説明

CFRP半製品から実質的に平面のブランク材を所定サイズに切断・処理するための装置およびその方法

本発明は、切断機構(20)により、カッティングテーブル(2)に置かれた平面的なCFRP半製品(6)から、実質的に平面のブランク材(9)を所望のサイズに切り出すための装置(1)に関する。ブランク材(9)は、操作装置に配設されたバキュームエフェクタ(3)により吸引保持され、その後、制限なく室内の適当な位置に置かれる。本発明によれば、バキュームエフェクタ(3)が降下すると、少なくとも一つのブランク材電極(5)がブランク材(9)に接触可能になり、それに応じて少なくとも一つの切り取り残部電極(4)がCFRP半製品(6)から切り離された端部(12)に電気的に接触可能になる。どちらの電極(4、5)も、電線(14)を介して直流源(18)、計測器(16)、特に(DC)電流計(17)に接触されている。切り離されたブランク材(9)をバキュームエフェクタにより測定高(22)まで持ち上げた後、電流Iを確認する。電流Iが約0mAであれば、完全に切り離されている。電流Iが0mAより明らかに大きい場合、完全に切り離されなかったカーボン繊維橋(23)が少なくとも1つ存在するが、好ましくはパルス式に電流Iを最大値IMaxまで上昇させることで、完全な自動生産シーケンスにおいて溶解・切断される。これにより、特に高度に自動化された製造工場において重要となる、摩擦のないさらなるブランク材(9)の処理が可能となる。また、本発明は、特に装置(1)により、CFRP半製品(6)からブランク材(9)を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断手段を用いて、カッティングテーブルの上に置かれた平面のCFRP半製品から実質的に平面のブランク材のサイズに切断・処理するための装置に関する。この装置により、切断済みのブランク材を吸引で引き上げ、少なくともバキュームエフェクタにより持ち上げることができる。
【0002】
さらに、本発明は、本発明の装置を用いて、1枚の平面的なブランク材から複数のブランク材を製造する方法であって、不完全な切断を自動的に検出し、必要に応じて、自動的に除去することを可能にする製造方法に関する。
【0003】
現代の航空機構造における繊維強化プラスチック製部品の使用は、増加傾向にある。このタイプの部品を製造するには、所定の部品形状となるまで、大量の平面的な繊維製半加工品(semi−finished fibrous product)を積層して繊維プリフォームを得る。ほぼランダムな表面形状を有するプリフォームを製造するため、個々の補強繊維層の周辺形状はそれぞれ異なる可能性がある。このため、適切な自動切断機構で、平面的な繊維製半加工品から、適切な周辺構造をもつブランク材を高精度で切り離す必要がある。好適に使用される繊維製半加工品としては、カーボン繊維を用いた織布、スクリムまたは編地等がある(いわゆる「CFRP半製品」)。
【0004】
このように、実質的には製造予定のCFRP部品の三次元形状に従って、カーボン繊維により作製される(繊維)プリフォームは、製造プロセスの過程で、たとえば製造予定のCFRP部品の幾何学的形状に対応した鋳型に導入されて、エポキシ樹脂などの硬化性プラスチック材料で含浸させられる。圧力および/または温度を加えながら、最終的にまたは同時に硬化を行い、寸法的に正確な部品を製造する(いわゆる「RTMプロセス」、「樹脂トランスファー成型」)。
【0005】
RTMプロセスにおいて、繊維プリフォームの製造の完全自動化を可能な限り実現するために、たとえばバキュームエフェクタを使用して、切り離したブランク材を吸引により引き上げ上昇させて、たとえばプリフォームの積層構造用のRTM鋳型内に置き、最終工程において、硬化性プラスチック材料による含浸が実行できるようにする。本装置のバキュームエフェクタは、一般的に、ハンドリング装置(特に複数の自由度を有する関節型ロボットアーム)により完全に自動化されるように、空間的に配置される。
【0006】
自動製造工程においては、切断装置における切断過程で、すべてのカーボン繊維が必ずしも完全に切断されない場合に問題が生じる。この場合、バキュームエフェクタにより、ブランク材をカッティングテーブルから持ち上げようとすると、バキュームエフェクタの下で、ブランク材の位置が変化してしまうため、一般に以降の製造フローに混乱をきたす。このように、ブランク材の正確な空間的位置がわからなくなり、鋳型に対する正確な位置決めは、もはや保証されない。この場合、CFRP半製品からもぎ取られることでブランク材の完全性が損なわれていないのであれば、複雑なマニュアルのリポジショニングによってのみ、位置の修正が可能である。
【0007】
DE69905752T2は、複合積層板の製造用織物を積層するための機械に関し、積層板製造のために織物を積層していく段階的な手順、および、特に成形時のブランク材について開示されている。
【0008】
DE2301736Aには、平坦な材料を切断するための装置が開示されている。この文献によれば、コンピュータによる切断命令が切削ヘッドに伝達され、切断領域が材料繊維の送り方向でそれぞれ切削ヘッドと関連するように設けられている。
【0009】
DE10252671C1には、繊維強化三次元プラスチック材料部品の製造方法が開示されており、選択領域において最も大きな歪みが発生している領域で縫合されている材料を部分的に破壊することが開示されている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、開始材料である平面的なCFRP半製品からのブランク材の切断を完全自動化する装置を提供することであり、この装置は、カーボン繊維の不完全な切断を自動的に検出することができ、必要に応じて、実際の切断工程後に、完全に切断されなかったカーボン繊維を自動的に切断することができる。さらに、本装置は、次の製造段階に自動的に、正しく切り離されたブランク材を移動または搬送することが可能である。
【0011】
本目的は、請求項1に記載の技術的特徴を有する装置により達成される。
【0012】
少なくとも1つのブランク材電極をブランク材に接触させることができ、少なくとも1つの切り取り残部電極(peripheral electrode)をCFRP半製品から切り離された切り取り残部(peripheral portion)に接触させることができ、少なくとも2つの電極が電源および測定手段に接続されており、前記測定手段はCFRP半製品からのブランク材の完全な分離を検出することができることから、CFRP半製品から完全に切断されなかったり切り離されなかったりしたブランク材の完全自動検出が可能である。この場合、シグナル手段により、たとえば、単純な視覚信号の送信および/または対応するエラー信号の制御手段への伝達が可能となり、CFRP半製品からブランク材を完全に分離させるためのさらなる工程を開始させることができるようになる。
【0013】
「CFRP半製品」という語句は、実質的には平面で、当初は「乾いた」状態の強化繊維配置(reinforcing fibre arrangement)を規定する。この強化繊維配置は、好ましくは、カーボン繊維スクリム、織布、編み地、織り合わせ地(interlaced fabric)等で形成されており、まだ、CFRP部品の最終製品を製造するために最終的に硬化性プラスチック材料を浸透させたり含浸させたりしていない。強化繊維が切断指示に十分な電気伝導性を有すると仮定すれば、原則として、本発明は他の半加工の繊維製品にも応用可能である。あるいは、適切な切断方法があれば、本発明は、平面的な「プリプレグ」材料、つまり強化繊維配置、特にカーボン繊維強化配置にも応用可能である。これらの材料は、既に硬化性プラスチック材料に含浸処理済みではあるが、まだ硬化していないか、完全には硬化していない。
【0014】
切り取り残部電極は、CFRP半製品から切り離された、あるいは切り離されることになる切り取り残部と電気的に接触し、ブランク材電極は、切り離されたブランク材と電気的に接続する。好ましくは点状ではなく平面的に構成されるこれら2つの電極は、たとえば穴の開いた板により、または導電性材料からなる織布または網(meshwork)により形成される。ブランク材電極がバキュームエフェクタの吸引領域に配置される場合、穴の開いた板または金属製の織布は、吸引により引き上げられるブランク材への真空効果を妨げない。この真空効果により、通常、十分な電気的な接触が常に確保されるのに十分な大きさの力で、ブランク材がブランク材電極に対して押圧される。したがって、切り取り残部電極とは異なり、電極に取り付けて十分な電気的接触のために十分な高さの接触圧を確保するための弾性保持手段は、ブランク材電極では通常必要とされない。
【0015】
電極は、電源と、特に電流計方式またはオーム計測器方式の測定装置とに接続される。直流電流により、抵抗のばらつきや電流の流れの変動等がより簡易的にかつより正確に検出できるため、電源は直流電流源であることが好ましい。ただし、代わりに交流電流源を用いても測定は可能である。
【0016】
たとえば、切断されていないCFRP半製品がカッティングテーブル上に置かれ、バキュームエフェクタがCFRP半製品の方へ十分に下がってきている場合、有意には0mA以上の(初期または静)直流電流Iがまず定電圧源の陽極から流れ、電流計および切り取り残部電極を介して電気的に伝導性のあるCFRP半製品を通り、ブランク材電極を介して定電圧源の陰極まで戻る。この直流電流Iの絶対的な高さは、CFRP半製品の導電性のみによるものではなく、ブランク材の幾何学形状や電極の表面的な範囲や接触圧、CFRP半製品の幾何学形状等にもより、典型的なブランク材の場合、最大10A(amps;アンペア)である。
【0017】
CFRP半製品は、たとえばHexcel(登録商標)G0926およびHexcel(登録商標)G1157などのバインダー付きのカーボン繊維製の織地である。原則として、本装置は、個々の強化繊維の不完全な切断を確実に検出するため、十分な電気伝導性がある限り、強化繊維織地、スクリム等、どんな素材のブランク材に対しても利用できる。
【0018】
カッティングテーブルの上に置かれ、バキュームエフェクタが通常完全に持ち上げられた後に、最大で18,000回/分の振動数で垂直に振動する刃により、完全に機械的に平面的CFRP半製品から必要な周囲輪郭を有するブランク材を切断する。
【0019】
切断手順が完了した後に全てのカーボン繊維の完全な切断を測定するために、バキュームエフェクタが、切り離されたブランク材の方に降下し、ブランク材を吸引により引き上げて保持する。ブランク材とCFRP半製品との間の隣接する切断面には、依然として電流が流れているため、この手順の間にも、CFRP半製品中の全てのカーボン繊維が正確に切断されたかどうかによらず、非切断時に流れる(初期または静)電流Iと比較して実質的には変化しない強度で、(測定)電流Iが最初は流れ続ける。
【0020】
ブランク材は、バキュームエフェクタの上昇により、最終的に数ミリメートルの測定高まで持ち上げられる。しかしながら、ブランク材をこのようにやや持ち上げた状態で、電流Iが約0mAの数値にならない場合には、このことから、先行する切断手順が不完全であったことが確実にわかる。言い換えると、ブランク材とブランク材を囲むCFRP半製品の切り取り残部との間に、架橋フィラメント、カーボン繊維橋または切り離されたカーボン繊維が残っており、非常に低減された強さではあるものの、それを介して直流電流Iが流れ続けている可能性がある。この場合、ブランク材をさらに上昇させて次の製造段階または生産ユニットに移行させることを直ちに停止し、全体の製造フローを損なわないようにする必要がある。測定高は、好ましくは、少なくともCFRP半製品の材料厚に安全域として数ミリメートルを加えた数値に相当する。
【0021】
出力信号、または電流計もしくはオーム計測器などの測定装置で発生した電流Iは、たとえば切断が不完全だった繊維の切断を自動で開始させる等の目的で、使用者または機械の操作者に対する障害に関する簡単な通知または情報として利用され、かつ/または(切断)装置全体の制御手段に伝達されることになる電気的なエラー信号としても利用される。
【0022】
本装置の開発により、バキュームエフェクタが下げられている状態で、少なくとも2つの電極と、電源と、測定手段と、切断されなかったCFRP半製品とが閉鎖的な電気回路を形成する。したがって、閉鎖回路における電流Iの流れの有無により、CFRP半製品の完全な切断を簡便かつ特に確実な方法で検出できる。
【0023】
本装置のさらに有利な実施形態によれば、測定手段が特に電流計であり、ブランク材を測定高まで上げた場合に、電流Iのアンペア数が有意に0mA以上であれば、ブランク材の不完全な切断を意味する。測定高(たとえば5mm)まで上げられていないブランク材の場合、CFRP半製品とブランク材との隣接する切断面どうしの接触領域に流れる電流により、電流Iのアンペア数は常に0mA以上であるため、測定エラーが防止できる。
【0024】
本装置の他の実施形態として、電流の流量を増やすことでブランク材とCFRP半製品との間にまだ存在している可能性のあるカーボン繊維橋またはカーボン繊維フィラメントを溶融して、このように完全に分離させるため、電流Iを短時間またはパルス状に最大値IMaxまで上昇させることも可能である。
【0025】
したがって、本発明に係わる切断装置は、CFRP部品製造の完全自動生産ラインに使用できる。残存するカーボン繊維橋を融解するのに必要となる電流の最大値IMaxは、100A(アンペア)までである。カーボン繊維橋が完全に融解したら、ブランク材をさらなる製造段階に搬送する。たとえば、操作装置(特に、少なくとも6自由度をもつ多関節ロボットアーム)を用いてバキュームエフェクタにより、次のRTMプロセスのために鋳型まで移動させる。
【0026】
さらに、本発明の目的は、以下の工程を有する請求項11に記載の方法であって、
a) 実質的に平面のCFRP半製品をカッティングテーブルの上に置く工程と、
b) 切断手段により、前記CFRP半製品から、所定の周囲輪郭を有するブランク材を切断する工程と、
c) 前記ブランク材を吸引により引き上げ、少なくとも1つのブランク材電極が前記ブランク材に接触し、少なくとも1つの切り取り残部電極が切り離された前記CFRP半製品の切り取り残部に接触するように該ブランク材を設置するため、バキュームエフェクタを降下させる工程と、
d) 前記バキュームエフェクタにより、少なくとも測定高まで前記ブランク材を持ち上げる工程と、
e) 測定手段、特に電流計により、前記少なくとも2つの電極間を流れる電流Iを測定する工程とを有し、0mAを超える電流IはCFRP半製品からの前記ブランク材の不完全な分離を意味する方法により達成される。
【0027】
この方法により、切断手順の終了時に完全に切り離されないまま残っているカーボン繊維橋の確実な検出が可能となる。切断手順の直後は、分離領域中でCFRP半製品とブランク材の切断面は互いに隣接したままであり、完全な分離の有無にかかわらず電流Iが常に流れてしまい、この電流Iにより誤認が生じる可能性があるが、測定高までブランク材を持ち上げることで、誤った測定結果を導くことになるエラー電流を防ぐ。
【0028】
本装置および方法のさらに有利な実施形態については、その他の請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1に、開始位置にある装置を示す。CFRP半製品は、カッティングテーブル上に置かれ、バキュームエフェクタは、完全に上げられた状態にある。
【図2】図2に、バキュームエフェクタが完全に下げられた状態の前記装置を示す。
【図3】図3に、前記装置と、測定高まで持ち上げられ、完璧に切断されたブランク材とを示す。
【図4】図4に、前記装置と、測定高まで持ち上げられているが、完全には切断されていないブランク材(カーボン繊維橋)とを示す。
【0030】
図中、同じ構成要素には、いずれも同じ参照番号を付した。
【0031】
図1および2は、本装置の模式図であり、カッティングテーブル上に置かれた(CFRP)半製品と、図1では上げられており図2では完全に下げられているバキュームエフェクタとが示されている。カッティングテーブル上に置かれたCFRP半製品の実際の切断手順は、図1に示すように、適切な切断手段により、好ましくは図1のようにバキュームエフェクタが上げられた状態で実行される。CFRP半製品またはブランク材は、平面的な表面形状、または少なくとも1つの空間方向に(若干)湾曲した(球状に湾曲した)表面形状を有する。
【0032】
装置1は、特に、カッティングテーブル2と、バキュームエフェクタ3とを含み、バキュームエフェクタ3は、切り取り残部電極4とブランク材電極5とを備える。装置1により切断される平面的なCFRP半製品6は、カッティングテーブル2の上に置かれている。ブランク材電極5は、バキュームエフェクタ3のCFRPの吸引領域7に配置され、バキュームエフェクタ3が矢印8の方向に下げられたときに、CFRP半製品6またはそこから切り離されたブランク材9と電気的に接触する。切り取り残部電極4は、保持手段11によりバキュームエフェクタ3の外部エッジ10の領域に取り付けられている。バキュームエフェクタ3が下げられると、切り取り残部電極4は、CFRP半製品6の切り取り残部12と電気的に接触し、ブランク材9が切断されている間、電気的な接触がある。保持手段11には、(圧力)バネ13があるため、バキュームエフェクタ3が太字の両矢印に平行に下げられると、切り取り残部電極4がCFRP半製品6上に弾性的に置かれ、バキュームエフェクタ3が矢印8の方向とは反対にやや(少なくとも測定高まで)上げられても、電気的な接触が維持される。切り取り残部電極4の保持手段11の垂直バネ偏位運動は、数ミリメートルに相当する。両電極4、5は、CFRP半製品6の接触面ができるだけ大きくなるように、たとえば金属製の多孔板または金属編組で形成される。電極4、5の多孔板または金属編組は、好ましくは、電気伝導性の良好な耐食金属合金で形成され、たとえば銅、銀、アルミニウムもしくはチタン合金、またはそれらを組合せたものなどで形成される。
【0033】
切り取り残部電極4およびブランク材電極5は、いずれも電源15および測定手段16に相互接続されて、(直流)電流回路を形成している。少なくともバキュームエフェクタ3が下げられた状態では、この回路は、電線を介し閉じている。なお、他の線を代表するかたちで電線14のみに参照番号が与えられている。
【0034】
図1〜4に図示された実施形態において、測定手段16は(直流)電流計17であり、電源15は、好ましくは陽極および陰極を備える定電圧源18として構成される。定電圧源18の陽極と陰極間には、直流電圧Uがかかっており、切り取り残部電極4とブランク材電極5間の電気抵抗が十分低い場合に、電流Iが連続して電線14に流れる。なお、電流Iは、電流計17によりを測定・提示される。さらに、電流計17による電流の測定値は、評価とこれに依存する処理工程の自動化指示のため、制御手段(図示なし)に中継される。2つの電極4、5間に十分に高い(空気)絶縁抵抗が存在するため、図1の場合には、電流Iの測定値は約0mAとなる。
【0035】
バキュームエフェクタ3は、吸引されたブランク材9の任意の空間的位置決めのため、操作装置(図示なし)、具体的には少なくとも6自由度を有する多関節ロボットアーム(標準的な産業ロボット)に空間的に取り付けられる。ブランク材9の位置は、カッティングテーブル2から完全に持ち上げられた図1に示すバキュームエフェクタ3の位置で、操作装置により空間的に自在に決められる。バキュームエフェクタ3には、吸引領域7において乾燥したブランク材9を吸引・保持するため、好ましくはマトリックス形状に配置された小さな吸引キャップまたは吸引パイプの形状などの多数の吸引手段がある。なお、わかりやすくするため、他の吸引手段を代表するかたちで吸引手段19のみに採番した。この配置では、ブランク材9を覆うのに必要とされる吸引手段19のみが、好ましくは真空となる。バキュームエフェクタ3は、事実上いかなる幾何学的形状のブランク材9であっても吸引することができ、制御手段(図示なし)により制御されて、カッティングテーブル2から矢印8とは反対の方向にブランク材9を持ち上げ、下流に接続された生産ユニットに移動させることができる。たとえば、バキュームエフェクタ3は、次のRTM生産プロセスのため、ブランク材9を機械的に鋳型に導入でき、ブランク材を設置しそこに積み重ねて、寸法的に正確なCFRP部品の実質的に完全な自動生産を可能にする。
【0036】
図2を参照すると、バキュームエフェクタ3が、既に切断されたCFRP半製品6上に下げられた位置に示されている。したがって、切り取り残部電極4およびブランク材電極5は、CFRP半製品6と電気的に接触している。定電圧源18の電極4、5における直流電圧Uにより、有意に0mAを超える電流Iが、CFRP半製品6が依然としてもつ電気伝導性により電線14を流れる。隣接する切断面には、分離領域内に依然として十分に低い境界抵抗または十分に高い伝導性があるため、この電流Iは、バキュームエフェクタ3が下げられたときに切断されていないブランク材9の場合に流れる電流Iと比較して、やや低減するのみである。電流Iの強度は、電流計17で測定され、測定電流値として示され、かつ/または装置1全体の制御手段に送信される。
【0037】
完全に上昇させた状態では(図1)、ブランク材9は、CFRP半製品6の切り取り残部12を残しつつ、好ましくは、概略的にのみ示されている切断手段20により、CFRP半製品6から切り離されまたは切断される。切断手段20は、好ましくは、最大18,000回/分の振動数で垂直に振動する少なくとも1つの刃または刃先であり、ブランク材9のあらゆる所望の外形に沿って自動的に導かれる。切断手段20は、図1にて交差した両矢印により示すように、少なくともCFRP半製品の平面内で、また任意にはz方向にも自在に配置される。図2を参照すると、切断手段20は、カッティングテーブル2から搬出され、または除去されている。なお、このことは、切断手段20の領域において垂直に上方を指す矢印により示されている。保持手段11へのバネ13の効果により、切り取り残部電極4およびブランク材9の間に確実な電気的接触が提供される。ブランク材9の切断面(採番なし)が、切断領域においてCFRP半製品6の対向する切断面に密着しているため、カーボン繊維の完全な切断の有無によらず、切断手順の終了時には、電流Iは低減している可能性はあるものの未だに流れている。
【0038】
図3に首尾良く完了した切断手順を図示する。一方、図4では、一例として、切断手順終了時にブランク材9とCFRP半製品6の間に単一のカーボン繊維橋が残っている。図3、4に、完全に上昇した位置(図1参照)ではなく、いわゆる測定位置にあるバキュームエフェクタ3を示す。
【0039】
ブランク材9を周囲のCFRP半製品6から分離させるための実際の切断手順終了時に、バキュームエフェクタ3は、吸引されたブランク材9とともに、CFRP半製品6の上側(採番なし)に対して、図3に示すように矢印21の方向に測定高22までわずかに持ち上げられる。先行する切断手順が首尾良く終了したとき、電流Iはもはや電線14を流れていない。つまり、電流Iのアンペア数が0mA程度の大きさとなるため、電流計17は動かず(電流遮断)、エラー信号が制御手段に出されることはない。完全な切断の場合であっても、ブランク材9が持ち上げられなければ、電流Iが分離領域(切断領域または切断片(Cut))を通ってCFRP半製品6と切断されたブランク材9との間を流れ続けるため、カッティングテーブル2から測定高22へのバキュームエフェクタ3の上昇は、結果の信頼性のため重要である。
【0040】
測定高22は、最大5mmであるが、好ましくは、測定高22はCFRP半製品6の材料厚みよりもやや大きい程度に調整されるのみでよい。
【0041】
図4でも、バキュームエフェクタ3はいわゆる測定位置にあるが、切断手順の終了時には、太い点線の円により示されるように、カーボン繊維橋23がCFRP半製品6と切り離されたブランク材9との間に残っている。
【0042】
CFRP半製品6からのブランク材9のこの不完全な分離の結果、有意に0mAを超えるアンペア数を有する電流Iが電線14を通って流れる。したがって、電流計17が動き、対応する制御信号またはエラー信号が制御手段に伝達される。もし、バキュームエフェクタ3が、矢印21の方向にさらに持ち上げられれば、このエラーに関係なく、張力が十分な大きさに達すればカーボン繊維橋23が実際に裂かれることになる。しかしながら、バキュームエフェクタ3による吸引により引き上げられるブランク材9は、この張力効果により、吸引領域7において滑ってしまう可能性があるため、ブランク材9が規定位置どおり提供されず、たとえば、次のRTMプロセスのための鋳型へのブランク材9の自動挿入が難しくなる。
【0043】
この種の完全な自動生産プロセスを中断させないためには、不完全な切断を知らせるエラー信号が制御手段に到達したら、電流Iが短時間で(パルス状に)最大100A程度の最大値Imaxまで上昇し、カーボン繊維橋23を迅速に溶融し、焼き、または分離する。その後、バキュームエフェクタ3により、ブランク材9がカッティングテーブル2から矢印21の方向に通常の方法で完全に持ち上げられ、次の製造段階へ移される。
【0044】
本発明に係わる方法、好ましくは切断装置1を用いる方法は、以下のとおりである。
【0045】
第1の工程においては、装置1のカッティングテーブル2の上に平面のCFRP半製品6が置かれる。バキュームエフェクタ3が、切断されていないCFRP半製品6の方に下げられたときには、通常、最大で数A(アンペア)の(静)電流Iが存在している。
【0046】
第2の工程において、好ましくは完全に持ち上げられた状態のバキュームエフェクタ3とともに、好ましくは完全に自動化された方法で、CFRP半製品6からブランク材9(どんな外形のブランク材9であっても)を切断する。
【0047】
第3の工程において、バキュームエフェクタ3をCFRP半製品6の方に下ろし、次にブランク材9を真空吸引により引き上げる。したがって、定電圧源18が電線14を介して切り取り残部電極4およびブランク材電極5に接続されて、電気的に閉鎖した(直流)電流回路を形成する。開始材料からブランク材9が完全に、つまり正確に分離された場合でも、電流Iは依然として0mAより大きな状態で流れるが、切断手順開始前に流れていた電流Iよりも通常大幅に低減されている。切断領域において、ブランク材9と、CFRP半製品6とが依然として対向する切断面に沿って互いに接触しているため、電流Iに対する境界抵抗は未だに非常に低いままである。
【0048】
第4の工程において、バキュームエフェクタ3を、吸引されたブランク材9とともに、垂直方向に測定高22まで移動し、つまりカッティングテーブル2から持ち上げる。保持手段11の上のバネ13により、バキュームエフェクタ3が持ち上げられていても、切り取り残部電極4とCFRP半製品6の切り取り残部12との確実な接触が確保される。測定高22は、最大5mm程度であるが、好ましくは大体(単層)CFRP半製品6の材料厚みに対応する。
【0049】
第5の工程において、最終的に電流計17により電流Iに対応する測定値が得られるが、切断が不完全であった場合には、電流Iが切り取り残部電極4、ブランク材電極5および定電圧源18間を流れる。
【0050】
切断手順が正しく実行され、つまりカーボン繊維橋23または分離したカーボン繊維フィラメントが、ブランク材9とCFRP半製品6間に残ってないのであれば、電流I(または正確には測定電流)は約0mAの値となる。この約0mAの電流Iが電流計17により「エラーフリー」進行信号として制御手段に送られて、結果として、制御手段が次に続く製造段階へのブランク材9の進行またはさらなる移送を開始する。
【0051】
しかしながら、カーボン繊維橋23が残っている場合には、ブランク材9が持ち上げられているときの電流Iのアンペア数が、依然として有意に0mAより大きい。この場合、電流計17により測定され、制御手段に送信される電流値が、「エラー信号」である。その後、電流Iは、自動的に最大で100A(アンペア)の最大値IMaxまで上昇して、カーボン繊維橋23を即時熔解または赤熱分離(glowing away)(溶融)させ、CFRP半製品6からブランク材9を最終分離させる。
【0052】
ブランク材9は、その後、自動製造フローにおいて次の製造ステーションに通常の方法で混乱なく送られる。この点において、たとえば、複数のブランク材9が、次のRTMプロセスのために鋳型内で互いに積み重ねられ、最終的には加圧加温しながら硬化性プラスチック材料(特にエポキシ樹脂)に浸積または含浸させて、CFRP完成部品を生成する。
【符号の説明】
【0053】
1 装置
2 カッティングテーブル
3 バキュームエフェクタ
4 切り取り残部電極
5 ブランク材電極
6 CFRP半製品
7 吸引領域(バキュームエフェクタ)
8 矢印
9 ブランク材
10 外部エッジ(バキュームエフェクタ)
11 保持手段
12 切り取り残部(CFRP半製品)
13 バネ
14 (電)線
15 電源
16 測定手段
17 (DC)電流計
18 定電圧源
19 吸引手段(バキュームエフェクタ)
20 切断手段
21 矢印
22 測定高
23 カーボン繊維橋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機構(20)により、カッティングテーブル(2)に置かれた平面的なCFRP半製品(6)から、実質的に平面のブランク材(9)を所望のサイズに切断・処理するための装置であって、切り離された前記ブランク材(9)を吸引により引き上げ、少なくともバキュームエフェクタ(3)により上昇させることができ、少なくとも1つのブランク材電極(5)を、前記ブランク材(9)と接触させ、少なくとも1つの切り取り残部電極(4)を前記CFRP半製品(6)から切り離された切り取り残部(12)と接触させ、前記少なくとも2つの電極(4、5)が電源(15)および測定手段(16)に接続され、前記測定手段(16)は前記CFRP半製品(6)からの前記ブランク材(9)の完全な分離を検出可能である装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極(4、5)と、前記電源(15)と、前記測定手段(16)と、前記切断されていないCFRP半製品(6)とが、少なくともバキュームエフェクタ(3)が下げられている状態で閉電気回路を形成する請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記測定手段(16)が特に電流計(17)であり、ブランク材(9)を測定高(22)まで上昇させたとき、0mAを超える電流Iは、前記CFRP半製品(6)からの前記ブランク材(9)の不完全な分離を意味する請求項1または請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
切断されていないカーボン繊維橋(23)を溶融することにより、前記CFRP半製品(6)からのブランク材(9)の前記完全な分離を自動化するため、0mAを超える電流Iを短時間で最大値IMaxまで上昇させることができる請求項1〜3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの切り取り残部電極(4)が、前記バキュームエフェクタ(3)の外部エッジ(10)の領域に配置される請求項1〜4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの切り取り残部電極(4)が、バネ(13)により保持手段(11)に対して弾性的に垂直方向に配置されて、少なくとも前記測定高(22)まで、前記少なくとも1つの切り取り残部電極(4)と前記CFRP半製品(6)の切り取り残部(12)との間における電気的な接触を確保するようになっている請求項1〜5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブランク材電極(5)が、前記バキュームエフェクタ(3)の吸引領域(7)に配置され、前記ブランク材電極(5)と、吸引により引き上げられる前記ブランク材(9)との間に電気的な接触が存在する請求項1〜6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記切断装置(20)が、高速で垂直に振動する、少なくとも1つの刃先および/または刃を有する請求項1〜7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
前記CFRP半製品(6)が、好ましくは単層織り繊維布、織り合わせ繊維布、編み繊維布またはその組合せである請求項1〜8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
前記電源(15)が定電圧源(18)であり、前記電流計(17)が直流電流計である請求項1〜9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
請求項1〜10の少なくとも1の装置(1)によるCFRP半製品(6)からのブランク材(9)の切断・運搬方法であって、
a) 実質的に平面のCFRP半製品(6)をカッティングテーブル(2)の上に置く工程と、
b) 切断手段(20)により、前記CFRP半製品(6)から、所定の周囲輪郭を有するブランク材(9)を切断する工程と、
c) 前記ブランク材(9)を吸引により引き上げ、少なくとも1つのブランク材電極(5)が前記ブランク材(9)に接触し、少なくとも1つの切り取り残部電極(4)が切り離された前記CFRP半製品(6)の切り取り残部(12)に接触するように該ブランク材を設置するため、バキュームエフェクタ(3)を降下させる工程と、
d) 前記バキュームエフェクタ(3)により、少なくとも測定高(22)まで前記ブランク材(9)を持ち上げる工程と、
e) 測定手段(16)、特に電流計(17)により、前記少なくとも2つの電極(4、5)間を流れる電流Iを測定する工程を有し、0mAを超える電流IはCFRP半製品(6)からの前記ブランク材(9)の不完全な分離を意味する方法。
【請求項12】
前記測定高(22)に達している場合であって、電流Iが0mAを超えているとき、前記電流Iを短時間で最大値IMaxまで上昇させ、少なくとも1つのカーボン繊維橋(23)を溶融することにより、前記ブランク材(9)と前記CFRP半製品(6)間を完全に分離させる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バキュームエフェクタ(3)が前記ブランク材(9)を前記測定高(22)より高く上昇させ、位置決めをして、次の製造段階、特にRTMプロセスの鋳型まで搬送する請求項11または請求項12のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506117(P2011−506117A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538567(P2010−538567)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067064
【国際公開番号】WO2009/080490
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509203120)エアバス オペラツィオンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (67)
【Fターム(参考)】