CEST活性な常磁性の錯体を含むMRI造影剤
本発明は、好感度を提供し且つ最適化された体内保持時間を有するMRI造影剤を提供する。これらの薬剤は、化学交換飽和移動(CEST)の使用による患者の体内における局所的なpH、温度、酸素濃度、又は他の代謝物質のマッピングを可能とする。特に、pH及び温度のマッピングは、それぞれ、小さい癌の病巣及び局所化された炎症の検出について有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging)(MRI)に用いる造影剤に関係する。より詳しくは、本発明は、MRI技術の感度を向上させ且つ体内における最適化された保持時間を有するMRI造影剤に及びこのような造影剤の調製のための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は、医学における主要な画像化の技術の一つである。この技術においては、画像が、患者へ強い磁場、磁場の勾配及び周波数整合されたRFパルスを印加することによって得られる。画像化の過程の間に、体内における原子核は、RF放射によって励起されたものになり、それら原子核は、磁気モーメントを有し、且つ、それら原子核は、大部分が陽子である。RFパルスが、停止させられるとき、励起された核の緩和は、RF信号の放出を引き起こす。印加された磁場の勾配の結果として、このRF信号における周波数は、空間的な情報を含有し、且つ、画像を構築するために使用され得る。強度における差、即ち、異なる組織の間におけるコントラストが、満足な臨床的な情報を得るのに十分なものでないとき、MRI造影剤が、使用される。全ての今日使用される造影剤は、永久磁気双極子をもち、それら永久磁気双極子は、付近の水の陽子の緩和過程に影響し、且つ、そのようにして画像のコントラストの局所的な変化に至る。
【0003】
MRIは、生物学的な経路の生体内の特性付けを目的とする非常に有望な新しい分野、分子の画像化のための主要な担い手の一つである。これは、現在よりも大幅に早い段階での疾患の検出を可能とすることになる。これを達成するためには、特別に設計された造影剤、即ち、研究される生物学的な過程のマーカーと結び付き且つ標的化される造影剤と呼ばれる造影剤か、又は、研究される生物学的な過程のサイトで異なるMR信号を与え且つ応答性のスマート若しくはセンサー造影剤と呼ばれる造影剤かのいずれかが、要求される。MR信号におけるこの差異を、例.pH、温度、又は代謝物の濃度における差異によって誘起することができる。pHの画像化は、このようなサイトにおけるpHが、低減された緩衝能及び増加させられた乳酸の生産のおかげで低下させられるので、例えば、小さい癌の病巣の検出を可能とすることができる。同様に、温度のマッピングは、炎症のサイトを検出することができる。
【0004】
例えば、pHのマッピングについては、数個の方法が知られる。一つは、その緩和能がpHに依存する造影剤の使用である。別の方法は、化学交換飽和移動(Chemical Exchange Saturation Transfer)(CEST)を使用することによるものである。CESTの技術を使用することによって、画像のコントラストが、T1、T2の緩和時間の差異の代わりに、水の信号の強度を変えることによって、得られる。これは、RFパルスを使用して交換可能な陽子の集まりを選択的に飽和させることによってなされる。これらの陽子は、その後、水の陽子との交換によって、飽和を付近の水へ移動させ、水の信号を減少させる。水の信号の減少の程度は、陽子の交換速度に及び交換可能な陽子の濃度に依存する。陽子の交換速度が、pHに依存し得るので、この方法は、pHのマッピングを可能とする。
【0005】
CESTを使用するpHのマッピングの可能性は、幅広く研究されてきた。例えば、交換可能な陽子を備えた数個の小さい分子が、調査されてきたが、CESTの効果、即ち、水の信号の減少の程度は、例.62mMの高い濃度でさえ、小さいままであった[M.K.Ward and R.S.Balaban,Mag.Res.Med.44,799(2000)(非特許文献1)]。
【0006】
CEST剤の感度を改善する一つの方式は、分子当たりの交換可能な陽子の数を増加させることによるものである。これは、疑一次交換速度定数k1によって表現された、合計のCEST効果が、単一の交換サイト速度定数kCA(秒−1)に及び利用可能な交換サイトの合計の数に依存する:
k1=kCA[CA]n (1)
という事実から、当然の結果であり、ここで[CA]は、造影剤の分子の濃度であり、且つ、nは、分子当たりの化学交換サイトの数である。nを増加させることによってk1を増加させるために、CEST剤としての少数の巨大分子が、研究された。例えば、分子当たり2000個を超えるアミドの陽子を有するポリ−L−リシンは、11μMで顕著なCEST効果を与えた[N.Goffeney et al.,J.Am.Chem.Soc.123,8628,(2001)(非特許文献2)]。しかしながら、これらの巨大分子の不都合は、水の信号に関する交換可能な陽子の化学シフトが、小さいものであり、その信号が、水の陽子の代わりにこれらの巨大分子の陽子の選択的な飽和を困難なものにするというものである。事実上、水と交換可能な陽子との間の離散的な共鳴周波数の差異があるとすれば、即ち、次に続く式:
(1/kCA)ΔωCA > 1 (2)
が、成り立つとすれば、これをすることができるのみであり、ここで、ΔωCAは、水と交換可能な陽子との間の化学シフトの差異(ラジアン/秒)である。そのようにして、ΔωCAが、大きいものであればあるほど、kCA、及び、このようにCEST効果は、大きいものであり得る。
【0007】
常磁性のイオン、例.ランタニドイオンの近くに位置させられる陽子の化学シフトが、非常に大きいものであり得ることは、知られたことである。これは、大環状のDOTAM誘導体(図1を参照のこと)(DOTAM=1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラアセトアミド)のランタニド錯体を使用したAime et al.によってCESTについて活用されてきた[“Paramagnetic lanthanide(III) complexes as pH−sensitive chemical exchange saturation transfer(CEST) contrast agents for MRI applications”,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639(非特許文献3)]。これらの錯体のアミドの陽子は、アミドの陽子の交換の強いpHの依存性の理由のために、CESTを使用するpHマッピングに適切であることを証明した。しかしながら、分子当たりの交換可能な陽子の数は、最大で8個までに限定される。これは、0.3mMの程度、即ち、標準的なCdに基づいたMRI造影剤に対して10倍劣る係数、における、CESTの効果が5%である濃度として定義された、感度に至る。
【非特許文献1】M.K.Ward and R.S.Balaban,Mag.Res.Med.44,799(2000)
【非特許文献2】N.Goffeney et al.,J.Am.Chem.Soc.123,8628,(2001)
【非特許文献3】Aime et al.,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、MRI技術の感度を向上させ且つ体内における最適化された保持時間を有するMRI造影剤、及び、このような造影剤の調製のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に従った方法及びデバイスによって成し遂げられる。
【0010】
本発明の特定の及び好適な態様は、成し遂げる独立及び従属請求項に述べられる。従属請求項の特徴は、適切なものとして、且つ、請求項に明示的に述べられたものとしてだけでなく、独立請求項の特徴と且つ他の従属請求項の特徴と組み合わせられることがある。
【0011】
次に続く用語は、単に本発明の理解を援助するために、提供される。これらの定義は、当業者によって理解されるものよりも小さい範囲を有するように解釈されるべきではない。
【0012】
化学交換飽和移動(CEST):異なる磁気共鳴周波数を提示する二つの分子の間における化学交換に依存する全ての飽和移動の過程を指す。
【0013】
CEST効果:CESTによって引き起こされた、MR画像を発生させるために使用される信号の減少、例.陽子の画像化の場合における水の陽子の信号の減少、の程度。CEST効果を、1−MS/M0*として書くことができ、ここで、MSは、交換可能な実体、例.交換可能な陽子、の予備飽和におけるそれの信号の強度であり、且つ、M0*は、非共鳴周波数で、好ましくはそれの信号に対して周波数スペクトルの反対側(対称的な非共鳴)で、照射する際におけるそれの信号の強度である。
【0014】
CESTスペクトル:予備飽和周波数のオフセットの関数としての、CESTによって引き起こされた、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、例.陽子の画像化の場合における水の陽子の信号の強度。
【0015】
CEST造影剤(Contrasting Agent)(CA):別な材料の、交換可能な実体、例.陽子、に化学的に交換することができる、且つ、CEST画像化を行うために使用され得る、少なくとも一つの交換可能な実体、例.陽子、を有する材料。交換可能な実体、例.陽子、は、交換可能な分子又は原子の基、例.水の分子、に組み込まれることも組み込まれないこともある。
【0016】
交換可能な実体の集まり:一方で他の交換可能な実体、例.陽子、と化学的に交換することができ且つ他方で化学的に且つ磁気的に等価である、全ての交換可能な実体の全体。交換可能な実体の集まりの具体的な例は、交換可能な陽子の集まりであることがある。
【0017】
水の陽子の信号:遊離の水の陽子の共鳴によって引き起こされた陽子のNMRスペクトルにおける信号であって、その信号は、ある周波数及びある強度を有する。
【0018】
本発明は、担体に連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含むMRI造影剤を提供し、その少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、CESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含む。
【0019】
本発明の実施形態に従って、CEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオンを含むことがある。常磁性のイオンは、例えば、ランタニドイオン又は遷移金属イオンのようないずれの他の常磁性のイオンであることもある。キレート化配位子は、DOTAM又はDOTAM誘導体(例.Hと異なるR基、例えば、COO−、COOEt、PO32−、など、を備えたDOTAM)であることがある。そして、常磁性の錯体は、例えば、Yb−DOTAM錯体であることがある。
【0020】
本発明に従ったMRI造影剤の利点は、一つを超えるタイプの陽子の集まりを有する造影剤を、同じ担体へ二つの異なる常磁性の錯体を付けることによって容易に得ることができるというものである。
【0021】
本発明の実施形態に従って、常磁性の錯体は、担体へ共有結合的に付けられることがある。その場合には、担体は、デンドリマー、例えばPPIのデンドリマー、又は直鎖の重合体であることがある。他の実施形態においては、常磁性の錯体は、担体へ非共有結合的に付けられることがある。これらの場合には、担体は、リポソーム又はミセルのような粒子であることがある。この場合には、常磁性の錯体は、さらに、リン脂質のテールを含むことがある。
【0022】
本発明に従った他の実施形態において、CEST活性な常磁性の錯体は、有機の材料に埋め込まれた超常磁性の酸化鉄(superparamagnetic iron oxide)(SPIO)の粒子を含むことがある。
【0023】
本発明の好適な実施形態に従って、MRI造影剤は:
− 第一のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、その第一のCEST活性な常磁性の錯体は、第一の常磁性のイオン、第一のキレート化配位子、及び少なくとも一つの第一の交換可能な実体を含み、且つ、
MRI造影剤は、
− 第二のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、第二のCEST活性な常磁性の錯体は、第二の常磁性のイオン、第二のキレート化配位子、及び少なくとも一つの第二の交換可能な実体
を含むことがあり、
− ここで、第一の及び第二の常磁性のイオン、第一の及び第二のキレート化配位子並びに第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なるものである。
【0024】
本発明の実施形態に従って、交換可能な実体は、陽子、水分子又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基であることがある。CESTは、常磁性のイオンへ結び付けられた水の分子によってもまた可能とされることがある。これは、いくつかの場合には、CESTが、キレート化配位子の部分ではない交換可能な実体によって可能とされることがあることを意味する。
【0025】
本発明は、さらに、MRI造影剤の調製のための方法を提供し、その造影剤は、担体へ連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、前記の少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオン及びCESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含み、その方法は、
− 少なくとも一つのキレート化配位子を提供すること、
− 担体を提供すること、
− 前記の担体へ前記キレート化配位子を連結すること、及び
− 少なくとも一つのキレート化配位子と少なくとも一つの常磁性のイオンとの間のCEST活性な錯体を形成すること
:を含む。
【0026】
本発明に従ったMRI造影剤の利点は、一つを超えるタイプの陽子の集まりを有する造影剤を、同じ担体へ二つの異なる常磁性の錯体を付けることによって容易に得ることができるというものである。
【0027】
好適な実施形態において、その方法は、
− 第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び第二のキレート化配位子の少なくとも一つを提供すること、
− 担体を提供すること、
− 前記の担体へ前記の少なくとも一つの第一のキレート化配位子及び前記の少なくとも一つの第二のキレート化配位子を連結させること、並びに
− 前記の少なくとも一つの第一のキレート化配位子と第一の常磁性のイオンとの間における少なくとも一つの第一の交換可能な実体を有する錯体及び前記の少なくとも一つの第二のキレート化配位子と第二の常磁性のイオンとの間の少なくとも一つの第二の交換可能な実体を有する錯体を形成すること
:を含むことがあり、
− ここで、それぞれ、前記第一の及び第二の常磁性のイオン、第一の及び第二のキレート化配位子、又は、第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、添付する図面と併せて理解される、次に続く詳細な説明から明らかになると思われ、それら図面は、一例として、本発明の原理を図解する。この記載は、本発明の範囲を限定することなく、例のみの目的で与えられる。以下に引用された参考図は、添付された図面を指す。
【0029】
異なる図において、同じ符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【0030】
本発明を、特定の実施形態に関して、且つ、ある一定の図面を参照して、記載することにするが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるいずれの符号も、その範囲を限定するものとして解釈されないものとする。記載された図面は、単に概略的なものであり、且つ、限定しないものである。図面において、要素のいくつかの大きさは、誇張されることがあり、且つ、図解の目的のために一定の縮尺で描かれたものではない。用語“を含む”が、本記載及び特許請求の範囲において使用される場合、それは、他の要素又はステップを排除するものではない。単数の名詞を指すとき不定冠詞又は定冠詞、例.“ある”、“その”が使用される場合、これは、他に何かが具体的に述べられない限り、複数のその名詞を含むものである。
【0031】
さらには、本記載において、及び、特許請求の範囲において、用語、第一の、第二の、第三の、及び同様のものは、類似の要素の間で区別するために使用され、且つ、必ずしも連続した又は経時的な順序を記述するために使用されるものではない。そのように使用される用語が、適切な状況の下で交換可能であること、及び、ここに記載された本発明の実施形態が、ここに記載された又は図解された以外の順序で動作の可能なものであることは、理解されることである。
【0032】
特許請求の範囲において使用される、用語“を含む”が、その後に列挙される手段に制限されるものとして解釈されるべきではないことは、注意されることである;それは、他の要素又はステップを排除するものではない。このように、それは、言及したような、述べられた特徴、整数、ステップ、又は構成成分の存在を条件として指定するものとして解釈されるものであるが、一つ以上の他の特徴、整数、ステップ、若しくは構成成分、又はそれらの群の存在又は付加を予め除外するものではない。このように、表現“手段A及びBを含むデバイス”の範囲は、構成成分A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの単に関連性のある構成成分がA及びBであることを意味する。
【0033】
本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)における使用に適切な造影剤、及びより詳しくは、CESTのMRI技術に対して高い感度を提供し且つ体内における最適化された保持時間を有する化学交換飽和移動(CEST)の造影剤を提供する。さらには、本発明は、このような造影剤の調製のための方法を提供する。
【0034】
本発明に従って、MRI造影剤は、担体に付けられた少なくとも一つのCEST活性な錯体を含む。CEST活性な錯体で、CESTを可能とするために例.陽子、水の分子又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基のような少なくとも一つの交換可能な実体を含む錯体を意味する。
【0035】
本発明の実施形態に従って、CEST活性な錯体は、キレート化配位子に付けられた常磁性のイオンを含むことがある。常磁性のイオンは、ランタニドイオン、例.イッテルビウム(Yb)イオンであることがある、又は、例.遷移金属イオンのようないずれの他の適切な常磁性イオンであることもある。好ましくは、常磁性のイオンは、ランタニドイオンであることがあり、より好ましくは、常磁性のイオンは、Yb3+イオンであることがある。キレート化配位子は、常磁性のイオンと共に錯体を形成する。
【0036】
本発明に従った他の実施形態において、常磁性の錯体は、また、例えば、重合体のような、有機の材料に埋め込まれる超常磁性の酸化鉄(SPIO)の粒子で形成されることもある。生体適合性のために、超常磁性の鉄の粒子は、重合体の殻を有することを必要とする。CEST剤として有用なものであるために、重合体の殻は、交換可能な実体、例えば交換可能な陽子、を含むべきである。
【0037】
本発明に従って、常磁性の錯体は、例えば、陽子、水の分子、又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基のような、交換可能な実体を含む。好ましくは、交換可能な実体は、交換可能な陽子であることがあり、より好ましくは、交換可能な実体は、交換可能なアミドの陽子であることがある。キレート化配位子は、例えば、DOTAM、又はそれの誘導体(Hと異なるR基、例.COO−、COOEt、PO32−、などを備えたDOTAM(図1を参照のこと))であることがある。
【0038】
さらには、本発明に従った造影剤は、少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体が連結される担体を含む。連結することは、共有結合的になされる、即ち、重合体を形成することがあり、又は、非供給結合的に、即ち、例.リポソーム若しくはミセルの形態でなされることがある。
【0039】
担体へ付けられる常磁性のイオンの利点は、CEST効果において大きい変化が起こるpHの範囲を、担体における官能基の選択によって最適化することができるというものである。例えば、CEST活性な部位又は錯体が、例.PPIのデンドリマーへ直接的に付けられるとき、CEST効果において大きい変化を提示するpHの範囲は、PPIの樹枝状のコアが、存在する多数のアミン基のおかげで塩基性であるので、より低いpHへシフトする。
【0040】
共有結合的に連結する場合には、例えば、デンドリマー又は直鎖の重合体のような、異なるタイプの重合体が、使用されることがある。デンドリマーは、制御された大きさ及び形状、並びに、従って良好に定められた体内分布を有するという、直鎖の重合体を超える利点を有することがある。例えば、アミンの末端基を有するデンドリマーについては、これらのアミンの末端基を、常磁性の錯体で容易に官能化することができる。担体としてデンドリマーを使用することの別の利点は、造影剤の分子が大きければ大きいほど、体内における体内保持時間が長くなることになるので、デンドリマーの大きさを、及び、従って、体内の保持時間を、世代を選択することによって最適化することができるというものである。図解のように、世代1若しくはG1ポリ(プロピレンイミン)又はPPIのデンドリマー、即ち、4個の末端基を備えたPPIのデンドリマーは、図2に図解され、且つ、世代3若しくはG3のPPIのデンドリマー、即ち、16個の末端基を備えたPPIのデンドリマーは、図3に図解される。
【0041】
他の実施形態において、直鎖の重合体は、担体として使用されることがある。これは、組織の中への、より良好な溢出、即ち、血管からのCEST造影剤の脱出という、デンドリマーに関する利点を有することがある。内皮における穴が、約10から20nmまでのであるので、20kDaよりも大きい分子量を備えた粒子又は分子の溢出は、困難でものである。この大きさの範囲において、直鎖の重合体は、かさ高いデンドリマーよりも速く内皮を通過することになる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態においては、担体は、リポソーム又はミセルのような粒子であることがある。この場合には、常磁性の錯体は、上に記載したようないずれの常磁性のイオンであることもある常磁性のイオン、また前に記載したようないずれのキレート化配位子であることもあるキレート化配位子、及びリン脂質のテールを含むことがある。リン脂質は、親水性のヘッド基、例.リン酸塩及び/又はリン酸エステル基、及び、親油性のテール、例.ことによると飽和させられた、一つ以上の脂肪酸、を含む分子である。このようなリン脂質の例は、例.1,2−ジラウロイル、−ジミリストイル、−ジパルミトイル−、−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン又は−ホスホエタノールアミンであることがある。加えて、リン脂質は、親水性のヘッド基に付けられたポリ(エチレングリコール)の鎖を含むことがある。テールの目標は、リポソーム又は粒子の殻の中へ錯体を組み込むことである。錯体が、コアに含まれるとすれば、テールは、使用されない。常磁性の錯体は、リン脂質の親水性のサイトへ常磁性の錯体を共有結合的に付けることによって、リポソーム又は粒子の殻にあることがあるか、又は、それは、リポソーム又は粒子のコアに含まれることがある。
【0043】
本発明に従ったCEST剤が、例.デンドリマー、直鎖の重合体、又はリポソームのような、担体へ付けられた複数の常磁性の錯体を含むことがあるので、それは、陽子MRIの場合には水である、主要な天然に存在する集まり、即ち、画像を発生させるために使用される集まり、の共鳴周波数から十分に離れた共鳴周波数で、多数の交換可能な実体、例.交換可能な陽子、交換可能な水の分子、又は交換可能なリン酸塩及び/又はリン酸エステル基を含むことがある。
【0044】
複数の常磁性の錯体を含む担体の利点は、少なくとも二つの異なる交換可能な実体の集まり、例えば少なくとも二つの異なる陽子の集まり、を含む造影剤を、各々が異なる交換可能な実体の集まり、例.陽子の集まりを有し且つ一つの且つ同じ担体へ付けられる、少なくとも二つの異なる常磁性の錯体を使用することによって、容易に提供することができるというものである。例えば、先行技術において、濃度依存性が、Aime等によって、二つのCEST剤のカクテル、即ち、CESTのためのアミノの陽子の交換を使用するYb錯体及び水の交換を使用するEu錯体、を使用することによって、除去されてきた[“Paramagnetic lanthanide(III) complexes as pH−sensitive chemical exchange saturation transfer (CEST) contrast agents for MRI applications”,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639]。二つの分子の等しい体内分布が、仮定される必要があった。本発明に従って、複数の常磁性の錯体を含む、重合体又はリポソーム若しくは粒子のような担体の場合には、二つの異なるCEST活性な錯体、例.二つの異なるランタニドは、固定された濃度比で一つの粒子/分子に存在することがある。この方式では、等しい体内分布の仮定がなされることを必要としない。
【0045】
二つの異なる常磁性の錯体、即ち、第一の及び第二の常磁性の錯体が、同じ担体に付けられるとすれば、それらは、異なるキレート化剤及び/又は異なる常磁性のイオンを含むことがある。担体は、複数の第一の常磁性の錯体及び複数の第二の常磁性の錯体を含むことがある。
【0046】
以後、本発明の異なる実施形態に従ったMRI造影剤のいくつかの例を、詳細に記載することにする。
【0047】
本発明に従ったCEST剤の第一の例は、担体としてのPPIのデンドリマーを含むことがあり、そのPPIのデンドリマーは、それに付けられた複数のイッテルビウム(Yb)−DOTAM錯体を備えたものである。従って、非対称的なDOTAM誘導体が、合成され、且つ、PPIのデンドリマーの世代1及び3の末端基へカップリングさせられた(それぞれ図2及び図3を参照のこと)。このように、二つの異なる造影剤、即ち、Yb−DOTAM−G1及びYb−DOTAM−G3が、得られることがある。比較の理由(以下を参照のこと)のみのための、基準のCEST剤として、非対称的なYb−DOTAM錯体は、また、脂肪族の/芳香族の“テール”へカップリングさせられ、Yb−DOTAM−テールとさらに呼ばれる造影剤に至った。
【0048】
三つの化合物のランタニド錯体は、次にようにして得られることがある。‘ビルディングブロック’又は常磁性の錯体の合成は、図4に図解される。合成は、シクレンから開始され、そのシクレンは、例.Aldrich又はMacrocyclicsから、商業的に入手可能な化合物である。図4における分子A、B及びCは、文献から知られたものである。分子A及びそれの合成は、とりわけ、“E.Kimura,J.Am.Chem.Soc.,1997,199,3068−3076”に報告されてきたものである。分子Bは、国際公開第2004/065385号パンフレットに報告されてきたものであり、分子Cは、“A.Heppeler et al.,Chem.Eur.J.1999,5,7,1974−1981”に報告されてきたものである。
【0049】
分子Aを、ゆっくりと、即ち、3時間以内に、CHCl3(Al2O3を通じて通過させられた、100mL)にジ−tert−ブチル=ジカーボナート(7.9g,36mmol)の溶液を、室温で、CHCl3(120mL)におけるシクレン(2.2g,13mmol)及びトリエチルアミン(5.5mL,39mmol)の溶液へ添加することによって、調製することができる。反応混合物は、室温で24時間の間攪拌され、且つ、有機溶媒は、減圧の下で取り除かれる。残留する残留物は、無色の非晶質の固体(4.4g,72%)として分子Aを提供するために、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン類/AcOEt)によって精製される[E.Kimura,J.Am.Chem.Soc.,1997,199,3068−3076]。
【0050】
そして、トリ−BOCで保護された分子A(15.2g)が、20mLのアセトニトリルに溶解させられ、その後に、19mLのジイソプロピルエチルアミン、及び10mLのアセトニトリルにおける7.9gのベンジル=ブロモアセタートが、添加される。溶液は、60−65℃まで加熱され、且つ、アルゴン雰囲気の下で一晩中攪拌される。そして、混合物は、溶媒の蒸発によって濃縮され、且つ、ジクロロメタンに溶解させられる。溶液は、1MのNaOHで洗浄される。有機層は、Na2SO4で乾燥させられ、且つ、その後、蒸発及びトルエンとの同時蒸発によって低減される。純粋な生産物、分子Bは、溶離剤としてヘキサン/エチル=アセタート(1/1)を使用するシリカのカラムクロマトグラフィーによって単離される。収率は、約90%である。
【0051】
分子B(6.22g)は、60mLのジクロロメタン及び60mLのトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)(TFA)に溶解させられる。溶液は、窒素雰囲気の下で攪拌される。3時間の後に、溶媒は、蒸発させられ、且つ、TFAの別の部分(40mL)が、添加される。2時間のさらなる攪拌の後に、TFAは、蒸発させられ、且つ、残留する混合物は、二回、トルエンと同時蒸発させられ、油として分子Cの粗TFA塩を残し、そして、その塩の10gが、さらなる精製無しに、次に続くステップにおいて使用される。油は、45mLのDMF及び31mLのジイソプロピルエチルアミンにおいて溶解させられ且つ攪拌される。そして、4.7gのブロモアセトアミドが、添加され、且つ、混合物が、50℃で二日間攪拌され、その時間の間に、沈殿が、成長させられる。混合物は、600mLのエーテル中にもってこられ、攪拌され、且つ、褐色の沈殿が、濾過及びエーテルでの洗浄によって単離される。そして、固体は、水における25%のNH3溶液の25mLの部分で四回、及び、最後に30mLの水で、洗浄される。40℃での真空下での乾燥は、分子Dの白色固体の生産物(収率=85%)に帰着する。
【0052】
そして、分子D(1.7g)は、触媒としてPd/C(10%)を使用して、100mLの水において70プサイの過圧力で水素化される。混合物は、セライトで濾過され、セライトは、多少の水で洗浄され、且つ、濾液は、凍結乾燥させられ、且つ、そして、分子Eの微細な白色の吸湿性の粉末の1.1グラムを与えるように、真空においてP2O5で乾燥させられる。
【0053】
担体への、与えられた例においてはPPIのデンドリマーへの、分子Eのカップリングのために、アミドのカップリング剤HBTU(o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム=ヘキサフルオロホスファート)が使用される。デンドリマーへの常磁性の錯体のカップリングは、図5に図解される。便宜上、デンドリマーは、円として表記される。使用されたデンドリマーは、ジアミノブタン(diaminobutane)(DAB)から誘導されたコアを備えた(DAB−Am−Xの名前の下でAldrichからの、又は、SyMO−Chemからの)商業的に入手可能なポリ(プロピレンイミン)(PPI)のデンドリマーである。それらのデンドリマーについて最も使用された名前は、DAB−Am−Xであり、ここで、Xは、表面のアミノ基の数を指す。この合成において、DAB−Am−4及びDAB−Am−16は、それぞれ、DOTAM−G1の錯体及びDOTAM−G3の錯体を得るために、使用されてきた。DOTAM−G1及びDOTAM−G3の形成は、類似であり、末端基の数nについての値のみが、異なるもの、即ち、DOTAM−G1についてはn=4及びDOTAM−G3についてはn=16である。
【0054】
G1のPPIのデンドリマーへの分子Eのカップリングのために、0.39mLのジイソプロピルエチルアミンが、3mLの乾燥DMFにおける312mgのHBTUの混合物へ添加される。分子E(300mg)が、添加され、混合物は、澄んだ溶液が獲得されるまで、攪拌される。これは、約5から10分かかることがある。その後、3mLのDMFにおける60mgのDAB−Am−4が、添加される。混合物は、不活性な雰囲気の下で一晩中攪拌され、それの後に、それは、150mLのエーテルの中へ滴下される。粘着性の沈殿が、少量のメタノール中で溶かされ、且つ、エーテル中へ沈殿させられ、白色固体を与え、その固体は、メタノールからエーテルの中へ再度沈殿させられる。最後に、固体は、メタノールに溶解させられ、且つ、陰イオン交換カラム(Dowex OH−)で溶離される。溶媒の蒸発は、約200mgの生産物を与えたが、その生産物を、さらなる合成において、分子IIと呼ぶことにする。
【0055】
G3のPPIのデンドリマーへの分子Eのカップリングのために、0.25mLのジイソプロピルエチルアミンが、1mLの乾燥DMFにおける164mgのHBTUの混合物へ添加される。分子E(172mg)が、添加され、且つ、混合物が、澄んだ溶液が獲得されるまで、攪拌される。これは、約5から10分かかることがある。そして、1mLの乾燥DMFにおける第三の世代のPPI−デンドリマーのDAM−Am−16(41mg)が、添加され、且つ、溶液は、窒素の不活性な雰囲気の下で一晩中攪拌される。混合物は、40mLの攪拌されたエーテルの中へ注入され、沈殿を与える;エーテルは、エーテルの別の部分に取り替えられ(洗浄するステップ)、且つ、沈殿は、乾燥させられる。最後に、沈殿は、水及びトリエチルアミンに溶解させられ、且つ、この溶液は、1000の分子量のカットオフを備えた膜を使用して、且つ、洗浄溶媒として1.2Lの水及び20mLのトリエチルアミンを使用して、透析される。一晩中の透析の後で、洗浄溶液は、1.2Lの水に取り替えられ、且つ、透析は、別の24時間の間続けられる。透析の管における溶液の凍結乾燥は、約200mgの綿毛状の白色の生産物を与えたが、その生産物を、さらなる合成において、分子IIIと呼ぶことにする。
【0056】
図6は、脂肪族の/芳香族のテールへの分子Eのカップリングを図解する。分子IIについて使用されたものと類似の合成の及び精製の手順が、アミンの出発の生産物としてN−カーボベンゾキシ−1,5−ジアミノペンタン(モノCbzで保護された1,5−ペンチルジアミン)を使用して、適用されることがある。結果として生じる生産物を、さらなる合成において、分子IVと称することにする。
【0057】
合成における最後のステップは、Yb3+イオンとの錯化である。Yb−DOTAM−G1錯体の形成のために、5mLの水における0.1mmolのYbCl3の溶液が、8mLの水における49mg(0.1mmol)の分子IIの攪拌する溶液へ、滴の様式で添加される。その後に、溶液は、攪拌する一方で、2時間の間60℃まで加熱され、その間に、NH4OHの小滴を添加することによって7から8までのpHを維持する。溶液は、500の分子量のカットオフを備えた膜及び洗浄溶媒としての流水を使用して、24時間の間透析される。溶液の凍結乾燥は、〜80%の収率で白色の粉末を生じる。
【0058】
Yb−DOTAM−G3の錯体の形成のために、錯化の手順は、Yb−DOTAM−G1の錯体についてのものと類似のものであるが、今、分子IIIが、分子IIの代わりに、使用される。
【0059】
Yb−DOTAM−テールの錯体の形成のために、錯化の手順は、また、Yb−DOTAM−G1の錯体についてのものと類似であるが、今、分子IVが、分子IIの代わりに、使用され、且つ、100の分子量のカットオフを備えた透析膜が、使用される。
【0060】
上述した合成が、また、例えばYb以外のランタニド又はDOTAMキレート化配位子の誘導体を含む、他のCEST造影剤を形成するために使用されることもあることは、理解されることである必要がある。
【0061】
このように、上記の合成は、錯体のYb−DOTAM−テール(図7を参照のこと)、Yb−DOTAM−G1(図8を参照のこと)、及びYb−DOTAM−G3(図9を参照のこと)に帰着する。図7から9までにおいて、Ybは、Yb3+を表し、且つ、水の分子は、9番目の配位サイトに存在するが、そのサイトは、明りょうさの目的のために、図においては省略される。
【0062】
テール、G3のPPIのデンドリマー又はG1のPPIのデンドリマーのいずれかに付けられた上述したYb−DOTAMの錯体でのCESTの実験は、7TのBruker NMR分光計で行われることがある。式:
【0063】
【化1】
を有する3−モルホリノプロパンスルホン酸(3-morpholinopropanesulfonic acid)(MOPS)緩衝剤を備えたYb−DOTAM−テールの造影剤(18mM)の溶液についての予備飽和の周波数のオフセットの関数としての、CESTのスペクトル、即ち、MR画像を発生させるために使用された信号、与えられた例においては水の信号、の強度は、図10に示される。この図から、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度が、直接的に水の陽子を予備飽和させる際に0に、即ち、0Hzに、なることを見て取ることができる。より重要なのは、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度、における明りょうな局所的な最小は、水の共鳴に関して−5000Hzの周波数のオフセットで照射するとき、即ち、(図10の上部のグラフにおいて符号10によって示された)アミドの陽子を予備飽和させる際に、得られる。与えられた例においては、この強度の減少は、水の陽子とのアミドの陽子の化学交換によって引き起こされる。
【0064】
CEST効果は、
CEST効果=1−MS/M0* (3)
:として定義され、ここで、MSは、交換可能な陽子の予備飽和の際(−5000Hz)に、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度であり、且つ、M0*は、MR画像を発生させるために使用された信号、与えられた例においては水の陽子の信号に対して反対側で照射する際(+5000Hz)に、MR画像を発生させるための信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度である。
【0065】
図11は、どのようにCEST効果が、Yb−DOTAM−テールの錯体について、pHと共に変動するかを示す。アミドの陽子の交換が、塩基で触媒される。従って、CEST効果は、低いpHでは起こらない。図11から、Yb−DOTAM−テールの錯体の場合に、CEST効果が、〜pH5から起こり始め、且つ、CEST効果が、pH7.5で〜42%まで急速に増加することを見てとることができる。6.5−7.5の臨床的に関連性のあるpHの範囲におけるCEST効果の急勾配の及び緩やかな増加は、この材料でのpHのマッピングを可能とする。より高いpHでは、CEST効果は、交換が、アミドの陽子の共鳴が水の共鳴と合併するほど速くなり、アミドの陽子の(且つ水の陽子でない)選択的な予備飽和を妨げるので、再度減少する(図11における曲線11)。アミドの陽子の共鳴のシフトのために、より高いpHで、照射の周波数が同様にシフトされるとき、即ち、RFパルスが最適化されるとき、最大のCEST効果が、得られる(図11における曲線12)。
【0066】
Yb−DOTAM−G3の錯体について、類似のCEST−pHの曲線が、得られる(図12を参照のこと)。Yb−DOTAM−G3の錯体の濃度が、Yb−DOTAM−テールの錯体についてのものよりも16倍小さいものであるように選ばれた、即ち、Ybの濃度及びこのようにアミドの陽子の濃度が等しいものであったので、最大のCEST効果は、再度、期待されるものとして〜42%である。唯一の差異は、図12における曲線が、Yb−DOTAM−テールの錯体についての曲線(図11)と比較して、より低いpHへシフトしまっているというものである。これは、樹枝状のコアが第三級アミンのおかげで塩基性であるという事実によって、説明されることがあり[G.J.M.Koper et al.,J.Am.Chem.Soc.119,6512(1997)]、且つ、アミドの陽子の交換が、塩基で触媒されるので、交換が、より低いpHで起こり始める。CEST効果における鋭い増加が、今、臨床的に関連性のあるpHの範囲の外側にあるとはいえ、Yb−DOTAM−G3を、pHのマッピングのために、なおも使用することができることを、以下に示すことにする。
【0067】
水におけるMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−G3の錯体の溶液は、CEST効果の濃度依存性を研究するために、徐々に希釈された。理論[S.Zhang et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41,1919(2002)]から期待されるように、MR画像を発生させるために使用される信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度は、増加する、即ち、CEST効果は、濃度を減少させると共に非線形的に、減少する(図13を参照のこと)。CEST効果が5%である濃度は、一般に、感度についての尺度として使用されることがある。与えられた例においては、これは、Yb−DOTAM−G3の錯体について〜20μM、一般的なT1の造影剤Gd−DTPA(MagnevistTM)の感度と匹敵する値である。
【0068】
画像化の実験は、Philips 3T人間用MRIスキャナーで実行された。小瓶を含む模型が、図14に図解される。上部の小瓶13は、MOPS緩衝剤を含むのみである。符号14で示された、小瓶の真ん中の行は、3つの異なるpHの値、即ち、(符号14aによって示された)pH=3.5、(符号14bによって示された)pH=6.5、及び(符号14cによって示された)pH=7.5でのYb−DOTAM−テールの錯体(0.9mM)を含む。符号15によって示された、小瓶の下側の行は、3つの異なるpHの値、即ち、(符号15aによって示された)pH=3.5、(符号15bによって示された)pH=6.5、及び(符号15cによって示された)pH=7.5でのYb−DOTAM−G3の錯体を含む。小瓶を備えた模型は、生理学的な水と共にビーカーの中に置かれた。Ybの濃度は、全ての小瓶14a−c、15a−cで同じものであった。この実験における目的は、CESTによるコントラストを得ることであるので、陽子密度で重み付けされた画像が、T1/T2の差異による全てのコントラストを取り除くために、獲得された。事実上、予備飽和無しの画像(図14、上部における左の画像)は、ほとんどいずれの強度の差異をも示さない。使用されたMRIスキャナーの磁場の強さは、3T(128MHz)であり、その磁場の強さは、NMR分光計(7T、300MHz)の磁場の強さと異なる。場の強さにおける差異のために、交換可能な実体、与えられた例においてはアミドの陽子、は、これがBruker社のNMR分光計においては−5000Hzであるのに対して、Philips社のMRIスキャナーにおいて−1900Hzで共鳴する。図14において、−1900Hzにおけるアミドの陽子の予備飽和で、四つの最も右の小瓶の強度は、CESTの発生のおかげで、より低いものである(図14、上部における真ん中の画像)。これを、図14の上部における右の画像において、より明りょうに見てとることができ、それは、左の画像と真ん中の画像との間における差異である。図14から、pH7.5におけるYb−DOTAM−テール(14c)及びpH6.5におけるYb−DOTAM−G3(15b)が、最も大きいCEST効果を提示し、その効果が、図11及び12に図解されたCEST−pHの曲線に従ったものであることを、見てとることができる。最大のCEST効果は、この場合には、〜20%である。これは、使用されたBruker社のNMR(7T)分光計で同じ溶液について得られたもの(〜40%)よりも低いものである。CEST効果における差異は、予備飽和パルスにおける差異によるものであり、且つ、場の強さの差異によらないものである。その差異は、予備飽和のために使用された異なる方法、即ち、パルス化された場の勾配の組み合わせられた使用有りの5.0msの300倍の代わりに、パルス化された場の勾配無しの100msの16倍、によるものであることがある。pH7.5でのYb−DOTAM−G3についてのCEST効果は、〜11%であり、その効果は、pH6.5での値の半分である。これは、アミドの陽子の共鳴のシフトのおかげである(上記を参照のこと)。pH6.5とpH7.5との間におけるこの大きい差異のために、Yb−DOTAM−G3は、分子当たりの多数の常磁性のイオンのおかげで良好な感度を備えたCESTを使用するpHのマッピングに適切な造影剤である。
【0069】
本発明に従ったCEST剤の上記の例が、本発明を限定するものではないことは、理解されることである必要がある。また、他の分子が、本発明の利益を提示する。
【0070】
例えば、本発明の第二の実施形態は、本発明に従ったCEST剤を形成するためにリポソームに組み込まれることがある錯体を含むことがあるCEST剤を提供する。錯体は、CEST活性な常磁性の錯体16及びリン脂質のテール17を含む。CEST活性な常磁性の錯体16は、キレート化剤に付けられた、ランタニドイオンのような常磁性のイオン、好ましくはYb3+のイオン、又は、例.遷移金属イオンのような全ての他の適切な常磁性のイオンを含むことがある。常磁性の錯体は、好ましくは交換可能な陽子であることがあり且つより好ましくは交換可能なアミドの陽子であることがある、交換可能な実体を含む。このようなCEST剤の具体的な例は、図15に図解される。この例におけるCEST活性な常磁性の錯体16は、Yb−DOTAMであることがあり、且つ、ホスファチジルコリンのテール17、より詳しくは1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン誘導体のテールへ付けられることがある。このホスファチジルコリンのテール17において、Rは、C、CH2(OCH2CH2)n、又はCH2(OCH2CH2)nCONHCH2CH2であることがある。リポソームは、100000個までのこれらの常磁性の錯体を含有することができ、よって、常磁性の錯体を備えたこのようなリポソームを使用するMRI技術の感度の大きな改善を可能とする。
【0071】
本発明に従ったデバイスについて、材料のみならず、好適な実施形態、具体的な構築物及び構成を、ここにおいて議論してきたとはいえ、形態及び細部における様々な変化又は変更が、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、なされることがあることは、理解されることである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
応答性のMRI造影剤造影剤
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、先行技術に従ったCEST剤として使用されたLn−DOTAM錯体を図解する。
【図2】図2は、世代(generation)1(G1)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを示す。
【図3】図3は、世代3(G3)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを示す。
【図4】図4は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図5】図5は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図6】図6は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図7】図7は、本発明に従った実施形態において対照のCEST剤として使用されたYb−DOTAM−テールの分子を図解する。
【図8】図8は、DOTAM基で官能化された世代1(G1)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを図解する。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従ったYb−DOTAM−G3のCEST剤を図解する。
【図10】図10は、pH=7.05での水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−テール(18mM)用の1H−NMRスペクトル(上部)及びCESTスペクトル(下部)を示す。
【図11】図11は、固定されたRFパルスについての及び最適化されたRFパルスについての水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−テール(18mM)についてのpHの関数としてCEST効果を図解する。
【図12】図12は、固定されたRFパルスについての及び最適化されたRFパルスについての水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−G3(1.1mM)についてのpHの関数としてCEST効果を図解する。
【図13】図13は、Yb及びYb−DOTAM−G3の濃度の関数として相対的な水の信号の強度を図解する。
【図14】図14は、MOPS緩衝剤(上部の小瓶)のみ、様々なpH及び298Kでの水中のMOPS緩衝剤を伴った、Yb−DOTAM−テール(14mM,真ん中の行)及びYb−DOTAM−G3(0.9mM,下側の行)、の溶液を備えた小瓶を含む、模型のTSEの陽子密度で重み付けされた画像を示す。
【図15】図15は、本発明の実施形態に従ったCEST剤を図解する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging)(MRI)に用いる造影剤に関係する。より詳しくは、本発明は、MRI技術の感度を向上させ且つ体内における最適化された保持時間を有するMRI造影剤に及びこのような造影剤の調製のための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は、医学における主要な画像化の技術の一つである。この技術においては、画像が、患者へ強い磁場、磁場の勾配及び周波数整合されたRFパルスを印加することによって得られる。画像化の過程の間に、体内における原子核は、RF放射によって励起されたものになり、それら原子核は、磁気モーメントを有し、且つ、それら原子核は、大部分が陽子である。RFパルスが、停止させられるとき、励起された核の緩和は、RF信号の放出を引き起こす。印加された磁場の勾配の結果として、このRF信号における周波数は、空間的な情報を含有し、且つ、画像を構築するために使用され得る。強度における差、即ち、異なる組織の間におけるコントラストが、満足な臨床的な情報を得るのに十分なものでないとき、MRI造影剤が、使用される。全ての今日使用される造影剤は、永久磁気双極子をもち、それら永久磁気双極子は、付近の水の陽子の緩和過程に影響し、且つ、そのようにして画像のコントラストの局所的な変化に至る。
【0003】
MRIは、生物学的な経路の生体内の特性付けを目的とする非常に有望な新しい分野、分子の画像化のための主要な担い手の一つである。これは、現在よりも大幅に早い段階での疾患の検出を可能とすることになる。これを達成するためには、特別に設計された造影剤、即ち、研究される生物学的な過程のマーカーと結び付き且つ標的化される造影剤と呼ばれる造影剤か、又は、研究される生物学的な過程のサイトで異なるMR信号を与え且つ応答性のスマート若しくはセンサー造影剤と呼ばれる造影剤かのいずれかが、要求される。MR信号におけるこの差異を、例.pH、温度、又は代謝物の濃度における差異によって誘起することができる。pHの画像化は、このようなサイトにおけるpHが、低減された緩衝能及び増加させられた乳酸の生産のおかげで低下させられるので、例えば、小さい癌の病巣の検出を可能とすることができる。同様に、温度のマッピングは、炎症のサイトを検出することができる。
【0004】
例えば、pHのマッピングについては、数個の方法が知られる。一つは、その緩和能がpHに依存する造影剤の使用である。別の方法は、化学交換飽和移動(Chemical Exchange Saturation Transfer)(CEST)を使用することによるものである。CESTの技術を使用することによって、画像のコントラストが、T1、T2の緩和時間の差異の代わりに、水の信号の強度を変えることによって、得られる。これは、RFパルスを使用して交換可能な陽子の集まりを選択的に飽和させることによってなされる。これらの陽子は、その後、水の陽子との交換によって、飽和を付近の水へ移動させ、水の信号を減少させる。水の信号の減少の程度は、陽子の交換速度に及び交換可能な陽子の濃度に依存する。陽子の交換速度が、pHに依存し得るので、この方法は、pHのマッピングを可能とする。
【0005】
CESTを使用するpHのマッピングの可能性は、幅広く研究されてきた。例えば、交換可能な陽子を備えた数個の小さい分子が、調査されてきたが、CESTの効果、即ち、水の信号の減少の程度は、例.62mMの高い濃度でさえ、小さいままであった[M.K.Ward and R.S.Balaban,Mag.Res.Med.44,799(2000)(非特許文献1)]。
【0006】
CEST剤の感度を改善する一つの方式は、分子当たりの交換可能な陽子の数を増加させることによるものである。これは、疑一次交換速度定数k1によって表現された、合計のCEST効果が、単一の交換サイト速度定数kCA(秒−1)に及び利用可能な交換サイトの合計の数に依存する:
k1=kCA[CA]n (1)
という事実から、当然の結果であり、ここで[CA]は、造影剤の分子の濃度であり、且つ、nは、分子当たりの化学交換サイトの数である。nを増加させることによってk1を増加させるために、CEST剤としての少数の巨大分子が、研究された。例えば、分子当たり2000個を超えるアミドの陽子を有するポリ−L−リシンは、11μMで顕著なCEST効果を与えた[N.Goffeney et al.,J.Am.Chem.Soc.123,8628,(2001)(非特許文献2)]。しかしながら、これらの巨大分子の不都合は、水の信号に関する交換可能な陽子の化学シフトが、小さいものであり、その信号が、水の陽子の代わりにこれらの巨大分子の陽子の選択的な飽和を困難なものにするというものである。事実上、水と交換可能な陽子との間の離散的な共鳴周波数の差異があるとすれば、即ち、次に続く式:
(1/kCA)ΔωCA > 1 (2)
が、成り立つとすれば、これをすることができるのみであり、ここで、ΔωCAは、水と交換可能な陽子との間の化学シフトの差異(ラジアン/秒)である。そのようにして、ΔωCAが、大きいものであればあるほど、kCA、及び、このようにCEST効果は、大きいものであり得る。
【0007】
常磁性のイオン、例.ランタニドイオンの近くに位置させられる陽子の化学シフトが、非常に大きいものであり得ることは、知られたことである。これは、大環状のDOTAM誘導体(図1を参照のこと)(DOTAM=1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラアセトアミド)のランタニド錯体を使用したAime et al.によってCESTについて活用されてきた[“Paramagnetic lanthanide(III) complexes as pH−sensitive chemical exchange saturation transfer(CEST) contrast agents for MRI applications”,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639(非特許文献3)]。これらの錯体のアミドの陽子は、アミドの陽子の交換の強いpHの依存性の理由のために、CESTを使用するpHマッピングに適切であることを証明した。しかしながら、分子当たりの交換可能な陽子の数は、最大で8個までに限定される。これは、0.3mMの程度、即ち、標準的なCdに基づいたMRI造影剤に対して10倍劣る係数、における、CESTの効果が5%である濃度として定義された、感度に至る。
【非特許文献1】M.K.Ward and R.S.Balaban,Mag.Res.Med.44,799(2000)
【非特許文献2】N.Goffeney et al.,J.Am.Chem.Soc.123,8628,(2001)
【非特許文献3】Aime et al.,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、MRI技術の感度を向上させ且つ体内における最適化された保持時間を有するMRI造影剤、及び、このような造影剤の調製のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に従った方法及びデバイスによって成し遂げられる。
【0010】
本発明の特定の及び好適な態様は、成し遂げる独立及び従属請求項に述べられる。従属請求項の特徴は、適切なものとして、且つ、請求項に明示的に述べられたものとしてだけでなく、独立請求項の特徴と且つ他の従属請求項の特徴と組み合わせられることがある。
【0011】
次に続く用語は、単に本発明の理解を援助するために、提供される。これらの定義は、当業者によって理解されるものよりも小さい範囲を有するように解釈されるべきではない。
【0012】
化学交換飽和移動(CEST):異なる磁気共鳴周波数を提示する二つの分子の間における化学交換に依存する全ての飽和移動の過程を指す。
【0013】
CEST効果:CESTによって引き起こされた、MR画像を発生させるために使用される信号の減少、例.陽子の画像化の場合における水の陽子の信号の減少、の程度。CEST効果を、1−MS/M0*として書くことができ、ここで、MSは、交換可能な実体、例.交換可能な陽子、の予備飽和におけるそれの信号の強度であり、且つ、M0*は、非共鳴周波数で、好ましくはそれの信号に対して周波数スペクトルの反対側(対称的な非共鳴)で、照射する際におけるそれの信号の強度である。
【0014】
CESTスペクトル:予備飽和周波数のオフセットの関数としての、CESTによって引き起こされた、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、例.陽子の画像化の場合における水の陽子の信号の強度。
【0015】
CEST造影剤(Contrasting Agent)(CA):別な材料の、交換可能な実体、例.陽子、に化学的に交換することができる、且つ、CEST画像化を行うために使用され得る、少なくとも一つの交換可能な実体、例.陽子、を有する材料。交換可能な実体、例.陽子、は、交換可能な分子又は原子の基、例.水の分子、に組み込まれることも組み込まれないこともある。
【0016】
交換可能な実体の集まり:一方で他の交換可能な実体、例.陽子、と化学的に交換することができ且つ他方で化学的に且つ磁気的に等価である、全ての交換可能な実体の全体。交換可能な実体の集まりの具体的な例は、交換可能な陽子の集まりであることがある。
【0017】
水の陽子の信号:遊離の水の陽子の共鳴によって引き起こされた陽子のNMRスペクトルにおける信号であって、その信号は、ある周波数及びある強度を有する。
【0018】
本発明は、担体に連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含むMRI造影剤を提供し、その少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、CESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含む。
【0019】
本発明の実施形態に従って、CEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオンを含むことがある。常磁性のイオンは、例えば、ランタニドイオン又は遷移金属イオンのようないずれの他の常磁性のイオンであることもある。キレート化配位子は、DOTAM又はDOTAM誘導体(例.Hと異なるR基、例えば、COO−、COOEt、PO32−、など、を備えたDOTAM)であることがある。そして、常磁性の錯体は、例えば、Yb−DOTAM錯体であることがある。
【0020】
本発明に従ったMRI造影剤の利点は、一つを超えるタイプの陽子の集まりを有する造影剤を、同じ担体へ二つの異なる常磁性の錯体を付けることによって容易に得ることができるというものである。
【0021】
本発明の実施形態に従って、常磁性の錯体は、担体へ共有結合的に付けられることがある。その場合には、担体は、デンドリマー、例えばPPIのデンドリマー、又は直鎖の重合体であることがある。他の実施形態においては、常磁性の錯体は、担体へ非共有結合的に付けられることがある。これらの場合には、担体は、リポソーム又はミセルのような粒子であることがある。この場合には、常磁性の錯体は、さらに、リン脂質のテールを含むことがある。
【0022】
本発明に従った他の実施形態において、CEST活性な常磁性の錯体は、有機の材料に埋め込まれた超常磁性の酸化鉄(superparamagnetic iron oxide)(SPIO)の粒子を含むことがある。
【0023】
本発明の好適な実施形態に従って、MRI造影剤は:
− 第一のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、その第一のCEST活性な常磁性の錯体は、第一の常磁性のイオン、第一のキレート化配位子、及び少なくとも一つの第一の交換可能な実体を含み、且つ、
MRI造影剤は、
− 第二のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、第二のCEST活性な常磁性の錯体は、第二の常磁性のイオン、第二のキレート化配位子、及び少なくとも一つの第二の交換可能な実体
を含むことがあり、
− ここで、第一の及び第二の常磁性のイオン、第一の及び第二のキレート化配位子並びに第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なるものである。
【0024】
本発明の実施形態に従って、交換可能な実体は、陽子、水分子又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基であることがある。CESTは、常磁性のイオンへ結び付けられた水の分子によってもまた可能とされることがある。これは、いくつかの場合には、CESTが、キレート化配位子の部分ではない交換可能な実体によって可能とされることがあることを意味する。
【0025】
本発明は、さらに、MRI造影剤の調製のための方法を提供し、その造影剤は、担体へ連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、前記の少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオン及びCESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含み、その方法は、
− 少なくとも一つのキレート化配位子を提供すること、
− 担体を提供すること、
− 前記の担体へ前記キレート化配位子を連結すること、及び
− 少なくとも一つのキレート化配位子と少なくとも一つの常磁性のイオンとの間のCEST活性な錯体を形成すること
:を含む。
【0026】
本発明に従ったMRI造影剤の利点は、一つを超えるタイプの陽子の集まりを有する造影剤を、同じ担体へ二つの異なる常磁性の錯体を付けることによって容易に得ることができるというものである。
【0027】
好適な実施形態において、その方法は、
− 第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び第二のキレート化配位子の少なくとも一つを提供すること、
− 担体を提供すること、
− 前記の担体へ前記の少なくとも一つの第一のキレート化配位子及び前記の少なくとも一つの第二のキレート化配位子を連結させること、並びに
− 前記の少なくとも一つの第一のキレート化配位子と第一の常磁性のイオンとの間における少なくとも一つの第一の交換可能な実体を有する錯体及び前記の少なくとも一つの第二のキレート化配位子と第二の常磁性のイオンとの間の少なくとも一つの第二の交換可能な実体を有する錯体を形成すること
:を含むことがあり、
− ここで、それぞれ、前記第一の及び第二の常磁性のイオン、第一の及び第二のキレート化配位子、又は、第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、添付する図面と併せて理解される、次に続く詳細な説明から明らかになると思われ、それら図面は、一例として、本発明の原理を図解する。この記載は、本発明の範囲を限定することなく、例のみの目的で与えられる。以下に引用された参考図は、添付された図面を指す。
【0029】
異なる図において、同じ符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【0030】
本発明を、特定の実施形態に関して、且つ、ある一定の図面を参照して、記載することにするが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるいずれの符号も、その範囲を限定するものとして解釈されないものとする。記載された図面は、単に概略的なものであり、且つ、限定しないものである。図面において、要素のいくつかの大きさは、誇張されることがあり、且つ、図解の目的のために一定の縮尺で描かれたものではない。用語“を含む”が、本記載及び特許請求の範囲において使用される場合、それは、他の要素又はステップを排除するものではない。単数の名詞を指すとき不定冠詞又は定冠詞、例.“ある”、“その”が使用される場合、これは、他に何かが具体的に述べられない限り、複数のその名詞を含むものである。
【0031】
さらには、本記載において、及び、特許請求の範囲において、用語、第一の、第二の、第三の、及び同様のものは、類似の要素の間で区別するために使用され、且つ、必ずしも連続した又は経時的な順序を記述するために使用されるものではない。そのように使用される用語が、適切な状況の下で交換可能であること、及び、ここに記載された本発明の実施形態が、ここに記載された又は図解された以外の順序で動作の可能なものであることは、理解されることである。
【0032】
特許請求の範囲において使用される、用語“を含む”が、その後に列挙される手段に制限されるものとして解釈されるべきではないことは、注意されることである;それは、他の要素又はステップを排除するものではない。このように、それは、言及したような、述べられた特徴、整数、ステップ、又は構成成分の存在を条件として指定するものとして解釈されるものであるが、一つ以上の他の特徴、整数、ステップ、若しくは構成成分、又はそれらの群の存在又は付加を予め除外するものではない。このように、表現“手段A及びBを含むデバイス”の範囲は、構成成分A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの単に関連性のある構成成分がA及びBであることを意味する。
【0033】
本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)における使用に適切な造影剤、及びより詳しくは、CESTのMRI技術に対して高い感度を提供し且つ体内における最適化された保持時間を有する化学交換飽和移動(CEST)の造影剤を提供する。さらには、本発明は、このような造影剤の調製のための方法を提供する。
【0034】
本発明に従って、MRI造影剤は、担体に付けられた少なくとも一つのCEST活性な錯体を含む。CEST活性な錯体で、CESTを可能とするために例.陽子、水の分子又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基のような少なくとも一つの交換可能な実体を含む錯体を意味する。
【0035】
本発明の実施形態に従って、CEST活性な錯体は、キレート化配位子に付けられた常磁性のイオンを含むことがある。常磁性のイオンは、ランタニドイオン、例.イッテルビウム(Yb)イオンであることがある、又は、例.遷移金属イオンのようないずれの他の適切な常磁性イオンであることもある。好ましくは、常磁性のイオンは、ランタニドイオンであることがあり、より好ましくは、常磁性のイオンは、Yb3+イオンであることがある。キレート化配位子は、常磁性のイオンと共に錯体を形成する。
【0036】
本発明に従った他の実施形態において、常磁性の錯体は、また、例えば、重合体のような、有機の材料に埋め込まれる超常磁性の酸化鉄(SPIO)の粒子で形成されることもある。生体適合性のために、超常磁性の鉄の粒子は、重合体の殻を有することを必要とする。CEST剤として有用なものであるために、重合体の殻は、交換可能な実体、例えば交換可能な陽子、を含むべきである。
【0037】
本発明に従って、常磁性の錯体は、例えば、陽子、水の分子、又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基のような、交換可能な実体を含む。好ましくは、交換可能な実体は、交換可能な陽子であることがあり、より好ましくは、交換可能な実体は、交換可能なアミドの陽子であることがある。キレート化配位子は、例えば、DOTAM、又はそれの誘導体(Hと異なるR基、例.COO−、COOEt、PO32−、などを備えたDOTAM(図1を参照のこと))であることがある。
【0038】
さらには、本発明に従った造影剤は、少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体が連結される担体を含む。連結することは、共有結合的になされる、即ち、重合体を形成することがあり、又は、非供給結合的に、即ち、例.リポソーム若しくはミセルの形態でなされることがある。
【0039】
担体へ付けられる常磁性のイオンの利点は、CEST効果において大きい変化が起こるpHの範囲を、担体における官能基の選択によって最適化することができるというものである。例えば、CEST活性な部位又は錯体が、例.PPIのデンドリマーへ直接的に付けられるとき、CEST効果において大きい変化を提示するpHの範囲は、PPIの樹枝状のコアが、存在する多数のアミン基のおかげで塩基性であるので、より低いpHへシフトする。
【0040】
共有結合的に連結する場合には、例えば、デンドリマー又は直鎖の重合体のような、異なるタイプの重合体が、使用されることがある。デンドリマーは、制御された大きさ及び形状、並びに、従って良好に定められた体内分布を有するという、直鎖の重合体を超える利点を有することがある。例えば、アミンの末端基を有するデンドリマーについては、これらのアミンの末端基を、常磁性の錯体で容易に官能化することができる。担体としてデンドリマーを使用することの別の利点は、造影剤の分子が大きければ大きいほど、体内における体内保持時間が長くなることになるので、デンドリマーの大きさを、及び、従って、体内の保持時間を、世代を選択することによって最適化することができるというものである。図解のように、世代1若しくはG1ポリ(プロピレンイミン)又はPPIのデンドリマー、即ち、4個の末端基を備えたPPIのデンドリマーは、図2に図解され、且つ、世代3若しくはG3のPPIのデンドリマー、即ち、16個の末端基を備えたPPIのデンドリマーは、図3に図解される。
【0041】
他の実施形態において、直鎖の重合体は、担体として使用されることがある。これは、組織の中への、より良好な溢出、即ち、血管からのCEST造影剤の脱出という、デンドリマーに関する利点を有することがある。内皮における穴が、約10から20nmまでのであるので、20kDaよりも大きい分子量を備えた粒子又は分子の溢出は、困難でものである。この大きさの範囲において、直鎖の重合体は、かさ高いデンドリマーよりも速く内皮を通過することになる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態においては、担体は、リポソーム又はミセルのような粒子であることがある。この場合には、常磁性の錯体は、上に記載したようないずれの常磁性のイオンであることもある常磁性のイオン、また前に記載したようないずれのキレート化配位子であることもあるキレート化配位子、及びリン脂質のテールを含むことがある。リン脂質は、親水性のヘッド基、例.リン酸塩及び/又はリン酸エステル基、及び、親油性のテール、例.ことによると飽和させられた、一つ以上の脂肪酸、を含む分子である。このようなリン脂質の例は、例.1,2−ジラウロイル、−ジミリストイル、−ジパルミトイル−、−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン又は−ホスホエタノールアミンであることがある。加えて、リン脂質は、親水性のヘッド基に付けられたポリ(エチレングリコール)の鎖を含むことがある。テールの目標は、リポソーム又は粒子の殻の中へ錯体を組み込むことである。錯体が、コアに含まれるとすれば、テールは、使用されない。常磁性の錯体は、リン脂質の親水性のサイトへ常磁性の錯体を共有結合的に付けることによって、リポソーム又は粒子の殻にあることがあるか、又は、それは、リポソーム又は粒子のコアに含まれることがある。
【0043】
本発明に従ったCEST剤が、例.デンドリマー、直鎖の重合体、又はリポソームのような、担体へ付けられた複数の常磁性の錯体を含むことがあるので、それは、陽子MRIの場合には水である、主要な天然に存在する集まり、即ち、画像を発生させるために使用される集まり、の共鳴周波数から十分に離れた共鳴周波数で、多数の交換可能な実体、例.交換可能な陽子、交換可能な水の分子、又は交換可能なリン酸塩及び/又はリン酸エステル基を含むことがある。
【0044】
複数の常磁性の錯体を含む担体の利点は、少なくとも二つの異なる交換可能な実体の集まり、例えば少なくとも二つの異なる陽子の集まり、を含む造影剤を、各々が異なる交換可能な実体の集まり、例.陽子の集まりを有し且つ一つの且つ同じ担体へ付けられる、少なくとも二つの異なる常磁性の錯体を使用することによって、容易に提供することができるというものである。例えば、先行技術において、濃度依存性が、Aime等によって、二つのCEST剤のカクテル、即ち、CESTのためのアミノの陽子の交換を使用するYb錯体及び水の交換を使用するEu錯体、を使用することによって、除去されてきた[“Paramagnetic lanthanide(III) complexes as pH−sensitive chemical exchange saturation transfer (CEST) contrast agents for MRI applications”,Magnetic Resonance in Medicine 2002,47,p.639]。二つの分子の等しい体内分布が、仮定される必要があった。本発明に従って、複数の常磁性の錯体を含む、重合体又はリポソーム若しくは粒子のような担体の場合には、二つの異なるCEST活性な錯体、例.二つの異なるランタニドは、固定された濃度比で一つの粒子/分子に存在することがある。この方式では、等しい体内分布の仮定がなされることを必要としない。
【0045】
二つの異なる常磁性の錯体、即ち、第一の及び第二の常磁性の錯体が、同じ担体に付けられるとすれば、それらは、異なるキレート化剤及び/又は異なる常磁性のイオンを含むことがある。担体は、複数の第一の常磁性の錯体及び複数の第二の常磁性の錯体を含むことがある。
【0046】
以後、本発明の異なる実施形態に従ったMRI造影剤のいくつかの例を、詳細に記載することにする。
【0047】
本発明に従ったCEST剤の第一の例は、担体としてのPPIのデンドリマーを含むことがあり、そのPPIのデンドリマーは、それに付けられた複数のイッテルビウム(Yb)−DOTAM錯体を備えたものである。従って、非対称的なDOTAM誘導体が、合成され、且つ、PPIのデンドリマーの世代1及び3の末端基へカップリングさせられた(それぞれ図2及び図3を参照のこと)。このように、二つの異なる造影剤、即ち、Yb−DOTAM−G1及びYb−DOTAM−G3が、得られることがある。比較の理由(以下を参照のこと)のみのための、基準のCEST剤として、非対称的なYb−DOTAM錯体は、また、脂肪族の/芳香族の“テール”へカップリングさせられ、Yb−DOTAM−テールとさらに呼ばれる造影剤に至った。
【0048】
三つの化合物のランタニド錯体は、次にようにして得られることがある。‘ビルディングブロック’又は常磁性の錯体の合成は、図4に図解される。合成は、シクレンから開始され、そのシクレンは、例.Aldrich又はMacrocyclicsから、商業的に入手可能な化合物である。図4における分子A、B及びCは、文献から知られたものである。分子A及びそれの合成は、とりわけ、“E.Kimura,J.Am.Chem.Soc.,1997,199,3068−3076”に報告されてきたものである。分子Bは、国際公開第2004/065385号パンフレットに報告されてきたものであり、分子Cは、“A.Heppeler et al.,Chem.Eur.J.1999,5,7,1974−1981”に報告されてきたものである。
【0049】
分子Aを、ゆっくりと、即ち、3時間以内に、CHCl3(Al2O3を通じて通過させられた、100mL)にジ−tert−ブチル=ジカーボナート(7.9g,36mmol)の溶液を、室温で、CHCl3(120mL)におけるシクレン(2.2g,13mmol)及びトリエチルアミン(5.5mL,39mmol)の溶液へ添加することによって、調製することができる。反応混合物は、室温で24時間の間攪拌され、且つ、有機溶媒は、減圧の下で取り除かれる。残留する残留物は、無色の非晶質の固体(4.4g,72%)として分子Aを提供するために、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン類/AcOEt)によって精製される[E.Kimura,J.Am.Chem.Soc.,1997,199,3068−3076]。
【0050】
そして、トリ−BOCで保護された分子A(15.2g)が、20mLのアセトニトリルに溶解させられ、その後に、19mLのジイソプロピルエチルアミン、及び10mLのアセトニトリルにおける7.9gのベンジル=ブロモアセタートが、添加される。溶液は、60−65℃まで加熱され、且つ、アルゴン雰囲気の下で一晩中攪拌される。そして、混合物は、溶媒の蒸発によって濃縮され、且つ、ジクロロメタンに溶解させられる。溶液は、1MのNaOHで洗浄される。有機層は、Na2SO4で乾燥させられ、且つ、その後、蒸発及びトルエンとの同時蒸発によって低減される。純粋な生産物、分子Bは、溶離剤としてヘキサン/エチル=アセタート(1/1)を使用するシリカのカラムクロマトグラフィーによって単離される。収率は、約90%である。
【0051】
分子B(6.22g)は、60mLのジクロロメタン及び60mLのトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)(TFA)に溶解させられる。溶液は、窒素雰囲気の下で攪拌される。3時間の後に、溶媒は、蒸発させられ、且つ、TFAの別の部分(40mL)が、添加される。2時間のさらなる攪拌の後に、TFAは、蒸発させられ、且つ、残留する混合物は、二回、トルエンと同時蒸発させられ、油として分子Cの粗TFA塩を残し、そして、その塩の10gが、さらなる精製無しに、次に続くステップにおいて使用される。油は、45mLのDMF及び31mLのジイソプロピルエチルアミンにおいて溶解させられ且つ攪拌される。そして、4.7gのブロモアセトアミドが、添加され、且つ、混合物が、50℃で二日間攪拌され、その時間の間に、沈殿が、成長させられる。混合物は、600mLのエーテル中にもってこられ、攪拌され、且つ、褐色の沈殿が、濾過及びエーテルでの洗浄によって単離される。そして、固体は、水における25%のNH3溶液の25mLの部分で四回、及び、最後に30mLの水で、洗浄される。40℃での真空下での乾燥は、分子Dの白色固体の生産物(収率=85%)に帰着する。
【0052】
そして、分子D(1.7g)は、触媒としてPd/C(10%)を使用して、100mLの水において70プサイの過圧力で水素化される。混合物は、セライトで濾過され、セライトは、多少の水で洗浄され、且つ、濾液は、凍結乾燥させられ、且つ、そして、分子Eの微細な白色の吸湿性の粉末の1.1グラムを与えるように、真空においてP2O5で乾燥させられる。
【0053】
担体への、与えられた例においてはPPIのデンドリマーへの、分子Eのカップリングのために、アミドのカップリング剤HBTU(o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム=ヘキサフルオロホスファート)が使用される。デンドリマーへの常磁性の錯体のカップリングは、図5に図解される。便宜上、デンドリマーは、円として表記される。使用されたデンドリマーは、ジアミノブタン(diaminobutane)(DAB)から誘導されたコアを備えた(DAB−Am−Xの名前の下でAldrichからの、又は、SyMO−Chemからの)商業的に入手可能なポリ(プロピレンイミン)(PPI)のデンドリマーである。それらのデンドリマーについて最も使用された名前は、DAB−Am−Xであり、ここで、Xは、表面のアミノ基の数を指す。この合成において、DAB−Am−4及びDAB−Am−16は、それぞれ、DOTAM−G1の錯体及びDOTAM−G3の錯体を得るために、使用されてきた。DOTAM−G1及びDOTAM−G3の形成は、類似であり、末端基の数nについての値のみが、異なるもの、即ち、DOTAM−G1についてはn=4及びDOTAM−G3についてはn=16である。
【0054】
G1のPPIのデンドリマーへの分子Eのカップリングのために、0.39mLのジイソプロピルエチルアミンが、3mLの乾燥DMFにおける312mgのHBTUの混合物へ添加される。分子E(300mg)が、添加され、混合物は、澄んだ溶液が獲得されるまで、攪拌される。これは、約5から10分かかることがある。その後、3mLのDMFにおける60mgのDAB−Am−4が、添加される。混合物は、不活性な雰囲気の下で一晩中攪拌され、それの後に、それは、150mLのエーテルの中へ滴下される。粘着性の沈殿が、少量のメタノール中で溶かされ、且つ、エーテル中へ沈殿させられ、白色固体を与え、その固体は、メタノールからエーテルの中へ再度沈殿させられる。最後に、固体は、メタノールに溶解させられ、且つ、陰イオン交換カラム(Dowex OH−)で溶離される。溶媒の蒸発は、約200mgの生産物を与えたが、その生産物を、さらなる合成において、分子IIと呼ぶことにする。
【0055】
G3のPPIのデンドリマーへの分子Eのカップリングのために、0.25mLのジイソプロピルエチルアミンが、1mLの乾燥DMFにおける164mgのHBTUの混合物へ添加される。分子E(172mg)が、添加され、且つ、混合物が、澄んだ溶液が獲得されるまで、攪拌される。これは、約5から10分かかることがある。そして、1mLの乾燥DMFにおける第三の世代のPPI−デンドリマーのDAM−Am−16(41mg)が、添加され、且つ、溶液は、窒素の不活性な雰囲気の下で一晩中攪拌される。混合物は、40mLの攪拌されたエーテルの中へ注入され、沈殿を与える;エーテルは、エーテルの別の部分に取り替えられ(洗浄するステップ)、且つ、沈殿は、乾燥させられる。最後に、沈殿は、水及びトリエチルアミンに溶解させられ、且つ、この溶液は、1000の分子量のカットオフを備えた膜を使用して、且つ、洗浄溶媒として1.2Lの水及び20mLのトリエチルアミンを使用して、透析される。一晩中の透析の後で、洗浄溶液は、1.2Lの水に取り替えられ、且つ、透析は、別の24時間の間続けられる。透析の管における溶液の凍結乾燥は、約200mgの綿毛状の白色の生産物を与えたが、その生産物を、さらなる合成において、分子IIIと呼ぶことにする。
【0056】
図6は、脂肪族の/芳香族のテールへの分子Eのカップリングを図解する。分子IIについて使用されたものと類似の合成の及び精製の手順が、アミンの出発の生産物としてN−カーボベンゾキシ−1,5−ジアミノペンタン(モノCbzで保護された1,5−ペンチルジアミン)を使用して、適用されることがある。結果として生じる生産物を、さらなる合成において、分子IVと称することにする。
【0057】
合成における最後のステップは、Yb3+イオンとの錯化である。Yb−DOTAM−G1錯体の形成のために、5mLの水における0.1mmolのYbCl3の溶液が、8mLの水における49mg(0.1mmol)の分子IIの攪拌する溶液へ、滴の様式で添加される。その後に、溶液は、攪拌する一方で、2時間の間60℃まで加熱され、その間に、NH4OHの小滴を添加することによって7から8までのpHを維持する。溶液は、500の分子量のカットオフを備えた膜及び洗浄溶媒としての流水を使用して、24時間の間透析される。溶液の凍結乾燥は、〜80%の収率で白色の粉末を生じる。
【0058】
Yb−DOTAM−G3の錯体の形成のために、錯化の手順は、Yb−DOTAM−G1の錯体についてのものと類似のものであるが、今、分子IIIが、分子IIの代わりに、使用される。
【0059】
Yb−DOTAM−テールの錯体の形成のために、錯化の手順は、また、Yb−DOTAM−G1の錯体についてのものと類似であるが、今、分子IVが、分子IIの代わりに、使用され、且つ、100の分子量のカットオフを備えた透析膜が、使用される。
【0060】
上述した合成が、また、例えばYb以外のランタニド又はDOTAMキレート化配位子の誘導体を含む、他のCEST造影剤を形成するために使用されることもあることは、理解されることである必要がある。
【0061】
このように、上記の合成は、錯体のYb−DOTAM−テール(図7を参照のこと)、Yb−DOTAM−G1(図8を参照のこと)、及びYb−DOTAM−G3(図9を参照のこと)に帰着する。図7から9までにおいて、Ybは、Yb3+を表し、且つ、水の分子は、9番目の配位サイトに存在するが、そのサイトは、明りょうさの目的のために、図においては省略される。
【0062】
テール、G3のPPIのデンドリマー又はG1のPPIのデンドリマーのいずれかに付けられた上述したYb−DOTAMの錯体でのCESTの実験は、7TのBruker NMR分光計で行われることがある。式:
【0063】
【化1】
を有する3−モルホリノプロパンスルホン酸(3-morpholinopropanesulfonic acid)(MOPS)緩衝剤を備えたYb−DOTAM−テールの造影剤(18mM)の溶液についての予備飽和の周波数のオフセットの関数としての、CESTのスペクトル、即ち、MR画像を発生させるために使用された信号、与えられた例においては水の信号、の強度は、図10に示される。この図から、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度が、直接的に水の陽子を予備飽和させる際に0に、即ち、0Hzに、なることを見て取ることができる。より重要なのは、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度、における明りょうな局所的な最小は、水の共鳴に関して−5000Hzの周波数のオフセットで照射するとき、即ち、(図10の上部のグラフにおいて符号10によって示された)アミドの陽子を予備飽和させる際に、得られる。与えられた例においては、この強度の減少は、水の陽子とのアミドの陽子の化学交換によって引き起こされる。
【0064】
CEST効果は、
CEST効果=1−MS/M0* (3)
:として定義され、ここで、MSは、交換可能な陽子の予備飽和の際(−5000Hz)に、MR画像を発生させるために使用された信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度であり、且つ、M0*は、MR画像を発生させるために使用された信号、与えられた例においては水の陽子の信号に対して反対側で照射する際(+5000Hz)に、MR画像を発生させるための信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度である。
【0065】
図11は、どのようにCEST効果が、Yb−DOTAM−テールの錯体について、pHと共に変動するかを示す。アミドの陽子の交換が、塩基で触媒される。従って、CEST効果は、低いpHでは起こらない。図11から、Yb−DOTAM−テールの錯体の場合に、CEST効果が、〜pH5から起こり始め、且つ、CEST効果が、pH7.5で〜42%まで急速に増加することを見てとることができる。6.5−7.5の臨床的に関連性のあるpHの範囲におけるCEST効果の急勾配の及び緩やかな増加は、この材料でのpHのマッピングを可能とする。より高いpHでは、CEST効果は、交換が、アミドの陽子の共鳴が水の共鳴と合併するほど速くなり、アミドの陽子の(且つ水の陽子でない)選択的な予備飽和を妨げるので、再度減少する(図11における曲線11)。アミドの陽子の共鳴のシフトのために、より高いpHで、照射の周波数が同様にシフトされるとき、即ち、RFパルスが最適化されるとき、最大のCEST効果が、得られる(図11における曲線12)。
【0066】
Yb−DOTAM−G3の錯体について、類似のCEST−pHの曲線が、得られる(図12を参照のこと)。Yb−DOTAM−G3の錯体の濃度が、Yb−DOTAM−テールの錯体についてのものよりも16倍小さいものであるように選ばれた、即ち、Ybの濃度及びこのようにアミドの陽子の濃度が等しいものであったので、最大のCEST効果は、再度、期待されるものとして〜42%である。唯一の差異は、図12における曲線が、Yb−DOTAM−テールの錯体についての曲線(図11)と比較して、より低いpHへシフトしまっているというものである。これは、樹枝状のコアが第三級アミンのおかげで塩基性であるという事実によって、説明されることがあり[G.J.M.Koper et al.,J.Am.Chem.Soc.119,6512(1997)]、且つ、アミドの陽子の交換が、塩基で触媒されるので、交換が、より低いpHで起こり始める。CEST効果における鋭い増加が、今、臨床的に関連性のあるpHの範囲の外側にあるとはいえ、Yb−DOTAM−G3を、pHのマッピングのために、なおも使用することができることを、以下に示すことにする。
【0067】
水におけるMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−G3の錯体の溶液は、CEST効果の濃度依存性を研究するために、徐々に希釈された。理論[S.Zhang et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41,1919(2002)]から期待されるように、MR画像を発生させるために使用される信号の強度、与えられた例においては水の信号の強度は、増加する、即ち、CEST効果は、濃度を減少させると共に非線形的に、減少する(図13を参照のこと)。CEST効果が5%である濃度は、一般に、感度についての尺度として使用されることがある。与えられた例においては、これは、Yb−DOTAM−G3の錯体について〜20μM、一般的なT1の造影剤Gd−DTPA(MagnevistTM)の感度と匹敵する値である。
【0068】
画像化の実験は、Philips 3T人間用MRIスキャナーで実行された。小瓶を含む模型が、図14に図解される。上部の小瓶13は、MOPS緩衝剤を含むのみである。符号14で示された、小瓶の真ん中の行は、3つの異なるpHの値、即ち、(符号14aによって示された)pH=3.5、(符号14bによって示された)pH=6.5、及び(符号14cによって示された)pH=7.5でのYb−DOTAM−テールの錯体(0.9mM)を含む。符号15によって示された、小瓶の下側の行は、3つの異なるpHの値、即ち、(符号15aによって示された)pH=3.5、(符号15bによって示された)pH=6.5、及び(符号15cによって示された)pH=7.5でのYb−DOTAM−G3の錯体を含む。小瓶を備えた模型は、生理学的な水と共にビーカーの中に置かれた。Ybの濃度は、全ての小瓶14a−c、15a−cで同じものであった。この実験における目的は、CESTによるコントラストを得ることであるので、陽子密度で重み付けされた画像が、T1/T2の差異による全てのコントラストを取り除くために、獲得された。事実上、予備飽和無しの画像(図14、上部における左の画像)は、ほとんどいずれの強度の差異をも示さない。使用されたMRIスキャナーの磁場の強さは、3T(128MHz)であり、その磁場の強さは、NMR分光計(7T、300MHz)の磁場の強さと異なる。場の強さにおける差異のために、交換可能な実体、与えられた例においてはアミドの陽子、は、これがBruker社のNMR分光計においては−5000Hzであるのに対して、Philips社のMRIスキャナーにおいて−1900Hzで共鳴する。図14において、−1900Hzにおけるアミドの陽子の予備飽和で、四つの最も右の小瓶の強度は、CESTの発生のおかげで、より低いものである(図14、上部における真ん中の画像)。これを、図14の上部における右の画像において、より明りょうに見てとることができ、それは、左の画像と真ん中の画像との間における差異である。図14から、pH7.5におけるYb−DOTAM−テール(14c)及びpH6.5におけるYb−DOTAM−G3(15b)が、最も大きいCEST効果を提示し、その効果が、図11及び12に図解されたCEST−pHの曲線に従ったものであることを、見てとることができる。最大のCEST効果は、この場合には、〜20%である。これは、使用されたBruker社のNMR(7T)分光計で同じ溶液について得られたもの(〜40%)よりも低いものである。CEST効果における差異は、予備飽和パルスにおける差異によるものであり、且つ、場の強さの差異によらないものである。その差異は、予備飽和のために使用された異なる方法、即ち、パルス化された場の勾配の組み合わせられた使用有りの5.0msの300倍の代わりに、パルス化された場の勾配無しの100msの16倍、によるものであることがある。pH7.5でのYb−DOTAM−G3についてのCEST効果は、〜11%であり、その効果は、pH6.5での値の半分である。これは、アミドの陽子の共鳴のシフトのおかげである(上記を参照のこと)。pH6.5とpH7.5との間におけるこの大きい差異のために、Yb−DOTAM−G3は、分子当たりの多数の常磁性のイオンのおかげで良好な感度を備えたCESTを使用するpHのマッピングに適切な造影剤である。
【0069】
本発明に従ったCEST剤の上記の例が、本発明を限定するものではないことは、理解されることである必要がある。また、他の分子が、本発明の利益を提示する。
【0070】
例えば、本発明の第二の実施形態は、本発明に従ったCEST剤を形成するためにリポソームに組み込まれることがある錯体を含むことがあるCEST剤を提供する。錯体は、CEST活性な常磁性の錯体16及びリン脂質のテール17を含む。CEST活性な常磁性の錯体16は、キレート化剤に付けられた、ランタニドイオンのような常磁性のイオン、好ましくはYb3+のイオン、又は、例.遷移金属イオンのような全ての他の適切な常磁性のイオンを含むことがある。常磁性の錯体は、好ましくは交換可能な陽子であることがあり且つより好ましくは交換可能なアミドの陽子であることがある、交換可能な実体を含む。このようなCEST剤の具体的な例は、図15に図解される。この例におけるCEST活性な常磁性の錯体16は、Yb−DOTAMであることがあり、且つ、ホスファチジルコリンのテール17、より詳しくは1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン誘導体のテールへ付けられることがある。このホスファチジルコリンのテール17において、Rは、C、CH2(OCH2CH2)n、又はCH2(OCH2CH2)nCONHCH2CH2であることがある。リポソームは、100000個までのこれらの常磁性の錯体を含有することができ、よって、常磁性の錯体を備えたこのようなリポソームを使用するMRI技術の感度の大きな改善を可能とする。
【0071】
本発明に従ったデバイスについて、材料のみならず、好適な実施形態、具体的な構築物及び構成を、ここにおいて議論してきたとはいえ、形態及び細部における様々な変化又は変更が、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、なされることがあることは、理解されることである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
応答性のMRI造影剤造影剤
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、先行技術に従ったCEST剤として使用されたLn−DOTAM錯体を図解する。
【図2】図2は、世代(generation)1(G1)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを示す。
【図3】図3は、世代3(G3)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを示す。
【図4】図4は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図5】図5は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図6】図6は、Yb−DOTAM−テール、Yb−DOTAM−G1、及びYb−DOTAM−G3の合成を図解する。
【図7】図7は、本発明に従った実施形態において対照のCEST剤として使用されたYb−DOTAM−テールの分子を図解する。
【図8】図8は、DOTAM基で官能化された世代1(G1)のポリ(プロピレンイミン)のデンドリマーを図解する。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従ったYb−DOTAM−G3のCEST剤を図解する。
【図10】図10は、pH=7.05での水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−テール(18mM)用の1H−NMRスペクトル(上部)及びCESTスペクトル(下部)を示す。
【図11】図11は、固定されたRFパルスについての及び最適化されたRFパルスについての水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−テール(18mM)についてのpHの関数としてCEST効果を図解する。
【図12】図12は、固定されたRFパルスについての及び最適化されたRFパルスについての水中のMOPS緩衝剤を伴ったYb−DOTAM−G3(1.1mM)についてのpHの関数としてCEST効果を図解する。
【図13】図13は、Yb及びYb−DOTAM−G3の濃度の関数として相対的な水の信号の強度を図解する。
【図14】図14は、MOPS緩衝剤(上部の小瓶)のみ、様々なpH及び298Kでの水中のMOPS緩衝剤を伴った、Yb−DOTAM−テール(14mM,真ん中の行)及びYb−DOTAM−G3(0.9mM,下側の行)、の溶液を備えた小瓶を含む、模型のTSEの陽子密度で重み付けされた画像を示す。
【図15】図15は、本発明の実施形態に従ったCEST剤を図解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI造影剤であって、
該造影剤は、担体に連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、
該少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、CESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含む、MRI造影剤。
【請求項2】
前記CEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子に付けられた常磁性のイオンを含む、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項3】
前記CEST活性な常磁性の錯体は、有機の材料に埋め込まれた超常磁性の酸化鉄の粒子を含む、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項4】
該造影剤は:
− 第一のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、該第一のCEST活性な常磁性の錯体は、第一の常磁性のイオン、第一のキレート化配位子及び少なくとも一つの第一の交換可能な実体を含み、且つ、
該造影剤は、
− 第二のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、該第二のCEST活性な常磁性の錯体は、第二の常磁性のイオン、第二のキレート化配位子及び少なくとも一つの第二の交換可能な実体を含み、
該第一の及び第二の常磁性のイオン、該第一の及び第二のキレート化配位子、及び、該第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なる、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項5】
前記常磁性のイオンは、ランタニドイオン又は遷移金属イオンである、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項6】
前記キレート化配位子は、DOTAM又はDOTAM誘導体である、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項7】
前記交換可能な実体は、陽子、水の分子、又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基、の一つである、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項8】
前記担体は、デンドリマー又は直鎖の重合体である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項9】
前記担体は、PPIのデンドリマーである、請求項8に記載のMRI造影剤。
【請求項10】
前記常磁性の錯体は、Yb−DOTAMの錯体である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項11】
前記常磁性の錯体は、Yb−DOTAM錯体である、請求項9に記載のMRI造影剤。
【請求項12】
前記担体は、リポソーム又は粒子である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項13】
前記常磁性の錯体は、さらに、リン脂質のテールを含む、請求項12に記載のMRI造影剤。
【請求項14】
MRI造影剤の調製のための方法であって、
該造影剤は、担体へ連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、該少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオンを含み且つCESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含み、
該方法は:
− 少なくとも一つのキレート化配位子を提供すること、
− 担体を提供すること、
− 該担体へ該キレート化配位子を連結させること、及び
− 該少なくとも一つのキレート化配位子と該少なくとも一つの常磁性のイオンとの間にCEST活性な錯体を形成すること
を含む、方法。
【請求項15】
該方法は:
− 第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び第二のキレート化配位子の少なくとも一つを提供すること、
− 担体を提供すること、
− 該担体へ該第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び該第二のキレート化配位子の少なくとも一つを連結させること、並びに
− 該第一のキレート化配位子の少なくとも一つと第一の常磁性のイオンとの間における少なくとも一つの第一の交換可能な実体を有する錯体及び該第二のキレート化配位子の少なくとも一つと第二の常磁性のイオンとの間の少なくとも一つの第二の交換可能な実体を有する錯体を形成すること
を含み、
それぞれ、該第一の及び第二の常磁性のイオン、該第一の及び第二のキレート化配位子、又は、該第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分子の画像化における請求項1に記載のMRI造影剤の使用。
【請求項1】
MRI造影剤であって、
該造影剤は、担体に連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、
該少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、CESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含む、MRI造影剤。
【請求項2】
前記CEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子に付けられた常磁性のイオンを含む、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項3】
前記CEST活性な常磁性の錯体は、有機の材料に埋め込まれた超常磁性の酸化鉄の粒子を含む、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項4】
該造影剤は:
− 第一のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、該第一のCEST活性な常磁性の錯体は、第一の常磁性のイオン、第一のキレート化配位子及び少なくとも一つの第一の交換可能な実体を含み、且つ、
該造影剤は、
− 第二のCEST活性な常磁性の錯体の少なくとも一つ
を含み、該第二のCEST活性な常磁性の錯体は、第二の常磁性のイオン、第二のキレート化配位子及び少なくとも一つの第二の交換可能な実体を含み、
該第一の及び第二の常磁性のイオン、該第一の及び第二のキレート化配位子、及び、該第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なる、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項5】
前記常磁性のイオンは、ランタニドイオン又は遷移金属イオンである、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項6】
前記キレート化配位子は、DOTAM又はDOTAM誘導体である、請求項2に記載のMRI造影剤。
【請求項7】
前記交換可能な実体は、陽子、水の分子、又はリン酸塩及び/又はリン酸エステル基、の一つである、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項8】
前記担体は、デンドリマー又は直鎖の重合体である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項9】
前記担体は、PPIのデンドリマーである、請求項8に記載のMRI造影剤。
【請求項10】
前記常磁性の錯体は、Yb−DOTAMの錯体である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項11】
前記常磁性の錯体は、Yb−DOTAM錯体である、請求項9に記載のMRI造影剤。
【請求項12】
前記担体は、リポソーム又は粒子である、請求項1に記載のMRI造影剤。
【請求項13】
前記常磁性の錯体は、さらに、リン脂質のテールを含む、請求項12に記載のMRI造影剤。
【請求項14】
MRI造影剤の調製のための方法であって、
該造影剤は、担体へ連結された少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体を含み、該少なくとも一つのCEST活性な常磁性の錯体は、キレート化配位子へ付けられた常磁性のイオンを含み且つCESTを可能とするための少なくとも一つの交換可能な実体を含み、
該方法は:
− 少なくとも一つのキレート化配位子を提供すること、
− 担体を提供すること、
− 該担体へ該キレート化配位子を連結させること、及び
− 該少なくとも一つのキレート化配位子と該少なくとも一つの常磁性のイオンとの間にCEST活性な錯体を形成すること
を含む、方法。
【請求項15】
該方法は:
− 第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び第二のキレート化配位子の少なくとも一つを提供すること、
− 担体を提供すること、
− 該担体へ該第一のキレート化配位子の少なくとも一つ及び該第二のキレート化配位子の少なくとも一つを連結させること、並びに
− 該第一のキレート化配位子の少なくとも一つと第一の常磁性のイオンとの間における少なくとも一つの第一の交換可能な実体を有する錯体及び該第二のキレート化配位子の少なくとも一つと第二の常磁性のイオンとの間の少なくとも一つの第二の交換可能な実体を有する錯体を形成すること
を含み、
それぞれ、該第一の及び第二の常磁性のイオン、該第一の及び第二のキレート化配位子、又は、該第一の及び第二の交換可能な実体、の少なくとも一つは、相互に異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分子の画像化における請求項1に記載のMRI造影剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−539223(P2008−539223A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508367(P2008−508367)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051235
【国際公開番号】WO2006/114738
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051235
【国際公開番号】WO2006/114738
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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