCTGAC−3’(配列番号32)を用いた。CD93PCR時の鋳型は100ngを、それぞれのプライマーは10pmol、Pfu DNAポリメラーゼ(2.5unit/μl)0.5μl、全体50μlを反応させた。CD93のPCR反応条件は、次のとおりである。初期変性過程で94℃で2分間処理した後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間を30回反復し、72℃で10分間延長反応を遂行した。PCR産物は、SfiIで切断させCMV I.Eエンハンサー/プロモーターとリーダー配列が前にあって、CD93遺伝子が入った後、6X His tag、Fc、Myc、8X His tagが順次に作られるpYK602ベクターで挿入してpYK−CD93_Fcベクターを作った。
【0092】
前記製作されたpCD93_Fc 20μgとポリエチレンイミン(PEI,Polysciences)40μgを混合して150mmディッシュにあらかじめ育てておいたHEK293E細胞に導入した。培養液を総8日間2日ごとに集めてフィルターリングした後、タンパク質Aセパロース(Amersham)を用いて精製した。精製した試料をPIERCE(Coomassie protein assay reagent)で定量してSDS−PAGEゲルにかけてそのサイズを確認した(図2)。還元された状態(Reduced;R)でsCD93_Fcは、70kDa程度であり、還元されない状態(Non−reduced;N)では140〜150kDa程度だった。
<実施例2>sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果実験
ヒト由来の急性単球性白血病細胞であるTHP−1細胞は、PMAなどの化学物質によって付着、広がり(spreading)、成熟過程を経て大食細胞に分化する。本実験では、sCD93がTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を実験した。
【0093】
まず、5×103THP−1細胞(ATCCから購入)を96ウェルプレートに移した。それぞれの陰性対照群にPBS、Fc(5μg/ml)、正常ヒトIgG(hIgG,5μg/ml)を添加して、陽性対照群にはPMA(Sigma,0.1μg/ml)を処理し、実験群にはsCD93_Fcを5、1、0.2、0.04μg/ml濃度で処理した。処理後30分間37℃培養室に放置した後再び取り出して、付着した細胞が落ちないようにタッピング(tapping)で付着しない細胞を除去した。PBSで2回さらに洗浄した後、光学顕微鏡(Leika)で写真を撮った(図3)。付着しない細胞を集めた培養上澄み液にヘマサイトメータ(Marienfeld,Germany)を用いて、その数を計算した。初めに入れた細胞数から付着しない細胞数を引いた残りを百分率で示した。THP−1細胞は、陰性対照群では付着しないが、sCD93_Fcを処理した実験群では濃度依存的に付着程度(%)が高くなることを観察することができた(図4)。
【0094】
その次に前記と同一な方式を、THP−1細胞でsCD93_Fcの分化(differenciation)効果調べた。陰性対照群にPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA 0.1μg/mlを処理した。実験群にはsCD93_Fcを5μg/mlの濃度で処理してそれぞれを3日間培養して光学顕微鏡で写真を撮影した。陰性対照群は分化しなかったし、sCD93_Fcを入れたTHP−1細胞はPMAと類似にマクロファージ様細胞に分化した(図5)。
【0095】
このようなTHP−1細胞の分化による単核球細胞であるTHP−1細胞が、実際に大食細胞(マクロファージ)に分化するかどうかを調べるため、すでに知られた大食細胞及び樹枝状細胞、そして好中球分化マーカーであるCD14、CD1a及びCD64のRNA発現量を測定するためにリアルタイムPCRを遂行した。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。また実験群ではsCD93_Fc 5μg/mlを処理して24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。処理後さらに24時間が経過した後、RNAを分離精製した(Qiagen RNA miniprep kiT)。精製されたRNA1μgを逆転写(reverse transcription)(iScript cDNA synthesis kit,Bio−Rad)してcDNAを合成した。このcDNAに対して下記<表1>のプライマー、iG SYBR Green supermix(Bio−Rad)及びCFX−96 Real−time system(Bio−Rad)を用いて定量−PCRを遂行した。
【0096】
その結果、sCD93処理によってTHP−1細胞が大食細胞に分化することが分かり、LPS処理によって分化マーカーであるCD14のRNA水準がより高くなることが分かった(図6)。
【0097】
【表1】
【0098】
<実施例3>sCD93タンパク質のミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性誘導効果実験
このようなTHP−1細胞の分化が分子的にどのように起きるのかを調べるため、MAPK(mitogen−activated protein kinases)信号経路を中心に調べた。
【0099】
具体的に、THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、Fc 5μg/ml、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。実験群はsCD93_Fcを5、1、0.2、0.04μg/mlの濃度で処理した。処理後30分間37℃の培養室に放置して再び取り出して、溶解緩衝溶液で溶解させた後、ウエスタンブロットを実施した。1次抗体としてphospho−Erk 1/2(Cell signaling)とphospho−p38(1次抗体)、そして定量のためにtotal−p38(1次抗体)をそれぞれブロッティングした。phospho−Erk 1/2とphospho−p38の量が、sCD93_Fc処理によって濃度依存的に増加することが分かった(図7)。
【0100】
また、時間的変化によるphospho−Erk 1/2量を観察するため、前記と同一な方法でsCD93_Fc 5μg/mlを0、10、30、60、180分間それぞれ処理してウエスタンブロットを実施した。陽性対照群としてPMA0.1μg/mlとLPS 1μg/mlをそれぞれ同一な方法で処理してウエスタンブロットを実施した。sCD93_Fc処理によって10分経過後からphospho−Erk 1/2の量が増加し始めて、30分で最も大きく増加し、60分から若干減少する傾向を示した(図8)。
【0101】
このようなTHP−1細胞の分化とMAPK信号の変化によるサイトカインの変化を調べるため、いろいろなよく知られた前炎症サイトカインの発現変化をRNA水準で調べた。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群ではsCD93_Fcを処理した。24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後さらに24時間が経過した後、RNAを分離精製した(Qiagen RNA miniprep kiT)。精製されたRNA1を逆転写(iScript cDNA synthesis kit,Bio−Rad)してcDNAを合成した。前記cDNAに対しての下記<表2>のプライマー配列、iG SYBR Green supermix(Bio−Rad)とCFX−96リアルタイムシステム(Bio−Rad)を用いて定量−PCRを遂行した。sCD93_Fc処理によって炎症性サイトカインであるTNF−a、IL−1b、IL−6等が、RNA水準で若干増加し、LPSを追加処理することで顕著にさらに増加することが分かった(図9ないし図11)。
【0102】
【表2】
【0103】
次に、このようなTHP−1細胞の分化とMAPK信号の変化にしたがって炎症性サイトカインの中でTNF−aの発現がどのように変化するかをタンパク質水準で測定した。
【0104】
具体的に、THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群にはsCD93_Fcを処理した。24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後さらに24時間が経過した後、Quantikine TNF−a分析キット(R&D system)を用いて培養上澄み液に含まれたTNF−a量を測定した。sCD93_Fcのみ処理した実験群でTNF−aの量が少し増加し、sCD93_FcとLPSを処理した実験群では、LPSのみ処理した実験群に比較して、TNF−aが比較的高く測定されることが分かった。これは、sCD93_FcによってTHP−1細胞が大食細胞に分化して、TLR信号に対する感受性が増加したことを示すものである(図12)。
<実施例4>sCD93タンパク質の基質金属タンパク質分解酵素(MMP)の発現誘導効果実験
その次に、sCD93_Fc処理によるTHP−1細胞の基質金属蛋白質分解酵素(matrix metalloproteinase,MMP)発現に対する影響を調べた。THP−1細胞に陰性対照群としてhIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。実験群ではsCD93_Fcを5、1、0.2μg/mlの濃度で処理した。処理後24時間が経過した後、ゼラチンザイモグラフィ分析法を用いて培養上澄み液に含まれたMMP−9(92kDa)とMMP−2(72kDa)の発現変化を観察した。ゼラチン(Sigma)最終濃度が2mg/mlになるように8%SDS−PAGEゲルを作った後、24時間の間培養した上澄み液をかけてクマシーブルーで染色した後、脱染色溶液で弱く色抜きした後、ゲルを写真撮影した。
【0105】
その結果、MMP−9の量がsCD93_Fc処理によって濃度依存的に増加することが分かった(図13)。
<実施例5>sCD93タンパク質の食作用誘導効果実験
このようなTHP−1細胞の大食細胞類似(macrophage−like)細胞への分化による食作用(phagocytosis)効果調べるため、mRFPを発現しているバクテリア(E.coli)を用いて食作用を測定した。THP−1細胞にsCD93_Fc 5μg/mlを処理して3日間培養した後、あらかじめ育てておいたRFP(赤色蛍光タンパク質)発現ベクターで形質転換されたE.coliを分化したTHP−1細胞に入れた。再び、12時間が経過した後、蛍光顕微鏡でバクテリアが分化したTHP−1細胞によって食作用されたことを確認し(図14)、この細胞を細胞分離緩衝溶液(cell dissociation buffer)(EDTA緩衝溶液)で分離してFACS(Coolter)分析を実施した(図15)。
【0106】
その結果、sCD93_Fc処理によって分化された細胞の食作用が、陰性対照群のhIgG処理によるものよりずっと増加して蛍光が示されることが分かった。
<実施例6>CD93タンパク質抗体のTNF−a生成阻害効果実験
このようなsCD93_Fcの炎症効果と大食細胞分化効果に対して、それに対する抗体の抗炎症剤としての開発可能性を調べるため、CD93に対する抗体処理によってこのような効果が抑制されるのかどうか調べた(図16)。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群ではsCD93_Fc 5μg/mlと抗CD93ポリクローナル抗体(R&D system)10μg/mlを処理した。24時間が経過した後、LPS 1μg/mlによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後、さらに24時間が経過した後、Quantikine TNF−a分析キット(R&D system)を用いて培養上澄み液に含まれたTNF−a量を測定した。
【0107】
その結果、sCD93_Fcのみを処理した実験群でTNF−aの量が少し増加し、sCD93_FcとLPSを処理した実験群ではLPSのみ処理した実験群と比較して比較的高くTNF−aが測定されることが分かった。しかし、抗CD93抗体処理によってこのようなTNF−aの増加が50〜60%以上阻害されることが分かった。
<実施例7>siRNAを用いた多様な炎症促進性サイトカイン発現変化実験
THP−1細胞でCD93に対するsiRNA阻害技法を用いてCD93をノックダウンさせた時のさまざまなサイトカインの変化量をリアルタイムPCRを用いて実験した。
【0108】
まず、THP−1細胞2×105(培地:10%FBS(Hyclone社)+RPMI1640(Hyclone社))を24ウェルに入れて置いた後、Lipofectamin RNAiMax(Invitrogen)1μlとCD93siRNA(siCD93)(Bioneer社)10pmoleを混合した後、10分間放置した後、あらかじめ入れて置いたTHP−1細胞に形質感染(transfection)させた。陰性対照群にはネガティブコントロールsiRNA(Bioneer社)を用い、陽性対照群には全長CD93(CD93_Full)遺伝子(Kugi分譲、hMU003993,Kugi No.IRAT−49−A06)を用いて同一な方法で形質感染させた。12時間の間CO2インキュベーターに保管した後、LPSを処理し、以後追加で24時間さらに培養した。以後、実施例2と3で説明したのと同じ方法でTNF−aとIL−6に対してリアルタイムPCRを遂行した。
【0109】
その結果、siCD93処理によって二つの炎症促進性サイトカインの量が減り、LPSによって増加した量も減少した。これとは反対に、CD93を過発現したCD93_Full処理群はむしろTNF−aやIL−6の量を増加させ、LPS処理によってより一層増加する様相を示した(図17)。
<実施例8>ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現及びCD93可溶性断片量の測定実験(in vitro)
様々な炎症誘導物質によるまたは炎症性環境でのCD93発現とその断片化様相を調べるために、ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現と培養上澄み液内でのCD93可溶性断片の量を測定した。
<8−1>ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現様相:FACS実験
THP−1細胞は、10%牛胎児血清、ペニシリンG(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、ピルビン酸ナトリウム(1.0mM)を含むRPMI1640培地で37℃の細胞培養器で培養した。培養されたTHP−1細胞をPBS、LPS(1.0μg/ml)、TNF−a(0.5μg/ml)またはPMA(0.1μg/ml)で24時間の間処理して、4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。PBSで1回洗浄して3%NGS(normal goat serum)を用いて30分間遮断した後、再び3回洗浄した。そこにヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D systems)を1時間の間冷たく冷却して反応させた。PBSでまた3回洗浄した後、抗ヤギIgG−FITC抗体で1時間の間冷たく冷却して蛍光染色した。対照群には、それぞれの実験群に対して抗CD14−FITC抗体で別に蛍光染色した。それぞれ染色した細胞を流細胞分析機(EPICS Elite(Coulter))を用いて分析した。
【0110】
その結果、図18に示されたように、THP−1細胞でCD93の細胞表面発現がLPS、TNF−aによって増加し、PMA処理によってはあまり増加しなかった(図18)。また、対照群に用いたCD14の細胞表面の発現は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて減少したが、これはCD14の断片化によるものと考慮される。CD14の断片化は、単核球大食細胞活性化を下向き調節(down−modulation)するのにおいて重要なメカニズムであると知られている(Schutt,C.1999.Cd14.Int.J.Biochem.Cell Biol.31:545.23.Le−Barillec,K.,M.Si−Tahar,V.Balloy,and M.Chignard.1999.Proteolysis of monocyte CD14 by human leukocyte elastase inhibits lipopolysaccharide−mediated cell activation.J.Clin.Invest.103:1039.Bazil,V.,and J.L.Strominger.1991.Shedding as a mechanism of down−modulation of CD14 on stimulated human monocytes.J.Immunol.147:1567)。今までの多くの研究結果によると、コラゲナーゼ、ニュ−ロピルエラスターゼ(neutrophil elastase)とカテプシンGなどが細胞表面のCD14分子を断片化させることが報告されられている(Bryniarski,K.,K.Maresz,M.Szczepanik,M.Ptak,and W.Ptak.2003.Modulation of macrophage activity by proteolytic enzymes.Differential regulation of IL−6 and reactive oxygen intermediates(ROIs)synthesis as a possible homeostatic mechanism in the control of inflammation.Inflammation 27:333.Le−Barillec,K.,M Si−Tahar,V.Balloy,and M.Chignard.1999.Proteolysis of monocyte CD14 by human leukocyte elastase inhibits lipopolysaccharide−mediated cell activation.J.Clin.Invest.103:1039.Coyne,C.P.,T.Howell III,H.Smodlaka,C.Willetto,B.W.Fenwick,and E.Chenney.2002.Alterations in membrane−associated CD14 expression and the simultaneous liberation of soluble CD14 fragment in adherent macrophages mediated by a leukocyte carboxyl/aspartate protease.J.Endotoxin.Res.8:273.)。
<8−2>ウエスタンブロット実験
THP−1細胞は、10%牛胎児血清、ペニシリンG(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100/)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、ピルビン酸ナトリウム(1.0mM)を含むRPMI1640培地で37℃の細胞培養器で培養した。培養されたTHP−1細胞をPBS、LPS(1.0μg/ml)、TNF−a(0.5μg/ml)またはPMA(0.1μg/ml)で24時間の間処理した後、溶解物(lysate)と培養上澄み液を得た。5分間試料を沸かした後、冷凍保管した。試料を8%SDS−PAGEゲルにローディングした後、電気泳動した。ゲルを再びニトロセルロース膜に移した後、4%脱脂牛乳で遮断した。以後、ヤギ抗CD93抗体(R&D systems)を0.5μg/mlに希釈して常温で1時間の間反応させた。また、PBSTで3回洗浄した後、抗ヤギIgG−HRP抗体(Santa cruz)を0.5μg/mlにして常温で1時間の間反応させた。内部対照群に抗βアクチン(Santa cruz)と抗ヤギIgG−HRP(Santa cruz)を用いた。以後、ECLキット(ECL Plus,Amersham,米国)を製造社の方法にしたがって処理した。
【0111】
その結果、図19に示されたように、CD93分子の自体発現はFACS結果と同様にLPS、TNF−a処理によって増加したが、PMA処理によっては増加しなかった。しかし、CD93可溶性断片の量は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて増加した(図19)。前記結果によって、炎症性環境あるいは炎症誘導物質によってTHP−1細胞とジャーカット細胞での発現増加という側面からみると、CD93自体の発現も増加して、特にCD93可溶性断片の量も増加するという点を考慮すれば、CD93またはその可溶性断片が炎症性疾患の診断マーカーとしての活用が可能であると考慮される。
<8−3>RT−PCR実験
THP−1細胞を6ウェルプレートに培養した後、それぞれPBS、LPS(1.0μg/ml、InvivoGen)、PMA(0.1μg/ml、Sigma)を処理した。処理24時間後にRNA同定キット(Qiagen)を用いて、RNAを同定した。逆転写のために逆転写酵素(Bio−Rad)とdNTPを混合して42℃で1時間の間反応させてそれぞれのcDNAを得た。リアルタイムPCR分析のためにCFX96 system(Bio−Rad)を用いた。95℃で3分間初期変性して、続いて95℃で15秒間アニーリング、60℃で1分間の伸長化を40〜45周期にしてPCRを遂行した。蛍光測定は、各アニーリング工程で記録されて、データは工程ごとに自動保存された。具体的には、2μlのcDNA鋳型とCD93プライマーを23のiQ SYBR Supermix(Bio−Rad)と混合して反応させた。すべての反応は、2回反復した。相対的mRNA発現を測定するために、平均Ct(average threshold cycle)値を基準値にした。すべてのCt値の基準は、GAPDHを用いて標準化した。プライマーセットは、次のとおりである[CD93:正方向プライマーCTC TGG GGC TAC TGG TCT ATC(配列番号:34)、逆方向プライマーTGT CGG ACT GTA CTG GTT CTC(配列番号:35);GAPDH:正方向プライマーCAT GTT CGT CAT GGG TGT GAA(配列番号:36)、逆方向プライマーGGA CTG TGG TCA TGA GTC CTT(配列番号:37)]。
【0112】
その結果、図20に示されたように、THP−1細胞でのCD93発現はLPSとPMA処理によって有意に増加した(図20)。
<実施例9>マウス末梢血液単核細胞と腹膜細胞でのCD93発現様相及び血清と腹膜液でのCD93可溶性断片量の測定実験(in vivo)
前記試験管内(in vitro)実験でのCD93発現様相に対して、生体内(in vivo)実験でも同じ発現様相と断片化現象が起きるのかどうかを確認するために、下記のような実験を遂行した。すなわち、マウスに腹膜炎を起こすか炎症誘発物質(チオグリコレートまたはLPS)を注射した後、マウス末梢血単核細胞(PBMC)と腹膜細胞でのCD93発現様相、及び血清と腹膜液(PLF)でのCD93可溶性断片量を測定した。
<9−1>マウス末梢血液単核細胞と腹膜細胞でのCD93発現様相:FACS実験
6週齢のbalb/Cマウスに、1mlのPBS、4%チオグリコレートまたは0.1mg/mlのLPSを注射した後、3日間維持した。3日後、マウスから後眼窩静脈(retro−orbital vein)を通じてヘパリンコーティングされたガラス毛細管チューブを用いて血液を採血して、遠心分離して血清とPBMC細胞を得た。直ちにマウスを犠牲にして、腹腔内から腹膜液(PLF)と腹膜細胞(大部分腹腔内大食細胞)を得た。それぞれの細胞に含まれた赤血球を除去するために、10mlの赤血球溶解バッファー(Sigma)を37℃で10分間二度反応させて完全に赤血球を除去した。その次に、前記実施例<8−1>前述したのと同一な方法で蛍光染色した。但し、抗体の場合、羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)と抗羊IgG−FITC(Santa Cruz)を用いた。また、大食細胞の分化程度を調べるために、分化マーカーであるCD11b抗体(BD sciences)を用いて、二重染色をした。
【0113】
その結果、図21に示されたように、腹膜細胞の中で大食細胞でのマウスCD93発現は、LPS処理によって最も多い増加を示し、チオグリコレート処理によっても類似に増加した(図21)。したがって、マウスにチオグリコレートとLPS処理によってPBMCに存在した大食細胞が腹膜に移ったことが分かる。
<9−2>ウエスタンブロット実験
前記<9−1>で使用して残った半分の細胞を溶解させた後、ウエスタンブロットを遂行した。マウスCD93を検出するために羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)と抗羊IgG−HRP(Santa Cruz)を用いたことを除き、前記実施例<8−2>の方法と同一にしてウエスタンブロット実験を遂行した。また、大食細胞の分化程度を調べるために、分化マーカーであるCD11b抗体(BD sciences)を用いて二重染色を行なった。内部対照群として抗βアクチン(Santa cruz)と抗ヤギIgG−HRP(Santa cruz)を用いた。以後、ECLキット(ECL Plus,Amersham,米国)を製造社の方法にしたがって処理した。
【0114】
その結果、図22に示されたように、前記FACS結果と同一にマウスにチオグリコレートとLPS処理によって、腹膜細胞でCD93分子の発現が顕著に増加した(図22)。
<9−3>CD93可溶性断片の量測定:サンドイッチELISA実験
FACSとウエスタンブロット実験によってCD93分子自体の量が増加したことを観察した後、CD93可溶性断片がどのように変化するかを確認するために、サンドイッチELISA方法を用いて血清と腹膜液(PLF)でのCD93可溶性断片の量を測定した。
【0115】
まず、96ウェルファルコンプレート(Becton Dickinson)に100ng/wellのラット抗マウスCD93抗体(R&D systems)を一晩中コーティングした。PBSTで3回洗浄した後、3%脱脂牛乳で常温で30分間遮断した。また、PBSTで3回洗浄した後、集めておいたそれぞれのマウス血清と腹膜液を100μlずつローディングした後、2時間の間放置した。定量のための標準物質には、マウスCD93可溶性断片を用いた。また、3回洗浄した後、1μg/mlの羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)で1時間放置しておき、まもなく1μg/mlの抗羊IgG−HRP抗体(Santa cruz)にまた1時間の間反応させた。PBSTにまた3回洗浄した後、OPD(Sigma)を用いて発色した後、分光光度計(VERSAmax tunable microplate reader,Molecular Devices)を用いてOD値を測定した。測定した値は、それぞれ標準曲線を用いて絶対定量を実施した。
【0116】
その結果、図23に示されたように、血清内CD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレートによって大きく変化しなかった。しかし、腹膜液内のCD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレート処理によって顕著に増加した(図23)。したがって、CD93可溶性断片は炎症性疾患の診断マーカーとして活用できると考えられる。
<実施例10>滑膜組織内でのCD93発現及び滑膜液内でのCD93可溶性断片量の測定
<10−1>滑膜組織内でのCD93発現:免疫組織化学方法
3人のリウマチ性関節炎(RA)患者と2人の退行性関節炎(osteo−arthritis,OA)患者から得た滑膜組織を4%パラホルムアルデヒドで一晩中固定した。以後、アルコールで脱水してパラフィンでエンベディング(embedding)して切断を実施した。以後、内在したペルオキシダーゼ活性を無くすためにメタノリックH2O2で反応させた。また、非特異的反応を無くすために3%NGS(normal goat serum)で2時間遮断した。以後、組織をヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D)とビオチニル化された抗ヤギIgG、ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体(Vector、Peterboredgh,UK)を順に各1時間ずつ反応させた。染色された組織は、再びヘマトキシリンで対比染色して、オリンパス顕微鏡(Tokyo,日本)で観察した。
【0117】
その結果、図24に示されたように、退行性関節炎患者から得た滑膜組織よりリウマチ性関節炎患者から得た滑膜組織で、CD93の発現が顕著に高く示された(図24)。特に、リンパ球の浸潤が起きる潤滑膜(synovial lining)、下内層(sublining)、及び血管周囲領域(perivascular region)でCD93分子の発現が顕著に高く示された。
<10−2>滑膜液内でのCD93可溶性断片量の測定:サンドイッチELISA方法
8人のリウマチ性関節炎患者と8人の退行性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片量をサンドイッチELISA方法を用いて測定した。
【0118】
まず、96ウェルファルコンプレート(Becton Dickinson)に100ng/wellのラット抗ヒトCD93抗体(R&D systems)を一晩中コーティングした。PBSTで3回洗浄した後、3%脱脂牛乳で常温で30分間遮断した。また、PBSTで3回洗浄した後、集めておいたそれぞれのリウマチ性関節炎患者と8人の退行性関節炎患者の滑膜液(SF)を100μlずつローディングした後、2時間の間放置しておいた。定量のための標準物質には、ヒト可溶性CD93を用いた。再び、3回洗浄した後、1μg/mlのヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D systems)で1時間放置しておき、続いて1μg/mlの抗ヤギIgG−HRP抗体(Santa cruz)に再び1時間の間反応させた。PBSTで再び3回洗浄した後、OPD(Sigma)を用いて発色して、分光光度計を用いてOD値を測定した。測定した値は、それぞれ標準曲線を用いて絶対定量を実施した。
【0119】
その結果、図25に示されたように、リウマチ性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片の量が退行性関節炎患者群より顕著に高いことを確認した(図25)。
【0120】
したがって、CD93分子またはその可溶性断片は、炎症性疾患の診断マーカーとしての活用が可能であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
前記のように、本発明は多様な炎症性疾患の治療剤及び診断キットを開発するのに有用に用いることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0122】
配列番号5:CD14新正方向プライマー
配列番号6:CD14新逆方向プライマー
配列番号7:CD64新正方向プライマー
配列番号8:CD64新逆方向プライマー
配列番号9:CD1a新正方向プライマー
配列番号10:CD1a新逆方向プライマー
配列番号11:IL-6正方向プライマー
配列番号12:IL-6逆方向プライマー
配列番号13:IL-12正方向プライマー
配列番号14:IL-12逆方向プライマー
配列番号15:iNOS正方向プライマー
配列番号16:iNOS逆方向プライマー
配列番号17:CXCL11正方向プライマー
配列番号18:CXCL11逆方向プライマー
配列番号19:CLEC4A正方向プライマー
配列番号20:CLEC4A逆方向プライマー
配列番号21:SPHK-1正方向プライマー
配列番号22:SPHK-1逆方向プライマー
配列番号23:IL-1β正方向プライマー
配列番号24:IL-1β逆方向プライマー
配列番号25:TNF-α正方向プライマー
配列番号26:TNF-α逆方向プライマー
配列番号27:pMEP4正方向プライマー
配列番号28:pMEP4逆方向プライマー
配列番号29:Bam HI Sfil ヒト免疫グロブリンFc N末端配列正方向プライマー
配列番号30:Xbal Stop Codon ヒト免疫グロブリンFc C末端配列逆方向プライマー
配列番号31:CD93プラスミド正方向プライマー
配列番号32:CD93プラスミド逆方向プライマー
配列番号34:CD93正方向プライマー
配列番号35:CD93逆方向プライマー
配列番号36:GAPDH正方向プライマー
配列番号37:GAPDH逆方向プライマー
【技術分野】
【0001】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を用いた抗炎症性組成物、炎症性疾患診断方法、及び炎症性疾患診断キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトCD93(C1qRp、AA4.1(mouse))は、染色体の20番、p11.21に位置したタイプ1膜通過糖蛋白質である(非特許文献1、2、3)。前記タンパク質は、B細胞発達において細胞・細胞間相互作用と食作用(phagocytosis)に関連することが報告されている(非特許文献2、4、5、6)。
【0003】
CD93は、総652個アミノ酸で構成され、リーダー配列、cタイプ炭水化物認知ドメイン、5個のEGF類似ドメイン、ムチンドメイン、一つの膜通過ドメイン、47個アミノ酸の細胞内ドメインを含んでいる(非特許文献2、7、8)。また、CD93は、骨髄系、造血母細胞、NK細胞、血小板、小膠細胞及び血管内皮細胞などで発現する(非特許文献9〜14)。また異なる研究結果では、CD93が大食細胞では発現しないが、血管内皮細胞では多く発現すると報告されている(非特許文献15〜17)。CD93は元来、抗CD93抗体を用いた結果において食作用のC1q−媒介増強(C1q−mediated enhancement of phagocytosis)に関与するとされ、C1qに対する受容体としての可能性が提議されてきた。しかし、後続の実験でC1qと直接結合しないことが多くのグループから報告された(非特許文献8、18、19)。
【0004】
CD93ノックアウトマウス実験では、CD93の不在によって死滅細胞の除去機能に問題が起こることが明かされ、試験管内(in vitro)実験ではそのような機能異常がみられない、相反した結果が導出された(非特許文献5、20)。このような食作用機能は、免疫反応において初期に重要な役割を担当していて、細胞死滅した細胞の除去に重要な役割をしている(非特許文献21)。
【0005】
このような機能に対する糸口を解く最近の研究結果として、CD93がTNF−a、LPSなど炎症の初期段階で細胞外部分(ectodomain)が切断される断片化(shedding)が起きるという報告があった(非特許文献7、22、23)。また、CD93と同じ系列細胞であるU937細胞で、PMA(phorbol−12−myristate−13−acetate)処理によって断片化が起きて可溶性断片で切断されるという報告もあった(非特許文献29)。同時に、特許文献1には、CD93−関連多形体が第1型糖尿病と赤斑性狼瘡の診断に有用であると記載している。しかし、CD93を炎症性疾患治療または診断に使用し報告はない。
【0006】
それで、本発明者等は、CD93またはその可溶性断片の炎症との関連性を研究した結果、CD93の可溶性断片が優秀な抗炎症効能を有して、CD93またはその可溶性断片が炎症誘導物質または炎症性環境で過発現することを確認することによって、CD93の可溶性断片は抗炎症性組成物の有効成分として用いることができ、CD93またはその可溶性断片は、炎症性疾患診断用マーカーとして用いられることを明らかにして本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開特許WO2008/082519号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Malhotra,R.等,Immunology,1993年,第78巻,p.341−348
【非特許文献2】Nepomuceno,R.R.等,Immunity,1997年,第6巻,p.119−129
【非特許文献3】Steinberger,P.等,Biol.2002年,第71巻,p.133−140
【非特許文献4】Petrenko,O.等,Immunity,1999年,第10巻,p.691−700
【非特許文献5】Norsworthy,P.J.等,J.Immunol.2004年,第172巻,p.3406−3414
【非特許文献6】McGreal,E.P.等,J.Immunol.2002年,第168巻,p.5222−5232
【非特許文献7】Park,M.等,J.Cell Physiol.2003年,第196巻,p.512−522
【非特許文献8】Nepomuceno,R.R.等,J.Immunol.1999年,第162巻,p.3583
【非特許文献9】Nepomuceno,R.R.等,Immunity,1997年,第6巻,p.119
【非特許文献10】Nepomuceno,R.R.等,J.Immunol.1998年,第160巻,p.1929
【非特許文献11】Danet G.H.等,Proc Natl Acad Sci USA,2002年,第99巻,p.10441−5
【非特許文献12】Lovik G.等,J Immunol,2000年,第30巻,p.3355−62
【非特許文献13】Fonseca M.I.等,J Leukoc Biol,2001年,第70巻,p.793−800
【非特許文献14】Webster,S.D.等,J.Leukocyte Biol.2000年,第67巻,p.109
【非特許文献15】Petrenko,O.等,Immunity,1999年,第10巻,p.691
【非特許文献16】Dean,Y.D.等,J.Immunol.第31巻,p.1370
【非特許文献17】Fonseca,M.I.等,J.Leukocyte Biol.2001年,第70巻,p.793
【非特許文献18】McGreal,E.P.等,J.Immunol.2002年,第168巻,p.5222
【非特許文献19】Steinberger,P.等,J.Leukocyte Biol.2002年,第71巻,p.133
【非特許文献20】Guan,E.等,J.Immunol.1994年,第152巻,p.4005−4016
【非特許文献21】Brown,E.J.Phagocytosis.Bioessays,1995年,第17巻,p.109−117
【非特許文献22】Suzanne S.Bohlson等,J.immunol.2005年,第175巻,p.1239−1247
【非特許文献23】Ikewaki N.,Tamauchi H.,and Inoko H.Decrease in CD93expression in a human monocyte−like cell line(U937)treated with various apoptosis−inducing chemical substances.Microbiol.Immunol.,2007年,第51(12)巻,p.1189−1200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、CD93の可溶性断片を用いた抗炎症性組成物を提供することである。
【0010】
本発明のまた別の目的は、CD93またはその可溶性断片を用いた炎症性疾患診断用キット、及びそれを用いた炎症性疾患診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列からなるCD93水溶性断片に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができる、siRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は前記組成物を炎症にかかった個体に投与する工程を含む炎症の治療方法を提供する。
【0014】
また、本発明は前記組成物を個体に投与する工程を含む炎症の予防方法を提供する。
【0015】
また、本発明はCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断用キットを提供する。
【0016】
同時に、本発明は前記炎症性疾患診断用キットを用いて炎症性疾患を診断する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、CD93の可溶性断片に対する抗体を有効成分として含む抗炎症性薬学的組成物を提供することができ、前記組成物を用いて炎症性疾患の予防または治療に有用に用いることができる。また、本発明は、CD93またはその可溶性断片を炎症性疾患の診断マーカーとしての用途を提供することができ、前記マーカーを用いて炎症性疾患のモニタリングまたは診断に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】全長のCD93タンパク質のアミノ酸配列(図1A)とsCD93タンパク質のアミノ酸配列(図1B)を示した図である。
【図2】HEK293E細胞でsCD93_Fcを発現及び精製した後の電気泳動写真である。ここで、Nは還元されない状態のタンパク質で、Rは還元された状態のタンパク質である。
【図3】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞がディッシュ(dish)表面に付着した程度を示した写真である。
【図4】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞の付着率を示したグラフである。
【図5】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、THP−1細胞が大食細胞に分化した程度を示した写真である。
【図6】sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を示した結果で、大食細胞分化標識の発現程度を示したグラフである。
【図7】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、phospho−Erk 1/2、phospho−p38及び全体p38をウエスタンブロットで定量化した電気泳動写真である。
【図8】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、phospho−Erk 1/2がsCD93タンパク質処理後の時間によって定量化した電気泳動写真である。
【図9】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、TNF−α及びIL−6の発現量をRNA水準で測定した結果である。
【図10】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、IL−1β及びiNOSの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図11】sCD93タンパク質のMAPK信号活性化効果を示した結果で、sCD93タンパク質処理後、IL−12、CXCL12、SPHK−1及びCLEC4Aの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図12】sCD93タンパク質処理後、TNF−αの発現量をタンパク質水準で測定した結果である。
【図13】sCD93タンパク質が基質金属タンパク質プロテアーゼ(MMP)の発現に及ぼす影響を示した電気泳動写真である。
【図14】sCD93タンパク質の食作用の誘導効果を示した写真である。
【図15】sCD93タンパク質の食作用の誘導効果を示したFACS分析グラフである。
【図16】CD93タンパク質抗体のTNF−α生成阻害効果を示したグラフである。
【図17】CD93遺伝子に対するsiRNAのTNF−a及びIL−6の生成阻害効果を示したグラフである。
【図18】ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞にLPS、TNF−aまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93発現様相をFACSで分析した結果を示したグラフである。
【図19】THP−1細胞にLPS、TNF−aまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93発現様相とその可溶性断片をウエスタンブロットで観察した結果を示した図である。
【図20】THP−1細胞にLPSまたはPMAを処理した後、細胞表面でのCD93mRNA発現をRT−PCRで測定して定量した結果を示したグラフである。
【図21】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93の発現様相を腹膜大食細胞でFACSで分析した結果を示したグラフである。
【図22】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93の発現様相をPBMCと腹膜大食細胞からウエスタンブロットで観察した結果を示した図である。
【図23】マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、マウスCD93可溶性断片の量を血清と腹膜液でサンドイッチELISA方法で測定した結果を示したグラフである。
【図24】リウマチ性関節炎患者(RA)と退行性関節炎患者(OA)から得た滑膜組織をCD93抗体で染色してその発現様相を免疫組織化学方法で分析した結果を示した図である。
【図25】リウマチ性関節炎患者(RA)と退行性関節炎患者(OA)から得た滑膜液に存在するCD93可溶性断片の量をサンドイッチELISA方法で測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の実施のための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
本発明は、CD93水溶性断片のsCD93に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、CD93水溶性断片のsCD93に対する特異的な抗体を抗炎症性組成物の製造に用いる用途を提供する。
【0022】
本発明者等は、sCD93をヒト由来単核球細胞であるTHP−1細胞に処理した時、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化が媒介されてTHP−1細胞がマクロファージに分化して食作用が誘導され、またTNF−α、IL−1β、IL−6等の炎症性サイトカインの分泌が増加して、基質金属蛋白質分解酵素(matrix metalloproteinase、MMP)の分泌が促進されるなど炎症反応が誘導されることを確認することができた。
【0023】
前記でMAPKは、細菌性脂質多糖類など炎症誘発物質によって活性化して炎症性サイトカインの分泌などを促進することが知られていて、MMPは炎症反応が誘導される過程でその分泌が促進されることが知られている。
【0024】
本発明者等は、このようなsCD93の炎症反応誘導効果に着眼して、それの抗体をTHP−1細胞に処理した時、活性化した単核細胞や大食細胞によって一次的に生成されることが知られたサイトカインであるTNF−aが減少することも確認することができた。
【0025】
本発明は、このような実験結果に基づいて提供されるもので、本発明の抗炎症性薬学的組成物は、sCD93に対する特異的な抗体を有効成分として含むことを特徴とする。
【0026】
本明細書で、「sCD93」は全長のCD93タンパク質から離れたCD93タンパク質の水溶性断片を意味し、それのアミノ酸配列と塩基配列は<図1のB>及び<配列番号1及び2>に開示されている。本明細書で標的タンパク質は、特別に異なる言及がない限りsCD93を意味する。全長のCD93タンパク質の配列は、<図1のA>及び<配列番号3>に開示されていて、前記タンパク質遺伝子の塩基配列は、<配列番号4>に開示されている。
【0027】
本明細書で、「抗炎症性」の意味は、炎症や炎症性疾患の予防、改善、治療、及び発病遅延を含む意味である。
【0028】
本明細書で、前記「炎症性疾患」というのは、外部の物理または化学的刺激またはバクテリア、かび、ウイルス、各種アレルギー誘発物質など外部感染源の感染に対する局所的または全身的生体防御反応で特定される状態として定義され得る。このような反応は、各種炎症媒介因子と免疫細胞と関連する酵素(例えば、iNOS、COX−2等)活性化、炎症媒介物質の分泌(例えば、NO、TNF−α、IL−6、IL−1β、PGE2の分泌)、体液浸潤、細胞移動、組織破壊などの一連の複合的な生理的反応を伴って、赤斑、痛み、むくみ、発熱、身体の特定機能の低下または喪失などの症状によって外的に現れる。前記炎症性疾患は、急性、慢性、潰瘍性、アレルギー性または壊死性を帯びることができるので、ある疾患が前記のような炎症性疾患の定義に含まれる限りそれが急性でも、慢性でも、潰瘍性でも、アレルギー性でもまたは壊死性であっても構わない。具体的に前記炎症性疾患には、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染(例えば、C型感染)、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、鞏膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹、多発性硬化症などが含まれる。
【0029】
本明細書で「有効成分」というのは、単独に目的とする活性を示すかまたはそれ自体は活性がない薬学的に許容される担体などとともに活性を示すことができる成分を意味する。前記「薬学的に許容される」の意味に対しては下記で説明する。
【0030】
本明細書で、「特異的結合」の意味は、抗体がその標的タンパク質であるsCD93と抗原抗体結合体を形成して、異なるタンパク質とは実質的にそのような結合体を形成しない場合を意味する。ここで、「実質的に」というのは、程度は低いが非特異的な結合体は形成することができるということを意味する。前記「特異的結合」の意味は、別の表現ではその結合がタンパク質の特定構造すなわち抗原の決定部位であるエピトープによって決定される結合であると表現することもできる。
【0031】
本明細書で、「エピトープ」というのは、標的タンパク質であるsCD93で抗原性または免疫原性を有する部分のアミノ酸領域(抗原決定基)を示す。エピトープは通常少なくとも10個のアミノ酸を含む。このようなエピトープは、当業界の公知されたエピトープ解釈法、例えば、ファージ提示法、逆免疫遺伝学(reverse immunogenetics)などによって同定することができる。
【0032】
本明細書で、「抗体」は標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合するものならすべての形態の物を含む意味である。したがって、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(すなわち二つ以上の抗原または二つ以上のエピトープに対して結合特異性を有する抗体であり、例えば二特異的抗体などをいう)、ヒト化抗体、ヒト抗体を含むこと以外に、標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合することができる能力を保有する抗体の断片、組換え抗体、化学的に修飾された抗体を含む。
【0033】
前記ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)がマウス、うさぎ、ねずみ、霊長類など非ヒト種のCDRで代替された抗体であり免疫拒否反応を最小化した抗体をいい、このような抗体の製造方法は当業界に公知されている。詳細な内容は、文献[Riechmann L.等,Nature,1988年,第332巻,p.323−327]、文献[Nakatani T.等,Protein Engineering,1994年,第7巻,p.435−443]、文献[Jones等,Nature,1986年,第321巻,p.522−525]、文献[Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992年,第2巻,p.593−596]などを参照することができる。
【0034】
前記ヒト抗体は、内因性免疫グロブリンを産生することができる遺伝子を破壊したマウスなどの動物にヒト免疫グロブリン遺伝子を導入させて、その動物に特定抗原を免疫させて得られる抗体をいう。具体的な内容は、文献[Jakobovits等,Proc、Natl.Acad,Sci.米国,1993年,第90巻,p.2551]、文献[Jakobovits等,Nature,1993年,第362巻,p.255−258]、文献[Bruggermann等,Year in Immuno.,1993年,第7巻,p.33]、文献[Hoogenboom等,J.Mol.Biol.,1991年,第227巻,p.381;Marks等,J.Mol.Bio.,1991年,第222巻,p.581−597]などを参照することができる。
【0035】
前記抗体の断片の例としては、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、scFv(重鎖や軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させた抗体)、Fv断片、Fab/c(1個のFabと完全なFcを有する抗体)、線形抗体(Zapata等,Protein Eng.,1995年,第8(10)巻,p.1057−1062)、抗体をタンパク質切断酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理して得られた抗体断片、断片に対する遺伝子を後述のように遺伝子組換え方法で宿主細胞に導入及び発現させて得られる抗体断片を含む意味である。前記抗体のグロブリン類型も標的タンパク質であるsCD93に特異的に結合するものなら特別に限定されず、そのグロブリン類型は、IgG、IgM、IgA、IgE、IgY及びIgD中でいずれか一つであり得る。
【0036】
一方、ポリクローナル抗体は、鳥類(例えば、ニワトリなど)、哺乳動物(例えば、うさぎ、やぎ、馬、ひつじ、なずみ、非ヒト霊長類(さる、チンパンジー、ゴリラなど)に標的タンパク質であるsCD93を免疫させることで製造することができる。通常、最終免疫日から6〜60日後に酵素免疫測定法(EIA及びELISA)、放射免疫測定法(RIA)などで抗体価を測定して、最大抗体価を示す時に採血する過程を踏むようになる。抗体は、免疫された動物の血液から当業界の公知または慣用の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィーなどの方法を用いて精製することができる。
【0037】
モノクローナル抗体は、標的タンパク質であるsCD93に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株によって得ることができる。このようなハイブリドーマ細胞株を産生するための方法として、例えば動物(例えば、マウス)を標的タンパク質であるsCD93で免疫させて、その免疫させた動物から脾臓細胞を採取して、その脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させて、それによってハイブリドーマ細胞を生成して、そして目的とするモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞株を同定する方法を挙げることができる。そのような細胞株からモノクローナル抗体の分離または回収は、当業界の公知または慣用の技術によって可能である。
【0038】
このようなモノクローナル抗体の製造に対して、下記により詳しく説明する。
【0039】
まず、モノクローナル抗体を得るためには、免疫源の標的タンパク質であるsCD93を哺乳動物、例えばラット、マウス、うさぎ、さる、やぎ、非ヒト霊長類(さる、チンパンジー、ゴリラ)などに投与する必要がある。免疫源の1回投与量は、当業者が免疫動物の種類、投与経路などを考慮してその通常の能力範囲内で適切に決定することができる。通常は、動物1匹当たり約50〜200μgである。投与は、通常、免疫源をPBS(phospate−buffered saline)や生理食塩水などで適量希釈または懸濁して、通常のアジュバントを混合して乳化した後に皮下、腹腔内に注入して行なうことができる。このような投与は、初めの投与後、数日から数週の間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で2〜10回、好ましくは3〜4回にわたって行なわれる。免疫源の投与を継続しながらELISA方法などによって免疫動物の血清中の抗体価を測定して抗体価が頂点(plateau)に到達した時は、最終的に免疫源を静脈内または腹腔内に投与して、その最終投与日から2〜5日後に抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞では、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞などを挙げることができるが、脾臓細胞またはリンパ節細胞が好ましい。
【0040】
抗体産生細胞を採取した後には、投与された免疫源すなわち本発明の標的タンパク質であるsCD93に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を製造する。このようなハイブリドーマは、当業界の公知または慣用の技術によって産生して同定することが可能である。通常は、抗体産生細胞、好ましくは脾臓細胞を免疫された動物から採取して、その脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させてハイブリドーマ細胞を製造して、免疫源に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する工程を経ることになる。抗体産生細胞と融合するのに用いられる骨髄腫細胞株は、マウスなどの動物に由来した細胞株を使用することができるが、このような細胞株は商業的に入手可能である。好ましい骨髄腫細胞株は、免疫動物と同種系の動物に由来して、抗生剤などに対する薬剤選択性を有して、脾臓細胞と融合されない状態では、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミンを含むHAT選択培地で生存することができず、脾臓細胞と融合した状態でのみ生存することができる特性を有することが好ましい。骨髄腫細胞株の具体的な例としては、BALB/cマウス由来のHGPRT(hypoxantine guanine phosporibosyl−transferase)欠損細胞株であるP3X63(ATCC TIB9)などを挙げることができる。
【0041】
抗体産生細胞である脾臓細胞と骨髄腫細胞株の融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で抗体産生細胞と骨髄腫細胞株を適正な割合(約1:1〜20:1の割合)で混合して、細胞融合促進剤の存在下で融合反応を遂行することで成立つようになる。細胞融合促進剤として平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコールなどを約10〜80%の濃度で使用することができる。また、場合によっては融合効率を高めるため、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用することもできる。また、市販されている細胞融合装置を用いて融合させることもできる。
【0042】
細胞融合処理後、目的とするハイブリドーマを選別しなければならない。通常細胞懸濁液を牛胎児血清含有RPMI−1640培地などに適当に希釈した後、マイクロタイタープレート上に細胞をウェル当り200万個程度で分注して、各ウェルに選択培地を添加して、以後同一な選択培地に適切に交換して新鮮な培地を供給しながら培養する。培養温度は、通常20〜40℃である。骨髄腫細胞株がHGPRT欠損株またはチミジンキナーゼ欠損株の場合には、ヒポキサンチン、アミノプテリンまたはチミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることで、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養して増殖させることができる。それで選択培地で培養開始後約14日前後で生育した細胞をハイブリドーマとして得ることができる。続いて、増殖されたハイブリドーマの上澄み培養物から目的とする抗体の存在有無をスクリーニングする。このようなハイブリドーマのスクリーニングは、当業界の公知または慣用の技術にしたがってなされ得る。そのよう技術として例えば、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay及びELISA)、放射免疫測定法などを挙げることができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法などによって行なうことができる。
【0043】
クローニングされたハイブリドーマは、10%牛胎児血清含有RPMI−1640培地、DMEM培地、無血清培地など動物細胞培養培地で通常の培養条件(例えば、37℃、5% CO2濃度)で培養すれば良い。培養期間は2〜10日程度である。モノクローナル抗体は、その上澄み培養物から得ることができる。
【0044】
モノクローナル抗体は、当業界の公知または慣用の技術を用いて回収することができる。そのような当業界の公知または慣用の技術としては、硫酸アンモニウム塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法またはこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体の産生には、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングして適当なベクターに挿入させてそれを適当な宿主細胞に導入及び発現させて得る遺伝子組換え技術を用いることもできる(Vandamme,A.M.等,Eur.J.Biochem.,1990年,第192巻,p.767−775)。
【0046】
具体的に本発明の抗体を産生するハイブリドーマから本発明の抗体の可変領域(V領域)を暗号化するmRNAを得る。このよなmRNAの収得は、当業界の公知または慣用の方法、例えばグアニジン超遠心分離法(Chirgwin,J.M.等,Biochemistry.,1979年,第18巻,p.5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.等,Anal.Biochem.,第162巻,p.156−159)などを用いて全体RNAを収得して、その全体mRNAからmRNA Purification Kit(Pharmacia社)などを用いて目的とするmRNAを収得することで成される。代案的には、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製品)を用いることで、mRNAを直接収得することもできる。
【0047】
収得されたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体可変領域のcDNAを合成する。必要ならcDNA合成または増幅にRACE PCR方法などを適用することもできる。このように得られた可変領域を暗号化するcDNAを抗体の不変領域(C領域)を暗号化するDNAを含む発現ベクターに挿入する。このような発現ベクターは、本発明の標的タンパク質であるsCD93のDNA組換え産生方法と関連して後述するようにプロモーター、エンハンサー、複製開示点、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位など調節配列を含むことができる。この発現ベクターが宿主細胞に形質転換されると抗体の産生が可能になる。抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)を暗号化するDNAをそれぞれ発現ベクターに組換えして宿主細胞を同時形質転換させても構わず、または重鎖及び軽鎖を暗号化するDNAを単一の発現ベクターに挿入して宿主細胞を形質転換させても構わない(WO94/11523号公報)。
【0048】
一方、本発明の抗体を得るために用いた免疫源としての本発明の標的タンパク質であるsCD93は、当業界の公知または慣用のDNA組換え技術によって得ることができる。一般的には、本発明の標的タンパク質であるsCD93のcDNAを製作してそのcDNAを発現ベクターに挿入し、その発現ベクターを原核または真核宿主細胞に形質転換させてその形質転換された宿主細胞を適当な培地で培養して、その培養液または細胞から得るようになる。前記cDNAは、GenBankなどの遺伝子/タンパク質データベースが提供する遺伝子配列または本明細書が提供する配列に基づいて当業者の通常の能力範囲内で製作可能である。
【0049】
このようなcDNAの製造には、ホスホアミダイト法などを用いるDNA合成装置、RT−PCR法、cDNAライブラリから目的とするcDNAを得るための混成化方法などを用いることができ、必要によってはPCR方法などによって目的とするcDNAを増幅することもできる。
【0050】
前記で発現ベクターは、バイオテクノロジーの会社、例えばノバジェン(Novagen)社、ダカラ酒造、キアゲン(Qiagen)社、ストラタジーン(Stratagene)社、プロメガ(Promega)社、ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnositics)社、インビトロジェン(Invitrogen)社、ジェネティクスインスティチュート(Genetics Institute)社などから商業的に入手可能である。
【0051】
このような発現ベクターには、本発明の標的タンパク質であるsCD93をコードするDNA以外に調節エリメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム、結合部位、複製開示点、ターミネーター、選択マーカー、単離または精製を容易にするための標識ペプチド配列(例えば、ヒスチジン反復配列を暗号化する塩基配列)などを含むことができる。
【0052】
宿主細胞は、細菌などの原核細胞(例えば、大腸菌、枯草菌)、及び酵母(例えば、サッカロマイセスセレビシア(Saccharomyces cerevisiae))、昆虫細胞(例えば、Sf細胞)、ホ乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK)などの真核細胞を使用することができる。
【0053】
宿主細胞またはその培養物から本発明の標的タンパク質の精製には、限外ろ過、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィー(標識ペプチドが結合された場合)、HPLC、疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどの方法やこれらを組み合わせる方法を用いることができる。
【0054】
DNA組換え技術による本発明の標的タンパク質の産生に対しては、本明細書の記載内容以外に「Samrook等,Molecular Cloning A Laboratory Mannual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,米国(1989年)」、「Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology,Jon Willey & Sons,米国(1993年)」及び「Sambrook,J.& Russel,D.著,Molecular Cloning,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001年1月15日発行の第1巻p.7.42〜7.45,第2巻,p.8.9〜8.17」などの文献を参照することができる。これらの文献は、本明細書の一部として見なされる。
【0055】
本発明の抗体を産生するための免疫源としての本発明の標的タンパク質は、その断片(sCD93の断片)や全長のタンパク質(CD93自体)を用いることもできる。断片や全長のタンパク質を用いて得られる抗体も、本発明の標的タンパク質に特異的に結合する能力を保有する可能性があるからである。
【0056】
また、本発明は、配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができるsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上のものを有効成分として含む抗炎症性組成物を提供する。
【0057】
また、本発明は、前記CD93遺伝子の発現を抑制することができるsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上のものを抗炎症性組成物の製造に用いる用途を提供する。
【0058】
本発明者等は、CD93遺伝子に対するsiRNAをTHP−1に処理した時、炎症誘発物質であるLPS(lipopolysaccharide)処理時に増加する炎症性サイトカインであるTNF−a及びIL−6の発現量を減少させることを確認した。
【0059】
特定遺伝子に対する短い二重RNAであるsiRNA(small interfering RNA)やshRNA(short haripin RNA)が細胞内に導入される場合、リボヌクレアーゼであるダイサー(dicer)によってプロセッシングされてRISC(RNA induced gene sciencing complex)に結合することでRNAiを誘導することが知られている(Nature,1998年,第391巻,p.806−811;Genes Dev.2001年,第15巻,p.485−490;Nature,2001年,第411巻,p.494−498;Science,2000年,第287巻,p.2494−2497;Cell,2000年,第101巻,p.25−33)。このようなRNAiには、ヘリカーゼとエンドヌクレアーゼが関与するが、ヘリカーゼによってsiRNAの二重鎖のRNAが解かれてその中のアンチセンスは標的遺伝子のmRNAに結合するが、この結合された部位はエンドヌクレアーゼによって加水分解されるようになる(Cell,2000年,第101巻,p.25−33;Science,2002年,第296巻,p.1265−1269、2002;J.Biol.Chem.2003年2月28日,第278(9)巻,p.7108−18)。
【0060】
本明細書で、「siRNA」はその標的遺伝子のRNAに対してRNAi現象を誘導することができる10〜40塩基対を有する二重鎖RNA、好ましくは15〜30の塩基対を有する二重鎖RNA、さらに好ましくは20〜22塩基対を有する二重鎖RANを意味する。このようなsiRNAは、ブラント(blunt)末端を有するか突出(overhang)末端を有することができ、突出末端を有する場合それは、3’末端と5’末端の両方で可能である。好ましくは3’末端が突出した場合である。突出した末端の塩基数は1〜5で、2〜3塩基であることが好ましい。
【0061】
本明細書で、「shRNA」は2〜10塩基のループ領域を有するヘアピン構造の二重鎖RNAをいう。このようなループ領域の塩基は、当業界に公知されたものなどを使用することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002年,第99(8)巻,p.5515−5520;Nature Biotechnology,2002年,第20巻,p.505−508;Nature Biotechnology,202年,第20巻,p.500−505;Nat Cell Biol.,2003年,第5巻,p.489−490;Proc.Natl.Acad.Sci.米国,2002年,第99(9)巻,p.6047−6052)。shRNAの二重鎖部分は、前記siRNAと同一に構成することができるので、siRNAと関連した説明がそのまま適用できる。
【0062】
本明細書で、「shRNAの発現ベクター」は、shRNAのコード配列を含むことによって、細胞内でshRNAを発現させることができるベクターを意味する。前記shRNAコード配列は、CD93遺伝子の一部配列とループ領域を構成するスペーサー(spacer)配列及びそのCD93遺伝子の一部配列に相補的な配列で構成されるが、shRNAコード配列は、用いる発現ベクターによってRNAやDNAであり得、発現ベクターの調節配列(例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナルなど)に作動可能に連結されるようになる。発現ベクターは、プラスミド由来の発現ベクターまたはレンチウイルスベクターであることができる。プラスミド由来の発現ベクターは、プロメガ(Promega)社(Cat Nos.C8750、C8760、C8770、C8780、C8790、C7800等)、ゲンスクリプト(Genscript)社((Cat.Nos.SD1201、SD1202、SD1207)など生命工学会社が市販するものを購入して使用するか自己製作して使用することができる。レンチウイルスベクターの利用に対して国際特許第WO2004/065549号の開示内容を参照することができる。
【0063】
一方、本発明の組成物は、sCD93に対する抗体やsiRNA、shRNAなどを含む以外に、一般的に製薬上許容される担体を含むことができる。ここで「製薬上許容される」の意味は、有効成分の活性を抑制せずに適用(処方)対象が適応可能以上の毒性を持たない(充分に低い毒性)意味である。このような担体の例としては、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エチルアルコール、ポリアルコール(例、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0064】
本発明の組成物は、その保存寿命を延長したり有効性を保存したりするために、保存剤、抗酸化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、非イオン系界面活性剤などを含むこともできる。このような保存剤、抗酸化剤、湿潤剤などとして適当なものは当業界で公知されている。
【0065】
本発明の組成物は、多様な形態に剤形化することができ、例えば液状溶液、懸濁液、シロップ、錠剤、丸薬などに剤形化することができるが、これに限定されるのではない。
【0066】
本発明の組成物は、ヒトを含むホ乳動物に経口または非経口で投与することができるが、通常は抗体を有効成分として含むバイオ医薬品と同じく静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内注射によって投与することができるが、これに限定されるのではない。
【0067】
本発明の組成物の投与量は、前記組成物の有効成分の含有量、疾病の重症度、患者の体重、薬物形態、投与経路、投与期間によって医学的専門家によって決定されるが、通常は1日に0.01μg/kg〜100mg/kgの範囲内で決定することができるが、これに限定されるのではない。
【0068】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片を有効成分として含む炎症性疾患診断用マーカーを提供する。
【0069】
前記CD93は、配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0070】
前記CD93可溶性断片は、膜通過タンパク質であるCD93タンパク質が細胞培養後放出された細胞外部分(ectodomain)であり、95kDa程度の断片であることが好ましいが、これに限定されない。
【0071】
本発明によるCD93の発現が、ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でLPS、TNF−aによって増加し、PMA処理によってはあまり増加しない。しかし、CD93可溶性断片の量は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて増加する。また、マウスにPBS、チオグリコレート、LPSを注射した後、腹膜細胞中の大食細胞でのマウスCD93発現は、LPS処理によって最も大きく増加して、チオグリコレート処理によっても類似に増加する。また、血清内CD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレートによって大きく変化しないが、腹膜液内のCD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレート処理によって顕著に増加する。
【0072】
また、退行性関節炎患者から得た滑膜組織よりリウマチ性関節炎患者から得た滑膜組織でCD93の発現が顕著に高く示されて、リウマチ性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片の量が退行性関節炎患者群より顕著に高く示される。
【0073】
前記のように、本発明によるCD93またはその可溶性断片は、炎症誘導物質による、または炎症性環境でCD93発現が増加してCD93可溶性断片の量が増加する。したがって、本発明によるCD93またはその可溶性断片は、炎症性疾患の診断マーカーとして有用に用いることができる。
【0074】
前記炎症性疾患は、喘息、アレルギー性及びに非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、腹膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹、多発性硬化症などを含むが、これに限定されない。
【0075】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断キットを提供する。
【0076】
また、本発明は、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを炎症性疾患診断用キットの製造に用いる用途を提供する。
【0077】
前記炎症性疾患診断キットは、本発明のCD93またはその可溶性断片マーカーを用いて当業界で一般的に用いる製造方法によって容易に製造することができる。前記アプタマーは、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合することができる特徴を有した単一鎖核酸(DNA、RNAまたは変形核酸)である。
【0078】
前記炎症性疾患診断キットは、CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体、基質との反応によって発色する標識体が接合された2次抗体接合体(conjugate)、前記標識体と発色反応する発色基質溶液、洗浄液及び酵素反応停止溶液などを含むことができる。
【0079】
また、本発明は、本発明のCD93またはその可溶性断片マーカーを用いて炎症性疾患を診断する方法を提供する。
【0080】
具体的に、前記方法は、下記の工程で遂行することが好ましいが、これに限定されない:
1)生物学的試料及び対照群のタンパク質を固定体にコーティングさせる工程、
2)前記固定体に炎症性疾患診断用マーカーであるCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を添加して抗原抗体結合反応を遂行する工程、
3)前記抗原抗体結合反応を通じて生成された抗原抗体結合反応物を2次抗体接合体の標識体及び発色基質溶液を用いて検出する工程、及び
4)生物学的試料と対照群に対する検出結果とを比較する工程。
【0081】
前記生物学的試料は、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便及び大便からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。
【0082】
前記方法において、2次抗体接合体の標識体は、発色反応をする通常の発色剤が好ましく、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、塩基性脱リン酸化酵素(アルカリホスファターゼ)、コロイドゴールド(coloid gold)、FITC(ポリ−L−リジン−フルオレセインイソチオシアネート)、RITC(ローダミン−B−イソチオシアネート)などの蛍光物質、及び色素などを用いることができる。
【0083】
前記方法において、発色基質溶液は標識体によって使用することが好ましく、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)、ABTS[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]、OPD(o−フェニレンジアミン)などを使用することができる。ここで、発色基質は緩衝溶液(0.1M NaOAc、pH5.5)に溶解された状態で提供することがさらに好ましい。
【0084】
前記洗浄液は、リン酸塩緩衝溶液、NaCl及びツイーン20を含むことが好ましく、0.02Mリン酸塩緩衝溶液、0.13M NaCl、及び0.05%ツイーン20で構成された緩衝溶液(PBST)がさらに好ましい。洗浄液は、抗原抗体結合反応後、抗原抗体結合体に2次抗体を反応させた後、適量を固定体に加えて3回ないし6回洗浄することが好ましいが、これに限定されない。反応停止溶液は、硫酸溶液を用いることができる。
【0085】
本発明は、生物学的試料でCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を用いた抗原抗体結合反応を通じてCD93またはその可溶性断片を検出して、炎症性疾患の診断または予後を早期に予測することができる。前記生物学的試料は、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便または大便を含むが、これに限定されない。具体的には、生物学的試料内のCD93またはその可溶性断片をSDS−PAGEで電気泳動して分画して固定体に移して固定させた後、固定されたCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を加えて抗原抗体結合反応を遂行して、CD93またはその可溶性断片の発現水準を測定する。すなわち、生物学的試料でCD93またはその可溶性断片の発現水準が高ければ、炎症性疾患を有すると診断するか、炎症性疾患の可能性を有すると予測するものである。
【0086】
前記方法において、抗原抗体結合反応のための固定体では、ニトロセルロース膜、PVDF膜(ポリビニリデン・ジフルオライド膜)、ポリビニル樹脂またはポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラス製のスライドガラスなどを用いることができる。
【0087】
前記方法において、抗原抗体結合反応は通常の酵素免疫分析法(ELISA)、放射能免疫分析法(RIA)、サンドイッチELISA法、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、免疫組織化学染色法、蛍光免疫法、酵素基質発色法、抗原抗体凝集法、SPR(surface plasmon resonance)、バイオチップ(DNA、RNA)、電気泳動法、PCR、RT−PCRなどの方法を用いて測定することができる。
[発明の実施のための形態]
【0088】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。
【0089】
しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供するものであって、実施例によって本発明の内容が限定されるのではない。
<実施例1>sCD93タンパク質の準備
<1−1>pYW600の製作
<1−1−1>oriPの挿入
まず、oriPをクローニングするため、pMEP4(Invitrogen、米国)を鋳型に正方向プライマー(5’−gtagatctgcaggaaaaggacaagc−3’;配列番号27)及び逆方向プライマー(5’−cgagatctggttgacttccctaatgt−3’;配列番号28)を用いて95℃30秒、60℃30秒、72℃1分、30サイクルの条件でPCR反応を遂行した後、2187bpの大きさのPCR産物をPCR精製キット(Promega、米国)を用いて精製した。その後、前記PCR産物をBglII酵素(Invitrogen、米国)で切断した後、切断産物をまた精製した。前記精製された切断断片をpcDNA3.1(Invitrogen、米国)のCMVプロモーター上部に存在するBglII認識部位にBglII酵素(Invitrogen、米国)を用いて線形化したベクターに挿入した後、大腸菌に形質転換させて形質転換体を収得した(pcDNA3.1−oriP)。前記形質転換体からプラスミドを通常の方法で抽出した後、塩基配列分析を通じてoriPが正しく挿入されたかどうか確認した。
<1−1−2>ヒト抗体Fcをコードするポリヌクレオチドの挿入
前記製造したoriPが挿入されたpcDNA3.1ベクターにヒト抗体Fcをコードするポリヌクレオチドを挿入するため、pLCN−MoHベクター(韓国登録特許第450266号)を鋳型に、「Bam HI−SfiI−human immunoglobulin Fc N−terminal sequence」で構成された正方向プライマー(5’−cgg gat cc g gcc gtg ggg gcc gac aaa a ct cac aca tgc c−3’:配列番号29)と「XbaI−stop codon−human immunoglobulin Fc C−terminal sequence」で構成された逆方向プライマー(5’−cgagtc tca ttt acc cgg aga cag gga−3’:配列番号30)を用いてPCR反応を遂行した(94℃、4分処理後、95℃、30秒、60℃、30秒、72℃、1分過程を30回反復した後72℃、10分間延長)。
【0090】
続いて、PCR産物をPCR精製キット(Promega、米国)を用いて精製した。前記精製されたPCR産物を制限酵素BamHI及びXbaIで切断した後、どうようにBamHI及びXbaIで切断した前記で製造したoriPが挿入されたpcDNA3.1ベクター(pcDNA3.1−oriP)に挿入して、pcDNA3.1−oriP−Fcを製造した。以後、前記のように製造された組換えプラスミドで大腸菌(DH5a)を形質転換させて、形質転換体を分離した後、プラスミドを収得して、Fcをコードするポリヌクレオチドが正しく挿入されたかどうか確認した。このようにしてpYW600が完成された。
<1−1−3>sCD93_Fcの発現精製
sCD93_Fcを動物細胞であるHEK293E細胞で発現/精製するためにsCD93_Fcを発現させることができる発現ベクターを製作した。
【0091】
ヒトIgG1 Fc断片を含んだ自己製作された前記pYW600をSfiIで切断した後、PCRを通じて得られたCD93断片をSfiIで切断した後、挿入した。CD93断片を増幅するために、CD93プラスミド(Kugi分譲,hMU003993,Kugi No.IRAT−49−A06)を鋳型に用い、正方向プライマーに5’−CAGGGGGCCGTGGGGGCCACGGGAGCTGACACGGAGGC−3’(配列番号31)を、逆方向プライマーに5’−TAGCGGCCGACGCGGCCAAGTCCACACAGTCCAGCTGAC−3’(配列番号32)を用いた。CD93PCR時の鋳型は100ngを、それぞれのプライマーは10pmol、Pfu DNAポリメラーゼ(2.5unit/μl)0.5μl、全体50μlを反応させた。CD93のPCR反応条件は、次のとおりである。初期変性過程で94℃で2分間処理した後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間を30回反復し、72℃で10分間延長反応を遂行した。PCR産物は、SfiIで切断させCMV I.Eエンハンサー/プロモーターとリーダー配列が前にあって、CD93遺伝子が入った後、6X His tag、Fc、Myc、8X His tagが順次に作られるpYK602ベクターで挿入してpYK−CD93_Fcベクターを作った。
【0092】
前記製作されたpCD93_Fc 20μgとポリエチレンイミン(PEI,Polysciences)40μgを混合して150mmディッシュにあらかじめ育てておいたHEK293E細胞に導入した。培養液を総8日間2日ごとに集めてフィルターリングした後、タンパク質Aセパロース(Amersham)を用いて精製した。精製した試料をPIERCE(Coomassie protein assay reagent)で定量してSDS−PAGEゲルにかけてそのサイズを確認した(図2)。還元された状態(Reduced;R)でsCD93_Fcは、70kDa程度であり、還元されない状態(Non−reduced;N)では140〜150kDa程度だった。
<実施例2>sCD93タンパク質のTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果実験
ヒト由来の急性単球性白血病細胞であるTHP−1細胞は、PMAなどの化学物質によって付着、広がり(spreading)、成熟過程を経て大食細胞に分化する。本実験では、sCD93がTHP−1細胞の大食細胞への分化誘導効果を実験した。
【0093】
まず、5×103THP−1細胞(ATCCから購入)を96ウェルプレートに移した。それぞれの陰性対照群にPBS、Fc(5μg/ml)、正常ヒトIgG(hIgG,5μg/ml)を添加して、陽性対照群にはPMA(Sigma,0.1μg/ml)を処理し、実験群にはsCD93_Fcを5、1、0.2、0.04μg/ml濃度で処理した。処理後30分間37℃培養室に放置した後再び取り出して、付着した細胞が落ちないようにタッピング(tapping)で付着しない細胞を除去した。PBSで2回さらに洗浄した後、光学顕微鏡(Leika)で写真を撮った(図3)。付着しない細胞を集めた培養上澄み液にヘマサイトメータ(Marienfeld,Germany)を用いて、その数を計算した。初めに入れた細胞数から付着しない細胞数を引いた残りを百分率で示した。THP−1細胞は、陰性対照群では付着しないが、sCD93_Fcを処理した実験群では濃度依存的に付着程度(%)が高くなることを観察することができた(図4)。
【0094】
その次に前記と同一な方式を、THP−1細胞でsCD93_Fcの分化(differenciation)効果調べた。陰性対照群にPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA 0.1μg/mlを処理した。実験群にはsCD93_Fcを5μg/mlの濃度で処理してそれぞれを3日間培養して光学顕微鏡で写真を撮影した。陰性対照群は分化しなかったし、sCD93_Fcを入れたTHP−1細胞はPMAと類似にマクロファージ様細胞に分化した(図5)。
【0095】
このようなTHP−1細胞の分化による単核球細胞であるTHP−1細胞が、実際に大食細胞(マクロファージ)に分化するかどうかを調べるため、すでに知られた大食細胞及び樹枝状細胞、そして好中球分化マーカーであるCD14、CD1a及びCD64のRNA発現量を測定するためにリアルタイムPCRを遂行した。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。また実験群ではsCD93_Fc 5μg/mlを処理して24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。処理後さらに24時間が経過した後、RNAを分離精製した(Qiagen RNA miniprep kiT)。精製されたRNA1μgを逆転写(reverse transcription)(iScript cDNA synthesis kit,Bio−Rad)してcDNAを合成した。このcDNAに対して下記<表1>のプライマー、iG SYBR Green supermix(Bio−Rad)及びCFX−96 Real−time system(Bio−Rad)を用いて定量−PCRを遂行した。
【0096】
その結果、sCD93処理によってTHP−1細胞が大食細胞に分化することが分かり、LPS処理によって分化マーカーであるCD14のRNA水準がより高くなることが分かった(図6)。
【0097】
【表1】
【0098】
<実施例3>sCD93タンパク質のミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性誘導効果実験
このようなTHP−1細胞の分化が分子的にどのように起きるのかを調べるため、MAPK(mitogen−activated protein kinases)信号経路を中心に調べた。
【0099】
具体的に、THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、Fc 5μg/ml、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。実験群はsCD93_Fcを5、1、0.2、0.04μg/mlの濃度で処理した。処理後30分間37℃の培養室に放置して再び取り出して、溶解緩衝溶液で溶解させた後、ウエスタンブロットを実施した。1次抗体としてphospho−Erk 1/2(Cell signaling)とphospho−p38(1次抗体)、そして定量のためにtotal−p38(1次抗体)をそれぞれブロッティングした。phospho−Erk 1/2とphospho−p38の量が、sCD93_Fc処理によって濃度依存的に増加することが分かった(図7)。
【0100】
また、時間的変化によるphospho−Erk 1/2量を観察するため、前記と同一な方法でsCD93_Fc 5μg/mlを0、10、30、60、180分間それぞれ処理してウエスタンブロットを実施した。陽性対照群としてPMA0.1μg/mlとLPS 1μg/mlをそれぞれ同一な方法で処理してウエスタンブロットを実施した。sCD93_Fc処理によって10分経過後からphospho−Erk 1/2の量が増加し始めて、30分で最も大きく増加し、60分から若干減少する傾向を示した(図8)。
【0101】
このようなTHP−1細胞の分化とMAPK信号の変化によるサイトカインの変化を調べるため、いろいろなよく知られた前炎症サイトカインの発現変化をRNA水準で調べた。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群ではsCD93_Fcを処理した。24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後さらに24時間が経過した後、RNAを分離精製した(Qiagen RNA miniprep kiT)。精製されたRNA1を逆転写(iScript cDNA synthesis kit,Bio−Rad)してcDNAを合成した。前記cDNAに対しての下記<表2>のプライマー配列、iG SYBR Green supermix(Bio−Rad)とCFX−96リアルタイムシステム(Bio−Rad)を用いて定量−PCRを遂行した。sCD93_Fc処理によって炎症性サイトカインであるTNF−a、IL−1b、IL−6等が、RNA水準で若干増加し、LPSを追加処理することで顕著にさらに増加することが分かった(図9ないし図11)。
【0102】
【表2】
【0103】
次に、このようなTHP−1細胞の分化とMAPK信号の変化にしたがって炎症性サイトカインの中でTNF−aの発現がどのように変化するかをタンパク質水準で測定した。
【0104】
具体的に、THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群にはsCD93_Fcを処理した。24時間が経過した後、LPSによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後さらに24時間が経過した後、Quantikine TNF−a分析キット(R&D system)を用いて培養上澄み液に含まれたTNF−a量を測定した。sCD93_Fcのみ処理した実験群でTNF−aの量が少し増加し、sCD93_FcとLPSを処理した実験群では、LPSのみ処理した実験群に比較して、TNF−aが比較的高く測定されることが分かった。これは、sCD93_FcによってTHP−1細胞が大食細胞に分化して、TLR信号に対する感受性が増加したことを示すものである(図12)。
<実施例4>sCD93タンパク質の基質金属タンパク質分解酵素(MMP)の発現誘導効果実験
その次に、sCD93_Fc処理によるTHP−1細胞の基質金属蛋白質分解酵素(matrix metalloproteinase,MMP)発現に対する影響を調べた。THP−1細胞に陰性対照群としてhIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理した。実験群ではsCD93_Fcを5、1、0.2μg/mlの濃度で処理した。処理後24時間が経過した後、ゼラチンザイモグラフィ分析法を用いて培養上澄み液に含まれたMMP−9(92kDa)とMMP−2(72kDa)の発現変化を観察した。ゼラチン(Sigma)最終濃度が2mg/mlになるように8%SDS−PAGEゲルを作った後、24時間の間培養した上澄み液をかけてクマシーブルーで染色した後、脱染色溶液で弱く色抜きした後、ゲルを写真撮影した。
【0105】
その結果、MMP−9の量がsCD93_Fc処理によって濃度依存的に増加することが分かった(図13)。
<実施例5>sCD93タンパク質の食作用誘導効果実験
このようなTHP−1細胞の大食細胞類似(macrophage−like)細胞への分化による食作用(phagocytosis)効果調べるため、mRFPを発現しているバクテリア(E.coli)を用いて食作用を測定した。THP−1細胞にsCD93_Fc 5μg/mlを処理して3日間培養した後、あらかじめ育てておいたRFP(赤色蛍光タンパク質)発現ベクターで形質転換されたE.coliを分化したTHP−1細胞に入れた。再び、12時間が経過した後、蛍光顕微鏡でバクテリアが分化したTHP−1細胞によって食作用されたことを確認し(図14)、この細胞を細胞分離緩衝溶液(cell dissociation buffer)(EDTA緩衝溶液)で分離してFACS(Coolter)分析を実施した(図15)。
【0106】
その結果、sCD93_Fc処理によって分化された細胞の食作用が、陰性対照群のhIgG処理によるものよりずっと増加して蛍光が示されることが分かった。
<実施例6>CD93タンパク質抗体のTNF−a生成阻害効果実験
このようなsCD93_Fcの炎症効果と大食細胞分化効果に対して、それに対する抗体の抗炎症剤としての開発可能性を調べるため、CD93に対する抗体処理によってこのような効果が抑制されるのかどうか調べた(図16)。THP−1細胞に陰性対照群としてPBS(−)、hIgG 5μg/mlを処理して、陽性対照群はPMA0.1μg/mlを処理し、また実験群ではsCD93_Fc 5μg/mlと抗CD93ポリクローナル抗体(R&D system)10μg/mlを処理した。24時間が経過した後、LPS 1μg/mlによる感受性を調べるためにLPSを処理した。LPS処理後、さらに24時間が経過した後、Quantikine TNF−a分析キット(R&D system)を用いて培養上澄み液に含まれたTNF−a量を測定した。
【0107】
その結果、sCD93_Fcのみを処理した実験群でTNF−aの量が少し増加し、sCD93_FcとLPSを処理した実験群ではLPSのみ処理した実験群と比較して比較的高くTNF−aが測定されることが分かった。しかし、抗CD93抗体処理によってこのようなTNF−aの増加が50〜60%以上阻害されることが分かった。
<実施例7>siRNAを用いた多様な炎症促進性サイトカイン発現変化実験
THP−1細胞でCD93に対するsiRNA阻害技法を用いてCD93をノックダウンさせた時のさまざまなサイトカインの変化量をリアルタイムPCRを用いて実験した。
【0108】
まず、THP−1細胞2×105(培地:10%FBS(Hyclone社)+RPMI1640(Hyclone社))を24ウェルに入れて置いた後、Lipofectamin RNAiMax(Invitrogen)1μlとCD93siRNA(siCD93)(Bioneer社)10pmoleを混合した後、10分間放置した後、あらかじめ入れて置いたTHP−1細胞に形質感染(transfection)させた。陰性対照群にはネガティブコントロールsiRNA(Bioneer社)を用い、陽性対照群には全長CD93(CD93_Full)遺伝子(Kugi分譲、hMU003993,Kugi No.IRAT−49−A06)を用いて同一な方法で形質感染させた。12時間の間CO2インキュベーターに保管した後、LPSを処理し、以後追加で24時間さらに培養した。以後、実施例2と3で説明したのと同じ方法でTNF−aとIL−6に対してリアルタイムPCRを遂行した。
【0109】
その結果、siCD93処理によって二つの炎症促進性サイトカインの量が減り、LPSによって増加した量も減少した。これとは反対に、CD93を過発現したCD93_Full処理群はむしろTNF−aやIL−6の量を増加させ、LPS処理によってより一層増加する様相を示した(図17)。
<実施例8>ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現及びCD93可溶性断片量の測定実験(in vitro)
様々な炎症誘導物質によるまたは炎症性環境でのCD93発現とその断片化様相を調べるために、ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現と培養上澄み液内でのCD93可溶性断片の量を測定した。
<8−1>ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞でのCD93発現様相:FACS実験
THP−1細胞は、10%牛胎児血清、ペニシリンG(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、ピルビン酸ナトリウム(1.0mM)を含むRPMI1640培地で37℃の細胞培養器で培養した。培養されたTHP−1細胞をPBS、LPS(1.0μg/ml)、TNF−a(0.5μg/ml)またはPMA(0.1μg/ml)で24時間の間処理して、4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。PBSで1回洗浄して3%NGS(normal goat serum)を用いて30分間遮断した後、再び3回洗浄した。そこにヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D systems)を1時間の間冷たく冷却して反応させた。PBSでまた3回洗浄した後、抗ヤギIgG−FITC抗体で1時間の間冷たく冷却して蛍光染色した。対照群には、それぞれの実験群に対して抗CD14−FITC抗体で別に蛍光染色した。それぞれ染色した細胞を流細胞分析機(EPICS Elite(Coulter))を用いて分析した。
【0110】
その結果、図18に示されたように、THP−1細胞でCD93の細胞表面発現がLPS、TNF−aによって増加し、PMA処理によってはあまり増加しなかった(図18)。また、対照群に用いたCD14の細胞表面の発現は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて減少したが、これはCD14の断片化によるものと考慮される。CD14の断片化は、単核球大食細胞活性化を下向き調節(down−modulation)するのにおいて重要なメカニズムであると知られている(Schutt,C.1999.Cd14.Int.J.Biochem.Cell Biol.31:545.23.Le−Barillec,K.,M.Si−Tahar,V.Balloy,and M.Chignard.1999.Proteolysis of monocyte CD14 by human leukocyte elastase inhibits lipopolysaccharide−mediated cell activation.J.Clin.Invest.103:1039.Bazil,V.,and J.L.Strominger.1991.Shedding as a mechanism of down−modulation of CD14 on stimulated human monocytes.J.Immunol.147:1567)。今までの多くの研究結果によると、コラゲナーゼ、ニュ−ロピルエラスターゼ(neutrophil elastase)とカテプシンGなどが細胞表面のCD14分子を断片化させることが報告されられている(Bryniarski,K.,K.Maresz,M.Szczepanik,M.Ptak,and W.Ptak.2003.Modulation of macrophage activity by proteolytic enzymes.Differential regulation of IL−6 and reactive oxygen intermediates(ROIs)synthesis as a possible homeostatic mechanism in the control of inflammation.Inflammation 27:333.Le−Barillec,K.,M Si−Tahar,V.Balloy,and M.Chignard.1999.Proteolysis of monocyte CD14 by human leukocyte elastase inhibits lipopolysaccharide−mediated cell activation.J.Clin.Invest.103:1039.Coyne,C.P.,T.Howell III,H.Smodlaka,C.Willetto,B.W.Fenwick,and E.Chenney.2002.Alterations in membrane−associated CD14 expression and the simultaneous liberation of soluble CD14 fragment in adherent macrophages mediated by a leukocyte carboxyl/aspartate protease.J.Endotoxin.Res.8:273.)。
<8−2>ウエスタンブロット実験
THP−1細胞は、10%牛胎児血清、ペニシリンG(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100/)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、ピルビン酸ナトリウム(1.0mM)を含むRPMI1640培地で37℃の細胞培養器で培養した。培養されたTHP−1細胞をPBS、LPS(1.0μg/ml)、TNF−a(0.5μg/ml)またはPMA(0.1μg/ml)で24時間の間処理した後、溶解物(lysate)と培養上澄み液を得た。5分間試料を沸かした後、冷凍保管した。試料を8%SDS−PAGEゲルにローディングした後、電気泳動した。ゲルを再びニトロセルロース膜に移した後、4%脱脂牛乳で遮断した。以後、ヤギ抗CD93抗体(R&D systems)を0.5μg/mlに希釈して常温で1時間の間反応させた。また、PBSTで3回洗浄した後、抗ヤギIgG−HRP抗体(Santa cruz)を0.5μg/mlにして常温で1時間の間反応させた。内部対照群に抗βアクチン(Santa cruz)と抗ヤギIgG−HRP(Santa cruz)を用いた。以後、ECLキット(ECL Plus,Amersham,米国)を製造社の方法にしたがって処理した。
【0111】
その結果、図19に示されたように、CD93分子の自体発現はFACS結果と同様にLPS、TNF−a処理によって増加したが、PMA処理によっては増加しなかった。しかし、CD93可溶性断片の量は、LPS、TNF−a、PMA処理によってすべて増加した(図19)。前記結果によって、炎症性環境あるいは炎症誘導物質によってTHP−1細胞とジャーカット細胞での発現増加という側面からみると、CD93自体の発現も増加して、特にCD93可溶性断片の量も増加するという点を考慮すれば、CD93またはその可溶性断片が炎症性疾患の診断マーカーとしての活用が可能であると考慮される。
<8−3>RT−PCR実験
THP−1細胞を6ウェルプレートに培養した後、それぞれPBS、LPS(1.0μg/ml、InvivoGen)、PMA(0.1μg/ml、Sigma)を処理した。処理24時間後にRNA同定キット(Qiagen)を用いて、RNAを同定した。逆転写のために逆転写酵素(Bio−Rad)とdNTPを混合して42℃で1時間の間反応させてそれぞれのcDNAを得た。リアルタイムPCR分析のためにCFX96 system(Bio−Rad)を用いた。95℃で3分間初期変性して、続いて95℃で15秒間アニーリング、60℃で1分間の伸長化を40〜45周期にしてPCRを遂行した。蛍光測定は、各アニーリング工程で記録されて、データは工程ごとに自動保存された。具体的には、2μlのcDNA鋳型とCD93プライマーを23のiQ SYBR Supermix(Bio−Rad)と混合して反応させた。すべての反応は、2回反復した。相対的mRNA発現を測定するために、平均Ct(average threshold cycle)値を基準値にした。すべてのCt値の基準は、GAPDHを用いて標準化した。プライマーセットは、次のとおりである[CD93:正方向プライマーCTC TGG GGC TAC TGG TCT ATC(配列番号:34)、逆方向プライマーTGT CGG ACT GTA CTG GTT CTC(配列番号:35);GAPDH:正方向プライマーCAT GTT CGT CAT GGG TGT GAA(配列番号:36)、逆方向プライマーGGA CTG TGG TCA TGA GTC CTT(配列番号:37)]。
【0112】
その結果、図20に示されたように、THP−1細胞でのCD93発現はLPSとPMA処理によって有意に増加した(図20)。
<実施例9>マウス末梢血液単核細胞と腹膜細胞でのCD93発現様相及び血清と腹膜液でのCD93可溶性断片量の測定実験(in vivo)
前記試験管内(in vitro)実験でのCD93発現様相に対して、生体内(in vivo)実験でも同じ発現様相と断片化現象が起きるのかどうかを確認するために、下記のような実験を遂行した。すなわち、マウスに腹膜炎を起こすか炎症誘発物質(チオグリコレートまたはLPS)を注射した後、マウス末梢血単核細胞(PBMC)と腹膜細胞でのCD93発現様相、及び血清と腹膜液(PLF)でのCD93可溶性断片量を測定した。
<9−1>マウス末梢血液単核細胞と腹膜細胞でのCD93発現様相:FACS実験
6週齢のbalb/Cマウスに、1mlのPBS、4%チオグリコレートまたは0.1mg/mlのLPSを注射した後、3日間維持した。3日後、マウスから後眼窩静脈(retro−orbital vein)を通じてヘパリンコーティングされたガラス毛細管チューブを用いて血液を採血して、遠心分離して血清とPBMC細胞を得た。直ちにマウスを犠牲にして、腹腔内から腹膜液(PLF)と腹膜細胞(大部分腹腔内大食細胞)を得た。それぞれの細胞に含まれた赤血球を除去するために、10mlの赤血球溶解バッファー(Sigma)を37℃で10分間二度反応させて完全に赤血球を除去した。その次に、前記実施例<8−1>前述したのと同一な方法で蛍光染色した。但し、抗体の場合、羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)と抗羊IgG−FITC(Santa Cruz)を用いた。また、大食細胞の分化程度を調べるために、分化マーカーであるCD11b抗体(BD sciences)を用いて、二重染色をした。
【0113】
その結果、図21に示されたように、腹膜細胞の中で大食細胞でのマウスCD93発現は、LPS処理によって最も多い増加を示し、チオグリコレート処理によっても類似に増加した(図21)。したがって、マウスにチオグリコレートとLPS処理によってPBMCに存在した大食細胞が腹膜に移ったことが分かる。
<9−2>ウエスタンブロット実験
前記<9−1>で使用して残った半分の細胞を溶解させた後、ウエスタンブロットを遂行した。マウスCD93を検出するために羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)と抗羊IgG−HRP(Santa Cruz)を用いたことを除き、前記実施例<8−2>の方法と同一にしてウエスタンブロット実験を遂行した。また、大食細胞の分化程度を調べるために、分化マーカーであるCD11b抗体(BD sciences)を用いて二重染色を行なった。内部対照群として抗βアクチン(Santa cruz)と抗ヤギIgG−HRP(Santa cruz)を用いた。以後、ECLキット(ECL Plus,Amersham,米国)を製造社の方法にしたがって処理した。
【0114】
その結果、図22に示されたように、前記FACS結果と同一にマウスにチオグリコレートとLPS処理によって、腹膜細胞でCD93分子の発現が顕著に増加した(図22)。
<9−3>CD93可溶性断片の量測定:サンドイッチELISA実験
FACSとウエスタンブロット実験によってCD93分子自体の量が増加したことを観察した後、CD93可溶性断片がどのように変化するかを確認するために、サンドイッチELISA方法を用いて血清と腹膜液(PLF)でのCD93可溶性断片の量を測定した。
【0115】
まず、96ウェルファルコンプレート(Becton Dickinson)に100ng/wellのラット抗マウスCD93抗体(R&D systems)を一晩中コーティングした。PBSTで3回洗浄した後、3%脱脂牛乳で常温で30分間遮断した。また、PBSTで3回洗浄した後、集めておいたそれぞれのマウス血清と腹膜液を100μlずつローディングした後、2時間の間放置した。定量のための標準物質には、マウスCD93可溶性断片を用いた。また、3回洗浄した後、1μg/mlの羊抗マウスCD93抗体(R&D systems)で1時間放置しておき、まもなく1μg/mlの抗羊IgG−HRP抗体(Santa cruz)にまた1時間の間反応させた。PBSTにまた3回洗浄した後、OPD(Sigma)を用いて発色した後、分光光度計(VERSAmax tunable microplate reader,Molecular Devices)を用いてOD値を測定した。測定した値は、それぞれ標準曲線を用いて絶対定量を実施した。
【0116】
その結果、図23に示されたように、血清内CD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレートによって大きく変化しなかった。しかし、腹膜液内のCD93可溶性断片の量は、LPSやチオグリコレート処理によって顕著に増加した(図23)。したがって、CD93可溶性断片は炎症性疾患の診断マーカーとして活用できると考えられる。
<実施例10>滑膜組織内でのCD93発現及び滑膜液内でのCD93可溶性断片量の測定
<10−1>滑膜組織内でのCD93発現:免疫組織化学方法
3人のリウマチ性関節炎(RA)患者と2人の退行性関節炎(osteo−arthritis,OA)患者から得た滑膜組織を4%パラホルムアルデヒドで一晩中固定した。以後、アルコールで脱水してパラフィンでエンベディング(embedding)して切断を実施した。以後、内在したペルオキシダーゼ活性を無くすためにメタノリックH2O2で反応させた。また、非特異的反応を無くすために3%NGS(normal goat serum)で2時間遮断した。以後、組織をヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D)とビオチニル化された抗ヤギIgG、ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体(Vector、Peterboredgh,UK)を順に各1時間ずつ反応させた。染色された組織は、再びヘマトキシリンで対比染色して、オリンパス顕微鏡(Tokyo,日本)で観察した。
【0117】
その結果、図24に示されたように、退行性関節炎患者から得た滑膜組織よりリウマチ性関節炎患者から得た滑膜組織で、CD93の発現が顕著に高く示された(図24)。特に、リンパ球の浸潤が起きる潤滑膜(synovial lining)、下内層(sublining)、及び血管周囲領域(perivascular region)でCD93分子の発現が顕著に高く示された。
<10−2>滑膜液内でのCD93可溶性断片量の測定:サンドイッチELISA方法
8人のリウマチ性関節炎患者と8人の退行性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片量をサンドイッチELISA方法を用いて測定した。
【0118】
まず、96ウェルファルコンプレート(Becton Dickinson)に100ng/wellのラット抗ヒトCD93抗体(R&D systems)を一晩中コーティングした。PBSTで3回洗浄した後、3%脱脂牛乳で常温で30分間遮断した。また、PBSTで3回洗浄した後、集めておいたそれぞれのリウマチ性関節炎患者と8人の退行性関節炎患者の滑膜液(SF)を100μlずつローディングした後、2時間の間放置しておいた。定量のための標準物質には、ヒト可溶性CD93を用いた。再び、3回洗浄した後、1μg/mlのヤギ抗ヒトCD93抗体(R&D systems)で1時間放置しておき、続いて1μg/mlの抗ヤギIgG−HRP抗体(Santa cruz)に再び1時間の間反応させた。PBSTで再び3回洗浄した後、OPD(Sigma)を用いて発色して、分光光度計を用いてOD値を測定した。測定した値は、それぞれ標準曲線を用いて絶対定量を実施した。
【0119】
その結果、図25に示されたように、リウマチ性関節炎患者から得た滑膜液内でのCD93可溶性断片の量が退行性関節炎患者群より顕著に高いことを確認した(図25)。
【0120】
したがって、CD93分子またはその可溶性断片は、炎症性疾患の診断マーカーとしての活用が可能であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
前記のように、本発明は多様な炎症性疾患の治療剤及び診断キットを開発するのに有用に用いることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0122】
配列番号5:CD14新正方向プライマー
配列番号6:CD14新逆方向プライマー
配列番号7:CD64新正方向プライマー
配列番号8:CD64新逆方向プライマー
配列番号9:CD1a新正方向プライマー
配列番号10:CD1a新逆方向プライマー
配列番号11:IL-6正方向プライマー
配列番号12:IL-6逆方向プライマー
配列番号13:IL-12正方向プライマー
配列番号14:IL-12逆方向プライマー
配列番号15:iNOS正方向プライマー
配列番号16:iNOS逆方向プライマー
配列番号17:CXCL11正方向プライマー
配列番号18:CXCL11逆方向プライマー
配列番号19:CLEC4A正方向プライマー
配列番号20:CLEC4A逆方向プライマー
配列番号21:SPHK-1正方向プライマー
配列番号22:SPHK-1逆方向プライマー
配列番号23:IL-1β正方向プライマー
配列番号24:IL-1β逆方向プライマー
配列番号25:TNF-α正方向プライマー
配列番号26:TNF-α逆方向プライマー
配列番号27:pMEP4正方向プライマー
配列番号28:pMEP4逆方向プライマー
配列番号29:Bam HI Sfil ヒト免疫グロブリンFc N末端配列正方向プライマー
配列番号30:Xbal Stop Codon ヒト免疫グロブリンFc C末端配列逆方向プライマー
配列番号31:CD93プラスミド正方向プライマー
配列番号32:CD93プラスミド逆方向プライマー
配列番号34:CD93正方向プライマー
配列番号35:CD93逆方向プライマー
配列番号36:GAPDH正方向プライマー
配列番号37:GAPDH逆方向プライマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるCD93水溶性断片に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物。
【請求項2】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の断片、組換え抗体及び化学的に修飾された抗体からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の抗炎症性組成物。
【請求項3】
前記抗体の断片は、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、Fab/c、抗体をタンパク質切断酵素で切断して得られた抗体または遺伝子組換え技術によって得られた抗体であることを特徴とする、請求項2に記載の抗炎症性組成物。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の抗炎症性組成物。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体が、
1)哺乳動物に、sCD93タンパク質、その断片及び全長のCD93タンパク質からなる群から選択された免疫源を免疫させて抗体産生細胞を採取する工程と、
2)前記抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを製造する工程、及び
3)前記ハイブリドーマから前記モロクローナル抗体を得る工程とを含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項4に記載の抗炎症性組成物。
【請求項6】
前記ポリクローナル抗体が、
1)哺乳動物に、sCD93タンパク質、その断片及び全長のCD93タンパク質からなる群から選択された免疫源を免疫させる工程、及び
2)免疫された哺乳動物から採取した血液からsCD93タンパク質に特異的な抗体を分離する工程とを含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項4に記載の抗炎症性組成物。
【請求項7】
配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができる、siRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上を有効成分として含む抗炎症性組成物。
【請求項8】
請求項1または請求項7のいずれか一項の組成物を炎症にかかった個体に投与する工程を含む炎症治療方法。
【請求項9】
請求項1または請求項7のいずれか一項の組成物を個体に投与する工程を含む炎症予防方法。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体、または請求項7に記載のsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択されたいずれか一つを抗炎症性組成物の製造に用いる用途。
【請求項11】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断用キット。
【請求項12】
前記可溶性断片が、CD93タンパク質が細胞培養後放出された細胞外部分(ectodomain)で95kDaであることを特徴とする、請求項11に記載の炎症性疾患診断用キット。
【請求項13】
前記炎症性疾患が、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、腹膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹及び多発性硬化症からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項11に記載の炎症性疾患診断用キット。
【請求項14】
1)生物学的試料及び対照群のタンパク質を固定体にコーティングさせる工程と、
2)前記固定体に配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有するCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を添加して抗原抗体結合反応を遂行する工程と、
3)前記抗原抗体結合反応を通じて生成された抗原抗体結合反応物を2次抗体接合体の標識体及び発色基質溶液を用いて検出する工程と、
4)生物学的試料と対照群に対する検出結果を比較する工程、及び
5)生物学的試料内のCD93またはその可溶性断片の発現水準が対照群より高ければ炎症性疾患を有するか有する可能性があると判定する工程とを含む、炎症性疾患診断方法。
【請求項15】
前記生物学的試料が、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便及び大便からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項16】
前記固定体が、ニトロセルロース膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜、ポリビニル樹脂またはポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラスからなるスライドガラスからなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項17】
前記抗原抗体結合反応が、酵素免疫分析法(ELISA)、放射能免疫分析法(radioimmnoassay,RIA)、サンドイッチELISA法、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、免疫組織化学染色法、蛍光免疫法、酵素基質発色法、抗原抗体凝集法、SPR(surface plasmon resonance)、バイオチップ(DNA、RNA)、電気泳動法、PCR及びRT−PCRからなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項18】
前記2次抗体接合体の標識体が、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、塩基性脱リン酸化酵素(アルカリホスファターゼ)、コロイドゴールド(coloid gold)、FITC(ポリ−L−リジン−フルオレセインイソチオシアネート)、RITC(ローダミン−B−イソチオシアネート)、及び色素からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項19】
前記発色基質溶液が、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)、ABTS[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]、 及びOPD(o−フェニレンジアミン)からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項20】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを、炎症性疾患の診断用キットの製造に用いる用途。
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるCD93水溶性断片に対する特異的な抗体を有効成分として含む抗炎症性組成物。
【請求項2】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の断片、組換え抗体及び化学的に修飾された抗体からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の抗炎症性組成物。
【請求項3】
前記抗体の断片は、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、Fab/c、抗体をタンパク質切断酵素で切断して得られた抗体または遺伝子組換え技術によって得られた抗体であることを特徴とする、請求項2に記載の抗炎症性組成物。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の抗炎症性組成物。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体が、
1)哺乳動物に、sCD93タンパク質、その断片及び全長のCD93タンパク質からなる群から選択された免疫源を免疫させて抗体産生細胞を採取する工程と、
2)前記抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを製造する工程、及び
3)前記ハイブリドーマから前記モロクローナル抗体を得る工程とを含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項4に記載の抗炎症性組成物。
【請求項6】
前記ポリクローナル抗体が、
1)哺乳動物に、sCD93タンパク質、その断片及び全長のCD93タンパク質からなる群から選択された免疫源を免疫させる工程、及び
2)免疫された哺乳動物から採取した血液からsCD93タンパク質に特異的な抗体を分離する工程とを含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項4に記載の抗炎症性組成物。
【請求項7】
配列番号4の塩基配列からなるCD93遺伝子の発現を抑制することができる、siRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択された一つ以上を有効成分として含む抗炎症性組成物。
【請求項8】
請求項1または請求項7のいずれか一項の組成物を炎症にかかった個体に投与する工程を含む炎症治療方法。
【請求項9】
請求項1または請求項7のいずれか一項の組成物を個体に投与する工程を含む炎症予防方法。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体、または請求項7に記載のsiRNA、shRNA及びshRNAの発現ベクターからなる群から選択されたいずれか一つを抗炎症性組成物の製造に用いる用途。
【請求項11】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを含む炎症性疾患診断用キット。
【請求項12】
前記可溶性断片が、CD93タンパク質が細胞培養後放出された細胞外部分(ectodomain)で95kDaであることを特徴とする、請求項11に記載の炎症性疾患診断用キット。
【請求項13】
前記炎症性疾患が、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎または腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉鎖性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症侯群、炎症性痛み、偏頭痛、頭痛、腰痛、繊維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、かび感染、やけど、外科的または歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症侯群、アテローム性動脈硬化症、痛風、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊柱炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、紅彩炎、腹膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、湿疹及び多発性硬化症からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項11に記載の炎症性疾患診断用キット。
【請求項14】
1)生物学的試料及び対照群のタンパク質を固定体にコーティングさせる工程と、
2)前記固定体に配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有するCD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体を添加して抗原抗体結合反応を遂行する工程と、
3)前記抗原抗体結合反応を通じて生成された抗原抗体結合反応物を2次抗体接合体の標識体及び発色基質溶液を用いて検出する工程と、
4)生物学的試料と対照群に対する検出結果を比較する工程、及び
5)生物学的試料内のCD93またはその可溶性断片の発現水準が対照群より高ければ炎症性疾患を有するか有する可能性があると判定する工程とを含む、炎症性疾患診断方法。
【請求項15】
前記生物学的試料が、組織、細胞、血液、血清、腹膜液、滑膜液、唾液、小便及び大便からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項16】
前記固定体が、ニトロセルロース膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜、ポリビニル樹脂またはポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラスからなるスライドガラスからなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項17】
前記抗原抗体結合反応が、酵素免疫分析法(ELISA)、放射能免疫分析法(radioimmnoassay,RIA)、サンドイッチELISA法、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、免疫組織化学染色法、蛍光免疫法、酵素基質発色法、抗原抗体凝集法、SPR(surface plasmon resonance)、バイオチップ(DNA、RNA)、電気泳動法、PCR及びRT−PCRからなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項18】
前記2次抗体接合体の標識体が、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、塩基性脱リン酸化酵素(アルカリホスファターゼ)、コロイドゴールド(coloid gold)、FITC(ポリ−L−リジン−フルオレセインイソチオシアネート)、RITC(ローダミン−B−イソチオシアネート)、及び色素からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項19】
前記発色基質溶液が、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)、ABTS[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]、 及びOPD(o−フェニレンジアミン)からなる群から選択されるいずれかひとつであることを特徴とする、請求項14に記載の炎症性疾患の診断方法。
【請求項20】
CD93またはその可溶性断片に特異的に結合する抗体またはアプタマーを、炎症性疾患の診断用キットの製造に用いる用途。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2012−516322(P2012−516322A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547769(P2011−547769)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000315
【国際公開番号】WO2010/087594
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(508139457)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000315
【国際公開番号】WO2010/087594
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(508139457)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]