説明

CDR回路

【課題】入力データと再生クロックの同期を保ったまま、再生クロックの適切なジッタ量と適切なバースト応答時間とを両立させる。
【解決手段】CDR回路は、入力データが遷移したときにパルスを出力するゲーティング回路2と、ゲーティング回路2の出力パルスのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整するG−VCO3と、G−VCO3から出力されるクロックのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整するVCO4と、入力データのデータ識別をVCO4から出力される再生クロックに基づいて行うフリップフロップ1と、G−VCO3の出力端子とVCO4の入力端子との間に設けられたバッファ増幅器6aとを備える。バッファ増幅器6aの駆動力は、CDR回路のバースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように予め設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力データに対して位相同期したクロックを再生し、このクロックにより入力データのリタイミングを行うCDR回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)を実現する手法として開発が進められているPON(Passive Optica1 Network)方式等では、バーストデータを扱う必要がある。これらのシステムにおいては、非同期に受け取るバーストデータに対し瞬時に位相同期を確立してクロックを抽出し、このクロックに同期してデータをリタイミングして送り出すCDR(Clock Data Recovery)回路が必須である。この種の回路は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図9は特許文献1に開示された従来のCDR回路の構成を示すブロック図である。このCDR回路は、フリップフロップ(以下、FFとする)1と、ゲーティング回路2と、ゲート付き電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator 、以下、G−VCOとする)3と、電圧制御発振器(以下、VCOとする)4と、遅延回路5と、バッファ増幅器6とから構成される。
【0004】
ゲーティング回路2に入力データが入力されると、入力データのエッジに同期したパルスが出力される。ゲーティング回路2からのエッジパルスがG−VCO3に入力されると、G−VCO3は、当該エッジパルスのタイミング、つまり電圧値偏移点をトリガとしてその発振位相がエッジパルスの位相(すなわち、入力データの位相)と合うように調整される。そして、G−VCO3から出力されたクロックがバッファ増幅器6を介してVCO4に入力されるため、VCO4から出力される再生クロックの位相は、G−VCO3の出力クロックの位相(すなわち、入力データの位相)と合うように調整される。G−VCO3の周波数制御端子とVCO4の周波数制御端子には、周波数制御信号が入力される。この周波数制御信号に応じてG−VCO3とVCO4とは、入力データと同じ周波数で発振する。
【0005】
遅延回路5は、ゲーティング回路2の遅延時間とゲーテッドVCO3の遅延時間とバッファ増幅器6の遅延時間とVCO4の遅延時間の分だけ入力データを遅延させる。FF1は、遅延回路5を通過した入力データを再生クロックの所定のタイミング(例えば再生クロックの立ち上がり)でリタイミング(サンプリング)して、再生データを出力する。こうして、入力データからクロックおよびデータを再生することができる。
【0006】
特許文献1に開示されたCDR回路によれば、VCO4から出力される再生クロックの位相は、G−VCO3の出力クロックの位相と合うように(すなわち、入力データの位相と合うように)調整されるが、G−VCO3の影響が小さいことから、G−VCO3の出力クロックの位相に瞬時に追従することはない。したがって、入力データにジッタが存在する場合でも、このジッタの影響を受け難くなるので、再生クロックのジッタを低減することができる。さらに、G−VCO3とVCO4との間に駆動力の弱いバッファ増幅器6を挿入しているので、再生クロックの位相に与えるG−VCO3の影響を小さくすることができ、再生クロックのジッタをより一層低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−239512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたCDR回路によれば、入力データにジッタが存在する場合でも、再生クロックのジッタを低減することができる。しかしながら、このCDR回路では、バッファ増幅器6の駆動力を低下させて再生クロックのジッタを低減すると、バーストデータを受信する場合のCDR回路の応答時間が増加してしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、入力データと再生クロックの同期を保ったまま、再生クロックの適切なジッタ量と適切なバースト応答時間とを両立させることができるCDR回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のCDR回路は、入力データが遷移したときにパルスを出力するゲーティング回路と、このゲーティング回路の出力パルスのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整することにより、前記入力データとタイミングの合ったクロックを出力する第1の電圧制御発振器と、この第1の電圧制御発振器の後ろに縦続接続され、前段の電圧制御発振器から出力されるクロックのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整するn個(nは1以上の整数)の第2の電圧制御発振器と、前記入力データのデータ識別を、前記n個の第2の電圧制御発振器のうち最後尾の電圧制御発振器から出力される再生クロックに基づいて行うデータ識別回路と、前記ゲーティング回路の出力端子と前記第1の電圧制御発振器の入力端子との間、前記第1の電圧制御発振器の出力端子と前記n個の第2の電圧制御発振器のうち先頭の電圧制御発振器の入力端子との間、前記n個の第2の電圧制御発振器のうち1個の電圧制御発振器の出力端子と直後の電圧制御発振器の入力端子との間のうち、少なくとも1箇所に設けられたバッファ増幅器とを備え、前記バッファ増幅器の駆動力は、バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように予め設定されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記バッファ増幅器は、前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記電流源トランジスタを流れる電流が予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするものである。
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記バッファ増幅器は、前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記コレクタ抵抗の値が予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするものである。
また、前記バッファ増幅器は、前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記増幅用トランジスタおよび電流源トランジスタのサイズ、例えばCMOSトランジスタであれば、ゲート長やゲート幅、バイポーラトランジスタであればエミッタ面積が予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記第1の電圧制御発振器は、ゲート回路と複数のインバータとが縦続接続されたリング発振回路からなり、前記ゲート回路の一方の入力端子に前記ゲーティング回路の出力が入力されると共に、前記ゲート回路の他方の入力端子に最終段の前記インバータの出力が入力され、前記ゲーティング回路と前記第1の電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、前記バッファ増幅器の出力が前記ゲート回路の一方の入力端子に入力されることを特徴とするものである。
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記第2の電圧制御発振器は、複数のインバータが縦続接続されたリング発振回路からなり、初段の前記インバータの入力端子に前段の前記電圧制御発振器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力され、前段の前記電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、初段の前記インバータの入力端子に前記バッファ増幅器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力されることを特徴とするものである。
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記第2の電圧制御発振器は、ゲート回路と複数のインバータとが縦続接続されたリング発振回路からなり、前記ゲート回路の一方の入力端子が一定電圧に設定されると共に、前記ゲート回路の他方の入力端子に前段の前記電圧制御発振器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力され、前段の前記電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、前記ゲート回路の他方の入力端子に前記バッファ増幅器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力されることを特徴とするものである。
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記第1、第2の電圧制御発振器は、外部から入力される周波数制御信号に応じて前記入力データと等しい周波数で発振することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲーティング回路と、第1の電圧制御発振器と、n個の第2の電圧制御発振器と、データ識別回路とを設けると共に、ゲーティング回路の出力端子と第1の電圧制御発振器の入力端子との間、第1の電圧制御発振器の出力端子とn個の第2の電圧制御発振器のうち先頭の電圧制御発振器の入力端子との間、n個の第2の電圧制御発振器のうち1個の電圧制御発振器の出力端子と直後の電圧制御発振器の入力端子との間のうち、少なくとも1箇所にバッファ増幅器を設け、バッファ増幅器の駆動力を、バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように設定しておくことにより、入力データと再生クロックの同期を保ったまま、再生クロックの適切なジッタ量と適切なバースト応答時間とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路におけるゲーティング回路の構成の1例を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路におけるG−VCOとVCOの構成の1例を示す回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路におけるバッファ増幅器の構成の1例を示す回路図である。
【図5】バッファ増幅器の駆動力とCDR回路のバースト応答時間との関係を示す図である。
【図6】バッファ増幅器の駆動力と高周波ジッタトランスファとの関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるバッファ増幅器の駆動力設定手法を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るバッファ増幅器とVCOの接続方法を示す回路図である。
【図9】従来のCDR回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。本実施の形態のCDR回路は、FF1と、ゲーティング回路2と、G−VCO3と、VCO4と、遅延回路5と、バッファ増幅器6aとから構成される。本実施の形態においても、CDR回路の構成は図9に示した従来のCDR回路と同様であるが、バッファ増幅器6aの駆動力の設定手法が異なる。以下、本実施の形態のCDR回路について詳細に説明する。
【0016】
図2はゲーティング回路2の構成の1例を示す回路図である。ゲーティング回路2は、一方の入力端子に入力データが入力され、他方の入力端子がプルアップされたNAND20と、NAND20の出力を入力とするインバータ21と、インバータ21の出力を入力とするインバータ22と、一方の入力端子に入力データが入力され、他方の入力端子にインバータ22の出力が入力されるNAND23とから構成される。
【0017】
図3はG−VCO3とVCO4の構成の1例を示す回路図である。G−VCO3は、一方の入力端子にゲーティング回路2の出力が入力され、他方の入力端子にG−VCO3の出力が入力されるNAND30と、NAND30の出力を入力とするインバータ31と、インバータ31の出力を入力とするインバータ32と、一端がインバータ31の出力端子およびインバータ32の入力端子に接続された可変容量33とから構成される。可変容量33の容量制御端子(G−VCO3の周波数制御端子)には、G−VCO3の発振周波数を制御する周波数制御信号が入力される。このG−VCO3は、ゲート回路であるNAND30と2個のインバータ31,32とが縦続接続されたリング発振回路である。
【0018】
VCO4は、入力端子にバッファ増幅器6aから出力されるクロックとVCO4の出力である再生クロックとが入力されるインバータ40と、インバータ40の出力を入力とするインバータ41と、インバータ41の出力を入力とし、再生クロックを出力するインバータ42と、一端がインバータ41の出力端子およびインバータ42の入力端子に接続された可変容量43とから構成される。可変容量43の容量制御端子(VCO4の周波数制御端子)には、VCO4の発振周波数を制御する周波数制御信号が入力される。このVCO4は、3個のインバータ40,41,42が縦続接続されたリング発振回路である。
【0019】
図4はバッファ増幅器6aの構成の1例を示す回路図である。バッファ増幅器6aは、ベース端子がバッファ増幅器6aの正相入力端子INpに接続され、コレクタ端子がバッファ増幅器6aの逆相出力端子OUTnに接続された増幅用トランジスタQ600と、ベース端子がバッファ増幅器6aの逆相入力端子INnに接続され、コレクタ端子がバッファ増幅器6aの正相出力端子OUTpに接続された増幅用トランジスタQ601と、ベース端子がバッファ増幅器6aの駆動力制御端子VCSBUFに接続された電流源トランジスタQ602と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端が増幅用トランジスタQ600のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R600と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端が増幅用トランジスタQ601のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R601と、一端が増幅用トランジスタQ600のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ602のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R602と、一端が増幅用トランジスタQ601のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ602のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R603と、一端が電流源トランジスタQ602のエミッタ端子に接続され、他端が接地された抵抗R604とから構成される。
【0020】
正相入力端子INpには、G−VCO3から出力される正相のクロック信号が入力され、逆相入力端子INnには、G−VCO3から出力される逆相のクロック信号が入力される。正相出力端子OUTpからは正相のクロック信号が出力され、逆相出力端子OUTnからは逆相のクロック信号が出力される。駆動力制御端子VCSBUFには、バッファ増幅器6aの駆動力を設定する一定の駆動力調整電圧が与えられる。なお、図4に示したバッファ増幅器6aは差動型の増幅器であるため、この増幅器を使うためには、図3に示したG−VCO3とVCO4も差動型の回路構成にする必要がある。
【0021】
次に、本実施の形態のCDR回路の動作を説明する。ゲーティング回路2は、入力データが「0」から「1」に立ち上がったときに立ち下がり、T/2(Tは入力データの周期)後に立ち上がる幅がT/2のパルスを出力する。
【0022】
G−VCO3は、入力データと等しい周波数のクロックを出力する。このクロックの位相は、ゲーティング回路2の出力パルスにより制御される。すなわち、G−VCO3は、ゲーティング回路2の出力パルスが「0」のときはリセットされ「0」を出力し、ゲーティング回路2の出力パルスが「1」になった途端に発振を始め、ゲーティング回路2の出力パルスが「1」の間は発振を続ける。こうして、G−VCO3においては、出力クロックの位相が入力データの位相と合うように調整される。
【0023】
G−VCO3の出力クロックは、バッファ増幅器6aの入力端子に入力される。そして、このクロックは、バッファ増幅器6aで減衰され、VCO4の入力端子に入力される。
VCO4は、G−VCO3と同様に、周波数制御端子に周波数制御信号が供給されることにより、入力データと等しい周波数の再生クロックを出力する。G−VCO3の出力端子から出力されたクロックがバッファ増幅器6aを介してVCO4の入力端子に入力されるため、VCO4から出力される再生クロックの位相は、G−VCO3の出力クロックの位相と合うように(すなわち、入力データの位相と合うように)調整されるが、G−VCO3の影響が小さいことから、G−VCO3の出力クロックの位相に瞬時に追従することはない。したがって、入力データにジッタが存在する場合でも、このジッタの影響を受け難くなるので、再生クロックのジッタを低減することができる。さらに、G−VCO3とVCO4との間に、バッファ増幅器6aが挿入されているため、再生クロックの位相に与えるG−VCO3の影響がより小さくなっている。
【0024】
遅延回路5は、ゲーティング回路2の遅延時間とG−VCO3の遅延時間とバッファ増幅器6aの遅延時間とVCO4の遅延時間の分だけ入力データを遅延させる。データ識別回路となるFF1は、遅延回路5を通過した入力データを再生クロックの所定のタイミング(例えば再生クロックの立ち上がり)でリタイミング(サンプリング)して、再生データを出力する。こうして、入力データからクロックおよびデータを再生することができる。
【0025】
本実施の形態では、G−VCO3の出力端子とVCO4の入力端子との間にバッファ増幅器6aを挿入することにより、従来と同様に再生クロックのジッタを低減することができる。さらに、本実施の形態では、バッファ増幅器6aの駆動力を適切に設定することにより、ジッタ低減能力と入力データに対する位相同期能力とを両立させることができる。
【0026】
図5はバッファ増幅器6aの駆動力とCDR回路のバースト応答時間との関係を示す図、図6はバッファ増幅器6aの駆動力と高周波ジッタトランスファとの関係を示す図である。図5に示すように、バッファ増幅器6aの駆動力が大きくなるほど、G−VCO3の出力クロックの位相にVCO4の出力クロックの位相が高速で同期するため、バーストデータを受信する場合のCDR回路の応答時間が減少する。一方、図6に示すように、バッファ増幅器6aの駆動力が大きくなるほど、入力データのジッタがVCO4から出力される再生クロックに重畳されることになり、再生クロックへのジッタの伝達度を示す高周波ジッタトランスファが劣化する。したがって、バッファ増幅器6aの駆動力を低下させると、再生クロックのジッタを低減することができるが、その一方で応答時間が増加してしまう。また、バッファ増幅器6aの駆動力を低くし過ぎると、入力データと再生クロックの同期が外れてしまう。
【0027】
CDR回路に入力データが入力されてからその入力データに応じた再生クロックがCDR回路から出力されるまでの時間であるバースト応答時間は、CDR回路の仕様によって数十ns〜数百ns程度以下であることが求められる。そこで、本実施の形態では、バースト応答時間が予め規定された仕様の範囲内で最大となるようにバッファ増幅器6aの駆動力を設定する。例えばバースト応答時間の仕様が80ns以下と規定されている場合には、バースト応答時間が80nsとなるようにバッファ増幅器6aの駆動力を設定する。
【0028】
図7は本実施の形態のバッファ増幅器6aの駆動力設定手法を説明するために図5と図6を重ね合わせて示した図であり、Tは図5のバースト応答時間、Jは図6の高周波ジッタトランスファを示している。上記のようにバースト応答時間Tが予め規定された仕様の範囲内で最大値Tmaxとなるようにバッファ増幅器6aの駆動力DPを設定すると、この駆動力DPに応じて高周波ジッタトランスファJが決まる。このときの高周波ジッタトランスファJは、最小値ではないが、十分に小さい適切な値となっている。
【0029】
バッファ増幅器6aの駆動力を調整するには、バッファ増幅器6aの駆動力制御端子VCSBUFに与える駆動力調整電圧を変更すればよい。駆動力調整電圧を上げると、バッファ増幅器6aの電流源トランジスタQ602を流れる電流Iが増加し、結果として増幅用トランジスタQ600,Q601を流れる電流も増加し、バッファ増幅器6aの出力振幅が上昇する。こうして、駆動力調整電圧を上げると、バッファ増幅器6aの駆動力が上昇する。反対に、駆動力調整電圧を下げると、電流源トランジスタQ602を流れる電流Iが減少し、結果として増幅用トランジスタQ600,Q601を流れる電流も減少し、バッファ増幅器6aの出力振幅が低下する。こうして、駆動力調整電圧を下げると、バッファ増幅器6aの駆動力が低下する。したがって、CDR回路のバースト応答時間が予め規定された仕様の範囲内で最大となるように駆動力調整電圧を設定してバッファ増幅器6aに印加すればよい。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、CDR回路のバースト応答時間が予め規定された仕様の範囲内で最大となるようにバッファ増幅器6aの駆動力を設定することにより、入力データと再生クロックの同期を保ったまま、再生クロックの適切なジッタ量と適切なバースト応答時間とを両立させることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、バッファ増幅器6aに与える駆動力調整電圧によって電流源トランジスタQ602を流れる電流を設定してバッファ増幅器6aの駆動力を設定していたが、これに限るものではない。バッファ増幅器6aの駆動力は、コレクタ抵抗R600,R601の大きさや、トランジスタQ600〜Q602のサイズによっても設定することができる。
【0032】
コレクタ抵抗R600,R601の抵抗値を上げると、バッファ増幅器6aの出力振幅が上昇し、駆動力も上昇する。反対に、コレクタ抵抗R600,R601の抵抗値を下げると、バッファ増幅器6aの出力振幅が低下し、駆動力も低下する。また、トランジスタQ600〜Q602のサイズを大きくすると、バッファ増幅器6aの駆動力が上昇し、トランジスタQ600〜Q602のサイズを小さくすると、バッファ増幅器6aの駆動力が低下する。したがって、CDR回路のバースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるようにコレクタ抵抗R600,R601の抵抗値を予め設定してもよいし、トランジスタQ600〜Q602のサイズを予め設定してもよい。なお、一般に、コレクタ抵抗R600とR601の値は同一の値に設定する。
【0033】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は本発明の第2の実施の形態に係るバッファ増幅器6aとVCO4の接続方法を示す回路図であり、図3、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、図3に示したバッファ増幅器6aとVCO4の接続をより具体的に説明するものである。
【0034】
バッファ増幅器6aの構成は図4に示したとおりである。VCO4のインバータ40は、ベース端子がインバータ40の正相入力端子IN1pに接続され、コレクタ端子がインバータ40の逆相出力端子OUT1nに接続されたトランジスタQ400と、ベース端子がインバータ40の逆相入力端子IN1nに接続され、コレクタ端子がインバータ40の正相出力端子OUT1pに接続されたトランジスタQ401と、ベース端子がバイアス端子VCSに接続された電流源トランジスタQ402と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端がトランジスタQ400のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R400と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端がトランジスタQ401のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R401と、一端がトランジスタQ400のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ402のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R402と、一端がトランジスタQ401のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ402のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R403と、一端が電流源トランジスタQ402のエミッタ端子に接続され、他端が接地された抵抗R404とから構成される。
【0035】
VCO4のインバータ42は、ベース端子がインバータ42の正相入力端子IN2pに接続され、コレクタ端子がインバータ42の逆相出力端子OUT2nに接続されたトランジスタQ420と、ベース端子がインバータ42の逆相入力端子IN2nに接続され、コレクタ端子がインバータ42の正相出力端子OUT2pに接続されたトランジスタQ421と、ベース端子がバイアス端子VCSに接続された電流源トランジスタQ422と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端がトランジスタQ420のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R420と、一端に電源電圧VCCが供給され、他端がトランジスタQ421のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗R421と、一端がトランジスタQ420のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ422のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R422と、一端がトランジスタQ421のエミッタ端子に接続され、他端が電流源トランジスタQ422のコレクタ端子に接続されたエミッタ抵抗R423と、一端が電流源トランジスタQ422のエミッタ端子に接続され、他端が接地された抵抗R424とから構成される。インバータ40,42のバイアス端子VCSには一定電圧が供給される。
【0036】
図8では、インバータ41の構成について記載していないが、インバータ41もインバータ40,42と同様の構成を有する。そして、インバータ40の正相出力端子OUT1pをインバータ41の逆相入力端子と接続し、インバータ40の逆相出力端子OUT1nをインバータ41の正相入力端子と接続し、インバータ41の正相出力端子をインバータ42の逆相入力端子IN2nと接続し、インバータ41の逆相出力端子をインバータ42の正相入力端子IN2pと接続すればよい。
【0037】
本実施の形態では、リング発振回路であるVCO4のインバータとして差動バッファを用いている。そして、バッファ増幅器6aの正相出力端子OUTpと最終段のインバータ42の逆相出力端子OUT2nとをワイヤードオア接続して初段のインバータ40の正相入力端子IN1pに入力し、またバッファ増幅器6aの逆相出力端子OUTnと最終段のインバータ42の正相出力端子OUT2pとをワイヤードオア接続して初段のインバータ40の逆相入力端子IN1nに入力している。これにより、VCO4の初段の論理は、最終段のインバータ42の出力の論理とバッファ増幅器6aの出力の論理との、駆動力の強弱の傾斜のついた足し合わせで決定される。
【0038】
なお、第1、第2の実施の形態では、G−VCO3とVCO4の回路構成が異なるが、G−VCO3とVCO4を同じ回路構成とするために、VCO4の初段のインバータ40を、図3に示したG−VCO3と同じようにNANDにしてもよい。この場合は、NANDの一方の入力端子をプルアップし、他方の入力端子にバッファ増幅器6aの出力とインバータ42の出力とを入力すればよい。
【0039】
また、第1、第2の実施の形態では、VCO4を1個としているが、VCO4を2個以上縦続接続してもよい。このとき、1個のVCO4の出力端子とその直後のVCO4の入力端子との間にバッファ増幅器6aを設けてもよい。また、ゲーティング回路2の出力端子とG−VCO3の入力端子との間にバッファ増幅器6aを設けるようにしてもよい。またバッファ増幅器6aは、ゲーティング回路2の出力端子から最後段のVCO4の入力端子との間の複数個所に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、入力データに対して位相同期したクロックを再生し、このクロックにより入力データのリタイミングを行う技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…フリップフロップ、2…ゲーティング回路、3,4…VCO、5…遅延回路、6a…バッファ増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データが遷移したときにパルスを出力するゲーティング回路と、
このゲーティング回路の出力パルスのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整することにより、前記入力データとタイミングの合ったクロックを出力する第1の電圧制御発振器と、
この第1の電圧制御発振器の後ろに縦続接続され、前段の電圧制御発振器から出力されるクロックのタイミングに合うように出力クロックの位相を調整するn個(nは1以上の整数)の第2の電圧制御発振器と、
前記入力データのデータ識別を、前記n個の第2の電圧制御発振器のうち最後尾の電圧制御発振器から出力される再生クロックに基づいて行うデータ識別回路と、
前記ゲーティング回路の出力端子と前記第1の電圧制御発振器の入力端子との間、前記第1の電圧制御発振器の出力端子と前記n個の第2の電圧制御発振器のうち先頭の電圧制御発振器の入力端子との間、前記n個の第2の電圧制御発振器のうち1個の電圧制御発振器の出力端子と直後の電圧制御発振器の入力端子との間のうち、少なくとも1箇所に設けられたバッファ増幅器とを備え、
前記バッファ増幅器の駆動力は、バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように予め設定されることを特徴とするCDR回路。
【請求項2】
請求項1記載のCDR回路において、
前記バッファ増幅器は、
前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、
一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、
前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、
前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記電流源トランジスタを流れる電流が予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするCDR回路。
【請求項3】
請求項1記載のCDR回路において、
前記バッファ増幅器は、
前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、
一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、
前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、
前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記コレクタ抵抗の値が予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするCDR回路。
【請求項4】
請求項1記載のCDR回路において、
前記バッファ増幅器は、
前段の前記ゲーティング回路または前段の前記電圧制御発振器からの出力信号が入力される増幅用トランジスタと、
一端に電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗と、
前記増幅用トランジスタに定電流を供給する電流源トランジスタとを有し、
前記バースト応答時間が仕様の範囲内で最大となるように前記増幅用トランジスタのサイズおよび電流源トランジスタのサイズが予め設定されることにより、前記バッファ増幅器の駆動力が設定されることを特徴とするCDR回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCDR回路において、
前記第1の電圧制御発振器は、ゲート回路と複数のインバータとが縦続接続されたリング発振回路からなり、
前記ゲート回路の一方の入力端子に前記ゲーティング回路の出力が入力されると共に、前記ゲート回路の他方の入力端子に最終段の前記インバータの出力が入力され、
前記ゲーティング回路と前記第1の電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、前記バッファ増幅器の出力が前記ゲート回路の一方の入力端子に入力されることを特徴とするCDR回路。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCDR回路において、
前記第2の電圧制御発振器は、複数のインバータが縦続接続されたリング発振回路からなり、
初段の前記インバータの入力端子に前段の前記電圧制御発振器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力され、
前段の前記電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、初段の前記インバータの入力端子に前記バッファ増幅器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力されることを特徴とするCDR回路。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCDR回路において、
前記第2の電圧制御発振器は、ゲート回路と複数のインバータとが縦続接続されたリング発振回路からなり、
前記ゲート回路の一方の入力端子が一定電圧に設定されると共に、前記ゲート回路の他方の入力端子に前段の前記電圧制御発振器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力され、
前段の前記電圧制御発振器との間に前記バッファ増幅器が設けられている場合には、前記ゲート回路の他方の入力端子に前記バッファ増幅器の出力と最終段の前記インバータの出力とが入力されることを特徴とするCDR回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のCDR回路において、
前記第1、第2の電圧制御発振器は、外部から入力される周波数制御信号に応じて前記入力データと等しい周波数で発振することを特徴とするCDR回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−171899(P2011−171899A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32250(P2010−32250)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】