説明

CFRP体と金属体との連結構造

【課題】電食反応の防止に有効で、連結強度に優れ、設計自由の高いCFRP体と金属体との連結構造の提供を目的とする。
【解決手段】炭素繊維強化樹脂体(CFRP体)に絶縁性の熱可塑性樹脂からなる取付体を接合し、当該取付体に金属体を連結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂にて成形、製作されたCFRP体と、金属にて成形、製作された金属体との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化樹脂(CFRP)は比強度、比剛性が高いことから、製品の軽量化、小型化に貢献できることが期待され、多くの産業分野での利用が検討されている。
例えば自動車、二輪車分野では車体の軽量化による燃費向上、産業機械や電気製品の分野では製品の軽量化、小型化、高強度化を図るのに有効とされている。
また、CFRPは導電性に優れていることが特徴となっている。
しかし、このようなCFRPで製作された部品、製品(以下、CFRP体と称する。)と金属製の部品、製品(以下、金属体と称する。)とをそのまま連結すると、ガルバニック・コロージョンと称される電食反応が発生するために金属体の連結部から腐食が進行し、それにより連結強度が低下し、最悪の場合には部品脱落といった問題も発生する。
【0003】
上記のような現象の対策として、特許文献1は電食反応の防止策としてCFRPパイプとアルミニウムパイプとの結合部に電気的絶縁層を介在する技術を開示し、特許文献2は電池反応の防止策として連結部材間に所定電圧を印加する技術を開示する。
しかし、これらの公報に開示する技術は連結構造に大きな制限があり、しかも電食反応の防止策として他の対策手段を講じる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−123765号公報
【特許文献2】特開2009−255429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電食反応の防止に有効で、連結強度に優れ、設計自由の高いCFRP体と金属体との連結構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るCFRP体と金属体との連結構造は、炭素繊維強化樹脂体(CFRP体)に絶縁性の熱可塑性樹脂からなる取付体を接合し、当該取付体に金属体を連結したことを特徴とする。
ここで、接合手段としては熱溶融による熱溶着、取付体をCFRP体にインサート成形するインサート接合の他に接着剤を用いた化学接合やビス、リベット等の物理的接合が例として挙げられる。
また、連結手段はボルト、リベット、クリップ等の物理的連結が好ましいが、接着剤による連結でもよい。
【0007】
CFRP体にはフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を基材に用いたものとポリプロピレン、ナイロン、ABS樹脂のような熱可塑性樹脂を基材に用いたものがある。
本発明は取付体に熱可塑性樹脂を用いた点に特徴があることから、CFRPとして炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)を用いたCFRTP体にすると、このCFRTP体と取付体とを熱溶着により接合したり、CFRTP体に対して取付体をインサート成形するインサート接合でより強固に接合できる。
なお、接着剤を用いて接合してもよい。
【0008】
取付体の熱可塑性樹脂は絶縁性を有することが必要であることから、絶縁性を確保しつつ、強度向上を図った強化材との複合体からなる取付体でもよい。
この場合に取付体がCFRPと同等の機械的強度を有するように強化材で強化されているのが好ましい。
例えば、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)を用いてこの取付体を製作すると連結部の強度が向上する。
また、GFRPの基材にポリプロピレンを用いたGFPPであってもよく、ガラス繊維は短繊維、長繊維の両方が含まれる。
その他にタルク、マイカ、セメント等の無機の補強材との複合材を取付体に用いることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明はCFRP体と金属体との連結部に熱可塑性樹脂からなる取付体を採用したので、CFRP体と金属体との間の電食反応を有効に防止できる。
また、CFRP体としてCFRTP体を用いると、CFRTP体の基材と取付体の基材とがともに熱可塑性樹脂となるので、熱溶着やインサート接合により強固に接合しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る連結構造例を示す。
【図2】取付体の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明に係るCFRP体と金属体との連結構造例を説明するが、CFRP体及び金属体に特に限定がなく、各種製品分野に適用できる。
図1は連結構造部を部分的に示す。
本実施例は、CFRP体1に熱可塑性樹脂からなる断面略コ字形状の取付体3を接合部5にて接合した例である。
取付体3は絶縁性であり、この取付体3と金属体2をボルト等の連結部材4にて連結してある。
CFRP体の基材は熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。
接合方法として熱板や熱風を用いた熱溶融による熱溶着や取付体3を金型に配置したインサート成形によるインサート接合が例として挙げられる。
【0012】
図2に示した実施例は略L字形状の取付体3aを用い、CFRTP体に熱溶着した接合部5aを有し、連結部材としてリベット4aを用いた例である。
取付体3aはガラス繊維と複合化を図った複合材(GFRP)でもよい。
図1及び図2に例として示したように、取付体の形状に制限はなく、CFRP体1と金属体2の形状や連結部位に応じて適宜選択できるので設計自由度が高い。
【符号の説明】
【0013】
1 CFRP体
2 金属体
3,3a 取付体
4,4a 連結部材
5,5a 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化樹脂体(CFRP体)に絶縁性の熱可塑性樹脂からなる取付体を接合し、
当該取付体に金属体を連結したことを特徴とするCFRP体と金属体との連結構造。
【請求項2】
前記CFRP体は炭素繊維強化熱可塑性樹脂体(CFRTP体)であることを特徴とする請求項1記載のCFRP体と金属体との連結構造。
【請求項3】
取付体は強化材との絶縁性複合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のCFRP体と金属体との連結構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−111090(P2012−111090A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260693(P2010−260693)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】